IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ セントロ デ インミュノロヒア モレキュラルの特許一覧

特表2024-512762炎症性疾患の治療のための造血増殖因子枯渇ワクチン組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】炎症性疾患の治療のための造血増殖因子枯渇ワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P11/00
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P25/00
A61P17/00
A61P1/00
A61P11/06
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560805
(86)(22)【出願日】2022-03-16
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 CU2022050002
(87)【国際公開番号】W WO2022207016
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】CU-2021-0021
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】509352381
【氏名又は名称】セントロ デ インミュノロヒア モレキュラル
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラーゲ ダビラ、アグスティン ビエンベニード
(72)【発明者】
【氏名】レドン ナランホ、ヌリス
(72)【発明者】
【氏名】ペレイラ ジャニェス、カーラ
(72)【発明者】
【氏名】シルバ ソーサ、アレクサ
(72)【発明者】
【氏名】フエンテス モラレス、ダシャ
(72)【発明者】
【氏名】サアベドラ エルナンデス、ダナイ
(72)【発明者】
【氏名】オテロ アルフォロ、オスカー
(72)【発明者】
【氏名】スアレス フォルミーゴ、ヒセラ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ロハス ドランテス、ゲルトルーディス
(72)【発明者】
【氏名】ペレス マルティネス、ダヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ガルベス バルカルセル、ヘスス ラモン
(72)【発明者】
【氏名】ロペス メディナニージャ、アルマンド
【テーマコード(参考)】
4C085
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085BB11
4C085EE06
4C085FF11
4C085FF13
4C085FF20
4C085GG01
4C085GG03
4C085GG04
(57)【要約】
本発明は、バイオテクノロジー及び医薬品の分野に関する。特に、化学的コンジュゲーションまたは融合によって他の分子またはその断片へ結合された、造血増殖因子(G-SCF及び/またはGM-CSF等)に対する自己免疫反応を産生することが可能な治療用ワクチン組成物を記載する。かかるワクチン組成物は、特に循環好中球の病理学的な増加が起こる炎症性疾患の治療のために有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体タンパク質と、
アジュバントと、
組み換え顆粒球コロニー刺激因子(rG-CSF)、及び組み換え顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(rGM-CSF)からなる群から選択される少なくとも1つの抗原と
を含む、造血増殖因子に対する免疫応答を誘導する治療用ワクチン組成物。
【請求項2】
前記担体タンパク質が、
コレラトキシンBサブユニット、
破傷風トキソイド、
KLH、
Neisseria meningitidisのP64k、
ジフテリアトキソイド、
G-CSF及びGM-CSFに対するエピトープを提示することが可能なペプチド、
免疫グロブリンG、
免疫グロブリンM、
抗体Fc領域、
抗体可変領域、
細菌タンパク質、
酵母タンパク質、及び
哺乳動物タンパク質
を含む群から選択される、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
前記担体タンパク質が、
化学的コンジュゲーション、及び
融合
のうちの任意のものによって、抗原へ結合される、請求項1~2のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
前記抗原が、rG-CSFである、請求項1~3のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
前記抗原が、rGM-CSFである、請求項1~3のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが、
不完全フロイントアジュバント、
完全フロイントアジュバント、
スクアレンベースのアジュバント、
合成起源アジュバント、
ミネラル起源アジュバント、
植物起源アジュバント、
動物起源アジュバント、
微粒子タンパク質性アジュバント、
プロテオリポソーム型アジュバント、
リポソーム、及び
上記のアジュバントの混合物
からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
癌、
慢性閉塞性肺疾患、
ぶどう膜炎、
関節リウマチ、
強直性脊椎炎、
紅斑性狼瘡、
クローン病、
喘息、
皮膚炎、
サイトカイン放出症候群、
細胞脱顆粒が関連する疾患
からなる群から選択される炎症性疾患の治療における、請求項1~6のいずれか1項に記載ワクチン組成物の使用。
【請求項8】
0.01~10mg/kgの範囲の治療用有効量の請求項1~6のいずれか1項に記載の治療用ワクチン組成物の投与を含む、必要性のある対象の治療の方法。
【請求項9】
免疫応答誘導ステージが、前記ワクチン組成物を1~6用量少なくとも毎週投与して達成され、維持ステージとして、少なくとも1用量で毒性が起こる使用制限まで毎週投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ワクチン組成物の投与経路が、筋肉内、皮下、及び腫瘍内を含む群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオテクノロジー及び医薬品の分野に関する。特に、抗原が顆粒球コロニー刺激因子及び/または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子であり得る、造血増殖因子であるワクチン組成物を記載する。
【背景技術】
【0002】
炎症は複雑なプロセスであり、白血球及び血漿に由来するエフェクタータンパク質は、特異的な組織部位へ動員されて、局所的免疫応答を駆動する(Newton K,Dixit VM.(2012)Cold Spring Harb Perspect Biol.4(3):a006049)。これは、感染を限定し、組織リモデリングを開始するための有効な手法であるが、付随する組織損傷を回避するために制御されなくてはならない。短期間の急性炎症は、感染または傷害を阻止し、創傷治癒を可能にするが、長期の慢性炎症(サイトカイン産生細胞及び顆粒球を活性化して、サイトカインの産生を増加させ、正のフィードバックループを生成することに起因する)は、局所的な組織損傷の増加及び全身的に規制された免疫(特にT細胞応答)を引き起こし得る。
【0003】
慢性炎症は、様々な理由で、完全な治癒フェーズを欠き、それは決して終わらない。これについては、感染または刺激物との長時間の接触、及び継続的に炎症性メディエーターを分泌する細胞の存在等の異なる理由がある。炎症性刺激が永続的になる場合に、免疫抑制及び免疫寛容が始まる。この事例において、臨床的なレベル以下であるが上昇したレベルの顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及び顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)等のサイトカインは、免疫寛容に関連する一方で、有意に上昇するレベルは、炎症性増悪に関連する(Rogovskii V.(2020)Front Immunol.11:2061)。実際に、炎症性サイトカイン(G-CSF及びGM-CSF等)は、免疫寛容の増加を媒介し得る。免疫寛容の増加の代償は、腫瘍への罹病性の増加である(Stape T(2018)Asia Pac J Oncol Nurs 5:40-2)。
【0004】
G-CSF及びGM-CSFは、骨髄中での正常な顆粒球前駆体の顆粒球形成及び分化における主要サイトカインである。その生理的効果は、特異的な細胞表面受容体への結合によって媒介される。G-CSF及びGM-CSFならびにそれらの受容体の血漿濃度は、好中球増加症、発熱、炎症、組織破壊を示す炎症性疾患において、ならびに、いくつかの症例では、ショック及び死亡において、変化することが公知である(Watari K et al.(1989)Blood.73(1):117-22;Hamilton JA(2020)J Exp Med.217(1):e20190945)。
【0005】
感染が起こる場合に、G-CSF及びGM-CSFの放出は、感染性病原体のいくつかの構成要素がそれらの産生を刺激するので、自然に増加する。生じた反応の連鎖を起源とする好中球は、今度は、感染性病原体を攻撃し、それらの破壊を支援する(Eyles JL et al.(2006)Nat.Clin.Pract.Rheumatol.2(9):500-510;Ahandideh B et al.(2020)Hum Immunol.81(5):206-217)。G-CSF及びGM-CSFは、癌の開始、進行、及び転移における重要な役割も有する(Do H et al.(2020)Cancers.12(2):287)。新生物性細胞によって産生されたサイトカインの組み合わせられた作用は、宿主の免疫系の細胞応答を調節する。高レベルの炎症性サイトカインは、複数の型の癌についての進行ステージ及び予後不良と相関している(Silva EM et al.(2017)PLoS ONE 12(7):e0181125.;Lippitz,BE(2013).;The Lancet Oncology,14(6),e218-e228)。
【0006】
好中球は、とりわけ腫瘍の発生、慢性閉塞性肺疾患、ぶどう膜炎、関節炎、強直性脊椎炎、紅斑性狼瘡、喘息、サイトカイン放出症候群等の慢性炎症によって特徴付けられる異なる病理において、重要な役割を果たすことが公知である。好中球/リンパ球の比は、それらのうちのいくつかにおける予後指標である(Lee HN et al.(2019)Rheumatol Int.39(5):859-868)。
【0007】
臨床において、G-CSF及びGM-CSFは、化学療法に付随する好中球減少症を治療し、移植のための造血幹細胞を動員するために広範囲に使用されてきた(Roberts,AW(2005)Growth Factors 23(1):33-4;Mehta HM et al.(2015)J.Immunol.195(4):1341-1349)が、これに反する先行例は見出されていない。
【0008】
診断的役割を果たし得るか、またはG-CSF受容体(G-CSFR)を高発現する腫瘍と闘う受動的療法としてのモノクローナル抗体(Ab)が記載されている。G-CSFRに対する指向性のヒト化中和モノクローナル抗体は、霊長動物において良好な忍容性を示し、好中球減少症をもたらさなかったことが報告されている。加えて、マウス抗G-CSFRモノクローナル抗体は、関節炎を抑制し、関節中の好中球蓄積を有意に阻害し、これらは好中球減少症を伴わずに生じたことから、G-CSFR遮断が、炎症部位への好中球局在化に影響することを示唆した(Campbell IK(2016).J.Immunol.197:4392-4402)。しかしながら、抗増殖性及び抗腫瘍性の治療についての証拠は、見出されていない。G-CSFは、好中球の制御及び機能における重要なリガンドであるので、このタイプの疾患の患者における治療適応症としてこのサイトカインの活性化を阻害する製剤の使用は有用且つ重要である。
【0009】
化膿性汗腺炎及び掌蹠膿疱症の治療のためのモノクローナル抗G-CSFR抗体による健康なボランティアにおける第I相試験があり(WO2019/178645及びWO2020/113270)、その場合には、循環好中球数はより低い危険なレベルまで低下しない。
【0010】
サイトカインまたはその受容体自身に対する指向性のモノクローナル抗体によるGM-CSF経路の遮断は、WO2010/124163中で記載され、難治性関節リウマチの患者https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04333147(2020年11月23日にアクセス);ClinicalTrials.gov.https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04134728(2020年11月23日にアクセス)及びCOVID患者https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04376684(2020年11月23日にアクセス)において継続している臨床試験がある。ACT型免疫療法によって誘導された毒性の治療における、GM-CSFに対する抗体の使用も記載されている(WO2019/070680)。
【0011】
患者において検出されるG-CSFサイトカイン及びGM-CSFサイトカインの濃度は高く、そのため、高用量の抗体でさえ完全にそれらの活性を中和することは不可能である。これらの分子が正常条件下の身体において見出されるので、寛容の破壊及び免疫原性の生成はこれらの分子について容易なプロセスではない。これまでのところ、G-CSF依存性腫瘍またはGM-CSF依存性腫瘍に対して、それらの増殖を阻害できる積極的な免疫療法は提案されていない。
【0012】
初めて、本発明において、これらの造血増殖因子を枯渇させる免疫応答が示され、この応答の治療効果の証拠が炎症及び癌の実験モデルにおいて示される。前記組成物は、抗GCSF抗体及び抗GM-CSF抗体の力価の増加、循環好中球数の減少、抗増殖性抗炎症効果、ならびに高い抗腫瘍効果を生じる。加えて、低用量の活性成分が要求されることによって、毒性が低減されるので、それらは慢性状況において使用され得る。
【0013】
本明細書において記載されるワクチン組成物によって示される効果は、意外且つ予想外である。サイトカインネットワークの複雑な特性とその多面的効果、ならびに炎症を生成するメカニズムの冗長性から、これらのワクチン組成物によって生成された抗体が、好中球の集団を選択的に抑制できること、ましてや、この枯渇が抗炎症性効果及び抗腫瘍性効果へと変換されることは明らかではない。
【発明の概要】
【0014】
1つの手順行為において、本発明の対象は、担体タンパク質、アジュバント、及びrG-CSFまたはrGM-CSFであり得る少なくとも1つの抗原を含む、造血増殖因子に対する免疫応答を誘導する治療用ワクチン組成物である。
【0015】
これらのワクチン組成物によって使用される担体タンパク質の中には、コレラトキシンB、破傷風トキソイド、KLH、Neisseria meningitides P64k、ジフテリアトキソイド、G-CSF及びGM-CSFに対するTエピトープを提示し得るペプチド、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、抗体のFc領域、抗体の可変断片、ならびに細菌、酵母、または哺乳動物からのタンパク質がある。これらの担体タンパク質は、化学的コンジュゲーションまたは融合方法によって抗原へ付着され得る。
【0016】
本発明のワクチン組成物中で使用され得るアジュバントは、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、スクアレンに基づくアジュバント、合成起源のアジュバント、ミネラル起源のアジュバント、植物起源のアジュバント、動物性タンパク質のアジュバント、微粒子タンパク質アジュバント、プロテオリポソーム型アジュバント、リポソーム、及び上記のうちの任意のものの混合物である。
【0017】
特定の手順行為において、本発明は、癌、慢性閉塞性肺疾患、ぶどう膜炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、紅斑性狼瘡、クローン病、喘息、皮膚炎、サイトカイン放出症候群、及び細胞脱顆粒が重要な役割を果たす疾患を含む群から選択される炎症性疾患の治療における、本明細書において記載されるワクチン組成物の使用に関する。
【0018】
別の手順行為において、0.01~10mg/体重kgの範囲の治療有効量の本発明のワクチン組成物を投与することを含む、必要性のある対象を治療する方法が記載される。特に、1から6用量の間で少なくとも週に1回投与して生成される免疫応答誘導ステージ、及び1用量から毒性が起こる使用限度までの間で少なくとも週に1回投与する前記免疫応答を維持するための別のステージが実行される。この方法は、筋肉内経路、皮下経路、または腫瘍内経路のいずれかによるワクチン組成物の投与を含む。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ワクチン組成物
本発明は、造血増殖因子G-CSF及びGM-CSFに対する免疫応答を誘導し、インビボで、循環好中球数の減少、抗増殖性効果、及び高い抗腫瘍効果を生じるワクチン調製物を得ることを含む。
【0020】
本発明のワクチン組成物の活性成分は、抗原(G-CSF及び/またはGM-CSF)を担体タンパク質へ結合したタンパク質コンジュゲートである。前記担体タンパク質は、コレラトキシンB、破傷風トキソイド、KLH、Neisseria meningitidisからのP64k;ジフテリアトキソイド、ならびにG-CSF及びGM-CSFに対するTエピトープを提示できるペプチドから選択されるがこれらに限定されない。上記のコンジュゲートにおいて、当該タンパク質は、ヒトまたは別の動物種からであるかにかかわらず、免疫グロブリンG、免疫グロブリンM、抗体のFc領域へ融合され得る。前記Fc領域は、突然変異L234A及びL235Aにより領域Cγ2中で突然変異したIgG1からなり、Fc受容体へ限定的に結合するバリアントであり得る。加えて、コンジュゲートは、抗体の可変断片、細菌タンパク質、酵母タンパク質、または哺乳動物タンパク質へ融合され得る。
【0021】
また、上で記載されるタンパク質コンジュゲートは、抗G-CSF及び/または抗GM-CSF Ab応答を促進または補完するアジュバントを含む。これらのアジュバントは、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、スクアレンベースのアジュバント、合成起源のアジュバント、ミネラル起源のアジュバント、植物起源のアジュバント、動物起源のアジュバント、微粒子タンパク質アジュバント、プロテオリポソーム型アジュバント、リポソーム、または上記のもののうちの任意のものの混合物であり得る。
【0022】
抗G-CSF及び/または抗GM-CSF系は、好適な本発明使用において、薬学的賦形剤を含んでいた。これらのもとしては、注射用水、塩化ナトリウム、リン系塩( phosphorous salt)及びカリウム塩、塩化カルシウム、水酸化ナトリウム及びクエン酸ナトリウム、ならびにEDTAが挙げられるがこれらに限定されない。患者は、0.01~10mg/mLのタンパク質濃度で、且つ10~100μL/kg、または1キログラムあたり総タンパク質10~100μg、または総タンパク質の最大5mg(10~60μg/kgがより推奨される)の用量で、非経口製剤において接種され得る。
【0023】
治療用組成物は、液体形態を使用して-80℃~8℃の温度で、またはで凍結乾燥プロセス後に2~8℃の温度で保存され得る。
【0024】
担体タンパク質と組み換えG-CSF(rG-CSF)及び/または組み換え体G-CSF(rGM-CSF)との間の化学的コンジュゲートの取得
rGCSFタンパク質及び/またはrGM-CSFタンパク質と上で言及される担体タンパク質のうちのいくつかとの間の化学的抱合反応のための条件の評価及び最適化から、コンジュゲーションの最中の両者の間の高いコンジュゲーション効率を保証するために、高いモル比の自己タンパク質を要求する化学的コンジュゲーション法が開発されている。次いで、コンジュゲーションの最中で必要な過剰量の自己タンパク質は、限外濾過膜精製方法を通じて除去され、それにより、高い均一性を備えたワクチン調製物を取得することが可能にされる。
【0025】
本発明において記載される手順は、両方のタンパク質間の適切な化学的コンジュゲーションを保証し、単一のステップからなるものである。当該手順は、0.1~1mg/mLの範囲に事前に濃縮されたrGCSFタンパク質及び/またはrGM-CSFタンパク質ならびにそれがコンジュゲートされるであろう分子を、0.6~20mg/mLの範囲でコンジュゲーション反応器中で混合することによって開始する。後続して、PBS/MgCl2の溶液(pH6.0~7.2)及び0.1~0.8%の範囲のグルタルアルデヒドコンジュゲーション溶液は、このタンパク質混合物へ添加される。混合物は、20~24℃±2℃の温度で15分間~4時間で持続的な撹拌下で維持される。コンジュゲーション反応の最中の総タンパク質濃度は1~20mg/mLである。
【0026】
後続して、50~100kDaの範囲の限外濾過膜を使用して、2つのステージからなる精製が実行される。初期ステージにおいて、バッファー溶液の連続交換(ダイアフィルトレーション)を遂行して、グルタルアルデヒドを除去し、過剰な自己タンパク質を除去し、遊離しているか、または異なるサイズの、rGCSFタンパク質のみもしくはrGM-CSFタンパク質のみのコンジュゲートを形成するもの、のいずれかとする。このステージの間に、バッファー溶液の3~15回の交換が遂行される。第2のステージは、精製された化学的コンジュゲートの濃縮である。
【0027】
膜精製によって取得された治療用調製物は、rGCSFタンパク質とそれがコンジュゲートされる分子との間の化学的コンジュゲーション比が5:1~20:1の範囲であること、及びグルタルアルデヒドが無いことによって特徴付けられる。
【0028】
融合タンパク質発現方法による治療用組成物の取得
本発明のワクチン組成物は、発現ベクター(これに限定されないが、好ましくはPCMX)中にクローニングされ、前述の担体タンパク質のうちの任意のものの遺伝子へ融合された、rG-CSF遺伝子及びrGM-CSF遺伝子に基づく遺伝的構造物をデザインすることによっても取得され得る、トランスフェクションにおいて使用される細胞は、HEK-293T、HEK-293-GE、Expi 293、HEK-293、またはCHOk1であり得る。トランスフェクションされた細胞の上清は、6~10日間の培養後に収集される。次いで、前記組み換えタンパク質は、プロテインA親和性クロマトグラフィーまたは金属イオン親和性クロマトグラフィーによって精製される。
【0029】
治療方法
上で記載される系は、本発明において記載される系によって生成された抗体の事前の誘導により、抗G-CSF免疫応答及び/または抗GM-CSF免疫応答の維持において有効である。G-CSF及びGM-CSFが関連する役割を果たす場合に、当該系は、炎症性疾患の治療において有用である。これらの疾患としては、癌(特にG-CSFまたはGM-CSFに依存性の腫瘍)、慢性閉塞性肺疾患、ぶどう膜炎、関節炎、強直性脊椎炎、紅斑性狼瘡、クローン病、喘息、皮膚炎、サイトカイン放出症候群、及び細胞脱顆粒が重要な役割を果たす疾患が挙げられるがこれらに限定されない。
【0030】
ヒトまたは動物における使用のために承認される用量は、少なくとも毎週投与される1から6の誘導用量で投与され、次いで免疫応答の維持のステージにおいて、1用量から使用を限定する毒性が起こるまでの間で投与され、少なくとも毎週だけではなく、隔週、毎月、四半期、または毎年、筋肉内、皮下、または腫瘍内に投与される。
【0031】
本発明は、以下の実施例及び図面によりさらに詳述される。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】SDS PAGE電気泳動によるrG-CSF-P64k系の特性評価。
図2】SDS PAGE電気泳動によるrG-CSF-Fc系及びrGM-CSF-Fc系の特性評価。
図3】治療用組成物rG-CSF-P64k単独で、またはG-CSFと併用して投与した後の、抗G-CSF抗体力価の生成の動態研究。
図4】A)異なる用量での治療用組成物rG-CSF-P64kの投与後の抗G-CSF抗体力価の生成。B)異なる用量での治療用組成物rG-CSF-P64kの投与後の抗G-CSF抗体力価の生成の動態。
図5】治療用組成物rG-CSF-P64k単独で、またはG-CSFと組み合わせて投与した後の循環好中球カウントの評価。
図6】治療用組成物rGCSF-P64kにより免疫されたマウスから得た血清によって誘導される細胞増殖の阻害。
図7】クロトン油の適用によって引き起こされた炎症モデルにおける治療用組成物rGCSF-P64kの投与後の抗炎症効果の評価。A)循環好中球カウントの減少。B)心房浮腫の減少。
図8】治療用組成物rG-CSF-Fc単独で、またはG-CSFと組み合わせて投与した後の、Ab抗G-CSF力価の生成の動態研究。
図9】A)異なる用量での治療用組成物rG-CSF-Fcの投与後の抗G-CSF抗体力価の生成の研究。B)異なる用量での治療用組成物rG-CSF-Fcの投与後の抗G-CSF抗体力価の生成の動態。
図10】Balb/c系統における治療用組成物rG-CSF-Fcの投与後の抗G-CSF抗体力価の生成の動態研究。
図11】治療用組成物rG-CSF-Fc単独で、またはG-CSFと組み合わせて投与した後の循環好中球カウントの評価。
図12】治療用組成物rGCSF-Fcにより免疫されたマウスから得た血清によって誘導された細胞増殖の阻害。
図13】治療用組成物rGM-CSF-Fcの投与後の抗GM-CSF Ab力価の生成の動態研究。
図14】A)異なる用量での治療用組成物rGM-CSF-Fcの投与後の抗GM-CSF抗体力価の生成の研究。B)異なる用量での治療用組成物rGM-CSF-Fcの投与後の抗GM-CSF抗体力価の生成の動態研究。
図15】治療用組成物rGMCSF-Fcにより免疫されたマウスから得た血清によって誘導された細胞増殖の阻害。
【実施例
【0033】
実施例1.組み換えタンパク質rP64kとrG-CSFとの間の化学的コンジュゲートの取得
20:1の比でrGCSFとP64kのタンパク質との間の化学的コンジュゲートを取得するために、17.6mgのGCSFタンパク質から開始し、3mgのP64k担体タンパク質を、1時間撹拌しながら反応器中で、NaHCO3Na2CO3バッファー溶液(0.01M)及び0.5%のグルタルアルデヒドコンジュゲーション溶液中に添加する。後続して、細かい不純物(details impurities)及びコンジュゲートされないタンパク質を限外濾過系を通じて除去する。このプロセスを、ポリソルベート80、ソルビトール、酢酸ナトリウム、酢酸、及び注射用水を含有するバッファーを使用して実行する。この操作の中に、7回のバッファー交換を遂行する。残存する限外濾過溶液を濃縮して、1mg/mlの投薬量へ濃縮を調整する。その後、2~8℃で保存する。
【0034】
精製タンパク質の純度を、10%のSDS-PAGEゲル及び1つのμgタンパク質質量で査定した。図1は、取得されたワクチン組成物がおよそ200kDの分子量に対応することを示す。
【0035】
実施例2.融合タンパク質発現方法を介する治療用組成物の取得。
ヒト免疫グロブリンG1のFc領域へ融合されPCMX発現ベクターの中へクローニングされた、G-CSF遺伝子に基づく遺伝子コンストラクト及びGM-CSF遺伝子による別の遺伝子コンストラクトをデザインした。Expi 293細胞に、評価される遺伝子コンストラクトをポリエチレンイミンと混合して、トランスフェクションした。トランスフェクションした細胞からの上清を、6日間の培養後に収集した。前記組み換えタンパク質を、プロテインAマトリックスへの親和性によって精製した。精製タンパク質の純度を7.5%のSDS-PAGEゲルにおいて評価し、使用されるG-CSF-Fcの質量は2μgであり、GM-CSF-Fcの事例において9μgであった。
【0036】
図2は、評価した組成物の両方の分子量がおよそ35kDに対応することを示す。
【0037】
実施例3.治療用組成物rG-CSF-P64kは、抗G-CSF抗体を誘導する。
C57BL/6系統のマウス(n=5)を、Montanideをアジュバントとした(V/V 1:1)、50μg/体重kgの実施例1の製剤により、0日目、7日目、21日目、35日目、及び42日目に筋肉内で免疫した。14日目に開始して、G-CSFまたはPBSも週に3回皮下投与した。
【0038】
0日目(免疫前)、14日目、35日目、及び56日目に採血して、血清へとプロセシングした。G-CSFに対する特異的な抗体の力価を、ELISAによって決定した。このために、プレートを5μg/mLのG-CSFによりカバーし、37℃で1時間インキュベーションした。対応するブロッキング後に、血清希釈物(1/10、1/100、1/500、1/1000、1/5000、1/10000、1/20000)を添加した。抗マウスIgG抗体/アルカリホスファターゼコンジュゲート(Sigma)及び対応する酵素基質を使用して、反応を可視化した。吸光度を405nmで読み取った。免疫前血清を陰性対照として使用した。抗体力価は、ELISA光学的密度(OD)読み取りを示し、加えて免疫前血清を含有するウェルにおいて得られた平均ODを5標準偏差超えるものを最大血清希釈として定義された。
【0039】
各々の実験群のELISAによって評価された抗G-CSF抗体力価の幾何平均を使用して、免疫応答の条件を規定した。免疫されたマウスは特異的な抗体を生じ、それは、1/10,000を超える力価に達し、ワクチン組成物がG-CSF自体に対する免疫応答を誘導することを示す(図3)。
【0040】
実施例4.異なる濃度での治療用組成物rG-CSF-P64kは抗G-CSF抗体を誘導する。
C57BL/6系統のマウス(n=5)を、Montanideをアジュバントとした(V/Ver 1:1)、50、25、12.5、6.25、及び3.125μgの異なる濃度の実施例1の製剤により、14日間の間隔の6用量で筋肉内で免疫した。2回目の免疫から、G-CSFまたはPBSも週に2回皮下投与した。
【0041】
0日目(免疫前)及び各々の免疫の15日後に採血して、血清へとプロセシングした。G-CSFに対する特異的な抗体の力価を、ELISAによって決定した。このために、プレートを5ug/mLのG-CSFによりカバーし、37℃で1時間インキュベーションした。対応するブロッキング後に、血清希釈物(1/100、1/1000、1/10000、1/100000、1/1000000)を添加した。次いで実施例3において記載される手順に従った。
【0042】
免疫されたマウスは特異的な抗体を生じ、それは、ワクチン組成物の異なる濃度で1/1000を超える力価に達し、G-CSFに対する免疫応答を誘導することを実証した。抗原の複数の用量により免疫されたマウスにおいて得た力価間で有意な差がある(図4A)。これは、抗体力価として測定して取得される応答に関して、免疫群間の用量依存性を実証する。
【0043】
液性免疫応答も、ワクチン組成物の3用量、4用量、5用量、及び6用量に対応する異なる時間的間隔で評価した。異なる濃度のワクチン調製物で免疫されたすべての動物の抗体力価は、用量依存的様式で増加し、5回目の免疫からの抗体力価はプラトーに到達する(図4B)。
【0044】
実施例5.治療用組成物rG-CSF-P64kは、C57BL/6マウスにおいて循環好中球のカウントを減少させる。
C57BL/6マウス(n=5)を、Montanideをアジュバントとした(V/V 1:1)実施例1のワクチン製剤により、実施例3の免疫スケジュールに従って免疫した。14日目に開始して、G-CSFまたはPBSも週に3回皮下投与した。0日目(免疫前)及び第1の免疫の56日後に、末梢血を動物の上顎洞から採血し、EDTA(血液1mLあたり40μl)含有バイアル中に収集した。Carl Zeiss顕微鏡。
【0045】
正規性はコルモゴロフ・スミルノフ検定によって、等分散性はルビーン検定によって検証され、対応のあるスチューデントのt検定は、免疫前の各々の動物の値と35日目及び56日目の各々の動物の値との間で遂行された。有意水準は、p<0.05である。G-CSF-P64kコンジュゲートにより処理された動物において、好中球の統計的に有意な低減は56日目に観察され、この医薬組成物が、生成する抗G-CSF抗体を通じて好中球減少症を引き起こすことが可能であることを示唆する(図5)。好中球減少症がマウスの生存の減少を意味するものでないことにも留意されたい。
【0046】
実施例6.治療用組成物rGCSF-P64kは、マウス骨髄芽球株NFS60の細胞増殖を阻害する。
実施例1の治療用組成物、及び実施例3において記載される免疫スキームを使用して、14日目及び28日目で取得された血清の効果を、C57BL/6マウスの免疫後のマウス骨髄芽球株NFS60(G-CSF依存性)における細胞増殖アッセイを通じて評価した。
【0047】
細胞を事前に融解し、指数関数的増殖を達成するために培養において48時間維持した。試験の中のインキュベーション条件は、温度37℃及び5%のCO2雰囲気であった。活性成分が1/250;1/500、及び1/1000の希釈のrP64k-rG-CSFタンパク質コンジュゲートであるワクチン製剤の存在下において、細胞を1ウェルあたり10,000細胞の濃度で96ウェル培養プレート中に播種した。hG-CSF参照物質(MRT(QFB)G-CSF/1905)を、陽性対照として同じ濃度でこれらのアッセイのために使用し、G-CSF無しの培地による細胞を陰性対照として含めた。48時間のインキュベーション後に、1ウェルあたり20μLのAlamar Blueを添加し、6時間インキュベーションした。プレートを540nm及び620nmで読み取った。すべてのサンプルを二重で試験した。
【0048】
図6は、ワクチン組成物の投与により、希釈(希釈が低いほど効果が大きい)及び処理の開始からの時間に依存して分裂増殖の阻害があることを示すが、これは14日目よりも28日目により高い阻害効果が観察されたからであり、ワクチン製剤が、G-CSF(評価される腫瘍株における顆粒球形成に重要である)の増殖性効果を阻害することを示す。
【0049】
実施例7.治療用組成物rG-CSF-P64kは、抗炎症効果を有する。
C57BL/6マウスを、完全フロイントアジュバント中の50μg/体重kgの実施例1のワクチン製剤(V:V 1:1)により、0日目、7日目、及び21日目に皮下で免疫した。残りの免疫は、フロイントの不完全アジュバント中で遂行した。対照群として、マウスに、同じ経路及び頻度によって食塩水を投与した。
【0050】
0日目、7日目、及び21日目に、動物の右側耳介の各々の面上に、10μLの0.4%のクロトン油を局所的に適用した。等体積の食塩水を左側耳介へ適用した。0日目及びクロトン油投与開始の20日前に、好中球のカウントのために、すべての動物から血液サンプルを採取した。35日目に、刺激物質の適用の4時間後に、動物を屠殺し、耳介浮腫への応答を決定した。それらのために、6mmの直径の組織片を耳介から採取し、分析天秤で秤量した。各々の動物の両方の耳介のディスクから得られた重量により、生じた浮腫及び炎症の阻害パーセンテージを、以下を考慮して計算した。
浮腫=腫れた耳介(右側耳介)の重量-腫れていない耳介(左側耳介)の重量
炎症の%阻害=[(Pc-Pt)/Pc]×100式中:
Pc:対照群における重量の変化の算術平均、
Pt:処理群における重量変動の算術平均。
【0051】
統計パッケージMINITAB(Minitab Inc.バージョン16.1.0.MINITAB、2010)を、データプロセッシングのために使用し、結果の解釈において90%の信頼水準を確立した。データを群間で比較し、コルモゴロフ・スミルノフ(KS)検定及びルビーン検定を使用して、それぞれ正規性及び等分散性を分析した。実験群間で有意差があるかどうかを決定するために、パラメトリックスチューデントのt検定(好中球カウント)及び浮腫のためにマン・ホイットニーU検定を遂行した。
【0052】
前の手順の結果として、20日目に対照群に比較して、GCSF-P64Kコンジュゲートにより処理された群の好中球カウントの統計的に有意な低減(p<0.1)が検出された(図7A)一方で、35日目に、対照群に比較して、GCSF-P64Kコンジュゲートにより処理された群の急性炎症の阻害が検出され、これは、クロトン油によって引き起こされた耳介浮腫の統計的に有意な53.85%の低減(p<0.1)によって特徴付けられ(図7B)、ワクチン調製物が、急性炎症のモデルにおいて抗炎症効果を有することを示す。
【0053】
実施例8.治療用組成物rG-CSF-Fcは、抗体応答を誘導する。
5匹のC57BL/6マウスの群を、抗原としてG-CSFをFcへカップリングし、Montanideをアジュバントとした、20μg/kgの実施例2において記載されるワクチン組成物により、0日目、14日目、28日目、及び42日目に筋肉内で免疫した。14日目及び56日目に採血して、血清をプロセシングし、G-CSFに対する特異的な抗体力価を、ELISAによって決定した。このために、プレートを、5μg/mLの、6つのヒスチジン分子の尾部を備えたG-CSFhにより、4℃で16~20時間コーティングした。プレートを、リン酸緩衝食塩水中で希釈した4%の脱脂粉乳により、25℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング溶液中の免疫されたマウスからの血清及び免疫前血清の連続希釈物(1/10~1/10)を添加し、25℃で1時間インキュベーションした。0.1%(V:V)のTween 20溶液による6回の洗浄を遂行した。ブロッキング溶液中で1:35000に希釈した抗マウスIgG免疫グロブリン-ホースラディシュペルオキシダーゼコンジュゲート(Sigma、A2554-1mL)を添加し、25℃で1時間インキュベーションした。オルトフェニレンジアミン(0.5mg/mL)(Sigma、USA)を、0.015%の過酸化水素と共に、基質バッファー溶液(200mmol/LのNa2HPO4、100mmol/Lのクエン酸、pH=5)中で、顕色のために25℃で30分間使用した。反応を10%のH2SO4により停止させた。吸光度を、Dialab GmbH ELISAリーダー、ELx808で490nmで決定した。
【0054】
力価は、同じ動物からの免疫前血清の吸光度の少なくとも2倍の吸光度が観察されたものが最高希釈として決定された。図8中で示される結果は、14日目及び56日目に得られた血清の力価測定に対応する。グラフから、前記サイトカインに対してマウスにおいてG-CSFhに対する免疫が液性型応答及び高力価を生成することが可能であることが示される。
【0055】
実施例9.異なる濃度での治療用組成物rG-CSF-Fcは、抗G-CSF抗体を誘導する。
C57BL/6系統のマウス(n=7)を、FcへカップリングしたGCSFを抗原として有し、Montanideをアジュバントとした(V/V 1:1)、80、40、20、10、及び5μgの異なる濃度の実施例2の製剤により、14日間の間隔の6用量で筋肉内で免疫した。血清のプロセシングのために0日目(免疫前)及び各々の免疫の14日後に採血した。G-CSFに対する特異的な抗体の力価を、ELISAによって決定し、次いで実施例3の手順に従った。
【0056】
免疫されたマウスは特異的な抗体が生じ、それは、ワクチン組成物の異なる濃度で免疫された群間の統計的な差異無しで、1/1000を超える力価に達し、評価された間隔の用量に依存しないG-CSFに対する免疫応答を誘導することを実証する(図9A)。
【0057】
液性免疫応答を、40及び5ugのワクチン組成物により免疫された動物について、実施例4の手順に従って、異なる時間的間隔で評価した。抗体力価の動態は、3回目の免疫からプラトー相に留まり、4回目の用量後に小さな変動があった。経時的な液性応答の発生において、濃度に対する非依存性は維持される(図9B)。
【0058】
実施例10.治療用組成物rG-CSF-Fcは、Balb/c系統において抗G-CSF抗体を誘導する。
Balb/cマウスを、抗原としてFcへ融合したG-CSFを有し、Montanideをアジュバントとした、5ugの実施例2の治療用組成物により、14日間の間隔で分離して5用量で皮下で免疫した。0日目(免疫前)、42日目、70日目、及び77日目に採血した。
【0059】
G-CSFに対する特異的な抗体力価を、異なる血清抽出物についてELISAによって決定した。このために、プレートを5ug/mLのG-CSFによりカバーし、37℃で1時間インキュベーションした。対応するブロッキング後に、血清希釈物(1/100、1/1000、1/10,000、1/100,000、1/1,000,000)を添加し、次いで実施例3中で記載されるように進めた。
【0060】
免疫されたBalb/cマウスは特異的な抗体を生じ、それは、1/10,000の平均力価に達し、ワクチン組成物がG-CSFに対する強い免疫応答を誘導することを実証する(図10)。
【0061】
実施例11.治療用組成物rG-CSF-Fcは、C57BL/6マウスにおいて循環好中球のカウントを減少させる。
C57BL/6マウス(n=5)に、抗原としてFcへカップリングしたG-CSFを有し、Montanideをアジュバントとした、20μg/kgの実施例2中で記載されるワクチン組成物の重量を、実施例3中で記載される免疫スケジュールに従って投与した。好中球カウントを、Carl Zeiss顕微鏡を使用して査定した。0日目(免疫前)及び第1の免疫の56日目に、末梢血を動物の上顎洞から抽出し、EDTA(血液1mLあたり40μl)含有バイアル中に収集した。好中球カウントを、Carl Zeissの顕微鏡を使用して遂行した。
【0062】
正規性はコルモゴロフ・スミルノフ検定によって及び等分散性はルビーン検定によって検証され、対応のあるスチューデントのt検定は、免疫前の各々の動物の値と35日目及び56日目の各々の動物の値との間で遂行された。有意水準は、p<0.05である。
【0063】
好中球の統計的に有意な低減は、GCSF-P64kコンジュゲートにより処理した動物において56日目に観察され、この医薬組成物が、生成する抗G-CSF抗体を通じて好中球減少症を引き起こすことが可能であることを示唆する(図11)。好中球減少症がマウスの生存の減少を意味するものでないことにも留意されたい。
【0064】
実施例12.治療用組成物rGCSF-Fcは、マウス骨髄芽球株NFS60の細胞増殖を阻害する。
C57BL/6マウスを、抗原としてFcへ融合したGCSFを有し、Montanideをアジュバントとした、40及び5ugの実施例2の治療用組成物により、14日間の間隔で分離して5用量で筋肉内で免疫した。
【0065】
マウス骨髄芽球株NFS60(G-CSF依存性)において細胞増殖アッセイを使用して、0日目(免疫前)に及び免疫スキームの終了時に得た血清の効果を評価し、手順は実施例5中で記載されるものである。
【0066】
図12から、ワクチン組成物の投与により分裂増殖阻害が起こり、免疫されていない動物(免疫前)の血清では阻害が起こらないことが示され、このことは、ワクチン製剤が、NFS60株における顆粒球形成に重要なG-CSFの増殖分裂効果を阻害することを示す。評価された血清の分裂増殖の阻害は、ワクチン組成物の濃度に対する依存性を示さない。
【0067】
実施例13.治療用組成物rGM-CSF-Fcは、抗体応答を誘導する。
4匹のBALB/cマウスの群を、IgG1 Fc鎖へ融合した、20μgのヒトGM-CSFにより、皮下で免疫した。第1の免疫の2日前に、マウスから血清をして、免疫前血清対照として使用した6回の免疫を14日間の間隔で遂行し、第6の用量の7日後に採血した。0日目に、免疫を、フロイントの完全アジュバント中で乳化させた20μgのタンパク質(V:V 1:1)により実行した。残りの免疫は、フロイントの不完全アジュバント中で遂行した。
【0068】
0日目日、35日目、49日目、及び77日目に、採血し、GM-CSFに対する抗体力価をELISAによって血清で決定した。このために、96ウェルプレートを、リン酸緩衝食塩水中で溶解した5μg/mLのヒトGM-CSFにより、4℃で16~20時間コーティングした。プレートを、リン酸緩衝食塩水中で希釈した4%の脱脂粉乳により、25℃で1時間ブロッキングした。ブロッキング溶液中の免疫されたマウスからの血清及び免疫前血清の連続希釈物(1/10~1/107)を添加し、25℃で1時間インキュベーションした。0.1%(V:V)のTween 20溶液による6回の洗浄を遂行した。ブロッキング溶液中で1/35,000に希釈した抗マウスIgG-ホースラディシュペルオキシダーゼコンジュゲートを添加し、25℃で1時間インキュベーションした。顕色のために、オルトフェニレンジアミン(0.5mg/mL)(Sigma、USA)を、0.015%の過酸化水素と共に、基質バッファー溶液(200mmol/LのNa2HPO4、100mmol/Lのクエン酸、pH=5)中で25℃で30分間使用した。反応を10%のH2SO4により停止させた。すべてのサンプルを二重で適用し、免疫されたマウスの結成中に存在する抗体力価は、同じ動物の免疫前血清の吸光度の少なくとも2倍の吸光度が観察されたものが最高希釈としてみなされた。
【0069】
図13中で、グラフから、ヒトGM-CSFに対する免疫が、最大で1×107の力価による高い応答を生成したことが示される。結果から、免疫が、かかるサイトカインに対してマウスにおいて高力価の液性応答を生成することが可能であることが示される。
【0070】
実施例14.異なる濃度での治療用組成物rGM-CSF-Fcは、抗GM-CSF抗体を誘導する。
C57BL/6系統のマウス(n=7)を、FcへカップリングしたGMCSFを抗原として有し、Montanideをアジュバントとした(V/V 1:1)、40、20、10、5、及び2.5μgの異なる濃度の実施例2の製剤により、14日間の間隔の6用量で筋肉内で免疫した。
【0071】
血清のプロセシングのために0日目(免疫前)及び各々の免疫の14日後に採血した。GM-CSFに対する特異的な抗体の力価を、ELISAによって決定した。このために、実施例4の手順に従って、プレートを5μg/mLのGM-CSFによりカバーし、37℃で1時間インキュベーションした。
【0072】
各々の実験群のELISAによって評価された抗GM-CSF抗体価の幾何平均を使用して、免疫応答の条件を規定した。免疫されたマウスは特異的な抗体が生じ、それは、ワクチン組成物の異なる濃度で免疫した群間の統計的な差異無しで、1/1000を超える力価に達し、試験された用量範囲において濃度に依存しないGM-CSFに対する免疫応答を誘導することを実証する(図14A)。
【0073】
液性免疫応答を、20及び5ugのワクチン組成物により免疫された動物について、実施例4の手順に従って、異なる時間的間隔で評価した。抗体力価の動態は、用量の数と対応して増加する。5回目の用量から、応答における変動がないプラトー相が観察される。経時的な液性応答の発生において、濃度に対する非依存性は維持される(図14B)。
【0074】
実施例15.治療用組成物rGMCSF-Fcは、マウス骨髄芽球株NFS60の細胞増殖を阻害する。
Balb/cマウスを、抗原としてFcへ融合したGMCSFを有し、Montanideをアジュバントとした、5ugの実施例2の治療用組成物により、14日間の間隔で分離して5用量で皮下で免疫した。0日目(免疫前)及び最終免疫の14日後に採血した。
【0075】
免疫から取得された血清の効果を、マウス骨髄芽球株NFS60(G-CSF依存性)における細胞増殖アッセイによって評価し、実施例6において記載される同じ手順に従った。
【0076】
図15から、rGMCSF-Fcワクチン組成物の投与により、免疫された動物において分裂増殖の阻害が起こり、免疫されていない動物(免疫前)の血清では阻害が起こらないことが示され、このことは、ワクチン製剤が、NFS60株における顆粒球形成に重要なG-CSFの増殖効果を阻害することを示す。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
【国際調査報告】