(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】免疫原性融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240312BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240312BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240312BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240312BHJP
C07K 14/315 20060101ALI20240312BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/09 20060101ALI20240312BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240312BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/31
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K14/315
C07K19/00
C12N15/11 Z
A61K39/09
A61K39/39
A61K48/00
A61P31/04
A61P37/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560549
(86)(22)【出願日】2022-03-29
(85)【翻訳文提出日】2023-11-15
(86)【国際出願番号】 EP2022058309
(87)【国際公開番号】W WO2022207657
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523371562
【氏名又は名称】ミネルバエクス・アンパルトセルスカブ
【氏名又は名称原語表記】MINERVAX APS
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペダーセン・フィッシャー,ペル・ボー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB35
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA14
4C085CC05
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF02
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA11
4H045EA31
4H045EA52
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、i.170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなり、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列部分と、ii.165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなり、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列部分と、任意選択的に、iii.1~20個のアミノ酸からなり、及び第1のアミノ酸配列部分を第2のアミノ酸部分から分離するリンカーアミノ酸配列部分とからなるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる免疫原性融合タンパク質に関する。免疫原性融合タンパク質は、好ましくは335~372個のアミノ酸、好ましくは343~353個のアミノ酸、より好ましくは343~347個のアミノ酸からなる。本発明は、免疫原性融合タンパク質をコードする核酸分子、ベクター、宿主細胞、ワクチン、及びB群連鎖球菌感染に対してワクチン接種するか又はB群連鎖球菌感染症を処置する方法に更に関係する。
図3は要約とともに公開されることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i.170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなり、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列部分と、
ii.165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなり、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列部分と、任意選択的に
iii.1~20個のアミノ酸からなり、及び前記第1のアミノ酸配列部分を前記第2のアミノ酸部分から分離するリンカーアミノ酸配列部分と
からなるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる免疫原性融合タンパク質であって、
好ましくは335~372個のアミノ酸、好ましくは343~353個のアミノ酸、より好ましくは343~347個のアミノ酸からなる、免疫原性融合タンパク質。
【請求項2】
前記第1のアミノ酸配列部分が、配列番号7で表される配列のアミノ酸1~175又は2~175を含むか、又は好ましくはそれからなり、及び
前記第2のアミノ酸配列部分が、配列番号14で表される配列のアミノ酸1~170、又は2~170を含むか、又は好ましくはそれからなる、請求項1に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項3】
前記アミノ酸配列がリンカーアミノ酸配列部分を含み、並びに前記リンカーアミノ酸配列部分が、1~10個のアミノ酸、好ましくは2~5個のアミノ酸、より好ましくは2個のアミノ酸、及び最も好ましくはアミノ酸配列EFからなる、いずれかの先行する請求項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項4】
配列番号21に対して少なくとも90%の配列同一性を有する、いずれかの先行する請求項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項5】
配列番号21で表されるアミノ酸の配列からなり、或いは配列番号21のアミノ酸2~347からなる、いずれかの先行する請求項に記載の免疫原性融合タンパク質。
【請求項6】
先行する請求項のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子。
【請求項7】
配列番号15~20のうちの1つで表されるヌクレオチドの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、請求項6に記載の核酸分子。
【請求項8】
請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質を発現するか、又は請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子、又は請求項8に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項10】
請求項1~5のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質、請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、又は請求項9に記載の宿主細胞のうちの1つ又は複数を含むワクチン。
【請求項11】
a)配列番号42で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる更なる免疫原性融合タンパク質、
b)前記更なる免疫原性融合タンパク質をコードする更なる核酸分子であって、好ましくは配列番号36~41の1つで表されるヌクレオチドの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する更なる核酸分子、
c)前記更なる核酸分子を含む更なるベクター、或いは
d)前記更なる免疫原性融合タンパク質を発現するか又は前記更なるベクターを含む更なる宿主細胞
のうちの1つ又は複数を更に含む、請求項10に記載のワクチン。
【請求項12】
a)請求項5に記載の免疫原性融合タンパク質と、
b)配列番号42で表されるアミノ酸の配列を含み、好ましくはそれからなり、或いは配列番号42のアミノ酸2~347を含むか、好ましくはそれからなる更なる免疫原性融合タンパク質と
を含む、請求項11に記載のワクチン。
【請求項13】
アジュバントとして水酸化アルミニウムを更に含む、請求項10~12のいずれかに記載のワクチン。
【請求項14】
i)B群連鎖球菌感染症に対するワクチン接種、又はii)B群連鎖球菌感染症の処置における使用のための、請求項1~5のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質、請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、又は請求項10~13のいずれかに記載のワクチン。
【請求項15】
請求項14に記載の使用のための、請求項1~5のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質、請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、又は請求項10~13のいずれかに記載のワクチンであって、女性ヒト対象に投与される請求項1~5のいずれかに記載の免疫原性融合タンパク質、請求項6~7のいずれかに記載の核酸分子、請求項8に記載のベクター、請求項9に記載の宿主細胞、又は請求項10~13のいずれかに記載のワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は微生物学及びワクチン技術の分野に関し、並びにB群連鎖球菌感染症に対する免疫性を付与する能力を有する免疫原性融合タンパク質の開発と関係する。より具体的には、本発明は、B群連鎖球菌(Streptococcus)の侵襲的系統に対する免疫性を付与する免疫原性融合タンパク質に関する。本発明は、免疫原性融合タンパク質をコードする核酸分子、ベクター、宿主細胞、ワクチン、及びB群連鎖球菌感染に対してワクチン接種するか又はB群連鎖球菌感染症を処置する方法に更に関係する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
B群連鎖球菌(ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae))(GBS)は、新生児期の、髄膜炎を含む侵襲性細菌感染症の主原因である。米国単独で、今日、年間約5000例の侵襲性疾患がこの細菌により引き起こされている。この感染症の全体的な死亡率は約10%であり、また生存する小児の多くは永続的な神経学的後遺症を有する。この点に鑑み、予防及び処置する方法を見出し、またGBSが引き起こす感染症の機構を解析するための多大な努力が払われてきた。
【0003】
GBSは、ウシにおいて乳房炎、重大な経済的重要性を有するウシの疾患、を引き起こすおそれもある。従って、GBS感染症に対するワクチンの開発は獣医学においても関心事である。
【0004】
全女性の約20%がGBSの膣内保菌者であり、また母体生殖器からの垂直感染が、おそらくはこの細菌により引き起こされる新生児疾患において最も一般的な感染源である。しかしながら、出生時にGBSがコロニー形成した小児のうちの約1%が重篤な感染症に罹患するにすぎない。従って、出生時の当該細菌への曝露以外のその他の要因が、新生児疾患の発症に寄与しているはずである。
【0005】
B群連鎖球菌株は、多糖類カプセルの構造に基づき9つの血清型(Ia、Ib、及びII~VIII)に分割される。4つの「古典的な」血清型Ia、Ib、II、及びIIIは、通常の細菌叢内の系統間でほぼ等しい割合で生ずるが、しかしIII型は、特に髄膜炎のほとんどの症例の原因とされるので、臨床的に最も重要な血清型である。カプセルは公知の病原性因子であるので、特にIII型系統においてかなり詳細に研究されてきた。ワクチンを開発するための努力がなされているが、そこではIII型多糖類カプセルが必須のコンポーネントである。
【0006】
欧州特許第0 866 133号は、B群連鎖球菌により引き起こされる感染症からレシピエントを防御する能力を有するワクチンについて開示する。該発明は、多糖類とイプシロンタンパク質の断片との併用と関連する。該発明は、型固有のカプセルがB群連鎖球菌感染症に対する免疫性において重要な役割を演ずることを示唆する疫学的データについて更に開示する(7頁の2~3行を参照されたい)。更に、該出願において記載される異なるタンパク質と多糖類との間にはいくつかの異なる組合せが存在するが、しかしすべての請求項は、その特別なコンポーネントの重要性を示す多糖類を含む。しかしながら、多糖類カプセルをワクチンとして使用すると、ヒト組織との交差反応に起因して問題が生ずるおそれがある(Pritchardら、Infect Immun、1992年、第60巻:1598頁)。従って、多糖類よりはむしろタンパク質に基づくワクチンを開発することができれば非常に有用であろう。
【0007】
Gravekampらの文献、Infection and Immunity、1997年12月、5216~5221頁は、アルファ(α)Cタンパク質の反復数並びにN末端部分単独について、それらの免疫原性並びに保護の評価を開示する。反復数が増加すると共に免疫原性は低下することが判明した(
図2Bを参照されたい)。しかしながら、N末端領域に対する抗体と比較して、N末端領域に対する抗体は保護に主として関与することがプロテクションアッセイにおいても判明した(5219頁、左側カラム、下から6行目、及び5220頁、右側カラム、26~29行を参照されたい)。
【0008】
国際公開第9410317号は、コンジュゲートワクチンの開発におけるアルファタンパク質(GBS表面タンパク質)の使用について記載する。このタンパク質の欠点として、多くの重篤なGBS感染症の原因であるIII型系統により通常発現されないことが挙げられる。従って、この系統に対する防御免疫はアルファタンパク質ワクチンによって誘起されない。
【0009】
国際公開第9421685号は、ワクチンの開発におけるRibタンパク質(GBS表面タンパク質)の使用について記載する。このタンパク質は、ミョウバンと共に投与すると免疫性を誘発する。しかしながら、Ribタンパク質は、GBS系統のいずれに対しても防御免疫を惹起しないという欠点を有する。
【0010】
Lindahlらの文献、Nonimmunodominant Regions Are Effective As Building Blocks In A Streptococcal Fusion Protein Vaccine、Cell Host & Microbe、第2巻、427~434頁、2007年12月は、B群連鎖球菌表面タンパク質、Rib及びAlpCのN末端領域を含む融合タンパク質について開示する。
【0011】
同様に、国際公開第2008127179号は、B群連鎖球菌表面タンパク質、又は類似体、相同体、誘導体、又は免疫学的に関連するアミノ酸配列、又はその断片の少なくとも1つの第2のN末端領域断片に融合している、B群連鎖球菌表面タンパク質、又は類似体、相同体、誘導体、又は免疫学的に関連するアミノ酸配列、又はその断片の少なくとも1つの第1のN末端領域断片を含む融合タンパク質であって、B群連鎖球菌表面タンパク質の第1及び第2の少なくとも1つのN末端領域断片が異なるB群連鎖球菌系統に由来し、並びに融合タンパク質はB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発する能力を有する融合タンパク質について記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
GBS疾患の予防に適するワクチンに向けた進展に進歩がみられるにもかかわらず、GBS感染症を予防及び処置するための更なる方法及びワクチンに対する必要性がなおも存在する。従って、広範囲のGBS系統に対して防御免疫を誘発する能力を有するワクチン戦略を探索する必要性が存続する。
【0013】
従って、本発明の第1の目的は、GBS感染症に対して防御免疫を誘発する能力を有するワクチンにおいて使用可能である免疫原性融合タンパク質を提供することである。
【0014】
本発明の更なる目的は、多くの臨床的に重要なGBS系統に対して防御免疫を誘発するワクチンを提供することである。
【0015】
本発明の別の目的は、GBS感染症に対して防御免疫を誘発する単一又はいくつかの免疫原性融合タンパク質を含むワクチンを提供することである。単一又はいくつかのタンパク質は、非常に多くのタンパク質から構成されるワクチンに対して、例えば製造コスト及び安全性といったいくつかの長所を有する。
【0016】
GBSに対して改善した防御を提供する能力を有する免疫原性融合タンパク質を提供することが本発明の更なる目的である。
【0017】
上記目的のそれぞれ並びにその他を実現する手段は、以下に続く本発明の説明から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明の概要
本発明は、本発明者による、国際公開第2008127179号で開示された融合タンパク質に関する更なる研究に基づく。特に、Rib及びAlpCのN末端領域のより短いアミノ酸配列を含む免疫原性融合タンパク質が好適であることが判明した。そのような免疫原性融合タンパク質は、ワクチン接種用として製造及び使用することがより容易であり得る。更に、実施例4及び5に示すように、そのようなより短尺の融合タンパク質は、特に内皮細胞との接着及び/又はそれへの浸潤に対して改善した防御を提供することにより、GBSに対して改善した防御を提供する。
【0019】
それに付加して、免疫原性融合タンパク質をコードするコドン最適化された対応する核酸分子が考案された。これはベクター内に提供され得る。宿主細胞が、ひいては免疫原性融合タンパク質を発現するか又はベクターを含み得る。免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、及び宿主細胞のそれぞれは、ワクチンで使用され得る。免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、宿主細胞、及び/又はワクチンは、B群連鎖球菌感染症に対してワクチン接種する方法、又はB群連鎖球菌感染症を処置する方法で更に使用され得る。
【0020】
従って、本発明の第1の態様は、
i.170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなり、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列部分と、
ii.165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなり、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列部分と、任意選択的に
iii.1~20個のアミノ酸からなり、及び第1のアミノ酸配列部分を第2のアミノ酸部分から分離するリンカーアミノ酸配列部分と
からなるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる免疫原性融合タンパク質であって、
好ましくは335~372個のアミノ酸、好ましくは343~353個のアミノ酸、より好ましくは343~347個のアミノ酸からなる、免疫原性融合タンパク質に関する。
【0021】
上記で指摘したように、免疫原性融合タンパク質は、ワクチン接種用として製造及び使用することがより容易であり得る。免疫原性融合タンパク質は、アジュバントを用いなくても免疫原性であるという利点を有するが、しかしながら免疫原性を増加させるためのアジュバント、例えばミョウバン又は水酸化アルミニウム(Al(OH)3)等と共に使用することも可能である。
【0022】
免疫原性融合タンパク質に備わる別の長所は、Alp1及びAlp2のN末端領域を含む更なる免疫原性融合タンパク質と組み合わせることができるという点にある。実施例において認められるように、2つのそのような免疫原性融合タンパク質を組み合わせることで、免疫化で併用される場合、取得される抗体の数(抗体価)に対して相乗的効果がもたらされる。
【0023】
本発明は下記でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を単独で、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンに包含される更なる免疫原性融合タンパク質と組み合わせてのいずれかの、アジュバントを含め/含めないで、異なる投薬量において、1回の投与を使用する免疫化から29日後に得られたIgGの倍率増加を示す図である。
【
図2】本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を単独で、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンに包含される更なる免疫原性融合タンパク質と組み合わせてのいずれかの、アジュバントを含め/含めないで、異なる投薬量において、第1回投与及び第2回投与を使用する免疫化から57日目に得られたIgGの倍率増加を示す図である。
【
図3】B群連鎖球菌系統BM110(8×10
3cfu)を用いて新生児細菌性感染症を引き起こした後のマウス幼獣の生存率を示す図である。幼獣は、a)配列番号21の免疫原性融合タンパク質+アジュバント(水酸化アルミニウム(Al(OH)
3))、b)又はコントロール(アジュバント(水酸化アルミニウム)のみ)のいずれかで免疫化したメスのマウスから生まれた。
【
図4A】臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合タンパク質を使用した免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す図である。
【
図4B】臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合タンパク質を使用した免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す図である。
【
図4C】臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合タンパク質を使用した免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す図である。
【
図4D】臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合タンパク質を使用した免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す図である。
【
図4E】臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合タンパク質を使用した免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す図である。
【
図5A】国際公開第2008127179号に基づく融合タンパク質の描画を、配列番号43に基づく先導配列及び配列番号21に基づく融合タンパク質のより短尺のアミノ酸配列を含め示す図である。
【
図5B】国際公開第2008127179号に基づく融合タンパク質の描画を、配列番号43に基づく先導配列及び配列番号21に基づく融合タンパク質のより短尺のアミノ酸配列を含め示す図である。
【
図5C】国際公開第2008127179号に基づく融合タンパク質の描画を、配列番号43に基づく先導配列及び配列番号21に基づく融合タンパク質のより短尺のアミノ酸配列を含め示す図である。
【
図6】配列番号21のより短尺の融合タンパク質とα1β1インテグリンとの間の相互作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本明細書において、別途規定されない限り、「a」又は「an」は、「1つ又は複数」を意味する。本明細書全体を通じて、あらゆるすべての参考資料は、参照により本特許出願に特別に組み込まれる。
【0026】
上記の通り、本発明の第1の態様は、
i.170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなり、及び配列番号7で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第1のアミノ酸配列部分と、
ii.165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなり、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する第2のアミノ酸配列部分と、任意選択的に
iii.1~20個のアミノ酸からなり、及び第1のアミノ酸配列部分を第2のアミノ酸部分から分離するリンカーアミノ酸配列部分と
からなるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる免疫原性融合タンパク質であって、
好ましくは335~372個のアミノ酸、好ましくは343~353個のアミノ酸、より好ましくは343~347個のアミノ酸からなる、免疫原性融合タンパク質に関する。
【0027】
用語「免疫原性」は、免疫応答を誘発する能力を有することを意味するように意図される。本発明の免疫原性融合タンパク質は免疫原性であり、また少なくとも表面タンパク質(そのN末端領域が免疫原性融合タンパク質に含まれる)を含有するGBSに対する防御免疫応答を誘発するその能力により特徴付けられる。B群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発するということは、表面タンパク質Rib及びAlpCの少なくとも1つを担持するB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発するということを包含するものと理解される。「~の能力を有する」とは、免疫原性融合タンパク質が、免疫系を有する個体に対して適する用量で投与された場合、当該個体において防御免疫を誘発することを意味する。免疫原性融合タンパク質は、好ましくはB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発する能力を有する。
【0028】
用語「防御免疫」とは、本発明に関連する場合、感染性病原体、例えばB群連鎖球菌等により引き起こされた疾患から防御する(部分的又は全面的に)ための免疫化の期間中に誘発された血清抗体の能力及び/又は細胞傷害性T細胞応答を指す。すなわち、本発明のワクチンにより免疫化された脊椎動物は、B群連鎖球菌の限定的増殖及び拡散を経験する。防御免疫が融合タンパク質又はワクチンにより誘発されるかどうか判定するために、当業者にとって周知の技術が使用可能である。例えば、本発明の融合タンパク質又はワクチンを用いた免疫化がB群連鎖球菌感染症に対して防御免疫を誘発するかどうか判定するためには、B群連鎖球菌を免疫化されたテスト動物に負荷することが可能であり、そしてB群連鎖球菌の増殖及び拡散が測定される。例えば、防御免疫が誘発されるかどうか判定するために、下記の実施例に記載する方法に基づく方法が使用可能である。
【0029】
本発明の目的に照らして、用語「融合タンパク質」とは、2つ以上のタンパク質領域又はその断片のアセンブリを指す。上記のように、免疫原性融合タンパク質は、少なくとも第1及び第2のアミノ酸配列部分からなるアミノ酸配列を含む(又は好ましくはそれからなる)。これらの部分は、B群連鎖球菌表面タンパク質Rib及びAlpCそれぞれのN末端領域と関連する。
【0030】
融合タンパク質を取得するためのアミノ酸配列部分の組合せは、アミノ酸配列部分をその一方若しくは両方の端部において共に融合させ、すなわち結びつけること(共有結合性のカップリング、結合、又はリンキング、又はコンジュゲーション)により、又は結びついた核酸分子が翻訳されるときに、単一の連続した発現産物が生成されるように、各アミノ酸配列部分をコードする別個の核酸分子を共に結びつけることにより実現可能である。
【0031】
融合タンパク質において、第1及び第2のアミノ酸配列部分はリンカーアミノ酸配列部分により分離され得る。
【0032】
融合タンパク質は、アミノ酸配列部分を架橋すること又は高分子構造上でそれを捕捉することにより取得可能であることが、本発明の文脈において更に想定される。
【0033】
本発明の目的に照らして、用語「タンパク質」とは、アミノ酸の分子鎖を指す。タンパク質は特定の長さを有するものではなく、また必要であれば、例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、又はリン酸化により、in vivo又はin vitroで改変可能である。特に、ペプチド、オリゴペプチド、及びポリペプチドが、当該定義に含まれる。
【0034】
用語「N末端領域」とは、本発明に関連する場合、タンパク質のN末端領域(N)を指す。
【0035】
本明細書においてGBSとも呼ばれるB群連鎖球菌系統は公知であり、感染したヒトの血液から単離され得る。GBSは、米国内の新生児敗血症の最も一般的な原因であり、また年間約5000例に関与する。
【0036】
「B群連鎖球菌」という表示は、連鎖球菌は、その細胞表面上の特定の炭水化物抗原の存在に基づき免疫学的群に分割されるという事実に由来する。現時点では、A群からO群が認識されている。
【0037】
B群連鎖球菌のRibタンパク質は、本明細書においてRib及びRibタンパク質とも呼ばれ、当技術分野において公知の表面タンパク質であり、また例えば国際公開第9421685号に記載されている。「Rib」という表示は、プロテアーゼ耐性、免疫性、及びB群を表す。Ribタンパク質は、特徴的な95kDaタンパク質として血清型IIIのB群連鎖球菌株から最初に単離された。タンパク質Ribは、髄膜炎のほとんどの症例の原因をなす臨床的に重要な血清型IIIに該当するほぼすべてのB群連鎖球菌株により、及びその他の血清型、例えばII等のいくつかの系統により発現されている。それに加えて、Ribは、III型の超強毒性クローンのすべての系統により発現される。タンパク質Ribを精製する方法が考案されており、またこのタンパク質に対する抗体は、タンパク質Ribを発現する系統による致死性感染症から保護することが実証されている(更なる詳細については、例えばDNA及びタンパク質配列等については、国際公開第9421685号を参照されたい)。
【0038】
配列番号7はRibのより短いN末端領域を示す:
MAEVISGSAVTLNTNMTKNVQNGRAYIDLYDVKNGKIDPLQLITLNSPDLKAQYVIRQGGNYFTQPSELTTVGAASINYTVLKTDGSPHTKPDGQVDIINVSLTIYNSSALRDKIDEVKKKAEDPKWDEGSRDKVLISLDDIKTDIDNNPKTQSDIANKITEVTNLEKILVPRIP
配列番号7のアミノ酸配列をコードする核酸DNA分子は配列番号1、3、5で表され、配列番号3は大腸菌(E.coli)内で発現させるためにコドン最適化されており、及び配列番号5は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0039】
配列番号7のアミノ酸配列をコードする対応する核酸RNA分子は配列番号2、4、6で表され、配列番号4は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、及び配列番号6は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0040】
Ribのより短いN末端領域、すなわち配列番号7と、国際公開第2008127179号においてRibのN末端に関して提示される配列との間の差異は、アミノ酸5個分の長さの先導配列GPLGS、配列番号44に該当する。
【0041】
B群連鎖球菌のAlpCタンパク質はアルファタンパク質としても知られており、当技術分野において公知のB群連鎖球菌表面タンパク質である。国際公開第9410317号は、アルファタンパク質を含むコンジュゲートワクチン組成物について記載する。国際公開第9410317号に記載されるような天然のB群連鎖球菌AlpC前駆体タンパク質は、分子量108kDaを有する。41個のアミノ酸からなる推定シグナル配列を切断すると、104kDaの成熟したタンパク質が得られる。(注記:しかしながら、シグナル配列は長さ56個のアミノ酸残基を有することが、その後明らかとなった:Stalhammar-Carlemalmら、J Exp Med、第177巻、1593頁;1993年)。AlpC抗原の20kDa N末端領域は、これまでに記載されたタンパク質配列に対して相同性を示さず、また成熟したタンパク質の74%を占める一連の9個の直列反復単位がそれに後続する。各反復単位(本明細書において「R」として表される)は同一であり、また約8500ダルトンの分子質量を有する82個のアミノ酸からなり、246個のヌクレオチドによりコードされる。AlpC抗原のC末端領域は、いくつかのグラム陽性表面タンパク質中に存在する細胞壁アンカードメインモチーフを含有する。
【0042】
配列番号14はAlpCのより短いN末端領域を示す:
STIPGSAATLNTSITKNIQNGNAYIDLYDVKLGKIDPLQLIVLEQGFTAKYVFRQGTKYYGDVSQLQSTGRASLTYNIFGEDGLPHVKTDGQIDIVSVALTIYDSTTLRDKIEEVRTNANDPKWTEESRTEVLTGLDTIKTDIDNNPKTQTDIDSKIVEVNELEKLLVLS
AlpCのより短いN末端領域、すなわち配列番号14と、国際公開第2008127179号においてAlpCのN末端に関して提示される配列との間の差異は、アミノ酸5個分の長さの先導配列GPLGS、配列番号44に該当する。
【0043】
配列番号14のアミノ酸配列をコードする核酸DNA分子は配列番号8、10、12で表され、配列番号10は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、及び配列番号12はCricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0044】
配列番号14のアミノ酸配列をコードする対応する核酸RNA分子は配列番号9、11、13で表され、配列番号11は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、及び配列番号13はCricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0045】
用語「配列同一性」は、等しい長さの2つのアミノ酸配列間、又は等しい長さの2つのヌクレオチド配列間の相同性について、その程度の定量的指標を表す。比較される2つの配列の長さが等しくない場合には、該2つの配列は、考え得る最良の当て嵌めとなるようにアライメントされなければならない。配列同一性は、例えばBLASTプログラム、例えばBLASTPプログラム又はBLASTNプログラムにより計算可能である(Pearson W.R 及び D.J.Lipman(1988年)PNAS USA、第85巻:2444~2448頁)(www.ncbl.nlm.nlh.gov/BLAST)。
【0046】
好ましくは、免疫原性融合タンパク質はアミノ酸配列からなる。170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなる第1のアミノ酸配列部分は、配列番号7で表される完全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0047】
165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなる第2のアミノ酸配列部分は、配列番号14で表される完全長アミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0048】
第1のアミノ酸配列部分は、最大178個のアミノ酸、例えば170~178個のアミノ酸、好ましくは174~175個のアミノ酸からなるべきである。記載の通り、配列番号7は175個のアミノ酸を含有する。該配列内の最初のMは任意選択的であり、従ってこの場合174個のアミノ酸となる。
【0049】
第1のアミノ酸配列部分は、配列番号7で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0050】
第2のアミノ酸配列部分は、最大174個のアミノ酸、例えば165~174個のアミノ酸、好ましくは169~170個のアミノ酸からなるべきである。記載の通り、配列番号14は170個のアミノ酸を含有する。配列内の最初のAは任意選択的であり得、従ってこの場合169個のアミノ酸となる。
【0051】
第2のアミノ酸配列部分は、配列番号14で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0052】
リンカーアミノ酸配列部分は任意選択的である。換言すれば、リンカーアミノ酸配列部分は、含まれる場合、0~20個のアミノ酸からなり得る。リンカーアミノ酸配列部分内のアミノ酸は、ランダムに、すなわちランダムコイル形成が得られるように選択され得る。リンカーアミノ酸配列部分は、存在する場合には、第1のアミノ酸配列部分を第2のアミノ酸部分から分離する。換言すれば、リンカーアミノ酸配列部分は、第1のアミノ酸配列部分と第2のアミノ酸部分との間に設けられる。
【0053】
第1及び第2のアミノ酸配列部分の一方は、第1及び第2のアミノ酸配列部分の他方から最も遠ざかった端部に位置する先導/後続アミノ酸配列部分と共に提供され得る。先導/後続アミノ酸配列部分は1つ又は複数のアミノ酸を含み得る。
【0054】
免疫原性融合タンパク質は、335~372個のアミノ酸、好ましくは343~353個のアミノ酸、より好ましくは343~347個のアミノ酸からなるのが好ましい。
【0055】
本発明の第1の態様による免疫原性融合タンパク質の好ましい実施形態では、
-第1のアミノ酸配列部分は、配列番号7で表される配列のアミノ酸1~175又は2~175を含むか又は好ましくはそれからなり、及び
-第2のアミノ酸配列部分は、配列番号14で表される配列のアミノ酸1~170又は2~170を含むか又は好ましくはそれからなる。
【0056】
配列番号7は175個のアミノ酸を含有する。アミノ酸2~175は、最初のメチオニン(M)を除き、配列番号7内のアミノ酸の配列に対応する。
【0057】
本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質の好ましい実施形態では、アミノ酸配列はリンカーアミノ酸配列部分を含み、並びにリンカーアミノ酸配列部分は、1~10個のアミノ酸、好ましくは2~5個のアミノ酸、より好ましくは2個のアミノ酸、及び最も好ましくはアミノ酸配列EFからなる。
【0058】
リンカーアミノ酸配列部分がアミノ酸EF(グルタミン酸-フェニルアラニン)からなる場合、第2のアミノ酸配列部分は、配列番号14で表される配列のアミノ酸2~170を含むか又は好ましくはそれからなるのが好ましい。
【0059】
好ましくは、免疫原性融合タンパク質は、好ましくは配列番号21で表されるアミノ酸配列のすべてと、少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、免疫原性融合タンパク質は、配列番号21で表されるアミノ酸の配列からなり、或いは免疫原性融合タンパク質は配列番号21のアミノ酸2~347からからなる。
【0061】
図と関連して示すように、そのような免疫原性融合タンパク質は、国際公開第2008127179号で開示される免疫原性融合タンパク質よりも短いが、なおも良好な効果を有し、またGBSに対するワクチンで使用するのに適する。
【0062】
更に、実施例4及び5に示すように、先導配列(配列番号43)を除去することによるそのようなより短尺のアミノ酸配列は、特に内皮細胞との接着及び/又はそれへの浸潤に対してより有効であり及び/又は改善した防御を提供することにより、GBSに対する防御を提供する際により有効であり且つ改善している。
【0063】
配列番号21は、アミノ酸配列:
MAEVISGSAVTLNTNMTKNVQNGRAYIDLYDVKNGKIDPLQLITLNSPDLKAQYVIRQGGNYFTQPSELTTVGAASINYTVLKTDGSPHTKPDGQVDIINVSLTIYNSSALRDKIDEVKKKAEDPKWDEGSRDKVLISLDDIKTDIDNNPKTQSDIANKITEVTNLEKILVPRIPEFSTIPGSAATLNTSITKNIQNGNAYIDLYDVKLGKIDPLQLIVLEQGFTAKYVFRQGTKYYGDVSQLQSTGRASLTYNIFGEDGLPHVKTDGQIDIVSVALTIYDSTTLRDKIEEVRTNANDPKWTEESRTEVLTGLDTIKTDIDNNPKTQTDIDSKIVEVNELEKLLVLS
に対応する。
【0064】
配列番号21に基づくより短尺の融合タンパク質と、国際公開第2008127179号の融合タンパク質について提示される配列との間の差異は、アミノ酸32個分の長さの先導配列:GPLGSASVLIGISFLGGFTQGQFNISTDTVFA-配列番号43であり、配列番号21には見出されない配列である。
【0065】
本発明の第1の態様による免疫原性融合タンパク質の更なる実施形態では、免疫原性融合タンパク質はグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、若しくはリン酸化により、又は更に下記する本発明の第3の態様に関して記載される莢膜多糖類若しくはRSV抗原にコンジュゲートすることにより改変される。
【0066】
そのような融合タンパク質は強化された免疫原性を有し得るので、これは有利である。融合タンパク質の免疫原性を実質的に増加させるために、過度の実験を行わなくても使用され得る非常に多くの技術が利用可能であり、また当業者に周知されている。例えば、融合タンパク質は、ジニトロフェノール基又はアルサニル酸とカップリングさせることにより、或いは熱及び/又はSDSを用いた変性により改変され得る。或いは、融合タンパク質は免疫原性担体とカップリングし得る。カップリング戦略におけるいくつかの一般的検討事項のレビューについては、Antibodies、A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory、ed.E.Harlow and D.Lane(1988年)を参照されたい。有用な免疫原性担体は当技術分野において周知されている。そのような担体の例は、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH);アルブミン、例えばウシ血清アルブミン(BSA)やオバルブミン等、PPD(ツベルクリンの精製済みタンパク質誘導体);赤血球;破傷風トキソイド;コレラトキソイド;アガロースビーズ;活性炭;又はベントナイトである。
【0067】
更なる実施形態では、免疫原性融合タンパク質は、莢膜多糖類、好ましくは細菌多糖類、より好ましくはB群連鎖球菌多糖類にコンジュゲートしている。
【0068】
多糖類とは、通常グリコシド結合によりリンクした単糖残基からなる任意の直鎖状又は分岐状ポリマーを意味し、従ってオリゴ糖を含む。好ましくは、多糖類は、2~50個の単糖ユニット、より好ましくは6~30個の単糖ユニットを含有する。
【0069】
多糖類コンポーネントは、多くのグラム陽性及びグラム陰性菌病原体、例えばインフルエンザ菌(H.influenzae)、髄膜炎菌(N.meningitidis)、及びストレプトコッカス・ニューモニエ(S.pneumoniae)等から得られた多糖類カプセルの多糖類コンポーネントに基づくか又はそれに由来し得る。本発明の融合タンパク質にコンジュゲートし得る多糖類コンポーネントの起源となるその他の細菌として、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、シュードモナス属(Pseudomonas)、腸チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及びシゲラ・ディセンテリアエ(Shigella dysenteriae)が挙げられる。本発明のこの態様に基づく使用に適する多糖類コンポーネントとして、Hibオリゴ糖、緑膿菌由来のリポ多糖類、サルモネラ属(Salmonella)由来のリポ多糖類、及びシゲラ・ディセンテリアエ由来のO-特異的多糖類が挙げられる。
【0070】
本発明に基づく使用に適するその他の多糖類コンポーネントは当業者において周知される。
【0071】
細菌莢膜多糖類の断片は、任意の適する方法により、例えば酸加水分解又は超音波照射等により生成され得る。多糖類コンポーネントを調製するその他の方法は当業者において周知される。
【0072】
多糖類は、好ましくはB群連鎖球菌に由来する莢膜多糖類又はその等価物である。
多糖類は、好ましくは共有結合により融合タンパク質とカップリングすべきである。多糖類とタンパク質をカップリングする特に好ましい方法は還元的アミノ化である。その他の方法として、臭化シアンを用いた多糖類の活性化とそれに後続するアジピン酸ジヒドラジド(スペーサー)を用いた反応及び可溶性カルボジイミドを使用するキャリアタンパク質のカルボキシド基へのコンジュゲーション;アジピン酸ジヒドラジドを用いたキャリアタンパク質の機能化とそれに後続する臭化シアン活性化多糖類とのカップリング、キャリアタンパク質及び多糖類の両方の化学修飾とそれに後続するそのカップリングが挙げられる。
【0073】
多糖類分子は、スペーサー分子、例えばアジピン酸等により融合タンパク質とカップリングし得る。このスペーサー分子は、多糖類に対する融合タンパク質のカップリングを促進するのに使用可能である。カップリング反応を実施した後に、コンジュゲートは、未反応のタンパク質又は多糖類コンポーネントを取り除くために、透析濾過又はその他の公知の方法により精製され得る。
【0074】
多糖類がGBSとは異なる細菌性病原体に由来する場合には、コンジュゲートは、2つ以上の病原体、例えば、複数種類の細菌に対して免疫性を誘発し得る。これは、免疫原性融合タンパク質の潜在的に重要な応用である。
【0075】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子と関係する。
【0076】
そのような核酸分子は、例えば分離及び取得される免疫原性融合タンパク質の起源となる細胞培養物において直接的に、又は例えば、免疫化するために免疫原性融合タンパク質が発現される対象内で間接的に、免疫原性融合タンパク質を製造する際に使用可能である。
【0077】
核酸分子は、例えばDNA分子又はRNA分子である可能性がある。RNA分子はmRNA分子であり得る。
【0078】
核酸分子は、配列番号8~13のうちの1つと少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する第2のポリヌクレオチドに、直接又はリンカーポリヌクレオチド配列を介して融合した、配列番号1~6のうちの1つに対して少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する第1のポリヌクレオチドを含み得るか又は好ましくはそれからなり得る。
【0079】
リンカーポリヌクレオチド配列は任意選択的であるが、核酸分子によりコードされる免疫原性融合タンパク質が、第1のアミノ酸配列部分と第2のアミノ酸配列部分との間に提供されるリンカーを有することとする場合に含まれる。第1のポリヌクレオチドが第2のポリヌクレオチドに直接融合する場合には、核酸分子中に存在するはずのリンカーポリヌクレオチド配列は存在しない。
【0080】
上記で引用した配列番号1~6及び配列番号8~13のそれぞれは、核酸分子によりコードされる免疫原性融合タンパク質の第1のアミノ酸配列部分内のイニシャルメチオニン(M)、及び第2のアミノ酸配列部分内のイニシャルアラニン(A)をコードする最初の3つの塩基を取り除くことにより任意選択的にトランケートされ得る。
【0081】
核酸分子は、1つ又は複数の終止コドンを任意選択的に含み得る。
核酸分子は、1つ又は複数の開始コドンを任意選択的に含み得る。
【0082】
核酸分子は、特定の生物、例えば大腸菌又はCricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞等において発現させるためにコドン最適化され得る。
【0083】
本発明の第2の態様に基づく核酸分子の好ましい実施形態では、核酸分子は、配列番号15~20のうちの1つで表されるヌクレオチドの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。好ましくは、核酸分子は、配列番号15~20のうちの1つで表されるヌクレオチドの配列と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。これらの好ましい実施形態において引用された配列番号15~20のそれぞれは、核酸分子によりコードされる免疫原性融合タンパク質の第1のアミノ酸配列部分内のイニシャルメチオニン(M)をコードする最初の3つの塩基を取り除くことにより、任意選択的にトランケートされ得る。更に、これらの好ましい実施形態において引用された配列番号15~20のそれぞれは、2つの終止コドンの最後1~6の塩基を取り除くことにより、任意選択的にトランケートされ得る。これは、例えば、核酸分子がDNA又はRNAワクチンとして使用されるときに使用され得る-転写及び/又は翻訳が核酸分子の末端において停止する。
【0084】
核酸分子は、好ましくは、1044個(イニシャルMを含まない)~1047個(イニシャルMを含む)の塩基からなり得る。
【0085】
本発明の第3の態様は、本発明の第2の態様に基づく核酸分子を含むベクターと関係する。
【0086】
多種多様な発現宿主/ベクターの組合せが、核酸分子を発現させる際に採用され得る。真核生物宿主に対する有用発現ベクターとして、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、サイトメガロウイルス、及びレトロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に対する有用発現ベクターとして、細菌プラスミド、例えばpBluescript、pGEX2T、pUCベクター、col E1、pCR1、pBR322、pMB9、及びその誘導体を含む、大腸菌に由来するもの等、より広範囲の宿主プラスミド、例えばRP4、ファージDNA等、例えば非常に多くのファージラムダの誘導体、例えばラムダGT10及びラムダGT11、NM989、及びその他のDNAファージ、例えばM13及び線維状一本鎖DNAファージ等が挙げられる。酵母菌細胞に対する有用発現ベクターとして、2.mu.プラスミド及びその誘導体が挙げられる。昆虫細胞に対する有用ベクターとしてpVL941が挙げられる。
【0087】
それに加えて、多種多様な発現制御配列のいずれも、これらのベクターにおいて核酸分子を発現させるために使用され得る。有用な発現制御配列として、上記発現ベクターの構造遺伝子と関連する発現制御配列が挙げられる。有用な発現制御配列の例として、例えばSV40又はアデノウイルスの初期及び後期プロモーター、lac系、trp系、TAC又はTRC系、T3及びT7プロモーター、ファージラムダの主要なオペレーター及びプロモーター領域、fd外被タンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ又はその他の糖分解酵素に対するプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、例えばPho5、酵母菌アルファ交配系のプロモーター、並びに原核若しくは真核細胞、又はそのウイルス及びその様々な組合せにおいて、それらの遺伝子の発現をコントロールすることが公知のその他の構成的及び誘導的プロモーター配列が挙げられる。
【0088】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を発現するか、又は本発明の第2の態様に基づく核酸分子、又は本発明の第3の態様に基づくベクターを含む宿主細胞と関係する。
【0089】
宿主細胞は、グラム陰性細菌細胞、グラム陽性細菌細胞、酵母菌細胞、昆虫細胞、動物細胞、アフリカミドリザル細胞、ヒト細胞、又は植物細胞であり得る。宿主細胞は、大腸菌、シュードモナス属、バシルス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、アスペルギルス属(aspergillus)、ラクトバチルス属(lactobacillus)、シゲラ属(shigella)、サルモネラ属、リステリア属(listeria)、連鎖球菌属、スタフィロコッカス属(staphylococcus)、及び菌類からなる群から選択され得る。しかしながら、大腸菌が好ましい。
【0090】
更に、昆虫細胞、例えばヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(SF9)等、動物細胞、例えばCHO及びマウス細胞等、アフリカミドリザル細胞、例えばCOS1、COS7、BSC1、BSC40、及びBMT10等、ヒト細胞、並びに組織培養における植物細胞が使用され得る。好ましい宿主生物として、細菌、例えば大腸菌やB.サブチリス(B.subtilis)等、及び組織培養における哺乳動物細胞が挙げられる。
【0091】
宿主細胞が、免疫原性融合タンパク質を生成するのに使用されるか、又はその第1及び第2のアミノ酸配列部分を生成するのに使用されるか、又はリンカーアミノ酸配列部分を生成するのに使用されるとき、生成したアミノ酸配列部分は微生物培養物又は細胞培養物から単離され、及び様々な従来法のいずれか(HPLC、FPLC等を使用する液体クロマトグラフィー(例えば、順相又は逆相等);アフィニティークロマトグラフィー(例えば、無機リガンド又はモノクローナル抗体等を用いた);イオン交換クロマトグラフィー、粒径排除クロマトグラフィー;固定化金属キレートクロマトグラフィー;ゲル電気泳動;タンジェンシャルフロー濾過等を含む)を使用して精製され得る。当業者は、本発明の範囲から逸脱せずに最も適する単離及び精製技術を選択し得る。
【0092】
それに加えて、免疫原性融合タンパク質、その第1及び第2のアミノ酸配列部分、又はリンカーアミノ酸配列部分は、いくつかの化学的技法のいずれかにより生成され得る。例えば、それらは固相合成技術を使用して調製され得るか、又は溶液状態での合成により調製され得る。
【0093】
本発明の第5の態様は、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、又は本発明の第4の態様に基づく宿主細胞のうちの1つ又は複数を含むワクチンと関係する。
【0094】
免疫原性融合体、核酸分子、ベクター、及び/又は宿主細胞のそれぞれの量は、好ましくは薬学的に有効な量、又はB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発する能力を有する量、又は免疫応答を誘発するのに十分な量である。更に、量は、例えばワクチン投与を受ける対象の活動及び応答における臨床的に重要な欠陥を低減し、及び最も好ましくは防止するのに十分な量等であり得る。或いは、量は、宿主又は対象における臨床的に重要な状態の改善を引き起こすのに十分な量である。
【0095】
当業者により認識されるように、化合物の量はその比活性に応じて変化し得る。適する投与量は、望ましい治療効果を生成するように、必要とされる稀釈剤;すなわち担体又は添加剤と関連して計算された事前決定量の活性組成物を含有し得る。更に、投与される投薬量は、使用される有効成分(1つ又は複数)、処置される個体の年齢、体重等に応じて変化する。ワクチンは、好ましくはB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発する能力を有する。
【0096】
図で指摘する通り、免疫原性融合タンパク質は、対象に投与されるとき、免疫応答を誘発する。そのような免疫応答は、核酸分子を、免疫原性融合タンパク質を発現させるために後に転写及び翻訳されるDNA核酸分子として、又は免疫原性融合タンパク質に翻訳され、それを発現するためのRNA若しくはmRNA核酸分子として、そのいずれかによって間接的に投与することにより取得することも可能である。核酸分子は、転写及び/又は翻訳のコントロールを高めるためにベクター内に提供され得るが、またベクターは、ひいては、免疫原性融合タンパク質の発現を更にコントロールし、及び/又は増加させるために宿主細胞内に提供可能である。
【0097】
ワクチンは、薬学的に許容される媒体、及び任意選択的にアジュバントを更に含み得る。用語「薬学的に許容される媒体」は、医薬製剤で一般的に使用される任意の適する許容される賦形剤、アジュバント、担体、稀釈剤を意味するように意図される。
【0098】
ワクチンは、ワクチン組成物を包含し得る。
ワクチンは、その他の薬理学的に許容される成分、例えば塩、バッファー、免疫活性コンポーネント、アジュバント(AlOH)、湿潤剤、乳化及び懸濁剤、又は甘味料、香味料、芳香剤、又は組成物の有効性を改善するのに望ましいその他の物質等を更に含み得る。組成物は、その投与がレシピエント個体により許容され得る場合に「薬理学的に許容される」と言われる。
【0099】
アジュバントは、特定の免疫応答を特別に増強するのに使用可能である物質である。通常、アジュバント及び組成物は免疫系に提示される前に混合されるか、又は個別に、但し免疫化される動物又はヒトの同一部位内に提供される。アジュバントは、その組成に基づき、いくつかの群におおまかに分割され得る。このような群には、オイルアジュバント(例えば、フロイント完全及び不完全アジュバント)、無機塩、例えばAlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、AlOH、シリカ、カオリン、及びカーボン)、ポリヌクレオチド(例えば、ポリIC及びポリAU酸)、及びある特定の天然物質(例えば、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD)、並びにコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)又は百日咳菌(Bordetella pertussis)、及びブルセラ(Brucella)属のメンバーに見出される物質が含まれる。
【0100】
アルハイドロゲル(例えば、水酸化アルミニウム、Al(OH)3)は、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質にとって特に有効なアジュバントであり、従って本発明の第5の態様に基づくワクチンにおいて特に有用である。
【0101】
ワクチン及びワクチン組成物を調製及び製剤化するための方法は、当業者に周知されている。成分の選択は、例えば組成物の投与経路に応じて変化する。例えば、非経口投与用の組成物として、滅菌水性又は非水性の溶液、懸濁物質、及びエマルジョンが挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油、例えばオリーブ油等、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチル等である。担体又は閉鎖性包帯が、皮膚透過性を増加させ、そして抗原吸収を強化するのに使用可能である。経口投与用の液体投与剤形は、液体投与剤形を含有するリポソーム溶液を一般的に含み得る。リポソームを懸濁するための適する形態として、当技術分野で一般的に使用される不活性稀釈剤、例えば精製水等を含有するエマルジョン、懸濁物質、溶液、シロップ、及びエリキシル剤が挙げられる。
【0102】
ワクチンは、哺乳動物及び鳥類を含むヒト又は動物、例えば齧歯類(マウス、ラット、モルモット、又はウサギ);鳥類(シチメンチョウ、メンドリ又はニワトリ);その他の家畜(ウシ、ウマ、ブタ、又は子ブタ);ペット(イヌ、ネコ、及びその他のペット);及びヒト等に投与され得る。多くの動物が本発明のワクチンで処置され得るものの、処置の対象となる好ましい個体は、ヒト又は商業的に有用な動物及び家畜、例えば魚、例えばティラピアやラクダ等である。
【0103】
ワクチンは、当技術分野において公知の方法に基づき、個体に対して投与可能である。そのような方法は、例えば、非経口的、例えば皮膚内に又はそれを通じて注射するすべての経路:例えば、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内、粘膜、粘膜下、又は皮下等の経路を通じた適用を含む。また、そのような方法は、眼、鼻、口、肛門、若しくは膣の粘膜上皮に対する又は身体の任意の部分に位置する外部皮膚の表皮上へのドロップ剤、スプレー剤、ゲル剤、又は軟膏剤として、局所投与により適用される場合もある。その他の考え得る適用経路は、呼吸気管を経由する吸入を通じたスプレー剤、エアゾール剤、又は散剤の適用による。この最後のケースでは、使用される粒子サイズが、呼吸気管内に粒子がどの程度進入するかその深さを決定する。或いは、適用は、例えば、散剤、液剤、若しくは錠剤として食物、飼料、又は飲料水と組み合わせることにより、或いは液剤、ゲル剤、錠剤、若しくはカプセル剤として口内に、又は坐剤として肛門に直接投与することにより消化経路を経由し得る。
【0104】
多くの異なる技術が、免疫化の時期を調節するために存在する。免疫化される動物によって発現される免疫グロブリンレパートリーの発現において、そのレベル及び多様性を増加させるために、ワクチン又はコンポーネントa~dを2回以上投与することが可能である。一般的に、複数の免疫化が実施される場合、免疫化は1週間~3ヶ月の間隔を置いて、例えば2週間~2ヶ月の間隔、例えば1~2ヶ月の間隔、又は4週間の間隔を置いて実施され得る。
【0105】
更に、ワクチン又はコンポーネントa~dの1回又はおそらくはそれより多数回のブースター注射が投与される場合がある。好ましくは、ブースター注射は、初回注射(単回又は複数回)から約1~6ヶ月後に投与され得る。
【0106】
本発明の第5の態様に基づくワクチンは、好ましくは、1つ又は複数の追加の免疫活性成分を含み得る。追加の免疫活性コンポーネントは、抗原、免疫増強物質、及び/又はワクチンであり得るが、これらのいずれもアジュバントを含み得る。
【0107】
従って、本発明の第5の態様に基づくワクチンの好ましい実施形態では、ワクチンは、
a)配列番号42で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むか又はそれからなる更なる免疫原性融合タンパク質、
b)更なる免疫原性融合タンパク質をコードする更なる核酸分子であって、好ましくは配列番号36~41の1つで表されるヌクレオチドの配列と少なくとも90%の配列同一性を有する更なる核酸分子、
c)更なる核酸分子を含む更なるベクター、或いは
d)更なる免疫原性融合タンパク質を発現するか又は更なるベクターを含む更なる宿主細胞
のうちの1つ又は複数を更に含む。
【0108】
下記で更に議論されるように、更なる免疫原性融合タンパク質は、国際公開第2017/068112号でもやはり開示されるようなGBS表面タンパク質Alp1及びAlp2/3のN末端領域に由来する。図に示し、また以下で議論されるように、免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質の両方を含むワクチンを使用するとき、相乗的効果が認められる。
【0109】
更に、1つ又は複数の追加のコンポーネントa~dを含めることにより、ワクチンは、すべてのB群連鎖球菌系統に対してより広い防御範囲を提供し得る。免疫原性融合タンパク質について上記したことと類似して、更なる免疫原性融合タンパク質は、更なる核酸分子、更なるベクター、及び更なる宿主細胞により間接的に発現され得る。
【0110】
a~dのそれぞれの量は、好ましくは薬学的に有効な量、又はB群連鎖球菌に対して防御免疫を誘発する能力を有する量、又は免疫応答を誘発するのに十分な量、又は少なくともワクチンに対する一般的な免疫応答を増加させるのに十分な量であるべきである。
【0111】
上記のように、更なる免疫原性融合タンパク質は、配列番号42で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば95、96、97、98、又は99%の配列同一性を有し、配列番号42は下記のアミノ酸配列:
MAEVISGSAATLNSALVKNVSGGKAYIDIYDVKNGKIDPLNLIVLTPSNYSANYYIKQGGRIFTSVNQLQTPGTATITYNILDENGNPYTKSDGQIDIVSLVTTVYDTTELRNNINKVIENANDPKWSDDSRKDVLSKIEVIKNDIDNNPKTQSDIDNKIVEVNELEKLLVLPEFSTIPGSAATLNTSITKNIQNGNAYIDLYDVKNGLIDPQNLIVLNPSSYSANYYIKQGAKYYSNPSEITTTGSATITFNILDETGNPHKKADGQIDIVSVNLTIYDSTALRNRIDEVINNANDPKWSDGSRDEVLTGLEKIKKDIDNNPKTQIDIDNKINEVNEIEKLLVVSL
を表す。
【0112】
配列番号42のアミノ酸配列をコードする核酸DNA分子、すなわち(b)に包含される核酸DNA分子は配列番号36、38、及び40で表され、配列番号38は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号40は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0113】
配列番号42のアミノ酸配列をコードする対応する核酸RNA分子は、配列番号37、39、及び41で表され、配列番号39は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号41は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0114】
上記のように、更なる免疫原性融合タンパク質は、GBS表面タンパク質Alp1及びAlp2/3のN末端領域に由来する。
【0115】
Alp1タンパク質はイプシロンタンパク質としても知られており、またB群連鎖球菌アルファタンパク質様タンパク質である。
【0116】
Alp1のN末端領域のアミノ酸配列は、配列番号28:
MAEVISGSAATLNSALVKNVSGGKAYIDIYDVKNGKIDPLNLIVLTPSNYSANYYIKQGGRIFTSVNQLQTPGTATITYNILDENGNPYTKSDGQIDIVSLVTTVYDTTELRNNINKVIENANDPKWSDDSRKDVLSKIEVIKNDIDNNPKTQSDIDNKIVEVNELEKLLVLP
により提示される。
【0117】
配列番号28のアミノ酸配列をコードする核酸DNA分子は、配列番号22、24、及び26で表され、配列番号24は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号26は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0118】
配列番号28のアミノ酸配列をコードする対応する核酸RNA分子は、配列番号23、25、及び27で表され、配列番号25は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号27は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0119】
Alp2タンパク質は、別のアルファタンパク質様タンパク質である。その他のファミリーメンバーと同様に、Alp2タンパク質は、N末端ドメイン及びC末端に向かっていくつかの反復したドメインを有する。Alp2及びAlp3のN末端領域は同一である。Alp3は、R28としても知られている別のアルファタンパク質様タンパク質である。Alp3は、S.ピオゲネス(S.pyrogenes)においても見出されるR28タンパク質と非常に類似している。
【0120】
Alp2のN末端領域のアミノ酸配列は、配列番号35:
STIPGSAATLNTSITKNIQNGNAYIDLYDVKNGLIDPQNLIVLNPSSYSANYYIKQGAKYYSNPSEITTTGSATITFNILDETGNPHKKADGQIDIVSVNLTIYDSTALRNRIDEVINNANDPKWSDGSRDEVLTGLEKIKKDIDNNPKTQIDIDNKINEVNEIEKLLVVSL
により提示される。
【0121】
配列番号35のアミノ酸配列をコードする核酸DNA分子は、配列番号29、31、及び33で表され、配列番号31は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号33は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0122】
配列番号35のアミノ酸配列をコードする対応する核酸RNA分子は、配列番号30、32、及び34で表され、配列番号32は大腸菌内で発現させるためにコドン最適化されており、また配列番号34は、Cricetulus griseus(チャイニーズハムスター卵巣)細胞内で発現させるためにコドン最適化されている。
【0123】
配列番号42は、従って、アミノ酸EFからなるリンカーアミノ酸配列部分を介して配列番号35(Alp2/3のN末端)に融合した配列番号28(Alp1のN末端)に対応する。
【0124】
第2の免疫原性融合タンパク質は、
i.配列番号28で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する更なる第1のアミノ酸配列部分と、
ii.配列番号35で表されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する更なる第2のアミノ酸配列部分と、任意選択的に
iii.1~20個のアミノ酸からなり、及び更なる第1のアミノ酸配列部分を更なる第2のアミノ酸部分から分離する更なるリンカーアミノ酸配列部分と
からなるアミノ酸配列を含むか又はそれからなり得る。
【0125】
配列番号28及び42のそれぞれにおいて、イニシャルMは任意選択的であり得る。従って、本発明の第5の態様に基づくワクチンの好ましい実施形態では、ワクチンは、
a)本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質であって、配列番号21で表されるアミノ酸の配列からなり、或いは配列番号21のアミノ酸2~347からなる免疫原性融合タンパク質と、
b)配列番号42で表されるアミノ酸の配列を含み、好ましくはそれからなり、或いは配列番号42のアミノ酸2~347を含み、好ましくはそれからなる更なる免疫原性融合タンパク質と
を含む。
【0126】
このような実施形態では、好ましくは、規定された免疫原性融合タンパク質及び規定された更なる免疫原性融合タンパク質とは異なるその他のタンパク質又はアミノ酸配列はワクチン内に存在しない。
【0127】
本発明の第5の態様に基づくワクチンの好ましい実施形態では、ワクチンはアジュバントとして水酸化アルミニウムを更に含む。このような実施形態では、ワクチンは、好ましくは医薬組成物であり、また薬学的に許容される賦形剤、稀釈剤、又は担体を更に含む。
【0128】
本発明の第6の態様は、i)B群連鎖球菌感染症に対するワクチン接種、又はii)B群連鎖球菌感染症の処置における使用のための、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、本発明の第4の態様に基づく宿主細胞、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンと関係する。
【0129】
免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、宿主細胞、又はワクチンは、免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、宿主細胞、又はワクチンを、それを必要としている対象に投与することにより、そのようなワクチン接種又は処置を行うのに使用され得る。
【0130】
対応する本発明の第7の態様は、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、本発明の第4の態様に基づく宿主細胞、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンを、それを必要としている対象に投与することにより、i)B群連鎖球菌感染症に対するワクチン接種、又はii)B群連鎖球菌感染症の処置を行う方法と関係する。
【0131】
対応する本発明の第8の態様は、i)B群連鎖球菌感染症に対するワクチン接種、又はii)B群連鎖球菌感染症の処置用の医薬組成物又は医薬、例えばワクチン等を製造するための本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、本発明の第4の態様に基づく宿主細胞の使用と関係する。
【0132】
本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、本発明の第4の態様に基づく宿主細胞、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンは、従ってB群連鎖球菌により引き起こされる感染症を予防又は処置する方法で使用され得る。
【0133】
母親及び若年小児の両方を対象としてB群連鎖球菌の感染症から保護する場合、ワクチンを用いた母体の免疫学的予防が潜在的経路として長く提案されてきた。
【0134】
従って、本発明の第6、第7、及び第8の態様の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、本発明の第2の態様に基づく核酸分子、本発明の第3の態様に基づくベクター、本発明の第4の態様に基づく宿主細胞、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンが、女性ヒト対象に投与される。
【0135】
投与は、従ってGBS感染症に対する免疫性をヒト女性の未生の子供に付与する能力を有する。更に、投与は、男性が老齢の場合には、男性に対しても実施され得る。
【0136】
この実施形態によれば、女性及び胎児又は新生児の両方を保護する役目を果たす抗体の生成(胎盤を横断する抗体の受身移入を介して)を引き起こすのに十分な時間と量という条件下で、免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、宿主細胞、又はワクチンが、非妊娠女性又は妊娠女性に投与される。
【0137】
用語「~を予防すること又は処置すること」とは、本発明に関連するその様々な文法的形態において、(1)B群連鎖球菌感染症と関連する障害の有害効果、(2)障害の進行、又は(3)障害病原体(B群連鎖球菌)を予防、治癒、逆転、減弱、緩和、良化、阻害し、最低限に抑え、抑制するか、又は停止させることを指す。更に、用語「~を予防すること又は処置すること」は、B群連鎖球菌感染症に対して個体がその全体的又は部分的な免疫性を構築することを含むように想定される。
【0138】
本発明の第9の態様は、B群連鎖球菌により引き起こされた感染症を予防又は処置するための方法であって、第2の個体を、本発明の第1~第5の態様に基づく免疫原性融合タンパク質、核酸分子、ベクター、宿主細胞、又はワクチンに曝露することから誘発される有効量の抗体を、それを必要としている個体に投与することを含む方法と関係する。
【0139】
この態様によれば、B群連鎖球菌に対する抵抗性又は免疫性が、受動免疫化により個体に付与され、すなわち、誘発された抗血清が回収され、そしてB群連鎖球菌により引き起こされた感染症を有するものと疑われるレシピエントに直接提供される。そのような抗血清は、抗血清が胎児又は新生児いずれかを保護する(胎盤を横断する抗体の受身移入を介して)役目を果たすのに十分な時間と量という条件下で、妊娠女性(出産時又はその前に)に投与され得るものと想定される。
【0140】
本発明のワクチン又は抗血清は、従って感染症が発現する前(予期される感染症を予防又は減弱するために)、又は実際の感染症が開始した後のいずれかにおいて提供され得る。
【0141】
本発明の第10の態様は、免疫原性融合タンパク質を製造する方法であって、
-本発明の第4の態様に基づく宿主細胞を提供するステップと、
-宿主細胞を増倍させるステップと、
-本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を精製するステップと、
-免疫原性融合タンパク質を取得するステップと
を含む方法と関係する。
【0142】
或いは、免疫原性融合タンパク質は、無細胞発現系内で製造可能である。そのような系は、該当する組換え核酸から発現させるためのすべての必須因子(その特別な系において機能するプロモーターに作動可能にリンクしている)を含む。
【実施例】
【0143】
実施例1-健康女性の免疫化
アジュバント(水酸化アルミニウム)を含め/含めないで、配列番号21からなる免疫原性融合タンパク質を単独で、又は配列番号42に基づく更なる免疫原性融合タンパク質と共に用いながら、成人健康女性を免疫化した。
【0144】
図1は、アジュバント(水酸化アルミニウム)を含め/含めないで、異なる投薬量において、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を単独で、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンに包含される更なる免疫原性融合タンパク質と組み合わせてのいずれかの、その1回投与を使用しながら免疫化した後29日目に取得されたIgGの増加倍率を示す。
【0145】
図1では、最初の7つの結果は、配列番号21からなる免疫原性融合タンパク質を単独で、又はアジュバント(水酸化アルミニウム)(0.5mg)と共に投与することにより取得された。
【0146】
図1から了解されるように、水酸化アルミニウムの使用は、10μgの用量でのIgG増加倍率を50μgの用量でのIgG増加倍率に匹敵する数値まで押し上げるので有益である。同様に、50μgの用量を水酸化アルミニウムと併用することで、250μgの用量に匹敵する増加倍率を実現する。
【0147】
図1は、水酸化アルミニウム、並びに配列番号21に基づく免疫原性融合タンパク質及び配列番号42に基づく更なる免疫原性融合タンパク質の両方を含むワクチンが使用されるとき、25μgの用量の免疫原性融合タンパク質それぞれは、配列番号21に基づく免疫原性融合タンパク質250μgの投薬量と比較して、同等か又はそれ以上の増加倍率を実現することを更に示す。水酸化アルミニウム及び50μgの各免疫原性融合タンパク質を使用することで、29日目に最高の増加倍率を実現した。各実験の対象の数(n)を図内に提示する。
【0148】
図2は、アジュバントを含め/含めないで、異なる投薬量において、本発明の第1の態様に基づく免疫原性融合タンパク質を単独で、又は本発明の第5の態様に基づくワクチンに包含される更なる免疫原性融合タンパク質と組み合わせてのいずれかの、その第1回投与及び第2回投与を使用しながら免疫化してから57日目に取得されたIgG増加倍率を示す。
【0149】
図2では、最初の7つの実験は、配列番号21からなる免疫原性融合タンパク質を単独で、又はアジュバント(水酸化アルミニウム)、0.5mgと共に投与することにより取得される。
【0150】
図2から了解されるように、水酸化アルミニウムと共に、配列番号21からなる免疫原性融合タンパク質を、50μg及び100μgの2用量で投与すると約100倍の増加倍率を実現する。しかしながら、水酸化アルミニウム、並びに配列番号21に基づく免疫原性融合タンパク質及び配列番号42に基づく更なる免疫原性融合タンパク質の両方を含むワクチンを使用したとき、より高い増加倍率が認められるといえども、免疫原性融合タンパク質それぞれの投薬量は25μg又は50μgにすぎない。
【0151】
各実験の対象の数(n)を図内に提示する。
実施例2-幼獣を保護するためのメスマウスの免疫化
図3は、B群連鎖球菌系統BM110(8×10
3cfu)により新生児細菌性感染症に罹患させた後のマウス幼獣の生存率を示す。幼獣は、a)アジュバント(水酸化アルミニウム(Al(OH)
3))と併用される配列番号21の免疫原性融合タンパク質、b)、又はコントロール(アジュバント(水酸化アルミニウム)のみ)のいずれかで免疫化したメスのマウスから生まれた。
図3に認められるように、配列番号21に基づく免疫原性融合タンパク質で免疫化された母親から生まれたマウス幼獣(破線)は、実験全体を通じて(感染後0~48時間)、コントロールの投与を受けた母親から生まれたマウス幼獣(実線)よりも有意に高い生存率を有した。従って、配列番号21の免疫原性融合タンパク質は、メスマウスに投与したとき、そのようなメスマウスから生まれたマウス幼獣を、GBS感染及び死亡から有意に防御した。免疫原性融合タンパク質は、Lindahlら、Nonimmunodominant Regions Are Effective As Building Blocks In A Streptococcal Fusion Protein Vaccine,Cell Host & Microbe、第2巻、427~434頁、2007年12月の
図2のパネルC及びパネルEにおいてマウスについて報告するものと類似する防御効果をGBS感染及び死亡に対して実現した。
【0152】
実施例3-上皮細胞浸潤試験
図4A~
図4Eは、臨床分離株及び配列番号21の免疫原性融合体を使用する免疫化から得られた抗血清を使用するヒト上皮細胞浸潤試験において得られた結果を示す。それぞれのバーは、コントロール(無血清)、0日目の免疫前の段階(D0)、及び57日目の免疫後の段階(D57)について相対的上皮細胞浸潤率(%)を示す。内皮細胞の浸潤阻害に対する良好な効果が認められる。従って、免疫原性融合タンパク質は、Lindahlら、Nonimmunodominant Regions Are Effective As Building Blocks In A Streptococcal Fusion Protein Vaccine、Cell Host & Microbe、第2巻、427~434頁、2007年12月の
図3のパネルBにおいて報告するものと類似する阻害効果を上皮細胞の浸潤に対して実現した。
【0153】
従って、
図1及び
図2は、更なる融合タンパク質と共に免疫原性融合タンパク質を投与することが有利であること、及びアジュバント、例えば水酸化アルミニウムを使用することもやはり有利であることを示す。とはいえ、免疫原性融合タンパク質は、低投薬量(10μg)であっても、またアジュバントを含めなくても、免疫応答、例えばIgG倍率増加を誘発した。
【0154】
更に、
図3及び
図4A~
図4Eは、免疫原性融合タンパク質がLindahlら、Nonimmunodominant Regions Are Effective As Building Blocks In A Streptococcal Fusion Protein Vaccine、Cell Host & Microbe、第2巻、427~434頁、2007年12月、及び国際公開第2008127179号で開示される免疫原性融合タンパク質について認められたものと類似した効果を実現することを示す。
【0155】
免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)それぞれのヒトに対する投薬量は、10μg~250μgの範囲、例えば10μg~100μg、例えば15μg~75μg、好ましくは25μg~75μg、例えば25μg~50μgであり得る。
【0156】
免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)それぞれのヒトに対する好ましい投薬量は、アジュバント、例えば水酸化アルミニウム等の存在下では、従って10~250μg、好ましくは10~150μg、好ましくは25~100μg、又は25~75μgの範囲内である。
【0157】
免疫原性融合タンパク質が、更なる免疫原性融合タンパク質と共に、及びアジュバント、例えば水酸化アルミニウム等の存在下で投与される場合には、各融合タンパク質の投薬量は、好ましくは15μg~75μg、好ましくは25μg~75μg、例えば25μg~50μgの範囲である。
【0158】
アジュバント、例えば水酸化アルミニウム等の非存在下では、免疫原性融合タンパク質、及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)それぞれのヒトに対する投薬量は、10~1000μg、好ましくは50~500μg、又は好ましくは100~250μgである。
【0159】
免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)が、対応する核酸分子、ベクター、又は宿主細胞の投与として間接的に投与される場合には、対応する核酸分子、ベクター、又は宿主細胞の投薬量は、好ましくは、免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)が対象に対して直接投与された場合に取得されるはずの免疫応答に類似した免疫応答が取得されるように選択される。
【0160】
好ましくは、免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)それぞれの投薬は繰り返される。従って、免疫原性融合タンパク質及び更なる免疫原性融合タンパク質(投与される場合)は、第1回投与において投与され、そして第1回投与後のある時間に第2回投与として繰り返される。第1回投与及び第2回投与は、1週間~3ヶ月の間隔、例えば2週間~2ヶ月の間隔、例えば1~2ヶ月の間隔、又は4週間の間隔が置かれる場合がある。
【0161】
実施例4-配列番号21に基づく融合タンパク質は、RibのN末端の保存された領域の遮蔽性が低下している
最初に記載した通り、本発明は、国際公開第2008127179号で開示される融合タンパク質に関する更なる研究に基づく。この研究では、免疫原性融合タンパク質配列(配列番号21)を同定したが、それは国際公開第2008127179号で開示された免疫原性融合タンパク質よりも短尺であるもののなおも良好な効果を有し、そして上記で議論された図に示すように、GBSに対するワクチンで使用するのに適する。
【0162】
本実施例は、より短尺の免疫原性融合タンパク質と国際公開第2008127179号の融合タンパク質との間の差異について更なる見識をもたらす。
【0163】
特に、配列間の差異は、アミノ酸32個分の長さの先導配列:GPLGSASVLIGISFLGGFTQGQFNISTDTVFA-配列番号43であり、この配列は配列番号21には見出されない。
【0164】
コンピューターシミュレーションを、配列番号43に基づく先導配列を含む国際公開第2008127179号の免疫原性融合タンパク質に関する配列上で実施した。シミュレーションは、システム内の各原子が明示的にモデル化される分子動力学に基づいた。隣接する原子が各原子に作用する力も計算し、そして短い時間間隔(一般的にフェムト秒)で各原子の相対的位置を更新するのに使用される。シミュレーションは分子軌道を生成し、全コンフォメーションが規定された時間間隔で書き出される。
【0165】
特に、国際公開第2008127179号の完全長融合タンパク質の高品質モデルを、Alphafold2、バージョンv2.1.0、Jumperら、Nature、第596巻、583~589頁(2021年)を使用して調製した。C末端ドメイン、すなわちAlpCのN末端は先導配列からはるか遠方に位置するので、それを除去し、アミノ酸32個の先導配列(配列番号43)及び合計204個のアミノ酸を含むN末端ribドメインを残した。Gromacs 2021.5を、以下のようにシステムを調製するのに使用した;Alphafold2モデルを、水(gmx solvate)を使用しながら立方体単位胞内で溶媒和させ、そしてイオンを添加してシステムを中性にした(gmx genion)。重原子の封じ込め及びそれに後続する平衡化ステップ(圧力及び温度(300K))を保つことによって、エネルギーを最低限に抑えた。システムが定常状態下にあることを検証した後に、以下のようなメインシミュレーションに進んだ。グローバルシステムの分子運動を、デルタタイムを2fsとして100ns間、合計50百万ステップについてシミュレーションを実施し、そしてシステムコンフォメーションを5000ステップ毎に保管し、10000モデルに及ぶ軌道を得た。
【0166】
グローバル軌道を分析し、ribドメインが基底状態の周辺で振動することを検証し、分子は現行条件下で安定であることを示すのに、MDanalysis v2.0.0を使用した。分析を3回反復した(Sim1~3)。
【0167】
部分的な結果として、先導配列(アミノ酸1~32)は、大規模なコンフォメーション変化を経た後、約60ns後に安定なコンフォメーションを見出すことが判明した。Gromacs mindist(gmx mindist)を使用して、先導配列との間の相互作用を計算した。先導配列とribドメインとの間の緊密且つ安定な相互作用を見出すために、シミュレーションの最後の30ns(3000モデル)について検討を行い、そして3回のシミュレーションの平均に基づき、時間の少なくとも30%(900以上のモデルにおける相互作用)において、発生した相互作用を計算した。このポイントでの相互作用を、アミノ酸の任意の原子間の最低距離(0.3nm以下)として定義した。結果を下記の表1に提示及び
図5Aに示すが、同図は、表面描画(ボール及びスティック描画で表わされた先導配列を含む)においてRibN末端を表す。RibN末端の表面描画は、高頻度接触(高い割合)に対応する白色から無接触又は稀な接触に対応する黒色で影付きにした。
【0168】
図5Bは、RibN末端(カートゥーン描画で示す)及び先導配列(ボール及びスティック描画で示す)の代替的描画を示す。RibN末端のカートゥーン描画は、高頻度接触(高い割合)に対応する白色から無接触又は稀な接触に対応する黒色で影付きにした。
【0169】
更に、ribドメインのアミノ酸保存を以下のように計算した;144個の完全ストレプトコッカス・アガラクティアエ(Streptococcus agalactiae)ゲノムをPatricBRCからダウンロードし、その中から95個のribドメインをblastp 2.9.0+を使用して見出した。95個の配列を、Muscle v3.8.1551を使用してアライメントし、そしてアミノ酸1個当たりの標準化後の情報量を、logomaker0.8を使用してコンピューター計算した。保存スコアを下記表1の保存(Cons.)カラムにおいて報告し、また
図5Cに示すが、同図は、表面描画(ボール及びスティック描画で表わされた先導配列を含む)においてRibN末端を表す。RibN末端の表面描画は、高保存スコアに対応する白色から無保存又は低保存スコアに対応する黒色で影付きにした。
【0170】
【0171】
【0172】
表1は、先導配列(アミノ酸1~32)とribドメイン(アミノ酸33~204)との間の安定な相互作用を示す。シミュレーションの最後30nsにおいてその少なくとも30%の時間相互作用する、先導配列とribドメインとの間の各アミノ酸の対をリスト化する。先導配列アミノ酸毎に最高割合を太字で示す。アミノ酸の保存性を見積もり、Cons.の行に示す。
【0173】
表1に認められるように、4つの構造要素の対が相互作用を支配する;1番目は、Ribドメインの主要なベータ-シート(129~133)の1つに納まるドメインに最も近い先導配列(29~32)のストレッチである。第2の要素は、2つのベータ-シートを結びつけるRibドメインのループ領域(126~127)と相互作用する先導配列アミノ酸23~26である。第3の相互作用は、いくつかのベータ-シート(84、113、127)と相互作用する先導配列アミノ酸12~16である。最終的に、先導配列の第1の部分(1~5)は、Ribドメインのループ(90~93)と相互作用する。
【0174】
これら相互作用する対は、保存されたアミノ酸の割合が高いRibのN末端部分と関係するが、このように割合が高いということは、これらの部分がRibタンパク質の意図する目的(GBS細菌による細胞の感染を促進する)にとって重要であることを示唆する。
【0175】
従って、表1の結果より、国際公開第2008127179号のRibN-AlpCN融合タンパク質の32個のアミノ酸からなる先導配列は、少なからず、融合タンパク質のRib部分のこれら重要な部分に納まり、それらと相互作用することが明らかである。このように、先導配列は時間的に、すなわち少なくとも30%の時間、これらの部分と相互作用し、それへのアクセスを減少させる。従って、免疫応答を誘発するために使用されるとき、先導配列が存在することでRibタンパク質のこのような重要部分に対する免疫系のアクセスが減少する。
【0176】
反対に、配列番号21に基づくより短尺の免疫原性融合タンパク質は先導配列を含まない。従って、免疫系のこれら重要な部分に対するアクセスを減少させる相互作用は一切存在しないと考えられ、その結果としてより良好な免疫応答が取得される。
【0177】
特に、先導配列とRibのドメインとの間の相互作用が、先導配列の異なるアミノ酸において生ずる。従って、国際公開第2008127179号の免疫原性融合タンパク質を短縮させることで、いずれの場合にも相互作用の低下をもたらし、そして免疫系が免疫原性融合タンパク質のRibNドメインのあらゆる部分に対してより良好にアクセスするようにする。従って、軽微な短縮化、例えば先導配列について、そのより少ない数のアミノ酸の除去等を行っても、やはり免疫系は免疫原性融合タンパク質のRibNドメインに対してより良好にアクセスするようにする。
【0178】
図5A~
図5Cに示すように、先導配列はRibのN末端の1つのエンドキャップと相互作用する。この観察の重要性について下記の実施例5において調査した。
【0179】
実施例5-Ribタンパク質がα1β1インテグリンと相互作用するとき、先導配列により遮蔽されたRibのN末端の保存された領域が上皮細胞との接着及びそれへの浸潤に関与する
実施例4で見出されたRibのN末端の保存された領域の意義について研究した。RibはGBS表面タンパク質であること、及びRibNに対する抗体は、上皮細胞への浸潤を含む、GBS感染に対する防御を提供することに留意しつつ、保存された領域は上皮細胞との接着及びそれへの浸潤促進に関与できるものと仮定した。
【0180】
α1β1インテグリンに関するアルファフォールド構造を、Bolducら、Microbiology(2007年)、第153巻、4039~4049頁で引用された配列から取得し、そして配列番号21に基づく融合部分に含まれるRibのN末端とα1β1インテグリンとの間の相互作用シミュレーションを実施した。
図6は結果を表し、α1β1インテグリンを黒色の表面描画で示し、及びRibのN末端を薄い灰色の表面描画で示す。
図6Aにおいて、RibのN末端を
図5A~
図5Cと類似した方向で示す。従って、
図6では図示しないものの、先導配列がRibのN末端の右側のエンドキャップに提供される。
図5A~
図5Cと比較することにより、実施例4において特定された保存された領域がα1β1インテグリンとの結合に関与することが更に明らかとなった。その結果より、N末端は、ドメイン2(フォン・ヴィルブランド因子、タイプA)及びα1β1インテグリンのドメイン3と結合することが更に明らかとなった。
【0181】
従って、実施例4及び5は、先導配列はRibのN末端の保存された領域と相互作用し、それを遮蔽し、そのような保存された領域は、α1β1インテグリンとの結合、これによる上皮細胞との接着及びそれへの浸潤に関与していることを示す。
【0182】
従って、先導配列と共に提供されるRibのN末端領域を用いて免疫化する場合、先導配列の遮蔽効果に起因して、これらの保存された領域の露出が低下することとなる。これは、保存された領域に対するより非効率的な免疫系応答及び/又は抗体応答を引き起こす。
【0183】
対照的に、免疫化が、先導配列(配列番号43)が除去されるか又は少なくとも短縮したRibのN末端を使用して、そのようなN末端を単独で、又は本発明の第1の態様若しくは配列番号21の融合タンパク質の一部として使用しながら実施される場合、これらの保存された領域は免疫系に対してよりアクセスしやすくなる。従って、免疫化された宿主にとって、保存された領域に対する抗体形成がより容易になる。保存された領域をより効率的且つ完全に中和することで、α1β1インテグリンを介する上皮細胞との接着及びそれへの浸潤に対する防御が増加する。
【0184】
まとめとして、配列番号21により例示されるような、Rib構成要素の先導配列(配列番号43)が除去されるか又は少なくとも短縮した、本発明の第1の態様に基づく融合タンパク質を使用すれば、特に内皮細胞との接着及び/又はそれへの浸潤に対する防御を改善させることができ、それによってGBSに対する防御が改善する。
【配列表】
【国際調査報告】