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特表2024-512736芳香族原料由来のメソフェーズピッチ組成物、その製造方法及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】芳香族原料由来のメソフェーズピッチ組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C08G 10/02 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
C08G10/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560662
(86)(22)【出願日】2022-03-08
(85)【翻訳文提出日】2023-09-29
(86)【国際出願番号】 US2022019225
(87)【国際公開番号】W WO2022211986
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/167,319
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509004675
【氏名又は名称】エクソンモービル ケミカル パテンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】ユ レンユアン
(72)【発明者】
【氏名】アルティンタス オズカン
(72)【発明者】
【氏名】メニート アンソニー エス
(72)【発明者】
【氏名】ダッカ ジハド エム
(72)【発明者】
【氏名】シュー テン
(72)【発明者】
【氏名】リウ イフェイ
(72)【発明者】
【氏名】フェルゲッリ デヴィッド ティー
(72)【発明者】
【氏名】コンテッロ ジョヴァンニ エス
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033DA02
4J033DA11
4J033DA12
4J033HA04
4J033HB01
4J033HB02
(57)【要約】
等方性ピッチ組成物を熱処理に付すことにより、メソフェーズピッチ組成物を得ることができる。メソフェーズピッチ組成物の製造方法は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物の、約300°C~約500°Cの温度での熱処理による、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量、約100°C以上の軟化点、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分を有するメソフェーズピッチ組成物の生成;熱処理による、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間での環化の誘導、1又は複数の5員環及び/又は6員環の形成を有してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各芳香族クラス間が少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理して、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を生成することを含む方法であって、
熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環が形成される、方法。
【請求項2】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
置換芳香族が、C1~C20ヒドロカルビル一置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル二置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル三置換芳香族、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化して1又は複数の6員環を形成し、続いて脱水素的芳香族化を行い、高芳香族性メソフェーズピッチ組成物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
以下により等方性ピッチ組成物を生成する、請求項1に記載の方法:
1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料を酢酸及び硫酸と混合して第一混合物を生成すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物を加熱すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物に対してホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを添加して、反応生成物の組成物を含有する第二混合物を生成すること

第二混合物を濾過すること;及び
等方性ピッチ組成物を単離すること。
【請求項6】
等方性ピッチ組成物が、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが部分的に水素化された芳香族環を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、オルト-、メタ-、パラ-キシレン)、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、ピセンコロネン(picenecoronene)、クリセン、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、コランニュレン、ベンゾ[j]フルオランセン、ベンゾ[c]フルオレン、ペリレン、ベンゾ-ペリレン、オバレン、AROMATIC-200TM、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が約10:1から約1:10までである、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が1:3である、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
芳香族原料:硫酸のモル比が約1:0.001から約1:20までである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
芳香族原料:硫酸のモル比が1:2である、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
熱処理が熱浸漬及び/又は脱歴である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
脱歴が、室温から280°Cまでに及ぶ温度で、大気圧から700psiまでに及ぶ圧力で、及び/又は約1時間から3時間までに及ぶ反応時間で実施される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脱歴のために使用する溶媒が、トルエン、へプタン、又は様々な比率でのこれら2つの組合せからなる群より選択される、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
熱処理が、大気圧から1,000psiまでに及ぶ圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
メソフェーズピッチ組成物が、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき、約40vol%から約100%までに及ぶメソフェーズ含量を有する、請求項12~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載のメソフェーズピッチ組成物を用いて調製される、繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブ。
【請求項21】
約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物であって、
メソフェーズピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを有する等方性ピッチ組成物より生成され、
及び、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する、メソフェーズピッチ組成物。
【請求項22】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族である、請求項21に記載のメソフェーズピッチ組成物。
【請求項23】
等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、請求項21に記載のメソフェーズピッチ組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年3月29日に出願された米国仮出願No.63/167319の利益及び優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、同時出願されたUSSN 63/167,354、「芳香族原料由来の等方性ピッチ組成物、その製造方法及びその使用」の名称の仮特許申請に関連する。
【0002】
分野
本開示は、芳香族炭化水素原料由来の合成等方性ピッチ組成物より製造されるメソフェーズピッチ組成物、その製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素繊維市場は過去10年で著しく成長してきたが、これは、例えば自動車(例えば、ラゲージドア、ボンネット、フロントエンド、バンパー、ドア、シャーシ、リーフスプリング、ドライブシャフト等のサスペンジョンシステム等の車体部品)、航空宇宙(例えば航空機及び宇宙システム)、高性能水上船舶(例えばヨット及びローイングシェル)、航空機、スポーツ用品(例えば、ゴルフクラブ、テニスラケット、スキー板、スノーボード、ヘルメット、こぎ舟、又は水上スキー装備)、建設(非構造的及び構造的システム)、軍事(例えば、飛行型ドローン、装甲、装甲車両、軍用機)、風力発電産業、エネルギー貯蔵用途、防火材料、炭素-炭素複合材料、炭素繊維、並びに建築及び道路建設に用いられる多くの絶縁及び封止材料(例えばコンクリート)、タービンブレード、軽量シリンダー並びに圧力容器、沖合ロープ並びに掘削ライザー、医療等の幅広い産業からの需要増加に起因し得る。炭素繊維の非限定的な特性は、そのような材料を以下の高性能用途に適するものにする:高体積弾性率及び引張係数(炭素繊維の形態に依存する)、高電気伝導率及び高熱伝導率、高比重等。しかし、そのような材料が示す優れた特性にもかかわらず、炭素繊維のコストが高いことによりその用途及び広範な使用が制限される。このような理由から、低コストで炭素繊維を製造する技術の開発は、研究者及び主要な製造者にとって主な課題となっている。
炭素繊維の製造に適した重油ボトムより液晶又はメソフェーズピッチを製造するための信頼性のある低コストな工程は、石油化学産業における困難な課題とされており、高温及び高圧、長い滞留時間等の厳しい反応条件が要求される。加えて、非選択的な反応により、ピッチに加えて、軽油及びコークス等の広範囲の望まない生成物が生じる傾向にある。
特に、炭素繊維のための製品の品質及び純度における厳しい要求が、実現を困難にし続けている。炭素繊維の製造に適させるために、メソフェーズピッチは極微量の硫黄及び少量の固形ファインコンテンツを示さなければならいが、それらはいずれも石油ボトムから除くのが極めて困難である。ピッチ前駆体由来の優れた機械特性を有する高配向性炭素繊維は、石油化学産業における積年の目標とされてきた。メソフェーズピッチベースの炭素繊維の極めて高い引張係数は、親メソフェーズピッチにおける平面液晶構造を有する高配向性芳香族分子に起因する。豊富な芳香族留分を含む石油副産物が、共通してメソフェーズピッチの製造に使用されてきた。しかし、しばしば、そのような製造工程は、超酸(例えば、HF/BF3又はAlCl3)の使用等の毒性があり且つ激しい条件を必要とする。その上、激しい酸性条件及び高純度ピッチ材料の製造の困難性により、今日の工程の幅広い適用が制限される。更に、ピッチベースの炭素繊維の機械特性は、前駆体のピッチ繊維の配向性及び均一性並びにピッチ自体の純度に依存する。
意図された用途(例えば、メソフェーズピッチ製造、炭素繊維製造等)のためのピッチ組成物前駆体の適合性を決定する因子は、例えば、軟化点、分子量、粘度、密度、融点、並びにこれらのパラメーターにより影響を受ける二次的な性能因子が含まれる。幅広い物理特性を有するピッチ組成物が様々なタイプの用途での使用に理想的であり得るが、現状、合成による高品質なメソトロピックピッチ組成物を製造する確固たる方法、特に所定の用途に特有のニーズに対応することが必要とされる構造的及びその他の物理特性を調整する能力を有するもの、が存在しない。
【発明の概要】
【0004】
概要
ある実施形態において、本開示は、メソフェーズピッチ組成物の製造方法を提供する。前記方法は以下を有する:各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物の、約300°C~約500°Cの温度での熱処理により、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を製造する;ここで、熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間での環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環を形成する。
ある実施形態において、本開示は、メソフェーズピッチ組成物を提供する。メソフェーズピッチ組成物は以下を有する:約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR);ここで、メソフェーズピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを有する等方性ピッチ組成物より製造され;並びに、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。
【0005】
以下の図は、本開示の所定の態様を説明するために含まれており、唯一の構造とみなされるべきではない。開示される主題は、考えられる変性、変形、組合せ、並びに形態及び機能における同等を可能とし、それは当業者であって、本開示の利益を有する者が想到することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示の等方性ピッチ組成物のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)、及びLDI-MSスペクトルに基づくその推定構造である。
図2図2は、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物に対応する等方性ピッチ組成物のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)である。
図3図3は、メソフェーズピッチ組成物中に含有されるオリゴマーの分布を描くグラフである。
図4A図4Aは、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物に対応する等方性ピッチ組成物のマススペクトルを描く。
図4B図4Bは、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物に対応する等方性ピッチ組成物のマススペクトルを描く。
図5図5は、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物のC32同定を描くマススペクトル、及びLDI-MSスペクトルに基づくその推定構造である。
図6図6は、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物に対応する等方性ピッチ組成物のマススペクトル、及びLDI-MSスペクトルに基づくその推定構造である。
図7図7は、本開示のメソフェーズピッチ組成物の偏光顕微鏡である。
図8図8は、本開示のメソフェーズピッチ組成物のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)である。
図9図9は、本開示のメソフェーズピッチ組成物の偏光顕微鏡である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の詳細な説明
本開示は、芳香族炭化水素原料由来の合成等方性ピッチ組成物より製造されるメソフェーズピッチ組成物、その製造方法、及びその使用に関する。特に、本開示は、芳香族炭化水素原料由来の前記等方性ピッチ組成物の酸を媒介する製造、その製造方法、及びその使用(例えば、炭素繊維製造のためのメソフェーズピッチへの変換)に関する。
上述した通り、様々な産業におけるピッチ、特に、例えば炭素繊維の製造に適したピッチのような高品質ピッチ、に対する需要が増加している。現状、高品質メソフェーズピッチ組成物の製造を可能とする合成の選択肢、特に所定の用途に特有のニーズを満たすためのピッチ組成物の構造、物理、及び機械特性を調整する能力を有するもの、が存在しない。
本開示は、化学及び石油産業における所定の豊富な製品(例えば、芳香族原料)が、その高品質メソフェーズピッチ組成物を形成するための適切な前駆体でありうることを実証する。より具体的には、本開示は、オリゴマー(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体、六量体、七量体等)含有等方性ピッチ組成物の製造のための原料として芳香族を活用し、ここで更に温和な反応条件(例えば、約300°C~約500°Cの温度下;大気圧)下で熱処理に付してもよく、このようにして等方性ピッチ組成物中の各オリゴマー内での環化をもたらし、及び対応するメソフェーズピッチ組成物を形成する。ある例において、前記メソフェーズピッチ組成物は、脱水素化又は部分的に水素化され、反応生成物として、より高い芳香族性を有する対応するメソフェーズピッチ組成物を形成することができる。
驚くことに及び有利なことに、調整可能な特性及び制御された分子量分布(MWD)を有するメソフェーズピッチ組成物は、十分に定義された高純度な等方性ピッチ組成物(例えば、約80%以上の単離収率、例えば約90%以上の単離収率、例えば100%単離収率)の温和な熱処理(例えば、約300°C~約500°Cの温度範囲での熱処理)により形成されてもよい。任意の理論又は機構に拘束されることなく、狭いMWDの材料は、広いMWDの材料と比較して、より高品質のメソフェーズピッチを生じ得ると信じられている。更に、温和な熱処理はコークス形成を顕著に防止し、その結果汚染問題を減らすことができる。特に、単離されたオリゴマー(すなわち、十分に定義された高純度な等方性ピッチ組成物)に対して、温和な熱処理でも、環化を、及びある場合において、従来のピッチ製造(例えば、典型的には約450°Cから約550°Cまでの範囲)よりも顕著に低温な温度範囲でピッチ組成物の芳香族化を誘導することができる。加えて、前記の温和な熱処理により製造されたメソフェーズピッチ組成物は、更に高い溶解ブレンド数(SBN)(例えば、典型的には80以上、例えば100以上)を有する溶媒(例えばトルエン)を用いてメソフェーズ分子を濃縮するために加工してもよく、そうすることで、低いSBN(80未満)と比較して、より高純度且つ高収率でメソフェーズを製造することができると信じられている。
【0008】
本開示は、以下を有する方法を与える:各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物の、約300°C~約500°Cの温度での熱処理により、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を製造する;熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環を形成する。1又は複数の6員環を形成するための2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間での環化は、その後高芳香族メソフェーズピッチ組成物を製造するために脱水素的芳香族化を続けてもよい。
芳香族クラスは、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族であってもよい。
等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有してもよい。
【0009】
定義及び試験方法
本明細書中の発明の詳細な説明及び請求項中の全ての数値的な値は、示された値に関して「約」又は「およそ」により修正され、及び当業者に予想され得る実験的な誤差及び変動を考慮に入れる。別段明示されない限り、周囲温度(室温)は約25°Cである。
本開示及び請求項で使用される限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈中で別に言及されない限り、複数形を含む。
用語「及び/又は」は、本明細書中で例えば「A及び/又はB」のような表現で使用される場合、「A及びB」、「A又はB」、「A」、及び「B」を含むことが意図される。
本開示及びそれに加えて請求項の目的のために、以下の定義を用いるものとする。
別段規定されない限り、用語「Cn」は、分子当たりn個の炭素原子を有する炭化水素を意味し、nは正の整数である。
用語「Cn」基又は化合物は、その合計数がnである炭素原子を有する基又は化合物を指す。このように、「Cm-Cn」基又は化合物は、その合計数がmからnまでの範囲である炭素原子を有する基又は化合物を指す。このように、C1-C50アルキル基は、その合計数が1から50までの範囲である炭素原子を有するアルキル基を指す。
用語「基」、「ラジカル」、及び「置換基」は、意味の区別なく用いることができる。
用語「ヒドロカルビルラジカル」、「ヒドロカルビル基」、又は「ヒドロカルビル」は、意味の区別なく用いることができ、水素及び炭素原子のみからなる基を意味するものと定義される。好ましいヒドロカルビルは、C1-C100ラジカルであり、それは直鎖、分岐状、又は環状でもよく、環状の場合、芳香族又は非芳香族でもよい。そのようなラジカルの例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-アミル、ヘキシル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等のアルキル基、フェニル、ベンジルナフタレニル等のアリール基が含まれるが、それらに限定されない。
【0010】
別段明示されない限り(例えば、「置換ヒドロカルビル」等の定義)、用語「置換」は、少なくとも1つの水素原子が、少なくとも1つの、ヒドロカルビル基のような非水素基に置き換わっていることを意味する。
用語「アリール」又は「アリール基」は、芳香族環(典型的には6個の炭素原子からなる)及びその置換体、例えばフェニル、2-メチルフェニル、キシリル、4-ブロモキシリル等、を意味する。
用語「置換芳香族」は、1又は複数の水素基がヒドロカルビル又は置換ヒドロカルビルにより置き換わっている芳香族基を意味する。
用語「環原子」は、環状環構造の一部である原子を意味する。この定義によると、ベンジル基は6個の環原子を有し、及びテトラヒドロフランは5個の環原子を有する。
命名されたアルキル、アルケニル、アルコキシド、又はアリール基の異性体が存在する場合(例えば、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル)、基の1種(例えば、n-ブチル)に言及するときは、その群の残りの異性体(例えば、iso-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル)を明確に開示するものとする。同様に、特定の異性体を明記することなくアルキル、アルケニル、アルコキシド、又はアリール基について言及するときは(例えば、ブチル)、全ての異性体(例えば、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチル)を明示的に開示する。
用語「直鎖」又は「直鎖炭化水素」は、側鎖の分岐が無く連続する炭素鎖を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指し、連続する炭素鎖は、任意に置換されていてもよい。
用語「環状」又は「環状炭化水素」は、閉環した炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指し、任意に置換されていてもよい。用語「炭素環式の」は、同義語としてそのような炭化水素又はヒドロカルビル基を指してもよい。
用語「分岐状」又は「分岐状炭化水素」は、直鎖の炭素鎖又は閉環した炭素環を有する炭化水素又はヒドロカルビル基で、直鎖の炭素鎖又は閉環した炭素環からヒドロカルビル側鎖が伸びているものを指す。直鎖の炭素鎖、閉環した炭素環、及び/又はヒドロカルビル側鎖上に任意の置換が存在してもよい。
用語「芳香族」又は「芳香族炭化水素」は、ヒュッケル則を満たす共役したπ電子の環状配置を有する炭化水素又はヒドロカルビル基を指す。
用語「独立して」は、既定のマーカッシュ群の中からの複数の項目の選択について言及するとき、最初の項目として選択された選択肢が必ずしも任意の2番目又はその後の項目の選択肢に影響を与えないことを意味する。つまり、既定のマーカッシュ群の中の独立した複数の項目の選択は、個々の項目が互いに同一又は異なっていてもよいことを意味する。
【0011】
飽和ヒドロカルビル基の例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、iso-アミル(イソペンチル)、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオクチル等、並びにそれらの置換された類縁体が含まれるが、それらに限定されない。不飽和ヒドロカルビル基の例として、エテニル、プロペニル、アリル、1,4-ブタジエニル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル等、並びにそれらの置換された類縁体が含まれるが、それらに限定されない。
芳香族ヒドロカルビル基の例として、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル等が含まれるが、それらに限定されない。多核アリール基として、ナフタレニル、アントラセニル、インダニル、インデニル、及びテトラリニルが含まれてもよいが、それらに限定されない。
別段明記されない限り、特定の成分に関して、用語「~を実質的に含まない」は、関連する組成物の合計量に基づき、関連する組成物中で5mоl%以下(例えば、関連する測定の枠組みの限度内で、3mоl%以下、1mоl%以下、又は約0%)のその成分の濃度を意味する。
用語「単離された」は、既定の物質に対して溶媒及び/又は前駆体を実質的に含まない状態で得られる物質の条件を指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、Mwは重量平均分子量であり、wt%は重量パーセントであり、mоl%はモルパーセントである。別段言及されない限り、分子量単位(例えば、Mw)は、g/mоlである。
別段示されない限り、用語「室温」は、「周囲温度」とも称され、およそ23°Cである。
「マイクロ残留炭素分試験」は、「MCRT」とも称され、残留炭素の決定のための標準的な試験方法(マイクロ法)である。様々な石油材料における残留炭素値は、材料における、試験方法で使用される条件と同様の分解条件下での炭素質析出物を形成する傾向の指標としての役割を果たし、及び所定の資源の製造における指針として有用であり得る。しかし、結果を解釈するうえでは注意を払う必要がある。この試験方法は、所定条件下での石油材料の気化及び熱分解後に形成される残留炭素量の決定を対象としており、及びそのような材料における関連するコークス形成の傾向の指標を与えることが意図されている。ここで、MCRTは、ASTM D4530-15標準試験方法に従って測定する。
【0013】
用語「溶媒ブレンド数」(SBN)は、異なる割合のモデル溶媒(例えばトルエン)又は溶媒混合物(例えばトルエン/n-へプタン)に対する材料(例えば、油、ピッチ等)の相溶性に関連するパラメーターを指す。
「軟化点」は、物質が軟化する温度又は温度範囲を指す。ここで、軟化点(SP)は、ASTM D36と類似の手順に従い、METTLER TOLEDO滴点装置、例えばMETTLER TOLEDO DP70、を用いて測定する。
以下の略語は本開示及び請求項を通して使用されてもよい:「MCRT」はマイクロ残留炭素留分試験、「equiv」はモル当量、「ppm」は百万分率、及び「Tsp」は軟化点温度である。
【0014】
等方性ピッチ組成物
本開示の方法は、先進的な炭素製品の製造のためのピッチ前駆体の製造のための経路を提供する非脱水素化合成経路である。更に、本開示の方法は、高品質の合成等方性ピッチ組成物、特に所定の用途に特有のニーズに対応することが必要とされる構造的及びその他の物理特性を調整する能力を有するもの、の製造方法を提供する。本開示の等方性ピッチ組成物は、優れた機械特性を有する高配向性炭素繊維、並びに通常のパラフィン炭化水素又は増粘付与剤の製造を改良するための炭素繊維の製造のためのメソフェーズピッチ前駆体として使用してもよい。
本開示の実施形態は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を含む。ここで、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及びピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。本開示の等方性ピッチ組成物は、酢酸及び硫酸存在下、芳香族原料をホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドと反応させることにより製造するメチレン架橋芳香族オリゴマーである。
本明細書中、芳香族クラスは以下を含んでもよい:1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族。置換芳香族は、C1~C20ヒドロカルビル一置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル二置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル三置換芳香族、およびそれらの任意の組合せからなる群より選択されてもよい。少なくとも1つの実施形態において、置換芳香族は、C1~C5ヒドロカルビル一置換芳香族、C1~C5ヒドロカルビル二置換芳香族、C1~C5ヒドロカルビル三置換芳香族、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択されてもよい。等方性ピッチ組成物は、明確に定義された、高純度で、及び費用対効果の良い、置換及び/又は無置換単環式芳香族原料、置換及び/又は無置換多環式芳香族炭化水素(PAH)原料、並びにそれらの任意の組合せより製造することができる。PAHは、2環状芳香族原料又は多環状芳香族原料(例えば、3環状芳香族原料又はそれ以上)を含んでもよい。
1又は複数の芳香族クラスは、例えばテトラリン(「1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン」とも称される)又はインデン等の部分的に水素化された芳香族環を含有してもよい。
【0015】
本開示の等方性ピッチ組成物は、以下により製造されてもよい:1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料を酢酸及び硫酸と周囲温度で混合し、第一混合物を生成する;約40°C~約400°Cの温度で第一混合物を加熱する;約40°C~約400°Cの温度で第一混合物に対してホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを加えて、反応生成物の組成物を含有する第二混合物を生成し、ここで、反応生成物の組成物は、オリゴマー生成物(例えば、二量体、三量体、四量体、五量体等)を含有するか又はそれらから本質的になる;第二混合物を濾過する;及び、等方性ピッチ組成物を単離する。
本開示の等方性ピッチ組成物は、連続攪拌タンク反応器(CSTR)又は管形反応器等の連続モードで存在してもよく、そのような反応器は連続生産ライン工程に適合してもよい。本明細書中の開示に従った等方性ピッチ組成物の製造を実施するための他の適切な反応器は、CSTR又は直列のCSTR、攪拌タンク反応器(STR)又は直列のSTR、管形反応器、段階的気泡塔型反応器、並流気液フローを備えた管形反応器、周期的気液分離を備えた管形反応器等を含んでもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、約40°Cから約400°Cまでに及ぶ温度、及び/又は1分未満から約48時間、例えば36時間以下、例えば24時間以下、例えば12時間以下、例えば6時間以下までに及ぶ滞留時間で実施してもよい。
本開示の他の態様は、以下を有する等方性ピッチ組成物の製造のための方法に関する:酢酸存在下周囲温度で1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料をパラホルムアルデヒドと混合し、第一混合物を生成する;約40°C~約100°Cの温度で第一混合物を加熱する;及び約40°C~約100°Cの温度で、第一混合物に対して、硫酸及び酢酸を含有する第二混合物を混合し、等方性ピッチ組成物を含有する混合物を形成し、ここで、等方性ピッチ組成物は以下を有する:各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された1又は複数の芳香族クラスであり、ここで、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。
【0016】
本明細書中の方法の反応条件は、等方性ピッチ組成物の分子量分布及び軟化点のために重要である。好意的には、本開示の方法は、酢酸、硫酸、及び/又はパラホルムアルデヒドのモル比を調節することにより、分子量分布及び軟化点の両方に対する制御を可能とする。等方性ピッチ組成物の軟化点は、特に硫酸及びパラホルムアルデヒドの量に基づき増加することができる。酢酸は、少なくとも部分的に溶媒として用いてもよい。更に、任意の残留酸は、等方性ピッチ組成物を含有する残渣を、水及び希釈塩基溶液(例えば、NaOH又はNH4OH)で洗浄した後、濾過により容易に除くことができ、その後、高純度材料としての前記等方性ピッチ組成物(すなわち、定量的に消費される出発材料であり、質量分析(例えば、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)、1H NMR、及び13C NMRスペクトル)により確認する)の単離を促進する。
【0017】
芳香族原料の非限定的な例として、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、オルト-、メタ-、パラ-置換キシレン)、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、3-メチルナフタレン、2,6-ジメチルナフタレン、1-エチルナフタレン、2-エチルナフタレン、1,7-ジイソプロピルナフタレン、2,3-ジイソプロピルナフタレン、2,6-ジイソプロピルナフタレン、2,7-ジイソプロピルナフタレン、1-ブチルナフタレン、2-ブチルナフタレン、1-tert-ブチルナフタレン、2-tert-ブチルナフタレン、アントラセン、1-メチルアントラセン、2-メチルアントラセン、9-メチルアントラセン、9,10-ジメチルアントラセン、9,10-ジフェチルアントラセン、フェナントレン、1-メチルフェナントレン、1-エチルフェナントレン、2-メチルフェナントレン、1-フェニルフェナントレン、2,7-ジフェニルフェナントレン、ピレン、1-プロピルピレン、4-プロピルピレン、1,2,3-トリメチルピレンベンゾピレン、ピセンコロネン(picenecoronene)、クリセン、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、コランニュレン、フルオレン(fluorine)、ベンゾ[j]フルオランセン、ベンゾ[c]フルオレン、ペリレン、ベンゾ-ペリレン、オバレン、AROMATIC-200TM、アセナフテン、及びそれらの任意の異性体、並びにそれらの任意の組合せが含まれてもよい。
好適な芳香族炭化水素化合物は、1~3環を含んでもよく、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基、フェニル基、又は7~9個の炭素原子を含むアラルキル基により置換されていてもよい。本明細書中、芳香族炭化水素は、有利なものとして、キシレン、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、ビフェニル、アントラセン、フェナントレン、ピレン、及び1~6個の炭素原子を含むアルキル基で置換されたそれらの誘導体より選択される。より好ましくは、例えば、ナフタレン、メチルナフタレン、及びジメチルナフタレン等の多環式芳香族炭化水素、並びに例えば芳香族油等のそれらの多環式芳香族炭化水素の混合物である。
多環式芳香族化合物が反応剤として使用される場合、例えば、上記化合物は、ナフタレンを90wt%以上含む芳香族炭化水素油、高純度ナフタレン、又は主にナフタレンを含む芳香族炭化水素油であってもよい。コールタール由来のナフタレン油留分、メチルナフタレン油留分、及び中間体油留分、又は蒸留、抽出等によってこれらの留分の主成分を回収することにより得られる中間体生成物及び残渣油を、炭化水素油として使用することができる。前記ナフタレン又はメチルナフタレン含有油は、主成分及び沸点が互いに近接する多環式芳香族炭化水素の混合物として生じることが多い。反応中で使用される芳香族炭化水素は、純粋な原材料が使用される限り、混合物であってもよい。
ナフタレン含有芳香族炭化水素油は、当然主成分として芳香族炭化水素を含み、追加的に不活性な脂肪族炭化水素を含む官能基を有する芳香族化合物を含んでもよい。ナフタレンを90wt%以上含む芳香族炭化水素油は、精製ナフタレンであってもよいが、好ましい例は95%グレードのナフタレンである。この特定の材料は、ナフタレンに加えて、ベンゾチオフェン、メチルナフタレン等を含む。
本開示の方法で使用されるホルムアルデヒドは、ホルムアルデヒド自体か、又は反応系中でホルムアルデヒドを生成することができる化合物であってもよく、及びホルムアルデヒド、ホルマリン、パラホルムアルデヒド等を用いることができる。ある場合において、パラホルムアルデヒドは、無溶媒条件下又はアルカリ(例えば、NaOH又はKOH)溶液中で使用してもよい。
酸の非限定的な例としては、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、リン酸、クエン酸、炭酸、シュウ酸、芳香族スルホン酸を含んでもよい。本開示の酸は、溶媒として用いてもよい。
【0018】
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC2(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC3(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC4(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC5(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC6(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC7(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC8(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC9(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC10+(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有してもよい。
【0019】
更に、等方性ピッチ組成物は、約500°C以下(又は約90°Cから約500°Cまで、又は約100°Cから約490°Cまで、又は約110°Cから約480°Cまで、又は約120°Cから約470°Cまで、又は約130°Cから約460°Cまで、又は約140°Cから約450°Cまで、又は約150°Cから約440°Cまで、又は約160°Cから約430°Cまで、又は約170°Cから約420°Cまで、又は約180°Cから約410°Cまで、又は約200°Cから約400°Cまで)のTspを有してもよい。等方性ピッチ組成物は、約100°C以上のTspを有してもよい。
等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、約40wt%以下(又は35wt%以下、又は30wt%以下、又は25wt%以下、又は20wt%以下、又は15wt%以下)のMCRを有してもよい。等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、約15wt%から約40wt%までのMCRを有してもよい。
等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоl(又は約400g/mоl~約2,000g/mоl、又は約500g/mоl~約1,500g/mоl、又は約600g/mоl~約800g/mоl、又は約300g/mоl~約1,000g/mоl、又は約300g/mоl~約500g/mоl)のMwを有してもよい。代わりに、等方性ピッチ組成物は、約500g/mоl以下(又は約100g/mоl~約500g/mоl、又は約150g/mоl~約400g/mоl、又は約200g/mоl~約350g/mоl、又は約250g/mоl~約300g/mоl、又は約100g/mоl~約250g/mоl、又は約250g/mоl~約500g/mоl)のMwを有してもよい。
【0020】
上述の等方性ピッチ組成物の製造方法は、以下を有してもよい:酢酸存在下周囲温度で1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料をパラホルムアルデヒドと混合し、第一混合物を生成する;約40°C~約100°Cの温度で第一混合物を加熱する;及び約40°C~約100°Cの温度で、第一混合物に対して、硫酸及び酢酸を含有する第二混合物を混合し、等方性ピッチ組成物を含有する混合物を形成し、ここで、等方性ピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された1又は複数の芳香族クラスを有し、ここで、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、90°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。任意の理論に拘束されることなく、反応はFriedel-Craftsアシル化反応を介して始まり、縮合反応が続いてもよいと信じられている。
【0021】
芳香族原料及びパラホルムアルデヒドの混合は、約10:1から約1:10まで(又は約1:1.5~約1:9、又は約1:2~約1:8、又は約1:2.5~約1:7、又は約1:3~約1:6、又は約1:4~約1:5)の芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比で実施することができる。ある場合において、芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比は1:3である。別の場合において、芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比は1:1である。
更に、約1:0.001から約1:20(又は約1:0.01~約1:19、又は約1:0.1~約1:18、又は約1:0.5~約1:17、又は約1:1~約1:16、又は約1:1.5~約1:15、又は約1:2~約1:14、又は約1:2.5~約1:13、又は約1:3~約1:12、又は約1:3.5~約1:11、又は約1:4~約1:10)までの芳香族原料:硫酸のモル比で、硫酸の追加を行ってもよい。少なくとも一実施態様において、芳香族原料:硫酸のモル比は1:2である。
第一混合物に対する、硫酸及び酢酸を含有する第二混合物の混合は、約40°C~約100°C、例えば約50°C~約90°C、例えば約60°C~約80°C、例えば約40°C~約60°C、例えば約60°C~約90°Cの温度で、約5時間以下(又は例えば、約5分~約5時間、又は約10分~約4時間、又は約15分~約3時間、又は約20分~約2時間、又は約25分~約1時間、又は約30分)の時間で、実施してもよいが、使用する原材料及び酸に応じて条件を変化してもよい。
【0022】
任意の残存するパラホルムアルデヒド、硫酸及び/又は酢酸からの等方性ピッチ組成物の分離は、残渣を洗浄し酸を中和するためにアルカリを用いて、反応混合物を濾過することで実施することができる。
好適なアルカリの例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム及び炭酸ナトリウム等の水溶性のアルカリがあり得る。「水溶性」は、アルカリ自体が水溶性であるだけでなく、酸との反応により形成される塩も水溶性であることを意味する。更に、「アルカリ」は、酸を中和することができる物質を意味し、その例が水酸化物及び弱酸の塩であり、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。例えば、水酸化ナトリウムは、容易に入手可能であり多くの酸に溶解することができるため、濾過工程で使用することができる。
本開示の方法は、更に以下を有してもよい:等方性ピッチ組成物を含有する混合物を周囲温度まで冷却する;及び等方性ピッチ組成物を任意の残存するパラホルムアルデヒド、硫酸及び/又は酢酸から分離する。
ある例において、第一混合物に対する、硫酸及び酢酸を含有する第二混合物の混合は、周囲圧力で実施してもよい。
【0023】
メソフェーズピッチ組成物及びその製造方法
本開示は、明細書中で以下を有する方法を提供する:各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物(上述)を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理し、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を製造する;ここで、熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環を形成する。ある場合において、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化して1又は複数の6員環を形成し、続いて脱水素的芳香族化を行い、高芳香族性メソフェーズピッチ組成物を生成してもよい。
メソフェーズピッチは、バッチ反応器中で、好ましくは連続フロー反応器中で製造してもよい。少なくとも一実施形態において、メソフェーズピッチは、約300°Cから約500°Cに及ぶ温度で、1分未満から48時間(又は36時間以下、又は24時間以下、又は20時間以下、又は15時間以下、又は10時間以下、又は5時間以下、又は2.5時間以下、又は1時間以下)に及ぶ滞留時間で、連続管形反応器中で製造する。
【0024】
上述した通り、2以上の芳香族クラスは、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族であってもよい。
メソフェーズピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC2(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC3(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC4(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC5(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC6(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC7(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC8(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC9(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
本開示の等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC10+(0.1wt%~95wt%、又は0.5wt%~90wt%、又は1wt%~85wt%、又は5wt%~80wt%、又は10wt%~75wt%、又は15wt%~70wt%、又は20wt%~65wt%、又は25wt%~60wt%、又は30wt%~55wt%、又は35wt%~50wt%、又は40wt%~45wt%、又は0.1wt%~50wt%、又は0.5wt%~45wt%、又は1wt%~40wt%、又は1.5wt%~35wt%、又は2wt%~30wt%、又は2.5wt%~25wt%、又は3wt%~20wt%)を含有してもよい。
メソフェーズピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有してもよい。
【0025】
本明細書中、熱処理は熱浸漬及び/又は脱歴であってもよい。熱処理は、大気圧から1,000psiまで(又は例えば、約1psiから約500psiまで、又は約10psiから約450psiまで、又は約50psiから約400psiまで、又は約100psiから約350psiまで、例えば300psi)に及ぶ圧力で実施してもよい。
脱歴は、室温から280°Cまでに及ぶ温度で、大気圧から700psiまでに及ぶ圧力で、及び/又は約1時間から3時間までに及ぶ反応時間で実施してもよい。脱歴のために使用する溶媒の非限定的な例としては、トルエン、へプタン、又は様々な比率でのこれら2つの組合せからなる群より選択されてもよい。
【0026】
本開示のメソフェーズピッチ組成物は、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき、約40vol%から約100%まで(又は約45vol%から約95vol%まで、又は約50vol%から約90vol%まで、又は約55vol%から約85vol%まで、又は約60vol%から約80vol%まで)に及ぶメソフェーズ含量を有してもよい。
メソフェーズピッチ組成物は、約100°C以上(又は約150°C以上、又は約200°C以上、又は約250°C以上、又は約300°C以上、又は約350°C以上、又は約400°C以上)の軟化点(Tsp)を有してもよい。メソフェーズピッチ組成物は、約100°Cから約500まで、例えば約150°Cから約475°Cまで、例えば約200°Cから約450°Cまでの軟化点(Tsp)を有してもよい。
メソフェーズピッチ組成物は、メソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき、約25wt%以上(又は約25wt%から約95wt%まで、又は約30wt%から約90wt%まで、又は約35wt%から約85wt%まで、又は約40wt%から約80wt%まで)のマイクロ残留炭素分(MCR)を有してもよい。
本開示のメソフェーズピッチ組成物は、1又は複数の繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブの製造のために使用されてもよい。
【0027】
最終用途
本開示のメソフェーズピッチ組成物は、優れた機械特性を有する高配向性炭素繊維、並びに繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブの製造を改良するための炭素繊維製品の製造のための前駆体として使用してもよい。
ある例において、本開示の方法は、各芳香族クラス間が少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理し、炭素繊維への紡糸に適したメソフェーズピッチ組成物を製造し、ここでメソフェーズピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有することを有してもよい;ここで、熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環が形成される。
本明細書中で開示される実施態様は、以下を含む。
【0028】
A.メソフェーズピッチ組成物の製造方法。前記方法は、各芳香族クラス間が少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理して、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を生成することを含み、
熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環が形成される。
B.メソフェーズピッチ組成物。メソフェーズピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有し、
メソフェーズピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを有する等方性ピッチ組成物より生成され、
及び、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。
【0029】
実施形態A及びBは、任意の組合せで1又は複数の下記の要素を有してもよい。
要素1:2以上の芳香族クラスのそれぞれは、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族である。
要素2:置換芳香族は、C1~C20ヒドロカルビル一置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル二置換芳香族、C1~C20ヒドロカルビル三置換芳香族、及びそれらの任意の
組合せからなる群より選択される。
要素3:2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化して1又は複数の6員環を形成し、続いて脱水素的芳香族化を行い、高芳香族性メソフェーズピッチ組成物を生成する。
要素4:等方性ピッチ組成物は、以下により生成する:
1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料を酢酸及び硫酸と混合して第一混合物を生成すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物を加熱すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物に対してホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを添加して、反応生成物の組成物を含有する第二混合物を生成すること;
第二混合物を濾過すること;及び
等方性ピッチ組成物を単離すること。
要素5:等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する。
要素6:2以上の芳香族クラスのそれぞれは部分的に水素化された芳香族環を有する。
要素7:2以上の芳香族クラスのそれぞれは、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、オルト-、メタ-、パラ-キシレン)、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、ピセンコロネン(picenecoronene)、クリセン、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、コランニュレン、ベンゾ[j]フルオランセン、ベンゾ[c]フルオレン、ペリレン、ベンゾ-ペリレン、オバレン、AROMATIC-200TM、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される。
要素8:芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比は約10:1から約1:10までである。
要素9:芳香族原料:ホルムアルデヒドの当量のモル比は1:3である。
要素10:芳香族原料:硫酸のモル比は約1:0.001から約1:20までである。
要素11:芳香族原料:硫酸のモル比は1:2である。
要素12:等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有する。
要素13:等方性ピッチ組成物は、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する。
要素14:熱処理は熱浸漬及び/又は脱歴である。
要素15:脱歴は、室温から280°Cまでに及ぶ温度で、大気圧から700psiまでに及ぶ圧力で、及び/又は約1時間から3時間までに及ぶ反応時間で実施される。
要素16:脱歴のために使用する溶媒は、トルエン、へプタン、又は様々な比率でのこれら2つの組合せからなる群より選択される。
要素17:熱処理は、大気圧から1,000psiまでに及ぶ圧力で実施される。
要素18:メソフェーズピッチ組成物は、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき、約40vol%から約100%までに及ぶメソフェーズ含量を有する。
要素19:前記要素のいずれかのメソフェーズピッチ組成物を用いて調製される繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブ。
【0030】
非限定的な例によると、Aに適用することができる例示的な組み合わは、以下を含むが、これらに限定されない:1又は2及び3;1又は2及び4;1又は2及び5;1又は2及び6;1又は2及び7;1又は2及び8;1又は2及び9;1又は2及び10;1又は2及び11;1又は2及び12;1又は2及び13;1又は2及び14;1又は2及び15;1又は2及び16;1又は2及び17;1又は2及び18;1又は2及び19;1又は2及び6及び7;1又は2及び13及び14;15及び16。
非限定的な例によると、Bに適用することができる例示的な組合せは、以下を含むが、これらに限定されない:1又は2及び3;1又は2及び4;1又は2及び5;1又は2及び6;1又は2及び7;1又は2及び8;1又は2及び9;1又は2及び10;1又は2及び11;1又は2及び12;1又は2及び13;1又は2及び14;1又は2及び15;1又は2及び16;1又は2及び17;1又は2及び18;1又は2及び19;1又は2及び6及び7;1又は2及び13及び14;15及び16;1又は2及び18及び19。
本開示の実施形態の理解をより促すため、以下の好ましい実施例又は代表的な実施態様を示す。以下の実施例は、発明の範囲を限定又は定義するような方法で解釈してはならない。
【実施例
【0031】
AROMATIC-200TM Fluidを除く、全ての溶媒及び試薬は、シグマアルドリッチ社又はフィッシャーサイエンティフィック社より購入し、入手した状態で更に精製することなく使用した。別段明記しない限り、全ての反応は、標準的なN2雰囲気下で実施した。AROMATIC-200TM Fluid(「ナフタレンフリー」グレード)は、AR-200TM(例えば、SOLVESSOTM 200 Fluid)とも称され、ExxonMobilケミカル社より入手し、入手した状態で使用した。
【0032】
等方性ピッチ組成物の合成のための一般手順:3口丸底フラスコに対して、芳香族分子(1モル当量)、18M硫酸(2モル当量)、及び酢酸(全体積200mLに調整)を加えた。ホルムアルデヒド溶液(3モル当量、35wt%水溶液、又は希NaOH中で事前に溶解したパラホルムアルデヒド)を含む滴下漏斗を3口丸底フラスコに取り付けた。(反応スケールに応じて大型スターラーバー又はメカニカルスターラーのいずれかで)高速攪拌しながら、混合液を100°Cに加熱する。温度が60°Cに達したら、ホルムアルデヒド溶液を、2.5時間~3時間の時間をかけて非常にゆっくりと混合液に滴下で加えて、その間反応混合液を加熱し続け、90°Cから100°Cまでに及ぶ温度を維持した。滴下終了後、混合液を、100°Cで更に1時間~3時間更に加熱し、その後温度を室温まで冷却した。水を加え、スラリー状の混合液を濾過し、固形物を希アンモニア又は水酸化ナトリウムで完全に洗浄し、最後に水で洗浄し、ゲル状又は粉状の残渣のいずれか(使用する反応条件及び芳香族出発原料に依存する)を得た。
【0033】
表1は、等方性ピッチ組成物の反応条件及び物性を示す。実施例1では、パラホルムアルデヒドを用いて、ナフタレン対硫酸対ホルムアルデヒドの比率を1:10:3で使用した。実施例2では、35%ホルムアルデヒド溶液を用いて、ナフタレン対硫酸対ホルムアルデヒドの比率を1:2:3で使用した。実施例3では、NaOHの希釈液中でパラホルムアルデヒドより調製したホルムアルデヒド溶液を用いて、ナフタレン対硫酸対ホルムアルデヒドの比率を1:2:3で使用した。
【0034】
【表1】
【0035】
図1は、二量体、三量体、四量体、五量体、及び六量体を含む5種のオリゴマーの存在を示す等方性ピッチ組成物(実施例2)のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)である。ナフタレンより形成される等方性ピッチ組成物(実施例2)の質量分析の解析は、二量体から六量体までのオリゴマーの範囲の分布(MW200g/mоl~900g/mоl)を示し、その中で主要な成分は三量体から五量体の範囲(MW400g/mоl~700g/mоl)であった。
【0036】
合成した等方性ピッチ組成物(実施例1~8)の温和な熱処理により、対応するメソフェーズピッチ組成物が形成された。熱処理は、等方性ピッチ組成物の各オリゴマー間で脱水素的環化を誘導するのに十分な温度で且つ熱分解を防ぐため高すぎない温度で実施した。ピッチ組成物の反応条件及び物性は、表2に示す。
芳香族分子間の各メチレン架橋は、環化手段としての役割を果たした。熱処理(例えば熱浸漬)は300°Cから420°Cまでに及ぶ温度で実施したが、この温度はピッチ製造のための従来の熱変換工程(すなわち、典型的には420°Cから550°Cまでに及ぶ)より大幅に下回る。表2は、ナフタレンベースオリゴマーを含有する等方性ピッチ組成物(実施例2)の300°Cから350°Cまでに及ぶ温度での熱処理により得られたメソフェーズピッチ組成物(実施例9-11)の結果を示す。メソフェーズピッチ組成物(実施例9-11)のMCR値は、等方性ピッチ組成物(実施例2)のMCR値よりも高かった。メソフェーズピッチ組成物(実施例9-11)のTsp値は、等方性ピッチ組成物(実施例2)のTsp値よりも高く、熱処理温度が増加するにつれて、メソフェーズピッチ組成物のTspが低下することに留意されたい。実施例9-11は、メソフェーズを一切含んでいなかった。実施例9-11より得られた結果は、メソフェーズ形成のための最小温度要件を強調する。
【0037】
【表2】

表2(続き).
【0038】
図2は、熱浸漬処理後の実施例2とその対応するメソトロピックピッチ組成物(実施例9-11)のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)である。実施例9及び10で有意に縮合された分子が観察された。
図3は、メソフェーズピッチ組成物(実施例9-11)中に含有されるオリゴマーの分布を描くグラフである。図3は、実施例2の熱浸漬後に四量体が主生成物であったことを示す。
質量分析の解析により、熱処理された等方性ピッチ組成物が脱水素的環化反応を受け、炭素数の変化が非常に少なく、軽度~重度の水素不足な新分子が生じたことが明らかとなった。図4A及び4Bは、熱浸漬処理後の等方性ピッチ組成物(実施例2)及びその対応するメソトロピックピッチ組成物(実施例9-11)の質量分析を描く。広域スペクトルは、熱処理の温度が増加したことに伴う縮合の程度を明らかにした。熱の増加により縮合された分子が観察された(図4B参照)。同一の炭素数の種について、処理された試料において最大で8個の水素原子の損失が観察されたが、このことは環化したことを示すだけでなく、広範な芳香族化反応の証拠でもある。得られた種は、高品質ピッチのための理想的な分子である高度に共役した芳香族種であると考えられる。
図5は、熱浸漬処理後のメソトロピックピッチ組成物(実施例10)のC32同定を描くマススペクトルである。
図6は、熱浸漬処理後の等方性ピッチ組成物(実施例2)及びその対応するメソトロピックピッチ組成物(実施例10)のマススペクトルであり、メソフェーズの形成及び炭素数の再分配のための反応機構を描いている。
【0039】
表3は、AROMATIC-200TM-ベースの等方性ピッチ組成物(メソフェーズピッチ組成物、実施例12-13)の条件及び熱処理後に得られた結果を示す。熱処理は、オートクレーブ中で、420°C、圧力300psiで、以下に従い3時間実施した:AROMATIC-200TMをまずシンチレーションバイアルに導入し、その後そのバイアルを開口したまま、ケイ砂をプレロードしたオートクレーブに挿入した。全体的な設定は圧力下での「開口」の熱処理を刺激し、ここで反応中ガス状物質はバイアルから放出されたが、反応の終点では必ずしもバイアル内に回収されるとは限らなかった。
図7は、大型メソフェーズドメインを描く実施例12の偏光顕微鏡であり、こうして、得られた固形残渣(20%単離回収)が大型メソフェーズドメイン(即ち、図7中に示す白色ドメイン)を表すことを示している。
図8は、メソフェーズピッチ組成物である実施例12のレーザー脱離イオン化質量分析(LDI-MS)である。
【0040】
【表3】

表3(続き).
【0041】
表4は、1-メチルナフタレン-ホルムアルデヒドベースの等方性ピッチ組成物の条件及び熱処理後に得られた結果を示す。実施例14は、反応器(従来のオートクレーブ)中300psiで実施し、ここで反応後に軽量分子を凝縮させて生成物残渣に戻した。回収した残渣は、約50°Cの低融点を有し、メソフェーズを有さなかった。回収した残渣は、更に、へプタン/トルエンの混合溶媒(70:30、v/v)を溶媒対サンプル比10で使用して脱歴処理し、その後メソフェーズ(60%メソフェーズ)の生成が生じた。図9は、大型メソフェーズドメイン(即ち、図9中に示す白色ドメイン)を描く実施例15の偏光顕微鏡である。
【0042】
【表4】

表4(続き)
【0043】
本明細書に記載される全ての書面は、そのような慣習が許容される全法域の目的で、本明細書中の参考文献により包含され、そこには本文章と一貫性のある範囲内で、あらゆる優先権書面及び/又は試験手順が含まれる。本開示の形態が説明及び開示される一方、前述の一般的記載及び特定の実施形態より明らかな通り、本開示の主旨及び範囲から離れることのない範囲で様々な修飾を施すことができる。従って、本開示はそれにより限定されることは意図されない。例えば、本明細書に記載される組成物は、任意の成分、若しくは本明細書中に明確に列挙又は開示されていない組成物を有さなくてもよい。任意の方法は、本明細書に列挙又は開示されない任意の工程を欠いてもよい。同様に、用語「含有する」は、用語「含む」と同義であると考えられる。方法、組成物、要素、又は要素の群が暫定的表現「含有する」に先行されるときはいつでも、組成物、単一要素、又は複数要素の列挙に先行して、及び逆も同様で、暫定的表現「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群より選択される」、又は「である」とともに、同一の組成物又は構成物の群もまた考察されることが理解される。
本明細書中に、1又は複数の発明要素を包含する1又は複数の例示的な具体例を示す。明確性のために、本出願中に自然な実施の特徴全てを記載せず、又は示さない。本発明の1又は複数の要素を包含する自然な実施形態の開発において、開発者の目標を達成するために、実施により及び時折変化する、システムに関連した、事業に関連した、政治に関連した、及びその他の制約の順守等の数多くの特定目的の決定をしなければならないことが理解される。開発者の努力は多大な時間を必要とし得る一方、それでもなお、そのような努力は当業者にとっては習慣的な仕事であり、この開示の利益を有しているであろう。
他に明示されない限り、分子量、反応条件等の要因、特性の量を表現し、及びその他本明細書及び関連する請求項で使用される全ての数字は、用語「約」により全ての例において修飾されるものとして理解されなければならない。従って、反対に示されない限り、以下の本明細書及び添付の請求項で明記される数値的パラメーターは、本発明の実施形態により得られるであろう所望の特性に依存して変化してもよい近似値である。最低限、及び特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、各数値的パラメーターは、少なくとも、報告される重要なアラビア数字の数の観点から、及び通常の四捨五入する手法を適用することにより解釈されるべきである。
下限及び上限とともに数値的範囲が開示されるときはいつでも、任意の数字及び上記範囲内に収まる任意の含まれた範囲は特に開示され、下限及び上限を含む。特に、本明細書で開示される(「約aから約bまで」、又は同等に「およそaからbまで」又は同等に「およそa-b」の形態の)各値の範囲は、より幅広い値の範囲内で包含される各数字及び範囲を明記するものとして理解される。更に、請求項中の用語は、特許権者により明白且つ明確に定義されない限り、率直な、通常の意味を有する。その上、請求項で用いられる非限定的な冠詞「a」又は「an」は、それが示す1又は複数の要素を意味するものとして本明細書中に定義される。
【0044】
それ故、本開示は、言及される並びにその固有の目的及び利点を達成するためによく適応される。本開示は、異なるもののその技術分野の通常の技術を有し、及び本明細書で教示された利益を有することが明らかである同等な方法で修飾され、実施されうるため、上述で開示した特定の実施形態は、例示的なものにすぎない。更に、以下の請求項に記載されるものを以外、本明細書に示される構造又は設計の詳細に対して限定は意図されない。それ故、上記で開示される特定の例示的な実施形態は、変更され、組み合わされ、又は修飾されてもよく、そのような全ての変化形は、本開示の範囲及び主旨に含まれると考えられることは明白である。本明細書で例示的に開示された実施形態は、本明細書で特に開示されたものでない任意の要素及び/又は本明細書で開示された任意の選択的な要素無しで適切に実施されてもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各芳香族クラス間が少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理して、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を生成することを含む方法であって、
熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環が形成される、方法。
【請求項2】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族であり、置換芳香族が、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル一置換芳香族、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル二置換芳香族、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル三置換芳香族、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択され、及び2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化して1又は複数の6員環を形成し、続いて脱水素的芳香族化を行い、高芳香族性メソフェーズピッチ組成物を生成する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下により等方性ピッチ組成物を生成し、
芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が約10:1から約1:10までであり、又は芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が1:3であり、
芳香族原料:硫酸のモル比が約1:0.001から約1:20までであり、又は芳香族原料:硫酸のモル比が1:2であり、
メソフェーズピッチ組成物が、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき、約40vol%から約100%までに及ぶメソフェーズ含量を有する、請求項1に記載の方法:
1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料を酢酸及び硫酸と混合して第一混合物を生成すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物を加熱すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物に対してホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを添加して、反応生成物の組成物を含有する第二混合物を生成すること

第二混合物を濾過すること;及び
等方性ピッチ組成物を単離すること。
【請求項4】
等方性ピッチ組成物が、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有し、2以上の芳香族クラスのそれぞれが部分的に水素化された芳香族環を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、オルト-、メタ-、パラ-キシレン)、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、ピセンコロネン(picenecoronene)、クリセン、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、コランニュレン、ベンゾ[j]フルオランセン、ベンゾ[c]フルオレン、ペリレン、ベンゾ-ペリレン、オバレン、AROMATIC-200TM、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有する、又は等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
熱処理が熱浸漬及び/又は脱歴であり、脱歴が、室温から280°Cまでに及ぶ温度で、大気圧から700psiまでに及ぶ圧力で、及び/又は約1時間から3時間までに及ぶ反応時間で実施され、脱歴のために使用する溶媒が、トルエン、へプタン、又は様々な比率でのこれら2つの組合せからなる群より選択され、熱処理が、大気圧から1,000psiまでに及ぶ圧力で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載のメソフェーズピッチ組成物を用いて調製される、繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブ。
【請求項9】
約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(Tsp)、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物であって、
メソフェーズピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを有する等方性ピッチ組成物より生成され、
及び、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(Tsp)、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する、メソフェーズピッチ組成物。
【請求項10】
2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族であり、及び等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、請求項に記載のメソフェーズピッチ組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
それ故、本開示は、言及される並びにその固有の目的及び利点を達成するためによく適応される。本開示は、異なるもののその技術分野の通常の技術を有し、及び本明細書で教示された利益を有することが明らかである同等な方法で修飾され、実施されうるため、上述で開示した特定の実施形態は、例示的なものにすぎない。更に、以下の請求項に記載されるものを以外、本明細書に示される構造又は設計の詳細に対して限定は意図されない。それ故、上記で開示される特定の例示的な実施形態は、変更され、組み合わされ、又は修飾されてもよく、そのような全ての変化形は、本開示の範囲及び主旨に含まれると考えられることは明白である。本明細書で例示的に開示された実施形態は、本明細書で特に開示されたものでない任意の要素及び/又は本明細書で開示された任意の選択的な要素無しで適切に実施されてもよい。
本発明のまた別の態様は、以下の通りであってもよい。
〔1〕各芳香族クラス間が少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを含有する等方性ピッチ組成物を、約300°C~約500°Cの温度で熱処理して、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(T sp )、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物を生成することを含む方法であって、
熱処理により、2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化が誘導され、1又は複数の5員環及び/又は6員環が形成される、方法。
〔2〕2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族である、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕置換芳香族が、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル一置換芳香族、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル二置換芳香族、C 1 ~C 20 ヒドロカルビル三置換芳香族、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、前記〔2〕に記載の方法。
〔4〕2以上の芳香族クラスのうちの少なくとも2つの間で環化して1又は複数の6員環を形成し、続いて脱水素的芳香族化を行い、高芳香族性メソフェーズピッチ組成物を生成する、前記〔1〕に記載の方法。
〔5〕以下により等方性ピッチ組成物を生成する、前記〔1〕に記載の方法:
1又は複数の芳香族クラスを含有する芳香族原料を酢酸及び硫酸と混合して第一混合物を生成すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物を加熱すること;
約40°C~約400°Cの温度で第一混合物に対してホルムアルデヒド及び/又はパラホルムアルデヒドを添加して、反応生成物の組成物を含有する第二混合物を生成すること

第二混合物を濾過すること;及び
等方性ピッチ組成物を単離すること。
〔6〕等方性ピッチ組成物が、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(T sp )、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔7〕2以上の芳香族クラスのそれぞれが部分的に水素化された芳香族環を有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔8〕2以上の芳香族クラスのそれぞれが、ベンゼン、トルエン、キシレン(例えば、オルト-、メタ-、パラ-キシレン)、ナフタレン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン、ピセンコロネン(picenecoronene)、クリセン、テトラセン、ペンタセン、トリフェニレン、コランニュレン、ベンゾ[j]フルオランセン、ベンゾ[c]フルオレン、ペリレン、ベンゾ-ペリレン、オバレン、AROMATIC-200 TM 、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、前記〔1〕に記載の方法。
〔9〕芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が約10:1から約1:10までである、前記〔5〕に記載の方法。
〔10〕芳香族原料:ホルムアルデヒド当量のモル比が1:3である、前記〔5〕に記載の方法。
〔11〕芳香族原料:硫酸のモル比が約1:0.001から約1:20までである、前記〔5〕に記載の方法。
〔12〕芳香族原料:硫酸のモル比が1:2である、前記〔5〕に記載の方法。
〔13〕等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~100wt%のARC3、0.1wt%~100wt%のARC4、0.1wt%~100wt%のARC5、0.1wt%~100wt%のARC6、0.1wt%~100wt%のARC7、0.1wt%~100wt%のARC8、0.1wt%~100wt%のARC9、0.1wt%~100wt%のARC10+を含有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔14〕等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、前記〔1〕に記載の方法。
〔15〕熱処理が熱浸漬及び/又は脱歴である、前記〔1〕に記載の方法。
〔16〕脱歴が、室温から280°Cまでに及ぶ温度で、大気圧から700psiまでに及ぶ圧力で、及び/又は約1時間から3時間までに及ぶ反応時間で実施される、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕脱歴のために使用する溶媒が、トルエン、へプタン、又は様々な比率でのこれら2つの組合せからなる群より選択される、前記〔15〕又は〔16〕に記載の方法。
〔18〕熱処理が、大気圧から1,000psiまでに及ぶ圧力で実施される、前記〔1〕に記載の方法。
〔19〕メソフェーズピッチ組成物が、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき、約40vol%から約100%までに及ぶメソフェーズ含量を有する、前記〔12〕~〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕前記〔1〕~〔19〕のいずれかに記載のメソフェーズピッチ組成物を用いて調製される、繊維、酸化繊維、炭化繊維、グラファイト繊維、繊維ウェブ、酸化繊維ウェブ、炭化繊維ウェブ、又はグラファイト繊維ウェブ。
〔21〕約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、約100°C以上の軟化点(T sp )、メソフェーズピッチ組成物の全体積に基づき約0.01vol%~100vol%のメソフェーズ含量、及びメソフェーズピッチ組成物の全重量に基づき約25wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有するメソフェーズピッチ組成物であって、
メソフェーズピッチ組成物は、各芳香族クラス間で少なくとも1つのメチレン架橋で連結された2以上の芳香族クラスを有する等方性ピッチ組成物より生成され、
及び、等方性ピッチ組成物は、約300g/mоl~約2,000g/mоlの重量平均分子量(Mw)、50°C以上の軟化点(T sp )、及び等方性ピッチ組成物の全重量に基づき約15wt%以上のマイクロ残留炭素分(MCR)を有する、メソフェーズピッチ組成物。
〔22〕2以上の芳香族クラスのそれぞれが、1員環芳香族(ARC1)、2員環芳香族(ARC2)、3員環芳香族(ARC3)、4員環芳香族(ARC4)、5員環芳香族(ARC5)、6員環芳香族(ARC6)、7員環芳香族(ARC7)、8員環芳香族(ARC8)、9員環芳香族(ARC9)、10員環又はそれ以上の環式の芳香族(ARC10+)、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される無置換芳香族及び/又は置換芳香族である、前記〔21〕に記載のメソフェーズピッチ組成物。
〔23〕等方性ピッチ組成物が、等方性ピッチ組成物の全重量に基づき、0.1wt%~100wt%のARC1、0.1wt%~100wt%のARC2、0.1wt%~80wt%のARC3、0.1wt%~50wt%のARC4、0.1wt%~50wt%のARC5、0.1wt%~25wt%のARC6、0.1wt%~25wt%のARC7、0wt%~10wt%のARC8、0wt%~10wt%のARC9、0wt%~5wt%のARC10+を含有する、前記〔21〕に記載のメソフェーズピッチ組成物。
【国際調査報告】