(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】重炭酸塩を含む歯磨剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/21 20060101AFI20240312BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20240312BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20240312BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K8/21
A61Q11/00
A61K8/19
A61K8/49
A61K8/64
A61K8/9789
A61K8/73
A61K8/35
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560235
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 CN2021085779
(87)【国際公開番号】W WO2022213299
(87)【国際公開日】2022-10-13
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137523
【氏名又は名称】出口 智也
(74)【代理人】
【識別番号】100141830
【氏名又は名称】村田 卓久
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】カオ、チャオシン
(72)【発明者】
【氏名】スン、リリ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、アルチア
(72)【発明者】
【氏名】ロス、ストランド
(72)【発明者】
【氏名】ユアン、チンファン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA111
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB282
4C083AB311
4C083AB312
4C083AB321
4C083AB322
4C083AB471
4C083AB472
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC211
4C083AC712
4C083AC782
4C083AC861
4C083AC862
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD311
4C083AD351
4C083AD411
4C083CC41
4C083EE06
4C083EE31
4C083EE33
(57)【要約】
重炭酸塩と、水と、中強度甘味料と、高強度甘味料と、を含む歯磨剤組成物は、改善された官能体験を提供しながら、歯垢バイオフィルムの治療において有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯磨剤組成物であって、
(a)水と、
(b)前記組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、
(c)フッ化物イオン源と、
(d)約150~350の甘味指数を有する中強度甘味料と;
(e)約500~10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と;
を含み、
中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が約1:0.15~約1:1.2である、歯磨剤組成物。
【請求項2】
前記中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が、約1:0.25~約1:0.75である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が、約1:0.4~約1:0.65である、請求項2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
歯磨剤組成物であって、
(a)前記組成物の約15重量%~約55重量%の水と、
(b)前記組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、
(c)前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の、約150~約350の甘味指数を有する中強度甘味料と、
(d)前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の、約500~約10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と、
(e)前記組成物の約0.0025重量%~約2重量%のフッ化物イオン源と、
を含む、歯磨剤組成物。
【請求項5】
前記組成物の約10重量%~約50重量%、好ましくは約20重量%~約40重量%の重炭酸塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の0重量%~約10重量%、好ましくは0重量%~約5重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールであり、好ましくはソルビトール、グリセロール、又はこれらの混合物から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
前記中強度甘味料が、サッカリン、アスパルテーム、ステビア、アセスルファム、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項8】
前記中強度甘味料が、サッカリン又はその塩である、請求項1~7のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項9】
前記組成物が、前記歯磨剤組成物の約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.2重量%~約0.6重量%、又は好ましくは約0.3重量%~約0.5重量%の中強度甘味料を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項10】
前記高強度甘味料が、スクラロース、ブラゼイン、ペンタジン、タウマチン、モネリン、ジヒドロカルコン、及びネオテーム、それらの塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項11】
前記高強度甘味料が、スクラロース又はその塩である、請求項1~10のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記歯磨剤組成物の約0.05重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%、又は好ましくは約0.2重量%~約0.3重量%の高強度甘味料を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物の約20重量%~50重量%、好ましくは約25重量%~約45重量%の水を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項14】
前記歯磨剤組成物が、前記組成物の約0重量%~約15重量%、好ましくは約0重量%~約10重量%、又は好ましくは約0重量%~約5重量%のシリカ研磨剤を更に含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項15】
前記組成物が、約7.3超、好ましくは約7.8超、又は好ましくは約8.0超のpHを有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項16】
前記重炭酸塩が、重炭酸ナトリウムである、請求項1~15のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項17】
前記歯磨剤組成物が、増粘シリカを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項18】
前記歯磨剤組成物が、増粘ポリマーを含み、前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、直鎖硫酸化多糖類、天然ガム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~17のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記組成物の約5重量%~約50重量%、好ましくは約10重量%~約50重量%、又は好ましくは約15重量%~約40重量%のカルシウム含有研磨剤を含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項20】
前記歯磨剤組成物が、カルシウム含有研磨剤を含み、前記カルシウム含有研磨剤が炭酸カルシウムである、請求項1~19のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項21】
前記フッ化物イオン源が、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、フッ化ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項22】
前記歯磨剤組成物が、前記組成物の約0.5重量%~約1.5重量%の前記フッ化物イオン源を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【請求項23】
前記歯磨剤組成物が、単相の練り歯磨きである、請求項1~22のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重炭酸塩と二重甘味料とを含む、歯磨剤組成物に関する。歯磨剤組成物は、バイオフィルム形成の阻害を助けるか又はバイオフィルムの破壊を助ける改善された有効性、並びにコンプライアンス及び消費者体験を改善するための改善された官能体験を有する。
【背景技術】
【0002】
(デンタルバイオフィルムとしても知られる)歯垢は粘着性であり、歯の表面上に常に形成されている細菌の無色の堆積物である。歯垢は、細菌及び細胞外ポリマー物質(いわゆる「extracellular polymer substances、EPS」)で概ね構成される。EPSは、バイオフィルム微生物が埋め込まれた微生物起源のバイオポリマーである。J.Bacteriol.2007,189(22):7945。唾液、食品、及び流体が組み合わさってこれらの堆積物が生成され、歯と歯茎が合流する場所に集まる。歯垢の蓄積は、歯肉炎を含む、虫歯及び歯周病(歯茎の疾患)につながる場合がある口腔衛生不良の主要な因子である。歯磨剤組成物が歯垢を予防及び抑制するのに役立つ1つの方法は、抗菌剤を活用することによるものであるが、欠点及び製剤上の課題として、製剤成分との抗菌剤の意図しない反応性がある。これには、酸化分解、加水分解、吸着、又はオキシ水酸化物種の沈殿が含まれ得るが、それらのいずれも、抗菌剤の生物学的利用に影響を与える場合がある。歯に歯垢が形成されるのを防止し、かつ/又は抗菌剤の使用を最小限に抑えるのに役立つ製剤を提供するための、消費者の継続的な需要が存在する。
【0003】
バイオフィルム形成を阻害するのに役立つか、又はバイオフィルムを破壊するのに役立つ1つの解決策としては、ベーキングソーダ(すなわち、重炭酸ナトリウム)の使用がある。バイオフィルムに対するベーキングソーダの作用機序は、少なくとも2倍である可能性が高い。ベーキングソーダは、バイオフィルムを破壊又は低減することを助けるようにカルシウムイオンを変位させることができる。カルシウムイオンは、デンタルバイオフィルムのEPS成分の「接着剤」又は「足場」として機能する。ベーキングソーダは、口腔バイオフィルムの物理的除去を助けるための研磨剤としても作用し得る。30重量%超、ときには60重量%超の、歯磨剤中のベーキングソーダのいくつかの濃度について報告がなされている。
【0004】
しかしながら、一部のユーザは、(比較的高濃度のベーキングソーダに起因する)不快な味を感じた経験を報告している。高濃度のベーキングソーダ組成物の使用は、ベーキングソーダの分解に関する安定性の問題と、許容できない塩味から生じる官能体験の悪さによる消費者受容性の問題とを引き起こす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.Bacteriol.2007,189(22):7945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのような安定性の課題を克服するために使用されるアプローチは、無水又は低含水組成物にベーキングソーダ組成物を配合することである。しかしながら、このアプローチは、レオロジー特性の低下をもたらす場合があり、分散性及び送達性を損なう。更に、歯垢は、市場の開拓において特に問題となっている。そこで歯磨剤溶液は、最も費用対効果が高い(例えば、比較的高濃度の水を含有する)。したがって、改善された風味プロファイル、改善された分散性及び送達性と共に消費者のコンプライアンスを助けるために、重炭酸塩の濃度を最小限(例えば、60重量%未満)に抑えながら、重炭酸塩に関連する治療効果を最大化する、ベーキングソーダ含有水性歯磨剤組成物が必要とされている。また、そのような組成物の必要性がほぼ間違いなく最も大きいものである市場を開拓するために、費用対効果の高い組成物が必要とされている。
【0007】
安定性の課題に対処すると同時に、組成物の味が甘くなりすぎないようにしながら塩味を低減することによって、そのような組成物の全体的な官能体験を改善する必要性が更に残っている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、歯磨剤組成物であって、(a)水と、(b)当該組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、(c)フッ化物イオン源と、(d)約150~350の甘味指数を有する中強度甘味料と;(e)約500~10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と、を含み、中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が約1:0.15~約1:1.2である、歯磨剤組成物に関する。
【0009】
本発明は、更に、歯磨剤組成物であって、(a)当該組成物の約15重量%~約55重量%の水と、(b)当該組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、(c)当該組成物の約0.01重量%~約1重量%の、約150~約350の甘味指数を有する中強度甘味料と、(d)当該組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の、約500~約10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と、(e)当該組成物の約0.0025重量%~約2重量%のフッ化物イオン源と、を含む、歯磨剤組成物に関する。
【0010】
重炭酸塩(例えば、重炭酸ナトリウム)と、中強度甘味料(甘味指数が1であるスクロースの基準に対して約150~約350の甘味指数を有する)及び高強度甘味料(甘味指数が1であるスクロースの基準に対して約500~約10,000の甘味指数を有する)の組み合わせと、を含む水性歯磨組成物によって、歯のバイオフィルムを著しく破壊及び不安定化することができ、これは驚くべきことに、ブラッシング中及びブラッシング後の両方に重炭酸塩歯磨剤組成物に関連する既知の塩味をマスキングする改善された官能プロファイルを提供する。
【0011】
65%を超える重炭酸ナトリウムを含有する市販の歯磨剤組成物は、歯肉炎の治療において臨床効果を提供すると主張しているが、この高レベルの重炭酸ナトリウムに関連する不快な官能体験(例えば、味、泡立ち、分散)がユーザによって報告されている。本発明の別の態様は、バイオフィルムの不安定化において治療効果を提供し、改善された官能体験を有すると同時に、重炭酸塩のレベルを低下させることである。
【0012】
本発明は更に、製品の有効期間にわたって良好な化学的及び物理的安定性を有し、それによって重炭酸塩の歯垢マトリックスへの分散及び送達を改善し、重炭酸塩に関連する治療効果を最大化する、比較的高含有量の重炭酸塩及び水の両方を含有する水性歯磨剤を提供する。
【0013】
本発明は更に、本発明の歯磨剤組成物を用いて歯をブラッシングするステップを含む、歯のバイオフィルムを治療する方法を包含する。
【0014】
本発明は更に、本発明の歯磨剤組成物を用いて歯をブラッシングするステップを含む、歯のエナメル質上の歯垢形成を予防又は軽減する方法を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】ヒドロキシアパタイト(hydroxyapatite:「HA」)ディスクが取り付けられた口腔スプリントの斜視図である。
【
図2】内部に溝を有するHAディスクの斜視図である。
【
図3】内部にバイオフィルムを有する溝の断面図の概略図である。
【
図4】塩味/甘味に対する中強度甘味料のみの使用の影響を示すグラフである。
【
図5】塩味/甘味に対する高強度甘味料と中強度甘味料との組み合わせの影響を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本明細書で使用するとき、用語「歯磨剤」とは、特に指定がない限り、口腔の表面を洗浄するために使用する、ペースト、ゲル、粉末、タブレット、又は液体の製剤を意味する。好ましくは、本発明の歯磨剤組成物は単相組成物であるが、二相又は多相組成物であってもよい。歯磨剤組成物の一例は、(歯をブラッシングするための)練り歯磨きである。本明細書で使用するとき、「歯」という用語は、天然歯、及び人工歯又は歯科補綴物を指す。
【0017】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列挙されている成分に関するとき、こうした重量は全て、活性レベルに基づき、このため、特に指定されない限り、市販の材料に含まれている可能性のある溶媒又は副生成物を含まない。「重量パーセント」という用語は、本明細書では「重量%」として表示される場合がある。本明細書で使用される場合、全ての分子量は、別途記載のない限り、グラム/モルで表される重量平均分子量である。
【0018】
水
本発明の歯磨剤組成物は、本明細書においては、組成物の約5重量%~約55重量%、好ましくは約15重量%~約45重量%、好ましくは約20重量%~約35重量%の水を含む。歯磨剤組成物は、組成物の約15重量%~約55重量%、好ましくは約20重量%~約45重量%、好ましくは約25重量%~約35重量%の水を含んでもよい。水は、製剤に添加されてもよく、かつ/又は、水溶液中に提供される他の成分を含めることによって組成物中に含まれてもよい。好ましくは、水は、USP水である。
【0019】
重炭酸塩
本発明の組成物は、組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩を含む。好ましくは、重炭酸塩は、重炭酸ナトリウム、重炭酸カルシウム、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、重炭酸ナトリウムである。歯磨剤組成物は、組成物の約1重量%~約60重量%、好ましくは約10重量%~約50重量%、より好ましくは約20重量%~約40重量%の重炭酸塩(好ましくは重炭酸ナトリウム)を含み得る。
【0020】
フッ化物イオン源
組成物は、任意選択的に、有効量のフッ化物イオン源等の抗う蝕剤を含んでいてもよい。フッ化物イオンは、25℃においてあるフッ化物イオン濃度を付与するのに十分な量で組成物中に存在してよい、及び/又は一実施形態では、抗う蝕効果を提供するために、組成物の約0.0025重量%~約5重量%、好ましくは組成物の約0.005重量%~約2.0重量%、好ましくは組成物の約0.5重量%~約1.5重量%のレベルで使用してよい。代表的なフッ化物イオン源としては、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化アミン、モノフルオロリン酸ナトリウム、及びフッ化亜鉛、又はこれらの混合物が挙げられる。一態様では、本発明の歯磨剤組成物は、2種類のフッ化物イオン源、具体的にはモノフルオロリン酸ナトリウム及びアルカリ金属フッ化物を有していてもよい。理論に束縛されるものではないが、このようなアプローチは、平均フッ化物摂取の改善をもたらし得る。
【0021】
一態様では、フッ化物イオン源は、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、フッ化ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0022】
甘味料
本発明の歯磨剤組成物は、甘味指数が1である基準としてのスクロースに対する甘味料の甘味指数に基づいて、中強度甘味料と高強度甘味料との組み合わせを含む。
【0023】
本明細書で使用するとき、用語「中強度甘味料」は、(甘味指数が1である基準としてのスクロースに対して)約150~約350の甘味指数範囲を有する天然及び合成の甘味料を含む。
【0024】
したがって、本発明での使用に好適な中強度甘味料としては、サッカリン、アスパルテーム、ステビア、アセスルファム、それらの塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の組成物において使用される中強度甘味料は、サッカリン、ステビア、それらの塩、又はそれらの混合物を含み得る。
【0025】
本発明の歯磨剤組成物は、典型的には、歯磨剤組成物の約0.01重量%~約1重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.2重量%~約0.6重量%、又は好ましくは約0.3重量%~約0.5重量%のレベルの中強度甘味料を含む。
【0026】
本明細書で使用するとき、用語「高強度甘味料」は、(甘味指数が1である基準としてのスクロースに対して)約400~約10,000、好ましくは約500~約10,000、好ましくは約500~5,000、又は好ましくは約500~約1,000の甘味指数範囲を有する天然及び合成の甘味料を含む。
【0027】
したがって、本発明での使用に好適な高強度甘味料としては、スクラロース、ブラゼイン、ペンタジン、タウマチン、モネリン、ジヒドロカルコン、ネオテーム、それらの塩、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の歯磨剤組成物は、典型的には、歯磨剤組成物の約0.01重量%~約0.5重量%、好ましくは約0.05重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%、又は好ましくは約0.2重量%~約0.3重量%のレベルの高強度甘味料を含む。
【0029】
好ましくは、本発明の組成物は、約1:0.15~約1:1.2、好ましくは約1:0.25~約1:0.75、又は好ましくは約1:0.4~約1:0.65の中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比で、中強度甘味料と高強度甘味料とを含む。
【0030】
甘味力(Sweetness Power)とも呼ばれる甘味指数は、文献で周知の特性であり、甘味指数が1であるスクロースを基準にして測定される。甘味指数/力の値並びに中強度甘味料及び高強度甘味料の更なる例は、H.Mitchell,Sweeteners and Sugar Alternatives in Food Technology(Blackwell Publishing 2006)and in M.Carocho et al.,Sweeteners as food alternatives in the XXI century:A review of what is known,and what is to come,107 Food and Chemical Technology 302-317,303(2017)に提供されている(上記H.Mitchellの参照文献を引用)。
【0031】
カルシウム含有研磨剤
本発明の組成物は、任意選択的にかつ一部の態様では好ましくは、組成物の約5重量%~約50重量%、好ましくは約10重量%~約50重量%のカルシウム含有研磨剤を含むことができ、好ましくはカルシウム含有研磨剤は、炭酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、リン酸三カルシウム、オルトリン酸カルシウム、メタリン酸カルシウム、ポリリン酸カルシウム、オキシアパタイトカルシウム、炭酸ナトリウム、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、カルシウム含有研磨剤は、炭酸カルシウムである。好ましくは、組成物は、組成物の約15重量%~約50重量%、好ましくは約15重量%~約40重量%、好ましくは約15重量%~約25重量%のカルシウム含有研磨剤を含む。
【0032】
好ましくは、カルシウム含有研磨剤は炭酸カルシウムである。より好ましくは、カルシウム含有研磨剤は、微粉砕天然白亜、粉砕炭酸カルシウム、沈殿炭酸カルシウム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。カルシウム含有研磨剤の重量パーセントの非限定的な例としては、組成物の約15重量%、約20重量%、約25重量%、又は約30重量%が挙げられ、好ましくはカルシウム含有研磨剤は炭酸カルシウムである。
【0033】
シリカ研磨剤
様々な種類のシリカ歯科用研磨剤は、歯のエナメル質又は象牙質を過度に研磨せずに優れた歯の洗浄及び艶出性能という独特の効果があるので好ましい。本明細書におけるシリカ研磨剤用研摩材料、並びに他の研磨剤は、約0.1~約30マイクロメートル、好ましくは約5~約15マイクロメートルの範囲の平均粒径を概ね有する。研磨剤は、沈降性シリカ、又は米国特許第3,538,230号(Paderら、1970年3月2日発行)、及び同第3,862,307号(DiGiulio、1975年1月21日発行)に記載されているシリカキセロゲルのようなシリカゲルとすることができる。W.R.Grace&Company,Davison Chemical Divisionから「Syloid」という商品名で販売されているシリカキセロゲルが好ましい。J.M.Huber Corporationから「Zeodent(登録商標)」という商品名で販売されているもののような沈降性シリカ材料、特に「Zeodent(登録商標)119」、「Zeodent(登録商標)118」、「Zeodent(登録商標)109」、及び「Zeodent(登録商標)129」の名称を有するシリカも好ましい。本発明の練り歯磨きにおいて有用なシリカ歯科用研磨剤のタイプは、1982年7月29日に発行されたWasonの米国特許第4,340,583号;及び1997年2月18日に発行された同一出願人による米国特許第5,603,920号、1996年12月31日に発行された同第5,589,160号、1997年8月19日に発行された同第5,658,553号、1997年7月29日に発行された同第5,651,958号、並びに2001年6月25日に出願された米国仮出願第60/300766号に、より詳細に記載されている。
【0034】
一態様では、組成物は、組成物の0重量%~約15重量%、好ましくは0重量%~約10重量%、より好ましくは0重量%~約5重量%のシリカ研磨剤を含む。好ましくは、シリカ研磨剤は、増粘シリカである。
【0035】
pH
歯磨剤組成物のpHは、約7.3超、好ましくは約8超、好ましくは約8~約11、好ましくは約8.5~約11、好ましくは約8.5~約10.5、好ましくは約8.5~約10であり得る。本発明の組成物の比較的高いpHは、フッ化物の安定性のためである。したがって、歯磨剤組成物は、フッ化物イオン源の安定性を最大化するために、pH8.0超であることが望ましい。歯磨剤のpHを評価するための方法を以下に記載する。明確にするために、分析方法は、調製されたばかりのときの歯磨剤組成物を試験することを記載しているが、本発明を特許請求する目的のために、pHは、製品の合理的なライフサイクル(製品が店舗から購入され、ユーザの自宅に持ち込まれたときを含むが、これらに限定されない)中の任意の時点で測定され得る。
【0036】
pH調整剤
本明細書における歯磨剤組成物は、有効量のpH調整剤を含んでいてもよく、好ましくはそのpH調整剤は、pH緩衝剤である。本明細書で使用するとき、pH調整剤は、歯磨剤組成物のpHを上記のpH範囲に調整するために使用することができる剤を指す。本組成物は、組成物の約0.001重量%~約5重量%のpH調整剤を含み得る。pH調整剤としては、アルカリ金属水酸化物、水酸化アンモニウム、有機アンモニウム化合物、炭酸塩、セスキ炭酸塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、イミダゾール、及びこれらの混合物を挙げることができる。具体的なpH剤としては、リン酸一ナトリウム(リン酸一塩基性ナトリウム又は「MSP」)、リン酸三ナトリウム(リン酸三塩基性ナトリウム十二水和物又は「TSP」)、安息香酸ナトリウム、安息香酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルカリ金属炭酸塩、炭酸ナトリウム、イミダゾール、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、グルコン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、又はリン酸が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、リン酸はまた、カルシウムイオンキレート活性を有し得るので、(モノフルロリン酸塩を含有する製剤において)若干のモノフルオロリン酸塩の安定化をもたらす。
【0037】
歯磨剤のpHを評価するための方法を説明する。pHは、自動温度補償(ATC)プローブを用いてpHメータによって測定する。pHメータは、0.001pH単位で読み取りが可能である。pH電極は、以下の、(i)Orion Ross Sure-Flowコンビネーション:ガラス体-VWR#34104-834/Orion#8172BN又はVWR#10010-772/Orion#8172BNWP、エポキシ体-VWR#34104-830/Orion#8165BN又はVWR#10010-770/Orion#8165BNWP、セミミクロエポキシ体-VWR#34104-837/Orion#8175BN又はVWR#10010-774/Orion#3175BNWP、又は(ii)Orion PerpHectコンビネーション:VWR#34104-843/Orion#8203BNセミミクロガラス体、又は(iii)適切な同等物のうちの1つ、から選択することができる。自動温度補償プローブはFisher Scientific、カタログ#13-620-16である。
【0038】
歯磨剤の25重量%スラリーを脱イオン水で調製し、その後、SORVALL RC 28S遠心分離器及びSS-34ロータ(又は同等の重力、24149g力で)を使用して、15000回転/分で10分間遠心分離する。1分後に上清中のpHを測定するか、測定値が安定してから測定する。各pH評価後、電極を脱イオン水で洗浄する。いかなる過剰な水も、実験室グレードのティッシュで拭き取る。問題がない場合は、電極をpH7の緩衝液又は適切な電極保管液に浸漬しておく。
【0039】
保湿剤
本明細書の組成物は、比較的少量の保湿剤を含有するか、あるいは更には保湿剤を実質的に含まないか又は全く含まない。保湿剤レベルの非限定的な例としては、歯磨剤組成物の約0.1重量%、約0.5重量%、約1重量%、約5重量%、約10重量%以下、又は0重量%が挙げられる。理論に束縛されるものではないが、保湿剤(例えば、ソルビトール/グリセロール)の存在は、多くの水及び高濃度の炭酸塩を含有する本発明の歯磨剤配合物において、歯垢へのフッ化物の取り込みにおいて否定的な役割を果たす場合がある。これらの歯磨剤組成物中のソルビトール/グリセロールの濃度が低ければ、より優れたフッ化物の取り込みの結果がもたらされる。好ましくは、本発明の歯磨剤組成物は、組成物の0重量%~約10重量%の保湿剤を含み、その保湿剤はソルビトール、グリセロール、又はこれらの混合物から選択され、より好ましくは、組成物は、組成物の0重量%~約7重量%、好ましくは0重量%~約5重量%の当該保湿剤を含む。一態様では、組成物は、保湿剤を実質的に含まない。
【0040】
本発明の目的のための用語「保湿剤」としては、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、ブチレングリコール、プロピレングリコール、又はこれらの混合物などの食用多価アルコールが挙げられる。一態様では、保湿剤はポリオールであり、好ましくは、ポリオールは、ソルビトール、グリセリン、又はこれらの混合物から選択される。更に別の実施例では、保湿剤はソルビトールである。理論に束縛されるものではないが、低濃度(すなわち、約2重量%以下)の保湿剤を含有する歯磨剤組成物を有する潜在的な利点は、グリセロール又はソルビトールなどの保湿剤を含まないこれらの歯磨剤組成物が、高濃度のそのような保湿剤を有する組成物と比較して、フッ化物のより良い取り込みを提供し得ることである。一態様では、本発明の歯磨剤組成物は、組成物の0重量%~約2重量%、好ましくは0重量%~約1重量%、より好ましくは0重量%~約0.5重量%のグリセリン及び/又はソルビトールを含む。一態様では、組成物は、好ましくは、グリセリン及びソルビトールのいずれも実質的に含まない。
【0041】
増粘系
本発明の歯磨剤組成物は、増粘系を含んでいてよい。好ましくは、歯磨剤組成物は、組成物の約0.5重量%~約10重量%、好ましくは約0.8重量%~約5重量%、より好ましくは約1重量%~約5重量%の増粘系を含む。より好ましくは、増粘系は、増粘ポリマー、増粘シリカ、又はこれらの混合物を含む。更により好ましくは、増粘系が増粘ポリマーを含む場合、増粘ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、直鎖硫酸化多糖類、天然ガム、又はこれらの混合物から選択される。また更により好ましくは、増粘系が増粘ポリマーを含む場合、増粘ポリマーは、(a)組成物の約0.01重量%~約3重量%のカルボキシメチルセルロース(carboxymethyl cellulose、「CMC」)、好ましくは組成物の約0.1重量%~約2.5重量%のCMC、より好ましくは組成物の約0.5重量%~約1.7重量%のCMC、(b)組成物の約0.01重量%~約2.5重量%、好ましくは約0.05重量%~約2重量%、より好ましくは約0.1重量%~約1.5重量%の直鎖硫酸化多糖類(ただし好ましくは、直鎖硫酸化多糖類はカラギーナンである)、(c)組成物の約0.01重量%~約3重量%、好ましくは約0.1重量%~約2重量%、より好ましくは約0.2重量%~約1.8重量%の天然ガム、又は(d)これらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
好ましくは、増粘系が増粘シリカを含む場合、増粘シリカは、組成物の約0.01重量%~約8重量%、好ましくは約0.1重量%~約5重量%、好ましくは約1重量%~約3重量%である。
【0043】
好ましくは、直鎖硫酸化多糖類は、カラギーナン(カラゲナンとしても知られている)である。カラギーナンの例としては、κ-カラギーナン、ι-カラギーナン、λ-カラギーナン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0044】
一態様では、増粘シリカは、ケイ酸ナトリウム溶液から、酸で不安定化して超微粒子を得ることによって得られる。市販されている一例は、Huber Engineered MaterialsのZEODENT(登録商標)ブランドのシリカ(例えば、ZEODENT(登録商標)103、124、113、115、163、165、167)である。
【0045】
一態様では、CMCは、セルロースから、アルカリ及びモノクロロ酢酸又はそのナトリウム塩で処理することによって調製される。異なる種は、商業上、粘度によって特徴付けられる。市販されている一例は、Ashland Special Ingredients製のAqualon(商標)ブランドのCMC(例えば、Aqualon(商標)7H3SF、Aqualon(商標)9M3SF、Aqualon(商標)TM9A、Aqualon(商標)TM12A)である。
【0046】
好ましくは、天然ガムは、カラヤガム、アラビアガム(アカシアガムとしても知られている)、トラガカントガム、キサンタンガム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくは、天然ガムは、キサンタンガムである。キサンタンガムは、細菌キサントモナスカメストリス(Xanthomonas camestris)によって分泌される多糖類である。一般に、キサンタンガムは、それぞれ2:2:1のモル比でグルコース、マンノース、及びグルクロン酸を含む、五糖繰り返し単位から構成される。(モノマーの)化学式は、C35H49O29である。一態様では、キサンタンガムは、CP Kelco Inc(Okmulge,US)製である。
【0047】
一態様では、増粘ポリマーは、カルボキシメチルセルロース、直鎖硫酸化多糖、天然ゴム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
粘度
好ましくは、本発明の歯磨剤組成物は、約200,000センチポアズ~約850,000センチポアズ(「cP」)の粘度範囲を有する。粘度を評価するための方法を記載する。粘度計はBrookfield(登録商標)粘度計、Brookfield「Helipath」スタンドを有するモデルDV-I Primeである。粘度計をHelipathスタンド上に置き、水準器を介して水平化する。Eスピンドルを取り付け、粘度計を2.5RPMに設定する。スピンドルを取り外し、粘度計をゼロにし、Eスピンドルを取り付ける。次いで、測定を開始する前に、クロスピースがペーストに部分的に沈むまでスピンドルを下げる。粘度計及びヘリパスの電源スイッチを同時にオンにして、スピンドルの下向きの回転を開始する。タイマーを48秒に設定し、モータ及びヘリパスと同時にタイマーをオンにする。48秒後に読み取りを行う。読み取り値はcPである。
【0049】
ポリエチレングリコール
本発明の組成物は、任意選択的に、組成物の様々な重量パーセントの、並びに様々な平均分子量の範囲のポリエチレングリコール(「PEG」)を含んでいてもよい。本発明の一態様では、組成物は、組成物の約0.1重量%~約5重量%、好ましくは約0.5重量%~約4重量%、より好ましくは約1重量%~約3重量%のPEGを含む。本発明の別の一態様では、PEGは、約100~約1600、好ましくは約200~約1000、好ましくは約400~約800、好ましくは約500~約700ダルトンの平均分子量の範囲を有するものである。PEGは、一般式:H-(OCH2CH2)n-OHを有するエチレングリコール等価物へのエチレンオキシドの付加反応によって形成される水溶性直鎖ポリマーである。PEGの1つの供給元は、CARBOWAX(商標)というブランド名のDow Chemical Companyである。理論に束縛されるものではないが、歯磨剤組成物中にいくらかのPEGを有することは、物理的安定性を助けることができる。
【0050】
界面活性剤
本明細書の歯磨剤組成物は、界面活性剤を含んでよい。界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、両性、双極性、カチオン性界面活性剤、又はこれらの混合物から選択することができる。組成物は、界面活性剤を、組成物の約0.01重量%~約10重量%、約0.025重量%~約9重量%、約0.05重量%~約5重量%、約0.1重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2重量%、又は約0.1重量%~約1重量%の濃度で含んでよい。アニオン性界面活性剤の非限定的な例としては、米国特許出願公開第2012/0082630A1号の段落32、33、34、及び35に記載されているものが挙げられ得る。双性イオン性又は両性界面活性剤の非限定的な例としては、米国特許出願公開第2012/0082630A1号の段落36に記載されているものが挙げられ得る。カチオン性界面活性剤としては、上記参照文献の段落37に記載のものが挙げられ得る。非イオン性界面活性剤としては、上記参照文献の段落38に記載のものが挙げられ得る。好ましい界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、コカミドプロピルベタイン、又はこれらの混合物が挙げられる。一態様では、組成物は、組成物の約0.1重量%~約5重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.3重量%~約3重量%、好ましくは約1.2重量%~約2.4重量%、好ましくは約1.2重量%~約1.8重量%、好ましくは約1.5重量%~約1.8重量%のアニオン性界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate、SLS)を含む。
【0051】
着色剤
本明細書の組成物は、着色剤を含んでよい。二酸化チタンは、着色剤の一例である。二酸化チタンは、組成物に不透明度を加える白色粉末である。着色剤、例えば二酸化チタンは、一般に、組成物の約0.25重量%~約5重量%を構成し得る。
【0052】
風味料
本明細書の組成物は、組成物の約0.001重量%~約5重量%、好ましくは約0.01重量%~約4重量%、好ましくは約0.1重量%~約3重量%、好ましくは約0.5重量%~約2重量%、好ましくは約1重量%~約1.5重量%、好ましくは約0.5重量%~約1重量%の風味料を含み得る。用語「風味料」は、最も広範な意味で使用され、風味成分、感覚剤、又はこれらの組み合わせを含む。風味成分としては、米国特許出願公開第2012/0082630A1号、段落39に記載されているものが挙げられ得、感覚剤としては、段落40~45に記載のものが挙げられ得るが、それらは参照により本明細書に組み込まれる。(上記のような)「甘味料」は、風味料の定義から除外される。
【0053】
試験方法:バイオフィルムの構造及び厚さを測定するためのアッセイ
バイオフィルムの細胞外ポリマー物質(EPS)マトリックスの不安定化及びデンタルバイオフィルムの厚さを、バイオフィルム内の標識されたカルシウム及びEPSから放出された蛍光を測定することによって評価するために、以下のアッセイが、本発明の発明に関する口腔ケア組成物に対するインサイチューの歯垢バイオフィルムにおいて使用される。
【0054】
「バイオフィルム」という用語は、表面に付着した細胞の(複数の)層を指す。バイオフィルムは、生きていて成長している微生物細胞並びに死んでいる微生物細胞の両方を含む細菌由来のバイオフィルムであり得る。バイオフィルムは、1つの細胞型で構成されてもよく、あるいは2つ以上の細胞型で構成されてもよく、例えば、多種多様な細菌由来コミュニティであるバイオフィルム複合体であってもよい。具体的なタイプのバイオフィルムは、ヒトの口内の歯の表面上に典型的に形成されるバイオフィルムである、「デンタルバイオフィルム」(本明細書では互換的に使用される「歯垢バイオフィルム」としても知られる)である。歯垢バイオフィルム内の細菌は、有意に異なる生理学的特徴、例えば、洗剤及び抗生物質に対する耐性が強化されていることなどを有しているため、バイオフィルムの研究が非常に重要となる。口内細菌由来種の非限定的なリストが、米国特許第6,309,835B1号、第7列、12~30行目に記載されている。これらの接着性微生物細胞は、細胞外ポリマー物質(「EPS」)の自己生産マトリクス内に埋め込まれていることが多い。EPSは、バイオフィルム微生物が埋め込まれた微生物起源のバイオポリマーである。J.Bacteriol.2007,189(22):7945。バイオフィルム細胞外ポリマー物質は、一般的に、カルシウム、細胞外DNA、タンパク質、及び多糖類で構成される高分子集塊である。
【0055】
アッセイの詳細を以下に説明する。
【0056】
(a)バイオフィルムの増殖のための基質
インサイチューでのバイオフィルムの増殖にはヒドロキシアパタイト(HA)ディスクを使用する。HAディスクは、各ディスクに3つの平行な溝(すなわち、2つの側方溝の幅200μm、深さ200μm、中央溝の幅500μm及び深さ500μm)を有するように設計される。対象の口にディスクを取り付けるとき、一般に歯垢が蓄積する傾向がありクリーニングが困難な領域である、歯間の隣接歯間間隙を模倣するように、これらの溝を垂直に維持する。このモデルは、溝からのそのままの状態での歯垢の収集を可能にする。HAディスクは、Shanghai Bei’erkang biomedicine limited company(Shanghai,China)によって製造される。
【0057】
(b)スプリントを着用する
ヒトである対象は、スプリントを着用する。各対象は、48時間後に少なくとも9枚のHAディスクを確実に利用可能にするために、スプリント上に最大12枚までのHAディスクを装着する。このようなスプリント及びHAディスクの非限定例を
図1に示す。
図1を参照すると、デバイス(1)は、複数のHAディスク(2a~2d)を保持する。特定の例では、
図2を参照すると、HAディスク(201)は、3本の平行な溝(203)を有する(2本の側方溝(203a及び203c)は、幅300μm及び深さ300μmであるが、(2本の側方溝の間にある)中央溝(203b)は、幅500μm及び深さ500μmである)。中央溝は、HAディスクがヘッド対ヘッドの比較目的のため、2つの同形の半分のディスクに、より容易に分割することができるように、2つの側方溝よりも広くかつ深く設計されている。
図3は、内部にバイオフィルム(2005)を有する溝(2003)の断面図の概略図である。HAディスクの更なる詳細は、米国特許出願公開第2017/0056531号(例えば、段落[0019]~[0020])に記載されている。
【0058】
図3には示されていないが、ディスクは、歯間の歯間空間に後退が生じるように位置付けられ得る(この位置は歯垢を生じやすいため(クリーニングの困難さなどを考慮する))。対象は、食事中にのみスプリントを取り外し(不透明な容器内に湿った状態でスプリントを保存する)、口腔衛生処置を実施する。その後すぐに、スプリントを再び着用する。対象は、飲用時にはストローを使用するように求められる。
【0059】
(c)HAディスクからのインサイチューのバイオフィルムの分離
全てのHAディスクは、48時間でピンセットによってスプリントから除去される。ピンセットを使用して、HAチップの縁部を保持し、HAディスクをPBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液を含有する2mL遠心管に移す。ディスクを移す前には、毎回ピンセットを十分に洗浄する(水、75%アルコール、及び次いで脱イオン水)。
【0060】
(d)練り歯磨き上清の調製
15グラムの脱イオン水を5グラムの練り歯磨き(実施例1~5のいずれか1つを使用)に添加する。完全に撹拌した後、混合物を12,000RPMで20分間遠心分離する。上清を使用の1日前に調製し、4℃で保管する。
【0061】
(e)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
HAディスクをスプリントから除去した後に実施する。様々な本発明の組成物及び比較組成物によるエクスビボ処置に、HAディスクを使用する。対象の上清で処置し、微生物蛍光プローブ及び第一スズ蛍光プローブ(例えば、米国特許出願公開第2018/0072944A1号、Shi et al.に記載されているもの)で標識した後、溝内のバイオフィルムを、共焦点レーザー走査顕微鏡検査(confocal laser scanning microscopy、CLSM)によって(以下に記載されるように)測定する。
【0062】
(f)ディスクの調製
HAディスクをPBS溶液ですすぎ、各HAディスクをピンセットで半分に分割し2つにする。その後、半分のディスクのそれぞれを500~1000μLのPBS溶液に1分間静置する。各ディスクを、PBS溶液又は練り歯磨き上清のいずれかによって2分間処理する。各ディスクをピンセットで保持し、1mLのPBS溶液中で前後に10回揺り動かして洗浄し、次いでこの洗浄サイクルを繰り返す。次いで、各ディスクを500~1000μLのPBS溶液に5分間静かに浸漬する。
【0063】
PBS及び/又は口腔ケア組成物(例えば、練り歯磨き)上清で処置し、特定の蛍光プローブで標識した後、溝内のバイオフィルムを共焦点レーザー走査顕微鏡検査(CLSM)によって測定する。
【0064】
(g)蛍光プローブ染色及び顕微鏡検査
「イオン蛍光プローブ」は、1つの種類のイオンに特異的に結合し、特定の波長で蛍光を発する蛍光プローブを意味する。近年、生化学及び環境に関する研究において潜在的に用途があるため、非常に高いイオン選択性を有する、新しい蛍光プローブの開発が、有意に強化されている。イオンの光学的検出のために、多くの種類の信号伝達メカニズム、例えば、光誘起電子/エネルギー移動(photo-induced electron/energy transfer:PET)、分子内電荷移動(intramolecular charge transfer:ICT)、蛍光共鳴エネルギー移動(fluorescence resonance energy transfer:FRET)などが提案され、利用されてきた。これらの蛍光プローブの一部のものは、蛍光バイオイメージングにも適用することができるが、細胞損傷をほとんど引き起こさず、生細胞の高速空間分析で高感度のものである。具体的には、分析物の存在下及び非存在下で異なる波長での2つの発光強度の同時記録を提供するFRET撮像は、分子レベルで複雑な生物学的プロセスを可視化するための容易な方法を提供している。この技術は、バイオフィルム及び人体におけるイオンの、生理学的機能の研究又は病因の研究に適しているように思われる。
【0065】
蛍光標識カルシウムプローブは、Ca2+に結合すると、蛍光の増加を呈する分子である。バイオフィルムは、カルシウム蛍光プローブで標識される。バイオフィルムを標識するのに好適なカルシウム蛍光プローブの例は、以下の化合物のうちのいずれか1つ以上であり得る。
(a)Fluo-3(商標)、AM(商標)、細胞透過性蛍光染色剤、
(b)Fluo-3(商標)、五カリウム塩、細胞不透過性蛍光染色剤、
(c)Fluo-4(商標)、AM(商標)、細胞透過性蛍光染色剤、
(d)Fluo-4(商標)、五カリウム塩、細胞不透過性蛍光染色剤、
(e)Fluo-4 Direct(商標)カルシウムアッセイキット、
(f)Mag-Fluo-4(商標)、四カリウム塩、細胞不透過性蛍光染色剤、及び
(g)Fluo-5F(商標)、AM(商標)、細胞透過性蛍光染色剤。
これらのプローブのうちの1つ以上は、ThermoFisher Scientific Company(Waltham、MA)から入手可能であり得る。
【0066】
Fluo-3(商標)を使用して、Ca2+信号伝達の空間的ダイナミクスを画像化する。バイオフィルムは、溶解させたプローブをバイオフィルムに直接添加することによって、カルシウムプローブのAM(商標)エステル形態で処置され得る。Fluo-3(商標)、AM(商標)、細胞透過性蛍光プローブは、共焦点顕微鏡法、フローサイトメトリー、及びマイクロプレートスクリーニングの用途(吸収/発光最大値は、約506/526nm)を使用して、細胞内及び細胞外カルシウム染色法に使用される。Concanavalin A(商標)(Con A)、Alexa Fluor(登録商標)594Conjugateは、バイオフィルムのEPSを染色するための信頼できる代替物であることが報告されている。Con AのAlexa Fluor(登録商標)594コンジュゲートは、Alexa Fluor(登録商標)594色素の明るい赤色蛍光を示す(吸収/発光最大値は約590/617nm)。Concanavalin A(商標)、Alexa Fluor(登録商標)594Conjugateは、バイオフィルムのEPS部分に豊富に存在する、α-マンノピラノシル残基及びα-グルコピラノシル残基に選択的に結合する。
【0067】
1つの具体例は、Concanavalin A(商標)、Fluorescein Conjugate(商標)であり、励起波長は494nmであり、最大発光は518nmで検出される。これらのEPS蛍光プローブは、広く入手可能であり、EPSの場所及び/又は量を定量的に決定するためにそれらをどのように使用するかの手順詳細も、広く入手可能である。
【0068】
バイオフィルムを標識するのに好適なEPS蛍光プローブの例は、以下の化合物のうちの任意の1つであり得る:
(a)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Alexa Fluor(登録商標)350Conjugate(商標)、
(b)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Alexa Fluor(登録商標)488Conjugate(商標)、
(c)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Alexa Fluor(登録商標)594Conjugate(商標)、
(d)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Alexa Fluor(登録商標)633Conjugate(商標)、
(e)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Alexa Fluor(登録商標)647Conjugate(商標)、
(f)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Fluorescein Conjugate(商標)、
(g)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Oregon Green(登録商標)488Conjugate(商標)、
(h)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)テトラメチルローダミンConjugate(商標)、
(i)Molecular Probes(商標)Concanavalin A(商標)Texas Red(登録商標)Conjugate(商標)。
これらのプローブのうちの1つ以上は、ThermoFisher Scientific Company(Waltham、MA)から入手可能であり得る。
【0069】
処置及び浸漬後、各半分のディスク標本を、Concanavalin A(商標)、Alexa Fluor(登録商標)594Conjugateプローブ(5μMのFluo-3(商標)及び5μMのCon-A(商標)を含有する)とともに、Fluo-3(商標)、AM(商標)、細胞透過性蛍光プローブの染料混合溶液を用いて、暗所で30分間かけて染色する。染色後、各標本を、500~1000μLのPBS溶液に浸漬して、2分間静置する。Fluo-3(商標)、AM(商標)/Concanavalin A(商標)、Alexa Fluor(登録商標)594 Conjugate染料で染色した試料について、以下のパラメータを使用する:λex=506nm/590nm、λem=526/617nm、20倍対物レンズ、及び表面細菌の底部から60μmにわたってステップサイズ=3μmで走査する。
【0070】
(h)共焦点レーザー走査顕微鏡検査
Leica(商標)TCS SP8 AOBS分光共焦点顕微鏡を使用する。共焦点システムは、Leica(商標)DM6000B直立顕微鏡及びLeica(商標)DMIRE2反転顕微鏡からなる。直立スタンドは、スライド載置した標本を含む用途に使用されるが、37℃のインキュベーションチャンバ及びCO2富化付属品を有する反転スタンドには、生細胞向けの用途がある。この顕微鏡は、交換可能なレーザー走査ヘッド、及びそれ自体の電気モータ駆動ステージに加えて、焦点(Z)平面における急速撮像を容易にする、ガルバノメータ駆動型高精度Zステージを共有する。更に当該顕微鏡は、落射蛍光に加えて、明視野、偏光光及び微分干渉コントラストを含む様々な透過光コントラスト法に対応しており、5倍、20倍、40倍、63倍(油浸及び乾燥)並びに100倍(油浸)Leica(商標)対物レンズを装備している。
【0071】
レーザー走査及び検出システムについて説明する。TCS SP8 AOBS共焦点システムには、4とおりのレーザー(1つのダイオード、1つのアルゴン及び2つのヘリウムネオンレーザー)が供給され、これにより電磁スペクトルのUV、可視及び近赤外範囲内の広範な蛍光色素を励起させることが可能である。レーザー走査ヘッドに音響光学的調整可能フィルタ(acousto-optical tunable filter、AOTF)、音響光学ビームスプリッタ(acousto-optical beam splitter、AOBS)及び4つのプリズム分光光度計検出器を組み込むという設計により、3とおりの蛍光色素の同時励起及び検出が可能である。直立顕微鏡も、透過光検出器を有しており、透過光画像を蛍光記録上に重ね合わせることが可能である。
【0072】
Leica(商標)共焦点ソフトウェアLAS AF3.3.0を使用する。共焦点は、デュアルモニターを備え、Leica(商標)共焦点ソフトウェアを実行している標準的なPentium搭載PCによって制御される。Leica共焦点ソフトウェアLAS AF3.3.0(Leica Lasertechnik GmbH(Heidelberg,Germany)から入手可能)は、3Dの再構成及び測定、生理学的記録及び解析、タイムラプス、蛍光色素の共局在、FRAP及びFRETなどの光退色技術、スペクトル不混合及び多色回復(multicolour restoration)を含む、多次元での一連の画像の取得、処理及び解析のためのインターフェースを提供する。
【0073】
(i)画像分析
Ca:EPS;Fluo-3(商標)/Con-A(商標)染色標本の両方の蛍光チャネルは、緑色ピクセル(カルシウム)対赤色ピクセル(EPS)の蛍光強度比を定量化するように選択され、Con-A(商標)蛍光チャネルは、バイオフィルム厚を測定するように選択される。これによって、各標本のCon-A(商標)蛍光チャネルの6つの選択されたフィールドを評価する。これらのフィールドは、観察者の一般的な検査後の試料全体を代表するものと見なされる。距離は、バイオフィルムの表面からその基部まで測定され、フィールドの厚さを測定し、続いて対応する標本のバイオフィルムの平均厚さを計算する。
【実施例】
【0074】
本発明の歯磨剤組成物の非限定的な例(実施例5~7)、並びに練り歯磨き組成物の形態の比較例(例2~4並びに市販例A及びB)及び対照例(例1)が以下に提供される。
【0075】
【0076】
以下の表2は、対照例1、比較例2~4、市販例A~B、及び本発明の実施例6について、上記の試験方法に従ったCa/EPSの蛍光比及びバイオフィルム厚に関するデータを提供する。
【0077】
【表2】
1市販例A:以下の成分を有するParodontax Original(商標)(ロット番号190796KWA):重炭酸ナトリウム、水、グリセリン、アルコール、コカミドプロピルベタイン、ハッカ油、セイヨウハッカ(Mentha Piperita)油、キサンタンガム、ムラサキバレンギク(Echinacea Purpurea)花/葉/茎汁、ラタニア(Krameria Trianda)抽出物、フッ化ナトリウム、カミツレ(Chamomilla Recutita)抽出物、セージ(Salvia Officinalis)油、モツヤクジュ(Commiphora Myrrha)抽出物、リモネン、サッカリンナトリウム、リナロール、CI77491。
2市販例B:以下の成分を有するArm&Hammer Sensitive Pro Repair(商標)(ロット番号FE9092D 2022/03):重炭酸ナトリウム、PEG/PPG-38/8コポリマー、硫酸カルシウム、PEG/PPG-116/66コポリマー、シリカ、ラウリル硫酸ナトリウム、アロマ、サッカリンナトリウム、リン酸二カリウム、PEG-8、トチャカ(Chondrus Crispus)粉末、フッ化ナトリウム、リモネン、CI77891。
【0078】
更に、表1に参照されるように、比較例2及び4並びに本発明の実施例5~6を、市販例A及びBと共に、18人の訓練された官能検査員を使用する無作為化ブラッシング順序の一対比較試験である方法を使用して、塩味、発泡の量、及び使用中の分散について評価する。各々の割り当てられた歯磨剤組成物を、Oral BのNavigatorブラシ上に分注し、管理された2分間ブラッシングする。各検査員は、以下に示す属性等級尺度に従って0~5の等級スコアを使用して標準質問表に官能属性を記録した。スコア0が官能的に最も好ましくなく、5が官能的に最も好ましい。結果を以下の表3に示す。
【0079】
【表3】
塩味属性等級尺度:塩味がきつく不快=0、中程度の許容可能な塩味=3、塩味なし=5。
発泡量属性等級尺度:発泡不良、発泡が少ない=0、中程度の発泡=3、
発泡良好、発泡が多い=5。
分散性属性等級尺度:分散が悪い、不良、困難=0、中程度の分散性=3、良好に容易に分散する泡=5。
【0080】
上記表3に示す塩味データは、比較例2(重炭酸塩を含まない)は塩味を呈しないが、比較例4(20%の重炭酸塩及び0.5%の中強度甘味料を含む)は不快な塩味を呈することを示す。また、市販例A及びB(高い重炭酸塩レベルを有し、中強度甘味料のみを含む)も不快な塩味を呈する。本発明の実施例5及び6(高強度甘味料及び中強度甘味料の組み合わせと共に40%の重炭酸塩を含む)は、塩味をほとんど呈さず、改善された味を呈する。
【0081】
図4に示すデータは、40%w/wの重炭酸ナトリウムを含有し、中強度甘味料のみを異なるレベルで使用した歯磨剤の官能評価を示す。驚くべきことではないが、中強度甘味料が増加すると、重炭酸塩歯磨剤の塩味が減少する。しかしながら、
図4に示すように、約0.5%w/wのレベルの中強度甘味料を添加すると、レベルを増加させて塩味をそれ以上減少させることはできない。
【0082】
驚くべきことに、
図5に提示されるデータは、
図5に示すように高強度甘味料を中強度甘味料と共に最適レベルで使用した際の相乗的組み合わせ効果を示す。塩味を低減するが過度に甘くはない最適なバランスは、約1:0.15~約1:1.2の中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比によって、及び/又は(a)組成物の約15重量%~約55重量%の水と、(b)当該組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、(c)組成物の約0.01重量%~約1重量%の、約150~約350の甘味指数を有する中強度甘味料と、(d)組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の、約500~約10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と、を含む歯磨剤組成物を提供することによって達成することができる。
【0083】
表2及び表3は、より好ましい官能体験を可能にしながら、中強度甘味料及び高強度甘味料を重炭酸ナトリウムと組み合わせてCa:EPS比及びバイオフィルム厚の両方を減少させる相乗効果を示す。
【0084】
表1中の対照例1は、72.5μmの最終バイオフィルム厚及び2.39のCa:EPSバイオフィルム比をもたらしたリン酸緩衝液の唾液塩を表す。表1に示される比較例2及び3は、それぞれ炭酸カルシウム又はシリカ研磨剤を含有し、重炭酸ナトリウムを含まない。比較例2及び3は、それぞれ37.7μm及び35.4μmの最終バイオフィルム厚、並びに2.13及び2.05のCa:EPSバイオフィルム比をもたらした。表1に示す比較例4は、炭酸カルシウム及びシリカ研磨剤を含有し、重炭酸ナトリウム及びサッカリンナトリウム甘味料のみが存在する。比較例4は、27.8μmの最終バイオフィルム厚及び1.81のCa:EPSバイオフィルム比をもたらした。比較例2(重炭酸ナトリウムを含有しない)に対して比較例4では20重量%の重炭酸ナトリウムを含めると、バイオフィルム厚の低減及びCa:EPSの低減の改善がもたらされた。しかしながら、比較例4は、重炭酸ナトリウムの結果として、塩味についての官能等級(1)が劣っている。
【0085】
市販例Aは、67%重炭酸ナトリウム及び中強度甘味料(サッカリンナトリウム)のみを含む、Parodontax Original(商標)の商品名で販売されている市販の歯磨剤組成物である。市販例Aは、26.9μmの最終バイオフィルム厚及び1.76のCa:EPSバイオフィルム比をもたらした。市販例Aでは重炭酸ナトリウム含有量が多く、バイオフィルム厚及びCa:EPS比が減少した。しかしながら、市販例Aのこの炭酸ナトリウムの多い配合はまた、表2に示すように、塩味がきつい(0)及び発泡不良/発泡が少ない(1)という低い官能等級をもたらした。市販例Bは、無水組成物中に配合された約35%~45%の重炭酸ナトリウムを含有する、Arm&Hammer Sensitive Pro Repair(商標)の商品名で販売されている市販の歯磨剤組成物であり、28.7μmの最終バイオフィルム厚及び1.81のCa:EPSバイオフィルム比をもたらした。しかしながら、市販例Bのこの無水組成物はまた、表2に示すように、塩味(1)、発泡不良/発泡が少ない(2)、及び分散性(1)に関する低い官能等級をもたらした。
【0086】
予想外に、本発明の実施例6のように、高強度甘味料及び中強度甘味料を重炭酸ナトリウムと組み合わせることにおける相乗作用によって、最終バイオフィルム厚23.8μm、1.56のEPSバイオフィルム比、及び良好な官能経験がもたらされた。実施例6に重炭酸ナトリウムを含めることにより、比較例2に対してバイオフィルム厚及びCa:EPS比の低減における治療効果が著しく改善されたが、驚くべきことに、許容可能な塩味(4)、良好な発泡(3)、及び良好な分散性(4)と共に、高レベルの重炭酸ナトリウムに関連する官能的トレードオフを全く有していなかった。
【0087】
換言すれば、水ベースの歯磨剤組成物における中強度甘味料及び高強度甘味料と、比較的高レベルの重炭酸ナトリウム(例えば、少なくとも約20%、好ましくは約40%)との相乗作用は、市販例A及びB等の市販の高重炭酸ナトリウム歯磨剤組成物に対して改善された官能体験を有し、驚くべきことに、バイオフィルム厚の低減を改善した。
【0088】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示されない限り、そのような寸法は各々、列挙された値と、その値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0089】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することが明言されない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいずれの発明に対する先行技術であるともみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないずれの発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語のいずれの意味又は定義も、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0090】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯磨剤組成物であって、
(a)水と、
(b)前記組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、
(c)フッ化物イオン源と、
(d)約150~350の甘味指数を有する中強度甘味料と;
(e)約500~10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と;
を含み、
中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が約1:0.15~約1:1.2である、歯磨剤組成物。
【請求項2】
前記中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が、約1:0.25~約1:0.75である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項3】
前記中強度甘味料の高強度甘味料に対する重量比が、約1:0.4~約1:0.65である、請求項2に記載の歯磨剤組成物。
【請求項4】
歯磨剤組成物であって、
(a)前記組成物の約15重量%~約55重量%の水と、
(b)前記組成物の約1重量%~約60重量%の重炭酸塩と、
(c)前記組成物の約0.01重量%~約1重量%の、約150~約350の甘味指数を有する中強度甘味料と、
(d)前記組成物の約0.01重量%~約0.5重量%の、約500~約10,000の甘味指数を有する高強度甘味料と、
(e)前記組成物の約0.0025重量%~約2重量%のフッ化物イオン源と、
を含む、歯磨剤組成物。
【請求項5】
前記組成物の約10重量%~約50重量%、好ましくは約20重量%~約40重量%の重炭酸塩を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項6】
前記組成物が、前記組成物の0重量%~約10重量%、好ましくは0重量%~約5重量%の保湿剤を更に含み、前記保湿剤が、ポリオールであり、好ましくはソルビトール、グリセロール、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項7】
前記中強度甘味料が、サッカリン、アスパルテーム、ステビア、アセスルファム、それらの塩、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項8】
前記中強度甘味料が、サッカリン又はその塩である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項9】
前記組成物が、前記歯磨剤組成物の約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.2重量%~約0.6重量%、又は好ましくは約0.3重量%~約0.5重量%の中強度甘味料を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項10】
前記高強度甘味料が、スクラロース、ブラゼイン、ペンタジン、タウマチン、モネリン、ジヒドロカルコン、及びネオテーム、それらの塩、並びにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項11】
前記高強度甘味料が、スクラロース又はその塩である、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項12】
前記組成物が、前記歯磨剤組成物の約0.05重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.7重量%、好ましくは約0.1重量%~約0.5重量%、又は好ましくは約0.2重量%~約0.3重量%の高強度甘味料を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項13】
前記組成物が、前記組成物の約20重量%~50重量%、好ましくは約25重量%~約45重量%の水を更に含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項14】
前記歯磨剤組成物が、前記組成物の約0重量%~約15重量%、好ましくは約0重量%~約10重量%、又は好ましくは約0重量%~約5重量%のシリカ研磨剤を更に含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項15】
前記組成物が、約7.3超、好ましくは約7.8超、又は好ましくは約8.0超のpHを有する、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項16】
前記重炭酸塩が、重炭酸ナトリウムである、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項17】
前記歯磨剤組成物が、増粘シリカを含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項18】
前記歯磨剤組成物が、増粘ポリマーを含み、前記増粘ポリマーが、カルボキシメチルセルロース、直鎖硫酸化多糖類、天然ガム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項19】
前記組成物が、前記組成物の約5重量%~約50重量%、好ましくは約10重量%~約50重量%、又は好ましくは約15重量%~約40重量%のカルシウム含有研磨剤を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項20】
前記歯磨剤組成物が、カルシウム含有研磨剤を含み、前記カルシウム含有研磨剤が炭酸カルシウムである、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項21】
前記フッ化物イオン源が、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化アミン、フッ化ナトリウム、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項22】
前記歯磨剤組成物が、前記組成物の約0.5重量%~約1.5重量%の前記フッ化物イオン源を含む、請求項1に記載の歯磨剤組成物。
【請求項23】
前記歯磨剤組成物が、単相の練り歯磨きである、請求項1~22のいずれか一項に記載の歯磨剤組成物。
【国際調査報告】