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特表2024-512441抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法
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  • 特表-抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法 図1
  • 特表-抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/02 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240312BHJP
   C07K 5/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07K1/02
A61K47/68
C07K5/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556505
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 CN2022084238
(87)【国際公開番号】W WO2022206871
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110350022.0
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087262
【氏名又は名称】レメゲン シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REMEGEN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.58 Beijing Middle Road, Yantai Development Zone, Yantai District, China(Shandong)Pilot Free Trade Zone, Yantai, Shandong 264006 China
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジュアンリン
(72)【発明者】
【氏名】グオ, ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャオ, チュアンジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ジョンリン
【テーマコード(参考)】
4C076
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF68
4C076GG50
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA13
4H045EA20
4H045FA10
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法に関し、より詳細には、抗体薬物複合体のリンカー部分と薬物部分との複合体の調製方法及び精製方法に関し、この複合体は、目的生成物由来の不純物及び反応プロセス中の副生成物を効果的に除去し、それによって最終的に得られる目的生成物の純度を99%以上にすることができるだけでなく、安定した量産を実現し、臨床医薬品の品質基準を十分に満たし、その結果、医薬品の安全性及び安定供給を保証することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示す化合物、エナンチオマー、ラセミ体、またはその薬学的に許容される塩である抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法であって、式中、Dが、連結された毒素部分を表し、
【化20】

前記方法の合成経路が、以下の通りであり:
【化21】

前記毒素部分Dが、オーリスタチン細胞傷害剤、アントラマイシン細胞傷害剤、アントラサイクリン細胞傷害剤、またはピューロマイシン細胞傷害剤であり、前記オーリスタチン細胞傷害剤が、MMAE、MMAF、MMAD、またはそれらの誘導体を含み、前記アントラマイシン細胞傷害剤が、アントラマイシンまたはその誘導体を含み、前記アントラサイクリン細胞傷害剤が、ダウノルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、またはそれらの誘導体を含み、前記ピューロマイシン細胞傷害剤が、ピューロマイシンまたはその誘導体を含み、
前記方法が、具体的には以下のステップを含み:
A.化合物1を適量の溶媒1に溶解し、ビス(4-ニトロベンゼン)カーボネート及び有機塩基を順次添加し、ここで前記添加するビス(4-ニトロベンゼン)カーボネートのモル数及び前記添加する有機塩基のモル数は、化合物1のモル数よりも大きく、
B.適切な反応時間後に吸引濾過によって濾液を取得し、
C.ステップBで取得した前記濾液に十分な量の酢酸エチル及びn-ヘキサンを順次添加し、n-ヘキサンの滴下後、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
D.ステップCで取得した前記濾過ケーキを適量の酢酸エチル及びn-ヘキサンで連続的に洗浄し、吸引濾過によって前記濾過ケーキを取得し、
E.ステップDで取得した前記濾過ケーキを酢酸とメタノールの混合溶液に溶解し、適量の精製水を加え、前記精製水を加えた後、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって前記濾過ケーキを取得し、
F.ステップEで取得した前記濾過ケーキを適量の精製水、メタノール、酢酸エチル及びn-ヘキサンで順次洗浄し、吸引濾過及び乾燥後に化合物2(MC-Val-Cit-PAB-PNP)を取得し、
G.化合物2及びトリアゾール系化合物を適量の溶媒2に溶解して溶液Xを形成し、前記コンジュゲートされた毒素部分Dを溶媒3に溶解して溶液Yを形成し、溶液Yを溶液Xに添加し、均一に混合して溶液Zを形成し、
H.適量の有機塩基を溶液Zに添加して前記系のpHを調整し、前記反応を触媒し、
I.適切な反応時間後に吸引濾過によって前記濾液を取得し、
J.ステップIの前記濾液に適量の酢酸エチル及びn-ヘキサンを順次添加し、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって前記濾過ケーキを取得し、
K.ステップJで取得した前記濾過ケーキを酢酸エチル及びn-ヘキサンで順次洗浄し、吸引濾過によって前記濾過ケーキを取得し、
L.ステップKで取得した前記濾過ケーキを適量のメタノール溶液に溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより調製及び精製し、調製溶液を回収し、
M.ステップLで取得した前記調製溶液を減圧下で濃縮し、
N.ステップMの減圧下で取得した前記濃縮物を、適量のメタノールで溶解させ、次いで減圧下で再び濃縮し、
O.ステップNの減圧下で取得した前記濃縮物を真空乾燥して、式(I)に示す前記精製化合物を取得することを含み、
その場合、
ステップAの溶媒1、ステップGの溶媒2及び溶媒3が極性溶媒であり、好ましくは、溶媒1、溶媒2、及び溶媒3が、それぞれ独立して、DMF、DMA、及びNMPのうちの1つ以上から選択され、より好ましくは、溶媒1、溶媒2、及び溶媒3がDMFである、前記調製方法及び精製方法。
【請求項2】
ステップAの化合物1と炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)のモル比が約1:1.8であり、化合物1と有機塩基1のモル比が約1:1.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップAの化合物1と炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)のモル比が1:1.5~2であり、化合物1と有機塩基1のモル比が1:1~1.5である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップCの化合物1と酢酸エチルの重量体積比(g/ml)が約1:30.0であり、ステップCの化合物1とn-ヘキサンの重量体積比(g/ml)が約1:60.0である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ステップCの化合物1と酢酸エチルの重量体積比(g/ml)が1:25~35であり、ステップCの化合物1とn-ヘキサンの重量体積比(g/ml)が1:55~65である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)が約1:7.0であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)が約1:1.0であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)が約1:20.0である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)が1:6~8であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)が1:0.5~1.5であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)が1:15~25である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比が約1:1であり、化合物2と毒素部分Dのモル比が約1:1である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比が1:0.8~1.2であり、化合物2と毒素部分Dのモル比が1:0.8~1.2である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップAの前記有機塩基とステップHの前記有機塩基が、それぞれ独立して、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンのうちの1つ以上から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ステップAの前記有機塩基がN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、ステップHにおいてN,N-ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンの2種類の有機塩基を添加する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物2とステップHで添加するN,N-ジイソプロピルエチルアミンのモル比が約1:1であり、ステップGの化合物2とステップHで添加するピリジンのモル比が約1:20.5である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップGの化合物2とステップHで添加するN,N-ジイソプロピルエチルアミンのモル比が1:0.8~1.2であり、ステップGの化合物2とステップHで添加するピリジンのモル比が1:19~25である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップJで添加する前記酢酸エチルの量が前記濾液の体積の3.5~4.5倍であり、前記n-ヘキサンの添加量が前記濾液の体積の7~9倍である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ステップLにおける高速液体クロマトグラフィーの調製条件が、以下の通りであり、すなわち、移動相AがpH=4.0~5.0の酢酸水溶液であり、移動相Bがアセトニトリルであり、移動相A:B=60:40(V/V)であり、調製及び精製に等勾配を使用する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体薬物複合体中間体の構造が式(1~11):
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】
【化32】

である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項17】
ステップAの温度を-5~5℃の範囲内に制御する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項18】
ステップBの温度を25~30℃の範囲内に制御する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項19】
ステップDを1~5回繰り返すことができる、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項20】
ステップFの洗浄回数が1~5回である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項21】
ステップFの乾燥温度が25~30℃である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項22】
ステップGの前記トリアゾール系化合物が、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール、及び1-ヒドロキシル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルのうちの1つ以上であり、好ましくは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項23】
ステップGの温度を-5~5℃の範囲内に制御する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項24】
ステップHの温度を-5~5℃の範囲内に制御する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項25】
ステップIの反応温度が25~30℃である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項26】
ステップKの洗浄回数が1~5回である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項27】
ステップMにおける減圧濃縮の温度が25~35℃である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項28】
ステップMにおいて、ステップLで取得した前記調製溶液を減圧下で発泡固体状態に濃縮する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項29】
ステップNにおける減圧濃縮の温度が25~35℃である、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項30】
ステップNにおいて、ステップMにて減圧下で取得した前記濃縮物を適切な量のメタノールで溶解させ、次いで、減圧下で再び発泡固体状態に濃縮する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項31】
ステップNを1~5回繰り返すことができる、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【請求項32】
ステップA、ステップB、ステップG、ステップH、及びステップIをすべて窒素保護下で実施する、請求項1に記載の調製方法及び精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月31日に出願された中国出願第CN202110350022.0号に対する優先権を主張し、その開示の全内容が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、製薬化学の分野に関し、より詳細には、抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体薬物複合体(ADC)は、抗腫瘍薬の一種であり、抗体部分(抗体)、リンカー部分(リンカー)及び毒素部分(薬物)の3つの構成要素を含む。抗体部分と毒素部分は、リンカー部分によって連結されており、その作用機序は、抗体を標的細胞(腫瘍細胞など)への薬物の標的輸送に用い、毒素を放出して腫瘍細胞を死滅させることである。現時点では、最も一般的な抗体薬物複合体の合成方法は、液相中でリンカー部分と毒素部分とを共有結合させてリンカー-毒素複合体を形成し、次いで抗体とスルフヒドリル結合またはアミノ結合させて抗体薬物複合体を形成する方法である。例えば、挙げられたいくつかのADC薬剤の抗体上のリンカー-毒素構造は、Mc-Val-Cit-PAB-MMAEである。しかしながら、MMAEは非常に高価であるため、Mc-Val-Cit-PAB-MMAEのバッチの製造コストは数百万RMBにも及ぶ(MMAE供給量は100グラムのレベルである)。したがって、そのようなADC中間体を製造し、ADC医薬品をバッチで安定して供給するために、品質を制御でき、収率が高く、純度の高い合成方法及び精製方法が必要である。
【0004】
特許公開第CN108853514A号は、明細書の第14頁において、抗体薬物複合体中間体(Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)の調製方法及び精製方法を開示している:
【化1】

本方法は、主に2つのステップに分けられる。第1のステップでは、化合物Mc-VC-PABAを用いてMc-VC-PAB-PNPを調製し、第2のステップでは、Mc-VC-PAB-PNP及びMMAEを用いてMc-Val-Cit-PAB-MMAEを調製する。第1のステップの生成物Mc-VC-PAB-PNPを石油エーテル及び酢酸エチルで晶析し、次のステップにおいて生成物を無精製で使用し、これにより、より多くの不純物が次の反応に確実に持ち越され、第2のステップにおける生成物の精製プロセスは、HPLCによる調製及び精製のみを行うため、多くの場合、調製される化合物は不純物を多く含む。中国特許出願公開第CN106999605A号及び中国特許出願公開第CN108743968A号にも、明細書の47頁及び明細書の第4頁のMc-Val-Cit-PAB-MMAEの製造方法が開示されているが、その後の生成物の精製方法はHPLCによる調製及び精製であり、この方法は、生成物から不純物を効果的に除去することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】中国特許出願公開第108853514号
【特許文献2】中国特許出願公開第106999605号
【特許文献3】中国特許出願公開第108743968号
【発明の概要】
【0006】
上記で特定された問題を解決するために、本開示は、ADCを合成するための中間体として使用することができる精製リンカー-毒素複合体を生成する新規方法を提供する。本開示はまた、式(I)の化合物またはその塩の精製Mc-Val-Cit-PAB-Dを提供し、式中、Dは連結された毒素部分を表す。
【化2】

本明細書に開示される方法は、式(I)の化合物またはその塩のラセミ体、ジアステレオマーまたはエナンチオマーを製造するためにも使用され得ることが理解されるであろう。
【0007】
驚くべきことに、以下に示すように、トリアゾール系化合物の存在下で化合物2と毒素(D)(例えば、MMAE)を反応させることにより、高純度の式(I)の化合物またはその塩を生成することができることが発見された:
【化3】
【0008】
いくつかの実施形態では、トリアゾール系化合物は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチル、またはそれらの組み合わせである。特定の実施形態では、トリアゾール系化合物は1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである。
【0009】
いくつかの実施形態では、上記の反応を、1つ以上の塩基の存在下で実行する。例えば、反応を、1つ以上の有機塩基の存在下で実行することができる。特定の実施形態では、反応は、異なるアルカリ度の2つの有機塩基の存在下で行う反応である。アルカリ度の異なる2つの異なる有機塩基を使用すると、プロセスで生成される不純物の量がさらに減少することが判明した。一実施形態では、有機塩基の少なくとも1つはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。別の実施形態では、有機塩基の少なくとも1つはピリジンである。別の実施形態では、2つの有機塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンである。
【0010】
本開示はさらに、化合物2の合成方法を提供する。一実施形態では、化合物2は、本明細書で有機塩基1と称される有機塩基の存在下で、化合物1とビス-(4-ニトロベンゼン)とを反応させることによって製造される。反応を以下に示す:
【化4】
【0011】
いくつかの実施形態では、毒素部分Dは、オーリスタチン細胞傷害剤、アントラマイシン細胞傷害剤、アントラサイクリン細胞傷害剤、またはピューロマイシン細胞傷害剤であり、オーリスタチン細胞傷害剤としては、MMAE、MMAF、MMAD、またはそれらの誘導体が挙げられ、アントラマイシン細胞傷害剤としては、アントラマイシンまたはその誘導体が挙げられ、アントラサイクリン細胞傷害剤としては、ダウノルビシン、アドリアマイシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、またはそれらの誘導体が挙げられ、ピューロマイシン細胞傷害剤としては、ピューロマイシンまたはその誘導体が挙げられる。
【0012】
特定の実施形態では、毒素(D)はMMAEである。そのような実施形態では、本開示に従って製造される精製リンカー-毒素複合体は、以下の化学構造を有するMc-Val-Cit-PAB-MMAEである:
【化5】
【0013】
いくつかの実施形態では、Mc-Val-Cit-PAB-Dは、以下の合成経路を使用して生成される:
【化6】

特定の実施形態では、DはMMAEである。
【0014】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、95%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、96%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、97%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、98%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、99%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、99.5%超の純度を有し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、99.8%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、約95%~約99.5%の純度を有し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、約97%~約99.5%の純度を有し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、約98%~約99.8%の純度を有し得る。他の実施形態では、本明細書に記載される方法によって生成されるMc-Val-Cit-PAB-D(例えば、Mc-Val-Cit-PAB-MMAE)は、約95%~約98%の純度を有し得る。
【0015】
本開示はまた、本明細書で調製される精製リンカー毒素複合体を使用して製造される高純度のADCを提供する。いくつかの実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、95%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、96%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、97%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、98%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、99%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、99.5%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、99.8%超の純度を有し得る。他の実施形態では、本開示に従って製造されるADCは、約95%~約99.5%の純度を有し得る。
【0016】
一実施形態では、本開示の方法は、以下のステップ:
A.化合物1を適量の溶媒1に溶解し、ビス(4-ニトロベンゼン)カーボネート及び有機塩基を順次添加し(添加するビス(4-ニトロベンゼン)カーボネートのモル数及び添加する有機塩基のモル数は、化合物1のモル数よりも大きい)、
B.適切な反応時間後に吸引濾過によって濾液を取得し、
C.ステップBで取得した濾液に十分な量の酢酸エチル及びn-ヘキサンを順次添加し、n-ヘキサンの滴下後、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
D.ステップCで取得した濾過ケーキを適量の酢酸エチル及びn-ヘキサンで連続的に洗浄し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
E.ステップDで取得した濾過ケーキを酢酸とメタノールの混合溶液に溶解し、適量の精製水を加え、精製水を加えた後、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
F.ステップEで取得した濾過ケーキを適量の精製水、メタノール、酢酸エチル及びn-ヘキサンで順次洗浄し、吸引濾過及び乾燥後に化合物2(MC-Val-Cit-PAB-PNP)を取得し、
G.化合物2及びトリアゾール系化合物を適量の溶媒2に溶解して溶液Xを形成し、コンジュゲートされた毒素部分Dを溶媒3に溶解して溶液Yを形成し、溶液Yを溶液Xに添加し、均一に混合して溶液Zを形成し、
H.溶液Zに適切な量の有機塩基を添加し、
I.適切な反応時間後に吸引濾過によって濾液を取得し、
J.ステップIの濾液に適量の酢酸エチル及びn-ヘキサンを順次添加し、適切な時間にわたって撹拌し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
K.ステップJで取得した濾過ケーキを酢酸エチル及びn-ヘキサンで順次洗浄し、吸引濾過によって濾過ケーキを取得し、
L.ステップKで取得した濾過ケーキを適量のメタノール溶液に溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより調製及び精製し、調製溶液を回収し、
M.ステップLで取得した調製溶液を減圧下で濃縮し、
N.ステップMの減圧下で取得した濃縮物を、適量のメタノールで溶解させ、次いで減圧下で再び濃縮し、
O.ステップNの減圧下で取得した濃縮物を真空乾燥して、式(I)に示す精製化合物を取得することを含み、
その場合、
いくつかの実施形態では、ステップAの溶媒1、ステップGの溶媒2及び溶媒3は極性溶媒であり、好ましくは、溶媒1、溶媒2、及び溶媒3は、それぞれ独立して、DMF、DMA、及びNMPのうちの1つ以上から選択され、より好ましくは、溶媒1、溶媒2、及び溶媒3はDMFである。
【0017】
ステップAの有機塩基及びステップHの有機塩基は、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジンのうちの1つ以上から選択され、好ましくは、有機塩基は、それぞれ独立して、N,N-ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンのうちの1つまたは2つである。好ましくは、ステップAの有機塩基はN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、ステップHでは2種類の有機塩基、N,N-ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンが存在する。
【0018】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップAにおける化合物1と炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)のモル比は約1:1.8であり、化合物1と有機塩基1のモル比は約1:1.2である。
【0019】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップAの化合物1と炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)のモル比は1:1.5~2であり、化合物1と有機塩基のモル比は1:1~1.5である。好ましくは、ステップAの化合物1とビス(4-ニトロベンゼン)カーボネートのモル比は1:1.6~1.9または1:1.7~1.8であり、化合物1と有機塩基のモル比は1:1.1~1.4または1:1.2~1.3である。いくつかの特定の実施形態では、ステップAの化合物1と炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)のモル比は1:1.8であり、化合物1と有機塩基のモル比は1:1.2である。
【0020】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップCの化合物1と酢酸エチルの重量体積比(g/ml)は約1:30.0であり、ステップCの化合物1とn-ヘキサンの重量体積比(g/ml)は約1:60.0である。
【0021】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップCの化合物1と酢酸エチルの重量体積比(g/ml)は1:25~35、1:27~33、1:28~32、または1:29~31であり、ステップCの化合物1とn-ヘキサンの重量体積比(g/ml)は1:55~65、1:57~63、1:58~62、または1:59~61である。いくつかの特定の実施形態では、ステップCの化合物1と酢酸エチルの重量体積比(g/ml)は1:30であり、ステップCの化合物1とn-ヘキサンの重量体積比(g/ml)は1:60である。
【0022】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)は約1:7.0であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)は約1:1.0であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)は約1:20.0である。
【0023】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)は約1:6~8であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)は1:0.5~1.5であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)は約1:15~25である。好ましくは、ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)は1:6.5~7.5または1:6.8~7.3であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)は1:0.7~1.3または1:0.9~1.1であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)は1:17~23または1:19~21である。いくつかの特定の実施形態では、ステップEの化合物1と酢酸の重量体積比(g/ml)は1:7.0であり、ステップEの化合物1とメタノールの重量体積比(g/ml)は1:1.0であり、ステップEの化合物1と精製水の重量体積比(g/ml)は1:20.0である。
【0024】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比は約1:1であり、化合物2と毒素部分Dのモル比は約1:1である。
【0025】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比は1:0.8~1.2であり、化合物2と毒素部分Dのモル比は1:0.8~1.2である。いくつかの実施形態では、ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比は1:0.9~1.1であり、化合物2と毒素部分Dのモル比は1:0.9~1.1である。好ましくは、ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比は1:0.85~1.05であり、化合物2と毒素部分Dのモル比は1:0.95~1.05である。いくつかの特定の実施形態では、ステップGの化合物2とトリアゾール系化合物のモル比は1:1であり、化合物2と毒素部分Dのモル比は1:1である。
【0026】
さらに、上記のように、いくつかの実施形態では、ステップHにおいて、2種類の有機塩基、すなわちN,N-ジイソプロピルエチルアミン及びピリジンが存在する。いくつかの実施形態では、ステップGの化合物2と、ステップHで添加する化合物2の有機塩基N,N-ジイソプロピルエチルアミンのモル比は約1:1であり、ステップGの化合物2と、ステップHで添加する有機塩基ピリジンのモル比は約1:20.5である。他の実施形態では、ステップGの化合物2と有機塩基N,N-ジイソプロピルエチルアミンのモル比は1:0.8~1.2であり、より好ましくはモル比は1:0:9~1.1または1:0.95~1.05であり、ステップGの化合物2とステップHで添加する有機塩基ピリジンのモル比は1:19~25であり、より好ましくは、モル比は1:19.5~23、1:19.5~21.5、または1:20~21である。いくつかの特定の実施形態では、ステップGの化合物2と有機塩基2のモル比は1:1であり、化合物2と有機塩基3のモル比は1:20.5である。
【0027】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップJで添加する酢酸エチルの体積は、濾液の体積の3.5~4.5倍であり、添加するn-ヘキサンの体積は、濾液の体積の7~9倍である。好ましくは、ステップJで添加する酢酸エチルの体積は、濾液の体積の3.7~4.3倍であり、添加するn-ヘキサンの体積は、濾液の体積の7.5~8.5倍である。いくつかの特定の実施形態では、ステップJで添加する酢酸エチルの体積は、濾液の体積の4倍であり、添加するn-ヘキサンの体積は、濾液の体積の8倍である。
【0028】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップLにおける高速液体クロマトグラフィーの調製条件は以下のとおりである:移動相AはpH=4.0~5.0の酢酸水溶液であり、移動相Bはアセトニトリルであり、移動相A:B=60:40(V/V)であり、調製及び精製に等勾配を使用する。
【0029】
さらに、特定の実施形態では、抗体薬物複合体中間体の構造を式(1~11)に示す。
【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】
【0030】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップAの温度を、-5~5℃の範囲内に制御する。
【0031】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップBの温度を、25~30℃の範囲内に制御する。
【0032】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップDを1~5回繰り返すことができる。
【0033】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップFにおける洗浄回数は1~5回である。
【0034】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップFにおける乾燥温度は25~30℃である。
【0035】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップGのトリアゾール系化合物は、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシ-7-アゾベンゾトリアゾール、及び1-ヒドロキシル-1H-1,2,3-トリアゾール-4-カルボン酸エチルのうちの1つ以上であり、好ましくは1-ヒドロキシベンゾトリアゾールである。
【0036】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップGの温度を、-5~5℃の範囲内に制御する。
【0037】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップHの温度を、-5~5℃の範囲内に制御する。
【0038】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップIの反応温度は25~30℃である。
【0039】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップKにおける洗浄回数は1~5回である。
【0040】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップMにおける減圧下での濃縮の温度は25~35℃である。
【0041】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップMにおいて、ステップLで取得した調製溶液を減圧下で発泡固体状態に濃縮する。
【0042】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップNにおける減圧下での濃縮の温度は25~35℃である。
【0043】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップNにおいて、ステップMにおける減圧下での濃縮物を適切な量のメタノールで溶解させ、次いで、減圧下で再び発泡固体状態に濃縮する。
【0044】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップNを1~5回繰り返すことができる。
【0045】
さらに、いくつかの実施形態では、ステップA、ステップB、ステップG、ステップH、及びステップIを、すべて窒素の保護下で実施する。
【0046】
本発明によって提供される抗体薬物複合体中間体の調製方法及び精製方法は、目的生成物及び反応プロセスにおける副生成物から不純物を効果的に除去することができ、得られる最終目的生成物の純度を極めて高くすることができ(例えば、99%以上)、安定した大量生産を実現でき、臨床医薬品の品質基準要件を十分に満たし、ADC医薬品の安定した大量生産を飛躍的に保証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】精製MC-Val-Cit-PAB-PNPのクロマトグラムである。
図2】精製MC-VC-PAB-MMAEのクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0048】
定義
別途定義されない限り、本発明で使用されるすべての技術用語は、当業者によって理解されている意味と同じ意味を有する。
【0049】
本発明で使用される用語「抗体薬物複合体」とは、抗体/抗体の機能的断片、リンカー、及び毒素部分が化学反応によって一体的に結合した化合物を指し、通常、構造的には3つの部分:抗体または抗体ベースのリガンド、毒素部分、及び抗体または抗体ベースのリガンドと薬物をコンジュゲートするリンカーからなる。現在、抗体薬物複合体は、通常、2つのステップで調製され:第1のステップでは、リンカーと毒素部分との化学反応によって「リンカー-薬物」複合体を形成し、第2のステップでは、「リンカー-薬物」複合体のリンカー部分をスルフヒドリル基またはアミノ基によって抗体/抗体の機能的断片と共有結合させる。本発明において使用される用語「抗体薬物複合体中間体」とは、上記の「リンカー-薬物」複合体を指す。
【0050】
本発明において使用される用語「リンカー」及び「リンカー部分」とは、抗体薬物複合体化において抗体と薬物を連結する部分を指し、切断性または非切断性であり得る。切断性リンカー(すなわち、破壊性リンカーまたは生分解性リンカー)は、標的細胞内または標的細胞上で切断されて、薬物を放出することができる。いくつかの実施形態では、本発明のリンカーは、ジスルフィドベースのリンカー(より高いスルフヒドリル濃度を有する腫瘍細胞内で選択的に切断される)、ペプチドリンカー(腫瘍細胞内で酵素によって切断される)、及びヒドラゾンリンカーなどの切断性リンカーから選択される。他の実施形態では、本発明のリンカーは、チオエーテルリンカーなどの非切断性リンカー(すなわち、非破壊性リンカー)から選択される。別の実施形態では、本発明のリンカーは、破壊性リンカーと非破壊性リンカーの組み合わせである。
【0051】
本発明で使用される用語「薬物」及び「毒素部分」は、一般に、所望の生物学的活性を有し、本発明の複合体を調製するための反応性官能基を有する任意の化合物を指す。所望の生物学的活性には、ヒトまたは他の動物における疾患の診断、治癒、軽減、治療、及び予防が含まれる。新薬の継続的な発見及び開発に伴い、これらの新薬も本発明に記載の薬物に含まれるべきである。具体的には、薬物には、細胞傷害薬、細胞分化因子、幹細胞栄養因子、ステロイド系薬剤、自己免疫疾患治療薬、抗炎症薬、または感染症薬剤が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、薬物には、チューブリン阻害剤、またはDNA及びRNA傷害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【実施例
【0052】
本発明の技術的解決策を、特定の実施例と併せて、以下の非限定的な詳細においてさらに説明する。以下の実施例は、本発明の技術的概念及び特徴を説明し、当業者が本発明の内容を理解し、それに応じて本発明を実施できるようにすることのみを目的とし、本発明の保護範囲を限定するものではないことに留意されたい。本発明の精神の本質に従ってなされるあらゆる同等の変更または修正は、本発明の保護範囲に含まれるべきである。
【0053】
実施例1 MC-Val-Cit-PAB-PNPの調製及び精製
【化18】

清潔で乾燥した3L反応フラスコを取り、そこに130.00gの化合物1(すなわち、MC-Val-Cit-PAB-OH)(227.01mmol)及び1300mlのDMFを加えた。
【0054】
窒素の保護下で撹拌して固形物を均一に分散させ、内部温度を-2~2℃の範囲内に維持した。
【0055】
添加プロセスでは、内部温度を0~5℃の範囲内に制御し、炭酸ビス(4-ニトロベンゼン)124.02g(407.68mmol)を添加した。
【0056】
滴下プロセスでは、内部温度を0~5℃の範囲内に制御し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン35.03g(271.03mmol)を滴下したところ、滴下中に反応液が褐色となり、滴下後に温度が上昇した。
【0057】
温度が25℃に上昇したら、タイミングを計り、内部温度を25~30℃に制御し、2時間の反応後に試料を採取し、次いで0.5時間ごとに試料を採取し、インプロセス制御検出を実施した。化合物1の残分が1.0%未満になった時点で反応を終了した。
【0058】
上記反応溶液を吸引濾過し、反応溶液を取り出して20Lステンレス鋼バレルに移し、機械撹拌(100~300rpm)下、3900mlの酢酸エチル(V酢酸エチル/W化合物1=30.0)を滴下し、次いでn-ヘキサン7800ml(Vn-ヘキサン/W化合物1=60.0)を滴下し、滴下後5±1分間撹拌を続け、循環水の多目的真空ポンプを使用して吸引濾過して、化合物2(MC-Val-Cit-PAB-PNP)の粗生成物である濾過ケーキを取得した。
【0059】
5220mlの酢酸エチル(V酢酸エチル/W化合物1=40.0)を取り出し、3等分した。最初に真空を解除し、次いで酢酸エチルの一部を加えて、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、次いで真空を接続し、酢酸エチルを抜き、この操作を2回繰り返した。
【0060】
5220mlのn-ヘキサン(Vn-ヘキサン/W化合物1=40.0)を取り出し、3等分した。最初に真空を解除し、次いでn-ヘキサンの一部を加えて、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、次いで真空を接続し、n-ヘキサンを抜き、この操作を2回繰り返し、生成物が粉末固体になるまで濾過ケーキを循環水の多目的真空ポンプで吸引濾過した。
【0061】
得られた固体粉末を10Lステンレス鋼製バレルに移し、酢酸(V酢酸/W化合物1=7.0)910mlとメタノール(Vメタノール/W化合物1=1.0)130mlとの混合溶液に溶解させ、機械的撹拌(100~3000rpm)下で2600mlの精製水(V精製水/W化合物1=20.0)を30±10分以内に滴下した。滴下後約10分間撹拌を続け、次いで循環水の多目的真空ポンプで吸引濾過を実施し、濾過ケーキを得た。
【0062】
濾過ケーキを、精製水、メタノール、酢酸エチル、及びn-ヘキサンで順次洗浄した。具体的な洗浄方法は以下の通りであった:
精製水による洗浄:2600mlの精製水(V精製水/W化合物1=20.0)を取り出し、2等分した。最初に真空を解除し、精製水を加えて、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、次いで真空を接続し、精製水を抜き、次いで真空下で濾過ケーキを精製水ですすいだ。
【0063】
メタノールによる洗浄:真空下で、1300mlのメタノール(Vメタノール/W化合物1=10.0)を取り出し、濾過ケーキを均一に洗浄した。
【0064】
酢酸エチルによる洗浄:2610mlの酢酸エチル(V酢酸エチル/W化合物1=20.0)を取り出し、3等分した。最初に真空を解除し、次いで酢酸エチルの一部を加えて、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、次いで真空を接続し、酢酸エチルを抜き、真空を解除して再度この操作を繰り返し、次いで酢酸エチルの第3の部分を加えて、濾過ケーキを真空下で洗浄した。
【0065】
n-ヘキサンによる洗浄:最初に真空を解除し、5220mlのn-ヘキサン(Vn-ヘキサン/W化合物1=40.0)を取り出し、3等分した。n-ヘキサンの第1の部分を加えて、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、次いで真空を接続し、n-ヘキサンを抜き、次いでn-ヘキサンの第2の部分を加えてこの操作を繰り返し、次いでn-ヘキサンの第3の部分を加えて、真空下で濾過ケーキを洗浄した。濾過ケーキを、生成物が粉末固体になるまで、循環水の多目的真空ポンプを用いて吸引濾過した。
【0066】
得られた粉末固体を2Lの一口ボトルに移し、真空下で25~30℃にて少なくとも16時間乾燥させた。重量がそれ以上変化しなくなった時点で乾燥を停止し、得られた粉末固体を精製化合物2(すなわち、精製MC-Val-Cit-PAB-PNP)とした。試験により、純度は99.12%に達し、単一の不純物の最大値は0.58%であり、不純物の合計は0.88%であった。クロマトグラムを図1に示す。
【0067】
実施例2 MC-VC-PAB-MMAEの調製及び精製
【化19】

清潔で乾燥した2L反応フラスコに、124.00gの化合物2(168.08mmol、1.05当量)、21.50gの1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)(159.11mmol)及び460mlのDMF(VDMF/WMMAE=4.0)を加え、窒素保護下で撹拌を行って固体を溶解させ、撹拌を開始し、温度を0~5℃に下げた(回転速度:100~300rpm)。
【0068】
上記系の内部温度が0~5℃の範囲に下がった時点で、460mlのDMF中の114.96gのMMAE(160.12mmol)の溶液(VDMF/WMMAE=4.0)を加えた。
【0069】
反応系の内部温度を0~5℃に保持し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン20.71g(160.23mmol)、ピリジン273.03g(3451.71mmol)を順次添加し、添加後に温度を上昇させた。
【0070】
温度を25℃に上昇させ、タイミング反応を開始し、内部温度を25~30℃に制御し、18時間の反応後に、インプロセス制御用に試料を採取し、その後、1時間ごとにインプロセス制御用に試料を採取した。MMAEの残分が3.0%以下になった時点で反応を終了した。
【0071】
上記の反応溶液を循環水の多目的真空ポンプで吸引濾過し、メスシリンダーで反応溶液を量り取り、30Lステンレス鋼バレルに移し、次いでブフナーファネルと濾過フラスコを115mlのDMF(VDMF/WMMAE=1.0)で洗浄し、濾過フラスコ内の溶液を再度量り取り、30Lステンレス鋼バレルに移し、2回の測定の合計体積をV反応溶液とした。撹拌(100~300rpm)下、V反応溶液の約4倍量の酢酸エチル6363mlを一度に加え、次いでV反応溶液の約8倍量のn-ヘキサン12600mlを30±10分以内に滴下した。滴下後、再度約5分間撹拌し、濾過吸引を実施して未精製の式(I)の化合物である濾過ケーキを得た。
【0072】
次に、V反応溶液の2倍量の酢酸エチル3160mlを取り出し、2等分した。最初に、真空を解除し、酢酸エチル1部を取り出し、ブフナー漏斗に加え、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、真空を接続し、濾過吸引を実施し、この操作を1回繰り返した。
【0073】
真空を解除し、V反応溶液の2倍量のn-ヘキサン3160mlを抜き、2等分し、n-ヘキサン1部を採取して漏斗に加え、濾過ケーキを3~5分間浸漬及び洗浄し、浸漬中に濾過ケーキを粉砕し、真空を接続し、濾過吸引を実施し、この操作を1回繰り返し、最後の洗浄後に溶媒を除去し、濾過ケーキを、生成物が粉末固体になるまで、循環水の多目的真空ポンプを用いて吸引濾過に供した。得られた固体粉末を2Lの一口ボトルに移し(ボトルを最初に秤量した)、真空下、室温(18~26℃)で重量が変化しなくなるまで5時間以上乾燥させて、それにより乾燥粉末固体を得た。
【0074】
上記の粉末固体を適量のメタノールに溶解し、調製及び精製システムを用いて精製した。具体的な調製条件は以下の通りである:移動相A:酢酸水溶液(pH=4.0~5.0)、及び移動相B:アセトニトリル。移動相A:B=60:40(V/V)、調製及び精製には等勾配を使用した。
【0075】
調製溶液を回収し、得られた調製溶液を減圧下、30±2℃で濃縮して発泡固体を得た。上記の発泡固体を1200mlのメタノール(VメタノールWMMAE=10.4)で溶解し、2Lの一口ボトルに移し(ボトルを最初に秤量した)、生成物が発泡固体になるまで減圧下で30~35℃にて濃縮し、この操作を2回繰り返した。最終的に濃縮により泡状となり液滴がなくなった後、0.5時間反応を継続し、得られた固体を直結の高速回転翼真空ポンプで真空乾燥し、粉砕して、式(I)の精製化合物(すなわち、精製MC-VC-PAB-MMAE)を得た。純度は99.80%、単一の不純物の最大値は0.13%、不純物の合計は0.20%であった。クロマトグラムを図2に示す。
【0076】
様々な具体例によって本発明を説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明が様々な特定の実施形態に限定されないことを理解することができる。当業者は、本発明の範囲内で様々な変更または修正を行うことができ、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、説明における様々な箇所で言及された様々な技術的特徴を互いに組み合わせることができる。そのような変更及び修正は、本発明の範囲内である。
図1
図2
【国際調査報告】