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特表2024-512574CD47およびPD-L1を標的とする二重特異性抗体ならびにその使用方法
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  • 特表-CD47およびPD-L1を標的とする二重特異性抗体ならびにその使用方法 図9
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】CD47およびPD-L1を標的とする二重特異性抗体ならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/46 20060101AFI20240312BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
C07K16/30
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P15/00
A61P1/02
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/10
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P21/00
A61P13/12
A61P25/00
A61P13/08
A61P37/04
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558579
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-11-10
(86)【国際出願番号】 EP2022057553
(87)【国際公開番号】W WO2022200387
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】63/164,237
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/317,892
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】506198562
【氏名又は名称】ノビミューン エスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ショーシェ グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】マステルナク クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】シャン リミン
(72)【発明者】
【氏名】フェーリン ヴァルター
(72)【発明者】
【氏名】ペニャリエータ エリーゼ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、CD47およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と特異的に結合する新規の二重特異性抗体を提供する。本開示は、該二重特異性抗体を作製する方法、および該抗体をコードする核酸にさらに関する。本開示は、CD47および/またはPD-L1を発現する悪性細胞に関連する状態(例えば、がん)の処置における該二重特異性抗体の使用のための治療方法にさらに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1);
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2);および
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)
を含む重鎖;
(ii)SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1);
SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2);および
SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)
を含む第1の軽鎖;ならびに
(iii)(a)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(b)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(c)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(d)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(e)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(f)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(g)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(h)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(i)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(j)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(k)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(l)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(m)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(n)SEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(o)SEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(p)SEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含む第2の軽鎖
を含む二重特異性抗体であって、
CD47と特異的に結合する、(i)および(ii)を含む第1の抗原結合領域、ならびに
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と特異的に結合する、(i)および(iii)を含む第2の抗原結合領域
を含む、二重特異性抗体。
【請求項2】
第1の軽鎖の少なくとも一部分がκ型であり、第2の軽鎖の少なくとも一部分がλ型である、請求項1記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項3】
第1の軽鎖がκ定常領域を少なくとも含む、請求項2記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項4】
第1の軽鎖がκ可変領域をさらに含む、請求項3記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項5】
第1の軽鎖がλ可変領域をさらに含む、請求項3記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項6】
第2の軽鎖がλ定常領域を少なくとも含む、請求項2記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項7】
第2の軽鎖がλ可変領域をさらに含む、請求項6記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項8】
第2の軽鎖がκ可変領域をさらに含む、請求項5記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項9】
第1の軽鎖がκ定常領域とκ可変領域とを含み、第2の軽鎖がλ定常領域とλ可変領域とを含む、請求項2記載の単離された二重特異性抗体。
【請求項10】
ヒト抗体である、請求項1~9のいずれか一項記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
IgG1抗体である、請求項1~10のいずれか一項記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項記載の二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項13】
腫瘍細胞を請求項12記載の組成物と接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を低下させ、かつ/または腫瘍細胞を死滅させる方法。
【請求項14】
請求項12記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置する方法。
【請求項15】
異常なCD47の発現もしくは活性に関連する病理、または異常なCD47-SIRPαの発現もしくは活性に関連する病理を処置する、予防する、またはその進行を遅延させるための、請求項12記載の組成物の使用。
【請求項16】
病理ががんである、請求項15記載の使用。
【請求項17】
がんが固形腫瘍である、請求項15記載の使用。
【請求項18】
固形腫瘍が乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、黒色腫、中皮腫、結腸直腸がん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、腎臓がん、神経膠腫、神経膠芽腫、子宮内膜がん、食道がん、胆道胃(biliary gastric)がん、前立腺がん、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれに由来する、請求項15記載の使用。
【請求項19】
(i)SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1;
SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2;および
SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3
を含む重鎖;ならびに
(ii)(a)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(b)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(c)SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(d)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(e)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(f)SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(g)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(h)SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(i)SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(j)SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(k)SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(l)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(m)SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(n)SEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(o)SEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3;または
(p)SEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含むCDRL1;
SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2;および
SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3
を含む軽鎖
を含む抗体であって、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と特異的に結合する、抗体。
【請求項20】
ヒト抗体である、請求項19記載の抗体。
【請求項21】
IgG1抗体である、請求項19記載の抗体。
【請求項22】
F(ab)断片、F(ab')2断片、およびFv断片、または一本鎖Fv断片である、請求項19記載の抗体。
【請求項23】
単一特異性である、請求項19記載の抗体。
【請求項24】
一価である、請求項19記載の抗体。
【請求項25】
請求項19~24のいずれか一項記載の抗体と、薬学的に許容される担体とを含む、組成物。
【請求項26】
腫瘍細胞を請求項25記載の組成物と接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を低下させ、かつ/または腫瘍細胞を死滅させる方法。
【請求項27】
請求項25記載の組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置する方法。
【請求項28】
異常なPD-L1の発現もしくは活性に関連する病理、または異常なPD-L1の発現もしくは活性に関連する病理を処置する、予防する、またはその進行を遅延させるための、請求項25記載の組成物の使用。
【請求項29】
病理ががんである、請求項28記載の使用。
【請求項30】
がんが固形腫瘍である、請求項29記載の使用。
【請求項31】
固形腫瘍が乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、黒色腫、中皮腫、結腸直腸がん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、腎臓がん、神経膠腫、神経膠芽腫、子宮内膜がん、食道がん、胆道胃がん、前立腺がん、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれに由来する、請求項30記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、その全体が各々参照により本明細書に組み入れられる、2022年3月8日に出願された米国仮出願第63/317,892号および2021年3月22日に出願された米国仮出願第63/164,237号の恩典およびそれらに基づく優先権を主張する。
【0002】
分野
本開示は、PD-L1と結合する抗体、および該抗体をコードする核酸に関する。本開示はさらに、CD47およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と特異的に結合する二重特異性抗体に関する。本開示はさらに、抗体を作製する方法、ならびにCD47および/またはPD-L1を発現する悪性細胞に関連する状態(例えば、がん)の処置における該抗体の使用のための治療方法にさらに関する。
【0003】
配列表の参照
本願は、EFS-Webを介して電子出願されており、電子的に提出された.txt形式の配列表を含む。.txtファイルは、2022年3月21日に作成された、およそ32キロバイトのサイズを有する「NOVI-047_001WO_SeqList_ST25.txt」という名前の配列表を含有する。この.txtファイルに含有される配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
CD47またはインテグリン関連タンパク質(IAP)は、細胞間コミュニケーションにおいて複数の機能を有する遍在性の50kDa膜貫通糖タンパク質である。インテグリン、SIRPα(シグナル制御タンパク質アルファ)、SIRPγ、およびトロンボスポンジンなどの複数のリガンドと相互作用する。
【0005】
健常組織におけるCD47の広範な発現は、処置の安全性および有効性の問題をもたらす:第1に、中和モノクローナル抗体(Mab)によってCD47を標的とすることは、マウスおよびカニクイザルによる前臨床研究において示されたように、健常細胞に影響し、重篤な毒性をもたらし得る。第2に、代替的なフォーマットを使用することによって、重篤な毒性を回避するか、または軽減することができたとしても、CD47の広範囲の発現は、依然として、標的媒介性薬物消失(target-mediated drug disposition)によって、CD47結合分子の急速な排除を引き起こし、不十分な薬物動態および減少した有効性をもたらし得る。
【0006】
B7-H1およびCD274とも呼ばれるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、造血細胞、具体的には、骨髄系細胞、および非造血健常組織の両方において恒常的に発現される膜貫通タンパク質である。腫瘍細胞および腫瘍間質においても発現され得る。がんにおいて、阻害性受容体PD-1の発現は、持続性の抗原および炎症による刺激のために機能不全表現型を示す疲弊T細胞の特徴と見なされている。さらに、腫瘍微小環境におけるPD-L1のアップレギュレーションは、T細胞上のPD-1と相互作用することによって、腫瘍が宿主免疫系から逃れることを可能にすることが示されている。PD-L1は、多様な腫瘍組織において、腫瘍細胞または免疫浸潤細胞のいずれか、またはその両方において発現されることを、複数の研究が報告している。患者において、モノクローナル抗体を使用してPD-1とPD-L1との相互作用を阻止することは、ある範囲のがん適応症において成功した治療であることが判明しており、T細胞疲弊の発生の逆転または防止によって、そして腫瘍流入領域リンパ節(tumor draining lymph nodes)におけるT細胞プライミング中のT細胞の増大の促進によっても、抗腫瘍T細胞応答を増強すると広く考えられている。しかしながら、PD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤によって達成されている患者の転帰の相当の改善にも関わらず、これらの治療に対する持続的奏効(durable responses)は、ほんの少数の患者でしか観察されず、内因性耐性または獲得耐性が一般的である。
【0007】
したがって、これらの障壁を克服するため、CD47およびPD-L1を二重に標的とすることを可能にする新規の抗体および治療薬が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、CD47およびPD-L1と特異的に結合する二重特異性抗体を提供する。
【0009】
いくつかの局面において、本開示は、(i)重鎖;(ii)第1の軽鎖;および(iii)第2の軽鎖を含む二重特異性抗体を提供する。いくつかの態様において、本明細書に開示される二重特異性抗体は、CD47と特異的に結合する、重鎖と第1の軽鎖とを含む第1の抗原結合領域、およびプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)と特異的に結合する、重鎖と第2の軽鎖とを含む第2の抗原結合領域を含む。
【0010】
いくつかの態様において、重鎖は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)とを含む。
【0011】
いくつかの態様において、第1の軽鎖の一部分は、κ型であり、第2の軽鎖の少なくとも一部分は、λ型である。いくつかの態様において、第1の軽鎖は、κ定常領域を少なくとも含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖は、κ可変領域をさらに含む。いくつかの態様において、第1の軽鎖は、λ可変領域をさらに含む。
【0012】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、λ定常領域を少なくとも含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖は、λ可変領域をさらに含む。いくつかの態様において、第2の軽鎖は、κ可変領域をさらに含む。
【0013】
いくつかの態様において、第1の軽鎖は、κ定常領域とκ可変領域とを含み、ここで、第2の軽鎖は、λ定常領域とλ可変領域とを含む。
【0014】
いくつかの態様において、第1の軽鎖は、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(CDRL1)と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(CDRL2)と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(CDRL3)とを含む。
【0015】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0016】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0017】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0018】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0019】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0020】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0021】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0022】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0023】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0024】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0025】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0026】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0027】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0028】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0029】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0030】
いくつかの態様において、第2の軽鎖は、SEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0031】
いくつかの態様において、二重特異性抗体は、ヒト抗体である。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、IgG1抗体である。いくつかの態様において、単離された二重特異性抗体は、単離されている。
【0032】
本開示は、二重特異性抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0033】
本開示は、腫瘍細胞を、二重特異性抗体を含む組成物と接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を低下させ、かつ/または腫瘍細胞を死滅させる方法を提供する。本開示はまた、二重特異性抗体を含む組成物を対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置する方法を提供する。
【0034】
本開示は、異常なCD47の発現もしくは活性に関連する病理、または異常なCD47-SIRPαの発現もしくは活性に関連する病理を処置する、予防する、またはその進行を遅延させるための、本明細書に記載される単離された二重特異性抗体の使用を提供する。いくつかの態様において、病理は、がんである。いくつかの態様において、がんは、固形腫瘍である。いくつかの態様において、固形腫瘍は、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、黒色腫、中皮腫、結腸直腸がん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、腎臓がん、神経膠腫、神経膠芽腫、子宮内膜がん、食道がん、胆道胃(biliary gastric)がん、前立腺がん、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれに由来する。
【0035】
本開示は、PD-L1と特異的に結合する抗体を提供する。いくつかの局面において、本開示は、(i)重鎖と(ii)軽鎖とを含む抗体を提供する。
【0036】
いくつかの態様において、重鎖は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(CDRH1)と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(CDRH2)と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(CDRH3)とを含む。
【0037】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0038】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0039】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0040】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0041】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0042】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0043】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0044】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0045】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0046】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0047】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0048】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0049】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0050】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0051】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0052】
いくつかの態様において、軽鎖は、SEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含む。
【0053】
いくつかの態様において、抗体は、ヒト抗体である。いくつかの態様において、二重特異性抗体は、IgG1抗体である。いくつかの態様において、抗体は、単離されている。いくつかの態様において、抗体は、F(ab)断片、F(ab')2断片、およびFv断片、または一本鎖Fv断片である。いくつかの態様において、抗体は、単一特異性である。いくつかの態様において、抗体は、一価である。
【0054】
本開示は、抗体と、薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0055】
本開示は、腫瘍細胞を、抗体を含む組成物と接触させる工程を含む、腫瘍細胞の増殖を低下させ、かつ/または腫瘍細胞を死滅させる方法を提供する。本開示は、抗体を含む組成物を、対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置する方法も提供する。
【0056】
本開示は、異常なPD-L1の発現もしくは活性に関連する病理、または異常なPD-L1の発現もしくは活性に関連する病理を処置する、予防する、またはその進行を遅延させるための、本明細書に記載される単離された抗体の使用を提供する。いくつかの態様において、病理は、がんである。いくつかの態様において、がんは、固形腫瘍である。いくつかの態様において、固形腫瘍は、乳がん、卵巣がん、頭頸部がん、膀胱がん、黒色腫、中皮腫、結腸直腸がん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、平滑筋腫、平滑筋肉腫、腎臓がん、神経膠腫、神経膠芽腫、子宮内膜がん、食道がん、胆道胃(biliary gastric)がん、前立腺がん、もしくはそれらの組み合わせであるか、またはそれに由来する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1A図1A~1Eは、例示的な本発明のCD47×PD-L1二重特異性抗体および抗PD-L1 mAb(S79およびS100)の、様々な種から単離されたPD-L1に対する結合、交差反応性、および特異性を示す一連のグラフを示す。図1Aは、ELISAアッセイによって決定された、組換えヒトPD-L1との結合を示す。図1Bは、ELISAアッセイによって決定された、組換えカニクイザルPD-L1との結合を示す。図1Cは、ELISAアッセイによって決定された、組換えマウスPD-L1との結合を示す。図1Dは、ELISAアッセイによって決定された、組換えヒトPD-L2との結合を示す。図1Eは、細胞ベースの競合結合アッセイによって決定された、hIgG4アイソタイプ対照抗体、抗PD-L1 mAbであるアテゾリズマブおよびアベルマブ、ならびに抗PD-L2 mAbと比較された、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体による、可溶性hPD-1と、hPD-L1でトランスフェクトされたCHO(ハムスター)細胞との結合の阻止を示すグラフを示す。
図1B図1Aの説明を参照のこと。
図1C図1Aの説明を参照のこと。
図1D図1Aの説明を参照のこと。
図1E図1Aの説明を参照のこと。
図2A図2A~2Cは、例示的な本発明のCD47×PD-L1二重特異性抗体の、様々な種から単離されたCD47との結合を示す一連のグラフを示す。図2Aは、ELISAアッセイによって決定された、組換えヒトCD47との結合を示す。図2Bは、ELISAアッセイによって決定された、カニクイザルCD47との結合を示す。図2Cは、ELISAアッセイによって決定された、組換えマウスCD47との結合を示す。
図2B図2Aの説明を参照のこと。
図2C図2Aの説明を参照のこと。
図2D図2D~2Eは、例示的な本発明のCD47×PD-L1二重特異性抗体のヒトCD47+PD-L1-腫瘍細胞との結合を示す一連のグラフを示す。図2Dは、フローサイトメトリーによって決定された、Raji腫瘍細胞との結合を示す。図2Eは、フローサイトメトリーによる、Nalm-6腫瘍細胞との結合を示す。
図2E図2Dの説明を参照のこと。
図2F図2Fは、細胞ベースの競合結合アッセイにおける、抗CD47 5F9アナログと比較された、1種の例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体による、可溶性SIRPaとヒトCD47+PD-L1- Nalm-6腫瘍細胞との結合の阻止を示すグラフを示す。
図3図3は、抗CD47 5F9アナログと比較された、フローサイトメトリーによって査定された、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体の、健常ドナーの全血から単離されたヒト赤血球との結合を示すグラフを示す。
図4図4A~4Bは、フローサイトメトリーによって評価された、例示的な本発明のCD47×PD-L1二重特異性抗体のHT-1080腫瘍細胞との結合を示す一連のグラフを示す。
図5図5A~5Bは、ヒトCD47+/PD-L1+ HT-1080腫瘍細胞を使用した、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体の結合のPD-1およびSIRPaを阻止する活性を示す一連のグラフを示す。図5Aは、HT-1080腫瘍細胞におけるPD-1の阻止の阻止を示す。図5Bは、HT-1080腫瘍細胞におけるSIRPa阻止の阻止を示す。
図6図6A~6Bは、Xアッセイにおける、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体によって媒介された、腫瘍細胞の貪食を示す一連のグラフを示す。図6Aは、N87腫瘍細胞の貪食を示す。図6Bは、HT-1080腫瘍細胞の貪食を示す。
図7図7A~7Cは、抗体依存性細胞貪食アッセイによる、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体による腫瘍細胞の死滅を示す一連のグラフを示す。図7Aは、H226腫瘍細胞の死滅を示す。図7Bは、N87腫瘍細胞の死滅を示す。図7Cは、A375腫瘍細胞の死滅を示す。
図8図8。ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)PBMC刺激アッセイにおいて査定された、選択されたCD47×PD-L1二重特異性抗体によって誘導されるT細胞活性化。96hのインキュベーションの後に採集された上清中のIL-2濃度を、ELISAによって定量化した。無関係のIgG1アイソタイプ対照抗体、抗PD-L1 mAbであるアベルマブおよびアテゾリズマブ、ならびに一価CD47対照K2を、比較のために試験した。
図9図9。免疫適格性C57BL/6マウスに移植されたMC38結腸癌モデルにおける抗PD-L1 S79 mAbのインビボ抗腫瘍効力。皮下腫瘍細胞移植の8日後に、3日毎に、10mg/kgの用量の抗PD-L1 mAb S79または無関係のIgG1対照をマウスに腹腔内投与した(マウスは最大で3用量を受容した)。結果は、各群8匹のマウスの個々の腫瘍増殖曲線を示す。黒矢印は処置注射に相当する。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
本開示は、CD47およびPD-L1と結合する二重特異性抗体を提供する。具体的には、二重特異性抗体は、CD47と結合し、SIRPa/CD47相互作用を阻止する第1の抗原結合領域、およびPD-L1と結合し、PD-1/PD-L1相互作用を阻止する第2の抗原結合領域を含む。
【0059】
がん細胞は、免疫監視を免れるため、複数の機序を採用する。いくつかの研究は、腫瘍細胞におけるCD47およびPD-L1の発現が、免疫応答を抑制するため、同時に制御されることを証明した。したがって、自然免疫または適応免疫の単独の活性化は、腫瘍を根絶するのに不十分であり得、両方の免疫応答の利用が、持続的な抗腫瘍活性を誘導するためのより効果的な戦略を提示し得る。したがって、抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体と抗CD47抗体との組み合わせが、現在、臨床において探求されている。しかしながら、造血細胞、赤血球、および血小板などの多くの健常細胞におけるCD47の発現は、これらの薬剤の薬物動態に影響し、安全性プロファイルを損なう、強力な抗原シンクを提供する。
【0060】
CD47発現の遍在性を克服する1つの方式は、同じ細胞の表面上の2種の異なる抗原と結合する二重標的二重特異性抗体(bsAb)によって提供される。二重特異性抗体は、一価エンゲージメントで、異なる親和性で、標的(すなわち、CD47およびPD-L1)と結合する。具体的には、二重特異性抗体は、一価結合を可能にする高い親和性で、PD-L1と結合する。対照的に、二重特異性抗体は、低い親和性、すなわち、PD-L1コエンゲージメント時にのみCD47/SIRPαを阻害するのに十分な親和性で、CD47と結合する。しかしながら、両方の標的が同じ細胞に発現されている時、二重特異性抗体は、それぞれの受容体相互作用(すなわち、SIRPaおよびPD-1)を同時に阻止することができる。この設計は、本発明の二重特異性抗体が、PD-L1陽性細胞においてのみ、CD47を優先的に阻害することを可能にする。結果として、この設計は、単一の抗原のみを発現する細胞と比較して、両方の抗原を発現する細胞に対して、高い選択性を与える。
【0061】
さらに、本明細書に記載される二重特異性抗体は、マクロファージおよび/またはその他の免疫エフェクター細胞を動員するために機能性のFc部分を必要とする。例えば、二重特異性抗体は、IgG1アイソタイプである。
【0062】
CD47
CD47またはインテグリン関連タンパク質(IAP)は、細胞間コミュニケーションにおいて複数の機能を有する遍在性の50kDa膜貫通糖タンパク質である。例えば、インテグリンおよび/またはSIRPαなどの複数のリガンドと相互作用する。自然免疫系に関して、CD47は、マクロファージ、好中球、および樹状細胞などの骨髄系細胞のみならず、NK細胞によっても発現されるSIRPαと結合することによって、阻害性の「ドント・キル・ミー(don't kill me)」シグナルを伝達する自己のマーカーとして機能する(Deuse T et al.,The SIRPα-CD47 immune checkpoint in NK cells,J Exp Med 2021 Vol.218 No.3)。したがって、生理学的状況におけるCD47の広範な発現の役割は、自然免疫系による排除から健常細胞を防御することである。
【0063】
腫瘍細胞は、CD47を過剰発現することによって、この免疫抑制機序を乗っ取り、そのことは、それらが自然免疫細胞による免疫監視および死滅を免れるのを効率的に補助する。CD47発現は、大部分のヒトがん(例えば、NHL、AML、乳がん、結腸がん、神経膠芽腫、神経膠腫、卵巣がん、膀胱がん、および前立腺がん)においてアップレギュレートされており、CD47発現のレベルの増加は、侵襲性疾患および低い生存率と明らかに相関している。したがって、CD47を標的とすることは、がんの処置、がんの進行の遅延、またはその他の方法によるがんの症状の寛解において有用であろう。
【0064】
しかしながら、健常組織におけるCD47の広範な発現は、処置の安全性および有効性の問題をもたらす:第1に、中和モノクローナル抗体(mAb)によってCD47を標的とすることは、マウスおよびカニクイザルによる前臨床試験において示されているように、健常細胞に影響し、重篤な血液毒性(貧血および血小板減少症)をもたらし得る。第2に、代替的な抗体フォーマットを使用することによって、重篤な毒性を回避するか、または軽減することができたとしても、CD47の広範囲の発現は、依然として、標的媒介性薬物消失によるCD47結合分子の急速な排除を引き起こし、不十分な薬物動態および減少した有効性をもたらし得る。
【0065】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)
B7-H1およびCD274とも呼ばれるプログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、造血細胞
、具体的には、骨髄系細胞、および非造血健常組織の両方において恒常的に発現される膜貫通タンパク質である。腫瘍細胞および腫瘍間質においても発現され得る。IFNγ、TNFα、またはLPSなどの様々な炎症性刺激が、免疫細胞、内皮細胞、および上皮系譜(これらの系譜に由来する腫瘍細胞を含む)におけるPD-L1発現を誘導する。PD-L1は、活性化リンパ球の表面上に発現されるプログラム細胞死1(PD-1)のリガンドとして作用し、抗原提示細胞、具体的には、樹状細胞およびマクロファージによって発現されるB7.1(CD80としても公知)のリガンドとしても作用する。T細胞におけるPD-L1によるPD-1のエンゲージメントは、免疫チェックポイントと見なされ、T細胞活性化シグナルに対抗することによって、T細胞の増殖、サイトカインの産生および放出、ならびに細胞傷害の阻害をもたらす。実際、PD-1は、少なくとも部分的には、T細胞の最適な活性化のために必要な主要な共刺激経路、CD28シグナル伝達の阻害を通して、T細胞活性化を抑制することが示されている。したがって、PD-1/PD-L1経路は、生理学的条件においては、T細胞応答の大きさおよび機能的活性を制御することによって、炎症反応中の組織傷害の制限および自己寛容の維持において重要な役割を果たす。病理学的状況においては、腫瘍免疫および自己免疫疾患の発症に関与する。
【0066】
がんにおいて、阻害性受容体PD-1の発現は、持続性の抗原および炎症による刺激のために機能不全表現型を示す疲弊T細胞の特徴と見なされている。さらに、腫瘍微小環境におけるPD-L1のアップレギュレーションは、T細胞上のPD-1との相互作用によって、腫瘍が宿主免疫系から逃れることを可能にすることが示されている。PD-L1は、多様な腫瘍組織において、腫瘍細胞もしくは免疫浸潤細胞のいずれか、またはその両方において発現されていることを、複数の研究が報告している。患者において、モノクローナル抗体を使用してPD-1とPD-L1との相互作用を阻止することは、ある範囲のがん適応症において成功した治療であることが判明しており、T細胞疲弊の発生の逆転または防止によって、そして腫瘍流入領域リンパ節におけるT細胞プライミング中のT細胞の増大の促進によっても、抗腫瘍T細胞応答を増強すると広く考えられている。しかしながら、PD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤によって達成されている患者の転帰の相当の改善にも関わらず、これらの治療に対する持続的奏効は、ほんの少数の患者でしか観察されず、内因性耐性または獲得耐性が一般的である。
【0067】
CD47およびPD-L1と結合する例示的な二重特異性抗体
本発明の二重特異性抗体は、CD47に特異的である1個の抗原結合領域と、PD-L1に特異的である第2の抗原結合領域とを有する。換言すると、二重特異性抗体は、CD47およびPD-L1に対して一価である。二重特異性抗体は、共通の重鎖を共有している。重鎖は、天然重鎖である(すなわち、変異を含有しない)。重鎖は、エフェクター機能(ADCCおよび/またはC1q結合)の効力が高いIgG1またはIgG3アイソタイプのものである。任意で、二重特異性抗体は、異なる型の軽鎖を有する。例えば、一方の軽鎖はκ軽鎖であり、他方の軽鎖はλ軽鎖である(すなわち、κλボディ)。軽鎖が異なることは、二重特異性のものが、κセレクト樹脂およびλセレクト樹脂を使用して容易に精製されることを可能にする。
【0068】
CD7抗原結合領域が由来し得る例示的なCD47抗体には、K2抗体が含まれる。PD-L1抗原結合領域が由来し得る例示的なPD-L1抗体には、S8抗体、S9抗体、S37抗体、S14抗体、S15抗体、S17抗体、S57抗体、S58抗体、S28抗体、S30抗体、S94抗体、S23抗体、S46抗体、S71抗体、S79抗体、S93抗体、S96抗体、およびS100抗体が含まれる。
【0069】
いくつかの態様において、CD47と結合する第1の抗原結合領域を少なくとも含む例示的な本発明の二重特異性抗体は、表1、2、および3に示されるCDR配列より選択される重鎖相補性決定領域および軽鎖相補性決定領域(CDR)の組み合わせを含む。表1、2、および3に示されるCDRは、IMGT命名法に従って定義されている(オンライン(http://www.imgt.org/)で入手可能な、IMGT(登録商標)、international ImMunoGeneTics information system(登録商標)を参照されたい)。
【0070】
いくつかの態様において、例示的な本発明の二重特異性抗体は、表1に示されるCDRH1、CDRH2、およびCDRH3のアミノ酸配列より選択される重鎖CDRアミノ酸配列の組み合わせを含む重鎖、表2に示されるCDRL1、CDRL2、およびCDRL3のアミノ酸配列より選択される第1の軽鎖CDRアミノ酸配列のセットを含む少なくとも第1の軽鎖、ならびに表3に示されるCDRL1、CDRL2、およびCDRL3の配列より選択される第2の軽鎖CDRアミノ酸配列のセットを含む少なくとも第2の軽鎖を含む。
【0071】
いくつかの態様において、例示的な本発明の二重特異性抗体は、CD47と結合する第1の抗原結合領域、およびPD-L1と結合する第2の抗原結合領域を含み、ここで、第1の抗原結合領域は、表1に示される重鎖相補性決定領域(CDR)の組み合わせと、表2に示されるCDR配列より選択される軽鎖CDRの組み合わせとを含み、第2の抗原結合領域は、表1に示される重鎖相補性決定領域(CDR)の組み合わせと、表3に示されるCDR配列より選択される軽鎖CDRの組み合わせとを含む。
【0072】
(表1)共通の重鎖CDR
【0073】
(表2)抗CD47 κ軽鎖CDR
【0074】
(表3)抗PD-L1 λ軽鎖CDR
【0075】
いくつかの態様において、K2×S8二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:20のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0076】
いくつかの態様において、K2×S8二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:32の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0077】
いくつかの態様において、K2×S8二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:30に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0078】
いくつかの態様において、K2×S9二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:21のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0079】
いくつかの態様において、K2×S9二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:36の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0080】
いくつかの態様において、K2×S9二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:34に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0081】
いくつかの態様において、K2×S37二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:8のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:15のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:22のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0082】
いくつかの態様において、K2×S37二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:40の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0083】
いくつかの態様において、K2×S37二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:38に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0084】
いくつかの態様において、K2×S14二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:23のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0085】
いくつかの態様において、K2×S14二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:44の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0086】
いくつかの態様において、K2×S14二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:42に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0087】
いくつかの態様において、K2×S15二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0088】
いくつかの態様において、K2×S15二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:48の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:47のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0089】
いくつかの態様において、K2×S15二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:46に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0090】
いくつかの態様において、K2×S17二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:25のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0091】
いくつかの態様において、K2×S17二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:52の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0092】
いくつかの態様において、K2×S17二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:50に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0093】
いくつかの態様において、K2×S57二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0094】
いくつかの態様において、K2×S57二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:56の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:55のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0095】
いくつかの態様において、K2×S57二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:54に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:53のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0096】
いくつかの態様において、K2×S58二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:9のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:16のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:24のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0097】
いくつかの態様において、K2×S58二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:60の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:59のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0098】
いくつかの態様において、K2×S58二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:58に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:57のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0099】
いくつかの態様において、K2×S28二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0100】
いくつかの態様において、K2×S28二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:64の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:63のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0101】
いくつかの態様において、K2×S28二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:62に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:61のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0102】
いくつかの態様において、K2×S30二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:10のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:17のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:98のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0103】
いくつかの態様において、K2×S30二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:68の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:67のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0104】
いくつかの態様において、K2×S30二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:66に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:65のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0105】
いくつかの態様において、K2×S94二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:11のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0106】
いくつかの態様において、K2×S94二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:72の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:71のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0107】
いくつかの態様において、K2×S94二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:70に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:69のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0108】
いくつかの態様において、K2×S23二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:12のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0109】
いくつかの態様において、K2×S23二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:76の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:75のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0110】
いくつかの態様において、K2×S23二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:74に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:73のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0111】
いくつかの態様において、K2×S46二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:13のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:26のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0112】
いくつかの態様において、K2×S46二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:80の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:79のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0113】
いくつかの態様において、K2×S46二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:78に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:77のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0114】
いくつかの態様において、K2×S71二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:27のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0115】
いくつかの態様において、K2×S71二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:84の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:83のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0116】
いくつかの態様において、K2×S71二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:82に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:81のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0117】
いくつかの態様において、K2×S79二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:14のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:19のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:28のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0118】
いくつかの態様において、K2×S79二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:88の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:87のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0119】
いくつかの態様において、K2×S79二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:86に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:85のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0120】
いくつかの態様において、K2×S93二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:101のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0121】
いくつかの態様において、K2×S93二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:109の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0122】
いくつかの態様において、K2×S93二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:90に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0123】
いくつかの態様において、K2×S96二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:102のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0124】
いくつかの態様において、K2×S96二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:110の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:95のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0125】
いくつかの態様において、K2×S96二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:94に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:93のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0126】
いくつかの態様において、K2×S100二重特異性抗体は、SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含むCDRH1と、SEQ ID NO:2のアミノ酸配列を含むCDRH2と、SEQ ID NO:3のアミノ酸配列を含むCDRH3とを含む重鎖、SEQ ID NO:89のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:92のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:96のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むκ軽鎖、およびSEQ ID NO:103のアミノ酸配列を含むCDRL1と、SEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含むCDRL2と、SEQ ID NO:97のアミノ酸配列を含むCDRL3とを含むλ軽鎖を有する。
【0127】
いくつかの態様において、K2×S100二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、SEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域、およびSEQ ID NO:100の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:99のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0128】
いくつかの態様において、K2×S100二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変および定常領域、SEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖、ならびにSEQ ID NO:114に示される核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:113のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0129】
本明細書に記載される例示的な抗CD47単一特異性抗体、抗PD-L1単一特異性抗体、および抗CD47抗PD-L1二重特異性抗体の各々は、下記のアミノ酸配列および対応する核酸配列に示されるように、共通の重鎖(HC)を含み、抗CD47抗体および抗PD-L1抗体については、1本のκ鎖または1本のλ鎖、単一特異性二重特異性抗体については、1本のκ軽鎖および1本のλ軽鎖(LC)を含む。下記の例示的な抗CD47、抗PD-L1の一価抗体および二重特異性抗体の各々は、下記のアミノ酸配列および対応する核酸配列に示されるように、重鎖可変ドメイン(VH)を含み、抗CD47抗体および抗PD-L1抗体については、1個のκ軽鎖可変ドメインまたは1個のλ軽鎖可変ドメイン、一価抗体および二重特異性抗体については、1個のκ軽鎖可変ドメインおよび1個のλ軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。
【0130】
以下の抗体配列が、例として本明細書において提供されるが、これらの配列は、当技術分野において認識されている多様な技術のうちのいずれかを使用して、二重特異性抗体を生成するため、使用され得ることを理解されたい。二重特異性フォーマットの例には、Fabアーム交換に基づく二重特異性IgG(Gramer et al.,2013 MAbs.5(6));CrossMabフォーマット(Klein C et al.,2012 MAbs 4(6));強制ヘテロ二量体化アプローチ、例えば、SEEDテクノロジー(Davis JH et al.,2010 Protein Eng des Sel.23(4):195-202)、静電ステアリング(Gunasekaran K et al.,J Biol Chem.2010 285(25):19637-46)、もしくはノブ・インツー・ホール(Ridgway JB et al.,Protein Eng.1996 9(7):617-21)、またはホモ二量体形成を防止するその他の変異セット(Von Kreudenstein TS et al.,2013 MAbs.5(5):646-54)に基づく複数のフォーマット;断片に基づく二重特異性フォーマット、例えば、タンデムscFv(例えば、BiTE)(Wolf E et al.,2005 Drug Discov.Today 10(18):1237-44);二重特異性四価抗体(Portner LM et al.,2012 Cancer Immunol Immunother.61(10):1869-75);二重親和性リターゲティング分子(Moore PA et al.,2011 Blood.117(17):4542-51)、ダイアボディ(Kontermann RE et al.,Nat Biotechnol.1997 15(7):629-31)が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0131】
例示的な抗CD47、抗PD-L1の単一特異性抗体および二重特異性抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖の可変領域および共通領域を含む。
【0132】
例示的な抗CD47、抗PD-L1の単一特異性抗体および二重特異性抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0133】
抗CD47抗体
例示的な抗CD47抗体の配列を以下に示す。軽鎖可変領域は、イタリック体の下線付きのテキストで示される。CDR配列は、太字の下線付きのテキストで示される。
【0134】
「K2」または「Ka3」または「K2_KA3 VKCK aCD47 IGKV1-39」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:104の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:107のアミノ酸配列を含むκ軽鎖を有する。
【0135】
「K2」または「Ka3」または「K2_KA3 VKCK aCD47 IGKV1-39」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:106の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:105のアミノ酸配列を含むκ軽鎖可変領域を有する。
【0136】
抗PD-L1抗体
例示的な抗PD-L1抗体の配列を以下に示す。軽鎖可変領域は、イタリック体の下線付きのテキストで示される。CDR配列は、太字の下線付きのテキストで示される。
【0137】
「S8」または「S8_Sa10_1A9_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:30の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:29のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0138】
「S8」または「S8_Sa10_1A9_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:32の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:31のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0139】
「S9」または「S9_Sa10_1D9_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44-AA」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:34の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:33のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0140】
「S9」または「S9_Sa10_1D9_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44-AA」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:36の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:35のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0141】
「S37」または「S37_Sa10_1D7_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:38の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0142】
「S37」または「S37_Sa10_1D7_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:40の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0143】
「S14」または「S14_Sh3_1C6_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:42の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:41のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0144】
「S14」または「S14_Sh3_1C6_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:44の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:43のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0145】
「S15」または「S15_Sh3_1E2_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:46の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:45のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0146】
「S15」または「S15_Sh3_1E2_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:48の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:47のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0147】
「S17」または「S17_Sh3_1D9_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:50の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:49のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0148】
「S17」または「S17_Sh3_1D9_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:52の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0149】
「S57」または「S57_Sh3_2D9_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:54の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:53のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0150】
「S57」または「S57_Sh3_2D9_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:56の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:55のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0151】
「S58」または「S58_Sh3_1G5_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:58の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:57のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0152】
「S58」または「S58_Sh3_1G5_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:60の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:59のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0153】
「S28」または「S28_Sa2_1G7_VLCL2 aPDL1 IGLV2-44」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:62の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:61のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0154】
「S28」または「S28_Sa2_1G7_VLCL2 aPDL1 IGLV2-44」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:64の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:63のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0155】
「S30」または「S30_Sa2_C10_VLCL2 aPDL1 IGLV2-44」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:66の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:65のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0156】
「S30」または「S30_Sa2_C10_VLCL2 aPDL1 IGLV2-44」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:68の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:67のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0157】
「S94」または「S94_Sa2_G11_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:70の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:69のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0158】
「S94」または「S94_Sa2_G11_VLCL2 aPDL1 IGLV1-44」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:72の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:71のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0159】
「S23」または「S23_Sc3_1H4_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:74の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:73のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0160】
「S23」または「S23_Sc3_1H4_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:76の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:75のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0161】
「S46」または「S46_Sc3_1E4_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:78の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:77のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0162】
「S46」または「S46_Sc3_1E4_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:80の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:79のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0163】
「S71」または「S71_Sc3_2C6_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:82の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:81のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0164】
「S71」または「S71_Sc3_2C6_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:84の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:83のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0165】
「S79」または「S79_Sc3_1G7_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:86の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:85のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0166】
「S79」または「S79_Sc3_1G7_VLCL2 aPDL1 IGLV2-23」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:88の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:87のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0167】
「S93」または「S93 IgG_Sa2_1F9」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:90の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:108のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0168】
「S93」または「S93 IgG_Sa2_1F9」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:109の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:91のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0169】
「S96」または「S96 IgG_Sa2_H10」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:94の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:93のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0170】
「S96」または「S96 IgG_Sa2_H10」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:110の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:95のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0171】
「S100」または「S100 IgG_Sa2_1E5」抗体は、SEQ ID NO:5の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:4のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および重鎖共通領域、ならびにSEQ ID NO:114の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:113のアミノ酸配列を含むλ軽鎖を有する。
【0172】
「S100」または「S100 IgG_Sa2_1E5」抗体は、SEQ ID NO:7の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:6のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、およびSEQ ID NO:100の核酸配列によってコードされるSEQ ID NO:99のアミノ酸配列を含むλ軽鎖可変領域を有する。
【0173】
ダミー軽鎖
ダミー軽鎖1(SEQ ID NO:112)は、SEQ ID NO:111に示される核酸配列によってコードされる。
【0174】
ダミー可変軽鎖ドメイン1(SEQ ID NO:206)は、SEQ ID NO:205に示される核酸配列によってコードされる。
【0175】
ダミー軽鎖2(SEQ ID NO:208)は、SEQ ID NO:207に示される核酸配列によってコードされる。
【0176】
ダミー可変軽鎖ドメイン2(SEQ ID NO:210)は、SEQ ID NO:209に示される核酸配列によってコードされる。
【0177】
定義
別様に定義されている場合を除き、本発明に関連して用いられる科学技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有する。さらに、本文がそれ以外であることを必要としている場合を除き、単数形は複数形を含み、複数形は単数形を含む。一般的に、本明細書に記載される細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられる名称、およびそれらの技術は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる。組み換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織培養および形質転換に関して、標準的な技術が用いられる(例えば、電気穿孔、リポフェクション)。酵素反応および精製技術は、製造元の仕様書に従って、または当技術分野において一般的に行われるように、または本明細書に記載されるように行われる。前述の技術および技法は一般的に、当技術分野において周知の通常の方法に従っておよび本明細書を通して引用および考察される様々な一般的なおよびより特異的な参考文献に記述されるように行われる。例えば、Sambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989))を参照されたい。本明細書に記載される分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関連して用いられる名称、ならびにそれらの実験技法および技術は、当技術分野において周知であり、一般的に用いられる技法および技術である。化学合成、化学分析、薬剤調製、調合、ならびに患者への送達および処置に関して、標準的な技術が用いられる。
【0178】
本開示に従って用いられるように、以下の用語は、それ以外であることを示している場合を除き、以下の意味を有すると理解される。
【0179】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫活性部分、すなわち抗原に特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を含む分子を意味する。「と特異的に結合する」、または「と免疫反応する」、または「免疫特異的に結合する」とは、抗体が所望の抗原の1つまたは複数の抗原性決定基と反応するが、他のポリペプチドとは反応しないか、またはかなり低い親和性(Kd>10-6)で結合することを意味する。抗体としては、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、dAb(ドメイン抗体)、一本鎖、Fab、Fab'、およびF(ab')2断片、scFv、ならびにFab発現ライブラリが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0180】
抗体の基本構造単位は、四量体を含むことが知られている。各四量体は、各々の対が1つの「軽」鎖(約25 kDa)と1つの「重」鎖(約50~70 kDa)とを有する、ポリペプチド鎖の2つの同一の対で構成される。各鎖のアミノ末端部分は、抗原認識を主に担う約100個から110個またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、エフェクター機能を主に担う定常領域を定義する。一般的に、ヒトから得られる抗体分子は、分子に存在する重鎖の性質が互いに異なるIgG、IgM、IgA、IgE、およびIgDのクラスのいずれかに関連する。あるクラスは、IgG1、IgG2、およびその他などのサブクラスも同様に有する。さらに、ヒトでは、軽鎖はカッパ鎖またはラムダ鎖でありうる。
【0181】
本明細書において用いられる「モノクローナル抗体」(MAb)、または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、独自の軽鎖遺伝子産物と独自の重鎖遺伝子産物からなる抗体分子の1つの分子種のみを含む抗体分子集団を意味する。特に、モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は、その集団の全ての分子において同一である。MAbは、抗原に対する独自の結合親和性を特徴とする抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含む。
【0182】
「抗原結合領域」または「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、免疫グロブリン分子の、抗原結合に関与する部分をさす。抗原結合部位は、重(「H」)鎖および軽(「L」)鎖のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。重鎖および軽鎖のV領域においては、「超可変領域」と呼ばれる、高度の多様性を有する3個のストレッチが、「フレームワーク領域」または「FR」として公知の、より保存された隣接するストレッチの間に介在している。したがって、「FR」という用語は、免疫グロブリンの超可変領域の間および隣に天然に見出されるアミノ酸配列をさす。抗体分子において、軽鎖の3個の超可変領域および重鎖の3個の超可変領域は、抗原結合表面が形成されるよう、三次元空間において相対的に配置される。抗原結合表面は、結合した抗原の三次元表面に対して相補的であり、重鎖および軽鎖の各々の3個の超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。抗体のアミノ酸配列のナンバリング、および相補性決定領域の同定のための様々な方法が、当技術分野において公知である。例えば、Kabatナンバリングシステム(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Protein of immunological interest,Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,US Government Printing Office(1991)を参照されたい)またはIMGTナンバリングシステム(オンライン(http://www.imgt.org/)で入手可能な、IMGT(登録商標)、international ImMunoGeneTics information system(登録商標)を参照されたい)。IMGTナンバリングシステムは、全ての脊椎動物種に由来する免疫グロブリン(IG)およびT細胞受容体(TR)において、コード配列のアミノ酸位置、対立遺伝子のアライメントを決定し、配列を容易に比較するため、当技術分野において、ルーチンに使用されており、信頼性のある正確なシステムとして受け入れられている。IMGTデータの正確さおよび一貫性は、免疫遺伝学および免疫情報学のための、最初の、そしてこれまでのところ独特のオントロジーであるIMGT-ONTOLOGYに基づく(Lefranc.M.P.et al.,Biomolecules,2014 Dec;4(4),1102-1139を参照されたい)。IMGTのツールおよびデータベースは、配列の大規模なリポジトリから構築されたIMGTリファレンスディレクトリに対して実行される。IMGTシステムにおいては、適宜、エクソン境界を考慮して、IG VドメインとIG Cドメインとが区切られる。したがって、より多くの配列のIMGTデータベースへの利用可能性、IMGTエクソンナンバリングシステムは、コード配列内のアミノ酸位置を確実に決定するため、そして対立遺伝子のアライメントのため、当業者によって使用され得、「使用されている」。さらに、IMGTの独特のナンバリングと他のナンバリング(すなわち、Kabat)との対応は、IMGT Scientificチャートにおいて入手可能である(Lefranc.M.P.et al.,Biomolecules,2014 Dec;4(4),1102-1139を参照されたい)。
【0183】
「超可変領域」または「可変領域」という用語は、抗体の、典型的には抗原結合を担うアミノ酸残基をさす。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」もしくは「CDR」に由来するアミノ酸残基(例えば、Kabatナンバリングシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))に従ってナンバリングされたとき、VL内の残基24-34(L1)、50-56(L2)、および89-97(L3)付近、ならびにVH内の31-35(H1)、50-65(H2)、および95-102(H3)付近);ならびに/または「超可変ループ」に由来する残基(例えば、Chothiaナンバリングシステム(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))に従ってナンバリングされたとき、VL内の残基24-34(L1)、50-56(L2)、および89-97(L3)、ならびにVH内の26-32(H1)、52-56(H2)、および95-101(H3));ならびに/または「超可変ループ」VCDRに由来する残基(例えば、IMGTナンバリングシステム(Lefranc,M.P.et al.Nucl.Acids Res.27:209-212(1999)、Ruiz,M.e al.Nucl.Acids Res.28:219-221(2000))に従ってナンバリングされたとき、VL内の残基27-38(L1)、56-65(L2)、および105-120(L3)、ならびにVH内の27-38(H1)、56-65(H2)、および105-120(H3))を含む。任意で、抗体は、AHo(Honneger,A.and Plunkthun,A.J.Mol.Biol.309:657-670(2001))に従ってナンバリングされたとき、VL内の28、36(L1)、63、74-75(L2)、および123(L3)、ならびにVH内の28、36(H1)、63、74-75(H2)、および123(H3)の点のうちの1つまたは複数に、対称的な挿入を有する。
【0184】
本明細書において用いられる「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、scFv、またはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面官能基からなり、通常、特異的三次元構造特徴ならびに特異的電荷特徴を有する。例えば、抗体は、ポリペプチドのN末端またはC末端ペプチドに対して作製されうる。抗体は、解離定数が≦1μM、例えば≦100 nM、好ましくは≦10 nM、および最も好ましくは≦1 nMである場合に、抗原に特異的に結合すると言われる。
【0185】
本明細書において用いられる「免疫学的に結合する」および「免疫学的結合特性」という用語は、免疫グロブリン分子と、それに対して免疫グロブリン分子が特異的である抗原とのあいだに起こるタイプの非共有的相互作用を意味する。免疫学的結合相互作用の強度または親和性は、相互作用の解離定数(Kd)に関して表記することができ、Kdが小さいほど、親和性が大きいことを表す。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野において周知の方法を用いて定量することができる。そのような1つの方法は、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離速度を測定する段階を伴い、それらの速度は、複合体パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメータに依存する。このように、濃度ならびに実際の結合速度および解離速度を計算することによって、「オン速度定数」(Kon)および「オフ速度定数」(Koff)の両方を決定することができる(Nature 361 : 186-87 (1993)を参照されたい)。Koff/Konの比率は、親和性に関連しない全てのパラメータの削除を可能にして、解離定数Kdに等しい(一般的に、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。本発明の抗体は、放射リガンド結合アッセイまたは当業者に公知の類似のアッセイなどのアッセイによって測定した場合に、平衡結合定数(Kd)が≦1μM、例えば≦100 nM、好ましくは≦10 nM、およびより好ましくは≦1 nMであれば、標的に特異的に結合すると言われる。
【0186】
本明細書において用いられる「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、もしくは合成起源のポリヌクレオチド、またはそのいくつかの組み合わせを意味し、その起源のために、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)「単離されたポリヌクレオチド」が天然において見いだされるポリヌクレオチドの全てまたは一部に会合していない、(2)天然において結合していないポリヌクレオチドに機能的に結合している、または(3)より大きい配列の一部として天然において存在しない。本発明に従うポリヌクレオチドは、本明細書に記載される重鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子および軽鎖免疫グロブリン分子をコードする核酸分子を含む。
【0187】
「単離されたタンパク質」という用語は、cDNA、組み換え型RNA、もしくは合成起源のタンパク質、またはそのいくつかの組み合わせを意味し、その起源または由来源のために、「単離されたタンパク質」は、(1)天然において見いだされるタンパク質に会合していない、(2)同じ起源の他のタンパク質を含まない、例えば海洋タンパク質を含まない、(3)異なる種からの細胞によって発現される、または(4)天然において存在しない。
【0188】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書においてポリペプチド配列の本来のタンパク質、断片、またはアナログを意味するために、一般的な用語として用いられる。ゆえに、本来のタンパク質断片およびアナログは、ポリペプチドに属する種である。本発明に従うポリペプチドは、本明細書に記載される重鎖免疫グロブリン分子および軽鎖免疫グロブリン分子を含むとともに、重鎖免疫グロブリン分子にカッパ軽鎖免疫グロブリン分子などの軽鎖免疫グロブリン分子を組み合わせた、およびその逆によって形成される抗体分子、ならびにその断片およびアナログを含む。
【0189】
本明細書において物体に適用される場合に用いられる「天然に存在する」という用語は、物体を天然において見いだすことができるという事実を意味する。例えば、天然の起源から単離することができる生物(ウイルスを含む)に存在して、研究室において人為的にまたはそれ以外の方法で意図的に改変されていないポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列は、天然に存在する。
【0190】
本明細書において用いられる「機能的に連結した」という用語は、そのように記述された成分の位置がその意図される様式でそれらを機能させる関係にあることを意味する。コード配列に「機能的に連結された」制御配列は、コード配列の発現が、制御配列と適合性の条件下で達成されるようにライゲーションされる。
【0191】
本明細書において用いられる「制御配列」という用語は、それらがライゲーションされるコード配列の発現およびプロセシングを行うために必要であるポリヌクレオチド配列を意味する。そのような制御配列の性質は、原核細胞中の宿主生物に応じて異なり、そのような制御配列は一般的に、真核細胞においてプロモーター、リボソーム結合部位、および転写終止配列を含み、一般的に、そのような制御配列はプロモーターおよび転写終止配列を含む。「制御配列」という用語は、少なくとも、その存在が発現およびプロセシングにとって必須である全ての成分を含むことを意図し、同様にその存在が有利である追加の成分、例えばリーダー配列、および融合パートナー配列を含むことができる。本明細書において言及される「ポリヌクレオチド」という用語は、長さが少なくとも10塩基のリボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドのポリマーホウ素、またはいずれかのタイプのヌクレオチドの修飾型を意味する。この用語は、DNAの一本鎖および二本鎖型を含む。
【0192】
本明細書において用いられる、20種類の通常アミノ酸およびその略語は、慣例的用法に従う。Immunology - A Synthesis (2nd Edition, E.S. Golub and D.R. Gren, Eds., Sinauer Associates, Sunderland7 Mass. (1991))を参照されたい。20種類の通常アミノ酸の立体異性体(例えば、D-アミノ酸)、α-、α-二置換アミノ酸などの非天然アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、乳酸、および他の非通常アミノ酸も同様に、本発明のポリペプチドにとって適した成分でありうる。非通常アミノ酸の例には、4-ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、ε-N,N,N-トリメチルリジン、ε-N-アセチルリジン、O-ホスホセリン、N-アセチルセリン、N-ホルミルメチオニン、3-メチルヒスチジン、5-ヒドロキシリジン、σ-N-メチルアルギニン、および他の類似のアミノ酸およびイミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン)が挙げられる。本明細書において用いられるポリペプチドの表記において、標準的な用法および慣例に従って、左手方向はアミノ末端方向であり、右手方向はカルボキシ末端方向である。
【0193】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な同一性」という用語は、2つのペプチド配列が、プログラムGAPまたはBESTFITなどによって、デフォルトのギャップの重みを用いて最適に整列させた場合に、少なくとも80%の配列同一性、好ましくは少なくとも90%の配列同一性、より好ましくは少なくとも95%の配列同一性、および最も好ましくは少なくとも99%の配列同一性を共有することを意味する。
【0194】
好ましくは、同一でない残基の位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。
【0195】
保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の相互交換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシンであり、脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群は、セリンおよびトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギンおよびグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、リジン、アルギニン、およびヒスチジンであり、ならびにイオウ含有側鎖を有するアミノ酸の群は、システインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。
【0196】
本明細書において考察されるように、抗体または免疫グロブリン分子のアミノ酸配列における軽微な変化は、アミノ酸配列の変化が、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、および最も好ましくは99%を維持する限り、本発明に包含されると企図される。特に、保存的アミノ酸交換が企図される。保存的交換は、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリー内で起こる交換である。遺伝子コードアミノ酸は一般的に、ファミリーに分けられる:(1)酸性アミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸であり;(2)塩基性アミノ酸は、リジン、アルギニン、ヒスチジンであり;(3)非極性アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファンであり、および(4)非荷電極性アミノ酸は、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンである。親水性アミノ酸には、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、リジン、セリン、およびトレオニンが挙げられる。疎水性アミノ酸には、アラニン、システイン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、およびバリンが挙げられる。他のアミノ酸ファミリーには、(i)脂肪族ヒドロキシファミリーであるセリンおよびトレオニン;(ii)アミド含有ファミリーであるアスパラギンおよびグルタミン;(iii)脂肪族ファミリーであるアラニン、バリン、ロイシン、およびイソロイシン;ならびに(iv)芳香族ファミリーであるフェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンが挙げられる。例えば、ロイシンをイソロイシンまたはバリンに、アスパラギン酸をグルタミン酸に、トレオニンをセリンに単発的に交換しても、またはアミノ酸を構造的に関連するアミノ酸に類似の交換を行っても、特に交換がフレームワーク部位内でのアミノ酸を伴わない場合、得られた分子の結合または特性に対して主要な効果を有しないことは妥当に予想される。アミノ酸の変化によって、機能的ペプチドが得られるか否かは、ポリペプチド誘導体の比活性をアッセイすることによって容易に決定することができる。アッセイは、本明細書において詳細に記述される。抗体または免疫グロブリン分子の断片またはアナログは、当業者によって容易に調製することができる。断片またはアナログの好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界付近に存在する。構造および機能的ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを公共または固有の配列データベースと比較することによって同定することができる。好ましくは、コンピューター化比較法を用いて、公知の構造および/または機能の他のタンパク質に存在する配列モチーフまたは予想されるタンパク質コンフォメーションドメインを同定する。公知の三次元構造に折り畳まれるタンパク質配列を同定する方法は公知である。Bowie et al. Science 253: 164 (1991)。このように、前述の例は、当業者が、本発明に従って構造および機能的ドメインを定義するために用いられうる配列モチーフおよび構造コンフォメーションを認識できることを証明する。
【0197】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低減させる、(2)酸化に対する感受性を低減させる、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変化させる、(4)結合親和性を変化させる、および(4)そのようなアナログの他の物理化学的または機能的特性を付与または改変する置換である。アナログは、天然に存在するペプチド配列以外の配列の様々なムテインを含むことができる。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換(好ましくは、保存的アミノ酸置換)を、天然に存在する配列(好ましくは分子間接触を形成するドメイン外のポリペプチドの部分において)に行ってもよい。保存的アミノ酸置換は、親配列の構造的特徴を実質的に変化させてはならない(例えば、交換アミノ酸は、親配列に存在するらせんを切断するまたは親配列を特徴付けする他のタイプの二次構造を崩壊させる傾向があってはらなない)。当技術分野において認識されるポリペプチドの二次および三次構造の例は、Proteins, Structures and Molecular Principles (Creighton, Ed., W. H. Freeman and Company, New York (1984)); Introduction to Protein Structure (C. Branden and J. Tooze, eds., Garland Publishing, New York, N.Y. (1991)); and Thornton et at. Nature 354: 105 (1991)において記述される。
【0198】
本明細書において用いられる、「標識」または「標識された」という用語は、例えば、印をつけたアビジン(例えば、光学または熱量測定法によって検出することができる蛍光マーカーまたは酵素活性を含むストレプトアビジン)によって検出することができる、ビオチニル部分のポリペプチドに、放射標識アミノ酸または連結部分を組み入れることによって検出可能なマーカーを組み入れることを意味する。ある状況において、標識またはマーカーはまた、治療的でありうる。ポリペプチドおよび糖タンパク質を標識する様々な方法が当技術分野において公知であり、用いられうる。ポリペプチドの標識の例には、以下が挙げられるがこれらに限定されるわけではない:放射性同位元素または放射性核種(例えば、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、111In、125I、131I)、蛍光標識(例えば、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、p-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ)、化学発光物質、ビオチニル基、二次レポーターによって認識される既定のポリペプチドエピトープ(例えば、ロイシンジッパー対配列、二次抗体の結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ)。いくつかの態様において、標識は、可能性がある立体妨害を低減させるために、様々な長さのスペーサーアームによって結合される。本明細書において用いられる「薬剤または薬物」という用語は、患者に適切に投与した場合に、所望の治療効果を誘導することができる化学化合物または組成物を意味する。
【0199】
本明細書における他の化学用語は、The McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms (Parker, S., Ed., McGraw-Hill, San Francisco (1985))によって例証されるように、当技術分野における慣例的用法に従って用いられる。
【0200】
本明細書において用いられる「実質的に純粋な」とは、目的種が、存在する優勢な種であり(すなわち、モルに基づいて、組成物中の他の任意の個々の種より豊富に存在する)、好ましくは実質的に精製された画分は、目的種が、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルに基づいて)を含む組成物である。
【0201】
一般的に、実質的に純粋な組成物は、組成物に存在する全ての高分子種が約80%を超えて、より好ましくは約85%、90%、95%、および99%を超えて含むであろう。最も好ましくは、目的種は、組成物が本質的に1つの高分子種からなる、本質的に均一になるまで精製される(通常の検出法によって組成物中に汚染種を検出することができない)。
【0202】
患者という用語は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。
【0203】
抗体
当技術分野において公知の様々な技法を、例えば、CD47、腫瘍関連抗原、もしくは他の標的などの所定の標的に対する、またはその誘導体、断片、アナログ、ホモログ、もしくはオルソログに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体を産生するために用いてもよい(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照されたい)。
【0204】
抗体は、免疫血清の主にIgG画分を提供するプロテインAまたはプロテインGを用いるアフィニティクロマトグラフィーなどの周知の技術によって精製される。次に、または代わりに、求める免疫グロブリンの標的である特異的抗原またはそのエピトープを、免疫アフィニティクロマトグラフィーによって免疫特異的抗体を精製するためにカラム上に固定してもよい。免疫グロブリンの精製は、例えばD. Wilkinson(The Scientist, published by The Scientist, Inc., Philadelphia PA, Vol. 14, No. 8 (April 17, 2000), pp. 25-28)によって考察される。
【0205】
一部の態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、例えば本明細書において提供される実施例に記載される技法を用いることによって生成される。抗体はまた、例えばその表面上の所定の標的の高レベルを発現する細胞トランスフェクタントの組み合わせによってBALB/cマウスを免疫感作することによっても作製される。次に、骨髄腫/B細胞融合体から生じるハイブリドーマを、選択された標的に対する反応性に関してスクリーニングする。
【0206】
モノクローナル抗体は、例えばKohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)に記述される方法などのハイブリドーマ法を用いて調製される。ハイブリドーマ法において、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を典型的に、免疫物質に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を誘発するために、免疫物質によって免疫感作する。または、リンパ球をインビトロで免疫感作することができる。
【0207】
免疫物質は典型的に、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質を含む。一般的に、ヒト起源の細胞が望ましい場合、末梢血リンパ球が用いられ、または非ヒト哺乳動物起源が望ましい場合には脾細胞もしくはリンパ節細胞が用いられる。リンパ球を、ポリエチレングリコールなどの適した融合物質を用いて不死化細胞株に融合させて、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳動物細胞であり、詳しくは齧歯類、ウシ、およびヒト起源の骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウス骨髄腫細胞株が用いられる。融合していない不死化細胞の生育または生存を阻害する1つまたは複数の物質を好ましくは含む適した培養培地において、ハイブリドーマ細胞を培養することができる。例えば、親細胞が酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠如する場合、ハイブリドーマの培養培地は典型的に、HGPRT欠損細胞の生育を防止する物質であるヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジンを含む(「HAT培地」)であろう。
【0208】
好ましい不死化細胞株は、効率よく融合して、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である細胞株である。より好ましい不死化細胞株は、例としてSalk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Californiaおよびthe American Type Culture Collection, Manassas, Virginiaから得ることができるマウス骨髄腫細胞株である。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も同様にモノクローナル抗体を産生するために記述されている(Kozbor, J. Immunol, 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)を参照されたい)。
【0209】
ハイブリドーマ細胞を培養した培養培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の存在に関してアッセイすることができる。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されたモノクローナル抗体の結合特異性を、免疫沈降またはラジオイムノアッセイ(RIA)もしくは酵素免疫測定法(ELISA)などのインビトロ結合アッセイによって決定する。そのような技術およびアッセイは当技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えばMunson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のScatchard分析によって決定することができる。その上、モノクローナル抗体の治療応用では、標的抗原に対して高い程度の特異性および高い結合親和性を有する抗体を同定することが重要である。
【0210】
所望のハイブリドーマ細胞を同定した後、クローンを限界希釈技法によってサブクローニングして、標準的な方法によって生育させることができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103を参照されたい)。この目的のための適した培養培地は、例えばダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI 1640培地を含む。または、ハイブリドーマ細胞を、インビボで哺乳動物の腹水として生育させることができる。
【0211】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体を、例えばプロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーなどの通常の免疫グロブリン精製技法によって培養培地または腹水から単離または精製することができる。
【0212】
モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号に記述される方法などの組み換えDNA法によっても作製することができる。本発明のモノクローナル抗体をコードするDNAは、通常の技法を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離およびシークエンシングすることができる。本発明のハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの好ましい起源として役立つ。単離した後、DNAを発現ベクターの中に入れることができ、次に発現ベクターをサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはそれ以外では免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組み換え型宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得る。DNAはまた、例えばヒト重鎖および軽鎖定常ドメインのコード配列を相同なマウス配列の代わりに置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrison, Nature 368, 812-13 (1994)を参照されたい)、または非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合させることによって、改変することができる。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本発明の抗体の定常ドメインの代わりに置換することができ、または本発明の抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインの代わりに置換して、キメラ二価抗体を作製することができる。
【0213】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒト化抗体またはヒト抗体を含む。これらの抗体は、投与される免疫グロブリンに対してヒトが免疫応答を生じることがなく、ヒトに投与するために適している。抗体のヒト化型は、ヒト免疫グロブリンの配列で主に構成され、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含む、キメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖または断片(Fv、Fab、Fab'、F(ab')2、または抗体の他の抗原結合小配列など)である。ヒト化は、例えばWinterと共同研究者(Jones et al, Nature, 321 :522-525 (1986); Riechmann et al, Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen et al, Science, 239: 1534-1536 (1988))の方法に従うことによって、齧歯類CDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに置換することによって行われる。(同様に、米国特許第5,225,539号も参照されたい)。いくつかの例において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基を、対応する非ヒト残基に交換する。ヒト化抗体はまた、例えばレシピエント抗体またはインポートされたCDRもしくはフレームワーク配列のいずれにおいても見いだされない残基を含む。一般的に、ヒト化抗体は、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンの領域に対応し、およびフレームワーク領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域に対応する、少なくとも1つ、典型的に2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体は最適には、免疫グロブリン定常領域、典型的にヒト免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)を含む(Jones et al., 1986; Riechmann et al, 1988; and Presta, Curr. Op. Struct. Biol, 2:593-596 (1992))。
【0214】
完全ヒト型抗体は、CDRを含む軽鎖および重鎖の両方の全配列がヒト遺伝子から生じる抗体分子である。そのような抗体は、本明細書において「ヒト抗体」または「完全ヒト型抗体」と呼ばれる。モノクローナル抗体は、トリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al, 1983 Immunol Today 4: 72を参照されたい)、およびモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole, et al, 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照されたい)を用いることによって調製することができる。モノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることによって(Cote, et al, 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照されたい)、またはエプスタイン-バーウイルスによってインビトロでヒトB細胞を形質転換することによって(Cole, et al., 1985 In: MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照されたい)利用および産生されうる。
【0215】
加えて、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリを含むさらなる技術を用いて産生することもできる。(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol, 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)を参照されたい)。同様に、ヒト抗体は、トランスジェニック動物、例えば内因性の免疫グロブリン座が部分的または完全に不活化されているマウスにヒト免疫グロブリン座を導入することによって作製されうる。チャレンジすると、遺伝子再配列、アセンブリ、および抗体レパートリーを含む全ての局面においてヒトにおいて認められるものと類似するヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、およびMarks et al, Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg et al, Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild et al, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996); and Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)において記述される。
【0216】
加えて、ヒト抗体は、抗原によるチャレンジに応答して動物の内因性の抗体ではなく完全ヒト型抗体を産生するように改変されたトランスジェニック非ヒト動物を用いて産生されうる(PCT公報WO 94/02602を参照されたい)。非ヒト宿主における重鎖および軽鎖免疫グロブリン鎖をコードする内因性の遺伝子を、無能力化して、ヒト重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする活性な座を宿主ゲノムに挿入する。ヒト遺伝子を、例えば、必須のヒトDNAセグメントを含む酵母人工染色体を用いて組み入れる。次に、完全ではない修飾の相補物を含む中間のトランスジェニック動物を交雑することによって、所望の修飾の全てを提供する動物が子孫として得られる。そのような非ヒト動物の例は、PCT公報WO 96/33735およびWO 96/34096において開示されるXenomouse(商標)と呼ばれるマウスである。この動物は、完全ヒト型免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。抗体を、動物から、関心対象の免疫原による免疫感作後に、例えばポリクローナル抗体調製物として、直接得ることができ、またはモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマなどの動物に由来する不死化B細胞から得ることができる。加えて、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収して発現させて、抗体を直接得ることができ、またはさらに改変して、例えば一本鎖Fv(scFv)分子などの抗体のアナログを得ることができる。
【0217】
マウスがその例である、内因性の免疫グロブリン重鎖の発現を欠如する非ヒト宿主を産生する方法の例は、米国特許第5,939,598号に開示される。これは、座の再配列を防止するためにおよび再配列した免疫グロブリン重鎖座の転写物の形成を防止するために、胚幹細胞における少なくとも1つの内因性の重鎖座からJセグメント遺伝子を欠失させる段階であって、欠失が選択可能マーカーをコードする遺伝子を含むターゲティングベクターによって行われる段階、ならびにその体細胞および生殖細胞が選択可能マーカーをコードする遺伝子を含むトランスジェニックマウスを胚幹細胞から産生する段階を含む方法によって得ることができる。
【0218】
ヒト抗体などの関心対象の抗体を産生する1つの方法は、米国特許第5,916,771号に開示される。この方法は、ある培養哺乳動物宿主細胞に、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを導入する段階、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、別の哺乳動物宿主細胞に導入する段階、およびこれら2種類の細胞を融合させてハイブリッド細胞を形成する段階を含む。このハイブリッド細胞は、重鎖および軽鎖を含む抗体を発現する。
【0219】
この技法をさらに改善するために、免疫原における臨床的に関連するエピトープを同定する方法、および関連するエピトープに高い親和性で特異的に結合する抗体を選択する相関法が、PCT公報WO 99/53049に開示される。
【0220】
抗体は、上記の一本鎖抗体をコードするDNAセグメントを含むベクターによって発現されうる。
【0221】
これらは、ベクター、リポソーム、裸のDNA、アジュバント補助DNA、遺伝子銃、カテーテル等を含みうる。ベクターは、WO 93/64701に記述されるコンジュゲートなどの、ターゲティング部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)と核酸結合部分(例えば、ポリリジン)とを有する化学コンジュゲート、ウイルスベクター(例えば、DNAまたはRNAウイルスベクター)、標的部分(例えば、標的細胞に対して特異的な抗体)と核酸結合部分(例えば、プロタミン)とを含む融合タンパク質であるPCT/US 95/02140(WO 95/22618)に記述されるタンパク質などの融合タンパク質、プラスミド、ファージ等を含む。ベクターは、染色体、非染色体、または合成ベクターでありうる。
【0222】
好ましいベクターは、ウイルスベクター、融合タンパク質、および化学コンジュゲートを含む。レトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイルスを含む。DNAウイルスベクターが好ましい。これらのベクターは、オルトポックスまたはアビポックスベクターなどのポックスベクター、I型単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターなどのヘルペスウイルスベクター(Geller, A. I. et al, J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A. I. et al, Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993); Geller, A. I., et al, Proc Natl. Acad. Sci USA 87: 1149 (1990)を参照されたい)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al, Science, 259:988 (1993); Davidson, et al, Nat. Genet 3:219 (1993); Yang, et al, J. Virol. 69:2004 (1995)を参照されたい)、およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt, M. G. et al, Nat. Genet. 8: 148 (1994)を参照されたい)を含む。
【0223】
ポックスウイルスベクターは、細胞質に遺伝子を導入する。アビポックスウイルスベクターによって、核酸のごく短期間の発現が起こる。アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、神経細胞に核酸を導入するために好ましい。アデノウイルスベクターでは、核酸の発現は、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月間)より短期間(約2ヶ月間)であるが、アデノ随伴ウイルスでの発現は、HSVベクターより短期間である。選択される特定のベクターは、標的細胞および処置される状態に依存するであろう。導入は、標準的な技術によって、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によって行われうる。遺伝子移入様式の例には、例えば裸のDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、電気穿孔、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが挙げられる。
【0224】
ベクターは、本質的に任意の所望の標的細胞を標的とするために用いることができる。例えば、定位注射を用いてベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を所望の位置に向けることができる。加えて、SynchroMed Infusionシステムなどのミニポンプ注入システムを用いて脳室内(icv)注入によって、粒子を送達することができる。対流と呼ばれるバルクフローに基づく方法はまた、脳の広い領域に大きい分子を送達するために有効であることが証明されており、標的細胞にベクターを送達するために有用でありうる(Bobo et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91 :2076-2080 (1994); Morrison et al, Am. J. Physiol. 266:292-305 (1994)を参照されたい)。用いることができる他の方法は、カテーテル、静脈内、非経口、腹腔内および皮下注射、ならびに経口または他の公知の投与経路を含む。
【0225】
二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する抗体である。本件の例において、結合特異性の1つは、CD47またはその任意の断片などの標的に対するものである。第二の結合標的は、任意の他の抗原であり、都合よくは、細胞表面タンパク質または受容体もしくは受容体サブユニットである。
【0226】
二重特異性抗体を作製する方法は当技術分野において公知である。従来、二重特異性抗体の組み換えによる産生は、2つの重鎖が異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖/軽鎖対の同時発現に基づいている(Milstein and Cuello, Nature, 305 :537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖および軽鎖が無作為に組み合わさるために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、そのうちの1つのみが正しい二重特異性構造を有する10個の異なる抗体分子の可能性がある混合物を生じる。正しい分子の精製は通常、アフィニティクロマトグラフィー段階によって行われる。類似の技法は、1993年5月13日に公表されたWO 93/08829、およびTraunecker et al, EMBO J., 10:3655-3659 (1991)に開示される。
【0227】
本発明の二重特異性および/または一価抗体は、これによってその内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる2011年8月16日に出願された同時係属中の出願、PCT公報WO 2012/023053号において開示されるものを含む、本技術分野において認識される様々な技術のうち任意のものを用いて作製することができる。PCT公報WO 2012/023053号に記載される方法によって、構造においてはヒト免疫グロブリンと同一の二重特異性抗体が作製される。このタイプの分子はユニークな重鎖ポリペプチドの2つのコピー、定常κドメインに融合された第一の軽鎖可変領域、および定常λドメインに融合された第二の軽鎖可変領域からなる。各々の結合部位は重鎖および軽鎖の両方が寄与する異なる抗原特異性を表す。軽鎖可変領域はλファミリーまたはκファミリーのものであってよく、好ましくはλ定常ドメインおよびκ定常ドメインにそれぞれ融合される。これは、非天然型の接合ポリペプチドの生成を避けるために好ましい。しかし、第一の特異性のためにκ軽鎖可変ドメインを定常λドメインに融合し、第二の特異性のためにλ軽鎖可変ドメインを定常κドメインに融合することによって本発明の二重特異性抗体を得ることも可能である。PCT公報WO 2012/023053号に記載される二重特異性抗体は、IgGκλ抗体または「κλボディ」と呼ばれ、新規の完全ヒト型二重特異性IgGフォーマットである。このκλボディフォーマットにより、標準のモノクローナル抗体と識別不能な特徴を有する標準のIgG分子から識別不能な二重特異性抗体の親和性精製が可能になるため、本フォーマットは以前のフォーマットと比べて好都合である。
【0228】
この方法において必須の段階は、同じ重鎖可変ドメインを共有し異なる抗原特異性を有する2つの抗体Fv領域(各々が可変軽鎖ドメインと可変重鎖ドメインとからなる)を同定することである。モノクローナル抗体およびその断片の作製については数多の方法が記載されている(例えば、参照により本明細書に組み入れられるAntibodies:A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NYを参照のこと)。完全ヒト型抗体は、CDR1およびCDR2を含む軽鎖および重鎖の両方の配列がヒト遺伝子から生じるような抗体分子である。CDR3領域はヒト由来のものであってもよく、または、合成法によって設計されてもよい。本明細書においてそのような抗体は「ヒト抗体」または「完全ヒト型抗体」と称される。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ技術;ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4:72を参照のこと);およびヒトモノクローナル抗体を作製するEBVハイブリドーマ技術(Cole, et al., 1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96 を参照のこと)を用いて調製することができる。ヒトモノクローナル抗体は、ヒトハイブリドーマを用いることによって(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80:2026-2030を参照のこと)、またはインビトロにおいてエプスタイン・バーウイルスを用いてヒトB細胞を形質転換することによって(Cole, et al., 1985 In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, Alan R. Liss, Inc., pp.77-96 を参照のこと)、利用することができ、作製することができる。
【0229】
モノクローナル抗体は、例えば、標的抗原、またはその免疫原性断片、誘導体、もしくは変異体を用いて動物個体を免疫感作することによって作製される。あるいは、標的抗原をコードする核酸分子を含有するベクターでトランスフェクトした細胞を用いることによって、トランスフェクトされた細胞の表面で標的抗原が発現され結合されるようにして、動物個体を免疫感作する。当技術分野においては異種(xenogenic)非ヒト動物を作製するための様々な技術が周知である。例えば、これによってその全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第6,075,181号および第6,150,584号を参照のこと。
【0230】
あるいは、抗体は、抗体配列もしくは抗原結合ドメイン配列を含有するライブラリを、標的抗原との結合についてスクリーニングすることによって得られる。このライブラリは、例えばバクテリオファージにおいて、構築されたファージ粒子の表面上において発現されるバクテリオファージコートタンパク質とのタンパク質またはペプチド融合体、およびファージ粒子内に含有されるコードDNA配列として(即ち「ファージディスプレイライブラリ」として)調製される。
【0231】
次いで、ミエローマ/B細胞融合の結果生じたハイブリドーマを、標的抗原に対する反応性についてスクリーニングする。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495(1975)によって記載されるようなハイブリドーマ法を用いて調製される。ハイブリドーマ法においては、免疫感作剤に特異的に結合する抗体を産生する、または産生できるリンパ球を誘発するために、典型的には、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫感作剤を用いて免疫感作する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫感作することができる。
【0232】
厳密には不可能ではないが、同じ重鎖可変ドメインを有するが異なる抗原に対して指向する異なる抗体が偶然に同定される可能性は非常に低い。実際、ほとんどの場合において、重鎖は抗原結合表面に大きく寄与しているとともに、配列が最も変わりやすい。特に、重鎖上のCDR3は、配列、長さ、および構造の最も多様なCDRである。したがって、異なる抗原に対して特異的な2つの抗体はほぼ常に、異なる重鎖可変ドメインを有する。
【0233】
同時係属中の出願、PCT公報WO 2012/023053号において開示される方法は、この制限を克服するものであり、全てのライブラリメンバーについて重鎖可変ドメインが同じであり、それゆえに多様性が軽鎖可変ドメインに限定されるような抗体ライブラリを使用することによって、同じ重鎖可変ドメインを有する抗体の単離を大いに促進する。そのようなライブラリは、例えば、これによってその各々の全体が参照により本明細書に組み入れられる同時係属中の出願、PCT公報WO 2010/135558号およびPCT公報WO 2011/084255号に記載されている。しかし、重鎖可変ドメインと共に軽鎖可変ドメインが発現されるため、双方のドメインが抗原との結合に寄与し得る。過程をさらに容易にするため、異なる抗原に対する抗体のインビトロにおける選択のために、同じ重鎖可変ドメインおよび多様なλ可変軽鎖またはκ可変軽鎖のいずれかを含有する抗体ライブラリを並行して使用することができる。このアプローチでは、本発明の完全免疫グロブリンフォーマットにおいて二重特異性抗体を作製するための構成要素として使用できる、共通の重鎖を有するが、一方がλ軽鎖可変ドメインを有し、他方がκ軽鎖可変ドメインを有する2つの抗体の同定が可能になる。本発明の二重特異性抗体は、異なるアイソタイプのものであってよく、異なるFcレセプターへの結合特性を変えるために、ならびにこのような方法で抗体のエフェクター機能および薬物動態学的特性を改変するために、それらのFc部分は改変されてよい。Fc部分を改変するための数多の方法が記載されており、本発明の抗体に適用可能である(例えば、Strohl, WR Curr Opin Biotechnol 2009 (6):685-91;米国特許第6,528,624号;2009年1月9日に出願されたPCT/US2009/0191199を参照のこと)。本発明の方法は、Fc部分を欠くF(ab’)2 フォーマットでの二重特異性抗体および抗体混合物を作製するために使用することもできる。
【0234】
共通の重鎖および2つの異なる軽鎖を単一の細胞において共発現させて、本発明の二重特異性抗体を構築する。全てのポリペプチドが同じレベルで発現され、免疫グロブリン分子を形成するのに十分に同等に構築された場合、単一特異性(同じ軽鎖)および二重特異性(2つの異なる軽鎖)の比率は50%となるはずである。しかし、異なる軽鎖が異なるレベルで発現される、および/または同じ効率では構築されない可能性がある。したがって、その固有の発現特性または異なる性質を補って共通の重鎖と構築させるために、異なるポリペプチドの相対的発現を調節する手段が用いられる。この調節は、プロモーターの強度によって、異なる効率を特徴とする配列内リボソーム進入部位(IRES)の使用、または、転写もしくは翻訳レベルにおいて作用できる、およびmRNA安定性に対して作用する他のタイプの調節エレメントの使用によって成すことができる。異なる強度の異なるプロモーターは、CMV(最初期サイトメガロウイルス・ウイルスプロモーター);EF1-1α(ヒト伸長因子1α-サブユニットプロモーター);Ubc(ヒトユビキチンCプロモーター);SV40(サルウイルス40プロモーター)を含み得る。哺乳動物起源およびウイルス起源の異なるIRESについても記述されている(例えば、Hellen CU and Sarnow P. Genes Dev 2001 15:1593-612を参照のこと)。これらのIRESはその長さおよびリボソーム動員効率において大きく異なる。さらに、IRESの複数のコピーを導入することによって活性をさらに調整することが可能である(Stephen et al.2000 Proc Natl Acad Sci USA 97:1536-1541)。発現の調節は細胞の複数の連続的なトランスフェクションを行ってどれか1つの軽鎖を発現する個々の遺伝子のコピー数を増加させ、それによりそれらの相対的な発現を改変することによって成すこともできる。本明細書において提供される例から、異なる鎖の相対的発現の調節が二重特異性抗体の構築および全収量を最大化するために重要であることが示される。
【0235】
重鎖と2種類の軽鎖の共発現から、細胞培養上清中に3種類の異なる抗体の混合物が生じる:2種類の単一特異性二価抗体および1種類の二重特異性二価抗体である。後者は、混合物から精製して関心対象の分子を得なければならない。本明細書に記載される方法では、CaptureSelect Fab Kappa and CaptureSelect Fab Lambdaアフィニティマトリクス(BAC BV, Holland)のようなκまたはλ軽鎖定常ドメインと特異的に相互作用するアフィニティクロマトグラフィー媒体を使用することによって、この精製工程が大いに促進される。この多段階アフィニティクロマトグラフィー精製アプローチは効率的であり、本発明の抗体に一般に適用可能である。これは抗体混合物を発現するクアドローマまたは他の細胞株に由来する各々の二重特異性抗体について開発しなければならない、および最適化しなければならない特異的精製法とは著しく対照的である。実際に、混合物中の異なる抗体の生化学的特徴が類似している場合、イオン交換クロマトグラフィーのような標準のクロマトグラフィー技術を用いたそれらの分離は難しいか、または全く不可能であり得る。
【0236】
他の好適な精製法には、これによってその内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、2012年10月19日に出願され、PCT公報WO 2013/088259号として公開された同時係属中の出願PCT/IB2012/003028において開示されるものが含まれる。
【0237】
二重特異性抗体製造の他の態様において、所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインを、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合させることができる。融合は好ましくは、ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのあいだで行う。融合体の少なくとも1つに存在する軽鎖結合にとって必要な部位を含む第一の重鎖定常領域(CHI)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合体、および望ましければ免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、異なる発現ベクターに挿入して、適した宿主生物に同時トランスフェクトする。二重特異性抗体を作製するさらなる詳細に関しては、例えば、Suresh et al, Methods in Enzymology, 121 :210 (1986)を参照されたい。
【0238】
WO 96/27011に記述される別のアプローチに従って、抗体分子対のあいだの界面を、組み換え型細胞培養から回収されるヘテロ二量体のパーセンテージを最大限にするように操作することができる。好ましい界面は、抗体定常ドメインのCH3領域の少なくとも一部を含む。この方法において、第一の抗体分子の界面からの1つまたは複数の小さいアミノ酸側鎖を、より大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)に交換する。大きいアミノ酸側鎖をより小さい側鎖(例えば、アラニンまたはトレオニン)に交換することによって、大きい側鎖と同一または類似のサイズの代償的「腔」が、第二の抗体分子の界面上に作製される。これは、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物に対してヘテロ二量体の収率を増加させる機序を提供する。
【0239】
抗体断片から二重特異性抗体を作製する技術は、文献において記述されている。例えば、二重特異性抗体は、化学的連結を用いて調製することができる。産生された二重特異性抗体を、酵素の選択的固定のための物質として用いることができる。
【0240】
組み換え型細胞培養から二重特異性抗体断片を直接作製および単離する様々な技術もまた記述されている。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを用いて産生されている。Kostelny et al, J. Immunol. 148(5): 1547- 1553 (1992)。FosおよびJunタンパク質のロイシンジッパーペプチドを、遺伝子融合によって異なる2つの抗体のFab'部分に連結させた。抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、その後再度酸化して抗体ヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体を産生するためにも利用することができる。Hollinger et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)によって記述される「ディアボディ」技術は、二重特異性抗体断片を作製するための代わりの機序を提供している。断片は、同じ鎖の2つのドメイン間で対を形成するには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。したがって、1つの断片のVHおよびVLドメインを、別の断片の相補的VLおよびVHドメインと対を形成させて、それによって2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体を用いることによって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略も同様に報告されている。Gruber et al, J. Immunol. 152:5368 (1994)を参照されたい。
【0241】
2価を超える抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体を調製することができる。Tutt et al., J. Immunol. 147:60 (1991)。
【0242】
例示的な二重特異性抗体は、異なる2つのエピトープに結合することができ、その少なくとも1つは、本発明のタンパク質抗原を起源とする。または、特定の抗原を発現する細胞に細胞防御機構を集中させるために、免疫グロブリン分子の抗抗原性アームを、T細胞受容体分子(例えば、CD2、CD3、CD28、またはB7)、またはFcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、およびFcγRIII(CD16)などのIgGのFc受容体(FcγR)などの白血球上のトリガー分子に結合するアームと組み合わせることができる。二重特異性抗体を用いて、特定の抗原を発現する細胞に細胞傷害性物質を向けることもできる。これらの抗体は、抗原結合アームと、細胞傷害剤、またはEOTUBE、DPTA、DOTA、もしくはTETAなどの放射性核種キレート剤に結合するアームとを有する。別の関心対象の二重特異性抗体は、本明細書に記載されるタンパク質抗原に結合して、組織因子(TF)にさらに結合する。
【0243】
ヘテロコンジュゲート抗体も同様に、本発明の範囲内である。ヘテロコンジュゲート抗体は、2つの共有結合抗体で構成される。そのような抗体は、例えば、免疫系の細胞を望ましくない細胞に向けるために(米国特許第4,676,980号を参照されたい)およびHIV感染症を処置するために(WO 91/00360;WO 92/200373;EP 03089を参照されたい)提唱されている。抗体は、架橋剤を含む化学を含む合成タンパク質化学における公知の方法を用いてインビトロで調製することができると企図される。例えば、ジスルフィド交換反応を用いて、またはチオエーテル結合を形成することによって、免疫毒素を構築することができる。この目的のための適した試薬の例には、イミノチオラートおよびメチル-4-メルカプトブチルイミダート、ならびに例えば米国特許第4,676,980号に開示される試薬が挙げられる。
【0244】
例えば、異常なCD47の発現および/または活性に関連する、がん、ならびに/またはその他の疾患および障害の処置における、抗体の有効性を増強するため、エフェクター機能に関して本発明の抗体を修飾することが望ましい場合がある。例えば、システイン残基をFc領域に導入し、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることができる。そのようにして生成されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能、ならびに/または増加した補体媒介性細胞死滅および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る(例えば、Caron et al.,J.Exp Med.,176:1191-1195(1992)およびShopes,J.Immunol.,148:2918-2922(1992)を参照されたい)。あるいは、二重Fc領域を有し、それによって、増強された補体溶解およびADCCの能力を有するよう、抗体を改変してもよい(Stevenson et al.,Anti-Cancer Drug Design,3:219-230(1989)を参照されたい)。
【0245】
本発明は、細胞傷害性薬剤、例えば、毒素(例えば、細菌、真菌、植物、もしくは動物に由来する酵素活性毒素、またはそれらの断片)にコンジュゲートされた抗体を含むイムノコンジュゲート、または放射性同位元素にコンジュゲートされた抗体(すなわち、ラジオコンジュゲート)にも関する。
【0246】
使用され得る酵素活性毒素およびその断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)に由来する)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、αサルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、ならびにトリコテセンが含まれる。多様な放射性核種が、ラジオコンジュゲート抗体の作製のために利用可能である。例には、212Bi、131I、131In、90Y、および186Reが含まれる。
【0247】
抗体と細胞傷害性薬剤とのコンジュゲートは、多様な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジポイミド酸ジメチル(dimethyl adipimidate)HCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタレルデヒド(glutareldehyde))、ビス-アジド化合物(例えば、ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トリエン(tolyene)2,6-ジイソシアネート)、およびビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素は、Vitetta et al.,Science 238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14で標識された1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、ラジオヌクレオチド(radionucleotide)の抗体へのコンジュゲーションのための例示的なキレート剤である(WO94/11026を参照されたい)。
【0248】
極めて多様な可能な部分が、得られた本発明の抗体にカップリングされ得ることを、当業者は認識するであろう(例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み入れられる、"Conjugate Vaccines",Contributions to Microbiology and Immunology,J.M.Cruse and R.E.Lewis,Jr(eds),Carger Press,New York,(1989)を参照されたい)。
【0249】
カップリングは、抗体および他の部分が、それぞれの活性を保持する限り、2つの分子を結合させる任意の化学反応によって達成され得る。この連結には、多くの化学的機序、例えば、共有結合、親和性結合、インターカレーション、配位結合、および複合体化が含まれ得る。しかしながら、好ましい結合は、共有結合である。共有結合は、既存の側鎖の直接縮合、または外部架橋分子の組み込みのいずれかによって達成され得る。多くの二価または多価の連結剤が、タンパク質分子、例えば、本発明の抗体の、他の分子へのカップリングにおいて有用である。例えば、代表的なカップリング剤には、有機化合物、例えば、チオエステル、カルボジイミド、スクシンイミドエステル、ジイソシアネート、グルタルアルデヒド、ジアゾベンゼン、およびヘキサメチレンジアミンが含まれ得る。このリストは、当技術分野において公知の様々なクラスのカップリング剤を網羅するためのものではなく、より一般的なカップリング剤を例示するものである(Killen and Lindstrom,Jour.Immun.133:1335-2549(1984);Jansen et al.,Immunological Review 62:185-216(1982);およびVitetta et al.,Science 238:1098(1987)を参照されたい)。
【0250】
好ましいリンカーは、文献に記載されている(例えば、MBS(M-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)の使用を記載しているRamakrishnan,S.et al.,Cancer Res.44:201-208(1984)を参照されたい)。オリゴペプチドリンカーによって抗体にカップリングされたハロゲン化アセチルヒドラジド誘導体の使用を記載している米国特許第5,030,719号も参照されたい。特に好ましいリンカーには、(i)EDC(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド塩酸塩;(ii)SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-プリジル(pridyl)-ジチオ)-トルエン(Pierce Chem.Co.カタログ21558G);(iii)SPDP(スクシンイミジル-6[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ#21651G);(iv)スルホ-LC-SPDP(スルホスクシンイミジル6[3-(2-ピリジルジチオ)-プロピアナミド(propianamide)]ヘキサノエート(Pierce Chem.Co.カタログ#2165-G);および(v)EDCにコンジュゲートされたスルホ-NHS(N-ヒドロキシスルホ-スクシンイミド:Pierce Chem.Co.カタログ#24510)が含まれる。
【0251】
前記のリンカーは、異なる属性を有する成分を含有し、したがって、異なる物理化学的特性を有するコンジュゲートをもたらす。例えば、アルキルカルボン酸のスルホ-NHSエステルは、芳香族カルボン酸のスルホ-NHSエステルより安定している。NHS-エステルを含有するリンカーは、スルホ-NHSエステルより可溶性が低い。さらに、リンカーSMPTは、立体障害性ジスルフィド結合を含有し、増加した安定性を有するコンジュゲートを形成することができる。ジスルフィド結合はインビトロで切断されるため、ジスルフィド結合は、一般に、他の結合より安定性が低く、より少ない利用可能なコンジュゲートをもたらす。具体的には、スルホ-NHSは、カルボジミド(carbodimide)カップリングの安定性を増強することができる。カルボジミドカップリング(例えば、EDC)は、スルホ-NHSと共に使用された時、単独のカルボジミドカップリング反応より、加水分解に対して抵抗性のエステルを形成する。
【0252】
本明細書において開示される抗体はまた、イムノリポソームとして調合することができる。抗体を含むリポソームは、Epstein et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82: 3688 (1985); Hwang et al, Proc. Natl Acad. Sci. USA, 77: 4030 (1980);ならびに米国特許第4,485,045号および第4,544,545号において記述される方法などの当技術分野において公知の方法によって調製される。血液循環時間が改良されたリポソームは、米国特許第5,013,556号において開示される。
【0253】
特に有用なリポソームは、ホスファチジルコリン、コレステロール、およびPEG-誘導体化ホスファチジルエタノールアミン(PEG-PE)を含む脂質組成物による逆相蒸発法によって作製されうる。所望の直径を有するリポソームを生じるために、既定の孔サイズのフィルターの中にリポソームを押し出す。本発明の抗体のFab'断片を、Martin et al., J. Biol. Chem., 257: 286-288 (1982)に記述されるように、ジスルフィド交換反応を介してリポソームにコンジュゲートさせることができる。
【0254】
使用方法
本発明に従う治療実体の投与は、移動、送達、認容性の改善、およびその他を提供するために製剤に組み入れられる、適した担体、賦形剤、および他の作用物質と共に投与されると認識されるであろう。多数の適当な製剤を、全ての製薬化学者に公知である処方集:Remington's Pharmaceutical Sciences (15th ed, Mack Publishing Company, Easton, PA (1975))、特にその中のBlaug, Seymourによる第87章において見いだすことができる。これらの製剤には、例えば、粉剤、パスタ剤、軟膏、ゼリー、ロウ、油、脂質、脂質(陽イオンまたは陰イオン性)含有小胞(Lipofectin(商標)など)、DNAコンジュゲート、無水吸収パスタ剤、水中油型および油中水型乳剤、乳剤カーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、およびカーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。前述の混合物はいずれも、製剤中の活性成分が、製剤によって不活化されず、製剤が投与経路と生理学的に適合性で認容性である限り、本発明に従う処置および治療において適切であり得る。同様に、製薬化学者にとって周知である製剤、賦形剤、および担体に関連する追加の情報に関して、Baldrick P. "Pharmaceutical excipient development: the need for preclinical guidance." Regul. Toxicol Pharmacol. 32(2):210-8 (2000), Wang W. "Lyophilization and development of solid protein pharmaceuticals." Int. J. Pharm. 203(1-2): 1-60 (2000), Charman WN "Lipids, lipophilic drugs, and oral drug delivery-some emerging concepts." J Pharm Sci.89(8):967-78 (2000), Powell et al. "Compendium of excipients for parenteral formulations" PDA J Pharm Sci Technol. 52:238-311 (1998)、ならびにその中での引用を参照されたい。
【0255】
本発明の抗体を含む本発明の治療製剤は、非限定的な例として、白血病、リンパ腫、乳がん、結腸がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、神経膠腫、肺および気管支がん、大腸がん、膵臓がん、食道がん、肝臓がん、膀胱がん、腎臓および腎盂腎がん、口腔がんおよび咽頭がん、子宮体がん、ならびに/またはメラノーマのようながんに関連する症状を治療または緩和するために使用される。本発明はまた、がんに関連する症状を治療または緩和する方法をも提供する。治療計画は、例えばがんを患っている(または発症リスクのある)ヒト患者のような対象を、標準法を用いて同定することによって実施される。
【0256】
処置の有効性は、特定の免疫関連障害を診断または処置するための任意の公知の方法に関連して決定される。免疫関連障害の1つまたは複数の症状が軽減されれば、抗体が臨床上の恩典を付与することを示している。
【0257】
所望の特異性を有する抗体をスクリーニングする方法は、酵素免疫測定法(ELISA)および当技術分野において公知の他の免疫学媒介技術を含むがこれらに限定されるわけではない。
【0258】
CD47、PD-L1、またはその組み合わせ(またはその断片)などの標的に対する抗体が、例えば適切な生理的試料中のこれらの標的のレベルを測定するために用いるために、診断法において用いるために、タンパク質のイメージングにおいて用いるために、およびその他のために、これらの標的の局在および/または定量に関連する当技術分野において公知の方法において用いられうる。所定の態様において、これらの標的のいずれかに対して特異的な抗体、または抗体由来抗原結合ドメインを含むその誘導体、断片、アナログ、もしくはホモログが、薬理活性化合物(本明細書において以降「治療物質」と呼ぶ)として利用される。
【0259】
本発明の抗体は、免疫アフィニティクロマトグラフィーまたは免疫沈降などの標準的な技術を用いて特定の標的を単離するために用いられうる。本発明の抗体(またはその断片)を診断的に用いて、臨床試験技法の一部として組織中のタンパク質レベルをモニターする、例えば所定の処置治療計画の有効性を決定することができる。抗体を検出可能な物質に連結させる(すなわち、物理的に連結させる)ことによって、検出を容易にすることができる。検出可能な物質の例には、様々な酵素、補欠分子群、蛍光材料、発光材料、生物発光材料、および放射活性材料が挙げられる。適した酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられる;適した補欠分子群の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられる;適した蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、またはフィコエリスリンが挙げらる;発光材料の例には、ルミノールが挙げられる;生物発光材料の例にはルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられる;ならびに適した放射活性材料には125I、131I、35S、または3Hが挙げられる。
【0260】
ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、および完全ヒト型抗体を含む本発明の抗体は、治療物質として用いられうる。そのような物質は一般的に、対象における所定の標的の異常な発現または活性化に関連する疾患または病態を処置または予防するために用いられるであろう。抗体調製物、好ましくはその標的抗原に対して高い特異性および高い親和性を有する調製物を対象に投与すると、一般的に、標的とのその結合により効果を有するであろう。抗体を投与することにより、標的のシグナル伝達機能が排除、阻害、または妨害されうる。抗体を投与することにより、それが本来結合する内因性のリガンドと標的との結合が排除、または阻害、または妨害されうる。例えば、抗体は、標的に結合し、CD47とSIRPαとの相互作用を中和またはそうでなければ阻害する。
【0261】
本発明の抗体の治療的有効量は一般的に、治療目的を達成するために必要な量に関する。先に述べたように、これは、ある例において、標的の機能を妨害する、抗体とその標的抗原との結合相互作用でありうる。投与するために必要な量は、さらにその特異的抗原に対する抗体の結合親和性に依存して、同様に、投与された抗体が、それが投与される対象の他の自由容量(free volume other subject)から枯渇する速度に依存するであろう。本発明の抗体または抗体断片の治療的に有効な投与の一般的範囲は、非制限的な例として、約0.1 mg/kg体重から約50 mg/kg体重でありうる。一般的な投与回数は、例えば1日2回から1週間に1回の範囲でありうる。
【0262】
本発明の抗体またはその断片は、薬学的組成物の形状で様々な疾患および障害の治療のために投与されうる。そのような組成物の調製に関係する原理および検討、ならびに成分の選択における指針は、例えばRemington : The Science And Practice Of Pharmacy 19th ed. (Alfonso R. Gennaro, et al., editors) Mack Pub. Co., Easton, Pa. : 1995; Drug Absorption Enhancement : Concepts, Possibilities, Limitations, And Trends, Harwood Academic Publishers, Langhorne, Pa., 1994; and Peptide And Protein Drug Delivery (Advances In Parenteral Sciences, Vol. 4), 1991, M. Dekker, New Yorkにおいて提供される。
【0263】
抗体断片を用いる場合、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最小の阻害性断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列の結合能を保持するペプチド分子を設計することができる。そのようなペプチドは、化学合成することができ、および/または組み換えDNA技術によって産生することができる(例えば、Marasco et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 7889-7893 (1993)を参照されたい)。製剤はまた、処置される特定の適応にとって必要な1つより多くの活性化合物、好ましくは互いに有害な影響を及ぼさない補足的活性を有する化合物を含有することができる。またはもしくは加えて、組成物は、例えば細胞傷害物質、サイトカイン、化学療法剤、または増殖阻害剤などのその機能を増強する作用物質を含むことができる。そのような分子は、ふさわしくは、意図される目的にとって有効である量で併用して存在する。
【0264】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技術によってまたは界面重合化によって調製されたマイクロカプセル、例えばコロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、およびナノカプセル)において、またはマクロエマルジョンにおいて、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに捕捉することができる。
【0265】
インビボ投与のために用いられる製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過メンブレンを通して濾過することによって容易に達成される。
【0266】
徐放性製剤を調製することができる。徐放性調製物の適した例には、マトリクスが、成型された製品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形状である、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられる。徐放性マトリクスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマーおよび酢酸リュープロリドで構成される注射可能なミクロスフェア)、およびポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン酢酸ビニルおよび乳酸-グリコール酸などのポリマーは、100日間のあいだ分子の放出を可能にするが、あるハイドロゲルは、タンパク質をより短い期間放出する。
【0267】
本発明の抗体は、試料中の所与の標的(またはそのタンパク質断片)の存在を検出するための作用物質として用いることができる。いくつかの態様において、抗体は、検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナル抗体であるか、またはより好ましくはモノクローナル抗体である。無傷の抗体またはその断片(例えば、Fab、scFv、またはF(ab)2)が用いられる。プローブまたは抗体に関して「標識された」という用語は、検出可能な物質をプローブまたは抗体にカップリングさせる(すなわち、物理的に連結させる)ことによるプローブまたは抗体の直接標識、ならびに直接標識される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識を包含すると意図される。間接的標識の例には、蛍光標識二次抗体を用いる一次抗体の検出、および蛍光標識ストレプトアビジンによって検出することができるようにビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。「生物試料」という用語は、対象から単離された組織、細胞、および生体液、ならびに対象内に存在する組織、細胞、および液体を含むと意図される。それゆえ、血液、および血清、血漿、またはリンパを含む血液の画分または成分は「生物試料」という用語の用法内に含まれる。すなわち、本発明の検出法を用いて、インビトロならびにインビボで生物試料中の対象mRNA、タンパク質、またはゲノムDNAを検出することができる。例えば、分析対象mRNAを検出するためのインビトロ技術には、ノザンハイブリダイゼーションおよびインサイチューハイブリダイゼーションが挙げられる。分析対象タンパク質を検出するためのインビトロ技術には、酵素免疫測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、免疫沈降、および免疫蛍光が挙げられる。分析対象ゲノムDNAを検出するためのインビトロ技術にはサザンハイブリダイゼーションが挙げられる。イムノアッセイを行うための技法は、例えば"ELISA: Theory and Practice: Methods in Molecular Biology", Vol. 42, J. R. Crowther (Ed.) Human Press, Totowa, NJ, 1995; "Immunoassay", E. Diamandis and T. Christopoulus, Academic Press, Inc., San Diego, CA, 1996; and "Practice and Theory of Enzyme Immunoassays", P. Tijssen, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985において記述される。さらに、分析対象タンパク質を検出するためのインビボ技術は、標識した抗分析対象タンパク質抗体を対象に導入する段階を含む。例えば、対象におけるその存在および位置を標準的な撮像技術によって検出することができる放射活性マーカーによって、抗体を標識することができる。
【0268】
薬学的組成物
本発明の抗体(本明細書において「活性化合物」と呼ばれる)、ならびにその誘導体、断片、アナログ、および相同体は、投与にとって適した薬学的組成物に組み入れることができる。そのような組成物は典型的に、抗体と、薬学的に許容される担体とを含む。本明細書において用いられる「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合性の任意のおよび全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤、ならびにその他を含むと意図される。適した担体は、参照により本明細書に組み入れられる、当技術分野において標準的な参考テキストであるRemington's Pharmaceutical Sciences最新版に記述される。そのような担体または希釈剤の好ましい例には、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるがこれらに限定されるわけではない。リポソームおよび固定油などの非水性媒体も同様に用いられうる。薬学的活性物質のためにそのような媒体および作用物質を用いることは、当技術分野において周知である。いかなる通常の媒体または作用物質も、活性化合物と不適合性である場合を除き、組成物におけるその使用が企図される。補助活性化合物も同様に、組成物に組み入れることができる。
【0269】
本発明の薬学的組成物は、その意図される投与経路と適合性であるように調合される。投与経路の例には、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば、吸入)、経皮(例えば、表面)、経粘膜、および直腸投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用のために用いられる溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水、食塩水溶液、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒などの滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩などの緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの等張性調節剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基によって調節することができる。非経口調製物は、ガラスもしくはプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、または多用量バイアルに封入することができる。
【0270】
注射での使用にとって適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、および滅菌注射可能溶液または分散液の即時調製用滅菌粉末を含む。静脈内投与の場合、適した担体には、生理食塩液、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、またはリン酸緩衝生理食塩液(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は、無菌的でなければならず、容易なシリンジ操作性が存在する程度に流動性であるべきである。組成物は、製造および保存の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール、およびその他)、およびその適した混合物を含む溶媒または分散媒体でありうる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングを用いることによって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサル、およびその他によって達成することができる。多くの場合において、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましいであろう。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収を遅らせる作用物質、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物に含めることによってもたらすことができる。
【0271】
滅菌注射用溶液は、活性化合物の必要量を、適切な溶媒において、先に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に組み入れて、必要に応じてその後濾過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散剤は、基本分散培地と、先に列挙した必要な他の成分とを含む滅菌媒体に活性化合物を組み入れることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製法は、予め濾過滅菌したその溶液から、活性成分と任意の追加の所望の成分とを含む粉末を生じる真空乾燥および凍結乾燥である。
【0272】
経口組成物は一般的に、不活性希釈剤または食用担体を含む。それらを、ゼラチンカプセルに封入することができ、または錠剤に圧縮することができる。経口治療的投与の目的に関して、活性化合物を賦形剤と共に組み入れて、錠剤、トローチ剤、またはカプセル剤の剤形で用いることができる。経口組成物はまた、液体担体中の化合物が、口に適用される、すすいで吐き出される、または飲み込まれる、マウスウォッシュとして用いるための液体担体を用いて調製することができる。薬学的に適合性の結合剤および/または補助材料を、組成物の一部として含めることができる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤およびその他は、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれかを含むことができる:血漿セルロース、トラガカントゴム、またはゼラチンなどの結合剤;デンプンまたは乳糖などの賦形剤;アルギン酸、Primogel、またはコーンスターチなどの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムまたはSterotesなどの潤滑剤;コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤;蔗糖またはサッカリンなどの甘味料;またはペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジ香料などの香味料。
【0273】
吸入投与の場合、化合物は、適した促進剤、例えば、二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの剤形で送達される。
【0274】
全身投与も、経粘膜または経皮手段によって行うことができる。経粘膜または経皮投与の場合、浸透される障壁にとって適切な浸透剤を製剤に用いる。そのような浸透剤は一般的に当技術分野において公知であり、例えば経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻スプレーまたは坐剤の使用を通して達成することができる。経皮投与の場合、活性化合物は、一般的に当技術分野において公知である軟膏、軟膏剤(salve)、ゲル、またはクリームに調合される。
【0275】
化合物はまた、直腸送達のために坐剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤と共に)または浣腸の剤形で調製することができる。
【0276】
1つの態様において、活性化合物は、インプラントおよび微小封入送達システムを含む、徐放性製剤などの、化合物が体から急速に消失しないよう保護する担体と共に調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生体分解性で生体適合性のポリマーを用いることができる。そのような製剤を調製する方法は、当業者に明らかであろう。材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.からの購入によっても得ることができる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体によって感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として用いることができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記述されるように当業者に公知の方法に従って調製することができる。
【0277】
投与の容易さおよび用量の均一性のために、単位投与剤形で経口または非経口組成物を調合することが特に有利である。本明細書において用いられる単位投与剤形は、各単位が、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された既定量の活性化合物を含む、処置される対象にとって単位用量として適した物理的に個別の単位を意味する。本発明の単位投与剤形の仕様は、活性化合物の独自の特徴および達成される特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにそのような活性化合物を作る技術分野における固有の制限によって左右され、それらに直接依存する。
【0278】
薬学的組成物は、投与に関する説明書と共に、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0279】
本発明を、以下の実施例においてさらに説明するが、これらは特許請求の範囲に記述される本発明の範囲を制限しない。
【実施例
【0280】
実施例1:固定された可変重鎖を含有するヒトscFvライブラリを使用したPD-L1 Fvのファージディスプレイ選択
M13バクテリオファージ上に提示されたヒトscFvライブラリの構築および取扱いのための一般的な手法は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Vaughan et al.,(Nat.Biotech.1996,14:309-314)に記載されている。選択およびスクリーニングのためのライブラリは、全て、同じVHドメインを共有し、VLドメインのみが多様化されているscFvをコードする。固定されたVHライブラリの生成のための方法、ならびに二重特異性抗体の同定および組み立てのためのそれらの使用は、その全体が参照により本明細書に各々組み入れられる、US 2012/0184716およびWO 2012/023053に記載されている。scFvのヒトPD-L1との結合を同定する手法を、以下に記載する。
【0281】
A. タンパク質選択
scFvファージライブラリ(1012Pfu)のアリコートを、ロータリーミキサー上で室温で1時間、3%(w/v)スキムミルクを含有するPBSでブロッキングする。ブロッキングされたファージを、ロータリーミキサー上で室温で1時間、ストレプトアビジン磁気ビーズ(Dynabeads(商標)M-280)でデセレクト(deselected)する。CD47に対する選択のため、いくつかの場合においては、108個の精製された赤血球を、デセレクション(deselection)のため、ビーズに添加した。デセレクトされたファージを、ロータリーミキサー上で室温で2時間、ストレプトアビジン磁気ビーズ上に捕捉された100nMのビオチン化されたヒトPD-L1細胞外ドメインと共にインキュベートする。結合親和性を改善するため、減少する濃度(10nMから0.1nMまで)のPD-L1を、選択の各ラウンドにおいて使用する。ビーズを磁気スタンドを使用して捕捉し、その後、PBS/0.1%Tween 20で5回洗浄し、PBSで2回洗浄する。ファージを、ロータリーミキサー上で室温で30分間、100nM TEAで溶出させる。溶出したファージおよびビーズを、Tris-HCl 1M pH 7.4で中和し、10mlの対数増殖期TG1細胞に直接添加し、低速(90rpm)で振とうしながら、37℃で1時間、インキュベートする。選択アウトプットを滴定するため、感染TG1のアリコートを段階希釈する。残りの感染TG1を、3800rpmで10分間回転させ、2ml 2×TYに再懸濁させ、2×TYAG(100μg/mlアンピシリンおよび2%グルコースを含有する2×TY培地)寒天バイオアッセイプレート上に広げる。30℃での一晩のインキュベーションの後、10mlの2×TYをプレートに添加し、細胞を表面から掻き取り、50mlポリプロピレンチューブに移す。17%グリセロールという最終濃度を得るため、50%グリセロール溶液を細胞懸濁液に添加する。選択ラウンドのアリコートを-80℃に維持する。
【0282】
B. ファージレスキュー
前選択ラウンドから得られた50μlの細胞懸濁液を、50mlの2×TYAGに添加し、0.3~0.5のOD600に達するまで、攪拌(240rpm)しながら37℃で増殖させる。次いで、培養物に1.2×1011 M13K07ヘルパーファージを重感染させ、37℃(90rpm)で1時間、インキュベートする。3800rpmで10分間、細胞を遠心分離し、培地を除去し、50mlの2×TYAK(100μg/mlアンピシリン;50μg/mlカナマイシンを含有する2×TY培地)にペレットを再懸濁させることによって、培地を交換する。次いで、30℃(240rpm)で一晩、培養物を増殖させる。翌日、ファージを含有する上清を、次の選択ラウンドのために使用する。
【0283】
C. 細胞表面選択
ファージを含有する上清を、ロータリーミキサー上で室温で1時間、3%(w/v)スキムミルクを含有するPBSでブロッキングする。ブロッキングされたファージを次いで、ヒトPD-L1を発現しない1×107個のMKN-45細胞において、1時間、デセレクトする。デセレクトされたファージを、(PBS 3%BSA、0.1%NaN3でブロッキングされた)PD-L1発現を強化するため、IFNγと共に24時間、予めインキュベートされた1×107個のA431細胞またはTHP-1細胞と共に、穏やかに振とうしながら、室温で2時間、インキュベートする。細胞をペレット化し、PBSで6回洗浄する。結合したファージを76mMクエン酸で溶出させ、10分間、振とうする。Tris-HCl 1M pH 8での中和の後、細胞を含む溶出液を、10mlの対数増殖期TG1に直接添加し、低速で振とうしながら、37℃で1時間、インキュベートする。選択アウトプットを滴定するため、感染TG1のアリコートを段階希釈する。感染TG1を、3800rpmで10分間回転させ、2ml 2×TY培地に再懸濁させ、2×TYAG寒天バイオアッセイプレート上に広げる。30℃での一晩のインキュベーションの後、10mlの2×TYをプレートに添加し、表面から細胞を掻き取り、50mlポリプロピレンチューブに移す。17%グリセロールという最終濃度を得るため、50%グリセロール溶液を細胞懸濁液に添加する。選択ラウンドのアリコートを-80℃に維持する。
【0284】
実施例2:scFvのPD-L1との結合のスクリーニング
A. 結合試験および機能試験のためのscFvペリプラズム調製物
個々の感染TG1クローンを、1ウェルあたり0.9mlの2×TYAG培地(100μg/mlアンピシリン、0.1%グルコースを含有する2×TY培地)を含有するディープウェル96穴プレートに接種し、37℃で5~6時間、増殖させる(240rpm)。0.02mMという最終濃度を与えるため、IPTG 0.2mMを含む2×TY培地を添加する。プレートを、240rpmで振とうしながら、30℃で一晩、インキュベートする。ディープウェルプレートを、4℃で10分間、3200rpmで遠心分離し、上清を注意深く除去する。ペレットを、150μl TES緩衝液(50mM Tris-HCl(pH 8)、1mM EDTA(pH 8)、20%ショ糖)に再懸濁させる。150μlの希釈されたTES緩衝液(1:5 TES:水希釈)の添加、および氷上での30分間のインキュベーションによって、低浸透圧ショックを与える。細胞および破片をペレット化するため、プレートを、4℃で10分間、4000rpmで遠心分離する。上清を、96穴マイクロタイタープレートに注意深く移し、機能アッセイまたは結合アッセイにおいて直ぐに試験するため、氷上に維持する。
【0285】
B. 結合
PD-L1との結合についてのscFvのスクリーニングを、CellInsight(商標)テクノロジーを使用したホモジニアスアッセイにおいて試験する。以下の試薬を透明底384穴プレート(Corning)の各ウェルにおいて混合する:ビオチン化されたPD-L1、または対照タンパク質としてのビオチン化された無関係のタンパク質でコーティングされたストレプトアビジンポリスチレンビーズ懸濁液(Polysciences;3000ビーズ/ウェル)30μl;ブロッキングされたscFvペリプラズム調製物60μl;検出緩衝液(2μg/mlのヒト抗c-myc抗体;1:500希釈の抗ヒトIgG Fc AlexaFluor(登録商標)647を含有するPBS)10μl。600rpmで5分間振とうした後、384穴プレートを室温でインキュベートし、2時間後にCellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニング(High-Content Screening)プラットフォーム(ThermoFisher Scientific)で読み取る。PD-L1で特異的シグナルを与え、対照タンパク質では与えなかったscFvを発現するクローンを、さらなる分析または配列決定のために選択する。
【0286】
C. PD-1/PD-L1相互作用の阻害
PD-L1を標的とするscFvを、CellInsight(商標)テクノロジーを使用したビーズベースのホモジニアスアッセイにおいて、PD-1とPD-L1との間の相互作用を阻害する能力についてスクリーニングした。以下の試薬を、透明底384穴プレート(Corning)の各ウェルにおいて混合した:ビオチン化PD-L1でコーティングされたストレプトアビジンポリスチレンビーズ懸濁液(Polysciences;3000ビーズ/ウェル)30μl、0.1μg/ml PD-1-huFc(ACROBiosystems)、1:2000希釈の抗ヒトIgG Fc AlexaFluor(登録商標)647、およびscFvペリプラズム調製物50μl。600rpmで5分間、振とうした後、384穴プレートを室温でインキュベートし、2時間後にCellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォーム(ThermoFisher Scientific)で読み取った。PD-L1と結合しない無関係のscFvを含有する対照ウェルを、各プレートに含め、それによって、対照において測定されたPD-1/PD-L1シグナルの低下をもたらしたscFvを発現するクローンを、さらなる分析または配列決定のために選択した。
【0287】
実施例3:λ軽鎖およびκ軽鎖を保持する二重特異性抗体の発現および精製
同一細胞における1本の重鎖および2本の軽鎖の同時発現は、3種の異なる抗体の組み立てをもたらし得る。同時発現は、同時発現させたい鎖のうちの1本を発現する複数のベクターのトランスフェクション、または複数の遺伝子の発現を駆動するベクターの使用などの種々の方式で達成され得る。ベクターpNovi κHλは、参照によりその全体が各々本明細書に組み入れられる、US 2012/0184716およびWO 2012/023053に記載されるように、1本の重鎖、1本のκ軽鎖、および1本のλ軽鎖の同時発現を可能にするため、以前に生成された。3種の遺伝子の発現は、ヒトサイトメガロウイルスプロモーター(hCMV)によって駆動され、ベクターは、安定的な細胞株の選択および樹立を可能にするグルタミン合成酵素遺伝子(GS)も含有する。抗hPD-L1 IgGλまたは抗hCD47 IgGκのVL遺伝子を、哺乳動物細胞における一過性発現のため、ベクターpNovi κHλにクローニングした。Expi293細胞(Gibco)を増幅し、50mLのExpi293培養培地(Gibco)で、3×106細胞/mLの濃度で、三角フラスコに分割した。製造業者の指示に従って、ポリエチレンイミントランスフェクション試薬(PEI、Polyscience)を使用して、62.5μgのプラスミドDNAを細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトされた細胞の上清中のIgG濃度を、バイオレイヤー干渉法(BLI)テクノロジーを使用して、産生中に測定した。OctetRED96装置およびプロテインAバイオセンサーを、定量化のために使用した(Sartorius)。10mMグリシンpH 1.7を使用して、バイオセンサーをプレコンディショニングし、再生し、コンディショニングされた細胞培地で希釈されたIgG標準物質を、標準曲線生成のために調製した。用量応答5PL重み付けなしY標準曲線式および初期勾配結合速度式を使用して、濃度を決定した。抗体濃度によって、トランスフェクションの7~10日後に上清を採集し、2000gで10分間の遠心分離および0.22μmでのろ過によって清澄化した。精製プロセスは、ThermoFisher Scientificのアフィニティ樹脂を使用した3工程から構成された。最初に、CaptureSelect FcXL樹脂をPBSで洗浄し、次いで、清澄化された上清に添加した。+4℃および15rpmでの一晩のインキュベーションの後、上清を600gで10分間遠心分離し、フロースルーを精製プロセスの終わりまで保管し、樹脂をPBSで2回洗浄した。次いで、樹脂をAmicon Proカラム(Merck Millipore)に移し、pH 3の50mMグリシンを含有する溶液を、溶出のために使用した。いくつかの溶出画分を生成し、1/10 Tris HCl pH 7.4(Invitrogen)で中和し、プールした。全ヒトIgGを含有する精製された生成物を、NanoDrop分光光度計(NanoDrop Technologies)を使用して定量化し、適切な体積のCaptureSelect Kappa XLアフィニティマトリックスと共に、RTおよび15rpmで30分間、インキュベートした。インキュベーション、樹脂回収、溶出、および中和の工程は、前記と同様に実施された。最後のアフィニティ精製工程は、前の2回の精製と同じプロセスを適用して、CaptureSelect LC-λ(Hu)アフィニティマトリックスを使用して実行された。溶出画分のプールを、50kDa Amicon遠心式ユニット(Merck Millipore)を使用して、25mMヒスチジン/125mM NaCl pH 6.0に対して脱塩した。精製されたκλボディを、Nanodropを使用して定量化し、製造業者(Agilent Technologies)による説明の通り、Agilent 2100バイオアナライザおよびプロテイン80キットを使用して、変性還元条件下でのキャピラリー電気泳動によって分析した。(二重特異性抗体および両方の単一特異性mAbを含有する)最初の精製工程からのアリコートならびに(精製されたκλボディを含有する)最終生成物のアリコートを、精製された最終二重特異性抗体の純度(mAb混入の欠如)を評価するため、等電点電気泳動(IEF)ゲルに負荷した。凝集物レベルを、SEC-UPLCによって決定した。最後に、全ての試料を、リムルス・アメボサイト・ライセート(Limulus Amebocyte Lysate)試験(LAL;Charles River Laboratories)を使用して、内毒素混入について試験した。
【0288】
実施例4:例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体の特徴決定
既述のCD47アームK2(=Ka3アーム、WO2014087248A2)を、本発明からの様々な抗PD-L1アームと対にすることによって、CD47×PD-L1二重特異性抗体(bsAb)を生成した。全てのbsAbを、ヒトIgG1 Fcドメインによって再編成した。
【0289】
組換えヒトPD-L1との結合および交差反応性
選択されたCD47×PD-L1 bsAbの、組換えのヒトPD-L1(ACROBiosystems)、カニクイザルPD-L1(Sino Biological)、およびマウスPD-L1(社内作製)の可溶性タンパク質と結合する能力を、サンドイッチELISAアッセイによって査定した。簡単に説明すると、PBSで5μg/mlに希釈されたヤギ抗ヒトFc捕捉抗体(Jackson ImmunoResearch)を、MaxiSorp 96穴黒色プレート(Nunc)に、4℃で一晩、コーティングした。ブロッキング試薬(PBS緩衝液/BSA 3%/Tween 0.05%)で、室温で1時間、プレートをブロッキングした。PBS緩衝液-Tween 0.05%での3回の洗浄の後、固定された濃度のbsAbを添加し、室温で1時間、インキュベートし、さらに3回の洗浄を実施した。洗浄後、増加する濃度のビオチン化されたヒト、カニクイザル、またはマウスの組換えPD-L1タンパク質を添加し、室温で1時間、インキュベートした。最後に、ストレプトアビジン-HRPとの1時間のインキュベーションの後、Amplexレッド検出試薬を添加し、暗所で室温で20分間、インキュベートし、プレートリーダーを使用して蛍光シグナルを検出した。図1Aは、抗PD-L1ベンチマークであるアテゾリズマブおよびアベルマブと比較された、選択されたbsAbおよびmAbのヒトPD-L1との様々な一価結合を示す。図1Bは、試験された全てのPD-L1アームが、カニクイザルPD-L1と交差反応性であることを強調しており、図1Cは、それらのうちの一部のPD-L1のみが、マウスPD-L1と交差反応性であることを示している。
【0290】
B. PD-L1特異性
例示的なCD47×PD-L1 bsAbのPD-L1に対する特異性を、ELISA法によって、ヒトPD-L2との結合の欠如を評価することによって決定した。ヒトPD-L2は、ヒトPD-L1と34%の配列同一性を有する。組換えヒトPD-L2可溶性タンパク質(ACROBiosystems)と結合するbsAbの能力を、サンドイッチELISAアッセイによって査定した。簡単に説明すると、PBSで5μg/mlに希釈されたヤギ抗マウスFc捕捉抗体(Jackson ImmunoResearch)を、MaxiSorp 96穴黒色プレート(Nunc)に、4℃で一晩、コーティングした。ブロッキング試薬(PBS緩衝液/BSA 3%/Tween 0.05%)で、室温で1時間、プレートをブロッキングした。PBS緩衝液-Tween 0.05%での3回の洗浄の後、固定された濃度のbsAbを添加し、室温で1時間、インキュベートした。洗浄後、増加する濃度のビオチン化ヒト組換えPD-L2タンパク質を添加し、室温で1時間、インキュベートした。最後に、ストレプトアビジン-HRPとの1時間のインキュベーションの後、Amplexレッド検出試薬を添加し、暗所で室温で20分間、インキュベートし、プレートリーダーを使用して蛍光シグナルを検出した。アイソタイプ対照抗体を陰性対照として使用し、市販のマウス抗ヒトPD-L2 IgG(R&D system)を陽性対照として用いた。
【0291】
図1Dに示されるように、試験されたCD47×PD-L1 bsAbは、いずれも、ヒトPD-L2と交差反応しなかった。
【0292】
C. PD-L1でトランスフェクトされたCHO細胞におけるPD-1/PD-L1阻止活性
CD47×PD-L1 bsAbのPD-1阻止活性を、細胞ベースのPD-1/PD-L1競合結合アッセイにおいて評価した。ヒトPD-L1でトランスフェクトされたCHO細胞(ヒトCD47陰性)を、Cell Trace Violet(Invitrogen)で予め染色し、室温で1時間、様々な濃度のbsAbと共にインキュベートした。検出試薬として、ヒトPD-1-moFcタンパク質(ACROBiosystem、最終濃度100ng/ml)と抗マウスFc AF647(Jackson ImmunoResearch)との混合物を、室温で3時間、添加した。最後に、CellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォームを使用して、プレートを読み取った。図1Eは、選択されたbsAbが、様々な効力で、PD-1とPD-L1との間の相互作用を、一価で(すなわち、CD47コエンゲージメントなしに)阻止することを示す(表4)。二価抗PD-L1アテゾリズマブを、参照として使用した。
【0293】
(表4)ヒトPD-L1でトランスフェクトされたCHO細胞における、選択されたCD47×PD-L1二重特異性抗体および抗PD-L1アテゾリズマブのPD-1阻止効力
【0294】
E. CD47陽性腫瘍細胞との結合
例示的なCD47×PD-L1 bsAbの細胞におけるCD47結合を、ヒト腫瘍細胞株Raji(ATCC;CCL-86)およびNalm-6(ATCC;CRL-3273)、ならびに陰性対照としてのCHO細胞を使用して、フローサイトメトリーによって研究した。Raji細胞株およびNalm-6細胞株は、いずれも、PD-L1を極めて低レベルに発現するか、または発現せず(表5)、bsAbの一価CD47結合の評価を可能にする。
【0295】
様々な濃度の抗体を、4℃で15分間、予めPBS/BSA 2%に再懸濁させた細胞と共にインキュベートした。2回の洗浄の後、AF647にコンジュゲートされた抗ヒトFc F(ab')2(Jackson ImmunoResearch)を使用して、結合したAbを検出した。4℃での15分間のインキュベーション、その後の2回の洗浄工程の後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0296】
(表5)RajiおよびNalm-6ヒト腫瘍細胞株の細胞表面のPD-L1およびCD47の標的密度
【0297】
図2Dおよび2Eは、それぞれ、Raji腫瘍細胞およびNalm-6腫瘍細胞における、CD47×PD-L1 bsAbのCD47アームおよび二価抗CD47 5F9アナログの結合プロファイルを示す。結合プロファイルは、両方の腫瘍細胞株の間で一致している。CD47アームK2は、予想通り、高親和性抗CD47 5F9アナログと比較して低い、腫瘍細胞との結合を示す。試験されたいずれの分子の結合も、CHO細胞においては観察されなかった(データは示されない)。
【0298】
F. CD47陽性腫瘍細胞におけるCD47/SIRPa阻止活性
例示的なCD47×PD-L1 bsAbのSIRPa阻止活性を、細胞ベースのCD47/SIRPa競合結合アッセイにおいて決定した。Cell Trace Violet(Invitrogen)によって予め染色されたPD-L1-CD47+ Nalm-6腫瘍細胞(表5)を、室温で1時間、様々な濃度のbsAbおよび対照と共にインキュベートした。検出試薬として、ヒトSIRPa-マウスFcタンパク質(社内)と抗マウスFc AF647(Jackson ImmunoResearch)との混合物を、室温で3時間、添加した。最後に、CellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォームを使用して、プレートを読み取った。
【0299】
CD47の一価エンゲージメントの後、bsAbは、CD47結合特性と一致する、抗CD47 5F9アナログと比較して低い効力(表6)で、SIRPa阻止を誘導する(図2F)。
【0300】
(表6)ヒトPD-L1-CD47+ Nalm-6腫瘍細胞における、例示的なCD47×PD-L1二重特異性抗体および抗CD47 5F9アナログのSIRPa阻止効力
【0301】
G. ヒト赤血球(RBC)との結合
ヒトRBCは、PD-L1は発現しないが、CD47標的を細胞表面に発現しており、安全性および薬物動態学的特性に影響を与える、CD47を標的とする抗体に対する大きい抗原シンクとなっている。したがって、同じ低親和性CD47 K2アームを保持する選択されたCD47×PD-L1 bsAbのヒトRBCへの結合を、フローサイトメトリーによって査定し、臨床ベンチマーク分子として使用された抗CD47 5F9アナログと比較した。
【0302】
健常ドナーの全血からRBCを単離し、PBS/BSA 2%に再懸濁させ、4℃で15分間、様々な濃度の抗体と共にインキュベートした。2回の洗浄の後、AF647にコンジュゲートされた抗ヒトFc F(ab')2(Jackson ImmunoResearch)を使用して、結合したbsAbを検出した。4℃での15分間のインキュベーションおよび2回の洗浄工程の後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0303】
図3は、CD47×PD-L1 bsAbであるK2×S100およびK2×S23、ならびに5F9アナログの、ヒト赤血球との代表的な結合プロファイルを示す。予想通り、低親和性CD47アームに基づき、bsAbは、赤血球との極めて低い結合を示す。
【0304】
H. 選択された二重特異性抗体のPD-L1に対する結合親和性
選択されたCD47×PD-L1 bsAbのPD-L1組換えタンパク質に対する親和性を、バイオレイヤー干渉法テクノロジーを使用して、30℃で決定した。OctetRED96装置を使用した。水和およびキネティック緩衝液(Sartorius、#18-1105;PBS、0.02%Tween20、0.1%BSA、0.05%アジ化ナトリウム)におけるベースライン工程の後、ストレプトアビジンバイオセンサー(Sartorius、#18-5019)に、1μg/mLのビオチン化されたヒト、カニクイザル、またはマウスのPD-L1組換えタンパク質(Acrobiosystems、それぞれ、#PD1-H82E5、#PD1-C52H4、および#PD1-M5220)を含むキネティック緩衝液を、5分間、負荷した。次いで、2倍希釈率で28.6nMから始まるbsAbの段階希釈物に、バイオセンサーを浸した。会合および解離の過程を、それぞれ、600秒間および900秒間、モニタリングした。会合および解離の全過程において、二重参照曲線における1:1グローバルフィッティングモデルを適用して、親和性を測定した。親和性の結果を表7に示す。
【0305】
(表7)選択されたbsAbの組換えPD-L1可溶性タンパク質に対する結合親和性
ND:未決定
【0306】
I. CD47/PD-L1二重陽性腫瘍細胞との結合
選択されたCD47×PD-L1 bsAbのPD-L1+CD47+ヒト腫瘍細胞との結合を、IFNgで予め活性化されたHT-1080腫瘍細胞株(ATCC;CCL-121)を使用して、フローサイトメトリーによって研究した(表8)。CHO細胞株を陰性細胞株として使用した。
【0307】
様々な濃度の抗体を、PBS/BSA 2%に予め再懸濁させられた腫瘍細胞と共に、4℃で15分間、インキュベートした。2回の洗浄の後、AF647にコンジュゲートされた抗ヒトFc F(ab')2(Jackson ImmunoResearch)を使用して、結合したAbを検出した。4℃での15分間のインキュベーション、その後の2回の洗浄工程の後、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。
【0308】
(表8)24時間のIFNg誘導後のHT-1080腫瘍細胞の細胞表面のPD-L1およびCD47の標的密度
【0309】
図4Aは、抗PD-L1 mAbであるS79およびS100の結合プロファイルが、抗PD-L1ベンチマークであるアテゾリズマブおよびアベルマブと類似していることを示している。予想通り、CD47およびPD-L1のコエンゲージメントに基づき、bsAbは、抗PD-L1 mAbより高い結合を示し、それは、PD-L1に対する親和性に依存する(表7および図1Aに例示されるように、K2×S23 bsAbは、K2×S100より低い、PD-L1に対する親和性を有する)。
【0310】
図4Bは、CD47およびPD-L1の一価対照K2およびS100と比較された、bsAb K2×S100の結合を示し、分子の結合における、両方の標的のコエンゲージメントの寄与を強調している。試験されたいずれの分子の結合も、CHO細胞においては観察されなかった(データは示されない)。
【0311】
J. CD47陽性PD-L1陽性腫瘍細胞におけるCD47/SIRPaおよびPD-1/PD-L1を阻止する活性
細胞ベースのCD47/SIRPaおよびPD-1/PD-L1の競合結合アッセイにおいて、選択されたCD47×PD-L1 bsAbおよび抗PD-L1 mAbの、SIRPaおよびPD-1を阻止する活性を、様々な対照と比較して査定した。簡単に説明すると、24時間、IFNgによって誘導され(表8)、Cell Trace Violet(Invitrogen)で染色されたPD-L1+CD47+ HT-1080腫瘍細胞を、室温で1時間、様々な濃度の抗体と共にインキュベートした。検出試薬として、ヒトSIRPa-マウスFcタンパク質(社内)またはヒトPD-1-moFcタンパク質(ACROBiosystem)と抗マウスFc AF647(Jackson ImmunoResearch)との混合物を、室温で3時間、添加した。最後に、CellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォームを使用して、プレートを読み取った。
【0312】
図5Aおよび表9に示されるように、抗PD-L1 mAbであるS100およびS79も、K2×S100 bsAbも、抗PD-L1臨床ベンチマークと比較して、改善されたPD-1阻止を示す。一価PD-L1対照S100の有意に低いPD-1阻止は、K2×S100 bsAbの強力な阻止におけるK2 CD47アームの寄与を示す。一方で、PD-L1コエンゲージメントのため、K2×S100 bsAbは、一価CD47対照K2より優れたSIRPa阻止活性を誘導することができる(図5B)。bsAbは、低いbsAb濃度においては、PD-L1とのコエンゲージメント、最高濃度においては、主として、PD-L1標的が飽和した後の一価CD47阻止に頼る可能性が高い、二相のSIRPa阻止曲線を示す。この曲線プロファイルのため、SIRPa阻止効力は決定されなかった。
【0313】
(表9)ヒトPD-L1+CD47+ HT-1080腫瘍細胞における、選択されたCD47×PD-L1二重特異性抗体および抗PD-L1 mAbのPD-1阻止効力
【0314】
実施例5:PD-L1およびCD47を標的とする二重特異性抗体によって誘導される抗体依存性細胞貪食(ADCP)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)
PD-L1発現を誘導するため、24時間、IFNgに予め曝露された、ATCCから得られた様々な腫瘍細胞株に対する、選択された本発明の抗CD47×PD-L1二重特異性抗体の、ADCPまたはADCCによるインビトロ死滅活性を査定した(表10)。
【0315】
(表10)ADCPアッセイまたはADCCアッセイにおいて使用された、24時間のIFNg誘導後の腫瘍細胞の細胞表面のPD-L1およびCD47の標的密度
【0316】
A. ADCPアッセイにおける活性
アッセイは、CellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォームを使用するイメージングベースの方法に頼る。得られる貪食指数は、100個のマクロファージによって貪食される標的細胞の平均数として定義される。
【0317】
1. マクロファージの調製:
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、フィコール勾配によって、健常ドナーのバフィーコートから単離する。20ng/mLのヒトマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)(PeproTech)の存在下で、完全培地(RPMI1640、10%熱不活化ウシ胎仔血清、Invitrogen)、2mM L-グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、10mM HEPES緩衝液、25mg/mLゲンタマイシン(全て、Sigma-Aldrich)、および50mM 2-メルカプトエタノール(Thermo Fisher Scientific)において、7~9日間、PBMCを培養することによって、マクロファージを生成する。その後、分化期(+1日目)に、細胞培養培地を交換することによって、非接着細胞を排除し、6日目に、細胞解離緩衝液を使用して、マクロファージを表す接着細胞を剥離し、96穴オプティカルプレート(Costar)に1ウェルあたり30'000個で播種する。
【0318】
2. 貪食活性の査定
異なる濃度の被験抗体の存在下で、マイクロプレートウェルに接着した(カルセインレッドオレンジで染色された)マクロファージを、カルセインAMで標識された標的と、1:3のエフェクター:標的細胞比で、37℃で2.5時間、コインキュベートする。インキュベーション期間の終わりに、上清を完全培養培地に交換し、マイクロプレートをCellInsight(商標)CX5ハイコンテントスクリーニングプラットフォームで画像化する。1ウェルあたり1500個のマクロファージを取得し、分析する。CellInsight(商標)の製造業者のソフトウェアによって、二重陽性イベント(マクロファージ+標的腫瘍細胞)として貪食を立証し、貪食指数を計算する。
【0319】
図6は、選択された本発明のbsAbが、NCI-N87腫瘍細胞(A)およびHT-1080腫瘍細胞(B)の貪食を用量依存的に誘導し、その活性が、IgG1抗PD-L1ベンチマークであるアベルマブと類似しているか、またはアベルマブより良好であることを示している。さらに、図6Bに示されるように、K2×S100 bsAbは、一価PD-L1対照S100または一価対照CD47 K2のいずれよりも、HT-1080腫瘍細胞の貪食を強化する効果が高い。
【0320】
B. ADCCアッセイにおける活性
健常ドナーに由来する末梢血単核細胞(PBMC)を、10ng/mlの組換えhIL-2が補足されたRPMI/10%熱不活化FCSで、37℃で一晩、活性化した。翌日、標的がん細胞、NCI-H226、NCI-N87、またはA375を、異なる濃度の被験抗体でオプソニン化した。PBMCおよびオプソニン化された標的細胞を、丸底プレートにおいて、37℃で6時間、50/1または25/1のエフェクター/標的比でコインキュベートした。次いで、上清を平底オプティカルプレートに移し、マイクロプレートリーダーでODを測定することによって、Rocheからの市販のキットで、LDH放出を定量化した。特異的溶解の百分率を、以下の式で計算した:
【0321】
図7は、選択された本発明のbsAbが、NCI-H226腫瘍細胞(A)、NCI-N87腫瘍細胞(B)、およびA375腫瘍細胞(C)の様々な死滅を用量依存的に誘導し、K2×S94 bsAb、K2×S96 bsAb、およびK2×S100 bsAbの活性が、IgG1抗PD-L1ベンチマークであるアベルマブより改善されていることを示している。
【0322】
実施例6:CD47×PD-L1二重特異性抗体によるT細胞活性化の増強
ブドウ球菌エンテロトキシンA(200ng/mL;SEA)の存在下で、bsAbおよび抗PD-L1臨床ベンチマークの段階希釈物を、健常ドナーに由来するヒトPBMCと共に、96時間、インキュベートすることによって、CD47×PD-L1 bsAbの、T細胞活性化を増強する能力を評価した。上清中のヒトIL-2産生を、ELISA(DuoSET ELISA R&D system DY2020)によって測定し、T細胞活性化を決定するために使用した。
【0323】
結果は、選択された本発明の抗CD47×PD-L1二重特異性抗体が、抗PD-L1であるアテゾリズマブおよびアベルマブと比較可能な範囲で、T細胞活性化を効果的に増強したことを示している(図8)。
【0324】
実施例7:C57BL/6マウスに移植されたMC38結腸がんモデルにおける抗PD-L1 mAb S79のインビボ抗腫瘍活性
8~10週齢雌C57BL/6マウスに、5×105個のMC38腫瘍細胞を皮下(s.c.)生着させた。移植の8日後に、10mg/kgのIgG1抗PD-L1 mAb S79または無関係のIgG1で、全部で3用量のため、3日毎に、MC38腫瘍を保持するマウスを腹腔内処置した。
【0325】
図9において観察されるように、IgG1抗PD-L1 mAb S79は、腫瘍進行を有意に遅延させ、1回目の投与の数日後、そして処置期間中、腫瘍増殖の阻害を誘導する。次いで、処置中止のおよそ1週間後に、腫瘍が再発する。
【0326】
他の態様
本発明を、その詳細な説明と共に記載したが、上記の記載は、例示するためのものであって、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を限定するためのものではない。他の局面、利点、および修飾は、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
2024512574000001.app
【国際調査報告】