(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】高効率プラズマ生成システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H05H 1/08 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H05H1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023556999
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(85)【翻訳文提出日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 IL2021051541
(87)【国際公開番号】W WO2022201140
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523350486
【氏名又は名称】エヌ.ティー.タオ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ワインフィールド,ドロン
(72)【発明者】
【氏名】ワインフィールド,ボアズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴウア ラヴィ,オデッド
【テーマコード(参考)】
2G084
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA11
2G084AA21
2G084BB02
2G084CC08
2G084CC33
2G084DD18
2G084FF26
2G084FF27
2G084FF29
(57)【要約】
プラズマの加熱に寄与する1つまたは複数のエスカレーションステージを介してチャンバ中心軸に向かって電荷の移動をエスカレートさせることと、チャンバ中心軸へのプラズマの集中化と、内部でプラズマの回転を起こすことと、を特徴とするチャンバ断面マルチステージプラズマ配置。プラズマがその軸を中心に回転すると、自己生成磁場が誘導され、その結果、プラズマの安定性と閉じ込めが強化される。マルチステージ配置の該ステージの一部は物理的要素及び構成要素によって作成され得るが、他のステージは、外部から磁場及び/もしくは電場またはそれらの組み合わせを印加することによって、ならびに/または電子、イオンもしくは他のプラズマの注入によって、誘導または生成され得る。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定したプラズマの取得及び閉じ込め方法であって、
外部及び内部の発生または誘導された磁場及び電場が、円筒形チャンバ内の軸方向のアノードステージ間の実質的に軸を横切るイオンの移動を加速し、チャンバの中心軸に向かう電荷移動のエスカレーションが、チャンバ内の前記イオンの加熱とチャンバ内のプラズマの生成及び回転に実質的に寄与し、自己生成された局所磁場をもたらし、前記プラズマの安定性及び閉じ込めを強化する、
前記安定したプラズマの取得及び閉じ込め方法。
【請求項2】
加熱が断熱圧縮によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a.円筒形チャンバ内に実質的に減圧された内部圧力を生成するステップと、
b.円筒形チャンバのかなりの領域を封入する円筒形磁石を用いてチャンバ内に半径方向の電場を生成するステップと、
c.円筒形チャンバの遠位端に軸方向に配置された電極によって、前記円筒形チャンバの遠位端にイオン雲を生成するステップと、
d.軸方向の磁場と前記半径方向の電場とをポインティングベクトル(E×B)に結合するステップと、
を含み、
チャンバ内のチャンバ壁から中心軸までの半径方向のイオン加速が影響を受け、イオン衝突がチャンバ軸で促進される、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
円筒形チャンバ内のイオン密度が、チャンバ壁の近位にガスを挿入することによって高められる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
電荷移動のエスカレーションが、チャンバ軸に沿って実質的に半径方向に配置された1つまたは複数のエスカレーションステージによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
エスカレーションステージが内部エスカレーションステージによって取得可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
内部エスカレーションステージが、チャンバ壁の近くに配置されたアノード要素である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
1つまたは複数の内部エスカレーションステージが、主反応ステージの近位のチャンバ軸に沿って配置されたアノード機構を有する導電性装置である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
導電性装置が、実質的に15%未満のメッシュ密度、典型的には5%未満のメッシュ密度を有する金属メッシュグリッドシリンダである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
メッシュシリンダがスプリングコイル形状である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
メッシュシリンダがケージコイル形状である、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
メッシュシリンダが溝彫りコイル形状である、請求項9に記載のシステム。
【請求項13】
前記導電性装置が、ステンレス鋼、タングステン、またはモリブデンなどの高温耐性材料で作られている、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
内部エスカレーションステージが、外側イオン化ステージと主反応ステージとの間の軸方向プラズマ境界領域において非固体ガス組成物である、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
プラズマの安定性が、イオン化プロセスにおいてカソードとして機能するチャンバの端部の電極によって強化される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
エスカレーションステージが外部エスカレーションステージによって取得可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
外部エスカレーションステージが、予熱電源からの外部電場源である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
外部電場源が2~20KVの範囲にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
主反応ステージにおける内部電場が10~100KVの範囲にある、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
外部エスカレーションステージが、コンデンサバンクに結合されたコイルまたはソレノイドなどの外部磁場源である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
外部磁場が0.1~2テスラ、典型的には0.1~0.5テスラである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
外部エスカレーションステージが実質的に長い電流パルスによって印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記パルスの期間が、典型的には0.1~10ミリ秒の範囲内である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プラズマの安定性及び閉じ込めが、前記方法の動作中にチャンバへのガス注入を制御することによって改善される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ガスが、コントローラによって制御される比例弁に接続されたシリンダ壁ガス入口を通して注入され、チャンバボリューム内のガス及びイオン密度分配に影響を与える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記チャンバ軸における電場電位が、円筒形チャンバの遠位端に配置された少なくとも1つの電極によって影響を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記チャンバ軸における電場電位が、円筒形チャンバの遠位端に配置された少なくとも1つの電子放出源によって影響を受ける、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記電極または電子放出源が、チャンバボリュームにさらされる異なる大きさスケールのいくつかのフェーズを含む、変化する勾配または徐々に変化する半径または変化する平面設計を有する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記電極が少なくとも2つのフェーズを有し、少なくとも1つのフェーズが前記電極の他のフェーズと比較して直径がかなり大きい、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記電極フェーズのいくつかを通じて電流が駆動され、他のフェーズは静電的に帯電される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記電極が、前記フェーズの少なくとも3つの主要な領域である、比較的大きい大きさのフェーズと、先端に向かって先細になる中間セクションフェーズと、先端セクションフェーズとによって特徴付けられる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
加熱が、前記電極または電子放出源に直接誘導される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項33】
加熱が、前記電極に直接設置された加熱素子に直接誘導される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも1つの前記電極または電子放出源の先端に集中した熱が、前記電場による縦方向の力に影響を及ぼし、前記チャンバの中央に向かう前記磁場によって保持される熱イオン放出プロセスにおいて電子の放出を引き起こし、仮想カソードステージが得られ、維持される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項35】
前記チャンバ内のマルチステージカスケード配置と前記電極との組み合わせが、円筒形チャンバの遠位端におけるイオンミラーリング効果に影響を与える、請求項26または27に記載の方法。
【請求項36】
チャンバ内での前記ミラーリングが、チャンバの端部でのイオンの漏れを実質的に減少させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記安定した閉じ込めプラズマが、中性子、紫外線、極端紫外線またはエネルギー源として収集される、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
前記安定した閉じ込めプラズマがエッチングプロセスにおいて使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
前記安定した閉じ込めプラズマが収集可能な高密度高温プラズマである、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
安定したプラズマの取得及び閉じ込めシステムであって、
a.実質的に減圧された内部圧力、典型的には10
-3~10
-7トールを有する円筒形チャンバと、
b.前記円筒形チャンバ内の内部エスカレーションステージと、
c.円筒形チャンバの作動領域を封入する磁石と、
d.チャンバボリューム内に放電可能なコンデンサバンクと、
e.前記チャンバボリュームに結合された予熱電源と、
f.チャンバにガスを挿入するための手段と結合された作動ガス源と、
g.オペレーティングシステム構成要素に接続された制御ユニットと、
を含み、
チャンバ中心軸に向かう電荷移動のエスカレーションは、チャンバ内の前記イオン加熱及びチャンバ内のプラズマの回転に実質的に寄与し、自己生成された局所磁場をもたらし、前記プラズマの安定性及び閉じ込めを強化する、
前記安定したプラズマの取得及び閉じ込めシステム。
【請求項41】
円筒形チャンバ壁の近くに内部アノード要素を備える、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記円筒形チャンバ内の前記内部エスカレーションステージが物質または仮想ボリュームによって画定される、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
円筒形チャンバの前記磁石封入作動領域がソレノイドである、請求項40に記載のシステム。
【請求項44】
ガスをチャンバ内に挿入するための前記挿入手段がチャンバ壁の近位にある、請求項40に記載のシステム。
【請求項45】
チャンバ壁がある程度の導電性を有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項46】
チャンバ壁がある程度の不透過性を有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項47】
チャンバ壁がある程度の磁性を有する、請求項40に記載のシステム。
【請求項48】
内部アノード要素が円筒形チャンバ壁の近くにある、請求項40に記載のシステム。
【請求項49】
電極が、負の高電圧負荷に接続された前記円筒形チャンバの遠位端に同軸に配置されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項50】
前記電極が、ステンレス鋼、タングステンまたはモリブデンなどの耐高温材料で作られている、請求項49に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な種類の生成物を収集するための比較的小型の線形で安定したプラズマ閉じ込めシステム及び方法、及びそのような現象から得られる効果に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは、ほぼ同数の正イオンと電子を含む高度にイオン化されたガスである。プラズマは導電性があるため、電場または磁場によって操作できる。このような動作可能な温度で安定したプラズマを得ることが、当技術分野で多く議論されている課題である。このような目的を達成するための現在のシステム及び方法は複雑で、非常に大規模な物理的設備を必要とし、そのような現象の広く知られている利益及び利点を得るために一般に商品化された適用可能な手段を提供していない。
【0003】
プラズマは導電体であるため、プラズマを通る電流を流すことでプラズマを加熱することができ、ポロイダル場の大部分をもたらす誘導電流も、主な初期加熱源となる。誘導電流によって引き起こされる加熱は、オーミック(または抵抗)加熱と呼ばれる。発生する熱は、プラズマの抵抗とそこを流れる電流の量に依存する。しかし、加熱されたプラズマの温度が上昇すると、抵抗が減少し、オーミック加熱の効果が低下する。
【0004】
非常に多くのプラズマ源が提案され、開発されてきた。プラズマ源の種類は、プラズマの励起方法、電極の形状、プラズマのボリュームが異なり、これらがプラズマの主要パラメータを決定する。
【0005】
いくつかのこのような方法及びシステムは、イオン源として様々なガス成分やその混合物から構成されており、これらの様々なガス成分やその混合物は、エネルギー源と結合されるとイオン化ガスを生成し、そのイオン化ガスは磁石や磁場を生成するのに適したその他の手段によって導かれたり、閉じ込められたりする。この場合、意図された反応に必要なエネルギーまでイオンにエネルギーを与えることは、従来技術において、電場または磁場、電極の配置などの異なる組み合わせによって得ることができる。したがって、X線、極端紫外線、中性子などの放出が発生する。
【0006】
関連技術分野で認識されているいくつかの用語と現象を以下に示す。
【0007】
ピンチ - プラズマ内の電流は、プラズマを自己閉じ込めするのに十分な強さであり得る磁場を生成することができながら、プラズマを閉じ込めるための外部磁石の必要性を低減または完全に排除する。プラズマ内で「ピンチ」を実行する可能性により、トロイダル形状の使用を円筒形状に置き換えることができる。大きなトロイドの代わりに、直線状のチューブに簡単に電流を流すことができ、これにより内部のプラズマが崩壊してフィラメントになり得る。これには、プラズマ中の電流が通常の抵抗加熱によってプラズマを加熱するという利点があるが、従来技術では、この構成は、達成可能なプラズマ温度がかなり制限されると考えられている。しかし、プラズマが崩壊すると、断熱プロセスにより温度が劇的に上昇する。ピンチを作り出す別の方法は、磁場を生成するコイル内に非常に高い電流パルスで磁場を増大させることである。このピンチによりプラズマの圧力が増大し、したがってプラズマ密度が増大する。
【0008】
磁気圧縮 - ガスは急激な圧縮によって加熱される。同様に、閉じ込め磁場を増大させてプラズマを急速に圧縮すると、プラズマの温度は上昇する。プラズマ圧縮によりイオンが互いに近づくため、このプロセスには必要な密度の達成が容易になるという追加の利点がある。磁気圧縮がATC(断熱トロイダル圧縮器)において限られた範囲で実施されたことは当技術分野で知られているが、それ以来この概念は広く使用されていない。
【0009】
プラズマの安定性 - プラズマは、その平衡に影響を与える可能性のある摂動的な力を受ける可能性がある。安定したプラズマでは、そのような摂動は減衰または相殺され、その結果、プラズマパラメータの安定性、すなわち、設定された期間の安定性がもたらされる。
【0010】
FRC(高エネルギーが運動効果を引き起こす)におけるプラズマの安定性を強化するために、「安定化ピンチ」が概念化された。この概念では、チャンバの外側に追加の磁石が追加され、ピンチ放電の前にプラズマ内に存在する磁場が生成された。ほとんどの概念では、外部磁場は比較的弱く、プラズマは反磁性であるため、外部磁場はプラズマの外側領域のみに浸透した。ピンチ放電が発生し、プラズマが急速に収縮すると、この場が結果として生じるフィラメントに「凍結」し、その外層に強力な場が形成される。これは、「プラズマにバックボーンを与える」とも呼ばれる。
【0011】
トロイダル構成では、安定化は若干異なっていた。レイアウトは安定化ピンチ構成と同じであるが、2つの場の役割が逆になる。新しいレイアウトでは、安定化をもたらす弱い外部磁場と閉じ込めの役割を果たす強いピンチ電流の代わりに、外部磁石は閉じ込めの大部分を提供するためにはるかに強力になり、一方で電流ははるかに小さくなり、安定化効果の役割を果たす。
【0012】
FRC - 場反転構成 - 電流が流れると、それ自体の周囲に磁場が生成される。その磁場は電流を自己完結させることができる。場反転構成は、帯電プラズマのループである。それらは独自の磁場を作り、それ自体を自己完結させる。ループの内側ではプラズマ密度がより高くなる。FRCはプラズマから作られた構造である。FRCは、リニアマシンだけでなくトロイダルマシンでも取得できる。
【0013】
リニアマシンでFRCを取得するための様々なアプローチが知られている。そのようなアプローチの1つは、リニアマシンの対応する端での磁場イオンミラーリングによるものである。これによりプラズマがリニアマシンの束ねられた端部の間で往復し、それによってマシンの中央にFRCが形成される。直線状チャンバの両端にある2つの磁気ミラーは互いに向かい合い、回転磁場がチューブチャンバの外側に印加される。この配置によりプラズマ内の電子が引き寄せられ、電流が流れ、それにより磁場が自己生成され、プラズマの中央にFRCが形成される。
【0014】
別のアプローチは、円筒形チャンバの中央に最終的にプラズマが回転してFRCを生成するわずかな角度で2本の中性ガスビームを照射する、というものである。これらのビームは衝突によってプラズマを加熱し、イオン化して密度をさらに高める。
【0015】
安定した効率的な収集可能なプラズマを生成するための当該技術分野で知られている現在の解決策には、多くの問題と制限がある。例えば、当技術分野では、時には、エネルギーが大量に漏れ出す可能性があることが知られている。さらに、そのような状況では、プラズマトーラスに接続された電磁巻線を通る電流を継続的に増加させることによって電流が誘導され、プラズマは変圧器の二次巻線とみなすことができる。一次側を流れる電流には制限があるため、これは本質的にパルスプロセスとして認識される(長いパルスについての他の制限もある)。したがって、当技術分野で知られている現在のシステムは、短期間動作するか、他の加熱手段及び電流駆動に依存する必要がある。このようなシステムの欠点は、突然の衝撃や熱の損失によって構成要素が破壊される可能性があることである。複雑で高価で、場合によっては危険なシステムでは、このような偶発的な損失は許容できない。
【0016】
当技術分野における別の欠点は、プラズマを生成するために必要な実際のシステムの物理的なサイズである。トロイダル設計のシステム及び現在設計されている一部のリニアマシンでは、大規模なプラズマ生成物を取得する際に課題が生じている。
【0017】
安定性は、効果的なプラズマの生成及び収集プロセスの前提条件である。トロイダルマシンの現在の設計、ならびにリニア機械の設計は、所望の安定性を得る上で課題を抱えている。線形軸対称システムがその対称性により比較的より高いプラズマの安定性を示すことができることは当技術分野でよく知られているが、それにもかかわらず、現在設計されている線形システムは間接的な方法(イオンビーム、RFアンテナ、レーザーなど)によって加熱を得るため、プラズマ加熱の効率に悪影響を及ぼす。これらの間接的な方法では、大量の入力エネルギーが必要となるため、システム全体の効率に悪影響を及ぼす。
【0018】
比較的小さな軸方向の円筒形の慣性電気閉じ込め器が当技術分野で知られているが、そのような装置はプラズマ収集には有利とは考えられておらず、仮に有利であったとしても、X線源などの他の技術的作業には十分であるとは考えられていない(「A Portable Neutron/tunable X-ray source based on inertial electrostatic confinement」, Nucl. Instrum.Meth. Physics Res. A 422, 16-20, 1999)。
【0019】
さらに、該欠点に対処及び軽減し、追加の利点を提供するように構成された、システム及び方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、実質的に安定したプラズマ及びイオン加熱機構に寄与するように構成された局所的な自己生成磁場を生成するためのシステム及び方法を提供する。このような配置を様々に組み合わせることで、高効率のプラズマプロセス(中性子源、極端紫外線、エッチングプロセスなど)が容易になる。
【0021】
本発明は実質的に以下の態様、すなわち、プラズマの閉じ込め、プラズマ内のイオン及び/または電子の加熱、プラズマの密度増加、プラズマの高いまたは非常に高い安定性、比較的長期間(ミリ秒の大きさ)非常に安定しているプラズマ、及び、ほぼ軸対称のチャンバ設計、を導入する。比較的長期間安定しているプラズマを、本明細書では超安定閉じ込めプラズマ(SSCP)と呼ぶ。本発明のこれらの態様を部分的または全体的に様々に組み合わせて実施することにより、経済的で拡張性の高い効率的なプラズマ及び/またはイオン加熱プロセスが促進される。
【0022】
本発明は、プラズマの加熱に寄与する1つまたは複数のエスカレーションステージを介してチャンバ中心軸に向かって電荷の移動をエスカレートさせることと、チャンバ中心軸へのプラズマの集中化と、内部でプラズマの回転を起こすことと、を特徴とするチャンバ断面マルチステージプラズマ配置を提供するシステム及び方法を提案する。プラズマがその軸を中心に回転すると、自己生成磁場が誘導され、その結果、プラズマの安定性と閉じ込めが強化される(よく知られているトロイダルピンチ効果と同様ではない)。マルチステージ配置の該ステージの一部は物理的要素及び構成要素によって作成され得るが、他のステージは、外部から磁場及び/もしくは電場またはそれらの組み合わせを印加することによって、ならびに/または電子、イオンもしくは他のプラズマの注入によって、誘導または生成され得る。
【0023】
以下の実施形態及びその態様は、範囲を限定するものではなく、例示及び説明を意図するシステム、デバイス、及び方法と関連して説明及び図示される。様々な実施形態では、上述の問題のうちの1つまたは複数が軽減または解消されているが、他の実施形態は他の利点または改善を目的としている。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態が、本明細書において、添付の図面を参照しながら説明される。この説明は、図面と共に、当業者に対して、いくつかの実施形態がどのように実施され得るかを明白にするものである。図面は例示的な説明を目的としており、本発明の基本的な理解に必要な以上に実施形態の細部を詳細に示そうとしていない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による高効率プラズマシステムの概略図を構成する。
【
図2A】本発明のいくつかの実施形態による高効率プラズマシステムチャンバの概略図を構成する。
【
図2B】本発明のいくつかの実施形態による高効率プラズマシステムチャンバの概略図を構成する。
【
図3】A及びBは、本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステムチャンバ反応領域におけるイオン化ステージの概略図を構成する。
【
図4A】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステムチャンバ反応領域におけるイオン加速のセル内粒子(Particle-In-Cell)シミュレーション結果の軸方向断面を示す。
【
図4B】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステムチャンバ反応領域における電子加速のセル内粒子シミュレーション結果の軸方向断面を示す。
【
図4C】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステムチャンバ反応領域におけるイオン半径方向速度のセル内粒子シミュレーション結果の断面を示す。
【
図4D】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステムチャンバ反応領域におけるイオンファイ(phi)方向速度のセル内粒子シミュレーション結果の断面を示す。
【
図5A】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステム及び方法の動作時に得ることができる磁場及び電場の概略的な例を構成する。
【
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステム及び方法の動作時に得ることができる磁場及び電場の概略的な例を構成する。
【
図6A】チャンバの軸線に沿って見た高効率プラズマシステムチャンバ反応領域を示す、本発明のいくつかの実施形態による試験装置の写真画像であり、より低い磁場におけるプラズマ循環を実証している。
【
図6B】チャンバの軸線に沿って見た高効率プラズマシステムチャンバ反応領域を示す、本発明のいくつかの実施形態による試験装置の写真画像であり、より高い磁場におけるプラズマ循環を実証している。
【
図7】本発明のいくつかの実施形態による試験装置で使用されるプローブで測定された電圧と外部から印加された電圧値との関係を示すグラフである。
【
図8】A~Gは、本発明のいくつかの実施形態による電極設計の例を示す。
【
図9】本発明のいくつかの実施形態による、高効率プラズマシステム及び方法の動作時に得ることができるイオンミラーリングの取得の概略的な例を構成する。
【
図10】A~Dは、本発明のいくつかの実施形態によるメッシュシリンダ設計の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかし、本発明がこれらの具体的な詳細を用いずに実施され得ることが、当業者により理解される。他の例では、周知の方法、手順、及び構成要素、モジュール、ユニット、及び/または回路は、本発明を曖昧にしないように、詳細には説明されていない。一実施形態に関して説明したいくつかの特徴または要素は、他の実施形態に関して説明した特徴または要素と組み合わせることができる。明確にするために、同じまたは類似の特徴または要素についての説明を繰り返さない場合がある。)
【0027】
本発明の実施形態はこの点に限定されないが、例えば、「制御する(controlling)」、「処理する(processing)」、「計算する(computing)」、「算出する(calculating)」、「判定する(determining)」、「確立する(establishing)」、「分析する(analyzing)」、「確認する(checking)」、「設定する(setting)」、「受信する(receiving)」など用語を用いる記述は、コンピュータのレジスタ及び/またはメモリの内部で物理(例えば、電子)量として表されるデータを、コンピュータのレジスタ及び/またはメモリ、あるいは動作及び/またはプロセスを実行する命令を記憶できる他の情報の非一時的記憶媒体内部の物理量として同様に表される他のデータを操作及び/または変換する、コントローラ、コンピュータ、コンピューティングプラットフォーム、コンピューティングシステム、または他の電子コンピューティングデバイスの動作(複数可)及び/またはプロセス(複数可)を指し得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、「コントローラ」という用語は、中央処理装置(CPU)またはマイクロプロセッサを備え、またいくつかの入出力(I/O)ポートを備えることができる任意のタイプのコンピューティングプラットフォームまたは構成要素を指し、例えば、パーソナルコンピュータなどの汎用コンピュータ、ラップトップ、タブレット、携帯電話、コントローラチップ、SoC、またはクラウドコンピューティングシステムがある。
【0029】
明示的に述べられていない限り、本明細書に記載される方法の実施形態は、特定の順番または順序に制約されない。さらに、記載された方法の実施形態またはその要素のいくつかは、同時に、同じ時点で、または並行して発生または実行され得る。
【0030】
本発明の一態様によれば、プラズマの軸対称形状は、
図1に概略的に例示されるように、以下で論じられるシステム構成要素または要素の一部または全部の組み合わせによって安定かつ同軸に維持され、実質的に以下の、
(i)実質的に減圧された内部圧力を有する円筒形チャンバ(100)、
(ii)内部アノード要素(145)、
(iii)外部電源に接続された管状チャンバの各端部に配置された電極(140)、
(iv)外部ソレノイド、磁石、またはそれらの組み合わせ(160)、
(v)チャンバの外部のコンデンサバンク(e/mパルス用)(800)、
(vi)制御ユニット(500)、
(vii)非常に高度の真空(特徴的に10
-3~10
-7トール)ポンピングシステム(600)、
(viii)予熱電源(700)、
(ix)ガス入口(910)に接続された制御弁(920)に結合された作動ガス源(900)、からなる。
【0031】
図2Aを参照すると、管状チャンバ(100)は、外部及び内部の生成または誘導された磁場及び電場の、内部のカスケードステージまでの最初の外部ステージとして、内部アノード要素(145)(チャンバの内部スキンの近位)と任意選択で組み合わされる。
図2Bを参照すると、管状チャンバの端部にある任意選択の電極(140)がイオン化プロセスにおいてカソードとして機能する。
【0032】
一方、一実施形態では、少なくとも1つの内部管状電場は、導電性装置(135)によって、または管状チャンバ軸上に同心円状に配置された「仮想」誘導プラズマ(130)によって生成され、そのような内部電場は、イオン化を操作するカスケードステージとして機能する。
図3Aを参照すると、外部イオン化ステージ(OIS)(300)の促進が示されており、これは、ガス入口(910)経由で制御弁(920)を介してチャンバ(100)内に制御可能に注入される作動ガス源(900)から生じる作動ガスの高いイオン化率に寄与する。このイオン化は、外部カスケード内の比較的高い電場(典型的には約2~7KVであるが、約2~20KVまたはそれ以上などのより広い範囲でもある)によるものである。このようなイオン化と、外部から印加される電場(予熱電源(700)から)及び磁場(コンデンサバンク(800)と結合された磁気コイルまたはソレノイド(160)を介して)によるチャンバ軸(110)の周りの電子の回転との結合は、OIS(300)内のイオンの加熱及びチャンバ軸(110)に向かうイオンの加速に寄与する。制御ユニット(500)の指示に従って、それ自体が磁場の勾配に寄与するこのような加速は、チャンバ軸(110)及びその周りのイオンの圧縮をもたらし、それによって反応領域(170)での安定したプラズマ(130)の生成に寄与する。一実施形態の促進を示す
図3Bを参照すると、少なくとも2つの追加の内部管状電場が、導電性装置(135)によって、または管状チャンバ軸(110)上に同心円状に配置された「仮想」プラズマ誘起によって生成され、そのような内部電場は、外部イオン化ステージ(OIS)(300)及び主反応ステージ(MRS)(200)を通じてイオン化を操作する追加のカスケードステージとして機能する。カスケードステージの上位部であるOISは、作動ガスの高いイオン化率に貢献する。このイオン化は、外部カスケード内に生成された比較的高い電場(典型的には約2~7KVであるが、約2~20KVまたはそれ以上などのより広い範囲でもある)によるものである。MRSの内部カスケードステージの電場は、はるかに大きな大きさになる(典型的には約10~35KVであるが、約10~100KVまたはさらに大きい範囲など)。
【0033】
このような配置により、管状チャンバの端部にある該オプションの電極(140)から電子が放出され、内部で生成された磁場及び電場と結合した外部から印加された磁場及び電場によって影響を受ける管状チャンバの軸に「仮想カソード」(130)を形成し、コントローラの指示に従って、ガスイオンに磁力と電気力をもたらす。本発明のいくつかの実施形態に従って実行された特定のセル内粒子(PIC)シミュレーション結果を示す
図4Aから
図4Dで取得可能であることが実証されている。当業者であれば、PICシミュレーションがプラズマシミュレーション技術の許容可能な調査及び実証であることを理解するであろう。
図4Aは、チャンバ(100)の半径方向におけるイオン加速のPICシミュレーション結果を示し、
図4Bは、チャンバ壁の近位の領域(401)及びチャンバ軸(110)の領域(402)での2ステージの電位井戸への電子の閉じ込めを示す。
図4Aと
図4Bは、イオンが電子よりもはるかに重い質量に比例して磁場の影響をあまり受けない現象を例示している。それにより、該配置は、
図4Aに示すように領域(401)と領域(402)の間のイオンの移動を促進するが、
図4Bに示すように電子は実質的に領域(401)または(402)に位置したままとなる。このようなPICシミュレーションは、MRS(200)を生成する管状チャンバの軸におけるOIS(300)及び「仮想カソード」(130)の促進を実証する。イオンの運動特性であるイオン(i)の半径方向速度は
図4Cに、イオン(i)ファイ方向(回転)速度は
図4Dに示されており、それに応じてどちらも領域(401)及び(402)の停滞電子(e)に対して示されている。このようなPICシミュレーションは、半径方向及び回転方向の両方でイオン速度の増加を実証し、これは、該配置のチャンバ軸(110)領域で得ることができる高いイオン温度を示すことが、当業者には理解されよう。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、プロセスを封入するために円筒形チャンバが使用される。チャンバ壁は、様々な材料(金属、セラミック、パイレックス、ガラスなどと異なる)で作られてもよい。材料が異なれば、強度、温度伝達、隔離、放射線の「透過性」、「不透過性」及びその他の特性によって、異なる利点または欠点が生じる場合がある。いくつかの実施形態によれば、チャンバ壁は導電性であり、電極(145)として、または磁場及び電場のカスケードにおけるステージとして機能し得る。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、円筒形チャンバ(100)は、制御弁(920)に接続されたガス入り口(910)を介してガスを注入する前に、残留ガスの望ましくない粒子による干渉/汚染を防ぐため、最初に非常に高度の真空状態(特徴的に10-3~10-7トール)まで高度に減圧される。いくつかの実施形態によれば、円筒形チャンバは、所定の圧力で作動ガス(キセノン/アルゴン/水素/重水素/または他の関連ガス、または実施されるプラズマプロセスに応じたそれらの組み合わせ)で満たされる。チャンバ内のガスはイオン化され、本発明に従って配置された印加磁場及び電場によって効果的に操作される。
【0036】
いくつかの実施形態によれば、円筒形チャンバ(100)の外周は、チャンバ内のガスをイオン化する高電圧の半径方向の電場の誘導を可能にするアノードとして機能する能動導電構成要素を含む。
図2A及び2Bを参照すると、外部チャンバ(100)のこの構成要素は、マルチステージアノード配置の第1ステージであり、その一例が
図2に示されている。これはプラズマのいくつかのステージを含み、その一部は物理的であり、その他は「仮想的に」誘導される可能性がある。本発明のいくつかの実施形態によれば、
図3を参照すると、そのようなステージはチャンバ軸(110)に対して半径方向に配置され、各ステージは、プラズマ(130)が集中する領域の中心軸に向かってイオンの加速を引き起こす。
【0037】
いくつかの実施形態によれば、非限定的な例として、
図1を参照すると、イオンの加速は、様々な磁場、電場、及びそれらの組み合わせによって得られ、チャンバ周囲(100)の反応領域(170)は、かなり中程度から低出力の磁石または磁気コイル(160)(典型的には、約0.1~0.5テスラまたは、約0.1~2テスラなどそれ以上の大きさ)によって囲まれていることが当業者には理解される。いくつかの実施形態によれば、そのようなMRSは、チャンバの長手方向の中心で明らかであり、いくつかの他の実施形態によれば、能動部分(170)は、電極(140)の領域など、管状チャンバ(100)の端部まで延びることができる。実質的に、このような配置により、コイルに電流パルスを印加して磁気パルスを発生させ、その結果チャンバ内のプラズマを圧縮及び加熱してプラズマプロセスの効率を高めることができる。
【0038】
いくつかの実施形態によれば、システムのサイズが比較的小さいため、システムの保守性が向上する。パルス作動システムでは、連続作動下では劣化してMTBFが削減され、交換時期が短縮されてしまうことになる材料の、寿命が延びる。
【0039】
いくつかの実施形態によれば、マルチステージイオン化の概要が
図3Aに示されており、円筒形グリッド要素または「仮想メッシュグリッド」の軸遠位端が境界として機能する内部領域が示されており、外部イオン化ステージ(「OIS」)のカソードは、チャンバ内のプラズマのイオン化レベルを高め、最終的にシリンダの軸に向かうイオン束を増大させる。
【0040】
いくつかの実施形態によれば、マルチステージイオン化の概要が
図3Bに示されており、円筒形グリッド要素または「仮想メッシュグリッド」の軸遠位端が境界及び、チャンバ内のプラズマのイオン化レベルを高め、最終的にシリンダの軸にある主反応ステージ(MRS)を通過する材料カソードまたは「仮想カソード」に向かうイオン束を増大させる外部イオン化ステージ(「OIS」)のカソードとして機能する内部領域が示されている。いくつかの実施形態によれば、
図3Aに概要を示すように、MRSと「仮想カソード」の生成が同時に行われ、それによって軸内のイオンの密度が増加し、OISステージからの加速されたイオンとMRSと「仮想カソード」を組み合わせたボリューム内のイオンとの間の反応の確率が高くなる。このような条件下で通過するイオン(
図3Aまたは
図3Bによる)は、指定されたプラズマプロセスの生成に寄与する。
【0041】
いくつかの実施形態によれば、プラズマが濃縮される内部ボリュームは、内部金属グリッドシリンダ(135)(実質的に15%未満のメッシュ密度、典型的には5%未満のメッシュ密度)によって囲まれる。金属グリッドシリンダは、様々な材料(ステンレス鋼、タングステン、モリブデン、その他の材料など、熱に耐えることができ、水や他の物質の吸収が少なく、チャンバを汚染しない任意の導電性材料など)で作ることができ、様々な形状及びパターン(例えば、螺旋ばね形状、穴あき、溝付き、全体、溝彫りなど、実験されたいくつかの例が
図10Aから
図10Dに示されている)(このような内部円筒形要素は、以下「メッシュシリンダ」または「円筒形グリッド要素」と呼ばれる)であり得る。
【0042】
いくつかの実施形態によれば、円筒形グリッド要素の代わりに、またはそれに加えて、マルチステージアノード配置の操作によってメッシュシリンダ(135)と同様の効果を生み出す電磁場を局所的に生成することができる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、該円筒形グリッド要素は、MRSのアノードの役割も果たす。その結果、ステージのカスケードが形成され、最初のステージはアノードとして機能する外部チャンバのシリンダであり、次のステージは円筒形のグリッド要素のアノードになる。次のステージは、プラズマ領域のチャンバシリンダの軸上の材料カソードまたは「仮想カソード」であり、そのような「カソード」特性は、能動管状チャンバの端にある電子放出電極と結合された前のステージの適用から生じる。チャンバ内の線形磁場束とチャンバ内の半径方向の電場との外積により、
図5Aに概略的に例示されるように、強力な内部磁場が生成される。この自己誘導磁場(301)は、チャンバ内に閉じた磁力線を持つ。このような外積は、実質的に追加のエネルギーを投資することなく、プラズマの歪み及び共軸化に寄与する。電場、磁場、及びその外積を調整及び最適化することにより、強力な閉じ込めが生じ、高圧、高密度、高安定のプラズマが得られる(従来のFRC効果と似ていないものではない)。いくつかの実施形態によれば、
図5Bを参照すると、追加的に外部磁場パルス302A(典型的には大きさ3~10テスラ以上)が、外部磁場パルス(302A)の積である誘導電流を増加させることになり、チャンバ軸(110)に現れる外部電場により、誘導磁場(301A)の縦方向の集中を示すSSCP効果に寄与する軸方向プラズマが歪められる。このような効果は、
図6A及び
図6Bに示される本発明に従って構成された動作試験装置の写真画像でも明らかである。
図6A及び
図6Bは、異なる外部磁場の印加下でチャンバの軸の周りを循環するプラズマを示す、本発明によるシステムの写真画像である。明らかに、プラズマ(300B)の半径は、外部から印加される磁場が強い場合には大きくなり、外部から印加される磁場が低い場合には半径(300A)が小さくなる。当業者であれば、回転エネルギーは、半径方向の外部電場及びそのz方向(軸方向)の外部磁場(ExB)との積によってもたらされることを理解するであろう。このような外部磁場の変化は、
図6A及び
図6Bに示されるプラズマの歪みで視覚的に実証されるように、SSCP効果の生成に特徴的に支配的に寄与するであろう。さらに、当業者であれば、外部磁場の強いパルスを印加すると、プラズマの遠心力を圧縮して克服するピンチと実質的に同等の効果が生じ、それによってプラズマの加熱がもたらされるとともに、MRS内のプラズマ密度を増大させ、プラズマを高エネルギーパラメータにすることを理解するであろう。このようなエネルギーパラメータを取得する例を
図7に示す。
図7は、本発明のいくつかの実施形態による試験装置による、プローブで測定された電圧対外部印加電圧値のグラフを示す。試験装置は2つのラングミュアプローブで構成され、その1つはOISの下部領域に、もう1つはMRS領域の上部に配置された。プローブはプラズマ電位を測定した。
図7は、様々な加熱/加速電圧の印加と、MRS(200)におけるプラズマの実際の加熱を示す測定されたプラズマ電圧との間の高い相関関係を示す。
【0044】
イオンの加速により温度の上昇を確実にする。この加速は静電場の直接的な結果であり、帯電粒子に運動エネルギーを与える効率的な方法と考えられる。いくつかの実施形態によれば、半径方向の電場の使用により、高度な均一性を有する固有の軸対称加熱機構が形成され、プラズマの安定性にとって重要な軸対称性が維持される。
【0045】
当業者であれば、追加のガスをチャンバ内に注入することによってプラズマ密度を増加できることを理解するであろう。いくつかの実施形態によれば、ガス注入は、比例弁(920)に接続されたガス入口によってシリンダ壁(100)を通して達成することができる。チャンバ壁を通したガスの注入を制御することは、チャンバボリュームにおける密度分配に影響を与えることによって、帯電ガスの効果的な分布にさらに寄与することができる。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、電極(タングステン/モリブデン/などの高温耐性材料で作られる)は、管状チャンバの端部に同軸に配置され、負の高電圧負荷に接続される。このような設計は、チャンバ軸における電場電位に寄与するため、及び/または電子放出源としての機能を促進するために使用され得る。いくつかの実施形態によれば、このような電極は、加熱が電極先端部(141)からのプラズマ自体によって行われる受動型、または加熱が電極内で外部から誘導され、したがって能動電極先端部(141’)からの電子の放出を能動的に引き起こす能動型のいずれかであり得る(「電子銃」の作成)。
【0047】
いくつかの実施形態によれば、該電極は、異なる大きさスケールのいくつかのフェーズを含む、変化する勾配及び/または徐々に変化する半径及び/または変化する平面設計によって特徴付けられる。いくつかのそのような電極を示す
図8Aから8Gを参照する。いくつかの実施形態によれば、
図8B及び8Fに示されるような電極は、該フェーズの3つの主要な領域、すなわち、比較的大きい大きさのフェーズ(143)と、先端に向かって先細になる中間セクションフェーズ(142)と、先端セクションフェーズ(141)とによって特徴付けられ得る。他の実施形態によれば、追加の代替電極設計が実施可能である(
図8A、8C、8D、及び8Eに示され得る)。
図8Gを参照すると、加熱されると電極先端(141)からの高速電子放出を促進する内部加熱要素(147)と組み合わされたさらに別の電極設計が示されている。
【0048】
図9を参照すると、能動電極は能動チップ(141)から電子を放出する。このような能動放出は、外部加熱要素(700)によって得られる。先端フェーズ(141)に集中した熱は、熱イオン放出プロセスにおいて電子の放出を引き起こす。したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、放出された電子は、電場によって長手方向に強制され、チャンバの中央に向かう磁場によって保持され、したがって、最初の「仮想カソード」(130)の生成に寄与し、その後、それを実質的に定常状態に維持する。
【0049】
いくつかの実施形態によれば、チャンバのボリューム内に浸漬された電極の形状及び構造により、電子「銃」源が形成される。いくつかの実施形態によれば、チャンバのボリューム内に浸漬された電極の形状及び構造は、
図8Aから
図8Gなどの本発明による該固有の特定の幾何学的形状によって得られる「電気ミラー」または「電気偏向器」を作り出す。一方、当業者であれば、そのような効果が本発明による他の特定のマルチフェーズ電極設計によって得られることを理解するであろう。
【0050】
非限定的な例として、軸(110)と位置合わせされたチャンバ(100)内に同軸に浸漬された電極(140)を配置するときに生成される電場バックミラー(171)を示す
図9を参照する。このような例では、チャンバの各端に配置された電極先端(141)の領域内の遠位端のプラズマフェーズが、あるボリュームのイオンを蓄積する。
図9を参照すると、主要なプラズマ束に捕捉されないイオン雲(151)、(152)、及び(153)は、チャンバ内のプラズマの形状及び形成に封じ込め効果を及ぼす。このような雲は、管状チャンバの端に向かう軌道上のイオンが電子雲に閉じ込められる「ミラーリング」制約効果を有すると考えられる(
図9に概略的に示す)。いくつかの実施形態によれば、このようなミラーリングは、他の円筒形のデザインでも提案されているように、「磁気ミラーリング効果」を得るために線形設計のチャンバの端部に実際の磁石を設置することなく、チャンバ内のマルチステージカスケード配置と該マルチフェーズ電極との組み合わせによって得られる。いくつかの実施形態によれば、プラズマ遠位電極フェーズからの電子放出に依存するだけで十分である。「イオンミラー」の軸方向の位置は、電極のフェーズの実際の設計を含む多くのパラメータに従って変化するが、いずれの場合も、最終的に「イオンミラー」を確立するイオンと電子の間の平衡を生み出す距離にある。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、電子放出電極は、少なくとも2つのフェーズを有することを特徴とし、それにより、電極の近くにイオン及び電子の「雲」を誘導するようにフェーズ配置が設計され、それにより、少なくとも1つのフェーズの直径が電極の他のフェーズに比べてかなり大きい。
【0052】
いくつかの実施形態によれば、電子放出電極は、少なくとも2つのフェーズを有することを特徴とし、それにより、電極の近くにイオン及び電子の「雲」を誘導するようにフェーズ配置が設計され、それにより、いくつかのフェーズを通じて電流が駆動され、他のフェーズは静電的に帯電される。
【0053】
いくつかの実施形態によれば、電子放出電極は、チャンバ内に「電気ミラー」を生成し、管状チャンバの端部でのイオンの「漏れ」を実質的に減少させるように配置される。
【0054】
現在検討されているシステムの動作に必要なのは、加熱と磁場の構築の両方のための外部源からの(従来のシステムと比較して)比較的小さなエネルギーレベルの入力である。当業者であれば、上記のアプローチから導き出された独自の設計基準を実装すると、非常に効率的なシステムが得られることを理解するであろう。
【0055】
上記のいずれにも限定されることなく、当業者であれば、提案されたシステム及び方法に従って得ることができる収集可能なプラズマが、エッチングプロセス、エネルギー収集において、及び/または一般に高密度高温プラズマ核融合プロセスにおいてまたはそのために、中性子源として、極端紫外線源として使用され得ることを理解するであろう。
【0056】
本発明を特定の実施形態を参照して説明してきたが、この説明は限定的な意味で解釈されることを意図したものではない。開示された実施形態の様々な変更、及び本発明の代替実施形態は、本発明の説明を参照すると、当業者には明白である。したがって、付属の特許請求の範囲は、本発明の範囲に入るそのような変更を網羅することが企図される。
【国際調査報告】