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特表2024-512488浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全システム
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20240312BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240312BHJP
   B63B 21/26 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F03D13/25
B63B35/00 T
B63B21/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557204
(86)(22)【出願日】2022-03-11
(85)【翻訳文提出日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2022056392
(87)【国際公開番号】W WO2022194713
(87)【国際公開日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】21163627.9
(32)【優先日】2021-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVA
2.PYTHON
(71)【出願人】
【識別番号】519081710
【氏名又は名称】シーメンス ガメサ リニューアブル エナジー エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Siemens Gamesa Renewable Energy A/S
【住所又は居所原語表記】Borupvej 16, 7330 Brande, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ソーアン エイドリアン シュミット
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA25
3H178AA43
3H178BB41
3H178BB58
3H178BB59
3H178DD51X
3H178DD61Z
3H178DD70X
(57)【要約】
浮体式基礎(114)によって支持された洋上風力タービン(100)のための安全システムが開示される。浮体式基礎は、対応する複数の係留索(121,122,12n)によって海底(104)の複数のアンカー(131,132,13n)に固定される。安全システムは、安全コントローラ(251,252,25n)と、係留索ごとに少なくとも1本の伝導性ワイヤ(241a,241b,242a,242b,24na,24nb)とを備え、各伝導性ワイヤは、安全コントローラから係留索に沿って海底の対応するアンカーまで延在して安全コントローラに戻るように構成されている。安全コントローラは、伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体式基礎(114)によって支持された洋上風力タービン(100)のための安全システムであって、
前記システムは、浮体式基礎を海底(104)の複数のアンカー(131,132,13n)に固定するように構成された複数の係留索(121,122,12n)と、安全コントローラ(251,252,25n)とを備え、
前記係留索(121,122,12n)のそれぞれは、少なくとも第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と、第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とを備え、
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)および前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)は、前記安全コントローラ(251,252,25n)からそれぞれの前記係留索(121,122,12n)に沿って海底の対応する前記アンカー(131,132,13n)まで延在して前記安全コントローラ(251,252,25n)に戻るように構成されており、
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、
第1の所定の信号を前記第1の伝導性ワイヤ(241a,21b,242a,242b,24na,24nb)に供給し、第2の所定の信号を前記第2の伝導性ワイヤ(241b,21b,242a,242b,24na,24nb)に供給し、前記第1の所定の信号と前記第2の所定の信号とは、それぞれの周波数、位相および/またはデューティサイクルに関して相互に異なっており、
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とを個別に監視し、
前記第1の信号と前記第2の信号とが混合されているか否かを判定し、かつ/または前記伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定し、さらに、
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とが破損していると判定された場合に、警報信号を発信し、特に前記警報信号は停止信号である、
ように構成されている、
安全システム。
【請求項2】
前記係留索(121,122,12n)のそれぞれは、第3の伝導性ワイヤを備え、前記第3の伝導性ワイヤは、前記安全コントローラ(251,252,25n)から前記それぞれの係留索(121,122,12n)に沿って海底の対応する前記アンカー(131,132,13n)まで延在して前記安全コントローラ(251,252,25n)に戻るように構成されており、
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、第3の所定の信号を前記第3の伝導性ワイヤに供給するように構成されている、
請求項1記載の安全システム。
【請求項3】
前記係留索(121,122,12n)のそれぞれは、第4の伝導性ワイヤを備え、前記第4の伝導性ワイヤは、前記安全コントローラ(251,252,25n)から前記それぞれの係留索(121,122,12n)に沿って海底の対応する前記アンカー(131,132,13n)まで延在して前記安全コントローラ(251,252,25n)に戻るように構成されており、
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、第4の所定の信号を前記第4の伝導性ワイヤに供給するように構成されている、
請求項2記載の安全システム。
【請求項4】
前記第3の所定の信号は、前記第1の所定の信号および/または前記第2の所定の信号とは異なっており、かつ/または前記第4の所定の信号は、前記第1の所定の信号、前記第2の所定の信号および/または前記第3の所定の信号とは異なっている、請求項2または3記載の安全システム。
【請求項5】
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、
前記第3の伝導性ワイヤおよび/または前記第4の伝導性ワイヤを個別に監視し、
前記第1の信号、前記第2の信号および前記第3の信号のいずれか、または前記第1の信号、前記第2の信号、前記第3の信号および前記第4の信号のいずれかが別の信号と混合されているか否かを判定し、かつ/または
前記伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定する
ように構成されている、請求項4記載の安全システム。
【請求項6】
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、
前記第1の所定の信号からそれぞれの第1の監視された信号を決定し、前記第2の所定の信号からそれぞれの第2の監視された信号を決定し、
前記監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信し、
特に、前記監視された信号のすべてが前記それぞれの所定の信号のそれぞれと実質的に異なる場合に、警報信号を発信する
ように構成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項7】
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、
前記第3の所定の信号からそれぞれの第3の監視された信号を決定するか、または前記第3の所定の信号からそれぞれの第3の監視された信号を決定しかつ前記第4の所定の信号からそれぞれの第4の監視された信号を決定し、
前記監視された信号全体のうちの1つの監視された信号のみが前記それぞれの所定の第1の信号、前記それぞれの所定の第2の信号、前記それぞれの所定の第3の信号および/または前記それぞれの所定の第4の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信するか、または前記第1の監視された信号が前記第1の所定の信号と実質的に異なる場合、もしくは前記第2の監視された信号が前記第2の所定の信号と実質的に異なる場合、もしくは前記第3の監視された信号が前記第3の所定の信号と実質的に異なる場合、もしくは特に前記第4の第3の監視された信号が前記第4の所定の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信する
ように構成されている、請求項2から6までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項8】
前記安全コントローラ(251,252,25n)は、それぞれの監視された信号と前記それぞれの所定の信号との比較に所定の偏差閾値または適応化可能な偏差閾値を適用することによって、監視された信号が前記それぞれの所定の信号と実質的に異なるか否かを判定するように構成されている、請求項6または7記載の安全システム。
【請求項9】
前記風力タービンの前記安全コントローラ(251,252,25n)および/または任意の更なるローカル制御エンティティは、前記通知信号に基づいて前記風力タービン(100)の停止を開始するようには構成されておらず、かつ/または
前記通知信号は、前記風力タービン(100)の停止信号ではない、
請求項6から8までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項10】
前記風力タービンの前記安全コントローラ(251,252,25n)および/または任意の更なる制御エンティティは、前記通知信号の結果として低減された電力出力で前記風力タービン(100)を動作させるように構成されており、かつ/または
前記通知信号は、前記風力タービン(100)の電力削減信号である、
請求項6から9までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項11】
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)および前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)は、特に前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とを前記それぞれの係留索(121,122,12n)の伝導性ワイヤの対向する部分に配置することによって、前記それぞれの係留索(121,122,12n)の長手方向に対して垂直な、前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)との間の距離が実質的に最大となるように、前記それぞれの係留索(121,122,12n)に配置されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項12】
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)、前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)および前記それぞれの係留索(121,122,12n)が、それぞれの長手方向で実質的に同じ有効長さを有するか、または前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)、前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)および前記それぞれの係留索(121,122,12n)が、その全長にわたって効果的に実質的に同じ絶対伸びを有する、請求項1から11までのいずれか1項記載の安全システム。
【請求項13】
洋上風力タービンであって、
対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定されるように構成された浮体式基礎と、
前記浮体式基礎上に配置されたタワーと、
前記タワーの上側端部に配置された、ナセル、ロータおよび発電機と、
請求項1から12までのいずれか1項記載の安全システムと
を備える、洋上風力タービン。
【請求項14】
請求項14記載の浮体式風力タービン(100)を動作させるための方法であって、
第1の所定の信号を第1の伝導性ワイヤ(241a,21b,242a,242b,24na,24nb)に供給し、第2の所定の信号を第2の伝導性ワイヤ(241a,21b,242a,242b,24na,24nb)に供給するステップであって、前記第1の所定の信号と前記第2の所定の信号とは、それぞれの周波数、位相および/またはデューティサイクルに関して相互に異なっている、ステップと、
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とを個別に監視するステップと、
前記第1の信号と前記第2の信号とが混合されているか否か、かつ/または前記伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定するステップと、
前記第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)と前記第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)とが破損していると判定された場合に、警報信号を発信するステップであって、特に前記警報信号は停止信号である、ステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記方法がさらに、
前記第1の所定の信号からそれぞれの第1の監視された信号を決定し、前記第2の所定の信号からそれぞれの第2の監視された信号を決定するステップと、
前記監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信するステップと、
特に、前記監視された信号のすべてが前記それぞれの所定の信号のそれぞれと実質的に異なる場合に、前記警報信号を発信するステップと
を含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、前記警報信号が発信された場合に、前記風力タービン(100)の停止を開始するステップを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記方法が、前記通知信号が発信された場合に、低減された電力出力で前記風力タービン(100)を動作させるステップを含む、請求項14から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
コンピュータプログラム製品であって、プログラムがコンピュータによって実行される際に、前記コンピュータに請求項14から17までのいずれか1項記載の方法を実行させるための命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項19】
コンピュータ可読記憶媒体であって、請求項18記載のコンピュータプログラム製品を記憶したコンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、風力タービンの分野に関し、特に、対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定された浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全システムに関する。本発明はさらに、このような安全システムを備える洋上風力タービンと、対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定された浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全性を提供する方法とに関する。
【0002】
技術の背景
従来の固定基礎による洋上風力タービンの基礎は、最大水深70~100m程度の浅海に限定されるため、設置可能な領域が限られている。そのため、水深100m以上に設置することを可能にすることによって、洋上風力発電の可能性を最大限まで解放する浮体式基礎タイプの開発が進められている。これらの新しい基礎タイプの導入により、タービンを海底に安全に固定する必要が生じる。このことは、典型的には、係留索および海底アンカーを使用することによって解決される。タービン基礎を固定することは、タービンを所定の位置に維持する目的と、動作中の風力タービンおよび基礎構造の構造的安定性とを提供する目的との双方に役立つ。動作中に風力タービンのロータに加わる推力により、係留索に障害が発生した場合、風力タービンが転倒して海に落下するきわめて危険な状況が発生する可能性がある。したがって、浮体式風力タービンの浮体式基礎の安全な動作を確実に確保して、風力タービンが転倒したり、海へ落下したりすることを防止することのできる安全システムへの需要が存在する。
【0003】
発明の概要
この需要は、各独立請求項による主題によって満足させることができる。本発明の有利な実施形態は、各従属請求項に記載されている。
【0004】
本発明の第1の態様によれば、浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全システムが提供される。浮体式基礎は、対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定される。したがって、安全システムは、係留索と安全コントローラとを備え、係留索のそれぞれは少なくとも第1の伝導性ワイヤと第2の伝導性ワイヤとを備える。「伝導性ワイヤ」なる用語には、電子または光子の形態で情報信号を直接にまたは間接的に送信するのに適した任意の伝導性要素が含まれており、例えば電気ケーブルまたは光導体として実現され、特に、必ずしも大きな(例えば1kWを超える)電力を供給するように構成される必要はない。第1の伝導性ワイヤおよび第2の伝導性ワイヤは、安全コントローラからそれぞれの係留索に沿って海底の対応するアンカーまで延在して安全コントローラに戻るように構成されている。さらに、安全コントローラは、第1の所定の信号を第1の伝導性ワイヤに供給し、第2の所定の信号を第2の伝導性ワイヤに供給するように構成されており、ここで、第1の所定の信号と第2の所定の信号とは、それぞれの周波数、位相および/またはデューティサイクルに関して相互に異なっている。加えて、安全コントローラは、第1の伝導性ワイヤと第2の伝導性ワイヤとを個別に監視し、第1の信号と第2の信号とが混合されているか否かを判定し、伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定し、さらに、第1の伝導性ワイヤと第2の伝導性ワイヤとが破損していると判定された場合に、警報信号を発信するように構成されている。
【0005】
本発明のこの態様は、少なくとも2本の伝導性ワイヤが各係留索に設けられていて係留索が破損した場合、伝導性ワイヤも破損するという考えに基づいている。したがって、複数のワイヤのうちの少なくとも1本の伝導性ワイヤが無傷である限り、これは対応する係留索にも当てはまると想定することができる。安全コントローラにより、伝導性ワイヤが破損している、例えば複数の伝導性ワイヤのうちの少なくとも1本によって形成される電気回路が破損していると判定された場合、安全コントローラは、通知信号を発信し、対応する安全措置が講じられて、風力タービンの損傷または危険の発生が防止される。実際に、安全コントローラは、第1の所定の信号からそれぞれの第1の監視された信号を決定し、第2の所定の信号からそれぞれの第2の監視された信号を決定し、監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信する。「実質的に」なる用語は、当業者が、環境が伝導性ワイヤに与える予想される電気的影響(ワイヤの長さ、環境の導電率など)により、監視された(戻り)信号がそれぞれの所定の供給信号とは異なっていることを実際に予想していることであると理解されるべきである。なお、供給信号と監視された信号との間で検出された差が予想される差を超えている場合、本発明の文脈で理解される実質的な差が存在するものとする。各係留索に少なくとも2本の伝導性ワイヤを備えることにより、対応する冗長性によって付加的な安全性が保証される。
【0006】
本発明の更なる実施形態によれば、警報信号は停止信号である。停止信号により、風力タービンは、直ちにロータブレードに風を受けさせないようにし、発電機を停止させて、風力タービンの構造要素に対する風の影響が軽減される。
【0007】
一実施形態によれば、それぞれの監視された信号とそれぞれの所定の信号との比較に所定の偏差閾値または適応化可能な偏差閾値を適用することによって、監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なるか否かが判定される。差が偏差閾値を超えると、通知信号が発信される。
【0008】
一実施形態によれば、所定の信号は、所定の周波数、所定の位相および所定のデューティサイクルのうちの少なくとも1つを有するパルス信号である。換言すれば、所定の信号は、所定の周波数、および/または所定の位相および/または所定のデューティサイクルを有することによって特徴付けられており、これにより認識可能である。
【0009】
異なる所定の信号(すなわち異なる周波数および/または異なる位相および/または異なるデューティサイクルを有する信号)を、同じ係留索に関連付けられた伝導性ワイヤのそれぞれに供給することによって、冗長的に設けられた伝導性ワイヤのそれぞれを個別に監視し、さらに、例えば2本以上の伝導性ワイヤ間の電気的接触により信号同士が混合されたか否かを判定することが可能である。
【0010】
本発明の更なる実施形態によれば、係留索ごとの少なくとも1本の伝導性ワイヤまたはすべての伝導性ワイヤは、係留索に沿って延在するように構成された電気ケーブルまたは光ケーブルとして具体化される。
【0011】
ワイヤは、特に、例えばストリップによって係留索に固定することができ、または係留索の周囲に巻き付けることができ、または係留索に一体化することができる。
【0012】
本発明の更なる実施形態によれば、通知信号の存在により、浮体式風力タービンが低減された電力出力で動作することになる。したがって、風力タービンの安全コントローラおよび/または任意の更なる制御エンティティが、通知信号の結果として低減された電力出力で風力タービンを動作させるように構成されており、かつ/または通知信号が風力タービンの電力削減信号である。
【0013】
本発明の第2の態様により提供される洋上風力タービンは、(a)対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定されるように構成された浮体式基礎と、(b)浮体式基礎上に配置されたタワーと、(c)タワーの上側端部に配置された、ナセル、ロータおよび発電機と、(d)第1の態様またはその実施形態のいずれかによる安全システムとを備える。
【0014】
本発明のこの態様は、上述の第1の態様と同じ概念に基づいており、係留索の破損を直ちに検出して対応することができる浮体式洋上風力タービンを提供する。第1の態様およびその組み合わせの実施形態は、第2の態様にも同様に適用される。
【0015】
本発明の第3の態様により、第2の態様に従って風力タービンを動作させる方法が開示され、当該方法は、第1の所定の信号を第1の伝導性ワイヤに供給し、第2の所定の信号を第2の伝導性ワイヤに供給するステップであって、ここで、第1の所定の信号と第2の所定の信号とは、それぞれの周波数、位相および/またはデューティサイクルに関して相互に異なっている、ステップと、例えばそれぞれの伝導性ワイヤの他方の端部の電気信号または光信号を測定することによって、第1の伝導性ワイヤと第2の伝導性ワイヤとを個別に監視するステップと、第1の信号と第2の信号とが混合されているか否か、かつ/または伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定するステップと、第1の伝導性ワイヤおよび第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)が破損していると判定された場合に、警報信号を発信するステップであって、特に警報信号は停止信号である、ステップとを含む。
【0016】
例えば、方法は、第1の所定の信号からそれぞれの第1の監視された信号を決定し、第2の所定の信号からそれぞれの第2の監視された信号を決定するステップと、監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なる場合に、通知信号を発信するステップとを含む。それぞれの監視された信号を決定するステップは、それぞれの伝導性ワイヤの他方の端部の電気信号または光信号を測定し、ひいてはそれぞれの監視された信号を取得することによって行うことができる。実質的な差が存在するか否かの判定は、それぞれの供給信号をそれぞれの監視された信号と比較することによって実行することができる。「実質的に」なる用語は、当業者が、例えば環境が電気ケーブルに与える予想される電気的影響(ワイヤの長さ、環境の導電率など)により、監視された(戻り)信号がそれぞれの所定の供給信号とは異なっていることを実際にある程度予想していることであると理解されるべきである。なお、供給信号と監視された信号との間で検出された差が予想される差を超えている場合、本発明の文脈で理解される実質的な差が存在するものとする。
【0017】
本発明の第3の態様は、上述の第1の態様および第2の態様と同じ概念に基づいており、係留索の破損を直ちに検出して対応することのできる浮体式洋上風力タービンの動作方法を提供する。第1の態様、第2の態様およびこれらの組み合わせの実施形態は、第3の態様にも同様に適用される。
【0018】
一実施形態によれば、方法は、それぞれの監視された信号とそれぞれの所定の信号との比較に所定の偏差閾値または適応化可能な偏差閾値を適用しながら、それぞれの供給信号とそれぞれの監視された信号とを比較するステップを含む。差が偏差閾値を超えると、通知信号が発信される。
【0019】
3本または4本の伝導性ワイヤを有するシステムの実施形態の類似の方法ステップも、開示全体の文脈の中で開示されることを理解されたい。
【0020】
本発明はさらに、プログラムがコンピュータ、例えばコントローラによって実行される際に、コンピュータに第3の態様による記載の方法を実行させるための命令を含むコンピュータプログラム製品に関する。加えて、このようなコンピュータプログラム製品を記憶したコンピュータ可読記憶媒体が提案される。したがって、本発明のコンピュータプログラム製品および記憶媒体は、上述の利点ももたらす。
【0021】
コンピュータプログラム製品は、JAVA、C++、C#、および/またはPythonなどの任意の適切なプログラミング言語および/または機械語のコンピュータ可読命令コードとして実装することができる。コンピュータプログラム製品は、データディスク、リムーバブルドライブ、揮発性メモリあるいは不揮発性メモリ、または内蔵メモリ/プロセッサなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。命令コードは、所望の機能の実行のために、コンピュータまたはコントローラなどの他のプログラム可能なデバイスをプログラミングするものであってよい。さらに、コンピュータプログラム製品は、インターネットなどのネットワーク上に提供および/または存在することができ、必要に応じてユーザがそこからダウンロードすることができる。コンピュータプログラム製品は、ソフトウェアおよび1つ以上の特別な電子回路によって、すなわちハードウェアまたは任意のハイブリッド形式、すなわちソフトウェアコンポーネントおよびハードウェアコンポーネントによって実装可能である。
【0022】
本発明の更なる態様によれば、対応する複数の係留索によって海底の複数のアンカーに固定された浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全性を提供する方法が提供される。方法は、(a)安全コントローラを提供することと、(b)係留索ごとに少なくとも1本の伝導性ワイヤを提供することであって、各伝導性ワイヤは、安全コントローラから係留索に沿って海底の対応するアンカーまで延在して安全コントローラに戻る、ことと、(c)安全コントローラで、伝導性ワイヤのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定することと、(d)伝導性ワイヤが破損している判定された場合、警報信号を発信することとを含む。
【0023】
本発明のこの態様は、上述した第1の態様および第2の態様と同じ考え方に基づいている。
【0024】
本発明の実施形態を、それぞれ異なる主題を参照して説明していることに留意されたい。特に、幾つかの実施形態は方法発明の請求項を参照して説明したが、他の実施形態は装置発明の請求項を参照して説明した。しかし、当業者であれば、上記および以下の説明から、特に断らない限り、1つの種類の主題に属する特徴の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴の組み合わせ、特に方法発明の請求項の特徴と装置発明の請求項の特徴との組み合わせも本明細書の開示の一部であると理解するであろう。
【0025】
上記で定義した態様および本発明の更なる態様は、以下に説明する実施形態の例から明らかであり、実施形態の例を参照して説明される。以下、実施形態の例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明は記載の例示的な実施形態に限定されないことを明記しておく。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンを示す図である。
図2】一実施形態による、浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全システムのブロック図である。
図3】一実施形態による、浮体式基礎によって支持された洋上風力タービンのための安全性を提供する方法のフロー図である。
【0027】
詳細な説明
図中の説明は模式的なものである。異なる図においても、類似のまたは同一の要素には同じ参照符号または最初の桁のみが異なる参照符号が付されていることに留意されたい。
【0028】
図1には、浮体式基礎114によって支持された洋上風力タービン100が示されている。風力タービン100は、喫水線102およびその下方で浮遊する基礎114によって支持されたタワー110を備える。タワー110は、タワー110の上側端部に(ハブとロータブレードとを備えた)ロータ112と、ナセル(図示せず)とを支持する。浮体式基礎は、基礎114と海底の対応するアンカー131,132との間に延在する係留索121,122によって海底104に固定されている。簡略化のため、図1には、2本の係留索121,122および対応するアンカー131,132のみが示されている。しかし、3本、4本、5本、6本、8本、12本、18本、または2より大きい他の任意の数など、任意の他の数の係留索および対応するアンカーを使用できることを理解されたい。
【0029】
図2は、一実施形態による、浮体式基礎114によって支持された洋上風力タービン100のための安全システム200のブロック図が示されている。複数の係留索121,122,12nは、概略的にボックスとして示されている。各係留索121,122,12nは、第1の伝導性ワイヤ241a,242a,24naと第2の伝導性ワイヤ241b,242b,24nbとを備え、第2の伝導性ワイヤ241b,242b,24nbは、対応する安全コントローラモジュール251,252,25nの間を係留索121,122,12nに沿って海底104の対応するアンカー131,132,13nまで延在して安全コントローラモジュール251,252,25nに戻る。安全コントローラモジュール251は、PL(プログラマブルロジック)251aを備え、伝導性ワイヤ241a,241bのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定し、伝導性ワイヤ241a,241bの一方または両方が破損していると判定された場合、これは係留索121が破損していることを示しているため、警報信号を発信するように構成されている。警報信号により、コンタクタ261,262の一方または両方が開放され、その結果、風力タービンコントローラ(図示せず)が直ちにロータブレードに風を受けさせないようにする安全ピッチ機能270が作動される。同様に、安全コントローラモジュール252は、PL(プログラマブルロジック)252aを備え、伝導性ワイヤ242a,242bのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定し、伝導性ワイヤ242a,242bの一方または両方が破損していると判定された場合、これは係留索122が破損していることを示しているため、警報信号を発信するように構成されている。最後に、安全コントローラモジュール25nは、PL(プログラマブルロジック)25naを備え、伝導性ワイヤ24na,24nbのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかを判定し、伝導性ワイヤ24na,24nbの一方または両方が破損していると判定された場合、これは係留索12nが破損していることを示しているため、警報信号を発信するように構成されている。
【0030】
上述したように、図2に示す例示的な実施形態における各係留索121,122,12nは、2本の導電性ワイヤ241a/b,242a/b,24na/bを備える。係留索ごとに任意の数の導電性ワイヤを使用できることに明確に留意されたい。すなわち、係留索ごとに1本、2本、3本、4本、またはそれ以上の伝導性ワイヤを使用してよい。
【0031】
図示されている安全コントローラモジュール251,252,25nは、別個の安全コントローラモジュールとして実現可能であり、またはこれらが単一の安全コントローラの機能モジュールであってもよい。
【0032】
伝導性ワイヤが無傷であるかあるいは破損しているかを判定するために、対応する安全コントローラモジュールは、伝導性ワイヤの一方の端部に所定の信号を供給し、伝導性ワイヤの他方の端部で同じ所定の信号が受信されたか否かを判定することができる。所定の信号は、特に、所定の周波数、所定の位相および所定のデューティサイクルのうちの少なくとも1つを有するパルス信号であってよい。導電性ワイヤのそれぞれに異なる周波数および/または異なる位相および/または異なるデューティサイクルを使用することにより、安全システムの信頼性をさらに高めることができる。
【0033】
図3には、一実施形態による、対応する複数の係留索121,122,12nによって海底104の複数のアンカー131,132,13nに固定された浮体式基礎114によって支持された洋上風力タービン100のための安全性を提供する方法のフロー図300が示されている。310では、例えば図2に示したような安全コントローラモジュール251,252,25nの形態の安全コントローラが提供される。320では、少なくとも2本の伝導性ワイヤ241a,241b,242a,242b,24na,24nbが係留索ごとに設けられる。各伝導性ワイヤ241a,241b,242a,242b,24na,24nbは、安全コントローラから係留索121,122,12nに沿って海底104の対応するアンカー131,132,13nまで延在して安全コントローラに戻る。330では、安全コントローラによって、伝導性ワイヤ241a,241b,242a,242b,24na,24nbのそれぞれが無傷であるかあるいは破損しているかが判定される。伝導性ワイヤ241a,241b,242a,242b,24na,24nbが破損していると判定された場合、340で警報信号が発信される。
【0034】
安全コントローラ251,252,25nは、第1の伝導性ワイヤ(241a,242a,24na)の一方端部に供給される第1の所定の信号からそれぞれの第1の監視された信号を決定し、第2の伝導性ワイヤ(241b,242b,24nb)に供給される第2の所定の信号からそれぞれの第2の監視された信号を決定するように構成されている。監視された信号のすべてではなく、1つの監視された信号のみがそれぞれの所定の信号と実質的に異なる場合、第1の通知信号が発信される。例えば、当該通知信号を使用して、風力タービンの動作を、電力出力が低減される動作へと変更することができる。これは、浮体式基礎114への荷重と推力とを軽減するのに役立つ。また、監視された信号の偏差の原因、特にそれぞれの係留索が適切に機能しているか否かを調べることができる。
【0035】
「備える(comprising)」なる用語は他の要素やステップを排除するものではなく、冠詞「1つ(aまたはan)」の使用は複数を排除するものではないことに留意されたい。また、それぞれ異なる実施形態に関連付けて説明した要素を組み合わせることもできる。さらに、特許請求の範囲における参照符号は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されないことに留意されたい。
図1
図2
図3
【国際調査報告】