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特表2024-512485肺の均一性の尺度を決定するための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】肺の均一性の尺度を決定するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0536 20210101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B5/0536
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557171
(86)(22)【出願日】2022-03-15
(85)【翻訳文提出日】2023-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2022056714
(87)【国際公開番号】W WO2022194873
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21163378.9
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501204802
【氏名又は名称】センテック アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Sentec AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クルケビット,リザ
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA06
4C127GG13
4C127HH13
(57)【要約】
本発明は、電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置および方法、ならびにコンピュータプログラムに関する。装置(100)は、電気インピーダンス断層撮影装置(110)によって得られたEITデータを受信するデータ入力ユニット(112)を備え、データ入力ユニット(112)は、観察期間(ΔT)にわたって生体の少なくとも1つの肺(2)の少なくとも1つの領域からEITデータを受信および提供するように構成される。装置(100)はまた、データ入力ユニット(112)に接続された計算および制御ユニット(114)を備える。計算および制御ユニット(114)は、少なくとも1つの肺(2)の少なくとも1つの領域の各画素(1)についての観察期間(ΔT)にわたるインピーダンス値を決定し、少なくとも1つの肺(2)の各画素(1)についてのインピーダンス振幅値(ΔZ)および呼気終末インピーダンス値(EELI)を決定するように構成される。計算および制御ユニット(114)は、インピーダンス振幅値(ΔZ)および呼気終末インピーダンス値(EELI)を各画素(1)について個別に関連付けて、インピーダンス振幅値(ΔZ)および関連する呼気終末インピーダンス値(EELI)に基づいてデータを決定し、データに基づいて制御信号を生成するようにさらに構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置(100)であって、
電気インピーダンス断層撮影装置(110)によって得られた前記EITデータを受信するデータ入力ユニット(112)であって、前記データ入力ユニット(112)は、観察期間(ΔT)にわたって生体の少なくとも1つの肺(2)の少なくとも1つの領域からEITデータを受信し提供するように構成されている、データ入力ユニット(112)と、
前記データ入力ユニットに接続された計算および制御ユニット(114)と、
を備え、
前記計算および制御ユニット(114)は、
-少なくとも1つの肺(2)の少なくとも前記1つの領域の各画素(1)について、前記観察期間(ΔT)にわたるインピーダンス値を決定し、
-少なくとも1つの肺(2)の各画素(1)のインピーダンス振幅値(ΔZ)を決定し、
-少なくとも1つの肺の各画素の呼気終末インピーダンス値(EELI)を決定し、
-前記インピーダンス振幅値(ΔZ)および前記呼気終末インピーダンス値(EELI)を各画素(1)について個別に関連付け、
-前記インピーダンス振幅値(ΔZ)および前記関連付けられた呼気終末インピーダンス値(EELI)に基づいてデータを決定し、
-前記データに基づいて制御信号を生成し、
-特に、前記データを所定の基準と比較するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記計算および制御ユニット(114)は、前記データを、患者の対照群に基づいて予め決定された基準と比較するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記計算および制御ユニット(114)は、少なくとも1つの肺についての前記呼気終末インピーダンス値(EELI)に依存して前記インピーダンス振幅値(ΔZ)の関数適合を実行して、少なくとも1つの肺についての適合関数(ΔZideal(EELI))、特に線形関数ΔZideal=αEELI+βを得るように構成されている、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記計算および制御ユニットは、各画素について、前記適合値(ΔZideal)からの前記インピーダンス振幅値ΔZの偏差を表す偏差値(StrainEIT)、特に、同じ呼気終末インピーダンス値(EELI)での前記インピーダンス振幅値(ΔZ)と前記適合値(ΔZideal)との間の比(ΔZ/ΔZideal)を決定するように構成されている、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記計算および制御ユニット(114)は、少なくとも1つの肺(2)のすべての画素(1)の間隔の各々について、一定の間隔における偏差値(StrainEIT)を有する画素の数を示すヒストグラムを決定するように構成されている、請求項2、3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記計算および制御ユニット(114)は、
前記偏差値(StrainEIT)が所定の閾値よりも大きい、および/または前記偏差値(StrainEIT)が所定の領域外にある画素(1)の量を決定するように構成されている、先行する請求項2~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
出力ユニット(115)を備え、前記出力ユニット(115)は、前記制御信号を使用して、前記データの表現を表示するための出力信号を提供または出力するように構成され、
特に、
-各画素について、前記インピーダンス振幅値(ΔZ)および/または適合振幅値(ΔZideal)を前記呼気終末インピーダンス値(EELI)と関連付けるグラフと、
-少なくとも1つの肺にわたる呼気終末インピーダンス値(EELI)、インピーダンス振幅値(ΔZ)および/または適合値(ΔZideal)の局所分布と、
-特定の区間、特にインピーダンス振幅値(ΔZ)と適合振幅値(ΔZideal)との比の区間内の偏差値(StrainEIT)に関連付けられた画素数のヒストグラムと、
-偏差値(StrainEIT)が所定の閾値よりも大きい、および/または偏差値(StrainEIT)が所定の領域外にある画素(1)の量を示す図と、
を表示するために構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記計算および制御ユニット(114)は、
少なくとも1つの肺(2)についてすべての画素(1)にわたって前記インピーダンス振幅値(ΔZ)を正規化し、少なくとも1つの肺(2)のすべての画素について正規化された振幅値(ΔZ)を取得する、
および/または
少なくとも1つの肺(2)についてすべての画素(1)にわたって前記呼気終末インピーダンス値(EELI)を正規化し、少なくとも1つの肺(2)の各画素(1)について正規化された呼気終末インピーダンス値(EELI)を取得するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
例えば参照患者の電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて、参照データ、例えばインピーダンス振幅値(ΔZ)および適合値(ΔZideal)の参照分布または参照ヒストグラムを決定および/または表示するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記計算および制御ユニット(114)は、前記肺(2)の各々について独立してデータを決定するように構成されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
特に先行する請求項のいずれか1項に記載の装置を用いて、電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて前記肺の前記均一性の尺度を決定するための方法であって、
-観察期間(ΔT)にわたって生体の少なくとも1つの肺(2)の少なくとも1つの領域からEITデータを提供するステップと、
-少なくとも1つの肺(2)の少なくとも1つの領域の各画素(1)についての観察期間にわたるインピーダンス値を決定するステップと、
少なくとも1つの肺(2)の各画素(1)のインピーダンス振幅値(ΔZ)を決定するステップと、
-少なくとも1つの肺(2)の各画素(1)の呼気終末インピーダンス値(EELI)を決定するステップと、
-前記インピーダンス振幅値(ΔZ)および前記呼気終末インピーダンス値(EELI)を各画素(1)について個別に関連付けるステップと、
-前記インピーダンス振幅値(ΔZ)および前記関連付けられた呼気終末インピーダンス値(EELI)に基づいてデータを決定するステップと、
-前記データに基づいて制御信号を生成するステップと、
-特に、前記データを所定の基準と比較するステップと、
を含む、方法。
【請求項12】
患者の対照群に基づいて基準を事前に決定し、好ましくは前記基準をデータストレージに保存するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの肺についての前記呼気終末インピーダンス値(EELI)に依存して前記インピーダンス振幅値(ΔZ)の関数適合を実行して、少なくとも1つの肺(2)についての適合関数(ΔZideal(EELI))、特に線形関数ΔZideal=αEELI+βを取得し、前記適合値(ΔZideal)に対するインピーダンス振幅値(ΔZ)の分布を表すデータを決定するステップを含む、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
各画素について、前記適合値(ΔZideal)からの前記インピーダンス振幅値(ΔZ)の偏差を表す偏差値(StrainEIT)、特に、同じ呼気終末インピーダンス値(EELI)でのインピーダンス振幅値(ΔZ)と前記適合値(ΔZideal)との間の比(ΔZ/ΔZideal)を決定するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記偏差値(StrainEIT)が所定の閾値よりも大きい、および/または前記偏差値(StrainEIT)が所定の領域外にある画素(1)の量を決定するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記データの表現を表示するための出力信号を提供または出力するステップ、特に前記出力信号を表示するステップを含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記肺(2)の各々のデータを決定するステップを含み、および/または参照データを決定するステップを含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
コンピュータに、および/またはコンピュータ上で実行するために、特に請求項1~10のいずれか1項に記載の装置および/またはEIT装置の計算および制御ユニットに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品であって、請求項11~17のいずれか1項に記載の方法のステップを実行するためのソフトウェアコード部分を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置および方法、ならびにコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気インピーダンス断層撮影(EIT)は、電流の印加および患者の身体に取り付けられた電極を通る電圧の測定に基づく非侵襲的撮像技術である。EITは、導電率、誘電率、インピーダンス、もしくは抵抗率の分布、またはそれらの変化の画像を提供する。以下では、測定値を「インピーダンス値」と呼び、上記分布をまとめて「電気特性」とも呼ぶ。この画像をEIT画像と呼ぶ。画像または画像シーケンスは、患者の状態を監視するのに有用な、様々な身体組織、骨、皮膚、体液および器官、特に肺の電気的特性の違いを示す。
【0003】
典型的なEIT配置は、国際公開第2015/048917号明細書に示されている。1組の電極が、皮膚と電気的に接触して、患者の胸部の周りに互いに一定の距離を置いて配置されるように、ベルト上に配置される。電流または電圧入力信号は、異なるまたはすべての可能な電極対の間で交互に印加される。入力信号が1対の電極の一方に印加されている間に、残りの電極間の電流または電圧を測定することができる。身体部分の測定された電圧は、電極ベルトリングが配置される患者の断面にわたる分布インピーダンス値の表現を得るためにデータプロセッサによって使用される再構成アルゴリズムによって、電気的特性または電気的特性の変化に再構成することができる。電気的特性は画面に表示される。
【0004】
EITプロセスでは、多数のインピーダンス測定値が、例えば16個または32個の電極で記録される。これらのインピーダンス測定値から、EIT画像再構成アルゴリズムは、肺の特性を表す画素を含む2次元画像を生成することができる。画像は、肺の内外の位置を表す32×32画素を含むことができる。
【0005】
EITによって得られた電気的特性に関する情報は、解剖学的コンテキストにおける解剖学的モデルから導出された断面画像に投影することができ、例えば、電極面内のモデル化された器官の外側境界を表す輪郭を示す。
【0006】
機能的構造の輪郭を使用して、そのような構造内の画素を(自動的に)クラスタ化して、肺などの機能的に意味のある解剖学的構造と一致する関心領域(ROI)を形成することができる。そのようなROI内に入る画素の信号は、自動信号処理手段およびアルゴリズムによってROIの各々について別々に識別および分析することができる。
【0007】
毎秒最大100またはそれ以上の断層EIT画像を再構成することができる。これらの高時間分解能画像は、呼吸および心周期によって影響を受ける肺組織内の局所的な電気的特性を反映する。CTスキャンとは対照的に、EIT画像は形態学的な情報ではなく、局所的な1回換気量、局所的な肺リクルートメント、呼気時定数、または肺灌流の分布を示す機能的な情報を表示する。EITはまた、全体レベルでの機能的残存容量(FRC)および/または領域レベルもしくは画素レベルでの呼気終末肺容積(EELV)と相関するパラメータである呼気終末肺インピーダンス(EELI)を測定する。
【0008】
EITの機能は、EIT画像内の個々の画素のレベルにおける換気に関する情報を提供する。しかしながら、現在、インピーダンス値から容積測定値への信頼できる変換は存在せず、したがって、EITデータからの容積および容積変化の直接計算は不可能である。
【0009】
独国特許第102017007224号明細書は、肺コンプライアンスまたは弾性の領域的変化を表すEITデータに基づいて、肺の少なくとも2つの局所的領域の特性および特性変化を決定することを開示している。この方法は、肺全体のレベルでの基準を提供しない。
【0010】
欧州特許第3725222号明細書は、人工呼吸中の肺における局所的なストレスのリアルタイム決定のためのシステムに関する。特定の時点における特定の電気インピーダンス値が特定のEIT画素に割り当てられる。局所的な1回換気量の値zは、特定のEIT画素の吸気終末電気インピーダンス(ZINSP)と呼気終末電気インピーダンス(ZEXSP)との間の差として決定される。予備歪み値は、局所的な1回換気量を吸気終末電気インピーダンスで割ることによって決定される。予備歪み値は、例えば所定のPEEP値で基準歪み値に対して正規化されてもよい。肺の状態の変化は、特定の患者について監視されてもよいが、肺の状態自体の基準は導出されなくてもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、従来技術の欠点を克服すること、特に、肺に関する意味のあるデータを単純かつ信頼できる方法で提供することを可能にする装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、これらおよび他の目的は、独立請求項に記載の電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置および方法によって解決される。
【0013】
換気中の肺容積dVの、静止時肺容積Vまたは呼気終末肺容積EELVに対する変化の比は、肺歪み(Gattinoniら、2012年、Stress and strain within the lung、Curr Opin Crit Care 18(1):42-7)と呼ばれる。
【0014】
本発明の装置は、EITによる画素レベルの歪みの決定、監視、および分析が、EITで容積の特定の値を決定することができなくても、意味のある情報を提供することができるという知見に基づいている。
【0015】
機械換気中の呼吸ドライブの増加に起因する肺歪みは、肺組織に高いエネルギー負荷を与え、それによって患者が肺を自傷するリスクを高め得る(Brochardら、2017年、Mechanical ventilation to minimize lung injury in acute respiratory failure、Am J Respir Crit Care Med 195(4):438-42)。
【0016】
全体的な歪みは、1回換気量VTを機能的残存容量FRCで割った比から導出することができる。
【0017】
機械換気中、全肺歪みが低いと、人工呼吸器誘発性肺損傷のリスクが低下する(Prottiら、2012年、Lung stress and strain during mechanical ventilation:Any safe threshold?、Am J Respir Crit Care Med 185:115)。しかしながら、このような比dV/Vの健全な境界が何であるのか、また、いつ非生理的に歪みが大きくなるのか(Gattinoniら、2012年)はほとんど不明である。機械換気されたブタでは、Prottiらは、1.5未満の歪み値の肺損傷および2.5を超える歪み値の急性呼吸不全を発見しなかったが、これらの値の間にグレーゾーンが残っている(Prottiら、2012年、Gattinoniら、2012年)。しかしながら、Gattinoniは、そのような高い肺歪みは、典型的には機械換気された患者には現れず、機械換気された患者における肺損傷の可能性のある主な原因として肺の不均一性を指摘している(Gattinoniら、2012年)。これまでのところ、肺全体のレベルでのdV/Vとしての歪みの一般的な定義は、局所的な肺歪み測定を必要とするためにそのような不均一性が気付かれないことが多いことを意味する。
【0018】
したがって、特に自発的に呼吸している患者において、肺損傷の原因として歪みに注目する場合、局所的な歪みの決定および歪みの不均一性の特定に焦点を当てる必要がある。局所的な肺歪みの均一な分布は、肺容積dVの変化と静止時肺容積Vとの比dV/Vが肺全体にわたってほぼ一定であることを意味する。したがって、dVはVと共に直線的に増加する必要があり、これは肺容積が大きい領域がより大きな換気を示すことを意味する。
【0019】
米国特許第20140316266号明細書は、超音波撮像を使用して局所的な肺歪み、肺容積および肺容積の変化を決定することを開示している。
【0020】
本発明による装置は、データ入力ユニットを備える。
データ入力ユニットは、患者に配置される電極を備える電気インピーダンス断層撮影装置によって得られたEITデータを受信するように設計されている。
【0021】
EITデータは、電気インピーダンス断層撮影装置から直接的に、またはデータ線、信号線もしくはネットワーク接続を介して間接的にデータ入力ユニットに提供されてもよい。
【0022】
装置は、電気インピーダンス断層撮影装置に関連付けられてもよいし、これを備えてもよい。
【0023】
データ入力ユニットは、観察期間にわたって生体の少なくとも1つの肺の少なくとも1つの領域からEITデータを受信および提供するように構成される。観察期間は、典型的には、多数の呼吸サイクルにわたって続く。好ましくは、EITデータは、少なくとも1つの肺全体の断面について提供される。
【0024】
データ入力ユニットには、計算および制御ユニットが接続されている。計算および制御ユニットは、少なくとも1つの領域の各画素について、観察期間にわたるインピーダンス値を決定するように構成される。
【0025】
計算ユニットは、少なくとも1つの観察平面で測定されたEITデータを、右肺および/または左肺などの関心領域に割り当てることができる。
【0026】
インピーダンス値は、典型的には、計算および制御ユニットに割り当てられたデータメモリまたはデータ記憶領域にデータセットとして記憶され、データメモリまたはデータ記憶領域におけるさらなるデータ処理のために利用可能に保たれる。
【0027】
計算および制御ユニットは、少なくとも1つの肺の各画素のインピーダンス振幅値を決定するようにさらに構成される。
【0028】
振幅は、呼吸サイクル内の最大インピーダンス値と最小インピーダンス値との間の差を示す。振幅は、サイクル内の絶対最大値および最小値に基づいて定義されてもよいが、平均に基づいて、または連続する最大値および最小値に基づいて定義されてもよい。インピーダンス振幅値は、観察期間にわたる平均インピーダンス差によって、または観察期間にわたって生じる最大差によって決定されてもよい。
【0029】
計算および制御ユニットは、少なくとも1つの肺の各画素の呼気終末インピーダンス値を決定するようにさらに構成される。呼気終末インピーダンス値は、各画素の観察期間にわたるインピーダンス値の平均最小値として計算されてもよい。
【0030】
計算および制御ユニットは、各画素について個別にインピーダンス振幅値および関連する呼気終末インピーダンス値に基づいてデータを決定するようにさらに構成される。
【0031】
データは、インピーダンス振幅値および/または呼気終末インピーダンス値の各画素へのマッピングに使用することができる。
【0032】
データは、測定値の局所分布の表現を提供することができる。
データを使用して、各画素のインピーダンスの変化と呼気終末肺インピーダンスとの間の関係を示すグラフ表現を提供することができる。非罹患肺では、インピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値はある程度相関すると仮定される。
【0033】
決定されたデータに基づいて、計算および制御ユニットは、各画素のインピーダンス振幅値と関連する呼気終末インピーダンス値との間の割り当て関係の特性である少なくとも1つの数または少なくともある範囲の数を提供することができる。
【0034】
計算および制御ユニットは、データに基づいて制御信号を生成するようにさらに構成される。制御信号は、データまたはデータから導出された情報を転送、格納、および/または表示するために使用され得る。
【0035】
データは、データのパターンから結論を引き出すことができる当業者によって分析され得る。データはまた、医療機器の自動制御にも使用され得る。
【0036】
特に、計算および制御ユニットは、データが所定の基準を満たすかどうかを決定するようにさらに構成される。データは、例えば、所定のデータパターン、所定の閾値数、または所定の範囲などの所定の基準と比較することができる。基準が満たされない場合、不均一性インジケータが生成され得る。
【0037】
基準は、患者の対照群に基づいて予め決定されてもよい。対照群は、非罹患の肺を有する人からなり得る。
【0038】
インピーダンス振幅値および関連する呼気終末インピーダンス値は、対照群について測定または決定することができる。
【0039】
基準は、肺の画素にわたるインピーダンス振幅値、関連する呼気終末インピーダンス値、および/またはインピーダンス振幅値および関連する呼気終末インピーダンス値から推定されたデータの局所分布から導出することができる。
【0040】
基準は、関連する呼気終末インピーダンス値にわたるインピーダンス振幅値の分布から導出することができる。
【0041】
比較は、患者について取得されたデータと基準との間の少なくとも1つの差、および/または患者について取得されたデータと基準との間の比を提供することができる。
【0042】
EITでは、インピーダンスの絶対値を決定すること、およびこれから、肺容積を決定することは、特に較正なしでは困難である。したがって、分布および容積の変化を定量化することができるが、患者内の比較可能性は依然として困難である。容積および静止肺容積の変化は、それぞれインピーダンス振幅値および呼気終末肺インピーダンスに関連するが、これらの測定値を容積測定値に変換することはできない。特に、呼気終末インピーダンス値の値は、同じ患者のEIT記録においてさえ大きく変化する可能性があり、インピーダンス振幅値と呼気終末肺インピーダンスとの単純な比として計算した場合、歪み値が大きく異なる可能性がある。
【0043】
したがって、インピーダンス振幅値と呼気終末肺インピーダンスとの比の絶対値は、同様の肺歪みを有する患者の測定間で、または同じ患者の連続測定間でさえも変化し得る。
【0044】
したがって、絶対歪み値に焦点を合わせる代わりに、関連するインピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値から、特に肺内のインピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値の局所分布から、および/またはインピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値から導出された値の統計的分布から導出されたデータを、肺の不均一性の尺度として使用することができる。
【0045】
これにより、本方法は、単一の異常値による歪みの影響を受けにくくなる。
健康な肺では、歪みは低く、肺全体にわたってほぼ一定であると仮定され、肺容積の大きな変化は、高い静止肺容積の領域で生じる。
【0046】
周囲組織よりも高い歪みを有する領域を特定するために、本発明によれば、肺容積または静止肺容積の変化の絶対値は必要とされない。
【0047】
むしろ、分析は、EITによって測定することができるパラメータの画素ごとの比較に基づくことができる。
【0048】
計算および制御ユニットは、特に、少なくとも1つの肺の呼気終末インピーダンス値に依存してインピーダンス振幅値の関数適合を実行し、適合関数を取得するように、特に適合関数を特徴付けるパラメータを取得するように構成され得る。
【0049】
肺容積が大きい領域は、より大きな換気およびより大きなインピーダンス変動を示すので、例えば、インピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間の線形関係を仮定することができる。
【0050】
例えば、少なくとも1つの肺について線形関数ΔZideal=αEELI+βを得るために、線形回帰が実行されてもよい。
【0051】
適合値は、各肺における一定の歪みを表す。
EITによって測定されたインピーダンス変化は、胸郭形状などの様々な患者固有の要因に依存し、較正なしではほとんど不可能ではないにしても少なくともEITからの1回換気量の計算を困難にするが、インピーダンス振幅値は、肺容積の変化と共に直線的に増加すると仮定できることが分かった。
【0052】
EITは、局所的な1回換気量に比例するインピーダンス変化の分布を提供する。同様に、呼気終末肺インピーダンスは、呼気終末肺容積と共に直線的に増加すると仮定することができる。呼気終末肺インピーダンスの分布は、局所静止肺容積に比例すると仮定することができる。
【0053】
肺容積と静止肺容積の変化の一定の比の仮定から、インピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間の線形関係を仮定することができる。
【0054】
EIT画像の再構成によっては、そのような高導電率は健康な肺組織に典型的ではないため、呼気終末インピーダンスがゼロに近い領域は、健康な個体では換気を示さない。したがって、オフセットβは0と仮定することができ、インピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間の比は一定であると仮定することができる。
【0055】
周囲の肺組織よりも高い歪みを有する領域を特定するために、肺容積および静止肺容積の変化の局所分布の絶対値は必要ではない。むしろ、局所レベルでの所定の、例えば線形関係からのこれらのパラメータの偏差に関する情報のみが必要である。
【0056】
上記で導出されたように、肺内の1回換気量および肺容積の分布は、EITによって測定することができる値、つまり各画素のインピーダンスの1回換気変動および呼気終末インピーダンスに関する。したがって、EITは、肺歪みの局所分布のリアルタイム測定値を提供することができる。
【0057】
計算および制御ユニットは、適合値に対するインピーダンス振幅値の分布を決定し、データに基づいて制御信号を生成するようにさらに構成されてもよい。例えば、インピーダンス振幅値および適合値を、各画素のそれぞれの呼気終末インピーダンス値に割り当てることができる。代替的または追加的に、インピーダンス振幅値および適合値をそれぞれの画素に割り当てることができる。インピーダンス振幅値の分布は、適合値の分布と比較されてもよい。
【0058】
インピーダンス振幅値の分布は、肺の状態の尺度を提供することができる。分布が理想的な状態を表す適合値に十分に近い場合、肺は十分な均一性を有すると仮定することができる。分布の偏りが大きいほど、不均一性が生じて誤動作を引き起こす可能性が高くなる。
【0059】
肺の均一性の尺度を決定するための装置および/またはデータ入力ユニットおよび/または計算および制御ユニットは、スタンドアロンEIT装置の一部であってもよく、もしくはパーソナルコンピュータ、患者モニタまたは病院のデータ処理システムなどの外部装置の一部であってもよい。
【0060】
肺の均一性の尺度を決定するための装置は、人工呼吸器または麻酔装置などの別の医療装置と相互作用することができ、医療技術システムを形成することができる。
【0061】
装置の有益な実施形態では、計算および制御ユニットは、各画素について、適合値からのインピーダンス振幅値の偏差を表す偏差値を決定するように構成される。
【0062】
偏差は、例えば、同じ呼気終末インピーダンス値におけるインピーダンス振幅値と適合値との間の比として決定されてもよい。
【0063】
あるいは、偏差は、同じ呼気終末インピーダンス値におけるインピーダンス振幅値と適合値との差、差の2乗、または同じ呼気終末インピーダンス値におけるインピーダンス振幅値と適合値との比の対数(log(ΔZ/ΔZideal))によって決定されてもよい。
【0064】
偏差は、肺の不均一性の尺度であり得る。
インピーダンス振幅値と適合値との比が1.0に近いほど、それぞれのインピーダンス振幅値が適合値に近いことを示す。したがって、1.0に近い比を有する画素が多いほど、影響を受けていない肺の可能性が高くなる。均一性が高いことは、健康な肺を示唆している。1.0付近の比率値の狭い分布は、正常呼吸中の健康な肺組織の活動を反映する。
【0065】
代替的または追加的に、決定係数Rは、肺の不均一性の基準として使用されてもよい。
【0066】
計算および制御ユニットは、少なくとも1つの肺のすべての画素について、間隔の各々について一定の間隔における偏差値を有する画素の数を示すヒストグラムを決定するように構成されてもよい。
【0067】
ヒストグラムの分布から、肺の状態を知ることができる。値1.0の右側の尾が長いほど、肺の不均一性が大きくなり、損傷の可能性が高くなる。
【0068】
計算および制御ユニットは、偏差値が所定の閾値よりも大きい、および/または所定の領域、特に信頼区間などの適合関数の周りの所定の領域の外側にある画素の量を決定するように構成されてもよい。
【0069】
画素の量は、絶対数またはパーセンテージによって与えられてもよい。
閾値は、病的状態を表すと考えられる値のカットオフによって定義されてもよい。
【0070】
閾値は、それを下回ると、参照患者または特に健康な患者の参照グループのすべての画素の偏差の特定の割合(例えば95%)が存在する値によって定義されてもよい。
【0071】
信頼区間の境界、または閾値を上回る画素数は、肺の均一性または不均一性の尺度として使用されてもよい。
【0072】
有利な実施形態では、装置は出力ユニットを備え、出力ユニットは、制御信号を使用してデータの表現を表示するための出力信号を提供または出力するように構成される。
【0073】
出力ユニットは、EIT装置の一部であってもよいし、外部装置の一部であってもよい。
【0074】
出力ユニットは、インピーダンス振幅値および/または適合振幅値を各画素の呼気終末インピーダンス値(EELI)に関連付けるグラフ表現、例えば、呼気終末インピーダンス値に依存してインピーダンス振幅値ΔZおよび適合値を示す2次元グラフを表示することができる。
【0075】
出力ユニットは、代替的または追加的に、少なくとも1つの肺にわたる呼気終末インピーダンス値、インピーダンス振幅値および/または適合値の局所分布を表示することができる。
【0076】
出力ユニットは、代替的または追加的に、特定の間隔、特にインピーダンス振幅値と適合振幅値との比の間隔内の偏差値に関連付けられた画素数のヒストグラムを表示することができる。
【0077】
出力ユニットは、代替的または追加的に、偏差値が所定の閾値よりも大きい、および/または所定の領域外にある画素の量を表示することができる。
【0078】
較正なしでは、インピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値の絶対値は、ml単位の特定の容積に対応しない。偏差値分布のパターンに主に関心があるので、インピーダンス振幅値は、少なくとも1つの肺のすべての画素について正規化されて、少なくとも1つの肺のすべての画素について正規化されたインピーダンス振幅値を得ることができる。
【0079】
正規化は、特に各肺について、インピーダンス振幅値を最大値で除算することによって達成され得る。
【0080】
代替的または追加的に、呼気終末インピーダンス値は、少なくとも1つの肺のすべての画素にわたって正規化されて、少なくとも1つの肺のすべての画素について正規化された呼気終末インピーダンス値を得ることができる。
【0081】
正規化された値の範囲は1までである。
好ましい実施形態では、装置は、参照データ、例えば参照患者のEITデータ、インピーダンス振幅値の参照分布、適合値および/または参照ヒストグラムを取得、決定、および/または表示するように構成される。
【0082】
好ましくは、参照データは、参照患者の電気インピーダンス断層撮影データに基づいて決定することができる。参照患者は、健康な肺を有する患者であり得る。参照データは、多数の参照患者の平均値を決定することによって得ることができる。
【0083】
計算および制御ユニットは、肺の各々について独立してデータを決定するように構成されてもよい。
【0084】
好ましくは上述のような装置上で実行される、本発明による電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて差パラメータを決定するための方法は、以下のステップを含む。
【0085】
EITデータは、観察期間にわたって、生体の少なくとも1つの肺の少なくとも1つの領域から提供される。
【0086】
インピーダンス値は、少なくとも1つの肺の少なくとも1つの領域の各画素について観察期間にわたって決定される。
【0087】
インピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値は、少なくとも1つの肺の各画素について決定される。
【0088】
インピーダンス振幅値(ΔZ)は、各画素の呼気終末インピーダンス値(EELI)に関連付けられる。この情報に基づいてデータが決定される。
【0089】
データに基づく制御信号が生成される。
特に、計算および制御ユニットは、データが所定の基準を満たすかどうかを分析する。データは、所定のデータパターン、所定の数、または所定の範囲などの所定の基準と比較することができる。
【0090】
少なくとも1つの肺の呼気終末インピーダンス値に依存して、インピーダンス振幅値の関数適合、例えば線形回帰を実行することができる。適合関数は、例えば、少なくとも1つの肺についての線形関数ΔZideal=αEELI+βを得ることができる。
【0091】
適合値に対するインピーダンス振幅値の分布を表すデータを決定することができる。データに基づく制御信号を生成してもよい。
【0092】
EITに基づく統計的肺歪み分布は、インピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間の線形関係からの偏差として定義することができる。
【0093】
これは、個々の画素のレベルで決定することができる。
健康な換気を有する領域に対応するすべての画素がインピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間に線形関係を有すると仮定すると、呼気終末インピーダンス値の関数としてのインピーダンス振幅値のプロットは、すべての画素について直線上にある。
【0094】
肺の大部分が健康な換気を示す場合、インピーダンス振幅値と呼気終末インピーダンス値との間の理想的な比は、すべての画素の線形回帰から決定することができる。この適合関数上にあるインピーダンス振幅値は、肺内の一定の歪み分布を示す。
【0095】
各画素について、適合値からのインピーダンス振幅値の偏差を表す偏差値を決定することができる。
【0096】
各画素の理想的な歪みからの偏差を定量化するために、測定されたインピーダンス振幅値と同じ呼気終末インピーダンス値に対する適合関数との比を計算することができる。これは、特定の統計的分布を有する多数の偏差値をもたらし得る。
【0097】
健康な肺では、値の中央値は1.0に近い。インピーダンス振幅値は常に0より大きいため、偏差も同様である。
【0098】
偏差値が所定の閾値よりも大きい、および/または所定の領域外の画素の量が決定されてもよい。
【0099】
出力信号は、データを表示するために提供または出力されてもよい。特に、インピーダンス振幅値の2次元グラフおよび呼気終末値の依存性における適合関数を示す出力信号が表示されてもよい。追加的または代替的に、偏差値の量を示す少なくとも1つのヒストグラムが表示されてもよい。
【0100】
健康なボランティアにおける測定値に基づいてカットオフを定義することができる。健康な肺であっても、インピーダンス振幅値および呼気終末インピーダンス値のいくらかの変動が観察され、偏差値が不等1.0になるので、この閾値は必要である。
【0101】
各肺のデータおよび/または参照データは、独立して決定および/または表示することができる。
【0102】
各画素のインピーダンス振幅値および関連する呼気終末インピーダンス値に基づいて決定されたデータは、健康な患者から得られた参照振幅値および/または偏差値のそれぞれの分布と比較することができる。比較によっては、早期段階であっても、肺疾患または肺機能不全に関する結論が引き出され得る。したがって、本発明による装置および方法は、診断ツールを提供することができる。
【0103】
本発明の目的はまた、コンピュータの内部メモリに、特に上記のような装置および/またはEIT装置の計算および制御ユニットに直接ロード可能なコンピュータプログラム製品によって解決され、コンピュータプログラム製品は、前記製品がコンピュータ上で実行されるときに上記のような方法のステップを実行するためのソフトウェアコード部分を備える。
【0104】
ここで、本発明を、好ましい実施形態および以下の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0105】
図1】電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置の概略図である。
図2a】第1の例示的な患者の観察期間中のEIT画像の概略図である。
図2b】観察期間中の1つの画素について測定されたインピーダンスの変化の一例を示す。
図3】第1の例示的な患者のそれぞれの呼気終末インピーダンス値に依存するインピーダンス振幅値のグラフ表現である。
図4】第1の例示的な患者の肺の各画素の適合振幅値のグラフ表現である。
図5】第1の例示的な患者の肺の各画素の偏差値のグラフ表現である。
図6a】参照患者のそれぞれの呼気終末インピーダンス値に依存するインピーダンス振幅値のグラフ表現である。
図6b】COVID-19患者のそれぞれの呼気終末インピーダンス値に依存するインピーダンス振幅値のグラフ表現である。
図7a】参照患者の偏差値のグラフ表現である。
図7b】COVID-19患者の偏差値のグラフ表現である。
図8】参照患者と比較したCOVID-19患者のグループの閾値よりも大きい偏差値を有する画素の割合のグラフ表現である。
【発明を実施するための形態】
【0106】
図1は、電気インピーダンス断層撮影(EIT)データに基づいて肺の均一性の尺度を決定するための装置100の一例の概略図を示す。
【0107】
装置100は、図に明示的に示されていない電極を有するベルト111を有するEIT装置110を備える。EIT装置110で得られたEITデータは、データ線113を介してデータ入力ユニット112に提供される。データ入力ユニット112には、計算および制御ユニット114が接続されている。計算および制御ユニット114は、EITデータを処理し、肺の均一性の尺度を表す様々な値を決定し、以下に説明するような出力信号を提供する。
【0108】
これらの出力信号は、決定された値を表示するための表示ユニット116を備える出力ユニット115に提供され得る。
【0109】
32個の電極を備えた織物電極ベルトを使用して、Sentec BB2(Sentec株式会社、EIT部門、Landquart、スイス)を用いてEIT測定値を記録した。インピーダンス断層撮影データを、47.68Hzのサンプリングレートで記録した。呼吸誘導インピーダンス変化の患者特有の換気画像を、製造業者の撮像アルゴリズムを使用して参照測定値に関連して計算した。すべての計算は、Matlab R2018b(MathWorks、Natick、マサチューセッツ州)を用いてオフラインで行った。製造業者の撮像アルゴリズムによって作成された32×32画素の画像を使用して歪み画像を計算した。
【0110】
図2aは、第1の例示的な患者の観察期間ΔT中の異なる時点についてのEIT画像10t1、10t2、10t3、10t4の概略図を示す。EIT画像は、肺2の各々の画素1におけるインピーダンス値に基づいており、患者上のベルト111の位置によって画定される観察平面内の各画素について測定されたインピーダンス値を示す。EIT画像の各画素は、画素のインピーダンス値に従って着色される。
【0111】
図2bは、観察期間ΔT中の1つの画素1について測定されたインピーダンス値の変化の一例を示す。
【0112】
インピーダンス振幅値ΔZは、観察期間ΔT中に測定されたインピーダンスの最大値と後続の最小値との間の最大差として決定される。
【0113】
呼気終末インピーダンス値EELIは、観察期間ΔT中のインピーダンスの平均最小値として決定されてもよい。
【0114】
肺2の両方の各画素1について、インピーダンス振幅値ΔZおよび呼気終末インピーダンス値EELIが決定される。
【0115】
図3は、第1の例示的な患者のそれぞれの呼気終末インピーダンス値EELIに依存するインピーダンス振幅値ΔZのグラフ表現を示す。
【0116】
主にパターンに関心があるので、インピーダンス振幅値ΔZおよび呼気終末インピーダンス値EELIを1.0までの範囲に正規化した。インピーダンス振幅値ΔZおよび呼気終末インピーダンス値EELIを、それぞれの最大値で割った。
【0117】
インピーダンス振幅値ΔZを両方の肺について別々に正規化し、各肺2のΔZをその肺2の最大値で除算した。
【0118】
各画素の正規化されたインピーダンス振幅値ΔZは、それぞれの正規化された呼気終末インピーダンス値EELIに対してプロットされる。
【0119】
関数適合、この場合、線形回帰ΔZ=α・EELIが、両方の肺2の各々についての適合関数ΔZideal1(EELI)およびΔZideal2(EELI)を得るために、両肺について別々に実行される。値ΔZideal1、ΔZideal2は、各肺に一定の歪みがある場合に特定の呼気終末インピーダンス値に対応する値である。
【0120】
同様に、関数適合ΔZ=α・EELI+βを実行することができ、オフセットβを排除する方法でEELIを決定/再スケーリングすることができる。ΔZとEELIとの間の線形関係は、肺容積dVの変化と静止時肺容積Vとの間の線形関係を反映する。
【0121】
例示的な患者のそれぞれの肺2の各画素のΔZideal1、ΔZideal2が図4に示されている。肺2の1つに割り当てられた観察平面の各画素1は、それぞれの画素のそれぞれの値EELIの値ΔZideal1またはΔZideal2に従って着色される。
【0122】
図4は、第1の例示的な患者の肺の各画素の適合振幅値のグラフ表現を示し、振幅値の等しい値が水準線3として示されている。
【0123】
線形適合は、肺2の正常な挙動の合理的なモデルを表すことが分かる。
大きな理想的な振幅ΔZidealを有する値は、肺2の中心の画素に位置するが、肺2の境界領域ではより小さい値を見つけることができる。
【0124】
各画素について、適合値ΔZidealからのインピーダンス振幅値ΔZの偏差を表す偏差値StrainEITを決定することができる。
【0125】
この例では、偏差値StrainEITは、各肺2の各画素1について、同じ呼気終末インピーダンス値EELIでのインピーダンス振幅値ΔZと適合値ΔZidealとの比ΔZ/ΔZidealによって得られる。
【0126】
図5は、第1の例示的な患者についての偏差値StrainEIT、ΔZ/ΔZideal1およびΔZ/ΔZideal2の局所分布のグラフ表現を示す。肺2の1つに属する観察平面の各画素1は、それぞれの画素の呼気終末値EELIの値ΔZ/ΔZideal1またはΔZ/ΔZideal2に割り当てられる。肺2の各々について、それぞれの偏差値StrainEIT、ΔZ/ΔZideal1およびΔZ/ΔZideal2の等しい値が水準線4として示されている。
【0127】
図4と比較して分かるように、偏差値は、適合値ΔZidealとは異なって分布している。
【0128】
肺の領域を識別することができ、偏差値ΔZ/ΔZideal1は、1.0の理想的で乱れていない偏差値から多かれ少なかれ逸脱する。これらの領域は、乱れた肺歪みを有すると考えられ得る。
【0129】
したがって、肺内の歪みが高い領域ならびに非生理学的な肺の不均一性を有する患者を特定することができる。
【0130】
図6aは、参照患者のそれぞれの正規化された呼気終末インピーダンス値EELIに依存する正規化インピーダンス振幅値ΔZのグラフ表現を示し、図6bは、COVID-19患者のそれぞれの呼気終末インピーダンス値EELIに依存する正規化インピーダンス振幅値ΔZのグラフ表現を示す。
【0131】
両方の表現は、両方の肺の測定された画素値および適合関数を別々に示す。
参照患者のインピーダンス振幅値ΔZおよびそれぞれの呼気終末インピーダンス値EELIを、健康なボランティアにおけるEIT測定によって得た。
【0132】
COVID-19患者については、2回の連続EIT測定を3日空けて実施した。健康なボランティアについては、1つの測定値のみを記録した。すべての測定値は、座位、仰臥位、左右の側方位置で記録されてもよい。本出願に示される例は、仰臥位でのEIT記録のみに基づく。
【0133】
呼吸ドライブの増加に起因する肺歪みは、肺組織に高いエネルギー負荷を与え、それによって患者が肺を自傷するリスクを高める可能性がある。そのような大きい肺歪みは、COVID-19患者の呼吸不全に寄与している可能性がある。COVID-19肺炎による呼吸不全は、著しく不均一に損傷した肺を伴う急性呼吸窮迫症候群(ARDS)様の臨床像に急速に進行することがある。これらの患者は、初期段階でさえ、重度の低酸素血症および高い呼吸負荷を伴う病的な呼吸ドライブを発症することが多い。疾患の経過中に、脆弱な肺組織に高い1回歪みおよびエネルギー負荷を誘発するこの呼吸ドライブの増加は、患者が肺を自傷するリスクを高める。
【0134】
健康な肺においても、歪みはゼロではない。代わりに、ある領域における換気中の容積変化は、その領域における全肺容積と適合し、生理学的レベルの歪みをもたらす。さらに、健康な肺であっても、一部の画素は線形関係から逸脱する。したがって、これらの値の典型的な分布は、健康なボランティアにおける測定値から定義する必要がある。
【0135】
したがって、インピーダンス振幅値ΔZは、適合直線上に正確にはない。
32±8歳の10人の健康なボランティアおよび55±21歳の10人のCOVID-19患者を含む研究では、全体的に良好な相関が認められ、平均R値はCOVID-19患者では0.80、健康なボランティアでは0.92であった。Rは、R=1-sum(ΔZ-ΔZideal/sum(ΔZ-平均(ΔZ))で計算できる。最も低いR値は、ボランティアでは0.77、患者では0.29であった。
【0136】
決定係数Rによって示される相関自体は、歪みの尺度および/または不均一性の尺度と考えることができる。しかしながら、どの画素がインピーダンス振幅値ΔZと呼気終末インピーダンス値EELIとの正しい比ΔZ/EELIを示すかに関する情報は、健康な肺画素が少ないほど明確でなくなる。したがって、Rが低い場合には、歪みの局所分布に関する情報を慎重に取り扱うべきである。
【0137】
しかしながら、図6bに見られるように、適合関数に対するインピーダンス振幅値の変動は、健康な参照患者よりもCOVID-19患者の方がはるかに大きい。
【0138】
したがって、それぞれの正規化された呼気終末インピーダンス値EELIに依存する正規化されたインピーダンス振幅値ΔZの分布は、肺の不均一性の尺度であると考えることができる。
【0139】
図7aは、参照患者の偏差値StrainEITのグラフ表現を示し、図7bは、COVID-19患者の偏差値StrainEITのグラフ表現を示す。
【0140】
偏差値StrainEITは、同じ呼気終末インピーダンス値EELIでのインピーダンス振幅値ΔZと適合関数ΔZidealの値との比として計算した。
【0141】
これらの比の平均は常に1.0であり、健康な肺では、ほとんどの画素が1.0に近い偏差値StrainEITを有する。
【0142】
生理学的には、高すぎる値は患者にとってより致命的である。あるいは、例えば、log(ΔZ/ΔZideal)をすべての画素について決定することもできる。この考察は、理想値の両側にテールを提供し、理想値の両側に閾値を設定することを可能にする。大きすぎるΔZ/ΔZidealの値だけでなく、小さすぎるΔZ/ΔZidealの値も考慮することができる。
【0143】
図7aおよび図7bは、2つの偏差値間の等距離間隔のそれぞれ1つにある偏差値StrainEITを有する画素数のヒストグラムを示す。この場合、間隔は1/10の長さを有する。
【0144】
図7aに見られるように、健康な参照患者について最大値は予想通り1であり、画素の大部分は少なくとも1に近い。
【0145】
COVID-19患者の場合、ヒストグラムは長いテールを示し、これは多くの画素が大きな偏差値StrainEITを有することを意味する。
【0146】
健康なボランティアのサンプルグループにおける測定値に基づいてカットオフを定義することができる。健康な肺組織では、少数の外れ値画素のみが非生理学的に大きな歪みを示すと仮定すると、インピーダンス振幅値ΔZと適合関数値ΔZidealとの比は、健康なボランティアの全画素の97.5%がより低い比を有し、健康な肺歪みのカットオフとして決定することができる。
【0147】
局所歪みEIT分布の画像(図5を参照)において、この閾値を上回る値を有する画素は、高い肺歪みの領域を示す。
【0148】
さらに、そのような高い偏差値を表示する画素の数は、全肺歪みの指標となり得る。したがって、これらの画素の合計は、全歪みの指標と考えることができる。
【0149】
前記研究の患者では、肺領域の239画素のうちの平均21画素が2.11より大きい歪み値を示したが、これは健康なボランティアの肺領域の242画素のうちの平均6画素にのみ当てはまる。
【0150】
図8は、試験の参照患者と比較して、研究のCOVID-19患者のグループの閾値よりも大きい偏差値を有する画素の割合についての箱ひげ図の形態のグラフ表現を示す。
【0151】
患者とボランティアとの間のこの数の差は、0.028の2標本検定を使用して計算されたp値で統計学的に有意であるように保存される。
【0152】
pは、患者およびボランティアの歪み値が、平均が等しく、変動が等しいが未知である正規分布から独立したランダムサンプルに由来する確率である(帰無仮説)。検定統計量tが計算され、pは、帰無仮説の下で観測された値として極端であるか、またはそれより極端であるとして検定統計量を観測する確率である。計算は、数値法を使用する統計ソフトウェアを用いて行われる。ここでは、Matlabsのttest2関数を使用した。
【0153】
2.11より大きい画素の割合の中央値は、健康なボランティアでは1.8%、COVID-19患者では10.2%であった。
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7a
図7b
図8
【国際調査報告】