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特表2024-512677静的ハロゲン化亜鉛電池内のカソード面に結合したハロゲン複合化剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】静的ハロゲン化亜鉛電池内のカソード面に結合したハロゲン複合化剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
H01M12/08 B
H01M12/08 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560409
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-11-01
(86)【国際出願番号】 US2022021704
(87)【国際公開番号】W WO2022212163
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,699
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】523069441
【氏名又は名称】イオス エナジー テクノロジー ホールディングス リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】スミス レベッカ
【テーマコード(参考)】
5H032
【Fターム(参考)】
5H032AA03
5H032AA04
5H032AS03
5H032AS07
5H032BB02
5H032BB07
5H032CC14
5H032CC16
5H032EE01
5H032EE03
5H032HH01
(57)【要約】
式Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有するハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板を含むバイポーラ電極が開示される。バイポーラ電極はカソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板も含み、カソード面はアノード面の反対側にある。カソード面は少なくとも部分的にカソード基板と接している。バイポーラ電極を含む電気化学セルおよび電池スタック、ならびにバイポーラ電極を製造するための方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板と
を含む、バイポーラ電極であって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):
Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-
の構造を有し、
式中、
QがN、P、またはSであり、
RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または非置換もしくは置換、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6ヘテロ環式基を形成し、
RDが、非置換または置換、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基をさらに含み、かつ
XがF、Cl、Br、またはIであり、
ここで、RDの末端官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yのうちの1つであり、
式中、
RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClのうちの1つであり、
RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルのうちの1つであり、かつ
Yがハロゲン化物である、
バイポーラ電極。
【請求項2】
RA~Dについての置換基がそれぞれ独立して、ハロゲン化物、ヒドロキシ、カルボン酸、エーテル、アミン、アミド、またはアンモニウムのうちの1つである、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項3】
カソード基板が、カーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項4】
カソード基板がカーボンフェルトを含む、請求項3記載のバイポーラ電極。
【請求項5】
カソード基板が圧縮カーボンパウダーを含む、請求項3記載のバイポーラ電極。
【請求項6】
カーボンパウダーが、活性炭、カーボンブラック、膨張グラファイト、グラファイト、またはそれらの2つ以上の組み合わせである、請求項5記載のバイポーラ電極。
【請求項7】
カソード基板に接したカソード面が、接着剤、電気伝導性結合材、テープ、メカニカルケージ、またはそれらの組み合わせを用いて該カソード基板に接続されている、請求項5記載のバイポーラ電極。
【請求項8】
カソード基板が、酸化されているか、炭素処理されているか、黒鉛処理されているか、活性化されているか、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項9】
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板が、該ハロゲン複合化剤と化学的に結合している、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項10】
カソード基板が、ハロゲン複合化剤のモノマーと化学的に結合している、請求項9記載のバイポーラ電極。
【請求項11】
カソード基板が、ハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している、請求項9記載のバイポーラ電極。
【請求項12】
ハロゲン複合化剤が、臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項13】
バイポーラ電極板がチタン材を含む、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項14】
チタン材が、炭化チタンで少なくとも部分的にコーティングされている、請求項13記載のバイポーラ電極。
【請求項15】
バイポーラ電極板が、チタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む、請求項1記載のバイポーラ電極。
【請求項16】
ハロゲン複合化剤および溶媒を混合して混合物を形成する工程、
カソード基板を該混合物と接触させて、カソード基板に該混合物を負荷した負荷カソード基板を形成する工程、および
負荷カソード基板の少なくとも一部をバイポーラ電極板のカソード側と接触させてバイポーラ電極を形成する工程
を含む、バイポーラ電極を製造するための方法であって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):
Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-
の構造を有し、
式中、
QがN、P、またはSであり、
RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または非置換もしくは置換、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6ヘテロ環式基を形成し、
RDが、非置換または置換、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基をさらに含み、かつ
XがF、Cl、Br、またはIであり、
ここで、RDの末端官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yのうちの1つであり、
式中、
RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClのうちの1つであり、
RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルのうちの1つであり、かつ
Yがハロゲン化物である、
方法。
【請求項17】
負荷カソード基板を乾燥させる工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
カソード基板を混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に、該混合物を超音波処理する工程をさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
溶媒が、水、アルコール、またはそれらの組み合わせである、請求項16記載の方法。
【請求項20】
カソード基板を混合物に浸漬させる、請求項16記載の方法。
【請求項21】
カソード基板を処理する工程をさらに含み、該処理が、酸化、炭素処理、活性化、黒鉛処理、またはそれらの任意の組み合わせより選択される、請求項16記載の方法。
【請求項22】
酸化、炭素処理、活性化、黒鉛処理、またはそれらの任意の組み合わせが、カソード基板を混合物と接触させる前に行われる、請求項21記載の方法。
【請求項23】
混合物中のハロゲン複合化剤がモノマーである、請求項16記載の方法。
【請求項24】
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板が、該ハロゲン複合化剤と化学的に結合している、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
カソード基板が、ハロゲン複合化剤のモノマーと化学的に結合している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
カソード基板が、ハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している、請求項24記載の方法。
【請求項27】
カソード面とアノード面とを含むバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板、および
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板
を含む、バイポーラ電極と、
水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、電気化学セルであって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):
Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-
の構造を有し、
式中、
QがN、P、またはSであり、
RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または非置換もしくは置換、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6ヘテロ環式基を形成し、
RDが、非置換または置換、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基をさらに含み、かつ
XがF、Cl、Br、またはIであり、
ここで、RDの末端官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yのうちの1つであり、
式中、
RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClのうちの1つであり、
RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルのうちの1つであり、かつ
Yがハロゲン化物である、
電気化学セル。
【請求項28】
カソード基板が、カーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む、請求項27記載の電気化学セル。
【請求項29】
ハロゲン複合化剤が、臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである、請求項27記載の電気化学セル。
【請求項30】
バイポーラ電極板が、チタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む、請求項27記載の電気化学セル。
【請求項31】
水性ハロゲン化亜鉛電解質が、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む、請求項27記載の電気化学セル。
【請求項32】
水性ハロゲン化亜鉛電解質が、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む、請求項31記載の電気化学セル。
【請求項33】
1つまたは複数の第四級アンモニウム剤が、塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む、請求項31記載の電気化学セル。
【請求項34】
1つまたは複数の第四級アンモニウム剤が、アルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項31記載の電気化学セル。
【請求項35】
一対の端子アセンブリと、
該一対の端子アセンブリ間に挿入された少なくとも1つのバイポーラ電極と
を含む、電池スタックであって、
バイポーラ電極が、
バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板と、
バイポーラ電極板およびカソード基板と接した水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含み、
ハロゲン複合化剤が、式(I):
Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-
の構造を有し、
式中、
QがN、P、またはSであり、
RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または非置換もしくは置換、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6ヘテロ環式基を形成し、
RDが、非置換または置換、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基をさらに含み、かつ
XがF、Cl、Br、またはIであり、
ここで、RDの末端官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yのうちの1つであり、
式中、
RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClのうちの1つであり、
RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルのうちの1つであり、かつ
Yがハロゲン化物である、
電池スタック。
【請求項36】
カソード基板が、カーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む、請求項35記載の電池スタック。
【請求項37】
ハロゲン複合化剤が、臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである、請求項35記載の電池スタック。
【請求項38】
バイポーラ電極板が、チタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む、請求項35記載の電池スタック。
【請求項39】
水性ハロゲン化亜鉛電解質が、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む、請求項35記載の電池スタック。
【請求項40】
水性ハロゲン化亜鉛電解質が、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む、請求項39記載の電池スタック。
【請求項41】
1つまたは複数の第四級アンモニウム剤が、塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む、請求項39記載の電池スタック。
【請求項42】
1つまたは複数の第四級アンモニウム剤が、アルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項39記載の電池スタック。
【請求項43】
電池スタックの自己放電率が、ハロゲン複合化剤を含まない等価な電池スタックと比較して、単一サイクルにおいて約29%~約34%低い、請求項35記載の電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2021年3月31日に出願の米国仮特許出願第63/168,699号の恩典を主張し、その開示はその全体において参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
充電式電池が本明細書において記載される。特に、静的ハロゲン化亜鉛電池が記載される。
【背景技術】
【0003】
背景
ハロゲン化亜鉛電池は電気エネルギーを貯蔵するための装置として開発された。従来のハロゲン化亜鉛電池(例えば、臭化亜鉛電池)は静的な、すなわち非流動性の、臭化亜鉛水溶液中に配置されたバイポーラ電極を採用していた。ハロゲン化亜鉛電池において電流を充電および放電するプロセスは、概して、ハロゲン化亜鉛電解質中のZn2+/Zn(s)およびX-/X2などの酸化還元対の反応を通じて達成される。電池が電流で充電される際には以下の化学反応が起きる:
Zn2++2e-→Zn
2X-→X2+2e-
式中、Xはハロゲン(例えば、Cl、Br、またはI)である。逆に、電池が電流を放電する際には以下の化学反応が起きる:
Zn→Zn2++2e-
X2+2e-→2X-
【0004】
これらのハロゲン化亜鉛蓄電池はバイポーラ電気化学セルスタック内で形成され、ここで各電極は、電極の一方側ではアノード反応が起き、同電極の反対側ではカソード反応が起きるように、2つの極を含む。この場合、バイポーラ電極は板状に構成されることが多く、セルスタックは角柱形状を形成するように組立てられていた。バイポーラ電池の充電および放電時には、電極板は隣接するセルのための導体として機能し、すなわち、各電極板は1つのセルのためのアノードとして機能し、かつ隣接するセルのためのカソードとして機能する。この角柱電池形状では、隣接する電気化学セルを隔てる電極板の表面領域全体が、セルからセルへと電流を伝達させる。
【0005】
したがって、従来のバイポーラハロゲン化亜鉛電池が充電される際には、バイポーラ電極板のアノード側では亜鉛金属が電解的に析出する一方で、電極板のカソード側では分子ハロゲン種が形成される。そして、電池が放電する際には、電析した亜鉛金属は酸化して電子を放出し、該電子は電極板を通って伝導され、分子ハロゲン種を還元してハロゲン化物アニオンを生成する。
【0006】
従来の亜鉛臭素電池のカソードは充電時に臭素またはポリ臭化物を貯蔵して、それらが放電時に利用できるようになる必要がある。しかしながら、現在の亜鉛臭素電池は、多孔質カソードにおける臭素またはポリ臭化物の物理的な捕捉に依存しており、この捕捉は、濃度勾配および密度勾配が原因で臭素およびポリ臭化物が移動してカソードから遠ざかり放電時にそれらが利用できなくなり得る場合には、困難である。このことは、ポリ臭化物が動き回ることなく1回で数時間にわたってカソード内に貯蔵され続けなければならないため、大型の静的ハロゲン化亜鉛電池では特に問題となる。
【発明の概要】
【0007】
概要
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板を有するバイポーラ電極が、本明細書において記載される。
【0008】
本開示の一局面は、
カソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板と
を含む、バイポーラ電極であって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義されたとおりである、
バイポーラ電極に関する。
【0009】
いくつかの態様では、カソード基板は酸化されているか、炭素処理されているか、黒鉛処理されているか、活性化されているか、またはそれらの任意の組み合わせである。カソード基板はハロゲン複合化剤が負荷される前に酸化されていても、炭素処理されていても、黒鉛処理されていても、活性化されていても、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0010】
いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルトを含む。カーボンフェルトは酸化されていても、炭素処理されていても、黒鉛処理されていても、活性化されていても、またはそれらの任意の組み合わせであってもよい。いくつかの態様では、カーボンフェルトは約2mm~約10mmの厚さを有する。カーボンフェルトはカーボンフェルト1グラム当たり約0.1~約100ミリグラムの濃度のハロゲン複合化剤が負荷されていてもよい。
【0011】
いくつかの態様では、カソード基板は圧縮カーボンパウダーを含む。カーボンパウダーは活性炭、カーボンブラック、膨張グラファイト、グラファイト、またはそれらの2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0012】
いくつかの態様では、カソード面は接着剤、電気伝導性結合材、テープ、メカニカルケージ、またはそれらの組み合わせを用いてカソード基板に少なくとも部分的に接している。
【0013】
いくつかの態様では、負荷カソード基板は、カソード基板がハロゲン複合化剤と化学的に結合したものである。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤のモノマーと化学的に結合している。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している。
【0014】
いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0015】
いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン材を含む。チタン材は少なくとも部分的に炭化チタンでコーティングされていてもよい。いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0016】
本開示の第2の局面はバイポーラ電極を製造するための方法に関する。方法は、ハロゲン複合化剤および溶媒を混合して混合物を形成する工程;カソード基板を該混合物と接触させて、カソード基板に該混合物を負荷した負荷カソード基板を形成する工程;および負荷カソード基板の少なくとも一部をバイポーラ電極板のカソード側と接触させてバイポーラ電極を形成する工程を含む。ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義される通りである。
【0017】
いくつかの態様では、方法は負荷カソード基板を乾燥させる工程をさらに含む。
【0018】
いくつかの態様では、方法は、カソード基板を混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に、該混合物を超音波処理する工程をさらに含む。
【0019】
いくつかの態様では、方法はカソード基板を処理する工程をさらに含み、処理は酸化、炭素処理、活性化、黒鉛処理、またはそれらの任意の組み合わせより選択される。いくつかの態様では、処理工程は、カソード基板をハロゲン複合化剤と溶媒との混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に行われる。
【0020】
いくつかの態様では、溶媒は水、アルコール、またはそれらの組み合わせである。
【0021】
混合物中のハロゲン複合化剤はモノマーである。いくつかの態様では、負荷カソード基板は、カソード基板がハロゲン複合化剤と化学的に結合したものである。いくつかの態様では、カソード基板は、モノマー形態のハロゲン複合化剤と化学的に結合している。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している。
【0022】
本開示の第3の局面は、
カソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板、および、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板
を含む、バイポーラ電極と、
水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、電気化学セルであって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義される通りである、
電気化学セルに関する。
【0023】
いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0024】
いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0025】
いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン材を含む。チタン材は少なくとも部分的に炭化チタンでコーティングされていてもよい。いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0026】
いくつかの態様では、電気化学セルの水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0027】
いくつかの態様では、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0028】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤は塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む。
【0029】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤はアルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0030】
本開示の第4の局面は、
一対の端子アセンブリと、
該一対の端子アセンブリ間に挿入された少なくとも1つのバイポーラ電極と
を含む、電池スタックであって、
バイポーラ電極が、
バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板と、
バイポーラ電極板およびカソード基板と接した水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含み、
ハロゲン複合化剤が、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義される通りである、
電池スタックに関する。
【0031】
いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0032】
いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0033】
いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン材を含む。
【0034】
いくつかの態様では、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0035】
いくつかの態様では、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0036】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤は塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む。
【0037】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤はアルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0038】
いくつかの態様では、本明細書において記載される電池スタックの自己放電率は、ハロゲン複合化剤を含まない等価な電池スタックと比較して、単一サイクルにおいて約29%~約34%低い。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本明細書において記載される装置のこれらおよび他の特徴、局面、および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読めばよりよく理解されるであろう。
【0040】
図1】記載される本発明の一局面に係る電気化学セルの分解図を示す。
図2図2Aおよび2Bは、それぞれ、記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電極の正面および側面図である。
図3】記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電極の分解図を示す。
図4図4Aは、記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電極の正面図を示す。図4Bは、記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電極の分解図を示す。
図5】記載される本発明の一局面に係るサンドブラスト領域217を有する電極板の裏面の図を示す。
図6図6Aおよび6Bは、それぞれ、記載される本発明の一局面に係るカソードケージの正面および側面図を示す。
図7図7Aおよび7Bは、それぞれ、記載される本発明の一局面に係るカソードケージの正面図および貫通孔を有するカソードケージ材料の拡大図を示す。
図8】記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電極板の前面(それに搭載されたカソードアセンブリを含む)と第2電極板の裏面または端子エンドプレートの内面との境界を含む、電気化学セルの一部分の断面図を示す。
図9】記載される本発明の一局面に係るカソード基板としての使用のための負荷カーボンフェルトの正面図、側面図、および上面斜視図を示す。
図10】記載される本発明の一局面に係るバイポーラ電池のための端子アセンブリの上面斜視図を示す。
図11】記載される本発明の局面に係る図10の端子アセンブリの分解図を示す。
図12】記載される本発明の一局面に係る電池スタックの側面図を示す。
図13】記載される本発明の一局面に係る図12の電池スタックの分解図を示す。
図14】記載される本発明の一局面に係る図12の電池スタックにおける使用のための電池フレーム部材の正面図を示す。
図15】記載される本発明の一局面に係る図14の電池フレーム部材の底部の近接側面図を示す。
図16】本明細書において記載されるハロゲン複合化剤の2つの異なる例を用いた、酸化面(例えば、カソード基板)に結合した自己組織化単層の例を示す。
図17】未処理の対照フェルト(「未処理」)または本明細書において記載される例示的なハロゲン複合化剤のうちの1つを負荷したフェルト(「シラン処理」もしくは「ホスフェート処理」)のいずれかを含む、3種類のセル集団の平均放電容量対サイクル指数のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
詳細な説明
同様の参照番号が類似または同一の要素を識別する図面を参照して本開示の態様を詳細に説明する。開示される態様は様々な形態で具体化され得る開示の単なる例示であると理解されるべきである。不必要に詳述して本開示が不明瞭になるのを避けるために、周知の機能または構造は詳細には記載していない。したがって、本明細書において開示される具体的な構造および機能の詳細は、限定としてではなく、単に特許請求の範囲のための根拠として、および実質的にあらゆる適切で詳細な構造において本開示を様々な形で採用することを当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0042】
I.定義
本明細書において用いられるように、「電気化学セル」または「セル」という用語は、化学反応から電気エネルギーを発生させることまたは電気エネルギーの導入を介して化学反応を促進することのいずれかが可能な装置を指すように互換的に用いられる。電気化学セルはバイポーラ電気化学セル、端子電気化学セル、または実験用セルであり得る。
【0043】
本明細書において用いられるように、「電池」という用語は少なくとも1つの電気化学セルを含む蓄電装置を包含する。例えば、電池は直列にした40個の電気化学セルを含み得る。「二次電池」は充電可能であるが、「一次電池」は充電可能ではない。本明細書において記載される二次電池については、電池のアノードは放電時には正極として、かつ充電時には負極として指定される。
【0044】
本明細書において用いられるように、「電解質」とは電気伝導性媒体として作用する物質を指す。例えば、電解質はセル内のアニオンおよびカチオンの移動を促進する。電解質はハロゲン化金属塩(例えば、ZnBr2、ZnCl2など)の水溶液などの物質の混合物を含む。
【0045】
本明細書において用いられるように、「電極」という用語は回路の非金属部分(例えば、半導体、電解質、または真空)との接触を形成するために用いられる導電体を指す。電極はアノードまたはカソードのいずれかを指す場合もある。
【0046】
本明細書において用いられるように、「アノード」という用語は電池における放電段階時に電子が流出する負極を指す。アノードは放電段階時に化学的酸化を受ける電極でもある。しかしながら、二次つまり充電式電池では、アノードはセルの充電段階時に化学的還元を受ける電極である。アノードは電気伝導性または半伝導性材料、例えば、金属(例えば、チタンまたはTiC被覆チタン)、金属酸化物、金属合金、金属複合材料、半導体などから形成される。
【0047】
本明細書において用いられるように、「カソード」という用語は電池における放電段階時に電子が流入する正極を指す。カソードは放電段階時に化学的還元を受ける電極でもある。しかしながら、二次つまり充電式電池では、カソードはセルの充電段階時に化学的酸化を受ける電極である。カソードは電気伝導性または半伝導性材料、例えば、金属、金属酸化物、金属合金、金属複合材料、半導体などから形成される。
【0048】
本明細書において用いられるように、「バイポーラ電極」という用語は一方のセルのアノードとして機能し、他方のセルのカソードとして機能する電極を指す。例えば、電池においては、バイポーラ電極は1つのセルではアノードとして機能し、すぐ隣のセルではカソードとして機能する。いくつかの例では、バイポーラ電極はカソード面およびアノード面という2つの面を含み、2つの面は電気伝導性材料によって繋がっている。例えば、バイポーラ電極板は反対の面を有し得、ここで一方の面はアノード面であり、他方の面はカソード面であり、電気伝導性材料は反対の面間の板の厚さになる。
【0049】
本明細書において用いられるように、「ハロゲン化物」という用語はハロゲンとハロゲンより電気陰性度が低い(または電気陽性度が高い)別の元素またはラジカルとの二元化合物を指し、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、またはアスタチド化合物を生じる。
【0050】
本明細書において用いられるように、「ハロゲン」という用語は周期表の第VIIA(17)族を占めるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、およびアスタチンのいずれかの元素を指す。ハロゲンは水素と強酸性化合物を形成する反応性の非金属元素であり、これから単塩を生じることができる。
【0051】
本明細書において用いられるように、「アニオン」という用語は1つまたは複数の永久負電荷を有する任意の化学成分を指す。アニオンの例はフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ヒ酸塩、リン酸塩、亜ヒ酸塩、リン酸水素、リン酸二水素、硫酸塩、硝酸塩、硫酸水素塩、亜硝酸塩、チオ硫酸塩、亜硫酸塩、過塩素酸塩、ヨウ素酸塩、塩素酸塩、臭素酸塩、亜塩素酸塩、次亜塩素酸塩、次亜臭素酸塩、炭酸塩、クロム酸塩、炭酸水素塩(重炭酸塩)、重クロム酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シアン化物、アミド、シアン酸塩、過酸化物、チオシアン酸塩、シュウ酸塩、水酸化物、および過マンガン酸塩を非限定的に含む。
【0052】
本明細書において用いられるように、「チタン材」はチタン(任意の酸化状態における)、TiC、TiCの合金、例えば、TiCxM(式中、xは0、1、2、3、または4であり、Mは金属である)、チタニウムカルボヒリド(titanium carbohyride)、非化学量論的チタン-炭素化合物、およびそれらの組み合わせを非限定的に含み得る。
【0053】
本明細書において用いられるように、「炭化チタン」は「炭化チタン材」と互換的に用いられ、TiC、TiCの合金、例えば、TiCxM(式中、xは0、1、2、3、または4であり、Mは金属である)、チタニウムカルボヒドリド、非化学量論的チタン-炭素化合物、およびそれらの組み合わせを非限定的に含む。
【0054】
本明細書において用いられるように、「亜鉛金属」という用語はZn(0)またはZnoとしても一般に公知である元素亜鉛を指す。
【0055】
本明細書において用いられるように、「第四級アンモニウム剤」という用語は第四級窒素原子を含む任意の化合物、塩、または材料を指す。例えば、第四級アンモニウム剤はハロゲン化アンモニウム(例えば、NH4Br、NH4Cl、またはそれらの任意の組み合わせ)、ハロゲン化テトラアルキルアンモニウム(例えば、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、アルキル置換ハロゲン化ピリジニウム、アルキル置換ハロゲン化モルホリニウム、それらの組み合わせなど)、ヘテロ環式ハロゲン化アンモニウム(例えば、アルキル置換ハロゲン化ピロリジニウム(例えば、ハロゲン化N-メチル-N-エチルピロリジニウムまたはハロゲン化N-エチル-N-メチルピロリジニウム)、アルキル置換ハロゲン化ピリジニウム、アルキル置換ハロゲン化モルホリニウム、少なくとも1つの第四級窒素原子を有するビオロゲン、それらの組み合わせなど)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムは、第四級窒素原子の置換基に関して、対称に置換されていても、非対称に置換されていてもよい。
【0056】
本明細書において用いられるように、「重量%」という用語およびその略称である「wt.%」または「wt%」は、1つまたは複数の成分の質量を、該成分を含む混合物または生成物の総質量で割った商の100倍を指すように、互換的に用いられる:
【0057】
電解質について成分または原料の濃度に言及する場合は、本明細書において記載されるように、wt.%(またはwt%)は電解質の総重量に基づいている。
【0058】
要素または層が別の要素または層「に接している」、「に係合している」、「に接続している」、「に取り付けられている」、または「に結合している」と言及される場合は、別の要素または層に直接接しているか、係合しているか、接続しているか、取り付けられているか、または結合していてもよいし、介在する要素または層が存在していてもよい。対照的に、要素が別の要素または層「に直接接している」、「に直接係合している」、「に直接接続している」、「に直接取り付けられている」、または「に直接結合している」と言及される場合は、介在する要素または層が存在してはいけない。要素間の関係を説明するために用いられる他の語も同様に解釈されるべきである(例えば、「~の間で」と「直接的に~の間で」、「隣接する」と「直接的に隣接する」など)。本明細書において用いられるように、「および/または」という用語は関連する列挙された項目の1つまたは複数のあらゆる全ての組み合わせを含む。
【0059】
上、下、上方、下方、右、左などの用語は本明細書においては、様々な要素の、他の要素に対する位置を説明するために用いられ得る。これらの用語は例示的な構成における要素の位置を表す。しかしながら、本開示から逸脱することなく電池フレーム部材を空間内で回転させ得ることは当業者には明らかであり、よって、これらの用語は本開示の範囲を限定するために用いられるべきものではない。
【0060】
本明細書において用いられるように、「複数」とは、記載されている要素のうちの2つ以上を指す。いくつかの態様では、複数とは、記載されている要素のうち3つ以上、4つ以上、または5つ以上を指す。
【0061】
本明細書において用いられるように、「化学的に適合する」とは電気化学セルの性能に意味のあるほどに悪影響を与える様式で電気化学セルのケミストリーに干渉することのない材料を指す。化学的に適合する材料は電解質(例えば、ハロゲン化亜鉛電解質、アルカリ性電解質)ならびにアノードおよびカソード材料と化学的に適合する。
【0062】
本明細書において用いられるように、「化学的に不活性な」とは電気化学セルの電解質、アノード、またはカソードと任意の意味のある様式で化学反応することのない材料を指す。
【0063】
II.電気化学セルおよび電池スタック
図1~15を参照すると、一局面では静的(非流動性)バイポーラ型ハロゲン化亜鉛充電式電気化学セル100およびそのようなセルの電池スタック1000が記載される。
【0064】
A.バイポーラ電気化学セル
バイポーラ電気化学セル100はバイポーラ電極102、端子アセンブリ104、およびハロゲン化亜鉛電解質を含む。
【0065】
1.バイポーラ電極
バイポーラ電極102、102'は前面212および後面214を有するバイポーラ電極板208を含み得る。表面の一方はカソード面であり、他方はアノード面である。カソード基板224を含むカソードアセンブリ202はバイポーラ電極板の前面などのカソード面に固定されるため、カソードアセンブリはバイポーラ電極板208の少なくともその表面(例えば、前面)と電気的に連通する。バイポーラ電極102は、電気化学セルの充電時には、アノード電極面(例えば、隣接するバイポーラ電極の後面、または端子アノードアセンブリのエンドプレートの内面)上に亜鉛金属を電析させ、カソードアセンブリ内で可逆的に隔離されるハロゲン化物または混合ハロゲン化物種を発生させるように構成し得る。逆に、これらの電極は電気化学セルの放電時には電析した亜鉛金属を酸化してZn2+カチオンを生じ、ハロゲン化物または混合ハロゲン化物種を対応するアニオンに還元するように構成される。
【0066】
a.バイポーラ電極板
バイポーラ電極板208、208'は、例えば、図8に示されるように、前面212(212')および後面214(214')を含み得る。いくつかの態様では、前面212はカソード面であり、後面214はアノード面(亜鉛アノード230の)である。カソードアセンブリはバイポーラ電極板208のカソード面(例えば、前面212)に位置する。バイポーラ電極板は電気化学セルまたは電池スタックにおいて用いられるハロゲン化亜鉛電解質に対して比較的不活性な伝導性コーティングまたはフィルムを含む。いくつかの態様では、伝導性コーティングまたはフィルムはバイポーラ電極板208の少なくとも一部、例えば、前面212の少なくとも一部、後面214の少なくとも一部、または両表面の少なくとも一部を覆う。
【0067】
いくつかの態様では、バイポーラ電極板208はチタン、酸化チタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208はチタン材を含む。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208は炭化チタン材で少なくとも部分的にコーティングされたチタン材を含む。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208は炭素が熱で拡散されたチタン材を含む。これらの態様では、前面212の少なくとも一部、後面214の少なくとも一部、または両表面の少なくとも一部が炭化チタン材でコーティングされているか、または炭素が熱で拡散されている。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208はグラファイト板などの電気伝導性炭素材を含む。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208は炭化チタン材でコーティングされたグラファイト板を含む。これらの態様では、前面212の少なくとも一部、後面214、またはこれら表面のいずれかの少なくとも一部が炭化チタン材でコーティングされている。いくつかの態様では、バイポーラ電極板208は電気伝導性プラスチックを含む。記載されたものの範囲内で、任意の好適な電気伝導性プラスチックを用い得る。そのような電気伝導性プラスチック材は、カーボンブラック、グラファイト、ヒュームドシリカ、またはそれらの組み合わせとのベース樹脂ポリマーを含み得る。例えば、参照により本書に組み入れられる1978年3月6日に出願の米国特許第4,169,816号に記載の電導性プラスチックを本明細書において記載されるものの範囲内で用い得る。
【0068】
本明細書において記載されるバイポーラ電極板は任意でバイポーラ電極板の前面212に凹部215を含む。いくつかの態様では、バイポーラ電極板はバイポーラ電極板の前面212に凹部215を含む。これらの態様のいくつかでは、凹部215の周縁は、バイポーラ電極が組立てられた際にカソードアセンブリが凹部215内に少なくとも部分的に収まるように、カソードアセンブリ202のカソードケージ216のフランジ220の最外縁によって実質的に規定される。別の態様では、凹部の周縁は少なくとも部分的にカソードアセンブリ202のカソードケージ216のフランジ220の最外縁内にある。これらの態様のいくつかでは、凹部は、バイポーラ電極102が組立てられた際に負荷カーボンフェルト224が少なくとも部分的にバイポーラ電極板の凹部215内に収まるように、カソードアセンブリ202のカソードケージ216内に入った負荷カーボンフェルト224の最外縁によって規定され得る。また、いくつかの代替的な態様では、バイポーラ電極板の前面212は前面が少なくとも実質的に平坦となるように凹部がない。
【0069】
記載のバイポーラ電極板は任意で、板の周囲部204またはその近傍に1つまたは複数の貫通孔を含み得る。図2A~4Bを参照すると、いくつかの態様では、バイポーラ電極板は、電気化学セルを液体電解質で満たすのに有用となり得るかまたは電池スタック内の電極板を位置合わせするのに有用となり得る、板の周囲部204またはその近傍に1つまたは複数の貫通孔206、210を含む。
【0070】
バイポーラ電極板はスタンピングまたは他の好適な方法によって形成し得る。前面212の一部、後面214の一部、または両表面の一部が任意で表面処理(例えば、コーティングなど)を受けて、セルまたは電池スタックの電気化学的特性を向上し得る。バイポーラ電極板の後面は、セルまたは電池スタックの充電時の亜鉛金属層の形成に関連するかまたはそれによって規定される電気化学的に活性な領域を含み得る。いくつかの態様では、電極板の後面は電気化学的に活性な領域内でサンドブラストされる(例えば、SiCまたはガーネットでサンドブラストされる)か、テクスチャ加工されるか、または他の様式で処理され得る。別の態様では、前面もカソードアセンブリによって囲まれた領域に関連する電気化学的に活性な領域内でサンドブラストされ得る。
【0071】
例えば、いくつかの態様では、後面の少なくとも一部、前面の少なくとも一部、または両表面の少なくとも一部が処理されて(例えば、サンドブラストされて)、粗面が得られる。いくつかの場合では、バイポーラ電極板の後面の少なくとも一部が処理されて(例えば、サンドブラストされて)、粗面が得られる。いくつかの場合では、粗面が得られるように処理された後面の領域は電極板の前面に固定されたカソードアセンブリの周囲部によって実質的に規定される。
【0072】
いくつかの態様では、電気化学セルはアノード面とカソード面の間に配置された半透性バリアを含む。いくつかの態様では、電気化学セルはアノード面とカソード面の間に配置された半透性バリアを含まない。
【0073】
b.カソードアセンブリ
記載の電気化学セルおよび電池スタックは少なくとも1つのカソードアセンブリ202を含み得る。カソードアセンブリ202はバイポーラ電極板208のカソード面(例えば、前面212)に位置し、ここで、カソードアセンブリ202は少なくとも1つのカソード基板224を含む。カソード面は少なくとも部分的にカソード基板224と接する。接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、テープ、メカニカルケージ、またはそれらの組み合わせがカソード基板224をバイポーラ電極板208のカソード面に電気的に接続させる。いくつかの態様では、メカニカルケージはカソードケージである。
【0074】
i.a.カソードケージ
カソードケージ216などのメカニカルケージはポケット部218およびフランジ220を含み、フランジ220においてバイポーラ電極板の前面212、212'または端子エンドプレートの内面316のいずれかに配置される。図6Aおよび6Bを参照すると、カソードケージ216の正面図(図6A)および側面図(図6B)が示されている。カソードケージ216は、フランジ220を含む、長さX1および幅Y1によって規定される全体領域を含む。フランジを形成するために、平らな金属シートを、平らなシートの4つの端部それぞれにフランジをプレスする成形機にセットする。いくつかの実施形態では、平らな金属シートはチタンまたは炭化チタン材を含む。いくつかの態様では、カソードケージはケージの角にスロットをさらに含む。これらのスロットはレーザー切断によって形成し得る。カソードケージ216は長さX2および幅Y2によって規定されるポケット部218に対応する縮小領域を含む。したがって、X1はX2より大きく、Y1はY2より大きい。示された例では、フランジ220はポケット部218に対して平たく曲げられて、X1/X2およびY1/Y2の寸法ならびにポケット部の深さが決まる。いくつかの態様では、X2およびY2によって規定される領域は複数の孔227が形成されるエッチング領域を示す。長さX1/X2および幅Y1/Y2は電気化学セル100または電池スタック1000の動作要件に基づいて異なり得る。
【0075】
いくつかの態様では、フランジ220はバイポーラ電極板の前面212に隣接しかつこれに接する表面を含み、ポケット部218の深さはフランジから、電極板の前面から離れる方向に、延びている。カソードケージのポケット部218は電極板の前面と協働して、負荷カーボンフェルト224が位置するチャンバを形成する。これらの態様のいくつかでは、カソードケージは、溶接、接着剤の使用、電気伝導性結合材、メカニカルファスナーの使用、またはそれらの任意の組み合わせによって、そのフランジにおいて電極板の前面に配置される。
【0076】
カソードケージは電気化学セルまたは電池スタックの電解質に対して実質的に不活性な金属、金属合金、またはプラスチックから形成される。いくつかの態様では、カソードケージはチタン材から打ち抜かれる。いくつかの態様では、カソードケージはチタンまたは酸化チタンを含む。いくつかの態様では、カソードケージは炭化チタン材でコーティングされたチタン材を含む。
【0077】
いくつかの態様では、カソードケージのポケット部は化学エッチングされて、間隔をあけた複数の孔227を形成する。いくつかの態様では、孔は、電気化学セルの動作(例えば、充電または放電)時に起きるカソードケージのポケット部の変形または屈曲を相殺することによってカソードケージ全体に分配される電流および/または電荷の均一性を増加させる孔パターン(例えば、調節された孔パターン)を形成するような大きさおよび間隔である。
【0078】
図7Aは、化学エッチングによってポケット部218の化学エッチング表面を貫通して形成された複数の孔227を含む、図6Aによって図示されるカソードケージ216の正面図を示す。図7Bは、複数の孔227の分布を示す、図7Aによって示される部分の詳細図である。化学エッチングプロセスは複数の孔227を形成するために除去される固体材料を取り除く減法的製造プロセスである。化学エッチングプロセスの第1工程時には、カソードケージ216は、X1およびY1に対応する寸法を達成するために剪断力を用いて切断される平らな金属シートとして開始される。次に、金属シートを洗浄し、ホットロールラミネーター内にてドライフィルムソルダーマスクでコーティングし、次いで暗所で冷却し得る。次いで、真空露光ユニット内で保護フィルムを貼付して、金属シートを露光し得る。いくつかの例では、露光の程度はステップインジケータを用いて測定し得、所望の露光程度が達成された際に露光したと判断される。その後、金属シートを現像液に通して保護フィルムを除去する一方で、現像液中の分解洗浄剤を金属板に塗布して不要な未露光レジストを除去する。次いで、金属シートを炉のラックに入れ、所定の温度で所定の時間にわたり焼成し得る。例えば、焼成温度は約250°Fで約60分間であり得る。焼成サイクルに続いて、各金属シートを空冷し、化学エッチング装置が所望のエッチング領域、例えば、X2およびY2によって規定される領域、の仕様ごとにプログラムされ、焼成および冷却された金属シートが化学エッチング装置に通されて不要な材料が除去され、これによって孔227が形成される。
【0079】
ここで図7Bを参照すると、複数の孔227はパターン状に列に沿って間隔をあけて分布している。いくつかの態様では、パターンは交互の繰り返しパターンである。いくつかの態様では、パターンは、電気化学セルまたは電池スタックの充電時に平たい状態から湾曲しかつ変形したカソードケージの存在下で、カソードケージ216全体にわたる電流の均一な分布を可能にするように選択される。本開示に従ってカソードケージに孔パターンを設けることは電荷および/または電流の均一な分布を向上させ、これは、充電サイクル時のバイポーラ電極プレートのアノード面(例えば、バイポーラ電極板の後面214、またはエンドプレートの内面318、または両表面)において金属亜鉛のより均一な電析を生じさせる。同様に、カソードケージ216またはその近傍での臭素と臭化物アニオンとの変換も向上し得る。いくつかの態様では、x方向の列に沿った複数の孔227の各孔の間隔、y方向の交互の列の間隔、および孔の直径fは、電気化学セルまたは電池スタックが充電および放電する際にカソードケージおよびバイポーラ電極に生じる湾曲または変形の量に基づいて、カソードケージ216全体にわたる電荷および/または電流の実質的に均一な分布を達成するように選択し得る。いくつかの実施形態では、xおよびy方向のそれぞれにおけるxおよびy孔位置の分布(例えば、間隔)は公称孔面積およびカソードケージ216の推奨されるウェブ長に基づく。ポケット部218の表面の厚さが公称孔面積および推奨ウェブ長の寸法を決定し得る。いくつかの例では、列に沿った隣接する複数の孔227の中心はx方向に約0.067cmの間隔があり、一列おきにy方向に約0.152cmの間隔がある。下により詳細に記載されるように、カソードケージ216、およびバイポーラ電極板208、208'、または端子エンドプレート302は、該部分のそれぞれにおいて外周からより遠い領域で平坦からより大きな距離湾曲し、その結果、アノードとカソード電極の間隔は外周に近い外側の領域に対して中央の領域でより短くなる。概して、アノードとカソード電極の間隔が小さくなると、対応するxおよびyの孔位置における計算上の孔径は大きくなる。
【0080】
i.b.接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、および/またはテープ
カソードケージに加えて、またはカソードケージの代わりに、接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、および/またはテープをバイポーラ電極板に適用して、カソード基板を少なくとも部分的にバイポーラ電極板に接触させて保持するために用い得る。カソードケージ、接着剤、粘着剤、結合材、またはテープは電気伝導性である。いくつかの態様では、バイポーラ電極および電気化学セルは、カソードケージを伴わずに、接着剤を用いて負荷カーボンフェルトをバイポーラ電極板のカソード側に取り付けるように構築される。電気化学セルは、バイポーラ板のカソード側と電気的に連通したいかなるグラファイト板も含まない。
【0081】
上記、下記および全体を通して検討するように、接着剤を用いてカソード基板をバイポーラ電極板に取り付け得る。いくつかの態様では、ある体積(例えば、5ml)の接着剤または粘着剤をバイポーラ電極のカソード面に塗布し、カソード基板を接着剤の上に置き、炭素基板上に圧力(例えば、3psi、5psiなど)を印加し、次いで接着剤または粘着剤を乾燥させる(例えば、1時間)。次いで接着剤がバイポーラ電極板の面上にカソード基板を保持し得る。カソード基板は実質的に矩形の形状を有し得、実質的に矩形のバイポーラ電極板のほぼ中央に位置合わせし得る。いくつかの態様では、接着剤または粘着剤の代わりに、またはそれらに加えて、テープを用いることができる。
【0082】
カーボンフェルトをバイポーラ電極板に接触させて保持するために用い得る1つの例示的な接着剤または粘着剤はアセトンと、ポリフッ化ビニリデンと、メタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル共重合体と、グラファイトとの混合物を含む接着剤または粘着剤である。いくつかの態様では、粘着剤は約50wt.%~約75wt.%のアセトン、約10wt.%~約20wt.%のポリフッ化ビニリデン、約5wt.%~約10wt.%のメタクリル酸メチル/メタクリル酸n-ブチル共重合体、および約10wt.%~約20wt.%のグラファイトを含む。例えば、接着剤または粘着剤はアセトン、Kynar 2750、Elvacite 4111、およびTimrex KS6グラファイトを含み得る。
【0083】
ii.カソード基板
カソード基板224はバイポーラ電極板208のカソード面と電気的に連通しており、接着剤層、粘着剤、電気伝導性接合材、テープ、またはそれらの組み合わせを用いてバイポーラ電極板208に接着されている。いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0084】
いくつかの態様では、カソード基板は少なくとも1つの炭素材を含む。ここで記載される電気化学セルに好適な炭素材は、水性臭素種(例えば、水性臭素または水性臭化物)(総称して702)を可逆的に吸収することができ、電解質の存在下で実質的に化学的に不活性な任意の炭素材を含み得る。いくつかの態様では、炭素材はカーボンブラックまたは他のファーネスプロセスカーボンを含む。好適なカーボンブラック材はCabot Vulcan(登録商標) XC72R、Akzo-Nobel Ketjenblack EC600JD、および電気伝導性ファーネスプロセスカーボンブラックの他のマットブラック混合物を非限定的に含む。いくつかの態様では、炭素材は、PTFEバインダーおよび脱イオン水を非限定的に含む、他の成分も含み得る。例えば、炭素材は炭素材の重量に対して50wt.%未満(例えば、約0.01wt.%~約30wt.%)の含水率を有する。いくつかの態様では、炭素材はPTFEを含む(例えば、炭素材の重量に対して約0.5wt.%~約5wt.%)。
【0085】
いくつかの態様では、炭素材は1つまたは複数の薄い矩形ブロックの形態であり得る。いくつかの態様では、炭素材は単一の固体ブロックを含み得る。別の態様では、炭素材はカーボンブラックの固体ブロックを1~5個、1~3個、または1~2個含み得る。
【0086】
いくつかの態様では、炭素材は織られた炭素繊維または不織カーボンフェルト材を含み得る。
【0087】
いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルトを含む。図9は本明細書において記載される装置の一局面に係るカソード基板としての使用のための負荷カーボンフェルトの正面、側面、および上面斜視図を示す。カーボンフェルト224はバイポーラ電極板208、208'の前面212、212'と電気的に連通しており、カソードケージ216、216'およびバイポーラ電極板の前面212、212'によって閉じ込められている。いくつかの態様では、カーボンフェルトは負荷カーボンフェルトがカソードケージに少なくとも部分的に収まることができるような大きさおよび形状に作られている。いくつかの態様では、カーボンフェルトは負荷カーボンフェルトがフレームに少なくとも部分的に収まることができるような大きさおよび形状に作られている。いくつかの態様では、カーボンフェルトは酸化されているか、炭素処理されているか、黒鉛処理されているか、活性化されているか、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの態様では、カーボンフェルトは約2mm~約10mmの厚さを有する。例えば、カーボンフェルトは約4mm~約8mm、約6mm~約10mm、または約2mm~約6mmの厚さを有し得る。非限定的には、ここで記載される装置における使用に好適な他のカーボンフェルトはAvcarb、Cera Materials、またはSGL Groupから市販されている(例えば、Avcarb G150、Avcarb G150A、Avcarb G200、Avcarb G200A、Avcarb G250、Avcarb G250A、Avcarb Cl 50、Avcarb C200、Avcarb C250、Cera GFE-1、SGL GFA5、SGL GFA6、SGL KFD2.5、またはSGL GFC4.6)。
【0088】
いくつかの態様では、カソード基板は圧縮カーボンパウダーを含む。いくつかの態様では、カーボンパウダーは活性炭、カーボンブラック、膨張グラファイト、グラファイト、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0089】
2.端子アセンブリ
本明細書において記載されるバイポーラ電気化学セルまたは電池は端子アセンブリをさらに含む。好適な端子アセンブリは、例えば、2018年11月27日に出願のPCT国際公開公報第2019/108513号に記載される端子アセンブリであり得、これは、参照により本明細書に組み入れられ、本明細書において記載されるものの範囲内で用いられ得る。
【0090】
図10~11を参照すると、端子アセンブリ104は端子308と、電気伝導性外周306を備えた伝導性平板304と、電気絶縁性テープ部材310と、端子バイポーラ電極板302とを含み得る。伝導性平板304、端子バイポーラ電極板302および電気絶縁性テープ部材310は少なくとも互いに実質的に平行な内面および外面を有し、ここで、電気絶縁性テープ部材310が伝導性平板304の内面全体を覆わないように電気絶縁性テープ部材310が伝導性平板304の内面と端子バイポーラ電極板302の外面の間にある状態で、伝導性平板304の外面は端子308に接合され、伝導性平板304の内面は端子バイポーラ電極板302の外面に接合されており、ここで、電気伝導性外周306は端子308と端子バイポーラ電極板302の間の伝導性平板304を通る双方向の均一な電流の流れを可能にする。
【0091】
絶縁性テープ部材310は伝導性平板304の表面全体を覆ってはいないため、電気伝導性外周306が端子バイポーラ電極板302と電気的に連通することを可能にしている。いくつかの態様では、絶縁性テープ部材310の寸法は伝導性平板304の寸法より小さい。バイポーラ電気化学電池の端子308は電気的な連通のために伝導性平板304と接続されている。いくつかの態様では、伝導性平板304の外面が端子308に接合されている。いくつかの態様では、端子308は任意の電気伝導性の材料を含む。1つの態様では、端子は黄銅を含む(例えば、端子は、端子の外周と電気的に連通するかまたは接する黄銅プラグである)。
【0092】
端子アセンブリ104の端子バイポーラ電極板302は、伝導性平板304および電気絶縁性テープ部材310の内面および外面と少なくとも実質的に平行な内面および外面を有する。端子バイポーラ電極板302は、炭化チタン材でコーティングされたチタン材、貫通孔、粗い内面などを非限定的に含み得る。電気絶縁性テープ部材310を備えた平板304の電気伝導性外周306は、電気伝導性外周306が端子バイポーラ電極板302の電気化学的に活性な領域をほぼ中心とするように、バイポーラ電極板302に接合されている。いくつかの態様では、電気化学的に活性な領域は、電気化学電池の充放電サイクル時に隣接する端子バイポーラ電極板と化学的または電気的に連通する端子バイポーラ電極板302の内面と外面の間に延びる領域に対応している。これらの態様では、電池のカソード端子に関連する端子バイポーラ電極板302のための電気化学的に活性な領域は、端子バイポーラ電極板302(例えば、端子カソード電極板)の内面に配置されたカソードアセンブリによって囲まれた領域に対応するかまたはそれによって規定される。電池のアノード端子に関連する端子バイポーラ電極板302のための電気化学的に活性な領域は、隣接するバイポーラ電極板の前面に配置されたカソードアセンブリの反対側にありかつ電池の充電時に亜鉛金属の層を形成するその内面上の領域(端子アノードアセンブリ)に対応し得る。いくつかの態様では、端子アノードアセンブリの端子バイポーラ電極板302の表面の少なくとも一部(例えば、少なくとも化学的に活性な領域)は粗面である。
【0093】
図11は、カソード炭素材224、接着剤層311、端子バイポーラ電極板302、電気絶縁性テープ部材310、伝導性平板304、電気伝導性外周306、および端子308を示す、図10の端子アセンブリの分解図である。
【0094】
いくつかの態様では、溶接によって形成された電気伝導性外周306は端子バイポーラ電極板302の電気化学的に活性な領域内の中央にある。いくつかの態様では、電気伝導性外周306は実質的に矩形、実質的に円形、または実質的に楕円形である。いくつかの態様では、電気伝導性外周306は実質的に矩形である。
【0095】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304は端子バイポーラ電極板302の電気化学的に活性な領域内の中央にある。
【0096】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材の表面は溶接または接着剤によって伝導性平板の表面に接合されている。いくつかの態様では、接着剤は電気伝導性である。
【0097】
本明細書において記載される伝導性平板は先行技術の集電体よりも大きく、このため、より多くの接点およびより良好な電流密度分布を提供する。これにより製造コストが削減される。
【0098】
いくつかの態様では、端子アセンブリは端子カソードアセンブリであり、ここで、端子カソードアセンブリは、電気化学的に活性な領域を有する端子バイポーラ電極板302と、端子バイポーラ電極板302の表面に配置されかつ電気化学的に活性な領域のほぼ中央にある電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304と、端子バイポーラ電極板302の内面に配置された、本明細書において記載されるカソードアセンブリのいずれかなどのカソードアセンブリとを含む。
【0099】
いくつかの態様では、端子アセンブリは端子アノードアセンブリであり、ここで、端子アノードアセンブリは、電気化学的に活性な領域を有する端子バイポーラ電極板302と、電気化学的に活性な領域の中央にある電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304とを含み、端子アノードアセンブリはカソードアセンブリを有していない。
【0100】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304の電気伝導性外周306は溶接または接着剤によって端子バイポーラ電極板302の表面に接合される。好適な溶接方法の非限定例はスポット溶接、連続溶接、タングステン不活性ガス(TIG)溶接、または抵抗溶接を含む。いくつかの例では、接着剤は電気伝導性である。好適な電気伝導性接着剤の非限定例はグラファイト充填接着剤(例えば、グラファイト充填エポキシ、グラファイト充填シリコーン、グラファイト充填エラストマー、またはそれらの任意の組み合わせ)、ニッケル充填接着剤(例えばニッケル充填エポキシ)、銀充填接着剤(例えば、銀充填エポキシ)、銅充填接着剤(例えば、銅充填エポキシ)、それらの任意の組み合わせなどを含む。
【0101】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304は銅合金、銅/チタンクラッド、アルミニウム、チタン、および電気伝導性セラミックスのうちの少なくとも1つで構成される。
【0102】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304、または端子バイポーラ電極板302の少なくとも一方はチタンを含む。いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304、または端子バイポーラ電極板302の少なくとも一方は炭化チタン材でコーティングされたチタン材を含む。
【0103】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304の少なくとも一方の内面は銅を含む。
【0104】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304の少なくとも一方の外面は銅、チタン、および電気伝導性セラミックスの少なくとも1つを含む。
【0105】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310を備えた伝導性平板304は第1の金属を含み、端子バイポーラ電極板302は第2の金属を含む。
【0106】
いくつかの態様では、電気絶縁性テープ部材310は電気絶縁性の性質がある任意の接着材料を含み得る。電気絶縁性テープ部材310の非限定例は、例えば、Kapton(商標)、Mylar(商標)、ポリイミド、ポリエチレン、ナイロン、テフロン、ネオプレン、または任意の他の電気絶縁性ポリマーを含む。
【0107】
3.ハロゲン化亜鉛電解質
記載される電気化学セルおよび電池スタックにおいて、水性電解質、すなわちハロゲン化亜鉛電解質が、端子エンドプレートの内面と、カソードアセンブリと、バイポーラ電極の前面と、存在する場合にはフレームの内面との間に挿入される。これらの態様では、電解質に曝されるカソードアセンブリのカソードケージの表面における臭化物アニオンは電気化学セルまたは電池スタックが充電される際に臭素へと酸化される。逆に、放電時には臭素は臭化物アニオンへと還元される。カソードアセンブリまたはその近傍での臭素と臭化物アニオン232との変換は以下のように表すことができる:
Br2+2e-→2Br-
【0108】
流動性または非流動性(すなわち静的)の充電式ハロゲン化亜鉛電気化学セルまたは電池スタックに有用な水性電解質が本明細書において記載される。これらのセルまたは電池スタックにおいて、電解質中に存在する臭化亜鉛、塩化亜鉛、または2つの任意の組み合わせが電気化学的に活性な物質として作用する。
【0109】
本明細書において記載されるものの範囲内で、任意の好適なハロゲン化亜鉛電解質を用い得る。例えば、いずれも参照により本明細書に組み入れられる、2015年10月6日に出願のPCT国際公開公報第2016/057477号および2016年3月29日に出願の米国特許出願公開第2017/0194666号に記載の電解質を本明細書において記載されるものの範囲内で用い得る。
【0110】
本明細書において記載されるものの1つの局面は、約30wt.%~約40wt.%のZnCl2またはZnBr2と、約5wt.%~約15wt.%のKBrと、約5wt.%~約15wt.%のKClと、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤とを含む二次臭素亜鉛電気化学セルにおける使用のための電解質を企図しており、ここで、電解質は、約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0111】
いくつかの態様では、電解質は約4wt.%~約12wt.%(例えば、約6wt.%~約10wt.%)の臭化カリウム(KBr)を含む。いくつかの態様では、電解質は約8wt.%~約12wt.%の臭化カリウム(KBr)を含む。
【0112】
いくつかの態様では、電解液は約4wt.%~約12wt.%(例えば、約6wt.%~約10wt.%)の塩化カリウム(KCl)を含む。いくつかの態様では、電解液は約8wt.%~約14wt.%の塩化カリウム(KCl)を含む。いくつかの態様では、電解液は約11wt.%~約14wt.%の塩化カリウム(KCl)を含む。
【0113】
いくつかの態様では、水性電解質は、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0114】
いくつかの態様では、水性電解質は、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0115】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤は塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む。
【0116】
いくつかの態様では、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤はアルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0117】
いくつかの態様では、電解質はグライム(例えば、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ペンタグライム、ヘキサグライム、またはそれらの任意の組み合わせ)、エーテル(例えば、DME-PEG、ジメチルエーテル、またはそれらの組み合わせ)、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、またはそれらの任意の組み合わせ)、グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサレングリコール(hexalene glycol)、またはそれらの任意の組み合わせ)、添加剤(例えば、Sn、In、Ga、Al、Tl、Bi、Pb、Sb、Ag、Mn、Fe、またはそれらの任意の組み合わせ)、酸(例えば、酢酸、硝酸、クエン酸、またはそれらの任意の組み合わせ)、クエン酸二水素カリウム、クラウンエーテル(例えば、18-クラウン-6、15-クラウン-5、またはそれらの組み合わせ)、クエン酸一水和物、またはクエン酸二水素カリウム一水和物などの1つまたは複数の追加の成分を含む。
【0118】
1つの態様では、電解質は臭化亜鉛、27.42wt.%;水、44.34wt.%;臭化カリウム、6.78wt.%;塩化カリウム、9.83%;2,5,8,11,14-ペンタオキサペンタデカン、2.58wt.%;臭化4-エチル-4-メチルモルホリン-4-イウム、1.03wt.%;臭化テトラエチルアンモニウム、2.03wt.%;塩化トリエチルメチルアンモニウム、1.94wt.%;メトキシポリエチレングリコールMW2000、1.29wt.%;メトキシポリエチレングリコールMW1000、0.32wt.%;2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1.29wt.%;2-メチルプロパン-2-オール、0.32wt.%;臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、0.06wt.%;臭化水素酸(pH3.6に達するため)、0.52wt.%;二臭化1,1-ジオクタデシル-4,4'ビピリジニウム、0.25wt.%;塩化スズ、7ppm;および塩化インジウム、7ppmからなる。
【0119】
1つの態様では、電解質は臭化亜鉛、35.41wt.%;水、38.84wt.%;臭化カリウム、5.54wt.%;塩化カリウム、11.09wt.%;塩化トリエチルメチルアンモニウム、5.8wt.%;ポリエチレングリコールジメチルエーテル(MW2000)、1.26wt.%;ポリエチレングリコールジメチルエーテル(MW1000)、0.35wt.%;2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、1wt.%;トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン(MW1250)、0.2wt.%;塩化インジウム、7ppm;および塩化スズ、7ppmからなる。
【0120】
B.電池スタック
電池スタックは、少なくとも部分的にハロゲン化亜鉛電解質内に配置されかつカソード端子アセンブリとアノード端子アセンブリとの間に挿入された複数のバイポーラ電極を含む。カソード端子アセンブリ、アノード端子アセンブリ、ハロゲン化亜鉛電解質、およびバイポーラ電極は本明細書において記載される任意の態様を含む。
【0121】
図12および13を参照すると、電池スタック1000は少なくとも1つのバイポーラ電気化学セルと2つの端子電気化学セルとを含む。1つの態様では、電池スタックは直列の40個のバイポーラ電気化学セルと2つの端子電気化学セルとを含む。
【0122】
少なくとも1つのバイポーラ電気化学セルはバイポーラ電極102、電池フレーム部材114、およびハロゲン化亜鉛電解質を含む。端子電気化学セルはバイポーラ電極102、電池フレーム部材114、端子アセンブリ104、端子エンドプレート105、およびハロゲン化亜鉛電解質を含む。
【0123】
1.フレーム部材
いくつかの態様では、電池は、2つの隣接するバイポーラ電極間に挿入されるか、またはバイポーラ電極102と端子アセンブリ104(例えば、端子アノードアセンブリまたは端子カソードアセンブリ)の間に挿入される電池フレーム部材114を含む。
【0124】
図14に示される1つの態様では、電池フレーム部材114は外周縁と、中空内部領域を規定する内周縁とを有する。いくつかの態様では、電池フレーム部材114は、中空内部領域が、電池フレーム部材114によって受容される端子バイポーラ電極板302の電気化学的に活性な領域の中心および/または端子バイポーラ電極板302上に配置されるカソードアセンブリの中心をほぼ中央にするように構成される。いくつかの態様では、電池フレーム部材114の外周は電池の外面を規定する。
【0125】
いくつかの態様では、電池フレーム部材114は第1端子バイポーラ電極板302に対向しかつこれを保持する第1側と、電池フレーム部材114の第1側とは反対側に配置され、第2バイポーラ電極板に対向しかつこれを保持する第2側とを含む。第2電極板は電池内の第1電極板に隣接しかつこれと平行になっている。第1および第2電極板ならびに端子電極板は実質的に同一の大きさおよび形状を有するように構成し得る。いくつかの態様では、電池フレーム部材114は一方側ではアノードバイポーラ電極板と接し、他方側では隣接するバイポーラセルのカソードバイポーラ電極板と接している。
【0126】
いくつかの態様では、電池フレーム部材114は内周縁の周りに延びるシール部材116(図14)を含む。いくつかの態様では、電池フレーム部材114は第1内周縁に沿って配置された第1シール部材116を含む。いくつかの態様では、第1シール部材はOリングである。いくつかの態様では、第1シール部材116はガスケットである。いくつかの態様では、各内周縁はここに取り付けられるシール部材116を受容するように構成されており、これは、電気化学電池が組立てられてバイポーラ電極板またはエンドプレートと電池フレーム部材114との間にシール界面がもたらされると、対応するバイポーラ電極板または端子電極板と電池フレーム部材114との間でシールが圧縮された際に実質的に漏れのないシールを形成する。シール部材は、対向するバイポーラ電極板と電池フレーム部材114の間、またはバイポーラ電極板、端子電極板およびフレーム部材114の間に電解質を保持するように協働する。
【0127】
いくつかの態様では、電池フレーム部材114はサイクル時の電圧異常を防止するために電池フレーム部材114の底部に樋状部を含む。いくつかの態様では、樋状部は樋状部棚406と、樋状部棚406の下の空隙407とを含む。いくつかの態様では、カソード炭素材224は樋状部棚406に載置されている。樋状部棚の存在および樋状部棚の下にある空隙がサイクル時の電圧異常を防止することが見出された。いくつかの態様では、樋状部棚406の下には空隙407がなく、樋状部棚406は電池フレーム部材114の底部まで延びている。いくつかの態様では、カソード炭素材224が載置される樋状部棚406は樋状部棚406の下の空隙407を含めて高さが0.5~5cmであり得、電池フレーム部材114の底部全体の幅に沿った広さが3mm~10mmであり得る。
【0128】
いくつかの態様では、電池フレーム部材は第1フレーム部材および第2フレーム部材を含む。いくつかの態様では、第1フレーム部材および第2フレーム部材は水平に積み重ねられかつ垂直に配向され、第1フレーム部材の第1外縁は第2フレーム部材の第2外縁と実質的に同一平面上にある。
【0129】
電池のいくつかの態様では、各電池フレーム部材114は、電池フレーム部材114の外周の周りで溶接ビード405を用いて隣接するフレーム部材114に溶接されるプラスチックである。
【0130】
いくつかの態様では、気体流路401へと気体を逃がす通気孔402の真下の電池フレーム部材114の上部に液体逸らしシステムが存在する。いくつかの態様では、液体逸らしシステムは2つの部分遮断壁404と複数の二次遮断壁とを備えた一次逸らし部機構403を含み、液体が常に電池フレーム部材114内の中空内部領域に確実に戻されるようになっている。いくつかの態様では、一次逸らし部403は30~60度の範囲の角度で下方を向いたエンドピースを備えた水平プラスチック突起部からなる。いくつかの態様では、二次遮断壁は、最小限の液体しか一次逸らし部に到達しないことを確実にする。液体逸らしシステムの利点の1つは、輸送時に電解質をフレーム部材内に保持することによって電池の品質を向上させることである。
【0131】
各電池フレーム部材114は難燃性ポリプロピレン繊維、高密度ポリエチレン、ポリフェニレンオキシド、またはポリフェニレンエーテルから形成し得る。各電池フレーム部材114は2つの隣接するバイポーラ電極板、またはバイポーラ電極板と端子電極板とを受容し得る。各電池フレーム部材114は水性電解質溶液(例えば、ハロゲン化亜鉛電解質または臭化亜鉛電解質)も収容し得る。
【0132】
図15は樋状部棚406および樋状部棚の下にある空隙407を示す電池フレーム部材114の底部の拡大側面図である。この態様では、電池内の各フレーム部材は樋状部棚406および空隙407を含む。
【0133】
2.加圧板
いくつかの態様では、電気化学セルまたは電池スタックは、電気化学セルまたは電池スタックの端部に位置する一対の加圧板を備える。好適な加圧板は、例えば、参照により本明細書に組み入れられる2018年11月27日出願のPCT国際公開公報第2019/108513号に記載される加圧板を本明細書において記載されるものの範囲内で用い得る。
【0134】
III.ハロゲン複合化剤を有するカソード面を含むバイポーラ電極
A.ハロゲン複合化剤を有するカソード基板
上に検討したように、亜鉛臭素電池のために最適なカソード面は迅速な臭素酸化還元速度、高い臭素複合体保持率、低い電気抵抗、および高い化学的安定性を示すべきである。しかしながら、現在の亜鉛臭素電池は、多孔質カソード基板における臭素またはポリ臭化物の物理的な捕捉に依存しており、この捕捉は、濃度勾配および密度勾配が原因で臭素およびポリ臭化物が移動してカソードから遠ざかり放電時にそれらが利用できなくなり得る場合には、困難である。ポリ臭化物はカソード基板の底部に蓄積する傾向があり、放電時に利用できるカソード基板の表面積を減少させる。ポリ臭化物油相の一部はカソード基板から完全に失われ、これがアノードと接触しかつ自己放電率を増加させ得ることを意味する。
【0135】
本願の発明者らは、予想外にも、本明細書において記載されるハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板を有するバイポーラ電極が、カソード面における臭素の保持および容量の空間分布を改善できることを見出した。臭素およびポリ臭化物を一箇所に固定する、臭素およびポリ臭化物をカソード面に化学的に結合させる手法が本明細書において記載される。理論に拘束されるものではないが、ハロゲン複合化剤はカソード基板上の酸素官能基を利用することによってカソード基板に化学的に結合されると仮定される。次いでハロゲン複合化剤は、臭素およびポリ臭化物を複合化しかつこれらの材料をカソード基板表面に固定/結合させ続けるように利用できる。このアプローチは、(1)カソード基板に結合するハロゲン複合化剤を導入するための広範な化学的選択肢が可能である;(2)カソード基板上の反応部位が損なわれないようにハロゲン複合化剤の官能基でカソード基板の一部だけを覆う;(3)このアプローチは、カーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、炭素フォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、網状カーボンを含む大多数のカソード基板を処理する簡便かつ費用効果の高い手法である;および(4)このアプローチは商業用途のための大規模製造および大型電極に容易にスケールアップできる、という点で有利である。
【0136】
本明細書において記載されるものの一局面は、
カソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板と
を含む、バイポーラ電極に関する。ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、
式中、
QがN、P、またはSであり、
RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または置換されていてもよい、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基を形成し、
RDが、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、PおよびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基を有し、
X-がF-、Cl-、Br-、またはI-であり、
ここで、官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yであり、
式中、
RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClであり、
RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルであり、
Yがハロゲン化物である。
【0137】
1つの態様では、RA、RB、RC、およびRD基はそれぞれ独立して、ハロゲン化物、ヒドロキシ、カルボン酸、エーテル、アミン、アミド、またはアンモニウムによって置換されていてもよい。RA、RB、およびRC基のそれぞれの非限定例は、例えば、置換されていてもよいメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、オクタデシル、エテニル、2-プロペニル、エチニル、2-プロピニル、ピリジニウム(C5H5N+-)、ピペリジニウム(C5H12N+-)、ピロリジニウム(C4H8N+-)、またはイミダゾリウム(C3H3N(R)N+-)を含む。
【0138】
RD基は、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、PおよびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDは末端官能基を有する。RD基の非限定例は、例えば、末端官能基を有する、置換されていてもよいメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシル、オクタデシル、エテニル、2-プロペニル、エチニル、2-プロピニル、ピリジニウム(C5H5N+-)、ピペリジニウム(C5H12N+-)、ピロリジニウム(C4H8N+-)、またはイミダゾリウム(C3H3N(R)N+-)を含む。いくつかの態様では、末端官能基はホスホン酸基、シリルエーテル基、またはハロゲン化アルキル基である。
【0139】
ハロゲン複合化剤はモノマーとしてカソード基板に導入される。いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤はポリマーを含まない。ハロゲン複合化剤はカソード基板の表面をコーティングする自己組織化単層または多層を形成する。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤のモノマーと化学結合している。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤のポリマーと化学結合している。形成された単層または多層フィルムは非常に薄いため、他のドーピング手法であり得るような、セルの抵抗を著しく増加させたり、電極の電気化学的に活性な表面領域を減少させたり、または電極を通じた電解質成分の流動輸送を防止したりしない。例えばポリマーまたは架橋ポリマー複合化剤を用いることによる、カソード基板内へのハロゲン複合化剤の物理的な捕捉を伴う他の手法は、電極全体にわたる電解質成分の輸送を妨げたり、電極表面の大部分を覆ってそれを電気化学的に不活性にしたりする場合がある。
【0140】
いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤はハロゲン化第四級アンモニウム、ハロゲン化ホスホニウム、またはハロゲン化スルホニウムである。1つの態様では、ハロゲン複合化剤はハロゲン化第四級アンモニウムである。電解質において一般的に用いられる第四級アンモニウム塩は、そのような第四級アンモニウム塩とカソード基板の間にはイオン性または共有結合性の相互作用が形成されないので、カソード基板には強く付着しないことに留意されたい。カソード基板に結合する能力がない第四級アンモニウム塩がカソードに負荷されている場合、アンモニウム基の正電荷により、それらは電池のサイクル時にカソードからアノードに向かって移動する可能性がある。これは放電時のカソード内の臭素およびポリ臭化物の利用能を低下させるであろう。対照的に、側鎖の1つ(すなわち、RD基)がカソード基板の表面に共有結合し得る官能基を末端とする本明細書において記載されるハロゲン複合化剤(例えば、式(I)の第四級アンモニウム塩を含む)を用いることによって、強く付着しかつバルク電解質中への拡散をさせないハロゲン複合化剤の層でカソード基板の表面をコーティングすることが可能になる。
【0141】
ハロゲン複合化剤の非限定例は、例えば、臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムを含む。
【0142】
図16は本明細書において記載されるハロゲン複合化剤の2つの異なる例を用いた酸化面(例えば、カソード基板)に結合した自己組織化単層の例を示す。左の例では、ハロゲン複合化剤は、一端にホスホン酸末端官能基を有する(他端において、ハロゲン化第四級アンモニウムに結合している)アルキル鎖を有するRD基を含む。そのようなハロゲン複合化剤が酸化性表面(例えば、カソード基板)に曝されると、ホスホン酸が酸素と結合し、それらが自己組織化して1分子の厚さの膜を形成し、そこで、ハロゲン化第四級アンモニウム基(他端側の選択基)が、酸化面(例えば、カソード基板)をコーティングする。同様の結果はハロゲン複合化剤がホスホン酸の代わりにシリルエーテル基を末端とする場合にも達成することができ、これは図16の右側の例に示されている。さらに、ハロゲン複合化剤のシリルエーテル基は、シリルエーテル基を有するハロゲン複合化剤を含む混合物とカソード基板を接触させるか、該混合物をカソード基板に析出させるか、または該混合物でカソード基板をコーティングする過程で重合して、Si-O-Si(シロキサン)結合を形成し得る。シランのこれらのクラスターは、単層または多層の形成において酸化面(例えば、カソード基板)に結合し得る。
【0143】
上記、下記、および出願全体にわたって検討されるように、いくつかの態様では、カソード基板はさらなる処理を受ける。例えば、カソード基板は酸化されるか、炭素処理されるか、黒鉛処理されるか、活性化されるか、またはそれらの任意の組み合せである。
【0144】
B.方法
本開示の別の局面はバイポーラ電極を製造するための方法に関する。方法は、ハロゲン複合化剤および溶媒を混合して混合物を形成する工程;カソード基板を該混合物と接触させて、カソード基板に該混合物を負荷した負荷カソード基板を形成する工程;および負荷カソード基板の少なくとも一部をバイポーラ電極板のカソード側と接触させてバイポーラ電極を形成する工程を含む。負荷カソード基板は、カソード基板がハロゲン複合化剤と化学的に結合したものである。ハロゲン複合化剤は、式(I):
Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-
の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義された通りである。
【0145】
ハロゲン複合化剤、カソード基板、バイポーラ電極板は上記および出願全体にわたって記載された通りである。いくつかの態様では、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0146】
ハロゲン複合化剤および溶媒を混合して混合物を形成する。溶媒はハロゲン複合化剤の分散、カソード基板の負荷、およびカソード基板の乾燥時の蒸発を可能にする任意の好適な溶媒であり得る。いくつかの態様では、溶媒は水を含む。いくつかの態様では、溶媒は水混和性の溶媒を含む。いくつかの態様では、溶媒は水、アルコール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの態様では、アルコールは第一級、第二級、または第三級アルキルアルコールである。溶媒の非限定例は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、またはそれらの組み合わせを含む。混合物中のハロゲン複合化剤の濃度は約0.01wt.%~約1wt.%であり、混合物中の溶媒の濃度は約99wt.%~約99.99wt.%である。
【0147】
ハロゲン複合化剤と溶媒とを含む混合物をカソード基板と接触させて、カソード基板に該混合物を負荷した負荷カソード基板を形成する。負荷カソード基板は、カソード基板がハロゲン複合化剤と化学的に結合したものである。ハロゲン複合化剤はカソード基板の内部に、それに接した状態、または内部および接した状態の両方で存在し得る。ハロゲン複合化剤と溶媒とを含む混合物はカソード基板に塗布されるか、接触させるか、析出させるか、または負荷されて、負荷カソード基板を生じる。いくつかの態様では、混合物はカソード基板に噴霧され、別の態様では、カソード基板は混合物にディップコーティングされる。いくつかの態様では、カソード基板はハロゲン複合化剤と溶媒とを含む混合物に浸漬される。
【0148】
いくつかの態様では、方法は負荷カソード基板を乾燥させる工程をさらに含む。乾燥は混合物から溶媒を蒸発させるために行い得る。乾燥は真空下で、または実験室フードなどの通気環境下で行い得る。乾燥時間を短縮するために迅速に蒸発する溶媒(例えば、アセトン)を選択し得る。いくつかの態様では、方法は、カソード基板を混合物と接触させる前および/または接触時に、該混合物を超音波処理する工程をさらに含む。いくつかの態様では、カソード基板は混合物に浸漬される。例えば、カソード基板を浸漬し、混合物に沈めた状態を約15秒間維持する。いくつかの態様では、混合物は、カソード基板を該混合物と接触させる前および/または接触時に、撹拌されるかまたはかき混ぜられる。
【0149】
いくつかの態様では、方法は、ハロゲン複合化剤と溶媒との混合物を、カソード基板を該混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に超音波処理する工程をさらに含む。
【0150】
いくつかの態様では、方法はカソード基板の追加の処理をさらに含む。処理は酸化、炭素処理、活性化、または黒鉛処理方法のうちの1つまたは複数を含み得る。酸化または活性化処理がカソード基板を改質して、ハロゲン複合化剤と結合するその能力が高まる。例えば、カソード基板の表面の酸化または活性化が酸素の表面濃度を増加させ、カソード基板の表面とハロゲン複合化剤との間により強い結合の形成を可能にする。炭素処理または黒鉛処理はカソード基板の化学的安定性および電気伝導性を高め、これは使われている電池の性能および寿命を向上させる。
【0151】
いくつかの態様では、追加の処理工程は、カソード基板をハロゲン複合化剤と溶媒との混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に行われる。いくつかの態様では、追加の処理工程は、カソード基板をハロゲン複合化剤と溶媒との混合物と接触させる前に行われる。
【0152】
酸化、活性化、炭素処理、および/または黒鉛処理という追加の処理工程は任意の順序で実施することができる。酸化および活性化プロセスはカソード基板を酸素または空気環境で処理することを伴い得る。酸化プロセスは化学的、電気化学的、熱的手法を含み得るが、これらはすべて当業者には周知である。炭素処理および黒鉛処理プロセスは機能性を提供するための広範なコーティングプロセスのうちの1つまたは複数を伴い得る。例えば、ディップ、スロットダイコーティング(多層を含む)、スプレー、コンマバー、リバースロールおよびマイヤーロッドプロセスがある。スリッター、カレンダー、シーター、およびホットプレスを含む加工装置ならびにダイカッターも用い得る。いくつかの態様では、処理は高温、例えば、約1000℃超または約3000℃までで実施される。
【0153】
炭素処理および/または黒鉛処理は炭素または黒鉛の化学蒸着(CVD)も含み得る。典型的なCVDプロセスは、カーボンファブリック、ペーパー、トウなどの炭素基板上にアモルファス熱分解炭素(PC)を析出させる。実質的に均一な層がナノメートル~マイクロメートルの範囲の厚さで適用され得る。
【0154】
いくつかの態様では、カソード基板は、ハロゲン複合化剤と溶媒との混合物と該カソード基材を接触させる前に、強塩基(KOHなど)で前処理される。
【0155】
カソード基板は上記および出願全体にわたって記載された通りである。いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0156】
いくつかの態様では、カソード基板はカーボンフェルトを含む。いくつかの態様では、カーボンフェルトは酸化されているか、炭素処理されているか、黒鉛処理されているか、活性化されているか、またはそれらの任意の組み合わせである。布地および布地の複合材料の構造を設計して電気化学用途における使用に好適なカーボンフェルトを作成できる。いくつかの態様では、カーボンフェルトはポリアクリロニトリル(PAN)、レーヨンまたはピッチのいずれかを含む前駆体材料から形成される。いくつかの態様では、カーボンフェルトは表面積が大きい直接活性化不織繊維である。カーボンフェルトは吸着量が多い、吸着速度が速い、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性などの特徴を有し得る。
【0157】
いくつかの態様では、カーボンフェルトはカーボンフェルト1キログラム当たり約0.1グラム~約500グラムの濃度のハロゲン複合化剤が負荷されている。例えば、カーボンフェルトはカーボンフェルト1キログラム当たり約1グラム~約100グラムの濃度のハロゲン複合化剤が負荷されている。
【0158】
負荷カソード基板の少なくとも一部はバイポーラ電極に組み込まれ、これは、対応して、本明細書において記載される電気化学セルおよび電池スタックに組み込まれ得る。負荷カソード基板をバイポーラ電極に組み込むためには、負荷カソード基板または負荷カソード基板の少なくとも一部をバイポーラ電極板のカソード面に接触させてバイポーラ電極を形成する。
【0159】
バイポーラ電極板は上記および出願全体にわたって記載された通りである。いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン材を含む。チタン材は炭化チタンで少なくとも部分的にコーティングし得る。いくつかの態様では、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0160】
いくつかの態様では、接着剤または粘着剤を用いて負荷カソード基板とバイポーラ電極板のカソード側とを結合し得る。接着剤または粘着剤は電気伝導性である。いくつかの態様では、カソード面の少なくとも一部が接着剤または粘着剤でコーティングされ、負荷カソード基板が粘着剤の接着剤の上部に設置され、圧力(例えば、3psi、5psiなど)が負荷カソード基板の上部に印加され、次いで接着剤または粘着剤が硬化されるかまたは乾燥される(例えば、1時間)。
【0161】
別の態様では、カソードケージが負荷カソード基板をバイポーラ電極板のカソード側と接した状態で保持する。バイポーラ電極板と接した負荷カソード基板を保持するための好適なカソードケージ構成は上記および出願全体にわたって記載された通りである。
【0162】
接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、テープ、またはカソードケージ、またはそれらの組み合わせのいずれかを用いて、負荷カソード基板をバイポーラ電極板に組み込み得る。したがって、接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、またはテープを用いて接触が維持される、カソードケージのないバイポーラ電極(および対応する電気化学セル)を有することが可能である。同様に、カソードケージを用いて接触が維持される、接着剤、粘着剤、電気伝導性結合材、またはテープのないバイポーラ電極(および対応する電気化学セル)を有することが可能である。
【0163】
本開示の別の局面は、
カソード面とアノード面とを含むバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板、および、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板
を含む、バイポーラ電極と、
水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、電気化学セルに関し、ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義された通りである。上に検討したように、本明細書において記載されるバイポーラ電極は、対応して、フレーム部材をスペーサーとして用いて電極を積層し、両端の端子アセンブリでスタックを終了することによって、本明細書において記載される電気化学セルに組み込まれ得る。
【0164】
本開示のさらに別の局面は、
一対の端子アセンブリと、
該一対の端子アセンブリ間に挿入された少なくとも1つのバイポーラ電極と
を含む、電池スタックであって、
バイポーラ電極が、
バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板と、
バイポーラ電極板およびカソード基板と接した水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、
電池スタックに関し、ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、変数Q、RA、RB、RC、RD、およびXは本明細書において定義された通りである。上に検討したように、本明細書において記載されるバイポーラ電極は、対応して、本明細書において記載される電気化学セルに組み込まれ得、これは翻って、対応して、フレーム部材をスペーサーとして用いて電極を積層し、両端の端子アセンブリでスタックを終了することにより、本明細書において記載される電池スタックに組み込まれ得る。
【0165】
いくつかの態様では、本明細書において記載される電池スタックの自己放電率は、ハロゲン複合化剤を含まない等価な電池スタックと比較して、単一サイクルにおいて約29%~約34%低い。
【実施例
【0166】
IV.実施例
実施例1:シラン系ハロゲン複合化剤を負荷したカーボンフェルト基板の調製
1:1(v/v)のメタノールおよび水に塩化トリメチル{[3-(トリメトキシシリル)プロピル]}アンモニウム(13mM)を含有する溶液を調製した。炭素処理、活性化および黒鉛処理方法によって事前に改質した厚さ6mmの同じドライPAN繊維系カーボンフェルトを混合物に3枚浸漬し、約15秒間沈めた。フェルトを取り出し、余分な混合物を流し出した。各フェルトを乾燥ラックに載せ、ヒュームフード内で72時間乾燥させた。次いでフェルトを60℃のオーブンに1時間入れた。
【0167】
実施例2:ホスホネート系ハロゲン複合化剤を負荷したカーボンフェルト基板の調製
エタノール中の臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム(0.231mM)の溶液を調製した。炭素処理、活性化および黒鉛処理方法によって事前に改質した厚さ6mmの同じドライPAN繊維系カーボンフェルトを混合物に3枚浸漬し、約15秒間沈めた。フェルトを取り出し、余分な混合物を流し出した。各フェルトを乾燥ラックに載せ、ヒュームフード内で24時間乾燥させた。次いでフェルトを60℃のオーブンに1時間入れた。
【0168】
実施例3:試験セルの調製
試験セルは、プレート状に形成された、炭化チタンでコーティングされたチタン金属集電体を用いて組立てた。アノードおよびカソード板は、2つの対向するスチール加圧板の間で構成要素を圧縮することによってセルを密閉させる埋込みシールリングを含む厚さ12mmの高密度ポリエチレンフレームによって隔てられた平行な構成で配置した。セルの組立て前に、ハロゲン複合化剤を負荷した上記のカーボンフェルトまたは未処理の対照カーボンフェルトを、13mlの電気伝導性アセトン系粘着剤を用いて、カソードチタン集電体に取り付けた。組立てたセルに、臭化亜鉛および水から主に構成されかつ少量のハロゲン化カリウム塩および臭化テトラアルキルアンモニウム塩も含む電解質を充填した。
【0169】
実施例4:試験セルの放電容量
試験セルはArbin Instrumentsのバッテリーサイクラーを用いてサイクル処理した。セルは4Wの定電力で13Ahの容量まで充電した。充電電圧の限度は2.4Vであった。電圧が1.1Vに達するまでセルを4Wの定電力で放電した。図17は、未処理の対照カーボンフェルト(未処理)または塩化トリメチル{[3-(トリメトキシシリル)プロピル]}アンモニウム(シラン)もしくは臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム(ホスホネート)を負荷したカーボンフェルトのいずれかを含む3つずつ調製した3種類のセル集団の平均放電容量対サイクル指数を示す。処理されたカーボンフェルトを含むセルの放電容量は、対照カーボンフェルトのものよりも高く、カーボンフェルト処理が、充電された材料の利用可能性を高めることを示唆している。
【0170】
実施例5:試験用セルの自己放電率の試験
異なる集団の試験セルの自己放電率を試験するために、充電工程の終了時(トップ・オブ・チャージ)から放電の開始時まで休止期間をサイクルごとに0.08時間~4時間の間で変化させた。自己放電率はトップ・オブ・チャージ休止期間の関数としての容量損失率として定義される。表1は、未処理のカーボンフェルトを含む対照集団と比較した、塩化トリメチル{[3-(トリメトキシシリル)プロピル]}アンモニウム(シラン)または臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム(ホスホネート)を負荷したカーボンフェルトの自己放電率の低下を示す。自己放電率の低下は、カーボンフェルト処理が、カソードからアノードへの臭素のクロスオーバー(臭素が亜鉛と反応し得る)を減少させ、放電容量を減少させることを示唆している。
【0171】
【表1】
【0172】
第1の局面では、
カソード面とアノード面とを有するバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板と
を含む、バイポーラ電極であって、
ハロゲン複合化剤が、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、QがN、P、またはSであり;RA、RB、およびRCがそれぞれ独立して、水素、または置換されていてもよい、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つがQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基を形成し;RDが、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDが末端官能基を有し;かつX-がF-、Cl-、Br-、またはI-であり、ここで、官能基が-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yであり、式中、RE、RF、およびRGがそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClであり、RHおよびRIがそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルであり、かつYがハロゲン化物である、
バイポーラ電極が記載される。
【0173】
上記の第1の局面では、各任意の置換基は独立してハロゲン化物、ヒドロキシ、カルボン酸、エーテル、アミン、アミド、またはアンモニウムである。
【0174】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0175】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板はカーボンフェルトを含む。
【0176】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板は圧縮カーボンパウダーを含む。
【0177】
上記の第1の局面のいずれかでは、カーボンパウダーは活性炭、カーボンブラック、膨張グラファイト、グラファイト、またはそれらの2つ以上の組み合わせである。
【0178】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード面は接着剤、電気伝導性結合材、テープ、メカニカルケージ、またはそれらの組み合わせを用いてカソード基板に少なくとも部分的に接している。
【0179】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板は酸化されているか、炭素処理されているか、黒鉛処理されているか、活性化されているか、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0180】
上記の第1の局面のいずれかでは、負荷カソード基板は、ハロゲン複合化剤と化学的に結合している。
【0181】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板はハロゲン複合化剤のモノマーと化学的に結合している。
【0182】
上記の第1の局面のいずれかでは、カソード基板がハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している。
【0183】
上記の第1の局面のいずれかでは、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0184】
上記の第1の局面のいずれかでは、バイポーラ電極板はチタン材を含む。
【0185】
上記の第1の局面のいずれかでは、チタン材は炭化チタンで少なくとも部分的にコーティングされている。
【0186】
上記の第1の局面のいずれかでは、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0187】
第2の局面では、ハロゲン複合化剤および溶媒を混合して混合物を形成する工程;カソード基板を該混合物と接触させて、カソード基板に該混合物を負荷した負荷カソード基板を形成する工程;および負荷カソード基板の少なくとも一部をバイポーラ電極板のカソード側と接触させてバイポーラ電極を形成する工程を含むバイポーラ電極を製造するための方法が記載される。ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、QはN、P、またはSであり;RA、RB、およびRCはそれぞれ独立して、水素、または置換されていてもよい、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つはQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基を形成し;RDは、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDは末端官能基を有し;かつX-はF-、Cl-、Br-、またはI-であり、ここで、官能基は-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yであり、式中、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClであり、RHおよびRIはそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルであり、かつYはハロゲン化物である。
【0188】
上記の第2の局面では、方法は負荷カソード基板を乾燥させる工程をさらに含む。
【0189】
上記の第2の局面のいずれかでは、方法は、カソード基板を混合物と接触させる前に、接触時に、または接触させる前および接触時に、該混合物を超音波処理する工程をさらに含む。
【0190】
上記の第2の局面のいずれかでは、溶媒は水、アルコール、またはそれらの組み合わせである。
【0191】
上記の第2の局面のいずれかでは、カソード基板を混合物に浸漬させる。
【0192】
上記の第2の局面のいずれかでは、方法はカソード基板を処理する工程をさらに含み、処理は酸化、炭素処理、活性化、黒鉛処理、またはそれらの任意の組み合わせより選択される。
【0193】
上記の第2の局面のいずれかでは、酸化、炭素処理、活性化、黒鉛処理、またはそれらの任意の組み合わせは、カソード基板を混合物と接触させる前に行われる。
【0194】
上記の第2の局面のいずれかでは、混合物中のハロゲン複合化剤はモノマーである。
【0195】
上記の第2の局面のいずれかでは、負荷カソード基板は、カソード基板がハロゲン複合化剤と化学的に結合したものである。
【0196】
上記の第2の局面のいずれかでは、カソード基板はハロゲン複合化剤のモノマーと化学的に結合している。
【0197】
上記の第2の局面のいずれかでは、カソード基板はハロゲン複合化剤のポリマーと化学的に結合している。
【0198】
第3の局面では、
カソード面とアノード面とを含むバイポーラ電極板であって、カソード面がアノード面の反対側にある、バイポーラ電極板、および、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板であって、カソード面が少なくとも部分的にカソード基板と接している、カソード基板
を含む、バイポーラ電極と、
水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、電気化学セルが記載される。ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、QはN、P、またはSであり;RA、RB、およびRCはそれぞれ独立して、水素、または置換されていてもよい、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つはQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基を形成し;RDは、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDは末端官能基を有し;かつX-はF-、Cl-、Br-、またはI-であり、ここで、官能基は-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yであり、式中、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、CH3、またはClであり、RHおよびRIはそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルであり、かつYはハロゲン化物である。
【0199】
上記の第3の局面では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0200】
上記の第3の局面のいずれかでは、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0201】
上記の第3の局面のいずれかでは、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0202】
上記の第3の局面のいずれかでは、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0203】
上記の第3の局面のいずれかでは、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0204】
上記の第3の局面のいずれかでは、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤は塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む。
【0205】
上記の第3の局面のいずれかでは、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤はアルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0206】
第4の局面では、
一対の端子アセンブリと、
該一対の端子アセンブリ間に挿入された少なくとも1つのバイポーラ電極と
を含む、電池スタックであって、
バイポーラ電極が、
バイポーラ電極板と、
ハロゲン複合化剤を負荷したカソード基板と、
バイポーラ電極板およびカソード基板と接した水性ハロゲン化亜鉛電解質と
を含む、
電池スタックが記載されている。ハロゲン複合化剤は、式(I):Q+(RA)(RB)(RC)(RD)X-の構造を有し、式中、QはN、P、またはSであり;RA、RB、およびRCはそれぞれ独立して、水素、または置換されていてもよい、分岐もしくは非分岐のC1~C20アルキル、アリル、もしくはビニルであるか、またはRA~Cのうちのいずれか2つはQと一緒になって、N、P、およびOより選択される1つまたは複数の追加のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基を形成し;RDは、置換されていてもよい、分岐または非分岐の、C1~C20アルキル、アリル、ビニル、または、N、P、およびOより選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含んでいてもよいC3~C6環式基であり、ここで、RDは末端官能基を有し;かつX-はF-、Cl-、Br-、またはI-であり、ここで、官能基は-PO3H2、-Si(RE)(RF)(RG)、または-C(RH)(RI)Yであり、式中、RE、RF、およびRGはそれぞれ独立して、OCH3、OCH2CH3、Cl、またはCH3であり、RHおよびRIはそれぞれ独立して、HまたはC1~C20アルキルであり、かつYはハロゲン化物である。
【0207】
上記の第4の局面では、カソード基板はカーボンフェルト、グラファイトフェルト、圧縮カーボンパウダー、グラファイトパウダー、膨張グラファイトパウダー、カーボンフォーム、エアロゲルカーボン、キセロゲルカーボン、ゾルゲル化カーボン、カーボンクロス、カーボンペーパー、または網状カーボンを含む。
【0208】
上記の第4の局面のいずれかでは、ハロゲン複合化剤は臭化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、塩化トリメチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、臭化N-トリメトキシシリルウンデシル-N,N,N-トリ-n-ブチルアンモニウム、塩化(12-ドデシルホスホン酸)トリエチルアンモニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)ピリジニウム、臭化(12-ドデシルホスホン酸)N,N-ジメチル-N-オクタデシルアンモニウム、臭化1-メチル-3-(ドデシルホスホン酸)イミダゾリウム、または臭化1-メチル-3-(ヘキシルホスホン酸)イミダゾリウムである。
【0209】
上記の第4の局面のいずれかでは、バイポーラ電極板はチタン、TiC、TiN、グラファイト、または電気伝導性プラスチックを含む。
【0210】
上記の第4の局面のいずれかでは、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約70wt.%のZnBr2、約5wt.%~約50wt.%の水、および約0.05wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0211】
上記の第4の局面のいずれかでは、水性ハロゲン化亜鉛電解質は、約25wt.%~約40wt.%のZnBr2、約25wt.%~約50wt.%の水、約5wt.%~約15wt.%のKBr、約5wt.%~約15wt.%のKCl、および約0.5wt.%~約10wt.%の、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤を含む。
【0212】
上記の第4の局面のいずれかでは、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤は塩化アンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化トリエチルメチルアンモニウム、塩化トリメチルプロピルアンモニウム、塩化ブチルトリメチルアンモニウム、塩化トリメチルエチルアンモニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルモルホリニウム(MEMBr)、臭化1-エチル-1-メチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-ブチルモルホリニウム、臭化N-メチル-N-エチルピロリジニウム、臭化N,N,N-トリエチル-N-プロピルアンモニウム、臭化N-エチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ブチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ブチルピロリジニウム、臭化1-メチル-1-ブチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-(2-クロロエチル)ピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ヘキシルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-エチル-N-ブチルピロリジニウム、二臭化トリメチレン-ビス(N-メチルピロリジニウム)、臭化N-ブチル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化N-メチル-N-プロピルピロリジニウム、臭化N-プロピル-N-ペンチルピロリジニウム、臭化1-エチル-4-メチルピリジニウム、臭化1-エチル-2-メチルピリジニウム、臭化1-ブチル-3-メチルピリジニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリエチルアンモニウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群より選択される第四級剤を含む。
【0213】
上記の第4の局面のいずれかでは、1つまたは複数の第四級アンモニウム剤はアルキル置換塩化ピリジニウム、アルキル置換臭化ピリジニウム、アルキル置換塩化モルホリニウム、アルキル置換臭化モルホリニウム、アルキル置換塩化ピロリジニウム、アルキル置換臭化ピロリジニウム、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0214】
上記の第4の局面のいずれかでは、電池スタックの自己放電率は、ハロゲン複合化剤を含まない等価な電池スタックと比較して、単一サイクルにおいて約29%~約34%低い。
【0215】
上記から、および様々な図面を参照して、当業者であれば本開示の範囲から逸脱することなく本開示に対して何らかの変更を加えることもできると認識するであろう。開示のいくつかの態様を図面に示したが、開示がそれらに限定されることは意図されておらず、開示が当技術分野で許容される範囲で広いことおよび明細書も同様に読まれることが意図されている。したがって、上の記載は限定としてではなく、単なる特定の態様の例示として解釈されるべきである。当業者であれば本明細書に添付した特許請求の範囲および精神の範囲内で他の変更を想定するであろう。
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【国際調査報告】