(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】白化しない、又は白化が低減されたクリアコートを提供するためのクリアコート組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/00 20060101AFI20240312BHJP
C09D 201/06 20060101ALI20240312BHJP
C09D 167/00 20060101ALI20240312BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D201/06
C09D167/00
C09D5/00 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558827
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-22
(86)【国際出願番号】 EP2022057836
(87)【国際公開番号】W WO2022200533
(87)【国際公開日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】マテュー,マライケ
(72)【発明者】
【氏名】ファイグル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グレーネヴォルト,マッティユス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイハー,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェグナー,イェンス
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG001
4J038DD001
4J038DG001
4J038DL031
4J038GA03
4J038HA446
4J038KA06
4J038MA14
4J038NA01
4J038NA04
4J038PA07
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つの成分(A)及び(B)を含み、これら成分が互いに異なり且つ互いに別個であるクリアコート系であって、(A)が少なくとも構成成分(a1)~(a5)、すなわち少なくとも1つの有機溶媒(a1)、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)、少なくとも1つのポリシロキサン(a3)、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)、及び少なくとも1種類のヒュームドシリカ(a5)を含み、成分(A)内の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比が1.0:0.1~1.0:<5.0の範囲であり、そして(B)が互いに異なる少なくとも2つの構成成分(b1)及び(b2)、すなわち少なくとも1つの有機溶媒(b1)及び平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも有機構成成分(b2)を含み、これらのNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)へ組み込まれる、クリアコート系と、本発明のコーティング系の少なくとも成分(A)及び(B)を互いに混合することによって得ることができるクリアコート組成物と、任意に予め塗装された基材に本発明のクリアコート組成物を適用する工程を含む基材をコーティングする方法と、本発明の方法によって得ることができる塗装された基材とに関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの成分(A)及び(B)、及び任意に少なくとも1つのさらなる成分(C)を含み、これら成分が互いに異なり且つ互いに別個であるクリアコート系であって、
成分(A)が、互いに異なる少なくとも構成成分(a1)~(a3)、すなわち
少なくとも1つの有機溶媒(a1)、
少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)、及び
少なくとも1つのエーテルセグメントを含有する少なくとも1つのポリシロキサン(a3)
を含み、
成分(B)が、互いに異なる少なくとも2つの構成成分(b1)及び(b2)、すなわち
少なくとも1つの有機溶媒(b1)、及び
平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)であって、これらNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)に組み込まれる、有機構成成分(b2)
を含み、そして
任意の成分(C)が還元剤成分であり、少なくとも1つの有機溶媒(c1)を含み、
成分(A)が、互いに異なり且つ構成成分(a1)~(a3)、(b1)及び(b2)のいずれとも異なる、少なくとも1つの構成成分(a4)及び少なくとも1つの構成成分(a5)、すなわち
少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートと、少なくとも1つのモノアミンとの少なくとも付加物である、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)、及び少なくとも1種類のヒュームドシリカ(a5)、
をさらに含み、
成分(A)内の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比が1.0:0.1~1.0:<5.0の範囲であることを特徴とする、クリアコート系。
【請求項2】
構成成分(a4)が、成分(A)内において、0.10~10.0質量%、好ましくは0.10~8.0質量%、より好ましくは0.1~7.0質量%、さらにより好ましくは0.10~5.0質量%、なおより好ましくは0.10~4.0質量%、またより好ましくは0.10~3.0質量%の範囲の量で、各場合とも成分(A)の総質量に対して存在することを特徴とする、及び/又は
構成成分(a5)が、成分(A)内において、0.10~10.0質量%、好ましくは0.20~8.0質量%、より好ましくは0.20~7.0質量%、さらにより好ましくは>0.20~5.0質量%、なおより好ましくは0.25~4.0質量%、またより好ましくは0.3~3.0質量%の範囲の量で、各場合とも成分(A)の総質量に対して存在することを特徴とする、請求項1に記載のクリアコート系。
【請求項3】
構成成分(a4)が、少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、好ましくは少なくとも1つのジイソシアネートを、少なくとも1つのモノアミンの混合物に、少なくとも1つのOH官能性ポリマー、好ましくは少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーの存在下で添加することによって調製され、このポリマーは少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)と同一でも異なっていてもよいことを特徴とする、
及び/又は
構成成分(a5)として使用される少なくとも1種類のヒュームドシリカが、親水性及び疎水性のヒュームドシリカ及びその混合物からなる群から選択され、好ましくは疎水性のヒュームドシリカからなる群から選択され、特に、ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネート及びメトキシプロピルアミンの付加物である尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)と組み合わせられることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のクリアコート系。
【請求項4】
成分(A)内の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比が、1.0:0.2~1.0:<5.0、好ましくは1.0:0.4~1.0:<5.0、より好ましくは1.0:0.5~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:0.7~1.0:<5.0、さらにより好ましくは1.0:0.9~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:1.0~1.0:<5.0、なおより好ましくは1.0:1.1~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:1.5~1.0:<5.0、さらにより好ましくは1.0:1.7~1.0:<5.0、なおより好ましくは1.0:1.8~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:2.0~1.0:<5.0、特に1.0:2.2~1.0:<5.0、最も好ましくは1.0:2.2~1.0:4.8の範囲又は1.0:2.2~1.0:4.5又は1.0:2.2~1.0:4.0又は1.0:2.2~1.0:3.8の範囲であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項5】
少なくとも1つの構成成分(b2)が、式(I)
-NR-(X-SiR’’
x(OR’)
3-x) (I)、
の少なくとも1つの構造単位、
及び/又は、好ましくは及び、式(II)
-N(X-SiR’’
x(OR’)
3-x)
n(X’-SiR’’
y(OR’)
3-y)
m (II)、
の少なくとも1つの構造単位
を有し、
式中、
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖が隣接していない酸素基、硫黄基又はNR
a基により中断されていてもよく、このR
aはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
各R’は、互いに独立して水素、アルキル又はシクロアルキルであり、炭素鎖が隣接していない酸素基、硫黄基又はNR
a基により中断されていてもよく、好ましくは各R’はエチル及び/又はメチルであり、
各X、X’は、互いに独立して1~20個の炭素原子を有する直鎖及び/又は分岐アルキレン又はシクロアルキレン基であり、好ましくは各X、X’は1~4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
各R’’は、互いに独立してアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖が隣接していない酸素基、硫黄基又はNR
a基により中断されていてもよく、好ましくは各R’’はアルキル基であり、より好ましくは1~6個のC原子を有し、
nは、パラメータ0~2であり、mは、パラメータ0~2であり、m+nは2であり、そしてx、yはパラメータ0~2であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項6】
少なくとも1つの構成成分(b2)中に元から存在するイソシアネート基の10~80モル%、好ましくは15~70モル%、より好ましくは20~50モル%、及びなおより好ましくは25~40モル%が、少なくとも1つのシランと反応しており、好ましくは構造単位(I)及び/又は(II)を形成する、好ましくは請求項5に記載の構造単位(I)及び(II)を形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項7】
少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)が、少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマー及び/又は少なくとも1つのOH官能性ポリエステル、好ましくは少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーであり、より好ましくは、少なくとも2つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーが互いに異なることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項8】
少なくとも1つのエーテルセグメントを含有するポリシロキサン(a3)が、ポリジアルキルシロキサン、好ましくはアルキル≠メチルであるポリメチルアルキルシロキサンであり、エーテルセグメント(複数可)-[O-R]
n-を含有し、式中nは1~1000の範囲のパラメータであり、そして各Rは互いに独立してエチレン、プロピレン及び/又はブチレン残基であり、該ポリシロキサンが好ましくは成分(A)の総質量に対して0.01~2.5質量%の範囲の量で存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項9】
成分(B)が、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b3)を含み、該有機構成成分は構成成分(b2)とは異なり且つ如何なるシラン変性NCO基も含有せず、好ましくは、環状脂肪族親構造及び/又は三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によって環状脂肪族ポリイソシアネートから誘導される親構造を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項10】
成分(A)が、シラン基の架橋のための少なくとも1つの触媒(a7)を含むことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載のクリアコート系。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のコーティング系の少なくとも成分(A)及び(B)、及び任意に(C)を互いに混合することによって得ることができる溶媒系クリアコート組成物。
【請求項12】
成分(A)及び(B)を、3:1~1:3の範囲、より好ましくは2.5:1~1:2.5の範囲、なおより好ましくは2:1~1:1.2の範囲の質量比(成分(A)/成分(B)、またより好ましくは1.5:1~1:1.2の範囲、特に1.2:1~1:1.2の範囲の質量比で混合することによって得られることを特徴とする、請求項11に記載のクリアコート組成物。
【請求項13】
基材を塗装する方法であって、任意に予め塗装された基材に、請求項11又は12に記載の少なくとも1つのクリアコート組成物を塗布して、少なくとも1つのコーティング膜を前記任意に予め塗装された基材上に形成する少なくとも1つの工程と、前記少なくとも1つのコーティング膜を硬化して、少なくとも1つの硬化したコーティング層を前記基材上に得る任意の少なくとも1つのさらなる工程とを含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、任意に予め塗装された基材上に多層コーティング系を調製する方法であり、少なくとも工程(1)、(3)、及び(4)、及び任意に(2)、すなわち
(1) 任意に予め塗装された基材に第1のベースコート組成物を適用し、そして前記任意に予め塗装された基材上に第1のコーティング膜を形成する工程、
(2) 工程(1)の後に得られた基材上に存在する前記第1のコーティング膜に、任意に第2のベースコート組成物を適用した後、前記第1のコーティング膜を硬化させて前記第1のコーティング膜に隣接する第2のコーティング膜を形成する工程、
(3) 任意の工程(2)を実施しない場合は、工程(1)の後に得られた基材上に存在する前記第1のコーティング膜に、第3のコーティング組成物を適用した後、前記第1のコーティング膜を硬化させて前記第1のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成するか、又は任意の工程(2)を実施する場合は、工程(2)の後に得られた基材上に存在する前記第2のコーティング膜に、第3のコーティング組成物を適用した後、前記第2のコーティング膜を硬化させて前記第2のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成する工程であって、
該第3のコーティング組成物が請求項11又は12に記載のクリアコート組成物である、工程、及び
(4) 第1のコーティング膜及び第3のコーティング膜、及び任意に第2のコーティング膜を一緒に硬化させ、硬化した前記第3のコーティング膜を、形成された多層コーティング系の最外層として、硬化した第1のコーティング層、任意に第2のコーティング層及び第3のコーティング層を得る工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の方法によって得られる塗装された基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つの成分(A)及び(B)を含み、これら成分が互いに異なり且つ互いに別個であるクリアコート系であって、(A)が少なくとも構成成分(a1)~(a5)、すなわち少なくとも1つの有機溶媒(a1)、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)、少なくとも1つのポリシロキサン(a3)、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)、及び少なくとも1種類のヒュームドシリカ(a5)を含み、成分(A)内の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比が1.0:0.1~1.0:<5.0の範囲であり、そして(B)が互いに異なる少なくとも2つの構成成分(b1)及び(b2)、すなわち少なくとも1つの有機溶媒(b1)及び平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも有機構成成分(b2)を含み、これらのNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)へ組み込まれる、クリアコート系と、本発明のコーティング系の少なくとも成分(A)及び(B)を互いに混合することによって得ることができるクリアコート組成物と、任意に予め塗装された基材に本発明のクリアコート組成物を適用する工程を含む基材をコーティングする方法と、本発明の方法によって得ることができる塗装された基材とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日の自動車仕上げでは、様々な基材、例えば金属製の車体及び車体部品が塗料塗りされる。通常、このような用途では、マルチコート塗料系が構築される。金属基材上のマルチコート塗料系は、従来、電着塗装被覆、プライマー・サーフェーサー塗装、フィラーと1つのベースコート、又はフィラーなしと2つのベースコート、及びクリアコートからなる。2つのベースコートとクリアコートが使用される場合、これらはしばしば3C-1Bプロセスで適用される、すなわち3つの塗装すべてをウェット・オン・ウェットで適用して一緒に硬化させる(塗装3、焼き付け1)。
【0003】
仕上げに課される高度な技術的要件、及び上述の個別の塗装それぞれの機能及び技術的特性は、当業者に知られている。このような系において、本質的な技術的特性、例えば光沢、画像の輝き又は明瞭さ(DOI)、及び耐候安定性などを規定するのは、特にクリアコートである。クリアコートコーティング組成物は、とりわけ、基材への適用後に、スプレー塗布から生じる如何なる凹凸も均一化され、ひいては得られた仕上がりの表面が平滑になるような十分な流動特性を有するために、良好なレベリング性を呈するべきである。同様に重要なことは、如何なる望ましくない目に見える仕上げ欠陥、例えば後続の硬化させた仕上げにおける流れの出現も回避するために、クリアコートコーティング組成物が良好な垂れ挙動を有することである。さらに、もちろん、クリアコートの良好な引っかき抵抗性も必要である。
【0004】
特に、今日の自動車OEM用途では、顧客の外観特性への注目度が高まっている。高品質OEM仕上げの厳しい要求及び仕様を満たすために、使用されるクリアコートコーティング組成物は、特にマルチコート塗料系の構築に2つのベースコートが使用される場合、この場合は通常、クリアコートの層厚がより厚くなるので、上述したように良好なレベリング性及び垂れ安定性(垂れ耐性)を提供することができ、そして引っかき抵抗性のあるクリアコートをもたらすことができなければならない。
【0005】
クリアコート組成物は、例えば、WO2010/112106A1、WO2004/018578A1及びWO00/71596A1、さらにWO2013/076208A1及びWO2012/140131A1に開示されている。
【0006】
WO2010/112106A1は、特定の(メタ)アクリル(コ)ポリマーを含む非プロトン性溶媒をベースとするコーティング組成物に関する。WO2004/018578A1は、とりわけ疎水性及び親水性シリカナノ粒子と親水性シリカナノ粒子との両方を含むコーティング組成物を開示しており、引っかき抵抗性があり且つ透明なコーティングを提供することを目的としている。WO00/71596A1は、とりわけバインダー、架橋剤、シリカ及び尿素及び/又は尿素誘導体を含むコーティング組成物に関する。WO00/71596A1は、流れ傾向が低減され、レベリング性及び貯蔵安定性が改善されたコーティング組成物を提供することを目的としている。WO2013/076208A1及びWO2012/140131A1は両方とも、とりわけ2つの異なる(メタ)アクリルOH官能性コポリマー、ポリアミド及び尿素化合物を含む溶媒ベースのクリアコートコーティング組成物を開示している。
【0007】
さらなるクリアコート組成物が、例えば、WO2009/077181A1、WO2010/139375A1及びWO2010/063332A1、さらにEP1923412A1に開示されている。
【0008】
WO2009/077181A1は、とりわけOH官能性バインダー、NCO官能性架橋剤(シランを使用することによって部分的に変性することができる)、及び水分捕捉剤を含むコーティング組成物に関する。WO2010/139375A1は、とりわけOH官能性バインダー、NCO官能性架橋剤、アミノ樹脂及び不飽和、環状、立体障害アミンを含むコーティング組成物に関する。WO2010/063332A1は、とりわけOH官能性高分岐樹枝状ポリエステルと、部分的にシラン変性された形態で存在するポリイソシアネートとを含む、非プロトン性溶媒をベースとするコーティング組成物を開示している。WO2010/063332A1は、高い引っかき抵抗性と、うねりを測定することによって決定される良好な外観とを有するコーティングを提供することを目的としている。WO2010/063332A1によれば、これは特定の前述のポリエステルを使用することにより達成される。EP1923412A1は、ナノ粒子変性ポリイソシアネートに関するものであり、このポリイソシアネートは、アルコキシシラン及びこれを含有するコーティング組成物との反応によって変性されている。
【0009】
さらなるクリアコート組成物が、例えば、WO2014/086530A1及びWO2014/086529A1に開示されている。
【0010】
WO2014/086530A1は、非水性コーティング組成物、例えば、とりわけOH官能性バインダー、環状脂肪族及び脂環式ポリイソシアネート及びヒュームドシリカを含み、2つのポリイソシアネートの少なくとも1つが部分的にシラン変性された形態で存在し、少なくとも2つの異なる種類のシランが変性に使用されているクリアコート組成物を開示している。WO2014/086530A1は、高い引っかき抵抗性、良好な研磨性、及びうねりを測定することによって決定される良好な外観を有するコーティングを提供することを目的としている。WO2014/086529A1は、プライマー組成物、少なくとも1つの顔料ベースコート組成物及びクリアコート組成物を、少なくとも後続して基材に適用することによって得られる多層コーティング効果及び/又は着色塗料系に関する。クリアコート組成物は、とりわけ、ヒュームドシリカ、及び部分的にシラン変性された形態で存在するポリイソシアネートを含有する。WO2014/086529A1は、湿気暴露下の白化傾向が低減され、うねりを測定することによって決定される良好な全体的外観を有するコーティングを提供することを目的としている。
【0011】
しかしながら、クリアコート及びそれを調製するために使用されるクリアコートコーティング組成物は、良好なレベリング性、垂れ安定性及び引っかき抵抗性を示す/呈する必要があるだけでない。同時に、クリアコート及びそれを調製するために使用されるクリアコートコーティング組成物は、その加工性に関して堅牢でなければならず、へこみの発生に対して耐性がなければならず、そして結露試験後などの湿度試験後に著しい白化を示してはならない。特に、湿気及び水分への暴露後に白化しないか、又はわずかな白化しか示さないという要求に関して、先行技術のクリアコートは、そのような望ましい最小限の白化、又は白化の不在さえ、必ずしも十分に示すものではない。
【0012】
よって、湿気及び/又は水分への暴露後に白化を示さないか、又は少なくとも最小限の白化しか示さないクリアコートの調製に使用することができるクリアコートコーティング材料組成物が必要とされている。同時に、垂れ安定性及びレベリング性などの他の外観関連の特性は、特に、クリアコートコーティング材料組成物が3C-1Bプロセスで使用される場合、悪影響を受けてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2010/112106A1
【特許文献2】WO2004/018578A1
【特許文献3】WO00/71596A1
【特許文献4】WO2013/076208A1
【特許文献5】WO2012/140131A1
【特許文献6】WO2009/077181A1
【特許文献7】WO2010/139375A1
【特許文献8】WO2010/063332A1
【特許文献9】EP1923412A1
【特許文献10】WO2014/086530A1
【特許文献11】WO2014/086529A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の基礎となる目的は、湿気及び/又は水分への暴露後に白化を示さない、又は少なくとも最小限の白化しか示さないクリアコートを調製するために使用することができる、クリアコートコーティング材料組成物を提供することである。同時に、垂れ安定性及びレベリング性などの他の外観関連の特性は、特に、クリアコートコーティング材料組成物が3C-1Bプロセスで使用される場合、悪影響を受けてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、本出願の特許請求の範囲の主題、及び本明細書に開示されたその好ましい実施形態、すなわち本明細書に記載された主題により、解決された。
【0016】
本発明の第1の主題は、少なくとも2つの成分(A)及び(B)、及び任意に少なくとも1つのさらなる成分(C)を含み、これら成分が互いに異なり且つ互いに別個であるクリアコート系であり、
成分(A)は、互いに異なる少なくとも構成成分(a1)~(a3)、すなわち
少なくとも1つの有機溶媒(a1)、
少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)、及び
少なくとも1つのエーテルセグメントを含有する少なくとも1つのポリシロキサン(a3)
を含み、
成分(B)は、互いに異なる少なくとも2つの構成成分(b1)及び(b2)、すなわち
少なくとも1つの有機溶媒(b1)、及び
平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)であって、これらNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)に組み込まれる、有機構成成分(b2)
を含み、そして
任意の成分(C)は還元剤成分であり、少なくとも1つの有機溶媒(c1)を含み、
成分(A)が、互いに異なり且つ構成成分(a1)~(a3)、(b1)及び(b2)のいずれとも異なる、少なくとも1つの構成成分(a4)及び少なくとも1つの構成成分(a5)、すなわち
少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートと、少なくとも1つのモノアミンとの少なくとも付加物である、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)、及び
少なくとも1種類のヒュームドシリカ(a5)、
をさらに含むことを特徴とし、
成分(A)中の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比が1.0:0.1~1.0:<5.0の範囲であることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティング系の少なくとも成分(A)及び(B)及び任意に(C)を互いに混合することによって得ることができる溶媒系クリアコート組成物である。
【0018】
本発明のさらなる主題は、基材をコーティングする方法であって、任意に予め塗装された基材に、本発明のクリアコート組成物を好ましくはスプレー塗布を介して適用し、任意に予め塗装された基材上に少なくとも1つのコーティング膜を形成する少なくとも1つの工程を含み、そして任意に、少なくとも1つのコーティング膜を硬化させて基材上に少なくとも1つの硬化したコーティング層を得る、少なくとも1つのさらなる工程を含む。
【0019】
好ましくは、本発明の方法は、任意に予め塗装された基材上に多層コーティング系を調製する方法であり、少なくとも工程(1)、(3)、及び(4)、及び任意に(2)、すなわち
(1) 任意に予め塗装された基材に第1のベースコート組成物を適用し、そして任意に予め塗装された基材上に第1のコーティング膜を形成する工程、
(2) 工程(1)の後に得られた基材上に存在する第1のコーティング膜に、任意に第2のベースコート組成物を適用した後、第1のコーティング膜を硬化させて第1のコーティング膜に隣接する第2のコーティング膜を形成する工程、
(3) 任意の工程(2)を実施しない場合は、工程(1)の後に得られた基材上に存在する第1のコーティング膜に、第3のコーティング組成物を適用した後、第1のコーティング膜を硬化させて第1のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成するか、又は任意の工程(2)を実施する場合は、工程(2)の後に得られた基材上に存在する第2のコーティング膜に、第3のコーティング組成物を適用した後、第2のコーティング膜を硬化させて第2のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成する工程であって、
その第3のコーティング組成物が、本発明のクリアコート組成物である、工程、及び
(4) 第1のコーティング膜及び第3のコーティング膜、及び任意に第2のコーティング膜を一緒に硬化させ、硬化した第3のコーティング膜を、形成された多層コーティング系の最外層として、硬化した第1のコーティング層、任意に第2のコーティング層及び第3のコーティング層を得る工程
を含む。
【0020】
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる塗装された基材である。
【0021】
驚くべきことに、本発明のクリアコート組成物から得られたクリアコートを湿気及び/又は水分条件に暴露した後、白化が全く観察されないか、又は少なくとも有意に低減されることが見出された。特に、クリアコートは、白化の回避/低減の点で望ましい低いdL値しか示さないことが見出された。dL値は、最外層としてクリアコートを有する基材を、DIN EN ISO6270-2:2018-04に準拠した240時間の気候試験(結露水試験)に供する前と後で測定された色値Lの差である。
【0022】
特に、ヒュームドシリカ構成成分(a5)の存在が、クリアコート界面での水の吸着を改善し、ひいては湿度試験後の望ましくない白化を減少させ(低下したエマルジョン効果、光拡散)、これによって多くの自動車製造者の顧客仕様を十分に満たすことが見出された。特に、驚くべきことに、本発明のクリアコート組成物が、本発明のクリアコート組成物を調製するために使用される成分(A)の総質量に対して好ましくは10.0質量%以下の範囲の量で構成成分(a4)を追加的に含有するにもかかわらず、白化が観察されないか、又は少なくとも有意に低減されることが見出された。本発明のクリアコート組成物の製造から得られたクリアコートが、架橋のための少なくとも1つの部分的にシラン化されたポリイソシアネート(b2)の使用によって比較的高いネットワーク密度を追加的に有し、さらにポリシロキサン構成成分(a3)を含有するにもかかわらず、白化が観察されないか、又は少なくとも有意に低減されることは、さらに特に驚くべきことであった。
【0023】
さらに、特に驚くべきことに、特に尿素構成成分(a4)の存在に起因して、特に、通常は膜構築が他の従来のコーティング方法の場合よりも高い3C-1Bプロセスでクリアコートコーティング材料組成物を使用する場合に、本発明のクリアコート組成物は優れた垂れ安定性及び優れたレベリング性特性をさらに示すことが見出された。
【0024】
さらに、驚くべきことに、特にポリシロキサン構成成分(a3)の存在に起因して、へこみ及び/又は流れの望ましくない発生が観察されないことが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のコーティング系
本発明のコーティング系は、少なくとも2つの成分(A)及び(B)を含み、これら成分が互いに異なり且つ互いに別個である2(2K)成分又は多成分のクリアコート系である。この文脈における互いに別個とは、例えば、本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)を、本発明のクリアコート組成物を調製するために互いに混合するまで別々に貯蔵することができることを意味する。本発明のコーティング系は、多成分コーティング系である場合、成分(A)及び(B)とは異なり且つ(A)及び(B)の両方と別個でもある、少なくとも1つのさらなる任意の成分(C)を好ましくは含有する。成分(C)は、好ましくは、調製対象のコーティング組成物を希釈するために使用される還元剤成分であり、よって好ましくは少なくとも1つの有機溶媒(c1)を含み、そしてより好ましくは少なくとも1つの有機溶媒(c1)からなる。しかしながら、本発明のコーティング系は、2成分コーティング系である(これが好ましい)場合、好ましくは成分(A)及び(B)からなる。
【0026】
少なくとも2つの成分(A)及び(B)を混合すると、構成成分(a2)のOH基と構成成分(b2)のイソシアネート基との反応により、ポリウレタン又はポリウレタンベースのコーティング組成物が形成される。
【0027】
好ましくは、本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)の両方及び任意の成分(C)は、水を含まない、又は水を本質的に含まない。本発明のコーティング組成物についても同様である。本発明の意味において、「水を含まない」という用語は、好ましくは、水が全く存在しないことを意味する。本発明の意味において、「水を本質的に含まない」という用語は、好ましくは、本質的に水が存在しないことを意味する。これは、本発明に使用される成分(A)及び(B)及び任意に(C)のいずれか及び本発明のコーティング組成物に、少なくとも水が意図的に添加されないことを意味する。しかしながら、本発明に使用される成分(A)及び(B)、及び任意に(C)を調製するために使用される構成成分のいずれかの調製時に形成された水の残留物がそこに存在することを否定するものではない。好ましくは、成分(A)及び(B)及び任意に(C)の各々に存在する任意の水の量は1質量%未満、より好ましくは0.5質量%未満、さらにより好ましくは0.1質量%未満、なおより好ましくは0.05質量%未満、またより好ましくは0.01質量%未満、特に0.005質量%未満又は0.001質量%未満であり、これらは各場合とも成分(A)又は(B)又は任意に(C)の総質量に対するものである。
【0028】
好ましくは、本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)の両方及び任意の成分(C)は、溶媒系、すなわち有機溶媒(複数可)ベースである。よって、好ましくは、本発明のコーティング系は、水系、すなわち水性コーティング系ではない。
【0029】
本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)、及び任意に(C)、及び本発明によるコーティング組成物に関連して、本発明の文脈における用語「含む(comprising)」は、好ましくは「からなる(consisting of)」の意味を有する。この場合、成分(A)及び(B)及び(C)内に存在する構成成分(a1)~(a5)及び(b1)~(b2)及び(c1)に加えて、本発明のコーティング系又は本発明によるコーティング組成物の成分それぞれに含有される後述のさらなる任意の構成成分の1つ以上が、本発明によるコーティング系、その成分(A)及び(B)及び任意に(C)又はコーティング組成物中に含有されていてよい。あらゆる成分は、後述のそれらの好ましい実施形態において各場合とも存在し得る。
【0030】
成分(A)及び(B)及び(C)内に存在する構成成分(a1)~(a5)及び(b1)~(b2)及び(c1)、そしてコーティング系中にさらに任意に存在する構成成分のwt.-%(質量%)での割合及び量は、加算すると各場合ともコーティング系のそれぞれの成分(A)又は(B)又は(C)の総質量に対して100質量%である。同じことが成分(A)及び(B)及び任意に(C)についても当てはまる:成分(A)及び(B)及び(C)のwt.-%(質量%)での割合及び量は、加算すると各場合とも本発明によるクリアコート組成物の総質量に対して100質量%である。
【0031】
好ましくは、本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)の両方及び任意に(C)は、透明(transparent)、すなわち明瞭(clear)である。好ましくは、もちろん、本発明のコーティング組成物も透明、すなわち明瞭である。特に、本発明のコーティング系の成分(A)及び(B)及び任意に(C)のいずれも、顔料及び/又はフィラー、特に色及び/又は効果を付与する顔料及び/又はフィラーを含有しない。同じことが、もちろん、また好ましくは、本発明のコーティング組成物についても当てはまる。
【0032】
成分(A)
成分(A)は、少なくとも構成成分(a1)~(a5)を含むが、さらなる任意の構成成分を追加的に含んでもよい。
【0033】
好ましくは、本発明によるコーティング系の成分(A)は、成分(A)の総質量に対して>30質量%、好ましくは>35質量%、より好ましくは>40質量%、さらにより好ましくは>45質量%である、総固形分含量を有する。本発明によるコーティング系の成分(A)の総固形分含量は、好ましくは、>35~60質量%、より好ましくは40~57.5質量%、さらにより好ましくは42.5~55質量%、特に45~52.5質量%の範囲であり、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。総固形分含量、換言すると不揮発性画分は、後述の方法に従って決定される。
【0034】
構成成分(a1)
構成成分(a1)は少なくとも1つの有機溶媒である。このような有機溶媒の例には、複素環式、脂肪族又は芳香族炭化水素、モノアルコール又は多価アルコール、特にメタノール及び/又はエタノール、エーテル、エステル、ケトン、及びアミド、例えばN-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、ブタノール、エチルグリコール及びブチルグリコール及びまたそれらのアセテート、ブチルジグリコール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、イソホロン、又はそれらの混合物が含まれる。成分(A)は、複数の有機溶媒(a1)を含んでよい。
【0035】
好ましくは、成分(A)中の構成成分(a1)の量は、10~70質量%、より好ましくは15~65質量%の範囲であり、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。
【0036】
構成成分(a2)
構成成分(a2)は少なくとも1つのOH官能性ポリマーであり、膜形成バインダーとして機能する。本発明の目的では、用語「バインダー」は、DIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)に従って、膜形成に関与するコーティング組成物の不揮発性構成成分であると理解される。そのため、その中に含有される顔料及び/又はフィラーは、用語「バインダー」に包含されない。好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー、例えばOH官能性(メタ)アクリルコポリマーは、コーティング組成物の主要なバインダーである。本発明の意味における主要なバインダーとして、バインダー構成成分が好ましくは言及されるが、それはコーティング組成物の総質量に対してより高い割合で存在する他のバインダー構成成分がコーティング組成物中に存在しない場合である。
【0037】
「ポリマー」という用語は当業者に知られており、本発明の目的では、重付加物、重合化物及び重縮合物を包含する。「ポリマー」という用語には、ホモポリマー及びコポリマーの両方が含まれる。
【0038】
少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)は、好ましくは、平均で2つ以上のOH基を含む。
【0039】
好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)は、ポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定して、好ましくは800~100000g/モルの間、より詳細には1000~75000g/モルの間の質量平均分子量Mwを有する。
【0040】
特に好ましい構成成分(a2)は、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。上記に概説したように、これらの用語は、各場合ともホモポリマー及びコポリマーの両方を含む。
【0041】
好適なポリエステルは、例えば、EP-A-0994117及びEP-A-1273640に記載されている。ポリウレタンポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオールプレポリマーと好適なジ-及び/又はポリイソシアネートとの反応によって製造され、例えば、EP-A-1273640に記載されている。
【0042】
好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)は、少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマー及び/又は少なくとも1つのOH官能性ポリエステル、好ましくは少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーである。好ましくは、少なくとも2つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマー(これらは互いに異なる)が、成分(A)中の構成成分(a2)として存在する。
【0043】
好ましくは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)は、30~400mgKOH/g、より詳細には100~300KOH/gの間のOH価を有する。このポリマーの、DIN EN ISO11357-2(2019-03)に準拠したDSC測定によって測定されるガラス転移温度は、好ましくは-150~100℃の間、より好ましくは-120℃~80℃の間である。
【0044】
用語「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」又は「(メタ)アクリルの」は、それぞれの場合に本発明の文脈において、「メタクリル」及び/又は「アクリル」、「メタクリルの」及び/又は「アクリルの」、又は「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」の意味を含む。従って、一般における「(メタ)アクリルコポリマー」は、「アクリルモノマー」のみ、「メタクリルモノマー」のみ、又は「アクリルモノマー及びメタクリルモノマー」から形成されうる。しかしながら、アクリルモノマー及び/又はメタクリルモノマー以外の重合性モノマー、例えばスチレンなどはまた、「(メタ)アクリルコポリマー」中に含有され得る。換言すると、(メタ)アクリルポリマーは、アクリルモノマー単位及び/又はメタクリルモノマー単位のみからなり得るが、そうでなければならないわけではない。表示法「(メタ)アクリレートポリマー又はコポリマー」又は「(メタ)アクリルポリマー又はコポリマー」は、ポリマー/コポリマー(ポリマー骨格/主鎖)が優勢に形成され、すなわち好ましくは、使用されるモノマー単位のうちの50%超又は75%超が、(メタ)アクリレート基を有するモノマーから形成されることを意味すると意図される。(メタ)アクリルコポリマーの製造では、好ましくは、モノマーのうちの50%超又は75%超が、そのため(メタ)アクリレート基を有する。しかしながら、共重合性ビニルモノマー等のコモノマーとしてのさらなるモノマーの使用、例えばその調製のためのスチレンの使用は、除外されない。
【0045】
(メタ)アクリルコポリマーはOH官能性である。ヒドロキシル含有モノマーには、アクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステルが含まれ、これらはコポリマーの調製に用いることができる。ヒドロキシル官能性モノマーの非限定的な例には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、これらとイプシロン-カプロラクトンとの反応生成物、及び炭素が約10個までの分岐又は直鎖アルキル基を有する他のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物が含まれ、ここで用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート及びアクリレートエステルのいずれか又は両方を表す。一般的に、少なくとも約5質量%のヒドロキシル官能性モノマーがポリマー中に好ましくは含まれる。アクリルポリマーなどのビニルポリマーのヒドロキシル基は、他の手段によっても、例えば、共重合したグリシジルメタクリレートのグリシジル基の、例えば有機酸又はアミンによる開環により、生じさせることができる。
【0046】
ヒドロキシル官能性は、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、1-メルカプト-2-プロパノール、2-メルカプトエタノール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、2-メルカプトベンジルアルコール、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、4-メルカプト-1-ブタノール、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されないチオ-アルコール化合物によっても、導入できる。これらの方法の任意を、有用なヒドロキシル官能性アクリルポリマーの調製に使用してよい。
【0047】
使用できる好適なコモノマーの例には、3~5個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸、及びアクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸のアルキル及びシクロアルキルエステル、ニトリル及びアミド;4~6個の炭素原子を含有するα,β-エチレン性不飽和ジカルボン酸及びこれらの酸の無水物、モノエステル、及びジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、及び芳香族又は脂肪族複素環式ビニル化合物が含まれるが、これらに限定されない。アクリル酸、メタクリル酸、及びクロトン酸の好適なエステルの代表的な例には、1~20個の炭素原子を含有する飽和脂肪族アルコールとの反応によるこれらのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ドデシル、3,3,5-トリメチルヘキシル、ステアリル、ラウリル、シクロヘキシル、アルキル置換シクロヘキシル、アルカノール置換シクロヘキシル、例えば2-tert-ブチル及び4-tert-ブチルシクロヘキシル、4-シクロヘキシル-1-ブチル、2-tert-ブチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、3,3,5,5,-テトラメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル及びイソボルニルアクリレート、メタクリレート、及びクロトネート;不飽和ジアルカン酸及び無水物、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸及び無水物、及びそれらのアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、及びtert-ブタノール)とのモノ-及びジエステル、例えば無水マレイン酸、マレイン酸ジメチルエステル及びマレイン酸モノヘキシルエステル;ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエチルエーテル、及びビニルエチルケトン;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2-ビニルピロリドン、及びp-tert-ブチルスチレンが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
(メタ)アクリルコポリマーは、従来技法を使用して、例えば重合開始剤及び任意に連鎖移動剤の存在下でモノマーを加熱することによって、調製してよい。重合は、例えば溶液中で実施してよい。典型的な開始剤は、有機過酸化物、例えばジアルキルペルオキシド、例えばジ-t-ブチルペルオキシド、ペルオキシエステル、例えばt-ブチルペルオキシ2-エチルヘキサノエート、及びt-ブチルペルアセテート、ペルオキシジカーボネート、ジアシルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、例えばt-ブチルヒドロペルオキシド、及びペルオキシケタール;アゾ化合物、例えば2,2’アゾビス(2-メチルブタンニトリル)及び1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル);及びこれらの組合せである。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n-又はtert-ドデシルメルカプタン;ハロゲン化された化合物、チオサリチル酸、メルカプト酢酸、メルカプトエタノール及びすでに言及した他のチオールアルコール、及び二量体のアルファ-メチルスチレンである。
【0049】
ポリマー化反応は、通常、約20℃~約200℃の温度で実施される。反応は、溶媒又は溶媒混合物が還流する温度で好都合に行われ得るが、適切に制御すれば、還流温度未満が維持される。開始剤は、反応が実施される温度に合わせて選択され、これにより、その温度における開始剤の半減期が、好ましくは約30分以下であるようにすべきである。付加重合一般及び(メタ)アクリレートモノマーを含む混合物の重合のさらなる詳細は、ポリマー技術分野で容易に入手できる。一般的には、溶媒又は溶媒混合物を反応温度に加熱して、モノマー及び開始剤(複数可)を、制御された速度で或る期間、通常は2~6時間にわたり、添加する。連鎖移動剤又は追加の溶媒も、制御された速度でこの時間の間に供給してよい。次に、混合物の温度を或る期間維持して、反応を完了させる。任意に、完全な変換を確実にするために、追加の開始剤を添加してもよい。
【0050】
本発明に従って構成成分(a2)として用いるのに特に好ましい(メタ)アクリルコポリマーは、好ましくは、1000~35000g/モルの間、より好ましくは1500~30000g/モルの間、さらにより好ましくは3000~25000g/モルの間、なおより好ましくは5000~20000g/モルの間の質量平均分子量Mwを有し、これらは各場合ともポリスチレン標準に対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定される。コポリマーのガラス転移温度は、好ましくは-100~100℃の間、より詳細には-60~20℃未満の間である(DIN EN ISO11357-2(2019-03)に準拠しDSC測定によって測定される)。コポリマーは、好ましくは、60~300mgKOH/g、より詳細には70~200mgKOH/gの間のOH価、及び0~30mgKOH/gの間の酸価を有する。
【0051】
少なくとも1つの構成成分(a2)は、少なくとも1つの(メタ)アクリルポリマーである場合、好ましくは、成分(A)中に、成分(A)の総質量に対して5.0質量%~85.0質量%の範囲の量で存在する。より好ましくは、少なくとも1つの構成成分(a2)は、成分(A)中に10.0質量%~80.0質量%、またより好ましくは15.0質量%~75.0質量%、さらにより好ましくは20.0質量%~70.0質量%、なおより好ましくは25.0~65.0質量%、最も好ましくは30.0~60.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。
【0052】
構成成分(a3)
構成成分(a3)は、少なくとも1つのエーテルセグメント(複数可)を含有する少なくとも1つのポリシロキサンである。エーテルセグメント(複数可)は、ポリシロキサンの側鎖に組み込まれていてもよい。好ましくは、少なくとも1つのエーテルセグメント(複数可)含有ポリシロキサンは、ポリエーテル単位を含有するポリシロキサン、すなわちポリエーテル変性ポリシロキサンである。好ましくは、構成成分(a3)は、エーテルセグメント(複数可)-[O-R]n-を含有し、nは、1~1000、より好ましくは1~500又は1~100の範囲、特に2~100未満の範囲のパラメータであり、各Rは、互いに独立して、エチレン、プロピレン及び/又はブチレン残基である。
【0053】
好ましくは、ポリシロキサンは、ポリジアルキルシロキサン、例えばポリジメチルシロキサン及び/又はポリメチルアルキルシロキサンであり、ここでアルキルはメチルを表さず、好ましくはポリエーテル単位で側鎖変性されている。最も好ましいのは、好ましくはポリエーテル単位で側鎖変性されているポリメチルアルキルシロキサンであり、アルキルはメチルを表さない。
【0054】
好ましくは、構成成分(a3)は、成分(A)の総質量に対して0.01~2.5質量%の範囲の量で存在し、より好ましくは0.01~2.0質量%、さらにより好ましくは0.01~1.5質量%、なおより好ましくは0.02~1.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。
【0055】
好ましくは、構成成分(a3)は添加剤として機能し、へこみの発生を回避/低減するために、調製されるクリアコートの表面張力を低下させる。構成成分として使用することができる市販品は、例えばByk Chemie GmbH社から市販されているBYK(登録商標)325及びBYK(登録商標)333である。
【0056】
構成成分(a4)
成分(A)は、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)を含有し、これは少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、好ましくは少なくとも1つのジイソシアネートと、少なくとも1つのモノアミンとの少なくとも付加物である。
【0057】
好ましくは、構成成分(a4)は、0.10~10.0質量%、より好ましくは0.10~8.0質量%の範囲の量、さらにより好ましくは0.10~7.0質量%、またより好ましくは0.10~5.0質量%、なおより好ましくは0.10~4.0質量%、またより好ましくは0.10~3.0質量%、なおより好ましくは0.10~2.0質量%、特に0.10~1.5質量%、最も好ましくは0.10~1.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。或いは、及び好ましくは、構成成分(a4)は、成分(A)の総質量に対して0.20~8.0質量%の範囲の量で存在し、より好ましくは0.20~7.0質量%、さらにより好ましくは0.20~5.0質量%、なおより好ましくは0.20~4.0質量%、またより好ましくは0.20~3.0質量%、なおより好ましくは0.20~2.0質量%、特に0.20~1.5質量%、最も好ましくは0.20~1.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。
【0058】
好ましくは、構成成分(a4)は、成分(A)の少なくとも1つの構成成分(a2)の総質量に対して0.02~5.0質量%の範囲の量で存在し、より好ましくは0.04~4.0質量%、さらにより好ましくは0.1~3.5質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の少なくとも1つの構成成分(a2)の総質量に対するものである。
【0059】
好ましくは、尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)は、垂れ制御剤(SCA)として機能する。構成成分(a4)として使用するための尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)は、例えば、WO2013/076208A1及びWO2012/140131A1に開示されている。当業者は、いわゆる透明な垂れ制御剤(例えばWO2013/076208A1に開示されている)、及び不透明な垂れ制御剤(例えばWO2012/140131A1に開示されている)が存在することを認識している。
【0060】
好ましくは、少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート及び少なくとも1つのモノアミン以外の他の出発材料は、尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)の調製に使用されない。しかしながら、代替的に、付加物(a4)を、OH官能性ポリマー、例えば構成成分(a2)及び/又は以下に記載する任意の構成成分(a6)の少なくとも一部を、追加的に利用することによって調製することも可能である。例えば、構成成分(a4)は、モノアミンと、ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートとの尿素結合(依然としてNCO基を有する)形成下での反応によって調製してよい。これらは、次に、上記のOH官能性ポリマーとさらに反応させてよい。
【0061】
特に、構成成分(a4)は、少なくとも1つのジイソシアネート及び/又はポリイソシアネート、好ましくは少なくとも1つのジイソシアネートを、少なくとも1つのモノアミンの混合物に、少なくとも1つのOH官能性ポリマー、好ましくは少なくとも1つのOH官能性(メタ)アクリルコポリマーの存在下で添加することによって調製され、このポリマーは、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)と同一でも異なっていてもよく、及び/又は(a6)がOH基を有する場合には、任意のポリマー(a6)と同一でも異なっていてもよい。これにより、少なくとも1つの尿素部分と少なくとも1つのウレタン部分の両方を有する付加物が形成される。
【0062】
好ましくは、尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)は、如何なる遊離NCO基も含有せず、特に如何なる遊離NCO基も残存せず、これはその調製のためにジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートを使用することによるものである。或いは、そのようなNCO基は依然として存在してもよく、これは次いで(a4)内にさらに存在するウレタン結合の形成下で少なくとも構成成分(a2)のOH基と反応する。
【0063】
構成成分(a4)の調製に原則的に使用できるポリイソシアネートは、1分子当たり2つ以上のイソシアネート基を含有する有機モノマー、オリゴマー及びポリマーである。構成成分(a4)の調製に原則的に使用できるジイソシアネートは、1分子当たり正確に2つのイソシアネート基を含有する有機モノマー、オリゴマー及びポリマーである。反応生成物をジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートとして使用することも可能であり、これらはイソシアネート基を含有し、例えばポリオール、ポリアミン及びポリイソシアネートの反応の生成物である。ジイソシアネート及び/又はポリイソシアネートは、環状脂肪族を含む脂肪族又は芳香族とすることができる。ジイソシアネート、非常に特定的には脂肪族ジイソシアネート、より詳細にはヘキサメチレンジイソシアネートを使用することが好ましい。使用できるポリイソシアネート及び/又はジイソシアネートの例として、以下が挙げられる:テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、シクロヘキシル1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4-ジイソシアネート、1,5-ジメチル-(2,4-オメガ-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,5-ジメチル-(2,4-オメガ-ジイソシアナト-エチル)ベンゼン、1,3,5-トリメチル-(2,4-オメガ-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリエチル-(2,4-オメガ-ジイソシアナトメチル)ベンゼン、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート及び/又は2,6-トルエンジイソシアネート。
【0064】
構成成分(a4)の調製に原則的に使用することができるモノアミンは、1分子あたり正確に1つのアミノ基を含有する有機モノマー、オリゴマー、ポリマーである。アミノ基は、好ましくは第一級又は第二級、より好ましくは第一級アミノ基である。モノアミンは、環状脂肪族を含む脂肪族又は芳香族とすることができる。好適なモノアミンの例は、エチルアミン、1-プロピルアミン、2-プロピルアミン、1-ブチルアミン、2-ブチルアミン、ベンジルアミン及びメトキシプロピルアミンである。最も好ましいのは、ベンジルアミン又はメトキシプロピルアミンである。
【0065】
好ましくは、少なくとも1つのモノアミンは、使用されるポリイソシアネート及び/又はジイソシアネートのあらゆるイソシアネート基が確実に尿素基に変換されるような量で、構成成分(a4)の調製に使用する。この場合、付加物は、ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネート及びモノアミンを利用することによってのみ形成される。
【0066】
構成成分(a4)は、好ましくは、少なくとも1つの有機溶媒、例えば少なくとも1つの有機溶媒(a1)、及び少なくとも1つのポリマー、例えばOH官能性ポリマー、例えば少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)の少なくとも1部及び/又は以下にさらに詳細に記載する任意に存在するポリマー(a6)の少なくとも1部を含有するペーストの形態で調製される。このペーストは、次いで、成分(A)の調製に使用してよい。よって構成成分(a4)は、例えば、少なくとも1つのポリマー、例えばOH官能性ポリマー、例えば少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)の少なくとも1部及び/又は任意に存在するポリマー(a6)の少なくとも1部の存在下で、直接調製できる。この場合、ペーストを調製する手順は、例として、モノアミン、例えばメトキシプロピルアミン又はベンジルアミンを、少なくとも1つのポリマー、例えばOH官能性ポリマー、例えば少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)の少なくとも1部及び/又は任意に存在するポリマー(a6)の少なくとも1部の溶液又は分散体に、少なくとも1つの有機溶媒中又は有機溶媒、例えば少なくとも1つの有機溶媒(a1)の混合物中で添加し、それからポリイソシアネート及び/又はジイソシアネートを添加する。このような場合、例えば、既に上記に概説したように、ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネート、及び/又は依然としてイソシアネート基を含有する構成成分(a4)の前駆体と、少なくとも1つのOH官能性ポリマーとの結合も起こり得る。
【0067】
ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネートと、OH官能性ポリマーとの混合物の形態のメトキシプロピルアミンとの付加物としての尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)は、例えば、Allnex社の市販品として入手可能である。一例はSetalux(登録商標)81753SS-55である。ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネートと、OH官能性ポリマーとの混合物の形態のベンジルアミンとの付加物としての尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)も、例えばAllnex社の市販品として入手可能である。一例はSetalux(登録商標)91756VS-60である。
【0068】
ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネート及びメトキシプロピルアミンの付加物である尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)の使用は、特に、構成成分(a5)として疎水性シリカと組み合わせて使用する場合に特に好ましい。
【0069】
構成成分(a5)
成分(A)は、構成成分(a5)として少なくとも1種類のヒュームドシリカを含有する。
【0070】
好ましくは、構成成分(a5)は、0.10~10.0質量%、より好ましくは0.20~8.0質量%、さらにより好ましくは0.20~7.0質量%、またより好ましくは>0.20~5.0質量%、なおより好ましくは0.25~4.0質量%、またより好ましくは0.30~3.0質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の総質量に対するものである。
【0071】
好ましくは、構成成分(a5)は、成分(A)の少なくとも1つの構成成分(a2)の総質量に対して0.02~5.0質量%の範囲の量で存在し、より好ましくは0.04~4.0質量%、さらにより好ましくは0.1~3.5質量%の範囲の量で存在し、これらは各場合とも成分(A)の少なくとも1つの構成成分(a2)の総質量に対するものである。
【0072】
構成成分(a5)として使用するためのフュームドシリカは、例えば、WO2014/086530A1に開示されている。
【0073】
好ましくは、構成成分(a5)として使用するためのヒュームドシリカは、鎖状構造を有し、二酸化ケイ素一次粒子のアグロメレート及び/又はアグリゲートである。好ましくは、構成成分(a5)は、焼成ニックフュームドシリカである。構成成分(a5)は、特に、ケイ素ハロゲン化合物の火炎加水分解によって得ることができる。この種のヒュームドシリカは、例えば、Evonik Degussa社からAerosil(登録商標)の名称で市販されている。
【0074】
当業者が認識しているように、火炎加水分解中の好適な反応条件及び一次二酸化ケイ素粒子の表面変性を介して、パラメータを変化させることが可能であり、ひいては、制御された方法でヒュームドシリカ粒子の特性も変化させることが可能である。例えば、二酸化ケイ素粒子の一次粒子径はその一端を担っているが、これは一般に一次粒子径が大きくなるにつれてアグロメレートの形成傾向が低下するためである。さらに、もちろん、一次粒子径が小さいということは、比表面積が大きいことを意味する。さらに、特に親水性シリカと疎水性シリカとは区別される。親水性シリカ又は疎水性シリカのどちらか、或いは親水性シリカと疎水性シリカとの混合物を使用することも可能である。
【0075】
火炎加水分解によって製造されるヒュームドシリカは、その表面に種々の官能基、特にシラノール基及び/又はシロキサン基を有する。従ってこれはそのままでは親水性であり、その表面をさらに変性せずに使用することができる。
【0076】
表面がモノマー及び/又はオリゴマー化合物で変性されたフュームドシリカを使用することも可能である。表面変性は、典型的には、例えばシラノール基などのシリカ表面に位置する基を、モノマー及び/又はオリゴマー化合物に付着させることによって達成される。従って、これらのモノマー又はオリゴマー化合物は、粒子表面に位置する基に対して親和性を有する少なくとも1つの基を含有する。付着は、例えば、共有結合、イオン結合、及び/又は物理吸着によって達成される。シリカ粒子表面への付着に必要とされないモノマー及び/又はオリゴマー化合物の部分は、好ましくは、全体的又は部分的に、粒子を取り囲む媒体中に突出する。表面変性に使用されるモノマー及び/又はオリゴマー化合物は、シリカ粒子表面への付着に必要な基に加えて、さらなる官能基を含有していてもよく、これらのさらなる官能基は、例えば、構成成分(a2)と反応することができる。この種の表面変性は、例えば、少なくとも1つの追加の官能基をさらに有する加水分解性シランをシリカ粒子に添加することにより達成される。
【0077】
粒子の表面変性に好適な加水分解性シランの例には、構成成分(a2)に対して及び/又は(b2)に対して反応性の基として、グリシジル基、アミノ基、ヒドロキシル基及び/又はメルカプト基を含むシランが挙げられる。
【0078】
しかしながら、表面変性のために、本発明によれば、シラノール基に対して反応性である基と同様に1つ以上の疎水性基を有し、従ってシリカ粒子の疎水化に関連し、従って疎水性シリカを製造するのに役立つモノマー及び/又はオリゴマー化合物を使用することが可能である。シリカの変性には、1~50個の炭素原子、より詳細には1~10個の炭素原子を有する少なくとも1つのアルキル基を有し、少なくとも1つの加水分解性基を有し、及び/又は少なくとも1つのヒドロキシル基及び/又はアミノ基を有する有機官能性ケイ素化合物を使用することが好ましい。このような化合物の例としては、アルキルアルコキシシラン、より詳細にはジアルキルジアルコキシシラン及びアルキルトリアルコキシシラン、アルキルハロシラン、より詳細にはアルキルクロロシラン、好ましくはトリアルキルクロロシラン及びジアルキルジクロロシラン、アルキルポリシロキサン、ジアルキルポリシロキサン及びアルキルジシラザンなどが挙げられる。特にオクタメチルシクロテトラシロキサンを使用してよい。
【0079】
疎水性シリカとして、ここでは、モノメチルシリル基及び/又はジメチルシリル基及び/又はトリメチルシリル基が表面に固定された、シラン化され、焼成により調製されたシリカを使用することが特に好ましい。これらは、例えば、焼成により調製された二酸化ケイ素をトリメチルクロロシラン及び/又はジメチルジクロロシラン及び/又はモノメチルトリクロロシランで表面変性することにより調製することができる。
【0080】
好ましくは、構成成分(a5)は、<50nm、より好ましくは<30nm、さらにより好ましくは<20nm、特に<15nm、最も好ましくは<10nmの平均一次粒子径を有する。
【0081】
好ましくは、構成成分(a5)は、100m2/gを超える内部BET表面積を有し、より詳細には200m2/gを超える内部BET表面積を有する。親水性フュームドシリカの場合、内部BET表面積は好ましくは>300m2/gである。
【0082】
親水性シリカの例として、市販されている慣用の既知の製品が挙げられ、例えばDegussa Evonik社からの商品名Aerosil(登録商標)380、Aerosil(登録商標)300、Aerosil(登録商標)200、Aerosil(登録商標)150及びAerosil(登録商標)130、又はWacker社の種類名T40が挙げられ、特にAerosil(登録商標)380が使用される。
【0083】
疎水性シリカの例として、販売されている慣用の既知の製品が挙げられ、例えばDegussa Evonik社からの商品名Aerosil(登録商標)、より詳細にはAerosil(登録商標)R816、R711、8200、R106、R972、R974、R805、R812、又はR812S、又はWacker社の商品名又は種類名HDK、より詳細にはHDK H15、H18、H20、H30、又は2000が挙げられ、特にAerosil(登録商標)R106及び/又はR812が使用される。
【0084】
構成成分(a5)は、好ましくは、少なくとも1つのポリマー、例えば少なくとも1つの構成成分(a2)の少なくとも一部及び/又は少なくとも1つの任意の構成成分(a6)の少なくとも一部の分散体及び/又は溶液を、少なくとも1つの有機溶媒、例えば少なくとも1つの有機溶媒(a1)中で使用することにより、成分(A)に組み込まれる。
【0085】
構成成分(a5)としての疎水性シリカの使用は、特に、ポリイソシアネート及び/又はジイソシアネート及びメトキシプロピルアミンの付加物である尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)と組み合わせて使用する場合に、特に好ましい。
【0086】
成分(A)中の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比は、1.0:0.1~1.0:<5.0の範囲である。
【0087】
好ましくは、成分(A)内の構成成分(a4)と(a5)との互いに対する相対質量比は、1.0:0.2~1.0:<5.0、より好ましくは1.0:0.4~1.0:<5.0、さらにより好ましくは1.0:0.5~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:0.7~1.0:<5.0、さらにより好ましくは1.0:0.9~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:1.0~1.0:<5.0、なおより好ましくは1.0:1.1~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:1.5~1.0:<5.0、さらにより好ましくは1.0:1.7~1.0:<5.0、なおより好ましくは1.0:1.8~1.0:<5.0、またより好ましくは1.0:2.0~1.0:<5.0、特に1.0:2.2~1.0:<5.0、最も好ましくは1.0:2.2~1.0:4.8又は1.0:2.2~1.0:4.5又は1.0:2.2~1.0:4.0又は1.0:2.2~1.0:3.8の範囲である。
【0088】
任意の構成成分(a6)
成分(A)は、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)の他に、構成成分(a6)として少なくとも1つのさらなるポリマーを含んでもよく、このポリマーはバインダーとしても機能し得、且つOH官能性ポリマー(a2)とは異なる。
【0089】
構成成分(a6)は好ましくは架橋性基を含み、この基は(a2)の場合のようにOH基であってもよいがそれらと異なってもよく、すなわち第一級アミノ基、第二級アミノ基、チオール基、カルボキシル基及びカルバメート基からなる群から選択することができる。好ましくは、任意に存在する構成成分(a6)は、官能性のヒドロキシル基(OH基)及び/又はカルバメート基、特定するとヒドロキシル基を有する。
【0090】
任意の構成成分(a6)は、例えばOH基を追加で含み得るカルバメート官能性(メタ)アクリルコポリマーであってよい。同様に、例えばポリエーテル、ポリウレタン、天然油をベースとするポリオール、例えばVertellus Specialties Inc.,Indianapolis,Ind.から商品名Polycin(登録商標)で入手可能なもの、例えばヒマシ油をベースとするポリオールを、構成成分(a6)として使用してよい。
【0091】
任意の構成成分(a7)
成分(A)は、好ましくは構成成分(b2)内に存在するシラン基の架橋のための、少なくとも1つの触媒(a7)を含んでよい。例として、亜鉛又はアルミニウムをベースとする、キレート配位子、例えばルイス酸又はチタネートとの金属錯体(例えばWO05/03340に記載されている)であるが、触媒を選択する際、触媒によって本発明のコーティング組成物の如何なる望ましくない黄変も確実に生じないこととするべきである。さらに、使用が既知である一部の触媒は、毒物学的理由からあまり望ましくない。
【0092】
従って触媒(a7)として、リン含有、より詳細にはリン含有窒素含有触媒を使用することが好ましい。この文脈において、2つ以上の異なる触媒(a7)の混合物を使用することも可能である。
【0093】
好適なリン含有触媒(a7)の例は、好ましくは、非環式ホスホン酸ジエステル、環式ホスホン酸ジエステル、非環式ジホスホン酸ジエステル、及び環式ジホスホン酸ジエステルからなる群から選択される、置換ホスホン酸ジエステル及びジホスホン酸ジエステルである。これらの種類の触媒は、例えば、独国特許出願第DE-A-102005045228に記載されている。
【0094】
しかし、より詳細には、好ましくは、非環式リン酸ジエステル及び環式リン酸ジエステル、より好ましくはリン酸モノエステル及びジエステルのアミン付加物からなる群から選択される、置換リン酸モノエステル及びリン酸ジエステルが使用される。
【0095】
触媒(a7)として特に非常に好ましく使用されるのは、対応するアミンブロックリン酸エステルであり、これらのうち、より詳細には、アミンブロックエチルヘキシルホスフェート及びアミンブロックフェニルホスフェート、非常に好ましくは、アミンブロックビス(2-エチルヘキシル)ホスフェートである。
【0096】
リン酸エステルをブロックするアミンの例は、特に、第三級アミンであり、例として、二環式アミン、例えば、ジアザビシクロオクタン(DABCO)、ジアザビシクロノネン(DBN)、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジメチルドデシルアミン又はトリエチルアミンなどが挙げられる。リン酸エステルのブロックに特に好ましいのは、硬化条件下で高い触媒の活性を確保する第三級アミンの使用である。
【0097】
或る特定のアミンブロックリン酸触媒は、市販もされている(例えば、King Industries社のNacureタイプ)。例えば、アミンブロックリン酸部分エステルをベースとする特に好適な触媒として、King Industries社のNacure(登録商標)4167が挙げられる。
【0098】
触媒は、好ましくは、本発明のコーティング組成物の総バインダー画分に対して0.01~20質量%の画分、より好ましくは0.1~10質量%の画分で使用される。より低い触媒活性は、対応してより多くの量を使用することによって、部分的に補うことができる。
【0099】
任意の構成成分(a8)
成分(A)は、少なくとも1つの樹脂(a8)を含んでよく、これは特に、前述の如何なる他の構成成分、例えば(a2)、(a6)及び(b2)とも異なる。構成成分(a8)として、例えば、メラミン及びメラミンホルムアルデヒド樹脂を含むアミノ樹脂及び/又はエポキシ樹脂を用いることが可能である。慣用及び既知のアミノ樹脂が考えられ、そのうちのいくつかのメチロール基及び/又はメトキシメチル基は、カルバメート基又はアロファネート基によって脱官能化されていてもよい。この種の架橋剤は、特許US-A-4710542及びEP-B-0245700に記載されている。
【0100】
任意の構成成分(a9)
成分(A)は、所望の用途に応じて、1つ以上の通常使用される添加剤(a9)を含有してよい。例えば、反応性希釈剤、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、可塑剤、フリーラジカル重合用の開始剤、接着促進剤、流動調整剤、膜形成補助剤、難燃剤、腐食抑制剤、乾燥剤、殺生物剤、増粘剤及び/又はマット剤からなる群から選択される少なくとも1つの添加剤を含んでよい。それらは、既知且つ通例の割合で使用することができる。好ましくは、それらの含有率は、コーティング組成物の総質量に対して0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、特に好ましくは0.1~10.0質量%、最も好ましくは0.1~7.5質量%、特に0.1~5.0質量%、及び最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0101】
成分(B)
成分(B)は、少なくとも1つの構成成分(b1)及び少なくとも1つの構成成分(b2)を含むが、さらなる任意の構成成分(複数可)を含んでもよい。
【0102】
好ましくは、本発明によるコーティング系の成分(B)は、>40質量%、より好ましくは>45質量%、さらにより好ましくは>50質量%、なおより好ましくは>55質量%である総固形分含量を有し、これらは各場合とも成分(B)の総質量に対するものである。本発明によるコーティング系の成分(B)の総固形分含量は、好ましくは、45~100質量%、より好ましくは50~100質量%未満、さらにより好ましくは55~100質量%未満の範囲であり、これらは各場合とも成分(B)の総質量に対するものである。総固形分含量、換言すれば不揮発性画分は、以下に記載する方法に従って決定される。
【0103】
構成成分(b1)
構成成分(b1)は、少なくとも1つの有機溶媒である。このような有機溶媒の例には、構成成分(a1)との関連で既に上記で述べたものが含まれる。成分(B)は、複数の有機溶媒(b1)を含んでもよい。少なくとも1つの有機溶媒(b1)は、少なくとも1つの有機溶媒(a1)と同一であっても異なっていてもよい。複数の有機溶媒が(a1)及び/又は(b1)として使用される場合、(a1)及び(b1)は部分的に同一であり、部分的に異なっていてもよい。
【0104】
好ましくは、成分(B)中の構成成分(b1)の量は、5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、さらにより好ましくは15~35質量%の範囲であり、これらは各場合とも成分(B)の総質量に対するものである。
【0105】
構成成分(b2)
構成成分(b2)は、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)であり、これらのNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)に組み込まれる。
【0106】
構成成分(b2)の例は、例えば、WO2009/077181A1、WO2010/139375A1、WO2010/063332A1、WO2014/086530A1及びWO2014/086529A1に開示されている。
【0107】
好ましくは、構成成分(b2)は、式(I)
-NR-(X-SiR’’x(OR’)3-x) (I)、
の少なくとも1つの構造単位、
及び/又は、好ましくは及び、式(II)
-N(X-SiR’’x(OR’)3-x)n(X’-SiR’’y(OR’)3-y)m (II)、
の少なくとも1つの構造単位
を有し、
式中、
Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、このRaはアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、
各R’は、互いに独立して水素、アルキル又はシクロアルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、各R’は好ましくはエチル及び/又はメチルであり、
各X、X’は、互いに独立して1~20個の炭素原子を有する直鎖及び/又は分岐アルキレン又はシクロアルキレン基であり、好ましくは各X、X’は1~4個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
各R’’は、互いに独立してアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、炭素鎖は隣接していない酸素基、硫黄基又はNRa基により中断されていてもよく、各R’’は好ましくはアルキル基であり、より好ましくは1~6個のC原子を有し、
nは、パラメータ0~2であり、mは、パラメータ0~2であり、m+nは2であり、及びx、yはパラメータ0~2である。
【0108】
それぞれの好ましいアルコキシ基(OR’)は同一であっても異なっていても良いが、基の構造にとって決定的に重要なことは、それらが加水分解性シラン基の反応性に影響を与える程度である。好ましくは、R’はアルキル基であり、より詳細には1~6個の炭素原子を有する。シラン基の反応性を増加させる、すなわち、良好な脱離基に相当する基R’が特に好ましい。従って、メトキシ基がエトキシ基よりも好ましく、また、エトキシ基はプロポキシ基より好ましい。従って、特に好ましいのは、R’=エチル及び/又はメチルであり、より詳細にはメチルである。有機官能性シランの反応性はまた、シラン官能基と、変性される構成成分との反応の役割を担う有機官能基との間のスペーサーX、X’の長さによって、さらに相当に影響され得る。挙げることができるその例には、Wacker社から入手可能な、Si原子と官能基との間にプロピレン基(「ガンマ」シランの場合に存在する)ではなくメチレン基が存在する「アルファ」シランが含まれる。
【0109】
構成成分(b2)において、好ましくは、10~80モル%の間、好ましくは15~70モル%の間、より好ましくは20~50モル%の間、及びなおより好ましくは25~40モル%の間の元から存在するイソシアネート基が、少なくとも1つのシランと反応していて構造単位(I)及び/又は(II)を形成し、より好ましくは構造単位(I)及び(II)を形成する。
【0110】
さらに、構造単位(I)の総量が3~90モル%の間、より好ましくは5~70モル%の間(各場合とも構造単位(I)及び(II)の全体に対するものである)であり、そして構造単位(II)の総量が97~10モル%の間、より好ましくは95~30モル%の間(各場合とも構造単位(I)及び(II)の全体に対するものである)である、構成成分(b2)が好ましい。
【0111】
平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)は、少なくとも1つのシランとの反応前に、構成成分(b2)の親構造として機能し、少なくとも1つのシランとの反応前のこの段階で、ジ-及び/又はポリイソシアネートを表す。好ましくは、前記少なくとも1つのジ-及び/又はポリイソシアネートは、芳香族、脂肪族、環状脂肪族及び/又は複素環式ジ-及び/又はポリイソシアネート、特に脂肪族アシリック(acylic)である。
【0112】
少なくとも1つの有機構成成分(b2)は、好ましくは、環状脂肪族親構造及び/又は三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によって環状脂肪族ポリイソシアネートから誘導される親構造を有し、構成成分(b2)は、式(I)及び/又は(II)の少なくとも1つの構造単位を有する。代替的又は追加的に、少なくとも1つの有機構成成分(b2)は、好ましくは、非環式脂肪族親構造及び/又は三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によって非環式脂肪族ポリイソシアネートから誘導される親構造を有し、構成成分(b2)は、式(I)及び/又は(II)の少なくとも1つの構造単位を有する。
【0113】
最も好ましくは、少なくとも1つの有機構成成分(b2)は、非環式脂肪族親構造及び/又は三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によって非環式脂肪族ポリイソシアネートから誘導される親構造を有し、構成成分(b2)は、式(I)及び/又は(II)の少なくとも1つの構造単位を有する。三量体、すなわちイソシアヌレートが特に好ましい。
【0114】
親構造の役割を果たす非環式脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくは、それ自体が既知である置換された又は非置換の脂肪族ポリイソシアネートである。例として、テトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサン1,6-ジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、ドデカン1,12-ジイソシアネート、及び上記のポリイソシアネートの混合物が挙げられる。
【0115】
さらに好ましいポリイソシアネート親構造は、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によりそのような非環式脂肪族ポリイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート、より詳細には、ビウレットダイマー及び/又はアロファネートダイマー及び/又はイソシアヌレートトリマーである。ポリイソシアネート親構造は、ポリオールの、化学量論的に過剰量の上記の非環式脂肪族ポリイソシアネートとの反応によって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーでもよい。この種類のポリイソシアネートプレポリマーは、例えば、US-A-4,598,131に記載されている。特に好ましいポリイソシアネート親構造は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はそのビウレットダイマー及び/又はアロファネートダイマー及び/又はイソシアヌレートトリマー及び/又はそのウレトジオン、さらには上述のポリイソシアネート親構造の混合物である。特に好ましいポリイソシアネート親構造は、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はそのイソシアヌレートトリマー(任意にそのウレトジオンも伴う)である。
【0116】
親構造として用いられる環状脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくはそれ自体既知の置換された又は非置換の環状脂肪族ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロブタン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばBayer AG社のDesmodur(登録商標)W)及び前述のポリイソシアネートの混合物である。追加的に好ましいポリイソシアネート親構造は、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成、より詳細にはビウレット二量化及び/又はアロファネート二量化及び/又はイソシアヌレート三量化によって、このような環状脂肪族ポリイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである。ポリイソシアネート親構造は、ポリオールの、化学量論的に過剰量の上記の環状脂肪族ポリイソシアネートとの反応によって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーでもよい。このようなポリイソシアネートプレポリマーは、例えばUS-A-4,598,131に記載されている。特に好ましい環状脂肪族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート及び4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート及び/又はそれらのビウレットダイマー及び/又はそのアロファネートダイマー及び/又はそのイソシアヌレートトリマーである。
【0117】
(b2)が(B)成分に組み込まれる前に、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)との反応に使用される少なくとも1つのシランは、好ましくは、
式(Ia)
H-NR-(X-SiR’’x(OR’)3-x) (Ia)
の少なくとも1つの化合物
及び/又は、式(IIa)
HN(X-SiR’’x(OR’)3-x)n(X’-SiR’’y(OR’)3-y)m (IIa)
の少なくとも1つの化合物
であり、
式中、置換基は、好ましい定義を含む上述の定義を有する。
【0118】
好ましい化合物(Ia)は、アミノアルキルトリアルコキシシラン、例えば、好ましくは、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシランである。特に好ましい化合物(Ia)は、N-(2-(トリメトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アルキルアミン、N-(4-(トリメトキシシリル)ブチル)アルキルアミン、N-(2-(トリエトキシシリル)エチル)アルキルアミン、N-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)アルキルアミン及び/又はN-(4-(トリエトキシシリル)ブチル)アルキルアミンである。特に好ましいのは、N-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)ブチルアミンである。これらの種類のアミノシランは、例えば、DEGUSSA社より商標名DYNASYLAN(登録商標)の下で入手可能であり、又はOSI社より商標名Silquest(登録商標)の下で入手可能である。
【0119】
好ましい化合物(IIa)は、ビス(2-エチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミン、ビス(4-ブチルトリメトキシシリル)アミン、ビス(2-エチルトリエトキシシリル)アミン、ビス(3-プロピルトリエトキシシリル)アミン及び/又はビス(4-ブチルトリエトキシシリル)アミンである。特に好ましいのは、ビス(3-プロピルトリメトキシシリル)アミンである。これらの種類のアミノシランは、例えば、DEGUSSA社より商標名DYNASYLAN(登録商標)の下で入手可能であり、又はOSI社より商標名Silquest(登録商標)の下で入手可能である。
【0120】
任意の構成成分(b3)
成分(B)は、少なくとも1つのさらなる構成成分(b3)を含んでもよい。構成成分(b3)は、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分であり、ただし、NCO基のいずれも、如何なるシランとも反応していない。よって平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b3)は、好ましくは構成成分(b2)とは異なり、好ましくは如何なるシラン変性NCO基も含有しない。少なくとも1つの有機構成成分(b3)は、好ましくは、環状脂肪族親構造及び/又は三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成によって環状脂肪族ポリイソシアネートから誘導される親構造を有する。三量体、すなわちIPDIのイソシアヌレートが特に好ましい。
【0121】
構成成分(b3)の親構造として用いられる環状脂肪族ポリイソシアネートは、好ましくはそれ自体既知の置換された又は非置換の環状脂肪族ポリイソシアネートである。好ましいポリイソシアネートの例は、イソホロンジイソシアネート、シクロブタン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4-ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,6-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,3-ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン1,4-ジイソシアネート、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート、4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(例えばBayer AG社のDesmodur(登録商標)W)及び前述のポリイソシアネートの混合物である。追加的に好ましいポリイソシアネート親構造は、三量化、二量化、ウレタン形成、ビウレット形成、ウレトジオン形成及び/又はアロファネート形成、より詳細にはビウレット二量化及び/又はアロファネート二量化及び/又はイソシアヌレート三量化によって、このような環状脂肪族ポリイソシアネートから誘導されたポリイソシアネートである。ポリイソシアネート親構造は、ポリオールの、化学量論的に過剰量の上記の環状脂肪族ポリイソシアネートとの反応によって得られる、ウレタン構造単位を有するポリイソシアネートプレポリマーでもよい。このようなポリイソシアネートプレポリマーは、例えばUS-A-4,598,131に記載されている。特に好ましい環状脂肪族ポリイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート及び4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート及び/又はそれらのビウレットダイマー及び/又はそのアロファネートダイマー及び/又はそのイソシアヌレートトリマーである。
【0122】
任意の成分(C)
成分(C)は、少なくとも1つの有機溶媒(c1)を含み、そして好ましくは少なくとも1つの有機溶媒(c1)からなる。このような有機溶媒の例としては、本明細書中、構成成分(a1)及び(b1)に関連して既に述べたものが挙げられる。成分(C)は、複数の有機溶媒(c1)を含んでよい。少なくとも1つの有機溶媒(c1)は、少なくとも1つの有機溶媒(a1)及び/又は(b1)と同一であっても異なっていてもよい。複数の有機溶媒が(a1)及び/又は(b1)及び/又は(c1)として使用される場合、(a1)及び/又は(b1)及び/又は(c1)は、部分的に同一であり且つ部分的に異なっていてよい。
【0123】
本発明のコーティング組成物
本発明のさらなる主題は、コーティング系の成分(A)及び(B)及び任意に(C)を互いに混合することにより得ることができるコーティング組成物であり、これは溶媒系クリアコート組成物である。
【0124】
本明細書において、本発明のコーティング系及びその好ましい実施形態に関連して上述したすべての好ましい実施形態は、本発明のコーティング組成物の好ましい実施形態でもある。
【0125】
コーティング組成物の調製は、通例で既知の調製及び混合方法、及び混合単位を用いて、又は従来の溶解機及び/又は撹拌機を用いて、行うことができる。
【0126】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、好ましくは構成成分(a1)及び(b1)、及び任意に(c1)の存在により、溶媒系、すなわち有機溶媒(複数可)をベースとする、コーティング組成物である。本発明のコーティング組成物に関連する「溶媒系」という用語は、好ましくは本発明の目的では、溶媒及び/又は希釈剤としての前述の有機溶媒(複数可)が、存在するあらゆる溶媒及び/又は希釈剤の主構成成分(複数可)として、本発明のコーティング組成物の総質量に対して好ましくは少なくとも35質量%の量で存在することを意味すると理解される。よって好ましくは、本発明のコーティング組成物は、水系、すなわち水性コーティング組成物ではない。
【0127】
本発明のコーティング組成物は、好ましくは、多くとも65質量%、より好ましくは多くとも60質量%、さらにより好ましくは多くとも55質量%、なおより好ましくは多くとも50質量%、またより好ましくは多くとも48質量%、特に多くとも45質量%又は多くとも40質量%、又は多くとも35質量%又は多くとも30質量%の有機溶媒(複数可)画分を含み、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。当業者に既知のあらゆる従来の有機溶媒を、有機溶媒として、すなわち構成成分(a1)及び(b1)及び任意に(c1)として使用することができる。「有機溶媒」という用語は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/ECから当業者に公知である。使用可能な有機溶媒の例は、構成成分(a1)及び(b1)及びc1)に関連して本明細書中に前述している。
【0128】
好ましくは、本発明のコーティング材料組成物は、>35質量%、より好ましくは>40質量%、さらにより好ましくは>45質量%、なおより好ましくは>50質量%である総固形分含量を有し、これらは各場合ともコーティング材料組成物の総質量に対するものである。
【0129】
本発明のコーティング組成物の総固形分含量は、好ましくは>35~75質量%、より好ましくは>40~70質量%、さらにより好ましくは>45~65質量%、なおより好ましくは>48~60質量%の範囲であり、これらは各場合ともコーティング組成物の総質量に対するものである。総固形分含量、換言すれば不揮発性画分は、以下に記載する方法に従って決定される。
【0130】
本発明のクリアコート組成物は、技術的及び審美的に特に要求の厳しい自動車OEM仕上げ、及び自動車再仕上げの分野で特に使用される。
【0131】
「クリアーコート」、「クリアコート」又は「クリアーコーティング」という用語は当業者に知られており、好ましくは、基材に適用される多層コーティング構造の実質的に透明な又は透明な最外層を表す。
【0132】
好ましくは、本発明のコーティング組成物は、成分(A)及び(B)を、3:1~1:3の範囲の質量比(成分(A)/成分(B))で混合することにより得ることができる。より好ましくは、混合は、2.5:1~1:2.5の範囲の質量比、さらにより好ましくは2:1~1:1.2の範囲の質量比で、特に、1.5:1~1:1.2の範囲の質量比、最も好ましくは1.2:1~1:1.2の範囲の質量比で行われる。
【0133】
好ましくは、本発明のクリアコート組成物は、その総質量に対して、5質量%を超える顔料及び/又はフィラーを含まない。そうでなければ、組成物から製造されるクリアコートコーティング層の透明性又は所望の明瞭性が影響を受ける可能性があるためである。より好ましくは、本発明のクリアコート組成物は、如何なる顔料及び/又はフィラーも、特に如何なる効果顔料も含まない。
【0134】
特に、本発明のコーティング組成物は、以下の構成成分を各場合とも組成物の総質量に対して含み、組成物中に存在するすべての構成成分を加算した合計が100質量%となる:
10~70質量%の範囲の量の、少なくとも1つの有機溶媒(a1)及び少なくとも1つの有機溶媒(b1)、
10~60質量%の範囲の量の、少なくとも1つのOH官能性ポリマー(a2)、
0.005~1.25質量%の範囲の量の、少なくとも1つのエーテルセグメントを含有する少なくとも1つのポリシロキサン(a3)、
0.05~5.0質量%の範囲の量の、少なくとも1つの尿素部分(単数又は複数)含有構成成分(a4)、
0.05~5.0質量%の範囲の量の、少なくとも1種類のヒュームドシリカ(a5)、及び
7.5~50.0質量%の範囲の量の、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b2)であって、これらのNCO基の少なくとも一部が少なくとも1つのシランと反応した後に構成成分(b2)が成分(B)へ組み込まれる、有機構成成分(b2)、
任意にさらに、
1.0~30.0質量%、好ましくは1.2~25.0質量%、より好ましくは1.4~20.0質量%、さらにより好ましくは1.6~15.0質量%の範囲の量の、平均して2つ以上のNCO基を有する少なくとも1つの有機構成成分(b3)であって、構成成分(b3)が成分(B)に組み込まれる前にNCO基のいずれも如何なるシランとも反応していない有機構成成分(b3)、及び/又は
0.05~5.0質量%の範囲の量の少なくとも1つの触媒(a7)、及び/又は
0.05~5.0質量%の範囲の量の少なくとも1つ、好ましくは複数の添加剤(a9)。
【0135】
本発明の方法
本発明のさらなる主題は、基材をコーティングする方法であって、任意に予め塗装された基材に、本発明のクリアコート組成物を好ましくはスプレー塗布を介して適用し、任意に予め塗装された基材上に少なくとも1つのコーティング膜を形成する少なくとも1つの工程を含み、そして任意に、少なくとも1つのコーティング膜を硬化させて基材上に少なくとも1つの硬化したコーティング層を得る、少なくとも1つのさらなる工程を含む。
【0136】
本発明のコーティング系及び組成物に関連した本明細書中の上記のあらゆる好ましい実施形態は、前述した本発明の方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0137】
好ましくは、本発明の方法は、任意に予め塗装された基材上に多層コーティング系を調製する方法であり、少なくとも工程(1)、(3)、及び(4)、及び任意に(2)、すなわち
(1) 任意に予め塗装された基材に第1のベースコート組成物を適用し、そして任意に予め塗装された基材上に第1のコーティング膜を形成する工程、
(2) 工程(1)の後に得られた基材上に存在する第1のコーティング膜に、任意に第2のベースコート組成物を適用した後、第1のコーティング膜を硬化させて第1のコーティング膜に隣接する第2のコーティング膜を形成する工程、
(3) 任意の工程(2)を実施しない場合は、工程(1)の後に得られた基材上に存在する第1のコーティング膜に第3のコーティング組成物を適用した後、第1のコーティング膜を硬化させて第1のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成するか、又は任意の工程(2)を実施する場合は、工程(2)の後に得られた基材上に存在する第2のコーティング膜に第3のコーティング組成物を適用した後、第2のコーティング膜を硬化させて第2のコーティング膜に隣接する第3のコーティング膜を形成する工程であって、
その第3のコーティング組成物が、本発明のクリアコート組成物である、工程、及び
(4) 第1のコーティング膜及び第3のコーティング膜、及び任意に第2のコーティング膜を一緒に硬化させ、硬化した第3のコーティング膜を、形成された多層コーティング系の最外層として、硬化した第1のコーティング層、任意に第2のコーティング層及び第3のコーティング層を得る工程
を含む。
【0138】
好ましくは、少なくとも工程(3)、より好ましくは工程(1)及び任意の工程(2)も、スプレー塗布を介して行う。
【0139】
工程(1)、任意に工程(2)及び工程(3)を行うことにより、任意に予め塗装された基材上に形成された第1の、任意に第2の、及び第3のコーティング膜は、この段階で各々未硬化のコーティング膜である。そのため、第1の、任意に第2の、及び第3のコーティング組成物のいずれもが、ウェット・オン・ウェットで適用される。
【0140】
本発明の方法は、自動車車両ボディ又はその部品、及びそれぞれの金属基材のコーティングに特に好適であるが、ポリマー基材などのプラスチック基材にも好適である。従って好ましい基材は、自動車車両ボディ又はその部品である。
【0141】
本発明によって使用される金属基材として好適なのは、慣用的に使用され且つ当業者に既知のあらゆる基材である。本発明によって使用される基材は、好ましくは金属基材であり、より好ましくは鋼、好ましくは裸鋼、冷延鋼(CRS)、熱延鋼、亜鉛めっき鋼、例えば溶融亜鉛めっき鋼(HDG)、合金亜鉛めっき鋼(例えば、Galvalume、Galvannealed又はGalfan)及びアルミめっき鋼からなる群より選択される鋼、アルミニウム及びマグネシウム、及びZn/Mg合金及びZn/Ni合金からなる群より選択される。特に好適な基材は、製造用自動車の車両ボディの一部又は完全なボディである。
【0142】
好ましくは、熱可塑性ポリマーをプラスチック基材として使用する。好適なポリマーはポリ(メタ)アクリレートであり、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニリデンフルオリド、ポリビニルクロリド、ポリカーボネート及びポリビニルアセテートを含むポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステルコポリマー)及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、TPUを含むポリウレタン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物が含まれる。ポリカーボネート及びポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0143】
本発明によって使用される基材は、好ましくは、少なくとも1つの金属ホスフェート、例えば亜鉛ホスフェートで前処理された、及び/又は少なくとも1つのオキサレートで前処理された金属基材である。リン酸塩処理によるこの種の前処理は、通常、基材が洗浄された後、且つ基材が電着塗装コーティングされる前に行われ、特に、自動車産業で慣用的に行われている前処理工程である。
【0144】
上記で概説したように、使用される基材は、予め塗装された基材、すなわち、少なくとも1つの硬化したコーティング膜を有する基材であってよい。工程(1)で使用される基材は、硬化した電着塗装コーティング層で予め塗装することができる。基材には、例えば、少なくとも1つの硬化したプライマーコーティング膜も少なくとも1つの追加の予塗装として提供することができる。用語「プライマー」は、当業者に既知である。プライマーは、典型的には、硬化した電着塗装コーティング層が基材に提供された後に適用される。硬化したプライマーコーティング膜も存在する場合、硬化した電着塗装コーティング膜は、硬化したプライマーコーティング膜の下に好ましくは隣接して存在する。
【0145】
好ましくは、本発明の方法は、工程(1)の後且つ任意の工程(2)の前に行われる工程(1a)をさらに含む。前記工程(1a)において、工程(1)の後に得られた第1のコーティング膜を、好ましくは1~20分の期間、より好ましくは2~15分の期間、特に5~10分の期間フラッシュオフした後、任意の工程(2)において第2のコーティング材料組成物を適用する。好ましくは、工程(1a)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18~30℃の範囲の温度で行う。
【0146】
好ましくは、本発明の方法は、工程(2)の後且つ工程(3)の前に行われる工程(2a)をさらに含む。前記工程(2a)において、工程(2)の後に得られた第2のコーティング膜を、好ましくは1~20分の期間、より好ましくは2~15分の期間、特に5~10分の期間フラッシュオフした後、工程(3)において第3のコーティング材料組成物を適用する。好ましくは、工程(2a)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18~30℃の範囲の温度で行う。
【0147】
好ましくは、本発明の方法は、工程(3)の後且つ工程(4)の前に行われる工程(3a)をさらに含む。前記工程(3a)において、工程(3)の後に得られた第3のコーティング膜を、好ましくは1~20分の期間、より好ましくは2~15分の期間、特に5~10分の期間フラッシュオフした後、硬化工程(4)を行う。好ましくは、工程(3a)は、40℃を超えない温度で、より好ましくは18~30℃の範囲の温度で行う。
【0148】
本発明の意味における「フラッシュオフ」という用語は、好ましくは乾燥を意味し、これは有機溶媒の少なくとも一部及び/又は一部の量がコーティング膜から蒸発し、その後次のコーティング組成物が適用される及び/又は硬化するものである。フラッシュオフによる硬化は行われない。
【0149】
本発明の方法の工程(4)において、第1及び第3のコーティング膜、及び任意に第2のコーティング膜も、一緒に硬化させる、すなわち一緒に同時に硬化させる。硬化した第3のコーティング膜は、工程(4)の後に得られる形成された多層コーティング系の最外層を表す。
【0150】
得られた各硬化コーティング膜は、コーティング層を表す。よって工程(4)の実施後、第1の及び第3の、及び任意に第2のコーティング層が、任意に予め塗装された基材上に形成され、第3の層は、形成された多層コーティング系の最外層である。
【0151】
好ましくは、工程(4)は、80℃~180℃の範囲、より好ましくは100℃170℃の範囲、さらにより好ましくは120℃~160℃の範囲、なおより好ましくは130℃~150℃の範囲の温度で、各場合とも5~45分の期間、好ましくは10~40分の期間、特に12.5~35分の期間、最も好ましくは15~30分の期間行う。
【0152】
本発明の塗装された基材
本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって得ることができる、塗装された基材である。
【0153】
本発明のコーティング系、組成物及び方法に関連する上記のあらゆる好ましい実施形態は、前述の本発明の塗装された基材に関する好ましい実施形態でもある。
【0154】
方法
1. 不揮発性画分
不揮発性画分(固形画分、固体含有量)は、DIN EN ISO3251:2018-07に準拠し、140℃で60分間測定した。
【0155】
2. 湿気への暴露後の色値L及び色値差dL
塗装された基材の色価Lは、硬化を含むその調製後にDIN EN ISO11664-4:2012-06に準拠して判定する。塗装された基材の色値Lは、ここでもDIN EN ISO11664-4:2012-06に準拠し、DIN EN ISO6270-2:2018-04に準拠して240時間の定気候試験(結露水試験)を行い、その後1時間の再生を行った後に判定する。測定された2つのL値の差はdL値として示す。色値Lは、X-Rite MA68IIを使用して45°の角度で測定する。
【実施例】
【0156】
以下の実施例は本発明をさらに説明するが、その範囲を限定するものとして解釈されるものではない。
【0157】
1. クリアコート組成物の調製
1.1 クリアコート組成物を調製するための、本発明により使用する「A」成分I1、I2、I3及び比較例に使用する「A」成分C1
【0158】
本発明により使用する「A」成分I1、I2、I3及び比較例に使用する「A」成分C1は、表1.1aに列挙する構成成分をこの順序で混合することにより調製した。「pbw」は質量部を意味する。
【0159】
【0160】
ポリ(メタ)アクリレート1は、約175mgKOH/gのOH価、約10mgKOH/gの酸価、-15℃の計算ガラス転移温度、及び約18000g/モルの質量平均分子量を有する(メタ)アクリルコポリマーを含有する有機溶媒(複数可)含有分散体であった。この分散体の固体含有量は65質量%であった。ポリ(メタ)アクリレート2は、約185mgKOH/gのOH価、約12mgKOH/gの酸価、+8℃の計算ガラス転移温度、及び約8000g/モルの質量平均分子量を有する(メタ)アクリルコポリマーを含有する有機溶媒(複数可)含有分散体であった。この分散体の固体含有量は65質量%であった。チキソトロピーペーストTP1は、市販の疎水性フュームドシリカであるAerosil(登録商標)R106を10.8質量部(pbw)、有機溶媒を47.2pbw、及びポリ(メタ)アクリレート1を42.0pbw含有していた。Setalux(登録商標)81753SS-55は、54~57質量%の固体含有量を有し、そして尿素化合物で変性された(メタ)アクリルポリオールを垂れ制御剤(SCA)として含有していた。(メタ)アクリルポリオールは、その総質量に対して4.2質量%のOH基を含有していた。ブチルアセテートは、有機溶媒としてSetalux(登録商標)81753SS-55中に存在した。Setalux(登録商標)81753SS-55中に存在するSCAの含有量は、製品の総質量に対して2.5質量%であった。光安定剤1は、市販の置換ベンゾトリアゾールであった。光安定剤2は市販のヒンダードアミン光安定剤(HALS)であった。ソルベントナフサ160/180は、市販の有機溶媒の混合物であった。添加剤1は、市販のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン表面添加剤であった。添加剤2は市販の消泡剤であった。触媒溶液は、アミン、リン酸エステル及び有機溶媒を含有していた。
【0161】
【0162】
1.2 クリアコート組成物を調製するための、さらなる本発明により使用する「A」成分I4~I8
【0163】
本発明により使用する「A」成分I4~I8は、表1.2aに列挙する構成成分をこの順序で混合することにより調製した。「pbw」は質量部を意味する。
【0164】
【0165】
チキソトロピーペーストTP2は、市販の親水性フュームドシリカであるAerosil(登録商標)380を8.7質量部(pbw)、有機溶媒を9.3pbw、及びポリ(メタ)アクリレート1を82.0pbw含有していた。Setalux(登録商標)91756VS-60は、58~61質量%の固体含有量を有し、そして尿素化合物で変性された(メタ)アクリルポリオールを垂れ制御剤(SCA)として含有していた。ブチルアセテートとソルベントナフサが、有機溶媒としてSetalux(登録商標)91756VS-60中に存在した。Setalux(登録商標)91756VS-60中に存在するSCAの含有量は、製品の総質量に対して3.3~4.0質量%の範囲であった。
【0166】
【0167】
1.3 クリアコート組成物を調製するための、さらなる本発明により使用する「A」成分I9~I13
【0168】
本発明により使用する「A」成分I9~I13は、表1.3aに列挙する構成成分をこの順序で混合することにより調製した。「pbw」は質量部を意味する。
【0169】
【0170】
【0171】
1.4 クリアコート組成物を調製するための架橋剤成分(「B」成分B1)の調製
【0172】
本発明により使用する「B」成分B1は、後述するように調製した。
【0173】
反応容器に34.00質量部のヘキサメチル1,6-ジイソシアネート(HDI)トリマー(Desmodur(登録商標)N3300)及び36.60質量部のブチルアセテートを導入した。還流冷却、窒素ブランケット及び撹拌を行いながら0.90質量部のN-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]ブチルアミン(Dynasylan(登録商標)1189))及び20.00質量部のビス[3-トリメトキシシリルプロピル]アミン(Dynasylan(登録商標)1124)の混合物を、50~60℃の温度を超えないような速度で滴下添加した。反応混合物は、滴定によって決定されたNCO含有量が理論的計算値のNCO含有量に達するまで撹拌した。この手順により、有機構成成分(b2)を調製した。次に、8.50質量部のイソホロンジイソシアネート(IPDI)トリマー(Desmodur(登録商標)Z4470、ソルベントナフサ中固体含有量70質量%)を添加した。IPDIトリマーは、平均して2つ以上のNCO基を有する有機構成成分(b3)を表し、どのNCO基もシランとは反応していなかった。得られた混合物は、5.9質量%のNCO含量及び60質量%の固体含有量を有していた。このようにして調製したポリイソシアネート混合物中には、(HDI及びIPDI中に元から存在するすべてのNCO基に対して)合計で30モル%のあらゆるNCO基がシラン化された形態で存在した。この混合物をそのまま「B」成分B1として使用した。
【0174】
1.5 クリアコート組成物の調製
【0175】
「A」成分C1、I1~I4、I6、I10及びI13のそれぞれを、架橋剤「B」成分B1と1:1の質量比で混合し、得られた組成物を約80mPasの噴霧可能な粘度に調整した。得られた組成物の総固体含有量は53~55質量%の範囲であった。このようにして、組成物C1B1、I1B1、I2B1、I3B1、I4B1、I6B1、I10B1及びI13B1が得られた。
【0176】
2. 多層コーティング系の調製
クリアコート組成物を利用して得られる多層コーティング系
【0177】
市販の製品Gardobond(登録商標)26S 6800 OCで前処理したスチールパネルを、市販の電着塗装コーティング組成物(Cathoguard(登録商標)800)を含有する浴に浸漬した。次いで、塗装された基材を175℃で15分間焼き付けた(乾燥膜厚:20μm)。続いて、異なる2種類の水性ベースコート組成物を、硬化した電着塗装被覆、すなわち濃灰色ベースコート1及び黒色ベースコート2にウェット・オン・ウェットでスプレー塗布した。2つのベースコートへの塗布の間、23℃のフラッシュオフ期間を2分間行った。2つのベースコートは、第1のベースコートの乾燥膜厚が18~20μm、第2のベースコートの乾燥膜厚が12~14μmになるように塗布した。第2のベースコートの塗布後、得られたベースコートを70℃で5分間乾燥させた。次に、クリアコート組成物C1B1を、クリアコート層の乾燥膜厚が45~50μmとなるように塗布した。その後、すべてのコートを140℃で20分間硬化させた。
【0178】
クリアコート組成物C1B1ではなく、クリアコート組成物I1B1、I2B1、I3B1、I4B1、I6B1、I10B1及びI13B1の各々を使用したことを除き、同様の手順をさらなる塗装されたスチールパネルに対して行った。
【0179】
3. 多層コーティング系で塗装された基材の特性
【0180】
多層コーティング系で塗装された多数の基材について、すなわち、クリアコート組成物C1B1、I1B1、I2B1、I3B1、I4B1、I6B1、I10B1及びI13B1に由来するクリアコート層を有する基材について、塗装された基材を3日間エージングした後に、「方法」のセクションに開示の方法に従って色値Lを判定した。次いで、塗装された基材を、DIN EN ISO6270-2:2018-04に準拠して240時間の定気候試験(結露水試験)に供した。再生の1時間後、塗装された基材の色値Lを再度測定した。各塗装された基材について、結露水試験の実施前と実施後に測定した色値の差を、以下にdL値として示す。結果を表2にまとめる。dL値が小さいほど、望ましくない白化の発生が少ない。
【0181】
測定されたdL値を以下の等級システムによって分類した:
0~0.2の範囲のdL = 1(優良)
>0.2~0.5の範囲のdL = 2(良好)
>0.5~0.6の範囲のdL = 3(許容範囲内)
>0.6のdL = 4(不十分)
【0182】
【国際調査報告】