(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】亜鉛を含まない潤滑組成物及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C10M 169/04 20060101AFI20240312BHJP
C10M 137/02 20060101ALN20240312BHJP
C10M 137/04 20060101ALN20240312BHJP
C10M 137/08 20060101ALN20240312BHJP
C10M 137/10 20060101ALN20240312BHJP
C10M 159/22 20060101ALN20240312BHJP
C10M 159/24 20060101ALN20240312BHJP
C10M 129/10 20060101ALN20240312BHJP
C10M 129/54 20060101ALN20240312BHJP
C10M 135/10 20060101ALN20240312BHJP
C10M 133/16 20060101ALN20240312BHJP
C10M 133/56 20060101ALN20240312BHJP
C10M 139/00 20060101ALN20240312BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20240312BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20240312BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M137/02
C10M137/04
C10M137/08
C10M137/10 B
C10M137/10 Z
C10M159/22
C10M159/24
C10M129/10
C10M129/54
C10M135/10
C10M133/16
C10M133/56
C10M139/00 A
C10N10:04
C10N40:25
C10N30:00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560876
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-10-11
(86)【国際出願番号】 US2022023053
(87)【国際公開番号】W WO2022212844
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591131338
【氏名又は名称】ザ ルブリゾル コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセント, ポール アール.
(72)【発明者】
【氏名】バートン, ウィリアム アール.エス.
(72)【発明者】
【氏名】ファーヘイ, エマ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン, ヤンシ
(72)【発明者】
【氏名】デイビース, マーク シー.
(72)【発明者】
【氏名】デルブリッジ, イワン イー.
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB24C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG06C
4H104BH02A
4H104BH03A
4H104BH05C
4H104BJ05C
4H104DA02A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA02
4H104LA20
4H104PA44
(57)【要約】
本開示は、一般に、潤滑粘度の油、無灰リン含有耐摩耗剤、アルカリ土類金属清浄剤、無灰酸化防止剤、及び無灰分散剤を有し、亜鉛を実質的に含まない潤滑組成物、並びにかかる潤滑組成物でエンジンを潤滑する方法に関する。本潤滑組成物は、亜鉛を低減及び/又は排除して、潤滑組成物の所望の性能目標を達成する代替潤滑組成物として有用である。本開示は、実質的に亜鉛を含まない潤滑組成物及びその使用方法に関する。本潤滑組成物は、潤滑粘度の基油と、無灰リン含有耐摩耗剤と、アルカリ土類金属清浄剤と、無灰酸化防止剤と、無灰分散剤とを含む。本潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まない。本開示は、LSPI事象に有利な条件下で動作するエンジンにおいて低速過早点火(「LSPI」)を低減するために潤滑組成物を使用する方法を更に含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤組成物であって、
潤滑粘度の基油と、
無灰リン含有耐摩耗剤と、
アルカリ土類金属清浄剤と、
無灰酸化防止剤と、
無灰分散剤と、を含み、
亜鉛を実質的に含まない、潤滑剤組成物。
【請求項2】
前記潤滑粘度の油が、前記潤滑剤組成物の80~95重量%を構成する、請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
前記潤滑粘度の油が、前記潤滑剤組成物の80~90重量%を構成する、請求項2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が有機リン耐摩耗剤である、請求項1~3のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項5】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、ホスファイト、(チオ)ホスフェート、(チオ)ホスフェートアミン塩、及びそれらの組合せから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項6】
前記(チオ)ホスフェートアミン塩がアルキルホスフェートアミン塩である、請求項5に記載の潤滑剤組成物。
【請求項7】
前記アルキルホスフェートアミン塩中の前記リン原子の少なくとも30モル%がアルキルピロリン酸塩構造である、請求項6に記載の潤滑剤組成物。
【請求項8】
前記アミンアルキルピロリン酸塩が、式(I)又は(II):
【化1】
によって表される種を含み、
式中、各R
1は、独立して、約3~約12個の炭素原子の第一級アルキル基であり、各R
2は、独立して、水素又はヒドロカルビル基又はエステル含有基であり、少なくとも1つのR
2基は、ヒドロカルビル基又はエステル含有基であり、又は-OH基が-OR
1基で置換されているか、又は1つ以上の-OR
1基が-OH基で置換されているか、又はR
1基がリン含有基で置換されている、請求項7に記載の潤滑剤組成物。
【請求項9】
前記アミンアルキルピロリン酸塩が、式(I)又は(II):
【化2】
によって表される種を含み、
式中、各R
1は、独立して、約3~約12個の炭素原子の第一級アルキル基であり、各R
2は、独立して、水素又はヒドロカルビル基又はエステル含有基であり、少なくとも1個のR
2基は、ヒドロカルビル基又はエステル含有基である、請求項7又は8に記載の潤滑剤組成物。
【請求項10】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、前記潤滑剤組成物中に0.1~1.5重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項11】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、前記潤滑剤組成物中に0.3~1.2重量%の量で存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項12】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、前記潤滑剤組成物中に0.5~1.1重量%の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項13】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、前記潤滑剤組成物中に0.6~0.9重量%の量で存在する、請求項1~12のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項14】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、500~900ppmのリンを前記潤滑剤組成物にもたらす量で存在する、請求項1~13のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項15】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、550~850ppmのリンを前記潤滑剤組成物にもたらす量で存在する、請求項1~14のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項16】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、600~825ppmのリンを前記潤滑剤組成物にもたらす量で存在する、請求項1~15のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項17】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、650~800ppmのリンを前記潤滑剤組成物にもたらす量で存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項18】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が、700~800ppmのリンを前記潤滑剤組成物にもたらす量で存在する、請求項1~17のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項19】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、アルカリ土類金属スルホネート、フェネート、及びサリシレートから選択される、請求項1~18のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項20】
前記アルカリ土類金属清浄剤の金属が、カルシウム及びマグネシウムから選択される、請求項19に記載の潤滑剤組成物。
【請求項21】
前記アルカリ土類金属清浄剤がスルホン酸カルシウム清浄剤である、請求項20に記載の潤滑剤組成物。
【請求項22】
前記アルカリ土類金属清浄剤がスルホン酸マグネシウム清浄剤である、請求項20に記載の潤滑剤組成物。
【請求項23】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、前記潤滑剤組成物中に0.3~2.5重量%の量で存在する、請求項1~22のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項24】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、前記潤滑剤組成物中に0.5~2.0重量%の量で存在する、請求項1~23のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項25】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、前記潤滑剤組成物中に0.6~1.8重量%の量で存在する、請求項1~24のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項26】
前記アルカリ土類金属清浄剤が、アルカリ土類金属清浄剤の混合物を含み、前記混合物が、0.8~2.0重量%の量で前記潤滑組成物中に存在する、請求項1~25のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項27】
前記アルカリ土類金属清浄剤の混合物が、前記潤滑剤組成物の総重量に基づいて、0.4~0.8重量%のスルホン酸カルシウム清浄剤と、0.6~1.1重量%のスルホン酸マグネシウム清浄剤とを含む、請求項26に記載の潤滑剤組成物。
【請求項28】
前記無灰酸化防止剤が、アリールアミン、ジアリールアミン、アルキル化アリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、フェノール、ヒンダードフェノール、硫化オレフィン、及びそれらの混合物から選択される、請求項1~27のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項29】
前記酸化防止剤がアルキル化ジアリールアミンである、請求項28に記載の潤滑剤組成物。
【請求項30】
前記酸化防止剤が硫化オレフィンである、請求項28に記載の潤滑剤組成物。
【請求項31】
前記酸化防止剤が、前記潤滑剤組成物中に0.1~2.1重量%の量で存在する、請求項1~30のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項32】
前記酸化防止剤が、前記潤滑剤組成物中に0.2~1.8重量%の量で存在する、請求項1~31のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項33】
前記酸化防止剤が、0.8~1.3重量%のアルキル化ジアリールアミンと、0.1~0.5重量%の硫化オレフィンとを含む、請求項28~32のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項34】
前記無灰分散剤がポリイソブチレンスクシンイミド分散剤である、請求項1~33のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項35】
前記ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤が、ホウ酸化されている、請求項34に記載の潤滑剤組成物。
【請求項36】
前記無灰分散剤が、1~6重量%、又は2~5重量%、又は2.5~4.5重量%の量で前記潤滑剤組成物中に存在する、請求項1~35のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項37】
前記無灰型分散剤が、0.8~1.6重量%のホウ素非含有ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤と、1.8~3.1重量%のホウ酸化ポリイソブチレン分散剤とを含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項38】
前記ホウ素非含有ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及び前記ホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤のうちの1つ以上が、直接アルキル化プロセスから生成される、請求項37に記載の潤滑剤組成物。
【請求項39】
前記無灰リン含有耐摩耗剤が硫黄を含有し、硫黄対リンの比が2対1又は1.75対1未満である、請求項1~38のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項40】
前記潤滑剤組成物が、3,000rpm以下の速度において10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷の下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおける低速過早点火事象を低減することができる、請求項1~39のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物。
【請求項41】
請求項1~40のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物を火花点火式直噴内燃エンジンに供給することを含む、エンジンの低速過早点火を低減する方法。
【請求項42】
前記エンジンが、10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で、3,000rpm以下の速度で運転される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記エンジンに、液体炭化水素燃料、液体非炭化水素燃料、又はそれらの混合物が燃料供給される、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
火花点火式直噴内燃エンジンにおける低速過早点火を低減するための、請求項1~40のいずれか一項に記載の潤滑剤組成物の使用。
【請求項45】
前記エンジンが、10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で、3,000rpm以下の速度で運転される、請求項44に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代のエンジン設計は、性能又は耐久性を犠牲にすることなく燃費が改善されるように開発されている。従来、ガソリンは、ポート燃料噴射(PFI)、すなわち、吸気口を通して噴射され、吸気弁を介して燃焼室に流入していた。ガソリン直接噴射(GDI)は、燃焼室内へのガソリンの直接噴射を含む。
【0002】
特定の状況では、内燃機関は異常燃焼を示すことがある。火花始動式内燃機関における異常燃焼は、点火器以外の原因によって燃焼室内の可燃性要素が点火する結果として燃焼室内で生じる制御されない爆発として理解することができる。
【0003】
過早点火は、点火器による点火の前に空気-燃料混合物が点火することによって生じる異常な燃焼形態として理解することができる。点火器による点火の前に燃焼室内の空気-燃料混合物が点火されるときはいつでも、過早点火として理解することができる。
【0004】
現在、ZDDPなどの亜鉛含有耐摩耗剤が、直接噴射エンジンにおけるLSPIを低減及び/又は軽減することが示されていることが知られている。しかしながら、亜鉛含有耐摩耗剤は、潤滑組成物の硫酸灰分の一因となる。亜鉛含有耐摩耗剤はまた、潤滑組成物中の粒子状物質の一因となり、そのような粒子状物質は、清浄度、堆積物形成、燃料経済性、及び排出品質に影響を及ぼし得る。更に、亜鉛耐摩耗剤は、環境調査の対象となっている。したがって、所望の性能結果を有する亜鉛を含まない代替物を用いて亜鉛耐摩耗剤を低減又は排除することが望まれている。
【0005】
したがって、無灰代替物を用いて亜鉛を低減及び/又は排除して、潤滑剤の所望の性能目標を達成する潤滑剤組成物を開発することが引き続き必要とされている。
【0006】
本開示の潤滑剤組成物は、少なくとも無灰リン含有耐摩耗剤を有する潤滑剤組成物を使用することによって、LSPIを低減又は軽減することを含む、前述の懸念のうちの1つ以上に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、潤滑組成物及び当該潤滑組成物でエンジンを潤滑する方法に関する。本潤滑組成物は、潤滑粘度の基油、無灰リン含有耐摩耗剤、アルカリ土類金属清浄剤、無灰酸化防止剤及び無灰分散剤を含む。本潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まないことによって更に定義される。前述の組成物で説明した無灰リン含有耐摩耗剤は、アルキルホスフェートアミン塩を含み得る。
【0008】
本開示は、潤滑粘度の基油と、ピロリン酸塩構造中に少なくとも30モルパーセントのリン原子を有し、500ppm~900ppmのリンを潤滑組成物にもたらす量のアルキルホスフェートアミン塩耐摩耗剤と、カルシウムスルホネート清浄剤及びマグネシウムスルホネート清浄剤を含む選択されたアルカリ土類金属清浄剤と、アルキル化ジアリールアミン及び硫化オレフィンを含む無灰酸化防止剤と、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む無灰分散剤と、を有する潤滑組成物であって、亜鉛を実質的に含まない潤滑組成物を更に含む。
【0009】
本開示は更に、3,000rpm以下の速度で10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおいて、潤滑粘度の基油と、無灰リン含有耐摩耗剤と、アルカリ土類金属清浄剤と、無灰酸化防止剤と、無灰分散剤とを含む潤滑組成物をエンジンに供給することによって、低速過早点火(「LSPI」)を低減する方法に関する。本潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まないことによって更に定義される。
【0010】
本開示は更に、潤滑粘度の基油と、ピロリン酸塩構造中に少なくとも30モルパーセントのリン原子を有し、500ppm~900ppmのリンを潤滑組成物にもたらす量のアルキルホスフェートアミン塩耐摩耗剤とを有する潤滑組成物をエンジンに供給することによって、3,000rpm以下の速度で10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおけるLSPIを低減する方法であって、選択されるアルカリ土類金属清浄剤は、スルホン酸カルシウム清浄剤及びスルホン酸マグネシウム清浄剤を含み、無灰酸化防止剤は、アルキル化ジアリールアミン及び硫化オレフィンを含み、無灰分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含み、本潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まない、方法に関する。
【0011】
本開示は更に、潤滑粘度の基油と、無灰リン含有摩耗防止剤と、アルカリ土類金属清浄剤と、無灰酸化防止剤と、無灰分散剤とを含む潤滑組成物の使用であって、当該潤滑組成物が更に、3,000rpm以下の速度で10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおけるLSPIを低減するために、亜鉛を実質的に含まないことによって定義される、使用。
【0012】
本開示は更に、潤滑粘度の基油と、ピロリン酸塩構造中に少なくとも30モルパーセントのリン原子を有し、500ppm~900ppmのリンを潤滑組成物にもたらす量のアルキルホスフェートアミン塩耐摩耗剤と、スルホン酸カルシウム清浄剤及びスルホン酸マグネシウム清浄剤を含む選択されたアルカリ土類金属清浄剤と、アルキル化ジアリールアミン及び硫化オレフィンを含む無灰酸化防止剤と、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤を含む無灰分散剤とを含む潤滑組成物の使用であって、当該潤滑組成物が、3,000rpm以下の速度で10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおけるLSPIを低減するために、実質的に亜鉛を含まない、使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、実質的に亜鉛を含まない潤滑組成物及びその使用方法に関する。本潤滑組成物は、潤滑粘度の基油と、無灰リン含有耐摩耗剤と、アルカリ土類金属清浄剤と、無灰酸化防止剤と、無灰分散剤とを含む。本潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まない。本開示は、LSPI事象に有利な条件下で動作するエンジンにおいて低速過早点火(「LSPI」)を低減するために潤滑組成物を使用する方法を更に含む。
【0014】
潤滑粘度の油
本開示の組成物の1つの成分は、潤滑粘度の油である。本明細書で使用される場合、潤滑粘度の油は、天然油及び合成油、水素化分解、水素化及び水素化仕上げから誘導される油、未精製油、精製油、再精製油又はそれらの混合物を含み得る。未精製油、精製油及び再精製油のより詳細な説明は、国際公開第2008/147704号の段落[0054]~[0056]に提供されている(同様の開示が米国特許出願第2010/197536号に提供されており、[0072]~[0073]を参照されたい)。天然油及び合成潤滑油のより詳細な説明は、それぞれ国際公開第2008/147704号の段落[0058]~[0059]に記載されている(同様の開示が米国特許出願第2010/197536号に提供されており、[0075]~[0076]を参照されたい)。両方の参考文献の引用部分は、本明細書に組み込まれる。合成油はまた、フィッシャー・トロプシュ反応によっても生成され得、典型的には、水素化異性化されたフィッシャー・トロプシュ炭化水素又はワックスであり得る。一実施形態では、油は、フィッシャー・トロプシュガス液化合成手順、並びに他のガス液化油によって調製され得る。
【0015】
好適な油は、生物学的、すなわち天然の原料から製造され得、又は生物工学的方法によって製造され得る。これには、標準的なプロセスによってさらなる精製又は純化がなされ得る植物油及びトリグリセリド油などの天然油、並びに、天然化学物質の油への直接的な生物学的変換、あるいは、既知のプロセスによって更に油に変換され得るビルディングブロック前駆体分子の生物学的形成によって誘導され得る油の両方が含まれる。
【0016】
潤滑粘度の油はまた、「Appendix E-API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car motor Oils and Diesel Engine Oils」の2008年4月版、セクション1.3小見出し1.3において規定されるように定義され得る。「Base Stock Categories」で指定されているようにも定義され得る。APIガイドラインは、米国特許第7,285,516号(第11欄64行目~第12欄10行目参照)にも要約されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
一実施形態では、潤滑粘度の油は、APIグループI~IVの鉱油、エステル若しくは合成油、又はそれらの混合物であり得る。一実施形態では、潤滑粘度の油は、APIグループII、グループIII、グループIVの鉱油、エステル若しくは合成油、又はそれらの混合物であり得る。
【0018】
存在する潤滑粘度の油の量は、典型的には、100重量%から、本開示による分散剤添加剤パッケージと追加の添加剤(もしあれば)の合計量を差し引いた後の残りである。いくつかの実施形態では、潤滑粘度の油は、本潤滑組成物の80~95重量%であり得る。他の実施形態では、潤滑粘度の油は、本潤滑組成物の80~90量%であり得る。
【0019】
本開示において、潤滑粘度の油は、100℃で測定した動粘度が2.4m2/s~6.4m2/sであってもよい。いくつかの実施形態では、動粘度は、4.0m2/s~5.0m2/s、又は5.2m2/s~5.8m2/s、又は6.0m2/s~6.5m2/sである。他の実施形態では、動粘度は、6.2m2/s、又は5.6m2/s、又は4.6m2/sである。
【0020】
本明細書において特許請求される潤滑組成物は、濃縮物及び/又は完全に配合された潤滑剤の形態であり得る。潤滑組成物が濃縮物の形態である場合(追加の油と組み合わせて、全体又は一部が完成潤滑剤を形成し得る)、本明細書に開示される成分の潤滑粘度の油に対する比率、及び/又は希釈油に対する比率は、重量で1対99~99対1、又は重量で80対20~10対90の範囲を含む。
【0021】
無灰リン含有耐摩耗剤
本明細書に開示される潤滑組成物は、無灰リン含有耐摩耗剤を更に含む。一実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、有機リン化合物である。好適な無灰リン含有耐摩耗剤としては、ホスファイト、(チオ)ホスフェート、(チオ)ホスフェートアミン塩、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤はまた、硫黄原子を含有し得る。他の実施形態では、リン含有耐摩耗剤は、硫黄を含まないか、又は実質的に含まない。一実施形態では、それが存在する場合、リン含有耐摩耗剤の硫黄含有量は、硫黄対リンの重量比が2対1未満、又は1.75対1未満といった量である。
【0022】
一実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤はホスファイトである。好適なホスファイトとしては、3個以上、又は8個以上、又は12個以上の炭素原子を有する少なくとも1つのヒドロカルビル基を有するものが挙げられる。ホスファイトは、モノヒドロカルビル置換ホスファイト、ジヒドロカルビル置換ホスファイト、又はトリヒドロカルビル置換ホスファイトであり得る。ホスファイトは、以下の式で表され得る:
【化1】
式中、少なくとも1個のRは、少なくとも3個の炭素原子を含有するヒドロカルビル基であり得、他のR基は水素であり得る。一実施形態では、R基のうちの2個はヒドロカルビル基であり、3番目は水素である。一実施形態では、各R基はヒドロカルビル基であり、すなわち、ホスファイトはトリヒドロカルビル置換ホスファイトである。ヒドロカルビル基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、非環式又はそれらの混合物であってもよい。Rヒドロカルビル基は、直鎖又は分岐、典型的には直鎖、及び飽和又は不飽和、典型的には飽和であり得る。一実施形態では、ホスファイトは、式Iに従うホスファイトであり、式中、Rは、C
18ヒドロカルビル、フェニル部分、C
14~C
18アルキル又はそれらの組み合わせ~選択される。
【0023】
一実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、C12~22ヒドロカルビルホスファイト又はその混合物であり得、すなわち、各Rは独立して、水素又は12~24個、又は14~20個の炭素原子、典型的には16~18個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり得る。典型的には、C12~22ヒドロカルビルホスファイトは、C16~18ヒドロカルビルホスファイトを含む。R3、R4、及びR5のアルキル基の例としては、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ノナデシル基、エイコシル基、又はそれらの混合物が挙げられる。別の実施形態では、ホスファイトは、C3~8ヒドロカルビルホスファイト又はそれらの混合物であり得、すなわち、各Rは独立して、水素又は3~8個、若しくは4~6個の炭素原子、典型的には4個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり得る。典型的には、C3~8ヒドロカルビルホスファイトは、ジブチルホスファイトを含む。
【0024】
本明細書で使用されるホスファイトは、亜リン酸エステルを更に含んでもいてもよい。亜リン酸エステルは、(a)モノマー亜リン酸又はそのエステルと、(b)少なくとも2つのアルキレンジオール、すなわち、1,4又は1,5又は1,6の関係で2つのヒドロキシ基を有する第1のアルキレンジオール(i)、及び、アルキル置換1,3-プロピレンジオールであって、そのアルキル置換基の1つ以上がプロピレン単位の1つ以上の炭素原子の上にあり、アルキル置換1,3-プロピレンジオール中の炭素原子の総数が5又は6~12である第2のアルキレンジオール(ii)、との反応生成物を含み、モノマー亜リン酸又はそのエステル(a)とアルキレンジオール(b)の合計との相対モル量が0.9:1.1~1.1:0.9の比であり、第1のアルキレンジオール(i)とアルキル置換1,3-プロピレンジオール(ii)との相対モル量が30:70~65:35の比である。
【0025】
本明細書で使用されるホスファイトは、硫黄含有ホスファイトを更に含んでもいてもよい。好適な硫黄含有ホスファイトとしては、式:
【化2】
で表されるものが挙げられ、
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、3~約12個の炭素原子、若しくは6~8個の炭素原子のヒドロカルビル基であるか、又は、
【化3】
で表される基であり、
又は、式中、R
1及びR
2は、隣接するO原子及びP原子と一緒になって、2~6個の炭素原子を含有する環を形成し、R
3は水素又はメチル基であり、R
4は炭素原子数2~6のアルキレン基であり、R
5は水素又は炭素原子数1~約12のヒドロカルビル基であり、nは1又は2である。
【0026】
別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、(チオ)ホスフェートであり得る。「チオ」という用語が化学識別子の前の括弧内にある場合、チオ基は任意であることが理解される。したがって、例えば、「(チオ)ホスフェート」は、ホスフェート化合物及びチオホスフェート化合物の両方を含む。
【0027】
一実施形態において、(チオ)ホスフェートは、ジチオホスフェートエステルである。好適なジチオリン酸エステルは、(RO)2PSSHによって表されるジチオリン酸と不飽和化合物との反応によって形成することができる。一実施形態では、不飽和化合物は不飽和カルボン酸又はエステルである。不飽和カルボン酸又は無水物の例としては、アクリル酸又はそのエステル、メタクリル酸又はそのエステル、イタコン酸又はそのエステル、フマル酸又はそのエステル、及びマレイン酸、その無水物又はそのエステルが挙げられる。
【0028】
(チオ)ホスフェートの例としては、リン含有アミドエステルが挙げられ、これは、リン酸(例えば、ジチオリン酸)と不飽和アミドとの反応によって調製され得る。不飽和アミドの例としては、アクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、メタクリルアミド、クロトンアミドなどが挙げられる。ホスフェートと不飽和アミドとの反応生成物は、ホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドなどの結合又はカップリング化合物と更に反応されてもよい。リン含有アミドは当技術分野で知られており、米国特許第4,670,169号、同第4,770,807号及び同第4,876,374号に開示されており、これらはリンアミド及びそれらの調製の開示について参照することにより組み込まれる。
【0029】
別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、(チオ)ホスフェートアミン塩であり得る。一実施形態では、(チオ)ホスフェートアミン塩は、アミンアルキルチオホスフェートであり、ここで、アルキルチオホスフェートは、エポキシド又は多価アルコール(例えば、グリセロール)と反応する。この反応生成物は、単独で使用してもよく、又は更にホスフェート、無水物、又は低級エステルと反応させてもよい。エポキシドは、一般に脂肪族エポキシド又はスチレンオキシドである。有用なエポキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられ、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが好ましい。多価アルコールは、1~約12個、又は約2~約6個、又は2若しくは3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールであってもよい。グリコールは、エチレングリコール、プロピレングリコールなどを含む。アルキルチオホスフェート、グリコール、エポキシド、無機リン試薬及びそれらを反応させる方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第3,197,405号及び米国特許第3,544,465号に記載されている。
【0030】
別の実施形態では、(チオ)リン酸アミン塩は、五酸化リンとアルコール(炭素数4~28)との反応と、これに続く第一級アミン(例えば、2-エチルヘキシルアミン)、第二級アミン(例えば、ジメチルアミン)又は第三級アミン(例えば、ジメチルオレイルアミン)との反応によってリン酸炭化水素エステルのアミン塩を形成することによって調製されるリン酸炭化水素エステルのアミン塩を含む。好適なアルコールには、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、s-アミルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、オクチルアルコール、デシルアルコール及びオレイルアルコールなどの第一級又は第二級アルコールを含む、最大30個又は24個、又は最大12個の炭素原子を含むもの、並びに例えば、8~10個、12~18個、又は18~28個の炭素原子を有する任意の様々な市販のアルコール混合物が含まれる。
【0031】
別の実施形態では、(チオ)ホスフェートアミン塩は、実質的に硫黄を含まないアルキルホスフェートアミン塩を含む。アルキルリン酸アミン塩は、リン原子の少なくとも30モルパーセントが、オルトリン酸(又は単量体リン酸)構造とは対照的に、アルキルピロリン酸構造である。ピロホスフェート構造中のリン原子のパーセンテージは、30~100モル%、又は40~90%又は50~80%又は55~70%又は55~65%であってもよい。リン原子の残りの量は、オルトホスフェート構造であってもよく、又は部分的に未反応のホスフェート若しくは他のリン種からなってもよい。一実施形態において、リン原子の最大60又は最大50モルパーセントが、モノ-又はジ-アルキル-オルトホスフェート塩構造である。
【0032】
ピロホスフェート形態(POP構造と呼ばれることもある)で存在する実質的に硫黄を含まないアルキルホスフェートアミン塩は、部分的に以下の式(I)及び/若しくは(II):
【化4】
で表される。
式(V)は、半中和リン塩を表し、式(VI)は、完全に中和された塩を表す。最初に形成されたホスフェート構造の2つのヒドロキシ水素原子の両方は、アミンによって中和されるのに十分に酸性であり、その結果、化学量論的に十分な量のアミンが存在する場合、式(VI)が優勢であり得ると考えられる。実際の中和の程度、すなわちリンエステルの-OH基の塩析の程度は、50%~100%、又は80%~99%、又は90%~98%、又は93%~97%、又は約95%であってもよく、これは、ホスフェートエステル混合物に投入されたアミンの量に基づいて決定又は計算され得る。これらの物質の異形は、式(V)又は式(VI)の異形などで存在してもよい。ここで、式(V)中の-OH基は、別の-OR
1基で置き換えられるか、又は1つ以上の-OR
1基は、-OH基で置き換えられるか、又はR
1基は、リン含有基(すなわち、末端R
1基の代わりに、第3リン構造を含むもの)で置き換えられる。例示的な異形構造には、以下が挙げられる場合がある。
【化5】
【0033】
式(V)及び(VI)の構造は、リン原子が硫黄原子ではなく酸素に結合しているという点で、完全に硫黄を含まない種として示されている。しかしながら、O原子の小さなモル分率は、0~5パーセント、又は0.1~4パーセント、又は0.2~3パーセント、又は0.5~2パーセントなどのS原子によって置き換えられ得る可能性がある。
【0034】
これらのピロリン酸塩は、一般構造:
【化6】
のオルトピロリン酸塩と区別され得、
これは、任意選択的に、上記の量でも存在し得る。
【0035】
式(V)及び(VI)において、各R1は、独立して、3~12個の炭素原子のアルキル基である。特定の実施形態では、アルキル基の少なくとも80モルパーセント、又は少なくとも85、90、95、又は99パーセントが第二級アルキル基である。いくつかの実施形態では、アルキル基は、4~12個の炭素原子、又は5~10個、又は6~8個の炭素原子を有することがある。そのような基としては、2-ブチル、2-ペンチル、3-ペンチル、3-メチル-2-ブチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、シクロヘキシル、4-メチル-2-ペンチル、並びに6、7、8、9、10、11又は12個の炭素原子を有する他のそのような二級基及びその異性体が挙げられる。いくつかの実施形態では、アルキル基は、その基のα-位置にメチル分岐を有することがあり、その一例は、4-メチル-2-ペンチル(4-メチルペンタ-2-イルとも称される)基である。
【0036】
このようなアルキル(シクロアルキルを含む)基は、典型的には、対応するアルコール又は複数のアルコールと五酸化リンとの反応によって生成される(本明細書ではP
2O
5とするが、より可能性の高い構造はP
4O
10で表すことができることが認められている)。典型的には、P
2O
51モル当たり2~3.1モルのアルコールが生成されて、オルトホスフェート構造のモノ及びジエステル並びにピロホスフェート構造のジエステルなどの部分エステルの混合物がもたらされる。
【化7】
【0037】
特定の実施形態では、P2O51モル当たり2.5~3モルのアルコールがもたらされ得、又は、1モル当たり2.2~2.8モル、又は更に1モル当たり2.2~2.4モルのアルコールがもたらされ得る。2.5~3(又は2.2~2.8若しくは2.2~2.4)モルのアルコールは、典型的には、P2O5と反応するために利用可能にされ得る(すなわち、反応混合物中に含められ得る)が、通常、実際の反応は、3モル/モル未満を消費する。したがって、アルキルホスフェートアミン塩は、以下に更に詳細に記載されるように、五酸化リンと4~12個の炭素原子を有する第二級アルコールとの反応、及びその生成物とアミンとの反応によって調製され得る。
【0038】
反応条件及び反応物は、ピロリン酸構造のエステルの形成に有利であり、オルトリン酸モノエステル及びオルトリン酸ジエステルの形成に比較的不利であるように選択され得る。第一級アルコールよりもむしろ第二級アルコールの使用が、ピロリン酸構造の形成に有利であることがわかっている。好ましい合成温度としては、30~60℃又は35~50℃又は40~50℃又は30~40℃、又は約35℃が挙げられ、いくつかの実施形態では、反応温度は50~60℃であってもよい。成分の初期混合後の60~80℃又は約70℃でのその後の加熱が望ましい場合がある。特に温度が60℃以上である場合、反応混合物の過熱を回避するか、又は反応が実質的に完了したら加熱を中止することが望ましい場合がある。このことは当業者には明らかであろう。特定の実施形態では、反応温度は、62℃又は61℃又は60℃を超えない。好ましい条件はまた、外部からの水の排除を含み得る。反応の進行及び種々のリン種の相対量は、赤外分光法及び31P又は1H NMR分光法などの、当業者に公知の分光学的手段によって測定することができる。
【0039】
ピロホスフェートエステルは、必要に応じてオルトエステルから単離することができるが、成分を分離することなく反応混合物を使用することも可能であり、また商業的に好ましい場合がある。
【0040】
ピロホスフェートホスフェートエステル又はホスフェートエステルの混合物は、アミンと反応してアミン塩を形成する。アミンは、R2
3Nによって表すことができ、式中、各R2は、独立して、水素又はヒドロカルビル基又はエステル含有基又はエーテル含有基であるが、ただし、少なくとも1つのR2基は、ヒドロカルビル基又はエステル含有基又はエーテル含有基である(すなわち、NH3ではない)。好適なヒドロカルビルアミンとしては、1~18個の炭素原子又は3~12個若しくは4~10個の炭素原子を有する一級アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン及びその異性体、ペンチルアミン及びその異性体、ヘキシルアミン及びその異性体、ヘプチルアミン及びその異性体、オクチルアミン及びその異性体(イソオクチルアミン及び2-エチルヘキシルアミンなど)、並びに高級アミンが挙げられる。他の一級アミンとしては、ドデシルアミン、脂肪アミン(n-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、及びオレイルアミンなど)が挙げられる。他の有用な脂肪アミンとしては、市販の脂肪アミン(「Armeen(登録商標)」アミン)(Akzo Chemicals,Chicago,Illから入手可能な製品)(Armeen(登録商標)C、Armeen(登録商標)0、Armeen(登録商標)OL、Armeen(登録商標)T、Armeen(登録商標)HT、Armeen(登録商標)S、及びArmeen(登録商標)SDなど)が挙げられ、ここで、文字の指定は、ココ、オレイル、タロー、又はステアリル基などの脂肪族に関する。
【0041】
使用され得る二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、ビス-2-エチルヘキシルアミン、N-メチル-1-アミノ-シクロヘキサン、Armeen(登録商標)2C、及びエチルアミルアミンが挙げられる。二級アミンは、ピペリジン、ピペラジン、及びモルホリンなどの環状アミンであり得る。
【0042】
好適な三級アミンとしては、トリ-n-ブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、トリ-デシルアミン、トリ-ラウリルアミン、トリ-ヘキサデシルアミン、及びジメチルオレイルアミン(Armeen(登録商標)DMOD)が挙げられる。トリイソデシルアミン又はトリデシルアミン及びそれらの異性体を使用することができる。
【0043】
アミンの混合物の例としては、(i)三級アルキル一級基に11~14個の炭素原子を有するアミン、(ii)三級アルキル一級基に14~18個の炭素原子を有するアミン、又は(iii)三級アルキル一級基に18~22個の炭素原子を有するアミンが挙げられる。三級アルキル一級アミンの他の例としては、tert-ブチルアミン、tert-ヘキシルアミン、tert-オクチルアミン(1,1-ジメチルヘキシルアミンなど)、tert-デシルアミン(1,1-ジメチルオクチルアミンなど)、tert-ドデシルアミン、tert-テトラデシルアミン、tert-ヘキサデシルアミン、tert-オクタデシルアミン、tert-テトラコサニルアミン、及びtert-オクタコサニルアミンが挙げられる。一実施形態では、アミンの有用な混合物としては、「Primene(登録商標)81R」又は「Primene(登録商標)JMT」が挙げられる。Primene(登録商標)81R及びPrimene(登録商標)JMT(両方ともRohm&Haasによって製造及び販売されている)は、それぞれ、C11~C14第三級アルキル第一級アミンの混合物及びC18~C22第三級アルキル第一級アミンの混合物であり得る。
【0044】
他の実施形態では、アミンは、N-ヒドロカルビル置換γ-又はδ-アミノ(チオ)エステルなどのエステル含有アミンであり得、したがって、二級アミンである。エステル基のO原子の一方又は両方が硫黄で置き換えられていてもよいが、典型的には硫黄原子が存在しなくてもよい。N-置換γ-アミノエステルは、
【化8】
によって表すことができ、
また、N-置換δ-アミノエステルは、
【化9】
によって表すことができる。
【0045】
アミノエステルのα、β、γ、又はδの位置に1つ以上のさらなる置換基又は基も存在してもよい。一実施形態では、そのような置換基は存在しない。別の実施形態では、β位に置換基が存在し、したがって、特定の実施形態では、式
【化10】
によって表される物質の群をもたらし、
R及びR
4は、以下に定義される通りであり、Xは、O又はS(一実施形態では、O)であり、R
5は、水素、ヒドロカルビル基、又は-C(=O)-R
6によって表される基であってもよく、式中、R
6は、水素、アルキル基、又は-X’-R
7であり、式中、X’は、O又はSであり、R
7は、1~30個の炭素原子のヒドロカルビル基である。すなわち、鎖のβ位置の置換基は、エステル、チオエステル、カルボニル、又はヒドロカルビル基を含み得る。R
5が-C(=O)-R
6である場合、構造は、
【化11】
によって表すことができる。
δ-アミノエステルについての類似の構造が包含されるものと理解され、これは、例えば、
【化12】
であり得る。
R
6が-X’-R
7である場合、その物質は置換コハク酸エステル又はチオエステルであることは明らかであろう。一実施形態では、具体的には、その物質は、メチル基上にアミン置換を有するメチルコハク酸ジエステルであってもよい。R
4基及びR
7基は、同じでも異なっていてもよい。特定の実施形態では、それらは独立して、R
4について以下に記載されるように、1~30個又は1~18個の炭素原子を有し得る。特定の実施形態では、この物質は、
【化13】
の構造によって表すことができる。
特定の実施形態では、この物質は、2-((ヒドロカルビル)-アミノ-メチルコハク酸ジヒドロカルビルエステル(ジヒドロカルビル2-((ヒドロカルビル)アミノメチルコハク酸塩とも称され得る)であるか、又はそれを含む。
【0046】
上記構造において、アミン窒素上のヒドロカルビル置換基Rは、ヒドロカルビル鎖の1又は2(すなわち、α又はβ))位(上記のエステル基のα又はβ位と混同してはならない)に分岐を有する少なくとも3個の炭素原子のヒドロカルビル基を含んでもいてもよい。このような分枝状ヒドロカルビル基Rは、部分式
【化14】
によって表すことができ、
式中、右側の結合は窒素原子への結合点を表す。この部分構造において、nは0又は1であり、R
1は水素又はヒドロカルビル基であり、R
2及びR
3は独立してヒドロカルビル基であってもよく、又は一緒になってカルボン酸構造を形成してもよい。ヒドロカルビル基は、脂肪族、脂環式、若しくは芳香族、又はそれらの混合物であってもよい。nが0である場合、分岐は、その基の1又はα位にある。nが1である場合、分岐は、2位又はβ位にある。上記のR
4がメチルである場合、nは、いくつかの実施形態では、0であり得る。
【化15】
もちろん、1位及び2位の両方で分岐していてもよい。環状構造への結合は、分岐と考えられる。
【化16】
(1-又はα分岐のタイプ)
【0047】
したがって、アミン窒素上の分岐ヒドロカルビル置換基Rは、イソプロピル、シクロプロピル、sec-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、1-エチル-プロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、シクロヘキシル、4-ヘプチル、2-エチル-1-ヘキシル(一般に2-エチルヘキシルと呼ばれる)、t-オクチル(例えば、1,1-ジメチル-1-ヘキシル)、4-ヘプチル、2-プロピルヘプチル、アダマンチル、及びα-メチルベンジルなどの基を含み得る。
【0048】
上記構造において、アルコール残基部分であるR4は、1~30個又は1~18個又は1~12個又は2~8個の炭素原子を有し得る。それはヒドロカルビル基又は炭化水素基であってもよい。それは、脂肪族、脂環式、分岐脂肪族又は芳香族であってよい。特定の実施形態では、R4基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル、イソ-オクチル、又は2-エチルヘキシルであり得る。R4がメチルである場合、窒素上のヒドロカルビル置換基であるR基は、しばしば1位に分岐を有し得る。他の実施形態では、R4基はエーテル含有基であってもよい。例えば、それは、エーテル官能基を表す酸素原子と共に、例えば、2~120個の炭素原子を含有し得るエーテル含有基又はポリエーテル含有基であり得る。
【0049】
別の実施形態では、R4は、2~12個の炭素原子を有するヒドロキシ含有アルキル基又はポリヒドロキシ含有アルキル基であり得る。このような物質は、ジオール(例えば、エチレングリコール又はプロピレングリコール)に基づき得、そのヒドロキシ基のうちの1つは、反応してエステル結合を形成し、1つの非エステル化アルキル基を残し得る。物質の別の例はグリセリンであってもよく、これは縮合後に1つ又は2つのヒドロキシ基を残し得る。他のポリヒドロキシ材料としては、ペンタエリスリトール及びトリメチロールプロパンが挙げられる。任意選択で、1つ以上のヒドロキシ基を反応させてエステル又はチオエステルを形成してもよい。一実施形態では、R4内の1つ以上のヒドロキシ基は、架橋種を形成するように、さらなる基と縮合され得、又はさらなる基に結合され得る。
【0050】
一実施形態では、アミンは、構造
【化17】
で表され得、
式中、R
6及びR
7は独立して炭素原子数1~約6のアルキル基であり、R
8及びR
9は独立して炭素原子数1~約12のアルキル基である。
【0051】
本明細書に開示されるN-ヒドロカルビル置換γ-アミノエステル又はγ-アミノチオエステル材料は、典型的には上述の分岐ヒドロカルビル基を有する第一級アミンと、上述の種類のエチレン性不飽和エステル又はチオエステルとのマイケル付加によって調製され得る。エチレン性不飽和は、この例では、エステルのβ炭素原子とγ炭素原子の間である。したがって、この反応は、例えば、
【化18】
のように起こり得、
式中、X及びR基は上に定義した通りである。一実施形態では、エチレン性不飽和エステルは、イタコン酸のエステルであってもよい。この構造において、nは0又は1であり得、R
1は水素又はヒドロカルビル基であり得、R
2及びR
3は独立してヒドロカルビル基であり得るか、又は一緒になって炭素環式構造を形成し得、XはO又はSであり、R
4は1~30個の炭素原子のヒドロカルビル基であり得、そしてR
5は水素、ヒドロカルビル基、又は-C(=O)-R
6で表される基であり得、式中、R
6は水素、アルキル基、又は-X’-R
7であり、式中、X’はO又はSであり、そしてR
7は1~30個の炭素原子のヒドロカルビル基である。一実施形態では、アミン反応物は、第三級ヒドロカルビル(例えば、t-アルキル)第一級アミンではなく、すなわち、nは0ではないが、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれヒドロカルビル基である。
【0052】
反応して上記のマイケル付加生成物を形成することができるアミンは、第一級アミンであってもよく、その結果、得られる生成物は、上記の分岐R置換基を有し、窒素も分子の残部に結合している第二級アミンとなる。
【0053】
本明細書に開示されるN-ヒドロカルビル置換δ-アミノエステル又はδ-アミノチオエステル材料は、5-オキシ置換カルボン酸又は5-オキシ置換チオカルボン酸のエステルの還元的アミン化によって調製され得る。それらはまた、5-ハロゲン置換カルボン酸又は5-ハロゲン置換チオカルボン酸のエステルのアミノ化によって、又は2-アミノ置換ヘキサン二酸のエステルの還元的アミノ化によって、又は2-アミノヘキサン二酸のエステルのアルキル化によって調製され得る。
【0054】
N-置γ-アミノエステル及びその合成の詳細は、国際公開第2014/074335号、Lubrizol、2014年5月15日に見出すことができる。N-置換δ-アミノエステル及びその合成の詳細は、国際出願第US2015/027958号(Lubrizol、2015年4月28日出願)及び米国特許出願第61/989306号(2015年5月6日出願)に見出すことができる。
【0055】
アミンは、どのような種類のものであっても、反応して、上記のピロリン酸エステル並びに存在し得る任意のオルトリン酸エステルを含むリンエステル成分上の酸性基を中和する。
【0056】
一実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、アルキルホスフェートアミン塩である。アミンリン酸塩は、モノ又はジヒドロカルビルリン酸(典型的には、アルキルリン酸)、又はそれらの混合物から誘導され得る。モノ又はジヒドロカルビルリン酸のアルキルは、3~36個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み得る。直鎖又は分岐鎖ヒドロカルビルリン酸のヒドロカルビル基は、4~30個、又は8~20個の炭素原子を含有し得る。ヒドロカルビルリン酸の好適なヒドロカルビル基の例には、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、アミル、4-メチル-2-ペンチル(すなわち、メチルアミル)、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソ-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、2-プロピルヘプチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、又はそれらの組み合わせが含まれ得る。一実施形態では、ホスフェートは、モノ-及びジ-(2-エチルヘキシル)ホスフェートの混合物である。
【0057】
好適な第一級アミンの例には、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、及びドデシルアミン、並びにn-オクチルアミン、n-デシルアミン、n-ドデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-オクタデシルアミン、及びオレヤミンなどの脂肪族アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンには、Armeen C、Armeen O、Armeen O L、Armeen T、Armeen H T、Armeen S、及びArmeen S Dなどの「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals、シカゴ、Ill.から入手可能な製品)などの市販の脂肪アミンが含まれ、ここで、文字表示はココ、オレイル、獣脂、又はステアリル基などの脂肪族に関連する。
【0058】
本明細書に開示される組成物は、アミンジアルキルジチオホスフェートを含んでもいてもよい。好適なアミン(又はアンモニウム)ジアルキルジチオホスフェートの例としては、式:
【化19】
の塩が挙げられ、
式中、R
8及びR
9は、独立して、3~30個又は3~20個、3~16個又は3~14個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、五硫化リン(P
2S
5)とアルコール又はフェノールとの反応により、式:
【化20】
に相当するO,O-ジヒドロカルビルホスホロジチオ酸を形成することによって容易に得ることができる。
【0059】
この反応は、20℃~200℃の温度で、4モルのアルコール又はフェノールを1モルの五硫化リンと混合することを含む。この反応では硫化水素が遊離する。次いで、この酸を塩基性アミン(又はアンモニウム)化合物と反応させて塩を形成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、ここでのR8基及びR9基は、独立してヒドロカルビル基であり、典型的にはアセチレン不飽和を含まず、通常はエチレン不飽和も含まない。それらは、典型的には、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、又はアルカリール基であり、3~20個の炭素原子、例えば、3~16個の炭素原子又は最大13個の炭素原子、例えば、3~12個の炭素原子を有する。反応してR8及びR9基をもたらすアルコールは、第二級アルコールと第一級アルコールの混合物、例えば、2-エチルヘキサノールと2-プロパノールの混合物、あるいは、第二級アルコール、例えば、2-プロパノールと4-メチル-2-ペンタノールの混合物であってもよい。
【0061】
特定の実施形態では、ジアルキルジチオホスフェートは、潤滑剤からのリンの揮発性を低下させるように、すなわち、潤滑剤中のリンの保持を増加させるように選択されたR8基及びR9基を有し得る。エンジンにおいて良好なリン保持を実現するための好適な配合物は、例えば、米国特許出願公開第2008-0015129号に開示されており、例えば、特許請求の範囲を参照されたい。
【0062】
そのようなアミン塩は、しばしば、アミンジアルキルジチオホスフェート又は単にアミンジチオホスフェートと呼ばれる。それらは周知であり、潤滑剤配合物の当業者に容易に入手可能である。さらなるジアルキルジチオリン酸亜鉛は、その調製に使用されるアルコールの構造に応じて、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛又は第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛として記載される場合がある。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛を含む。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、第一級ジアルキルジチオリン酸亜鉛と第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛の混合物を含む。いくつかの実施形態では、アミン塩は、第一級ジアルキルジチオホスフェートと第二級ジアルキルジチオホスフェートの混合物であり、第一級ジアルキルジチオホスフェートと第二級ジアルキルジチオホスフェートの比(重量基準)は、少なくとも1:1、又は少なくとも1:1.2、又は少なくとも1:1.5又は1:2、又は1:10である。いくつかの実施形態では、アミンホスフェートは、第一級ジアルキルジチオホスフェートと、第二級ジアルキルジチオホスフェートの混合物であって、第二級ジアルキルジチオホスフェートは、第一級の重量基準で少なくとも50%、又は更には第一級の重量基準で少なくとも60、70、80%、又は更には90%である。
【0063】
一実施形態では、アルキルホスフェートアミン塩は、アルキルジチオホスフェートアミン塩である。ジアルキルジチオリン酸亜鉛は、当該技術分野において既知である。アミンジチオホスフェートは、3~20個の炭素原子、又は3~12個の炭素原子、又は4~8個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖アルキル基を含み得る。
【0064】
アミン塩であってもよいジチオホスフェートの例としては、イソプロピルメチルアミルジチオホスフェート、イソプロピルイソオクチルジチオホスフェート、ジ(シクロヘキシル)ジチオホスフェート、イソブチル2-エチルヘキシルジチオホスフェート、イソプロピル2-エチルヘキシルジチオホスフェート、イソブチルイソアミルジチオホスフェート、イソプロピルn-ブチルジチオホスフェート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0065】
無灰リン含有耐摩耗剤は、本潤滑組成物中に0.1~1.5重量%の量で存在してもよい。他の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、本潤滑組成物中に0.3~1.2重量%の量で存在する。更に別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、本潤滑組成物中に0.5~1.1重量%の量で存在する。別の実施形態では、無灰リン含有耐耐摩耗剤は、本潤滑組成物中に0.6~0.9重量%の量で存在する。
【0066】
特定の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤の量は、本潤滑組成物にもたらすことができるリンの量によって定義される。そのような実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、500~900ppmのリンを本潤滑組成物にもたらす量で存在する。別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、550~850ppmのリンを本潤滑組成物にもたらす量で存在する。別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、600~825ppmのリンを本潤滑組成物にもたらす量で存在する。別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、650~800ppmのリンを本潤滑組成物にもたらす量で存在する。別の実施形態では、無灰リン含有耐摩耗剤は、700~800ppmのリンを潤滑組成物にもたらす量で存在する。
【0067】
アルカリ土類金属清浄剤
本明細書に開示される潤滑組成物は、アルカリ土類金属清浄剤を更に含む。好適なアルカリ土類金属清浄剤としては、金属過塩基性清浄剤が挙げられる。
【0068】
オーバーベース化清浄剤、金属含有オーバーベース化清浄剤又はスーパーベース化塩とも呼ばれる金属オーバーベース化清浄剤は、金属及び特定の酸性有機化合物(すなわち、金属と反応する基質)の化学量論に従う中和に必要とされる量を超える金属含量によって特徴付けられる。過塩基化洗浄剤は、非硫黄含有フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリシレート、及びそれらの混合物のうちの1種以上を含み得る。
【0069】
過剰な金属の量は、一般に、基質対金属比で表される。「金属比」という用語は、ヒドロカルビル置換有機酸、すなわち過塩基性化されるヒドロカルビル置換フェノール又はそれらの混合物と、塩基性金属化合物との間の、2つの反応物の既知の化学反応性及び化学量論に従った反応から生じると予想される塩中の金属の化学当量に対する、過塩基性塩中の金属の総化学当量の比を定義するために、先行技術及び本明細書において使用される。ヒドロカルビル置換フェノール又はその混合物は過塩基化されており、塩基性金属化合物は、既知の化学反応性及び2つの反応物の化学量論に従う。したがって、通常の塩又は中性の塩(すなわち、石鹸)では、金属比は1であり、過塩基化塩では、金属比は1より大きく、特に1.3より大きい。本発明の過塩基性清浄剤は、5~30の金属比、又は7~22の金属比、又は少なくとも11の金属比を有し得る。
【0070】
金属含有清浄剤は更に、例えば米国特許第6,429,178号、同第6,429,179号、同第6,153,565号、及び同第6,281,179号に記載されているように、フェネート及び/又はスルホネート成分、例えばフェネート-サリチレート、スルホネート-フェネート、スルホネート-サリチレート、スルホネート-フェネート-サリチレートを含む混合界面活性剤系で形成された「ハイブリッド」清浄剤を含んでいてもよい。例えば、ハイブリッドスルホネート/フェネート洗浄剤を用いる場合、このハイブリッド洗浄剤は、それぞれ同様の量のフェネート石鹸及びスルホネート石鹸を導入する別個のフェネート洗浄剤及びスルホネート洗浄剤の量と同等であると考えられる。過塩基化フェネート及びサリシレートは、典型的には、180から450TBNの全塩基価を有する。過塩基性スルホネートは、典型的には、250~600、又は300~500の全塩基価を有する。過塩基性清浄剤は当技術分野で既知である。
【0071】
アルキルフェノールは、過塩基性清浄剤中の成分及び/又は過塩基性清浄剤の構成要素として使用されることが多い。アルキルフェノールは、フェネート、サリチレート、サリキサレート、又はサリゲニン清浄剤又はそれらの混合物を調製するために使用され得る。好適なアルキルフェノールとしては、パラ置換ヒドロカルビルフェノールを挙げられ得る。ヒドロカルビル基は、1~60個の炭素原子、8~40個の炭素原子、10~24個の炭素原子、12~20個の炭素原子又は16~24個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖の脂肪族基であり得る。一実施形態において、アルキルフェノール過塩基性洗浄剤は、p-ドデシルフェノールを含まないか、又は実質的に含まない(すなわち、0.1重量%未満を含む)アルキルフェノール又はその混合物から調製される。一実施形態では、本発明の潤滑組成物は、0.3重量パーセント未満のアルキルフェノール、0.1重量パーセント未満のアルキルフェノール、又は0.05重量パーセント未満のアルキルフェノールを含む。
【0072】
過塩基化金属含有洗浄剤は、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩であり得る。一実施形態において、過塩基性洗浄剤は、フェネート、硫黄含有フェネート、スルホネート、サリキサレート及びサリシレートのナトリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩又はそれらの混合物であり得る。一実施形態において、過塩基性洗浄剤は、カルシウム洗浄剤、マグネシウム洗浄剤又はそれらの混合物である。一実施形態では、過塩基性カルシウム洗浄剤は、少なくとも500重量ppmのカルシウム及び3000重量ppm以下のカルシウム、又は少なくとも1000重量ppmのカルシウム、又は少なくとも2000重量ppmのカルシウム、又は2500重量ppm以下のカルシウムを本潤滑組成物にもたらす量で存在してもよい。一実施形態では、過塩基性洗浄剤は、本潤滑組成物に500重量ppm以下、又は330重量ppm以下、又は125重量ppm以下、又は45重量ppm以下のマグネシウムをもたらす量で存在してもよい。一実施形態において、本潤滑組成物は、過塩基性洗浄剤から生じるマグネシウムを本質的に含まない(すなわち、マグネシウムを10ppm未満含む)。一実施形態では、過塩基性洗浄剤は、本潤滑組成物に少なくとも200重量ppmのマグネシウム、又は少なくとも450重量ppmのマグネシウム、又は少なくとも700重量ppmのマグネシウムをもたらす量で存在してもよい。一実施形態では、カルシウム含有洗浄剤及びマグネシウム含有洗浄剤の両方が本潤滑組成物中に存在してもよい。カルシウム洗浄剤及びマグネシウム洗浄剤は、カルシウム対マグネシウムの重量比が10:1~1:10、又は8:3~4:5、又は1:1~1:3となるように存在してもよい。一実施形態において、過塩基性洗浄剤はナトリウムを含まないか、又は実質的に含まない。
【0073】
一実施形態では、スルホネート洗浄剤は、主として、米国特許公開第2005/065045号(及び米国特許第7,407,919号として付与)の段落[0026]~[0037]に記載されている、少なくとも8の金属比を有する直鎖アルキルベンゼンスルホネート洗浄剤であり得る。直鎖アルキルベンゼンスルホネート清浄剤は、燃料経済性の改善を助けるのに特に有用であり得る。直鎖アルキル基は、アルキル基の直鎖に沿った任意の位置でベンゼン環に結合していてもよいが、多くの場合、直鎖の2位、3位又は4位で結合しており、場合によっては主に2位で結合しており、直鎖アルキルベンゼンスルホネート清浄剤をもたらす。
【0074】
サリチル酸塩洗浄剤及び過塩基化サリチル酸塩洗浄剤は、少なくとも2つの異なる様態で調製され得る。p-アルキルフェノールのカルボニル化(カルボキシル化とも呼ばれる)は、米国特許第8,399,388号を含む多くの参考文献に記載されている。カルボニル化の後に過塩基化して過塩基性サリチレート清浄剤を形成することができる。好適なp-アルキルフェノールとしては、1~60個の炭素原子の直鎖及び/又は分岐鎖ヒドロカルビル基を有するものが挙げられる。サリチレート清浄剤は更に、米国特許第7,009,072号に記載されるように、サリチル酸のアルキル化、続いて過塩基化によって調製されてもよい。このようにして調製されるサリチレート清浄剤は、6~50個の炭素原子、10~30個の炭素原子、又は14~24個の炭素原子を含有する直鎖及び/又は分岐鎖アルキル化剤(通常、1-オレフィン)から調製され得る。一実施形態では、本発明の過塩基性清浄剤はサリシレート清浄剤である。一実施形態では、本発明のサリチル酸塩洗浄剤は、未反応のp-アルキルフェノールを含まない(すなわち、0.1重量%未満しか含有しない)。一実施形態では、本発明のサリチル酸塩洗浄剤は、サリチル酸のアルキル化によって調製される。
【0075】
いくつかの実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤の金属は、カルシウム、マグネシウム、又はそれらの混合物から選択される。一実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤はスルホン酸カルシウム清浄剤である。別の実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤はスルホン酸マグネシウム清浄剤である。一実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤は、2つ以上のアルカリ土類金属清浄剤の混合物である。アルカリ土類金属清浄剤が混合物である実施形態では、この混合物は、スルホン酸カルシウム清浄剤及びスルホン酸マグネシウム清浄剤を含んでもいてもよい。
【0076】
アルカリ土類金属清浄剤は、本潤滑組成物の総重量に基づいて0.3~2.5重量%の量で本潤滑組成物中に存在してもよい。一実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤は、本潤滑組成物の総重量に基づいて0.5~2.0重量%の量で本潤滑組成物中に存在してもよい。別の実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤は、本潤滑組成物の総重量に基づいて0.6~1.8重量%の量で本潤滑組成物中に存在してもよい。アルカリ土類金属清浄剤の混合物を有する実施形態では、1つの清浄剤は、0.4~0.8重量%の量で潤滑組成物中に存在してもよく、第2の清浄剤は、0.6~1.1重量%の量で存在してもよい。本潤滑組成物中のアルカリ土類金属清浄剤混合物の総量は、約0.8~2.0重量%であってよい。一実施形態では、アルカリ土類金属清浄剤は、本潤滑組成物の総重量に基づいて、0.4~0.8重量%の量で本潤滑組成物中に存在するスルホン酸カルシウム清浄剤と、0.6~1.1重量%の量で本潤滑組成物中に存在するスルホン酸マグネシウム清浄剤とを含む。
【0077】
無灰酸化防止剤
本明細書に開示される潤滑組成物は、無灰酸化防止剤を更に含む。無灰酸化防止剤としては、アリールアミン、ジアリールアミン、アルキル化アリールアミン、アルキル化ジアリールアミン、フェノール、ヒンダードフェノール、硫化オレフィン、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0078】
好適なアリールアミンとしては、アミン窒素に結合した単一の(任意選択で置換された)アリール基によって置換された第二級又は第三級アミンが挙げられる。アリールアミンの例としては、N-アルキルナフチルアミンが挙げられ、これは、1個又は2個のN-アルキル基を有し得、つまり、窒素基は、一置換又は二置換である。一実施形態では、窒素基は主に一置換である。N-アルキル基は、非環式、環式、又は脂環式であってもよい。非環式アルキル基は分岐していてもよい。
【0079】
ジアリールアミン又はアルキル化ジアリールアミンは、フェニル-α-ナフチルアミン(PANA)、アルキル化ジフェニルアミン、若しくはアルキル化フェニルナフチルアミン、又はそれらの混合物であってもよい。アルキル化ジフェニルアミンとしては、ジ-ノニル化ジフェニルアミン、ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジ-オクチル化ジフェニルアミン、ジ-デシル化ジフェニルアミン、デシルジフェニルアミン及びそれらの混合物が挙げられ得る。一実施形態では、ジフェニルアミンには、ノニルジフェニルアミン、ジノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、ジオクチルジフェニルアミン、又はこれらの混合物が含まれていてもよい。一実施形態では、アルキル化ジフェニルアミンは、ノニルジフェニルアミン又はジノニルジフェニルアミンを含んでいてもよい。アルキル化ジアリールアミンとしては、オクチル、ジオクチル、ノニル、ジノニル、デシル又はジデシルフェニルナフチルアミンが挙げられ得る。
【0080】
本発明のジアリールアミンはまた、以下の式:
【化21】
によって表すことができ、
式中、R
1及びR
2は、それらが結合している炭素原子と一緒になって一緒に結合して、5員、6員、又は7員環(炭素環式環又は環状ヒドロカルビレン環など)を形成する部分であり、R
3及びR
4は、独立して、水素、ヒドロカルビル基であるか、又はそれらが結合している炭素原子と一緒になって、5員、6員若しくは7員環(炭素環式環又は環状ヒドロカルビレン環など)を形成する部分であり、R
5及びR
6は、独立して、水素、ヒドロカルビル基であるか、又はそれらが結合している炭素原子と一緒になって環を形成するか、又はゼロ炭素若しくは環間の直接結合を表す部分(典型的にはヒドロカルビル部分)であり、R
7は、水素又はヒドロカルビル基である。
【0081】
一実施形態では、ジアリールアミンは、N-フェニル-ナフチルアミン(PNA)である。
【0082】
別の実施形態では、ジアリールアミンは、式:
【化22】
で表すことができ、
式中、R
3及びR
4は上記のように定義される。
【0083】
別の実施形態では、ジアリールアミン化合物は、一般式:
【化23】
を有するものを含み、
式中、R
7は上記のように定義され、R
5及びR
6は、独立して水素、ヒドロカルビル基であるか、又は一緒になってジヒドロアクリダンなどの環を形成してもよく、n=1又は2であり、Y及びZは独立して、炭素又はN、O及びSなどのヘテロ原子を表す。
【0084】
特定の実施形態では、ジアリールアミン化合物は、式:
【化24】
のものを含む。
【0085】
一実施形態では、ジアリールアミンは、式:
【化25】
のジヒドロアクリダン誘導体であり、
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は上記のように定義され、R
8及びR
9は、独立して、水素又は1から20個の炭素原子のヒドロカルビル基である。
【0086】
一実施形態では、ジアリールアミンは、R
5及びR
6がアリール環間の直接(又はゼロ炭素)連結を表すように選択される。結果は、式:
【化26】
のカルバゾールであり、
式中、R
1、R
2、R
3、及びR
4は上記のように定義される。
【0087】
ジアリールアミン酸化防止剤は、本潤滑組成物中に、本潤滑組成物の総重量に基づいて、0.1重量%~10重量%、0.35重量%~5重量%、又は更には0.5重量%~2重量%、又は0.1~2.1重量%若しくは0.2~1.8重量%で存在してもよい。
【0088】
フェノール系酸化防止剤は、単純なアルキルフェノール、ヒンダードフェノール、又は結合フェノール化合物であってもよい。
【0089】
ヒンダードフェノール酸化防止剤は、しばしば、立体障害基として二級ブチル及び/又は三級ブチル基を含有する。フェノール基は、ヒドロカルビル基(典型的には、直鎖状若しくは分岐のアルキル)及び/又は第2の芳香族基に結合する架橋基で更に置換されてもよい。好適なヒンダードフェノール酸化防止剤の例には、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール若しくは4-ブチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、4-ドデシル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、又はブチル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシルフェニル)プロパノエートが挙げられる。一実施形態において、ヒンダードフェノール酸化防止剤は、エステルであってもよく、例えば、CibaからのIrganox(商標)L-135を挙げることができる。
【0090】
結合フェノールは、アルキレン基と結合してビスフェノール化合物を形成する2つのアルキルフェノールが含有することが多い。好適な結合フェノール化合物の例としては、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4-メチル-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,2’-ビス-(6-t-ブチル-4-ヘプチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、及び2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)が挙げられる。
【0091】
本発明のフェノールには、多価芳香族化合物及びそれらの誘導体も含まれる。好適な多価芳香族化合物の例として、没食子酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、2,6-ジヒドロキシ安息香酸、1,4-ジヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3,5-ジヒドロキシナフトエ酸、3,7-ジヒドロキシナフトエ酸、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
一実施形態では、フェノール系酸化防止剤は、ヒンダードフェノールを含む。別の実施形態では、ヒンダードフェノールは、2,6-ジ-tertブチルフェノールから誘導される。
【0093】
一実施形態では、本開示の潤滑組成物は、本潤滑組成物の0.01重量%~5重量%、又は0.1重量%~4重量%、又は0.1~2.1重量%、又は0.2~1.8重量%、又は0.2重量%~3重量%、又は0.5重量%~2重量%の範囲のフェノール系酸化防止剤を含む。
【0094】
硫化オレフィンはよく知られた市販の材料であり、実質的に窒素を含まない、すなわち窒素官能基を含有しないものは容易に入手できる。硫化される可能性のあるオレフィン化合物は、実際は多様である。それらは、非芳香族二重結合、すなわち、2個の脂肪族炭素原子を連結するものとして定義される少なくとも1つのオレフィン二重結合を含有する。これらの材料は一般に、1~10個、例えば1~4個、又は1若しくは2個の硫黄原子を含むスルフィド結合を有している。
【0095】
本発明の無灰酸化防止剤は、別々に又は組み合わせて使用することができる。一実施形態では、2種以上の異なる酸化防止剤が、少なくとも2種の酸化防止剤の各々が少なくとも0.1重量パーセント存在し、無灰酸化防止剤の合計量が0.5から5重量パーセントとなるように、組み合わせて使用される。
【0096】
無灰酸化防止剤は、本潤滑組成物の総重量に基づいて0.1~2.1重量%、又は0.2~1.8重量%の量で存在してもよい。
【0097】
一実施形態では、無灰酸化防止剤はアルキル化ジアリールアミンである。別の実施形態では、無灰酸化防止剤は硫化オレフィンである。更に別の実施形態では、無灰酸化防止剤は、0.8~1.3重量%のアルキル化ジアリールアミン及び0.1~0.5重量%の硫化オレフィンを含む無灰酸化防止剤の混合物である。
【0098】
無灰分散剤
本明細書に開示される潤滑組成物は、無灰分散剤を更に含む。分散剤は、スクシンイミド分散剤、マンニッヒ分散剤、ポリオレフィンコハク酸エステル、アミド、若しくはエステル-アミド、又はそれらの混合物であり得る。一実施形態では、分散剤は、ホウ酸化スクシンイミド分散剤であり得る。一実施形態では、分散剤は、ホウ酸化スクシンイミド分散剤であり得る。一実施形態では、分散剤は、単一の分散剤として存在してもよい。別の実施形態では、分散剤は、2つ又は3つの異なる分散剤の混合物として存在してもよい。
【0099】
スクシンイミド分散剤は、脂肪族ポリアミン又はこれらの混合物から誘導され得る。脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミン、プロピレンポリアミン、ブチレンポリアミン、又はそれらの混合物などの脂肪族ポリアミンであってもよい。一実施形態では、脂肪族ポリアミンは、エチレンポリアミンであってもよい。一実施形態では、脂肪族ポリアミンは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリアミン蒸留残液、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。
【0100】
スクシンイミド分散剤は、芳香族アミン、芳香族ポリアミン、又はこれらの混合物から誘導され得る。芳香族アミンは、4-アミノジフェニルアミン(ADPA)(N-フェニルフェニレンジアミンとしても知られている)、ADPAの誘導体(米国特許公開第2011/0306528号及び同第2010/0298185号に記載)、ニトロアニリン、アミノカルバゾール、アミノ-インダゾリノン、アミノピリミジン、4-(4-ニトロフェニルアゾ)アニリン、又はこれらの組合せであってもよい。一実施形態では、分散剤は、芳香族アミンの誘導体であり、芳香族アミンは、少なくとも3つの不連続な芳香環を有する。
【0101】
スクシンイミド分散剤は、ポリエーテルアミン又はポリエーテルポリアミンの誘導体であってよい。典型的なポリエーテルアミン化合物は、少なくとも1つのエーテル単位を含み、少なくとも1つのアミン部分で連鎖停止されるであろう。ポリエーテルポリアミンは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びブチレンオキシドなどのC2~C6エポキシドから誘導されたポリマーに基づくことができる。ポリエーテルポリアミンの例は、Jeffamine(登録商標)ブランドで販売されており、Huntsman Corporationから市販されている。
【0102】
分散剤は、N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドであり得る。N-置換長鎖アルケニルスクシンイミドの例としては、ポリイソブチレンスクシンイミドが挙げられる。典型的には、ポリイソブチレン無水コハク酸が由来するポリイソブチレンは、350~5000、又は550~3000、又は750~2500の数平均分子量を有する。スクシンイミド分散剤及びそれらの調製は、例えば、米国特許第3,172,892号、同第3,219,666号、同第3,316,177号、同第3,340,281号、同第3,351,552号、同第3,381,022号、同第3,433,744号、同第3,444,170号、同第3,467,668号、同第3,501,405号、同第3,542,680号、同第3,576,743号、同第3,632,511号、同第4,234,435号、同第Re26,433号、及び同第6,165,235号、同第7,238,650号、並びに欧州特許第0355895(B1)号に開示されている。
【0103】
分散剤はまた、多様な薬剤のいずれかとの反応による従来の方法により後処理され得る。これらの中でもとりわけ、ホウ素化合物、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾール、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換無水コハク酸、無水マレイン酸、ニトリル、エポキシド、及びリン化合物がある。
【0104】
分散剤は、様々な形態のホウ酸(メタホウ酸、HBO2、オルトホウ酸、H3BO3、及びテトラホウ酸、H2B4O7を含む)、酸化ホウ素、三酸化ホウ素、及びホウ酸アルキルからなる群から選択される多様な薬剤のうちの1つ以上を使用してホウ酸化され得る。一実施形態では、ホウ酸化剤は、単独で又は他のホウ酸化剤と組み合わせて使用され得るホウ酸である。ホウ素化分散剤を調製する方法は、当該分野で公知である。ホウ酸化分散剤は、0.1重量%~2.5重量%のホウ素、又は0.1重量%~2.0重量%のホウ素、又は0.2重量%~1.5重量%のホウ素、又は0.3重量%~1.0重量%のホウ素を含有するように調製することができる。
【0105】
スクシンイミド分散剤での使用に好適なポリイソブチレンとしては、約60モル%、及び特に約70モル%~約90モル%又は90モル%超など、少なくとも約50モル%の末端ビニリデン含有量を有するポリイソブチレン又は高反応性ポリイソブチレンから形成されるものが挙げられ得る。好適なポリイソブテンには、BF3触媒を使用して調製されたものを挙げることができる。一実施形態では、ホウ酸化分散剤は、350~3000ダルトンの数平均分子量と、少なくとも50モル%、又は少なくとも70モル%、又は少なくとも90モル%のビニリデン含有量とを有するポリオレフィンから誘導される。
【0106】
分散剤は、「直接アルキル化プロセス」と呼ばれるものによって、「エン」反応又は「熱」反応による無水コハク酸の反応から調製することができ/得ることができ/得ることが可能である。「エン」反応機構及び一般的な反応条件は、「Maleic Anhydride」、第147~149頁、B. C. Trivedi and B. C. Culbertson編、Plenum Press発行(1982)に要約されている。「エン」反応を含むプロセスによって調製される分散剤は、50モル%未満、又は0~30モル%未満、又は0~20モル%未満、又は0モル%の分散剤分子に存在する炭素環を有するポリイソブチレンスクシンイミドであってもよい。「エン」反応は、180℃~300℃未満、又は200℃~250℃、又は200℃~220℃の反応温度を有し得る。
【0107】
分散剤はまた、しばしばディールス・アルダーケミストリーが関与し、炭素環結合の形成につながる塩素支援プロセスから取得され/取得可能であり得る。このプロセスは当業者に既知である。塩素支援プロセスは、分散剤分子の50モル%以上、又は60~100モル%に存在する炭素環を有するポリイソブチレンスクシンイミドである分散剤を生成し得る。熱プロセス及び塩素補助プロセスの両方は、米国特許第7,615,521号、第4~第5欄、並びに調製例A及びBにより詳細に記載されている。
【0108】
分散剤は、単独で、又は非ホウ酸化又はホウ酸化分散剤の混合物の一部として使用することができる。分散剤の混合物が使用される場合、2つ~5つ、若しくは2つ~3つ、又は2つの分散剤があり得る。
【0109】
ポリオレフィン分散剤は、ポリアルファオレフィンスクシンイミド、ポリアルファオレフィンスクシンアミド、ポリアルファオレフィン酸エステル、ポリアルファオレフィンオキサゾリン、ポリアルファオレフィンイミダゾリン、ポリアルファオレフィンスクシンアミドイミダゾリン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される分散剤を含有するポリアルファオレフィン(PAO)を含み得る。
【0110】
PAO含有分散剤を形成する際の原料として有用なポリアルファオレフィン(PAO)は、エチレン、プロピレン、及びα-オレフィンのオリゴマー化又は重合から誘導されたものである。好適なα-オレフィンには、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、及び1-オクタデセンが挙げられる。PAOを商業的に製造する場合、典型的には、前述のモノマーの2種以上の混合物及び他の炭化水素を含有する原料が用いられる。PAOは、ダイマー、トリマー、テトラマー、ポリマーなどの形態を取り得る。
【0111】
PAOを無水マレイン酸(MA)と反応させて、ポリアルファオレフィン無水コハク酸(PAO-SA)を形成し、その後無水物をポリアミン、アミノアルコール、及びアルコール/ポリオールのうちの1つ以上と反応させて、ポリアルファオレフィンスクシンイミド、ポリアルファオレフィンスクシンアミド、ポリアルファオレフィンコハク酸エステル、ポリアルファオレフィンオキサゾリン、ポリアルファオレフィンイミダゾリン、ポリアルファオレフィン-スクシンアミド-イミダゾリン、及びそれらの混合物を形成することができる。
【0112】
別のクラスの無灰分散剤は、マンニッヒ塩基である。これらは、高分子量のアルキル置換フェノール、アルキレンポリアミン、及びホルムアルデヒドなどのアルデヒドの縮合によって形成される材料であり、米国特許第3,634,515号においてより詳細に記載されている。
【0113】
有用な窒素含有分散剤としては、(a)アルデヒド、(b)ポリアミン、及び(c)任意に置換されたフェノールの間のマンニッヒ反応の生成物が挙げられる。フェノールは、マンニッヒ生成物が7500未満の分子量を有するように置換され得る。任意に、分子量は、2000未満、1500未満、1300未満、又は例えば1200未満、1100未満、1000未満であり得る。いくつかの実施形態では、マンニッヒ生成物は、900未満、850未満、又は800未満、500未満、又は400未満の分子量を有する。置換フェノールは、芳香環上で最大4つの基で置換され得る。例えば、それは三置換又は二置換フェノールであり得る。いくつかの実施形態では、フェノールは、一置換フェノールであり得る。置換は、オルト、及び/又はメタ、及び/又はパラの位置にあり得る。マンニッヒ生成物を形成するために、アルデヒドのアミンに対するモル比は、4:1~1:1、又は2:1~1:1である。アルデヒドとフェノールのモル比は、少なくとも0.75:1、好ましくは0.75対1~4:1、好ましくは1:1~4;1、より好ましくは1:1~2:1であり得る。好ましいマンニッヒ生成物を形成するために、フェノールのアミンに対するモル比は、好ましくは少なくとも1.5:1、より好ましくは少なくとも1.6:1、より好ましくは少なくとも1.7:1、例えば少なくとも1.8:1、好ましくは少なくとも1.9:1である。フェノールのアミンに対するモル比は、最大5:1であり得、例えば、それは、最大4:1又は最大3.5:1であり得る。好適には、それは、最大3.25:1、最大3:1、最大2.5:1、最大2.3:1又は最大2.1:1である。
【0114】
一実施形態では、無灰分散剤は、ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤である。別の実施形態では、無灰分散剤は、ホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤である。一実施形態では、無灰分散剤は、本潤滑組成物中に1~6重量%、又は2~5重量%、又は2.5~4.5重量%の量で存在する。一実施形態では、無灰分散剤は、0.8~1.6重量%のホウ素非含有ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤と、1.8~3.1重量%のホウ酸化ポリイソブチレン分散剤との混合物を含む。別の実施形態では、ホウ素を含まないポリイソブチレンスクシンイミド分散剤及びホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド分散剤のうちの1つ以上は、直接アルキル化プロセスから生成される。
【0115】
本明細書に開示される潤滑組成物は、亜鉛を実質的に含まない。本明細書で使用される場合、「実質的に含まない」とは、本潤滑組成物が、少量の記載された成分を非官能性添加物として含み得ることを意味する。いくつかの実施形態では、本潤滑組成物は、50ppm未満、又は40ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満、又は10ppm未満、又は5ppm未満の亜鉛を含有し得る。一実施形態では、本潤滑組成物は亜鉛を含まず、これは本潤滑組成物が0ppmの亜鉛を含有することを意味する。
【0116】
他の添加剤
本開示の潤滑組成物は、任意選択で、1つ以上の追加の性能添加剤を含んでいてもよい。これらのさらなる性能添加剤は、1つ以上の金属不活性化剤、粘度調整剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、分散剤粘度調整剤、極圧剤、発泡防止剤、解乳化剤、流動点降下剤、シール膨潤剤、及びそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含み得る。典型的には、完全に配合された潤滑油は、これらの性能向上添加剤のうちの1種以上を含有するであろうし、複数の性能向上添加剤のパッケージを含有することも多い。
【0117】
好適な分散剤粘度調整剤としては、官能化ポリオレフィン、例えば、無水マレイン酸及びアミンなどのアシル化剤で官能化されたエチレン-プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、又はアミンと反応させたエステル化スチレン-無水マレイン酸コポリマーが挙げられる。分散剤粘度調整剤のより詳細な説明は、国際公開第2006/015130号、又は米国特許第4,863,623号、同第6,107,257号、同第6,107,258号及び同第6,117,825号に開示されている。一実施形態では、分散剤粘度調整剤は、米国特許第4,863,623号(第2欄15行~第3欄52行を参照されたい)又は国際公開第2006/015130号(ページ2、段落[0008]及び調製例は段落[0065]~[0073]に記載されている)に記載されているものが含まれ得る。
【0118】
一実施形態では、本発明は、モリブデン化合物を更に含む潤滑組成物を提供する。モリブデン化合物は、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオカルバメート、モリブデン化合物のアミン塩、及びこれらの混合物からなる群から選択してもよい。モリブデン化合物は、0~1000ppm、又は5~1000ppm、又は10~750ppm、又は5ppm~300ppm、又は20ppm~250ppmのモリブデンを潤滑組成物に提供し得る。
【0119】
一実施形態では、本発明は、摩擦調整剤を更に含む潤滑組成物を提供する。摩擦調整剤の例としては、アミン、脂肪エステル又はエポキシドの長鎖脂肪酸誘導体;脂肪イミダゾリン、例えばカルボン酸とポリアルキレン-ポリアミンとの縮合生成物;アルキルリン酸のアミン塩;酒石酸脂肪アルキル;脂肪アルキル酒石酸イミド;又は脂肪アルキルタルトラミドが挙げられる。本明細書で使用される脂肪という用語は、C8~22の直鎖アルキル基を有することを意味し得る。
【0120】
摩擦調整剤は、また、硫化脂肪化合物及びオレフィン、モリブデンジアルキルジチオホスフェート、モリブデンジチオカルバメート、ヒマワリ油、又はポリオールと脂肪族カルボン酸とのモノエステルなどの材料を包み得る。
【0121】
一実施形態では、摩擦調整剤は、アミンの長鎖脂肪酸誘導体、長鎖脂肪エステル、又は長鎖脂肪エポキシド;脂肪イミダゾリン;アルキルリン酸のアミン塩;酒石酸脂肪アルキル;脂肪アルキルタルトリミド;及び脂肪アルキルタルトラミドからなる群から選択されてもよい。摩擦調整剤は、潤滑組成物の0重量%~6重量%、又は0.05重量%~4重量%、又は0.1重量%~2重量%で存在してもよい。
【0122】
一実施形態では、摩擦調整剤は、長鎖脂肪酸エステルであってもよい。別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、モノエステル若しくはジエステル、又はこれらの混合物であってもよく、別の実施形態では、長鎖脂肪酸エステルは、トリグリセリドであってもよい。
【0123】
腐食防止剤などの他の性能向上添加剤としては、国際公開第2006/047486号として公開された米国出願第05/038319号の段落5~8に記載されているもの、オクチルオクタンアミド、ドデセニルコハク酸又はその無水物及びオレイン酸などの脂肪酸とポリアミンとの縮合生成物が挙げられる。一実施形態では、腐食防止剤として、Synalox(The Dow Chemical Companyの登録商標)腐食防止剤が挙げられる。Synalox(登録商標)腐食防止剤は、プロピレンオキシドのホモポリマー又はコポリマーであってよい。Synalox(登録商標)腐食防止剤は、The Dow Chemical Companyから発行されたForm No.118-01453-0702 AMSの製品により詳細に記載されている。製品のタイトルは、「SYNALOX Lubricants,High-Performance Polyglycols for Demanding Applications」である。
【0124】
本潤滑組成物は、ベンゾトリアゾール(典型的にはトリルトリアゾール)の誘導体、ジメルカプトチアジアゾール誘導体、1,2,4-トリアゾール、ベンズイミダゾール、2-アルキルジチオベンズ-イミダゾール、又は2-アルキルジチオベンゾチアゾールなどの金属不活性化剤;エチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレートのコポリマー並びにエチルアクリレート及び2-エチルヘキシルアクリレート及び酢酸ビニルのコポリマーなどの発泡防止剤;トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド及び(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)ポリマーを含む解乳化剤;及び、無水マレイン酸-スチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート又はポリアクリルアミドのエステルなどの流動点降下剤、を更に含んでいてもよい。
【0125】
本発明の組成物において有用であり得る流動点降下剤は、ポリアルファオレフィン、無水マレイン酸-スチレンのエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリレート、又はポリアクリルアミドを更に含む。
【0126】
内燃エンジン用の本潤滑剤組成物は、硫黄、リン、又は硫酸灰分(ASTM D-874)の含有量に関係なく、あらゆるエンジン潤滑剤に好適である場合がある。エンジンオイル潤滑油の硫黄含有量は、1.1重量%以下、又は0.9重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.3重量%以下であってもよい。一実施形態では、硫黄含有量は、0.001重量%~0.5重量%、又は0.01重量%~0.3重量%、又は0.5~1.0重量%の範囲であり得る。リン含有量は、0.2重量%以下、又は0.12重量%以下、又は0.1重量%以下、又は0.085重量%以下、又は0.08重量%以下、又は更には0.06重量%以下、0.055重量%以下、又は0.05重量%以下であってもよい。一実施形態では、リン含有量は、100ppm~1000ppm、又は200ppm~900ppm、又は300~875、又は400~850、又は600~800であってもよい。全硫酸灰分含有量は、2重量%以下、又は1.5重量%以下、又は1.1重量%以下、又は1重量%以下、又は0.8重量%以下、又は0.5重量%以下、又は0.4重量%以下であり得る。一実施形態では、全硫酸灰分含有量は、0.05重量%~0.9重量%、又は0.1重量%~0.2重量%若しくは~0.45重量%の範囲であり得る。
【0127】
一実施形態では、潤滑組成物はエンジンオイルであってもよく、潤滑組成物は、(i)0.5重量%以下の硫黄含有量、(ii)0.1重量%以下のリン含有量、(iii)1.5重量%以下の硫酸灰分含有量、又はこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有すると特徴付けることができる。
【0128】
本潤滑組成物は、エンジンにおける低速過早点火(「LSPI」)を低減又は排除するために使用され得る。一実施形態では、本明細書に開示される潤滑組成物は、本潤滑組成物を直接噴射エンジンに供給することによって当該エンジンのLSPIを低減する方法で使用することができる。LSPI事象は、本質的に壊滅的であり得る。したがって、直接燃料噴射エンジンの通常動作又は持続動作中のLSPI事象の大幅な低減か、もっと言えば排除が望ましい。
【0129】
直噴エンジンを3,000rpm以下の速度で、かつ正味平均有効圧力(BMEP)が10バール以上の負荷で運転すると、LSPI事象が発生し得る。LSPI事象は、1つ以上のLSPI燃焼サイクルからなることができ、一般に、連続的に発生するか、又はその間の通常の燃焼サイクルを伴って交互に発生する複数のLSPI燃焼サイクルからなる。特定の理論に束縛されるものではないが、LSPIは、例えば、ピストンの上部ランド隙間容積、又はピストンのリングランド及びリング溝隙間に蓄積する可能性がある油滴、又は油燃料混合物の液滴、又はそれらの組み合わせの燃焼から生じる場合がある。潤滑油は、異常なピストンリングの動きのために、油制御リングの下からピストントップランド領域に移動し得る。低速、高負荷条件では、特にリング運動力学に影響を及ぼす可能性がある、大幅に遅延された燃焼フェージング並びに高いブースト及びピーク圧縮圧力に起因して、筒内圧力学(圧縮及び着火圧力)は、低負荷での筒内圧とは大きく異なる可能性がある。
【0130】
前述の負荷では、LSPIは、後続の爆轟及び/又は激しいエンジンノックを伴う可能性があり、非常に迅速に(多くの場合、1~5エンジンサイクル以内に)エンジンに深刻な損傷を引き起こす可能性がある。点火器から正常なスパークが提供された後に複数の火炎が存在し得ることを考慮すると、エンジンノックはLSPIで発生し得る。本発明は、LSPI事象を抑制又は低減するための方法であって、本明細書に開示される潤滑剤組成物をエンジンに供給することを含む方法を提供することを目的とする。
【0131】
一般に、潤滑剤は内燃機関の潤滑システムに添加され、その後、運転中に潤滑を必要とするエンジンの重要な部分に潤滑組成物を送達する。エンジンの構成要素は、鋼又はアルミニウムの表面(典型的には鋼の表面)を有してもよく、例えばダイヤモンドライクカーボン(DLC)コーティングでコーティングされてもよい。
【0132】
アルミニウム表面は、共晶又は過共晶アルミニウム合金(ケイ酸アルミニウム、酸化アルミニウム、又は他のセラミック材料に由来するものなど)であり得るアルミニウム合金で構成されてもよい。アルミニウム表面は、アルミニウム合金又はアルミニウム複合材を有するシリンダーボア、シリンダーブロック、又はピストンリング上に存在し得る。
【0133】
内燃機関には、排気制御システム又はターボチャージャが取り付けられ得る。排出制御システムの例には、ディーゼル微粒子フィルター(DPF)、又は選択的触媒還元(SCR)を用いるシステムが含まれる。
【0134】
本発明の内燃エンジンは、ガスタービンとは区別される。内燃エンジンでは、個々の燃焼イベントは、直線往復力からロッドとクランクシャフトを介した回転トルクに変換される。対照的に、ガスタービン(ジェットエンジンとも呼ばれることもある)では、連続燃焼プロセスが変換されずに連続的に回転トルクを生成し、排気口で推力を発生させることができる。ガスタービンと内燃エンジンとの運転条件におけるこれらの違いは、異なる運転環境及びストレスをもたらす。
【0135】
本発明の一実施形態では、エンジンは、500rpm~3000rpm、又は800rpm~2800rpm、又は更に1000rpm~2600rpm、又は3,000rpm未満、又は2,500rpm未満、又は2,000rpm未満の速度で動作する。加えて、エンジンは、10バール~15バール、又は10~20バール、又は10~30バール、又は12バール~24バールの平均有効圧力で動作されてもよい。
【0136】
一実施形態では、本開示は、本明細書に開示される潤滑剤組成物に関し、本潤滑剤組成物は、3,000rpm以下の速度で10バール以上の正味平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で運転される火花点火式直噴内燃エンジンにおける低速過早点火事象を低減することができる。
【0137】
別の実施形態では、本開示は、火花点火式直噴内燃エンジンに本明細書に開示される潤滑剤組成物を供給することによって低速過早点火を低減する方法に関する。本方法は、10バール以上の平均有効圧力(BMEP)を有する負荷下で、3,000rpm以下の速度で運転される火花点火式直噴内燃エンジンに、本明細書に開示される潤滑剤組成物のいずれか1つを供給することを更に含む。
【0138】
いくつかの実施形態では、エンジンに、液体炭化水素燃料、液体非炭化水素燃料、又はそれらの混合物を燃料供給することができる。
【0139】
本開示は更に、火花点火式直噴内燃エンジンにおける低速過早点火を低減するための、本明細書に開示される潤滑剤組成物のいずれか1つの使用に関する。
【0140】
異なる実施形態では、本潤滑組成物は、以下の表に記載されるような組成を有し得る。
【表4】
【実施例】
【0141】
本開示を、特に有利な実施形態を説明する以下の実施例によって更に説明する。本発明を例示するために実施例を提供するが、これらは本発明を限定することを意図するものではない。
【0142】
無灰(すなわち、金属を含まない)リン化合物を、低粘度潤滑組成物における摩耗の防止及び低減並びに低速過早点火の低減について評価した。いくつかの無灰化合物を以下に詳述するように調製し、いくつかを以下にまとめた商業的供給源から入手した(表1)。
【0143】
調製実施例A(EXA)
(パートi)4-メチル-2-ペンタノール(1250g)を、高剪断ミキサー及びスクリューフィード粉末添加漏斗を備えた3Lの反応容器に投入し、60℃に加熱する。固体五酸化リン(752.5g)を添加漏斗に投入し、高剪断ミキサーを6000rpmで作動させながら1時間45分かけて添加する。反応混合物を60℃で更に1.5時間維持し、その後、混合物を30分間真空ストリッピングして、中間体アルキルリン酸(1958.5g)を得る。
【0144】
(パートii)上記パート(i)から得られたアルキルリン酸(12030g)(先の同様のバッチと合わせた)を、オーバーヘッドスターラー、熱電対、及び窒素導入口を備えた反応容器に投入し、60℃に加熱する。(2-エチルヘキシル)アミン(802.4g)を1.2時間にわたって反応容器に滴下する。アミン添加の約半分が完了した後、希釈油(350g)を添加する。得られたオレンジ色の液体生成物を更に精製することなく使用する(2352.3g)。
【0145】
調製実施例B(EXB)
(パートi)窒素表面下導入管、熱電対、メカニカルガラスロッドスターラー、並びに25%水酸化ナトリウムトラップ及び漂白トラップに接続されたフリードリッヒ冷水凝縮器を備えた5Lの4つ口丸底フラスコに、40℃に温めた2-ヒドロキシエチルアクリレート(純度97%、797g、6.65mol)を加える。これに、O,O’-ジ(4-メチル-2-ペンチル)ジチオリン酸(2500g、6.86mol、分析による全酸価に基づく)を、均圧添加漏斗を使用して、55℃~65℃の温度で、2時間(1~2.5時間であってもよい)かけて滴下する。添加が完了した後、反応温度を65℃(65℃~70℃であってもよい)に設定し、反応物をこの温度で7時間(3~5時間又はヒドロキシエチルアクリレートが消費されるまでであってもよい)撹拌した。得られた中間体を周囲温度に冷却して液体(3297g)を得、不活性雰囲気下で保存する。
【0146】
(パートii)同様に装備された5Lの4つ口丸底フラスコに、パートiからの中間体(2872g、8.00モル、分析による利用可能なOH基の量に基づく)を添加する。無水ナトリウムメトキシド(1g、18.5mmol)を一度に加え、反応物を更に5分間撹拌する。ジメチルホスファイト(449g、4.08モル)を一度に添加し、表面管を通して窒素を約28L/時間(約1.0sfch)で吹き込みながら、反応物をゆっくりと95℃に加熱する。反応混合物を95℃(90~100℃であってもよい)で8時間に保持し、留出物を回収し、Dean-Starkトラップを介して取り出す。反応混合物を減圧下(2.7kPa、20mmHg)、95℃で2時間ストリッピングし、追加の留出物を得る。90℃に設定したオーブン中で一晩乾燥させた30gの濾過助剤をフラスコに加え、更に15分間撹拌する。55gの追加の濾過助剤を使用して、濾過ケーキを真空下でブフナー漏斗に詰める。次いで、5Lフラスコの内容物をこのケーキを通して濾過し、淡黄色がかった褐色の透明な液体(2802g、9.5重量%のリン)として生成物を得る。
【0147】
調製実施例C(EXC)
ディーンスターク水ジャケット付き凝縮器、メカニカルスターラー、及び窒素入口を備えた2L丸底フラスコに、亜リン酸水素ジメチル(18.61kg)を投入する。2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール(37.1kg)を蒸気室で溶融し、ホスファイトに一度に添加する。反応混合物を300rpmで撹拌しながら窒素下で135℃に加熱する。メタノールの蒸留が完了した後(3.5時間)、1,6-ヘキサンジオール(200g)を一度に添加し、得られた混合物を更に2時間撹拌する。得られた生成混合物を135℃で30分間真空ストリッピングして、透明なわずかに黄色の液体(42.1kg; 13.3重量%のリン)を生成する。
【0148】
調製実施例E(EXE)
還流凝縮器、メカニカルスターラー、及び窒素導入口を備えた5L丸底フラスコに、混合アミル/イソブチルジアルキルジチオリン酸(C
4/C
5アルキル基の重量比60:40)(1700g)を投入し、62℃に加熱する。メチルアクリレート(196.4g)をゆっくり添加して、反応温度を80℃未満に維持した。アクリレートの添加が完了した後、反応混合物を98℃に加熱し、その温度で4時間保持した。混合物を40℃に冷却した後、プロピレンオキシド(43.7g)を表面下チューブを介して添加した。次いで、反応混合物を80℃に加熱し、真空ストリッピングし、濾過助剤を通して濾過して、透明な琥珀色の液体(2020g)を生成した。
【表1】
【0149】
本発明の無灰リン化合物、金属清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、並びにポリマー粘度指数向上剤、摩擦調整剤、腐食防止剤、流動点降下剤、及び発泡防止剤をなどの他の従来の添加剤を含有する一連の0W-20潤滑組成物を調製した(表1)。
【表2】
1.特に明記しない限り、全ての処理速度はオイルフリーである
2.高ビニリデンPIB(2000Mn PIB、TBN 26mg KOH/g)から調製されたポリイソブエニルコハク酸イミド
3.ホウ素化ポリイソブテニルスクシンイミド(2000mn PIB、TBN 26mg KOH/g、0.8重量%ホウ素)
4.過塩基性カルシウムアルキルベンゼンスルホネート(TBN 520mg KOH/g、20重量%Ca)
5.過塩基性カルシウムアルキルベンゼンスルホネート(TBN 690mg KOH/g、16重量%Mg)
6.他の添加剤としては、摩擦調整剤、腐食防止剤、流動点降下剤、及び発泡防止剤が挙げられる。
【0150】
潤滑実施例を、高い正味平均有効圧力(BMEP)で運転される低速エンジンにおける過早点火事象を低減又は排除する能力、並びに摩耗低減、酸化防止、及び清浄性/堆積物制御などの一般的な潤滑性能について評価した(表3)。
【0151】
低速過早着火(LSPI)を、フォード2.0Lエコブーストエンジン、ターボ過給ガソリン直噴(GDI)エンジンにおいて評価した。フォード・エコブーストエンジンは、1750rpm及び17.0バールBMEPで運転する。エンジンをこれらの条件で合計175,000燃焼サイクル運転し、LSPI事象を計数する。2つの段階を4回繰り返し、過早点火事象の数を平均として記録する。以下の表2は、4回の実行にわたる平均LSPI事象を示す。LSPI事象は、ピークシリンダー圧力(PP)及びシリンダー内の燃料チャージの質量分率燃焼(MFB)をモニターすることによって判定する。両方の基準が満たされる場合、LSPI事象が起こったと判定する。ピークシリンダー圧力の閾値は、典型的には9,000~10,000kPaである。MFBの閾値は、典型的には、燃料チャージの少なくとも2%が遅れて、すなわち上死点後(ATDC)5.5度より前に燃焼されるようなものである。
【0152】
耐摩耗性は、高周波往復リグ(HFRR)において評価する。HFRRは、PCS Instrumentsから入手可能である。評価のための試験条件は、硬化鋼ディスク上の鋼球、200g荷重、60分持続時間、20ヘルツ周波数であり、温度は120℃で一定に保持した。
【0153】
耐酸化性及び清浄性は、コマツホットチューブ(KHT)、差圧走査熱量測定(PDSC)(例えば、L85-99)、MHT TEOST(ASTM D7097)、及びTEOST 33C(ASTM D6335)を含む一連の標準ベンチ試験で評価する。
【表3】
【0154】
上で説明される材料のうちのいくつかは、最終配合物中で相互作用し得るため、最終配合物の成分は、最初に添加されたものとは異なり得ることが既知である。意図された使用における本発明の潤滑剤組成物を使用する際に形成される生成物を含む、本明細書により形成される生成物は、簡単に説明できない場合がある。それにもかかわらず、全てのそのような修飾及び反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる。本発明は、上記成分を混合することによって調整される潤滑剤組成物を包含する。
【0155】
本明細書において別段の記載がない限り、本明細書において開示される潤滑組成物中に存在する成分の処理速度又は量への言及は、油フリー基準、すなわち活性物質の量に基づいて引用される。
【0156】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル置換基」又は「ヒドロカルビル基」という用語は、当業者に周知であるその通常の意味で使用される。具体的には、分子の残りの部分に直接結合した炭素原子を有し、1つ以上の二重結合を含む炭化水素特性を主に有する基を指す。ヒドロカルビル基の例としては、炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキル又はアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、並びに芳香族、脂肪族、及び脂環式置換芳香族置換基だけでなく、環が分子の別の部分を介して完成される(例えば、2つの置換基が一緒になって環を形成する)環状置換基;置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の文脈において、置換基の主に炭化水素の性質を変化させない非炭化水素基を含有する置換基(例えば、ハロ(特にクロロ及びフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、及びスルホキシ);ヘテロ置換基、すなわち、本発明の文脈において、主に炭化水素特性を有するが、そうでなければ炭素原子から構成された環又は鎖中に炭素以外を含有し、かつピリジル、フリル、チエニル、及びイミダゾリルとして置換基を包含する置換基が挙げられる。ヘテロ原子としては、硫黄、酸素、及び窒素が挙げられる。一般に、ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子毎に2個以下、又は1個以下の非炭化水素置換基が存在し、代替的に、ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基が存在しない場合がある。
【0157】
本開示は、本出願に記載された特定の実施形態に関して限定されるものではなく、様々な態様の例示として意図されている。当業者には明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び構成要素は、前述の説明から当業者に明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本開示は、添付の特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲と共に、そのような特許請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。本開示は、特定の方法、試薬、化合物、又は組成物に限定されず、これらは、もちろん変化し得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0158】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の言及を含む。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本開示におけるいかなるものも、本開示において説明される実施形態が、先行発明によってそのような開示に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」を意味する。
【0159】
種々の組成物、方法、及びデバイスが、種々の構成要素又はステップを「含む」(「含むが、これに限定されない」ことを意味すると解釈される)に関して説明されるが、組成物、方法、及びデバイスは更に、種々の構成要素及びステップ「から本質的になる」又は「からなる」ことができ、そのような専門用語は、本質的に閉鎖要素群を定義すると解釈されるべきである。
【0160】
本明細書における実質的に任意の複数形及び/又は単数形の用語の使用に関して、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形から単数形に、及び/又は単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の変換は、明確にするために本明細書に明示的に記載され得る。
【0161】
一般に、本明細書で使用される用語、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体)で使用される用語は、一般に「オープン」用語として意図される(例えば、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」と解釈されるべきであるなど)ことが当業者によって理解されるであろう。導入される請求項の記載の特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項において明示的に記載され、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが当業者によって更に理解されるであろう。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するために、導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の使用を含み得る。しかしながら、そのような句の使用は、同じ請求項が導入句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び「a」又は「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」又は「an」による請求項記載の導入が、そのような導入された請求項記載を含む任意の特定の請求項を、1つのみのそのような記載を含む実施形態に限定することを暗示するように解釈されるべきではない(例えば、「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味するように解釈されるべきである)。請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても同じことが当てはまる。加えて、導入される請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、当業者は、そのような記載が少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識するであろう(例えば、他の修飾語句を伴わない「2つの記載」という明白な記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B、及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似する規約が使用される場合、概して、そのような構成は、当業者が規約を理解するであろう意味で意図される(例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又はA、B、及びCを共に有するシステムなどを含むが、それらに限定されない)。「A、B、又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似する規約が使用される場合、概して、そのような構成は、当業者が規約を理解するであろう意味で意図される(例えば、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBを共に、A及びCを共に、B及びCを共に、並びに/又はA、B、及びCを共に有するシステムなどを含むが、それらに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する実質的に任意の選言的単語及び/又は句は、明細書、特許請求の範囲、又は図面にかかわらず、用語のうちの1つ、用語のいずれか、又は両方の用語を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者によって更に理解されるであろう。例えば、「A又はB」という語句は、「A」若しくは「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解されるであろう。
【0162】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載され得る場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々の要素又は要素のサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0163】
当業者によって理解されるように、書面による説明を提供することに関してなど、ありとあらゆる目的のために、本明細書に開示される全ての範囲は、ありとあらゆる可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。任意の列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1、及び上3分の1などに容易に分解することができる。当業者が理解するように、「最大」、「少なくとも」などの全ての文言は、上記で論じられるように、記載される数を含み、その後に部分範囲に分解できる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるように、範囲はそれぞれの個々の要素を含む。したがって、例えば、1~3重量%を有する基は、1、2、又は3重量%を有する基を指す。同様に、1~5重量%を有する基は、1、2、3、4、又は5重量%などを有する基を指し、その間の全ての点を含む。
【0164】
更に、処理速度について記載された範囲が提供される場合、このような範囲は、個々の成分及び/又は成分の混合物についての処理速度を含むことが意図される。したがって、例えば、1~3重量%の範囲は、所与の成分が1~3重量%の範囲で存在し得ること、又は同様の成分の混合物が1~3重量%の範囲で存在し得ることを企図する。
【0165】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、所与の量の値が、述べられた値の±20%以内であることを意味する。他の実施形態では、値は、表示値の±15%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±10%以内である。他の実施形態では、値は、表示値の±5%以内である。他の実施形態において、値は、表示値の±2.5%以内である。他の実施形態では、値は、記載された値の±1%以内である。
【0166】
特に明記しない限り、本明細書で使用される「重量%」は、オイルフリーベースの本潤滑組成物の総重量に基づく重量パーセントを指すものとする。
【国際調査報告】