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特表2024-512510置換芳香族化合物及びその医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】置換芳香族化合物及びその医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 235/34 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/136 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 39/11 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 33/20 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 33/24 20060101ALI20240312BHJP
   C07C 215/68 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07C235/34 CSP
A61P35/00
A61P25/04
A61P3/00
A61P11/00
A61P39/06
A61K31/165
A61K31/05
A61K31/136
A61K31/045
A61P35/04
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/496
A61P35/02
C07C39/11
C07C33/20
C07C33/24
C07C215/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023557465
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 CA2021051395
(87)【国際公開番号】W WO2022073115
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,266
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523215794
【氏名又は名称】ファーマセウティーク・インジェニュー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リーヌ・ギャニオン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA55
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA59
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZC21
4C084ZC37
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZC21
4C086ZC37
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA11
4C206CA17
4C206FA31
4C206GA09
4C206GA22
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA75
4C206NA14
4C206ZC75
4H006AA01
4H006AB21
4H006AB22
4H006AB28
4H006BJ50
4H006BN10
4H006BN30
4H006BU46
4H006BV51
4H006FC52
4H006FE11
4H006FE13
(57)【要約】
式Iの化合物、その調製及び使用方法。式Iは、以下のような置換基を有するコア芳香族基を有する:式(I)
[化1]
(式中、
G1は、-(CH2)nC(R1)(R2)OH、-(CH2)n-CHO、-(CH2)nC(O)NR1R2、-(CH2)nCH(R1)NR1R2、-(CH2)nC(O)OR3、-(CH2)n-CH(R1)O-R3又は-(CH2)nC(O)R3であり、G2及びG4は、独立してH、OH、F又はClであり、G2はまたNH2であってもよく、G3及びG5は、独立してH、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3又はCH(OH)-R3であり、G6は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル又は(CH2)nCOOHであり、・nは0~5から選択される整数であり、・R1及びR2は、H及び任意に置換されたC1~C6アルキル基から独立して選択され、・R3は任意に置換されたC1~C6アルキル基であるか、又はG1上に存在する場合、コア芳香族基とラクトンを形成する)又はその薬学的に許容される塩。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のような置換基を有するコア芳香族基を有する式Iによる化合物:
【化1】
(式中、
G1は、-(CH2)nC(R1)(R2)OH、-(CH2)n-CHO、-(CH2)nC(O)NR1R2、-(CH2)nCH(R1)NR1R2、-(CH2)nC(O)OR3、-(CH2)n-CH(R1)O-R3又は-(CH2)nC(O)R3であり、
G2は、H、NH2、OH、F又はCl、好ましくはH、NH2又はOHであり、
G3は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3及びCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G4は、H、OH、F又はCl、好ましくはH又はOH、より好ましくはOHであり、
G5は、H、OH、F、Cl、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3又はCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G6は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル又は(CH2)nCOOHであり、
・nは0~5、好ましくは1~5、より好ましくは1~3から選択される整数であり、
・R1及びR2は、H及び任意に置換されたC1~C6アルキル基から独立して選択され、
・R3は、任意に置換されたC1~C6アルキル基であるか、又はG1上に存在する場合、コア芳香族基とラクトンを形成する)
又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
G3がC5アルキル、C5アルケニル、-C(O)-(CH2)3-CH3又は-CH(OH)-(CH2)3-CH3である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
G3がC6アルキル、C6アルケニル、-C(O)-(CH2)4-CH3又は-CH(OH)-(CH2)4-CH3である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
G3がC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニル又はC6アルケニルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
G3がC5アルキル又はC5アルケニルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
G3がC5アルキル又はC6アルキルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
G3がC5アルキルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
G3が-(CH2)n-で任意に置換されたフェニルである、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
フェニルが任意に置換されたC1~C6アルキルで置換される、請求項8に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
G3がCH3(CH2)x-C6H4-(CH2)y-であり、x+y=4又は5であり、yが0~5から選択される整数である、請求項9に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
G3が-(CH2)n-で任意に置換された複素環である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
複素環が、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を有する、請求項11に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
複素環が非芳香族単環式又は多環式環である、請求項11又は12に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
複素環が芳香環である、請求項11又は12に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
G5がH、OH、F、-CH2Phe、-CH2-C3H5、C4~C6アルキル、-(CH2)nCH=CH又は-CH=CH(CH2)であり、nが2又は3である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
G1が、
・-(CH2)nCH(CH3)OH;
・-(CH2)n-CH2-O-CH3;
・-(CH2)nCH(O)NH2;
・-(CH2)nC(O)R3;
・-C(CH3)2OH;
・-CH(F)-OH;
・-CF2-OH;
・-C(O)CH3;
・-CH2C(O)OR3;又は
・-(CH2)nC(O)R3
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
G1が-(CH2)nC(R1)(R2)OHである、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
G1が-(CH2)n-CHOである、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
G1が-(CH2)nC(O)NR1R2である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
G1が-(CH2)nCH(R1)NR1R2である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
G1が-(CH2)nC(O)OR3である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
G1が-(CH2)n-CH(R1)O-R3である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
G1が-(CH2)nC(O)R3である、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項24】
化合物が、
・2-(2-ヒドロキシプロピル)-4,6-ジペンチルフェノール;
・4-ベンジル-2-(2-ヒドロキシプロピル)-6-ペンチルフェノール;
・2,4-ジベンジル-6-(2-ヒドロキシプロピル)フェノール;
・2-ベンジル-6-(2-ヒドロキシプロピル)-4-ペンチルフェノール;
・2,4-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-6-(2-ヒドロキシプロピル)フェノール;
・2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセトアミド;
・2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセトアミド;
・2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセトアミド;
・2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセトアミド;
・2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセトアミド;
・2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
・2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
・2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセトアルデヒド;
・2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
・2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセトアルデヒド;
・1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
・1-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
・1-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン;
・1-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
・1-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン;
・メチル2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセテート;
・メチル2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセテート;
・メチル2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセテート;
・メチル2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセテート;
・メチル2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセテート;
・2-(2-メトキシプロピル)-4,6-ジペンチルフェノール;
・4-ベンジル-2-(2-メトキシプロピル)-6-ペンチルフェノール;
・2,4-ジベンジル-6-(2-メトキシプロピル)フェノール;
・2-ベンジル-6-(2-メトキシプロピル)-4-ペンチルフェノール;又は
・2,4-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-6-(2-メトキシプロピル)フェノール、
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項25】
【化2】
又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項26】
前記化合物の薬学的に許容される塩が有機又は無機塩である、請求項1から25のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項27】
塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩又は銅塩であり、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩又はリチウム塩であり、より好ましくはナトリウム塩である、請求項26に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項28】
塩が、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物、炭酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヒプル酸塩、ヨウ化物、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナプシル酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩又は塩化物塩である、請求項26に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項29】
対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防に使用するための、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項30】
対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防のための医薬の製造に使用するための、請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項31】
線維化関連疾患における線維化組織の増殖又は進行を減少するための、請求項29又は30に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項32】
がんの処置が、対象における腫瘍成長、細胞増殖、腫瘍細胞遊走又は転移の阻害を含む、請求項29又は30に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項33】
化合物が、対象における抗がん治療と組み合わせて使用するためのものである、請求項29から32のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項34】
抗がん治療が化学療法又は電離放射線である、請求項33に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項35】
電離放射線が、X線、イオンビーム、電子ビーム、ガンマ線及び放射性同位体からの放射線から選択される、請求項34に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項36】
化合物が抗がん剤と組み合わせて使用するためのものである、請求項33に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項37】
抗がん剤が、テモゾロミド、アブラキサン、デカルバジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ブスルフェクス、ブスルファン、ブレオマイシン、アレクチニブ、メルファラン、パミドロネート、ベバシズマブ、カルボザンチニブ、ビンブラスチン、ドセタキセル、プレドニゾロン、イフォスファミド、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、マイトマイシン、イリノテカン、タキソテール、タキソール、5-フルオロウラシル、フォルフィリノックス、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、ベリブシン又はチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項36に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項38】
がんが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、肺癌、肝臓癌、白血病、膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌又は子宮癌である、請求項29から37のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項39】
がんが膠芽腫又は黒色腫であり、化合物ががんの再発のin situ処置のためにキトサンと組み合わせて投与するためのものである、請求項29から37のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項40】
線維症関連疾患が、肺、腎臓、肝臓、心臓又は皮膚の線維症関連疾患である、請求項29又は30に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項41】
対象がヒトである、請求項29から40のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項42】
経腸、粘膜、非経口又は局所投与に適した形態で製剤化される、請求項1から41のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項43】
制御放出組成物に製剤化される、請求項1から42のいずれか一項に規定の使用のための化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項44】
請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は担体を含む医薬組成物。
【請求項45】
請求項1から28のいずれか一項に記載の化合物又は請求項44に記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防のための方法。
【請求項46】
化合物が、経腸、粘膜、非経口又は局所投与に適した形態で製剤化される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
化合物が制御放出組成物に製剤化される、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
がんの処置が、がんを患う対象における腫瘍成長、細胞増殖、腫瘍細胞遊走又は転移の阻害を含む、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
化合物が、対象における抗がん治療と組み合わせて投与される、請求項45から47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
抗がん治療が化学療法又は電離放射線である、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
電離放射線が、X線、イオンビーム、電子ビーム、ガンマ線及び放射性同位体からの放射線から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
化合物が抗がん剤と組み合わせて投与される、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
抗がん剤が、テモゾロミド、アブラキサン、デカルバジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ブスルフェクス、ブスルファン、ブレオマイシン、アレクチニブ、メルファラン、パミドロネート、ベバシズマブ、カルボザンチニブ、ビンブラスチン、ドセタキセル、プレドニゾロン、イフォスファミド、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、マイトマイシン、イリノテカン、タキソテール、タキソール、5-フルオロウラシル、フォルフィリノックス、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、ベリブシン又はチロシンキナーゼ阻害剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
がんが、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、肺癌、肝臓癌、白血病、膠芽腫、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌又は子宮癌である、請求項45から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
がんが膠芽腫又は黒色腫であり、化合物ががんの再発のin situ処置のためにキトサンと組み合わせて投与される、請求項45から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
線維化関連疾患を処置又は予防するための、請求項45に記載の方法。
【請求項57】
線維化関連疾患における線維化組織の増殖又は進行を減少するための、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
化合物が抗線維化剤と組み合わせて投与される、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項59】
抗線維化剤が、ピルフェニドン、ニンテダニブ、フェザゲプラス、チロシンキナーゼ阻害剤、PPARアゴニスト/アンタゴニスト、GPR84アンタゴニスト、CTGF阻害剤、TGF阻害剤、IL-6阻害剤である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
対象がヒトである、請求項45から59のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、Lyne Gagnonによって2020年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/088,266号の利益を主張する。上記で参照された文書の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、化合物及びその医薬用途に関する。より詳細には、本開示は、置換芳香族化合物、その製造のための方法、それを含む組成物、並びに対象における様々な疾患及び状態の予防及び/又は処置のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
がん:がんは、100を超える臨床的に異なる病型を指す。身体のほぼすべての組織ががんを発生させる可能性があり、一部は複数の種類のがんを生じる可能性もある。がんは、起源の組織に侵襲する又は他の部位に拡散する可能性がある細胞の異常な成長によって特徴付けられる。実際、特定のがんの重篤度又は悪性度は、がん細胞の侵襲傾向及び拡散する能力に基づく。つまり、様々なヒトのがん(例えば、癌腫)は、原発部位又は腫瘍から拡散して身体全体に転移する能力に関して顕著に異なる。実際、がん患者の生存に有害なのは、腫瘍転移の過程である。外科医は原発腫瘍を取り除くことができるが、転移したがんは、外科的治療ができないほど多くの場所に到達することが多い。転移を成功させるためには、がん細胞が元の場所から離れ、血液やリンパ管に侵襲し、循環中に新たな部位に移動し、腫瘍を確立させる必要がある。
【0004】
がん処置には多くの種類が存在する。受ける処置の種類は、患っているがんの種類及び進行度によって決まる。一部のがん患者は、1つの処置しか受けない。しかし、ほとんどの人は、手術と化学療法及び/又は放射線療法等の処置の組合せを受ける。また、免疫療法、標的化療法、幹細胞/骨髄処置、ホルモン療法、レーザー又は温熱療法を受ける場合もある。12種の主要ながんは、前立腺癌、乳癌、肺癌、結腸直腸癌、膀胱癌、非ホジキンリンパ腫、子宮癌、黒色腫、腎臓癌、白血病、卵巣癌及び膵臓癌である。一部のがんは、5年生存率のパーセンテージが高い可能性がある。しかし、他のがんは、5年生存率のパーセンテージが低い可能性があり(25%未満)、これは膠芽腫、心臓、食道、肝臓及び胆管、膵臓、肺、胆嚢、中皮腫、びまん性内在性橋膠腫及び急性骨髄単球性白血病に当てはまる。
【0005】
多くの場合、がんは化学療法剤(細胞毒性薬とも称される)によって幾分効果的に処置され得る。しかし、化学療法剤には2つの大きな制限がある。第一に、化学療法剤はがん細胞に特異的ではなく、特に高用量では、正常な急速に分裂する細胞にも毒性がある。第二に、時間及び反復使用と共に、がん細胞は化学療法剤に対する耐性を獲得し、したがって患者にそれ以上の利益をもたらさない。その後、化学療法剤の使用によって課される制限に対処するために、他の処置方法が調査されてきた。代替的な十分に研究された処置の選択肢は、手術、放射線及び免疫療法である。しかし、これらの処置も、特により進行したがんでは深刻な制限を有する。したがって、例えば、手術は広範囲の転移を完全に除去する能力によって制限され、放射線は、放射線を選択的に照射してがん細胞を透過する能力によって制限され、免疫療法(例えば、承認されたサイトカインの使用)は、有効性と毒性の間のバランスによって制限される。このため、他の比較的新しい治療手法が研究されている。これらの手法には、プロテインキナーゼ阻害剤(選択的ではないため毒性があり、更に薬物耐性が生じやすい)、抗血管新生剤(有効性及び毒性が限定的である)、並びに遺伝子療法(現在までに顕著な成功はない)、温熱療法(特定のがんに限定される)の使用が含まれる。したがって、がんの処置に有効であり(例えば、腫瘍の大きさ及び/又は転移の拡散を減少させる)、毒性が減少した新規化合物に対する必要性が依然として存在する。
【0006】
例として、膠芽腫の第1の処置工程は、手術によって腫瘍を可能な限り多く取り除くことである。膠芽腫は、正常な周囲の脳組織に広範囲に侵襲及び浸潤する能力があるため、完全な切除は不可能である。手術後に、再発を防ぐ試みとして、イメージングで視認可能な残存する腫瘍及び周辺領域の微視的な腫瘍細胞を処置するために、放射線療法が使用される。化学療法は、しばしば放射線と同時に行われ、またしばしば化学療法と放射線療法の併用が終了した後に単独で行われる。小児では、放射線療法の必要性を遅らせるために化学療法が使用される場合がある。しかし、腫瘍細胞は非常に耐性があり、脳は従来の治療に感受性であるという複数の要因のために、膠芽腫を処置することは非常に困難である。更に、多くの薬物は血液脳関門(BBB)を通過して腫瘍に作用することができず、脳は自己修復能力が非常に限られている。BBBを通過する化合物、又は抗がん化合物をゆっくりと放出できる、脳内におけるそのような化合物の送達システムに対する必要性が存在する。
【0007】
線維症関連疾患:線維症は、損傷組織の創傷治癒過程の一部として起こり得る、臓器又は組織における過剰な線維性結合組織の形成又は発達を指す。これは、自然回復しない創傷治癒の誇張された形態とみなすことができる。
【0008】
線維症はしばしば皮膚に生じるが、腎臓、心臓、肺、肝臓及び脳等の内臓に生じる場合もある。臓器の場合、線維症は硬化に先行することが多く、その後罹患した臓器が停止する。当然ながら、完全な臓器不全の最も一般的な結果は死である。したがって、例えば、肺線維症は罹患率及び死亡率の主要な原因である。これは、高用量化学療法(例えば、ブレオマイシン)の使用及び骨髄移植に関連する。特発性肺線維症(IPF)は肺の線維性疾患であり、その生存期間の中央値は、症状発症後4~5年である。現在、ピルフェニドン及びニンテダニブという2種の化合物がヒトの必要性のために承認されている。しかし、これらの化合物は、疾患の進行をわずかに減少させ、重篤な副作用を有する。したがって、線維性疾患の処置に有用な化合物に対する必要性が存在する。
【0009】
腎線維症は、慢性腎傷害から末期腎臓病への進行の基礎となる共通の経路である。腎臓は構造的に複雑な臓器であり、多数の重要な機能:代謝廃棄物の排泄、体内の水分及び塩分の調節、酸バランスの維持、並びに様々なホルモン及びオータコイドの排泄を行う。腎臓の疾患は複雑であるが、4つの基本的な形態的構成要素:糸球体、尿細管、間質及び血管への影響によって腎臓の疾患を分けることにより、その研究が容易になる。あいにく、いくつかの障害は1つより多くの構造に影響を及ぼし、また腎臓の構造は解剖学的に相互依存しているため、1つの構造が損傷すると、ほとんどの場合、他の構造にも二次的に影響が及ぶことが示唆される。したがって、起源が何であれ、すべての形態の腎臓病は最終的に腎臓の4つの構成要素をすべて破壊し、慢性腎不全に至る傾向がある。例えば、糖尿病等の自己免疫疾患では、腎臓は組織損傷又は病変を生じる主要な標的である。腎臓癌(例えば、腎細胞癌)の患者に行われることもある手技である腎摘出術又は腎臓切除は、残存する腎臓の腎機能に悪影響を及ぼす場合がある。また、化学療法及び免疫抑制療法も腎臓に有害な影響を与える原因である。したがって、腎臓病患者に投与できる、良好な安全性プロファイルを有する薬物に対する必要性が存在する。また、腎臓の健康を長引かせるか、又は腎臓が機能できなくなるほどの悪化から保護することができる医薬化合物に対する必要性が存在する。
【0010】
骨髄増殖性障害は、髄外造血をもたらす骨髄線維症及び赤血球造血不全と関連する(Agarwalら、「Bone marrow fibrosis in primary myelofibrosis: pathogenic mechanisms and the role of TGF-β」、Stem Cell Investig. 2016;3:5)。骨髄線維症(MF)は、体内の血液細胞の正常な産生を乱す骨髄の致死的な障害である。これにより、骨髄に大規模な瘢痕が生じ、重度の貧血、疲労、衰弱、並びに一般的には肝臓及び脾臓の肥大を引き起こす。現在、MFの処置に承認されている薬物は、Incyte/Novartis社のJakafi(ルキソリチニブ)の1種のみであり、MFに使用される他の従来の治療は適応外である。しかし、これらの薬物はいずれも治癒には至らず、治癒の可能性のある唯一の介入は同種幹細胞移植であるが、罹患率及び死亡率のリスクが高いため、ごく一部の適格患者にしか利用できない。そのため、MFの処置には大きな満たされていない必要性が存在する。
【0011】
また、非アルコール性脂肪肝疾患/非アルコール性脂肪肝炎(NAFL/NASH)等の肝線維症も、肝線維症を減少、予防又は逆転させる処置を必要としている。
【0012】
炎症:免疫介在性炎症性疾患(IMID)は、明確な病因を持たないが、炎症につながる共通の炎症経路を特徴とし、正常な免疫応答の調節障害から生じるか、又はそれによって引き起こされ得る一群の状態又は疾患のいずれかを指す。自己免疫疾患は、組織傷害が身体構成要素に対する体液性及び/若しくは細胞媒介性免疫応答、又は広義には自己に対する免疫応答と関連する一群の疾患又は障害のいずれかを指す。自己免疫疾患に対する現在の処置は、自己に対する免疫応答を減衰又は抑制する薬物、及び慢性炎症から生じる症状に対処する薬物の2つの群に大別することができる。より詳細には、自己免疫疾患(例えば、主に関節炎)に対する従来の処置は、(1)アスピリン、イブプロフェン、ナプロキセン、エトドラク及びケトプロフェン等の非ステロイド性抗炎症薬(NSAID);(2)プレドニゾン及びデキサメタゾン等の副腎皮質ステロイド;(3)メトトレキサート、アザチオプリン、シクロホスファミド、シクロスポリンA、Sandimmune(商標)、Neoral(商標)及びFK506(タクロリムス)等の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD);(4)組み換えタンパク質のRemicade(商標)、Enbrel(商標)及びHumira(商標)等の生物学的製剤である。数多くの治療が利用可能である一方で、従来の処置は日常的に有効ではない。更に問題なのは、しばしば慢性疾患で必要な長期使用の妨げとなる、付随する毒性である。したがって、慢性及び非慢性の自己免疫疾患を含む炎症関連疾患の処置に有用な化合物に対する必要性が存在する。
【0013】
酸化ストレス:酸化ストレスは、活性酸素種の生成と、反応性中間体を容易に解毒する、又は結果として生じた損傷を容易に修復する生体系の能力との間の不均衡によって引き起こされる。活性酸素種は、細胞のシグナル伝達において及び免疫系によって使用されるため有益であり得るが、多くの疾患にも関与する。そのため、活性酸素種の毒性作用によって引き起こされ得る細胞又はその構成要素の損傷を防ぐために、そのような反応種のレベルの適切なバランスを維持するのに役立つことができる化合物に対する必要性が依然として存在する。
【0014】
代謝障害:糖尿病、肥満、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)及び非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)等の代謝疾患は、世界中で健康に対する顕著な脅威となっており、今後も更に顕著になると予想される。2015年、米国人口の10%近くが糖尿病を患っていた。また、米国の成人の3分の1超が肥満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】WO2014/138906
【特許文献2】WO2012/097428
【特許文献3】WO2006/086871
【特許文献4】WO2014/138906
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Agarwalら、「Bone marrow fibrosis in primary myelofibrosis: pathogenic mechanisms and the role of TGF-β」、Stem Cell Investig. 2016;3:5
【非特許文献2】Hajdukら、J.Med.Chem.2000、43:3443~3447頁
【非特許文献3】Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66、1~19(1977)
【非特許文献4】Hundertmarkら、Org. Lett. 2000、12、1729~1731頁
【非特許文献5】Sorensenら、「Chemokine CCL2 and chemokine receptor CCR2 in early active multiple sclerosis」、Eur J Neurol.2004、11:445~449頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
当技術分野では、線維症又は線維症関連疾患の処置及び/又は予防のために置換芳香族化合物を(例えば、WO2014/138906)、又は糖尿病若しくは糖尿病関連障害のためにフェニルケトンカルボキシレート化合物を(例えば、WO2012/097428)、又は造血の刺激剤として中鎖長脂肪アルコール化合物を(例えば、WO2006/086871)使用する様々な試みがなされてきたが、これまで得られた商業化の結果は依然として不満足であった。前述の技術分野に記載された化合物の少なくとも一部で観察された商業化前の問題の少なくとも一部を軽減する化合物、医薬組成物及び処置方法に対する必要性が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本概要は、詳細な説明で更に後述される選択された概念を簡略化して導入するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な態様又は本質的な態様を特定することを意図しない。
【0019】
1つの広範な態様において、本開示は、以下のような置換基を有するコア芳香族基を有する式Iによる化合物:
【化1】
(式中、
G1は、-(CH2)nC(R1)(R2)OH、-(CH2)n-CHO、-(CH2)nC(O)NR1R2、-(CH2)nCH(R1)NR1R2、-(CH2)nC(O)OR3、-(CH2)n-CH(R1)O-R3又は-(CH2)nC(O)R3であり、
G2は、H、NH2、OH、F又はCl、好ましくはH、NH2又はOHであり、
G3は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3及びCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G4は、H、OH、F又はCl、好ましくはH又はOH、より好ましくはOHであり、
G5は、H、OH、F、Cl、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3又はCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G6は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル又は(CH2)nCOOHであり、
・nは0~5、好ましくは1~5、より好ましくは1~3から選択される整数であり、
・R1及びR2は、H及び任意に置換されたC1~C6アルキル基から独立して選択され、
・R3は任意に置換されたC1~C6アルキル基であるか、又はG1上に存在する場合、コア芳香族基とラクトンを形成する)
又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0020】
1つの広範な態様において、本開示は、対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防のための、本明細書に記載の化合物又はその薬学的な塩の使用に関する。
【0021】
1つの広範な態様において、本開示は、対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防のための医薬の製造に使用するための、本明細書に記載の化合物又はその薬学的な塩の使用に関する。
【0022】
1つの広範な態様において、本開示は、対象におけるがん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患の処置又は予防のための方法であって、本明細書に記載の化合物又はその薬学的な塩を対象に投与する工程を含む方法に関する。
【0023】
特定の実施形態において、本明細書に記載の使用及び方法は、以下の特徴の1つ又は複数を更に含むことができる:
・G3は、C5アルキル、C5アルケニル、-C(O)-(CH2)3-CH3又は-CH(OH)-(CH2)3-CH3であってもよい、
・G3は、C6アルキル、C6アルケニル、-C(O)-(CH2)4-CH3又は-CH(OH)-(CH2)4-CH3であってもよい、
・C5アルキル、C6アルキル、C5アルケニル又はC6アルケニルであってもよい、
・G3は、C5アルキル又はC5アルケニルであってもよい、
・G3は、C5アルキル又はC6アルキルであってもよい、
・G3は、C5アルキルであってもよい、
・G3は、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニルであってもよい、
・フェニルは、任意に置換されたC1~C6アルキルで置換されてもよい、
・G3は、CH3(CH2)x-C6H4-H(CH2)y-(ここでx+y=4又は5であり、yは0~5から選択される整数であってもよい)であってもよい、
・G3は、-(CH2)n-で任意に置換された複素環であってもよい、
・複素環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を有する、
・複素環は、非芳香族の単環式又は多環式環であってもよい、
・複素環は芳香環であってもよい、
・G5は、H、OH、F、-CH2Phe、-CH2-C3H5、C4~C6アルキル、-(CH2)nCH=CH又は-CH=CH(CH2)(ここでnは2又は3であってもよい)であってもよい、
・G1は、
○-(CH2)nCH2(CH3)OH;
○-(CH2)n-CH-O-CH3;
○-(CH2)nCH(O)NH2;
○-(CH2)nC(O)R3;
○-C(CH3)2OH;
○-CH(F)-OH;
○-CF2-OH;
○-C(O)CH3;
○-CH2C(O)OR3;又は
○-(CH2)nC(O)R3
○又はその薬学的に許容される塩
であってもよい、
・G1は-(CH2)nC(R1)(R2)OHであってもよい、
・G1は-(CH2)n-CHOであってもよい、
・G1は-(CH2)nC(O)NR1R2であってもよい、
・G1は-(CH2)nCH(R1)NR1R2であってもよい、
・G1は-(CH2)nC(O)OR3であってもよい、
・G1は-(CH2)n-CH(R1)O-R3であってもよい、
・G1は-(CH2)nC(O)R3であってもよい、
・化合物は、
○2-(2-ヒドロキシプロピル)-4,6-ジペンチルフェノール;
○4-ベンジル-2-(2-ヒドロキシプロピル)-6-ペンチルフェノール;
○2,4-ジベンジル-6-(2-ヒドロキシプロピル)フェノール;
○2-ベンジル-6-(2-ヒドロキシプロピル)-4-ペンチルフェノール;
○2,4-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-6-(2-ヒドロキシプロピル)フェノール;
○2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセトアミド;
○2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセトアミド;
○2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセトアミド;
○2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセトアミド;
○2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセトアミド;
○2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
○2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
○2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセトアルデヒド;
○2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセトアルデヒド;
○2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセトアルデヒド;
○1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
○1-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
○1-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン;
○1-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)プロパン-2-オン;
○1-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)プロパン-2-オン;
○メチル2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)アセテート;
○メチル2-(5-ベンジル-2-ヒドロキシ-3-ペンチルフェニル)アセテート;
○メチル2-(3,5-ジベンジル-2-ヒドロキシフェニル)アセテート;
○メチル2-(3-ベンジル-2-ヒドロキシ-5-ペンチルフェニル)アセテート;
○メチル2-(3,5-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-2-ヒドロキシフェニル)アセテート;
○2-(2-メトキシプロピル)-4,6-ジペンチルフェノール;
○4-ベンジル-2-(2-メトキシプロピル)-6-ペンチルフェノール;
○2,4-ジベンジル-6-(2-メトキシプロピル)フェノール;
○2-ベンジル-6-(2-メトキシプロピル)-4-ペンチルフェノール;又は
○2,4-ビス(3-シクロプロピルプロピル)-6-(2-メトキシプロピル)フェノール、
○又はその薬学的に許容される塩
であってもよい、
・化合物は、
【化2】
又はその薬学的に許容される塩であってもよい、
・薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、オラミン塩、メグルミン塩、リジン塩、トロメタミン塩又は銅塩であってもよく、好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩又はリチウム塩であってもよく、より好ましくはナトリウム塩等の塩であってもよい、
・薬学的に許容される塩は、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物、炭酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヒプル酸塩、ヨウ化物、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナプシル酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩又は塩化物塩等の塩であってもよい。
・薬学的に許容される塩は、無機塩又は有機塩であってもよい、
・がんの処置は、対象における腫瘍成長、細胞増殖、腫瘍細胞の遊走又は転移の阻害を含む、
・化合物は、対象における抗がん療法と組み合わせて使用するためのものであってもよい、
・抗がん療法は、化学療法又は電離放射線であってもよい、
・電離放射線は、X線、イオンビーム、電子ビーム、ガンマ線及び放射性同位元素からの放射線から選択される、
・化合物は、抗がん剤と組み合わせて使用するためのものであってもよい、
・抗がん剤は、テモゾロミド、アブラキサン、デカルバジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ブスルフェクス、ブスルファン、ブレオマイシン、アレクチニブ、メルファラン、パミドロネート、ベバシズマブ、カルボザンチニブ、ビンブラスチン、ドセタキセル、プレドニゾロン、イフォスファミド、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、マイトマイシン、イリノテカン、タキソテール、タキソール、5-フルオロウラシル、フォルフィリノックス、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、ベリブシン又はチロシンキナーゼ阻害剤であってもよい、
・がんは、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、肺がん、肝臓癌、白血病、膠芽腫、卵巣癌、すい臓癌、前立腺癌又は子宮癌であってもよい、
・がんは、膠芽腫又は黒色腫であってもよく、化合物は、がんの再発のin situ処置のためにキトサンとの組合せで投与するためのものであってもよい、
・線維症関連疾患は、肺、腎臓、肝臓、心臓又は皮膚の線維症関連疾患であってもよい、
・化合物は、線維化関連疾患における線維化組織の増殖又は進行の減少に使用することができる、
・対象はヒトであってもよい、
・化合物又はその薬学的に許容される塩は、経腸、粘膜、非経口又は局所投与に適した形態で製剤化することができる、
・化合物又はその薬学的に許容される塩は、制御放出組成物に製剤化することができる。
【0024】
1つの広範な態様において、本開示は、本明細書に記載の芳香族化合物のアルコール形態の製造方法であって、(a)出発芳香族化合物と、所望のG3置換基に対応する炭素数を有するオレフィンボロン酸エステル誘導体の混合物を好適な条件下でインキュベートして、G1にエステル、及び所望のG3置換基に対応する炭素数を有するアルケン鎖をG3に含む構造を有する第1の中間化合物を得る工程であり、出発芳香族化合物が、G1にエステル及びG5にハロゲンを有する工程、(b)第1の中間化合物を好適な条件下でインキュベートして、所望のG3置換基に対応する炭素数を有するアルキル鎖をG3に有する第2の中間化合物を得る工程、及び(c)第2の中間化合物を好適な条件下でインキュベートして芳香族化合物のアルコール形態を得る工程を含む、方法に関する。
【0025】
具体的な実施形態において、本明細書に記載の製造方法は、以下の特徴の1つ又は複数を更に含むことができる:
・工程(a)の好適な条件は、第1のパラジウム含有触媒の存在下でインキュベートすることを含む。
・第1のパラジウム含有触媒は、Pd(PPh3)4を含む。
・工程(a)の好適な条件は、Na2CO3の存在下でインキュベートすることを更に含む。3
・工程(a)の好適な条件は、約16時間~約18時間の期間にわたってインキュベートすることを更に含む。
・工程(a)の好適な条件は、約90℃の温度でインキュベートすることを更に含む。
・工程(b)の好適な条件は、第2のパラジウム含有触媒の存在下でインキュベートすることを含む。
・第2のパラジウム含有触媒は、Pd(OH)2を含む
・工程(b)の好適な条件は、5barのH2圧力下でインキュベートすることを含む。
・工程(c)の好適な条件は、還元剤の存在下でインキュベートすることを含む。
・還元剤は、水素化アルミニウムリチウムを含む。
【0026】
本開示に記載され、相互に排他的でない例示的な実施形態のすべての特徴は、互いに組み合わせることができる。1つの実施形態の要素は、更に言及することなく他の実施形態で利用することができる。本発明の他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて具体的な実施形態の以下の説明を検討することにより、当業者に明らかになる。
【0027】
特許又は出願ファイルには、少なくとも1枚のカラーで作成された図面が含まれる。カラー図面を含む本特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な手数料の支払いに応じて特許庁から提供される。具体的な例示的な実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して、本明細書で以下に提供される:
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の実施形態による、CAM Avatarモデルにおける、ヒト膠芽腫U87に対するカルボプラチン(「Carbo」)のものと比較した代表化合物の抗がん活性を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図2】本開示の実施形態による、Avatar CAMモデルにおける、ヒト腎細胞癌Caki細胞に対するソラフェニブのものと比較した代表化合物の抗がん活性を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図3】本開示の実施形態による、カルボプラチン耐性PDX膠芽腫(GBM20-75)に対するカルボプラチン(「Carbo」)と代表化合物の相乗的抗がん活性を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図4】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるPDX-IPF肺断片の成長の阻害を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図5】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるPDX-IPF肺断片におけるコラーゲン沈着の阻害を示すデータ及び写真(カラー)を示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図6】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるLPS刺激PBMCからのIL-6放出の阻害を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図7】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるLPS刺激PBMCからのMCP-1放出の阻害を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図8】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるLPS刺激PBMCからのTNFα放出の阻害を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
図9】本開示の実施形態による、セトゲプラムのものと比較した代表化合物によるLPS刺激PBMCからのIL-1β放出の阻害を示すデータを示す非限定的ヒストグラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図には、例示的な実施形態又は結果が例として示される。説明及び図面は、特定の実施形態を示すためのものにすぎず、理解のための補助であることが明示的に理解されるべきである。これらは、本発明の限界の定義であることを意図しない。
【0030】
本開示の1つ又は複数の実施形態の詳細な説明は、本開示の原理を示す添付の図面と共に以下に提供される。本発明は、このような実施形態に関連して記載されるが、本発明は、任意の実施形態に限定されない。本開示の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。本開示の完全な理解をもたらすために、多数の具体的な詳細が以下の説明に記載される。これらの詳細は、非限定的な例の目的で提供され、本発明は、これらの具体的な詳細の一部又はすべてを伴わずに特許請求の範囲に従って実施され得る。明瞭化のために、本発明に関連する技術分野で公知の技術資料は、本発明が不必要に不明瞭にならないように、詳細には説明されていない。
【0031】
本発明者は、研究開発作業を通じて、驚くべきことにかつ予想外に、置換芳香族化合物(すなわち、本明細書に記載の式I)のアルコール、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、エーテル、ラクトン及び/又はケトン形態並びにその許容される塩が、商業医薬用途に特に適していることを発見した。
【0032】
例えば、そのような医薬用途には、医薬組成物の製造、例えば、がん、炎症関連疾患、酸化ストレス、疼痛、代謝障害又は線維化関連疾患を予防する及び/又は処置するためのその治療的使用及び方法が含まれる。例えば、本明細書に記載の化合物は、以下の有利な特性: 公知の構造に対して向上した薬物動態、向上した半減期、向上した毒性及び/又は望ましくない代謝物の低減の少なくとも1つ又は複数を示すことが発見された。
【0033】
いかなる理論にも束縛されることなく、芳香族コア上の本明細書に記載のG1基及び/又は本明細書に記載のG2~G6置換基は、本開示の化合物に対して本明細書に記載の有利な特性の1つ又は複数を付与すると考えられる。そのような有利な特性は、公知技術に鑑みて予想外かつ驚くべきものであった。例えば、本明細書に記載のG1基は、本開示の化合物に対して、G1にカルボン酸を有することを除いて類似の化合物と比較して優れた薬物動態/安全性プロファイルを付与し、例えば、より少ないグルクロニド代謝物の形成をもたらすと考えられており、これは少なくともそのような代謝物、特にアシル-グルコロニドが特有の有害事象を誘導することが公知であり、したがって健康機関及び規制当局から良好に評価されていないため、有利な商業的実現になる。例えば、本明細書に記載のG1基は、本開示の化合物に対して、G1にカルボン酸を有することを除いて類似の化合物と比較して優れた生物学的活性を付与すると考えられる。これは、少なくともカルボン酸官能基が薬物設計において重要な役割を果たし、この官能基がしばしば多様なクラスの治療剤のファーマコフォアの一部である(Hajdukら、J.Med.Chem.2000、43:3443~3447頁)ために驚くべきものであり、予想外かつ逆説的であった。実際、広範に使用されている非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、抗生物質、抗凝固薬及びコレステロールを低下させるスタチンを含む多数の(450超)カルボン酸含有薬が世界中で販売されている。この官能基が薬物-標的相互作用の重要な決定因子であると考えられる理由として、比較的強い静電相互作用及び水素結合を確立する能力と組み合わせた酸性度がしばしば取り上げられる。
【0034】
A)化合物
広範な態様において、本開示は、以下のような置換基を有するコア芳香族基を有する式Iの化合物:
【化3】
(式中、
G1は、-(CH2)nC(R1)(R2)OH、-(CH2)n-CHO、-(CH2)nC(O)NR1R2、-(CH2)nCH(R1)NR1R2、-(CH2)nC(O)OR3、-(CH2)n-CH(R1)O-R3又は-(CH2)nC(O)R3であり、
G2は、H、OH、NH2、F又はCl、好ましくはH、NH2又はOHであり、
G3は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3及びCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G4は、H、OH、F又はCl、好ましくはH又はOH、より好ましくはOHであり、
G5は、H、OH、F、Cl、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル、-(CH2)nC3H5、任意に置換されたC1~C6アルキル、任意に置換されたC2~C6アルケニル、-C(O)-R3又はCH(OH)-R3、好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは3である)、より好ましくは任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC6アルケニル、C(O)-(CH2)n-CH3又はCH(OH)-(CH2)n-CH3(ここでnは4である)、更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル、任意に置換されたC6アルキル、任意に置換されたC5アルケニル、任意に置換されたC6アルケニル、また更により好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC5アルケニル、特に好ましくは任意に置換されたC5アルキル又は任意に置換されたC6アルキル、より特に好ましくは任意に置換されたC5アルキルであり、
G6は、H、F、Cl、OH、-(CH2)n-で任意に置換された複素環、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニル又は(CH2)nCOOHであり、
・nは0~5、好ましくは1~5、より好ましくは1~3から選択される整数であり、
・R1及びR2は、H及び任意に置換されたC1~C6アルキル基から独立して選択され、
・R3は任意に置換されたC1~C6アルキル基であるか、又はG1上に存在する場合、コア芳香族基とラクトンを形成する)
又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0035】
特に、G1位の官能基は、カルボン酸を含まない。
【0036】
用語「任意に置換された複素環」は、その環のメンバーとして少なくとも2つの異なる元素の原子を有する環式化合物を指す。好ましくは、複素環は5又は6員環である。好ましくは、複素環は、窒素、酸素及び硫黄から選択される1~3個のヘテロ原子を有する。複素環は、「ヘテロシクロアルキル」、すなわち、炭素及び水素原子、並びに少なくとも1つのヘテロ原子を含む非芳香族単環式又は多環式環であってもよいし、「ヘテロ芳香族」、すなわち、芳香環の一部として少なくとも1つのヘテロ原子を含有する芳香環であってもよい。ヘテロシクロアルキル基の例として、これらに限定されないが、アジリジニル、ピロリジニル、ピロリジノ、ピペリジニル、ピペリジノ、ピペラジニル、ピペラジノ、モルホリニル、モルホリノ、チオモルホリニル、チオモルホリノ、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフラニル、テトラヒドロピラニル及びピラニルが挙げられる。ヘテロ芳香族基の例として、これらに限定されないが、ピリジン、フラン、チオフェン、シトシン及びインドールが挙げられる。複素環は、非置換であってもよく、又は1つ若しくは2つの好適な置換基、例えば任意に置換されたC1~C6アルキルで置換されてもよい。
【0037】
-(CH2)n-で任意に置換された複素環の非限定的な例として、複素環が任意に置換されたC1~C6アルキルで置換されている基を挙げることができる。非限定的な例では、-(CH2)n-で任意に置換された複素環は、CH3(CH2)x-複素環-(CH2)y-等の基を含んでもよく、ここでx+y=3、4又は5であり、yは0~5、好ましくは1~5、より好ましくは1~4から選択される整数である。yが0~5の整数である非限定的な例として、以下のいずれか1つを挙げることができる(ここで、(CH2)yは、示される構造の右端にあり、波線結合で式Iの残りに接続されていることが示される):
【化4】
(すなわち、ここでyは0であり、x+yは3である)、
【化5】
(すなわち、ここでyは0であり、x+yは3である)等。
【0038】
-(CH2)n-で任意に置換されたフェニルは、フェニルが任意に置換されたC1~C6アルキルで置換されている基を含むことができる。非限定的な例では、-(CH2)n-で任意に置換されたフェニルは、CH3(CH2)x-C6H4-(CH2)y-等の-(CH2)n-置換フェニル基を含んでもよく、ここでx+y=3、4又は5であり、yは0~5、好ましくは1~5、より好ましくは1~4から選択される整数である。yが0~5の整数である非限定的な例として、以下のいずれか1つを挙げることができる(ここで、(CH2)yは示される構造の右端にあり、波線結合で式Iの残りに接続されていることが示される):
【化6】
(すなわち、ここでyは3であり、x+yは3である)、
【化7】
(すなわち、ここでyは2であり、x+yは3である)、
【化8】
(すなわち、ここでyは1であり、x+yは3である)、又は
【化9】
(すなわち、ここでyは0であり、x+yは3である)等。
【0039】
フェニルが置換C1~C6アルキルで置換される場合、非限定的な例として、フェニルで置換されたC1~C6アルキルを挙げることができる(ここで、残りの式Iの分子への結合は、示される構造の右端にあり、波線結合で式Iの残りに接続されていることが示される):
【化10】
【化11】
【0040】
特に、G1に関して以下に記載されるような基及び置換基を有する式Iの化合物は、がんの予防及び/又は処置のために使用することができる:
・(CH2)nOH(ここで、nは1若しくは2であるか、又はnは好ましくは1である)、
・(CH2)nCH(CH3)OH(ここで、nは1若しくは2であるか、又はnは好ましくは1である)、
・(CH2)nO-CH3(ここで、nは1若しくは2であるか、又はnは好ましくは1である)、
・(CH2)n(O)NH2(ここで、nは1若しくは2であるか、又はnは好ましくは1である)、
・CH2-COH;
・CH(CH3)OH;
・(CH2)n-C(O)-R3;
・-C(CH3)2OH;
・-CH(F)-OH;
・-CF2-OH;
・-C(O)CH3
・-C(O)-R3;
・-CH2C(O)OR3;
・-(CH2)nC(O)R3
【0041】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるアルコールとして提供される。
【0042】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるアルデヒドとして提供される。
【0043】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるケトンとして提供される。
【0044】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるアミンとして提供される。
【0045】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるアミドとして提供される。
【0046】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるエステルとして提供される。
【0047】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるエーテルとして提供される。
【0048】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるラクトンとして提供される。
【0049】
特定の実施形態によれば、化合物は、G1位における薬学的に許容されるケトンとして提供される。
【0050】
式Iの化合物の非限定的な例として、以下のTable 1(表1)に列挙される化合物のいずれかのアルコール、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、エーテル、ラクトン又はケトン(G1位における)形態(アルコール形態として示される)が挙げられ、ここでG2位は、好ましくはH、NH2又はOHであってもよい。好ましい実施形態では、化合物は、以下の化合物のいずれか1種のアルコール、アルデヒド、ラクトン又はケトン(G1位における)形態によって表される。関連する場合、以下の化合物の1種又は複数は、薬学的な塩の形態(例えば、そのナトリウム塩)であってもよい:
【0051】
【表1】
【0052】
式Iの化合物の非限定的な例はまた、以下のTable 2(表2)に列挙される化合物のいずれかのアルコール、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、エーテル、ラクトン又はケトン(G1位における)形態を含み、ここでG2位は、好ましくはH、NH2又はOHであってもよい。好ましい実施形態では、化合物は、以下の化合物のいずれか1種のアルコール、ラクトン、アルデヒド又はケトン(G1位における)形態によって表される。関連する場合、以下の化合物の1種以上は、薬学的な塩の形態(例えば、そのナトリウム塩)であってもよい:
【0053】
【表2】
【0054】
一部の実施形態において、式Iの化合物はまた、以下のTable 3(表3)に列挙される化合物のいずれかのアルコール、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、エーテル又はケトン(G1位における)形態を含み、ここでG2位は、好ましくはH、NH2又はOHであってもよい。好ましい実施形態では、化合物は、以下の化合物のいずれか1種のアルコール、アルデヒド、ラクトン又はケトン(G1位における)形態によって表される。関連する場合、以下の化合物の1種以上は、薬学的な塩の形態(例えば、そのナトリウム塩)であってもよい:
【0055】
【表3A】
【表3B】
【表3C】
【表3D】
【表3E】
【表3F】
【表3G】
【0056】

本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、塩基付加塩を意味することを意図する。薬学的に許容される塩の例はまた、例えば、Bergeら、「Pharmaceutical Salts」、J.Pharm.Sci.66、1~19頁(1977)に記載されている。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により酸性部分を含有する親剤から合成されてもよい。一般に、このような塩は、これらの薬剤の遊離酸形態を、水中、有機溶媒中又はその2つの混合物中で、化学量論的量の適切な塩基と反応させることにより調製される。同様に、親剤が-NH2等の基を含有する場合、薬学的に許容される塩は、好適な溶媒中で遊離-NH3 +をアニオン源と反応させることにより、通常の化学的方法によって親剤から合成され得る。
【0057】
塩は、化合物の最終的な単離又は精製の間にin situで、又は本開示の精製化合物を所望の対応する塩基と別々に反応させ、そのように形成された塩を単離することによって調製され得る。例えば、この手法は、本開示の化合物の一部のアルコール形態(Tables 1~3(表1~3)のいずれか1つの化合物の少なくとも一部のアルコール形態等)、又は本開示の化合物の一部の遊離酸形態(Tables 1~3(表1~3)のいずれか1つの化合物の少なくとも一部のG1以外の位置の置換基上に存在する遊離酸形態等)によって実施され得る。
【0058】
本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、有機又は無機塩からなる群から選択され得る。
【0059】
例えば、薬学的に許容される塩は、化合物がそのような塩になることが可能である場合、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、オラミン塩、メグルミン塩、リジン塩、トロメタミン塩又は銅塩を含むことができる。好ましい実施形態において、本開示の化合物の薬学的に許容される塩は、化合物がそのような塩になることが可能である場合、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩又はリチウム塩であってもよい。より好ましくは、薬学的に許容される塩は、化合物がそのような塩になることが可能である場合、ナトリウム塩である。
【0060】
例えば、薬学的に許容される塩は、化合物がそのような塩になることが可能である場合、酢酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、臭化物、炭酸塩、クエン酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヒプル酸塩、ヨウ化物、マレイン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナプシル酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩又は塩化物塩を含んでもよい。
【0061】
一部の実施形態では、化合物は、そのような塩になることが可能である、上記のTable1~3(表1~3)に列挙される化合物の少なくとも一部のナトリウム塩である。
【0062】
記載される化合物のすべてのアルコール、塩並びに他のイオン及び非イオン形態は、該当する場合、所与の化合物に言及するときに含まれる。例えば、化合物が本明細書でアルコールとして示される場合、化合物がそのような塩になることが可能である場合には、化合物の塩の形態も含まれる。同様に、化合物が本明細書で塩として示される場合、アルコール形態も含まれる。置換基の1つに芳香族基を有する化合物にも同じことが当てはまり、このような置換基上の芳香族基は、カルボン酸の遊離形態を含んでもよい。このような場合、化合物が本明細書で塩として示される場合には、カルボン酸の遊離形態も含まれる。同様に、置換基上の芳香族基がカルボン酸の遊離形態で示される場合、化合物がそのような塩になることが可能である場合には、その化合物の塩の形態も含まれる。
【0063】
プロドラッグ
特定の実施形態において、本開示の化合物はまた、すべての薬学的に許容される塩、テトラゾール等の等比体積等価物及びそのプロドラッグ形態を含むことができる。後者の例として、本開示の化合物の薬学的に許容されるエステル又はアミドが挙げられる。
【0064】
キラリティー
本開示の化合物、その薬学的に許容される塩又はそれらのプロドラッグは、1種以上の不斉中心、キラル軸及びキラル平面を含有してもよく、したがってエナンチオマー、ジアステレオマー及び他の立体異性体形態を生じる場合があり、(R)-又は(S)-等の絶対立体化学の観点から定義され得る。本開示は、そのようなすべての可能な異性体、並びにそれらのラセミ体形態及び光学的に純粋な形態を含むことを意図する。光学活性の(+)及び(-)、(R)-及び(S)-異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製されるか、又は逆相HPLC等の従来技術を使用して分割され得る。ラセミ混合物を調製し、その後個々の光学異性体に分離してもよいし、これらの光学異性体をキラル合成によって調製してもよい。エナンチオマーは、例えば、結晶化、気液又は液体クロマトグラフィー、エナンチオマー特異的試薬との1つのエナンチオマーの選択的反応によって後に分離され得るジアステレオ異性体塩を形成することにより、当業者に公知の方法によって分割されてもよい。また、分離技術によって所望のエナンチオマーが別の化学的実体に変換される場合、所望のエナンチオマー形態を形成するために追加の工程が必要であることが当業者に理解される。或いは、特定のエナンチオマーは、光学活性試薬、基質、触媒若しくは溶媒を使用した不斉合成によって、又は不斉変換により1つのエナンチオマーを別のものに変換することによって合成されてもよい。
【0065】
本開示の特定の化合物は、双性イオン形態で存在してもよく、本開示は、これらの化合物の双性イオン形態及びそれらの混合物を含む。
【0066】
水和物
加えて、本開示の化合物はまた、水和及び無水物形態で存在してもよい。したがって、本明細書に記載される式のいずれかの水和物は、一水和物として又は多水和物の形態で存在してもよい。
【0067】
B)調製方法
一般に、本開示の化合物は、容易に入手可能な及び/又は従来的にの調製可能な出発材料、試薬及び従来の合成手順を使用して任意の従来の方法によって調製することができる。特に興味深いのは、Hundertmarkら、Org. Lett. 2000、12、1729~1731頁及びWO2014/138906の研究である。
【0068】
以下の例示セクションでは、式Iの代表化合物の合成に関する一般スキーム、及び具体的であるが非限定的な例を提供する。
【0069】
C)医薬用途
本明細書で示され、例示されるように、本開示の化合物は、有益な医薬特性を有してもよく、これらの化合物は、対象において有用な医薬用途を有する場合がある。本発明者によって企図される医学的及び医薬用途は、これらに限定されないが、様々ながん、酸化ストレス関連状態、炎症関連疾患、疼痛、代謝障害、並びに/又は線維症及び線維症関連疾患の予防及び/又は処置を含む。
【0070】
一態様において、医学的及び医薬用途は、様々ながんの予防及び/又は処置である。一実施形態において、がんは、膀胱癌、乳癌、結腸直腸癌、腎臓癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、白血病、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌及び子宮癌から選択される。
【0071】
別の実施形態では、がんは、膠芽腫、心臓、食道、肝臓及び胆管、膵臓、肺、胆嚢、中皮腫、びまん性内在性橋膠腫及び急性骨髄単球性白血病、並びに線維肉腫から選択される。
【0072】
別の実施形態では、がんは、膠芽腫、乳癌、結腸直腸癌、白血病、黒色腫及び膵臓癌から選択される。
【0073】
別の実施形態では、がんは、脳及び皮膚癌から選択される。
【0074】
一部の実施形態では、医薬用途は、本明細書で定義されるがんを予防する又は処置する方法を含んでもよく、方法は、例えば、がんの近傍に、又は原発腫瘍の除去後若しくは除去せずにがん部位においてin situで、言い換えると腫瘍周囲又は腫瘍の外科的切除の前/後に本明細書に定義される化合物の治療有効量を患者に投与する工程を含んでもよい。一部の場合では、このような投与は、手術不能な腫瘍の状況下で行われてもよい。
【0075】
一部の実施形態において、本開示の化合物は、例えば、標的部位における化合物の局所的送達のために、徐放性又は制御放出組成物に製剤化されてもよい。徐放性又は制御放出組成物は当技術分野で公知であり(例えば、サーモゲル)、簡潔さのために本明細書ではこれ以上説明されない。
【0076】
本明細書における処置への言及は、予防並びに確立されたがんの治療に及ぶ。したがって、本開示の化合物の少なくともいくつかは、原発腫瘍の外科的除去後、手術前、積極的な化学療法、放射線療法、免疫療法又は他の標的化療法の前若しくは後、又は患者が寛解状態にあるときでも使用することができる。これらの本開示の化合物の少なくともいくつかは、標準的ながん治療と比較した場合、相対的に毒性がないと予想され、それにより標準的な治療で望ましいであろうものよりも自由な予防的使用を可能にする。
【0077】
一態様において、医学的及び医薬用途は、線維症及び線維症関連疾患の予防及び/又は処置である。一実施形態において、本開示の化合物は、線維症及び線維症関連疾患の処置のための単独療法で使用するためのものである。例えば、化合物は、線維化関連疾患における線維化組織の増殖又は進行の減少のために使用され得る。他の実施形態では、本開示の化合物は、ピルフェニドン、ニンテダニブ又はPPARアゴニスト/アンタゴニスト、フェザゲプラス、キナーゼ阻害剤、mTOR阻害剤等の他の前臨床化合物等の、1種又は複数の既に承認された抗線維症及び抗線維症関連疾患薬剤と組み合わせて使用される。
【0078】
例えば、線維性疾患は肺線維症であってもよい。この実施形態では、治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kg、好ましくは約1~約20mg/kgである。化合物は、好ましくは経口投与される。対象は、好ましくはヒトである。好ましい実施形態によれば、肺線維症は、特発性肺線維症、サルコイドーシス、嚢胞性線維症、家族性肺線維症、珪肺症、石綿症、炭坑夫塵肺、炭素塵肺、過敏性肺炎、無機粉塵の吸入によって引き起こされる肺線維症、感染性物質によって引き起こされる肺線維症、有害ガス、エアロゾル、化学物質の粉塵、煙若しくは蒸気の吸入によって引き起こされる肺線維症、薬物誘導性間質性肺疾患又は肺高血圧症である。
【0079】
例えば、線維性疾患は肝線維症であってもよい。この実施形態では、治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kgである。化合物は、好ましくは経口投与される。対象は、好ましくはヒトである。好ましい実施形態によれば、肝線維症は、慢性肝疾患、B型肝炎ウイルス感染、C型肝炎ウイルス感染、D型肝炎ウイルス感染、住血吸虫症、アルコール性肝疾患又は非アルコール性脂肪肝炎、肥満、糖尿病、タンパク質栄養不良、冠動脈疾患、自己免疫肝炎、嚢胞性線維症、アルファ-1-アンチトリプシン欠損、一次胆汁性肝硬変、薬物反応及び毒物への曝露から生じる。
【0080】
例えば、線維性疾患は皮膚線維症であってもよい。この実施形態において、化合物は、好ましくは局所又は経口投与される。局所投与される場合、本開示の化合物の治療有効量は、好ましくは約0.01~約10質量%である。対象は、好ましくはヒトである。経口投与される場合、本開示の化合物の治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kgであり、対象はヒトである。本開示の好ましい実施形態によれば、皮膚線維症は、瘢痕、肥厚性瘢痕、ケロイド瘢痕、真皮線維性障害、創傷治癒、創傷治癒遅延、乾癬又は強皮症である。前記瘢痕は、火傷、外傷、外科的損傷、放射線又は潰瘍に由来し得る。前記潰瘍は、糖尿病性足潰瘍、静脈性下腿潰瘍又は褥瘡であってもよい。
【0081】
例えば、線維性疾患は心臓線維症であってもよい。この実施形態では、治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kg、好ましくは約1~約20mg/kgである。化合物は、好ましくは経口投与される。対象は、好ましくはヒトである。好ましい実施形態によれば、心臓線維症は、冠動脈及び血管の疾患、心筋梗塞、心不全、アテローム性動脈硬化症、狭心症、不整脈から生じる。
【0082】
例えば、線維性疾患は腎線維症であってもよい。この実施形態では、治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kgであり、好ましくは約1~約20mg/kgである。化合物は、好ましくは経口投与される。対象は、好ましくはヒトである。好ましい実施形態によれば、腎線維症は、慢性腎臓病(CKD)、急性腎臓病(AKD)、糖尿病性腎臓病(DKD)、多嚢胞性腎臓病(PKD)又は他の希少若しくは遺伝性疾患から生じる場合がある。
【0083】
投与量の上述の実施形態に加え、すべての上記の線維性疾患について、本開示の化合物がヒトに局所投与される場合、化合物の治療有効量は、好ましくは約0.01~約10質量%、又は約0.1~約10質量%、又は約1.0~約10質量%、約0.1~約5質量%、又は約1.0~約5質量%に相当する。すべての上記の線維性疾患において、本開示の化合物がヒトに経口投与される場合、化合物の治療有効量は、好ましくは約1~約50mg/kg、又は約1~25mg/kg、又は約1~約10mg/kg、約5~約25mg/kg又は約10~約20mg/kgに相当する。
【0084】
一態様において、医学的及び医薬用途は、酸化ストレス関連障害の予防及び/又は処置である。「酸化ストレス関連障害」という用語は、活性酸素種の産生と、反応性中間体を容易に解毒する又は結果として生じる損傷を容易に修復する生体系の能力の間に不均衡が存在する任意の疾患を指す。このような疾患の例として、これらに限定されないが、心血管疾患、がん、糖尿病、関節炎、アテローム性動脈硬化、パーキンソン病、心不全、心筋梗塞、アルツハイマー病、慢性疲労症候群及び自己免疫疾患が挙げられる。
【0085】
一態様において、医学的及び医薬用途は、炎症関連疾患の予防及び/又は処置である。「炎症関連疾患」という用語は、これらに限定されないが、免疫介在性炎症性疾患(IMID)及び自己免疫疾患、関節炎、ITP、糸球体腎炎、血管炎、乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、乾癬、クローン病、炎症性腸疾患、強直性脊椎炎、シェーグレン症候群、スティル病(マクロファージ活性化症候群)、ぶどう膜炎、強皮症、筋炎、ライター症候群及びウェゲナー症候群等を含む、慢性及び急性炎症性疾患を含む炎症関連疾患に関連するあらゆる異常を指す。例えば、炎症関連疾患として、関節リウマチ、浮腫、皮膚炎、大腸炎等を挙げることができる。一般に、予防的及び治療的使用は、対象、好ましくはそれを必要とするヒト患者への本明細書に記載の化合物の投与を含む。本開示の化合物は、任意の従来の処置と共に投与されてもよい。本開示の方法、化合物及び/又は組成物の有効性を評価、査定及び/又は確認するために、連続的な測定値が決定されてもよい。炎症関連疾患の査定のための定量的方法及び技術は、当技術分野において周知である。
【0086】
一態様において、医学的及び医薬用途は、代謝疾患又は障害の予防及び/又は処置である。代謝障害で起こり得る症状のいくつかは、嗜眠、体重減少、黄疸及び発作である。代謝障害の主なクラスは:酸塩基平衡異常、代謝性脳疾患、カルシウム代謝の障害、DNA修復欠損障害、グルコース代謝障害、高乳酸血症、鉄代謝障害、脂質代謝障害、吸収不良症候群、代謝症候群X、先天的代謝異常、ミトコンドリア病、リン代謝障害、ポルフィリア、プロテオスタシス欠損、代謝性皮膚疾患、消耗症候群又は水分電解質不均衡であると考えられる。例えば、代謝疾患又は障害として、I型、II型又はIII型糖尿病、トリグリセリド血症、コレステロール血症等を挙げることができる。
【0087】
一部の実施形態において、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩は、がんの処置の単独療法に使用するためのものである。
【0088】
他の実施形態では、本開示の化合物又はその薬学的に許容される塩は、これらに限定されないが、化学療法剤、サイトカイン、放射線療法剤、免疫療法、モノクローナル抗体、標的化療法等の1種又は複数の既に承認された抗がん療法と組み合わせて使用される。本開示の化合物と組み合わせて使用され得る抗がん剤の例として、これらに限定されないが、テモゾロミド、アブラキサン、デカルバジン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、シクロホスファミド、ブスルフェクス、ブスルファン、ブレオマイシン、アレクチニブ、メルファラン、パミドロネート、ベバシズマブ、カルボザンチニブ、ビンブラスチン、ドセタキセル、プレドニゾロン、イフォスファミド、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ブレオマイシン、エトポシド、トポテカン、マイトマイシン、イリノテカン、タキソテール、タキソール、5-フルオロウラシル、フォルフィリノックス、メトトレキサート、ゲムシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、クロラムブシル、ベリブシン及びチロシンキナーゼ阻害剤が挙げられる。
【0089】
一部の実施形態において、本開示による処置又は予防の方法は、別の治療有効剤の投与と共に、本開示による少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩の共投与を含んでもよい。したがって、本開示の追加の態様は、対象の併用治療処置の方法であって、それを必要とする対象に有効量の第1の薬剤及び第2の薬剤を投与する工程を含み、第1の薬剤が式Iで定義される通りであるか又は他の列挙された化合物であり、第2の薬剤が、上記で定義された障害又は疾患のいずれか1つを予防又は処置するためのものである、方法に関する。本明細書で使用する場合、語句「併用治療処置」又は「と併用して」におけるような用語「併用」又は「併用して」は、第2の薬剤の存在下で第1の薬剤を投与することを含む。併用治療処置方法は、第1、第2、第3又は追加の薬剤が共投与される方法を含む。併用治療処置方法は、第1又は追加の薬剤が第2又は追加の薬剤の存在下で投与される方法も含み、第2又は追加の薬剤は、例えば、以前に投与されていてもよい。併用治療処置方法は、異なる行為者によって段階的に実行されてもよい。例えば、1人の行為者が対象に第1の薬剤を投与してもよく、第2の行為者が対象に第2の薬剤を投与してもよく、投与工程は、第1の薬剤(及び/又は追加の薬剤)が第2の薬剤(及び/又は追加の薬剤)の存在下での投与後である限り、同時に若しくはほぼ同時に、又は離れた時間で実行されてもよい。行為者と対象は、同じ存在(例えば、ヒト)であってもよい。
【0090】
したがって、本開示はまた、上記の疾患又は状態のいずれか1つの症状又は合併症又は転移を予防、減少又は排除するための方法に関する。方法は、それを必要とする対象に、本開示の少なくとも1種の化合物を含む第1の医薬組成物、及び1種以上の追加の活性成分を含む第2の医薬組成物を投与する工程を含み、すべての活性成分は、処置されるべき疾患又は状態の1つ又は複数の症状又は合併症を阻害、減少又は排除するのに十分な量で投与される。一態様では、第1及び第2の医薬組成物の投与は、時間的に少なくとも約2分間間隔を空けられる。好ましくは、第1の薬剤は、式Iの化合物若しくは本明細書で定義される他の列挙された化合物、又はその薬学的に許容される塩、例えば、化合物がそのような塩になることが可能である場合はナトリウム塩である。第2の薬剤は、上記に示された化合物のリストから選択されてもよいが、それらに限定されない。
【0091】
D)医薬組成物及び製剤
上記で示されたように、本開示の化合物の少なくともいくつかは、1つ又は複数の潜在的な治療用途を有してもよい。したがって、本開示はまた、治療有効量の本開示の化合物の1種又は複数、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。例えば、そのような医薬組成物は、式Iの化合物、例えば、前述の表のいずれか1つに記載されるそれらの化合物のアルコール、アルデヒド、エステル、ケトン形態を含んでもよい。
【0092】
本開示の関連する態様は、治療有効量の本開示の化合物の1種又は複数を含む医薬組成物に関する。上記で示されたように、本開示の医薬組成物は、対象における1種又は複数のがんの予防及び/又は処置に有用であってもよい。
【0093】
本開示の組成物は、本明細書で定義される式Iの1種又は複数の化合物若しくは他の列挙された化合物、又はその薬学的に許容される誘導体、塩、プロドラッグ、類似体及び異性体若しくはエナンチオマーを含んでもよい。活性化合物の製剤は、経腸(例えば、液体、カプセル、錠剤又はチュアブル錠の形態で経口摂取される)、粘膜(舌下、鼻腔、通常は口(吸入による)又は口及び鼻(噴霧による)を介した肺への呼吸、膣及び直腸を含む)、非経口(筋肉内、皮内、くも膜下腔内、皮下及び静脈内を含む)又は局所(軟膏、クリーム又はローションを含む)投与に適した形態の医薬組成物を提供するように調製され得る。製剤は、適切な場合、個別の投薬単位で好都合に提供され得、医薬製剤の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。すべての方法は、必要に応じて、活性医薬成分を液体担体又は微細に分割された固体担体又はその両方と一緒にする工程を含む。
【0094】
適切な場合、上記の製剤は、活性医薬成分の持続放出をもたらすように適合されてもよい。当技術分野に周知の持続放出製剤には、ボーラス注射、連続注入、生体適合性ポリマー、キトサン又はリポソームの使用が含まれる。本明細書に記載の化合物はまた、デポーとして、原発がんの部位にin situで投与されてもよい。
【0095】
E)キット
本開示の化合物は、任意に容器(例えば、包装、箱、バイアル等)を含むキットの一部として包装されてもよい。キットは、本明細書に記載の方法に従って商業的に使用されてもよく、本開示の方法における使用のための説明書を含んでもよい。追加のキット構成要素は、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、酸化防止剤、保存剤又は金属キレート剤を含み得る。追加のキット構成要素は、純粋な組成物として、又は1つ又は複数の追加のキット構成要素を組み込んだ水性若しくは有機溶液として存在する。キット構成要素のいずれか又はすべては、任意に緩衝剤を更に含む。
【0096】
本開示の化合物は、患者に同時に又は同じ投与経路によって投与されてもよく、されなくてもよい。したがって、本開示の方法は、医療従事者によって使用される場合、適切な量の2種以上の活性成分の患者への投与を簡略化することができるキットを包含する。
【0097】
本開示の典型的なキットは、式Iによって定義される本開示による少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩の単位剤形、及び少なくとも1種の追加の有効成分の単位剤形を含む。本開示の化合物と共に使用され得る追加の活性成分の例は、これらに限定されないが、本開示の化合物と組み合わせて使用することができる上記で示された抗がん剤のいずれかを含む。キットは、これらに限定されないが、紙のインサート、コンピュータ可読媒体等の好適な媒体で、本明細書に記載される使用のための説明を更に含んでもよい。
【0098】
本開示のキットは、1種又は複数の活性成分を投与するために使用可能な薬学的に許容されるビヒクルを更に含むことができる。例えば、活性成分が非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、キットは、活性成分が溶解され、非経口投与に適した粒子状物質不含の無菌溶液を形成することができる好適なビヒクルの密封容器を含んでもよい。薬学的に許容されるビヒクルの例は、本明細書の上記に提供される。
【0099】
定義
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用する場合、また別段の記載がない限り又は文脈によって別段の要求がない限り、以下の用語のそれぞれは、以下に示す定義を有するものとする。
【0100】
本明細書で使用する場合、「治療有効量」という用語は、特定の障害、疾患又は状態を処置又は予防するために対象に投与された場合、その障害、疾患又は状態のそのような処置又は予防を行うのに十分な化合物の量を意味する。本明細書で使用する場合、用語「治療有効量」は、確立された腫瘍及び/又は原発固形腫瘍の退行を誘導し、細胞増殖、がん細胞の遊走及び転移を阻害する化合物の量を更に意味する。投与量及び治療有効量は、例えば、利用される特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、一般的な健康、性別及び食事、投与時間、投与経路、排泄速度、並びに適用可能であれば任意の薬物の組合せ、医師が対象に対して化合物が有することを望む効果(例えば、腫瘍負荷及び/又は腫瘍サイズの減少、並びに標準的であるがより毒性の高い抗がん剤による処置の量及び/又は期間の減少に関連する生存時間及び/又は生活の質の増加を含む要因によって証明される、全体的又は部分的な応答)、化合物の特性(例えば、バイオアベイラビリティ、安定性、効力、毒性等)、並びに対象が患っている特定の障害を含む種々の要因に応じて変化してもよい。更に、治療有効量は、対象の血液パラメータ(例えば、脂質プロファイル、インスリンレベル、血糖値)、疾患状態の重症度、臓器機能、又は基礎疾患若しくは合併症に依存してもよい。そのような適切な用量は、本明細書に記載のex-ovo(絨毛尿膜)アッセイを含む任意の利用可能なアッセイを使用して決定されてもよい。本開示の化合物の1種又は複数がヒトに投与される場合、医師は、例えば、最初は比較的低用量を処方し、その後適切な応答が得られるまで用量を増加させてもよい。投与される用量は、最終的に腫瘍学者の裁量による。しかし、一般的に、経口投与の場合は1日あたり約1~約100mg/kgの範囲であり、静脈内又は皮下投与の場合は1日あたり約0.01~約10mg/kgの範囲である。
【0101】
本明細書で使用する場合、「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される希釈剤」又は「薬学的に許容される賦形剤」という用語は、限定されないが、任意のアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味剤、希釈剤、保存剤、色素/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶媒、乳化剤又はカプセル化剤、例えばリポソーム、デカン酸ナトリウム、トリグリセリド、シクロデキストリン、カプセル化ポリマー送達システム、又は対象、好ましくはヒトへの使用に許容されるポリエチレングリコールマトリックスを意味することを意図する。これは好ましくは、連邦又は州政府の規制機関によって承認される若しくは承認可能である、又は動物、より詳細にはヒトにおける使用のために米国薬局方若しくは他の一般に認識される薬局方に列挙される化合物又は組成物を指す。薬学的に許容されるビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であってもよい。薬学的に許容されるビヒクルの追加の例として、これらに限定されないが:注射用水USP、これらに限定されないが塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、並びにラクトリンゲル注射液等の水性ビヒクル、これらに限定されないがエチルアルコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等の水混和性ビヒクル、並びにこれらに限定されないがコーン油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル及び安息香酸ベンジル等の非水性ビヒクルが挙げられる。微生物の作用の予防は、抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等の添加により達成され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム、又はマンニトール及びソルビトール等の多価アルコールが組成物中に含まれる。注射用組成物の吸収の延長は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム、キトサン又はゼラチンを組成物に含めることによってもたらされてもよい。
【0102】
本明細書で使用する場合、対象の「処置」又は「処置すること」という用語は、疾患若しくは状態、疾患若しくは状態の症状、又は疾患若しくは状態のリスク(若しくは感受性)を遅延させる、安定化する、治療する、治癒する、軽減する、和らげる、改変する、修正する、悪化を低減する、改善する、向上させる又は影響を与えることを目的とした、本開示の化合物の対象への適用又は投与(又は本開示の化合物の対象からの細胞若しくは組織への適用又は投与)に関する。「処置すること」という用語は、緩和、寛解、悪化の速度の低減、疾患の重症度の低減、安定化、症状の減少、又は傷害、病態若しくは状態を対象にとってより耐えられるものにする、変性又は低下の速度を遅くする、変性の最終点を衰弱しにくくする、又は対象の身体若しくは精神の健康を向上させる等の、任意の客観又は主観パラメータを含む傷害、病態又は状態の処置又は改善の成功の任意の兆候を指す。一部の実施形態では、「処置すること」という用語は、対象の余命を増加させる及び/又は追加の処置が必要となる(例えば、腎臓癌を有する患者に対する透析又は腎臓移植)まで遅延させることを含んでもよい。
【0103】
本明細書で使用する場合、「予防すること」又は「予防」という用語は、少なくとも疾患又は障害又は転移を獲得するリスク(又はそれに対する感受性)の可能性の減少(すなわち、疾患にさらされるか、又は疾患に素因がある可能性があるが、疾患の症状を未だ経験していない若しくは示していない患者において疾患の臨床症状の少なくとも1つを発症させないようにする)を指すことが意図される。そのような患者を特定するための生物学的及び生理学的パラメータは、本明細書に提供され、また医師に周知である。
【0104】
本明細書で使用する場合、用語「対象」は、がんが発生し得る又はそのような疾患に感受性である生体を含む。用語「対象」は、哺乳動物又は鳥類等の動物を含む。好ましくは、対象は哺乳動物である。より好ましくは、対象はヒトである。最も好ましくは、対象は処置を必要とするヒト患者である。
【0105】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖状又は分枝鎖状配置で指定された数の炭素原子を有する分枝鎖状及び直鎖状飽和脂肪族炭化水素基を含むことを意図しており、例えば、C1~C8アルキルにおけるようなC1~C8は、直鎖状又は分枝鎖状配置で1、2、3、4、5、6、7又は8個を有する基を含むとして定義される。C1~C8アルキルの例として、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、i-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。好ましい実施形態において、アルキル基は直鎖状アルキル基である。
【0106】
本明細書で使用する場合、用語「アルケニル」は、その中に指定された数の炭素原子を有し、炭素原子の少なくとも2つが二重結合によって互いに結合しており、E又はZのいずれかの位置化学及びその組合せを有する不飽和直鎖状又は分枝鎖状炭化水素基を意味することを意図する。例えば、C2~C6アルケニルにおけるようなC2~C6は、直鎖状又は分岐鎖状配置で2、3、4、5又は6個の炭素を有し、炭素原子の少なくとも2つが二重結合により互いに結合している基を含むとして定義される。C2~C6アルケニルの例として、エテニル(ビニル)、1-プロペニル、2-プロペニル及び1-ブテニルが挙げられる。好ましい実施形態において、アルケニル基は直鎖状アルケニル基である。
【0107】
本明細書で使用する場合、用語「任意に置換された」は、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、C1~C6アルキルアリール、C1~C6アルキルヘテロアリール、C1~C6アルキルシクロアルキル、C1~C6アルキルC3~C8ヘテロシクロアルキル、アミノ、アミノスルホニル、アンモニウム、アシルアミノ、アミノカルボニル、アリール、ヘテロアリール、スルフィニル、スルホニル、アルコキシ、アルコキシカルボニル、カルバメート、スルファニル、ハロゲン、トリハロメチル、シアノ、ヒドロキシ、メルカプト及びニトロからなる群から選択される1~5個の置換基で置換された基を指す。好ましくは、C1~C6アルキル、C2~C6アルケニル、C2~C6アルキニル、C3~C8シクロアルキル、C3~C8ヘテロシクロアルキル、C1~C6アルキルアリール、C1~C6アルキルヘテロアリール、C1~C6アルキルシクロアルキル、及びC1~C6アルキルC3~C8ヘテロシクロアルキルからなる群から選択される1~5個の置換基で置換された基を指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、非ヒト哺乳動物又はヒトを示す。好ましい非ヒト哺乳動物は、霊長類、マウス又はラット等の齧歯類、ネコ、イヌ、ウシ及びヒツジを含む。より詳細には、対象は、ヒト、特に小児、成人、女性又は男性である。
【0109】
本明細書で使用する場合、「ラクトン」という用語は、1-オキサシクロアルカン-2-オン構造(-C(O)-O-)を含有する環式カルボン酸エステル、又は不飽和若しくは環の1つ又は複数の炭素原子を置き換えるヘテロ原子を有する類似体を指す。ラクトンは通常、対応するヒドロキシカルボン酸の分子内エステル化によって形成されるが、これは形成される環が5又は6員環である場合に自然に行われる。
【実施例
【0110】
以下の実施例は、本明細書に記載される特定の組成物を作製及び実施するためのいくつかの例示的な態様を説明する。これらの実施例は、例示のためのものにすぎず、本明細書に記載される組成物及び方法の範囲を限定することを意味しない。
【0111】
本明細書で以下に記載される実施例は、式Iによって包含される特定の代表化合物の例示的な調製方法を提供する。いくつかの実施例は、式Iの特定の代表化合物の例示的な使用を提供する。また、式Iの代表化合物を、in vitro、ex ovo及び/又はin vivoの有効性についてアッセイするための例示的な方法が提供される。
【0112】
これらの実施例において、以下の化合物は、「代表化合物x」に関して言及され、xは以下のように1~5の数である:
【0113】
【表4】
【0114】
機器:
すべてのHPLCクロマトグラム及びマススペクトルは、分析用C18カラム(250x4.6mm、5ミクロン)を使用するHP1100 LC-MS Agilent機器で、溶離液として0.01%TFAを含む50~99% CH3CN-H2Oの3分間のグラジエントに続き3分間のアイソクラティック、及び2mL/分の流量で記録した。
【0115】
(実施例1)
特定の代表化合物の調製のための実験手順
A)代表化合物2
以下の手順を使用して代表化合物2を調製した:
【0116】
【化12】
【0117】
工程1:ACN中の(2-ヒドロキシ-フェニル)-酢酸(1当量)の溶液に、0℃でNBSをロット毎に(2.2当量)添加し、RMをゆっくりと室温(rt)にし、室温(rt)で16時間撹拌した(TLC制御)。RMを濃縮してACNを除去し、水中で1時間消化し、次いで濾過して収集した固体を乾燥させた。100℃まで加熱したトルエンに固体を取り込んで溶解させ、ゆっくりと室温にし、濾過して純粋な化合物を得た。
【0118】
工程2:DMF(5V)中の工程1からの溶液(1当量)に、K2CO3(5当量)及びベンジルブロミド(2.2当量)を滴下添加し、RMを80℃で4時間撹拌した(TLC制御)。RMを水にクエンチし、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)で抽出し、MTBE層を水で洗浄し、乾燥して減圧下で濃縮して粗生成物を得た。
【0119】
工程3:DME(10V)及びH2O(1V)中の工程2からの溶液(1当量)、オレフィンボロン酸エステル誘導体(2.2当量)及びNa2CO3(5当量)をアルゴンで脱気し、Pd(PPh3)4(0.1当量)を添加し、90℃で18時間撹拌した。後処理:反応混合物をセライトで濾過し、濾液をEtOAcで希釈し、水で洗浄して有機層を乾燥させ、濃縮して粗生成物を暗褐色の粘性油として得た。粗生成物をCombiFlash(商標)で精製し、純粋な化合物を得た。
【0120】
工程4:乾燥THF(10V)中の工程3からの溶液(1当量)を0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下でLAH(1.2当量)を滴下添加し、室温にして室温で1時間撹拌した。RMを0℃でNa2SO4水溶液でクエンチしてEtOAcで抽出し、有機層を乾燥させて減圧下で濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0121】
工程5:EtOAc(10V)中の工程4からの溶液(1当量)にPd(OH)2(50質量%)を添加し、10barのH2圧力下でオートクレーブ中で室温で撹拌した(TLC制御)。RMをセライトで濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物を逆相CombiFlash精製に供し、所望の生成物を高純度で得た。精製条件:SiliaSep(商標)C18、80gカートリッジを溶離液と共に使用した:水中MeCNのグラジエント溶出(0.1%HCO2H)。純度をLCMSで査定し、同一性を1H核磁気共鳴(1H NMR)で確認した。
【0122】
B)代表化合物1
以下の手順を使用して代表化合物1を調製した:
【0123】
【化13】
【0124】
工程5a:トルエン(20V)中の代表化合物2の溶液(1当量)に、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)(0.1当量)を添加し、Dean-Starkコンデンサーを使用してRMを120~130℃に16時間加熱した。RMを濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0125】
工程6a:THF(10V)中の工程5aからの溶液(1当量)を-20℃に冷却し、アンモニアガスで10分間パージし、80℃で16時間撹拌した。(TLC制御)。RMを濃縮して粗化合物を得た。粗質量 - 225mg;LCMSによる純度 - 81%。ヘキサンを使用して粗生成物を再結晶化し、所望の化合物を得た。
【0126】
C)代表化合物3
以下の手順を使用して代表化合物3を調製した。
【0127】
【化14】
【0128】
工程1:乾燥THF(10V)中のInt-1の溶液(1当量)を0℃に冷却した後、アルゴン雰囲気下でBH3.THF(1.5当量)を滴下添加し、室温にして室温(rt)で16時間撹拌した。RMを0℃で水でクエンチし、次にEtOAcで希釈し、水で洗浄して有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をCombiFlashで精製し、純粋な化合物を得た。
【0129】
工程2:MeOH(10V)中の工程1からの溶液(1当量)に、Pd/C(20質量%)を添加し、5barのH2下で室温で16時間撹拌した(TLC制御)。後処理:RMをセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0130】
工程3:THF(10V)中の工程2からの溶液(1当量)に、0℃でNBS(2.5当量)を添加し、(TLC制御)下で室温で16時間撹拌した。後処理:RMを飽和チオ硫酸ナトリウムでクエンチし、EtOAcで抽出し、有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製した。
【0131】
工程4:1,4-ジオキサン(10V)及びH2O(1V)中の工程3からの溶液(1当量)、オレフィンボロン酸エステル誘導体(2.2当量)及びNa2CO3(5当量)をアルゴンで脱気し、Pd(PPh3)4(0.2当量)を添加し、90℃で18時間撹拌した。後処理:反応混合物をセライトで濾過し、濾液をEtOAcで希釈し、水で洗浄して有機層を乾燥させ、濃縮して粗生成物を暗褐色の粘性油として得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、純粋な化合物を得た。
【0132】
工程5:MeOH(10V)中の工程4からの溶液(1当量)にPd(OH)2(20質量%)を添加し、5barのH2下で室温で16時間撹拌した(TLC制御)。後処理:RMをセライトで濾過し、濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、純粋な化合物を得た。純度をLCMSで査定し、同一性を1H核磁気共鳴(1H NMR)で確認した。
【0133】
D)代表化合物4
以下の手順を使用して代表化合物4を調製した。
【0134】
【化15】
【0135】
工程1:1,4-ジオキサン(10V)及びH2O(1V)中の(3-ブロモフェニル)酢酸メチルエステル(1当量)の溶液、オレフィンボロンエステル誘導体(1.1当量)及びNa2CO3(3当量)を15分間アルゴンで脱気し、Pd(PPh3)4(0.01当量)を添加し、90℃で18時間撹拌した。後処理:反応混合物をセライトで濾過し、濾液をEtOAcで希釈し、水で洗浄して有機層を乾燥させ、濃縮して粗生成物を暗褐色の粘性油として得た。
【0136】
工程2:EtOH(20V)中の工程1からの溶液(1当量)にPd(OH)2(20質量%)を添加し、5barのH2圧力下でオートクレーブ中で室温で撹拌した(TLC制御)。RMをセライトで濾過し、濾液を濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をCombi-flashで精製し、純粋な化合物を得た。
【0137】
工程3:乾燥THF(10V)中の工程2からの溶液(1当量)を0℃に冷却し、アルゴン雰囲気下で水素化アルミニウムリチウム(LAH)(1.2当量)を滴下添加し、室温にして室温で1時間撹拌した。RMを0℃でNa2SO4水溶液でクエンチし、EtOAcで希釈してセライトで濾過し、濾液層、有機層を乾燥し、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をCombiFlashで精製し、純粋な化合物を得た。純度をLCMSで査定し、同一性を1H核磁気共鳴(1H NMR)で確認した。
【0138】
E)代表化合物5
以下の手順を使用して代表化合物5を調製した。
【0139】
【化16】
【0140】
工程1:0℃に冷却したTHF(10V)中のInt-1の溶液(1当量)に、臭化フェニルマグネシウム(5当量)(THF中2.0M)を滴下添加し、室温で16時間撹拌した(TLC制御)。後処理:RMを飽和NH4Cl溶液でクエンチし、EtOAcで抽出し、有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。
【0141】
工程2:0℃に冷却したジクロロメタン(DCM)(10V)中の工程1からの溶液(1当量)に、トリエチルシラン(2.5V)及びトリフルオロ酢酸(TFA)(5V)を滴下添加し、室温で20時間撹拌した(TLC制御)。RMをDCMで希釈し、水で洗浄して有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィーで精製し、純粋な生成物を得た。
【0142】
工程3:0℃に冷却した1,4-ジオキサン(10V)中の工程2からの溶液(1当量)、CuBr2(2当量)及びジメチルマロネート(2.2当量)にNaH(2.0当量)を添加し、100℃で16時間撹拌した。(TLC制御)。後処理:RMをセライトで濾過し、EtOAcで床を洗浄し、濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して純粋な生成物を得た。
【0143】
工程4:エタノール(10V)中の工程3からの溶液(1当量)に、NaOH(2.2当量)を室温で添加し、60℃で16時間撹拌した。(TLC制御)。後処理:RMを水で希釈し、MTBEで洗浄した後、水性層を1.5N HClで酸性化してEtOAcで抽出し、有機層を水で洗浄し、減圧下で乾燥及び濃縮した。
【0144】
工程5a:0℃に冷却したTHF(10V)中の工程4からの溶液(1当量)に、LAH(5当量)(THF中2.0M)を滴下添加し、室温で2時間撹拌した。(TLC制御)。後処理:RMを水でクエンチし、EtOAcで抽出し、有機層を乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。純度をLCMSで査定し、同一性を1H核磁気共鳴(1H NMR)で確認した。
【0145】
(実施例2)
Avatar CAMアッセイでの化合物の抗腫瘍効果
本実施例では、本開示の代表化合物を、Avatar Chick Chorioallantoic Membrane(CAM)アッセイのモデルを使用して腫瘍に対するそれぞれの効果について試験した。CAMアッセイは、結腸直腸、前立腺及び脳癌の血管新生及び腫瘍侵襲の研究、並びに潜在的な個別化医療のための患者由来異種移植の研究に広く使用されている。
【0146】
本発明者は、本開示の代表化合物又はポジティブコントロール(PCtrl:2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)酢酸ナトリウム)を以下のように試験した。白色レグホーン鶏の受精卵を使用し、Ova-Easy孵卵器で37℃及び湿度60%でインキュベートした。3日目に卵を割った。9日目に、U87(ヒト膠芽腫)細胞懸濁液(1×106細胞)又はCaki細胞又は患者由来異種移植片(膠芽腫断片)を、細胞株及びPDX-患者断片に対して総体積20μlで成長因子低減Matrigel(商標)と混合(1:1)し、CAMの上に直接置き、孵卵器へ戻した。11日目に、化合物を含む若しくは含まない静脈内注射又は局所投与(11日目から16日目)。16日目に、ニワトリ胚を断頭により致死させた。腫瘍を取り出し、腫瘍体積を式:(Dd2/3)を使用して算出した。
【0147】
Table 4(表5)は、これらの代表化合物のヒト膠芽腫U87細胞、ヒト腎臓癌Caki細胞株、患者由来異種移植片(PDX)からの膠芽腫及びヒト線維肉腫HT1080細胞に対する抗がん活性の要約である。示されるように、アルコール誘導体は、それぞれのポジティブコントロール化合物(Pctrl又はセトゲプラム)と比較して抗がん活性を強く向上させる。
【0148】
【表5】
【0149】
図1は、がんに関連する上皮間葉転換(EMT)、代謝及び線維症を標的とした異なる機序により、化学療法に使用される周知のアルキル化剤であるカルボプラチンの抗がん活性に到達した代表化合物5の活性を示す。
【0150】
図2は、CAM Avatarモデルにおける代表化合物2及び5の腎臓癌Caki細胞に対する抗がん活性を示す図である。代表化合物2及び5は、原発腎臓癌の処置のために承認されたキナーゼ阻害薬であるソラフェニブの抗がん活性に到達する。
【0151】
図3は、カルボプラチンに耐性のある患者由来異種移植(PDX)膠芽腫において、化学療法及び代表化合物2の使用で観察された相乗的な抗がん活性を示す。観察されるように、PDXがん断片は移植日(T0)から処置日(Ctl)にかけて体積が増加する。結果から、PDXはカルボプラチンに実質的に耐性があり、更にいかなる処置(テモゾロミド(データ示さず))及び代表化合物2にも応答しないことが確認される。しかし、カルボプラチンと代表化合物2の組合せで処置すると、相乗的な活性が観察され、組合せ処置は、カルボプラチン耐性PDX-膠芽腫の成長の有意な減少に到達する。
【0152】
(実施例3)
化合物のがん細胞に対する抗増殖効果
また、PC-3細胞(ヒト前立腺癌細胞)を使用することにより、がん細胞に対する代表化合物の抗増殖活性に取り組んだ。PC-3細胞を、様々な濃度の化合物又はポジティブコントロール(PCtrl:2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)酢酸ナトリウム)若しくはセトゲプラム CAS番号:MedChemExpress LLC、米国からの1002101-19-0)を含む又は含まない96ウェルプレートで24時間培養した。インキュベーションの最後の4時間、PBS中2mg/mlのMTTの作製直後の溶液50μlを添加した。細胞を採取し、150μlのDMSOを添加して形成されたホルマザン結晶を可溶化し、570nmでプレートを読み取った。
【0153】
Table 5(表6)は、代表化合物によるPC-3細胞増殖の阻害パーセンテージの要約である。示されるように、アルコール誘導体は、ポジティブコントロール化合物と比較して抗増殖/抗がん活性を強く向上させる。
【0154】
【表6】
【0155】
(実施例4)
患者由来異種移植IPF肺に対する化合物の抗線維化効果
また、Avatar CAMモデルを使用して代表化合物の抗線維化活性を決定した。簡潔には、白色レグホーン鶏の受精卵を使用し、Ova-Easy孵卵器で37℃及び湿度60%でインキュベートした。3日目に卵を割った。9日目に、IPF肺からのPDX断片をCAMの上に移植し、孵卵器に戻した。11日目及び16日目に化合物の静脈内注射による処置を行い、ニワトリ胚を断頭によって致死させた。IPF-PDX断片を取り出し、体積を式:(Dd2/3)を使用して算出した。線維症をマッソントリクローム染色によって決定した。
【0156】
Table 6(表7)は、PDX-IPF断片の体積成長の減少によって示される、PDX-IPFに対する好ましい化合物の抗線維化活性を示す。結果は、周知の抗線維化化合物であるセトゲプラムと比較され、アルコール誘導体(代表化合物4)が予想外により大きな抗線維化活性を示すことを示す。図4に示されるように、代表化合物4のみがPDX-IPF断片の体積を有意に減少させるが、いずれの化合物もPDX-IPF断片のコラーゲン沈着を減少させる。
【0157】
図5に示されるように、化合物6とセトゲプラムの両方の化合物は、マッソントリクローム染色によって決定してコラーゲン沈着(青色)を減少させたが、アルコール誘導体は、PDX-IPF断片のコラーゲンの非常に顕著な減少を達成した。
【0158】
【表7】
【0159】
(実施例5)
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)からのサイトカイン放出により決定される代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝/鎮痛効果
代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝及び鎮痛活性は、LPS刺激PBMCにおける炎症条件下でのサイトカイン放出の解析によって取り組んだ。
【0160】
IL-6、MCP1、TNFα及びIL-1βは、炎症、線維症、代謝及び疼痛に関与する多面的なサイトカインであることが周知である。ヒト末梢血単核細胞は、製造者のプロトコールに従い、デキストラン沈降後にFicoll-Hypaqueで遠心分離することにより、健康なボランティアの静脈血から単離した。単離直後のヒトPBMC(RPMI-1640に懸濁された4×106細胞/mL)を、様々な濃度のLPS又は代表化合物又はポジティブコントロール(PCtrl:2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペンチルフェニル)酢酸ナトリウム)、又はセトゲプラム(周知の抗炎症/抗繊維化剤)を用いて又は用いずに刺激し、4及び24時間インキュベーションした。インキュベーション後、上清を収集し、製造者のプロトコールによって推奨されるように、IL-6、MCP1、TNFα及びIL-1βをELISAによって測定した。
【0161】
IL-6
Il-6は多面的なサイトカインであり、炎症促進因子だけでなく線維化促進因子としても機能する。慢性疾患の炎症/線維化モデル及び臨床観察では、IL-6の活性が自己免疫及びがんにおいて有害であることも確認される。また、IL-6は、脂肪細胞機能のオートクリン及び/又はパラクリン作用として、様々な代謝プロセスで重要な役割を担う。現在、IL-6がMS及び2型糖尿病等の代謝障害と密接に関連することが、蓄積された証拠によって実証されている。また、IL-6は、病的疼痛のプロセスにも関与する。
【0162】
図6は、LPS刺激PBMCからのIL-6放出の減少によって観察される代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝/鎮痛活性を示す。先に観察されたように、アルコール誘導体では、予想外により強い阻害が観察される。
【0163】
MCP-1
CCL2は、内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、メサンギウム細胞、アストロサイト細胞、単球細胞及びミクログリア細胞を含む多くの細胞種によって産生される。これらの細胞は、末梢循環及び組織における抗ウイルス免疫応答に重要である。しかし、単球/マクロファージが、CCL2の主要な供給源であることが判明している。CCL2は、単球、メモリーTリンパ球及びナチュラルキラー(NK)細胞の遊走及び浸潤を調節する。CCL2は、様々な炎症性及び線維性疾患(IPF)、並びに多発性硬化症(Sorensen et al., Chemokine CCL2 and chemokine receptor CCR2 in early active multiple sclerosis. Eur J Neurol.2004、11:445-449)、関節リウマチ、アテローム性動脈硬化症及びインスリン抵抗性糖尿病の処置の潜在的な介入点であることが示されている。
【0164】
図7は、LPS刺激PBMCからのMCP-1放出の減少によって観察される代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝/鎮痛活性を示す。先に観察されたように、アルコール誘導体で予想外により強い阻害が観察される。
【0165】
TNFα
TNFαは、炎症応答及び細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を担う。TNFαのシグナル伝達は、様々な自己免疫及び炎症性疾患と密接に関連する。これまで、TNFを標的とする5種の薬物:インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、グロムマブ及びセルトリズマブペゴルが開発されている。これらのTNFを標的とする薬物の適応は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、若年性特発性関節炎、クローン病及び潰瘍性大腸炎のために承認されている。また、TNF-αは、肺及び肝臓の線維症の発展に関与する。更に、TNFαは肥満の対象で増加するように思われ、肥満におけるインスリン抵抗性及び代謝異常への炎症性サイトカインとしてのその役割が示唆される。
【0166】
図8は、LPS刺激PBMCからのTNFα放出の減少によって観察される代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝/鎮痛活性を示す。先に観察されたように、アルコール誘導体で予想外により強い阻害が観察される。
【0167】
IL-1β
IL-1βは誘導性サイトカインであり、一般に健康な細胞又は組織では発現しないが、損傷細胞によって放出される病原性産物又は因子により、TLR等のパターン認識受容体(PRR)が活性化されると、全長IL-1βが細胞内で速やかに誘導され、タンパク質の細胞内蓄積につながる。IL-1βは肺マクロファージによって放出され、線維芽細胞を刺激してコラーゲンを合成させ、フィブリンを産生させる。IL-1βは、炎症性、線維性、メタボリックシンドローム及び病的疼痛並びに関連疾患にも関与する。
【0168】
図9は、LPS刺激PBMCからのIL-1β放出の減少によって観察される代表化合物の抗炎症/抗線維化/代謝/鎮痛活性を示す。先に観察されたように、アルコール誘導体で予想外により強い阻害が観察される。
【0169】
他の実装例は、本明細書の教示を考慮して読者に明らかになり、したがって本明細書ではこれ以上説明されない。
【0170】
本結果は、置換芳香族化合物(すなわち、式I)のアルコール、アルデヒド、アミン、アミド、エステル、エーテル、ラクトン及び/又はケトン形態、並びにその許容される塩が、有利な特性を有する化合物を提供することを示している。特に、アルコール形態は、そのような置換芳香族化合物のカルボン酸形態(又はその許容される塩)と比較して、本明細書に記載の試験において優れた生物活性を実証している。
【0171】
なお、本開示を通して、読者の便宜のためにタイトル又はサブタイトルが使用される場合があるが、これらは決して本開示の範囲を制限すべきではない。更に、特定の理論が本明細書に提案され、開示される場合があるが、それらは任意の特定の理論又は行動様式に関係なく、本発明が本開示に従って実施される限り、それらが正しいか誤りであるかに関わらず、決して本開示の範囲を制限すべきではない。
【0172】
本明細書を通して引用されたすべての参考文献は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
本明細書を通した「一部の実施形態」等への言及は、本発明に関連して説明される特定の要素(例えば、特徴、構造及び/又は特性)が本明細書に記載の少なくとも1つの実施形態に含まれ、他の実施形態に存在してもしなくてもよいことを意味する。更に、記載された本発明の特徴は、様々な実施形態で任意の好適な方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0174】
本明細書を通して、用語の前に使用される用語「a」は、用語が指すものを1つ又は複数含有する実施形態を包含することが、当業者によって理解される。また、本明細書を通して、「含む(including)」、「含有する」又は「によって特徴付けられる」と同義である用語「含む(comprising)」は、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法工程を除外しないことが当業者によって理解される。
【0175】
別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。矛盾がある場合、定義を含む本書が優先される。
【0176】
本開示で使用される場合、用語「ほぼ」、「約」又は「およそ」は、一般に、当分野で一般に許容される誤差の範囲内を意味する。したがって、本明細書で与えられる数量は、一般に、用語「ほぼ」、「約」又は「およそ」が明示されていない場合に推論することができるように、そのような誤差を含む。
【0177】
本開示の様々な実施形態が説明及び図示されたが、本説明に照らして、当業者には、多数の修正及び変形を加えることができることが明らかである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲においてより詳細に定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】