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特表2024-5124293Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法およびこの方法を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】3Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法およびこの方法を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B22F 12/50 20210101AFI20240312BHJP
   B22F 10/22 20210101ALI20240312BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20240312BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20240312BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240312BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20240312BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20240312BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240312BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240312BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240312BHJP
【FI】
B22F12/50
B22F10/22
B22F12/90
B22F10/85
B29C64/106
B29C64/209
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555683
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-03
(86)【国際出願番号】 EP2022057027
(87)【国際公開番号】W WO2022195027
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】102021202649.4
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ヤーンル,ヘンドリック
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AP05
4F213AP16
4F213AP17
4F213AQ03
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL32
4F213WL52
4F213WL74
4F213WL85
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
3Dプリンタ用プリントヘッド(100)を作動させるために印刷可能な溶融物(12)を提供する方法(200)。本発明によれば、この方法(200)は以下のステップを含み、すなわち供給機構(2)により中空空間(40)を印刷可能な材料(10)で充填するステップ(210)と、ピストン(3)をスタート位置(3a)から前記プリントヘッド(100)のノズル(8)の方向に送ることによってピストンブシュ(4)の開口横断面部(21)を閉じるステップ(220)と、前記材料を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるステップ(230)と、前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(240)と、前記液相(12)の弾性定数を検出するステップ(250)と、前記液相(12)の印刷準備を行うステップ(260)とを含んでいる。本発明による方法(200)を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッド(100)。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタ用プリントヘッド(100)を作動させるために印刷可能な溶融物(12)を提供する方法(200)において、
前記方法(200)が以下のステップを含み、すなわち
-供給機構(2)により中空空間(40)を印刷可能な材料(10)で充填するステップ(210)と、
-ピストン(3)をスタート位置(3a)から前記プリントヘッド(100)のノズル(8)の方向に送ることによってピストンブシュ(4)の開口横断面部(21)を閉じるステップ(220)と、
-前記材料を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるステップ(230)と、
-前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(240)と、
-前記液相(12)の弾性定数を検出するステップ(250)と、
-前記液相(12)の印刷準備を行うステップ(260)と、
を含んでいることを特徴とする方法(200)。
【請求項2】
少なくとも前記閉じるステップ(220)と、前記転移させるステップ(230)と、前記圧縮するステップ(240)と、前記弾性定数を検出するステップ(250)と、前記印刷準備を行うステップ(260)とを、制御・調整ユニット(113)によるアクチュエータ装置(110)のアクティブな制御によって実施し、この場合センサ(36,82,83,111,112)の測定値に基づく評価ユニット(114)の結果を前記制御・調整ユニット(113)へ転送することを特徴とする、請求項2に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記供給機構(2)により前記中空空間(40)を印刷可能な材料(10)で充填する前記充填するステップ(210)が、少なくとも以下のステップを含み、すなわち
-前記材料(10)を前記供給機構(2)の開口部(23)を介して前記プリントヘッド(100)内へ充填するステップ(310)と、
-前記材料(10)を、特に複数の顆粒塊(10)を互いに解離するためにエアインパルス(26)を発生させるステップ(320)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記顆粒塊(10)を充填する前記充填するステップ(310)を手動または自動で実施し、この場合前記顆粒塊(10)を重力の影響によって前記供給機構(2)の下部領域(24)内へ滑り込ませることを特徴とする、請求項3に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記エアインパルス(26)を発生させるステップ(320)を間欠的に実施し、前記顆粒塊(10)を前記エアインパルス(26)の領域で次のように投げ上げ、すなわち前記顆粒塊が落下する際にその下にある顆粒塊(10)に対しインパルスを作用させて、それを前記プリントヘッド(100)の加熱される前記中空空間(40)内へ順次滑り込ませるように投げ上げることを特徴とする、請求項4に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記ピストン(3)により前記ピストンブシュ(4)の前記開口横断面部(21)を閉じるステップ(220)が以下のステップを含み、すなわち
-前記ピストン(3)を、前記ピストン(3)のピストン底部(35)のスタート位置(3a)から前記ノズル(8)の方向に前記ピストンブシュ(4)の切欠き(44)の下方の位置(3b)に到達するまで送るステップ(410)と、この場合に、
-前記ピストン底部(35)をして前記切欠き(44)のそばを滑動させることによって前記顆粒(10)を剪断するステップ(420)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記材料を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるステップ(230)が以下のステップを含み、すなわち
-前記プリントヘッド(100)の状態ゾーン(A,B,C,D,E)にわたってノズルヘッド(6)の加熱要素(61,63)によって前記材料(10,11,12)を加熱するステップ(510)であって、この場合前記状態ゾーン(A,B,C,D,E)は前記材料(10)の温度(T)に依存する前記材料の凝集状態を表し、前記材料(10,11,12)の前記凝集状態を、前記加熱要素(61,63)の加熱エネルギーを投入することにより前記状態ゾーン(A,B,C,D,E)にわたって固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ変化させる前記加熱するステップ(510)と、
-前記圧縮するステップ(240)の間に前記材料(11,12)を混合するステップ(520)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項8】
前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(240)が、特に前記圧縮プロセス(240)が、以下のステップを含み、すなわち
-前記ピストン(3)を送ることによって前記材料(10,11,12)を予圧縮するステップ(610)と、
-前記ノズル(8)を閉じるステップ(620)と、
-前記ピストン(3)を送ることによって前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(630)と、
-前記ピストン(3)を保持位置(3d)に保持するステップ(640)と、
を含んでいる請求項1または2または7に記載の方法(200)。
【請求項9】
前記材料(10,11,12)を予圧縮するステップ(610)を、前記ピストン(3)の送りによって圧力および/または力を制御しながら実施し、この場合力曲線および/または圧力曲線の材料に依存した勾配および/または材料に依存した勾配角に到達するときに、および/または、これを越えるときに到達している位置(3c)まで予圧縮を行うことを特徴とする、請求項8に記載の方法(200)。
【請求項10】
前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(630)を、前記ノズル(8)を閉じた状態で前記ピストン(3)を送ることによって圧力を制御しながら実施し、その際ピーク圧力(p)に達するまで保持位置(3d)を目指すことを特徴とする、請求項8に記載の方法(200)。
【請求項11】
前記圧縮するステップ(630)の間、前記ノズル(8)が閉じており、且つピストンニードル(32)が次のように前記ノズルヘッド(6)の溶融物空間(81)内に沈んでおり、すなわちこれによって前記液相(12)の一部が前記溶融物空間(81)の上部領域から腎臓形部材(7)の開口部(71)を通って溶融ゾーン(D)から混合ゾーン(C)へ戻り排除されるように前記ノズルヘッド(6)の溶融物空間(81)内に沈んでおり、これによって前記液相(12)の前記一部が塑性化ゾーン(B)から来る前記塑性相(11)と前記混合ゾーン(C)で混合することを特徴とする、請求項8または10に記載の方法(200)。
【請求項12】
前記ピストン(3)を前記保持位置(3d)で保持し、その際前記保持過程(640)の間に、前記液相(12)の圧力(p)と温度(T)とを測定し、その測定値を前記評価ユニット(114)によってチェックして、前記圧縮プロセス(240)の機能管理を行うことを特徴とする、請求項8または10に記載の方法(200)。
【請求項13】
前記ピストン(3)を前記保持位置(3d)で保持するステップ(640)の間、前記ノズル(8)が閉じており、且つ前記ピストンニードル(32)が次のように前記溶融物空間(81)内に沈んでおり、すなわちこれによって前記液相(12)の一部が前記溶融物空間(81)の上部領域から前記腎臓形部材(7)の前記開口部(71)を通って前記溶融ゾーン(D)から前記混合ゾーン(C)へ戻し排除されるように前記溶融物空間(81)内に沈んでおり、これによって前記液相(12)の前記一部が前記塑性化ゾーン(B)から来る前記塑性相(11)と前記混合ゾーン(C)で混合することを特徴とする、請求項8または12に記載の方法(200)。
【請求項14】
前記液相(12)の弾性定数を検出するステップ(250)が以下のステップを含み、すなわち
-前記保持するステップ(640)の終了後、前記保持位置(3d)から、前記溶融物圧力(p)が目標圧力(p)に達したときに達成される目標位置(3e)へ圧力制御しながら戻し走行させるステップ(710)と、
-前記ピーク圧力(p)と前記目標圧力(p)との間の圧力差を検出するステップ(720)と、
-前記保持位置(3d)と前記目標位置(3e)との間の距離を検出するステップ(730)と、
-前記液相(12)の弾性定数を算出するステップ(740)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項15】
前記液相(12)の印刷準備を行うステップ(260)が以下のステップを含み、すなわち
-前記弾性定数に依存して前記ピストン(3)を引き戻すことによって前記液相(12)の減圧をアクティブに行うステップ(810)と、
-前記ノズル(8)を開くステップ(820)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法(200)を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッド(100)であって、
前記プリントヘッド(100)のハウジング(1)内に配置されている、前記ピストン(3)を制御するための前記アクチュエータ装置(110)と、印刷可能な前記材料(10)のための前記供給機構(2)と、前記ハウジング(1)および前記供給機構(2)に配置され、冷却装置(50)を備えているフランジ(5)と、前記材料(10)を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるための加熱要素(61,63)を備えた前記ノズルヘッド(6)と、前記材料(10)の前記液相(12)を前記ノズルヘッド(6)から放出するための前記ノズル(8)とを含んでいる前記3Dプリンタ用プリントヘッド(100)において、
前記制御・調整ユニット(113)は、充填および印刷のために実施すべき作動戦略に対応して前記ピストン(3)を走行させるための前記アクチュエータ装置(110)のアクティブな制御のために、および、前記加熱要素(61,63)のアクティブな制御のために設けられていることを特徴とするプリントヘッド(100)。
【請求項17】
前記評価ユニット(114)は、前記プリントヘッド(100)のセンサ(36,82,83,111,112)の測定値を評価して、その結果を、前記アクチュエータ装置(110)のアクティブな制御のために、および、前記加熱要素(61,63)のアクティブな制御のために、前記制御・調整ユニット(113)へ転送するように設けられていることを特徴とする、請求項16に記載のプリントヘッド(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法およびこの方法を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘度の点で変化しうる材料のための3Dプリンタは、この材料の固相を出発材料として含んでおり、それから液相を生じさせ、この液相を、生成すべきオブジェクトに属する個所へ選択的に塗布する。このような3Dプリンタは、出発材料を前処理して印刷準備をさせるプリントヘッドを含んでいる。さらに、プリントヘッドとオブジェクトが生じる作業面との間に相対運動を発生させるための手段が設けられている。その際、プリントヘッドのみを移動させるか、作業面のみを移動させるか、或いは、プリントヘッドと作業面の双方を移動させることができる。
【0003】
プリントヘッドは、液状材料がそれから流出する第1の作動状態と、液状材料がそれから流出しない第2の作動状態とを有する。第2の作動状態とは、たとえば、作業面上の別のポジションへ接近して、途中でそこに材料を堆積させるべきでない場合に占める状態である。プリントヘッドの両作動状態の間は、たとえば、固形出発材料の推力をオンオフすることで切換えることができる。
【0004】
最も普及しているのは“fused deposition modeling”(FDM;熱溶解積層法)である。この方法では、出発材料から成るフィラメントを、電気加熱される押出しノズル内で溶解して、プラットホーム上に層状に塗布する。この種のフィラメントの形状では、出発材料は非常に高価である。
【0005】
特許文献1では、出発材料を顆粒形状で供給し、コンベヤスクリューで加熱されたゾーンへ搬送し、そこから塑性化形状で流出することが提案される。一方では、顆粒のほうがより好ましいことは明らかであり、他方では、種々の熱可塑性材料から成る混合物をこのようにして簡単に製造できる。
【0006】
さらに、特許文献2からプリントヘッドが知られており、この場合プリントヘッド内で顆粒がピストンと加熱された区間とを介して塑性化される。ピストンが顆粒を押圧すると、顆粒が圧縮され、プリントヘッドの下部領域にある塑性化ゾーンへ搬送される。その際力が発生し、この力はピストンとプリントヘッドのシリンダ壁とに強い荷重を与え、プリントヘッドハウジングのシリンダ壁の摩耗を促進させることがある。さらに、熱伝導構造を備える複雑な溶解幾何学が開示されており、この場合熱伝導構造は加熱要素の加熱力を塑性化された材料に投入することで、それを材料の液相にもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2016/082627A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102016222306A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、3Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法および3Dプリンタ用プリントヘッドを提供することであり、この場合前記方法およびプリントヘッドは、高価値の溶融物を再現可能な品質で提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の範囲内で、3Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法が開発された。さらに、この方法を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッドが開発された。
【0010】
前記方法は、本発明によれば、以下のステップを含んでいる。
-供給機構により中空空間を、特に加熱可能な中空空間を、印刷可能な材料で充填するステップ、
-ピストンをスタート位置からプリントヘッドのノズルの方向に送ることによってピストンブシュの開口横断面部を閉じるステップ、
-前記材料を固相から塑性相を経て液相へ転移させるステップ、
-前記材料を圧縮するステップ、
-前記液相の弾性定数を検出するステップ、
-前記液相の印刷準備を行うステップ。
【0011】
本発明の更なる構成では、少なくとも閉じるステップと、転移させるステップと、圧縮するステップと、弾性定数を検出するステップと、印刷準備を行うステップとを、制御・調整ユニットによるアクチュエータ装置のアクティブな制御によって実施し、この場合センサの測定値に基づく評価ユニットの結果を制御・調整ユニットへ転送する。
【0012】
印刷準備中に充填からプリントヘッドのノズルを開くまでのプロセスの経過全体は、再充填プロセスとも呼ばれる。というのは、このプロセスの経過全体は、部品を印刷している間に任意に繰り返される反復過程だからである。再充填プロセスは、3Dプリンタ用プリントヘッドを作動させるために印刷可能な溶融物を提供する方法である。
【0013】
さらに、本発明は本発明による方法を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッドに関する。プリントヘッドは、プリントヘッドのハウジング内に配置されている、ピストンを制御するためのアクチュエータ装置と、印刷可能な材料のための供給機構と、前記ハウジングおよび前記供給機構に配置され、冷却装置を備えているフランジと、前記材料を固相から塑性相を経て液相へ転移させるための加熱要素を備えたノズルヘッドと、前記材料の前記液相を前記ノズルヘッドから放出するためのノズルとを含み、この場合本発明によれば、制御・調整ユニットは、充填および印刷のために実施すべき作動戦略に対応して前記ピストンを走行させるための前記アクチュエータ装置のアクティブな制御のために、および、前記加熱要素のアクティブな制御のために設けられている。
【0014】
プリントヘッドの更なる構成では、評価ユニットは、プリントヘッドのセンサの測定値を評価して、その結果を、アクチュエータ装置のアクティブな制御のために、および、加熱要素のアクティブな制御のために、制御・調整ユニットへ転送するように設けられている。
評価ユニットは、制御・調整ユニットとは別個に実施してもよいし、この中に統合されていてもよい。
【0015】
その都度の作動状態に依存してセンサ値を検知、評価することにより、プリントヘッドの機能性をチェックすることができ、これによってプロセス内のエラーまたは狂いを早期に具現できて有利である。さらに、センサ値の検知によって、定義された目標値を制御することができる。補正係数を算出して、制御・調整ユニットに送ることも可能である。たとえば、補正係数を目標値に加算することで、所望の一定量の溶融物をノズルから放出するのを達成できて有利である。
加熱要素のアクティブな制御は温度の動的制御を可能にし、動的制御は加熱にも冷却にも有利に影響する。たとえば、第1加熱要素の加熱エネルギーを制御・調整ユニットによって低減させれば、フランジ内の冷却は引き続き進行し、この冷却は材料の塑性相からエネルギーを取り出し、これによって塑性相は急激に冷える。
さらに、アクチュエータ装置および加熱要素のアクティブな制御は、必要に応じて材料をノズルから放出できることを可能にし、この場合プリントヘッドの異なる軌道速度は、アクティブに制御される材料体積によって補償することができる。
【0016】
それ故、アクティブな制御は通常のNCシステムに対し利点を提供し、すなわちその軌道速度に関係なく常に同じ体積を放出し、或いは、この過程をアクティブに制御することなく、一定の送り速度で放出量を制御する通常のNCシステムに対し利点を提供する。
【0017】
ピストンを制御するためのアクチュエータ装置は、たとえば機械的な伝動装置を備えた電動機、または、液圧源を備えた液圧式駆動装置であってよい。
アクチュエータ装置としての電動機は、液圧式駆動装置に比べてより軽量であり、これによって、わずかな質量を加速させればよいので、プリンタ全体および印刷プロセスのハイダイナミックスを実現する用を成すので有利である。
液圧式駆動装置は、ピストンを制御する際に大きな力を達成するので有利である。
【0018】
印刷可能な材料のための供給機構は、特に、顆粒として存在する材料または出発材料のための供給部として設けられていてよい。出発材料は、特に熱可塑性材料であってよい。
出発材料として顆粒を使用することにより、熱可塑性材料から成るフィラメントを使用するプリントヘッドに比べて、特にプリンタの出発材料に対するコストにおいて特有の利点が得られることが認められた。
【0019】
コンベヤスクリューを用いて顆粒を搬送するプリントヘッドに比べて、本発明によるプリントヘッドはよりコンパクトに構成できる。これも、プリントヘッドがより容易に、より簡単に移動可能であるという結果をもたらす。これは、特に、プリントヘッドを非常に高速で、特に100mm/sまたはそれ以上の速度で移動させる必要がある場合に特に有利である。
【0020】
フランジは冷却装置を含んでおり、これによって供給装置の領域で最適化された熱管理が得られ、その結果ピストンでの材料または顆粒の固着が回避されるので有利である。さらに、ノズルヘッドは、固相の材料を、特に顆粒を、液相へ転移させるための加熱要素を有している。ノズルヘッド内の加熱要素は、加熱力を溶融すべき材料に合目的に取り込む用を成すので有利である。引き続き、液相または溶融物をピストン運動によりノズルヘッドのノズルを通じて放出可能である。
【0021】
ピストンブシュは、ピストンを案内するための別個のピストンブシュとして実施され、ピストンがダイレクトにピストンブシュ内で案内され、プリントヘッドのハウジング内やシリンダ内で案内されないことを可能にさせる。これにより、摩耗が直接ハウジングまたはシリンダの内壁に発生することはなく、ピストンブシュの内部に発生することが達成されるので有利である。別個の構成部材としてのピストンブシュは、必要な場合には交換可能であるという利点をもたらす。加えて、直径が異なっていても互いに適合しあっているピストンとピストンブシュとを、たとえばフランジおよびノズルヘッドにおいて更なる構造的変更なしに使用できるという可能性が与えられている。
【0022】
本方法の更なる構成では、供給機構により中空空間を、特に加熱可能な中空空間を印刷可能な材料で充填するステップは、少なくとも以下のステップを含み、すなわち
-材料を、または、顆粒塊を供給機構の開口部を介してプリントヘッド内へ充填するステップと、
-複数の顆粒塊を互いに解離するためにエアインパルスを発生させるステップと、
を含んでいる。
【0023】
更なる構成では、顆粒塊を充填するステップを手動または自動で実施し、この場合顆粒塊を重力の影響によって供給機構の下部領域内へ滑り込ませる。
【0024】
充填するステップの有利な更なる構成では、エアインパルスを発生させるステップを間欠的に実施し、顆粒塊をエアインパルスの領域で次のように投げ上げ、すなわち顆粒塊が再び落下する際にその下にある顆粒塊に対しインパルスを作用させて、それをプリントヘッドの加熱される中空空間内へ順次滑り込ませるように投げ上げる。
【0025】
効果的な再充填のプロセスは、顆粒のバックブローを必要とし、これによって顆粒の持ち上げ効果が生じ、その結果その後顆粒はプリントヘッド内へ滑り込む。投げ上げまたは巻き上げは自動チャージにとって必要であり、発生する重力インパルスまたは打撃により、顆粒が順次滑り込むので有利である。必要な場合には、エアインパルスによって固着した顆粒を解離させることができ、これによってプリントヘッドの停止時間が回避されるので有利である。
【0026】
本方法の更なる構成では、ピストンによりピストンブシュの開口横断面部を閉じるステップは以下のステップを含み、すなわち
-ピストンを、ピストンのピストン底部のスタート位置からノズルの方向にピストンブシュの切欠きの下方の位置に到達するまで送るステップと、この場合に、
-ピストン底部をして切欠きのそばを滑動させることによって顆粒を剪断するステップと、
を含んでいる。
【0027】
ピストンブシュは、フランジ内へ突出している上部部分領域と、ノズルヘッド内へ突出している下部部分領域とを有している。これにより、上部部分領域はフランジの冷却装置の冷却ゾーンの作用範囲内に配置され、下部部分領域はノズルヘッドの加熱ゾーンの作用範囲内に配置され、これによって、冷却ゾーン内部での材料からの効果的なエネルギー排出、または、加熱ゾーン内部での材料内への効果的なエネルギー供給が達成されるので有利である。ピストンブシュの上部部分領域には、供給装置からピストンブシュ内への材料の供給を可能にする開口部または開口横断面部が配置されている。開口部の下部領域には、ピストンブシュの内面に対し鈍角で形成されている切欠きが配置されている。切欠きの領域は硬化されており、或いは択一的に、硬化された別個の嵌め込み部材として実施されている。ピストンによって開口部が閉じると、材料または顆粒はピストンによって切欠きで剪断され、これによってピストンブシュのこの部分に強い機械的荷重が作用する。別個のピストンブシュと切欠きの硬化領域とにより、より長い寿命と欠陥部品のより迅速な交換とが達成されるので有利である。
【0028】
本方法の更なる構成では、材料を固相から塑性相を経て液相へ転移させるステップは以下のステップを含み、すなわち
-プリントヘッドの状態ゾーンにわたってノズルヘッドの加熱要素によって材料を加熱するステップであって、この場合状態ゾーンは材料の温度Tに依存する当該材料の凝集状態を表し、材料の凝集状態を、加熱要素の加熱エネルギーを投入することにより状態ゾーンにわたって固相から塑性相を経て液相へ変化させる前記加熱するステップと、
-圧縮するステップの間に材料を混合するステップと、
を含んでいる。
【0029】
プリントヘッドは、ピストンブシュの上部部分領域から出発して腎臓形部材を経てノズルまで異なる状態ゾーンを有しており、この場合状態ゾーンは材料の温度Tに依存する当該材料の凝集状態を表している。その際、材料の凝集状態は状態ゾーンにわたって固相から塑性相を経て液相へ変化可能である。
プリントヘッドの状態ゾーンが、固相の材料を含んでいる低温ゾーンと、塑性相の材料を含んでいる塑性化ゾーンと、それぞれ液相の材料を含んでいる溶融ゾーンおよびプロセスゾーンと、材料を塑性相および液相で含んでいる混合ゾーンとを含んでいるのが有利である。
さらに、フランジ内の冷却装置と、ピストン内に統合されているピストン冷却部とは、この場合でも、塑性化ゾーン内の材料の塑性相の温度Tをガラス移行温度T(この温度から材料が塑性化されて、液相へ移行する)以下に保持するために設けられている。
【0030】
これは、ピストン底部がもっぱら材料の固相とだけ接触し、完全に塑性化された相とは接触しないことと同義であるので有利である。完全に塑性化された相は、表面粘着性の傾向が強い、粘性の高い粘着性のある稠度を持っている。したがって、ピストンがこの相と接触すると、ピストンがこれに接着することがあり、これによって、たとえばピストンの引き戻しの際に新鮮な顆粒が順次流動するのが困難になる。この作用は回避されるので、有利である。
【0031】
本方法を実施するため、ノズルヘッドは2つの加熱ゾーンを含んでいる。第1の加熱ゾーン内には、塑性化ゾーンの部分領域と、混合ゾーンと、溶融ゾーンの部分領域とが配置され、この場合第1の加熱要素が上部ノズルヘッド内に次のように配置され、すなわち加熱エネルギーを第1の加熱要素からピストンブシュの下部部分領域と腎臓形部材と上部ノズルヘッドのセクションとを介して材料内へ投入できるように配置されている。
第2の加熱ゾーン内には、溶融ゾーンの部分領域とプロセスゾーンとが配置され、この場合第2の加熱要素が下部ノズルヘッド内に次のように配置され、すなわち加熱エネルギーを第2の加熱要素から下部ノズルヘッドを介して材料の液相内へ投入できるように配置されている。
【0032】
ノズルヘッド内に両加熱ゾーンを配置することは、より効果的なプリントヘッドの熱管理の用を成す。というのは、第1の加熱ゾーンは、材料が液相へ移行することなく、材料の有利な予塑性化の用を成すからである。これにより、ピストンが圧縮の際に固着せず、プリントヘッドが申し分なく機能することが達成されるので有利である。この効果は、フランジ内の冷却装置との協働で最適化される。さらに、塑性相内の材料は、ピストンの送りの際にアクチュエータ装置がよりわずかな力の消費を必要とするように予塑性化され、これによって、ピストンの送りのためにより小型のアクチュエータを使用できるので有利である。これは設備コストを低減させ、プリントヘッドの重量が減少するので、プリントヘッドのダイナミックスが改善されることになる。これにより、いわゆる軌道制御の間、部品を生成させるためにプリントヘッドをより良好に加速、減速させることができる。
第2の加熱ゾーンでは、溶融物が生成され、投入される加熱エネルギーは、溶融物空間全体にわたって比較的一定の溶融物温度に対し配慮する。溶融物温度は、材料の加熱が強すぎないように第2の加熱ゾーン内部で制御することができる。これにより、過大な熱負荷によってたとえば分解産物が生じることを回避できるので有利であり、第1に、システム内で支配的な圧力によって材料の更なる分解を促進させ、直接的にもその品質に悪影響を及ぼすガスの発生を回避できる。
【0033】
圧縮するプロセスと転移させるプロセスとは、両プロセスの間に加熱エネルギーが両加熱ゾーンを介してプリントヘッド内へ投入されるので、大部分同時に行う。
【0034】
本発明の有利な更なる構成では、圧縮プロセスの間に材料を圧縮するステップは、以下のステップを含み、すなわち
-ピストンを送ることによって材料を予圧縮するステップと、
-ノズルを閉じるステップと、
-ピストンを送ることによって材料を圧縮するステップと、
-ピストンを保持位置で保持するステップと、
を含んでいる。
【0035】
圧縮プロセスの更なる構成では、材料を予圧縮するステップを、ピストンの送りによって圧力および/または力を制御しながら実施し、この場合力曲線および/または圧力曲線の材料に依存した勾配および/または材料に依存した勾配角に達するときに、および/または、これを越えるときに到達している位置まで予圧縮を行う。
【0036】
次の方法ステップでは、材料を圧縮するステップを、ノズルを閉じた状態でピストンを送ることによって圧力を制御しながら実施し、その際ピーク圧力に達するまで保持位置を目指す。
【0037】
更なる構成では、圧縮するステップの間、ノズルは閉じており、且つピストンニードルは次のようにノズルヘッドの溶融物空間内に沈んでおり、すなわちこれによって液相の一部が溶融物空間の上部領域から腎臓形部材の開口部を通って溶融ゾーンから混合ゾーンへ戻り排除されるようにノズルヘッドの溶融物空間内に沈んでおり、これによって液相の前記一部は塑性化ゾーンから来る塑性相と混合ゾーンで混合する。
【0038】
更なる構成では、ピストンを保持位置で保持し、その際保持過程の間に、液相の圧力と温度とを測定し、その測定値を評価ユニットによってチェックして、圧縮プロセスの機能管理を行う。
【0039】
さらに、更なる構成では、ピストンを保持位置で保持するステップの間、ノズルは閉じており、且つピストンニードルは次のように溶融物空間内に沈んでおり、すなわちこれによって液相の一部が溶融物空間の上部領域から腎臓形部材の開口部を通って溶融ゾーンから混合ゾーンへ戻し排除されるように溶融物空間内に沈んでおり、これによって液相の前記一部は塑性化ゾーンから来る塑性相と混合ゾーンで混合する。
【0040】
予圧縮するステップは、力または圧力を制御しながらピストンをアクチュエータ装置により制御することによって実施し、この場合ピストン底部の目標位置は、低温ゾーンを起点として、塑性化ゾーンの最初の3分の1の位置にある。顆粒は、塑性化ゾーンでピストンの送りによって圧縮され、この場合同時に、溶融ゾーンには中空空間とノズルとの間に溶融物がある。これにより、塑性化された顆粒は混合ゾーン内で溶融物内へ圧入される。ピストンを下げ、対応的にピストンニードルをノズルの方向に下げることにより、すでに溶融物がノズルから出て、これによって、空気または閉じ込められた空気があればこれをノズルヘッドから排出させることができるので有利である。これによって、ノズルは自由になる。
【0041】
予圧縮するステップが目標位置に達した後、プリントヘッドのノズルを閉じる。
【0042】
材料を圧縮するため、所定のピーク圧力に達するまで、よってピーク圧力位置に到達するまで、ピストンをアクチュエータ装置によって圧力制御しながら前進させる。その際、本方法の更なる構成では、圧縮するステップの間にプリントヘッドを作動させるため、ノズルは閉じており、ピストンニードルは次のように溶融物空間内に沈んでおり、すなわちこれによって液相の一部が溶融物空間の上部領域から腎臓形部材の開口部を通って溶融ゾーンから混合ゾーンへ戻し排除されるように溶融物空間内に沈んでおり、これによって液相の前記一部は塑性化ゾーンから来る塑性相と混合ゾーンで混合する。
【0043】
引き続いて、材料に依存する予め定義した時間の間、いわゆるピーク圧力位置を保持し、それ故ピーク圧力位置はプリントヘッドの保持位置でもある。
本方法の更なる構成では、ピストンを保持位置で保持している間、ノズルは閉じており、ピストンニードルは次のように溶融物空間内に沈んでおり、すなわちこれによって液相の一部が溶融物空間の上部領域から腎臓形部材の開口部を通って溶融ゾーンから混合ゾーンへ戻し排除されるように溶融物空間内に沈んでおり、これによって液相の前記一部は塑性化ゾーンから来る塑性相と混合ゾーンで混合する。
【0044】
保持過程によって残留空気が排除され、混合ゾーンC内の溶融物が均質化される。これによって、より好適なエネルギー流れが達成され、均質な材料が生成されるので有利である。流れ戻る溶融物は塑性状になり、腎臓形部材内へ押し込まれる顆粒成分は溶融物状になる。これによって、材料の混合が生じる。
加えて、ここで説明している保持過程は、プリントヘッドの分析およびシステムチェックに用いられるので、有利である。というのは、圧力の圧力測定の際に次の作用が生じうるからである。溶融物内での圧力の圧力上昇は、たとえば溶融物の温度が高すぎるために溶融物がガスを出していることを意味していると考えられる。溶融物温度が高すぎるのは、エアプラズマが生じることがあって、これが化学的分解を引き起こすと考えられるので、望ましいものではない。
溶融物圧力の強い圧力降下は、たとえば、プリントヘッドのシステムが非密封状態にあるか、或いは、まだ過量の空気がシステム内にあったことを意味していると考えられる。この作用は、プリントヘッドの温度管理が最適に設定されていなかったために、たとえば過量の冷たい材料が中空空間内にあった場合に生じると考えられる。
【0045】
更なる構成では、液相の弾性定数を検出するステップは以下のステップを含み、すなわち
-保持するステップの終了後、保持位置から、溶融物圧力が目標圧力に達したときに達成される目標位置へ圧力制御しながら戻し走行させるステップと、
-ピーク圧力と目標圧力との間の圧力差を検出するステップと、
-保持位置と目標位置との間の距離を検出するステップと、
-液相の弾性定数を算出するステップと、
を含んでいる。
【0046】
弾性定数は、溶融物の圧縮率から得られるもので、アクチュエータ装置によるピストンの正確な制御のために必要な補正係数または形状係数を導き出す。溶融物の圧縮率に基づけば、たとえばピストンが進んだ幾何学的なピストン距離の1.2体積単位は、溶融物の放出体積の1.0体積単位に相当する。圧縮率がなければ、比率1:1が考えられる。
【0047】
溶融物の弾性定数を検出することにより、アクチュエータ装置がピストンを調整しながら制御できることが達成されて有利であり、この場合弾性定数は、とりわけ、溶融物の実際の放出量が印刷時に移動するプリントヘッドの軌道速度に依存した溶融物の正確な算出体積流を達成することを可能にする。すなわち、プリントヘッドの軌道速度がどのような値であっても、各印刷位置にはそれぞれに必要な量の溶融物が部品に放出される。
【0048】
更なる構成では、液相の印刷準備を行うステップは以下のステップを含み、すなわち
-弾性定数に依存してピストンを引き戻すことによって液相の減圧をアクティブに行うステップと、
-ノズルを開くステップと、
を含んでいる。
【0049】
アクティブに減圧する際、ピストンを検出した弾性定数に依存してほぼ1ないし2ミリメートルだけ引き戻し、これによって、ノズルまたはノズル開口部が開いても、これらから溶融物が流出しないことが達成されて有利である。これは、位置を引き続き保持した場合、既存のシステムが開放系であるため、重力の影響による事例であると考えられる。同時に、溶融物はばねのように除荷される。
【0050】
次に、印刷準備をさらに継続することで、圧縮によって印刷プロセスが始まる。
プリントヘッドのシステム全体は、溶融物がたとえばほぼ20%の圧縮を有することができるので、圧縮性のシステムである。それ故、ピストンの送りによって排除される体積は放出される材料の体積に対応しておらず、これによって、不正確で不規則な放出が生じることがある。
【0051】
液相の放出、すなわち印刷は、圧力を制御しながら実施し、この場合、
-溶融物空間内の圧力を持続的に測定する、
-ピストンを制御・調整ユニットを介してアクティブに制御し、この場合ピストンの送りを圧力に依存して補正係数だけ適合させ、その際補正係数は材料の液相の算出弾性定数から得られる。
【0052】
測定した圧力は、部品に対する液相の放出によって生じる圧力に対応し、補正係数は、液相の圧縮率を補償するために有利である。
【0053】
印刷開始時の溶融物空間内での溶融物の圧縮は、一部は溶融物を「押し出す」際のノズルのノズル開口部における摩擦を介して発生させ、一部は部品または基板担持体(その上で部品を組み立てる)に対して印刷を行う際の抵抗を介して発生させる。
溶融物の均一な放出は、プリントヘッドのインテリジェントコントロールによって達成され、この場合補正係数だけ適合されたピストンの非同期運動は、アクチュエータ装置で電子伝動装置を使用することによって行う。特に検出した溶融物の弾性定数から得られる補正係数は、いわば、システムにマージされる。それ故、本発明による方法には、通常のNCシステムのような同期運動に対する制限がないので有利である。
【0054】
電気駆動されるアクチュエータ装置は、この事例に対しダイナミックで非常に効果的であることが明らかになっている。
【0055】
さらに、プリントヘッドの構成からいくつかの利点が得られ、この場合ピストンブシュは、上部部分領域と下部部分領域との間にストッパーを有していてよく、ストッパーによってフランジとノズルヘッドとは互いに切り離されている。したがってピストンブシュと特にストッパーとは、冷却されるフランジを加熱されるノズルヘッドから切り離すので有利であり、これによってこれらは互いに接触しない。
さらに、ピストンブシュの下部部分領域に腎臓形部材が配置されていてよく、この場合腎臓形部材は、同心に延びる、ピストンのピストンニードルを受容するための穿孔部を有している。
【0056】
プリントヘッドのピストンは、アクチュエータ装置に結合するための第1のピストン部分と、第1のピストン部分に結合し且つピストンニードルを受容するためのピストンヘッドとを含んでいる。第1のピストン部分は、有利にはアルミニウム中空ピストンとして形成され、これによって第1のピストン部分により冷媒を誘導でき、これによりピストン冷却が達成されるので有利である。ピストンヘッドはノズル側に下面を有し、この場合ピストンニードルはこの下面の中心から突出している。ピストンニードルの仮想の面を除くピストンヘッドの下面の面は、材料に対する圧力を生成させるためのピストン面を形成している。ピストンヘッドの下面はピストン冷却によって一緒に冷却され、これによってピストン底部における溶融物または塑性材料の粘度を局部的に減少させる。これにより、液状の溶融物が駆動装置の方向に流れ込みうることが阻止され、これによりピストンブシュ内でピストンが固着することも、溶融物が駆動装置内へ侵入することも阻止されるので有利である。加えて、材料は引き戻しの際にピストン底部から、または、ピストンヘッドの下面からより簡単に解離し、その結果ピストンのスタート点または出発点に到達したときに、残存材料がピストン底部に付着することなく、固相の材料または顆粒を簡単に再充填することが可能である。
ピストンヘッドの下面またはピストン底部には、有利には温度センサが装着されている。温度センサをこのように配置することにより、ピストンの位置に依存してプリントヘッドの温度管理が可能であり、これによって、溶融物がピストンヘッドの下面と接触することなく、材料のより迅速な加熱が達成される。これによって、プリントヘッドの充填過程の加速を達成できるので有利である。
ピストンヘッドは筒状の構成部材として実施されており、有利には熱に抵抗力がある材料から製造されている。第1のピストン部分がアルミニウムから実施され、ピストンヘッドがたとえば鋼から実施されているという組み合わせは、有利であることが実証されている。というのは、このように構成すると、ピストンが、機械的応力を吸収するための弾性のある上部領域と、加熱される材料の領域に設けられる熱に抵抗力のある領域とを有しているからである。
ピストンニードルは、ピストンの位置に応じて、腎臓形部材の穿孔部内へ一部のみが突出するか、或いは、全体が貫通し、これによってピストンニードルは腎臓形部材の中央の穿孔部内で案内されるので有利である。
【0057】
腎臓形部材は、同心に配置される複数の開口部を有し、この場合これら開口部は、ピストンブシュ内に配置されている中空空間と、ノズルヘッドの下部部分内に配置されている溶融物空間との間の流体結合部を形成している。
【0058】
中空空間は、ピストンブシュの内部に配置され、外面がピストンブシュの内面と、ピストンニードルの外面と、腎臓形部材の上面と、ピストンの下面とから形成されている容積部によって形成される。
中空空間の内部で、材料または顆粒は、ピストンの走行により、ピストンヘッドの下面またはピストン面を介して圧縮される。材料の圧縮の間、プリントヘッドの温度管理は次のように設定されており、すなわち中空空間の内部で材料の液相または溶融物は形成されずに、材料が塑性相として形成されるように設定されている。これにより、塑性化された材料がピストンの下面に付着しないことが達成されるので有利である。しかしながら、圧縮の間、溶融物空間内の液相または溶融物の一部が、溶融物空間内に侵入するピストンニードルにより、腎臓形部材の同心に配置されている複数の開口部を通じて溶融物空間からピストンブシュの中空空間内へ押される。その際、溶融物の一部が塑性相の一部と混合する。その際に溶融物が塑性相内にエネルギーを放出し、これによって均質な材料が生成されるので有利である。したがって、腎臓形部材は混合器または静的混合器を形成している。というのは、有利にも、ピストン運動以外に、塑性相を液相と混合させるための他の可動部分は必要ないからである。したがって、腎臓形部材の構成は、材料または溶融物を塑性化材料とより好適に混ぜ合わせるブレンド作用の用を成しているので有利である。
腎臓形部材は、ノズルヘッドからの加熱要素の加熱エネルギーを溶融物内とピストンニードル内との双方へ誘導し、このことは溶融物を加熱する際のエネルギー管理を改善させる用を成すので有利である。
【0059】
腎臓形部材は、さらに、別個の構成部材として形成されていてよく、または、ピストンブシュと一体に形成されていてよい。
【0060】
さらに、溶融物空間内には、液相の圧力pのための圧力センサおよび/または温度Tのための温度センサが配置されている。圧力pの測定は、出口からの溶融物の吐出または放出または質量流に関しても決定する第1次パラメータである。温度Tの補助的な測定は、質量流Qを決定する際に、材料の粘度の温度依存性を考慮することを可能にさせる。ピストン送りによって、配分すべき量を正確に調整することができる。しかも、製造される部品またはオブジェクトの品質に対しては、材料の熱劣化を回避するために、特に一定の正確な制御の形態での温度Tのコントロールがより重要である。
加えて、アクチュエータ装置および/またはピストンには、ピストンの位置sのための距離測定システム、および/または、ピストンから材料に作用する力Fもしくはピストンに作用する液圧pのためのセンサが設けられている。
ピストンの送りは、放出すべき材料の量に対する基準である。この量は、とりわけ距離測定システムを介してコントロールすることができる。さらに、力Fは材料内の圧力と直接的に相関関係にある。
さらに、ピストンには、特にピストンのピストンヘッドの下面には、材料の塑性相の温度Tのための温度センサが配置されている。
温度センサのこの配置により、プリントヘッドのピストン位置に依存した熱管理が可能であり、これにより、溶融物がピストンヘッドの下面と接触することなく、材料のより迅速な加熱が達成される。これによって、プリントヘッドの充填過程の加速、または、充填過程の必要時間の低減を達成できるので有利である。
【0061】
次に、本発明を改善する更なる処置を、図に基づく本発明の有利な実施形態の説明とともにより詳細に提示する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本発明によるプリントヘッドの図である。
図2】本発明によるプリントヘッドの他の図である。
図3】本発明によるプリントヘッドの1つのセクションの図である。
図4】本発明によるプリントヘッドの概略図である。
図5】印刷可能な溶融物を提供するための本発明による方法のフローチャートである。
図6】本発明によるプリントヘッドの1つのセクションを圧力の経過とともに示した図である。
図7】本発明によるプリントヘッドのピストンの異なる位置を示す図である。
図8】プリントヘッドの中空空間を充填するための方法のフローチャートである。
図9】プリントヘッドのピストンブシュの開口横断面部を閉じるための方法のフローチャートである。
図10】材料を固相から塑性相を経て液相へ転移させるための方法のフローチャートである。
図11】材料を圧縮するための方法のフローチャートである。
図12】材料の液相の弾性定数を検出するための方法のフローチャートである。
図13】材料の液相の印刷準備を行うための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は3Dプリンタのためのプリントヘッド100を示し、プリントヘッドは、プリントヘッド100のハウジング1内に配置される、ピストン3を制御するためのアクチュエータ装置110と、印刷可能な材料10のための供給機構2と、ハウジング1および供給機構2に配置され、冷却装置50を備えたフランジ5と、材料10を固相10から塑性相11を経て液相12へ転移させるための加熱要素61,63を備えたノズルヘッド6と、材料10の液相12をノズルヘッド6から放出するためのノズル8とを含んでいる。プリントヘッド100は、ピストン3を案内するために別個のピストンブシュ4を含んでいる。
【0064】
冷却装置50によって内部冷却されるフランジ5は、プリントヘッド100の下部加熱領域をアクチュエータ装置110に対して、または、ピストン3の駆動部に対して熱的に切り離す用を成している。
【0065】
ピストン3は、ピストン3をアクチュエータ装置110に取り付けるための第1のピストン部分31と、第1のピストン部分31に固定され、ノズル8の方向にピストンニードル32を受容しているピストンヘッド34とを含んでいる。ピストン3には、または、ピストンヘッド34の下面35には、材料の塑性相11の温度Tを測定するための温度センサ36が配置されている。ピストンヘッド34の下面35は、ピストン底部35を形成している。第1のピストン部分31は、有利にはアルミニウム中空ピストンとして形成され、この場合アルミニウム中空ピストンは、内部に冷却通路として形成されている中空空間を有している。第1のピストン部分31の下端には、冷媒システムを介して冷却されるピストン冷却部33が配置されている。ピストン冷却部33は、ピストン底部35で材料11,12を硬化させる用を成し、これによってピストン3をアクチュエータ装置110の方向で密封し、または、これによってアクチュエータ装置110の方向への流動性溶融物12の流れ込みを阻止している。冷媒として有利には冷却液が使用され、この場合冷却液は複数の接続部と可撓管とを介してハウジング1を通って第1のピストン部分31の冷却接続部37内へ搬送される。
フランジ5内の冷却装置50には、同じ冷媒システムによって冷媒が供給される。
【0066】
ピストン底部35での材料11,12の冷却により、局部的に材料11,12の粘性が低下し、これによってピストン3の引き戻しの際に糸を引くことなく材料がピストンから解離する。その際、新たな材料10のための空間が形成される。
【0067】
図1は、ピストン3を、供給機構2を介してプリントヘッド100内へ供給される印刷可能な材料10でプリントヘッド100を充填するための出発位置で示している。
【0068】
供給機構2はホッパー状に形成されており、この場合、有利には顆粒である材料10は上から供給機構2の開口部内へ充填される。材料10は、重力によって、ピストンブシュ4に対する開口部21または開口横断面部まで到達する。開口部21上方の供給機構2の下部領域には、空気通路20が配置されている。空気通路は、空気圧弁22によってエアインパルスの作用を受ける。空気圧弁22と空気通路20とは吹込み装置を形成しており、すなわち吹込み装置は、顆粒10が供給機構2のさらに上部にある領域の方向に投げ飛ばされ、これによって個々の顆粒塊10が互いに解離するように、間欠的に顆粒にエアブラストを作用させる。空気流を切ると、供給機構2の下部領域にある顆粒10が開口横断面部21の開口の際にピストンブシュ4内へ落下する。
これにより、供給機構2の吹込み装置は顆粒塊10の固着を阻止し、これによって供給装置2の詰まりが阻止されて、吹込み装置はピストンブシュ4を顆粒10で確実に充填する用を成す。さらに、供給機構2の入口に小径部を使用してよい。
再充填のプロセスは顆粒10のバックブローを必要とし、これによって顆粒の持ち上げ効果が生じ、その結果顆粒はその後プリントヘッド100内へ滑り込む。巻き上げることは自動チャージのために必要であり、発生する重力インパルスまたは打撃によって顆粒10は順次滑り込む。
【0069】
ピストンブシュ4は、フランジ5内へ突出している上部部分領域41と、ノズルヘッド6の上部部分領域60内へ突出している下部部分領域42とを有している。ピストンブシュ4の上部部分領域41と下部部分領域42との間にはストッパー43が配置され、ストッパーによってフランジ5とノズルヘッド6とは互いに分離されている。開口部21または開口横断面部は、ピストンブシュ4の上部部分領域41内に配置され、ピストンブシュ4の内面に切欠き44を有している。切欠き44は、ピストン3によって開口横断面部21が閉じる際に、ピストン底部35が切欠き44の下方の位置に到達するまで、顆粒10が切欠き44とピストン底部35との間で剪断されることを生じさせる。
【0070】
ピストンブシュ4は切欠き44に鈍角部を有し、この場合鈍角部はエッジが鋭く、硬化されている。その際、局部的に硬化するのが有利である。切欠き44は、択一的実施形態では、スローアウェイチップのような別個のインサート部材によって形成されていてもよい。
切欠き44の構造は、顆粒10を剪断するために必要な力を低減させる用を成すので有利であり、これによってエネルギーを節減でき、ピストンブシュ4およびピストン3の材料が摩耗する可能性が少なくなる。なお、切欠き44のエッジは極めて摩耗しやすい。
【0071】
ピストンブシュ4の下部部分領域42には腎臓形部材7が配置され、この場合腎臓形部材7は、ピストン3のピストンニードル32を受容するために中央に延びる穿孔部70を有している。
腎臓形部材7は、さらに、同心に配置される複数の開口部71を有し、これら開口部は、ピストンブシュ4内に配置されている中空空間40と、ノズルヘッド6の下部部分62内に配置されている溶融物空間81との間で流動結合部を形成している。中空空間40は、ピストンブシュ4の内部に配置されており、ピストンブシュ4の内面と、ピストンニードル32の外面と、腎臓形部材7の上面と、ピストン3の下面35とで形成される。
【0072】
腎臓形部材7の主な課題は、ノズルヘッド6の加熱要素61,63から材料または溶融物12の液相12への熱伝導またはエネルギー伝達である。これは、特に、中空空間40に対する、したがって材料の塑性相11に対する接触面積を増大することによって達成される。
更なる課題はピストンニードル32の案内であり、この場合穿孔部70内部でのピストンニードル32の接触は、補助的にピストンニードル32を必要なプロセス温度に加熱する用を成す。最終的なプロセス温度は、ノズル8へと向かうノズルヘッド6内で初めて達成される。
【0073】
プリントヘッド100の充填過程の間、ノズル8は必要な場合に閉じられ、アクチュエータ装置110によるピストン3の制御時には、中空空間40および溶融物空間81内に配置されている材料10,11,12はピストン送りによって圧縮される。
【0074】
ノズルヘッド6は、プリントヘッド100の加熱要素61,63を含み、この場合第1の加熱要素61は上部ノズルヘッド60内に配置され、第2の加熱要素63は下部ノズルヘッド62内に配置されている。上部ノズルヘッド60はセクション64を有し、このセクションは上部ノズルヘッド60と下部ノズルヘッド62との間に配置され、そしてこのセクションには腎臓形部材7が載置されている。ノズル8の領域には、冷却リング84がノズルヘッド6に配置されている。冷却リングは印刷対象部品を冷却し、この部品をプリントヘッド100から熱的に遮蔽する。
【0075】
ノズルヘッド6内の加熱要素61,63は、材料の液相12がそのプロセス温度に達してノズル8から放出できるようになるまで、中空空間40の内部、腎臓形部材7の内部、溶融物空間82の内部にある材料10,11,12を加熱する。溶融物空間82は、上部ノズルヘッド60のセクション64からノズル8まで先細りになるように形成されている。溶融物空間81の円錐状供給部は体積流の上昇を可能にするとともに、ノズルヘッド6の内壁での材料の沈積を阻止する。溶融物空間81が筒状である場合に比べて、円錐状に延びている溶融物空間81内には材料12または体積が少ないことにより、混合プロセスがさらに最適化される。これにより、密封の際に溶融物12の一部をして腎臓形部材7の開口部71を通って溶融物空間81から中空空間40内へ戻し排除するためにピストンニードル32が排除しなければならない体積は少なくなる。
【0076】
さらに、プリントヘッド100は他のセンサを含んでおり、この場合溶融物空間81内には材料の液相12の圧力p用の圧力センサ83と、温度T用の温度センサ82とが配置されている。他のセンサはアクチュエータ装置110に配置され、この場合ピストン3の位置s用の距離測定システム111と、ピストン3から材料10,11へ作用する力Fまたはピストン3に作用する液圧P用のセンサ112とが設けられている。択一的実施形態では、センサ111,112はプリントヘッド100のピストン3にも配置されていてよい。
【0077】
図2は、本発明によるプリントヘッド100の他の図であり、この場合、本発明によれば、材料の固相10は顆粒塊10を含み、供給機構2は複数の顆粒塊10を互いに解離させるための吹込み装置25を有している。
吹込み装置25は空気圧弁22と空気通路20とを含み、この場合空気通路20は供給機構2のハウジング部分27内に配置されて、供給機構2の下部領域24においてフランジ5の開口横断面部21の上方に開口している。
空気通路20は、空気圧弁22によってエアインパルス26の作用を受けることができ、この場合エアインパルス26は、複数の顆粒塊10が互いに解離するように下部領域24において顆粒塊に作用する。
供給機構2はホッパー状に形成されており、この場合顆粒塊10は上から供給機構2の開口部23内へ充填される。材料10は重力によってフランジ5の開口横断面部21まで、または、ピストンブシュ4まで、または、ピストンブシュ4の開口横断面部21まで到達する。フランジ5の開口横断面部21の上方の供給機構2の下部領域24には、吹込み装置25の空気通路20が配置されている。空気通路20は、空気圧弁22によってエアインパルス26の作用を受ける。吹込み装置25は空気圧弁22と空気通路20とを含み、この場合顆粒10は、さらに上にある供給機構2の領域の方向に投げ飛ばされ、これによって個々の顆粒塊10が互いに解離するように、間欠的にエアブラストの作用を受ける。吹込み装置25を切ると、供給機構2の下部領域24内にある顆粒10が開口横断面部21の開口の際にピストンブシュ4の中空空間40内へ落下する。これにより、供給機構2の吹込み装置25は顆粒塊10の固着を阻止し、これによって供給装置2の詰まりが阻止され、吹込み装置はピストンブシュ4を顆粒10で確実に充填する用を成している。再充填のプロセスは顆粒10のバックブローを必要とし、これによって顆粒の持ち上げ効果が生じ、その結果顆粒はその後プリントヘッド100内へ滑り込む。巻き上げることは自動チャージのために必要であり、発生する重力インパルスまたは打撃によって顆粒10は順次滑り込む。
【0078】
図3は、本発明によるプリントヘッド100の1つのセクションを90゜回転させて示した図であり、この場合ピストンブシュ4の上部部分領域41から出発して腎臓形部材7を経てノズル8までの、作動中に材料10,11,12で充填されるプリントヘッド100の状態ゾーンA,B,C,D,Eが図示されている。状態ゾーンA,B,C,D,Eは、材料10の温度Tに依存するその凝集状態を表すもので、この場合状態ゾーンA,B,C,D,E全体における材料10の凝集状態は、固相10から塑性相11を経て液相12へ変化可能である。
【0079】
プリントヘッド100内部での材料10,11,12の温度Tまたは温度経過は、プリントヘッド100の上に図示したグラフで示されており、この場合温度Tは距離sまたはプリントヘッド100の作業範囲120の長さに関して図示されている。
【0080】
プリントヘッド100の状態ゾーンA,B,C,D,Eは、材料が固相10の状態にある低温ゾーンAと、材料が塑性相11の状態にある塑性化ゾーンBと、それぞれ材料が液相12の状態にある溶融ゾーンDおよびプロセスゾーンEとを含んでいる。さらに、状態ゾーンは、材料が塑性相11および液相12の状態にある混合ゾーンCを含んでいる。
【0081】
フランジ5内の冷却装置50と、ピストン3内に統合されているピストン冷却部33とは、塑性化ゾーンB内での材料の塑性相11の温度Tを、材料11が塑性化して液相12へ移行する起点となるガラス移行温度T以下に保持するために設けられている。材料が塑性相11の状態にある塑性化ゾーンBは、ここに示した実施形態では、顆粒の粘性がすでに変化し、これによって圧縮・混合プロセスが最適化されるような材料または顆粒の状態を記述するものであるが、しかしながら顆粒の塑性相11はまだ液相12へ移行していない。
【0082】
さらに、ノズルヘッド6は2つの加熱ゾーン65,66を含んでいる。
第1の加熱ゾーン65内には、塑性化ゾーンBの部分領域と、混合ゾーンCと、溶融ゾーンDの部分領域とが配置され、この場合第1の加熱要素61が上部ノズルヘッド60内に次のように配置されており、すなわち加熱エネルギーを第1の加熱要素61からピストンブシュ42の下部部分領域と腎臓形部材7と上部ノズルヘッドのセクション64とを介して材料10,11,12内へ投入できるように配置されている。
第2の加熱ゾーン66内には、溶融ゾーンDの部分領域とプロセスゾーンEとが配置され、この場合第2の加熱要素63が下部ノズルヘッド62内に次のように配置され、すなわち加熱エネルギーを第2の加熱要素63から下部ノズルヘッド62を介して材料の液相12内へ投入できるように配置されている。
【0083】
グラフから読み取れるように、材料10,11,12の温度Tは、プリントヘッド100の作業範囲120の距離sに関して連続的に上昇している。低温ゾーンAでは、フランジ5の冷却装置50の作用が支配的であり、これによって顆粒10は距離sにわたってゆっくりとしか加熱されない。塑性化ゾーンBから、第1の加熱要素61による第1の加熱ゾーン65の影響が大きくなり始め、この場合温度曲線はガラス移行温度Tに到達するまで強く上昇し、そこから混合ゾーンCが始まる。温度Tは、混合ゾーンCでは、溶融ゾーンDに到達するまでより小さな勾配でさらに上昇する。そこで、第2の加熱要素63による第2の加熱ゾーン66としての影響ゾーンが始まり、この場合第2の加熱要素は、プロセスゾーンEで溶融物12のプロセス温度が達成されて、印刷可能な溶融物12が生じるまで、溶融物12の温度Tを強く上昇させることができる。
【0084】
温度Tは次のように調整されていなければならず、すなわち顆粒10が充填の際に中空空間40内へ接着せずに流れ込むように、しかしセクション44での材料10,11の剪断を可能な限り力消費を少なくして可能であるように予熱されるようにも調整されていなければならない。その際、プリントヘッド100の温度管理は次のように調整されており、すなわちフランジ5内の冷却装置50がピストンブシュ4内へ、これによって材料10,11内へほぼ40℃の冷却温度調整をもたらし、第1の加熱ゾーン65の第1の加熱要素61が材料10,11,12のガラス移行温度Tまたは溶融物温度以下のほぼ30℃の加熱温度調整をもたらすように調整されている。
この効果は、ピストン冷却部33によって支援される。ピストン底部35での材料11,12の冷却により、局部的に材料11,12の粘度が減り、これによってピストン3の引き戻しの際に材料は糸を引くことなくピストンから解離する。その際、ピストン3が供給機構2に対し開口横断面部21を開放すると、新たな材料10のための空間が提供される。
【0085】
ピストン底部35に設けた温度センサ36は、材料10,11に対するピストン3の接触個所で温度Tを測定し、これによってプリントヘッド100の冷却能力および加熱能力を算出でき、その結果材料10のガラス移行温度Tを越えない。ピストン底部35に温度センサ36または温度検出器が配置されているため、ピストン位置に依存した加熱要素61,63の制御が可能であり、これによって温度Tの調整が可能である。これにより、材料11,12のより高速な昇温が達成される。したがって、プリントヘッド100の温度管理は、60℃ないし80℃以下の低い溶融温度によるプラスチックの処理も可能にする。
【0086】
プロセスゾーンEで材料の液相12を形成するために圧縮プロセスを行っている間、ノズル8は閉じられている。ノズル8は、たとえば、図示していない閉鎖弁によって閉じることができ、または、プリンタの造形室内でプレートに対しプリントヘッド100を位置決めすることによって閉じることができる。さらに、部品9のすでに印刷した領域を接近させ、これによってノズル8を閉じることもできる。圧縮プロセスの間、ピストンニードル32は溶融物空間81内へ沈んでおり、この中へさらに進入し、これによって液相12の複数の部分が溶融ゾーンDから混合ゾーンC内へ戻し排除され、これによって混合ゾーンCにおいて液相12が塑性化ゾーンBから来た塑性相11と混合される。
【0087】
その際、溶融ゾーンDから来る液相12は溶融物空間81の上部領域から腎臓形部材7の開口部71を通ってピストンブシュ4の中空空間40内へ、よって混合ゾーンC内へ戻し排除される。
【0088】
図4は、ピストン3を走行させるためにアクチュエータ装置110をアクティブに制御するための制御・調整ユニット113と、センサ36,82,83,111,112の測定値を評価し、その結果を制御・調整ユニット113に転送してアクチュエータ装置110をアクティブに制御し且つ加熱要素61,63をアクティブに制御するために形成されている評価ユニット114とを備える本発明によるプリントヘッド100の概略図である。
制御・調整ユニット113は、充填および印刷するために実施すべき作動戦略に対応してピストン3を走行させるためのアクチュエータ装置110をアクティブに制御するために設けられているとともに、第1の加熱要素61と第2の加熱要素63との温度をアクティブに制御するために設けられている。
アクチュエータ装置110をアクティブに制御するために決定的なのは、評価ユニット114によって受信されるセンサ信号、および、それぞれの値から算出される結果である。
液相12の圧力pのための圧力センサ83と、温度Tのための温度センサ82とは、溶融物空間81内に配置されている。ピストン3の位置sのための距離測定システム111と、ピストン3から材料10,11に作用する力Fまたはピストン3に作用する液圧pのためのセンサ112とは、アクチュエータ装置110またはピストン3に配置されている。
さらに、ピストン3には、材料の塑性相11の温度Tのための温度センサ36が配置されている。
【0089】
破線の矢印で図示した、センサ111,112,36,82,83の信号s,F,p,T,T,pは、評価ユニット114へ送られ、次にこの中でまたはクラウドで評価され、その結果が作動戦略に対応して制御量iとして制御・調整ユニット113へ送られ、アクチュエータ装置110と加熱要素61,63とが対応的に制御される。
【0090】
図5は、本発明によるプリントヘッド100を作動させるための印刷可能な溶融物12を提供するための本発明による方法200のフローチャートであり、この場合方法200は次のステップを含んでいる。
-供給機構2によって印刷可能な材料10で中空空間40を充填するステップ210、
-ピストン3をスタート位置3aから出発してプリントヘッド100のノズル8の方向に送ることによってピストンブシュ4の開口横断面部21を閉じるステップ220、
-材料を固相10から塑性相11を経て液相12へ転移させるステップ230、
-材料10,11,12を圧縮するステップ240、
-液相12の弾性定数を検出するステップ250、
-液相12の印刷準備を行うステップ260。
【0091】
方法200の少なくとも閉じるステップ220と、転移させるステップ230と、圧縮するステップ240と、弾性定数を検出するステップ250と、印刷準備を行うステップ260とは、制御・調整ユニット113によるアクチュエータ装置110のアクティブな制御によって実施され、この場合センサ36,82,83,111,112の測定値に基づく評価ユニット114の結果は、制御・調整ユニット113へ転送される。
次に、これらの方法ステップをさらに詳細に説明する。
【0092】
図6は、本発明によるプリントヘッド100の1つのセクションと2つのグラフ6a,6bを示すもので、2つのグラフは、印刷可能な溶融物12を提供している間の、または、印刷可能な溶融物を提供するための方法200の種々の方法ステップを実施している間の、圧力経過または圧力、力の経過を表している。図7は、図6に示す種々の方法ステップまたは状態でのピストン3の異なる位置を、ピストン底部35のスタート位置3aから始まって最終位置3zまで示している。方法ステップを実施している間、フランジ5内の冷却装置50,33とピストン3および加熱要素61,63は作動しており、溶融物空間81と腎臓形部材7とは溶融物12で充填され、中空空間40の下部部分領域にはまだ顆粒が塑性相11の状態で存在している。
【0093】
図示したプリントヘッド100の複数のセクションは、図1図3図4に図示した本発明によるプリントヘッド100のそれに対応しており、その結果以前の図の参照符号を、図6および図7を説明するために援用し、この場合新たな構成要件および関連事項、たとえばピストン3のその都度の位置は、図6および図7においてピストン底部35に関連して特徴づけられている。
【0094】
図6は、第1のグラフ6aで2つの曲線形状を示し、これらの曲線形状はピストン3が進んだ距離sに関してプロットされている。距離sは、アクチュエータ装置110またはピストン3に設けた距離測定システム111または距離センサ111によって測定される。
上の曲線は、閉じるステップ220または圧縮するステップ240の際のアクチュエータ装置110によるピストン3の送りの間にピストン3から材料10,11に作用する力Fに対する、または、ピストン3に作用する液圧pに対する力の経過または圧力の経過を示しており、この場合力センサまたは圧力センサ112はアクチュエータ装置110またはピストン3に配置されている。
グラフ6aの下の曲線は、圧縮するステップ240の間における溶融物空間81内の溶融物圧力pの圧力経過とピストン3の距離sとの関係を表している。液相12または溶融物12の圧力pのための圧力センサ83は、溶融物空間81内に配置されている。
【0095】
第2のグラフ6bには、第1のグラフ6aの下の曲線の一部分が図示されており、その際ここでも圧縮するステップ240の間における溶融物空間81内の溶融物圧力pの圧力経過とピストン3の距離sとの関係が図示されている(pからpへの曲線形状)。
【0096】
図7aは、プリントヘッド100の充填プロセス210の間におけるピストン3のスタート位置3aを示しており、この場合ピストン底部35はピストンブシュ4の開口部21の上面に位置決めされている。印刷準備を行うステップ260の間における充填するステップ210からノズルを開くステップ820までのプロセスの経過全体は、再充填プロセスとも呼ばれる。というのは、このプロセスは部品9を印刷する間に任意に繰り返される反復過程だからである。再充填プロセスは、3Dプリンタのためのプリントヘッド100を作動させるために印刷可能な溶融物12を提供するための方法である。図7aに示されているピストン3の位置は、図1のピストン3の位置に相当している。ピストンブシュ4の開口部21または開口横断面部21は開いており、顆粒10は供給機構2を介してピストンブシュ4の中空空間40内へもたらすことができる。次に、ピストン3をアクチュエータ装置110によって図7bに示した位置3bへ制御する。その際、ピストン底部35はピストンブシュ4の切欠き44のそばを滑動し、開口部21から中空空間40内へ突き出している顆粒10がピストン底部35と切欠き44との間で剪断される。それ故、この位置を剪断位置3bと呼ぶ。剪断するステップ420の後、開口横断面部21は閉じられている220。
力の経過、圧力の経過F,pは、スタート位置3aから剪断位置3bまで上昇し、この場合アクチュエータ装置110が顆粒10を剪断するための力をもたらさねばならないので、切欠き44または剪断位置3bでのアクチュエータ装置110の力の消費量は最大である。力の消費量は、ピストン底部35の特性および顆粒10の予加熱と関連して切欠きの幾何学的形状を最適化するなどして適当な処置により低減させることができる。これに対し、溶融物12の圧力の経過pは変化がわずかであり、または、ほとんど上昇しない。これは、ノズル8がまだ開いており、溶融物空間81内に増圧が生じないからである。
【0097】
次に、圧縮プロセス240が始まり、ピストン3はアクチュエータ装置110によって力または圧力を制御されて位置3cまで走行する。ピストン3が変位する際に、材料または顆粒10,11に作用する力Fまたはピストン3に作用する液圧pおよび溶融物12内の圧力pを測定する。ピストン3が変位することにより、材料10,11,12が予圧縮される。
【0098】
位置3cは力または圧力の上昇によって定義され、すなわち位置3cは制御され、この場合ダイレクトポイントが制御されるのではなく、グラフ6aに図示した曲線のスロープが制御される。スロープは、小さな勾配または勾配のないそれぞれの直線(位置3aから位置3cまでの範囲)から、予め定義された勾配または予め定義された勾配角に到達するおよび/またはこれを越える曲線の上昇(位置3cで)までの交替点pLc,F,pHcに生じる。位置3cは、塑性化ゾーンBの最初の3分の1の位置にある。顆粒10,11は塑性化ゾーンBにおいてピストン3の送りによって圧縮され、この場合同時に溶融ゾーンDにおいては中空空間40とノズル8との間に溶融物12がある。これにより、塑性化された顆粒11は混合ゾーンC内で溶融物12内へ圧入される。
ピストン3を下げ、対応的にピストンニードル32をノズル8の方向に下げることにより、すでに溶融物12がノズル8から出て、これによって、空気または閉じ込められた空気があればこれをノズルヘッド6から排出させることができる。これによってノズル8は自由になる。
【0099】
位置3cには、方法および材料に起因して公差が付与され、これによって、プリントヘッド100の種々の再充填過程を順次実施する場合、ピストン3の位置3cがわずかに異なっていることがある。それ故、位置3cは固定点ではない。もし位置3cが所定の公差範囲内にあれば、充填するステップ210が成功したことが保証されており、すなわち顆粒10が十分に中空空間40内に充填されて、溶融物空間81がすでに溶融物12で充填されていることが保証されている。スロープがたとえば位置3cよりもはるか手前で始まれば、ピストン底部35からノズル8までの領域には過量の高粘性または硬い材料10,11があり、場合によっては混合ゾーンCで混合プロセスが成功しなかったことになる。スロープがたとえば位置3cのはるか後方で初めて始まれば、場合によっては材料10の再充填が少なすぎたことになる。
【0100】
位置3cに到達後、予圧縮するステップ610が完了し、プリントヘッド100のノズル8を閉じる620。
【0101】
圧縮するステップ630を行うため、事前に定義したピーク圧力pに到達してピストン底部35が図7cに示した位置3dへ移動するまで、ピストン3を位置3cから圧力制御して変位させる。ピーク圧力pは、材料10によっては且つ必要に応じてはほぼ100バールと300バールの間にあってよい。
【0102】
次に、いわゆるピーク圧力位置3dを、材料に依存する予め定義した時間の間保持する。その際、ピストン底部35は第1の加熱ゾーン65の中へ突出し、ピストンニードル32は溶融物空間81の中へ突出しており、保持している間、溶融物12の一部はノズルヘッド6の溶融物空間81から腎臓形部材7の開口部71を通って混合ゾーンCの中へ、よってそこにある可塑性の顆粒10の中へ流れ戻る。これによって残留空気が排除されて、溶融物12は混合ゾーンC内で均質化される。これによって、より優れたエネルギー流れが達成され、より均質な材料11,12が生成される。流れ戻る溶融物12は塑性状態になり、腎臓形部材7内へ押し込まれる顆粒成分11は溶融物状になる。これによって材料11,12の混合が生じる。
ここで説明している保持過程640は、プリントヘッド100の分析およびシステムチェックにも用いられる。というのは、圧力pの圧力測定の際に次の作用が生じうるからである。溶融物12内での圧力pの圧力上昇は、たとえば温度Tが高すぎるために溶融物12がガスを出していることを意味していると考えられる。溶融物温度Tが高すぎるのは、エアプラズマが発生することがあって、これが化学的分解を引き起こすと考えられるので、望ましいものではない。
溶融物圧力pの強い圧力降下は、たとえば、プリントヘッド100のシステムが非密封状態にあるか、或いは、まだ過量の空気がシステム内にあったことを意味していると考えられる。このような作用は、たとえばプリントヘッド100の温度管理が最適に調整されていなかったために、過量の冷たい材料10,11が中空空間40内にあった場合に生じると考えられる。
【0103】
前記予め定義した時間の満了後、ほぼ0バールの目標圧力pが達成されるまで、ピストン3をピーク圧力位置3dからアクチュエータ装置110によって圧力を制御しながら戻す710。システムはレリーズ状態になる。これによって、溶融物12が圧縮解除されて脱気状態になることが達成され、これによって特にプロセスゾーンEで純粋な溶融物12が発生し、純粋な溶融物はこの時点で品質的に高価値であり、印刷可能である。目標圧力pに達すると、図7dに図示した目標圧力位置3eが達成され、この場合ピストン底部35は第1の加熱ゾーン65の外側にしてピストンブシュ4のストッパー43の領域に位置決めされている。
この時点で測定される、ピーク圧力位置3dの圧力pと目標圧力位置3eの圧力pとの圧力差、および、両点3d,3eの間で進んだ距離sは、材料の液相12または溶融物12の弾性定数740を明らかにする。
【0104】
弾性定数は、溶融物12の圧縮率から得られるもので、アクチュエータ装置110によるピストン3の正確な制御のために必要な補正係数または形状係数を導き出す。溶融物12の圧縮率に基づけば、たとえばピストン3が進んだ幾何学的なピストン距離sの1.2体積単位は、溶融物12の放出体積の1.0体積単位に相当する。圧縮率がなければ、比率1:1が考えられる。
【0105】
これによって、アクチュエータ装置110がピストン3を調整しながら制御できることが達成され、この場合弾性定数は、とりわけ、溶融物12の実際の放出量が印刷時に移動するプリントヘッド100の軌道速度vに依存した溶融物12の正確な算出体積流を達成することを可能にする。すなわち、プリントヘッド100の軌道速度vがどのような値であっても、各印刷位置にはそれぞれに必要な量の溶融物12が部品9に放出される。
【0106】
次に、ピストン3を引き戻すことによりアクティブな減圧を行うステップ810を介して、溶融物12を放出するプロセス270または印刷プロセス270を準備する260。
その際、ピストン3を検出した弾性定数に依存してほぼ1ないし2ミリメートルだけ引き戻し、これによって、その後ノズル8またはノズル開口部を開いたとき820にこれから溶融物12が流出しないことが達成される。これは、位置3eを引き続き保持した場合、既存のシステムが開放系であるため、重力の影響による事例であると考えられる。同時に、溶融物12はばねのように除荷される。
【0107】
次に、圧縮による印刷プロセスの更なる印刷準備が始まる。
プリントヘッド100のシステム全体は、溶融物12がたとえばほぼ20%の圧縮を有することができるので、すでに述べたように圧縮性のシステムである。それ故、ピストン3の送りによって排除される体積は放出される材料12の体積に対応しておらず、これによって、不正確で不規則な放出が生じることがある。印刷プロセスの送りのために可能な溶融物12の体積は、目標位置3eと図7eに示した最終位置3zまでの距離とによって定義される。
上述した作用に基づいて、印刷開始の間、溶融物12を圧縮する。印刷開始時の溶融物空間81内での溶融物12の圧縮は、一部は溶融物12を「押し出す」際のノズル8のノズル開口部における摩擦を介して発生させ、一部は部品9または基板担持体(その上で部品9を組み立てる)に対して印刷を行う際の抵抗を介して発生させる。
溶融物12の均一な放出は、プリントヘッド100のインテリジェントな制御によって達成され、この場合補正係数だけ適合されたピストン3の非同期運動は、アクチュエータ装置110で電子伝動装置を使用することによって行う。特に検出した溶融物12の弾性定数740から得られる補正係数は、いわば、システムにマージされる。それ故、本発明によるプリントヘッド100には、通常のNCシステムのような同期運動に対する制限がない。
【0108】
その際、印刷プロセスは圧力を制御して実施され、この場合溶融物12の圧力pがノズルヘッド6内の圧力センサ83を介して持続的に測定される。測定した圧力pは、溶融物12を部品9または基板担持体(まだ部品がない場合)へ放出することによって生じる圧力である。オブジェクトに印刷を行うというこの作用がなければ、ノズル8には摩擦圧の対圧以外に対圧はないと考えられ、これによって過量の材料/溶融物12がノズル8から放出されると考えられる。
印刷プロセスをスタートさせるため、ピストン3のインテリジェントなコントロールおよび制御により溶融物12をアクティブに混入する。その際、溶融物12の圧縮率を補償するため、「より多く」ストロークを実施する。その際、原理的には過量の溶融物12がノズル8から押し出されるが、しかしながら溶融物12の混入に並行して圧力センサ83を読み取り、これによって対応的に圧力に依存して対応制御することができる。
アクチュエータ装置110が電気で駆動されるものであれば、この事例に対しダイナミックで非常に効果的であることが実証されている。
【0109】
印刷プロセス270の間、溶融物温度Tを連続的に測定し、加熱ゾーン2においては、溶融物12をノズルヘッド6内の加熱要素63を介して、プロセスゾーンEの領域で必要な処理温度の目標値へ調整する。
【0110】
印刷スタート時に、ピストン3をプリントヘッド100の軌道速度に対応してアクチュエータ装置110により制御し、これによって溶融物12をノズル8から放出させる。
印刷プロセスの間、プリントヘッド100の制御・調整ユニット113を作動させて、アクチュエータ装置110の制御にアクティブに介入することで、たとえば必要な場合に材料12の付加目標値または付加量を添加する。たとえば、付加目標値を添加し、これによって、連続制御によるよりも多くの材料12をノズル8から放出または押し出すと、結果としてノズルヘッド6での圧力pも上昇する。その際、付加目標値は混入値であり、或いは、弾性定数740から求められる補正値に対応して望ましい体積の溶融物12を放出するために走破しなければならない付加的ピストン距離である。これによって定常状態が達成され、これにより部品9に対し放出される溶融物12の量が一定に維持される。
【0111】
その際、ピストンニードル32の使用は、ピストンニードルによって溶融物空間81内での溶融物12内部のダイレクトな容積押し除けが可能であるという有利な効果をもたらし、これによってより小さな弾性定数が達成される。小さな弾性定数も、プリントヘッド100の高いダイナミックスを可能にさせる。この効果は、ピストンニードル32によって溶融物12へのよりダイレクトな圧力伝達が行われることから結果的に得られる。したがって、ピストン3を送る際には、ピストン底部35だけでなく、ノズル8により近く位置決めされているピストンニードル32も、ノズル8から溶融物12を放出するための圧力インパルスを伝達する。
【0112】
印刷プロセスは、ピストン底部35が位置3zに到達するまでの間実施可能であり、この場合位置3zは、ピストン底部35がまさに機械的なストッパーに到達するのではなく、図7eに図示したように、腎臓形部材7に到達する直前に停止するように設定されている。その後、材料12はもはや放出されず、上述した本発明による再充填プロセスが新たにスタートする。
【0113】
図8ないし図13には、前記の図で説明した本発明の実施形態を補完するものとして、本発明による方法200の方法ステップの個々のフローチャートが図示されている。
【0114】
図8は、供給機構2により印刷可能な材料10で中空空間40を充填する方法210のフローチャートであり、この場合方法210は少なくとも以下のステップを含んでいる。
-供給機構2の開口部23を介して材料10をプリントヘッド100内へ充填するステップ310、
-材料10を、特に顆粒塊10を互いに解離させるためのエアインパルス26を発生させるステップ320。
【0115】
顆粒塊10を充填するステップ310は手動または自動で実施し、この場合顆粒塊10は重力の影響によって供給機構2の下部領域24内へ滑り込む。
【0116】
エアインパルス26を発生させるステップ320は間欠的に実施し、顆粒塊10は、エアインパルス26の領域で次のように投げ上げられ、すなわち顆粒塊が落下の際にその下にある顆粒塊10に対しインパルスを作用させて、それをプリントヘッド100の加熱された中空空間40内へ順次滑り込ませるように投げ上げられる。
【0117】
図9は、ピストン3によってピストンブシュ4の開口横断面部21を閉じる方法220のフローチャートであり、この場合方法220は以下のステップを含んでいる。
-ピストン3のピストン底部35のスタート位置3aから出発して、ノズル8の方向に、ピストンブシュ4の切欠き44の下方の位置3bに到達するまでピストン3を送るステップ410、その際に、
-ピストン底部35をして切欠き44のそばを滑動させることによって顆粒10を剪断するステップ420。
【0118】
図10は、材料を固相10から塑性相11を経て液相12へ転移させる方法230のフローチャートであり、この場合方法230は以下のステップを含んでいる。
-プリントヘッド100の状態ゾーンA,B,C,D,Eにわたってノズルヘッド6の加熱要素61,63により材料10,11,12を加熱するステップ510であって、この場合状態ゾーンA,B,C,D,Eは、材料10の温度Tに依存した当該材料の凝集状態を表し、加熱要素61,63の加熱エネルギーを投入することによって材料10,11,12の凝集状態を状態ゾーンA,B,C,D,Eにわたって固相10から塑性相11を経て液相12へ変化させる前記加熱するステップ510、
-圧縮するステップ240の間に材料11,12を混合するステップ520。
【0119】
図11は、材料10,11,12を圧縮する方法240のフローチャートである。圧縮プロセス240は以下のステップを含んでいる。
-ピストン3の送りによって材料10,11,12を予圧縮するステップ610、
-ノズル8を閉じるステップ620、
-ピストン3の送りによって材料10,11,12を圧縮するステップ630、
-ビストン3を保持位置3dに保持するステップ640。
【0120】
材料10,11,12を予圧縮するステップ610は、ピストン3の送りによって圧力および/または力を制御しながら実施し、この場合位置3cまで予圧縮を行い、そして力曲線および/または圧力曲線の材料に依存した勾配および/または材料に依存した勾配角に達すると、および/または、これを越えると、位置3cは到達されている。
【0121】
材料10,11,12を圧縮するステップ630は、ノズル8を閉じた状態でピストン3を送ることによって圧力を制御しながら実施し、その際ピーク圧力pに達するまで保持位置3dを目指し、または、保持位置をピーク圧力pによって定義する。
【0122】
圧縮するステップ630の間、ノズル8は閉じており、且つピストンニードル32は次のようにノズルヘッド6の溶融物空間81内に沈んでおり、すなわちこれによって液相12の一部が溶融物空間81の上部領域から腎臓形部材7の開口部71を通って溶融ゾーンDから混合ゾーンCへ戻り排除されるように沈んでおり、これによって液相12の前記一部は塑性化ゾーンBから来る塑性相11と混合ゾーンCで混合する。
【0123】
ピストン3は保持位置3dで保持され、この場合保持過程640の間、液相12の圧力pと温度Tとを測定し、測定値を評価ユニット114によってチェックして圧縮プロセス240の機能管理を行う。
【0124】
ピストン3を保持位置3dで保持するステップ640の間、ノズル8は閉じており、且つピストンニードル32は次のように溶融物空間81の内に沈んでおり、すなわちこれによって液相12の一部が溶融物空間81の上部領域から腎臓形部材7の開口部71を通って溶融ゾーンDから混合ゾーンCへ戻し排除されるように沈んでおり、これによって液相12の前記一部は塑性化ゾーンBから来る塑性相11と混合ゾーンCで混合する。
【0125】
図12は、液相12の弾性定数を検出する方法250のフローチャートであり、この場合方法250は以下のステップを含んでいる。
-保持するステップ640の終了後、保持位置3dから、溶融物圧力pが目標圧力pに達したときに達成される目標位置3eへ圧力制御しながら戻し走行させるステップ710、
-ピーク圧力pと目標圧力pとの間の圧力差を検出するステップ720、
-保持位置3dと目標位置3eとの間の距離を検出するステップ730、
-液相12の弾性定数を算出するステップ740。
【0126】
図13は、液相12の印刷準備を行う方法260のフローチャートであり、この場合方法260は以下のステップを含んでいる。
-弾性定数に依存してピストン3を引き戻すことによって液相12の減圧をアクティブに行うステップ810、
-ノズル8を開くステップ820。
【符号の説明】
【0127】
1 プリントヘッドのハウジング
2 供給機構
3 ピストン
3a ピストンのスタート位置
3b ピストンブシュの切欠きの下方の位置、剪断位置
3c ピストンの位置
3d ピストンの保持位置
3e ピストンの目標位置
4 ピストンブシュ
6 ノズルヘッド
7 腎臓形部材
8 ノズル
10 材料(顆粒、顆粒塊、固相)
11 材料(塑性相)
12 溶融物(液相)
21 ピストンブシュの開口横断面部
23 供給機構の開口部
24 供給機構の下部領域
26 エアインパルス
32 ピストンニードル
35 ピストン底部
36 温度センサ
82 温度センサ
83 圧力センサ
40 中空空間
44 切欠き
50 冷却装置
61,63 加熱要素
71 腎臓形部材の開口部
81 溶融物空間
100 プリントヘッド
110 アクチュエータ装置
111 距離センサ
112 圧力センサ
113 制御・調整ユニット
114 評価ユニット
200 印刷可能な溶融物を提供する方法
210 中空空間を充填するステップ
220 ピストンブシュの開口横断面部を閉じるステップ
230 材料を転移させるステップ
240 材料を圧縮するステップ
250 液相の弾性定数を検出するステップ
260 液相の印刷準備を行うステップ
310 材料をプリントヘッド内へ充填するステップ
320 エアインパルスを発生させるステップ
410 ピストンを送るステップ
420 顆粒を剪断するステップ
510 材料を加熱するステップ
520 材料を混合するステップ
610 材料を予圧縮するステップ
620 ノズルを閉じるステップ
630 材料を圧縮するステップ
640 ピストンを保持位置で保持するステップ
710 ピストンを戻し走行させるステップ
720 ピーク圧力と目標圧力との間の圧力差を検出するステップ
730 保持位置と目標位置との間の距離を検出するステップ
740 液相の弾性定数を算出するステップ
810 減圧するステップ
820 ノズルを開くステップ
A 低温ゾーン
B 塑性化ゾーン
C 混合ゾーン
D 溶融ゾーン
溶融物(液相)の圧力
ピーク圧力
目標圧力
液相の温度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【手続補正書】
【提出日】2023-11-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dプリンタ用プリントヘッド(100)を作動させるために印刷可能な溶融物(12)を提供する方法(200)において、
前記方法(200)が以下のステップを含み、すなわち
-供給機構(2)により中空空間(40)を印刷可能な材料(10)で充填するステップ(210)と、
-ピストン(3)をスタート位置(3a)から前記プリントヘッド(100)のノズル(8)の方向に送ることによってピストンブシュ(4)の開口横断面部(21)を閉じるステップ(220)と、
-前記材料を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるステップ(230)と、
-前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(240)と、
-前記液相(12)の弾性定数を検出するステップ(250)と、
-前記液相(12)の印刷準備を行うステップ(260)と、
を含んでいることを特徴とする方法(200)。
【請求項2】
少なくとも前記閉じるステップ(220)と、前記転移させるステップ(230)と、前記圧縮するステップ(240)と、前記弾性定数を検出するステップ(250)と、前記印刷準備を行うステップ(260)とを、制御・調整ユニット(113)によるアクチュエータ装置(110)のアクティブな制御によって実施し、この場合センサ(36,82,83,111,112)の測定値に基づく評価ユニット(114)の結果を前記制御・調整ユニット(113)へ転送することを特徴とする、請求項に記載の方法(200)。
【請求項3】
前記供給機構(2)により前記中空空間(40)を印刷可能な材料(10)で充填する前記充填するステップ(210)が、少なくとも以下のステップを含み、すなわち
-前記材料(10)を前記供給機構(2)の開口部(23)を介して前記プリントヘッド(100)内へ充填するステップ(310)と、
-前記材料(10)を、特に複数の顆粒塊(10)を互いに解離するためにエアインパルス(26)を発生させるステップ(320)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項4】
前記顆粒塊(10)を充填する前記充填するステップ(310)を手動または自動で実施し、この場合前記顆粒塊(10)を重力の影響によって前記供給機構(2)の下部領域(24)内へ滑り込ませることを特徴とする、請求項3に記載の方法(200)。
【請求項5】
前記エアインパルス(26)を発生させるステップ(320)を間欠的に実施し、前記顆粒塊(10)を前記エアインパルス(26)の領域で次のように投げ上げ、すなわち前記顆粒塊が落下する際にその下にある顆粒塊(10)に対しインパルスを作用させて、それを前記プリントヘッド(100)の加熱される前記中空空間(40)内へ順次滑り込ませるように投げ上げることを特徴とする、請求項4に記載の方法(200)。
【請求項6】
前記ピストン(3)により前記ピストンブシュ(4)の前記開口横断面部(21)を閉じるステップ(220)が以下のステップを含み、すなわち
-前記ピストン(3)を、前記ピストン(3)のピストン底部(35)のスタート位置(3a)から前記ノズル(8)の方向に前記ピストンブシュ(4)の切欠き(44)の下方の位置(3b)に到達するまで送るステップ(410)と、この場合に、
-前記ピストン底部(35)をして前記切欠き(44)のそばを滑動させることによって前記顆粒(10)を剪断するステップ(420)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項7】
前記材料を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるステップ(230)が以下のステップを含み、すなわち
-前記プリントヘッド(100)の状態ゾーン(A,B,C,D,E)にわたってノズルヘッド(6)の加熱要素(61,63)によって前記材料(10,11,12)を加熱するステップ(510)であって、この場合前記状態ゾーン(A,B,C,D,E)は前記材料(10)の温度(T)に依存する前記材料の凝集状態を表し、前記材料(10,11,12)の前記凝集状態を、前記加熱要素(61,63)の加熱エネルギーを投入することにより前記状態ゾーン(A,B,C,D,E)にわたって固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ変化させる前記加熱するステップ(510)と、
-前記圧縮するステップ(240)の間に前記材料(11,12)を混合するステップ(520)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項8】
前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(240)が、特に前記圧縮プロセス(240)が、以下のステップを含み、すなわち
-前記ピストン(3)を送ることによって前記材料(10,11,12)を予圧縮するステップ(610)と、
-前記ノズル(8)を閉じるステップ(620)と、
-前記ピストン(3)を送ることによって前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(630)と、
-前記ピストン(3)を保持位置(3d)に保持するステップ(640)と、
を含んでいる請求項1または2または7に記載の方法(200)。
【請求項9】
前記材料(10,11,12)を予圧縮するステップ(610)を、前記ピストン(3)の送りによって圧力および/または力を制御しながら実施し、この場合力曲線および/または圧力曲線の材料に依存した勾配および/または材料に依存した勾配角に到達するときに、および/または、これを越えるときに到達している位置(3c)まで予圧縮を行うことを特徴とする、請求項8に記載の方法(200)。
【請求項10】
前記材料(10,11,12)を圧縮するステップ(630)を、前記ノズル(8)を閉じた状態で前記ピストン(3)を送ることによって圧力を制御しながら実施し、その際ピーク圧力(p)に達するまで保持位置(3d)を目指すことを特徴とする、請求項8に記載の方法(200)。
【請求項11】
前記圧縮するステップ(630)の間、前記ノズル(8)が閉じており、且つピストンニードル(32)が次のようにノズルヘッド(6)の溶融物空間(81)内に沈んでおり、すなわちこれによって前記液相(12)の一部が前記溶融物空間(81)の上部領域から腎臓形部材(7)の開口部(71)を通って溶融ゾーン(D)から混合ゾーン(C)へ戻り排除されるように前記ノズルヘッド(6)の溶融物空間(81)内に沈んでおり、これによって前記液相(12)の前記一部が塑性化ゾーン(B)から来る前記塑性相(11)と前記混合ゾーン(C)で混合することを特徴とする、請求項8または10に記載の方法(200)。
【請求項12】
前記ピストン(3)を前記保持位置(3d)で保持し、その際前記保持過程(640)の間に、前記液相(12)の圧力(p)と温度(T)とを測定し、その測定値を評価ユニット(114)によってチェックして、前記圧縮プロセス(240)の機能管理を行うことを特徴とする、請求項8または10に記載の方法(200)。
【請求項13】
前記ピストン(3)を前記保持位置(3d)で保持するステップ(640)の間、前記ノズル(8)が閉じており、且つピストンニードル(32)が次のように溶融物空間(81)内に沈んでおり、すなわちこれによって前記液相(12)の一部が前記溶融物空間(81)の上部領域から腎臓形部材(7)の開口部(71)を通って溶融ゾーン(D)から混合ゾーン(C)へ戻し排除されるように前記溶融物空間(81)内に沈んでおり、これによって前記液相(12)の前記一部が塑性化ゾーン(B)から来る前記塑性相(11)と前記混合ゾーン(C)で混合することを特徴とする、請求項8または12に記載の方法(200)。
【請求項14】
前記液相(12)の弾性定数を検出するステップ(250)が以下のステップを含み、すなわち
-前記保持するステップ(640)の終了後、保持位置(3d)から、溶融物圧力(p)が目標圧力(p)に達したときに達成される目標位置(3e)へ圧力制御しながら戻し走行させるステップ(710)と、
-ピーク圧力(p)と前記目標圧力(p)との間の圧力差を検出するステップ(720)と、
-前記保持位置(3d)と前記目標位置(3e)との間の距離を検出するステップ(730)と、
-前記液相(12)の弾性定数を算出するステップ(740)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項15】
前記液相(12)の印刷準備を行うステップ(260)が以下のステップを含み、すなわち
-前記弾性定数に依存して前記ピストン(3)を引き戻すことによって前記液相(12)の減圧をアクティブに行うステップ(810)と、
-前記ノズル(8)を開くステップ(820)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法(200)。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法(200)を実施するための3Dプリンタ用プリントヘッド(100)であって、
前記プリントヘッド(100)のハウジング(1)内に配置されている、前記ピストン(3)を制御するためのアクチュエータ装置(110)と、印刷可能な前記材料(10)のための前記供給機構(2)と、前記ハウジング(1)および前記供給機構(2)に配置され、冷却装置(50)を備えているフランジ(5)と、前記材料(10)を固相(10)から塑性相(11)を経て液相(12)へ転移させるための加熱要素(61,63)を備えたノズルヘッド(6)と、前記材料(10)の前記液相(12)を前記ノズルヘッド(6)から放出するための前記ノズル(8)とを含んでいる前記3Dプリンタ用プリントヘッド(100)において、
前記制御・調整ユニット(113)は、充填および印刷のために実施すべき作動戦略に対応して前記ピストン(3)を走行させるための前記アクチュエータ装置(110)のアクティブな制御のために、および、前記加熱要素(61,63)のアクティブな制御のために設けられていることを特徴とするプリントヘッド(100)。
【請求項17】
価ユニット(114)は、前記プリントヘッド(100)のセンサ(36,82,83,111,112)の測定値を評価して、その結果を、前記アクチュエータ装置(110)のアクティブな制御のために、および、前記加熱要素(61,63)のアクティブな制御のために、前記制御・調整ユニット(113)へ転送するように設けられていることを特徴とする、請求項16に記載のプリントヘッド(100)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
ノズルヘッド6内の加熱要素61,63は、材料の液相12がそのプロセス温度に達してノズル8から放出できるようになるまで、中空空間40の内部、腎臓形部材7の内部、溶融物空間81の内部にある材料10,11,12を加熱する。溶融物空間81は、上部ノズルヘッド60のセクション64からノズル8まで先細りになるように形成されている。溶融物空間81の円錐状供給部は体積流の上昇を可能にするとともに、ノズルヘッド6の内壁での材料の沈積を阻止する。溶融物空間81が筒状である場合に比べて、円錐状に延びている溶融物空間81内には材料12または体積が少ないことにより、混合プロセスがさらに最適化される。これにより、密封の際に溶融物12の一部をして腎臓形部材7の開口部71を通って溶融物空間81から中空空間40内へ戻し排除するためにピストンニードル32が排除しなければならない体積は少なくなる。
【国際調査報告】