(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】バッテリモジュール及びバッテリモジュールを緊締するための方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240312BHJP
H01M 50/211 20210101ALI20240312BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240312BHJP
H01M 50/289 20210101ALI20240312BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/211
H01M50/262 S
H01M50/249
H01M50/289
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023557800
(86)(22)【出願日】2022-03-01
(85)【翻訳文提出日】2023-09-20
(86)【国際出願番号】 EP2022055047
(87)【国際公開番号】W WO2022207210
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】102021107991.8
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(74)【代理人】
【識別番号】100191938
【氏名又は名称】高原 昭典
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルコチュ・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ロッホ・ローベルト
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AS07
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY04
5H040AY05
5H040AY08
5H040CC26
5H040CC34
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】バッテリモジュールの異なる動作状態において、バッテリモジュールの個々のバッテリセルの緊締条件のそれぞれ精確な調整を可能とする。
【解決手段】電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリモジュール110であって、
-バッテリモジュール110が、2つの押圧プレート112,114の間でバッテリモジュール110の横方向軸線に沿って互いに並んで配置されている1つ又は複数のバッテリセルを含んでおり、
-バッテリモジュール110が、
-1つ又は複数のバッテリセルの横方向軸線に沿った空間的な拡張の変化が可能であるよう2つの押圧プレート112,114間の間隔が間隔範囲内で変化可能であるように、及び
-2つの押圧プレート112,114により、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセルへの押圧力がもたらされるように
形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリモジュール(110)であって、
-バッテリモジュール(110)が、2つの押圧プレート(112,114)の間でバッテリモジュール(110)の横方向軸線に沿って互いに並んで配置されている1つ又は複数のバッテリセル(111)を含んでおり、
-バッテリモジュール(110)が、
-1つ又は複数のバッテリセル(111)の横方向軸線に沿った空間的な拡張の変化が可能であるよう2つの押圧プレート(112,114)間の間隔が間隔範囲内で変化可能であるように、及び
-2つの押圧プレート(112,114)により、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセル(111)への押圧力がもたらされるように
形成されていることを特徴とするバッテリモジュール。
【請求項2】
-1つ又は複数のバッテリセル(111)が、放電された状態において、横方向軸線に沿って最小の全体拡張を有しており、
-1つ又は複数のバッテリセル(111)が、充電された状態において、横方向軸線に沿って最大の全体拡張を有しており、
-最大の全体拡張が最小の全体拡張を特に5~15%超過しており、及び
-下方への間隔範囲が最小の全体拡張によって制限され、上方への間隔範囲が最大の全体拡張によって制限される
ことを特徴とする請求項1に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項3】
バッテリモジュール(110)が、間隔範囲全体内で最大で20%、特に最大で10%だけ変動する押圧力が2つの押圧プレート(112,114)によって1つ又は複数のバッテリセル(111)へもたらされるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項4】
-バッテリモジュール(110)が、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセル(111)への最小圧力を下回らないよう、及び/又は1つ又は複数のバッテリセル(111)への最大圧力を上回らないよう、2つの押圧プレート(112,114)によって押圧力が1つ又は複数のバッテリセル(111)へもたらされるように形成されており、
-最小圧力が特に8barであり、及び/又は最大圧力が特に12barである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項5】
バッテリモジュール(110)が少なくとも1つの押圧要素(313)を含んでおり、該押圧要素が、2つの押圧プレート(112,114)によって1つ又は複数のバッテリセル(111)への押圧力がもたらされるよう、2つの押圧プレート(112,114)のうち第1の押圧プレート(112)を2つの押圧プレート(112,114)のうち第2の押圧プレート(114)へ向けて押圧及び/又は引っ張るように形成されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項6】
押圧要素(313)は、平坦な、又はバンド状のクランプ要素、特にゴムクランプバンド及び/又は蛇行バネを含んでおり、クランプ要素は、第1の押圧プレート(112)を第2の押圧プレート(114)へ向けて引っ張るように形成されていることを特徴とする請求項5に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項7】
押圧要素(313)は、少なくとも1つのバネ、特に板バネ、押圧バネ、ねじりバネ及び/又は皿バネを含んでおり、バネは、第1の押圧プレート(112)を第2の押圧プレート(114)へ向けて押圧するように形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項8】
押圧要素(313)が、特に横方向軸線に関して傾斜したバネの配置によって、及び/又はレバー(403)の使用によって、バネによって第1の押圧プレート(112)へもたらされる力が2つの押圧プレート(112,114)間の間隔に依存して変化するように形成されていることを特徴とする請求項7に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項9】
押圧要素(313)が、第1の押圧プレート(112)に結合されたカム(406)へ作用する脚部を有するねじりバネを備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項10】
押圧要素(313)が、ニーレバー(403)を介して第1の押圧プレート(112)へ作用する押圧バネを含んでいることを特徴とする請求項7~9のいずれか1項に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項11】
バッテリモジュール(110)が、2つの押圧プレート(112,114)のうち第1の押圧プレート(112)が可動に支持されており、2つの押圧プレート(112,114)のうち第2の押圧プレート(114)が不動に支持されているように形成されていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項12】
バッテリモジュール(110)が、直接互いに並んで配置された2つのバッテリセル間に横方向軸線に沿って可動に支持されたそれぞれ1つのフレーム(311)を備えていることを特徴とする請求項1~11のいずれか1項に記載のバッテリモジュール(110)。
【請求項13】
-少なくとも1つの支持部(101,102)と、
-支持部(101,102)において支持された、請求項1~12のいずれか1項に記載の少なくとも1つのバッテリモジュール(110)と
を含む車両(100)。
【請求項14】
-車両(100)が、第1のバッテリモジュール(110)及び第2のバッテリモジュール(110)を含み、
-第1のバッテリモジュール(110)及び第2のバッテリモジュール(110)が、第1のバッテリモジュール(110)及び/又は第2のバッテリモジュール(110)において各バッテリモジュール(110)の2つの押圧プレート(112,114)間の間隔が増大するときに、第1のバッテリモジュール(110)の可動に支持された押圧プレート(112)と第2のバッテリモジュール(110)の可動に支持された押圧プレート(112)の間の間隔が低減されるように、車両(100)に配置されている
ことを特徴とする請求項13に記載の車両(100)。
【請求項15】
第1のバッテリモジュール(110)及び第2のバッテリモジュール(110)が共通の押圧要素(313)を備えており、押圧要素は、第1のバッテリモジュール(110)の1つ又は複数のバッテリセル(111)への押圧力と、第2のバッテリモジュール(110)の1つ又は複数のバッテリセル(111)への押圧力とをもたらすために、第1のバッテリモジュール(110)の可動に支持された押圧プレート(112)と、第2のバッテリモジュール(110)の可動に支持された押圧プレート(112)とに作用することを特徴とする請求項14に記載の車両(100)。
【請求項16】
バッテリモジュール(110)を緊締するための方法(500)であって、バッテリモジュール(110)が1つ又は複数のバッテリセル(111)を含んでおり、方法(500)が、
-横方向軸線に沿った1つ又は複数のバッテリセル(111)の空間的な拡張の変化により2つの押圧プレート(112,114)間の間隔が間隔範囲内で変化可能であるように、バッテリモジュール(110)の横方向軸線に沿って1つ又は複数のバッテリセル(111)を互いに並んで2つの押圧プレート(112,114)間に配置すること(501)、及び
-2つの押圧プレート(112,114)によって、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセル(111)へ押圧力をもたらすこと(502)
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリモジュール及びバッテリモジュール、特に、例えば固体電解質を有するリチウムイオンバッテリのような固体バッテリを緊締するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも部分的に電気式に駆動される車両は、車両の電気駆動モータを動作させるための電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリあるいはバッテリモジュールを備えている。バッテリモジュールは、典型的には多数の個別のバッテリセル、特に多数のパウチセルを備えており、当該バッテリセルは、バッテリモジュールのハウジングに互いに並んで配置されている。バッテリモジュールは車両の動作中に繰り返し充電及び放電され、個々のバッテリセルは、放電された状態あるいは充電された状態ではそれぞれ異なる空間的な拡張(拡がり)を有し得る。バッテリモジュールの信頼性のある動作のために、バッテリモジュールの異なる動作状態においても、個々のバッテリセルの緊締についての所定の、特に一定の条件が遵守されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書は、特に高い性能を有するバッテリモジュールを提供するために、バッテリモジュールの異なる動作状態において、バッテリモジュールの個々のバッテリセルの緊締条件のそれぞれ精確な調整を可能とするという技術的な課題に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
当該課題は、各独立請求項によって解決される。有利な実施形態は、とりわけ従属請求項に記載されている。独立請求項に従属する請求項の追加的な特徴は、独立請求項の特徴なしに、又は独立請求項の特徴の一部との組合せにおいてのみでも、固有の、及び独立請求項の全ての特徴の組合せから独立した発明を形成することができ、当該発明は、独立請求項、分割出願又は後出願の対象に対して行われ得ることを指摘しておく。このことは、独立請求項の特徴のうち1つから独立した発明を形成し得る、明細書に記載された技術的な示唆についても同様に当てはまる。
【0005】
一態様では、電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリモジュールが記述される。バッテリモジュールは、60V以上の定格電圧、300V以上の定格電圧又は800V以上の定格電圧を有し得る。バッテリモジュールは、原動機付き車両の駆動モータを動作させるための電気エネルギーを貯蔵するように形成されることが可能である。原動機付き車両は、場合によっては、共に原動機付き車両のバッテリを形成する複数のバッテリモジュールを含むことができる。個々のバッテリモジュールは、少なくとも部分的に直列に及び/又は少なくとも部分的に互いに並列に接続されることが可能である。例えば、大きな総定格電圧を有する車両バッテリを提供するために、複数のバッテリモジュールを直列に接続することが可能である。
【0006】
バッテリモジュールは、バッテリモジュールの横方向軸線に沿って互いに並んで2つの押圧プレート間に配置された1つ又は複数のバッテリセル(特に10以上又は50以上のバッテリセル)を含んでいる。バッテリセルはパウチセルであってよく、横方向軸線は、パウチセルの面及び/又は層に対して垂直となっている。バッテリモジュールの横方向軸線は、バッテリモジュールが配置された車両の横方向軸線と一致し得る。
【0007】
バッテリモジュールは、横方向軸線に沿った1つ又は複数のバッテリセルの空間的な拡張の変化(特に膨張及び/又は縮小)が可能であるよう所定の間隔範囲内で2つの押圧プレート間の間隔が変化可能であるように形成されている。特に、バッテリモジュールは、横方向軸線に沿った1つ又は複数のバッテリセルの空間的な拡張の変化(拡大又は縮小)によって2つの押圧プレート間の間隔の相応の変化(拡大又は縮小)がもたらされるように形成されることが可能である。
【0008】
バッテリモジュールは、2つの押圧プレートのうち第1の押圧プレートが(車両の1つの支持部において)可動に支持され、2つの押圧プレートのうち第2の押圧プレートが(車両の他の支持部において)不動に支持されるように形成されることが可能である。したがって、信頼性をもって両押圧プレート間の間隔の変化が可能となり得る。
【0009】
1つ又は複数のバッテリセルは、放電された状態において、横方向軸線に沿って最小の全体拡張を有することができる。また、1つ又は複数のバッテリセルは、充電された状態において、横方向軸線に沿って最大の全体拡張を有することができる。したがって、1つ又は複数のバッテリセルは、1つ又は複数のバッテリセルが充電過程において(横方向軸線に沿って)膨張し、及び/又は放電過程において(横方向軸線に沿って)収縮するように形成されることが可能である。膨張は、例えば全体膨張の10%の範囲にあり得る。1つ又は複数のバッテリセルの最大の全体拡張は、1つ又は複数のバッテリセルの最小の全体拡張を5~15%上回ることができる。このような膨張は、特に、固体電解質を有する電気化学的なバッテリセル(いわゆるAll Solid State Battery;ASSB(全固体バッテリ))において、特に固体電解質を有するリチウムイオンセルにおいてあり得る。
【0010】
2つの押圧プレート間の間隔が変化する間隔範囲は、下方へは最小の全体拡張によって制限され、上方へは最大の全体拡張によって制限されることが可能である。
【0011】
また、バッテリモジュールは、間隔範囲全体内で2つの押圧プレートによって1つ又は複数のバッテリセルへの押圧力がもたらされるように形成されることが可能である。バッテリモジュールは、特に、間隔範囲全体内で最大で20%、特に最大で10%だけ変動する押圧力が2つの押圧プレートによって1つ又は複数のバッテリセルへもたらされるように形成されることが可能である。これに代えて、又はこれに補足して、バッテリモジュールは、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセルへの最小圧力を下回らないよう、及び/又は1つ又は複数のバッテリセルへの最大圧力を上回らないよう、2つの押圧プレートによって押圧力が1つ又は複数のバッテリセルへもたらされるように形成されることが可能である。例えば、最小圧力が8bar以上であってよく、及び/又は最大圧力が12bar以下であってよい。
【0012】
したがって、バッテリモジュールの1つ又は複数のバッテリセルの相応の膨張及び/又は収縮を可能とするために、及びこのとき1つ又は複数のバッテリセルへの常に所定の(場合によっては本質的に一定の)圧力をもたらすために、横方向軸線に沿って膨張及び/又は収縮するように形成されたバッテリモジュールが記述される。したがって、信頼性をもってバッテリモジュールの高い性能が可能となり得る。
【0013】
バッテリモジュールは、直接互いに並んで配置された2つのバッテリセル間にそれぞれ1つの横方向軸線に沿って可動に支持されたフレームを備えることが可能である。バッテリセルは、バッテリセルのできる限り穏やかな動作を可能とするために、膨張時あるいは収縮時に個々のフレームによってガイドされることが可能である。
【0014】
バッテリモジュールが少なくとも1つの押圧要素を含むことができ、当該押圧要素は、2つの押圧プレートによって1つ又は2つのバッテリセルへの押圧力がもたらされるよう、押圧プレートのうち第1の(可動に支持された)押圧プレートを2つの押圧プレートのうち第2の(不動に支持された)押圧プレートへ向けて押圧及び/又は引っ張るように形成されている。このとき、押圧要素は、少なくとも1つの弾性要素(例えばバネ)を含むことができる。したがって、特に効率的かつ信頼性をもって押圧力を1つ又は複数のバッテリセルへもたらすことが可能である。
【0015】
押圧要素は、平坦な、又はバンド状のクランプ要素、特にゴムクランプバンド及び/又は蛇行バネを含むことができ、クランプ要素は、第1の押圧プレートを第2の押圧プレートへ向けて引っ張るように形成されている。平坦な、又はバンド上のクランプ要素は、例えば、両押圧プレートを互いに結合及び緊締する弾性的なアンカを形成することが可能である。したがって、特に効率的かつ信頼性をもって押圧力を1つ又は複数のバッテリセルへもたらすことが可能である。
【0016】
これに代えて、又はこれに補足して、押圧要素は、少なくとも1つのバネ、特に板バネ、押圧バネ、ねじりバネ及び/又は皿バネを含むことができ、バネは、第1の押圧プレートを第2の押圧プレートへ向けて押圧するように形成されている。このとき、バネは、バッテリモジュール用の支持部と第1の押圧プレートの間に配置されることが可能である。したがって、特に効率的かつ信頼性をもって押圧力を1つ又は複数のバッテリセルへもたらすことが可能である。
【0017】
押圧要素は、横方向軸線に関して傾斜したバネの配置によって、及び/又はレバーの使用によって、バネによって第1の押圧プレートへもたらされる力が2つの押圧プレート間の間隔に依存して変化するように形成されることが可能である。例えば、押圧要素は、第1の押圧プレートに結合されたカムへ作用する脚部を有するねじりバネを備えることが可能である。これに代えて、又はこれに補足して、押圧要素は、ニーレバーを介して第1の押圧プレートに作用する押圧バネ(圧縮バネ)を含むことができる。したがって、バッテリモジュールの性能を更に高めるために、1つ又は複数のバッテリセルの膨張に応じて押圧要素から第1の押圧プレートを介して1つ又は複数のバッテリセルに作用する力の推移を特に精確に調整することが可能である。
【0018】
別の一態様によれば、本明細書で記載されるバッテリモジュールのうち少なくとも1つを含む(道路車両)原動機付き車両(特に自家用車又は貨物自動車又はバス又は自動二輪車)が記載される。車両は、例えば部分的に互いに直列及び/又は並列に配置されることが可能な特に複数のバッテリモジュールを含むことができる。さらに、車両は、1つ又は複数のバッテリモジュールが固定された少なくとも1つの支持部を含むことが可能である。
【0019】
車両は、第1のバッテリモジュール及び第2のバッテリモジュールを含むことが可能である。第1のバッテリモジュール及び第2のバッテリモジュールは、第1のバッテリモジュール及び/又は第2のバッテリモジュールにおいて各バッテリモジュールの2つの押圧プレート間の間隔が増大するときに、第1のバッテリモジュールの可動に支持された押圧プレートと第2のバッテリモジュールの可動に支持された押圧プレートの間の間隔が低減されるように、車両に配置されることが可能である。
【0020】
第1のバッテリモジュール及び第2のバッテリモジュールが共通の押圧要素を備えることができ、押圧要素は、第1のバッテリモジュールの1つ又は複数のバッテリセルへの押圧力と、第2のバッテリモジュールの1つ又は複数のバッテリセルへの押圧力とをもたらすために、第1のバッテリモジュールの可動に支持された押圧プレートと、第2のバッテリモジュールの可動に支持された押圧プレートとに作用する。したがって、車両において特に効率的に複数のバッテリモジュールを提供することが可能である。
【0021】
別の一態様によれば、1つ又は複数のバッテリセルを含むバッテリモジュールを緊締するための方法が記述される。方法は、横方向軸線に沿った1つ又は複数のバッテリセルの空間的な拡がりの変化により2つの押圧プレート間の間隔が間隔範囲内で変化可能であるように、バッテリモジュールの横方向軸線に沿って1つ又は複数のバッテリセルを互いに並んで2つの押圧プレート間に配置することを含む。方法は、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセルへ押圧力をもたらすことを更に含む。このとき、押圧力は、2つの押圧プレートによって(及び1つ又は複数の押圧要素に基づき)もたらされることが可能である。換言すれば、方法においては、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセルへの押圧力をもたらすことが可能である。このとき、押圧力は、1つ又は複数の押圧要素に基づき、押圧プレートを介して1つ又は複数のバッテリセルへもたらされることが可能である。
【0022】
本明細書に記載される方法、装置及びシステムは、単独でも、また本明細書に記載される他の方法、装置及びシステムとの組合せにおいても用いられることができることに留意すべきである。さらに、本明細書に記載される方法、装置及びシステムの各態様は、様々に互いに組み合わせられることが可能である。特に、請求項の特徴を様々に組み合わせることが可能である。
【0023】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1a】電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリあるいはバッテリモジュールを有する例示的な車両を示す図である。
【
図1b】車両におけるバッテリモジュールの例示的な格納を示す図である。
【
図2】バッテリモジュールのバッテリセルの空間的な膨張を可能とするバッテリモジュールの例示的な格納を示す図である。
【
図3a】例示的な弾性的な押圧要素を有するバッテリモジュールの異なる視点を示す図である。
【
図3b】例示的な弾性的な押圧要素を有するバッテリモジュールの異なる視点を示す図である。
【
図3c】例示的な弾性的な押圧要素を有するバッテリモジュールの異なる視点を示す図である。
【
図4a】異なるように形成された弾性的な押圧要素を示す図である。
【
図4b】異なるように形成された弾性的な押圧要素を示す図である。
【
図4c】異なるように形成された弾性的な押圧要素を示す図である。
【
図4d】異なるように形成された弾性的な押圧要素を示す図である。
【
図4e】異なるように形成された弾性的な押圧要素を示す図である。
【
図5】バッテリモジュールを緊締するための例示的な方法のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
冒頭で説明したように、本明細書は、バッテリモジュールの異なる動作状態における、電気的なバッテリモジュール、特に固体バッテリ(固体電池)のバッテリセルの機械的な応力についての条件の効果的で精確な調整(設定)に関するものである。これに関連して、
図1aには、電気エネルギーを貯蔵するためのバッテリモジュール110と、バッテリモジュール110からの電気エネルギーで動作される電気的な駆動モータ105とを有する例示的な車両100が示されている。ここで、バッテリモジュール110は、典型的には、車両100において、(場合によっては複数のバッテリモジュール110を包囲する)バッテリハウジング内に取り付けられている。
【0026】
図1bには、車両100におけるバッテリモジュール110の例示的な格納が図示されている。車両100は(少なくとも、又はちょうど)2つの長手支持部101を備えることができ、当該長手支持部は、車両100の長手軸線に沿って向き調整されている。長手支持部101の間には横方向支持部102を配置することができ、当該横方向支持部は、車両100の横軸線に沿って向き調整されている。バッテリモジュール110は、車両100の、1つ若しくは複数の長手支持部101及び/又は1つ若しくは複数の横方向支持部102において支持されることが可能である。
【0027】
バッテリモジュール110は、1つ又は複数のバッテリセル111、特にパウチセルを含んでいる。個々の平坦なバッテリセル111は、車両100において、バッテリセル111の面、特にバッテリセル111の個々の層が車両100の長手軸線及び高さ方向軸線で描かれる平面内に配置されるように配置されることが可能である。そして、個々のバッテリセル111は、車両100の横方向軸線に沿って互いに並んで配置されている。したがって、バッテリセル111の厚さは、車両100の横方向軸線に沿って延在している。
【0028】
バッテリモジュール110は2つの押圧プレート112,114を備えており、これら押圧プレートの間には、1つ又は複数のバッテリセル111が配置されている。このとき、個々の押圧プレート112,114は、それぞれ、車両100の長手軸線と高さ方向軸線で描かれる平面に配置されている。両押圧プレート112,114はアンカ113を介して互いに結合されており、個々のアンカ113は、車両100の横方向軸線に沿って延在している。押圧プレート112,114は、その間に位置する1つ又は複数のバッテリセル111へ圧力をもたらすために、アンカ113を介して緊締され得る。例えば、アンカ113によって、約10barの圧力を個々のバッテリセル111へもたらすことが可能である。個々のバッテリセル111への圧力は、バッテリセル111の信頼性のある動作のために必要であり得る。
【0029】
個々のバッテリセル111は、特に固体電解質を有するリチウムイオンセル(リチウムイオン電池)の場合のように、充電過程中に膨張するように、及び/又は放電過程中に収縮するように形成されることが可能である。このとき、膨張及び/又は収縮は、特に(車両100あるいはバッテリモジュール110の横方向軸線に沿った)個々のバッテリセル111の厚さの変化をもたらし得る。例えば、個々のバッテリセル111の厚さは、放電された状態と充電された状態で約10%程度変化し得る。
【0030】
厚さの変化により、押圧プレート112,114を介して個々のバッテリセル111へ、あるいは個々のバッテリセル111においてもたらされる圧力あるいは応力が相応に変化することとなる。特に、バッテリモジュール110の充電時の圧力あるいは応力が高められ得る一方、バッテリモジュール110の放電時には圧力あるいは応力が低減される。したがって、個々のバッテリセル111の機械的な応力条件は、バッテリモジュール110の動作状態に依存して変化し、これにより、バッテリモジュール110の性能の低減につながることがある。
【0031】
図2には、バッテリモジュール110の動作中にバッテリモジュール110の体積の変化を可能とするバッテリモジュール110の例示的な格納が示されている。特に、
図2に図示された格納により、(車両100あるいはバッテリモジュール110の横方向軸線に沿った)バッテリモジュール110の個々のバッテリセル111の厚さの変化が可能となる。
図2に図示された例では、バッテリモジュール110の第2の押圧プレート114は、1つ又は複数の固定支持部を介して支持部101,102に固結されている。他方で、バッテリモジュール110の対向する第1の押圧プレート112は、1つ又は複数の浮動支持部を介して、支持部102、特に横方向支持部において可動に支持されているため、可動に支持された第1の押圧プレート112は、固定支持された第2の押圧プレート114へ向けて、及び/又は固定支持された第2の押圧プレート114から離れるように移動することができる(したがって、個々のバッテリセル111の厚さの変化が可能となる)。
【0032】
両押圧プレート112,114はアンカ113を介して互いに結合されることができ、当該アンカは、バッテリセル110の全体の厚さの(横方向軸線に沿った)変化を可能とするために、変化可能な長さを有している。特に、アンカ113は、バッテリモジュール110の膨張に合わせて膨張するように、及びこのとき場合によっては(理想的にはアンカ113の膨張とは無関係な)本質的に一定の圧力を個々のバッテリセル111へ加えるように形成されることが可能である。個々のアンカ113は、この目的のために、1つ又は複数の弾性的なクランプ要素を備えることができる(あるいはそのようなクランプ要素として形成されることができる)。
【0033】
図3a~
図3cにはバッテリモジュール110の異なる視点が示されており、当該バッテリモジュールでは、両押圧プレート112,114が、互いに対向する2つのエッジ部において、それぞれ1つのクランプ要素313、例えばそれぞれ1つの弾性的な(ゴム)バンドを介して互いに結合されている。クランプ要素313は、バッテリセル111の膨張を可能とするために、膨張し、あるいは収縮するように形成されている。
図3a~
図3cに図示された例では、個々のバッテリセル111はそれぞれセルフレーム311に配置されており、セルフレーム311は、個々のバッテリセル111の膨張時に互いに離れるように移動することができ、個々のバッテリセル111の収縮時には互いへ向けて移動することが可能である。個々のバッテリセル111は、セルコンタクト部315を介して(例えば個々のバッテリセル111の直列接続のために)互いに導電的に接続されている。
【0034】
図3aには、一方側からバッテリモジュール110への視点が示されている(すなわち、高さ方向軸線は
図3aにおける垂直軸線に対応し、横方向軸線は
図3aにおける水平軸線に対応する。)。
図3bには、
図3aにおける矢印によって示されるバッテリモジュール110を通る断面が示されている。
図3cには、垂直軸線が高さ方向軸線に対応し、水平軸線が長手軸線に対応するバッテリモジュール110を通る断面が示されている。
図3cには、横方向軸線に沿ったバッテリモジュール110の膨張及び/又は収縮を可能とするために、バッテリモジュール110が車両100の横方向支持部102においてどのように可動に支持されているかが図示されている。
【0035】
したがって、適切な材料(例えばゴム)から成る平坦なクランプ要素313を用いることができ、当該クランプ要素は、(場合によってはほぼ)一定の力(例えばセル面に対して10barの圧力)において10%のセル長さ変化あるいはセル厚さ変化を可能とする。クランプ要素313は、例えば、10%のセル長さ変化あるいはセル厚さ変化において生じる力が力の平均値から最大で10%又は最大で20%だけ異なるように形成されることが可能である。クランプ要素313は、バッテリモジュール110に配置された押圧プレート112,114に係合式及び/又は嵌合式に結合されることが可能である。10%のセル長さ変化あるいはセル厚さ変化は、バッテリモジュール110の固定支持配置構造/浮動支持配置構造によって可能となり得る。
【0036】
セル111はフレーム311において支持されることができ、個々のフレーム311は、互いに対してガイドを形成するように積層されることが可能である。2つのフレーム311の間には、それぞれ1つのセル111を配置することが可能である。したがって、モジュール110ごとのフレーム311の数は、セル111の数よりも1つだけ少なくてよい。両押圧プレート112,114は、それぞれ始部フレーム及び終部フレームを形成することが可能である。場合によっては、個々のセル111の間にそれぞれ1つの(例えば接着剤又は緩い中間層として)中間層を配置することができ、当該中間層は、セル111の相対運動に基づくせん断応力を受容するように、及び/又はできる限り均等な圧力分配を可能とするように形成されている。このとき、せん断応力は、特に、個々のセル111の膨張が全ての空間的な方向へなされることで生じ得る。
【0037】
図3a~
図3cに示されたクランプ要素は、一般的に押圧要素313と呼ぶことができ、当該押圧要素は、押圧プレート112,114を介して1つ又は複数のセル111へ圧力をもたらすように形成されている。
【0038】
図4a~
図4eには、バッテリモジュール110あるいは個々のバッテリセル111への(少なくともほぼ)一定の圧力におけるバッテリセル110の膨張を可能とする押圧要素313の異なる形態が図示されている。
図4aには、クランプ要素313としての1つ又は複数の蛇行バネの使用が示されている。ここで、蛇行バネは、力をバッテリセル111へもたらすために、バッテリモジュール110の非膨張状態では所定の予負荷(例えば50%の延び)を有している。
【0039】
図4bには、バッテリセル111内で応力をもたらすための押圧要素313としての板バネの使用が示されている。板バネは、緩く支持された第1の押圧プレート112へ圧力を加えるために、例えば、バッテリモジュール110の(長手)支持部101と緩く支持された第1の押圧プレート112の間に配置されることが可能である。したがって、板バネは、支持部101に対して一方側で支持され、第1の押圧プレート112に対して他方側で支持される。
図4bに図示された例では、バッテリモジュール110を支持するための、特に第2の押圧プレート114を支持するための固定支持部314を車両中心401に配置することが可能である。
図4bに図示されたバッテリ配置構造は、車両100の他の半部において鏡面対称状に配置されることが可能である。板バネに代えて、又はこれに補足して、皿バネを用いることが可能である。
【0040】
図4cには、第1の押圧プレート112へ圧力を加えるために、(長手)支持部101と緩く支持された第1の押圧プレート112の間に配置された(押圧要素313としての)押圧バネ402の使用が示されている。
図4cに図示されているように、押圧バネ402は、横方向軸線に対して傾斜して対状に配置されることができるため、バッテリモジュール110の膨張時に力ベクトルが変化し、場合によっては累減する力推移が可能となる(バッテリモジュール111の膨張時に一方側へ押圧バネ402が傾動するため、バッテリモジュール110の膨張へのストローク方向における押圧バネ402の力割合が小さくなる)。したがって、押圧バネ402の角度によって、第1の押圧プレート112にもたらされる力の推移を調整することが可能である。
【0041】
図4dには、車両中心401に関して両側におけるバッテリモジュール110の配置構造が図示されている。
図4dに示されたバッテリモジュール110では、バッテリモジュール110の膨張は車両中心401へ向けてなされる。したがって、両バッテリモジュール110の緩く支持された第1の押圧プレート112は、車両中心401へ向いている。両バッテリモジュール110間には(共通の)押圧バネ402が配置されており、当該押圧バネは、ニーレバー403を介してそれぞれ両バッテリモジュール110の緩く支持された第1の押圧プレート112へ力を加えるように形成されている。特に膨張の規模が増大に伴い累減的な力推移を提供するために、バッテリモジュール110の膨張のストローク方向における力ベクトルは、膨張の規模に依存して、ニーレバー403を介して変化することが可能である。
【0042】
図4eには、バッテリモジュール110の膨張を可能とするとともに、その際、緩く支持された第1の押圧プレート112へ力を加えるために(押圧要素313としての)ねじりバネ405が用いられる一例が示されている。
図4eには、バッテリモジュール110の膨張した状態における第1の押圧プレート112の位置(破線で図示された押圧プレート112)が例示的に示されている。ねじりバネ405の脚部は、押圧プレートに固定された、押圧プレート112のカム406において支持されている。バッテリモジュール110の膨張時に変化する1つ又は複数のねじりバネ405のレバー長さを介して、バッテリモジュール110の膨張の規模が増大するときに累減的な力推移をもたらすことが可能である。
【0043】
図5にはバッテリモジュール110を緊締するための例示的な一方法のフローチャートが示されており、バッテリモジュール110は、1つ又は複数(例えば10以上又は50以上)のバッテリセル111を含んでいる。
【0044】
方法500は、横方向軸線に沿った1つ又は複数のバッテリセル111の空間的な拡張の変化により2つの押圧プレート112,114間の間隔が間隔範囲内で変化可能であるように、バッテリモジュール110の横方向軸線に沿って1つ又は複数のバッテリセル111を互いに並んで2つの押圧プレート112,114間に配置すること501を含む。1つ又は複数のバッテリセル111の拡張は、(充電過程における)1つ又は複数のバッテリセルの膨張によって増大されることができ、及び/又は(放電過程における)1つ又は複数のバッテリセル111の収縮によって低減されることが可能である。間隔範囲は、1つ又は複数のバッテリセル111の(放電状態における)最小拡張と(充電状態における)最大拡張の間で延在し得る。
【0045】
方法500は、2つの押圧プレート112,114によって、あるいは2つの押圧プレート112,114を介して、間隔範囲全体内で1つ又は複数のバッテリセル111へ押圧力をもたらすこと502を更に含む。したがって、間隔範囲全体にわたって、1つ又は複数のバッテリセル111へ(場合によっては本質的に一定の)圧力をもたらすことが可能である。
【0046】
本明細書において記載する措置により、個々のバッテリセル111の調整可能な圧力特性あるいは応力特性によるバッテリモジュール110の膨張を可能とすることができる。したがって、バッテリモジュール110の性能を向上させることが可能である。
【0047】
本発明は、示された実施例に限定されているものではない。特に、明細書及び図面は、提案される方法、装置及びシステムの原理を例示的にのみ説明するものとなっていることに留意すべきである。
【国際調査報告】