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特表2024-512659医薬製剤におけるアニオン性キレート剤としてのリン脂質
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  • 特表-医薬製剤におけるアニオン性キレート剤としてのリン脂質 図1
  • 特表-医薬製剤におけるアニオン性キレート剤としてのリン脂質 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】医薬製剤におけるアニオン性キレート剤としてのリン脂質
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K47/24
A61K9/48
A61K47/44
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/26
A61K47/36
A61K47/42
A61K47/34
A61K47/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560274
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-20
(86)【国際出願番号】 US2022022737
(87)【国際公開番号】W WO2022212639
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/169,330
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】520355792
【氏名又は名称】アール.ピー.シェーラー テクノロジーズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】オー,ジャン ホアン,トゥイ
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ,ウィリアム,デレク
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA56
4C076BB01
4C076DD01
4C076DD09
4C076DD22
4C076DD23
4C076DD24
4C076DD26
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD57
4C076DD63
4C076DD66
4C076EE23
4C076EE30
4C076EE42
4C076EE53
4C076FF36
(57)【要約】
本明細書において、レシチンなどのアニオン性キレート剤と、塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分および遊離イオンとを組み込んだ充填物を含む剤形が開示される。遊離イオンに対するレシチンなどのアニオン性キレート剤のモル比は約0.5~約3の範囲である。また、本明細書において、塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分を含む剤形を安定化させる方法、そのような剤形を調製する方法、およびそのような剤形を使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分(API)および遊離アニオン、ならびにレシチンを含むアニオン性キレート剤を含み、前記遊離アニオンに対する前記アニオン性キレート剤のモル比は約0.5~約3の範囲である、充填物と、
シェル組成物と
を含むカプセル。
【請求項2】
前記カプセルは、40℃および3週間の保存においてその完全性を維持し、前記カプセルの前記完全性は、前記シェル組成物からの前記充填物の漏出に基づいて測定される、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記遊離アニオンは、塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硝酸塩のイオン、またはそれらの組合せである、請求項2に記載のカプセル。
【請求項4】
前記充填物は、前記充填物の総重量に対して、約0.1wt%~約50wt%のAPIを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項5】
前記充填物は、前記充填物の総重量に対して、約1wt%~約50wt%のアニオン性キレート剤を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項6】
前記遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比は、約0.8、約1.0、約1.2、約1.5または約1.8のいずれかから、約2.0、約2.2、約2.4、約2.6または約2.8のいずれかまでの範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項7】
前記レシチンは、前記レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%の正に帯電した官能基を有するリン脂質成分を含む、請求項1から6のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項8】
前記レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)のうちの1つまたは複数を含む、約10wt%~約95wt%のホスファチドを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項9】
正に帯電した官能基を有する前記リン脂質成分は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)またはそれらの混合物を含む、請求項7に記載のカプセル。
【請求項10】
正に帯電した官能基を有するリン脂質成分は、ホスファチジルコリン(PC)である、請求項9に記載のカプセル。
【請求項11】
前記充填物はさらに、グリセリド、トリグリセリド、半合成エステルグリセリド、脂肪酸、アルコール、脂肪酸エステル、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、炭水化物および共溶媒のうちの1つまたは複数、またはそれらの組合せを含む脂質ベースのマトリックスを含む、請求項1から10のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項12】
前記脂質ベースのマトリックスは、植物油を含む、請求項11に記載のカプセル。
【請求項13】
前記充填物は、前記充填物の総重量に対して、約10wt%~約90wt%の植物油を含む、請求項12に記載のカプセル。
【請求項14】
前記植物油は、前記植物油の総重量に対して、約50wt%~約95wt%の多価不飽和脂肪酸のグリセリドを含む、請求項12または13に記載のカプセル。
【請求項15】
前記植物油は、オリーブ油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ベニバナ油、大豆油のうちの1つまたは複数を含む、請求項12から14のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項16】
前記脂質ベースのマトリックスは、式R-C(=O)-OHを有する脂肪酸を含み、式中、RはC~C20であり、前記脂肪酸は完全に飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和部位を含む、請求項11から15のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項17】
前記脂肪酸は、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸のうちの1つまたは複数を含む、請求項16に記載のカプセル。
【請求項18】
前記充填物は、前記充填物の総重量に対して、約10wt%~約90wt%の脂肪酸を含む、請求項16または17に記載のカプセル。
【請求項19】
前記脂質ベースのマトリックスは、1つまたは複数のアルコール、脂肪酸エステル、またはそれらの組合せを含む、請求項11から18のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項20】
前記アルコールは、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、グリセロール、プロピレングリコールのうちの1つまたは複数を含む、請求項19に記載のカプセル。
【請求項21】
前記充填物は、前記充填物の総重量に対して、約1wt%~約90wt%のアルコールを含む、請求項19または20に記載のカプセル。
【請求項22】
前記脂肪酸エステルは、モノ-、ジ-、トリ-エステルの中鎖もしくは長鎖脂肪酸界面活性剤および/または共溶媒を含む、請求項19に記載のカプセル。
【請求項23】
前記界面活性剤および/または共溶媒は、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水添ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、スパン80、ラブラフィルM2125、ラブラゾール、ゲルシール44/14またはそれらの組合せを含む、請求項11から22のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項24】
ソフトジェルカプセルである、請求項1から23のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項25】
前記シェル組成物は、ゼラチンを含む、請求項24に記載のカプセル。
【請求項26】
前記ゼラチンは、A型ゼラチン、B型ゼラチンまたはそれらの組合せである、請求項25に記載のカプセル。
【請求項27】
前記シェル組成物は、カラギーナンを含む、請求項1から26のいずれか1項に記載のカプセル。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか1項に記載のカプセルを調製する方法であって、
前記充填物を調製することと、
前記充填物を、前記シェル組成物で封入することと
を含む、方法。
【請求項29】
塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分(API)および遊離アニオンを、レシチンを含むアニオン性キレート剤と、遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比が約0.5~約3で組み合わせて、充填物を調製することと、
前記充填物を、シェル組成物に封入することと
を含む、カプセルを安定化させる方法。
【請求項30】
前記カプセルは、40℃および3週間の保存においてその完全性を維持し、前記カプセルの前記完全性は、前記シェル組成物からの前記充填物の漏出に基づいて測定される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分(API)および遊離アニオン、ならびにレシチンを含むアニオン性キレート剤を含み、前記レシチンは、前記レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%の正に帯電した官能基を有するリン脂質成分を含む、充填物と、
シェル組成物と
を含むカプセルであって、
前記カプセルは、40℃および3週間の保存においてその完全性を維持し、前記カプセルの前記完全性は、前記シェル組成物からの前記充填物の漏出に基づいて測定される、
カプセル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月1日に出願された米国仮特許出願第63/169,330号の優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
本開示は、塩基性または酸性の活性医薬成分と遊離アニオンとを含む医薬組成物の分野に関する。本発明はまた、このような医薬組成物の調製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
経口投与は、薬物投与にとって最も好ましい経路の一つである。十分に高用量の薬物は、消化(GI)管で溶解され、吸収され、血流を介して標的部位に到達するように分布される必要がある。新しく発見された化学物質の40%超は、溶解度が低い(BSCクラスII)、透過度が低い(BSCクラスIII)、またはその両方(BCSクラスIV)である。これらの薬剤は溶解度が低いため、溶解性に乏しく、吸収も限られている。GI管における薬物の溶解性を高めることは、創薬における課題である。水溶液中で100μg/mL未満の、溶解度の低い化合物は、通常、溶解制限があると考えられる。薬物の水溶解度を高めるために、複数の手法が用いられてきた。これらの手法の中でも、APIの塩形成は、特に塩基性化合物の創薬において一般的なアプローチである。
【0004】
活性医薬成分(API)の特定の塩はしばしば、望ましい製剤特性を達成するために形成される。API上に存在する官能基に応じて、潜在的な対イオンを選択して、塩の形態を作り出すことができる。塩形成は、融点が低いAPI(通常、遊離塩基の形態で液体である)に対して、融点を上昇させ、安定した結晶状態を維持するために用いられ得る。塩形成はまた、デリバリービークルおよび薬物の目的に応じて、薬物分子の水溶解度または親油性を高める手法としてもよく知られている(Gupta D., Bhatia D., Dave V., Sutariya V., Gupta S.V. "Salts of Therapeutic Agents: Chemical, Physicochemical and Biological Considerations." Molecules 23: 1719-1734 (2018)、以下"Gupta et. al., 2018")。酸性薬物の塩は、ナトリウム(Na+)を対イオンとして用いて作られるのが一般的である一方で、塩基性薬物の対イオンとしては塩化物(塩酸由来)が一般的である(Vioglio P.C., Chierotti M.R., Gobetto R. "Pharmaceutical aspects of salt and cocrystal forms of APIs and characterization challenges." Advanced Drug Delivery Reviews. 117: 86-110 (2017)、以下"Vioglio et. al., 2017")。
【0005】
塩の形態のAPI中の酸性または塩基性の対イオンは、液体剤形中の微小環境のpHを変化させ得る。APIと添加剤との間の反応性は、pHの変化により影響を受ける可能性があり、それはAPIの分解を引き起こし、医薬品中に著しい不純物を生成する可能性がある。遊離イオンによるpHの変化はまた、医薬品のゼラチンシェルのような担体の完全性にも影響を及ぼす可能性がある。溶液中の化学物質および薬物を安定化させるためにキレート剤を使用するのは、一般的な戦略である。キレート剤は、対イオン/遊離イオンを結合させ、製剤の物理的および化学的特性を安定化させることができる。
【0006】
最も一般的には、イオン錯体生成は、有効な金属イオンキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)およびその塩を用いた医薬製剤における重金属のキレート化に重点を置いている。しかしながら、医薬用途で使用される最も一般的なキレート剤は、カチオン性キレート剤である。現在、安全かつ有効であることが示されている医薬品用のアニオン性キレート剤の選択肢は非常に限られている。
【0007】
遊離アニオンを有する塩基性または酸性のAPIの医薬組成物を製剤化するために使用され得、長期間にわたって組成物の安定性を維持することができる、安全かつ有効なアニオン性キレート剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の特定の実施形態の目的は、塩基性のAPIおよび遊離アニオンを含み、長期間にわたって安定な剤形を提供することである。
【0009】
本開示の特定の実施形態の目的は、酸性のAPIおよび遊離アニオンを含み、長期間にわたって安定な剤形を提供することである。
【0010】
本開示の特定の実施形態の別の目的は、塩基性のAPIおよび遊離アニオンを含む剤形を長期間にわたって安定化させるための方法を提供することである。
【0011】
本開示の特定の実施形態の別の目的は、酸性のAPIおよび遊離アニオンを含む剤形を長期間にわたって安定化させるための方法を提供することである。
【0012】
本開示の特定の実施形態のさらなる目的は、塩基性のAPIおよび遊離アニオンを含み、長期間にわたって安定な剤形を調製するための方法を提供することである。
【0013】
本開示の特定の実施形態のさらなる目的は、酸性のAPIのおよび遊離アニオンを含み、長期間にわたって安定な剤形を調製するための方法を提供することである。
【0014】
本開示の特定の実施形態のさらに別の目的は、剤形中の塩基性または酸性のAPIの量を最大化し、剤形中の付加価値のない添加剤の量を最小化する剤形を調製することである。
【0015】
本開示の上記の目的および他の目的は、シェル組成物に封入された充填物を有するカプセルを対象とする本開示により達成することができ、ここで、充填物は、塩の形態の塩基性または酸性のAPIおよび遊離アニオンと共に、遊離アニオンに対するレシチンのモル比が約0.5~約3でレシチンを含むアニオン性キレート剤を含む。特定の実施形態において、遊離アニオンは、塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硝酸塩のイオン、またはそれらの組合せのうちの少なくとも1つである。特定の実施形態において、レシチンは、レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%の正に帯電した官能基を有するリン脂質成分(例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、またはそれらの混合物)を含む。
【0016】
特定の実施形態において、本開示は、シェル組成物に封入された充填物を有するカプセルを対象とし、ここで、充填物は、レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%の正に帯電した官能基を有するリン脂質成分(例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、またはそれらの混合物)を有するレシチンを含むアニオン性キレート剤、塩の形態の塩基性または酸性のAPI、および遊離アニオンを含む。
【0017】
特定の実施形態において、本開示のカプセルは、3週間にわたって40℃でその完全性を維持し、ここで、カプセルの完全性は、シェル組成物からの充填物の漏出に基づいて測定される。
【0018】
いくつかの実施形態において、本開示は、カプセルを安定化させるための方法を対象とする。特定の実施形態において、方法は、塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分(API)および遊離アニオンを、遊離アニオンに対するレシチンのモル比が約0.5~約3でレシチンを含むアニオン性キレート剤と組み合わせて、充填物を調製することと、シェル組成物に充填物を封入することとを含む。特定の実施形態において、安定化されたカプセルは、3週間にわたって40℃でその完全性を維持し、ここで、カプセルの完全性は、シェル組成物からの充填物の漏出に基づいて測定される。
【0019】
いくつかの実施形態において、本開示は、剤形(例えば、ハードカプセルまたはソフトジェルカプセル)を調製するための方法を対象とする。特定の実施形態において、方法は、塩の形態の塩基性または酸性のAPI、遊離アニオン、およびアニオン性キレート剤を含む、本明細書に記載の充填物のいずれかを調製することと、シェル組成物に充填物を封入することとを含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療有効量の、本明細書に開示されるいずれかの剤形を、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を対象とする。
【0021】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形への言及を含む。したがって、例えば、「活性医薬成分」への言及は、単一の活性医薬成分ならびに2つ以上の異なる活性医薬成分の混合物を含み、「添加剤」への言及は、単一の添加剤ならびに2つ以上の異なる添加剤の混合物などを含む。
【0022】
本明細書で使用される場合、測定量に関連する「約」という用語は、当業者が測定を行い、測定目的および測定装置の精度に見合った注意レベルを行使する際に予想される、その測定量における通常の変動を指す。ある特定の実施形態において、「約」という用語は、「約10」が9~11を含むと思われるように、言及された数±10%を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「活性剤」、「活性成分」、「活性医薬成分」および「薬物」という用語は、その目的のために政府機関によって承認されているか否かにかかわらず、治療、予防、または他の意図した効果をもたらすことを意図している任意の材料を指す。特定の薬剤に対するこれらの用語は、全ての薬学的活性剤、その全ての薬学的に許容される塩、錯体、立体異性体、結晶形態、共結晶、エーテル、エステル、水和物、溶媒和物、およびそれらの混合物を含み、その形態は薬学的に活性である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「立体異性体」という用語は、空間内のそれらの原子の配向のみが異なる個々の分子の全ての異性体の総称である。これは、エナンチオマーおよび互いに鏡像ではなく、1つまたは複数のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオマー)を含む。
【0025】
「エナンチオマー」または「エナンチオマー性」という用語は、その鏡像と重ね合わせることができず、したがって光学活性である分子であって、エナンチオマーが偏光面を一方向にある程度回転させ、その鏡像が同じ程度であるが、反対方向に偏光面を回転させる分子を指す。
【0026】
「キラル中心」という用語は、4つの異なる基が結合している炭素原子を指す。
【0027】
「患者」という用語は、治療の必要性を示唆する特定の1つ以上の症状の臨床症状を示している、ある状態に対して防止的にもしくは予防的に治療されている、または治療すべき状態と診断されている、対象、動物またはヒトを指す。「対象」という用語は、「患者」という用語の定義を含み、その他の点では健康な個体を除外しない。
【0028】
本明細書の値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、範囲内にある各個別の値を個別に言及する簡略化された方法として役立つことを単に意図し、各個別の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施できる。本明細書で提供されるありとあらゆる例、または例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に特定の材料および方法を明らかにすることを意図しており、範囲を制限するものではない。本明細書のいかなる文言も、特許請求されていない要素が開示された材料および方法の実施に不可欠であることを示すと解釈するべきではない。
【0029】
「状態」または「状態(複数)」という用語は、有効量の活性剤の対象への投与によって治療または予防できる医学的状態を指す。
【0030】
「の治療」および「治療すること」という用語は、状態の重症度の軽減もしくは停止、または状態の症状の重症度の軽減もしくは停止を含む。
【0031】
「の予防」および「予防すること」という用語は、状態の発症の回避を含む。
【0032】
「治療有効量」は、対象において、例えば、状態を治療もしくは予防するため、または状態の症状を治療するための、活性剤の量、または活性剤の組合せの量を含むことを意図している。
【0033】
「薬学的に許容される」という表現は、正当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、または合理的な利益/リスク比に見合った他の問題もしくは合併症なしに、ヒトおよび動物の組織と接触して使用するのに適している、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0034】
「持続放出」という用語は、例えば、1日1回または1日2回剤形を提供するために、一定時間にわたって放出される活性剤を指す。
【0035】
「即時放出」という用語は、薬物の溶解も吸収も遅延することも延長することも意図せずに、薬物が消化管で溶解することを可能にする剤形を指す。例えば、室温の水性媒体(pH1~8)中、USP装置1(40号メッシュバスケット)、USP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、約5分、約15分、約30分、約45分または約60分での活性剤の少なくとも85%、少なくとも90%または少なくとも95%の放出を指す。
【0036】
本開示の上記のおよび他の特徴、その性質、ならびに様々な利点は、添付される図面と併せて、以下の詳細な説明を考慮するとより明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、様々なレシチンのグレードにおける、異なるレベルのホスファチジルコリン(PC)の遊離塩化物アニオン性キレート能を示す図である。
図2図2Aは、加速安定性試験前および加速安定性試験後のレシチンを含まないソフトジェルカプセル製剤を示す図である。図2Bは、加速安定性試験前および加速安定性試験後のレシチンを含むソフトジェルカプセル製剤を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
剤形
様々な実施形態によれば、本開示は、シェル組成物に封入された充填物を含む剤形に関する。特定の実施形態において、剤形は、これらに限定されないが、ハードカプセルまたはソフトカプセル(例えば、ソフトジェルカプセル)などのカプセルでもよい。
【0039】
特定の実施形態において、充填物は、塩の形態の塩基性または酸性の活性医薬成分(API)および遊離アニオンを含む。特定の実施形態において、遊離アニオンは、塩化物、臭化物、フッ化物、硫酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、硝酸塩のイオン、またはそれらの組合せである。塩基性または酸性のAPIの「塩の形態」という用語は、塩化物(例えば、塩酸中)のような負に帯電した対イオン(アニオン)を含む化合物を指す。特定の実施形態において、遊離アニオンは、これらに限定されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩などのアミノ酸塩およびナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩などの金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩を含み得る、薬学的に許容される塩から誘導され得る。特定の実施形態において、遊離アニオンは、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、エタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩などの有機アミン塩を含む、薬学的に許容される塩から誘導され得る。
【0040】
一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、HCl塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは塩化物である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、HBr塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは臭化物である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、HF塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはフッ化物である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、硫酸(HSO)塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは硫酸水素塩(HSO )または硫酸塩(SO 2-)である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、リン酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはリン酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、ギ酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはギ酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、酢酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは酢酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、トリフルオロ酢酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはトリフルオロ酢酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、マレイン酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはマレイン酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、酒石酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは酒石酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、メタンスルホン酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはメタンスルホン酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、ベンゼンスルホン酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンはベンゼンスルホン酸塩である。一実施形態において、塩の形態の塩基性または酸性のAPIは、硝酸塩の形態のAPIであり、遊離アニオンは硝酸塩である。
【0041】
塩基性または酸性のAPIは、充填物の総重量に対して0.0001w/w%~90.0w/w%、例えば、約0.001w/w%、約0.01w/w%、約0.1w/w%、約0.5w/w%、約1.0w/w%、約3.0w/w%、約5.0w/w%、約8.0w/w%、または約10.0w/w%から、約15.0w/w%、約20.0w/w%、約25.0w/w%、約30.0w/w%、約35.0w/w%、約40.0w/w%、約50.0w/w%、約60.0w/w%、約70.0w/w%、約80.0w/w%、または約90.0w/w%の範囲の濃度で、充填物中に存在し得る。特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形は、充填物にアニオン性キレート剤を含まない比較剤形と比較して、より高濃度の塩基性または酸性のAPIを含めることを可能にする。これは、充填物にアニオン性キレート剤を含まない比較剤形は、塩の形態の塩基性または酸性のAPIから生じる高濃度の遊離アニオンの存在により、化学的または物理的に安定的でない可能性があるためであると考えられる。対照的に、本明細書に記載の剤形の充填物中のアニオン性キレート剤は、塩の形態の塩基性または酸性のAPIから生じる遊離アニオンと錯形成することにより、遊離アニオンの濃度を低下させる可能性がある。これにより、より多くの塩基性または酸性のAPIを充填物に含めることが可能になる一方で、長期間にわたって剤形の化学的および物理的安定性を依然として維持することができる。
【0042】
現在市販されているものの濃度よりも高い濃度のAPIを有する剤形は、患者が服用する剤形の単位数の減少または患者が剤形を服用する回数の減少に寄与し得るので、有益となり得る(例えば、現在市販されている剤形が1日2回の投与のための約4mgのAPIを含む場合、本開示による剤形は、1日1回の投与のための約8mgのAPIを含み得る)。
【0043】
適切なAPIは、これらに限定されないが、鎮痛消炎剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗菌剤、抗凝血剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、抗下痢剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風剤、降圧剤、抗マラリア剤、抗偏頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗腫瘍剤および免疫抑制剤、抗原虫剤、抗リウマチ剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤および神経弛緩剤、β遮断薬、心臓強心薬、コルチコステロイド、咳止め薬、細胞毒性薬、鬱血除去薬、利尿薬、酵素、抗パーキンソン病薬、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、脂質調整剤、局所麻酔剤、神経筋剤、硝酸塩および抗狭心症剤、栄養剤、オピオイド鎮痛剤、経口ワクチン、タンパク質、ペプチドおよび遺伝子組換え医薬品、性ホルモンおよび避妊薬、殺精子剤、刺激剤ならびにそれらの組合せを含む。
【0044】
特定の実施形態において、適切なAPIは、これらに限定されないが、イブプロフェン、ジクロフェナク、デキストロメトルファン、コリンおよびそれらの組合せなどを含む。
【0045】
特定の実施形態において、充填物はさらに、アニオン性キレート剤を含む。特定のリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン)は、アニオン塩形態(HCl塩など)のAPIキレート剤として候補となり得る。リンを含む脂質は全てリン脂質と呼ばれる。リン脂質は表面活性のある両親媒性分子で、極性頭部基および親油性の尾部を含む。リン脂質の分子構造は、グリセロール骨格を含み、それは1位および2位は脂肪酸、3位はリン酸でエステル化されている。例示的なリン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)を含む。PCおよびPEは双性イオンであり、pH7で中性電荷を有する。
【0046】
粗植物油源から分離された、トリグリセリド、脂肪酸および炭水化物のような様々な量の他の物質と組み合わされ、アセトン不溶性物質を50%以上含む、PC、PE、PSおよびPIのようなホスファチドの混合物は、米国薬局方(USP)の定義に従ってレシチンと定義される(Hoogevest P. and Wendel A. "The use of natural and synthetic phospholipids as pharmaceutical excipients." European Journal of Lipid Science and Technology. 116(9): 1088-1107 (2014)、以下"van Hoogevest et. al, 2014")。
【0047】
特定の実施形態において、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE)などのレシチン中のリン脂質成分は、アニオン性キレート剤として作用することができる。第3級アミンおよび第4級アミンの正電荷は、塩の形態の塩基性または酸性のAPI(塩化物アニオンなど)によって生成される遊離アニオンと結合することができ、充填物および(充填物を封入する)シェル組成物の化学的安定性に対する遊離アニオンの影響を最小限に抑えることができる。
【0048】
特定の実施形態において、充填物は、遊離アニオン(塩の形態の塩基性または酸性のAPI由来)およびレシチン(またはアニオン性キレート剤の他の供給源)を、遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比が約0.5~約3となる量で含む。特定の実施形態において、遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比は、約0.5、約0.8、約1.0、約1.2、約1.5もしくは約1.8のいずれかから、約2.0、約2.2、約2.4、約2.6もしくは約2.8のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲である。
【0049】
特定の実施形態において、充填物は、APIおよびホスファチジルコリン(またはアニオン性キレート剤の他の供給源)を、APIに対するアニオン性キレート剤(例えば、ホスファチジルコリン)のモル比が約1:1~約1:50、約1:2~約1:45、約1:3~約1:40、約1:4~約1:35、約1:5~約1:30もしくは約1:5~約1:25、またはその中の任意の部分範囲もしくは単一値となる量で含む。特定の実施形態において、レシチンは、レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%の正に帯電した官能基を有するリン脂質成分(例えば、ホスファチジルコリン(PC)およびホスファチジルエタノールアミン(PE))を含む。一実施形態において、レシチンは、レシチンの総重量に対して、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)およびホスファチジルセリン(PS)のうちの1つまたは複数を含む、約10wt%~約95wt%のホスファチドを含む。
【0050】
一実施形態において、レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、またはそれらの混合物を含む(例えば、レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%)。一実施形態において、レシチンは、ホスファチジルコリン(PC)を含む(例えば、レシチンの総重量に対して、約10wt%~約95wt%)。
【0051】
特定の実施形態において、リン脂質成分、もしくは正に帯電した官能基を有するリン脂質成分、またはPC、PE、PS、もしくはPIのいずれか1つもしくは複数の濃度は、レシチンの総重量に対して、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約35wt%、約40wt%もしくは約45wt%のいずれかから、約50wt%、約55wt%、約60wt%、約65wt%、約70wt%、約75wt%、約80wt%、約85wt%もしくは約90wt%のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲でもよい。
【0052】
特定の実施形態において、充填物中のアニオン性キレート剤の濃度は、充填物の総重量に対して、約1wt%、約3wt%、約5wt%、約8wt%、約10wt%、約12wt%、約15wt%、約18wt%、約20wt%もしくは約25wt%のいずれかから、約28wt%、約30wt%、約33wt%、約35wt%、約38wt%、約40wt%、約45wt%もしくは約50wt%のいずれかまで、またはその中の任意の値もしくは範囲の範囲でもよい。
【0053】
この理論が限定的であると解釈することなく、アニオン性キレート剤は、塩の形態の塩基性または酸性のAPIによって生成される遊離アニオンに結合し、その結果、遊離アニオンが充填物の化学的安定性およびシェル組成物の物理的安定性に及ぼす影響を最小化すると考えられている。したがって、特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形は、長期間にわたって化学的および物理的に安定的である。剤形は、高温および/または高湿度で保存されてもよく、長期間にわたって化学的および物理的安定性を依然として維持し得る。特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形(例えば、本明細書に記載のカプセル)は、40℃および3週間の保存においてその完全性を維持する。カプセルに関する「完全性」という用語は、カプセルのシェル組成物からの充填物の漏出に基づいて測定される。カプセルは、シェル組成物からの充填物の漏出がない場合、その完全性を維持する。
【0054】
特定の実施形態において、シェル組成物は充填物を封入する。充填物は液体または半固体の形態であってもよく、シェル組成物は充填物を投与するために使用されてもよい。一実施形態において、カプセルはソフトジェルカプセルであり、シェル組成物は、これらに限定されないが、A型ゼラチン(酸加水分解プロセス由来)、B型ゼラチン(アルカリ加水分解プロセス由来)、またはそれらの組合せなどのゼラチンを含む。特定の実施形態において、カプセルはハードカプセルであり、シェル組成物はカラギーナンを含む。
【0055】
ゼラチンおよび/またはカラギーナンに加えて、シェル組成物はさらに、可塑剤、水、デンプン、着色剤のうちの少なくとも1つ、またはそれらの組合せを含むことができる。例えば、一実施形態において、剤形は、ゼラチン、可塑剤、水、および着色剤を含むシェル組成物を有するソフトカプセルである。別の実施形態において、剤形は、カラギーナン、可塑剤、デンプン、水、および着色剤を含むシェル組成物を有するハードカプセルである。
【0056】
剤形は、経口経路、舌下経路、頬側経路、膣経路、または直腸経路による投与に適した形態であってもよい。いくつかの実施形態において、最終剤形は、これらに限定されないが、円形、楕円形、長円形、カプセル、チューブ、および涙滴からなる群から選択される形状を有することができる。いくつかの実施形態において、最終剤形は、単一のコンパートメントを有する。他の実施形態において、最終剤形は複数のコンパートメント(チャンバーとも呼ばれる)を有する。例えば、最終剤形は、2、3、4またはそれ以上のチャンバーを有していてもよい。
【0057】
特定の実施形態において、充填物は、さらなる添加剤および/または充填剤を含むことができる。例えば、充填物はさらに、グリセリド、トリグリセリド、半合成エステルグリセリド、脂肪酸、アルコール、脂肪酸エステル、親油性界面活性剤、親水性界面活性剤、炭水化物および共溶媒のうちの1つまたは複数、またはそれらの組合せを含む脂質ベースのマトリックスを含み得る。
【0058】
特定の実施形態において、充填物は、植物油を含む脂質ベースのマトリックスを含む。植物油は、充填物の総重量に対して、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約35wt%、約40wt%もしくは約45wt%のいずれかから、約50wt%、約55wt%、約60wt%、約65wt%、約70wt%、約75wt%、約80wt%、約85wt%もしくは約90wt%のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲の濃度で充填物中に存在し得る。特定の実施形態において、植物油は、植物油の総重量に対して、約55wt%、約60wt%、約65wt%、約70wt%もしくは約75wt%のいずれかから、約80wt%、約85wt%、約90wt%、もしくは約95wt%のいずれかまでの多価不飽和脂肪酸のグリセリドを含み得る。例示的な適切な植物油は、これらに限定されないが、オリーブ油、ゴマ油、トウモロコシ油、落花生油、ベニバナ油、大豆油のうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含む。
【0059】
特定の実施形態において、充填物は、式R-C(=O)-OHを有する脂肪酸を含む脂質ベースのマトリックスを含み、式中、RはC~C20であり、脂肪酸は完全に飽和しているか、または1つもしくは複数の不飽和部位を含む。脂肪酸は、充填物の総重量に対して、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約35wt%、約40wt%もしくは約45wt%のいずれかから、約50wt%、約55wt%、約60wt%、約65wt%、約70wt%、約75wt%、約80wt%、約85wt%もしくは約90wt%のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲の濃度で充填物中に存在し得る。例示的な適切な脂肪酸は、これらに限定されないが、オレイン酸、リノール酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸のうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含む。
【0060】
特定の実施形態において、充填物は、アルコール、脂肪酸エステルのうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含む脂質ベースのマトリックスを含む。
【0061】
アルコールは、充填物の総重量に対して、約0.5wt%、約1wt%、約5wt%、約10wt%、約15wt%、約20wt%、約25wt%、約30wt%、約35wt%、約40wt%もしくは約45wt%のいずれかから、約50wt%、約55wt%、約60wt%、約65wt%、約70wt%、約75wt%、約80wt%、約85wt%もしくは約90wt%のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲の濃度で充填物中に存在し得る。例示的な適切なアルコールは、これらに限定されないが、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、グリセロール、プロピレングリコールのうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含む。
【0062】
例示的な適切な脂肪酸エステルは、これらに限定されないが、モノ-、ジ-、トリ-エステルの中鎖もしくは長鎖脂肪酸界面活性剤よび/または共溶媒のうちの1つまたは複数、あるいはそれらの組合せを含む。例示的な好適な界面活性剤および/または共溶媒は、これらに限定されないが、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40水添ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリソルベート80、スパン80、ラブラフィルM2125、ラブラゾール、ゲルシール44/14のうちの1つもしくは複数、またはそれらの組合せを含む。
【0063】
HLB値が10未満の適切な界面活性剤は、これらに限定されないが、エチレンオキシド/プロピレンオキシド(EO/PO)コポリマー、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノカプレート、グリセロールカプリレート/カプレート、グリセロールモノオレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールラウレート、グリセロールモノリノレート、グリセロールベヘネート、グリセロールパルミトステアレート、石油およびラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、ポリオキシル4ラウリルエーテル、ポリオキシル2セチルエーテル、ポリオキシル2ステアリルエーテル、ポリオキシル2オレイルエーテル)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノイソステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン)、スクロースエステル、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)(プルロニックコポリマー)、レシチン、リン脂質、ステアレス-2、オレース-2、セテス-2、PEG-30ジポリヒドロキシステアレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールジラウレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールイソステアレート、αトコフェロール、混合トコフェロール、トリカプリリン、非イオン性乳化ワックス、アニオン性乳化ワックス、モノオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ならびにそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0064】
充填物および/またはシェル組成物中で使用され得る例示的な適切な可塑剤は、これらに限定されないが、イソマルト、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、アドニトール、ダルシトール、ペンタエリスリトール、もしくはマンニトールなどのアルコール可塑剤;または、グリセリン、ジグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、最大10,000MWのポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ポリエーテルポリオール、エタノールアミンなどのポリオール可塑剤;およびそれらの混合物を含む。他の例示的な可塑剤は、これらに限定されないが、低分子量ポリマー、オリゴマー、コポリマー、油、有機小分子、脂肪族ヒドロキシルを有する低分子量ポリオール、エステル型可塑剤、グリコールエーテル、ポリ(プロピレングリコール)、マルチブロックポリマー、シングルブロックポリマー、クエン酸エステル型可塑剤およびトリアセチンを含み得る。このような可塑剤は、1,2-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、スチレングリコール、モノプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ソルビトールラクテート、エチルラクテート、ブチルラクテート、エチルグリコレート、ジブチルセバケート、アセチルトリブチルシトレート、トリエチルシトレート、グリセリルモノステアレート、ポリソルベート80、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレートおよびアリルグリコレート、ならびにそれらの混合物を含み得る。
【0065】
着色剤(colorant)は、本明細書において「染料または顔料」または「着色剤(coloring agent)」とも呼ばれることがある。着色剤は、剤形に着色および/または美的外観を付与する物質を指す。染料は、適用される基材に親和性を有する着色物質である。染料は水溶液で適用することができ、基材上での染料の定着を向上させるために媒染剤を必要とする。顔料は、波長選択的吸収の結果として、反射光または透過光の色を変化させる材料である。この物理的プロセスは、材料が発光する蛍光、燐光、および他の形態の発光とは異なる。染料も顔料も、ある波長の光を他よりも多く吸収するため、色がついて見える。染料とは対照的に、顔料は一般的に不溶性で、基材との親和性を有していない。
【0066】
剤形中に存在し得る例示的な着色剤は、これらに限定されないが、例えば、白色、黒色、黄色、青色、緑色、ピンク色、赤色、オレンジ色、紫色、藍色、および茶色などの色を含み得る。特定の実施形態において、剤形の色は、その中に含まれる内容物(例えば、1つまたは複数の活性成分)を示すことができる。
【0067】
特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形は、これらに限定されないが、高融点の脂肪(例えば、融点が25℃を超えるトリグリセリド)、ワックス、低融点の油(例えば、融点が25℃未満のトリグリセリド)、液体脂質、HLB値が10を超える界面活性剤、溶媒、共溶媒、固体高分子量ポリエチレングリコール、液体ポリエチレングリコール、潤滑剤、造孔剤、分散剤、ゼラチン、ガム、水溶性ポリマー、水、グリセリン、ソルビトール、シクロデキストリン、香味剤、崩壊剤、およびそれらの組合せなどの、追加の薬学的に許容される充填剤および/または添加剤を含み得る。いくつかの実施形態において、剤形は、可溶性増強剤、可溶化剤(例えば、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、およびモノステアリン酸ポリエチレングリコール)、生物学的利用能増強剤、可塑剤、着色剤、不透明化剤、芳香剤、酵素、甘味料、香辛料、ビタミン、保存料、安定剤、抗酸化剤、放出剤(例えば、ジステアリン酸グリセリルなどの持続放出用脂質マトリックス)、エクステンダー、架橋剤、ブロッキング防止剤、抗粘着付与剤、希釈剤、消泡剤、緩衝剤、発泡剤、増量剤、アジュバント、流動化促進剤、離型剤、造粒剤、結合剤、油/脂肪、pH調整剤、吸収剤、滑沢剤(二酸化ケイ素など)、接着剤、付着防止剤(例えば、タルク、コーンスターチ、コロイド状二酸化ケイ素(Cab-O-Sil(商標))、DL-ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび金属ステアリン酸塩)、酸味料、軟化剤、樹脂、粘滑剤、乳化剤、浸透圧剤、エラストマー、漂白剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムなど)、苦味剤などの忌避剤(例えば、安息香酸デナトニウム、デナトニウムサッカリド、および塩化デナトニウムなどのデナトニウム塩;スクロースオクタアセテート;キニーネ;ケルセチンおよびナリンゲンなどのフラボノイド;ならびにクアシンおよびブルシンなどのクアシノイド)および辛味剤(例えば、カプサイシン、ピペリン、イソチオシアン酸アリル、およびレジンフェラトキシン)、それらの組合せ、ならびに他の機能性成分などの追加の添加剤を、それらの意図される目的に適した量で含み得る。適切な添加剤は、液体、半固体、および/または固体の形態であってもよい。
【0068】
充填剤および/または添加剤は、単独で、または累積的に、剤形中に、剤形の総重量に対して、約50wt%以下、約40wt%以下、約30wt%以下、約20wt%以下、約15wt%以下、約10wt%以下、約5wt%以下、約4wt%以下、約3wt%以下、約2wt%以下、約1wt%以下、約0.5wt%以下、約0.1wt%以下の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態において、剤形は、充填剤を有さなくてもよい(例えば、0wt%)。いくつかの実施形態において、剤形は、添加剤を有さなくてもよい(例えば、0wt%)。いくつかの実施形態において、剤形は、剤形の総重量に対して、個別に、またはまとめて、例えば、約2wt%~約50wt%、約6wt%~約40wt%、約10wt%~約30wt%、約10wt%~約40wt%、約15wt%~約35wt%、約20wt%~約30wt%、約20wt%~約25wt%、または約15wt%~約25wt%の範囲の量で充填剤および/または添加剤を含み得る。
【0069】
香味剤
「香味剤」は、香味を提供することができる物質を指す。香味剤は、使用者に味がよく心地よい因子を提供することに加えて、剤形中に存在する望ましくない香味を隠すこともできる。香味剤には天然香味剤(例えば、抽出物)を含み得る。
【0070】
「香味抽出物」は、しばしばエタノールまたは水などの溶媒を使用することによって、原料、例えば動物または植物材料の一部を抽出することによって得られる香味剤を指す。天然エッセンスの大部分は、圧搾(レモンの皮のように、油が極めて豊富で、容易に得られる場合)、吸収(バニラビーンズのように、アルコールに漬け込むことによって一般的に達成される)、温浸(maceration)(ハッカ抽出物等の調製のように、全体中の少部分生成するために使用される)および蒸留(温浸と共に使用されるが、多くの場合、専門化学知識および高価な蒸留器の組み立てを要する)の4つの手法を通して、花、果実、根等または植物全体から精油を抽出することによって得られる。
【0071】
剤形中に存在し得る例示的な香味剤には、これらに限定されないが、口臭消臭化合物、例えばメントール、スペアミントおよびシナモン、コーヒー豆、他の香味剤または芳香剤、例えば果実香味剤(例えば、サクランボ、オレンジ、ブドウ等)、特に口腔衛生のために使用されるもの、ならびに歯および口腔洗浄に使用される活性剤、例えば第四級アンモニウム塩基を含み得る。香味剤の効果は、香味増強剤、例えば酒石酸、クエン酸、バニリンなどを使用して増強し得る。
【0072】
芳香剤
剤形中に存在し得る例示的な芳香剤には、これらに限定されないが、天然および/または合成芳香原料が含まれる。例えば、油溶性香油は、水溶性香油との混合物中にあってもよく、またはなくてもよい。油溶性香料材料は、天然または天然と同一の精油、例えばオレンジ油、ラベンダー油、松根油、ユーカリ油、レモン油、クローブ葉、ハッカ油、セダー油、ローズマリー油、ベルガモット油、ラバンジン油、パッチュリ油、カモミール油、ジャスミン油、スパイク油、バラ油、ベチバー油、フェンネル油、アニス油、タイム油、ゲルマニウム油、メントールおよびマジョラム油である。動物芳香剤は、例えばムスク、海狸香、アベール(aber)またはジャコウネコである。スパジリック(spagyric)エッセンスも当技術分野で知られている。これらは、特定の薬草を発酵させ、次いで、これらを最終生成物に処理することによって調製される。合成芳香剤成分は、例えば、リナロール、テルピネオール、ネロール、シトロネラール、ベンズアルデヒド、ケイヒアルデヒド、バニリン、エチルバニリンまたはメチルアセトフェノンなどの単一化合物で構成されるような合成精油である。芳香剤材料はまた、芳香性の炭化水素、アルコール、ケトン、アルデヒド、エーテル、エステル、ポリエン誘導体からなる通常の群から選択される合成油溶性香油であり得る。使用され得る他の芳香剤は、参考文献およびデータベース、例えばS. Arctander, Perfume and Flavor Chemicals, Volumes I and II (1960, 1969; reprint 2000);Allured's Flavor and Fragrance Materials (2005);およびwww.rifm.org.でResearch Institute for Fragrance Materialsによって維持されるデータベースに目録化され、記載されている。
【0073】
甘味料
「甘味料」という用語は、使用者に味がよく心地よい因子をもたらすことができる、および/または剤形中に存在する望ましくない香味を隠すことができる物質を指す。剤形中に存在し得る例示的な甘味料には、これらに限定されないが、1つもしくは複数の人工甘味料、1つもしくは複数の天然甘味料、またはそれらの組合せを含み得る。人工甘味料には、例えばアセスルファムおよびその様々な塩、例えばカリウム塩(Sunett(登録商標)として入手可能)、アリターム、アスパルテーム(NutraSweet(登録商標)およびEqual(登録商標)として入手可能)、アスパルテーム-アセスルファムの塩(Twinsweet(登録商標)として入手可能)、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、ナリンギンジヒドロカルコン、ジヒドロカルコン化合物、ネオテーム、サイクラミン酸ナトリウム、サッカリンおよびその様々な塩、例えばナトリウム塩(Sweet’N Low(登録商標)として入手可能)、ステビア、スクロースのクロロ誘導体、例えばスクラロース(Kaltame(登録商標)およびSplenda(登録商標)として入手可能)、ならびにモグロシドが含まれる。天然甘味料には、例えばグルコース、デキストロース、転化糖、フルクトース、スクロース、グリチルリチン;グリチルリチン酸モノアンモニウム(商品名MagnaSweet(登録商標)で販売されている);ステビア(Stevia rebaudiana)(ステビオシド)、天然高甘味度甘味料、例えば羅漢果、ポリオール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトールなどが含まれる。
【0074】
ビタミン
本明細書で使用される場合、「ビタミン」という用語は、限られた量で、必須栄養素として生物によって必要とされる有機化合物を指す。有機化学化合物(または化合物の関連するセット)は、生物によって十分な量合成することができず、食事から得なければならない場合に、ビタミンと呼ばれる。よって、この用語は、環境と特定の生物の両方を条件とする。例えば、アスコルビン酸(ビタミンC)はヒトにとってはビタミンであるが、ほとんどの他の動物にとってはそうではなく、ビオチンおよびビタミンDは、特定の環境でのみヒトの食事で必要とされる。
【0075】
剤形中に存在し得る例示的なヒト用ビタミンには、これらに限定されないが、ビタミンA(例えば、レチノール、レチナール、およびβカロテンを含む4つのカロテノイド)、ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(例えば、ナイアシンおよびナイアシンアミド)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(例えば、ピリドキシン、ピリドキサミンおよびピリドキサール)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(例えば、葉酸およびフォリン酸)、ビタミンB12(例えば、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンおよびメチルコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンD(コレカルシフェロール)、ビタミンE(例えば、トコフェロールおよびトコトリエノール)、およびビタミンK(例えば、フィロキノン、フィトナジオンおよびメナキノン)を含み得る。
【0076】
保存剤
本明細書で使用される場合、「保存剤」という用語は、香味、臭気、色、肌理、外観、治療効果または安全性の劣化を遅延させるまたは防止することによって剤形の貯蔵寿命を延ばす薬剤を指す。保存剤は、部分的または完全な微生物細胞破壊または無能力化をもたらす致死的な不可逆的作用をもたらす必要はない。滅菌剤、清浄剤、消毒剤、殺胞子剤、殺ウイルス剤および結核菌殺菌剤は、時に「殺菌」作用と呼ばれる、このような不可逆的作用様式をもたらす。対照的に、保存剤は、保存剤を除去した場合に標的微生物が増殖を再開することができるという点で、可逆的である抑制性または静菌性作用をもたらすことができる。保存剤と清浄剤との間の主な違いには、主に作用様式(保存剤は微生物を殺傷するのではなく増殖を防止する)および曝露時間(保存剤は数日~数カ月作用するが、清浄剤は最大でも数分間しか作用しない)が含まれる。
【0077】
抗酸化剤
剤形中に存在し得る例示的な抗酸化剤には、これらに限定されないが、立体障害フェノール、アリールアミン、チオ尿素、チオカルバメート、亜リン酸エステル、チオエーテルエステル、および前記の組合せを含み得る。抗酸化剤の他の適切な例としては、これらに限定されないが、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2-tert-ブチル-4,6-ジ-メチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-n-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール、2,6-ジシクロペンチル-4-メチルフェノール、2-(α-メチルシクロヘキシル)-4,6-ジメチルフェノール、2,6-ジオクタデシル-4-メチルフェノール、2,4,6-トリシクロヘキシルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシメチルフェノール、側鎖が直鎖または分岐であるノニルフェノール、例えば2,6-ジ-ノニル-4-メチルフェノール、2,4-ジメチル-6-(1’-メチルウンデカ-1’-イル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(1’-メチルヘプタデカ-1’-イル)フェノール、2,4-ジメチル-6-(1’-メチルトリデカ-1-イル)フェノールおよびそれらの混合物を含むアルキル化モノフェノール、これらに限定されないが、2,4-ジオクチルチオメチル-6-tert-ブチルフェノール、2,4-ジオクチルチオメチル-6-メチルフェノール、2,4-ジオエチルチオメチル-6-エチルフェノール、2,6-ジ-ドデシルチオメチル-4-ノニルフェノールを含むアルキルチオメチルフェノール、これらに限定されないが、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-アミルヒドロキノン、2,6-ジフェニル-4-オクタデシルオキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルステアレート、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)アジペートを含むヒドロキノンおよびアルキル化ヒドロキノン、これらに限定されないが、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、δ-トコフェロールおよびそれらの混合物を含むトコフェロール(ビタミンE)、これらに限定されないが、2,2’-チオビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-オエチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-3-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、4,4’-チオビス(3,6-ジ-sec-アミルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ジスルフィドを含むヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、これらに限定されないが、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[4-メチル-6-(α-メチルシクロヘキシル)フェノール]、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-メチレンビス(6-ノニル-4-メチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(6-tert-ブチル-4-イソブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス[6-(α-メチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-(α,α-ジメチルベンジル)-4-ノニルフェノール]、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(6-tert-ブチル-2-メチルフェノール)、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、2,6-ビス(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェノール、1,1,3-トリス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ブタン、1,1-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチル-フェニル)-3-n-ドデシルメルカプトブタン、エチレングリコールビス[3,3-ビス(3’-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)ブチレート]、ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチル-フェニル)ジシクロペンタジエン、ビス[2-(3’-tert-ブチル-2’-ヒドロキシ-5’-メチルベンジル)-6-tert-ブチル-4-メチルフェニル]テレフタレート、1,1-ビス-(3,5-ジメチル-2-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)-4-n-ドデシルメルカプトブタン、1,5,5-テトラ-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-2-メチルフェニル)ペンタンを含むアルキリデンビスフェノール、これらに限定されないが、3,5,3’,5’-テトラ-tert-ブチル-4,4’-ジヒドロキシジベンジルエーテル、オクタデシル-4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルベンジルメルカプトアセテート、トリデシル-4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジルメルカプトアセテート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)アミン、ビス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)ジチオテレフタレート、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、イソオクチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルメルカプトアセテートを含むO-、N-およびS-ベンジル化合物、これらに限定されないが、ジオクタデシル-2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-2-ヒドロキシベンジル)マロネート、ジ-オクタデシル-2-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)マロネート、ジドデシルメルカプトエチル-2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、ビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル]-2,2-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネートを含むヒドロキシベンジル化マロネート、これらに限定されないが、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,4-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,3,5,6-テトラメチルベンゼン、2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)フェノールを含む芳香族ヒドロキシベンジル化合物、これらに限定されないが、2,4-ビス(オクチルメルカプト)-6-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-オクチルメルカプト-4,6-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2-オクチルメルカプト-4,6-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェノキシ)-1,2,3-トリアジン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、2,4,6-トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルエチル)-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニルプロピオニル)-ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン、1,3,5-トリス(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートを含むトリアジン化合物、これらに限定されないが、ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジエチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネート、ジオクタデシル-5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルベンジルホスホネート、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸のモノエチルエステルのカルシウム塩を含むベンジルホスホネート、これらに限定されないが、4-ヒドロキシラウラニリド、4-ヒドロキシステアラニリド、オクチルN-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)カルバメートを含むアシルアミノフェノール、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-オクタノール、i-オクタノール、オクタデカノール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3-チアウンデカノール、3-チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4-ヒドロキシメチル-1-ホスファ-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンのエステル、β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、n-オクタノール、i-オクタノール、オクタデカノール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’-ビス-(ヒドロキシエチル)オキサミド、3-チアウンデカノール、3-チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4-ヒドロキシメチル-1-ホスファ-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンのエステル;3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]-ウンデカン、6-(3,5-ジシクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸と一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3-チアウンデカノール、3-チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4-ヒドロキシメチル-1-ホスファ-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンのエステル、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル酢酸と一価または多価アルコール、例えばメタノール、エタノール、オクタノール、オクタデカノール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、エチレングリコール、1,
2-プロパンジオール、ネオペンチルグリカール、チオジエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、N,N’-ビス(ヒドロキシエチル)オキサミド、3-チアウンデカノール、3-チアペンタデカノール、トリメチルヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、4-ヒドロキシメチル-1-ホスファ-2,6,7-トリオキサビシクロ[2.2.2]オクタンのエステル、6-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸のアミド、例えばN,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチルA-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヘキサメチレンジアミド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)トリメチレンジアミド、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオニル)ヒドラジド、N,N’-ビス[2-(3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニルオキシ)エチル]オキサミド(Uniroyalによって供給されるNaugard(登録商標)XL-1)、アスコルビン酸(ビタミンC)、これらに限定されないが、N,N’-ジ-イソプロピル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(1-メチルヘプチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ビス(2-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1-メチルヘプチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、4-(p-トルエンスルファモイル)ジフェニルアミン、N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-sec-ブチル-p-フェニレンジアミン、ジフェニルアミン、N-アリルジフェニルアミン、4-イソプロポキシジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-(4-tert-オクチルフェニル)-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、これらに限定されないが、p,p’-ジ-tert-オクチルジフェニルアミンを含むオクチル化ジフェニルアミン、4-n-ブチルアミノフェノール、4-ブチリルアミノフェノール、4-ノナノイルアミノフェノール、4-ドデカノイルアミノフェノール、4-オクタデカノイルアミノフェノール、ビス(4-メトキシフェニル)アミン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ジメチルアミノメチルフェノール、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,2-ビス[(2-メチルフェニル)アミノ]エタン、1,2-ビス(フェニルアミノ)プロパン、(o-トリル)ビグアニド、ビス[4-(1’,3’-ジメチルブチル)フェニル]アミン、tert-オクチル化N-フェニル-1-ナフチルアミン、モノ-およびジアルキル化tert-ブチル/tert-オクチルジフェニルアミンの混合物、モノ-およびジアルキル化ノニルジフェニルアミンの混合物、モノ-およびジアルキル化ドデシルジフェニルアミンの混合物、モノ-およびジアルキル化イソプロピル/イソヘキシルジフェニルアミンの混合物、モノ-およびジアルキル化tert-ブチルジフェニルアミンの混合物、2,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-4H-1,4-ベンゾチアジン、フェノチアジン、モノ-およびジアルキル化tert-ブチル/tert-オクチルフェノチアジンの混合物、モノ-およびジアルキル化tert-オクチルフェノチアジンの混合物、N-アリルフェノチアジン、N,N,N’,N’-テトラフェニル-1,4-ジアミノブタ-2-エンを含むアミン系抗酸化剤、ならびに前記の組合せが挙げられる。
【0078】
潤滑剤/放出剤
剤形に適した潤滑剤/放出剤には、これらに限定されないが、脂肪酸およびその塩、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪アミン、脂肪アミンアセテートおよび脂肪アミドを含み得る。他の適切な潤滑剤には、これらに限定されないが、ベヘン酸グリセリル(Compritol(商標)888)、ステアリン酸金属塩(例えば、ステアリン酸マグネシウム、カルシウムおよびナトリウム)、ステアリン酸、水添植物油(例えば、Sterotex(商標))、タルク、ワックス、例えば蜜蝋およびカルナウバ蝋、シリカ、ヒュームドシリカ、コロイド状シリカ、ステアリン酸カルシウム、長鎖脂肪アルコール、ホウ酸、安息香酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、DL-ロイシン、ポリエチレングリコール(例えば、Carbowax(商標)4000およびCarbowax(商標)6000)、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(Pruv(商標))、ラウリル硫酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリルアルコール、鉱油、パラフィン、微結晶セルロース、グリセリン、プロピレングリコールならびにそれらの組合せを含み得る。
【0079】
エクステンダー/ブロッキング防止剤/抗粘着付与剤
剤形に適したエクステンダー/ブロッキング防止剤/抗粘着付与剤には、これらに限定されないが、デンプン、加工デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、架橋セルロース、微結晶セルロース、シリカ、金属酸化物、炭酸カルシウム、タルクおよびマイカを含み得る。
【0080】
希釈剤
本開示による剤形で有用な適切な希釈剤には、これらに限定されないが、ラクトースUSP、ラクトースUSP(無水)、ラクトースUSP(噴霧乾燥)、デンプンUSP、直接圧縮性デンプン、マンニトールUSP、ソルビトール、デキストロース一水和物、微結晶セルロースNF、第二リン酸カルシウム二水和物NF、スクロース系希釈剤、粉砂糖、第一硫酸カルシウム一水和物、硫酸カルシウム二水和物NF、乳酸カルシウム三水和物顆粒NF、デキストレートNF(例えば、Emdex(商標))、デキストロース(例えば、Cerelose(商標))、イノシトール、加水分解穀類固形物、例えばMaltrons(商標)およびMor-Rex(商標)、アミロース、粉末セルロース(例えば、Elcema(商標))、炭酸カルシウム、グリシン、ベントナイト、ポリビニルピロリドンなどが含まれる。
【0081】
油/脂肪
剤形中に存在し得る例示的な油および脂肪には、これらに限定されないが、アーモンド油、アルガン油、アボカド油、キャノーラ油、カシュー油、ヒマシ油、カカオ脂、ヤシ油、菜種油、トウモロコシ油、綿実油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヘンプ油、水添レシチン、レシチン、亜麻仁油、マカダミア油、マンゴーバター、マニラ油、モンゴンゴナッツ油、オリーブ油、パーム核油、パーム油、落花生油、ペカン油、エゴマ油、松の実油、ピスタチオ油、ケシ油、カボチャ種子油、米ぬか油、ベニバナ油、ゴマ油、シアバター、大豆油、ヒマワリ油、クルミ油およびスイカ種子油を含み得る。PVAシェルの充填物中に存在し得る他の油および脂肪には、これらに限定されないが、魚油(ω-3)、オキアミ油、例えば、その水添形態の動物または植物脂肪、C12-、C14-、C16-、C18-、C20-およびC22-脂肪酸とのモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドを含み得る。
【0082】
pH調整剤
剤形中に存在し得る例示的なpH調整剤には、これらに限定されないが、塩酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、硫酸、リン酸および硝酸を含み得る。
【0083】
他の添加剤
剤形中に存在し得る他の例示的な添加剤には、これらに限定されないが、ゼラチン、植物性タンパク質、例えばヒマワリタンパク質、大豆タンパク質、綿実タンパク質、落花生タンパク質、グレープシードタンパク質、乳清タンパク質、乳清タンパク質単離物、血液タンパク質、卵タンパク質、アクリル化タンパク質、水溶性多糖、例えばアルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、寒天、キサンタンガム、ジェランガム、アラビアガムおよび関連するガム(ガティガム、カラヤガム、トラガントガム)、ペクチン、セルロースの水溶性誘導体:アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースエステルおよびヒドロキシアルキルセルロースエステル、例えば酢酸フタル酸セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);カルボキシアルキルセルロース、カルボキシアルキルアルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロースエステル、例えばカルボキシメチルセルロースおよびそのアルカリ金属塩;水溶性合成ポリマー、例えばポリアクリル酸、ポリアクリルアミドおよびポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリルアミドおよびポリメタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸フタル酸ビニル(PVAP)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PVY/酢酸ビニルコポリマーおよびポリクロトン酸が含まれ得;フタル化ゼラチン、コハク酸ゼラチン、架橋ゼラチン、シェラック、デンプンの水溶性化学誘導体、例えば、第三級または第四級アミノ基、例えば所望であれば四級化されていてもよい、ジエチルアミノエチル基を有するカチオン性修飾アクリレートおよびメタクリレート;ならびに他の同様のポリマー;無機充填剤、例えばマグネシウム、アルミニウム、ケイ素、チタン等の酸化物も適している。
【0084】
剤形中に使用され得る他の薬学的に許容される添加剤は、これらに限定されないが、これらに限定されないが、消化性の長鎖(C~C50、特にC12~C40)、置換または非置換炭化水素、例えば天然または合成ワックス(蜜蝋、グリコワックス(glycowax)、ヒマシ油ワックスおよびカルナウバ蝋など)、脂肪アルコール(ラウリル、ミリスチル、ステアリル、セチルまたは好ましくはセトステアリルアルコールなど)、これらに限定されないが、中鎖脂肪酸(カプリル、カプリン、カプロン、ラウリン、オレイン、リノールなど)のモノ-ジグリセリド、中鎖トリグリセリド、脂肪酸エステル、脂肪酸グリセリド(モノ-、ジ-およびトリ-グリセリド)を含む脂肪酸、硬化脂肪、炭化水素、ノルマルワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコールを含む疎水性材料、ならびに炭化水素骨格を有する疎水性および親水性材料を含み得る。
【0085】
追加の薬学的に許容される添加剤にはさらに、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリル酸、セルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、セルロースアミド、ポリ酢酸ビニル、ポリカルボン酸および塩、酢酸、カプリル酸、オレイン酸、ポリアミノ酸またはペプチド、ポリアミド、ポリアクリルアミド、マレイン酸/アクリル酸のコポリマー、デンプンおよびゼラチンを含む多糖、天然ガム、例えばキサンタンおよびカラギーナンを含み得る。例えば、ポリマーは、ポリアクリレートおよび水溶性アクリレートコポリマー、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリメタクリレート、ならびにそれらの組合せから選択することができる、またはポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマーおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メタクリル酸/メタクリル酸メチル、メタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマー、メタクリル酸/アクリル酸メチル/メタクリル酸メチルコポリマー、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルローストリメリテート、酢酸フタル酸セルロース、ポリ酢酸フタル酸ビニル、PEG-35ヒマシ油、カプリロカプロイルポリオキシル-8グリセリド、ジステアリン酸グリセリル、ならびにそれらの組合せから選択することができる。
【0086】
放出速度
本明細書に開示される剤形は、即時放出プロファイルを示し得る。
【0087】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、約37℃の水性媒体(約1~約8の範囲のpH)中、USP装置1(40号メッシュバスケット)、USP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、15分以内で活性剤の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%を放出する。
【0088】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、37℃の水性媒体(約1~約8の範囲のpH)中、USP装置1(40号メッシュバスケット)、USP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、30分以内で活性剤の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%を放出する。
【0089】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、37℃の水性媒体(約1~約8の範囲のpH)中、USP装置1(40号メッシュバスケット)、USP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、45分以内で活性剤の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%を放出する。
【0090】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、室温で、水性媒体(約1~約8の範囲のpH)中、USP装置1(40号メッシュバスケット)、USP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、60分以内で活性剤の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約98%を放出する。
【0091】
本明細書に開示される剤形は、持続放出プロファイルを示し得る。
【0092】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、各場合で、37℃の水性媒体(pH1~8)中、100rpmのUSP装置1(バスケット)、50rpm、75rpmもしくは100rpmのUSP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、1時間で活性剤の約10wt%~約30wt%、2時間で活性剤の約25wt%~約50wt%、4時間で活性剤の約40wt%~約80wt%、8時間で活性剤の約65wt%~約95wt%、12時間で約80wt%~約100wt%および24時間で活性剤の90wt%超を放出し得る。
【0093】
特定の実施形態において、本明細書に開示される剤形が、各場合で、37℃の水性媒体(pH1~8)中、100rpmのUSP装置1(バスケット)、50rpm、75rpmもしくは100rpmのUSP装置2(パドル)またはUSP装置3(往復シリンダー)でのインビトロ溶解によって測定した場合に、1時間で活性剤の約15wt%~約25wt%、2時間で活性剤の約30wt%~約40wt%、4時間で活性剤の約55wt%~約75wt%、8時間で活性剤の約75wt%~約85wt%、12時間で約90wt%~約100wt%および24時間で活性剤の95wt%超を放出し得る。
【0094】
調製、安定化および治療の方法
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載の剤形のいずれかを安定化および/または調製するための方法を対象とする。方法は、塩の形態の塩基性または酸性のAPIおよび遊離アニオンを、アニオン性キレート剤と組み合わせることを含む。アニオン性キレート剤は、レシチンまたは正に帯電した官能基を有するリン脂質成分(PCまたはPEなど)の別の供給源を含み得る。特定の実施形態において、(塩基性または酸性のAPIによって提供される)遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比は、約0.5、約0.8、約1.0、約1.2、約1.5もしくは約1.8のいずれかから、約2.0、約2.2、約2.4、約2.6、約2.8もしくは約3.0のいずれかまで、またはその中の任意の範囲もしくは値の範囲であり得る。一実施形態において、遊離アニオンに対するアニオン性キレート剤のモル比は、約0.5~約3.0の範囲であってもよい。
【0095】
特定の実施形態において、APIに対するアニオン性キレート剤(例えば、PC)のモル比は、約1:1~約1:50、約1:2~約1:45、約1:3~約1:40、約1:4~約1:35、約1:5~約1:30もしくは約1:5~約1:25のいずれか、またはその中の任意の部分範囲もしくは値の範囲であってもよい。
【0096】
特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形のいずれかを安定化および/または調製するための方法はさらに、本明細書に記載のシェル組成物のいずれかに、本明細書に記載の充填物のいずれかを封入することを含み得る。
【0097】
特定の実施形態において、本明細書に記載の調製および/または安定化の方法は、長期間にわたる化学的および物理的に安定的な剤形の形成に寄与する。特定の実施形態において、本明細書に記載の方法によって調製および/または安定化された剤形は、高温(例えば、40℃)および/または高湿度(例えば、約75%の相対湿度)で保存されてもよく、長期間(例えば、約3週間)にわたって化学的および物理的安定性(例えば、完全性)を依然として維持し得る。
【0098】
特定の実施形態において、本明細書に記載の安定化および/または調製の方法は、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日または約7日のいずれかから、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日または約21日のいずれかまでの範囲の長期間にわたって、加速安定性試験条件下(例えば、高温および/または高湿度)でもその完全性を維持する剤形、例えばカプセルを形成し得る。
【0099】
本明細書の実施形態による加速安定性試験は、約25℃~約40℃の範囲の温度および例えば約60%~約75%の範囲の湿度で実施され得る。特定の実施形態において、加速安定性試験は、約40℃の温度および約75%の相対湿度で実施され得る。
【0100】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の剤形のいずれかを安定化および/または調製するための方法はさらに、均質混合物中または充填物の成分のうちの1つもしくは複数を含むマトリックス中に塩基性または酸性のAPIを溶解または懸濁させることを含み得る。
【0101】
特定の実施形態において、本明細書に記載の剤形のいずれかを安定化および/または調製するための方法はさらに、均質混合物中またはマトリックス中に溶解または懸濁した塩基性または酸性のAPIを、ロータリーダイマシンを使用して予め形成された空洞に投入することを含み得る。次いで、投入されたブリスターの空洞は冷却され、密封され得る。このアプローチにより、充填剤が不要となり、それによって使用される溶解度および/または生物学的利用能を向上させる材料の量を最大化することができる。
【0102】
他の実施形態において、本明細書に記載の剤形のいずれかを安定化および/または調製するための方法はさらに、均質混合物中またはマトリックス中に溶解または懸濁した塩基性または酸性のAPIを、ソフトシェルカプセルまたはハードシェルカプセル(例えば、ソフトゼラチンカプセルまたはデンプンもしくはカラギーナンベースのカプセル)に充填することを含み得る。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明は、塩基性または酸性のAPI、遊離アニオン、アニオン性キレート剤、および少なくとも1つの固体または半固体脂質を混合して、混合物を形成することを含む、剤形を調製するための方法を対象とする。方法はさらに、混合物を加熱して、少なくとも1つの固体または半固体脂質を溶融させ、溶融混合物を形成することを含み得る。方法はさらに、溶融混合物を剤形に形成することと、剤形を硬化させることとを含み得る。一実施形態において、溶融混合物を剤形に形成することは、予め形成されたブリスターの空洞に溶融混合物を投入することを含み得る。一実施形態において、溶融混合物を剤形に形成することは、溶融混合物をハードシェルカプセルまたはソフトシェルカプセルに封入することを含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療有効量の、本明細書に開示される剤形のいずれかを、それを必要とする患者に投与することを含む治療方法を対象とする。
【実施例
【0105】
以下の実施例は本開示の理解を助けるために示されるものであり、本明細書に記載および請求される本開示を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。当業者の範囲内にある、現在知られているまたは後に開発される全ての等価物の置換、および配合の変更または実験設計の若干の変更を含む、本開示のこのようなバリエーションは、本明細書に組み込まれる開示の範囲に入るとみなされるべきである。
【0106】
[実施例1]
レシチンのキレート能
アニオン性キレート能、特に遊離塩化物アニオンのキレート能について、様々なレシチンのグレードにおける異なるレベルのホスファチジルコリン(PC)を評価した。製剤中のPCの量を増やすことで、遊離塩化物イオン(Cl)をより多く結合させ、ゼラチンシェルへの塩化物イオンの移行を最小限に抑えることができる可能性がある。PCレベルの増加による効果を評価するため、同じベース製剤を用いてレシチン量を変化させた。3つの異なるレシチンのグレードも評価した:リキッドレシチン(13%PC)、リポイドS45 NF(45%PC)およびホスフォリポン90G(90%PC)。
【0107】
塩化物イオンに特異的な電極プローブを用いて、製剤中のレシチンの量を調整しながら遊離塩化物イオン活性を測定した。レシチンの割合が増加すると、試験した製剤では遊離塩化物イオンの割合が低下した。
【0108】
図1は、様々なレシチンのグレードにおける異なるレベルのPCの遊離塩化物アニオン性キレート能を示す。図1に示すように、約13%のPCを有するリキッドレシチンのグレードを用いると、遊離塩化物イオンは、当初の20%と比較して約19%に減少した。図1にさらに示すように、PCを少なくとも45%含有するリポイドS45を用いると、遊離塩化物イオンは、当初の20%と比較して約16%に減少した。図1はさらに、PCを90%含有するホスフォリポン90Gを用いると、遊離塩化物イオンは、当初の20%と比較して約18%に減少することを示した。図1に示すように、レシチン(13%PC)およびリポイドS45(45%PC)は、対応する添加剤/キレート剤の濃度が増加するにつれて、遊離塩化物アニオンの%の連続的な減少を示した。対照的に、ホスフォリポン90G(90%PC)は5%の添加剤の添加後プラトーに達したようであった。実施例1で評価したサンプルは、PCとAPIのモル比が1:5~1:25であった。
【0109】
[実施例2]
レシチンを含む製剤と含まない製剤の安定性
レシチンを含む充填物と含まない充填物とを、塩化コリンを含むソフトジェルカプセルに封入した。カプセルを、約40℃の温度で長期間、加速安定性試験条件に供した。
【0110】
図2Aは、加速安定性試験前および加速安定性試験後の、レシチンを含まないソフトジェルカプセル製剤を示す。図2Bは、加速安定性試験前および加速安定性試験後の、レシチンを含むソフトジェルカプセル製剤を示す。
【0111】
3日以内に、レシチンを含まない試験製剤(図2A)はゼラチンシェルを溶解させ、加速安定性条件(40℃)で充填物の漏出をもたらした。レシチンを含む製剤を含むカプセルは、3週間の保存後、加速安定性試験条件(40℃)で、ゼラチンの完全性を保持した。レシチンを含む製剤では、充填物の漏出は検出されなかった(図2B)。
【0112】
説明を簡潔にするために、この開示の方法の実施形態は、一連の行為として表され、記載されている。しかし、この開示による行為は、様々な順序でおよび/または同時に、本明細書に提示および記載されていない他の行為と共に行うことができる。さらに、全ての説明された行為が、開示された主題による方法を実行するのに必要とされ得るわけではない。加えて、方法は状態図または事象により、一連の相互に関連する状態として代替的に表され得ることを当業者は理解し、認識する。
【0113】
前述の記載において、本発明の完全な理解を提供するために、特定の材料、寸法、プロセスパラメーターなどの多数の特定の詳細が示されている。特定の特色、構造、材料、または特徴は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な様式で組み合わされ得る。単語「例」または「例示的な」は、例、事例、または実例として機能することを意味するために本明細書で使用される。「例」または「例示的な」と本明細書に記載される任意の態様または設計は、他の態様または設計に対して好ましいまたは有利であると必ずしも解釈されるべきでない。むしろ、単語「例」または「例示的な」の使用は、具体的に概念を提示することが意図されている。この出願で使用される場合、「または」という用語は、排他的な「または」ではなく包括的な「または」を意味することが意図されている。つまり特に指定されていない限り、または文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」は、自然な包括的置換のいずれかを意味することが意図されている。つまりXがAを含む;XがBを含む;またはXがAおよびBの両方を含む場合、「XはAまたはBを含む」は前述の事例のいずれにおいても満たされる。「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、または「一実施形態」へのこの明細書全体の言及は、その実施形態に関連して記載された特定の特色、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、この明細書全体の様々な場所での「1つの実施形態」、「特定の実施形態」、または「一実施形態」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0114】
本発明は、その特定の例示的な実施形態を参照して説明されてきた。したがって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味でみなされる。本明細書に示され、記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が当業者には明らかとなり、添付の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】