(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】連続焼結炉で使用するためのラッキングシステム
(51)【国際特許分類】
F27D 3/12 20060101AFI20240312BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20240312BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F27D3/12 Z
C04B38/00 303Z
C04B35/80
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555727
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 US2022020319
(87)【国際公開番号】W WO2022197661
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523346261
【氏名又は名称】ディーエスビー テクノロジーズ, エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】DSB Technologies, LLC
【住所又は居所原語表記】3330 Palmer Dr, Janesville, Wisconsin 53546-2305, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100091502
【氏名又は名称】井出 正威
(72)【発明者】
【氏名】ラング,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】デポウティロフ,ピーター,エイ.
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】アトー,パウル
(72)【発明者】
【氏名】フラー,エルドン
【テーマコード(参考)】
4G019
4K055
【Fターム(参考)】
4G019FA15
4K055AA06
4K055HA02
4K055HA08
4K055HA12
4K055HA13
4K055HA14
(57)【要約】
焼結炉の中で被焼結部品を搬送するためのアセンブリであって、耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の前記被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルと、を備えるアセンブリ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結炉の中で被焼結部品を搬送するためのアセンブリであって、
耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、
前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の前記被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルと、を備えるアセンブリ。
【請求項2】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、発泡セラミックタイルである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、ファイバーボードセラミックタイルである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、3.5g/cm
3未満の密度を有する、請求項3に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、2.0g/cm
3未満の密度を有する、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの隣接するセラミックタイルの間に配置され、それらの垂直方向の間隔を維持するスタンドオフをさらに備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記スタンドオフは、セラミックを含む、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記スタンドオフは、前記複数の被焼結部品に画定された開口内に配置される、請求項6に記載のアセンブリ。
【請求項9】
耐火金属又は合金で形成された蓋をさらに備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記蓋は、複数の開口を含む、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
耐火金属、金属合金、又はセラミック材料のうちの1つで形成された上部キャップをさらに備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記上部キャップは、前記ボート内に配置された最上部のセラミックタイルに配置されたスタンドオフによって支持されるように構成されている、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記ボートは、モリブデンを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記ボートは、ランタン化モリブデン(MoLa)を含む、請求項13に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記側壁は、複数の開口を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記複数の開口は、均一な間隔で前記側壁に配置されている、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記複数の開口は、前記側壁に不均一に分布して、部品への放射エネルギー及びガス流を調整する、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記側壁の下部に画定された1つ又は複数のスロットをさらに含む、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれは、前記複数の被焼結部品を保持するように構成された複数の凹部を含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記側壁は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルを前記ボートに積み込み及び前記ボートから取り出すためにアクセスできるスロットを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最上部のセラミックタイルよりも大きな機械的強度を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの前記最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの前記最上部のセラミックタイルよりも大きな厚さ又は大きな密度を有する、請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項23】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最上部のセラミックタイルと同じ厚さを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項24】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、少なくとも3つの垂直に積層されたセラミックタイルを含む、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項25】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれは、同数の前記複数の被焼結部品を搬送する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項26】
前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの1つは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの別の1つとは異なる数の前記複数の被焼結部品を搬送する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項27】
前記複数の被焼結部品は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれにおいて同じ位置に配向される、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項28】
前記複数の被焼結部品は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの1つと、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルの別の1つとにおいて異なる位置に配向される、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項29】
部品を焼結させる方法であって、
キャリア内に複数の前記部品を搭載するステップであって、前記キャリアが
耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、
前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルと、を備えるステップと、
前記部品を焼結させるのに十分な温度に加熱した焼結炉に前記キャリアを通過させるステップと、を含む方法。
【請求項30】
1つ又は複数の粉末材料をコンパクト化することで前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
金属射出成形によって前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
アディティブマニュファクチャリングによって前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項33】
前記複数のセラミックタイル上に前記複数の被焼結部品を搭載するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記複数の被焼結部品内に画定された開口内にスタンドオフを搭載するステップをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ボート内で前記複数の被焼結部品及び前記スタンドオフを含む前記複数のセラミックタイルを積層するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記部品がボートなしで全密度セラミックプレートにより前記焼結炉を通過する場合、使用すべき温度よりも低い温度で前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項37】
焼結システムを改造する方法であって、
焼結炉の中で被焼結部品を輸送するために使用されるキャリアを、
耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、
前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルとを備えるキャリアに置き換えるステップを含む、方法。
【請求項38】
前記焼結炉内で、前記焼結炉を改造する前よりも焼結部品を1時間あたりにより多く製造するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記焼結炉を改造する前よりも低い温度で前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記焼結炉内で、前記焼結炉を改造する前よりも寸法の可変性が少ない焼結部品を製造するステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記焼結炉を改造する前よりも少ない詰まりで前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む、請求項37に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本明細書で開示される態様及び実施形態は、概して、連続焼結炉で焼結することによって機械部品を製造するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.従来技術の考査
材料は、一般的に、粉末の塊を所望の形状に形成し、その後、制御された雰囲気下で熱を加えることにより、粒子を固体状態で、つまり完全に液化させることなく結合させることによって、有用な形状に形成される。粉末の成形には、一軸ダイコンパクション、冷間静水圧プレス、粉末圧延、粉末押出、粉末射出成形、アディティブマニュファクチャリング(3D印刷)などの数多くのプロセスが利用できるが、これらに限定されない。形成プロセスには、「グリーン」部を形成するために、内部又は外部潤滑剤、例えばワックスやステアリン酸金属塩が含まれ得る。熱分解又は他の手段を使用して潤滑剤を除去した後、グリーン部は、粉末材料内の原子を拡散させ、粉末の隣接する粒子を冶金的に結合させる高温にさらされる。この加熱と固結のプロセスは焼結として知られている。焼結プロセスは、金属、セラミック、プラスチック、及び複合材料など、様々な材料から形状を固結させるのに適用できる。
【0003】
焼結プロセスは、粉末材料の粒子間の気孔又は空隙の減少又は除去をもたらすこともあれば、もたらさないこともある。グリーン部は、最も一般的に、部品の望ましい寸法を維持するために、成長又は収縮のいずれかのサイズ変化が極めて少なくて焼結される。場合によっては、グリーン部のサイズが大きくなって気孔率が増加することがあるが、他の場合には、気孔率の減少によって収縮が発生することもある。収縮が発生した場合、最終的な所望の寸法公差を達成するために、部品内の密度の変動を最小限に抑え、部品に加えられる熱の均一性を最大にして歪みを防止又は最小限に抑えることが一般に望ましい。
【0004】
焼結は、被焼結部品の所望の密度又は機械的強度に影響を与えるのに必要な時間及び温度、部品のサイズ、グリーン部に含まれる1つ又は複数の材料などの様々な要因に応じて、様々な種類のオーブン又は炉のうちの1つで行うことができる。部品は炉又はキルンに置かれ、移動せずにその場で焼結され得る。しかし、大量生産では、部品は入口から出口まで連続的に焼結炉を通過し、手動又は専用の材料処理設備を使用して積み降ろされることが多い。
【0005】
「ベルト炉」は、炉の各端にあるロール上の連続ベルト(通常は金属)によって部品のトレイを炉内に引き込む。トレイはベルト上に乗せられ、ベルトは炉の床(炉床板)を進行する。このベルト炉は、典型的に、金属帯の温度制限により、低温焼結(最大2150°F未満)に限定される。アルミナ又は炭化ケイ素のリンクを使用するセラミックベルト炉は、より高温の焼結には限定的に使用されるが、荷重搬送制限がある。
【0006】
「プッシャー」炉は、機械的なプッシュロッドによって、被焼結部品を収容するセラミック又は金属タイル又はボートの長い列を炉内に押し込む。タイル又はボートは接続されていないが、炉内を背中合わせに押し込まれ、炉の床(炉床板)を直接横切って滑る。このプッシャー炉は、金属ベルト炉よりも高温で運転でき、セラミックベルト炉よりも重い負荷を搬送することができる。
【0007】
「ローラハース」炉は、重荷重の部品を、バスケット又はボート(窯業では「匣鉢」という用語を使用する)に一連のローラを横切って炉の中で搬送することができる。このローラハース炉は、窯業で焼結キルンに広く使用されている。
【0008】
「ウォーキングビーム」炉は、トレイを持ち上げ、前方に移動させてから再びトレイを下ろす、炉を通過するビームを有する。このウォーキングビーム炉は、高温ではプッシャー炉よりも重い負荷を搬送することができるが、「ベローズ」(ビームを前方に移動させる移動部の周囲のシール部)周囲の漏れを最小限に抑える又はなくすという点では、高額な初期資本コストと継続的なメンテナンスが必要になる。
【0009】
連続焼結炉は、典型的には、部品を所望の焼結温度に加熱するための1つ目の「予熱ゾーン」、部品を所望の焼結温度に保持するための2つ目の「高温ゾーン」、及び部品を室温に戻すように冷却するための3つ目の「冷却ゾーン」の3つのゾーンを含む。「一定温度での保持時間」は、高熱ゾーンの長さと選択された炉を通過する押し込み速度に応じて、数分から数時間の範囲になり得る。非限定的な例では、焼結炉は長さ30~70フィートであり、部品が炉を通過するのに数時間かかり、典型的には炉内で高熱セクションに費やされる時間が半分未満であり得る。
【発明の概要】
【0010】
一態様によれば、焼結炉の中で被焼結部品を搬送するためのアセンブリが提供される。前記アセンブリは、耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の前記被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルと、を備える。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、発泡セラミックタイルである。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、ファイバーボードである。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、3.5g/cm3未満の密度を有する。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、2.0g/cm3未満の密度を有する。
いくつかの実施形態では、前記アセンブリは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの隣接するセラミックタイルの間に配置され、それらの垂直方向の間隔を維持するスタンドオフをさらに備える。
【0012】
いくつかの実施形態では、前記スタンドオフは、セラミックを含む。
いくつかの実施形態では、前記スタンドオフは、前記複数の被焼結部品に画定された開口内に配置される。
いくつかの実施形態では、前記アセンブリは、耐火金属又は合金で形成されたボート蓋をさらに備える。
いくつかの実施形態では、前記蓋は、複数の開口を含む。
いくつかの実施形態では、前記アセンブリは、耐火金属、金属合金、又はセラミック材料のうちの1つで形成された上部キャップをさらに備える。
いくつかの実施形態では、前記上部キャップは、前記ボート内に配置された最上部のセラミックタイルに配置されたスタンドオフによって支持されるように構成されている。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記耐火金属は、モリブデンを含むか、又はそれからなる。
いくつかの実施形態では、前記耐火金属は、ランタン化モリブデン(MoLa)を含むか、又はそれからなる。
いくつかの実施形態では、前記側壁は、複数の開口を含む。
いくつかの実施形態では、前記複数の開口は、均一な間隔で前記側壁に配置されている。
いくつかの実施形態では、前記複数の開口は、前記側壁に不均一に分布して、部品への放射エネルギー及びガス流を調整する。
いくつかの実施形態では、前記アセンブリは、前記側壁の下部に画定された1つ又は複数のスロットをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれは、前記複数の被焼結部品を保持するように構成された複数の凹部を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、前記側壁は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルを前記ボートに積み込み及び前記ボートから取り出すためにアクセスできるスロットを含む。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最上部のセラミックタイルよりも大きな機械的強度を有する。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの前記最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの前記最上部のセラミックタイルよりも大きな厚さ又は大きな密度を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最下部のセラミックタイルは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの最上部のセラミックタイルと同じ厚さを有する。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルは、少なくとも3つの垂直に積層されたセラミックタイルを含む。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれは、同数の前記複数の被焼結部品を搬送する。
いくつかの実施形態では、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの1つは、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの別の1つとは異なる数の前記複数の被焼結部品を搬送する。
【0016】
いくつかの実施形態では、前記複数の被焼結部品は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのそれぞれにおいて同じ位置に配向される。
いくつかの実施形態では、前記複数の被焼結部品は、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルのうちの1つと、前記複数の垂直に積層されたセラミックタイルの別の1つとにおいて異なる位置に配向される。
【0017】
別の態様によれば、部品を焼結させる方法が提供される。前記方法は、キャリア内に複数の前記部品を搭載するステップであって、前記キャリアが耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルと、を備えるステップと、前記部品を焼結させるのに十分な温度に加熱した焼結炉に前記キャリアを通過させるステップと、を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、前記方法は、1つ又は複数の粉末材料をコンパクト化することで前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、金属射出成形によって前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、アディティブマニュファクチャリングによって前記複数の被焼結部品を形成するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記複数のセラミックタイル上に前記複数の被焼結部品を搭載するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記複数の被焼結部品内に画定された開口内にスタンドオフを搭載するステップをさらに含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記ボート内で前記複数の被焼結部品及び前記スタンドオフを含む前記複数のセラミックタイルを積層するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記部品がボートなしで全密度セラミックプレートにより前記焼結炉を通過する場合、使用すべき温度よりも低い温度で前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む。
【0020】
別の態様によれば、焼結システムを改造する方法が提供される。前記方法は、焼結炉の中で被焼結部品を輸送するために使用されるキャリアを、耐火金属又は金属合金で形成され、ベース部及び側壁を含むボートと、前記ボート内に配置され、それぞれが前記焼結炉の中で複数の被焼結部品を搬送するサイズとされる、複数の垂直に積層されたセラミックタイルとを備えるキャリアに置き換えるステップを含む、方法。
【0021】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記焼結炉内で、前記焼結炉を改造する前よりも焼結部品を1時間あたりにより多く製造するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記焼結炉を改造する前よりも低い温度で前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記焼結炉内で、前記焼結炉を改造する前よりも寸法の可変性が少ない焼結部品を製造するステップをさらに含む。
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記焼結炉を改造する前よりも少ない詰まりで前記焼結炉を動作させるステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
添付の図面は、縮尺に合わせて描くことを意図したものではない。図面では、様々な図に示されている同一又はほぼ同一の各構成要素は、同様の符号で表されている。明瞭にするために、全ての構成要素は全ての図面にラベル付けされるわけではない。図面において、
【0023】
【
図1】焼結炉の中で部品を搬送するためのタイルの一例を示す。
【
図2A】タイルの表面に6つの部品が置かれた、焼結炉の中で部品を搬送するための緻密なアルミナセラミックタイルの平面図である。
【
図3A】代替のセラミックタイルの設計の平面図である。
【
図4A】2つの積層されたタイルを含む部品焼結支持構造の一例の立面図である。
【
図4B】
図4Aの部品焼結支持構造を異なる視点から見た図である。
【
図5】積層構成における複数の
図3A及び
図3Bのセラミックタイルを示す図である。
【
図6A】金属ボート内に積層されたタイルを含む部品焼結支持構造の一例の断面図である。
【
図6B】金属ボート内に積層されたタイルを含む部品焼結支持構造の別の例の断面図である。
【
図7A】セラミックタイル、部品、又はスタンドオフのない、
図6A又は
図6Bの部品焼結支持構造の内部を示す。
【
図7B】下部タイル、関連部品、及びスタンドオフが金属ボート内に配置された、
図7Aの部品焼結支持構造を示す。
【
図7C】中間タイル、関連部品、及びスタンドオフが金属ボート内に下部タイル、関連部品、及びスタンドオフに配置された、
図7Bの部品焼結支持構造を示す。
【
図7D】上部タイル及び関連部品が金属ボート内に中間タイル及び関連部品に配置された、
図7Cの部品焼結支持構造を示す。
【
図7F】
図7Dの部品焼結支持構造を代替の視点から見た図である。
【
図8A】カバープレートがない部品焼結支持構造の別の例を示す。
【
図8B】カバープレートがある
図8Aの部品焼結支持構造を示す。
【
図8C】タイル、スタンドオフ、部品、又はカバープレートがない
図8Aの部品焼結支持構造の等角図である。
【
図9A】部品の、本明細書に開示される金属ボートの一実施形態を利用した焼結炉を通過した場合のスループットと平らなタイルを利用した焼結炉を通過した場合のスループットとの比較結果を示す。
【
図9B】別の部品の、本明細書に開示される金属ボートの一実施形態を利用した焼結炉を通過した場合のスループットと平らなタイルを使用した焼結炉を通過した場合のスループットとの比較結果を示す。
【
図10A】平らなタイルキャリアを使用した焼結炉内で焼結された部品についての観察された特性寸法の測定値及び統計的まとめを示す。
【
図10B】本明細書に開示される金属ボートキャリア、及び
図10Aに示されるデータをもたらすプロセスよりも高い目標収縮率を使用した焼結炉内で焼結された部品についての、
図10Aと同じ観察された特性寸法の測定値及び統計的まとめを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に開示される態様及び実施形態は、以下の説明に記載される、又は図面に示される構成要素の構成及び配置の詳細に限定されない。本明細書に開示される態様及び実施形態は、様々な方式で実践又は実行することができる。また、本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではない。本明細書における「備える」、「含む」、「有する」、「含有する」、「伴う」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される事項及びそれらの事項の同等物、ならびに追加の事項を網羅することを意味する。
【0025】
本明細書に開示される1つ又は複数の態様は、焼結炉の中で被焼結部品を収容及び運搬するためのシステム及び方法に関する。被焼結部品は、典型的には、焼結炉を通過する際に、何らかの形態のキャリアによって支持される。キャリアは、焼結中の部品が所望の形状を維持するのに役立つ機械的支持体を提供し、部品を均一に焼結させるように熱を部品にわたって均一に分散させるのに役立つことができる。支持体の1つの形態は、セラミックプレート又はタイルであり得る。被焼結1つ又は複数の部品は、セラミックプレートに直接置かれ、セラミックプレート上に炉の中で搬送され得る。セラミックプレート又はタイルは、金属部品を焼結させるためによく使用される高温、例えば2700°F以上に耐えることができるアルミナ又は別の形態のセラミック材料などの材料で形成され得る。このタイプの支持体の例は、
図1の100で示されている。プレート又はタイル100は、例えば、アルミナ又はジルコニア安定化アルミナで形成され得る。プレート又はタイル100は、プレート又はタイルが焼結炉を通過するときに1つ又は複数の被焼結部品105を支持し得る。プレート又はタイル100は、いくつかの実施形態では約1インチの厚さであり得るが、より薄い又はより厚いタイルも使用され得る。プレート又はタイル100の横方向寸法は、プレート又はタイル100の使用が意図されている炉の内容積の幅に基づいて決定され得、例えば、いくつかの実施方式では幅約12インチである。場合によっては、タイルとその上での被焼結部品との間の化学的相互作用を防止するために、タイルにコーティングを施すことができる。
【0026】
図1、
図2A及び
図2Bに示される配置では、焼結コスト、効率及び生産性の点で利点と制限の両方が存在する。単層積層の簡便性は、適切な焼結温度と一定温度での保持時間で部品間のサイズ変化の差を最小限に抑えるのに有効である。しかし、これは、プロセスがより高い温度とより速い速度で実行されるように積極的に設計されていない限り、炉内で複数のトレイを積層する場合と比較して生産性が低下するという犠牲を払い、炉及びタイルに印加されるストレスが大きくなる。タイルを積層することは、1時間あたりに焼結できる部品の数を増加することによって焼結プロセスの生産性を向上させることができるが、このスループットの向上は、積層体の複雑さの増加、積層体内の位置の関数として各部品によって吸収されるエネルギーの変動の増加、炉の詰まりや高価なメンテナンスを引き起こす可能性のある積層体の壊滅的な故障の確率の増加を犠牲にする。連続焼結炉用のラッキングシステムは、理想的に、破損したタイル又はタイルから脱落した部品による詰まりを防止することで炉の詰まりのリスクを最小限に抑え、熱シールドを最適化して加熱要素から部品への直接放射量を制御し、積層体の上部から底部まで部品へのエネルギー入力のバランスをとり、プロセスガスが部品の周囲を自由に流れることを可能にする。このようなラッキングシステムは、モリブデン、チタンジルコニウム安定化モリブデン(「TZM」)、又は酸化ランタン安定化モリブデン(ランタン化モリブデン、又は「MoLa」)などの耐火材料で作られた金属収容箱と、セラミック、グラファイト、又は金属であり得るトレイとを組み合わせて構成され得る。トレイがグラファイト又は金属である場合、コーティングを利用して部品とトレイの間の反応を防止することができる。
【0027】
図1に示されるようなプレート又はタイルは、典型的には、緻密なセラミック材料の固体プレートで形成される。このタイプの緻密なタイルは、タイルが炉内で背中合わせに押し込まれる際に印加される高い圧縮荷重に耐えるのによく適している。他の実施方式では、焼結部品支持体、例えばプレート又はタイルは、質量を低減するために、コーディエライト、ファイバーボード、又は発泡セラミック(業界では多孔質セラミックとも呼ばれる)材料などの低密度セラミックで形成され得る。発泡セラミックタイルにおける気孔により、空気がタイルを通って高温の領域から低温の領域に移動することができ、タイルにわたって均一な温度を維持するのに役立つことができる。また、発泡セラミックタイルは、典型的には、固体セラミックから形成された同様のタイルよりも質量が小さく、熱容量が小さいため、焼結オーブン内で発泡セラミックキャリア及び支持される部品を加熱又は冷却するのに必要な時間を短縮することができる。焼結炉の中で被焼結部品を搬送するための発泡セラミックタイル200の一例は、
図2Aの平面図及び
図2Bの立面図に示されている。タイル200は、その上面に6つの部品205が置かれた状態で示されている。部品205は、例えば粉末ステンレス鋼又は他の金属で形成され得る。動作中、部品205は、部品ローディング装置によって、又は手動で(例えば窓固定具により)タイル200の表面に置かれる。タイル200は、任意の適切な材料、例えば、アルミナ、ジルコニア強化アルミナ、イットリア安定化ジルコニア/アルミナ、カルシア/マグネシア安定化ジルコニア、カルシア安定化ジルコニア、マグネシア安定化ジルコニア、又は別のセラミックで形成され得、0.5インチ~1インチの範囲の厚さを有し、焼結炉の特定のモデルに適合するサイズとされる横方向寸法を有し得る。タイル200の多孔性、例えば、気孔サイズ及び全空隙スペース(実際の材料ではなく気孔が占めるタイルの体積の割合)は、所望のレベルの機械的強度、熱容量、熱伝導率を提供するように選択され得る。特定の非限定的な例では、タイル200は1インチあたり約30個の気孔を有し得る。これらの材料で形成され、これらの多孔性を有する発泡セラミックタイルは、例えば、ノースカロライナ州ヘンダーソンビルのSelee社から入手可能である。
【0028】
いくつかの実施形態では、発泡セラミックタイル200は、一部のタイル200に画定され、例えば
図2Aに示されるように、タイル200の縁から内側に延びる1つ又は複数の拡張スロット210を含み得る。拡張スロット210は、タイル200が焼結炉内で加熱されるときに拡張するときに、応力を低減し、タイル200が破損する傾向を低減するために提供することができる。
【0029】
他の実施形態では、焼結炉内で被焼結部品を支持するために発泡セラミックタイルを利用するのではなく、例えば3.5g/cm3未満又は2.0g/cm3未満の密度を有する低密度セラミックタイルを利用してもよい。このようなセラミックタイルの例は、ファイバーボードアルミナ、ファイバーボードアルミナシリケート、又はいずれかの上記した他のセラミック材料のファイバーボード構成で形成され得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、被焼結部品を支持タイルの上面に置くのではなく、被焼結部品を受け入れるための凹部をタイルに設けてもよい。
図3A及び
図3Bは、部品305用の凹部310を含む、上記したような発泡セラミック又は低密度セラミックで形成され得るタイル300を示している。部品305は、部品305Aの上面がタイル300の上面300Aのレベル以下に位置するように、凹部内に完全に嵌合し得る。
【0031】
所定の炉幅での焼結炉の生産能力(焼結される部品/時間)を向上させるために、単一のタイルの代わりに積層された焼結支持体を利用することができる。
図4A及び
図4Bは、積層部品焼結支持構造400の一実施形態を示している。構造400は、それぞれ5つの部品405を保持するように設計された2つのセラミックタイル400A、400Bを含むが、各タイル上に支持される部品の数は、部品とタイルの相対的なサイズに基づいて変化し得る。タイル400Aは、いくつかの実施形態では、マサチューセッツ州ニュートンのH.C. Starck社又はメイン州ルイストンのElmet Technologiesから入手可能なものうちの1つなど、金属、例えばモリブデン、TZM、又はMoLaボート410内に配置され得る下部支持タイルである。タイル400Bは、支持体415によって下部タイル400A及び下部タイル400A上の部品405上に支持される上部タイルである。支持体415は、下部タイル400A上の部品405の間に、又は部品405内に画定されたオリフィス内に置かれ得る。いくつかの実施形態では、支持体415は、タイル400A、400Bのように発泡セラミック又は低密度セラミックで形成されてもよく、あるいはセラミック又は他の耐火材料の固体ブロックであってもよい。上部タイル400Bの下面が下部タイル400A上に置かれた部品405の上面よりも上になると共に、タイル400A、400B間の垂直方向のスペースは、可能な限り小さくなるように選択し得る。
図4A及び
図4Bには、2層のタイル400A、400Bのみが示されているが、他の実施形態では、例えば3つ~5つ又はそれ以上の垂直に積層されたタイルを有する支持構造を形成するために、追加の積層されたタイルを含んでもよい。部品焼結支持構造内に積層され得るタイルの数は、それが使用される焼結炉の内容積の高さだけで制限され得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、下部タイル、例えば
図4A及び
図4Bにおける下部タイル400Aは、割れずに上部タイル、例えば
図4A及び
図4Bにおけるタイル400Bを支持するのに十分な機械的強度を提供するために、上部タイルよりも厚く、多孔性が低く、又は緻密であり得る。いくつかの非限定的な例では、下部タイル又はベース部タイル、例えば、
図4A及び
図4Bにおける下部タイル400Aは、約0.75インチの厚さを有し得、一方、上部タイル、例えば、
図4A及び
図4Bにおけるタイル400Bは、約0.5インチの厚さを有し得る。他の実施形態では、積層体内の全てのタイルは、同じ厚さ、及び/又は同じ長さ及び幅の寸法、及び/又は空隙率、及び/又は密度を有してもよい。タイルの材料、厚さ、間隔は、部品周囲の熱プロファイルを最適化するように変更することができる。
【0033】
例えば
図3A及び
図3Bに示されるように、被焼結部品を保持するための凹部を有するタイルを含む実施形態では、タイルは、例えば、
図5に示されるそれぞれ1つ又は複数の部品505を収容する、積層されたタイル500A、500B、500Cのように、支持体を介さずに互いに直接積層され得る。
【0034】
焼結炉は、その内容積の側に沿って配置された加熱要素を有することが一般的である。上図のいずれかに示されるような部品支持構造について、支持構造が焼結炉を通過する時に、支持構造上の部品の一部は、他の部分よりも支持構造の側に近く、それにより焼結炉の加熱要素に近くなり得る。したがって、部品が不均一に焼結する可能性があり、その結果、部品のサイズ、密度、又は材料の微細構造が異なることになる。いくつかの実施形態では、支持構造及び部品は、例えばモリブデン、TZM、又はMoLaなどの耐火金属で形成された箱状の容器内に配置され得る。
【0035】
このようなラッキングシステムの一例は
図6Aに示されている。ラッキングシステムは、ベース部600Aと、側壁600Bと、上部カバー又は蓋600Cとを有するMoLaボート600を含む。ボート600内に配置されたのは、部品605をラッキングし、ボート600内の空間容積の使用を最大化するために使用されるセラミックタイル610A、610B、610Cの積層システムである。蓋600C及び側壁600Bは、炉の雰囲気が部品605の周りを自由に流れることを可能にするように開口部又は開口600H(以下の
図7E、
図7F、及び
図8A~
図8Cを参照)を含有する。ボート600の側壁600B及び蓋600Cは、炉の加熱要素から部品605へのエネルギーの直接放射を防止するための熱シールドと、ボート600内の熱のより良好な分散のための部品605へのエネルギーの二次放射体の両方として機能する。セラミックタイル610A、610B、610Cは、システムの熱質量又は熱容量を最小限に抑える。同様に発泡セラミック、低密度セラミック、又は全密度セラミックもしくは別の耐火材料で形成され得るスタンドオフ615は、セラミックタイル610A、610B、610Cの間の垂直方向の分離を維持する。スタンドオフ615は、ボート600内の部品605の一部の位置を示すために、
図6A及び
図6Bでは部分的に透明として示されている。積層部品焼結支持構造体400と同様に、最下部のタイル610Aは、上部のタイル610B、610Cよりも厚く、多孔性が低く、又は緻密であり得る。最下部のタイル610Aは、例えば0.75インチの厚さであり得、一方、上部のタイル610B、610Cの各々は、0.5インチの厚さであり得る。ボート600の寸法は、それが使用される焼結炉の内容積に基づいて設定され得る。一例では、ボート600は、高さが約5インチ、長さ及び/又は幅が約12インチであり得る。
【0036】
他の例では、ボート600は金属蓋なしで使用することができるが、
図6Bに示されるように、追加のスタンドオフ615を最上部のタイル610Cに設けて、ボート600を形成する金属と同じであっても異なっていてもよい金属で形成され得るカバープレート600Dを支持することができる。あるいは、カバープレート600Dは、セラミックタイル610A、610B、610Cのうちのいずれか1つ又は複数の材料と同じであっても異なっていてもよく、セラミックタイル610A、610B、610Cのうちのいずれか1つ又は複数のセラミックタイルと同じであっても異なっていてもよい厚さを有するセラミック材料で形成され得る。
【0037】
モリブデン、TZM、又はMoLaボート部品キャリア構造600の利点は、ボート600が、セラミックタイル610A、610B、610Cの一部が炉内でこれらのタイルのうちの1つ以上が破損した場合に収容することができることである。これにより、例えば、ボートに含まれていないタイルが焼結炉内で破損し、炉の詰まりを避けるように破損したタイル片を除去するために、炉がメンテナンスのために停止された場合に発生する可能性のある生産のダウンタイムを避けることができる。
【0038】
空のボート600の一例は
図7Aに示されている。最下部のタイル610A、部品605、及び第1層のスタンドオフ615が挿入されたボート600は
図7Bに示されている。最下部のタイル610A上に搭載されている中間タイル610B、第2層の部品605、及び第2層のスタンドオフ615が挿入されたボート600は
図7Cに示されている。中間タイル610B上に搭載されている上部タイル610C、第3層の部品605が挿入されたボート600は
図7Dに示されている。3つのタイル610A、610B、610C及び関連部品605を備え、所定の位置に蓋600Cを有するボート600は
図7E及び
図7Fに示されている。
図7A~
図7D及び
図7Fに示されるように、側壁600Bのうちの1つ以上は、タイル610A、610B、610Cの挿入及び取り出しを補助するためにタイル610A、610B、610Cにアクセスできる1つ又は複数のスロット620を含み得る。
【0039】
図8A~
図8Cは、ボート600の壁の下部に画定されたスロット600Sを含む代替のボートの設計を示している。このボートの設計は、
図8Aではカバープレート600Eなしで、
図8Bではカバープレート600Eありで、
図8Cでは等角図で示されている。スロット600は長方形で、水平方向により長いが、代替の実施形態では、異なる高さ及び幅を有してもよい。単一の壁内の異なるスロット600Sは、例えば
図8Cに示されるように、同じ又は異なる寸法を有してもよい。示されたボートは、各壁に2つのスロットを有しているが、代替の実施形態では、ボートは、各壁に単一のスロット又は3つ以上のスロットを有してもよく、又は壁のサブセットのみにスロットを含んでもよい。スロット600Sは、開口部又は開口600Hよりも多くの加熱空気の流れをボート600内に提供することができる。開口部又は開口600Hを含む壁の上部は、空気流に対してより大きな抵抗を与えることができ、ボート600内に加熱空気を維持するのに役立つことができる。
【0040】
複数の部品積層体で動作する焼結炉は、単一の部品積層体で動作する炉と比較して、生産性を犠牲にすることなく、より遅い押し込み速度で動作することができる。より遅い押し込み速度を使用し、焼結温度での保持時間を長くすることにより、潜在的により低い焼結温度が可能になり、炉の構成要素及び部品支持構造のより長い耐用寿命をもたらすことができる。より低い焼結温度は、MoLaボートの使用によってもたらされる、材料が高熱にさらされた後に、室温で材料の延性を維持するという利点を最大限に活用するのに特に有利である。また、より低い動作温度は、熱サイクルの程度及び熱誘導破壊の可能性を低減することによって、MoLaボート部品キャリア内のセラミックタイル610A、610B、610C(例えば
図6A及び
図6Bに示される)の寿命を長くすることができる。
【0041】
実施例1:
以下の表では、(例えば
図1に示される)全密度セラミック支持体を使用したステンレス鋼部品の焼結と、(例えば
図6~
図7Fに示される)MoLaボート及び発泡タイル(MoLa)の3層積層体を使用したステンレス鋼部品の焼結についての予想生産性を比較するために計算が行った。
【0042】
【0043】
上記の表1は、全密度セラミック支持体からMoLaキャリアに切り替えた場合のスループットの変化を示している。炉への連続キャリアの導入速度(焼結ラム速度)は、キャリアあたり3.5分間から7.5分間に低下させることで、焼結時間を増加させ、MoLaキャリアを使用した炉のより低い動作温度を補った。この焼結時間の増加にもかかわらず、全密度セラミック支持体からMoLaキャリアに切り替えた時、全密度セラミック支持体を使用した場合よりもMoLaキャリアを使用した方が焼結できる部品の数が多いことにより、スループットが46%増加した。
【0044】
【0045】
上記の表2に示されるように、MoLaキャリアは全密度セラミックキャリアよりも重かったが、MoLa&発泡セラミックキャリアに含まれ得る部品の数が多かったため、部品ごとの総重量は低減した。各部品の総加熱重量を低減することにより、焼結される部品あたりのエネルギー節約が実現された。
【0046】
実施例2:
本明細書に開示されるMoLaボート及び焼結トレイ設計構成の実施形態から求められる利点は、焼結作業の生産性を向上させることであった。具体的には、目標は、所定の炉で焼結可能なスループット(部品数/時間)を向上させることである。これは、これまで2つの部品の生産で証明されたが、改善の可能性はこれら2つの部品に限定されない。この目標を達成するために、ボート内で多層で焼結される部品が、開放タイル上に単層で焼結する元のプロセスと同等の寸法能力を有することを確認するためのテストが行われた。具体的には、新たなプロセスからの全ての部品の寸法は、指定された部品公差を満たすべきである。統計的に言えば、全ての限界寸法はCp>1.0を維持すべきである。
【0047】
実施例2A:
部品番号1は、事前に高温プッシャー炉内で、12インチx12インチのセラミックタイル上で、6部品/タイルで3.5分間の押し込み速度で焼結され、103部品/時間の公称計算スループットが達成された。部品は、2500°Fを超える温度設定値で、公称30分間ホットゾーンにあった。新たなMoLaボート及びトレイの構成を使用すると、ボートあたり20つの部品(5部品x4層)が7.5分間の押し込み速度で焼結され、160部品/時間の計算された生産速度、又は55%の計算された生産性の向上が達成された。MoLaボートで使用されるセラミックタイルの寸法は11インチx11インチx0.25インチであったので、12インチx12インチのタイルではタイルあたり6つの部品を収容することに対して、タイルあたり5つの部品を収容した。
図9Aのチャートに示されるように、4か月間にわたって収集された実際のデータでは、生産性が実際に平均で90部品/時間から135部品/時間に(又は50%)向上したことが示された。
【0048】
実施例2B:
部品番号2は、事前に高温炉内で、12インチx12インチのセラミックタイル上で、6部品/タイルで3.5分間の押し込み速度で焼結され、温度設定値が2500°Fを超えるホットゾーンで公称30分間が達成された。スループットは再び103部品/時間と計算された。開示されたMoLaボート及びトレイの構成を使用すると、ボートあたり15個の部品(5部品x3層)が7.5分間の押し込み速度で焼結され、120部品/時間の生産速度が達成され、17%の計算された生産性の向上が得られた。
図9Bのチャートに示されるように、4か月間にわたって収集された実際のデータでは、生産性が実際に平均で公称100部品/時間から120部品/時間に(又は20%)向上したことが示された。層数を3から4に増加するためのさらなるテストが進行中で、55%の計算された生産性の向上が得られた。
【0049】
実施例3:
実現できるもう1つの利点は、ホットゾーンでの焼結時間が30分間から60分間に増加し、温度が2450°Fにわずかに上昇することで、部品の密度を増加させて寸法能力の向上が実現できることであった。端子密度をより近づけることにより、寸法公差の統計的な広がりが減少した。この利点を活用するために、追加の収縮に合わせてツーリングの寸法をリターゲットすることで、より狭いデータ分布を仕様範囲の中心に向けて再集中させることができた。
【0050】
部品番号1は、全仕様範囲に対するCp=1.70の部品の内径についての全プロセスの広がりがある、有能な元の単層プロセスを示している。このプロセスも、Cpk=1.16で仕様内に適切に中心に集中された。
図10Aは、仕様制御限界と比較した、平らなタイルキャリアを用いた複数回の実行にわたる焼結後の部品番号1の内径の測定値のヒストグラム、及びプロセスが十分に仕様制御限界内にあることを示す測定データの統計的まとめを含む。この図では、「全体的な能力」の数値は、サブグループ内(例えば、8つのMoLaボートの1回の実行)とサブグループ間(例えば、8つのマンボウボートの複数回の実行)の両方の変動を反映している。「潜在的な(内部)能力」の数値は、サブグループ内の変動のみを反映している。Pp及びCpの数値は、測定された部品内径の6-σの広がりに対する仕様の上限と下限の差の比率を反映している。PPL及びCPLの数値は、測定された部品内径の平均値から仕様下限(LSL)までの距離と、全体的な標準偏差に基づいてプロセスの片側広がり(3-σの変動)とを比較した比率である。PPU及びCPU数は、測定された部品内径の平均値から仕様上限(USL)までの距離と、全体的な標準偏差に基づいてプロセスの片側広がり(3-σの変動)とを比較した比率である。Ppk及びCpkの数値は、仕様限界LSL及びUSLに対する測定された部品の内径の平均値μ、及び測定されたデータの標準偏差σを考慮した全体的なプロセス能力の尺度であり、式min[USL-μ/3σ,μ-LSL/3σ]により計算できる。図の下部にあるPPMの数値は、内径測定値における観察された可変性に基づいて、仕様の上限又は下限から外れる部品数を百万分率で表している。
【0051】
新たなMoLaボート及び積層プロセスは、より高い収縮率(SF)が選択された場合の向上したプロセス能力(Cp=2.29)を提供する。しかし、部品間の寸法の変動が減少する時、分布は特性寸法の仕様の下側範囲に向かって移動し、CpKは-0.03に低下する。ツーリングにおける収縮率をシフトすることにより、公称寸法を公差帯域の中心にリターゲットすることができ、それによって、向上したCpを利用して向上したCpKが得られる。
図10Bは、仕様制御限界と比較した、本明細書に開示されたMoLaキャリアの一実施形態における複数回の実行にわたる部品内径の測定値を示すヒストグラム、及びプロセスが十分に制御されているが仕様制御下限に近いことを示す測定データの統計的まとめを含む。
【0052】
本明細書で使用される表現及び用語は説明を目的とするものであり、限定的なものと見なされるべきではない。本明細書で使用されるように、「複数の」という用語は、2つ以上の事項又は構成要素を指す。「含む」、「備える」、「搬送する」、「有する」、「含有する」、及び「伴う」という用語は、明細書又は特許請求の範囲等のいずれにおいても、無制限の用語であり、すなわち、「を含むがそれに限定されない」ことを意味する。したがって、そのような用語の使用は、その後に列挙される事項、及びそれらの事項の同等物、ならびに追加の事項を網羅することを意味する。「からなる」及び「本質的にからなる」という移行句のみが、特許請求の範囲に関して、それぞれ終了又は半終了の移行句である。特許請求の範囲においてクレーム要素を修飾するために「第1」、「第2」、「第3」などの序数詞を使用することは、それ自体では、あるクレーム要素の別のクレーム要素に対する優先度、優先順位、又は順序、あるいは方法の動作が実行される時間的順序を意味するものではなく、単にクレーム要素を区別するために、特定の名称を持つあるクレーム要素を同じ名称を持つ(ただし、序数語を使用する)別の要素と区別するためのラベルとしてのみ使用される。
【0053】
このように少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様を説明したが、当業者であれば、様々な変更、修正、及び改良が容易に想到することを理解されたい。任意の実施形態で説明された任意の特徴は、他の任意の実施形態の任意の特徴に含まれ得るか、又は他の任意の実施形態の任意の特徴と置き換えられ得る。このような変更、修正及び改良は、本開示の一部であることが意図されており、本発明の範囲内にあることが意図されている。したがって、上記の説明及び図面は単なる例に過ぎない。
【手続補正書】
【提出日】2023-11-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
実施例1:
以下の表では、(例えば
図1に示される)全密度セラミック支持体を使用したステンレス鋼部品の焼結と、(例えば
図6A~
図7Fに示される)MoLaボート及び発泡タイル(MoLa)の3層積層体を使用したステンレス鋼部品の焼結についての予想生産性を比較するため
の計算
を行った。
【国際調査報告】