(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20240312BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240312BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
A01H 1/00 20060101ALI20240312BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20240312BHJP
C12N 15/82 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N9/02 ZNA
C12N15/09 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A01H1/00 A
A01H5/00 A
C12N15/82 154Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560280
(86)(22)【出願日】2022-03-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 CN2022082947
(87)【国際公開番号】W WO2022206580
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】202110361141.6
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210136187.2
(32)【優先日】2022-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520479722
【氏名又は名称】チンタオ、キングアグルート、ケミカル、コンパウンド、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO KINGAGROOT CHEMICAL COMPOUND CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.53,QINGLONGHE ROAD,HUANGDAO DISTRICT,QINGDAO,SHANDONG,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】モー、ストン
(72)【発明者】
【氏名】リウ、コイチー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】ホウ、チーチー
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ボー
【テーマコード(参考)】
2B030
4B065
【Fターム(参考)】
2B030AA02
2B030AB03
2B030AD05
2B030CA11
2B030CB02
2B030CD03
2B030CD13
4B065AA26X
4B065AA89X
4B065AA89Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BC31
4B065CA28
4B065CA47
(57)【要約】
本発明はバイオテクノロジーの分野に関し、特に、PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドおよびその使用に関する。前記ポリペプチドは、モチーフ「LLLNYI」を含み、該モチーフにおいて3位のロイシンLが他のアミノ酸で置換されているか、または5位のチロシンYが他のアミノ酸で置換されている。これを商品作物を含む植物に用いることにより、除草剤耐性特性および除草剤選択性に応じて、PPO阻害型除草剤に対する植物の耐性を大幅に改善させ、経済的に雑草の成長を防除することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドまたはその生物活性断片であって、前記ポリペプチドがモチーフ「LL
LN
YI」を含み、該モチーフにおいて3位のロイシンLが他のアミノ酸で置換されているか、または5位のチロシンYが他のアミノ酸で置換されている、前記PPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項2】
前記モチーフ「LL
LN
YI」において、
3位のロイシンLがセリンSに変異しているか、または
3位のロイシンLがイソロイシンIに変異しているか、または
3位のロイシンLがグリシンGに変異しているか、または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しているか、または
3位のロイシンLがバリンVに変異しているか、または
3位のロイシンLがトリプトファンWに変異しているか、または
5位のチロシンYがメチオニンMに変異しているか、または
5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しているか、または
5位のチロシンYがロイシンLに変異しているか、または
5位のチロシンYがバリンVに変異している、
請求項1に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項3】
前記「LL
LN
YI」モチーフにおいて、3位のロイシンLが他のアミノ酸で置換され、5位のチロシンYが他のアミノ酸で置換されている、請求項1に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項4】
前記「LL
LN
YI」モチーフにおいて、
3位のロイシンLがセリンSに変異しており、5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しているか、または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しており、5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しているか、または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しており、5位のチロシンYがバリンVに変異しているか、または
3位のロイシンLがセリンSに変異しており、5位のチロシンYがバリンVに変異しているか、または
3位のロイシンLがバリンVに変異しており、5位のチロシンYがロイシンLに変異しており、または
3位のロイシンLがトリプトファンWに変異しており、5位のチロシンYがロイシンLに変異している、
請求項3に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項5】
前記ポリペプチドが、自由に組み合わせられるアミノ酸配列の変異体および配列番号1~19のいずれか1つで示されるアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するその断片を含み、前記変異体が、請求項1~4のいずれか一項において規定される1つ以上のアミノ酸変異を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項6】
前記ポリペプチドが、請求項1~4のいずれか一項において規定される1つ以上のアミノ酸変異を有すること以外は、配列番号1~19のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項7】
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型イネPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号1で示される野生型イネPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型トウモロコシPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号2で示される野生型トウモロコシPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号3で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号4で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号5で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号6で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の439位および441位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ダイズPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号7で示される野生型ダイズPPO1タンパク質のアミノ酸配列の430位および432位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ソルガムPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号8で示される野生型ソルガムPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型コムギPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号9、10または11で示される野生型コムギPPO1タンパク質のアミノ酸配列の418位および420位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型トマトPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号12で示される野生型トマトPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ジャガイモPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号13で示される野生型ジャガイモPPO1タンパク質のアミノ酸配列の444位および446位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型タバコPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号14で示される野生型タバコPPO1タンパク質のアミノ酸配列の440位および442位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)PPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号15で示される野生型アラビドプシス・タリアナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型高地ワタPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号16で示される野生型高地ワタPPO1タンパク質のアミノ酸配列の426位および428位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ダイコンPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号17で示される野生型ダイコンPPO1タンパク質のアミノ酸配列の425位および427位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アワPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号18で示される野生型アワPPO1タンパク質のアミノ酸配列の422位および424位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型キャベツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号19で示される野生型キャベツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置に1つ以上の変異を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項8】
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型イネPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号1で示される野生型PPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置において、L423S、L423I、L423G、Y425M、Y425IおよびY425Vからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型トウモロコシPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号2で示される野生型トウモロコシPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置において、L424T、L424S、L424V、Y424W、Y426V、Y426IおよびY426Lからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424T/Y426V、L424S/Y426V、L424V/Y426L、L424W/Y426LまたはL424S/Y426Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号3で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置において、L424SおよびY426Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424S/Y426Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号4で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号5で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置において、L445SおよびY447Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L445S/Y447Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号6で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の439位および441位に対応する1つ以上の位置において、L439SおよびY441Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L439S/Y441Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ダイズPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号7で示される野生型ダイズPPO1タンパク質のアミノ酸配列の430位および432位に対応する1つ以上の位置において、L430SおよびY432Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L430S/Y432Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ソルガムPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号8で示される野生型ソルガムPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型コムギPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号9、10または11で示される野生型コムギPPO1タンパク質のアミノ酸配列の418位および420位に対応する1つ以上の位置において、L418SおよびY420Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L418S/Y420Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型トマトPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号12で示される野生型トマトPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置において、L445SおよびY447Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L445S/Y447Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ジャガイモPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号13で示される野生型ジャガイモPPO1タンパク質のアミノ酸配列の444位および446位に対応する1つ以上の位置において、L444SおよびY446Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L444S/Y446Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型タバコPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号14で示される野生型タバコPPO1タンパク質のアミノ酸配列の440位および442位に対応する1つ以上の位置において、L440SおよびY442Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L440S/Y442Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アラビドプシス・タリアナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号15で示される野生型アラビドプシス・タリアナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型高地ワタPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号16で示される野生型高地ワタPPO1タンパク質のアミノ酸配列の426位および428位に対応する1つ以上の位置において、L426SおよびY428Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L426S/Y428Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型ダイコンPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号17で示される野生型ダイコンPPO1タンパク質のアミノ酸配列の425位および427位に対応する1つ以上の位置において、L425SおよびY427Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L425S/Y427Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型アワPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号18で示される野生型アワPPO1タンパク質のアミノ酸配列の422位および424位に対応する1つ以上の位置において、L422SおよびY424Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L422S/Y424Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列が、野生型キャベツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号19で示される野生型キャベツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置において、L424SおよびY426Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424S/Y426Iを有する、
請求項7に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項9】
配列番号20~48のいずれかで示されるアミノ酸配列を有する、請求項8に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片。
【請求項10】
(1)請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリヌクレオチドもしくはその生物活性断片をコードする核酸配列、またはそれらの部分配列もしくはそれらの相補配列;
(2)(1)に示す配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列;および
(3)遺伝暗号の縮重により(1)に示す配列と同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列、またはその相補配列
から選択される核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチドであって、好ましくはDNA分子である、前記ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含む、植物ゲノム。
【請求項12】
請求項10に記載のポリヌクレオチドと、それに作動可能に連結された相同プロモータまたは非相同プロモーターとを含む、ベクター構築物。
【請求項13】
請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項12に記載のベクター構築物を含む宿主細胞であって、好ましくは植物細胞である、前記宿主細胞。
【請求項14】
PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための植物細胞の製造方法であって、請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項12に記載のベクター構築物を遺伝子編集法を用いて植物細胞内で生産すること、または請求項10に記載のポリヌクレオチドまたは請求項12に記載のベクター構築物をトランスジェニック法を用いて植物細胞に導入することを含む、前記製造方法。
【請求項15】
請求項13に記載の植物細胞、または請求項14に記載の方法により製造される植物細胞を再生することを含む、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための植物の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法により製造される、植物。
【請求項17】
植物がPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善できるようにする方法であって、PPO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子に改変を導入して、請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片を生産することを含む、前記方法。
【請求項18】
植物細胞、植物組織、植物部分または植物においてPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善する方法であって、前記植物細胞、植物組織、植物部分または植物において請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片を発現させることを含むか;または
請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片を発現する植物と別の植物とをハイブリダイズさせ、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善することができる植物またはその部分をスクリーニングすることを含むか;または
前記植物細胞、植物組織、植物部分または植物のPPO活性を有するタンパク質を遺伝子編集して、請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドまたはその生物活性断片の発現を達成することを含む、
前記方法。
【請求項19】
宿主細胞、植物細胞、植物組織、植物部分または植物のPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための、請求項1~9のいずれか一項に記載のPPOポリペプチドもしくはその生物活性断片、または請求項10に記載のポリヌクレオチドの使用であって、好ましくは前記宿主細胞が細菌細胞または真菌細胞である、前記使用。
【請求項20】
植物の栽培場所の雑草を防除するための方法であって、除草有効量のPPO阻害型除草剤を前記栽培場所に適用することを含み、前記植物が、請求項16に記載の植物、または請求項15、17または18に記載の方法によって製造される植物を含む、前記方法。
【請求項21】
前記PPO阻害型除草剤が、1種以上の追加の除草剤と組み合わせて適用される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記植物が単子葉植物または双子葉植物であり;好ましくは前記植物がイネ(オリザ・サティバ・L(Oryza sativa L.))、ソルガム(ソルガム・ビコラー(Sorghum bicolor))、コムギ(トリティカム・アエスティバム(Triticum aestivum))、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、トウモロコシ(ゼア・メイズ(Zea mays))、サトウキビ(サッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum))、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、ラッカセイ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、タバコ(ニコチナ・タバカム(Nicotiana tabacum))、ワタ(ゴシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum))、ダイコン(ラファナス・サティバス(Raphanus sativus))、キャベツ(ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea))、サツマイモ(ディオスコレア・エスクレンタ(Dioscorea esculenta))、ヤムイモ(ディオスコレア・カイエネシス(Dioscorea cayenensis))、キャッサバ(マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta))、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))、トマト(ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum))、コショウ(カプシカム・アンナムCapsicum annuum))、ナス(ソラナム・メロゲネア(Solanum melongena))、スイカ(シトルルス・ラナタス(Citrullus lanatus))、カボチャ(ククルビタ・モスカタ(Cucurbita moschata))、キュウリ(ククミス・サティバス(Cucumis sativus))、レタス(ラクタカ・サティバ(Lactuca sativa))、ゴマ(セサマム・インディカム(Sesamum indicum))、アブラナ(ブラシカ・ナパス(Brassica napus))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンナス(Helianthus annuus))、クワ(モラス・アルバ(Morus alba))、ササゲ(ビグナ・ウングイクラタ(Vigna unguiculata))、イチゴ(フラガリア・アナナサ(Fragaria ananassa))、リンゴ(マルス・ドメスティカ(Malus domestica))、モモ(プルナス・ペルシカ(Prunus persica))、サクランボ(プルナス・シュードセラサス(Prunus pseudocerasus))、アプリコット(プルナス・アルメニアカ(Prunus armeniaca))、ヨーロッパブドウ(ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera))、パパイヤ(カリカ・パパヤ(Carica papaya))またはアルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))である、請求項11に記載の植物ゲノム、請求項13に記載の宿主細胞、請求項16に記載の植物、請求項15、17、18もしくは20に記載の方法、または請求項19に記載の使用。
【請求項23】
前記PPO阻害型除草剤が、ピリミジンジオン、ジフェニルエーテル、フェニルピラゾール、N-フェニルフタルイミド、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾリノン、オキサゾリジンジオンおよびその他からなる群から選択される1種以上の化合物であり;好ましくは
(1)ピリミジンジオンとしては、ブタフェナシル、サフルフェナシルベンズフェンジゾン、チアフェナシル、[3-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(1-メチル-6-トリフルオロメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-3-イル)フェノキシ]-2-ピリジルオキシ]酢酸エチルエステル、1-メチル-6-トリフルオロメチル-3-(2,2,7-トリフルオロ-3-オキソ-4-プロパ-2-イニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン、3-[7-クロロ-5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-4-イル]-1-メチル-6-(トリフルオロメチル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン、フルプロパシル、および
【化1】
が挙げられ;
(2)ジフェニルエーテルとしては、フォメサフェン、オキシフルオルフェン、アクロニフェン、ラクトフェン、クロメトキシフェン、クロルニトロフェン、フルオログリコフェンエチル、アシフルオルフェンまたはナトリウム塩、ビフェノックス、エトキシフェン、エトキシフェンエチル、フルオロニトロフェン、フリルオキシフェン、ニトロフルオルフェンおよびハロサフェンが挙げられ;
(3)フェニルピラゾールとしては、ピラフルフェンエチルおよびフルアゾレートが挙げられ;
(4)N-フェニルフタルイミドとしては、フルミオキサジン、シニドンエチル、フルミプロピンおよびフルミクロラックペンチルが挙げられ;
(5)チアジアゾールとしては、フルチアセトメチル、フルチアセトおよびチジアジミンが挙げられ;
(6)オキサジアゾールとしては、オキサジアルギルおよびオキサジアゾンが挙げられ;
(7)トリアゾリノンとしては、カルフェントラゾン、カルフェントラゾンエチル、スルフェントラゾン、アザフェニジンおよびベンカルバゾンが挙げられ;
(8)オキサゾリジンジオンとしては、ペントキサゾンが挙げられ;
(9)その他としては、ピラクロニル、フルフェンピルエチル、プロフルアゾール、トリフルジモキサジン、N-エチル-3-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド、N-テトラヒドロフルフリル-3-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド、N-エチル-3-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド、N-テトラヒドロフルフリル-3-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド、3-[7-フルオロ-3-オキソ-4-(プロパ-2-イニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル]-1,5-ジメチル-6-チオキソ[1,3,5]トリアジナン-2,4-ジオン、2-(2,2,7-トリフルオロ-3-オキソ-4-プロパ-2-イニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロイソインドール-1,3-ジオン、メチル(E)-4-[2-クロロ-5-[4-クロロ-5-(ジフルオロメトキシ)-1H-メチルピラゾール-3-イル]-4-フルオロフェノキシ]-3-メトキシ-ブタ-2-エノエート、フェニルピリジン、ベンゾオキサジノン誘導体、および一般式I
【化2】
[式中、
Qは
【化3】
を表し;
Yはハロゲン、ハロゲン化C1-C6アルキルまたはシアノを表し;
Zはハロゲンを表し;
MはCHまたはNを表し;
Xは-CX
1X
2-(C1-C6アルキル)
n-、-(C1-C6アルキル)-CX
1X
2-(C1-C6アルキル)
n-または-(CH
2)
r-を表し、nは0または1を表し、rは2以上の整数を表し;
X
1およびX
2は独立して水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、ハロゲン化C1-C6アルキル、ハロゲン化C2-C6アルケニル、ハロゲン化C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルスルファニル、ヒドロキシC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシC1-C6アルキル、フェニルまたはベンジルを表し;
X
3およびX
4は独立してOまたはSを表し;
Wはヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、C2-C6アルケニルオキシ、C2-C6アルキニルオキシ、ハロゲン化C1-C6アルコキシ、ハロゲン化C2-C6アルケニルオキシ、ハロゲン化C2-C6アルキニルオキシ、C3-C6シクロアルキルオキシ、フェノキシ、スルフィドリル、C1-C6アルキルスルファニル、C2-C6アルケニルスルファニル、C2-C6アルキニルスルファニル、ハロゲン化C1-C6アルキルスルファニル、ハロゲン化C2-C6アルケニルスルファニル、ハロゲン化C2-C6アルキニルスルファニル、C3-C6シクロアルキルスルファニル、フェニルスルファニル、アミノまたはC1-C6アルキルアミノを表し;
より好ましくは、Qは
【化4】
を表し;Yは塩素を表し;Zはフッ素を表し;MはCHを表し;Xは-C
*X
1X
2-(C1-C6アルキル)
n-を表し、nは0を表し;X
1は水素を表し;X
2はメチルを表し;X
3およびX
4は独立してOを表し;Wはメトキシを表し;式中、C
*はキラル中心であり、化合物はR配置である。]
で表される化合物が挙げられる、
請求項15、17、18もしくは20に記載の方法、または請求項19に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオテクノロジーの分野に関し、特に、PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
雑草は、農業生産における作物の収量に影響を与える重要な要因の1つである。除草剤は雑草防除のための主要な技術的手段である。除草剤の作用機序は、Weed Science Society of America(weedscience.org)によって、植物における除草剤の様々な標的部位に応じて28のカテゴリーに分類されており、グループ14(グループ14;HRAC GROUPE)がプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ(PPO)阻害剤である(http://www.weedscience.org/)。
【0003】
プロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ(PPOX、PPXまたはPPO;EC1.3.3.4)は、クロロフィルおよびヘムの合成経路における最後の一般的な酵素である。プロトポルフィリノーゲンIXは、酸素分子の存在下でPPOによる触媒作用を受けてプロトポルフィリンIXに変換される。
【0004】
PPOは植物の重要な除草剤標的部位であり、植物のプロポルフィリノーゲンオキシダーゼを阻害し、反応を触媒する基質プロトポルフィリノーゲンの細胞内蓄積を引き起こす。細胞内の葉緑体およびミトコンドリアにおけるプロトポルフィリノーゲンの蓄積は、O2によるプロポルフィリノーゲンの非酵素的酸化を引き起こす。光条件下では、非酵素的酸化により一重項酸素が生成される。一重項酸素は内膜系において脂質の酸化を引き起こし、次いでこれらの内膜系に酸化的損傷を引き起こし、それによって植物細胞を死滅させる(Future Med Chem. 2014 Apr; 6(6): 597-599. doi:10.4155/fmc.14.29)。
【0005】
生物界におけるPPO酵素の進化の関係は、それらの配列類似性を研究することによって研究され、PPO酵素はHemG、HemJおよびHemYの3つのカテゴリに分類される。ほとんどの場合、1つの種はこれらのカテゴリのうち1つだけを有する。これらのうち、HemGは一般にγ-プロテオバクテリアに分布し、HemJはα-プロテオバクテリアに分布し、他のプロテオバクテリアやシアノバクテリアに転移するが、HemYは真核生物における唯一のPPO酵素である(Genome Biol Evol. 2014 Aug;6(8):2141-55. doi: 10.1093/gbe/evu170)。
【0006】
PPO遺伝子は特定の生物から同定されている。例えば、我々によって公知となったこれらの遺伝子としては、ニコチアナ・タバカム(nicotiana tabacum)のPPO1遺伝子(Genbank ID Y13465)およびPPO2遺伝子(Genbank ID Y13466)、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)のPPO遺伝子(Genbank ID D83139)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)のHemY遺伝子(Genbank ID M97208)、マウスのPPO遺伝子(Genbank ID D45185)、ヒトのPPO遺伝子(Genbank ID D38537)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)のPPO遺伝子(Genbank ID Z71381)、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)のhemG遺伝子(Genbank ID X68660)等が挙げられる。
【0007】
一般に、植物には少なくとも2種類のPPO遺伝子が存在し、それぞれPPO1およびPPO2と名付けられ、PPO1は一般に植物の葉緑体に位置し、PPO2は植物細胞のミトコンドリアに位置する。しかしながら、特定のヒユ科植物のPPO2遺伝子のmRNAは翻訳開始部位(TIS)が異なるため、異なる長さのPPO2ポリペプチドが生成される。例えば、ホウレンソウ(スピナシア・オレラセア・L(Spinacia oleracea L))のPPO2遺伝子は、分子量がそれぞれ58KDおよび56KDの2種類のPPO2タンパク質を発現し、これら2種類のタンパク質は26ポリペプチドの長さの違いがある。ここで、長いものは葉緑体に位置し、短いものはミトコンドリアに位置する(J Biol Chem. 2001 Jun 8;276(23):20474-81. doi: 10.1074/jbc.M101140200. Epub 2001 Mar 23)。
【0008】
特定の化合物によってPPOの活性が阻害されると、クロロフィルやヘムの生成も阻害される。基質であるプロトポルフィリノーゲンIXは、通常のポルフィリン生合成経路から切り離され、葉緑体から急速に分離して細胞質に入る。プロトポルフィリノーゲンIXは酸化されてプロトポルフィリンIXとなり、細胞膜上に蓄積する。蓄積されたプロトポルフィリンIXは、光および酸素分子の作用により高活性一重項酸素(1O2)を生成し、細胞膜の破壊を引き起こし、植物細胞を急速に死滅させる。PPO阻害型除草剤を用いることにより、特定のPPO阻害型除草剤に対する耐性を有する雑草の事例が報告されている(Pest Manag Sci. 2014 Sep;70(9):1358-66. doi: 10.1002/ps.3728. Epub 2014 Feb 24)。
【0009】
例えば、ヒユモドキ(Amaranthus tuberculatus(アマランサス・ツベルクラタス))では、PPO2L遺伝子の210位におけるグリシンの欠失(ΔG210)によって、除草剤であるラクトフェンに対する耐性が付与される(Proc Natl Acad Sci U S A. 2006 Aug 15;103(33):12329-34. doi: 10.1073/pnas.0603137103. Epub 2006 Aug 7)。
【0010】
オオホナガアオゲイトウ(Amaranthus palmeri(アマランサス・パルメリ))では、PPO2遺伝子の98位におけるアルギニンからグリシンまたはメチオニンへの変異(R98G、R98M)によって、除草剤であるフォメサフェンに対する耐性が付与される(Pest Manag Sci. 2017 Aug;73(8):1559-1563. doi: 10.1002/ps.4581. Epub 2017 May 16)。
【0011】
オオホナガアオゲイトウ(Amaranthus palmeri(アマランサス・パルメリ))では、PPO2遺伝子の399位におけるグリシンからアラニンへの変異(G399A)によって、フォメサフェンに対する耐性が付与される(Front Plant Sci. 2019 May 15;10:568. doi: 10.3389/fpls.2019.00568. eCollection 2019)。
【0012】
ブタクサ(Ambrosia artemisiifolia(アンブロシア・アルテミシフォリア))では、PPO2遺伝子の98位におけるアルギニンからロイシンへの変異(R98L)によって、フルミオキサジンに対する耐性が付与される(Weed Science, 60(3):335-344 (2012))。
【0013】
オヒシバ(Eleusine indica(エレウシン・インディカ))では、PPO1遺伝子の212位におけるアラニンからスレオニンへの変異(A212T)によって、オキサジアゾンに対する耐性が付与される(Pest Manag Sci. 2020 May;76(5):1786-1794. doi: 10.1002/ps.5703. Epub 2020 Jan 23)。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドまたはその生物活性断片に関する。
【0015】
本発明はまた、単離されたポリヌクレオチドおよび対応する植物ゲノム、ベクター構築物または宿主細胞に関する。
【0016】
別の態様において、本発明によれば、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための植物細胞または植物の製造方法、およびその製造方法によって製造される植物が提供される。
【0017】
別の態様において、本発明によれば、植物がPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善できるようにする方法が提供される。
【0018】
本発明によれば、植物細胞、植物組織、植物部分または植物においてPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善する方法も提供される。
【0019】
本発明はさらに、宿主細胞、植物細胞、植物組織、植物部分または植物のPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための、PPOポリペプチドもしくはその生物活性断片またはポリヌクレオチドの使用に関する。
【0020】
本発明はさらに、植物の栽培場所の雑草を防除するための方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、様々な植物からのPPOアミノ酸配列のアラインメントを示し、マークされたボックスはスクリーニング部位で保存されているアミノ酸モチーフを示し、上から下に順に:イネ(オリザ・サティバ・L(Oryza sativa L.))、トウモロコシ(ゼア・メイズ(Zea mays))、アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max))、タバコ(ニコチナ・タバカム(Nicotiana tabacum))、ソルガム(ソルガム・ビコラー(Sorghum bicolor))、トマト(ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum))、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare))、アブラナ(ブラシカ・ナパス(Brassica napus))、ラッカセイ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、コムギ(トリティカム・アエスティバム(Triticum aestivum))、キャベツ(ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea))、アワ(セタリア・イタリカ(Setaria italica))、ダイコン(ラファナス・サティバス(Raphanus sativus))、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum))、高地ワタ(ゴシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum))、ワタ(ゴシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum))、ダイコン(ラファナス・サティバス(Raphanus sativus))、キャベツ(ブラシカ・オレラセア(Brassica oleracea))、サツマイモ(ディオスコレア・エスクレンタ(Dioscorea esculenta))、ヤムイモ(ディオスコレア・カイエネシス(Dioscorea cayenensis))、キャッサバ(マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta))、コショウ(カプシカム・アンナムCapsicum annuum))、カボチャ(ククルビタ・モスカタ(Cucurbita moschata))、キュウリ(ククミス・サティバス(Cucumis sativus))、レタス(ラクタカ・サティバ(Lactuca sativa))、ゴマ(セサマム・インディカム(Sesamum indicum))、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンナス(Helianthus annuus))、クワ(モラス・アルバ(Morus alba))、ササゲ(ビグナ・ウングイクラタ(Vigna unguiculata))、イチゴ(フラガリア・アナナサ(Fragaria ananassa))、リンゴ(マルス・ドメスティカ(Malus domestica))、モモ(プルナス・ペルシカ(Prunus persica))、サクランボ(プルナス・シュードセラサス(Prunus pseudocerasus))、アプリコット(プルナス・アルメニアカ(Prunus armeniaca))、ヨーロッパブドウ(ビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera))、パパイヤ(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))を表す。
【
図2】
図2は、pET44a空ベクターおよびイネOsPPO1野生型遺伝子(WT)で形質転換した後、0nM、100nM、300nMおよび1000nM(ナノモル)の化合物Aで処理したPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)の細胞増殖レベルを示す。
【
図3】
図3は、0nMおよび500nMの濃度の化合物Aで処理した場合の、OsPPO1野生型遺伝子(WTとして示す)または様々なOsPPO1変異体遺伝子によって形質転換されたPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)形質転換体の細胞増殖レベルを示す。
【
図4】
図4は、0μM、1μM、10μM、20μM、50μMおよび100μMの濃度の化合物Aで処理した場合の、OsPPO1野生型遺伝子(WTとして示す)または様々なOsPPO1変異遺伝子によって形質転換されたPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)形質転換体のそれぞれの細胞増殖レベルを示す。
【
図5】
図5は、0μM、5μM、50μMおよび100μMの濃度の化合物Aで処理した場合の、ZmPPO1野生型遺伝子(ZmPPO1-WTとして示す)または様々なZmPPO1変異遺伝子によって形質転換されたPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)形質転換体のそれぞれの細胞増殖レベルを示す。
【
図6】
図6は、化合物A、サフルフェナシルおよびフルミオキサジン等の異なるPPO阻害型除草剤に対する他の作物耐性を有する部位の組み合わせの耐性試験を示す。
【
図7】
図7は、エピリフェナシル、スルフェントラゾンおよびチアフェナシル等の異なるPPO阻害型除草剤に対する他の作物耐性を有する部位の組み合わせの耐性試験を示す。
【
図8】
図8は、フォメサフェンおよびトリフルジモキサジン等の異なるPPO阻害型除草剤に対する他の作物耐性を有する部位の組み合わせの耐性試験を示す。
【
図9】
図9は、100nMのフルミオキサジン、100nMのオキシフルオルフェン、500nMのサフルフェナシル、5μMのピラクロニル、1μMのカルフェントラゾンエチルおよび10μMのフォメサフェンで処理した場合の、OsPPO1野生型遺伝子(WTとして示す)または様々なOsPPO1変異遺伝子によって形質転換されたPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)形質転換体のそれぞれの細胞増殖レベルを示す。
【
図10】
図10は、変異酵素活性の測定を示す。イネOsPPO1野生型(WTとして示す)、Y425IおよびL423S/Y425Iの酵素反応速度曲線間の差異も同様に示す。L423S/Y425変異体の酵素活性はWTよりも高く、Y425Iの酵素活性はWTよりも低い。
【
図11】
図11は、化合物Aで9g/haの割合で処理した場合の、野生株との比較における、L423S/Y425I部位での相同置換を有するイネ苗株の生育能を示す。
【
図12】
図12は、異なる濃度の化合物Aで処理した過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432のアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいて化合物Aに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L430S/Y432Iの化合物Aに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型のアラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-GmPPO1 WTとは過剰発現ダイズPPO1を示し;pHSE-GmPPO1 L430S/Y432Iとは過剰発現ダイズPPO1 L430S/Y432Iを示す。
【
図13】
図13は、異なる濃度の化合物Aで処理した過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいて化合物Aに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424S/Y426Iの化合物Aに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型のアラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-BnPPO1-C5 WTとは過剰発現アブラナPPO1を示し;pHSE-BnPPO1-C5 L424S/Y426Iとは過剰発現アブラナPPO1 L424S/Y426Iを示す。
【
図14】
図14は、異なる濃度の化合物Aで処理した過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいて化合物Aに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424W/Y426Lの化合物Aに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型のアラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-ZmPPO1 WTとは過剰発現トウモロコシPPO1を示し;pHSE-ZmPPO1 L424W/Y426Lとは過剰発現トウモロコシPPO1 L424W/Y426Lを示す。
【
図15】
図15は、異なる濃度の化合物Aで処理した過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいて化合物Aに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L423S/Y425Iの化合物Aに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-OsPPO1 WTとは過剰発現イネPPO1を示し;pHSE-OsPPO1 L423S/Y425Iとは過剰発現イネPPO1 L423S/Y425Iを示す。
【
図16】
図16は、異なる濃度のフルミオキサジンで処理した過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてフルミオキサジンに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L423S/Y425Iのフルミオキサジンに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-OsPPO1 WTとは過剰発現イネPPO1を示し;pHSE-OsPPO1 L423S/Y425Iとは過剰発現イネPPO1 L423S/Y425Iを示す。
【
図17】
図17は、異なる濃度のサフルフェナシルで処理した過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iのアラビドプシス・タリアナ種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてサフルフェナシルに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L423S/Y425Iのサフルフェナシルに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-OsPPO1 WTは過剰発現イネPPO1を示し;pHSE-OsPPO1 L423S/Y425Iは過剰発現イネPPO1 L423S/Y425Iを示す。
【
図18】
図18は、異なる濃度のフルミオキサジンで処理した過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてフルミオキサジンに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L430S/Y432Iのフルミオキサジンに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-GmPPO1 WTとは過剰発現ダイズPPO1を示し;pHSE-GmPPO1 L430S/Y432Iとは過剰発現ダイズPPO1 L430S/Y432Iを示す。
【
図19】
図19は、異なる濃度のサフルフェナシルで処理した過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現ダイズPPO1 WTおよびL430S/Y432Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてサフルフェナシルに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L430S/Y432Iのサフルフェナシルに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-GmPPO1 WTとは過剰発現ダイズPPO1を示し;pHSE-GmPPO1 L430S/Y432Iとは過剰発現ダイズPPO1 L430S/Y432Iを示す。
【
図20】
図20は、異なる濃度のフルミオキサジンで処理した過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてフルミオキサジンに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424W/Y426Lのフルミオキサジンに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-ZmPPO1 WTとは過剰発現トウモロコシPPO1を示し;pHSE-ZmPPO1 L424W/Y426Lとは過剰発現トウモロコシPPO1 L424W/Y426Lを示す。
【
図21】
図21は、異なる濃度のサフルフェナシルで処理した過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現トウモロコシPPO1 WTおよびL424W/Y426Lの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてサフルフェナシルに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424W/Y426Lのサフルフェナシルに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-ZmPPO1 WTとは過剰発現トウモロコシPPO1を示し;pHSE-ZmPPO1 WTL424W/Y426Lとは過剰発現トウモロコシPPO1 L424W/Y426Lを示す。
【
図22】
図22は、異なる濃度のフルミオキサジンで処理した過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてフルミオキサジンに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424S/Y426Iのフルミオキサジンに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-BnPPO1-C5 WTとは過剰発現アブラナPPO1を示し;pHSE-BnPPO1-C5 L424S/Y426Iとは過剰発現アブラナPPO1 L424S/Y426Iを示す。
【
図23】
図23は、異なる濃度のサフルフェナシルで処理した過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iのアラビドプシス・タリアナの種子を示す。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、過剰発現アブラナPPO1 WTおよびL424S/Y426Iの両方が、アラビドプシス・タリアナにおいてサフルフェナシルに対して一定レベルの耐性を示すが、過剰発現L424S/Y426Iのサフルフェナシルに対する耐性は、過剰発現野生型の耐性よりもはるかに高い。ここで、野生型とは野生型アラビドプシス・タリアナを示し;pHSE-BnPPO1-C5 WTとは過剰発現アブラナPPO1を示し;pHSE-BnPPO1-C5 L424S/Y426Iとは過剰発現アブラナPPO1 L424S/Y426Iを示す。
【
図24】
図24は、異なる濃度の化合物Aを噴霧した過剰発現イネPPO1 WTおよびL423S/Y425Iのイネ苗の試験結果を示す。ここで、WTはHuaidao No.5野生型を示し;MT1およびMT2は過剰発現イネPPO1 WTを示し;MT3およびMT4は過剰発現イネPPO1 L423S/Y425Iを示す。
【0022】
【発明の詳細な説明】
【0023】
本明細書で用いられるいくつかの用語は下記のように定義される。
【0024】
本発明において、「除草剤」という用語は、植物を枯らす、防除する、または植物の成長に悪影響を与えることができる有効成分を指す。「除草剤耐性(herbicide tolerance)」または「除草剤抵抗性(herbicide resistance)」という用語は、正常または野生型の植物を枯らしたり、その成長を阻害したり、または野生型の植物と比較して植物の成長を弱めたりもしくは停止させたりすることができる除草剤の処理後であっても、植物が成長し続ける状況を指す。上述した除草剤としては、PPO阻害型除草剤が挙げられ、ピリミジンジオン、ジフェニルエーテル、フェニルピラゾール、N-フェニルフタルイミド、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾリノン、オキサゾリジンジオン、および異なる化学構造を有する他の除草剤に分類することができる。
【0025】
本明細書に記載され、本発明に関連して用いることができるPPO阻害型除草剤および/または他の除草性化合物が、E/Z異性体等の幾何異性体を形成することができる場合、それらの純粋な異性体およびそれらの混合物のいずれも本発明の組成物に用いることができる。本明細書に記載のPPO阻害型除草剤および/または他の除草性化合物が1つ以上のキラリティー中心を有し、その結果、エナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在する場合、それらの純粋な異性体およびそれらの混合物のいずれも本発明の組成物に用いることができる。本明細書に記載のPPO阻害型除草剤および/または他の除草性化合物がイオン化可能な官能基を有する場合、それらは農業上許容可能な塩の形態で用いることもできる。一般に、それらのカチオンの塩およびそれらの酸の酸付加塩は、それらのカチオンおよびアニオンがそれぞれ活性化合物の活性に悪影響を及ぼさないことが適切である。好ましいカチオンはアルカリ金属イオン、好ましくはリチウムイオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオン、アルカリ土類金属イオン、好ましくはカルシウムイオンおよびマグネシウムイオン、ならびに遷移金属イオン、好ましくはマンガンイオン、銅イオン、亜鉛イオンおよび鉄イオンであり、さらにアンモニウム、および1~4個の水素原子がC1-C4-アルキル、ヒドロキシ-C1-C4-アルキル、C1-C4-アルコキシ-C1-C4-アルキル、ヒドロキシ-C1-C4-アルコキシ-C1-C4-アルキル、フェニルまたはベンジルで置換された置換アンモニウム、好ましくはアンモニウム、メチルアンモニウム、イソプロピルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジイソプロピルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、ヘプチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、2-ヒドロキシエチルアンモニウム(オラミン塩)、2-(2-ヒドロキシエチル-1-オキシ)エト-1-イルアンモニウム(ジグリコールアミン塩)、ジ(2-ヒドロキシエト-1-イル)アンモニウム(ジオラミン塩)、トリス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウム(トロラミン塩)、トリス(2-ヒドロキシプロピル)アンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウムおよびN,N,N-トリメチルエタノールアンモニウム(コリン塩)であり、さらにはホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、好ましくはトリメチルスルホニウム等のトリ(C1-C4-アルキル)スルホニウム、およびスルホキソニウムイオン、好ましくはトリ(C1-C4-アルキル)スルホキソニウムイオンであり、最後にN,N-ビス-(3-アミノプロピル)メチルアミンおよびジエチレントリアミン等のポリ塩基アミンの塩である。有用な酸付加塩のアニオンは、主に塩化物、臭化物、フッ化物、ヨウ化物、硫酸水素、硫酸メチル、硫酸、リン酸二水素、リン酸水素、硝酸、重炭酸、炭酸、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロリン酸、安息香酸のイオン、およびC1-C4-アルカン酸のアニオン、好ましくはギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩および酪酸塩である。
【0026】
カルボキシル基を有する本明細書に記載のPPO阻害型除草剤および/または他の除草化合物は、酸の形態で、上述した農業上適切な塩の形態で、または農業上許容可能な誘導体の形態、例えば、モノ-およびジ-C1-C6-アルキルアミドまたはアリールアミド等のアミドとして、アリルエステル、プロパルギルエステル、C1-C10-アルキルエステル、アルコキシアルキルエステル、テフリル((テトラヒドロフラン-2-イル)メチル)エステル等のエステルとして、C1-C10-アルキルチオエステル等のチオエステルとして用いることができる。好ましいモノ-およびジ-C1-C6-アルキルアミドは、メチルアミドおよびジメチルアミドである。好ましいアリールアミドは、例えば、アニリドおよび2-クロロアニリドである。好ましいアルキルエステルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、メキシル(1-メチルヘキシル)、メプチル(1-メチルヘプチル)、ヘプチル、オクチルまたはイソオクチル(2-エチルヘキシル)エステルである。好ましいC1-C4-アルコキシ-C1-C4-アルキルエステルは、直鎖状または分岐鎖状のC1-C4-アルコキシエチルエステル、例えば、2-メトキシエチルエステル、2-エトキシエチルエステル、2-ブトキシエチル(ブトチル)エステル、2-ブトキシプロピルエステルまたは3-ブトキシプロピルエステルである。直鎖状または分岐鎖状のC1-C10-アルキルチオエステルの例は、エチルチオエステルである。
【0027】
例示的な実施形態において、ピリミジンジオンとしては、限定されないが、ブタフェナシル(CAS番号:134605-64-4)、サフルフェナシル(CAS番号:372137-35-4)、ベンズフェンジゾン(CAS番号:158755-95-4)、チアフェナシル(CAS番号:1220411-29-9)、[3-[2-クロロ-4-フルオロ-5-(1-メチル-6-トリフルオロメチル-2,4-ジオキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-3-イル)フェノキシ]-2-ピリジルオキシ]酢酸エチルエステル(エピリフェナシル、CAS番号:353292-31-6)、1-メチル-6-トリフルオロメチル-3-(2,2,7-トリフルオロ-3-オキソ-4-プロパ-2-イニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(CAS番号:1304113-05-0)、3-[7-クロロ-5-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-4-イル]-1-メチル-6-(トリフルオロメチル)-1H-ピリミジン-2,4-ジオン(CAS番号:212754-02-4)、フルプロパシル(CAS番号:120890-70-2)、CN105753853Aに開示されるイソキサゾリン含有ウラシル(例えば、
【化1】
の化合物)、WO2017/202768に開示されるウラシルピリジン、およびWO2018/019842に開示されるウラシルが挙げられる。
【0028】
ジフェニルエーテル系除草剤としては、限定されないが、フォメサフェン(CAS番号:72178-02-0)、オキシフルオルフェン(CAS番号:42874-03-3)、アクロニフェン(CAS番号:74070-46-5)、ラクトフェン(CAS番号:77501-63-4)、クロメトキシフェン(CAS番号:32861-85-1)、クロルニトロフェン(CAS番号:1836-77-7)、フルオログリコフェンエチル(CAS番号:77501-90-7)、アシフルオルフェンまたはナトリウム塩(CAS番号:50594-66-6または62476-59-9)、ビフェノックス(CAS番号:42576-02-3)、エトキシフェン(CAS番号:188634-90-4)、エトキシフェンエチル(CAS番号:131086-42-5)、フルオロニトロフェン(CAS番号:13738-63-1)、フリルオキシフェン(CAS番号:80020-41-3)、ニトロフルオルフェン(CAS番号:42874-01-1)およびハロサフェン(CAS番号:77227-69-1)が挙げられる。
【0029】
フェニルピラゾール系除草剤としては、限定されないが、ピラフルフェンエチル(CAS番号:129630-19-9)およびフルアゾレート(CAS番号:174514-07-9)が挙げられる。
【0030】
N-フェニルイミド系除草剤としては、限定されないが、フルミオキサジン(CAS番号:103361-09-7)、シニドンエチル(CAS番号:142891-20-1)、フルミプロピン(CAS番号:84478-52-4)およびフルミクロラックペンチル(CAS番号:87546-18-7)が挙げられる。
【0031】
チアジアゾール系除草剤としては、限定されないが、フルチアセットメチル(CAS番号:117337-19-6)、フルチアセット(CAS番号:149253-65-6)およびチジアジミン(CAS番号:123249-43-4)が挙げられる。
【0032】
オキサジアゾール系除草剤としては、限定されないが、オキサジアルギル(CAS番号:39807-15-3)およびオキサジアゾン(CAS番号:19666-30-9)が挙げられる。
【0033】
トリアゾリノン系除草剤としては、限定されないが、カルフェントラゾン(CAS番号:128621-72-7)、カルフェントラゾンエチル(CAS番号:128639-02-1)、スルフェントラゾン(CAS番号:122836-35-5)、アザフェニジン(CAS番号:68049-83-2)およびベンカルバゾン(CAS番号:173980-17-1)が挙げられる。
【0034】
オキサゾリジンジオン系除草剤としては、限定されないが、ペントキサゾン(CAS番号:110956-75-7)が挙げられる。
【0035】
他の除草剤としては、限定されないが、ピラクロニル(CAS番号:158353-15-2)、フルフェンピルエチル(CAS番号:188489-07-8)、プロフルアゾール(CAS番号:190314-43-3)、トリフルジモキサジン(CAS番号:1258836-72-4)、N-エチル-3-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド(CAS番号:452098-92-9)、N-テトラヒドロフルフリル-3-(2,6-ジクロロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド(CAS番号:915396-43-9)、N-エチル-3-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド(CAS番号:452099-05-7)、N-テトラヒドロフルフリル-3-(2-クロロ-6-フルオロ-4-トリフルオロメチルフェノキシ)-5-メチル-1H-ピラゾール-1-カルボキサミド(CAS番号:452100-03-7)、3-[7-フルオロ-3-オキソ-4-(プロパ-2-イニル)-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル]-1,5-ジメチル-6-チオキソ[1,3,5]トリアジナン-2,4-ジオン(CAS番号:451484-50-7)、2-(2,2,7-トリフルオロ-3-オキソ-4-プロパ-2-イニル-3,4-ジヒドロ-2H-ベンゾ[1,4]オキサジン-6-イル)-4,5,6,7-テトラヒドロイソインドール-1,3-ジオン(CAS番号:1300118-96-0)、メチル(E)-4-[2-クロロ-5-[4-クロロ-5-(ジフルオロメトキシ)-1H-メチルピラゾール-3-]イル]-4-フルオロフェノキシ]-3-メトキシ-ブタ-2-エノエート(CAS番号:948893-00-3)、WO2016/120116に開示されるフェニルピリジン、EP09163242.2に開示されるベンゾオキサジノン誘導体、および一般式I
【化2】
で示される化合物(CN202011462769.7を参照)が挙げられ;
別の例示的な実施形態において、Qは
【化3】
を表し;
Yはハロゲン、ハロゲン化C1-C6アルキルまたはシアノを表し;
Zはハロゲンを表し;
MはCHまたはNを表し;
Xは-CX
1X
2-(C1-C6アルキル)
n-、-(C1-C6アルキル)-CX
1X2-(C1-C6アルキル)
n-または-(CH
2)
r-を表し、nは0または1を表し、rは2以上の整数を表し;
X
1およびX
2は独立して水素、ハロゲン、C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、ハロゲン化C1-C6アルキル、ハロゲン化C2-C6アルケニル、ハロゲン化C2-C6アルキニル、C3-C6シクロアルキル、C3-C6シクロアルキルC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ、C1-C6アルキルスルファニル、ヒドロキシC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシC1-C6アルキル、フェニルまたはベンジルを表し;
X
3およびX
4は独立してOまたはSを表し;
Wはヒドロキシル、C1-C6アルコキシ、C2-C6アルケニルオキシ、C2-C6アルキニルオキシ、ハロゲン化C1-C6アルコキシ、ハロゲン化C2-C6アルケニルオキシ、ハロゲン化C2-C6アルキニルオキシ、C3-C6シクロアルキルオキシ、フェノキシ、スルフィドリル、C1-C6アルキルスルファニル、C2-C6アルケニルスルファニル、C2-C6アルキニルスルファニル、ハロゲン化C1-C6アルキルスルファニル、ハロゲン化C2-C6アルケニルスルファニル、ハロゲン化C2-C6アルキニルスルファニル、C3-C6シクロアルキルスルファニル、フェニルスルファニル、アミノまたはC1-C6アルキルアミノを表す。
【0036】
別の例示的な実施形態において、一般式Iで表される化合物は化合物Aから選択され:Qは
【化4】
を表し;Yは塩素を表し;Zはフッ素を表し;MはCHを表し;Xは-C
*X
1X
2-(C1-C6アルキル)
n-を表し(C
*はキラル中心、R配置)、nは0を表し;X
1は水素を表し;X
2はメチルを表し;X
3およびX
4は独立してOを表し;Wはメトキシを表す。
【0037】
本発明を実施するのに有用な上記のPPO阻害型除草剤は、非常に多くの場合、より広範な望ましくない植生の防除を得るために、1種以上の他の除草剤と組み合わせて適用される。例えば、PPO阻害型除草剤は、作物植物が元来耐性であるか、または上述したような1種以上の追加の導入遺伝子の発現を介して耐性である除草剤を追加的に組み合わせてさらに用いることができる。他の標的除草剤と組み合わせて用いる場合、本発明の化合物は、1種または複数種の他の除草剤と共に製剤化したり、1種または複数種の他の除草剤とタンク混合したり、1種または複数種の他の除草剤と連続的に適用したりすることができる。
【0038】
混合物に適した成分は、例えば、クラスb1)~b15)の除草剤から選択される:
b1)脂質生合成阻害剤;
b2)アセト乳酸シンターゼ阻害剤(ALS阻害剤);
b3)光合成阻害剤;
b4)プロトポルフィリノーゲン-IXオキシダーゼ阻害剤;
b5)漂白剤除草剤;
b6)エノールピルビルシキミ酸3-リン酸シンターゼ阻害剤(EPSP阻害剤);
b7)グルタミン合成酵素阻害剤;
b8)7,8-ジヒドロプテロエートシンターゼ阻害剤(DHP阻害剤);
b9)有糸分裂阻害剤;
b10)超長鎖脂肪酸合成阻害剤(VLCFA阻害剤);
b11)セルロース生合成阻害剤;
b12)デカップラー除草剤;
b13)オーキシン系除草剤;
b14)オーキシン輸送阻害剤;および
b15)ブロモブチド、クロルフルレノール、クロルフルレノールメチル、シンメチリン、クミルロン、ダラポン、ダゾメット、ジフェンゾクワット、ジフェンゾクワットメチル硫酸塩、ジメチピン、DSMA、ダイムロン、エンドタールおよびその塩、エトベンザニド、フランプロップ、フランプロップイソプロピル、フランプロップメチル、フランプロップ-M-イソプロピル、フランプロップ-M-メチル、フルレノール、フルレノールブチル、フルルプリミドール、フォサミン、フォサミンアンモニウム、インダノファン、インダジフラム、マレイン酸ヒドラジド、メフルイジド、メタム、メチオゾリン(CAS番号:403640-27-7)、アジ化メチル、臭化メチル、メチルダイムロン、ヨウ化メチル、MSMA、オレイン酸、オキサジクロメフォン、ペラルゴン酸、ピリブチカルブ、キノクラミン、トリアジフラム、トリジファンならびに6-クロロ-3-(2-シクロプロピル-6-メチルフェノキシ)-4-ピリダジノール(CAS番号:499223-49-3)およびその塩およびエステルからなる群から選択される他の除草剤;ならびにそれらの農業上許容可能な塩または誘導体。
【0039】
さらに、上述した他の除草性化合物と組み合わせて用いる場合、PPO阻害型除草剤と薬害軽減剤とを組み合わせて適用することが有用であり得る。薬害軽減剤は、望ましくない植物に対する除草剤の除草作用に大きな影響を与えることなく、有用な植物への被害を防止または軽減する化合物である。薬害軽減剤は、播種前(例えば、種子処理時、新芽時または実生苗時)、または有用な植物の発芽前適用または発芽後適用のいずれかで適用することができる。
【0040】
さらに、薬害軽減剤、PPO阻害型除草剤および/または他の除草剤は、同時にまたは連続して適用することができる。
【0041】
PPO阻害型除草剤、グループb1)~b15)の除草性化合物、および薬害軽減剤は、それぞれ既知の除草剤および薬害軽減剤であり、例えば、WO2013/189984;The Compendium of Pesticide Common Names (http://www.alanwood.net/pesticides/);Farm Chemicals Handbook 2000, Volume 86, Meister Publishing Company, 2000;B.Hock, C.Fedtke, R.R.Schmidt, Herbizide [herbicide], Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1995;W.H.Ahrens, Herbicide Handbook, 7th edition, Weed Science Society of America, 1994およびK.K.Hatzios, Herbicide Handbook, supplement to the 7th edition, Weed Science Society of America, 1998を参照されたい。
【0042】
本発明が適用される植物としては、特に限定されないが、単子葉植物または双子葉植物が挙げられる。また、植物には、草本植物または木本植物が含まれる。単子葉植物としては、オモダカ科、トチカガミ科、シバナ科、ホロムイソウ科、ヒルムシロ科、イバラモ科、アマモ科、ユリ科、ハエモドルム科、リュウゼツラン科、ヒガンバナ科、ヤマノイモ科、ミズアオイ科、アヤメ科、ヒナノシャクジョウ科、イグサ科、ツユクサ科、ホシクサ科、イネ科(Gramineae)、イネ科(Poaceae)、サトイモ科、ウキクサ科、ミクリ科、ガマ科、カヤツリグサ科、バショウ科、ショウガ科、カンナ科、ラン科に属する植物が挙げられる。
【0043】
双子葉植物としては、イワウメ科、リョウブ科、イチヤクソウ科、ツツジ科、ヤブコウジ科、サクラソウ科、イソマツ科、カヤノキ科、エゴノキ科、ハイノキ科、モクセイ科、フジウツギ科、リンドウ科、ミツガシワ科、キョウチクトウ科、ガガイモ科、アカネ科、ハナシノブ科、ヒルガオ科、ムラサキ科、クマツヅラ科、シソ科、ナス科、ゴマノハグサ科、ノウゼンカズラ科、キツネノマゴ科、ゴマ科、ハマウツボ科、イワタバコ科、タヌキモ科、ハエドクソウ科、オオバコ科、スイカズラ科、レンプクソウ科、オミナエシ科、マツムシソウ科、キキョウ科、キク科、ヤマモモ科、クルミ科、ヤナギ科、カバノキ科、ブナ科、ニレ科、クワ科、イラクサ科、ビャクダン科、オオバヤドリギ科、タデ科、ヤマゴボウ科、オシロイバナ科、ザクロソウ科、スベリヒユ科、ナデシコ科、アカザ科、ヒユ科、サボテン科、モクレン科、シキミ科、クスノキ科、カツラ科、キンポウゲ科、メギ科、アケビ科、ツヅラフジ科、スイレン科、マツモ科、ハゴロモモ科、ドクダミ科、コショウ科、センリョウ科、ウマノスズクサ科、マタタビ科、ツバキ科、オトギリソウ科、モウセンゴケ科、ケシ科、フウチョウソウ科、アブラナ科、スズカケノキ科、マンサク科、ベンケイソウ科、ユキノシタ科、トチュウ科、トベラ科、バラ科、マメ科、カタバミ科、フクロソウ科、ノウゼンハレン科、ハマビシ科、アマ科、トウダイグサ科、アワゴケ科、ミカン科、ニガキ科、センダン科、ヒメハギ科、ウルシ科、カエデ科、ムクロジ科、トチノキ科、アワブキ科、ツリフネソウ科、モチノキ科、ニシキギ科、ミツバウツギ科、ツゲ科、ガンコウラン科、クロウメモドキ科、ブドウ科、ホルトノキ科、シナノキ科、アオイ科、アオギリ科、ジンチョウゲ科、グミ科、イイギリ科、スミレ科、トケイソウ科、ギョリュウ科、ミゾハコベ科、シュウカイドウ科、ウリ科、ミソハギ科、ザクロ科、アカバナ科、アリノトウグサ科、ウリノキ科、ミズキ科、ウコギ科、セリ科(Umbelliferae)(セリ科(Apiaceae))に属する植物が挙げられる。
【0044】
別の例示的な実施形態において、植物としては、限定されないが、下記のものが挙げられる:(1)食用作物:オリザ・サティバ(Oryza sativa)、オリザ・ラティフォリア(Oryza latifolia)、オリザ・サティバ・L(Oryza sativa L.)、オリザ・グラベリマ(Oryza glaberrima)等のオリザ属種;トリティカム・アエスティバム(Triticum aestivum)、トリティカム・ツルギダム亜種デュラム(T. Turgidum ssp. durum)等のトリティカム属種;ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare)、ホルデウム・アリゾニカム(Hordeum arizonicum)等のホルデウム属種;セカレ・セレアーレ(Secale cereale);アベナ・サティバ(Avena sativa)、アベナ・ファトゥア(Avena fatua)、アベナ・ビザンチン(Avena byzantine)、アベナ・ファトゥア変種サティバ(Avena fatua var. sativa)、アベナ・ハイブリダ(Avena hybrida)等のアベナ属種;ペニセタム・グラウカム(Pennisetum glaucum)、ソルガム(ソルガム・ビコラー(Sorghum bicolor))、ソルガム・ブルガレ(Sorghum vulgare)、ライコムギ、ゼア・メイズ(Zea mays)またはトウモロコシ、雑穀(Millet)、イネ、アワ(Foxtail millet)、キビ(Proso millet)、ソルガム・ビコラー、キビ属種等のエキノクロア属種、ソバ属種、パニカム・ミリアセウム(Panicum miliaceum)、セタリア・イタリカ(Setaria italica)、ジザニア・パルストリス(Zizania palustris)、エラグロスティス・テフ(Eragrostis tef)、パニカム・ミリアセウム、エレウシン・コラカナ(Eleusine coracana);(2)マメ科作物:グリシン・マックス(Glycine max)等のダイズ種、ソラマメ属種、ササゲ属種、エンドウ属種、ソラマメ、ルピナス属種、ソラマメ属、タマリンダス・インディカ(Tamarindus indica)、レンズ・クリナリス(Lens Culinaris)、レンリソウ属種、フジマメ、ソラマメ、
リョクトウ、アカインゲンマメ、ヒヨコマメのマメ;(3)油料作物:アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea)、ラッカセイ属種、ゴマ属種、ヘリアンサス・アンナス(Helianthus annuus)等のヒマワリ属種、エラエイス・ギニーンシス(Elaeis guineensis)およびエラエイス・オレイフェラ(Elaeis oleifera)等のアブラヤシ、セイヨウアブラナ、ブラシカ・ナパス(Brassica napus)、セサマム・オリエンターレ(Sesamum orientale)、ブラシカ・ジュンセア(Brassica juncea)、アブラナ、カメリア・オレイフェラ(Camellia oleifera)、アブラヤシ、オリーブ、ヒマシ油植物、ブラシカ・ナパス・L(Brassica napus L.)、セイヨウアブラナ;(4)繊維作物:アガベ・シサラナ(Agave sisalana)、ワタ属およびゴシピウム・バルバデンス(Gossypium barbadense)、ゴシピウム・ヒルスタム(Gossypium hirsutum)等のワタ属種、ハイビスカス・カンナビナス(Hibiscus cannabinus)、アガベ・シサラナ、ムサ・テキスティリス・ニー(Musa textilis Nee)、リナム・ウシタティシマム(Linum usitatissimum)、コルコラス・カプスラリス・L(Corchorus capsularis L)、ボエメリア・ニベア・(L)(Boehmeria nivea (L.))、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa)、カンナビス・サティバ(Cannabis sativa);(5)果樹作物:ナツメ属種、キュウリ属種、パッシフロラ・エドゥリス(Passiflora edulis)、ブドウ属種、スノキ属種、イラス・コムニス(Pyrus communis)、サクラ属種、バンジロウ属種、プニカ・グラナタム(Punica granatum)、リンゴ属種、シトルルス・ラナタス(Citrullus lanatus)、ミカン属種、フィカス・カリカ(Ficus carica)、キンカン属種、オランダイチゴ属種、サンザシ属種、カキノキ属種、エウゲニア・ウニフォラ(Eugenia unifora)、エリオボトリア・ジャポニカ(Eriobotrya japonica)、ディモカルプス・ロンガン(Dimocarpus longan)、カリカ・パパヤ(Carica papaya)、ココヤシ属種、アベルホア・カラムボラ(Averrhoa carambola)、マタタビ属種、プルナス・アミグダラス(Prunus amygdalus)、バショウ属種(バナナ)、ワニナシ属種(ペルセア・アメリカーナ(Persea Americana))、プシディウム・グアジャバ(Psidium guajava)、マンメア・アメリカーナ(Mammea Americana)、マンギフェラ・インディカ(Mangifera indica)、カナリウム・アルバム(Canarium album)(オレア・エウロパエア(Olea europaea))、ココス・ヌシフェラ(Cocos nucifera)、マルピギア・エマルギナタ(Malpighia emarginata)、マニルカラ・ザポタ(Manilkara zapota)、アナナス・コモサス(Ananas comosus)、バンレイシ属種、シトラス・レティクラート(Citrus reticulate)(ミカン属種)、パンノキ属種、ライチ・キネンシス(Litchi chinensis)、スグリ属種、キイチゴ属種、セイヨウナシ、モモ、アプリコット、プラム、ヤマモモ、
レモン、キンカン、ドリアン、オレンジ、ブルーベリー、ハミウリ、マスクメロン、ナツメヤシ、クルミ、サクラ;(6)根茎作物:イモノキ属種、イポモエア・バタタス(Ipomoea batatas)、コロカシア・エスクレンタ(Colocasia esculenta)、塊茎カラシ(tuber mustard)、アリウム・セパ(Allium cepa)(タマネギ)、エレオカリス・ツベローズ(Eleocharis tuberose)(シログワイ)、シペラス・ロタンダス(Cyperus rotundus)、リゾマ・ディオスコレア(Rhizoma dioscoreae);(7)野菜作物:ホウレンソウ属種、インゲンマメ属種、ラクタカ・サティバ(Lactuca sativa)、ニガウリ属種、ペトロセリナム・クリスパム(Petroselinum crispum)、トウガラシ属種、ナス属種(ソラナム・ツベロサム(Solanum tuberosum)、ソラナム・インテグリフォリウム(Solanum integrifolium)、ソラナム・リコペルシカム(Solanum lycopersicum)等)、トマト属種(リコペルシコン・エスクレンタム(Lycopersicon esculentum)、リコペルシコン・リコペルシカム(Lycopersicon lycopersicum)、リコペルシコン・ピリフォルメ(Lycopersicon pyriforme)等)、マクロチローマ属種(Macrotyloma spp.)、ケール、ルファ・アクタングラ(Luffa acutangula)、レンズマメ、オクラ、タマネギ、ジャガイモ、アーティチョーク、アスパラガス、ブロッコリー、ブラッセルス・スプラウト(Brussels sprouts)、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、カラードグリーン(collard greens)、
カボチャ、ベニンカーサ・ヒスピダ(Benincasa hispida)、アスパラガス・オフィシナリス(Asparagus officinalis)、アピウム・グラベオレンス(Apium graveolens)、ヒユ属種、ネギ属種、トロロアオイ属種、キコリウム・エンディビア(Cichorium endivia)、カボチャ属種、コリアンドラム・サティバム(Coriandrum sativum)、ブラシカ・カリナタ(B. carinata)、ラプバナス・サティバス(Rapbanus sativus)、アブラナ属種(ブラシカ・ラパ・亜種(Brassica rapa ssp.)、セイヨウアブラナ、カブナノハナ(turnip rape)、カラシナ、キャベツ、クロガラシ、ブラッセルズ・スプラウト、ナス科(ナス)、アマトウガラシ、キュウリ、ヘチマ属、ハクサイ、セイヨウアブラナ、ヒョウタン、ニラ、ハス、レンコン、レンコン、レタス;(8)花卉作物:トロパエオラム・ミナス(Tropaeolum minus)、トロパエオラム・マジャス(Tropaeolum majus)、カンナ・インディカ(Canna indica)、オプンティア属種、コウオウソウ属種、シンビジウム(ラン)、クリナム・アジアティカム・L(Crinum asiaticum L.)、クンシラン、ヒッペアストラム・ルティラム(Hippeastrum rutilum)、ロサ・ルゴサ(Rosa Rugosa)、ロサ・キネンシス(Rosa Chinensis)、ジャスミナム・サンバック(Jasminum sambac)、チューリパ・ゲスネリアナ・L(Tulipa gesneriana L.)、サクラ属種、ファルビティス・ニル(L.)・チョイシー(Pharbitis nil (L.) Choisy)、カレンデュラ・オフィシナリス・L(Calendula officinalis L.)、ハス属種、ベリス・ペレンニス・L(Bellis perennis L.)、ディアンサス・カリオフィラス(Dianthus caryophyllus)、ペチュニア・ハイブリダ(Petunia hybrida)、チューリパ・ゲスネリアナ・L、リリウム・ブラウニイ(Lilium brownii)、プルナス・ムメ(Prunus mume)、ナルキサス・タゼッタ・L(Narcissus tazetta L.)、ジャスミナム・ヌーディフロラム・リンドル(Jasminum nudiflorum Lindl.)、プリムラ・マラコイデス(Primula malacoides)、ダフネ・オドラ(Daphne odora)、カメリア・ジャポニカ(Camellia japonica)、ミケリア・アルバ(Michelia alba)、マグノリア・リリフローラ(Magnolia liliiflora)、ビビブルナム・マクロセファラム(Viburnum macrocephalum)、クリビア・ミニアータ(Clivia miniata)、マルス・スペクタビリス(Malus spectabilis)、パエオニア・サフルティコサ(Paeonia suffruticosa)、パエオニア・ラクティフロラ(Paeonia lactiflora)、シジギウム・アロマティクム(Syzygium aromaticum)、ロドデンドロン・シムシ(Rhododendron simsii)、ロドデンドロン・ハイブリダム(Rhododendron hybridum)、ミケリア・フィゴ(ロウル.)・スプレング(Michelia figo (Lour.) Spreng、セルシス・キネンシス(Cercis chinensis)、ケリア・ジャポニカ(Keria japonica)、ウェイゲラ・フロリダ(Weigela florida)、フルクタス・フォルシチア(Fructus forsythiae)、ジャスミナム・メスニー(Jasminum mesnyi)、パロケタス・コムニス(Parochetus communis)、シクラメン・ペルシカム・ミル(Cyclamen persicum Mill)、ファレノフシス・ハイブリッド(Phalaenophsis hybrid)、デンドロビウム・ノービレ(Dendrobium nobile)、ヒヤシンタス・オリエンタリス(Hyacinthus orientalis)、アイリス・テクトラム・マキシム(Iris tectorum Maxim)、ザンテデスキア・エチオピカ(Zantedschia aethiopica)、カレンデュラ・オフィシナリス(Calendula officinalis)、ヒッペアストラム・ルチルム(Hippeastrum rutilum)、ベゴニア・センパーフローレンス・ハイブリッド(Begonia semperflorens hybr)、フクシア・ハイブリダ(Fuchsia hybrida)、ベゴニア・マキュレート・ラディ(Begonia maculate Raddi)、ゼラニウム;(9)薬用作物:カルタマス・ティンクトリウス(Carthamus tinctorius)、ミント属、レウム・ラバルバラム(Dheum rhabarbarum)、クロッカス・サティバス(Crocus sativus)、リシウム・キネンセ(Lycium chinense)、ポリゴナタム・オドラタム(Polygonatum odoratum)、ポリゴナタム・キンギアナム(Polygonatum Kingianum)、アネマールヘナ・アスフォデロイデス・ブンゲ(Anemarrhena asphodeloides Bunge)、ラディックス・オフィオポゴニス(Radix ophiopogonis)、フリティラリア・キルホサ(Fritillaria cirrhosa)、クルクマ・アロマティカ(Curcuma aromatica)、アモマム・ビロサム・ロウル.(Amomum villosum Lour.)、ポリゴナム・マルチフロラム(Polygonum multiflorum)、レウム・オフィシナーレ(Rheum officinale)、グリシルヒザ・ウラレンシス・フィスキ(Glycyrrhiza uralensis Fisch)、
アストラガルス・メンブラナセウス(Astragalus membranaceus)、パナックス・ギンセング(Panax ginseng)、パナックス・ノトギンセング(Panax notoginseng)、アカントパナックス・グラシリスチラス(Acanthopanax gracilistylus)、アンジェリカ・シネンシス(Angelica sinensis)、リグスティカム・ワリチ(Ligusticum wallichii)、ブプレウラム・シネンセス・DC(Bupleurum sinenses DC.)、ダチュラ・ストラモニウム・リン(Datura stramonium Linn)、ダチュラ・メテル・L.(Datura metel L.)、メンタ・ハプロカリクス(Mentha haplocalyx)、レオヌルス・シビリクス・L.(Leonurus sibiricus L.)、アガスタッシュ・ルゴサス(Agastache rugosus)、スクテラリア・バイカレンシス(Scutellaria baicalensis)、プルネラ・ブルガリス・L.(Prunella vulgaris L.)、ピレスラム・カルネウム(Pyrethrum carneum)、シンコナ・レドゲリアナ(Cinchona ledgeriana)、ヘベア・ブラシリエンシス(Hevea brasiliensis)(野生)
、ピペル・ニグラム・L.(Piper Nigrum L.);(10)原料作物:ヘベア・ブラシリエンシス、リシナス・コムニス(Ricinus communis)、ベルニシア・フォルディ(Vernicia fordii)、モルス・アルバ・L.(Morus alba L.)、ホプス・フムラス・ルプラス(Hops Humulus lupulus)、カバノキ属、アルナス・クレマストジン・バーク(Alnus cremastogyne Burk)、ラス・ベルニシフルア・ストークス(Rhus verniciflua stokes);(11)牧草作物:コムギダマシ属種、シャジクソウ属種、ミスカンサス・シネンシス(Miscanthus sinensis)、チカラシバ属種、ファラリス・アルンディナセア(Phalaris arundinacea)、パニカム・ビルガタム(Panicum virgatum)、プレーリーグラス(prairie grasses)、インディアングラス(Indian grass)、ビッグブルーステムグラス(Big bluestem grass)、プレウム・プラテンセ(Phleum pratense)、シバ、カヤツリグサ科(コブレシア・ピグマエア(Kobresia pygmaea)、カレクス・ペディフォルミス(Carex pediformis)、カレクス・フミリス(Carex humilis))、メディカゴ・サティバ・リン(Medicago sativa Linn)、フレウム・プラテンセ・L.(Phleum pratense L.)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、メリロタス・スアブコレン(Melilotus suavcolen)、アストラガルス・シニカス(Astragalus sinicus)、クロタラリア・ジュンセア(Crotalaria juncea)、セスバニア・カンナビナ(Sesbania cannabina)、アゾラ・インビルカタ(Azolla imbircata)、エイクホルニア・クラシペス(Eichhornia crassipes)、アモルファ・フルティコサ(Amorpha fruticosa)、ルピナス・ミクランサス(Lupinus micranthus)、シャクジソウ属、アストラガルス・アドスルゲンス・パル(Astragalus adsurgens pall)、ピスティア・ストラティオテス・リン(Pistia stratiotes linn)、アルテナンテラ・フィロクセロイデス(Alternanthera philoxeroides)、ドクムギ属;(12)砂糖作物:サッカラム・オフィシナラム(Saccharum officinarum)(サトウキビ属種)、ベータ・ブルガリス(Beta vulgaris);(13)飲料作物:カメリア・シネンシス(Camellia sinensis)、カメリア・シネンシス(Camellia Sinensis)、チャ、コーヒー(コーヒー属種)、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)、フムラス・ルプラス・リン(Humulus lupulus Linn);(14)芝生植物:アンモフィラ・アレナリア(Ammophila arenaria)、イチゴツナギ属種(ポア・プラテンシス(Poa pratensis)(ブルーグラス))、ヌカボ属種(アグロスティス・マツムラ(Agrostis matsumurae)、アグロスティス・パルストリス(Agrostis palustris))、ドクムギ属種(ドクムギ属)、ウシノケグサ属種(フェスタカ・オビナ・L.(Festuca ovina L.))、シバ属種(ゾイシア・ジャポニカ(Zoysia japonica))、ギョウギシバ属種(シノドン・ダクチロン(Cynodon dactylon)/ギョウギシバ(Bermuda grass))、ステノタフラム・セクンダタム(Stenotaphrum secundatum)(ステノタフラム・セクンダタム(Stenotaphrum secundatum))、スズメノヒエ属種(パスパラム・ノタタム(Paspalum notatum))、エレモクロア・オフィウロイデス(Eremochloa ophiuroides)(センチピードグラス(centipede grass))、ツルメヒシバ属種(クルマバザクロソウ)、ボウテロウア・ダクチロイデス(Bouteloua dactyloides)(ヤギュウシバ)、ボウテロウア属変種(ボウテロウア・グラシリス(Bouteloua gracilis))、ディジタリア・サンギナリス(Digitaria Sanguinalis)、
シペラス・ロタンダス(Cyperus rotundus)、キリンガ・ブレビフォリア(Kyllinga brevifolia)、シペラス・アムリカス(Cyperus amuricus)、エリゲロン・カナデンシス(Erigeron canadensis)、ヒドロコチル・シブトルピオイデス(Hydrocotyle sibthorpioides)、クメロビア・ストリアタ(Kummerowia striata)、エウフォルビア・フミフサ(Euphorbia humifusa)、ビオラ・アルベンシス(Viola arvensis)、カレクス・リゲセンス(Carex rigescens)、カレクス・ヘテロスタキヤ(Carex heterostachya)、シバ;(15)樹木作物:マツ属種、ヤナギ属種、カエデ属種、フヨウ属種、ユーカリ属種、イチョウ属種、ホウライチク属種、ハコヤナギ属種、プロソピス属種(Prosopis spp.)、コナラ属種、ナツメヤシ属種、ブナ属種、セイバ・ペンタンドラ(Ceiba pentandra)、ニッケイ属種、ツナソ属種、フラグミテス・アウストラリス(Phragmites australis)、ホオズキ属種、ヌスビトハギ属種、ハコヤナギ、ヘデラ・ヘリックス(Hedera helix)、ポプラス・トメントサ・カール(Populus tomentosa Carr)、ビブルナム・オドラティシナム(Viburnum odoratissinum)、ギンゴ・ビロバ・L.(Ginkgo bilova L.)、コナラ属、
アイランサス・アルティシマ(Ailanthus altissima)、スキマ・スペルバ(Schima superba)、イレックス・プルプレア(Ilex pur-purea)、プラタナス・アセリフォリア(Platanus acerifolia)、リグストラム・ルシダム(ligustrum lucidum)、バクサス・メギストフィラ・レブル(Buxus megistopphylla Levl.)、グイマツ(Dahurian larch)、アカシア・メアルンシ(Acacia mearnsii)、ピナス・マソニアナ(Pinus massoniana)、ピナス・クハシス(Pinus khasys)、ピナス・ユンナネンシス(Pinus yunnanensis)、ピナス・フィンレイソニアナ(Pinus finlaysoniana)、ピナス・タブリフォルミス(Pinus tabuliformis)、ピナス・コライエンシス(Pinus koraiensis)、ジュグランス・ニグラ(Juglans nigra)、シトラス・リモン(Citrus limon)、プラタナス・アセリフォリア(Platanus acerifoia)、シジギウム・ジャンボス(Syzygium jambos)、ダビディア・インボルクラート(Davidia involucrate)、ボンバックス・マラバリカ・L.(Bombax malabarica L.)、セイバ・ペンタンドラ(L.)(Ceiba pentandra (L.))、バウヒニア・ブラキアナ(Bauhinia blakeana)、アルビジア・サマン(Albizia saman)、アルビジア・ジュリブリシン(Albizzia julibrissin)、エリスリナ・コラロデンドロン(Erythrina corallodendron)、エリスリナ・インディカ(Erythrina indica)、マグノリア・グラディフローラ(Magnolia gradiflora)、シカス・レボルテ(Cycas revolute)、ラゲルストロエミア・インディカ(Lagerstroemia indica)、針葉樹(coniferous)、大型地上植物(macrophanerophytes)、低木、モラス・アルバ・L.(Morus alba L.);(16)ナッツ作物:ベルトレティア・エクセルセア(Bertholletia excelsea)、クリ属種、ハシバミ属種、ペカン属種、クルミ属種、ピスタシア・ベラ(Pistacia vera)、アナカルディウム・オシデンターレ(Anacardium occidentale)、マカダミア属(マカダミア・インテグリフォリア(Macadamia integrifolia))、カリア・イリノエンシス・コフ(Carya ilinoensis Koch)、マカダミア属、ピスタチオ、
バダム(Badam)、ナッツを生産するその他の植物;(17)その他:アラビドプシス・タリアナ(arabidopsis thaliana)、ブラキアリア・エルシフォルミス(Brachiaria eruciformis)、センクラス・エキナタス(Cenchrus echinatus)、セタリア・ファベリ(Setaria faberi)、エレウシン・インディカ(eleusin indica)、カダバ・ファリノース(Cadaba farinose)、藻類、カレックス・エラタ(Carex elata)、観賞用植物、カリッサ・マクロカルパ(Carissa macrocarpa)、チョウセンアザミ属種、ダウカス・カロタ(Daucus carota)、ヤマノイモ属種、エリアンサス属種(Erianthus sp.)、フェスタカ・アルンディナセア(Festuca arundinacea)、ヘメロカリス・フルバ(Hemerocallis fulva)、ミヤコグサ属種、ルズラ・シルバティカ(Luzula sylvatica)、メディカゴ・サティバ(Medicago sativa)、シナガワハギ属種、モラス・ニグラ(Morus nigra)、タバコ属種、オリーブ属種、オルニソプス属種(Ornithopus spp.)、パスティナカ・サティバ(Pastinaca sativa)、ニワトコ属種、シロガラシ属種、フトモモ属種、トリプサカム・ダクチロイデス(Tripsacum dactyloides)、トリチコセカーレ・リムパウイ(Triticosecale rimpaui)、ビオラ・オドラタ(Viola odorata)等。
【0045】
例示的な一つの実施形態において、植物は、イネ(オリザ・サティバ・L.)、ソルガム(ソルガム・ビコラー)、コムギ(トリティカム・アエスティバム)、オオムギ(ホルデウム・ブルガレ)、アワ(セタリア・イタリカ)、トウモロコシ(ゼア・メイズ)、サトウキビ(サッカラム・オフィシナラム)、アラビドプシス・タリアナ、ダイズ(グリシン・マックス)、ラッカセイ(アラキス・ヒポガエア)、タバコ(ニコチナ・タバカム)、ワタ(シピウム・ヒルスタム)、ダイコン(ラファナス・サティバス)、キャベツ(ブラシカ・オレラセア)、サツマイモ(ディオスコレア・エスクレンタ)、ヤムイモ(ディオスコレア・カイエネシス)、キャッサバ(マニホト・エスクレンタ)、ジャガイモ(ソラナム・ツベロサム)、トマト(ソラナム・リコペルシカム)、コショウ(カプシカム・アンナム)、ナス(ソラナム・メロゲネア)、スイカ(シトルルス・ラナタス)、カボチャ(ククルビタ・モスカタ)、キュウリ(ククミス・サティバス)、レタス(ラクタカ・サティバ)、ゴマ(セサマム・インディカム)、アブラナ(ブラシカ・ナパス)、ヒマワリ(ヘリアンサス・アンナス)、クワ(モラス・アルバ)、ササゲ(ビグナ・ウングイクラタ)、イチゴ(フラガリア・アナナサ)、リンゴ(マルス・ドメスティカ)、モモ(プルナス・ペルシカ)、サクランボ(プルナス・シュードセラサス)、アプリコット(プルナス・アルメニアカ)、ヨーロッパブドウ(ビティス・ビニフェラ)、パパイヤ(カリカ・パパヤ)またはアルファルファ(メディカゴ・サティバ)である。
【0046】
本発明において、用語「植物組織」または「植物部分」には、植物細胞、プロトプラスト、植物組織培養物、植物カルス、植物塊、および植物の胚、花粉、胚珠、種子、葉、茎、花、枝、苗、果実、芯、穂、根、根の先端、葯等が含まれる。
【0047】
本発明において、「植物細胞」とは、例えば、カルス等の未分化組織、胚、植物部分、植物または種子等の分化組織を形成することができる、植物に由来するかまたは植物中に見出される任意の細胞を意味すると理解されるべきである。
【0048】
本発明において、「宿主生物」とは、変異タンパク質をコードする核酸を導入することができる任意の単細胞生物または多細胞生物を意味すると理解されるべきであり、例えば、エシェリヒア・コリ等の細菌、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ)、カビ(例えば、アスペルギルス)等の真菌、植物細胞、植物等が挙げられる。
【0049】
一つの態様において、本発明は、PPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドまたはその生物活性断片を開示し、前記ポリペプチドはモチーフ「LLLNYI」(すなわち、「ロイシン-ロイシン-ロイシン-アスパルチル-チロシン-イソロイシン」)を含み、該モチーフにおいて3位のロイシンLが他のアミノ酸で置換されているか、または5位のチロシンYが他のアミノ酸で置換されている。
【0050】
一つの実施形態において、モチーフ「LLLNYI」において、
3位のロイシンLがセリンSに変異しており、「LLSNYI」と略されるか;または
3位のロイシンLがイソロイシンIに変異しており、「LLINYI」と略されるか;または
3位のロイシンLがグリシンGに変異しており、「LLGNYI」と略されるか;または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しており、「LLTNYI」と略されるか;または
3位のロイシンLがバリンVに変異しており、「LLVNYI」と略されるか;または
3位のロイシンLがトリプトファンWに変異しており、「LLWNYI」と略されるか;または
5位のチロシンYがメチオニンMに変異しており、「LLLNMI」と略されるか;または
5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しており、「LLLNII」と略されるか;または
5位のチロシンYがロイシンLに変異しており、「LLLNLI」と略されるか;または
5位のチロシンYがバリンVに変異しており、「LLLNVI」と略される。
【0051】
別の実施形態において、モチーフ「LLLNYI」において、3位のロイシンLが他のアミノ酸で置換されており、5位のチロシンYが他のアミノ酸で置換されている。
【0052】
別の実施形態において、モチーフ「LLLNYI」内において、
3位のロイシンLがセリンSに変異しており、5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しており、「LLSNII」と略されるか;または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しており、5位のチロシンYがイソロイシンIに変異しており、「LLTNII」と略されるか;または
3位のロイシンLがスレオニンTに変異しており、5位のチロシンYがバリンVに変異しており、「LLTNVI」と略されるか;または
3位のロイシンLがセリンSに変異しており、5位のチロシンYがバリンVに変異しており、「LLSNVI」と略されるか;または
3位のロイシンLがバリンVに変異しており、5位のチロシンYがロイシンLに変異しており、「LLVNLI」と略されるか;または
3位のロイシンLがトリプトファンWに変異しており、5位のチロシンYがロイシンLに変異しており、「LLWNLI」と略される。
【0053】
一つの実施形態において、ポリペプチドは、自由に組み合わせられるアミノ酸配列の変異体および配列番号1~19のいずれか1つで示されるアミノ酸配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するその断片を含み、前記変異体は、上記で定義した1つ以上のアミノ酸変異を有する。
【0054】
別の実施形態において、ポリペプチドは、上記で定義した1つ以上のアミノ酸変異を有すること以外は、配列番号1~19のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有し;好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列は、上記で定義した1つ以上のアミノ酸変異を除いて、配列番号1~19のいずれか1つで示される通りである。
【0055】
別の実施形態において、PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型イネPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号1で示される野生型イネPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型トウモロコシPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号2で示される野生型トウモロコシPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号3で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号4で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号5で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号6で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の439位および441位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ダイズPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号7で示される野生型ダイズPPO1タンパク質のアミノ酸配列の430位および432位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ソルガムPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号8で示される野生型ソルガムPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型コムギPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号9、10または11で示される野生型コムギPPO1タンパク質のアミノ酸配列の418位および420位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型トマトPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号12で示される野生型トマトPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ジャガイモPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号13で示される野生型ジャガイモPPO1タンパク質のアミノ酸配列の444位および446位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型タバコPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号14で示される野生型タバコPPO1タンパク質のアミノ酸配列の440位および442位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列、野生型アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)PPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号15で示される野生型アラビドプシス・タリアナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型高地ワタPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号16で示される野生型高地ワタPPO1タンパク質のアミノ酸配列の426位および428位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ダイコンPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号17で示される野生型ダイコンPPO1タンパク質のアミノ酸配列の425位および427位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アワPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号18で示される野生型アワPPO1タンパク質のアミノ酸配列の422位および424位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型キャベツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号19で示される野生型キャベツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)に1つ以上の変異を有する。
【0056】
別の実施形態において、PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型イネPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号1で示される野生型PPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L423S、L423I、L423G、Y425M、Y425IおよびY425Vからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型トウモロコシPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号2で示される野生型トウモロコシPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L424T、L424S、L424V、Y424W、Y426V、Y426IおよびY426Lからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424T/Y426V、L424S/Y426V、L424V/Y426L、L424W/Y426LまたはL424S/Y426Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号3で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L424SおよびY426Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424S/Y426Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アブラナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号4で示される野生型アブラナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号5で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L445SおよびY447Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L445S/Y447Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ピーナッツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号6で示される野生型ピーナッツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の439位および441位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L439SおよびY441Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L439S/Y441Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ダイズPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号7で示される野生型ダイズPPO1タンパク質のアミノ酸配列の430位および432位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L430SおよびY432Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L430S/Y432Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ソルガムPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号8で示される野生型ソルガムPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型コムギPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号9、10または11で示される野生型コムギPPO1タンパク質のアミノ酸配列の418位および420位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L418SおよびY420Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L418S/Y420Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型トマトPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号12で示される野生型トマトPPO1タンパク質のアミノ酸配列の445位および447位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L445SおよびY447Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L445S/Y447Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ジャガイモPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号13で示される野生型ジャガイモPPO1タンパク質のアミノ酸配列の444位および446位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L444SおよびY446Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L444S/Y446Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型タバコPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号14で示される野生型タバコPPO1タンパク質のアミノ酸配列の440位および442位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L440SおよびY442Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L440S/Y442Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アラビドプシス・タリアナPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号15で示される野生型アラビドプシス・タリアナPPO1タンパク質のアミノ酸配列の423位および425位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L423SおよびY425Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L423S/Y425Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型高地ワタPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号16で示される野生型高地ワタPPO1タンパク質のアミノ酸配列の426位および428位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L426SおよびY428Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L426S/Y428Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型ダイコンPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号17で示される野生型ダイコンPPO1タンパク質のアミノ酸配列の425位および427位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L425SおよびY427Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L425S/Y427Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型アワPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号18で示される野生型アワPPO1タンパク質のアミノ酸配列の422位および424位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L422SおよびY424Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L422S/Y424Iを有するか、または
前記PPOポリペプチドのアミノ酸配列は、野生型キャベツPPO1のアミノ酸配列と比較して、配列番号19で示される野生型キャベツPPO1タンパク質のアミノ酸配列の424位および426位に対応する1つ以上の位置(のみ)において、L424SおよびY426Iからなる群から選択される1つ以上の変異を有するか;好ましくは下記の変異:L424S/Y426Iを有する。
【0057】
別の実施形態において、ポリペプチドは、配列番号20~48のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を有し;好ましくは、ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号20~48のいずれかに示されるとおりである。
【0058】
「モチーフ」または「コンセンサス配列」という用語は、進化的に関連したタンパク質の配列における短い保存された領域を指す。モチーフは多くの場合、高度に保存されたドメインの一部であるが、ドメインの一部のみを含む場合や、保存されたドメインの外側に位置する場合もある(モチーフのすべてのアミノ酸が定義されたドメインの外側にある場合)。
【0059】
「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」という用語は、本発明において互換的に用いることができ、アミノ酸残基のポリマーを指し、1つ以上のアミノ酸残基が天然アミノ酸残基である化学的類似体のポリマーを含む。本発明のタンパク質およびポリペプチドは、組換えによって生成してもよく、化学的に合成してもよい。
【0060】
本明細書で用いられるアミノ酸置換に関する用語について、最初の文字は特定の配列中の特定の位置にある天然に存在するアミノ酸を表し、次の数字は配列番号1に対応する位置を表し、2番目の文字は天然に存在するアミノ酸を置換した別のアミノ酸を表す。例えば、L423Sは、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、423位のロイシンがセリンで置換されていることを表す。二重または複数の変異の場合、各変異は「/」で区切られる。例えば、L423S/Y425Iとは、配列番号1のアミノ酸配列と比較して、423位のロイシンがセリンで置換され、かつ425位のチロシンがイソロイシンで置換され、該当する変異型OsPPO1タンパク質に両方の変異が存在することを意味する。
【0061】
本発明のタンパク質中の特定のアミノ酸の位置(番号)は、標準的な配列アラインメントツールを用いて、目的のタンパク質のアミノ酸配列と配列番号1または配列番号2~19等とをアラインメントすることによって決定され、例えば、Smith-WatermanアルゴリズムまたはCLUSTALW2アルゴリズムが2つの配列をアラインメントするために用いられ、アラインメントスコアが最も高い場合に、配列がアラインメントされているとみなされる。アラインメントスコアは、Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. (1983), “Rapid similarity searches of nucleic acid and protein data banks”, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 80: 726-730に記載されている方法により算出することができる。ClustalW2(1.82)アルゴリズムで用いられるデフォルトのパラメータは、好ましくは:タンパク質ギャップオープンペナルティ=10.0;タンパク質ギャップ延長ペナルティ=0.2;タンパク質マトリックス=ゴネット;タンパク質/DNA末端ギャップ=-1;タンパク質/DNA GAPDIST=4である。
【0062】
好ましくは、AlignXプログラム(ベクターNTIセットの一部)を用いて、複数のアライメントのデフォルトパラメータ(ギャップオープンペナルティ:10og、ギャップ延長ペナルティ:0.05)をマッチングし、本発明のタンパク質中の特定のアミノ酸の位置を、該タンパク質のアミノ酸配列と配列番号1とをアラインメントすることにより決定する。
【0063】
アミノ酸配列の同一性は、National Center for Biotechnology Information(www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手可能なBLASTアルゴリズム(Altschul et al., 1990, Mol. Biol. 215:403-10)とデフォルトパラメータを用いる従来の方法によって決定することができる。
【0064】
タンパク質の活性および機能に悪影響を与えることなくタンパク質の構造を変更できること、例えば、タンパク質分子の活性および/または三次元構造に悪影響を与えることなく、タンパク質のアミノ酸配列に1つ以上の保存的アミノ酸置換を導入し得ることも、当業者に明らかであろう。保存的アミノ酸置換の例および実施形態は当業者に公知である。具体的には、ある部位のアミノ酸残基が、置換されるアミノ酸と同じグループに属する別のアミノ酸残基で置換されてもよく、すなわち、非極性アミノ酸残基が別の非極性アミノ酸残基で置換され、極性の非荷電アミノ酸残基が別の極性の非荷電アミノ酸残基で置換され、塩基性アミノ酸残基が別の塩基性アミノ酸残基で置換され、酸性アミノ酸残基が酸性アミノ酸残基で置換される。置換によりタンパク質の生物活性が損なわれない限り、あるアミノ酸を同じグループに属する他のアミノ酸で置換する保存的置換は本発明の範囲に包含される。
【0065】
したがって、本発明の変異タンパク質は、上述した変異に加えて、そのアミノ酸配列中に保存的置換等の他の変異をさらに含んでいてもよい。さらに、本発明には、非保存的置換が本発明のタンパク質の所望の機能および生物学的活性に有意な影響を与えない限り、1つ以上の他の非保存的置換をさらに含む変異タンパク質も包含される。
【0066】
当技術分野で周知のように、タンパク質のN末端および/またはC末端から1つ以上のアミノ酸残基を欠失させることができ、そのタンパク質は依然として機能および活性を保持する。したがって、別の態様において、本発明はまた、所望の機能および活性を保持しながら、変異タンパク質のN末端および/またはC末端の1つ以上のアミノ酸残基を欠く断片にも関する。本発明の範囲内で、断片は生物活性断片と呼ばれる。本発明において、「生物活性断片」とは、本発明の変異型タンパク質の生物活性を保持している、本発明の変異型タンパク質の一部をいう。例えば、変異体タンパク質の生物活性断片は、タンパク質のN末端および/またはC末端において1つ以上(例えば、1~50個、1~25個、1~10個または1~5個、例えば、1個、2個、3個、4個または5個)のアミノ酸残基の部分を欠くが、完全長のタンパク質の所望の生物学的活性を依然として保持する生物活性断片であり得る。
【0067】
本明細書で用いられる「変異」という用語は、正常配列もしくは野生型配列または参照配列と比較した場合における、ポリペプチドにおける単一のアミノ酸の変化および/または核酸配列における少なくとも単一のヌクレオチドの変化を指す。いくつかの実施形態において、変異とは、除草剤耐性ではないPPOタンパク質のヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と比較した場合における、ポリペプチドにおける単一のアミノ酸の変化および/または核酸配列における少なくとも単一のヌクレオチドの変化を指す。特定の実施形態において、変異とは、例えば配列番号1~19のいずれかで示される参照PPOアミノ酸配列に対応するアミノ酸位置、または異なる種由来の相同遺伝子の相同位置に1つ以上の変異を有することを指す。特定の実施形態において、変異には、置換、欠失、逆位または挿入が含まれ得る。いくつかの実施形態において、置換、欠失、挿入または逆位は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個または24個のヌクレオチドにおける変化を含み得る。いくつかの実施形態において、置換、欠失、挿入または逆位は、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個または8個のアミノ酸位置における変化を含み得る。
【0068】
「野生型」という用語は変異に関連しており、特定の集団内で最も高い頻度を示す表現型、またはその表現型を有する系、生物および遺伝子を指す。場合によっては、野生型対立遺伝子は、遺伝子座における標準的な対立遺伝子、または特定の集団において最も高い頻度を有する対立遺伝子を指し、特定のアミノ酸配列または核酸配列によって表され得る。例えば、野生型イネPPOタンパク質は、配列番号1によって表され得る。例えば、野生型トウモロコシPPOタンパク質は、配列番号2によって表され得る。
【0069】
別の態様において、本発明によれば、
(1)PPOポリペプチドもしくはその生物活性断片をコードする核酸配列、またはそれらの部分配列もしくはそれらの相補配列;
(2)(1)に示す配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列;および
(3)遺伝暗号の縮重により(1)に示す配列と同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列、またはその相補配列
からなる群から選択される核酸配列を含む単離されたポリヌクレオチも提供される。
【0070】
一つの実施形態において、ポリヌクレオチドはDNA分子である。
【0071】
「ポリヌクレオチド」、「核酸」、「核酸分子」または「核酸配列」という用語は、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖であり得るそれらの断片または部分を指すために交換可能に用いられ、センス鎖またはアンチセンス鎖を表す。核酸には、DNA、RNAまたはそれらのハイブリッドが包含され得、天然起源または合成起源のものであり得る。例えば、核酸には、mRNAまたはcDNAが包含され得る。核酸には、(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応を用いて)増幅された核酸が包含され得る。ヌクレオチドの一文字コードは、米国特許庁のManual of Patent Examining Procedure, section 2422, table 1に記載されている。この点に関して、ヌクレオチド記号「R」はグアニンやアデニン等のプリンを意味し、「Y」はシトシンまたはチミン等のピリミジン(RNAの場合はウラシル)を意味し;「M」はアデニンまたはシトシンを意味し;「K」はグアニンまたはチミンを意味し;「W」はアデニンまたはチミンを意味する。「単離された」という用語は、核酸に言及する場合、天然に存在するゲノムの実質的な部分から分離している、かつ/またはそのような核酸に天然に付随する他の細胞成分から実質的に分離している核酸を指す。例えば、合成的に(例えば、連続塩基縮合によって)生成された核酸は、単離されているとみなされる。同様に、組換えにより発現されるか、クローン化されるか、プライマー伸長反応(例えば、PCR)により産生されるか、またはその他の方法でゲノムから切り出される核酸も単離されているとみなされる。
【0072】
遺伝暗号の縮重により、様々な異なる核酸配列が本明細書に開示されるアミノ酸配列をコードし得ることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、同じタンパク質をコードする追加の核酸配列を生成することができ、したがって、本発明は、遺伝暗号の縮重により同じアミノ酸配列をコードする核酸配列を包含する。例えば、植物等の宿主生物において異種遺伝子の高い発現を達成するために、発現を向上させるために宿主が好むコドンを用いて遺伝子を最適化することができる。
【0073】
本発明によれば、上述したポリヌクレオチドを含む植物ゲノムも提供される。
【0074】
一つの実施形態において、植物ゲノムは少なくとも1つの変異により改変される。別の実施形態において、植物ゲノムは少なくとも2つの変異により改変される。
【0075】
一つの実施形態において、色素体PPO遺伝子は、イネ色素体OsPPO1等の植物ゲノム変異によって改変される。別の実施形態において、色素体PPO遺伝子対立遺伝子は、BnPPO1-C5またはBnPPO1-A10等の植物ゲノム変異によって改変される。
【0076】
本発明によれば、ポリヌクレオチドと、それに作動可能に連結された相同プロモーターまたは非相同プロモーターとを含むベクター構築物も提供される。
【0077】
本発明によれば、ポリヌクレオチドまたはベクター構築物を含む宿主細胞も提供される。
【0078】
一つの実施形態において、宿主細胞は植物細胞である。
【0079】
本発明によれば、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための植物細胞の製造方法であって、上述したポリヌクレオチドもしくは上述したベクター構築物を遺伝子編集法を用いて植物細胞内で生産すること、または上述したポリヌクレオチドまたは上述したベクター構築物をトランスジェニック法を用いて植物細胞に導入することを含む前記製造方法も提供される。
【0080】
本発明によれば、上述した植物細胞、または上述した製造方法により製造される植物細胞を再生することを含む、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための植物の製造方法も提供される。
【0081】
本発明によれば、上述した製造方法により製造される植物も提供される。
【0082】
一つの実施形態において、上述した植物または植物細胞は非トランスジェニックである。
【0083】
別の実施形態において、上述した植物または植物細胞はトランスジェニックである。
【0084】
「トランスジェニック」植物という用語は、異種ポリヌクレオチドを含む植物を指す。好ましくは、異種ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドが後に続く世代に受け継がれるようにゲノム内に安定して組み込まれる。異種ポリヌクレオチドは、単独で、または組換え発現カセットの一部としてゲノムに組み込まれてもよい。本明細書において「トランスジェニック」とは、異種核酸の存在によってその遺伝子型が改変された任意の細胞、細胞株、カルス、組織、植物部分または植物を指すために用いられ、最初にそのように改変されたトランスジェニック生物または細胞、および最初のトランスジェニック生物または細胞からの交配または無性生殖によって作製されたトランスジェニック細胞または細胞が含まれる。本明細書において用いられる「トランスジェニック」という用語は、従来の植物育種法(例えば、交配)、または例えば自家受精、ランダムな他家受精、非組換えウイルス感染、非組換え細菌形質転換、非組換え転位または自然突然変異等の自然発生事象によるゲノム(染色体または染色体外)の改変を包含することを意図するものではない。
【0085】
「遺伝子編集植物」、「遺伝子編集植物部分」または「遺伝子編集植物細胞」という用語は、遺伝子編集システムによって編集された1つ以上の内因性遺伝子を含む植物、植物部分またはその植物細胞を指す。「遺伝子編集システム」という用語は、細胞に導入されたときに内因性DNA配列の標的遺伝子座を改変することができるタンパク質、核酸またはそれらの組み合わせを指す。本発明の方法における使用に適した多数の遺伝子編集システムが当技術分野において公知であり、限定されないが、ジンクフィンガーヌクレアーゼシステム(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼシステム(TALEN)およびCRISPR/Casシステム等が挙げられる。本発明において用いられる「遺伝子編集」という用語は、通常、ゲノム内でDNAが挿入、欠失、修飾または置換される技術を指す。例えば、遺伝子編集としては、当業者が用いる一般的な操作方法であるノックイン法が挙げられる。“Gene Target: A Practical Method” (Edited by Joyner, Oxford University Press, 2000)”を参照されたい。
【0086】
本発明によれば、植物がPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善できるようにする方法であって、PPO活性を有するタンパク質をコードする遺伝子に改変を導入して、PPOポリペプチドまたはその生物活性断片を生産することを含む方法も提供される。
【0087】
本発明によれば、植物細胞、植物組織、植物部分または植物においてPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善する方法であって、植物細胞、植物組織、植物部分または植物においてPPOポリペプチドまたはその生物活性断片を発現することを含むか;または
PPOポリペプチドまたはその生物活性断片を発現する植物と別の植物とをハイブリダイズさせ、PPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善することができる植物またはその部分をスクリーニングすることを含むか;または
植物細胞、植物組織、植物部分または植物のPPO活性を有するタンパク質を遺伝子編集して、PPOポリペプチドまたはその生物活性断片の発現を達成することを含む
前記方法も提供される。
【0088】
本発明によれば、宿主細胞、植物細胞、植物組織、植物部分または植物のPPO阻害型除草剤に対する耐性を獲得または改善するための、PPOポリペプチドもしくはその生物活性断片、またはポリヌクレオチドの使用も提供される。
【0089】
一つの実施形態において、宿主細胞は細菌細胞または真菌細胞である。
【0090】
除草剤耐性PPOタンパク質は、当技術分野において広く知られている方法を用いて抽出および精製することによって天然源から得ることができる。また、化学合成により調製される合成タンパク質として取得してもよく、遺伝子組換え技術により調製される組換えタンパク質として取得してもよい。化学的に合成する場合、タンパク質は当該技術分野において広く知られているポリペプチド合成法によって得ることができる。遺伝子組換え技術を用いる場合、除草剤耐性PPOタンパク質をコードする核酸を適切な発現ベクターに挿入し、このベクターを宿主細胞に形質転換し、宿主細胞を培養して目的のタンパク質を発現させ、次いで除草剤耐性PPOタンパク質を宿主細胞から回収する。選択した宿主細胞内でタンパク質を発現させた後、その分離精製のために、一般的な生化学的分離技術、例えば、タンパク質沈殿剤による処理(塩析)、遠心分離、超音波破砕、限外濾過、透析、分子篩クロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等のクロマトグラフィーが用いられ得る。一般に、タンパク質を高純度で分離するために、これらの方法を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
除草剤耐性PPO核酸分子は、標準的な分子生物学的技術、例えば化学合成法または組換え法を用いて単離または調製することができる。あるいは、市販のものを用いてもよい。
【0092】
本明細書において提供されるPPOタンパク質は植物に導入され、それによって植物の除草剤耐性を強化するために用いられ得る。
【0093】
本明細書において提供される除草剤耐性PPO遺伝子は、当技術分野において公知の様々な方法によって植物に導入することができ、植物形質転換用の発現ベクターを用いることによってトランスジェニックまたは遺伝子編集することができる。
【0094】
ベクターに含まれ得る適切なプロモーターは、植物のトランスジェニックまたは遺伝子編集のために当技術分野において一般的に用いられる任意のプロモーターであり得る。例えば、植物のトランスジェニックまたは遺伝子編集のために一般的に用いられるプロモーターとしては、限定されないが、SP6プロモーター、T7プロモーター、T3プロモーター、PMプロモーター、トウモロコシユビキチンプロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリンシンターゼ(nos)プロモーター、イチジクモザイクウイルス35Sプロモーター、サトウキビ桿菌状ウイルスプロモーター、ツユクサ黄色斑点ウイルスプロモーター、リブロース-1,5-二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO)由来の光誘導性プロモーター、イネサイトゾルトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)プロモーター、シロイヌナズナのアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)プロモーター、オクトピンシンターゼプロモーター、およびBCB(青色銅結合タンパク質)プロモーター等が挙げられる。
【0095】
植物トランスジェニックベクターまたは遺伝子編集ベクターは、3’末端のポリアデニル化を引き起こすポリアデニル化シグナル配列を含み、例えば、限定されないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のノパリンシンターゼ遺伝子由来のNOS3’末端、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのオクトピンシンターゼ由来のオクトピンシンターゼ3’末端、トマトまたはジャガイモのプロテアーゼインヒビターIまたはII遺伝子の3’末端、CaMVPolyAシグナル配列、イネのα-アミラーゼ遺伝子の3’末端およびファセオリン遺伝子の3’末端が挙げられる。
【0096】
上述したトランスジェニックベクターにおいては、葉緑体において除草剤耐性PPO遺伝子を発現させるために、葉緑体を標的とするために必要なトランジットペプチドをPPO遺伝子の5’末端に結合させてもよい。
【0097】
ベクターは、レポーター分子として選択マーカーをコードする遺伝子をさらに含んでもよく、選択マーカーの例としては、限定されないが、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カルベニシリン、カナマイシン、スペクチノマイシン、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール等)または除草剤(グリホサート、グルホシネート、ホスフィノスリシン等)に対する耐性遺伝子が挙げられる。
【0098】
ベクター形質転換の方法としては、アグロバクテリウム媒介形質転換、エレクトロポレーション、微粒子銃(microparticle bombardment)、ポリエチレングリコール媒介取り込み等を用いた植物への組換えプラスミドの導入が挙げられる。
【0099】
本発明における植物の形質転換対象としては、植物細胞(浮遊培養細胞を含む)、プロトプラスト、カルス、胚軸、種子、子葉、苗条および成熟植物が挙げられる。
【0100】
トランスジェニック植物または遺伝子編集植物の範囲には、遺伝子が導入された当代の植物、およびそのクローンまたは後代(T1世代、T2世代、またはその後の世代)が包含される。例えば、本発明において提供されるPPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むトランスジェニック植物または遺伝子編集植物、ならびに有性生殖および無性生殖によって得られる上述したPPO阻害型除草剤に対する耐性を有するPPOポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む後代生殖、ならびに除草剤耐性特性を継承した植物も包含される。本発明の範囲には、最初のトランスジェニック植物または遺伝子編集植物の特徴を示すすべての突然変異体および変異体、ならびに上述したトランスジェニック植物または遺伝子編集植物のすべてのハイブリダイゼーション産物および融合産物も包含される。さらに、本発明の範囲には、本発明の方法により予めトランスジェニックまたは遺伝子編集により改変された植物、またはその後代であって、導入遺伝子または遺伝子編集により改変された細胞の少なくとも一部から構成される植物に由来する種子、花、茎、果実、葉、根、塊茎、塊根等の植物部分も包含される。
【0101】
本発明によれば、植物の栽培場所の雑草を防除するための方法であって、除草有効量のPPO阻害型除草剤を栽培場所に適用することを含み、植物が上述した植物、または上述した方法によって製造される植物を含む方法も提供される。
【0102】
一つの実施形態において、雑草を防除するために1種のPPO阻害型除草剤が用いられる。
【0103】
別の実施形態において、雑草を防除するために2種以上のPPO阻害型除草剤が連続的または同時に用いられる。
【0104】
別の実施形態において、PPO阻害型除草剤は、1種以上の追加の除草剤と組み合わせて適用される。
【0105】
本発明において「栽培場所」とは、土壌等の本発明の植物が栽培される場所を含み、例えば、植物の種子、植物の苗および生育した植物等も含む。「除草有効量」という用語は、標的雑草の成長または発達に影響を与えるのに十分な除草剤の量、例えば、標的雑草の成長または発達を予防または阻害する、または雑草を枯らすのに十分な量を意味する。有利には、このような除草有効量は、本発明の植物の種子、植物の苗または植物の成長および/または発育に有意な影響を及ぼさない。当業者は、従来の実験を通じてそのような除草有効量を決定することができる。
【0106】
本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように提供されるものである。全体を通して、同様の参照番号は同様の要素を指す。
【0107】
「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、本明細書では様々な要素または構成要素を説明するために用いられ得るが、これらの要素または構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素または構成要素を別の要素または構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0108】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり、限定することを意図するものではない。本明細書で用いられる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むものとする。さらに、本明細書で用いられる「含む(comprise)」および/または「含む(comprising)」、または「包含する(include)」および/または「包含する(including)」という用語は、記載された特徴、要素および/または構成要素の存在を特定するものであるが、1つ以上の他の特徴、要素または構成要素および/またはそれらの群の存在または追加を排除するものではない。本明細書で用いられる場合、「および/または」という用語には、関連する列挙された項目の1つ以上のあらゆる組み合わせが包含される。
【0109】
本発明を多数の実施形態に関連して詳細に説明してきたが、本発明はそのような開示された実施形態に限定されない。むしろ、本発明は、これまで説明されていないが、本発明の範囲に見合った任意の数の変形、変更、置換または同等の構成を組み込むように修正することができる。
【0110】
本発明の有益な効果は:変異形態が、変異形態を有するPPOに対するPPO阻害型除草剤の阻害効果を低減させることができるが、同時に、これらの変異体はPPO自体の触媒活性を低下させないことである。PPO阻害型除草剤に対する植物の耐性は、遺伝子編集によって内因性PPOをこれらの変異型に改変するか、またはトランスジェニック手段によってそのようなPPO突然変異形態を有する遺伝子を植物に導入することによって大幅に改善することができる。このようなPPO突然変異形態は、経済的に雑草の成長を制御するために、除草剤耐性特性および除草剤選択性に従って商品作物を含む植物に用いることができる。
【実施例】
【0111】
本発明を、以下の実施例と併せてさらに説明する。実施例に記載されているすべての方法および操作は例示として提供されており、限定として解釈されるべきではない。
【0112】
実施例1:植物由来PPOのアミノ酸配列のアラインメント
PPOは動物、植物、細菌および菌類中に存在し、分子状酸素の存在下でプロトポルフィリノーゲンIXをプロトポルフィリンIXに変換する触媒作用を有する。PPOは、主な合成産物としてフェロヘムおよびクロロフィルを含むテトラピロールの生合成における最後の重要な酵素である。植物には2種類のPPOアイソザイムが存在し、それぞれミトコンドリアおよび葉緑体に存在する。
図1は、イネ(NCBI番号:XM_015770568.2(配列番号1))、トウモロコシ(NCBI番号:NM_001112094(配列番号2))、アブラナ(NCBI番号:BnPPO1-C5:XM_013841402.2(配列番号3);BnPPO1-A10:XM_013810914.2(配列番号4))、ラッカセイ(NCBI番号:AhPPO1-A:XM_025762937.2(配列番号5);AhPPO1-B:XM_025820369.2(配列番号6))、ダイズ(NCBI番号:XM_003535957.4(配列番号7))、ソルガム(NCBI番号:XM_002455439.2(配列番号:6))8))、コムギ(NCBI番号:TaPPO1-A:XP_037432241.1(配列番号:9);TaPPO1-B:XM_037583444.1(配列番号:10);TaPPO1-D:(配列番号:11))、トマト(NCBI番号:NM_001348379.1(配列番号:12))、ジャガイモ(NCBI番号:NP_001275224.1(配列番号:13))、タバコ(NCBI番号:XM_016654498.1(配列番号:14))、アラビドプシス・タリアナ(NCBI番号:AT4G01690(配列番号:15))、高地ワタ(NCBI番号:XM_016840317.1(配列番号:16))、ダイコン(NCBI番号:XP_018459031.1(配列番号:7))、アワ(NCBI番号:XP_004967639.1(配列番号18))、キャベツ(NCBI番号:XM_013731605.1(配列番号19))、ヤムイモ(NCBI番号:XP_039129342.1)、キャッサバ(NCBI番号:XM_021757904.2)、コショウ(NCBI番号:XM_016683798.1)、カボチャ(NCBI番号:XM_023107680.1)、オオムギ(NCBI番号:XM_045092307.1)、キュウリ(NCBI番号:XM_004149431.3)、レタス(NCBI番号:XM_023904577.2)、ゴマ(NCBI番号:XM_011081162.2)、ヒマワリ(NCBI番号:XM_022132124.2)、クワ(NCBI番号:XM_010093132.2)、ササゲ(NCBI番号:XM_017556834.1)、イチゴ(NCBI番号:XM_004289391.2)、リンゴ(NCBI番号:XM_008383404.3)、モモ(NCBI番号:XM_007221411.2)、サクランボ(NCBI番号:XM_021956996.1)、アプリコット(NCBI番号:XM_034353497.1)、ヨーロッパブドウ(NCBI番号:XM_013613689.3)、パパイヤ(NCBI番号:XM_022041496.1)、アルファルファ(NCBI番号:XM_013613689.3)を含む異なる植物由来のPPOアミノ酸配列のアラインメントを示し、これらはPPOタンパク質モチーフLL
LN
YIが異なる植物種間で保存的であることを示している。したがって、このモチーフの対応する部位における突然変異の生物学的影響も、異なる種にわたって一貫している可能性がある。
【0113】
実施例2:イネのプロポルフィリノーゲンオキシダーゼPPO1遺伝子のクローニング
イネ(オリザ・サティバ、ジャポニカグループ)のプロトポルフィリノーゲンIXオキシダーゼ(PPO)遺伝子は、1番染色体のOs01g18320部位に位置している。プライマーNusOs-F:acgattgatgacgacgacaagATGGCGGCGGCGGCGGCGおよびNusOs-R:tccacgagctcccggactcTTACTTGTACGCATACTTGGTCを、そのcDNA配列およびベクターpET-44a配列に従って設計および合成した。野生型イネのcDNAを鋳型として用い、Kod DNAポリメラーゼをPCR増幅に用いた。増幅を以下の条件下で行った:98℃で2分間;次いで98℃で20秒間、65℃で30秒間、68℃で60秒間を35サイクル;そして最後に68℃で5分間。増幅断片はアガロースゲル電気泳動で1.6Kbと示され、回収後、紫外線吸収によりDNA濃度を測定した。
【0114】
pET-44a(Novagen社)プラスミドをPshAI(NEB、New England Biolabs社、米国ボストン)により37℃で1時間消化し、次いで65℃に加熱してPshAIを不活化した。等量のOsPPO1のDNA断片およびPshAI直線化pET-44aベクターを混合し、次いで等量の2×Gibson Assembly Master Mix(Hanbio社、中国上海)を添加した。混合後、均一な混合物を50℃で1時間インキュベートした。5μlのライゲーション産物を用いて、コンピテントなエシェリヒア・コリDH5aを形質転換し;この菌液を、アンピシリン100ppmを含むLB固体培地プレートの表面に広げ、37℃で一晩培養した。翌日、個々のクローンが選択され、個々の細菌コロニーPCRによって正確なクローンを確認し、その後、3つの正確なクローンを37℃で一晩培養し、十分なプラスミドDNAを抽出し、サンガー配列決定のためにQingke Biotechnology Co., Ltd.(中国北京)に送った。用いた配列決定プライマーは、NUS-F:GCTGCTGCGAAATTTGAACGおよびNUS-R:TACAGCTGTGCGGCCGCAAGであった。配列決定の結果、正確な全長イネOsPPO1コード領域DNAが得られることが証明され、発現した野生型イネPPOの発現ベクターをpET44a-OsPPO1WTと命名した。
【0115】
除草剤に対するイネOsPPO1の耐性を、PPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)を用いて試験した。ΔhemG株は、hemG型PPO遺伝子を欠損し、カナマイシン耐性を有するエシェリヒア・コリ株である(Watanabe N, Che F S, Iwano M, et al. Dual Targeting of Spinach Protoporphyrinogen Oxidase II to Mitochondria and Chloroplasts by Alternative Use of Two In-frame Initiation Codons[J]. Journal of Biological Chemistry, 2001, 276(23):20474-20481)。上記で調製したクローンイネOsPPO1プラスミドをΔhemGのコンピテントセルにトランスフェクトし、電気形質転換によりノックアウト細菌のPPO活性を回復させた。イネOsPPO1プラスミドは、アンピシリンおよびカナマイシンを添加したLB AGAR培地で増殖させることができた。
【0116】
この系が化合物Aに対するイネPPO1遺伝子耐性の進化的スクリーニングに用いることができるかどうかを検証するために、野生型イネpET44a-OsPPO1 WTの相補株を用いて、PPO阻害型除草剤を含むプレート上での相補株の増殖の違いを試験した。形質転換された相補株ΔhemG/pET44aおよびΔhemG/pET44a-OsPPO1WTのクローンを選択し、100μlのLB培地に再懸濁した。次いで、希釈した溶液を10分の1の係数で4回連続して再度希釈した。次いで、化合物Aを0nM、300nM、1000nMの濃度で含むLB寒天培地(培養皿)に、各希釈液3μlを添加した。LB寒天培地を28℃で培養し、培養40~48時間後の増殖阻害を評価した。
【0117】
図2に示すように、除草剤を含まない培地では、ΔhemG/pET44a相補株は成長しなかったのに対し、形質転換イネΔhemG/pET44a-OsPPO1 WTの相補株は正常に増殖することができ、これは、相補されたOsPPO1が、欠損エシェリヒア・コリにおいて正常なPPO機能を果たすことを示唆するものである。
【0118】
野生型イネΔhemG/pET44a-OsPPO1 WT相補株の増殖は300nMで阻害され、様々な濃度の化合物Aを含む培地ではプレート上でクローンが増殖しなかったことも分かる。また、この系が、化合物Aに対するイネOsPPO1遺伝子耐性の進化的スクリーニングに用いることができることも実証された。
【0119】
実施例3:PPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)を用いた化合物Aに対するイネOsPPO1の耐性を有する部位のスクリーニング
化合物Aに対するイネOsPPO1遺伝子の耐性を有する部位をスクリーニングするために、実施例1の異なる植物由来のPPOアミノ酸のアラインメント結果に従って、イネのモチーフLL
LN
YIを有する部位でアミノ酸の飽和変異を行った。これは、アミノ酸コード配列をNNKに変化させる所望の変異を含むプライマーおよび別の適切な従来のプライマーのPCR増幅によって達成された。NNKにおいて、NはA/T/G/Cを表し、KはG/Tを表し、NNKコドンは20アミノ酸または停止コンドンのいずれかをコードし得る。したがって、これは飽和突然変異誘発であった。Kille S, Acevedo-Rocha CG, Parra LP, Zhang ZG, Opperman DJ, ReetzMT, AcevedoJP (2013) Reducing codon redundancy and screening effort of combinatorial protein libraries created by saturation mutagenesis. ACS Synth Biol 2(2):83-92;Directed Evolution Library Creation: methods and protocols 2nd ed. Edited by Elizabeth M.J. Gillam, Janine N. Copp and David F. Ackerley New York, NY United States: Springer, 2014.doi:10.1007/978-1-4939-1053-3を参照されたい。大量の突然変異体が生成されるだろう。異なる部位を有する飽和ライブラリーの構築されたプラスミドをΔhemGコンピテント細胞に形質転換し、実施例2のエシェリヒア・コリ スクリーニング系を用いて、化合物Aに対するイネPPO1遺伝子の異なる部位の耐性のスクリーニング試験を行い、次いで化合物Aを含むプレートから正常に増殖する耐性クローンを選択し、その遺伝子型を同定した。6種の単一アミノ酸変異体がスクリーニングされ、それぞれL423S(配列番号20)、L423I(配列番号21)、L423G(配列番号22)、Y425M(配列番号23)、Y425I(配列番号24)およびY425V(配列番号25)であった。
図3に示すように、野生型と比較して、これらの耐性変異体は、500nMの化合物Aを含むLB培地上で正常に増殖した。
【0120】
具体的な実験方法:
1. OsPPO1-423-FおよびOsPPO1-423-Rをプライマーとし、実施例2で調製したpET44a-OsPPO1 WTプラスミドを鋳型として、Kod DNAポリメラーゼを用いてPCR増幅を行った。増幅は以下の条件下で行った:98℃で3分間;98℃で20秒間、65℃で30秒間、72℃で3分間を35サイクル;72℃で5分間。アガロースゲル電気泳動による検出後、正しいサイズ(約9KB)のバンドを回収し、紫外線吸収によって濃度を測定した。
2. 5μlの回収産物を等量の2×Gibson Assembly Master Mix(Hanbio社、中国上海)に添加し、十分に混合した後、50℃で1時間インキュベートし;ライゲーション産物5μlを用いてコンピテントエシェリヒア・コリDH5αを形質転換し、この菌液を、アンピシリン100ppmを含むLB固形培地プレート表面に塗布し、37℃で一晩培養した。プレート上のすべてのクローン(コロニー)をかき取り、プラスミドを抽出し、UV吸収によりDNAを定量した。
3. 構築したプラスミド100ngをΔhemGコンピテントセルに形質転換し、500nMの化合物Aを含むLB培地プレートに広げ、一晩培養した。化合物Aを含むプレートから正常に増殖する耐性クローンを選択し、その遺伝子型を同定した。
【0121】
【0122】
実施例4:PPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)を用いたイネOsPPO1の耐性を有する部位の組み合わせの除草剤耐性の検証
PPO阻害型除草剤に対するイネOsPPO1の耐性をさらに高めるために、化合物Aに対する耐性を有するスクリーニングされた単一変異体L423SおよびY425Iを好ましくは選択して組み合わせ、それらの除草剤に対する耐性をエシェリヒア・コリ スクリーニング系を用いて試験した。L423S/Y425Iの部位の組み合わせ(配列番号26)も化合物Aに対する耐性を示したことが分かる。スクリーニングされた単一部位または部位の組み合わせを、0μM、1μM、10μM、20μM、50μM、100μMの異なる濃度で化合物Aを含むプレート上で培養し、それらにおける増殖阻害を観察した。スクリーニング結果を
図4に示すが、化合物Aの濃度が増加すると特定の部位の組み合わせにおいて顕著な増殖阻害が発生するが、変異部位の組み合わせL423S/Y425Iは、100μMの濃度での化合物Aの処理により高い耐性を示し、正常な増殖も示した。これにより、変異部位L423S/Y425Iの組み合わせにより、単一変異体L423SおよびY425Iと比較して、除草剤化合物Aに対するイネの耐性が改善されることが示唆された。
【0123】
具体的な実験方法:
1. 合成したOsPPO1-423S/425I-FおよびOsPPO1-423S/425I-Rをプライマーとし、実施例2で調製したpET44a-OsPPO1 WTプラスミドを鋳型として、Kod DNAポリメラーゼを用いてPCR増幅を行った。増幅は以下の条件下で行った:98℃で3分間;98℃で20秒間、65℃で30秒間、72℃で3分間を35サイクル;72℃で5分間。アガロースゲル電気泳動による検出後、正しいサイズ(約9KB)のバンドを回収し、紫外線吸収によって濃度を測定した。
2. 5μlの回収産物を等量の2×Gibson Assembly Master Mix(Hanbio社、中国上海)に添加し、十分に混合した後、50℃で1時間インキュベートし;ライゲーション産物5μlを用いてコンピテントエシェリヒア・コリDH5αを形質転換し、この菌液を、アンピシリン100ppmを含むLB固体培地のプレート表面に塗布し、37℃で一晩培養した。プレート上のすべてのクローン(コロニー)をかき取り、プラスミドを抽出し、UV吸収によりDNAを定量した。
3. 構築したプラスミド100ngをΔhemGコンピテントセルに形質転換し、500nMの化合物Aを含むLB培地プレートに広げ、一晩培養した。増殖阻害が観察された。
4. 形質転換相補株ΔhemG/pET44a-OsPPO1 WT、ΔhemG/pET44a-OsPPO1 L423S、ΔhemG/pET44a-OsPPO1 Y425IおよびΔhemG/pET44a-OsPPO1 L423S/Y425Iのクローンを選択し、100μlのLB培地に再懸濁した。次いで、希釈した溶液を10分の1の係数で4回連続して再度希釈した。次いで、化合物Aを0nM、1nM、10nM、20nM、50nM、100nMの濃度で含むLB寒天培地(培養皿)に、各希釈液3μlを添加した。LB寒天培地を28℃で培養し、培養40~48時間後の増殖阻害を評価した。
【0124】
実施例5:トウモロコシZmPPO1における変異体LLLNYIタンパク質モチーフの化合物Aに対する耐性の検証
他の植物のPPO1に保存されたタンパク質モチーフLL
LN
YIの変異によっても除草剤耐性を付与できるかどうかを検証するために、タンパク質モチーフLL
LN
YIの3位のロイシン残基および5位のチロシン残基の変異の組み合わせを上述した実施例に記載したのと同様の方法を用いて行い、除草性化合物Aを含むLB培地を用いてスクリーニングし、成長阻害を観察した。
図5に示すように、野生型ZmPPO1-WT(配列番号2)と比較して、L424T/Y426V(配列番号27)、L424S/Y426V(配列番号28)、L424V/Y426L(配列番号29)およびL424W/Y426L(配列番号30)を含む、タンパク質モチーフLL
LN
YIにおける3位のロイシン残基および5位のチロシン残基の変異の組み合わせは、5μMの濃度で化合物Aを含むプレート上で阻害されずに正常に増殖した。それらの大部分は、化合物Aの濃度の増大に対して高い耐性を示し、これは、様々な植物のPPOに保存されたタンパク質モチーフLL
LN
YIの対応する部位における変異によって付与された除草剤に対する耐性に、一貫した効果があることを示唆するものである。
【0125】
実施例6:他の作物のPPO1における化合物Aおよび他のPPO阻害型除草剤に対するLLLNYIタンパク質モチーフ変異の耐性の検証
他の作物のPPOに保存されたタンパク質モチーフLL
LN
YIの対応する部位における変異によって付与される除草剤に対する耐性に対する効果をさらに検証するために、野生型イネPPO1のOsPPO1 WT(配列番号1)、変異型イネPPO1のOsPPO1 L423S/Y425I(配列番号26)、野生型トウモロコシPPO1のZmPPO1 WT(配列番号2)、変異型トウモロコシPPO1のZmPPO1 L424S/Y426I(配列番号31)、野生型コムギPPO1のTaPPO1-A WT(配列番号9)、変異体コムギPPO1のTaPPO1-A L418S/Y420I(配列番号38)、野生型アブラナPPO1のBnPPO1-A10 WT(配列番号4)、変異型アブラナPPO1のBnPPO1-A10 L423S/Y425I(配列番号33)、野生型ワタPPO1のGhPPO1 WT(配列番号16)、変異型ワタPPO1のGhPPO1 L426S/Y428I(配列番号45)、野生型アラビドプシス・タリアナPPO1のAtPPO1 WT(配列番号15)および変異体アラビドプシス・タリアナPPO1のAtPPO1 L423S/Y425I(配列番号44)を構築し、実施例3および実施例4で記載したのと同じ方法および表2に示すプライマーを用いて、PPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)に形質転換した。様々な作物の野生型PPO1遺伝子または様々な変異PPO1遺伝子で形質転換したPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)のクローンを選択し、100μlのLB培地に再懸濁し、次いで、希釈した溶液を10分の1の係数で2回再度希釈した。次いで、各希釈液3μlを、化合物Aを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、サフルフェナシルを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、フルミオキサジンを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、エピリフェナシルを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度で含有するLB寒天培地(培養皿)、スルフェントラゾンを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、チアフェナシルを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、フォメサフェンを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、100μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)、およびトリフルジモキサジンを0.1μM、0.5μM、1μM、10μM、10μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)に添加した。LB寒天培地を28℃の恒温器内で培養し、培養40~48時間後の増殖阻害を評価した。結果を
図6~8に示すが、実施例3および4の耐性を有する部位または組み合わせが他のPPO除草剤に対しても耐性であることが示された。
【0126】
【0127】
実施例7:イネOsPPO1の耐性を有する部位または組み合わせの様々な種類のPPO除草剤に対する耐性の検証
実施例3および4の耐性を有する部位または組み合わせが他のPPO除草剤にも耐性を有するかどうかを検証するために、いくつかの部位または組み合わせを選択して、様々な種類のPPO除草剤に対するそれらの耐性を検証した。野生型(WT)OsPPO1遺伝子または様々な変異型OsPPO1遺伝子によって形質転換されたPPO欠損エシェリヒア・コリ(ΔhemG)形質転換体のクローンを選択し、100μlのLB培地に再懸濁し、次いで、希釈した溶液を10分の1の係数で2回連続して再度希釈した。次いで、各希釈液3μlを、フルミオキサジンを100nM、オキシフルオルフェンを100nM、サフルフェナシルを500nM、ピラクロニルを5μM、カルフェントラゾンエチルを1μM、およびフォメサフェンを10μMの濃度でそれぞれ含有するLB寒天培地(培養皿)に添加した。LB寒天培地を28℃の恒温器内で培養し、培養40~48時間後の増殖阻害を評価した。結果を
図9に示すが、実施例3および4の耐性を有する部位または組み合わせが他のPPO除草剤に対しても耐性であることが示された。
【0128】
実施例8:イネOsPPO1の耐性を有する部位の組み合わせタンパク質(ポリペプチド)のin vitro酵素活性及び耐性試験
1. プロトポルフィリノーゲンの調製
PPOによって触媒される基質であるプロトポルフィリノーゲンを、プロトポルフィリンをナトリウムアマルガムで還元することによって調製した。プロトポルフィリン10mgを溶媒10mLに溶解し、20%ナトリウムアマルガムを0.2g/mLの割合で添加し、2時間反応させ、次いで窒素保護下で暗所で濾過した。反応終了後、反応液は無色または淡褐色であった。反応液に反応バッファー(100mM Tris-HCl、1mM EDTA、5mM DTT、0.1% Tween20/80)を添加して希釈し、10%塩酸を用いてpHを約8.0に調整した。最終的に約100μMの濃度のプロトポルフィリノーゲンが得られ、サブパッケージ化し、液体窒素または-80℃の温度で保存した。
2. OsPPO1タンパク質の発現および精製
1)28MBP-OsPPO1-T38F:CCGCGCGGCAGCCATATGGCGGGTTCTGGTACGATTGおよび28MBP-OsPPO1-T38Rn:GAGCTCGAATTCGGATCCTTACTTGTACGCATACTTGGTCAGをプライマーとし、pET44a-OsPPO1-WTおよびスクリーニング変異体を鋳型として、Kod DNAポリメラーゼを用いてPCR増幅を行った。増幅は以下の条件下で行った:95℃で3分間;98℃で10秒間、60℃で30秒間、68℃、68℃で1分間、35サイクル;68℃で5分間。アガロースゲル電気泳動による検出後、正しいサイズ(約1.5KB)のバンドを回収し、紫外線吸収によって濃度を測定した。
2)4μlの回収産物および1μlのpET28a-MBPベクターを等量の2×Gibson Assemble Master Mix(Hanbio社、中国上海)に添加し、混合し、50℃で1時間インキュベートし;ライゲーション産物5μlを用いてコンピテントエシェリヒア・コリDH5αを形質転換し、この菌液を、硫酸カナマイシン100mg/Lを含むLB固形培地プレート表面に塗布し、37℃で一晩培養した。プレート上のすべてのクローンが選択し、配列を決定した。
3)構築した融合発現ベクターpET28a-MBP-OsPPO1をエシェリヒア・コリBL21(DE3)に導入し、0.5mMのIPTGで発現を誘導し、次いでNi-NTAカラムで精製し、その後トロンビン消化を行い、透析し。次いでデキストリンカラムおよびNiカラムで精製した。具体的な方法は以下の通りである。OsPPO1酵素組換え発現ベクターをBL21(DE3)細胞に形質転換し、そのクローンを10mlのLB培地で選択し、Kana耐性で37℃、200rpmの振盪機上で一晩培養し、次いで1LのTB培地を含む2L振盪フラスコに移し、OD600が0.6~0.8に達するまで37℃、200rpmの振盪機で培養し、18℃の温度に冷却し、0.5mMのIPTGで一晩発現を誘導した。菌株を4000×gの遠心分離により収集した。収集した菌株をNiバッファーA(50mM Tris、pH8.0、500mM NaCl、50mM イミダゾール)で再懸濁し、高圧セルホモジナイザーでホモジナイズし、4000×g、4℃で30分間遠心分離し;上清をNiカラムで精製し、次いでその純度をSDS-PAGEで検出した。タンパク質の量に応じてトロンビン酵素を添加し、50mMのpH8.0のTris、500mMのNaCl、1mMのDTTバッファーで透析した。2日目、デキストリンカラムおよびNiカラムで引き続き精製を行い;目的のタンパク質を含む溶出液を収集し、濃縮し、サブパッケージ化し、後で用いるために-80℃の温度で保存した。
3. OsPPO1の活性試験
基質親和性および酵素の触媒活性の測定:反応バッファー(100mM Tris-HCl、1mM EDTA、5mM DTT、0.1% Tween20/80)を用いて、様々な濃度の基質プロトポルフィリノーゲンを含む反応液を調製し、試験濃度を0.125μM、0.5μM、2μM、4μM、8μM、16μMとしたた。OsPPO1酵素を10μMに希釈し、黒色の96ウェルELISAプレートに5μlを吸収させ、全量が100μlに達するまで反応液を添加した。酵素の最終使用濃度は500nMであった。溶液をすぐに十分に混合し、蛍光マイクロプレートリーダーでモニターした。混合物を410nmで励起(stimulate)し、630nmで検出した。
図10に示すように、反応曲線を作成した。
【0129】
実施例9:除草剤耐性を獲得するためのCRISPR/cas9を介したイネPPO1変異体の相同置換
除草剤耐性を有する非トランスジェニックイネを得るために、上述したL423S/Y425I変異部位の組み合わせをCRISPR/cas9を介した相同置換に供した。イネのOsPPO1遺伝子には9つのエクソンおよび8つのイントロンが存在していたが、2つの標的部位L423SおよびY425Iは8番目のエクソンに位置していた。
【0130】
gRNAの設計:1つのgRNAをそれぞれL423Sの上流とY425Iの下流とに設計し、それぞれの部位で1回切断し;2つの部位間のDNAを相同置換を用いて同時に置換した。イネOsPPO1の配列をhttp://crispor.tefor.net/crispor.pyに入力して、考えられるすべてのgRNAを評価した。特異性スコア値が90より大きいという原則により(Hsu PD, Scott DA, Weinstein JA, Ran FA, Konermann S, Agarwala V, Li Y, Fine EJ, Wu X, Shalem O, Cradick TJ, Marraffini LA, Bao G, Zhang F. Nat Biotechnol. 2013 Sep;31(9):827-32. doi: 10.1038/nbt.2647. Epub 2013 Jul 21)、オフターゲット効果を回避し、長さを可能な限り短縮し、下記の2つのgRNAを選択した:gRNA:Osppo1 gRNA5-2:acatgaactagtaatgattgggg(上部鎖);およびOsppo1 gRNA8-3:agcagctggagttgaaaaacagg(下部鎖)。ここで、下線はPAM配列であった。
【0131】
修復鋳型の設計:2つの選択された標的RNAによって切断されるDNA断片の長さは1212bpであった。しかしながら、部位423と部位425との位置が近いため、修復鋳型の設計中、左の相同性アームの長さは1127bpであり、右の相同性アームの長さは82bpであった。また、ベクターから修復鋳型を切り出すために、左右の端に消化対象部位を残した。したがって、鋳型の全長は1258bp(配列番号49)であった。
【0132】
編集ベクター:Osppo1 gRNA5-2およびOsppo1 gRNA8-3をそれぞれイネU3プロモーターによって発現させた。したがって、2つのgRNA発現カセットを、合成のために修復鋳型とともにGenScript(Nanjing)Co.,Ltd.に送った。合成した2つのgRNA発現カセットおよびベクターpRGEB32(Addgene#63142)をBsaI酵素で酵素消化し、アガロースゲル電気泳動で検出し、次いで精製して回収し、T4DNAリガーゼ(NEB、New England Biolabs社、米国ボストン)で連結および形質転換し、編集ベクターを生成した。
【0133】
遺伝子銃による形質転換、スクリーニング、分化、発根、土壌栽培苗木:上記で構築した編集ベクターを、配列決定および多酵素消化によって検証し、合成した修復鋳型NDAと共に遺伝子銃によるイネ形質転換に用いた。
【0134】
遺伝子銃を用いたイネカルスの形質転換の具体的な方法:
1. イネ品種Huaidao No.5およびJinjing818の高品質種子を選択し、70%アルコールおよび20%次亜塩素酸ナトリウムを含む溶液で滅菌し、滅菌水ですすぎ、カルス誘導培地に接種した。1週間の培養後、胚を取り出し、剥離したカルスをカルス誘導培地に接種した。2週間後、次の感染のために継代培養を行った。
2. マイクロプロジェクタイルおよび遺伝子銃形質転換の準備
(1)金粉懸濁液の調製:輸入した1.5mLのEPチューブで30mgの金粉(直径0.6μm)を秤量し、これに1mLの70%エタノールを添加し、完全にボルテックスし、上清を遠心分離によって捨て;滅菌水を添加してすぐことを3回繰り返した。500μLの滅菌グリセロール(50%)を添加して十分にボルテックスし、60μg/μLの濃度の金粉末懸濁液を調製し、次いで-20℃で保存した。
(2)DNAラッピング:25μLの金粉末懸濁液(60μg/μL)、編集ベクターおよび修復テンプレート(1:10)、25μLのCaCl2(SIGMA社)(2.5mol/L)および10μLのスペルミジン(0.1mol/L)を1.5mLの遠心管に連続的に添加した。上述した混合サンプルを3~5分間十分にボルテックスし、氷上に10分間静置し、遠心分離により上清を捨て;最後に、再懸濁および最終容量のために30μLの無水エタノールを添加した。
(3)遺伝子銃照射:スーパークリーンベンチを清掃し、ベンチ上部をアルコールで拭き、装置を調整し、操作説明書に従って照射を行った。照射パラメータを、27真空度、1100psi、6cmに調整した。照射後、カルスを25℃、暗所で16時間培養し、次いでカルスを25℃の回復培地に移し、1週間暗所培養した。
(4)耐性カルスのスクリーニングおよび植物の分化:カルスをスクリーニング用のスクリーニング培地に移し、2週間ごとに培地を交換した。4週間のスクリーニング後、標的置換が起こったかどうかを検出するためにサンプルを採取した。
(5)陽性のカルスを分化培地に移し、28℃の光インキュベーター内で分化培養を行った。
【0135】
イネの苗に耐性カルスを誘導後、トランスジェニックイネのゲノムDNAを抽出し、そのDNAを鋳型としてPCR増幅試験を行った。イネOsPPO1遺伝子のL423S/Y425I部位を同時に置換することにより、T0世代イネ系統の取得に成功した。得られたT0世代のイネの苗の化合物Aに対する耐性をさらに検証するために、イネの苗を9g/haの割合で化合物Aで処理したところ、
図11に示すように、L423S/Y425I部位に相同置換を有する系統は、処理後3日で枯れた野生型系統と比較して正常に増殖し、これはL423S/Y425I部位におけるイネOsPPO1遺伝子の変異が植物に除草性化合物A耐性を付与したことを示唆するものである。種子を採取して栽培したものから、T1世代およびT2世代のイネの苗を得た。得られたT1世代およびT2世代のイネの苗も化合物Aに対する耐性を有することが判明し、T2世代のイネの苗の化合物Aに対する耐性は表3に示す通りである。
【0136】
【0137】
実施例10:他の作物由来のPPO1におけるLLLNYIタンパク質モチーフ変異の化合物Aに対する耐性のアラビドプシス・タリアナにおける過剰発現
様々な作物由来のPPO1におけるLLLNYIタンパク質モチーフ変異の化合物Aに対する耐性を迅速に検証するために、イネ、トウモロコシ、ダイズおよびアブラナで過剰発現された野生型および変異型PPO1遺伝子のベクターをそれぞれ構築した。
【0138】
1. 過剰発現ベクターの構築
1)プライマー:野生型および変異体を増幅するために、選択された制限酵素切断部位および遺伝子自体のヌクレオチド配列に従ってプライマーを設計した。設計されたプライマーを、Beijing Qingke Biotechnology Co., Ltd.によって合成した。
【表5】
2)PCR増幅:合成したプライマーおよびQ5DNAポリメラーゼ(NEB、New England Biolabs社、米国ボストン)を用いて、目的の遺伝子を増幅した。増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって検出し、TIAN quick Midi Purificationキットの操作説明書に従って収集した。収集完了後、抽出されたDNAの濃度をNanodropで測定した。
3)過剰発現ベクターの構築:収集したPPO1断片、ならびにXbaIおよびSacIで消化したプラスミドpHSE401Vを用いて、HanBio Biotechnology Co., Ltd.(上海)のHB-infusion TMシームレスクローニングキットを用いて過剰発現ベクターを構築し、次いでコンピテントエシェリヒア・コリDH5αに形質転換して陽性クローンを得;陽性クローンを、配列決定および制限エンドヌクレアーゼ消化による検証後、後で用いるためにアグロバクテリウムに形質転換した。
【0139】
2.花序の浸漬によるアラビドプシス・タリアナの形質転換
1)播種:開花結実が促進されたふくらんだ野生型アラビドプシス・タリアナの種子を選択し、75%のアルコールで1分間処理し、10%のNaClOで6分間消毒し、滅菌水で5~6回洗浄した。滅菌完了後、種子をMS培地プレート上に1週間静置し、次いで滅菌した栄養土壌(栄養土壌:バーミキュライト=1:1)に移植し、(25±2)℃、光周期16時間/8時間(明/暗)の温室内で培養した。
2)アグロバクテリウムの活性化および調製:低温で保存した発現ベクターを有するアグロバクテリウム株を、クラリスロマイシンおよびリファンピシンを含む耐性プレート上に画線状に塗布した。単一のコロニーをかき取り、対応する抗生物質を添加した5mL液体LB培地に植菌し、28℃、250rpmで18~24時間振盪培養した。次いで、同じ条件下で1:100植菌に従って培養を拡大し、OD6000が1.0~1.5の範囲になるまで細菌溶液の総量を50mlとした。
3)感染液(infestation solution)の調製:培養細菌液を6000rpmで10分間遠心分離し、上清を廃棄した。OD6000が約0.8になるまで、ステイン(stain)を、5%スクロースを含む感染液に再懸濁した。SilwetL-77(0.02%~0.04%)を細菌溶液に添加し、十分に混合した。
4)アラビドプシス・タリアナ花序の感染:良好な生育状態と豊かな花序を備える未感染のアラビドプシス・タリアナを感染のために選択し、形質転換の前にそれらの果実のさやをハサミで植物から切除した。アラビドプシス・タリアナの花序を、調製した感染液に0.5~1分間浸漬した。次いで、感染したアラビドプシス・タリアナの苗木を多湿の暗所条件に24時間静置した。1週間後、感染を再度行った。
5)トランスジェニック系統のスクリーニング
アラビドプシス・タリアナの花序の形質転換後、アラビドプシス・タリアナのT0世代の種子を収集し、30mg/Lのハイグロマイシンを含む耐性MSプレートに播種して、陽性植物をスクリーニングした。スクリーニングされた陽性苗木を、土壌を入れたポットに移し、栽培のために温室内に静置し、以下を得た:アラビドプシス・タリアナにおける過剰発現イネOsPPO1 L423S/Y425Iおよび過剰発現OsPPO1 WT苗木またはイベント(event);アラビドプシス・タリアナにおける過剰発現ダイズGmPPO1 L430S/Y432Iおよび過剰発現GmPPO1 WT苗木またはイベント;アラビドプシス・タリアナにおける過剰発現アブラナBnPPO1-C5 L424S/Y426Iおよび過剰発現BnPPO1-C5 WT苗木またはイベント;アラビドプシス・タリアナにおける過剰発現トウモロコシZmPPO1 L424T/Y426V、ZmPPO1 L424S/Y426V、ZmPPO1 L424V/Y426L、ZmPPO1 L424W/Y426L、ZmPPO1 L424S/Y426I、および過剰発現ZmPPO1 WT苗木またはイベント。
【0140】
3.除草剤耐性試験
図12~23に示すように、得られた様々な作物の過剰発現変異体および野生型アラビドプシス・タリアナの種子を、様々な濃度のPPO阻害型除草剤化合物を含むMS培地(ペトリ皿)上で耐性について試験した。野生型アラビドプシス・タリアナと比較して、様々な作物由来のPPO1における過剰発現されたLL
LN
YIタンパク質モチーフの変異および過剰発現されたPPO1 WTの両方が、本発明における除草剤に対して一定レベルの耐性/抵抗性を示し、それらの耐性レベルは、適用濃度は50nMであった。しかしながら、2μMというより高い適用濃度では、様々な作物由来のPPO1における過剰発現されたLL
LN
YIタンパク質モチーフ変異は依然として耐性を示したが、様々な作物由来の過剰発現PPO1 WTは野生型アラビドプシス・タリアナ対照との差を示さず、これは、様々な作物由来のPPO1におけるLL
LN
YIタンパク質モチーフ変異が過剰発現した後、そのような作物はPPO阻害型除草剤化合物に対してより高い耐性を有することを示唆するものである。
【0141】
実施例11:除草剤耐性を獲得するためのイネOSPPO1 L423S/Y425I変異の過剰発現
植物における得られた変異体の化合物Aに対する耐性をさらに試験するために、イネからスクリーニングされた変異体L423S/Y425Iをイネで過剰発現させた。
【0142】
1. 過剰発現ベクターの構築
1)プライマー:変異体L423S/Y425Iを増幅するために、選択された制限酵素切断部位および遺伝子自体のヌクレオチド配列に従ってプライマーを設計した。PPO1-F:GCCAGTGCCAAGCTCTGCAGattcgggtcaaggcggaおよびPPO1-R:ACATGATTACGAATTCtctagtaacatagatgacaccgcgcを含む設計されたプライマーが、Beijing Qingke Biotechnology Co., Ltd.によって合成された。
2)Q5DNAポリメラーゼ(NEB、New England Biolabs社、米国ボストン)を用いて、目的の遺伝子を増幅した。増幅産物をアガロースゲル電気泳動によって検出し、TIAN quick Midi Purification kitの操作説明書に従って収集した。収集完了後、抽出されたDNAの濃度をNanodropにより測定した。
3)イネ過剰発現ベクターの構築:収集したPPO1断片、ならびにKpnIおよびHindIIIで消化したプラスミドpCAMBIA1301を用いて、HanBio Biotechnology Co., Ltd.(上海)のHB-infusion TMシームレスクローニングキットを用いてイネ過剰発現ベクターpCAMBIA1301-OsPPO1 L423S/Y425Iを構築し、次いでコンピテントエシェリヒア・コリDH5αに形質転換して、陽性クローンを得た。陽性クローンを、配列決定および制限エンドヌクレアーゼ消化による検証後、アグロバクテリウムに形質転換した。
【0143】
2.アグロバクテリウムを介したイネカルスの形質転換およびトランスジェニックイベントの発生:
1)イネ過剰発現ベクターpCAMBIA1301-OsPPO1 L423S/Y425IおよびpCAMBIA1301-OsPPO1WTのベクタープラスミド100ngをそれぞれ吸引し、コンピテントアグロバクテリウムEH105にそれぞれ添加し、氷上に5分間静置し、液体窒素に5分間浸漬して急速凍結させ、取り出して37℃で5分間放置し、最後に氷上に5分間静置し;これに500μlのYEB溶液培養物(抗生物質不含)を添加し、28℃、200rpm/分で2~3時間シェーカー上で培養し;3500rpm/分の遠心分離によりコロニーを収集し、収集した細胞をYEB(クラリスロマイシン+リファンピシン)プレートにコーティングし、28℃のインキュベーターで2日間培養し;単一のクローンをかき取り、液体培地で培養し、細菌の寿命を保つために-80℃で保存した。
2)アグロバクテリウムの培養:形質転換されたアグロバクテリウムの単一のクローンをかき取り、YEB液体培地(クラリスロマイシン+リファンピシン)中でOD600が0.5になるまで28℃で振盪培養し、コロニーを3500rpmで収集し、等量のAAM(1ml AAM+1μl 1000×AS)液体培地で希釈して、カルスに感染させた。
3)Huaidao No.5イネ品種由来のカルスの誘導:アグロバクテリウムの調製の前に、まずイネカルスを調製した。イネの種子の皮を剥き、洗浄水が透明になるまで必要なだけ滅菌水で洗浄した。次いで、種子を70%のアルコールで30秒間消毒し、次にいで5%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒した。種子を水平振盪機で20分間培養し、次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、滅菌水で5回洗浄し、滅菌吸収紙上に静置して種子の表面水分を風乾し、誘導培地に接種してカルスを28℃で栽培した。
4)イネカルスのアグロバクテリウム感染:直径3mmのHuaidao No.5カルスを10日間継代培養するために選択し、カルスを50ml遠心管に収集した。濃度を調整したアグロバクテリウム菌液を、カルスが入った遠心管に添加し、遠心管を28℃、200rpmの振盪機上に静置し、20分間感染させ;感染完了後、細菌液を廃棄し、カルスを滅菌濾紙上に静置し、約20分間風乾し、AAM(1ml AAM+30μl 1000×AS)液体培養物で湿らせた滅菌濾紙で覆った共培養プレート上で共培養し;感染の3日後、アグロバクテリウムを洗浄して除去し(すなわち、滅菌水で5回洗浄し、次いで500mg/Lのセファロスポリン抗生物質で20分間洗浄した)、次いでカルスをスクリーニングし、50mg/Lのハイグロマイシンスクリーニング培地で培養した。
5)耐性カルスのスクリーニング、分化および発根:共培養したカルスをスクリーニングの第1ラウンド(2週間)のためにスクリーニング培地に移し;第1ラウンドのスクリーニングの完了後、新たに成長したカルスを第2ラウンドのスクリーニング(2週間)のためにスクリーニング培地(50mg/Lのハイグロマイシンを含む)に移し;スクリーニングの完了後、生育状態が良好な黄白色のカルスをかき取り分化させ、3~4週間後に1cm程度の苗木を得た。分化した苗木を発根培養のための発根培地に移し;発根した苗木を馴化処理し、次いで温室内で栽培するための土壌を入れたポットに移し;次いで過剰発現OsPPO1 L423S/Y425Iおよび過剰発現OsPPO1 WT苗木またはイベントを得た。
3. トランスジェニック苗木(T0世代)の除草剤耐性の検出:耐性試験のために、T0世代イネ苗木の過剰発現イネOsPPO1 L423S/Y425IおよびOsPPO1 WTに、様々な濃度の化合物Aを噴霧した。
図24に示すように、野生型のHuaidao No.5と比較して、過剰発現イネOsPPO1 L423S/Y425Iおよび過剰発現OsPPO1 WTの両方が、化合物Aに対して一定レベルの耐性/抵抗性を示した。これらの耐性レベルは、45g/haの散布で同様であったが、135g/haおよび270g/ha等のより高い適用濃度でも、過剰発現OsPPO1 L423S/Y425Iは依然として抵抗性を示したが、過剰発現OsPPO1 WTは野生型対照との差を示さなかったことから、OsPPO1 L423S/Y425Iを過剰発現したイネは、化合物Aに対する耐性が高くなることが示唆された。
【0144】
同時に、多くの試験を通じて、トランスジェニック技術または遺伝子編集技術によって本発明の対応する耐性部位または組み合わせを他の植物に導入すると、PPO阻害型除草剤に対する耐性も同様に付与されることが判明し、優れた産業的価値を有することが示唆された。
【0145】
本明細書で言及されるすべての刊行物および特許出願は、あたかも各刊行物または特許出願が個別かつ具体的に参照により本明細書に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0146】
上述した発明は、明確な理解のために実施例および実施形態によってさらに詳細に説明されるが、特定の変更および修正が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることは明らかであり、そのような変更および修正はすべて本発明の範囲内にある。
【国際調査報告】