(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】逆シールを有する足回りシステム用のトラックローラ、および該トラックローラ用のローラリム
(51)【国際特許分類】
B62D 55/15 20060101AFI20240312BHJP
B62D 55/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
B62D55/15
B62D55/14 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558271
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 US2022020846
(87)【国際公開番号】W WO2022203943
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391020193
【氏名又は名称】キャタピラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スアンノ、ジェンナロ
(72)【発明者】
【氏名】チンクアンタ、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ノッツァ、グラツィアーノ
(57)【要約】
足回りシステム(14)用のトラックローラ(30)は、ローラ軸を画定し、第一の軸方向端(38)に形成された第一のシールボア(40)および第二の軸方向端(42)に形成された第二のシールボア(44)を含む、ローラリム(32)を含む。ローラシャフト(46)は、第一のシールボア(40)および第二のシールボア(44)を通って延在し、連続した円筒形外面を有する直線シャフトを含み得る。第一のシール組立品(58)は、第一のシールボア(40)内に締まり嵌めされた第一の外側シールキャリア(60)を含み、第二のシール組立品(66)は、第二のシールボア(44)内に締まり嵌めされた第二の外側シールキャリア(68)を含む。第一のシール組立品(58)および第二のシール組立品(66)は、それぞれ、第一の面シール(64)および第二の面シール(72)を含み、各々が、外側シールリング(74、76)および外側シール要素(78、80)と、内側シールリング(82、84)および内側シール要素(86、88)と、を含み、各外側シール要素(78、80)は、それぞれの外側シールリング(74、76)の半径方向内側にあり、半径方向圧縮で圧迫されて、流体シールを、それぞれの外側シールキャリア(60、68)により形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面係合軌道システム(14)用のトラックローラ(30、130、230)であって、
ローラ軸を画定し、その中に形成された第一のシールボア(40、240)を有する第一の軸方向端(38)と、その中に形成された第二のシールボア(44)を有する第二の軸方向端(42)と、を含む、ローラリム(32、132、232)と、
前記第一のシールボア(40、240)および前記第二のシールボア(44)を通って延在するローラシャフト(46、146、246)と、
前記第一のシールボア(40、240)内にあり、前記ローラシャフト(46、146、246)の周りで前記ローラリム(32、132、232)とともに回転するように固定された第一の外側シールキャリア(60)と、前記ローラシャフト(46、146、246)に固定された第一の内側シールキャリア(62)と、第一の面シール(64、164)と、を含む、第一のシール組立品(58、158)と、
前記第二のシールボア(44)内にあり、前記ローラシャフト(46、146、246)の周りで前記ローラリム(32、132、232)とともに回転するように固定された第二の外側シールキャリア(68)と、前記ローラシャフト(46、146、246)に固定された第二の内側シールキャリア(70)と、第二の面シール(72、172)と、を含む、第二のシール組立品(66、166、266)と、を含み、
前記第一の面シール(64、164)および前記第二の面シール(72、172)が各々、前記それぞれの外側シールキャリア(60、68)内に支持される外側シールリング(74、76)および外側シール要素(78、80)、ならびに前記それぞれの内側シールキャリア(62、70)内に支持される内側シールリング(82、84、182、184)および内側シール要素(86、88、186、188)を含み、
各外側シール要素(78、80)は、前記それぞれの外側シールリング(74、76)の半径方向内側であり、半径方向圧縮で圧迫されて、流体シールを、前記それぞれの外側シールキャリア(60、68)により形成する、トラックローラ(30、130、230)。
【請求項2】
前記第一の外側シールキャリア(60)および前記第二の外側シールキャリア(68)は、それぞれ、前記第一のシールボア(40、240)および前記第二のシールボア(44)内の前記ローラリム(32、132、232)と締まり嵌めされ、
前記ローラシャフト(46、146、246)は、前記第一のシール組立品(58、158)と前記第二のシール組立品(66、166、266)との間で外形が連続した外側円筒面(49)を含む、請求項1に記載のトラックローラ(30、130、230)。
【請求項3】
各内側シール要素(86、88、188)は、前記それぞれの内側シールリング(82、84)の半径方向内側にあり、半径方向圧縮で圧迫されて、シールを、前記それぞれの内側シールキャリア(62、70)により形成する、請求項1または2に記載のトラックローラ(30、230)。
【請求項4】
各内側シール要素(186、188)は、前記それぞれの内側シールリング(182、184)の半径方向外側にあり、半径方向圧縮で圧迫されて、流体シールを、前記それぞれの内側シールキャリア(62、70)により形成する、請求項1または2に記載のトラックローラ(130)。
【請求項5】
前記ローラリム(32、232)は、前記ローラシャフト(46、246)の周りに円周方向に延在するオイル空洞(102、202)、前記オイル空洞(102、202)から前記第一のシールボア(40、240)まで延在する第一のオイル通路(104、304)、および前記オイル空洞(102、202)から前記第二のシールボア(44)まで延在する第二のオイル通路(106)を形成する、請求項1~3のいずれかに記載のトラックローラ(30、230)。
【請求項6】
前記第一の内側シールキャリア(62)および前記第二の内側シールキャリア(70)は、前記ローラシャフト(46、146、246)に締まり嵌めされ、
前記ローラシャフト(46、146、246)は、第一の刻み付き面(90)および第二の刻み付き面(92)を含み、前記第一の内側シールキャリア(62)および前記第二の内側シールキャリア(70)は、それぞれ、前記第一の刻み付き面(90)および前記第二の刻み付き面(92)上の前記ローラシャフト(46、146、246)に締まり嵌めされる、請求項1~5のいずれかに記載のトラックローラ(30、130、230)。
【請求項7】
前記第一の内側シールキャリア(62)の内部の前記ローラシャフト(46、146、246)に締まり嵌めされた第一のベアリング(94、294)と、前記第二の内側シールキャリア(78)の内部の前記ローラシャフト(46、146、246)に締まり嵌めされた第二のベアリング(96)と、をさらに含み、
前記第一のベアリング(94、294)は、ジャーナルスリーブ(98、298)と、前記第一のシールボア(40、240)内にあり、前記ローラリム(32、132、232)と前記第一の内側シールキャリア(62)との間に閉じ込められた突出スラストフランジ(100)と、を含む、請求項1~6のいずれかに記載のトラックローラ(30、130、230)。
【請求項8】
前記第一のベアリング(294)は、ジャーナルスリーブ(298)を含み、前記第一のシールボア(240)内にあり、前記第一の内側シールキャリアと前記ローラリム(232)との間に閉じ込められた浮動スラストワッシャ(300)をさらに含み、
前記浮動スラストワッシャ(300)は、前記ローラシャフト(246)とともに、複数のオイル通路を形成する複数の内側オイル溝(301)を含む、請求項1~7のいずれかに記載のトラックローラ。
【請求項9】
足回りシステム(14)内のトラックローラ(30、130、230)用のリム(32、132、232)であって、
第一のローラシェル軸方向端(38)と第二のローラシェル軸方向端(42)との間に延在するローラ軸を画定し、前記ローラ軸の周りに円周方向に、かつ第一のローラシェル端フランジ(52)と第二のローラシェル端フランジ(54)との間に軸方向に延在する外側踏面(50)を含む、ローラシェル(34)を含み、
前記ローラシェル(34)が、前記第一のローラシェル軸方向端(38)に形成された第一のシールボア(40、240)と、前記第二のローラシェル軸方向端(42)に形成された第二のシールボア(44)と、前記第一のシールボア(40、240)と前記第二のシールボア(44)との間に軸方向に、かつ前記ローラシェル軸(36)の周りに円周方向に延在するシャフトボア(57)と、をさらに含み、
前記ローラシェル(34)が、前記シャフトボア(57)と連通する中央に位置するオイル空洞(102、202)と、前記シャフトボア(57)に曝露され、前記オイル空洞(102、202)から前記第一のシールボア(40、240)まで軸方向に延在する第一の内側ベアリング表面(59)と、前記シャフトボア(57)に曝露され、前記オイル空洞(102、202)から前記第二のシールボア(44)まで軸方向に延在する第二の内側ベアリング表面(61)と、をさらに含み、
前記ローラシェル(34)が、第一のオイルチャネル(104、304)および第二のオイルチャネル(106)をさらに含み、各々が前記シャフトボア(57)の半径方向外側に形成され、それぞれ、前記オイル空洞(102、202)と前記第一のシールボア(40、240)および前記第二のシールボア(44)との間に軸方向に延在する、リム(32、132、232)。
【請求項10】
前記第一のオイルチャネル(104)は、前記第一の内側ベアリング表面(59)の半径方向外側に間隔を置いて配置された一組のオイル通路のうちの一つであり、前記第二のオイルチャネル(106)は、前記第二の内側ベアリング表面(61)の半径方向外側に間隔を置いて配置された一組のオイル通路のうちの一つである、請求項9に記載のリム(32、132、232)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、足回りシステム用のトラックローラに関し、より具体的には、逆シールを面シール組立品内に有するトラックローラに関する。
【背景技術】
【0002】
軌道型機械は、鉱業、建築業、林業、道路建設、埋め立て、およびその他多くの用途を含む、様々なオフハイウェイ環境下で、世界中で使用される。典型的な軌道型機械は、機械フレームの各側面に位置決めされた地面係合軌道を含む。地面係合軌道は、一つ以上のアイドラー、駆動スプロケット、およびトラックローラを含む、複数の回転可能なトラック接触要素の周りに延在する。地面係合軌道は、軌道型機械を前方に移動させるために、第一の方向に、軌道型機械を後方に移動させるために、逆方向に、かつ軌道型機械の進行方向または配向を変更するために、異なる速度で前進させられ得る。
【0003】
軌道型機械は、特定の作業用途を必要として、また、機械の大部分および複雑な部品が、一般的に、非常に堅牢かつ頑丈であるように構築されるための両方の点で、非常に重量がある傾向にある。軌道型機械が受ける動作条件はまた、非常に堅牢であり、重量のある負荷を押動し、急勾配の地形を走行し、粗い研磨性の基板材料と相互作用し得る。トラックローラは、典型的には、軌道型機械の重量の大部分を担持し、軌道型機械が移動する際に、連続的に回転する。この理由から、トラックローラは、典型的には、軌道型機械の使用方法に応じて、大きさが厳密で、反復性、および可変であり得る、様々な型の荷重に耐えるように構成される。エンジニアは、現場性能および耐用年数を最適化するために、トラックローラ用の様々な潤滑計画を開発してきた。
【0004】
一つの共通のトラックローラ設計では、金属面シールを使用して、トラックローラと支持ローラシャフトとの間で回転するものの、流体的に封止された境界面を提供する。面シールおよび関連する組立品は、長年使用されて、大きな成功を収めてきた。しかしながら、特定の用途では、既存の封止計画は、回転面シールの構成要素の互いに対する比較的高速での動作を経験し得、その結果、最終的に、性能低下または故障をもたらす。様々な封止計画に順応するための労力によっても、トラックローラの他の部品の工学技術および設計は複雑になり得る。一つの既知のトラックローラ組立品の構成は、Hasselbuschらによる米国特許第6,364,438号に記載される。Hasselbuschらの文献では、ローラ組立品は、ローラリムおよびローラシャフトを有する。リテーナは、ローラリム内のアクセス開口部に圧入される。軸方向スラストベアリングは、ローラシャフトの外側に延在するフランジとリテーナとの間に介在される。Hasselbuschらの発明は、間違いなく、様々な用途を有する一方、代替計画には改善および開発の余地が常にある。
【発明の概要】
【0005】
一つの態様では、地面係合軌道システム用のトラックローラは、ローラ軸を画定し、その中に形成された第一のシールボアを有する第一の軸方向端と、その中に形成された第二のシールボアを有する第二の軸方向端と、を含む、ローラリムを含む。トラックローラは、第一のシールボアおよび第二のシールボアを通って延在するローラシャフトをさらに含む。トラックローラは、第一のシールボア内にあり、ローラシャフトの周りでローラリムとともに回転するように固定された第一の外側シールキャリア、ローラシャフトに固定された第一の内側シールキャリア、および第一の面シールを有する、第一のシール組立品をさらに含む。トラックローラは、第二のシールボア内にあり、ローラシャフトの周りでローラリムとともに回転するように固定された第二の外側シールキャリア、ローラシャフトに固定された第二の内側シールキャリア、および第二の面シールを有する、第二のシール組立品をさらに含む。第一の面シールおよび第二の面シールは各々、それぞれの外側シールキャリア内に支持される外側シールリングおよび外側シール要素、ならびにそれぞれの内側シールキャリア内に支持される内側シールリングおよび内側シール要素を含む。各外側シール要素は、それぞれの外側シールリングの半径方向内側にあり、半径方向圧縮で圧迫されて、流体シールを、それぞれの外側シールキャリアにより形成する。
【0006】
別の態様では、地面係合軌道システム用のトラックローラは、外側踏面と、第一のシールボア、第二のシールボアおよびローラ軸を画定し、第一のシールボアと第二のシールボアとの間に延在するシャフトボアを形成する、内面と、を有する、ローラリムを含む。トラックローラは、ローラシャフトと、第一のシールボア内にあり、ローラシャフトの周りでローラリムとともに回転するように固定された外側シールキャリア、および面シールを含む、シール組立品と、をさらに含む。面シールは、外側シールキャリア内に支持される外側シールリングおよび外側シール要素、ならびに内側シールリングおよび内側シール要素を含む。外側シール要素は、外側シールリングの半径方向内側にあり、外側シールリングと外側シールキャリアとの間の半径方向圧縮で圧迫される。
【0007】
さらに別の態様では、足回りシステムトラックローラ用のリムは、第一のローラシェル軸方向端と第二のローラシェル軸方向端との間を延在するローラ軸を画定し、ローラ軸の円周方向の周りで、第一のローラシェル端フランジと第二のローラシェル端フランジとの間に軸方向に延在する外側踏面を有する、ローラシェルを含む。ローラシェルは、第一のローラシェル軸方向端に形成された第一のシールボアと、第二のローラシェル軸方向端に形成された第二のシールボアと、第一のシールボアと第二のシールボアとの間に軸方向に、ローラシェル軸の円周方向の周りに延在するシャフトボアと、をさらに含む。ローラシェルは、シャフトボアと連通する中央に位置するオイル空洞と、シャフトボアに曝露され、オイル空洞から第一のシールボアまで軸方向に延在する第一の内側ベアリング表面と、シャフトボアに曝露され、オイル空洞から第二のシールボアまで軸方向に延在する第二の内側ベアリング表面と、をさらに含む。ローラシェルは、第一のオイルチャネルおよび第二のオイルチャネルをさらに含み、各々がシャフトボアの半径方向外側に形成され、それぞれ、オイル空洞と第一のシールボアおよび第二のシールボアとの間に軸方向に延在する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る、機械の側面図である。
【
図2】
図2は、一つの実施形態に係る、トラックローラの部分断面正面図である。
【
図4】
図4は、別の実施形態に係る、トラックローラの断面図である。
【
図5】
図5は、さらに別の実施形態に係る、トラックローラの一部分の断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のトラックローラでの使用に好適な浮動ワッシャの図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、一つの実施形態に係る、軌道型機械10が示されている。機械10は、軌道型トラクタとの関連で示されているが、他の実施形態では、機械10は、軌道型ローダ、採掘機、ショベルの性質を持つ採掘機械、ハーフトラック、またはさらに別のものであってもよい。機械10は、フレーム12を含み、典型的には、フレーム12に結合された油圧作動器具システム(図示せず)を有する。機械10はまた、足回りシステムまたは地面係合軌道システム14を含む。該システム14は、トラックローラフレーム16と、駆動スプロケット18と、前方アイドラー20と、後方アイドラー22と、複数のトラックローラ30と、地面係合軌道24と、を含む。軌道24は、典型的には二つの平行なチェーンで、端と端を接した配置でともに結合され、複数のトラックシュー28に取り付けられた、複数の軌道リンク26を含む。該軌道24は、典型的には、機械10の一方の側に位置決めされた一つの軌道であり、実質的に同一の軌道が、機械10の反対側に位置決めされる。システム14は、いわゆる「高駆動」構成で示されているが、代わりに、楕円形軌道構成、またはさらに別のものであり得る。以下の説明からさらに明らかなように、トラックローラ30は、回転構成要素間の簡略化されかつ効率的な構造および封止で一意に構成され得る。
【0010】
ここで
図2および
図3も参照すると、トラックローラ30のうちの一つがより詳細に示される。以下、本明細書で時として単数形で言及される各トラックローラ30は、ローラ軸36を画定するローラシェル34を有するローラリム32を含む。ローラリム32およびローラシェル34は、本明細書で互換的に言及される。ローラ「リム」が、ローラシェル、および押し込み式またはそうでなければ締まり嵌めされた構成要素などの追加的な取り付け構成要素を含んでもよい一方、ローラ「シェル」が、一体式シェルのみを指すことは理解されるべきである。ローラリム34は、その中に形成された第一のシールボア40を有する第一のローラシェル軸方向端38と、その中に形成された第二のシールボア44を有する第二のローラシェル軸方向端42と、を含む。ローラシェル34は、ローラ軸36の円周方向の周りに、第一のローラシェル端フランジ52と第二のローラシェル端フランジ54との間に軸方向に延在する、外側踏面50を含む。ローラ軸36を画定すると理解され得るシャフトボア57は、第一のシールボア40と第二のシールボア44との間に軸方向に延在する。ローラシャフト46は、第一のシールボア40および第二のシールボア44を通って、シャフトボア57を通って延在する。一つの実装例では、ローラシェル34は、溶接接合部56での摩擦溶接によってなどで取り付けられた二つのシェル部分によって形成される。第一のシールボア40、第二のシールボア44、およびシャフトボア57の各々は、ローラシェル34の内面55によって画定されることが理解され得る。ローラシェル34は、シャフトボア57と連通する中央に位置するオイル空洞102、シャフトボア57に曝露され、オイル空洞102から第一のシールボア40まで軸方向に延在する第一の内側ベアリング表面59、およびシャフトボア57に曝露され、オイル空洞102から第二のシールボア44まで軸方向に延在する第二の内側ベアリング表面61をさらに形成する。ローラシャフト46は、その一方の端上に平坦部分48、典型的には、その反対側の端上に別の平坦部分(番号付けなし)を含み得、それによって、ローラシャフト46は、締結カラーによってなどでトラックローラフレーム16に装着され得る。ボルトボア(図示せず)は、ローラシャフト46を通って延在し得、対象の平坦部分内で開放し得る。ローラシャフト46は、第一のシールボア40と第二のシールボア44との間で外形が連続した円筒形外面49を含む、直線シャフトである。トラックローラ30は、第一のシール組立品58および第二のシール組立品66をさらに含み、外側円筒面49も、第一のシール組立品58と第二のシール組立品66との間で外形が連続している。第一のシール組立品58および第二のシール組立品66の各々は、金属面シール組立品として理解され得る。
【0011】
第一のシール組立品58は、第一のシールボア40内にあり、ローラシャフト46の周りでローラリム32とともに回転するように固定された第一の外側シールキャリア60を含む。第一のシール組立品58はまた、ローラシャフト46に固定された第一の内側シールキャリア62と、第一の面シール64(金属面シール)と、を含む。第二のシール組立品66は、第二のシールボア44内にあり、ローラシャフト46の周りでローラリム32とともに回転するように固定された第二の外側シールキャリア68と、ローラシャフト46に固定された第二の内側シールキャリア70と、第二の面シール72(金属面シール)と、を含む。ある実施形態では、第一の内側シールキャリア62および第二の内側シールキャリア70は、ローラシャフト46に締まり嵌めされる。ローラシャフト46は、第一の刻み付き面90および第二の刻み付き面92を含み得、各々がローラ軸36の円周方向の周りに延在し、第一の内側シールキャリア62および第二の内側シールキャリア70は、それぞれ、第一の刻み付き面90および第二の刻み付き面92上で、ローラシャフト46に締まり嵌めされ得る。第一の外側シールキャリア60および第二の外側シールキャリア68は、それぞれ、第一のシールボア40および第二のシールボア44内のローラリム32と締まり嵌めされ得る。利用可能な比較的短い軸方向の締まり嵌めの長さにより、刻み付き面90および92を使用して、締まり嵌めの強度を改善することができる。代替的な実施形態では、ローラシャフト46上のスナップリング(図示せず)は、第一の内側シールキャリア62および第二の内側シールキャリア70をローラシャフト46に固定するために、締まり嵌めと併せて、または締まり嵌めの代わりに使用され得る。この性質のスナップリングは、典型的には、それぞれ、第一の内側シールキャリア62および第二の内側シールキャリア70の軸方向外側に位置決めされ、その結果、第一の内側シールキャリア62および第二の内側シールキャリア70は各々、ローラシャフト56上の溝内に着座したスナップリングとローラシェル34との間に閉じ込められる。
【0012】
第一の面シール64および第二の面シール72は各々、金属面シールを含み得、互いに対して回転可能な金属構成要素間に封止された境界面を形成する。第一の面シール64および第二の面シール72は各々、それぞれ、外側シールリング74および76、ならびにそれぞれの外側シールキャリア60および68内にそれぞれ支持される、外側シール要素78および80を含む。第一の面シール64および第二の面シール72の各々は、それぞれ、内側シールリング82および84、ならびにそれぞれの内側シールキャリア62および70内にそれぞれ支持される、内側シール要素86および88をさらに含む。各外側シール要素78および80は、それぞれの外側シールリング74および76の半径方向内側にあり、半径方向圧縮で圧迫されて、流体シールを、それぞれの外側シールキャリア60および68により形成する。図に見られるように、外側シール要素78および80は、それぞれの外側シールキャリア60および68の空隙内に位置決めされ、外側シールキャリア60および68の締まり嵌めされた据え付け、ならびに外側シールキャリア60および68の傾斜面および/または外側シールリング74および76の傾斜面との相互作用によって、軸方向内側および半径方向内側に圧縮される。本明細書で使用する用語「軸方向内側」および「軸方向外側」は、それぞれ、ローラシャフト46内のローラ軸36の線分の中心点に向かって、およびそこから離れて、ローラ軸36に沿った方向を指す。用語「半径方向外側」および「半径方向内側」は、それぞれ、ローラ軸36から離れて、それに向かうことを意味する。したがって、第一の外側シールキャリア60は、例えば、第一の内側シールキャリア62の軸方向外側である。それぞれのシールリング74、76、82、および84の各々は、形態が環状であり、当接する封止面(番号付けなし)を有するが、典型的には、潤滑オイルの薄い層によって分離された金属シールリングを含み得る。それぞれのシール要素78、80、86、および88の各々は、円形、楕円形、多角形、または他の断面を有する形態で環状の非金属シール要素を含み得、当該技術分野では、一般的に、円環状と称される。
【0013】
トラックローラ30は、第一の内側シールキャリア62の内部または軸方向内側のローラシャフト46に締まり嵌めされた第一のベアリング94と、第二の内側シールキャリア70の内部または軸方向内側のローラシャフト46に締まり嵌めされた第二のベアリング96と、をさらに含む。図示した実施形態では、第一のベアリング94は、ジャーナルスリーブ98と、ジャーナルスリーブ98に取り付けられ、それと一体であり、第一のシールボア40内に位置決めされた突出スラストフランジ100と、を含む。ジャーナルスリーブ98は、ローラシェル34を回転可能にジャーナル運動する。スラストフランジ100は、ローラリム32と第一の内側シールキャリア62との間に閉じ込められ、ローラリム32/ローラシェル34と第一の内側シールキャリア62との間のスラスト負荷に反応する。第二のベアリング96は、ジャーナルスリーブおよび突出スラストフランジと類似的に構成され得る。
【0014】
上述のように、ローラリム32/ローラシェル34は、その中に形成された中央に位置するオイル空洞102を有する。オイル空洞102は、ローラシャフト46の円周方向の周りに延在する。ローラリム32はまた、オイル空洞102から第一のシールボア40まで延在する第一のオイルチャネル104、およびオイル空洞102から第二のシールボア44まで延在する第二のオイルチャネル106を形成する。図示した実施形態では、第一のオイルチャネル104および第二のオイルチャネル106は、オイル通路またはクロスホールの形態を有する。第一のオイルチャネル104および第二のオイルチャネル106は、それぞれ、第一の内側ベアリング表面59および第二の内側ベアリング表面61の半径方向外側に間隔を置いて配置される。従って、オイルチャネル104および106は、それぞれ、第一のベアリング94および第二のベアリング96の半径方向外側に間隔を置いて配置されると理解される。各オイルチャネル104は、ローラ軸36の円周方向の周りに互いに間隔を置いて配置された一組のオイルチャネルのうちの一つであり得る。各オイルチャネル106は、同様に、ローラ軸36の円周方向の周りに間隔を置いて配置された一組のオイルチャネルのうちの一つであり得る。また、
図3には、第二の軸方向端42に形成されたオイル充填開口部108が示される。オイル充填開口部108は、第二のシール組立品66の領域内へのオイルの供給を提供し得、その後、そのオイルは、オイルチャネル106を通過し、オイル空洞102内に入ることができる。その後、オイル空洞102からのオイルは、オイルチャネル104を通って第一のシール組立品58まで流れ得る。また、
図3には、ローラシャフト46に形成された別のオイル充填開口部または空洞110が示される。オイル充填開口部110により、オイルの供給は、ローラシャフト46を通ってオイル空洞102まで搬送され得る。一部の実施形態では、オイル充填開口部108のみを使用してもよく、他の実施形態では、オイル充填開口部110のみを使用してもよく、さらに他の実施形態では、両方を使用し得る。本明細書のオイル充填開口部は、通常、トラックローラ30が稼働中の場合に塞がれる。
【0015】
図4を参照すると、別の実施形態に係る、トラックローラ130が示される。トラックローラ130では、ローラシャフト146は、ローラリム132を通って延在する。第一のシール組立品158および第二のシール組立品166は、前述の実施形態に関連して記載したものに類似の目的のために提供される。シール組立品158および166の各々は、ローラリム132と締まり嵌めされた外側シールキャリア(番号付けなし)と、ローラシャフト146に固定された内側シールキャリア(番号付けなし)と、ローラシャフト146に締まり嵌めされたベアリング(番号付けなし)と、を含む。
図3の実施形態では、各内側シール要素86および88が、それぞれの内側シールリング82および84の半径方向内側である一方、
図4の実施形態では、第一の内側シール要素186および第二の内側要素188は、それぞれ、第一の内側シールリング182および第二の内側シールリング184の半径方向外側である。第一のシール組立品158および第二のシール組立品166の各々は、それぞれ、面シール164および172を形成すると理解されるが、シールリングおよびシール要素の別個の組立品は、互いに対して反転される。
図3に関連して記載されるローラシャフトへのベアリングの締まり嵌めにより、
図4および本明細書で想定される他の実施形態の場合でも理解されるように、他の特定のトラックローラで使用されるような、可能性のあるオイル供給経路は排除される。記載した構成を有する外側シール要素およびシールリングが存在しない場合、面シールまでのオイル流路は、達成に支障が出る可能性がある。
【0016】
図5を参照すると、さらに別の実施形態に係る、トラックローラ230が示される。トラックローラ230は、シール組立品266と、ローラリム232と、ローラシャフト246の周りに、ローラリム232内に少なくとも部分的に位置決めされる、前述の実施形態のいずれかのシール組立品と一般的に類似して構成される、シールボア240内にある、シール組立品266と、を含む。ローラリム232は、その中に形成された中央に位置するオイル空洞202、およびローラシャフト246に締まり嵌めされたベアリング294のジャーナルスリーブ298の半径方向外側に位置決めされた溝の性質のオイルチャネル304を有する。溝304は、ローラ軸の円周方向の周りに間隔を置いて配置された複数の溝のうちの一つであり得、オイル空洞202からシール組立品266までのオイル供給経路を提供する。溝304が、ローラリム232に形成された軸方向に延在し、半径方向に延在する溝である一方、そのうちの一つは、
図5の図で視認可能であり、305とラベル付けされ、溝304から延在し得る。浮動スラストワッシャ300は、リム232に形成されたシールボア240内にあり得る。
図6も参照すると、浮動スラストワッシャ300は、ローラシャフト246とともに、複数のオイル通路を形成する複数の内側溝301を含む。
【産業上の利用可能性】
【0017】
一般的に、図面を参照する上で、特に
図2および
図3の実施形態に戻ると、ローラシャフト46は、動作中、トラックローラフレーム16への装着によって、静止状態に保持され得る。ローラシェル32は、トラック24が前方アイドラー20、後方アイドラー22、および駆動スプロケット18の周りに前進されるにつれて、トラック24に接触して回転し得る。外側シールキャリア60および68が、ローラリム32とともに回転する間、内側シールキャリア62および70は、静止状態のままであり、接合する構成要素間の回転が、面シール64および面シール72で発生する。オイルは、オイル空洞102内に存在し得、面シール64および72へのオイルの供給を維持するために、オイルチャネル104によって、軸方向外側に分配され得る。
【0018】
本明細書は、例示目的のみとし、本開示の範囲をいかなる形でも狭めるように解釈されるべきではない。従って、当業者は、本開示の完全および公正な範囲および趣旨から逸脱することなく、本開示の実施形態にさまざまな修正を行うことができることを理解するであろう。その他の態様、特徴および利点は、添付図面および添付の特許請求の範囲を検討の上で明らかになるであろう。本明細書で使用する冠詞「a」および「an」は、一つ以上の品目を含むことが意図されており、「一つ以上(one or more)」と交換可能に使用され得る。一つの項目のみが意図される場合、用語「一つの」または類似の言い回しが使用される。また、本明細書で使用する「有する(has)」、「有する(have)」、「~を有する~(having)」またはこれに類する用語は、非限定な用語であることが意図される。さらに、語句「~に基づく」は、別段の明示がない限り、「少なくとも部分的に~に基づく」を意味することを意図する。
【国際調査報告】