(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】タキサンに対する過敏性反応を治療するためのC5AR1阻害薬
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240312BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/451 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P37/08
A61K31/451
A61K31/427
A61K39/395 N
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556979
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022057007
(87)【国際公開番号】W WO2022195017
(87)【国際公開日】2022-09-22
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】315012541
【氏名又は名称】ドムペ・ファルマチェウティチ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100106080
【氏名又は名称】山口 晶子
(72)【発明者】
【氏名】アレグレッティ,マルチェッロ
(72)【発明者】
【氏名】アラミーニ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】アメンドラ,ピエルジョルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ブランドリーニ,ローラ
(72)【発明者】
【氏名】チェスタ,マリア・キャンディダ
(72)【発明者】
【氏名】シリコ,アンナ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084NA14
4C084ZB131
4C084ZB132
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC21
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB13
(57)【要約】
本発明は、個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療のためのC5aR1阻害薬の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療に使用するためのC5aR1阻害薬。
【請求項2】
前記タキサンが、パクリタキセル、Nab
TM-パクリタキセル、ドセタキセル及びカバジタキセルから選ばれる、請求項1に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項3】
前記C5aR1阻害薬が、前記個人におけるタキサンに対する過敏性反応の予防に使用するためのものであり、該阻害薬が前記タキサンの各投与前に1回又は複数回投与される、請求項1又は2に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項4】
前記C5aR1阻害薬が、個人にタキサンを投与する30分~24時間前に1回又は複数回投与される、請求項3に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項5】
前記個人が、以前にタキサンに対するHSRのエピソードを有する、前記タキサンに対する感受性を調べる皮膚プリックテストで陽性の結果である、及び/又はアトピー歴を有するがん患者である、請求項3又は4に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項6】
一つ又は複数のコルチコステロイド及び/又は抗ヒスタミンと組み合わせて投与される、請求項3~5に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項7】
前記C5aR1阻害薬が前記個人におけるタキサンに対する過敏性反応の急性治療に使用されるためのものであり、該阻害薬が過敏性反応の症状の開始時に投与される、請求項1又は2に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項8】
前記C5aR1阻害薬が、C5aR1競合的アンタゴニスト、受容体上のC5a結合部位を遮断できる抗C5aR1抗体、及びC5aR1非競合的アロステリック阻害薬から選ばれる、請求項1~7に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項9】
- (2R,3S)-2-[4-(シクロペンチルアミノ)フェニル]-1-(2-フルオロ-6-メチルベンゾイル)-N-[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-3-カルボキサミド(Avacopan、Vynpenta(登録商標));
- N-アセチル-L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン-N-5.2-C-1.6-ラクタム(PMX-53);
- アセチル化フェニルアラニン-[オルニチル-プロリン-(D)シクロヘキシルアラニン-トリプトフィル-アルギニン];
- L-アラニル-L-セリル-グリシル-L-アラニル-L-プロリル-L-アラニル-L-プロリル-グリシル-L-プロリル-L-アラニル-グリシル-L-プロリル-L-ロイシル-L-アルギニル-L-プロリル-L-メチオニル-L-フェニルアラニン;
- N,N-ビス(1,3-ベンゾジオキソール-5-イルメチル)-N-(1-ブチル-2,4-ジフェニル-1H-イミダゾール-5-イルメチル)アミン;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-2-イソブチルベンズアミド;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-1-ベンゾチオフェン-3-カルボキサミド;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)ナフタレン-1-カルボキサミド;
- 2-(2-エチル-6-メチルフェニル)-4-メトキシ-N-(5-メトキシ-2-メチルフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-5-アミン;
- 2-(2,6-ジエチルフェニル)-N-エチル-4-メトキシ-N-(1-ナフチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-5-アミン;
- N-[2,6-ジオキソヘキサヒドロピリミジン-4(S)-イルカルボニル]-L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-5-メチル-L-ノルロイシル-4-フルオロ-L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニンアミド(JPE-1375;JSM-1375);
- N-(3-フェニルプロピオニル)-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン N-5.1-C-1.5-ラクタム(PMX-205);
- N,N’-ビス(4-アミノ-2-メチルキノリン-6-イル)ウレア(NSC12155);
- N-[4-(ジメチルアミノ)ベンジル]-N-(4-イソプロピルフェニル)-7-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-カルボキサミドヒドロクロリド(W54011);
- L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン N-5.2-C-1.6-サイクリックペプチド;
- (4aR,16aS)-6,18-ジヒドロキシ-23(S)-[2(S)-ヒドロキシ-2-[2(R)-ヒドロキシ-6(R)-メチル-5(R)-[2(S)-メチルブチル]テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]プロピオンアミド]-22(S)-イソプロピル-7(S),19(R)-ジメチルドコサヒドロ-13H,22H-ジピリダジノ[6,1-f:6’,1’-o][1,4,7,10,13,16]オキサペンタアザシクロノナデシン-5,7,11,17,20,24-ヘキサノン(L-156602)
からなる群から選ばれるC5aR1アンタゴニストである、請求項1~8に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項10】
- Avdoralimab(IPH-5401)
- MOR-044254;
- NOX-D20;
- 抗C5aR1ab-C5-SiRNA;
- m20/70 mlgG2a.1;
- 3C5
- 7F3
からなる群から選ばれる抗C5aR1抗体である、請求項1~8に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項11】
- (2R)-2-[3-(フラン-2-カルボニル)フェニル]-N-[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]プロペンアミド(DF2427);
及び
- 一般式(I)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【化1】
[式中、
i)Rは、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(Wは直鎖又は分枝C
1-C
4アルキルである);
- CORa、SORa、SO
2Ra、PORa、PO
2Ra
から選ばれ、
上記式中、
Raは、
- C
1-C
5-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
2-C
5-アルケニル、非置換フェニル又はハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、ハロ-C
1-C
4-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1-C
4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニル;
- ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選ばれるヘテロアリール基(当該ヘテロアリールは非置換であるか又はハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、ハロ-C
1-C
4-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1-C
4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- α又はβカルボキシアルキル残基(直鎖又は分枝C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
2-C
6-アルケニル、C
1-C
6-フェニルアルキルからなり、更なるカルボキシ(COOH)基で置換されていてもよい);
- 式(II)のω-アミノアルキルアミノ基:
【化2】
{前記式(II)において、
Xは、
- 直鎖又は分枝C
1-C
6アルキレン、C
4-C
6アルケニレン、C
4-C
6アルキニレン(任意に、a)CO
2R4基(式中、R4は、水素又は直鎖もしくは分枝C
1-C
6アルキル基又は直鎖もしくは分枝C
2-C
6アルケニレン基を表す)によって、又はb)CONHR5基(式中、R5は、水素、直鎖もしくは分枝C
2-C
6アルキル又はOR4基(R4は上記定義の通り)を表す)によって置換されていてもよい);
- (CH
2)
m-B-(CH
2)
n基(上記定義のCO
2R4又はCONHR5基で置換されていてもよく、式中、a)Bは、酸素、又は硫黄原子、又は窒素原子(C
1-C
4アルキル基で置換されていてもよい)であり、mは0又は2~3の整数であり、nは2~3の整数であるか、又はb)Bは、CO、SO又はCONH基であり、mは1~3の整数であり、nは2~3の整数である)
であり;
R2及びR3は、独立に、水素、直鎖又は分枝C
1-C
6アルキル(酸素又は硫黄原子を間に挟んでいてもよい)、C
3-C
7シクロアルキル、C
3-C
6アルケニル、C
3-C
6-アルキニル、アリール-C
1-C
3-アルキル、ヒドロキシ-C
2-C
3-アルキル基であるか;又は
R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【化3】
(上記式中、
Yは、
- 単結合、CH
2、O、S、又はN-R6基(ここで、R6は、水素、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アシル、非置換フェニル又はハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1-C
4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニルを表す)、
そしてpは0~3の整数を表し;
- 式SO
2R7の残基(ここで、R7は、C
1-C
6-アルキル、C
3-C
6-シクロアルキル、C
2-C
6-アルケニル、アリール及びヘテロアリールである);
を表す)
の3~7員の窒素ヘテロサイクリック環を形成するか;
又は
前記式(II)において、
Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロサイクリック、モノサイクリック又はポリサイクリック環を形成し、R3は、水素、C
1-C
4アルキル、C
1-C
4アシル、非置換フェニル又はハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1-C
4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニルを表す}
から選ばれ;
ii)R1は、直鎖又は分枝C
1-C
5アルキル、C
3-C
5シクロアルキルであり;
iii)Arは、
- 非置換フェニル基又はハロゲン、C
1-C
4-アルキル、C
1-C
4-アルコキシ、ヒドロキシ、C
1-C
4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C
1-C
4-アシルアミノ、ハロ-C
1-C
3-アルキル、ハロ-C
1-C
3-アルコキシ、ベンゾイル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリール、直鎖又は分枝C
1-C
8-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C
1-C
8-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C
1-C
8アルキルスルホニルメチルから独立に選ばれる一つ又は複数の基で置換されている置換フェニル基;又は
- ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選ばれるヘテロアリール環
である]
から選ばれる非競合的アロステリック阻害薬であり、
上記化合物中、特に好適なのは、
Rが、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(Wは直鎖又は分枝C
1-C
4アルキルである);
- CORa、SORa又はSO
2Ra(式中Raは上記定義の通り)
から選ばれ;そして
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニル
から選ばれるか;
又はArが、ピリジン、ピロール、チオフェン、フランもしくはインドールから選ばれるヘテロアリール環である、
前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である、請求項1~8に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項12】
前記化合物が、
- (2R)-2-[3-(フラン-2-カルボニル)フェニル]-N-[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]プロペンアミド(DF2427);
- 4-{(1R)-1-[(フェニルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;
- 4-{(1R)-1-[(ピリジン-3-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]メタンスルホンアミド;
- N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}チオフェン-2-スルホンアミド;
- N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}メタンスルホンアミド;
- 4-{(1R)-1-[(チエン-2-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]チオフェン-2-スルホンアミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-3-ピロリジン-1-イルプロパン-1-スルホンアミド;
- メチル 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロエート;
- 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロ酸;
- 4-{(1R)-2-メチル-1-[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-((1R)-1-{4-[1-メチル-1-(フェニルスルホニル)エチル]フェニル}エチル)メタンスルホンアミド;
- 4-[(1R)-1-(イソブチリルアミノ)エチル]フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- 4-{[(1R)-1-(ピリジン-3-イルカルボニル)アミノ]エチル]}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンズアミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-2-フラミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]シクロブタンカルボキサミド;
- N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イル ブタンアミド(DF2593Y);
- 4-{(1R)-1-[(4-ピロリジン-1-イルブタノイル)アミノ]エチル]}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- 3-{(1R)-1-[4-(4-トリフルオロメチル-1,3-チアゾール-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)(フェニル)メタノン;
- R(-)-2-[(4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-[3-(N’-ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド(DF2297X)又はその塩化物塩(DF2297A);及び
- 5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]テトラゾール-2-イド(DF3966Y)又はそのナトリウム塩(DF3966A)
から選ばれる、請求項1~8及び11に記載の使用のためのC5aR1阻害薬。
【請求項13】
個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療に使用するための、請求項1~12に記載のC5aR1阻害薬と少なくとも一つの不活性な薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タキサンに対する過敏性反応の予防及び治療に関する。
【背景技術】
【0002】
過敏性反応(HSR)は、免疫学的機序の証拠がない場合であってもアレルギー反応に似た臨床症状を特徴とする予測不能な反応で、生命を脅かすことも、入院の必要や長期化をもたらすことも、その後の療法の変更を余儀なくされることもある。一般に、重症のHSRは、薬物投与中止の正当な理由になるほど重症な何らかの反応と定義される。HSRは、免疫グロブリン及び/又はT細胞によって媒介される免疫反応が関与するアレルギー性のこともあれば、特異的な免疫反応が関与しない非アレルギー性のこともある。
【0003】
臨床的には、HSRは一般的に、それを引き起こした治療と発症との関連に応じて即時型又は非即時型/遅延型に分類される。
即時型HSRは通常、投薬中又は薬物暴露後最初の1時間以内に発生し、一般的にIgE媒介機序によって誘発され、通常非アレルギー性である。これに対し、非即時型HSRは、最初の薬物投与の1時間後以降に発生し、通常、遅発性のT細胞依存型のアレルギー機序と関連する。
【0004】
しかしながら、上記の機序的分類には限界がある。なぜならば、投与経路、薬物代謝産物の役割、及び補因子又は併用処方薬の存在といったその他の因子によって、反応の開始及び/又は進行が早まることも又は遅くなることもあるからである(Demolyら,Allergy 2014,69:420-437)。
【0005】
化学療法、特に、タキサン類及びプラチン剤に対するHSRは非常によく見られ、がん患者の治療に対する重大な脅威となっている。場合によっては、患者の特定のがんに対して最も効果的な薬物である第一選択薬が使用できなくなることもある。
【0006】
症状は、顔面紅潮などの皮膚症状、胸部、背部及び腹部の痛み、ならびに呼吸器症状などである。より重篤な反応は、酸素飽和度の低下及び/又は低血圧によっても特徴付けられる。
【0007】
現在、プラチン類に対するHSRはIgE媒介性であることが確立されているが、タキサン類に対するHSRの機序は依然として明らかにされていない。
臨床診療に使用されているタキサン類は、パクリタキセル、ドセタキセル及びカバジタキセルである。
【0008】
これらは、微小管(細胞骨格の構成要素)の動態を妨害することによって分裂過程にある細胞の有糸分裂を阻害し、アポトーシスを誘導することによって抗新生物活性を発揮する。
【0009】
パクリタキセル(Taxol(登録商標))は、アルブミン結合パクリタキセル(NabTM-パクリタキセル;Abraxane(登録商標))としても臨床使用できるが、元は1960年代にタイヘイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮から単離された天然化合物である。卵巣がん、乳がん、非小細胞肺がん、及びAIDS関連のカポジ肉腫の治療に使用されている。
【0010】
ドセタキセル(Taxotere(登録商標))は、パクリタキセルに代わり、より可溶性でより製造が容易であるとして開発された半合成タキサンである。乳がん、卵巣がん、前立腺がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん及び胃腺がんの治療に使用されている。
【0011】
カバジタキセル(Jevtana(登録商標))は、パクリタキセル及びドセタキセルに対する腫瘍の薬物耐性を克服するために開発された半合成タキサンである。
これらの分子はいずれも水に難溶性であるので、静脈内投与を可能にするためにそれらの製剤に乳化剤の添加、特にパクリタキセル製剤に対してはCremophor(登録商標)EL(ポリオキシエチル化トリグリセリド類の混合物)、パクリタキセルより可溶性のドセタキセル及びカバジタキセルに対してはポリソルベート80(Tween 80)の添加を必要とする。
【0012】
タキサン類に対するHSRの大部分は、薬物の1回目又は2回目の注入中に発生し、通常即時型HSRで、注入開始の数分以内に発症し、以前の感作に無関係であることを示唆している(Picardら,Clinic Rev Allerg Immunol 2015,49:177-191)。
【0013】
パクリタキセルやその他のタキサン類を可溶化するために使用されている乳化剤が、補体活性化やアナフィラトキシンの産生とそれに続く肥満細胞及び好塩基球分泌反応を通じて、HSRの原因となっていると仮定されている。しかしながら、無溶媒のパクリタキセル製剤であるNabTMパクリタキセルも、治療された患者の相当割合に依然としてHSRを誘発しうるため、直接的な感作機序が示唆される。
【0014】
さらに最近の知見では、タキサン誘発性HSRがIgE媒介性である可能性も高まっており、リスクある患者を識別するために皮膚プリックテストの使用が支持され(Prietoら,J Investig Allergol Clin Immunol 2010,20:170-171;Picardら,J Allergy Clin Immunol 2016,137:1154-64)、そしてタキサンが非IgE媒介性機序を通じて好塩基球の活性化を誘導しているかもしれないことが示唆されている(Picardら,J Clinic Rev Allerg Immunol 2015,49:177-191)。
【0015】
このようにタキサンによるHSRの主な原因が明確に理解できていないため、実際的には非常に多様な管理対策を(取らざるを得ない事態を)招いている。反応の発生率を削減するために、コルチコステロイド及び抗ヒスタミン化合物による前投薬が予防的治療として使用されている。しかしながら、前投薬にもかかわらず高割合の患者がHSRを経験しており、その発生率は、生命を脅かす重症のHSRを含め、使用される化学療法薬に応じて様々である(パクリタキセル10%、ドセタキセル5%、NabTM-パクリタキセル4%、及びカバジタキセル約1%)(Picardら,Immunol Allergy Clin An Am 2017,37:679-693)。
【0016】
この10年の間に、薬物の減感作及び段階的負荷(graded challenging)のプロトコルの開発により、HSRを経験する一部の患者にタキサンの再導入が可能になった。しかしながら、タキサンに対するHSRの機序のより良い理解と、これらの薬物で治療される患者のHSRを予防するための安全な臨床的アプローチの開発を求めるニーズは依然として高い。
【0017】
アナフィラトキシン(AT)のC3a、C5a及びC5a-desArgは、補体活性化に応答してC3及びC5のタンパク分解的切断後に生成する炎症誘発性ポリペプチドである。C5aは主にC5a受容体1(C5aR1)を通じて作用し、炎症誘発及び免疫調節機能を発揮する。C5a-C5aR1軸の調節異常は様々な免疫障害に関与している。
【0018】
C5aR1は、骨髄起源のすべての細胞(好中球、好酸球、単球、マクロファージ、樹状細胞、肥満細胞)、リンパ球、及び非骨髄細胞、例えば、肺、肝臓、腎臓、皮膚、及び中枢神経系(CNS)の細胞を含む広範囲の細胞タイプ上に発現している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Demoly et al, Allergy 2014, 69: 420-437
【非特許文献2】Picard et al, Clinic Rev Allerg Immunol 2015, 49:177-191
【非特許文献3】Prieto et al, J Investig Allergol Clin Immunol 2010, 20: 170-171
【非特許文献4】Picard et al, J Allergy Clin Immunol 2016, 137:1154-64
【非特許文献5】Picard et al, J Clinic Rev Allerg Immunol 2015, 49:177-191
【非特許文献6】Picard et al, Immunol Allergy Clin An Am 2017, 37: 679-693
【発明の概要】
【0020】
本発明者らは今回、驚くべきことに、タキサンがC5aの受容体C5aR1に結合でき、C5aがこの受容体に結合することによって引き起こされる同じシグナル伝達経路を活性化することによって、これらの薬物の投与に関連するHSRの原因となるアナフィラキシー反応を引き起こしていることを見出した。
【0021】
そこで、本発明の第一の側面は、個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療に使用するためのC5aR1阻害薬である。
本発明の第二の側面は、個人におけるタキサンに対する過敏性反応の予防又は治療に使用するための、C5aR1阻害薬と少なくとも一つの不活性な薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0022】
本発明の第三の側面は、C5aR1阻害薬を個人に投与する手順を含む、個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療法である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施例1a)に記載されているように、c-Mycタグを介したC5aR1捕捉によって得られた、センサーチップに結合されたC5aR1のレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。センサーチップ上へのC5AR1-cMycの注入前(開始ベースライン)及び注入後(最終ベースライン)のベースラインRU間の差は、表面への受容体の77RUの安定な結合に対応している。
【
図2】
図2は、実施例1b)に記載されているように、センサーチップ上に固定化されたC5aR1に結合されたC5aのレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。
【
図3】
図3は、実施例1c)に記載されているように、センサーチップ上に固定化されたC5aR1に結合されたパクリタキセルのレゾナンスユニット(RU)で表された濃度を示す。
【
図4】
図4は、実施例1c)に記載されているように、様々なパクリタキセル濃度(4.06μM~37.5μM)で測定された、センサーチップ上に固定化されたC5aR1に結合されたパクリタキセルのレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。
【
図5】
図5は、実施例1c)に記載されているように、パクリタキセル濃度の関数として測定された、センサーチップ上に固定化されたC5aR1に結合されたパクリタキセルのレゾナンスユニット(RU)で表された定常状態濃度を示す。
【
図6】
図6は、実施例2a)に記載されているように、Hisタグを介したC5aR2捕捉によって得られた、マイクロチップに結合されたC5aR2のレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。センサーチップ上へのC5aR2-Hisの注入前(開始ベースライン)及び注入後(最終ベースライン)のベースラインRU間の差は、表面への受容体の569RUの安定な結合に対応している。
【
図7】
図7は、実施例2b)に記載されているように、センサーチップ上に固定化されたC5aR2に結合されたC5aのレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。
【
図8】
図8は、実施例2c)に記載されているように、様々なパクリタキセル濃度(4.06μM~37.5μM)で測定された、センサーチップ上に固定化されたC5aR2に結合されたパクリタキセルのレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。パクリタキセルは、試験されたどの濃度でも受容体に結合することができない。
【
図9】
図9は、実施例3b)に記載されているように、センサーチップ上のC5aに結合されたパクリタキセルのレゾナンスユニット(RU)で表された経時的濃度を示す。パクリタキセルは、試験された濃度でC5aに結合することができない。
【
図10】
図10は、実施例4に記載されているように、パクリタキセルで24時間処理されたRAW264.7の上清中のサイトカインのプロファイリングを示す。メンブレン上の数字は、アッセイで明らかになった、ヒストグラムに報告されている各サイトカインを示す(1:MCP-1/CCL2;2:C5a;3:TNFアルファ;4:MIP-1アルファ/CCL3;5:MI-1ベータ/CCL4;6:MIP2/CXCL2;7:IL-1ra;8:Rantes/CCL5)。
【
図11】
図11は、実施例4に記載のようにして測定された、C5a又はパクリタキセルで24時間処理されたRAW264.7の上清中の、ピクセル密度として表されたサイトカインレベルを示す。
【
図12】
図12は、10nMのパクリタキセル(PAC)又は50nMのC5a(50nMC5a)で20時間処理されたF11細胞におけるIL-8の相対的mRNA発現のリアルタイムPCR分析の結果を示す。
【
図13】
図13は、実施例6に記載のようにして測定された、非処理(CTR)の、あるいはC5a単独(C5a)で処理された、又はC5Aと、C5AR1抗体との組合せ(抗C5AR+C5A)、Avacopanとの組合せ(AV+C5A)もしくはDF3966Aとの組合せ(DF+C5A)で処理された、パクリタキセル単独(PAC)で処理された、又はパクリタキセルと、C5AR1抗体のとの組合せ(抗C5AR+PAC)、Avacopanとの組合せ(AV+PAC)もしくはDF3966Aとの組合せ(DF+PAC)で処理されたマウスRAW264マクロファージ(パネルA及びB)、及びヒトマクロファージ(パネルC及びD)によって放出された各サイトカインの平均ピクセル密度の結果を示す。
【
図14】
図14は、実施例6に記載のアッセイで明らかにされ、
図13のヒストグラムに報告されているマウスRAW264マクロファージによって放出された各サイトカインを示すメンブレンを示す。
【
図15】
図15は、実施例6に記載のようにして測定された、非処理(CTR)の、あるいはC5a単独(C5a)で処理された、又はC5Aと、C5AR1抗体との組合せ(抗C5AR+C5A)、Avacopanとの組合せ(AV+C5A)もしくはDF3966Aとの組合せ(DF+C5A)で処理された、パクリタキセル単独(PAC)で処理された、又はパクリタキセルと、C5AR1抗体のとの組合せ(抗C5AR+PAC)、Avacopanとの組合せ(AV+PAC)もしくはDF3966Aとの組合せ(DF+PAC)で処理されたヒトマクロファージで放出された各サイトカインの平均ピクセル密度の結果を示す(パネルA及びB)。
【
図16】
図16は、実施例6に記載のアッセイで明らかにされ、
図15のヒストグラムに報告されているヒトマクロファージによって放出された各サイトカインを示すメンブレンを示す。
【
図17】
図17は、PEG/TWEEN単独(PEG/TWEEN)、DMSO/PEG/TWEEN中パクリタキセル(PEG/TWEEN中PAC)、Cremophor EL単独(Cremophor)又はCremophor EL中パクリタキセル(Cremophor中PAC)で処置されたマウスにおける、分光光度計(O.D.)を通じて計算された透過度スコア(パネルA)及び血管漏出(パネルB)の結果を示す。
【
図18】
図18は、Cremophor単独(Cremophor)、又はCremophor中に溶解されたパクリタキセルと、DF3966Aに使用されるビヒクルとの組合せ(Cremophor中PAC+Veh DF)、DF3966Aとの組合せ(Crem中PAC+DF)、Avacopanに使用されるビヒクルとの組合せ(Cremophor中PAC+Veh AVA)、もしくはAvacopanとの組合せ(Crem中PAC+AVA)で処置されたマウスにおけるインビボ実験の結果を示す。有効性の結果は、実施例8に記載のようにして測定された4つの異なるパラメーター、すなわち、透過度(パネルA)、血管漏出(パネルB)、ヒスタミン及びSC5B-9(パネルC及びD)に基づいて示されている。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本発明によれば、用語“予防”は、障害又は病的事象が確立又は発生する前に、これの部分的又は完全予防を得るために個人に投与することを指す。
【0025】
本発明の一態様によれば、予防は、障害又は病的事象が完全に遮断される完全予防である。
本発明の代替の態様によれば、予防は、障害又は病的事象の発症が遅延される及び/又は重症度が低減される部分予防である。
【0026】
本発明によれば、用語“治療”は、障害又は病的事象が確立又は発生した後に、これを完全に逆転する又は重症度もしくは進行を縮小することを指す。
本発明によれば、用語“個人”は、ヒト又は動物、好ましくはヒトを指す。
【0027】
本発明によれば、用語“過敏性反応”又は“HSR”は、免疫学的機序の証拠がない場合であってもアレルギー反応に似た臨床症状を特徴とする、薬物に対する予測不能な有害反応を指すために使用される。
【0028】
発明の詳細な説明
本発明の第一の側面は、個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療に使用するためのC5aR1阻害薬である。
【0029】
好ましくは、前記タキサンは、パクリタキセル、NabTM-パクリタキセル、ドセタキセル及びカバジタキセルから選ばれる。
前記個人は、好ましくは、がんと診断され、その治療の選択がタキサンである対象である。好ましくは、前記がんは、卵巣がん、乳がん、非小細胞肺がん、前立腺がん、頭頸部がん、胃腺がん、及びAIDS関連のカポジ肉腫から選ばれる。
【0030】
第一の態様に従って、前記C5aR1阻害薬は、前記個人におけるタキサンに対する過敏性反応の予防に使用され、その阻害薬は前記タキサンの各投与前に1回又は複数回投与される。
【0031】
好ましくは、前記C5aR1阻害薬は、個人へのタキサン投与30分~24時間前のフレーム時間内に1回又は複数回投与される。さらに好ましくは、個人へのタキサン投与30分~2時間前に投与される。
【0032】
この態様に従って、上記個人は、好ましくは過敏性反応を発症するリスクのある対象である。好ましくは、前記個人は、以前にタキサンに対する過敏性反応のエピソードを有する、前記タキサンに対する感受性についての皮膚プリックテストで陽性の結果である、及び/又はアトピー歴を有するがん患者である。
【0033】
この態様に従って、C5aR1阻害薬は、一つ又は複数のコルチコステロイド及び/又は抗ヒスタミン薬と組み合わせて投与することもできる。一部の場合、C5aR1阻害薬とコルチコステロイド及び/又は抗ヒスタミンは実質的に同時に投与される。あるいは、C5aR1阻害薬とコルチコステロイド及び/又は抗ヒスタミン薬は、すべて個人へのタキサン投与30分~24時間前のフレーム時間内に順次投与される。
【0034】
好ましくは、前記コルチコステロイド及び/又は抗ヒスタミン薬は、タキサンに対する前投薬治療のために常用されているものである。好ましくは、C5aR1阻害薬は、デキサメタゾン、ジフェンヒドラミン及びラニチジンと組み合わせて投与される。さらに好ましくは、タキサンの注入12~6時間前に経口投与のデキサメタゾン(8mg)及びタキサンの注入30分前に静脈内投与のジフェンヒドラミン(2mg)及びラニチジン(50mg)と組み合わせて投与される。
【0035】
代替の態様に従って、前記C5aR1阻害薬は、前記個人におけるタキサンに対する過敏性反応の急性治療用であり、該阻害薬は過敏性反応の症状の開始時に投与される。この場合、タキサンによる前記個人の治療も直ちに中止される。
【0036】
この態様に従って、C5aR1阻害薬は、他の適切な治療、好ましくは、コルチコステロイド、ドーパミン及び/又は抗ヒスタミンと組み合わせて投与できる。最も重症例では、エピネフリン及び/又は酸素補給も投与できる。
【0037】
本発明による用語“C5aR1阻害薬”は、C5aR1と相互作用し、C5aへのその結合を防止するか又はC5a結合時にC5aR1のシグナル伝達を遮断する任意の化合物を意味する。好ましくは、前記C5aR1阻害薬は、C5aR1競合的アンタゴニスト、受容体上のC5a結合部位を遮断できる抗C5aR1抗体及びC5aR1非競合的アロステリック阻害薬から選ばれる。
【0038】
上記定義に従う多くの異なるC5aR1阻害薬が開発されており、当業者には周知である。
一つの好適な態様に従って、前記C5aR1アンタゴニストは、
- (2R,3S)-2-[4-(シクロペンチルアミノ)フェニル]-1-(2-フルオロ-6-メチルベンゾイル)-N-[4-メチル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]ピペリジン-3-カルボキサミド(Avacopan、Vynpenta(登録商標));
- N-アセチル-L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン-N-5.2-C-1.6-ラクタム(PMX-53);
- アセチル化フェニルアラニン-[オルニチル-プロリン-(D)シクロヘキシルアラニン-トリプトフィル-アルギニン];
- L-アラニル-L-セリル-グリシル-L-アラニル-L-プロリル-L-アラニル-L-プロリル-グリシル-L-プロリル-L-アラニル-グリシル-L-プロリル-L-ロイシル-L-アルギニル-L-プロリル-L-メチオニル-L-フェニルアラニン;
- N,N-ビス(1,3-ベンゾジオキソール-5-イルメチル)-N-(1-ブチル-2,4-ジフェニル-1H-イミダゾール-5-イルメチル)アミン;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-2-イソブチルベンズアミド;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)-1-ベンゾチオフェン-3-カルボキサミド;
- N-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-N-(4-ヒドロキシシクロヘキシル)ナフタレン-1-カルボキサミド;
- 2-(2-エチル-6-メチルフェニル)-4-メトキシ-N-(5-メトキシ-2-メチルフェニル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-5-アミン;
- 2-(2,6-ジエチルフェニル)-N-エチル-4-メトキシ-N-(1-ナフチル)-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-5-アミン;
- N-[2,6-ジオキソヘキサヒドロピリミジン-4(S)-イルカルボニル]-L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-5-メチル-L-ノルロイシル-4-フルオロ-L-フェニルアラニル-L-フェニルアラニンアミド(JPE-1375;JSM-1375);
- N-(3-フェニルプロピオニル)-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン N-5.1-C-1.5-ラクタム(PMX-205);
- N,N’-ビス(4-アミノ-2-メチルキノリン-6-イル)ウレア(NSC12155);
- N-[4-(ジメチルアミノ)ベンジル]-N-(4-イソプロピルフェニル)-7-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-カルボキサミドヒドロクロリド(W54011);
- L-フェニルアラニル-L-オルニチル-L-プロリル-3-シクロヘキシル-D-アラニル-L-トリプトフィル-L-アルギニン N-5.2-C-1.6-サイクリックペプチド;
- (4aR,16aS)-6,18-ジヒドロキシ-23(S)-[2(S)-ヒドロキシ-2-[2(R)-ヒドロキシ-6(R)-メチル-5(R)-[2(S)-メチルブチル]テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル]プロピオンアミド]-22(S)-イソプロピル-7(S),19(R)-ジメチルドコサヒドロ-13H,22H-ジピリダジノ[6,1-f:6’,1’-o][1,4,7,10,13,16]オキサペンタアザシクロノナデシン-5,7,11,17,20,24-ヘキサノン(L-156602)
からなる群から選ばれる。
【0039】
一つの好適な態様に従って、前記抗C5aR1抗体は、
- Avdoralimab(IPH-5401)
- MOR-044254;
- NOX-D20;
- 抗C5aR1ab-C5-SiRNA;
- m20/70 mlgG2a.1;
- 3C5
- 7F3
からなる群から選ばれる。
【0040】
一つの好適な態様に従って、前記非競合的アロステリック阻害薬は、
(2R)-2-[3-(フラン-2-カルボニル)フェニル]-N-[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]プロペンアミド(DF2427);
及び
一般式(I)を有する化合物又はその薬学的に許容可能な塩:
【0041】
【0042】
[式中、
i)Rは、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(Wは直鎖又は分枝C1-C4アルキルである);
- CORa、SORa、SO2Ra、PORa、PO2Ra
から選ばれ、
上記式中、
Raは、
- C1-C5-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C5-アルケニル、非置換フェニル又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ハロ-C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニル;
- ピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール、オキサゾールから選ばれるヘテロアリール基(当該ヘテロアリールは非置換であるか又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ハロ-C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている);
- α又はβカルボキシアルキル残基(直鎖又は分枝C1-C6-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C6-アルケニル、C1-C6-フェニルアルキルからなり、更なるカルボキシ(COOH)基で置換されていてもよい);
- 式(II)のω-アミノアルキルアミノ基:
【0043】
【0044】
{前記式(II)において、
Xは、
- 直鎖又は分枝C1-C6アルキレン、C4-C6アルケニレン、C4-C6アルキニレン(任意に、a)CO2R4基(式中、R4は、水素又は直鎖もしくは分枝C1-C6アルキル基又は直鎖もしくは分枝C2-C6アルケニレン基を表す)によって、又はb)CONHR5基(式中、R5は、水素、直鎖もしくは分枝C2-C6アルキル又はOR4基(R4は上記定義の通り)を表す)によって置換されていてもよい);
- (CH2)m-B-(CH2)n基(上記定義のCO2R4又はCONHR5基で置換されていてもよく、式中、a)Bは、酸素、又は硫黄原子、又は窒素原子(C1-C4アルキル基で置換されていてもよい)であり、mは0又は2~3の整数であり、nは2~3の整数であるか、又はb)Bは、CO、SO又はCONH基であり、mは1~3の整数であり、nは2~3の整数である)
であり;
R2及びR3は、独立に、水素、直鎖又は分枝C1-C6アルキル(酸素又は硫黄原子を間に挟んでいてもよい)、C3-C7シクロアルキル、C3-C6アルケニル、C3-C6-アルキニル、アリール-C1-C3-アルキル、ヒドロキシ-C2-C3-アルキル基であるか;又は
R2及びR3は、それらが結合しているN原子と一緒になって、式(III):
【0045】
【0046】
(上記式中、
Yは、
- 単結合、CH2、O、S、又はN-R6基(ここで、R6は、水素、C1-C4アルキル、C1-C4アシル、非置換フェニル又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニルを表す)、
そしてpは0~3の整数を表し;
- 式SO2R7の残基(ここで、R7は、C1-C6-アルキル、C3-C6-シクロアルキル、C2-C6-アルケニル、アリール及びヘテロアリールである);
を表す)
の3~7員の窒素ヘテロサイクリック環を形成するか;
又は
前記式(II)において、
Xは、それが結合している窒素原子及びR2基と一緒になって、窒素含有3~7員のヘテロサイクリック、モノサイクリック又はポリサイクリック環を形成し、R3は、水素、C1-C4アルキル、C1-C4アシル、非置換フェニル又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノから選ばれる基で置換されている置換フェニルを表す}
から選ばれ;
ii)R1は、直鎖又は分枝C1-C5アルキル、C3-C5シクロアルキルであり;
iii)Arは、
- 非置換フェニル基又はハロゲン、C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ、ヒドロキシ、C1-C4-アシルオキシ、フェノキシ、シアノ、ニトロ、アミノ、C1-C4-アシルアミノ、ハロ-C1-C3-アルキル、ハロ-C1-C3-アルコキシ、ベンゾイル、ヘテロアリールカルボニル、ヘテロアリール、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホネート、直鎖又は分枝C1-C8-アルカンスルホンアミド、直鎖又は分枝C1-C8アルキルスルホニルメチルから独立に選ばれる一つ又は複数の基で置換されている置換フェニル基;又は
- ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドールから選ばれるヘテロアリール環
である]
から選ばれる。
【0047】
上記化合物中、特に好適なのは、
Rが、
- 2-チアゾリル又は2-オキサゾリル(非置換であるか又はメチル、tert-ブチルもしくはトリフルオロメチル基から選ばれる基によって置換されている);
- C(Ra)=N-W(Wは直鎖又は分枝C1-C4アルキルである);
- CORa、SORa又はSO2Ra(式中Raは上記定義の通り)
から選ばれ;そして
Arが、
3’-ベンゾイルフェニル、3’-(4-クロロ-ベンゾイル)-フェニル、3’-(4-メチル-ベンゾイル)-フェニル、3’-アセチル-フェニル、3’-プロピオニル-フェニル、3’-イソブタノイル-フェニル、4’-イソブチル-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルオキシ-フェニル、4’-トリフルオロメタンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル、4’-ベンゼンスルホニルメチル-フェニル、4’-アセトキシフェニル、4’-プロピオニルオキシ-フェニル、4’-ベンゾイルオキシ-フェニル、4’-アセチルアミノ-フェニル、4’-プロピオニルアミノ-フェニル、4’-ベンゾイルアミノ-フェニル、3’-(フラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ベンゾフラン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チオフェン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(ピリジン-2-カルボニル)-フェニル、3’-(チアゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(オキサゾール-2-カルボニル)-フェニル、3’-(2-フリル)-フェニル、3’-(2-オキサゾリル)-フェニル、3’-(3-イソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-ベンゾオキサゾリル)-フェニル、3’-(3-ベンゾイソオキサゾリル)-フェニル、3’-(2-チアゾリル)-フェニル、3’-(2-ピリジル)-フェニル、3’-(2-チオフェニル)-フェニル
から選ばれるか;
又はArが、ピリジン、ピロール、チオフェン、フランもしくはインドールから選ばれるヘテロアリール環である、
前記式(I)の化合物又はその薬学的に許容可能な塩である。
【0048】
本発明による式(I)の好適な化合物は、
- 4-{(1R)-1-[(フェニルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンゼンスルホンアミド;
- 4-{(1R)-1-[(ピリジン-3-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]メタンスルホンアミド;
- N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}チオフェン-2-スルホンアミド;
- N-{(1R)-1-[3-(2-フロイル)フェニル]エチル}メタンスルホンアミド;
- 4-{(1R)-1-[(チエン-2-イルスルホニル)アミノ]エチル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]チオフェン-2-スルホンアミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-3-ピロリジン-1-イルプロパン-1-スルホンアミド;
- メチル 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロエート;
- 5-({[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]アミノ}スルホニル)-2-フロ酸;
- 4-{(1R)-2-メチル-1-[(メチルスルホニル)アミノ]プロピル}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-((1R)-1-{4-[1-メチル-1-(フェニルスルホニル)エチル]フェニル}エチル)メタンスルホンアミド;
- 4-[(1R)-1-(イソブチリルアミノ)エチル]フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- 4-{[(1R)-1-(ピリジン-3-イルカルボニル)アミノ]エチル]}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]ベンズアミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]-2-フラミド;
- N-[(1R)-1-(3-ベンゾイルフェニル)エチル]シクロブタンカルボキサミド;
- N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イル ブタンアミド(DF2593Y);
- 4-{(1R)-1-[(4-ピロリジン-1-イルブタノイル)アミノ]エチル]}フェニル トリフルオロメタンスルホネート;
- 3-{(1R)-1-[4-(4-トリフルオロメチル-1,3-チアゾール-2-イル)アミノ]エチル}フェニル)(フェニル)メタノン;
- R(-)-2-[(4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-[3-(N’-ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド(DF2297X)又はその塩化物塩(DF2297A);及び
- 5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]テトラゾール-2-イド(DF3966Y)又はそのナトリウム塩(DF3966A)
から選ばれる。
【0049】
本発明による式(I)の特に好適な化合物は、N-[(1R)-1-(4-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニルエチル]-4-ピペリジン-1-イル ブタンアミド(DF2593Y)及びその薬学的に許容可能な塩、特にその塩化物塩(DF2593A)、R(-)-2-[(4’-トリフルオロメタンスルホニルオキシ)フェニル]-N-[3-(N’-ピロリジニル)プロピル]プロピオンアミド(DF2297X)又はその塩化物塩(DF2297A)、及び5-[(1R)-1-(4-{[4-(トリフルオロメチル)-1,3-チアゾール-2-イル]アミノ}フェニル)エチル]テトラゾール-2-イド(DF3966Y)又はそのナトリウム塩(DF3966A)から選ばれる。
【0050】
式(I)の化合物は、WO2007/060215に開示されており、それにはそれらの合成法、それらのC5aR阻害薬としての活性、ならびにC5a経路の活性化に依存する疾患の治療におけるそれらの使用も開示されている。
【0051】
本発明による好適なC5aR1阻害薬は、Avacopan、PMX-53、W54011、Avdoralimab、MOR-044254、PMX-205、DF2593A、DF2297A、DF2427及びDF3966Aである。
【0052】
本発明のC5aR1アンタゴニスト又はアロステリック阻害薬は、薬学的に許容可能な有機又は無機の酸又は塩基と安定な薬学的に許容可能な塩を形成でき、そのような場合、C5aR1阻害薬化合物は塩として投与するのが適切でありうる。
【0053】
酸付加塩の例は、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、炭酸水素塩、硫酸水素塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2-ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸塩、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩(p-トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、及びウンデカン酸塩などである。
【0054】
塩基付加塩の例は、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、アルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩;有機塩基との塩、例えば、ジシクロヘキシルアミン塩及びN-メチル-D-グルカミン;及びアミノ酸、例えば、アルギニン、リシン、オルニチンなどとの塩などである。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルハロゲン化物;ジアルキル硫酸塩、例えば、ジメチル、ジエチル、ジブチル、ジアミル硫酸塩;長鎖ハロゲン化物、例えば、デシル、ラウリル、ミリスチル及びステアリルハロゲン化物;アリールアルキルハロゲン化物、例えば臭化ベンジル及びその他などの薬剤で四級化されていてもよい。非毒性の生理学的に許容可能な塩が好適である。
【0055】
塩は従来手段によって形成できる。例えば、遊離形の生成物を1当量又は複数当量の適切な酸又は塩基と、塩が不溶の溶媒又は媒体中(例えば水又はエタノール)で反応させ、これを真空下又は凍結乾燥によって除去するなどの手段である。
【0056】
本発明はまた、上記C5aR1阻害薬のプロドラッグ、立体異性体、同位体標識、例えばジュウテリウム化された誘導体及びエナンチオマーも含む。
本明細書中で使用されている用語“プロドラッグ”は、何らかの生理学的過程によってインビボで親化合物に変換される薬剤を指す(例えば、プロドラッグが生理的pHにさらされると所望の薬物形に変換される)。プロドラッグは、一部の状況において、親薬物よりも容易に投与できるため、有用なことが多い。例えば、それらは経口投与によって生体利用可能(バイオアベイラブル)になるが、親薬物はそうではない。また、プロドラッグは、薬理学的組成物中で親薬物よりも改良された溶解性も有しうる。
【0057】
プロドラッグは多くの有用な特性を有する。例えば、プロドラッグは、最終薬物よりも水に溶けやすいので、薬物の静脈内投与が容易になる。また、プロドラッグは最終薬物より高いレベルの経口バイオアベイラビリティも有しうる。投与後、プロドラッグは、酵素的又は化学的に切断されて血液又は組織中に最終薬物を送達する。
【0058】
本明細書中に開示されている化合物のエステルプロドラッグが特に検討されている。例えば、プロドラッグは、水溶性であることが不利な細胞膜の通過を促進するためにエステルの形態(“プロドラッグ”)で投与されるが、水溶性が有利な細胞内に入ると代謝的に加水分解されるような本発明の化合物であろう。
【0059】
限定するつもりはないが、エステルは、アルキルエステル、アリールエステル、又はヘテロアリールエステルでありうる。用語アルキルは当業者が一般的に理解している意味を有し、直鎖、分枝、又は環状アルキル部分を指す。C1-6アルキルエステルは特に有用であり、エステルのアルキル部分は1~6個の炭素原子を有し、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、ペンチル異性体、ヘキシル異性体、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びそれらの組合せなどであるが、これらに限定されない。
【0060】
一定の化合物は互変異性体形で存在でき、本発明は、別段の定めがない限り、それらの化合物のすべてのそのような互変異性体形も包含する。
特に明記されない限り、本明細書中に描かれている構造は、その構造のすべての立体化学形、すなわち各不斉中心についてR及びL配置も含むものとする。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体のほか、エナンチオマー混合物及びジアステレオマー混合物も本発明の範囲に含まれる。従って、本発明は、実質的に他方の異性体を含まない(モルベースで他方の立体異性体を>90%、好ましくは>95%含まない)各ジアステレオマー又はエナンチオマーのほか、任意の比率のそのような異性体の混合物も包含する。
【0061】
光学異性体は、従来法に従ってラセミ混合物を分割することによって、例えば。ジアステレオマー塩の形成によって、光学的に活性な酸又は塩基で処理することによって、又は酵素的に得ることができる。適切な酸の例は、酒石酸、ジアセチル酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、及び樟脳スルホン酸で、次いでジアステレオマーの混合物を結晶化によって分離した後、光学的に活性な塩基をこれらの塩から遊離させる。光学異性体の別の分離法は、エナンチオマーの分離を最大限にするために最適に選択されたキラルクロマトグラフィーカラムの使用を含む。さらに別の方法は、本発明の化合物を光学的に純粋な活性化形の酸又は光学的に純粋なイソシアネートと反応させることによって共有結合ジアステレオマーを合成することを含む。合成されたジアステレオマーは、クロマトグラフィー、蒸留、結晶化又は昇華などの従来手段によって分離した後、加水分解してエナンチオマー的に純粋な化合物にすることができる。本発明の光学活性化合物は、活性出発物質を用いて得ることもできる。これらの異性体は、遊離酸、遊離塩基、エステル又は塩の形態でありうる。
【0062】
本発明のC5aR1阻害薬は、任意の多形を含むアモルファス形又は結晶形でありうる。
典型的には、本発明に従って使用するためのC5aR1阻害薬は医薬組成物の形態で投与される。
【0063】
従って、本発明の第二の側面は、上記のように個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療に使用するための、C5aR1阻害薬(前に定義の通り)と少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む医薬組成物に関する。
【0064】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、有効量のC5aR1阻害薬、その薬学的に許容可能な塩又はそのプロドラッグと、少なくとも一つの薬学的に許容可能な賦形剤とを含む適切な剤形に製造される。
【0065】
本発明の医薬組成物の患者への投与は公知法に準拠し、経口投与、非経口投与、好ましくは静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、皮下投与、局所投与、口腔投与、又は直腸(坐剤)投与から選ばれる非経口投与を含みうる。
【0066】
本説明と以下の特許請求の範囲において、“有効量”という表現は、所望の臨床応答を有意に達成するのに足る薬物化合物の投与量を意味する。
本発明に従って特定の患者のために使用するためのC5aR1阻害薬の投与量及び治療計画はいくつかの要因に応じて変動する。それらの要因は当業者の知識及び専門知識の範囲内であり、例えば、使用される特定の阻害薬の阻害濃度(IC50)及び半減期、使用される製剤及び投与経路、患者の年齢、体重、全般的健康状態、性別、ならびに食事などである。
【0067】
本明細書中に記載のように、本発明の医薬組成物は、C5aR1阻害薬とともに薬学的に許容可能な賦形剤とを含む。その賦形剤は、本明細書においては、所望の特定の剤形に適切な、任意の及びすべての溶媒、希釈剤又はその他のビヒクル、分散又は懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、保存剤、固体バインダ、滑沢剤などを含む。
【0068】
薬学的に許容可能な賦形剤として機能できる物質のいくつかの例は、ラクトース、グルコース及びスクロースなどの糖;コーンスターチ及びジャガイモデンプンなどのデンプン;ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び坐剤用ワックスなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー(発熱物質を含まない)水;等張生理食塩水;滅菌水;リンゲル液;緩衝生理食塩水;デキストロース溶液;マルトデキストリン溶液;エチルアルコール;及びリン酸緩衝液などであるが、これらに限定されない。
【0069】
さらに、本発明の組成物は、希釈剤、分散剤、及び界面活性剤をさらに添加することにより、溶液、懸濁液、及びエマルションなどの吸入用又は注射用剤形に製剤化することもできる。
【0070】
さらに、本発明の組成物は、当該技術分野で公知の適切な方法を用いて、又はRemington’s Pharmaceutical Science(最新版),Mack Publishing Company(ペンシルベニア州イーストン)に開示されている方法によって適切に製剤化できる。
【0071】
“薬学的に許容可能”及び“生理学的に許容可能”という用語は、制限なしに、生物に投与される医薬組成物を製造するのに適切な、薬物でない任意の材料を定義するものとする。
【0072】
剤形は、その他の従来成分、例えば、保存剤、安定剤、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、フレーバー剤なども含有できる。
本発明の医薬組成物の剤形は、製薬化学者によく知られた、混合、造粒、圧縮、溶解、滅菌などの技術によって製造できる。
【0073】
更なる側面において、本発明は、個人におけるタキサンに対する過敏性反応(HSR)の予防又は治療法にも関し、該方法は、上記のC5aR1阻害薬を前記個人に投与する手順を含む。
【0074】
好ましくは、本発明による方法において、前記C5aR1は上記定義のような医薬組成物の形態で投与される。
本発明を以下の実施例でさらに説明する。これは特許請求の範囲で定義されている本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0075】
実験の部
実施例1~3
BIAcore技術を用いて、パクリタキセルと補体成分5a受容体1(C5aR1)(実施例1)、補体成分5a受容体2(C5AR2)(実施例2)又は補体成分5a(実施例3)との間の相互作用を解析した。
【0076】
BIAcoreシステムは、表面プラズモン共鳴(SPR)の現象を利用して、分子間の相互作用をリアルタイムでモニターする。簡潔に説明すると、SPR現象は、異なる屈折率の媒体間の界面の導電性薄膜で発生する。BIAcoreシステムでは、媒体はセンサーチップのガラスとサンプル溶液であり、導電性膜はセンサーチップ表面上の金の薄層である。BIAcoreは、二つの分子、一つはセンサー表面に結合されたリガンドと呼ばれる分子と、もう一つは溶液中に遊離しているアナライトと呼ばれる分子との間の相互作用をモニターする。
【0077】
実施例1
パクリタキセルのC5aR1への結合
a)センサーチップCM5上へのC5aR1の固定
抗c-Myc抗体(9E10、sc-40、Santa Cruz Technology)をセンサーチップCM5(#29149604、Cytiva)上に固定化した。詳しくは、該抗体を、pH4.5の10mM酢酸緩衝液中に50μg/mlの濃度で希釈し、センサーチップの表面全体に注入した。詳しくは、センサーチップ表面上のデキストランマトリックスをまず1-エチル-3-カルボジイミド(EDC)とN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)の混合物で活性化して反応性スクシンイミドエステルにした。次に、抗Myc抗体を表面に流すと、エステルは非荷電アミノ基と自然に反応し、リガンドがデキストランに共有結合された。その後、表面をエタノールアミン-HClによって不活化させた。
【0078】
アミンカップリング化学による抗c-Myc抗体の共有結合固定は、表面へのリガンドの2782レゾナンスユニット(RU)と測定される安定な結合をもたらした。ひとたび抗体が固定化されれば受容体はセンサーチップ表面上に捕捉(キャプチャー)された。この手順により、目的リガンドの配向的な(方向性のある)固定化が可能になった。具体的には、ランニングバッファー(0.01%のCHS、0.1%のCHAPS、及び0.33mMの脂質を含有する50mMのHEPES緩衝液、pH7.0)中20μg/mlの濃度のC5AR1-cMyc(TP303784、OriGene)を、上記のように調製されたセンサーチップ上に流速5μl/分で注入した。
【0079】
図1に示されているように、この方法により、表面へのC5aR1-cMycの77RUという安定な結合が得られている。
b)固定化されたC5aR1へのC5aの結合
受容体が正しい立体配座状態で固定化されていることを実証するために、該受容体の天然リガンドであるC5aの結合を分析した。詳しくは、ランニングバッファー中5μMのC5a(A144、Complement Technologies)を、実施例1a)で調製されたセンサーチップのC5aR1表面に注入した。
【0080】
図2に示されているように、C5aはC5aR1受容体に結合でき、配向的に固定化された受容体の正しい立体配座状態が確認された。
c)固定化されたC5aR1へのパクリタキセルの結合
パクリタキセルとC5aR1の直接結合を最初に評価するために、この化合物(パクリタキセル)を実施例1a)で調製されたセンサーチップのC5aR1表面に、ランニングバッファー中300μMの濃度で注入した。
【0081】
図3に示されているように、パクリタキセルは試験された濃度で受容体に300RUで結合している。
相互作用のアフィニティー値を決定するために、パクリタキセルをランニングバッファー中に様々な濃度(4.06~37.5μM)で希釈してセンサーチップ上に4分間注入し、パクリタキセルを含まないランニングバッファーを流して5分間解離させた。このようにして、速度定数を時間の関数として評価した。
【0082】
図4に示されているように、パクリタキセルの受容体への結合は用量依存性で、Kd値は670nMである。
また、平衡時のパクリタキセル/Myc-C5aR1相互作用のアフィニティー値を、平衡時のRU値のScatchard解析により、定常状態の結合レベルを測定することによって決定した。BIAcoreは、
図5に示されているように、溶液中のアナライト濃度の関数として525nMのアフィニティー定数を提供した。
【0083】
実施例2
パクリタキセルのC5aR2への結合
a)センサーチップCM5上へのC5aR2の固定
ポリクローナル抗His抗体(ab137839、Abcam)をセンサーチップCM5(#29149604、Cytiva)上に固定化した。詳しくは、該抗体を、pH4.0の10mM酢酸緩衝液中に50μg/mlの濃度で希釈し、センサーチップの表面全体に注入した。センサーチップの活性化及び不活化は実施例1a)に記載のように実施した。
【0084】
アミンカップリング化学による抗His抗体の共有結合固定は、表面へのリガンドの2510RUの安定な結合をもたらした。ひとたび抗体が固定化されれば受容体がセンサーチップ表面上に配向的に捕捉された。具体的には、100μg/mlの濃度のC5AR2-His(CSB-CF868390HU、CUSABIO)をランニングバッファー中5マイクロリットル/分の流速でセンサーチップ上に注入した。
【0085】
図6に示されているように、この方法により、表面へのC5aR2の569RUという安定な結合が得られている。
b)固定化されたC5aR2へのC5aの結合
ここでも、受容体が正しい立体配座状態で固定化されていることを実証するために、受容体の天然リガンドであるC5aの結合を分析した。5μMのC5a(A144、Complement Technologies)を、実施例2a)で調製されたセンサーチップのC5AR2表面に注入した。
【0086】
図7に示されているように、C5aはセンサーチップ上に固定化されたC5aR2受容体に結合でき、C5aR2が正しい立体配座で固定化されていることが確認された。
c)固定化されたC5aR2へのパクリタキセルの結合
実施例2a)で調製されたセンサーチップのC5aR2表面に、パクリタキセルをランニングバッファー中様々な濃度(10、100及び200マイクロM)で注入し、得られたRUの量を評価した。
【0087】
図8に示されているように、パクリタキセルは試験されたどの濃度でもC5aR2に結合できなかった。
実施例3
パクリタキセルのC5aへの結合
a)センサーチップCM5上へのC5aの固定
C5aをセンサーチップ(#29149604、Cytiva)上に固定化した。詳しくは、20マイクロg/mlの組換えタンパク質C5aをpH4.5の10mM酢酸緩衝液中に希釈し、センサーチップの表面全体に注入した。センサーチップの活性化及び不活化は実施例1a)に記載のように実施した。
【0088】
アミンカップリング化学によるC5aの共有結合固定は、表面へのC5aの1330RUの安定な結合をもたらした。
b)固定化されたC5aへのパクリタキセルの結合
実施例2a)で調製されたセンサーチップのC5A表面に、パクリタキセルをランニングバッファー中300マイクロMの濃度で注入した。RUはBIAcoreによって検出できる。
【0089】
図9に示されているように、RUはBIAcoreによって検出できず、パクリタキセルは試験された高濃度でC5aに結合できないことを示している。
実施例4
RAW264.7(ATTC TIB-71)マウスマクロファージを製造業者の説明書に従い、10%FBS(非加熱不活性化)(ATCC、米国)を補給したDMEM培地(Euroclone、イタリア・ミラノ県)を用い、加湿95%空気-5%CO
2雰囲気下37℃で培養した後、1*104細胞/cm
2で播種した。
【0090】
24時間後、細胞を、C5a阻害薬DF3966A(10μM)、及び抗C5aR Ab(BioLegend、米国カリフォルニア州;50nM)又はAvacopan(10μM)の不在下及び存在下で、C5a(培地中に希釈)(10nM、R&D、米国)、パクリタキセル(培地中に希釈)(10nM、Sigma、米国)で24時間処理し、次いで培地を培養培地(5ml)と24時間交換し、その後回収した。
【0091】
馴化培地を遠心分離して粒子状物質を除去し、直ちにアッセイした。サンプル量は示唆通りに調整した(500μl)。試薬は製造業者のプロトコル(R&D、米国)に従って調製した。簡潔に説明すると、メンブレンをロッキングプラットフォームシェーカー上でアレイバッファー6と1時間インキュベートした。サンプルは、二つの別の試験管に1mlまでのアレイバッファー4を加えることによって調製し、次いで15マイクロリットルの再構成マウスサイトカイン検出抗体カクテル(>40マウスサイトカイン)を各調製サンプルに加え、1時間インキュベートした。次に、アレイバッファー6を吸引し、サンプル/抗体混合物と交換して4℃で一晩インキュベートした。翌日、メンブレンを3回洗浄し、ストレプトアビジン-HRP(1:2000)をロッキングプラットフォームシェーカー上室温で30分間インキュベートした。メンブレンを再度洗浄し、1mlの調製済みChemi Reagentミックスを各メンブレン上に散布した。複数の露光時間がUVITECデジタルアナライザー(Alliance、英国ケンブリッジ)を用いて取得された。
【0092】
現像されたメンブレンに見られる陽性シグナルは、透明オーバーレイテンプレートをアレイ画像に載せ、各アレイの3隅の参照スポットのペアと位置合わせすることによって同定できる(
図10参照)。参照スポットは、アッセイ手順中にアレイをストレプトアビジン-HRPとインキュベートしたことを示すために含まれている。ピクセル密度(各サイトカインを表す二重のペアの平均シグナル)をImageJによって分析し、平均バックグラウンドを各スポットから差し引いた。
【0093】
図11に、パクリタキセル(PAC)又はC5aで24時間処理したRAW264.7から放出されたサイトカインのプロテオームプロファイリングを示す。それによると、パクリタキセルではなくC5aによって刺激された場合にRAW264.7細胞によってのみ放出されるC5a以外、分析されたすべてのサイトカインがオーバーラップしている。さらに、C5a及びパクリタキセルによるサイトカイン放出の誘導は、DF3966A、C5aR Ab、及びAvacopanによって阻害され、この二つの分子によるC5aR1受容体の活性化にオーバーラップが確認される。
【0094】
実施例5
DRGニューロンの代替モデルとして選択されたF11ハイブリドーマ細胞(ECACC 08062601)を、10%FBS(Sigma-Aldrich、コロラド州セントルイス、米国)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Euroclone)及び1%グルタミン(Euroclone)を補給したDMEM培地(Euroclone、イタリア・ミラノ県)中、加湿95%空気-5%CO2雰囲気下37℃で培養した。実験では18継代の細胞を使用し、1x104細胞/cm2で播種した。
【0095】
24時間後、細胞をラットNGF(rNGF)(Sigma)で分化させた。rNGFを、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び1%グルタミン入り(FBS含まず)DMEM中に最終濃度50ng/mlで溶解した。培地は完全分化まで3日毎に交換した。完全分化は7日後に起こった。
【0096】
ニューロン分化後、ニューロンをパクリタキセル(Sigma-Aldrich;最終濃度10nM)又はC5a(R&D Systems,Inc.米国ミネソタ州、最終濃度50nM)で20時間処理した。
【0097】
RT-PCR
遺伝子発現分析のために下記プロトコルを使用した。全RNAを製造業者の説明書に従ってTrizol試薬によって抽出した。全RNA濃度をRNAアーゼを含まない水中で分光光度法で決定し、全RNAの1μgのアリコートをProtoScript First Strand cDNA合成キット(NEB)を用いてcDNAに逆転写した。RT-PCRは、ABI 7300HT配列決定システム(ABI)(EagleTaq Universal Master Mix(Roque)、DEPC水、4マイクロリットルのcDNAを含有する総容量20ml中で)、及び以下のIL-8 Mm04207460m1(Applied Biosystem、米国)用Prime Time qPCR Assayにて実施された。標的遺伝子の発現を標準化するために、参照遺伝子GADPH ID Mm04207460g1(Applied Biosystem、米国)を内部対照(内在性コントロール)として使用した。RT-PCRのプロトコルは次の通りであった。95℃で3分間の予熱工程、95℃で10秒間及び60℃で30秒間を40サイクル、そして65℃で10秒間の最終工程。相対発現レベルは、以前の報告[Livakら,2001 DOI:10.1006/meth.2001.1262]にあるように、各サンプルについて、参照遺伝子に対して標準化後、相対発現比(relative fold expression differences)を比較するためのΔΔCt法を用いて計算した。
図12に、10nMのパクリタキセル(PAC)又は50nMのC5aで20時間処理したF11細胞におけるIL-8の相対mRNA発現のリアルタイムPCR分析の結果を示す。マクロファージで得られた結果と一致して、どちらの処理も分化したF11のIL-8発現レベルを増大する。C5aはIL-8発現レベルを増大させ、パクリタキセルの正確な分子機構を共有している。
【0098】
これらの実施例で得られた結果は、パクリタキセルがC5aR1に結合でき、RAW264マウスマクロファージで同じC5aのシグナル伝達経路を活性化し、そしてF11細胞で同じC5aの分子機構を共有していることを示している。
【0099】
実施例6
C5aR1の阻害は、マクロファージにおいてパクリタキセル又はC5aが誘導するサイトカイン放出を妨げる
マウス(RAW264.7)及びヒト(THP-1)のマクロファージを用いて、C5aR1がパクリタキセル誘発性HSRを媒介することが示された。詳しくは、パクリタキセル(Sigma-Aldrich;10nM)又はC5a(R&D Systems,Inc.米国ミネソタ州;10nM)で24時間処理(challenge)されたRAW264.7及びヒトのマクロファージから放出されたサイトカイン(>40サイトカイン)をプロテオームプロファイラーアッセイを用いてプロファイリングした。両方の処理で、マウスとヒトのプロテオームプロファイルは典型的なアナフィラキシーのそれと類似し、C5a刺激細胞によってのみ放出されるC5aを除き、分析されたすべてのサイトカインがオーバーラップしていた(
図13及び15)。実験的アッセイは実施例4に説明されている。
【0100】
ヒトマクロファージについては、ヒトXL Cytokine Arrayキット#Ary022Bを使用し、マウスマクロファージについては、マウスサイトカインArray Panel A #Ary006を使用した(R&D systems、米国)。
【0101】
パクリタキセル及びC5aで処理されたRAW264.7では、単球走化性タンパク質-1(MCP-1)のレベルが対照群と比べて著しく増加していた。マクロファージ炎症性タンパク質(MIP)-1α及びMIP-1βならびにMIP-2及びIL1Raのレベルも同様であった(
図13A~B)。
【0102】
これらのサイトカインの放出は、Avacopan(Selleckchem、米国)によって、抗C5aR1抗体(BioLegend、米国カリフォルニア州)によって又はDF3966Aによって媒介されるC5aR1の阻害によって妨げられた(
図13A~B)。ヒトマクロファージについての分析で、C5aで放出されたサイトカインのプロファイルとしてマウスマクロファージで得られたデータは、パクリタキセル刺激で得られたデータとオーバーラップすること、そしてまた、これらの実験条件下でAvacopan(Selleckchem、米国)、抗C5aR1抗体(BioLegend、米国カリフォルニア州)又はDF3966Aは、C5a及びパクリタキセルが誘導するサイトカイン放出を効果的に妨害したことが確認された(
図15A~B)。
【0103】
実施例7
そこで、Balb/cマウスを4群に分け、Cremophor EL中パクリタキセル(20mg/kg及び0.1mL/Kg、iv)、DMSO/PEG/TWEEN中パクリタキセル(20mg/kg及び0.1mL/Kg、iv)、Cremophor ELのみ(0.1mL/Kg、iv)又はDMSO/PEG/TWEENのみ(0.1mL/Kg、iv)で処置した。Cremophor EL中又はDMSO/PEG/TWEEN中のパクリタキセルで処置されたマウスは、両ビヒクルのみで処置されたマウスと比べて、より大きい血管漏出(過透過性)及び血漿浸出を示すより重篤な急性HSRを起こし(
図17A及びB)、HSRの誘発にパクリタキセル自体が重要な役割を演じていることが確認された。
【0104】
実施例8
C5aR1の阻害はインビボでパクリタキセル誘発性HSRを防止する
パクリタキセルが化学療法治療によって誘発されるHSRに特有なサイトカイン放出に関与する主要因子であると確認されたので、予防治療としてのC5aR1の阻害の効果の可能性について調査した。
【0105】
パクリタキセル(Selleckchem、米国、cod.S1150)をCremophor EL(ポリオキシル35ヒマシ油、Sigma-Aldrich、cod.238470)中に溶解し、20mg/kg(0.1mL/Kg)で静脈内投与した。DF3966A(30mg/kg、os)又はDF3966Aのビヒクル(生理食塩水)(それぞれ、Crem中PAC+DF及びCremophor中PAC+Veh DF)をパクリタキセルの3時間前に投与した。一方、Avacopanに使用されるビヒクル(PEG-400/ソルトール-HS15 70:30、5mL/kg50)(Cremophor中PAC+Veh AVA)又はAvacopan(30mg/kg、os)(Crem中PAC+AVA)は、それらの薬物動態プロファイルに従ってパクリタキセルの1時間前に投与した。Cremophor単独(Cremophor)を対照として使用した。
【0106】
a)血管漏出の評価
パクリタキセル注射が誘発したHSRの皮膚症状を評価するために、Evans Blue(EB、0.8%/0.3mL/iv)を用いて耳を青色に視覚化し、耳における血管漏出の程度を定量した。パクリタキセルの投与30分後、マウスにEBを投与した。耳の着色の程度を0~5のスコアで評価した。“0”は目に見える青色領域がなかったことを表し、“1~5”は目に見える青色領域の割合を示す。
【0107】
b)血漿浸出
パクリタキセル投与の約40分後、動物を屠殺し、耳を切除して細かく刻み、2mLのホルムアルデヒド中に室温で一晩保存した。翌日、耳を遠心分離し、上清を取り出して分光光度計(620nm O.D.)によって分析した。
【0108】
c)ELISAアッセイ
心臓内注射を実施して試験管に血液を採取し、室温で静置した。30分後、遠心分離(2000×gで10分間、4℃)によって血液細胞から血清を分離した。アリコートを調製し、-20℃で保存した。ELISAキットを用いて下記マーカー:ヒスタミン及びSC5b-9を評価した(Mybiosource、米国サンジエゴ、カタログ番号:MBS9361379、MBS725193)。
【0109】
d)結果
両方の処置によってC5aR1を薬理学的に阻害すると、HSRの発症が効果的に阻止され、パクリタキセル誘発性の血管漏出及び血漿浸出の増加が消失した(それぞれ
図18A及びB)。さらに、DF3966A又はAvacopanによる前処置は、パクリタキセル処置マウスにおけるヒスタミン及び補体5b-9(SC5b-9)両方の血清濃度の増加を著しく低下させ(それぞれ
図18C及びD)、C5aR1の阻害がパクリタキセル誘発性HSRの予防にとって効果的な薬理学的対策であることが示された。
【国際調査報告】