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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】アッセイ
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240312BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20240312BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20240312BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N5/10
G01N33/68
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12Q1/02
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556765
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2022057801
(87)【国際公開番号】W WO2022200515
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21165236.7
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】514232904
【氏名又は名称】ウニヴェルジテート ベルン
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】エッゲル アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】バハマイヤー ノエミ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA26
2G045DA37
2G045FB03
4B063QA01
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ79
4B063QQ96
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS10
4B063QS38
4B063QX01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB19
4B065BB34
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC11
4B065CA46
(57)【要約】
非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の製造方法は、誘導ホメオボックス遺伝子を含む核酸分子を、非ヒト動物に由来し、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された骨髄系前駆細胞に導入するステップと、前記核酸分子を含む細胞を選択するステップと、を含む。分化したマスト細胞を取得するために、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養することができる。マスト細胞は、IgE媒介アレルギーを判断するアッセイに有用であることが見出されている。
【選択図】図2H
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導ホメオボックス遺伝子を含む組換え核酸分子を、非ヒト動物に由来し、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された骨髄系前駆細胞に導入するステップと、
前記組換え核酸分子を含む細胞を選択するステップと
を含む、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の製造方法。
【請求項2】
前記ホメオボックス遺伝子は、HoxB8、HoxA9、Lhx2(LH2)及びTLX1(Hox11)から選択され、任意に、前記ホメオボックス遺伝子は、HoxB8である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組換え核酸分子は、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を更に含み、前記核酸分子を含む細胞を選択するステップは、前記抗生物質を含む培地中で前記細胞を培養するステップを含み、
前記ホメオボックス遺伝子の発現は、誘導因子によって制御され、前記培地は、前記誘導因子及びインターロイキン3(IL-3)を更に含み、任意に、前記誘導因子は、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
以前に非ヒト動物から取得された全骨髄を用意し、
任意に磁気細胞分離を使用して、前記骨髄の造血前駆細胞を濃縮し、
IL-3の存在下で前記造血前駆細胞を培養することにより、前記動物から前記骨髄系前駆細胞を誘導するステップを更に含み、任意に、前記造血前駆細胞は、WEHI-3B細胞馴化培地中で培養され、
任意に、前記非ヒト動物は、マウスなどの齧歯動物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養して、分化したマスト細胞を取得するステップを更に含み、任意に、前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、少なくとも5日間培養される、請求項3又は請求項3に従属する場合の請求項4に記載の方法。
【請求項6】
誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含む組換え核酸分子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞。
【請求項7】
誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含む組換え核酸分子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させ、c-kit陽性である、非ヒトマスト細胞。
【請求項8】
患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうか、及び/又は患者のアレルゲンに対するアレルギーの重症度を判断する方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞は、請求項7に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
【請求項9】
前記マスト細胞の活性化を検出するステップは、メディエーターの放出を検出するステップ、表面マーカーの発現を検出するステップ、又は前記患者の血清試料中の前記アレルゲンに特異的なIgEの存在を示すpH変化を検出するステップを含み、任意に、前記表面マーカーは、リゾチーム関連膜糖タンパク質(LAMP-1、LAMP-2又はLAMP-3など)、CD203c、CD63又はCD107aであり、好ましくは、前記表面マーカーはCD107aである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アレルゲンにアレルギーがある患者を治療するために使用されている療法、将来使用される可能性がある療法、又は以前に使用された療法の有効性をモニタリングする方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む第1試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化の第1レベルを測定するステップと、
測定された前記第1レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞は、請求項10に記載の非ヒトマスト細胞であり、
任意に、前記基準レベルは、療法開始前に前記患者から取得された抗体を含む試料を使用して測定されたマスト細胞の活性化のベースラインレベルであり、
任意に、前記療法は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)である、方法。
【請求項11】
アレルゲン製剤の効力の測定方法であって、
マスト細胞を、前記アレルゲンに特異的なIgEとインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲン製剤の試料と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化レベルを測定するステップと、
任意に、測定された前記活性化レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞は、請求項10に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
【請求項12】
食品添加物又は薬剤候補のアレルゲン性スクリーニング方法であって、
マスト細胞を、被験者の抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記食品添加物又は薬剤候補と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞は、請求項10に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
【請求項13】
前記マスト細胞を、患者抗体を含む試料又はアレルゲンに特異的なIgEとインキュベートするステップと、前記マスト細胞を前記アレルゲン、アレルゲン製剤、食品添加物又は薬剤候補と接触させるステップとの間の洗浄ステップの非存在下で行われる、請求項8~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
患者の血清IgE濃度の測定方法であって、
マスト細胞を、前記患者からのIgEを含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップと
を含み、前記マスト細胞は、請求項10に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
【請求項15】
前記FcεRIαは、ヒトFcεRIα(huFcεRIα)であり、任意に、前記患者はヒトである、請求項1~5若しくは8~14のいずれか一項に記載の方法、又は請求項6若しくは7に記載の細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギー検査のアッセイに関する。本発明は、更に、細胞株及び上記アッセイに用いられるキット、並びに細胞株の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の推定によると、世界人口の約1/3は、アレルギー性過敏症を患っている。多くの患者にとって、アレルギーは、身体的・心理的健康状態の顕著な低下に関連しており、疾患活動性による生活の質の重大な低下につながる。効果的で個別化された治療オプションを提供するために、医師は、信頼性の高い確実な診断ツールに依存する。
【0003】
一般に、アレルギー診断は、複雑で面倒な多段階の手順である。これは、患者の病歴の検査、総免疫グロブリンE(IgE)抗体及びアレルゲン特異的IgE抗体のレベルの血清学的測定、及び様々なインビボアレルゲン皮膚プリックテスト(SPT)又は他のインビボアレルゲンチャレンジプロトコルを含む。また、測定された総IgE抗体及びアレルゲン特異的IgE抗体のレベルは、個人のアトピー状態に関する情報を提供するが、これらの値は、疾患活動性及び臨床症状にあまり相関しないことが多い。また、アレルゲン特異的IgE抗体の多様性及び親和性、アレルゲン特異的IgG抗体の存在などの、アレルギー反応の悪化又は抑制に関与する重要なパラメータは、臨床検査室の結果の解釈において無視されることが多い。
【0004】
時々、特定のアレルゲンに対する反応性を測定するために、患者の全血試料を用いた機能的好塩基球活性化試験(BAT)が行われる。このようなアッセイは、個人のアレルギー状態に関する重要な定量的及び機能的情報を提供するので有用であるが、専門の臨床検査室で数時間以内に処理されなければならない新鮮な全血の使用によって妨げられている。全血は、生物学的物質が不安定であるので、保存が不可能であるため、その即時分析は、大きな物流上の課題を伴う。もっと最近では、初代ヒト血液由来マスト細胞(即ち、MAT)に基づくアレルギーの診断検査が独立に複数のグループによって提案されている。このアプローチの全体的な目標は魅力的であるが、細胞の生成は、面倒で、2ヶ月以上の長期培養期間を必要とする。これらの興味深い最近の進展にもかかわらず、原因となるアレルゲンに対する機能的反応性を予測するための、便利で、安全で、標準化された信頼性の高い診断アッセイは、まだ得られていない。
【0005】
アレルギー患者は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)を受けるように勧められることが多く、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)は、現在アレルギー治療に利用できる少数の疾患修飾介入の1つであると報告されている。AITでは、一定の維持用量(アレルゲンに依存する)に達するまで、増加する用量のアレルゲンを患者に投与する(用量増加段階)。皮下AIT(SCIT)プロトコルでは、患者は、最初の用量増加段階の後、3~5年間にわたって毎月にアレルゲンの注射を受ける。AITについて、アレルゲン特異的保護IgGの誘導などの、様々な分子機構及び細胞機構が説明されてきたが、なぜ一部の患者が他の患者よりも治療によく反応するかは、依然として不明のままである。実際に、最近のピーナッツ脱感作研究で評価されたように、AIT完了1年後にアレルゲンに対する持続的な無反応性を示す患者は、わずか13%であった。現在、患者が治療に反応しているかどうか、及びいつ反応しているかを評価するために利用できる適切な読み取りシステムがない。したがって、医師は、通常、AIT後の無反応性の程度を測定するためにインビボアレルゲンチャレンジ試験を行うが、この試験は、患者にとって不快であり、患者が治療に反応したことがなかった場合にアレルギー反応を誘発するリスクがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、
誘導ホメオボックス遺伝子を含む核酸分子を、非ヒト動物に由来し、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された骨髄系前駆細胞に導入するステップと、
前記核酸分子を含む細胞を選択するステップと
を含む、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の製造方法が提供される。
【0007】
前記核酸分子は、組換え体であってもよい。
【0008】
本発明の第2態様によれば、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養するステップを含み、前記条件的不死化マスト細胞前駆細胞が誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を更に含み、前記条件的不死化マスト細胞前駆細胞が前記誘導因子の非存在下で培養される、マスト細胞の調製方法が提供される。
【0009】
マスト細胞を調製するために使用される非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、本発明の第1態様の方法で調製されたものであってもよい。
【0010】
第3態様では、本発明は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を提供する。前記ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれてもよい。
【0011】
非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、本発明の第1態様の方法によって取得されてもよい。
【0012】
本発明の第4態様では、本発明の第3態様に係る非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の集団を含む組成物が提供される。前記組成物は、前記ホメオボックス遺伝子の発現を制御する誘導因子を更に含んでもよい。
【0013】
本発明の第5態様によれば、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる、非ヒトマスト細胞が提供される。前記ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれてもよい。
【0014】
前記マスト細胞は、本発明の第2態様に係る方法によって取得されてもよい。
【0015】
本発明の第6態様によれば、本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞の集団を含む組成物が提供される。
【0016】
更なる態様では、本発明は、患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうか、及び/又は患者のアレルゲンに対するアレルギーの重症度を判断する方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞は、本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法を提供する。
【0017】
更なる態様では、本発明は、アレルゲンにアレルギーがある患者を治療するために使用されている療法、将来使用される可能性がある療法、又は以前に使用された療法の有効性のモニタリング方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む第1試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化の第1レベルを測定するステップと、
測定された前記第1レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞は、本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法を提供する。
【0018】
前記療法は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)であってもよい。
【0019】
前記方法は、抗アレルギー治療薬を必要とする患者に投与される抗アレルギー治療薬の有効性をモニタリングする方法であってもよい。前記抗アレルギー治療薬は、抗IgE薬であってもよい。いくつかの実施形態では、抗アレルギー治療薬は、保護IgGを誘導する薬剤である。
【0020】
本発明の別の態様では、アレルゲン製剤の効力の測定方法であって、
マスト細胞を、前記アレルゲンに特異的なIgEとインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲン製剤の試料と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化レベルを測定するステップと、
任意に、測定された前記活性化レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0021】
本発明の更なる態様では、食品添加物又は薬剤候補のアレルゲン性スクリーニング方法であって、
マスト細胞を、被験者の抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記食品添加物又は薬剤候補と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、患者の血清IgE濃度の測定方法であって、
マスト細胞を、患者からのIgEを含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップと
を含み、前記マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0023】
いくつかの実施形態では、前記方法は、前記試料中の総IgE濃度を測定するためのものである。他の実施形態では、前記方法は、前記試料中のアレルゲン特異的IgEの濃度を測定するためのものである。
【0024】
本発明は、
本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞と、
前記マスト細胞の活性化を検出する試薬と
を含む、アレルギー検査用キットを更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
これより、添付の図面を参照しながら、例によって本発明を説明する。
【0026】
図1A図1A~Cは、条件的不死化Hoxb8マスト細胞前駆細胞の生成と分化を示す。図1Aは、前駆細胞株の生成と分化の概略図である。
図1B図1A~Cは、条件的不死化Hoxb8マスト細胞前駆細胞の生成と分化を示す。図1Bは、誘導因子4-OTHを除去した場合の選択されたHoxb8マスト細胞前駆細胞株のフローサイトメトリー評価を示す。細胞は、最初に側方散乱光及び前方散乱光でゲートされ(上の列)、続いてc-kit/huFcεRIαの発現のために分析される(下の列)。
図1C図1A~Cは、条件的不死化Hoxb8マスト細胞前駆細胞の生成と分化を示す。図1Cは、トルイジン染色による、分化0、2、4及び6日目の選択されたHoxb8マスト細胞前駆細胞株の形態学的分析を示す。
図2A図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Aは、ヒト組換えIgEの非存在下又は存在下(一晩)の細胞あたりのhuFcεRIα受容体の絶対数を示す。図2Aのデータは、平均値±SEMとして示されている。
図2B図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Bは、フローサイトメトリーによって評価された、分化したHoxb8マスト細胞へのヒト組換えIgEの用量依存的結合を示す。図2Bのデータは、平均値±SEMとして示されている。
図2C図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Cは、25人のアレルギー患者の血清について、Hoxb8マスト細胞に基づいて、又はシングルプレックスイムノアッセイによって測定された総血清IgE間の相関性を示す。図2Cの統計分析は、標準線形回帰モデルを用いて行われた。
図2D図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Dは、フローサイトメトリーによって測定された、IgE用量依存的なHoxb8マスト細胞の抗原媒介活性化の代表的な等高線図を示す。
図2E図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Eは、IgE用量依存的なHoxb8マスト細胞の抗原媒介活性化の定量化を示す。図2Eのデータは、平均値±SEMとして示されている。
図2F図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Fは、採取されたHoxb8マスト細胞に5日分化した後の播種された前駆細胞の絶対細胞数を示す。
図2G図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Gは、異なるアレルギーエフェクター細胞の細胞増殖の経時的な比較を示す。
図2H図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Hは、前駆細胞を5週間培養した後の、IgE用量依存的なHoxb8マスト細胞の抗原媒介活性化の定量化を示す。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。図2Hのデータは、平均値±SEMとして示されている。
図2I図2A~Iは、分化6日後のHoxb8マスト細胞の機能的特性評価を示す。図2Iは、抗原活性化Hoxb8マスト細胞について、放出されたβ-ヘキソサミニダーゼと細胞表面活性化マーカーCD107aとの相関性を示す。図2Iの統計分析は、標準線形回帰モデルを用いて行われた。
図3A図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Aでは、ピーナッツ抽出物のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3B図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Bでは、組換えFel d1のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3C図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Cでは、イエロージャケットのハチ毒のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3D図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Dでは、ミツバチの毒のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3E図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Eでは、イエダニ抽出物のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3F図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Fでは、シラカバ花粉抽出物のアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図3G図3A~Gは、Hoxb8マスト細胞に対するアレルギー患者血清の検査である。アレルギー患者の所定の血清を用いて、細胞を一晩感作した。図3Gでは、オオアワガエリのアレルゲン源について、フローサイトメトリーによって測定された用量依存的活性化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図4A図4A~Dは、Hoxb8マスト細胞によるアレルゲン特異的免疫療法のモニタリングである。図4Aでは、ヒト組換えNIP特異的IgE(sIgE)のみ、又はヒト組換えNIP特異的IgE(sIgE)とIgG(sIgG)の組み合わせを含む人工血清を用いて細胞を一晩感作し、フローサイトメトリーによって測定された細胞の用量依存的活性化が示される。
図4B図4A~Dは、Hoxb8マスト細胞によるアレルゲン特異的免疫療法のモニタリングである。図4Bでは、少なくとも36ヶ月AITを受けた3人のオオアワガエリアレルギー患者からの血清と、プラセボ治療を受けている1人患者の血清とを用いて細胞を一晩感作し、フローサイトメトリーによって測定された細胞の用量依存的活性化が示される。
図4C図4A~Dは、Hoxb8マスト細胞によるアレルゲン特異的免疫療法のモニタリングである。図4Cでは、AITを受けた12ヶ月後の2人のオオアワガエリアレルギー患者からの未処理血清又はIgG除去血清(実線及び破線)を用いて細胞を一晩感作した。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。矢印は、曲線のシフトを示す。
図4D図4A~Dは、Hoxb8マスト細胞によるアレルゲン特異的免疫療法のモニタリングである。図4Dでは、分化したHoxb8マスト細胞は、コントロール抗体(アイソタイプ、ライトグレー)又は抗FcγRIIb抗体(抗CD32b、ダークグレー)で染色された。フローサイトメトリー分析は、幾何平均蛍光強度(geom.MFI)を備えたヒストグラム表現で示される。
図5A図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Aでは、基本的なワークフローの代替実施形態の概略図が示される。
図5B図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Bでは、バーコーディングされプールされた細胞を取得した後のデコンボリューションゲーティング戦略が示される。最初に、細胞は、側方散乱光及び前方散乱光でゲートされる。次に、Pacific Blueの標識強度に基づいて、4つの異なる細胞集団(1~4)が同定される。これら4つの集団のそれぞれは、Alexa Fluor 488の標識強度とAlexa Fluor 647の標識強度の組み合わせに基づいて、9つの個別の亜集団に更に細分することができる。
図5C図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Cでは、個別にバーコーディングされた細胞集団(A~F)を、異なる濃度のヒト組換えNIP特異的IgEで感作した。細胞をプールし、NIP7BSA抗原で活性化した。取得後、デコンボリューション分析を行って、個別の細胞亜集団を同定し、細胞表面活性化マーカーとしてCD107aを定量化することにより活性化状態を評価した。
図5D図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Dでは、このハイスループットアプローチにおける、IgE用量依存的なHoxb8マスト細胞のデコンボリューションされた抗原媒介活性化の定量化が示される。非線形回帰曲線は、測定データ点に当てはめられた。
図5E図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Eでは、個別にバーコーディングされた細胞集団(1A~4H)を、8人の異なるオオアワガエリアレルギー患者からの血清で感作した。細胞を4つの別々のチューブにプールし、4つの濃度のアレルゲンで活性化した。プールして取得した後、デコンボリューション分析を行って、各個別の細胞亜集団を同定し、細胞表面活性化マーカーとしてCD107aを定量化することにより活性化状態を評価した。
図5F図5A~Fは、細胞バーコーディングを使用したハイスループットスクリーニングである。図5Fでは、各個別の患者試料のHoxb8マスト細胞のデコンボリューションされた用量依存的アレルゲン媒介活性化の定量化が示される。
図6A図6A~Dは、細胞バーコーディングを使用した複数のアレルゲンのハイスループットスクリーニングである。個別にバーコーディングされた細胞集団を、多感作患者からの2つの血清で感作した(図6A及び図6B)。異なる組換えアレルゲン又はアレルゲン抽出物で細胞を刺激した。プールして取得した後、デコンボリューション分析を行って、各個別の細胞亜集団を同定し、細胞表面活性化マーカーとしてCD107aを定量化することにより活性化状態を評価した。
図6B】細胞バーコーディングを使用した複数のアレルゲンのハイスループットスクリーニングである。個別にバーコーディングされた細胞集団を、多感作患者からの2つの血清で感作した(図6A及び図6B)。異なる組換えアレルゲン又はアレルゲン抽出物で細胞を刺激した。プールして取得した後、デコンボリューション分析を行って、各個別の細胞亜集団を同定し、細胞表面活性化マーカーとしてCD107aを定量化することにより活性化状態を評価した。
図6C】細胞バーコーディングを使用した複数のアレルゲンのハイスループットスクリーニングである。図6Cでは、患者1からの血清を用いた、個別のアレルゲンに対するHoxb8マスト細胞のデコンボリューションされた用量依存的アレルゲン媒介活性化の定量化が示される。矢印は、細胞の活性化を引き起こした同定されたアレルゲンを示す。
図6D】細胞バーコーディングを使用した複数のアレルゲンのハイスループットスクリーニングである。図6Dでは、患者2からの血清を用いた、個別のアレルゲンに対するHoxb8マスト細胞のデコンボリューションされた用量依存的アレルゲン媒介活性化の定量化が示される。矢印は、細胞の活性化を引き起こした同定されたアレルゲンを示す。
図7】Hoxb8マスト細胞活性化感度の最適化を示すグラフである。分化したHoxb8マスト細胞を、分化の5日目にJW8-IgEで感作し、6日目にNIP7-BSAでチャレンジする(黒丸)か、又は分化の6日目にJW8-IgEで感作し、7日目にNIP7-BSAでチャレンジした(黒三角形)。感作前に1日の休止期を追加すると、細胞の活性化感度が2.8倍増加する(活性化曲線の左シフト)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
定義
特に明記しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下に示す意味を有する。
【0028】
「骨髄系前駆細胞」は、少数の細胞種のみに分化する前駆細胞の一種である。骨髄系前駆細胞は、赤血球、血小板、顆粒球、単球マクロファージ、樹状細胞、マスト細胞及び破骨細胞の前駆体である。
【0029】
「マスト細胞」は、成体哺乳動物の事実上全ての血管新生組織に存在する細胞である。マスト細胞は、その表面に、IgEに対する高親和性受容体(FcεRI)を発現させ、該受容体は、IgE及び特定の抗原によって活性化されて、ヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、セリンプロテアーゼ、及び様々なサイトカイン、ケモカイン、増殖因子などのメディエーターを放出することができる。このように、マスト細胞は、IgE関連アレルギー疾患の重要なエフェクター細胞である。成熟マスト細胞は、c-kit及びFcεRIである。
【0030】
マスト細胞は、骨髄を出る前に成熟せず、未熟マスト細胞前駆細胞として血管系を循環することが見出されている。したがって、マスト細胞前駆細胞は、インビボで増殖因子の影響下で成熟マスト細胞に分化する成熟マスト細胞の前駆体である。本発明の文脈において、「マスト細胞前駆細胞」は、特定の条件下で成熟マスト細胞に分化することができる細胞である。
【0031】
語句「高親和性IgE受容体(FcεRI)」は、アレルギー反応に関与する抗体アイソタイプである免疫グロブリンE(IgE)のFc領域の受容体を指す。FcεRIは、IgEのε重鎖のFc部分に結合する四量体受容体複合体である。これは、1つの細胞外α鎖(FcεRIα)、1つのβ鎖(FcεRIβ)、及び2つのγ鎖(FcεRIγ)の4つのポリペプチド鎖からなる。α鎖の細胞外結合ドメインは、高親和性でIgEのFc領域に結合するが、他の鎖は、細胞内への初期架橋シグナルの伝達を担う。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、抗体全体、二量体抗体、三量体抗体、及び多量体抗体;二重特異性抗体;キメラ抗体;組換え抗体及び改変抗体並びにその断片を含む、全ての抗体及びその抗原結合断片を含むものとして理解されるであろう。したがって、用語「抗体」は、抗原結合領域を有する任意の抗体様分子を指すために使用され、該用語は、抗原結合ドメインを含む抗体断片を含み、抗原結合ドメインは、例えば、Fab’、Fab、F(ab’)2、単一ドメイン抗体(DAB)、TandAbsダイマー、Fv、scFv(一本鎖Fv)、dsFv、ds-scFv、Fd、鎖状抗体、ミニボディーズ、ダイアボディーズ、二重特異性抗体断片、バイボディ、トリボディ(scFv-Fab融合体、それぞれ、二重特異性又は三重特異性);sc-ダイアボディ;カッパ(ラムダ)ボディーズ(scFv-CL融合体);二重特異性T細胞結びつけ抗体(BiTE)(T細胞を引きつけるためにscFvとscFvが一列に並んでいる);二重可変ドメイン抗体(DVD)-Ig(二重特異性フォーマット);小型イムノプロテイン(SIP)(一種のミニ抗体);SMIP(「小型モジュラー免疫医薬」scFv-Fcダイマー);DART(二本鎖安定化ダイアボディ「二重親和性再標的化(Dual Affinity ReTargeting)」);1つ以上のCDRを含む小抗体模倣物などを含む。
【0033】
マスト細胞前駆細胞の製造
本発明の第1態様によれば、
誘導ホメオボックス遺伝子(inducible homeobox gene)を含む核酸分子を、非ヒト動物に由来し、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された骨髄系前駆細胞に導入するステップと、
上記核酸分子を含む細胞を選択するステップと
を含む、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の製造方法が提供される。
【0034】
上記核酸分子は、組換え核酸分子であってもよい。
【0035】
「異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)」により、FcεRIα遺伝子をコードする遺伝子は、骨髄系前駆細胞が由来する非ヒト動物とは異なる種に由来することが理解される。換言すれば、非ヒト動物は、FcεRIα遺伝子がトランスジェニックされる。いくつかの実施形態では、FcεRIα遺伝子は、マスト細胞が本明細書に記載の診断アッセイ及びモニタリングアッセイに使用される種に由来する。いくつかの実施形態では、FcεRIα遺伝子は、ヒトFcεRIα(寄託番号:NM_002001.4、遺伝子ID:2005)である。例えば、骨髄系前駆細胞は、マウス細胞であってもよく、FcεRIαは、ヒトFcεRIαであってもよい。ヒトFcεRIαがトランスジェニックされ、マウスFcεRIα遺伝子がノックアウトされたマウスは、Dombromoviczら、J.Immunol.1996、15;157(4):1645-51に記載されており、Jackson Laboratory(ジャクソン・ラボラトリー)から取得することができる(株B6.Cg-Fcer1atm1Knt Tg(FCER1A)1Bhk/J;在庫番号:010506)。
【0036】
ホメオボックス遺伝子は、HoxB8、HoxA9、Lhx2(LH2)及びTLX1(Hox11)から選択されてもよい。Lhx2(LH2)及びTLX1(Hox11)は、多能性造血前駆細胞を不死化する可能性を有することが示されている(Pintoら、EMBO J、1998年10月1日;17(19):5744-56;Zhangら、Oncogene 1999年4月1日;18(13):2273-9)。いくつかの実施形態では、ホメオボックス遺伝子は、HoxB8である。哺乳類由来のHox遺伝子は、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態では、HoxB8遺伝子は、マウスHoxB8である。マウスHoxB8遺伝子は、GenBankの寄託番号NM_010461(遺伝子ID:15416)(マウスHoxB8タンパク質、寄託番号:NP_034591、をコードする)で入手可能である。
【0037】
ホメオボックス遺伝子は、核酸分子内に含まれる。核酸分子は、組換え核酸分子であってもよい。組換え核酸分子は、誘導プロモーターに作動可能に連結されたホメオボックス遺伝子を含んでもよい。例えば、核酸分子は、ホメオボックス遺伝子を含む外因性の誘導発現カセットを含んでもよい。骨髄系前駆細胞へのホメオボックス遺伝子の導入は、宿主細胞に核酸を導入する任意の従来の組換え技術を使用して達成することができ、該技術は、形質導入、トランスフェクション又はエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。
【0038】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ベクター(例えば、コスミド、プラスミド、又はウイルスベクター)などの、トランスフェクションに適した任意のタイプの分子であってもよい。
【0039】
したがって、本発明の非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞及び非ヒトマスト細胞は、外因性ホメオボックス遺伝子、即ち、既に存在している染色体ホメオボックス遺伝子に加えて、又はその代わりに、細胞に導入されたホメオボックス遺伝子を含むことを理解されたい。いくつかの実施形態では、核酸分子内に含まれるホメオボックス遺伝子は、異種であり、即ち、マスト細胞又はマスト細胞前駆細胞が由来する種とは異なる種に属する。したがって、本明細書における「ホメオボックス遺伝子」への言及は、特に明記しない限り、細胞染色体に存在し得る天然のホメオボックス遺伝子ではなく、核酸分子(例えば、組換え核酸分子)を介して骨髄系前駆細胞に導入されるホメオボックス遺伝子を指す。
【0040】
いくつかの実施形態では、核酸分子は、ウイルスベクターである。異種遺伝子を細胞(例えば、哺乳類細胞)に導入するための適切なウイルスベクターは、当業者に公知であり、単純ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)、又はレトロウイルスベクター(例えば、HIVレトロウイルスベクター、レンチウイルス、VL30ベクター、MSCVレトロウイルスベクター、又はハーベイマウス肉腫ベクターが挙げられるが、これらに限定されない)を含む。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルス粒子である。
【0041】
マウスHoxb8遺伝子をレンチウイルス系にサブクローニングし、ウイルス粒子を生成する方法は、Salmanidisら、Cell Death Differ 2013;20:1370-80、及びGurzelerら、Allergy 2013;68:604-13に記載されている。
【0042】
ウイルスベクターを宿主細胞に導入する方法(即ち、形質導入)は、当業者に公知である。いくつかの実施形態では、細胞は、スピン感染によってトランスフェクトされてもよい。
【0043】
核酸分子を含む細胞だけが生き残るように、骨髄系前駆細胞に選択圧をかけることによって、核酸分子が成功して導入された細胞(例えば、形質導入された細胞)を選択することができる。例えば、核酸分子は、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を更に含んでもよく、この場合、抗生物質の存在下で細胞を培養することによって(例えば、抗生物質を含む培地中で細胞を培養することによって)、核酸分子を含む細胞を選択することができる。抗生物質選択を行うと、核酸分子を含まない細胞を除去することができるため、より均質な(それでもポリクローナルな)細胞集団が得られる。
【0044】
いくつかの実施形態では、細胞は、抗生物質を含む培地中で培養される。適切な抗生物質は、ピューロマイシン及びブラストサイジンを含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、抗生物質は、核酸分子の導入(例えば、形質導入)の1、2、3、4又は5日、好ましくは2~4日後に培地に添加される。培地中の抗生物質の存在は、生存細胞(即ち、形質導入された細胞)が増殖するまで維持されてもよい。
【0045】
該方法によって製造されたマスト細胞前駆細胞は、条件的に不死化される。「不死化」により、細胞が無限に増殖できることが理解される。したがって、細胞は、長期間培養で維持することができる。
【0046】
「条件的不死化」により、ホメオボックス遺伝子(例えば、核酸分子に存在するホメオボックス遺伝子)が構成的に発現せず、その代わりに、遺伝子の発現が外因性薬剤によって制御されることが理解される。当業者に知られているように、遺伝子の条件的発現は、例えば、遺伝子が誘導因子の存在下で発現するように誘導プロモーターの下流に遺伝子を挿入することによって達成することができる。ホメオボックス遺伝子の発現を制御するために、「Tet-on」又は「Tet off」系などの任意の適切な誘導発現系を使用することができる。天然のhoxb遺伝子系は、マウスのマスト細胞に存在するが、これらのhoxb遺伝子は、マスト細胞前駆細胞にも、最終分化した成熟マスト細胞にも発現しないことが以前に証明された。hoxb遺伝子の発現は、胚発生及び造血幹細胞に限定され、より多くの系統コミットされた前駆細胞で抑制されることが知られている。したがって、本発明のマスト細胞若しくはマスト細胞前駆細胞、又はそれらが由来する骨髄系前駆細胞に存在する任意の天然の染色体ホメオボックス遺伝子は、構成的にも内部誘導剤によっても発現しないことが当業者に理解される。したがって、核酸分子を介して細胞に導入されるホメオボックス遺伝子のみが、本発明の細胞において発現することができる。
【0047】
したがって、いくつかの実施形態では、ホメオボックス遺伝子の発現は、誘導因子によって制御される。核酸分子を含む骨髄系前駆細胞は、誘導因子の存在下で培養されてもよい。例えば、培地は、誘導因子を含んでもよい。これにより、ホメオボックス遺伝子の発現を引き起こして、細胞を不死化する。いくつかの実施形態では、誘導因子は、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)である。この誘導因子は、発現系pF-5xUAS-gene_of_interest-GEV16とともに使用されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、核酸分子を含む細胞を培養するために使用される培地は、インターロイキン3(IL-3)を含む。
【0049】
したがって、核酸分子を骨髄系前駆細胞に導入した後、IL-3及び誘導因子(例えば、4-OHT)を含む培地中で細胞を培養することができる。上述したように、形質導入された細胞を選択するために、抗生物質を培地に添加してもよい(例えば、1~5日後、好ましくは2~4日後)。
【0050】
そして、優良細胞株を選択するために、上述した方法によって取得された非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞に対して、それらの増殖、生存能力、及び/又は機能的性能特性の検査を行うことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、該方法は、条件的不死化マスト細胞前駆細胞の単一細胞希釈を行い、その後にクローン増殖を行って、モノクローナルの条件的不死化マスト細胞前駆細胞株を取得するステップを更に含む。
【0052】
条件的不死化マスト細胞前駆細胞を調製するために使用される骨髄系前駆細胞は、
以前に非ヒト動物から取得された全骨髄を用意し、
その骨髄の造血前駆細胞を濃縮し、
IL-3の存在下でその造血前駆細胞を培養する
ことにより、非ヒト動物に由来してもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、該方法は、動物から全骨髄を取得するステップを更に含んでもよい。
【0054】
系統除去カクテルを使用して磁気細胞分離によって骨髄の造血前駆細胞を濃縮することができる。当業者に知られているように、該プロセスは、当該技術分野において、コミットされた白血球集団(即ち、T細胞、B細胞、NK細胞、血小板などの成熟造血細胞)を除去するために一般に使用されることにより、前駆細胞などの希少細胞集団を濃縮することを可能にする。BD Biosciences Europe(ビーディー・バイオサイエンシーズ・ヨーロッパ)からのBD IMagセットなどの系統細胞除去キットが市販されている。
【0055】
濃縮するステップの後、残っている造血前駆細胞をIL-3の存在下でインキュベートする。少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、又は少なくとも72時間インキュベートしてもよい。いくつかの実施形態では、最長7日間インキュベートする。好ましくは、約48時間インキュベートする。好ましくは、IL-3は、骨髄系前駆細胞が由来する種と同じ種に由来する。例えば、骨髄系前駆細胞がマウスに由来する実施形態では、IL-3は、好ましくは、マウスIL-3である。造血前駆細胞は、マウスIL-3の供給源となるWEHI-3B細胞馴化培地中で培養されてもよい。
【0056】
非ヒト動物は、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、イヌ、霊長類、ウサギ、又は齧歯動物などの任意の適切な動物であってもよい。いくつかの実施形態では、非ヒト動物は、齧歯動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット又はアレチネズミ)である。非ヒト動物は、マウスであってもよい。
【0057】
したがって、本発明は、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を提供する。該前駆細胞は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含む核酸分子(例えば、組換え核酸分子)を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる。非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、本明細書に記載の方法によって取得されてもよい。
【0058】
また、本発明によれば、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の集団を含む組成物が提供される。該組成物は、ホメオボックス遺伝子の発現を制御する誘導因子を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、該組成物は、IL-3を含む。該組成物は、細胞を維持する適切な培地、緩衝液及び/又は塩を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、該組成物は、1つ以上のサイトカイン(例えば、IL-3に加えて)、タンパク質、及び/又は増殖因子を含んでもよい。例えば、該組成物は、IP-10、MIP-1a、MIP-2、VEGF、IFNB-1、IL-16、IL-20、及びMCP-5のうちの1つ又は複数(又は全て)を含んでもよい。
【0059】
誘導ホメオボックス遺伝子により、本発明の条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、高い複製率及びほぼ無制限の再生能力を有する。有利には、これは、オンデマンドの分化を可能にして、数日以内に大量のマスト細胞を製造する。したがって、本発明は、優れた自己再生能力を特徴とする、条件的不死化マスト細胞前駆細胞株を提供する。本発明の前駆細胞は、自己再生能力を失うことなく数か月培養し続けることができる。前駆細胞は、保存のために(例えば、液体窒素を使用して)凍結することもでき、これにより、事実上無制限の数のマスト細胞を生成できる前駆細胞のストックを確保する。
【0060】
マスト細胞の製造
分化したマスト細胞を製造するために、本発明の非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で培養することができる。誘導因子の非存在下で、前駆細胞は、ホメオボックス遺伝子を発現させなくなり、骨髄系統に沿って分化する。
【0061】
したがって、マスト細胞の調製方法は、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養するステップを含み、該条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含む核酸分子(例えば、組換え核酸分子)を更に含み、該条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で培養される。いくつかの実施形態では、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、WEH3b細胞馴化培地中で培養される。
【0062】
Guerzelerら(Allergy 68 (2013) 604-613)は、IL-3の存在下でHoxb8を使用して骨髄系前駆細胞を条件的に不死化するステップを含む方法を記載している。しかしながら、Guerzelerらは、該方法を使用したc-kit陰性の好塩基球の生成のみを報告している。
【0063】
いくつかの実施形態では、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で少なくとも5日間、又は少なくとも6日間培養される。
【0064】
いくつかの実施形態では、マスト細胞の調製方法は、
0日目に、IL-3を含むが誘導因子を欠いている培地に、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を添加するステップと、
5日目又は6日目に、(成熟)マスト細胞を採取するステップと
を含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、6日目にマスト細胞を採取する。驚くべきことに、本発明者らは、分化したマスト細胞を採取するのを6日目まで待つと、抗原チャレンジ時の活性化に対する細胞の感度を高めることができることを見出した。
【0066】
いくつかの実施形態では、該方法は、マスト細胞を採取する前に培地を交換するステップを含む。例えば、マスト細胞を採取する日の前日に培地を交換してもよい。
【0067】
いくつかの実施形態では、該方法は、5日目に培地を交換するステップと、(誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で)少なくとも2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、30、又は36時間細胞を培養し続けるステップと、を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、該方法は、5日目に培地を交換するステップと、6日目に細胞を採取するステップと、を含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、該方法は、
0日目に、IL-3を含むが誘導因子を欠いている第1培地に、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を添加するステップと、
5日目に、第1培地から細胞を取り出して、IL-3を含むが誘導因子を欠いている第2培地に細胞を添加するステップと、
6日目に、(成熟)マスト細胞を採取するステップと
を含む。
【0070】
第1培地と第2培地は、異なってもよく、同じであってもよい。いくつかの実施形態では、第2培地中のIL-3の濃度は、第1培地中のIL-3の濃度よりも高い。第2培地中のIL-3の濃度は、第1培地中のIL-3の濃度よりも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、又は100倍高くてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、細胞を、第1培地から取り出した後に第2培地に添加する前に洗浄する。
【0072】
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、細胞を、本明細書に記載の条件などの、当業者に公知の適切な条件下で培養することが理解される。例えば、37℃、任意に5%CO下でマスト細胞前駆細胞を培養してもよい。
【0073】
上述したように、マスト細胞が生成されるモノクローナル細胞株を生成するために、単一の非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞のクローン増殖を行ってもよい。したがって、マスト細胞を利用する本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、マスト細胞は、モノクローナルであってもよい。或いは、マスト細胞は、ポリクローナルであってもよい。
【0074】
細胞と特性
本発明は、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞(以下、「前駆細胞」とも称する)を提供する。前駆細胞は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる。非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、本明細書に記載の方法によって取得されてもよい。ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれてもよい。
【0075】
本発明は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる、非ヒトマスト細胞を更に提供する。マスト細胞は、本明細書に記載の方法によって取得されてもよい。ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれてもよい。
【0076】
また、本明細書に記載される非ヒトマスト細胞の集団を含む組成物が提供される。いくつかの実施形態では、該組成物は、IL-3を含む。該組成物は、細胞を維持する適切な培地、緩衝液及び/又は塩を更に含んでもよい。
【0077】
したがって、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞及びそれに由来する非ヒトマスト細胞は両方とも、細胞表面にFcεRIαを発現させる。FcεRIαの発現は、例えば本明細書に記載の方法を使用して、抗FcεRIα抗体で細胞を染色することによって確認することができる。
【0078】
マスト細胞は、多くの方法によって、それらが由来する前駆細胞から区別することができる。例えば、マスト細胞は、c-kit(CD117)の発現によって同定することができる。前駆細胞のマスト細胞への分化中に、誘導因子の非存在下で前駆細胞を培養することにより、c-kit発現が時間の経過とともに徐々に増加することが観察された。したがって、本発明に係る非ヒトマスト細胞の集団では、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%のマスト細胞は、c-kit陽性であってもよい。いくつかの実施形態では、集団(例えば、モノクローナル集団)中の100%のマスト細胞は、c-kit陽性である。したがって、本明細書に記載されるように、条件的不死化マスト細胞前駆細胞の分化から生じるマスト細胞は、c-kit及びFcεRIαの二重陽性であると同定することができる。マスト細胞は、細胞表面に、FcεRIα(例えば、ヒトFcεRIα)とc-kitの両方が均一に分布している可能性があり、c-kit発現は、本明細書に記載の方法などの周知の技術を使用して、抗c-kit(例えば、抗マウスc-kit)抗体で細胞を染色することによって検出することができる。
【0079】
条件的不死化マスト細胞前駆細胞が分化すると、細胞は、徐々にHoxb8のタンパク質の発現を失う。これにより、前駆細胞(Hoxb8のタンパク質の発現レベルが高い)と分化したマスト細胞(Hoxb8が検出されないか又はHoxb8の発現レベルが低い)とは、明確に区別される。Hoxb8の発現(例えば、ウェスタンブロットを使用して検出される)は、分化後の約2日目までに検出できなくなる可能性がある。
【0080】
分化したマスト細胞は、更に細胞あたりのFcεRIα(例えば、ヒトFcεRIα)受容体の数を特徴とすることができる。IgE感作の非存在下で、本発明のマスト細胞は、例えば、細胞あたり5000~24000個の受容体(rpc)、10000~22000rpc、15000~20000rpc、又は17000~19000rpc、例えば、約18000~18500rpcを示し得る。マスト細胞をIgE(例えば、組換えヒトIgE)とインキュベートすると、細胞の受容体の量が4倍~6倍、例えば、約5倍増加する可能性がある。IgE感作の存在下で、本発明のマスト細胞は、70000~120000rpc、80000~110000rpc、又は85000~110000rpc、例えば、約90000rpcを示し得る。
【0081】
本発明者らは、条件的不死化マスト細胞前駆細胞の受容体の数がマスト細胞の受容体の数よりも多いことを見出した。IgE感作の非存在下で、本発明のマスト細胞前駆細胞は、細胞あたり24000個を超え、28000個を超え、30000個を超え、又は32000個を超える受容体(rpc)、例えば、約30000~約38000rpc又は約32000~約36000rpc(例えば、約35000rpc)を示す。IgE感作の存在下で、本発明のマスト細胞前駆細胞は、90000rpcを超え、95000rpcを超え、又は100000rpcを超え、例えば、約98000~約110000rpc又は約10000~約108000rpc、例えば、約106000rpcを示す。
【0082】
分化したマスト細胞は、形態によって同定することもできる。細胞の形態学的分析は、(例えば、トルイジンブルーを使用して)細胞を染色することによって、及び/又は、例えば顕微鏡法を使用して、染色された細胞を画像化することによって行われてもよい。このような方法は、当業者に公知であり、以下に更に詳細に説明される。マスト細胞の表現型は、マスト細胞が由来する前駆細胞と比較して、細胞粒度及び異染性要素が増加することを特徴とする。例えば、分化したマスト細胞は、顆粒の蓄積によって同定され、顆粒は、染色されると、ピンク色又は紫色の点として観察される。親の前駆細胞にはそのような顆粒がない。
【0083】
マスト細胞は、更に、β-ヘキソサミニダーゼ、ヒスタミン、及び/又はマスト細胞プロテアーゼ(例えば、マウスマスト細胞プロテアーゼ1、4及び5)の発現及び/又は分泌を検出することによって同定されてもよい。これらの分子は、マスト細胞の成熟に伴ってますます発現し(そして顆粒に蓄えられ)、活性化されると、放出される。マスト細胞プロテアーゼの発現は、(例えば、qt-PCR、RNA配列決定又はマイクロアレイを使用して)対応するmRNAを検出することによって、又は(例えば、細胞溶解物のウェスタンブロット、ELISA、免疫蛍光法又は顕微鏡法を使用して)タンパク質自体を検出することによって検出されてもよい。
【0084】
有利には、本発明の非ヒトマスト細胞は、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、又は少なくとも97%(例えば、約95%又は約97%)の最大活性化を示し得る。最大活性化は、本明細書に記載の方法によって決定されてもよい。例えば、最大活性化は、チャレンジ時に細胞によって放出されるβ-ヘキソサミニダーゼ(又は、ヒスタミン、マスト細胞プロテアーゼ、又はロイコトリエンなどの他の適切なメディエーター)の量によりβ-ヘキソサミニダーゼ(又は他のメディエーター)の総量(放出量とチャレンジ後の細胞内の残留量の和)のパーセンテージとして決定されてもよい。或いは、最大活性化は、例えば、フローサイトメトリーにより、脱顆粒時に露出する細胞表面マーカー(CD107aなど)を定量化することによって決定されてもよい。
【0085】
本発明の条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、以前に特徴付けられた前駆細胞株よりも速く増殖することが観察された。本発明の条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、37℃で培養される場合、35時間未満、32時間未満、又は30時間未満(例えば、約29時間)の倍増時間を有してもよい。10%FCS Sera Pro (Pan Biotech(パン・バイオテック))、10%WEHI-3b上清、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(100×のペニシリン/ストレプトマイシン、Gibco(ギブコ))及び100nMの4-ヒドロキシタモキシフェン(Sigma(シグマ))が追加されたRPMI-1640培地AQmedia(Sigma)などの適切な培地中で、5%COで細胞を培養してもよい。更に、本発明のマスト細胞前駆細胞の本発明の成熟マスト細胞への分化は、以前に記載された骨髄由来マスト細胞よりもはるかに速い。成熟マスト細胞への分化は、14日間未満、10日間未満、又は8日間未満しかかからなくてもよい。例えば、本発明のマスト細胞前駆細胞から成熟マスト細胞への分化は、約5日間又は6日間かかってもよい。対照的に、骨髄由来細胞の分化に関与する従来技術の方法は、マスト細胞を製造するのに数週間がかかる。
【0086】
本発明の条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、培養物中に、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも8週間、少なくとも10週間若しくは少なくとも12週間、又は少なくとも4、6、8、10若しくは12ヶ月保存されてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、完全に機能的マスト細胞は、少なくとも4、5、6、8、10若しくは12週間、又は少なくとも4、6、8、10若しくは12ヶ月培養された前駆細胞から分化することができる。
【0087】
分化したマスト細胞は、37℃で、(生存能力及び機能を保持しながら)培養物中に、少なくとも5日間、少なくとも7日間、又は少なくとも10日間保存されてもよい。これらの特徴により、本発明のマスト細胞は、機能的アッセイ及び診断に特に有用になる。
【0088】
本発明の非ヒトマスト細胞は、標準作業手順において同じ前駆細胞に由来することができることにより、著しく均質であり、安定し、再現性が高い。また、本発明のマスト細胞は、アレルゲン媒介活性化時の前例のない信号対雑音比を特徴とする。これまでに記載されているほとんどのアレルギーエフェクター細胞株の最大活性化は、40~60%にあるが、本発明の非ヒトマスト細胞は、ほぼ100%まで活性化することができ、これは、系の動的範囲と優れた感度を示す。重要なことには、これらの活性パラメータは、数か月の前駆細胞の培養後に一定のままであり、細胞の長期間使用は、細胞の生存率に影響を与えない。
【0089】
アッセイ
機能的アレルギーアッセイ
本発明のマスト細胞は、アレルギー検査において特に有用であることが見出されている。本発明の更なる態様では、患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうか、及び/又は患者のアレルゲンに対するアレルギーの重症度を判断する方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
マスト細胞をアレルゲンと接触させるステップと、
マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。マスト細胞は、本明細書に記載の方法によって取得されてもよい。
【0090】
マスト細胞のFcεRIα結合IgEの抗原媒介凝集又はアレルゲン媒介凝集は、それらの活性化及び即時の脱顆粒を引き起こす。マスト細胞は、ヒスタミン、β-ヘキソサミニダーゼ、インターロイキン、ロイコトリエンC4(LTC4)、プロテオグリカン及びさまざまな酵素などの多くの異なるケミカルメディエーターを顆粒に貯蔵する。「脱顆粒」は、マスト細胞が活性化されると、その顆粒の内容物を周囲の環境、即ちインビボの周囲組織、又はインビトロアッセイの場合に細胞培養上清に放出する細胞プロセスである。したがって、マスト細胞の活性化は、細胞培養上清中のケミカルメディエーター(例えば、β-ヘキソサミニダーゼ)を検出及び/又は定量化することによって検出することができる。或いは、脱顆粒時に露出する細胞表面マーカーは、例えば、フローサイトメトリーにより検出及び/又は定量化されてもよい。
【0091】
本明細書に記載のマスト細胞及び方法は、空中アレルゲン、食物アレルゲン(例えば、乳糖、卵タンパク質、魚、ナッツ、小麦及び大豆)、薬物アレルゲン(例えば、ペニシリン、テトラサイクリン、非ステロイド性抗炎症薬、麻酔薬)、環境アレルゲン(例えば、花粉、シラカバ、オオアワガエリ、動物の毛、唾液又はフケ、カビ、ラテックス、イエダニ)及び毒(例えば、ハチ刺傷及びミツバチ刺傷、蚊刺咬)を含む任意の潜在的なアレルゲンに対するアレルギーを検出するために使用することができる。
【0092】
患者抗体を含む試料は、患者の原血清又は希釈患者血清を含んでもよい。いくつかの実施形態では、試料は、適切な培地又は緩衝液中に、患者血清から単離された抗体を含む。例えば、抗体は、精製又は液体交換により患者血清から抽出されたものであってもよい。
【0093】
したがって、本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、マスト細胞を患者抗体とインキュベートする前に、患者血清から抗体が単離されてもよい。抗体は、周知の抗体精製方法を使用して単離されてもよく、周知の抗体精製方法は、プロテインAカラム又はプロテインGカラム、イオン交換クロマトグラフィー又は金属キレートクロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿、及びMelonゲルクロマトグラフィーを使用した方法を含むが、これらに限定されない。
【0094】
他の実施形態では、患者血清に、血清の流体相が適切な培地によって交換される流体交換プロセスを行うことにより、患者抗体を含む試料を取得する。次に、抗体を含む試料を、マスト細胞とインキュベートする。流体交換プロセスは、血清試料をサイズ排除(例えば、100kDaカットオフ)カラムに通して選択された培地に遠心することによって行われてもよい。好ましくは、抗体濃度が変化しないように、血清の体積は、培地の体積と等しい。この処理ステップにより、抗体が培地中に残るが、低分子量化合物(例えば、100kDa未満)が除去される。
【0095】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、該方法は、
任意に、患者から血清を取得するステップと、
患者血清から抗体を単離して、患者抗体を含む試料を取得するステップと
を更に含んでもよい。
【0096】
本明細書に記載の方法のいずれかにおいて、マスト細胞を、患者抗体を含む試料と少なくとも8時間、少なくとも10時間、好ましくは少なくとも12時間(例えば、一晩)インキュベートしてもよい。
【0097】
マスト細胞をアレルゲンと接触させるステップは、マスト細胞培養物にアレルゲンを直接添加することによって行われてもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、該方法は、マスト細胞を抗体とインキュベートするステップとマスト細胞をアレルゲンと接触させるステップとの間の洗浄ステップの非存在下で行われる。驚くべきことに、アレルゲンチャレンジの前に細胞が洗浄されないプロトコルは、いくつかの利点があることが見出された。第1に、洗浄ステップの省略は、マスト細胞が常に血清に露出するインビボ条件と非常によく似ている。アレルゲンチャレンジ時の血清試料中のアレルゲン特異的IgG又は他の未知の調節因子の役割を評価することもできる。更に、感作後、かつアレルゲンチャレンジ前にマスト細胞を洗浄しなかった場合、マスト細胞の最大活性化が著しく高くなることが予想外に観察された(表1)。理論に拘束されることなく、IgE-アレルゲン複合体の形成は、洗浄ステップの非存在下でより効率的に行われ、細胞表面でのFcεRIの架橋の強化を引き起こし得ると考えられている。
【0099】
マスト細胞の活性化を検出するステップは、患者血清試料中のアレルゲンに特異的なIgEの存在を示す、メディエーターの放出、又は表面マーカーの発現を検出するステップを含んでもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、マスト細胞の活性化を検出するステップは、表面マーカーの発現を検出するステップを含む。表面マーカーは、リゾチーム関連膜糖タンパク質(LAMP-1、LAMP-2、又はLAMP-3)、CD203c、CD63、又はCD107aであってもよい。いくつかの実施形態では、表面マーカーはCD107aである。
【0101】
いくつかの実施形態では、表面マーカーの発現を検出するステップは、マスト細胞を表面マーカーに特異的な抗体と接触させるステップと、細胞に結合した抗体を検出するステップと、を含む。例えば、表面マーカーがCD107aである実施形態では、表面マーカーの発現を検出するステップは、マスト細胞を抗CD107a抗体と接触させるステップを含んでもよい。アレルゲンと同時に、又はアレルゲンの後に、抗体をマスト細胞培養物に添加してもよい。該方法は、例えばフローサイトメトリーを使用して、細胞に結合した抗体を定量化するステップを更に含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、マスト細胞の活性化を検出するステップは、メディエーターの放出を検出するステップを含む。メディエーターは、β-ヘキソサミニダーゼ、プロテアーゼ、ヒスタミン又はロイコトリエン(例えば、LTC4)であってもよい。いくつかの実施形態では、メディエーターは、β-ヘキソサミニダーゼである。β-ヘキソサミニダーゼの放出は、β-ヘキソサミニダーゼの基質を培養上清及び/又は細胞ペレット溶解物に添加し、酵素-基質反応の生成物を検出することによって検出することができる。例えば、基質は、β-ヘキソサミニダーゼの発色基質である4-ニトロフェニルN-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼであってもよい。プロテアーゼの放出は、プロテアーゼの基質、例えば、アセチル-Orn-Phe-Arg-AMCなどのトリプターゼ基質を使用して、又は細胞上清のELISA又は免疫ブロットによって検出されてもよい。
【0103】
或いは、マスト細胞の活性化は、脱顆粒に起因するpH変化を検出することによって検出されてもよい。pHの変化は、pH感受性蛍光色素又はpH指示薬溶液などの試薬を使用して検出されてもよい。
【0104】
マスト細胞の活性化を検出するステップは、活性化レベルを測定するステップを含んでもよい。活性化レベルは、アレルゲンに対する患者のアレルギーの重症度に対応し得る。したがって、マスト細胞の活性化レベルは、アレルギーの臨床等級付けに使用することができる。これは、患者のアレルギーの治療又は管理の種類を知らせるために使用することもできる。マスト細胞の最大活性化に達するのに必要なアレルゲンが少ないほど、及び/又は最大活性化レベルが高いほど、患者のアレルゲンに対するアレルギーが強くなる。活性化レベルは、例えば、マスト細胞によって発現する表面マーカーの量、細胞によって放出されるメディエーターの量、又はpH変化の程度を定量化することによって測定されてもよい。
【0105】
本明細書に記載のアッセイ方法のいずれかにおいて、該方法は、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養して、マスト細胞を製造するステップを更に含んでもよい。マスト細胞前駆細胞を上記のように培養してもよい。したがって、必要に応じて、アッセイで使用するためにマスト細胞を生成してもよい。
【0106】
或いは、更なる態様では、本発明は、患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうか、及び/又は患者のアレルゲンに対するアレルギーの重症度を判断する方法であって、
それぞれが誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の集団を用意するステップと、
誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下でマスト細胞前駆細胞を少なくとも5日間培養して、非ヒト条件的不死化マスト細胞を製造するステップと、
マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
マスト細胞をアレルゲンと接触させるステップと、
マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含む、方法を提供する。
【0107】
ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれてもよい。
【0108】
マスト細胞前駆細胞を培養して非ヒト条件的不死化マスト細胞を製造するステップは、本明細書に記載の方法のいずれかを使用して行われてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、該方法は、得られたマスト細胞を試料とインキュベートする前に、マスト細胞前駆細胞を少なくとも6日間培養するステップを含む。
【0110】
いくつかの実施形態では、マスト細胞前駆細胞を培養するステップは、
0日目に、IL-3を含むが誘導因子を欠いている培地に、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を添加するステップと、
5日目又は6日目に、(成熟)マスト細胞を採取するステップと
を含む。
【0111】
いくつかの実施形態では、6日目にマスト細胞を採取する。
【0112】
いくつかの実施形態では、該方法は、
0日目に、IL-3を含むが誘導因子を欠いている第1培地に、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を添加するステップと、
5日目に、第1培地から該細胞を取り出して、IL-3を含むが誘導因子を欠いている第2培地に細胞を添加するステップと、
6日目に、(成熟)マスト細胞を採取するステップと
を含む。
【0113】
第1培地と第2培地は、異なってもよく、同じであってもよい。いくつかの実施形態では、第2培地中のIL-3の濃度は、第1培地中のIL-3の濃度よりも高い。第2培地中のIL-3の濃度は、第1培地中のIL-3の濃度よりも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、又は100倍高くてもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、細胞を、第1培地から取り出した後に第2培地に添加する前に洗浄する。
【0115】
したがって、本発明は、優れた診断可能性を備えた機能的アレルギースクリーニングアッセイを提供する。患者血清からのIgEによる高親和性IgE受容体(例えば、ヒトFcεRIα)がトランスジェニックされるマスト細胞の受動的感作に基づく本発明の方法は、患者のアレルギー状態に関する総合的な情報を提供し、現在の診断ツールに関連する多くの課題及び制限を克服する。
【0116】
全血ではなく血清に由来する抗体に基づく本発明の機能的アッセイは、生物学的活性を失わずに患者試料を後の分析のために凍結して保存できるという利点を有する。これにより、試料の取り扱いが容易になり、個別の患者試料又はコホート試料全体のプロスペクティブ分析及びレトロスペクティブ分析が可能になる。
【0117】
ハイスループットマルチプレックスアッセイ
好都合に、該方法は、マルチプレックスであってもよい。したがって、いくつかの実施形態では、該方法は、患者が複数のアレルゲンにアレルギーがあるかどうかを判断するためのものである。このような実施形態では、該方法は、
複数のマスト細胞集団のそれぞれを、患者抗体を含む試料と別々にインキュベートするステップと、
複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップと、
マスト細胞集団を、患者抗体を含む試料とインキュベートした後、複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なるアレルゲンと別々に接触させるステップと、
複数のマスト細胞集団をプールするステップと、
各集団におけるマスト細胞の活性化を検出するステップと
を含んでもよく、各マスト細胞集団は、本明細書に記載の非ヒトマスト細胞を含む。
【0118】
複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップは、複数のマスト細胞集団を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップの前又は後に行われてもよい。
【0119】
更なる実施形態では、該方法は、複数の患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうかを判断するためのものであり、
複数の試料のそれぞれを複数のマスト細胞集団のうちの1つと別々にインキュベートするステップであって、各試料が異なる患者からの抗体を含むステップと、
複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップと、
複数のマスト細胞集団をプールするステップと、
複数のマスト細胞集団のそれぞれをアレルゲンと接触させるステップと、
各集団におけるマスト細胞の活性化を同時に検出するステップと
を含み、各マスト細胞集団は、本明細書に記載の非ヒトマスト細胞を含む。
【0120】
「各試料が異なる患者からの抗体を含む」により、試料が単一の患者に由来する複数の抗体を含むこと、及び各試料が患者特有のものであることが理解される。このようにして、各患者試料は、他の各患者に使用される検出可能標識とは異なる検出可能標識と対になる。例えば、該方法は、第1患者及び第2患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうかを検査するステップを含んでもよい。第1患者からの抗体を含む試料を、第1検出可能標識で標識された第1マスト細胞集団とインキュベートしてもよい。第2患者からの抗体を含む試料を、第1検出可能標識とは異なる第2検出可能標識で標識された第2マスト細胞集団とインキュベートしてもよい。第1及び第2マスト細胞集団をプールし、アレルゲンと接触させた後、異なる検出可能標識により、第1マスト細胞集団の活性化を第2マスト細胞集団の活性化から区別することができる。
【0121】
複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップは、マスト細胞集団を試料とインキュベートするステップの前又は後に行われてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、マスト細胞をアレルゲンと接触させる前に、複数のマスト細胞集団をプールする。或いは、マスト細胞をアレルゲンと接触させた後、かつ活性化を検出する前に、複数のマスト細胞集団をプールしてもよい。
【0123】
上述した方法において、マスト細胞集団は、蛍光標識(蛍光標識抗体を含む)、放射性標識、又は核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)標識などの任意の適切な検出可能標識で標識されてもよい。
【0124】
細胞標識又は「バーコーディング」戦略の使用により、複数のアレルゲン又は複数の患者血清をハイスループットで同時に検査することができるため、迅速で標準化された診断手順が得られる。ハイスループットアプローチは、臨床試験、例えば、血清IgEレベルを変更する薬剤候補の有効性を評価するのに有用であり得る。
【0125】
抗アレルギー療法のモニタリング
更なる態様では、本発明は、アレルゲンにアレルギーがある患者を治療するために使用されている、将来使用される可能性があるか、又は以前に使用された療法の有効性をモニタリングする方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む第1試料とインキュベートするステップと、
マスト細胞をアレルゲンと接触させるステップと、
マスト細胞の活性化の第1レベルを測定するステップと、
測定された第1レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、マスト細胞は、本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法を提供する。
【0126】
現在又は過去の療法の有効性がモニタリングされている実施形態では、基準レベルは、療法開始前に患者から取得された(例えば、患者血清から取得された)抗体を含む試料を使用して測定されたマスト細胞の活性化のベースラインレベルであってもよい。該方法は、マスト細胞の活性化の基準レベルを測定することを更に含んでもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、該方法は、患者抗体を含む第1試料を用意するステップを含む。第1試料は、(例えば、上述したように)任意に、患者から血清試料を取得し、血清試料を希釈するか又は血清試料から抗体を単離することによって用意されてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、療法は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)である。AITは、アレルギー患者の治療に重要な疾患修飾アプローチである。本発明の細胞及び方法により、血清抗体反応性の長期的追跡を通じて、患者がAITに反応するかどうか、及びいつ反応するかを評価することができる。これは、AITが成功したかどうかを判断するためのインビボアレルゲンチャレンジの必要性を低減又は排除するのに役立つ。
【0129】
患者は、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、又は少なくとも2、3、4若しくは5年間、AITを受けてもよい。患者は、現在、AITを受けていてもよい。AITの有効性は、治療期間中に定期的に測定されてもよい。例えば、AITの有効性のモニタリング方法は、AITの開始から、治療期間の一部又は全体にわたって、約3、4、6又は12ヶ月ごとに行われてもよい。したがって、AITの開始後、3、4、6又は12ヶ月の間隔で患者から血清試料を取得し、血清中に存在する抗体をマスト細胞と接触させてもよい。治療の有効性は、初期期間でより頻繁にモニタリングされ、その後の期間でモニタリング頻度が低くなってもよい。例えば、モニタリングは、最初の12、18又は24ヶ月の治療の間に3又は4ヶ月ごとに、その後の数年の治療の間に6又は12ヶ月ごとに行われてもよい。
【0130】
本明細書に記載の療法の有効性のモニタリング方法は、療法(例えば、AIT)に反応する患者、及び/又は療法(例えば、AIT)に反応しない患者を同定するために使用されてもよい。例えば、患者が一定期間(例えば、6、12、18ヶ月又は2年間)にわたって療法(例えば、AIT)を受けており、基準レベルと比較して、マスト細胞の活性化の第1レベルに有意な変化が観察されない可能性がある。このような場合、患者は、療法(例えば、AIT)に反応しないと判断し得る。基準レベルと比較してマスト細胞の活性化の第1レベルが低下することは、患者がAITに反応することを示し得る。低下は、少なくとも5%、少なくとも7%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%であってもよい。患者を、療法(例えば、AIT)に対する反応者又は無反応者に分類することは、臨床医が療法を進めるかどうか、又は代替治療を使用するかどうかを決定するのに役立ち得る。
【0131】
したがって、第1試料がAITの開始から少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも20ヶ月、又は少なくとも24ヶ月後に患者から取得された抗体を含み、基準レベルと比較して、マスト細胞の活性化の第1レベルが大幅には低下しないいくつかの実施形態では、患者は、AITに反応しないと判断される。このような実施形態では、AITが中止される可能性がある。
【0132】
いくつかの実施形態では、該方法は、療法を完了した患者におけるAITの有効性をモニタリングするためのものである。換言すれば、該方法は、AITの完了後にアレルゲンに対する耐性が持続するかどうかを判断するために使用されてもよい。例えば、該方法は、AITの完了後、患者がアレルゲンに対する耐性を少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、又は少なくとも5年維持するかどうかを判断するために使用されてもよい。このような実施形態では、適切な時点で患者から血清試料を採取し、上述した方法を使用して、血清中に存在する抗体を使用したマスト細胞の活性化を試験する。
【0133】
いくつかの実施形態では、該方法は、患者がアレルゲンに対して耐性になっているかどうか、即ち、療法の結果を判断するステップを含む。該方法でマスト細胞が実質的に活性化されないと、患者がアレルゲンに対して耐性になっていると判断されてもよい。
【0134】
いくつかの実施形態では、該方法は、抗アレルギー治療薬を使用した患者の治療を含む療法の有効性をモニタリングするためのものである。これは、例えば、アトピー性喘息及び特定の食物アレルギーなどのIgE依存性疾患の治療に使用される抗IgE生物学的製剤の有効性を評価するのに有用であり得る。抗アレルギー治療薬は、抗体、DARPin、アフィマー(affimer)、モノボディ、アンチカリン(anticalin)又はアフィボディであってもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、抗アレルギー治療薬は、血清IgEレベル及び/又は特異性を調節する。抗アレルギー治療薬は、抗IgE薬であってもよい。「抗IgE薬」は、IgEに特異的に結合することにより、IgEの機能を低減又は阻害する薬剤である。いくつかの実施形態では、抗アレルギー治療薬は、抗IgE抗体である。抗IgE薬は、抑制剤(例えば、キリズマブ(Quilizumab)などのIgE抑制抗体)又は中和剤(例えば、オマリズマブ(Omalizumab)又はリゲリズマブ(ligelizumab)などのIgE中和抗体)であってもよい。いくつかの実施形態では、抗アレルギー治療薬は、リツキシマブ(Rituximab)などのIgE調節剤である。
【0136】
いくつかの実施形態では、抗アレルギー治療薬は、保護IgGを誘導する薬剤である。
【0137】
いくつかの実施形態では、療法の有効性のモニタリング方法は、保護(即ち、抗原特異的)IgGの誘導を検出するステップを更に含んでもよい。患者に保護IgGが誘導されているかどうかを検出することは、療法が有効であるかどうか、及び療法を継続すべきかどうかを判断するのに役立ち得る。保護IgGの誘導を検出するステップは、
マスト細胞を、患者の抗体を含みIgGが除去された第2試料とインキュベートすることと、
マスト細胞をアレルゲンと接触させることと、
マスト細胞の活性化の第2レベルを測定することと、
測定された第2レベルと基準レベル及び/又は測定された第1レベルとを比較することと
により、行われてもよい。
【0138】
第2試料は、第1試料と同じ血清試料に由来してもよく、第1試料とは異なる血清試料に由来してもよい。IgG除去は、プロテインG結合ビーズ又はプロテインA結合ビーズ(IgG3を除く)を使用して行われてもよい。例えば、IgG除去は、プロテインGスピンカラム(例えば、ThermoFisher(サーモフィッシャー)によって供給される)を用いて行われてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、該方法は、潜在的な療法、即ち将来使用される可能性がある療法の有効性をモニタリングするためのものである。例えば、該方法は、例えば、臨床試験の一部として、血清IgEレベルを変更する薬剤候補の有効性を評価するために使用されてもよい。
【0140】
したがって、マスト細胞アッセイは、AITなどの療法を受けているアレルギー患者の治療反応を機能的に追跡し、任意に定量化するための適切なツールを提供する。該アッセイは、臨床医が治療中に反応者と無反応者を早く区別するのをサポートするだけでなく、耐性誘導の時点を決定することを援助する。更に、該アッセイにより、アレルゲン特異的IgGの誘導(例えば、AIT中)を調べたり、IgGの保護機能を評価したりすることができる。本発明の機能的アッセイは、危険なインビボアレルゲンチャレンジを行う必要性を低減又は排除してもよい。
【0141】
更なる機能的アッセイ
本発明の別の態様では、アレルゲン製剤の効力の測定方法であって、
マスト細胞を、アレルゲンに特異的なIgEとインキュベートするステップと、
マスト細胞をアレルゲン製剤の試料と接触させるステップと、
マスト細胞の活性化レベルを測定するステップと、
任意に、測定された活性化レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、マスト細胞が本明細書に記載の非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0142】
このような方法は、同じアレルゲン製剤の異なるバッチ間の効力の変化を検出するために使用されてもよい。例えば、該方法は、AITに使用されるアレルゲン製剤の標準化に使用されてもよい。いくつかの実施形態では、該方法は、標準化アレルゲン製剤を調製するためのものである。該方法は、アレルゲン製剤の効力を調整して、例えば、効力を目標範囲内にするステップを更に含んでもよい。
【0143】
本発明の更なる態様では、食品添加物又は薬剤候補のアレルゲン性スクリーニング方法であって、
マスト細胞を、被験者の抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
マスト細胞を食品添加物又は薬剤候補と接触させるステップと、
マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0144】
いくつかの実施形態では、試料は、複数の被験者、例えば、少なくとも10、50、100、200、500、700又は1000個の被験者の血清から取得された抗体のプールを含む。このようにして、食品添加物又は薬剤候補が集団内でアレルギー反応を引き起こす可能性を判断することができる。
【0145】
本発明の更なる態様によれば、患者の血清IgE濃度の測定方法であって、
マスト細胞を、患者からのIgEを含む試料とインキュベートするステップと、
マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップと
を含み、マスト細胞が本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞である、方法が提供される。
【0146】
いくつかの実施形態では、該方法は、試料中の総IgE濃度を測定するためのものである。いくつかの実施形態では、該方法は、試料中に存在するアレルゲン特異的IgEの濃度を測定するためのものである。
【0147】
マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップは、
マスト細胞を、IgEに特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
細胞に結合した薬剤の量を測定するステップと
を含んでもよい。
そして、細胞に結合した薬剤の量を基準量と比較してもよい。これにより、IgEに結合した薬剤の濃度、そしてIgE濃度を測定することができる。
【0148】
いくつかの実施形態では、例えば、該方法が総IgE濃度を測定するためのものである場合、上記薬剤は、抗体、即ち抗IgE抗体である。抗体を、検出可能標識、例えば、蛍光色素で標識してもよい。そして、細胞上の検出可能標識を検出することによって、例えば、FACSなどの当該技術分野の標準的技術を使用して蛍光レベルを測定することによって、抗IgE抗体の濃度、そしてIgE濃度を測定し得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、例えば、該方法がアレルゲン特異的IgEの濃度を測定するためのものである場合、上記薬剤は、標識されたアレルゲン(即ち、検出されているIgEの同種アレルゲン)である。アレルゲンは、蛍光色素などの検出可能標識で標識されてもよい。そして、細胞上の検出可能標識を検出することによって、例えば、蛍光レベルを測定することによって、標識されたアレルゲンの濃度、そしてアレルゲン特異的IgEの濃度を測定し得る。このような実施形態では、該方法は、抗原を(例えば、タグ又は蛍光色素で)標識するステップを更に含んでもよい。
【0150】
抗IgE抗体などのIgE調節剤を使用した患者の治療中又は治療後に、(総及び/又はアレルゲン特異的)IgE濃度を測定し得る。このような実施形態では、測定されたIgE濃度と、治療開始前に患者から採取された試料中のIgE濃度とを比較してもよい。これは、治療の有効性を判断するために使用することができる。
【0151】
試料は、患者から取得された原血清又は希釈血清を含んでもよい。或いは、試料は、上述したように、例えば、適切な培地又は緩衝液での精製又は液体交換によって、患者から取得された血清から単離されたIgEを含んでもよい。
【0152】
基準は、標準曲線であってもよい。マスト細胞を一連の既知濃度のIgEとインキュベートし、マスト細胞を薬剤(例えば、蛍光標識された抗IgE抗体又はアレルゲン)と接触させ、マスト細胞に結合した薬剤の量を測定することによって(例えば、蛍光レベルを測定することによって)、標準曲線を作成してもよい。そして、標準曲線を作成するために、薬剤の量(又は、例えば、蛍光レベル)を各IgE濃度に対してプロットすることができる。
【0153】
本発明は、
本発明の第5態様に係る非ヒトマスト細胞と、
マスト細胞の活性化を検出する試薬と
を含む、アレルギー検査用キットを更に提供する。
【0154】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上のアレルゲン及び/又は陽性対照を更に含む。陽性対照は、そのアレルゲン又は各アレルゲンに特異的な抗IgE抗体(例えば、モノクローナル抗体)であってもよい。
【0155】
マスト細胞の活性化を検出する試薬は、抗体(例えば、CD107a又はCD203cなどのリゾチーム関連膜糖タンパク質(LAMP)に特異的な抗体)、プロテアーゼ基質(例えば、トリプターゼ基質)、β-ヘキソサミニダーゼの基質、又はpHの変化に反応する試薬(例えば、pH感受性蛍光色素又はpH指示薬溶液)であってもよい。
【0156】
本明細書に記載の態様又は実施形態のいずれかにおいて、患者は、哺乳動物、好ましくは、ヒトであってもよい。FcεRIαは、患者と同じ種に由来してもよい。したがって、上記FcεRIαは、ヒトFcεRIα(huFcεRIα)であることが好ましい。
【実施例
【0157】
以下の実施例により本発明を更に説明する。
【0158】
実施例1
材料及び方法
試薬
NBS-C BioScience(エヌビーエス・シー・バイオサイエンス)(ウィーン、オーストリア)から、ヒトキメラNIP特異的JW8-IgEを購入した。BioRad Laboratories(バイオラッド・ラボラトリーズ)(クレッシエ(Cressier)、スイス)から、ヒトキメラNIP特異的JW183-IgGを購入した。CSL Behring(シーエスエル・ベーリング)(キングオブプルシア(King of Prussia)、ペンシルベニア州、米国)から、単離されたヒト免疫グロブリンIVIG Hizentra(登録商標)を入手した。Peprotec(ペプロテック)(ロンドン、英国)から、組換えマウスIL-3を購入した。LGC Biosearch Technologies(エルジーシー・バイオサーチ・テクノロジーズ)から、アレルゲンNIP-BSA及びNIP24-BSAを購入した。Buehlmann Laboratories AG(ビュールマン・ラボラトリーズ)(シェーネンブーフ(Schoenenbuch)、スイス)から、ピーナッツ抽出物(BAG-F13)、ネコの組換えFel d1(BAG2-FELD1)、イエロージャケットのハチ毒(BAG2-I3)、ミツバチの毒(BAG2-I1)、イエダニ抽出物(BAG-D1)、シラカバ抽出物(BAG-T3)、オオアワガエリ抽出物(BAG-G6)などの様々なCAST(登録商標)アレルゲンを入手した。Sartorius(ザルトリウス)(ゲッティンゲン、ドイツ)から、VivaSpin(登録商標)の2mlの限外濾過スピンカラム、100kDaのMWCO PES膜を購入した。Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)から、0.2mLのIgG除去カラムと0.2mLのNAbプロテインGスピンカラムを購入した。Thermo Fisher Scientific(ウォルサム(Waltham)、マサチューセッツ州、米国)から、Pacific Blue(商標)スクシンイミジルエステル(NHS)、Alexa Fluor 488スクシンイミジルエステル(NHS)、及びAlexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(NHS)を全て購入した。10%FCS Sera Pro(Pan Biotech)、10%WEHI-3b上清(自製)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(100×のペニシリン/ストレプトマイシン、Gibco)及び100nMの4-ヒドロキシクタモキシフェン(Sigma)を補充したRPMI-1640培地AQmedia(Sigma)中で、Hoxb8前駆細胞を培養した。安定グルタミン及び2.0g/lのNaHCO(Seraglob(セラグロブ))を含有し、10%Hyclone FCS(Fisher Scientific(フィッシャーサイエンティフィック)、ニューハンプシャー州、米国)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(100×のペニシリン/ストレプトマイシン、Merck(メルク)、ダルムシュタット、ドイツ)、10mMのHEPES緩衝液(1Mのストック溶液、Life Technologies(ライフテクノロジーズ)、カリフォルニア州、米国)、1mMのピルビン酸ナトリウム(100mMのストック溶液、100×、Gibco)、4mMのL-グルタミン(200mMのストック溶液、100×、Gibco)、1×の非必須アミノ酸(ストック溶液、100×、Gibco)、30ng/mlのマウス組換えIL-3(Peprotec、ロンドン、英国)、50μMの2-メルカプトエタノール(ストック溶液、14.3M、Merck)を補充したRPMI-1640で構成され活性化培地(BMMC培地)中で、細胞の感作と活性化を行った。β-ヘキソサミニダーゼ放出アッセイに使用したタイロード緩衝液は、10mMのHepes、130mMのNaCl、5mMのKCl、1.9mMのCaCl、2.1mMのMgCl、5.6mMのL-グルコース、及び蒸留水に溶解した、エンドトキシンを含まない0.1%BSAで構成した。フローサイトメトリーについて、本発明者らは、抗ヒトIgE FITC(クローンIge21、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)、モノクローナルマウス抗ヒトFcεRIα APC(クローンAER-37、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)、モノクローナルラット抗マウスCD200R FITC(クローンOX-110、AbD Serotec(AbDセロテック))、モノクローナルラット抗マウスCD117 cKit PE(クローン2B8、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)、モノクローナルラット抗マウスCD107a(LAMP1)APC及びPE(クローン1D4B)、IgG2aK、BioLegend(バイオレジェンド)、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、モノクローナルマウス抗ヒトCD117 cKit PE(クローンA3C6E2)、IgG1 BioLegend、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、モノクローナルラット抗マウスCD63(LAMP-3)APC(クローンNVG-2)、IgG2aK、BioLegend、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国のような抗体、並びに、マウスIgG1アイソタイプコントロールFITC(クローンP3.6.2.8.1、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)、マウスIgG2bアイソタイプコントロールAPC(クローンeBMG2b、Thermo Fisher Scientific、マサチューセッツ州、米国)、ラットIgG2bアイソタイプコントロールPE(クローンeB149/10H5)、eBioscience、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国、マウスIgG1アイソタイプコントロールPE(MOPC-21)、BioLegend、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国のような適切なアイソタイプコントロールを使用した。特に明記していない限り、BD FACSCantoデバイス(BD Bioscience(ビーディー・バイオサイエンス)、フランクリンレイクス(Franklin Lakes)、ニュージャージー州、米国)を使用してフローサイトメトリーを行い、FlowJo Version 10.1(Ashland(アシュランド)、オレゴン州、米国)で結果を評価した。
【0159】
異なるアレルギーエフェクター細胞の細胞培養
骨髄由来マスト細胞(BMMC):マウスFcεRIαを欠いているがヒトFcεRIαがトランスジェニックされたマウス(sTG)、及びヒトIgE及びヒトFcεRIαの二重トランスジェニックマウス(dTG)を、CO窒息によって安楽死させた。大腿骨、脛骨及び上腕骨を取り出し、単離した骨髄細胞を、安定グルタミン及び2.0g/lのNaHCO(Seraglob)を含有し、10%Hyclone FCS(Fisher Scientific、ニューハンプシャー州、米国)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)、10mMのHEPES緩衝液(1Mのストック溶液、Life Technologies、カリフォルニア州、米国)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Gibco)、4mMのL-グルタミン(Gibco)、1×の非必須アミノ酸(Gibco)、30ng/mlのマウス組換えIL-3(Peprotec、ロンドン、英国)、50μMの2-メルカプトエタノール(Merk)を補充したRPMI-1640で構成したBMMC培地中で増殖させた。最初の2週間に、培地を2日ごとに交換し、細胞をT75細胞培養フラスコ(Greiner Bio One(グライナー・バイオ・ワン)、クレムスミュンスター(Kremsmuenster)、オーストリア)中で2×10個の細胞/mLの濃度で培養し、5%COを含む加湿した37℃のインキュベーター内に保存した。その後、培地を週に2回交換し、細胞を1×10個の細胞/mlに希釈した。
【0160】
HMC-1:HMC-1細胞を、10%Hyclone FCS(Fisher Scientific、ニューハンプシャー州、米国)及び1.2mMの1-チオグリセロール(Sigma)を追加したフィルター滅菌済(0.22μm、Sartorius)イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM 1x)+GlutaMAX-I+25mMのHEPES(Gibco)中で37℃、5%COで培養した。細胞を3日ごとに継代して3.5×10個の細胞/mlに希釈し、T25細胞培養フラスコ(Greiner Bio One、クレムスミュンスター、オーストリア)内に保存した。
【0161】
RBL-2H3α:RBL-2H3α細胞を、10%Hyclone FCS(Fisher Scientific、ニューハンプシャー州、米国)及び500μMのジェネティシンG-418硫酸塩(Gibco)を補充した、安定グルタミン及び2.0g/lのNaHCO(Seraglob)を含有するフィルター滅菌済(0.22μm、Sartorius)RPMI-1640培地中で、37℃、5%COで培養した。培地を除去し、pH7.4の1×PBS(Insel Group(インセル・グループ))で2回すすぎ、0.25%トリプシンEDTA溶液(Sigma)を使用して37℃、5%COで細胞を5分間剥離することにより、細胞を3日ごとに継代した。培地の添加によりトリプシンEDTAをクエンチし、細胞を2×10個の細胞/mlに希釈し、T75細胞培養フラスコ(Greiner Bio One、クレムスミュンスター、オーストリア)に保存した。
【0162】
LUVA:LUVA細胞を、StemPro-34栄養補給剤(Gibco)、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Merck、ダルムシュタット、ドイツ)、2mMのL-グルタミン(Gibco)及び100μg/mlのプリモシン(Invivo Gen(インビボジェン)、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を補充したフィルター滅菌済(0.22μm、Sartorius)StemPro-34 SMF培地(Gibco)中で、37℃、5%COで培養した。細胞を2~3日ごとに継代して5×10個の細胞/mlに希釈し、T25細胞培養フラスコ(Greiner Bio One、クレムスミュンスター、オーストリア)内に保存した。
【0163】
上記細胞のhFcεRIα受容体の発現を評価するために、5×10個の細胞を、200μlのpH7.4のPBSで、4℃、5分間、600×gで2回洗浄した。続いて、室温で遮光し、抗ヒトFcεRIα抗体又はそれに対応するアイソタイプコントロール抗体で細胞を15分間染色した。BD FACSCantoデバイス(BD Bioscience、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を使用してフローサイトメトリーを行い、FlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)で結果を評価した。
【0164】
上述した細胞のIgE媒介活性化を評価するために、ウェルあたり5×10個となるように細胞を96ウェル丸底プレートに播種した。200μlのpH7.4のPBSで、4℃、5分間、600×gで1回洗浄し、細胞を、濃度が増加した(0.01~50μg/ml)JW8-IgEを含む25μlの対応する培地中に再懸濁し、37℃、5%COで一晩インキュベートした。続いて、培地で希釈され、染色抗体の抗CD107a又は抗CD63を含む25μlの2X抗原NIP24-BSAを細胞に添加し、50μlの総活性化体積及び100ng/mlのチャレンジ用抗原濃度を得た。この細胞を37℃、5%COで25分間インキュベートした。細胞をpH7.4のPBSで、4℃、5分間、600×gで2回洗浄し、フローサイトメトリーで測定した。
【0165】
分化したマスト細胞の受容体の定量化とIgE結合能力
Hoxb8マスト細胞のヒトFcεRIαの表面密度を定量的に測定するために、QIFIKIT(登録商標)(BIOCYTEX(バイオサイテックス))(コードK0078、Dako(ダコ)、デンマーク/Aligent(アジレント)、サンタクララ、カリフォルニア州)を製造業者の指示に従って使用した。したがって、1×10個の分化したHoxb8マスト細胞を、1μgの非結合モノクローナルマウス抗ヒトFcεRIα抗体CRA-1(Abnova(アブノバ)、台北、中国)又は同じアイソタイプの無関係なモノクローナルマウス抗ヒトCD32(IV.3)抗体(Stem Cell Technologies(ステムセル・テクノロジーズ)、バンクーバー、カナダ)とそれぞれインキュベートする前に、5μg/mlのJW8-IgE又はIgEなしで一晩インキュベートした。続いて、キットに付属するFITC結合ヤギ抗マウス免疫グロブリンのF(ab’)断片で細胞を染色した。キットのセットアップビーズとキャリブレーションビーズを製造業者の推奨に従って調製した。キャリブレーションビーズ試料のMFI値を使用して確立したキャリブレーション曲線から細胞あたりの受容体の量(rpc)を推定した。
【0166】
フローサイトメトリーによってヒトFcεRI受容体へのIgEの結合を評価するために、分化したHoxb8マスト細胞を、濃度が増加した(0.1~500μg/ml)JW8-IgEと一晩インキュベートした。続いて、細胞をαhu-IgEで染色した。
【0167】
フローサイトメトリーによってヒト血清試料からのIgE濃度を推定するために、分化したHoxb8マスト細胞を、未希釈及び1:2、1:5、1:10の比例で希釈された25個の異なるヒト血清試料と一晩インキュベートした。その後、細胞を上述したように進めた。GraphPad、Prism 8(GraphPad Holdings LLC(グラフパッド・ホールディングス)、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して、IgE-JW8に基づいて確立された標準曲線へのデータ補間から血清試料中のIgE濃度を計算した。
【0168】
組換えタンパク質及び患者血清を用いた分化したマスト細胞の活性化
フローサイトメトリーによりHoxb8マスト細胞の活性化を測定するために、分化したHoxb8マスト細胞を、細胞感作のために、濃度が増加した(0.01~5μg/ml)JW8-IgEと一晩インキュベートした。続いて、100ng/mlの抗原NIP24-BSA及び染色抗体の抗CD107aを直接添加することによって細胞を刺激した。この時のみ、細胞を洗浄して取得に備えた。
【0169】
分化したHoxb8マスト細胞を、上述したようにIgE-JW8感作のために一晩処理し、次に、タイロード緩衝液(10mMのHepes、130mMのNaCl、5mMのKCl、1.9mMのCaCl、2.1mMのMgCl、5.6mMのL-グルコース、及び蒸留水に溶解した、エンドトキシンを含まない0.1%BSAを加えた)中で希釈した100ng/mlの抗原NIP-BSAで刺激した。細胞を37℃、5%COで60分間インキュベートした。続いて、細胞を4℃、5分間、600×gで遠心分離した。50μlの上清を96ウェル平底プレートに移し、残りの上清を細胞から除去した。次に、タイロード緩衝液で調製した0.5%Triton-Xを100μl添加することによって細胞を溶解し、完全に再懸濁した。再度、50μlのペレット溶解物を96ウェル平底プレートに移した。50μlの基質pNAG溶液(ddHOに201mMのNaHPO及び438mMのクエン酸を含有する基質緩衝液中の4mMの4-ニトロフェニルN-アセチル-B-D-グルコサミニダーゼ、pH4.5、Sigma)を上清及びペレット溶解物に添加し、37℃(COなし)で60分間インキュベートした。100μlのpH10.7の0.2Mグリシンを各ウェルに添加することによって酵素-基質反応を停止させ、標準ELISAプレートリーダーSpectraMax M5(Molecular Devices LCC(モレキュラーデバイス)、サンノゼ、カリフォルニア州、米国)で405nmの波長における吸光度を測定した。チャレンジ時のRBL-2H3α細胞からのβ-ヘキソサミニダーゼの正味放出のパーセンテージを、放出量をβ-ヘキソサミニダーゼの総量(放出量とチャレンジ後の細胞内の残留量の和)で割ることによって計算した。細胞からのβ-ヘキソサミニダーゼ又は別のメディエーターの正味放出のパーセンテージを測定する方法は、当業者に公知である。このような方法は、Kuehnら、Measuring Mast Cell Mediator Release、Curr.Protoc.Immunol. 2010年11月、第7章、ユニット7.38に記載されている。
【0170】
VivaSpin(登録商標)の2mlの限外濾過スピンカラム(100kDaのMWCO)を使用して、ピーナッツ、ネコ、ハチ、ミツバチ、イエダニ、カバノキ及びオオアワガエリに明らかにアレルギーがある患者からの血清試料を、Hoxb8マスト細胞の感作のために調製した。製造業者の指示に従ってカラムを使用して、ヒト血清試料とBMMC培地の緩衝液交換を行った。ヒト患者血清で受動的に感作したHoxb8マスト細胞の活性化をフローサイトメトリーにより測定するために、条件あたり5×10個の分化したHoxb8マスト細胞を処理血清試料に再懸濁し、細胞のIgE感作のために一晩インキュベートした。続いて、同種抗原及び染色抗体の抗CD107aを添加する前に細胞を洗浄するか、又は(示されているように)洗浄ステップを省略した。アレルゲンを滴定し、ピーナッツの場合に1~50ng/mlのアレルゲン、ネコの場合に0.1~100ng/mlのアレルゲン、ハチの場合に1.1~100ng/mlのアレルゲン、ミツバチ、シラカバ及びオオアワガエリの場合に1~100ng/mlのアレルゲン、並びにイエダニの場合に3.7~1000ng/mlのアレルゲンで細胞をチャレンジした。細胞を活性化するためにインキュベートし、洗浄して取得した。
【0171】
AIT後にアレルギー患者に存在する可能性のあるアレルゲン特異的IgGの効果を評価するために、50μg/mlのJW183-IgGの存在下又は非存在下で、240ng/mlのJW8-IgEと10mg/mlのIVIGヒト免疫グロブリンを混合することによって、人工血清を組み立てた。これらの人工的に組み立てられた血清試料を、分化したHoxb8マスト細胞に添加し、一晩インキュベートした。続いて、刺激のために同種抗原NIP-BSA及び染色抗体の抗CD107aを細胞に添加した。抗原を0.07ng/mlから333.33μg/mlまでの増加した濃度で添加して、用量依存的活性化を評価した。刺激後、細胞を洗浄し、CytoFLEX S 4L 13C(B2-R3-V4-Y4)と96DWプレートローダー、Beckman Coulter Life Sciences(ベックマン・コールター・ライフサイエンス)(ブレア(Brea)、カリフォルニア州、米国)を使用して、フローサイトメトリーにより細胞の活性化を評価した。FlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)で結果を評価した。
【0172】
上述したように、VivaSpin(登録商標)の2mlの限外濾過スピンカラム(100kDaのMWCO)を使用して、時点0(治療前)並びに療法開始後3、6、9、12、24及び36ヶ月時点(治療後)でSCIT患者からの血清又は血漿試料を、Hoxb8マスト細胞感作のために調製した。ヒト患者血清で受動的に感作したHoxb8マスト細胞の活性化に対するSCITの効果を測定するために、分化したHoxb8マスト細胞を、対応する処理血清試料と一晩インキュベートした。続いて、刺激のために、同種抗原のオオアワガエリを、5~100ng/mlの範囲で増加した濃度で、染色抗体の抗CD107aとともに細胞に添加した。刺激後のみ、細胞を洗浄して取得した。
【0173】
SCIT患者の血清中のIgGの効果を調べるために、製造業者の指示に従ってNAbプロテインGスピンカラム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、療法開始後12ヶ月の患者の血清試料からIgGを除去した。上述したように、VivaSpin(登録商標)の2mlの限外濾過スピンカラムを使用して緩衝液交換ステップを進める前に、400μlの血清に対してIgG除去を2回行った。分化したHoxb8マスト細胞の感作と活性化を上記と同様に行った。
【0174】
分化したマスト細胞の蛍光細胞バーコーディング
Hoxb8マスト細胞の活性化のためのハイスループット形式を可能にする設定を設計するために、分化したHoxb8マスト細胞を36個(4×3×3)の固有の蛍光バーコードで標識した。したがって、蛍光色素Pacific Blueスクシンイミジルエステル(40、6、0.5、0μg/ml)、Alexa Fluor 488スクシンイミジルエステル(40、2、0μg/ml)及びAlexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(8、0.5、0μg/ml)の全ての可能な濃度の組み合わせを、pH7.4のPBS中で調製して、細胞に添加した。アミンの共有結合のために、製造業者の指示に従って細胞を室温で25分間インキュベートした。続いて、細胞を、5mlのFACSチューブにプールする前に洗浄して、BD FACS LSR II SORPデバイス(BD Bioscience、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を使用してフローサイトメトリー測定を行った。FlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)を使用して単一細胞集団をデコンボリューションした。
【0175】
ハイスループット形式でHoxb8マスト細胞の活性化を評価するために、ウェルあたりの分化したHoxb8マスト細胞を、感作のために、濃度が増加した(0.01~2μg/ml)JW8-IgEと一晩インキュベートした。そして、蛍光色素Alexa Fluor 488スクシンイミジルエステル(40、2、0μg/ml)及びAlexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(0.5、0μg/ml)を使用して、上述したように9個(3×3)の固有の蛍光バーコードで標識する前に、細胞を洗浄した。アミンの共有結合後、100ng/mlの同種抗原NIP-BSA及び染色抗体の抗CD107aを添加する前に、細胞を洗浄した。単一細胞条件の活性化後、細胞を洗浄し、5mlのFACSチューブにプールし、BD FACS LSR II SORPデバイス(BD Bioscience、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を使用してフローサイトメトリーを行った。バーコーディングされた細胞集団をデコンボリューションし、各集団の活性化をFlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)で測定した。
【0176】
ヒトアレルギー患者からの血清試料によって受動的に感作された後のHoxb8マスト細胞の活性化のためのハイスループット形式を実証するために、分化したHoxb8マスト細胞を、VivaSpin(登録商標)の2mlの限外濾過スピンカラム(100kDaのMWCO)で8人の明らかなオオアワガエリアレルギー患者からの処理血清試料と一晩インキュベートした。そして、Hoxb8マスト細胞を、蛍光色素Pacific Blueスクシンイミジルエステル(40、6、0.5、0μg/ml)、Alexa Fluor 488スクシンイミジルエステル(40、2、0μg/ml)及びAlexa Fluor 647スクシンイミジルエステル(8、0.5、0μg/ml)を使用して36個(4×3×3)の固有の蛍光バーコードで標識する前に、洗浄した。続いて、細胞を洗浄し、同じPacific Blueバーコードを有する9つの状態を1つの5mlのFACSチューブにプールした。活性化のために、1つの濃度の同種抗原のオオアワガエリ(0、10、50、100ng/ml)及び染色抗体の抗CD107aを4つのFACSチューブのうちの1つに別々に添加した。活性化後、4つのFACSチューブを洗浄し、全て4つのチューブの細胞を1つのチューブにプールした後にもう一度洗浄した。BD FACS LSR II SORP(アップグレード)デバイス(BD Bioscience、フランクリンレイクス、ニュージャージー州、米国)を使用してフローサイトメトリーを行い、FlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)で結果を評価した。バーコーディングされた細胞集団をデコンボリューションし、各集団の活性化をFlowJo Version 10.1(Ashland、オレゴン州、米国)で測定した。
【0177】
条件的Hoxb8不死化前駆細胞の生成と分化
マウスHoxb8コード配列のpF-5xUAS-SV40-puro-Gev16レンチウイルスベクター系へのサブクローニングとウイルス粒子の生成は、他の場所(Tsaiら、J.Allergy Clin.Immunol.2020;145(885-6)、Agacheら、Allergy 2015;70:335-65)に記載されている。要するに、X-tremeGENE HPトランスフェクション試薬(Roche Diagnostics(ロシュ・ダイアグノスティックス)、ロートクロイツ(Rotkreuz)、スイス)を使用して、一過性トランスフェクションにより、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)誘導Hoxb8発現系を担持するレンチウイルス粒子をHEK 293T細胞で製造した。2:5:3のpMD2.VSV-G(エンベロープタンパク質):pCMVδR8.2(パッケージング要素):pF-5xUAS-Hoxb8(mm)-Sv40puroGev16の割合で、30μlのトランスフェクション試薬を使用して、合計15μgのDNAを10cmの組織培養ディッシュごとにトランスフェクトした。翌日、培地を交換し、24h(時間)後及び48h後にウイルスを含む上清を回収した。上清をプールし、0.2μmのフィルターに通し、感染のために新たに使用した。製造業者の指示に従って、系統除去カクテル(BD IMag(商標)、BD Biosciences Europe)を使用して、磁気細胞分離により、B6.Cg-Fcer1atm1Knt Tg(FCER1A)1Bhk/Jマウスの骨髄から造血前駆細胞を濃縮した。5×10個の系統マーカーが除去された細胞を、完全RPMI培地(RPMI=RPMI-1640 AQmedia(商標)、10%FCS、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、50μMの2-メルカプトエタノール)中で、300~400pg/mlのIL-3(マウスIL-3の供給源となるWEHI-3B細胞馴化培地として添加した)の存在下で48時間インキュベートした。細胞をcondHoxb8レンチウイルス粒子(8μg/mlのポリブレンを追加した、上清含有ウイルス1mL)に30℃で90分間スピン感染した。細胞をRPMI/IL-3培地に移し、0.1μMの4-OHTの添加によりHoxb8発現を誘導した。ピューロマイシン選択(1μg/ml)を感染4日後に開始し、生存細胞が増殖するまで維持した。取得した細胞株をRPMI/IL-3/4-OHTで培養し、機能的アッセイにおける最良の増殖、生存能力、及び機能的性能の組み合わせに基づいて選択した。更に、96ウェルプレートでの単一細胞限界希釈と50%前調整増殖培地を使用したクローン増殖により、優良細胞株をサブクローンの検査に使用した。前駆細胞を成熟アレルギーエフェクター細胞に分化するために、細胞をPBSで2回洗浄し、RPMI/IL-3培地中に7.5×10個の細胞/mlで5~6日間再播種した。
【0178】
細胞のフローサイトメトリー及び形態学的特性
分化の様々な段階のHoxb8マスト細胞前駆細胞株を特徴付けるために、分化開始後0、2、4又は6日目に抗マウスcKit CD117及び抗ヒトFcεRIα抗体で細胞を染色した。マルチスペクトルイメージングフローサイトメトリーにより、空間的状況において表面マーカーの発現とhuFcεRIαへのIgEの結合を視覚化するために、1×10個の分化したHoxb8マスト細胞を抗マウスcKit CD117抗体、抗ヒトFcεRIα抗体、及び対応するアイソタイプとインキュベートした。0、0.5、5μg/mlのJW8-IgEと一晩インキュベートした後のHoxb8マスト細胞を、抗ヒトIgE抗体及び抗ヒトFcεRIα抗体で染色した。Amnis(登録商標)lmageStream(登録商標)X MKII及び対応するIDEAS(登録商標)ソフトウェア(Luminex Corporation(ルミネックス・コーポレーション)、オースティン、テキサス州、米国)を使用して、抗マウスcKit及び抗ヒトFcεRIαである表面マーカーの発現及び分布と、受容体へのIgE-JW8の結合とを評価した。
【0179】
Hoxb8マスト細胞前駆細胞株の分化による細胞粒度の漸進的増加を視覚化するために、分化開始後0、2、4又は6日目に、Cellspin(登録商標)I遠心分離機(Tharmac(タルマック)、ヴィースバーデン(Wiesbaden)、ドイツ)を使用して、5×10個の細胞を顕微鏡スライド(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)に固定した。細胞をメタノール中の1%トルイジンブルー溶液(Insel Apotheke(インゼル・アポテーケ))で染色し、脱水し、透明にし、Cyto Seal XYL(商標)(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)でマウントした。LEICA DMI4000顕微鏡の63倍の倍率のHCX PL APO対物レンズ及び対応するLAS V4.2ソフトウェアを使用して、顕微鏡の明視野モードで画像を取得した。
【0180】
ヒト試料及び動物
地元の倫理委員会の承認(KEK 2017-01590)を得て、the Center of Laboratory Medicine at the University Hospital Bern(ベルン大学病院の検査医学センター)からアレルギー性ドナーのヒト血清試料を受け取った。Aarhus University Hospital(オーフス大学病院)のRegional Committee on Biomedical Research Ethics(生物医学研究倫理地域委員会)から承認された(M2009-0121)研究から、アレルゲン特異的皮下免疫療法を受けたアレルギー性ドナーのヒト血清試料を受け取った。ヘルシンキ宣言に従ってインフォームドコンセントを取得した。ヒトFcεRIαがトランスジェニックされ、マウスFcεRIαがノックアウトされたマウスをJean-Pierre Kinet教授から取得した。ヒトIgE及びヒトFcεRIαを発現させる二重トランスジェニックマウスを、GenOway S.A.(ジェノウェイ)からライセンス供与された。全ての動物実験は、地元の動物委員会から承認された(BE66/18)。
【0181】
統計学
Prism 8.0ソフトウェア(GraphPad Software、ラホヤ(La Jolla)、カリフォルニア州)で、図の凡例に示す線形及び非線形フィッティングモデルの統計的分析及び計算を行った。適切な限り、個別のデータポイントが示されている。他の全てのグラフでは、データは、平均値±SEMとして表示される。
【0182】
結果
Hoxb8不死化前駆細胞の生成と分化
ヒトIgE依存性1型過敏症反応の機能診断テストに使用されるアレルギーエフェクター細胞の事実上無制限の供給源を生成するために、本発明者らは、ヒト高親和性IgE受容体がトランスジェニックされたマウス(huFcεRIαtg)からのマスト細胞前駆細胞を条件的に不死化しようと努力した。この目的のために、本発明者らは、huFcεRIαtgマウスの大腿骨から全骨髄を単離し、系統除去(即ち、コミットされた白血球集団の除去)を行い、残りの骨髄系前駆細胞をマウスIL-3を含有する分化培地中で2日間培養した(図1A)。次のステップでは、本発明者らは、これらの細胞を、ピューロマイシン耐性遺伝子を含む前述の4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)誘導ホメオボックスB8(Hoxb8)発現系でスピン感染させた。4-OHT及びマウスIL-3含有分化培地の存在下での抗生物質の圧力により、広範な増殖及び自己再生の可能性を備えた不死化前駆細胞を選択した。
【0183】
そのような安定して形質導入された前駆細胞培養物中の4-OHTの使用中止による外因性Hoxb8発現のシャットダウンは、骨髄系統に沿った細胞分化を容易に誘導することが以前に証明された。存在するサイトカインに応じて、好中球、マクロファージ及び好塩基球の生成が報告されている。したがって、本発明者らは、まず、IL-3の存在下で前駆細胞が成熟アレルギーエフェクター細胞(即ち、好塩基球又はマスト細胞)に分化するかどうかを評価した。重要なことには、条件的Hoxb8を使用したマスト細胞の生成がまだ報告されていない。実際に、本発明者らは、培地から4-OHTを除去した結果、アレルギーエフェクター細胞への分化を観察した(図1B)。本発明者らは、c-kitの最も均一な発現を示す細胞を更に進めることにした。最終的に堅牢なマスト細胞前駆細胞株を取得するという目的で、本発明者らは、これらの細胞を分化のさまざまな段階(即ち、0~6日目)で特徴付けた。フローサイトメトリー分析は、c-kit発現が時間の経過とともに徐々に増加し、6日目までに90%を超える細胞がc-kit及びhuFcεRIαの二重陽性であったことを証明する(図1B)。空間的状況においてこれらの細胞表面マーカーを更に視覚化するために、本発明者らは、イメージストリームフローサイトメトリーを追加して行った。これらの測定により、huFcεRIαとc-kitの両方が細胞表面に均一に分布していることが明らかになり、分化時のc-kitのアップレギュレーションが確認された。更に、様々な分化段階での細胞のトルイジンブルー染色は、細胞粒度の漸進的な増加と異染性要素を伴う明確なマスト細胞表現型を示す(図1C)。更に、本発明者らは、選択したポリクローナル前駆細胞の限界希釈とその後のクローン増殖を行い、モノクローナルHoxb8マスト細胞株(即ち、NT-1)を生成した。NT-1は、c-kit/huFcεRIα発現及びIgE結合に関して親ポリクローナル株と著しく類似した特徴を示した。本発明者らは、最終的に、その後の実験でポリクローナル株を使い続けることにした。まとめると、このデータは、本発明者らの選択戦略により不死化huFcεRIαトランスジェニックマスト細胞前駆細胞株を同定し、該前駆細胞株から、マウスIL-3含有分化培地の存在下で細胞培養物から4-OHTを除去した後のわずか5日間で、分化したHoxb8マスト細胞を誘導できるという強力な証拠を提供する。
【0184】
分化したHoxb8マスト細胞の細胞特性及び機能的特性
分化したHoxb8マスト細胞を更に特徴付けるために、本発明者らは、細胞あたりのhuFcεRIα受容体の絶対量(rpc)を定量化し、それを、単一トランスジェニックhuFcεRIαマウス(即ち、BMMCα-sTG)又は二重トランスジェニックhuIgE/huFcεRIαマウス(即ち、BMMCα-dTG)からの骨髄由来マスト細胞、huFcεRIαで安定してトランスフェクトされたラット好塩基性白血病細胞(即ち、RBL-2H3α)、並びにヒトマスト細胞株HMC-1及びLUVAで測定したレベルと比較した(図2A及び表1を参照)。IgE感作の非存在下で、Hoxb8マスト細胞は、平均18,415rpcを示すが、BMMCα-sTGは、35,160rpcというほぼ2倍の受容体を発現させる。BMMCα-dTGは、25,007rpcという中間レベルを示し、RBL-2H3αは、1,084rpcという低量を示した。huFcεRIαの表面発現は、HMC-1及びLUVAの両方で検出できなかった。5μg/mlの組換えヒトIgE(huIgE)の存在下で一晩インキュベートすると、分析されている各細胞株のhuFcεRIαの量が約5倍に増加する(図2A及び表1を参照)。この発見は、IgEがそのマスト細胞表面上の受容体を安定させることを証明した以前の報告と一致する。イメージストリームフローサイトメトリー分析により、huFcεRIαとhuIgEの均一な分布と共局在が更に明らかになった。Hoxb8マスト細胞表面上のクラスター化又は凝集が観察されなかった。組換えヒトIgE-JW8を使用したHoxb8マスト細胞上の滴定実験は、フローサイトメトリーにより>1μg/ml~<100μg/mlの線形範囲の濃度でIgEを検出できることを証明する。したがって、このアッセイは、2対数を超える動的範囲でIgE結合を検出することができる(図2B)。次に、本発明者らは、Hoxb8マスト細胞系を使用してヒト血清試料中の総IgE濃度を測定することができるかどうかを評価した。本発明者らは、標準曲線を使用して、Hoxb8マスト細胞上の25人の血清中のIgEレベルを定量化し、それらの結果を、現在の至適基準のシングルプレックスイムノアッセイ(即ち、ImmunoCAP(商標)、Phadia(ファディア))によって測定した総血清IgE値と比較した。注目すべきことに、結果は、Hoxb8マスト細胞系が正確であり、シングルプレックスイムノアッセイによる測定結果と高い相関性(r=0.972、p<0.0001)を示すことを証明する(図2C)。
【0185】
【表1】
【0186】
マスト細胞上のFcεRIα結合IgEの抗原媒介凝集又はアレルゲン媒介凝集は、それらの活性化及び即時の脱顆粒を引き起こすことが十分に実証されている。しかしながら、機能的に活性になるために、huFcεRIαは、細胞内シグナル伝達ドメインを含むマウスγ鎖と対を形成し(即ち、三量体αγ受容体を形成する)、理想的には、細胞内シグナル伝達ドメインも含みシグナル増幅器として機能するマウスβ鎖に結合する(即ち、四量体αβγ受容体を形成する)必要がある。Hoxb8マスト細胞におけるα鎖、β鎖、及びγ鎖の発現を評価するために、本発明者らは、ウェスタンブロット分析を行った。全て3つの鎖は、検出可能であり、これは、ヘテロ四量体αβγ受容体形式がHoxb8マスト細胞の表面に発現することを強く示唆している。アレルギーエフェクター細胞の活性化と脱顆粒は、様々な手段で評価することができる。一方で、研究者らは、細胞培養上清中の脱顆粒時に放出される特定の酵素又はメディエーター(例えば、β-ヘキソサミニダーゼ)を定量化する。或いは、リソソーム関連膜タンパク質-1(LAMP-1又はCD107a)などの、脱顆粒時に露出する細胞表面マーカーをフローサイトメトリーにより定量化することもできる。分化したHoxb8マスト細胞においてhuFcεRIαが機能的に活性になるかどうかを評価するために、本発明者らは、濃度が増加した抗原特異的IgE-JW8で細胞を感作し、濃度が一定の同種抗原(NIP24-BSA)で細胞をチャレンジした。細胞表面CD107a陽性を読み取り値(図2D)として使用すると、今回の結果は、Hoxb8マスト細胞の用量依存的活性化を示し、最大活性化の再現性が高く、全体として優れた信号対雑音比を示す(図2E)。最大活性化は、約95%に達するが、これは、マスト細胞株でも骨髄由来マスト細胞でもこれまで観察されたことのない値であり(表1)、バックグラウンド活性化は、<1%で低いままである。本発明者らは、更に、モノクローナル前駆細胞株(即ち、NT-1)に由来するHoxb8マスト細胞を試験し、該細胞は、その親ポリクローナル株に由来する細胞とほぼ同じ挙動を示す。Hoxb8マスト細胞は、非常に高い最大活性化値に加えて、他の好ましい特徴を示す。5日後の分化した細胞の総収量は、播種された前駆細胞の数の5.8倍であり(図2F)、これは、ヒト血液由来マスト細胞培養物について以前に記載されたものと類似する範囲内にある。しかしながら、計算された倍増時間は、28.8時間であり、このHoxB8前駆細胞培養物は、BMMCα-sTG、BMMCα-dTG、RBL-2H3α、HMC-1又はLUVAを含む、以前に記載された他のマスト細胞株又は好塩基球株よりも明らかに速く増殖する(図2G)。重要なことには、HoxB8マスト細胞は、前駆細胞の培養5週間後にも活性を失うことなく機能し続ける(図2H)。マスト細胞活性化のインビトロモデルに関与する以前の研究では、活性化マーカーのフローサイトメトリー分析ではなく、上清中のβ-ヘキソサミニダーゼの定量化が優先的に使用されたため、本発明者らは、更に、Hoxb8マスト細胞についてこれら2つのパラメータがどのように相互に関連するかを評価した。両方の測定を行うことにより、本発明者らは、放出されたβ-ヘキソサミニダーゼと露出したCD107a表面マーカーとの間に密接な相関性があることを見出した(図2I)。
【0187】
分化したHoxb8マスト細胞は、密閉管内にO又はCOが追加されない室温の分化培地中の少なくとも7日間のアッセイにおいて、優れた生存率及び反応性の維持を有することが見出された。この発見は、この細胞の堅牢性を強調している。
【0188】
Hoxb8マスト細胞を使用したIgE媒介反応の調査
本発明者らは、ヒト血清由来のIgEが分化したHoxb8マスト細胞上のhuFcεRIαに容易に結合することを示し、これらの細胞が抗原刺激によるIgE架橋時に直ちに脱顆粒することを証明した。次に、本発明者らは、アレルギー患者からの所定の血清によるHoxb8マスト細胞の受動的感作がアレルゲン特異的活性化の試験に使用できるかどうかを評価したかった。異なるアレルゲン源の代表的なイメージを取得するために、本発明者らは、Hoxb8マスト細胞を、ピーナッツ、ネコ、ハチ、ミツバチ、イエダニ、カバノキ又はオオアワガエリにアレルギーがある患者からの血清とインキュベートし、更にシングルプレックスイムノアッセイにより、これらの試料中の総IgE及びアレルゲン特異的IgEを測定した(表2)。更に、本発明者らは、異なるRASTクラスからの血清が試験した試料において表されることを確認した。使用した全てのアレルゲンについて、本発明者らは、Hoxb8マスト細胞の用量依存的活性化を観察し(図3A~G)、これは、この実験設定が未知のアレルギーについて患者をスクリーニングするのに適していることを示唆する。興味深いことに、活性化は、血清中のアレルゲン特異的IgE若しくは総IgEの量とも、及びそれらの比率とも相関せず、これは、保護アレルゲン特異的IgGの存在などの追加パラメータがこの機能的アッセイの結果に影響を与えることを示す。これらのデータは、Hoxb8マスト細胞アッセイが、事実上あらゆるアレルゲンに対するIgE媒介アレルギーを同定するとともに、特定のアレルゲン濃度での最大活性化に基づいてアレルギー反応の重症度を判断するために使用できることを強く示唆する。
【0189】
【表2】
【0190】
分化したHoxb8マスト細胞を使用したAITのモニタリング
保護IgGの誘導は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)寛容の確立の根底にある機構の1つを表すことがよく理解されている。それにもかかわらず、アレルゲン特異的IgG誘導の影響を試験し、AITの治療の成功をモニタリングするために利用できる、標準化され検証された機能的アッセイがない。ここで、本発明者らは、患者血清によるHoxb8マスト細胞の受動的感作がAITを受けているアレルギー患者のモニタリングに有用であるかどうか、及びこのアプローチが治療結果の予測に役立つかどうかという問題に取り組んだ。概念実証として、本発明者らは、200倍過剰のNIP特異的IgGの存在下又は非存在下で、濃度が一定の組換えNIP特異的ヒトIgE-JW8でHoxb8マスト細胞を感作した。異なる濃度のNIP-BSA抗原で細胞を活性化すると、本発明者らは、NIP特異的IgG含有試料の場合、活性化曲線がより高い抗原濃度にシフトすることを観察した。更に、NIP特異的IgGが存在すると、最大活性化の低下が明らかになった(図4A)。次に、本発明者らは、少なくとも36ヶ月にわたってAITを受けたオオアワガエリアレルギー患者の血清試料(表3)を試験した。この長期的観察により、ベースライン(即ち、治療開始前)ではHoxb8マスト細胞上でオオアワガエリに対する反応性を示す患者血清が、12ヶ月の治療後又はそれ以降の時点で反応しなくなることが明らかになった(図4B)。一方で、プラセボ治療を受けた対照患者からの血清は、36ヶ月の時間枠にわたって反応性の明らかな変化は示さなかった。SCIT後の患者血清の無反応性が保護アレルゲン特異的IgGの存在によるものであるかどうかを評価するために、本発明者らは、SCIT後の12ヶ月後の血清からIgGを除去し、その血清を未処理のSCIT後の12ヶ月後の血清と比較した。未処理のSCIT血清は、予想どおり活性化を誘導しなかったが、IgG除去血清は、反応性が高くなり、オオアワガエリアレルゲンチャレンジ時に用量依存的にHoxb8マスト細胞を活性化した(図4C)。更に、本発明者らの発見は、以前に報告されたSCIT中のアレルゲン特異的IgG誘導の重要性を再び強調する。更に、本発明者らは、Hoxb8マスト細胞が抑制性受容体FcγRIIB(即ち、CD32b)を発現させるかどうかを確認し、この受容体は、マウスIgGではなく、類似する親和性を備えたヒトIgGアレルゲン免疫複合体と潜在的に結合することにより、Hoxb8マスト細胞の活性化を阻害する可能性がある。フローサイトメトリー分析により、抗CD32b抗体で染色された場合、アイソタイプコントロールと比較して細胞集団全体は、明らかにシフトし、Hoxb8マスト細胞の表面にFcγRIIBが存在することを確認した(図4D)。まとめると、これらのデータは、機能的Hoxb8マスト細胞アッセイがAIT治療を受けている患者の長期的モニタリングと療法結果の臨床的解釈に役立つことを強く示す。
【0191】
【表3】
【0192】
分化したHoxb8マスト細胞を使用したハイスループットアレルギースクリーニング
次のステップで、本発明者らは、Hoxb8マスト細胞の活性化に基づくアレルギースクリーニングアッセイがハイスループット形式に適応できるかどうかを調べた。この目的のために、本発明者らは、共有結合アミンカップリングプロトコルを使用して、さまざまな濃度の蛍光色素(即ち、Pacific Blue、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 647)で感作細胞を標識した(図5A(i))。しかしながら、代替実施形態では、マスト細胞を感作前に標識することができるということが理解される(図5、A(ii))。各バッチの細胞は、特定の蛍光標識に基づく固有の細胞バーコードを受け取る。Hoxb8マスト細胞のフローサイトメトリー分析により、異なって標識された細胞集団がうまく分離されることを示す(図5B)。ゲーティング戦略として、本発明者らは、最初にSSC/FSC生細胞をそれらのPacific Blue蛍光強度に従って分離し、続いてAlexa Fluor 647シグナルに対してAlexa Fluor 488シグナルをプロットすることを選択した。概念実証実験では、本発明者らは、異なる濃度の組換えヒトNIP特異的ヒトIgE-JW8を使用して、個別に標識された細胞集団を感作した後、全ての細胞集団を単一のチューブにプールし、その後、その単一のチューブに濃度一定のNIP-BSA抗原を活性化のために添加した。フローサイトメトリーによる取得と分析により、本発明者らは、個別の細胞集団を取得し、それらの活性化状態をモニタリングすることができた(図5C)。同定された各細胞集団のCD107a細胞表面陽性によって測定した活性化のパーセンテージは、感作量とよく相関した(図5C及びD)。次のステップでは、本発明者らは、オオアワガエリアレルギー患者からの8種類の所定の血清(表4)を使用して、個別に標識した細胞集団を感作した後、それらを4つのチューブにプールした。活性化のために、4つのチューブのそれぞれに特定の濃度のオオアワガエリ抽出物(即ち、0、10、50、100ng/ml)を添加した。全ての細胞をプールして取得し、その後、デコンボリューションして、個別の細胞集団をそれらの蛍光バーコードに基づいて同定した(図5E)。無血清対照を除く各血清試料は、アレルゲン用量依存的細胞活性化を示し(図5F)、これは、蛍光細胞バーコーディングに基づくハイスループットアプローチが1回の実験の実行で複数の血清をスクリーニングするのに適することを強く裏付けている。
【0193】
【表4】
【0194】
次に、本発明者らは、そのようなハイスループットアプローチで個別の患者血清を複数のアレルゲンに対してスクリーニングできるかどうかを調べた。これを行うために、本発明者らは、バーコーディングした細胞を2人の多感作患者からの処理血清とインキュベートし(表5)、それらをさまざまなアレルゲンで別々に刺激した。活性化後、個別の患者血清からの細胞をプールして取得し、その後、デコンボリューションして、個別の細胞集団をそれらの蛍光バーコードに基づいて同定した。本発明者らは、患者1の血清でオオアワガエリミックス、ネコ及びカバノキアレルゲンに対する反応性を検出し(図6A及びC)、患者2の血清は、イエダニ及びネコのアレルゲンに対して反応する(図6B及びD)。これらのデータは、確立されたハイスループット形式が、多感作患者を機能的にスクリーニングして同定するための適切かつ迅速な設定であることを明確に示す。
【0195】
【表5】
【0196】
実施例2
Hoxb8マスト細胞活性化感度の最適化
方法
Hoxb8マスト前駆細胞を、10%FCS Sera Pro、10%WEHI-3b上清、100U/mlのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン及び50mMの2-メルカプトエタノールを補充したStableCell RPMI-1640培地中で、タモキシフェン(4-OHT)の非存在下で、37℃、5%COで5日間分化した。続いて、細胞をPBSで洗浄し、96ウェルプレートにウェルあたり25μlのBMMC培地(即ち、安定グルタミン及び2.0g/LのNaHCOを含有し、10%Hyclone FCS、100U/mLのペニシリン、100mg/mLのストレプトマイシン、10mMのHEPES緩衝液、1mMのピルビン酸ナトリウム、4mMのL-グルタミン、13種の非必須アミノ酸、30ng/mLのマウス組換えIL-3及び50mMの2-メルカプトエタノールを補充したRPMI-1640)に5×10個の分化したHoxb8マスト細胞を播種した。37℃、5%COで、細胞を、異なる濃度のJW8-IgEで一晩直接感作するか(5~6日目の設定、丸)、又はBMMC培地中にもう1日放置した後に異なる濃度のJW8-IgEで一晩感作する(6~7日目の設定、三角)。翌朝、感作細胞を抗CD107a抗体の存在下で100ng/mlのNIP-BSA抗原で25分間チャレンジし、活性化をフローサイトメトリー(即ち、CD107a細胞の定量化)により測定した。
【0197】
結果
5~6日目の設定と比較して、6~7日目の設定では、半値活性化のJW8-IgE濃度が0.075μg/mlから0.026μg/mlまで低下するため、NIP-BSA抗原チャレンジ時に活性化される感作Hoxb8マスト細胞の感度が2.8倍増加する。
【0198】
本発明は、以下の項のいずれかによって定義され得る。
【0199】
1.誘導ホメオボックス遺伝子を含む核酸分子を、非ヒト動物に由来し、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された骨髄系前駆細胞に導入するステップと、
前記核酸分子を含む細胞を選択するステップと
を含み、前記核酸分子は、組換え体であってもよい、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の製造方法。
2.前記ホメオボックス遺伝子は、HoxB8、HoxA9、Lhx2(LH2)及びTLX1(Hox11)から選択される、項1に記載の方法。
3.前記ホメオボックス遺伝子は、HoxB8である、項2に記載の方法。
4.前記核酸分子は、抗生物質に対する耐性を与える遺伝子を更に含み、前記核酸分子を含む細胞を選択するステップは、前記抗生物質を含む培地中で前記細胞を培養するステップを含む、項1~3のいずれか一項に記載の方法。
5.前記ホメオボックス遺伝子の発現は、誘導因子によって制御され、前記培地は、前記誘導因子を更に含む、項4に記載の方法。
6.前記誘導因子は、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-OHT)である、項5に記載の方法。
7.前記培地は、インターロイキン3(IL-3)を更に含む、項4~7のいずれか一項に記載の方法。
8.前記核酸分子は、ベクターであり、任意に、ウイルスベクターである、項1~7のいずれか一項に記載の方法。
9.前記ウイルスベクターは、レンチウイルス粒子である、項8に記載の方法。
10.前記条件的不死化マスト細胞前駆細胞の単一細胞希釈を行い、その後にクローン増殖を行って、モノクローナルの条件的不死化マスト細胞前駆細胞株を取得するステップを更に含む、項1~9のいずれか一項に記載の方法。
11.以前に非ヒト動物から取得された全骨髄を用意し、
任意に磁気細胞分離を使用して、前記骨髄の造血前駆細胞を濃縮し、
IL-3の存在下で前記造血前駆細胞を培養することにより、前記動物から前記骨髄系前駆細胞を誘導するステップを更に含み、任意に、前記造血前駆細胞は、WEHI-3B細胞馴化培地中で培養される、項1~10のいずれか一項に記載の方法。
12.前記非ヒト動物は、齧歯動物であり、任意に、マウスである、項1~11のいずれか一項に記載の方法。
13.前記異種FcεRIαは、ヒトFcεRIαである、項1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.前記誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養して、分化したマスト細胞を取得するステップを更に含む、項5、又は項5に従属する場合の項6~13のいずれか一項に記載の方法。
15.前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、少なくとも5日間培養され、任意に、少なくとも6日間培養される、項14に記載の方法。
16.前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、WEH3b細胞馴化培地中で培養される、項14又は15に記載の方法。
17.異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させるように改変された非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養するステップを含み、前記条件的不死化マスト細胞前駆細胞は、誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を更に含み、前記誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で培養され、任意に、前記ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれる、マスト細胞の調製方法。
18.前記マスト細胞は、c-kitと異種FcεRIαの二重陽性である、項14~17のいずれか一項に記載の方法。
19.誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させ、任意に、前記ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれる、非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞。
20.項1~14のいずれか一項に記載の方法によって取得可能である、項19に記載の細胞。
21.項19又は20に記載の非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の集団と、
誘導因子と、を含む、組成物。
22.誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させ、任意に、前記ホメオボックス遺伝子は、組換え核酸分子に含まれる、非ヒトマスト細胞。
23.項14~18のいずれか一項に記載の方法によって取得可能である、項22に記載の非ヒトマスト細胞。
24.c-kit陽性である、項22又は23に記載の非ヒトマスト細胞。
25.項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞の集団を含む、組成物。
26.前記マスト細胞集団の少なくとも95%は、c-kit陽性である、項25に記載の組成物。
27.前記マスト細胞集団は、IgE感作の非存在下で、細胞あたり15000~20000個のFcεRIα受容体を示す、項25又は26に記載の組成物。
28.前記マスト細胞集団は、IgE感作の存在下で、細胞あたり80000~110000個のFcεRIα受容体を示す、項25~27のいずれか一項に記載の組成物。
29.前記マスト細胞は、少なくとも90%、任意に少なくとも95%の最大活性化を示す、項25~28のいずれか一項に記載の組成物。
30.前記マスト細胞は、35時間未満、任意に30時間未満の倍増時間を有する、項25~29のいずれか一項に記載の組成物。
31.患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうか、及び/又は患者のアレルゲンに対するアレルギーの重症度を判断する方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞は、項22~24に記載の非ヒトマスト細胞、又は項25~30に記載の組成物に含まれた非ヒトマスト細胞の集団である、方法。
32.前記試料は、患者の原血清又は希釈患者血清である、項31に記載の方法。
33.前記試料は、例えば、適切な培地又は緩衝液中に、患者血清から単離された抗体を含む、項31に記載の方法。
34.前記マスト細胞は、患者の抗体を含む試料と少なくとも10時間、好ましくは、少なくとも12時間(例えば、一晩)インキュベートされる、項31~33のいずれか一項に記載の方法。
35.前記マスト細胞を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップと、前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップとの間の洗浄ステップの非存在下で行われる、項31~34のいずれか一項に記載の方法。
36.前記マスト細胞の活性化を検出するステップは、メディエーターの放出を検出するステップ、表面マーカーの発現を検出するステップ、又は患者の血清試料中の前記アレルゲンに特異的なIgEの存在を示すpH変化を検出するステップを含む、項31~35のいずれか一項に記載の方法。
37.前記表面マーカーは、リゾチーム関連膜糖タンパク質(LAMP-1、LAMP-2又はLAMP-3など)、CD203c、CD63又はCD107aであり、任意に、前記表面マーカーはCD107aである、項36に記載の方法。
38.表面マーカーの発現を検出するステップは、前記マスト細胞を前記表面マーカーに特異的な抗体と接触させるステップと、前記細胞に結合した抗体を検出するステップと、を含む、項37に記載の方法。
39.任意にフローサイトメトリーを使用して、細胞に結合した抗体を定量化するステップを含む、項38に記載の方法。
40.前記メディエーターは、β-ヘキソサミニダーゼ、プロテアーゼ、ヒスタミン又はロイコトリエン(例えば、LTC4)である、項36に記載の方法。
41.前記マスト細胞の活性化を検出するステップは、前記アレルゲンに対する前記患者のアレルギーの重症度に対応する活性化レベルを測定するステップを更に含む、項31~40のいずれか一項に記載の方法。
42.前記患者が複数のアレルゲンにアレルギーがあるかどうかを判断するためのものであり、
複数のマスト細胞集団のそれぞれを、患者抗体を含む試料と別々にインキュベートするステップと、
前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップと、
前記マスト細胞集団を、前記患者抗体を含む試料とインキュベートした後、前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なるアレルゲンと別々に接触させるステップと、
前記複数のマスト細胞集団をプールするステップと、
各集団における前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、各マスト細胞集団は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞を含む、項31~41のいずれか一項に記載の方法。
43.前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップは、前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを、前記患者抗体を含む試料とインキュベートするステップの前又は後に行われる、項42に記載の方法。
44.複数の患者がアレルゲンにアレルギーがあるかどうかを判断するためのものであり、
複数の試料のそれぞれを複数のマスト細胞集団のうちの1つと別々にインキュベートするステップであって、各試料が異なる患者からの抗体を含むステップと、
前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップと、
前記複数のマスト細胞集団をプールするステップと、
前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを前記アレルゲンと接触させるステップと、
各集団における前記マスト細胞の活性化を同時に検出するステップと
を含み、各マスト細胞集団は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞を含む、項31~41のいずれか一項に記載の方法。
45.前記複数のマスト細胞集団のそれぞれを異なる検出可能標識で標識するステップは、前記マスト細胞集団を、患者抗体を含む試料とインキュベートするステップの前又は後に行われる、項44に記載の方法。
46.前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させる前に、前記複数のマスト細胞集団をプールする、項44又は45に記載の方法。
47.前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させた後、かつ活性化を検出する前に、前記複数のマスト細胞集団をプールする、項44又は45に記載の方法。
48.前記検出可能標識は、蛍光色素である、項44~47のいずれか一項に記載の方法。
49.アレルゲンにアレルギーがある患者を治療するために使用されている、将来使用される可能性があるか、又は以前に使用された療法の有効性のモニタリング方法であって、
マスト細胞を、患者抗体を含む第1試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化の第1レベルを測定するステップと、
測定された前記第1レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
50.前記基準レベルは、療法開始前に前記患者から取得された抗体を含む試料を使用して測定されたマスト細胞の活性化のベースラインレベルである、項49に記載の方法。
51.前記療法は、アレルゲン特異的免疫療法(AIT)である、項49又は50に記載の方法。
52.前記患者は、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1、2、3、4若しくは5年間、AITで治療される、項51に記載の方法。
53.AIT開始後に一定の時間間隔で行われ、任意に、約3、4、6又は12ヶ月ごとに行われる、項51又は52に記載の方法。
54.前記療法に反応しない患者を同定するためのものである、項49~53のいずれか一項に記載の方法。
55.前記アレルゲンに対して耐性になっている患者を同定するためのものである、項49~53のいずれか一項に記載の方法。
56.抗アレルギー治療薬を使用した前記患者の治療を含む療法の有効性をモニタリングするためのものである、項49又は50に記載の方法。
57.前記抗アレルギー治療薬は、抗IgE薬であり、任意に、前記抗アレルギー治療薬は、抗体、DARPin、アフィマー、モノボディ、アンチカリン又はアフィボディである、項56に記載の方法。
58.前記抗アレルギー治療薬は、保護IgGを誘導する薬剤である、項56に記載の方法。
59.マスト細胞を、患者の抗体を含みIgGが除去された第2試料とインキュベートすることと、
前記マスト細胞を前記アレルゲンと接触させることと、
前記マスト細胞の活性化の第2レベルを測定することと、
測定された前記第2レベルと前記基準レベル及び/又は測定された前記第1レベルとを比較することとにより、保護(抗原特異的)IgGの誘導を検出するステップを更に含む、項49~58のいずれか一項に記載の方法。
60.アレルゲン製剤の効力の測定方法であって、
マスト細胞を、前記アレルゲンに特異的なIgEとインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記アレルゲン製剤の試料と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化レベルを測定するステップと、
任意に、測定された前記活性化レベルと基準レベルとを比較するステップと
を含み、前記マスト細胞は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
61.同じアレルゲン製剤の異なるバッチ間の効力の変化を検出するためのものである、項60に記載の方法。
62.標準化アレルゲン製剤を調製するためのものであり、前記アレルゲン製剤の効力を調整するステップを更に含む、項60又は61に記載の方法。
63.食品添加物又は薬剤候補のアレルゲン性スクリーニング方法であって、
マスト細胞を、被験者の抗体を含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞を前記食品添加物又は薬剤候補と接触させるステップと、
前記マスト細胞の活性化を検出するステップと
を含み、前記マスト細胞は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
64.前記試料は、複数の個体、例えば、少なくとも10、50、100、200、500、700又は1000個の個体から取得された抗体を含む、項63に記載の方法。
65.患者の血清IgE濃度の測定方法であって、
マスト細胞を、前記患者からのIgEを含む試料とインキュベートするステップと、
前記マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップと
を含み、前記マスト細胞は、項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞である、方法。
66.前記試料中の総IgE濃度を測定するためのものである、項65に記載の方法。
67.前記試料中のアレルゲン特異的IgEの濃度を測定するためのものである、項65に記載の方法。
68.前記マスト細胞の表面に結合したIgEの量を測定するステップは、
前記マスト細胞を、IgEに特異的に結合する薬剤と接触させるステップと、
前記細胞に結合した前記薬剤の量を測定するステップと
を含む、項65~67のいずれか一項に記載の方法。
69.前記細胞に結合した薬剤の量と基準とを比較するステップを更に含む、項68に記載の方法。
70.前記基準は、標準曲線である、項69に記載の方法。
71.前記薬剤は、抗IgE抗体、又は前記アレルゲン特異的IgEの同種アレルゲンである、項68~70のいずれか一項に記載の方法。
72.前記薬剤は、検出可能標識、例えば、蛍光色素で標識される、項68~71のいずれか一項に記載の方法。
73.非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養して、前記マスト細胞を製造するステップを更に含む、項31~72のいずれか一項に記載の方法。
74.前記非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養するステップは、項17に従って行われる、項73に記載の方法。
75.非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞を培養して、マスト細胞を製造するステップは、
それぞれが誘導因子の制御下で発現するホメオボックス遺伝子を含み、異種高親和性IgE受容体αサブユニット(FcεRIα)を発現させる非ヒト条件的不死化マスト細胞前駆細胞の集団を用意するステップと、
前記誘導因子の非存在下及びIL-3の存在下で前記マスト細胞前駆細胞を少なくとも5日間培養して、前記非ヒト条件的不死化マスト細胞を製造するステップと
を含む、項73又は74に記載の方法。
76.項22~24のいずれか一項に記載の非ヒトマスト細胞と、
前記マスト細胞の活性化を検出する試薬と、
任意に、1つ以上のアレルゲンと、
任意に、陽性対照(例えば、前記アレルゲン又は各アレルゲンに特異的なモノクローナルIgE)と
を含む、アレルギー検査用キット。
77.前記試薬は、抗体(例えば、CD107a又はCD203cなどのリゾチーム関連膜糖タンパク質(LAMP)に特異的な抗体)、プロテアーゼ基質(例えば、トリプターゼ基質)、β-ヘキソサミニダーゼの基質、又はpHの変化に反応する試薬(例えば、pH感受性蛍光色素又はpH指示薬溶液)である、項76に記載のキット。
78.前記患者は、ヒトであり、前記FcεRIαは、ヒトFcεRIα(huFcεRIα)である、項1~17若しくは31~75のいずれか一項に記載の方法、項19、20若しくは22~24のいずれか一項に記載の細胞、項21若しくは25~30のいずれか一項に記載の組成物、又は項76若しくは77に記載のキット。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図2H
図2I
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
【国際調査報告】