(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】侵害受容の予測および検出を伴う血行動態モニタ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20240312BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B5/022 C
G16H50/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558598
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022020988
(87)【国際公開番号】W WO2022203965
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・リー
(72)【発明者】
【氏名】フェラス・アル・ハティブ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・エム・ポテス・ブランドン
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ジェームズ・モセス
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・エム・サイマン
【テーマコード(参考)】
4C017
5L099
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AB03
4C017AC03
4C017AD01
4C017BC11
4C017BD06
4C017CC02
4C017CC06
4C017FF08
5L099AA04
(57)【要約】
血行動態モニタリングシステムは、患者の動脈圧を監視し、患者の侵害受容について医療従事者に警告を提供する。システムは、患者の動脈圧波形を表す血行動態データを生成する血行動態センサを含む。システムのハードウェアプロセッサは、侵害受容検出ソフトウェアコードを実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定するように構成される。患者の侵害受容事象を示す検出入力特徴は、プロセッサによって複数の信号測定値から抽出される。患者の侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアは、検出入力特徴から決定される。感覚アラームは、侵害受容スコアが所定の検出基準を満たすことに応答して発動される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の動脈圧を監視し、前記患者の現在または予測される将来の侵害受容について医療従事者に警告を提供するための方法であって、
血行動態モニタによって、前記患者の動脈圧波形を表す感知された血行動態データを受信することと、
前記血行動態モニタによって、前記感知された血行動態データの波形解析を実施して、前記感知された血行動態データの複数の信号測定値を計算することと、
前記患者の現在の侵害受容事象を示し、前記患者の将来の侵害受容事象を予測する、前記血行動態モニタのための入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出することと、
前記血行動態モニタによって、前記入力特徴に基づき、前記患者の前記現在の侵害受容事象の確率および/または前記患者の前記将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアを決定することと、
前記血行動態モニタによって、前記侵害受容スコアが所定のレベル基準を満たすことに応答して、感覚アラームを発動して感覚信号を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記血行動態モニタによって、前記入力特徴に基づき、前記患者の血行動態薬剤投与事象の確率および/または前記患者の将来の血行動態薬剤投与事象の確率を表す血行動態薬剤スコアを決定することであって、血行動態薬剤投与事象が、心血管血行動態を変化させる化合物の投与による心拍数の増加および血圧の上昇を前記患者が経験していることとして定義され、かつ前記患者の侵害受容事象ではない、決定することと、
前記血行動態モニタによって、前記血行動態薬剤スコアを前記血行動態モニタの表示装置に出力することと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血行動態モニタによって、前記入力特徴に基づき、前記患者が侵害受容事象も血行動態薬剤投与事象も経験していない安定エピソードの確率を表す安定スコアを決定することと、
前記血行動態モニタによって、前記安定スコアを前記血行動態モニタの表示装置に出力することと、をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者の前記現在の侵害受容事象の前記確率を決定するために前記血行動態モニタを訓練することをさらに含み、前記血行動態モニタを前記訓練することが、
動脈圧波形、および心血管血行動態を変化させる化合物の投与の臨床アノテーションを含む、臨床データセットを収集することと、
前記臨床データセット内の侵害受容データセグメントを識別することであって、前記侵害受容データセグメントがそれぞれ、
前の期間と比較した、少なくとも第一の閾値の血圧の上昇と、
前記前の期間と比較した、少なくとも第二の閾値の心拍数の増加と、
血圧の前記上昇および心拍数の前記増加の前に、心血管血行動態を変化させる前記化合物の注入が開始されないことと、を含む、識別することと、
前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の開始および終了を識別することと、
前記開始後、ならびに前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加中に、前記侵害受容データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記侵害受容データセグメントの波形解析を実施して、前記侵害受容データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記複数の信号測定値から前記入力特徴に属するものとして選択することによって、前記入力特徴の少なくとも一部分を決定することと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者の予測された前記将来の侵害受容事象の前記確率を決定するために、
前記侵害受容データセグメントの各々の、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の前記開始前の、前記前の期間を識別することと、
前記侵害受容データセグメントの各々の前記前の期間を、予測データセグメントとしてラベル付けすることと、
前記予測データセグメントの波形解析を実施して、前記予測データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記予測データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値、および最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記予測データセグメントの前記複数の信号測定値から前記入力特徴に属するものとして計算することによって、前記入力特徴の少なくとも一部分を決定することと、によって、前記血行動態モニタを訓練することと、をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者の前記血行動態薬剤投与事象の前記確率を決定するために前記血行動態モニタを訓練することをさらに含み、前記患者の前記血行動態薬剤投与事象の前記確率を決定するために前記血行動態モニタを前記訓練することが、
前記臨床データセット内の血行動態薬剤投与データセグメントを識別することであって、前記血行動態薬剤投与データセグメントが、それぞれ、
心血管血行動態を変化させる化合物の注入と、
前記注入後の少なくとも第三の閾値の血圧の上昇と、
前記注入後の少なくとも第四の閾値の心拍数の増加と、を含む、識別することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々において、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の開始および終了を識別することと、
前記開始後、ならびに前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加中に、前記血行動態薬剤投与データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記血行動態薬剤投与データセグメントの波形解析を実施して、前記血行動態薬剤投与データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記血行動態薬剤投与データセグメントの前記複数の信号測定値から前記入力特徴に属するものとして選択することによって、前記入力特徴の少なくとも一部分を決定することと、を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記患者の前記将来の血行動態薬剤投与事象の前記確率を決定するために前記血行動態モニタを訓練することをさらに含み、前記患者の前記将来の血行動態薬剤投与事象の前記確率を決定するために前記血行動態モニタを前記訓練することが、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々の、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の前記開始前の、以前の期間を識別することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々の前記以前の期間を、血行動態薬剤予測データセグメントとしてラベル付けすることと、
前記血行動態薬剤予測データセグメントの波形解析を実施して、前記血行動態薬剤予測データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記血行動態薬剤予測データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記血行動態薬剤予測データセグメントの前記複数の信号測定値から前記入力特徴に属するものとして選択することによって、前記入力特徴の少なくとも一部分を決定することと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記患者の前記安定エピソードの前記確率を決定するために前記血行動態モニタを訓練することをさらに含み、前記安定エピソードの前記確率を決定するために前記血行動態モニタを前記訓練することが、
前記臨床データセット内の安定データセグメントを識別することであって、前記安定データセグメントが各々、
設定された期間にわたって前記第一の閾値を超える上昇のない安定血圧と、
前記設定された期間にわたって前記第二の閾値を超える増加のない安定心拍数と、
心血管血行動態を変化させる化合物の注入が実施されないことと、を含む、識別することと、
前記安定血圧および前記安定心拍数の開始および終了を識別することと、
前記安定血圧および前記安定心拍数の前記開始および前記終了から前記安定データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記安定データセグメントの波形解析を実施して、前記安定データセグメントの複数の安定信号測定値を計算することと、
前記複数の安定信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する安定信号測定値を前記複数の安定信号測定値から前記入力特徴に属するものとして選択することによって、前記入力特徴の少なくとも一部分を決定することと、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
患者の動脈圧を監視し、前記患者の侵害受容について医療従事者に警告を提供するためのシステムであって、
前記患者の動脈圧波形を表す血行動態データを生成する血行動態センサと、
侵害受容検出ソフトウェアコードを格納するシステムメモリと、
前記患者の侵害受容事象について前記医療従事者に警告する感覚信号を提供する感覚アラームを含むユーザーインターフェースと、
ハードウェアプロセッサであって、前記侵害受容検出ソフトウェアコードを実行して、
前記血行動態データの波形解析を実施して、複数の信号測定値を決定し、
前記患者の前記侵害受容事象を示す検出入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出し、
前記検出入力特徴に基づいて、前記患者の前記侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアを決定し、
前記侵害受容スコアが所定の検出基準を満たすことに応答して、前記ユーザーインターフェースの前記感覚アラームを発動する、ように構成されたハードウェアプロセッサと、を備える、システム。
【請求項10】
前記侵害受容検出ソフトウェアコードの前記検出入力特徴が、検出マシントレーニングによって決定され、前記検出マシントレーニングが、
動脈圧波形、および心血管血行動態を変化させる化合物の投与の臨床アノテーションを含む、臨床データセットを収集することと、
前記臨床データセット内の侵害受容データセグメントを識別することであって、前記侵害受容データセグメントがそれぞれ、
前の期間と比較した、少なくとも第一の閾値の血圧の上昇と、
前記前の期間と比較した、少なくとも第二の閾値の心拍数の増加と、
血圧の前記上昇および心拍数の前記増加の前に、心血管血行動態を変化させる前記化合物の注入が開始されないことと、を含む、識別することと、
前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の開始および終了を識別することと、
前記開始後、ならびに前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加中に、前記侵害受容データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記侵害受容データセグメントの波形解析を実施して、前記侵害受容データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記侵害受容データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する上位信号測定値を前記侵害受容データセグメントの前記複数の信号測定値から選択し、前記上位信号測定値を前記検出入力特徴としてラベル付けすることによって、前記検出入力特徴を決定することと、を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記システムメモリが、前記患者の予測される将来の侵害受容事象の確率を決定するための侵害受容予測ソフトウェアコードを格納し、前記感覚アラームが、前記予測される将来の侵害受容事象について前記医療従事者に警告するための第二の感覚信号を提供し、前記ハードウェアプロセッサが、前記侵害受容予測ソフトウェアコードを実行して、
前記患者の前記将来の侵害受容事象を予測する予測入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出し、
前記予測入力特徴に基づいて、前記患者の前記将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容予測スコアを決定し、
前記侵害受容予測スコアが所定の予測基準を満たすことに応答して、前記ユーザーインターフェースの前記感覚アラームを発動する、ように構成された、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記侵害受容予測ソフトウェアコードの前記予測入力特徴が、予測マシントレーニングによって決定され、前記予測マシントレーニングが、
前記侵害受容データセグメントの各々の、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の前記開始前の、前記前の期間を識別することと、
前記侵害受容データセグメントの各々の前記前の期間を、予測データセグメントとしてラベル付けすることと、
前記予測データセグメントの波形解析を実施して、前記予測データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記予測データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記予測データセグメントの前記複数の信号測定値から前記予測入力特徴として選択することによって、前記予測入力特徴を決定することと、を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記システムメモリが、前記患者の血行動態薬剤投与事象を検出するための血行動態薬剤検出ソフトウェアコードを格納し、前記感覚アラームが、前記血行動態薬剤投与事象について前記医療従事者に警告するための第三の感覚信号を提供し、前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態薬剤検出ソフトウェアコードを実行して、
前記患者の前記血行動態薬剤投与事象を示す血行動態薬剤検出入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出し、
前記血行動態薬剤検出入力特徴に基づいて、前記血行動態薬剤投与事象の確率を表す血行動態薬剤検出スコアを決定し、
前記血行動態薬剤検出スコアが所定の予測基準を満たすことに応答して、前記ユーザーインターフェースの前記感覚アラームを発動する、ように構成された、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記血行動態薬剤検出ソフトウェアコードの前記血行動態薬剤検出入力特徴が、血行動態薬剤検出マシントレーニングによって決定され、前記血行動態薬剤検出マシントレーニングが、
前記臨床データセット内の血行動態薬剤投与データセグメントを識別することであって、前記血行動態薬剤投与データセグメントが、それぞれ、
心血管血行動態を変化させる化合物の注入と、
前記注入後の少なくとも第三の閾値の血圧の上昇と、
前記注入後の少なくとも第四の閾値の心拍数の増加と、を含む、識別することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々において、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の開始および終了を識別することと、
前記開始後、ならびに前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加中に、前記血行動態薬剤投与データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記血行動態薬剤投与データセグメントの波形解析を実施して、前記血行動態薬剤投与データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの前記複数の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記血行動態薬剤投与データセグメントの前記複数の信号測定値から前記血行動態薬剤検出入力特徴であるものとして選択することによって、前記血行動態薬剤検出入力特徴を決定することと、を含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムメモリが、前記患者の将来の血行動態薬剤投与事象の確率を決定するための血行動態薬剤予測ソフトウェアコードを格納し、前記感覚アラームが、前記将来の血行動態薬剤投与事象について前記医療従事者に警告する第四の感覚信号を提供し、前記ハードウェアプロセッサが、前記血行動態薬剤予測ソフトウェアコードを実行して、
前記患者の前記将来の血行動態薬剤投与事象を予測する血行動態薬剤予測入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出し、
前記血行動態薬剤予測入力特徴に基づいて、前記患者の前記将来の血行動態薬剤投与事象の確率を表す血行動態薬剤予測スコアを決定し、
前記血行動態薬剤予測スコアが所定の血行動態薬剤予測基準を満たすことに応答して、前記ユーザーインターフェースの前記感覚アラームを発動する、ように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記血行動態薬剤予測ソフトウェアコードの前記血行動態薬剤予測入力特徴が、血行動態薬剤予測マシントレーニングによって決定され、前記血行動態薬剤予測マシントレーニングが、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々の、前記血圧の前記上昇および前記心拍数の前記増加の前記開始前の、以前の期間を識別することと、
前記血行動態薬剤投与データセグメントの各々の前記以前の期間を、血行動態薬剤予測データセグメントとしてラベル付けすることと、
前記血行動態薬剤予測データセグメントの波形解析を実施して、前記血行動態薬剤予測データセグメントの複数の信号測定値を計算することと、
前記血行動態薬剤予測データセグメントの前記複数の信号測定値間で組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する信号測定値を前記血行動態薬剤予測データセグメントの前記複数の信号測定値から前記血行動態薬剤予測入力特徴として選択することによって、前記血行動態薬剤予測入力特徴を決定することと、を含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記システムメモリが、前記患者の安定エピソードの確率を決定するための安定検出ソフトウェアコードを格納し、前記ハードウェアプロセッサが、前記安定検出ソフトウェアコードを実行して、
前記患者の前記安定エピソードを示す安定検出入力特徴を前記複数の信号測定値から抽出し、
前記安定検出入力特徴に基づいて、前記患者が侵害受容事象も血行動態薬剤投与事象も経験していない前記安定エピソードの確率を表す安定スコアを決定し、
前記安定スコアを表示装置に出力する、ように構成された、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記安定検出ソフトウェアコードの前記安定検出入力特徴が、安定検出マシントレーニングによって決定され、前記安定検出マシントレーニングが、
前記臨床データセット内の安定データセグメントを識別することであって、前記安定データセグメントが各々、
設定された期間にわたって前記第一の閾値を超える上昇のない安定血圧と、
前記設定された期間にわたって前記第二の閾値を超える増加のない安定心拍数と、
心血管血行動態を変化させる化合物の注入が実施されないことと、を含む、識別することと、
前記安定血圧および前記安定心拍数の開始および終了を識別することと、
前記安定血圧および前記安定心拍数の前記開始および前記終了から前記安定データセグメントをラベル付けすることと、
ラベル付けされた前記安定データセグメントの波形解析を実施して、前記安定データセグメントの複数の安定信号測定値を計算することと、
前記複数の安定信号測定値間の組み合わせ測定値を計算し、最も予測可能な組み合わせ測定値を有する安定信号測定値を前記複数の安定信号測定値から前記安定検出入力特徴であるものとして選択することによって、前記安定検出入力特徴を決定することと、を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
ラベル付けされた前記侵害受容データセグメントの波形解析を実施して、前記侵害受容データセグメントの複数の信号測定値を計算することが、
前記臨床データセットの前記動脈圧波形中の個々の心周期を識別することと、
前記個々の心周期の各々における重複切痕を識別することと、
前記個々の心周期の各々において、収縮期上昇相、収縮期減衰相、および拡張期を識別することと、
前記個々の心周期の各々からの、前記収縮期上昇相、前記収縮期減衰相、および前記拡張期の各々から信号測定値を抽出することと、を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記信号測定値が、前記個々の心周期の各々からの、前記収縮期上昇相、前記収縮期減衰相、および前記拡張期の各々からの血行動態効果に対応し、前記血行動態効果が、収縮性、大動脈コンプライアンス、一回拍出量、血管緊張、後負荷、および全心周期を含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記信号測定値が、前記個々の心周期の各々からの、前記収縮期上昇相、前記収縮期減衰相、および前記拡張期の各々からの、平均値、最大値、最小値、持続時間、面積、標準偏差、導関数、および/または形態学的測定値を含む、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記信号測定値が、前記個々の心周期の各々から抽出された、心拍数、呼吸数、一回拍出量、脈圧、脈圧変動、一回拍出量変動、平均動脈圧(MAP)、収縮期圧(SYS)、拡張期圧(DIA)、心拍変動性、心拍出量、末梢抵抗、血管コンプライアンス、および/または左心室収縮性を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記侵害受容データセグメントの前記複数の信号測定値間の前記組み合わせ測定値を計算することが、
前記侵害受容データセグメントの前記複数の信号測定値から三つの信号測定値を任意に選択することによって、ステップ1を実行することと、
前記三つの信号測定値のそれぞれに対して異なるオーダーの冪を計算して、前記三つの信号測定値の冪を生成することによって、ステップ2を実行することと、
前記三つの信号測定値の前記冪を互いに乗算して、前記三つの信号測定値の前記冪の積を生成することによって、ステップ3を実行することと、
前記積の受信者動作特性(ROC)分析を実行して、前記三つの信号測定値についての組み合わせ測定値に達することによって、ステップ4を実行することと、
前記侵害受容データセグメントの前記複数の信号測定値のすべての間で前記組み合わせ測定値のすべてが計算されるまで、ステップ1、2、3、および4を繰り返すことと、を含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記血行動態センサが、前記患者の末端に取り付け可能な非侵襲的血行動態センサである、請求項9~23のいずれかに記載のシステム。
【請求項25】
前記血行動態センサが、低侵襲的動脈カテーテルベースの血行動態センサである、請求項9~23のいずれかに記載のシステム。
【請求項26】
前記血行動態センサが、前記患者の前記動脈圧波形を表すアナログ血行動態センサ信号として前記血行動態データを生成する、請求項9~25のいずれかに記載のシステム。
【請求項27】
アナログ血行動態センサ信号を、前記患者の前記動脈圧波形を表すデジタル血行動態データに変換するアナログ・デジタル変換器をさらに含む、請求項9~26のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年3月24日に出願された、「HEMODYNAMIC MONITOR WITH NOCICEPTION PREDICTION AND DETECTION」と題する米国仮特許出願第63/165,702号に基づく優先権を主張し、その完全な開示は、ここにその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、血行動態モニタリングに関し、特に、監視された血行動態データを使用して、患者における侵害受容を検出および予測することに関する。
【背景技術】
【0003】
侵害受容は、侵害受容器と呼ばれる神経終末が侵害刺激を検出し、痛みとして解釈される信号を中枢神経系に送信するプロセスである。侵害受容は、意識に達することなく、または意識に達する前に、自動反応を引き起こす可能性があり、したがって手術中の無意識の患者が痛みを経験する場合がある。患者が痛みで外科手術から目を覚ますのを防ぐために、医療従事者は、手術前および/または手術中に患者に鎮痛剤を投与する。しかしながら、痛みの閾値および耐性は患者によって異なり、かつ患者は無意識の間に口頭でのコミュニケーションやフィードバックの伝達はできないため、投与する鎮痛剤の量を知ることは困難である場合がある。手術中に患者に投与する鎮痛剤が少なすぎると、患者は手術後に痛みで目覚める結果となる可能性がある。手術中に患者に投与する鎮痛剤が多すぎると、患者は、悪心、眠気、思考能力の障害、および機能の障害を経験する結果となる可能性がある。
【0004】
患者への鎮痛剤の投与が少なすぎることのネガティブな結果、および患者への鎮痛剤の投与が多すぎることのネガティブな結果を考慮すると、手術中に無意識の患者の侵害受容を検出または予測する能力を医療従事者に与える解決策が必要とされる。手術中に患者の侵害受容を正確に検出または予測することは、患者が著しい痛みで手術から目を覚まさないように、かつ患者に多すぎる鎮痛剤を与えることなく、患者に投与する鎮痛剤の適切な量を医療従事者が知るのに役立ち得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一例では、患者の動脈圧を監視し、患者の現在のまたは予測される将来の侵害受容について医療従事者に警告を提供するための方法には、患者の動脈圧波形を表す、血行動態モニタによって感知された血行動態データを受信することが含まれる。方法はさらに、血行動態モニタによって、感知された血行動態データの波形解析を実施して、感知された血行動態データの複数の信号測定値を計算することを含む。血行動態モニタは、患者の現在の侵害受容事象を示し患者の将来の侵害受容事象を予測する、入力特徴を複数の信号測定値から抽出する。侵害受容スコアは、入力特徴に基づいて血行動態モニタによって決定される。侵害受容スコアは、患者の現在の侵害受容事象の確率および/または患者の将来の侵害受容事象の確率を表す。血行動態モニタは、侵害受容スコアが所定のレベル基準を満たすことに応答して、感覚アラームを発動して感覚信号を生成する。
【0006】
別の実施例では、患者の動脈圧を監視し、患者の侵害受容について医療従事者に警告を提供するためのシステムは、患者の動脈圧波形を表す血行動態データを生成する血行動態センサを含む。システムはまた、侵害受容検出ソフトウェアコードを格納するシステムメモリと、侵害受容事象について医療従事者に警告する感覚信号を提供する感覚アラームを備えたユーザーインターフェースとを含む。システム内のハードウェアプロセッサは、侵害受容検出ソフトウェアコードを実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定するように構成される。ハードウェアプロセッサはまた、侵害受容ソフトウェアコードを実行して、患者の侵害受容事象を示す検出入力特徴を複数の信号測定値から抽出するように構成される。ハードウェアプロセッサはまた、侵害受容ソフトウェアコードを実行して、検出入力特徴に基づいて、患者の侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアを決定するように構成される。プロセッサは、侵害受容スコアが所定の検出基準を満たすことに応答して、ユーザーインターフェースの感覚アラームを発動するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、患者の動脈圧を分析し、患者の侵害受容事象についてのリスクスコアおよび警告を医療従事者に提供する、例示的な血行動態モニタの斜視図である。
【
図2】
図2は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための低侵襲的圧力センサの例の斜視図である。
【
図3】
図3は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための非侵襲的センサの例の斜視図である。
【
図4】
図4は、患者の動脈圧波形の信号測定値から導出された入力特徴の集合に基づいて、患者についての現在の侵害受容事象、将来の侵害受容事象、現在の血行動態薬剤投与事象、将来の血行動態薬剤投与事象、および/または安定期間の確率を表すリスクスコアを決定する、例示的な血行動態モニタリングシステムを図示するブロック図である。
【
図5】
図5は、臨床データセットの図であり、血行動態モニタリングシステムのデータマイニングおよびマシントレーニングに使用される臨床アノテーションを有する。
【
図6】
図6は、
図5の臨床データセットからの経時的な収縮期血圧および心拍数を示し、侵害受容事象および鎮痛剤の投与を示すグラフである。
【
図7】
図7は、
図5の臨床データセットからの経時的な収縮期血圧および心拍数を示し、安定エピソードを示すグラフである。
【
図8】
図8は、
図5の臨床データセットからの経時的な収縮期血圧および心拍数を示し、血行動態薬剤投与事象および昇圧剤の投与を示すグラフである。
【
図9】
図9は、血行動態モニタリングシステムの機械学習モデルを訓練するための、患者の動脈圧波形の波形特徴から導出される入力特徴の集合を抽出するための流れ図である。
【
図10】
図10は、患者のリスクスコアを決定する入力特徴を抽出するために使用される信号測定値に対応する兆候の例を含む、動脈圧波形のトレース例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書に記載されるように、血行動態モニタリングシステムは、患者の現在の侵害受容事象の確率、患者の将来の侵害受容事象の確率、および患者が安定エピソードを経験している確率を表すリスクスコアを生成する予測モデルを実装する。血行動態モニタリングシステムの予測モデルはまた、任意選択的に、患者が以前に投与された血行動態薬剤の効果(以下、「血行動態薬剤投与事象」と称する)を経験しており、かつ現在の侵害受容事象を経験していない確率を表すリスクスコアを生成することもできる。血行動態モニタリングシステムの予測モデルはまた、任意選択的に、患者が将来の血行動態薬剤投与事象の開始を経験し、かつ将来の侵害受容事象の開始を経験しない確率を表すリスクスコアを生成することもできる。
【0009】
血行動態モニタリングシステムの予測モデルは、機械学習を使用して、患者の動脈圧から入力特徴の集合を抽出する。入力特徴の集合は、血行動態モニタリングシステムによって使用されて、例えば手術室(OR)、集中治療室(ICU)、または他の患者ケア環境内で、手術中に患者について上述のリスクスコアを生成する。リスクスコアのレベルに応じて、血行動態モニタリングシステムは、患者が侵害受容事象を経験しているか、またはまもなく侵害受容事象を経験することになることを医療従事者に警告するために、医療従事者に信号またはアラームを発することができる。信号を受信した後、医療従事者は患者に鎮痛剤を投与して、侵害受容事象を軽減または防止することができる。リスクスコアが、患者が血行動態薬剤事象を経験している、またはまもなく血行動態薬剤事象を経験することになると判断する場合、血行動態モニタリングシステムは、医療従事者が患者の血行動態薬剤事象を侵害受容事象と混同しないように、医療従事者に信号を送信できる。
【0010】
血行動態モニタリングシステムの予測モデルの機械学習は、心血管血行動態を変化させる鎮痛剤、昇圧剤、変力物質、流体、および他の薬剤の投与の臨床アノテーションでラベル付けされている、動脈圧波形を含む臨床データセットを使用して訓練される。血行動態モニタリングシステムは、
図1~10を参照して以下に詳細に説明される。
【0011】
図1は、患者の現在の侵害受容事象の確率を表すスコアおよび/または患者の将来の侵害受容事象の確率を表すスコアを決定する、血行動態モニタ10の斜視図である。
図1に図示するように、血行動態モニタ10は、
図1の実施例では、血行動態モニタ10とのユーザー相互作用を可能にする制御要素(例えば、グラフィカル制御要素)を含むグラフィカルユーザーインターフェースを提示する表示装置12を含む。血行動態モニタ10はまた、以下にさらに記載されるように、一つ以上の血行動態センサなどの一つ以上の周辺構成要素との有線接続(例えば、電気的接続および/または通信的接続)のために構成された、複数の入力および/または出力(I/O)コネクタを含み得る。例えば、
図1に示すように、血行動態モニタ10は、I/Oコネクタ14を含み得る。
図1の実施例は、5つの別個のI/Oコネクタ14を示すが、他の実施例では、血行動態モニタ10は、5つ未満のI/Oコネクタ、または5つを超えるI/Oコネクタを含み得ることが理解されるべきである。さらに他の実施例では、血行動態モニタ10は、I/Oコネクタ14を含まなくてもよく、むしろ様々な周辺機器と無線で通信してもよい。
【0012】
以下でさらに説明するように、血行動態モニタ10は、一つ以上のプロセッサと、患者の今の(すなわち、現在の)侵害受容事象の確率を表すスコアおよび/または患者の将来の侵害受容事象の確率を表すスコアを生成するために実行可能な侵害受容検出および予測ソフトウェアコードを格納するコンピュータ可読メモリとを含む。血行動態モニタ10は、例えばI/Oコネクタ14を介して血行動態モニタ10に接続された一つ以上の血行動態センサを介して、患者の動脈圧波形を表す感知された血行動態データを受信することができる。以下にさらに記載されるように、血行動態モニタ10は、侵害受容予測ソフトウェアコードを実行して、受信した血行動態データを使用して複数の侵害受容プロファイリングパラメータ(例えば、入力特徴)を取得し、これには、患者のバイタルサインデータを特徴づける一つ以上のバイタルサインパラメータ、ならびに、一つ以上のバイタルサインパラメータから導出された微分パラメータおよび組み合わせパラメータが含まれ得る。
【0013】
図1に示すように、血行動態モニタ10は、表示装置12にグラフィカルユーザーインターフェースを提示することができる。表示装置12は、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)表示装置、有機発光ダイオード(OLED)表示装置、またはグラフィカル形式でユーザーに情報を提供するために好適な他の表示装置とすることができる。
図1の実施例などのいくつかの実施例では、表示装置12は、タッチジェスチャ、スクロールジェスチャ、ズームジェスチャ、スワイプジェスチャ、または他のジェスチャ入力など、ジェスチャの形態でユーザー入力を受信するように構成された、タッチ感知式および/またはプレゼンス感知式の表示装置であり得る。
【0014】
図2は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するために患者に取り付けることができる血行動態センサ16の斜視図である。
図2に図示される血行動態センサ16は、例えば、患者の腕に挿入された橈骨動脈カテーテルを介して患者に取り付けることができる低侵襲的血行動態センサの一例である。他の実施例では、血行動態センサ16は、患者の脚に挿入された大腿動脈カテーテルを介して患者に取り付けられ得る。
【0015】
図2に示すように、血行動態センサ16は、ハウジング18、流体入力ポート20、カテーテル側流体ポート22、およびI/Oケーブル24を含む。流体入力ポート20は、生理食塩水バッグまたは他の流体入力源などの流体源への、チューブまたは他の液圧接続を介して接続されるように構成される。カテーテル側流体ポート22は、患者の腕(すなわち、橈骨動脈カテーテル)または患者の脚(すなわち、大腿動脈カテーテル)に挿入されるカテーテル(例えば、橈骨動脈カテーテルまたは大腿動脈カテーテル)に、チューブまたは他の液圧接続を介して接続されるように構成される。I/Oケーブル24は、例えばI/Oコネクタ14のうちの一つ以上を介して、血行動態モニタ10に接続されるように構成される(
図1)。血行動態センサ16のハウジング18は、I/Oケーブル24を介して血行動態モニタ10(
図1)に送信される患者の動脈圧に対応する流体圧力を感知するために、一つ以上の圧力変換器、通信回路、処理回路、および対応する電子構成要素を封入する。
【0016】
動作中、流体(例えば、生理食塩水)のカラムは、流体源(例えば、生理食塩水バッグ)から、血行動態センサ16を通して流体入力ポート20を介してカテーテル側流体ポート22へ、患者に挿入されるカテーテルに向かって導入される。動脈圧は、流体カラムを通して、流体カラムの圧力を感知するハウジング16内に位置する圧力センサに伝達される。血行動態センサ16は、圧力変換器を介して流体カラムの感知された圧力を電気信号に変換し、I/Oケーブル24を介して対応する電気信号を血行動態モニタ10(
図1)に出力する。したがって、血行動態センサ16は、アナログセンサデータ(またはアナログセンサデータのデジタル表現)を、患者の動脈圧の実質的に連続的なビート・ツー・ビートのモニタリングを表す血行動態モニタ10(
図1)に送信する。
【0017】
図3は、患者の動脈圧を表す血行動態データを感知するための血行動態センサ26の斜視図である。
図3に図示される血行動態センサ26は、患者の動脈圧を表すデータを感知するために、一つ以上のフィンガーカフを介して患者に取り付けることができる非侵襲的血行動態センサの一例である。
図3に示すように、血行動態センサ26は、膨張可能なフィンガーカフ28および心臓基準センサ30を含む。膨張可能なフィンガーカフ28は、膨張可能なフィンガーカフ28に空気圧的に接続される圧力コントローラ(図示せず)によって制御される通りに膨張および収縮するように構成された膨張可能な血圧ブラダーを含む。膨張可能なフィンガーカフ28はまた、指のカフの下の動脈の変化する体積を測定するために圧力コントローラ(図示せず)に電気的に接続される、光(例えば、赤外線)送信器および光受信器を含む。
【0018】
動作中、圧力コントローラは、フィンガーカフ内の圧力を継続的に調整して、膨張可能なフィンガーカフ28の光送信器および光受信器を介して測定される指の動脈の一定の体積(すなわち、動脈のアンロードされた体積)を維持する。アンロードされた体積を連続的に維持するために圧力コントローラによって加えられる圧力は、指内の血圧を表し、
図1に示す血行動態モニタ10に、圧力コントローラによって通信される。心臓基準センサ30は、指が保持されるレベルと、典型的には心臓レベルである、圧力測定の基準レベルとの間の静水学的な高さの差を測定する。したがって、血行動態センサ26は、患者の動脈圧波形の実質的に連続的なビート・ツー・ビートのモニタリングを表すセンサデータを送信する。
【0019】
図4は、患者の動脈圧から導出された侵害受容プロファイリングパラメータ(入力特徴とも呼ばれる)の集合に基づいて、患者36の現在または将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアを決定する、血行動態モニタリングシステム32のブロック図である。血行動態モニタリングシステム32は、患者36の動脈圧を監視し、患者36の侵害受容スコアが所定の閾値を超えると、医療従事者38に警告を提供する。医療従事者38は、患者36に適切な鎮痛剤を投与して現在または将来の侵害受容事象を軽減することにより、警告に対応できる。
【0020】
図4に示すように、血行動態モニタリングシステム32は、血行動態モニタ10および血行動態センサ34を含む。血行動態モニタリングシステム32は、ICU、OR、または他の患者ケア環境などの、患者ケア環境内に実装することができる。
図4に示すように、患者ケア環境は、患者36、および血行動態モニタリングシステム32を利用するよう訓練されたヘルスケア従事者38を含み得る。
【0021】
図1に関して上述したように、血行動態モニタ10は、例えば、システムプロセッサ40、システムメモリ42、表示装置12、アナログ・デジタル(ADC)変換器44、およびデジタル・アナログ(DAC)変換器46を含む統合ハードウェアユニットとすることができる。他の実施例では、血行動態モニタ10の任意の一つ以上の構成要素および/または記載される機能性は、複数のハードウェアユニットの間で分散され得る。例えば、いくつかの実施例では、表示装置12は、血行動態モニタ10から遠隔であり、かつ血行動態モニタ10と動作可能に結合された、別個の表示装置であってもよい。一般に、
図4の実施例に統合ハードウェアユニットとして図示および記載されているが、血行動態モニタ10は、本明細書で血行動態モニタ10に起因する機能を実施するために電気的、通信的、または他の方法で動作可能に接続される装置および構成要素の任意の組み合わせを含み得ることが理解されるべきである。
【0022】
図4に示すように、システムメモリ42は、血行動態モニタ10の予測モデルを形成する侵害受容ソフトウェアコード48を格納する。侵害受容ソフトウェアコード48は、患者36の動脈圧から波形特徴を抽出および計算するための第一のモジュール50と、波形特徴から入力特徴を抽出するための第二のモジュール51と、入力特徴に基づいて患者36の侵害受容の確率を計算するための第三のモジュール52とを含む。表示装置12は、血行動態モニタ10および/または血行動態モニタリングシステム32の他の構成要素とのユーザー相互作用を可能にする制御要素56を含む、ユーザーインターフェース54を提供する。
図4に図示するように、ユーザーインターフェース54はまた、以下でさらに説明するように、患者36の現在の侵害受容事象または予測される将来の侵害受容事象について、医療従事者に警告を提供するための感覚アラーム58を提供する。感覚アラーム58は、視覚アラーム、可聴アラーム、触覚アラーム、または他のタイプの感覚アラームのうちの一つ以上として実装され得る。例えば、感覚アラーム58は、表示装置12上の使用インターフェース54によって示される点滅するグラフィックおよび/または色付きのグラフィック、表示装置12上のユーザーインターフェース54を介した侵害受容スコアの表示、サイレンまたは反復音などの警告音、ならびに血行動態モニタ10に、医療従事者38または他のユーザーに知覚可能な物理的インパルスを振動して出させるか、または他の方法で送達させるように構成された触覚アラームの任意の組み合わせとして発動され得る。
【0023】
血行動態センサ34は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを感知するために、患者36に取り付けることができる。血行動態センサ34は、血行動態モニタ10に感知された血行動態データを提供するために、血行動態モニタ10に動作可能に接続される(例えば、有線もしくは無線接続または両方を介して電気的および/または通信的に接続される)。いくつかの実施例では、血行動態センサ34は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを血行動態モニタ10にアナログ信号として提供し、これは、ADC 44によって、動脈圧波形を表すデジタル血行動態データに変換される。他の例では、血行動態センサ34は、感知された血行動態データをデジタル形式で血行動態モニタ10に提供でき、この場合、血行動態モニタ10はADC 44を含まなくてもよく、利用しなくてもよい。さらに他の実施例では、血行動態センサ34は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを、血行動態モニタ10にアナログ信号として提供でき、これは、血行動態モニタ10によってそのアナログ形式で分析される。
【0024】
血行動態センサ34は、患者36に取り付けられた非侵襲的または低侵襲的なセンサであってもよい。例えば、血行動態センサ34は、低侵襲的血行動態センサ16(
図2)、非侵襲的血行動態センサ26(
図3)、または他の低侵襲的または非侵襲的血行動態センサの形態を取ることができる。いくつかの実施例では、血行動態センサ34は、手首、腕、指、足首、足指、または患者36の他の末端など、患者36の末端に非侵襲的に取り付けることができる。このように、血行動態センサ34は、患者36による長時間の着用に適した、小型で、軽量で、快適な血行動態センサの形態を取って、数分または数時間などの長期間にわたって患者36の動脈圧の実質的に連続的なビート・ツー・ビートのモニタリングを提供することができる。
【0025】
特定の実施例では、血行動態センサ34は、低侵襲的な様式で患者36の動脈圧を感知するように構成され得る。例えば、血行動態センサ34は、患者36の腕に挿入された橈骨動脈カテーテルを介して患者36に取り付けることができる。他の実施例では、血行動態センサ34は、患者36の脚に挿入された大腿動脈カテーテルを介して患者36に取り付けられ得る。こうした低侵襲技術は、同様に、血行動態センサ34が、数分または数時間などの長期間にわたって、患者36の動脈圧の実質的に連続的なビート・ツー・ビートのモニタリングを提供することを可能にすることができる。
【0026】
システムプロセッサ40は、侵害受容ソフトウェアコード48を実行するように構成されたハードウェアプロセッサであり、これは、第一のモジュール50、第二のモジュール51、および第三のモジュール52を実装して、患者36の現在の侵害受容事象の確率または将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容スコアを生成する。システムプロセッサ40の例は、マイクロプロセッサ、コントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、または他の等価のディスクリート論理回路または集積論理回路のうちの任意の一つ以上を含み得る。
【0027】
システムメモリ42は、動作中に血行動態モニタ10内に情報を記憶するように構成され得る。いくつかの実施例では、システムメモリ42は、コンピュータ可読記憶媒体として記述される。いくつかの実施例では、コンピュータ可読記憶媒体は、非一時的媒体を含み得る。「非一時的」という用語は、記憶媒体が搬送波または伝搬信号で具現化されていないことを示し得る。特定の実施例では、非一時的記憶媒体は、(例えば、RAMまたはキャッシュ内に)経時的に変化し得るデータを格納することができる。システムメモリ42は、揮発性および不揮発性のコンピュータ可読メモリを含み得る。揮発性メモリの例としては、ランダムアクセスメモリ(RAM)、動的ランダムアクセスメモリ(DRAM)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、および他の形態の揮発性メモリが挙げられる。不揮発性メモリの例としては、例えば、磁気ハードディスク、光ディスク、フラッシュメモリ、または電気的にプログラム可能なメモリ(EPROM)もしくは電気的に消去可能なプログラム可能な(EEPROM)メモリの形態が挙げられる。
【0028】
表示装置12は、液晶表示装置(LCD)、発光ダイオード(LED)表示装置、有機発光ダイオード(OLED)表示装置、またはグラフィカル形式でユーザーに情報を提供するために好適な他の表示装置とすることができる。ユーザーインターフェース54は、ユーザー入力が血行動態モニタ10および/または血行動態モニタリングシステム32の他の構成要素と相互作用することを可能にする、グラフィカルおよび/または物理的な制御要素を含み得る。いくつかの実施例では、ユーザーインターフェース54は、例えば、表示装置12のタッチ感知式および/またはプレゼンス感知式の表示画面に提示されるグラフィカル制御要素を提示するグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)の形態を取ることができる。こうした実施例では、ユーザー入力は、タッチジェスチャ、スクロールジェスチャ、ズームジェスチャ、または他のジェスチャ入力などの、ジェスチャ入力の形態で受信され得る。特定の実施例では、ユーザーインターフェース54は、物理的ボタン、キー、ノブ、または血行動態モニタリングシステム32の構成要素と相互作用するユーザー入力を受信するように構成された他の物理的制御要素などの物理的制御要素の形態を取ることができ、および/またはそれらを含み得る。
【0029】
動作中、血行動態センサ34は、患者36の動脈圧波形を表す血行動態データを感知する。血行動態センサ34は、血行動態データ(例えば、アナログセンサデータとして)を血行動態モニタ10に提供する。ADC 44は、アナログ血行動態データを、患者の動脈圧波形を表すデジタル血行動態データに変換する。
【0030】
侵害受容ソフトウェアコード48は、侵害受容検出ソフトウェアコードを含み得る。システムプロセッサ40は、侵害受容ソフトウェアコード48の侵害受容検出ソフトウェアコードを実行して、患者36の現在の侵害受容事象の確率を表す侵害受容検出スコアを、受信した血行動態データを使用して決定する。例えば、システムプロセッサ40は、第一のモジュール50を実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定することができる。システムプロセッサ40は、第二のモジュール51を実行して、患者36の侵害受容事象を検出する侵害受容検出入力特徴を複数の信号測定値から抽出する。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、患者36の侵害受容事象の確率を表す侵害受容検出スコアを、侵害受容検出入力特徴に基づいて決定する。侵害受容検出スコアが所定の検出基準を満たす場合、システムプロセッサ40は、ユーザーインターフェース54の感覚アラーム58を発動して、第一の感覚信号を送信して、患者36が現在の侵害受容事象を現在経験していることを医療従事者38に警告する。医療従事者38は、患者36に鎮痛剤を投与することによって、または患者36に任意の他の形態の治療を投与することによって、警告に応答して、現在の侵害受容事象を軽減することができる。
【0031】
侵害受容ソフトウェアコード48はまた、侵害受容予測ソフトウェアコードを含んでもよい。システムプロセッサ40は、侵害受容ソフトウェアコード48の侵害受容予測ソフトウェアコードを実行して、患者36に対する将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容予測スコアを、受信した血行動態データを使用して決定する。例えば、システムプロセッサ40は、第一のモジュール50を実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定することができる。システムプロセッサ40は、第二のモジュール51を実行して、患者36の将来の侵害受容事象を予測する侵害受容予測入力特徴を複数の信号測定値から抽出する。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、患者36の将来の侵害受容事象の確率を表す侵害受容予測スコアを、侵害受容予測入力特徴に基づいて決定する。侵害受容予測スコアが所定の予測基準を満たす場合、システムプロセッサ40は、ユーザーインターフェース54の感覚アラーム58を発動して、第二の感覚信号を送信して、患者36がまもなく将来の侵害受容事象を経験することになることを医療従事者38に警告する。医療従事者38は、患者36に鎮痛剤を投与することによって、または患者36に任意の他の形態の治療を投与することによって、この警告に応答して、予測される将来の侵害受容事象の開始を軽減または防止することができる。
【0032】
患者36の現在の侵害受容事象を検出し将来の侵害受容事象を予測することに加えて、血行動態モニタリングシステム32は、いつ患者36が現在の侵害受容事象を経験するか、およびいつ患者36が医療従事者38によって以前に患者36に投与された血行動態薬剤に反応する(以下、血行動態薬剤投与事象と称する)に過ぎないかを、識別することができる。血行動態薬剤投与事象は、患者36が、心血管血行動態を変化させる化合物(例えば、鎮痛剤、昇圧剤、変力物質、流体、および/または他の薬剤)の投与により、心拍数増加および血圧上昇を経験する場合の事象として定義され、患者36の侵害受容事象ではない。侵害受容ソフトウェアコード48は、患者36の血行動態薬剤投与事象の存在を検出するための血行動態薬剤検出ソフトウェアコードを含む。システムプロセッサ40は、侵害受容ソフトウェアコード48の血行動態薬剤検出ソフトウェアコードを実行して、血行動態薬剤投与事象が患者36の心拍数の増加および血圧の上昇の原因である確率を表す血行動態薬剤検出スコアを、受信した血行動態データを使用して決定する。例えば、システムプロセッサ40は、第一のモジュール50を実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定することができる。システムプロセッサ40は、第二のモジュール51を実行して、患者36の血行動態薬剤投与事象の現在の効果を検出する血行動態薬剤検出入力特徴を複数の信号測定値から抽出する。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、患者36の血行動態薬剤検出スコアを、血行動態薬剤検出入力特徴に基づいて決定する。血行動態薬剤検出スコアが所定の血行動態検出基準を満たす場合、システムプロセッサ40は、ユーザーインターフェース54の感覚アラーム58を発動して、第三の感覚信号を送信して、患者36が現在の侵害受容事象ではなく血行動態薬剤投与事象を経験していることを医療従事者38に警告する。血行動態薬剤検出スコアおよび第三の感覚信号は、医療従事者38が血行動態薬剤投与事象を侵害受容事象と混同するのを防ぎ、医療従事者38が患者36に不必要に鎮痛剤を投与するのを防ぐのに役立つ。
【0033】
侵害受容ソフトウェアコード48はまた、患者36の将来の血行動態薬剤投与事象の開始を検出するための血行動態薬剤予測ソフトウェアコードも含む。システムプロセッサ40は、侵害受容ソフトウェアコード48の血行動態薬剤予測ソフトウェアコードを実行して、血行動態薬剤投与事象が患者36の心拍数の増加および血圧の上昇の原因である確率を表す血行動態薬剤予測スコアを、受信した血行動態データを使用して決定する。例えば、システムプロセッサ40は、第一のモジュール50を実行して、血行動態データの波形解析を実行して、複数の信号測定値を決定することができる。システムプロセッサ40は、第二のモジュール51を実行して、患者36の血行動態薬剤投与事象の開始を検出する血行動態薬剤予測入力特徴を複数の信号測定値から抽出する。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、患者36の血行動態薬剤予測スコアを、血行動態薬剤予測入力特徴に基づいて決定する。血行動態薬剤予測スコアが所定の血行動態予測基準を満たす場合、システムプロセッサ40は、ユーザーインターフェース54の感覚アラーム58を発動して、第四の感覚信号を送信して、患者36がまもなく血行動態薬剤投与事象を経験することになることを医療従事者38に警告する。血行動態薬剤予測スコアおよび第四の感覚信号は、医療従事者38が将来の血行動態薬剤投与事象を将来の侵害受容事象と混同することを防止し、医療従事者38が患者36に不必要な鎮痛剤を投与することを防止するのに役立つ。
【0034】
血行動態モニタ10のシステムメモリ42はまた、患者36の安定エピソードを検出するための安定検出ソフトウェアコードを含み得る。安定エピソードは、患者36が侵害受容事象または血行動態薬剤投与事象を経験しない期間として定義される。安定検出ソフトウェアコードは、侵害受容ソフトウェアコード48のサブパーツであってもよい。システムプロセッサ40は、安定検出ソフトウェアコードを実行して、複数の信号測定値から安定検出入力特徴を抽出する。安定検出ソフトウェアコードは、第二のモジュール51を使用して、複数の信号測定値から安定検出入力特徴を抽出することができる。安定検出入力特徴は、患者36の安定エピソードを検出する。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、患者36の安定スコアを、安定検出入力特徴に基づいて決定する。システムプロセッサ40は、表示装置12のユーザーインターフェース54に患者36の安定スコアを出力する。
【0035】
システムプロセッサ40は、第一のモジュール50を実行して、所与の単位時間に対して複数の信号測定値の単一のバッチを抽出することができ、その信号測定値の単一のバッチは、その単位時間に対する侵害受容検出入力特徴、侵害受容予測入力特徴、血行動態薬剤検出入力特徴、血行動態薬剤予測入力特徴、および安定検出入力特徴のすべてを抽出するために、第二のモジュール51によって使用され得る。第二のモジュール51は、複数の信号測定値から、侵害受容検出入力特徴、侵害受容予測入力特徴、血行動態薬剤検出入力特徴、血行動態薬剤予測入力特徴、および安定検出入力特徴のすべてを同時に抽出することができる。システムプロセッサ40は、第三のモジュール52を実行して、侵害受容検出スコア、侵害受容予測スコア、血行動態薬剤検出スコア、血行動態薬剤予測スコア、および安定スコアを同時に決定することができる。血行動態モニタ10の侵害受容ソフトウェアコード48は、いくつかの実施例では、バイナリポジティブ対ネガティブラベルを有する分類型機械学習モデルを利用することができる。プロセッサ40は、特定の実施例では、侵害受容検出スコアおよび血行動態薬剤検出スコアを一緒に表示装置12に出力して、二つの確率を比較および対比することができ、侵害受容事象または血行動態薬剤投与事象が患者36における血圧上昇および心拍数増加を引き起こしているかどうかを医療従事者38がより良く理解するのを助けることができる。
【0036】
あるいは、血行動態モニタ10の侵害受容ソフトウェアコード48は、侵害受容事象と血行動態薬剤事象と安定エピソードの三つのラベルを有するマルチクラス機械学習モデルを利用することができる。例えば、プロセッサ40は、患者が現在の侵害受容事象を受けている確率、患者が現在の血行動態薬剤投与事象を経験している確率、および患者が安定している確率という三つの確率すべてを互いに比較するように、安定スコアおよび血行動態薬剤検出スコアの両方とともに侵害受容検出スコアを表示装置12に出力することができる。以下で
図5~8を参照して論じるように、血行動態モニタ10の機械学習モデルは、動脈圧波形と、心血管血行動態を変化させる化合物(例えば、鎮痛剤、昇圧剤、変力物質、流体、および/または他の薬剤)の投与の臨床アノテーションとを含む臨床データセットを使用して、患者36の動脈圧波形のこれらのタイプの事象およびエピソードを認識および/または予測するように訓練され得る。
【0037】
図5は、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用される臨床データセット60の図である。臨床データセット60は、以前の患者から記録された動脈圧波形のコレクションを含む第一のデータセット61を含む。第一のデータセット61は、
図2に示す血行動態センサ16などの侵襲的血行動態センサによって収集されてもよく、または
図3に示す血行動態センサ26などの非侵襲的血行動態センサによって収集されてもよい。臨床データセット60はまた、心血管血行動態を変化させる化合物(例えば、鎮痛剤、昇圧剤、変力物質、流体、および/または他の薬剤)が、第一のデータセット61の以前の患者に、その者らの動脈圧波形が記録されていた間に投与された事例のログを含む、第二のデータセット62を含む。医療従事者は、第一のデータセット61および第二のデータセット62が同時に一緒に収集されるように、第一のデータセット61を収集している同じ血行動態モニタに投与情報を直接入力できる。
図6~8に示すように、第二のデータセット62の情報は、第一のデータセット61の動脈圧波形のコレクションに注釈付けされ、ラベル付けされる。
【0038】
図6は、経時的な収縮期血圧のプロット(以下、「SBPプロット」と称する)および経時的な心拍数のプロット(以下、「HRプロット」と称する)を示すグラフである。臨床データセット60が、血行動態モニタ10をマシントレーニングするために使用され得る前に、SBPプロットおよびHRプロットは、臨床データセット60で収集された動脈圧波形の各々に対して決定される。
図6に示すSBPプロットおよびHRプロットは、臨床データセット60の動脈圧波形(図示せず)のうちの一つからの実施例である。SBPプロットおよびHRプロットが、臨床データセット60で収集された動脈圧波形の各々について決定された後、SBPプロットおよびHRプロットの両方は、注釈付けされて、心血管血行動態を変化させる化合物がいつ臨床患者に投与されたかを示す。例えば、
図6に示すSBPプロットおよびHRプロットは、鎮痛剤ラベル64を含み、これは、SBPプロットおよびHRプロットを横切って時間の同じ位置に延在する垂直バーである。
図6の鎮痛剤ラベル64は、
図6のSBPプロットおよびHRプロットによって表示される時間の間、臨床患者が鎮痛剤を投与されたことを示す。SBPプロットおよびHRプロットが臨床患者への薬剤投与を示すように注釈付けおよびラベル付けされた後、侵害受容データセグメント66が、SBPプロットおよびHRプロット上で識別およびラベル付けされる。
【0039】
図6に示すように、侵害受容データセグメント66は、前の期間と比較して臨床患者の収縮期血圧が少なくとも閾値量(例えば、20%または他の閾値量)だけ増加し、前の期間と比較して臨床患者の心拍数も少なくとも閾値量(例えば、20%または他の閾値量)だけ増加し、ならびに心血管血行動態を変化させる化合物(例えば、鎮痛剤、昇圧剤、変力物質、流体、および/または他の薬剤)の注入が血圧上昇および心拍数増加の前に開始されなかった、時間セグメントをSBPプロットおよびHRプロットの両方において見出すことによって、SBPプロットおよびHRプロット上で識別される。
図6では、SBPプロットおよびHRプロットの両方が、鎮痛剤ラベル64の前に発生する開始点68で20%を超えて増加し、したがって、
図6の侵害受容データセグメント66の開始を示す。
図6の侵害受容データセグメント66は、鎮痛剤ラベル64で臨床患者にちょうどよい時に投与された鎮痛剤の結果として、SBPプロットおよびHRプロットの両方が低下し始めるまで継続する。SBPプロットおよびHRプロットの低下は、終了点70によって示される。開始点68および終了点70の両方は、HRプロットおよびSBPプロット上にラベル付けされ、開始点68と終了点70との間の時間セグメントは、一つの侵害受容データセグメント66として指定される。鎮痛剤ラベル64および侵害受容データセグメント66が、SBPプロットおよびHRプロット上で識別されると、
図6のSBPプロットおよびHRプロットを生成するために使用される動脈圧波形も、鎮痛剤ラベル64および侵害受容データセグメント66が動脈圧波形上でいつ発生したかを示すように、注釈付けおよびラベル付けされ得る。鎮痛剤ラベル64および侵害受容データセグメント66でラベル付けされると、動脈圧波形は、侵害受容事象を検出するために、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用される準備が整っている。以下で
図9~10を参照してさらに論じるように、現在の侵害受容事象の確率を最もよく検出する侵害受容検出入力特徴を計算するためにその後使用される、複数の信号測定値を計算するために、波形解析は、侵害受容データセグメント66を含む臨床データセット60に対して行われる。
【0040】
図6の予測データセグメント71も、将来の侵害受容事象を予測するために、血行動態モニタ10のマシントレーニングに使用され得る。予測データセグメント71は、SBPプロットおよびHRプロットの増加の開始前の、前の期間を識別することによって、臨床データセット60内で識別され得る。
図6の例では、前の期間は、開始点68の前に発生する。開始点68より前の、前の期間は、予測データセグメント71としてラベル付けされる。いくつかの実施例では、予測データセグメント71は、侵害受容データセグメント66の15分前に開始し、侵害受容データセグメント66の直前に終了する期間を含む。他の実施例では、予測データセグメント71は、侵害受容データセグメント66より前の、より大きなまたはより小さな期間を含み得る。予測データセグメント71が、SBPプロットおよびHRプロット上で識別およびラベル付けされると、
図6のSBPプロットおよびHRプロットを生成するために使用される動脈圧波形も、予測データセグメント71がいつ動脈圧波形上で発生したかを示すように、注釈付けおよびラベル付けされ得る。予測データセグメント71でラベル付けされると、動脈圧波形は、侵害受容事象を予測するために、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用される準備が整っている。以下で
図9~10を参照してさらに論じるように、将来の侵害受容事象の開始の確率を最もよく検出する侵害受容予測入力特徴を計算するためにその後使用される、複数の信号測定値を計算するために、波形解析は、予測データセグメント71を含む臨床データセット60に対して行われる。
【0041】
図7は、臨床データセット60からの動脈圧波形セグメント(図示せず)から導出された別のSBPプロットおよびHRプロットを示すグラフである。
図7のSBPプロットおよびHRプロットを生成した動脈圧波形セグメントは、安定データセグメント72として識別され、患者が侵害受容なしで安定エピソードをいつ経験しているかを検出するために、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用されることができる。SBPプロットに閾値量(例えば、20%または他の閾値量)よりも大きい増加がなく、HRプロットに閾値量(例えば、20%または他の閾値量)よりも大きい増加がなく、および心血管血行動態を変化させる化合物の注入が実行されない場合、臨床データセット60の動脈圧波形セグメントは、安定データセグメント72として識別される。
図7の例に示すように、SBPプロットは、開始点74と終了点76との間の20%よりも大きい増加を含まない。
図7の例のHRプロットも、開始点74と終了点76との間の20%よりも大きい増加を含まない。
図7のHRプロットおよびSBPプロットはまた、開始点74と終了点76との間の臨床患者における心血管血行動態を変える化合物の注入を示す、いかなる注釈もラベルも含まない。
図7の例におけるHRプロットおよびSBPプロットの上述の特性を考慮すると、
図7のHRプロットおよびSBPプロットは、開始点74と終了点76との間の安定データセグメント72としてラベル付けされる。
図7のHRプロットおよびSBPプロットを生成した動脈圧波形セグメント(図示せず)も、開始点74と終了点76との間の安定データセグメント72としてラベル付けされる。安定データセグメント72でラベル付けされると、動脈圧波形セグメントは、血行動態モニタ10の安定データマイニングおよび安定マシントレーニングに使用される準備が整っている。以下で
図9~10を参照してさらに論じるように、安定エピソードの確率を最もよく検出する安定検出入力特徴を計算するためにその後使用される、複数の信号測定値を計算するために、波形解析は、安定データセグメント72を含む臨床データセット60に対して行われる。
【0042】
図8は、臨床データセット60からの動脈圧波形セグメント(図示せず)から導出された別のSBPプロットおよびHRプロットを示すグラフである。
図8のSBPプロットおよびHRプロットを生成した動脈圧波形セグメントは、血行動態薬剤投与データセグメント78(以下、「HDAデータセグメント78」と称する)として識別され、患者が現在の血行動態薬剤投与事象をいつ経験しているかを検出するために、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用されることができる。臨床データセット60の動脈圧波形セグメントは、動脈圧波形セグメントが、臨床患者への心血管血行動態を変える化合物の注入を含み、かつ注入後のSBPプロットおよびHRプロットの両方で少なくとも閾値量(例えば、20%または他の閾値量)の増加がある場合に、HDAデータセグメント78として識別される。
図8の例では、SBPプロットおよびHRプロット上の昇圧剤注入ラベル80は、臨床患者が昇圧剤を投与されたことを示す。昇圧剤注入ラベル80の直後に、SBPプロットは、開始点82と終了点84との間で少なくとも20%増加した。開始点82と終了点84との間で、HRプロットも、少なくとも20%増加したのであり、したがって、HDAデータセグメント78が開始点82と終了点84との間で発生したことを示す。
図8のHRプロットおよびSBPプロットは、開始点82と終了点84との間のHDAデータセグメント78としてラベル付けされている。
図8のHRプロットおよびSBPプロットを生成した動脈圧波形セグメント(図示せず)も、開始点82と終了点84との間のHDAデータセグメント78としてラベル付けされる。HDAデータセグメント78でラベル付けされると、動脈圧波形セグメントは、血行動態モニタ10の血行動態薬剤検出データマイニングおよびマシントレーニングに使用される準備が整っている。以下で
図9~10を参照してさらに論じるように、現在の血行動態薬剤投与事象の確率を最もよく検出する血行動態薬剤検出入力特徴を計算するためにその後使用される、複数の信号測定値を計算するために、波形解析は、HDAデータセグメント78を含む臨床データセット60に対して行われる。
【0043】
図8の血行動態薬剤予測データセグメント85(以下、「HDPデータセグメント85」と称する)は、将来の血行動態薬剤投与事象を予測するための、血行動態モニタ10のマシントレーニングにも使用され得る。HDPデータセグメント85は、
図8のSBPプロットおよびHRプロットの増加の開始前の、以前の期間を識別することによって、臨床データセット60内で識別され得る。
図8の例では、以前の期間は、開始点82の前に発生する。開始点82より前の、以前の期間は、HDPデータセグメント85としてラベル付けされる。いくつかの実施例では、HDPデータセグメント85は、HDAデータセグメント78の15分前に開始し、HDAデータセグメント78の直前に終了する期間を含む。他の実施例では、HDPデータセグメント85は、HDAデータセグメント78より前の、より大きなまたはより小さな期間を含み得る。HDPデータセグメント85が、SBPプロットおよびHRプロット上で識別およびラベル付けされると、
図8のSBPプロットおよびHRプロットを生成するために使用される動脈圧波形も、HDPデータセグメント85がいつ動脈圧波形上で発生したかを示すように、注釈付けおよびラベル付けされ得る。HDPデータセグメント85でラベル付けされると、動脈圧波形は、将来の血行動態薬剤投与事象の開始を予測するために、血行動態モニタ10のデータマイニングおよびマシントレーニングに使用される準備が整っている。以下で
図9~10を参照してさらに論じるように、将来の血行動態薬剤投与事象の開始の確率を最もよく検出する血行動態薬剤予測入力特徴を計算するためにその後使用される、複数の信号測定値を計算するために、波形解析は、HDPデータセグメント85を含む臨床データセット60に対して行われる。
【0044】
図9は、血行動態モニタ10の機械学習モデルのマシントレーニングのための、
図5~8からの臨床データセット60のデータマイニングのための方法86の流れ図である。
図10も参照しながら、
図9の方法86を考察する。方法86は、臨床データセット60の侵害受容データセグメント66、予測データセグメント71、安定データセグメント72、HDAデータセグメント78、およびHDPデータセグメント85の各々に適用されて、血行動態モニタを訓練して、
図4を参照して以前に説明した入力特徴を見出す。方法86を、侵害受容データセグメント66(
図6に示す)に適用されるものとして説明する。
【0045】
図4に記載される侵害受容検出入力特徴を識別するために、血行動態モニタ10をマシントレーニングするために、侵害受容検出入力特徴が、まず、臨床データセット60の侵害受容データセグメント66に方法86を適用することによって決定される。方法86の第一のステップ88は、データセット60で収集された動脈波形の侵害受容データセグメント66の波形解析を実施して、侵害受容データセグメントの複数の信号測定値を計算することである。侵害受容データセグメント66の波形解析を行うことは、侵害受容データセグメント66の動脈圧波形の各々における個々の心周期を識別することを含み得る。
図10は、個々の心周期が識別および拡大された、動脈圧波形のトレース例を示す、例示的なグラフを提供する。次に、侵害受容データセグメント66の波形解析を行うことは、
図10に示す例に類似した、侵害受容データセグメント66の動脈圧波形の各々の、個々の心周期の各々における、重複切痕を識別することを含み得る。次に、侵害受容データセグメント66の波形解析は、
図10に示す例に類似した、侵害受容データセグメント66の動脈圧波形の各々の、個々の心周期の各々における、収縮期上昇相、収縮期減衰相、および拡張期を識別することを含む。
【0046】
信号測定値は、侵害受容データセグメント66の動脈圧波形の各々の、個々の心周期の各々からの、収縮期上昇相、収縮期減衰相、および拡張期の各々から抽出される。信号測定値は、個々の心周期の各々からの、収縮期上昇相、収縮期減衰相、および拡張期の各々からの血行動態効果に対応し得る。これらの血行動態効果には、収縮性、大動脈コンプライアンス、一回拍出量、血管緊張、後負荷、および全心周期が含まれ得る。方法86の第一のステップ88の波形解析によって計算または抽出される信号測定値は、個々の心周期の各々からの、収縮期上昇相、収縮期減衰相、および拡張期の各々からの、平均値、最大値、最小値、持続時間、面積、標準偏差、導関数、および/または形態学的測定値を含む。信号測定値はまた、侵害受容データセグメント66の動脈圧波形の各々の、個々の心周期の各々から抽出された、心拍数、呼吸数、一回拍出量、脈圧、脈圧変動、一回拍出量変動、平均動脈圧(MAP)、収縮期圧(SYS)、拡張期圧(DIA)、心拍変動性、心拍出量、末梢抵抗、血管コンプライアンス、および/または左心室収縮性も含むことができる。
【0047】
侵害受容データセグメント66に対する信号測定値が決定された後、方法86のステップ90が、侵害受容データセグメント66の信号測定値に対して実施される。方法86のステップ90は、侵害受容データセグメント66の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算する。侵害受容データセグメント66の信号測定値間の組み合わせ測定値を計算することは、侵害受容データセグメント66の信号測定値すべてに対して、
図9に示すステップ92、94、96、および98を実行することを含み得る。ステップ92は、侵害受容データセグメントの信号測定値から三つの信号測定値を任意に選択することによって実施される。次に、
図9のステップ94に示すように、三つの信号測定値の冪を生成するために、三つの信号測定値の各々について異なるオーダーの冪が計算される。
図9のステップ96では、次いで三つの信号測定値の冪を互いに乗算して、三つの信号測定値の冪の積を生成する。ステップ98は、積の受信者動作特性(ROC)分析を実施して、三つの信号測定値についての組み合わせ測定値に達することを含む。ステップ92、94、96、および98は、組み合わせ測定値のすべてが、侵害受容データセグメント66の信号測定値のすべての間で計算されるまで繰り返される。最も予測可能な上位の組み合わせ測定値(すなわち、閾値予測基準を満たす組み合わせ測定値)を有する信号測定値は、侵害受容データセグメント66に対する上位信号測定値として選択され、侵害受容検出入力特徴としてラベル付けされる。侵害受容検出入力特徴が決定されると、血行動態モニタ10は、患者36の動脈圧波形(
図4に示す)に対して波形解析を実行し、患者36の動脈圧波形から侵害受容検出入力特徴を抽出し、これらの侵害受容検出入力特徴を使用して、患者36が現在の侵害受容事象を現在経験している確率を決定するように、訓練またはプログラムされる。
【0048】
方法86がどのように侵害受容データセグメント66に適用されたかと同様に、方法86は、侵害受容予測入力特徴、安定検出入力特徴、血行動態薬剤検出入力特徴、および血行動態薬剤予測入力特徴を決定するために、それぞれ、臨床データセット60の予測データセグメント71、安定データセグメント72、HDAデータセグメント78、およびHDPデータセグメント85に適用される。
【0049】
本発明は例示的実施形態を参照して記載されてきたが、様々な変更がなされてもよく、均等なものが、本発明の範囲から逸脱することなく、その要素を置換してもよいことが当業者によって理解されるであろう。さらに、特定の状況または材料を、その必須範囲から逸脱することなく、本発明の教示に適合させるために、多くの修正がなされてもよい。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されず、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。
【国際調査報告】