(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1226 20160101AFI20240312BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/124 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20240312BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20240312BHJP
C25B 9/60 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M8/1226
H01M8/12 101
H01M8/124
H01M8/12 102A
H01M8/1213
H01M8/0258
C25B9/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555581
(86)(22)【出願日】2022-03-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-08
(86)【国際出願番号】 US2022018913
(87)【国際公開番号】W WO2022216387
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502337907
【氏名又は名称】プレシジョン コンバスチョン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100082049
【氏名又は名称】清水 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100220711
【氏名又は名称】森山 朗
(72)【発明者】
【氏名】スズキ,トシオ
(72)【発明者】
【氏名】ラブレシュ,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ジュナエディ,クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ロイチョードリー,スビル
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA01
4K021CA02
4K021DB47
4K021DB50
4K021EA05
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5H126JJ03
5H126JJ04
5H126JJ08
(57)【要約】
本発明は、堅牢構造を有する金属支持型電気化学セルに有用な多孔質の強化金属基板及び多孔質の強化金属基板の製法に関連する。本発明の一実施の形態は、強化多孔質の金属基板を金属架枠に溶着封止し又は拡散接合して形成される堅牢構造を有する金属支持型電気化学セルの反復構成単位に関連する。本発明の別の実施の形態は、電気化学セル及び積層体に関連する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構成(a)~(e):
(a) 酸素電極、
(b) 電解質、
(c) 燃料電極、
(d) 第1の側及び第2の側を形成する一層として構成されかつ気孔率約20体積%~50体積%を有する多孔質の金属基板、及び
(e) 燃料電極に隣接する第1の側とは反対側の多孔質の金属基板の第2の側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度の金属補強材、
を積層状に備えることを特徴とする堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項2】
多孔質の金属基板は、孔径3μm~75μmの細孔を有する請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項3】
高密度の金属補強材の気孔率は、20体積%未満である請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項4】
多孔質の金属基板は、板厚80μm~1000μmを有し、
高密度の金属補強材は、材料厚50μm~1000μmを有する請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項5】
多孔質の金属基板と高密度の補強材は、鉄クロム合金、鉄ニッケルクロム合金、鉄コバルト合金、鉄アルミニウムクロム合金及びクロム合金からなる群から選択される材料により形成される請求項1に記載の堅牢構造金属支持型電気化学セル。
【請求項6】
(a)酸素電極と(b)電解質との間に配置される中間層を更に備える請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項7】
(c)燃料電極と(d)多孔質の金属基板との間に配置される障壁層を更に備える請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項8】
(f)高密度の金属補強材に取り付けられる金属架枠を備える追加層を更に備える請求項1に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項9】
(g)金属架枠に取り付けられる接続端子を有する追加層を更に備える請求項8に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項10】
接続端子は、金属架枠に隣接する第1の側に配置される1つ又は複数の気体燃料路と、第1の側とは反対側の接続端子の第2の側に配置される1つ又は複数の空気流路又は酸素流路とを更に備える請求項9に記載の堅牢構造を有する金属支持型電気化学セル。
【請求項11】
請求項1に記載の堅牢構造の複数の金属支持型電気化学セルを備える電気化学セル積層体。
【請求項12】
堅牢構造の各金属支持型電気化学セルは、金属支持型固体酸化物燃料電池又は金属支持型固体酸化物形電気分解電池である請求項11に記載の電気化学セル積層体。
【請求項13】
(a) 第1の側と第2の側とを有する一層に形成されかつ約20体積%~50体積%の気孔率を有する多孔質の金属基板と、
(b) 多孔質の金属基板の片側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度の金属補強材とを備えることを特徴とする電気化学セルに使用する多孔質の強化金属基板。
【請求項14】
多孔質の金属基板は、孔径3μm~75μmの細孔を有する請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項15】
高密度の金属補強材の気孔率は、20体積%未満である請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項16】
多孔質の金属基板は、板厚80μm~1000μmを有し、
高密度の金属補強材は、材料厚50μm~1000μmを有する請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項17】
多孔質の金属基板と高密度の補強材は、鉄クロム合金、鉄ニッケルクロム合金、鉄コバルト合金、鉄アルミニウムクロム合金及びクロム合金からなる群からそれぞれ別々に選択された材料により形成される請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項18】
多孔質の金属基板又は高密度の金属補強材は、鉄クロムフェライト合金を含む材料により形成される請請求項17に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項19】
高密度の金属補強材は、1つ以上の金属支柱を更に備える請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項20】
高密度の金属補強材は、多孔質の金属基板の全周に沿って配置される請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項21】
高密度の金属補強材は、多孔質の金属基板の平行な2縁に沿って配置され又は多孔質の金属基板の4角に配置される請求項13に記載の多孔質の強化金属基板。
【請求項22】
(a) 約20体積%~50体積%の気孔率を有する多孔質の金属基板の一層の片側の外周の少なくとも一部に沿って金属強化インクをスクリーン印刷して、基板インク複合体を形成する工程と、
(b) 基板インク複合体を焼結して、第1の側と第2の側を形成する一層として構成される金属補強材を形成することにより、気孔率20体積%~50体積%を有しかつ基板インク複合体の片側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度の金属補強材を形成する工程とを含むことを特徴とする多孔質の強化金属基板の製法。
【請求項23】
多孔質金の属基板は、孔径3μm~75μmの細孔を有する請求項22に記載の製法。
【請求項24】
高密度の金属補強材の気孔率は、20体積%未満である請求項22に記載の製法。
【請求項25】
多孔質の金属基板は、板厚80μm~1000μmを有し、
高密度金属補強材は、材料厚50μm~1000μmを有する請求項22に記載の製法。
【請求項26】
金属強化インクは、溶媒、結合剤、可塑剤及び粒径5μm~25μmの強化金属粒子を含む請求項22に記載の製法。
【請求項27】
温度900℃~1300℃の水素を含む還元雰囲気で、基板インク複合体を焼結する工程を含む請求項22に記載の製法。
【請求項28】
(a) 基板金属粒子と、気孔率20体積%~50体積%を付与する細孔形成剤とを含む生地金属薄板を形成すると共に、高密度化の金属補強材となる金属粒子を含む生地金属補強材を形成する工程と、
(b) 生地金属薄板の片側の外周の少なくとも一部に生地金属補強材を加熱加圧して、積層体を形成する工程と、
(c) 第1の側と第2の側を有する一層として形成されかつ約20体積%~50体積%の気孔率を有する強化多孔質金属基材と、強化多孔質金属基材の片側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度化金属補強材とを形成するのに十分な温度及び圧力で積層体を加熱する工程とを含むことを特徴とする多孔質の強化金属基板の製法。
【請求項29】
圧力206.8kPa~3,447kPaと温度50℃~150℃で積層体を加圧し加熱して、工程(b)を実施する請求項28に記載の製法。
【請求項30】
温度900℃~1300℃の還元雰囲気で積層体を加熱して、工程(c)を実施する請求項28に記載の製法。
【請求項31】
多孔質の金属基板は、孔径3μm~75μmの細孔を有する請求項28に記載の製法。
【請求項32】
高密度の金属補強材の気孔率は、20体積%未満である請求項28に記載の製法。
【請求項33】
多孔質の金属基板は、板厚80μm~1000μmを有し、
高密度の金属補強材は、材厚50μm~1000μmを有する請求項28に記載の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府が享有する権利
本発明は、第W911NF19P0036号契約の規定により、米国国防総省の後援と米国政府の支援を受けて完成した。米国政府は、本発明に関連する一定の特許を受ける権利を有する。
【0002】
関連出願の表示
本発明は、2021年3月12日に出願された米国仮特許出願第63/160,200号の利益を主張し、米国仮特許出願の内容を参照により本明細書に組み込むものとする。
【0003】
本発明の一実施の形態は、金属支持型固体酸化物燃料電池(MS-SOFC)又は金属支持型固体酸化物形電気分解電池(MS-SOEC)等の金属支持型電気化学セルに有用な多孔質の強化金属基板に関連する。本発明は、多孔質の強化金属基板の製法にも関連する。本発明の更に別の実施の形態は、堅牢構造の電気化学セルに関連する。本発明の一実施の形態は、複数の電気化学セルの反復構成単位として製造される電気化学セル積層体に関連する。
【背景技術】
【0004】
電気化学セルは、積層(サンドイッチ)構造に構成される酸素電極、電解質及び燃料電極の3層必須要素で構成される。即ち、固体酸化物燃料電池(SOFC)の要素は、電子発生源からの酸素分子を酸化物イオンに還元する機能を有する酸素電極を含み、中間層を構成する電解質は、酸素電極から燃料電極に酸化物イオンを移動する媒体機能があり、燃料電極の機能により、水素、一酸化炭素又はそれらの混合物等の燃料を酸化物イオンにより酸化して、夫々水と二酸化炭素を生成し、同時に電子も生成する。外部電気回路に接続される複数の燃料電極から生成される電子は、外部電気回路を通じて酸素電極に送出されると共に、有用な電気を発生する。単一の電気化学セルから通常低電圧電力しか得られないので、接続端子、気体流路、必要に応じてその他の構成を組み込む個別の電気化学セルを直列又は並列に複数接続して、より高電圧かつ高出力の電気化学セル積層体が形成される。本明細書では、電気化学セル積層体の形成に要する各追加セルを「電気化学セルの反復構成単位」と呼ぶ。
【0005】
多孔質の金属基板を使用して、燃料電極、電解質、酸素電極を含むセル構成要素を支持し、電気化学セルの構造維持と物理的強度を付与する技術が開示される。本明細書では、金属支持型固体酸化物燃料電池(MS-SOFC)のように、セル構成要素が多孔質の金属基板に隣接する電気化学セルを「金属支持型」と呼ぶ。電気化学セルの反復構成単位集合体を結合して積層体を形成する従来の方法では、密閉の問題、不均一圧縮の問題、材料間の熱膨張係数(CTE)の不一致による構造上の問題が発生する。溶着封止構造又は拡散接合構造により、ガスケット装着工程及びガラス封止工程を削減し、より高電力の軽量積層体を実現し、全動作工程を通じて封止作用と熱循環耐久性を向上して、積層体の組立に多くの利点を招来する。残念ながら、溶着封止構造又は拡散接合構造を多孔質の金属基板に適用できない。高気孔率の多孔質金属基板には、溶接工程で基板層の陥没又は変形が起こり易い難点がある。
【0006】
上記欠陥を考慮して、溶着封止構造又は拡散接合構造に適する金属支持型電気化学セルを設計し、複数の電気化学セルの反復構成単位を組み立てて、全動作条件から強度、耐久性及び堅牢性を向上する積層体を形成することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、積層体の組立部品を溶着封止し又は拡散接合する多孔質の金属基板を組み込む新規な金属支持型電気化学セルを開発した。新規な金属支持型電気化学セルは、多孔質の金属基板の外周に配置される金属帯の追加層(「金属補強材」という)を備える。外縁を高密度化する拡散接合層として機能する金属補強材は、セルの組立てに良好な溶接性を生ずる点で有利である。溶着封止技術又は拡散接合技術を適用して、堅牢構造の電気化学セルを製造し、軽量な電気化学セルによる積層体の組立部品を実現して、高比電力(kW/kg)が得られる。また、封止構造により、全動作工程で耐久性が向上し、熱循環能力も向上する。また、本発明の金属支持型電気化学セルの外縁(端部)を高密度化する金属基板と高密度化の結果得られる堅牢構造の電気化学セルは、下記の溶着法又は拡散封止法により製造され、始動時及び過渡時の熱循環を通じて改善された耐振動性と耐久性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従って、本発明の一実施の形態は、下記構成(a)及び(b)を備える電気化学セルに使用する新規な多孔質の強化金属基板を提供する。
(a) 気孔率約20体積%~50体積%を有する層として構成される第1の側及び第2の側を形成する金属基板及び
(b) 多孔質の金属基板の一方側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度金属補強材。
高密度の金属補強材は、溶着又は拡散接合する着座を形成しつつ多孔質の金属基板に強度を付与する機能を有する。金属補強材に追加する金属基体は、製造時及び積層体の溶着工程又は接着工程での陥没、損傷及び変形に対する有用な耐性を有する。本発明の新規な強化多孔質の金属基板は、金属支持型電気化学セルの反復構成単位の製造に有用であり、各反復構成単位は、金属補強材への構成要素の溶着又は拡散接合により製造される。
【0009】
本発明の一実施の形態は、積層構造の下記構成(a)~(e)を備える堅牢構造の金属支持型電気化学セルに関連する。
【0010】
(a) 酸素電極、
【0011】
(b) 電解質、
【0012】
(c) 燃料電極、
【0013】
(d) 気孔率約20体積%~50体積%を有する層として構成される第1の側及び第2の側を形成しかつ第1の側が燃料電極に隣接して配置される多孔質の金属基板、及び
【0014】
(e) 多孔質の金属基板の第2の側の外周の少なくとも一部に沿って配置される高密度の金属補強材。
【0015】
本発明の例示的な一実施の形態の金属支持型電気化学セルは、(a)酸素電極と(b)電解質との間に配置される中間層を更に備える。
【0016】
本発明の別の例示的な実施の形態の金属支持型電気化学セルは、(c)燃料電極と(d)多孔質の金属基板との間に配置される障壁層を更に備える。
【0017】
本発明の更に別の例示的な実施の形態の金属支持型電気化学セルは、(e)高密度金属補強材に取り付けられる(f)金属架枠の追加層を備え、金属架枠は、1つ又は複数の気体流路を形成する。
【0018】
本発明は、上記(a)層~(f)層に加えて、(f)金属架枠に結合される(g)接続端子の追加層を更に備える金属支持型電気化学セルの反復構成単位を提供する。本発明の別の実施の形態の接続端子は、金属架枠に結合される接続端子の第1の側(上側)に配置される複数の気体燃料路を形成する。本発明の更に別の実施の形態の接続端子は、金属架枠に取り付けられる接続端子の第1の側(上側)とは反対側の第2の側(下側)に配置される複数の酸素(又は空気)流路を備える。金属架枠、接続端子及び複数の流路を形成する金属支持型電気化学セルは、積層体の組立に適し、本明細書では、各金属支持型電気化学セルを「金属支持型電気化学セルの反復構成単位」と定義する。
【0019】
本発明の別の実施の形態では、金属支持型電気化学セルの反復構成単位は、非導電性ガスケット、金属網集電体又はそれらの組合わせ等の追加の積層状構成要素を備えてもよく、追加の積層状構成要素は、金属支持型電気化学セルの第2の側(底面)に配置され、第1の側の反対側の接続端子は、金属架枠に固定(結合)される。
【0020】
本発明の別の実施の形態では、複数の金属支持型電気化学セルの反復構成単位を備える堅牢構造の金属支持型固体酸化物燃料電池(MS-SOFC) 積層体等の堅牢構造の電気化学セル積層体を提供し、各反復構成単位は、金属支持型電気化学セル(積層構造の酸素電極、電解質、燃料電極、多孔質の金属基板及び補強材)と、金属架枠と、気体流路を有する接続端子とを備える。従って、高密度化金属補強材により複数の金属支持型電気化学セルの反復構成単位を組み立てて、電気化学セル積層体が製造される。
【0021】
本発明の別の実施の形態の多孔質の強化金属基板の第1の製法は、下記工程(a)及び(b)を含む。
【0022】
(a) 約20体積%~50体積%の気孔率を有する多孔質の金属基板の一層の片側の外周の少なくとも一部に沿って金属強化インクをスクリーン印刷して、基板インク複合体を形成する工程、及び
【0023】
(b) 第1の側と第2の側を形成する一層として構成される高密度の金属補強材を準備するのに十分な条件下で基板インク複合体を焼結し、気孔率20体積%~50体積%を有しかつ基板インク複合体の片側の外周の少なくとも一部に沿って高密度化金属補強材を配置する工程。
【0024】
本発明の別の実施の形態による多孔質の強化金属基板の第2の製法は、下記工程(a)~(c)を含む。
【0025】
(a) 金属基板粒子と、気孔率約20体積%~50体積%を生成する細孔形成剤とを含む生地金属薄板及び補強材の金属粒子を含む生地金属補強材を準備する工程、
【0026】
(b) 生地金属薄板の片側の外周の少なくとも一部に生地金属補強材を加熱加圧して、積層構造体を形成する工程、及び
【0027】
(c) 積層構造体を焼結して、第1の側及び第2の側を形成する一層として構成される多孔質の金属基板を備える多孔質の強化金属基板を準備して、気孔率20体積%~50体積%を有しかつ積層構造体の片側の外周の少なくとも一部に沿って高密度化金属補強材を配置する工程。
【0028】
外周(端部)を高密度で多孔質の強化金属基板を利用して、本発明の電気化学セルの反復構成単位と積層体を組立てる新規な製法を提供する。磁器(セラミック)封止工程及びガラス封止工程を省略して、溶着部位と拡散接合部位となる金属補強材に多孔質の金属基板を接着、接合又は固着する点で、本発明は、有利である。この固着法により、セルの組立てによる積層体の製造に要する構成要素数を減少し、積層体全体の重量を低減しかつセル出力密度(kW/kg)を増加できる利点がある。金属支持型セルを他の積層体構成要素と共に溶着し又は拡散接合して、積層体の耐久性を向上し、熱循環に伴う熱漏洩と品質劣化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の一実施の形態による多孔質の強化金属基板に支持される単一の電気化学セルのセル構成要素を示す断面図
【0030】
【
図2】
図1の本発明の一実施の形態による多孔質の強化金属基板の電気化学セルの底部を示す底面図
【0031】
【
図3】本発明の別の実施の形態の多孔質の強化金属基板に支持される単一の電気化学セルの断面図
【0032】
【
図4】本発明の別の実施の形態の多孔質の強化金属基板に支持される単一の電気化学セルの断面図
【0033】
【
図5】本発明の一実施の形態による外周を強化した金属支持型固体酸化物型燃料電池の積層工程を示す分解斜視図
【0034】
【
図6】接続端子の多燃料通路側で本発明の一実施の形態の外周強化金属支持型固体酸化物型燃料電池の反復構成単位を示す分解斜視図
【0035】
【
図7】接続端子の多空気通路側に見る本発明の一実施の形態の外周強化金属支持型固体酸化物型燃料電池の反復構成単位を示す分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0036】
本明細書に使用する用語「層」は、長さと幅が、厚さより著しく大きい形態の擬二次元(薄膜状)構造を示す。主要2平行面の「第1の側」(例えば、上側)と「第2の側」(例えば、底面)を形成する平面又は薄板を一層と考える。単一層厚の第1の材料層は、第2の材料の全表面若しくは一部表面又は全層若しくは一部層を通常被覆する。本明細書に使用する用語「層」は、層を特定の形状に限定するものではない。正方形、長方形、六角形、円、楕円又は設計上指定する他の任意形状に層を形成できる。本明細書に記載する電気化学セルの全層は、通常同一形状であり、各層の外縁と角部とを整合して封止し、形成できる。本発明の目的に対し、第2の材料の表面全体を第1の材料層で被覆する必要はない。積層構造又はサンドイッチ構造に構成される本発明の構成要素は、隣接する構成要素の表面全体を被覆するか否かに無関係に、各構成要素を「層」と言い説明を簡略する。
【0037】
即ち、本明細書では、多孔質の金属基板の外周の少なくとも一部のみを被覆する必要のある補強材を「層」と記載する。
【0038】
本明細書に使用する用語「外周」は、物体の境界を計る連続的な周囲長さを表す長さ単位の数学的意味を通常有するが、本明細書での用語「外周」は、多孔質の金属基板の層の境界を示すことが最も多い。
【0039】
本明細書に使用する用語「外縁」は、物体、範囲又は表面とそれらの外側との境界、中心から最遠の場所又は部分を示すので、物体の外縁は、物体の外周に沿って下方にも延伸する。本発明の目的上、用語「外周」と「外縁」は、同一の意味で使用される。実際には、例えば、多孔質の金属基板層等の一層の「外周縁」又は「外縁」は、幅約1mm~約5mmの通常測定可能な帯状幅を有するが、5mmを超える幅でも、大きなセル(10cm×10cm 以上のセル等)の外周又は外縁とみなされる。外周帯幅の範囲は、層の全長又は幅の長さ約1%~20%にほぼ相当する。
【0040】
本明細書に使用する用語「気孔率」は、本明細書では、固体材料一層内の空隙量又は隙間量を示す。固体材料が占める総体積に対する空隙体積の割合又は百分率として気孔率が測定される。
【0041】
本明細書に使用する用語「溶着」又は「溶着された」又は「溶着封止」は、複数の部品を高熱で同時に熔解し、その後冷却して複数の部品を融合する金属材料等を接合する製造工程を示す。
【0042】
本明細書に使用する用語「拡散接合」は、類似の金属と異種の金属とを接合する溶着技術を示す。拡散接合は、2固体金属表面の原子が、時間の経過と共に相手方金属内に相互に分散する固体拡散原理による作用をいう。拡散接合は、材料絶対融解温度約50%~75%の高温雰囲気と加圧工程との組合わせで通常実施される。
【0043】
本明細書に例示する電気化学セルの高密度金属補強材は、電気化学セルの反復構成単位に強度、溶着性及び耐久性を付与する構造要素、即ち、基礎要素を意味する。本明細書では、電気化学セル積層体の高密度金属補強材で製造される複数の反復構成単位を「堅牢構造」セル積層体という。
【0044】
本明細書では、数値範囲の下限値の前に用語「約」を付加する。別段の説明のない限り、用語「約」は、数値範囲の下限値と上限値の両数値を修飾して、下限値と上限値との許容可能な両変動値を意図する。
【0045】
本発明の例示的な一実施の形態では、下記構成(a)と(b)を備える電気化学セルに使用する新規な多孔質の強化金属基板を提供する。
(a) 第1の側と第2の側を形成する一層として構成されかつ気孔率約20体積%~50体積%を有する多孔質の金属基板、及び
(b) 多孔質の金属基板の片側の外周の少なくとも一部に沿って配置されかつ20体積%未満の気孔率を有する高密度金属補強材。
【0046】
本発明の別の例示的な実施の形態は、積層状の下記構成(a)~(c)を備える堅牢構造の金属支持型電気化学セルを示す。
【0047】
(a) 酸素電極、
【0048】
(b) 電解質、
【0049】
(d) 第1の側と第2の側を形成しかつ気孔率約20体積%~50体積%を有する一層として構成され、燃料電極に隣接して第1の側が配置される多孔質の金属基板、
【0050】
(c) 燃料電極、及び、
【0051】
(e) 多孔質の金属基板の第2の側の外周の少なくとも一部に沿って配置されかつ気孔率20体積%未満を有する高密度金属補強材。
【0052】
本発明の更に別の例示的な実施の形態の多孔質の金属基板の孔径は、約3μm~75μmである。
【0053】
本発明の更に別の例示的な実施の形態の多孔質の金属基板の厚さは、約80μm~1000μmを有する。
【0054】
本発明の更に別の例示的な実施の形態の高密度補強材の厚さは、約50μm~1000μmを有する。
【0055】
添付図面について説明する本発明と実施の形態をより明確に認識し理解できよう。
図1は、溶着技術又は拡散接合技術により多孔質の金属基板4を金属補強材6に固定し、多孔質の金属基板4上に単一の電気化学セル10を支持する本発明の一実施の形態の断面図を示す。
図1に示す電気化学セル10は、酸素電極1(「カソード」ともいう)、電解質2及び燃料電極3(「アノード」ともいう)を含む積層(サンドイッチ)状のセル構成要素を備える。多孔質の金属基板4を備える多孔質の金属基体14上に燃料電極3が固定されかつ支持され、多孔質の金属基板層4の底面8の外周(外縁)に強化(高密度化)した金属補強材6が取り付けられる。多孔質の金属基板層4の上面7に燃料電極3が配置される。電気化学セル10の底部から多孔質の金属基板4を見る
図2は、電気化学セル10の外周5に配置される金属補強材6を示す。
【0056】
本発明の他の実施の形態の断面図を示す
図3の電気化学セル20は、積層状のセル構成要素:酸素電極1、電解質2及び燃料電極3を備える。反復するが、多孔質の金属基板層4を備えかつ外縁が強化(高密度化)される多孔質金属基体14上に燃料電極3が設けられかつ支持され、多孔質の金属基板層4の底面8の外周に金属補強材6が取り付けられる。本実施の形態の電気化学セル20の金属補強材6は、多孔質の金属基板4の外縁に沿って取り付けられる。
【0057】
図4に断面図を示す本発明の別の実施の形態の電気化学セル30は、
図3と同様に、積層状のセル構成要素:酸素電極1、電解質2及び燃料電極3を備える。反復するが、多孔質の金属基板層4を備えかつ外縁が強化(高密度化)される多孔質金属基体14上に燃料電極3が設けられかつ支持され、多孔質の金属基板層4の底面8の外周に金属補強材6が取り付けられる。本実施の形態では、金属補強材6は、多孔質の金属基板4の外縁と燃料電極3の外縁とに沿って取り付けられる。本発明の更に別の実施の形態(図示せず)では、金属補強材6は、多孔質の金属基板4の外縁と、燃料電極3の外縁と、電解質2の外縁に沿って取り付けられる。
【0058】
金属基板は、純粋な単一金属元素又は合金等の組合わせ金属元素等の任意の金属材料を通常含む。適切な金属基板の非限定的例は、主に鉄と、約10重量%~約40重量%のクロムと、イットリウム、マンガン、ニッケル、ニオブ、アルミニウム、ランタン、モリブデン及びそれらの混合物からなる群から選択される少量の任意の金属元素とを含むフェライト系合金及びオーステナイト系合金である。0重量%~30重量%のイットリウムを含む金属基板が適切である。金属基板の合金は、約0.03重量%~約0.16重量%の少量の炭素を含んでもよい。本発明の一実施の形態の多孔質の金属基板は、フェライト合金を含む。本発明の別の実施の形態の多孔質の金属基板は、フェライト系鉄クロム合金を含む。他の適切な多孔質の金属基板は、鉄ニッケルクロム合金、鉄コバルト合金、鉄アルミニウムクロム合金及びクロム合金を含む。
【0059】
金属基板の全体及び内部に複数の細孔、溝及び/又は空隙が形成されて気体成分の拡散を促進する「多孔質」の金属基板が必要である。金属基板は、直径又は限界寸法が約3μm~75μmの細孔を通常有する。多孔質の金属基板の総体積に対し、金属基板の代表的な気孔率は、約20体積%~約50体積%である。約80μm(0.08mm)~約1000μm(1mm)、好ましくは、約100μm(0.1mm)~約500μm(0.5mm)の板厚で、金属基板は、一層に形成される。
【0060】
製造条件と動作条件により電気化学セルに必要な強度、溶着性及び耐久性を付与する任意の金属元素又は合金で、高密度金属補強材が形成される。即ち、金属補強材は、単金属元素又は合金等の組合わせ金属元素等の金属材料を含む。本発明の例示的な一実施の形態では、金属補強材は、多孔質の金属基板の組成物と同一の組成の金属元素又は合金である。本発明の別の例示的な実施の形態の金属補強材は、多孔質の金属基板とは別組成の金属元素又は合金である。金属補強材の非限定的で適切な材料例は、主に鉄と、約10重量%~約40重量%のクロムとを含むフェライト系及びオーステナイト系合金、好ましくはフェライト系合金であるが、必要に応じて、イットリウム、マンガン、ニッケル、ニオブ、アルミニウム、ランタン、モリブデン及びそれらの混合物からなる群から選択される少量の他の金属元素を含んでもよい。金属補強材の合金は、約0.03重量%~約0.16重量%の少量の炭素を含んでもよい。他の適切な強化材料は、鉄ニッケルクロム合金、鉄コバルト合金、鉄アルミニウムクロム合金及びクロム合金である。
【0061】
金属補強材は、多孔質の金属基板より密度の高い(「高密度」)材料で低気孔率に通常形成される。本発明の一実施の形態の金属補強材は、金属補強材を形成する材料の総体積に対して約20体積%未満の気孔率を有する。金属補強材は、約50μm(0.05mm)~約1,000μm(1mm)、好ましくは、約200μm(0.2mm)~約700μm(0.7mm)の厚さ(又は高さ)を通常有する。
【0062】
図1及び
図2に示す電気化学セル10に一体の架枠として設けられる金属補強材6は、多孔質の金属基板4の外縁又は外周5全体に設けられ、燃料電極(アノード)3が取り付けられる上面7とは反対側の多孔質の金属基板4の底面8の外縁に金属補強材6が取り付けられる。本発明の他の実施の形態では、多孔質の金属基板4の底面8に補強支柱を更に設けると、金属補強材6の強度と支持力を更に改善できる。例えば、十字又は他の任意の幾何学的形状の支柱を多孔質の金属基板4の底面8に又は底面8を横断して固定して、外周の金属補強材6を補強できる。本発明の別の例示的な実施の形態では、金属補強材6は、多孔質の金属基板4の底面8の全周ではなく、平行な2外縁に配置される。本発明の別の例示的な実施の形態では、金属補強材6は、多孔質の金属基板4の底面8の全周ではなく、4角部に配置される。金属補強材6は、積層体組立時の基礎溶着部となる。
【0063】
多孔質の金属基板に許容不能な変形又は損傷が生じない限り、当技術分野で公知の任意の方法を使用して、金属補強材を多孔質の金属基板に取り付けることができる。(a)注型帯積層法と(b)金属インク印刷法の2加工法が開発されて、多孔質の強化金属基板の製造が可能となった。
【0064】
図5は、注型帯積層工程を示す。本積層工程では、薄い生地帯架枠の生地補強層12を選択して、多孔質の金属基板の前駆体を含む生地多孔質金属薄板11の底面外周に生地補強層12が積層される。生地帯製造業者から市販の生地多孔質金属薄板11を入手できるが、生地帯製造業者は、金属基板用に選択する金属粉末粒子と、所定の気孔率と気孔径を金属基板に付与する所与の細孔形成剤と、所望の強化金属とを使用する。
図5に示す加熱加圧積層法は、加圧(垂直矢印方向)と加熱により生地多孔質金属薄板11の外周に、金属補強材となる生地補強層12が積層される。通常の加熱加圧条件は、温度約50℃~約150℃で圧力約30lbs/sq in(30psi、206.8kPa)~約500psi(3,447kPa)である。水素と不活性(非反応性)ガスとの混合気体等の還元雰囲気内の積層工程で形成される積層構造体9を十分な温度で共焼結して、金属強化高密度外縁を有する多孔質の強化金属基板40が形成される。本発明の一実施の形態の還元雰囲気は、窒素又はアルゴン等の不活性気体内に約1体積%~約20体積%の水素を含む。許容可能な焼結工程は、周囲温度から温度約900℃~1300℃に加熱する工程を含む。必要に応じて金属補強材に1層以上の層を追加して、金属補強材を所望の厚さに積層できる。本積層法により得られる本発明の一実施の形態の多孔質の強化金属基板40は、材料厚0.47mmの金属補強材に結合される板厚0.27mmの金属基板を備える。
【0065】
複数層を積層して、溶着に適する厚い層が形成される。また、基板の外縁を強化して平坦性を向上できる。許容可能な基板の平坦性を確保して、セル構成要素の良好な印刷品質を維持する必要がある。本発明は、実質的に複数層を平坦に形成して、層上に電極層を密着して固定できる利点を有する。用語「平坦」は、実質的に凹凸のない線又は軌跡で形成される平担表面を示す。基板の平坦性許容範囲は、倍率約10~20倍の光学顕微鏡を使用して層の反りを目視検査して判断する。
【0066】
多孔質の強化金属基板を製造する第2の製法は、多孔質の金属基板の外周に金属強化インクをスクリーン印刷した後、得られるインク金属基板複合体を焼結する工程を含む。金属強化インクは、溶媒と、結合剤と、金属強化組成物粒子と、任意の可塑剤及び分散剤の1つ以上の混合物とを通常含む。金属強化インクに使用する溶媒は、通常の揮発性有機溶媒から選択される。アルコール、エステル及びケトンからなる群から通常選択される有機溶媒量は、金属強化インクの総重量に対して通常約5重量%~30重量%含まれる。非限定的な例としてエチルセルロース等のセルロース族化合物を含む市販の結合剤配合物から、結合剤が選択される。金属強化インクの総重量に対し、結合剤量は、約5重量%~30重量%含まれる。 金属強化インクの金属粒子の平均粒径は、通常約5μm~約25μmである。適切な可塑剤量は、金属強化インクの総重量に対して通常約1重量%~約20重量%で添加されるフタル酸エステル基及びグリコール基である。適切な分散剤量は、金属強化インクの総重量に対して約1重量%~約20重量%で添加される魚油及びアミン系分散剤である。所望の溶着性に応じて、金属強化インクの固形物負荷と塗布数を制御し、最適な塗布厚の金属強化インク層が形成される。例えば、水素と窒素又はアルゴン等の不活性気体の混合物を含む還元雰囲気で、インク金属基板複合体が焼結される。本発明の一実施の形態の還元性雰囲気は、約1体積%~20体積%の水素を含む不活性気体である。許容可能な焼結工程は、周囲温度から温度約900℃~1300℃に加熱する工程を含む。
【0067】
図6は、電気化学セル積層体の構成に必要な積層体に有用な金属支持型固体酸化物燃料電池の反復構成単位(「反復構成単位」という)50の斜視図を示し、金属支持型固体酸化物燃料電池(「燃料電池」と略称する)19を構成する反復構成単位50は、例えば、
図1、
図3及び
図4に例示する多層金属支持型電気化学セル10を備えるものと理解すべきである。追加層となる金属製の架枠21(「金属製間座」ともいう)に燃料電池19を溶着して、燃料電池19の金属補強材6を形成できる。架枠21は、気体流の入出流路を通常備える。
図6に示す架枠21は、追加層となる金属製の接続端子23に固定される。金属補強材6と燃料電極3とに対向する(例えば、
図1に詳細を示す)接続端子23の上側29には複数の気体燃料路27が設けられ、燃料電池19の燃料電極に供給される通常水素、一酸化炭素又はそれらの混合物の燃料流は、複数の気体燃料路27から供給される。
【0068】
図7は、
図6の反復構成単位を水平軸上で180度回転して、接続端子23の底面33を表す本発明の反復構成単位50の実施の形態の斜視図を示す。接続端子23の底面33は、隣接する燃料電池19の酸素電極に対向して架枠21に取り付けられる。燃料電池の酸素電極(
図1の符号1)に空気、希釈酸素又は純酸素を供給する空気流路31が接続端子23に設けられる。
【0069】
本特許出願人の新規な外周金属強化法により実現する金属支持型固体酸化物燃料電池の反復構成単位は、耐振動性、熱循環及び急速起動に寄与する堅牢性を得る技術的利点を有する。外周の溶着により内部を気密封止でき、機密封止を行えば、ガスケット又はガラス封止は、不要である。金属補強材6での溶着により、架枠21上に燃料電池19を固定できる(
図1)。
【0070】
特定の燃料電極、電解質又は酸素電極の使用に、本発明は、限定されない。気体燃料路27を有する燃料電極構造により、通常水素と一酸化炭素とを含む改質気体の燃料を、入口から出口に均一に流動することができる。標準的磁器加工技術で製造される磁器と金属を混合したサーメット強力耐熱材料により、電気伝導性とイオン伝導性が必要な燃料電極を通常形成できる。燃料電極層として有用なサーメットの非限定的例は、ニッケル又は酸化ニッケルと金属酸化物との組合わせ複合物であり、金属は、ジルコニウム、イットリウム、セリウム、スカンジウム、ガドリニウム、サマリウム、カルシウム、ランタン、ストロンチウム、マグネシウム、ガリウム、バリウム及びそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の一実施の形態の非限定的金属例は、ニッケルイットリア安定化ジルコニア、ガドリニウム添加セリア混合ニッケル及びイットリア添加セリアジルコニア混合ニッケルを含む。
【0071】
固体酸化物電解質は、酸化物イオン(O2)を伝導する緻密磁器層で形成される。固体酸化物電解質層を形成する材料例は、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニウム安定化セリア(GDC)及びセリア系電解質を含む。新規に開発される電解質は、抵抗力の問題を軽減し、酸化物イオンの伝導性を向上して、堅牢かつ優れた性能の電解質層を形成し、適用可能などの電解質も本発明に使用できる。
【0072】
酸電極全体で酸素流を均一に供給する多孔質の素電極は、酸化物イオン(O2)を固体酸化物電解質に伝導する必要がある。バリウム、ストロンチウム、ランタン、サマリウム、プラセオジム及びそれらの組み合わせからなる群から選択される物質をAで表し、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン及びそれらの混合物からなる群から選択される物質をBで表すと、酸素電極を形成する材料の非限定的例は、式ABO3で表される。本発明の酸素電極材料の例示的な一実施の形態は、マンガン変性イットリア安定化ジルコニア、ランタンストロンチウムマンガナイト、ランタンストロンチウムフェライト及びコバルタイトの何れかである。
【0073】
架枠21は、金属補強材6と同一の構成材料、密度、強度及び材厚を通常有する。架枠21は、金属補強材6に溶着されるが、溶着工程は、本発明の一実施の形態の燃料電極3を支持する多孔質の金属基板40を損傷しないことが重要である。
【0074】
架枠21の上側に金属補強材6を取り付け、反対側の架枠21の下側に接続端子23が溶着される。曝露する加熱環境と化学的環境に耐性のある導電性材料で接続端子23を形成して、燃料電池19の酸化側と還元側の両側で高温に曝露される接続端子23を変質しない安定化特性を保持する必要がある。本発明の一実施の形態に使用する接続端子23は、金属板又は金属箔、例えば、鉄クロム(FeCr)合金又はニッケルクロム(NiCr)合金等の耐高温ステンレス鋼で形成される。本発明は、特定の厚さと材料の接続端子に限定されない。本発明の一実施の形態では、任意に又は必要に応じて接続端子23の架枠21との対向側に気体燃料路27が設けられ、気体燃料路27を通じて燃料電極3に燃料気体流が供給される。酸素又は空気流を酸素電極1に供給する酸素又は空気流路が接続端子23の反対側に設けられる。
【0075】
必要に応じて又は任意に設けられる非限定的層は、従来の組成物層である。例えば、添加セリア(Gd、Sm、Y、La又はそれらの混合物から選択される添加物)の組成物で構成される中間層でもよい。また、特定層の元素の他層への拡散を防止する障壁層が通常設けられる。ニッケル及び金属酸化物を配合するサーメットを含む障壁層を燃料電極に設けるのが一例である。
【0076】
本発明の有限数の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は、開示した実施の形態に限定されないことは、容易に理解できよう。むしろ、記載がなくても、本発明を修正して、本発明の精神及び範囲に相応する任意の数の変形、変更、置換又は同等の構成を備える着想を採用できよう。また、記載する本発明の種々の実施の形態の態様には、説明する実施の形態の一部のみを含む場合があることは、理解されよう。従って、本発明は、前記説明に限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定すべきものである。
【国際調査報告】