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特表2024-512522オプトエレクトロニクスデバイスのための光透過性多層構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】オプトエレクトロニクスデバイスのための光透過性多層構造
(51)【国際特許分類】
   H10K 30/50 20230101AFI20240312BHJP
   H10K 50/816 20230101ALI20240312BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240312BHJP
   H10K 30/82 20230101ALN20240312BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K50/816
H10K77/10
H10K30/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557764
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 EP2022057505
(87)【国際公開番号】W WO2022200357
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】21461526.2
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519262973
【氏名又は名称】サウル エス.エー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スピネッリ、ピエルパオロ
(72)【発明者】
【氏名】スチガ、マテウス
(72)【発明者】
【氏名】ウォシチョフスキー、コンラッド
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフスカ、ターニャ
【テーマコード(参考)】
3K107
5F251
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107DD16
3K107DD19
3K107DD22
3K107DD24
3K107DD27
3K107DD29
3K107DD44X
3K107DD44Y
3K107DD46X
3K107DD46Y
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF15
5F251AA20
5F251BA16
5F251CB27
5F251FA04
5F251FA06
5F251FA17
5F251GA05
5F251XA01
5F251XA56
(57)【要約】
基板(11);電極構造(13);及び、前記基板(11)及び前記電極構造(13)の間に配置されたバリア構造(12)を備えるオプトエレクトロニクス(OP)デバイスのための光透過性多層構造。多層構造は、変形可能な、例えば可撓性の、箔として作成されることができ、それは、ペロブスカイト又は有機PVデバイス、又はOLED等の様々なOPデバイス内で実装され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性多層構造であって、
基板;
電極構造;及び
前記基板及び前記電極構造の間に配置されたバリア構造、前記バリア構造はバリアスタック内に配置されたバリア層を有し、前記バリアスタックは、前記基板に隣接するバッキング層、前記電極構造に隣接するバッファ層、及び前記バッキング層及び前記バッファ層の間に配置されたブロック層を含み;
前記電極構造は、電極スタック内に配置された電極層を有し、前記電極スタックは誘電体層、及び前記バリア構造の前記バッファ層及び前記誘電体層の間に配置された金属層を含む
を備え;
前記バッファ層は、TiO、ZrO、Nb、TeO及びZnSからなる群から選択された少なくとも1つの材料を含み、ここで、前記バッファ層の全ての材料は、2.2~2.6の範囲内の屈折率値を有し、及びここで、前記バッファ層の総厚さは10~60nmである;及び
ここで、前記金属層は、銀(Ag)及び、Al、Cu、Ti、Ge、Zn、及びCrからなる群から選択された少なくとも1つの金属を含む、オプトエレクトロニクス(OP)デバイスのための多層構造。
【請求項2】
前記金属層は、4~13nmの総厚さを有する、請求項1に記載の多層構造。
【請求項3】
前記誘電体層は、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、及び酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)からなる群から選択された少なくとも1つの透明導電酸化物(TCO)を含む、請求項1又は2に記載の多層構造。
【請求項4】
前記誘電体層は、20~80nmの総厚さを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項5】
前記ブロック層は、AlO、SnO、ZnO、HfO、AlTiO、AlZrO、及びAlZnOからなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物を含み、ここで前記ブロック層の全ての材料は、1.5~2.1の範囲内の屈折率値を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項6】
前記ブロック層は、10~100nmの総厚さを有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項7】
前記バッキング層は、TiO、SnO、ZrO、HfO、AlTiO及びAlZrOからなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項8】
前記バッキング層は、2~20nmの総厚さを有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項9】
前記バッキング層の全ての前記材料は、1.6~2.6の範囲内の屈折率値(n)を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項10】
前記バッファ層は、主にTiOを含み、ここで前記バッファ層の全ての材料は、2.4~2.5の範囲内の屈折率値を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項11】
前記バッファ層は、20~50nmの総厚さを有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項12】
前記ブロック層は主にAlOを含み、ここで前記ブロック層の全ての材料は、1.6~2.0の範囲内の屈折率値を有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項13】
前記金属層は、Ag及びCuを、90at%のAg及び10at%のCuの量において含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項14】
前記バッキング層、前記ブロック層、前記バッファ層、前記金属層及び前記誘電体層は、互いに独立に単層構造又は多層構造から選択され、前記多層構造は2つ又は2つよりも多いサブ層を含む、請求項1から13のいずれか1項に記載の多層構造。
【請求項15】
前記基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ETFE)及びパリレンからなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む変形可能箔で構成される、請求項1から14のいずれか1項に記載の多層構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オプトエレクトロニクス(OP)デバイスのための光透過性電極多層構造に関する。多層構造は、変形可能な、例えば可撓性の、箔として作成されることができ、それは、ペロブスカイト又は有機PVデバイス、又はOLED等の様々なOPデバイス内で実装され、電極のうちの1つ、好ましくはOPデバイスの感光材料の隣の前面電極として機能することができる。
【背景技術】
【0002】
特許文献から、様々なOPデバイスのための、公知の薄い、箔様の、多層構造が存在する。
【0003】
国際特許出願WO2018139945は、プラスチック箔基板、導電層、及び、導電層及びプラスチック基板の間に配置されたバリア層からなる透光性オプトエレクトロニクス箔を説明している。バリアは、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素、有機ケイ素化合物、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化クロム及びパリレンから選択された材料で構成され、ここで、バリア層は単層又は多層構造であり得る。導電層は、少なくとも2つのサブ層:酸化物層(AZO、IZO、FTO、ZTO、ITO、GZO、GIO、IO:H、CdO、又はTiOx等)、及び、Al、Ti、Ni、Cr、Au、Mg、Ta、Ge、Ag、Cu、Zr、Pt及びWから選択された少なくとも1つの金属からなる金属層を備える。プラスチック箔基板及び導電層の間に配置されたバリア層の存在に起因して、箔は、1日当たり10-3及び10-6g/mの間の範囲の水蒸気透過率(WVTR)、並びに、高疎水性及びUV放射線抵抗性を含む、安定したバリア特性を示す。箔の導電層は、単一の、より厚い導電ITO(酸化インジウムスズ)の代替である。
【0004】
更に、米国特許出願US20140054578は、主に有機ポリマー層及びポリマー層に対して位置決めされた電極からなる多層電子デバイスを説明している。電極は、薄い金属層、第1バリアスタックと呼ばれる水分及びガスに対するバリア、反射防止コーティング、及び酸化又は未酸化のいずれかである金属で構成されるオーバーブロッカー層によって構成されている。このオーバーブロッカー層は、酸化又は窒化雰囲気下で後続の層を堆積する最中に薄い金属層を保護することを意図されている。電子デバイスの多層構造は、例えば、ZnO/Ag/Ti/TiO等のアーキテクチャを含み得、したがってある金属層(Ag)が別の金属層(Ti)に隣接する結果となる。デバイスアーキテクチャ内で、電極層の構成要素であるバリアスタックは、交互により低い屈折率及びより高い屈折率のものであり、このようにして電極構造内の干渉フィルタを提供している。したがって、バリアスタックは、電極の薄い金属層の反射防止効果に関与する。
【0005】
特許出願EP2871681は、キャリア基板及び電極コーティングを有する光起電性セルのためのバックコンタクト基板を説明している。基板の電極層は、厚さ80~300nmのAlベースの金属薄膜、例えばMo又はWベースの、硫化又はセレン化の際に接点を形成することが可能なオーミック接触膜、及び、金属層及びオーミック接触膜の間の、20~50nmの厚さのセレン化に対するバリアからなる。しかしながら、この設計は、それぞれの層の配置の別の可能性を示していない。更に、当該バリア層は、ナトリウム移動のみを効果的に制御できる。
【0006】
更に、特許出願EP2720276は、金属拡散から保護する多層金属拡散バリアを備える太陽電池基板を説明している。金属拡散バリアは、下記の材料から構成される:Cr、Ni、Ti、及び金属酸化物。使用される材料のそのような選択は、層が不純物:Na及びFeの拡散を抑制することを可能にする。この拡散バリア層は、太陽電池基板内で、下部基板及び下部電極の間に、配置されている。そのようなアーキテクチャは、基板の拡散防止効果をもたらす;段落0043「(...)多層拡散バリア層が、異なるタイプの材料間で形成される界面において、Na及びFe等の不純物の拡散を防ぐためのバリアとして機能するように、酸化物層と共に金属層を形成することによる界面に起因して(...)」。この解決方法において、金属層は基板へ直接的に適用され、酸化金属層は(多層拡散バリア層内の)2つの金属の間にのみ配設され、Na及びFeの浸透を効果的に抑制する。
【0007】
光透過率は、多層オプトエレクトロニクス(OP)デバイスの機能の重要な要因を構成する。そうして、非常に透明な反射防止コーティングは、通常OPデバイス多層構造内に含まれ、フレネル反射損失を低減し、それによりOPデバイスの層構造を通過できる光の量を増加させることを狙っている。これは、デバイスの効率を向上させる。反射防止コーティングは、デバイスの外側に外部コーティングが堆積された透明基板に、通常適用される。反射防止コーティングは、例えばガラス又はプラスチックから作成され得る。そうして、反射防止コーティングは、広範囲の光波長及び入射角にわたる表面反射損失を効果的に低減できる。通常、反射防止コーティングは、高屈折率及び低屈折率の交互の材料層のスタック構造を含む多層設計のものである。更に、反射損失の低減は、OPデバイスアーキテクチャ内の材料及びそれらの厚さの適切な配置によっても獲得され得る。
【0008】
実質的に、屈折率(n)は、光が材料を通ってどれだけ速く移動するかということを説明する無次元数として定義される。それは、n=c/vとして定義され、ここでcは真空中での光の速度であり、vは所与の(考慮される)媒体(材料)中での光の位相速度である。例えば、二酸化ケイ素(SiO)は、その低い屈折率、優れた耐久性及び耐環境性に起因して、反射防止コーティングの生産のために使用されることが公知である。
【0009】
更に、科学出版物「High Refractive Index Polymer Coatings for Optoelectronics Applications」T.Flaim, et all, Proceedings of SPIE - The International Society for Optical Engineering, February 2004 DOI: 10.1117/12.513363は、フラットパネルディスプレイ、撮像センサ、光回路、及び発光ダイオード等のOP応用のための高屈折率ポリマーコーティングを説明している。ポリマーコーティング材料は、1.6~1.9の範囲値内の屈折率を有し、それはデバイスの発光又は光感知部分に適用される。これは、OPデバイスの内側の、アクティブ回路の高い屈折率から、空気の低い率への段階的な遷移を可能にし、それにより光がより効果的にデバイスに取り入れられる又はそれから出ていくことを可能にし、デバイスの効率及び/又は画質を向上させる。コーティングは、二酸化チタンポリマー前駆体及び適合有機ポリマーから作成される、有機-無機ハイブリッドである材料で構成されている。
【0010】
更に、国際特許出願WO2015/140090A1は、電極を備える透明基板の形態の層化光デバイスを説明している。デバイスは、スタック内に配置された層、支持材、バリア層、散乱層、平滑層、バリアサブ層、結晶化サブ層、金属導電層、及びバッファ層からなる。WO2015/140090A1によれば、バリアサブ層は、化学物質に対して、及び特にガラスで構成される支持材から来るアルカリ性物質の移動による汚染に対して、電極層を保護する。しかしながら、この文書は、バリアサブ層の屈折率値については言及せず、この文書は更に、その問題についてはバリアサブ層の材料の選択に関していかなる制約も課さない。逆に、WO2015/140090A1は、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化イットリウム、亜鉛-スズ混合酸化物、亜鉛アルミニウム、亜鉛-チタン、亜鉛-インジウム、スズ-インジウム、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸炭化ケイ素、酸炭窒化ケイ素、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウム、アルミニウム-ケイ素混合窒化物、及び、アルミニウム-ケイ素混合酸窒化物を含む、広範囲のバリアサブ層のための材料を提示している。バッファサブ層の厚さは、20~200nmで変動し得る。上記のパラメータは、非常に広範囲の屈折率値を予期できるのみであるが、しかしながらそのことはWO2015/140090A1内で言及されていない。
【0011】
上記で引用された出版物からわかるように、OPデバイスのための多層構造のアーキテクチャは、それらの効率を高め、様々なOPデバイスのライフスパンを延長するために、OPデバイスの光透過率及びバリア特性の両方の改善を狙う継続的な発展を経験している。
【0012】
したがって、OPデバイス専用の、電極機能の光透過性多層構造を更に発展させ、改善された光透過率、OPデバイス内部の酸素及び水分の浸透の制限、及びそれらのOPセル設計の中で、当該多層構造を利用しているOPデバイスの強化された化学的安定性を含む、それらのバリア特性を更に改善することが望ましい。特に、それらの応用の範囲を広げるために、改善された変形可能性、特に可撓性を示す多層構造を発展させることが更に望ましい。
【発明の概要】
【0013】
基板11;電極構造13;及び前記基板11及び前記電極構造13の間に配置されたバリア構造12、前記バリア構造12はバリアスタック内に配置されたバリア層を有し、前記バリアスタックは、前記基板11に隣接するバッキング層A、前記電極構造13に隣接するバッファ層C、及び前記バッキング層A及び前記バッファ層Cの間に配置されたブロック層Bを含み;前記電極構造13は、電極スタック内に配置された電極層を有し、前記電極スタックは誘電体層E及び前記バリア構造12の前記バッファ層C及び前記誘電体層Eの間に配置された金属層Dを含む、を備え;前記バッファ層Cは、TiO、ZrO、Nb、TeO及びZnSからなる群から選択された少なくとも1つの材料を含み、ここで、前記バッファ層Cの全ての材料は、2.2~2.6の範囲内の屈折率値を有し、及びここで、前記バッファ層Cの総厚さは10~60nmである;及びここで、前記金属層Dは、銀(Ag)及び、Al、Cu、Ti、Ge、Zn、及びCrからなる群から選択された少なくとも1つの金属を含む、オプトエレクトロニクス(OP)デバイスのための光透過性多層構造が開示される。
【0014】
好ましくは、前記金属層Dは、4~13nmの総厚さを有する。
【0015】
好ましくは、前記誘電体層Eは、酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、及び酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)からなる群から選択された少なくとも1つの透明導電酸化物(TCO)を含む。
【0016】
好ましくは、前記誘電体層Eは、20~80nmの総厚さを有する。
【0017】
好ましくは、前記ブロック層Bは、AlO、SnO、ZnO、HfO、AlTiO、AlZrO、及びAlZnOからなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物を含み、ここで前記ブロック層Bの全ての材料は、1.5~2.1の範囲内の屈折率値を有する。
【0018】
好ましくは、前記ブロック層Bは、10~100nmの総厚さを有する。
【0019】
好ましくは、前記バッキング層Aは、TiO、SnO、ZrO、HfO、AlTiO及びAlZrOからなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物を含む。
【0020】
好ましくは、前記バッキング層Aは、2~20nmの総厚さを有する。
【0021】
好ましくは、前記バッキング層Aの全ての前記材料は、1.6~2.6の範囲内の屈折率値(n)を有する。
【0022】
好ましくは、前記バッファ層Cは、主にTiOを含み、ここで前記バッファ層Cの全ての材料は、2.4~2.5の範囲内の屈折率値(n)を有する。
【0023】
好ましくは、前記バッファ層Cは、20~50nmの総厚さを有する。
【0024】
好ましくは、前記ブロック層Bは主にAlOを含み、ここで前記ブロック層Bの全ての材料は、1.6~2.0の範囲内の屈折率値を有する。
【0025】
好ましくは、前記金属層Dは、Ag及びCuを、90at%のAg及び10at%のCuの量において含む。
【0026】
好ましくは、前記層A~Eは、互いに独立に単層構造又は多層構造から選択され、前記多層構造は2つ又は2つよりも多いサブ層を含む。
【0027】
好ましくは、前記基板は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ETFE)及びパリレンからなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む変形可能箔で構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本開示の目的は、図面中の例示的な実施形態によって示される:
【0029】
図1】本開示に係る、オプトエレクトロニクスデバイスのための多層構造を概略的に示す図である。
図2】本開示の実施例1に係る、多層構造の光透過率の実験データを示す図である。
図3】本開示の実施例2に係る、多層構造の光透過率のシミュレーションを示す図である。
図4】本開示の実施例3に係る、多層構造の光透過率のシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本開示に係る多層構造は、電極構造を備える、変形可能な、例えば可撓性の、光透過性(透明、又は透光性の)箔として提供され得、当該箔は、好ましくはカソード又はアノードのいずれかとして、前面電極として、特別な必要に応じて、例えばペロブスカイト又は有機感光領域を用いるOPデバイス(例えばOLED)の様々な設計において、配置され得る。
【0031】
多層構造は、基板、電極構造、及び、基板及び電極構造の間に配置されたバリア構造を備える。この設計、及び更に当該2つの構造(電極及びバリア)の発展アーキテクチャ、並びにこれらの構造内で使用される材料の選択された特性は共に、超高バリア特性、強化された化学的及び熱的安定性、高可撓性、スタック全体のより高い光透過率、及び電極の低シート抵抗性を含む、多層構造の改善された特性をもたらす。とりわけ、多層構造は、改善されたバリア特性、38℃/90%RH(相対湿度)において1日当たり1×10-6~1×10-3g/mの水蒸気透過率(WVTR)、より高い可撓性を示し、わずか0.5cmの半径を有していても、その曲げの際に多層構造のバリア特性において、変化は観察されなかった(ここで、曲げ半径がより大きいほど、曲率がより低くなる)。更に、発展多層構造は、電極構造に加えてバリア構造の80%超のAVT(平均可視光線透過率)へ改善された光透過率、及び20Ohms/sq未満の低シート抵抗性を特徴とする。
【0032】
上記の利点は、多層構造の層のための発展した決まった順序及び選択された材料、並びに特定の層の厚さ、及び、それにより、層の材料の選択された屈折率値(n)の効果であり、それらは共に、少なくとも2つの、及びより好ましくは2つ、3つ、又は全ての、多層構造内に配置された層のための、ある決まったサブレンジの識別としてみなされ得る。本開示によれば、スタック内の材料選択及び層配置のこの特別な組み合わせは、新しくかつ優越した機能をもたらし、それにより多層構造の全体の特性における改善をもたらす。
【0033】
したがって、本開示の1つの態様は、使用される材料の様々な特性を考慮したOPデバイスのための多層構造のための材料の特別な選択である。
【0034】
本開示によれば、図1中に概略的に示されるように、オプトエレクトロニクスデバイスのための多層構造は、基板11、好ましくは変形可能な、例えば可撓性の、基板11を備える。基板は、様々な透明又は透光性材料、及び好ましくは基板11へ変形可能性をもたらす材料で作成され得る。例えば、基板は、箔を備え得るか、又は実質的に完全に箔で構成され得、任意選択的に箔表面上にプライマーコーティングが設けられる。基板11のために使用されるのに好適なプラスチック材料の、好ましい非限定的な例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、エチレン/テトラフルオロエチレン(ETFE)、及びパリレン、又はこれらの混合物である。基板11の厚さは、必要に応じる。例えば、基板は25~300ミクロン(マイクロメートル)の厚さであり得る。
【0035】
更に、多層構造は、一方がもう一方の上部に配置された、電極層:D、Eのスタックを備える電極構造13、及び一方がもう一方の上部に配置された、バリア層A、B、Cのスタックを備えるバリア構造12を備える。バリア構造12は、基板11及び電極構造13の間に配置される。電極構造13の各層(D、E)及びバリア構造12の各層(A、B、C)は、単層又は多層構造のものであり得る。そうして、多層構造の層は、一方がもう一方の上部にある、少なくとも2つのサブ層を備え得る。本開示によれば、多層構造の層A、B、C、D、Eのいずれもが、当該サブ層を備え得る。
【0036】
多層構造を作成するために、それぞれの構造12、13のバリア層A、B、C及び電極層D、Eは、一方がもう一方の上部に、様々な堆積技法を使用して、基板11の上に、順次に堆積され得る。例えば、層:A、B、Cの各層は、ALD(原子層堆積)又はMLD(分子層堆積)技法を使用して堆積され得、その一方でD及びE層の各々は、マグネトロンスパッタリング、熱蒸着、化学気相成長、又はパルスレーザ堆積法又は同様の技法を使用して堆積され得る。サブ層が層A、B、C、D、Eのいずれかの中に存在する場合、同じことがそれらにも当てはまる。
【0037】
バリア構造12は、金属酸化物(又は層C内のZnS等の硫化物)で実質的に構成される層を備え、バリア構造12は、残りの層B~Eを基板から分離するための、基板11に隣接するバッキング層Aを備える。バッキング層Aは、好ましくはTiO、SnO、ZrO、HfO、又は、Ti、Sn、Zr、及びHfからなる群から選択された金属原子のうちの少なくとも1つ及び例えばAl又はZn等の別の金属原子の組み合わせを含む複合金属酸化物からなる群から選択された少なくとも1つの金属酸化物で構成されており、複合金属酸化物の非限定的な例は、AlTiO及びAlZrOであり、ここで、yは0.25~1(0.25≦y≦1)であり得、zは0.01~0.9(0.01≦z≦0.9)であり得、ここで、バッキング層Aの好ましい材料は、その優れた耐久性及び耐環境性に起因して、TiOである。好ましくは、バッキング層Aは2~20nmの厚さのものである。好ましくは、バッキング層Aは、1.6~2.6の屈折率(n)(1.6≦n≦2.6)を有し、より好ましくは、層Aのサブ層の各々は、存在する場合は、当該範囲の屈折率値を有する。しかしながら、バッキング層Aの屈折率値は、多層構造の光学的透過率にとって決定的重要性はより低い。
【0038】
バッキング層Aの厚さ及び選択された材料は、湿った空気からの多層構造の低減された加水分解を含む、多層構造の望ましい化学的安定性をもたらす。それにより、多層構造の発展アーキテクチャにおいて、バッキング層Aは、次の層:Bにとっての底部バッファの層として機能する。バッキング層Aは、少なくとも1つの酸化物、又は1つよりも多い金属酸化物、例えばTiO、及び/又はSnO、のいずれかによって構成されている単層構造であり得、又はバッキング層Aは、各々が1つの金属酸化物又は1つよりも多い金属酸化物から作成される少なくとも2つのサブ層を備え得、ここで、好ましくは、バッキング層Aの中で、サブ層のうちの1つはTiOで構成され、もう一方のサブ層はSnOで構成され得る。バッキング層Aは、基板11の上に直接的に堆積されてもよく、又はそれは基板11のプライマーコーティングの上に堆積されてもよい。
【0039】
更に、バリア構造は、バッファ層C及びブロック層Bを備え、ブロック層Bはバッファ層C及びバッキング層Aの間に配置されている。
【0040】
ブロック層Bは、単層又は多層構造のいずれかのものであり得る。単層構造の1つの実施形態において、ブロック層Bは、任意選択的にアルコンを添加した、SnO、AlO、ZnO、及びHfO、又はSn、Al、Zn、及びHfからなる群から選択された金属原子のうちの少なくとも1つ及びTi、Zr等の別の金属原子を金属酸化物構造の中に含む複合金属酸化物からなる群から選択された、少なくとも1つの、及びより好ましくは2つの金属酸化物で構成され得、複合酸化物の非限定的な例は、AlTiO、AlZrO、及びAlZnOであり、ここでyは0.25~1(0.25≦y≦1)であり得、zは0.01~0.9(0.01≦z≦0.9)であり得る。最も好ましくは、ブロック層Bは、一方の金属酸化物としてAlOを、もう一方の金属酸化物としてSnO又はZnO又はHfOを含む。多層構造の1つの実施形態において、ブロック層Bは、2つ又は2つよりも多いサブ層を備え得、ここで各サブ層は、少なくとも1つの金属酸化物を含み得る。例えば、ブロック層Bは、2つのサブ層を備え得、一方はAlOxで構成され、もう一方はSnOx又はZnOx又はHfOxで構成される。別の実施形態では、ブロック層Bは、各々異なる金属酸化物で構成された複数のサブ層を備え得、例えば1つのブロック層Bの中のサブ層は、層A及びCの間に、下記のパターンで配置され得る:A/AlOx/SnOx/ZnOx/HfOx/アルコン/C。好ましくは、ブロック層Bは総厚さ10~100nmのものである。好ましくは、ブロック層Bは、1.5及び2.1の間の屈折率(n)(1.5≦n≦2.1)を有し、最も好ましくは、ブロック層Bは、AlOの屈折率に近い1.6≦n≦1.8、より好ましくはn=1.7の屈折率値を有する。ブロック層BがAlOから作成される例において、この層の屈折率はn=1.7であり得る。
【0041】
ブロック層Bのために選択された材料及びその厚さは共に、層Bの効果的なバリア機能をもたらす。ブロック層Bの存在及びその多層構造の中の配置に起因して、当該多層構造は、38℃/90%RHにおいて1日当たり1×10-6~1×10-3g/mの水蒸気透過率(WVTR)という低水蒸気透過性、及び1日当たり1x10-2cm/m未満の酸素透過率(OTR)を含む、改善されたバリア特性を示す。更に、ブロック層Bの選択された材料は、適切な1.5及び2.1の間の屈折率値(n)、好ましくはn=1.7を与え、これは多層構造を通る改善された光透過率に寄与する。
【0042】
バッファ層Cは、単層又は多層構造のいずれかのものであり得る。単層構造の1つの実施形態において、バッファ層Cは、TiOx、ZrO、Nb、TeO、及びZnSからなる群から選択された1つの(酸化又は硫化)化合物、又は、1つよりも多くの化合物で構成され得る。最も好ましくは、単層構造のバッファ層Cは、TiOを含み、又はそれは完全にTiOで構成され得、なぜならば、バッファ層C内に存在するTiOは、多層構造の改善された化学物質抵抗性、及びひいては当該多層構造に含まれる電極構造13のための保護をもたらし、同時に、バッファ層Cの望ましい厚さにおける、本開示によって要求される(下記で説明されるような)高屈折率値に寄与するためである。
【0043】
好ましくは、バッファ層Cは、少なくとも総厚さ10nmのものであり、より好ましくは、バッファ層Cは、総厚さ10~60のもの、更により好ましくは20~50nmのものである。バッファ層Cは、2.2~2.6の範囲内の屈折率(n)を有し、より好ましくは、バッファ層Cは屈折率n=2.45を有する。電極構造13及びブロック層Bの間に配置されるバッファ層Cのそのような高屈折率値は、電極構造(D、E)の界面においての反射損失の最小化をもたらす。上記で言及された特徴は、電極構造(金属-誘電体)の選択された設計と共に、それぞれ層D及びEを備える電極構造13の改善された安定性及び性能をもたらす。
【0044】
バリア構造12の発展バリアスタックは、層A、B及びCを備え、その各層は少なくとも1つの金属酸化物(又は硫化物)で構成されている。更に、バッファ層Cは、電極構造13に近接して隣に配置され、2.2≦n≦2.6の、好ましくはn=2.45の高い屈折率を有するように選択される。これらが共に、多層構造を通る改善された光遷移をもたらし、ここで、層C(金属酸化物及び/又は金属硫化物層)は、金属層:Dと接触している。
【0045】
また、上記のアーキテクチャに起因して、実現された優れた化学的安定性は、電極構造13の層D及びEにおいて、多層構造がレーザエッチングされることを可能にする。そうして、多層構造は、多層構造がOPデバイスにおいて利用されるとき、デザイナーセルアーキテクチャを獲得するために、レーザパターニングされ得る。そうして、多層構造の発展アーキテクチャは、下方の材料、すなわち層C、B及びAを傷めることなく、自体の改善されたパターニング挙動を提供する。そうして、実施されるパターニングは、バリア構造12のバリア特性を損なうことがない。
【0046】
好ましくは、層Bは更に、1.5≦n≦2.1、より好ましくはn=1.7の高い屈折率を有するように選択される。このことが、層Bの最大100nmという実質的に小さい厚さにおいて、優れたバリア特性を保証しつつ、層Cの屈折率値と組み合わせられて、多層構造の光遷移を更に改善する。
【0047】
電極構造13は、電極層(E、D)、誘電体層E、及び、誘電体層E及び高い屈折率のバッファ層Cの間の金属層Dを備える。金属層Dは、2つ又は2つよりも多い金属を含む。金属層Dは、好ましくは、例えばバイメタル合金といった金属合金の形態の、単層構造のものであり得、又は金属層Dは、2つのサブ層又は2つよりも多いサブ層を備え、好ましくは各サブ層が1つの金属タイプ又は金属合金で構成されている、多層構造のものであり得る。
【0048】
電極構造13の金属層Dは、好ましくは銀(Ag)及び、Al、Cu、Ti、Ge、Zn、及びCrからなる群から選択された1つ又は1つよりも多い金属を含む。好ましくは、金属層Dはバイメタルである。金属層Dの総厚さは、4~13nmである。例えば、層Dは、Cu=10at%及びAg=90at%のCu/Ag合金からなり得る。この層:Dは、スパッタリングによって、より好ましくは2つの別個の金属、Ag及びCuが使用される同時スパッタリングによって、層C上に直接的に実施され得る。同時スパッタリングによって、わずか4nmの厚さを有する金属層を作成することが可能であり、このことは、Rsh≦20Ω/sqという非常に優れた導電性をもたらす。任意選択的に、単一のAg/Cu合金ターゲットの同時スパッタリングも使用され得る。
【0049】
好ましくは、電極構造の誘電体層Eは、単層構造のものである。誘電体層Eは、好ましくは酸化インジウム(In)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、又は、複合酸化物構造の中に、上記で言及されたIn、Sn、Zn、V、Mo、及びWからなる群から選択された金属原子のうちの少なくとも1つ及び別のドーパント金属を含む、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)及び酸化インジウムガリウム亜鉛(IGZO)又は同様の複合金属酸化物等の複合金属酸化物からなる群から選択される、1つ又は1つよりも多いTCO(透明導電酸化物)で構成される。誘電体層Eの厚さは、20~80nmである。好ましくは、誘電体層Eは1.8及び2.2の間の高屈折率値(1.8≦n≦2.2)を有する。上記の範囲内に該当する誘電体層Eの厚さは、多層構造のそれぞれの用途に応じて、VIS又はNIR領域において、多層構造の望ましい、好ましくは最大の光透過率を最適化するように選択され得る。そうして、層TCO(E)は、下方のバリア構造12と組み合わせられて、誘電体層Eの反射防止コーティング効果をもたらす。更に、層Eは、金属層Dの酸化に対して保護する。また、層Eは、そこから接点を形成し、多層構造を例えば感光材料と、次に別の電極と組み合わせ、例えばペロブスカイト又は有機等の太陽電池又はOLED等のOPデバイスを形成するのに好適である。
【0050】
多層構造の中の層の発展スタックは、層:C及び好ましくはBも;及びEを関与させ、電極構造の薄い金属層Dに反射防止効果をもたらす。より詳細に、発展多層構造において、層Eは、電極構造の一部、及び多層構造の片側からの層Dの反射防止コーティングの両方として機能し、その一方で、層Cは、好ましくは層Bと共に、もう一方の側からの層Dのための反射防止コーティングとして機能する。同時に、層B及びCは、上記で言及されたように、バリア特性をもたらす。それにより、多層構造内に実装された層の選択的な組み合わせは、反射損失における低減をもたらし、したがってそれは一体的に反射防止システムとして機能する。
【0051】
本明細書で言及された、SnO、TiO、ZnO、HfO等の一般式の金属酸化物MeOは、多層構造の層又はそれぞれのサブ層のいずれにおいても、本開示によれば、化学量論的及び/又は非化学量論的構造のものであり得、xは1~2(1≦x≦2)であり得る。これは、材料の望ましい層の作成において獲得され得る、それぞれの金属酸化物内の金属の様々な酸化状態に起因する。例えば、SnOに関して、材料はSnOを含むが、しかしながら、実際には通常はスズはSn(IV)へ完全に酸化されているわけではなく、したがって材料SnOは、SnO及びSnOを含み、SnO相及びSnO相の正確な量がどれほどかは、正確な堆積状況に依存する。同じことは、本明細書においてMeOとして表現される他の金属酸化物に当てはまる。例えば、SnO材料の正確な式はSnO1.8であり得る。本明細書においてMeOとして表現される材料の非限定的な例は、TiO、SnO、SnO1.8、ZrO、HfO、ZnO、Alである。
【0052】
更に、金属層D及びTCO層Eを備える電極構造の配置は、本発明に係る多層構造内の金属-誘電体電極アーキテクチャをもたらす。これは、公知の誘電体-金属-誘電体構造と比べて優越した可撓性をもたらし、その一方で誘電体材料で構成された層Eは、金属層Dに反射防止効果をもたらす。
【0053】
それぞれの層B、C、及びEのための材料は、それらの屈折率値に起因して選択され、例えば、AlOはn=1.7を有し、SnOはn=1.9を有し、ZnOはn=2.0を有し、TiOはn=2.45を有し、ITOはn=2.0を有し、ZrOはn=2.2を有し、これらは本開示の下記実施形態において使用される材料の典型的なn値である。
【0054】
本開示の好ましい実施形態において、多層構造は、プラスチック基板及び層の下記スタックを備え得る:
・層Aは、TiOを含み、より好ましくはTiOで構成され、層Aの総厚さは、2~20nmであり、2.45の屈折率値である;
・層Bは、AlO、及び、AlOの屈折率値、すなわちn=1.7に近いそれを有する別の金属酸化物を含み;層Bの総厚さは10~100nmであり;層Bは単層又は多層構造のものであり得る;
・層Cは、TiOを含み、2.45の屈折率を有し、又は層Cは2.2~2.6の屈折率値をもたらす別の金属酸化物を含み得;層Cの総厚さは20~50nmである、
・層D及びEは共に、金属-誘電体(M誘電体)電極構造をもたらし、ここで層Dは2つの金属で構成され、そのうちの1つはAgであり、層Dの総厚さは4~13nmであり;誘電体層EはTCOから作成され;その結果、層D及びEを含む電極構造は、パターニング、好ましくはレーザパターニング又は化学的にパターニングされ得る。
【0055】
既に言及されたように、M-誘電体電極構造の実装と共に、選択された使用材料、厚さ及び、それぞれの層、すなわち少なくとも層C、及び更に好ましくは層B及び/又は層Eの反射率値、を含む決まったパラメータの特別に選択されたサブ範囲に起因して、発展多層構造は、改善された化学的安定性、スタック内の層(A~D)のより良い接着、及び基板へのA~E層の接着を示す。更に、多層構造は、実質的により薄い構造として実施され得、A~D層のスタック全体は、250nm未満の厚さであり得、A~C層のスタックは、100nm未満の厚さ、より好ましくは、60nm未満の厚さであり得る。これは更に、多層構造のより高い可撓性をもたらし、少なくとも1000サイクル及び0.5cmまでの曲げ半径を有する曲げテストの際に、機能損失がないという結果になる。更に、層Cのために及び好ましくは層B及び層Eのためにも選択された材料は、各々が相対的に高い屈折率値を有し、バリア(A~C)及び電極(D~E)構造の界面における反射損失を十分に最小化し、このことは本開示によってもたらされる別の技術的効果を構成する。これは、透明/透光性基板によって、又はOPデバイスの電極領域を通って入る、又は出される入射光に有利に影響する。そうして、上に実装された多層構造を有するOPデバイスは、向上した効率を示し得る。
【0056】
更に、本開示によれば、好ましくはAlOで構成されたブロック層Bは、他の金属酸化物(又は硫化物)層(例えば、層CにZnS)を用いて効果的に挟まれ、及びそれにより封止され、したがって、他の層A、C及びEは、上記で言及されたように、更に追加の機能を有する。このことは、本開示に係る多層構造を利用するOPデバイスに、延長されたライフスパンをもたらす。
【0057】
上記で言及された効果は、多層構造内に、いかなる有機添加物も用いずにもたらされるということが更に留意されるべきである。そうして、本開示によれば、層(A~E)の間、及び/又はそれらの中に、有機層及び/又は添加物は要求されず、多層構造内で唯一の有機材料は、ポリマー基板11であり得る。そうして、発展多層アーキテクチャは、実質的に簡単にかつコスト効率が高く作成されることができる。
【実施例1】
【0058】
PET箔である基板を、IPA(70%イソプロピルアルコール)内で超音波処理によって洗浄し、次に窒素ガンによって乾燥した。次に、層:A、B、Cを、100℃でALD技法によって、各層堆積の間の真空を破壊せずに連続して堆積させた。全ての層は、優れた浸透バリア特性、化学的安定性を更に強化するために、できるだけ緻密であるように最適化した。層は、基板上のスタックの形態で形成した。各層の詳細な組成は、以下の通りである:
・バリア構造:層A:TiO(5nm厚);層B:サブ層AlO(20nm厚)/サブ層ZnO(10nm厚)、サブ層AlO(20nm厚);層C:TiO(32nm厚)。
【0059】
次に、電極領域:層:D+Eを堆積させ、各層はマグネトロンスパッタリングによって堆積させた。各層の詳細な組成は以下の通りである:
・電極構造:層D:Cu/Ag(Cu:10at%;Ag:90at%)同時スパッタリングされた層(7nm厚)。同時スパッタリングは、2つの別個の金属ターゲット(Ag及びCu)を用いて、異なるパワーを用いて実施した;層E:ITOターゲットからのITO層(40nm厚)。
【0060】
獲得された多層構造は、下記の層の配置の可撓性透明箔の形態であった:PET/TiO(5nm)/AlO(20nm)/ZnO(10nm)/AlO(20nm)/TiO(32nm)/CuAg(7nm)/ITO(40nm)。
【0061】
次に、獲得された多層構造を、テストし、可視光線(VIS)において及び赤外線(IR)のスペクトル域においての両方で、その透過率特性を評価した。獲得された結果は、図2中のダイアグラム中にセットされ、それは、(中心部において及び角部において)10×10cmのサンプル上で測定された、自体の完全な構造を有する箔(多層構造)の透過率を示す。図2のダイアグラムからわかるように、中心部における平均可視光線透過率は82%、角部では80.4~81.6%である。したがって、80%を超える非常に優れた透過率は、広範囲にわたって実現され得る。
【0062】
獲得された箔の他のパラメータは、以下の通りである:シート抵抗性:13.5Ohm/sq(同様の透過率を有する典型的なITOは、20Ohm/sqを超えるRshを有する);バリアスタックのWVTR:約10-6g/m/日;バリアスタックのOTR:≦5*10-4cc/m/日(OTRは検出限界未満であった)。
【実施例2】
【0063】
透明可撓性箔の形態の多層構造は、実施例1と同じ条件で作成した。獲得された箔は、下記のアーキテクチャのものであった。
【0064】
基板:PET
層A:SnO、5nm厚、ALDによって作成
層B:AlO、50nm厚、ALDによって作成
層C:TiO、32nm厚、ALDによって作成
領域D:Cu/Ag(10/90アトミック%)、7nm厚、スパッタリングによって作成
領域E:ITO、40nm厚、スパッタリングによって作成
上記のアーキテクチャに関して、コンピュータシミュレーションが行われ、その光学的透過率を評価した。獲得されたデータは、図3中のダイアグラム中にセットされている。見られるように、獲得された箔の光学的透過率は、可視光線400~800nmスペクトル域において80%を優に超えている。
【実施例3】
【0065】
透明可撓性箔の形態の多層構造は、実施例1と同じ条件で作成した。獲得された箔は、下記のアーキテクチャのものであった。
【0066】
基板:PET
層A:TiO、5nm厚、ALDによって作成
層B:サブ層AlO(10nm厚)/サブ層ZnO(10nm厚)/サブ層AlO(10nm厚)/サブ層ZnO(10nm厚)/サブ層AlO(10nm厚)、全てALDによって作成
層C:ZrO、35nm厚、ALDによって作成
層D:Cu/Ag(10/90アトミック%)、7nm厚、スパッタリングによって作成
層E:ITO、40nm厚、スパッタリングによって作成。
【0067】
獲得された層スタックは、図4中でシミュレーションによって示されるように、可視光線400~800nmスペクトル域において>80%を優に超える光学的透過率をもたらした可撓性透明箔の形態を有する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】