(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗ANG2×VEGF多重特異性抗体を用いて脈絡膜新生血管形成を治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20240312BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20240312BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240312BHJP
A61K 31/56 20060101ALI20240312BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20240312BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61P9/00
A61P27/02
A61P27/10
A61P29/00
A61P9/10
A61K31/7088
A61K31/56
C07K16/22 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560485
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022022323
(87)【国際公開番号】W WO2022212360
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523039477
【氏名又は名称】アブプロ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ムダ, マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ルロ, ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB36
4C085BB42
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG10
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA08
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA58
4C086MA67
4C086NA05
4C086ZA33
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、概して、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を使用して、脈絡膜新生血管形成の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈絡膜新生血管形成(CNV)の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、前記対象に、有効量の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を投与することを含み、前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、配列番号1及び配列番号2、配列番号5及び配列番号6、並びに配列番号9及び配列番号10からなる群から選択される、重鎖配列及び軽鎖配列を含む、方法。
【請求項2】
脈絡膜新生血管形成(CNV)の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、前記対象に、有効量の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を投与することを含み、前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、VEGFエピトープに結合する第1の抗原結合部分と、Ang-2エピトープに結合する第2の抗原結合部分と、を含み、
前記第1の抗原結合部分が、第1の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V
H)及び第1の軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(V
L)を含み、前記第2の抗原結合部分が、第2のV
H及び第2のV
Lを含み、
前記第1のV
Hが、配列番号25又は配列番号44のアミノ酸配列を含み、前記第1のV
Lが、配列番号27のアミノ酸配列を含み、
前記第2のV
Hが、配列番号26又は配列番号45のアミノ酸配列を含み、前記第2のV
Lが、配列番号28のアミノ酸配列を含む、方法。
【請求項3】
前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、免疫グロブリン及びscFvを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記scFvが、前記第2の抗原結合部分を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記脈絡膜新生血管形成が、加齢黄斑変性(AMD)、病的近視(PM)、炎症、ポリープ状脈絡膜症、又は中心性漿液性脈絡網膜症によって引き起こされる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、CNVを有するとして診断されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
CNVの徴候又は症状が、中心視のゆがみ若しくはうねり、又は中心視における灰色/黒色/空隙斑点、網膜における液体の水疱又は出血、色の輝度の喪失又は各眼で異なって現れる色、変視、痛みを伴わない視力低下、傍中心又は中心暗点、各眼について異なって現れる物体のサイズ、中心視における閃光又は明滅、網膜内若しくは網膜下液の滲出、出血、又は黄斑線維症による視力低下のうちの1つ以上を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、VEGF及び/又はAng-2の上昇した発現レベル及び/又は増加した活性を示す、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の追加の療法を前記対象に、別々に、連続的に、又は同時に投与することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記1つ以上の追加の療法が、レーザー光凝固、光線力学療法(PDT)、ペガプタニブナトリウム、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、及びコルチコステロイドからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、局所、硝子体内、眼内、網膜下、又は強膜下投与を介して投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
強膜下投与が、前記対象に徐放性強膜下インプラントを移植することによって達成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体の投与が、前記対象における新生血管病変形成及び/又は血管漏出の低減をもたらす、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記対象が、ヒトである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、前記抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体の投与の1週間後に眼の炎症を示さない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月30日に出願された、米国仮特許出願第63/167,822号、及び2021年4月30日に出願された、米国仮特許出願第63/182,623号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を使用して、脈絡膜新生血管形成の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本技術の背景の以下の説明は、単に本技術を理解する際の補助として提供され、本技術の先行技術を説明又は構成するとは認められない。
【0004】
脈絡膜新生血管形成(CNV)は、網膜下色素上皮又は網膜下空間へのブルッフ膜における切断を通した脈絡膜に由来する新しい血管の成長を特徴とする。脈絡膜は、網膜と強膜との間にある眼の血管層であり、ブドウ膜の一部である。ブルッフ膜は、網膜色素上皮と隣接する脈絡膜の最内層である。網膜色素上皮は、眼の桿体及び錐体に隣接しており、これは視力への潜在的な干渉を説明する。CNVは、網膜内若しくは網膜下液の滲出、出血、又は黄斑部の線維症に起因する視力低下を引き起こし得る。CNVの最も重要な原因は、加齢黄斑変性(AMD)及び病的近視(PM)である。炎症、ポリープ状脈絡膜症、又は中心性漿液性脈絡網膜症などの他の原因が認識される。例えば、AMDは、高齢者に影響を与える全ての高所得国における失明及び重度視覚障害の主な原因である。疾患の有病率は、50歳以降10年毎に指数関数的に増加する。PMは、一般人口の約2%に見られる。近視性CNVは、罹患した眼の4~11%で発症する、PMを有する眼における重度視力低下及び失明の主な原因である。それはアジア人では50歳未満の人々の中で特に蔓延している。CNVは、最も重要な視力を脅かす因子であり、これは一般的にAMD及びPMに対して二次的に発生する。網膜色素上皮(RPE)細胞への酸化ストレスは、その上に細胞外破片の蓄積を引き起こし、栄養素に対するブルッフ膜の透過性に影響を与えることによってRPE細胞の機能障害をもたらすと考えられる。
【0005】
VEGFは、通常、RPE及び網膜光受容体によって産生される重要な血管新生促進要素である。CNVでは、RPEは、非定型新生血管形成を強化し、VEGFは、新しい血管の発生及び進化に関与する主な成長因子である。抗VEGF薬物でVEGFの活性を阻害するという考えは、眼の新生血管障害の管理において、特にその結果、すなわち、網膜下及び/又は網膜内流体の治療について、調査されている。しかしながら、現在の抗VEGF治療は、視力を維持するために繰り返し注射を必要とするCNVの完全な退縮を誘導しない。また、抗VEGF療法耐性に関する証拠は、CNVの治療のための代替薬の必要性を示す。
【0006】
したがって、CNVの治療を必要とする患者においてそれを効果的に治療する治療剤の緊急の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、本開示は、脈絡膜新生血管形成(CNV)の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、対象に、有効量の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を投与することを含み、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、配列番号1及び配列番号2、配列番号5及び配列番号6、並びに配列番号9及び配列番号10からなる群から選択される、重鎖配列及び軽鎖配列を含む、方法を提供する。
【0008】
一態様において、本開示は、脈絡膜新生血管形成(CNV)の治療を必要とする対象においてそれを行うための方法であって、対象に、有効量の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体を投与することを含み、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体が、VEGFエピトープに結合する第1の抗原結合部分と、Ang-2エピトープに結合する第2の抗原結合部分と、を含み、第1の抗原結合部分が、第1の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)及び第1の軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、第2の抗原結合部分が、第2のVH及び第2のVLを含み、第1のVHが、配列番号25又は配列番号44のアミノ酸配列を含み、第1のVLが、配列番号27のアミノ酸配列を含み、第2のVHが、配列番号26又は配列番号45のアミノ酸配列を含み、第2のVLが、配列番号28のアミノ酸配列を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体は、免疫グロブリン及びscFvを含む。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、scFvは、第2の抗原結合部分を含む。
【0009】
本明細書に開示される方法のいずれか及び全ての実施形態において、脈絡膜新生血管形成は、加齢黄斑変性(AMD)、病的近視(PM)、炎症、ポリープ状脈絡膜症、又は中心性漿液性脈絡網膜症によって引き起こされる。
【0010】
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、対象は、CNVを有するとして診断されている。CNVの徴候又は症状の例としては、これらに限定されないが、中心視のゆがみ若しくはうねり、又は中心視における灰色/黒色/空隙斑点、網膜における液体の水疱又は出血、色の輝度の喪失又は各眼で異なって現れる色、変視、痛みを伴わない視力低下、傍中心又は中心暗点、各眼について異なって現れる物体のサイズ、中心視における閃光又は明滅、網膜内若しくは網膜下液の滲出、出血、又は黄斑線維症による視力低下が挙げられる。本明細書に開示される方法のいずれか及び全ての実施形態において、対象は、VEGF及び/又はAng-2の上昇した発現レベル及び/又は増加した活性を示す。追加的又は代替的に、特定の実施形態において、対象は、ヒトである。
【0011】
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、本技術の方法は、1つ以上の追加の療法を対象に別々に、連続的に、又は同時に投与することを更に含む。かかる追加の療法の例としては、レーザー光凝固、光線力学療法(PDT)、ペガプタニブナトリウム、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、及びコルチコステロイドが挙げられる。
【0012】
本明細書に開示される方法のいずれか及び全ての実施形態において、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体は、局所、硝子体内、眼内、網膜下、又は強膜下投与を介して投与される。特定の実施形態において、強膜下投与は、対象に徐放性強膜下インプラントを移植することによって達成される。
【0013】
追加的又は代替的に、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体の投与は、対象の眼における新生血管病変形成及び/又は血管漏出の低減をもたらす。いくつかの実施形態において、対象は、抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体の投与の1週間後に眼の炎症を示さない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体の概略図を示す。
【
図2A】それぞれ、huVEGF及びhuANG2への、抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201(配列番号1及び配列番号2によって表される)の結合親和性(KD)を示す。
【
図2B】ABP201が、ANG2について選択的であり、サル、ラット、及びウサギと交差反応することを示す。
【
図3】本開示の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体の投与のための患者調製物を示す。
【
図4】ウサギモデルにおける抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の毒性及び薬物動態(PK)を研究するための例示的な実験設計を示す。
【
図5-1】注射の24時間後の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の忍容性結果を示す。ABP201群における炎症のフレアが観察された。
【
図5-2】注射の24時間後の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の忍容性結果を示す。ABP201群における炎症のフレアが観察された。
【
図6】注射の7日後の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の忍容性結果を示す。ABP201治療群における炎症が取り除かれた。
【
図7】注射の14日後の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の忍容性結果を示す。組織病理データは、ABP201治療群において大きな懸念を示さなかった。
【
図8】注射の14日後の試験されたウサギの組織病理を示す例示的な画像を示す。
【
図9】インビボウサギモデルにおける抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201のPK結果を示す。
【
図10】成体雄ダッチベルテッドウサギにおける抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201のPK平均パラメータを示す。
【
図11】抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201と、文献に報告されるEylea及びEylea様分子とのPK比較を示す。
【
図12A】ラットレーザー誘発性脈絡膜新生血管形成(CNV)疾患モデルを使用して、眼における抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP-201の活性を評価する研究の結果を示す。
図12Aは、ABP-201治療CNVラットにおける病変体積を示す。
図12Bは、ABP201治療CNVラットにおける漏出を示す。
【
図12B】ラットレーザー誘発性脈絡膜新生血管形成(CNV)疾患モデルを使用して、眼における抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP-201の活性を評価する研究の結果を示す。
図12Aは、ABP-201治療CNVラットにおける病変体積を示す。
図12Bは、ABP201治療CNVラットにおける漏出を示す。
【
図13A】ABP201の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)アミノ酸配列(配列番号1及び配列番号2)を示す。V
H CDR1~3及びV
L CDR1~3アミノ酸配列は、下線が引かれ、抗Ang2 scFvのV
H及びV
Lアミノ酸配列は、斜体である。抗VEGF HC及び抗Ang-2 scFvは、それぞれ、配列番号3及び配列番号4として表される。
【
図13B】ABP202の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)アミノ酸配列(配列番号5及び配列番号6)を示す。V
H CDR1~3及びV
L CDR1~3アミノ酸配列は、下線が引かれ、抗Ang2 scFvのV
H及びV
Lアミノ酸配列は、斜体である。抗VEGF HC及び抗Ang-2 scFvは、それぞれ、配列番号7及び配列番号8として表される。
【
図13C】ABP200の重鎖(HC)及び軽鎖(LC)アミノ酸配列(それぞれ、配列番号9及び配列番号10)を示す。V
H CDR1~3及びV
L CDR1~3アミノ酸配列は、下線が引かれ、抗Ang2 scFvのV
H及びV
Lアミノ酸配列は、斜体である。抗VEGF HC及び抗Ang-2 scFvは、それぞれ、配列番号11及び配列番号12として表される。
【
図13D】本開示の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体のCDR領域(配列番号13~24及び42~43によって表される)を示す。
【
図13E】本開示の抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体の可変重(V
H)ドメイン及び可変軽(V
L)ドメイン(配列番号25~28及び44~45によって表される)を示す。
【
図13F】それぞれ、配列番号38~39によって表される標的VEGF及びAng-2のアミノ酸配列を示す。
【
図14A】実験群及び対照群についての代表的な血管造影を示す。漏出は、実験方法に記載されるスコアリングシステムによって評価した。矢印は、病変を示す。
【
図14B】実験群及び対照群の代表的なOCT画像を示す。体積を、方法に記載される計算によって決定した。赤矢印は、病変を示す。
【
図15A】実験群及び対照群におけるフルオレセイン血管造影スコアを示す。
【
図15B】実験群及び対照群における病変体積を示す。
【
図16】経時的な抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201(配列番号1及び配列番号2によって表される)でのインビボ累積関心領域(ROI)蛍光の分析を示す。ビヒクル及びアフリベルセプトを、それぞれ、陰性及び陽性対照として使用した。
【
図17】各時点での抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201(配列番号1及び配列番号2によって表される)対ビヒクルのインビボ累積関心領域(ROI)蛍光パーセント差を示す。
【
図18A】経時的な
図16に記載される異なる治療群の例示的な蛍光画像を示す。
【
図18B】経時的な
図16に記載される異なる治療群の例示的な蛍光画像を示す。
【
図18C】経時的な
図16に記載される異なる治療群の例示的な蛍光画像を示す。
【
図18D】経時的な
図16に記載される異なる治療群の例示的な蛍光画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本技術の実質的な理解を提供するために、本方法の特定の態様、モード、実施形態、変形、及び特徴が、様々なレベルの詳細で以下に記載されることを理解されたい。本開示は、勿論、変化し得る特定の使用、方法、試薬、化合物組成物、又は生物系に限定されるものではないことを理解されたい。本明細書に使用される用語が、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、制限することが意図されないことも理解されたい。
【0016】
本方法を実施する際に、分子生物学、タンパク質生化学、細胞生物学、免疫学、微生物学、及び組換えDNAにおける多くの従来の技術が使用される。例えば、Sambrook and Russell eds.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd edition、the series Ausubel et al.eds.(2007)Current Protocols in Molecular Biology、the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.)、MacPherson et al.(1991)PCR 1:A Practical Approach(IRL Press at Oxford University Press)、MacPherson et al.(1995)PCR 2:A Practical Approach;Harlow and Lane eds.(1999)Antibodies,A Laboratory Manual、Freshney(2005)Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,5th edition、Gait ed.(1984)Oligonucleotide Synthesis、米国特許第4,683,195号、Hames and Higgins eds.(1984)Nucleic Acid Hybridization、Anderson(1999)Nucleic Acid Hybridization、Hames and Higgins eds.(1984)Transcription and Translation;Immobilized Cells and Enzymes(IRL Press(1986))、Perbal(1984)A Practical Guide to Molecular Cloning、Miller and Calos eds.(1987)Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(Cold Spring Harbor Laboratory)、Makrides ed.(2003)Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells、Mayer and Walker eds.(1987)Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(Academic Press,London)、及びHerzenberg et al.eds(1996)Weir’s Handbook of Experimental Immunologyを参照されたい。ポリペプチド遺伝子発現産物のレベル(すなわち、遺伝子翻訳レベル)を検出及び測定する方法は、当該技術分野で周知であり、抗体検出及び定量技術などのポリペプチド検出方法の使用を含む。(また、Strachan & Read,Human Molecular Genetics,Second Edition.(John Wiley and Sons,Inc.,NY,1999)を参照されたい)。
【0017】
ベバシズマブ(アバスチン)などの既存の抗VEGF治療剤は、全身心血管系に悪影響を及ぼし、血小板凝集、脱顆粒、及び血栓形成を誘発する。対照的に、本開示の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体は、硝子体内送達後に迅速な全身クリアランスを示し、治療された眼において所望されない炎症性応答を引き起こさない。また、本開示の抗ANG-2×VEGF多重特異性抗体は、治療後わずか1週間で低用量でインビボCNVモデルにおける新生血管病変形成及び/又は血管漏出を有意に低減する。
【0018】
定義
別途定義されない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、一般に、本技術が属する技術分野の当業者によって通例理解される意味と同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明示的に別様に示さない限り、複数の指示物を含む。例えば、「細胞(a cell)」に対する言及は、2つ以上の細胞の組み合わせなどを含む。一般に、本明細書に使用される命名法、並びに細胞培養、分子遺伝学、有機化学、分析化学、及び核酸化学における実験手順、並びに以下に記載されるハイブリダイゼーションは、当該技術分野で周知のものであり、通例用いられる。
【0019】
本明細書に使用される場合、数に関して「約」という用語は、別段の言明がない限り、又は文脈から明らかでない限り、数のいずれかの方向(より大きいか、又はより小さい)で1%、5%、又は10%の範囲内に入る数を含むと一般に解釈される(かかる数が考えられる値の0%未満であるか、又は100%を超える場合を除く)。
【0020】
本明細書に使用される場合、対象への薬剤又は薬物の「投与」は、その意図された機能を行うために、対象に化合物を導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、経口、眼内、鼻腔内、非経口(静脈内、筋肉内、腹腔内、又は皮下)、直腸、髄腔内、又は局所を含むが、これらに限定されない任意の好適な経路によって実行することができる。投与は、自己投与及び他者による投与を含む。
【0021】
本明細書に使用される場合、「抗体」という用語は、例として、限定されずに、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、それらの組み合わせ、並びに任意の脊椎動物、例えば、ヒト、ヤギ、ウサギ、及びマウスなどの哺乳動物、並びにサメ免疫グロブリンなどの非哺乳類種における免疫応答中に産生される同様の分子を含む、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子を総称して指す。本明細書で使用される場合、「抗体」(インタクトな免疫グロブリンを含む)及び「抗原結合断片」は、他の分子(例えば、生体試料中の他の分子の結合定数よりも少なくとも103M-1大きい、少なくとも104M-1大きい、又は少なくとも105M-1大きい、目的の分子の結合定数を有する抗体及び抗体断片)への結合の実質的な除外に対して目的の分子(又は高度に類似した目的の分子の群)に特異的に結合する。「抗体」という用語はまた、キメラ抗体(例えば、ヒト化マウス抗体)、ヘテロコンジュゲート抗体(二重特異性抗体など)などの遺伝子操作された形態を含む。Pierce Catalog and Handbook,1994-1995(Pierce Chemical Co.,Rockford,Ill.)、Kuby,J.,Immunology,3rd Ed.,W.H.Freeman & Co.,New York,1997も参照されたい。
【0022】
より特定的には、抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識して結合する、少なくとも軽鎖免疫グロブリン可変領域又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドを指す。抗体は、重鎖及び軽鎖からなり、それらの各々は、可変重(VH)領域及び可変軽(VL)領域と称される可変領域を有する。一緒に、VH領域及びVL領域が、抗体によって認識される抗原に対する結合に関与する。典型的には、免疫グロブリンは、ジスルフィド結合により相互接続された重(H)鎖及び軽(L)鎖を有する。軽鎖には、ラムダ(λ)及びカッパ(κ)の2つのタイプがある。抗体分子の機能的活性を決定する5つの主要な重鎖クラス(又はアイソタイプ)がある:IgM、IgD、IgG、IgA、及びIgE。各重鎖及び軽鎖は、定常領域及び可変領域(領域は、「ドメイン」としても知られている)を含む。組み合わせで、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、抗原に特異的に結合する。軽鎖及び重鎖可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」とも呼ばれる3つの超可変領域によって中断される「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域及びCDRの範囲が定義されている(参照により本明細書に組み込まれる、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,U.S.Department of Health and Human Services,1991を参照されたい)。Kabatデータベースは、現在、オンラインで維持されている。異なる軽鎖又は重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存されている。抗体のフレームワーク領域は、構成する軽鎖及び重鎖の組み合わされたフレームワーク領域であり、主にβシート立体構造をとり、CDRが、β-シート構造に接続し、場合によってその一部を形成するループを形成する。したがって、フレームワーク領域は、鎖間の非共有結合相互作用によって、CDRを正しい方向で配置することを提供する足場を形成するよう機能する。
【0023】
CDRは主に、抗原のエピトープとの結合に関与する。各鎖のCDRは通常、N末端から開始して順次付番されてCDR1、CDR2、及びCDR3と称され、また通常は、特定のCDRが配置される鎖によって特定される。よって、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、一方で、VL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。VEGF及び/又はAng-2タンパク質に結合する抗体は、特異的なVH領域及びVL領域配列、よって、特異的なCDR配列を有するであろう。異なる特異性(すなわち、異なる抗原に対する異なる結合部位)を有する抗体は、異なるCDRを有する。抗体間で異なるのはCDRであるが、CDR内の限定された数のアミノ酸位置のみが、抗原結合に直接関与する。CDR内のこれらの位置は、特異性決定残基(SDR)と呼ばれる。「免疫グロブリン関連組成物」は、本明細書に使用される場合、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、組換え抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体などを含む)並びに抗体断片を指す。抗体又はその抗原結合断片は、抗原に特異的に結合する。
【0024】
本明細書に使用される場合、「抗体関連ポリペプチド」という用語は、単鎖抗体を含む抗原結合抗体断片を意味し、可変領域を単独で、又は抗体分子のポリペプチド要素:ヒンジ領域、CH1、CH2、及びCH3ドメインの全て又は一部と組み合わせて、含むことができる。技術には、可変領域及びヒンジ領域、CH1、CH2、及びCH3ドメインの任意の組み合わせも含まれる。本方法において有用な抗体関連分子、例えば、Fab、Fab’及びF(ab’)2、Fd、単鎖Fv(scFv)、単鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、並びにVL又はVHドメインのいずれかを含む断片に限定されない。例としては、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)2断片、(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなる、dAb断片(Ward et al.,Nature 341:544-546,1989)、並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。かかる「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、全長抗体の一部、一般に、その抗原結合領域又は可変領域を含むことができる。抗体断片又は抗原結合断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、線状抗体、単鎖抗体分子、並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0025】
「二重特異性抗体」又は「BsAb」は、本明細書に使用される場合、異なる構造を有する2つの標的、例えば、2つの異なる標的抗原、同じ標的抗原上の2つの異なるエピトープ、又は標的抗原上のハプテン及び標的抗原若しくはエピトープに同時に結合することができる抗体を指す。様々な異なる二重特異性抗体構造が、当該技術分野で知られている。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体における各抗原結合部分は、VH及び/又はVL領域を含み、いくつかのかかる実施形態において、VH及び/又はVL領域は、特定のモノクローナル抗体に見出されるものである。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部分を含み、各々が、異なるモノクローナル抗体からのVH及び/又はVL領域を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、2つの抗原結合部分を含み、2つの抗原結合部分のうちの一方は、第1のモノクローナル抗体からのCDRを含有するVH及び/又はVL領域を有する免疫グロブリン分子を含み、他方の抗原結合部分は、第2のモノクローナル抗体からのCDRを含有するVH及び/又はVL領域を有する抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)、F(ab’)2、Fd、Fv、dAB、scFvなど)を含む。
【0026】
本明細書に使用される場合、「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」又は「ADCC」という用語は、その膜表面抗原が抗VEGF及び/又は抗Ang-2抗体などの抗体によって結合されている、標的細胞を、免疫系のエフェクター細胞が活性的に溶解する細胞媒介性免疫防御のメカニズムを指す。
【0027】
本明細書に使用される場合、「抗原」は、抗体(又はその抗原結合断片)が選択的に結合することができる分子を指す。標的抗原は、タンパク質、炭水化物、核酸、脂質、ハプテン、又は他の天然に存在するか若しくは合成による化合物であり得る。いくつかの実施形態において、標的抗原は、ポリペプチド(例えば、VEGF又はAng-2ポリペプチド)であり得る。また抗原を動物に投与して、動物における免疫応答を生じ得る。
【0028】
「抗原結合断片」という用語は、抗原との結合に関与するポリペプチドの一部を有する免疫グロブリン構造全体の断片を指す。本技術に有用な抗原結合断片の例には、scFv、(scFv)2、scFvFc、Fab、Fab’、及びF(ab’)2が含まれるが、これらに限定されない。上記の抗体断片のうちのいずれかが、当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、断片が、インタクト抗体と同様な手段で、結合特異性及び中和活性についてスクリーニングされる。
【0029】
本明細書に使用される場合、「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一結合部位と、その結合パートナー(例えば、抗原又は抗原ペプチド)との間全非共有結合相互作用全体の強度を意味する。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野で既知の標準的な方法によって測定することができる。低親和性複合体は、一般に、抗原から容易に解離する傾向がある抗体を含むが、高親和性複合体は、一般に、より長期間、抗原に結合し続ける傾向がある抗体を含む。
【0030】
本明細書に使用される場合、「生体試料」という用語は、生細胞に由来する試料材料を意味する。生体試料は、対象から単離された組織、細胞、細胞のタンパク質又は膜抽出物、及び生物学的液体(例えば、腹水又は脳脊髄液(CSF))、並びに対象内に存在する組織、細胞、及び液体を含み得る。本技術の生体試料には、乳房組織、腎臓組織、子宮頸部、子宮内膜、頭部又は頸部、胆嚢、耳下腺組織、前立腺、脳、下垂体、腎臓組織、筋肉、食道、胃、小腸、結腸、肝臓、脾臓、膵臓、甲状腺組織、心臓組織、肺組織、膀胱、脂肪組織、リンパ節組織、子宮、卵巣組織、副腎組織、精巣組織、扁桃腺、胸腺、血液、毛髪、頬、皮膚、血清、血漿、CSF、精液、前立腺液、精漿、尿、糞便、汗、唾液、痰、粘膜、骨髄、リンパ、及び涙から採取される試料が含まれるが、これらに限定されない。生体試料は、内臓の生検から得ることもできる。生体試料は、診断又は研究のために対象から得ることができるか、又は対照として若しくは基礎研究のために、非疾患個体から得ることができる。試料は、例えば、静脈穿刺及び外科的生検を含む標準的な方法によって得ることができる。特定の実施形態において、生体試料は、針生検によって得られる組織試料である。
【0031】
本明細書に使用される場合、「CDR移植」という用語は、「アクセプター」抗体の少なくとも1つのCDRを、所望の抗原特異性を有する「ドナー」抗体からのCDR「移植片」で置き換えることを意味する。
【0032】
本明細書に使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、1つの種からのモノクローナル抗体のFc定常領域(例えば、マウスFc定常領域)が、組換えDNA技術を使用して、別の種の抗体からのFc定常領域(例えば、ヒトFc定常領域)で置き換えられている抗体を意味する。一般に、Robinson et al.,PCT/US86/02269、Akira et al.,欧州特許出願184,187、Taniguchi,欧州特許出願171,496、Morrison et al.,欧州特許出願173,494、Neuberger et al.,WO86/01533、Cabilly et al.米国特許第4,816,567号、Cabilly et al.,欧州特許出願0125,023、Better et al.,Science 240:1041-1043,1988、Liu et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443,1987、Liu et al.,J.Immunol 139:3521-3526,1987、Sun et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218,1987、Nishimura et al.,Cancer Res 47:999-1005,1987、Wood et al.,Nature 314:446-449,1885、及びShaw et al.,J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559,1988を参照されたい。
【0033】
本明細書に使用される場合、「補体依存性細胞傷害性」又は「CDC」という用語は、一般に、表面抗原に結合したときに古典的な補体経路を誘発し、膜攻撃複合体の形成及び標的細胞溶解を誘発する、IgG及びIgM抗体のエフェクター機能を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「コンジュゲートされた」という用語は、当業者に既知の任意の方法による2つの分子の会合を指す。好適なタイプの会合としては、化学結合及び物理結合が挙げられる。化学結合としては、例えば、共有結合及び配位結合が挙げられる。物理結合としては、例えば、水素結合、双極子相互作用、ファンデルワールス力、静電相互作用、疎水性相互作用、及び芳香族スタッキングが挙げられる。
【0035】
本明細書に使用される場合、「コンセンサスFR」という用語は、コンセンサス免疫グロブリン配列におけるフレームワーク(FR)抗体領域を意味する。抗体のFR領域は、抗原に接触しない。
【0036】
本明細書に使用される場合、「対照」は、比較目的のために実験で使用される代替試料である。対照は、「陽性」又は「陰性」であることができる。例えば、実験の目的が特定のタイプの疾患に対する治療における治療剤の有効性の相関を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが知られている化合物又は組成物)及び陰性対照(治療を受けないか、又はプラセボを受ける対象若しくは試料)が典型的に用いられる。
【0037】
本明細書に使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指し、この断片は、同じポリペプチド鎖内の軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む(VHVL)。同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインを別の鎖の相補的ドメインと対合させ、2つの抗原結合部位を作製させる。ダイアボディは、例えば、EP404,097、WO93/11161、及びHollinger et al.,Proc Natl Acad Sci USA,90:6444-6448(1993)により十分に記載される。
【0038】
本明細書に使用される場合、「有効量」という用語は、所望の治療的及び/又は予防的効果を達成するのに十分な量、例えば、本明細書に記載される疾患若しくは状態、又は本明細書に記載される疾患若しくは状態に関連する1つ以上の徴候若しくは症状の予防又は減少をもたらす量を指す。治療的又は予防的適用の文脈において、対象に投与される組成物の量は、組成物、疾患の程度、タイプ、及び重症度、並びに全般的な健康、年齢、性別、体重、及び薬物に対する耐性などの個体の特性に応じて異なる。当業者は、これら及び他の要因に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。組成物はまた、1つ以上の追加の治療用化合物と組み合わせて投与することができる。本明細書に記載の方法において、治療用組成物は、本明細書に記載される疾患又は状態の1つ以上の徴候又は症状を有する対象に投与され得る。本明細書に使用される場合、「治療有効量」の組成物は、疾患又は状態の生理学的影響が改善又は排除される組成物レベルを指す。治療有効量は、1回以上の投与で与えることができる。
【0039】
本明細書に使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識及び活性化段階とは対照的に、免疫応答のエフェクター段階に含まれる免疫細胞を意味する。例示的な免疫細胞には、骨髄又はリンパ起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、好中球、多形核細胞、顆粒球、肥満細胞、及び好塩基球が含まれる。エフェクター細胞は、特異的なFc受容体を発現し、特異的免疫機能を実行する。エフェクター細胞は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、例えば、ADCCを誘導することができる好中球を誘導することができる。例えば、FcαRを発現する単球、マクロファージ、好中球、好酸球、及びリンパ球は、標的細胞の特異的殺傷に関与し、免疫系の他の成分に抗原を提示するか、又は抗原を提示する細胞に結合する。
【0040】
本明細書に使用される場合、「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合することができるタンパク質決定因子を意味する。エピトープは通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、通常、特異的な三次元構造特徴、並びに特異的な電荷特徴を有する。立体構造エピトープ及び非立体構造エピトープは、変性化溶媒の存在下で前者との結合は失われるが、後者とは失われないことで、区別される。いくつかの実施形態において、VEGF又はAng-2タンパク質の「エピトープ」は、本技術の抗VEGF又はAng-2多重特異性抗体が特異的に結合するタンパク質の領域である。いくつかの実施形態において、エピトープは、立体構造エピトープ又は非立体構造エピトープである。エピトープに結合する抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体をスクリーニングするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)などに記載される定型的な交差遮断アッセイを行うことができる。このアッセイは、抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体が、本技術の抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体と同じ部位又はエピトープに結合するかを決定するために使用することができる。代替的に、又は追加的に、エピトープマッピングは、当技術分野で既知の方法によって行うことができる。例えば、抗体配列は、アラニンスキャニングなどによって変異誘発して、接触残基を特定することができる。異なる方法において、VEGF又はAng-2タンパク質の異なる領域に対応するペプチドは、試験抗体との競合アッセイ、又は試験抗体と、特徴付けられたか若しくは既知のエピトープを有する抗体との競合アッセイに使用することができる。
【0041】
本明細書に使用される場合、「発現」は、遺伝子の前駆体mRNAへの転写と、成熟mRNAを産生する前駆体mRNAのスプライシング及び他のプロセシングと、mRNA安定性と、成熟mRNAのタンパク質への翻訳(コドンの使用及びtRNAの利用能を含む)と、適切な発現及び機能が必要とされる場合、翻訳産物のグリコシル化及び/又は他の修飾と、のうちの1つ以上を含む。
【0042】
本明細書に使用される場合、「遺伝子」という用語は、プロモーター、エクソン、イントロン、及び発現を制御する他の非翻訳領域を含む、RNA産物の調節された生合成のための全ての情報を含む、DNAのセグメントを意味する。
【0043】
本明細書に使用される場合、「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間又は2つの核酸分子間の配列類似性を指す。相同性は、比較の目的のためにアラインメントさせ得る、各配列の位置を比較することによって決定することができる。比較される配列における位置が同じ塩基又はアミノ酸で占められている場合、その分子はその位置において相同的である。配列間の相同性の程度は、配列によって共有される、一致するか又は相同な位置の数の関数である。ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチド領域(又はポリペプチド又はポリペプチド領域)は、別の配列に対する特定のパーセンテージ(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、又は99%)の「配列同一性」を有することは、アラインメントしたときに、塩基(又はアミノ酸)のそのパーセンテージが、2つの配列を比較する際に同じであることを意味する。このアラインメント及び相同性又は配列同一性パーセントは、当該技術分野で既知のソフトウェアプログラムを使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、デフォルトパラメータが、アラインメントのために使用される。1つのアラインメントプログラムはBLASTであり、デフォルトパラメータを使用する。特に、プログラムはBLASTNとBLASTPであり、以下のデフォルトパラメータ:Genetic code=standard、filter=none、strand=both、cutoff=60、expect=10、Matrix=BLOSUM62、Descriptions=50 sequences、sort by=HIGH SCORE、Databases=non-redundant、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+SwissProtein+SPupdate+PIRを使用する。これらのプログラムの詳細は、National Center for Biotechnology Informationで見出すことができる。生物学的に等価なポリヌクレオチドは、指定された相同性パーセントを有し、同じか又は類似の生物学的活性を有するポリペプチドをコードするものである。2つの配列は、それらが互いに40%未満の同一性、又は25%未満の同一性を共有する場合、「無関連」又は「非相同的」とみなされる。
【0044】
本明細書に使用される場合、非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、又は非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)からの超可変領域残基によって置き換えられているヒト免疫グロブリンである。いくつかの実施形態において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に認められない残基を含み得る。これらの修飾は、結合親和性などの抗体性能を更に洗練するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメイン(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、又はFv)の実質的に全てを含み、そこにおける超可変ループの全て又は実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全ては、ヒト免疫グロブリンコンセンサスFR配列のものであるが、FR領域は、結合親和性を改善する1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的には、H鎖では6個以下、L鎖では3個以下である。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものの少なくとも一部を含み得る。更なる詳細については、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986)、Reichmann et al.,Nature 332:323-329(1988)、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。例えば、Ahmed & Cheung,FEBS Letters 588(2):288-297(2014)を参照されたい。
【0045】
本明細書に使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般に、「相補性決定領域」若しくは「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、VLにおける残基約24~34(L1)、50~56(L2)、及び89~97(L3)の周囲、並びにVHにおける約31~35B(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)の周囲)(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))及び/又は「超可変ループ」からの残基(例えば、VLにおける残基26~32(L1)、50~52(L2)、及び91~96(L3)、並びにVHにおける26~32(H1)、52A~55(H2)、及び96~101(H3))(Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。
【0046】
本明細書に使用される場合、「同一の」又は「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸又はポリペプチド配列の文脈で使用される場合、以下に記載のデフォルトパラメータを用いたBLAST若しくはBLAST2.0配列比較アルゴリズム、又はマニュアルアラインメント及び目視検査(例えば、NCBIウェブサイト)を使用して測定された、比較幅又は指定された領域にわたる最大の対応について比較及びアラインメントされる場合、同じであるか、又は同じであるアミノ酸残基若しくはヌクレオチドの指定されたパーセント(すなわち、指定された領域(例えば、本明細書に記載される抗体をコードするヌクレオチド配列又は本明細書に記載される抗体のアミノ酸配列)にわたる約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより高い同一性)を有する2つ以上の配列又はサブ配列を指す。次いで、かかる配列は、「実質的に同一」であると言われる。この用語はまた、試験配列の相補体を指すか、又はそれに適用することができる。この用語はまた、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含む。いくつかの実施形態において、同一性は、長さが少なくとも約25個のアミノ酸若しくはヌクレオチド、又は長さが50~100個のアミノ酸若しくはヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0047】
本明細書に使用される場合、「インタクト抗体」又は「インタクト免疫グロブリン」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖ポリペプチド及び2つの軽(L)鎖ポリペプチドを有する抗体を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略される)及び重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、3つのドメインであるCH1、CH2、及びCH3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略される)及び軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLで構成される。VH領域及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分化することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシル末端に、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1の成分(Clq)を含む、宿主組織又は因子との免疫グロブリンの結合を媒介することができる。
【0048】
本明細書に使用される場合、「リンカー」という用語は、2つ以上のポリペプチド又は核酸を、それらが互いに連結されるように共有結合する官能基(例えば、化学物質又はポリペプチド)を指す。本明細書に使用される場合、「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を一緒に結合させるために(例えば、VH及びVLドメインを結合させるために)使用される1つ以上のアミノ酸を指す。特定の実施形態において、リンカーは、(GGGGS)nのアミノ酸配列を含み、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15以上である。特定の実施形態において、リンカーは、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号40)又はGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGS(配列番号41)の配列を有するアミノ酸を含む。
【0049】
本明細書に使用される場合、「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る自然に発生する可能性がある変異以外は同一である。例えば、モノクローナル抗体は、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む、それが産生される方法ではない、単一クローンに由来する抗体であることができる。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一の結合特異性及び親和性を示す。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して指向される。更に、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を典型的に含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。「モノクローナル」という修飾語句は、抗体の実質的に均一な集団から得られるときの抗体の特徴を示すが、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするとは解釈されない。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の多種多様な技術を使用して調製することができる。例えば、本方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature 256:495(1975)によって最初に報告されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、又は組換えDNA法によって作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991)及びMarks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1991)で報告されている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離され得る。
【0050】
本明細書に使用される場合、「核酸」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、任意のRNA又はDNAを意味し、非修飾又は修飾されたRNA又はDNAであり得る。ポリヌクレオチドには、限定されないが、一本鎖及び二本鎖DNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖及び二本鎖RNA、一本鎖及び二本鎖領域の混合物であるRNA、並びに一本鎖若しくはより典型的には二本鎖、又は一本鎖及び二本鎖領域の混合物であり得るDNA及びRNAを含むハイブリッド分子が含まれる。加えて、ポリヌクレオチドは、RNA若しくはDNA、又はRNA及びDNAの両方を含む三本鎖領域を指す。「ポリヌクレオチド」という用語はまた、1つ以上の修飾塩基を含むDNA又はRNA、及び安定性又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAを含む。
【0051】
本明細書に使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合性のある、任意及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌化合物、等張性及び吸収遅延化化合物などを含むことが意図される。薬学的に許容される担体及びその製剤は、当業者に既知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(20th edition,ed.A.Gennaro,2000,Lippincott,Williams & Wilkins,Philadelphia,Pa.)に記載されている。
【0052】
本明細書に使用される場合、「ポリクローナル抗体」という用語は、少なくとも2つの異なる抗体産生細胞株に由来する抗体の調製を意味する。本用語の使用は、抗原の異なるエピトープ又は領域に特異的に結合する抗体を含有する、少なくとも2つの抗体の調製物を含む。
【0053】
本明細書に使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に使用され、ペプチド結合又は修飾ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸、すなわち、ペプチドアイソスター、を含むポリマーを意味する。ポリペプチドは、一般にペプチド、グリコペプチド、又はオリゴマーと称される短鎖、及び一般にタンパク質と称される長鎖の両方を指す。ポリペプチドは、20個の遺伝子コードされたアミノ酸以外のアミノ酸を含み得る。ポリペプチドには、翻訳後プロセシングなどの天然プロセス、又は当該技術分野において周知である化学修飾技術のいずれかによって修飾されたアミノ酸配列が含まれる。かかる修飾は、基本的なテキスト及びより詳細なモノグラフ、並びに膨大な研究文献に十分記載されている。
【0054】
本明細書に使用される場合、「組換え」という用語は、例えば、細胞、又は核酸、タンパク質、若しくはベクターに関連して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、異種核酸若しくはタンパク質の導入、又は天然核酸若しくはタンパク質の変更によって修飾されているか、あるいは材料がそのように修飾された細胞に由来することを示す。よって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然(非組換え)形態には見られない遺伝子を発現するか、又はそうでなければ異常に発現されるか、過小発現されるか、若しくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0055】
本明細書に使用される場合、用語「別個の」治療的使用は、異なる経路による、同時又は実質的に同時の、少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
【0056】
本明細書に使用される場合、用語「連続的な」治療的使用は、異なる時点での少なくとも2つの活性成分の投与を指し、投与経路は同一であるか、又は異なる。より特定的には、連続的使用は、一方の活性成分の後に他方の投与を開始する投与全体を指す。したがって、一方の活性成分を数分、数時間、又は数日にわたって投与して、その後に他の活性成分を投与することが可能である。この例では同時治療はない。
【0057】
本明細書に使用される場合、「同時の」治療的使用という用語は、同じ経路による、同時、又は実質的に同時の少なくとも2つの活性成分の投与を指す。
【0058】
本明細書に使用される場合、「単鎖抗体」又は「単鎖Fv(scFv)」という用語は、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHの抗体融合分子を指す。単鎖抗体分子は、いくつかの個々の分子、例えば、二量体、三量体、又は他のポリマーを有するポリマーを含み得る。更に、Fv断片の2つのドメインであるVL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を使用して、VL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって結合することができる(単鎖Fv(scFv)として知られる)。Bird et al.(1988)Science 242:423-426及びHuston et al.(1988)Proc Natl Acad Sci 85:5879-5883。かかる単鎖抗体は、組換え技法又はインタクト抗体の酵素若しくは化学的切断によって調製することができる。
【0059】
本明細書に使用される場合、「特異的に結合する」とは、別の分子(例えば、抗原)を認識して結合するが、他の分子を実質的に認識及び結合しない分子(例えば、抗体又はその抗原結合断片)を指す。「特異的結合」、「に特異的に結合する」、又は特定の分子(例えば、ポリペプチド、又はポリペプチド上のエピトープ)に「対して特異的である」という用語は、本明細書に使用される場合、例えば、それが結合する分子に対して、約10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、又は10-12MのKDを有する分子によって示すことができる。「特異的結合する」という用語は、分子(例えば、抗体又はその抗原結合断片)が特定のポリペプチド(例えば、VEGF又はAng-2ポリペプチド)、又は特定のポリペプチド上のエピトープに結合し、いずれの他のポリペプチド又はポリペプチドエピトープにも実質的に結合することがない結合を指し得る。
【0060】
本明細書に使用される場合、「対象」、「患者」、又は「個体」という用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、又はヒトであることができる。いくつかの実施形態において、対象、患者、又は個体は、ヒトである。
【0061】
本明細書に使用される場合、「治療剤」という用語は、有効量で存在する場合、それを必要とする対象に対して所望の治療効果を生じる化合物を意味することが意図される。
【0062】
本明細書で使用される「治療すること」又は「治療」は、ヒトなどの対象における、本明細書に記載される疾患又は障害の治療を包含し、(i)疾患若しくは障害を阻害すること、すなわち、その発症を阻害すること、(ii)疾患若しくは障害を緩和すること、すなわち、障害の退行を引き起こすこと、(iii)障害の進行を遅らせること、及び/又は(iv)疾患若しくは障害の1つ以上の症状の進行を阻害、緩和、若しくは遅延することを含む。いくつかの実施形態において、治療は、疾患に関連する症状が、例えば、緩和されるか、低減されるか、治癒されるか、又は寛解状態になることを意味する。
【0063】
本明細書に記載される障害の様々な治療モードは、全治療を含むが、全治療よりも少ない「実質的な」ことを意味することが意図され、いくつかの生物学的又は医学的に関連する結果が達成されることも理解されたい。治療は、慢性疾患のための継続的な長期治療、又は急性状態の治療のための単回、若しくは数回の投与であり得る。
【0064】
本明細書に記載される抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体のアミノ酸配列修飾が企図される。かかる修飾は、抗体の結合親和性及び/若しくは他の生物学的特性を改善するために、例えば、コードされたアミノ酸をグリコシル化させるために、又はC1q、Fc受容体に結合する抗体の能力を破壊するために、又は補体系を活性化するために、行われ得る。抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体のアミノ酸配列バリアントは、抗体核酸に適切なヌクレオチド変更を導入することによって、ペプチド合成によって、又は化学修飾によって調製される。かかる修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又はそれへの挿入及び/又はその置換が含まれる。得られた抗体が所望の特性を有する限り、欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせが目的の抗体を得るためになされる。修飾はまた、タンパク質のグリコシル化のパターンの変化を含む。置換変異誘発について最も関心が高い部位には、超可変領域が含まれるが、FR変更もまた企図される。
【0065】
保存的アミノ酸置換は、所与のアミノ酸を、類似する生化学的特性(例えば、電荷、疎水性、及びサイズ)を有する別のアミノ酸に変更するアミノ酸置換である。「保存的置換」を以下の表に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0066】
置換バリアントの一タイプは、親抗体の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。かかる置換バリアントを生成するために好都合な方法は、ファージディスプレイを使用する親和性成熟を含む。具体的には、いくつかの超可変領域部位(例えば、6~7部位)を変異させて、全ての可能なアミノ酸置換を各部位で生じさせる。このように生成された抗体バリアントは、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III生成物との融合として、繊維状ファージ粒子からの一価形式でディスプレイされる。次いで、ファージディスプレイされたバリアントを、本明細書に開示されるように、それらの生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングする。修飾について超可変領域部位候補を特定するために、アラニンスキャニング変異誘発を行い、抗原結合に著しく寄与する超可変領域残基を特定することができる。代替的に、又は追加的に、抗原-抗体複合体の結晶構造を分析して、抗体と抗原との間の接触点を特定することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接する残基は、本明細書に詳述される技術による置換のための候補である。かかるバリアントが生成されると、バリアントのパネルは、本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1つ以上の関連アッセイにおいて類似するか又は優れた特性を有する抗体が、更なる開発のために選択され得る。
【0067】
VEGF
血管内皮成長因子(VEGF)は、一般に、脈管形成及び血管新生に関与するシグナル伝達タンパク質のサブファミリーである。VEGF-A(UniProt P15692.2、配列番号38)は、タンパク質の最も一般的に研究され、関連する形態である。ベバシズマブ、ラニビズマブ、及びアフリベルセプトなどの薬物は全て、血管新生関連疾患状態を低減するために、このタンパク質を標的とする。内皮細胞のための分泌されたマイトジェンとしてのVEGFの役割の特定前に、それは血管透過性因子として特定され、増殖、移動、特殊化、及び生存を含む、内皮細胞挙動の多くの異なる態様を制御するVEGFの能力を強調した(Ruhrberg,2003 BioEssays 25:1052-1060)。VEGFファミリーメンバーとしては、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、VEGF-E、胎盤成長因子(PIGF)、及び内分泌腺由来VEGF(EG-VEGF)が挙げられる。VEGFの活性形態は、他のVEGFファミリーメンバーとともにホモ二量体又はヘテロ二量体のいずれかとして合成される。VEGF-Aは、代替スプライシングによって生成される6つのアイソフォーム:VEGF121、VEGF145、VEGF165、VEGF183、VEGF189、及びVEGF206に存在する。これらのアイソフォームは、主にそれらのバイオアベイラビリティにおいて異なり、VEGF165が優勢なアイソフォームである(Podar,et al.2005 Blood 105(4):1383-1395)。様々なアイソフォームの段階特異的及び組織特異的比を生成する胚発生中のスプライシングの調節は、VEGFに応答する内皮細胞の明確で文脈依存的な挙動のための豊富な可能性を生み出す。VEGFは、正常及び疾患関連血管新生(Jakeman,et al.1993 Endocrinology:133,848-859、Kolch,et al.1995 Breast Cancer Research and Treatment:36,139-155)並びに血管透過性(Connolly,et al.1989 J.Biol.Chem:264,20017-20024)の両方の重要な刺激因子であると考えられている。
【0068】
Ang-2
Ang-2及びVEGFは、病理学的血管新生及び転移を促進するために協調して作用する。Ang-2の上方調節は、VEGF経路阻害に対する回避メカニズムである。Ang1ではなく、Ang2レベルは、ヒト網膜血管疾患において上昇する。VEGFファミリーに加えて、アンジオポエチンは、血管発生及び出生後血管新生に関与すると考えられている。ANG-2(GenBank AAF21627.2、配列番号39)発現は、主に、ANG-1の構成的安定化又は成熟機能を遮断し、血管が発芽シグナルにより応答し得る可塑性状態に戻り、留まることを可能にすると考えられる血管リモデリングの部位に限定される(Hanahan,1997、Holash et al,Oncogene 18:5356-62(1999)、Maisonpierre,1997)。通常、Ang-2は、血管形成事象を混乱させる。しかしながら、VEGFの存在下では、新生血管形成がもたらされる。このタンパク質、及びその関連する経路、Tie2は、VEGFとともにCNV進行に寄与することが示されている。LC-10は、入手可能な主要な抗Ang-2薬物である。
【0069】
本技術の免疫グロブリン関連組成物
本技術は、抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物(例えば、抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体又はその抗原結合断片)の生成及び使用のための方法及び組成物を記載する。本技術の抗体及び抗原結合断片は、VEGF及びAng-2ポリペプチドに選択的に結合する。本開示の抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物は、CNVの診断、又は治療に有用であり得る。本技術の範囲内の抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物には、例えば、標的ポリペプチド、ホモログ、誘導体、又はその断片に特異的に結合するモノクローナル、キメラ、ヒト化、二重特異性抗体、及びダイアボディが含まれるが、これらに限定されない。本技術の抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物のアミノ酸配列が、
図13A~13Eに記載される。
【0070】
一態様において、本開示は、VEGFエピトープに結合する第1の抗原結合部分と、Ang-2エピトープに結合する少なくとも第2の抗原結合部分と、を含む、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体又はその抗原結合断片を提供し、第1の抗原結合部分は、第1の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)及び第1の軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、第2の抗原結合部分は、第2のVH及び第2のVLを含み、(a)第1のVHは、配列番号13のVH-CDR1配列、配列番号14のVH-CDR2配列、及び配列番号15若しくは配列番号42からなる群から選択されるVH-CDR3配列を含み、かつ/又は第1のVLは、配列番号16のVL-CDR1配列、配列番号17のVL-CDR2配列、及び配列番号18のVL-CDR3配列を含む。追加的又は代替的に、本明細書に開示される多重特異性(例えば、二重特異性)抗体又は抗原結合断片のいくつかの実施形態において、第2のVHは、配列番号19のVH-CDR1配列、配列番号20若しくは配列番号43のVH-CDR2配列、及び配列番号21のVH-CDR3配列を含み、かつ/又は第2のVLは、配列番号22のVL-CDR1配列、配列番号23のVL-CDR2配列、及び配列番号24のVL-CDR3配列を含む。
【0071】
一態様において、本開示は、VEGFエピトープに結合する第1の抗原結合部分と、Ang-2エピトープに結合する少なくとも第2の抗原結合部分と、を含む、多重特異性(例えば、二重特異性)抗体又はその抗原結合断片を提供し、第1の抗原結合部分は、第1の重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)及び第1の軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、第2の抗原結合部分は、第2のVH及び第2のVLを含み、第1のVHは、配列番号25若しくは配列番号44のアミノ酸配列を含み、かつ/又は第1のVLは、配列番号27のアミノ酸配列を含む。追加的又は代替的に、本明細書に開示される多重特異性(例えば、二重特異性)抗体又は抗原結合断片のいくつかの実施形態において、第2のVHは、配列番号26若しくは配列番号45のうちのいずれか1つから選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/又は第2のVLは、配列番号28のアミノ酸配列を含む。
【0072】
上記の実施形態のうちのいずれかにおいて、抗体は、任意のアイソタイプ、例えば、これらに限定されないが、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む)、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgD、IgE、又はIgM、及びIgYのFcドメインを更に含む。定常領域配列の非限定的な例には、以下が含まれる。
【0073】
ヒトIgD定常領域、Uniprot:P01880(配列番号29)
APTKAPDVFPIISGCRHPKDNSPVVLACLITGYHPTSVTVTWYMGTQSQPQRTFPEIQRRDSYYMTSSQLSTPLQQWRQGEYKCVVQHTASKSKKEIFRWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDHGPMK
【0074】
ヒトIgG1定常領域、Uniprot:P01857(配列番号30)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0075】
ヒトIgG2定常領域、Uniprot:P01859(配列番号31)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDISVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0076】
ヒトIgG3定常領域、Uniprot:P01860(配列番号32)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYTCNVNHKPSNTKVDKRVELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFKWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTFRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESSGQPENNYNTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNIFSCSVMHEALHNRFTQKSLSLSPGK
【0077】
ヒトIgM定常領域、Uniprot:P01871(配列番号33)
GSASAPTLFPLVSCENSPSDTSSVAVGCLAQDFLPDSITLSWKYKNNSDISSTRGFPSVLRGGKYAATSQVLLPSKDVMQGTDEHVVCKVQHPNGNKEKNVPLPVIAELPPKVSVFVPPRDGFFGNPRKSKLICQATGFSPRQIQVSWLREGKQVGSGVTTDQVQAEAKESGPTTYKVTSTLTIKESDWLGQSMFTCRVDHRGLTFQQNASSMCVPDQDTAIRVFAIPPSFASIFLTKSTKLTCLVTDLTTYDSVTISWTRQNGEAVKTHTNISESHPNATFSAVGEASICEDDWNSGERFTCTVTHTDLPSPLKQTISRPKGVALHRPDVYLLPPAREQLNLRESATITCLVTGFSPADVFVQWMQRGQPLSPEKYVTSAPMPEPQAPGRYFAHSILTVSEEEWNTGETYTCVAHEALPNRVTERTVDKSTGKPTLYNVSLVMSDTAGTCY
【0078】
ヒトIgG4定常領域、Uniprot:P01861(配列番号34)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0079】
ヒトIgA1定常領域、Uniprot:P01876(配列番号35)
ASPTSPKVFPLSLCSTQPDGNVVIACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQGVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCLAGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPSTPPTPSPSTPPTPSPSCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGVTFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAEPWNHGKTFTCTAAYPESKTPLTATLSKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRLAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY
【0080】
ヒトIgA2定常領域、Uniprot:P01877(配列番号36)
ASPTSPKVFPLSLDSTPQDGNVVVACLVQGFFPQEPLSVTWSESGQNVTARNFPPSQDASGDLYTTSSQLTLPATQCPDGKSVTCHVKHYTNPSQDVTVPCPVPPPPPCCHPRLSLHRPALEDLLLGSEANLTCTLTGLRDASGATFTWTPSSGKSAVQGPPERDLCGCYSVSSVLPGCAQPWNHGETFTCTAAHPELKTPLTANITKSGNTFRPEVHLLPPPSEELALNELVTLTCLARGFSPKDVLVRWLQGSQELPREKYLTWASRQEPSQGTTTFAVTSILRVAAEDWKKGDTFSCMVGHEALPLAFTQKTIDRMAGKPTHVNVSVVMAEVDGTCY
【0081】
ヒトIgカッパ定常領域、Uniprot:P01834(配列番号37)
TVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0082】
いくつかの実施形態において、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、配列番号29~36と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%同一であるか、又は100%同一である重鎖定常領域を含む。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、配列番号37と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%同一であるか、又は100%同一である軽鎖定常領域を含む。
【0083】
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、抗体又は抗原結合断片は、VEGF及び/又はAng-2ポリペプチドの細胞外領域に結合する。いくつかの実施形態において、VEGFポリペプチドは、配列番号38のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、Ang-2ポリペプチドは、配列番号39のアミノ酸配列を有する。特定の実施形態において、エピトープは、立体構造エピトープ又は非立体構造エピトープである。
【0084】
いくつかの実施形態において、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)免疫グロブリン可変ドメイン配列は、同じポリペプチド鎖の構成要素である。他の実施形態において、HC及びLC免疫グロブリン可変ドメイン配列は、異なるポリペプチド鎖の構成要素である。特定の実施形態において、抗体は、全長抗体である。
【0085】
いくつかの実施形態において、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、少なくとも1つのVEGFポリペプチド及び/又は少なくとも1つのAng-2ポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態において、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、少なくとも1つのVEGFポリペプチドに約10-3M、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、若しくは10-12Mの解離定数(KD)で、及び/又は少なくとも1つのAng-2ポリペプチドに約10-3M、10-4M、10-5M、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、若しくは10-12Mの解離定数(KD)で結合する。特定の実施形態において、免疫グロブリン関連組成物は、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体、又は多重特異性抗体である。いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体フレームワーク領域を含む。
【0086】
特定の実施形態において、免疫グロブリン関連組成物は、N297A、K322A、H435A、L234A、及びL235Aからなる群から選択される1つ以上のアミノ酸置換を含むIgG1定常領域を含有する。追加的、又は代替的に、いくつかの実施形態において、免疫グロブリン関連組成物は、S228P変異を含むIgG4定常領域を含有する。
【0087】
一態様において、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、それぞれ、配列番号1及び2、配列番号5及び6、並びに配列番号9及び10からなる群から選択される重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含む。
【0088】
一態様において、本開示は、第1のポリペプチド鎖、第2のポリペプチド鎖、第3のポリペプチド鎖、及び第4のポリペプチド鎖を含む多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を提供し、第1及び第2のポリペプチド鎖は、互いに共有結合し、第2及び第3のポリペプチド鎖は、互いに共有結合し、第3及び第4のポリペプチド鎖は、互いに共有結合し、(a)第1のポリペプチド鎖及び第4のポリペプチド鎖の各々は、N末端からC末端への方向で、(i)第1のエピトープに特異的に結合することができる第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインと、(ii)第1の免疫グロブリンの軽鎖定常ドメインと、を含み、(b)第2のポリペプチド鎖及び第3のポリペプチド鎖の各々は、N末端からC末端への方向で、(i)第1のエピトープに特異的に結合することができる第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインと、(ii)第1の免疫グロブリンの重鎖定常ドメインと、(iii)アミノ酸配列(GGGGS)2を含む可撓性ペプチドリンカーと、(iv)第2の免疫グロブリンの相補的重鎖可変ドメインに連結している第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメイン、又は第2の免疫グロブリンの相補的軽鎖可変ドメインに連結している第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインと、を含み、第2の免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖可変ドメインは、第2のエピトープに特異的に結合することができ、アミノ酸配列(GGGGS)4を含む可撓性ペプチドリンカーを介して一緒に連結して、一本鎖可変断片を形成し、第1の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインは、配列番号25若しくは44のうちのいずれか1つを含み、かつ/又は第1の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインは、配列番号27を含む。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、第2の免疫グロブリンの重鎖可変ドメインは、配列番号26若しくは45のいずれか1つを含み、かつ/又は第2の免疫グロブリンの軽鎖可変ドメインは、配列番号28を含む。
【0089】
いくつかの態様において、本明細書に記載の抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物は、迅速な結合並びに細胞取り込み及び/又は緩やかな放出を促進するための構造的修飾を含有する。いくつかの態様において、本技術の抗VEGF×Ang-2多重特異性免疫グロブリン関連組成物(例えば、抗体)は、CH2定常重鎖領域に欠失を含有して、迅速な結合並びに細胞取り込み及び/又は緩やかな放出を促進し得る。いくつかの態様において、Fab断片を使用して、迅速な結合並びに細胞取り込み及び/又は緩やかな放出を促進する。いくつかの態様において、F(ab)’2断片を使用して、迅速な結合並びに細胞取り込み及び/又は緩やかな放出を促進する。
【0090】
一態様において、本技術は、本明細書に記載される免疫グロブリン関連組成物のうちのいずれか及び全てをコードする組換え核酸配列を提供する。本明細書に記載される免疫グロブリン関連組成物のうちのいずれかをコードする任意の核酸配列を発現する宿主細胞も本明細書に開示される。
【0091】
本技術の免疫グロブリン関連組成物(例えば、抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体)は、二重特異性、三重特異性、又はより多い多重特異性であり得る。多重特異性抗体は、1つ以上のVEGF又はAng-2ポリペプチドの異なるエピトープについて、及び異種ポリペプチド又は固体支持材などの異種組成物について特異的であることができる。例えば、WO93/17715、WO92/08802、WO91/00360、WO92/05793、Tutt et al.,J.Immunol.147:60-69(1991)、米国特許第5,573,920号、同第4,474,893号、同第5,601,819号、同第4,714,681号、同第4,925,648号、同第6,106,835号、Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547-1553(1992)を参照されたい。いくつかの実施形態において、免疫グロブリン関連組成物は、キメラである。特定の実施形態において、免疫グロブリン関連組成物は、ヒト化されている。
【0092】
本技術の免疫グロブリン関連組成物は更に、異種ポリペプチドにN末端若しくはC末端で組換え的に融合することができるか、又はポリペプチド若しくは他の組成物に化学的にコンジュゲートすることができる(共有結合的及び非共有結合的コンジュゲーションを含む)。例えば、本技術の免疫グロブリン関連組成物は、検出アッセイの標識として有用な分子、及び異種ポリペプチド、薬物、又は毒素などのエフェクター分子に組換え的に融合又はコンジュゲートすることができる。例えば、WO92/08495、WO91/14438、WO89/12624、米国特許第5,314,995号、及びEP0396387を参照されたい。
【0093】
本技術の免疫グロブリン関連組成物の上記実施形態のいずれかにおいて、抗体又は抗原結合断片は、任意選択的に、同位体、色素、クロマゲン(chromagen)、造影剤、薬物、毒素、サイトカイン、酵素、酵素阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、成長因子、放射性核種、金属、リポソーム、ナノ粒子、RNA、DNA、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される薬剤にコンジュゲートされ得る。化学結合又は物理結合について、免疫グロブリン関連組成物上の官能基は、典型的には、薬剤上の官能基と会合する。あるいは、薬剤上の官能基は、免疫グロブリン関連組成物上の官能基と会合する。
【0094】
薬剤及び免疫グロブリン関連組成物上の官能基は、直接会合することができる。例えば、薬剤上の官能基(例えば、スルフヒドリル基)は、免疫グロブリン関連組成物上の官能基(例えば、スルフヒドリル基)と会合して、ジスルフィドを形成することができる。あるいは、官能基は、架橋剤(すなわち、リンカー)を通して会合することができる。架橋剤のいくつかの例を以下に記載する。架橋剤は、薬剤又は免疫グロブリン関連組成物のいずれかに結合することができる。コンジュゲート中の薬剤又は免疫グロブリン関連組成物の数は、他方に存在する官能基の数によっても限定される。例えば、コンジュゲートに会合した薬剤の最大数は、免疫グロブリン関連組成物に存在する官能基の数に依存する。あるいは、薬剤と会合した免疫グロブリン関連組成物の最大数は、薬剤に存在する官能基の数に依存する。
【0095】
更に別の実施形態において、コンジュゲートは、1つの薬剤に会合した1つの免疫グロブリン関連組成物を含む。一実施形態において、コンジュゲートは、少なくとも1つの免疫グロブリン関連組成物に化学的に結合した(例えば、コンジュゲートした)少なくとも1つの薬剤を含む。薬剤は、当業者に既知の任意の方法によって免疫グロブリン関連組成物に化学的に結合することができる。例えば、薬剤上の官能基は、免疫グロブリン関連組成物上の官能基に直接結合し得る。好適な官能基のいくつかの例としては、例えば、アミノ、カルボキシル、スルフヒドリル、マレイミド、イソシアネート、イソチオシアネート、及びヒドロキシルが挙げられる。
【0096】
薬剤はまた、ジアルデヒド、カルボジイミド、ジマレイミドなどのような、架橋剤によって免疫グロブリン関連組成物に化学的に結合し得る。架橋剤は、例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,Illから得ることができる。Pierce Biotechnology,Inc.ウェブサイトは、援助を提供することができる。追加の架橋剤としては、Kreatech Biotechnology,B.V.、Amsterdam,The Netherlandsの米国特許第5,580,990号、同第5,985,566号、及び同第6,133,038号に記載される白金架橋剤が挙げられる。
【0097】
あるいは、薬剤上の官能基及び免疫グロブリン関連組成物は、同じであり得る。ホモ二官能性架橋剤は、典型的には、同一の官能基を架橋するために使用される。ホモ二官能性架橋剤の例としては、EGS(すなわち、ビス[スクシンイミジルコハク酸]エチレングリコール)、DSS(すなわち、スベリン酸ジスクシンイミジル)、DMA(すなわち、アジプイミド酸ジメチル.2HCl)、DTSSP(すなわち、3,3’-ジチオビス[スルホスクシンイミジルプロピオン酸塩])、DPDPB(すなわち、1,4-ジ-[3’-(2’-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン)、及びBMH(すなわち、ビス-マレイミドヘキサン)が挙げられる。かかるホモ二官能性架橋剤はまた、Pierce Biotechnology,Inc.から入手可能である。
【0098】
他の場合において、薬剤を免疫グロブリン関連組成物から切断することが有益であり得る。上記のPierce Biotechnology,Inc.のウェブサイトはまた、例えば、細胞における酵素によって切断することができる好適な架橋剤を選択することにおいて、当業者に援助を提供することができる。よって、薬剤は、免疫グロブリン関連組成物から分離することができる。切断可能なリンカーの例としては、SMPT(すなわち、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-a-[2-ピリジルジチオ]トルエン)、スルホ-LC-SPDP(すなわち、スルホスクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、LC-SPDP(すなわち、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)ヘキサノエート)、スルホ-LC-SPDP(すなわち、スルホスクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド) ヘキサノエート)、SPDP(すなわち、N-スクシンイミジル3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミドヘキサノエート)、及びAEDP(すなわち、3-[(2-アミノエチル)ジチオ]プロピオン酸HCl)が挙げられる。
【0099】
別の実施形態において、コンジュゲートは、少なくとも1つの免疫グロブリン関連組成物と物理的に結合した少なくとも1つの薬剤を含む。当業者に既知の任意の方法は、薬剤を免疫グロブリン関連組成物と物理的に結合させるために使用することができる。例えば、免疫グロブリン関連組成物及び薬剤は、当業者に既知の任意の方法によって一緒に混合することができる。混合の順序は、重要ではない。例えば、薬剤は、当業者に既知の任意の方法によって免疫グロブリン関連組成物と物理的に混合することができる。例えば、免疫グロブリン関連組成物及び薬剤は、容器に入れ、例えば、容器を振盪することによって撹拌して、免疫グロブリン関連組成物及び薬剤を混合することができる。
【0100】
免疫グロブリン関連組成物は、当業者に既知の任意の方法によって修飾することができる。例えば、免疫グロブリン関連組成物は、上記のように、架橋剤又は官能基によって修飾され得る。
【0101】
本技術の抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体を調製する方法
一般的な概要。最初に、標的ポリペプチドが選択され、それに対して本技術の抗体を上昇させることができる。例えば、抗体は、全長VEGF若しくはAng-2タンパク質、又はVEGF若しくはAng-2タンパク質の細胞外ドメインの一部分に対して上昇され得る。かかる標的ポリペプチドに向けられる抗体を生成するための技術は、当業者に周知である。かかる技術の例には、例えば、ディスプレイライブラリ、xeno又はヒトマウス、ハイブリドーマなどを伴うものが含まれるが、これらに限定されない。本技術の範囲内の標的ポリペプチドには、免疫応答を誘発することができる細胞外ドメインを含有するVEGF又はAng-2タンパク質に由来する任意のポリペプチドが含まれる。
【0102】
VEGF又はAng-2タンパク質及びその断片に向けられる、組換え操作された抗体及び抗体断片、例えば、抗体関連ポリペプチドは、本開示による使用に好適であることを理解されたい。
【0103】
本明細書に示される技法に供することができる抗VEGF×Ang-2抗体には、モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体、並びにFab、Fab’、F(ab’)2、Fd、scFv、ダイアボディ、抗体軽鎖、抗体重鎖、及び/又は抗体断片などの抗体断片が含まれる。抗体Fv含有ポリペプチド、例えば、Fab’及びF(ab’)2抗体断片の高収率産生に有用な方法が記載されている。米国特許第5,648,237号を参照されたい。
【0104】
一般に、抗体は、発端となる種から得られる。より具体的には、標的ポリペプチド抗原に対して特異性を有する発端となる種の抗体の軽鎖、重鎖、又はその両方の可変部分の核酸又はアミノ酸配列が得られる。発端となる種は、本技術の抗体又は抗体のライブラリ(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ニワトリ、サル、ヒトなど)を生成するのに有用であった任意の種である。
【0105】
ファージ又はファージミドディスプレイ技術は、本技術の抗体を誘導するのに有用な技術である。モノクローナル抗体を生成及びクローニングする技術は、当業者に周知である。本技術の抗体をコードする配列の発現は、E.coliで実行することができる。
【0106】
核酸コード配列の縮重性により、天然に存在するタンパク質のものと実質的に同じアミノ酸配列をコードする他の配列が、本技術の実施において使用され得る。これらには、限定されないが、上記のポリペプチドをコードする核酸配列の全部又は一部を含む核酸配列が含まれ、これらは、配列内の機能的に等価なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更され、したがって、サイレント変化を生じる。本技術による免疫グロブリンのヌクレオチド配列は、標準的な方法(“Current Methods in Sequence Comparison and Analysis,”Macromolecule Sequencing and Synthesis,Selected Methods and Applications,pp.127-149,1998,Alan R.Liss,Inc.)によって計算される場合、かかるバリアントがVEGF又はAng-2タンパク質を認識する有効抗体を形成する限り、最大25%の配列相同性変動を許容することが理解される。例えば、ポリペプチド配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用する類似の極性の別のアミノ酸によって置換され得、サイレント改変をもたらす。配列内のアミノ酸における置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。また、本技術の範囲内には、例えば、グリコシル化、タンパク質分解切断、抗体分子又は他の細胞リガンドとの結合などによって、翻訳中又は翻訳後に差次的に修飾されるタンパク質、又はその断片若しくは誘導体が含まれる。追加的に、免疫グロブリンコード核酸配列を、インビトロ若しくはインビボで変異させて、翻訳、開始、及び/若しくは終結配列を作製及び/若しくは破壊するか、あるいはコード領域に変異を作製し、かつ/若しくは新たな制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するか、又は既存のものを破壊して、インビトロ修飾を更に促進することができる。インビトロ部位特異的変異誘発、J.Biol.Chem.253:6551、Tabリンカー(Pharmacia)の使用などを含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知の変異誘発のための任意の技法を使用することができる。
【0107】
ポリクローナル抗血清及び免疫原の調製。本技術の抗体又は抗体断片を生成する方法は、典型的には、対象(一般に、マウス又はウサギなどの非ヒト対象)を、精製されたVEGF若しくはAng-2タンパク質若しくはその断片で、又はVEGF若しくはAng-2タンパク質若しくはその断片で免疫化することを含む。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え発現VEGF若しくはAng-2タンパク質、又は化学合成VEGF若しくはAng-2ペプチドを含有することができる。VEGF若しくはAng-2タンパク質の細胞外ドメイン、又はその一部若しくは断片を免疫原として使用して、VEGF若しくはAng-2タンパク質、又はその一部若しくは断片に結合する抗VEGF又はAng-2抗体を、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体調製のための標準技法を使用して生成することができる。
【0108】
いくつかの実施形態において、抗原性VEGF又はAng-2ペプチドは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100個のアミノ酸残基を含む。より長い抗原性ペプチドが、使用に応じ、当業者に周知の方法に従い、より短い抗原性ペプチドよりも時には望ましい。所与のエピトープの多量体が、時には単量体よりも効果的である。
【0109】
必要に応じて、VEGF又はAng-2タンパク質(又はその断片)の免疫原性は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)又はオバルブミン(OVA)などの担体タンパク質との融合又はコンジュゲーションによって増加させることができる。多くのかかる担体タンパク質が、当技術分野で知られている。また、VEGF又はAng-2タンパク質をフロイント完全又は不完全アジュバントなどの従来のアジュバントと組み合わせて、ポリペプチドに対する対象の免疫反応を増加させることができる。免疫学的応答を増加させるために使用される様々なアジュバントには、フロイント(完全及び不完全)、ミネラルゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニック(登録商標)ポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルション、ジニトロフェノールなど)、Bacille Calmette-Guerin及びCorynebacterium parvumなどのヒトアジュバント、又は同様の免疫刺激化合物が含まれるが、これらに限定されない。これらの技法は、当該技術分野において標準的である。
【0110】
あるいは、ナノ粒子、例えば、ウイルス様粒子(VLP)を使用して、抗原、例えば、VEGF又はAng-2を宿主動物に提示することができる。ウイルス様粒子は、真正のネイティブウイルスの組織体及び立体構造を模倣する多タンパク質構造であり、いかなるウイルス遺伝物質も担持しないため、感染性であることない(Urakami A,et al,Clin Vaccine Immunol 24:e00090-17(2017))。宿主免疫系に導入されると、VLPは効果的な免疫応答を誘発し、それらを外来抗原の誘引的な担体にすることができる。VLPベースの抗原提示プラットフォームの重要な利点は、高密度で反復的な手段で抗原を提示できることである。したがって、抗原担持VLPは、B細胞受容体(BCR)の架橋結合を効果的に可能にすることによって、強いB細胞応答を誘導することができる。VLPは、それらの特性、例えば、免疫原性をより精確にするために、遺伝子操作され得る。これらの技法は、当該技術分野において標準的である。
【0111】
抗体が上昇するように十分に精製されたタンパク質又はポリペプチドの単離は、時間がかかり、時には技術的に困難であり得る。従来のタンパク質ベースの免疫に関連する追加の課題には、タンパク質抗原の安全性、安定性、スケーラビリティ、及び一貫性にわたる懸念が含まれる。核酸(DNA及びRNA)ベースの免疫が、有望な選択肢として出現している。DNAワクチンは、通常、候補抗原、例えば、VEGF又はAng-2のポリペプチド配列をコードする細菌プラスミドに基づいている。頑強な真核生物プロモーターを用いて、宿主がプラスミドを接種されると、コードされた抗原が発現させて、十分なレベルの導入遺伝子発現を得ることができる(Galvin T.A.,et al.,Vaccine 2000,18:2566-2583)。現代のDNAワクチンの生成は、DNA合成、あるいはプラスミドベクターへのワンステップクローニング、及びプラスミドのその後の単離に依存しており、製造にかかる時間及びコストを大幅に削減させる。得られるプラスミドDNAはまた、室温で非常に安定であり、冷蔵輸送を回避し、実質的に延長した有効期限をもたらす。これらの技法は、当該技術分野において標準的である。
【0112】
代替的に、目的の抗原、例えば、VEGF又はAng-2をコードする核酸配列は、mRNA分子に合成的に導入することができる。次いで、mRNAを宿主動物に送達し、その細胞は、mRNA配列を認識して、候補抗原、例えば、VEGF又はAng-2のポリペプチド配列に翻訳し、したがって、外来抗原に対する免疫応答を誘発する。mRNA抗原又はmRNAワクチンの魅力的な特徴は、mRNAが非感染性で、組み込みのないプラットフォームであることである。DNAワクチンに関連する感染又は挿入変異誘発の潜在的なリスクはない。加えて、mRNAは、通常の細胞プロセスによって分解され、設計及び送達方法の修飾を通して制御可能なインビボ半減期を有する(Kariko,K.,et al.,Mol Ther 16:1833-1840(2008)、Kauffman,K.J.,et al.,J Control Release 240,227-234(2016)、Guan,S. & Rosenecker,J.,Gene Ther 24,133-143(2017)、Thess,A.,et al.,Mol Ther 23,1456-1464(2015))。これらの技法は、当該技術分野において標準的である。
【0113】
本技術を記載する際に、免疫応答は、「一次」又は「二次」免疫応答のいずれかとして記載され得る。「保護的」免疫応答としても記載される一次免疫応答は、特定の抗原、例えば、VEGF又はAng-2タンパク質へのいくつかの初期曝露(例えば、初期「免疫化」又は「プライミング」)の結果として、個体で生じる免疫応答を指す。いくつかの実施形態において、免疫は、個体に抗原を含有するワクチンを接種する結果として生じることができる。例えば、ワクチンは、1つ以上のVEGF又はAng-2タンパク質由来抗原を含むVEGF又はAng-2ワクチンであることができる。一次免疫応答は、時間の経過とともに弱化又は減少し、消失又は少なくともそれが検出できないほど減少さえし得る。したがって、本技術はまた、「二次」免疫応答に関するものであり、「記憶免疫応答」としても本明細書に記載される。二次免疫応答という用語は、一次免疫応答が既に生じている個体に誘発される免疫応答を指す。
【0114】
したがって、二次免疫応答を誘発して、例えば、弱化若しくは減少してきている既存の免疫応答を増強(例えば、ブースト)するか、又は消失しているか、若しくはもはや検出できない以前の免疫応答を再構築することができる。二次又は記憶免疫応答は、体液性(抗体)応答又は細胞性応答のいずれかであることができる。二次又は記憶体液性応答は、抗原の最初の提示時に生成された記憶B細胞の刺激で生じる。遅延型過敏症(DTH)反応は、CD4+T細胞によって媒介される細胞二次又は記憶免疫応答のタイプである。抗原に対する最初の曝露は、免疫系をプライミングし、追加の曝露が、DTHをもたらす。
【0115】
適切な免疫後、抗VEGF×Ang-2抗体は、対象の血清から調製することができる。所望の場合、VEGF又はAng-2タンパク質に対して向けられた抗体分子は、哺乳動物から(例えば、血液から)単離することができ、ポリペプチドAクロマトグラフィーなどの周知の技法によって更に精製して、IgG画分を得ることができる。
【0116】
モノクローナル抗体。本技術の一実施形態において、抗体は、抗VEGFモノクローナル抗体又は抗Ang-2モノクローナル抗体である。例えば、いくつかの実施形態において、抗VEGF又は抗Ang-2モノクローナル抗体は、ヒト又はマウス抗VEGF又は抗Ang-2モノクローナル抗体であり得る。VEGFタンパク質若しくはAng-2タンパク質、又はその誘導体、断片、アナログ、若しくはホモログに対して向けられるモノクローナル抗体の調製のために、連続細胞株培養によって抗体分子の産生を提供する任意の技法を利用することができる。かかる技法としては、これらに限定されないが、ハイブリドーマ技法(例えば、Kohler & Milstein,1975.Nature 256:495-497を参照されたい)、トリオーマ技法、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(例えば、Kozbor,et al.,1983.Immunol.Today 4:72を参照されたい)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するEBVハイブリドーマ技法(例えば、Cole,et al.,1985.In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照されたい)が挙げられる。ヒトモノクローナル抗体は、本技術の実施において利用することができ、ヒトハイブリドーマを使用することによって(例えば、Cote,et al.,1983.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026-2030を参照されたい)又はヒトB細胞をエプスタインバールウイルスでインビトロで形質転換することによって(例えば、Cole,et al.,1985.In:MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照されたい)産生することができる。例えば、抗体の領域をコードする核酸の集団を単離することができる。抗体の保存された領域をコードする配列に由来するプライマーを利用したPCRを使用して、抗体の部分をコードする配列を集団から増幅させ、次いで、抗体又は可変ドメインなどのその断片をコードするDNAを、増幅させた配列から再構築する。かかる増幅させた配列はまた、ファージ又は細菌での融合ポリペプチドの発現及び提示のために、他のタンパク質-例えば、バクテリオファージコート、又は細菌細胞表面タンパク質-をコードするDNAに融合することができる。増幅された配列を発現させ、更に、例えば、VEGF又はAng-2タンパク質に存在する抗原又はエピトープに対して発現された抗体又はその断片の親和性に基づいて、選択又は単離することができる。代替的に、抗VEGFモノクローナル抗体又は抗Ang-2モノクローナル抗体を発現するハイブリドーマは、対象を免疫し、次いで、定型的方法を使用して、対象の脾臓からハイブリドーマを単離することによって調製することができる。例えば、Milstein et al.,(Galfre and Milstein,Methods Enzymol(1981)73:3-46)を参照されたい。標準的な方法を使用してハイブリドーマをスクリーニングすると、様々な特異性(すなわち、異なるエピトープに対する)及び親和性のモノクローナル抗体が生成される。所望の特性、例えば、VEGF又はAng-2結合を有する選択されたモノクローナル抗体は、ハイブリドーマによって発現されるように使用することができ、それは、ポリエチレングリコール(PEG)などの分子に結合させてその特性を変更することができるか、又はそれをコードするcDNAを、様々な方法で単離、配列決定、及び操作することができる。合成デンドロマーツリーを反応性アミノ酸側鎖、例えばリジンに付加して、VEGF又はAng-2タンパク質の免疫原性特性を増強することができる。また、CPG-ジヌクレオチド技法を使用して、VEGF又はAng-2タンパク質の免疫原性特性を増強することができる。他の操作には、保存中又は対象への投与後の抗体の不安定性に関与する特定のアミノアシル残基の置換又は欠失、及びVEGF又はAng-2タンパク質を標的とする抗体の親和性を改善する親和性成熟技法が含まれる。
【0117】
ハイブリドーマ技法。いくつかの実施形態において、本技術の抗体は、不死化細胞に融合したヒト重鎖導入遺伝子及び軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する遺伝子導入非ヒト動物、例えば、遺伝子導入マウスから得られたB細胞を含む、ハイブリドーマによって産生された抗VEGFモノクローナル抗体又は抗Ang-2モノクローナル抗体である。ハイブリドーマ技法は、当該技術分野で既知であり、Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,349(1988)、Hammerling et al.,Monoclonal Antibodies And T-Cell Hybridomas,563-681(1981)に教示されている。ハイブリドーマ及びモノクローナル抗体を生成するための他の方法は、当業者に周知である。
【0118】
ファージディスプレイ技法。上述したように、本技術の抗体は、組換えDNA及びファージディスプレイ技術の適用によって産生することができる。例えば、抗VEGF抗体又は抗Ang-2抗体は、当該技術分野で既知の様々なファージディスプレイ方法を使用して調製することができる。ファージディスプレイ方法では、機能的抗体ドメインが、それらをコードするポリヌクレオチド配列を担持するファージ粒子の表面上に提示される。所望の結合特性を有するファージは、典型的には、固体表面又はビーズに結合又は捕捉された抗原を用いて直接的に選択することによって、レパートリー又は組み合わせ抗体ライブラリ(例えば、ヒト又はネズミ)から選択される。これらの方法に使用されるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかに組換えによって融合されたFab、Fv、又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するfd及びM13を含む繊維状ファージである。加えて、方法は、Fab発現ライブラリの構築のために適合させて(例えば、Huse,et al.,Science 246:1275-1281,1989を参照されたい)、VEGFポリペプチド又は抗Ang-2ポリペプチド、例えば、ポリペプチド、又はその誘導体、断片、アナログ、若しくはホモログに対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速で効果的な特定を可能にする。本技術の抗体を作製するために使用することができるファージディスプレイ方法の他の例には、Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,85:5879-5883,1988、Chaudhary et al.,Proc.Natl.Acad.Sci U.S.A.,87:1066-1070,1990、Brinkman et al.,J.Immunol.Methods 182:41-50,1995、Ames et al.,J.Immunol.Methods 184:177-186,1995、Kettleborough et al.,Eur.J.Immunol.24:952-958,1994、Persic et al.,Gene 187:9-18,1997、Burton et al.,Advances in Immunology 57:191-280,1994、PCT/GB91/01134、WO90/02809、WO91/10737、WO92/01047、WO92/18619、WO93/11236、WO95/15982、WO95/20401、WO96/06213、WO92/01047(Medical Research Council et al.)、WO97/08320(Morphosys)、WO92/01047(CAT/MRC)、WO91/17271(Affymax)、並びに米国特許第5,698,426号、同第5,223,409号、同第5,403,484号、同第5,580,717号、同第5,427,908号、同第5,750,753号、同第5,821,047号、同第5,571,698号、同第5,427,908号、同第5,516,637号、同第5,780,225号、同第5,658,727号、及び同第5,733,743号に開示されるものが含まれる。ジスルフィド結合を介してポリペプチドを結合させることによってバクテリオファージ粒子の表面上にポリペプチドを表示するのに有用な方法は、Lohning,米国特許第6,753,136号によって記載されている。上記の参考文献に記載されるように、ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域を単離し、使用してヒト抗体を含む全抗体、又は任意の他の所望の抗原結合断片を生成し、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望の宿主で発現させることができる。例えば、Fab、Fab’、及びF(ab’)2断片を組換えによって産生する技法はまた、WO92/22324、Mullinax et al.,BioTechniques 12:864-869,1992、及びSawai et al.,AJRI 34:26-34,1995、及びBetter et al.,Science 240:1041-1043,1988に開示されるものなどの、当該技術分野で既知の方法を用いて使用することができる。
【0119】
一般に、抗体又は抗体断片は、ファージ又はファージミド粒子の表面上に存在するため、ディスプレイベクターにクローニングされるハイブリッド抗体又はハイブリッド抗体断片を適切な抗原に対して選択して、優れた結合活性を維持するバリアントを特定することができる。例えば、Barbas III et al.,Phage Display,A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001)を参照されたい。しかしながら、選択及び/又はスクリーニングのために、抗体断片ライブラリを溶解性ファージベクター(修飾T7又はラムダZap系)にクローニングするなどの、他のベクター方式をこのプロセスに使用することができる。
【0120】
組換え抗VEGF×Ang-2抗体の発現。上述したように、本技術の抗体は、組換えDNA技術の適用によって産生することができる。本技術の抗VEGF×Ang-2抗体をコードする組換えポリヌクレオチド構築物は、典型的には、抗VEGF×Ang-2抗体鎖のコード配列に操作可能に連結された発現制御配列を含み、天然に関連するか又は異種のプロモーター領域が含まれる。したがって、本技術の別の態様は、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体をコードする1つ以上の核酸配列を含有するベクターを含む。本技術のポリペプチドのうちの1つ以上の組換え発現のために、抗VEGF×Ang-2抗体をコードするヌクレオチド配列の全て又は一部を含む核酸は、適切なクローニングベクター、又は発現ベクター(すなわち、挿入されたポリペプチドコード配列の転写及び翻訳に必要な要素を含有するベクター)に、当技術分野で周知であり、以下に詳細される組換えDNA技法によって挿入される。ベクターの多様な集団を産生するための方法は、Lerner et al.,米国特許第6,291,160号及び第6,680,192号によって記載されている。
【0121】
一般に、組換えDNA技法で有用な発現ベクターは、多くの場合、プラスミドの形態にある。本開示において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドがベクターの最も一般に使用されている形態であるため、互換的に使用され得る。しかしながら、本技術は、同等の機能を果たすウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)などの、技術的にプラスミドではない他の形態の発現ベクターを含むことが意図される。かかるウイルスベクターは、対象の感染及びその対象における構築物の発現を可能にする。いくつかの実施形態において、発現制御配列は、真核生物宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトすることができるベクターにおける真核生物プロモーター系である。ベクターが適切な宿主に組み込まれていると、宿主は、抗VEGF×Ang-2抗体をコードするヌクレオチド配列の高レベル発現、並びに抗VEGF×Ang-2抗体、例えば、交差反応性抗VEGF×Ang-2抗体の収集及び精製に好適な条件下で維持される。一般に、U.S.2002/0199213を参照されたい。これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの組み込み部分としてのいずれかで、宿主生物において複製可能である。一般に、発現ベクターは、選択マーカー、例えば、アンピシリン耐性又はヒグロマイシン耐性を含有し、所望のDNA配列で形質転換されたこれらの細胞の検出を可能にする。ベクターはまた、細胞外抗体断片の分泌を指示するのに有用なシグナルペプチド、例えばペクチン酸リアーゼをコードすることができる。米国特許第5,576,195号を参照されたい。
【0122】
本技術の組換え発現ベクターは、VEGF×Ang-2結合特性を有するタンパク質をコードする核酸を、宿主細胞における核酸の発現に好適な形態で含み、これは、組換え発現ベクターが、発現される核酸配列に操作可能に連結される、発現に使用される宿主細胞に基づいて選択される1つ以上の調節配列を含むことを意味する。組換え発現ベクター内では、「作動可能に連結された」とは、目的のヌクレオチド配列が、ヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で(例えば、インビトロ転写/翻訳システムにおいて、又はベクターが宿主細胞に導入されるときに宿主細胞において)調節配列に連結されることを意味することが意図される。「調節配列」という用語は、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。かかる調節配列は、例えば、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)で更に考察されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞におけるヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、及び特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的調節配列)が含まれる。当業者であれば、発現ベクターの設計が、形質転換される宿主細胞の選択、所望されるポリペプチドの発現レベルなどの因子に依存し得ることが理解されるであろう。組換えポリペプチド発現(例えば、抗VEGF×Ang-2抗体)のプロモーターとして有用な典型的な調節配列には、例えば、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の糖解酵素のプロモーターが含まれるが、これらに限定されない。誘導性酵母プロモーターには、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロムC、並びにマルトース及びガラクトース利用に関与する酵素からのプロモーターが含まれる。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体をコードするポリヌクレオチドは、ara Bプロモーターに操作可能に結合され、宿主細胞において発現可能である。米国特許第5,028,530号を参照されたい。本技術の発現ベクターを宿主細胞に導入し、それによって、本明細書に記載されるような核酸(例えば、抗VEGF×Ang-2抗体など)によってコードされる融合ポリペプチドを含む、ポリペプチド又はペプチドを産生することができる。
【0123】
本技術の別の態様は、1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体をコードする核酸を含有する、抗VEGF×Ang-2抗体発現宿主細胞に関する。本技術の組換え発現ベクターは、原核生物細胞又は真核生物細胞における抗VEGF×Ang-2抗体の発現のために設計することができる。例えば、抗VEGF×Ang-2抗体は、Escherichia coliなどの細菌細胞、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用)、真菌細胞、例えば、酵母、酵母細胞、又は哺乳動物細胞などで発現させることができる。好適な宿主細胞は、Goeddel,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)で更に考察されている。代替的に、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列及びT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写及び翻訳することができる。確率的に生成されたポリヌクレオチド配列の発現を介して、所定の特性を有するポリペプチド、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体の調製及びスクリーニングに有用な方法が、既に報告されている。米国特許第5,763,192号、同第5,723,323号、同第5,814,476号、同第5,817,483号、同第5,824,514号、同第5,976,862号、同第6,492,107号、同第6,569,641号を参照されたい。
【0124】
原核生物におけるポリペプチドの発現は、多くの場合、融合ポリペプチド又は非融合ポリペプチドのいずれかの発現を指示する構成的又は誘導性プロモーターを含むベクターを用いてE.coliで実行される。融合ベクターは、それにコードされるポリペプチドに、通常、組換えポリペプチドのアミノ末端に、いくつかのアミノ酸を付加する。かかる融合ベクターは、典型的には、3つの目的:(i)組換えポリペプチドの発現を増加させること、(ii)組換えポリペプチドの溶解性を増加させること、及び(iii)アフィニティー精製においてリガンドとして作用することによって組換えポリペプチドの精製を補助することを果たす。多くの場合、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解切断部位が融合部分と組換えポリペプチドとの接合部に導入され、融合ポリペプチドの精製に続いて、融合部分からの組換えポリペプチドの分離を可能にする。かかる酵素、及びそれらの同族認識配列には、第Xa因子、トロンビン、及びエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合ポリペプチド、又はポリペプチドAをそれぞれ標的組換えポリペプチドに融合させる、pGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith and Johnson,1988.Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs、Beverly,Mass.)、及びpRIT5(Pharmacia、Piscataway,N.J.)が含まれる。
【0125】
好適な誘導性非融合E.coli発現ベクターの例には、pTrc(Amrann et al.,(1988)Gene 69:301-315)及びpET 11d(Studier et al.,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)60-89)が含まれる。ポリペプチド融合を介して多官能性ポリペプチドを得る、異なる活性ペプチド又はタンパク質ドメインの標的化組み立てのための方法は、Pack et al.,米国特許第6,294,353号、同第6,692,935号に記載されている。E.coliにおける組換えポリペプチド発現、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体を最大化する1つの戦略は、組換えポリペプチドをタンパク質分解的に切断する能力が損なわれた宿主細菌でポリペプチドを発現することである。例えば、Gottesman,GENE EXPRESSION TECHNOLOGY:METHODS IN ENZYMOLOGY 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)119-128を参照されたい。別の戦略は、各アミノ酸における個々のコドンが発現宿主、例えばE.coliで優先的に利用されるものであるように、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を変更することである(例えば、Wada,et al.,1992.Nucl.Acids Res.20:2111-2118を参照されたい)。本技術の核酸配列のかかる変更は、標準的なDNA合成技法によって実行することができる。
【0126】
別の実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母Saccharomyces cerevisiaeにおける発現のためのベクターの例には、pYepSec1(Baldari,et al.,1987.EMBO J.6:229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz,Cell 30:933-943,1982)、pJRY88(Schultz et al.,Gene 54:113-123,1987)、pYES2(Invitrogen Corporation、San Diego,Calif.)、及びpicZ(Invitrogen Corp、San Diego,Calif.)が含まれる。代替的に、抗VEGF×Ang-2抗体は、バキュロウイルス発現ベクターを使用して昆虫細胞で発現させることができる。培養した昆虫細胞(例えば、SF9細胞)におけるポリペプチド、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAcシリーズ(Smith,et al.,Mol.Cell. Biol.3:2156-2165,1983)及びpVLシリーズ(Lucklow and Summers,1989.Virology 170:31-39)が含まれる。
【0127】
更に別の実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体をコードする核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞で発現させる。哺乳動物発現ベクターの例には、例えば、pCDM8(Seed,Nature 329:840,1987)及びpMT2PC(Kaufman,et al.,EMBO J.6:187-195,1987)が含まれる。哺乳類細胞で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、多くの場合、ウイルス調節要素によって提供される。例えば、一般に使用されているプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、及びシミアンウイルス40に由来する。本技術の抗VEGF×Ang-2抗体の発現に有用な原核生物細胞及び真核生物細胞の両方に好適な他の発現システムについて、例えば、Chapters 16 and 17 of Sambrook,et al.,MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989を参照されたい。
【0128】
別の実施形態において、組換え哺乳類発現ベクターは、特定の細胞タイプで核酸の発現を指示することができる(例えば、組織特異的調節要素)。組織特異的調節要素は、当該技術分野で既知である。好適な組織特異的プロモーターの非限定的な例には、アルブミンプロモーター(肝臓特異的、Pinkert,et al.,Genes Dev.1:268-277,1987)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton,Adv.Immunol.43:235-275,1988)、T細胞受容体のプロモーター(Winoto and Baltimore, EMBO J.8:729-733, 1989)、及び免疫グロブリン(Banerji,et al.,1983.Cell 33:729-740、Queen and Baltimore,Cell 33:741-748,1983.)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター、Byrne and Ruddle,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5473-5477,1989)、膵臓特異的プロモーター(Edlund,et al.,1985.Science 230:912-916)、及び乳腺特異的プロモーター(例えば、乳清プロモーター、米国特許第4,873,316号及び欧州出願公開第264,166号)が含まれる。発生的に調節されたプロモーター、例えば、ネズミhoxプロモーター(Kessel and Gruss,Science 249:374-379,1990)及びα-フェトタンパク質プロモーター(Campes and Tilghman,Genes Dev.3:537-546,1989)も包含される。
【0129】
本方法の別の態様は、本技術の組換え発現ベクターが導入されている宿主細胞に関する。「宿主細胞」及び「組換え宿主細胞」という用語は、本明細書で互換的に使用される。かかる用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫又は潜在的子孫も指すことを理解されたい。変異又は環境影響のいずれかにより、特定の修飾が後世代で生じ得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではない場合があるが、依然として本明細書で使用される本用語の範囲内に含まれる。
【0130】
宿主細胞は、任意の原核生物細胞又は真核生物細胞であることができる。例えば、抗VEGF×Ang-2抗体は、E.coliなどの細菌細胞、昆虫細胞、酵母、又は哺乳動物細胞で発現させることができる。哺乳類細胞は、免疫グロブリン又はその断片をコードするヌクレオチドセグメントを発現するのに好適な宿主である。Winnacker,From Genes To Clones,(VCH Publishers,NY,1987)を参照されたい。インタクト異種タンパク質を分泌することができるいくつかの好適な宿主細胞株が当該技術分野で開発されてきており、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、L細胞、及び骨髄腫細胞株が含まれる。いくつかの実施形態において、細胞は、非ヒトである。これらの細胞のための発現ベクターは、複製起点、プロモーター、エンハンサーなどの発現制御配列、及びリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写ターミネーター配列などの必要なプロセシング情報部位を含むことができる。Queen et al.,Immunol.Rev.89:49,1986。例示的な発現制御配列は、内因性遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターである。Co et al.,J Immunol.148:1149,1992。他の好適な宿主細胞が、当業者に既知である。
【0131】
ベクターDNAは、従来の形質転換又はトランスフェクション技法によって原核生物細胞又は真核生物細胞に導入することができる。本明細書に使用される場合、「形質転換」及び「トランスフェクション」という用語は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に導入するための様々な当該技術分野で認識されている技法を指すことが意図され、リン酸カルシウム若しくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーション、遺伝子銃、又はウイルスベースのトランスフェクションが含まれる。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション、及びマイクロインジェクションの使用が含まれる(一般に、Sambrook et al.,Molecular Cloningを参照されたい)。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための好適な方法は、Sambrook,et al.(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL.2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、及び他の検査室マニュアルに見出すことができる。対象のDNAセグメントを含有するベクターは、細胞宿主のタイプに応じて、周知の方法によって宿主細胞に移入することができる。
【0132】
好適なベクターの非限定的な例には、増殖及び拡張のために、若しくは発現のために、又は両方のために設計されたものが含まれる。例えば、クローニングベクターは、pUCシリーズ、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif.)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif.)からなる群から選択することができる。ラムダ-GT10、ラムダ-GT11、ラムダ-ZapII(Stratagene)、ラムダ-EMBL4、及びラムダ-NM1149などのバクテリオファージベクターも使用することができる。植物発現ベクターの非限定的な例には、pBI110、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が含まれる。動物発現ベクターの非限定的な例には、pEUK-C1、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が含まれる。TOPOクローニングシステム(Invitrogen、Calsbad,CA,Carlsbad,CA)も、製造業者の推奨に従って使用することができる。
【0133】
特定の実施形態において、ベクターは、哺乳類ベクターである。特定の実施形態において、哺乳類ベクターは、mRNAの転写と、抗体コード配列と、転写物の転写及びポリアデニル化の終結と、の開始に必要なシグナルを媒介する少なくとも1つのプロモーター要素を含有する。特定の実施形態において、哺乳類ベクターは、追加の要素、例えば、RNAスプライシングのためのドナー及びアクセプター部位に隣接するエンハンサー、Kozak配列、及び介入配列を含有する。特定の実施形態において、例えば、SV40からの早期及び後期プロモーター、レトロウイルス、例えば、RSV、HTLVI、HIVIからの長末端反復(LTRS)、及びサイトメガロウイルス(CMV)の早期プロモーターを用いて、非常に効率的な転写を達成することができる。細胞要素も使用することができる(例えば、ヒトアクチンプロモーター)。哺乳類発現ベクターの非限定的な例には、pIRESlneo、pRetro-Off、pRetro-On、PLXSN、又はpLNCX(Clonetech Labs、Palo Alto,Calif.)、pcDNA3.1(+/-)、pcDNA/Zeo(+/-)、又はpcDNA3.1/Hygro(+/-)(Invitrogen、Calsbad,CA)、PSVL及びPMSG(Pharmacia、Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC37152)、pSV2dhfr(ATCC37146)、並びにpBC12MI(ATCC67109)などのベクターが含まれる。かかる哺乳動物ベクターと組み合わせて使用することができる哺乳動物宿主細胞の非限定的な例としては、ヒトHela 293、HEK 293、H9、及びJurkat細胞、マウス3T3、NIH3T3、及びC127細胞、Cos 1、Cos 7、及びCV 1、ウズラQC1-3細胞、マウスL細胞、並びにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。
【0134】
特定の実施形態において、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、パルボウイルスベースのベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクター、AAV-アデノウイルスキメラベクター、及びアデノウイルスベースのベクター、並びに単純ヘルペス(HSV)ベースのベクターなどのレンチウイルスベクターである。特定の実施形態において、ウイルスベクターは、ウイルス複製を欠損させるように操作される。特定の実施形態において、ウイルスベクターは、宿主に対する毒性を排除するように操作される。これらのウイルスベクターは、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,New York,N.Y.(1994)に記載される標準的な組換えDNA技法を使用して調製することができる。
【0135】
特定の実施形態において、本明細書に記載のベクター又はポリヌクレオチドは、従来の技術によって細胞(例えば、エクスビボ細胞)に移入することができ、得られる細胞は、従来の技術によって培養して、本明細書に記載の抗VEGF×Ang-2抗体又は抗原結合断片を産生することができる。したがって、本明細書において、抗VEGF×Ang-2抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを、宿主細胞におけるかかる配列の発現のための調節発現要素(例えば、プロモーター)に操作可能に連結されて含む細胞が提供される。特定の実施形態において、プロモーターに操作可能に連結された重鎖をコードするベクター及びプロモーターに操作可能に連結された軽鎖をコードするベクターは、抗VEGF×Ang-2抗体全体又は抗原結合断片の発現のために、細胞で共発現させることができる。特定の実施形態において、細胞は、プロモーターに操作可能に連結される、本明細書に記載の抗VEGF×Ang-2抗体又は抗原結合断片の重鎖及び軽鎖の両方をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。特定の実施形態において、細胞は、2つの異なるベクターを含み、第1のベクターは、プロモーターに操作可能に連結された重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、第2のベクターは、プロモーターに操作可能に連結された軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、第1の細胞は、本明細書に記載の抗VEGF×Ang-2抗体又は抗原結合断片の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを含み、第2の細胞は、本明細書に記載の抗VEGF×Ang-2抗体又は抗原結合断片の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。特定の実施形態において、本明細書では、当該第1の細胞及び当該第2の細胞を含む、細胞の混合物が提供される。細胞の例には、ヒト細胞、ヒト細胞株、E.coli(例えば、E.coli TB-1、TG-2、DH5a、XL-Blue MRF’(Stratagene)、SA2821、及びY1090)、B.subtilis、P.aerugenosa、S.cerevisiae、N.crassa、昆虫細胞(例えば、Sf9、Ea4)などが含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
哺乳類細胞の安定的なトランスフェクションでは、使用される発現ベクター及びトランスフェクション技法に応じて、わずかな割合の細胞のみが、外来DNAをそれらのゲノムに組み込み得ることは既知である。これらの組み込み体を特定及び選択するために、一般に、選択可能なマーカー(例えば、抗生物質に対する抵抗性)をコードする遺伝子が、目的とする遺伝子とともに宿主細胞に導入される。様々な選択可能なマーカーには、G418、ハイグロマイシン、及びメトトレキサートなどの薬物に対する抵抗性を付与するものが含まれる。選択可能なマーカーをコードする核酸は、抗VEGF×Ang-2抗体をコードするものと同じベクターで宿主細胞に導入するか、又は別個のベクターで導入することができる。導入された核酸で安定的にトランスフェクトされた細胞は、薬物選択によって特定することができる(例えば、選択可能なマーカー遺伝子を組み込んだ細胞は生存するが、他の細胞は死滅する)。
【0137】
培養における原核生物又は真核生物の宿主細胞などの本技術の抗VEGF×Ang-2抗体を含む宿主細胞を使用して、組換え抗VEGF×Ang-2抗体を産生(すなわち、発現)することができる。一実施形態において、方法は、宿主細胞(抗VEGF×Ang-2抗体をコードする組換え発現ベクターが導入されている)を、抗VEGF×Ang-2抗体が産生されるような、好適な培地中で培養することを含む。別の実施形態において、方法は、培地又は宿主細胞から抗VEGF×Ang-2抗体を単離するステップを更に含む。発現されると、抗VEGF×Ang-2抗体、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体又は抗VEGF×Ang-2抗体関連ポリペプチドの集合体を、培養培地及び宿主細胞から精製する。抗VEGF×Ang-2抗体は、HPLC精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当該技術分野の標準的手順に従って精製することができる。一実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、Boss et al.,米国特許第4,816,397号の方法によって宿主生物で産生される。通常、抗VEGF×Ang-2抗体鎖は、シグナル配列で発現され、したがって、培養培地に放出される。しかしながら、抗VEGF×Ang-2抗体鎖が宿主細胞によって自然に分泌されない場合、抗VEGF×Ang-2抗体鎖は、穏やかな界面活性剤を用いた処理によって放出させることができる。組換えポリペプチドの精製は、当該技術分野で周知であり、硫酸アンモニウム沈殿、アフィニティークロマトグラフィー精製技法、カラムクロマトグラフィー、イオン交換精製技法、ゲル電気泳動などが含まれる(一般に、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,1982を参照されたい)。
【0138】
抗VEGF×Ang-2抗体コードするポリヌクレオチド、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体コード配列は、トランスジェニック動物のゲノムへの導入及びトランスジェニック動物の乳中におけるその後の発現のために導入遺伝子に組み込むことができる。例えば、米国特許第5,741,957号、同第5,304,489号、及び同第5,849,992号を参照されたい。好適な導入遺伝子には、カゼイン又はβ-ラクトグロブリンなどの乳腺特異的遺伝子からのプロモーター及びエンハンサーと操作可能な連結にある軽鎖及び/又は重鎖のコード配列が含まれる。トランスジェニック動物の生成のために、導入遺伝子は、受精した卵母細胞にマイクロインジェクションすることができるか、又は胚性幹細胞のゲノムに組み込み、かかる細胞の核を、除核された卵母細胞に移すことができる。
【0139】
単鎖抗体。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、単鎖抗VEGF×Ang-2抗体である。本発明の技術に従い、技法は、VEGF又はAng-2タンパク質に特異的な単鎖抗体の産生に適合させることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照されたい)。本技術の単鎖Fv及び抗体を産生するために使用することができる技法の例には、米国特許第4,946,778号及び同第5,258,498号、Huston et al.,Methods in Enzymology,203:46-88,1991、Shu,L.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7995-7999,1993、並びにSkerra et al.,Science 240:1038-1040,1988に記載されるものが含まれる。
【0140】
キメラ及びヒト化抗体。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、キメラ抗VEGF×Ang-2抗体である。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、ヒト化抗VEGF×Ang-2抗体である。本技術の一実施形態において、ドナー抗体及びアクセプター抗体は、異なる種からのモノクローナル抗体である。例えば、アクセプター抗体は、ヒト抗体(ヒトにおいてその抗原性を最小限に抑えるため)であり、その場合、得られるCDR移植抗体は、「ヒト化」抗体と称される。
【0141】
ヒト部分及び非ヒト部分の両方を含む、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体などの組換え抗VEGF×Ang-2抗体は、標準的な組換えDNA技法を使用して作製することができ、本技術の範囲内である。ヒトにおける本技術の抗VEGF×Ang-2抗体のインビボ使用、並びにインビトロ検出アッセイにおけるこれらの薬剤の使用を含むいくつかの使用では、キメラ又はヒト化抗VEGF×Ang-2抗体を使用することが可能である。かかるキメラ及びヒト化モノクローナル抗体は、当技術分野で知られている組換えDNA技法によって産生することができる。かかる有用な方法としては、例えば、これらに限定されないが、国際出願第PCT/US86/02269号、米国特許第5,225,539号、欧州特許第184187号、欧州特許第171496号、欧州特許第173494号、PCT国際公開第86/01533号、米国特許第4,816,567号、同第5,225,539号、欧州特許第125023号、Better,et al.,1988.Science 240:1041-1043、Liu,et al.,1987.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443、Liu,et al.,1987.J.Immunol.139:3521-3526、Sun,et al.,1987.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218、Nishimura,et al.,1987.Cancer Res.47:999-1005、Wood,et al.,1985.Nature 314:446-449、Shaw,et al.,1988.J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559、Morrison(1985)Science 229:1202-1207、Oi,et al.(1986)BioTechniques 4:214、Jones,et al.,1986.Nature 321:552-525、Verhoeyan,et al.,1988.Science 239:1534、Morrison,Science 229:1202,1985、Oi et al.,BioTechniques 4:214,1986、Gillies et al.,J.Immunol.Methods,125:191-202,1989、米国特許第5,807,715号、及びBeidler,et al.,1988.J.Immunol.141:4053-4060に記載されるものが挙げられる。例えば、抗体は、CDR移植(EP 0 239 400、WO91/09967、米国特許第5,530,101号、同第5,585,089号、同第5,859,205号、同第6,248,516号、EP460167)、ベニヤリング又はリサーフェイシング(EP 0 592 106、EP 0 519 596、Padlan E.A.,Molecular Immunology,28:489-498,1991、Studnicka et al.,Protein Engineering 7:805-814,1994、Roguska et al.,PNAS 91:969-973,1994)、及び鎖シャフリング(米国特許第5,565,332号)を含む様々な技法を用いてヒト化することができる。一実施形態において、ネズミ抗VEGF×Ang-2モノクローナル抗体をコードするcDNAは、Fc定常領域をコードする配列を除去するために特異的に選択された制限酵素で消化され、ヒトFc定常領域をコードするcDNAの等価部分は、置換される(Robinson et al.,PCT/US86/02269、Akira et al.,欧州特許出願184,187、Taniguchi,欧州特許出願171,496、Morrison et al.,欧州特許出願173,494、Neuberger et al.,WO86/01533、Cabilly et al.米国特許第4,816,567号、Cabilly et al.,欧州特許出願125,023、Better et al.(1988)Science 240:1041-1043、Liu et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439-3443、Liu et al.(1987)J Immunol 139:3521-3526、Sun et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214-218、Nishimura et al.(1987)Cancer Res 47:999-1005、Wood et al.(1985)Nature 314:446-449、及びShaw et al.(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553-1559、米国特許第6,180,370号、米国特許第6,300,064号、同第6,696,248号、同第6,706,484号、同第6,828,422号を参照されたい)。
【0142】
一実施形態において、本技術は、ヒト抗マウス抗体(以下、「HAMA」と称される)応答を誘導する可能性が低いものの、依然として有効な抗体エフェクター機能を有する、ヒト化抗VEGF×Ang-2抗体の構築を提供する。本明細書に使用される場合、抗体に関して、「ヒト」及び「ヒト化」という用語は、ヒト対象において治療的に耐えられる弱い免疫原性応答を誘発することが予想される任意の抗体に関する。一実施形態において、本技術は、ヒト化抗VEGF×Ang-2抗体、重鎖及び軽鎖免疫グロブリンを提供する。
【0143】
CDR抗体。いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、抗VEGF×Ang-2 CDR抗体である。一般に、抗VEGF×Ang-2 CDR抗体を生成するために使用されるドナー抗体及びアクセプター抗体は、異なる種からのモノクローナル抗体であり、典型的には、アクセプター抗体は、ヒト抗体であり(ヒトにおけるその抗原性を最小限に抑えるため)、この場合、得られるCDR移植抗体は、「ヒト化」抗体と称される。移植片は、アクセプター抗体の単一のVH若しくはVL内の単一のCDR(又は単一のCDRの一部でさえ)のものであり得るか、又はVH及びVLの一方若しくは両方内の複数のCDR(又はその一部)であることができる。多くの場合、アクセプター抗体の全ての可変ドメインにおける3つの全てのCDRが、対応するドナーCDRで置き換えられるが、VEGF×Ang-2タンパク質に対する得られるCDR移植抗体の十分な結合を可能にするために必要な数のみ置き換える必要がある。CDR移植及びヒト化抗体を生成するための方法は、Queen et al.米国特許第5,585,089号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,693,762号、及びWinter US.5,225,539、並びにEP0682040によって教示される。VH及びVLポリペプチドを調製するのに有用な方法は、Winter et al.,米国特許第4,816,397号、同第6,291,158号、同第6,291,159号、同第6,291,161号、同第6,545,142号、EP0368684、EP0451216、及びEP0120694によって教示される。
【0144】
同じファミリー及び/又は同じファミリーメンバーから好適なフレームワーク領域候補を選択した後、発端となる種からのCDRをハイブリッドフレームワーク領域に移植することによって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のいずれか又は両方が生成される。上記の態様のいずれかに関して、ハイブリッド可変鎖領域を有するハイブリッド抗体又はハイブリッド抗体断片の組み立ては、当業者に既知の従来の方法を使用して達成することができる。例えば、本明細書に記載のハイブリッド可変ドメインをコードするDNA配列(すなわち、標的種に基づくフレームワーク及び発端となる種からのCDR)は、オリゴヌクレオチド合成及び/又はPCRによって生成することができる。CDR領域をコードする核酸は、好適な制限酵素を使用して発端となる種の抗体から単離し、好適なライゲーション酵素で連結することによって標的種フレームワークに連結することもできる。代替的に、発端となる種の抗体の可変鎖のフレームワーク領域は、部位特異的変異誘発によって変更することができる。
【0145】
ハイブリッドは、各フレームワーク領域に対応する複数の候補の中の選択から構築されるため、本明細書に記載される原理に従う構築に適した、配列の多くの組み合わせが存在する。したがって、個々のフレームワーク領域の異なる組み合わせによるメンバーを有して、ハイブリッドのライブラリを組み立てることができる。かかるライブラリは、配列の電子データベースコレクション又はハイブリッドの物理的コレクションであることができる。
【0146】
このプロセスは、典型的には、移植されたCDRに隣接するアクセプター抗体のFRを変更しない。しかしながら、当業者であれば、所与のFRの特定の残基を置き換えて、FRをドナー抗体の対応するFRに、より類似させることによって、得られる抗VEGF×Ang-2 CDR移植抗体の抗原結合親和性を改善することができる。置換の好適な位置には、CDRに隣接するか、又はCDRと相互作用することができるアミノ酸残基が含まれる(例えば、US5,585,089、特にカラム12~16を参照されたい)。又は、当業者であれば、ドナーFRから始めて、それを修飾して、アクセプターFR又はヒトコンセンサスFRにより類似させることができる。これらの修飾を行うための技法は、当該技術分野で既知である。特に、得られるFRがその位置でヒトコンセンサスFRに適合する場合、又はかかるコンセンサスFRに少なくとも90%以上同一である場合、それを行うことは、完全なヒトFRを有する同じ抗体と比較して、得られる修飾抗VEGF×Ang-2 CDR移植抗体の抗原性を有意に増加させ得ない。
【0147】
二重特異性抗体(BsAb)。二重特異性抗体は、異なる構造を有する2つの標的、例えば、2つの異なる標的抗原、同じ標的抗原上の2つの異なるエピトープ、又は標的抗原上のハプテン及び標的抗原若しくはエピトープに同時に結合することができる抗体である。BsAbは、例えば、同じか又は異なる抗原の異なるエピトープを認識する重鎖及び/又は軽鎖を組み合わせることによって作製することができる。いくつかの実施形態において、分子機能によって、二重特異性結合剤は、その2つの結合アームのうちの1つ(1つのVH/VL対)で1つの抗原(又はエピトープ)に結合し、その第2のアーム(異なるVH/VL対)で異なる抗原(又はエピトープ)に結合する。この定義によれば、二重特異性結合剤は、2つの異なる抗原結合アーム(特異性及びCDR配列の両方において)を有し、それが結合する各抗原に対して一価である。
【0148】
二重特異性抗体(BsAb)及び二重特異性抗体断片(BsFab)などの多重特異性抗体は、例えば、VEGF×Ang-2に特異的に結合する少なくとも1つのアームと、第2の標的抗原に特異的に結合する少なくとも1つの他のアームと、を有する。
【0149】
様々な二重特異性融合タンパク質は、分子工学を使用して産生することができる。例えば、BsAbは、全免疫グロブリンフレームワーク(例えば、IgG)、単鎖可変断片(scFv)、又はそれらの組み合わせのいずれかを利用するように構築されている。いくつかの実施形態において、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、1つの抗原に対する単一結合部位を有するscFvと、第2の抗原に対する単一結合部位を有するFab断片と、を含む。いくつかの実施形態において、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する単一結合部位を有するscFvと、第2の抗原に対する単一結合部位を有する別のscFv断片と、を含む、二価である。他の実施形態において、二重特異性融合タンパク質は、例えば、1つの抗原に対する2つの結合部位と、第2の抗原に対する2つの同一のscFvと、を有する免疫グロブリン(例えば、IgG)を含む、四価である。2つのscFvユニットから構成されるBsAbは、臨床的に成功した二重特異性抗体形式であることが示されている。
【0150】
BsAbを産生するための最近の方法には、より一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりも強く架橋するように、追加のシステイン残基を有する操作された組換えモノクローナル抗体が含まれる。例えば、FitzGerald et al.,Protein Eng.10(10):1221-1225(1997)を参照されたい。別のアプローチは、組換え融合タンパク質を操作して、必要とされる二重特異性を有する2つ以上の異なる単鎖抗体又は抗体断片セグメントを連結することである。例えば、Coloma et al.,Nature Biotech.15:159-163(1997)を参照されたい。様々な二重特異性融合タンパク質は、分子工学を使用して産生することができる。
【0151】
2つ以上の異なる単鎖抗体又は抗体断片を連結する二重特異性融合タンパク質は、同様の方法で産生される。組換え方法を使用して、様々な融合タンパク質を産生することができる。いくつかの特定の実施形態において、本技術によるBsAbは、免疫グロブリンを含み、免疫グロブリンは、重鎖及び軽鎖、並びにscFvを含む。いくつかの特定の実施形態において、scFvは、本明細書に開示される任意のVEGF×Ang-2免疫グロブリンの重鎖のC末端に連結される。いくつかの特定の実施形態において、scFvは、本明細書に開示される任意のVEGF×Ang-2免疫グロブリンの軽鎖のC末端に連結される。様々な実施形態において、scFvは、リンカー配列を介して重鎖又は軽鎖に連結される。重鎖FdのscFvとのフレーム内接続に必要な適切なリンカー配列は、PCR反応によってVL及びVカッパドメインに導入される。次に、scFvをコードするDNA断片を、CH1ドメインをコードするDNA配列を含有するステージングベクターに連結させる。得られたscFv-CH1構築物を切除し、VEGF×Ang-2抗体のVH領域をコードするDNA配列を含有するベクターに連結させる。得られたベクターを使用して、二重特異性融合タンパク質の発現のための哺乳類細胞などの適切な宿主細胞をトランスフェクトすることができる。
【0152】
いくつかの実施形態において、リンカーは、長さが少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100個、又はそれ以上のアミノ酸である。いくつかの実施形態において、リンカーは、強固な三次元構造を採用しない傾向があり、むしろポリペプチド(例えば、第1及び/又は第2の抗原結合部位)に可撓性を提供することを特徴とする。いくつかの実施形態において、リンカーは、例えば、安定性の増加などのBsAbに付与される特定の特性に基づいて、本明細書に記載のBsAbに用いられる。いくつかの実施形態において、本技術のBsAbは、G4Sリンカーを含む。いくつかの特定の実施形態において、本技術のBsAbは、(G4S)nリンカーを含み、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上である。
【0153】
Fc修飾。いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、バリアントFc領域を含み、当該バリアントFc領域は、野生型Fc領域(又は親Fc領域)に対して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、それによって、当該分子は、Fc受容体(例えば、FcγR)に対する変化した親和性を有するが、ただし、当該バリアントFc領域は、Sondermann et al.,Nature,406:267-273(2000)によって開示されるものなどのFc-Fc受容体相互作用の結晶学的及び構造的分析に基づいて、Fc受容体と直接的な接触をする位置で置換を有さない。FcγRなどのFc受容体と直接接触するFc領域内の位置の例としては、アミノ酸234~239(ヒンジ領域)、アミノ酸265~269(B/Cループ)、アミノ酸297~299(C7Eループ)、及びアミノ酸327~332(F/G)ループが挙げられる。
【0154】
いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、活性化及び/又は阻害性受容体に対する変化した親和性を有し、1つ以上のアミノ酸修飾を有するバリアントFc領域を有して、当該1つ以上のアミノ酸修飾は、アラニンによるN297置換、又はアラニンによるK322置換である。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるVEGF×Ang-2抗体のFc領域は、2つのアミノ酸置換であるLeu234Ala及びLeu235Ala(LALA変異と呼ばれる)を含み、FcγRIIa結合を排除する。LALA変異は、T細胞からのサイトカイン誘導を緩和するために一般的に使用され、したがって、抗体の毒性を減少させる(Wines BD,et al.,J Immunol 164:5313-5318(2000))。
【0155】
グリコシル化修飾。いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、親Fc領域と比較して、バリアントグリコシル化を伴うFc領域を有する。いくつかの実施形態において、バリアントグリコシル化は、フコースの不存在を含み、いくつかの実施形態において、バリアントグリコシル化は、GnT1欠損CHO細胞における発現から生じる。
【0156】
いくつかの実施形態において、本技術の抗体は、抗体の機能性、例えば、抗原との結合活性を変更することなく、目的の抗原(例えば、VEGF×Ang-2)に結合する適切な参照抗体と比較して、修飾されたグリコシル化部位を有し得る。本明細書に使用される場合、「グリコシル化部位」は、オリゴ糖(すなわち、一緒に連結された2つ以上の単純な糖を含有する炭水化物)が特異的及び共有結合的に結合する抗体における任意の特定のアミノ酸配列を含む。
【0157】
オリゴ糖側鎖は、典型的には、N結合又はO結合のいずれかを介して抗体の骨格に連結されている。N結合型グリコシル化とは、オリゴ糖部分とアスパラギン残基の側鎖との結合を指す。O結合型グリコシル化とは、オリゴ糖部分とヒドロキシアミノ酸、例えば、セリン、スレオニンとの結合を指す。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される免疫グロブリン関連組成物の炭水化物含有量は、グリコシル化部位を付加又は欠失させることによって修飾される。抗体の炭水化物含有量を修飾する方法は、当該技術分野で周知であり、本技術内に含まれ、例えば、米国特許第6,218,149号、EP0359096B1、米国特許公開第2002/0028486号、国際特許出願公開第03/035835号、米国特許公開第2003/0115614号、米国特許第6,218,149号、米国特許第6,472,511号を参照されたく、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、抗体(又はその関連部分若しくは成分)の炭水化物含有量は、抗体の1つ以上の内因性炭水化物部分を欠失させることによって修飾される。いくつかの特定の実施形態において、本技術は、297位をアスパラギンからアラニンに修飾することによって、抗体のFc領域のグリコシル化部位を欠失させることを含む。
【0159】
操作されたグリコフォームは、エフェクター機能を増強させるか、又は低下させることを含むがこれらに限定されない、様々な目的のために有用であり得る。操作されたグリコフォームは、当業者に既知の任意の方法によって、例えば、操作されたか若しくはバリアント発現株を使用することによって、1つ以上の酵素、例えば、N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)との共発現によって、様々な生物若しくは様々な生物からの細胞株にFc領域を含む分子を発現させることによって、又はFc領域を含む分子が発現された後に炭水化物を修飾することによって、生成され得る。操作されたグリコフォームを生成するための方法は、当該技術分野で知られ、これらに限定されないが、Umana et al.,1999,Nat.Biotechnol.17:176-180、Davies et al.,2001,Biotechnol.Bioeng.74:288-294、Shields et al.,2002,J.Biol.Chem.277:26733-26740、Shinkawa et al.,2003,J.Biol.Chem.278:3466-3473、米国特許第6,602,684号、米国特許出願第10/277,370号、米国特許出願第10/113,929号、国際特許出願公開第00/61739A1号、同第01/292246A1号、同第02/311140A1号、同第02/30954A1号に記載されるもの、POTILLEGENT(商標)技術(Biowa,Inc.Princeton,N.J.)、GLYCOMAB(商標)グリコシル化操作技術(GLYCART biotechnology AG、Zurich,Switzerland)を含み、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。例えば、国際特許出願公開第00/061739号、米国特許出願公開第2003/0115614号、Okazaki et al.,2004,JMB,336:1239-49を参照されたい。
【0160】
融合タンパク質。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、融合タンパク質である。本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、第2のタンパク質に融合されたとき、抗原タグとして使用することができる。ポリペプチドに融合させることができるドメインの例には、異種シグナル配列だけでなく、他の異種機能性領域も含まれる。融合は必ずしも直接的である必要はなく、リンカー配列を介して生じることができる。更に、本技術の融合タンパク質は、抗VEGF×Ang-2抗体の特徴を改善するように操作することもできる。例えば、追加のアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域は、抗VEGF×Ang-2抗体のN末端に付加して、宿主細胞からの精製中又はその後の取り扱い及び保存の安定性及び持続性を向上させることができる。また、ペプチド部分は、抗VEGF×Ang-2抗体に付加して精製を容易にすることができる。かかる領域は、抗VEGF×Ang-2抗体の最終調製前に除去することができる。ポリペプチドの取り扱いを容易にするペプチド部分の付加は、当技術分野ではよく知られており、定型的な技術である。本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、融合したポリペプチドの精製を容易にするペプチドなどのマーカー配列に融合することができる。選択された実施形態において、マーカーアミノ酸配列は、その多くは、市販されており、とりわけ、pQEベクター(QIAGEN,Inc.、Chatsworth,Calif)に提供されるタグなどのヘキサ-ヒスチジンペプチドである。Gentz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821-824,1989に記載されるように、例えば、ヘキサ-ヒスチジンは、融合タンパク質の都合のよい精製を提供する。精製に有用な別のペプチドタグである「HA」タグは、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来するエピトープに対応する。Wilson et al.,Cell 37:767,1984。
【0161】
したがって、これら上記の融合タンパク質のうちのいずれかは、本技術のポリヌクレオチド又はポリペプチドを使用して操作することができる。また、いくつかの実施形態において、本明細書に記載の融合タンパク質は、インビボで増加した半減期を示す。
【0162】
ジスルフィド結合二量体構造(IgGに起因する)を有する融合タンパク質は、単量体分泌タンパク質又はタンパク質断片単独と比較して、他の分子との結合及び中和において効率的であり得る。Fountoulakis et al.,J.Biochem.270:3958-3964,1995。
【0163】
同様に、EP-A-O464533(カナダの対応する2045869)は、免疫グロブリン分子の定常領域の様々な部分を、別のヒトタンパク質又はその断片と一緒に含む融合タンパク質を開示する。多くの場合、融合タンパク質におけるFc部分は、治療及び診断に有益であり、したがって、例えば、改善された薬物動態特性をもたらすことができる。EP-A0232262を参照されたい。代替的に、融合タンパク質が発現、検出、及び精製された後に、Fc部分を欠失又は修飾することが望ましいことがある。例えば、Fc部分は、融合タンパク質が免疫のための抗原として使用される場合、治療及び診断を妨げ得る。創薬において、例えば、hIL-5などのヒトタンパク質は、hIL-5のアンタゴニストを特定するハイスループットスクリーニングアッセイの目的のためにFc部分と融合されている。Bennett et al.,J.Molecular Recognition 8:52-58,1995、Johanson et al.,J.Biol.Chem.,270:9459-9471,1995。
【0164】
標識抗VEGF×Ang-2抗体。一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、標識部分、すなわち、検出可能な基と結合される。抗VEGF×Ang-2抗体にコンジュゲートされた特定の標識又は検出可能な基は、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体とVEGF又はAng-2タンパク質との特異的結合を著しく干渉しない限り、本技術の重大な態様ではない。検出可能な基は、検出可能な物理的又は化学的特性を有する任意の材料であることができる。かかる検出可能な標識は、イムノアッセイ及びイメージングの分野で十分に開発されてきている。一般に、かかる方法に有用なほとんどいずれの標識も、本技術に適用することができる。したがって、標識は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、又は化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。本技術の実施において有用な標識には、磁性ビーズ(例えば、Dynabeads(商標))、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミンなど)、放射性標識(例えば、3H、14C、35S、125I、121I、131I、112In、99mTc)、マイクロバブル(超音波イメージング用)などの他のイメージング剤、18F、11C、15O、89Zr(陽電子放射断層撮影用)、99mTC、111In(単一光子放射断層撮影用)、酵素(例えば、ラジッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、及びELISAで一般的に使用される他のもの)、及び金コロイド又は着色ガラス若しくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズなどのカロリメトリック標識が含まれる。かかる標識の使用を記載する特許には、米国特許第3,817,837号、同第3,850,752号、同第3,939,350号、同第3,996,345号、同第4,277,437号、同第4,275,149号、及び同第4,366,241号が含まれ、各々は、参照によりそれらの全体が全ての目的で本明細書に組み込まれる。Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals(6th Ed.,Molecular Probes,Inc.,Eugene OR.)も参照されたい。
【0165】
標識は、当技術分野で周知の方法に従って、アッセイの所望の成分に直接的又は間接的に結合させることができる。上述のように、必要とされる感度、化合物とのコンジュゲーションの容易さ、安定性要件、利用可能な装置、及び廃棄規定などの要因に応じた標識の選択によって、多種多様な標識を使用することができる。
【0166】
非放射性標識は、しばしば間接的な手段によって結合される。一般に、リガンド分子(例えば、ビオチン)は、分子に共有結合される。次に、リガンドは、検出可能な酵素、蛍光化合物、又は化学発光化合物などのシグナルシステムに固有に検出可能又は共有結合された抗リガンド(例えば、ストレプトアビジン)分子に結合する。多くのリガンド及び抗リガンドを使用することができる。リガンドが天然の抗リガンド、例えば、ビオチン、チロキシン、及びコルチゾールを有する場合、それは、標識された、天然に存在する抗リガンドと併せて使用することができる。代替的に、任意のハプテン性又は抗原性化合物は、抗体、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体と組み合わせて使用することができる。
【0167】
分子はまた、例えば、酵素又はフルオロフォアとのコンジュゲーションによって、直接的にシグナル発生化合物にコンジュゲートすることもできる。標識としての目的の酵素は、主に、ヒドロラーゼ、特にホスファターゼ、エステラーゼ、及びグリコシダーゼ、又はオキシドレダクターゼ、特にペルオキシダーゼである。標識部分として有用な蛍光化合物には、例えば、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれるが、これらに限定されない。標識部分として有用な化学発光化合物には、例えば、ルシフェリン、及び2,3-ジヒドロフタラジンジオン、例えば、ルミノールが含まれるが、これらに限定されない。使用することができる様々な標識又はシグナル発生システムのレビューについて、米国特許第4,391,904号を参照されたい。
【0168】
標識を検出する手段は、当業者に周知である。したがって、例えば、標識が放射性標識である場合、検出手段には、シンチレーションカウンター又はオートラジオグラフィーにおけるような写真フィルムが含まれる。標識が蛍光標識である場合、適切な波長の光で蛍光色素を励起し、得られる蛍光を検出することによって検出することができる。蛍光は、写真フィルムによって、電荷結合素子(CCD)又は光増倍管などの電子検出器の使用によって、視覚的に検出することができる。同様に、酵素に適切な基質を提供し、得られる反応生成物を検出することによって、酵素標識を検出することができる。最後に、単純な比色標識は、標識に関連付けられた色調を単に観察することによって検出することができる。したがって、様々なディップスティックアッセイでは、コンジュゲート化金は、しばしばピンク色を出現させるが、様々なコンジュゲート化ビーズは、ビーズの色調を出現させる。
【0169】
いくつかのアッセイ方式は、標識成分の使用を必要としない。例えば、凝集アッセイを使用して、標的抗体、例えば、抗VEGF×Ang-2抗体の存在を検出することができる。この場合、抗原コーティング粒子は、標的抗体を含む試料によって凝集される。この方式では、成分のいずれも標識する必要はなく、標的抗体の存在は、単純な目視検査によって検出される。
【0170】
本技術の抗VEGF×Ang-2抗体の特定及び特性評価
本技術の抗VEGF×Ang-2抗体を特定及び/又はスクリーニングするための方法。VEGF又はAng-2タンパク質に対する所望の特異性を有するもの(例えば、配列番号38及び配列番号39のアミノ酸配列を含むポリペプチドなどのVEGF又はAng-2タンパク質の細胞外ドメインに結合するもの)について、VEGF又はAng-2ポリペプチドに対する抗体を特定及びスクリーニングするのに有用な方法には、当該技術分野内で既知の任意の免疫学的に媒介される技法が含まれる。免疫応答の成分は、当業者に周知の様々な方法によって検出することができる。例えば、(1)細胞傷害性Tリンパ球を放射性標識標的細胞とともにインキュベートして、これらの標的細胞の溶解を放射能の放出によって検出することができ、(2)ヘルパーTリンパ球を抗原及び抗原提示細胞とともにインキュベートして、サイトカインの合成及び分泌を標準的な方法によって測定することができ(Windhagen A et al.,Immunity,2:373-80,1995)、(3)抗原提示細胞を総タンパク質抗原とともにインキュベートして、MHC上でのその抗原の提示をTリンパ球活性化アッセイ又は生物物理学的方法のいずれかによって検出することができ(Harding et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,86:4230-4,1989)、(4)マスト細胞をそれらのFc-イプシロン受容体を架橋する試薬とともにインキュベートして、ヒスタミン放出を酵素免疫測定法によって測定することができ(Siraganian et al.,TIPS,4:432-437,1983)、並びに(5)酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)。
【0171】
同様に、モデル生物(例えば、マウス)又はヒト対象のいずれかにおける免疫応答の産物も、当業者に周知の様々な方法によって検出することができる。例えば、(1)ワクチン接種に応答する抗体の産生は、臨床検査室で現在使用されている標準的な方法、例えば、ELISAによって容易に検出することができ、(2)炎症部位への免疫細胞の移動は、皮膚の表面をスクラッチし、無菌容器を配置して、移動細胞をスクラッチ部位にわたって捕捉することによって検出することができ(Peters et al.,Blood,72:1310-5,1988)、(3)マイトジェン又は混合リンパ球反応に応答する末梢血単核細胞(PBMC)の増殖は、3H-チミジンを用いて測定することができ、(4)PBMCにおける顆粒球、マクロファージ、及び他の食細胞の貧食能は、PBMCをウェルにおいて標識された粒子と一緒に配置することによって測定することができ(Peters et al.,Blood, 72:1310-5,1988)、(5)免疫系細胞の分化は、PBMCをCD4及びCD8などのCD分子に対する抗体で標識し、これらのマーカーを発現するPBMCの画分を測定することによって測定することができる。
【0172】
一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、複製可能な遺伝子パッケージの表面上のVEGF又はAng-2ペプチドのディスプレイを使用して選択される。例えば、米国特許第5,514,548号、同第5,837,500号、同第5,871,907号、同第5,885,793号、同第5,969,108号、同第6,225,447号、同第6,291,650号、同第6,492,160号、EP585287、EP605522、EP616640、EP1024191、EP589877、EP774511、EP844306を参照されたい。所望の特異性を有する結合分子をコードするファージミドゲノムを含有する繊維状バクテリオファージ粒子の生成/選択するのに有用な方法が記載されている。例えば、EP774511、US5871907、US5969108、US6225447、US6291650、US6492160を参照されたい。
【0173】
いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、酵母宿主細胞の表面上のVEGF又はAng-2ペプチドのディスプレイを使用して選択される。酵母表面ディスプレイによるscFvポリペプチドの単離に有用な方法は、Kieke et al.,Protein Eng.1997 Nov;10(11):1303-10によって記載されている。
【0174】
いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、リボソームディスプレイを使用して選択される。リボソームディスプレイを使用してペプチドライブラリ中のリガンドを特定するのに有用な方法は、Mattheakis et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9022-26,1994、及びHanes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94:4937-42,1997によって記載されている。
【0175】
特定の実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、VEGF又はAng-2ペプチドのtRNAディスプレイを使用して選択される。tRNAディスプレイを使用したリガンドのインビトロ選択に有用な方法は、Merryman et al.,Chem.Biol.,9:741-46,2002によって記載されている。
【0176】
一実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、RNAディスプレイを使用して選択される。RNAディスプレイライブラリを使用してペプチド及びタンパク質を選択するのに有用な方法は、Roberts et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,94:12297-302,1997、及びNemoto et al.,FEBS Lett.,414:405-8,1997によって記載されている。非天然RNAディスプレイライブラリを使用してペプチド及びタンパク質を選択するのに有用な方法は、Frankel et al.,Curr.Opin.Struct.Biol.,13:506-12,2003によって記載されている。
【0177】
いくつかの実施形態において、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体は、グラム陰性細菌の周辺質中で発現され、標識されたVEGF又はAng-2タンパク質と混合される。WO02/34886を参照されたい。VEGF又はAng-2タンパク質に対する親和性を有する組換えポリペプチドを発現するクローンでは、抗VEGF×Ang-2抗体に結合した標識VEGF又はAng-2タンパク質の濃度が増加し、Harvey et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.22:9193-98 2004及び米国特許公開第2004/0058403号に記載されるように細胞がライブラリの残部から単離されることを可能にする。
【0178】
所望の抗VEGF×Ang-2抗体の選択後、当該抗体は、当業者に既知の任意の技術、例えば、原核生物細胞又は真核生物細胞の発現などによって、大量に産生できることが企図される。例えば、限定されないが、抗VEGF×Ang-2ハイブリッド抗体又は断片である、抗VEGF×Ang-2抗体は、CDRと、必要に応じて、元の種の抗体結合特異性を保持するために必要とされる可変領域フレームワークの最小部分(本明細書に記載される技術に従って操作される)とが発端となる種の抗体に由来し、抗体の残分が本明細書に記載されるように操作することができる標的種免疫グロブリンに由来する、抗体重鎖をコードする発現ベクターを構築し、それによってハイブリッド抗体重鎖の発現のためのベクターを作製する、従来の技法を使用して産生することができる。
【0179】
VEGF又はAng-2結合の測定。いくつかの実施形態において、VEGF×Ang-2結合アッセイは、VEGF及び/又はAng-2タンパク質並びに抗VEGF×Ang-2抗体を、VEGF及び/又はAng-2タンパク質と抗VEGF×Ang-2抗体との間を結合し、VEGF及び/又はAng-2タンパク質と抗VEGF×Ang-2抗体との間の結合量を評価するのに好適な条件下で混合するアッセイ方式を指す。結合の量は、VEGF及び/又はAng-2タンパク質の不存在下での結合の量、非特異的免疫グロブリン組成物の存在下での結合の量、又はその両方であることができる好適な対照と比較される。結合の量は、任意の好適な方法によって評価することができる。結合アッセイ方法には、例えば、ELISA、放射免疫アッセイ、シンチレーション近接アッセイ、蛍光エネルギー移動アッセイ、液体クロマトグラフィー、膜濾過アッセイなどが含まれる。抗VEGF×Ang-2抗体に結合するVEGF及び/又はAng-2タンパク質の直接的な測定のための生物物理学的アッセイは、例えば、核磁気共鳴、蛍光、蛍光偏光、表面プラズモン共鳴(BIACOREチップ)などである。特異的結合は、当技術分野で知られている標準的なアッセイ、例えば、放射性リガンド結合アッセイ、ELISA、FRET、免疫沈降、SPR、NMR(2D-NMR)、質量分析法などによって決定される。候補抗VEGF×Ang-2抗体の特異的結合が、候補抗VEGF×Ang-2抗体の不存在下で観察される結合よりも少なくとも1パーセント大きい場合、候補抗VEGF×Ang-2抗体は、本技術の抗VEGF×Ang-2抗体として有用である。
【0180】
治療方法
以下の考察は、例としてのみ提示され、限定することを意図するものではない。
【0181】
本技術の一態様は、新しい血管の網膜下色素上皮又は網膜下空間への成長を特徴とする疾患又は状態を治療する方法を含む。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、本技術は、CNVを治療する方法を含む。一態様では、本開示は、眼におけるVEGF-及び/又はAng-2誘発性血管新生を阻害するための方法であって、対象に治療有効量の少なくとも1つの本技術のVEGFxAng-2抗体を投与することを含み、対象が、新たな血管の網膜下色素上皮又は網膜下空間への成長を特徴とする疾患又は状態に罹患している、方法を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態において、対象は、VEGF及び/又はAng-2の上昇した発現レベル及び/又は増加した活性を特徴とする疾患又は状態を有するか、有すると疑われるか、又は有するリスクがあると診断される。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、対象は、CNVを有するとして診断される。
【0183】
治療用途において、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2抗体を含む組成物又は医薬品は、かかる疾患又は状態を疑われるか、又は既に罹患している対象(VEGF及び/若しくはAng-2の上昇した発現レベル及び/若しくは増加した活性を特徴とする疾患若しくは状態と診断される対象、並びに/又はCNVと診断される対象など)に、疾患の発症におけるその合併症及び中間病理学的表現型を含む、疾患の症状を治癒するか、又は少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与される。
【0184】
VEGF及び/若しくはAng-2の上昇した発現レベル及び/若しくは増加した活性を特徴とする疾患若しくは状態に罹患している対象、又は代替的に、CNVと診断された対象は、当該技術分野で既知の診断アッセイ又は予後アッセイのいずれか又は組み合わせによって特定することができる。例えば、CNVの典型的な症状としては、これらに限定されないが、中心視のゆがみ若しくはうねり、又は中心視における灰色/黒色/空隙斑点、網膜における液体の水疱若しくは出血、色の輝度の喪失若しくは各眼で異なって現れる色、変視、すなわち、視覚のゆがみ、直線が曲がって、ゆがんで、若しくはでこぼこに見えること、痛みを伴わない視力低下、傍中心若しくは中心暗点、すなわち、視野の中心若しくは中心付近における相対的若しくは絶対的視力低下の島、各眼について異なって現れる物体のサイズ、又は中心視における閃光若しくは明滅が挙げられる。
【0185】
いくつかの実施形態において、VEGF及び/若しくはAng-2の上昇した発現レベル及び/若しくは増加した活性を特徴とする疾患若しくは状態を有する対象、並びに/又は抗VEGF及び/若しくはAng-2抗体で治療されるCNVに罹患している対象は、以下の症状:中心視のゆがみ若しくはうねり、又は中心視における灰色/黒色/空隙斑点、網膜における液体の水疱若しくは出血、色の輝度の喪失若しくは各眼で異なって現れる色、変視、すなわち、視覚のゆがみ、直線が曲がって、ゆがんで、若しくはでこぼこに見えること、痛みを伴わない視力低下、傍中心若しくは中心暗点、すなわち、視野の中心若しくは中心付近における相対的若しくは絶対的視力低下の島、各眼について異なって現れる物体のサイズ、又は中心視における閃光若しくは明滅のうちの1つ以上の改善又は排除を示すであろう。
【0186】
治療用途のために、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2抗体を含む組成物は、対象に投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1日に1回、2回、3回、4回、又は5回投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1日に5回を超えて投与される。追加的又は代替的に、いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、毎日、1日おき、3日毎、4日毎、5日毎、又は6日毎に投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、毎週、2週間毎、3週間毎、又は毎月投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1、2、3、4、又は5週間の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、6週間以上にわたって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、12週間以上にわたって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1年未満の期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1年を超える期間にわたって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、対象の生涯を通して投与される。
【0187】
本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、1週間以上毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、2週間以上毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、3週間以上毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、4週間以上毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、6週間以上毎日投与される。本技術の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、12週間以上毎日投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体は、対象の生涯を通して毎日投与される。
【0188】
抗VEGF×Ang-2抗体の生物学的効果の決定
様々な実施形態において、好適なインビトロ又はインビボアッセイは、特定の抗VEGF×Ang-2抗体の効果、及びその投与が治療に適しているかを決定するために実施される。様々な実施形態において、インビトロアッセイは、代表的な動物モデルで、所与の抗VEGF×Ang-2抗体がCNVの徴候及び/又は症状を低減又は排除することに対して所望の効果を発揮するかを決定するために実施することができる。療法における使用のための化合物は、ヒト対象における試験の前に、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含むがこれらに限定されない、好適な動物モデルシステムにおいて試験することができる。同様に、インビボ試験のために、当該技術分野で既知の動物モデルシステムのいずれも、ヒト対象への投与前に使用することができる。いくつかの実施形態において、インビトロ又はインビボ試験は、1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体の生物学的機能を対象とする。
【0189】
CNVの動物モデルは、当該技術分野で既知の技法を使用して生成され得る。かかるモデルは、特定の遺伝子の破壊から生じる状態の予防及び治療における抗VEGF×Ang-2抗体の生物学的効果を実証するため、かつ所与の文脈において治療有効量の本明細書に開示される1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体を含むものを決定するために使用され得る。
【0190】
投与様式及び有効投与量
細胞、臓器、又は組織を、本明細書に開示される1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体と接触させるための当業者に既知の任意の方法が使用され得る。好適な方法としては、インビトロ、エクスビボ、又はインビボ方法が挙げられる。インビボ方法は、典型的には、1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体の哺乳動物、好適にはヒトへの投与を含む。療法のためにインビボで使用される場合、本明細書に記載される1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、有効量(すなわち、所望の治療効果を有する量)で対象に投与される。用量及び投与量レジメンは、対象の疾患状態の程度、使用される特定の抗VEGF×Ang-2抗体の特徴、例えば、その治療指数、及び対象の病歴に依存するであろう。
【0191】
有効量は、前臨床試験及び臨床試験中に、医師及び臨床医によく知られている方法によって決定され得る。有効量の、方法において有用な本明細書に開示される1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、医薬化合物を投与するためのいくつかの周知の方法のいずれかによって、それを必要とする哺乳動物に投与され得る。抗VEGF×Ang-2抗体は、全身又は局所投与され得る。
【0192】
本明細書に開示される1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、RPE細胞との接触を可能にする任意の経路によって投与することができる。投与は、例えば、眼、非経口(例えば、皮下、筋肉内、又は静脈内)、局所、経皮、硝子体内、後眼窩、網膜下、強膜下、経口、舌下、又は頬側投与様式であり得る。前述の例示的な投与様式のいくつかは、注射によって達成することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、注射は、網膜の近く(例えば、強膜下経路)での徐放性インプラントの使用によって、又は結膜に滴剤を投与することによって回避される。本技術の1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、CNVに罹患している患者の眼に、局所投与され得る。局所投与には、硝子体内、局所眼、経皮パッチ、皮下、非経口、眼内、結膜下、又は後球若しくはテノン嚢下注射、経強膜(イオントフォレシスを含む)、後強膜近傍送達、又は徐放性生体分解性ポリマー若しくはリポソームが含まれる。1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体はまた、眼内灌流溶液中に送達することができる。濃度は、約0.001μM~約100μM、好ましくは約0.01μM~約5μMの範囲であり得る。
【0193】
本技術の組成物は、CNVに罹患している患者の眼に、局所投与され得る。本技術の1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、(例えば、局所的、腔内、強膜近傍、又はインプラントを介した)眼への送達のために様々なタイプの眼科用製剤に組み込むことができる。本技術の1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体は、水性、無菌眼科用懸濁液若しくは溶液、又は予め形成されたゲル、又はインサイチュ形成されたゲルを形成するために、眼科的に許容される防腐剤、界面活性剤、粘度増強剤、ゲル化剤、浸透増強剤、緩衝剤、塩化ナトリウム、及び水と組み合わされ得る。
【0194】
本開示の方法のいくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体組成物は、網膜下経路によって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体組成物は、網膜下注射又は注入によって投与される。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体組成物は、網膜下注射によって投与され、注射は、50μL~1000μLの体積を含む。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体組成物は、網膜下注射によって投与され、注射は、50μL~300μLの体積を含む。いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体組成物は、網膜下注射によって投与され、これは、100μL又は最大100μL(例えば、25~100μL、50~100μL、75~100μL)の体積を含む。いくつかの実施形態において、網膜下注射は、2段階注射を含む。
【0195】
本明細書に記載される抗VEGF×Ang-2抗体は、CNVの治療又は予防のために対象に、単独で又は組み合わせて、投与のための医薬組成物に組み込むことができる。かかる組成物は、典型的には、活性剤及び薬学的に許容される担体を含む。本明細書に使用される場合、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与と適合性のある、食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、等張及び吸収遅延剤などを含む。補助的な活性化合物も、組成物中に組み込むことができる。
【0196】
医薬組成物は、典型的には、その意図される投与経路と適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口(例えば、静脈内、皮内、腹腔内、又は皮下)、経口、吸入、経皮(局所)、眼内、イオントフォレシス、及び経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、又は皮下適用に使用される溶液又は懸濁液は、以下の成分:注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、若しくは他の合成溶媒などの無菌希釈剤、ベンジルアルコール若しくはメチルパラベンなどの抗細菌剤、アスコルビン酸若しくは亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、若しくはリン酸塩などの緩衝剤、及び塩化ナトリウム若しくはデキストロースなどの張度調整のための薬剤を含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの、酸又は塩基で調整することができる。非経口調製物は、ガラス又はプラスチック製のアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数用量バイアルに封入することができる。患者又は治療する医師の便宜のために、投与製剤は、治療経過(例えば、7日の治療)のために必要な全ての装置(例えば、薬物のバイアル、希釈剤のバイアル、シリンジ、及び針)を含有するキットで提供することができる。
【0197】
注射可能な使用に好適な医薬組成物は、無菌注射可能溶液又は分散液の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液及び無菌粉末を含むことができる。好適な担体には、生理食塩水、静菌水、CREMOPHOR EL(商標)(BASF、Parsippany,N.J.)、又はリン酸緩衝食塩水(PBS)が含まれる。いくつかの実施形態において、組成物は、無菌であり、容易なシリンジ通過性(syringability)が存在する程度に流動性であるべきである。製造及び保存の条件下で安定であるべきであり、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。
【0198】
本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2抗体を有する医薬組成物は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する溶媒又は分散媒であることができる、担体を含むことができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散剤の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗細菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。グルタチオン及び他の抗酸化剤は、酸化を防止するために含めることができる。多くの場合、組成物中に、等張剤、例えば、糖、マンニトールなどの多価アルコール、ソルビトール、又は塩化ナトリウムを含めることが有利であろう。注射可能組成物の長期吸収は、組成物中に、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを含むことによってもたらすことができる。
【0199】
無菌注射可能溶液は、必要な量の活性化合物を、上記に列挙される成分の1つ又は組み合わせを有する適切な溶媒に組み込むことによって調製することができ、必要に応じて、濾過滅菌が続く。一般に、分散液は、活性化合物を、塩基性分散媒及び上記に列挙されるものからの必要な他の成分を含有する、無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌注射可能溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製の典型的な方法は、活性成分及びその既に無菌濾過された溶液からの任意の追加の所望の成分の粉末をもたらすことができる、真空乾燥及び凍結乾燥を含む。
【0200】
治療剤は、担体システムに製剤化することができる。担体は、コロイドシステムであり得る。コロイドシステムは、リポソーム、リン脂質二重層ビヒクルであり得る。一実施形態において、治療剤は、薬剤の構造的完全性を維持しながら、リポソームに封入される。当業者であれば、リポソームを調製する様々な方法があることを理解するであろう。(Lichtenberg,et al.,Methods Biochem.Anal.,33:337-462(1988)、Anselem,et al.,Liposome Technology,CRC Press(1993)を参照されたい)。リポソーム製剤は、クリアランスを遅らせ、細胞取り込みを増加させることができる(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7-8):915-923(2000)を参照されたい)。活性剤はまた、これらに限定されないが、可溶性、不溶性、透過性、不透過性、生体分解性、又は胃保持性ポリマー又はリポソームを含む薬学的に許容される成分から調製される粒子に装填することができる。かかる粒子には、ナノ粒子、生体分解性ナノ粒子、マイクロ粒子、生体分解性マイクロ粒子、ナノスフェア、生体分解性ナノスフェア、マイクロスフェア、生体分解性マイクロスフェア、カプセル、エマルション、リポソーム、ミセル、及びウイルスベクターシステムが含まれるが、これらに限定されない。
【0201】
担体はまた、ポリマー、例えば、生体分解性、生体適合性ポリマーマトリックスであり得る。一実施形態において、治療剤は、薬剤の構造的完全性を維持しながら、ポリマーマトリックスに埋め込むことができる。ポリマーは、ポリペプチド、タンパク質、若しくは多糖などの天然であってもよく、又はポリα-ヒドロキシ酸などの合成であってもよい。例としては、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、エラスチン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、多糖、フィブリン、ゼラチン、及びそれらの組み合わせで作製された担体が挙げられる。一実施形態において、ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)又はコポリ乳酸/グリコール酸(PGLA)である。ポリマーマトリックスは、ミクロスフェア及びナノスフェアを含む、様々な形態及びサイズで調製及び単離することができる。ポリマー製剤は、治療効果の持続時間の延長につながり得る。(Reddy,Ann.Pharmacother.,34(7-8):915-923(2000)を参照されたい)。ヒト成長ホルモン(hGH)のためのポリマー製剤は、臨床試験において使用されている。(Kozarich and Rich,Chemical Biology,2:548-552(1998)を参照されたい)。
【0202】
ポリマーマイクロスフェア徐放製剤の例は、PCT公開第99/15154号(Tracy,et al.)、米国特許第5,674,534号及び第5,716,644号(ともにZale,et al.)、PCT公開第96/40073号(Zale,et al.)、及びPCT公開第00/38651号(Shah,et al.)に記載される。米国特許第5,674,534号及び第5,716,644号並びにPCT公開第96/40073号は、塩との凝集に対して安定化されるエリスロポエチンの粒子を含有するポリマーマトリックスを記載する。
【0203】
いくつかの実施形態において、治療組成物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの、体からの迅速な排除に対して治療組成物を保護するであろう担体で調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの生体分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。かかる製剤は、既知の技法を使用して調製することができる。材料はまた、例えば、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals,Inc.から、商業的に入手することができる。リポソーム懸濁液(細胞特異的抗原に対するモノクローナル抗体で特定の細胞に標的化されたリポソームを含む)はまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されるように、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0204】
治療化合物はまた、細胞内送達を増強するように製剤化することができる。例えば、リポソーム送達システムは、当該技術分野で既知であり、例えば、Chonn and Cullis,“Recent Advances in Liposome Drug Delivery Systems,”Current Opinion in Biotechnology 6:698-708(1995)、Weiner,“Liposomes for Protein Delivery:Selecting Manufacture and Development Processes,”Immunomethods,4(3):201-9(1994)、及びGregoriadis,“Engineering Liposomes for Drug Delivery:Progress and Problems,”Trends Biotechnol.,13(12):527-37(1995)を参照されたい。Mizguchi,et al.,Cancer Lett.,100:63-69(1996)は、インビボ及びインビトロの両方で細胞にタンパク質を送達するための融合性リポソームの使用を記載する。
【0205】
任意の治療剤の投与量、毒性、及び治療有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死的な用量)又はED50(集団の50%に致死的な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との間の用量比は、治療指標であり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が有利である。毒性副作用を示す化合物が使用され得るが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、それによって副作用を低減するために、かかる化合物を罹患組織の部位に標的化する送達システムを設計するように注意するべきである。
【0206】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトにおける使用のための投与量の範囲を製剤化することにおいて使用することができる。かかる化合物の投与量は、ED50を、ほとんど又は全く毒性を伴わずに含む、循環濃度の範囲内にあり得る。投与量は、用いられる投与形態、及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。方法で使用される任意の化合物について、治療有効量は、初期に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、細胞培養で決定されるように、IC50(すなわち、症状の半最大阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで製剤化することができる。かかる情報を使用して、ヒトにおける有用な用量を正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0207】
典型的には、治療又は予防効果を達成するのに十分な、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2抗体の有効量は、1日当たりキログラム体重当たり約0.000001mg~1日当たりキログラム体重当たり約10,000mgの範囲である。好適には、投与量範囲は、1日当たりキログラム体重当たり約0.0001mg~1日当たりキログラム体重当たり約100mgである。例えば、投与量は、毎日、2日毎、若しくは3日毎に1mg/kg体重、若しくは10mg/kg体重、毎週、又は2週毎、若しくは3週毎に1~10mg/kgの範囲内であることができる。一実施形態において、治療化合物の単回投与量は、体重1kg当たり0.001~10,000マイクログラムの範囲である。一実施形態において、担体中の1つ以上の抗VEGF×Ang-2抗体濃度は、送達されるミリリットル当たり0.2~2000マイクログラムの範囲である。例示的な治療レジメンは、1日に1回又は1週間に1回の投与を伴う。治療的適用では、疾患の進行が減少若しくは終了するまで、又は対象が疾患の症状の部分的若しくは完全な改善を示すまで、比較的高い投与量が比較的短い間隔で、時に必要とされる。その後、患者に予防的レジームを投与することができる。
【0208】
いくつかの実施形態において、抗VEGF×Ang-2抗体の治療有効量は、10-32~10-6モル、例えば、約10-7モルの標的組織での阻害剤の濃度として定義され得る。この濃度は、体表面積による0.001~100mg/kgの全身用量又は等価用量によって送達され得る。用量のスケジュールは、単回の毎日又は毎週の投与などによって、標的組織での治療濃度を維持するように最適化されるであろう。
【0209】
当業者であれば、疾患又は障害の重症度、以前の治療、対象の一般的な健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患を含むが、これらに限定されない、特定の因子が、対象を効果的に治療するために必要な投与量及びタイミングに影響を及ぼし得ることを理解するであろう。また、治療有効量の本明細書に記載される治療組成物での対象の治療は、単回の治療又は一連の治療を含むことができる。
【0210】
本方法に従って治療される哺乳動物は、例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマなどの家畜、イヌ及びネコなどのペット動物、ラット、マウス、及びウサギなどの実験動物を含む、任意の哺乳動物であり得る。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒトである。
【0211】
併用療法
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体のうちの1つ以上は、CNVの予防又は治療のための1つ以上の追加の療法と組み合わされ得る。追加の療法としては、レーザー光凝固、光線力学療法(PDT)、ペガプタニブナトリウム、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、及びコルチコステロイドが挙げられる。
【0212】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体は、レーザー光凝固、光線力学療法(PDT)、ペガプタニブナトリウム、ベバシズマブ、ラニビズマブ、アフリベルセプト、及びコルチコステロイドからなる群から選択される少なくとも1つの追加の療法と、別々に、連続的に、又は同時に投与され得る。
【0213】
いずれの場合も、複数の療法は、任意の順序で、又は更には同時に投与してもよい。同時の場合、複数の療法は、単一の、統一された形態で、又は複数の形態で(例としてのみ、単一の丸剤として、又は2つの別個の丸剤としてのいずれかで)提供され得る。療法のうちの1つが複数の用量で与えられてもよく、又は両方が複数の用量として与えられてもよい。同時でない場合、複数の用量間のタイミングは、0週間超から4週間未満まで変動し得る。加えて、併用方法、組成物、及び製剤は、2つの薬剤のみの使用に限定されるものではない。
【0214】
キット
本開示はまた、本明細書に開示される抗VEGF×Ang-2多重特異性抗体のうちの1つ以上と、CNVを予防及び/又は治療するためにそれらを使用するための説明書と、を含む、キットを提供する。任意選択的に、本技術のキットの上述の構成要素は、好適な容器にパックされ、CNVの予防及び/又は治療について表示される。
【0215】
上記の構成要素は、水性の、好ましくは無菌の溶液として、又は再構成のための凍結乾燥された、好ましくは無菌の製剤として、単位又は複数用量の容器、例えば、密封したアンプル、バイアル、ボトル、シリンジ、及び試験管に保存され得る。キットは、医薬組成物をより大きい体積に希釈するのに好適な希釈剤を保持する第2の容器を更に含み得る。好適な希釈剤には、医薬組成物の薬学的に許容される賦形剤及び生理食塩水が含まれるが、これらに限定されない。更に、キットは、医薬組成物を希釈するための説明書、及び/又は希釈されるかどうかにかかわらず、医薬組成物を投与するための説明書を含み得る。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ、又は皮下注射針によって穿刺され得るストッパーを有するバイアルであり得る)。キットは、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル液、及びデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む、より多くの容器を更に含み得る。それは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、好適なホストのうちの1つ以上のための培地を含む、商業的及びユーザの観点から望ましい他の材料を更に含み得る。キットは、任意選択的に、例えば、かかる治療用製品又は診断用製品の適応症、使用法、投与量、製造、投与、禁忌、及び/又はその使用に関する警告についての情報を含む、治療用製品又は診断用製品の商用パッケージに通例含まれる説明書を含み得る。
【0216】
キットはまた、例えば、緩衝剤、保存剤、又は安定化剤を含むことができる。キットはまた、アッセイして、試験試料と比較することができる、対照試料又は一連の対照試料を含むことができる。キットの各構成要素は、個々の容器内に封入することができ、様々な容器の全ては、キットを使用して行われるアッセイの結果を解釈するための説明書とともに、単一のパッケージ内にあることができる。本技術のキットは、キット容器の上、又は中に記載物を含み得る。記載物は、キットに含まれる試薬を使用する方法を説明する。特定の実施形態において、試薬の使用は、本発明の技術の方法に従うことができる。
【実施例】
【0217】
本発明の技術は、以下の実施例によって更に例示されるが、これは、決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0218】
実施例1:硝子体内注射前のリスク管理についての指示
(1).局所麻酔薬を塗布し、(2).5パーセント又は10パーセントのポビドン-ヨウ素滴剤及び/又は眼球周囲ポビドン-ヨウ素眼瞼製剤を塗布し、(3).無菌検鏡を挿入して瞼を分離し、(4).注射前に注射部位の直上にポビドン-ヨウ素を再塗布する。
図3を参照されたい。
【0219】
実施例2:ウサギにおけるABP201毒性及びPK研究設計
治療。試験物品:試験物品は、すぐに使用できる様式で提供した。ビヒクルは、10mMのクエン酸ナトリウム、0.02%のポリソルベート80、及び5.8%のスクロース、pH7.2を含有する。投与:ウサギは、硝子体内経路を介して0日目に各眼において単回50μL用量(4mg/mlのABP201)又はビヒクルを受けた。
図4は、ウサギモデルにおける抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201の毒性及び薬物動態(PK)を研究するための実験設計を示す。毒性及びPK結果を
図5~11に示す。
【0220】
ABP201治療群において炎症は検出されず、治療の7日後に取り除かれた。
図6~7を
図5に対して比較する。
【0221】
群1(ビヒクル):4つの眼のうちの2つ、各ウサギにおける右眼は、主に網膜内面付近の、硝子体に5~10個の単核細胞を有した。そうでなければ、ビヒクル治療されたウサギにおいて他の異常は観察されなかった。
【0222】
群2.(OU ABP201):この群における1匹のウサギは、いずれの眼においても硝子体に異常を認めなかった。群における他のウサギは、一方の眼、左が、中等度のびまん性硝子体単核細胞浸潤を有し、視神経は、中等度の限局性単核細胞浸潤を有した。反対の眼(右)は、硝子体にいくつか(5~10個)の単核細胞を有した。
【0223】
全体的な組織病理は、ビヒクルとABP201治療群との間で同等であった。
図7~8。
【0224】
実施例3:CNV疾患モデルを用いて、眼におけるABP-201の活性を評価する
Brown-Norwayラットは、3つの濃度(0.0385μg/μL-低、0.385μg/μL-中、及び3.85μg/μL-高)のABP-201の単回5μL硝子体内注射、ビヒクル(10mMのNa-クエン酸塩、0.02%のポリソルベート80、5.8%のスクロース)、又はアフリベルセプト(EYLEA(登録商標)、0.2μg/μL)を右眼において受けた。注射は、Micron IIIカメラ(Phoenix Labs)に取り付けられた532nmレーザーで各OD眼における視神経頭からの2つの円板内で4~5つの200μmサイズの病変(100ms、200mW)を燃焼させた直後に行われた。眼底イメージング及び光干渉断層撮影(OCT、Bioptigen)は、病変の存在、サイズ、及び適切な標的化を検証した。7及び15日目に、フルオレセイン血管造影及びOCTは、病変漏出及び体積を評価した。データは、平均±SEMとして表し、一元配置分散分析を使用して分析した。研究の15日目に、動物を屠殺した。漏出データは、専門の読み手によって評価され、スコアは、カスタムImageJマクロを使用して確立された0(漏出なし)~4(非常に高い漏出)の経験的尺度に基づいた。各病変の中央OCTスキャンを手動で見つけ、Bioptigeninstrumentソフトウェアのキャリパーを使用して病変の底辺(b)及び高さ(h)サイズを測定することから、病変データを確立した。その後、半楕円体の式(V=hb2 π/12)を用いて病変体積を概算した。データは、平均±SEMとして表し、Graphpad Prismにおいて一元配置分散分析を使用して分析した。
【0225】
図14A~14Bは、それぞれ、実験群及び対照群の代表的な血管造影及びOCT画像を示す。7日目に、ABP-201の3つの用量全ては、ビヒクルと比較されるとき、病変体積(全てのp<0.01について、それぞれ、27%、27%、及び40%)及び漏出(全てのp<0.0002について、それぞれ、33%、35%、及び37%)の両方において高度に有意な低減を誘導した。15日目に、ABP-201の中及び高用量は、病変体積(両方のp<0.05について、それぞれ、26%及び27%)において有意な低減を誘導し、3つの用量全ては、漏出(全てのp<0.05について、それぞれ、28%、33%、及び36%)において有意な低減を誘導した。病変体積及び漏出の両方について、ABP-201の性能は、アフリベルセプトと同様又はそれよりも良好であった。
図12A~12B、
図15A~15Bを参照されたい。
【0226】
これらの結果は、本開示のANG-2×VEGF二重特異性抗体が、インビボでのレーザー誘導CNVにおける新生血管病変形成及び血管漏出を低減するのに有用であることを実証する。
【0227】
実施例4:ウサギにおける新規化合物の硝子体内(IVT)送達後の忍容性及び薬物動態研究
動物の健康及び順応:動物を、麻酔前に最低限の1週間にわたって研究環境に順応させた。順応期間の完了時に、各動物は、研究参加についての適合性の決定のために、実験動物技術者によって身体検査された。検査には、皮膚及び外耳、眼、腹部、神経学的挙動、並びに全身的身体状態が含まれた。良好な健康状態であると決定された動物を研究に供した。
【0228】
無作為化及び研究特定:動物を、Powered Research Standard Operating Procedures(SOP)に従って研究群に割り当てた。
【0229】
試験製剤及び投与:試験物品を、すぐに使用できる方式で供給し、実験設計表に基づいて硝子体内投与した。
【表2】
【0230】
硝子体内注射:0日目に、動物を1.0%トロピカミドHClで拡張し、ブプレノルフィン0.01~0.05mg/kgSQを投与した。次いで、ウサギを、注射のために鎮静し(ケタミン/キシラジン)、眼を、局所5%ベタジン溶液を使用し、続いて無菌洗眼液ですすぎ、無菌的に調製した。次いで、0.5%プロパラカインHCl及び10%フェニレフリンHClの局所塗布を行った。結膜をコリブリ鉗子で優しくつかみ、(毛様体扁平部を通って)上縁よりも2~3mm後方の、30G針を使用して、水晶体との接触を回避するために針をわずかに後方に向けて注射を行った。シリンジ内容物を分注した後、針をゆっくりと引き抜いた。両眼は、上記の実験設計表に示されるように注射を受けた。注射後、1滴のネオマイシンポリミキシンB硫酸塩グラミシジン眼科用溶液又はオフロキサシンを眼表面に局所適用し、動物を正常に麻酔から回復させる。
【0231】
眼検査:獣医眼科医は、ベースラインとして機能する投与前に、及び実験設計表によって示される追加の日に、スリットランプ生体顕微鏡及び間接検眼鏡を使用して完全な眼検査を実施して、全ての動物についての眼表面形態及び前部炎症を評価した。全ての動物は、この研究について検討されるために通常の眼検査を受けていなければならない。Hackett and McDonald眼グレーディングシステムをスコアリングに使用した。動物は、検査のために鎮静化されなかった。See Hackett,R.B.and McDonald,T.O.Ophthalmic Toxicology and Assessing Ocular Irritation.Dermatoxicology,Fifth Edition.Ed.F.N.Marzulli and H.I.Maibach.Washington,D.C.:Hemisphere Publishing Corporation.1996;299-305 and 557-566を参照されたい。
【0232】
眼圧測定:眼内圧(IOP)は、試験設計表によって示される時点で両眼において、全ての生存動物において測定した。ベースライン測定は、局所麻酔薬の使用なしに、Tonovetプローブ(iCare Tonometer、Espoo,Finland)を使用して覚醒動物から取った。Tonovetプローブの先端は、中心角膜に穏やかに接触するように指示された。ディスプレイ上に示される平均IOPを記録し、3回の測定を行った。
【0233】
血液収集:実験設計表によって示される時間に、約1mLの全血を、心臓穿刺(又は他の好適な静脈/動脈)を介して、Plastic Red Top Vacutainer(抗凝固剤又は血清分離剤ゲルなし)、1.3mL(Sarsredt Ref:41.1392.105又は同等)に血清収集のために採取した。収集後、チューブを3~5回反転させることによって穏やかに混合した。血液試料を、処理前に少なくとも30分、しかし60分未満にわたって室温で保存した。試料を4℃で10分間、10,000×gで冷蔵遠心分離機において遠心分離した。遠心分離直後、透明な血清を、予め標識された2mLのクライオバイアルポリプロピレンチューブに移し、解析的分析のために搬出されるまで-80℃で凍結保存した。赤血球が不注意に血清中に採取された場合、試料は直ちに再分離した。各アリコートは、以下の情報:試験番号、動物番号、群番号、マトリックス、時点、及び収集日で標識した。
【0234】
安楽死/組織収集:最終検査後、動物をケタミン/キシラジンの50/10mg/kg IMで鎮静化し、血液を実験設計表に示される日に収集した。次いで、動物を、IV投与されたペントバルビタールナトリウムの過剰投与で安楽死させ、続いて死亡を確認する聴診を行った。
【0235】
PK分析のために指定された眼:安楽死直後に、両眼を摘出した。両眼からの房水を、27ゲージ又は30ゲージのシリンジを介して除去し、予め計量されたポリプロピレンチューブに移し、計量して組織重量を決定した。次いで、試料を液体窒素中に浸漬することによって瞬間凍結した。眼組織を、Powered Research SOPに従って凍結したまま解剖した。全ての試料を個々のバイアルに入れ、計量した。試料を均質化まで-80℃で保存した。収集された組織のリスト:血清及び房水(2mLポリプロピレンスクリューキャップチューブ)、硝子体液(7mL Precellys Homogenization Tube)、網膜/脈絡膜/RPE(2mL Precellys Homogenization Tube)
【0236】
組織学:前述のように安楽死及び死亡の確認後、組織学について指定された動物の両眼を直ちに摘出し、ダビッドソン液中で24時間、続いてアルコール中で固定した。視神経を含む、各眼球の中央セクションを、ヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡を用いて検査した。
【0237】
図16~18は、経時的な抗ANG-2×VEGF二重特異性抗体ABP201(配列番号1及び配列番号2によって表される)でのインビボ累積関心領域(ROI)蛍光の分析を示す。ビヒクル及びアフリベルセプトを、それぞれ、陰性及び陽性対照として使用した。
【0238】
ABP-201二重特異性抗体の性能は、アフリベルセプトに相当した。これらの結果は、本開示のANG-2×VEGF二重特異性抗体が、CNVを治療するために有用であることを実証する。
【0239】
等価物
本技術は、本出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるべきではなく、本出願は、本技術の個々の態様の1つの例示として意図される。本技術の多くの修正及び変化は、当業者に明らかであるように、その趣旨及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本技術の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、前述の説明から当業者に明らかであろう。かかる修正及び変化は、本技術の範囲内であることが意図される。本発明の技術は、勿論、変化し得る特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物系に限定されるものではないことを理解されたい。本明細書に使用される用語が、単に特定の実施形態を記載する目的のためであり、制限することが意図されないことも理解されたい。
【0240】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者であれば、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素又は構成要素のサブグループの観点からも記載されることを認識するであろう。
【0241】
当業者によって理解されるように、任意及び全ての目的のために、特に書面による説明を提供するという点で、本明細書に開示される全ての範囲はまた、任意及び全ての可能なサブ範囲及びそのサブ範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分類されることを十分に示し、可能にするものとして、容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、容易に、下側の3分の1、中間の3分の1、及び上側の3分の1などに分類することができる。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より少ない」などの全ての言語は、列挙される数を含み、続いて、上述のようにサブ範囲に分類され得る範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるであろうように、範囲は、各個々のメンバーを含む。したがって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、又は3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1個、2個、3個、4個、又は5個などの細胞を有する群を指す、などなど。
【0242】
本明細書に言及又は引用される全ての特許、特許出願、仮出願、及び刊行物は、本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、全ての図及び表を含む、それらの全体が参照により組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】