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特表2024-512559スピルリナベースの組成物及び免疫を強化するためのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】スピルリナベースの組成物及び免疫を強化するためのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/15 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 35/748 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 36/899 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/59 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/4415 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/12 20060101ALI20240312BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K36/15
A61K35/748
A61K36/899
A61K33/04
A61K31/59
A61K31/4415
A61K31/355
A61P37/02
A61P31/04
A61P31/10
A61P31/12
A61P31/14
A61P43/00 121
C12N1/12 Z
A23L33/105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558355
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022058236
(87)【国際公開番号】W WO2022207626
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】2103289
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523359191
【氏名又は名称】アクシーン ファーマ
【氏名又は名称原語表記】AXEEN PHARMA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】モラ、ソッシオ
【テーマコード(参考)】
4B018
4B065
4C086
4C087
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018ME14
4B018MF01
4B065AA85X
4B065CA44
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA09
4C086BC18
4C086DA15
4C086HA08
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC80
4C087CA11
4C087CA14
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB33
4C087ZB35
4C087ZC75
4C088AB03
4C088AB73
4C088AB78
4C088AC03
4C088BA09
4C088CA04
4C088MA09
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZB07
4C088ZB33
4C088ZB35
4C088ZC75
(57)【要約】
本発明は、スピルリナを含む組成物に関する。本発明は、当該組成物が、花粉の細胞質の水性抽出物であって、当該花粉がライ麦属、トウモロコシ属、マツ属及び/またはカモガヤ属に属する植物から得られる、水性抽出物、並びに任意で、雌蕊抽出物、セレン及び/又はビタミンを含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピルリナ又はスピルリナ抽出物を含む経口組成物であって、花粉の細胞質の水性抽出物であって、前記花粉が、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる、水性抽出物、並びに任意で、
雌蕊の抽出物、
セレン、及び/又は
ビタミンを更に含むことを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
好ましくはトウモロコシ植物から得られる雌蕊の細胞質の水性抽出物である雌蕊抽出物を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
セレンを更に含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のビタミン、優先的にはビタミンD3、B6又はEを単独で又は混合物として更に含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
ヨーロッパアカマツ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
カモガヤ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、
ビタミンD3、
ビタミンB6、及び
ビタミンEを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
最終の花粉抽出物の総重量の60重量%~95重量%、好ましくは60重量%~86.5重量%のライ麦種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の4重量%~20重量%、好ましくは4重量%~20重量%のトウモロコシ種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の0.5重量%~3重量%のヨーロッパアカマツ種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の5重量%~15重量%のカモガヤ種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の1重量%~10重量%のトウモロコシ種由来の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、
ビタミンD3、
ビタミンB6、及び
ビタミンEを含むことを特徴とする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
カプセル化又はコーティングの手段を除いて、
前記組成物の総重量の30重量%~50重量%、優先的には前記組成物の総重量の約36重量%のスピルリナ又はスピルリナ抽出物、
前記組成物の総重量の20重量%~50重量%、優先的には前記組成物の総重量の約24.7重量%のライ麦種、トウモロコシ種、ヨーロッパアカマツ種、及び/又はカモガヤ種から選択される花粉の細胞質の水性抽出物、
任意で、前記組成物の総重量の4重量%~20重量%、優先的には前記組成物の総重量の4.5重量%のトウモロコシ種の花粉及び雌蕊の細胞質の水性抽出物、
任意で、前記組成物の総重量の0.01重量%~5重量%、優先的には前記組成物の総重量の4.5%のセレン、
任意で、前記組成物の総重量の0.001重量%~5重量%、優先的には前記組成物の総重量の0.45重量%のビタミンD3、
任意で、前記組成物の総重量の0.001重量%~4重量%、優先的には前記組成物の総重量の0.39重量%のビタミンB6、及び
任意で、前記組成物の総重量の0.01重量%~5重量%、優先的には、前記組成物の総重量の4.0重量%のビタミンEを含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
免疫調節剤として使用するための、スピルリナ又はスピルリナ抽出物と、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる花粉の細胞質の水性抽出物とを含む、経口組成物。
【請求項10】
免疫調節剤として使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の経口組成物。
【請求項11】
細菌、真菌及び/又はウイルス感染の治療及び/又は予防のために使用されることを特徴とする、請求項8又は9に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
SARS-Cov-2/COVID-19/コロナウイルス感染症の治療及び/又は予防のために使用されることを特徴とする、請求項8~11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物を調製するための方法であって、以下の工程、すなわち、
a.花粉の細胞質及び任意で雌蕊の細胞質を水性抽出する工程、
b.このようにして得られた水性抽出物を噴霧乾燥する工程、
c.前記水性抽出物を回収して、スピルリナ又はスピルリナ抽出物、並びに任意で
セレン、及び/又は
ビタミンと混合する工程、並びに
d.前記得られた組成物を回収する工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫の強化に使用するためのスピルリナを含むヒトの使用のための経口組成物に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、医薬又は栄養補助食品として、特に免疫調節剤として使用するための、他の成分を含むそのような組成物を包含する。
【背景技術】
【0003】
免疫は外来物質及び病原体に対して生物を防御するそれ自体の能力である。免疫系は一連の体の防御メカニズムである。それは生物の免疫を確保する器官、組織、細胞及び分子から構成される。
【0004】
「免疫応答」という用語は、攻撃物又は疾患に直面した場合の免疫系の誘発を指す。このようにして、免疫系は、外部要素、並びに腫瘍細胞などの構成的であるが異常な要素に対する生物の完全性を確保する。それは、体内での病原体の発生及び伝播の抑制に役立ち、それらを除去することができる。
【0005】
免疫系が対処するべき外部の病原体は、主にウイルス、寄生虫、酵母、真菌及び細菌である。
【0006】
病原体によって誘発される免疫応答は、一方では、先天性かつ非特異的である自然免疫、他方では、獲得性かつ適応性である特異的免疫の2つの機能的側面によって特徴付けられる。
【0007】
自然免疫は防御の第一線である。それは、病原体が何であっても同じ種の全ての個体において同一であり、生まれたときから存在する。
【0008】
特異的免疫は、関連する免疫応答が単一の抗原に向けられることから特異的であると言われ、病原体が体の第1の防御バリア(炎症反応)の突破に成功すると、防御の第二線が作動する。
【0009】
免疫反応は、免疫細胞の分化と多くのエフェクターの産生をもたらし、それらはマクロファージ及び単球などの細胞性、又はサイトカイン、インターロイキン若しくは抗体などの分子性であってもよい。
【0010】
このように、分子エフェクターによって生物は病原体と戦うことができる。
【0011】
より具体的には、第1のステップは、食細胞受容体(細胞エフェクター)によって外来パターンを有する病原体を認識することである。これによって、食細胞による炎症の化学伝達物質(インターロイキン、ヒスタミン、TNF)の放出が誘発される。インターロイキン及びサイトカインは細胞間の伝達を媒介し、ひいては感染部位への他の細胞の到達を促進する。それらは免疫反応に必要な炎症反応を誘発する。それらはまた、病原体の貪食を可能にする。次に、Tヘルパーリンパ球が様々な宿主の防御を病原体が局在している部位に誘引して、防御反応が増幅される。最後に、Bリンパ球が外来抗原に結合する抗体を産生し、細胞傷害性Tリンパ球が分解酵素を放出し、マクロファージが感染細胞を貪食して、病原体を除去する。
【0012】
毎日、免疫系は試されているため、能動的な免疫防御が不可欠である。
【0013】
古代から、疾患は、数ヶ月又は更に数日の間にも全人口の大部分を殺し、未知の悪魔に直面した住民の間に恐怖を誘発した。細菌又はウイルスによって引き起こされたパンデミックは古代から知られており、例えば、歴史において最初に記録されたパンデミックであるアテネの疫病は、紀元前430年にアテネ市の3分の1の者を殺した。アントニヌスの疫病、黒死病、スペイン風邪、コレラ、アジアインフルエンザ及びAIDSは、それらの痕跡を歴史に残した伝染病のほんの一部である。
【0014】
より最近では、他のウイルスが出現した。例として、SARS、MERS-Cov、エボラ、ジカ及びH1N1の伝染病が挙げられる。最後に、Covid-19パンデミック(伝染病)は、コロナウイルス科のウイルス、SARS-Cov-2によって引き起こされる疾病である「コロナウイルス病2019」を指す。この感染病は、その由来がまだ議論されており、2019年12月に中国湖北省の武漢市に出現した人畜共通伝染病である。
【0015】
ウイルスは、細胞に侵入して、それらの細胞の仕組みを使用することによってのみ複製できる微細な感染性粒子である。
【0016】
ウイルスが体内に侵入すると、免疫細胞は病原体を異物として認識し、免疫応答を活性化して免疫細胞の増殖及び分子エフェクターの産生を誘導して、ウイルスを体内から除去する。
【0017】
年齢や病気とともに、免疫が弱まり、身体が感染しやすくなることはよく知られた事実である。
【0018】
バランスのとれた食事及び健康的な生活習慣もまた、良好な免疫系の維持に役立つ。実際、免疫系の70%は腸に存在する。この器官、より具体的にはそれが含有する細菌、すなわち微生物叢は、病原体に対する防御において主要な役割を果たしている。腸内微生物叢の完全性を保つことは良好な防御を維持するために必須であり、プロバイオティクスが役立ち得る。
【0019】
免疫増強成分としては、ビタミン、微量元素、プロバイオティクス、ミネラル、補因子などが挙げられる。それらは多くの場合、食事の中に見られるか、又は栄養補助食品の形態で組み合わされる。
【0020】
ビタミンもまた、免疫系の適切な機能化に寄与することが知られている。よくバランスのとれた食事はビタミンの吸収を助ける。ビタミンは栄養補助食品の形態で容易に摂ることができる。
【0021】
他の植物及び生物もまた研究されており、免疫系に対するそれらの有効性が認識されている。これらとしては、ブルーベリー、クランベリー、クコ、イチゴ、トウガラシ、ニンニク、ショウガ、チアシード、亜麻、キヌア、カカオ、マカ及びスピルリナが挙げられる。
【0022】
近年、研究により、スピルリナが多くの生理学的メカニズムを刺激し、免疫系を促進することが示されている。このシアノバクテリアには、ビタミン、ミネラル、タンパク質、リノレン酸及び抗酸化物質が豊富に含まれる。「Impact of daily supplementation of Spirulina platensis on the immune system of naive HIV-1 patients in Cameroon:A 12-month single blind,randomized,multicenter trial」と題する論文,Ngo-Matip et al.(2015).Nutrition Journalでは、スピルリナが免疫応答を改善することによってHIVの進行を効果的に遅らせることが示された。
【0023】
今日、スピルリナを錠剤、カプセル及び粉末の形態で含有する多くの栄養補助食品が市販されている。これらの補助食品のほとんどは、フィコシアニンを高い百分率で含有する、抽出プロセスのないスピルリナ粉末を使用している。
【0024】
これらとしては、NUTRIMEA(商標)、NUTRI&CO(商標)及びNUTRALIE(商標)laboratories製の製品が挙げられる。それらは、持久力及び運動後の回復を改善し、活力を高め、栄養不足を解消し、倦怠感と闘い、体重の制御を助け、免疫系及び自然防御を強化するとして宣伝されている。これらの栄養補助食品は錠剤又はカプセルの形態で提供されている。それらは、スピルリナ単独、又はビタミン及びクロロフィルと組み合わせたスピルリナを含有する。
【0025】
中国特許第108851055号には、腸の痛みの治療剤として使用される食品組成物が記載されている。記載された組成物はスピルリナと花粉とを含む。
【0026】
論文「Photosynthetically Controlled Spirulina,but Not Solar Spirulina,Inhibits TNF-α Secretion:Potential Implications for COVID19 Related Cytokine Storm Therapy」Tzachor, A. et Al.(2021)Mar Biotechnol 23,149-155には、トール様受容体結合LPS(リポ多糖類)によって活性化されたマクロファージ及び単球に対するLEDスピルリナと呼ばれる光合成によって制御されたスピルリナ(アルスロスピラ・プラテンシス)の効果が開示されている。LEDスピルリナはまた、マクロファージ及び単球によって誘導されるTNF-αの分泌を減少させることが示されている。この場合、スピルリナは炎症性サイトカインのレベルが高いときに抗炎症効果を有する。
【0027】
したがって、スピルリナは免疫調節剤として知られるもので、体の免疫応答を改変することができる。それがどのように使用されるかに応じて、それは、(サイトカインレベルが基底状態の)免疫系を促進するか、又は(高いサイトカインレベルで)抗炎症効果を有するかのいずれかになる。
【0028】
Covid-19又はSARS-Cov-2コロナウイルスを含む多くのウイルス感染は、血球貪食症候群(マクロファージ活性化症候群)を誘発する。この異常は、サイトカインの脱制御(サイトカインショック)から生じ、炎症性サイトカイン、特にTNF-αの過剰発現をもたらす。
【0029】
TNF-αは、活性化マクロファージによって分泌される炎症性サイトカインである。SARS-Cov-2の場合、それは重症型、ひいては重症急性呼吸器症候群の原因であることが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
上記を考慮して、本発明が解決しようとする1つの問題は、免疫調節を増大させることができ、ひいては、例えば、SARS-Cov-2などの新興ウイルス又は他の感染症に対処するためにヒトにおいて有効な方法で免疫系を促進することができる経口組成物を実現することである。
【0031】
したがって、本出願人は、一方でスピルリナと、他方でマツ科及び/又はイネ科に属する植物から主に得られる花粉とを含む組成物が、ヒトにおいて免疫系を促進できることを予想外に発見した。
【0032】
単独で、また有利には相乗的に作用する複数の他の成分と関連付けて摂取されるそのような組成物は、特に細菌/ウイルス、真菌又は寄生虫感染の治療及び/又は予防のための体の防御の第一線の細胞の活性化において顕著な免疫系の増強活性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0033】
この技術的課題に対する本発明の解決策は、その第1の目的として、スピルリナ又はスピルリナ抽出物を含む経口組成物であって、更に花粉細胞質の水性抽出物であって、当該花粉が、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる、水性抽出物、並びに任意で
雌蕊の抽出物、
セレン、及び/又は
ビタミンを含むことを特徴とする経口組成物を含む。
【0034】
本発明はまた、医薬又は栄養補助食品として使用するためのスピルリナ又はスピルリナ抽出物を含む経口組成物であって、更に花粉細胞質の水性抽出物であって、当該花粉が、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる、水性抽出物、並びに任意で
雌蕊の抽出物、
セレン、及び/又は
ビタミンを含む
ことを特徴とする経口組成物に関する。
【0035】
本発明はまた、免疫調節剤として使用するための、スピルリナ又はスピルリナ抽出物と、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる花粉とを含む経口組成物に関する。
【0036】
本発明はまた、本発明による組成物を調製するための方法であって、以下の工程、すなわち
a.花粉の細胞質及び任意で雌蕊の細胞質を水性抽出する工程、
b.このようにして得られた水性抽出物を噴霧乾燥する工程、
c.当該水性抽出物を回収して、スピルリナ又はスピルリナ抽出物、並びに任意で
・セレン、及び/又は
・ビタミン、と混合する工程、並びに
d.得られた組成物を回収する工程を含む。
【発明の効果】
【0037】
特に、本出願人は免疫系の活性化及び強化における使用に特に有効な組成物を開発することができた。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明及びその利点は、添付の図面を参照して示される以下の説明及び非限定的な実施形態を読むことでより良く理解される。
【0039】
図1】実施例3に詳述されるサイトカイン産生に対する組成物Aの効果を検討するための結果を得るために使用される手順を示す。
図2】実施例4に詳述されるヒト単球における種々のサイトカインの産生に対する組成物Aの効果、並びに有意なサイトカインの産生に有効な組成物Aの濃度を示す。
図3】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるIL-1βの産生を示す。
図4】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるTNF-αの産生を示す。
図5】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるIL-6の産生を示す。
図6】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるMCP-1の産生を示す。
図7】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるIL-8の産生を示す。
図8】実施例5に詳述されるスピルリナ、花粉抽出物、セレン、ビタミンB6及び/又はビタミンD3を含む様々な組成物によるPGE-2の産生を示す。
図9】実施例6に詳述されるACE2受容体における(スパイクタンパク質の)RBDの阻害に対する組成物Aの効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本明細書では、別段の指定がない限り、区間が与えられる場合はその区間の上限と下限を含むと理解される。
【0041】
本発明は、スピルリナを含む経口組成物に関する。
【0042】
本発明の組成物は、1つ以上の同一又は異なる製剤で経口投与することができる。それは、ジェルキャップ、錠剤、カプセル、ソフトゲル、ロゼンジ、サシェ、チューブ、バイアル、チューインガム、パール、エマルジョン、懸濁液、液体、溶液、アンプル、飲料、シロップ、粉末、固体、ソフトゲル及び半固体を含む経口投与に通常使用される任意の剤形で利用することができる。
【0043】
有利には、組成物は、錠剤、ジェルキャップ、カプセル、半固体、固体、液体、又は粉末の形態である。
【0044】
当該組成物は、スピルリナ又はスピルリナ抽出物を含む。スピルリナは、アルスロスピラ属のシアノバクテリアから作られる産物である。
【0045】
これらは青色の微細な光合成細菌であり、通常は乾燥されて粉砕される。
【0046】
最も頻繁に販売される種はアルスロスピラ・プラテンシスであり、主に中国、米国、フランス及びアフリカで生育している。より少ない程度で、市販のスピルリナはまた、アルスロスピラ・マキシマ(スピルリナ・マキシマ種)に由来する。
【0047】
スピルリナは、以下のいくつかの形態で市販されており、すなわち
工業的方法:錠剤、粉末、カプセル及び液体、
伝統的な方法:スティック、フレーク及びマイクロニードル(未処理、食用バージョン)、
及び時には自家製パスタを含む加工食品の形態である。
【0048】
本発明では、組成物中で使用されるスピルリナは、アルスロスピラ・プラテンシス(スピルリナ・プラテンシス種)の抽出物である。好ましくは、スピルリナ・プラテンシスから抽出された多糖、より優先的にはスピルリナ・プラテンシス由来のリポ多糖の水性抽出物が、本発明による組成物に使用される。
【0049】
本発明の特定の実施形態によれば、使用されるスピルリナ抽出物は、凍結乾燥材料のエタノール抽出によって調製された粗スピルリナ抽出物であってもよい。この粗抽出物は、例えば特許EP1301191に記載されている方法を用いて調製される。
【0050】
本発明による組成物は、イネ及び/又はマツ科に属する植物から得られる少なくとも花粉、並びに任意での雌蕊を更に含む。
【0051】
草(イネ科)は、禾本(禾本)とも呼ばれ、イネ目の単子葉植物の科である。780の属にまとめられた約12,000種から構成されるこの科は、一般に「ハーブ」及び「穀類」と呼ばれるほとんどの種を含む。それらは概して草本植物であり、よりまれには木本(竹本)である。
【0052】
全ての風媒花粉と同様に、イネ科の花粉は、飾りの少ない球状であるか、又はわずかに楕円形である。単一の開口(又は孔)は円形であり、これは単子葉植物の基準の1つである。イネ科の花粉は小さくて軽い。サイズは40ミクロンのオーダーである。穀類では、サイズは60~100ミクロンである。
【0053】
マツ科植物(マツ科)又は針葉樹は、裸子植物に一緒に分類され、これは、11の属に分類される220~250種を含む。これらは、温帯地域由来の木又は低木であり、常緑であるか、又はカラマツの葉のように毎年落葉する針状の葉又は鱗状の葉を有する。この科において、フランスの固有種は、モミ属(モミの木)、トウヒ属(トウヒ)、カラマツ属(ヨーロッパカラマツ)、マツ属(マツ)に属する。
【0054】
マツ科は大量に大きな花粉粒を産生し、その大きさは概ね40~100ミクロンである。それらは細孔を有していない。マツ、モミの木、トウヒ及びヒマラヤスギの花粉粒は、空気中にそれらが容易に懸濁できるようにする2つの嚢を有する。カラマツ及びモミの花粉粒は、おおよそ球状であり、嚢を有していない。
【0055】
優先的には、花粉及び任意で雌蕊が得られる植物は、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属、又はそれらの混合物から選択される。
【0056】
より具体的には、花粉及び任意で雌蕊が得られる植物は、ライ麦種(ライ)、トウモロコシ種(コーン)、ヨーロッパアカマツ種(マツ)、及び/又はカモガヤ種(オーチャードグラス)、又はそれらの混合物から選択される。
【0057】
好ましくは、花粉を収集する植物は新たに収穫される。本発明に使用される花粉は、昆虫によって収穫された花粉(例えば、ミツバチの花粉)であってもよく、又は人間の作業によって収集された花粉であってもよい。例えば、ハチの花粉は花粉を含むが、花蜜及びハチの唾液も含む。ヒトの介入によって収穫された花粉は、そのような追加の成分を含まない。好ましくは、本組成物のための当該花粉はヒトの介入によってのみ得られる。これによってまた、最終製品を標準化することができる。
【0058】
本発明により使用される組成物は、有益なことに、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、タンニン、ポリフェノール、ビタミン、酵素及び微量元素、アミノ酸、脂肪酸及びミネラルが豊富である。更に、本発明により使用される組成物は、フィトエストロゲンなどのホルモンを含有しない。
【0059】
有利には、細胞質性の花粉抽出物は細胞質(花冠のない花粉種子の内側部分)から得られる。概して花冠はアレルゲンの供給源であり、また細胞質の化合物の利用可能性に対する障害であるため、細胞質性の花粉抽出物の使用は、天然の花粉抽出物の使用と比較して明らかな利点を有する。特定の標準化された花粉のそのような精製された細胞質性抽出物はまた、高含量のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、タンニン、ポリフェノール、ビタミン、酵素及び微量元素、アミノ酸、脂肪酸及びミネラル、並びに有益なタンパク質及び炭水化物を有する。様々な抽出物中の有益な化合物の濃度は、生の状態の花粉中の興味を引く化合物の量よりもかなり高い。
【0060】
本発明による組成物に使用される花粉、及び任意で雌蕊は、有利には、花粉及び/又は雌蕊の細胞質性抽出物であり、好ましくは、ライ麦(ライムギ)、トウモロコシ種(コーン)、ヨーロッパアカマツ種(マツ)、及び/若しくはカモガヤ種(オーチャードグラス)、又はそれらの混合物から選択される。
【0061】
本発明による花粉及び任意で雌蕊の抽出物は、油性及び/又は水性抽出物であってよい。
【0062】
本発明によれば、抽出という用語は、有利には環境に優しい溶媒、例えば、水、グリセリン、グリコール、エーテル、油、含水アルコール混合物、エタノール及び他のアルコールを植物原料に対して使用して、可能な混合、デカンテーション及び濾過を行なった後、そこから特定の化合物又は分子を抽出する場合に使用される。
【0063】
次いで、溶媒を部分的又は完全に除去して、抽出物を得ることができる。
【0064】
油性抽出物は、エーテル、ケトン又は油などの油性溶媒中での植物原料の抽出、例えばマセレーション(浸軟)、インフュージョン、消化、煎出、パーコレーション、更には浸出、優先的には15~27℃の環境温度でのマセレーションによって得られる脂溶性活性成分を含有する抽出物を意味すると理解される。
【0065】
非限定的な例として、油性溶媒はジエチルエーテルなどのエーテル、又はアセトンなどのケトンである。
【0066】
本発明により使用される組成物は、優先的には花粉の水性抽出物を含み、任意で雌蕊の水性抽出物を含む。
【0067】
水性抽出物とは、水性溶媒、すなわち、水単独、又は有利にはアルコール、ケトン、及び/又は非イオン性界面活性剤などの他の溶媒と混合された水を含む溶媒中での植物原料の抽出、例えば、水蒸気蒸留、マセレーション、インフュージョン、消化、煎出、パーコレーション、更には浸出、優先的には15~40℃の低温でのマセレーションによって得られる水溶性活性成分を含有する抽出物を意味すると理解される。
【0068】
非限定的な例として、水性溶媒は、エタノールなどのアルコール、アセトンなどのケトン、及び/又は非イオン性界面活性剤と組み合わせた主に水を含む混合物から選択される。
【0069】
本発明による組成物に使用される花粉抽出物、及び任意で雌蕊抽出物は、優先的には花粉及び/又は雌蕊の細胞質の水性抽出物である。
【0070】
更により優先的には、本発明による組成物に使用される花粉、及び任意で雌蕊は、有利には、好ましくはライ麦種(ライムギ)、トウモロコシ種(コーン)、ヨーロッパアカマツ種(マツ)、及び/又はカモガヤ種(カモガヤ)、あるいはそれらの混合物から選択される花粉及び/又は雌蕊からの細胞質の水性抽出物である。
【0071】
好ましくは、本発明による組成物は、トウモロコシ植物から得られた雌蕊細胞質の水性抽出物を含む。
【0072】
スピルリナと花粉とに加えて、本発明による組成物はまた、有利には、上記のような雌蕊、好ましくはセレンである微量元素、及び/又はビタミンを含む。
【0073】
必須微量元素は、その不十分な摂取が生物学的な障害及び活力の喪失を引き起こすと予想され得る無機元素である。それらは、非常に少量(体重の<0.01%)で、ただし極めて一定の濃度で人体中に存在する。化学的には、それらは様々な価数を有する半金属であり、その特性及び消化吸収は価数に応じて変化する。クロム、銅、鉄、ヨウ素、セレン及び亜鉛を含む12種の元素が必須である。
【0074】
好ましくは、上記の組成物はセレンを更に含む。セレン(元素の周期表における記号Se)は、様々なタンパク質と結合して、主に筋肉中に貯蔵される。
【0075】
セレンは、酸化的ストレス中に生成されるフリーラジカル種に潜在的に対抗して、レドックス調節物質及び細胞の抗酸化物質として作用するグルタチオンペルオキシダーゼ及びチオレドキシンレダクターゼなどのセレノタンパク質の機能に重要である。
【0076】
これらの酵素は、細胞の老化を加速し、様々な疾患の発症を促進する体内の過剰なフリーラジカルの中和に役立つ。
【0077】
好ましくは、上記の組成物はまた、少なくとも1種のビタミンも含む。
【0078】
ビタミンは体に必須の有機物質である。ヒトの体は概して、それ自身ではそれらを産生することができないため、それらの食事での摂取が必須である。
【0079】
ビタミンは、体を構築し、それを機能させ続けて、それを維持するために役立つ。
【0080】
本発明による組成物に使用することができるビタミンには、
ビタミンA、
8種のB群ビタミン、すなわちビタミンB1、B2、B3、B5、B6、B8、B9、B12、
ビタミンC
D2及び/又はD3の形態のビタミンD、
ビタミンE、及び
ビタミンKがある。
【0081】
より優先的には、本発明による組成物に使用可能なビタミンは、ビタミンD3、B6又はEから選択され、単独で又は混合物として使用される。
【0082】
ビタミンD3は、コレカルシフェロールとしても知られるビタミンDの一形態である。ビタミンDは2つの起源を有し、すなわち、食事によって供給され、また太陽のUVB光線の作用下で皮膚によって合成される。ビタミンDの本質的な機能は、カルシウム及びリンを吸収する腸の能力を増大させることであり、それによって、
石灰化された組織、特に骨、軟骨及び歯の最適な石灰化を確保し、
血漿カルシウム及びリンのレベルの維持を助ける。
【0083】
ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール及びピリドキサミンの3つの主な形態によって表される水溶性ビタミンである。
【0084】
ビタミンB6は、様々な植物及び動物の食物中に見られ、健康な細胞の機能、特に神経系及び皮膚系において必須である。
【0085】
ビタミンEは、8種の有機分子の群、すなわち、4種のトコフェロールと4種のトコトリエノールとを包含する脂溶性ビタミンである。最も生物学的に活性な形態はα-トコフェロールであり、食事中に最も豊富に存在するのはγ-トコフェロールである。これらの分子は植物油中に大量に存在する。それらは本質的に、特に脂肪酸の酸化によって生成される反応性の酸素誘導体に対する抗酸化物質として作用する。
【0086】
有利には、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の花粉の抽出物、
ヨーロッパアカマツ種の花粉の抽出物、及び
カモガヤ種の花粉の抽出物を含む。
【0087】
特に有利には、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の花粉の抽出物、
ヨーロッパアカマツ種の花粉の抽出物、
カモガヤ種の花粉の抽出物、及び
トウモロコシ種の雌蕊の抽出物を含む。
【0088】
あるいは、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の花粉の抽出物、
ヨーロッパアカマツ種の花粉の抽出物、
カモガヤ種の花粉の抽出物、及び
セレンを含む。
【0089】
あるいはまた、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の花粉の抽出物、
ヨーロッパアカマツ種の花粉の抽出物、
カモガヤ種の花粉の抽出物、並びに
D3、B6及び/又はEから選択される少なくとも1種のビタミンを含む。
【0090】
特に有利には、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の花粉の抽出物、
ヨーロッパアカマツ種の花粉の抽出物、
カモガヤ種の花粉の抽出物、
トウモロコシ種の雌蕊の抽出物、
セレン、並びに
D3、B6及び/又はEから選択される少なくとも1種のビタミンを含む。
【0091】
更により有利には、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種由来の細胞質性の花粉抽出物、
トウモロコシ種由来の細胞質性の花粉抽出物、
ヨーロッパアカマツ種由来の細胞質性の花粉抽出物、
カモガヤ種由来の細胞質性の花粉抽出物、
トウモロコシ種由来の細胞質性の雌蕊抽出物、
セレン、並びに
D3、B6及び/又はEから選択される少なくとも1種のビタミンを含む。
【0092】
更により有利には、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
ヨーロッパアカマツ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
カモガヤ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、並びに
D3、B6及び/又はEから選択される少なくとも1種のビタミンを含む。
【0093】
好ましい実施形態では、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
ヨーロッパアカマツ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
カモガヤ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、
ビタミンD3、
ビタミンB6、及び
ビタミンEを含む。
【0094】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
ライ麦種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
ヨーロッパアカマツ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
カモガヤ種由来の花粉の細胞質の水性抽出物、
トウモロコシ種由来の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、
ビタミンD3、
ビタミンB6、及び
ビタミンEからなる。
【0095】
特定の実施形態によれば、本発明による組成物は
スピルリナ又はスピルリナ抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の60重量%~95重量%、好ましくは60重量%~86.5重量%のライ麦種の花粉の細胞質の水性抽出物
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の4重量%~20重量%、好ましくは4重量%~20重量%のトウモロコシ種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の0.5重量%~3重量%のヨーロッパアカマツ種の花粉の細胞質の水性抽出物、
最終の花粉抽出物の総重量の5重量%~15重量%のカモガヤ種の花粉の細胞質の水性抽出物
最終の花粉の細胞質抽出物の総重量の1重量%~10重量%のトウモロコシ種の雌蕊の細胞質の水性抽出物、
セレン、
ビタミンD3、
ビタミンB6、及び
ビタミンEからなる。
【0096】
優先的には、本発明により使用される組成物は、カプセル化又はコーティングの手段を除いて、
組成物の総重量の30重量%~50重量%、優先的には組成物の総重量の約36重量%のスピルリナ又はスピルリナ抽出物、
組成物の総重量の20重量%~50重量%、優先的には組成物の総重量の約24.7重量%のライ麦種、トウモロコシ種、ヨーロッパアカマツ種、及び/又はカモガヤ種から選択される花粉の細胞質の水性抽出物、
任意で、組成物の総重量の4重量%~20重量%、優先的には組成物の総重量の4.5重量%のトウモロコシ種の花粉と雌蕊の細胞質の水性抽出物、
任意で、組成物の総重量の0.01重量%~5重量%、優先的には組成物の総重量の4.5%のセレン、
任意で、組成物の総重量の0.001重量%~5重量%、優先的には組成物の総重量の0.45重量%のビタミンD3、
任意で、組成物の総重量の0.001重量%~4重量%、優先的には組成物の総重量の0.39重量%のビタミンB6、及び
任意で、組成物の総重量の0.01重量%~5重量%、優先的には組成物の総重量の4.0重量%のビタミンEを含む。
【0097】
好ましくは、本発明による組成物の花粉及び/又は雌蕊の水性抽出物の1日用量は、50mg~250mg、より優先的には100~200mg、更により優先的には110~150mgである。この1日用量は、優先的には1、2又は3回投与(朝、昼及び/又は夕方)で、例えば1、2、3、4又は6つのジェルキャップの形態で投与される。
【0098】
カプセルの最終重量は、好ましくは300mg~1000mgである。更により優先的には、それは375mg~700mgである。
【0099】
特に有利には、カプセルの最終重量は689mgである。
【0100】
本発明による組成物は、有利には、治療として少なくとも10日間、又は3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間投与される。有益なことに、このような投与様式によって免疫を最適に調節することができる。
【0101】
本発明はまた、医薬又は栄養補助食品として使用するための上記の組成物を包含する。
【0102】
特に、本出願人は、本発明による組成物が免疫調節剤としての使用に特に適していることを実証することができた。
【0103】
したがって、本発明はまた、免疫調節剤として使用するための、スピルリナ又はスピルリナ抽出物と、ライ麦、トウモロコシ、マツ及び/又はカモガヤ属に属する植物から得られる花粉とを含む経口組成物に関する。
【0104】
免疫調節剤は、免疫応答を改変する製品である。
【0105】
体の免疫系のこの改変は、その機能を活性化又は抑制する薬剤によって引き起こすことができる。
【0106】
本発明による免疫調節という用語は、免疫応答を改変することを目的とした全ての治療的介入を包含する。免疫反応を増加させることは、免疫不全状態における感染を予防し、罹患した感染と戦い、がんと闘うために特に望ましい。
【0107】
アレルギー、自己免疫及び臓器移植の場合、目的は免疫応答を弱めることである。一部のアレルギーは特異的な脱感作によって治療することができる。自己免疫及び移植の場合、全ての免疫応答を弱めるために薬物が使用されることが多い。
【0108】
免疫は、免疫応答を誘発することによって、病原性微生物などの外来物質又はがん細胞に対して体を防御するそれ自体の能力を指す。
【0109】
異物が体内に入ると、免疫系が誘発され、インターロイキン及びサイトカインなどのメッセンジャーが産生される。
【0110】
実施例から分かるように、本出願人は、スピルリナと、好ましくはライ麦種(ライムギ)、トウモロコシ種(コーン)、ヨーロッパアカマツ種(マツ)、カモガヤ種(オーチャードグラス)、又はそれらの混合物から選択される花粉抽出物との間の相乗作用がインビトロの試験において認められることを示すことができた。実際、この組合せは、サイトカイン(IL-1β、TNFα、IL-6、MCP-1、IL-8及びPGE-2)の強力な放出をもたらし、ひいては免疫系を促進させる。
【0111】
好ましくは、本発明による組成物は、細菌、真菌及び/又はウイルス感染の治療及び/又は予防のために使用される。
【0112】
本発明によれば、「治療」という用語は、疾患若しくは障害、又はその少なくとも1つの識別可能な症状の改善、予防又は逆転を意味する。これはまた、治療する疾患又は障害に関連する少なくとも1つの測定可能な物理的パラメータの改善、予防又は逆転であり、それは必ずしも患者にとって知覚可能ではない。別の実施形態では、「治療」という用語は、物理的に、例えば、識別可能な症状を安定化させること、生理学的に、例えば、物理的パラメータを安定化させること、又はその両方で、疾患又は障害の進行を阻害する、又は遅延させることを指す。「治療」という用語はまた、疾患又は障害の出現の遅延も指す。本発明のある特定の実施形態において、対象となる組成物は予防的手段として投与される。この文脈において、「予防」という用語は、特定の疾患又は障害に罹患するリスクの低減を指す。
【0113】
特に、本出願人は、本発明による組成物が、H1N1インフルエンザ又はSARS感染、及びSARS-Cov-2/Covid-19/コロナウイルスなどのそれらの全ての変異体などのウイルス感染の治療及び/又は予防に特に有効であることを実証することができた。
【0114】
インフルエンザA(H1N1)v2009は、インフルエンザAウイルスのサブタイプH1N1によって引き起こされる急性伝染性呼吸器疾患である。この新規のインフルエンザウイルスは、ブタ、トリ及びヒトを起源とするいくつかの既知のウイルス由来の遺伝子を含む。それは、ヒト起源の季節性インフルエンザの原因であるA(H1N1)ウイルスとは異なる。A型インフルエンザには多数の変異体があり、H1N1、H1N2、H1N8、H2N2、H2N3、H3N1、H3N2、H3N3、H3N8、H4N1、H5N1、H5N2、H5N3、H5N6、H5N8、H5N9、H7、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H7N9、H9N2、H10N7、H10N8、H11N2、H11N9、H17N10、H18N11が挙げられる。
【0115】
SARS-Cov-2は、ベータコロナウイルスとして知られるタイプのウイルスである。これは、全てのRNAウイルスの中で最大のゲノムを有するプラス鎖RNAウイルスである。それは多形性である球状の形状を有し、その形態はそれが発生する環境条件によって変化する。このウイルスのゲノムは、完全なウイルス粒子の形成に必要な4つの構造タンパク質:タンパク質S(スパイク)、タンパク質M(膜)、タンパク質N(ヌクレオカプシド)及びタンパク質E(エンベロープ)をコードする。
【0116】
SARS-Cov-2は、感染した個体において、発熱及び咳から呼吸困難(呼吸窮迫症候群-RDS)、腎不全、また更には死までの様々な症状を引き起こすことがある。
【0117】
Sタンパク質としても知られるスパイクタンパク質は、SARS-Cov-2の表面上に存在するウイルスタンパク質である。このタンパク質によって、スパイクタンパク質とヒトACE2タンパク質との間の相互作用を介してヒト呼吸器上皮細胞に感染することができる。スパイクは、大量に産生される糖タンパク質であり、ウイルスの表面を覆い、ウイルスのヒト細胞への浸透を可能にする。スパイクタンパク質は180~200kDaの三量体膜貫通タンパク質である。それは細胞外N末端ドメインと小さな細胞内C末端ドメインとを有する。1273アミノ酸の長さで、それは2つのサブユニット、S1とS2とから構成される。S1サブユニットは、宿主細胞の表面受容体であるACE2の認識及びそれへの結合を可能にする受容体結合ドメイン(RBD)を含む。S2サブユニットは構造の「幹」であり、膜融合に必要な他の基本要素を含有する。それはまた、膜貫通ドメイン、融合ペプチド、HR1及びHR2(ヘプタペプチド反復配列)と呼ばれる2つの配列、並びに細胞質ドメインを含む。その2つのサブユニットによって、スパイクタンパク質は受容体結合及び膜融合に介在する。RBDドメインがACE2に結合すると、S2サブユニットの立体構造が変化して、融合ペプチドを宿主細胞に固定する。三量体のHR1及びHR2ドメインは、複数の相互作用によって6-HB(6-ヘリックスバンドル)を形成し、ウイルスの膜を宿主の膜に近づけ、最終的に膜融合を引き起こす。アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)に対応する細胞受容体である。この受容体は、肺の肺胞上皮細胞、心臓及び腎臓において発現される。レニン/アンジオテンシン/アルドステロン系におけるその関与を通して、それは心血管及び腎機能に重要な役割を果たす。ACEとACE2とは拮抗する作用を有する。より具体的には、ACE2受容体の活性化は血管拡張メカニズムに関与し、一方、ACEは血管を収縮させる。したがって、これら2つの受容体の活性化と不活化との間のバランスが血管の恒常性を維持するために不可欠である。したがって、その生理学的状態において、ACE2は体の血管の過剰な血管収縮に対抗する。SARS-Cov-2による感染中に、ウイルスはACE2タンパク質に結合して、その宿主の肺細胞、特にII型肺細胞への感染を可能にする。したがって、ACEタンパク質とACE2タンパク質とが介在する効果の間のバランスは、SARS-Cov-2に感染した患者における多種多様な機能不全の原因である血管収縮の増大によって特徴付けられるACEが介在する効果の方に有利にシフトする。実際、レニン/アンジオテンシン系のこの異常は、肺の急性炎症の原因であるサイトカイン性のショックなどの様々な心肺の病状に関連している。更に、既に肥満又は糖尿病を有する高血圧患者において、SARS-Cov-2感染によって強調される不均衡は、更なる病変(肺線維症、心血管病変など)を生じて、最も重度の病変を引き起こすようである。
【0118】
その目的は、もちろん、免疫系が活性化されたときに体に産生される抗体によってスパイクとACE2との間の相互作用を妨げ、このようにしてスパイクタンパク質を中和することである。
【0119】
SARS-Cov-2は、「ナイジェリア型」B.1.1.207、「イギリス型」VOC-202012/01、「デンマーク型」、「南アフリカ型」501.V2、「ブラジル型」又は「日本型」B.1.1.248、「スペイン型」株20A EU.1、「カリフォルニア型」CAL.20C、「ニューヨーク型」B.1.526と多くの変異体を有する。
【0120】
特定の実施形態によれば、本発明はまた、1つ以上の免疫機能の不全に関連する病理学的状況である免疫の欠如、免疫不全(IMD)又は免疫抑制の治療及び/又は予防のために使用される上記の組成物に関する。
【0121】
本発明の更なる目的は、上記の組成物を含み、本発明により使用される栄養補助食品に関する。
【0122】
実際、花粉又は花粉調製物は栄養補助食品として広く消費されている。それらは、花粉そのものであるそれらの基本的な形態で、そのままの、又はカプセル化された形態の粉末として摂取することができる。
【0123】
本発明による組成物はまた、結合剤、崩壊剤、増量剤、分散剤、凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤、流動剤、香味剤、甘味剤、着色剤、フィルム形成剤、安定剤及び/又は保存剤などの植物療法において一般に使用される公知の賦形剤を含む、妥当な利益/リスク比に比例した生理学的に許容される媒体を含む。
【0124】
当業者は、これらの可能な賦形剤及びそれらの量を、それらが本発明により使用される組成物の魅力的な特性を損なわないように注意して選択する。
【0125】
賦形剤の例としては、セルロース、優先的には微結晶セルロース、及び二酸化ケイ素が挙げられる。
【0126】
全般的に、本発明による組成物は、同一であっても異なっていてもよい抽出プロセスによって別々に得られた様々な成分(特に花粉及び雌蕊)を混合することによって得ることができる。例えば、本発明による組成物は、スピルリナ、第1の花粉、及び第2の花粉抽出物と組み合わせた雌蕊抽出物を含んでもよい。有利には、第1の花粉及び雌蕊抽出物は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)として知られる高活性の抗酸化酵素を含有する、精製された花粉及び雌蕊の細胞質の組合せ抽出物である。第2の花粉抽出物は、純粋な花粉の精製された細胞質抽出物である。花粉及び雌蕊は、イネ科のメンバーから別々に、標準化された方法で選択され、収穫される。規定された種は、薬用植物に適用可能な優良農業規範(Good Agricultural Practices)に従って、正式に確立された品質管理の下で別々の圃場で栽培され、収穫される。花粉は第2の花粉抽出物の調製のために選択され、一方、選択された花粉及び雌蕊を標準化された様式で混合して第1の抽出物配合物を生成する。Good Manufacturing Practicesに従って実施される抽出プロセス中に、花粉及び雌蕊を酵素で処理して開かせ発芽させる。次いで、抽出物を濾過して回収し、アレルゲン性であり得る花粉粒の殻を除去する。抽出物を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及びガスクロマトグラフィー(GC)で特定して、有効成分の量を保証する。抽出物を標準化された配合に混合する。この標準化手順によって、例えば、スピルリナに加えて、100~140mgの第1の花粉及び雌蕊の抽出物、並びに20~60mgの第2の花粉抽出物を含有する錠剤を得る。優先的には、最終組成物中の花粉及び雌蕊抽出物の量は、136mgである。
【0127】
したがって、本発明はまた、優先的にはマツ科及び/又はイネ科に属する植物由来の花粉及び雌蕊抽出物を調製する方法に関し、方法は以下の工程、すなわち、
a.花粉の細胞質及び任意で雌蕊の細胞質を水性抽出する工程、
b.このようにして得られた水性抽出物を噴霧乾燥する工程、
c.当該水性抽出物を回収し、スピルリナ又はスピルリナ抽出物並びに任意でセレン及び/又はビタミンと混合する工程、並びに
d.得られた組成物を回収する工程を含む。
【0128】
本出願人は、細胞質の水性抽出の工程が特に繊細であることを実証することができた。したがって、抽出温度は厳密に45℃未満であるべきである。この温度を超えると、上で詳述した1つ以上の花粉及び雌蕊はもはや存在しなくなる(特異的なマーカーがない)。したがって、組成物の品質及び/又はその有効性は確保されない。
【0129】
優先的には、抽出温度は42℃未満であるべきである。
【0130】
抽出工程の長さは、抽出物のそれぞれについて、優先的には少なくとも6時間、優先的には少なくとも10時間、より優先的には少なくとも12時間である。
【0131】
また、本出願人は、過度に持続された条件下での分離によって抽出物又は抽出物類が分解されることを実証することができた。したがって、抽出と分離とを組み合わせる場合、分離は毎分6000回転(rpm)、優先的には4500rpm、更に優先的には2800rpmを超えないものであるべきである。
【0132】
このようにして開発された方法によって、使用される花粉及び任意で雌蕊の良好なトレーサビリティを保証することができる。実際、本出願人は、先行技術の方法に従って製造された抽出物では、花粉及び雌蕊の1つ以上のマーカーの存在を見出すことができず、したがって事実上、組成物中の一連の花粉及び/又は雌蕊抽出物の存在を見出すことができないことを実証することができた。
【0133】
したがって、先行技術の組成物は均質ではなく、予想される花粉及び/又は雌蕊抽出物の全てが最終組成物中に含有されるものではない。
【0134】
本発明による方法は、有利には、最終抽出物の濃度の向上、又は当該抽出物の調製の最適化を可能にする追加の分離、濾過及び/又は蒸発工程を含む。
【0135】
本発明の主題である方法はまた、以下の、
標準化が可能である、
優れた再現性を有する、
産業用ツールの操作の数を最適化及び限定することによってコストの削減を可能にするという利点を有する。
【0136】
それによって、本発明による組成物中の抽出物の存在を追跡することが可能になり、したがってその品質及び結果としてその有効性を確保することができる。
【0137】
取り扱い及びコストの低減を可能にする利点では、以下の
簡素化された計画、
最適化された機器の占有、
非生産的な時間(洗浄、バッチの変更、検証回数など)の減少、
より少ない管理対象となる参照番号、
より少ない危険な操作(洗浄、秤量、作業手順、検証におけるコストの削減、安定性、簡素化された錠剤の製剤化、微生物学的なリスク、トレーサビリティなど)を挙げることができる。
【0138】
本出願人は、植物抽出物由来の組成物の製造が、多くの場合、噴霧乾燥及び造粒などの特定の製造工程を必要とすることを実証した。これらの工程は、最終組成物及びその構成成分、例えば、タンパク質に影響を与え得る。生の植物材料中に存在するある種のタンパク質は、製造プロセス(典型的には噴霧乾燥)の特定の性質のために、それらの活性を失うか又はなくなってしまう可能性が高い。本出願人は、特に、最適化された噴霧乾燥プロセス(入口温度と出口温度との間の50℃の温度差)を使用することによって、伴う目的のタンパク質の変性が回避されることを示すことができた。本出願人はまた、これらの目的のタンパク質に由来するこれらのタンパク質又はペプチドの少なくとも1つが最終組成物中に存在することが、組成物の品質の確保に役立つことを見出した。組成物の活性が変化しないことから、組成物中に使用される抽出物は、したがって、最適であり医薬品グレードである。更に、適切な品質管理を提供することによって、内容物のより良好な均一性を確保することができ、このことは、患者が特定の症状及び/又は不快について処置される場合に重要である。
【0139】
更に、組成物は、異なるバッチ間で(品質及び存在する成分に関して)高い再現性があり、これにより、品質管理、標準化、バッチのトレーサビリティ及び再現性のあるタンパク質のプロファイリングが可能になる。したがって、それは、市販の医薬品及び栄養補助食品(医薬品グレードの植物性製品)のためのgood manufacturing practicesに適合する。この再現性によって、花粉及び/又は雌蕊抽出物のそれぞれの新しいバッチが確立された仕様を満たし、その結果、臨床研究に使用されたバッチと同じ生理学的活性であることもまた確保される。この製造方法によって、所望の有益な化合物を得ることができる。
【0140】
本発明はまた、少なくともスピルリナと、マツ科及び/又はイネ科に属する植物の花粉抽出物及び/又は雌蕊抽出物に由来する成分とを含み、1つ以上のタンパク質マーカーの存在を検出することができ、これらのタンパク質マーカーが最終組成物の質の良好な指標である、経口組成物に関する。これらのマーカーはまた、組成物の標準化のために使用することができる。
【0141】
当該マーカー又はトレーサーは、有利にはタンパク質又はタンパク質由来ペプチドであり、当該タンパク質は、レチクリンオキシダーゼ、エンドキチナーゼA、β-1,3-グルカナーゼ、エキソ型ポリガラクツロナーゼ、非特異的脂質輸送タンパク質又はそれらの任意の組合せの群から選択される。
【0142】
本発明によれば、タンパク質又はこれらのタンパク質に由来するペプチドの特異的マーカー(マーカー)の存在を最終組成物中に確認することができ、当該マーカーは組成物の品質を示し、したがって標準化及び品質管理に使用することができる。
【0143】
実際に、本出願人は、特定のトレーサー又はマーカー(タンパク質又は当該タンパク質に由来するペプチド)の存在によって、最終組成物中の特定の花粉及び/又は雌蕊抽出物の存在を確認できることを実証することができた。
【0144】
図2に見られるように、本出願人は、花粉の細胞質抽出物とスピルリナとの相乗効果が用量依存的であることを実証することができた。組成物A又はBの用量が高いほど、相乗効果が大きくなり、サイトカイン活性化が良好になる。
【0145】
以下の実施例により本発明を説明する。
【0146】
実施例1:本発明による組成物
組成物A:
剤形:カプセル
カプセル重量:全体で約689mg、すなわち外側シェルを除いて550mg。
【0147】
以下に、カプセル化又はコーティングの手段を除いた組成物の総重量中の重量百分率を示す。
【0148】
スピルリナ:組成物の総重量の約36重量%、
ここでは花粉細胞質由来である水性花粉抽出物:組成物の総重量の約25重量%、
賦形剤:組成物の総重量の約36重量%。
【表1】
【0149】
最終製品中の他の成分としては、微結晶セルロース、ジャガイモデンプン及びステアリン酸マグネシウムが含まれてもよい。植物ベースのカプセルは、HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロースをベースとする。推奨される1日用量は1日当たり1カプセルであり、朝又は夜に服用される。
【0150】
上記カプセル中の花粉抽出物(花粉細胞質)は、花粉及び/又は雌蕊抽出物を調製するための従来のプロセスを使用して得た。
【0151】
実施例2:本発明による組成物
組成物B
剤形:カプセル
カプセル重量:全体で約689mg、外側シェルを除いて550mg。
【0152】
以下に、カプセル化又はコーティングの手段を除いた組成物の総重量中の重量百分率を示す。
【0153】
スピルリナ:組成物の総重量の約36重量%、
ここでは花粉細胞質由来である水性花粉抽出物:組成物の総重量の約25重量%、
セレン:組成物の総重量の約4.5重量%、
ビタミンD:組成物の総重量の約0.5重量%、
ビタミンB6:組成物の総重量の約0.4重量%、
ビタミンE:組成物の総重量の約4.0重量%、
賦形剤:組成物の総重量の約29.4重量%。
【表2】
【0154】
最終製品中の他の成分としては、微結晶セルロース、ジャガイモデンプン及びステアリン酸マグネシウムが含まれてもよい。植物ベースのカプセルは、HPMC:ヒドロキシプロピルメチルセルロースをベースとする。推奨される1日用量は1日当たり1ジェルキャップであり、朝又は夜に服用される。
【0155】
上記カプセル中の花粉抽出物(花粉細胞質)は、花粉及び/又は雌蕊抽出物を調製するための従来のプロセスを使用して得た。
【0156】
実施例3:サイトカイン産生に対する組成物Aの効果を検討しての結果を生成するために使用される手順
単球細胞培養物:初代ヒト単球を、標準化された手順を使用して、健康なヒト血液ドナーのバフィーコートから調製した。
【0157】
単球細胞の処理及びALAMARBlue(登録商標)試験:細胞を、生存率測定のために220000細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種した。試験エレメントを細胞培養培地に溶解した。1ウェル(100μL)当たり1μLのストック溶液又は希釈液を添加した。単球を96ウェルに播種し、NaF(250μg/mL)、陽性対照、培地対照及び漸増濃度の試験するエレメントと共にインキュベーションした。24時間インキュベーションした後、10μLのALAMARBlue(登録商標)(Biosource,USA)を各ウェルに添加した。2時間後、蛍光分光光度計で、544EXnm/590EMnmのフィルター設定を用いて蛍光を測定した。蛍光の量は生細胞の数に比例し、細胞の代謝活性に対応する。損傷した非生存細胞固有の代謝活性はより低く、したがって、健康な細胞よりも低い割合でシグナルを生成する。ALAMARBlue(登録商標)(レサズリン)中の活性成分は、細胞透過性で非毒性であり、青色の実質的に非蛍光性の化合物である。これが細胞に浸透すると、レゾルフィンに還元され、非常に明るい赤色蛍光を生じる。生きている細胞は、レサズリンをレゾルフィンに連続的に変換して、生存率及び細胞毒性の定量的な尺度を与える。
【0158】
ヒト単球における免疫調節:図1に示すように、初代ヒト単球を3人の健康なヒト血液ドナーのバフィーコートから単離した。細胞を、ELISAの測定のために2200000細胞/ウェルの密度で24ウェルプレートに播種した。単球を試験エレメント(5つの異なる濃度)と共に24時間インキュベーションした。LPS(10ng/mL、Salmonella typhimuriun SL1181)を、サイトカイン放出の陽性対照として使用した。24時間後、上清を除去して遠心分離し、製造業者のプロトコールを使用してELISAによってIL-1β、MCP-1、IL-6、TNF及びIL-8の濃度を調べた(n=6、3人の異なるドナー)。
【0159】
個々の成分の試験濃度は組成物B中の濃度、すなわち、
200mgのスピルリナ(36%)
136mgの花粉抽出物(25%)
25mgのセレン(4.5%)
2.5mgのビタミンD3(0.5%)
2.15mgのビタミンD6(0.4%)をいう。
【0160】
実施例4:サイトカイン産生に対する本発明による組成物Aの効果
図2から分かるように、組成物Aの投与によってヒト単球におけるIL-1β、TNF-α、IL-8、MCP-1及びPGE2の放出が誘導され、それは、≧10μg/mLの濃度から始まり、100μg/mLの試験用量で最大である。
【0161】
誘導は組成物の用量に依存する。
【0162】
IL-1βは、マクロファージによって分泌されるインターロイキンであり、炎症促進性の役割を果たす。IL-1βの放出は、10μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLと100μg/mLの間では、活性化の百分率は25%から100%に上昇する。
【0163】
TNF-α(腫瘍壊死因子)は、炎症に関与するサイトカインである。TNF-αの放出は、50μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLから100μg/mLの間では、活性化の百分率は20%から40%に上昇する。
【0164】
IL-6は、マクロファージ、Tリンパ球及び内皮細胞によって分泌されるインターロイキンである。それによって急性期タンパク質の合成及び抗体産生細胞の増殖が可能になる。IL-6の放出は、50μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLから100μg/mLの間では、活性化の百分率は40%から55%に上昇する。
【0165】
IL-8は、潜在的に病原性の微生物又は化学薬剤を検知した後に上皮細胞によって産生されるインターロイキンである。IL-8の放出は、50μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLから100μg/mLの間では、活性化の百分率は150%から210%に上昇する。
【0166】
MCP-1(単球走化性タンパク質1)はケモカイン型サイトカインであり、したがって、特定の免疫細胞を誘引する。MCP-1の放出は、0.1μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLと100μg/mLの間では、活性化の百分率は60%から190%に上昇する。
【0167】
PGE2(プロスタグランジンE2)は、プロスタグランジンクラスの脂肪酸であり、炎症において重要な役割を果たす。PGE-2の放出は、0.1μg/mLから100μg/mLまで誘導された。50μg/mLと100μg/mLの間では、活性化の百分率は60%から145%に上昇する。
【0168】
したがって、組成物Aは、いくつかの炎症促進性サイトカイン及び免疫細胞誘引性サイトカインの産生を誘導すると言うことができる。それは免疫系を活性化し、促進する能力を有する。
【0169】
このような結果は、示していない、実施例2に記載の組成物Bを用いても観察された。
【0170】
実施例5:花粉抽出物(花粉細胞質)とスピルリナとの間の相乗作用
組成物Aの効果は、スピルリナ及び花粉抽出物(花粉細胞質)の個々の成分の効果よりも大きい。
【0171】
IL-1β:図3に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、200pg/mLのIL-1βの放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、1,000pg/mLのIL-1βの放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、5000pg/mLのIL-1βの放出を誘導する。
【0172】
TNF-α:図4に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、10,000pg/mLのTNF-αの放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、10,000pg/mLのTNF-αの放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、45,000pg/mLのTNF-αの放出を誘導する。
【0173】
IL-6:図5に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、12,000pg/mLのIL-6の放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、25,000pg/mLのIL-6の放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、47,000pg/mLのIL-6の放出を誘導する。
【0174】
MCP-1:図6に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、3,100pg/mLのMCP-1の放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、3,200pg/mLのMCP-1の放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、6,000pg/mLのMCP-1の放出を誘導する。
【0175】
IL-8:図7に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、15,000pg/mLのIL-8の放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、25,000pg/mLのIL-8の放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、47,000pg/mLのIL-8の放出を誘導する。
【0176】
PGE-2:図8に示すように、スピルリナ(55μg/mL)は、2,000pg/mLのPGE-2の放出を誘導する。花粉抽出物(37μg/mL)は、9,500pg/mLのPGE-2の放出を誘導する。組成物A(100μg/mL)は、15,500pg/mLのPGE-2の放出を誘導する。
【0177】
ほぼ間違いなく、組成物Aの効果は、スピルリナの効果と花粉抽出物(花粉細胞質)の効果との合計よりも更に強く、免疫調節に関して成分の可能な相乗的活性を示している。セレン、ビタミンB6及びビタミンD3はいずれも、試験した最高濃度(それぞれ0.68μg/mL及び0.59μg/mL)まで、ヒト単球における基底サイトカイン放出に対していかなる効果も有していなかった。
【0178】
このような結果は、示していない、実施例2に記載の組成物Bを用いても観察された。
【0179】
実施例6:ACE2の相互作用に対する組成物Aの効果の試験:SARS-Cov-2
方法:組成物Aを5×PBS/DMSOストック溶液中で調製した(最終濃度DMSO 0.1%)。ACE2の相互作用:SARS-Cov-2 スパイク(RBD)を供給業者(BPS Bioscience、米国)の説明書に従って試験した。陽性対照として、スパイクS1中和抗体(BPS Bioscience 100793)を試験に含めた(50nM及び100nM)。インキュベーションした後、直ちに化学発光を読み取った(発光測定時間:0.1秒、Victor X5、Perkin Elmer,USA)。
【表3】
【0180】
表中のデータはn=4の平均±SDで表す(対照の結合を100%に設定した)。
【0181】
上の表3に、抗スパイク抗体及び組成物Aの存在に応じてのACE2とスパイクとの間の結合の百分率を示す。
【0182】
対照は、スパイクとACE2とが実際に100%±8.0%で結合することを示している。
【0183】
図9に見られるように、
100nMの抗スパイク抗体は、スパイクRBDのACE2タンパク質への結合を90%±3.3%阻害する。
【0184】
10nMの抗スパイク抗体は、スパイクRBDのACE2タンパク質への結合を70%±5.3%阻害する。
【0185】
組成物Aは、スパイクRBDのACE2タンパク質への結合を、100μg/mLで40%±10.4%、及び50μg/mLで10%±8.5%減少させる。
【0186】
したがって、本発明者らは、組成物Aが有効であり、スパイクRBDのACE2タンパク質への結合を減少させるための良好な代替物を表すものであると結論付けることができる。
【0187】
示していないが、このような結果はまた、実施例2に記載の組成物Bを使用しても観察された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】