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特表2024-512691FAS関連因子1(FAF1)内包エクソソームおよび抗癌剤としてのその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】FAS関連因子1(FAF1)内包エクソソームおよび抗癌剤としてのその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/16 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/22 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/04 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K45/00
A61K35/15
A61K35/17
A61K35/12
A61K35/22
A61K48/00
A61P35/00
A61P1/02
A61P1/04
A61P1/16
A61P1/18
A61P11/00
A61P11/02
A61P11/04
A61P13/08
A61P13/10
A61P13/12
A61P15/00
A61P17/00
A61P19/08
A61P21/00
A61P25/00
A61P35/02
A61P43/00 105
C07K14/705 ZNA
C12N5/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560455
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-20
(86)【国際出願番号】 KR2022004475
(87)【国際公開番号】W WO2022211473
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0040990
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516142104
【氏名又は名称】カイノス・メディスン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】KAINOS MEDICINE, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンフン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DC50
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA011
4C084ZA021
4C084ZA341
4C084ZA591
4C084ZA661
4C084ZA671
4C084ZA751
4C084ZA811
4C084ZA891
4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB271
4C084ZC412
4C087BB37
4C087BB40
4C087BB64
4C087CA04
4C087CA12
4C087MA41
4C087MA52
4C087MA56
4C087MA60
4C087MA66
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA34
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZA67
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA15
(57)【要約】
本発明は、fas関連因子1(FAF1)タンパク質内包エクソソームおよびその癌治療用途に関する。本発明者らは、既知の癌抑制機能を有するFAF1が過剰発現されているHEK293細胞からFAF1タンパク質内包エクソソームを単離し、このFAF1タンパク質内包エクソソームを、膵臓癌細胞(MIA PaCa-2)、肺癌細胞(A549)、大腸癌細胞(HCT116)、肝臓癌細胞(Hep3B)、乳癌細胞(MDA-MB-231)、腎臓癌細胞(Caki-1)および子宮頸癌細胞(HeLa細胞)をヌードマウスに腫瘍内注射して移植した腫瘍モデルマウスに投与したところ、FAF1で処置していない対照群よりも顕著な腫瘍増殖抑制効果が確認されたことから、本発明のFAF1内包エクソソームは、種々の癌の治療薬として用い得ることを見出した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Fas関連因子1(FAF1)タンパク質を内包するエクソソームを有効成分として含む、癌を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
FAF1タンパク質が配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
エクソソームが50~200nmの直径を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
エクソソームに内包されたFAF1タンパク質が、他の細胞の腫瘍形成を抑制する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌が、子宮頸癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、頭頸部扁平上皮癌、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、卵巣癌、睾丸癌、頭部癌、頸部癌、皮膚癌、中皮内膜癌、食道癌、副腎癌、甲状腺癌、骨腫瘍、神経膠芽腫、中皮腫、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌、精巣セミノーマ、白血病または悪性リンパ腫である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
FAF1の発現が癌において減少している、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
組成物のエクソソームが、FAF1を標的腫瘍細胞に送達する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
組成物が、経口投与、気管支内吸入、あるいは腹腔内、直腸内、皮下、静脈内、筋肉内、胸腔内または腫瘍内注射により投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
組成物が単独で、または他の治療剤と同時および逐次的に投与される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
配列番号1のFAF1がエクソソームに内包されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項11】
FAF1タンパク質を内包するエクソソームを製造する方法であって、
1)FAF1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して形質転換細胞を得る工程;
2)前記形質転換細胞を培養する工程;および、
3)前記細胞からエクソソームを分離する工程
を含む、方法。
【請求項12】
工程1)における細胞が、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞、巨核球、マクロファージ、幹細胞および腫瘍細胞、ならびにヒト胚性腎臓293(HEK293)細胞からなる群より選択されるいずれか1以上の細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
癌治療薬のスクリーニング方法であって、
1)FAF1の発現が低下した癌細胞を試験物質で処理する工程;
2)工程1)の細胞から単離したエクソソーム中のFAF1タンパク質のレベルを測定する工程;および、
3)試験物質で処理しない対照群と比較して、工程2)のFAF1タンパク質のレベルが増加する試験物質を選択する工程
を含む、方法。
【請求項14】
細胞が、MIA PaCa-2細胞、MDA-MB-231細胞、HCT 116細胞、Hep3B細胞、Caki-1細胞、A549細胞またはHeLa細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
FAF1の発現が低下した個体にFAF1タンパク質を内包したエクソソームを投与することを含む、癌を処置する方法。
【請求項16】
FAF1タンパク質内包エクソソームの、癌治療薬の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、FAS関連因子1(FAF1)内包エクソソーム、および抗癌剤としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
腫瘍とは、異常な細胞の無秩序な過剰増殖の産物であり、そのような腫瘍が破壊的な増殖性、浸潤性および転移性を有するとき、その腫瘍は悪性腫瘍、すなわち癌に分類される。癌関連死は韓国の死因の第1位であり、先進国では最も重要な死因の1つである。これまで、癌を処置するために、1950年代までは外科療法、1960年代は放射線療法、そして1970年代は抗癌剤治療が開発され、用いられてきた。1980年代に入り、免疫学および分子生物学を中心とした基礎科学の飛躍的な発展により、免疫療法および遺伝子治療が台頭し始め、現在も多くの研究が行われているが、既存の治療法として画期的な進歩を遂げるにはまだ不十分である。
【0003】
Fas(Fas受容体、CD95、Apo1またはTNFRSF6としても知られる)は、細胞死受容体(death receptor)の中で最も細胞を殺す能力の高い受容体であり、FasおよびFasリガンド(Fas L)はアポトーシスに重要な役割を果たしている。3つのFasリガンドが3つのFas分子に結合すると、Fas関連細胞死ドメイン(FADD)と称されるアダプタータンパク質がFasの細胞死ドメイン(DD)に結合する。次いで、FADDのデスエフェクタードメイン(DED)が不活性型カスパーゼ-8(FLICEまたはMACHとも呼ばれる)のデスエフェクタードメイン(DED)と結合すると、カスパーゼ-8が活性化され、これらのFas、FADD、およびカスパーゼ-8が、Fas細胞死誘導性シグナル伝達複合体(Fas-DISC)を形成し、最終的に細胞死を引き起こすエフェクターカスパーゼを活性化して細胞死を誘導する。
【0004】
Fas関連因子1(FAF1)はFas経路に関連するタンパク質であり、マウス(Chu et al., 1995;Becker et al., 1997)、ウズラ(Frohlich et al., 1998)およびヒト(Ryu et al., 1999)で見出だされた。これらは互いに高いアミノ酸相同性を有し、マウスのFAF1は649アミノ酸で構成され、ウズラのFAF1は648アミノ酸で構成され、ヒトのFAF1は650アミノ酸で構成されている。
【0005】
FAF1に関するこれまでの研究では、FAF1にはアポトーシスを誘導する能力があり、誘導の最小領域はFAF1の181-381アミノ酸領域であることが判明している。FAF1はFas-DISCのメンバーであり、DISCはカスパーゼ-8およびFADDのDEDと、DEDと構造的に類似しているFAF1の181-381アミノ酸領域が相互作用することで形成されることが分かっている(Ryu and Kim, 2003)。
【0006】
肺癌、大腸癌、肝臓癌、前立腺癌、脳腫瘍、乳癌など種々の癌でFAF1の発現量が低下することが報告されており(Feng et al., 2017)、FAF1タンパク質は腫瘍抑制因子として注目されており、FAF1はNF-kB阻害を介して腫瘍を抑制し、TGF-βシグナルを介して腫瘍転移を抑制することが知られている(Park et al., 2004; Park et al., 2007)。さらに、FAF1はオーロラA阻害を介して腫瘍の細胞周期をG2/M期に停止させることにより、腫瘍の増殖を阻害することが知られている(Jang et al., 2008)。韓国特許公開第10-2004-0101707号明細書には、FAF1の特定領域のフラゲメントが血管新生および管形成、および細胞増殖を阻害する活性を有し、腫瘍抑制剤として使用できることが開示されている。
【0007】
細胞外小胞が最初に発見されたのは50年前のことで、それ以来、試験されたすべての生体液中に小胞が存在することが判明し、試験管内で細胞株が様々な種類の小胞を放出することが知られている。細胞外小胞のうち、エクソソームはリン脂質二重層からなり、大きさが50~200nmの小胞で、細胞内で産生されて細胞外に分泌され、恒常性維持に重要な核酸(DNAおよびRNA)、タンパク質および脂質などの特定のレパートリーを細胞内に送達することで、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしていることがわかっている。例えば、エクソソームは、神経伝達、抗原提示、免疫反応、臓器発達、生殖能力などの基本的な生理学的プロセスに関与しており、また、癌の進行、心血管疾患、炎症およびプリオン感染を含むいくつかの病理学的疾患にも関与している。
【0008】
エクソソームが最初に発見されたのは、赤血球が成熟する最終段階で細胞内のタンパク質を放出および除去し、赤血球内にヘモグロビンだけを残す過程であった。これらのエクソソームは、細胞膜から直接分離されるのではなく、多胞体(MVB)と呼ばれる細胞内の特定の構成要素(コンパートメント)に由来して細胞外空間に放出および分泌されることが、電子顕微鏡を用いた研究で観察された。すなわち、多胞体が細胞膜と融合すると、そのような小胞は細胞外環境に放出され、これをエクソソームと称する。
【0009】
エクソソームがどのような分子メカニズムで作製されるのかについて多くの研究が行われており、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞、巨核球、マクロファージなど種々の免疫細胞、および幹細胞、腫瘍細胞などがエクソソームを産生および分泌することが知られている。エクソソームの産生は、輸送に必要なエンドソーム選別複合体(ESCRT)に依存する、あるいは依存しないことが報告されているが、正確なメカニズムを決定することは難しい。
【0010】
関連技術として、韓国特許公開第2004-0015508号明細書には、特定の抗原の遺伝子を細胞株に導入し、導入した遺伝子のタンパク質を細胞株内で安定に発現させ、エクソソームを通じて細胞外空間に放出させる方法、および該エクソソームをワクチンとして使用する方法が開示されている。さらに、韓国特許第10-2053065号は、ヒアルロン酸およびドキソルビシンを用いたpH感受性エクソソーム組成物に関し、ドキソルビシンならびにヒアルロン酸および3-ジエチルアミノプロピルアミンを化学的に結合させた高分子物質を用いたpH感受性エクソソームの調製方法、および該エクソソームの癌細胞死滅効果を開示している。さらに、韓国特許公開第10-2018-0078173号は、新規のエクソソームを用いた抗癌剤に関し、その表面に貪食促進タンパク質である受容体チロシンキナーゼおよびSIRPが提示される組換えエクソソーム、および抗癌タンパク質である、アスパラギナーゼ、タンパク質毒素、癌抗原に特異的な抗体またはそのフラグメント、癌抑制遺伝子または抗血管新生因子などを含む組換えエクソソームが開示されている。また、韓国特許出願第10-2019-0059724号では、FAF1がエクソソームに内包され、細胞外腔に分泌されることを確認した上で、神経変性疾患の治療薬候補をスクリーニングする方法が開示されているが、癌細胞に関する研究結果は報告されていない。
【0011】
エクソソームを用いることで、細胞外環境からカーゴ物質が保護され、半減期が長くなり、要すれば標的細胞内に入る。しかしながら、すべてのタンパク質がカーゴ物質としてエクソソームに内包されるわけではなく、エクソソームに内包されたとしても、内包されたカーゴ物質がすべての細胞に入るわけではない。また、大きなサイズの高分子タンパク質をエクソソーム内に内包することは技術的に困難であり、内包するためにタンパク質を操作したとき、内包したタンパク質の効果が著しく劣る可能性がある。FAF1が神経細胞内で自発的にエクソソームに内包されることは報告されているが、エクソソームに内包されたFAF1が細胞内に入って正常に機能するかどうかは細胞の種類によって異なり、実験によって検証しなければならないという限界がある。したがって、エクソソームを用いたFAF1送達が癌細胞で適切に機能することが確認され、FAF1内包エクソソームの大量生産が可能になれば、FAF1内包エクソソームは種々の癌の腫瘍抑制剤として適用可能であり得る。
【0012】
従って、本発明者らは、腫瘍抑制機能として知られるFAF1をエクソソームに内包させて種々の腫瘍に送達し、エクソソームに内包されたFAF1が腫瘍を抑制できるかどうかを判定するために、FAF1が過剰発現された細胞からエクソソームを単離し、単離されたエクソソーム中にFAF1が自発的に内包されているかどうかを確認し、単離されたFAF1が内包されたエクソソームで癌細胞を処置したところ、コロニー形成が抑制されたことを確認し、FAF1タンパク質が内包されたエクソソームを癌細胞が移植された種々のマウス癌モデルに投与したとき、組換え型FAF1タンパク質で処置した群を含む他の対照群と比較して有意に腫瘍増殖が阻害される効果を確認して、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
発明の開示
技術的課題
本発明の目的は、FAF1タンパク質を内包したエクソソームを有効成分として含有する、癌を処置するための医薬組成物を提供することである。
【0014】
本発明のもう一つの目的は、FAF1タンパク質を内包したエクソソームを製造する方法を提供することである。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、FAF1の発現を低下させた癌治療薬をスクリーニングする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
課題解決
上記の目的を達成するために、本発明は、FAF1タンパク質を内包するエクソソームを有効成分として含む癌の処置のための医薬組成物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、1)FAF1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して形質転換細胞を得る工程;2)形質転換細胞を培養する工程;および、3)培養細胞からエクソソームを単離する工程を含む、FAF1タンパク質を内包したエクソソームを製造する方法を提供する。
【0018】
さらに、本発明は、1)FAF1の発現が低下した癌細胞を試験物質で処理する工程;2)工程1)で細胞から単離したエクソソーム中のFAF1タンパク質のレベルを測定する工程;および、3)工程2)のFAF1タンパク質のレベルが、試験物質で処理しない対照群と比較して増加する試験物質を選択する工程を含む、癌治療薬をスクリーニングする方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
発明の有利な効果
本発明は、Fas関連因子1(FAF1)タンパク質内包エクソソームおよびその癌治療用途に関する。本発明者らは、腫瘍抑制機能を有することが知られているFAF1が過剰発現しているHEK293細胞からFAF1タンパク質内包エクソソームを単離し、このFAF1タンパク質内包エクソソームを腫瘍モデルに投与し、膵臓癌細胞(MIA PaCa-2)、肺癌細胞(A549)、大腸癌細胞(HCT116)、肝臓癌細胞(Hep3B)、乳癌細胞(MDA-MB-231)、腎臓癌細胞(Caki-1)および子宮頸癌細胞(HeLa細胞)をヌードマウスに移植し、腫瘍内注射により投与したところ、FAF1を投与していない対照群と比較して有意な腫瘍増殖抑制効果が確認されたことから、本発明のFAF1内包エクソソームは、種々の癌の治療薬として用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から超遠心分離機を用いて単離したエクソソーム中のFAF1の内包量を示すウェスタンブロッティングの結果である。
図2図2は、FAF1を過剰発現させたHeLa細胞から超遠心分離機を用いて単離したエクソソーム中のFAF1の内包量を示すウェスタンブロッティングの結果である。
図3図3は、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞からExo-quick-TC(商標)を用いて単離したエクソソーム中のFAF1の内包量を示すウェスタンブロッティングの結果である。
図4図4は、FAF1を過剰発現させたHeLa細胞からExo-quick-TC(商標)を用いて単離したエクソソーム中のFAF1の内包量を示すウェスタンブロッティングの結果である。
図5図5aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでMIA PaCa-2細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図5bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離されたエクソソームでMIA PaCa-2細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図6図6aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでA549細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図6bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでA549細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図7図7aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでHCT116細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図7bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離されたエクソソームでHCT 116細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図8図8aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでHep3B細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図8bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離されたエクソソームでHep3B細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図9図9aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでMDA-MB-231細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図9bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでMDA-MB-231細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図10図10aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームでHeLa細胞を処理したときの、コロニー形成阻害効果を示す写真である。図10bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離されたエクソソームでHeLa細胞を処理したときの、コロニー数を示すグラフである。
図11図11aは、MIA PaCa-2細胞を異種移植したヌードマウスに、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図11bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MIA PaCa-2細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図11cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MIA PaCa-2細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図11dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MIA PaCa-2細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図11eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MIA PaCa-2細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図12図12aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、A549細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図12bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、A549細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図12cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、A549細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図12dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、A549細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図12eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、A549細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図13図13aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HCT116細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図13bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HCT116細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図13cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HCT116細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図13dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HCT116細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図13eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HCT116細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図14図14aは、Hep3B細胞を異種移植したヌードマウスに、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図14bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Hep3B細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図14cは、Hep3B細胞を異種移植したヌードマウスに、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図14dは、Hep3B細胞を異種移植したヌードマウスに、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図14eは、Hep3B細胞を異種移植したヌードマウスに、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図15図15aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MDA-MB-231細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、組み換えFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図15bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MDA-MB-231細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図15cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MDA-MB-231細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図15dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MDA-MB-231細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図15eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、MDA-MB-231細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群における腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図16図16aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Caki-1細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図16bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Caki-1細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図16cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Caki-1細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図16dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Caki-1細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図16eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、Caki-1細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
図17図17aは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HeLa細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積の経時変化を示すグラフである。図17bは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HeLa細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、腫瘍徐核直前のMOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍体積を示すグラフである。図17cは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HeLa細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍の写真である。図17dは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HeLa細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍重量を示すグラフである。図17eは、FAF1を過剰発現させたHEK293細胞から単離したエクソソームを、HeLa細胞を異種移植したヌードマウスに投与したときの、MOCK群、リコンビナントFAF1タンパク質群、EXO-CON群およびEXO-FAF1群の腫瘍組織の細胞形態の変化を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明を実施するための最良の方法
以下、本発明を詳細に説明する。
【0022】
本発明は、FAF1タンパク質を内包するエクソソームを有効成分として含有する、癌の処置のための医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明のFAF1タンパク質は、配列番号1で表されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
本発明のFAF1は、Fas細胞死誘導シグナル複合体(Fas-DISC)を構成し、アポトーシスを誘導する。FAF1は、いくつかの経路を活性化し、アポトーシスを促進するタンパク質として知られている。
【0025】
FAF1は、JNK依存性のミトコンドリア機能障害による細胞壊死を介し、オーロラAを負に制御することで細胞周期のG2/M期を抑制することで細胞増殖に関与し、ユビキチン化タンパク質およびバロシン含有タンパク質(VCP)と結合することでユビキチン-プロテアソーム経路に関与し、タンパク質の分解を制御し、不要なFAF1はパーキンを介してユビキチン化され、そしてプロテアソーム経路で分解される。
【0026】
さらにFAF1は、アポトーシス、炎症、細胞増殖およびタンパク質の恒常性維持など、種々の生化学的プロセスに関与している。FAF1は腫瘍抑制因子であり、NF-κB阻害を介して腫瘍を抑制する役割を果たし、またTGF-βシグナルを介して腫瘍転移を抑制する。
【0027】
本発明のエクソソームは、細胞から分泌される2層のリン脂質膜からなる小胞であり、細胞間でシグナル伝達を行い、疾患特異的な核酸およびタンパク質を形成して体液中に放出することが知られており、恒常性維持に重要な核酸、タンパク質および脂質の特異的なレパートリーの細胞間伝達を通じて、細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たしている。例えば、エクソソームは、神経伝達、抗原提示、免疫反応、臓器発達および生殖能力などの基本的な生理学的プロセスに関与しており、また、癌の進行、心血管系疾患、炎症およびプリオン感染などのいくつかの病理学的疾患にも関与している。
【0028】
エクソソームは、管腔内小胞(ILV)を含む多胞体(MVB)として知られる後期エンドソームが細胞膜と融合した後、細胞外環境に分泌される。多胞体は細胞膜と融合してILVを放出し、多胞体はリソソームと融合して内容物を分解する。エクソソーム中に存在する物質は、細胞質物質の組成とは類似しておらず、エクソソームは要すればRNAおよびタンパク質を含んでいてもよい。
【0029】
エクソソームの産生は、輸送に必要なエンドソーム選別複合体(ESCRT)に依存する、または依存しないことが報告されているが、正確なメカニズムを決定することは難しい。細胞はシグナルペプチドが存在するタンパク質を、小胞体-ゴルジ体複合体を介して分泌する。シグナルペプチドが存在するタンパク質を含む小胞は、細胞膜に向かって移動し、細胞膜と融合し、そしてタンパク質を細胞外に放出する。しかしながら、シグナルペプチドを有しないタンパク質は、非古典的な分泌経路を経由して分泌されることもある。シグナルペプチドを有しないタンパク質が分泌されるとき、タンパク質は小胞の不存在下または存在下で分泌され、小胞以外の分泌経路の正確なメカニズムは不明であるが、膜孔およびATP結合カセットトランスポーターを介して分泌されるタンパク質もある。小胞分泌はエクソソームを含む細胞外小胞を介して行われ、種々の大きさの小胞を介して行われる。
【0030】
エクソソームの平均直径は50nm~300nmであるが、本発明はこれに限定されない。
【0031】
エクソソームは、ほとんどの細胞タイプから放出されるナノサイズの細胞外小胞であり、低分子RNA、脂質およびタンパク質を含む。これらの利点には、天然バリアを克服する能力、固有の細胞標的化特性、改善された透過性、維持効果および生体適合性などが含まれる。生物学的情報を伝達するという本来の機能に基づいて、治療薬としてのエクソソームの応用が注目されている。
【0032】
前記癌は、FAF1の発現が低下している癌である。
【0033】
該癌としては、子宮頸癌、膵臓癌、肝臓癌、肺癌(小細胞肺癌および非小細胞癌を含む)、乳癌、腎臓癌、大腸癌、頭頸部扁平上皮癌、膀胱癌、前立腺癌、胃癌、子宮内膜癌、脳腫瘍、卵巣癌、精巣癌、頭部癌、頸部癌、皮膚癌(メラノーマおよび基底癌を含む)、中皮内膜癌、食道癌、副腎癌、甲状腺癌、骨腫瘍、神経膠芽腫、中皮腫、肉腫、絨毛癌、皮膚基底細胞癌、精巣セミノーマ、白血病および悪性リンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい態様では、癌は、膵臓癌、非小細胞肺癌、結腸直腸癌、肝臓癌、トリプルネガティブ乳癌、腎臓癌または子宮頸癌である。
【0034】
本発明の医薬組成物は、医薬製剤に一般的に用いられる担体、希釈剤、賦形剤、またはそれらの混合物を含んでいてもよい。組成物を生体内に送達するのに適したものであれば、薬学的に許容される担体を使用してもよい。具体的には、担体は、Merck Index, 13th ed. Merck & Co. Inc.に記載されている化合物、生理食塩水、滅菌水、リンゲル液、ブドウ糖液、マルトデキストリン液、グリセロール、エタノール、またはこれらの混合物であり得る。さらに、要すれば、酸化防止剤、緩衝剤および静菌剤などの代表的な添加剤を加えてもよい。
【0035】
医薬組成物を製剤する際には、一般的に使用され得る充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤および界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を添加できる。
【0036】
本発明の医薬組成物は、経口剤または非経腸剤に製剤され得る。経口剤としては、固形剤および液剤が挙げられる。固形製剤は、錠剤、丸薬、粉末、顆粒、カプセルまたはトローチであってもよく、また固形製剤は、組成物に少なくとも1つの賦形剤を添加することによって調製されてもよい。賦形剤は、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース、ゼラチンまたはそれらの混合物であってもよい。さらに、固形製剤は、滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、およびタルクを含んでいてもよい。一方、液体製剤は、懸濁液、溶液、エマルジョン剤またはシロップのいずれでもよい。この場合、液体製剤は、湿潤剤、甘味料、香料および保存料などの賦形剤を含んでいてもよい。
【0037】
非経腸製剤としては、注射剤、坐剤、呼吸吸入用粉末、スプレーエアゾール、粉末、クリームなどを挙げることができる。注射剤には、滅菌水溶液、非水溶性溶媒、懸濁化剤、乳化剤などが含まれていてもよい。この場合、非水溶性溶媒または懸濁化剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、またはオレイン酸エチル等の注射用エステル等を用いることができる。
【0038】
本発明の医薬組成物は、所望の方法に従って経口的または非経腸的に投与できる。非経腸投与には、気管支内吸入、腹腔内、直腸内、皮下、静脈内、筋肉内、胸腔内または腫瘍内注射の方法が含まれるが、これらに限定されない。好ましい態様において、本発明の医薬組成物は、腫瘍内注射法によって投与できる。
【0039】
医薬組成物は、薬学的に有効な量で投与できる。これは、疾患の種類、重症度、薬剤の活性、患者の薬剤に対する感受性、投与時間、投与経路、処置期間、同時に使用する薬剤などによって異なっていてよい。しかしながら、所望の効果を得るためには、本発明の医薬組成物に含まれる有効成分の量は、0.0001~1,000mg/kg、特に、0.001~500mg/kgであり得る。投与は1日1回から数回行うことができる。
【0040】
本発明の医薬組成物は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて投与できる。併用投与の場合、投与は逐次または同時に行うことができる。
【0041】
さらに、本発明は、FAF1タンパク質を内包したエクソソームを製造する方法であって、
1)FAF1タンパク質をコードするポリヌクレオチドを細胞に導入して形質転換細胞を得る工程;
2)前記形質転換細胞を培養する工程;および、
3)前記細胞からエクソソームを分離する工程
を含む、方法を提供する。
【0042】
工程1)における細胞は、Bリンパ球、Tリンパ球、樹状細胞、巨核球、マクロファージ、幹細胞、腫瘍細胞、およびHEK293細胞からなる群より選択されるいずれか1以上の細胞であるが、これに限定されない。好ましい態様では、細胞はHEK293細胞またはHeLa細胞である。
【0043】
形質導入は、5×10~7×10個の細胞を5~10μgの3×Flag-FAF1プラスミドで処理し、細胞を培養することにより行うことができ、好ましくは、6.5 ×10個の細胞を8μgの3×Flag-FAF1プラスミドで処理し、細胞を培養する。
【0044】
エクソソームは、エクソソームを単離するために当技術分野で一般的に用いられている方法によって単離できる。サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、密度勾配遠心分離、示差遠心分離、限外濾過、タンジェンシャルフロー濾過、エクソソーム沈殿、全エクソソーム単離キット、免疫吸着剤捕捉、アフィニティー法、例えば、アフィニティー捕捉、アフィニティー精製、イムノアッセイ、マイクロ流体分離、またはこれらの組み合わせが、エクソソームを単離するために実施され得る。
【0045】
本発明の具体的な態様によれば、培養液を回収し、300×gで10分間、2,000gで10分間および10,000gで30分間遠心分離して上清を分離し、上清を0.2μmのフィルターで濾過し、超遠心機を用いて150,000×gで70分間遠心分離する。遠心した上清を除去し、PBSを加えてペレットを洗浄した後、再び150,000×gで70分間遠心して上清を除去し、下層に残ったエクソソームを単離する。
【0046】
単離されたエクソソームは-20℃および-80℃で保存できる。
【0047】
本明細書で用いる用語“形質転換”とは、元の細胞とは異なる外来遺伝子を有するDNA鎖フラグメントまたはプラスミドなどが細胞内に侵入し、元の細胞内に存在するDNAと結合することにより、細胞の遺伝的性質を変化させる分子生物学的手法である。
【0048】
FAF1内包エクソソームは、その中にFAF1タンパク質を含み、FAF1タンパク質を癌細胞または組織に輸送する担体として機能する。
【0049】
FAF1タンパク質はエクソソームを介して細胞外に分泌される。
【0050】
細胞外に分泌されたFAF1タンパク質は、他の細胞においてアポトーシスを誘導し得る。
【0051】
アポトーシスは、多細胞生物で起こり得る一種のプログラムされた細胞死である。アポトーシスは、細胞形態の変化および細胞内の生化学的変化によって細胞死を引き起こす。このプロセスは、細胞の膨潤および亀裂、細胞膜の変化、クロマチンの凝縮および染色体の切断、ならびに食細胞に貪食されることで終了する。
【0052】
急性の細胞傷害によって引き起こされる細胞死であるネクローシスとは対照的に、アポトーシスは生物に害を与えず、そのライフサイクルに利点をもたらす。ヒト胚の分化過程で手足の指が形成されるのは、アポトーシスの代表例である。さらにアポトーシスは、細胞の入れ替わり、組織のリモデリングおよび損傷細胞の除去において重要なメカニズムである。
【0053】
アポトーシスは2つの場合に生じ、1つは発生および分化の過程で不要な部分を除去するため、もう1つは細胞が深刻なダメージを受け、癌化する可能性がある場合に他の細胞を保護するためである。しかしながら、アポトーシスの過程で問題を有する細胞は癌細胞となり、癌細胞は死滅することなく、分裂を繰り返しながら徐々に増殖し成長していく。
【0054】
本明細書で用いる用語“培養”とは、適切に人工的に制御された環境条件下で細胞または微生物を増殖させる方法を意味する。本発明において、形質転換体を培養する方法は、当技術分野において広く知られている方法を用いて行うことができる。
【0055】
培地とは、動物細胞の培養に用いられる公知の培地を意味し、市販の無血清培地、無タンパク培地および化学的に定義された培地の群から選択できる。
【0056】
さらに、本発明は癌治療薬をスクリーニングする方法であって、
1)FAF1の発現が低下した癌細胞を試験物質で処理する工程;
2)工程1)の細胞から単離したエクソソーム中のFAF1タンパク質のレベルを測定する工程;および、
3)試験物質で処理しない対照群と比較して、工程2)のFAF1タンパク質のレベルが増加する試験物質を選択する工程
を含む、方法を提供する。
【0057】
本方法において、工程1)の細胞は特に限定されないが、好ましい局面では、MIA PaCa-2細胞、A549細胞、HCT 116細胞、Hep3B細胞、MDA-MB-231細胞、Caki-1細胞またはHeLa細胞である。
【0058】
本方法において、工程1)の試験物質とは、FAF1の発現を増加させる物質を意味し、ペプチド、タンパク質、非ペプチド化合物、合成化合物、発酵産物、細胞抽出物、植物抽出物、および動物組織抽出物からなる群より選択されるいずれか1つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0059】
本発明で用いる候補物質を選択するためのマーカーとして、FAF1タンパク質のレベルは、当技術分野で公知の方法を用いて測定できる。例えば、タンパク質を特異的に検出する抗体は市販されており、ウエスタンブロット、共免疫沈降法、免疫蛍光法、酵素結合免疫吸着測定法等を用いてタンパク質を検出するために用いられ得る。かかる抗体を用いることにより、特定のタンパク質の発現レベルを特異的に確認できるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
試験物質を投与していない対照群と比較して、特定のタンパク質の発現量が増加していれば、癌治療薬の候補物質として選択できる。
【0061】
まず、FAF1を過剰発現させたHEK 293細胞およびHeLa細胞のエクソソーム中のFAF1量の増加を通じて、HEK 293細胞およびHeLa細胞でFAF1を過剰発現させると、エクソソーム中に含まれるFAF1量が増加し、エクソソームを介してFAF1を分泌できることが確認された(図1図4参照)。アポトーシス促進因子であるFAF1は、腫瘍形成を阻害するタンパク質である。従って、FAF1を過剰発現するHEK 293細胞から単離したエクソソームに腫瘍形成抑制効果があるかどうかを確認するために、MIA PaCa-2、A549、HCT 116、Hep3B、MDA-MB-231またはHeLa細胞を用いて腫瘍形成抑制試験を行ったところ、FAF1を過剰発現しているHEK 293細胞から単離したエクソソームを処理したとき、FAF1を過剰発現していないHEK 293細胞から単離したエクソソームを処理した場合に比べて、形成されるコロニー数が少ないことが確認された(図5a、5b、6a、6b、7a、7b、8a、8b、9a、9b、10aおよび10b参照)。また、FAF1を過剰発現させたHEK 293細胞から単離したエクソソームを、MIA PaCa-2、A549、HCT 116、Hep3B、MDA-MB-231、Caki-1またはHeLa細胞を異種移植したヌードマウスに腫瘍内注入することにより、FAF1を内包したエクソソームの場合の腫瘍の体積および重量が減少することが確認され、FAF1の処理により細胞のネクローシスが生じることが確認された(図11a~11e、図12a~12e、図13a~13e、図14a~14e、図15a~15e、図16a~16e、図17a~17e参照)。上記の結果は、内包されたFAF1がエクソソームを介して細胞外空間に分泌され、FAF1内包エクソソームが標的の癌細胞に適切に送達され、FAF1が腫瘍を効果的に抑制できることを示し、FAF1内包エクソソームは癌治療剤として使用可能である。
【0062】
以下、本発明を下記の実施例により詳細に説明する。
【0063】
ただし、以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例
【0064】
<実施例1> FAF1を過剰発現するHEK 293細胞からのエクソソームの単離
<1-1>細胞培養
ヒト胚性腎臓由来の細胞株であるHEK 293細胞は、抗生物質、10%ウシ胎児血清(FBS、Atlas Biologicals, USA)および抗生物質-抗マイコプラズマ剤(ペニシリン/ストレプトマイシン、GIBCOBRL, USA)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、WelGENE, Korea)中で、5%COおよび37℃の条件下で2日に1回継代培養しながら維持した。
【0065】
<1-2>細胞内形質導入
FAF1を細胞内で過剰発現させるために、3x Flagタグ-FAF1プラスミド(8μg)を6.5×10細胞に導入した。
具体的には、細胞を150mmの培養皿に播種し、10%FBSを含むDMEM中で、5%COおよび37℃の条件下で24時間培養した。3xFlagタグ-FAF1を、以前から知られている方法(Yu et al., 2016)で調製した。FBSおよび抗生物質を含まないDMEMを用いて、DNA:BioT(Bioland scientific, USA)=1:1.5の割合で合計180μLの混合液を調製し、室温で5分間反応させた。24時間培養した細胞に該混合液を添加し、5%CO、37℃の条件下で24時間反応させた。
【0066】
<1-3>エクソソームの単離
<1-3-1>Exo-quick-TC (商標)を用いたエクソソームの単離
Exo-quick-TC (商標) (System Biosciences, USA)を用いて、3x Flagタグ-FAF1プラスミドを導入した細胞からエクソソームを単離した。
具体的には、導入24時間後、10%エクソソーム除去FBSを添加したDMEM(System Biosciences, USA)で処理し、48時間培養した。培養細胞の培地を回収し、3,000rpmで15分間遠心して上清を回収し、そこから細胞残屑を除去した。回収した培地(10mL)をExo-quickバッファー2mLで処理し、振盪し、培地:Exo-quickバッファー=5:1になるようによく混合した。4℃で一晩培養した後、培地を1,500gで30分間遠心する操作を2回繰り返してエクソソームを得た。
【0067】
<1-3-2>超遠心機を用いたエクソソームの単離
超遠心機(optima XE-100, BECKMAN Coulter, USA)を用いて、3x Flagタグ-FAF1プラスミドを導入した細胞からエクソソームを単離した。
具体的には、導入から24時間後、FBSおよび抗生物質を含まないDMEMで細胞を処理し、再び24時間培養した。培養細胞の培地を回収し、300gで10分間、2,000gで10分間および10,000gで30分間遠心分離して上清を分離し、上清を0.2μmのシリンジフィルター(BioFACT、Korea)でろ過した。
【0068】
インビトロおよびインビボ実験に用いるエクソソームを単離するために、BECKMAN Coulter optima XE-100超遠心機で45Tiローターを用いて150.000gで70分間遠心し、上清を捨て、ペレットをPBSで洗浄した。洗浄したPBSを再度150.000gで70分間遠心し、その後上清を捨て、残りをPBSを用いてEPチューブに回収した。
【0069】
単離したエクソソームは-20℃および-80℃で保存し、使用前に4℃で融解した。
【0070】
<実施例2> FAF1を過剰発現するHeLa細胞からのエクソソームの単離
<2-1>細胞培養
子宮頸癌患者由来のHeLa細胞は、抗生物質、10%FBS(Atlas Biologicals、USA)、抗生物質-抗マイコプラズマ剤(ペニシリン/ストレプトマイシン、GIBCOBRL、USA)を含むDMEM(WelGENE、Korea)中で、5%CO、37℃の条件下で2日に1回継代培養しながら維持した。
【0071】
<2-2>細胞内形質導入
HeLa細胞でFAF1を過剰発現させるために、3x Flagタグ-FAF1プラスミド(8μg)を6.5×10細胞に導入した。
具体的な実験方法は、実施例1-2と同じである。
【0072】
<2-3>エクソソームの単離
Exo-quick-TC(商標)または超遠心機を用いて、3x Flagタグ-FAF1プラスミドを導入したHeLa細胞からエクソソームを単離した。
具体的な実験方法は、実施例1-3と同じである。
【0073】
<実施例3>癌細胞株の培養
MIA PaCa-2(膵臓癌細胞)、Hep3B(肝臓癌細胞)、MDA-MB-231(トリプルネガティブ乳癌細胞)、Caki-1(腎臓癌細胞)、HeLa(子宮頸癌細胞)を、DMEM、10% FBS、1% 抗生物質-抗マイコプラズマ剤(ペニシリン/ストレプトマイシン、GIBCO BRL、USA)、5% CO、37℃の条件下でインキュベーター内で培養し、3日に1回継代培養した。A549(非小細胞肺癌細胞)およびHCT116(大腸癌細胞)を、RPMI1640培地中、10%FBS、1%抗生物質-抗マイコプラズマ剤、5%CO、37℃の条件下で培養し、3日に1回継代培養した。
【0074】
<実験例1>HEK 293細胞およびHeLa細胞でFAF1を過剰発現させたときのエクソソーム中のFAF1の増加の確認
実施例1の3x Flagタグ-FAF10プラスミド(8μg)を形質導入したHEK 293細胞およびHeLa細胞において、FAF1を過剰発現させたときにエクソソームにFAF1が多く入るかどうかを調べるため、超遠心機およびExo-quick-TC(商標)を用いて単離したエクソソーム中のFAF1の発現量をウェスタンブロッティングにより確認した。
【0075】
具体的には、ウェスタンブロッティングを行うために、上清を除去したペレットに哺乳動物溶解バッファー50μLを添加し、氷上で30分間溶解させた。ウエスタンブロットキット(Amersham Biosciences, UK)を用いて8-10%アクリルアミドゲルを調製し、溶解したペレットを5μLのSDSサンプルバッファーと共に混合し、3分間煮沸した後、ゲル上に所定量をのせ、80-100Vの電圧をかけ、ペレット中のタンパク質をサイズ別に分離した。分離したタンパク質を含むアクリルアミドゲルをニトロセルロース膜に重なるように置き、200mAの電流を2時間流してタンパク質をニトロセルロース膜に移した。タンパク質を転写したニトロセルロース膜を脱脂粉乳でブロッキングし、そこにFAF1抗体を結合させ、さらに二次抗体を結合させ、ウエスタンブロット検出キット(AbFrontier、Korea)およびChemiDoc-It Imaging System(UVP、USA)によりFAF1タンパク質の量を確認した。
【0076】
超遠心機を用いてエクソソームを単離するとき、FAF1が過剰発現しているHEK 293細胞から単離されたエクソソームでは、FAF1が過剰発現していない細胞から単離されたエクソソームと比較して、FAF1の発現がわずかに増加していた(図1)。HeLa細胞の場合、FAF1が過剰発現していない細胞から単離されたエクソソームおよびFAF1が過剰発現している細胞から単離されたエクソソームでは、FAF1の発現がほとんど見られなかった(図2)。
【0077】
Exo-quick-TC(商標)を用いてエクソソームを単離したとき、HEK 293細胞ではFAF1を過剰発現する細胞から単離されたエクソソーム中のFAF1の発現量が有意に増加し(図3)、HeLa細胞ではFAF1過剰発現細胞から単離されたエクソソーム中にFAF1は認められなかったが、タグタンパク質であるFlagによりFAF1の量が増加していることが確認された(図4)。
【0078】
Exo-quick-TC(商標)を用いたエクソソームの単離方法は、超遠心機を用いる方法よりも簡便であり、時間を短縮できる利点があるが、単離過程でコンタミネーションが生じる欠点がある。また、超遠心機を用いる方法は、より純度の高いエクソソームを単離し得るため、本発明者らは、純度の高いエクソソームの効果を確認するために以下の実験例において超遠心機を用いてエクソソームを単離した。
【0079】
<実験例2>FAF1過剰発現HEK 293細胞から単離したエクソソームのインビトロ抗腫瘍効果の確認
FAF1を過剰発現させたHEK 293細胞から単離したエクソソームを用いて、膵臓癌、非小細胞肺癌、肝臓癌、子宮頸癌の細胞株におけるコロニー形成阻害能を評価した。
【0080】
具体的には、3x Flagタグ-FAF1(0μgまたは8μg)を導入したHEK 293細胞を24時間培養し、エクソソームの分泌を促進するためにFBSおよび抗生物質を含まない培地で24時間培養した後、培地を回収し、超遠心機(optima XE-100, BECKMAN Coulter)を用いてエクソソームを単離した。単離されたエクソソームを、分光光度計(MECASYS、Korea)を用いて定量した。MIA PaCa-2、A549、HCT116、Hep3B、MDA-MB-231またはHeLa細胞株におけるFAF1内包エクソソームの腫瘍コロニーを阻害するインビトロ効果を見るために、MIA PaCa-2、Hep3BまたはHeLa細胞を、100個細胞で6ウェルプレートに播種し、A549、HCT116およびMDA-MB-231細胞は200個細胞で播種した。24時間後、FAF1を内包しないエクソソーム(エクソソーム対照:EXO-CON)およびFAF1を内包したエクソソーム(EXO-FAF1)で細胞を処理した。MIA PaCa-2の場合、エクソソームを分光光度計(MECASYS、Korea)で測定し、細胞を6μgのエクソソームで処理した後、12日間培養した;A549の場合、エクソソームをNTAで測定し、細胞を3x10のエクソソームで処理した後、10日間培養した;HCT116の場合、エクソソームをNTAで測定し、細胞を3.16x10のエクソソームで細胞を処理し、10日間培養した。Hep3Bの場合、分光光度計(MECASYS, Korea)でエクソソームを測定し、12μgのエクソソームで細胞を処理後、7日間培養した。8.4x10のエクソソームで処理し、12日間培養した。HeLaの場合、エクソソームをNTAで測定し、細胞を1.65x1010のエクソソームで処理し、10日間培養した。培地を3日に一度、新しい培地に交換し、培地交換したとき、細胞はそれぞれの濃度に従ってエクソソームで処理された。実験完了後、PBSで洗浄し、1mLのメタノールで20分間処理し、1mLのクリスタルバイオレット溶液(SIGMA-ALDRICH、USA)で5分間処理することにより、染色されたコロニー数を測定した。
【0081】
<2-1>膵臓癌におけるコロニー形成抑制能の確認
膵臓癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果のコロニー形成抑制能を確認するため、膵臓癌細胞株であるMIA PaCa-2細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、確認した。
【0082】
その結果、図5aおよび図5bに示すように、EXO-FAF1で処理した群で最もコロニー数が少ないことが確認された。図面で確認すると、EXO-FAF1はEXO-CONに比べて24.2±7.27%、MOCKに比べて26.2±7.08%コロニー形成が減少していることが確認された。
【0083】
以上の結果は、FAF1内包エクソソームが膵臓癌の腫瘍形成を抑制することを示唆している。
【0084】
<2-2>非小細胞肺癌におけるコロニー形成阻害能の確認
非小細胞肺癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果を検証するため、非小細胞肺癌細胞株であるA549細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、コロニー形成阻害能を確認した。
【0085】
その結果、図6aおよび図6bに示すように、EXO-FAF1で処理した群で最もコロニー数が少ないことが確認された。その結果、EXO-FAF1はEXO-CONと比較して46.9±12.88%、MOCKと比較して42.7±13.91%コロニー形成を減少させることが確認された。
【0086】
以上の結果は、FAF1内包エクソソームが非小細胞肺癌の腫瘍形成を抑制することを示唆している。
【0087】
<2-3>大腸癌におけるコロニー形成阻害能の確認
大腸癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果を検証するため、大腸癌細胞株であるHCT116細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、コロニー形成阻害能を確認した。
【0088】
その結果、図7aおよび図7bに示すように、EXO-FAF1で処理した群で最もコロニー数が少ないことが確認された。EXO-FAF1はEXO-CONと比較して23.0±9.07%、MOCKと比較して30.9±8.14%コロニー形成が減少することが確認された。
【0089】
以上の結果は、FAF1内包エクソソームが大腸癌の腫瘍形成を抑制することを示唆している。
【0090】
<2-4>肝臓癌におけるコロニー形成阻害能の確認
肝臓癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果を検証するため、肝臓癌細胞株であるHep3B細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、コロニー形成阻害能を確認した。
【0091】
その結果、図8aおよび図8bに示すように、EXO-FAF1で処理した群ではコロニー数が最も少ないことが確認された。その結果、EXO-FAF1はEXO-CONと比較して50.6±10.21%、MOCKと比較して46.1±11.15%コロニー形成を減少させることが確認された。
【0092】
以上の結果から、FAF1内包エクソソームが肝癌の腫瘍形成を抑制することが示唆された。
【0093】
<2-5>トリプルネガティブ乳癌におけるコロニー形成阻害能の確認
トリプルネガティブ乳癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果のコロニー形成抑制能を検証するため、トリプルネガティブ乳癌細胞株であるMDB-MB-231細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、その効果を確認した。
【0094】
その結果、図9aおよび図9bに示すように、EXO-FAF1で処理した群ではコロニー数が最も少ないことが確認された。数値で確認したところ、EXO-FAF1はEXO-CONに比べて43.8±10.40%、MOCKに比べて59.3±7.59%コロニー形成が減少していることが確認された。
【0095】
以上の結果から、FAF1内包エクソソームはトリプルネガティブ乳癌の腫瘍形成を抑制することが示唆された。
【0096】
<2-6>子宮頸癌におけるコロニー形成阻害能の確認
子宮頸癌におけるFAF1内包エクソソームの抗腫瘍効果のコロニー形成抑制能を確認するため、子宮頸癌細胞株であるHeLa細胞をFAF1内包エクソソームで処理し、確認した。
【0097】
その結果、図10aおよび図10bに示すように、EXO-FAF1で処理した群ではコロニー数が最も少ないことが確認された。数値で確認したところ、EXO-FAF1はEXO-CONに比べて38.4±6.45%、MOCKに比べて38.0±6.49%コロニー形成が減少していることが確認された。
【0098】
以上の結果から、FAF1内包エクソソームは子宮頸癌の腫瘍形成を抑制することが示唆された。
【0099】
<実験例3>FAF1過剰発現HEK 293細胞から単離したエクソソームの腫瘍異種移植動物モデルにおけるインビボ抗腫瘍効果の確認
FAF1を過剰発現しているHEK293細胞から単離したエクソソームのインビボ腫瘍抑制効果を見るために、MIA PaCa-2、A549、HCT 116、Hep3B、MDA-MB-231、Caki-1およびHeLa細胞株を100μLのPBSおよび100μLのマトリゲルと共に混合し(Corning Life Science, USA)、26Gシリンジを通して8週齢の雄性BALB/cSLC nu/nuマウス(Central Lab. Animal Inc., Korea)の背部に異種移植した。腫瘍体積は、(長軸)×(短軸)×0.5に基づいて計算された。腫瘍体積が80-140mmに達したとき、PBS、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)、EXO-CONおよびEXO-FAF1をそれぞれ2日に1回、計4回マウスに腫瘍内注射した。MIA PaCa-2細胞株の腫瘍体積は43日まで、A549細胞株の腫瘍体積は48日まで、HCT116細胞株の腫瘍体積は30日まで、Hep3B細胞株の腫瘍体積は35日まで、MDA-MB-231細胞株の腫瘍体積は40日まで、Caki-1細胞株の腫瘍体積は46日まで、そしてHeLa細胞株の腫瘍体積は41日まで測定した。最終日、マウスを安楽死させた後、腫瘍を除核して重量を測定し、H&E染色で腫瘍の内部を調べた。
【0100】
H&E染色用に抽出した組織をホルマリン溶液で保存した。24時間後、70%エタノールで20分間脱水し、95%エタノールで20分間脱水を2回行い、最後に100%エタノールで20分間脱水を2回行った。その後、組織プロセッサー(Leica, Germany)を用いて、キシレン反応およびパラフィン反応をそれぞれ3時間行った。組織切片の切り出しのため、組織をパラフィンで固め、ミクロトームを用いて厚さ5μmに切り出し、切片をスライドグラス上に置いた。染色を開始する前に、スライドウォーマーを用いて60℃で20分間反応を行った。次に、キシレン中で3分30秒の反応を3回行った。その後、100%エタノールで2回、95%、80%および70%エタノールで順に1回、それぞれ3分30秒間反応させた。その後、流水で3分間洗浄した。次に、ヘマトキシリン中で5分間反応させ、その後10分間洗浄し、塩酸で4秒間、1%アンモニアで10秒間反応させ、5分間洗浄し、エオシンで1分10秒間反応させる順で行った。その後、スライドを70%エタノール、85%エタノールの順に1分30秒ずつ入れ、100%エタノールで1分30秒の反応を2回行った。エタノール反応後、100%エタノールおよびキシレンを1:1の割合で混合した溶液を1分30秒間反応させた。最後に、キシレンで3分間反応させ、さらに新しいキシレンで4分間反応させた。Shandon(商標) Synthetic Mountant(Thermo Scientific、USA)を用いてスライドをガラスカバーで覆った。染色終了後、顕微鏡で観察した。
【0101】
<3-1>膵臓癌異種移植モデル動物における有効性評価
膵臓癌細胞株であるMIA PaCa-2細胞を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図11aおよび図11bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて60.46±13.33%、EXO-CON投与群に比べて55.40±15.04%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて59.71±13.58%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図11cおよび図11dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて腫瘍重量が52.55±12.13%、EXO-CON投与群に比べて腫瘍重量が46.74±13.61%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて腫瘍重量が45.28±13.98%減少することが確認された。
【0102】
また、H&E染色により腫瘍組織の細胞形態を観察した結果、図11eに示すように、HEK Exo-FAF1投与群の腫瘍組織の細胞質サイズは、モック投与群、組換え型FAF1投与群およびHEK Exo-CON投与群に比べて小さく、HEK Exo-FAF1投与により細胞ネクローシスが起こっていることが確認された。
【0103】
以上の結果は、エクソソームを介したFAF1がインビボでも腫瘍形成を抑制することを示している。
【0104】
<3-2>非小細胞肺癌異種移植モデル動物における有効性評価
非小細胞肺癌細胞株であるA549細胞を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図12aおよび図12bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群ではPBS投与群に比べて75.45±9.89%、EXO-CON投与群に比べて72.77±10.97%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて75.14±10.01%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図12cおよび図12dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群ではPBS投与群に比べて59.07±13.88%、EXO-CON投与群に比べて61.31±13.12%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて63.19±12.48%腫瘍重量が減少したことが確認された。また、図12eに示すように、EXO-FAF1投与群の腫瘍内部ではネクローシスが起こっていることが確認された。
【0105】
<3-3>大腸癌異種移植モデル動物における有効性評価
大腸癌細胞株であるHCT 116細胞株を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図13aおよび図13bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて66.87±7.62%、EXO-CON投与群に比べて47.87±12.00%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて56.93±9.91%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図13cおよび図13dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて腫瘍重量が71.88±5.66%減少し、EXO-CON投与群に比べて腫瘍重量が40.12±12.05%減少し、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて腫瘍重量が60.09±8.03%減少することが確認された。また、図13eに示すように、EXO-FAF1投与群では腫瘍内部にネクローシスが起こっていることが確認された。
【0106】
<3-4>肝癌異種移植モデル動物における有効性評価
肝癌細胞株であるHep3B細胞株を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図14aおよび図14bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて76.16±11.61%、EXO-CON投与群に比べて70.74±14.25%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて62.44±18.29%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図14cおよび図14dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて73.48±33.22%、EXO-CON投与群に比べて66.62±42.16%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて44.44±70.87%腫瘍重量が減少したことが確認された。また、図14eに示すように、EXO-FAF1投与群では腫瘍内部にネクローシスが起こっていることが確認された。
【0107】
<3-5>トリプルネガティブ乳癌異種移植モデル動物における有効性評価
トリプルネガティブ乳癌細胞株であるMDA-MB-231細胞株を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図15aおよび図15bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて80.38±8.34%、EXO-CON投与群に比べて68.32±13.46%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて67.22±13.93%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図15cおよび図15dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて77.03±11.83%、EXO-CON投与群に比べて69.63±15.66%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて62.50±19.33%腫瘍重量が減少したことが確認された。また、図15eに示すように、EXO-FAF1投与群の腫瘍内部ではネクローシスが起こっていることが確認された。
【0108】
<3-6>腎臓癌異種移植モデル動物における有効性評価
腎臓癌細胞株であるCaki-1細胞株を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図16aおよび図16bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて54.23±12.40%、EXO-CON投与群に比べて43.05±15.21%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて53.56±12.60%、腫瘍体積が減少していることが確認された。また、図16cおよび図16dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて腫瘍重量が42.11±16.22%減少し、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて腫瘍重量が31.25±19.26%減少したことが確認された。また、図16eに示すように、EXO-FAF1投与群では腫瘍内部にネクローシスが起こっていることが確認された。
【0109】
<3-7>子宮頸癌異種移植モデル動物における有効性評価
子宮頸癌細胞株であるHeLa細胞を免疫不全ヌードマウスに異種移植し、FAF1内包エクソソームに腫瘍形成抑制作用があるかどうかを確認した。
その結果、図17aおよび図17bに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群ではPBS投与群に比べて66±11.33%、EXO-CON投与群に比べて56.4±14.52%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて57.1±14.30%、腫瘍体積が減少することが確認された。また、図17cおよび図17dに示すように、FAF1内包エクソソーム投与群では、PBS投与群に比べて60±17.59%、EXO-CON投与群に比べて48.6±21.39%、リコンビナントFAF1(AngioLab, Korea)投与群に比べて70.7±12.17%腫瘍重量が減少したことが確認された。また、図17eに示すように、EXO-FAF1投与群では腫瘍内部にネクローシスが起こっていることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
図10a
図10b
図11a
図11b
図11c
図11d
図11e
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図13a
図13b
図13c
図13d
図13e
図14a
図14b
図14c
図14d
図14e
図15a
図15b
図15c
図15d
図15e
図16a
図16b
図16c
図16d
図16e
図17a
図17b
図17c
図17d
図17e
【配列表】
2024512691000001.app
【国際調査報告】