IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッドの特許一覧

特表2024-512548近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるレンズ組及び関連方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるレンズ組及び関連方法
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/04 20060101AFI20240312BHJP
   G02C 11/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C11/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023558273
(86)(22)【出願日】2022-04-22
(85)【翻訳文提出日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 GB2022051024
(87)【国際公開番号】W WO2022229608
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】63/181,249
(32)【優先日】2021-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521013611
【氏名又は名称】クーパーヴィジョン インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム バスカール
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン ポール
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー アーサー
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー マーティン
【テーマコード(参考)】
2H006
【Fターム(参考)】
2H006BB00
2H006BB01
2H006BB03
2H006BB07
2H006BC03
2H006BD01
2H006CA00
(57)【要約】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられる1組のコンタクトレンズ(200)、かかるコンタクトレンズを製造する方法及び使用する方法。各レンズ(201a,201b)は、オプティカルゾーン(202a,202b)及びレンズ(201a,201b)の回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを備えた取り囲み周辺ゾーン(204a,204b)を有する。オプティカルゾーン(202a,202b)は、ベース度数を提供する曲率を備えた中央領域(205a,205b)を有する。環状領域(203a,203b)が中央領域(205a,205b)を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーン(207a,207b)を有し、トリートメントゾーンは、中央領域(205a,205b)だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、中央領域(205a,205b)及びトリートメントゾーン(207a,207b)を通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を備えている。トリートメントゾーン(207a,207b)は、周辺ゾーン厚さプロフィールに対し、1組のコンタクトレンズ(200)の各レンズ(201a,201b)の光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられる1組のコンタクトレンズであって、前記コンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズは、オプティカルゾーンと、前記オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、各コンタクトレンズの前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有し、各コンタクトレンズの前記オプティカルゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有し、
前記トリートメントゾーンは、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記コンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズの前記光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる、1組のコンタクトレンズ。
【請求項2】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、各コンタクトレンズの前記環状領域の連続部分上に設けられ、前記トリートメントゾーンは、各コンタクトレンズの前記環状領域の面積の50%未満を占める、請求項1記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項3】
複数の非結合トリートメントゾーンが各コンタクトレンズの前記環状領域にまたがって位置している、請求項1又は2記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを50%以上減少させる強力なコントラスト減少領域を有する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項5】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、加入度数をもたらす曲率変化を示している、請求項1~4のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項6】
各コンタクトレンズにおいて、前記加入度数のうちの少なくとも何割かは、中心が前記第1の光軸から第1の距離を置いたところにある曲率中心上に位置する曲率によって提供される、請求項5記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項7】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、非対称の度数プロフィールを有する、請求項5又は6記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項8】
各コンタクトレンズに関し、前記加入度数をもたらす前記曲率は、前記コンタクトレンズの前方表面の曲率であるのがよい、請求項5~7のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項9】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンにより提供される前記加入度数は、+0.5~+10.0Dである、請求項5~8のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項10】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を含むのがよい、請求項1~9のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項11】
前記特徴は、前記環状領域の前方表面を含み又は該前方表面上に設けられる、請求項10記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項12】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、実質的に円形の外周を有する、請求項1~11のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項13】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、実質的に楕円形の外周を有する、請求項1~12のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項14】
各コンタクトレンズの前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、直径が2~7mmである、請求項1~13のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項15】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、前記中央領域の周囲から半径方向外側に0.5mm~1.5mmだけ延びている、請求項1~14のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項16】
各コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、若しくはシリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成る、請求項1~15のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項17】
各コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて形成される、請求項1~16のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項18】
各周辺ゾーンの前記漸変厚さプロフィールは、プリズムバラストである、請求項1~17のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズ。
【請求項19】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるキットであって、前記キットは、
請求項1~18のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズと、
前記1組のコンタクトレンズをユーザに供給する包装材と、
前記コンタクトレンズを装用するための手順を指示した取扱説明書とを含む、キット。
【請求項20】
前記取扱説明書は、前記包装材又は前記コンタクトレンズ上に設けられている、請求項19記載のキット。
【請求項21】
請求項1~18のうちいずれか一に記載の第2の組をなすコンタクトレンズをさらに含み、前記周辺ゾーンの厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに第1の角度で回転的に位置決めされたトリートメントゾーンを有するコンタクトレンズの第1の組中の各コンタクトレンズに関し、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに大きさが等しくかつ向きが逆の角度で位置決めされたトリートメントゾーンを有する前記コンタクトレンズの第2の組の対応のコンタクトレンズが設けられている、請求項20又は21記載のキット。
【請求項22】
1組のコンタクトレンズを製造する方法であって、前記方法は、
(a)第1のコンタクトレンズを形成するステップを含み、前記コンタクトレンズは、オプティカルゾーン及び前記オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、各コンタクトレンズの前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有し、各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有し、
(b)前記ステップ(a)を繰り返し実施して第2のコンタクトレンズを形成するステップを含み、
前記トリートメントゾーンは、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記第1のコンタクトレンズ及び前記第2のコンタクトレンズの前記光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされている、方法。
【請求項23】
前記ステップ(a)を繰り返し実施して1組のコンタクトレンズを形成するステップをさらに含み、コントラスト減少変化を示す前記環状領域の前記トリートメントゾーンは、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記組の前記コンタクトレンズの各々の前記光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされている、請求項22記載の方法。
【請求項24】
近視の進行を軽減する方法であって、
請求項1~20のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズを、様々な近見距離について調節が可能な近視の人に提供するステップを含み、前記コンタクトレンズは、前記コンタクトレンズを装用する順序を指示した取扱説明書を備えている、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示(本発明)は、近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられる1組のコンタクトレンズに関する。本開示はまた、かかるレンズを製造する方法及びかかるレンズを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近視(近眼)は、子供や大人を含むかなり多くの人々に影響を及ぼしている。近視眼は、遠くの物体からの到来光を網膜の前に位置する場所に合焦させる。その結果、光は、網膜の前に位置する平面に向かって収束し、そして網膜に向かって発散して網膜への到達時に焦点が合わなくなる。近視を矯正するための従来型レンズ(例えば、眼鏡レンズ又はコンタクトレンズ)は、遠くの物体からの到来光の収束具合を減少させ(コンタクトレンズに関して)、又は発散を生じさせ(眼鏡レンズに関して)、その後に、到来光は、眼に達し、その結果、焦点の位置は、網膜上にずらされるようになる。
【0003】
数十年前、子供又は若い人の近視の進行を遅らせ又は抑えるには、矯正不足にし、すなわち、焦点を網膜に近づけるが、完全には網膜上に移動させないようにすることが示唆された。しかしながら、このアプローチの必然的な結果として、近視を完全に矯正するレンズを用いて得られる遠見視力と比較して、遠見視力が低下する。さらに、矯正不足が増悪中の近視を制御する上で効果的であるということは、現在では疑わしいと考えられている。より最近のアプローチは、遠見視力の完全矯正を提供する領域と、矯正不足にし又は近視によるデフォーカスを意図的に引き起こす領域との両方を有するレンズを提供することである。レンズの完全矯正領域を通過した光と比較して、ある特定の領域における光の散乱を増大させるレンズもまた提供される場合がある。これらのアプローチは、子供又は若い人の近視の増悪又は進行を抑え又は遅らせることができ、しかも良好な遠視野を提供できることが示唆されてきた。
【0004】
デフォーカスをもたらす領域を有するレンズの場合、遠見視力の完全矯正をもたらす領域は、ベース度数(ベースパワー)領域と通称され、矯正不足をもたらし又は近視によるデフォーカスを意図的に引き起こす領域は、加入度数領域又は近視デフォーカス領域と通称される(ジオプトリーで表される度数は、遠見視力領域の度数よりも幾分プラス(+)又は幾分マイナス(-)だからである)。加入度数領域の表面(典型的には、前方表面(anterior surface))は、遠用度数領域の曲率半径よりも小さな曲率半径を有し、したがって、眼に対して幾分プラスの又は幾分マイナスの度数を提供する。加入度数領域は、到来する平行光線(すなわち、遠くからの光)を眼内で網膜の前(すなわち、レンズの近くに位置する)に合焦させる設計されており、他方、遠用度数領域は、光を合焦させて網膜のところ(すなわち、レンズから遠くに位置したところ)に像を結ぶことができるよう設計されている。
【0005】
ある特定の領域で光の散乱を増大させるレンズの場合、散乱を増大させる特徴がレンズ表面に組み込まれる場合があり、又は、レンズを形成するために用いられる材料中に組み込まれる場合がある。例えば、散乱要素がレンズ中に焼き込まれる場合がある。
【0006】
近視の進行を軽減するコンタクトレンズの既知の一形式は、MISIGHT(クーパービジョン・インコーポレーテッド(CooperVision, Inc.))の名称で市販されている二重焦点コンタクトレンズである。この二重焦点レンズは、二重焦点レンズが、調節力のある人が遠くの物体と近くの物体の両方を見るために距離補正(すなわち、ベース度数)を用いることができるようにするある特定の光学寸法を備えているという点で、老視の視力を向上させるよう構成されたバイフォーカル又は多焦点コンタクトレンズとは異なっている。加入度数を有する二重焦点レンズのトリートメントゾーンはまた、遠見距離と近見距離の両方のところに近視的にデフォーカスされた像をもたらす。
【0007】
これらのレンズは、近視の増悪又は進行を抑え又は遅らせる上で有益であることが判明したが、環状加入度数領域は、望ましくない視覚的副作用を生じさせる場合がある。網膜の前で環状加入度数領域により合焦される光は、焦点から発散して、網膜のところにデフォーカス環状部を形成する。したがって、これらレンズの装用者は、特に小さな光る物体、例えば、街路灯や車のヘッドライトに対して網膜上に作られる像を包囲したリング又は「ハロ」を見る場合がある。また、理論上、近くの物体に焦点を合わせるために眼の生まれつきの調節力(すなわち、焦点距離を変える目の生まれつきの能力)を用いるのではなく、装用者は、近くの物体に焦点を合わせるための環状加入度数領域に起因して生じる網膜の前の追加の焦点を利用する場合があり、換言すると、装用者は、老視矯正レンズが用いられているのと同一のやり方でレンズを偶発的に用いる場合があり、これは、若い被験者にとって望ましくない。
【0008】
近視の治療の際に使用できる別のレンズが開発されたが、かかるレンズは、上述のMISIGHT (クーパービジョン・インコーポレーテッド)レンズ及び他の類似のレンズ内の合焦された遠方像の周囲に観察されるハロをなくすよう設計されている。これらレンズでは、環状領域は、網膜の前に単一の軸上像が生じないよう構成されており、それにより、かかる像が、眼が近くの標的を対応する必要を回避するために使用されないようにする。これとは異なり、遠くの点光源は、環状領域によって近くの加入度数焦点面のところにリング状の焦線に結像され、それにより遠方焦点面のところで網膜上の周囲の「ハロ」効果を生じさせないで、小さなスポットサイズの光を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
眼は、近視によるデフォーカスやレンズ内に組み込まれた光散乱特徴を補償するよう経時的に順応する場合があるという認識が得られた。これにより、近視の進行を遅くすることを目的とするレンズの有効性が低下する場合がある。本開示は、このことを解決しようとしており、しかも近視の悪化を抑え又は遅くする若い被検者において使用可能な1組のレンズを提供することを目的としている。
【0010】
本発明は、第1の観点によれば、近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられる1組のコンタクトレンズを提供し、コンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズは、オプティカルゾーンと、オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。各コンタクトレンズの周辺ゾーンは、コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、中央領域を有する。中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有する。トリートメントゾーンは、周辺ゾーン厚さプロフィールに対してコンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズの光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。
【0011】
本発明は、第2の観点によれば、近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるキットを提供する。キットは、本発明の第1の観点の1組のコンタクトレンズと、1組のコンタクトレンズをユーザに供給する包装材と、コンタクトレンズを装用するための手順を指示した取扱説明書とを含む。
【0012】
本発明は、第3の観点によれば、1組のコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、第1のコンタクトレンズを形成するステップを含み、コンタクトレンズは、オプティカルゾーン及びオプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。各コンタクトレンズの周辺ゾーンは、コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、中央領域を有し、中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有する。本方法は、上述のステップを繰り返し実施して第2のコンタクトレンズを形成するステップを含む。トリートメントゾーンは、周辺ゾーン厚さプロフィールに対して第1のコンタクトレンズ及び第2のコンタクトレンズの光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。
【0013】
本発明は、第4の観点によれば、近視の進行を軽減する方法を提供する。本方法は、本発明の第1の観点の1組のコンタクトレンズを、様々な近見距離について調節が可能な近視の人に提供するステップを含む。
【0014】
当然のことながら、本発明の1つの観点と関連して説明した特徴を本発明の他の観点に組み込むことができるということは理解されよう。例えば、本発明の方法は、本発明の装置と関連して説明した特徴を含むことができ、又はその逆の関係が成り立つ。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】加入度数領域が設けられていない収差なしのレンズ及び環状加入度数領域を含むレンズに関し、空間周波数につれて生じる変調伝達関数(MTF)の減少を示す概略グラフ図である。
図2】四半部に分割された眼の視野を示す略図である。
図3(a)-(c)】レンズとレンズ装用者の瞳孔との視差の効果を示す略図である。
図4】本発明の一実施形態としての2枚1組のレンズの概略平面図であり、各レンズが環状領域の面積のほぼ50%を占めるトリートメントゾーンを有している状態を示す図である。
図5図4のレンズのうちの一方の断面図である。
図6】本発明の一実施形態としての7枚1組のレンズの概略平面図であり、各レンズが環状領域周りにほぼ50゜にわたるトリートメントゾーンを有する状態を示す図である。
図7】本発明の一実施形態としての2枚1組のレンズの概略平面図であり、各レンズが2つのトリートメントゾーンを有し、各トリートメントゾーンがレンズの1つの四半部に及び、各トリートメントゾーンが加入度数をもたらす曲率を有している状態を示す図である。
図8図7に示すレンズ組のうちの第1のレンズのオプティカルゾーンのA‐A線矢視概略断面図である。
図9図7に示すレンズ組のうちの第1のレンズのオプティカルゾーンのB‐B線矢視概略断面図である。
図10】本発明の一実施形態としての4枚1組のレンズの概略平面図であり、各レンズがレンズの四半部一つ分にわたるトリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンが非対称度数プロフィールで加入度数を提供する曲率を有している状態を示す図である。
図11図10に示すレンズ組中の4枚のレンズの環状領域についてθの関数としての非対称度数プロフィールを示すグラフ図(a)~(d)である。
図12】本発明の一実施形態としての4枚1組のレンズの概略平面図であり、各レンズがレンズの1つの四半部にわたるトリートメントゾーンを有し、各トリートメントゾーンがこの領域を通過した光の散乱を増大させる特徴を有している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、第1の観点によれば、近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられる1組のコンタクトレンズを提供し、コンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズは、オプティカルゾーンと、オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。各コンタクトレンズの周辺ゾーンは、コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、中央領域を有する。中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有する。トリートメントゾーンは、周辺ゾーン厚さプロフィールに対してコンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズの光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。
【0017】
本明細書で用いられるコンタクトレンズという用語は、眼の前方表面上に配置できるオフサルミックレンズを意味している。理解されるように、かかるコンタクトレンズは、臨床的に許容可能な眼球上運動をもたらし、人の片眼又は両眼に固着することはない。コンタクトレンズは、角膜レンズ(例えば、眼の角膜上に載るレンズ)の形態をしているのがよい。コンタクトレンズは、ソフトコンタクトレンズ、例えば、ヒドロゲルコンタクトレンズ又はシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズであるのがよい。
【0018】
本発明のコンタクトレンズは、オプティカルゾーンを有する。オプティカルゾーンは、光学機能性を有するレンズの部分を包含する。オプティカルゾーンは、使用の際に眼の瞳孔の上に位置決めされるよう構成されている。本発明のコンタクトレンズに関し、オプティカルゾーンは、中央領域、及び中央領域を包囲しかつトリートメントゾーンを含む環状領域を有する。本開示との関連において、環状領域は、オプティカルゾーンを包囲した実質的に環状の領域である。この環状領域は、実質的に円形又は実質的に楕円形の形をしているのがよい。環状領域は、オプティカルゾーンを完全に包囲するのがよい。環状領域は、オプティカルゾーンを部分的に包囲してもよい。
【0019】
トリートメントゾーンは、レンズの中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少を生じさせる特性を有する。換言すると、トリートメントゾーンは、トリートメントゾーンが設けられていない同一レンズを通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少をもたらす。トリートメントゾーンは、レンズの表面上に設けられたコントラスト減少特徴を有するのがよい。これら特徴は、環状領域の残りの部分及び中央領域を通過した光と比較して、光の追加の散乱を生じさせるのがよい。かかる特徴により、光を環状領域の残りの部分及び中央領域を通過した光と比較して、異なる状態に回折することができる。トリートメントゾーンは、光を環状領域の残りの部分及び中央領域とは異なる仕方で屈折させ、それによりレンズを通過した光により作られる像のコントラストの減少を生じさせる曲率を有するのがよい。
【0020】
トリートメントゾーンは、連続ゾーンであるのがよい。トリートメントゾーンは、環状領域の半分以下でもよい。トリートメントゾーンは、環状領域の1/4未満にわたって延びてもよい。環状領域は、複数のトリートメントゾーンから成っていてもよい。コントラスト減少は、各レンズのトリートメントゾーン全体にわたって様々であってもよい。レンズ組中の各レンズは、同一のトリートメントゾーンのコントラスト減少のばらつきを有してもよい。トリートメントゾーンのうちの任意のものと環状領域の残りの部分との境界部は、シャープな境界部であってもよく、或いは滑らかな境界部であってもよい。各トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の境界部のところに、混成ゾーンが設けられてもよい。混成ゾーンは、レンズの中央領域を通過した光により作られる像と比較して、レンズを通過した光により作られる像のコントラスト減少を生じさせる特性を有するのがよい。かかる特性は、様々であってよく、かかる特性は、トリートメントゾーンから環状領域に向かうにつれてそのコントラスト減少効果が消失してもよい。例えば、トリートメントゾーンが加入度数をもたらす曲率を有する場合、トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の混成ゾーンは、曲率の漸次変化を示してもよく、その結果、この領域全体にわたって加入度数の漸次減少が生じる場合がある。トリートメントゾーンが光の散乱を増大させる特徴を有する場合、トリートメントゾーンと環状領域の残りの部分との間の混成ゾーンは、散乱を増大させる特徴を有するのがよいが、これら特徴の密度は、混成ゾーン全体にわたってばらつきがあってもよい。
【0021】
中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラスト減少は、変調伝達関数(MTF)を用いて定量化できる。
【0022】
レンズは、レンズにより作られる物体の像における物体のコントラストを完全に再現することはない。所与のレンズの変調伝達関数(MTF)は、特定の解像度で、コントラストを物体からこの物体の像に伝達するレンズの能力を測定し、かかる変調伝達関数を点広がり関数又は線広がり関数のフーリエ変換から導き出すことができる。MTFを測定するには、黒色と白色の線対の試験用物体(撮像される物体)を用いるのがよい。試験用物体の線間隔が減少すると(すなわち、黒色線と白色線の対が互いに近づくと、すなわち、空間周波数が増大すると)、黒色線の線広がり関数は、互いにオーバーラップし始め、したがって、黒色線とこれらのバックグラウンドの差が像中で減少し、そしてMTFが減少する。
【0023】
本発明の実施形態としてのレンズに関し、トリートメントゾーンが設けられていることにより、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中心ゾーンを通過した光により作られる像のMTF(及びそれゆえにコントラスト)が減少する。これは、図1を参照すると良好に理解できる。曲線A(破線)で示すように、加入度数領域が設けられていない収差なしレンズに関し、MTFは、空間周波数の関数として減少する。加入度数を有する環状領域を含むオプティカルゾーンを有するレンズの場合、追加の変調が曲線Bで示すようにMTFに導入される。
【0024】
かくして、追加のコントラスト減衰は、加入度数を有するトリートメントゾーンの結果であると言える。変形例として、例えば、トリートメントゾーンは、光散乱の増大を招く特徴を有してもよい。
【0025】
本発明の実施形態としてのレンズに関し、トリートメントゾーンにより生じるコントラスト減衰は、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中央領域を通過した光により作られる像に関してコントラストの減少を生じさせることができる。
【0026】
オプティカルゾーンは、周辺ゾーンによって包囲されている。エッジゾーンが周辺ゾーンを包囲するのがよい。周辺ゾーンは、オプティカルゾーンの一部ではなく、オプティカルゾーンの外側にかつレンズが装用された場合には瞳孔の上に位置し、そして、周辺ゾーンは、機械的機能、例えば、レンズのサイズを増大させる機能を発揮し、それによりレンズを取り扱いやすくし、バラスト安定作用をもたらしてレンズの回転を阻止するとともに/或いは、レンズ装用者にとっての快適さを高める異形領域をもたらす。周辺ゾーンは、コンタクトレンズのエッジまで延びるのがよい。
【0027】
本発明の実施形態としてのコンタクトレンズは、レンズの回転を制御するよう構成された周辺ゾーン厚さの変化を呈している。レンズ組中の各レンズは、同一の周辺ゾーンの厚さプロフィールを有するのがよい。周辺ゾーンの厚さの変化は、レンズを特定の向きに安定化するよう構成されるのがよい。厚さの変化は、周辺ゾーン周りに連続的に変化する厚さであるのがよい。周辺ゾーンの厚さは、レンズの底部に向かって増大するのがよい(レンズが装用者によって装用されたときにはその通常の向きにあるとみなす)。厚さの変化は、周辺ゾーンの前方表面の曲率に起因して生じてもよい。厚さの変化は、周辺ゾーンの後方表面の曲率に起因して生じてもよい。厚さの変化は、周辺ゾーンの後方表面及び前方表面の曲率の組み合わせに起因して生じてもよい。周辺ゾーンの厚さの変化は、特定の方向におけるレンズの回転を促進するよう構成されているのがよい。
【0028】
周辺ゾーンの種々の領域の厚さは、当業者に知られている慣例の方法を用いて選択できる。厚さ及び形態は、コンタクトレンズの快適さ又はレンズ使用感をそれほど減少させないで、眼上における任意所望のコンタクトレンズ回転量を達成するよう選択されるのがよい。例えば、周辺ゾーンの設計に関し、コンタクトレンズは、特定の標的設計及び厚さを備えて製造されるのがよく、そして人の眼上で臨床的に試験されるのがよい。レンズの回転量は、スリットランプ又は他の従来型ツールを用いてアイケア専門家によって観察可能である。代表的には、互いに異なる厚さプロフィールを備えた多数のコンタクトレンズが製造され、そしてレンズの回転量及びレンズの快適さを評価するために多くの人(例えば20人以上)の眼上で試験される。レンズの回転量が少なすぎ又は多すぎる場合、或いは、レンズの快適度が対照レンズと比較して著しく低い場合、周辺ゾーンに異なる厚さプロフィールを有するレンズが製造されて試験される。
【0029】
レンズは、1つ又は複数の安定化特徴を有する。例えば、レンズは、ペリバラスト(periballast)、プリズムバラスト、又は動的安定化特徴(例えば、上方半部と下方半部を隔てた垂直経線に沿って設けられた2つの薄いゾーン)を含むのがよい。周辺ゾーンは、レンズを装用者の眼上に位置決めされたときに方向付けるためのバラストを含むのがよい。バラストは、プリズムバラストであるのがよい。レンズは、装用者の眼上に置かれると、装用者のまぶたの作用でかつ重力の結果として所定の安息角まで回転する場合がある。バラストは、ウェッジであるのがよく、回転は、装用者のまぶたによりウェッジに及ぼされる回転力に起因して生じる場合がある。プリズムバラストは、レンズの前方表面上に設けられるのがよい。プリズムバラストを備えたコンタクトレンズは、周辺ゾーン全体にわたって水平の帯の状態で延びる一様な厚さを有するのがよく、この場合、水平の帯は、レンズの上方部分の小さな厚さから、レンズの下方部分の相対的に大きな厚さまで次第に増大し、その後、コンタクトレンズの下縁の近くの薄い厚さまでテーパする。一基準系として、水平な帯は、平面図で見てかつレンズの上方部分が視界の頂部のところに位置している場合、コンタクトレンズの中心を通る水平線に平行である。換言すると、水平帯は、当業者には理解されるように、コンタクトレンズの0゜/180゜の経線に平行である。コンタクトレンズが動的安定化特徴を含む場合、コンタクトレンズは、コンタクトレンズの0゜/180゜経線に沿う周辺ゾーンの厚さよりも相対的に薄い上方及び下方部分を周辺ゾーン内に有することができる。一例として、安定化特徴は、周辺ゾーンの上方領域内に50~100マイクロメートルの厚さを有するのがよく、この厚さは0゜/180゜経線に向かって次第に増大するのがよい。安定化特徴は二重の薄いゾーンを有し、最大厚さの領域は、0゜/180゜経線の付近に位置するのがよく、そして250マイクロメートルから450マイクロメートルまでの範囲にあるのがよい。安定化特徴がプリズムバラストである場合、周辺ゾーンの厚さは、周辺ゾーンの下方部分の最大厚さまで増大し続けるのがよく、最大厚さは、約250マイクロメートル~450マイクロメートルであるのがよい。回転もまた、レンズに作用する重力によって支援されるのがよい。レンズ組中の各レンズは、同一の周辺ゾーンの厚さの変化を呈するのがよく、或いは、レンズ組中の各レンズは、レンズが装用者によって装用されると同一又は類似の効果を生じさせる周辺ゾーンの厚さの変化を呈するのがよい。例えば、レンズ組中の各レンズは、周辺ゾーンの厚さの変化を呈するのがよく、その結果、レンズは、レンズが装用者によって装用されると第1の光軸回りの同一の向きに位置するよう回転する。
【0030】
コンタクトレンズは、形状が実質的に円形であるのがよく、しかも約4mm~約20mm、好ましくは約13.0mm~約15.0mmの直径を有するのがよい。本明細書において直径と記載した場合、これは、弦直径を意味している。レンズの中心厚さは、約50マイクロメートル~約300マイクロメートルであるのがよい。レンズの周辺ゾーンは、約50マイクロメートル~約450マイクロメートルの厚さを有するのがよい。レンズの厚さは、従来技術及び器械、例えばレーダ(Rehder)計器を用いて測定されるのがよい。オプティカルゾーンは、形状が実質的に円形であるのがよく、また、約2mm~約10mmの直径を有するのがよい。幾つかの実施形態では、コンタクトレンズの直径は、13mm~15mmであり、オプティカルゾーンの直径は、7mm~9mmである。
【0031】
眼の視野を、図2に示すように四半部に分割することができ、これら四半部はまた、眼上に位置決めされたときにコンタクトレンズの四半部を説明するために使用されるのがよい。眼/レンズの上半分は、上方半部1、下半分は、下方半部3である。鼻の最も近くに位置する視野は、鼻側半部5であり、鼻から遠くに位置する視野は、側頭半部7である。したがって、4つの四半部は、上方‐鼻側9、上方‐側頭11、下方‐鼻側13、及び下方‐側頭15として定義できる。以下の説明において、これら定義を用いて、レンズが通常の使用状態にあるとき及び装用者によって装用されているときの加入度数領域の位置及び周辺ゾーンの厚さの変化を説明する。
【0032】
本発明の諸実施形態にしたがって、レンズに入射する軸外光に関し、光をレンズ装用者の視野の各四半部から網膜の反対側の四半部におおよそマッピングしている。角膜の前方表面上に位置決めされたときのレンズと装用者の瞳孔の位置との軸方向離隔の結果として視差が生じ、それにより視角が変化するにつれ、或いは、レンズに入射する光の方向が変化するにつれて、レンズと瞳孔の相対的な位置がずれる。これは、例示として、図3(a)~図3(c)に示されており、本発明の一実施形態としてのレンズ17を示し、レンズ17は、環状領域のほぼ半分(側頭半部)にわたるトリートメントゾーン19を有する。虹彩21は、角膜を通して見たままに概略的に示されている。図4(b)に示すように、トリートメントゾーン19のコントラスト減少特性は、装用者の右視野から結像される光に影響を及ぼすが、図4(c)に示すように、トリートメントゾーン19のコントラスト減少特性は、装用者の左視野から結像される光には影響を及ぼさない。トリートメントゾーン19を通過した装用者の左視野からの光は、虹彩21によって遮られる。このレンズ17に関し、トリートメントゾーン19は、左網膜(右眼の鼻側網膜、左眼の側頭網膜)に関して像コントラストを著しく減少させるが、右網膜(右眼の側頭網膜、左眼の鼻側網膜)についてはそうではない。トリートメントゾーンがレンズの側頭半部のかわりに鼻側半部に及んでいる場合、レンズは、右(側頭)網膜に関して像コントラストを著しく減少させるが、左(鼻側)網膜についてはそうではないことが明らかである。トリートメントゾーン17をレンズの環状領域内に設けることによって、中心窩視の妨害を最小限に抑えながらコントラスト減衰を網膜周辺ゾーンのところで標的にすることができる。
【0033】
レンズ組中の各レンズに関し、周辺ゾーンの厚さの変化は、レンズ直径線に対して対称であるのがよく、この場合、レンズ直径線は、環状領域を2つの半部に分割し、トリートメントゾーンは、環状領域の一方の半部に制限される。厚さの変化は、レンズ直径線に沿って位置するよう実質的に制限されるのがよい。周辺ゾーンの厚さの変化を用いると、レンズが装用者によって装用されたときに、装用者の網膜に対するトリートメントゾーンの位置を制御することができる。
【0034】
周辺ゾーンの厚さの変化は、バラストを含むのがよく、バラストは、レンズの回転を制御することができる。レンズが使用状態にあるとき、レンズは、バラストがレンズの底部のところ又は底部寄りに位置し、すなわち、下方半部内に位置するよう回転するのがよい。レンズは、バラストがレンズの側頭半部と鼻側半部に分割する線に関して対称であるよう回転するのがよい。
【0035】
レンズ直径は、レンズの鼻側半部と側頭半部を分離する線に沿って位置するのがよい。
【0036】
レンズ組中の各レンズに関し、トリートメントゾーンのコントラスト減少変化部は、周辺ゾーンの厚さプロフィールに対し、レンズ組中の各レンズの光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。例えば、レンズ組中の各レンズは、環状領域の面積の約25%を占めるトリートメントゾーンを有するのがよい。レンズ組中の第1のレンズは、レンズの下方‐側頭四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよく、レンズ組中の第2のレンズは、レンズの上方‐側頭四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよく、レンズ組中の第3のレンズは、レンズの上方‐鼻側四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよく、レンズ組中の第4のレンズは、レンズの下方‐鼻側四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよい。
【0037】
レンズ組は、例えば、2枚のレンズで構成され、これらレンズは、順繰りに何日にもわたって装用されるようになっている場合がある。レンズ組は、例えば7枚のレンズで構成され、これらレンズは、順繰りに曜日ごとに装用されるように意図されている場合がある。
【0038】
レンズ組中の各レンズは、周辺ゾーンの厚さプロフィールに対し、光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされたトリートメントゾーンを有しているので、レンズ組中の各レンズが装用者によって装用されると、トリートメントゾーンは、網膜の異なる領域を標的にする。したがって、レンズ組中の各レンズを連続して装用すると、眼がトリートメントゾーンのコントラスト減少効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0039】
中央領域の第1の光軸は、レンズの中心線に沿って位置するのがよい。中央領域は、第1の光軸上の遠くの点物体からの光を遠方焦点面のところの第1の光軸上のスポットに合焦させることができる。本明細書で用いられる表面という用語は、物理的な表面を意味しておらず、遠くの物体からの光を合焦させる点を通って描かくことができる表面を意味している。かかる表面は、像面(たとえこれが湾曲した表面であってもよい)又は像シェルとも呼ばれる。眼は、湾曲した網膜上に光を合焦させ、完全に焦点が合っている眼では、像シェルの曲率は、網膜の曲率に合致する。したがって、眼は、光を平坦な数学的平面上に合焦させることはない。しかしながら、当該技術分野においては、網膜の湾曲した表面は、局所的に平面と通称されている。
【0040】
諸実施形態では、トリートメントゾーンは、各レンズの環状領域の連続部分にわたって提供されるのがよい。トリートメントゾーンは、各レンズの環状領域の面積の50%未満を占めるのがよい。トリートメントゾーンは、各レンズの環状領域の面積の25%未満を占めるのがよい。トリートメントゾーンは、各レンズの環状領域の10%未満を占めるのがよい。諸実施形態では、複数の非結合トリートメントゾーンは、各レンズの環状領域をまたいだ状態で位置するのがよい。
【0041】
各レンズが複数の非結合トリートメントゾーンを有する実施形態では、各レンズの非結合トリートメントゾーンの占める総面積は、環状領域の面積の50%未満であるのがよい。各レンズの非結合トリートメントゾーンの占める総面積は、環状領域の面積の25%未満であるのがよい。各レンズの非結合トリートメントゾーンの占める総面積は、環状領域の面積の10%未満であるのがよい。各非結合トリートメントゾーンは、環状領域の周長の5~10%にわたるのがよい。各レンズに関し、非結合トリートメントゾーンの各々は、面積がほぼ同じであるのがよい。各レンズに関し、非結合トリートメントゾーンは、環状領域の周囲に沿って一定間隔を置いて配置されてもよく、或いは、環状領域の周囲に沿って不揃いの間隔を置いて配置されてもよい。非結合部分は、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを実質的に減少させない環状領域の部分によって隔てられるのがよい。トリートメントゾーン相互間の部分は、ベース度数をもたらす曲率を有するのがよい。
【0042】
レンズ組中の各レンズのトリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを50%以上減少させる特性を有する強力なコントラスト減少領域を有するのがよい。強力なコントラスト減少領域は、レンズにより作られる像のコントラストを75%以上減少させるのがよい。トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを50%未満減少させる弱いコントラスト減少領域をさらに有するのがよい。レンズ組中の各レンズが複数のトリートメントゾーンを有する実施形態では、トリートメントゾーンのうちの任意のもの又は全てが強力なコントラスト減少領域であってもよい。トリートメントゾーンのうちの任意のもの又は全てが弱いコントラスト減少領域であってもよい。
【0043】
各レンズのトリートメントゾーンは、加入度数をもたらす曲率変化を呈するのがよい。
【0044】
トリートメントゾーンの前方表面は、中央領域及び環状領域の残りの部分の前方表面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有するのがよい。したがって、トリートメントゾーンは、中央領域及び環状領域の残りの部分のベース度数よりも大きな度数を有することができる。トリートメントゾーンの焦点は、近方焦点面上に位置するのがよく、中央領域及び環状領域の残りの部分の焦点は、レンズの後方表面から見て遠くに位置する遠方焦点面上に位置するのがよい。トリートメントゾーンの焦点と中央領域の焦点は、共通の光軸を共有するのがよい。無限遠に位置する点光源の場合、中央領域及び環状領域によって合焦された光線は、遠方焦点面のところに合焦像を作る。中央領域によって合焦された光線もまた、近方焦点面のところに非合焦状態のぼやけたスポットを生じさせる。
【0045】
各レンズに関し、加入度数のうちの少なくとも何割かは、中心が第1の光軸から第1の距離を置いたところに位置する曲率中心上に位置する曲率によって提供されるのがよい。
【0046】
トリートメントゾーンを通過する遠方の点光源からの光線は、第1の光軸から遠ざかって加入度数焦点面上に合焦されるのがよい。中央領域を通過した光線は、最大加入度数焦点面のところに軸上のぼやけた円(又はトーリックレンズに関しては楕円)を形成することができる。トリートメントゾーンを通過した遠方点光源からの光線は、ぼやけた円又は楕円の外部に合焦されるのがよい。レンズの中央領域は、ベース度数を有する。トリートメントゾーンが加入度数領域を有する場合、トリートメントゾーンの正味の近見度数は、ベース度数と加入度数の合計である。加入度数領域の曲率中心は、第1の光軸から第1の距離を置いたところに位置するのがよい。
【0047】
少なくとも1つの加入度数領域は、全体として加入度数領域の任意のゾーン幾何学的形状を再現する加入度数領域の焦点面のところに光分布を生じさせるよう構成されているのがよい。加入度数領域の焦点面は、加入度数領域を通過した光が合焦する点を通過する平面によって定められる。環状領域の一部分にわたる加入度数領域に関し、合焦円弧を加入度数領域の焦点面のところに生じさせることができる。トリートメントゾーン又は部分の曲率は、トリートメントゾーン焦点面のところに合焦される光を光軸からかつ光軸に垂直に約2マイクロメートル~約700マイクロメートル、好ましくは、約20マイクロメートル~約300マイクロメートルの距離のところに位置決めするよう選択されるのがよい。
【0048】
環状領域のトリートメントゾーンは、幅を有し、トリートメントゾーンの幅の半分のところで取られたトリートメントゾーンの表面の垂線は、中央領域の表面の曲率中心のところで取られた垂線と交差するのがよい。それにより、トリートメントゾーンは、各遠方点物体からの光を合焦させて、近方焦点面のところに合焦円弧を作ることができ、円弧は、中央領域によって合焦された光により作られるぼやけた円の外部に位置しかつこれを包囲する。トリートメントゾーンの表面は、前方表面であるのがよい。中央領域の表面は、前方表面であるのがよい。トリートメントゾーンの表面は、加入度数をもたらす曲率を有する表面であるのがよい。中央領域の表面は、ベース度数をもたらす曲率を有する表面であるのがよい。
【0049】
レンズのベース度数は、プラスであるのがよく、トリートメントゾーンは、基ベース度数よりもプラスの値が大きい度数を有するのがよい。この場合、最大加入度数の焦点面は、遠方焦点面よりもレンズの近くに位置する。軸上像は、トリートメントゾーンを通過した光によって作られることはない。したがって、レンズの装用者は、自分の目の生まれつきの調節力を用いて近くの物体に焦点を合わせる必要がある。おそらくは、トリートメントゾーンによって合焦された光線は、コンタクトレンズの第1の光軸と全く交差せず、或いは、かかる光線が加入度数焦点面を通過した後になるまでは交差しない。
【0050】
レンズのベース度数は、マイナスであるのがよく、トリートメントゾーンは、ベース領域の度数よりもマイナスの度数が小さいのがよく、或いは、トリートメントゾーンはプラスの度数を有してもよい。レンズが角膜上に位置決めされた状態を考えると、トリートメントゾーンの度数がベース度数よりもマイナスの度数が小さい場合、加入度数焦点面は、遠方焦点面よりも眼内のより前方に位置することになる。レンズが角膜上に位置決めされていない場合のレンズを考えると、トリートメントゾーンの度数がプラスである場合、加入度数焦点面は、遠方焦点面(これは、マイナスのベース度数についてレンズの物体側上の仮想焦点面となる)よりもレンズの反対側(像側)上に位置することになり、トリートメントゾーンの度数がマイナスである場合(しかしながら、ベース度数よりもマイナスの値が小さい場合)、仮想加入度数焦点面は、仮想遠方焦点面よりもレンズから遠ざかって位置することになる。
【0051】
レンズ組中の各レンズが周辺ゾーンの厚さプロフィールに対し、光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされているトリートメントゾーンの加入度数を有するので、組中の各レンズは、加入度数を網膜周辺の異なる領域の方へ向ける。したがって、レンズが異なる時点で装用者によって装用される場合、加入度数は、別々の時点で網膜の異なる領域のところで向けられることになる。これは、特にヒドロロゲルレンズ及びシリコーンヒドロゲルレンズにとって有益であり、と言うのは、経時的に、眼が加入度数焦点面のところのぼやけに順応してしまい、それにより近視が悪化するのを防ぐ加入度数トリートメントゾーンの有効性を減じると考えられるからである。レンズの組からの別々のレンズを連続的に装用し、それにより別々の時点で網膜の異なる領域のところで標的とされる加入度数を提供することによって、レンズは、眼が経時的にぼやけを補償する能力を低下させる場合がある。組中の異なるレンズが装用された場合、網膜の別々の部分が互いに異なる量のデフォーカスの影響を受け、これは、一定の近視用デフォーカスを提供する単一のレンズを装用した場合よりも、近視の進行を遅くする上でより有効な場合がある。
【0052】
レンズ組中の各レンズが複数のトリートメントゾーンを有する実施形態では、所与のレンズのトリートメントゾーンの各々は、同一の加入度数を提供する曲率を有してもよく、或いは、所与のレンズのトリートメントゾーンの各々が異なる加入度数を提供する曲率を有してもよい。
【0053】
各レンズのトリートメントゾーンは、非対称な度数プロフィールを有するのがよい。レンズ組中の各レンズに関し、加入度数を提供する曲率は、レンズの前方表面の曲率であってもよい。各レンズに関し、加入度数を提供する曲率は、レンズの後方表面の曲率であってもよい。各レンズに関し、加入度数を提供する曲率は、組み合わせ効果を提供するレンズの前方表面と後方表面の曲率であってもよい。
【0054】
近視の治療の際に用いられるレンズに関し、ベース度数は、マイナスであり又はゼロに近くてもよく、中央領域は、遠見視力を矯正する。ベース度数は、0.5ディオプタ(D)~-20.0ディオプタであるのがよい。ベース度数は、-0.25ディオプタ~-20.0ディオプタであるのがよい。加入度数は、ベース度数と加入度数頂点の度数の差として定義される。レンズ組中の各レンズに関し、各トリートメントゾーンにより提供される加入度数は、+0.5~+10.0Dであるのがよく、好ましくは+2.0~+3.0Dである。プラスのベース度数を有するレンズに関し、任意の加入度数領域の各々の度数は、ベース度数よりも大きなプラスの値を有し、またそれと類似している。マイナスのベース度数を有するレンズに関し、任意の加入度数領域の各々の度数は、ベース度数よりもマイナスの値が小さくてもよく、或いは、任意の加入度数領域の度数は、プラスの度数であってもよい。任意の加入度数領域の環状領域の正味の度数は、ベース度数と加入度数の合計である。
【0055】
各レンズのトリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光と比較して、トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を含むのがよい。かかる特徴は、環状領域の前方表面上に設けられるのがよい。各レンズのトリートメントゾーンは、レンズの表面中に焼き込まれ又はレンズの表面にエッチングされた光学素子を有するのがよい。トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴は、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中央領域を通過した光により作られる像のコントラストを減少させる。組中の互いに異なるレンズが装用者によって装用されると、高散乱領域は、光を網膜の互いに異なる領域に向けて送る。これは、眼が散乱によって引き起こされるコントラストの減少を補償する能力を減少させる場合がある。
【0056】
トリートメントゾーンは、加入度数を提供する曲率を有するのがよく、この場合、曲率の中心は、第1の光軸上に位置する。
【0057】
トリートメントゾーンは、トリートメントゾーンを通過した光の回折を生じさせる特性を含むのがよい。トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光により作られる像と比較して、トリートメントゾーン及び中央領域を通過した光により作られる像のコントラストを減少させる他の特性を含むことができる。
【0058】
各レンズの環状領域は、実質的に円形の外周を有するのがよい。各レンズの環状領域は、実質的に楕円形の外周を有してもよい。各レンズの中央領域は、形状が実質的に円形であるのがよく、この中央領域は、約2~7mmの直径を有するのがよく、好ましくは、2~5mmの直径を有する。中央領域は、形状が実質的に楕円形であるのがよい。ベースカーブは、約8.0mm~9.0mmの曲率半径を有するのがよい。各レンズの環状領域は、中央領域の周囲から0.1mm~約4mm、好ましくは0.5mm~1.5mmだけ半径方向外側に延びるのがよい。各レンズの中央領域の周囲は、中央領域と環状領域との間の境界部を定めることができ、したがって、環状領域は、中央領域に隣接して位置するのがよい。
【0059】
各レンズの環状領域は、中央領域に当接するのがよい。混成ゾーンが中央領域と環状領域との間に設けられるのがよい。混成ゾーンは、中央領域及び環状領域により提供される光学的性質に実質的に影響を及ぼすべきではなく、混成ゾーンは、0.05mm以下の半径方向幅を有するのがよく、ただし、幾つかの実施形態では、混成ゾーンは、0.2mmという広い幅を有してもよく又は0.5mmという広い幅を有してもよい。
【0060】
環状領域は、周辺ゾーンに当接するよう半径方向外方に延びるのがよい。トリートメントゾーンは、環状領域の半径方向幅にわたるのがよい。
【0061】
レンズ組中の各レンズは、複数の同心環状領域を有するのがよい。各環状領域は、上述の特性を備えたトリートメントゾーンを含む環状領域であるのがよい。
【0062】
各レンズの中央領域は、ベース度数を有し、このベース度数は、本発明との関連において、中央領域の平均絶対屈折力と定義される。任意のベース度数経線はまた、ベース度数を有する。ベース度数は、コンタクトレンズの包装材上に設けられるコンタクトレンズの屈折力に対応する(ただし、実際には、これは、同一の値を有していない場合がある)。かくして、本明細書において与えられるレンズ度数は、公称度数である。これらの値は、レンズの直接測定により得られるレンズ度数値とは異なっている場合があり、これら値は、眼科治療で用いられるときに必要な処方度数を提供するために用いられるレンズ度数を反映している。
【0063】
各レンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、若しくはシリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成るのがよい。
【0064】
コンタクトレンズの分野で理解されているように、ヒドロゲルは、平衡状態では水を保持し、そしてシリコーン含有化学物質のない材料である。シリコーンヒドロゲルは、シリコーン含有化学物質を含むヒドロゲルである。本発明との関連で説明するヒドロゲル材料及びシリコーンヒドロゲル材料は、平衡含水率(EWC)が少なくとも10%~約90%(重量/重量)である。幾つかの実施形態では、ヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料のEWCは、約30%~約70%(重量/重量)である。比較例を説明すると、本発明との関連において説明するシリコーンエラストマー材料の含水率は、約0%~10%未満(重量/重量)である。代表的には、本発明の方法又は装置で用いられるシリコーンエラストマー材料の含水率は、0.1%~3%(重量/重量)である。適当なレンズ配合物の例としては、以下の米国一般名(USAN)を有する配合物が挙げられ、かかる米国一般名は、メタフィルコン(methafilcon)A、オキュフィルコン(ocufilcon)A、オキュフィルコンB、オキュフィルコンC、オキュフィルコンD、オマフィルコン(omafilcon)A、オマフィルコンB、コンフィルコン(comfilcon)A、エンフィルコン(enfilcon)A、ステンフィルコン(stenfilcon)A、ファンフィルコン(fanfilcon)A、エタフィルコン(etafilcon)A、セノフィルコン(senofilcon)A、セノフィルコンB、セノフィルコンC、ナラフィルコン(narafilcon)A、ナラフィルコンB、バラフィルコン(balafilcon)A、サムフィルコン(samfilcon)A、ロトラフィルコン(lotrafilcon)A、ロトラフィルコンB、ソモフィルコン(somofilcon)A、リオフィルコン(riofilcon)A、デレフィルコン(delefilcon)A、ベロフィルコン(verofilcon)A、カリフィルコン(kalifilcon)Aなどである。
【0065】
変形例として、各レンズは、シリコーンエラストマー材料を含んでもよく、本質的にこれから成っていてもよく、又はこれから成っていてもよい。例えば、レンズは、ショアA硬度が3~50のシリコーンエラストマー材料を含んでもよく、本質的にこれから成っていてもよく、或いはこれから成っていてもよい。ショアA硬度は、当業者には理解されるように、従来方法を用いて(例えば、方法DIN53505を用いて)決定できる。他のシリコーンエラストマー材料を、例えばヌシル・テクノロジー(NuSil Technology)社又はダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)社から得ることができる。
【0066】
第2の観点によれば、本発明は、近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるキットを含む。キットは、上述の特徴のうちの任意のものを有する1組のコンタクトレンズを含む。キットは、1組のコンタクトレンズをユーザに供給する包装材を含む。キットは、レンズを装用するための手順を指示する取扱説明書を含む。組中の各レンズは、個々にパッケージ化されるのがよく、例えば、ブリスター包装されるのがよい。包装材は、例えば、互いに結合されたブリスターパケットのストリップから成るのがよい。レンズの組は、順繰りに何日にもわたって使用可能な2枚1組のレンズであるのがよい。1組のレンズは、順繰りに曜日ごとに使用可能な7枚1組のレンズであるのがよい。取扱説明書は、毎日又はある特定の時間数又は日数の経過後に異なるレンズを装用するよう装用者に指図するのがよい。取扱説明書は、包装材又はレンズ上に設けられるのがよい。キットは、上述の特徴のうちの任意のものを有する第2の組をなすレンズをさらに含むのがよい。第1のレンズ組中の各レンズは、周辺ゾーンの厚さプロフィールに対し、第1の光軸回りに第1の角度で回転的に位置決めされたトリートメントゾーンを有する。第1のレンズ組中の各レンズに関し、周辺ゾーン厚さプロフィールに対して第1の光軸回りに大きさが等しくかつ向きが逆の角度で位置決めされたトリートメントゾーンを有するコンタクトレンズの第2の組の対応のコンタクトレンズが設けられるのがよい。第1の組をなすレンズは、装用者の左眼用の1組のレンズであるのがよく、第2組をなすレンズは、装用者の右眼用の1組のレンズであるのがよく、又はこれらの逆の関係が成り立つ。
【0067】
第3の観点によれば、本発明は、1組のコンタクトレンズを製造する方法を提供する。本方法は、第1のコンタクトレンズを形成するステップを含み、コンタクトレンズは、オプティカルゾーン及びオプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有する。各コンタクトレンズの周辺ゾーンは、コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、中央領域を有し、中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有する。各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、環状領域を有し、環状領域は、中央領域を円周方向に包囲し、環状領域は、トリートメントゾーンを有し、トリートメントゾーンは、中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有する。本方法は、上述のステップを繰り返し実施して第2のコンタクトレンズを形成するステップを含む。トリートメントゾーン減少変化部は、周辺ゾーン厚さプロフィールに対して第1のコンタクトレンズ及び第2のコンタクトレンズの光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。本方法は、上記ステップを繰り返し実施して1組のコンタクトレンズを形成するステップを含むのがよく、コントラスト減少変化を示す環状領域のトリートメントゾーンは、周辺ゾーン厚さプロフィールに対して組のコンタクトレンズの各々の光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされる。
【0068】
第2のレンズ、及び任意の次のレンズは、第1のレンズと同一の周辺ゾーン厚さプロフィール、及び第1のレンズと同一のトリートメントゾーンコントラスト減少変化を呈するのがよい。
【0069】
レンズ組中の各レンズ、及び各レンズ組は、上述の特徴のうちの任意のものを含むのがよい。
【0070】
製造方法は、凹レンズ形成面を備えた雌型金型部材、及び凸レンズ形成面を備えた雄型金型部材を形成するステップを含むのがよい。本方法は、雌型金型部材と雄型金型部材との間の隙間にバルクレンズ材料を充填するステップを含むのがよい。本方法は、バルクレンズ材料を硬化させてレンズを形成するステップをさらに含むのがよい。
【0071】
コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて形成されるのがよい。レンズは、注型プロセス、回転成形プロセス、若しくはレーシングプロセス、又はこれらの組み合わせによって形成されるのがよい。当業者には理解されるように、注型は、レンズ形成材料を、凹レンズ部材形成面を有する雌型金型部材と、凸レンズ部材形成面を有する雄型金型部材との間に配置することによるレンズの成形を意味している。
【0072】
本発明の第4の観点では、本明細書において説明する1組のコンタクトレンズを使用する方法もまた提供される。本方法は、屈折異常の進行を軽減し、例えば、近視の進行を軽減する上で有効な場合がある。本発明のレンズを用いて近視の進行を低減させるために使用される場合、本方法は、コンタクトレンズを眼が様々な近見距離(例えば、約15cmから約40cmまでの範囲にある)に対応することができる人に提供するステップを含む。本方法の幾つかの実施形態は、オフサルミックレンズを年齢が約5歳~約25歳の人に提供するステップを含む。この提供ステップは、アイケア専門家、例えば眼鏡技師又は検眼士によって実施されるのがよい。変形例として、かかる提供ステップは、レンズ装用者へのオフサルミックレンズの配送を手配するレンズ販売業者によって実施されてもよい。
【0073】
図4は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅くする(例えば、近視制御を行う)際に用いられる1組のコンタクトレンズ200を示している。この組は、2枚のレンズ201a,201bを含む。各レンズ201a,201bは、瞳孔をほぼ覆うオプティカルゾーン202a,202b、及び虹彩の上に位置する周辺ゾーン204a,204bを有する。周辺ゾーン204a,204bは、レンズ201a,201bのサイズを増大させ、それによりレンズ201a,201bを取り扱いやすくすると共にレンズ装用者の快適さを向上させる異形領域を提供する機能を含む機械的機能を提供する。周辺ゾーン204a,204bは、バラスト209a,209bをもたらすようレンズの底部に向かって厚さが増大している。図示すると共に本明細書において説明する例示の図では、バラストの最も厚い部分の存在場所は、三角形で指示されているが、当業者であれば、厚さの変化を互いに異なる形式のバラスト又は他の厚さ変化(例えば、段落[0027]を参照されたい)によって実施できることが理解されよう。組中の各レンズ201a,201bに関し、周辺ゾーン204a,204bの厚さの変化は、同一である。この組中の両方のレンズ201a,201bに関し、バラスト209a,209bは、レンズ201a,201bの側頭半部と鼻側半部を隔てる直径線に沿って、レンズの底部のところに(すなわち、下方半部)に位置決めされている。バラスト209a,209bは、レンズ201a,201bの回転を制御し、その結果、レンズ201a,201bが装用されているときに、これらレンズ201a,201bは、装用者のまばたきに起因して生じる回転力にもかかわらず、安定した位置のままでいるようになっている。オプティカルゾーン202a,202bは、レンズ201a,201bの光学機能性を提供する。各オプティカルゾーン202a,202bは、環状領域203a,203b及び中央領域205a,205bを有する。各環状領域203a,203bは、トリートメントゾーン207a,207bを有し、トリートメントゾーン207a,207bは、中央領域205a,205bだけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域205a,205b及びトリートメントゾーン207a,207bを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。この組200中のレンズ201a,201bに関し、第1のレンズ201aは、レンズ201aの側頭半部にわたるトリートメントゾーン207aを有し、第2のレンズ201bは、レンズ201aの鼻側半部にわたるトリートメントゾーン201bを有する。
【0074】
レンズの周囲周りの位置を、図4に示すように角度θによって定めることができ、θは、0゜~360゜である。この組中の2枚のレンズ201a,201bに関し、トリートメントゾーン207a,207bは、バラスト209a,209bに対し、光軸回りの様々な角度で回転的に位置決めされ、第1のレンズ201aのトリートメントゾーン207aは、およそ0゜~180゜にわたり、第2のレンズのトリートメントゾーン207bは、およそ180゜~360゜にわたる。装用者が2枚のレンズ201a,201bを順繰りに何日にもわたって装用した場合、トリートメントゾーン207a,207bは、互いに異なる時点で網膜の互いに異なる領域を目標とすることになる。これにより、眼がトリートメントゾーンのコントラスト減少効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0075】
図4のレンズ組に関し、トリートメントゾーンは、加入度数を提供する曲率変化を有する。図5は、図4のレンズ201aの断面図である。トリートメントゾーン207aの前方表面は、中央領域205a及び環状領域203aの残りの部分の前方表面の曲率半径よりも小さな曲率半径を有する。したがって、トリートメントゾーン207aは、中央領域205a及び環状領域203aの残りの部分のベース度数よりも大きな度数を有する。トリートメントゾーン207aの焦点は、近方焦点面222(破線で示されている)上に位置し、中央領域205a及び環状領域203aの残りの部分の焦点は、レンズ201aの後方表面から遠ざかって位置する遠方焦点面224上に位置する。トリートメントゾーン207aの焦点と中央領域205aの焦点は、共通の光軸218を共有するのがよい。無限遠に位置する点光源の場合、中央領域205a及び環状領域203aによって合焦された光線は、遠方焦点面224のところに合焦像を作る。中央領域205aによって合焦された光線もまた、近方焦点面222のところに焦点の合っていないぼやけたスポットを生じさせる。
【0076】
図6は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅くする(例えば、近視制御を行う)際に用いられる1組のコンタクトレンズ300を示している。この組は、7枚のレンズ301a~301gを含む。図4と同様、各レンズ301a~301gは、瞳孔をほぼ覆うオプティカルゾーン302a~302g、及び虹彩の上に位置する周辺ゾーン304a~304gを有する。周辺ゾーン304a~304gは、レンズ301a~301gのサイズを増大させ、それによりレンズ301a~301gを取り扱いやすくすると共にレンズ装用者の快適さを向上させる異形領域を提供する機能を含む機械的機能を提供する。周辺ゾーン304a~304gは、バラスト309a~309gによって提供された厚さの変化を呈している。組中の各レンズ301a~301gに関し、周辺ゾーン304a~304gの厚さの変化は、同一である。この組中のレンズ301a~301gの各々に関し、バラスト309a~309gは、レンズ301a~301gの側頭半部と鼻側半部を隔てる直径線に沿って、レンズの底部のところに(すなわち、下方半部)に位置決めされている。バラスト309a~309gは、レンズ301a~301gの回転を制御し、その結果、レンズ301a~301gが装用されているときに、これらレンズ301a~301gは、装用者のまばたきに起因して生じる回転力にもかかわらず、安定した位置のままでいるようになっている。オプティカルゾーン302a~302gは、レンズ301a~301gの光学機能性を提供する。各オプティカルゾーン302a~302gは、環状領域303a~303g及び中央領域305a~305gを有する。各環状領域303a~303gは、トリートメントゾーン307a~307gを有し、トリートメントゾーン307a~307gは、中央領域305a~305gだけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域305a~305g及びトリートメントゾーン307a~307gを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。レンズ301a~301gの周囲周りの位置を角度θ(この場合、シータは、0゜~360゜である)によって定めることによって、第1のレンズ301aは、環状領域303aに沿っておよそ0゜~50゜にわたるトリートメントゾーン307aを有し、第2のレンズ301bは、およそ50゜~100゜にわたるトリートメントゾーン307bを有する。組中の各レンズ301a~301gは、バラスト309a~309gに対して環状領域303a~303gの異なるセクタ(扇形部分)にわたるトリートメントゾーン307a~307gを有する。装用者がレンズ301a~301gを順繰りに何日にもわたって装用した場合、トリートメントゾーン307a~307gは、互いに異なる時点で網膜の互いに異なる領域を目標とすることになる。
【0077】
図7は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅くする(例えば、近視制御を行う)際に用いられる1組のコンタクトレンズ400を示している。この組は、2枚のレンズ401a,401bを含む。図4と同様、各レンズ401a,401bは、瞳孔をほぼ覆うオプティカルゾーン402a,402b、及び虹彩の上に位置する周辺ゾーン404a,404bを有する。周辺ゾーン404a,404bは、レンズ401a,401bのサイズを増大させ、それによりレンズ401a,401bを取り扱いやすくすると共にレンズ装用者の快適さを向上させる異形領域を提供する機能を含む機械的機能を提供する。周辺ゾーン404a,404bは、バラスト409a,409bによって提供された厚さの変化を呈している。組中の各レンズ401a,401bに関し、周辺ゾーン404a,404bの厚さの変化は、同一である。この組中のレンズ401a,401bの各々に関し、バラスト409a,409bは、レンズ401a,401bの側頭半部と鼻側半部を隔てる直径線に沿って、レンズの底部のところに(すなわち、下方半部)に位置決めされている。バラスト409a,409bは、レンズ401a,401bの回転を制御し、その結果、レンズ401a,401bが装用されているときに、これらレンズ401a,401bは、装用者のまばたきに起因して生じる回転力にもかかわらず、安定した位置のままでいるようになっている。オプティカルゾーン402a,402bは、レンズ401a,401bの光学機能性を提供する。各オプティカルゾーン402a,402bは、環状領域403a,403b及び中央領域405a,405bを有する。各環状領域403a,403bは、2つのトリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′を有し、トリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′は、中央領域405a,405bだけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域405a,405b及びトリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′を通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。レンズ401a,401bの周囲周りの位置を角度θ(この場合、シータは、0゜~360゜である)によって定めることによって、第1のレンズ401aは、環状領域403aに沿って上方‐側頭四半部、又は270゜~360゜にわたる第1のトリートメントゾーン407a、及び環状領域403aに沿って下方‐鼻側四半部、又は90゜~180゜にわたる第2のトリートメントゾーン407a′を有する。第2のレンズ401bは、環状領域403bに沿って上方‐鼻側四半部、又は0゜~90゜にわたる第1のトリートメントゾーン407b、及び環状領域403bに沿って下方‐側頭四半部、又は180゜~270゜にわたる第2のトリートメントゾーン407b′を有する。
【0078】
組400中の各レンズ401a,401bは、2つのトリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′を有し、各レンズのトリートメントゾーンは、バラスト409a,409bに対して環状領域403a,403bの異なるセクタ(扇形部分)にわたる。装用者がレンズ401a,401bを順繰りに何日にもわたって装用した場合、トリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′は、互いに異なる時点で網膜の互いに異なる領域を目標とすることになる。
【0079】
図7のレンズ401a,401bに関し、各トリートメントゾーン407a,407b,407a′,407b′は、加入度数を提供する曲率を有する。各レンズに関し、中央領域405a,405bは、ベース度数を提供し、第1の光軸418上に位置する曲率中心を中心とする曲率を有する。これは、図8に示されており、図8は、組中の第1のレンズ407aのA‐A線矢視概略断面図である。
【0080】
各トリートメントゾーン407a,407a′は、加入度数を提供する曲率を有する。トリートメントゾーン407a,407a′(破線の円で示されている)の前方表面の曲率半径406aは、中央領域405a(一点鎖線の円で示されている)の前方表面の曲率半径410よりも小さい。したがって、トリートメントゾーン407a,407a′は、中央領域405のベース度数よりも大きな度数を有する。トリートメントゾーン407a,407a′の各々は、同一の前側曲率及び同一の度数を有する。図8に示すように、トリートメントゾーン407a,407a′の焦点は、近方焦点面422上に位置し、中央領域405aの焦点は、レンズ401aの後方表面から遠くに位置する遠方焦点面424上に位置する。トリートメントゾーン407a,407a′の焦点425及び中央領域405aの焦点424は、共通の光軸418を共有している。無限遠の点光源に関し、中央領域405aによって合焦された光線は、遠方焦点面424のところに合焦像を作る。また、中央領域405aによって合焦された光線は、近方焦点面422のところに焦点の合っていないぼやけたスポットを生じさせる。トリートメントゾーン407a,407a′により合焦された光線は、近方焦点面422のところに合焦像を作る。トリートメントゾーン407a,407a′によって合焦された光線420は、近方焦点面422の後で発散する。
【0081】
加入度数トリートメントゾーン407a,407a′は、中央領域405だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。トリートメントゾーン407a,407a′相互間には、レンズ401を通過した光により作られる像のコントラストを著しくは減少させない領域が設けられている。図7のレンズ401aに関し、これらの領域は、ベース度数を有し、レンズ401aのB‐B線矢視断面図である図9に示すように、これらの領域を通過した光は、遠方焦点面424のところに合焦される。
【0082】
組400中の第2のレンズ401bは、互いに反対側の四半部にわたるトリートメントゾーン407b,407b′を有する。したがって、装用者が2枚のレンズ401a,401a′を順繰りに両日にわたって装用する場合、初日において、第1のレンズ401aのトリートメントゾーン407a,407a′は、加入度数を最初の2つの四半部(この場合、下方‐鼻側及び上方‐側頭四半部)のところに目標づけ、次の日には、第2のレンズ401bのトリートメントゾーン407b,407b′は、加入度数を次の異なる2つの四半部(この場合、下方‐側頭及び上方‐鼻側四半部)のところに目標づけることになる。
【0083】
図7に示す実施形態では、各レンズの2つのトリートメントゾーンは、同一の度数を有する。他の実施形態では、2つのトリートメントゾーンは、互いに異なる度数を有してもよい。
【0084】
図10は、本発明の一実施形態に従って、近視の進行を遅くする(例えば、近視制御を行う)際に用いられる1組のコンタクトレンズ500を示している。組500は、4枚のレンズ501a~501dを含む。各レンズ501a~501dは、瞳孔をほぼ覆うオプティカルゾーン502a~502d、及び虹彩の上に位置する周辺ゾーン504a~504dを有する。周辺ゾーン504a~504dは、レンズ501a~501dのサイズを増大させ、それによりレンズ501a~501dを取り扱いやすくすると共にレンズ装用者の快適さを向上させる異形領域を提供する機能を含む機械的機能を提供する。周辺ゾーン504a~504dは、バラスト509a~509dによって提供された厚さの変化を呈している。組中の各レンズ501a~501dに関し、周辺ゾーン504a~504dの厚さの変化は、同一である。この組中のレンズ501a~501dの各々に関し、バラスト509a~509dは、レンズ501a~501dの側頭半部と鼻側半部を隔てる直径線に沿って、レンズ501a~501dの底部のところに(すなわち、下方半部)に位置決めされている。バラスト509a~509dは、レンズ501a~501dの回転を制御し、その結果、レンズ501a~501dが装用されているときに、これらレンズ501a~501dは、装用者のまばたきに起因して生じる回転力にもかかわらず、安定した位置のままでいるようになっている。オプティカルゾーン502a~502dは、レンズ501a~501dの光学機能性を提供する。各オプティカルゾーン502a~502dは、環状領域503a~503d及び中央領域505a~505dを有する。各環状領域503a~503dは、トリートメントゾーン507a~507dを有し、トリートメントゾーン507a~507dは、中央領域505a~505dだけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域505a~505d及びトリートメントゾーン507a~507dを通過した光により作られる物体の像のコントラストを減少させる。コントラスト減少は、環状領域503a~503d周りの経線につれて変化する。レンズ501a~501dの周囲周りの位置を角度θ(この場合、シータは、0゜~360゜である)によって定めることによって、第1のレンズ501aは、環状領域503aに沿って上方‐側頭四半部、又は270゜~360゜にわたる第1のトリートメントゾーン507aを有し、第2のレンズ501bは、環状領域503bに沿って上方‐鼻側四半部、又は0゜~90゜にわたる第2のトリートメントゾーン507bを有し、第3のレンズ501cは、環状領域503cに沿って下方‐鼻側四半部、又は90゜~180゜にわたるトリートメントゾーン507cを有し、第4のレンズ501dは、環状領域503dに沿って下方‐側頭四半部、又は180゜~270゜にわたるトリートメントゾーン507dを有する。
【0085】
したがって、組中の各レンズ501a~501dは、バラスト509a~509dに対して環状領域503a~503dの異なるセグメントにわたるトリートメントゾーン507a~507dを有する。装用者がレンズ501a~501dを順繰りに何日にもわたって装用した場合、トリートメントゾーン507a~507dは、網膜の互いに異なる領域を目標とすることになる。
【0086】
図10のレンズ501a~501dに関し、各トリートメントゾーン507a~507dは、加入度数を提供する曲率を有する。各レンズに関し、中央領域505は、ベース度数を提供し、中心が第1の光軸上の曲率中心にある曲率を有する。
【0087】
各トリートメントゾーン507a~507dは、加入度数を提供する曲率を有する。トリートメントゾーン507a~507dの前方表面の曲率半径は、中央領域505a~505dの前方表面の曲率半径よりも小さい。したがって、トリートメントゾーン507a~507dは、中央領域505a~505dのベース度数よりも大きな度数を有する。トリートメントゾーン507a~507dの各々は、同一の前方曲率及び同一の度数を有し、トリートメントゾーンの各々は、非対称な前方表面曲率を有し、それにより、非対称な度数プロフィールが生じる。例示の非対称度数プロフィールが、図11(a)~図11(d)の組500中の各レンズについて示されている。各レンズ501a~501dに関し、トリートメントゾーン507b~507dは、環状領域503(a)~503(d)周りに90゜だけ回されている。
【0088】
図12は、本発明の一実施形態に従って近視の進行を遅くする(例えば、近視の制御を行う)際に用いられる1組のコンタクトレンズ600を示している。この組600は、図10に示すレンズの組に類似している。しかしながら、レンズ601a~601dのこの組に関し、トリートメントゾーン607a~607dの各々は、環状領域603a~603dの残りの部分及び中央領域605a~605dを通過した光と比較して、トリートメントゾーン607a~607dを通過した光の散乱を増大させる特徴608a~608dを有する。これにより、物体の像のコントラストが減少し、それにより、中央領域605a~605dだけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域605a~605d及びトリートメントゾーン607a~607dを通過した光により作られる像のコントラストが減少する。装用者がレンズ601a~601dを順繰りに装用した場合、トリートメントゾーン607a~607dは、網膜の互いに異なる領域を目標とし、これにより、眼がトリートメントゾーンのコントラスト減少効果を補償する能力が低下する場合がある。
【0089】
図12に示す実施形態では、光散乱特徴は、各レンズの環状領域の単一の四半部におよぶトリートメントゾーンに設けられている。理解されるように、かかる特徴は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるトリートメントゾーンの任意他の形態を有するレンズに設けられてもよい。
【0090】
他の実施形態(図示せず)では、レンズ組中の各レンズは、2つの同心環状領域を備えるのがよく、各環状領域は、上述したように、トリートメントゾーンを含む環状領域であるのがよい。
【0091】
他の実施形態では、トリートメントゾーンは、回折効果を引き起こすことによって、中央領域だけを通過した光により作られる物体の像と比較して、中央領域及びトリートメントゾーンを通過した光により作られる像の光のコントラストを減少させる特性を有するのがよい。
【0092】
理解されるように、装用者に、右眼に装用可能な1組のレンズ及び、左眼に装用可能な1組のレンズを提供することができる。所与の1日に装用可能な一対のレンズ(右眼レンズ及び左眼レンズ)を考えると、両方のレンズは、環状領域の同一の半分又は四半部にわたるトリートメントゾーンを有するのがよい。例えば、両方のレンズは、レンズの側頭半部に及んで、鼻側の網膜を標的とするトリートメントゾーンを有するのがよい。右眼レンズのトリートメントゾーンは、右眼の左網膜に強力なコントラスト減少効果をもたらす。左眼レンズのトリートメントゾーンは、左眼の右網膜に強力なコントラスト減少効果をもたらす。これに対応して、右眼レンズは、右眼の右網膜のところに弱いコントラスト減少効果をもたらし、左眼レンズは、左眼の左網膜のところに弱いコントラスト減少効果をもたらす。脳は、両方の眼及び網膜の両方の領域から信号を受け取るが、コントラストを弱く減少させた像は、大脳皮質内の両眼神経像の主要な部分を占める。したがって、知覚レベルでは、像劣化は、通常の両眼視中、回避できる。
【0093】
上述の説明において、既知の明らかな又は予測可能な均等例を有する整数又は要素に言及したが、かかる均等例については、これらが個々に記載されているかのごとく本明細書に記載されているものとする。任意のかかる均等例を含むものとみなされるべき本発明の真の範囲を定める特許請求の範囲を参照すべきである。また、読者には理解されるように、有利であり、好都合であるなどと説明された本開示の整数又は特徴は、オプションであり、独立形式の請求項の範囲を限定するものではない。さらに、理解されるべきこととして、本発明の幾つかの実施形態では利益があると考えられるが、かかるオプションとしての整数又は特徴は、望ましいものではない場合があり、したがって、他の実施形態では記載されていない場合がある。
図1
図2
図3(a)-(c)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-05-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近視の進行又は増悪を抑え又は遅くする際に用いられるキットであって、前記キットは、
第1の組をなすコンタクトレンズを含み、前記第1の組をなすコンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズは、オプティカルゾーン及び前記オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、各コンタクトレンズの前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有し、各コンタクトレンズの前記オプティカルゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有し、各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、
(a)加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域を有し、各遠くの点物体からの光は、トリートメントゾーンによって合焦されて、近方焦点面のところに合焦円弧が形成され、前記合焦円弧は、前記中央領域によって合焦された前記光により形成されるぼやけた円の外側に位置し、かつ該ぼやけた円周りの方向に延び、
(b)前記中央領域だけを通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を有し、
(c)前記トリートメントゾーンを通過した光の回折を生じさせる特性を有し、
前記トリートメントゾーンは、前記周辺ゾーンの厚さプロフィールに対して前記コンタクトレンズ組中の各コンタクトレンズの前記光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされ、
前記第1のコンタクトレンズ組の前記特徴を有する第2の組をなすコンタクトレンズを有し、前記周辺ゾーンの厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに第1の角度で回転的に位置決めされたトリートメントゾーンを有するコンタクトレンズの第1の組中の各コンタクトレンズに関し、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに大きさが等しくかつ向きが逆の角度で位置決めされたトリートメントゾーンを有する前記コンタクトレンズの第2の組の対応のコンタクトレンズが設けられ、前記第1の組をなすコンタクトレンズは、装用者の左眼のための1組のコンタクトレンズであり、かつ前記第2の組をなすコンタクトレンズは、前記装用者の右眼のための1組のコンタクトレンズであり、又は、前記第1の組をなすコンタクトレンズは、装用者の右眼のための1組のコンタクトレンズであり、かつ前記第2の組をなすコンタクトレンズは、前記装用者の左眼のための1組のコンタクトレンズである、キット
【請求項2】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、各コンタクトレンズの前記環状領域の連続部分上に設けられ、前記トリートメントゾーンは、各コンタクトレンズの前記環状領域の面積の50%未満を占める、請求項1記載のキット
【請求項3】
複数の非結合トリートメントゾーンが各コンタクトレンズの前記環状領域にまたがって位置している、請求項記載のキット
【請求項4】
前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを50%以上減少させる強力なコントラスト減少領域を有する、請求項1記載のキット
【請求項5】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、加入度数をもたらす曲率変化を有し、各コンタクトレンズにおいて、前記加入度数のうちの少なくとも何割かは、中心が前記第1の光軸から第1の距離を置いたところにある曲率中心上に位置する曲率によって提供される、請求項記載のキット
【請求項6】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、非対称の度数プロフィールを有する、請求項記載のキット
【請求項7】
各コンタクトレンズに関し、前記加入度数をもたらす前記曲率は、前記コンタクトレンズの前方表面の曲率であるのがよい、請求項記載のキット
【請求項8】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンにより提供される前記加入度数は、+0.5~+10.0Dである、請求項記載のキット
【請求項9】
各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を含むのがよく、前記特徴は、前記環状領域の前方表面を含み又は該前方表面上に設けられている、請求項記載のキット
【請求項10】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、実質的に円形の外周を有する、請求項記載のキット
【請求項11】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、実質的に楕円形の外周を有する、請求項記載のキット
【請求項12】
各コンタクトレンズの前記中央領域は、形状が実質的に円形であり、直径が2~7mmである、請求項記載のキット
【請求項13】
各コンタクトレンズの前記環状領域は、前記中央領域の周囲から半径方向外側に0.5mm~1.5mmだけ延びている、請求項記載のキット
【請求項14】
各コンタクトレンズは、エラストマー材料、シリコーンエラストマー材料、ヒドロゲル材料、もしくはシリコーンヒドロゲル材料、又はこれらの混合物から成る、請求項記載のキット
【請求項15】
各コンタクトレンズは、レーシング(lathing)プロセスを用いて形成される、請求項記載のキット
【請求項16】
各周辺ゾーンの前記漸変厚さプロフィールは、プリズムバラストである、請求項記載のキット
【請求項17】
請求項1~16のうちいずれか一に記載の1組のコンタクトレンズと、
前記1組のコンタクトレンズをユーザに供給する包装材と、
前記コンタクトレンズを装用するための手順を指示した取扱説明書とをさらに含む、請求項1記載のキット。
【請求項18】
前記取扱説明書は、前記包装材又は前記コンタクトレンズ上に設けられている、請求項17記載のキット。
【請求項19】
請求項1記載のキットに用いられる第1の組をなすコンタクトレンズ及び第2の組をなすコンタクトレンズを製造する方法であって、前記方法は、
(a)前記第1のコンタクトレンズ組のための第1のコンタクトレンズを形成するステップを含み、前記コンタクトレンズは、オプティカルゾーン及び前記オプティカルゾーンを包囲した周辺ゾーンを有し、各コンタクトレンズの前記周辺ゾーンは、前記コンタクトレンズの回転を制御するよう構成された漸変厚さプロフィールを有し、各コンタクトレンズのオプティカルゾーンは、
中央領域を有し、前記中央領域は、第1の光軸及びベース度数を提供する曲率を有し、
環状領域を有し、前記環状領域は、前記中央領域を円周方向に包囲し、前記環状領域は、トリートメントゾーンを有し、前記トリートメントゾーンは、前記中央領域だけを通過した光によって作られる物体の像と比較して、前記中央領域及び前記トリートメントゾーンを通過した光によって作られる像のコントラストを減少させる特性を有し、各コンタクトレンズの前記トリートメントゾーンは、
(i)加入度数を提供する曲率を備えた加入度数領域を有し、各遠くの点物体からの光は、トリートメントゾーンによって合焦されて、近方焦点面のところに合焦円弧が形成され、前記合焦円弧は、前記中央領域によって合焦された前記光により形成されるぼやけた円の外側に位置し、かつ該ぼやけた円周りの方向に延び、
(ii)前記中央領域だけを通過した光と比較して、前記トリートメントゾーンを通過した光の散乱を増大させる特徴を有し、
(iii)前記トリートメントゾーンを通過した光の回折を生じさせる特性を有し、
(b)前記ステップ(a)を繰り返し実施して前記第1の組中の第2のコンタクトレンズを形成するステップを含み、前記トリートメントゾーンは、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記第1のコンタクトレンズ及び前記第2のコンタクトレンズの前記光軸回りに異なる角度で回転的に位置決めされ
(c)前記ステップ(a)及び前記ステップ(b)を繰り返し実施して第2の組をなすコンタクトレンズを形成するステップを含み、前記第2の組をなすコンタクトレンズは、前記第1の組をなすコンタクトレンズの前記特徴を有し、前記周辺ゾーンの厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに第1の角度で回転的に位置決めされたトリートメントゾーンを有するコンタクトレンズの第1の組中の各コンタクトレンズに関し、前記周辺ゾーン厚さプロフィールに対して前記第1の光軸回りに大きさが等しくかつ向きが逆の角度をなして位置決めされたトリートメントゾーンを有する前記コンタクトレンズの第2の組の対応のコンタクトレンズが設けられ、前記第1の組をなすコンタクトレンズは、装用者の左眼のための1組のコンタクトレンズであり、かつ前記第2の組をなすコンタクトレンズは、前記装用者の右眼のための1組のコンタクトレンズであり、又は、前記第1の組をなすコンタクトレンズは、装用者の右眼のための1組のコンタクトレンズであり、かつ前記第2の組をなすコンタクトレンズは、前記装用者の左眼のための1組のコンタクトレンズである、方法。
【請求項20】
近視の進行を軽減する方法であって、
請求項のうちいずれか一に記載の第1の組をなすコンタクトレンズ及び第2の組をなすコンタクトレンズを含むキットを様々な近見距離について調節が可能な近視の人に提供するステップを含み、前記コンタクトレンズは、前記コンタクトレンズを装用する順序を指示した取扱説明書を備えている、方法。
【国際調査報告】