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特表2024-512707低速早期着火事象を低減するための燃料添加剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】低速早期着火事象を低減するための燃料添加剤
(51)【国際特許分類】
   C10M 133/08 20060101AFI20240312BHJP
   C10M 141/06 20060101ALI20240312BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 133/38 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 129/40 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 133/40 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20240312BHJP
   C10M 133/22 20060101ALN20240312BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20240312BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C10M133/08
C10M141/06
C10M133/16
C10M133/38
C10M129/40
C10M133/40
C10M129/10
C10M129/54
C10M133/22
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560504
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 IB2022052717
(87)【国際公開番号】W WO2022208251
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/168,446
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】503148834
【氏名又は名称】シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シー、ジウン - レ
(72)【発明者】
【氏名】クォ、チャン - ハオ
(72)【発明者】
【氏名】レーパー、チャールズ ポール
(72)【発明者】
【氏名】スムート、ジャネル
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB24C
4H104BE04C
4H104BE11C
4H104BE16C
4H104BE27C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA20
4H104PA44
(57)【要約】
火花点火式内燃機関における低速早期着火事象の予防方法または低減方法を提供する。この方法は、
【化I】

(I)によって示される構造を有する第1の添加剤またはその塩を含む潤滑剤組成物を機関に供給することを含む。R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、またはヒドロキシル基である。R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基であるか、あるいはR及びRは環状基の一部である。Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基である。最後に、pは0~2であり、nは1~5であり、mは0~2であり、p+n+mは6未満である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花点火式内燃機関における低速早期着火事象の予防方法または低減方法であって、前記方法が:
前記機関に、
【化1】

によって示される構造を有する第1の添加剤またはその塩を含む潤滑剤組成物を供給することを含み、
式中、R及びRが、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
及びRが、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基であるか、またはR及びRが環状基の一部であり、
が、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
pが0~2であり、nが1~5であり、mが0~2であり、p+n+mが6未満である、
前記予防方法または低減方法。
【請求項2】
前記カルボキシル基がカルボン酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記環状基が、1つ以上の窒素または1つ以上の酸素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の添加剤が、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-(tert-ブチル)-2,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノール、または2-(tert-ブチル)-4,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノールである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第2の添加剤またはその塩をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の添加剤が、酸、フェノール、1,3ジカルボニル、ヒドロキシアミド、抗酸化剤、サリチル酸塩、またはアミジンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の添加剤が、2-エチルヘキサン酸、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
及びRの両方が水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
及びR4のうちの少なくとも1つがメチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
nが、2または3である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
火花点火式内燃機関における低速早期着火事象の予防方法または低減方法であって、前記方法が:
前記機関に、
【化1】

によって示される構造を有するフェノール性アミンまたはその塩であって、
式中、R、及びRが、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
及びRが、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基であるか、またはR及びRが環状基の一部であり、
が、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、
pが0~2であり、nが1~5であり、mが0~2であり、p+n+mが6未満である、前記フェノール性アミンまたはその塩、
ならびに場合により、第2の添加剤またはその塩を含む潤滑剤組成物を潤滑させることを含み、前記第2の添加剤が、酸、フェノール、1,3ジカルボニル、ヒドロキシアミド、抗酸化剤、サリチル酸塩、またはアミジンである、
前記予防方法または低減方法。
【請求項12】
前記カルボキシル基がカルボン酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記環状基が、1つ以上の窒素または1つ以上の酸素を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記フェノール性アミンが、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール、4-(tert-ブチル)-2,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノール、または2-(tert-ブチル)-4,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノールである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記第2の添加剤が、2-エチルヘキサン酸、または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エンである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
及びRの両方が水素である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
及びRのうちの少なくとも1つがメチル基である、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
nが、2または3である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直噴エンジン用の燃料添加剤及び燃料組成物、ならびに燃料添加剤及び燃料組成物を使用した低速早期着火事象の予防方法または低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ターボチャージャまたは過給エンジン(すなわち、昇圧内燃機関)は、確率的早期着火または低速早期着火(すなわち「LSPI」)として知られている異常燃焼現象を示し得る。LSPIは、高い筒内圧力及び高度な燃焼フェージングを引き起こし得、これによって激しいノック強度が生じ得る。最悪の場合のシナリオでは、LSPIは壊滅的なエンジン損傷を引き起こし得る。しかしながら、LSPI事象は散発的かつ制御されない方法でのみ発生するため、この現象の原因を特定し、それを抑制する解決策を開発することは困難である。
【0003】
LSPIの1つの可能な説明は、エンジンが低速で動作しており、かつ圧縮行程時間が最も長い期間において、高圧下でピストン間隙からエンジン燃焼室に入るエンジンオイル液滴の自動点火によって少なくとも部分的に事象が引き起こされるというものである。
【0004】
LSPIへの対処を企図する新規エンジン技術、例えば電子制御センサ及びノックセンサの積極的な研究開発が存在している一方で、LSPIを低減または排除可能な燃料及び/または潤滑油組成物も必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、火花点火式内燃機関における低速早期着火事象の予防方法または低減方法を提供し、方法は:
【化1】

によって示される構造を有する第1の添加剤またはその塩を含む潤滑剤組成物を機関に供給することを含み、式中、R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、またはヒドロキシル基であり、R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基であるか、あるいはR及びRは環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pは0~2であり、nは1~5であり、mは0~2であり、p+n+mは6未満である。
【0006】
別の態様では、火花点火式内燃機関における低速早期着火事象の予防方法または低減方法を提供し、方法は:
【化1】

によって示される構造を有するフェノール性アミンまたはその塩であって、式中、R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、またはヒドロキシル基であり、R及びRは、独立して、H、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エステル、アミド、ケトン、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基であるか、あるいはR及びRは環状基の一部であり、Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基であり、pが0~2であり、nが1~5であり、mが0~2であり、p+n+mが6未満である、前記フェノール性アミンまたはその塩、ならびに場合により、第2の添加剤またはその塩を含む潤滑剤組成物で機関を潤滑することを含み、第2の添加剤は、酸、フェノール、1,3ジカルボニル、ヒドロキシアミド、抗酸化剤、サリチル酸塩、またはアミジンである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
序文
本明細書において、以下の単語及び表現は、使用される場合、及び使用されるとき、以下に付与される意味を有する。
【0008】
「ガソリン」または「ガソリン沸点範囲成分」は、少なくとも主にC-C12炭化水素を含有する組成物を指す。一実施形態では、ガソリンまたはガソリン沸点範囲成分は、さらに、少なくとも大部分がC-C12炭化水素を含有し、さらに約100°F(37.8℃)~約400°F(204℃)の沸点範囲を有する組成物を指すように定義される。代替の実施形態では、ガソリンまたはガソリン沸点範囲成分は、少なくとも大部分がC-C12炭化水素を含有し、約100°F(37.8℃)~約400°F(204℃)の沸点範囲を有する組成物を指すように定義され、さらにASTM D4814に適合するように定義される。
【0009】
用語「油溶性」とは、所与の添加剤に関して、潤滑粘性油に、溶解、分散または懸濁させることによって、その所望の水準の活性または性能をもたらすのに必要とされる量を組み込むことができることを意味する。通常、これは、少なくとも0.001重量%の添加剤を潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。用語「燃料可溶性」とは、燃料中に溶解、分散または懸濁させた添加剤についての類似の表現である。
【0010】
「少量」とは、記載される添加剤に関して、及び組成物の総重量に関して表現され、添加剤の活性成分として計算される、組成物の50重量%未満を意味する。
【0011】
「エンジン」または「燃焼機関」とは、燃焼室内で燃料の燃焼が生じる熱機関である。「内燃機関」とは、制限された空間(「燃焼室」)内で燃料の燃焼が生じる熱機関である。「火花点火式エンジン」とは、燃焼が火花、通常は点火プラグから点火される熱機関である。これは、燃料の噴射と共に圧縮によって発生した熱が、外部の火花なしに燃焼を開始させるのに十分である、典型的にはディーゼルエンジンである「圧縮点火エンジン」とは対照的である。
【0012】
低速早期着火(LSPI)
低速早期着火(LSPI)は、直噴、昇圧(ターボチャージまたは過給)、火花点火式(ガソリン)内燃機関において発生する可能性が最も高く、または発生しやすく、その運転中に、1500~2500回転/分(rpm)のエンジン速度、例えば1500~2000rpmのエンジン速度で、1000kPa(10bar)超の正味平均有効圧レベルを発生させる。「正味平均有効圧」(BMEP)とは、エンジンサイクル中に達成される仕事を、総行程容積で除算したものとして定義され、排気量によって正規化したエンジントルクである。用語「正味」とは、動力計で測定される、エンジンフライホイールで利用可能な実トルクまたは出力を表す。したがって、BMEPは、エンジンの有効エネルギー出力の尺度である。
【0013】
本開示の燃料添加剤または潤滑油添加剤は、高圧火花点火式内燃機関において特に有用であり、高圧火花点火式内燃機関で使用される場合には、エンジンのノッキング及び早期着火の問題を予防または最小限に抑えることが見出された。
【0014】
フェノール性アミン
本発明の燃料または潤滑剤添加剤は、以下の一般構造1を有するフェノール性アミン組成物またはその塩を含む。
【化1】

構造1について、pは0~2と定義され、nは1~5と定義され、mは0~2と定義され、式中、p+n+m<6である。R及びRは、それぞれ独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、及びケトン)、エーテル、またはヒドロキシル基である。R及びRは、それぞれ独立して、水素、C-C20ヒドロカルビル基、カルボキシル基(例えば、カルボン酸、エステル、アミド、及びケトン)、エーテル、アミノ、またはヒドロキシル基である。いくつかの実施形態では、R及びRは、環状基を形成していてもよい。Rは、C-C100ヒドロカルビル基、カルボキシル基、エーテル、またはヒドロキシル基である。いくつかの実施形態では、環状基は、1つ以上の窒素または1つ以上の酸素を含んでいてもよい。
【0015】
本発明のフェノール性アミン組成物は、市販品であってもよく、または任意の既知の方法により合成してもよい。例えば、本発明の1種以上のフェノール性アミン添加剤を、アルデヒドによるカルボニル官能基のアミノアルキル化を一般的に含むマンニッヒ反応によって合成してもよい。マンニッヒ反応の詳細な説明は、例えば、参照により本明細書に援用される米国特許第7,351,864号に記載されている。
【0016】
適合するフェノール性アミン組成物としては、例えば、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(構造2A)、2-[(ジメチルアミノ)メチル]フェノール(構造2B)、4-(tert-ブチル)-2,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノール(構造2C)、及び2-(tert-ブチル)-4,6-ビス((ジメチルアミノ)メチル)フェノール(構造2D)が挙げられる。

【化2A-2D】
【0017】
いくつかの実施形態では、フェノール性アミンは、塩の形態で存在していてもよい。構造1の塩は、通常、プロトン化形態(すなわちアンモニウム)である。いくつかの実施形態では、フェノール性アミン添加剤は、塩の形態で存在していてもよく、その場合、フェノール性アミン添加剤は、1種以上の第2のLSPI低減添加剤に配位している。フェノール性アミンと第2の添加剤との相乗的相互作用により、予想されるよりも大きく、LSPIを低減することができる。
【0018】
以下は、LSPI活動を低減するための燃料添加剤または潤滑添加剤として利用可能な第2の添加剤の説明である。一般的に、第2のLSPI低減添加剤、置換型の第2のLSPI低減添加剤、またはそれらの誘導体を、それらの塩の形態で、かつ第1の添加剤と併用して、LSPI活動を低減する。例えば、フェノール性アミンと脂肪酸(第2の添加剤)を組み合わせ、LSPI添加剤として利用することができる。
【0019】
酸添加剤
脂肪酸
脂肪酸は、非芳香族カルボン酸である。適切な脂肪酸には、以下の構造を有するモノカルボン酸が含まれ、
【化3】

式中、Rは、2~20個の炭素原子を有する脂肪族基である。脂肪族基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、ヘテロ原子を含んでいてもよい。
【0020】
適切な脂肪酸としては、ヘキサン酸(構造3A)、ヘプタン酸(構造3B)、オクタン酸(構造3C)、ノナン酸(構造3D)、デカン酸(構造3E)、ウンデカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸(C20)、ベヘン酸(C22)、2-エチル酪酸(構造3F)、3,3-ジメチル酪酸、2-メチルペンタン酸(C)、2-メチルヘキサン酸(C)、4-メチルヘキサン酸(C)、5-メチルヘキサン酸(C)、2,2-ジメチルペンタン酸(C)、2-プロピルペンタン酸(C)、2-エチルヘキサン酸(構造3G)、2-メチルヘプタン酸(C)、イソオクタン酸(C)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(C)、4-メチルオクタン酸(C)、4-メチルノナン酸(C10)、イソデカン酸(C10)、2-ブチルオクタン酸(C12)、イソトリデカン酸(C13)、2-ヘキシルデカン酸(C16)、イソパルミチン酸(C16)、イソステアリン酸(構造3H)、3-シクロヘキシルプロピオン酸、4-シクロヘキシル酪酸(構造3I)、及びシクロヘキサンペンタン酸が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。

【化3A-3J】
【0021】
不飽和酸
適切な不飽和酸には、炭素-炭素二重結合または三重結合を含む任意の有機酸が含まれる。代表的な不飽和酸としては、マレイン酸(構造4A)、フマル酸(構造4B)ならびに不飽和脂肪酸、例えば、パルミトレイン酸(構造4C)及びオレイン酸(構造4D)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。

【化4A-4D】
【0022】
アルキル芳香族酸
適切なアルキル芳香族酸には、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が含まれる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、または8~18個の炭素原子)を有していてもよい。アルキル部分は、場合により、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。アルキル芳香族酸の好適な例としては、メチル安息香酸(構造5A)及びエチル安息香酸(構造5B)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化5A-5C】
【0023】
芳香族酸
適切な芳香族酸には、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が含まれる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、または8~18個の炭素原子)を有していてもよい。アルキル部分は、場合により、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。適切な芳香族酸としては、安息香酸(構造6A)、ヒドロキシ安息香酸(構造6B)、及びテトラリンカルボン酸(構造6C)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化6A-6C】
【0024】
ヒドロキシ酸
適切なヒドロキシ酸には、以下の一般式によって表され得るものが含まれ:
【化7】

式中、n=1~3である。ヒドロキシ酸の好適な例としては、グリコール酸(構造7A)、乳酸(構造7B)、リンゴ酸(構造7C)、酒石酸(構造7D)、及びクエン酸(構造7E)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化7A-7E】
【0025】
アミノ酸
アミノ酸は、第1の添加剤及び/または第2の添加剤として利用することができる。適切なアミノ酸については、上述した。
【0026】
フェノール添加剤
フェノール
適切なフェノールとしては、チモール(構造8A)、オイゲノール(構造8B)、ヒドロキノン(構造8C)、レゾルシノール(構造8D)、クレゾール(構造8E)、及び2-メチルキノリン-8-オール(構造8G)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化8A-8G】
【0027】
1,3ジカルボニル添加剤
1,3ジケトン
1,3ジケトン化合物の好適な例としては、アセチルアセトン(構造9A)、及びクルクミン(構造9B)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。

【化9A-9B】
【0028】
1,3ケトエステル
適切な1,3ケトエステルを以下に示す。
【化10A-10B】
【0029】
ヒドロキサミド添加剤
ヒドロキサミドは、アミドのヒドロキシ誘導体である。有用なヒドロキサミドには、以下の一般式により表され得るものが含まれ:
【化11】

式中、R及びRは、それぞれ独立して、水素またはC-C20(例えば、C-C12)アルキル基から選択される。適切なヒドロキサミドとしては、ヒドロキシメチルアセトアミド(式21A)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化11A-11C】
【0030】
抗酸化添加剤
適切な抗酸化剤には、モノカルボン酸とジカルボン酸の両方が含まれる。アルキルカルボン酸は、6個以上の炭素原子(例えば、6~24個の炭素原子、6~20個の炭素原子、8~24個の炭素原子、8~20個の炭素原子、または8~18個の炭素原子)を有していてもよい。アルキル部分は、場合により、ヒドロキシ、アルコキシ、及びカルボニル(例えば、アルデヒドまたはケトン)基などの1つ以上の置換基で置換されていてもよい。適切な抗酸化剤には、以下のものが含まれる。
【化12】
【0031】
サリチル酸塩添加剤
サリチル酸塩
適切なサリチル酸塩としては、2-ヒドロキシ-5-(テトラコサ-1,3,5,7,9,11,13,15,17,19,21,23-ドデカン-1-イル)安息香酸-二水素(構造13E)が挙げられる。適切なサリチル酸塩を以下に示す。

【化13A-13E】
【0032】
アミジン
本開示の燃料添加剤または潤滑油添加剤は、アミジン、置換アミジン、もしくはその誘導体またはそれらの許容される塩であってもよい。有用なアミジンには、以下の一般式により表され得るものが含まれ:
【化14】

式中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素、一価の有機基、一価のヘテロ有機基(例えば、炭素原子を介して結合し、カルボン酸またはスルホン酸官能基を含まない、基または部分の形態で窒素、酸素、硫黄、またはリンを含む)、及びそれらの組み合わせから選択され、R、R、R、及びRのうちの任意の2つ以上は、場合により一緒に結合して、環状構造(例えば、5員環、6員環、または7員環)を形成することができる。環状構造は、芳香族または非芳香族であってよく、完全飽和から完全不飽和まで様々であってよい。有機基及びヘテロ有機基は、1~10個の炭素原子(例えば、1~6個の炭素原子)を有していてもよい。
【0033】
好適なアミジンの代表的な例としては、1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14A)、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14B)、1,2-ジエチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン(構造14C)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン(DBN;構造14D)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU;構造14E)、ベンズアミジン(構造14F)、ベンズイミダゾール(構造14G)、及び2-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール(構造14M)が挙げられる。代表的な構造を以下に示す。
【化14A-14M】
【0034】

本開示の塩は、従来の手段によって、例えば、第1の添加剤を非プロトン性溶媒中で適切な第2の添加剤と混合することによって調製してもよい。一方の添加剤を他方に加える順序は重要ではない。第1の添加剤及び第2の添加剤を、通常、ほぼ等モル比で一緒に混合する。過剰の第1または第2の添加剤成分を使用してもよい。例えば、塩基とアルキルカルボン酸とのモル比は、約1.05:1~2:1(例えば1.1:1~1.5:1)であってよい。
【0035】
燃料組成物
本開示の化合物は、火花点火式内燃機関でのエンジンノックまたは早期着火事象を予防または低減させるための炭化水素燃料中の添加剤として有用であり得る。
【0036】
炭化水素燃料中の本開示の化合物の濃度は、25~5000重量百万分率(ppm)の範囲(例えば50~1000ppm)であってもよい。
【0037】
本開示の化合物は、65℃~205℃の範囲で沸騰する不活性安定な親油性(すなわち、炭化水素燃料に可溶である)有機溶媒を使用して濃縮物として製剤化してもよい。脂肪族または芳香族炭化水素溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンまたは高沸点芳香族または芳香族シンナーを使用してもよい。炭化水素溶媒と組み合わせた、2~8個の炭素原子を有する脂肪族アルコール、例えば、エタノール、イソプロパノール、メチルイソブチルカルビノール、n-ブタノールなどもまた、本添加剤での使用に適している。濃縮物中で、添加剤の量は、10~70重量%の範囲(例えば、20~40重量%)であってもよい。
【0038】
ガソリン燃料では、酸素化物(例えば、エタノール、メチルtert-ブチルエーテル)、他のアンチノック剤、及び界面活性剤/分散剤(例えば、ヒドロカルビルアミン、ヒドロカルビルポリ(オキシアルキレン)アミン、スクシンイミド、マンニッヒ反応生成物、ポリアルキルフェノキシアルカノールの芳香族エステル、またはポリアルキルフェノキシアミノアルカン)を含む、他の周知の添加剤を使用することができる。さらに、摩擦調整剤、抗酸化剤、金属不活性化剤、及び解乳化剤を存在させてもよい。
【0039】
ディーゼル燃料では、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン価向上剤などの他の周知の添加剤を使用することができる。
【0040】
本開示の化合物と共に、燃料可溶性の不揮発性の分散媒または油を使用することもできる。分散媒は、化学的に不活性な炭化水素可溶性液体ビヒクルであり、オクタン要求量の増加に過度に寄与することなく、燃料添加剤組成物の不揮発性残留物(NVR)、または無溶媒の液体割合を実質的に増加させる。分散媒は、天然油または合成油、例えば鉱油、精製石油、水素化及び非水素化ポリアルファオレフィンを含む合成ポリアルカン及びアルケン、合成ポリオキシアルキレン由来の油、例えば、米国特許第3,756,793号、同第4,191,537号、及び同第5,004,478号、ならびに欧州特許出願公開第356,726号、及び同第382,159号に記載されている油であってもよい。
【0041】
分散媒は、35~5000重量ppmの範囲の量の炭化水素燃料(例えば、50~3000重量ppmの燃料)で使用してもよい。燃料濃縮物中で使用する場合、分散媒を、20~60重量%の範囲(例えば、30~50重量%)の量で存在させてもよい。
【0042】
潤滑油組成物
本開示の化合物は、火花点火式内燃機関でのエンジンノックまたは早期着火事象を予防または低減させるための潤滑油中の添加剤として有用であり得る。
【0043】
潤滑油組成物中の本開示の化合物の濃度は、潤滑油組成物の全重量を基準として、0.01~15重量%(例えば、0.5~5重量%)の範囲であってよい。
【0044】
潤滑粘性油(「ベースストック」または「基油」と呼ばれることもある)は、潤滑剤の主要な液体成分であり、添加剤及び場合によっては他の油をこれにブレンドして、例えば最終的な潤滑剤(または潤滑剤組成物)を生成する。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択され得る。
【0045】
本開示におけるベースストック及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(「API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils,」December 2016)に記載されている定義と同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和硫黄及び/または0.03%超の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックは、グループI、グループII、グループIII、またはグループIVに含まれない他のすべてのベースストックを含む。
【0046】
天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油及びラード油)、ならびに鉱油が含まれる。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用することができる。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの原油源に関して、例えば、パラフィン系、ナフテン系、または混合パラフィン系-ナフテン系であるかどうかに関して、大きく異なる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるかもしくは分解されているか、水素化精製されているか、または溶媒抽出されているかによっても異なる。
【0047】
合成油には、炭化水素油が含まれる。炭化水素油としては、重合及び相互重合オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー、及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。ポリアルファオレフィン(PAO)油ベースストックは、一般的に使用される合成炭化水素油である。例として、C-C14オレフィン、例えば、C、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物に由来するPAOを利用してもよい。
【0048】
基油として使用するための他の有用な流体には、高性能特性を提供するために、好ましくは触媒的に処理された、または合成された非従来型もしくは従来と異なった基油原料が含まれる。
【0049】
非従来型または従来と異なったベースストック/基油としては、1つ以上のガスツーリキッド(GTL)物質に由来するベースストック(複数可)の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス質供給原料に由来する異性化/イソ脱ロウ化ベースストック(複数可)、鉱油及び/または非鉱油ワックス質原料油、例えば、スラックワックス、天然ワックス、及びワックス質原料、例えば、ガスオイル、ワックス質燃料重質分、ワックス質ラフィネート、水素化分解生成物、熱分解生成物、または他の鉱物、鉱油、もしくは非石油由来ワックス質物質、例えば、石炭液化もしくはシェール油から回収されるワックス質物質、ならびにそのようなベースストックの混合物のうちの1つ以上が挙げられる。
【0050】
本開示の潤滑油組成物で使用するための基油は、それらの卓越した揮発性、安定性、粘度特性、及び清浄度特性により、APIのグループI、グループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、好ましくはAPIのグループII、グループIII、グループIV及びグループVの油、ならびにそれらの混合物、より好ましくはグループIII~グループVの基油に対応する様々な油のいずれかである。
【0051】
通常、基油は、100℃において、2.5~20mm/秒(例えば、3~12mm/秒、4~10mm/秒、または4.5~8mm/秒)の範囲の運動粘度(ASTM D445)を有する。
【0052】
本潤滑油組成物にはまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有させて、これらの添加剤を分散させるかまたは溶解させた最終的な潤滑油組成物を取得してもよい。例えば、潤滑油組成物を、抗酸化剤、無灰分散剤、消耗防止剤、金属洗剤などの洗剤、防錆剤、脱臭剤、解乳化剤、摩擦改質剤、金属非活性化剤、注入点抑制剤、粘度改質剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食抑制剤、染料、極圧剤など、及びそれらの混合物とブレンドすることができる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似化合物を、通常のブレンド手順によって、本発明の潤滑油組成物の調製に用いることができる。
【0053】
前述の添加剤の各々は、使用する場合、潤滑剤に所望の特性が付与されるように機能的に有効な量で使用する。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の各々の濃度は、使用する場合、別段の指定がない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲であってもよい。
【0054】
以下の例示的な実施例は、非限定的であることが意図される。
【実施例
【0055】
エンジン試験1
LSPI試験には、Ford2.0-LのEcoBoost4気筒ガソリンターボ過給直噴エンジンを使用した。このセットアップにおいて、各シリンダは、筒内圧力をモニタリングするための圧力変換器を備えていた。
【0056】
4セグメント試験手順を使用して、269N-mの負荷で1750rpmのエンジン速度で4気筒すべてにわたるLSPI事象の数を測定した。各セグメントは3.25時間であり、2000rpm及び50N-mでの15分間の軽負荷運転によって区切られた。比較用に最後の2つのセグメント間のLSPI周波数を報告し、また、エンジンオイル調整のために最初の2つのセグメントは考慮しない。過渡状態中のLSPI活動を考慮するために、各セグメントの開始部をフィルタリングまたは除去して、定常状態動作中のみの活動を比較できるようにする。このトランケーションにより、一般的には、セグメントあたりシリンダあたりおよそ4,000サイクルの除去が生じる。
【0057】
試験中、各シリンダについて燃焼圧力とフェージングの両方をモニタリングした。LSPI事象は、2つの基準:1)平均ピーク圧から5標準偏差を超過したピークシリンダ内圧、及び2)平均CA5から5標準偏差を超えた燃焼フェージング(CA5、すなわち5%の熱放出が発生するクランク角)が達成された時点で発生した。
【0058】
LSPI周波数は、100万サイクルにわたるシリンダあたりの事象の平均数として報告する。LSPI緩和添加剤の試験の前後で、ベースラインのLSPI活動を確保するために、無添加の49状態のプレミアム無鉛ガソリンを使用した。報告されたLSPI周波数の変化は、ベースライン実行の前後での百分率差である。試験中に使用したエンジンオイルは、ILSAC GF-5及びAPI SN仕様を満たしていた。
【0059】
基本燃料情報:FR62180-49状態無添加PUL燃料。
【0060】
以下に示す3つの実施例における添加比率は、燃料中で300ppmwである。(2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール+1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)の場合、1:1のモル比であり、総計で300ppmwである)。
【0061】
LSPI事象の低減結果を以下の表1に示す。

【表1】
【0062】
LSPIの低減は、隣接した、または局所的なベースライン試験値に関するものである。
【0063】
エンジン試験2
LSPI試験には、4-GM2.0-LのEcotec4気筒ガソリンターボ過給直噴エンジンを使用した。このセットアップにおいて、各シリンダは、筒内圧力をモニタリングするための圧力変換器を備えていた。
【0064】
6セグメント試験手順を使用して、290N-mの負荷で2000rpmのエンジン速度で4気筒すべてにわたるLSPI事象の数を測定した。各セグメントは28分であり、低いエンジン速度及び負荷におけるアイドル期間によって区切られた。比較用にセグメント2~6の間のLSPI周波数を報告し、エンジンオイル調整のために第1のセグメントは考慮しなかった。
【0065】
過渡状態中のLSPI活動を考慮するために、各セグメントの開始部をフィルタリングまたは除去して、定常状態動作中のみの活動を比較できるようにした。このトランケーションにより、通常、セグメントあたりシリンダあたりおよそ4,000サイクルが除去されることとなり、セグメントあたりおよそ100,000の測定サイクル(すなわちシリンダあたり25,000サイクル)となる。
【0066】
試験中、各シリンダについて燃焼圧力とフェージングの両方をモニタリングした。LSPI事象は、2つの基準:1)平均ピーク圧から5標準偏差を超過したピークシリンダ内圧、及び2)平均CA5から5標準偏差を超えた燃焼フェージング(CA5、すなわち5%の熱放出が発生するクランク角)が達成された時点で発生した。LSPI緩和添加剤の試験の前後で、ベースラインのLSPI活動を確保するために、無添加の49状態のプレミアム無鉛ガソリンを使用した。基本燃料情報:FR62180-49状態無添加PUL燃料。試験中に使用したエンジンオイルは、ILSAC GF-5及びAPI SN仕様を満たしていた。
【0067】
LSPI周波数は、100万サイクルにわたるシリンダあたりの事象の平均数として報告する。報告されたLSPI周波数の変化は、ベースライン実行の前後での百分率差である。
【0068】
以下に示す実施例の添加比率は、燃料中で1000ppmwである。(第1の添加剤+第2の添加剤[1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-ウンデカ-7-エン(DBU)]は、1:1のモル比であり、総計で1000ppmwである)。
【0069】
LSPI事象の低減結果を以下の表2に示す。

【表2】
【国際調査報告】