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特表2024-512481目的PKプロファイルに基づく経口医薬剤形の設計方法及びその剤形
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】目的PKプロファイルに基づく経口医薬剤形の設計方法及びその剤形
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61K9/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557125
(86)(22)【出願日】2022-02-23
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 CN2022077513
(87)【国際公開番号】W WO2022193922
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/081293
(32)【優先日】2021-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】517420511
【氏名又は名称】トリアステック インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ,リーホア
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シーパン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シン
(72)【発明者】
【氏名】デン,フェイホアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,センピン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シャオリン
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076FF70
4C076GG50
(57)【要約】
いくつかの態様では、本開示は、経口医薬剤形の設計方法に関し、該経口医薬剤形は、胃腸管内の任意の時間及び/又は位置における医薬品濃度-透過率相互作用を最適化することによって、有効性ベースの任意の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。他の態様では、本開示は、所望のPKプロファイルを有する経口医薬剤形、及びこのような経口医薬剤形の調製方法、例えば、正確な量の医薬品(及び任意の機能的賦形剤)を正確な時間及び正確な位置で放出するための三次元印刷に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形の設計方法であって、
(a) 該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、
ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つ
ここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点又は位置は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する胃腸(GI)管位置における該医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置でのGI管の液体体積に基づいて確定されることと、
(b) 該模擬医薬品放出プロファイルに基づいて該医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、該目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形設計することとを含む、方法。
【請求項2】
各時点で該経口医薬剤形から吸収された該医薬品の量を確定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各時点で該経口医薬剤形から吸収された該医薬品の量は、医薬品吸収速度プロファイルに基づくものであり、
ここで、該目的PKプロファイルを得るために、該医薬品吸収速度プロファイルは、該医薬品の該複数の時点での取り込み速度を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
該経口医薬剤形から吸収された該医薬品の量は、式IVに基づくものであり、
【数1】
式IV、
ここで、Qabs(t)は、時間の関数として該経口医薬剤形から吸収された該医薬品の量であり、且つ
ここで、qabs(t)は、時間の関数としての該医薬品の吸収速度である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
該医薬品の吸収速度プロファイルを確定することをさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
該医薬品吸収速度プロファイルは、該医薬品の処置プロファイルを用いた、式Iによる該目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づくものであり、
【数2】
式I、
ここで、L及びL-1は、ラプラス変換及びラプラス逆変換であり、
ここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品吸収速度プロファイルに基づくものであり、且つ
ここで、Cp,経口(t)及びCp,処置(t)は、それぞれ、経口投与時間及び処置時間の関数としての血漿レベル濃度プロファイルに基づくものである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
該処置プロファイルは、該医薬品が非経口経路で投与される場合の該複数の時点のうちの各時点での該医薬品の血漿中濃度を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
該非経口経路は、静脈内ボーラス投与である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該処置プロファイルを用いて、該目的PKプロファイルに対してデコンボリューションを行うことをさらに含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
該処置プロファイルは、既知のプロファイルである、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
該処置プロファイルを得ることをさらに含む、請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
該時点又は位置での、GI管の位置における該経口医薬剤形からの吸収にとって必要な該医薬品の量を確定することをさらに含み、ここで、該時点又は位置での、GI管の位置における該経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、該時点又は位置に関連するGI管の位置における該医薬品の透過率値、及び該時点又は位置に関連する位置におけるGI管の液体体積に基づくものである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
該時点又は位置での、GI管の位置における該経口医薬剤形からの吸収にとって必要な該医薬品の量は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づくものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ある時点又はGI管の位置における該経口医薬剤形からの吸収にとって必要な該医薬品の量は式IIIに基づくものであり、
【数3】
式III、
ここで、QGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、該経口医薬剤形からの吸収にとって必要な該医薬品の量であり、
ここで、CGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、該経口医薬剤形からの吸収にとって可溶性である該医薬品の濃度であり、且つ
ここで、VGIT(t/x)は、時間又は位置の関数としての該GI管の液体体積である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルである、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
該個体の状況に関連する該GI液体体積の時間又は位置プロファイルを得ることをさらに含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
該GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、該経口医薬剤形が投与された場合の該個体の摂食又は断食状態を反映する、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
該医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することをさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
該医薬品濃度-位置プロファイルは、該医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づくものであり、ここで、該医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、該複数の時点のうちの各時点に関連するGI管の位置における該医薬品の透過率値を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
該医薬品濃度-位置プロファイルは式IIに基づくものであり、
【数4】
式II、
ここで、C(t/x)は、時間又は位置の関数として、該経口医薬剤形からの、GI管において可溶性である該医薬品の濃度であり、
ここで、qabs(t/x)は、時間又は位置の関数としての該医薬品の吸収速度であり、且つ
ここで、P(t/x)は、時間又は位置の関数としての透過率である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルである、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
該医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを得ることをさらに含む、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
該医薬品溶解度の調節に基づいて該経口医薬剤形を設計することをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
該医薬品の透過率の調節に基づいて該経口医薬剤形を設計することをさらに含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
該模擬医薬品放出プロファイルを最適化することをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
該模擬医薬品放出プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
該目的PKプロファイルを得ることをさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比の相対的平均値について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比の相対的平均値について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが、該経口医薬剤形の投与後24時間である、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
該経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比の相対的平均値について、該目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが、該経口医薬剤形の投与後24時間である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
該目的PKプロファイルのAUC0-t、Cmax及びCは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルの許容される閾値内にあり、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
該目的PKプロファイルは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルと生物学的同等性を有する、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形の設計方法であって、
(a) 処置プロファイル及び該経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、
(b) 該医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、
(c) 模擬医薬品吸収速度プロファイル及び該医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、
(d) 該医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、
(e) 該医薬品吸収量プロファイル及び該GI医薬品要求量プロファイルに基づいて、該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、
ここで、該目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含むことと、
(f) 該模擬医薬品放出プロファイルに基づいて該医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、該目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む、方法。
【請求項37】
医薬品吸収速度プロファイルを確定することは、該医薬品の処置プロファイルを用いて、該目的PKプロファイルをデコンボリューションすることを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
該模擬医薬品放出プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形であって、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法から得られた設計に基づいて該医薬品を放出するように配合及び構成される、経口医薬剤形。
【請求項40】
目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形であって、該目的PKプロファイルを得るために設計される模擬医薬品放出プロファイルに基づいて該医薬品を放出するように配合及び構成される、経口医薬剤形。
【請求項41】
目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形の調製方法であって、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法から得られた該経口医薬剤形の設計に基づいて、該経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む、方法。
【請求項42】
目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形の調製方法であって、
(a) 処置プロファイル及び該経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、
(b) 該医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、
(c) 該医薬品吸収速度プロファイル及び該医薬品の透過率時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、
(d) 該医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、
(e) 該医薬品吸収量プロファイル及び該GI医薬品要求量プロファイルに基づいて、該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、
ここで、該目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含むことと、
(f) 該模擬医薬品放出プロファイルに基づいて該医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、該目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む方法から得られた該経口医薬剤形の設計に基づいて、該経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
いくつかの態様では、本開示は、経口医薬剤形の設計方法に関し、該経口医薬剤形は、目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。他の態様では、本開示は、所望の薬物動態学的特徴を有する経口医薬剤形、及びこのような経口医薬剤形の調製方法、例えば、三次元印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品及び試薬の処置及び作用機序が益々複雑になることに加えて、患者によって医薬品並びに試薬処置及び応答が異なることが認識され、医薬品又は試薬が所望の時間に所望の量で所望の位置に到達することを確保し、薬物動態プロファイルを実現することによって、前記医薬品、医薬品候補物及び試薬に最大有効性及び安全性を持たせるように、インビボ医薬品送達を正確にする重要性がますます示されてきた。所望の治療結果を実現するために、いくつかの医薬品及び試薬は、医薬品又は試薬の薬物動態プロファイルの実現を必要とする場合があり、該医薬品又は試薬は、複雑な放出プロファイルの産生及び/又は特有の投与レジメンを促進する特定の製剤によってのみ製造可能である。多くの医薬品及び試薬の生物薬剤学的特性により、従来のモデリング並びに模擬設計及び試験方法の使用が役に立たないため、選択された少数の医薬品及び試薬を除く全ての医薬品及び試薬について、これらの特有の薬物動態プロファイルを個体において実現できる医薬剤形の設計は困難であり得る。なお、従来の錠剤又はカプセル製造方法を使用すると、これらの複雑な放出プロファイルを製造し、これらの特有の経口剤形の投与レジメンを促進することに必要な製造プロセスを実現することは、不可能となることが多い。
【0003】
特許出願及び刊行物を含めて、本明細書に援用される全ての参考文献は、いずれも全体として参照により組み込まれる。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの態様では、本明細書は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する消化管(GI)の特定の位置(該経口医薬剤形は、摂取後に、該位置に存在すると予想される)における該医薬品の透過率値、及び該時点に関連する所望の位置において該医薬品が可溶性であるGI管の液体体積に基づいて確定されることと、(b)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0005】
いくつかの実施例において、該方法は、各時点で経口医薬剤形から吸収された医薬品の量を確定することをさらに含む。いくつかの実施例において、各時点で経口医薬剤形から吸収された医薬品の量は、医薬品吸収速度プロファイルに基づくものであり、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該医薬品吸収速度プロファイルは、医薬品の複数の時点での取り込み速度を含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形から吸収された医薬品の量は、式IVに基づくものであり、
【数1】
式IV、
ここで、Qabs(t)は、時間の関数として、経口医薬剤形から吸収された医薬品の量であり、且つここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品の吸収速度である。
【0006】
いくつかの実施例において、該方法は、医薬品吸収速度プロファイルを確定することをさらに含む。いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルは、医薬品の処置プロファイルを用いた目的PKプロファイルに対するデコンボリューション、例えば、数学的デコンボリューションに基づくものである。いくつかの実施例において、デコンボリューションは、ラプラス領域(Laplacian domain)、例えば、式Iに示されるものに基づくものである。いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルは、医薬品の処置プロファイルを用いた、式Iによる目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づくものであり、
【数2】
式I、
ここで、L及びL-1は、ラプラス変換(Laplace transform)及びラプラス逆変換であり、ここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品吸収速度プロファイルに基づくものであり、且つここで、Cp,経口(t)及びCp,処置(t)は、それぞれ、経口投与時間及び処置時間の関数としての血漿レベル濃度プロファイルに基づくものである。
【0007】
いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、医薬品が非経口経路で投与される場合の複数の時点のうちの各時点での医薬品の血漿中濃度を含む。いくつかの実施例において、非経口経路は静脈内投与である。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルに対してデコンボリューションを行うことをさらに含む。いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、既知のプロファイルである。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品の処置プロファイルを得ることをさらに含む。
【0008】
いくつかの実施例において、該方法は、該時点での、経口医薬剤形からの、GI管のある位置における必要な医薬品の量を確定することをさらに含み、ここで、該時点での、GI管位置における経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、該時点に関連する(GI)管内の所望の位置における医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置におけるGI管の液体体積に基づくものである。
【0009】
いくつかの実施例において、該方法は、医薬品濃度時間又は位置プロファイルを確定することをさらに含む。いくつかの実施例において、医薬品濃度時間又は位置プロファイルは、医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率時間又は位置プロファイルに基づくものであり、ここで、該医薬品透過率時間又は位置プロファイルは、複数の時点のうちの各時点に関連する(GI)管の位置における医薬品の透過率値を含む。いくつかの実施例において、医薬品濃度時間又は位置プロファイルは、式IIに基づくものであり、
【数3】
式II、
ここで、C(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの、GI管において可溶性である医薬品の濃度であり、ここで、qabs(t/x)は、時間又は位置の関数としての医薬品の吸収速度であり、且つここで、P(t/x)は、時間又は位置の関数としての透過率である。
【0010】
いくつかの実施例において、該時点でGI管の位置において経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づくものである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形からの、GI管位置における必要な医薬品の量は、式IIIに基づくものであり、
【数4】
式III、
ここで、QGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量であり、ここで、CGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって可溶性である医薬品の濃度であり、ここで、VGIT(t/x)は、時間又は位置の関数としてのGI管の液体体積である。
【0011】
いくつかの実施例において、GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルである。いくつかの実施例において、該方法は、GI液体体積の時間又は位置プロファイルを得ることをさらに含む。いくつかの実施例において、GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、経口医薬剤形が投与される場合の個体の摂食又は断食状態を反映することができる。
【0012】
いくつかの実施例において、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルである。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを得ることをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施例において、該方法は、医薬品溶解度の調節に基づいて経口医薬剤形を設計することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施例において、該方法は、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルの調節に基づいて経口医薬剤形を設計することをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルを最適化することをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施例において、該方法は、目的PKプロファイルを得ることをさらに含む。
【0018】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが、経口医薬剤形の投与後24時間である。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが、経口医薬剤形の投与後24時間である。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルのAUC0-t、Cmax及びCは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルの許容される閾値内にあり、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0019】
いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルと生物学的同等性を有する。
【0020】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出時間又は位置プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0021】
いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルを確定することは、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルをデコンボリューションすることを含む。
【0022】
他の態様では、本明細書は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、本明細書に記述される任意の方法から得られた設計に基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0023】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の調製方法を提供し、該経口医薬剤形は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含み、該方法は、本明細書に記述される任意の方法から得られた経口医薬剤形の設計に基づいて、経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む。
【0024】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の調製方法を提供し、該経口医薬剤形は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含み、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む方法から得られた経口医薬剤形の設計に基づいて、経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む。
【0025】
当業者であれば、また、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される実施形態の形式及び詳細を変更することができることを理解するであろう。また、様々な利点、態様及び目的が様々な実施形態を参照して記述されたが、本開示の範囲は、これらの利点、態様及び目的を参照することによって限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本明細書に開示される、目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計するための設計方法の例示的なワークフローを示した図である。
図2】5mg医薬品Aを含有する参照即放性経口医薬剤形が一日二回(BID)投与されるPKプロファイル、及び10mg医薬品Aを含有する徐放性経口医薬剤形が一日一回投与される目的PKプロファイルの重ね合わせを示した図である。
図3】目的PKプロファイル、医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品総量に関する情報に基づいて医薬品吸収速度プロファイルを得ることに利用される例示的ステップ及びプロファイルを示した図である。
図4】医薬品吸収速度プロファイルから医薬品吸収量プロファイルを得ることに利用される例示的ステップ及びプロファイルを示した図である。
図5A】医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを得ることに利用される例示的ステップ及びプロファイルを示した図である。
図5B】関連する時間及び位置情報を有する例示的医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを示した図である。
図6】医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを得ることに利用される例示的ステップ及びプロファイルを示した図である。
図7】例示的累積医薬品放出プロファイルを示した図である。
図8A-8B】技術による吸収の最適化が例示的医薬品濃度の時間又は位置プロファイルに与える影響を示した図である。図8Aは、例示的医薬品溶解度の増加の効果を示した。図8Bは、投与後の異なる時点での例示的医薬品の透過率増加の効果、及びその後の濃度プロファイルへの影響を示した。
【発明を実施するための形態】
【0027】
いくつかの態様では、本開示は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。本出願の開示は、発明者らの発見及び独自の見解に少なくとも部分的に基づくものであり、これらの発見及び独自の見解は、生理学的胃腸(GI)モデルシミュレーションに基づいて所望の目的PKプロファイルを提供するように、経口医薬剤形を設計するための方法に関する。本明細書に記述されている方法を用いて、各GI管部分における関連する医薬品吸収に基づいて、特定のGI管部分で放出された医薬品の量を正確に計算することによって、経口医薬剤形における最適な医薬品総量によって経口医薬剤形を正確に設計して、目的PKプロファイルによって測定されたような所望の効果を達成することができる。本明細書に開示される方法は、経口医薬剤形の設計において3つの肝心なRを実現することができ、該経口医薬剤形は、正確な医薬品放出によって所望の目的PKプロファイル--正確な量(right amount)、正確な時間(right time)及び正確な位置(right location)を得ることができる。このような方法は、経口医薬剤形設計分野において顕著な進歩を提供し、且つ例えば、正確で、調節可能で迅速な製剤設計を可能にする。他の利点に加えて、本明細書に記述されている設計方法は、GI位置依存性溶解度と透過率との間の相互作用を解決し、医薬品溶解度及び/又は透過率に基づく修飾による医薬品吸収の最適化を可能にするため、任意の生物薬剤学分類システム(Biopharmaceutical Classification System,BCS)医薬品クラスに属する医薬品に適する。対照的に、既知のインビトロインビボ関連(in vitro in vivo correlation,IVIVC)技術の使用は、BCSクラスII医薬品に極めて限定されている。必要な医薬品放出プロファイルを確定することによって経口医薬剤形を設計する能力は、さらに、正確な医薬品放出を生成できる技術(例えば、経口医薬剤形の三次元(3D)印刷)を用いて、所望の目的PKプロファイルを提供できる経口医薬剤形を迅速に製造することを可能にする。このような革新的な方法は、例えば、予測可能かつ加速されたタイムラインで前臨床及び臨床試験製剤開発を行う手段を提供する。
【0028】
そのため、いくつかの態様では、本明細書は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する胃腸管(GI)位置における医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置でのGI管の液体体積に基づいて確定されることと、(b)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0029】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対する数学的デコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0030】
他の態様では、本明細書は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、本明細書に教示される任意の設計方法から得られた設計に基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0031】
他の態様では、本明細書は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、目的PKプロファイルを得るために設計される模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0032】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の調製方法を提供し、該経口医薬剤形は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含み、該方法は、本明細書に記述される任意の設計方法から得られた経口医薬剤形の設計に基づいて、経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む。
【0033】
他の態様では、本明細書は、経口医薬剤形の調製方法を提供し、該経口医薬剤形は、目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含み、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む方法から得られた経口医薬剤形の設計に基づいて、経口医薬剤形を三次元(3D)印刷することを含む。
【0034】
本出願の大部分の内容は、医薬品を含む経口医薬剤形について論じているが、当業者であれば、本開示が、任意の化合物の所望のPKプロファイルを提供するように構成及び配合される他の経口剤形、例えば、試薬を含む剤形(例えば、経口試薬剤形)にも適用可能であり、それらに関することを容易に理解するであろう。
【0035】
当業者であれば、また、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される実施形態の形式及び詳細を変更することができることを理解するであろう。また、様々な利点、態様及び目的が様々な実施形態を参照して記述されたが、本開示の範囲は、これらの利点、態様及び目的を参照することによって限定されるべきではない。
【0036】
I. 定義
本明細書を説明するために、以下の定義が適用され、適切な場合に、単数形で使用される用語は複数も含み、その逆も同様である。以下に記載される任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれる任意の文書と矛盾する場合、記載される定義が優先される。
【0037】
本明細書に使用されるように、「個体」という用語は、哺乳動物を指し、且つヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類動物、ラット、マウス、イヌ又は霊長類動物を含むが、それらに限らない。いくつかの実施例において、個体はヒトである。
【0038】
本明細書に使用される用語「包含する」、「有する」、「含有する」、「含む」及び他の類似形態並びにその文法的等価物は、これらの用語のいずれかに続く一つ又は複数の項目が、そのような一つ又は複数の項目の完全なリストを意味していないか、又はリストされた一つ又は複数の項目に限定されることを意味していないため、意味的に同等で且つ非制限的であることが意図されている。例えば、成分A、B及びCを「包含する」物品は、成分A、B及びCからなる(即ち、これらのみを含有する)ことができ、又は成分A、B及びCだけでなく、一つ又は複数の他の成分をさらに含んでもよい。そのため、「包含する」及びその類似形態並びにその文法的等価物は、「本質的に...からなる」又は「...からなる」実施例の開示を含むことが意図され、理解される。
【0039】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、記載範囲の上限値と下限値との間にある各中間値(下限値の単位の10分の1まで)及び記載範囲内の任意の他の記載値又は中間値は、本開示に包含され、記載範囲中の具体的に除外される任意の限界値に従うことを理解されたい。記載範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も、本開示に含まれる。
【0040】
本明細書において、「約」値又はパラメータに対する引用は、この値又はパラメータ自体に対する変化を含む(且つ記述する)。例えば、「約X」に関する記述は、「X」の記述を含む。
【0041】
本明細書に使用されるように、添付の特許請求の範囲においても、単数形「一つ/種(a)」、「又は(or)」及び「該(the)」は、文脈が他の状況を明確に示さない限り、複数の指示対象を含む。
【0042】
II. 経口医薬剤形の設計方法
いくつかの態様では、本開示は、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。いくつかの態様では、本明細書による方法は、目的PKプロファイル(例えば、参照投与レジメンと生物学的同等性を有するように設計される)並びに医薬品処置、医薬品透過率及び胃腸(GI)管の位置における液体体積を含む追加の情報に基づいて経口医薬剤形を設計することを可能にする。いくつかの実施例において、医薬品処置、医薬品透過率及びGI管の位置における液体体積を含む該追加の情報は、既知であり、例えば、文献値に基づくものである。
【0043】
経口医薬剤形が経口投与される場合、経口医薬剤形がGI管を通って滞留する時、医薬品は経口医薬剤形から放出される。放出後、放出された医薬品の量の一部は吸収され、放出された医薬品の量の残りの部分は医薬品に伴ってGI管に沿って下向きに移動し、さらに下流に至る。経口医薬剤形がGI管に沿って下向きに移動する場合、新たに放出された医薬品及び上流位置で吸収されていない医薬品の量は、GI管下流位置において経口医薬剤形から吸収され得る医薬品の総量を確定することに用いることができる。本明細書に記載されているように、医薬品吸収速度は、GI管における医薬品濃度(GI管内の位置における医薬品の量、及びGI管に関連する液体体積に基づく)及び医薬品の透過率と正の相関を示す。また、本明細書に記載されているように、GI管における医薬品の吸収は、医薬品吸収速度プロファイルによって表され得る。医薬品が吸収された後、生物学的プロセスは、生体内で、例えば、医薬品分布、代謝及び排泄によって医薬品に作用する。一般的には、これらの生物学的プロセスは、静脈内注射後に医薬品が生体内で経験する生物学的プロセスと一致する。循環中に残っている医薬品の量は、薬物動態(PK)プロファイルによって表され得る。本明細書に記載の方法は、プロセスに関連する特定のパラメータを含めて、これらの全てのプロセスを考慮し、且つPKプロファイルを用いて、経口医薬剤形が移動してGI管を通る場合、経口医薬剤形から経時的に放出されるべき医薬品の量を確定することができる。
【0044】
図1は、経口医薬剤形を設計するための例示的ワークフローを示し、該経口医薬剤形は、本明細書に記載の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。簡単に言えば、いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量の数学的デコンボリューションを用いて、目的プロファイルを処理することにより、模擬医薬品放出吸収速度プロファイルを確定する。そして、模擬医薬品放出吸収速度プロファイルを二つの平行なトレースで行われる計算に用いて、模擬医薬品放出プロファイルを確定する。具体的には、一つのトレースは、医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することに関する。平行なトレースは、医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを利用して、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを最初に確定することに関する。そして、該医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルを用いて、GI医薬品要求量プロファイル(GI管における経口医薬剤形からの吸収にとって必要で、可溶性である医薬品の量のプロファイル)を確定する。そして、医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて模擬医薬品放出プロファイルを確定する。模擬医薬品放出プロファイルは、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形の設計を可能にする。
【0045】
いくつかの実施例において、該方法は、(a)該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する胃腸管(GI)位置における医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置でのGI管の液体体積に基づいて確定されることと、(b)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0046】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルを確定することは、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルをデコンボリューションすることを含む。いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む。
【0047】
本明細書に記述されている特徴のいくつかの態様では、経口医薬剤形は、位置と時間(例えば、経口医薬剤形の投与後に確定された時間)との間に関係がある。いくつかの実施例において、本発明の特徴、例えば、プロファイル、例えば、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、経口医薬剤形が移動してGI管を通る時間と位置との間の関係に基づいて、時間又は位置又はその両方で記述され得る。いくつかの実施例において、本明細書による記述は、時間又は位置のうちの一方を対象としており、且つ記述された時間と位置との間の関係が時間ベースの特徴を位置ベースの特徴に変換することに用いることができ、その逆も同様であることを排除することを意図していない。例えば、いくつかの実施例において、これらの方法は、時間ベースの医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを用いる。いくつかの実施例において、これらの方法は、位置ベースの医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを用いる。いくつかの実施例において、これらの方法は、時間及び位置ベースの医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを用いる。
【0048】
いくつかの態様では、本発明の特徴は、プロファイルとして記述されている。いくつかの実施例において、プロファイルは、時間及び/又は位置ベースの一つ又は複数のデータポイントを含む。例えば、模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量に関する情報を含み、且つ時間(例えば、投与後に測定された)及び/又は位置に基づいてもよい。特に断りのない限り、プロファイル又はデータポイントによる本発明の特徴に対する記述は、そのような特徴付けに限定されることを意図していない。本明細書に記載されるように、いくつかの実施例において、投与後に経口医薬剤形が移動してGI管を通る時間経過の関数としての時間と位置との関連に基づいて、時点は、GI位置の代理として機能することができ、且つその逆も同様である(時間ゼロ)。いくつかの実施例において、プロファイルは、時間ベースのデータポイントを含み、ここで、時点は、間隔、例えば、一定の1時間間隔で現れる。データポイントが時間に基づく場合、時間間隔は、任意の所望の時間間隔であってもよい。いくつかの実施例において、プロファイルは、位置に基づくデータポイントを含み、例えば、GI管の解剖学的部分、例えば、胃、十二指腸、空腸、回腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸及び直腸に基づくデータポイントを含む。そのため、本明細書による記述において、時点(及びそのプロファイル)についての議論は、時間及び/又は位置情報を含むか又はそれに拡張することができ、位置ポイント(及びそのプロファイル)についての議論は、時間及び/又は位置情報を含むか又はそれに拡張することができる。
【0049】
該方法のいくつかの特徴は、以下のセクションでより詳細に記述され、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定するステップを含む。これらの特徴のモジュール化された議論は、本明細書に記述されている方法の範囲を限定することを意図しておらず、且つ本明細書による教示を用いて、モジュール化して記述された様々な特徴を容易に組み合わせて、本明細書による方法の完全な範囲を達成することができる。
【0050】
A. 目的PKプロファイル
いくつかの態様では、該方法は、目的PKプロファイルを得る(例えば、確定する)ことを含む。目的PKプロファイルは、医薬品の経時的血漿中濃度、例えば、経口医薬剤形が投与された後の血漿中濃度を含む。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、例えば、有効性、安全性及び投与の利便性を改善するために、個体における時間の関数としての任意の所望の医薬品血漿中濃度に基づいてもよい。例えば、いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、関連する医薬品の所望の有効性、例えば、有効性に基づく目的PKプロファイルに基づくものである。目的PKプロファイルは、予め確定された任意の時間量であってもよい。例えば、いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、約6時間から1週間の期間にわたって継続する。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、約24時間の期間にわたって継続する。
【0051】
いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、参照投与レジメンに基づいて設計される。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルと生物学的同等性を有する。いくつかの実施例において、生物学的同等性は、生物学的同等性の規制、例えば、米国食品医薬品局(FDA)により確立されたものに基づいて定義される。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルは、参照PKプロファイルに基づくものであり、ここで、目的PKプロファイルの一つ又は複数の特徴(例えば、AUC又はCmax)を所望のレベル(例えば、参照PKプロファイルに比べて減少又は増加したパーセント)に調節する。医薬品のPK曲線を測定するための技術(例えば、参照PKプロファイル)は、当分野に既知のものである。例えば、Hellerら,Annu Rev Anal Chem[分析化学の年度コメント],11,2018、及びGhandforoush-Sattariら,J Amino Acids[アミノ酸雑誌],文書ID 346237,第2010巻を参照されたい。
【0052】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0053】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-tの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0054】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。
【0055】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCmaxの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。
【0056】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0057】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのCの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0058】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが投与後24時間である。
【0059】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのC24hの比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有し、ここで、24hが投与後24時間である。
【0060】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-∞の比について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。
【0061】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の投与レジメンと参照投与レジメンとのAUC0-∞の比の相対的平均値について、目的PKプロファイルは、約80%~約125%の範囲内に収まる少なくとも90%の信頼区間を有する。
【0062】
いくつかの実施例において、目的PKプロファイルのAUC0-t、Cmax及びCは、参照投与レジメンの参照PKプロファイルの許容される閾値内にあり、ここで、tが、予め確定された時間経過に基づくものである。
【0063】
B. 医薬品吸収速度プロファイル
いくつかの態様では、該方法は、目的PKプロファイルを得るように構成される医薬品吸収速度プロファイルを得る(例えば、確定する)ことを含む。いくつかの実施例において、目的PKプロファイルを得るために、医薬品吸収速度プロファイルは、例えば、経口医薬剤形投与後の、医薬品の経時的取り込み速度を含む。医薬品吸収速度プロファイルは、予め確定された任意の時間量であってもよい。いくつかの実施例において、模擬医薬品吸収速度プロファイルの時間長は、例えば、目的PKプロファイルと一致する時間長に基づくものである。
【0064】
いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルは、医薬品の処置プロファイルを用いた、式Iによる目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づくものであり、
【数5】
式I、
ここで、L及びL-1は、ラプラス変換及びラプラス逆変換であり、ここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品吸収速度プロファイルに基づくものであり、且つここで、Cp,経口(t)及びCp,処置(t)は、それぞれ、経口投与時間及び処置時間の関数としての血漿レベル濃度プロファイルに基づくものである。
【0065】
いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルは、医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づくものである。
【0066】
いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、医薬品の経時的血漿中濃度を含む。いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、GI管から吸収された後の医薬品の運命を反映している。例えば、いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、生物学的プロセス、例えば、分布、代謝及び排泄の関数としての、血漿中に残存する医薬品の量を反映している。いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、医薬品が非経口経路で投与される場合に、経時的に測定された医薬品の血漿中濃度を含む。いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、医薬品が非経口経路で投与される場合の複数の時点での医薬品の血漿中濃度を含む。いくつかの実施例において、非経口経路は、静脈内ボーラス(IV)投与である。いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、既知のプロファイルである。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品の処置プロファイルを得ること、例えば、医薬品がIV投与された後に、医薬品の経時的血漿中濃度を測定することをさらに含む。
【0067】
いくつかの実施例において、医薬品の処置プロファイルは、一定量の医薬品を非経口投与(例えば、IV投与)した後に得られ、ここで、IV製剤における医薬品の量は、医薬品が経口投与される場合にGI管から吸収された医薬品の量に基づくものである。例えば、経口投与される医薬品の既知の生物学的利用度は、一定量の医薬品を含む経口投与剤形から吸収される医薬品の量を評価することに用いることができ、それによって、非経口投与される医薬品の量は、経口投与医薬剤形から吸収される医薬品の量に近似し模擬する。いくつかの実施例において、IV製剤における医薬品の量は、経口投与された医薬剤形における医薬品の量と生物学的同等性を有する。
【0068】
いくつかの実施例において、該方法は、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルに対してデコンボリューションを行うことをさらに含む。デコンボリューションに用いられる技術は、当分野に既知のものであり、且つWagner-Nelson法、数値法及び数学的デコンボリューションを含む。
【0069】
C. 医薬品吸収量プロファイル
いくつかの態様では、該方法は、医薬品吸収量プロファイルを得る(例えば、確定する)ことを含む。いくつかの実施例において、医薬品吸収量プロファイルは、経口医薬剤形から経時的に吸収された医薬品の量を含む。医薬品吸収量プロファイルは、予め確定された任意の時間量であってもよい。いくつかの実施例において、医薬品吸収量プロファイルの時間長は、例えば、目的PKプロファイル及び/又は医薬品吸収速度プロファイルと一致する時間長に基づくものである。いくつかの実施例において、該方法は、時点(例えば、投与後の時点)で経口医薬剤形から吸収された医薬品の量を得る(例えば、確定する)ことを含む。
【0070】
いくつかの実施例において、時点で経口医薬剤形から吸収された医薬品の量は、医薬品吸収速度プロファイル及び時間間隔に基づくものである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形から吸収された医薬品の量は、式IVに基づくものであり、
【数6】
式IV、
ここで、Qabs(t)は、時間の関数として、経口医薬剤形から吸収された医薬品の量であり、且つここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品の吸収速度である。本明細書に記載されるように、時間間隔は、所望の時間間隔に基づいて選択され得る。いくつかの実施例において、時間間隔は1時間である。
【0071】
D. 医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイル
いくつかの態様では、該方法は、GI管の時点及び/又は位置での経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量を得る(例えば、確定する)ことを含む。いくつかの実施例において、該時点及び/又は位置での経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、該時点又は位置での、GI管における医薬品の所望の位置における医薬品の透過率値、及び該時点又は位置に関連するGI管の液体体積に基づくものである。本明細書に記載されるように、経口医薬剤形は、GI管における時間と位置との間に関係があり、且つ投与後に測定された時間及びGI管位置に基づいて提供された情報を変換することができる。
【0072】
いくつかの実施例において、GI管の時点及び/又は位置での経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量を確定することは、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを使用することを含む。本明細書に記載されるように、時点及び/又は位置での経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、上流で経口医薬剤形から放出され吸収されていない医薬品の量の一部分、及び経口医薬剤形から新たに放出された医薬品の量に基づくものである。いくつかの態様では、該方法は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを得る(例えば、確定する)ことを含む。医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、医薬品吸収速度プロファイルを得るために必要であり、GI管における経口医薬剤形からの経時的及び/又は位置依存的医薬品濃度を含む。本明細書に記述されている方法において、GI管の位置における経口医薬剤形からの医薬品濃度と、該位置での医薬品の透過率とは相互作用する。例えば、一定の吸収速度プロファイルは、様々な濃度-透過率組み合わせを有し得る。いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、例えば、透過率に基づいて、選択された医薬品濃度の時間又は位置プロファイルである。医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、予め確定された任意の時間量であってもよい。いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルの時間長は、例えば、目的PKプロファイル及び/又は医薬品吸収速度プロファイル及び/又は医薬品吸収量プロファイルと一致する時間長に基づくものである。いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、投与後時間に基づく医薬品濃度情報又はGI管における位置に基づく医薬品濃度情報を含む。いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、GI管における時間及び位置に基づく濃度情報を含む。
【0073】
いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づくものである。いくつかの実施例において、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、GI管における医薬品の位置(例えば、関連する時点)での透過率値を含む。いくつかの実施例において、医薬品濃度又は位置プロファイルは、式IIに基づくものであり、
【数7】
式II、
ここで、C(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって可溶性である医薬品濃度であり、ここで、qabs(t/x)は、時間又は位置の関数としての医薬品の吸収速度であり、且つここで、P(t/x)は、時間又は位置の関数としての医薬品透過率である。式IIに示すように、医薬品の透過率の調整は、所望の吸収速度に達するために必要な医薬品濃度に影響を与え、その逆も同様であり、それによって様々な濃度-透過率組み合わせを生成する。そのため、いくつかの実施例において、本明細書に記述されている方法は、選択された濃度-透過率組み合わせを使用することを含む。
【0074】
いくつかの実施例において、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルであり、例えば、既知の文献のプロファイルに基づくものである。いくつかの実施例において、該方法は、例えば、GI管領域の医薬品吸収研究を介して、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルを得ることをさらに含む。いくつかの実施例において、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルの透過率値は、透過率値に関連するGI管の位置の腸表面積を示す。
【0075】
いくつかの態様では、該方法は、GI管の位置における経口医薬剤形からの吸収及び/又は医薬品濃度時間又は位置プロファイルに基づくある時点での吸収にとって必要な医薬品の量を得る(例えば、確定する)ことを含む。いくつかの実施例において、GI管の位置における経口医薬剤形からの吸収、例えば、ある時点での吸収にとって必要な医薬品の量は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づくものである。いくつかの実施例において、投与後の、GI管の位置及び/又はある時点での吸収にとって必要な医薬品の量は、GI医薬品要求量プロファイルによって表される。いくつかの実施例において、GI医薬品要求量プロファイル、又はGI管の位置及び/又はある時点での経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量は、式IIIに基づくものであり、
【数8】
式III、
ここで、QGIT(t/x)は、時点又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量であり、ここで、CGIT(t/x)は、時点又は位置の関数としての、経口医薬剤形からの、GI管において可溶性である医薬品の濃度であり、ここで、VGIT(t/x)は、時点又は位置の関数としてのGI管の液体体積である。
【0076】
いくつかの実施例において、GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、既知のプロファイルである。いくつかの実施例において、該方法は、GI液体体積の時間又は位置プロファイルを得ることを含む。いくつかの実施例において、GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、個体の状況又は状態を反映している。例えば、いくつかの実施例において、GI液体体積の時間又は位置プロファイルは、食品状況、例えば、経口医薬剤形が投与される場合の個体の摂食又は断食状態を反映することができる。
【0077】
E. 模擬医薬品放出プロファイル及び累積医薬品放出プロファイル
いくつかの態様では、該方法は、模擬医薬品放出プロファイル及び/又は模擬累積医薬品放出プロファイルを得る(例えば、確定する)ことを含む。模擬医薬品放出プロファイル及び模擬累積医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から経時的に放出される医薬品の量に基づくものであり、本明細書に記載されるように、GI管における位置に関連してもよい。具体的には、いくつかの実施例において、模擬医薬品放出プロファイルは、ある時点で経口医薬剤形から放出される医薬品の量に基づくものであり、且つ模擬累積医薬品放出プロファイルは、ある時点で経口医薬剤形から放出される医薬品の累積量に基づくものである。
【0078】
いくつかの実施例において、医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて模擬医薬品放出プロファイルを確定する。いくつかの実施例において、式Vを用いて模擬医薬品放出プロファイルを確定する。式Vは、
【数9】
式V、
であり、
ここで、QGI放出(t/x)は、tの時間又はxのGI管位置において経口医薬剤形から放出される医薬品の量であり、ここで、QGIT(t/x)は、tの時間又はxのGI管位置においてGI管における経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量であり、ここで、QGIT(ti-1/xi-1)は、ti-1の時間又はxi-1のGI管位置においてGI管における経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量であり、且つここで、Qabs(t)は、tの時間において経口医薬剤形から吸収された医薬品の量であり、且つQabs(ti-1)は、ti-1の時間において経口医薬剤形から吸収された医薬品の量である。
【0079】
いくつかの実施例において、式VIを用いて模擬累積医薬品放出プロファイルを確定する。式VIは、
【数10】
式VI、
であり、
ここで、QGI累積放出(t)は、時間の関数として経口医薬剤形から放出される医薬品の累積量であり、且つここで、QGI放出(t)は、時間の関数として経口医薬剤形から放出される医薬品の量である。
【0080】
いくつかの実施例において、式VIIを用いて模擬累積医薬品放出プロファイルを確定する。式VIIは、
【数11】
式VII、
である。
【0081】
F. 吸収を最適化するための方法
いくつかの態様では、本明細書は、本明細書に記述されている設計方法及び経口医薬剤形と組み合わせて使用することができる、吸収を最適化するための技術を提供する。いくつかの実施例において、最適化技術は、医薬品の透過率を調節することを含む。いくつかの実施例において、最適化技術は、医薬品溶解度を調節することを含む。いくつかの実施例において、最適化技術は、GI管における時間及び/又は位置に基づいて医薬品の放出を調節することを含む。
【0082】
いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、例えば、胃液、腸液又は結腸液を用いた人工模擬条件から得られたデータに基づいて、目的PKプロファイルを達成するために必要なGI管における医薬品濃度が医薬品溶解度を超えたことを示す。図8Aを参照されたい。いくつかの実施例において、所望の吸収速度プロファイルを実現するために必要なGI管における医薬品濃度が医薬品溶解度を超えた場合、医薬品溶解度を調節し、例えば、医薬品溶解度を増加してもよい。いくつかの実施例において、医薬品溶解度は、医薬品の異なる形態及び/又は製剤(例えば、医薬品の非晶質固体分散体(ASD))を使用することによって、調節(例えば、増加)される。いくつかの実施例において、溶解度増強剤、例えば、賦形剤を使用することによって、医薬品溶解度を調節し、例えば、医薬品溶解度を増加する。いくつかの実施例において、溶解度増強剤は、経口医薬剤形に含まれている。いくつかの実施例において、溶解度増強剤は、制御された態様(例えば、制御された位置での制御された量)で経口医薬剤形から放出される。
【0083】
いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、GI管において目的PKプロファイルを実現するために必要な医薬品濃度と医薬品溶解度との間の指示される一貫性を説明するように、調節されてもよい。いくつかの実施例において、また医薬品の透過率を調節して吸収速度を調節し、ここで、医薬品濃度を調節するか又は調節しない。本明細書に記載されるように、提供される方法において、GI管の位置における経口医薬剤形からの医薬品濃度と該位置における医薬品の透過率とは相互作用する。いくつかの実施例において、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを調節するために、医薬品の透過率を増強してもよい。いくつかの実施例において、排出ポンプを阻害することによって医薬品の透過率を調節し、例えば、排出ポンプ阻害剤(例えば、P-gp阻害剤)を使用することによって、医薬品透過率を増強する。いくつかの実施例において、医薬品透過を増強することによって医薬品の透過率を調節し、例えば、透過率増強剤を用いて医薬品透過率を増強する。いくつかの実施例において、排出ポンプ阻害剤及び/又は透過率増強剤は、経口医薬剤形に含まれている。いくつかの実施例において、排出ポンプ阻害剤及び/又は透過率増強剤は、制御された態様(例えば、制御された位置での制御された量)で経口医薬剤形から放出される。
【0084】
図8Bに示すように、医薬品透過率値の調節は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを変えることができる。図8Bは、(a)投与0~24時間後の透過率値が元の透過率値の1.4倍になり、(b)投与3(空腸)~24時間後の透過率値が元の透過率値の1.4倍になり、(c)投与8(結腸)~24時間後の透過率値が元の透過率値の1.4倍になり、(d)投与8(結腸)~24時間後の透過率値が元の透過率値の1.8倍になる場合に医薬品濃度の時間又は位置プロファイルに与える影響を示している。
【0085】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、QGIT(t/x)に影響を与えるように最適化され、ここで、QGIT(t/x)は、位置及び/又は時間の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品の量である。いくつかの実施例において、医薬品が経口医薬剤形から放出される時間及び位置に応じて、経口医薬剤形から放出される医薬品の最適化は、医薬品透過率及び/又は医薬品溶解度及びそれらの間の相互作用を改善することに基づいて行われる。
【0086】
いくつかの実施例において、本明細書に記述されている方法では、一つ以上の最適化方法が用いられる。例えば、いくつかの実施例において、医薬品の溶解度、透過率及び放出のうちの任意の一つ又は複数を調節する。
【0087】
いくつかの実施例において、これらの方法は、個体における医薬品の目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形の最適化設計を選択することを含む。
【0088】
G. 経口医薬剤形の例示的設計方法
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)模擬医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルを確定することは、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルをデコンボリューションすることを含む。いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む。
【0089】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計するために、該経口医薬剤形を設計することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することを含み、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含む。いくつかの実施例において、医薬品吸収速度プロファイルを確定することは、医薬品の処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルをデコンボリューションすることを含む。いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて推定医薬品放出プロファイルを確定することをさらに含む。
【0090】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の設計方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成され、該方法は、(a)目的PKプロファイルの数学的デコンボリューションに基づいて、消化管(GI)における医薬品の医薬品吸収速度プロファイルを生成して、医薬品の処置プロファイル(例えば、医薬品を静脈ボーラス投与後の医薬品のPKプロファイルに基づく処置プロファイル)をそこから除去することと、(b)時間及び/又は位置の関数として医薬品濃度-透過率相互作用を模擬して、医薬品吸収速度プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせを同定することであって、ここで、医薬品濃度及び透過率値の組み合わせが、技術的に実行可能であるか又は望ましくないと同定されることと、(c)医薬品濃度-透過率相互作用の模擬、並びに医薬品吸収速度プロファイル、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせに基づいて、GI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(d)GI医薬品要求量プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することによって、個体における医薬品の目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。いくつかの実施例において、該方法は、累積医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品(及び必要に応じて任意の機能的賦形剤)を放出するために、多区画の経口医薬剤形を設計することをさらに含む。いくつかの実施例において、望ましくない医薬品濃度及び透過率値の組み合わせに対して最適化戦略を実施することによって、医薬品吸収速度プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせを生成する。いくつかの実施例において、最適化戦略は、溶解動態の調節(例えば、増加)、見かけの透過率の調節(例えば、増強)、又は医薬品分解の調節(例えば、阻害)又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、医薬品は、イオン化可能な医薬品であり、例えば、GI生理学的pH範囲の弱酸又は弱塩基である。いくつかの実施例において、イオン化可能な医薬品の場合、総溶解度は、pH-pKa関係(Henderson-Hasselbalch式)によって平衡化されたイオン化種及び非イオン化種の溶解度の和であり、ここで、非イオン化種は、医薬品のイオン化種よりもはるかに大きい透過率を有する。いくつかの実施例において、医薬品は、非イオン化医薬品である。いくつかの実施例において、医薬品は、非イオン化医薬品であり、ここで、総溶解度が、非イオン化分子に基づくものである。いくつかの実施例において、見かけの透過率又は正味の透過率は、負の排出ポンプ効果を含んでもよい。いくつかの実施例において、排出阻害剤の使用は、見かけの透過率を向上させることができる。いくつかの実施例において、該方法は、経口医薬剤形を最適化するために、(例えば、生体関連媒体中での医薬品放出研究、例えば、胃液及び/又は腸液の模擬によって)インビトロ試験を行うことをさらに含む。
【0091】
III. 経口医薬剤形
いくつかの態様では、本明細書は、医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを有するように配合及び構成される経口医薬剤形を提供する。いくつかの実施例において、本明細書は、目的PKプロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、目的PKプロファイルを得るために模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0092】
いくつかの実施例において、目的PKプロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、本明細書に記述されている任意の方法から得られた設計に基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0093】
いくつかの実施例において、目的PKプロファイルを有するように配合及び構成される医薬品を含む経口医薬剤形を提供し、ここで、該経口医薬剤形は、(a)医薬品の処置プロファイル及び経口医薬剤形における医薬品の総量を用いた、目的PKプロファイルに対するデコンボリューションに基づいて、医薬品吸収速度プロファイルを確定することと、(b)医薬品吸収速度プロファイルに基づいて医薬品吸収量プロファイルを確定することと、(c)医薬品吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づいて医薬品濃度の時間又は位置プロファイルを確定することと、(d)医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルに基づいてGI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(e)医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、目的PKプロファイルを得るために、該模擬医薬品放出プロファイルは、経口医薬剤形から放出される医薬品の量を含むことと、(f)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む方法から得られた設計に基づいて医薬品を放出するように配合及び構成される。
【0094】
本明細書による経口医薬剤形は、模擬医薬品放出プロファイルに応じて医薬品を放出するように配合及び構成される任意の設計であってもよく、該模擬医薬品放出プロファイルは、目的PKプロファイルを得るように構成される。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、医薬品を含む材料からの医薬品の拡散に基づいて医薬品を放出する。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、医薬品を含む浸食性材料の浸食に基づいて医薬品を放出する。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、多層構造を含み、該多層構造は、医薬品と混合する第1の浸食性材料の複数の層を含む。浸食に基づく経口医薬剤形の例は、米国特許第10,350,822号に記述されており、それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、区画から医薬品を放出するように構成される。いくつかの実施例において、区画の内容物は、区画の開放及び/又は区画の破裂によって外部環境に暴露される。区画に基づく経口医薬剤形の例は、米国特許第10,143,626号及び10,363,220号並びにWO 2018137686に記述されており、それは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書による開示を用いて、経口医薬剤形を設計及び生産して任意の目的PKプロファイルを得ることができる。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、複雑な目的PKプロファイルを得るために設計される複数の区画を含む。例えば、いくつかの実施例において、多区画経口医薬剤形は、模擬放出プロファイルに基づいて医薬品(及び必要に応じて任意の機能的賦形剤)を放出するように構成される。いくつかの実施例において、区画は、医薬品を含む。いくつかの実施例において、区画は、賦形剤、例えば、機能的賦形剤を含む。いくつかの実施例において、区画は、医薬品と、賦形剤、例えば、機能的賦形剤とを含む。いくつかの実施例において、多区画経口医薬剤形の各区画は、投与後の所望の時間及び/又は所望の速度でその中の内容物、例えば、医薬品を放出することができる。いくつかの実施例において、多区画経口医薬剤形の区画は、その中の内容物を調和された方式で放出するように調和され、それによって目的PKプロファイルを得る。
【0096】
本発明の医薬剤形は、例えば、特定の個体、例えば、子供又は大人への経口投与に適した任意のサイズ、形状又は重量であってもよい。いくつかの実施例において、経口医薬剤形のサイズ、形状又は重量は、経口医薬剤形が投与される個体の属性に基づいて選択される。いくつかの実施例において、個体の属性は、体長、体重、年齢又は生化学的パラメータのうちの一つ又は複数である。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の形状は、円筒形、楕円形、弾丸形、矢印形、三角形、円弧三角形、正方形、円弧正方形、長方形、円弧長方形、菱形、五角形、六角形、八角形、半月形、アーモンド形又はそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形のサイズ及び形状は、個体への経口投与に適する。
【0097】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、例えば、経口医薬剤形の外面にわたって測定される断面サイズ(例えば、経口医薬剤形の表面にわたる最大断面サイズ)を有し、それは、約22mmより小さく、例えば、約21mm、20mm、19mm、18mm、17mm、16mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmのうちのいずれか一つより小さい。いくつかの実施例において、医薬剤形は、例えば、経口医薬剤形の外面にわたって測定される断面サイズ(例えば、経口医薬剤形の表面にわたる最大断面サイズ)を有し、それは、約1mm~約22mmであり、例えば、約21mm、20mm、19mm、18mm、17mm、16mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、又は2mmのうちのいずれか一つである。
【0098】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の厚さは、約1mm~約25mmであり、例えば、約2mm~約10mm、約5mm~約12mm、約8mm~約15mm、約5mm~約10mm、約7mm~約9mmのうちのいずれか一つである。いくつかの実施例において、用量単位の厚さは、約25mmより小さく、例えば、約24mm、23mm、22mm、21mm、20mm、19mm、18mm、17mm、16mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、又は1mmのうちのいずれか一つより小さい。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の厚さは、約1mmより大きく、例えば、約2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、又は25mmのうちのいずれか一つより大きい。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の厚さは、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mm、又は25mmのうちのいずれか一つである。
【0099】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、約2000mg~約0.01mgの一定量の医薬品を含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、約2000mgより小さい一定量の医薬品を含み、例えば、約1900mg、1800mg、1700mg、1600mg、1500mg、1400mg、1300mg、1200mg、1100mg、1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mg、100mg、75mg、50mg、45mg、40mg、35mg、30mg、25mg、20mg、15mg、10mg、5mg、4mg、3mg、2mg、1mg、0.75mg、0.5mg、0.25mg、又は0.1mgのうちのいずれか一つより小さい。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、約2000mg、1900mg、1800mg、1700mg、1600mg、1500mg、1400mg、1300mg、1200mg、1100mg、1000mg、900mg、800mg、700mg、600mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mg、100mg、75mg、50mg、45mg、40mg、35mg、30mg、25mg、20mg、15mg、10mg、5mg、4mg、3mg、2mg、1mg、0.75mg、0.5mg、0.25mg、又は0.1mgのうちのいずれか一つの一定量の医薬品を含む。
【0100】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の総重量は、約50mg~約2500mgであり、例えば、約50mg~約150mg、約150mg~約250mg、約250mg~約350mg、約350mg~約450mg、約450mg~約550mg、約550mg~約650mg、約650mg~約750mg、約750mg~約850mg、約850mg~約950mg、約950mg~約1050mg、約1050mg~約1150mg、約1150mg~約1250mg、約1250mg~約1350mg、約1350mg~約1450mg、約1450mg~約1550mg、約1550mg~約1650mg、約1650mg~約1750mg、約1750mg~約1850mg、約1850mg~約1950mg、約1950mg~約2050mg、約2050mg~約2150mg、約2150mg~約2250mg、約2250mg~約2350mg、又は約2350mg~約2450mgのうちの約いずれか一つである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の総重量は、少なくとも約50mgであり、例えば、少なくとも約100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、650mg、700mg、750mg、800mg、850mg、900mg、950mg、1000mg、1100mg、1200mg、1300mg、1400mg、1500mg、1600mg、1700mg、1800mg、1900mg、2000mg、2100mg、2200mg、2300mg、2400mg、又は2500mgのうちのいずれか一つである。いくつかの実施例において、経口医薬剤形の総重量は、約2500mgより小さく、例えば、約2400mg、2300mg、2200mg、2100mg、2000mg、1900mg、1800mg、1700mg、1600mg、1500mg、1400mg、1300mg、1200mg、1100mg、1000mg、950mg、900mg、850mg、800mg、750mg、700mg、650mg、600mg、550mg、500mg、450mg、400mg、350mg、300mg、250mg、200mg、150mg、100mg、又は50mgのうちのいずれか一つより小さい。
【0101】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、複数の医薬品を含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形が複数の医薬品を含む場合、経口医薬剤形は、各医薬品の目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される。
【0102】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、別の薬剤、例えば、溶解度増強剤、透過率増強剤、排出ポンプ阻害剤又はGI管中の医薬品を安定化する薬剤のうちのいずれか一つ又は複数をさらに含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、別の薬剤を(例えば、制御された量及び制御された位置)で制御可能に放出するように構成及び配合される。いくつかの実施例において、他の薬剤は、経口医薬剤形の医薬品と混合される。いくつかの実施例において、他の薬剤は、経口医薬剤形の医薬品と別個に、例えば、別個の区画に含まれる。
【0103】
IV. 経口医薬剤形の調製方法
いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記述されている方法で設計される経口医薬剤形の製造方法、例えば、三次元(3D)印刷を提供する。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように構成及び配合され、該模擬医薬品放出プロファイルは、目的PKプロファイルを得るように設計される。
【0104】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の製造方法を提供し、該方法は、該経口医薬剤形を印刷することを含み、ここで、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように設計され、該設計方法は、(a)該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する胃腸管(GI)位置における医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置でのGI管の液体体積に基づいて確定されることと、(b)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含む。
【0105】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の製造方法を提供し、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的PKプロファイルを提供するように構成及び配合され、該方法は、(a)該目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルを確定することであって、ここで、該模擬医薬品放出プロファイルは、予め確定された時間経過における複数の時点で該経口医薬剤形から放出される該医薬品の量を含み、且つここで、該模擬医薬品放出プロファイルの各時点は、該時点で吸収された該医薬品の量、該時点に関連する胃腸管(GI)位置における医薬品の透過率値、及び該時点に関連する位置でのGI管の液体体積に基づいて確定されることと、(b)模擬医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品を放出するように該経口医薬剤形を設計することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することとを含み、経口医薬剤形の設計に基づいて経口医薬剤形を印刷する。
【0106】
いくつかの実施例において、該方法は、本明細書に記載の経口医薬剤形を3D印刷することを含む。
【0107】
本明細書に使用されるように、「印刷」、「三次元印刷」、「3D印刷」、「積層造形」又はそれらの等価物は、デジタル設計を用いて、三次元物体(例えば、医薬剤形)を層毎に製造するプロセスを指す。三次元印刷の基本的プロセスは、米国特許第5,204,055号、5,260,009号、5,340,656号、5,387,380号、5,503,785号、及び5,633,021号に記述されている。三次元印刷に関連する他の米国特許及び特許出願は、米国特許第5,490,962号、5,518,690号、5,869,170号、6,530,958号、6,280,771号、6,514,518号、6,471,992号、8,828,411号、米国公開番号2002/0015728、2002/0106412、2003/0143268、2003/0198677、2004/0005360を含む。上記米国特許及び特許出願の内容は、全体として参照により組み込まれる。
【0108】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の経口医薬剤形を製造するために積層造形技術が使用される。いくつかの実施例において、本明細書に記載の経口医薬剤形を製造するために交互積層技術が使用される。
【0109】
医薬剤形製造のために、原材料、機器、及び固化に関して様々な3D印刷方法が開発されてきた。これらの3D印刷方法としては、結合剤堆積(Gibsonら,Additive Manufacturing Technologies:3D Printing,Rapid Prototyping,and Direct Digital Manufacturing.[積層造形技術:3D印刷、ラピッドプロトタイピング及びダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング],第2版. シュプリンガー社(Springer),ニューヨーク,2015、Katstraら,Oral dosage forms fabricated by three dimensional printing[三次元印刷により調製される経口剤形],J Control Release[制御放出雑誌],66,2000、Katstraら,Fabrication of complex oral delivery forms by three dimensional printing[三次元印刷技術による複雑な口腔内送達形態の製造],材料工学博士学位論文(Dissertation in Materials Science and Engineering),マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology),2001、Lipsonら,Fabricated:The New World of 3D printing[製造:3D印刷の新世界],ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons,Inc.),2013、Jonathan,Karim 3D printing in pharmaceutics:a new tool for designing customized drug delivery systems[製薬分野の3D印刷:カスタマイズ医薬品送達システムの設計用の新しいツール],Int J Pharm[国際薬学雑誌],499,2016を参照されたい)、材料噴射(Jonathan,Karim,3D printing in pharmaceutics:a new tool for designing customized drug delivery systems[製薬分野の3D印刷:カスタマイズ医薬品送達システムの設計用の新しいツール],Int J Pharm[国際薬学雑誌],499,2016を参照されたい)、押出(Gibsonら,Additive Manufacturing Technologies: 3D Printing,Rapid Prototyping,and Direct Digital Manufacturing.[積層造形技術:3D印刷、ラピッドプロトタイピング及びダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング],第2版.シュプリンガー社(Springer),ニューヨーク,2015を参照されたい)、及び光重合(Melchelsら,A review on stereolithography and its application in biomedical engineering.[光造形法及び医用生体工学におけるその応用の概要]Biomaterials[生体材料],31,2010を参照されたい)が挙げられる。
【0110】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の経口医薬剤形は、押出法を用いて3D印刷される。いくつかの実施例において、3D印刷方法は、二軸押出法を使用することを含む。押出プロセスでは、材料は、ロボット作動印刷ヘッドから印刷ノズルを通って押し出される。粉体床を必要とする結合剤堆積とは異なり、押出法は、任意の基材上に印刷することができる。本明細書に開示される熱可塑性材料、ペースト及びコロイド懸濁液、シリコーン、並びに他の半固体を含む様々な材料を三次元印刷用に押し出すことができる。1つの一般的な押出印刷タイプは、固体ポリマーフィラメントを使用して印刷する溶融堆積モデリングである。溶融堆積モデリングでは、ギアシステムは、押出のために加熱ノズルアセンブリにフィラメントを送る(Gibsonら,Additive Manufacturing Technologies:3D Printing,Rapid Prototyping,and Direct Digital Manufacturing[積層造形技術:3D印刷、ラピッドプロトタイピング及びダイレクト・デジタル・マニュファクチャリング],第2版.シュプリンガー社(Springer),ニューヨーク,2015を参照されたい)。
【0111】
いくつかの実施例において、本明細書に記述されている3D印刷方法は、連続供給法を含む。
【0112】
いくつかの実施例において、本明細書に記述されている3D印刷方法は、バッチ供給法を含む。
【0113】
いくつかの実施例において、3D印刷は、溶融堆積モデリング(FDM)によって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、非フィラメントFDMによって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、溶融押出堆積(melt extrusion deposition、MED)によって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、インクジェット印刷によって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、選択的レーザー焼結(SLS)によって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、ステレオリソグラフィ(SLA又はSL)によって行われる。いくつかの実施例において、3D印刷は、PolyJet、マルチジェット印刷システム(MJP)、Perfactory、固体物体紫外レーザープリンタ、Bioplotter、3Dバイオプリンティング、急速凍結プロトタイピング、卓上システム、選択的堆積積層(SDL)、ラミネートオブジェクトの製造(LOM)、超音波圧密、カラージェット印刷(CJP)、EOSINTシステム、レーザー加工ネットシェイピング(LENS)及びエアロゾル噴射システム、電子ビーム溶融(EBM)、レーザーCUSING(登録商標)、選択的レーザー溶融(SLM)、Phenix PXTMシリーズ、マイクロ焼結、ダイレクトパーツマーキング(DPM)又はVXシステムによって行われる。
【0114】
いくつかの実施例において、三次元印刷は、3D印刷技術、例えば、FDMと組み合わせてホットメルト押出によって行われる。
【0115】
いくつかの実施例において、三次元印刷は、溶融押出堆積(MED)によって行われる。いくつかの実施例において、溶融押出堆積技術は、分配される材料を調製し、例えば、ホットメルト押出機内で粉末を調製し、そして材料をMED印刷ヘッド内に供給することを含む。そしてMED印刷ヘッドは、材料を分配し、積層方式(層ごとに堆積)で遅延徐放性経口医薬剤形を形成する。いくつかの実施例において、医薬剤形の各材料、例えば、第1の成分及び膨潤性成分は、異なるMED印刷ヘッドにより分配される。いくつかの実施例において、MED印刷ヘッドは、一つ又は複数のgcodeファイルにコンパイルされた命令に従って材料を分配する。例示的MED技術は、例えば、WO2019/137333、WO 2018137686及び米国特許第10,201,503号に開示され、それらは、それぞれその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の経口医薬剤形の製造方法は、3D印刷技術、例えば、別の方法と組み合わせる3D印刷、例えば、射出成形と3D印刷との組み合わせを含む。
【0117】
本明細書に開示される医薬剤形を3D印刷するための方法命令は、直接コーディング、ソリッドCADモデルからの導出、又は3Dプリンタのコンピュータインターフェース及びアプリケーションソフトウェアに固有の他の手段を含む様々な方法で生成することができる。これらの命令は、液滴の数及び空間的位置に関する情報、並びに一般的な3D印刷パラメータ(例えば、各線形次元(X、Y、Z)における液滴間隔、及び流体の体積又は質量/液滴)に関する情報を含んでもよい。所定の材料セットに対して、これらのパラメータを調整して作成する構造の品質を向上させることができる。作成する構造の全体的な解像度は、粉末粒子サイズ、液滴サイズ、印刷パラメータ及び材料特性の関数である。
【0118】
3D印刷は、一連の医薬品材料を処理し組成及び構造を局所的に制御することができるため、本発明による複雑な幾何学的形状及び組成を有する経口医薬剤形の製造に非常に適している。
【0119】
本出願に記述されている経口医薬剤形及びその成分は、商業的規模で印刷することができる。例えば、いくつかの実施例において、本明細書に開示される方法は、適切な商業的価格で経口医薬剤形を3D印刷することに用いられ得る。
【0120】
3D印刷方法で医薬剤形を製造することは、個別化医療にも有利である。個別化医療は、バイオマーカーに基づいて患者群を階層化し、治療の決定及び個別化剤形設計を支援することを指す。物理的な機器の修正よりもデジタル設計を修正する方が容易である。なお、自動化された小規模な三次元印刷の運用コストは無視できるほどである。そのため、3D印刷は、複数の少量の個別化されたバッチを経済的に実現可能にし、コンプライアンスの向上を目的とする個別化剤形を実現することができる。
【0121】
個別化医薬剤形は、患者の身長、体重、生化学的パラメータ、遺伝又は代謝及びそれらの任意の組み合わせに応じて、送達される医薬品の量を調整することを可能にする。3D印刷剤形は、成長中の児童への正確な投与を確実にするか又は高効率の医薬品の個別化投与を可能にすることができる。個別化剤形はさらに、患者の全ての医薬品を単一の1日用量に統合することによって、患者の医薬品に対する持続性及び治療コンプライアンスを向上させることができる。
【0122】
いくつかの実施例において、3D印刷のための方法は、目的PKプロファイルを得るように構成される模擬医薬品放出プロファイルに基づいて、本明細書に記載の経口医薬剤形を設計し、設計された経口医薬剤形を印刷することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、模擬医薬品放出プロファイル及び/又は経口医薬剤形のパラメータをコンピュータシステムに入力することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、一つ又は複数の印刷対象パラメータ、例えば、層表面積、厚さ、医薬品質量分率、浸食速度、区画サイズ、区画放出時間を提供することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、印刷対象の経口医薬剤形の仮想画像を作成することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、予め確定されたパラメータを含むコンピュータモデルを作成することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、予め確定されたパラメータを3Dプリンタに提供し、このような予め確定されたパラメータに基づいて品物を印刷することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、予め確定されたパラメータに基づいて印刷対象の品物の3D図面を作成することを含み、ここで、該3D図面は、コンピュータシステムで作成される。いくつかの実施例において、該方法は、3D図面を3D印刷コード、例えば、Gコードに変換(例えば、スライス)することを含む。いくつかの実施例において、該方法は、コンピュータシステムを用いて3D印刷コードを実行することによって、本明細書に記述されている方法に従って印刷することを含む。
【0123】
当業者であれば、本出願の開示の範囲及び趣旨内で、いくつかの実施例が可能であることを認識できる。本開示は、以下の例によってさらに説明され、これらの例は、本開示の範囲又は精神をそれらに記述されている特定のプロセスに限定するものとして解釈されるべきではない。
【0124】
いくつかの実施例において、経口医薬剤形の製造方法を提供し、該方法は、該経口医薬剤形を印刷することを含み、ここで、該経口医薬剤形は、個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように設計され、該設計方法は、(a)目的PKプロファイルの数学的デコンボリューションに基づいて、消化管(GI)における医薬品の医薬品吸収速度プロファイルを生成して、医薬品の処置プロファイル(例えば、医薬品を静脈ボーラス投与後の医薬品のPKプロファイルに基づく処置プロファイル)をそこから除去することと、(b)時間及び/又は位置の関数として医薬品濃度-透過率相互作用を模擬して、医薬品吸収速度プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせを同定することであって、ここで、医薬品濃度及び透過率値の組み合わせが、技術的に実行可能であるか又は望ましくないと同定されることと、(c)医薬品濃度-透過率相互作用の模擬、並びに医薬品吸収速度プロファイル、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせに基づいて、GI医薬品要求量プロファイルを確定することと、(d)GI医薬品要求量プロファイルに基づいて累積医薬品放出プロファイルを確定することによって、個体における医薬品の目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を設計することと、(e)累積医薬品放出プロファイルに基づいて経口医薬剤形を設計することとを含み、ここで、製造方法は、設計された経口医薬剤形を印刷することを含む。いくつかの実施例において、経口医薬剤形は、累積医薬品放出プロファイルに基づいて医薬品(及び必要に応じて任意の機能的賦形剤)を放出するように構成される多区画経口医薬剤形である。いくつかの実施例において、望ましくない医薬品濃度及び透過率値の組み合わせに対して最適化戦略を実施することによって、医薬品吸収速度プロファイルを満たす医薬品濃度及び透過率の組み合わせを生成する。いくつかの実施例において、最適化戦略は、溶解動態の調節(例えば、増加)、見かけの透過率の調節(例えば、増強)、又は医薬品分解の調節(例えば、阻害)又はそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施例において、医薬品は、イオン化可能な医薬品であり、例えば、GI生理学的pH範囲の弱酸又は弱塩基である。いくつかの実施例において、イオン化可能な医薬品の場合、総溶解度は、pH-pKa関係(Henderson-Hasselbalch式)によって平衡化されたイオン化種及び非イオン化種の溶解度の和であり、ここで、非イオン化種は、医薬品のイオン化種よりもはるかに大きい透過率を有する。いくつかの実施例において、医薬品は、非イオン化医薬品である。いくつかの実施例において、医薬品は、非イオン化医薬品であり、ここで、総溶解度が、非イオン化分子に基づくものである。いくつかの実施例において、見かけの透過率又は正味の透過率は、負の排出ポンプ効果を含んでもよい。いくつかの実施例において、排出阻害剤の使用は、見かけの透過率を向上させることができる。いくつかの実施例において、該方法は、経口医薬剤形を最適化するために、(例えば、生体関連媒体中での医薬品放出研究、例えば、胃液及び/又は腸液の模擬によって)インビトロ試験を行うことをさらに含む。
【0125】

例1
本例は、経口医薬剤形の設計を示し、該経口医薬剤形は、ヒト個体における医薬品の目的薬物動態(PK)プロファイルを提供するように配合及び構成される。
【0126】
5mgの医薬品Aを含む参照経口医薬剤形の投与レジメンの、24時間期間にわたる参照PKプロファイル(図2)を得た。医薬品Aの参照PKプロファイルは、24時間の間に参照経口医薬剤形を二回投与する(BID、投与が0時間及び12時間の時点で発生する)場合、個体における医薬品Aの血漿中濃度(ng/mL)を表した。
【0127】
参照PKプロファイルに基づいて目的PKプロファイルを確定した(図2)。目的PKプロファイルは、参照PKプロファイルと生物学的同等性を有する(同じAUC0-24、Cmax及びC24を有することに基づく)ように設計され、ここで、目的PKプロファイルは、10mgの医薬品Aを含有する経口医薬剤形を一日一回投与する(QD)ことに基づくものである。
【0128】
図3に示すように、目的PKプロファイルを用いて、目的PKプロファイルを実現するために必要な医薬品吸収速度プロファイルを確定した。具体的には、まず数学的デコンボリューション及び医薬品Aの処置プロファイルを用いて、目的PKプロファイルに対してデコンボリューションを行った。Matlabソフトウェアを用いて、デコンボリューションを行った。医薬品Aの処置プロファイルは、医薬品Aを静脈内ボーラス(IV)投与した後のヒト臨床研究から得られた。報告された医薬品Aの経口生物学的利用度を考慮すると、医薬品Aの静脈内投与量は経口投与量と生物学的同等性を有する。以上に記載したように、一日一回の経口医薬剤形は、経口剤形において医薬品Aの総量が10mgであるように設計され、5mgのBIDとして与えられた参照医薬品と同じ一日総用量をもたらした。医薬品Aは、経口投与時のヒトにおける生物学的利用度が約43.1%であることが知られている。一時間の時間増分を用いて、医薬品吸収速度プロファイルを確定した。
【0129】
計算された医薬品吸収速度プロファイルを用いて、医薬品A濃度の時間又は位置プロファイルを確定した。図5Aに示すように、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、医薬品Aの吸収速度プロファイル及び医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに基づくものであり、ここで、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、GI管位置又は投与後時間における医薬品の透過率値を含む。本明細書で教示するように、GI管における医薬品の位置は、医薬品投与後の時間に関連し得る。図5Bに示すように、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、位置(例えば、GI管に沿った位置に対する経口医薬剤形の滞在時間情報に基づく)及び/又は投与後時間に基づいてもよい。式IIを用いて、医薬品A濃度の時間又は位置プロファイルを計算した。式IIは、
【数12】
式II、
ここで、C(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって可溶性である医薬品Aの濃度であり、ここで、qabs(t/x)は、時間又は位置の関数としての医薬品Aの吸収速度であり、且つここで、P(t/x)は、時間又は位置の関数としての医薬品Aの透過率である。上記曲線に類似しており、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルは、一時間の時間増分を用いて確定された。
【0130】
透過率の時間又は位置プロファイルは、臨床研究から得られたデータに基づいて確定され、該臨床研究は、局所的GI吸収を研究するために、特別に設計された剤形を投与し、該剤形は、GI管の特定の位置において医薬品を放出し、医薬品Aの経口溶液を含有する。医薬品透過率の時間又は位置プロファイルの透過率値は、透過率値に関連するGI管の位置の腸表面積を示した。本明細書に記載されるように、医薬品透過率の時間又は位置プロファイルは、摂食又は断食状態を含む個体の様々な状態に基づいてもよい。図5A及び5Bによる医薬品A透過率の時間又は位置プロファイルは、摂食状態条件に基づいて計算された。医薬品透過率の時間又は位置プロファイルに類似しており、経口投与後の時間は、GI管内における剤形の所望の位置に関連し得る(図5Aを参照されたい)。図5A及び5Bに示すように、一時間の時間増分を用いて、医薬品A透過率の時間又は位置プロファイルを確定した。
【0131】
濃度の時間又は位置プロファイルを用いて、GI医薬品要求量プロファイルを確定した。具体的には、図6に示すように、医薬品濃度の時間又は位置プロファイル及びGI液体体積の時間又は位置プロファイル並びに式IIIを用いて、GI医薬品要求量プロファイルを確定した。式IIIは、
【数13】
式III、
であり、
ここで、QGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品Aの量であり、ここで、CGIT(t/x)は、時間又は位置の関数として、経口医薬剤形からの吸収にとって可溶性である医薬品Aの濃度であり、且つここで、VGIT(t/x)は、時間又は位置の関数としてのGI管セグメントの液体体積である。GI管の液体体積は、例えば、摂食状態又は断食状態期間中の個体の状態に関連し、これに基づいて推定された。以上に記載したように、医薬品A透過率の時間又は位置プロファイルが、摂食状態の持続時間に基づいて想定して計算されるため、用いたGI液体体積の時間又は位置プロファイルは摂食状態を反映した。本例に使用されるGI液体体積の時間又は位置プロファイルは、文献値から得られた。上記プロファイルに類似しており、GI医薬品要求量プロファイルは、一時間の時間増分を用いて確定された。
【0132】
医薬品Aの医薬品吸収速度プロファイルを用いて、医薬品Aの医薬品吸収量プロファイルを確定した。具体的には、図4に示すように、医薬品吸収速度プロファイル及び式IVを用いて、医薬品Aの医薬品吸収量プロファイルを確定した。式IVは、
【数14】
式IV、
であり、
ここで、Qabs(t)は、時間の関数として、経口医薬剤形から吸収された医薬品Aの量であり、且つここで、qabs(t)は、時間の関数としての医薬品Aの吸収速度である。以上で論じたプロファイルに類似しており、医薬品Aの医薬品吸収量プロファイルは、一時間の時間増分を用いて確定された。
【0133】
次に、医薬品吸収量プロファイル及びGI医薬品要求量プロファイルに基づいて、式Vを用いて、目的PKプロファイルを得るように設計される模擬医薬品放出プロファイルを確定した。式Vは、
【数15】
式V、
であり、
ここで、QGI放出(t/x)は、tの時間又はxのGI管位置において経口医薬剤形から放出される医薬品Aの量であり、ここで、QGIT(t/x)は、tの時間又はxのGI管位置においてGI管における経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品Aの量であり、ここで、QGIT(ti-1/xi-1)は、ti-1の時間又はxi-1のGI管位置においてGI管における経口医薬剤形からの吸収にとって必要な医薬品Aの量であり、且つここで、Qabs(t)は、tの時間において経口医薬剤形から吸収された医薬品Aの量であり、且つQabs(ti-1)は、ti-1の時間において経口医薬剤形から吸収された医薬品Aの量である。上記プロファイルに類似しており、模擬医薬品放出プロファイルは、時間増分を用いて確定された。
【0134】
各時点で経口医薬剤形から放出されるべき医薬品Aの量を確定して目的PKプロファイルを得る場合、経口医薬剤形から放出される医薬品の累積量を確定した。式VIを用いて医薬品放出の累積量を確定した。式VIは、
【数16】
式VI、
であり、
ここで、QGI累積放出(t)は、時間の関数として、経口医薬剤形から放出される医薬品Aの累積量であり、且つここで、QGI放出(t)は、時間の関数として、経口医薬剤形から放出される医薬品Aの量である。代替的に、経口医薬剤形から放出される医薬品aの累積量は、式VIIを用いて確定され得る。式VIIは、
【数17】
式VII、
である。
【0135】
図7によるプロファイルは、目的pKプロファイルを得るための、医薬品Aの経時的全累積放出を示す。
【0136】
なお、医薬品Aの吸収を最適化する技術も探索された。図8Aに示すように、溶解度は、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルと比較して評価された。ほとんどのGI管医薬品濃度時間プロファイルについて、本明細書に記述されている設計方法に基づいて、GI管に存在する濃度が医薬品Aの所望の溶解度を超えると予測される(図8A)。そのため、本明細書に記述されている最適化方法を用いて医薬品Aの溶解度を調節し、それにより増強された溶解度限界は、現在の全ての時点で必要なGI管濃度よりも高くなる(図8A)。また、図8Bに示すように、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルへの影響を確定するために、医薬品透過率の調節及びそのスケジュールを探索した。図8Bは、(a)投与0~24時間後の透過率が元の透過率値の1.4倍に増強され、(b)投与3(空腸)~24時間後の透過率が元の透過率値の1.4倍に増強され、(c)投与8(結腸)~24時間後の透過率が元の透過率値の1.4倍に増強され、(d)投与8(結腸)~24時間後の透過率が元の透過率値の1.8倍に増強される場合の、医薬品濃度の時間又は位置プロファイルに対する医薬品A透過率の変化の影響を示している。これらの方法は、単独で用いてもよく、他の最適化技術と組み合わせて用いてもよい。
【0137】
医薬品Aの経口医薬剤形からの放出に関する情報に基づいて、経口医薬剤形は、それに応じて医薬品を放出することによって、目的PKプロファイルを提供するように配合及び構成される経口医薬剤形を提供するように設計された。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8A
図8B