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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】染毛剤として有用な化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 217/84 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240312BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 255/16 20060101ALI20240312BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07C217/84 CSP
A61K8/41
A61Q5/10
A61Q1/02
C07C255/16
C09B67/20 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556912
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 SG2022050156
(87)【国際公開番号】W WO2022203601
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/165,429
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.NONIDET
2.TRITON
3.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンカテサン ゴパラクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】パストリン ジョルジア
(72)【発明者】
【氏名】ビリアールディ ポール
【テーマコード(参考)】
4C083
4H006
【Fターム(参考)】
4C083AB082
4C083AB412
4C083AC472
4C083AC551
4C083AC552
4C083CC02
4C083CC36
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE26
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB99
4H006BJ20
4H006BN10
4H006BP10
4H006BP30
4H006BR10
4H006BU36
4H006BU46
4H006QN30
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、式Iの化合物であって:
ここで置換基は本明細書で定義される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって:
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキル、または、生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物を表す;
化合物。
【請求項2】
請求項1に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキルを表す;
化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、C1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、C1-3アルキルを表す;
化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-6アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【請求項5】
請求項4に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-3アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【請求項6】
請求項5に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-3アルキルを表し;
これはCNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-3アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換される;
化合物。
【請求項8】
請求項7に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-2アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換される;
化合物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、RおよびRは、各々独立して、メチルを表す
化合物。
【請求項10】
請求項1または2に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1の置換基により置換されたC1-4アルキルを表し:
OR、=O、=CH、およびNHR
は、非置換であるか、またはOR基により置換された、HまたはC1-2アルキルを表し;
は、Hまたはメチルを表す;
化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで:
(a)Rは、C1-3アルキルにより置換されておらず、このC1-3アルキルは、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;および/または
(b)Rは、C1-6アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(c)Rは、C1-3アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(d)存在する場合、Rは、HまたはC1-3(例えばC1-2)アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換され;および/または
(e)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(f)存在する場合、Rは、HまたはC1-2アルキルを表し;および/または
(g)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(h)存在する場合、Rは、Hではない;
化合物。
【請求項12】
請求項1に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール;
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン;
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項13】
請求項1に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
および
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項14】
請求項13に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(b)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(c)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
および
(d)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項15】
請求項14に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(b)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項16】
請求項12に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール;
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン;
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項17】
請求項16に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
および
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【請求項18】
毛髪を染色する、または一時的なタトゥーを施す方法であって、
前記方法は、請求項1~17のいずれか一項に記載された式Iの化合物または生理的に許容される塩または溶媒和物、または、それらの酸化誘導体を含む組成物を、適用するステップを含む
方法。
【請求項19】
毛髪を染色する、または皮膚をタトゥーするための組成物であって:
請求項1~17のいずれか一項に規定された式Iの化合物;
および
水;
を含む組成物。
【請求項20】
請求項19に記載された組成物であって、
カップリング剤をさらに含む
組成物。
【請求項21】
部品キットであって:
(i)請求項19または請求項20に記載された組成物;
および
(ii)酸化剤を含む顕色組成物(developing composition);
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象の皮膚または毛髪に着色を施すように作用しうる、化合物および前記化合物を含む組成物に関連する。本明細書で開示される化合物は、水により溶けやすく、および/または対象にアレルギーまたは他の免疫反応を引き起こしにくく、および、黒色および/または強い暗色に酸化可能でもある。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行公開文献の記載または議論は、その文献が技術水準の一部であること、または技術常識であることを認めるものとして、必ずしも受け取られるべきではない。
【0003】
毛髪および一時的な皮膚の着色は、今日最も広く使用される化粧用処理のひとつである。これらの処理に使用される染料の多くは、所望の色素沈着を施すために酸化重合を受ける、不安定な2/3官能性芳香族アミンを含む。しかしながら、暗色染料の主成分であるパラフェニレンジアミン(PPD)、またはこのジアミンの酸化的および酵素的変化は、刺激物質および非常に強力な接触アレルゲンとなりうる。これらの生命を脅かす可能性のあるアレルギーは、時に重度の水疱形成、かゆみ、および顔面腫脹を伴う限局性または全身性の接触アレルギーとして現れることがあり、リンパ節腫脹、喘息、またはメトヘモグロビン血症などの全身反応、および発熱を発症させることがある。
【0004】
パラフェニレンジアミンは、2006年に「アレルゲン・オブ・ザ・イヤー」にノミネートされた。これは、具体的には染毛剤または非永久的なタトゥーに使用される、一般的なアミン含有化合物である。PPDは、皮膚を通して容易に浸透することができ、そこで生存可能な表皮の細胞を傷つけ、皮膚の免疫細胞と相互作用しうる。このことはまた、皮膚での代謝過程によって、または非電離放射線(紫外線/可視光線/赤外線)によって生成される、PPD誘導体にも当てはまる。加えて、PPDおよびその誘導体の角質層におけるケラチンタンパク質との相互作用は、デポを形成することができ、PPDの皮膚深部への放出を長引かせ、具体的にはPPDに対するアレルギー反応を、危険かつ長期間続く状態にしうる。
【0005】
標準化されたヘアドレッサーパッチテストシリーズ(Chemotechnique)からの1%PPD溶液を使用する実験は、PPDがパラフィン(提供されたもの)内に含まれる場合、酸化に対して保護されることを示した。パッチテスト2日後でも、テストフィールドは無色のままであるので、これは正しい。質量分析測定は、空気中で数日後でもパラフィン内のPPDパッチテスト製剤がこの製剤中でいかなるバンドロフスキー塩基(Bandrowski base)または他の酸化/代謝誘導体を示さず、親化合物PPDのみが存在することを示した。しかしながら、感作された患者は、このPPD製剤に反応して明らかな限局性接触皮膚炎を発症する。このことは、ハプテン化によって、または単独で(おそらくToll様受容体の活性化を通して)、PPD自体が主なアレルゲンであることを示唆する。従って、皮膚バリアを通過できずPPDを全く含まない着色ポリマーを適用することで、染毛剤および一時的なタトゥーが皮膚および免疫細胞に及ぼす深刻な毒性およびアレルギー効果を、回避できる可能性がある。
【0006】
商業的には、感作性のより低いPPD誘導体であるME-PPDが、PPDに代わりうるより安全な永久染毛剤として、2018年に発売された。しかしながら、PPDアレルギーである人の約30%は、ME-PPDに対してもアレルギー反応を依然発症するため、ME-PPD製剤を回避することが推奨される。従って、PPDアレルギーがある人にとって、PPDに代わる最適な非毒性代替物質は、現在は無いと思われる。従って、そのようなアレルギー反応を回避し、従来の着色物質に対し感受性を示す対象での使用に適するかもしれない、毛髪および一時的な皮膚の着色に対する必要性が残る。
【発明の概要】
【0007】
上記で同定された問題の一部または全部は、本発明により解決されうる。本発明の態様および実施形態は、以下の番号付けされた条項を参照して説明される。
【0008】
1. 式Iの化合物であって:
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキル、または、生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物を表す;
化合物。
【0009】
2. 条項1に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキルを表す;
化合物。
【0010】
3. 条項1または2に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、C1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、C1-3アルキルを表す;
化合物。
【0011】
4. 条項1~3のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-6アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【0012】
5. 条項4に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-3アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【0013】
6. 条項5に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において、Rは、C1-3アルキルを表し;
これはCNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
化合物。
【0014】
7. 条項1~6のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-3アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換される;
化合物。
【0015】
8. 条項7に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-2アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換される;
化合物。
【0016】
9. 条項1~8のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物において存在する場合、RおよびRは、各々独立して、メチルを表す
化合物。
【0017】
10. 条項1または2に記載された化合物であって、
ここで:
は、以下から選択される1の置換基により置換されたC1-4アルキルを表し:
OR、=O、=CH、およびNHR
は、非置換であるか、またはOR基により置換された、HまたはC1-2アルキルを表し;
は、Hまたはメチルを表す;
化合物。
【0018】
11. 条項1~10のいずれか一項に記載された化合物であって、
ここで:
(a)Rは、C1-3アルキルにより置換されておらず、このC1-3アルキルは、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;および/または
(b)Rは、C1-6アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(c)Rは、C1-3アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(d)存在する場合、Rは、HまたはC1-3(例えばC1-2)アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換され;および/または
(e)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(f)存在する場合、Rは、HまたはC1-2アルキルを表し;および/または
(g)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(h)存在する場合、Rは、Hではない;
化合物。
【0019】
12. 条項1に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール;
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン;
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0020】
13. 条項1に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
および
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0021】
14. 条項13に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
(b)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン;
(c)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
および
(d)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0022】
15. 条項14に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(b)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル;
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0023】
16. 条項12に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール;
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン;
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン;
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0024】
17. 条項16に記載された化合物であって、
ここで式Iの前記化合物は、以下のリスト:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール;
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール;
および
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物;
から選択される
化合物。
【0025】
18. 毛髪を染色する、または一時的なタトゥーを施す方法であって、
前記方法は、条項1~17のいずれか一項に記載された式Iの化合物または生理的に許容される塩または溶媒和物、または、それらの酸化誘導体を含む組成物を、適用するステップを含む
方法。
【0026】
19. 毛髪を染色する、または皮膚をタトゥーするための組成物であって:
条項1~17のいずれか一項に規定された式Iの化合物;
および
水;
を含む組成物。
【0027】
20. 条項19に記載された組成物であって、
カップリング剤をさらに含む
組成物。
【0028】
21. 部品キットであって:
(i)条項19または条項20に記載された組成物;
および
(ii)酸化剤を含む顕色組成物(developing composition);
を含むキット。
【0029】
[図面]
本開示のある実施形態は、以下で添付図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】HaCaT皮膚細胞でのN1~N13の細胞生存率プロファイル。グラフは、y軸で細胞生存率%(リニアスケール)、x軸で濃度(対数スケール)により表される。
図2】24時間のインキュベーション後の、N1~N13の平均ペプチド減少率(システイン1:10/リジン1:50)。データは、3回反復の平均±標準偏差を表し、ns;有意ではない、**;p値<0.01、***;p値<0.001。#は、J Hazard Mat., 2021, 402, 123712からのデータを示す。
図3i-3ii】フランツ型拡散セルで行われたブタ皮膚浸透試験から得られた、N1~N13誘導体の平均累積量プロファイル。合成された誘導体A.N1、B.N2、C.N3、D.N4、E.N5、F.N6、G.N7、H.N8、I.N9、J.N10、K.N11、L.N12、M.N13の、累積量プロファイル。皮膚データは、6回反復の平均±標準偏差である。
図4】PPD、ME-PPDおよびPTDと比較した、N1~N13の皮膚浸透。適用された化合物用量に対する割合として表される。A.ドナー区画における親化合物の回収、B)親化合物の浸透、C.皮膚における親化合物の回収。データは、6回反復の平均±標準偏差であり、**p<0.01。#は、J Hazard Mat., 2021, 402, 123712からのデータを示す。
図5i-5ii】皮膚浸透試験からの、N1~N13の抽出イオンクロマトグラム(XIC)。(A)N1のXIC、(B)N2のXIC、(C)N3のXIC、(D)N4のXIC、(E)N5のXIC、(F)N6のXIC、(G)N7のXIC、(H)N8のXIC、(I)N9のXIC、(J)N10のXIC、(K)N11のXIC、(L)N12のXIC、(M)N13のXIC。
図6】新規の染毛剤および標準物質による、IL-8およびIL-1αの誘発。データは、6つの独立した実験の平均±標準偏差を表す。データは、6回反復の平均±標準偏差であり、**p<0.01、***p<0.001、陰性対照と比較した差である。PPD、MEPPD、およびPTDのデータは、J Hazard Mat., 2021, 402, 123712から。
図7i-7iii】THP-1細胞でのN1~N13のCD54およびCD86発現レベルは、1×10細胞/mLで播種され、各化学物質CV75に基づく8用量で処理された。(A)DNCB(陽性対照)、(B)SLS(陰性対照)、(C)PPD、(D)ME-PPD、(E)PTD、(F)N1、(G)N2、(H)N3、(I)N4、(J)N5、(K)N6、(L)N7、(M)N8、(M)N9、(O)N10、(P)N11、(Q)N12、および(R)N13、24時間、抗体で染色された。CD54およびCD86発現は、フローサイトメトリーを使用して測定された。グラフは、1番目と2番目のY軸で%RFIと細胞生存率%の値を、X軸で化合物濃度を示す。破線および点線は、それぞれ%RFI≧200(CD54)または%RFI≧150(CD86)のOECDカットオフ範囲を表す。%RFIの値は、3回の実験の平均±標準誤差の値である。
図8i-8iv】N1~N13誘導体がブリーチされた毛髪試料上に適用された後の、染毛剤組成物および最終的な色。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、(酸化の有無にかかわらず)染色効果を保持するが、PPDおよび/またはその酸化生成物に関連する感作の問題を回避する、PPDのアナログの使用を通じて、上記で同定された問題を克服する。すなわち、本明細書の以下に開示された化合物は、毛髪を染色または皮膚を着色する目的で使用されたとき、対象からのアレゴリーまたは他の免疫反応を引き起こさない。
【0032】
従って、本発明の第1の態様によれば、式Iの化合物が提供され:
ここで:
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表し:
ハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表し;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキル、または、生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物を表す。
【0033】
本明細書の実施形態において、「含む(comprising)」という単語は、言及された特徴を必要とするが、他の特徴の存在を限定するものではないと解釈されうる。あるいは、「含む」という単語はまた、列挙された構成要素/特徴のみが存在する(例えば、「含む」という単語は、「~からなる(consists of)」または「本質的に~から構成される(consists essentially of)」という句により置き換えられうる)ことが意図される状況に、関連しうる。より広い解釈およびより狭い解釈の両方が、本発明のすべての態様および実施形態に適用されうることが、明示的に企図される。言い換えれば、「含む(comprising)」という単語およびその同義語は、「~からなる(consists of)」という句または「本質的に~から構成される(consists essentially of)」という句またはそれらの同義語により置き換えられることができ、その逆もまた同様である。
【0034】
本明細書における(本発明の任意の態様または実施形態における)式Iの化合物への言及は、そのような化合物自体への、そのような化合物の互変異性体への、および、そのような化合物の生理的に許容される塩または溶媒和物、または酸化誘導体への、言及を含む。
【0035】
言及されうる生理的に許容される塩には、酸付加塩および塩基付加塩を含む。そのような塩は、従来の手段によって、例えば式Iの化合物の遊離酸または遊離塩基の形態と、1または複数当量の適切な酸または塩基との反応によって、任意に溶媒中または塩が不溶性である培地中で、その後前記溶媒または前記培地を除去することによって、標準的な技術(例えば、真空中で、凍結乾燥により、または濾過により)を使用して、形成されうる。塩はまた、例えば適切なイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の式Iの化合物の対イオンを、別の対イオンと交換することにより、調製されうる。
【0036】
生理的に許容される塩の例には、無機酸および有機酸に由来する酸付加塩、および、ナトリウム、マグネシウム、または好ましくはカリウムおよびカルシウムなどの金属に由来する塩を含む。
【0037】
酸付加塩の例には、以下で形成される酸付加塩を含む:酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アリールスルホン酸(例えば、ベンゼンスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸)、アスコルビン酸(例えばL-アスコルビン酸)、L-アスパラギン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)カンファー酸、カンファースルホン酸、(+)-(1S)-カンファー-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸(例えばD-グルコン酸)、グルクロン酸(例えばD-グルクロン酸)、グルタミン酸(例えばL-グルタミン酸)、α-オキソグルタル酸、グリコール酸、ヒプリン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、乳酸(例えば(+)-L-乳酸および(±)-DL-乳酸)、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸(例えば(-)-L-リンゴ酸)、マロン酸、(±)-DL-マンデル酸、メタリン酸、メタンスルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロト酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L-ピログルタミン酸、サリチル酸、4-アミノ-サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸(例えば(+)-L-酒石酸)、チオシアン酸、ウンデシレン酸、および吉草酸。
【0038】
塩の具体的な例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸、および硫酸などの無機酸に由来する塩であり;酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸などの有機酸に由来する塩であり;およびナトリウム、マグネシウム、または好ましくはカリウムおよびカルシウムなどの金属に由来する塩である。
【0039】
上述のように、式Iにより包含されるのはまた、化合物の任意の溶媒和物およびそれらの塩である。好ましい溶媒和物は、本発明の化合物の固体構造(例えば結晶構造)内に、非毒性の薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和性溶媒という)の分子を取り込むことにより形成される、溶媒和物である。そのような溶媒の例には、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール、およびブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドを含む。溶媒和物は、溶媒和性溶媒を含む溶媒または溶媒の混合物を用いて、本発明の化合物を再結晶することにより調製されうる。任意の例において溶媒和物が形成されたかどうかは、熱重量分析(TGE)、示差走査熱量測定(DSC)、およびX線結晶構造解析など、周知の標準的な技術を使用して、化合物の結晶を分析にかけることにより決定されうる。
【0040】
溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的な溶媒和物でありうる。具体的には好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例には、半水和物、一水和物、および二水和物を含む。
溶媒和物についてのより詳細な議論、およびそれらの作製と特性評価に使用される方法については、Bryn et al., Solid-State Chemistry of Drugs, Second Edition、SSCI,Inc発行、ウェストラファイエット(West Lafayette)、インディアナ州、米国、1999年、ISBN0-967-06710-3参照。
【0041】
本明細書で規定される式Iの化合物の「酸化誘導体(oxidised derivatives)」とは、過酸化水素などの酸化剤に曝される、式Iの化合物から得られうる化合物である。結果得られる酸化化合物は、PPDの酸化生成物に類似しうることが理解されよう。
【0042】
式Iの化合物、および、そのような化合物の生理的に許容される塩、溶媒和物および酸化誘導体は、簡潔のために、以下「式Iの化合物(compounds of formula I)」と総称される。
【0043】
式Iの化合物は、二重結合を含んでもよく、従って個々の二重結合についてE(entgegen)およびZ(zusammen)幾何異性体として存在しうる。そのような異性体およびそれらの混合物はすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0044】
式Iの化合物は、位置異性体として存在してもよく、また互変異性を示しうる。互変異性体およびそれらの混合物はすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0045】
式Iの化合物は、1または複数の不斉炭素原子を含んでもよく、従って光学異性および/またはジアステレオ異性を示しうる。ジアステレオ異性体は、従来の技術、例えばクロマトグラフィーまたは分別晶析法を使用して、分離されうる。様々な立体異性体は、化合物のラセミ体または他の混合物を、従来の技術、例えば分別晶析法またはHPLCを使用して分離することによって、単離されうる。あるいは、ラセミ化またはエピメリ化を引き起こさない条件下で(すなわち「キラルプール」法)適切な光学活性出発物質を反応させることによって、適切な出発物質を適切な段階でその後除去されうる「不斉補助剤」と反応させることによって、例えばホモキラル酸で誘導体化し(すなわち、動的分割(dynamic resolution)を含む分割)、次いでクロマトグラフィーなどの従来の方法によりジアステレオマー誘導体を分離することによって、またはいずれも当業者に知られた条件下で適切なキラル試薬またはキラル触媒と反応させることによって、所望の光学異性体が作製されうる。立体異性体およびそれらの混合物はすべて、本発明の範囲に含まれる。
【0046】
誤解を避けるために、本発明の文脈において、「染色する(dyeing)」および「タトゥーする(tattooing)」という用語は、皮膚(タトゥーする場合)または毛髪(染色する場合)などの、対象の身体部分への化粧用処理の適用を指す。
【0047】
本明細書で使用される「対象(subject)」という用語は、当該技術分野でよく認識されており、イヌ、ネコ、ラット、マウス、サル、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ラクダ、および最も好ましくはヒトを含む哺乳動物を指すために、本明細書で使用される。その用語は、具体的な年齢または性別を示すものではない。従って、成人および(場合によっては)新生児の対象が、男女を問わずに含まれることが意図される。
【0048】
式Iの化合物の有効量が、対象の染色および/または一時的なタトゥーに効果を与えるために、使用されうることが理解されよう。「有効量(effective amount)」という用語は、処理対象に所望の着色効果(例えば、毛髪を染色し、または皮膚を一時的にタトゥーするために十分な)を与える化合物の量を指す。その効果は、客観的(すなわち、何らかの試験またはマーカーにより測定可能である)、または主観的(すなわち、対象が違いを認識できる)でありうる。
【0049】
「ハロ(halo)」という用語は、本明細書で使用される場合、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードへの言及を含む。
【0050】
特に断りがない限り、「アルキル(alkyl)」という用語は、非分岐または分岐、環式、飽和または不飽和(例えば、アルケニルまたはアルキニルを形成する)のヒドロカルビルラジカルを指し、(例えば、1または複数のハロ原子で)置換または非置換されうる。「アルキル」という用語が非環式基を指す場合、好ましくはC1-10アルキルであり、より好ましくはC1-6アルキル(エチル、プロピル(例えばn-プロピルまたはイソプロピル)、ブチル(例えば分岐または非分岐ブチル)、ペンチル、またはより好ましくはメチルなど)である。「アルキル」という用語が環式基である場合(「シクロアルキル」基が特定される場合でもよい)、好ましくはC3-12シクロアルキルであり、より好ましくはC5-10(例えばC5-7)シクロアルキルである。より具体的には、アルキルという用語は、非分岐または分岐の飽和ヒドロカルビルラジカルを指し、(例えば、1または複数のハロ原子で)置換または非置換されうる。
【0051】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下の非限定的な実施例において提供される。
【0052】
本明細書で言及されうる本発明の実施形態において、
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表してもよく:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、HまたはC1-5アルキルを表してもよく;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、HまたはC1-3アルキルを表してもよい。
【0053】
本明細書で言及されうる本発明のいくつかの実施形態において、
は、C1-3アルキルを表してもよい。
【0054】
本明細書で言及されうる本発明のさらなる実施形態において、
は、以下から選択される1または複数の置換基により置換されたC1-10アルキルを表してもよく:
ハロ、OR、CN、およびC1-3アルキル;
この後者の基は、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;
および
エポキシ;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-10アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
は、C1-5アルキルを表してもよく;
これは非置換であるか、またはハロ、OR、およびCNから選択される1または複数の置換基により置換され;
および
およびRは、各々独立して、C1-3アルキルを表してもよい。
【0055】
本明細書で言及されうる式Iの実施形態において、以下のうちの1または複数が適用されうる:
(a)Rは、C1-6アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
任意選択でRは、C1-3アルキルを表してもよく;
これはCNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;
(b)式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-2アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換され;
(c)式Iの前記化合物において存在する場合、RおよびRは、各々独立して、メチルを表す。
【0056】
式Iのさらなる実施形態において、以下のうちの1または複数が適用されうる:
(i)Rは、C1-3アルキルを表し;
これはOR、CNおよびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成される;
(ii)式Iの前記化合物において存在する場合、Rは、C1-3アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換される。
【0057】
(a)~(c)および(i)~(ii)のうちの1または複数が選択されうることが理解されよう。例えば、Rは上記(ii)に定められる定義から選択されてもよく、Rは置換基の最も広範な一般的定義に合わせて規定されてもよく、一方RおよびRは、上記(c)により規定されてもよい。
【0058】
本明細書で言及されうる本発明のさらなる実施形態において:
は、以下から選択される1の置換基により置換されたC1-4アルキルを表してもよく:
OR、=O、=CH、およびNHR
は、非置換であるか、またはOR基により置換された、HまたはC1-2アルキルを表してもよく;
および
は、Hまたはメチルを表してもよい。
【0059】
本明細書で言及されうる本発明のなおさらなる実施形態において、(a)~(h)のうちの1または複数が適用されうる:
(a)Rは、C1-3アルキルにより置換されておらず、このC1-3アルキルは、非置換であるか、またはハロ、CN、ORにより置換され;および/または
(b)Rは、C1-6アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-6アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(c)Rは、C1-3アルキルを表し;
これはハロ、OR、CN、=O、=CH、NHR、およびエポキシから選択される1または複数の置換基で置換され;
ただしエポキシ置換基は、RがC2-3アルキルであり、およびRの2つの隣接する炭素原子が、酸素原子と共に前記エポキシ置換基を形成する場合にのみ形成され;および/または
(d)存在する場合、Rは、HまたはC1-3(例えばC1-2)アルキルを表し;
これは非置換であるか、または、1または複数のOR置換基により置換され;および/または
(e)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(f)存在する場合、Rは、HまたはC1-2アルキルを表し;および/または
(g)存在する場合、Rは、Hを表し;および/または
(h)存在する場合、Rは、Hではない。
【0060】
それ自体言及されうる式Iの他の化合物には、本明細書の以下に記載される例の化合物を含む。従って、言及されうる本発明の実施形態は、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N1];
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N2];
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N3];
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N4];
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン[N5];
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル[N6];
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N7];
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール[N8];
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール[N9];
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール[N10];
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン[N11];
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N12];
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N13]、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0061】
本明細書で言及されうる本発明のより具体的な実施形態には、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(i)2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N1];
(ii)2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N2];
(iii)2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N3];
(iv)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N4];
(v)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン[N5];
(vi)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル[N6];
および
(vii)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N7]、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0062】
本明細書で言及されうる本発明のさらに具体的な実施形態には、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N4];
(b)2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン[N5];
(c)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル[N6];
および
(d)2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N7]、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0063】
本明細書で言及されうる本発明のさらに具体的な実施形態には、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(a)2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N4];
および
(b)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル[N6];
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0064】
本明細書で言及されうる本発明のさらに具体的な実施形態には、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール[N8];
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール[N9];
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール[N10];
(xi)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン[N11];
(xii)2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N12];
および
(xiii)2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン[N13]、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0065】
本明細書で言及されうる本発明のさらに具体的な実施形態には、式Iの化合物が以下のリストから選択される化合物であるものを含む:
(viii)2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール[N8];
(ix)2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール[N9];
および
(x)1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール[N10]、
または
生理的に許容されるそれらの塩または溶媒和物。
【0066】
式Iの化合物は、毛髪を染色し、または皮膚を(一時的に)タトゥーするための組成物に有用でありうることが理解されよう。従って、本発明のさらなる態様において、上記で規定された式Iの化合物および水を含む、毛髪を染色する、または皮膚をタトゥーするための組成物が、開示される。
【0067】
本発明でのタトゥーの文脈における「一時的に(temporary)」という用語は、皮膚を一時的に着色することを意味すると理解され、これは、洗浄(例えば、石鹸でタトゥーを洗浄)により、または一定期間にわたる表皮の自然な脱落により、完全にまたはほぼ完全に除去されうる。
【0068】
現在特許請求されている発明の文脈において、「毛髪を染色する(dyeing hair)」とは、式Iの化合物を含む製剤を適用して、そのように染色される毛髪に永久的または半永久的な色の変化をもたらすことを指す。この効果は、毛髪をブロンドにする/ブリーチする、および/または式Iの化合物を酸化させる酸化性材料が存在しなくても達成されうるが、本明細書に記載されるいくつかの実施形態において、酸化材料が存在してもよい。
【0069】
本明細書で言及される化合物および組成物は、毛髪を永久的に染色するために使用されうることが理解されよう。この場合、髪が伸びるか、または別の色に染色されるまで、その効果は本質的に永久的である。
【0070】
組成物は、0.0001~20重量%の式Iの化合物を含んでもよく、残りは水である。後述するように、他の構成要素が組成物の一部を形成してもよく、そのような水は、典型的には、組成物の総重量に対して約15~約99重量%の範囲の量で提供されることが理解されよう。組成物のpH範囲は約1.0~14.0でありうるが、より典型的には、組成物のpH範囲は約3.0~約11.0であろう。式Iの化合物の組合せが、本明細書で具体的に企図されることが理解されよう。誤解を避けるために、「式Iの化合物」への言及はまた、それらの生理的に許容される塩または溶媒和物、または酸化誘導体にも関連する。
【0071】
本明細書で説明される組成物は、追加の構成要素を含んでもよく、この追加の構成要素には、カップリング剤、界面活性剤、追加の希釈剤/溶媒、増粘剤、およびアルカリ化剤を含みうるが、これらに限定されないことが理解されよう。
【0072】
PPDと共に使用されうる任意の適切なカップリング剤が、本明細書で使用されてもよく、カップリング剤は組成物全体の0.0001~20重量%を形成する。適切なカップリング剤は、フェノール、カテコール、メタアミノフェノール、メタフェニレンジアミンなどを含むが、これらに限定されない群から選択されてもよく、これらは、無置換であるか、またはアミノ基またはベンゼン環が、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルアミノ基などで置換されてもよい。適切なカプラー(coupler)には、3,4-メチレンジオキシフェノール、3,4-メチレンジオキシ-1-[(β-ヒドロキシエチル)アミノ]ベンゼン、1-メトキシ-2-アミノ-4-[(β-ヒドロキシエチル)アミノ]-ベンゼン、1-ヒドロキシ-3-(ジメチルアミノ)ベンゼン、6-メチル-1-ヒドロキシ-3[(β-ヒドロキシエチル)-アミノ]ベンゼン、2,4-ジクロロ-1-ヒドロキシ-3-アミノベンゼン、1-ヒドロキシ-3-(ジエチルアミノ)-ベンゼン、1-ヒドロキシ-2-メチル-3-アミノベンゼン、2-クロロ-6-メチル-1-ヒドロキシ-3-アミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼン、6-メトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、6-ヒドロキシエトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、6-メトキシ-5-エチル-1,3-ジアミノベンゼン、6-エトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、1-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-アミノベンゼン、2-メチル-1,3-ジアミノベンゼン、6-メトキシ-1-アミノ-3-[(β-ヒドロキシエチル)アミノ]-ベンゼン、6-(β-アミノエトキシ)-1,3-ジアミノベンゼン、6-(β-ヒドロキシエトキシ)-1-アミノ-3-(メチルアミノ)ベンゼン、6-カルボキシメトキシ-1,3-ジアミノベンゼン、6-エトキシ-1-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-アミノベンゼン、6-ヒドロキシエチル-1,3-ジアミノベンゼン、1-ヒドロキシ-2-イソプロピル-5-メチルベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン、2-クロロ-1,3-ジヒドロキシベンゼン、2-メチル-1,3-ジヒドロキシベンゼン、4-クロロ-1,3-ジヒドロキシベンゼン、5,6-ジクロロ-2-メチル-1,3-ジヒドロキシベンゼン、1-ヒドロキシ-3-アミノ-ベンゼン、1-ヒドロキシ-3-(カルバモイルメチルアミノ)ベンゼン、6-ヒドロキシベンゾモルホリン、4-メチル-2,6-ジヒドロキシピリジン、2,6-ジヒドロキシピリジン、2,6-ジアミノピリジン、6-アミノベンゾモルホリン、1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロン、1-ヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、1,5-ジヒドロキシナフタレン、5-アミノ-2-メチルフェノール、4-ヒドロキシインドール、4-ヒドロキシインドリン、6-ヒドロキシインドール、6-ヒドロキシインドリン、およびそれらの混合物を含む。本明細書で言及されうる具体的なカップリング剤には、レゾルシノール、1-ナフトール、5-アミノ-o-クレゾール、2-メチルレゾルシノール、m-アミノフェノール、m-フェニレンジアミン、1-フェニル-3-メチル-ピラゾール-5-オン、それらの塩、または混合物を含む。
【0073】
組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、双性イオン性、または両性でありうる。1または複数の界面活性剤が、組成物の一部を形成しうることが理解されよう。存在する場合、界面活性剤(複数可)は、組成物の0.01~20重量%を形成しうる。
【0074】
本明細書で言及されうる適切な非イオン性界面活性剤には、以下を含むが、これらに限定されない:アルキルポリグリコシド、セトマクロゴール1000、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コカミドDEA、コカミドMEA、デシルグルコシド、デシルポリグルコース、エトキシレート、モノステアリン酸グリセロール、IGEPAL CA-630、イソセテス-20、ラウリルグルコシド、マルトシド、モノラウリン、マイコスブチリン、nonidet P-40、ノノキシノール、オクタエチレングリコールモノデシルエーテル、N-オクチルβ-D-チオグルコピラノシド、オクチルグルコシド、オレイルアルコール、PEG-10ヒマワリグリセリズ、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ポリドカノール、ポロキサマー、ポリエトキシ化牛脂アミン、ポリリシノール酸ポリグリセロール、ポリソルベート、ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ステアリルアルコール、サーファクチン、Triton X-100、およびTween 80。
【0075】
本明細書で言及されうる適切なカチオン性界面活性剤には、以下を含むが、これらに限定されない:ベヘントリモニウムクロリド、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンゾドデシニウム臭化物、ブロニドックス(bronidox)、カルベトペンデシニウムブロミド、セタルコニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、セトリモニウムクロリド、塩化セチルピリジニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド、 ジメチルジオクタデシルアンモニウムクロリド、ドミフェン臭化物、ラウリルメチルグルセス-10ヒドロキシプロピルジモニウムクロリド、オクテニジン二塩酸塩、オラフルル(olaflur)、N-オレイル-1,3-プロパンジアミン、パフトキシン、ステアラルコニウムクロリド、水酸化テトラメチルアンモニウム、および臭化トンゾニウム。
【0076】
本明細書で言及されうる適切な双性イオン性界面活性剤には、以下を含むが、これらに限定されない:ベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、N-アシルアミノプロピル-N,N-ジメチルアンモニウムグリシネート、および2-アルキル-3-カルボキシメチル-3-ヒドロキシエチルイミダゾリン。
【0077】
本明細書で言及されうる適切な双性イオン性界面活性剤には、以下を含むが、これらに限定されない:N-アルキルグリシン、N-アルキルプロピオン酸、N-アルキルアミノ酪酸、N-アルキルイミノジプロピオン酸、N-ヒドロキシエチル-N-アルキルアミドプロピルグリシン、N-アルキルタウリン、N-アルキルサルコシン、2-アルキルアミノプロピオン酸、およびアルキルアミノ酢酸。特に好ましい両性界面活性剤は、N-ココアルキルアミノプロピオネート、ココアシルアミノエチルアミノプロピオネート、およびC12-C18アシルサルコシンである。
【0078】
本発明に記載された組成物は、水に加えて、追加の希釈剤として1または複数の溶媒を含みうる。一般に、本発明の着色組成物において使用するのに適切な溶媒は、水と混和性であり皮膚に無害なものが選択される。本明細書において追加の希釈剤として使用するのに適切な溶媒には、C~C20一価または多価アルコールおよびそれらのエーテル、グリセリンを含み、一価および二価アルコールおよびそれらのエーテルが好ましい。これらの化合物において、2~10の炭素原子を含むアルコール残基が好ましい。従って、好ましい群には、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、ブタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、およびそれらの混合物を含む。これらの追加の希釈剤/溶媒は、全組成物の約0.5~約20重量%の量で存在しうる。
【0079】
選択された用途によっては、組成物の粘度が調整される必要がありうる。例えばこれは、消費者の期待に応えるため、または機能的な理由のため(例えば、具体的な用途のために組成物を扱いやすくするため)でありうる。これは一般的に、1または複数の増粘剤の使用を通じて起こる。任意の適切な増粘剤、例えば有機および無機増粘剤などが、使用されうる。
【0080】
適切な増粘剤には、以下を含む:アニオン性合成ポリマー;カチオン性合成ポリマー;天然由来の増粘剤、例えば非イオン性グアーガム、スクレログルカンガムまたはキサンタンガム、アラビアガム、ガティガム、カラヤガム、トラガントガム、カラギーナンガム、寒天、ローカストビーン粉、ペクチン、アルギン酸塩、デンプン画分、およびアミロース、アミロペクチン、およびデキストリンなどの誘導体、および、例えばメチルセルロース、カルボキシアルキルセルロース、およびヒドロキシアルキルセルロースなどのセルロース誘導体(本発明のセルロースとは異なる)など;非イオン性完全合成ポリマー、例えばポリビニルアルコールまたはポリビニルピロリジノンなど;および、無機増粘剤、具体的には、例えばベントナイトなどのフィロケイ酸塩、具体的にはモンモリロン石またはヘクトライトなどのスメクタイト。本明細書に記載された組成物において、1または複数の上記増粘剤が使用されうることが理解されよう。
【0081】
本明細書に記載された組成物において、増粘剤は、組成物の総重量に基づいて、0.1~4.5重量%、例えば0.15~3.5重量%、例えば0.2~2.0重量%の総量で使用されうる。
【0082】
組成物は、7.0~10.0(例えば9.5~10.0)の範囲のpHを有しうる。組成物が問題の用途に所望のpH範囲内のpHを有しない場合、pHは1または複数のアルカリ化剤の添加により調整されうる。所望のpH値を調整するために使用されうる適切なアルカリ化剤は、以下より形成される群から選択されうる:アンモニア、アルカノールアミン、塩基性アミノ酸、および無機アルカリ化剤、例えばアルカリ(アルカリ土類)金属水酸化物、アルカリ(アルカリ土類)金属メタケイ酸塩、アルカリ(アルカリ土類)金属リン酸塩、およびアルカリ(アルカリ土類)金属リン酸水素塩など。例えば、アルカリ化剤は、NaCOでありうる。
【0083】
pHがアルカリ性すぎる場合、組成物は、pH値を調整するために1または複数の酸をさらに含みうることが理解されよう。適切な酸は、例えば、α-ヒドロキシカルボン酸などの有機酸、または無機酸である。
【0084】
さらに、上述の組成物はまた、例えば以下のような他の活性物質、補助物質、および添加物を含みうる:線状カチオン性ポリマー、例えば四級化セルロースエーテル、四級化基を有するポリシロキサン、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドポリマー、アクリルアミド-ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー、硫酸ジエチルで四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレート-ビニルピロリジノンコポリマー、ビニルピロリドン-イミダゾリニウム-メトクロリドコポリマー、および四級化ポリビニルアルコールなど;双性イオン性および両性ポリマー;アニオン性ポリマー、例えばポリアクリル酸または架橋ポリアクリル酸など;構造化剤、例えばグルコース、マレイン酸、および乳酸など、ヘアコンディショニング化合物、例えばリン脂質、例えばレシチンおよびケファリンなど;香油、ジメチルイソソルビド、およびシクロデキストリン;繊維構造改善活性物質、具体的には単糖、二糖、およびオリゴ糖、例えばグルコース、ガラクトース、フルクトース、果糖、およびラクトースなど;薬剤を着色するための染料;抗フケ剤、例えばピロクトンオラミン、ジンクピリチオン(zinc omadine)、およびクリンバゾールなど;アミノ酸およびオリゴペプチド;動物性および/または植物性の基剤を有するタンパク質加水分解物、およびそれらの脂肪酸縮合生成物、または任意にアニオン性またはカチオン性修飾された誘導体の形態;光安定剤およびUVカット剤;活性物質、例えばパンテノール、パントテン酸、パントラクトン、アラントイン、ピロリジノンカルボン酸、およびそれらの塩、および、ビサボロールなど;ポリフェノール、具体的にはヒドロキシ桂皮酸、6,7-ジヒドロキシクマリン、ヒドロキシ安息香酸、カテキン、タンニン、ロイコアントシアニジン、アントシアニジン、フラバノン、フラボン、およびフラボノール;セラミドまたは擬セラミド;ビタミン、プロビタミン、およびビタミン前駆体;植物抽出物;油脂およびワックス、例えば脂肪アルコール、蜜蝋、モンタンワックス、およびパラフィンなど;膨潤および浸透剤、例えばグリセロール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、炭酸塩、炭酸水素塩、グアニジン、尿素、および第一、第二、第三リン酸塩など;乳白剤、例えばラテックス、スチレン/PVPおよびスチレン/アクリルアミドコポリマー、およびジステアリン酸PEG-3など;噴射剤、例えばプロパン-ブタン混合物、NO、ジメチルエーテル、CO、および空気など。
【0085】
これらの追加物質の選択は、問題の組成物の所望の特性に従って、当業者によりなされる。他の随意構成要素および前記構成要素の使用量に関しては、当業者に公知の関連するハンドブックを明示的に参照する。追加の活性および補助物質は、本発明の薬剤において、好ましくは各場合において、問題の組成物の総重量に基づいて、0.0001~25重量%、具体的には0.0005~15重量%の量で使用される。
【0086】
本明細書で開示される組成物は、例えば、ローション、ゲル、スプレー、エアロゾル、またはポンプフォームの形態で産生されうる。従って適用形態に応じてそれらは、好ましくはチューブ、容器、瓶、箱、加圧容器、またはポンプスプレーアプリケータ付き容器に充填される。
【0087】
ある実施形態において、上記で開示された組成物は、式Iの化合物の酸化誘導体を含みうる。その場合、別の酸化剤を与える必要はないかもしれない。一方、式Iの化合物が酸化されていない形態である組成物は、そのまま使用されてもよく、少なくとも一時的な染毛効果を与える。毛髪をブロンドにし、より一貫した着色を提供するために、酸化剤もまた組成物に含まれうる(または別に適用される)ことも、また企図されており、それは永久的でありうる。従って、本発明のさらなる態様において、以下を含む部品キットが提供される:
(i)上述の組成物;および
(ii)酸化剤を含む顕色組成物。
【0088】
上述の組成物は、好ましくは式Iの化合物の酸化されていない形態を含むが、式Iの化合物の酸化された形態もまた、使用されうることが理解されよう。
【0089】
一般に、上述の式Iの化合物を含む組成物は、これらの部品キットに使用されうる。そのため、ここではこれらの組成物の上記説明を参照する。
【0090】
顕色組成物は、ブロンド/ブリーチ効果を毛髪に与えるために、場合によっては式Iの化合物(酸化されていない形態の場合)の酸化を引き起こすために、式Iの化合物を含む組成物に加えられる。顕色組成物は、皮膚および毛髪に使用しても安全な、任意の適切な酸化剤を使用しうる。本明細書で言及されうる適切な酸化剤は、過酸化水素である。酸化剤は、規制ガイドライン内に収まる適切な量で提供されうる。そのため、欧州連合の化粧品指令(1976年7月27日理事会指令、付属書III 12頁)に従い、即時使用可能な染毛剤における最大許容濃度は12%(40ボリューム)、およびスキンケア製剤において4重量%である。ここで言及された部品キットは、染毛剤組成物における使用を意図され、そのような酸化剤は、顕色剤(developer)組成物中に0.5~45重量%の量で存在してもよく、残りは水であることが理解されよう。
【0091】
本発明のさらなる実施形態において、顕色剤組成物は、界面活性剤、増粘剤、および酸性化剤をさらに含みうる。
【0092】
顕色剤組成物において存在する場合、1または複数の界面活性剤は、本明細書で前述したものから選択されうる。界面活性剤(複数可)は、顕色剤組成物の0.01~20重量%の量で存在しうる。
【0093】
顕色剤組成物において存在する場合、1または複数の増粘剤は、本明細書で前述したものから選択されうる。増粘剤(複数可)は、顕色剤組成物の0.01~20重量%の量で存在しうる。
【0094】
顕色剤組成物は、2.5~6.9の範囲のpHを有しうる。顕色剤組成物が問題の用途に所望のpH範囲内のpHを有しない場合、pHは1または複数の酸性化剤の添加により調整されうる。適切な酸性化剤には、例えば、α-ヒドロキシカルボン酸などの有機酸、または無機酸を含む。
さらに、顕色剤組成物はまた、本明細書で前述したように、他の活性物質、補助物質、および添加物を含みうる。
【0095】
本明細書で開示される化合物は、毛髪を染色し、または皮膚に一時的なタトゥーを施すために有用であることが理解されよう。従って、本発明のさらなる態様において、毛髪を染色する、または一時的なタトゥーを施す方法が提供され、前記方法は、本明細書に記載された式Iの化合物または生理的に許容される塩または溶媒和物、または、それらの酸化誘導体を含む組成物を、適用するステップを含む。
【0096】
染毛において使用される場合、染毛方法は3つのステップを有しうる:
・第1のステップは、対象の毛髪を「組成物」と接触させるステップを必要とする(顕色剤(例えば、酸化剤を含む組成物)と任意に混合するステップの後に);
・混合物を毛髪に約30秒~約60分間残留させるステップ;
および
・その後、水および界面活性剤入りのシャンプーで広範囲に毛髪を洗浄し、毛髪色の変化を長持ちさせるステップ。
【0097】
本明細書に記載された組成物を使用する一時的なタトゥーは、対象の皮膚にヘナタトゥーと同様に適用されうる。
【0098】
以下の実施例に関連して本発明はさらに説明されるが、これらは例示のみを目的する。
【実施例
【0099】
[材料および方法]
特に断りのない限り、市販の材料はすべて、さらなる精製をせずに使用された。NMRスペクトルは、Bruker Ultrashield 300MHzシステム、Bruker Ultrashield Plus 400MHzシステム、およびBruker Ultrashield 500MHzシステム上で、溶媒としてDMSO-d6を、内部標準物質としてTMSを用いて、室温で記録された。Hおよび13C化学シフトは、残留溶媒ピークを基準にテトラメチルシランの低磁場側ppmで報告される。結合定数(J)はヘルツ(Hz)で報告され、シグナル結合は以下の略号を使用して報告される:s,一重線;d,二重線;t,三重線;m,多重線;p,五重線;q,四重線;br,幅広線(broad resonance)。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)および、または大気圧化学イオン化(APCI)モードを備えた、Finnigan/MAT 95XL-T分光計システム上で得られた。
【0100】
パラフェニレンジアミン(98.0%)およびレゾルシノール(≧99.0%)は、Sigma-Aldrich(シンガポール)から購入された。Schwarzkopf BlondMe Premium Lift 9+ブリーチパウダーおよびSchwarzkopf BlondMe 12%/40ボリューム顕色剤溶液、Silkpro VitAirシリーズデイリーバランスシャンプー、およびSilkpro VitAirシリーズデイリートリートメントマスク(ヘアコンディショナー)はAmazonから購入され、さらなる精製をせずに使用された。30%過酸化水素水は、Merck(シンガポール)から購入された。
【0101】
HPLCグレードアセトニトリル(99.0%)、メタノール(99.0%)は、Fisher Chemical(Fischer Scientific、ベルギー)から、ロイシンエンケファリン酢酸塩水和物(95.0%)、デフェロキサミンメシル酸塩(92.5%)、リジン含有(Ac-RFAAKAA-COOH、95.5%)およびシステイン含有(Ac-RFAACAA-COOH、96.05%)ヘプタペプチドは、Peptide 2.0 Inc(シャンティリー(Chantilly)、バージニア州)から購入され、Sigma-Aldrich(シンガポール)から購入された。
【0102】
図式1. C-置換誘導体の合成

【0103】
【0104】
[一般的手順1:ニトロ中間体1a~1mの合成]
これは、臭化アルキルのブロモ基の求核置換による、アルコキシ誘導体の合成に関連する。
【0105】
2-アミノ-5-ニトロフェノール(0.0065M)が、不活性雰囲気下に保たれた5mLのDMFに溶解され、臭化アルキル(0.00715M、1.1当量)および無水KCO(0.00715M、1.1当量)が、溶液に加えられた。結果得られた赤色混合物は、18~24時間還流され、その後、結果得られた暗褐色混合物は、激しく攪拌しながら飽和NaHCO溶液に滴下された。30分後、混合物はDCMで抽出され、有機層は、NaHCO溶液で3回、飽和LiCl溶液で3回、最後に塩溶液で、洗浄された。無水NaSO上で乾燥させた後、溶媒は減圧下で除去され、結果得られた混合油は真空中で乾燥された。油状混合物は次に、酢酸エチルおよびヘキサン混合物を溶離液とするグラジエントカラムクロマトグラフィーにより、精製された。この化合物は、酢酸エチルおよびヘキサンの混合物で溶離され、溶媒を蒸発させると中間生成物(1a~1m)が明るい黄色の固体として得られた。
【0106】
[一般的手順2:C-置換誘導体2a~2mの合成]
これは、ニトロ基のアミノ基への還元に関連する。
【0107】
ニトロ誘導体(0.001M;一般的手順1から調製)が、無水エタノール(50ml)に溶解され、そこに10%パラジウム炭素(0.00012M、0.12当量)が加えられた。混合物は、Parrリアクターを使用して50psiの水素ガス下で、2時間振とうされた。反応混合物は、セライトパッドを使用して2回濾過され、エタノール性濾過液は蒸発させて、最終生成物(2a~2m)を固体として得た。
【0108】
[実施例1:N1の合成]
[化合物1aの合成]
化合物1aは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして2-ブロモ-1,1-ジメトキシエタンを使用して、黄橙色の固体として調製された。2-(2,2-ジメトキシエトキシ)-4-ニトロアニリン(1a):収量:2.0g(86.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ8.10(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.90(d,J=2.4Hz,1H),6.92(d,J=8.8Hz,1H),6.25(s,2H),4.68(t,J=6.9Hz,1H),4.23(d,J=4.8Hz,2H),3.32(s,6H)。
【0109】
[化合物2a(N1)の合成]
化合物2aは、化合物1aから一般的手順2に従い、暗褐色の固体として調製された。2-(2,2-ジメトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン(2a):収量:0.98g(98.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ10.05(s,2H),7.75(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.64(d,J=2.0Hz,1H),6.69(d,J=8.8Hz,1H),4.75(s,2H),4.56(t,J=5.2Hz,1H),4.08(d,J=4.8Hz,2H),3.37(s,6H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ146.1,143.3,135.6,119.9,111.2,107.6,101.7,68.4,53.8。HRMS(ESI):C1016[M+H]の計算値:213.1155,実測値:213.1165,質量誤差(ppm):4.6。HPLC純度(254nm);99.249%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=21.688分。
【0110】
[実施例2:N2の合成]
[化合物1bの合成]
化合物1bは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとしてブロモメチルメチルエーテルを使用して、黄色の固体として調製された。2-(メトキシメトキシ)-4-ニトロアニリン(1b): 収量:2.3g(66.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ8.08(dd,J=2.4Hz,8.6Hz,1H),7.84(d,J=2.4Hz,1H),6.98(d,J=8.8Hz,1H),6.36(s,2H),5.98(s,2H),3.40(s,3H)。
【0111】
[化合物2b(N2)の合成]
化合物2bは、化合物1bから一般的手順2に従い、黒色の固体として調製された。2-(メトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン(2b):収量:0.92g(92.0%)。
【0112】
H NMR(400MHz,DMSO-d) δ10.29(s,2H),7.72(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.46(d,J=2.4Hz,1H),6.48(d,J=8.8Hz,1H),5.47(s,2H),4.69(br,2H),3.35(s,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ143.7,142.9,138.6,119.9,112.3,110.0,93.8,59.6。HRMS(ESI):C12[M+H]の計算値:169.0859,実測値:169.0858,質量誤差(ppm):0.5。HPLC純度(254nm);99.500%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=16.002分。
【0113】
[実施例3:N3の合成]
[化合物1cの合成]
化合物1cは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとしてクロロメチルエチルエーテルを使用して、黄褐色の固体として調製された。2-(エトキシメトキシ)-4-ニトロアニリン(1c):収量:2.4g(76.0%)。
H NMR(400MHz,DMSO-d) δ8.14(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.94(d,J=2.4Hz,1H),6.96(d,J=8.8Hz,1H),6.51(s,2H),5.54(s,2H),3.85(q,J=6.8Hz,2H),1.32(t,J=7.4Hz,3H)。
【0114】
[化合物2c(N3)の合成]
化合物2cは、化合物1cから一般的手順2に従い、黒色の固体として調製された。2-(エトキシメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン(2c):収量:0.94g(94.0%)。H NMR(400MHz,CDCl) δ7.92(d,J=2.4Hz,1H),7.81(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),6.65(d,J=8.8Hz,1H),5.31(s,2H),3.74(q,J=6.8Hz,2H),1.24(t,J=7.2Hz,3H)。13C NMR(400MHz,CDCl) δ143.9,143.1,138.7,120.1,112.5,110.2,93.9,65.0,15.2。HRMS(ESI):C14[M+H]の計算値:183.1492,実測値:183.1494,質量誤差(ppm):-1.2。HPLC純度(254nm);99.172%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=27.659分。
【0115】
[実施例4:N4の合成]
[化合物1dの合成]
化合物1dは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして1-ブロモ-2,3-エポキシプロパンを使用して、黄色の固体として調製された。4-ニトロ-2-(オキシラン-2-イルメトキシ)アニリン(1d):収量:3.2g(68.0%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ8.05(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.86(d,J=2.4Hz,1H),6.89(d,J=8.8Hz,1H),6.47(s,2H),5.05(d,J=2.4Hz,1H),4.69(t,J=6.9Hz,1H),4.0~4.1(m,1H),3.83~3.92(m,1H),3.48~3.50(m,1H),4.13~4.18(m,1H),3.99~4.05(m,2H),3.49~3.55(m,2H)。
【0116】
[化合物2d(N4)の合成]
化合物2dは、化合物1dから一般的手順2に従い、ベージュ色の固体として調製された。2-(オキシラン-2-イルメトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン(2d):収量:0.96g(96.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ10.35(s,2H),7.74(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.56(d,J=2.4Hz,1H),6.66(d,J=8.8Hz,1H),4.69(s,2H),4.08~4.12(m,1H),3.83~3.92(m,2H),3.47~3.51(m,2H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ146.3,140.0,127.9,115.8,107.6,101.9,67.9,62.0,53.8。HRMS(ESI):C12[M+H]の計算値:181.0886,実測値:181.0880,質量誤差(ppm):-3.3。HPLC純度(254nm);97.2%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=22.467分。
【0117】
[実施例5:N5の合成]
[化合物1eの合成]
化合物1eは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして1-ブロモ-2-(2-メトキシエトキシ)エタンを使用して、黄褐色の固体として調製された。2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)-4-ニトロアニリン(1e):収量:0.78g(78.2%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.94(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),7.82(d,J=2.4Hz,1H),6.95(d,J=8.8Hz,1H),6.31(s,2H),4.18(t,J=6.4Hz,2H),3.78(t,J=6.4Hz,2H),3.61(t,J=6.4Hz,2H),3.46(t,J=6.4Hz,2H),3.21(s,3H)。
【0118】
[化合物2e(N5)の合成]
化合物2eは、化合物1eから一般的手順2に従い、暗褐色の固体として調製された。2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]ベンゼン-1,4-ジアミン(2e):収量:0.92g(92.0%)。H NMR(400MHz,DO) δ7.52(d,J=8.4Hz,1H),7.18(d,J=2Hz,1H),7.09(dd,J=2Hz,8.4Hz,1H),4.35(t,J=4Hz,2H),3.96(t,J=4Hz,2H),3.75~3.77(m,2H),3.63~3.65(m,2H),3.36(s,3H)。13C NMR(400MHz,DO) δ152.3,132.3,125.1,119.7,115.5,108.0,70.9,69.5,68.6,68.2,58.0。HRMS(ESI):C1118[M+H]の計算値:227.1390,実測値:227.1392,質量誤差(ppm):-0.8。HPLC純度(254nm);99.063%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=24.725分。
【0119】
[実施例6:N6の合成]
[化合物1fの合成]
化合物1fは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとしてブロモアセトニトリルを使用して、橙色の固体として調製された。2-(2-アミノ-5-ニトロフェノキシ)アセトニトリル(1f):収量:0.52g(52.6%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.90(dd,J=8.6Hz,2.4Hz,1H),7.74(d,J=2.4Hz,1H),7.03(d,J=8.8Hz,1H),6.34(s,2H),4.71(s,2H)。
【0120】
[化合物2f(N6)の合成]
化合物2fは、化合物1fから一般的手順2に従い、紫色の結晶性固体として調製された。2-(2,5-ジアミノフェノキシ)アセトニトリル(2f):収量:0.94g(94.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ10.27(s,2H),6.57(d,J=8.0Hz,1H),6.15~6.19(m,2H),4.87(s,2H),4.41(s,2H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ164.9,143.9,127.4,127.0,117.5,116.8,111.8,67.1。HRMS(ESI):CO[M+H]の計算値:164.0580,実測値:164.0579,質量誤差(ppm):0.9。HPLC純度(254nm);98.988%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=13.843分。
【0121】
[実施例7:N7の合成]
[化合物1gの合成]
化合物1gは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして1-ブロモ-2-メトキシエタンを使用して、黄色の固体として調製された。2-(2-メトキシエトキシ)-4-ニトロアニリン(1g):収量:0.88g(88.0%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ8.0(dd,J=8.8Hz,2.6Hz,1H),7.90(d,J=2.4Hz,1H),7.02(d,J=8.8Hz,1H),6.38(s,2H),4.35(t,J=6.8Hz,2H),3.85(t,J=6.8Hz,2H),3.18(s,3H)。
【0122】
[化合物2g(N7)の合成]
化合物2gは、化合物1gから一般的手順2に従い、ベージュ色の固体として調製された。2-(2-メトキシエトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン(2g):収量:0.98g(98.0%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ10.1(s,2H),7.74(dd,J=2Hz,8.8Hz,1H),7.61(d,J=2.4Hz,1H),6.68(d,J=8.8Hz,1H),4.76(s,2H),4.19(t,J=4.4Hz,2H),3.71(t,J=4.8Hz,2H),3.35(s,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ146.2,143.6,135.6,119.8,111.1,107.1,70.2,68.1,58.2。HRMS(ESI):C14[M+H]の計算値:183.1128,実測値:183.1127,質量誤差(ppm):0.8。HPLC純度(254nm);98.348%、溶離液:90%ACN/NH4OAc、tR=27.102分。
【0123】
[化合物1hの合成]
化合物1hは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして2-(ブロモメトキシ)メタノールを使用して、黄橙色の固体として調製された。(2-アミノ-5-ニトロフェノキシ)メトキシ)メタノール(1h):収量:0.8g(84%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.74(dd,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),7.54(d,J=2.4Hz,1H),6.76(d,J=8.8Hz,1H),6.34(s,2H),4.08(s,1H),5.98(s,2H),5.65(s,2H)。
【0124】
[化合物2h(N8)の合成]
化合物2hは、化合物1hから一般的手順2に従い、暗褐色の固体として調製された。((2,5-ジアミノフェノキシ)メトキシ)メタノール,(2h):収量:0.75g(75%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.90(d,J=8.0Hz,1H),6.34(d,J=2.0Hz,1H),6.20(dd,J=8.4Hz,2.0Hz,1H),5.82(s,2H),5.40(s,2H),4.72(br,4H),4.08(s,1H)。13C NMR(300MHz,DMSO-d) δ148.0,141.0,127.0,117.5,109.0,98.8,88.2,87.5。
【0125】
[化合物1iの合成]
化合物1iは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして2-ブロモエタノールを使用して、黄橙色の固体として調製された。2-(2-アミノ-5-ニトロフェノキシ)エタン-1-オール(1i):収量:1.2g(78%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.80(dd,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),7.64(d,J=2.4Hz,1H),6.74(d,J=8.8Hz,1H),6.32(s,2H),4.86(s,1H),4.30(t,J=6.4Hz,2H),3.60(t,J=6.2Hz,2H)。
【0126】
[化合物2i(N9)の合成]
化合物2iは、化合物1iから一般的手順2に従い、茶色の固体として調製された。2-(2,5-ジアミノフェノキシ)エタン-1-オール,(2i):収量:0.82g(82%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.70(d,J=7.8Hz,1H),6.29(d,J=2.2Hz,1H),5.65(dd,J=8.5Hz,2.0Hz,1H),4.90(s,2H),4.70(br,4H),4.33(t,J=6.8Hz,3H),3.72(t,J=7.0Hz,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ146.0,141.5,128.2,118.5,109.2,100.8,90.0,61.2。
【0127】
[化合物1jの合成]
化合物1jは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして1-ブロモプロパン-2-オールを使用して、橙色の固体として調製された。1-(2-アミノ-5-ニトロフェノキシ)プロパン-2-オール(1j):収量:1.4g(80%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.82(dd,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),7.68(d,J=2.4Hz,1H),6.80(d,J=8.8Hz,1H),6.42(s,2H),5.30(s,1H),4.16~4.19(m,1H),3.90~3.94(m,2H),1.06~1.09(m,3H)。
【0128】
[化合物2j(N10)の合成]
化合物2jは、化合物1jから一般的手順2に従い、茶色の固体として調製された。1-(2,5-ジアミノフェノキシ)プロパン-2-オール,(2j):収量:0.65g(65%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.72(d,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),6.32(d,J=2.4Hz,1H),5.76(dd,J=8.8Hz,1H),5.25(s,1H),4.80(br,4H),4.17~4.20(m,1H),3.90~3.94(m,2H),1.06~1.09(m,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) δ146.0,141.4,128.0,118.0,109.2,100.7,77.0,66.5,19.5。
【0129】
[化合物1kの合成]
化合物1kは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして1-ブロモ-2-ブタノンを使用して、黄色の固体として調製された。1-(2-アミノ-5-ニトロフェノキシ)ブタン-2-オン(1k):収量:0.9g(93%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.76(dd,J=8.6Hz,2.4Hz,1H),7.62(d,J=2.4Hz,1H),6.70(d,J=8.8Hz,1H),6.36(s,2H),5.24(s,2H),2.58(q,J=8.8Hz,2H),1.12(t,J=6.9Hz,3H)。
【0130】
[化合物2k(N11)の合成]
化合物2kは、化合物1kから一般的手順2に従い、暗褐色の固体として調製された。1-(2,5-ジアミノフェノキシ)ブタン-2-オン,(2k):収量:0.58g(58%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.40(d,J=8.0Hz,1H),6.32(d,J=2.0Hz,1H),5.92(dd,J=8.4Hz,2.0Hz,1H),4.95(s,2H),5.02(s,2H),2.36(q,J=8.6Hz,2H),1.14(t,J=7.4Hz,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) 207.0,148.0,141.0,128.0,118.5,109.7,100.4,80.0,32.0,8.2。
【0131】
[化合物1lの合成]
化合物1lは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして2-ブロモプロペンを使用して、黄褐色の固体として調製された。4-ニトロ-2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)アニリン(1l):収量:1.5g(88%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.72(dd,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),7.58(d,J=2.4Hz,1H),6.76(d,J=8.8Hz,1H),6.54(s,2H),4.15(s,1H),4.48(s,1H),1.92~1.96(m,3H)。
【0132】
[化合物2l(N12)の合成]
化合物2lは、化合物1lから一般的手順2に従い、茶色の固体として調製された。2-(プロパ-1-エン-2-イルオキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン,(2l):収量:0.57g(57%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.28(d,J=8.0Hz,1H),6.10(d,J=2.0Hz,1H),5.50(dd,J=8.4Hz,2.0Hz,1H),4.76(br,4H),4.50(s,1H),4.10(s,1H),1.90~1.93(m,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) 158.5,143.0,141.2,129.5,117.5,111.0,103.0,90.5,21.5。
【0133】
[化合物1mの合成]
化合物1mは、一般的手順1に従い、臭化アルキルとして2-ブロモ-N-メチルエタンアミンを使用して、黄橙色の固体として調製された。2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)-4-ニトロアニリン(1m):収量:1.1g(85%)。H NMR(400 MHz,DMSO-d) δ7.84(dd,J=8.8Hz,2.4Hz,1H),7.66(d,J=2.4Hz,1H),6.84(d,J=8.8Hz,1H),6.40(s,2H),5.58(s,1H),4.20(t,J=6.8Hz,2H),2.94(t,J=7.2Hz,2H),3.32(t,J=7.2Hz,3H)。
【0134】
[化合物2m(N13)の合成]
化合物2mは、化合物1mから一般的手順2に従い、暗褐色の固体として調製された。2-(2-(メチルアミノ)エトキシ)ベンゼン-1,4-ジアミン,(2m):収量:0.61g(61%)。H NMR(400MHz,DMSO-d) δ6.65(d,J=8.0Hz,1H),6.29(d,J=2.0Hz,1H),5.65(dd,J=8.4Hz,2.0Hz,1H),4.72(br,4H),5.48(s,1H),4.12(t,J=6.8Hz,2H),2.87(t,J=7.2Hz,2H),3.20(t,J=7.2Hz,3H)。13C NMR(400MHz,DMSO-d) 145.5,140.3,127.2,117.4,108.5,100.0,68.5,51.5,36.0。
【0135】
[実施例8:染毛剤の溶解度決定およびPPD化合物との比較]
合成された化合物の溶解度プロファイルは、WO2019/098948に記載されているように、従前の化学物質ライブラリと比較された。
【0136】
[熱力学的溶解度アッセイ]
これらの化合物の水への溶解度(pH=7)は、修正フラスコ振とう法およびLC-MS/MSを使用して、測定された。各染毛剤は、Milli-Q水(1mL)を入れた2mLガラスバイアルに加えられ、25℃で沈殿物を形成した。続いて混合物は、溶解度平衡の段階にかけられた。バイアルは、300rpm、25℃で24時間振とうされた。沈殿物は、23000g、20分間の遠心分離により、分離された。その後、上澄み0.5mLが1mLエッペンドルフチューブ内に移され、上述のように再度遠心分離された。上澄みはその後、LC-MS/MS分析に使用された。Agilent 1290 Infinity超高圧液体クロマトグラフィー(UHPLC)バイナリポンプ、オートサンプラ、真空デガッサ、およびカラムオーブン(Agilent Technologies Inc.、サンタクララ(Santa Clara)、カリフォルニア州、米国)およびACQUITY UPLC BEH C18,1.7μM,2.1×100mmカラム(Waters、ミルフォード(Mildord)、マサチューセッツ州、米国)が、クロマトグラフィー分離に使用された。
【0137】
質量分析は、AB Sciex Turbo Ion Sprayインターフェースを装備したトリプル四重極ポジティブモード(ESI+)で動作する、AB SCIEX QTRAP 5500タンデム質量分析(MS/MS)システム(AB SCIEX、フレイミングハム(Framingham)、マサチューセッツ州、米国)を使用して、行われた。データの取得および分析は、Analystソフトウェアver.1.4.2(Applied Biosystems)を用いて行われ、すべてのクロマトグラフィーのピーク積分を行った。各染毛剤について、4つの濃度からなる標準曲線が定められた。
【0138】
溶媒Aは、Milli-Q水中の0.1%[v/v]ギ酸からなるものであり、一方溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1%[v/v]ギ酸からなるものであった。0.6mL/分でポンプされる移動相グラジエントが、カラムから染毛剤を溶離するために使用された。溶離に使用されたHPLCグラジエントプロファイルプログラムが、表2に示される。カラムは1分間平衡化され、その結果、総実行時間は5分間であった。注入体積は、すべての誘導体で5.0μLであった。針への化合物の蓄積を防ぐために、ACN中50%メタノールが、針洗浄として1試料あたり30秒間使用された。

【0139】
【0140】
[結果]
合成された化合物N1~N13は、従前の一連の化学物質PPD1~PPD16との比較として、模範的な溶解度プロファイルを示した。一連のPPDのうち、水溶性を示す化学物質はなかった(表4)。対照的に、N1~N13は、32~100mg/mlの、PPDよりも高い溶解度プロファイルを示した(表3)。全体として、新規の化合物N1~N13は、PPDと比較して1.5~2.5倍高い溶解度を示し、一連の親水性を確認した。化合物N1、N2、N5、N6、N8、N10は、PPDの4%(40mg/mL)と比較して、8.5~10%(78~100mg/mL)の溶解度を示した。化合物N3、N4、N7およびN9は、約6.5%~7.2%(65~72mg/mL)の溶解度を示した。対照的に、化合物N12およびN13は、PPDよりも低い溶解度プロファイルを示したが、これは理論に縛られることなく、化学物質の疎水性によるものと考えられる。

【0141】
【0142】
すべての値は、3回の別々の測定から得られた。

【0143】

【0144】
【0145】
【0146】
[実施例9:HaCaT細胞でのMTTアッセイ]
[方法]
HaCaT(ヒト、成人、低カルシウム、高温、皮膚ケラチノサイト)細胞懸濁液が、1ウェルあたり5×10細胞に調整され、96ウェルプレートに播種された後、37℃、5%COでインキュベートされた。24時間後、オートクレーブされたMilli-Q水中にN1~N13の10mM原液が調製され、連続的に希釈された濃度がウェルに加えられた。各濃度は6回反復で行われ、培地のみで化合物を含まない播種ウェルは対照として使用され、一方培地のみのウェルはブランクとして使用された。プレートは72時間インキュベートされ、その後100μLのMTT試薬が加えられ、100μLのDMSOが加えられる前に、プレートはさらに3時間インキュベートされた。続いて、プレートは20分間振とうされ、その後Bio-Tekプレートリーダーを使用して、570nmの吸光度が決定された。
【0147】
[結果]
エラー!参照元が見つかりません。Aおよび1Bは、様々な濃度のN1~N13に暴露された後の、HaCaT細胞の細胞生存率を示す。表5は、N1~N13の細胞毒性プロファイルの、公表データPPD、ME-PPDおよびPTDとの比較である(J Hazard Mat., 2021, 402, 123712)。シンバスタチンは、HaCaT細胞に対する細胞毒性効果がよく報告されているため、陽性対照として選択された。その結果、PPDのオルト位に置換して電子供与性の-O-R’基を導入することで、化合物の細胞毒性を改善しうることがわかった。すべての誘導体N1~N13は、PPD(IC50=23.45μM)より高いIC50値を示し、より良い細胞毒性プロファイルを示した。

【0148】
【0149】
[実施例10:ペプチド結合性試験(Direct Peptide Reactivity Assay)]
[DPRAインキュベーション]
アッセイは、化合物原液を調製するために使用されたそれぞれの溶媒を対照として、N1~N13について3回反復で行われた。化合物の不足のため、OECDにより推奨される100mMの代わりに、20mMの原液濃度が調製された。インキュベーション混合物の様々な成分は、結果の変動を引き起こしうる安定性の問題を防ぐために、新鮮に調製された。システインヘプタペプチドでは1:10の、リジンヘプタペプチドでは1:50の試験化合物比の(OECD. Test No. 442C: In Chemico Skin Sensitisation 2020)、推奨ペプチドとのインキュベーション混合物が調製され、その後25℃で24時間、振とうインキュベータでインキュベートされた(Toxicol Sci. 2012;129(2):421-31)。
【0150】
24時間後、200μMのロイシンエンケファリン(内部標準物質)を含む75μLの95%ACN/HOで、インキュベーション混合物がクエンチされた。システインDPRAでは、100μLのクエンチ混合物が、90μLの2%ACN/HOおよび新鮮に調製された10μLの0.016mM 1,4-ジチオトレイトール(DTT)溶液に、加えられた。DTTは、チオール基の二量体化および二付加物から一付加物への分解を防ぐことにより、チオール基の完全性を維持する。この第2の混合物は、その後40℃で30分間、振とうインキュベータでインキュベートされた。リジンDPRAでは、10μLのクエンチ混合物が、190μLの2%ACN/HOに加えられた。200μLの混合物はすべて、96ウェルプレートに移され、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)での分析に送られた。
【0151】
[結果]
N1~N13のDPRAの結果はすべて、PPDと比較して、より低い平均ペプチド減少率(すなわちより低い感作性)を示した。N1~N4、N6およびN8~N10は、弱い感作性を示し、平均ペプチド減少値は最も低かった(それぞれ17.2±2.3%~22.5±1.9%)。N5、N7およびN11~N13は、市販のPPD、ME-PPDおよびPTDと比較して、中程度の感作性を示した。
【0152】
より長鎖かつより多いジエーテル置換基を有する(例えばN5)および高い親電子性のアルケンハンドルを有する(例えばN12)R基は、求核ペプチドに対してより高い反応性を示し、従ってオルト位のR’置換基としてはより好ましくない基であることが観察されうる。置換アルケニル側鎖を有するN12が、最も高い反応性を示した(43.7±4.0%)。対照的に、CNで置換されたN6は、最も低い減少を示し、エポキシド基を有するN4は、N6よりもわずかに高いペプチド反応性を有した。構造的に類似し同じ分子量の2つの化合物N3およびN7は、互いに異なるプロファイルを示した。側鎖にヒドロキシル基を有するN8~N10は、19.5±3.6%~22.5±3.8%と、一貫してより低い減少率を示した。対照的に、ケトン側鎖を有するN11およびエチルアミン側鎖を有するN13は、ペプチド減少を改善せず、中程度の感作物質のままであった。中程度の感作性(30.4±2.9%)を示したN7と比較して、N3は約17%の感作性で、最も優れた分子のひとつとなった。これらの活性の違いの理由のひとつは、O-エチル鎖の存在によるかもしれない。同様の観察が、同じくO-エチルで置換され、さらに別のエーテル性O-エチル鎖で伸長された、最も低い効果の化合物N5でも見られる。このことは、おそらくO-メチル鎖化合物(N1~N4およびN6)よりも高い疎水性のため、これらのO-エチル結合が有害でありうることを示唆する。結果はまた、側鎖でのヒドロキシル基の存在が、活性に有利であることを示唆する。にもかかわらず、当業者であれば、化合物N1~N13のすべてが、既存の化合物よりも低下した感作性を示し、N1~N13のすべてが、PPD、MEPPDおよびPTDに対して有利であることを理解するであろう。
【0153】
[実施例11:皮膚浸透試験]
[フランツ型拡散セル(Franz Diffusion Cell)法]
皮膚浸透試験は、従来報告された通りに行われた(New Journal of Chemistry. 2019;43(41):16188-99;Journal of Hazardous Materials. 2021;402)。各フランツセルに、厚さ~1mmに調製されたブタ耳皮膚片が、しっかりとクランプされた。5mLのPBS溶液が、レシーバー区画に加えられ、皮膚片と溶液との接触が最大になるように、気泡がパージされた。N1~N13を脱イオン水に1%w/vで溶解することにより、ドナー溶液が調製され、900μLがドナー区画に加えられた。試験は8時間行われ、最初の1時間は15分間隔の各時点で、それ以降は1時間ごとに、200μLのアリコートがレシーバー溶液から取り出され、新しいPBSがいっぱいまで補充された。
【0154】
マスバランスのため、8時間後に皮膚片および皮膚の上下面のスワブが採取され、N1~N13抽出のためにACN中に保存された。ドナー溶液およびレシーバー溶液もまた、採取された。
【0155】
[試料処理および分析]
採取されたアリコート試料は、750μLのジクロロメタン(DCM)を使用した2段階抽出を受けた。抽出効率を改善するために、40μLの25%水酸化アンモニウムが加えられ、化合物をルイス塩基に変換した。溶媒はTurboVapを使用して乾燥され、その後198μLの50%メタノール水溶液中0.1%ギ酸で元に戻され、2μLのANP(内部標準物質)が加えられた。処理されたアリコート試料およびマスバランス試料は、その後LC-MS/MSを使用する分析に送られた。次に、各実験の累積量曲線の定常状態(直線部分)で、解をフィックの第2法則にフィッティングすることにより、化合物の定常状態のフラックスおよび浸透係数が計算された。
【0156】
[結果]
N1~N13の皮膚浸透は、フランツ型拡散セルに挿入されたブタ耳皮膚を使用して、評価された。フランツセルのレセプター区画は、化合物を皮膚に適用した後、異なる時点(0~8時間)でアッセイされ、経時的に浸透した累積量を得た。ブタ皮膚浸透試験から試料が採取され、-80℃で保存された。図5iおよび5iiは、ブタ皮膚浸透試験から得られた、N1~N13の抽出イオンクロマトグラム(XIC)の要約である。表6は、適用後8時間でのN1~N13の平均累積量の要約である。平均累積量がより高いほど、化合物の皮膚への透過性がより高い(すなわち浸透性がより高い)ことを示唆する。N1~N13は、PPDと比較して有意に低い皮膚透過性を有した。
【0157】
【0158】
データは、皮膚に適用された化合物の用量に対する割合で示される。N1~N13の皮膚浸透性および皮膚に回収された量は、PPDのそれらよりもほぼ3桁少なかった。
【0159】
一般に、PPDのオルト位に-O-R基を導入すると、N1~N13の浸透性が著しく減少する。ほぼすべての化合物が皮膚に対して不浸透性であったが、おそらくそれらの分子サイズがより大きいためである。予想通り、N1~N13の誘導体の分子量が増加するにつれ、浸透プロファイルは減少した。最小の誘導体N6(163.17Da)と最大の誘導体N5(226.3Da)は、それぞれPPDの分子量よりも1.5倍と2.0倍大きい分子量を有する。モル体積(表3)などの他の物理化学的パラメータもまた、皮膚浸透性に極めて重要な役割を果たす。分子量で指摘したとおり、化合物の皮膚浸透は、モル体積の増加とともに減少する。最小の誘導体N6は127.8cmのモル体積を有し、一方最大の誘導体N5は196.7cmのより大きいモル体積を有する。

【0160】
【0161】
N1(分子量212.25Da)は、0.0073μg/cmの累積量を生じ、PPDの累積量より約740倍少なかった。浸透したN2(分子量168.20Da)およびN9(分子量168.20Da)の累積量は、約0.0120μg/cmであり、PPDより445~450倍少なかった。一連のO-アルキルエーテル官能基のうち、同程度の分子量(分子量182.22Da)を有するN3、N7およびN11は、それぞれ0.0088μg/cmおよび0.0080μg/cmの累積量を示した。これはPPDより約617および675倍少ない浸透である。同様に、N3、N7およびN11と近い分子量を有する他の化合物N4、N13は、約500倍少ない浸透を示した。さらにヒドロキシル側鎖化合物N8(0.00843μg/cm)は、N3~N4、およびN7と同様のプロファイルを示し、640倍少ない浸透であった。最も長鎖の置換を有する別の多エーテル化合物であるN5は、8時間で最も少ない累積量0.0065μg/cmを示し、これはPPDの累積量より約825倍少なかった。対照的に、より短鎖とより大きい分子サイズを有するN6およびN12は、一連で最も少ない累積量を生じ、0.0145μg/cmで標準物質PPDより約370倍少ない浸透であった。
【0162】
対応する累積量対時間のプロファイル(図3iおよび3ii)およびマスバランスの結果は、表7に示される。N1~N13誘導体の皮膚への吸収は、皮膚におけるPPDよりも有意に少なかった。実験終了時に回収された適用された化合物の量は、93%~99%の範囲であり(図4A)、良好なマスバランスを示す。図4Bおよび4Cはそれぞれ、浸透実験終了時に、皮膚を通して浸透しおよび皮膚で回収された適用量の割合を示す。
【0163】
[実施例12:N1~N13の検出のためのLC-MS/MS法]
Agilent 1290 Infinity超高圧液体クロマトグラフィー(UHPLC)バイナリポンプ、オートサンプラ、真空デガッサ、およびカラムオーブン(Agilent Technologies Inc.、サンタクララ(Santa Clara)、カリフォルニア州、米国)およびACQUITY UPLC BEH C18,1.7μM,2.1×100mmカラム(Waters、ミルフォード(Mildord)、マサチューセッツ州、米国)が、クロマトグラフィー分離に使用された。
【0164】
質量分析は、AB Sciex Turbo Ion Sprayインターフェースを装備したトリプル四重極ポジティブモード(ESI+)で動作する、AB SCIEX QTRAP 5500タンデム質量分析(MS/MS)システム(AB SCIEX、フレイミングハム(Framingham)、マサチューセッツ州、米国)を使用して、行われた。データの取得および分析は、Analystソフトウェアver.1.4.2(Applied Biosystems)を用いて行われ、すべてのクロマトグラフィーのピーク積分を行った。分析カラムおよび試料の温度は、それぞれ45℃および4℃に保たれた。溶媒Aは、Milli-Q水中の0.1%[v/v]ギ酸からなるものであり、一方溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1%[v/v]ギ酸からなるものであった。0.6mL/分でポンプされる移動相グラジエントが、カラムからN1~N13を溶離するために使用された。溶離に使用されたHPLCグラジエントプログラムが、表2に示される。カラムは1分間平衡化され、その結果、総実行時間は5分間であった。注入体積は、すべての誘導体で5.0μLであった。針への化合物の蓄積を防ぐために、ACN中50%メタノールが、針洗浄として1試料あたり30秒間使用された。
【0165】
[較正標準物質および品質管理試料の調製]
10mMの濃度を有するN1~N13の原液は、2mgの化合物をメタノールに溶解することにより、調製された。作業用溶液は、各分析物の原液を最終濃度に希釈することにより、調製された。同じ濃度の品質管理(QC)試料を調製するために、異なる原液標準物質が使用された。N1~N13のための200μLの作業用較正物質(10μM、1μM、0.1μM、0.01μM、0.001μM、0.005μM、0.0005μM、0.0001μM、0.00001μM)が、バッファ(pH7.4)培地中に作成された。すべての低、中、および高品質管理(LQC、MQC、およびHQC)試料はまた、別々の原液を使用して、7.5、0.05、および0.00025μMの濃度で、バッファ(Ph7.4)培地中に調製された。50μMの2-アミノ-5-ニトロピリジン(ANP)を含む作業用内部標準物質は、2-アミノ-5-ニトロピリジンの原液(1.0mg/mL)をメタノールで希釈することにより、調製された。原液および作業用溶液および標準溶液は、使用まで-20℃で保存された。
【0166】
[タンデム質量分析]
[試料処理およびLC-MS/MS分析]

【0167】

【0168】
【0169】
略語: DP:デクラスタリングポテンシャル、EP:入口ポテンシャル、CE:衝突エネルギー、CXP:衝突出口ポテンシャル、CUR:カーテンガス、CAD:衝突ガス(窒素)、GS1:イオン源ガス1(シースガス)、GS2:イオン源ガス2(乾燥ガス)、IS:イオンスプレー電圧、インターフェースヒーター(Ihe)はオンにされた;四重極1および四重極3は、単位分解能に維持され、設定された滞留時間は、すべての化合物で100msであった。
【0170】
[LC-MS/MS分析のための皮膚浸透試験試料の試料調製および精製]
標準物質の原液希釈は、メタノー中に100倍濃度でなされた、すなわち、N1~N13の1mM、100μM、10μM、7.5μM、5μM、1μM、0.1μM、0.5μM、0.05μM、0.01μM、0.001μM、0.025μMの標準物質濃度(較正標準物質およびQC標準物質)が、調製された。上記濃度のそれぞれ2μLが、2mLエッペンドルフチューブに移され、バッファ(pH7.4)培地を使用して、体積が200μLにまでされた。試験試料として、200μLの細胞培養試料が直接使用された。2μLの内部標準物質、濃度100μMの2-アミノ-5-ニトロピリジンが、混合物にピペット注入された。次に、化合物をバッファ(pH7.4)培地から効率的に抽出するために、40μLの28%NHOHが加えられた。各チューブに1mLのジクロロメタンが抽出のために加えられ、各チューブは3分間かき混ぜられた。水層は、別セットの2mLエッペンドルフチューブ内に移され、化合物の2回目の抽出のために、1mLのジクロロメタンがさらに加えられた。各チューブ3分間の2回目のかき混ぜ、および水層を捨てた後、ジクロロメタンの2つの有機層が合わせられ、TurboVapシステムを使用して3~5psiの圧力で、窒素流下で蒸発乾固された。各標準物質および試験溶液試料はその後、50%メタノール水溶液中0.1%ギ酸である移動相200μLで元に戻され、LC-MS/MSまで4℃で保存された。
【0171】
[実施例13:THP-1白血病単球細胞モデルでのMTTアッセイおよびサイトカインIL-8およびIL-1α分析]
次のステップは、サイトカインIL-8、IL-1αについてのELISA(酵素結合免疫吸着測定法)分析などのさらなる試験を通じて、皮膚感作が起こったかどうかを証明することである。これらの試験を行う前に、THP-1樹状細胞モデルのN1~N13におけるCV75(細胞生存率が75%になると推定される濃度)値を決定する必要がある(Alternatives to Animal Testing and Experimentation. 2008;13(2):70-82)。これは、THP-1細胞のCV75値が、ELISA試験において試験用量として使用されるためである。IL-8およびIL-1α炎症性サイトカインは、皮膚の炎症に応答して放出された。皮膚ケラチノサイトでのIL-8およびIL-1α受容体の発現は、炎症に応答して誘導される。IL-8およびIL-1αはケモカインとして作用し、Tリンパ球などの免疫細胞を引きつけて免疫応答を促す。本発明者らはまず、THP-1細胞におけるN1~N13のCV75(細胞生存率が75%になると推定される濃度)値を決定した。
【0172】
[方法]
[A.MTTアッセイ]
THP-1(ヒト急性単球性白血病細胞株)細胞懸濁液は、1ウェルあたり1×10細胞に調整され、96ウェルプレートに播種された。プレートは、37℃、5%COでインキュベートされた。24時間後、オートクレーブされたMilli-Q水中にN1~N13の10mM原液が調製された。培地中に希釈された一連の濃度が、調製され、ウェルに加えられた。各濃度は6回反復で行われ、培地のみで化合物を含まない播種ウェルは対照として使用され、一方培地のみのウェルはブランクとして使用された。プレートは24時間インキュベートされ、その後100μLのMTT試薬が加えられ、100μLのDMSOが加えられる前に、プレートはさらに3時間インキュベートされた。続いて、プレートは20分間振とうされ、その後Bio-Tekプレートリーダーを使用して、570nmの吸光度が決定された。細胞生存率が計算され、CV75値が決定された。
【0173】
[B.IL-8およびIL-1α放出アッセイ(IL-8およびIL-1α濃度はELISAにより測定された)]
CV75値(THP-1細胞の75%生存を示す濃度)は、本方法の節Aで上述された手順に従って、決定された。IL-8およびIL-1αの放出アッセイは、Toxicol In Vitro. 2003,17(3), 311-321に記載されたように行われた。ケモカイン免疫吸着アッセイBio-legend ELISA Maxキットが使用され、得られたIL-8およびIL-1αタンパク質のレベルを定量した。未処理のTHP-1細胞の上澄み培地は、96ウェルプレートにおいて標準物質、試験試料N1~N13およびDMSOで処理された後、24時間の培養後に回収された。IL-8およびIL-1αは、メーカーのプロトコル(Biolegend、ELISA MAX(商標)、シンガポール)に従い、96ウェルマイクロタイタープレートで、ELISAにより測定された。
【0174】
[結果]
表10は、N1~N13に暴露されたときの、THP-1細胞のCV75値を示す。見ての通り、N6、N1、N3、およびN8~N10は、THP-1細胞に対してより優れた細胞毒性(すなわちより高いCV75値)を示し、HaCaT細胞と同じ傾向を示した。

【0175】
【0176】
図6は、新規の染毛剤(N1~N13)のIL-8およびIL-1α誘発プロファイルを、PPD、ME-PPD、PTDのような染毛剤標準物質、陽性(DNCB)および陰性対照(未処理、DMSO 0.2%)と比較して示す。様々な化学物質の相対IL-8濃度(pg/ml)は、標準曲線を使用して定量された。新規の誘導体の皮膚感作性が、PPD、ME-PPD、PTDなどの染毛剤標準物質、および、陽性(DNCB)および陰性対照(未処理、DMSO 0.2%)と比較された。様々な化学物質の相対IL-8およびIL-1α濃度(pg/ml)は、標準曲線を使用して定量された。新規の染毛剤N1~N4、N6、およびN8~N11、未処理およびDMSO 0.2%条件では、有意な量のIL-8およびIL-1αサイトカインは放出されなかった。予想通り、陽性対照DNCBは、染毛剤標準物質と比較して、2~3倍高いIL-8およびIL-1αマーカーの放出を示した。N4は、IL-8よりもIL-1αのわずかな放出を示したが、PPDよりも7~8倍少なかった。N5、N7、N12、N13は、IL-8とIL-1αの両方のレベルのわずかな上昇を示した。しかしながら、これらIL-8とIL-1αの放出レベルは、PPDよりも2~3倍低いという利点がある。染毛剤標準物質PPD、MEPPD、PTDは、より高濃度のIL-8およびIL-1αを放出した。予想通り、陽性対照DNCBは、染毛剤標準物質と比較して、2~3倍高いIL-8およびIL-1αマーカーの放出を示した。これらの結果は、新規の誘導体が標準的な染毛剤と比較して非感作性である利点を確認する。
【0177】
[実施例14:フローサイトメトリーによるhCLATアッセイCD86およびCD54発現分析]
[方法]
アッセイは文献に従って行われた(Toxicol In Vitro, 2006, 20, 767-73)。THP-1細胞は、24ウェルプレート(1×10細胞/1mL/ウェル)で、様々な濃度の各化学物質(N1~N13)、+ve対照(DNCB)、-ve対照とともに、24時間培養された。
【0178】
THP-1細胞は、24ウェルプレートで培養され(1×10細胞/mL/ウェル)、推奨濃度の各化学物質(N1~N13)、陽性対照(DNCB)または陰性対照(SLS)とともに、24時間処理された。THP-1細胞が培養され、CV75に基づいてN1~N13の8用量で、すなわち、1.2×CV75、1×CV75、1/1.2×CV75、1/1.2×CV75、1/1.2×CV75、1/1.2×CV75、1/1.2×CV75および1/1.2×CV75で、処理された。24時間後、細胞は1.5mLのマイクロチューブに移され、450g、5分、4℃で遠心分離された。上澄みが捨てられ、細胞は1mLのFACSバッファ(PBS+FBS+HEPES)で洗浄された。細胞は、450g、5分間、4℃で遠心分離された。50μLのFcブロック(0.01%のグロブリンCohn画分II,III)が加えられ、4℃で10分間インキュベートされた。細胞は、20μLのAPC CD54(マウスIgG1、κ、BD Biosciences、サンディエゴ(San Diego)、カリフォルニア州、米国)、20μLのFITC CD86(マウスIgG1、κ、BD Biosciences、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)またはそれらそれぞれのアイソタイプ対照で染色され、暗所、室温で15分間インキュベートされた。インキュベート後、抗体は、200μlのFACSバッファで希釈された。細胞は、1mLのFACSバッファで2回洗浄された。さらに、FACSバッファ中に調製された200μLのヨウ化プロピジウム(PI、0.625μg/mL)が、フローサイトメトリー分析の前に加えられた。フローサイトメトリー分析は、BD LSR Fortessa(商標)(Becton Dickinson、サンノゼ(San Jose)、カリフォルニア州、米国)を用いて行われた。合計10000個の生細胞が分析され、データはFlowjoソフトウェア(v10.6、アシュランド(Ashland)、オレゴン州、米国)を使用して処理された。75%の細胞生存率(CV75)を示す試験濃度は、用量反応曲線から導出され、対数線形補間により計算された。
【0179】
[データ分析および予測モデル]
幾何平均蛍光強度(MFI)は、CD54およびCD86細胞について別々に測定され、CD86およびCD54の相対発現を反映する相対蛍光強度率(%RFI)は、以下のように計算された。細胞生存率が50%を下回った場合、RFIは計算されなかった。
【0180】
すべての化学物質は、3回の独立した実験で試験された。3回の独立した実験のうち2回においていずれかの用量で、CD86のRFIが150%を超えた、またはCD54のRFIが200%を超えた場合、その化学物質は感作物質として同定された。そうでない場合は、非感作物質として同定される。
【0181】
データは、平均±平均の標準誤差(SEM)で表される。GraphPad Prismバージョン8.0.1(サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して、該当する場合はスチューデントのt検定、一元または二元配置分散分析(ANOVA)、次いでチューキーの事後検定が使用され、p値≦0.05を統計的に有意とした。
【0182】
[結果]
新規の誘導体N1~N13は、HaCaT細胞において非細胞毒性の可能性、DPRAおよびインビトロIL-8およびIL-1αアッセイにおいて非反応性の可能性を示したため、本発明者らは、THP-1細胞でのh-CLATアッセイをさらに行い、CD86およびCD54マーカー発現を調査し、これらの誘導体の皮膚感作性を確認した。陽性対照DNCBおよび陰性対照SLSが、標準物質PPD、ME-PPDおよび試験化学物質N1~N13に対して試験された。さらに、%RFIおよび有効濃度(EC)値、例えばCD86ではEC150、CD54ではEC200、すなわち試験化学物質が%RFI150または200を誘導する最低濃度が、計算された。
【0183】
THP-1細胞は、DNCB、SLS、PPD、ME-PPD、PTD、N1~N7の濃度の増加を伴って処理され、CD54、CD86発現は、フローサイトメトリーを使用して測定された。図7i~7iiiに示されるように、すべての化合物(DNCB、SLS、およびN1~N13)は、CD54およびCD86マーカーの発現レベルにおいて、用量依存的な増加を示した。すべての化合物は、すべての濃度にわたって65%を超える細胞生存率を示し、OECDガイドラインに従って、さらなるデータ分析が考慮された。DNCBは、1/1.2×CV75用量からOECDカットオフを超えるマーカー発現を誘導し、CV75でピークに達した後、減少した。CV75では、DNCBはOECD推奨範囲よりもほぼ2倍高く発現し(CD54ではRFI=450%、CD86ではRFI=326%)、EC200、EC150値はそれぞれ、1.5μg/mLおよび1.4μg/mLを示した。予想通り、陰性対照SLSは、最高濃度でもマーカーを発現しなかった。他の標準物質PPD、MEPPD、およびPTDは、推奨しきい値を超えるCD54、CD86発現が生じた。例えばPPDは、1/1.2×CV75からマーカーを過剰発現し、CV75用量まで誘導が持続し、1.2×CV75から減少した。PPDはDNCBと同様の傾向を示したが、CV75での発現率は1.6倍低く(CD54とCD86で、それぞれ270%と210%のRFI)、EC200、EC150値はそれぞれ、35.0μg/mLおよび39.4μg/mLを示した。標準物質ME-PPDは、PPDよりもわずかに低い発現を示したが、EC200、EC150値はそれぞれ120.5μg/mLおよび117.9μg/mLであり、依然として感作物質範囲で減少した。ME-PPDは、CV75用量でマーカーを誘導し、用量レベルが増加するにつれてさらに上昇した。PTDについても同様の傾向が認められたが、より低い用量レベル1/1.2×CV75でもマーカー誘導が認められ(EC200、EC150値は、それぞれ35.35μg/mLおよび34.3μg/mL)、発現傾向はPPDとME-PPDの間に位置した。
【0184】
新規の誘導体のうち、N1、N4、N10およびN11は、いずれの試験用量レベルでもマーカーを発現せず、感作物質のためのOECDカットオフ範囲に当てはまらなかった。加えて、誘導はDNCBおよびPPDよりも、それぞれ3~4倍および2~3倍低かった。発現レベルは、CD54とCD86でそれぞれ150%~155%、103%、および85%~125%であった。これらは、陰性対照SLSの発現レベルよりも大きいだけであった。N2、N3、およびN6は、N1およびN4と同様の傾向を示した(おおよそCD54で155%および160%、CD86で118%および92%のRFI)。これはDNCBよりも3倍低い誘導を示す。一連のN内であっても、N5、N7、N8、N9、およびN12は、推奨%RFIカットオフを超えるマーカー発現を誘導しなかった(それぞれCD54で170%~190%、CD86で115%~145%)。このことから、N5、N7およびN8~N9およびN12~N13は、非感作物質であるとみなされる。まとめると、全13の試験化合物のうち、試験濃度でTHP-1細胞に皮膚感作性を示したものはなかった。
【0185】
[実施例15:毛髪ニュアンス試験]
[ブリーチされた毛髪の準備]
35gのブリーチパウダーが50mLの顕色剤と混合され、次に染色されていない黒色の毛髪(ブリーチ効果を高めるためアルミホイルに包まれる)上に適用され、45分間放置された。毛髪はその後、脱イオン水およびシャンプーですすがれ、乾くまで放置された。この過程は、2回繰り返された。
【0186】
[染毛剤製剤]
染毛剤製剤は、報告されている方法に従い(New Journal of Chemistry. 2019; 43(41): 16188-99)、表11に記載された組成で、N1~N13から調製された。ブリーチされた毛髪試料は、それぞれの製剤内に20分間浸漬された後、20分間風乾された。その後、それらは2回シャンプーされ、コンディショナーで5分間処理された。
【0187】
【0188】
[毛髪色の測定]
SkinColorCatch(Delfin Technologies Ltd、クオピオ(Kuopio)、フィンランド)が、染色された毛髪試料のCIELAB三刺激値L*、a*、b*値、および未処理の毛髪からのベースラインL、a、b値の測定に、使用された。次に、色調の差(ΔH)および総合色差(ΔE)が、得られた値から以下の式を用いて導かれた:
【0189】
[結果および考察]
図8i~8ivは、N1~N13誘導体がブリーチされた毛髪試料上に適用された後の、最終的な色の写真を示す。白黒写真では色は見えないが、各毛髪試料の色は、図8i~8ivに示される。表12は、ブリーチされた毛髪試料の最終的な色を示し、表13は、N1~N13に毛髪ニュアンス試験を行った後の、それらのCIELAB三刺激値を示す。染毛剤標準物質からの測定値は、公表データから入手された(New Journal of Chemistry. 2019; 43(41): 16188-99)。3つの製剤が、この試験で調製された:酸化剤を含まないA型は、化合物が酸化剤を使用せずに毛髪を着色できるかどうかを調べるために使用された。酸化剤である過酸化水素を含むB型は、一般に市販される染毛剤製剤が酸化剤を含むため、使用された;C型は、カプラーであるレゾルシノールを含む酸化製剤で、カプラーを含む化合物の性能を調べるために使用された。
【0190】
N1~N13は、PPDのオルト位に様々な親水性置換基を導入することを通じて、より水溶性になるように設計された。化合物の水溶性を向上させる目的は、染毛過程中に毛髪と接触する製剤中の染毛剤の量を最大化することにより、その染毛効果を増加することである。
【0191】
図8i~8ivは、N1~N13誘導体がブリーチされた毛髪試料上に適用された後の、最終的な色の写真を示し、表12は、ブリーチされた毛髪試料の最終的な色を示し、表13は、N1~N13に毛髪ニュアンス試験を行った後の、それらのCIELAB三刺激値を示す。L*、a*、b*は、処理された毛髪の値を指し、L、a、bは、天然の未処理の毛髪から測定されたベースライン値である。N1~N13の測定値は、公表データからの染毛剤標準物質と比較される(J Hazard Mat., 2021, 402, 123712)。3つの製剤が調製された:A型、酸化剤無し;B型、酸化剤有り;C型、酸化剤+レゾルシノール有り。
【0192】
酸化剤を含まないA型製剤は、N1~N3、N5、およびN7に暗い色を、N4、N6、およびN13に明るい色を与えた。さらに、BおよびC型製剤の顕色中、アンモニア溶液でpHを10~10.5の間に調整しても化合物の沈殿は観察されず、これらの化合物の完全な混和性および異なるpH条件での水溶性を証明した。N1~N13染料は、図8i~8ivに見られるように、酸化剤が存在しなくても毛幹上に色を与えることができた。N1~N13のB型製剤は、様々な色合いの黒色から茶色の毛髪を、結果として生じさせた。一連のうち、N1~N3、N5およびN7~N11は、毛髪に暗い色合いを与えた。N1、N8、N10、N11は、元々暗褐色の化学物質であり、過酸化水素で酸化すると黒色を与えた(ΔE=2~3)。同様に、高い水溶性を有する天然の黒色として合成されたN2およびN3は、酸化(ΔE=2.0および9.9)がなくても、それぞれΔE=3.7および11.6で黒色を与えた。N4、N6、N11およびN13のA型製剤は、それぞれ茶色がかった緑色およびローズピンク色から灰色がかった茶色などの、はっきりとより明るい色を結果として生じさせ、一方N1は、その物理的な形として茶色を反射した。同様に、N5、N7は、暗褐色の色合いを毛髪に与え、構造的特徴の類似性を示した。一方、N9およびN12のA型およびB型製剤は、茶色を示した。
【0193】
ほとんどの化学物質は、レゾルシノールとのカップリングにより、茶色を示した(C型製剤)。興味深いことに、N4、N5、N7およびN9のC型製剤は、鮮やかな青色を結果として生じさせ、N12のC型は、はっきりとした紫色を示した。N1~N13は、比較対象PPD、ME-PPD、およびPTDよりも深い色合いの毛髪ニュアンスを、結果として生じさせた。
【0194】
さらに、ニュアンスの安定性試験が行われた。N1~N13で染色された毛髪試料は、この安定性試験中、3ヶ月まで毎週の洗浄、およびそのCIELAB三刺激値の測定を受け、すべての毛髪試料は、それらの元の毛髪色を保持しているように見えた。このことは、新しい染毛剤が、ひとたびコルテックス内に入ると繰り返しの洗浄でも毛幹から離れない、永久的な毛髪色を提供することを確認する。

【0195】

【0196】
【0197】
【0198】
[結論]
本研究において、改良された新規の染毛剤N1~N13は、それらの水溶性、染毛効果、細胞毒性、皮膚浸透性および感作性について評価された。N1~N13は、PPDのオルト位に戦略的親水性官能基を加えることにより、より水溶性になるように設計された。注意深い構造修飾により、それらの溶解度は6.5~10%まで向上した。
【0199】
染料の効果は、まず毛髪ニュアンス試験において評価された。N1~N3のB型製剤は、黒色を与え、自然な黒い毛髪色を示唆した(ΔE=2~9.9)。同様に、N1~N3、N5、N7、N8、N10~N11のA型製剤は、暗い色を与え、化合物のより深い暗い濃淡の性質を示した。インビトロ皮膚浸透試験の結果は、分子サイズのために皮膚浸透性がないことを示す。HaCaTケラチノサイトにおける細胞毒性アッセイの結果は、O-メチル部位(N1~N4、N6およびN8~N12)が、O-エチル部位(N5およびN7)よりも好ましいことを示唆する。加えて、DPRAの結果は、O-エチル鎖化合物(N5およびN7)が、O-メチル鎖化合物(N1~N4、N6およびN8~N12)と比較して、より助けにならないことをさらに確認する。
【0200】
最後に、単球性THP-1細胞における特異性マーカーサイトカイン(IL-8およびIL-1α)および表面タンパク質(CD54およびCD86)の評価により、皮膚感作アッセイがさらに評価された。O-メチル鎖化合物は、THP-1細胞においてIL-8およびIL-1α発現の誘導を示さなかったが、一方N5、N7およびN12、N13は、わずかな放出を示した。h-CLATアッセイの結果は、DPRA、IL-8およびIL-1αの結果を補完した。いずれの試験化合物も、OECDカットオフ(CD54で、>200%RFI、CD86で、>150%RFI)を超えるマーカー発現を誘導せず、従って非感作物質であるとみなされた。
【0201】
本研究において本発明者らは、既知のアレルゲンであるPPDおよびPTDの毒性効果を、インビトロで確認した。ME-PPDは、PPDに代わる非毒性物質とされているが、PPDと比較して同等か、またはわずかに減弱する程度の毒性および感作性を示した。このことは、臨床現場におけるME-PPD誘発性ACDの観察を確認する。対照的に、本発明者らは、N1~N13がPPDおよびME-PPDの優れた非毒性代替物質であることを見出した。これらは、高い水溶性、低い浸透性、HaCaT細胞におけるより低い細胞毒性、および低い感作性を示した。さらにこれらは、酸化剤が存在しない場合でも効果的に毛髪を着色する。N2およびN3、N8~N10が、着色に最も効果的であった。さらに、N1~N4およびN6、N8~N10は、接触アレルゲンPPDと比較して、最小限の反応性であると同定された。全体として、本発明の化合物は、非酸化性または酸化性の条件下で、毛幹への染色性が保持され、使用者にアレルギーまたは他の免疫反応を誘発しにくい。
【0202】
改善された性能に着目し、本発明者らは驚くべきことに、N1~N13が安全で効能があり、消費者に優しい2イン1ボトル製品であることを実証した。
図1
図2
図3iA-D】
図3iE-G】
図3ii
図4
図5iA-D】
図5iE-H】
図5ii
図6
図7i-1】
図7i-2】
図7ii
図7iii
図8i-1】
図8i-2】
図8ii
図8iii
図8iv
【国際調査報告】