IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーシティ オブ サウス フロリダの特許一覧

特表2024-512757合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム
<>
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図1
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図2
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図3
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図4
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図5
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図6A
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図6B
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図7
  • 特表-合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/026 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560786
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-11-07
(86)【国際出願番号】 US2022022734
(87)【国際公開番号】W WO2022212636
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/200,914
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521436740
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サウス フロリダ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF SOUTH FLORIDA
【住所又は居所原語表記】3802 Spectrum Boulevard,Suite 100,Tampa,Florida 33612(US)
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】パーササラティ,アシュウィン バラドワジュ
(72)【発明者】
【氏名】サフィ,アブドゥル モハイメン
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AB06
4C017AC26
4C017BB01
4C017BC11
(57)【要約】
合成多重露光スペックルイメージング(syMESI)により、従来の使用では、LSCI装置による(結像シーンでの)運動の定量的評価が従来実質的に不可能であるが、それらのような定量的な結果は、1つのみの固定された持続時間の露光時間で経験的に結像した後、そのようにして得られた生のスペックル画像(複数可)を様々な空間平均化を使用して変換し、複数の異なる合成露光時間を表すスペックル画像と、任意選択でスペックルコントラスト画像とを取得する。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学照明系であって、前記照明系の出力端部で光出力を生成するように構成され、光源を含むが、経時的に実質的に一定であるように前記光出力のパワーを維持するように構成される装置を含まない、前記光学照明系と、
光検出系を含む光学結像系と、
前記光検出系に操作可能に接続され、そこから電気信号を受信するように構成されたコンピュータシステムであって、前記光学結像系によって前記光出力からの光で形成されたスペックル画像を表す、前記コンピュータシステムと、
有形の非一時的なコンピュータ可読媒体と、
を含み、
前記有形の非一時的なコンピュータ可読媒体は、その上に配置された、コンピュータ可読命令が格納されるコンピュータ可読プログラムコードを含むことで、前記命令が前記コンピュータシステムのプロセッサによって実行されるとき、前記命令は、前記プロセッサに少なくとも、
1つのみの固定された第一経験的露光時間で、前記結像系によって前記光で形成された1つ以上の生のスペックル画像を取得させ、
空間的に異なる寸法を有する複数のビニングアパーチャを使用して、前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの選択された生のスペックル画像を空間的に平均させ、それぞれに対応する修正スペックル画像を形成させて、前記修正スペックル画像のそれぞれは複数の第二合成露光時間からのそれぞれに対応する第二合成露光時間に対応するスペックル画像を表し、
前記複数の第二合成露光時間からの各第二合成露光時間は、互いに異なり、前記第一経験的露光時間とは異なる、
複数合成露光時間スペックル結像(syMESI)系。
【請求項2】
前記命令はさらに、前記プロセッサに、前記修正スペックル画像のそれぞれを、前記同じ選択画像に対応する複数のスペックルコントラスト画像のそれぞれに対応するスペックルコントラスト画像に変換させる、請求項1に記載のsyMESI系。
【請求項3】
前記命令はさらに、前記プロセッサに、
(3a)前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの少なくとも1つ、前記選択画像、及び前記複数のスペックルコントラスト画像のうちの少なくとも1つを、視覚的に知覚可能な光放射照度の空間分布として表示させる、及び/または
(3b)第二合成露光時間の関数として、前記所与のスペクトルコントラスト画像の少なくとも1ピクセルに対する前記スペックルコントラストの値のスペックル視感度曲線を決定させる、及び/または表示させる、
ように構成される、請求項1及び2のうちの1項に記載のsyMESI系。
【請求項4】
前記命令はさらに、前記プロセッサに、前記スペックル視感度曲線に少なくとも基づいて、前記syMESI系の動作中に前記光出力によって照射され、前記1つ以上の生のスペックル画像によって表されたシーンの一部での運動の定量値を評価させるように構成される、請求項3に記載のsyMESI系。
【請求項5】
前記命令はさらに、前記プロセッサに、前記syMESI系の動作中に前記光出力によって照射され、前記1つ以上の生のスペックル画像によって表されたシーンの一部の視覚的に知覚可能な画像を生成させるように構成され、前記視覚的に知覚可能な画像は、前記視覚的に知覚可能な画像にわたる光学パラメータの空間分布を介して前記シーンの前記一部での運動の定量値の空間分布を表示する、請求項3及び4のうちの1項に記載のsyMESI系。
【請求項6】
前記命令は、前記プロセッサに、前記1つのみの固定された第一経験的露光時間で、前記結像系によって前記光で形成された生のスペックル画像のシーケンスを取得させるように構成され、前記シーケンス内の生のスペックル画像の構成は、必然的に非連続である、請求項1から6のうちの1項に記載のsyMESI系。
【請求項7】
前記光学結像系は、直接隣接する生のスペックル画像間の内に異なる持続時間の時間ギャップを有する前記必然的に非連続な生のスペックル画像を取得するように構成される、請求項6に記載のsyMESI系。
【請求項8】
請求項1から7のうちの1項に構成された前記syMESI系によるシーンを特徴付けるための方法であって、
前記光学照明系からの前記光出力を含む第一光によって前記シーンを照射することと、
前記1つのみの固定された第一経験的露光時間で、前記シーンによって後方散乱した前記第一光を表す第二光で前記シーンの1つ以上の生のスペックル画像を取得することと、
異なる空間寸法を有する複数のビニングアパーチャのそれぞれについて、前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの選択画像を、前記選択画像の放射照度分布を前記複数のビニングアパーチャのそれぞれに対応するビニングアパーチャで空間的に平均することによって、複数の修正スペックル画像のうちの対応する1つに修正することにより、複数の修正スペックル画像を生成することであって、前記複数の修正スペックル画像のそれぞれは、複数の第二合成露光時間のうちの1つの第二合成露光時間に対応する前記シーンのスペックル画像を表す、前記生成することと、
を含み、
前記複数の第二露光時間からのすべての第二合成露光時間は、互いに異なり、前記第一経験的露光時間とは異なる、
前記方法。
【請求項9】
前記複数の修正スペックル画像のそれぞれを、前記同じ選択画像に対応する複数のスペックルコントラスト画像のそれぞれに対応するスペックルコントラスト画像に変換することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(10a)前記第一光は前記光出力である、及び/または
(10b)前記光源はレーザ光源である、及び/または
(10c)前記複数の修正スペックル画像からの修正スペックル画像のそれぞれについて、前記第一経験的露光時間と前記対応する第二合成露光時間との間の数値関係は、前記所定のビニングアパーチャの寸法に依存する、及び/または
(10d)前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの少なくとも1つ、前記選択画像、及び前記複数のスペックルコントラスト画像のうちの少なくとも1つは視覚的に知覚可能である、請求項8及び9のうちの1項に記載の方法。
【請求項11】
(11a)前記少なくとも1つ以上の生のスペックル画像は、1つのみの生のスペックル画像を含む、または
(11b)連続して取得される前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの2つの生のスペックル画像は、次々に即時に取得されるのではなく、前記2つの画像の間に任意の時間遅延を有して取得される、請求項8から10のうちの1項に記載の方法。
【請求項12】
(12a)前記1つのみの固定された第一露光時間で、前記1つ以上の生のスペックル画像を取得することは、1つのみの生のスペックル画像を取得することを含む、及び/または
(12b)前記1つ以上の初期スペックル画像のうちの前記選択画像を修正することは、前記1つ以上の生のスペックル画像のうちの1つのみの画像を修正することを含む、請求項8から11のうちの1項に記載の方法。
【請求項13】
前記所与のスペックルコントラスト画像の各ピクセルは、前記修正スペックル画像のそれぞれに対応するピクセル強度の標準偏差と前記強度の平均との比率として決定されたスペックルコントラストの値を有する、請求項9から12のうちの1項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数のビニングアパーチャのうちの1つのビニングアパーチャは、多角形の形状を有する、請求項8から13のうちの1項に記載の方法。
【請求項15】
前記多角形の形状は、凹状多角形の形状である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
以下の条件、
(16a)前記方法は、前記選択画像の所与のピクセルによって表される前記シーンの一部での運動指数を定量的に決定することをさらに含むことと、
(16b)前記シーンが生体組織であるとき、前記運動指数は血流の指数であることと、
のうちの少なくとも1つを満たす、請求項8から16のうちの1項に記載の方法。
【請求項17】
前記取得することは、前記1つのみの固定された第一経験的露光時間で、前記結像系によって前記光で形成された生のスペックル画像のシーケンスの間の時間ギャップによって複数の生のスペックル画像を取得することを含み、前記シーケンス内の前記生のスペックル画像の構成は必然的に非連続である、請求項8から16のうちの1項に記載の方法。
【請求項18】
前記取得することは、異なる直接隣接する生のスペックル画像の間の内の異なる持続時間の時間ギャップによって前記必然的に非連続な生のスペックル画像を取得することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のビニングアパーチャのそれぞれについての前記選択画像を修正することは、
(19a)前記選択画像にわたって空間的に再位置決めされる前記同じビニングアパーチャによって、前記選択画像の前記放射照度分布を空間的に平均することと、
(19b)異なるサイズ及び/または形状の複数のビニングアパーチャによって、前記選択画像の前記放射照度分布を空間的に平均することであって、そのそれぞれに対応する基準コーナーは前記選択画像の前記同じ位置に固定される、前記平均することと、
のうちの1つを含む、請求項8から18のうちの1項に記載の方法。
【請求項20】
所与のスペックルコントラスト画像の各ピクセルは、時間領域、空間領域、または時空間領域内で決定されたスペックルコントラストの値を有する、請求項9から19のうちの1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本国際特許出願は、2021年4月2日に出願された米国仮特許出願第63/200,914号の優先権及び利益を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に援用されている。
【背景技術】
【0002】
血流が組織への酸素送達を直接指示し、正常な組織機能にとって重要であるため、組織を通る血流は、そのような組織の健康状態の重要な生理学的指標として機能する。例えば、脳への酸素供給中の小さい変化でさえ、正常な生理学的プロセスに劇的な影響を与え得るため、脳への血流の減少は重大な結果を招く可能性がある。したがって、血流の撮像は、正常な生理機能を理解し、疾患の進行を監視し、治療を追跡するために重要である。
【0003】
一般に、光学イメージング方法は時空間分解能特性が優れているため、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(CT)、または拡散光断層撮影法(DOT)よりも脳血流(CBF)動態の可視化(特に個々の脳血管の解像度を必要とする用途)により適している。例えば、光子相関に根ざした光学イメージング方法(レーザスペックルコントラストイメージング、またはLSCIなど)は、赤血球の天然のコントラスト運動を使用してCBFを評価するのに特によく適している。
【0004】
LSCIは、特に、小動物モデルでの脳血流の撮像に有用であることが示されている。LSCIの主な利点の1つは、使用される撮像装置が単純で安価でありながら、優れた時空間分解能を有する広視野CBF画像を取得するその能力である。現在まで、LSCIは、機能活性化研究では、ラット及びマウスの脳の虚血中にCBF動態を撮像し、虚血性脳卒中の進行をモデル化するために利用されてきた。
【0005】
関連技術で認識されているように、レーザスペックルは、光路長がわずかに異なっている軌道に沿ってサンプルから後方散乱したライトフィールド(例えば、レーザ光フィールド)のコヒーレントな加算によって生成されるランダムな干渉パターンである。この目的のために、図1Cは、典型的なLSCIセットアップを概略的に示す。ここでは、可視または近赤外のダイオードレーザ光源110からのわずかな発散光104が組織サンプル120に入射するように指向される。光104は組織内で散乱するが、組織120を通って異なる経路に沿って進むライトフィールドの成分は異なる位相シフトを受ける。後方散乱光124は結像レンズ128を通して集光され、適切に構成された電子回路130でのデータ処理のためにスペックル形態でカメラセンサ130に記録される。
【0006】
サンプル、細胞中の粒子(例えば、赤血球など)の運動は、スペックルパターンに時空間ゆらぎを与える(例えば、参考文献3を参照)。このような効果は、画像内に局所ブラー(または無相関)として現れる(図1A)。このブラーまたは無相関の定量化により、組織120の脈管構造内の赤血球の流量の尺度が得られる。正式には、局所スペックルコントラスト、K=σ/〈I〉、つまり、局所強度の正規化分散の平方根は、画像内の小さい窓(通常は7x7ピクセル)で計算される。ここで、σは7x7ピクセル窓内の強度の標準偏差で、〈I〉は7x7ピクセル窓内の強度の平均である。処理されたスペックルコントラスト画像(図1B)は、生のスペックル画像全体で窓ごとに、この計算を繰り返すことによって生成される。図1Bの画像の所与の一部内でスペックルコントラストの値が高くなるのは、サンプルの対応する領域(すなわち、図1A)内の空間ブラー量が減少する徴候であり、これは、ゆっくりと動く赤血球の直接的な結果である。
【0007】
特に、関連技術で認識されているように、LSCIアプローチで測定されるスペックルコントラストは、CBF変化の相対変化の急性測定にのみ適している。言い換えれば、LSCI系の従来の実装を実際に使用した結果では、標的組織またはその内での運動を定量的に測定することができず、代わりに、CBF変化に関して得られた1つのみの結論に現れ、それを提供する、スペックル画像全体で相対的な(例えば、0から1の任意の単位のスケールで)コントラスト値の評価を生成し、これは、次のような、画像の第一部分内に示された標的組織の第一領域での標的粒子の運動(血流など)が、画像の第二部分内に示された標的組織の第二領域での標的粒子の運動よりも速く発生しているように表されることができる。これら2つの運動の速度値の定量的(つまり、数値的)評価は、相対的な(つまり、比較的な)結果を提供する従来のLSCIに基づくと単純には不可能である。その結果、従来のLSCI系の適用は、最もごく単純な状況のみに限定されてきた。
【0008】
多重露光スペックルイメージング(または、MESI)として知られる方法論は、従来のLSCIの不能を訂正するために、複数のカメラ露光で取得されたレーザスペックル画像を処理し、それらを定量的なスペックル視感度モデルに当てはめることによって、血流の定量的な測定を提供するために導入された。現在まで、MESIは、音響光学変調器もしくは回転フィルタホイールなどの比較的かさばって遅い機器を使用した(例えば、Parthasarathy et al.,「Robust flow measurement with multi-exposure speckle imaging」,Optics Express16,1975-1989;2008)、または時間ビニングアプローチを使用した(ただし、8x5ピクセルなどの低解像度画像により良く適した高価な高速検出器を使用する場合のみ、例えば、参考文献Gを参照)いずれかのレーザのタイムゲートによって実現されてきた。MESIアプローチのよく知られている欠点は、調査対象のサンプル(組織)で有用なレーザ出力パワーを一定に維持することに対処する専用のハードウェアの使用、及び/または複数の実際の用途にとって十分に短くない測定の持続時間を必要とすることに現れる。
【0009】
引用文献:
-参考文献A Parthasarathy,A.B.,Kazmi,S.M.S.&Dunn,A.K.Quantitative imaging of ischemic stroke through thinned skull in mice with Multi Exposure Speckle Imaging.Biomedical optics express1,246-259,doi:10.1364/BOE.1.000246(2010)。
-参考文献B Kazmi,S.M.S.,Parthasarathy,A.B.,Song,N.E.,Jones,T.A.&Dunn,A.K.Chronic imaging of cortical blood flow using Multi-Exposure Speckle Imaging.Journal of Cerebral Blood Flow&Metabolism33,798-808,doi:10.1038/jcbfm.2013.57(2013)。
-参考文献C Parthasarathy,A.B.,Tom,W.J.,Gopal, A.,Zhang,X.&Dunn,A.K.Robust flow measurement with multi-exposure speckle imaging.Optics Express16,1975-1989(2008)。
-参考文献D Richards,L.M.et al.Intraoperative multi-exposure speckle imaging of cerebral blood flow.Journal of Cerebral Blood Flow &Metabolism37,3097-3109,doi:10.1177/0271678X16686987(2017)。
-参考文献E Valdes,C.P.et al.Speckle contrast optical spectroscopy,a non-invasive,diffuse optical method for measuring microvascular blood flow in tissue.Biomedical optics express5,2769,doi:10.1364/BOE.5.002769(2014)。
-参考文献F Varma,H.M.,Valdes,C.P.,Adams,K.E.,Culver,J.P.&Durduran,T.Speckle contrast optical tomography:A new method for deep tissue three-dimensional tomography of blood flow.Biomedical optics express5,1275,doi:10.1364/BOE.5.001275(2014)。
-参考文献G Dragojevic et al.,「High-speed multi-exposure laser speckle contrast imaging with a single-photon counting camera」,Biomedical Optics Express6,2865-2876;2015)。
【発明の概要】
【0010】
本発明の実施形態は、複数合成露光時間スペックル結像(syMESI)系を提供し、syMESI系は、光学照明系、光学結像系(または集光系)、及びマイクロプロセッサ、またはプログラムされた電子回路、及び/または有形の非一時的な記憶媒体を備えたコンピュータシステム(簡単にするために、総称して、及び/または個別にコンピュータシステムと呼ばれる)を含む。光学照明系は、照明系の出力端部で光出力を生成するように構成され、光源を含むが、経時的に実質的に一定であるように光出力のパワーを維持するように構成される装置を含まない(つまり、それを欠く)。(それらのような装置には、ほんの数例を挙げると、プロセッサによって制御される電子回路、ニュートラルデンシティフィルタ、及び音響光学変調器が含まれる場合がある。)光学結像系(または集光系)には、光検出系が含まれる。コンピュータシステムは、光検出系に操作可能に接続され、そこから電気信号を受信するように構成され、光学結像系によって当該光出力からの当該光で形成されたスペックル画像を表す。有形の非一時的なコンピュータ可読媒体は、その上に配置された、コンピュータ可読命令が格納されるコンピュータ可読プログラムコードを含むように構成されることで、命令がコンピュータシステムのプロセッサによって実行されるとき、命令は、プロセッサに少なくとも、1つのみの固定された第一経験的露光時間に、結像系によって当該光で形成された1つ以上の生のスペックル画像を取得させ、空間的に異なる寸法を有する複数のビニングアパーチャの使用によって当該1つ以上の生のスペックル画像から選択された生のスペックル画像を空間的に平均させ、それぞれに対応する修正されたスペックル画像を形成させ、当該修正されたスペックル画像のそれぞれは、複数の第二合成露光時間からそれぞれに対応する第二合成露光時間に対応するスペックル画像を表す。少なくとも1つの実施形態では、syMESI系は、必然的に互いに異なり、第一経験的露光時間とは異なる、複数の第二合成露光時間からの各第二合成露光時間を有するように構成され得る。さらに、またはその代わりに、そして少なくとも一実施形態では、命令はさらに、プロセッサに、修正されたスペックル画像のそれぞれを、同じ選択画像に対応する複数のスペックルコントラスト画像のそれぞれに対応するスペックルコントラスト画像に変換させるように構成され得る、及び/または命令はさらに、プロセッサに、(a)1つ以上の生のスペックル画像のうちの少なくとも1つ、選択画像、及び複数のスペックルコントラスト画像のうちの少なくとも1つを、視覚的に知覚可能な光放射照度の空間分布として表示させる、及び/または(b)第二合成露光時間の関数として、所与のスペクトルコントラスト画像の少なくとも1ピクセルについてのスペックルコントラストの値のスペックル視感度曲線を決定させる、及び/または表示させる、ように構成され得る。少なくとも後者の場合には(そして任意選択で、システムのすべての実装では)、命令はさらに、プロセッサに、スペックル視感度曲線に少なくとも基づいて、syMESI系の動作中に光出力によって照射され、1つ以上の生のスペックル画像によって表されたシーンの一部での運動の定量値を評価させるように構成され得る。代替的に、または加えて、そしてsyMESI系の特異的な実装に実質的に関係なく、命令は、さらにプロセッサに、syMESI系の動作中に当該光出力によって照射され、当該1つ以上の生のスペックル画像によって表されたシーンの一部の視覚的に知覚可能な画像を生成させるようにさらに構成され得、当該視覚的に知覚可能な画像は、当該視覚的に知覚可能な画像にわたる光学パラメータの空間分布を介して当該シーンの一部での運動の定量値の空間分布を表示する。(そのような光学パラメータは、ほんの数例を挙げると、実質的に単色画像(例えば、明視野画像)の場合の放射照度、及び/または多色画像の場合の画像の境界内の選択された色分布であり得る。)代替的または追加的に、そして実質的にsyMESI系のすべての実装では、命令は、プロセッサに、1つのみの固定された第一経験的露光時間で、結像系によって生成された光で形成された生のスペックル画像のシーケンスを取得させるように構成されることができ(ここで、少なくとも1つの場合には、そのようなシーケンス内の生のスペックル画像の構成は必然的に非連続になる)、そしてそのようなシーケンス内の生のスペックル画像の構成が必然的に非連続になるとき、光学結像系は、直接隣接する生のスペックル画像の間の内に異なる持続時間の時間ギャップで、そのような必然的に非連続の生のスペックル画像を取得するように構成され得る。
【0011】
実施形態はさらに、上記で特定された実施形態の少なくとも1つに従って構成されたsyMESI系を使用してシーンを特徴付ける方法を提供する。この方法の実施形態は、少なくとも、光学照明系からの光出力を含む第一光でシーンを照射することと、そのような1つのみの固定された第一経験的露光時間で、シーンによって後方散乱した当該第一光を表す第二光でシーンの1つ以上の生のスペックル画像を取得することと、異なる空間寸法を有する複数のビニングアパーチャのそれぞれについて、1つ以上の生のスペックル画像のうちの選択画像を、選択画像の放射照度分布を複数のビニングアパーチャのそれぞれに対応するビニングアパーチャによって空間的に平均することによって、複数の修正スペックル画像のうちの対応する1つに修正することにより、複数の修正スペックル画像を生成することであって、複数の修正スペックル画像のそれぞれは複数の第二合成露光時間のうちの1つの第二合成露光時間に対応するシーンのスペックル画像を表す、生成することと、を含む。ここで、複数の第二露光時間からのすべての第二合成露光時間は、互いに異なり、第一経験的露光時間とは異なる。方法の実施形態は、複数の修正スペックル画像のそれぞれを、同じ選択画像に対応する複数のスペックルコントラスト画像のそれぞれに対応するスペックルコントラスト画像に変換するステップをさらに含み得る。代替として、または追加として、そして方法の少なくとも1つの実装では、第一光は、結像系からの光出力であるように選択されてもよく、及び/または光源はレーザ光源であるように選択されてもよく、及び/または複数の修正スペックル画像からの修正スペックル画像のそれぞれについて、第一経験的露光時間と対応する第二合成露光時間との間の数値関係は、所定のビニングアパーチャの寸法に依存してもよく、及び/または1つ以上の生スペックル画像のうちの少なくとも1つ、選択画像、及び複数のスペックルコントラスト画像のうちの少なくとも1つは視覚的に知覚可能になってもよい。代替として、または追加として、そして実質的に方法のすべての実装では、少なくとも1つ以上の生のスペックル画像は、1つのみの生のスペックル画像を含むように定義されてもよく、または連続して取得されるそのような少なくとも1つ以上の生のスペックル画像のうちの2つの生のスペックル画像は、次々に即時に取得されるのではなく、それらのような2つの画像間に任意の時間遅延を有して取得されるように定義されてもよい。特定の実装の詳細に関係なく、また実質的に方法のすべての実施形態では、以下の条件:(a)1つのみの固定された第一露光時間で、1つ以上の生のスペックル画像を取得することは、1つのみの生のスペックル画像を取得することを含むこと、及び/または(b)1つ以上の初期スペックル画像のうちの選択画像を修正するステップは、1つ以上の生のスペックル画像のうちの1つのみの画像を修正することを含むことのうちの少なくとも1つが満たされ得る。同様に、代替として、または追加として、そして方法の任意の選択された実装では、所与のスペックルコントラスト画像の各ピクセルは、それらのような修正スペックル画像のそれぞれに対応するピクセル強度の標準偏差と、手元の強度の平均との比率として決定されたスペックルコントラスト値を有するように定義され得る。複数のビニングアパーチャのうちの1つのビニングアパーチャは、多角形の形状と、特異的な場合には、凹状多角形の形状とを有してもよい(例えば、mathopenref.comで定義されているように)。
【0012】
さらに、そして実質的に方法のすべての実装では、方法は、以下の条件:(i)方法は選択画像の所与のピクセルによって表されるシーンの一部での運動指数を定量的に決定するステップをさらに含むこと、及び(ii)関心対象のシーンが生体組織であるとき、運動指数は血流の指数であること、のうちの少なくとも1つを満たすように構成されることができる。少なくとも1つの実装では、当該取得するステップは、当該1つのみの固定された第一経験的露光時間でのそれらのような画像の間の時間ギャップと同様に複数の生のスペックル画像、それらのような画像の間の時間ギャップによって形成された生のスペックル画像シーケンス(ここでは、シーケンス内の生のスペックル画像の構成は必然的に非連続であるように選択される)を取得することを含むように構成され得る。後者の場合、この取得するステップは、異なる直接隣接する生のスペックル画像の間の内の異なる持続時間の時間ギャップによってそれらのような必然的に非連続な生のスペックル画像を取得することを含み得る。代替として、または追加として、そして実質的に方法のすべての実装では、複数のビニングアパーチャのそれぞれについて選択画像を修正するステップは、選択画像の放射照度分布を、選択画像全体で空間的に再位置決めされる同じビニングアパーチャによって空間的に平均することと、選択画像の放射照度分布を、異なるサイズ及び/または形状の複数のビニングアパーチャ(ここでは、アパーチャのそれぞれに対応する基準コーナーは選択画像の同じ位置に固定される)によって空間的に平均することと、のうちの1つを含むように構成され得る。方法の特定の実装の詳細に関係なく、この方法によって生成された所与のスペックルコントラスト画像の各ピクセルには、時間領域、空間領域、または時空間領域で決定されたスペックルコントラスト値が割り当てられ得る。
【0013】
本開示のより完全な理解のために、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】A、B及びCは、レーザスペックルコントラストイメージング(LSCI)方法の図解を提供する。ここで、Aはカメラによって取得された「生の」スペックル画像を提示する。生の画像はランダムな干渉パターンを表示する。Bは高血流量及び低血流量の空間領域を強調表示する、処理された(Aの画像に基づいて)「スペックルコントラスト」画像である。Cは脳血流の二次元イメージングのために構成された非定型LSCI装置を概略的に示す。
図2】ラット脳の多重露光スペックルイメージング(MESI)の結果を示す。カメラ露光持続時間Tの関数としてのスペックル分散を、スペックル視感度の式に当てはめて、4つの関心領域でのCBFの定量的推定値を導出する。挿入図の画像は、マウス皮質内のCBFのスペックルコントラスト画像である。カメラ露光持続時間によって血管の視感度が変調する。
図3】多重露光スペックルイメージング(MESI)の典型的なセットアップを概略的に示す。異なる露光時間にわたってレーザの強度を変調するには、音響光学変調器(AOM)が必要である。カメラ及びAOMは通常、データ取得電子回路(プロセッサ)によってトリガされる。
図4】合成多重露光スペックルイメージング。より長い露光での生のスペックル画像は、より短い露光での画像を空間的に平均することによって合成されることができる。例えば、1msの露光持続時間でのスペックル画像は、0.25msのスペックル画像の4ピクセルを空間的に平均することによって合成される。平均化は、2x2移動窓または2x2ビニングによって達成されることができる。各露光持続時間では、強度の平均に対する標準偏差の比率を計算することにより、時間領域内の各画像ピクセルでスペックルコントラストを計算する。
図5】A、B、Cは合成多重露光スペックルイメージング方法を示す。A:結像系の概略図。シングルモードダイオードレーザからの光はサンプルを照明する。標準結像系及びCMOSカメラを使用して後方反射光を結像する。B:制御された流動実験用のマイクロ流体流動ファントム。画像を2つのファントムから、1つは200μm層の静的散乱層有り、もう1つは無しで収集した。C:麻酔下ラットの脳血流を結像するためにインビボ実験を行った。
図6A】2つのサンプルから取得され、参考文献Cで説明された多重露光スペックルモデルに当てはめられた合成多重露光スペックルコントラストデータを提示する。2つの異なる速度及び2つの静的散乱レベルでの露光持続時間の関数としてスペックル分散を示す。実線は静的散乱層無しのサンプルで行った測定を表す。破線は静的散乱層有りのサンプルで行った測定を表す。μ’値は200μmの静的散乱層内の換算散乱係数を指す。μ’=0cm-1:静的散乱層無し。μ’=4cm-1:静的散乱層中の0.9mg/gのTiO図5Bを参照)。
図6B】相対速度に対する相対相関時間のプロットである。ベースライン流量:lμL/sec。示された2つの曲線は異なる静的散乱量を示した。新しいスペックルモデルは相対τ推定値の直線性を保持する。
図7】A、B、C、D:露光したラット皮質の明視野画像、A;対応する合成MESI画像、B。ICT(1/τ)値が高いほど、流動が速いことを示す。Cは、Bからの対応する5つのROIについての合成MESI計算したスペックル視感度曲線を含む。Dは、黄色の矩形ROIについての、三方血管分岐に対する流量保存解析を示す。2つの娘血管(D1、D2)及び親血管(P)からの流量組み合わせによる誤差のパーセントを計算した合成MESIをBの挿入図に示す。スケールバー:100μm。
図8】A、B:麻酔下ラット内の脳血管の焼灼前後の流量の合成MESI測定したスペックル逆相関時間マップ(スケールバー:100μm)、A;選択したROIの対応するスペックル視感度曲線での脳血流の約50%の減少を強調表示する、B。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一般に、図面内の要素のサイズ及び相対的な縮尺は、図面の簡潔さ、明瞭さ、及び理解を適切に促進するために、実際のものとは異なっている場合があるように設定され得る。同じ理由で、ある図面に存在するすべての要素が必ずしも別の図面に示されるわけではない。本開示が例示であることを意図したものであることを理解した上で、特異的な実施形態が図に示されているが、これらの特異的な実施形態は、本明細書に記載され、図示される本発明の実施態様の範囲を限定することを意図したものではない。
【0016】
上記で示唆したように、多重露光スペックルイメージング(またはMESI)と呼ばれる関連技術で現在使用されているスペックルイメージング技術は(従来のLSCI系のそれに比べて)より複雑な機器設計に、スペックルコントラストを定量的な血流指数に変換するための新しい数学モデルを組み合わせる。
【0017】
MESIアプローチに従ってレーザスペックルイメージングを実行する際に(例えば、参考文献A、B及びCを参照)、例えば、瞬間的なスペックル強度ゆらぎの分散/平均値は、カメラの露光時間にわたって時間平均され、その結果、カメラの露光持続時間に依存するスペックルコントラスト値が得られる。別の言い方をすると、カメラの露光持続時間は、様々な流量によって特徴付けられる血管の「視感度」を効果的に変調する。スペックルコントラストは、露光時間が短いほど速い強度ゆらぎに対して感度がより高くなり、遅い強度ゆらぎを検出するにはより長い露光時間を必要とする。以前に提案されたMESI技術は、この現象を利用しており、複数のLSCI画像の実験的記録を必要とする(カメラ露光の異なる持続時間で、例えば、図2の図解に示されるように、50μsから80msまでの複数の持続時間で)。実際には、このような利用は、サンプルの照射パワーレベルが測定の動的範囲にわたって実質的に一定に保たれることを確保しながら、カメラの取得及びレーザ光源を外部からトリガすることによって達成される(参考文献Cを参照)。スペックルコントラストとカメラの露光持続時間との間の関係は、最も単純な形式では、K(T,τ)=β(e-2x-1+2x)/2xで与えられるスペックル視感度の式によって特徴付けられることができる。ここで、x=T/τ、βは光の波長、検出器のピクセルサイズ及びスペックルサイズに依存するスペックル計測係数であり、Tはカメラ露光時間であり、τはスペックル無相関時間(血流に反比例する定量的指数)である。β及びτは、スペックル視感度の式に対する複数露光持続時間のスペックルデータ(すなわち、独立して複数の露光時間で光検出器によって取得されたスペックルデータ)の非線形曲線当てはめ(図2を参照)から推定される。この複数露光時間MESI方法は、機器及びサンプルに依存する較正係数として機能するβの決定を可能にすることによって、ベースライン/絶対血流の結像を可能にすることが示された。βのインサイツ測定を使用して、単一露光LSCI測定から血流指数(τ)を定量的に推定することもできる。MESIによって、大きいCBF変化の過小評価を訂正することが実証され(参考文献A、Cを参照)、頑健なスペックル視感度の式によって、頭蓋などの静的組織要素に対するスペックルイメージャの感度が低下した。参考文献A、Cで説明された高度な機器の設計及びモデル(その必要な部分は機器の照明部分から標的となる検査対象に向けられる光出力を一定レベルに維持するように構成されたデバイスである)は、スペックルベースのイメージャを劇的に改善したため、同じ動物のCBF画像の初めての定量的で長期の比較、及び対象内の比較が可能になった。
【0018】
最近、MESIアプローチは、関連技術により、拡散スペックルコントラスト分析を用いた深部組織血流測定に拡張された。これらの研究では、「スペックルコントラスト」処理スキーム(DSCA)を利用して、大型CCD/CMOSカメラ、SPADアレイ、またはEMCCDカメラなどの積分型検出器によって記録された拡散反射光から組織動態を測定する。基本的に、複数の検出器積分時間でスペックル強度ゆらぎ(つまり、I(T))を測定し、結果として得られるスペックル分散を拡散スペックルコントラストモデルに当てはめて血流を推定する。
【0019】
注目すべきことに、これまで関連技術で使用されてきた従来の多重露光スペックルイメージング(MESI)アプローチは、そのようなイメージング方法がオンになっているため、スペックルコントラスト値の時間平均化を必然的に伴うことから、複数の異なるカメラ露光(すなわち、異なる持続時間の複数の露光)でのスペックル強度の画像の取得を必然的に必要とする。当業者であれば、複数露光時間MESI方法の実際的な欠点がすぐに理解される。つまり、露光時間の広い動的範囲(例えば、50μsから80ms)にわたって画像を取得することは、非自明な機器の課題である。実際、スペックルコントラストがそれらの平均に対して正規化された強度の分散として計算されるため、MESIのユーザは、非常に広範囲のカメラ露光にわたって、標的組織に到達するレーザビームの平均強度を何らかの方法で実質的に一定に維持する必要がある。しかし、露光時間が長くなると、レーザの低い光パワーを維持するために必要な電流がレーザ発振閾値を下回るため、この条件はレーザ電流の電子制御を使用した場合には満たされることができない。図3は、LSCIで使用されたレーザ光源の強度を制御するために音響光学変調器(AOM)が使用される従来のMESIアプローチの1つの一般的な実装を示す。(あるいは、参考文献Dで説明されたように、ニュートラルデンシティフィルタのアレイを使用して照明の光パワーを制御することもできる)。
【0020】
ここでは当業者であれば理解されるように、複数露光時間の時間平均をとる従来のMESI方法の使用によって得られた実験的に所望の時間分解能は、標的(光による調査対象の)シーン(例えば、生体組織)に入射するレーザ光の光パワーを制御する能力に基づいて、その能力によって提供される。このようにレーザの光パワーを制御する必要があるため、現在採用されているMESIアプローチには少なくとも2つの大きい欠点が生じる。まず、照明強度の制御を実現するための計装により、システムがさらに複雑になる(特により単純な従来のLSCIアプローチと比較した場合であっても)。これにより、術中血流イメージングまたは網膜血流イメージングなどの困難な環境でのマルチフレーム時間平均化MESI法の実装が実質的に妨げられ、機器のアライメントが困難になり、低照度条件でのシステムの使用が妨げられる。さらに、または代わりに、広範囲の露光時間(最大80ms)にわたって画像を取得する必要があるため、必然的かつ必ず効果的な画像取得速度がわずか数Hzまで低下することによって、高速血流動態(例えば、いくつか例を挙げると、血液の脈動、急速な機能活性化、及び皮質拡延性抑制)の結像の忠実度が低下する。
【0021】
本発明の実施形態は、「合成MESI」(または、syMESI)方法と呼ばれるが、同時に、標的シーンを照射するレーザ光のパワーを制御する必要性を回避する(したがって、例えば図1に概略的に示された基本的でより単純なLSCI系の実際の使用にユーザが戻ることを可能にする)ことと同時に、従来の単一露光時間LSCIアプローチでは提供できない、標的内の粒子運動の定量的評価を提供することによって、複数露光時間の時間平均化MESIベースのLSCI実装に関連する問題を解決する。本発明の議論された着想の実装が様々な物体(それがたとえ無生物物体、または特定の動く部分もしくは要素、もしくは血流を担う生体組織などの生きた物体を含む空間であっても、これらすべてが本発明の範囲内である)の非侵入的な結像、及びそこに存在する運動の決定を対象としていることが理解される。そうは言っても、以下の本発明の実施形態の議論は、説明を簡単かつ確実にするために、生体組織である標的の特異的で非限定的な例を用いて提示される。
【0022】
上記ですでに触れたように、提案された「合成多重露光スペックルイメージング」(syMESI)技術の実装は、その結果、複数の露光時間での結像を使用せず、経験的に取得された画像を時間平均しないことを除き、広範囲のカメラ露光の持続時間(多くの場合、50μsから80ms)にわたって標的シーンから送達された光のスペックル強度のゆらぎを経験的に捕捉することによって、従来の複数露光時間MESI方法が送達するものと同じスペックル画像が形成されるように構成される。代わりに、従来のMESI技術とは対照的に有利には、syMESIは、時間領域ではなく空間領域で複数露光時間の画像の取得を再構築するため、時間変化のない一定の光出力レベル(標的シーンの照射/照明を目的としてsyMESI系の照明部分によって生成されたもの)を維持するように構成されたコンポーネントまたは素子またはデバイスを必要とせず、またそれを使用する必要もない。
【0023】
本発明の着想は、スペックルがエルゴード性条件を満たすランダムなプロセスであるため、そしてカメラ(光検出系)の空間的に隣接するピクセルで受光されて取得されたスペックル強度または放射照度もしくはパワーの値が互いに独立しているため、本来であれば様々な所望の露光時間で光検出系による実際の「キャプチャ」が必要となる、シーンのスペックル画像が、これらの所望の露光時間のいずれよりも短い特定の露光時間で経験的に取得された画像(複数可)を空間的に平均することによって(光検出系またはカメラの光検出器がそれらのような様々な所望の露光時間で入射光に実際に露光されることなく)生成される、または合成されることができるという認識から生じる。例えば、4msの露光でのスペックル画像は、1msの露光時間で検出器を入射光に露光させることによって経験的に取得された画像を変換することによって(例えば、その画像の4ピクセルを空間的に平均することによって)形成されることができる。このように形成されたスペックル画像(複数合成露光時間スペックル画像または合成複数露光時間スペックル画像と互換的に呼ばれることができる)は、少なくとも1つの生のスペックル画像を含む生のスペックル画像の同じセットからの異なる合成(つまり、システム全体の光検出器による光取得のプロセスで実施されない)露光時間に容易に形成されることができる。
【0024】
したがって、一実施形態では、本発明のsyMESI装置は、光学照明系、及び光学結像系、及びsyMESI装置の動作を調整するコンピュータシステムを含む。
【0025】
図5A、5B、5Cは、実用上、図1Cの従来のLSCI装置と実質的に同様であるsyMESI装置またはシステム500を概略的に示し、従来のLSCI装置が実行するように構成されていない、標的(シーン、サンプル)120に存在する運動の定量的測定をシステム500が提供するように構成されるという相当かつ有利な違いがある。ここで、出力端部510Aを有する(装置500の)光学照明系510は、光源514(ある場合には、適切なコントローラ/ドライバを備え、必要に応じて専用のハーネス構造体によってサポートされるレーザ光源を含む)と、光を光源514から出力端部510Aに伝達して光出力104を発生する光送達系518とを含むように示されている。例500では、光送達系は、図示のように、レンズ素子系及び光ファイバ素子を含む(ただし当然のことながら、そのような送達系は特異的な測定の特異的な要件を果たすために適切に修正され得る)。光学結像系520(レンズ素子などのいくつかの光リレー素子に加えて、図5Aで「CMOS」とラベル付けされた光検出器または光検出系524を含む)は、光学照明系510と光通信して配置される。光学結像系510は、光出力104で照射されたシーン120の生のスペックル画像のセットを取得するように構成される。本発明の着想によれば、生のスペックル画像のセットは、1つ以上の生のスペックル画像を含むことができ、光検出系524の光検出器の露光時間の唯一の単一値で取られる。生のスペックル画像のセットが複数の生のスペックル画像528(j)(そのうちの複数528が図5Aに示されている)を含むとき、個々の生のスペックル画像の構成は、対応する取得時間に関していかなる前提条件もなく取られる、または取得される。ある特異的な場合、例えば、複数528の直接隣接する構成画像間の時間ギャップまたは遅延は、互いに異なることができる。従来のMESI方法とは異なり、提案されたsyMESIの実装では生のスペックル画像を連続して取得する必要がない。(本開示の目的上、明示的に別段の定めがない限り、「連続した」という用語及び関連用語は、実質的に連続的に続いており、間に実質的に一時的な中断がない項目またはプロセスを識別するように定義される。)1つの特異的な実装では、システム500は、生のスペックル画像の構成が必然的に非連続である生のスペックル画像のシーケンス(照明系510によって発生した光で(図示のように、シーン104によって後方散乱した光104の一部532で)結像系524によって形成されたもの)を(1つのみの所定の固定された露光時間で)取得するように構成される。
【0026】
図5Aに530として示される、コンピュータシステムのマイクロプロセッサまたはプロセッサなどの専用の(好ましくはプログラム可能な)電子回路は、装置500の様々なサブシステムの動作を管理し(例えば、標的/シーン120が配置される再位置決めステージを含む;図5Aには示されていない)、光学結像情報を取得して適切に処理するように構成されたプログラムコードを適切に備えている。特に、装置500は、1つのみの固定された経験的露光時間で、光学照明系510によって発生した光で形成された1つ以上の生のスペックル画像を取得し、そして空間的に異なる寸法を有する複数のビニングアパーチャを使用して、それらのような1つ以上の生のスペックル画像の選択された生のスペックル画像を空間的に平均することにより、それぞれに対応する第二(今回は合成)露光時間に対応するスペックル画像をそれぞれが表す、それぞれに対応する修正スペックル画像を形成するように動作するように構成される。合成露光時間の値のそれぞれは、別の合成露光時間とは異なり、光学結像系520を用いて画像セット528が取得される第一(経験的)露光時間とは異なる。
【0027】
本発明の着想に従って構成された合成多重露光イメージングプロシージャの一例を図4に概略的に説明する。示されるように、少なくとも1つまたは一連の複数の生のスペックル画像428、528は、唯一の単回の固定された露光時間でカメラによって、従来法で構造化された従来のLSCI計装(例えば、図1Cまたは図5A)を使用して、取得される(生のスペックルデータの経験的取得;ここでは0.25msで)。次に1回で、これらの画像のうちの選択されたもの、または代替にこれらの画像のそれぞれは、カメラが記録した選択画像528(j)を、適切な空間窓またはアパーチャ(互換的に、ビニングアパーチャ)を用いて空間的に平均することによって、対応する合成複数露光時間画像(すなわち、複数の合成露光時間に対応する画像)に修正される/変換される/変えられる。アパーチャの形状は、好ましくは多角形であり(生のスペックル画像528のピクセル化性質を考慮して)、特異的な場合には、平均化空間アパーチャは、凹状多角形、すなわち、少なくとも1つの角度が180度を上回る多角形の形状を有してもよい。ここで、図4の例に示されるように、2×2の正方形窓/ビニングアパーチャを用いて0.25msの経験的露光時間で取られている選択された生のスペックル画像528(j)を空間平均すると、合成露光画像438(j)である修正画像が得られる。この画像438(j)は、1msの合成(経験的ではない)露光時間に対応するシーン120のスペックル画像である。合成1ms画像438(j)の各ピクセルは、カメラが取得した0.25msの経験的露光時間の画像428(j)、528(j)の2×2=4の隣接したピクセルの平均である。このようにして、図4はまた、2.25msの合成露光時間に対応する修正スペックル画像448(j)がどのように形成されることができるかを示す。このプロセスを複数回繰り返すことにより、図4には楕円で示されているが、セット428からの少なくとも1つの(必要に応じて1つより多い)経験的に記録された生のスペックル画像用の様々な形状及び/またはサイズに作られたビニング窓を用いて、ユーザまたはシステムは、複数の修正スペックル画像を生成し、それぞれが(決定された複数の合成露光時間のうちの)対応する合成露光時間に対応するシーンのスペックル画像を表す。
【0028】
さらに任意選択で、そして再び図4を参照すると、本発明の少なくとも1つの特異的な実施形態では、結像シーン120に存在する運動に関する情報(非限定的な例として、生体組織内の血流情報)は、少なくともある場合には、すべての合成露光時間について各画像ピクセルでの時間スペックルコントラストを決定することによって、つまり、σが標準偏差であり、〈I〉がn個の修正スペックル画像(通常、n=30~50の合成画像フレーム)の画素強度の平均である、各ピクセルでK=σ/〈I〉を計算することによって、定量化されてもよい。これにより、修正スペックル画像438(j)、448(j)などのセット(複数可)は、スペックルコントラストに関する情報を含むそれぞれに対応する画像に変換される。0.25msの露光時間で経験的に取得された画像(複数可)428、528の範囲内のスペックルコントラストの空間分布を表すスペックルコントラスト画像478(0.25)を参照されたい。1.0msの合成露光時間に対応する、空間ビニング平均によって生成された合成画像(複数可)438(j)の範囲内のスペックルコントラストの空間分布を表すスペックルコントラスト画像478(1.0)も参照されたい。2.25msの合成露光時間に対応する、空間ビニング平均によって生成された合成画像(複数可)448(j)の範囲内のスペックルコントラストの空間分布を表すスペックルコントラスト画像478(2.25)も参照されたい。さらに、そのようなスペックルコントラスト画像(複数可)の各ピクセルでは、したがって、スペックル視感度(少なくとも一例では、スペックル分散対合成露光時間のプロットまたは曲線として表現される、例えば、図2)を評価することができる。このスペックル視感度は、単一散乱定量的スペックルコントラスト分光モデル(参考文献A、Cを参照)、または拡散散乱定量的スペックルコントラスト分光モデル(参考文献E、Fを参照)のいずれかにさらに当てはめられ、選択された生のスペックル画像の所与のピクセルによって表される、調査対象のシーン120の一部での運動指数(及びシーンが生体組織である場合には、その組織の対応する部分での血流指数)を推定することができる。
【0029】
特に、空間平均化は、選択された生のスペックル画像と実質的に同じ位置に配置された様々なサイズ及び/または形状の空間窓もしくはアパーチャによって、または選択された生のスペックル画像全体に再位置決めされる、固定されたサイズ及び/または形状の空間窓もしくはアパーチャによって、ピクセルごとのビニング(図4に明確に示されている)を含む、用途に適した様々なアプローチを使用して実行されることができる。後者は、画像の高い空間分解能を維持することができる。これらの操作は、標準の画像処理アルゴリズムを使用して実行されることができる。さらに、当業者であれば上記の説明からすでに理解されたように、空間平均化は矩形形状の空間窓またはビニングアパーチャに限定されない。例えば、図4を参照すると、3×2の空間窓を使用して、0.25×6=1.5msの露光画像を合成することができる。用途の要求に応じて、任意の(任意選択で多角形の)形状及びサイズの窓を使用することができる。
【0030】
以下は、本発明の合成MESIの一実施形態における画像取得/画像形成/画像変換ステップの一例を提供する。
a)イメージングカメラをセットアップし、システムを初期化する。
b)カメラで1つ以上の生のスペックル画像を取得する;I(x,y,n,Tacq)-第nカメラ画像、I(x,y)は時間t及び事前に定義された単一経験的露光時間Tacqに取得された。
c)要求された第i合成露光時間(T)及び経験的露光時間Tacqに応じて、空間窓/アパーチャの形状及びサイズを定義する:
【数1】
矩形/正方形窓p=q≒round(A/2)の場合、p×q=Aとなる窓サイズp×q。
d)空間平均窓(カーネル)h(p,q)を生成する:各ピクセルの大きさ=1/A。
e)イメージングカメラ(光検出器)で経験的に取得された生のスペックルの選択されたものを(例えば、空間ビニングを介して)空間的に平均することによって、修正スペックル画像から合成スペックル画像(複数可)I(x,y,n,T)を形成する。例えば、経験的に取得された生のスペックル画像及びカーネルの畳み込みを決定する;
【数2】
空間平均化は、空間ビニングなどの方法、または画像内の強度の局所平均を実行する任意のアルゴリズムによって実行されることもできる。
f)必要に応じて、すべての事前に決定された合成露光時間Tに対してステップc)及びd)を繰り返す。
g)必要に応じて、画像変換セッションが終了するまでステップb)からf)を繰り返す。
【0031】
以下のステップh)、i)、j)は、任意選択で、結像シーン”で運動の定量的マップ(空間分布)のリアルタイム計算のためにステップa)からg)とオフライン(画像処理後)でも同時でも完了されることができる:
h) 各露光時間での時間スペックルコントラスト画像を計算する。
【数3】
ここで、σ(x,y,n,T)は画像I(x,y,n-navg,Ti)からI(x,y,n+navg,Ti)でのピクセル値の標準偏差として計算されることができる;〈I(x,y,n,T)〉は画像I(x,y,n-navg,T)からI(x,y,n+navg,T)でのピクセル値の平均として計算されることができる;そしてσ(x,y,n,T)及び〈I(x,y,n,T)〉の両方は移動時間窓、または代替に移動空間窓、または時空間方式で計算されることができる、
i)必要に応じて、ピクセルx、yごとの、そして画像フレームnごとのスペックル視感度曲線(v(x,y,n,T)=K(x,y,n,T))を、合成露光時間Tの関数として決定する、及び/または表示する。
j)必要に応じて、ステップi)からのスペックル視感度曲線を定量的スペックルコントラスト分光運動モデル(非限定的な一例では、血流モデル)に当てはめて、ピクセルx、yごとの、そして画像フレームnごとの運動指数(血流指数など)(F(x,y,n)を推定する。
【0032】
上記の本開示の利点を利用して、当業者であれば、関連技術で使用されている既存のシステム及び方法と比べて、提案された方法の様々な動作上の利点が容易にここで理解されよう。空間平均化を使用して複数露光時間のスペックル画像を合成する(実際に取得するのではなく)というアプローチは、当然のことながら、同等の機器に比べて(そして特に血流の結像/測定の分野で)いくつかの利点をもたらす。
【0033】
合成MESIアプローチの計測は極めて単純であり、この機器に必要なのは、CMOS/CCDカメラ及びシングルモードレーザからの照明のみである。従来から利用可能な画像サイズ(1メガピクセル程度)、ビット深度、及び光感度などを備えた任意のカメラを使用することができる。特殊なセンサ技術(APDアレイなど)、冷却、または画像増感の要件がないが、この技術はショットノイズに制限される。
【0034】
多重露光画像を生成するために、音響光学変調器、フィルタホイール、またはパルスレーザなどの特別な機器は必要ない。
【0035】
単一露光時間イメージングのみが関与し、異なる露光画像に対応する複数のスペックル画像は、実際には取得されないが、経験的に取得された1つ以上の生のスペックル画像(複数可)の変換の結果として、記録されたカメラフレームごとに生成される。この技術を利用するには、高フレームレートのカメラは必要とされない。その結果、提案されたアプローチは、定量的なビデオレートの多重露光スペックルイメージング(現在の関連技術よりも約10倍高速)を実行するようにうまく使用されることができる。
【0036】
スペックル視感度曲線を生成するための合成露光時間の範囲は、用途の必要に応じて容易に調整されることができる。唯一の要件は、少なくとも1つの生のスペックル画像を取得するためのカメラの唯一の単一経験的露光時間の持続時間を事前に決定することである。
【0037】
アルゴリズムは、所与の経験的露光時間で以前に記録されたスペックル画像に遡及的に適用されることができる。
【0038】
実験結果の考察:
再び図5A、5B、5Cを参照すると、多重露光スペックルイメージングの1つの特徴は、特に表面の静的散乱層の存在下で、ベースライン血流を結像するその能力である。最初の実験(図5Aのセットアップを参照)では、提案された合成MESI方法に従って変換された画像が、従来の複数露光時間MESI機器の機能を首尾よく再現したことを妥当性確認した。簡潔にいえば、シングルモードレーザダイオード(λ=785nm、90mW、Thorlabs)からの直線偏光出力104をコリメートして、マイクロ流体流動ファントムをシミュレートした組織を実質的に均一に照明した(図5B)。サンプル120からの後方散乱光532は、CMOSカメラ(Basler acA2000-165umNIR)及び対物レンズ(4X、NA0.10、Olympus)を含んだカスタムシステムを使用して結像した。生のスペックル画像のシーケンスは、250μsの(経験的)露光時間に100fpsのフレームレートで記録された。合成MESI画像及びスペックル視感度曲線は、250μs~25msの合成露光時間について上記で説明されたアプローチを使用して導出された。流動ファントムをシミュレートした2つの異なる組織サンプル、すなわち、一方は200μmの厚さの静的散乱層(μ’=4cm-1)有り、そして他方は無し(図5Bを参照)を使用した。20%のイントラリピドを200μm×150μmの流路に通して流速1~5μL/sで流動させながら、生のスペックル画像を収集した。
【0039】
マイクロ流体ファントム実験からの以下の2つの重要な結果(図6A、6Bを参照)は注目に値した。
【0040】
(1)静的散乱体の存在下での流動の定量的結像を図6Aに示す。この図は、流路内の領域から得られたスペックル視感度曲線を示し、これらは、2つのファントム(実線/破線)の2つの流量(青線/赤線)の定量的スペックル流量モデルに当てはめられる。当てはめの結果は、提案された合成MESIアプローチの実施形態が従来のMESIで最初に報告された定量的流量イメージングを首尾よく再現することを示す(18を参照)。特に、流量ごとに推定された推定スペックル無相関時間は、静的層の存在に関係なく、同様である。合成MESIは、静的散乱体の存在によるスペックル視感度曲線の形状における古典的な変化を再現し、データは従来のMESIモデルによく当てはまる。従来のMESIのその他の特徴も再現されており、所与の露光持続時間及び速度の場合、測定されたスペックルコントラスト値は、静的散乱光の非存在下で得られたスペックルコントラスト値と比較したとき、静的散乱光の存在下では異なる。従来のMESIアプローチと同様に、合成MESIは、合成多重露光画像を生成し、スペックル視感度曲線を測定し、当てはめて、τ(流動指数)を一貫して再現することにより、この懸念に対処している。
【0041】
(2)静的散乱体の存在下での大きい流量変化の直線性(図6B)。ここでも、合成MESI方法が静的散乱体の存在下での大きい相対流量変化の定量的測定を提供することが検証された。この目的を達成するために、静的散乱体の有り無し両方で、マイクロ流体ファントム内の様々な流量の流動に対するスペックル無相関時間を計算した。スペックル視感度曲線を計算し、流量ごとにτを推定した。流量における相対変化(ベースラインτ/測定したτ)を推定し、シリンジポンプによって設定された相対流量の関数としてプロットした。図6Bは、本開示で提案された合成MESIが線形目盛上に相対流量を正確にマッピングし、静的散乱体(従来の複数経験的露光時間MESIと同様)の存在下でも相対相関時間測定の線形性を保持するという、当業者には理解される明確なエビデンスを提供する。これは、合成MESIアルゴリズムが静的散乱体の存在下で一貫した相関時間を予測することができるという事実を再度増強した。
【0042】
合成MESIの有用性を実証するために、別の実験をインビボで実施した。ラット(Brown-Norway、雄、400~450g)を塩酸ケタミン(75mg/kg)及びキシラジン(7.5mg/kg)の腹腔内注射で麻酔し、必要に応じて補充し、開頭術を行って脳脈管構造を露光させた。脈管構造の合成MESI画像を、脳血管の電気焼灼の前後に取得した。動物を実験後に屠殺した。インビボ実験は、University of South FloridaのInstitutional Animal Care and Use Committeeによって承認されたプロトコルを用いて実施された。
【0043】
注目すべきは、インビボ実験からの2つの重要な結果である(図7A、7B及び挿入図7C及び7Dを参照)。
【0044】
(A)定量的な血流を測定する能力。図8Aから図7Dは、ラットの脳から記録されたベースラインのインビボ脳血流画像を提示する。「明視野」画像及び対応する合成MESIスペックル逆相関時間(ICT)画像(1/τ)をそれぞれ図7A及び7Bに示す。スペックルICTは、血流に直線的に比例する流動指数である。様々なサイズの血管及び様々な種類の組織の血流量を評価するために、合成MESI ICTフレームなどで5つの関心領域(ROI)を選択する。図7Cは、ROIのそれぞれについてのスペックル分散曲線を示す。これらの曲線は、合成MESIによって得られたτが所期の生理学的傾向に従うことを示している。ROI1(最大の血管)のスペックル視感度曲線は、ROI2~4(より小さい血管)及びROI5(実質)の曲線よりも速く減衰し、対応するτ値はROI1からROI5まで増加する。合成MESIが血流を定量的に測定することをさらに妥当性確認するために、流量保存解析も実施した。ここで、スペックルICT値は、図7Bの挿入図に示されるように、1つの親血管(P)及び2つの娘血管(D1及びD2)で計算された。流量保存をICT及び血管の直径の積として計算し、親血管内の流量は、娘血管内の流量の合計の2.6%以内であることがわかった。
【0045】
B)定量的な血流変化を測定する能力(図8A、8Bを参照)。ここでは、術中の血流変化の臨床イメージングの実現可能性を示すために、脳血管の焼灼の前後に合成MESIイメージングを実施した。図8Aは、脳血管の焼灼前後の合成MESI ICT画像を2つの部分に示す。焼灼後の合成MESIでは、焼灼位置における血流の減少が明らかに示される。焼灼から離れた組織位置では、最小限の変化で血流が保持される。図8Bは、選択されたROIに対する焼灼前後のスペックル分散曲線を示し、焼灼により、脳血流の50%減少が観察されることができる。
【0046】
ここで当業者であれば、提案された合成MESI方法が多種多様な用途に容易に使用できることが理解されることできる。第一に、このアプローチは、例えば、皮膚微小血管の機能及び機能不全、創傷治癒の血管新生、組織熱傷の診断、皮膚癌、内視鏡検査手術手技及び消化管手術、潰瘍、心血管研究、糖尿病、ならびに脳血管研究のイメージングを含むが、これらに限定されない、血流イメージングにレーザスペックルコントラストイメージングを利用する様々な用途に適用されることができる。より一般的には、合成MESIアプローチは、拡散相関分光法、レーザスペックルレオロジー及びスペックルベースの血栓症測定に適用されるシステムを含む、あらゆるマルチスペックル検出系におけるスペックルゆらぎ動態の定量化に適用されることができる。
【0047】
本開示で特定される関連技術の参考文献及び/または論文のそれぞれの内容は、参照により本明細書に援用されている。
【0048】
「一実施形態(one embodiment)」、「一実施形態(an embodiment)」、「関連する実施形態」、または類似の言葉に対する本明細書全体を通した言及は、言及されている「実施形態」に関連して記載される特定の特徴、構造、または特質が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる「一実施形態では(in one embodiment)」、「一実施形態では(in an embodiment)」という語句及び類似の言葉の出現は、必然ではないが、すべて同じ実施形態を指す場合がある。開示のどの部分も、単独で、また場合によっては図と関連させて解釈しても、本発明のすべての特徴の完全な説明を提供することを意図したものではないことを理解されたい。
【0049】
本明細書内では、明瞭かつ簡潔な明細書を作成できるように実施形態を説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態を様々に組み合わせてもよく、または分離してもよいことが意図されており、理解されよう。特に、本明細書に記載されるすべての特徴が本発明のすべての態様に適用できることが理解されよう。
【0050】
また、本開示が本発明の特徴を対応する図面(可能な限り同様の番号は同じまたは類似の要素を表す)を参照して説明する場合、図示された構造要素は一般に縮尺通りではなく、強調及び理解を目的として、特定の構成要素が他の構成要素に対して拡大されている。単一の図面が本発明のすべての特徴の完全な説明を支援することを意図したものではないことを理解されたい。換言すれば、所与の図面は、一般に本発明の一部の特徴のみを説明し、一般に全ての特徴を説明するものではない。所与の図面及びそのような図面を参照する説明を含む本開示の関連部分は、一般に、少なくとも所与の図面及び議論を簡略化する目的、ならびにこの図に描かれている特定の要素に議論を向ける目的で、特定の図のすべての要素、またはこの図で提示できるすべての特徴を含むわけではない。当業者であれば、本発明が特異的な特徴、要素、構成要素、構造、詳細、もしくは特性のうちの1つ以上を使用せずに、または他の方法、構成要素、材料などを使用して、実施できる可能性があることが認識されよう。したがって、本発明の実施形態の特定の詳細がそのような実施形態を説明する一つ一つの図面に必ずしも示されなくてもよく、説明の文脈で別段の必要がない限り、図面におけるこの特定の詳細の存在が黙示され得る。他の例では、議論されている本発明の実施形態の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、詳細、材料、または動作が所与の図面に示されない、または詳細に説明されない場合がある。さらに、本発明の記載された単一の特徴、構造、または特性は、1つ以上のさらなる実施形態において任意の適切な方法で組み合わされ得る。
【0051】
本開示及び添付の特許請求の範囲の目的上、手元にある値、要素、特性または特徴の記述子に関して「実質的に」、「おおよそ」、「約」という用語及び類似の用語を使用することは、言及される値、要素、特性、または特徴が、必ずしも記載どおりではないが、それでも当業者によって記載されているように、実用的な目的で考慮されることを強調することを意図したものである。特定の特性または品質記述子に適用されるこれらの用語は、当業者であればその範囲が理解されるように、近似の言語を合理的に示し、特定の特性または記述子を説明するなど、「ほとんど」、「主に」、「かなり」、「概して」、「本質的に」、「大幅またはかなりの範囲で」、「大部分が同じであるが必ずしも完全に同じではない」ことを意味する。ある特異的な場合では、「おおよそ」、「実質的に」、及び「約」という用語は、数値に関して使用される場合、指定された値に対してプラスまたはマイナス20%、より好ましくはプラスまたはマイナス10%、さらにより好ましくはプラスまたはマイナス5%、最も好ましくは指定された値に対してプラスまたはマイナス2%の範囲を表す。非限定的な例として、2つの値が互いに「実質的に等しい」ということは、2つの値の間の差が値自体の+/-20%の範囲内、好ましくは値自体の+/-10%の範囲内、より好ましくは値自体の+/-5%の範囲内、及びさらにより好ましくは値自体の+/-2%以下の範囲内であり得ることを黙示する。
【0052】
選択された特性または概念を説明する際のこれらの用語の使用は、指定された特性または記述子に対する数値制限の数量未確定及び追加を黙示することも、そのいかなる根拠を提供することもない。当業者には理解されるように、そのような値、要素、または特性の正確な値または特性の記載されたものからの実際の偏差は、それらのような目的のために当技術分野で許容される測定方法を使用する場合に典型的な実験測定誤差によって定義される数値範囲内にあり、その範囲内で変動する可能性がある。
【0053】
「画像」という用語は、一般に、空間位置に対応する検出器出力の順序付けられた表現を指す。例えば、視覚的画像は、光検出器によって検出された光のパターンに応答して、ビデオスクリーンまたはプリンタなどの表示装置X上に形成され得る。「定量的」という用語は、量によって表されるもの、または表される可能性があるものとして定義される。
【0054】
本開示に添付された特許請求の範囲に記載されている本発明は、参照される関連技術で開示された特徴を含む、本開示全体に照らして評価されることを意図したものである。
【0055】
本発明が上述の例示的な実施形態を通じて説明されているが、本明細書に開示されている本発明の概念から逸脱することなく、図示された実施形態に対する修正及び変形が可能であることが当業者には理解されよう。開示された態様、またはこれらの態様の一部は、上記に列挙されていない方法で組み合わされることができる。したがって、本発明は、開示された実施形態(複数可)に限定されるものとみなされるべきではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
【国際調査報告】