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特表2024-512575弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240312BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/14 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/165 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N15/86 Z ZNA
C07K14/14
C07K14/165
A61K39/00 A
A61P35/00
A61P31/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558580
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-13
(86)【国際出願番号】 KR2022003992
(87)【国際公開番号】W WO2022203358
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037160
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0035224
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522451160
【氏名又は名称】バイロキュア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VIROCURE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユ、へン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】アレン、トミー ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ハン、サン ギョン
(72)【発明者】
【氏名】シャン、シャオ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン スク
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ギ フン
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BA56
4C085BB01
4C085BB11
4C085CC03
4C085CC05
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG03
4C085GG08
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA28
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物及びその用途に関し、本発明による弱毒化されたレオウイルスは、カプシドのシグマ1タンパク質から251~455番目のアミノ酸が切断されたもので、前記切断されたシグマ1タンパク質部位にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原タンパク質のエピトープを導入する場合、抗原タンパク質のエピトープが細胞内に安定して発現し、中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導するなど免疫反応を示す効果を有する。そこで、本発明による弱毒化されたレオウイルスの切断されたシグマ1タンパク質部位に抗原タンパク質のエピトープを導入することにより、がんまたは感染性疾患に対するワクチン組成物として有用に利用できるものと期待される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列、及びがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)アミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、
N末端から251番目のアミノ酸の位置が切断されて弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質の1~250番目のアミノ酸配列、及び
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列のN末端から251番目を含んでそれ以降のアミノ酸の位置に挿入され、がんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープアミノ酸配列を含むことを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項2】
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列で表されることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質が、配列番号2で表される塩基配列によって暗号化されることを特徴とする、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記エピトープが、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のカルボキシ末端において融合タンパク質を形成するか、または構成することを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記エピトープのアミノ酸配列の前後にリンカー(配列番号11)、Mycタンパク質(配列番号12)、FLAGタンパク質(配列番号13)、及び2Aペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記がんが、肝がん、神経膠腫、肉腫、大腸がん、乳がん、前立腺がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、リンパ腫、甲状腺がん、骨髄がん、子宮内膜がん、腎臓がん、直腸がん、及び脳腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記感染性疾患が、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)、C型肝炎、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘導エイズ(AIDS)、結核、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、ロタウイルス(rotavirus)による乳幼児腸炎、及びノロウイルス(norovirus)による非細菌性急性胃腸炎からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記エピトープのアミノ酸配列が、配列番号3~10からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記エピトープをコードする塩基配列が、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列の5’末端から763~1416番目の塩基配列位置に置換または挿入されることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記エピトープが、宿主で中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導して免疫反応を引き起こすことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記エピトープが、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞エピトープからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、弱毒化されたレオウイルスベースのウイルスベクター。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または請求項12に記載のウイルスベクターを有効成分として含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物。
【請求項14】
前記ワクチン組成物が、がんまたは感染性疾患の予防または治療用であることを特徴とする、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
以下の段階を含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物の製造方法:
a)配列番号1で表される弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列を含むように逆進化ウイルスベクターを製造する段階、及び
b)前記シグマ1タンパク質をコードする塩基配列の763~1416番目の塩基配列位置にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)をコードする塩基配列が含まれるように塩基を置換または挿入し、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質とがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープが融合して発現されるようにコードするポリヌクレオチドを前記ベクターに導入する段階。
【請求項16】
c)前記b)段階のポリヌクレオチドを含む弱毒化されたレオウイルスベースのベクターをBHK21、L929、HEK293、CHO、PER.C6、HeLa、及びVero細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つの細胞において産生及び増殖させる段階を含むことを特徴とする、請求項15に記載のワクチン組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項13に記載のワクチン組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、がんまたは感染性疾患の予防または治療方法。
【請求項18】
請求項13に記載のワクチン組成物のがんまたは感染性疾患の予防または治療用途。
【請求項19】
請求項1に記載のポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターのがんまたは感染性疾患の予防または治療用ワクチンの製造のための用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物及びその用途に関する。
【0002】
本出願は、2021年03月23日付で出願された韓国特許出願第10-2021-0037160号及び2022年03月22日付で出願された韓国特許出願第10-2022-0035224号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示されたすべての内容は、本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
ウイルスは、遺伝物質とタンパク質からなる小さな非細胞性有機体であり、異なるタイプのウイルスが存在する。例えば、ウイルスは、宿主の核内で複製するDNAウイルス、または細胞の細胞質内で複製するRNAウイルスであってもよい。ウイルスは、二本鎖または一本鎖であってもよい。さらに、一本鎖RNAウイルスは、プラス(+、センス)鎖またはマイナス(-)鎖であってもよい。このような異なるタイプのウイルスは、様々なウイルス性感染を誘発する。
【0004】
ウイルス感染は、病原性ウイルスが有機体の体内に侵入して入るときに発生する。一旦ウイルスが有機体の体内に入ると、ウイルスは自らを細胞に付着させ、細胞が破裂(cell burst)または死滅するまで細胞が新しいウイルスを複製するように細胞をリプログラミング(reprogramming)し、ヒトと動物においてウイルスが様々な感染性疾患を誘発させ、急速に広がるようにする。ウイルスによって誘発される感染性疾患は、通常、風邪、インフルエンザ、及びイボ(warts)を含む。しかし、ウイルスは、さらにAIDS、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、C型肝炎、結核、重症急性呼吸器症候群(SARS)、及び中東呼吸器症候群(MERS)、重症天然痘(small pox)、ヘルペス(herpes)、出血熱(hemorrhagic fever)、小児麻痺(polio)、麻疹(measles)、流行性耳下腺炎(mumps)、風疹(rubella)、ロタウイルス(rotavirus)、非細菌性急性胃腸炎(norovirus)などの重症疾患を誘発することもある。
【0005】
近年、ウイルス感染に対抗し、その拡散を制限するための最も重要な保護措置は、予防接種である。現代のワクチンは原則として、表面ウイルス抗原に対する抗体の形成を誘導する。ワクチン効果は、ワクチンに含まれるウイルスの抗原構造と個体群で循環する菌株との間の一致の程度に直接的に依存的である。ほとんどのウイルスの表面タンパク質は、一定の抗原変異(antigenic variation)(抗原小変異(drift))を経験し、ワクチン菌株組成の継続的な更新が必要である。広範囲な作用の免疫反応を誘導する高度な免疫原性及び安全なワクチンの開発は、現在、効率的ながんや感染性疾患予防において直面する主な問題の一つである。最近拡散したSARS-CoV-2によるコロナウイルス感染症-19(COVID-19)などのような世界的な流行性疾患の拡散と持続的な感染を防ぐためには、ワクチンの開発が必要なのが実状である。そこで、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、麻疹ウイルス(MeV)、アデノウイルス(Ad)、バキュロウイルスなどのプラットフォームを使用し、現在、世界中で多くのウイルスベースのワクチンが開発されている。
【0006】
レオウイルス(Respiratory Enteric Orphan Virus;Reovirus)は、全ゲノムが10本の二本鎖のRNA断片から構成される非エンベロープウイルスであり、一般的な環境に遍在し、正常な免疫機能を有する宿主では症状を示さない無症候性ウイルスである。ヒトへの感染性が弱く、感染部位は、上部呼吸器及び胃腸管に限定されることが知られている。
【0007】
一方、逆遺伝学技術は、ウイルスの全遺伝体配列を確認して組換えされた人工ウイルスを作り出すことができ、最大の長所は、人工的にウイルスを組換え発現、操作し、合成するために、ウイルス遺伝子に意図する様々な操作を加えることができるという点である。キメラウイルス(Chimeric virus)、コドン最適化(codon pair deoptimization)、突然変異(Mutagenesis)などの様々な機序をウイルスの遺伝子に搭載し、操作された新しいウイルスを作り出すことができる。古典的な遺伝学的アプローチは、主に与えられた生命体の遺伝体に対して無作為に変異を誘導した後、関心対象の形質を示す突然変異から遺伝子を発掘する方法で、時間と労力を多く消耗し、変異による形質変異効果が強くない遺伝子の変異は、分離が容易ではないという短所を有していた。最近、機能誘電体の発達により、酵母をはじめとするいくつかのモデル生物体において、誘電体レベルの前記突然変異が利用可能になった。一方、逆遺伝学技術は、様々な機序のうち、前記突然変異を用いて各遺伝子の変異が起こり得る形質変異を直接導入して探索することにより、遺伝学的探索の識別能を増加させることができる。前記逆遺伝学技術は、人工的に必要に応じてウイルスを操作でき、その特性を極大化できるという長所があり、ワクチン開発において非常に有用な技術である。
【0008】
そこで、本発明者らは、逆遺伝学技術を用いて、特定のアミノ酸配列位置が切断され、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質にがんまたは感染性疾患に対するエピトープが融合して発現されるようにエピトープ塩基配列を挿入する「迅速交換」方法を通じて、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチンプラットフォームを開発しようとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、251~455番目のアミノ酸が切断されて弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質において、切断されたアミノ酸の位置にがんまたは感染性疾患に対する様々なエピトープのアミノ酸配列を置換または挿入する方法で導入してその発現を確認した結果、導入したエピトープが細胞内に安定的に発現し、中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導するなど免疫反応を示すことを確認し、これに基づいて本発明を完成した。
【0010】
そこで、本発明の目的は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列、及びがんまたは感染性疾患を誘発するエピトープ(epitope)のアミノ酸配列を含むポリペプチド及びそれをコードするポリヌクレオチドを提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、弱毒化されたレオウイルスベースのウイルスベクターを提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ウイルスベクターを有効成分として含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物及びその製造方法を提供することである。
【0013】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は、以下の記載から本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者が明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するために、本発明は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列、及びがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)のアミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、
N末端から251番目のアミノ酸の位置が切断されて弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質の1~250番目のアミノ酸配列、及び
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列のN末端から251番目を含むもの以降のアミノ酸の位置に挿入され、がんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープアミノ酸配列を含むことを特徴とする、ポリペプチドを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、弱毒化されたレオウイルスベースのウイルスベクターを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ウイルスベクターを有効成分として含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、以下の段階を含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物の製造方法を提供する。
【0018】
a)配列番号1で表される弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列を含むように逆進化ウイルスベクターを製造する段階、及び
b)前記シグマ1タンパク質をコードする塩基配列の763~1416番目の塩基配列位置にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)をコードする塩基配列が含まれるように塩基を置換または挿入し、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質とがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープが融合して発現されるようにコードするポリヌクレオチドを前記ベクターに導入する段階。
【0019】
本発明の一具現例として、前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列で表されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0020】
本発明の他の具現例として、前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質は、配列番号2で表される塩基配列によって暗号化されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープは、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のカルボキシ末端において融合タンパク質を形成するか、または構成するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープのアミノ酸配列の前後にリンカー(linker)(配列番号11)、Mycタンパク質(配列番号12)、FLAGタンパク質(配列番号13)、及び2Aペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列をさらに含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0023】
本発明のさらに他の具現例として、前記がんは、肝がん、神経膠腫、肉腫、大腸がん、乳がん、前立腺がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、リンパ腫、甲状腺がん、骨髄がん、子宮内膜がん、腎臓がん、直腸がん、及び脳腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明のさらに他の具現例として、前記感染性疾患は、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)、C型肝炎、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘導エイズ(AIDS)、結核、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、ロタウイルス(rotavirus)による乳幼児腸炎、及びノロウイルス(norovirus)による非細菌性急性胃腸炎からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0025】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープのアミノ酸配列は、配列番号3~10からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0026】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープをコードする塩基配列は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列の5’末端から763~1416番目の塩基配列位置に置換または挿入されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0027】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープは、宿主で中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導して免疫反応を引き起こすものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0028】
本発明のさらに他の具現例として、前記エピトープは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞エピトープからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0029】
本発明のさらに他の具現例として、前記ワクチン組成物は、がんまたは感染性疾患の予防または治療用であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0030】
本発明のさらに他の具現例として、前記ワクチン組成物の製造方法において、c)前記b)段階のポリヌクレオチドを含む弱毒化されたレオウイルスベースのベクターをBHK21、L929、HEK293、CHO、PER.C6、HeLa、及びVero細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つの細胞において産生及び増殖させる段階を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0031】
また、本発明は、前記ワクチン組成物をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、がんまたは感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0032】
また、本発明は、前記ワクチン組成物のがんまたは感染性疾患の予防または治療用途を提供する。
【0033】
また、前記本発明は、本発明によるポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、またはウイルスベクターのがんまたは感染性疾患の予防または治療用ワクチンの製造のための用途を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明による弱毒化されたレオウイルスは、カプシドのシグマ1タンパク質から251~455番目のアミノ酸が切断されたもので、前記切断されたシグマ1タンパク質部位にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原タンパク質のエピトープを導入する場合、抗原タンパク質のエピトープが細胞内に安定して発現し、中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導するなど免疫反応を示す効果を有する。そこで、本発明による弱毒化されたレオウイルスの切断されたシグマ1タンパク質部位に抗原タンパク質のエピトープを導入することにより、がんまたは感染性疾患に対するワクチン組成物として有用に利用できるものと期待される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1a】本発明の一具現例による野生型レオウイルス及び弱毒化されたレオウイルスRP116の構造を比較して示す図である。
図1b】本発明の一具現例による弱毒化されたレオウイルスRP116のシグマ1タンパク質の切断された部位に様々な病原体由来抗原のエピトープを追加してレオウイルスワクチンプラットフォームを生成できることを概略的に示す図面である。
図1c】本発明の一具現例による弱毒化されたレオウイルスを用いて製造したワクチンの投与経路及び作用を図式化して示す図面である。
図2】本発明の一具現例による迅速交換(quick exchange)レオウイルス逆遺伝学(reverse genetics)システム及びレオウイルス増殖過程を図式化して示す図面である。
図3a】本発明の一具現例によるL929細胞に野生型レオウイルス(WTReoV)、切断されたσ1を有する弱毒化されたレオウイルスRP116(ReoV+Q251)及びRBDを導入したレオウイルス(ReoV+RBD)をそれぞれ感染させた後、抗レオウイルス抗体によるタンパク質検出結果を確認した図である。
図3b】本発明の一具現例によるL929細胞にReoV+RBDを感染させて抽出した遺伝物質からRBD遺伝子が検出されることを確認した図である。
図3c】本発明の一具現例によるL929細胞にReoV+RBDを感染させて得られた細胞溶解物においてSARS-CoV-2中和抗体(NeuAb)(上段)及び抗レオウイルス抗体(下段)によるレオウイルスタンパク質とRBDの発現を確認した図である。
図4a】本発明の一具現例による弱毒化されたレオウイルスの組換えσ1タンパク質構成設計の概略図を示す図である。
図4b】本発明の一具現例による弱毒化されたレオウイルスにおいて様々なCD4+及びCD8+T細胞エピトープをσ1タンパク質と融合して発現するように操作し、組換えレオウイルスから導入した様々な抗原が発現されることをウェスタンブロットを通じて確認した図である。
図4c図4bで使用した組換えレオウイルスから導入した抗原が発現されることをRT-qPCR分析を通じて確認した図である。
図4d】は、本発明の一具現例による弱毒化されたレオウイルスにおいて様々なB細胞エピトープをσ1タンパク質と融合して発現するように操作し、組換えレオウイルスから導入した様々な抗原が発現されることをウェスタンブロットを通じて確認した図である。
図4e図4dで使用した組換えレオウイルスから導入した抗原が発現されることをRT-qPCR分析を通じて確認した図である。
図5】本発明の一具現例によるReoV+OVA257-264でエピトープ発現を免疫細胞化学分析法により確認した図である。
図6】本発明の一具現例によるReoV-S21P2(2)でSARS-CoV-2の線状B細胞エピトープ発現を確認した図である。
図7a】本発明の一具現例による組換えレオウイルスReoV+S21P2(1)及びReoV+OVA257-264の組換えσ1タンパク質構成設計の概略図を示す図である。
図7b】本発明の一具現例による組換えレオウイルスにおいてレオウイルス特異的抗体(上段)とFLAGタグに対する特異的抗体(下端)で抗原を検出することにより、導入したエピトープの安定性を確認した図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の一実施例では、ヌクレオチド763CAA(アミノ酸251Q-グルタミン)から763TAA(終止コドン)へのユニークな終止突然変異のある弱毒化されたレオウイルスRP116を使用し、RP116の切断されたシグマ1タンパク質にエピトープアミノ酸配列を追加し、迅速交換(quick exchange)レオウイルス逆遺伝学(reverse genetics)システムを通じて弱毒化されたレオウイルスベースのワクチンプラットフォームを構築した(実施例1及び2参照)。
【0037】
本発明の他の実施例では、レオウイルスワクチンプラットフォームに対する概念証明で、レオウイルスのシグマ1タンパク質と融合タンパク質の形態でコドン最適化されたSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)受容体結合ドメイン(RBD)配列を発現するReoV-RBDを製造し、これはSARS-CoV-2中和抗体により検出が可能であることを確認し、RBDを発現するReoVがワクチン候補に理想的な中和抗体を生成することが分かった(実施例3参照)。
【0038】
本発明のさらに他の実施例では、迅速交換技術を使用し、様々なCD4+及びCD8+T細胞エピトープが弱毒化されたレオウイルスのシグマ1タンパク質と融合して発現するように操作し、前記エピトープが実際に発現されることを実験を通じて確認し(実施例4~6参照)、導入したエピトープに変異なく安定的な発現が可能であることを確認した(実施例7参照)。
【0039】
そこで、本発明は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列、及びがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)アミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、
N末端から251番目のアミノ酸の位置が切断されて弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質の1~250番目のアミノ酸配列、及び
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列のN末端から251番目を含んでそれ以降のアミノ酸の位置に挿入され、がんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープアミノ酸配列を含むことを特徴とする、ポリペプチドを提供する。
【0040】
本発明において、「レオウイルス(respiratory enteric orphan virus, REO virus)」は、二本鎖のRNA断片をゲノムとして有する、非エンベロープ(non-enveloped)20面体のウイルスである。レオウイルスは、健康なヒトの消化器及び呼吸器からよく分離され、病原性のないバイロム(virome)であると考えられる。レオウイルスは、様々な形質転換(transformed)細胞を感染及び死滅させることができる腫瘍溶解性ウイルス(oncolytic virus)として知られている。
【0041】
本発明において、「弱毒化されたレオウイルス」は、野生型レオウイルスのカプシドから放出された付着タンパク質シグマ1から251番目のアミノ酸であるグルタミン(glutamine,Q)をコードする763CAAから763TAA(終止コドン)へ突然変異が発生し、前記シグマ1タンパク質の251番目のアミノ酸以降が切断され、球状ヘッド形態が切断されたことを特徴とするレオウイルスRP116であってもよい。
【0042】
本発明において、前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列で表されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明において、前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質は、配列番号2で表される塩基配列によって暗号化されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明において、「がん」とは、細胞が正常な成長限界を無視して分裂及び成長する 攻撃的(aggressive)特性、周囲組織に浸潤する浸潤的(invasive)特性、及び体内の他の部位に広がる転移的(metastatic)特性を有する細胞による疾患を総称する意味である。
【0045】
本発明において、前記がんは当業界において悪性腫瘍として知られているものであれば、その種類が特に制限されず、例えば、肝がん、神経膠腫、肉腫、大腸がん、乳がん、前立腺がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、リンパ腫、甲状腺がん、骨髄がん、子宮内膜がん、腎臓がん、直腸がん、及び脳腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0046】
本発明において、「感染」とは、ウイルスのような病原性微生物が宿主となる生物体の体内に侵入して発育、増殖するもので、ヒトや動物、植物の組織、体液、表面に定着して増殖することを意味し、その結果、宿主は、病理学的な変化を受けて疾患が発生することがある。
【0047】
本発明において、「感染性疾患」とは、病原性微生物がヒトや動物、植物の組織、体液、表面に定着して増殖することにより発生する疾患を意味し、感染経路、伝染性の有無によって様々な種類に区分できる。前記感染は、ウイルス性感染、真菌感染、細菌感染、原虫感染、及び寄生虫感染を含む。本発明において、前記感染性疾患は、C型肝炎、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘導エイズ(AIDS)、結核、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)感染症、ロタウイルス(rotavirus)による乳幼児腸炎、及びノロウイルス(norovirus)による非細菌性急性胃腸炎からなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよく、本発明の一実施によれば、コロナウイルス感染症-19であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0048】
本発明において、「コロナウイルス感染症-19(COVID-19)」は、SARS-CoV-2が引き起こす重症呼吸器症候群である。2019年12月に中国で初めての事例が報告されて全世界的に広がり、流行病として位置づけられた。COVID-19の症状は様々であるが、発熱、咳、頭痛、疲労、呼吸困難、嗅覚及び味覚喪失などがある。症状はウイルスに感染してから1~14日以内に現れる。特に感染した人の3分の1は無症状感染者で、目立つ症状が現れない。患者に分類されるほど目立つ81%の人々は、軽症から重症の症状が発生し、14%の人々は呼吸困難、低酸素症などの症状が発生し、5%の人々は呼吸器不全、ショックなど深刻な症状が発生する。高齢者は深刻な症状が発生する確率がさらに高く、一部の人々は、回復後、長い間感染したCOVID-19のために臓器損傷が観察された。
【0049】
SARS-CoV-2は、30kbのヌクレオチドを有し、4つの重要な構造タンパク質を有している。Nucleocapsid(N),Spike(S),Membrane(M),Envelope(E)タンパク質。そのうち、Sタンパク質は、宿主細胞の受容体(receptor)と結合することで重要な部位であり、細胞内にviral nucleocaspidを伝達し、複製(replication)が行われる。
【0050】
SARS-CoV-2に対抗する最も簡単で直接的な方法は、ヒト細胞に入るウイルスを中和させることで、SARS-CoV-2が細胞内に流入して複製が起こり、新しいビリオン(virion)が分泌されて他の細胞に感染させるメカニズムを遮断することである。
【0051】
SARS-CoV-2は、ヒト細胞のアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体と結合してウイルス複製が可能であることが知られている。コロナウイルスのSタンパク質のうち、受容体結合ドメイン(RBD)は、宿主細胞のACE2受容体と結合する核心領域であり、SARS-CoV-2感染に対する強力な中和抗体を誘導する多重形態依存的エピトープ(multiple conformational-dependent epitopes))を含んでいるため、コロナウイルス感染症-19の治療及びワクチンの開発にとって核心標的になりうる(J.Immunol 2005;174:4908-4915)。
【0052】
また、本発明は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、弱毒化されたレオウイルスベースのウイルスベクターを提供する。
【0053】
また、本発明は、前記ポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ウイルスベクターを有効成分として含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物を提供する。
【0054】
本発明において、前記ワクチン組成物は、がんまたは感染性疾患の予防または治療用であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0055】
本発明において、「ワクチン」とは、動物において免疫学的応答を誘導する少なくとも1つの免疫学的に活性な成分を含有する組成物を意味する。ワクチンの免疫学的に活性な成分は、生きているウイルスまたは死んだウイルスの適切な要素を含んでもよく(サブユニットワクチン)、これによってこれらの要素は、全ウイルスまたはその成長培養物を破壊し、次に所望の構築物(ら)を得る精製段階によって、または制限されるものではないが、バクテリア、昆虫、哺乳動物または他の種などの適切なシステムの適切な操作によって誘導される合成過程及び、次に単離及び精製過程により、または適切な薬学的組成物を使用して遺伝子物質の直接的な混入によるワクチンを必要とする動物において前記合成過程の誘導によって(ポリヌクレオチドワクチン化)製造される。
【0056】
ワクチンは、前述した要素の1つまたは1つ以上を含んでもよく、当業界に知られている方法によって製造されてもよい。本発明において、前記ワクチンは、シグマ1タンパク質が切断されて弱毒化されたレオウイルスに基づいて、その切断された部位に様々ながんまたは感染性疾患を誘発するエピトープが融合した形態で発現されるように製造されてもよく、例えば、前記弱毒化されたレオウイルスの切断されたシグマ1タンパク質及びエピトープアミノ酸配列を含むポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、及び前記ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターの形態で製造されてもよいが、これに制限されるものではない。本発明のワクチンは、当業界で知られている任意の形態、例えば、液剤及び注射剤の形態または懸濁液に適した固体形態であってもよいが、これに限定されるものではない。このような製剤は、さらにリポソームや可溶性ガラス内に乳化またはカプセル化されるか、またはエアロゾルやスプレーの形態で製造されてもよい。これらは経皮(transdermal)パッチに含ませてもよい。
【0057】
本発明によるワクチンは、必要に応じて、薬学的に許容されるワクチン保護剤、免疫強化剤、希釈剤、吸収促進剤などを含んでもよい。前記ワクチン保護剤は、例えば、ラクトースリン酸グルタミン酸ゼラチン混合物を含むが、これに限定されるものではない。前記ワクチンが液剤または注射剤の場合、必要に応じてプロピレングリコール及び溶血現象を防止するのに十分な量(例:約1%)の塩化ナトリウムを含有してもよい。
【0058】
前記免疫増強剤(アジュバント)として使用する物質には特に制限はなく、例えばミョウバン(Alum)、MPL(monophosphoryl lipid A)、水酸化アルミニウム、鉱油または他のオイルまたはワクチンに添加されるか、またはこのような追加成分によってそれぞれの誘導後、身体によって発生する補助分子であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0059】
このとき、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、個体に投与されるとき、活性成分の作用を阻害せず、通常、胃腸障害、めまいなどのアレルギー反応またはこれに類似した反応を引き起こさない非毒性であることを意味する。
【0060】
前記ワクチンは、経口、経皮、筋肉内、腹膜内、静脈内、皮下内などの投与経路を通じて投与されてもよいが、これに限定されず、例えば、経口または筋肉投与経路を通じて投与されてもよい。
【0061】
本発明において、「エピトープ(epitope)」とは抗原決定基であり、抗体、B細胞、T細胞などの免疫系が抗原を識別させる抗原の特定の部分を意味する。B細胞(すなわち、抗体)反応を誘導するためには、抗原が「B細胞エピトープ」を含むべきであり、T細胞反応を誘導するためには、抗原が「T細胞エピトープ」を含むべきである。当技術分野で一般的に理解されるように、B細胞エピトープは、B細胞受容体によって認識されて結合される抗原の一部である。脂質、多糖類及びタンパク質/ペプチドは、B細胞エピトープを含んでもよく、これは選択された有機体に導入されると、導入されたエピトープに特異的に結合する抗体をB細胞が産生するようにする。
【0062】
本発明において、前記エピトープは、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞エピトープからなる群から選ばれる少なくとも1つであってもよく、本発明の一実施例によれば、RBD(配列番号3)、OVA257-264(配列番号4)、OVA323-339(配列番号5)、Adpgk(配列番号6)、Rpl18(配列番号7)、P15E(配列番号8)、S21P2(1)(配列番号9)、及びS21P2(2)(配列番号10)からなる群から少なくとも1つのアミノ酸配列を含むエピトープであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0063】
本発明において、前記エピトープは、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のカルボキシ末端に融合タンパク質を形成するか、または構成するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0064】
本発明において、前記エピトープをコードする塩基配列は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列の5’末端から763~1416番目の塩基配列位置に置換または挿入されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。例えば、前記エピトープをコードする塩基配列は、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする配列番号2の塩基配列において5’末端から763~1416番目の塩基配列位置のうち、特定位置の塩基配列の代わりに置換されるものであってもよく、特定の位置の塩基配列の間に挿入されるものであってもよい。これにより、野生型レオウイルスのシグマ1タンパク質のアミノ酸配列においてN末端から251番目のアミノ酸配列以降が切断され、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質において、前記251番目を含んでそれ以降のアミノ酸の位置に挿入されて融合されるエピトープは、約5個~400個のアミノ酸配列を含んでもよいがこれに制限されるものではない。
【0065】
本発明において、前記弱毒化されたレオウイルスのシグマ1タンパク質において251番目を含むもの以降のアミノ酸の位置に含まれるエピトープのアミノ酸配列の前後にリンカー(linker)(配列番号11)、Mycタンパク質(配列番号12)、FLAGタンパク質(配列番号13)、及び2Aペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列をさらに含んでもよいが、これらに制限されず、それらの順序に制限はない。前記2Aペプチドは、例えば、P2A、T2A、E2A、またはF2Aなどを含む2Aペプチドの中から選ばれてもよく、その種類に制限はない。
【0066】
本発明において、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞エピトープからなる群から選ばれる少なくとも1つのエピトープは、T細胞またはB細胞が抗原を識別させることにより、宿主で中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導することにより、免疫反応を引き起こすものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0067】
本発明において、「抗体」とは、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子またはその断片に由来するフレームワーク領域を含むポリペプチドを意味する。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン、及びミュー不変領域遺伝子をはじめとして、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。軽鎖はカッパまたはラムダに分類された。重鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタ、またはイプシロンに分類され、結果としてそれぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgD及びIgEを限定する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合特異性及び親和性において最も核心的である。抗体は体液性免疫の主役であり、感作リンパ球とともに生体防御機構の重要な役割を担っており、抗原タンパク質を免疫原として動物に投与して体液性免疫反応を誘導することにより製造される。抗体または抗体の断片は、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ラクダ、ウサギなどを含む、異なる個体に由来されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0068】
本発明において、「中和抗体(neutralizing antibody)」とは、病原体に結合して細胞を感染させるか、または疾患を引き起こす病原体の能力を妨げる任意の抗体またはその抗原結合断片を意味する。
【0069】
本発明において、「細胞性免疫」とは、あるリンパ系細胞がある抗原に直接的に免疫反応を引き起こす免疫活動をいう。白血球細胞がある抗原に作用してその細胞を食べる大食作用をするか、または毒性細胞反応を起こして抗原を除去する免疫活動をいう。体内で血清抗体により行われる体液性免疫とともに免疫系を構成しており、代表的には細胞毒性を有するT細胞の作用が挙げられる。T細胞は、B細胞と結合して抗体を構成した後、直接的に抗原と接触して抗原を破壊させる。
【0070】
本発明において、「抗原」とは、宿主において免疫反応を生成する能力を有するタンパク質を指す。抗原は抗体によって認識され、それに結合されてもよい。抗原は体内または外部環境に由来されるものであってもよく、組換え型タンパク質も含む。本発明において、前記ワクチン組成物は、がんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープに対する抗体の産生を誘導することができ、このとき、前記エピトープは、抗原として作用する。前記ワクチン組成物を1回投与する場合に比べて2回または3回繰り返し投与する場合、抗体の産生がさらに増加し得るが、これに制限されるものではない。
【0071】
また、本発明は、以下の段階を含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物の製造方法を提供する。
【0072】
a)配列番号1で表される弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列を含むように逆進化ウイルスベクターを製造する段階、及び
b)前記シグマ1タンパク質をコードする塩基配列の763~1416番目の塩基配列位置にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)をコードする塩基配列が含まれるように塩基を置換または挿入し、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質とがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープが融合して発現されるようにコードするポリヌクレオチドを前記ベクターに導入する段階。
【0073】
本発明において、前記逆進化ウイルスベクターは、宿主細胞において弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードするS1セグメントRNAを産生できるように製造されたウイルスベクターを意味することができ、当業界で公知の方法を通じて製造されてもよい。T7RNAポリメラーゼプロモーターからウイルスRNAセグメント(segment)が転写されるようにベクターを構成し、3’末端はベクターにあるリボザイム(ribozyme)によって自然に形成されてベクターを導入したT7ポリメラーゼ発現細胞でウイルスRNAが産生され、これを用いてウイルスタンパク質が合成されることになり、逆進化システム(reverse genetics sytem)と命名されている。これはRNAウイルスの変異株をデザインして作り出す有用な方法である。
【0074】
本発明のワクチン組成物の製造方法において、c)前記b)段階のポリヌクレオチドを含む弱毒化されたレオウイルスベースのベクターをBHK21、L929、HEK293、CHO、PER.C6、HeLa、及びVero細胞からなる群から選ばれる少なくとも一つの細胞において産生及び増殖させる段階を含んでもよいが、これに制限されるものではない。
【0075】
また、本発明は、前記ワクチン組成物を、それを必要とする個体に投与する段階を含む、がんまたは感染性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0076】
また、本発明は、前記ワクチン組成物のがんまたは感染性疾患の予防または治療用途を提供する。
【0077】
また、本発明は、本発明によるポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ウイルスベクターのがんまたは感染性疾患の予防または治療用ワクチンの製造のための用途を提供する。
【0078】
本発明において「予防」とは、所望の疾患の発病を抑制するか、または遅延させるすべての行為を意味し、「治療」とは、本発明による薬学的組成物の投与により所望の疾患とそれに伴う代謝異常の症状が好転するか、または有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0079】
本発明で使用される用語の「投与」とは、任意の適切な方法で個体に所定の本発明の組成物を提供することを意味する。
【0080】
本発明で使用される用語の「個体」とは、がんまたは感染性疾患の予防を必要とする対象を意味し、より具体的には、ヒトまたは非-ヒトの霊長類、マウス(mouse)、イヌ、ネコ、ウマ、及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0081】
本発明において、「含む」という用語が使用されるとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。本発明の全体で使用される程度の用語の「~(する)段階」または「~の段階」は、「~のための段階」を意味しない。
【0082】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記の実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0083】
[実施例1.弱毒化されたレオウイルスベースのワクチンプラットフォームの構築]
レオウイルス(Reovirus)は、二本鎖のRNA非エンベロープウイルスである。REOは、Respiratory Enteric Orphanの略字で、ヒトの呼吸器及び腸のために分離されたが、既知のヒトの疾患とは関連がない。野生型レオウイルス感染によって発生するほとんどの中和抗体及び免疫反応は、ウイルスのシグマ1(sigma 1,σ1)タンパク質、より具体的には、カプシドから飛び出したタンパク質の球状ヘッドに対するものである。したがって、レオウイルスに対するσ1のこの領域は、抗原性を高める核心部分を示す。図1aに示すように、野生型(WT)レオウイルスは、接合部接着分子-A(JAM-A)を認識し、これに結合して進入する外部カプシドに付着タンパク質σ1を表示する(図1aの左図)。
【0084】
野生型レオウイルスσ1タンパク質のアミノ酸配列及び塩基配列を下記表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
弱毒化されたレオウイルスRP116は、ヌクレオチド763CAA(アミノ酸251Q-グルタミン)から763TAA(終止コドン)へのユニークな終止突然変異のあるレオウイルスであり、WTレオウイルスσ1に比べて「ヘッドが切断された」σ1タンパク質を生成する(図1aの右図)。
【0087】
図1bに示すように、RP116のこのようなσ1タンパク質は、球状ヘッドがレオウイルス複製に必須的ではなく、この部位で様々な病原体由来の他の抗原断片と交換できることを示している。革新的かつ安全なレオウイルスワクチンプラットフォームの生成のために、RP116σ1タンパク質のこのような部位にエピトープ断片の約5個~400個のアミノ酸を追加してもよい。
【0088】
また、図1cに示すように、非エンベロープレオウイルスは、過酷な環境条件に対する回復力があり、様々な溶液または食品供給源とともに投与してもよい。経口進入の際に、レオウイルスは、小腸のM細胞を優先的に感染させ、σ1に表示された様々な病原体エピトープに対する免疫反応を誘導する。
【0089】
[実施例2.迅速交換(quick exchange)レオウイルス逆遺伝学(reverse genetics)システムの構築]
レオウイルスに対する逆遺伝学システムは、10個のウイルス遺伝子切片及びT7発現細胞株で形質感染して、複製可能なレオウイルス粒子を生成し(Kobayshi et al.,2007,Cell Host Microbe.2007 Apr 19;1(2):147-57.)、その後、10個のウイルス遺伝子切片を含む4つのプラスミドのみがT7発現細胞株に形質感染される必要がある逆遺伝学システムの改善されたバージョンが報告された(Kobayashi et al.,2010,Virology.2010 Mar 15; 398(2):194-200.)。本発明では、弱毒化されたレオウイルスRP116遺伝子を使用して新しい逆遺伝学システムを構築することにより、ワクチンの設計及びテストのための速い「迅速交換(quick exchange)」アプローチを行った。本発明において前記システムを導入してレオウイルスRP116ベースのワクチンを設計するために使用したベクターは、以下の通りである(図2の上段図面参照):pS1AttまたはpS1XX、pL1、pSet2、pSet3、pSet4。
【0090】
T7RNAポリメラーゼを発現するように形質転換したBHK21細胞に前記ベクターを導入させると、ウイルス遺伝子が転写され、究極的に24~72時間以内に複製可能なウイルス粒子の生成を誘導する。pS1XXは、pS1Att、すなわち、RP116のS1遺伝子のアミノ酸位置251で終止コドン突然変異からC末端への配列を再設計することにより、非レオウイルスエピトープを導入して製造した。終止コドンと763番目のヌクレオチド以降の配列を再設計し、抗原またはエピトープ断片をRP116σ1タンパク質配列に「融合」してもよい。特定の制限酵素認識部位は、アミノ酸の位置251及びC末端の間にも設計され、σ1ペプチドのこの部分を容易に交換することができた。
【0091】
生成された複製可能な粒子は、感染前にキモトリプシン(chymotrypsin)50μg/mL処理を通じて外部カプシドを分解することにより、産生用細胞株BHK21、L929、Vero細胞への付着及び進入をさらに容易にした。
【0092】
このような迅速交換(quick exchange)レオウイルス逆遺伝学(reverse genetics)システム及びレオウイルス増殖過程を図式化して図2に示した。
【0093】
また、本発明で使用したエピトープのアミノ酸配列、構築物のアミノ酸配列及びコドン最適化された構築物のDNA配列を下記表2に示した。
【0094】
【表2】
【0095】
[実施例3.ReoV-RBDの製造]
レオウイルスワクチンプラットフォームに対する概念証明として、レオウイルスのσ1タンパク質と融合タンパク質の形態でコドン最適化されたSARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)受容体結合ドメイン(RBD)配列を発現するように弱毒化されたレオウイルスS1遺伝子の位置251コドン以降にSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)塩基配列を導入することにより製造した組換えレオウイルスReoV+RBD(ReoV-RBD)、WTσ1(WT ReoV)及び切断されたσ1(ReoV+Q251)を有するレオウイルスはBHK21細胞で生成されてL929で増殖された。この過程でσ1においてSARS-CoV-2受容体結合ドメイン(RBD)を発現する組換えレオウイルスは、SARS-CoV-2中和抗体により検出が可能である。
【0096】
図3aに示すように、L929細胞に野生型レオウイルス(WT ReoV)、切断されたσ1を有するレオウイルス(ReoV+Q251)及びRBD抗原基を導入したレオウイルス(ReoV+RBD)をそれぞれ感染させて96時間後、細胞溶解物において抗レオウイルス抗体によってそれぞれのレオウイルスタンパク質が検出されたことをウェスタンブロット結果を通じて確認した。
【0097】
それぞれの組換えレオウイルスをL929細胞に感染させて抽出した遺伝物質においてRBD遺伝子特異的プライマーを使用して組換えレオウイルスの4回継代後、RT-qPCR分析を行った結果、図3bに示すように、ReoV+RBDを感染させた場合、RBD遺伝子が検出されることを確認した。RT-qPCR分析に使用したプライマー配列は、下記表3に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
また、L929細胞に感染させて得られた細胞溶解物においてドットブロット(dot blot)法を行った結果、図3cに示すように、SARS-CoV-2中和抗体(NeuAb)(上段)及び抗レオウイルス抗体(下段)により組換えRBDが発現されることを確認した。陽性対照群組換えRBDは、Dr.John Bell研究室で製造(Azad et al.,Membranes(Basel).2020 Aug 30;10(9):215)し、SARS-CoV-2 NeuAb(40592-MM57)は、Sino Biological(Wayne、PA、米国)から購入して使用した。前記結果は、RBDを発現するReoVがワクチン候補に理想的な中和抗体を生成することを示す。
【0100】
[実施例4.レオウイルス付着タンパク質シグマ1(σ1)を用いた外来抗原の発現]
特定の突然変異の変化は、部位特異的突然変異誘発または複製によって導入され、1つまたは複数のレオウイルス遺伝子部分内で定義された突然変異の役割または結果を調査し、レオウイルスが変形するか、または突然変異を引き起こすことができる。例えば、シグマ3タンパク質をエンコードするレオウイルスのS4遺伝子にある特定のアミノ酸突然変異がウイルスベクター内に導入され、ウイルスカプシドのシグマ3タンパク質に特定の変異を有する変形されたレオウイルスが生成される。
【0101】
本発明の弱毒化されたレオウイルスRP116の主な突然変異は、σ1タンパク質をコードするS1遺伝子内で763CAA(アミノ酸251Q-グルタミン)から763TAA(終止コドン)への終止突然変異であり、このシステム内で前記突然変異の生成は、切断されたσ1タンパク質を有する複製可能なRP116レオウイルスを生成する。
【0102】
遺伝子断片の特徴によってヌクレオチド763-1416位置に選択した特定のエピトープ配列の置換または挿入が可能であり、本質的にσ1の球状ヘッド構造を代替する、この非レオウイルス配列の置換または挿入は、前記非レオウイルス抗原に対する免疫反応を生成する新規エピトープをウイルスのカプシドに露出させる。
【0103】
図4aは、組換え付着タンパク質の構成設計の概略図を示すもので、σ1タンパク質の251番アミノ酸~455番アミノ酸の間の残基は、標識目的のMyc及びFLAGタグなどを始めとして、様々なエピトープに代替可能である。
【0104】
レオウイルスは、「迅速交換(Quick Exchange)」技術を使用して様々なCD4+及びCD8+T細胞エピトープをσ1タンパク質と融合して発現するように操作し、図4bに示すようにウェスタンブロットで組換えレオウイルスから導入した様々な抗原が発現されることを確認し、図4cに示すように遺伝子特異的プライマーを使用してRT-qPCR分析を行うことにより、前記図4bで使用した組換えレオウイルスから導入した抗原が発現されることをDNAアガロースゲルで分離して確認した。
【0105】
また、レオウイルスは、迅速交換技術を使用して様々なB細胞エピトープをσ1タンパク質と融合して発現するように操作し、図4dに示すようにウェスタンブロットで組換えレオウイルスから導入した様々な抗原が発現されることを確認し、図4eに示すように遺伝子特異的プライマーを使用してRT-qPCR分析を行うことにより、図4dで使用した組換えレオウイルスから導入した抗原が発現されることをDNAアガロースゲルで分離して確認した。
【0106】
このような実施例は、様々な外来抗原のエピトープを発現する新しいレオウイルスワクチンプラットフォームの様々な有用性を示し、様々な疾患エピトープを導入し、新しいワクチン開発においてスクリーニング段階から使用できることを示唆する。
【0107】
[実施例5.ReoV-OVAを感染させた細胞に導入された抗原発現の確認]
図4aに示すように構成したReoV+オボアルブミン(OVA)257-264において、OVA257-264エピトープの側面にあるMyc及びFLAGタグは、免疫細胞化学分析法で検出してもよい。
【0108】
これを検出するために、カバースリップで成長したVero細胞をReoV、ReoV+Q251、及びReoV+OVA257-264で48時間感染させた。その後、細胞を3.7%PFAに固定し、抗ReoV(1:1000、ウサギ血清)、抗Myc(1:200)、及び抗FLAG(1:200)で1時間反応させた後、抗ReoV抗体に対する2次抗体であるウサギAlexa Fluor 488及び抗Mycまたは抗FLAG抗体に対する2次抗体Alexa Fluor 594とともに45分間培養した。染色したカバースリップは、核カウンター染色用DAPIを有するFluoromount Gでマウンティングし、イメージは60Xオイル対物レンズを有するオリンパス共焦点顕微鏡で撮影した(スケールバー=50μm)。
【0109】
その結果、図5に示すようにReoV+OVA257-264で感染した場合、Myc及びFLAGタグに現れる蛍光(赤色)は、レオウイルスタンパク質について検出した蛍光(緑色)と重なることを確認した。
【0110】
これは組換えレオウイルスが感染した細胞において特異的に抗原が発現されることを示し、組換えレオウイルスが感染性であり、哺乳動物細胞で操作されたネオエピトープ(neoepitope)を発現できることを示唆する。
【0111】
[実施例6.SARS-CoV-2線状B細胞エピトープの発現と検出]
BHK21細胞は、野生型(WT)または操作されたReoV(ReoV+p15E及びSARS-CoV-2線状B細胞エピトープを発現するReoV-S21P2(2))で感染させた。以前の研究では、SARS-CoV-2線状B細胞エピトープは、中和抗体を生成することが検証された(Poh et al.,Nat Commun.2020 Jun 1;11(1):2806)。
【0112】
SARS-CoV-2線状B細胞エピトープの発現を確認するために、感染48時間後に細胞を溶解させてウェスタンブロットに使用した。その結果、図6に示すように、レオウイルスタンパク質は、すべての感染されたサンプルから検出できたが、Myc及びFLAGタグは、両方ともp15EまたはSARS-CoV-2B細胞エピトープで操作されたReoVでのみ検出された。また、SARS-CoV-2のB細胞エピトープ領域を含むSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sino Biological社)の全S2部分から生成された抗S2抗体で標識した後、ReoV+S21P2(2)に感染されたサンプルでのみ明確に免疫反応性のあるタンパク質バンドを確認できた(矢印で表示)。
【0113】
これらの結果は、SARS-CoV-2の線状B細胞エピトープを保有する組換えレオウイルスがエピトープに対する特異的免疫反応を誘導し得ることを示唆する。
【0114】
[実施例7.組換えレオウイルスの安定性の確認]
図7aは、組換えレオウイルスReoV+S21P2(1)及びReoV+OVA257-264の組換えσ1タンパク質構成設計の概略図を示した。
【0115】
それぞれのエピトープは、N末端及びC末端でそれぞれMyc及びFLAGタグを含むように設計し、導入されたエピトープが安定して発現するかどうかを確認するために使用した。
【0116】
BHK21細胞を48時間組換えレオウイルスで感染させた後、ウェスタンブロッティングで分析し、組換えレオウイルスからレオウイルス特異的抗体(上段)及びFLAGタグに対する特異的抗体(下端)をすべて検出した。GAPDH認識抗体(抗GAPDH)をローディングコントロールとして使用した。
【0117】
その結果、図7bに示すようにFLAGタグで高濃度の抗原が検出されることを確認したところ、検出される高濃度抗原は、5回の継代後にも導入したエピトープに変異がなく安定的な発現が可能であることが分かった。
【0118】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、前述した実施例は、すべての点で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明による弱毒化されたレオウイルスの切断されたシグマ1タンパク質部位に抗原タンパク質のエピトープを導入する場合、がんまたは感染性疾患に対するワクチン組成物として有用に利用できるものと期待されるところ、本発明は、産業上利用可能性がある。
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5
図6
図7a
図7b
【配列表】
2024512575000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列、及びがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)アミノ酸配列を含むポリペプチドにおいて、
N末端から251番目のアミノ酸の位置が切断されて弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質の1~250番目のアミノ酸配列、及び
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のアミノ酸配列のN末端から251番目を含んでそれ以降のアミノ酸の位置に挿入され、がんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープアミノ酸配列を含むことを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項2】
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質が、配列番号1のアミノ酸配列で表されることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
前記弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質が、配列番号2で表される塩基配列によって暗号化されることを特徴とする、請求項2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
前記エピトープが、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質のカルボキシ末端において融合タンパク質を形成するか、または構成することを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項5】
前記エピトープのアミノ酸配列の前後にリンカー(配列番号11)、Mycタンパク質(配列番号12)、FLAGタンパク質(配列番号13)、及び2Aペプチドからなる群から選ばれる少なくとも1つのアミノ酸配列をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項6】
前記がんが、肝がん、神経膠腫、肉腫、大腸がん、乳がん、前立腺がん、黒色腫、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、膀胱がん、胃がん、食道がん、胆管がん、膵臓がん、子宮頸がん、皮膚がん、リンパ腫、甲状腺がん、骨髄がん、子宮内膜がん、腎臓がん、直腸がん、及び脳腫瘍からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項7】
前記感染性疾患が、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)、C型肝炎、インフルエンザ、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)誘導エイズ(AIDS)、結核、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、ロタウイルス(rotavirus)による乳幼児腸炎、及びノロウイルス(norovirus)による非細菌性急性胃腸炎からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記エピトープのアミノ酸配列が、配列番号3~10からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記エピトープをコードする塩基配列が、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列の5’末端から763~1416番目の塩基配列位置に置換または挿入されることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記エピトープが、宿主で中和抗体を生成するか、または細胞性免疫を誘導して免疫反応を引き起こすことを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記エピトープが、CD4+T細胞、CD8+T細胞、及びB細胞エピトープからなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む、弱毒化されたレオウイルスベースのウイルスベクター。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または請求項12に記載のウイルスベクターを有効成分として含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物。
【請求項14】
前記ワクチン組成物が、がんまたは感染性疾患の予防または治療用であることを特徴とする、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
以下の段階を含む、弱毒化されたレオウイルスベースのワクチン組成物の製造方法:
a)配列番号1で表される弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質をコードする塩基配列を含むように逆進化ウイルスベクターを製造する段階、及び
b)前記シグマ1タンパク質をコードする塩基配列の763~1416番目の塩基配列位置にがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープ(epitope)をコードする塩基配列が含まれるように塩基を置換または挿入し、弱毒化されたレオウイルスシグマ1タンパク質とがんまたは感染性疾患を誘発する抗原のエピトープが融合して発現されるようにコードするポリヌクレオチドを前記ベクターに導入する段階。
【請求項16】
c)前記b)段階のポリヌクレオチドを含む弱毒化されたレオウイルスベースのベクターをBHK21、L929、HEK293、CHO、PER.C6、HeLa、及びVero細胞からなる群から選ばれる少なくとも1つの細胞において産生及び増殖させる段階を含むことを特徴とする、請求項15に記載のワクチン組成物の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載のポリペプチド、それをコードするポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチドを含むウイルスベクターのがんまたは感染性疾患の予防または治療用ワクチンの製造のための使用
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0085
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0085】
【表1】
【国際調査報告】