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特表2024-512724ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置、方法、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置、方法、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/346 20210101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B5/346
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560559
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-09-28
(86)【国際出願番号】 KR2021006875
(87)【国際公開番号】W WO2022211184
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0041177
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521396019
【氏名又は名称】チョイ,マン-リム
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Man-Rim
(71)【出願人】
【識別番号】523371621
【氏名又は名称】チョイ,シン-リム
【氏名又は名称原語表記】CHOI, Shin-Rim
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,マン-リム
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127GG01
4C127GG02
4C127GG07
(57)【要約】
【要約】
本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用した心電図信号の大きさ測定装置は、測定された心電図信号を受信する受信部、受信された心電図信号をヒルベルト変換する変換部、およびヒルベルト変換された心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求める制御部を含むことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定された心電図信号を受信する受信部;
受信された前記心電図信号をヒルベルト変換する変換部;および
ヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求める制御部;
を含む、ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記心電図信号の値を実数値とし、ヒルベルト変換された前記心電図信号の値を虚数値とするナイキスト線図を作成するナイキスト線図作成モジュール;および
作成された前記ナイキスト線図に基づいて、前記ECG軸偏位を求める制御モジュール;
を含む、請求項1に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記心電図信号およびヒルベルト変換された前記心電図信号に対する包絡線を作成する包絡線作成モジュールをさらに含む、請求項2に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項4】
前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECG軸偏位として求める、請求項3に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項5】
前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図の2地点の共通接線で前記ナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度を前記ECG軸偏位として求める、請求項2に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項6】
前記制御モジュールは、前記共通接線が2つ以上の場合、2つ以上の前記共通接線の平均接線で前記ナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度を前記ECG軸偏位として求める、請求項5に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項7】
前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記心電図信号のQ波、R波、S波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和と、前記ナイキスト線図のうち前記ヒルベルト変換された前記心電図信号のQi波、Ri波、Si波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和を足したベクトルの角度を前記ECG軸偏位として求める、請求項2に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項8】
前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のT波のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECGT波軸偏位として求める、請求項3に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項9】
前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のP波のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECGP波軸偏位として求める、請求項3に記載のヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置。
【請求項10】
受信部で、測定された心電図信号を受信する第1ステップ;
変換部で、受信された前記心電図信号をヒルベルト変換する第2ステップ;および
制御部で、ヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG軸偏位を求める第3ステップ;
を含む、ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法。
【請求項11】
請求項10の方法を実行するためのプログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置、方法、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
医療映像(超音波、MT、CT)を利用した診断では、映像情報だけでなく、体内の特定時点の映像を抽出するために、心電図(Electrocardiography、ECG)信号を活用する。
【0003】
心電図信号の波形は、心臓の収縮によって発生する電流と電位差を、基底線(Base Line、BL)を中心として曲線で表示されることができる。心電図信号の一周期内には、通常、P波(P wave)、Q波(Q wave)、R波(R wave)、S波(S wave)、T波(T wave)が連続して発生する。P波は、心房の収縮、一連のQ波(Q wave)、R波(R wave)および S波(S wave)(QRS群)は、心室の収縮を示し、T波(T wave)は、心室の弛緩時に現われる特徴である。
【0004】
一方、ECG軸偏位(Axis Deviation)とは、心臓の電気軸が正常時より右側または左側に傾く症状で、このようなECG軸偏位は、右心室肥大(Right ventricular hypertrophy)、急性右心室緊張(Acute right ventricular strain)、慢性閉鎖性肺疾患(Chronic obstructive lung disease、COPD)、高カリウム血症(Hyperkalemia)、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症侯群(Wolff-Parkinson-White syndrome)、右胸心(Dextrocardia)など多様な疾患を判断するのに非常に重要であるので、このようなECG軸偏位を測定する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態によれば、ヒルベルト変換を利用してECG軸偏位を求めることができるECG軸偏位測定装置、方法、およびコンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1実施形態によれば、測定された心電図信号を受信する受信部;受信された前記心電図信号をヒルベルト変換する変換部;およびヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求める制御部;を含む、ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置が提供される。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、前記制御部は、前記心電図信号の値を実数値とし、ヒルベルト変換された前記心電図信号の値を虚数値とするナイキスト線図を作成するナイキスト線図作成モジュール;および作成された前記ナイキスト線図に基づいて、前記ECG軸偏位を求める制御モジュール;を含むことができる。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、前記制御部は、前記心電図信号およびヒルベルト変換された前記心電図信号に対する包絡線を作成する包絡線作成モジュールをさらに含むことができる。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECG軸偏位として求めることができる。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図の2地点の共通接線で前記ナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度を前記ECG軸偏位として求めることができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記共通接線が2つ以上の場合、2つ以上の前記共通接線の平均接線で前記ナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度を前記ECG軸偏位として求めることができる。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記心電図信号のQ波、R波、S波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和と、前記ナイキスト線図のうち前記ヒルベルト変換された前記心電図信号のQi波、Ri波、Si波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和を足したベクトルの角度を前記ECG軸偏位として求めることができる。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のT波のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECGT波軸偏位として求めることができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記制御モジュールは、前記ナイキスト線図のうち前記包絡線のP波のピーク値に対応する地点と前記ナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度を前記ECGP波軸偏位として求めることができる。
【0015】
本発明の第2実施形態によれば、受信部で、測定された心電図信号を受信する第1ステップ;変換部で、受信された前記心電図信号をヒルベルト変換する第2ステップ;および制御部で、ヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG軸偏位を求める第3ステップ;を含む、ヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法が提供される。
【0016】
本発明の第3実施形態によれば、上述したヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法を実行するためのプログラムを記録した、コンピュータで読み取り可能な記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態によれば、受信された心電図信号をヒルベルト変換し、ヒルベルト変換された心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置のブロック図である。
図2a】本発明の一実施形態による例示的な心電図信号を示した図面である。
図2b】本発明の一実施形態による例示的なヒルベルト変換された心電図信号および包絡線を示した図面である。
図2c】本発明の一実施形態による例示的なナイキスト線図を示した図面である。
図3】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図4】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図5a】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図5b】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図5c】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図6a】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図6b】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図6c】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図7a】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図7b】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図7c】本発明の一実施形態によるECG軸偏位を求める過程を説明した図面である。
図8】本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の実施形態は多様な他の形態に変形されてもよく、本発明の範囲が以下で説明する実施形態のみに限定されるのではない。図面における要素の形状および大きさなどは、より明確な説明のために誇張されてもよく、図面において同じ符号で表示される要素は同じ要素である。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置のブロック図である。そして、図2aは、本発明の一実施形態による例示的な心電図信号を示した図面であり、図2bは、本発明の一実施形態による例示的なヒルベルト変換された心電図信号および包絡線を示した図面である。そして、図2cは、本発明の一実施形態による例示的なナイキスト線図を示した図面である。
【0021】
まず、図1に示したように、本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定装置100は、測定された心電図信号を受信する受信部110、受信された心電図信号をヒルベルト変換する変換部120、およびヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求める制御部130を含むことができる。
【0022】
具体的には、受信部110は、外部で測定された心電図信号を受信し、受信された心電図信号を変換部120に伝達することができる。心電図信号は、例えば、図2aの図面符号201で示した通りである。
【0023】
一方、変換部120は、受信部110から受信した心電図信号をヒルベルト変換(Hilbert Transform)することができる。
【0024】
上述したヒルベルト変換は、心電図信号の大きさ(amplitude)は保持するが、位相(phase)だけ負の周波数では+π/2だけ、正の周波数では-π/2だけシフト(shift)させるのである。実数信号を複素数次元に拡張させることができるので、大きさおよび位相の分析が容易になる。すなわち、ある実数信号をX(t)とし、ヒルベルト変換された信号をX^(t)とした時、複素数次元に拡張された信号X(t)=x(t)+jx^(t)を得ることができる。ヒルベルト変換された心電図信号は、例えば、図2bの図面符号202で示した通りである。
【0025】
次に、制御部230は、ヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG(Electrocardiography)軸偏位を求めることができる。このために、制御部130は、ナイキスト線図作成モジュール131、包絡線作成モジュール132、および制御モジュール133を含むことができる。
【0026】
まず、制御部130におけるナイキスト線図作成モジュール131は、心電図信号の値を実数値とし、ヒルベルト変換された心電図信号の値を虚数値とする時間応答曲線であるナイキスト線図を作成することができる。作成されたナイキスト線図は制御モジュール133に伝達されることができる。一般的に、ナイキスト線図は周波数による周波数応答曲線を意味し、これに対して、本発明では、時間による時間応答曲線であることに留意すべきである。
【0027】
図2cは、心電図信号の値を実数値(Y軸)とし、ヒルベルト変換された心電図信号の値を虚数値(X軸)として作成されたナイキスト線図200を示している。図2cでは、実数値をY軸に、虚数値をX軸に表示しているが、逆に実数値をX軸に、虚数値をY軸に表示してもよいことは当業者にとって自明である。
【0028】
制御部130における包絡線作成モジュール132は、心電図信号201およびヒルベルト変換された心電図信号202に対する包絡線(Envelope)を作成することができる。作成された包絡線は、制御モジュール133に伝達されることができる。
【0029】
図2bには心電図信号およびヒルベルト変換された心電図信号に対する包絡線(Envelope)203を示している。包絡線203は、心電図信号201とヒルベルト変換された心電図信号202のRMS(Root Mean Square)値で、心電図信号201とヒルベルト変換された心電図信号202をそれぞれ二乗して足した値にルートを使った値であってもよい。
【0030】
最後に、制御部230における制御モジュール133は、ナイキスト線図および包絡線の少なくとも一つに基づいて、ECG軸偏位を求めることができる。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、制御モジュール133は、ナイキスト線図のうち包絡線のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0032】
図3は、本発明の一実施形態によってECG軸偏位を求める過程を説明する図面である。
【0033】
図3に示したように、制御モジュール133は、ナイキスト線図300のうち包絡線203(図2b)のピーク値に対応する地点P1とナイキスト線図300の原点oとを連結する直線310の角度θ1をECG軸偏位として求めることができる。このために、下記数学式1を利用することができる。
【0034】
[数学式1]
ECG軸偏位=atn(Imag(P1’)/Real(P1’))
【0035】
atnは、アークタンジェントであり、Imag(P1’)は、P1’の虚数軸の値、Real(P1’)は、P1’の実数軸の値である。
【0036】
また、本発明の一実施形態によれば、制御モジュール133は、ナイキスト線図の2つ地点の共通接線でナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0037】
図4は、本発明の一実施形態によってECG軸偏位を求める過程を説明する図面である。
【0038】
図4に示したように、制御モジュール133は、ナイキスト線図400の2つ地点A、Bの共通接線411でナイキスト線図400の原点oまでの垂線410がなす角度θ2をECG軸偏位として求めることができる。
【0039】
共通接線が2つ以上の場合であると、制御モジュール133は2つ以上の共通接線の平均接線でナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によれば、制御モジュール133は、ナイキスト線図のうち心電図信号のQ波、R波、S波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和と、ナイキスト線図のうちヒルベルト変換された心電図信号のQi波、Ri波、Si波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和を足したベクトルの角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0041】
図5a~図5cは、本発明の一実施形態によってECG軸偏位を求める過程を説明する図面である。図5aはナイキスト線図500であり、図5bは心電図信号501であり、図5cはヒルベルト変換された心電図信号502および包絡線503を示している。
【0042】
図5a~図5cに示したように、制御モジュール133はナイキスト線図500のうち心電図信号のQ波、R波、S波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和と、ナイキスト線図のうちヒルベルト変換された心電図信号のQi波、Ri波、Si波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和を足したベクトル510の角度θ3をECG軸偏位として求めることができる。
【0043】
上述した実施形態は、QRS波を対象としてECG軸偏位を求める方法を説明したのである。しかしながら、T波およびP波でもECG軸偏位を求めることができ、対象となる波(wave)によって各軸偏位を区分して、QRS波を対象とする場合はQRS波軸偏位、T波およびP波を対象とする場合には、それぞれT波軸偏位とP波軸偏位に指称されることができる。
【0044】
T波軸偏位とP波軸偏位も上述したような方式の少なくとも一つの方法を通じて求めることができる。以下では、第一方法を通じてT波軸偏位とP波軸偏位を求める過程を説明する。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、制御モジュール133は、ナイキスト線図のうち包絡線のT波のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECGT波軸偏位として求めることができる。
【0046】
図6a~図6cは、本発明の一実施形態によってECG軸偏位を求める過程を説明する図面である。図6aはナイキスト線図600であり、図6bは心電図信号601であり、図6cはヒルベルト変換された心電図信号602および包絡線603を示している。
【0047】
図6a~図6cに示したように、制御モジュール133は、ナイキスト線図600のうち包絡線のT波のピーク値に対応する地点P6とナイキスト線図の原点oとを連結する直線610の角度θ4をECGT波軸偏位として求めることができる。
【0048】
同様に、本発明の一実施形態によれば、制御モジュール133は、ナイキスト線図のうち包絡線のP波のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECGP波軸偏位として求めることができる。
【0049】
図7a~図7cは、本発明の一実施形態によってECG軸偏位を求める過程を説明する図面である。図7aはナイキスト線図700であり、図7bは心電図信号701であり、図7cはヒルベルト変換された心電図信号702および包絡線703を示している。
【0050】
図7a~図7cに示したように、制御モジュール133はナイキスト線図700のうち包絡線のP波のピーク値に対応する地点P7とナイキスト線図の原点oとを連結する直線710の角度θ5をECGP波軸偏位として求めることができる。
【0051】
上述したように、本発明の一実施形態によれば、受信された心電図信号をヒルベルト変換し、ヒルベルト変換された心電図信号に基づいてECG(Electrocardiography)軸偏位を求めることによって、四肢誘導の多くのリードを利用せず、単一リードのみを利用して、ECG軸偏位を求めることができる。
【0052】
一方、図8は、本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法を説明する流れ図である。
【0053】
以下、図1図8を参照して本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法について詳しく説明する。ただ、発明の簡明化のために、図1図7で既説明された内容と重複する事項に対する説明は省略する。
【0054】
本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法は、受信部110で測定された心電図信号を受信するステップによって開始されることができる(S801)。受信された心電図信号は、変換部120に伝達されることができる。
【0055】
次に、変換部120は、受信された心電図信号をヒルベルト変換(Hilbert Transform)することができる(S802)。ヒルベルト変換された心電図信号は、制御部130に伝達されることができる。
【0056】
最後に、制御部130は、ヒルベルト変換された前記心電図信号に基づいて、ECG軸偏位を求めることができる(S803)。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、制御部130は、ナイキスト線図のうち包絡線のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0058】
また、本発明の一実施形態によれば、制御部130は、ナイキスト線図の2つ地点の共通接線でナイキスト線図の原点までの垂線がなす角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0059】
また、本発明の一実施形態によれば、制御部130は、ナイキスト線図のうち心電図信号のQ波、R波、S波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和と、ナイキスト線図のうちヒルベルト変換された心電図信号のQi波、Ri波、Si波の各ピーク値に対応する各地点までのベクトルの和を足したベクトルの角度をECG軸偏位として求めることができる。
【0060】
また、本発明の一実施形態によれば、制御部130は、ナイキスト線図のうち包絡線のT波のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECGT波軸偏位として求めることができる。
【0061】
また、本発明の一実施形態によれば、制御部130は、ナイキスト線図のうち包絡線のP波のピーク値に対応する地点とナイキスト線図の原点とを連結する直線の角度をECGP波軸偏位として求めることができることは上述した通りである。
【0062】
上述したように、本発明の一実施形態によれば、受信された心電図信号をヒルベルト変換し、ヒルベルト変換された心電図信号に基づいてECG(Electrocardiography)軸偏位を求めることによって、四肢誘導の多くのリードを利用せず、単一リードのみを利用してECG軸偏位を求めることができる。
【0063】
本発明を説明する際において、「~部」乃至「~モジュール」は、多様な方式、例えばプロセッサ、プロセッサによって実行されるプログラム命令、ソフトウェアモジュール、マイクロコード、コンピュータプログラム生成物、ロジッグ回路、アプリケーション専用集積回路、ファームウエアなどによって具現されることができる。
【0064】
上述した本発明の一実施形態によるヒルベルト変換を利用したECG軸偏位測定方法は、コンピュータで実行されるためのプログラムに製作されてコンピュータが読み取り可能な記録媒体に保存されることができる。コンピュータが読み取り可能な記録媒体の例としては、ROM、RAM、CD-ROM、磁気テープ、フロッピーディスク、光データ保存装置などがある。また、コンピュータが読み取り可能な記録媒体は、ネットワークで連結されたコンピュータシステムに分散されて、分散方式でコンピュータが読み取り可能なコードが保存されて実行されることができる。そして上記方法を具現するための機能的な(function)プログラム、コードおよびコードセグメントは、本発明が属する技術分野のプログラマーによって容易に推論されることができる。
【0065】
本発明は、上述した実施形態および添付図面によって限定されない。添付された特許請求範囲によって権利範囲を限定しようとし、特許請求範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な形態の置換、変形および変更が可能であるということは当該術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。

図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8
【国際調査報告】