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特表2024-512437グラファイトシート用ポリイミドフィルムおよびこれから製造されたグラファイトシート
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  • 特表-グラファイトシート用ポリイミドフィルムおよびこれから製造されたグラファイトシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】グラファイトシート用ポリイミドフィルムおよびこれから製造されたグラファイトシート
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20240312BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240312BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20240312BHJP
   C01B 32/205 20170101ALI20240312BHJP
   C08K 5/50 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C08L79/08
C08J5/18 CFG
C08K5/521
C01B32/205
C08K5/50
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023555800
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-12
(86)【国際出願番号】 KR2022003935
(87)【国際公開番号】W WO2022203327
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037136
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520160738
【氏名又は名称】ピーアイ・アドバンスド・マテリアルズ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, ヒョン-ソプ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン, ドン-ヨン
【テーマコード(参考)】
4F071
4G146
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA60
4F071AC15
4F071AE04
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071AG28
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4G146AA02
4G146AB07
4G146AD20
4G146BA15
4G146BC04
4G146BC36B
4G146BC37B
4J002CM041
4J002EW046
4J002FD036
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、第1可塑剤および第2可塑剤を含み、前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の分子量が700g/mol以下である、ポリイミドフィルムを開示する。また、前記ポリイミドフィルムを用いたグラファイトシートの製造方法およびこれから製造された優れた外観のグラファイトシートを開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1可塑剤および第2可塑剤を含み、
前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の分子量が700g/mol以下である、
ポリイミドフィルム。
【請求項2】
前記第1可塑剤と前記第2可塑剤との分子量の差が、150g/mol以下である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項3】
前記ポリイミドフィルムに含まれるイミド化触媒の総含有量を基準として、1.65重量%以下の前記第1可塑剤および前記第2可塑剤を含む、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項4】
前記第1可塑剤と前記第2可塑剤との重量比が1:9~9:1である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項5】
前記第1可塑剤および前記第2可塑剤が、リン系可塑剤である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項6】
前記第1可塑剤または前記第2可塑剤が、
トリフェニルホスフェート(treiphenyl phosphate)、トリクレシルホスフェート(tricresyl phosphate)、トリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis(diphenyl phosphate))およびビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(bisphenol A bis(diphenyl phosphate))からなる群より選択されたいずれか1つである、
請求項5に記載のポリイミドフィルム。
【請求項7】
ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせを含む二無水物単量体、および
4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、またはこれらの組み合わせを含むジアミン単量体から形成された、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項8】
伸度が120%以上であり、
強度が210MPa以上であり、
1000℃での熱分解時の残留量が56重量%以上であり、
真密度が1.35g/cm以上である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項9】
グラファイトシート製造用である、
請求項1に記載のポリイミドフィルム。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを炭化、黒鉛化、または炭化および黒鉛化するステップを含む、
グラファイトシートの製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載のグラファイトシートの製造方法により製造される、
熱拡散係数が720mm/s以上であり、
発泡厚さが85μm以下である、
グラファイトシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイトシート用ポリイミドフィルムおよびこれから製造されたグラファイトシートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電子機器は、軽量化、小型化、薄型化および高集積化されており、これによって電子機器には多くの熱が発生している。このような熱は、製品の寿命を短縮させたり、故障、誤作動などを誘発することがある。したがって、電子機器に対する熱管理が重要な懸案として浮上している。
【0003】
グラファイトシートは、銅やアルミニウムなどの金属シートより高い熱伝導率を有し、電子機器の放熱部材として注目されている。
【0004】
グラファイトシートは多様な方法で製造できるが、例えば、高分子フィルムを炭化および黒鉛化させて製造できる。特に、ポリイミドフィルムは、優れた機械的熱的寸法安定性、化学的安定性などによってグラファイトシート製造用高分子フィルムとして脚光を浴びている。
【0005】
グラファイトシートの製造に使用されるポリイミドフィルムには多様な添加剤が使用できるが、このうち、可塑剤は、ポリイミドフィルムの物性向上のために広く使用されているが、可塑剤を含むポリイミドフィルムをグラファイトシートに転換させる場合、熱拡散係数および外観品質の低下などの問題が発生して、これに対する解決策が要求されている。
【0006】
また、使用される可塑剤の種類によって、グラファイトシート製造のための炭化、黒鉛化時の質量減少率が高くなる問題に対する解決策も探られているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国公開特許公報第2017-0049912号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、グラファイトシートに転換されても熱拡散係数および外観品質が低下せず、炭化、黒鉛化時の質量減少率が低い第1可塑剤および第2可塑剤を含むポリイミドフィルムを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、前記ポリイミドフィルムからグラファイトシートの製造方法およびこれから製造された優れた品質のグラファイトシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための、本発明の一実施形態は、第1可塑剤および第2可塑剤を含み、
前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の分子量が700g/mol以下である、
ポリイミドフィルムを提供する。
【0011】
本発明の他の実施形態は、前記ポリイミドフィルムを炭化、黒鉛化、または炭化および黒鉛化するステップを含む、
グラファイトシートの製造方法を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の実施形態は、前記グラファイトシートの製造方法により製造されるグラファイトシートを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、熱拡散係数が低下せず、炭化、黒鉛化時の質量減少率が低いポリイミドフィルム、前記ポリイミドフィルムからグラファイトシートの製造方法およびこれから製造された優れた外観のグラファイトシートを提供する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例および比較例によるポリイミドフィルムの伸度および強度の測定グラフである。
図2】本発明の実施例および比較例によるポリイミドフィルムの真密度の測定グラフである。
図3】本発明の実施例および比較例によるポリイミドフィルムの熱分解特性の測定グラフである。
図4】本発明の実施例および比較例によるグラファイトシートの熱拡散係数および発泡厚さの測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態および実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態および実施例に限定されない。本明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0016】
本明細書中、単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0017】
構成要素を解釈するにあたり、別の明示的記載がなくても誤差範囲を含むと解釈する。
【0018】
本明細書において、数値範囲を示す「a~b」の「~」は、≧aかつ≦bで定義する。
【0019】
本発明の一態様によるポリイミドフィルムは、第1可塑剤および第2可塑剤を含み、前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の分子量が700g/mol以下であってもよい。
【0020】
例えば、前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の分子量は、700g/mol以下、600g/mol以下、500g/mol以下、450g/mol以下、400g/mol以下、370g/mol以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0021】
一般的に、可塑剤は、ポリイミド高分子間の距離を増加させて、高分子鎖間の引力を弱くし、ガラス転移温度(Tg)を低温領域に移動させる効果を示す。
【0022】
ポリイミドフィルムに含まれる可塑剤の分子量が700g/molを超えると、ポリイミドフィルムをグラファイトシートに転換する時、グラファイトシートの熱拡散係数が低下する問題が発生した。
【0023】
このような熱拡散係数の低下は、可塑剤の分子量が大きくなるほど、可塑剤分子がポリイミドフィルムのポリイミド分子鎖間の距離を遠のかせて、ポリイミドフィルムから製造されたグラファイトシートに影響を及ぼすために現れる現象と推定される。
【0024】
また、ポリイミドフィルムの可塑剤の分子量が250g/mol未満であれば、グラファイトシート製造のためのポリイミドフィルムの炭化、黒鉛化時の質量減少率が高くなる。
【0025】
このような質量減少率の変化は、可塑剤の分子量が低くなるほど、可塑剤分子間の引力、または可塑剤とポリイミド分子との間の引力が低くなり、揮発性が大きくなって、グラファイトシート製造のためのポリイミドフィルムの炭化、黒鉛化時、フィルム内で可塑剤としての役割をまともに果たせないために現れる現象と推定される。
【0026】
すなわち、ポリイミドフィルムが1種の可塑剤のみを含む場合、熱拡散係数の低下および高い質量減少率の問題を併せて解決することが難しいが、ポリイミドフィルムが分子量の異なる2種以上の可塑剤を含む場合には、可塑剤の種類および比率を適宜調節して、グラファイト転換時、高い熱拡散係数とポリイミドフィルムの炭化、黒鉛化時の低い質量減少率をすべて確保することができる。
【0027】
一実施形態において、前記第1可塑剤と前記第2可塑剤との分子量の差は、150g/mol以下であってもよい。
【0028】
例えば、前記第1可塑剤と前記第2可塑剤との分子量の差は、150g/mol以下、120g/mol以下、100g/mol以下、50g/mol以下であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0029】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムに含まれるイミド化触媒の総含有量を基準として、1.65重量%以下の前記第1可塑剤および前記第2可塑剤を含むことができる。
【0030】
すなわち、ポリイミドフィルムに含まれるイミド化触媒の総含有量を100重量%とした時、ポリイミドフィルムに含まれる前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の総含有量は、1.65重量%以下であってもよい。
【0031】
例えば、ポリイミドフィルムに含まれる前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の総含有量は、1.65重量%以下、1.1重量%以下、0.7重量%以下であってもよい。
【0032】
前記イミド化触媒は、ポリアミック酸に対する閉環反応を促進するものであり、例えば、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、および複素環式3級アミンなどが用いられる。その中でも、触媒としての反応性の観点から、複素環式3級アミンが使用できる。
【0033】
複素環式3級アミンの例には、キノリン、イソキノリン、β-ピコリン、ピリジンなどがあり、これらは単独でまたは2種以上混合して使用可能である。イミド化触媒は、ポリアミック酸中のアミック酸基1モルに対して0.05モル~3モル(例えば、0.2モル~2モル)添加され、前記範囲で十分なイミド化が可能でフィルム状にキャスティングするのに有利になるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記第1可塑剤および前記第2可塑剤の総含有量が1.65重量%を超える場合、グラファイトシートへの転換時、熱拡散係数が減少し、発泡率が増加する。
【0035】
また、可塑剤の含有量の増加に伴い、ポリイミドフィルムおよびグラファイトシートへの転換時、密度が低下する。
【0036】
一実施形態において、前記第1可塑剤と前記第2可塑剤との重量比が1:9~9:1であってもよい。
【0037】
可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において相対的に分子量の大きい可塑剤が占める比重が高くなるにつれ、グラファイトシートの熱拡散係数が低くなり、発泡率(発泡厚さ)が増加する傾向が現れる。
【0038】
また、可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において相対的に分子量の大きい可塑剤が占める比重が高くなるにつれ、ポリイミドフィルムおよびグラファイトシートの密度は増加後に減少する傾向が現れる。
【0039】
可塑剤の全体含有量において相対的に分子量の大きい可塑剤と相対的に分子量の小さい可塑剤との重量比を調節することにより、グラファイトシートの熱拡散係数、発泡率および真密度を適宜調節することができる。
【0040】
一実施形態において、前記第1可塑剤および前記第2可塑剤は、リン(P)系可塑剤であってもよい。前記リン(P)系可塑剤は、難燃剤の特性を併せて示すこともできる。
【0041】
一実施形態において、前記第1可塑剤または前記第2可塑剤は、トリフェニルホスフェート(treiphenyl phosphate)、トリクレシルホスフェート(tricresyl phosphate)およびトリフェニルホスフィン(triphenylphosphine)、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート(resorcinol bis(diphenyl phosphate))およびビスフェノールAビスジフェニルホスフェート(bisphenol A bis(diphenyl phosphate))からなる群より選択されたいずれか1つであってもよい。
【0042】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムは、二無水物単量体とジアミン単量体との反応によって形成されたポリアミック酸をイミド化して製造され、前記ポリアミック酸は、100,000~500,000の重量平均分子量を有することができる。前記範囲で、グラファイトシートの製造時に黒鉛化が容易になる。ここで、「重量平均分子量」は、ゲルクロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリスチレンを標準試料として用いて測定できる。ポリアミック酸の重量平均分子量は、例えば150,000~500,000、他の例として100,000~400,000、さらに他の例として250,000~400,000であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0043】
二無水物単量体とジアミン単量体としては、ポリイミドフィルム製造分野にて通常用いられる多様な単量体が使用できる。例えば、二無水物単量体は、芳香族二無水物単量体であってもよく、ジアミン単量体は、芳香族ジアミン単量体であってもよい。二無水物単量体としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホン-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルフィド二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、p-ビフェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、2,2-ビス[(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるものではない。ジアミン単量体としては、ベンゼン環を1個含むジアミン単量体(例えば、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、2,4-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、3,5-ジアミノ安息香酸など)、ベンゼン環を2個含むジアミン単量体(例えば、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテルなどのジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,3’-ジメチルベンジジン、2,2’-ジメチルベンジジン、3,3’-ジメトキシベンジジン、2,2’-ジメトキシベンジジン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシドなど)、ベンゼン環を3個含むジアミン単量体(例えば、1,3-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)-4-トリフルオロメチルベンゼン、3,3’-ジアミノ-4-(4-フェニル)フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジ(4-フェニルフェノキシ)ベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルフィド)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニルスルホン)ベンゼン、1,3-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(3-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼン、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)イソプロピル]ベンゼンなど)、ベンゼン環を4個含むジアミン単量体(例えば、3,3’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、3,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパンなど)、またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
特に、二無水物単量体としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、またはこれらの組み合わせが使用され、ジアミン単量体としては、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-メチレンジアニリン、3,3’-メチレンジアニリン、またはこれらの組み合わせが使用できる。
【0045】
前記ポリイミドフィルムの厚さは、25~500μmであってもよい。ポリイミドフィルムの厚さは、例えば25~125μm、他の例として40~500μmであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記ポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルム製造分野にて通常用いられる多様な方法で製造できる。例えば、ポリイミドフィルムは、1種以上の二無水物単量体および1種以上のジアミン単量体を溶媒中で重合してポリアミック酸溶液を製造した後、前記ポリアミック酸溶液にイミド化触媒、脱水剤、および選択的に昇華性無機充填剤、溶媒などを添加してポリイミドフィルム用組成物を形成し、前記組成物を製膜して製造できるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記ポリアミック酸溶液をイミド化する過程は、熱イミド化法、化学イミド化法、または前記熱イミド化法と化学イミド化法とを併用する複合イミド化法など公知のイミド化法により行われる。
【0048】
前記ポリイミドフィルムに含まれる昇華性無機充填剤全体の平均粒径(D50)は、0.1~5.0μmであり、昇華性無機充填剤全体の含有量は、ポリイミドフィルムの総重量を基準として0.07~0.4重量%であってもよい。
【0049】
前記昇華性無機充填剤は、ポリイミドフィルムの炭化および/または黒鉛化時に昇華して所定の発泡現象を誘導することができる。このような発泡現象は、炭化および/または黒鉛化時に発生する昇華ガスの排気を円滑にして良質のグラファイトシートが得られるようにし、発泡によって形成される所定の空隙はグラファイトシートの耐屈曲性(「柔軟性」)も向上させることができる。
【0050】
ただし、過度の発泡現象とそれによる多数の空隙は、グラファイトシートの熱伝導度と機械的物性を大きく悪化させ、グラファイトシートの表面に欠陥を引き起こすことがあるので、昇華性無機充填剤の種類、含有量および粒子サイズは愼重に選択されなければならない。
【0051】
「平均粒径(D50)」は、昇華性無機充填剤をジメチルホルムアミド溶媒中に25℃で5分間超音波分散させた後、粒度測定器(laser diffraction particle size analyzer)(SALD-2201、Shimadzu)を用いて測定できる。
【0052】
ポリイミドフィルム中の昇華性無機充填剤全体の平均粒径(D50)は、例えば0.5~4.0μm、他の例として0.1~2.5μm、さらに他の例として1.5~5.0μm、さらに他の例として1.5~2.5μm未満であってもよいが、これに限定されるものではない。ポリイミドフィルム中の昇華性無機充填剤全体の含有量は、ポリイミドフィルムの総重量を基準として、例えば0.07~0.35重量%、他の例として0.1~0.3重量%、さらに他の例として0.15~0.3重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0053】
前記昇華性無機充填剤は、平均粒径(D50)が0.1~2.0μmの第1昇華性無機充填剤および平均粒径(D50)が2.0超過~5.0μmの第2昇華性無機充填剤を含むことができる。
【0054】
前記昇華性無機充填剤中の第1昇華性無機充填剤および第2昇華性無機充填剤の含有量は特に限定されないが、例えば、昇華性無機充填剤の総重量を基準として、第1昇華性無機充填剤は90~10重量%含まれ、第2昇華性無機充填剤は10~90重量%含まれる。例えば、昇華性無機充填剤の総重量を基準として、第1昇華性無機充填剤の含有量は、例えば15~85重量%、他の例として20~80重量%、さらに他の例として30~80重量%、さらに他の例として50~80重量%であってもよく、第2昇華性無機充填剤の含有量は、例えば85~15重量%、他の例として80~20重量%、さらに他の例として70~20重量%、さらに他の例として50~20重量%であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0055】
前記昇華性無機充填剤の例には、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、硫酸バリウムなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記溶媒としては、ポリアミック酸を溶解させることができるものであれば特に限定されない。例えば、溶媒は、非プロトン性極性溶媒(aprotic polar solvent)を含むことができる。
【0057】
特に、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒;N-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドンなどのピロリドン系溶媒;フェノール、o-、m-、またはp-クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド、γ-ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒;などを単独でまたは2種以上組み合わせて使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記脱水剤としては、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、安息香酸無水物などを単独でまたは2種以上組み合わせて使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0059】
前記製膜は、ポリアミック酸溶液を基材上にフィルム形状に塗布し、30~200℃の温度で15秒~30分間加熱乾燥させてゲルフィルムを製造した後、基材を除去したゲルフィルムを250~600℃の温度で15秒~30分間熱処理して行われるが、これに限定されるものではない。
【0060】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムの伸度が120%以上であり、強度が210MPa以上であり、1000℃での熱分解時の残留量が56重量%以上であり、真密度は1.35g/cm以上であってもよい。
【0061】
前記ポリイミドフィルムの伸度は135%以下であり、強度は230MPa以下であってもよいし、前記真密度は1.55g/cm以下であってもよい。
【0062】
可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において相対的に分子量の大きい可塑剤が占める比重が高くなるにつれ、伸度および強度はやや減少する傾向が現れる。
【0063】
また、可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において相対的に分子量の大きい可塑剤が占める比重が高くなるにつれ、1000℃での熱分解時の残留量は増加する傾向が現れる。
【0064】
ポリイミドフィルムの真密度が低い場合には、黒鉛化工程時、炭素の再配列が不利で熱伝導度が低くなり、真密度が過度に高い場合には、過度の密集性によってグラファイトシートの外観が不良になりうる。
【0065】
「真密度」とは、閉気孔および開気孔がすべて除去された密度であって、開気孔は除去されるものの閉気孔は含む見掛け密度とは差がある。
【0066】
ポリイミドフィルムの真密度は、多様な方式で制御できる。例えば、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸の分子量を制御したり、ポリアミック酸に溶媒を添加して粘度を制御したり、ポリイミドフィルムに含まれる充填剤の種類、粒度、含有量などを制御する方法などによって制御されるが、これに限定されるものではない。
【0067】
一実施形態において、前記ポリイミドフィルムは、グラファイトシート製造用であってもよい。
【0068】
前記ポリイミドフィルムでグラファイトシートを製造する時、熱拡散係数の低下、質量減少率および発泡率を調節可能で、優れた特性のグラファイトシートの製造が可能である。
【0069】
本発明の他の態様によるグラファイトシートの製造方法は、前記ポリイミドフィルムを炭化、黒鉛化、または炭化および黒鉛化するステップを含む。
【0070】
前記炭化は、ポリイミドフィルムの高分子鎖を熱分解して非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体を含む予備グラファイトシートを形成する工程で、例えば、ポリイミドフィルムを、減圧下または不活性気体雰囲気下、常温から最高温度の1,000℃~1,500℃の範囲の温度まで10時間~30時間かけて昇温および維持するステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、炭化時、ホットプレスなどを用いてポリイミドフィルムに圧力を加えてもよいし、この時の圧力は、例えば5kg/cm以上、他の例として15kg/cm以上、さらに他の例として25kg/cm以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0071】
前記黒鉛化は、非晶質炭素体、非結晶質炭素体および/または無定形炭素体の炭素を再配列してグラファイトシートを形成する工程で、例えば、予備グラファイトシートを、選択的に、不活性気体雰囲気下、常温から最高温度の2,500℃~3,000℃の範囲の温度まで2時間~30時間かけて昇温および維持するステップを含むことができるが、これに限定されるものではない。選択的に、炭素の高配向性のために、黒鉛化時、ホットプレスなどを用いて予備グラファイトシートに圧力を加えてもよいし、この時の圧力は、例えば100kg/cm以上、他の例として200kg/cm以上、さらに他の例として300kg/cm以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0072】
本発明のさらに他の態様によるグラファイトシートは、前記グラファイトシートの製造方法により製造され、熱拡散係数が720mm/s以上であり、発泡厚さが85μm以下であってもよい。
【0073】
前記熱拡散係数は、780mm/s以下であってもよく、前記発泡厚さは、60μm以上であってもよい。
【0074】
炭化と黒鉛化過程の過度の発泡現象は、グラファイトシートの内部構造に損傷を誘発し、これによってグラファイトシートの熱伝導度が低下し、グラファイトシートの表面に、発泡痕であるブライトスポット(bright spot)の個数を大きく増加させることがあるので、好ましくない。
【実施例
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、これは本発明の好ましい例として提示されたものであり、いかなる意味でもこれによって本発明が制限されるとは解釈され得ない。
【0076】
製造例1(ポリイミドフィルムの製造)
反応器に、溶媒としてジメチルホルムアミド205.0gを投入し、温度を20℃に合わせた。これに、ジアミン単量体として4,4’-オキシジアニリン(ODA)21.5gを添加し、次に、二無水物単量体としてピロメリット酸二無水物(PMDA)23.4gを添加して、粘度が230,000cPのポリアミック酸溶液を製造した。
【0077】
次に、製造されたポリアミック酸溶液に、脱水剤として酢酸無水物39.5g、イミド化剤としてβ-ピコリン4.8g、昇華性無機充填剤として第2リン酸カルシウム(平均粒径(D50):2.5μm)0.12gおよびジメチルホルムアミド30.4gを混合した。
【0078】
また、適正量の第1可塑剤(トリフェニルホスフェート、Triphenyl phosphate、TPP)および第2可塑剤(tricresyl phosphate、トリクレシルホスフェート、TCP)を添加して、ポリイミドフィルム前駆体溶液を製造した。
【0079】
用意されたポリイミドフィルム前駆体溶液をSUS plate(100SA、Sandvik)にドクターブレードを用いて500μmにキャスティングし、100℃~200℃の温度範囲で乾燥させて、自己支持性を有するゲルフィルムを製造した。
【0080】
次に、ゲルフィルムをSUS Plateから剥離してピンフレームに固定させて高温テンターに搬送した。フィルムを高温テンターで200℃から700℃まで加熱した後、25℃で冷却させた後、ピンフレームから分離してポリイミドフィルムを得た。
【0081】
製造例2(グラファイトシートの製造)
製造例1により製造されたポリイミドフィルムを、炭化可能な電気炉を用いて、窒素気体下、3.3℃/minの速度で1,210℃まで昇温し、1,210℃で約2時間維持させた(炭化)。
【0082】
次に、黒鉛化可能な電気炉を用いて、アルゴン気体下、2.5℃/minの昇温速度で1,210℃から2,200℃まで昇温して第1焼成ステップを行った。
【0083】
2,200℃に到達後、昇温速度を1.25℃/minの昇温速度に変更して2,500℃まで連続的に昇温して第2焼成ステップを行った。
【0084】
2,500℃に到達後、昇温速度を10℃/minの昇温速度に変更して2,800℃まで連続的に昇温して第3焼成ステップを行い、2,800℃で数分間静置した後、黒鉛化を完了してグラファイトシートを製造した。
【0085】
最後に、10℃/minの速度でグラファイトシートを冷却させた。
【0086】
実施例1
製造例1によりポリイミドフィルムを製造する時、第1可塑剤と第2可塑剤を、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として(イミド化触媒の総含有量を100重量%とした時)、それぞれ0.47重量%、0.08重量%添加した。以後、製造例2によりグラファイトシートを製造した。
【0087】
実施例2
第1可塑剤と第2可塑剤を、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として、それぞれ0.39重量%、0.17重量%添加したことを除けば、実施例1と同様にグラファイトシートを製造した。
【0088】
実施例3
第1可塑剤と第2可塑剤を、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として、それぞれ0.28重量%、0.28重量%添加したことを除けば、同様にグラファイトシートを製造した。
【0089】
実施例4
第1可塑剤と第2可塑剤を、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として、それぞれ0.17重量%、0.39重量%添加したことを除けば、実施例1と同様にグラファイトシートを製造した。
【0090】
比較例1
第1可塑剤と第2可塑剤を添加しないことを除けば、実施例1と同様にグラファイトシートを製造した。
【0091】
比較例2
第1可塑剤を添加せず、第2可塑剤のみを、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として、0.56重量%添加したことを除けば、実施例1と同様にグラファイトシートを製造した。
【0092】
比較例3
第2可塑剤を添加せず、第1可塑剤のみを、前記ポリアミック酸溶液に混合されたイミド化触媒の総含有量を基準として、0.56重量%添加したことを除けば、実施例1と同様にグラファイトシートを製造した。
【0093】
実施例1~4および比較例1~3の第1可塑剤および第2可塑剤の含有量は、下記表1の通りである。
【0094】
【表1】
【0095】
実験例1
製造例1により製造された実施例1~実施例4および比較例1~3のポリイミドフィルムの伸度および強度を測定した。
【0096】
伸度と強度は、Autograph Universal Testing Machines(SHIMADZU、AG-IS)を用いてASTM D882に準ずる方法で測定された。
【0097】
図1に示すように、第1可塑剤および第2可塑剤を含まない比較例1のポリイミドフィルムに比べて、第1可塑剤と第2可塑剤とを混合した実施例1~4のポリイミドフィルムの伸度と強度がすべて増加した。
【0098】
また、それぞれ第1可塑剤と第2可塑剤のみを含む比較例2および3のポリイミドフィルムも、比較例1のポリイミドフィルムに比べて伸度と強度がすべて増加する傾向を示した。第1可塑剤と第2可塑剤とを混合した実施例1~4のポリイミドフィルムは、第1可塑剤のみを含む比較例2のポリイミドフィルムに比べて伸度および強度がすべて増加したが、第2可塑剤のみを含む比較例3のポリイミドフィルムに比べて強度はやや低く、伸度は類似していたり、高かった。
【0099】
具体的には、実施例1~4の場合、強度の範囲は215~225MPa、伸度の範囲は120~135%と測定された。
【0100】
可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において第2可塑剤(TCP)の比重が高くなるにつれ、ポリイミドフィルムの伸度と強度が変化は大きくないものの一部減少する傾向を示した。
【0101】
実験例2
製造例1により製造された実施例1~実施例4および比較例1~3のポリイミドフィルムの真密度を測定した。
【0102】
真密度は、製造されたポリイミドフィルムを15mm×300mm(横×縦)の大きさに切断した試験片に対して、Pycnometer(AccuPyc1340、Micromeritics)を用いて、常温条件でヘリウム気体を用いて測定した。
【0103】
図2に示すように、実施例1~4のポリイミドフィルムの場合、真密度の範囲は1.45~1.47g/cmと測定された。
【0104】
可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において第2可塑剤(TCP)の比重が高くなるにつれ、ポリイミドフィルムの真密度が次第に増加後に減少する傾向を示した。
【0105】
これに対し、比較例1および比較例2のポリイミドフィルムの真密度は、実施例1~4のポリイミドフィルムの真密度に比べて過度に高くて、製造されたグラファイトシートの外観が不良になる問題が発生した。
【0106】
実験例3
製造例1により製造された実施例1~実施例4および比較例1のポリイミドフィルムの熱分解特性を測定した。
【0107】
熱分解特性は、Thermogravimetric Analysis(TA Instruments、TGA5500)を用いて、10℃/分の速度で1000℃まで昇温して測定された。
【0108】
図3に示すように、第1可塑剤および第2可塑剤を含まない比較例1のポリイミドフィルムに比べて、第1可塑剤と第2可塑剤とを混合した実施例1~4のポリイミドフィルムは、1000℃での熱分解時の残留量がすべて増加した。
【0109】
実施例1~4の場合、1000℃での熱分解時の残留量が56重量%以上と測定された。
【0110】
可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において第2可塑剤(TCP)の比重が高くなるにつれ、残留量が小幅増加する傾向を示した。
【0111】
実験例4
製造例2により製造された実施例1~実施例4ならびに比較例2および3のグラファイトシートの熱拡散係数および発泡厚さを測定した。
【0112】
実施例1~4の場合、製造されたグラファイトシートの熱拡散係数の範囲は720~760mm/s、発泡厚さの範囲は70~85μmと測定された。
【0113】
熱拡散係数は、測定装置(Netsch、LFA467)を用いてLaser Flash法で平面方向の熱拡散率を測定し、発泡厚さはDigital Micrometer(Standard-type、Mitutoyo)によって測定された。
【0114】
図4に示すように、可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において第2可塑剤(TCP)の比重が高くなるにつれ、熱拡散係数は低下する傾向を示した。
【0115】
これに対し、可塑剤の総含有量(第1可塑剤の含有量+第2可塑剤の含有量)において第2可塑剤(TCP)の比重が高くなるにつれ、発泡厚さは増加する傾向を示した。
【0116】
また、第2可塑剤のみを含む比較例3の場合、実施例1~4に比べて製造されたグラファイトシートにブライトスポットが多く形成されて、グラファイトシートの表面品質が低下した。
【0117】
本発明の製造方法の実施例は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する当業者が本発明を容易に実施できるようにする好ましい実施例に過ぎず、上述した実施例に限定されるものではないので、これによって本発明の権利範囲が限定されるものではない。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は添付した特許請求の範囲の技術的思想によって定められなければならない。また、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形および変更が可能であることが当業者にとって明白であり、当業者によって容易に変更可能な部分も本発明の権利範囲に含まれることは自明である。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、熱拡散係数が低下せず、炭化、黒鉛化時の質量減少率が低いポリイミドフィルム、前記ポリイミドフィルムからグラファイトシートの製造方法およびこれから製造された優れた外観のグラファイトシートを提供する効果を有する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】