(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】原子炉のための構造化プラズマセルエネルギーコンバータ
(51)【国際特許分類】
G21D 7/04 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
G21D7/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555546
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(85)【翻訳文提出日】2023-11-05
(86)【国際出願番号】 US2022016057
(87)【国際公開番号】W WO2022197391
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523050988
【氏名又は名称】ロウ,オースティン
(74)【代理人】
【識別番号】100147511
【氏名又は名称】北来 亘
(72)【発明者】
【氏名】ロウ,オースティン
(57)【要約】
構造化プラズマセルが、第1の複数のマイクロキャビティを含む第1の電極と、第1の複数のマイクロキャビティの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマと、を含んでいる。構造化プラズマセルは、更に、第2の複数のマイクロキャビティを含む第2の電極と、第2の複数のマイクロキャビティの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第2のプラズマと、を含んでいる。構造化プラズマセルは、更に、第1の電極と第2の電極の間に配置された電極間ギャップを含んでいる。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造化プラズマセルにおいて、
第1の複数のマイクロキャビティを含む第1の電極と、
前記第1の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマと、
第2の複数のマイクロキャビティを含む第2の電極と、
前記第2の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第2のプラズマと、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された電極間ギャップと、
を備える構造化プラズマセル。
【請求項2】
請求項1に記載の構造化プラズマセルであって、
前記電極間ギャップ内に配置されたバルクプラズマ、を更に備える構造化プラズマセル。
【請求項3】
請求項1に記載の構造化プラズマセルであって、
前記電極間ギャップ内に配置された絶縁体、を更に備える構造化プラズマセル。
【請求項4】
請求項3に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記絶縁体は、前記第1の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上を前記第2の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上と電気的に接続するように構成された導電性経路を含んでいる、構造化プラズマセル。
【請求項5】
請求項4に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記絶縁体の前記導電性経路内にプラズマが配置されている、構造化プラズマセル。
【請求項6】
請求項1に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記第1の電極の前記第1の複数のマイクロキャビティは、前記第1の電極の表面及び本体に配置されている、構造化プラズマセル。
【請求項7】
請求項6に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記第1の電極の前記表面に配置された前記第1の複数のマイクロキャビティは前記電極間ギャップへ直接暴露されている、構造化プラズマセル。
【請求項8】
請求項1に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記第1の複数のマイクロキャビティの量は前記第2の複数のマイクロキャビティの量より少ない、構造化プラズマセル。
【請求項9】
請求項1に記載の構造化プラズマセルにおいて、
前記第1の電極は、前記第1の複数のマイクロキャビティのうちの第1のマイクロキャビティを前記第1の複数のマイクロキャビティのうちの第2のマイクロキャビティと電気的に接続するように構成された第1の複数のチャネルを備えている、構造化プラズマセル。
【請求項10】
請求項1に記載の構造化プラズマセルであって、
前記電極間ギャップの中へ電子を放出する前記第1の電極を加熱するように構成された熱源、を更に備える構造化プラズマセル。
【請求項11】
電気を発生させるように構造化プラズマセルを動作させる方法であって、前記構造化プラズマセルは、第1の表面を含む第1の電極及び第1のプラズマであって、前記第1の表面が第1のマイクロキャビティを画定し、前記第1のプラズマが前記第1のマイクロキャビティ内に配置されている、第1の電極及び第1のプラズマと、第2の表面を含む第2の電極及び第2のプラズマであって、前記第2の表面が第2のマイクロキャビティを画定し、前記第2のプラズマが前記第2のマイクロキャビティ内に配置されている、第2の電極及び第2のプラズマと、を備え、前記方法は、
電磁(EM)源によって、EM場を生成する工程と、
前記EM場を前記第2の表面に平行な方向に伝播させる工程と、
前記EM場によって、前記第2のプラズマ内に配置された電子の温度を上昇させる工程と、を備える、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法において、
前記第1の表面は導電性材料を含んでいる、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記EM場を前記第2のプラズマの中へ吸収する工程、を更に備える方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
核反応からの荷電粒子を使用して前記第1のプラズマをイオン化する工程と、
前記第1の電極の前記第1の表面から前記第1のマイクロキャビティ内に配置された前記第1のプラズマの中へ電子を放出する工程と、
前記放出された電子を前記第1のマイクロキャビティから電極間ギャップを通って前記第2のマイクロキャビティへ伝導させる工程と、
前記放出された電子を前記第2の電極の前記第2の表面に捕集する工程と、を更に備える方法。
【請求項15】
請求項11に記載の方法であって、
前記第1の電極と前記第2の電極の間に配置された電極間ギャップに絶縁体を設ける工程、を更に備える方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法において、
前記EM場は、
高周波、又は、
マイクロ波、の一方を備えている、方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法において、
前記第1の電極は誘電性材料を含んでいる、方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法において、
前記第1の電極は、前記第1のプラズマから隠蔽された第1の本体を含んでいる、方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法において、
前記第2のプラズマ中の前記電子の上昇した前記温度は、前記構造化プラズマセルによって発生する電気の量を増加させる、方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法において、
前記第1の電極は複数の第1のマイクロキャビティを含み、前記第2の電極は複数の第2のマイクロキャビティを含んでいる、方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年3月16日出願の米国特許出願第17/202,952号のPCT国際出願であり、前記米国特許出願の開示全体を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概括的には、原子炉のための構造化プラズマセルエネルギーコンバータに関する。
【背景技術】
【0003】
この項目は、本開示に関連する背景情報を提供しており、必ずしも先行技術ではない。
【0004】
熱電子エネルギー変換(TEC:Thermionic Energy Conversion)システムは、熱電子放出から電気を生成することによって直接的な熱電気エネルギー変換を提供する。TECシスムは、動的な熱電気エネルギー変換方法を排除するので、従来のパワープラントに勝る恩恵をもたらす。具体的には、TECシステムは、電気エネルギーを発生させるために電子放出材料から電子を放出させるのに熱を使用する。幾つかの事例では、電子放出材料へ印加される熱の量はTECシステムが生成する電気エネルギーの量に正比例する。また一方で、TECシステムでの電気エネルギーを生成するのに必要とされる熱の量は潜在的制限要因である。システムへ印加される熱の量とは独立に電気エネルギー出力の量を増加させることが、電気エネルギー発生のためのTECシステムのより広範な適用を可能にするだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願第17/202,952号
【発明の概要】
【0006】
この項目は、開示の全体的な要約を提供しており、その全範囲の又はその特徴すべての包括的な開示ではない。
【0007】
本開示の1つの態様は、原子炉のための構造化プラズマセルエネルギーコンバータを提供している。構造化プラズマセルは、第1の複数のマイクロキャビティを含む第1の電極と、第1の複数のマイクロキャビティの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマと、を含んでいる。構造化プラズマセルは、更に、第2の複数のマイクロキャビティを含む第2の電極と、第2の複数のマイクロキャビティの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第2のプラズマと、を含んでいる。構造化プラズマセルは、更に、第1の電極と第2の電極の間に配置された電極間ギャップを含んでいる。
【0008】
開示のこの態様の諸実施形は、以下の随意的な特徴のうちの1つ又はそれ以上を含み得る。幾つかの実施例では、構造化プラズマセルは、電極間ギャップ内に配置されたバルクプラズマを更に含んでいる。他の実施例では、構造化プラズマセルは、電極間ギャップ内に配置された絶縁体を更に含んでいる。本明細書では、絶縁体は、第1の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上を第2の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上と電気的に接続するように構成された導電性経路を含むものとすることができる。随意的には、絶縁体の導電性経路内にプラズマが配置されていてもよい。
【0009】
幾つかの実施形では、第1の電極の第1の複数のマイクロキャビティは、第1の電極の表面及び本体に配置されている。これらの実施形では、第1の電極の表面に配置された第1の複数のマイクロキャビティは、電極間ギャップへ直接暴露されている。第1の複数のマイクロキャビティの量は、第2の複数のマイクロキャビティの量より少なくてもよい。幾つかの実施例では、第1の電極は、第1の複数のマイクロキャビティの第1のマイクロキャビティを第2の複数のマイクロキャビティの第2のマイクロキャビティと電気的に接続するように構成された複数のチャネルを含んでいる。第1のプラズマは、第1のプラズマを取り囲むシースを含んでいてもよい。
【0010】
開示の別の態様は、電気を発生させるように構造化プラズマセルを動作させる方法を提供している。構造化プラズマセルは、第1の表面を含む第1の電極と、第1のプラズマと、を含み、第1の表面は第1のマイクロキャビティを画定し、第1のプラズマは第1のマイクロキャビティ内に配置されている。構造化プラズマセルは、更に、第2の表面を含む第2の電極と、第2のプラズマと、を含み、第2の表面は第2のマイクロキャビティを画定し、第2のプラズマは第2のマイクロキャビティ内に配置されている。方法は、電磁(EM)源によって、EM場を生成する工程と、EM場を第2の表面に平行な方向に伝播させる工程と、を含む。方法は、更に、EM場によって、第2のプラズマ内に配置された電子の温度を上昇させる工程を含む。
【0011】
この態様は、以下の随意的な特徴のうちの1つ又はそれ以上を含み得る。幾つかの実施形では、第1の表面は導電性材料を含んでいる。幾つかの実施例では、方法は、EM場を第2のプラズマの中へ吸収する工程を更に含む。これらの実施例では、方法は、更に、核反応からの荷電粒子を使用して第1のプラズマをイオン化する工程と、第1の電極の第1の表面から第1の複数のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマの中へ電子を放出する工程と、放出された電子を第1の複数のマイクロキャビティから電極間ギャップを通って第2の複数のマイクロキャビティへ伝導させる工程と、放出された電子を第2の電極の第2の表面に捕集する工程と、を含む。
【0012】
方法は、第1の電極と第2の電極の間に配置された電極間ギャップに絶縁体を設ける工程を更に含んでもよい。随意的には、EM場は、高周波又はマイクロ波の一方を含んでいてもよい。幾つかの実施例では、第1の電極は誘電性材料を含んでいる。幾つかの実施形では、第1の電極は、第1のプラズマから隠蔽された第1の本体を含んでいる。第2のプラズマ中の電子の上昇した温度は、構造化プラズマセルによって発生する電気の量を増加させ得る。幾つかの実施例では、第1の複数のマイクロキャビティは、第2の複数のマイクロキャビティより少ない。
【0013】
本明細書に提供されている記述から適用可能性の更なる領域が明らかになるであろう。この要約中の記述及び特定の実施例は、例示のみを目的とし、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【0014】
本明細書に記載されている図面は、選択された構成を例示することのみを目的とし、全ての考えられ得る実施形を例示することを目的とせず、本開示の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本開示の原理による、原子炉のための或る例示としての構造化プラズマセルエネルギーコンバータの機能ブロック図である。
【
図1B】本開示の原理による、
図1Aの構造化プラズマセルエネルギーコンバータからの電極の分解図である。
【
図2】本開示の原理による、絶縁体を備えた或る例示としての構造化プラズマセルエネルギーコンバータの機能ブロック図である。
【
図3A】本開示の原理による、或る例示としての構造化プラズマセルエネルギーコンバータ配置の概略上面図である。
【
図3B】本開示の原理による、電磁場イオン化を使用して動作する
図3Aの構造化プラズマセルエネルギーコンバータの概略側面図である。
【
図4】本開示の原理による、
図3Bの構造化プラズマセルエネルギーコンバータを用いて電気を生成する方法のフロー線図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面全体を通して、対応する参照符号は対応する部分を指す。
【0017】
これより添付図面を参照しながら構成例をより十分に説明してゆく。構成例は、この開示が徹底され開示の範囲を当業者に十分に伝えることができるように提供されている。本開示の諸構成の十分な理解をもたらすために、特定の構成要素、デバイス、及び方法の実施例の様な特定の詳細事項が示されている。当業者には自明である様に、特定の詳細事項は採用される必要があるとは限らず、当該構成例は多くの異なる形態に具現化される余地があり、特定の詳細事項及び構成例は開示の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0018】
熱電子エネルギー変換(TEC)は、熱電子放出から電気を生成する直接的な熱電気エネルギー変換プロセスである。具体的には、TECシステムは、第1の電極(即ち、エミッタ又はカソード)から電子を放出し、それらを第2の電極(即ち、コレクタ又はアノード)に捕集することによって電気を発生させる。エミッタとコレクタの間に配置された空間又はギャップは、電極間ギャップと呼ばれる。電子がエミッタから放出されると、電子は電極間ギャップ中に集まり、空間電荷効果を生じさせる。空間電荷効果とは、電極の表面近くの電子から負電荷を捕集することである。即ち、電子が電極間ギャップ中に及び/又は電極表面近くに集まってゆくと、電子の負電荷が電子の更なる放出を跳ね返すのである。空間電荷効果は、エミッタから放出される追加の電子を跳ね返し、こうして追加の電子がエミッタからコレクタへ進むのを妨げる。
【0019】
TECシステムの現在の諸実施形では、空間電荷効果を軽減するのに電極間ギャップ中に導電性媒体を利用している。一部の実施例では、TECデバイスは、電極間ギャップ中に導電性ガス(即ち、バルクプラズマ)を含んでいる。電極間ギャップ中のバルクプラズマは、電子を、電極間ギャップを横切って伝導させることによって空間電荷効果を軽減する。即ち、バルクプラズマ(例えば、セシウム)は、エミッタから放出される電子を、導電性バルクプラズマを通ってコレクタへ伝導させる導電性ガスである。バルクプラズマは、電子が電極間ギャップ中に集まって空間電荷効果を生じさせないように、電子がエミッタから電極間ギャップを通ってコレクタへ進むのを促す。即ち、電極間ギャップ中に導電性媒体(例えば、バルクプラズマ)がなければ、電子は電極間ギャップを横切って伝導することができず、代わりにエミッタの表面又はその近くに集ってしまう。ゆえに、バルクプラズマは、電子を、電極間ギャップを通って伝導させることによって、空間電荷効果を軽減する。
【0020】
しかしながら、幾つかの実施形では、電極間ギャップ中のバルクプラズマは、自然なイオン化前状態では、電子を伝導させない可能性がある。プラズマがイオン化されたら、プラズマはエミッタからコレクタへ電子を伝導させることができる。一部の実施例では、バルクプラズマは、エミッタと接触することによってイオン化され、エミッタは電子をプラズマを横切って伝達させられるようになる。プラズマはエミッタから放出された電子によってイオン化され、したがって、放出された電子はプラズマをイオン化し尚且つ電極間ギャップを横断することができる。
【0021】
他の実施例では、プラズマは、荷電粒子がプラズマの中性原子に当たって中性原子を追加の電子とイオンへイオン化する拡散支配プラズマ(diffusion-dominated plasma)であり、このイオン化は荷電粒子イオン化と呼ばれることもある。本明細書では、荷電粒子は、核分裂片、アルファ崩壊粒子、及び/又はベータ崩壊粒子を含み得る。具体的には、TECシステムは、正味中性子発生材料によって吸収される中性子を発生させる中性子源を含んでいてもよい。正味中性子発生材料は、核分裂性(例えば、U-235)即ち、中性子吸収後に核分裂反応を起こせるか又は燃料親(例えば、U-238)即ち、中性子吸収後に核分裂反応を起こせないかのどちらかであり得る。正味中性子発生材料は、中性子吸収後に不安定になり、核分裂片へと割れる。一部の実施形では、核分裂片はベータ崩壊を来し、その結果、核分裂片は、本明細書で「ベータ崩壊粒子」と呼ばれる追加の電子を放出することによってその中性子の1つを陽子に変換する。核反応(例えば、核分裂及び/又はベータ崩壊)によって生成される核分裂片及び/又はベータ崩壊粒子(総称して荷電粒子と呼ぶ)は、TECシステムのプラズマをイオン化することができる。こうして、荷電粒子(例えば、核分裂片及び/又はベータ崩壊粒子)はプラズマをイオン化し、エミッタから放出された電子は電極間ギャップを横断してコレクタに至り、電気を発生させる。
【0022】
エミッタからコレクタへ放出される電子の量は、TECシステムの電流密度を表す。即ち、TECシステムの電流密度が高いほど、TECシステムが生成する電気の量が多い。TECシステムの電流密度出力は、電極(例えば、エミッタ及びコレクタ)とプラズマの間の表面積比に依存する。具体的には、エミッタとプラズマの間の増加された表面積が、エミッタからプラズマの中へ放出される電子の量を増加させる。コレクタとプラズマの間の増加された表面積が、電流を発生させるためにコレクタに集まる電子の量を増加させる。
【0023】
本明細書の諸実施形は、原子炉のための構造化プラズマセルエネルギーコンバータに向けられている。構造化プラズマセルは、複数のマイクロキャビティを含む電極(例えば、エミッタ及びコレクタ)を含んでいる。マイクロキャビティは、電極の表面積を増加させるように構成されている。ゆえに、マイクロキャビティは、電極の表面積を増加させることによって、プラズマと電極の間の表面積比を増加させる。幾つかの実施例では、プラズマと電極の間の増加された表面積比は、TECシステムによって発生する電気の量を増加させる。他の実施例では、プラズマと電極の間の増加された表面積比は、TECシステムの電流出力を同じに保ったままTECシステムがより低い温度で動作するのを可能にする。
【0024】
これより
図1Aを参照して、幾つかの実施例では、構造化プラズマエネルギーセルシステム100(入れ替え可能にTECシステム100と呼ばれる)が、電極110、電極間ギャップ120、熱源106、及び負荷108を含んでいる。電極110は、エミッタ110aとコレクタ110bを含んでいてもよい。エミッタ110aは、電子102を、電極間ギャップ120を通ってコレクタ110bへ放出するように構成されている。即ち、エミッタ110aが熱源106によって加熱されると、電子102がエミッタ110aから電極間ギャップ120の中へ吹きこぼれる。エミッタ110aを加熱するのに使用される熱源106は任意の外部熱源106であってもよい。幾つかの実施例では、熱源106は、核反応(例えば、核分裂及び/又は核融合)から熱を生成する。コレクタ130は、エミッタ110aから電極間ギャップ120を横断してきた電子102を捕集するように構成されている。コレクタ110bによって捕集された電子102は、負荷108を駆動する電流を生じさせる。電極間ギャップ120を横断し、負荷108を駆動する電子102の量は、構造化プラズマエネルギーセルシステム100によって発生する電気の量を表す。
【0025】
幾つかの実施形では、電極間ギャップ120は、本明細書ではプラズマ122と呼ばれるバルクプラズマ122を含んでいる。電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122は、空間電荷を軽減するように構成されている。具体的には、プラズマ122は、エミッタ110aから電極間ギャップ120を通ってコレクタ110bへ放出される電子102を伝導させる導電性ガス(即ち、セシウム)を含んでいてもよい。プラズマ122は、電極間ギャップ120を横切って電子102を伝導させることによって、エミッタ110aに及び/又はエミッタ110a近くに集まる電子102の量を減らし、それによって空間電荷効果を低減する。プラズマ122は、更に、プラズマ122の導電性材料を取り囲むシース(図示せず)を含んでいてもよい。シースは、シース中に電子密度より大きい正帯電イオン密度を含み得る。シース中のより大きい正帯電イオン密度は、電子の重量がイオンの重量より小さいことが理由で起こる。電子のより低い重量は、電子をイオンよりも動き易くするので、電子は、イオンがTECシステム100を脱出する速度より高い速度でTECシステム100を脱出する(例えば、電流出力を発生させる)。
【0026】
電極110は、電極表面112と電極本体114を含んでいてもよい。具体的には、エミッタ110aはエミッタ表面112aとエミッタ本体114aを含んでいる。エミッタ表面112aはプラズマ122へ直接暴露されており、その結果、電子102はエミッタ表面112aからプラズマ122の中へ放出される。幾つかの実施例では、エミッタ表面112aは、電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ直接暴露されている。他の実施例では、エミッタ表面112aは、電極間ギャップ120の外に配置されたプラズマ122へ直接暴露されている。エミッタ本体114aはエミッタ表面112aによって取り囲まれており、したがって、エミッタ本体114aは電極間ギャップ120の内又は外に配置されたプラズマ122の直接暴露から隠蔽されている。
【0027】
コレクタ110bは、コレクタ表面112bとコレクタ本体114bを含んでいてもよい。コレクタ表面112bは、電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ直接暴露されており、その結果、電子102は電極間ギャップ120を通ってプラズマ122を横断し、コレクタ表面112bに集まる。幾つかの実施例では、コレクタ表面112bは、電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ直接暴露されている。他の実施例では、コレクタ表面112bは、電極間ギャップ120の外に配置されたプラズマ122へ直接暴露されている。コレクタ本体114bはコレクタ表面112bによって取り囲まれており、したがって、コレクタ本体114bは電極間ギャップ120の内又は外に配置されたプラズマ122への直接暴露から隠蔽されている。
【0028】
TECシステム100の出力パワー又は電気は、次式、即ち、
P
out=IV
out (1)
によって表すことができる。方程式(1)では、P
outはTECシステム100によって発生する出力パワー又は電気を表し、IはTECシステム100の電流を表し、V
outはTECシステム100の出力電圧を表す。TECシステム100の出力電圧V
outは、次式、即ち、
V
out=(φ
E-φ
C)+V
p,bias (2)
によって表すことができる。方程式(2)では、V
outはTECシステム100の出力電圧を表し、φ
Eはエミッタ110aの仕事関数を表し、φ
Cはコレクタ110bの仕事関数を表し、V
p,biasは電極間ギャップ120内のプラズマ122へ印加されるバイアス電圧を表す。V
p,biasは、次式、即ち、
【数1】
によって表すことができる。方程式(3)では、Aはエミッタ110aの表面積に対するコレクタ110bの表面積の比を表し、Rは熱電子電流に対するプラズマ電子電流の比を表し、μはイオン電流に対するプラズマ電子電流の比を表し、T
Eはエミッタ110aの温度を表し、T
eは電子の温度を表し、I
thは熱電子放出電流を表し、V
Eはエミッタ110aでの電圧電位を表し、V
pはプラズマ122の電圧電位を表す。したがって、方程式3は、出力電圧V
outを、熱電子放出電流I
thとエミッタ110a及びコレクタ110bの表面積Aに関する電流Iの関数として表している。TECシステム100の電流Iと熱電子放出電流I
thは、次式、即ち、
【数2】
【数3】
によってそれぞれ表すことができる。
【0029】
方程式(4)及び(5)では、AEはエミッタ110aの表面積を表し、φEはエミッタ110aの仕事関数を表し、TEはエミッタ110aの温度を表し、eは単位クーロンによる電子102の電荷を表し、meは単位キログラムによる電子102の質量を表し、kは単位ジュール/ケルビンによるボルツマン定数を表し、hは単位ジュール秒によるプランク定数を表し、Ie,Eはエミッタ110aでの電子電流を表す。
【0030】
幾つかの実施形では、電極110の表面積を増加させることがTECシステム100の出力パワーPoutを増加させる。具体的には、以上の方程式(1)、(4)、及び(5)によって示されている様に、エミッタ110aの表面積AEを増加させることが、熱電子放出電流Ithも増加させ、それによってTECシステム100のパワー出力が増加する。エミッタ110aの表面積AEを増加させることは、更に、熱電子放出電流Ithを同じに保ったままエミッタTEの温度が降下するのを許容し得る。即ち、エミッタ110aの増加された表面積AEは、出力パワーPoutを同じに保ったままTECシステム100がより低い温度TEで動作することを可能にする。TECシステム100をより低い温度TEで動作させることは、TECシステム100の推定耐用年数を増加させる。
【0031】
幾つかの実施形では、電極110の表面積は電極110の大きさを増加させることによって増加されており、これはTECシステム100の体積Vを増加させることになる。しかしながら、TECシステム100は体積Vの制約を含んでいることもあり、これが表面積AEを増加させるために電極110の大きさを増加させることを阻む。他の実施形では、表面積AEは、電極110に複数のマイクロキャビティ116を設けることによって増加される。具体的には、エミッタ110aは第1の複数のマイクロキャビティ116aを含み、コレクタ110bは第2の複数のマイクロキャビティ116bを含んでいてもよい。マイクロキャビティ116は、電極表面112及び/又は電極本体114に含まれるボイド、ディンプル、ポア、マイクロ構造、又は他の適切な構築部であるとしてもよい。マイクロキャビティ116は、特定のTECシステム100の用途に応じた任意の適切な幾何学的形状、大きさ、量、及び/又は構成、又はそれらの組合せを含んでいてもよい。例えば、電極110は、電極110の体積1mm3当たり10mm2の表面積を有する球状マイクロキャビティ116を含んでいてもよい。幾つかの実施例では、第1の複数のマイクロキャビティ116aの量は、コレクタ110bの第2の複数のマイクロキャビティ116bの量より少ない。マイクロキャビティ116は、TECシステム100の体積Vを同じに保ったまま電極110の表面112の表面積(例えば、エミッタの表面積AE)を増加させる。
【0032】
幾つかの実施例では、電極110のマイクロキャビティ116は電極本体114内に配置されており、その結果、電極表面112の増加された表面積は、電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122への直接暴露から隠蔽される。他の実施例では、電極110のマイクロキャビティ116は、電極間ギャップ120へ直接暴露される電極表面112に配置されている。ここでは、電極表面112に配置されたマイクロキャビティ116は、電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へも直接暴露される。電極110は、電極表面112及び/又は電極本体114に配置されたマイクロキャビティ116の何れかの組合せを含んでいてもよい。
【0033】
マイクロキャビティ116によって作り出される電極表面112の増加された表面積は、電子102を放出する又は捕集するように構成され得る。例えば、熱源106がエミッタ110aを加熱してゆくと、マイクロキャビティ116によって作り出された追加のエミッタ表面112aは、マイクロキャビティ116によって作り出されたボイドの中へ電子102を放出する。エミッタ表面112aからマイクロキャビティ116の中へ放出された電子102は、エミッタ表面112aに又はエミッタ表面112aの近くに集まり、マイクロキャビティ116に空間電荷効果を生じさせる可能性がある。幾つかの実施例では、電極110のマイクロキャビティ116は、空間電荷効果を軽減するように構成されたプラズマ122を含んでいる。具体的には、第1のプラズマ122aが、エミッタ110a側に配置された各マイクロキャビティ116内に配置され、第2のプラズマ122bが、コレクタ110b側に配置された各マイクロキャビティ116内に配置されていてもよい。幾つかの実施例では、エミッタ110a表面とコレクタ110b表面の間の減少された表面積暴露は、放射損失減少をもたらし、TECシステム100の全体的な効率を改善する。減少された表面積は、放射損失を相殺するのに必要な放射電流IとTEも有意に低下させる。
【0034】
次に
図1Bを参照して、幾つかの実施形では、電極110(例えば、エミッタ110a及びコレクタ110b)は、1つ又はそれ以上のチャネル118を含んでいる。1つ又はそれ以上のチャネル118は、1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116を1つ又はそれ以上の他のマイクロキャビティ116及び/又は電極間ギャップ120と接続し、それらの間の流体連通を可能にするように構成されている。1つ又はそれ以上のチャネル118は、電子102を伝導させるための導電性媒体(例えば、セシウム)を提供するプラズマ122を含んでいる。チャネル118内に配置されたプラズマ122は、電子102が電極110のマイクロキャビティ116間で伝導するのを可能にする。幾つかの実施例では、第1のプラズマ122aは、エミッタ110aのチャネル118内に配置されている。他の実施例では、第2のプラズマ122bは、コレクタ110bのチャネル内に配置されている。例えば、
図1Bは、複数のチャネル118がマイクロキャビティ116aを他のマイクロキャビティ116a及び/又は電極間ギャップ120へ電気的に接続しているTECシステム100からのエミッタ110aの分解図を描いている。明確さを期して、
図1Bにはエミッタ110aしか描かれていないが、コレクタ110bの分解図は、
図1Bのエミッタ110aの分解図と実質的に同様であるものと理解される。エミッタ110aは、エミッタ本体114a内に配置された第1のマイクロキャビティ116a1をエミッタ本体114a内に配置された第2のマイクロキャビティ116a2へ接続する第1のチャネル118aを含んでいる。第1のチャネル118aは、第1のマイクロキャビティ116a1と第2のマイクロキャビティ116a2の間で電子102を伝導させる第1のプラズマ122aを含んでいる。第1のチャネル118aは、電子102をエミッタ表面112aから第1のチャネル118a内に配置された第1のプラズマ122aの中へ直接放出するように構成されていてもよい。
【0035】
幾つかの実施例では、1つ又はそれ以上のチャネル118は、1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116aから電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ電気的に接続し及び/又は電気連通を可能にさせる。例えば、
図1Bに示されている様に、第2のチャネル118bは、第2のマイクロキャビティ116a2を電極間ギャップ120へ接続している。第2のチャネル118bは、第2のマイクロキャビティ116a2を電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ接続している。第2のチャネル118bは、第1のマイクロキャビティ116a1と第2のマイクロキャビティ116aの間を伝導する電子102が電極間ギャップ120の中へ伝導するのを可能にする。こうして、第2のチャネル118bは、第1のマイクロキャビティ116a1及び第2のマイクロキャビティ116a2からの電子102が電極間ギャップ120の中へ伝導し、TECシステム100のための電流を発生させるのを可能にする。1つ又はそれ以上のチャネル118は、任意の数のマイクロキャビティ116aを任意の数の他のマイクロキャビティ116a(例えば、エミッタ表面112a及び/又はエミッタ本体114aに配置されたマイクロキャビティ116)へ電気的に接続することができる。1つ又はそれ以上のチャネル118は、電極表面112からの電子102をチャネル118内に配置されたプラズマ112から直接に放出する(例えば、エミッタ110aから)又は捕集する(例えば、コレクタ110bにて)ことによってマイクロキャビティ116の役目も果たし得る。ここでは、電子102は、1つ又はそれ以上のチャネル118の中へ直接放出され、1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116へ又は電極間ギャップ120へ伝導する。
【0036】
幾つかの実施形では、熱源106がエミッタ110aを加熱し、エミッタ表面112aから電子102が放出されると、電子102はエミッタ110aのマイクロキャビティ116a内に配置されたプラズマ122に進入する。ここでは、電子102は、1つ又はそれ以上のチャネル118を経由してエミッタ110aの別のマイクロキャビティ116aへ及び/又は電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122へ伝導することができる。電子102が電極間ギャップ120内に配置されたプラズマ122に到達したら、電子102は、コレクタ110bの1つ又はそれ以上のチャネル118を経由してコレクタ110b側に配置されたマイクロキャビティ116bへ伝導する。幾つかの実施例では、電子102はコレクタ表面112bに集まり、負荷108を駆動するための電流を発生させる。
【0037】
これより
図2を参照して、構造化プラズマエネルギーセルシステム200(入れ替え可能にTECシステム200と呼ばれる)は、ここでの記述を除いては、TECシステム100と実質的に同様であるとしてもよい。TECシステム200は、電極110、電極間ギャップ120、熱源106、及び負荷108を含んでいる。幾つかの実施形では、TECシステム200は、電極間ギャップ120中に絶縁体124を含んでいる。絶縁体124は、エミッタ110aとコレクタ110bの間に電気的絶縁を提供するように構成されている。即ち、絶縁体124は、電子102がエミッタ110aからコレクタ110bへ横断するのを阻止する非導電性材料を含んでいる。絶縁体124は、エミッタ110aとコレクタ110bの間に電気的短絡が起こるのも防止することができる。幾つかの実施例では、固体絶縁体124材料(例えば、セラミック)は、電極間ギャップ120中にTECシステム200のための構造的支持を提供する。
【0038】
幾つかの実施形では、電極間ギャップ内に配置された絶縁体124は、導電性経路126を含んでいる。導電性経路126は、電子102を、エミッタ110aからコレクタ110bへ電極間ギャップ120を通って伝導させるように構成されている。絶縁体は電子102がエミッタ110aからコレクタ110bへ伝導するのを阻止するので、導電性経路126が電子をエミッタ110aからコレクタ110bへ伝導させて、電流出力を発生させ、負荷108を駆動する。導電性経路126は、電子102をエミッタ110aからコレクタ110bへ伝導させる導電性媒体(例えば、プラズマ122)を含んでいてもよい。
【0039】
各導電性経路126は、エミッタ110aの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116aをコレクタ110bの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116bへ接続することができる。幾つかの実施例では、導電性経路126は、エミッタ110a側に配置された単一のマイクロキャビティ116aをコレクタ110b側に配置された1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116bへ接続している。幾つかの実施形では、熱源106がエミッタ110aを加熱し、エミッタ表面112aから電子102が放出されると、電子102は、エミッタ110aのマイクロキャビティ116a内に配置された第1のプラズマ122aに進入する。ここでは、電子102は、1つ又はそれ以上のチャネル118を経由して、エミッタ110aの別のマイクロキャビティ116aへ及び/又は絶縁体124の導電性経路126へ伝導することができる。電子102が導電性経路126に到達したら、導電性経路126内に配置されたプラズマ122は、電子をコレクタ110b側に配置された1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116bへ伝導させる。幾つかの実施例では、電子102はコレクタ表面112bに集まり、負荷108を駆動するための電流を発生させる。
【0040】
幾つかの実施形では、TECデバイスは、プラズマをイオン化するために電磁(EM)場を利用している。しかしながら、現在のTECデバイス(例えば、マイクロキャビティ無しの電極を含んでいるTECデバイス)は、導電性表面を有する電極を使用している。電極の導電性表面がEM場エネルギーを吸収することによってプラズマを遮蔽し、その結果、プラズマはEM場エネルギーを一切吸収しない。電極の導電性表面は、電子をエミッタから放出させ、コレクタによって吸収させる。幾つかの技法は、電極の導電性表面がEM場エネルギー全てを吸収せず、EM場エネルギーの一部がプラズマによって吸収されるように、電極材料の厚さを削減することを試みている。しかしながら、これらの技術はTECデバイスの全体としての推定耐用年数を低下させる、というのも薄い電極材料はTECデバイスの高い動作温度に耐えることができないからである。
【0041】
本明細書での諸実施形は、マイクロキャビティを含む電極を備えたTECシステムを用いて電気を発生させる方法に向けられている。これらの実施形は、電極の導電性表面に平行に伝播するEM場を生成する工程を含んでいる。電極の導電性表面に対するEM場の平行伝播方向は、EM場が電極のマイクロキャビティの中へ伝播し、電極のマイクロキャビティ及びチャネル内に配置されたプラズマの中へ吸収されるのを可能にする。プラズマの中へのEM場の吸収は、プラズマ中の電子をイオン化し及び/又は電子の温度を上昇させ、それによってTECシステム及びプラズマのイオン化工程の効率を高める。
【0042】
図3Aは、構造化プラズマエネルギーセルシステム300(入れ替え可能にTECシステム300と呼ばれる)の上面図を描いている。TECシステム300は、エミッタ表面112a又はエミッタ本体114aに配置され得る第1の複数のマイクロキャビティ116aを含むエミッタ110aを含んでいる。TECシステム300は、コレクタ表面112b又はコレクタ本体114bに配置され得る第2の複数のマイクロキャビティ116bを含むコレクタ110bも含んでいる。幾つかの実施例では、電極110(例えば、エミッタ110a及びコレクタ110b)は、電極110の1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116を1つ又はそれ以上の異なるマイクロキャビティ116へ電気的に接続する第1又は第2のプラズマ122a、122bを含んだ1つ又はそれ以上のチャネル118を含んでいる。他の実施例では、電極のチャネル118は、1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ116を絶縁体124の導電性経路126へ電気的に接続している。絶縁体124は、エミッタ110aとコレクタ110bの間の電極間ギャップ中に配置されている。絶縁体124は1つ又はそれ以上の導電性経路126を含み、導電性経路126は、第1の複数のマイクロキャビティ116aを第2の複数のマイクロキャビティ116bへ電気的に接続する導電性経路126内に配置されたプラズマ126を含んでいる。
図3Aに描かれている様に、第2の複数のマイクロキャビティ116bの量は、第1の複数のマイクロキャビティ116aの量より多い。
【0043】
図3Bは、EM場イオン化を使用する
図3Aの構造化エネルギーセルシステム300の側面図を描いている。幾つかの実施形では、TECシステム300は、EM場イオン化のためのEM場304を発生させる1つ又はそれ以上のEM源302を使用して電気を生成する。ここでは、EM源302は、例えば、高周波又はマイクロ波の様な任意のタイプのEM場を発生させる。EM源302がEM場304を生成すると、EM場304は伝播方向306に進む。EM場の伝播方向306は、電極110の導電性表面に平行に進む。電極110の表面112は、電極110の伝導帯から電子102を放出し及び捕集するように構成された導電性材料を含んでいる。即ち、電極110の表面112の導電性材料は、電子102が脱出し、電極110の表面112に集まることを可能にする。ゆえに、表面112は、本明細書では入れ替え可能に導電性表面112と呼ばれることもある。導電性表面112は、エミッタ表面112a、コレクタ表面112b、1つ又はそれ以上のチャネル118、及び/又は1つ又はそれ以上の導電性経路126に配置され得る。電極110の本体114は、電極110内に電子102を閉じ込めるのに役立つ誘電性材料を含んでいてもよい。
【0044】
幾つかの実施例では、導電性表面112は、EM場304を吸収し、EM場304の何れかがプラズマ122の中へ吸収されるのを遮蔽する。しかしながら、EM場304を導電性表面112に平行な伝播方向306に生成することは、EM場304がプラズマ122の中へ吸収されるのを可能にする。具体的には、マイクロキャビティ116は、EM場304が浸透できる孔を提供する。マイクロキャビティ116へ接続されているチャネル118及び導電性経路126は、EM場304が通って伝播することのできる追加の平行な導電性表面112を提供する。ゆえに、マイクロキャビティ116、チャネル118、及び導電性経路126は、それぞれ、EM場304が通って伝播するための平行な導電性表面112を提供し得る。EM場304が平行な導電性表面112を通って伝播してゆくと、EM場304は導電性表面112内に配置されたプラズマ122の中へ吸収される。EM場304のエネルギーは、プラズマ122の中へ吸収されることによって、プラズマ122をイオン化し、このイオン化はEM場イオン化と呼ばれる。EM場イオン化は、プラズマ122をイオン化するための荷電粒子イオン化に追加して及び/又は代えて使用されてもよい。幾つかの実施例では、EM場304がプラズマ122の中へ吸収されることでプラズマはイオン化される。他の実施例では、EM場304は、プラズマ122内に配置された電子102の温度を上昇させることができる。即ち、EM場304がプラズマ122の中へ吸収されると、電子102が励起され(即ち、運動し)、電子102が温まる。電子102の上昇した温度は、プラズマ電圧バイアス(例えば、方程式2からのVp,bias)に正比例する。ゆえに、EM場304がプラズマ122の中へ吸収されることによる電子102の上昇した温度は、プラズマ電圧バイアスVp,biasを増加させ、それによって出力電圧Vout及び出力パワーPoutを増加させることになる。
【0045】
他の実施形では、EM源302は、第1のプラズマ122a又は第2のプラズマ122bの一方のみをイオン化するEM場304を生成する。例えば、EM場304は、コレクタ110bの導電性表面112bのみに平行な伝播方向306に進むようになっていてもよい。具体的には、導電性表面112bに平行な伝播方向306に伝播するEM場304は、EM場304を第2のプラズマ122bの中へ吸収させ、それによって第2のプラズマ122b内に配置された電子102の温度を上昇させる。ここでは、コレクタ110bのマイクロキャビティ116b及びチャネル118は、EM場304を導電性表面112b内に配置されたプラズマ122、122bの中へ浸透させ及び吸収させることのできる孔及び/又はボイドを提供している。
【0046】
これらの実施形では、EM源302は、コレクタ110bの導電性表面112bのみに平行な伝播方向306にEM場304を生成し、したがって伝播方向306はエミッタ110aの導電性表面112aに対し横断方向である(例えば、平行でない)。エミッタ110aの導電性表面112aに対し横断方向である伝播方向306に進むEM場304のエネルギーは、エミッタ110aの導電性表面112aによって吸収される。ゆえに、EM場304は、第1のプラズマ122aの中へ吸収されて第1のプラズマ122aをイオン化するために、エミッタ110aのマイクロキャビティ116a及びチャネル118の孔に浸透することはできない。ここでは、導電性表面122bに平行で且つ導電性表面112aに対し横断方向である伝播方向306に進むEM場304は、第2のプラズマ122bのみをイオン化する一方、EM場304は第1のプラズマ122aをイオン化することはできない。
【0047】
幾つかの実施例では、TECシステム300は、荷電粒子イオン化とEM場イオン化の組合せを使用している。例えば、TECシステム300は、コレクタ110b内に配置された第2のプラズマ122bをイオン化するのにEM場イオン化を使用し、エミッタ110a内に配置された第1のプラズマ122aをイオン化するのに荷電粒子イオン化を使用してもよい。この実施例では、EM源302は、コレクタ110bの導電性表面112bに平行な伝播方向にEM場304を生成する。EM場304は、コレクタ110bのマイクロキャビティ116b及びチャネル118に浸透して、第2のプラズマ122bの中へ吸収され(例えば、EM場イオン化)、こうして第2のプラズマ122bをイオン化し及び/又は第2のプラズマ122bの温度を上昇させる。引き続きこの実施例に関して、TECシステム300は、荷電粒子イオン化を使用して第1のプラズマ122aをイオン化する。TECシステム300は、第1のプラズマ122aに進入して第1のプラズマ122aをイオン化する荷電粒子(例えば、核分裂片、アルファ崩壊粒子、及び/又はベータ崩壊粒子)を核反応(例えば、核分裂及び/又はベータ崩壊)から生成する。ここでは、荷電粒子は、空間電荷効果を軽減するために第1のプラズマ122aをイオン化し、電子はエミッタ110aから放出されて電極間ギャップ120を横断してコレクタ110bに至る。ここでは、第1のプラズマ122aは荷電粒子イオン化を使用してイオン化され、第2のプラズマ122bはEM場イオン化を使用してイオン化される。他の実施例では、TECシステム300は、第1のプラズマ122a及び第2のプラズマ122bをイオン化するのにEM場イオン化と荷電粒子イオン化の両方を使用する。第1のプラズマ122a及び第2のプラズマ122bをイオン化するのにEM場イオン化と荷電粒子イオン化の何れかの組合せが使用されてもよい。
【0048】
図4を参照すると、電気を発生させるように構造化プラズマセルを動作させる方法400が示されている。構造化プラズマセルは、第1の表面112aを含む第1の電極(例えば、エミッタ110a)と、第1のプラズマ122aと、を含んでいる。第1の表面112aは第1のマイクロキャビティ116aを画定し、第1のプラズマ122aは第1のマイクロキャビティ116a内に配置されている。構造化プラズマセルは、更に、第2の表面112bを含む第2の電極(例えば、コレクタ110b)と、第2のプラズマ122bと、を含んでいる。第2の表面112bは第2のマイクロキャビティ116bを画定し、第2のプラズマ122bは第2のマイクロキャビティ116b内に配置されている。工程402にて、方法400は、EM源302によって、EM場304を生成する工程を含んでいてもよい。EM場304は、高周波又はマイクロ波の様な任意のタイプのEM場を含み得る。工程404にて、方法400は、EM場304を第2の表面(例えば、導電性表面112b)に平行な方向に伝播させる工程を含んでいてもよい。工程406にて、方法400は、EM場304によって、第2のプラズマ122b内に配置された電子102の温度を上昇させる工程を含んでいる。
【0049】
上記詳細な説明中に記述されている構成のそれぞれは、他の独立した諸構成の下にあるものを含め、本開示に示されている特徴、オプション、及び実施可能性の何れかを含むことができ、更に、本開示及び諸図に示されている特徴、オプション、及び実施可能性の何れかから成る任意の組合せを含むことができる。本明細書に記載の本教示と一致する更なる実施例を以下の番号を付した条項に示す。
【0050】
条項1:第1の複数のマイクロキャビティを含む第1の電極と、第1の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマと、第2の複数のマイクロキャビティを含む第2の電極と、第2の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上のマイクロキャビティ内に配置された第2のプラズマと、第1の電極と第2の電極の間に配置された電極間ギャップと、を備える構造化プラズマセル。
【0051】
条項2:条項1に記載の構造化プラズマセルであって、電極間ギャップ内に配置されたバルクプラズマ、を更に備える構造化プラズマセル。
【0052】
条項3:条項1乃至2の何れか一項に記載の構造化プラズマセルであって、電極間ギャップ内に配置された絶縁体、を更に備える構造化プラズマセル。
【0053】
条項4:条項3に記載の構造化プラズマセルにおいて、絶縁体は、第1の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上を第2の複数のマイクロキャビティのうちの1つ又はそれ以上と電気的に接続するように構成された導電性経路を含んでいる、構造化プラズマセル。
【0054】
条項5:条項4に記載の構造化プラズマセルにおいて、絶縁体の導電性経路内にプラズマが配置されている、構造化プラズマセル。
【0055】
条項6:条項1乃至5の何れか一項に記載の構造化プラズマセルにおいて、第1の電極の第1の複数のマイクロキャビティは、第1の電極の表面及び本体に配置されている、構造化プラズマセル。
【0056】
条項7:条項6に記載の構造化プラズマセルにおいて、第1の電極の表面に配置された第1の複数のマイクロキャビティは電極間ギャップへ直接暴露されている、構造化プラズマセル。
【0057】
条項8:条項1乃至7の何れか一項に記載の構造化プラズマセルにおいて、第1の複数のマイクロキャビティの量は第2の複数のマイクロキャビティの量より少ない、構造化プラズマセル。
【0058】
条項9:条項1乃至8の何れか一項に記載の構造化プラズマセルにおいて、第1の電極は、第1の複数のマイクロキャビティのうちの第1のマイクロキャビティを第1の複数のマイクロキャビティのうちの第2のマイクロキャビティと電気的に接続するように構成された第1の複数のチャネルを備えている、構造化プラズマセル。
【0059】
条項10:条項1乃至9の何れか一項に記載の構造化プラズマセルであって、電極間ギャップの中へ電子を放出する第1の電極を加熱するように構成された熱源、を更に備える構造化プラズマセル。
【0060】
条項11:電気を発生させるように構造化プラズマセルを動作させる方法において、構造化プラズマセルは以下を備え、即ち、第1の表面を含む第1の電極及び第1のプラズマであって、第1の表面は第1のマイクロキャビティを画定し、第1のプラズマは第1のマイクロキャビティ内に配置されている、第1の電極及び第1のプラズマと、第2の表面を含む第2の電極及び第2のプラズマであって、第2の表面は第2のマイクロキャビティを画定し、第2のプラズマは第2のマイクロキャビティ内に配置されている、第2の電極及び第2のプラズマと、を備え、方法は、電磁(EM)源によって、EM場を生成する工程と、EM場を第2の表面に平行な方向に伝播させる工程と、EM場によって、第2のプラズマ内に配置された電子の温度を上昇させる工程と、を備える、方法。
【0061】
条項12:条項11に記載の方法において、第1の表面は導電性材料を含んでいる、方法。
【0062】
条項13:条項11乃至12の何れか一項に記載の方法であって、EM場を第2のプラズマの中へ吸収する工程、を更に備える方法。
【0063】
条項14:条項13に記載の方法であって、核反応からの荷電粒子を使用して第1のプラズマをイオン化する工程と、第1の電極の第1の表面から第1のマイクロキャビティ内に配置された第1のプラズマの中へ電子を放出する工程と、放出された電子を第1のマイクロキャビティから電極間ギャップを通って第2のマイクロキャビティへ伝導させる工程と、放出された電子を第2の電極の第2の表面に捕集する工程と、を更に備える方法。
【0064】
条項15:条項11乃至14の何れか一項に記載の方法であって、第1の電極と第2の電極の間に配置された電極間ギャップに絶縁体を設ける工程、を更に備える方法。
【0065】
条項16:条項11乃至15の何れか一項に記載の方法において、EM場は、高周波又はマイクロ波の一方を備えている、方法。
【0066】
条項17:条項11乃至16の何れか一項に記載の方法において、第1の電極は誘電性材料を含んでいる、方法。
【0067】
条項18:条項11乃至17の何れか一項に記載の方法において、第1の電極は、第1のプラズマから隠蔽された第1の本体を含んでいる、方法。
【0068】
条項19:条項11乃至18の何れか一項に記載の方法において、第2のプラズマ中の電子の上昇した温度は、構造化プラズマセルによって発生する電気の量を増加させる、方法。
【0069】
条項20:条項11乃至19の何れか一項に記載の方法において、第1の電極は複数の第1のマイクロキャビティを含み、第2の電極は複数の第2のマイクロキャビティを含んでいる、方法。
【0070】
本明細書で使用されている用語遣いは、専ら特定の例示としての構成を説明することが目的であり、限定を課す意図はない。本明細書での使用に際し、原文の単数を表す冠詞「a」、「an」、及び「the」の対訳である「或る」、「一」、及び「当該」は、別途文脈によって明白に指示されていない限り、複数形も含むものとする。「備えている」、「備える」、「含む」、及び「有する」という用語は包含的であり、したがって特徴、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を指示するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除しない。本明細書に説明されている方法の工程、プロセス、及び動作は、遂行の順序として特に識別されていない限り、論じられている又は例示されている特定の順序でそれらが遂行されることを必然的に要求するものであると解釈されてはならない。追加の又は代わりの工程も採用され得る。
【0071】
或る要素又は或る層が、別の要素「上」又は別の層「上」にある、別の要素又は別の層へ「係合されている」、「接続されている」、「付着されている」、又は「結合されている」という場合、それは、直接的に他方の要素上又は他方の層上にある、直接的に他方の要素又は他方の層へ係合されている、接続されている、付着されている、又は結合されていることもあれば、介在する要素又は介在する層が存在していることもある。対照的に、或る要素が別の要素上又は別の層上に「直接ある」、別の要素又は別の層へ「直接係合されている」、「直接接続されている」、「直接付着されている」、又は「直接結合されている」という場合、介在する要素又は介在する層は存在しないということになる。要素同士の関係を記述するのに使用されている他の語は同様の方式で解釈されるものとする(例えば、「○○の間に」対「○○の間に直接に」や「○○に隣接して」対「○○に直接隣接して」など)。本明細書での使用に際し「及び/又は」という用語は、関連の一覧品目のうちの1つ又はそれ以上から成るありとあらゆる組合せを含む。
【0072】
第1の、第2の、第3の、などの用語は、本明細書では、様々な要素、構成要素、領域、層、及び/又は区分を記述するのに使用されることがある。これらの要素、構成要素、領域、層、及び/又は区分は、これらの用語によって限定されるものではない。これらの用語は、1つの要素、構成要素、領域、層、又は区分を、別の領域、層、又は区分と区別するために使用されるにすぎない。「第1の」、「第2の」、及び他の数的用語の様な用語は、文脈によって明白に指示されていない限り、或るシーケンス又は順序を含意するものではない。したがって、以下に論じられている第1の要素、第1の構成要素、第1の領域、第1の層、又は第1の区分が、例としての構成の教示から逸脱することなく、第2の要素、第2の構成要素、第2の領域、第2の層、又は第2の区分と呼称されることもあり得る。
【0073】
以上の記述は例示と説明を目的に提供されている。網羅的であろうとする意図も開示を制限する意図もない。特定の構成の個々の要素又は特徴は、概して当該の特性の構成に限定されるのではなく、適用可能である場合には入れ替え可能であり、明確に図示又は説明されていなくても選択された構成に使用され得る。前記特定の構成の個々の要素又は特徴は多くのやり方で変えられてもよい。その様な変化型は開示からの逸脱とは見なされず、全てのその様な修正型は開示の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0074】
100 構造化プラズマエネルギーセルシステム(TECシステム)
102 電子
106 熱源
108 負荷
110 電極
112 電極表面
114 電極本体
116 マイクロキャビティ
118 チャネル
120 電極間ギャップ
122 プラズマ
124 絶縁体
126 伝動経路
200 構造化プラズマエネルギーセルシステム(TECシステム)
300 構造化プラズマエネルギーセルシステム(TECシステム)
302 EM源
304 EM場
306 伝播方向
【国際調査報告】