IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティーの特許一覧

特表2024-512703近位シグナル伝達分子の使用によるT細胞機能の増強
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】近位シグナル伝達分子の使用によるT細胞機能の増強
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240312BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240312BHJP
   C07K 14/435 20060101ALI20240312BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240312BHJP
   A61K 35/545 20150101ALI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C07K14/435
C12N15/12
A61K35/17
A61K35/545
A61P35/00
A61P37/02
A61P37/08
A61P31/00
A61K39/395 T
A61K39/395 N
A61K39/395 U
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560487
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 US2022022538
(87)【国際公開番号】W WO2022212496
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,624
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ロビー ジー.マズナー
(72)【発明者】
【氏名】エイダン タウスリー
(72)【発明者】
【氏名】マリア キャテリーナ ロティロティ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084CA18
4C084DC50
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB13
4C084ZB26
4C084ZB32
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C087BB37
4C087BB61
4C087BB65
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB07
4C087ZB13
4C087ZB26
4C087ZB32
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045CA41
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は概して、とりわけ、SLP-76ポリペプチドを過剰発現する単離された組換え細胞に関する。本開示はまた、この単離された組換え細胞及び対応するSLP-76分子を生成するために有用な組成物及び方法、並びにそのような組成物により、癌などの疾患を治療する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SLP-76ポリペプチドを過剰発現するか及び/又は上昇したレベルを含むように修飾された単離された組換え細胞を含有する組成物であって、ここでこの組換え細胞が、低密度で発現された標的抗原により活性化されることが可能である、組成物。
【請求項2】
前記単離された組換え細胞が、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを更に含み、ここでTCR又はCARポリペプチドが、標的抗原又は標的抗原を特異的に認識するアダプター分子への結合親和性を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記単離された組換え細胞が、TCRポリペプチドを含み、並びにこの標的抗原が、標的細胞により発現され、且つ抗原-提示細胞(APC)によりTCRポリペプチドに提示される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記単離された組換え細胞が、内因性TCRポリペプチドを含む、請求項2又は3記載の組成物。
【請求項5】
前記単離された組換え細胞が、CARポリペプチドを含み、並びにこの標的抗原が、標的細胞により発現される、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記標的細胞が、増殖性疾患、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、及び/又は老化/加齢に相関関係がある細胞である、請求項3又は5記載の組成物。
【請求項7】
前記標的細胞が、癌細胞である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記CARポリペプチドが:
a)標的抗原又は標的抗原を特異的に認識するアダプター分子への結合親和性を有する、細胞外リガンド-結合ドメイン;
b)膜貫通ドメイン;
c)近位シグナル伝達分子を含む、細胞内シグナル伝達ドメイン;並びに
d)任意に、ヒンジドメイン及び/又は共刺激ドメイン:
を含む、請求項5記載の組成物。
【請求項9】
前記CARポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインが、宿主細胞活性化を誘導することが可能なプロテインキナーゼ、Gタンパク質、GTP-結合タンパク質、アダプターシグナル伝達タンパク質、又はスカフォールドタンパク質の完全長又は生物活性のある断片を含む、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ζ、CD3-イプシロン、CD3-ガンマ、DAP12、ZAP70、PLCG1、PKC、ITK、NCK、VAV1、GRB2、GADS、SOS1、ADAP、SYK、LYN、PI3K、もしくはBLNK、又はそれらの生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含む、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドが、該組換え細胞の消耗を誘導する、請求項2~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
前記SLP-76ポリペプチドの過剰発現が、該組換え細胞の消耗を増強しない、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記単離された組換え細胞が更に、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを低密度で発現する、請求項2~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
前記SLP-76ポリペプチドが、該組換え細胞膜に結合される、請求項1~13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
前記SLP-76ポリペプチドが、膜貫通ドメインを介して、細胞膜に結合される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記SLP-76ポリペプチドが:
i)SLP-76ポリペプチドと膜タンパク質の間の相互作用;
ii)SLP-76ポリペプチドと膜中の脂肪酸の間の共有結合;及び/又は
iii)SLP-76ポリペプチドと膜中の脂質の極性の高い頭部の間の結合:
を介して、細胞膜へ結合される、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
前記SLP-76ポリペプチドが、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の組成物。
【請求項18】
前記単離された組換え細胞が、免疫細胞である、請求項1~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
前記単離された組換え細胞が、T細胞、腫瘍-浸潤リンパ球(TIL)、制御性T細胞(Treg)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、ガンマデルタT細胞、幹細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のNK細胞、又は誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のT細胞である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記単離された組換え細胞が、約10、100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、又は10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、又は1000万個未満の標的抗原の分子により活性化されることが可能である、請求項1~19のいずれか一項記載の組成物。
【請求項21】
前記標的抗原に応答しての単離された組換え細胞の活性化が、細胞の増殖、分化、サイトカイン産生及び/又は細胞傷害性を増強する、請求項1~20のいずれか一項記載の組成物。
【請求項22】
配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも75%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及び膜貫通ドメインを含むSLP-76ポリペプチドを含む、単離されたポリペプチド。
【請求項23】
請求項22記載の単離された膜結合型SLP-76ポリペプチドをコードしている、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項23記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
【請求項25】
請求項24記載の発現ベクターを含む、宿主細胞。
【請求項26】
組成物であって:
i)請求項23記載の単離されたポリヌクレオチド、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチド;
ii)請求項24記載の発現ベクター、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター;並びに/又は
iii)請求項23記載の単離されたポリヌクレオチド、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター:
を含有する、組成物。
【請求項27】
SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含有する組成物を、細胞へ導入することを含む、組換え細胞を作製する方法。
【請求項28】
前記細胞が、TCR又はCAR分子を更に含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含有する組成物を、細胞へ導入することを含む、組換え細胞を作製する方法。
【請求項30】
前記細胞においてSLP-76ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答しての細胞の活性化を増強する方法。
【請求項31】
前記細胞が、TCR又はCAR分子を更に含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記細胞において、SLP-76ポリペプチド並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答しての細胞の活性化を増強する方法。
【請求項33】
請求項1~21のいずれか一項記載の組成物の医薬としての有効量を対象へ投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法。
【請求項34】
治療を必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法であって:
i)対象における疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原の発現レベルを検出する工程であって、ここでこの標的抗原が、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドにより認識され得る工程;並びに
ii)この標的抗原の発現レベルが、対照レベルよりも低い場合、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現し且つSLP-76ポリペプチドを発現するT細胞の医薬としての有効量を対象へ投与する工程:
を含む、方法。
【請求項35】
前記工程ii)の前に、宿主細胞による標的抗原の発現レベルを、対照レベルと比較する工程を更に含む、請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記工程ii)の前に、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現しているT細胞においてSLP-76ポリペプチドを過剰発現する工程を更に含む、請求項34又は35記載の方法。
【請求項37】
前記SLP-76ポリペプチドが、膜に結合されている、請求項34~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前述のT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドは発現するが、SLP-76ポリペプチドは発現しないT細胞が、疾患又は障害を治療することができないか、又は効率的でなくもしくは不充分にのみ治療することができる、請求項34~37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
治療を必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法であって:
i)対象から少なくとも1種のT細胞を単離する工程であって、ここで少なくとも1種のT細胞が、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現し、ここでTCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドは、対象における疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識する工程;
ii)単離された少なくとも1種のT細胞においてSLP-76ポリペプチドを発現する工程;並びに
iii)SLP-76ポリペプチドを発現する単離されたT細胞の医薬としての有効量を対象へ投与する工程:
を含む、方法。
【請求項40】
前記宿主細胞により発現された標的抗原のレベルが、対照レベルよりも低い、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記工程i)の前に、宿主細胞による標的抗原の発現レベルを、対照レベルと比較する工程を更に含む、請求項39又は40記載の方法。
【請求項42】
前記SLP-76ポリペプチドが、膜に結合される、請求項39~41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
前記対象における少なくとも1種のT細胞が、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である、請求項39~42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
前記SLP-76ポリペプチドの発現が、宿主細胞を阻害又は死滅するように、少なくとも1種のT細胞の活性を増強する、請求項39~43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
前記宿主細胞が、癌細胞又は腫瘍細胞である、請求項39~44のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2021年3月31日に出願された米国特許仮出願第63/168,624号の優先権及び恩恵を主張するものであり;この出願の内容は、その全体が本明細書中に組み込まれている。
【0002】
引用による組込み
本願は、配列表を含み、これはその全体が引用により本明細書中に組み込まれている。添付された配列表のテキストファイルは、ファイル名「078430-533001WOSequenceListing_ST25.txt」であり、2022年3月30日に作製され、239,808バイトである。
【0003】
分野
本開示は概して、腫瘍学及び免疫治療の分野に関し、並びに特に、標的抗原に応答してキメラ抗原受容体(CAR)及び/又はT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞などの、細胞の活性化及び機能を増強することが可能である、例えばSLP-76などのポリペプチド、及びこれらのポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの組成物に関する。本開示はまた、これらのポリペプチドを含む組換え細胞の組成物、及びそのような組換え細胞の作製に有用な方法、並びに疾患(例えば、癌又は自己免疫疾患)などの状態の治療のためにT細胞活性を増強する方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
背景
キメラ抗原受容体(CAR)及び/又はT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞に関与するような、現在のT細胞療法は、CAR又はTCRにより認識される標的抗原が低密度で発現される場合には、制限を有する。腫瘍細胞が、それらの表面上に発現される腫瘍抗原(通常CAR又はTCRの標的抗原としてデザインされる)の量をダウンレギュレーションする場合、現在のCAR又はTCRは、腫瘍細胞を阻害又は死滅するようにT細胞を活性化することができないことがある。別のシナリオにおいて、CAR又はTCRは、抗原密度が正常である場合であっても、T細胞を破壊することがある。例えば一部のCAR又はTCRは、それらの標的抗原に対し低い親和性を有するか、或いはT細胞消耗に繋がり、従って最終的にはT細胞治療効果を減弱化又は終結させることがある。結果的に、これらの療法の及ぶ範囲を増強及び/又は拡大するようこれらの障害を克服するために、T細胞活性化を調節する必要性が依然存在している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
要約
本開示は概して、細胞質型又は膜結合型のいずれかでの、LCP2又はSLP-76としても公知の、リンパ球細胞質タンパク質2(76kDaのSH2ドメインを含む白血球タンパク質)などの、ポリペプチド、又はそのようなポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む、組換え細胞又は組換え細胞の溶解液を含む免疫療法の開発、並びに例えば疾患(例えば癌)などの様々な状態を治療する上で、免疫療法の増強において使用するための前述のものを含有する医薬組成物に関する。以下により詳細に説明されるように、様々なSLP-76構築体が、調製され、並びに抗原が低密度で発現される場合であっても、この抗原に応答してCAR及び/又はTCRを発現する免疫細胞(例えばT細胞)の活性化を増強し且つ効能を増大する劇的な作用を有することがわかった。一部の実施態様において、SLP-76構築体は、CAR及び/又はTCRを発現するT細胞の膜に結合される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一局面において、本開示は、SLP-76ポリペプチドを過剰発現するか及び/又は上昇したレベルを含むように修飾された単離された組換え細胞を含有する組成物を提供する。一部の実施態様において、本明細書記載の組成物の単離された組換え細胞は、低密度で発現された標的抗原により活性化されることが可能である。
【0007】
一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は更に、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド、キメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチド、及び/又は別の受容体ポリペプチドを含む。一部の実施態様において、TCR又はCARポリペプチドは、標的抗原又は標的抗原を特異的に認識するアダプター分子への結合親和性を有する。一部の実施態様において、単離された組換え細胞は、TCRポリペプチドを含む。一部の実施態様において、TCRポリペプチドの標的抗原は、標的細胞により発現され、且つ抗原-提示細胞(APC)によりTCRポリペプチドに提示される。一部の実施態様において、単離された組換え細胞は、内因性又は未変性のTCRポリペプチドを含む。一部の実施態様において、単離された組換え細胞は、CARポリペプチドを含む。一部の実施態様において、CARポリペプチドの標的抗原は、標的細胞により発現される。
【0008】
一部の実施態様において、本明細書記載の標的細胞は、例えば、増殖性疾患(癌又は腫瘍など)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、及び/又は老化/加齢などを含む状態と相関関係がある細胞である。一部の実施態様において、標的細胞は、癌細胞である。
【0009】
一部の実施態様において、本明細書記載のCARポリペプチドは:
a)標的抗原又は標的抗原を特異的に認識するアダプター分子への結合親和性を有する、細胞外リガンド-結合ドメイン;
b)膜貫通ドメイン;
c)近位シグナル伝達分子を含む、細胞内シグナル伝達ドメイン;並びに
d)任意に、ヒンジドメイン及び/又は共刺激ドメイン:
を含む。
【0010】
一部の実施態様において、本明細書記載のCARポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインは、宿主細胞活性化を誘導することが可能なプロテインキナーゼ、Gタンパク質、GTP-結合タンパク質、アダプターシグナル伝達タンパク質、又はスカフォールドタンパク質の完全長又は生物活性のある断片を含む。一部の実施態様において、CARポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ζ、CD3-イプシロン、CD3-ガンマ、DAP12、ZAP70、PLCG1、PKC、ITK、NCK、VAV1、GRB2、GADS、SOS1、ADAP、SYK、LYN、PI3K、もしくはBLNK、又はそれらの生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含む。
【0011】
一部の実施態様において、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドは、この組換え細胞の消耗を誘導する。一部の実施態様において、単離された組換え細胞における本明細書記載のSLP-76ポリペプチドの過剰発現は、この組換え細胞の消耗を増強しない。一部の実施態様において、単離された組換え細胞における本明細書記載のSLP-76ポリペプチドの過剰発現は、この組換え細胞の消耗に打ち勝つ。
【0012】
一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は更に、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを正常な密度で発現する。一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は更に、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを高密度で発現する。一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は更に、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを低密度で発現する。
【0013】
一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、遊離の細胞質型である。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、組換え細胞の膜に結合される。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、膜貫通ドメインを介して、細胞膜に結合される。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは:
i)SLP-76ポリペプチドと膜タンパク質の間の相互作用;
ii)SLP-76ポリペプチドと膜中の脂肪酸の間の共有結合;及び/又は
iii)SLP-76ポリペプチドと膜中の脂質の極性の高い頭部の間の結合:
を介して、細胞膜へ結合される。
【0014】
一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、完全長SLP-76を含む。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、SLP-76の生物活性のある断片、変異体、又はバリアントを含む。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、野生型SLP-76ポリペプチドに対する少なくとも1つの変異(例えばK30R置換)を含む。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも70%又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60のアミノ酸配列からなる。
【0015】
一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は、免疫細胞である。一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は、非-免疫細胞である。一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は、T細胞、制御性T細胞(Treg)、腫瘍-浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、ガンマデルタT細胞、幹細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のNK細胞、又は誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のT細胞である。
【0016】
一部の実施態様において、この単離された組換え細胞は、約10、100、200、300、400、500、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、9000、又は10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、100000、200000、300000、400000、500000、600000、700000、800000、900000、100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、又は1000万個未満の標的抗原の分子により活性化されることが可能である。
【0017】
一部の実施態様において、この標的抗原に応答しての単離された組換え細胞の活性化は、細胞の増殖、分化、サイトカイン産生及び/又は細胞傷害性を増強する。
【0018】
別の局面において、本開示は、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又はそれよりも大きい同一性の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSLP-76ポリペプチドを含む、単離されたポリペプチドを提供する。一部の実施態様において、この単離されたポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60と少なくとも70%、75%、90%、95%又はそれよりも大きい同一性の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むSLP-76ポリペプチドを含む。一部の実施態様において、単離されたポリペプチドは、本明細書記載のSLP-76ポリペプチド及び膜貫通ドメインを含む。一部の非限定的実施態様において、この単離されたポリペプチドの膜貫通ドメインは、単離されたポリペプチドを単離された組換え細胞の膜(例えば、細胞膜)へ繋留する。
【0019】
別の局面において、本開示は、本明細書記載の単離されたSLP-76ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドを提供する。一部の実施態様において、この単離されたポリヌクレオチドは、本明細書記載の単離された膜結合型SLP-76ポリペプチドをコードしている。そのようなSLP-76ポリペプチドは、膜貫通ドメイン又は他の本明細書記載の機序を通じて、単離された組換え細胞の膜に結合されてよい。
【0020】
別の局面において、本開示は、本明細書記載の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。一部の実施態様において、この発現ベクターは、発現プロモーターを含む。一部の実施態様において、この単離されたポリヌクレオチドは、本明細書記載の単離された組換え細胞において発現されるように発現プロモーターにコンジュゲートされている。
【0021】
別の局面において、本開示は、本明細書記載の発現ベクターを含む、宿主細胞を提供する。一部の実施態様において、この宿主細胞は、例えば、免疫細胞又は非-免疫細胞を含む、本明細書記載の組換え細胞である。
【0022】
別の局面において、本開示は:
i)本明細書記載の単離されたポリヌクレオチド、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチド;
ii)本明細書記載の発現ベクター、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター;並びに/又は
iii)本明細書記載の単離されたポリヌクレオチド、並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしている単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター:
を含有する、組成物を提供する。一部の実施態様において、この組成物は、医薬組成物である。一部の実施態様において、この医薬組成物は更に、医薬として許容し得る担体及び/又は賦形剤を含有する。
【0023】
別の局面において、本開示は、SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含有する組成物を、細胞へ導入することを含む、組換え細胞を作製する方法を提供する。一部の実施態様において、この細胞は、未変性の細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、組換え細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、非-免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、生体試料に由来している。一部の実施態様において、この細胞は、ヒト、例えば患者からの生体試料に由来している。
【0024】
一部の実施態様において、この細胞は、TCR又はCAR分子を更に含む。そのようなTCR分子は、この細胞において、未変性又は内因性、又は外因性であってよい。
【0025】
別の局面において、本開示は、SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド並びにT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含有する組成物を、細胞へ導入することを含む、組換え細胞を作製する方法を提供する。一部の実施態様において、この細胞は、未変性の細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、組換え細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、非-免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、生体試料に由来している。一部の実施態様において、この細胞は、ヒト、例えば患者からの生体試料に由来している。
【0026】
別の局面において、本開示は、細胞においてSLP-76ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答しての細胞の活性化を増強する方法を提供する。そのような過剰発現は、細胞へ、本明細書に記載されたような、SLP-76ポリペプチド、SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、及び/又はSLP-76ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを導入することから生じることができる。一部の実施態様において、この細胞は、未変性の細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、組換え細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、非-免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、生体試料に由来している。一部の実施態様において、この細胞は、ヒト、例えば患者からの生体試料に由来している。一部の実施態様において、この細胞は、TCR又はCAR分子を更に含む。そのようなTCR分子は、この細胞において、未変性又は内因性、又は外因性であってよい。
【0027】
別の局面において、本開示は、細胞中において、SLP-76ポリペプチド及びT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答しての細胞の活性化を増強する方法を提供する。一部の実施態様において、この細胞は、未変性の細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、組換え細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、非-免疫細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、生体試料に由来している。一部の実施態様において、この細胞は、ヒト、例えば患者からの生体試料に由来している。
【0028】
別の局面において、本開示は、本明細書記載の組成物の医薬としての有効量を対象へ投与することを含む、それを必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法を提供する。そのような組成物は、本明細書に記載されたような、SLP-76ポリペプチド、SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド、及び/又はSLP-76ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含有してよい。
【0029】
一部の実施態様において、対象における疾患又は障害は、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現するT細胞により、治療することができないか、又は単に部分的にもしくは非効率的に治療することができる一方で、このTCR又はCARポリペプチドは、標的抗原への、又はこの疾患もしくは障害に関連した宿主細胞(例えば癌細胞もしくは腫瘍細胞)により発現される標的抗原を特異的に認識するアダプター分子への結合親和性を有する。例えばこの疾患又は障害は、標的抗原を低レベルで発現する(すなわち、低密度を有する)宿主細胞に関与し、TCR又はCARポリペプチドを通じたT細胞の活性化を不充分なものにする。そのような低密度の標的抗原は、この疾患又は障害に関連した宿主細胞における、変異(複数可)又は転写もしくは翻訳の制御(複数可)により引き起こされ得る。そのような宿主細胞は、この疾患又は障害の形成及び発達の段階を通じて、又は疾患又は障害の形成及び発達の段階の特定の時点の後のみに、低密度の標的抗原を発現することができる。例えば一部の癌細胞又は腫瘍細胞は、宿主免疫系を回避するために、特定の癌/腫瘍-関連抗原の発現を減少する戦略を採用することができる。そのようなシナリオにおいて、癌/腫瘍-関連抗原を認識することによる一般的なCAR T又はTCR療法は、この疾患又は障害を治療するには有効でも十分でもない。SLP-76(例えば膜結合型SLP-76構築体)の過剰発現は、この疾患又は障害を治療するために、CAR T又はTCR-発現するT細胞の活性化及び機能を増強することができる。
【0030】
別の局面において、本開示は、この疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識するCAR又はTCRポリペプチドを発現し且つ更に本明細書記載のSLP-76ポリペプチド(例えば膜結合型SLP-76ポリペプチド)を発現するT細胞の医薬としての有効量を、対象へ投与することを含む、それを必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法を提供する。そのような宿主細胞は、標的抗原を低レベルで発現し(すなわち低密度を有し)、その結果、CAR又はTCRポリペプチドのみを発現するがSLP-76ポリペプチドは発現しない類似のT細胞は、この疾患又は障害を不充分に治療するか又は治療することができないようにしている。
【0031】
別の局面において、本開示は、疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識するCAR又はTCRポリペプチドを発現し且つ更に本明細書記載のSLP-76ポリペプチド(例えば膜結合型SLP-76ポリペプチド)を発現するT細胞の医薬としての有効量を、対象へ投与することを含む、それを必要とする対象における疾患又は障害を治療する一方で、この疾患又は障害は、CAR又はTCRポリペプチドのみを発現するが、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは発現しない類似のT細胞により、治療されないか、又は非効率的もしくは不充分にのみ治療される方法を提供する。そのような宿主細胞は、標的抗原を低レベルで発現し(すなわち低密度を有し)、その結果、CAR又はTCRポリペプチドのみを発現するが、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは発現しない類似のT細胞は、この疾患又は障害の治療を不充分又は不可能にしている。一部の実施態様において、本方法は更に、この疾患又は障害に関連した宿主細胞における標的抗原(複数可)の発現レベルを検出する第一工程を含む。一部の実施態様において、そのような標的抗原(複数可)の発現レベルは、治療前に分かっている。
【0032】
一部の実施態様において、本方法は、それを必要とする対象における疾患又は障害に関連した宿主細胞中の標的抗原(複数可)の発現レベルを検出する第一工程、並びにそのような発現レベルが、対照レベル(例えば、健常対象、もしくはその疾患又は障害に関連のない宿主細胞における標的抗原(複数可)の発現レベル)よりも低い場合、この対象を、この疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識するCAR又はTCRポリペプチドを発現し且つ更に本明細書記載のSLP-76ポリペプチド(例えば、膜結合型SLP-76ポリペプチド)を発現するT細胞で治療する第二工程を含む。一部の実施態様において、治療前に、対象におけるこの疾患又は障害に関連した宿主細胞は、CAR T又はTCR療法において使用されるCAR又はTCR分子により認識可能な標的抗原(複数可)を低レベルで発現することはわかっている。一部の実施態様において、そのような宿主細胞上の標的抗原(複数可)の低密度は、CAR T又はTCR療法のみによるこの疾患又は障害の治療の失敗をもたらす。一部の実施態様において、そのような宿主細胞上の標的抗原(複数可)の低密度は、CAR T又はTCR療法のみによるこの疾患又は障害の効果的でない又は不充分な治療を生じる。
【0033】
一部の実施態様において、本方法は更に、本明細書記載の測定/検出工程と治療工程の間に、測定された/検出された標的抗原の発現レベルを、対照レベル(例えば、健常対象、もしくはその疾患又は障害に関連のない宿主細胞における標的抗原(複数可)の発現レベル)と比較するための任意の工程を含む。一部の実施態様において、本方法は更に、本明細書記載の治療工程の前に、CAR T又はTCR-発現するT細胞において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチド(例えば、膜結合型SLP-76ポリペプチド)を過剰発現する任意の工程を含む。そのような過剰発現は、公知の方法(例えば、形質導入、トランスフェクション、ウイルス感染など)により行うことができる。
【0034】
別の局面において、本開示は、それを必要とする対象における疾患又は障害を治療する方法を提供し、これは:
i)対象における疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原の発現レベルを検出する工程であって、ここでこの標的抗原は、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドにより認識され得る工程;並びに
ii)この標的抗原の発現レベルが、対照レベルよりも低い場合、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現し且つSLP-76ポリペプチドを発現するT細胞の医薬としての有効量を対象へ投与する工程:
を含む。
【0035】
一部の実施態様において、本方法は更に、工程ii)の前に、宿主細胞による標的抗原の発現レベルを、対照レベルと比較する任意の工程を含む。一部の実施態様において、本方法は、工程ii)の前に、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現しているT細胞においてSLP-76ポリペプチドを過剰発現する任意の工程を含む。
【0036】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、膜に結合されている。
【0037】
一部の実施態様において、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現するが、SLP-76ポリペプチドを発現しないT細胞は、この疾患又は障害を治療することができないか、又は単に非効率的にもしくは不充分に治療する。
【0038】
別の局面において、本開示は、この疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識するTCRポリペプチドを発現し、且つ更に本明細書記載のSLP-76ポリペプチド(例えば膜結合型SLP-76ポリペプチド)を発現するT細胞(例えば対象における内因性T細胞)の医薬としての有効量を、対象を投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する一方で、この疾患又は障害は、TCRポリペプチドのみを発現するが、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは発現しない類似のT細胞により、治療されないか、又は単に非効率的もしくは不充分に治療される方法を提供する。そのような宿主細胞は、標的抗原を低レベルで発現し(すなわち、低密度で有し)、その結果TCRポリペプチドのみを発現するが、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは発現しない内因性T細胞は、その疾患又は障害の治療を不充分又は不可能にしている。一部の実施態様において、本方法は更に、この疾患又は障害に関連した宿主細胞における標的抗原(複数可)の発現レベルを検出する第一工程を含む。一部の実施態様において、そのような標的抗原(複数可)の発現レベルは、治療前に分かっている。一部の実施態様において、本方法は更に、対象からT細胞(例えば、対象における内因性T細胞)を単離する工程を含む。一部の実施態様において、本方法は更に、単離されたT細胞(例えば、内因性T細胞)において本明細書記載のSLP-76ポリペプチドを発現する工程を含む。そのようなT細胞は、標的抗原を認識するTCR分子を発現する任意のT細胞であってよく、例えば、制御性T細胞(Treg)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、ガンマデルタT細胞、幹細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のNK細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のT細胞、又はそれらのT細胞の混合物を含む。一部の実施態様において、これらのT細胞(例えば、対象における内因性T細胞)は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。一部の実施態様において、これらのT細胞は、この疾患又は障害について治療される対象から単離される。一部の実施態様において、これらのT細胞は、異なる対象、例えば、同じ疾患又は障害を有する異なる対象、もしくは健常対象から単離される。本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、本明細書記載の方法又は当業者に公知の方法(例えば、ウイルスベクターを介して)のいずれかにより、単離されたT細胞(例えば、対象における内因性T細胞)内での発現のために導入されてよい。
【0039】
別の局面において、本開示は:
i)対象においてこの疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現される標的抗原の発現レベルを検出する工程であって、ここでこの標的抗原は、対象においてT細胞により発現されるT細胞受容体(TCR)ポリペプチドにより認識され得る工程;
ii)対象から工程i)におけるT細胞を単離する工程;並びに
iii)工程i)における標的抗原の発現レベルが対照レベルよりも低い場合、工程ii)において単離されたT細胞においてSLP-76ポリペプチドを発現する工程;並びに
SLP-76ポリペプチドを発現する単離されたT細胞の医薬としての有効量を対象へ投与する工程:
を含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法を提供する。
【0040】
別の局面において、本開示は:
i)対象から少なくとも1種のT細胞を単離する工程であって、ここで少なくとも1種のT細胞が、T細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/又はキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを発現し、ここでTCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドは、対象においてこの疾患又は障害に関連した宿主細胞により発現された標的抗原を特異的に認識する工程;
ii)単離された少なくとも1種のT細胞においてSLP-76ポリペプチドを発現する工程;並びに
iii)SLP-76ポリペプチドを発現する単離されたT細胞の医薬としての有効量を対象へ投与する工程:
を含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法を提供する。
【0041】
一部の実施態様において、このTCRポリペプチドは、対象にとって内因性である。一部の実施態様において、TCRポリペプチド及び/又はCARポリペプチドを発現する少なくとも1種のT細胞は、対象にとって内因性である。一部の実施態様において、TCRポリペプチド、CARポリペプチド、並びに/又はTCRポリペプチド及び/もしくはCARポリペプチドを発現する少なくとも1種のT細胞は、外因性であるか、もしくは遺伝子修飾されている。
【0042】
一部の実施態様において、本方法は更に、工程i)の前に、宿主細胞による標的抗原の発現レベルを測定する工程を含む。
【0043】
一部の実施態様において、本明細書記載の方法は更に、工程i)の前に、宿主細胞による標的抗原の発現レベルを対照レベルと比較する、任意の工程を含む。
【0044】
一部の実施態様において、宿主細胞により発現される標的抗原のレベルは、対照レベルよりも低い。そのような対照レベルは、疾患又は障害とは関係がない異なる宿主細胞による(例えば、同じ対象の同じもしくは異なる組織もしくは器管中、又は同じ疾患又は障害を有するかもしくは健常個体などこの疾患又は障害を有さないのいずれかの異なる宿主の同じもしくは異なる組織もしくは器管中)、標的抗原の発現レベルを指してよい。そのような対照レベルは、この治療前に医師又は臨床医に既にわかっていることができる。
【0045】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、本明細書記載の方法又は当業者に公知の方法(例えば、ウイルスベクターを介して)のいずれかにより、単離されたT細胞中での発現のために導入されてよい。
【0046】
一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、膜に結合されている。
【0047】
一部の実施態様において、対象におけるT細胞は、制御性T細胞(Treg)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、ガンマデルタT細胞、幹細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のNK細胞、又は誘導多能性幹細胞(iPSC)-由来のT細胞である。一部の実施態様において、対象におけるT細胞は、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)である。
【0048】
一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドの発現は、宿主細胞を阻害又は死滅するように、少なくとも1種のT細胞の活性を増強する。
【0049】
一部の実施態様において、この宿主細胞は、癌細胞又は腫瘍細胞である。
【0050】
非限定的機序の下、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、内因性もしくは外因性のいずれかで、別のCARもしくはTCR分子の活性を増強することができ、並びに/又は特に抗原が低密度で発現される場合に、標的抗原に対し応答してCAR又はTCR分子を発現する細胞の活性閾値を低下することができる。本明細書記載のSLP-76ポリペプチドの発現は、CAR又はTCR分子を発現するT細胞を使用する現在のT細胞療法を増強することができる。
【0051】
本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、完全長SLP-76、又はSLP-76の生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含んでよい。一部の実施態様において、このSLP-76ポリペプチドは、野生型SLP-76ポリペプチドに対する少なくとも1つの変異を含む。そのような変異は、野生型SLP-76のK30位置に対する変異(例えば、K30R置換)など、当業者に公知の任意の変異であってよい。非限定的機序の下、SLP-76の発現レベル、安定性及び/又は生物学的機能を減少しない任意の変異が、本明細書において使用されてよい。K30R置換などの、一部の変異は、SLP-76の発現レベル、安定性及び/又は生物学的機能を増強し得る。そのような変異を有するSLP-76変異体は更に、標的抗原への結合時に、T細胞活性化を増強し得、その結果更に、本明細書記載の疾患又は障害に関するCAR T又はTCR療法の治療効果を増強し得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1は、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を示すグラフのセットである。FACS分析のヒストグラムは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”、上部左側パネル)又はHER2-標的化するCAR構築体(“HER-2-CD28TM-BBZ”、上部右側パネル)の発現を示すが、これらのT細胞は更に、LCK(配列番号:9、一番上の痕跡)、LAT(配列番号:8、上から2番目の痕跡)、SLP-76(配列番号:7、上から3番目の痕跡)、又は近位シグナル伝達分子を伴わない対照(一番下の痕跡)を過剰発現する。近位シグナル伝達分子を伴う又は伴わない、異なるCAR構築体を発現しているT細胞は、対照(“無腫瘍”)、CD19を発現するがHER2を発現しない野生型NALM6細胞(“WT NALM6”)、又はHER2を発現するがCD19を発現しないNALM6細胞(“HER2+NALM6”)と共にインキュベーションされた。T細胞によるIL-2生成のレベルを測定し、比較した(下側パネル)。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19-CD8TM-BBZ、CD19-CD8TM-BBZ+SLP-76、CD19-CD8TM-BBZ+LAT、CD19-CD8TM-BBZ+LCK、HER2-CD28TM-BBZ、HER2-CD28TM-BBZ+SLP-76、HER2-CD28TM-BBZ+LAT、及びHER2-CD28TM-BBZ+LCKである。
図1-1】図1は、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を示すグラフのセットである。FACS分析のヒストグラムは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”、上部左側パネル)又はHER2-標的化するCAR構築体(“HER-2-CD28TM-BBZ”、上部右側パネル)の発現を示すが、これらのT細胞は更に、LCK(配列番号:9、一番上の痕跡)、LAT(配列番号:8、上から2番目の痕跡)、SLP-76(配列番号:7、上から3番目の痕跡)、又は近位シグナル伝達分子を伴わない対照(一番下の痕跡)を過剰発現する。近位シグナル伝達分子を伴う又は伴わない、異なるCAR構築体を発現しているT細胞は、対照(“無腫瘍”)、CD19を発現するがHER2を発現しない野生型NALM6細胞(“WT NALM6”)、又はHER2を発現するがCD19を発現しないNALM6細胞(“HER2+NALM6”)と共にインキュベーションされた。T細胞によるIL-2生成のレベルを測定し、比較した(下側パネル)。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19-CD8TM-BBZ、CD19-CD8TM-BBZ+SLP-76、CD19-CD8TM-BBZ+LAT、CD19-CD8TM-BBZ+LCK、HER2-CD28TM-BBZ、HER2-CD28TM-BBZ+SLP-76、HER2-CD28TM-BBZ+LAT、及びHER2-CD28TM-BBZ+LCKである。
図1-2】図1は、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を示すグラフのセットである。FACS分析のヒストグラムは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”、上部左側パネル)又はHER2-標的化するCAR構築体(“HER-2-CD28TM-BBZ”、上部右側パネル)の発現を示すが、これらのT細胞は更に、LCK(配列番号:9、一番上の痕跡)、LAT(配列番号:8、上から2番目の痕跡)、SLP-76(配列番号:7、上から3番目の痕跡)、又は近位シグナル伝達分子を伴わない対照(一番下の痕跡)を過剰発現する。近位シグナル伝達分子を伴う又は伴わない、異なるCAR構築体を発現しているT細胞は、対照(“無腫瘍”)、CD19を発現するがHER2を発現しない野生型NALM6細胞(“WT NALM6”)、又はHER2を発現するがCD19を発現しないNALM6細胞(“HER2+NALM6”)と共にインキュベーションされた。T細胞によるIL-2生成のレベルを測定し、比較した(下側パネル)。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19-CD8TM-BBZ、CD19-CD8TM-BBZ+SLP-76、CD19-CD8TM-BBZ+LAT、CD19-CD8TM-BBZ+LCK、HER2-CD28TM-BBZ、HER2-CD28TM-BBZ+SLP-76、HER2-CD28TM-BBZ+LAT、及びHER2-CD28TM-BBZ+LCKである。
【0053】
図2図2は、対照(“単独”)、高レベルのCD19を発現する野生型NALM6細胞(“WT N6”)、又は低レベルのCD19を発現するNALM6細胞(“CD19低N6”)に応答してのT細胞のIL-2生成レベルの棒グラフである。これらのT細胞は更に、SLP-76を伴う又は伴わずに、図1と同じ、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)を発現する。各インキュベーション条件で使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19-CD8TM-BBZ、及びCD19-CD8TM-BBZ+SLP-76である。
【0054】
図3A図3A-3Cは、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を示すグラフのセットである。図3Aは、T細胞上のCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示し、これは更に、LCK(配列番号:9;一番上の痕跡)、膜結合型LCK構築体(配列番号:17;上から2番目の痕跡)、SLP-76(配列番号:7;上から3番目の痕跡)、膜結合型SLP-76(配列番号:16;上から4番目の痕跡)、又は対照(一番下の痕跡)を過剰発現する。
図3B図3Bは、対照(“単独”)、野生型NALM6細胞(“WT N6”)、又は低レベルのCD19を発現するNALM6細胞(“CD19低N6”)に応答した、これらのT細胞のIL-2生成レベルを比較する、棒グラフである。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19-CD8TM-BBZ、CD19-CD8TM-BBZ+SLP-76、CD19-CD8TM-BBZ+膜結合型SLP-76、CD19-CD8TM-BBZ+膜結合型LCK、及びCD19-CD8TM-BBZ+LCKである。
図3C図3Cは、膜結合型SLP-76を伴う又は伴わずに、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)を発現するT細胞のIL-2生成レベルを比較するグラフである。図3Cの実験について、CD19-標的化するCARの細胞外ドメインを特異的に認識する抗イディオタイプ抗体は、連続希釈により、異なる量(x-軸)で、プレートにコートされた。T細胞は、コートされた抗体の各量と共にインキュベーションし、且つ対応するIL-2の生成レベルを測定し、T細胞活性化の程度を示した。
【0055】
図4A図4A-4Cは、図3A-3Cと同様の、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を示すグラフのセットである。図4Aは、T細胞上のHER2-標的化するCAR構築体(“HER-2-CD28TM-BBZ”)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示し、これは更に、LCK(配列番号:9;一番上の痕跡)、膜結合型LCK構築体(配列番号:17;上から2番目の痕跡)、SLP-76(配列番号:7;上から3番目の痕跡)、膜結合型SLP-76(配列番号:16;上から4番目の痕跡)、又は対照(一番下の痕跡)を過剰発現する。
図4B図4Bは、対照(“無腫瘍”)、超低レベルのHER2を発現するNALM6細胞(“超低HER2+N6”)、低レベルのHER2を発現するNALM6細胞(“低HER2+N6”)、高レベルのHER2を発現するNALM6細胞(“高HER2+N6”)、又は野生型143B細胞(これは低レベルのHER2を発現する)に応答した、これらのT細胞のIL-2生成レベルを比較する、棒グラフである。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、HER2-CD28TM-BBZ、HER2-CD28TM-BBZ+SLP-76、HER2-CD28TM-BBZ+膜結合型SLP-76、HER2-CD28TM-BBZ+LCK、及びHER2-CD28TM-BBZ+膜結合型LCKである。
図4C図4Cは、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わずに、同じHER2-標的化するCAR構築体を発現するT細胞のIL-2生成レベルを比較するグラフである。組換えHer-2抗原は、連続希釈により、異なる量(x-軸)で、プレートにコートされた。T細胞は、コートされた組換え抗原の各量と共にインキュベーションし、且つ対応するIL-2の生成レベルを測定し、T細胞活性化の程度を示した。
【0056】
図5A図5A-5Fは、腫瘍細胞に応答してCAR T細胞活性を増強する膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示すグラフのセットである。図5Aは、T細胞上の、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-CD28Z”、左側パネル)及び膜結合型SLP-76(膜結合型SLP-76にコンジュゲートされた小型細胞外タグの検出を通じて)(右側パネル)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。
図5B図5Bは、対照(“単独”)、野生型NALM6細胞(“WT N6”)、又は低レベルのCD19を発現するNALM6細胞(“CD19低N6”)に応答しての、これらのT細胞のIL-2生成レベルを比較する、棒グラフである。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、モック、モック+膜結合型SLP-76、CD19-CD28TM-CD28Z、及びCD19-CD28TM-CD28Z+膜結合型SLP-76である。
図5C図5Cは、経時的にCD19低N6細胞に対するこれらのT細胞の細胞傷害性を比較するグラフである。具体的には、膜結合型SLP-76を伴う又は伴わないCD19-標的化するCAR構築体を発現するT細胞は、GFPを発現するCD19低N6細胞と共にインキュベーションし、並びに残存するN6細胞の数を、3時間~72時間のインキュベーション後にそれらのGFP発現を基にカウントした。この細胞傷害指数(ベースライン測定値に対し基準化された%GFPシグナル)を計算し、これは標的細胞を阻害又は死滅するT細胞の機能を反映した。
図5D図5Dは、インビボNALM6ストレス試験モデルにおける膜結合型SLP-76の作用を示す。具体的には、膜結合型SLP-76を伴う又は伴わない、CD19-標的化するCAR構築体を発現するT細胞を、分割治効量(sub-curative dose)で、野生型NALM-6腫瘍を有する動物へ注射した。腫瘍組織量(y-軸として総光束数で示した)を、治療後の様々な時点で、測定し比較した。
図5E図5Eは、図5Dにおいて説明した実験からのマウスの生存を示す。ラインは、左から右へ、モック+膜結合型SLP-76、CD19 28Z、又はCD19 28Z+膜結合型SLP-76を発現するマウスの生存を表す。
図5F図5Fは、誤計算したデータポイントを補正後の、図5Dの結果を示す(モック+膜SLP-76治療を除く)。
【0057】
図6A図6A-6Fは、腫瘍細胞に応答したCAR T細胞活性を増強する膜結合型SLP-76の能力を示すグラフのセットである。図6Aは、T細胞上の、CD22-標的化するCAR構築体(“CD22-CD8TM-BBZ”、左側パネル)及び膜結合型SLP-76(膜結合型SLP-76にコンジュゲートされた小型細胞外タグの検出を通じて)(右側パネル)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。
図6B図6Bは、対照(“単独”)、又は低レベルのCD22を発現するNALM6細胞(“CD22低N6”)に反応した、これらのT細胞、又はモック対照のIL-2生成レベルを比較する、棒グラフである。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、モック、モック+膜結合型SLP-76、CD22-CD8TM-BBZ、及びCD22-CD8TM-BBZ+膜結合型SLP-76である。
図6C図6Cは、膜結合型SLP-76を伴う又は伴わない、CD22-標的化するCAR構築体(“CD22-CD8TM-BBZ”)を発現するT細胞のIL-2生成レベルを比較するグラフである。組換えCD22は、連続希釈により、異なる量(x-軸)で、プレートへコートされた。T細胞は、コートされたCD22の各量と共にインキュベーションし、且つIL-2の生成レベルを測定し、T細胞活性化を示した。
図6D図6D-6Fは、インビボにおけるCD22低NALM6(低密度のCD22を発現する細胞)モデルにおける膜結合型SLP-76の作用を示す。具体的には、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、CD22-標的化するCAR構築体を発現するT細胞を、CD22低NALM-6腫瘍を有する動物へ注射した。腫瘍組織量(y-軸として総光束数で示した)を、治療後22日目に、測定し比較した(図6D)。
図6E】別の実験において、腫瘍組織量(y-軸として全ルミネセンスで示した)を、治療後異なる時点で測定し比較した(図6E)。
図6F図6Fは、図6Eにおいて説明した実験からのマウスの生存を示す。
【0058】
図7A図7A-7Dは、腫瘍細胞に応答してCAR T細胞活性を増強する膜結合型SLP-76の能力を示すグラフのセットである。図7Aは、T細胞上の、B7-H3-標的化するCAR構築体(“B7-H3-CD28TM-BBZ”、左側パネル)及び膜結合型SLP-76(膜結合型SLP-76にコンジュゲートされた小型細胞外タグの検出を通じて)(右側パネル)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。
図7B図7Bは、神経芽細胞腫細胞株CHLA-255(これは低密度のB7-H3を発現する)に対するこれらのCAR T細胞の細胞傷害性を比較するグラフである。具体的には、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、B7-H3-CD28TM-BBZを発現するT細胞を、GFPを発現するCHLA-255細胞と共にインキュベーションした。残存するCHLA-255細胞の数を、それらのGFPの発現レベルを基に、インキュベーション後3時間~78時間にカウントした。細胞傷害指数を計算し、これは標的細胞を阻害又は死滅するT細胞の機能を反映した。
図7C図7Cは、インビボにおけるCHLA-255(これは低密度のB7-H3を発現する)転移モデルにおける腫瘍組織量を示す。膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、B7-H3-CD28TM-BBZを発現するT細胞を、CHLA-255腫瘍を有する動物へ注射した。腫瘍組織量(y-軸として総光束数で示した)を、治療後異なる時点で、測定した。
図7D図7Dは、異なる時点での各治療後の、動物の生存を比較する。
【0059】
図8A図8A-8Dは、腫瘍細胞に応答してCAR T細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76の能力を示す、グラフのセットである。図8Aは、T細胞上の、CD3-ゼータシグナル伝達ドメイン(“CD19-CD28TM-ZAP70”、左側パネル)及び膜結合型SLP-76(膜結合型SLP-76にコンジュゲートされた小型細胞外タグの検出を通じて)(右側パネル)ではなく、ZAP70255-600断片を含むCD19-標的化するCAR構築体(ZAP70シグナル伝達ドメインを含む)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。
図8B図8Bは、対照(“無腫瘍”)、又は野生型NALM6細胞に応答する、これらのT細胞、又はモック対照のIL-2生成レベルを比較する。
図8C図8Cは、インビボNALM6異種移植モデルにおける腫瘍組織量を示す。膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、CD19-CD28TM-ZAP70を発現するT細胞を、NALM6腫瘍を有する動物へ注射した。腫瘍組織量(y-軸として総光束数で示した)を、治療後異なる時点で、測定し比較した。
図8D図8Dは、異なる時点での各治療後の、動物の生存を比較する。
【0060】
図9A図9A-9Bは、腫瘍細胞に応答してCAR T細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76の能力を示す、グラフのセットである。図9Aは、T細胞上の、高親和性(HA)GD2-標的化するCAR構築体(“HA 28Z”、左側パネル)、並びに各々異なるヒンジ-膜貫通ドメイン(CD8、対、CD28)を含む、2種の膜結合型SLP-76構築体(膜結合型SLP-76構築体にコンジュゲートされた例証的抗-HER2 ECDの検出を通じて)(右側パネル)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。
図9B図9Bは、GD2を発現するNALM6細胞(“GD2 N6”)、野生型143B細胞、又はCHLA-255細胞に応答しての、これらのT細胞のIL-2生成レベル(ベースライン減算後)を比較する。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、HA-28Z、HA-28Z+CD8TM-SLP-76、及びHA-28Z+CD28TM-SLP-76である。
【0061】
図10図10は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、B7-H3-CD28TM-BBZ CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
図10-1】図10は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、B7-H3-CD28TM-BBZ CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
図10-2】図10は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、B7-H3-CD28TM-BBZ CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
【0062】
図11図11は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、HA 28Z CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
図11-1】図11は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、HA 28Z CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
図11-2】図11は、CAR T細胞上の細胞消耗バイオマーカーの発現を示す、グラフのセットである。FACS分析を行い、膜結合型SLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、HA 28Z CAR構築体を発現しているT細胞上の、TIM-3(左側パネル)、PD-1(中央パネル)、及びLAG-3(右側パネル)の発現を検出した。
【0063】
図12A図12A-12Bは、膜結合型SLP-76、対、LAT/SLP-76キメラ(SLP-76に融合した膜貫通LAT)の、腫瘍細胞に応答してのCAR T細胞活性を増強する能力を比較する、グラフのセットである。図12Aは、T細胞におけるCD19 28Z CAR構築体(左側パネル)、膜結合型SLP-76構築体を過剰発現するもの(中央パネル、右側痕跡)、又はLAT/SLP-76キメラ構築体(右側パネル、右側痕跡)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。中央パネル及び右側パネルにおいて、左側痕跡は、いずれのSLP-76構築体の過剰発現も伴わない対照を表す。
図12A-1】図12A-12Bは、膜結合型SLP-76、対、LAT/SLP-76キメラ(SLP-76に融合した膜貫通LAT)の、腫瘍細胞に応答してのCAR T細胞活性を増強する能力を比較する、グラフのセットである。図12Aは、T細胞におけるCD19 28Z CAR構築体(左側パネル)、膜結合型SLP-76構築体を過剰発現するもの(中央パネル、右側痕跡)、又はLAT/SLP-76キメラ構築体(右側パネル、右側痕跡)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。中央パネル及び右側パネルにおいて、左側痕跡は、いずれのSLP-76構築体の過剰発現も伴わない対照を表す。
図12A-2】図12A-12Bは、膜結合型SLP-76、対、LAT/SLP-76キメラ(SLP-76に融合した膜貫通LAT)の、腫瘍細胞に応答してのCAR T細胞活性を増強する能力を比較する、グラフのセットである。図12Aは、T細胞におけるCD19 28Z CAR構築体(左側パネル)、膜結合型SLP-76構築体を過剰発現するもの(中央パネル、右側痕跡)、又はLAT/SLP-76キメラ構築体(右側パネル、右側痕跡)の発現を検出する、FACSヒストグラムを示す。中央パネル及び右側パネルにおいて、左側痕跡は、いずれのSLP-76構築体の過剰発現も伴わない対照を表す。
図12B図12Bは、対照(“単独”)、高抗原(すなわち、CD19)密度を発現する野生型NALM6細胞(“WT N6”)、又は低抗原密度を発現するNALM6細胞の2種のクローンのいずれか(“クローンF N6”及び“クローンZ N6”)に応答しての、これらのT細胞のIL-2生成レベルを比較する。各インキュベーション条件で使用したCAR構築体は、左から右へ、モック、モック+LAT/SLP-76キメラ、モック+膜結合型SLP-76、CD19-28Z、CD19-28Z+LAT/SLP-76キメラ、及びCD19-28Z+膜結合型SLP-76である。
【0064】
図13A図13A-13Bは、腫瘍細胞に応答してCAR T細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図13Aは、T細胞における、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。これらのT細胞は更に、膜結合型SLP-76構築体(一番上の痕跡)、膜結合型PLCG構築体(上から2番目の痕跡;配列番号:50)、膜結合型ZAP-70255-600構築体(上から3番目の痕跡;配列番号:46)、遊離のPLCG構築体(上から4番目の痕跡;配列番号:48)、遊離ZAP-70構築体(上から5番目の痕跡;配列番号:44)、又はモック対照(一番下の痕跡)を過剰発現するように、形質導入された。
図13B図13Bは、腫瘍細胞(野生型NALM-6)と共培養した場合に、左から右へ、モック対照、ZAP-70、PLCg、膜結合型ZAP-70255-600、膜結合型PLCg、又は膜結合型SLP-76を過剰発現するCD19-CD8TM-BBZ CAR T細胞による、サイトカインの生成(上側パネルのIL-2及び下側パネルのIFNγ)を示す、グラフのセットを含む。
【0065】
図14A図14A-14Eは、CAR分子により認識可能な抗原を異なるレベルで発現する腫瘍細胞に応答しての、CAR T細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図14Aは、T細胞における、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)-標的化するCAR構築体(“ALK-CD8TM-BBZ”)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。これらのT細胞は更に、膜結合型SLP-76構築体(一番上の痕跡)又はモック対照(上から2番目の痕跡)を過剰発現するように、形質導入された。一番下の痕跡は、CAR構築体又は膜結合型SLP-76構築体を発現しない、対照T細胞を指す。
図14B図14Bは、T細胞における膜結合型SLP-76(本明細書記載のその表面マーカーの検出による)の発現(右側痕跡)を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。
図14C図14Cは、高レベルのALK発現を有する細胞(ALKhigh、一番上の痕跡)、中レベルのALK発現を有する細胞(ALKmed、上から2番目の痕跡)、低レベルのALK発現を有する細胞(ALKlow、上から3番目の痕跡)、又はALKを発現しない細胞(ALK、一番下の痕跡)を含む、異なるNalm-6細胞におけるALKの発現レベルを示す、FACS分析のヒストグラムを含む。
図14D図14Dは、異なる抗原密度で腫瘍細胞と共培養される場合に、膜結合したSLP-76過剰発現を伴う又は伴わない、ALK-CD8TM-BBZ CAR T細胞によるサイトカイン(上側パネルのIL-2、下側パネルのIFNγ)の生成を示すグラフを含む。
図14E図14Eは、膜結合したSLP-76過剰発現を伴わない(各パネルの上側のライン)、又はこれを伴う(各パネルの下側のライン)ALK-CD8TM-BBZ CAR T細胞による、異なるレベルのALK発現を生じるALK Nalm-6の死滅を示すグラフを含む。NALM-6細胞とT細胞の間の細胞数の比は、各パネルの上側に記載した。
【0066】
図15A図15A-15Cは、腫瘍細胞に応答してT細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図15Aは、T細胞における、NY-ESO-1 TCR構築体(左側パネル)又は膜結合型SLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーにより検出された;右側パネル)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、TCR構築体及び膜結合型SLP-76構築体(一番上の痕跡)、TCR構築体のみ(上から2番目の痕跡)、モック対照及び膜結合型SLP-76構築体(上から3番目の痕跡)、又はモック対照のみ(一番下の痕跡)を過剰発現するように、形質導入された。
図15B図15Bは、抗原陽性腫瘍細胞(A2+/NY-ESO-1+Nalm-6細胞、上側パネル、又はA375細胞、下側パネル)又は抗原陰性腫瘍細胞Mel888(下側パネル)と共培養した場合に、NY-ESO-1 TCR T細胞によるIL-2生成を示す、グラフのセットを含む。
図15C図15Cは、共培養後の時間区分にわたり(x-軸、時間)細胞傷害指数(y-軸)により表された、膜結合されたSLP-76の過剰発現を伴う又は伴わない、NY-ESO-1 TCR T細胞による、A2+/NY-ESO-1+Nalm-6細胞の死滅を図示している。
【0067】
図16A図16A-16Cは、腫瘍細胞に応答してのT細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図16Aは、T細胞におけるB-細胞成熟抗原(BCMA)-標的化するCAR構築体(左側パネル)又は膜結合型SLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーVSV-Gを検出することによる;右側パネル)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76構築体(一番上の痕跡)、CAR構築体のみ(上から2番目の痕跡)、又はモック対照(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図16B図16Bは、MM1.S腫瘍細胞に応答しての、CAR構築体及び膜結合型SLP-76構築体の両方、又はCAR構築体のみを発現するT細胞による、IL-2(上側パネル)又はIFNγ(下側パネル)の生成を比較するグラフのセットを含む。
図16C図16Cは、ルシフェラーゼ-発現するMM1.S腫瘍細胞を接種し、且つこれらのT細胞により治療したマウスにおける、膜結合したSLP-76過剰発現を伴う又は伴わない、これらのT細胞によるインビボにおける腫瘍制御を比較する。
【0068】
図17A図17A-17Bは、腫瘍細胞に応答してT細胞活性を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図17Aは、T細胞におけるB7-H3-標的化するCAR構築体(“B7-H3-CD28TM-BBZ”)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76構築体(一番上の痕跡)、CAR構築体のみ(上から2番目の痕跡)、又はモック対照(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図17B図17Bは、ルシフェラーゼ-発現するびまん性橋膠腫6異種移植片(DIPG-6)を接種したマウスにおける、膜結合したSLP-76過剰発現を伴う又は伴わない、これらのT細胞によるインビボにおける腫瘍制御を比較する。
【0069】
図18A図18A-18Bは、腫瘍細胞に応答してT細胞増殖を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図18Aは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-CD28Z”;左側パネル)又は膜結合型SLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーVSV-Gにより検出される;右側パネル)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76構築体の両方(一番上の痕跡)、CAR構築体のみ(上から2番目の痕跡)、又はモック対照(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図18B図18Bは、異なる時点でのルシフェラーゼ-発現するWT Nalm-6を接種したマウスの脾臓(上側)又は骨髄(下側)から収集した、膜結合したSLP-76過剰発現を伴う又は伴わない、CD19-CD28TM-CD28Z CAR T細胞の量を比較する。
【0070】
図19A図19A-19Cは、腫瘍細胞に応答してT細胞増殖を増強する、膜結合型SLP-76(配列番号:16)の能力を示す、グラフである。図19Aは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-BBZ”;左側パネル)又は膜結合型SLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーVSV-Gにより検出される;右側パネル)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76構築体の両方(一番上の痕跡)、又はCAR構築体のみ(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図19B図19Bは、ルシフェラーゼ-発現する白血病異種移植片(WT Nalm-6)を接種したマウスにおける、膜結合したSLP-76過剰発現を伴う又は伴わない、これらのT細胞による、インビボにおける腫瘍制御を比較する。
図19C図19Cは、時間区分を通じた各治療後のマウスの生存を比較する。
【0071】
図20A図20A-20Cは、腫瘍細胞に応答してT細胞活性化を増強する、膜結合型SLP-76変異体(配列番号:60)の能力を示す、グラフである。図20A-20Bは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-BBZ”;図20A)又は様々なSLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーVSV-Gにより検出される;図20B)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76 K30R変異構築体の両方(一番上の痕跡)、膜結合型SLP-76(野生型)構築体(中央の痕跡)、又はCAR構築体のみ(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図20B図20A-20Bは、T細胞におけるCD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-BBZ”;図20A)又は様々なSLP-76構築体(本明細書記載のその表面マーカーVSV-Gにより検出される;図20B)の発現を示す、FACS分析のヒストグラムを含む。試験したT細胞は、CAR構築体及び膜結合型SLP-76 K30R変異構築体の両方(一番上の痕跡)、膜結合型SLP-76(野生型)構築体(中央の痕跡)、又はCAR構築体のみ(一番下の痕跡)を過剰発現するように形質導入された。
図20C図20Cは、低レベルのCD19を発現するNALM-6細胞又は対照(“非腫瘍”)と共培養した場合の、これらのT細胞による、IL-2発現レベルを比較した。各インキュベーション条件において使用したCAR構築体は、左から右へ、CD19BBZ CAR(すなわち、CD19-CD28TM-BBZ)のみ、CD19BBZ CAR+膜結合型SLP-76、及びCD19BBZ CAR+膜結合型SLP-76 K30R変異体であった。
【発明を実施するための形態】
【0072】
開示の詳細な説明
本開示は概して、とりわけ、標的抗原を発現する特異的標的細胞(例えば、癌細胞又は腫瘍細胞)を標的化、阻害及び/又は除外するなどのために、標的抗原に応答しての、細胞[例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及び/又はT細胞受容体(TCR)を発現する免疫細胞、例えばT細胞]の活性化及び機能を増強することが可能である、ポリペプチド、例えばSLP-76、及びこのポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドの組成物に関する。更に、このポリペプチドを含む組換え細胞の組成物及びそのような組換え細胞を作製するのに有用な方法、並びに疾患[例えば、増殖性疾患(癌など)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢など]などの状態を治療するために、細胞(例えば、免疫細胞)活性を増強する方法も、本明細書に提供される。
【0073】
本明細書に提示される例証的実験結果は、SLP-76は、細胞(例えば、CAR T細胞)活性化を増強することが可能であり、その結果増大したT細胞エフェクター機能及び抗-腫瘍効能(例えば、増大したサイトカイン生成及び細胞傷害性)を生じることを明らかにしている。更に、例えば膜結合型SLP-76などのSLP-76は、低い抗原密度に応答してCAR T細胞活性を増強することが可能であり、その結果増大したT細胞エフェクター機能及び抗-腫瘍効能(例えば、増強されたサイトカイン生成及び細胞傷害性)を生じることが示された。従って、SLP-76は、T細胞活性化閾値を低下し、免疫細胞においてTCR又はCAR機能を改善し、並びに近位シグナル伝達を増強することにより免疫細胞機能を改善することが可能である。ドメインスワップは、SLP-76のそのような能力は、CAR特異性又はSLP-76の構造とは無関係である(例えば、SLP-76の膜への繋留に使用される膜貫通ドメインに左右されない)ことを確認するために、様々なCAR分子又はSLP-76構築体を遺伝子操作するために、使用されている。例えば膜結合型SLP-76などのSLP-76の他の利点は、例えばCAR、TCR、もしくは緊張性(tonic)シグナル伝達を引き起こす他の分子を発現する細胞などの免疫細胞(例えばT細胞)において、例えば細胞消耗を増悪しないことを含むことができる。特にSLP-76分子は、そうでなければT細胞消耗の特徴を提示する、CAR T細胞の活性化を有意に増強することができる。例えば膜結合型SLP-76などのSLP-76は、ほとんどの状況において、CAR、TCR、もしくは他の受容体の機能又は他の免疫細胞機能を促進することができるが、これは、標的抗原が低密度で発現される場合、CAR、TCR、もしくは別の受容体構築体が標的抗原に対し低い親和性を有する場合、CAR、TCRもしくは他の受容体が低密度で発現される場合、及び/又はCAR、TCR、もしくは別の受容体構築体が細胞消耗を誘導する場合に、特に利点がある。
【0074】
これらのポリペプチドをコードしている核酸分子及びこれらのポリペプチドを発現する組換え細胞も、提供される。本開示はまた、SLP-76ポリペプチドを含むそのような組換え細胞を作製するのに有用な組成物及び方法、並びに細胞活性化を増強し、及び増殖性疾患(例えば癌)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢などの状態を予防及び/もしくは治療する方法も提供する。
【0075】
本開示において言及された全ての刊行物及び特許出願は、各々個々の刊行物及び特許出願が、引用により組み込まれることが具体的且つ個別に示されているのと同程度に、引用により本明細書中に組み込まれている。
【0076】
全般的実験手順
本発明の実践は、別に指定されない限りは、当業者に周知である、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の通常の技術を利用するであろう。そのような技術は、Sambrook, J.、及びRussell, D. W. (2012)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第4版)、Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory、並びにSambrook, J.及びRussel, D. W. (2001)、Molecular Cloning: A Laboratory Manual (第3版)、Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (本明細書においてはまとめて「Sambrook」と称する);Ausubel, F. M. (1987)、Current Protocols in Molecular Biology、New York, NY: Wiley(2014年までの補遺を含む);Bollag, D. M.ら、(1996)、Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss;Huang, L.ら、(2005)、Nonviral Vectors for Gene Therapy、San Diego: Academic Press;Kaplitt, M. G.ら、(1995)、Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications、San Diego, CA: Academic Press;Lefkovits, I.、(1997)、The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques、San Diego, CA: Academic Press;Doyle, A.ら、(1998)、Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology、New York, NY: Wiley;Mullis, K. B.、Ferre, F.及びGibbs, R.、(1994)、PCR: The Polymerase Chain Reaction、Boston: Birkhauser Publisher;Greenfield, E. A.、(2014)、Antibodies: A Laboratory Manual(第2版)、New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press;Beaucage, S. L.ら、(2000)、Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry、New York, NY: Wiley,(2014年までの補遺を含む);並びに、Makrides, S. C. (2003)、Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells、Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.などの文献において十分に説明されており、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。適切ならば、市販のキット及び試薬の使用に関与する手順は、別に注記されない限りは、一般に製造業者の規定したプロトコール及び/又はパラメータに従い、実行される。
【0077】
定義
別に規定されない限りは、本明細書において使用される技術用語、注記及び他の科学用語又は専門用語は全て、本開示が関連する技術分野の業者により通常理解される意味を有することが意図される。場合によっては、通常理解される意味を持つ用語は、明確さのため及び/又は容易な言及のために本明細書において定義され、且つ本明細書におけるそのような定義の包含は、当該技術分野において一般に理解されるものを超える実質的差異を表すと必ずしも解釈されるものではない。本明細書において記載又は言及された技術及び手順の多くは、良く理解され、且つ当業者により通常の方法論を用いて普通に利用される。
【0078】
単数形「ある(a,an)」及び「その(the)」は、文脈がそうではないことを明確に指示しない限りは、複数の言及を含む。例えば用語「ある細胞」は、それらの混合物を含む、1又は複数の細胞を含む。「A及び/又はB」は、以下の選択肢の全てを含むように本明細書において使用される:「A」、「B」、「A又はB」、並びに「A及びB」。
【0079】
本明細書において使用される用語「約」は、おおよそのその通常の意味を有する。近似の程度が文脈からそうでなくて明らかでない場合は、「約」は、提供された値のプラス又はマイナス10%以内のいずれかを意味するか、又は全ての場合において提供された値を包含する、最も近い意味のある数字に丸められる。範囲が提供される場合、これらは、境界値を包含する。
【0080】
用語「から由来する」は、分子の発生源又は給源を指し、並びに天然の、組換えの、未精製の、又は精製された分子を含んでよい。核酸分子又はポリペプチド分子が、機能性単位を生じる様式で集成された部分又は要素を含む場合に、それらは「から由来する」と考えられる。これらの部分又は要素は、それらが進化的に保存された機能を保持する限りは、複数の給源から集成され得る。一部の実施態様において、これらの派生した核酸分子又はポリペプチド分子は、給源の核酸又はポリペプチドの分子と実質的に同じ配列を含む。例えば、本開示の派生した核酸分子又はポリペプチド分子は、給源の核酸又はポリペプチドの分子に対し少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%の配列同一性を有してよい。
【0081】
本願において使用される用語「組換え」核酸分子、ポリペプチド、及び/又は細胞は、ヒトの介入を通じて変更されている核酸分子、ポリペプチド、及び/又は細胞を指す。非限定的例において、組換え核酸分子は:1)例えば、化学的もしくは酵素的技術、又は核酸分子の組換えを使用し、インビトロにおいて合成又は修飾されたもの;2)自然には結合されない、結合されたヌクレオチド配列を含むもの;3)天然の核酸分子配列に関して、1又は複数のヌクレオチドを欠損するように、分子クローニング技術を用い、遺伝子操作されたもの;並びに/又は、4)天然の核酸配列に関して、1又は複数の配列の変化又は再配列を有するように、分子クローニング技術を用い、操作されたもの:であることができる。組換えタンパク質の非限定的例は、本明細書に提供されるSLP-76ポリペプチド、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、又は他の受容体である。
【0082】
用語「細胞」、「細胞培養物」、「細胞株」は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株のみを指すのではなく、培養における移植又は継代の数に関わりなく、そのような細胞、細胞培養物、又は細胞株の後代又は可能性のある後代も指す。全ての後代は、親細胞と全く同一ではないことは、理解されるべきである。これは、ある種の修飾が、変異(例えば、意図的な又は不用意な変異)又は環境の影響(例えば、メチル化又は他のエピジェネティック修飾)のいずれかのために、次世代において生じることがあり、その結果後代は、事実上親細胞と同一ではないが、その後代が、当初の細胞、細胞培養物、又は細胞株の機能と同じ機能を保持する限りは、依然本明細書において使用される用語の範囲内に含まれるからである。
【0083】
本明細書で使用される「宿主細胞」は、本明細書記載の核酸及び/もしくはポリペプチド(例えば、SLP-76、CAR、及び/もしくはTCR分子)を導入するための細胞、並びに/又は本明細書記載の核酸もしくはポリペプチドを発現するための細胞を指す。宿主細胞は、形質転換されない細胞、又は本明細書記載の少なくとも1種の核酸分子(例えば、SLP-76、CAR、及び/もしくはTCR分子)が既に導入されている細胞のいずれかであることができる。「組換え細胞」は、遺伝子修飾を有するか、並びに/又は本明細書記載の導入された核酸及び/もしくはポリペプチドを有する細胞を指す。
【0084】
本明細書で使用される「対象」又は「個体」は、ヒト(例えば、ヒト対象)及び非-ヒト動物などの、動物を含む。一部の実施態様において、「対象」又は「個体」は、医師の監督(care)下の患者である。従って対象は、関心対象の疾患(例えば癌)及び/又はこの疾患の1もしくは複数の症状を有するか、有するリスクがあるか、もしくは有することが疑われる、ヒト患者又は個体であることができる。対象はまた、診断時又はその後に、関心対象の状態のリスクがあると診断された個体であることができる。用語「非-ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えば齧歯類、例えばマウスなど、並びに非-哺乳動物、例えば非-ヒト霊長類、例えば、ヒツジ、イヌ、ウシ、家禽、両生類、爬虫類などを含む。
【0085】
用語「ベクター」は、別の核酸分子を移入又は輸送することが可能である核酸分子又は配列を指すように、本明細書において使用される。例えば、ベクターは、遺伝子を細胞へ移入するための遺伝子送達ビヒクルとして使用することができる。移入された核酸分子は一般に、ベクター核酸分子へ、連結、例えば挿入される。一般にベクターは、適切な制御エレメントと会合される場合に、複製が可能である。用語「ベクター」は、クローニングベクター及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組込み型ベクターを含む。「発現ベクター」は、制御領域を含むベクターであり、これによりDNA配列及び断片をインビトロ及び/又はインビボにおいて発現することが可能である。ベクターは、細胞において自己複製を指示する配列を含んでよいか、或いは宿主細胞DNAへの組込みを可能にするのに十分な配列を含んでよい。有用なベクターは、例えば、プラスミド(例えば、DNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌の人工染色体、及びウイルスベクターを含む。有用なウイルスベクターは、例えば、複製欠損レトロウイルス及びレンチウイルスを含む。一部の実施態様において、ベクターは、遺伝子送達ベクターである。
【0086】
本明細書記載の開示の局面及び実施態様は、局面及び実施態様を「含む」、「からなる」及び「から本質的になる」ことを包含することが理解される。本明細書において使用される「含む」は、「包含する」、「含んでなる」又は「により特徴付けられる」と同義であり、且つ包括的又はオープンエンドであり、且つ追加の、列挙されない要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書において使用される「からなる」は、特許請求された組成物又は方法において特定されないあらゆる要素、工程、又は構成成分は除外される。本明細書において使用される「から本質的になる」は、特許請求された組成物又は方法の基本的特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程は除外されない。特に組成物の成分の説明又は方法の工程の説明における、用語「含む」の本明細書における列挙は、列挙された成分又は工程から本質的になる及びからなるそれらの組成物及び方法を包含すると理解される。
【0087】
例えば、(a)、(b)、(i)などの見出しは、単に明細書及び請求項の読み取りを容易にするために提示される。明細書及び請求項における見出しの使用は、工程又は要素が、アルファベット又は数字の順番に或いはそれらが提示された順番に実行されることを必要としない。
【0088】
当業者により理解され得るように、記載された説明を提供することに関してなど、いずれか及び全ての目的に関して、本明細書に開示された全ての範囲はまた、いずれか及び全ての可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組合せも包含している。任意の列挙された範囲は、同じ範囲を十分に説明し、並びに同じ範囲の少なくとも同等、半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などへの細分も可能にするとして容易に認識され得る。非限定的例として、本明細書で考察された各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、上位3分の1などに容易に細分され得る。同じく当業者により理解され得るように、「まで」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」及び同類のものなど全ての言い回しは、列挙された数値を含み、且つ先に考察したような部分範囲に実質的に細分され得る範囲を指す。最後に、当業者により理解され得るように、範囲は、個別の数値の各々を含む。従って、例えば1~3の項目(article)を有するグループは、1、2、又は3の項目を有するグループを指す。同様に、1~5の項目を有するグループは、1、2、3、4又は5の項目を有するグループを指すなどである。
【0089】
特定の範囲は、用語「約」が前に置かれた数値と共に本明細書において提示される。用語「約」は、それが前に置かれた正にその数値、並びにこの用語が前に置かれた数値の近似もしくは概算である数値に関する文字どおりの支援を提供するように、本明細書において使用される。数値が具体的には列挙された数値の近似又は概算であるかどうかの決定において、その近似又は概算の列挙されない数値は、それが提示されている文脈において、具体的には列挙された数値の実質的同等物を提供する数値であってよい。
【0090】
明確さのために、個別の実施態様の文脈において説明される本開示の特定の特徴はまた、単独の実施態様において組合せて提供されてもよいことが、理解される。対照的に、簡潔さのために単独の実施態様の文脈において説明される本開示の様々な特徴はまた、個別に又はいずれか好適な部分組合せで提供されてもよい。本開示に関連する実施態様の全ての組合せは、本開示により具体的に包含され、並びに正に各々の及び全ての組合せが個別に且つ明確に開示されるように、本明細書において開示される。加えて、様々な実施態様及びその要素の全ての部分組合せはまた、本開示により具体的に包含され、並びに正に各々の及び全てのそのような部分組合せが個別に且つ明確に開示されるように本明細書において開示される。
【0091】
本開示の組成物
以下により詳細に説明されるように、本開示は、とりわけ、細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)活性化を増強することが可能である、細胞膜に結合した又は結合していないのいずれかの、SLP-76ポリペプチドの組成物を提供する。この細胞活性化は、天然/内因性もしくは組換えT細胞受容体(TCR)、組換えキメラ抗原受容体(CAR)、又は別の天然/内因性もしくは組換え受容体により誘導され得、これは細胞の表面上に発現され、標的細胞(例えば、癌細胞又は腫瘍細胞)により発現される標的抗原に特異的に結合する。例えば、CARは、標的細胞の表面上に発現された標的抗原に特異的に結合することができるのに対し、TCRは、抗原-提示細胞(APC)の表面上に主要組織適合性複合体(MHC)により提示された標的抗原(標的細胞により発現された)に特異的に結合することができる。更に本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、低い抗原密度に応答して活性化を増強することにより(例えば、TCR又はCARを通じて)、T細胞活性化閾値を低下することができる。一部の実施態様において、本開示は、組換えCAR又は未変性もしくは組換えTCRと組合せた、SLP-76ポリペプチド、例えば膜結合型SLP-76ポリペプチドの組成物を提供する。一部の実施態様において、本開示は、SLP-76ポリペプチド、例えば膜結合型SLP-76ポリペプチドを発現するためのポリヌクレオチド及び発現ベクターの組成物を提供する。一部の実施態様において、本開示は、組換えCAR又は未変性もしくは組換えTCRを発現するためのポリヌクレオチド及び発現ベクターと組合せた、SLP-76ポリペプチド、例えば膜結合型SLP-76ポリペプチドを発現するための、ポリヌクレオチド及び発現ベクターの組成物を提供する。一部の実施態様において、本開示は、SLP-76のためのポリヌクレオチド及び/又は発現ベクターを含む組換え細胞の組成物を提供する。一部の実施態様において、本開示は、組換えCAR又は未変性もしくは組換えTCRのためのポリヌクレオチド及び/又は発現ベクターと組合せた、SLP-76のためのポリヌクレオチド及び/又は発現ベクターを含む組換え細胞の組成物を提供する。一部の実施態様において、本開示は、本明細書記載のSLP-76のための組成物を、単独で、又はCARもしくはTCRのための組成物と組合せて含むシステムを提供する。一部の実施態様において、本開示は、標的抗原、特に低密度で発現された抗原に応答してT細胞活性化を増強するために、T細胞活性化閾値を低下するために、及び/又はT細胞消耗を増悪しないために、SLP-76のための組成物を、単独で、又はCARもしくはTCRのための組成物と組合せて提供する。一部の実施態様において、本開示は、特にCAR又はTCRが標的抗原に対する低い親和性を有する場合に、標的抗原に応答してT細胞活性化を増強するために、SLP-76のための組成物を、単独で、又はCARもしくはTCRのための組成物と組合せて提供する。一部の実施態様において、本開示は、疾患などの状態を予防又は治療するために、SLP-76のための組成物を、単独で、又はCARもしくはTCRのための組成物と組合せて提供する。
【0092】
SLP-76
本開示のポリペプチドは、本明細書記載の、SLP-76ポリペプチドを含んでいる。SLP-76は、白血病T細胞株ジャーカットにおけるT細胞受容体(TCR)ライゲーション後の、ZAP-70タンパク質チロシンキナーゼの基質として、当初同定された。SLP-76遺伝子座は、ヒト染色体5q33に位置し、その遺伝子構造は、マウスにおいて部分的に特徴付けられている。コードされたSLP-76タンパク質は、増殖因子受容体結合タンパク質2と会合し、並びにTCR-媒介性細胞内シグナル伝達の役割を果たすと考えられる。マウスにおける類似のタンパク質は、正常なT細胞の成長及び活性化において役割を果たす。この遺伝子を欠いているマウスは、皮下及び腹腔内の胎児出血、機能障害性血小板及び損なわれた生存能力を示す。ヒト及びマウスのSLP-76 cDNAは両方共、533個のアミノ酸タンパク質をコードし、72%の同一性であり、且つ3つのモジュラードメインで構成されている。ヒトSLP-76タンパク質は、そのNCBI参照配列番号:NP_005556.1により入手され得る。このコーディングポリヌクレオチド(例えばmRNA)配列は、NCBI参照配列番号:NM_005565.5により入手され得る。SLP-76のNH-末端は、PESTドメイン、及びTCRライゲーション後にリン酸化される数個のチロシン残基を含む酸性領域を含む。SLP-76はまた、セントラルプロリン-リッチドメイン及びCOOH-末端SH2ドメインも含む。受容体ライゲーション後に構成的及び誘導的の両方でSLP-76に会合する数多くの追加のタンパク質が、同定されており、これは、SLP-76は、アダプター又はスカフォールドタンパク質として機能するという概念を裏付けている。SLP-76-欠損T細胞株又はマウスを使用する研究は、SLP-76は、T細胞成長及び活性化、並びにマスト細胞及び血小板機能の促進において、正の役割を果たすことの、強力な証拠を提供した。SLP-76は、NK細胞受容体の活性化により、シグナルの組込み部位として働く。NK細胞において、SLP-76は、受容体を活性化するライゲーション後にSYK又はZAP70によりリン酸化され得る。
【0093】
本明細書のポリペプチドは、SLP-76の完全長配列、又はその生物学的に機能する断片に加え、任意の変異体、バリアント、オルソログ、融合体、又は別の修飾された構築体を含んでよい。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、野生型SLP-76ポリペプチドに対する少なくとも1つの変異(例えば、K30位置への変異、例えばK30R置換など)を含む。例えば、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60に対し、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を有してよい。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60のアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60のアミノ酸配列からなる。
【0094】
本明細書のポリペプチドは、細胞膜への結合を伴わない、遊離細胞質型で、SLP-76構築体を含んでよい。膜へ結合しないSLP-76の細胞質型の例は、完全長SLP-76(例えば配列番号:1)、SLP-76の生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアント、又は別の分子(例えば、2A-tNGFRポリペプチド及び/又はHAタグ、配列番号:4から6のいずれか一つの配列を有する)へ融合もしくはコンジュゲートされたSLP-76の完全長、生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含むポリペプチドを含んでよい。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチドは、膜に結合されるように、遺伝子操作されてよい。例えばSLP-76は、膜へ繋留されるよう、別のポリペプチドもしくはポリヌクレオチドもしくは他の物質へ融合又はコンジュゲートされてよい。一部の実施態様において、本明細書中のSLP-76ポリペプチドは、SLP-76の完全長又は断片にコンジュゲートされた膜貫通ドメインを含んでよい。そのような膜貫通ドメインは、CAR分子、TCR分子の膜貫通ドメイン、又は他の膜貫通タンパク質であるか又はこれらから誘導されてよい。CAR分子由来の例証的膜貫通ドメイン(TMD)は、CAR構造に関する下記の説明セクションで認めることができる。好適なTMDの例は、CD28 TMD、CD8 TMD、CD4 TMD、CD3 TMD、CTLA-4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDを含むが、これらに限定されるものではない。TMDの追加の例は、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ゼータ、CD8a、CD8b、CD16、CD25、CD27、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD84、CD86、CD95、CD150(SLAMF1)、CD166、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、ICAM-1、2B4、BTLA、DAP10、FcRα、FcRβ、Fyn、GAL9、IL7、IL12、IL15、KIR、KIR2DL4、KIR2DS1、LAG-3、Lck、LAT、LPA5、LRP、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、SLP-76、SIRPα、pTα、T細胞受容体ポリペプチド(例えば、TCRα及びTCRβ)、TIM3、TRIM、並びにZAP70由来のTMDを含む。従って一部の実施態様において、このTMDは、CD28 TMD、CD8 TMD、CD4 TMD、CD3 TMD、CTLA4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDに由来する。一部の実施態様において、このTMDは、CD28 TMD、CD4 TMD、CD8 TMD、CD3 TMD、CTLA4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは、CD8から誘導されたTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは、CD8 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは、CD28から誘導されたTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは、CD28 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは、配列番号:12又は13と少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を含むTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドは更に、CAR又はTCR分子から誘導された追加のドメインを含んでよい。例えばSLP-76ポリペプチドは、膜貫通ドメインに更にコンジュゲートされた細胞外ドメイン又は細胞外タグを含んでよい。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチド中の任意の細胞外ドメイン又はタグは、SLP-76の細胞膜への繋留を促進してよい。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチド中の任意の細胞外ドメイン又はタグは、SLP-76ポリペプチドを検出する手段を提供してよい(例えば、FACS又は他の免疫学的方法により)。一部の実施態様において、任意の細胞外ドメインは、CAR分子に関して以下のセクションにおいて詳細に説明されるようなECDであってよい。一部の実施態様において、任意の細胞外ドメインは、抗原-結合ドメインを含む。一部の実施態様において、任意の細胞外タグは、配列番号:11又は39と、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を含む。一部の実施態様において、任意の細胞外タグは、ポリペプチド又はポリヌクレオチドなどの分子であってよい。一部の実施態様において、任意の細胞外タグは、VSV-Gポリペプチドを含む。一部の実施態様において、任意の細胞外タグは、配列番号:10と、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれよりも大きい同一性を有するアミノ酸配列を含む。非限定的機序の下で、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、任意の細胞外ドメイン又はタグを伴う又は伴わずに、標的抗原を認識しないか、及び/又はそれら自身SLP-76ポリペプチドを発現する細胞を活性化しない。対照的に、これらは、内因性もしくは外因性のいずれかで、別のCAR又はTCR分子の活性を増強するか、並びに/又は、特に抗原が低密度で発現される場合、標的抗原に応答して、CAR又はTCR分子を発現する細胞の活性閾値を低下してよい。
【0095】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、SLP-76の完全長又は断片にコンジュゲートされたタンパク質ドメイン又はアダプター配列を含んでよい。一部の実施態様において、このタンパク質ドメイン又はアダプター配列は、膜タンパク質と相互作用してよく(例えば、結合を介して)、その結果SLP-76を膜へ繋留する。
【0096】
一部の実施態様において、SLP-76の完全長又は断片は、SLP-76と膜の脂肪酸の間の共有結合を介して、膜へ繋留されてよい。一部の実施態様において、SLP-76の完全長又は断片は、膜の脂質の極性の高い頭部への結合を介して、膜へ繋留されてよい。
【0097】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、SLP-76の完全長又は断片へコンジュゲートされた膜-結合ドメインを含んでよい。一部の実施態様において、この膜-結合ドメインは、SLP-76を膜へ繋留してよい。例証的膜結合ドメインは、C1、C2、PH、FYVE、PX、ENTH、及びBARドメイン、或いはその文献の内容はその全体が引用により本明細書中に組み込まれているHurley、Biochim Biophys Acta、2006; 1761:805-811に記載された他のドメインを含んで良い。
【0098】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、任意の膜タンパク質又は膜脂肪酸もしくは脂質へ、架橋されるか又は化学的にコンジュゲートされてよい。
【0099】
キメラ抗原受容体(CAR)
先に説明したように、本開示のSLP-76ポリペプチドは、標的抗原による細胞(例えば、CAR又はTCRを発現するT細胞などの免疫細胞)の活性化を増強することが可能である。原則として、本明細書記載のSLP-76の増強機能に適したCAR分子に関する特別な制限は存在しない。一部の実施態様において、本明細書記載のCAR分子は、(i)標的抗原に結合親和性を有する細胞外リガンド-結合ドメイン(別名、細胞外抗原-結合ドメイン、又はECD);(ii)膜貫通ドメイン(TMD);及び、(iii)細胞内シグナル伝達ドメイン(別名、サイトゾルシグナル伝達ドメイン)を含んでよい。一部の実施態様において、標的抗原の細胞外リガンド-結合ドメインへの結合は、CARポリペプチドの細胞内シグナル伝達ドメインを活性化する。一部の実施態様において、開示されたCARは、N-末端からC-末端方向に(i)-(iii)で、先に列挙したドメインを有する。一部の実施態様において、開示されたCARは、フォーマットX-Y-Zで説明され、ここでXは、細胞外リガンド-結合ドメインにより認識可能なリガンド/抗原を表し、Yは、ヒンジ/膜貫通(H/TM)ドメインを表し、及びZは、細胞内シグナル伝達ドメインを表す。例えば、「CD19-CD28H/TM-CD28-CD3ゼータ」、「CD19-CD28TM-CD28Z」、又は「CD19 28Z」は、CD19に特異的に結合する細胞外リガンド-結合ドメイン、CD28ヒンジ/膜貫通ドメイン、CD28細胞内領域、及びCD3ゼータ細胞内シグナル伝達ドメインを有するCAR分子を指す。別に特定しない限りは、本願中の「TM」ドメインは、任意のヒンジドメインを伴う又は伴わない、TMDを含む。
【0100】
一部の実施態様において、細胞内の開示されたCARは、1又は複数のヒンジドメイン及び/又は共刺激ドメインを更に含む。
【0101】
一部の実施態様において、開示されたCARは、少なくとも1種の本明細書記載の細胞内(すなわち、サイトゾル)シグナル伝達ドメインを含み、これは、近位シグナル伝達分子、例えばCD3ゼータ、ZAP70、PLCG1、PKC、ITK、NCK、VAV1、GRB2、GADS、SOS1、ADAP、SYK、LYN、PI3K、BLNKなど、又はそれらの生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、開示されたCARは、2種以上の本明細書記載の細胞内(すなわち、サイトゾル)シグナル伝達ドメインを含み、これは、近位シグナル伝達分子、例えばCD3ゼータ、ZAP70、PLCG1、PKC、ITK、NCK、VAV1、GRB2、GADS、SOS1、ADAP、SYK、LYN、PI3K、BLNK、又はそれらの生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含むが、これらに限定されるものではない。
【0102】
細胞外リガンド(抗原)-結合ドメイン(ECD)
本明細書記載のCAR分子は、1又は複数の標的リガンド(又は抗原、これらは本願において互換的に使用される)に関する結合親和性を有する、少なくとも1種のECDを有する。一部の実施態様において、標的抗原は、細胞表面に発現されるか、又はそうでなければ、細胞表面に繋留されるか、固定されるか、もしくは拘束される。好適な標的抗原型の非限定的例は、細胞表面受容体、接着タンパク質、炭水化物、脂質、糖脂質、リポタンパク質、及び表面-結合されたリポ多糖、インテグリン、ムチン、及びレクチンを含む。一部の実施態様において、抗原は、タンパク質である。一部の実施態様において、抗原は、炭水化物である。一部の実施態様において、抗原は、標的細胞(例えば、癌細胞/腫瘍細胞)により発現される。一部の実施態様において、抗原は、標的細胞(例えば、癌細胞/腫瘍細胞)を特異的に認識するアダプター分子である。一部の実施態様において、抗原は、特異的疾患、障害、又は状態(例えば、癌/腫瘍)のためのバイオマーカーである。好適な抗原の非限定的例は、CD19、HER2、ROR1、B7-H3(CD276)、CD22、CD2、CD5、CD6、4-1BB、GD2、FcγR1、及びインテグリン、並びに「抗原」と題する以下のセクションにおいて説明されたものを含む。
【0103】
一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドのECDは、1又は複数の標的抗原に結合する抗原-結合部分を含む。一部の実施態様において、抗原-結合部分は、少なくとも抗体のリガンド-結合ドメイン、抗原-結合断片、抗体ミメティック、受容体、又は標的化された受容体のリガンドを含む、抗体の1又は複数の抗原-結合決定基、又はそれらの機能性抗原-結合断片を含む。本開示を読む際には当業者は、用語「それらの機能性断片」又は「それらの機能性バリアント」とは、それから断片又はバリアントが誘導される野生型分子と共通の定性的及び/又は定量的生物活性を有する分子を指すことを、容易に理解することができる。例えば、抗体の機能性断片又は機能性バリアントは、それから機能性断片又は機能性バリアントが誘導された抗体と同じエピトープに結合する同じ能力を本質的に保持しているものである。例えば細胞表面受容体のエピトープに結合することが可能な抗体は、N-末端及び/又はC-末端で切断されてよく、そのエピトープ結合活性の保持は、当業者に公知のアッセイを用いて評価される。一部の実施態様において、抗原-結合部分は、抗体、モノクローナル抗体、抗原-結合断片(Fab)、ナノボディ、ディアボディ、トリアボディ、ミニボディ、F(ab’)断片、F(ab)v断片、単鎖可変領域(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb)、Vドメイン、Vドメイン、Fv断片、VNARドメイン、及びVHHドメイン、又はそれらの機能性断片からなる群から選択される。一部の実施態様において、抗原-結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。一部の実施態様において、抗原-結合部分は、scFvを含む。一部の実施態様において、抗体ミメティックは、アフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アルファボディ、アビマー、DARPins、フィノマー、クニッツドメインペプチド、モノボディ、ナノCLAMP、及びそれらの生物活性のある断片からなる群から選択される。
【0104】
この抗原-結合部分は、天然のアミノ酸配列を含むことができるか、又は所望の及び/もしくは改善された特性、例えば結合親和性を提供するように、遺伝子操作されるか、設計されるか、もしくは修飾されることができる。一般に、標的抗原(例えば、CD19抗原又はHER2抗原)に関する抗体又は抗原-結合部分の結合親和性は、Frankelら、Mol. Immunol、16: 101-106, 1979により説明されたスキャッチャード法により、計算され得る。一部の実施態様において、結合親和性は、抗原/抗体解離速度により、測定され得る。一部の実施態様において、高い結合親和性は、競合放射免疫測定により測定され得る。一部の実施態様において、結合親和性は、ELISAにより測定され得る。一部の実施態様において、抗体親和性は、フローサイトメトリーにより測定され得る。標的抗原(CD19又はHER2など)へ「選択的に結合する」抗体は、標的抗原へ、高い親和性で結合するが、他の無関係の抗原には有意に結合しない抗体であるが、抗原には高い親和性で、例えば、平衡定数(K)100nM以下、例えば60nM以下、例えば30nM以下、例えば15nM以下、又は10nM以下、又は5nM以下、又は1nM以下、又は500pM以下、又は400pM以下、又は300pM以下、又は200pM以下、又は100pM以下などで結合する。
【0105】
当業者は、本開示のCARポリペプチドを発現するように遺伝子修飾される細胞の所望の局在又は機能を基にECDを選択することができる。例えば、HER2抗原に特異的な抗体を含むECDを伴うCARポリペプチドは、HER2-発現する乳癌細胞に、細胞を標的化することができる。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドのECDは、腫瘍-関連抗原(TAA)又は腫瘍-特異的抗原(TSA)を結合することが可能である。当業者は、TAAは、例えば腫瘍細胞及び正常細胞上に存在するタンパク質、又は多くの正常細胞上に存在するが腫瘍細胞上ははるかに低い濃度で存在するタンパク質などの分子を含むことを理解することができる。対照的に、TSAは一般に、例えば腫瘍細胞上には存在するが正常細胞上には存在しないタンパク質などの分子を含む。
【0106】
抗原
本願において、用語「リガンド(複数可)」及び「抗原(複数可)」は、本セクションに記載されたCAR分子の細胞外抗原-結合ドメインにより、又は以下のセクションに記載されたTCR分子により、特異的に認識される標的分子(複数可)を意味するように、互換的に使用される。原則として、好適な標的抗原に関する特別な制限は存在しない。本開示の一部の実施態様において、ECDの抗原-結合部分は、標的細胞により発現又は認識された抗原に存在するエピトープに特異的である。一部の実施態様において、この標的細胞は、疾患又は障害と相関関係がある。例証的疾患又は障害は、例えば、増殖性疾患(例えば癌)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢などを含んでよい。本開示の一部の実施態様において、CARのECDの抗原-結合部分は、腫瘍細胞により発現された抗原、すなわち腫瘍-関連抗原に存在するエピトープに特異的である。腫瘍-関連抗原は、例えば、白血病細胞、神経芽細胞腫細胞、骨肉腫細胞、膵臓癌細胞、結腸癌細胞、卵巣癌細胞、前立腺癌細胞、肺癌細胞、中皮腫細胞、乳癌細胞、尿路上皮癌細胞、肝臓癌細胞、頭頸部癌細胞、肉腫細胞、子宮頸癌細胞、胃癌細胞、胃部癌細胞、メラノーマ細胞、ブドウ膜メラノーマ細胞、胆管癌細胞、多発性骨髄腫細胞、リンパ腫細胞、膠芽細胞腫細胞、又は本開示に説明された他の癌細胞に関連した抗原であることができる。一部の実施態様において、この抗原-結合部分は、組織-特異的抗原に存在するエピトープに特異的である。一部の実施態様において、抗原-結合部分は、疾患-関連抗原に存在するエピトープに特異的である。腫瘍は、細胞の制御できない成長が、臓器、筋肉又は骨などの固形組織で発生する場合に、癌の亜群と称されることが多い。本願において、用語「腫瘍」及び「癌」は、別に特定されない限りは、一般に、制御できない成長を有する細胞を意味するよう、互換的に使用される。
【0107】
一部の実施態様において、この抗原は、CD19、HER2、ROR1、B7-H3(CD276)、CD22、GD2、CD2、CD5、CD6、4-1BB、FcγR1、及びインテグリンからなる群から選択される。一部の実施態様において、この抗原は、CD19、HER2、ROR1、B7-H3(CD276)、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)、CD22、CD2、CD5、CD6、4-1BB、FcγR1、GD2、CD22、CD10、CD20、GPC2、GD3、GM2、GM3、及びインテグリンからなる群から選択される。
【0108】
好適な標的抗原の非限定的例はまた、グリピカン2(GPC2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、PSMA、IL-13-受容体アルファ1、IL-13-受容体アルファ2、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、癌抗原-125(CA-125)、CA19-9、カルレチニン、MUC-1、上皮膜タンパク質(EMA)、上皮腫瘍抗原(ETA)も含む。他の好適な標的抗原は、チロシナーゼ、メラノーマ-関連抗原(MAGE)、CD34、CD45、CD123、CD93、CD99、CD117、クロモグラニン、サイトケラチン、デスミン、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、総嚢胞性疾患流体タンパク質(GCDFP-15)、ALK、DLK1、FAP、NY-ESO、WT1、HMB-45抗原、タンパク質メラン-A(Tリンパ球により認識されたメラノーマ抗原;MART-1)、myo-D1、筋肉特異アクチン(MSA)、神経フィラメント、神経特異エノラーゼ(NSE)、胎盤アルカリホスファターゼ、シナプトフィジン、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、CD138、FolR1、LeY、MCSP、及びTYRP1を含むが、これらに限定されるものではない。
【0109】
本明細書に開示されたCARにとって好適であることができる追加の抗原は、ピルビン酸キナーゼイソ型酵素M2(腫瘍M2-PK)の二量体型、CD19、CD20、CD5、CD7、CD3、TRBC1、TRBC2、BCMA、CD38、CD123、CD93、CD34、CD1a、SLAMF7/CS1、FLT3、CD33、CD123、TALLA-1、CSPG4、DLL3、カッパ軽鎖、ラムダ軽鎖、CD16/FcγRIII、CD64、FITC、CD22、CD27、CD30、CD70、GD2(ガングリオシドG2)、GD3、EGFRvIII(上皮細胞増殖因子バリアントIII)、EGFR及びそのイソバリアント、TEM-8、精子タンパク質17(Sp17)、及びメソテリンを含むが、これらに限定されるものではない。好適な抗原の更なる非限定的例は、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、プロステイン、NKG2D、TARP(T細胞受容体ガンマ鎖代替リーディングフレームタンパク質)、Trp-p8、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、異常なrasタンパク質、異常なp53タンパク質、インテグリンβ3(CD61)、ガラクチン、K-Ras(V-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、及びRal-Bを含んでいる。一部の実施態様において、この抗原は、CD19、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2/neu)、CD276(B7-H3)、又はGD-2である。
【0110】
本明細書に開示されたCARにとって好適であることができる抗原は、以下の1つ又はそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されるものではない:CD1a、CD1b、CD1c、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD8、CD9、CD10、CD11a、CD11b、CD11c、CD12、CD13、CD14、CD15(SSEA-1)、CD16(FcγRIII)、CD17、CD18、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD24、CD25、CD26、CD27、CD28、CD29、CD30、CD31、CD32(FcγRII)、CD33、CD34、CD35、CD36、CD37、CD38、CD39、CD40、CD41、CD43、CD44、CD44V6、CD45、CD45R/B220、CD45RO、CD49b、CD49d、CD49f、CD52、CD53、CD54、CD56(NCAM)、CD57、CD61(インテグリンβ3)、CD62L、CD63、CD64、CD66b、CD68、CD69、CD70、CD73、CD74、CD79a(Igα)、CD79b(Igβ)、CD80、CD83、CD85k(ILT3)、CD86、CD88、CD93(C1Rqp)、CD94、CD95、CD99、CD103、CD105(エンドグリン)、CD107a、CD107b、CD114(G-CSFR)、CD115、CD117、CD122、CD123、CD129、CD133、CD134、CD138(シンデカン-1)、CD141、CD146、CD152(CTLA-4)、CD158(Kir)、CD161(NK-1.1)、CD163、CD183、CD191、CD193(CCR3)、CD194(CCR4)、CD195(CCR5)、CD197(CCR7)、CD203c、CD205(DEC-205)、CD207(ランゲリン)、CD209(DC-SIGN)、CD223、CD235、CD244(2B4)、CD252(OX40L)、CD267、CD268(BAFF-R)、CD273(B7-DC、PD-L2)、CD276(B7-H3)、CD279(PD1)、CD282(TLR2)、CD284(TLR4)、CD294、CD304(ニューロピリン-1)、CD305、CD314(NKG2D)、CD319(CRACC)、CD326、CD328(シグレック-7)、CD335(NKp46)、胎児アセチルコリン受容体(AChR)、ADGRE2、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、ALK、BCMA、BDCA3、C3AR、ルイスA(CA19.9)、炭酸脱水酵素IX(CA1X)、カルレチニン、癌抗原-125(CA-125)、CCR1、CCR4、CDS、癌胎児性抗原(CEA)、クロモグラニン、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、CS-1、CSPG4、サイトケラチン、デスミン、DLK1、DLL3、EGFRvIII(上皮細胞増殖因子バリアントIII)、EGFR及びそのイソバリアント、上皮細胞接着分子(EpCAM)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮膜タンパク質(EMA)、ERBB、上皮腫瘍抗原(ETA)、FAP、葉酸結合タンパク質(FBP)、FcγR1、FcεRIα、FITC、FLT3、FOLR1、FOLR3、ガラクチン、ガングリオシド、総嚢胞性疾患流体タンパク質(GCDFP-15)、GD2(ガングリオシドG2)、GD3、GM2、GM3、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)、gpA33、糖ペプチド、グリピカン2(GPC2)、癌胎児性抗原(h5T4)、インフルエンザ赤血球凝集素(HA)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(Her2/neu)、HLA-DR、HM1.24、HMB-45抗原、HPV E6、HPV E7、ICAM-1、IgG、IgD、IgE、IgM、IL-13-受容体アルファ1、インテグリン、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、カッパ軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ラムダ軽鎖、LILRB2、ルイスY(LeY)、LGR5、Ly49、Ly108、L1細胞接着分子(L1-CAM)、メラノーマ-関連抗原(MAGE)、メラノーマ抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、タンパク質メラン-A(Tリンパ球により認識されたメラノーマ抗原;MART-1)、MCSP、c-Met、MICA/B、メソテリン、筋肉特異アクチン(MSA)、メソテリン(MSLN)、ピルビン酸キナーゼイソ型酵素M2(腫瘍M2-PK)の二量体型、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、myo-D1、Necl-2、神経フィラメント、NKCSI、NKG2D、神経特異エノラーゼ(NSE)、NY-ESO、精巣癌抗原NY-ESO-1、異常なp53タンパク質、PAP(前立腺酸性ホスファターゼ)、PAMA、P-カドヘリン、胎盤アルカリホスファターゼ、PRAIVIE、プロステイン、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、前立腺-特異的膜抗原(PSMA)、Ral-B、K-Ras(V-Ki-ras2カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子)、異常なrasタンパク質、ROR1、SLAMF7/CS1、受容体チロシン-プロテインキナーゼerb-B2,3,4、精子タンパク質17(Sp17)、STEAP1(前立腺の6回膜貫通上皮抗原1)、シナプトフィジン、腫瘍-関連糖タンパク質72(TAG-72)、TALLA-1、TARP(T細胞受容体ガンマ鎖代替リーディングフレームタンパク質)、TEM-8、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、TIM-3、TLR4、TRBC1、TRBC2、Trp-p8、サイログロブリン、甲状腺転写因子-1、TYRP1、チロシナーゼ、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、Vα24、ウイルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、及び当該技術分野において公知の様々な病原性抗原。一部の実施態様において、本明細書記載の抗原は、腫瘍-特異的抗原(TSA)又は腫瘍-関連抗原(TAA)である。
【0111】
一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、CD19に結合する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、HER2に結合する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、B7-H3に結合する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、GD2に結合する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、CD22に結合する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、本明細書記載の任意のECDに対し少なくとも50%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する抗原-結合部分を含むECDを含む。一部の実施態様において、この抗原-結合部分は、本明細書記載の任意のECDに対し少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する。本明細書において使用される%同一性は、同じであるか、又は特定された領域にわたり同じであるヌクレオチドもしくはアミノ酸の特定の百分率を有する、2つ以上の配列又は部分配列を指す。2つ以上の配列又は部分配列は、例えば、BLASTもしくはBLAST2.0配列比較アルゴリズムにより測定されるか、或いは手作業での整列及び目視により測定される際に比較され、且つ比較ウインドウ又は指定された領域にわたり最大の対応となるよう整列されてよい。例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照されたい。この定義はまた、配列の相補体も指すか、又はこれに適用されてよい。この定義はまた、欠失及び/もしくは付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含む。配列同一性は、公開された技術、並びに広範に入手可能なコンピュータプログラム、例えばGCSプログラムパッケージ(Devereuxら、Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschulら、J Mol Biol 215:403, 1990)などを用いて、計算することができる。配列同一性は、配列解析ソフトウェア、例えばSequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group at the University of Wisconsin Biotechnology Center (1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)を、そのデフォルトパラメータで使用し、測定することができる。アミノ酸置換(複数可)は、例えば、CDR配列中の非必須アミノ酸残基(複数可)での、保存的アミノ酸置換であってよい。「保存的アミノ酸置換」は、当初のアミノ酸残基が、類似の側鎖を有するアミノ酸残基により置換されたものであると理解される。類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において公知である。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非-極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ-分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を伴うアミノ酸を含む。
【0112】
本明細書記載のSLP-76ポリペプチドの一つの利点は、これらは、標的抗原に応答しての細胞活性化を増強することが可能であることである。一部の実施態様において、そのような活性化は、標的抗原へ特異的に結合する細胞の表面上に発現されたCAR又はTCR分子により誘導される。更に、SLP-76ポリペプチド、例えば本明細書記載の膜結合型SLP-76ポリペプチドは、標的抗原が、CAR又はTCR分子を介して、低密度で発現されるか、及び/又は細胞活性化閾値を低下する際に、細胞活性化を増強することが可能である。用語「抗原の低密度」とは、本開示において別に特定されない限りは、一般に、CAR又はTCR分子を発現する少なくとも1個の細胞並びに標的抗原(例えば、腫瘍細胞により発現された腫瘍抗原、又は抗原-提示細胞により発現された腫瘍抗原)を含む微小環境において、1細胞当たりの標的抗原分子の量が、CAR又はTCR分子を発現する細胞の活性化に必要とされるCAR又はTCR分子の十分な数を活性化する(結合を介して)のに十分でない場合のような状況を指す。標的抗原の密度は、抗原、CARもしくはTCR構造、及び/又は標的抗原を発現するもしくは提示する標的細胞によって決まる、相対用語である。例証的CD19の低い抗原密度は、その微小環境中のTCR又はCARに関する約1000個以下の分子(例えば、CAR活性化に関して各標的細胞上、及びTCR活性化に関して各抗原-提示細胞上に1000個の分子)を指してよい。別の例証的低密度の抗原は、約100個以下から約1000万個以下の抗原分子を指してよい。一部の実施態様において、低い抗原密度は、約10、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500、10000、15000、20000、25000、30000、35000、40000、45000、50000、55000、60000、65000、70000、75000、80000、85000、90000、95000、100000、150000、200000、250000、300000、350000、400000、450000、500000、550000、600000、650000、700000、750000、800000、850000、900000、950000、100万、200万、300万、400万、500万、600万、700万、800万、900万、又は1000万個以下の標的抗原分子を指してよい。一部の実施態様において、低い抗原密度は、正常又は高い抗原密度(例えば、野生型標的細胞上で発現された標的抗原の密度)と比べ、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、0.01%以下、もしくはそれ未満の標的抗原分子を指してよい。標的抗原の密度又は量は、例えば半-定量的FACS、免疫組織化学、又は他の免疫学的方法など、様々な方法により測定されてよい。SLP-76ポリペプチド、例えば本明細書記載の膜結合型SLP-76ポリペプチドはまた、標的抗原が正常又は高い密度である場合にも、細胞活性化を増強することが可能である。非限定的例において、細胞におけるCAR又はTCR分子の過剰発現は、細胞消耗を生じることがある。SLP-76過剰発現は、T細胞消耗を増悪することなく、CAR又はTCR能力を増強することができる。一部の実施態様において、細胞上に発現されるCAR又はTCR又は他の受容体分子は、その標的抗原に対し、低い親和性を有することがあり、その結果その微小環境中に多数の標的抗原が存在する場合であっても、弱い活性化を生じる。一部の実施態様において、SLP-76過剰発現は、標的抗原対し低い親和性を有するこれらのCAR又はTCR又は他の受容体の能力を増強することがあり、その結果細胞活性化を増強する。一部の非限定的実施態様において、細胞上に発現されるCAR又はTCR又は他の受容体分子は、低密度で発現されることがあり、その結果その微小環境内に多数の標的抗原が存在する場合であっても、細胞の弱い活性化を生じる。一部の非限定的実施態様において、SLP-76過剰発現は、標的抗原に対し低い親和性を有するこれらのCAR又はTCR又は他の受容体の能力を増強することができ、その結果細胞活性化を増強する。一部の非限定的実施態様において、疾患又は障害に関連した細胞(例えば、癌細胞又は腫瘍細胞又は他の標的細胞)は、低レベルの抗原を発現することがあり(すなわち低い抗原密度を有する)、これは抗原を認識するCAR又はTCR分子を活性化するには不充分であり、従ってそのようなCAR又はTCR分子を使用する一般的CAR T又はTCR療法は、その疾患又は障害を治療するには不充分であるか又は効果的でない。一部の非限定的実施態様において、SLP-76(例えば、膜結合型SLP-76構築体)の過剰発現は、これらのCAR又はTCR又は他の受容体の活性化及び機能を増強することができ、その結果CAR T又はTCR療法が、この疾患又は障害を治療することを可能にする。
【0113】
ヒンジドメイン
先に説明されたように、本明細書記載のCARポリペプチドは、任意のヒンジドメインを有してよい。キメラ抗原受容体内で、用語「ヒンジドメイン」は一般に、標的化部分(ECD)とTMDの間に配置された可動性ポリペプチドコネクター領域を指す。これらの配列は一般に、IgGサブクラス(IgG1及びIgG4など)、IgD及びCD8ドメインに由来し、その中でIgG1が最も広く使用されている。
【0114】
一部の実施態様において、ヒンジドメインは、隣接するポリペプチド領域に、構造可動性を提供する。このヒンジドメインは、天然の又は合成のポリペプチドからなってよい。近年、いくつかのヒンジドメインの研究が、以下の局面に主に焦点を当てている:(1)Fcγ受容体への結合親和性を低下し、これにより非-標的活性化の特定の型を除外すること;(2)単鎖可変断片(scFv)の可動性を増強し、これにより腫瘍抗原に標的化された特定のエピトープとCARの抗原-標的化部分の間の空間制約を緩和すること;(3)scFvと標的エピトープ(複数可)の間の距離を減少すること;並びに、(4)抗-Fc試薬を使用し、CAR発現の検出を促進すること。それにもかかわらず、ヒンジドメインのCAR T細胞の物理に対する影響は、良く理解されていない。
【0115】
ヒンジドメインは、それにより認識される抗原の部分との関係において、抗原-結合部分の最適な配置を促進することにより、本明細書記載のCARポリペプチドの機能を改善することができることは、当業者により理解され得る。一部の実施態様において、ヒンジドメインは、最適なCAR活性には必要とされ得ないことは、理解され得る。一部の実施態様において、短いアミノ酸配列を有する有益なヒンジドメインは、例えばそうでなければ抗体結合動態を変更することがある何らかの立体障害を緩和することによるなど、抗原結合を促進することにより、CAR活性を促進する。ヒンジドメインをコードしている配列は、抗原認識部分とTMDの間に配置されてよい。一部の実施態様において、ヒンジドメインは、抗原-結合部分の下流及びTMDの上流に機能的に連結される。本明細書記載のCARポリペプチドが任意のヒンジドメインを有する場合、ヒンジドメイン及びTMDドメインを説明するフォーマットは、「H/TM」又は「H-TM」であってよい。
【0116】
ヒンジ配列は一般に、いずれかの好適な分子に由来するか又はこれから得られた任意の部分又は配列であることができる。例えば一部の実施態様において、ヒンジ配列は、ヒトCD8分子又はCD28分子に、並びに隣接する領域へ可動性を供する類似の機能を提供するいずれか他の受容体に由来することができる。ヒンジドメインは、長さ約4アミノ酸(aa)から約50aaを、例えば、約4aa~約10aa、約10aa~約15aa、約aa~約20aa、約20aa~約25aa、約25aa~約30aa、約30aa~約40aa、又は約40aa~約50aaを有することができる。好適なヒンジドメインは、容易に選択されることができ、且つ1アミノ酸(例えば、Gly)~20aa、2aa~15aa、3aa~12aaなど数多くの好適な長さのいずれかであることができ、これは4aa~10aa、5aa~9aa、6aa~8aa、又は7aa~8aaを含み、並びに1、2、3、4、5、6、又は7aaであることができる。好適なヒンジドメインの非限定的例は、CD8ヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、CD4ヒンジドメイン、PD-1ヒンジドメイン、CD2ヒンジドメイン、CTLA4ヒンジドメイン、又はIgG4ヒンジドメインを含む。一部の実施態様において、ヒンジドメインは、ヒトCD8α(別名CD8a)分子又はCD28分子及び隣接する領域に可動性を供する類似の機能を提供するいずれか他の受容体に由来する領域を含むことができる。追加の例証的ヒンジドメインは、LFA-1(CD11a/CD18)、CD5、CD27(TNFRSF7)、CD70、4-1BB、OX40(CD134)、ICOS(CD278)、IgG1 Fc領域、IgG2 Fc領域、IgG3 Fc領域、IgG4 Fc領域、IgE Fc領域、IgM Fc領域、IgA Fc領域のヒンジドメイン、又はそれらの組合せに由来するか又はこれを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD8ヒンジドメイン由来のヒンジドメインを含む。一部の実施態様において、このヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインの1又は複数のコピーを含むことができる。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD28ヒンジドメイン由来のヒンジドメインを含む。一部の実施態様において、このヒンジドメインは、CD28ヒンジドメインの1又は複数のコピーを含むことができる。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD4ヒンジドメイン由来のヒンジドメインを含む。一部の実施態様において、このヒンジドメインは、CD4ヒンジドメインの1又は複数のコピーを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、IgG4ヒンジドメイン由来のヒンジドメインを含む。一部の実施態様において、このヒンジドメインは、IgG4ヒンジドメインの1又は複数のコピーを含むことができる。
【0117】
共刺激ドメイン
先に説明されたように、本明細書記載のCARポリペプチドは、任意の共刺激ドメインを有してよい。一般に、本明細書に開示されたCARポリペプチドに適した共刺激ドメインは、当該技術分野において公知の共刺激ドメインのいずれか一つであることができる。好適な共刺激ドメインの例は、サイトカイン生成を増強することができ、且つ非限定的に、4-1BB(CD137)、CD27、CD28、OX40(CD134)由来の共刺激ポリペプチド配列、並びに共刺激誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)ポリペプチド配列を含む。追加の例証的共刺激ポリペプチド配列は、以下の共刺激ドメインであるか又はこれらから誘導されてよい:CD28、ICOS(CD278)、CD27、4-1BB(CD137)、OX40(CD134)、CD2、CD4、CD5、CD7、CD8、CD8α、CD8β、CD11a、CD11b、CD11c、CD11d、CD18、CD19、CD19a、CD29、CD30、CD30L、CD40、CD40L(CD154)、CD48、CD49a、CD49D、CD49f、CD58、CD53、ICAM-1(CD54)、CD69、CD70、CD80(B7-1)、CD82、CD83、CD84、CD86(B7-2)、CD90、CD96、CD100、CD103、CD122、CD132、CD150(SLAMF1)、CD160(BY55)、CD162(DNAM1)、CD223(LAG3)、CD226、CD229、CD244、CD270(HVEM)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278、LAT、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、LIGHT、NKG2C、NKG2D、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80(KLRF1)、B7-H2、B7-H3、CD83リガンド、PD-1、SLP-76、Toll-様受容体(TLR、例えばTLR2など)、DAP10、DAP12、LAG-3、2B4、CARD1、CTLA-4(CD152)、TRIM、ZAP70、FcERIγ、4-1BBL、BAFF、GADS、GITR、GITR-L、BAFF-R、HVEM、CD27L、OX40L、TAC1、BLAME、CRACC、CD2F-10、NTB-A、インテグリンα4、インテグリンα4β1、インテグリンα4β7、IA4、ICAM-1、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、ITGA6、ITGAD、ITGAE、ITGAL、ITGAM、ITGAX、ITGB1、ITGB2、ITGB7、KIRDS2、LTBR、PAG/Cbp、PSGL1、SLAMF6(NTB-A、Ly108)、SLAMF7、SLP-76、TNFR2、TRANCE/RANKL、VLA1、VLA-6、BTLA、イカロス、LAG-3、LMIR、CEACAM1、CRTAM、TCL1A、DAP12、TIM-1、デクチン-1、PDCD6、PD-1、TIM-4、TSLP、EphB6、TSLP-R、HLA-DR、又はそれらの任意の組合せ。
【0118】
従って一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARの共刺激ドメインは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列、共刺激CD27ポリペプチド配列、共刺激CD28ポリペプチド配列、共刺激OX40(CD134)ポリペプチド配列、及び共刺激誘導性T細胞共刺激分子(ICOS)ポリペプチド配列からなる群から選択される。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列由来の共刺激ドメインを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、共刺激4-1BB(CD137)ポリペプチド配列を含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、共刺激CD28ポリペプチド配列由来の共刺激ドメインを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、共刺激CD28ポリペプチド配列を含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、任意の本明細書記載の共刺激ドメインの配列と、少なくとも50%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有する共刺激ドメインを含む。一部の実施態様において、この共刺激ドメインは、任意の本明細書記載の共刺激ドメインの配列と、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を含む。
【0119】
膜貫通ドメイン(TMD)
一般に、本明細書に開示されたCARポリペプチドに適した膜貫通ドメイン(膜貫通領域とも称される)は、当該技術分野において公知のTMDのいずれか一つであることができる。理論に結びつけられるものではないが、TMDは、細胞膜を横断し、CARを細胞表面に繋留し、且つECDを細胞内シグナル伝達ドメインに接続し、その結果細胞表面でのCARの発現に影響を及ぼすと考えられる。好適なTMDの例は、CD28 TMD、CD8 TMD、CD4 TMD、CD3 TMD、CTLA-4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDを含むが、これらに限定されるものではない。追加のTMDの例は、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ゼータ、CD8a、CD8b、CD16、CD25、CD27、CD40、CD79A、CD79B、CD80、CD84、CD86、CD95、CD150(SLAMF1)、CD166、CD200R、CD223(LAG3)、CD270(HVEM)、CD272(BTLA)、CD273(PD-L2)、CD274(PD-L1)、CD278(ICOS)、CD300、CD357(GITR)、A2aR、ICAM-1、2B4、BTLA、DAP10、FcRα、FcRβ、Fyn、GAL9、IL7、IL12、IL15、KIR、KIR2DL4、KIR2DS1、LAG-3、Lck、LAT、LPA5、LRP、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、PTCH2、ROR2、Ryk、SLP-76、SIRPα、pTα、T細胞受容体ポリペプチド(例えば、TCRα及びTCRβ)、TIM3、TRIM、及びZAP70由来のTMDを含む。従って一部の実施態様において、TMDは、CD28 TMD、CD8 TMD、CD4 TMD、CD3 TMD、CTLA4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDに由来する。一部の実施態様において、TMDは、CD28 TMD、CD4 TMD、CD8 TMD、CD3 TMD、CTLA4 TMD、OX40 TMD、4-1BB TMD、CD2 TMD、及びPD-1 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD8由来のTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARポリペプチドは、CD8 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD28由来のTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD28 TMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD4由来のTMDを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、CD4 TMDを含む。
【0120】
本明細書記載のようにCAR分子の例は、互いに隣接するヒンジドメイン及びTMDドメインを含む。様々なCAR分子に関する例証的ヒンジ/膜貫通(H/TM又はヒンジ/TM)ドメインについての配列が、本明細書に開示されている。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCAR分子は、本明細書記載の任意のTMD又はヒンジ-TMDに対し、少なくとも50%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するH/TMドメインを含む。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCAR分子は、本明細書記載の任意のTMD又はヒンジ-TMDに対し、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を示すアミノ酸配列を有するH/TMドメインを含む。
【0121】
細胞外スペーサー
本明細書に開示されたCARは更に、ECDと任意のヒンジドメインの間に配置されている1又は複数の介在アミノ酸残基を含む任意の細胞外スペーサードメインを含んでよい。一部の実施態様において、細胞外スペーサードメインは、ECDの下流及び任意のヒンジドメインの上流に機能的に連結される。原則として、細胞外スペーサーの長さ及び/又はアミノ酸組成に関する特別な制限は存在しない。一部の実施態様において、約1~100個のアミノ酸残基(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個などのアミノ酸残基)を含むいずれか任意の単鎖ペプチドは、細胞外スペーサーとして使用され得る。一部の実施態様において、この細胞外スペーサーは、約5~50、約10~60、約20~70、約30~80、約40~90、約50~100、約60~80、約70~100、約30~60、約20~80、約30~90個のアミノ酸残基を含む。一部の実施態様において、この細胞外スペーサーは、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25、約20~40、約30~50、約40~60、約50~70個のアミノ酸残基を含む。一部の実施態様において、この細胞外スペーサーは、約40~70、約50~80、約60~80、約70~90、又は約80~100個のアミノ酸残基を含む。一部の実施態様において、この細胞外スペーサーは、約1~10、約5~15、約10~20、約15~25個のアミノ酸残基を含む。一部の実施態様において、細胞外スペーサーの長さ及びアミノ酸組成は、CARの所望の活性を達成するために、ECD及び任意のヒンジドメインの互いへの配向及び/又は近接を変動するように、最適化され得る。一部の実施態様において、ECD及び任意のヒンジドメインの互いへの配向及び/又は近接は、CARの有効性を増強又は減少するための「チューニング」ツール又は効果として変動及び/又は最適化され得る。一部の実施態様において、ECD及び最適ヒンジドメインの間の互いへの配向及び/又は近接は、CARの完全機能型及び/又は部分機能型を生じるように、変動及び/又は最適化され得る。一部の実施態様において、この細胞外スペーサードメインは、IgG4ヒンジドメイン及びIgG4 CH2-CH3ドメインに対応するアミノ酸配列を含む。追加の例証的細胞外スペーサードメインは、免疫グロブリンヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgD)、免疫グロブリンFcドメインの全て又は部分(例えば、CH1ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらの組合せ)、II型C-レクチンのストーク領域(C-型レクチンドメインと膜貫通ドメインの間に配置された細胞外ドメイン)に由来するか、又はこれを含む。II型C-レクチンは、例えば、CD23、CD69、CD72、CD94、NKG2A、及びNKG2Dを含む。また更なる実施態様において、この細胞外スペーサードメインは、toll-様受容体(TLR)膜近傍ドメインに由来するか又はこれを含んでよい。TLR膜近傍ドメインは、TLRのロイシンリッチ反復配列(LRR)と膜貫通ドメインの間に存在する、酸性アミノ酸を含む。いくつかの実施態様において、TLR膜近傍ドメインは、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、TLR8、又はTLR9膜近傍ドメインである。
【0122】
当業者は、本開示のCARポリペプチドの完全なアミノ酸配列は、逆翻訳された遺伝子を構築するために使用することができることを理解することができる。例えば、所与のCARをコードしているヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーが合成されることができる。例えば、所望のCAR又は抗体の一部をコードしているいくつかの小型オリゴヌクレオチドが合成されることができ、その後ライゲーションされる。個別のオリゴヌクレオチドは典型的には、相補的集成体のために、5’又は3’オーバーハングを有する。
【0123】
組換え分子生物学的技術により改変された核酸分子の発現を介して所望のCARを作製することに加え、本開示に従う対象CARは、化学的に合成されることができる。化学的に合成されるポリペプチドは、当業者により慣習的に作製される。
【0124】
一旦集成されると(合成、組換え法、位置指定変異誘発又は他の好適な技術により)、本明細書に開示されたCARをコードしているDNA配列は、発現ベクターに挿入されるか、又は所望の形質転換された宿主におけるCARの発現に適した発現制御配列に機能的に連結されることができる。適切な集成体は、ヌクレオチドシークエンシング、制限酵素地図作成、及び好適な宿主における生物活性のあるポリペプチドの発現により確認することができる。当該技術分野において公知であるように、宿主においてトランスフェクションされた遺伝子の高い発現レベルを得るために、その遺伝子が、選択された発現宿主において機能する転写及び翻訳発現制御配列に、機能的に連結されることを確実にするべきである。
【0125】
細胞内シグナル伝達ドメイン
本明細書に開示されたCARは、標的抗原へ結合するECDからのシグナリングを伝達し、且つ細胞活性化を誘導する、細胞内シグナル伝達ドメインを含んでよい。
【0126】
キメラ抗原受容体(CAR)内の、細胞内シグナル伝達ドメイン(別名、サイトゾルシグナル伝達ドメイン)は一般に、細胞外ドメインを対応するリガンド又は抗原へ結合した後、活性化シグナルをCAR分子を発現する細胞へ伝達する、サイトゾルドメインを指す。場合によっては、細胞内シグナル伝達ドメインは、刺激分子由来の機能性シグナル伝達ドメインを含む。慣習的な細胞内シグナル伝達ドメインは、ほぼ常に、CD3ゼータ、T細胞活性を誘起するプロトタイプの「マスタースイッチ」(Irving及びWeiss、Cell 1991;64:891-901;Letourneur及びKlausner、Science 1992;255:79-82)、並びに効能及び持続性を増強する様々な任意の共刺激ドメインを含む。
【0127】
一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、近位シグナル伝達分子からの又はこれに由来する細胞内シグナル伝達ドメインを有する。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を伴う細胞内シグナル伝達ドメインを有する。一部の実施態様において、本明細書に開示されたCARは、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を伴わない細胞内シグナル伝達ドメインを有する。例証的近位シグナル伝達分子は、例えば、CD3ゼータ(CD3ζ)、CD3-イプシロン、DAP12、ZAP70、PLCG1、PKC、ITK、NCK、VAV1、GRB2、GADS、SOS1、ADAP、SYK、LYN、PI3K、BLNK、又はそれらの生物活性のある断片、変異体、もしくはバリアントを含む。
【0128】
T細胞受容体(TCR)
T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合したペプチドとしての抗原の断片を認識することに関与している、T細胞、又はTリンパ球の表面上に認められるタンパク質複合体である。TCRと抗原ペプチドの間の結合は、親和性が比較的低く、且つ変性している(degenerate)。このTCRは、2種の異なるタンパク質鎖で構成される(すなわち、ヘテロ二量体として)。ヒトにおいて、T細胞の95%においては、TCRは、アルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖(各々、TRA及びTRBによりコードされる)からなるのに対し、T細胞の5%においては、TCRは、ガンマ及びデルタ(γ/δ)鎖(各々、TRG及びTRDによりコードされる)からなる。これらの鎖内には、それにTCRが結合する抗原を決定する相補性決定領域(CDR)がある。抗原提示細胞(APC)は、病原体を消化し、且つそれらの断片を主要組織適合性複合体(MHC)分子に提示する。このMHC/抗原複合体は、TCRへ結合する一方で、他の共刺激分子(例えばCD28)が活性化され、T細胞の活性化、増殖、分化、アポトーシス、又はサイトカイン放出に繋がる。しかしMHC/抗原複合体は、TCRとの相互作用が可能な分子のみではない。脂質などの非-ペプチド抗原は、CD1の5種のアイソフォームのいくつかを介して、TCRと相互作用することができ、並びにいくつかの研究は、MHC様分子MR1に結合した代謝中間体へのTCR結合を説明している。
【0129】
T細胞機能の刺激は、TCRの、MHCクラスI又はII分子(CD8 T細胞についてMHC1及びCD4 T細胞についてMHC II)により提示される短いペプチドとの相互作用時に開始されてよい。しかし、TCRヘテロ二量体それ自身は、T細胞活性化を開始するために下流経路を活性化することは不可能である。TCRシグナル伝達の開始は、ヘルパーT細胞のためのCD4及び細胞傷害性T細胞のためのCD8などの、共受容体を必要とする。これらの共受容体は、それら各々MHC分子に結合し、且つT細胞及び抗原提示細胞の相互作用を安定化する、細胞接着分子として作用する。
【0130】
TCRはまた、タンパク質のCD3ファミリー(CD3δ、CD3ε、及びCD3γ)並びにTCRゼータ(ζ)鎖に非常に近接して配置される。一旦TCRが、ペプチド-MHC複合体と適切に結合されたならば、会合されたCD3鎖内にコンホメーション変化が誘導され、このことは、CAR分子によるシグナル伝達同様、近位シグナル伝達分子によるそれらのリン酸化及びシグナル伝達に繋がる。
【0131】
先に説明したように、本開示のSLP-76ポリペプチドは、抗原-提示細胞上のMHC分子により提示された標的抗原に応答してのTCR(未変性又は組換えのいずれか)を発現する細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)の活性化を増強することが可能である。原則として、本明細書記載のLP-76ポリペプチドの増強機能に関する好適なTCR分子に関する特別な制限は存在しない。非限定的実施態様において、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、例えば抗原-提示細胞(APC)により提示される標的抗原に応答してTCR-発現する細胞の活性化を増強することが可能である。一部の実施態様において、SLP-76ポリペプチド、例えば本明細書記載の膜結合型SLP-76ポリペプチドは、低密度で標的抗原に応答してTCR-発現する細胞を活性化するか又は活性化を増強することが可能である。一部の実施態様において、TCR-発現する細胞の活性化は、細胞の増殖、分化、サイトカイン生成及び/又は細胞傷害性を増強し得る。例えば養子細胞療法(ACT)において、患者の白血球細胞は、ロイコフェレーシスと称されるプロセスにおいて収集される。最も癌と闘う効能のある特異的T細胞の単離には、これらの細胞のインビトロ培養が続く。この大きく増殖されたT細胞集団は次に、癌に対して働くために、その患者へ再注入されてよい。一部の実施態様において、標的抗原が、抗原-提示細胞上に低密度で発現された場合であっても、SLP-76ポリペプチド、例えば本明細書記載の膜結合型SLP-76ポリペプチドは、提示された標的抗原(例えば腫瘍抗原)に応答して、TCR-発現する細胞を、活性化するか又は活性化及び/もしくは増殖を増強することが可能であり得る。従って本明細書記載のSLP-76ポリペプチドは、標的抗原(例えば腫瘍抗原)に対する特異性及び/又は効能を伴うTCR-発現する細胞の増殖及び/又は単離を選択的に増強するために使用されてよい。
【0132】
キメラ抗原受容体(CAR)又はT細胞受容体(TCR)の変異
複数の変異が、本開示のCAR又はTCRポリペプチドへ導入され得る。変異は、少なくとも、置換、欠失、挿入、又は他の当該技術分野において公知の方法を含む。これらの変異の目的は、例えば、CAR又はTCRポリペプチドの効能を増強するため、CAR又はTCRポリペプチドの安定性(例えば半減期)を増強するため、CAR又はTCRポリペプチドの発現を増強するため、CAR又はTCRポリペプチドの溶解度を増強し及び/又は凝集を減少するため、発現時のCAR又はTCRポリペプチドの修飾を操作するため、CAR又はTCRポリペプチドのその結合パートナー(複数可)への結合を操作するため、CAR又はTCRポリペプチドの精製を増強するため、CAR又はTCRポリペプチドのユビキチン化及び/もしくは分解を減少するためなどを含む。
【0133】
核酸分子
一局面において、例えば、宿主細胞又はエクスビボ細胞-非含有発現システムにおけるSLP-76ポリペプチド、CARポリペプチド、又はTCRポリペプチドのインビボ発現を可能にする制御配列などの、異種核酸配列に機能的に連結されたこれらの核酸分子を含む発現カセット及び発現ベクターを含む、本開示のSLP-76ポリペプチド、CARポリペプチド、又はTCRポリペプチドをコードしているヌクレオチド配列を含む、様々な核酸分子が、本明細書に提供される。
【0134】
本開示の核酸分子は、任意の長さの核酸分子であることができ、これは一般に約0.5Kb~約50Kb、例えば、約0.5Kb~約20Kb、約1Kb~約15Kb、約2Kb~約10Kb、又は約5Kb~約25Kb、例えば約10Kb~15Kb、約15Kb~約20Kb、約5Kb~約20Kb、約5Kb~約10Kb、又は約10Kb~約25Kbの核酸分子を含む。一部の実施態様において、本開示の核酸分子は、約1.5Kb~約50Kb、約5Kb~約40Kb、約5Kb~約30Kb、約5Kb~約20Kb、又は約10Kb~約50Kb、例えば約15Kb~30Kb、約20Kb~約50Kb、約20Kb~約40Kb、約5Kb~約25Kb、又は約30Kb~約50Kbである。
【0135】
一部の実施態様において、この組換え核酸は、SLP-76ポリペプチド、CARポリペプチド、又はTCRポリペプチドをコードしている核酸配列を含む。
【0136】
一部の実施態様において、組成物は、各々、組合せを形成するよう、本明細書記載のSLP-76ポリペプチド及び本明細書記載のCAR又はTCRポリペプチドをコードしている核酸配列を含む、少なくとも2種の組換え核酸を有する。一部の実施態様において、これらの少なくとも2種の組換え核酸は、一緒にコンジュゲートされる。一部の実施態様において、これらの少なくとも2種の組換え核酸は、組換え核酸の単独鎖内にある。
【0137】
一部の実施態様において、この組換え核酸は、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60からなる群から選択されるアミノ酸配列に対し、少なくとも50%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている。一部の実施態様において、この組換え核酸は、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60からなる群から選択されるアミノ酸配列に対し、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードしている。一部の実施態様において、この組換え核酸は、配列番号:20、26、33、35、37、38、42、61及び62からなる群から選択される核酸配列に対し、少なくとも50%の配列同一性を有する核酸配列を含む。一部の実施態様において、この組換え核酸は、配列番号:20、26、33、35、37、38、42、61及び62からなる群から選択される核酸配列に対し、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する核酸配列を含む。
【0138】
一部の実施態様において、この組換え核酸分子は、異種核酸配列に機能的に連結される。
【0139】
一部の実施態様において、この組換え核酸分子は更に、発現カセット又はベクターとして規定される。発現カセットは一般に、コード配列、並びにレシピエント細胞、インビボ及び/又はエクスビボにおいて、このコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を指示するのに十分な制御情報を含む遺伝物質の構築体を含むことが、理解される。一般に発現カセットは、所望の宿主細胞及び/又は個体を標的化するためのベクターに挿入されてよい。従って一部の実施態様において、本開示の発現カセットは、本明細書に開示されたSLP-76、CAR、又はTCRポリペプチドのためのコード配列を含み、これは、プロモーター、及び任意にコード配列の転写又は翻訳に影響を及ぼすいずれか他の配列もしくは他の核酸配列の組合せなどの発現制御エレメントに、機能的に連結される。
【0140】
一部の実施態様において、このヌクレオチド配列は、発現ベクターに組み込まれている。当業者により、用語「ベクター」は一般に、宿主細胞間の導入のために設計された組換えポリヌクレオチド構築体を指すこと、並びに例えば異種DNAの宿主細胞への導入などの、形質転換の目的のために使用されてよいことが理解され得る。従って一部の実施態様において、このベクターは、挿入されたセグメントの複製をもたらすように、それに別のDNAセグメントが挿入されてよい、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどの、レプリコンであることができる。一部の実施態様において、この発現ベクターは、組込み型ベクターであることができる。
【0141】
一部の実施態様において、この発現ベクターは、ウイルスベクターであることができる。当業者に理解され得るように、用語「ウイルスベクター」は、一般に核酸分子の導入もしくは細胞のゲノムへの組込みを促進するウイルス-由来の核酸エレメントを含む核酸分子(例えば、伝達性プラスミド)、又は核酸導入を媒介するウイルス粒子のいずれかを指すように、広範に使用される。ウイルス粒子は一般に、核酸(複数可)に加え、様々なウイルス成分、及び時には宿主細胞成分も含む。用語ウイルスベクターは、核酸の細胞への導入を可能にするウイルスもしくはウイルス粒子、又は導入された核酸それ自身のいずれかを指してよい。ウイルスベクター及び伝達性プラスミドは、ウイルスから主に誘導される構造性及び/又は機能性遺伝因子を含む。一部の実施態様において、ベクターは、レンチウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、バキュロウイルス、又はレトロウイルス由来のベクターである。用語「レトロウイルスベクター」は、レトロウイルスから主に誘導される、構造性及び機能性遺伝因子、又はそれらの一部を含む、ウイルスベクター又はプラスミドを指す。用語「レンチウイルスベクター」は、レトロウイルスの属である、レンチウイルスから主に誘導される、構造性及び機能性遺伝因子、又はそれらの一部を含む、ウイルスベクター又はプラスミドを指す。
【0142】
一部の実施態様において、本明細書に開示されたCAR、TCR、又は別の受容体ポリペプチドに対し、少なくとも約50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を伴う、ポリペプチドをコードしている核酸分子が、本明細書に提供される。
【0143】
CARポリペプチドをコードしている核酸配列は、関心対象の宿主細胞における発現のために最適化され得る。例えば、この配列のG-C含量は、宿主細胞において発現された既知の遺伝子を参照し計算された、所与の細胞宿主にとっての平均のレベルに調節され得る。コドン使用頻度の最適化の方法は、当該技術分野において公知である。本明細書に開示されたキメラ受容体のコード配列内のコドン使用頻度は、宿主細胞における発現を増強するように最適化されることができ、その結果コード配列内のコドンの約1%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、又は最大100%が、特定の宿主細胞における発現のために最適化される。
【0144】
提供される核酸分子は、天然の配列、又は天然の配列とは異なるが、遺伝暗号の縮重のために、同じポリペプチド、例えばECDの抗体をコードしている配列を含むことができる。これらの核酸分子は、RNA又はDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNA、もしくはホスホロアミダイト-ベースの合成により精製されたものなどの合成DNA)、又はこの種の核酸内のヌクレオチドの組合せもしくは修飾からなる。加えて、これらの核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)であることができる。
【0145】
これらの核酸分子は、ポリペプチド(例えば、ECDの抗体)をコードしている配列に限定されず;コード配列(例えば、キメラ受容体のコード配列)の上流又は下流に位置する非コード配列の一部又は全てもまた、含まれ得る。分子生物学分野の業者は、核酸分子を単離する慣習的手順を熟知している。それらは、例えば、ゲノムDNAの制限エンドヌクレアーゼによる処理によるか、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施により、作製され得る。この核酸分子がリボ核酸(RNA)である事象において、分子は、例えば、インビトロ転写により作製され得る。
【0146】
組換え細胞及び細胞培養物
本開示の核酸分子は、例えばT細胞を含む免疫細胞などの、細胞(すなわち宿主細胞)へ導入され、この核酸分子を含む組換え細胞を作製することができる。原則として、本開示の核酸分子を発現するのに適した細胞に関して、特別な制限は存在しない。従って本開示の一部の実施態様は、以下を含む、組換え細胞を作製する方法に関連している:(a)タンパク質発現が可能な宿主細胞を提供すること;並びに、本開示の組換え核酸で、提供された宿主細胞を形質導入し、組換え細胞を作製すること。本開示の核酸分子の細胞への導入は、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿法、ポリエチレンイミン(PEI)-媒介型トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、リポソーム-媒介型トランスフェクション、微粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿法、ダイレクトマイクロインジェクション、ナノ粒子-媒介型核酸送達及び同類のものなどの、当業者に公知の方法により、達成することができる。
【0147】
一局面において、本開示は、SLP-76ポリペプチドを過剰発現するか及び/又は上昇したレベルで含むように修飾された単離された組換え細胞を有する組成物を提供する。一部の実施態様において、この組換え細胞は、低密度で発現された標的抗原により活性化されることが可能である。一部の実施態様において、この組換え細胞は、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドを発現する細胞である。一部の実施態様において、この組換え細胞は、本明細書記載のSLP-76ポリペプチドを発現し、並びに先のセクションに記載されたCAR又はTCRを更に発現する細胞である。例えば、SLP-76構築体は、CAR又はTCRの発現を伴う又は伴わない細胞へ導入され、SLP-76を過剰発現する(又はCARもしくはTCRを更に過剰発現する)組換え細胞を作製してよく、その結果、近位シグナル伝達を促進することによるか及び/又はCARもしくはTCRの細胞を活性化する能力を増強することにより、細胞活性化を増強する。一部の実施態様において、この組換え細胞は、CAR又はTCRを発現する細胞である。一部の実施態様において、SLP-76構築体は、SLP-76を過剰発現するために、CAR又はTCRを発現する細胞へ導入されてよい。一部の実施態様において、この組換え細胞は、CAR又はTCRを発現しない細胞である。一部の実施態様において、SLP-76構築体は、細胞活性化を増強するために、CAR又はTCRを発現しない細胞へ導入されてよい。非限定的実施態様において、SLP-76構築体は、細胞における近位シグナル伝達を促進することにより、CAR又はTCRを発現しない細胞の活性化を増強することができる。一部の実施態様において、CAR又はTCRを発現しない細胞は、NK細胞である。一部の実施態様において、SLP-76構築体は、CAR又はTCR構築体と組合せて(逐次又は一緒にのいずれか)、CAR又はTCRを発現しない細胞へ導入され、SLP-76及びCAR又はTCRを過剰発現する組換え細胞を作製してよく、その結果CAR又はTCRの細胞を活性化する能力を増強する。非限定的実施態様において、SLP-76は、過剰発現のために、未変性宿主細胞又は組換え細胞へ導入されてよい。一部の実施態様において、SLP-76は、未変性又は内因性TCRを発現する、未変性宿主細胞又は組換え細胞へ導入されてよい。一部の実施態様において、過剰発現されたSLP-76は、未変性又は内因性TCRを介して、細胞活性化を増強することができる。一部の実施態様において、SLP-76は、組換えTCR又はCARを発現する組換え細胞へ導入されてよい。一部の実施態様において、過剰発現されたSLP-76は、組換えTCR又はCARを介して、細胞活性化を増強することができる。
【0148】
従って一部の実施態様において、この核酸分子は、当該技術分野において公知のウイルス又は非ウイルス送達ビヒクルにより、宿主細胞へ導入され、遺伝子操作された細胞を作製することができる。例えば、この核酸分子は、宿主ゲノムへ安定して組込まれることができるか、又はエピソームとして複製されるか、又は安定したもしくは一過性の発現のための小環状発現ベクターとして組換え宿主細胞に存在することができる。従って本明細書に開示された一部の実施態様において、この核酸分子は、エピソーム単位として、組換え宿主細胞において維持され且つ複製される。一部の実施態様において、この核酸分子は、組換え細胞のゲノムへ安定して組込まれる。安定した組込みは、古典的ランダムゲノム組換え技術、又はより正確なゲノム編集技術を用いて、例えばジンク-フィンガータンパク質(ZNF)、ガイドRNA指定したCRISPR/Cas9、DNA-ガイドしたエンドヌクレアーゼゲノム編集NgAgo(ナトロノバクテリウム・グレゴリー・アルゴノート)、又はTALENゲノム編集(転写アクチベーター-様エフェクターヌクレアーゼ)の使用などにより、完了され得る。
【0149】
これらの核酸分子は、ウイルスキャプシドもしくは脂質ナノ粒子内に封入されることができるか、又はウイルスもしくは非ウイルスの送達手段、及び電気穿孔法などの当該技術分野において公知の方法により、送達されることができる。例えば、核酸の細胞への導入は、ウイルスによる形質導入により、達成されてよい。非限定的例において、バキュロウイルス系ウイルス又はアデノ随伴ウイルス(AAV)は、ウイルス形質導入により、核酸を標的細胞へ送達するよう、遺伝子操作されることができる。いくつかのAAVセロタイプが説明されており、且つ公知のセロタイプは全て、複数の多様な組織型からの細胞を感染することができる。AAVは、毒性の証拠がなく、インビボにおいて広範な種及び組織を形質導入することが可能であり、これは比較的穏やかな先天性又は養子免疫応答を生じる。
【0150】
レンチウイルス-由来のベクターシステムも、ウイルス形質導入による、核酸送達及び遺伝子治療に有用である。レンチウイルスベクターは、遺伝子-送達ビヒクルとしてのいくつかの魅力的特性を提供し、これは:(i)宿主ゲノムへの安定したベクター組込みによる持続した遺伝子送達;(ii)分裂細胞及び非分裂細胞の両方へ感染する能力;(iii)重要な遺伝子療法及び細胞療法の標的細胞型を含む、広範な組織指向性;(iv)ベクター形質導入後の、ウイルスタンパク質の非発現;(v)多シストロン性配列又はイントロン含有配列などの、複雑な遺伝因子を送達する能力;(vi)潜在的により安全な組込み部位のプロファイル;並びに、(vii)ベクターの操作及び作製に関する比較的容易なシステム:を含む。
【0151】
一部の実施態様において、宿主細胞は、例えば、ウイルスベクター、又は宿主細胞のゲノムの一部と相同である核酸配列を含む相同組換えのためのベクターなどであることができるか、或いは関心対象のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチドの発現のための、発現ベクターであることができる、本願のベクター構築体により、遺伝子操作され得る(例えば、形質導入される又は形質転換される又はトランスフェクションされる)。
【0152】
一部の実施態様において、この組換え細胞は、真核細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、インビボにおいてである。一部の実施態様において、この細胞は、エクスビボにおいてである。一部の実施態様において、この細胞は、インビトロにおいてである。一部の実施態様において、この組換え細胞は、動物細胞である。一部の実施態様において、この動物細胞は、哺乳動物細胞である。一部の実施態様において、この動物細胞は、マウス細胞である。一部の実施態様において、この動物細胞は、ヒト細胞である。一部の実施態様において、この細胞は、非-ヒト霊長類細胞である。一部の実施態様において、この組換え細胞は、免疫系細胞、例えば、B細胞、単球、NK細胞、腫瘍-浸潤リンパ球(TIL)、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞(Treg)、ヘルパーT細胞(T)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、メモリーT細胞、ガンマデルタ(γδ)T細胞、別のT細胞、幹細胞(例えば造血幹細胞)、幹細胞前駆体(例えば造血幹細胞前駆体)、誘導性多能性幹細胞(iPSC)-由来のNK細胞、又は誘導性多能性幹細胞(iPSC)-由来のT細胞などである。
【0153】
一部の実施態様において、この免疫系細胞は、リンパ球である。一部の実施態様において、このリンパ球は、Tリンパ球である。一部の実施態様において、このリンパ球は、Tリンパ球前駆体である。一部の実施態様において、このTリンパ球は、CD4+ T細胞又はCD8+ T細胞である。一部の実施態様において、このTリンパ球は、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞である。本明細書に開示された組成物及び方法に適したCD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞の非限定的例は、ナイーブCD8+ T細胞、セントラルメモリーCD8+ T細胞、エフェクターメモリーCD8+ T細胞、エフェクターCD8+ T細胞、CD8+ステムメモリーT細胞、及びバルクCD8+ T細胞を含む。一部の実施態様において、このTリンパ球は、CD4+ヘルパーTリンパ球細胞である。好適なCD4+ヘルパーTリンパ球細胞は、ナイーブCD4+ T細胞、セントラルメモリーCD4+ T細胞、エフェクターメモリーCD4+ T細胞、エフェクターCD4+ T細胞、CD4+ステムメモリーT細胞、及びバルクCD4+ T細胞を含むが、これらに限定されるものではない。
【0154】
一部の実施態様において、本明細書記載の細胞は、非-免疫系細胞である。例えば、本明細書記載のSLP-76、CAR、又はTCR分子は、対応する細胞外リガンド(複数可)/抗原(複数可)を認識する際に、そのような分子を発現する細胞の活性を調節する(例えば活性化する)方法を提供する。この意味において、好適な宿主細胞に関する特別な制限は存在しない。
【0155】
本明細書記載の細胞は、天然もしくは人工の細胞のいずれかの型及び/又は任意の起源であってよい。原則として、研究者が活性化について調べたく思ういずれかの型の細胞は、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチドの発現について使用されてよい。本明細書記載の疾患の予防又は治療のために、疾患と相関関係がある標的細胞に対し、細胞傷害性又は他の阻害性の機能(例えば、サイトカインを生成及び分泌する機能)を有する細胞が使用されてよい。例えば、T細胞などの免疫細胞は、これらのポリペプチドを発現するために使用されてよく、その理由は、これらの細胞は、腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞に対し直接の細胞傷害能を有し、並びに/又はこれらの細胞は、標的細胞(例えば腫瘍細胞)を阻害又は死滅する少なくとも1種のサイトカインを生成するからである。
【0156】
先に概説したように、本開示の一部の実施態様は、以下を含む、組換え細胞を作製する様々な方法に関連している:(a)タンパク質発現が可能な宿主細胞を提供すること;並びに、本開示の組換え核酸で、提供された宿主細胞を形質導入し、組換え細胞を作製すること。組換え細胞の作製に関する開示された方法の実施態様の非限定的例は更に、1又は複数の以下の特徴を含むことができる。一部の実施態様において、宿主細胞は、対象から得られた試料に対し実施されたロイコフェレーシスにより得られ、並びにこの細胞は、エクスビボにおいて形質導入される。一部の実施態様において、この組換え核酸は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子内に封入される。一部の実施態様において、これらの方法は更に、作製された細胞を単離及び/又は精製することを含む。従って、本明細書に開示された方法により作製されるこれらの組換え細胞もまた、本開示の範囲内である。
【0157】
多種多様な前述の宿主細胞及び種を形質転換する技術は、当該技術分野において公知であり、且つ技術文献及び科学文献において説明されている。例えば、DNAベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術により、真核細胞へ導入されることができる。細胞を形質転換又はトランスフェクションするのに適した方法は、Sambrookらの文献(2012、前掲)及び他の標準の分子生物学実験マニュアルにおいて認めることができ、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介型トランスフェクション、トランスフェクション、微量注入、陽イオン脂質-媒介型トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、スクレープローディング(scrape loading)、バリスティック導入、ヌクレオポレーション、水力学的ショック、及び感染などがある。一部の実施態様において、この核酸分子は、形質導入手法、電気穿孔手法、又は遺伝子銃手法により、宿主細胞へ形質導入される。従って本明細書に開示された少なくとも1種の組換え細胞を含む細胞培養物も、本願の範囲内である。細胞培養物の作製及び維持に適した方法及びシステムは、当該技術分野において公知である。
【0158】
一部の実施態様において、この組換え細胞は、本明細書に開示されたSLP-76ポリペプチドに対し、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する、SLP-76ポリペプチドをコードしている核酸配列を含む核酸分子を含む。一部の実施態様において、この組換え細胞は、配列番号:1、7、14、16、18、19、40、59又は60のいずれか一つに対し、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を伴うポリペプチドをコードしている核酸分子を含む。一部の実施態様において、この組換え細胞は、配列番号:20、26、33、35、37、38、42、61及び62のいずれか一つに対し、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有する配列を有する核酸分子を含む。
【0159】
関連のある局面において、本開示の一部の実施態様は、本明細書に開示された少なくとも1種の組換え細胞、及び培養培地を含む細胞培養物に関する。一般にこの培養培地は、本明細書記載の細胞培養物にとって好適な培養培地のいずれか1種であることができる。一部の実施態様において、この組換え細胞は、本明細書記載のSLP-76、CAR、又はTCRを発現する。従って本明細書に開示された少なくとも1種の組換え細胞を含む細胞培養物もまた、本願の範囲内である。細胞培養物の作製及び維持に適した方法及びシステムは、当該技術分野において公知である。
【0160】
医薬組成物
本開示のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、及び/又は細胞培養物は、医薬組成物を含む、組成物へ組み込まれ得る。そのような組成物は一般に、本明細書記載のポリペプチド、核酸、組換え細胞、及び/もしくは細胞培養物、並びに医薬として許容し得る担体を含む。従って一つの局面において、本開示のいくつかの実施態様は、健康状態、例えば増殖性疾患(例えば癌)を、治療、予防、改善、軽減又は発症を遅延するための、医薬組成物に関する。他の例証的健康状態は、例えば、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢などを含む。
【0161】
従って本開示の一局面は、医薬として許容し得る担体及び以下の1又は複数を含む、医薬組成物に関する:(a)本開示のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド;(b)本開示の核酸分子;並びに/又は、(c)本開示の組換え細胞。一部の実施態様において、本組成物は、(a)本開示の組換え核酸、及び(b)医薬として許容し得る担体を含む。一部の実施態様において、この組換え核酸は、ウイルスキャプシド又は脂質ナノ粒子内に封入される。一部の実施態様において、本組成物は、(a)本開示の組換え細胞、及び(b)医薬として許容し得る担体を含む。
【0162】
特定の実施態様において、本明細書に開示されたいくつかの実施態様に従う医薬組成物は、それを必要とする個体への投与前に、洗浄され、処理され、混合され、補充されるか、又はそうでなければ改変されることができる、細胞培養物を含む。更に、投与は、変動した投与量、時間間隔、又は反復投与であることができる。
【0163】
本明細書に提供される医薬組成物は、組成物が個体へ投与されるのを可能にする任意の形であることができる。一部の具体的実施態様において、この医薬組成物は、ヒト投与に適している。本明細書において使用される用語「医薬として許容し得る」は、連邦又は州政府の規制機関により承認されるか、或いは米国薬局方もしくは動物における、より特定するとヒトにおける使用のための他の一般に認められた薬局方に収載されることを意味する。この担体は、それと共に医薬組成物が投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又はビヒクルであることができる。食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、注射溶液を含む、液体担体として利用されることができる。好適な賦形剤は、デンプン、グルコース、乳糖、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール及び同類のものを含む。好適な医薬担体の例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。一部の実施態様において、医薬組成物は、個体への投与のために、無菌的に製剤化される。一部の実施態様において、個体はヒトである。当業者は、製剤は、投与様式に適していなければならないことを理解することができる。
【0164】
一部の実施態様において、本開示の医薬組成物は、個体への意図された投与経路に適するように、製剤化される。例えば、この医薬組成物は、非経口、腹腔内、経結腸直腸、腹腔内、及び腫瘍内投与に適するように製剤化されてよい。一部の実施態様において、この医薬組成物は、静脈内、経口、腹腔内、気管内、皮下、筋肉内、局所的、又は腫瘍内投与のために製剤化されてよい。
【0165】
組成物の使用
本明細書記載の組成物、例えば、SLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、細胞外シグナル(例えばリガンド/抗原)に応答したシステムとして、様々な状態のために使用することができる。
【0166】
本明細書記載の組成物はまた、ある種のリガンド/抗原に応答して細胞機能を操作するための活性化システムとして使用されてもよい。一部の実施態様において、CAR又はTCR分子のECD(複数可)により、特異的リガンド/抗原を又はリガンド/抗原の特異的プロファイルを感知することにより、宿主は、活性化される。そのような活性化は、宿主細胞の正常な生物学的機能を増強もしくは阻害し、及び/又は細胞機能を操作するために外因性シグナル伝達機能を提供することができる。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76組成物は、CAR又はTCR分子を介して、そのような活性化を増強することができる。
【0167】
本明細書記載の組成物はまた、ある種のリガンド/抗原に応答して細胞の機能を操作するためにも使用されてよい。一部の実施態様において、CAR又はTCR分子のECD(複数可)により、特異的リガンド/抗原を感知することにより、宿主は、活性化される。そのような活性化は、そのようなリガンド(複数可)/抗原(複数可)を発現するか、又はある種のリガンド(複数可)/抗原(複数可)により特異的に認識される、標的細胞の機能を変更するために、宿主細胞の機能を増強もしくは阻害することができる。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76組成物は、CAR又はTCR分子を介して、そのような活性化を増強することができる。例えば、ある種のリガンド(複数可)/抗原(複数可)を発現する癌細胞は、癌細胞の表面上のリガンド(複数可)/抗原(複数可)へ結合するECD、又は癌細胞上に発現されたリガンド(複数可)/抗原(複数可)へ特異的に結合する一部のリガンド(複数可)/抗原(複数可)へ結合するECDのいずれかを介して、本明細書記載のCAR分子(複数可)又はCAR分子組合せ(複数可)により認識されてよい。次に活性化された宿主細胞は、癌細胞の機能を操作することができる。例えば、本明細書記載の組成物は、癌細胞を阻害又は死滅するため(例えば、サイトカインを分泌するか又は直接死滅することにより)に、宿主細胞(例えば、T細胞などの免疫系細胞)を活性化するために使用されてよい。一部の実施態様において、そのような癌細胞は、対象由来の生体試料から得られる。一部の実施態様において、そのような癌細胞は、対象の生物学的環境(例えば、癌微小環境)内にある。一部の実施態様において、標的細胞は、疾患又は障害と相関関係がある。例証的疾患又は障害は、例えば、増殖性疾患(例えば癌)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢などを含んでよい。
【0168】
製造方法
一局面において、本開示は、本明細書記載の組換え細胞を作製する方法を提供する。本明細書記載の組成物、例えば、SLP-75、CAR、及び/又はTCRポリペプチド又は核酸は、本明細書記載の細胞へ導入されてよい。例えば、SLP-76ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドを含む組成物は、単独で、又は細胞へのT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチドとの組合せのいずれかで、細胞へ導入されてよい。
【0169】
治療方法
一局面において、本開示は、細胞においてSLP-76ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答して細胞の活性化を増強する方法を提供する。一部の実施態様において、この細胞は更に、TCR及び/又はCAR分子を含む。
【0170】
別の局面において、本開示は、細胞においてSLP-76ポリペプチド及びT細胞受容体(TCR)ポリペプチド及び/もしくはキメラ抗原受容体(CAR)ポリペプチドを過剰発現することを含む、標的抗原に応答して細胞の活性化を増強する方法を提供する。
【0171】
別の局面において、本開示は、本明細書記載の組換え細胞、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、発現ベクター、又は他の組成物の医薬として有効量を、対象へ投与することを含む、それを必要とする対象において疾患又は障害を治療する方法を提供する。本明細書記載の治療的組成物、例えば、SLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物のいずれか一つの投与は、例えば増殖性疾患(例えば癌)、悪性血液疾患、固形腫瘍、自己免疫疾患、炎症、アレルギー性疾患、感染症、老化/加齢などの関連する状態の診断、予防、及び/又は治療において使用することができる。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、増殖性疾患(例えば、白血病、神経芽細胞腫、又は骨肉腫などの、癌)などの1又は複数の健康状態を有する、有することが疑われる、又は発症する高いリスクがある個体を予防及び/又は治療する方法において使用するための療法及び治療薬に組み込まれることができる。一部の実施態様において、この個体は、臨床医の監督下の患者である。
【0172】
例証的増殖性疾患は、血管新生疾患、転移性疾患、腫瘍原性疾患、新生物疾患及び癌を含むことができるが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、増殖性疾患は、癌である。一部の実施態様において、癌は、小児癌である。一部の実施態様において、癌は、膵臓癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、中皮腫、乳癌、尿路上皮癌、肝臓癌、頭頸部癌、肉腫、子宮頸癌、胃癌、胃部癌、メラノーマ、ブドウ膜メラノーマ、胆管癌、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫、血液の癌、膀胱癌、神経芽細胞腫、悪性胸膜中皮腫、肉腫、及び膠芽細胞腫である。例証的癌型はまた、以下も含む:急性骨髄性白血病、血液免疫芽球性T細胞リンパ腫、B細胞急性リンパ芽球性白血病、スイート症候群、T細胞非ホジキンリンパ腫(ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、腸管型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫及び皮膚T細胞性リンパ腫を含む)、T細胞急性リンパ芽球性白血病、B細胞非-ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫などを含む)、ヘアリーセル白血病、ホジキンリンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、粘膜-関連リンパ組織リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、形質細胞骨髄腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、慢性骨髄増殖症候群(慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症、本態性血小板血症、真正赤血球増加症など)及び慢性リンパ球性白血病。例証的癌型はまた、以下も含む:急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、AIDS関連癌、カポジ肉腫(軟部組織の肉腫)、AIDS関連リンパ腫、原発性CNSリンパ腫、肛門癌、虫垂癌、星膠細胞種、小児脳腫瘍、非定型奇形腫/ラブドイド腫瘍、中枢神経系癌、皮膚癌(例えば基底細胞癌)、胆管癌、膀胱癌、骨癌(ユーイング肉腫、骨肉腫及び悪性線維性組織球腫を含む)、脳腫瘍、乳癌、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、カルチノイド腫瘍、心臓(心)腫瘍、髄芽腫及び他のCNS胎児性腫瘍、胚細胞腫瘍、原発性CNSリンパ腫、子宮頸癌、小児癌、胆管癌、脊索腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性新生物、結腸直腸癌、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞性リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胎児性腫瘍、髄芽腫、子宮内膜癌(子宮癌)、上衣細胞腫、食道癌、鼻腔神経芽細胞腫(頭頸部癌)、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、小児性腺外胚細胞腫瘍、眼癌、眼球内メラノーマ、網膜芽細胞腫、卵管癌、骨肉腫、胆嚢癌、胃部(胃)癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)(軟部組織肉腫)、胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、精巣癌、妊娠性絨毛性疾患、ヘアリーセル白血病、頭頸部癌、心臓腫瘍、小児肝細胞(肝)癌、組織球増殖症、ホジキンリンパ腫、下咽頭癌(頭頸部癌)、眼球内メラノーマ、島細胞腫、膵臓神経内分泌腫瘍、腎臓(腎細胞)癌、ランゲルハンス細胞組織球増加症、喉頭癌、白血病、口唇及び口腔の癌、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞、小細胞、胸膜肺芽腫、及び気管気管支腫瘍)、リンパ腫、男性乳癌、骨の悪性線維性組織球腫及び骨肉腫、メラノーマ、眼球内メラノーマ、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性癌、原発不明転移性扁平頸部癌、中部管(Midline Tract)癌腫、口腔癌、多発性内分泌腺腫瘍症、多発性骨髄腫/形質細胞新生物、菌状息肉腫(リンパ腫)、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性新生物、骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性新生物、鼻腔及び副鼻腔の癌、鼻咽腔癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺癌、口腔癌、口唇及び口腔の癌並びに口腔咽頭癌、骨肉腫、未分化多形性肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵臓神経内分泌腫瘍(島細胞腫)、乳頭腫症(小児喉頭部)、傍神経節腫、副鼻腔及び鼻腔の癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、クロム親和細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫(肺癌)、妊娠及び乳癌、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、直腸癌、再発癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫、小児横紋筋肉腫、小児血管腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌、小腸癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明扁平頸部癌、胃(胃部)癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、咽喉癌、鼻咽腔癌、口腔咽頭癌、下咽頭癌、胸腺腫及び胸腺癌腫、甲状腺癌、気管気管支腫瘍、腎盂及び尿管の移行上皮癌、尿管及び腎盂の癌腫、移行上皮癌、尿道癌、子宮癌、子宮肉腫、膣癌、血管腫瘍、外陰癌、ウイルムス腫瘍、及び他の小児腎臓腫瘍。
【0173】
一部の実施態様において、癌は、多剤耐性癌又は再発癌である。本明細書に開示された組成物及び方法は、非-転移性癌及び転移性癌の両方に適していることが、意図される。従って一部の実施態様において、癌は、非-転移性癌である。一部の別の実施態様において、癌は、転移性癌である。一部の実施態様において、対象へ投与される組成物は、対象における癌の転移を阻害する。一部の実施態様において、投与された組成物は、対象における腫瘍成長を阻害する。
【0174】
従って一局面において、本開示の一部の実施態様は、それを必要とする対象における状態の予防及び/又は治療の方法に関し、ここでこれらの方法は、以下の1又は複数を含有する組成物を対象へ投与することを含む:本開示のSLP-76、CAR、又はTCRポリペプチド、本開示の組換え核酸、本開示の組換え細胞、及び/又は本開示の医薬組成物。
【0175】
一部の実施態様において、この投与された組成物は、標的癌細胞の増殖を阻害し、及び/又は対象における癌の腫瘍成長を阻害する。例えばこの標的細胞は、その増殖が減少された場合、その病的又は病原性の挙動が軽減された場合、それが破壊もしくは死滅された場合などに、阻害されてよい。阻害は、測定された病的又は病原性の挙動の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、又は約95%の軽減を含む。一部の実施態様において、これらの方法は、本明細書に開示された組換え細胞の有効数を個体へ投与することを含み、ここでこの組換え細胞は、その組換え細胞が投与されていない対象における標的細胞の増殖及び/又は標的癌の腫瘍成長と比べ、対象における、標的癌細胞の増殖を阻害するか、及び/又は標的癌の腫瘍成長を阻害する。一部の実施態様において、標的癌細胞は、白血病癌細胞、白血病癌細胞由来の細胞、又は白血病の微小環境の細胞である。一部の実施態様において、標的癌細胞は、神経芽細胞腫細胞、神経芽細胞腫細胞由来の細胞、又は神経芽細胞腫の微小環境の細胞である。一部の実施態様において、標的癌細胞は、骨肉腫細胞、骨肉腫細胞由来の細胞、又は骨肉腫の微小環境の細胞である。
【0176】
本明細書において使用される用語「投与」及び「投与する」は、非限定的に、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び局所的投与、又はそれらの組合せを含む投与経路による、生体活性組成物又は製剤の送達を指す。この用語は、医療専門家による投与及び自己投与を含むが、これらに限定されるものではない。
【0177】
本明細書記載の組成物、例えば、SLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の投与は、免疫応答の刺激において使用することができる。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、化学療法による癌の寛解の誘導後に、又は自家もしくは同種異系の造血幹細胞移植後に、個体に投与される。一部の実施態様において、本明細書記載の組成物は、治療した対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、TNF-α、及び/又はインターロイキン-2(IL-2)の生成が、本明細書に開示された治療的組成物の一種が投与されていない対象におけるこれらの分子の生成と比べ増大することを必要とする個体に投与される。
【0178】
本明細書記載の組成物、例えば、SLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の有効量は、例えば腫瘍退縮などの意図された目標を基に決定される。例えば存在する癌が治療される場合、投与されるべき本明細書に開示された組成物の量は、その組成物の投与が癌の予防に関する場合よりも、多いことがある。当業者は、この開示を考慮し、投与される組成物の量及び投与の頻度を決定することができるであろう。投与される量はまた、治療の回数及び投与量の両方に従い、治療される個体、個体の状態、及び望まれる防御によっても左右される。この組成物の正確な量はまた、開業医の判断によっても左右され、並びに特に各個人に左右される。投与頻度は、開業医の判断に応じて、1~2日から、2~6時間、6~10時間、1~2週間まで又はより長い範囲であることができる。
【0179】
一部の実施態様において、投与は、ボーラス注射による。一部の実施態様において、投与は、静脈内注入による。一部の実施態様において、本明細書記載の組換え細胞を含有する組成物は、1日当たり約100万個細胞/kg体重から、1日当たり約1億個細胞/kg体重の用量で、対象へ投与される。一部の実施態様において、本明細書に開示された組換え細胞を含有する組成物は、1日当たり約1000個細胞/kgから、1億個細胞/kg体重の用量で投与される。一部の実施態様において、これらの治療薬は、単回投与で投与される。一部の実施態様において、治療薬は、反復投与で投与される(例えば、1週間以上について毎週1回以上)。
【0180】
当業者は、本開示の組成物を個体へ投与する技術を熟知しているであろう。更に、当業者は、個体への投与前に、これらの組成物の調製に必要な技術及び医薬物質を熟知しているであろう。
【0181】
本開示の特定の実施態様において、本開示の組成物は、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物の1又は複数を含む、水性組成物を含む。本開示の水性組成物は、医薬として許容し得る担体又は水性媒体中に、本明細書に開示された組成物の有効量を含む。従って、本開示の「医薬調製品」又は「医薬組成物」は、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤及び同類のもののいずれか又は全てを含むことができる。医薬活性物質に関するそのような媒体及び物質の使用は、当該技術分野において周知である。任意の常用の媒体又は物質が本明細書に開示された組換え細胞と不適合である限りを除き、医薬組成物の製造におけるその使用が、意図される。補充的活性成分もまた、これらの組成物へ配合されることができる。ヒト投与に関して、調製品は、FDA生物製剤評価センターにより要求される、無菌性、発熱原性、全般的安全性、及び純度標準に合致しなければならない。
【0182】
当業者は、生物学的物質は、適切ならば、望ましくない小分子量の分子を除去するために広範に透析され、並びに/又は所望のビヒクルへのより容易な製剤化のために凍結乾燥されることを理解するであろう。本明細書記載の組成物、例えば、SLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は次に一般に、非経口的投与などの、任意の公知の経路による投与のために、製剤化され得る。投与されるべき組成物の量の決定は、当業者により決定されることができ、且つ一部は癌の程度及び重症度によって、並びにこの組換え細胞が存在する癌の治療又は癌の予防のために投与されるかどうかにより、左右され得る。本開示のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物を含有する組成物の調製は、本開示を考慮し、当業者に公知であり得る。
【0183】
製剤化時に、本開示の組成物は、用量処方に適合可能な様式で、及び治療的に有効な量で、投与され得る。本組成物は、先に説明された注射溶液の型など、様々な剤形で投与され得る。
【0184】
一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、対応するT細胞における、又は本明細書に開示された治療的組成物の一種を投与されていない対象に比べ、治療された対象における、T細胞消耗を克服するために使用されることができる。一部の実施態様において、本明細書記載のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物は、本明細書に開示された治療的組成物の一種を投与されていない対象におけるこれらの分子の生成に比べ、治療された対象におけるCAR T細胞の増殖及び/又は死滅能を刺激するために使用されることができる。インターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、及び/又はインターロイキン-2(IL-2)の生成は、本明細書に開示された治療的組成物の一種を投与されていない対象におけるインターフェロンガンマ(IFNγ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、及び/又はインターロイキン-2(IL-2)の生成に比べ、最大約20倍の、例えば約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、もしくは20倍以上のいずれかを生成するよう刺激され得る。
【0185】
組換え細胞の対象への投与
一部の実施態様において、本開示の方法は、本明細書に提供される組換え細胞の有効な量又は数を、それを必要とする対象へ投与することに関与する。この投与工程は、当該技術分野における内植送達の任意の方法を使用し達成され得る。例えばこれらの組換え細胞は、対象の血流に直接注入されるか、又はそうでなく対象へ投与されることができる。
【0186】
一部の実施態様において、本明細書に開示された方法は、所望の効果(複数可)が生じるように、所望の部位で導入された細胞の少なくとも部分的局在化を生じる方法又は経路により、組換え細胞を個体へ、投与することを含み、この用語は、「導入する」、「内植する」及び「移植する」と互換的に使用される。これらの組換え細胞又はそれらの分化した後代は、そこで投与された細胞又は細胞の成分の少なくとも一部は生存し続ける個体における所望の位置への送達を生じるいずれかの好適な経路により、投与され得る。対象への投与後の細胞の生存の期間は、数時間、例えば、24時間、数日と短く、長くとも数年、又は更にはその個体の一生、すなわち長期生着(engraftment)でさえあり得る。
【0187】
一部の実施態様において、方法又は経路による、組換え細胞組成物(例えば、本明細書記載の任意の細胞に従い複数の組換え細胞を含む組成物)の対象への送達は、この細胞組成物の所望の部位での少なくとも部分的局在化を生じる。投与様式は、例えば、注射、注入、及び点滴を含む。「注射」は、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊髄内、脳脊髄液内、及び胸骨内の注射及び注入を含むが、これらに限定されるものではない。一部の実施態様において、経路は、静脈内である。細胞の送達に関して、注射又は注入による送達は、投与の標準様式である。
【0188】
一部の実施態様において、これらの組換え細胞は、例えば、注入又は注射により、全身に投与される。
【0189】
キット
本明細書記載の方法の実践のための様々なキットも、本明細書に提供される。特に本開示の一部の実施態様は、対象における状態の診断のためのキットを提供する。いくつかの他の実施態様は、それを必要とする対象における状態の予防のためのキットに関する。いくつかの他の実施態様は、それを必要とする対象における状態を治療する方法のためのキットに関する。例えば一部の実施態様において、本明細書に提供され且つ記載された1又は複数のSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、組換え核酸、遺伝子操作された細胞、又は医薬組成物、並びにこれらの製造及び使用に関する書面による指示を含むキットが、本明細書に提供される。
【0190】
一部の実施態様において、本開示のキットは更に、提供されたSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、組換え核酸、遺伝子操作された細胞、又は医薬組成物のいずれか一つの個体への投与に有用な1又は複数の手段を含む。例えば一部の実施態様において、本開示のキットは更に、提供されたSLP-76、CAR、及び/又はTCRポリペプチド、組換え核酸、遺伝子操作された細胞、又は医薬組成物のいずれか一つを個体へ投与するために使用される、1又は複数の注射器(予め充填された注射器を含む)及び/又はカテーテル(予め充填された注射器を含む)を含む。一部の実施態様において、キットは、望ましい目的のため、例えば、それを必要とする対象における状態を診断、予防、又は治療するために、他のキットの構成品と同時に又は連続して投与されることができる1又は複数の追加の治療薬を有することができる。
【0191】
一部の実施態様において、キットは更に、本明細書に開示された方法を実践するためにキットの構成品を使用するための指示を含むことができる。
【0192】
本明細書に引用されたいずれの参考文献も、先行技術を構成することを承認するものではない。これらの参考文献の考察は、それらの著者が主張するものに言及し、且つ本発明者らは引用された文書の正確さ及び適切性に意義を申し立てる権利を保有している。科学雑誌の記事、特許文献、及びテキストを含む多くの情報源が、本明細書において言及されているが;この言及は、これらの文献のいずれかが、当該技術分野における共通の一般的知識の一部を形成することの承認を構成しないことは、明確に理解され得る。
【0193】
本明細書に与えられた全般的方法の考察は、例証を目的とすることのみ意図されている。他の代替の方法及び代替品は、本開示を考察し、当業者には明らかであることができ、且つ本願の精神及び範囲内に含まれる。
【実施例
【0194】
実施例
追加の実施態様が、下記実施例において、更に詳細に開示され、これらは例証のために提供され且つ本開示又は請求項の範囲を限定することは決して意図しない。
【0195】
実施例1
近位シグナル伝達分子によるCAR T細胞活性化の増強
この実施例は、過剰発現された場合に、CAR T細胞活性化を増強する近位シグナル伝達分子の機能を例証するために実施された実験を説明する。異なる細胞外リガンドを認識する例証的CAR分子を、遺伝子操作し、且つこれらの分子及び様々な近位シグナル伝達分子を発現する細胞を活性化するそれらの機能について試験した。
【0196】
近位シグナル伝達分子を、それらのいずれが、CAR分子によるT細胞活性化を増強するのに十分であるかどうかを調べるために試験した。scFv(例えばCD19又はHER2を認識する)、CD8又はCD28ヒンジ-膜貫通ドメイン(H/TM)、及び4-1BB共刺激ドメインを、CD3ゼータドメインへ直接連結することにより、CAR構築体を調製した。これらの遺伝子操作されたCARを、初代T細胞において近位シグナル伝達分子の構築体と共に、共発現した。CD19又はHER2抗原を発現する腫瘍細胞の存在下、これらのT細胞によるサイトカイン生成を、測定し且つ比較した。図1は、T細胞におけるCAR分子の発現を表している、CD19(上部左側パネル)又はHER2(上部右側パネル)などの、各CAR分子の細胞外リガンド結合ドメインを決定する、FACSヒストグラムを示している。CD19 CAR分子を発現するT細胞が、CD19を高密度で発現する野生型NALM6細胞と共にインキュベーションされる場合、又はHER2 CAR分子を発現するT細胞が、高密度HER2を発現するNALM6細胞と共にインキュベーションされる場合、これらのCAR分子は、対応するT細胞を活性化し、サイトカイン(例えばIL-2)を生成する。図1下側パネルに示されるように、CAR構築体のいずれかによるそのような活性化(IL-2生成レベルにより表される)は、T細胞におけるSLP-76(例えば配列番号:7)の過剰発現によってのみ増強され、LAT(例えば配列番号:8)又はLCK(例えば配列番号:9)などの、他の近位シグナル伝達分子によっては増強されない。
【0197】
現在のCAR T療法の一つの制限は、腫瘍は、通常CAR T細胞上のCAR分子による認識のための標的抗原として使用される発現された腫瘍抗原の量をダウンレギュレーションすることにより、CAR T細胞を回避することができることである。CAR T細胞活性は、抗原密度が低い場合に、制限されることがある。次に先の共発現システムを、低い抗原密度の実験設定下で試験した。具体的には、CD19 CAR分子を発現するT細胞を、SLP-76(配列番号:7)の過剰発現を伴う又は伴わずに、野生型NALM6細胞又は細胞表面に低密度のCD19を発現するNALM6細胞と共にインキュベーションした。T細胞の活性化は、先のようにIL-2生成により測定した。図2に示したように、SLP-76(配列番号:7;細胞膜に結合していない)の過剰発現は、野生型NALM6細胞のみに応答したCD19 CAR分子を介して、T細胞活性化を増強したが、低い抗原密度の細胞では増強しなかった。
【0198】
ほとんどの近位シグナル伝達分子は、サイトゾルであり、且つ膜貫通ドメインを有さない。低い抗原密度に応答してCAR T活性を増強するSLP-76の機能を改善するために、膜結合型構築体を、調製し且つ試験した。一つの例証的構築体(VSV-G-CD8TM-SLP-76;配列番号:16)は、SLP-76のN-末端にコンジュゲートされたCD8ヒンジ-膜貫通(H/TM)ドメインに加え、FACSによる容易な検出のための短い細胞外タグ(VSV-Gポリペプチド)を含む。類似の膜結合型LCK構築体(VSV-G-CD8TM-LCK;配列番号:17)を、対照として調製した。図1及び2において示したサイトゾルSLP-76(配列番号:7)と比べ、例証的膜結合型SLP-76は、単に野生型NALM6細胞(これは高密度のCD19を発現する)に応答してT細胞活性を更に増強したのみではなく、標的NALM6細胞上の低密度の抗原にも応答してT細胞活性を増強した(図3A及び3B)。T細胞を活性化又は刺激するためにCD19 CARの細胞外ドメインを認識する抗イディオタイプ抗体を使用し、そのような抗体はより少ない量で、膜結合型SLP-76を過剰発現するT細胞を活性化するのに十分であった(図3C)。これらのデータは、膜結合型SLP-76の過剰発現は、CAR T細胞活性化閾値を低下することを示している。
【0199】
HER2-標的化するCAR分子(HER2-CD28TM-BBZ)を発現するT細胞を用いる実験も、行った。図3A-3Cと同様に、膜結合型SLP-76(配列番号:16)は、高レベルのHER2を発現する野生型NALM6細胞又はHER2を発現する野生型143B骨肉腫細胞に応答してT細胞活性を更に増強するのみではなく、また低い抗原密度又は超低抗原密度を有する標的細胞のクローンにも応答してT細胞活性を増強した(図4A及び4B)。プレートを、組換えHer2抗原でコートし、並びにより少ない量でコートされた抗原は、膜結合型SLP-76が過剰発現される場合に、T細胞を活性化するのに十分であった(図4C)。
【0200】
別の実験において、T細胞を、遊離ZAP-70構築体(ZAP-70-2A-tNGFR、配列番号:44)、遊離PLCγ1(別名PLCg1又はPLCG)構築体(PLCg1-2A-tNGFR、配列番号:48)、膜結合型ZAP-70構築体[VSV-G-CD8TM-ZAP-70 KIDB(255-600)、ZAP-70インタードメインB及びキナーゼドメインの断片を含む;配列番号:46]、膜結合型PLCγ1構築体(VSV-G-CD8TM-PLCg1、配列番号:50)、又は先に説明した膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)を伴い又は伴わずに、例証的CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)を過剰発現するように形質導入した(図13A)。図13Bに示したように、遊離もしくは膜結合型のZAP-70もしくはPLCγ1構築体ではなく、膜結合型SLP-76のみ、野生型NALM-6細胞と接触させた場合に、CD19-標的化するCAR構築体を発現するT細胞によるサイトカイン(例えば、IL-2及びIFNγ)生成を、有意に増加した。
【0201】
実施例2
膜結合型SLP-76は、SLP-76又はCAR構造とは無関係にCAR T活性を増強する
この実施例は、様々なCAR分子により、CAR T活性化を増強する膜結合型SLP-76の能力を確認するために実施された実験を説明する。
【0202】
一つの例証的CAR構築体は、CD19を認識するための細胞外ドメイン、CD28膜貫通ドメイン及び細胞内領域、並びにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む(“CD19-CD28TM-CD28Z”又は“CD19-28Z”)。そのようなCAR構築体を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)の過剰発現を伴う又は伴わずに(図5A)、様々な腫瘍細胞と共にインキュベーションした。IL-2生成レベルを、腫瘍細胞とのインキュベーション後、これらのT細胞に関してELISAにより測定し、これは、膜結合型SLP-76は、通常の抗原密度又は低い抗原密度のいずれかに応答してT細胞活性を有意に増強したことを示している(図5B)。細胞傷害指数もまた、低い抗原密度で腫瘍細胞を死滅するためのT細胞活性化を増強する膜結合型SLP-76のそのような能力を確認した(図5C)。インビボにおける野生型NALM6ストレス試験モデルにおいて、膜結合型SLP-76は、CAR T細胞において発現される場合、膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞による治療と比べ、特に治療後14日で、腫瘍組織量を有意に低下した(図5D及び5F)。それに対応して、膜結合型SLP-76は、CAR T細胞の機能を有意に増強し、動物生存率を増大した(図5E)。
【0203】
同様の実験を、CD22を認識する細胞外ドメイン、CD8膜貫通ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、別の例証的CAR構築体(“CD22-CD8TM-BBZ”)を用いて行った。CD22のダウンレギュレーションは、患者におけるCD22 CAR T細胞療法からの抗原回避の既に知られた機序である(Fryら、Nature Medicine, 2017)。そのようなCAR構築体を発現するT細胞(図6A)を、膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)の過剰発現を伴う又は伴わずに、腫瘍細胞と共にインキュベーションした。IL-2生成レベルを、腫瘍細胞とのインキュベーション後に、これらのT細胞について、ELISAにより測定し、膜結合型SLP-76は、低い抗原密度に応答してT細胞活性を有意に増強したことを示している(図6B)。先に説明したような組換え抗原刺激アッセイにより、組換えCD22を、標的抗原として使用し、T細胞を活性化した。より少ない量でコートされたそのような抗原は、膜結合型SLP-76が過剰発現される場合に、T細胞を活性化するのに十分であった(図6C)。インビボにおけるCD22低NALM6モデルにおいて、膜結合型SLP-76は、CAR T細胞上に発現される場合に、膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞と比べ、腫瘍組織量を有意に減少した(例えば、図6Dに示した治療の22日後)(図6D-6F)。
【0204】
同様の実験を、B7-H3を認識する細胞外ドメイン、CD28膜貫通ドメイン、4-1BB細胞内シグナル伝達ドメイン、及びCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む、別の例証的CAR構築体(“B7-H3-CD28TM-BBZ”)を用いて行った。そのようなCAR構築体を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)の過剰発現を伴う又は伴わずに(図7A)、腫瘍細胞と共にインキュベーションした。細胞傷害指数を、治療後の生存標的腫瘍細胞(神経芽細胞腫細胞株CHLA-255、これは低密度のB7-H3を発現する)を検出することにより、計算し、これは膜結合型SLP-76は、B7-H3-CD28TM-BBZを発現するT細胞の活性を有意に増強し、標的腫瘍細胞を阻害又は死滅することを示している(図7B)。インビボにおけるCHLA-255(これは低密度のB7-H3を発現する)転移性モデルにおいて、膜結合型SLP-76は、CAR T細胞上で発現される場合に、実験期間を通じて腫瘍組織量を有意に減少したのに対し、膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞は、治療の7~14日後の腫瘍組織量の増加に繋がった(図7C)。結果として、膜結合型SLP-76を過剰発現するCAR T細胞で治療した動物は、100日より長く生存し、これは膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞で治療した動物よりもはるかに長かった(図7D)。
【0205】
従って、膜結合型SLP-76のCAR T活性を増強する能力は、特定のCAR構築体に限定されない。
【0206】
異なる近位シグナル伝達分子を有するCAR構築体を更に、膜結合型SLP-76の機能について試験するために使用した。例えば、先に説明したCD3ゼータシグナル伝達ドメインを有するCAR分子ではなく、細胞間シグナル伝達ドメインとしてZAP70を含むように、例証的CAR構築体は作製した(CD19-CD28TM-ZAP70)。そのようなCD19-標的化するCAR分子を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)の過剰発現を伴う又は伴わずに(図8A)、腫瘍細胞と共にインキュベーションした。IL-2生成レベルを、腫瘍細胞とのインキュベーション後のこれらのT細胞に関して、ELISAにより測定し、これは膜結合型SLP-76は、このCAR分子を介して、T細胞活性を有意に増強したことを示している(図8B)。インビボにおけるNALM6異種移植モデルにおいて、膜結合型SLP-76は、CAR T細胞上に発現される場合、膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞と比べ、腫瘍組織量を有意に低下した(図8C)。結果として、膜結合型SLP-76を過剰発現するCAR T細胞で治療した動物は、膜結合型SLP-76を発現しないCAR T細胞で治療した動物よりもより高い生存率を有した(図8D)。
【0207】
同様の実験を、高親和性(HA)GD2-標的化する細胞外ドメイン、CD28膜貫通及び共刺激ドメイン、並びにCD3ゼータシグナル伝達ドメインを含む例証的CAR構築体(“HA 28Z”)を発現するT細胞を使用し、異なる膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに行った。例えば、例証的膜結合型SLP-76構築体は、CD28膜貫通ドメインを含む(配列番号:19;“CD28TM SLP-76”)。別の例証的膜結合型SLP-76構築体は、CD8膜貫通ドメインを含む(配列番号:18;“CD8TM SLP-76”)。そのような高親和性GD2-標的化するCAR分子を発現するT細胞を、例証的膜結合型SLP-76構築体の過剰発現を伴う又は伴わずに(図9A)、腫瘍細胞と共にインキュベーションした。IL-2生成レベルを、様々な腫瘍細胞とのインキュベーション後のこれらのT細胞に関して、ELISAにより測定し、これは膜結合型SLP-76は、膜結合型SLP-76構築体において利用される膜貫通ドメインとは関係なく、CAR T細胞活性を有意に増強したことを示している(図9B)。
【0208】
この実施例は、例えそのscFv(抗原特異性)、シグナル伝達ドメイン(共刺激もしくはその他)、又は膜貫通ドメインが、CAR構築体に含まれるか、もしくはその膜貫通ドメインが、膜結合型SLP-76構築体において利用されるとしても、膜結合型SLP-76は、CARの活性を増強することを明らかにしている。
【0209】
実施例3
膜結合型SLP-76の更なる利点
この実施例は、膜結合型SLP-76のT細胞消耗に対する作用を試験するため、並びに報告されたSLP-76融合タンパク質へのその利点を示すために実施された実験を説明している。
【0210】
TCR又はCARを発現するT細胞の持続性の活性化は、通常慢性的な感染症又は腫瘍の進行に起因する、消耗した表現型へのゆるやかな発達に繋がり得る。先の実施例において説明した様々なCAR構築体を、過剰発現された場合の、T細胞消耗に対するそれらの作用について試験した。具体的には、FACS分析を行い、例えばTIM-3、PD-1、及びLAG-3を含むT細胞の表面上に発現されたT細胞消耗バイオマーカーを検出する一方で、そのようなバイオマーカーの発現レベルは、T細胞消耗の程度と相関関係があった。図10に示したように、先の実施例において説明したB7-H3-CD28TM-BBZ CAR構築体の過剰発現は、3種のバイオマーカー全ての中程度の発現を誘導し、これはB7-H3-CD28TM-BBZ CAR構築体は、中程度のT細胞消耗を誘導し得ることを示している。驚くべきことに、膜結合型SLP-76(CD19-CD8TM-SLP-76、配列番号:40)は、CAR T活性を増幅し、且つ活性化閾値を低下することは可能であるが、これは、膜結合型SLP-76の共発現は、バイオマーカー発現レベルを増加しなかったので、CAR T細胞消耗は悪化しなかった(図10)。図11は、HA 28Z CAR構築体の過剰発現による、より重度のCAR T消耗を示している。CAR T細胞における膜結合型SLP-76(Her2-CD8H/TM-SLP-76、配列番号:18)の過剰発現は、いずれも細胞消耗を悪化しなかった(図11)。従ってT細胞消耗の問題に関して、膜結合型SLP-76の他のCAR T療法をブーストするための使用は安全である。
【0211】
LAT/SLP-76キメラタンパク質(SLP-76融合したLAT膜貫通)は、ノックアウトされた内因性LAT遺伝子を有するT細胞においてTCRシグナル伝達を回復する(Boerthら、J. Exp. Med. 2000, 192:1047-1058)。そのようなキメラを、先の実施例において説明した膜結合型SLP-76構築体と比較した。先に説明したCD19 28Z CAR構築体を発現するT細胞、膜結合型SLP-76構築体(VSV-G-CD8TM-SLP-76、配列番号:16)又はLAT/SLP-76キメラ構築体を過剰発現するT細胞を、腫瘍細胞と共にインキュベーションした(図12A)。IL-2生成レベルを、腫瘍細胞とのインキュベーション後、これらのT細胞に関してELISAにより測定し、これは膜結合型SLP-76は、キメラよりも、高い抗原密度に応答してT細胞活性を増強するより高い能力を有することを示した(図12B、WT N6)。より重要なことに、膜結合型SLP-76は、低い抗原密度に応答してCAR T活性を増強することができるが、キメラはできない(図12B、クローンF N6)。従って膜結合型SLP-76は、特に抗原密度が低い場合に、LAT/SLP-76キメラに勝る利点を有し、これはCAR又はTCRによる現在のT細胞療法を回避するために腫瘍細胞により使用される。
【0212】
実施例4
様々な細胞又は動物モデルにおける膜結合型SLP-76の更なる研究
この実施例は、様々な細胞もしくは動物モデルにおけるT細胞活性化及び機能を増強する膜結合型SLP-76の作用を試験するために実施された実験を説明している。
【0213】
例証的実験において、T細胞を、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)-標的化するCAR構築体(“ALK-CD8TM-BBZ”)を過剰発現するように、形質導入した。このALK-標的化するCAR構築体は、T細胞の表面上に貧弱に(低レベルで)発現し、その治療上の有用性及びT細胞を完全に活性化するその能力を制限することが、先に認められた(Walkerら、Molecular Therapy, 2017: 25(9):2189-2201; PMID 28676342)。ALK-CD8TM-BBZを、膜結合型SLP-76 構築体を伴う又は伴わずに、T細胞上に発現させ(図14A-14B)、次に異なるレベルのALK抗原を発現するNALM-6癌細胞と共培養した(図14C)。この膜結合型SLP-76構築体は、高レベルのALKを発現するNALM-6細胞と接触された場合に、T細胞によるIL-2及びIFNγの両方の生成を有意に増加し、並びに中又は低レベルのALKを発現するNALM-6細胞と接触された場合には、T細胞によるIFNγの生成は有意に増加するが、IL-2の生成は増加しなかった(図14D)。標的NALM-6細胞に対するT細胞の細胞傷害性を、測定した。図14Eは、この膜結合型SLP-76構築体は、異なるALK密度を伴う標的NALM-6細胞の3つの系統(line)全てに対し、T細胞の細胞傷害性を有意に増大したことを、図示している。
【0214】
別の例証的実験において、NY-ESO-1トランスジェニックTCR構築体(A2+/NY-ESO-1)を発現するように遺伝子操作されたT細胞を、膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに、形質導入し(図15A)、且つ抗原陽性腫瘍細胞(A2+/NY-ESO-1+Nalm-6又はA375)又は抗原陰性腫瘍細胞Mel888のいずれかと共培養した。同様に、膜結合型SLP-76構築体は、抗原陽性NALM-6又はA375細胞と接触された場合、T細胞によるIL-2生成は有意に増加したが、抗原陰性Mel888細胞との場合は、増加しなかった(図15B)。膜結合型SLP-76構築体はまた、抗原陽性NALM-6細胞と共培養した場合に、T細胞の細胞傷害性も増大した(図15C)。
【0215】
別の例証的実験において、B-細胞成熟抗原(BCMA)-標的化するCAR構築体を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに、形質導入し(図16A)、且つMM1.S腫瘍細胞と共培養した。同様に、膜結合型SLP-76構築体は、T細胞によるサイトカイン(例えば、IL-2及びIFNγ)生成を有意に増加した(図16B)。ルシフェラーゼ-発現するMM1.S腫瘍細胞が接種され、且つこれらのT細胞により治療されたマウスにおいて、膜結合型SLP-76構築体は、腫瘍成長を制御するT細胞の能力を増大した(図16C)。
【0216】
別の例証的実験において、B7-H3-標的化するCAR構築体(“B7-H3-CD28TM-BBZ”)を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに形質導入した(図17A)。ルシフェラーゼ-発現するびまん性内在脳橋グリオーマ6異種移植片(DIPG-6)が接種され、且つこれらのT細胞により治療されたマウスにおいて、膜結合型SLP-76構築体は、腫瘍成長を制御するT細胞の能力を増大した(図17B)。
【0217】
別の例証的実験において、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-CD28Z”)を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに形質導入した(図18A)。B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)モデルにおいて、マウスに、ルシフェラーゼ-発現する野生型Nalm-6細胞を接種し、これらのT細胞により治療した。膜結合型SLP-76構築体は、脾臓又は骨髄のいずれかにおけるT細胞増殖を増加した(図18B)。
【0218】
別の例証的実験において、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD28TM-BBZ”)を発現するT細胞を、膜結合型SLP-76構築体を伴う又は伴わずに形質導入した(図19A)。ストレス試験モデル(CAR T細胞の分割治効量)において、マウスに、ルシフェラーゼ-発現する白血病異種移植片(WT Nalm-6)を接種し、これらのT細胞により治療した。膜結合型SLP-76構築体は、腫瘍成長を制御するT細胞の能力を増大し(図19B)、マウス生存を改善した(図19C)。
【0219】
更なる実験を、SLP-76変異体の機能を試験するために実施した。例証的実験において、T細胞を、CD19-標的化するCAR構築体(“CD19-CD8TM-BBZ”)を単独で、又はこれを本明細書記載の膜結合型SLP-76構築体(配列番号:16)もしくはK30R置換を有する膜結合型SLP-76変異(配列番号:60)と一緒に発現するように、形質導入した(図20A-20B)。このK30R変異は、SLP-76のユビキチン化ダウンレギュレーションを減少し、従って下流のT細胞活性化を増強することが可能であることが先に報告されていた。生じるT細胞を、低レベルのCD19(標的抗原)を発現するNALM-6腫瘍細胞と共にインキュベーションする一方で、これらのT細胞により生成されたIL-2のレベルを測定した。図20Cに示したように、膜結合型SLP-76 K30R変異体は、腫瘍細胞上の標的抗原に応答して、T細胞活性を増強し(IL-2発現レベルで示された)、腫瘍細胞上の低いレベルの標的抗原を伴うこのシナリオにおいて、膜結合型SLP-76野生型構築体よりも、より高い能力を有した。
【0220】
配列表
下記表は、様々な分子の例証的配列のリストである。
【表1-1】
【表1-2】
図1
図1-1】
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図10
図10-1】
図10-2】
図11
図11-1】
図11-2】
図12A
図12A-1】
図12A-2】
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
【配列表】
2024512703000001.app
【国際調査報告】