(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】棒状のワークの加熱装置
(51)【国際特許分類】
F27B 9/36 20060101AFI20240312BHJP
H05B 6/10 20060101ALI20240312BHJP
F27B 9/02 20060101ALI20240312BHJP
F27D 11/06 20060101ALI20240312BHJP
F27D 7/04 20060101ALI20240312BHJP
F27D 11/02 20060101ALI20240312BHJP
F27D 7/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
F27B9/36
H05B6/10 371
F27B9/02
F27D11/06 Z
F27D7/04
F27D11/02 A
F27D7/02 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559018
(86)(22)【出願日】2022-02-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2022053806
(87)【国際公開番号】W WO2022199948
(87)【国際公開日】2022-09-29
(31)【優先権主張番号】102021107670.6
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523365066
【氏名又は名称】エクストルーテック・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】EXTRUTEC GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(74)【代理人】
【識別番号】100230248
【氏名又は名称】杉本 圭二
(72)【発明者】
【氏名】ギュンター・ユーイ
(72)【発明者】
【氏名】ゾコル・ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】ベール・ステファン
【テーマコード(参考)】
3K059
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
3K059AA08
3K059AB24
3K059AB27
3K059AB28
3K059AD03
3K059CD54
4K050AA01
4K050BA03
4K050CA13
4K050CC08
4K050CD02
4K050CD06
4K050CD07
4K050CD16
4K050CG04
4K050EA05
4K063AA05
4K063AA08
4K063BA03
4K063CA01
4K063DA08
4K063DA26
4K063DA28
4K063DA32
4K063FA02
4K063FA07
4K063FA31
(57)【要約】
【課題】導電性を有する棒状のワーク、特には、金属棒および/または非鉄金属棒を加熱する加熱装置、特には、インラインヒータを提供する。
【解決手段】加熱装置1は、第1の入口部4および第1の出口部5を有し加熱手段10を含む対流加熱モジュール9として構成された第1の加熱モジュール2と、第2の入口部6および第2の出口部7を有し誘導加熱モジュール8として構成された第2の加熱モジュール3と、を備える。対流加熱モジュール9は、ワーク13を加熱するのに、作動ガスが加熱手段10と加熱対象のワーク13との間で、まず加熱手段10で加熱されてからワーク13に対して流れるというように循環すると共に、第1の出口部5が第2の入口部6に構造的に直接配置されるように設計および構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する棒状のワーク(13)、特には、金属棒および/または非鉄金属棒を加熱する加熱装置(1)、特には、インラインヒータであって、
前記ワーク(13)は、当該加熱装置(1)内を搬送方向(R)に沿って搬送されるものであり、当該加熱装置(1)は、
第1の入口部(4)および第1の出口部(5)を有し、前記搬送方向(R)を基準とする第1の加熱モジュール(2)と、
第2の入口部(6)および第2の出口部(7)を有し、誘導加熱モジュール(8)として構成された、前記搬送方向(R)を基準とする第2の加熱モジュール(3)と、
を備える、加熱装置(1)において、
前記第1の加熱モジュール(2)は、加熱手段(10)を含む対流加熱モジュール(9)として構成されており、前記対流加熱モジュール(9)は、前記ワーク(13)を加熱するのに、作動ガスが前記加熱手段(10)と加熱対象の前記ワーク(13)との間で、まず前記加熱手段(10)で加熱されてから前記ワーク(13)に対して流れるというように循環すると共に、前記第1の出口部(5)が前記第2の入口部(6)に構造的に直接配置されるように設計および構成されていることを特徴とする、加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、前記加熱手段(10)が、ガスバーナ(11)、特には、復熱式バーナ(22)、および電気抵抗発熱体(12)、特には、抵抗加熱式発熱抵抗体からなることを特徴とする、加熱装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱装置において、前記対流加熱モジュール(9)が、前記作動ガスを前記加熱手段(10)-加熱対象の前記ワーク(13)間で案内する少なくとも1つの通気ダクト(16)を含むことを特徴とする、加熱装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記対流加熱モジュール(9)が、前記作動ガスの平均流量、特には、前記少なくとも1つの通気ダクト(16)内の前記作動ガスの平均流量を制御し且つ/或いは該平均流量に影響を加える、ガス運搬要素(17)、特には、ベンチレータまたはファン(18)を含むことを特徴とする、加熱装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記対流加熱モジュール(9)が、前記ガスバーナ(11)および/または前記電気抵抗発熱体(12)の動作モードの制御および/または駆動を行う制御部(19)を含み、前記制御部(19)は、ユーザ由来の入力信号および/またはパラメータ由来の入力信号に応じて、第1の動作モードでは前記ガスバーナ(11)のみが駆動可能となるように、第2の動作モードでは前記電気抵抗発熱体(12)のみが駆動可能となるように、第3の動作モードでは前記ガスバーナ(11)および前記電気抵抗発熱体(12)が駆動可能となるように形成および/または構成されていることを特徴とする、加熱装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記対流加熱モジュール(9)は、前記作動ガスが前記棒状のワーク(13)に当たる際の該作動ガスの流量に影響を及ぼすノズル要素(14)を含むことを特徴とする、加熱装置。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱装置において、前記ノズル要素(14)同士が、前記搬送方向(R)に互いに隣接して設けられて、搬送対象の前記棒状のワーク(13)の側方に特には部分的に延在することになる、複数のスロットノズル(15)として構成されていることを特徴とする、加熱装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記第1の加熱モジュール(2)が、第1の対流加熱モジュール(81)および少なくとも第2の対流加熱モジュール(82)を含む、少なくとも2つの加熱ゾーンからなることを特徴とする、加熱装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記誘導加熱モジュール(8)が、第1の誘導加熱モジュール(91)および少なくとも第2の誘導加熱モジュール(92)を含む、少なくとも2つの個別に制御可能な加熱ゾーンからなることを特徴とする、加熱装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記第1の加熱モジュール(2)および前記第2の加熱モジュール(3)は、前記第1の加熱モジュール(2)の前記搬送方向(R)と前記第2の加熱モジュール(3)の前記搬送方向(R)が共通の長手軸心(L)に沿って延びるように形成されていることを特徴とする、加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の加熱装置において、前記搬送方向(R)における前記第1の加熱モジュール(2)の長さが6~15m、好ましくは6~12m、極めて好ましくは6~10mであり、前記搬送方向(R)における前記第2の加熱モジュール(3)の長さが0.5~4m、好ましくは0.8~2m、極めて好ましくは0.8~1.6mであることを特徴とする、加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有する、金属棒および/または非鉄金属棒(好適な実施形態として、アルミニウム棒)などの棒状のワークを加熱する加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性を有する棒状のワークの加熱装置が、先行技術から一般的に知られている。例えば、EP 2 337 871 B1(特許文献1)には、インラインヒータと称される、導電性を有する棒状のワークの一般的な加熱装置が記載されている。ワークは、搬送方向に沿って同加熱装置内を通過することになるが、最初に予熱用の第1の加熱モジュールを通過した後、より高い熱出力による本熱用の第2の加熱モジュールを通過するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記第1の加熱モジュールで実現される予熱は、ガスの燃焼で生じる炎でワークを直接加熱する典型的なガスオーブンによって行われる。上記一般的な加熱装置は、上記第2の加熱モジュールを実現するために、加熱対象のワークの搬送方向に沿って延在した出力コイルによって該ワーク中に渦電流を発生させる誘導加熱モジュールを備えている。上記ガスオーブンと上記誘導加熱モジュールとでワークの連続加熱チャンバが構成されるのであるが、上記ガスオーブンと上記誘導加熱モジュールとの間には、炎の伝播を防いで伝播炎による上記誘導加熱モジュールへの損傷を阻止するための熱的なデカップリング部を設ける必要がある。このことは、上記デカップリング部によって上記加熱装置の長さが増加し、上記加熱装置を製作するうえで構造的な手間が増えるという点で不利である。さらに、大掛かりな断熱にもかかわらず、上記デカップリング部の通過時に、棒状のワークに既に導入済みの熱が失われることになるので、コストが嵩む。そのほか、上記デカップリング部で発生する熱損失によって上記加熱装置の全体効率も低下する。
【0005】
したがって、本発明の目的は、先行技術から知られる短所を解消した加熱装置を提案することである。具体的に言えば、本発明の目的は、直後のプレス工程による機械的処理に先立って導電性を有する棒状のワークを効率的に加熱するための、長さがコンパクトになるとともに構造面で容易に製造可能な加熱装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、請求項1の構成を備える加熱装置によって達成される。
【0007】
本発明の有利な実施形態については、従属請求項に記載のとおりである。本発明は、明細書および/または特許請求の範囲および/または図面に開示された2つ以上の構成同士のあらゆる組合せに関する。
【0008】
本発明では、導電性を有する棒状のワーク、特には、金属棒および/またはアルミニウム棒などの非鉄金属棒、を加熱する加熱装置が提供される。前記ワークは、本加熱装置内を搬送方向に沿って搬送されることが可能である。本加熱装置は、第1の入口部および第1の出口部を有し、前記搬送方向を基準とする第1の加熱モジュールと、第2の入口部および第2の出口部を有し、前記導電性を有するワークを誘導加熱する誘導加熱モジュールとして構成された、前記搬送方向を基準とする第2の加熱モジュールと、を備える。
【0009】
本発明では、さらに、前記第1の加熱モジュールが、加熱手段を含む対流加熱モジュールとして構成されており、前記対流加熱モジュールは、作動ガスが前記加熱手段と加熱対象の前記ワークとの間で、まず前記加熱手段で加熱されてから前記ワークに対して流れて熱出力を加えるというように循環可能に設計および構成されている。本発明では、さらに、前記第1の出口部が前記第2の入口部に構造的に直接配置されるようにされる。これにより、本発明に係る加熱装置の長さが有利に減少し、エネルギー効率のよい構造的にコンパクトな加熱装置が形成される。さらに、これにより、先行技術において慣例のデカップリング部が不要となるので、部品コストの削減が可能となる。
【0010】
すなわち、前記第1の出口部を前記第2の入口部に構造的に直接配置することで、本発明に係る加熱装置の長さを短縮することができる。本発明では、有利なことに、作動ガスによって温度を制御することから炎の発生に繋がらず、デカップリング部が本発明に係る本加熱装置にとって不要となるため、それが可能となる。また、長さの短縮に加えて、ワークがデカップリング部を通過する際の該ワークの温度の低下がないので、加熱装置の全体効率の向上にも繋がる。さらに、デカップリング部をなくすことで、構造的な手間も軽減できる。
【0011】
前記加熱手段を含む本発明に係る対流加熱モジュールとして本発明で実現される前記第1の加熱モジュールでは、前記加熱手段で加熱された作動ガスの、加熱対象のワーク-前記加熱手段間での循環によってのみ、該ワークの加熱が行われる。
【0012】
有利なことに、前記第1の加熱モジュール内では、炎の形成を完全に防ぐことができる。これにより、前記第2の加熱モジュールを前記第1の加熱モジュールの直接隣りに構造的に配置することが可能となる。つまり、デカップリング部が完全に消去される。また、本発明に係る前記対流加熱モジュールでは、前記加熱手段によって前記作動ガスの温度を正確に制御・調節することができる。これにより、さらに、前記ワークに導入可能な熱出力を正確に制御することができる。
【0013】
本発明の一実施形態では、前記加熱手段が、ガスバーナ(好ましくは、復熱式バーナ)および電気抵抗発熱体(好ましくは、抵抗加熱式発熱抵抗体)として構成されている。有利には、これは、ハイブリッド式の対流加熱モジュールによって、循環する前記作動ガスの加熱が燃料(特には、化石燃料、すなわち、本発明ではガス)を用いた古典的な様式と電気エネルギーを用いた様式のうちの任意の様式で行われるように実現される。これにより、有利なことに、前記加熱装置の用途の範囲が広がり、化石燃料(特には、ガス)に拘わらない動作が可能となる。
【0014】
本発明に係る加熱装置の他の実施形態において、前記対流加熱モジュールは、前記作動ガスの案内を行う通気ダクトを含むものとされ、該通気ダクトは、前記加熱手段で加熱された空気を前記ワークへと大きな温度低下を伴うことなく最大限一様に案内することで、加熱された前記作動ガスが前記ワークに対して最大限広範囲にわたって流れるように、かつ、これによって前記ワークへの高い熱入力を実現することができるように構成されている。また、前記通気ダクトは、前記ワークに作用する給気と前記作動ガスの排気とを構造的に分離し、前記ワークに対して流れる前の加熱済みの前記作動ガスが、前記ワークに対して流れた後の既に温度低下済みの前記作動ガスと接触するのを防ぐことができる。
【0015】
また、前記循環を経て前記加熱手段で複数回加熱された前記作動ガス(つまり、既に予熱済みの前記作動ガス)によって前記ワークの加熱が効率的に行われるような前記作動ガスの回路が、前記通気ダクト同士で形成されることができるようになっている。
【0016】
他の実施形態では、前記対流加熱モジュールが、前記作動ガスの平均流量、特には、前記通気ダクト内を流れる際の前記作動ガスの平均流量を制御し且つ/或いは該平均流量に影響を加える、ガス運搬要素、特には、ベンチレータまたはファンを含む。
【0017】
有利なことに、前記ガス運搬要素は、前記作動ガスが前記ワークに対して流れる際の前記作動ガスの流量に影響を加えられるので、流量を増加させて前記ワークに対する熱入力を最大限に高めることが可能であり、そのため、前記ワークの加熱処理を追加で制御し且つ該加熱処理に影響を加えることが可能といえる。
【0018】
また、前記ガス運搬要素は、前記作動ガスを、好ましくは、前記ワークの周囲に対して流れた後の前記作動ガスを、再び前記加熱手段で730~750℃の流動温度に加熱されるように、少なくとも部分的に吸い込む。これにより、高いシステム効率が実現される。また、好ましくは、前記ガス運搬要素により、前記作動ガスの平均流量は、前記加熱手段と前記ワークとの温度差に合わせて選択的に調節される。これにより、前記ワークの各材料特性、例えば、前記棒状のワークの熱拡散率や各直径等に応じた個々の温度プロファイルの実現が可能となる。
【0019】
本発明の他の実施形態では、前記対流加熱モジュールが、前記ガスバーナおよび前記電気抵抗発熱体の動作モードの制御を行う制御部を含み、前記制御部は、ユーザ由来の入力信号および/またはパラメータ由来の入力信号に応じて、第1の動作モードでは前記ガスバーナのみが駆動可能となるように、第2の動作モードでは前記電気抵抗発熱体のみが駆動可能となるように、第3の動作モードでは、前記作動ガスを加熱するのに前記ガスバーナおよび前記電気抵抗発熱体が同時に駆動可能となるように形成されている。
【0020】
本発明の文脈において、ユーザ由来の入力信号とは、操作者による前記加熱手段の動作モードの選択のことを意味するものと理解されたい。この場面で、例えば、操作者が、本発明に係る加熱装置による前記ワークの全加熱処理の加熱手段として、前記ガスバーナのみを選択したとする。前記ワークが前記第1の加熱モジュール内を通過する際には、前記ガスバーナで加熱された高温の排気である作動ガスが該ワークに対して流れるだけになる。エネルギー源にガスを用いて前記第1の加熱モジュールを動作させることも可能なので、有利なことに、前記ワークの加熱で前記加熱装置に必要となる電気エネルギーが少なくて済む。
【0021】
ほかにも、前記動作モードの選択は、パラメータ由来で行われることも可能である。このとき、前記制御部とその通信相手との間には、最新の発電電気中の再生可能エネルギーの割合、最新のエネルギーコスト(例えば、化石エネルギー源のコストに対する最新の電気料金(瞬間値)等)などのデータに基づいて前記動作モードの駆動が自動的に行われることができるように通信リンクが存在する。これにより、例えば、再生可能エネルギーが余剰に存在している場合に、熱エネルギーの大部分を抵抗ベースで、すなわち、電気導通のみで生成することにより、低い電気料金から利益を得ることが可能になる。また、これにより、本実施形態では、有利なことに、運転コストだけでなく、CO2や近い将来導入される罰金の軽減を技術的視点から実現するように動作を最適化することも可能となる。また、ガスバーナを前記加熱手段とする好ましい本実施形態では、極めて有利なことに、再生可能エネルギーから生成した水素を用いた運転を実現することも可能である。また、これにより、前記ガスバーナを用いた場合の前記加熱装置の動作をCO2フリーで行うことも可能になる。
【0022】
他の実施形態において、前記対流加熱モジュールは、前記作動ガスが前記棒状のワークに当たる際の該作動ガスの平均流量に影響を及ぼすノズル要素を含む。
【0023】
有利なことに、前記ノズル要素は、前記作動ガスが前記ワークに対して流れる直前の該作動ガスの流量に選択的に影響を及ぼす、つまり、該流量の最適化を行うことができるため、前記ワークへの熱入力を最大限に高めることが可能である。また、好ましい本実施形態では、前記ワークを一定速度で搬送した場合の該ワークへの熱入力を最大限に高めることが可能となるので、本発明に係る加熱装置の全長の短縮に対する協力効果にもなる。
【0024】
このとき、極めて好ましくは、前記ノズル要素同士が、前記ワークの前記搬送方向に互いに隣接して設けられて搬送対象の前記棒状のワークの側方に特には部分的に延在することになる複数のスロットノズルとして構成されている。前記複数のスロットノズルは、前記棒状のワークの径方向側における加熱済みの前記作動ガスを該ワークの側面に案内して大規模な流入流、つまり、熱入力に関して最適な流入流を実現するものである。V字状の壁部とすることで、最大50m/sの平均流量の作動ガスを実現するような扇状のスロットノズルが形成される。また、前記ノズル要素を前記複数のスロットノズルとする好ましい本実施形態により、前記加熱装置の全長を短縮して該加熱装置を本発明に従ったコンパクトな長さにすることも可能となる。
【0025】
ほかにも、前記第1の加熱モジュールを、第1の対流加熱モジュールおよび少なくとも第2の対流加熱モジュールを含む、少なくとも2つの加熱ゾーンからなるものとする構成がある。これにより、有利なことに、前記作動ガスの温度が具体例として730~750℃の範囲内に加熱されるように、かつ、それによって、前記ワークの温度が380~450℃の範囲内に制御されるように、前記搬送方向における前記加熱装置の長さに沿って温度を個別調節することが可能となる。好ましくは、早ければ第1の加熱ゾーンで、加熱後の前記作動ガスと該ワークとの間の温度勾配が大きく設定される。大きい温度勾配の実現により、(焼戻し前の)前記ワークへの熱入力が最大限に高まる。有利なことに、このことは、前記加熱装置の長さの抑制可能化にも貢献する。そのほか、各加熱ゾーンの温度が個別に制御されることで、例えば、軸方向の温度プロファイルを実現すること、特には、温度を徐々に増加させることが可能になるので好ましい。
【0026】
このとき、他の実施形態として、前記誘導加熱モジュールが、第1の誘導加熱モジュールおよび少なくとも第2の誘導加熱モジュールを含む、少なくとも2つの個別に制御可能な加熱ゾーンからなる実施形態もある。この場合も、前記棒状のワークに対して軸方向の温度プロファイルを適用し、前記棒状のワークの幾何形状に応じた且つ/或いは該ワークの材料組成に応じた個別の加熱特性を実現することが可能となる。
【0027】
また、他の実施形態において、前記第1の加熱モジュールおよび前記第2の加熱モジュールは、前記第1の加熱モジュールの前記搬送方向と前記第2の加熱モジュールの前記搬送方向が共通の長手軸心に沿って延びるように構成されている。これは、言い換えれば、前記加熱装置が直線に沿って延びていることを意味する。これにより、有利なことに、前記加熱装置内を通過する際の前記ワークは挿通状(transversalbewegt)に搬送するだけでよくなる、すなわち、共通の延在軸心に沿って搬送するだけでよくなるので、前記加熱装置の構造的実現が容易なものになる。
【0028】
最後に、前記加熱装置の極めて好ましい一実施形態において、前記搬送方向における前記第1の加熱モジュールの長さは6~15m、好ましくは6~12m、極めて好ましくは6~10mであり、前記搬送方向における前記第2の加熱モジュールの長さは0.5~4m、好ましくは0.8~2m、極めて好ましくは0.8~1.6mである。
【0029】
前記加熱装置の上記詳細は、前記ワークに対するハイブリッド式の効率的な加熱を可能とすると共にコンパクトな長さによって特徴付けられる本発明に係る加熱装置の寸法がコンパクトであることを示している。
【0030】
本発明のその他の利点および詳細については、あくまでも模式的なものに過ぎない図面を用いた本発明の好適な実施形態についての以下の説明から、導き出されることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明に係る加熱装置の第1の実施形態を示す図である。
【
図2】本発明に係る加熱装置の第2の実施形態を示す図である。
【
図3】
図1から把握される加熱装置の第1の実施形態を示す断面図である。
【
図4】本発明に係る加熱装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る加熱装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図面では、同じ構成要素および同じ機能を有する構成要素に対し、同じ参照符号を付している。
【0033】
図1は、導電性を有する棒状のワーク13を加熱する本発明に係る加熱装置1の、好ましい第1の実施形態1Aを示す側面視図である。本発明に係る加熱装置1内をワーク13が搬送方向Rに沿って搬送されることで、前記加熱の実施が可能となっている。
【0034】
本発明に係る加熱装置1は、第1の加熱モジュール2および第2の加熱モジュール3を備える。第1の加熱モジュール2は第1の入口部4および第1の出口部5を有し、第2の加熱モジュール3は第2の入口部6および第2の出口部7を有する。
【0035】
第2の加熱モジュール3は、出力コイルに電気を供給することで生じる磁場によって導電性を有するワーク13に渦電流を形成することができ、それによって該ワーク13の加熱を行うように誘導加熱モジュール8として構成されている。前記出力コイルは、加熱対象のワーク13(加熱対象物)を同心状に取り囲んでおり、時間と共に変化する磁場を発生させて、金属製のワーク13の加熱に必要な渦電流を形成することが可能となっている。
【0036】
前記出力コイルは、交流電流を供給されることが可能な誘導コイルであるか、あるいは、好ましくは、回転する永久磁石とされる。前記永久磁石は、加熱対象のワーク13の周囲に配置されると共に、ロータとして直接回転運動させられるか、あるいは、ベルトドライブを介して間接的に回転運動させられることにより、時間と共に変化する前記磁場を発生させ得る。
【0037】
第1の加熱モジュール2は、加熱手段10(詳細は図示せず)を含む対流加熱モジュール9として構成されている。対流加熱モジュール9は、作動ガスが加熱手段10と受入対象かつ加熱対象であるワーク13との間で、まず加熱手段10に流れることで加熱されてからワーク13に対して流れてワーク13への熱入力を実現するというように循環可能に構成されている。第1の実施形態の対流加熱モジュール9は、モジュール式に構築されており、それぞれ加熱手段10を含み互いに個別に動作させられることが可能な2つの加熱ゾーンからなる。
【0038】
本実施形態において、加熱手段10は、ガス燃料を燃焼させることで作動ガスの加熱を可能にするためのガスバーナ11、および電気エネルギーを熱エネルギーに変化させることで作動ガスの加熱を可能にする、本実施形態では抵抗加熱式発熱抵抗体23によって構成される電気抵抗発熱体12(詳細は図示せず)の双方からなる。
【0039】
さらに、図示のとおり、第1の出力部5は第2の入力部6に構造的に直接配置されている。これにより、本発明に係る加熱装置1は、搬送方向Rにおける長さに関してコンパクトな設計となっている。有利なことに、対流加熱モジュール9でワーク13が加熱される際には炎が形成されない。このため、一般的な先行技術から知られているようなデカップリング部が不要となる。
【0040】
動作時には、加熱対象の棒状のワーク13が、第1の入口部4から加熱装置1内に導入されて、本例ではローラ20として構成されるハンドリング手段によって搬送方向Rに沿って第1の出力部5から、その直ぐ後に配置された第2の加熱モジュール3へと搬送される。有利なことに、本発明に係る加熱装置1は、加熱手段10で730~750℃の範囲内の温度に定期的に加熱される作動ガスが循環する対流加熱モジュール8によって、ワーク13を380~450℃の温度に予熱することが可能となっている。その後、ワーク13は、誘導加熱モジュール9によって高出力(hoher Leistung)でさらに加熱されることで最終温度が500~560℃、あるいは、好ましくは1000℃以下にまで昇温する。
【0041】
ワーク13がアルミニウム合金からなる場合、前記誘導加熱モジュール通過後の最終温度が500~560℃の範囲内となるのが好ましい。変形例として、ワーク13は、他種の非鉄金属、特には、銅または銅合金からなるものであってもよいが、この場合、前記予熱は580~600℃の範囲内の温度まで実施されて誘導加熱モジュール9通過後の最終温度が700~1000℃となるのが好ましい。
【0042】
図2は、本発明に係る加熱装置1の好ましい第2の実施形態1Bについての、極めて模式的な側面図である。同図からは、加熱装置1が搬送方向Rに関してモジュール式の構造となっていることが明らかである。つまり、第1の加熱モジュール2が、まず、第1の対流加熱モジュール81によって形成された第1の加熱ゾーンと第2の対流加熱モジュール82によって形成された第2の加熱ゾーンとの2つの加熱ゾーンからなり、これらの加熱ゾーンが互いに直接隣接して配置されている。有利なことに、第1の対流加熱モジュール81の温度は、第2の対流加熱モジュール82の温度と独立して調節されることが可能である。
【0043】
さらに、誘導加熱モジュール8も、第1の誘導加熱モジュール91によって形成されたゾーンと第2の誘導加熱モジュール92によって形成されたゾーンとの、個別に制御可能なゾーン同士に分割されている。有利なことに、加熱装置1を制御可能な各ゾーンに分割することにより、棒状のワーク13を個別的に加熱することが可能となるような軸方向温度プロファイルを実現することができる。
【0044】
図3は、
図1から把握される本発明に係る加熱装置1の第1の実施形態1Aについての、第1の加熱モジュール2の領域の断面図である。図示のとおり、加熱装置1内を通過することで加熱される棒状のワーク13は、断面が円状であると共に、前記ハンドリング手段を構成する複数本のローラ20上に載せられて、加熱装置1内を搬送方向Rに沿って挿通状に通過する。
【0045】
加熱装置1の鉛直方向Hを基準として、ワーク13の上方には、ガスバーナ11の構成要素の一つである鋼製チューブ21が配置されている。鋼製チューブ21は、側面開口部24(図示せず)を有する。ここで、ガスバーナ11は、前記作動ガスを加熱するように、あるいは、燃焼気から前記作動ガスを少なくとも部分的に生成するように、復熱式バーナ11となっている。
【0046】
鉛直方向Hを基準として、鋼製チューブ21の上方にはガス運搬要素17が配置されている。本例では、ガス運搬要素17がファン18によって構成されている。ガス運搬要素17は、鋼製チューブ21から鉛直方向Hに前記燃焼気を部分的に吸い込んで前記作動ガスを形成し、互いに横方向に対向して設けられてワーク13の両側に鏡面対称に位置せしめられる通気ダクト16によって、該作動ガスを導く。
【0047】
通気ダクト16は、前記作動ガスが電気抵抗発熱体12を介して流れることで、代替的な加熱方法又は追加の加熱方法としての電気エネルギーによる加熱が該作動ガスに施されるように配置および形成されている。言い換えれば、ガス運搬要素17と前記作動ガスを受けるか又は前記作動ガスの流動経路の関連で加熱されることになるワーク13との間に、本例では抵抗加熱式発熱抵抗体23として構成される電気抵抗発熱体12が設けられている。
【0048】
通気ダクト16の終わりには、本発明に係る加熱装置1による高い熱入力用の活発な動作で前記作動ガスが加熱対象のワーク13に対して流れる際の、該作動ガスの平均流量を最適化するように、ノズル要素14が形成されている。
【0049】
本発明に係る加熱装置1の動作時には、鋼製チューブ21の領域の燃焼気が約1000℃に達する。該燃焼気はガス運搬要素17に吸い込まれ、通気ダクト16に沿って電気抵抗発熱体12を介してワーク13へと運搬されるが、ノズル要素14により、その平均流量は最大50m/sにまでなることができる。このように、前記作動ガスがガスバーナ11により生成・加熱される第1の動作モードが、本発明に係る加熱装置1の動作モードとして制御部19(詳細には図示せず)によって実施される。
【0050】
図4は、
図1から把握される加熱装置1の第1の実施形態1Aについての斜視断面図である。同断面図には、本発明に係る加熱装置1のうち、ハイブリッド式の加熱手段10を含む対流加熱モジュール9によって形成された第1の加熱モジュール2の断面が描かれている。
【0051】
同図からは、復熱式バーナ22として構成されたガスバーナ11が、収容可能な棒状のワーク13上方を搬送方向Rに沿って延在するという様子が分かる。さらに、鋼製チューブ21の側面に形成された開口部24も確認できる。開口部21からは、燃焼過程で生じたガスが高温の燃焼気として漏れ出して前記作動ガスを形成し、該作動ガスが鉛直方向Hでガス運搬要素17に吸い込まれる。
【0052】
前記作動ガスは、横方向に形成された通気ダクト16を介して、両側に配置された抵抗加熱式発熱抵抗体23上を経てワーク13へと流れる。なお、通気ダクト16の終わりに形成されたノズル要素14が複数のスロットノズル15として構成されている点も明らかである。スロットノズル15は、収容可能なワーク13の外周に位置し、前記作動ガスがワーク13に対して流れる際の前記作動ガスの平均流量を増加させることで、ワーク13への熱入力を最適化する。
【0053】
図5は、本発明に係る加熱装置1の第2の実施形態1Bについての他の斜視図である。
【0054】
同図には、第1の加熱モジュール2内を通過しつつ加熱手段10(同図では図示せず)による加熱後の加熱済み作動ガスが流れてくる加熱対象の棒状のワーク13に加えて、ワーク13への最適な熱入力を実現する複数のスロットノズル15も描かれている。
【0055】
スロットノズル15は、前記作動ガスが棒状のワーク13の側面に対して略径方向に流れるようにワーク13の側方に部分的に位置することになる。
【0056】
各スロットノズル15は、互いにV字状に配置された一対の板金によって形成されており、先窄まり部には棒状のワーク13を収容するための円弧状の凹所26が形成されている。
【0057】
有利なことに、複数のスロットノズル15は、棒状のワーク13への熱入力を高めることができるので、本発明に係る加熱装置1の全長の短縮化への協力効果を奏することが可能である。
【0058】
さらに、図示の第1の加熱モジュール2が、分離要素25で互いに分離された第1の対流加熱モジュール81および少なくとも第2の対流加熱モジュール82を含む、少なくとも2つの加熱ゾーンからなるという点も見て取れる。これにより、有利なことに、棒状のワーク13の各材料組成に合わせて加熱処理を調節できるような軸方向の温度プロファイルの実現が可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1 加熱装置
1A 加熱装置の第1の実施形態
1B 加熱装置の第2の実施形態
2 第1の加熱モジュール
3 第2の加熱モジュール
4 第1の入口部
5 第1の出口部
6 第2の入口部
7 第2の出口部
8 誘導加熱モジュール
9 対流加熱モジュール
10 加熱手段
11 ガスバーナ
12 電気抵抗発熱体
13 ワーク
14 ノズル要素
15 スロットノズル
16 通気ダクト
17 ガス運搬要素
18 ファン
19 制御部
20 ローラ
21 鋼製チューブ
22 復熱式バーナ
23 電気抵抗発熱体
24 開口部
25 分離要素
26 凹所
81 第1の対流加熱モジュール
82 第2の対流加熱モジュール
91 第1の誘導加熱モジュール
92 第2の誘導加熱モジュール
R 搬送方向
L 長手軸心
H 鉛直方向
【国際調査報告】