(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗HER2抗体薬物コンジュゲート及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/30 20060101AFI20240312BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240312BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240312BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240312BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240312BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240312BHJP
【FI】
C07K16/30
A61K47/68
A61K45/00
A61K9/08
A61K47/22
A61K47/26
A61K38/05
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560882
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022023141
(87)【国際公開番号】W WO2022212899
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508048481
【氏名又は名称】アンブルックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ambrx,Inc.
【住所又は居所原語表記】10975 North Torrey Pines Road,Suite 100,La Jolla,California 92037,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ティアン,フェン
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,スラン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジンチュン
(72)【発明者】
【氏名】シャ,ギャン
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ヤンピン
(72)【発明者】
【氏名】ション,カオシュン
(72)【発明者】
【氏名】リャン,シュシュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE59
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA19
4C084BA15
4C084CA59
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、抗体が少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)、ならびにそのような非天然アミノ酸及びポリペプチドを作製する方法が開示される。ADCは広範囲の可能な官能基を含み得るが、通常は少なくとも1つのオキシム、カルボニル、ジカルボニル、及び/またはヒドロキシルアミン基を有する。また、翻訳後にさらに修飾される非天然アミノ酸ADC、そのような修飾を行うための方法、及びそのようなADCを精製するための方法も本明細書に開示される。通常、修飾されたADCには、少なくとも1つのオキシム、カルボニル、ジカルボニル、及び/またはヒドロキシルアミン基が含まれる。さらに、治療、診断、及び他のバイオテクノロジーでの使用を含む、そのような非天然アミノ酸ADC及び修飾された非天然アミノ酸ADCを使用するための方法がさらに開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって:
以下の構造を有する細胞毒性チューブリン類似体
【化1】
ならびに
配列番号2及び配列番号3を含む抗HER2抗体または抗体フラグメント、
を含み、式中、
【化2】
は、単結合または二重結合を示し、#は、前記抗HER2抗体または抗体フラグメントとの結合を示す、前記抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
【請求項2】
前記抗HER2抗体または抗体フラグメントが、前記ADCの重鎖、軽鎖、または重鎖及び軽鎖の両方に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む、請求項1に記載のADC。
【請求項3】
抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって:
以下の構造を有する細胞毒性チューブリン類似体
【化3】
及び
配列番号2を含む抗HER2抗体または抗体フラグメント、
を含み、ここで、前記抗HER2抗体または抗体フラグメントは、重鎖、軽鎖、または重鎖及び軽鎖の両方に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含み、式中
【化4】
は、単結合または二重結合を示し、ここで#は、前記抗HER2抗体または抗体フラグメントとの結合を示す、前記抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
【請求項4】
前記抗HER2抗体または抗体フラグメントが、前記重鎖に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のADC。
【請求項5】
【化5】
が、二重結合を示し、かつ前記チューブリン類似体は、二重結合を介して前記抗HER2抗体に共有結合されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のADC。
【請求項6】
前記二重結合が、前記チューブリン類似体と1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸のメンバーとの間である、請求項5に記載のADC。
【請求項7】
前記ADCが、2つの重鎖を含み、ここで、各重鎖は、配列番号2を含み、かつ、ここで各重鎖は、以下の構造を有する異なるチューブリン類似体に個々にコンジュゲートされており
【化6】
式中、#は、前記抗HER2抗体または抗体フラグメントへの結合を示す、請求項1~6に記載のADC。
【請求項8】
前記抗HER2抗体または抗体フラグメントがヒト化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のADC。
【請求項9】
前記1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸は、パラ-アセチルフェニルアラニンである、請求項1~8のいずれか1項に記載のADC。
【請求項10】
前記抗HER2抗体または抗体フラグメントの軽鎖が、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13のいずれか1つである、請求項1~9のいずれか1項に記載のADC。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の抗体薬物コンジュゲートを含む、組成物。
【請求項12】
追加の治療剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記追加の治療剤が、免疫療法剤、化学療法剤、ホルモン剤、抗腫瘍剤、免疫刺激剤もしくは免疫調節剤、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記追加の治療剤が、HER2標的化治療剤である、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記追加の治療剤が、チェックポイント阻害剤、HER2キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、小分子キナーゼ阻害剤もしくは白金系治療剤、またはそれらの組み合わせである、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
細胞を請求項1~10のいずれか1項に記載のADCと接触させることを含む、細胞を死滅させる方法。
【請求項17】
前記細胞が腫瘍またはがん細胞である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~10のいずれか1項に記載のADCを含む、医薬組成物。
【請求項19】
薬学的に許容される賦形剤をさらに含む、請求項18に記載の医薬組成物または塩。
【請求項20】
腫瘍またはがんの処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、前記ヒト対象に対して、請求項1~10のいずれか1項に記載のADCまたは請求項18もしくは19に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
前記有効量が、前記ヒト対象の体重1kg当たり約0.22、0.33、0.44、0.55、0.66、0.77、0.88、0.99、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0mg(mg/kg)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記有効量が、前記ヒト対象の体重1kg当たり約0.33、0.66、0.88、1.1、1.3、1.5、1.6、1.7、または1.8mg/kgである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が、1、2、3、4、5、6、7または8週間ごとに1回行われる、請求項20~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記投与が、2回以上の1、2、3、4、5、6、7または8週間のサイクル続けられる、請求項20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
投与が少なくとも4週間続く、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
投与が少なくとも3週間続く、請求項20~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記投与が、1、2、3、4、5、6、7または8週間サイクル内に2回以上行われる、請求項20~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が、4週間のサイクル内に2回以上行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与が、3週間のサイクル内に2回以上行われる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記投与される用量が、異なる投与日で同じである、請求項20~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記投与される用量が、異なる投与日で異なる、請求項20~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記ADCが、2週間ごとに1回、8週間超にわたって投与される、請求項20~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記ADCが、4週間ごとに1回、8週間超にわたって投与される、請求項20~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記腫瘍またはがんが、乳癌、卵巣癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、精巣癌、前立腺癌、大腸癌、食道癌、膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、尿路上皮癌、胆管癌、結腸胆道癌、膵臓癌、または固形腫瘍である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記腫瘍またはがんが、乳癌、卵巣癌または胃癌である、請求項20~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記投与が、第1の4週間サイクルの1日目に約1.8mg/kgの用量のADCを含む、請求項24~28及び30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記投与が、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.7mg/kg、1.5mg/kg、1.3mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記投与が、第1の4週間サイクルの1日目に、約1.7mg/kgの用量のADCを含む、請求項24~28及び30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記投与が、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kg、1.3mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記投与が、第1の4週間サイクルの1日目に約1.6mg/kgの用量のADCを含む、請求項24~28及び30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記投与が、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kg、1.3mg/kg、1.1mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記投与が、第1の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kgの用量のADCを含む、請求項24~28及び請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記投与が、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.3mg/kg、1.1mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記投与が、2回以上の3週サイクル続けられる、請求項24~27及び請求項29~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記投与が、第1の3週間サイクルの1日目に約1.8mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約1.7mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約1.5mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約1.3mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約1.1mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約0.88mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
前記投与が、3週間の第1のサイクルの1日目に約0.66mg/kgの用量のADCを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項52】
前記ヒト対象に有効量の追加の治療剤を投与することをさらに含む、請求項20~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記追加の治療剤が、化学療法剤、ホルモン剤、抗腫瘍剤、免疫刺激剤、免疫調節剤、もしくは免疫療法剤、またはそれらの組み合わせである、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記追加の治療剤が、チェックポイント阻害剤、HER2キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、小分子キナーゼ阻害剤もしくは白金系治療剤、またはそれらの組み合わせである、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記治療剤がHER2標的化療法剤である、請求項52に記載の方法。
【請求項56】
がん細胞死滅を改善または最適化する、請求項20~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記腫瘍またはがんの進行または再発を遅延させる、請求項20~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与が、経口、皮内、腫瘍内、静脈内、または皮下である、請求項20~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記腫瘍またはがんが、HER-2発現癌である、請求項20~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
前記がんが、HER-2低発現癌、HER2中発現癌、またはHER2高発現癌である、請求項20~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記治療されるべき対象が、HER-2発現癌、及び/または同じもしくは異なる癌からのがん転移を有する、請求項20~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
(i)請求項1~10のいずれか1項に記載された約20mg/mLのADC;(ii)約pH6.0の約5mMのヒスチジン緩衝液、(iii)約6(w/v)%のトレハロース、及び(iv)約0.02(w/v)%のポリソルベート80を含む、製剤。
【請求項63】
前記ヒスチジンがL-ヒスチジンである、請求項62に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2021年4月3日に出願された米国仮特許出願第63/170,446号、2021年5月28日に出願された米国仮特許出願第63/194,929号、2021年6月14日に出願された米国仮特許出願第63/210,481号、及び2021年10月20日に出願された米国仮特許出願第63/257,999号、2022年1月14日に出願された米国仮特許出願第63/299,879号(その各出願は、参照により本明細書に完全に組み込まれる)の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
HER2は、膜貫通チロシンキナーゼの上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーである。HER2の増幅または過剰発現は、原発性乳癌の約25~30%に発生し、その他の多くの固形腫瘍タイプでは頻度が低く(Mitri et al.,Chemother Res Pract,2012:743193)、乳癌(Spears et al.,Breast Cancer Res Treat.2012;134(2):701-8)及び胃癌(Bang et al.,Lancet,2010;376(9742):687-97;Boku et al.,Gastric Cancer.2014;17(1):1-12)における無再発生存期間及び全生存期間(OS)の短縮、ならびに肺癌、卵巣癌、大腸癌、及び膵癌におけるOS時間の短縮(Sithanandam et al.,Cancer Gene Ther.2008;15(7):413-48)を含むネガティブな予後と関連する。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって:
以下の構造を有する細胞毒性チューブリン類似体269
【化1】
ならびに
配列番号2及び配列番号3を含む抗HER2抗体または抗体フラグメントを含み、
式中、
【化2】
は、単結合または二重結合を示し、#は、抗HER2抗体または抗体フラグメントとの結合を示す、抗体薬物コンジュゲート(ADC)に関する。
【0004】
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体または抗体フラグメントは、重鎖、軽鎖、または重鎖及び軽鎖の両方に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む。
【0005】
本開示の別の態様は、抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって:
以下の構造を有する細胞毒性チューブリン類似体
【化3】
及び
配列番号2を含む抗HER2抗体または抗体フラグメントを含み、
ここで、抗HER2抗体または抗体フラグメントは、重鎖、軽鎖、または重鎖及び軽鎖の両方に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含み、式中
【化4】
は、単結合または二重結合を示し、ここで#は、抗HER2抗体または抗体フラグメントとの結合を示す、抗体薬物コンジュゲート(ADC)に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、抗HER2抗体または抗体フラグメントは、重鎖に組み込まれた1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、
【化5】
は、二重結合を示し、かつチューブリン類似体は、二重結合を介して抗HER2抗体に共有結合されている。いくつかの実施形態では、二重結合は、チューブリン類似体と1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸のメンバーとの間である。いくつかの実施形態では、ADCは、2つの重鎖を含み、ここで、各重鎖は、配列番号2を含み、かつ、各重鎖は、以下の構造を有する異なるチューブリン類似体に個々にコンジュゲートされている
【化6】
(式中、#は、抗HER2抗体または抗体フラグメントへの結合を示す)。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体または抗体フラグメントは、ヒト化されている。いくつかの実施形態では、1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸は、パラ-アセチルフェニルアラニンである。いくつかの実施形態では、抗HER2抗体または抗体フラグメントの軽鎖は、配列番号4、5、6、7、8、9、10、11、12及び13のいずれか1つである。
【0007】
本開示のさらに別の態様は、本明細書に開示された抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む組成物に関する。
【0008】
いくつかの実施形態では、本組成物は、追加の治療剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、免疫療法剤、化学療法剤、ホルモン剤、抗腫瘍剤、免疫刺激剤もしくは免疫調節剤、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、HER2標的化治療剤である。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤、HER2キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、小分子キナーゼ阻害剤もしくは白金系治療剤、またはそれらの組み合わせである。
【0009】
本開示の別の態様は、細胞を本明細書に開示されたADCと接触させることを含む、細胞を死滅させる方法に関する。
【0010】
いくつかの実施形態では、細胞は腫瘍またはがん細胞である。
【0011】
本開示のさらに別の態様は、本明細書に開示されたADCを含む医薬組成物に関する。
【0012】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0013】
本開示の別の態様は、腫瘍またはがんの処置をそれを必要とするヒト対象において行う方法であって、本明細書に開示されるADCまたは本明細書に開示される医薬組成物の有効量をヒト対象に投与することを含む、方法に関する。
【0014】
いくつかの実施形態では、有効量は、ヒト対象の体重1kg当たり約0.22、0.33、0.44、0.55、0.66、0.77、0.88、0.99、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または2.0mg(mg/kg)である。いくつかの実施形態では、有効量は、ヒト対象の体重1kg当たり約0.33、0.66、0.88、1.1、1.3、1.5、1.6、1.7、または1.8mg/kgである。いくつかの実施形態では、投与は、1、2、3、4、5、6、7、または8週間ごとに1回行われる。いくつかの実施形態では、投与は、2回以上の1、2、3、4、5、6、7または8週間のサイクルにわたり継続する。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも4週間継続する。いくつかの実施形態では、投与は、少なくとも3週間継続する。いくつかの実施形態では、投与は、1、2、3、4、5、6、7、または8週間以上のサイクル内に2回以上行われる。いくつかの実施形態では、投与は、4週間サイクル内に2回以上行われる。いくつかの実施形態では、投与は、3週間のサイクル内に2回以上行われる。いくつかの実施形態では、投与される投与量は、異なる投与日で同じである。いくつかの実施形態では、投与される投与量は、異なる投与日で異なる。いくつかの実施形態では、ADCは、8週間超にわたって2週間ごとに1回、投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、8週間超にわたって4週間ごとに1回、投与される。いくつかの実施形態では、腫瘍またはがんは、乳癌、卵巣癌、胃癌、胃食道接合部腺癌、子宮頸癌、子宮癌、子宮内膜癌、精巣癌、前立腺癌、大腸癌、食道癌、膀胱癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、尿路上皮癌、胆管癌、結腸胆道癌、膵臓癌、または固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、腫瘍またはがんは、乳癌、卵巣癌または胃癌である。
【0015】
いくつかの実施形態では、投与は、第1の4週間サイクルの1日目に約1.8mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.7mg/kg、1.5mg/kg、1.3mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の4週間サイクルの1日目に、約1.7mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kg、1.3mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の4週間サイクルの1日目に約1.6mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kg、1.3mg/kg、1.1mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の4週間サイクルの1日目に、約1.5mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第2の4週間サイクルの1日目に、約1.3mg/kg、1.1mg/kgまたはそれ以下の用量のADCをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、投与は2回以上の3週間サイクルにわたり継続する。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約1.8mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約1.7mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約1.5mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約1.3mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約1.1mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約0.88mg/kgの用量のADCを含む。いくつかの実施形態では、投与は、第1の3週間サイクルの1日目に約0.66mg/kgの用量のADCを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、この方法は、ヒト対象に有効量の追加の治療剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、化学療法剤、ホルモン剤、抗腫瘍剤、免疫刺激剤、免疫調節剤もしくは免疫療法剤、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、追加の治療剤は、チェックポイント阻害剤、HER2キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、小分子キナーゼ阻害剤もしくは白金系治療剤、またはそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、治療剤は、HER2標的化治療剤である。いくつかの実施形態では、本方法は、がん細胞の死滅を改善または最適化する。いくつかの実施形態では、本方法は、腫瘍またはがんの進行または再発を遅延させる。いくつかの実施形態では、投与は、経口、皮内、腫瘍内、静脈内、または皮下である。いくつかの実施形態では、腫瘍またはがんは、HER-2発現癌である。いくつかの実施形態では、がんは、HER-2低発現癌、HER2中発現癌、またはHER2高発現癌である。いくつかの実施形態では、治療されるべき対象は、HER-2発現癌、及び同じまたは異なる癌からのがん転移を有する。
【0018】
本開示のさらに別の態様は、(i)本明細書に開示された約20mg/mlのADC;(ii)約pH6.0の約5mMのヒスチジン緩衝液、(iii)約6(w/v)%のトレハロース、及び(iv)約0.02(w/v)%のポリソルベート80を含む製剤に関する。
【0019】
いくつかの実施形態では、ヒスチジンは、L-ヒスチジンである。
【0020】
参照による組み込み
本明細書に記述される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許、または特許出願が、明確かつ個別に参照により組み込まれることが示されているのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本開示における使用に適した細胞毒性チューブリン阻害剤AS269を含む例示的な抗体薬物コンジュゲート(ADC)を示す。
【
図2】1.5mg/kg及び1.3mg/kgのコホートにおけるベースラインからの標的病変の合計の最良の変化のウォーターフォールプロットを示す。
【
図3】時間の経過に伴う、ベースラインからの標的病変の合計におけるスパイダープロットの変化を示す。
【
図4】1.5mg/kgで投与したコホートにおける持続的な反応を示す。
【
図5】1.5mg/kgのQ4Wコホート中のPan腫瘍のウォーターフォールプロットを示す。
【
図6】1.5mg/kgで投与した乳房コホートにおける持続的な反応を示す。
【
図7】1.5mg/kg及び1.3mg/kgのベースラインからのウォーターフォールプロットの変化を示す。
【
図8】1.3mg/kgで投与した乳房コホートにおける持続的な反応を示す。
【
図9】1.5mg/kg及び1.3mg/kgのQ3W/Q4Wでの生存確率を示す。
【
図10】1.5mg/kgのQ3W及び1.3mg/kgのQ3Wでの生存確率を示す。
【
図11】1.5mg/kg及び1.3mg/kgのQ3W/Q4Wでの生存確率を示す。
【
図12】1.5mg/kgのQ3W及び1.3mg/kgのQ3Wでの生存確率を示す。
【
図13】ADCの2サイクル後に部分奏功したHR+/HER2低転移性乳癌患者を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の過剰発現及び/または増幅は、乳癌(BC)の約20%に起こり、腫瘍の発生及び進行の主な要因である。このHER2サブタイプは強力な腫瘍挙動を付与し、HER2受容体は抗体、二重特異性、及び抗体薬物コンジュゲート(ADC)の貴重な標的であり続ける。標的療法の進歩により、HER2陽性乳癌(HER2+BC)の患者は、生存率を含む予後の改善を受ける場合がある。薬剤耐性を克服し、かつ有害事象(例えば心毒性)の軽減を支援するために、新規なHER2標的療法が研究されている。本開示は、HER2特異的モノクローナル抗体と、強力な細胞毒性チューブリン阻害剤であるアンバスタチン269(AS269)とをコンジュゲートさせる技術プラットフォームを用いた次世代ADCを提供する。ADCの部位特異性、高い均質性、及び安定した共有結合は、その緩慢な放出及び血清pAF-AS269の延長したピークをもたらし、このことは、他のHER2 ADCと比較してより低い有効量で全身毒性の低下及び腫瘍細胞へのペイロードの標的送達の増加に寄与し得る。本開示のADCは、がん細胞表面上のHER2への結合、急速な内在化、ライソソームへの輸送、及びライソソーム内の代謝によるpAF-AS269の放出(微小管に結合し、がん細胞周期停止及び細胞死を誘発する)を含む複数の連続するステップを通じてHER2過剰発現細胞の増殖を阻害するように設計された。
【0023】
本明細書では、抗体及び1つ以上の薬物などの標的化部位を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)が開示される。薬物は、1種以上のリンカー(複数可)をさらに含んでもよい。本開示のADCは、標的化部位における非天然アミノ酸に連結する薬物を含んでもよい。また、標的化部位ポリペプチドに組み込まれる非天然アミノ酸を含むこのようなADCの製造方法も含まれる。
【0024】
特定の実施形態では、任意の記載される化合物、及び薬学的に許容される担体、賦形剤または結合剤を含む、医薬組成物が提供される。
【0025】
さらなる実施形態または代替的な実施形態では、患者におけるポリペプチドの存在を検出するための方法があり、この方法は、少なくとも1つの複素環含有非天然アミノ酸を含むポリペプチドを投与することを含み、得られた複素環含有非天然アミノ酸ポリペプチドは、相同な天然に存在するアミノ酸ポリペプチドに対するポリペプチドの免疫原性を調節する。
【0026】
本明細書に記載される方法及び組成物は本明細書に記載の特定の方法論、プロトコール、細胞株、構築物、及び試薬に限定されることはなく、したがって、変更されてもよいことが理解されるべきである。本明細書で使用される用語が特定の実施形態のみを記述するために使用されるものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本明細書に記載の方法及び組成物の範囲を限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。
【0027】
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本開示に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般的に理解される意味を有するものとする。用語の意味及び範囲は明確であるべきだが、潜在的な曖昧さがある場合には、本明細書において提供される定義は、あらゆる辞書または外因的定義に優先する。さらに、別段文脈によって要求されない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。本出願において、「または」の使用は、別途記載のない限り、「及び/または」を意味する。さらに、「含む(including)」という用語、ならびに「含む(includes)」及び「含まれる(included)」などの他の形態の使用は、限定的ではない。
【0028】
一般的に、本明細書に記載される、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝子及びタンパク質ならびに核酸化学及びハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及びそれらの技術は、当該技術分野で周知であり、かつ一般的に使用されるものである。本開示の方法及び技術は、一般的に、当該技術分野で周知の従来の方法に従って、かつ特段の記載がない限り、本明細書全体を通して引用及び考察される、種々の一般的かつさらに詳細な引用文献に記載されるように行われる。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様書に従って、当該技術分野において一般的に達成されるように、または本明細書に記載されるように実行される。本明細書に記載の分析化学、合成有機化学、ならびに医化学及び製薬化学に関連して用いられる命名法、ならびにそれらの実験手順及び技法は、当該技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。標準の技法は、化学合成、化学分析、薬学的調製物、製剤、及び送達、及び患者の治療に使用される。本開示はより容易に理解され得るが、選択された用語は以下で定義される。
【0029】
本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数形を含む。
【0030】
「アルドール系結合」または「混合アルドール系結合」という用語は、β-ヒドロキシカルボニル化合物、すなわちアルドールを生成する、同一であってもなくてもよい別のカルボニル化合物のエノラート/エノールとの1つのカルボニル化合物の酸または塩基触媒による縮合を指す。
【0031】
本明細書で使用される「親和性標識」という用語は、別の分子を改変するか、破壊するか、またはそれと化合物を形成するために、その分子と可逆的または不可逆的に結合する標識を指す。例として、親和性標識は、酵素及びその基質、または抗体及びその抗原を含む。
【0032】
「アルコキシ」、「アルキルアミノ」及び「アルキルチオ」(またはチオアルコキシ)という用語は、それらの従来の意味で使用され、それぞれ、酸素原子、アミノ基、または硫黄原子を介して分子に連結されたアルキル基を指す。
【0033】
「アルキル」という用語は、それ自体でまたは別の分子の一部として、特に指示がない限り、直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、またはそれらの組み合わせを意味し、これらは完全に飽和、モノもしくはポリ不飽和であってもよく、指定される炭素原子の数を有する(すなわち、C1-C10は、1~10個の炭素を意味する)二価及び多価ラジカルを含んでもよい。飽和炭化水素ラジカルの例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えば、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチルの同族体及び異性体などの基が挙げられる。不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合または三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2-プロペニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル、ならびに高級同族体及び異性体が挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル」という用語は、特に断りのない限り、本明細書でより詳細に定義される、「ヘテロアルキル」、「ハロアルキル」及び「ホモアルキル」などのアルキルの誘導体を含むことも意味する。
【0034】
それ自体でまたは別の分子の一部としての「アルキレン」という用語は、(-CH2-)n(式中、nは1~約24であり得る)で例示されるように、アルカンから誘導される二価のラジカルを意味する。単なる例として、そのような基としては、限定するものではないが、例えば-CH2CH2-及び-CH2CH2CH2CH2-構造などの10個以下の炭素原子を有する基が挙げられる。「低級アルキル」または「低級アルキレン」とは、より短い鎖のアルキルまたはアルキレン基であり、概して、8個以下の炭素原子を有する。「アルキレン」という用語は、特に明記されない限り、本明細書に記載される基を「ヘテロアルキレン」として含むことも意味する。
【0035】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸、及び非天然のアミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の形で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を指す。天然にコードされたアミノ酸は、20個の共通のアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)及びピロリジン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、ほんの一例では、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基に結合しているα炭素を指す。このような類似体は、修飾されたR基を有するか(例えばノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸と同じ基本化学構造をやはり保持している。アミノ酸類似体の非限定的な例としては、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムが挙げられる。
【0036】
アミノ酸は、本明細書では、それらの名称、広く知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨されている1文字の記号のいずれかによって表されている場合がある。さらに、ヌクレオチドは、それらの広く認められている1文字の略号で表されてもよい。
【0037】
「アミノ末端修飾基」とは、末端アミン基に結合し得る任意の分子を指す。例として、このような末端アミン基は、ポリマー分子の末端にあってもよく、このようなポリマー分子としては、限定するものではないが、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びポリサッカライドが挙げられる。末端修飾基は、限定するものではないが、多様な水溶性ポリマー、ペプチドまたはタンパク質を含む。単なる例として、末端修飾基は、ポリエチレングリコールまたは血清アルブミンを含む。末端修飾基は、ペプチドの血清半減期の増大を含むがこれに限定されないポリマー分子の治療特性を修飾するために使用されてもよい。
【0038】
本明細書での「抗体」とは、抗体遺伝子の全部または一部によって実質的にコードされた1つ以上のポリペプチドからなるタンパク質を意味する。免疫グロブリン遺伝子としては、限定するものではないが、カッパ定常領域遺伝子、ラムダ定常領域遺伝子、アルファ定常領域遺伝子、ガンマ定常領域遺伝子(IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4)、デルタ定常領域遺伝子、イプシロン定常領域遺伝子、及びミュー定常領域遺伝子、ならびに莫大な数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。本明細書における抗体とは、全長の抗体及び抗体フラグメントを含むことを意味し、任意の生物に自然に存在するか、または設計された抗体(例えば、バリアントである)を含む。
【0039】
「抗体フラグメント」とは、全長の形態以外の任意の形態の抗体を意味する。本明細書における抗体フラグメントには、全長抗体内に存在するより小さい成分である抗体、及び操作された抗体が含まれる。抗体フラグメントとしては、限定するものではないが、Fv、Fc、Fab及び(Fab’)2、一本鎖Fv(scFv)、ダイアボディー、トリアボディー、テトラボディー、二官能性ハイブリッド抗体、CDR1、CDR2、CDR3、CDRの組み合わせ、可変領域、フレームワーク領域、定常領域、重鎖、軽鎖、及び可変領域の組み合わせ、ならびに代替足場非抗体分子、二重特異性抗体などが挙げられる(Maynard & Georgiou,2000,Annu.Rev.Biomed.Eng.2:339-76;Hudson,1998,Curr.Opin.Biotechnol.9:395-402)。別の機能的部分構造は、ペプチドリンカーによって共有結合した免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の可変領域で構成される一本鎖Fv(scFv)である(S-z Hu et al.,1996,Cancer Research,56,3055-3061)。これらの小さい(Mr 25,000)タンパク質は、一般に単一のポリペプチドにおいて抗原に対する特異性及び親和性を保持し、かつより大きな抗原特異的分子に対する便利な構成単位を提供し得る。特に断りのない限り、「抗体」または「抗体(複数可)」という用語を使用する明細書及び請求項は、具体的には「抗体フラグメント」及び「抗体フラグメント(複数可)」を含む。
【0040】
本明細書で使用される「抗体薬物コンジュゲート」または「ADC」とは、1つ以上の生物学的活性分子(複数可)に共有結合した抗体分子またはそのフラグメントを指す。生物学的活性分子は、リンカー、ポリマーまたは他の共有結合を介して抗体にコンジュゲートされ得る。
【0041】
本明細書で使用される「芳香族」または「アリール」という用語は、共役パイ電子系を有する少なくとも1つの環を有し、かつ炭素環式アリール基及び複素環式アリール(または「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」)基の両方を含む閉環構造を指す。炭素環式または複素環式芳香族基は、5~20個の環原子を含み得る。この用語には、共有結合した単環式環または縮合環多環(すなわち、隣接する炭素原子対を共有する環)基が含まれる。芳香族基は、非置換型であっても、または置換型であってもよい。「芳香族」または「アリール」基の非限定的な例としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、アントラセニル、及びフェナントラセニルが挙げられる。上記のアリール及びヘテロアリール環系の各々に関する置換基は、本明細書に記載の許容される置換基の群から選択される。
【0042】
簡潔にするために、他の用語(限定するものではないが、アリールオキシ、アリールチオキシ、アラルキルなど)と組み合わせて用いる場合、「芳香族」または「アリール」という用語には、上で定義したようなアリール環とヘテロアリール環の両方が含まれる。したがって、「アラルキル」または「アルカリール」という用語には、アリール基が、アルキル基に結合しているラジカル(例としては、限定するものではないが、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチルなど)を含むことを意味しており、これには、炭素原子(限定するものではないが、メチレン基など)が、ヘテロ原子、一例として、酸素原子で置き換えられているアルキル基が挙げられる。このようなアリール基の例としては、限定するものではないが、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピルなどが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される「アリーレン」という用語は、二価アリールラジカルを指す。「アリーレン」の非限定的な例としては、フェニレン、ピリジニレン、ピリミジニレン及びチオフェニレンが挙げられる。アリーレン基の置換基は、本明細書に記載される許容可能な置換基の群から選択される。
【0044】
「二官能性リンカー」とも呼ばれる「二官能性ポリマー」とはまた、共有結合または非共有結合を形成するために他の部分と特異的に反応し得る2つの官能基を含むポリマーを指す。かかる部分としては、天然もしくは非天然アミノ酸、またはかかる天然もしくは非天然アミノ酸を含むペプチドの側基が含まれ得るが、これらに限定されない。二官能性リンカーまたは二官能性ポリマーに連結され得る他の部分は、同じ部分であっても、または異なる部分であってもよい。一例にすぎないが、二官能性リンカーは、第1のペプチド上の基と反応性の官能基と、第2のペプチド上の基と反応性の別の官能基とを有してもよく、それによって、第1のペプチド、二官能性リンカー及び第2のペプチドを含むコンジュゲートが形成される。種々の化合物をペプチドに結合させるための多くの手順及びリンカー分子が公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、欧州特許出願第188,256号;米国特許第4,671,958号、同第4,659,839号、同第4,414,148号、同第4,699,784号、同第4,680,338号、及び同第4,569,789号を参照のこと。「多官能性リンカー」とも呼ばれる「多官能性ポリマー」は、他の部分と反応し得る2つ以上の官能基を含むポリマーを指す。かかる部分としては、天然もしくは非天然アミノ酸、またはかかる天然もしくは非天然アミノ酸を含むペプチドの側基が含まれ得るが、これらに限定されない。共有結合または非共有結合を形成するための(アミノ酸側基を含むが、これらに限定されない)。二官能性ポリマーまたは多官能性ポリマーは、任意の所望の長さまたは分子量であってよく、化合物に連結された1つ以上の分子とそれが結合または化合物に結合する分子との間に特定の所望の間隔または立体配座を提供するように選択され得る。
【0045】
本明細書で使用される「生物学的利用能」という用語は、物質またはその活性部分が、医薬剤形から送達され、作用部位または一般的な循環で利用可能となる速度及び程度を指す。生物学的利用能の増大とは、物質またはその活性部分が医薬剤形から送達され、かつ作用部位または一般的な循環で利用可能となる速度及び程度を増大させることを指す。例として、生物学的利用能の増大は、他の物質または活性部分と比較した場合、血液中の物質またはその活性部分の濃度の増加として示され得る。生物学的利用能の増大を評価する方法は、当該技術分野で知られており、任意のポリペプチドの生物学的利用能を評価するために使用され得る。
【0046】
「生物学的活性分子」、「生物学的活性部分」または「生物学的活性剤」という用語は、本明細書で使用される場合、ウイルス、細菌、バクテリオファージ、トランスポゾン、プリオン、昆虫、真菌、植物、動物及びヒトを含むがこれらに限定されない、生物に関連する生物系、経路、分子または相互作用の任意の物理的または生化学的特性に影響を及ぼし得る任意の物質を意味する。特に、本明細書で使用される場合、生物学的活性分子は、ヒトまたは他の動物における疾患の診断、治療、緩和、処置、もしくは予防を意図するか、そうでなければヒトもしくは動物の物理的もしくは精神的な健康を増進することを意図する任意の物質を含むが、これらに限定されない。生物学的活性分子の例としては、限定するものではないが、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬物、硬性薬物、ソフトドラッグ、プロドラッグ、炭水化物、無機原子または分子、色素、脂質、ヌクレオシド、放射性核種、オリゴヌクレオチド、毒素、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子及びミセルが挙げられる。本明細書に記載された方法及び組成物での使用に適した生物活性剤のクラスには、限定するものではないが、薬剤、プロドラッグ、放射性核種、造影剤、ポリマー、抗生物質、殺真菌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、心血管剤、抗不安剤、ホルモン、成長因子、ステロイド剤、微生物由来毒素などが挙げられる。
【0047】
「生物学的活性の調節」とは、ポリペプチドの反応性の増減、ポリペプチドの選択性の変更、ポリペプチドの基質選択性の増減を意味する。修飾された生物活性の分析は、非天然ポリペプチドの生物活性を天然ポリペプチドの生物活性と比較することにより行うことができる。
【0048】
本明細書で使用される「生体材料」という用語は、限定するものではないが、バイオリアクター及び/または組換えの方法及び技術から得られた材料を含む、生体由来の材料を指す。
【0049】
本明細書で使用される「生物物理学的プローブ」という用語は、分子の構造変化を検出またはモニタリングできるプローブを指す。このような分子としては、限定するものではないが、タンパク質が挙げられ、「生物物理学的プローブ」を使用して、タンパク質と他のマクロ分子との相互作用を検出またはモニタリングしてもよい。生物物理学的プローブの例としては、限定するものではないが、スピン標識、フルオロフォア及び光活性化基が挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される「生合成的」という用語は、以下の成分:ポリヌクレオチド、コドン、tRNA、及びリボソームのうちの少なくとも1つの使用を含む、翻訳システム(細胞または非細胞)を利用する任意の方法を指す。一例として、非天然アミノ酸は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2002/085923号に記載の方法及び技術を用いて、非天然アミノ酸ポリペプチドに「生合成的に組み込まれ」てもよい。さらに、非天然アミノ酸ポリペプチドに「生合成的に組み込まれ」てもよい有用な非天然アミノ酸の選択方法は、WO2002/085923号に記載されており、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0051】
本明細書で使用される「ビオチン類似体」または「ビオチン模倣物」とも呼ばれる用語は、アビジン及び/またはストレプトアビジンに高親和性で結合する、ビオチン以外の任意の分子である。
【0052】
本明細書で使用される「カルボニル」という用語は、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)2-及び-C(S)-からなる群から選択される部分を含む基、例としては、限定するものではないが、少なくとも1つのケトン基、及び/または少なくとも1つのアルデヒド基、及び/または少なくとも1つのエステル基、及び/または少なくとも1つのカルボン酸基、及び/または少なくとも1つのチオエステル基を含む基を指す。そのようなカルボニル基には、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、及びチオエステルが含まれる。さらに、そのような基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状の分子の一部であってもよい。
【0053】
「カルボキシ末端修飾基」という用語は、末端カルボキシ基に結合し得る任意の分子を指す。例として、このような末端カルボキシ基は、ポリマー分子の末端にあってもよく、このようなポリマー分子としては、限定するものではないが、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、及びポリサッカライドが挙げられる。末端修飾基としては、限定するものではないが、多様な水溶性ポリマー、ペプチドまたはタンパク質が挙げられる。単なる例として、末端修飾基は、ポリエチレングリコールまたは血清アルブミンを含む。末端修飾基は、ペプチドの血清半減期の増大を含むがこれに限定されないポリマー分子の治療特性を修飾するために使用されてもよい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「化学的に切断可能な基」という用語「化学的に不安定」とも呼ばれる)は、酸、塩基、酸化剤、還元剤、化学開始剤、またはラジカル開始剤に曝されると破断または切断する基を指す。
【0055】
本明細書で使用される「コフォールディング(cofolding)」とは、互いに相互作用し、アンフォールディングまたは不適切にフォールディングされた分子を適切にフォールディングされた分子に変換する少なくとも2つの分子を利用するリフォールディングプロセス、反応、または方法を指す。単なる例であるが、「コフォールディング」とは、互いに相互作用し、アンフォールディングまたは不適切にフォールディングされたポリペプチドを天然の適切にフォールディングされたポリペプチドに変換する少なくとも2つのポリペプチドを使用する。そのようなポリペプチドは、天然アミノ酸及び/または少なくとも1つの非天然アミノ酸を含んでもよい。
【0056】
本明細書で使用される「コンジュゲート(conjugate)」とは、本明細書に記載の化合物または化合物リンカーに直接的にまたはリンカーを介して結合、例えば共有結合しているポリペプチドを指す。「標的化部位」とは、他の非標的分子と比較して、標的分子に選択的な親和性を有する構造を指す。本開示の標的化部位は、標的分子に結合する。標的化部位は、例えば、抗体、ペプチド、リガンド、受容体、またはそれらの結合部分を含んでもよい。標的生物学的分子は、腫瘍抗原などの細胞の生物学的受容体または他の構造であってもよい。本明細書で使用する場合、「本発明のコンジュゲート」、「本開示のコンジュゲート」、「標的化部位のコンジュゲート」、「標的化コンジュゲート」または「標的化部位-活性分子のコンジュゲート」という用語は、AS269などの細胞毒性チューブリン阻害剤を含むがこれらに限定されない、生物学的活性分子、その一部またはその類似体にコンジュゲートした細胞またはそのサブユニット上に存在する標的に結合する標的化ポリペプチド、またはその部分、類似体、もしくは誘導体を指す。本明細書で使用する場合、「腫瘍標的化部位コンジュゲート」、または「腫瘍標的化部位-生物学的活性分子コンジュゲート」という用語は、AS269などの細胞毒性チューブリン阻害剤を含むがこれらに限定されない、生物学的活性分子またはその部分、またはその類似体にコンジュゲートされた腫瘍細胞またはそのサブユニット上に存在する標的に結合する腫瘍標的化ポリペプチドまたはその部分、類似体もしくは誘導体を指す。特に明記しない限り、「本発明の化合物」、「本開示の化合物」、「本開示の組成物」及び「本発明の組成物」という用語は、「本発明のコンジュゲート」という用語に対する代替として使用される。
【0057】
「保存的に修飾されたバリアント」という用語は、天然及び非天然のアミノ酸ならびに天然及び非天然の核酸配列の両方、ならびにそれらの組み合わせに適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾されたバリアント」とは、同一または実質的に同一の天然及び非天然のアミノ酸配列をコードする天然及び非天然の核酸を指すか、またはその天然及び非天然の核酸が、天然及び非天然のアミノ酸配列をコードしない場合、本質的に同一の配列を指す。例として、遺伝暗号の縮重という理由で、多数の機能的に同一の核酸が任意の特定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸アラニンをコードする。これにより、アラニンがコドンによって特定される位置ごとに、コードされたポリペプチドを変更することなく、コドンを対応する記載のコドンのいずれかに変更してもよい。このような核酸の変異は「サイレント変異(silent variation)」であり、これは保存的に改変された変異の1種である。したがって、例として、天然または非天然のポリペプチドをコードする本明細書のあらゆる天然または非天然核酸配列も、天然または非天然核酸のあらゆる可能なサイレント変異(silent variation)を記載する。当業者は、天然または非天然核酸の各コドン(通常はメチオニンについては唯一のコドンであるAUGと、トリプトファンについては通常は唯一のコドンであるTGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識し得る。したがって、天然及び非天然のポリペプチドをコードする天然及び非天然の核酸の各々のサイレント変異は、各々の記載された配列において黙示的である。
【0058】
アミノ酸配列に関して、コードされた配列中の単一の天然及び非天然のアミノ酸または少ない割合の天然及び非天然のアミノ酸を変更、追加または削除する核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列への個々の置換、削除または追加は、「保存的に修飾されたバリアント」であり、この変さらにより、アミノ酸の削除、アミノ酸の付加、または天然及び非天然のアミノ酸と化学的に類似のアミノ酸との置換が生じる。機能的に類似の天然アミノ酸を提供する保存的置換表は、当該技術分野で周知である。そのような保存的に修飾されたバリアントは、多型バリアント、種間ホモログ、及び本明細書に記載の方法及び組成物の対立遺伝子に加えて存在し、それらを除外するものではない。
【0059】
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に公知である。次の8つの群は、それぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1)アラニン(A)、グリシン(G);2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4)アルギニン(R)、リジン(K);5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7)セリン(S)、スレオニン(T);及び8)システイン(C)、メチオニン(M)。(例えば、Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W H Freeman & Co.;2nd edition(December 1993)を参照のこと)。
【0060】
「シクロアルキル」と「ヘテロシクロアルキル」という用語は、別段の定めのない限り、それ自体でまたは他の用語と組み合わせて、それぞれ、「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環状形態を表す。したがって、シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルには、飽和の、部分的に不飽和の、及び完全に不飽和の環結合が含まれる。それに加えて、ヘテロシクロアルキルに関して、ヘテロ原子は、複素環が分子の残りの部分に付加される位置を占めてもよい。ヘテロ原子としては、限定するものではないが、酸素、窒素または硫黄が含まれ得る。シクロアルキルの例としては、限定するものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチルなどが挙げられる。ヘテロシクロアルキルの例としては、限定するものではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニルなどが挙げられる。さらに、この用語は、二環式及び三環式環構造を含むがこれらに限定されない多環式構造を包含する。同様に、それ自体でまたは別の分子の一部としての「ヘテロシクロアルキレン」という用語は、ヘテロシクロアルキルから誘導された二価ラジカルを意味し、かつそれ自体でまたは別の分子の一部としての「シクロアルキレン」という用語は、シクロアルキルから誘導された二価ラジカルを意味する。
【0061】
本明細書で使用される「シクロデキストリン」という用語は、環形成における少なくとも6~8個のグルコース分子からなる環状炭水化物を指す。環の外側の部分は水溶性基を含み、環の中心は小分子を収容し得る比較的非極性の空洞である。
【0062】
本明細書で使用される「細胞毒性」という用語は、細胞を傷害する化合物を指す。
【0063】
本明細書で使用される「変性剤(denaturing agent)」または「変性剤(denaturant)」とは、ポリマーの可逆的なアンフォールディングを引き起こす任意の化合物または材料を指す。単なる例として、「変性剤(denaturing agent)」または「変性剤(denaturant)」は、タンパク質の可逆的なアンフォールディングを引き起こす場合がある。変性剤(denaturing agent)または変性剤(denaturant)の強度は、特定の変性剤(denaturing agent)または変性剤(denaturant)の特性と濃度の両方により決定される。例えば、変性剤(denaturing agent)または変性剤(denaturant)としては、限定するものではないが、カオトロープ、界面活性剤、有機物、水混和性溶媒、リン脂質、またはそれらの組み合わせが挙げられる。カオトロープの非限定的な例としては、限定するものではないが、尿素、グアニジン及びチオシアン酸ナトリウムが挙げられる。界面活性剤の非限定的な例としては、限定するものではないが、強い界面活性剤、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、またはポリオキシエチレンエーテル(例えば、TweenまたはTriton界面活性剤)、サルコシル、穏やかな非イオン性界面活性剤(例えば、ジギトニン)、穏やかなカチオン性界面活性剤、例えば、N-2,3-(ジオレオキシ(Dioleyoxy))-プロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウム、穏やかなイオン性界面活性剤(例えば、コール酸ナトリウムまたはデオキシコール酸ナトリウム)、または双性イオン界面活性剤、例としては、限定するものではないが、スルホベタイン(Zwittergent)、3-(3-クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ-1-プロパン硫酸塩(CHAPS)、及び3-(3-クロロアミドプロピル)ジメチルアンモニオ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸塩(CHAPSO)が挙げられる。有機水混和性溶媒の非限定的な例としては、限定するものではないが、アセトニトリル、低級アルカノール(特に、エタノールまたはイソプロパノールなどのC2~C4アルカノール)、または低級アルカンジオール(エチレングリコールなどのC2~C4アルカンジオール)が挙げられ、変性剤として用いられ得る。リン脂質の非限定的な例としては、限定するものではないが、天然に存在するリン脂質、例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン及びホスファチジルイノシトールまたは合成リン脂質誘導体もしくはバリアント、例えば、ジヘキサノイルホスファチジルコリンまたはジヘプタノイルホスファチジルコリンが挙げられる。
【0064】
本明細書で使用される「ジアミン」という用語は、限定するものではないが、ヒドラジン基、アミジン基、イミン基、1,1-ジアミン基、1,2-ジアミン基、1,3-ジアミン基及び1,4-ジアミン基を含む少なくとも2つのアミン官能基を含む基/分子を指す。さらに、そのような基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状の分子の一部であってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「検出可能な標識」という用語は、限定されるものではないが、蛍光、化学発光、電子-スピン共鳴、紫外線/可視光吸収分光法、質量分析、核磁気共鳴、磁気共鳴、及び電気化学的方法を含む分析技術を用いて観察可能な標識を指す。
【0066】
本明細書で使用される「ジカルボニル」という用語は、-C(O)-、-S(O)-、-S(O)2-、及び-C(S)-からなる群から選択される少なくとも2つの部分を含む基、例としては、限定するものではないが、1,2-ジカルボニル基、1,3-ジカルボニル基、及び1,4-ジカルボニル基、ならびに少なくとも1つのケトン基、及び/または少なくとも1つのアルデヒド基、及び/または少なくとも1つのエステル基、及び/または少なくとも1つのカルボン酸基、及び/または少なくとも1つのチオエステル基を含む基を指す。そのようなジカルボニル基としては、ジケトン、ケトアルデヒド、ケト酸、ケトエステル、及びケトチオエステルが挙げられる。さらに、そのような基は、直鎖状、分岐鎖状、または環状の分子の一部であってもよい。ジカルボニル基中の2個の部分は、同一であっても異なっていてもよく、例として、2個の部分のうちのいずれかでエステル、ケトン、アルデヒド、チオエステル、またはアミドを生成するであろう置換基を含んでもよい。
【0067】
本明細書で使用される「薬物」という用語は、疾患または状態の予防、診断、軽減、治療、または治癒に使用される任意の物質を指す。
【0068】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の症状の1つ以上をある程度軽減する、投与されている十分な量の薬剤または化合物を指す。その結果は、疾患の徴候、症状、または病因の減少及び/または軽減、あるいは生物学的システムの任意の他の望ましい変化であり得る。例えば、投与される薬剤または化合物には、天然アミノ酸ポリペプチド、非天然アミノ酸ポリペプチド、修飾天然アミノ酸ポリペプチド、または修飾非アミノ酸ポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。かかる天然アミノ酸ポリペプチド、非天然アミノ酸ポリペプチド、修飾天然アミノ酸ポリペプチド、または修飾非天然アミノ酸ポリペプチドを含む組成物は、予防、増強及び/または治療的処置のために投与され得る。任意の個々のケースにおける適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を用いて決定され得る。
【0069】
「増強する(enhance)」または「増強する(enhancing)」という用語は、所望の効果の効力または持続時間のいずれかを増大または延長することを意味する。例として、治療剤の効果を「増強する」とは、疾患、障害または状態の治療の間に治療剤の効果が効力または持続時間のいずれかを増大または延長する能力を指す。本明細書で使用される「増強有効量」とは、疾患、障害または状態の治療における治療剤の効果を増強するのに十分な量を指す。患者に使用する場合、この使用の有効量は、疾患、障害または状態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応、ならびに治療する医師の判断に依存する。
【0070】
本明細書で使用される場合、「真核生物」という用語は、限定するものではないが、動物(限定するものではないが、哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥類などを含む)、繊毛虫、植物(限定するものではないが、単子葉、双子葉、及び藻類を含む)、真菌、酵母、鞭毛虫、微胞子虫(microsporidia)、及び原生生物などの植物遺伝学的真核生物ドメインに属する生物を指す。
【0071】
本明細書で使用される「脂肪酸」という用語は、約C6以上の炭化水素側鎖を有するカルボン酸を指す。
【0072】
本明細書で使用される「フルオロフォア」という用語は、励起時に光子を放出し、それによって蛍光性である分子を指す。
【0073】
本明細書で使用される用語「官能基」、「活性部分」、「活性化基」、「脱離基」、「反応性部位」、「化学反応性基」及び「化学反応性部分」とは、化学反応が起こる分子の部分または単位を指す。これらの用語は、化学分野ではいくらか同義であり、ある機能または活性を果たし、他の分子と反応性である分子の部分を示すために、本明細書では使用されている。
【0074】
ハロゲンという用語は、フッ素、塩素、ヨウ素、及び臭素を含む。
【0075】
本明細書で使用される「ハロアシル」という用語は、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3などを含むがこれらに限定されないハロゲン部分を含むアシル基を指す。
【0076】
本明細書で使用される「ハロアルキル」という用語は、-CF3及び-CH2CF3などを含むがこれらに限定されないハロゲン部分を含むアルキル基を指す。
【0077】
本明細書において用いる場合「ヘテロアルキル」という用語は、アルキル基と、O、N、Si及びSからなる群から選択した少なくとも1つのヘテロ原子とからなる直鎖もしくは分岐鎖、または環状炭化水素ラジカル、あるいはそれらの組み合わせを指し、その窒素及び硫黄の原子は、任意に選択で酸化されていてよく、その窒素ヘテロ原子は、任意選択で四級化されていてもよい。ヘテロ原子(複数可)O、N、及びS、及びSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置、またはアルキル基が分子の残りの部分に付加される位置に定置されてもよい。例として、限定するものではないが、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH2、-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、及び-CH=CH-N(CH3)-CH3が挙げられる。さらに、最大2個のヘテロ原子が、例えば、-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3のように、連続してもよい。
【0078】
「複素環ベース結合」または「複素環結合」という用語は、ジカルボニル基とジアミン基との反応から形成される部分を指す。得られる反応生成物は、ヘテロアリール基またはヘテロシクロアルキル基を含む複素環である。得られた複素環基は、非天然アミノ酸または非天然アミノ酸ポリペプチドと別の官能基との間の化学結合として働く。一実施形態では、複素環結合は、例としてピラゾール結合、ピロール結合、インドール結合、ベンゾジアゼピン結合、及びピラゾロン結合を含む含窒素複素環結合を含む。
【0079】
同様に、「ヘテロアルキレン」という用語は、限定はしないが、-CH2-CH2-S-CH2-CH2-及び-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-に例示されるように、ヘテロアルキルに由来する二価ラジカルを指す。ヘテロアルキレン基に関して、同じまたは異なるヘテロ原子はまた、鎖末端のいずれかまたは両方を占有することもできる(限定するものではないが、アルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ、アミノオキシアルキレンなど)。またさらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基に関して、連結基の配向は、連結基の式が記述される方向によっては示唆されない。例として、式-C(O)2R’-は、-C(O)2R’-及び-R’C(O)2-の両方を表す。
【0080】
「ヘテロアリール」または「ヘテロ芳香族」という用語は、本明細書において用いる場合、N、O、及びSから選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含有するアリール基を指し、ここで、窒素及び硫黄の原子は任意選択で酸化されてもよく、窒素原子(複数可)は任意選択で四級化されてもよい。ヘテロアリール基は、置換されても、または非置換であってもよい。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を通して、分子の残りの部分に付加され得る。ヘテロアリール基の非限定的な例としては、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル、及び6-キノリルが挙げられる。
【0081】
本明細書で使用される「ホモアルキル」という用語は、炭化水素基であるアルキル基を指す。
【0082】
本明細書で使用される「同一」という用語は、同じである2つ以上の配列またはサブ配列を指す。さらに、本明細書で使用される「実質的に同一」という用語は、比較アルゴリズムを使用してまたは手動でアラインメント及び目視検査により測定された比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって、最大対応のために比較及びアラインメントされる場合に同じである連続単位の割合を有する2つ以上の配列を指す。一例にすぎないが、連続する単位が特定の領域にわたって約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、または約95%同一である場合、2つ以上の配列を「実質的に同一」としてもよい。このようなパーセンテージは、2つ以上の配列の「パーセント同一性」を説明するものである。配列の同一性は、少なくとも約75~100の連続した単位の長さである領域にわたって、約50の連続した単位の長さである領域にわたって、または指定されない場合は配列全体にわたって存在し得る。この定義は、試験配列の相補体も指す。一例にすぎないが、アミノ酸残基が同じである場合、2つ以上のポリペプチド配列は同一であり、一方、アミノ酸残基が、特定の領域にわたり、約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、または約95%同一である場合、2つ以上のポリペプチド配列は「実質的に同一」である。同一性は、長さが少なくとも約75~約100のアミノ酸である領域にわたって、長さ約50アミノ酸である領域にわたって、または指定されない場合にはポリペプチド配列の全配列にわたって存在し得る。さらに、一例にすぎないが、2つ以上のポリヌクレオチド配列は核酸残基が同一であるときは同一であるが、2つ以上のポリヌクレオチド配列は、核酸残基が、特定の領域にわたって約60%同一、約65%同一、約70%同一、約75%同一、約80%同一、約85%同一、約90%同一、または約95%同一である場合、「実質的に同一」である。同一性は、少なくとも約75~約100の核酸長である領域にわたって、約50の核酸長である領域にわたって、または指定されない場合はポリヌクレオチド配列の配列全体にわたって存在し得る。
【0083】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブ配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用してもよく、または代替的なパラメータを指定してもよい。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0084】
本明細書で使用される「免疫原性」という用語は、治療薬物の投与に対する抗体応答を指す。治療用非天然アミノ酸ポリペプチドに対する免疫原性は、生物学的流体中の抗非天然アミノ酸ポリペプチド抗体を検出するための定量的及び定性的アッセイを使用して得ることができる。そのようなアッセイとしては、限定するものではないが、放射性免疫測定(RIA)、酵素結合免疫吸着測定(ELISA)、発光免疫測定(LIA)、及び蛍光免疫測定(FIA)が挙げられる。治療用非天然アミノ酸ポリペプチドに対する免疫原性の解析は、治療用非天然アミノ酸ポリペプチドを投与した際の抗体応答を、治療用天然アミノ酸ポリペプチドを投与した際の抗体応答と比較することを含む。
【0085】
本明細書で使用される「単離された」という用語は、目的の成分を、目的の成分ではない成分から分離し、除去することを指す。単離された物質は、乾燥もしくは半乾燥の状態であっても、または水溶液を含むがこれに限定されない溶液であってもよい。単離された成分は均質な状態であってもよく、または単離された成分は、追加の薬学的に許容される担体及び/または賦形剤を含む医薬組成物の一部であってもよい。純度及び均質性は、限定するものではないが、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法または高速液体クロマトグラフィーを含む分析化学技術を使用して決定され得る。加えて、目的の成分が単離され、それが調製物に存在する主たる種である場合には、この成分は本明細書では実質的に精製されたものと記載される。本明細書で使用される「精製された」という用語は、純度が少なくとも85%、純度が少なくとも90%、純度が少なくとも95%、純度が少なくとも99%またはそれ以上の目的の成分を指す場合がある。単なる例として、そのような核酸またはタンパク質が、天然の状態で関連している細胞成分の少なくともいくつかを含まない場合、またはその核酸もしくはタンパク質が、そのインビボもしくはインビトロでの生産の濃度よりも高いレベルに濃縮されている場合に、その核酸またはタンパク質は「単離」されている。また、例として、遺伝子に隣接しかつ目的の遺伝子以外のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームから分離した場合、その遺伝子は単離されている。
【0086】
本明細書で使用される「標識」という用語は、化合物に組み込まれ、その物理的分布を検出及び/またはモニタリングし得る容易に検出される物質を指す。
【0087】
本明細書で使用される「結合」または「リンカー」という用語は、ペイロード、薬物、及び/またはリンカーと別の分子の官能基の間の化学反応から形成される結合または化学的部分を指す。このような結合には、共有結合及び非共有結合が含まれ得るが、これらに限定されることはなく、このような化学部分としては、限定するものではないが、オキシム、エステル、カーボネート、リン酸イミンエステル、ヒドラゾン、アセタール、オルトエステル、ペプチド結合、及びオリゴヌクレオチド結合が挙げられ得る。加水分解的に安定な結合とは、結合が水中で実質的に安定であり、有用なpH値で水と反応しないことを意味し、これは、限定するものではないが、生理学的条件下で長時間、おそらく無限にさえ安定であることを含む。加水分解的に不安定なまたは分解性の結合とは、その結合が、水中で、または例えば血液を含む水溶液中で分解性であることを意味する。酵素的に不安定なまたは分解性の結合とは、この結合が1つ以上の酵素によって分解され得ることを意味する。単なる例として、PEG及び関連ポリマーは、ポリマー骨格またはポリマー骨格とポリマー分子の末端官能基の1つ以上との間のリンカー基における分解性結合を含み得る。そのような分解性結合としては、限定するものではないが、PEGカルボン酸または活性化PEGカルボン酸と生物活性剤上のアルコール基との反応により形成されるエステル結合が挙げられ、そのようなエステル基は、一般的に生理学的条件下で加水分解されて生物活性剤を放出する。その他の加水分解分解性結合としては、限定するものではないが、カーボネート結合;アミンとアルデヒドとの反応から生じるイミン結合;アルコールとリン酸基との反応により形成されるリン酸エステル結合;ヒドラジドとアルデヒドとの反応生成物であるヒドラゾン結合;アルデヒドとアルコールとの反応生成物であるアセタール結合;ギ酸塩とアルコールとの反応生成物であるオルソエステル結合;アミン基によって形成されるペプチド結合、例としては、限定するものではないが、PEG及びペプチドのカルボキシル基などのポリマーの末端での結合;ならびにホスホルアミダイト基によって形成されるオリゴヌクレオチド結合、例としては、限定するものではないが、ポリマーの末端、及びびオリゴヌクレオチドの5’ヒドロキシル基での結合が挙げられる。リンカーは、限定するものではないが、短い直鎖状、分岐鎖状、マルチアームの分子、またはデンドリマー分子、例えば、ポリマーを含む。本開示のいくつかの実施形態では、リンカーは分岐鎖状であってもよい。他の実施形態では、リンカーは二官能性リンカーであり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、三官能性リンカーであり得る。多数の異なる切断可能なリンカーが当業者に公知である。米国特許第4,618,492号;同第4,542,225号及び同4,625,014号を参照のこと。これらのリンカー基から薬剤を放出する機構としては、例えば感光性結合の照射及び酸触媒加水分解が挙げられる。米国特許第4,671,958号には、例えば、患者の補体系のタンパク質分解酵素によってインビボで標的部位において切断されるリンカーを含む免疫複合体の記載が含まれる。リンカーの長さは、ポリペプチドとそれに連結する分子との間の所望の空間関係に応じて予め決定されるか、または選択され得る。様々な放射線診断化合物、放射線治療化合物、薬物、毒素、及び他の薬剤を抗体に結合するために報告された多数の方法を考慮すれば、当業者は、所与の薬剤または分子をポリペプチドに結合するための適切な方法を決定し得る。
【0088】
本明細書で使用される「修飾された」という用語は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチド、または非天然アミノ酸ポリペプチドへの変化の存在を指す。このような変化または修飾は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドもしくは非天然アミノ酸ポリペプチドの合成後の修飾により、または天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドもしくは非天然アミノ酸ポリペプチドの翻訳時の修飾により、もしくは翻訳後修飾により得てもよい。「修飾または非修飾」という形は、考察されている天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが、任意選択で修飾されていることを意味し、すなわち、考察されている天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが、修飾であってもまたは非修飾であってもよいことを意味する。
【0089】
本明細書で使用される場合、「調節された血清半減期」という用語は、非修飾形態と比較した、改変された生物活性分子の循環半減期での正または負の変化を指す。例として、改変された生物学的活性分子としては、限定するものではないが、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが挙げられる。例として、血清半減期は、生物学的活性分子または改変された生物学的活性分子の投与後の様々な時点で血液サンプルを採取すること、及び各サンプル中のその分子の濃度を決定することによって測定される。血清濃度と時間との相関によって血清半減期を計算し得る。例として、調節された血清半減期は、血清半減期の増大である場合があり、これによって、投与レジメンの改善が可能になる場合もあり、または毒性効果を回避する場合もある。血清のそのような増大は、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約5倍、または少なくとも約10倍であり得る。任意のポリペプチドの血清半減期の増大を評価する方法は、当業者に周知である。
【0090】
本明細書で使用される「調節された治療半減期」という用語は、治療上有効な量の改変された生物活性分子の半減期の、その非改変形態と比較した正または負の変化を指す。例として、改変された生物学的活性分子としては、限定するものではないが、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが挙げられる。例として、治療半減期は、投与後の様々な時点での分子の薬物動態及び/または薬力学的特性を測定することにより測定される。治療半減期の延長は、特定の有益な投与レジメン、特定の有益な総用量を可能にする場合もあり、または望ましくない効果を回避する。例として、治療半減期の増大は、力価の増大、改変分子のその標的への結合性の増減、非改変分子の作用の別のパラメータもしくは機構の増減、または例えば、プロテアーゼなどの酵素による分子の破壊の増減から生じ得る。任意のポリペプチドの治療半減期の増大を評価する方法は、当業者に周知である。
【0091】
「非天然アミノ酸」とは、20の一般的なアミノ酸またはピロリジンもしくはセレノシステインのうちの1つではないアミノ酸を指す。「非天然アミノ酸(non-natural amino acid)」という用語と同義的に使用され得る他の用語は、「天然にはコードされないアミノ酸」、「非天然アミノ酸(unnatural amino acid)」、「非天然アミノ酸(non-naturally-occurring amino acid)」ならびにこれらの様々なハイフネーション及び非ハイフネーション版である。「非天然アミノ酸」という用語には、限定するものではないが、天然にコードされたアミノ酸(20の共通アミノ酸またはピロリジン及びセレノシステインを含むが、これらに限定されない)の修飾によって天然に存在するが、それ自体は翻訳複合体によって成長ポリペプチド鎖に組み込まれないアミノ酸が含まれる。このようなアミノ酸の例としては、限定するものではないが、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-スレオニン、及びO-ホスホチロシンが挙げられる。さらに、「非天然アミノ酸」という用語は、天然には存在せず、かつ合成的に得ることができるか、または非天然アミノ酸の修飾によって得ることができるアミノ酸を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、リジン類似体、例えば、N6-アジドエトキシ-L-リジン(AzK)、N6-プロパルギルエトキシ-L-リジン(PraK)、BCN-L-リジン、ノルボルネンリジン、TCO-リジン、メチルテトラジンリジンまたはアリルオキシカルボニルリジンを含む。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、糖部分を含む。このようなアミノ酸の例としては、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-ガラクトサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-スレオニン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-アスパラギン及びO-マンノサミニル-L-セリンが挙げられる。このようなアミノ酸の例としては、アミノ酸と糖類との間の天然に存在するN-結合またはO-結合が、限定するものではないが、アルケン、オキシム、チオエーテル、アミドなどを含む、天然には通常見られない共有結合によって置き換えられている例も挙げられる。そのようなアミノ酸の例としては、2-デオキシグルコース、2-デオキシガラクトースなどの天然に存在するタンパク質には通常見られない糖類も挙げられる。非天然アミノ酸の具体例としては、限定するものではないが、p-アセチル-L-フェニルアラニン、p-プロパルギルオキシフェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチルフェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアニリン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、p-プロパルギルオキシ-L-フェニルアラニン、4-アジド-L-フェニルアラニン、パラ-アジドエトキシフェニルアラニン、及びパラ-アジドメチル-フェニルアラニンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、パラ-アセチル-フェニルアラニン、4-アジド-L-フェニルアラニン、パラ-アジドエトキシフェニルアラニンまたはパラ-アジドメチルフェニルアラニンからなる群から選択される。
【0092】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシドまたはリボヌクレオチド及びそれらの一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のポリマーを指す。一例にすぎないが、かかる核酸及び核酸ポリマーとしては、限定するものではないが、(i)参照核酸と類似の結合特性を有し、かつ天然に存在するヌクレオチドと同様に代謝される天然ヌクレオチドの類似体;(ii)限定するものではないが、PNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技術で使用されるDNAの類似体(ホスホロチオエート、ホスホロアミダート(phosphoroamidates)など)を含むオリゴヌクレオチド類似体;(iii)その保存的に修飾されたバリアント(縮重コドン置換を含むが、これらに限定されない)ならびに相補配列及び明確に示される配列が挙げられる。例として、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(または全ての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);及びRossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0093】
本明細書で使用される「酸化剤」という用語は、酸化されている化合物から電子を除去し得る化合物または材料を指す。例として、酸化剤としては、限定するものではないが、酸化グルタチオン、シスチン、シスタミン、酸化ジチオスレイトール、酸化エリスリトール(oxidized erythreitol)、及び酸素が挙げられる。広範な様々な酸化剤が、本明細書に記載される方法及び組成物での使用に適切である。
【0094】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される」という用語は、限定するものではないが、化合物の生物学的活性または特性を抑止せず、かつ比較的非毒性である塩、担体または希釈剤などの物質を指し、すなわち、この物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、それが含有される組成物の構成成分のいずれとも有害な様態で相互作用することもなく、個体に投与され得る。
【0095】
本明細書で使用される「ポリアルキレングリコール」または「ポリ(アルケングリコール)」という用語は、直鎖状または分岐鎖状のポリマーポリエーテルポリオールを指す。そのようなポリアルキレングリコールとしては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びそれらの誘導体が挙げられる。他の例示的な実施形態は、例えば、Shearwater Corporationのカタログ「Polyethylen Glycol and Derivatives for Biomedical Applications」(2001)などの商業的供給業者のカタログに列挙されている。単なる例として、このようなポリマーポリエーテルポリオールは、約0.1kDa~約100kDaの平均分子量を有する。例として、このようなポリマーポリエーテルポリオールは、約100Da~約100,000Da以上を含むが、これらに限定されない。ポリマーの分子量は、約100Da~約100,000Daであってよく、これには、限定するものではないが、約100,000Da、約95,000Da、約90,000Da、約85,000Da、約80,000Da、約75,000Da、約70,000Da、約65,000Da、約60,000Da、約55,000Da、約50,000Da、約45,000Da、約40,000Da、約35,000Da、約30,000Da、約25,000Da、約20,000Da、約15,000Da、約10,000Da、約9,000Da、約8,000Da、約7,000Da、約6,000Da、約5,000Da、約4,000Da、約3,000Da、約2,000Da、約1,000Da、約900Da、約800Da、約700Da、約600Da、約500Da、400Da、約300Da、約200Da、及び約100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約2,000~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約10,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリ(エチレングリコール)分子は分岐鎖状ポリマーである。分岐鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約100,000Daであってよく、これには、限定するものではないが、約100,000Da、約95,000Da、約90,000Da、約85,000Da、約80,000Da、約75,000Da、約70,000Da、約65,000Da、約60,000Da、約55,000Da、約50,000Da、約45,000Da、約40,000Da、約35,000Da、約30,000Da、約25,000Da、約20,000Da、約15,000Da、約10,000Da、約9,000Da、約8,000Da、約7,000Da、約6,000Da、約5,000Da、約4,000Da、約3,000Da、約2,000Da、及び約1,000Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの分子量は、約5,000Da~約20,000Daである。他の実施形態では、分岐鎖PEGの分子量は、約2,000~約50,000Daである。
【0096】
本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、繰り返されるサブユニットで構成された分子を指す。そのような分子としては、限定するものではないが、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、またはポリサッカライド、またはポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0097】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、本明細書において同義に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。すなわち、ポリペプチドに関する記載は、ペプチドの記載及びタンパク質の記載に等しく適用され、逆もまた同様である。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、ならびに1つ以上のアミノ酸残基が非天然アミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。さらに、そのような「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は、全長タンパク質を含むあらゆる長さのアミノ酸鎖を含み、その際、アミノ酸残基は、共有ペプチド結合によって連結されている。
【0098】
「翻訳後修飾された」という用語は、そのようなアミノ酸がポリペプチド鎖に翻訳的に組み込まれた後に生じる天然または非天然アミノ酸の任意の修飾を指す。このような修飾としては、限定するものではないが、翻訳時のインビボでの修飾、翻訳時のインビトロでの修飾(例えば、無細胞翻訳系における修飾)、翻訳後のインビボでの修飾、及び翻訳後のインビトロでの修飾が挙げられる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「プロドラッグ」または「薬学的に許容されるプロドラッグ」という用語は、薬物の生物学的活性または特性を抑止せず、かつ比較的非毒性である、インビボまたはインビトロで親薬物に変換される因子を指し、すなわち、この物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こすことも、それが含有される組成物の構成成分のいずれとも有害な様態で相互作用することもなく、個体に投与され得る。プロドラッグとは、一般に、対象への投与後及びその後の吸収後に、代謝経路による変換などの何らかのプロセスによって活性種またはより活性な種に変換される薬剤前駆体である。一部のプロドラッグは、プロドラッグの活性を弱くさせる、及び/または薬剤に可溶性もしくは何らかの他の特性を付与する、化学基がそのプロドラッグに存在する。その化学基がプロドラッグから切断及び/または修飾されると、活性薬物が生成される。プロドラッグは、酵素反応または非酵素反応によって体内で活性薬物に変換される。プロドラッグは、改善された生理化学的特性、例えば、より良好な溶解性、特定の細胞、組織、器官またはリガンドを特異的に標的化するなどの増強された送達特性、及び薬物の改善された治療価値をもたらし得る。このようなプロドラッグの利点としては、限定するものではないが、(i)親薬剤と比較して投与が容易であること、(ii)プロドラッグは経口投与によって生物学的利用能を有し得るが親薬剤はそれを有さないこと、及び(iii)プロドラッグは親薬剤と比較して医薬組成物への溶解性を改善することも挙げられる。プロドラッグとしては、活性薬物の薬理学的に不活性な、または活性が低下した誘導体が挙げられる。プロドラッグは、薬物の特性、例えば、生理化学的特性、バイオ医薬特性または薬物動態特性の操作により、所望の作用部位に到達する薬物または生物学的活性分子の量を調節するように設計され得る。プロドラッグの例は、限定するものではないが、非天然アミノ酸ポリペプチドであり、これは、水溶性が移動度に有害である細胞膜を通じた伝達を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与されるが、その後、水溶性が有益である細胞内で一旦、活性物質であるカルボン酸に代謝的に加水分解される。プロドラッグは、可逆性の薬剤誘導体として設計され、特定部位組織(site-specific tissues)への薬剤輸送を促進する改質剤として使用される。
【0100】
本明細書で使用される「予防的有効量」という用語は、治療されている疾患、状態または障害の症状のうちの1つ以上をある程度軽減することになる、患者に予防的に適用される、少なくとも1つの非天然アミノ酸ポリペプチドまたは少なくとも1つの修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドを含む組成物の量を指す。このような予防用途では、このような量は、患者の健康状態、体重などに依存し得る。このような予防的に有効な量を、限定するものではないが用量漸増臨床試験を含む、慣用的な実験によって決定することは当該技術分野の範囲内であると十分に理解されるであろう。
【0101】
本明細書で使用される「保護される」という用語は、特定の反応条件下での化学反応性官能基の反応を防止する「保護基」または部分の存在を指す。保護基は、保護される化学反応性基の種類に応じて変化する。一例にすぎないが、(i)化学反応性基がアミンまたはヒドラジドである場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)及び9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)から選択されてもよく、(ii)化学反応性基がチオールである場合、保護基は、オルトピリジルジスルフィドであってもよく、(iii)化学反応性基が、ブタンもしくはプロピオン酸などのカルボン酸またはヒドロキシル基である場合、保護基は、ベンジルまたはアルキル基、例えばメチル、エチルまたはtert-ブチルであってもよい。
【0102】
単なる例にすぎないが、ブロッキング/保護基は、以下から選択され得る:
【化7】
【0103】
さらに、保護基としては、限定するものではないが、Nvoc及びMeNvocなどの感光性の基、ならびに当該技術分野で公知の他の保護基が挙げられる。他の保護基は、Greene and Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Ed.,John Wiley & Sons,New York,NY,1999に記載されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0104】
「組換え宿主細胞」という用語は、「宿主細胞」とも呼ばれ、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞を指し、その際、この外因性ポリヌクレオチドを細胞に挿入するために使用される方法としては、限定するものではないが、直接取り込み、形質導入、f接合、または組換え宿主細胞を作出するための当該技術分野で公知の他の方法が挙げられる。一例にすぎないが、このような外因性ポリヌクレオチドは、プラスミドを含むがこれに限定されない非組み込みベクターであってもよく、または宿主ゲノムに組み込まれてもよい。
【0105】
本明細書で使用される「酸化還元活性剤」という用語は、別の分子を酸化または還元し、それによって酸化還元活性剤が還元または酸化される分子を指す。酸化還元活性剤の例としては、限定するものではないが、フェロセン、キノン、Ru2+/3+錯体、Co2+/3+錯体及びOs2+/3+錯体が挙げられる。
【0106】
本明細書で使用される「還元剤」という用語は、還元される化合物に電子を付加し得る化合物または物質を指す。還元剤の例としては、限定するものではないが、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、ジチオエリスリトール、システイン、システアミン(2-アミノエタンチオール)、及び還元型グルタチオンが挙げられる。そのような還元剤は、単なる例としては、スルフヒドリル基を還元状態に維持し、かつ分子内または分子間のジスルフィド結合を還元するために使用してもよい。
【0107】
本明細書で使用される「リフォールディング」とは、不適切にフォールディングされた、またはアンフォールディングされた状態を天然のまたは適切にフォールディングされた高次構造に変換する任意のプロセス、反応または方法を表す。単なる例として、リフォールディングは、ジスルフィド結合含有ポリペプチドを、不適切にフォールディングされたまたはアンフォールディングされた状態から、ジスルフィド結合に関して天然のまたは適切にフォールディングされたか高次構造に変換する。このようなジスルフィド結合含有ポリペプチドは、天然アミノ酸ポリペプチドであっても、または非天然アミノ酸ポリペプチドであってもよい。
【0108】
本明細書で使用される「安全性」または「安全プロファイル」という用語は、薬物が投与された回数に対する、薬物の投与に関連し得る副作用を指す。例えば、複数回投与され、副作用が単に軽度であるかまたは全くない薬物は、優れた安全プロファイルを有すると言われている。任意のポリペプチドの安全プロファイルを評価するために使用される方法は、当該技術分野で公知である。
【0109】
本明細書で使用される「選択的にハイブリダイズする」または「特異的にハイブリダイズする」という句は、総細胞またはライブラリーのDNAまたはRNAを含むがこれらに限定されない複合体混合物中に配列が存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で特定のヌクレオチド配列に分子を結合、複製、またはハイブリダイズさせることを指す。
【0110】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、低いイオン強度及び高温の条件下での、DNA、RNA、PNAもしくは他の核酸模倣物、またはそれらの組み合わせの配列のハイブリダイゼーションを指す。例として、ストリンジェントな条件下で、プローブは、核酸の複合体混合物(限定されないが、総細胞またはライブラリーのDNAまたはRNAを含む)中でその標的サブ配列にハイブリダイズするが、複合体混合物中の他の配列にはハイブリダイズしない。ストリンジェント条件は、配列に依存しており、環境によって異なることになる。一例として、より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、限定するものではないが、以下が挙げられる:(i)定義されたイオン強度及びpHでの特定の配列の熱融点(Tm)よりも約5~10℃低い;(ii)短いプローブ(約10~約50ヌクレオチドを含むが、これに限定されない)の場合、塩濃度が、約pH7.0~約pH8.3で約0.01M~約1.0Mであり、かつ温度が少なくとも約30℃であり、長いプローブ(50ヌクレオチド超を含むが、これに限定されない)の場合、少なくとも約60℃である;(iii)ホルムアミドを含むがこれに限定さない不安定化剤の添加;(iv)50%ホルムアミド、5×SSC、及び1%のSDS、42℃でインキュベートすること、または5×SSC、約1%のSDS、65℃でインキュベートし、0.2×SSCで、及び約0.1%のSDSで65℃で約5分~約120分洗浄。一例にすぎないが、選択的または特異的ハイブリダイゼーションの検出は、少なくとも2回のバックグラウンドでの陽性シグナルを含むが、これに限定されるものではない。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。
【0111】
本明細書で使用される「対象」という用語は、治療、観察または実験の対象である動物を指す。一例にすぎないが、対象は、限定されるものではないが、ヒトを含む哺乳動物であってよいが、これに限定されない。
【0112】
本明細書で使用される「実質的に精製された」という用語は、精製の前に通常は目的の成分を伴うかまたはそれと相互作用する他の成分を実質的にまたは本質的に含まない場合がある目的の成分を指す。一例にすぎないが、目的の成分の調製物が、汚染成分を約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥重量)しか含有しない場合には、目的の成分は「実質的に精製」されているとしてもよい。したがって、目的の「実質的に精製された」成分は、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%またはそれ以上の純度レベルを有し得る。単なる例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、組換えにより産生された天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドの場合には、天然細胞または宿主細胞から精製され得る。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドの調製物を、その調製物が汚染物質を約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥重量)しか含有しない場合には、「実質的に精製」されているとしてもよい。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが宿主細胞によって組換え産生された場合、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、もしくは約1%またはそれ以下で存在し得る。例として、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドが宿主細胞によって組換え産生される場合、天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、細胞の乾燥重量の約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、約1g/L、約750mg/L、約500mg/L、約250mg/L、約100mg/L、約50mg/L、約10mg/L、もしくは約1mg/Lまたはそれ以下で培養物中に存在し得る。例として、「実質的に精製された」天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然アミノ酸ポリペプチドは、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、及びキャピラリー電気泳動を含むがこれらに限定されない適切な方法により決定された約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%またはそれ以上の純度レベルを有し得る。
【0113】
「非干渉置換基」とも呼ばれる「置換基」という用語は、ある分子上の別の基と置き換えるために使用され得る基を指す。このような基としては、限定するものではないが、ハロ、C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、C1-C10アルコキシ、C5-C12アラルキル、C3-C12シクロアルキル、C4-C12シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C2-C12アルコキシアルキル、C5-C12アルコキシアリール、C5-C12アリールオキシアルキル、C7-C12オキシアリール、C1-C6アルキルスルフィニル、C1-C10アルキルスルホニル、-(CH2)m-O-(C1-C10アルキル)が挙げられ、式中、mは1~8、アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ニトロアルキル、-NO2、-CN、-NRC(O)-(C1-C10アルキル)、-C(O)-(C1-C10アルキル)、C2-C10アルキルチオアルキル(alkthioalkyl)、-C(O)O-(C1-C10アルキル)、-OH、-SO2、=S、-COOH、-NR2、カルボニル、-C(O)-(C1-C10アルキル)-CF3、-C(O)-CF3、-C(O)NR2、-(C1-C10アリール)-S-(C6-C10アリール)、-C(O)-(C6-C10アリール)、-(CH2)m-O-(CH2)m-O-(C1-C10アルキル)であり、ここで各mは、1~8、-C(O)NR2、-C(S)NR2、-SO2NR2、-NRC(O)NR2、-NRC(S)NR2、それらの塩などである。前記リスト中の各R基としては、H、アルキルもしくは置換されたアルキル、アリールもしくは置換されたアリール、またはアルカリールが挙げられるが、これらに限定されない。置換基(substituent group)が、左から右へ記述された、それらの従来の化学式によって特定される場合、それらは、構造を右から左へ記述することによって得られるであろう化学的に同一な置換基(substituent)を等しく包括し、例えば、-CH2O-は、-OCH2-と同等である。
【0114】
一例にすぎないが、アルキル及びヘテロアルキルのラジカルの置換基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと呼ばれる基を含む)としては、限定するものではないが、-OR、=O、=NR、=N-OR、-NR2、-SR、-ハロゲン、-SiR3、-OC(O)R、-C(O)R、-CO2R、-CONR2、-OC(O)NR2、-NRC(O)R、-NRC(O)NR2、-NR(O)2R、-NR-C(NR2)=NR、-S(O)R、-S(O)2R、-S(O)2NR2、-NRSO2R、-CN及び-NO2が挙げられる。前記リスト中の各R基としては、限定するものではないが、水素、置換または非置換のヘテロアルキル、置換または非置換のアリール(1~3個のハロゲンで置換されたアリール、置換または非置換のアルキル、アルコキシまたはチオアルコキシ基、あるいはアラルキル基を含むが、これらに限定されない)が挙げられる。2つのR基が同一の窒素原子に付加されるとき、それらは、窒素原子と組み合わされて、5、6、または7員環を形成し得る。例えば、-NR2は、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。
【0115】
例として、アリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、限定するものではないが、-OR、=O、=NR、=N-OR、-NR2、-SR、-ハロゲン、-SiR3、-OC(O)R、-C(O)R、-CO2R、-CONR2、-OC(O)NR2、-NRC(O)R、-NRC(O)NR2、-NR(O)2R、-NR-C(NR2)=NR、-S(O)R、-S(O)2R、-S(O)2NR2、-NRSO2R、-CN、-NO2、-R、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキシ、及びフルオロ(C1-C4)アルキルが挙げられ、0から芳香環系上の開環した値(open valences)の総数までの範囲の数であり、かつ、上記のリストの各R基は、水素、アルキル、ヘテロアルキル、アリール及びヘテロアリールを含むが、これらに限定されない。
【0116】
本明細書で使用される「治療上有効な量」という用語は、治療されている疾患、障害または状態の1つ以上の症状を治療または少なくとも部分的に抑制またはある程度まで軽減するのに十分な、疾患、状態または障害に既に罹患している患者に投与される少なくとも1つの非天然アミノ酸ポリペプチド及び/または少なくとも1つの修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドを含む組成物の量を指す。このような組成物の有効性は、限定するものではないが、疾患、障害または状態の重症度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応、ならびに治療する医師の判断を含む状態に依存する。単なる例として、治療上有効な量は、限定するものではないが、用量増大臨床試験を含む慣用的な実験によって決定され得る。
【0117】
本明細書で使用される「チオアルコキシ」という用語は、酸素原子を介して分子に連結された硫黄含有アルキル基を指す。
【0118】
本明細書で使用される「毒性部分」または「毒性基」という用語は、害、障害、または死を引き起こし得る化合物を指す。毒性部分としては、限定するものではないが、オーリスタチン、DNAマイナーグルーブ結合剤、DNAマイナーグルーブアルキル化剤、エンジイン、レキシトロプシン、デュオカルマイシン、タキサン、ピューロマイシン、細胞毒性チューブリン阻害剤、メイタンシノイド、ビンカアルカロイド、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB、オーリスタチンE、パクリタキセル、ドセタキセル、CC-1065、SN-38、トポテカン、モルホリノ-ドキソルビシン、リゾキシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、エキノマイシン、コンブレタスタチン、カリケアミシン、メイタンシン、DM-1、ネトロプシン、ポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシドなど)、バッカチン及びその誘導体、抗チューブリン剤、クリプトフィジン、コンブレタスタチン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、VP-16、カンプトテシン、エポチロンA、エポチロンB、ノコダゾール、コルヒチン、コルシミド、エストラムスチン、セマドチン、ディスコデルモリド、メイタンシン、エレウテロビン、メクロレタミン、シクロホスファミド、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、ストレプトゾシン、クロロゾトシン、ウラシルマスタード、クロルメチン、イホスファミド、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホルアミン(triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、ダカルバジン、及びテモゾロミド、イタラビン、シトシンアラビノシド、フルオロウラシル、フロクスリジン、6-チオグアニン、6-メルカプトプリン、ペントスタチン、5-フルオロウラシル、メトトレキサート、10-プロパルギル-5,8-ジデアザ葉酸(dideazafolate)、5,8-ジデアザテトラヒドロ葉酸、ロイコボリン、フルダラビンリン酸、ペントスタチン、ゲムシタビン、Ara-C、パクリタキセル、ドセタキセル、デオキシコホルマイシン、マイトマイシンC、L-アスパラギナーゼ、アザチオプリン、ブレキナー(brequinar)、抗生物質(例えば、アントラサイクリン、ゲンタマイシン、セファロチン、バンコマイシン、テラバンシン、ダプトマイシン、アジスロマイシン、エリスロマイシン、ロシスロマイシン、フラゾリドン、アモキシシリン、アンピシリン、カルベニシリン、フルクロキサシリン、メチシリン、ペニシリン、シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、ストレプトマイシン、リファブチン、エタムブトール、リファキシミンなど)、抗ウイルス薬(例えば、アバカビル、アシクロビル、アンプリゲン、シドフォビル、デラビリジン、ジダノシン、エファビレンツ、エンテカビル、ホスホネット、ガンシクロビル、イバシタビン、イムノビル、イドクスウリジン、イノシン、ロピナビル、メチサゾン、ネキサビル、ネビラピン、オセルタミビル、ペンシクロビル、スタブジン、トリフルリジン、ツルバダ、バラシクロビル、ザナミビルなど)、塩酸ダウノルビシン、ダウノマイシン、ルビドマイシン、セルビジン、イダルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン及びモルホリノ誘導体、フェノキシゾンビスシクロペプチド(例えば、ダクチノマイシン)、塩基性糖ペプチド(例えば、ブレオマイシン)、アントラキノングリコシド(例えば、プリカマイシン、ミトラマイシン)、アントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン)、アジリノピロロインドールジオン(例えば、マイトマイシン)、大環状免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、FK-506、タクロリムス、プログラフ、ラパマイシンなど)、ナベルベン、CPT-11、アナストラゾール、レトラゾール、カペシタビン、リロキサフィン、イホスファミド(ifosamide)、ドロロキサフィン、アロコルヒチン、ハリコンドリンB、コルヒチン、コルヒチン誘導体、メイタンシン、リゾキシン、パクリタキセル、パクリタキセル誘導体、ドセタキセル、チオコルヒチン、トリチルシステリン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、シスプラチン、カルボプラチン、ヒドロキシ尿素、N-メチルヒドラジン、エピドフィロトキシン、プロカルバジン、ミトキサントロン、ロイコボリン、及びテガフールが挙げられる。「タキサン」としては、パクリタキセル、及び任意の活性タキサン誘導体またはプロドラッグも含まれる。
【0119】
「治療する」、「治療すること」、及び「治療」という用語は、本明細書において用いる場合、疾患もしくは病態の症状を緩和する、弱める、もしくは寛解させること、追加の症状を予防すること、症状の根底にある代謝性の原因を寛解させるもしくは予防すること、疾患もしくは病態を阻害すること、例えば、疾患もしくは病態の発症を阻むこと、疾患もしくは病態を軽減すること、疾患もしくは病態の退縮を引き起こすこと、疾患もしくは病態によって引き起こされる状態を軽減すること、または疾患もしくは病態の症状を止めることを含む。「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語には、予防的及び/または治療的な処置が含まれるが、これらに限定されない。
【0120】
本明細書で使用されているように、「水溶性ポリマー」という用語は、水性溶媒に可溶性である任意のポリマーを指す。このような水溶性ポリマーとしては、限定するものではないが、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、モノC1-C10-アルコキシまたはそのアリールオキシ誘導体(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,252,714号明細書に記載)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアミノ酸、ジビニルエーテル無水マレイン酸、N-(2-ヒドロキシプロピル)-メタクリルアミド、デキストラン、デキストラン誘導体、例としては、硫酸デキストラン、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、ヘパリン、ヘパリンフラグメント、ポリサッカライド、オリゴ糖類、グリカン、セルロース及びセルロース誘導体(メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースを含むが、これらに限定されない)、血清アルブミン、デンプン及びデンプン誘導体、ポリペプチド、ポリアルキレングリコール及びその誘導体、ポリアルキレングリコール及びその誘導体のコポリマー、ポリビニルエチルエーテル、及びアルファ-ベータ-ポリ[(2-ヒドロキシエチル)-DL-アスパルタミドなど、またはそれらの混合物が挙げられる。単なる例として、かかる水溶性ポリマーの天然アミノ酸ポリペプチドまたは非天然ポリペプチドへのカップリングは、変化、例としては、限定するものではないが、水溶性の増加、血清の半減期の増大または調節、未改変形態に対する治療半減期の増大または調節、生物学的利用能の増大、生物学的活性の調節、循環時間の延長、免疫原性の調節、物理的に関連する特徴の調節、例としては、限定するものではないが、凝集及び多量体形成、変更された受容体結合、活性調節剤、または他の標的化ポリペプチド結合、1つ以上の結合パートナーへの結合の変化、ならびに改変された標的化ポリペプチド受容体の二量体化または多量体化を生じ得る。さらに、そのような水溶性ポリマーは、それ自体の生物学的活性を有していても有していなくてもよく、また限定するものではないが、1つ以上の標的化ポリペプチド、または1つ以上の生物学的活性分子を含む、他の物質へ標的化ポリペプチドを結合するためのリンカーとして利用されてもよい。
【0121】
合成/試験の一般的な説明
特段の記載がない限り、当該技術分野における質量分析法、NMR法、HPLC法、タンパク質化学法、生化学法、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法が使用される。
【0122】
本明細書に提示される化合物(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド、修飾された非天然アミノ酸ポリペプチド、及び前述の化合物を製造するための試薬を含むが、これらに限定されない)としては、本明細書に提示される様々な式及び構造に記載されるものと同一であるが、ただし1つ以上の原子が、自然界に通常見られる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられているという事実によって同位体的に標識された化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、13C、14C、15N、18O、17O、35S、18F、36Clが挙げられる。本明細書に記載される特定の同位体標識化合物、例えば、3H及び14Cなどの放射性同位体が組み込まれている化合物は、薬物及び/または基質組織分布アッセイに有用である。さらに、重水素、すなわち、2Hなどの同位体での置換によって、代謝安定性の向上に起因する特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増大または必要用量の低下がもたらされ得る。
【0123】
本明細書の化合物のいくつか(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチド、ならびに前述の化合物を生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は、非対称炭素原子を有し、したがってエナンチオマーまたはジアステレオマーとして存在し得る。ジアステレオマー混合物は、例えばクロマトグラフィー及び/または分別再結晶などの公知の方法によって、それらの物理化学的差異に基づいてそれらの個々のジアステレオマーに分離され得る。エナンチオマーは、適切な光学活性化合物(例えば、アルコール)との反応によりエナンチオマー混合物をジアステレオマー混合物に変換すること、ジアステレオマーを分離すること、及び個々のジアステレオマーを対応する純粋なエナンチオマーに変換(例えば加水分解)することによって分離され得る。ジアステレオマー、エナンチオマー、及びそれらの混合物を含む全てのそのような異性体は、本明細書に記載される組成物の一部とみなされる。
【0124】
追加的なまたはさらなる実施形態では、本明細書に記載の化合物(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチド及び上述の化合物を生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は、プロドラッグの形で使用される。追加的なまたはさらなる実施形態では、本明細書に記載の化合物(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチド、ならびに前述の化合物を生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は、代謝物の産生が必要な生物に投与された際に代謝され、次いで、所望の治療効果を含む所望の効果を得るために使用される。さらなるまたは追加の実施形態には、非天然アミノ酸の活性代謝物及び「修飾または非修飾」非天然アミノ酸ポリペプチドがある。
【0125】
本明細書に記載された方法及び製剤は、N-オキシド、結晶形(多形としても公知)、または非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド、及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドの薬学的に許容される塩の使用を含む。特定の実施形態では、非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド、及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドは、互変異性体として存在してもよい。全ての互変異性体は、本明細書に提示される非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドの範囲内に含まれる。さらに、本明細書に記載の非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドは、非溶媒和形態、及び水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態でも存在し得る。本明細書に提示された非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドの溶媒和形態も、本明細書に開示されているとみなされる。
【0126】
本明細書に記載の化合物のいくつか(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド、及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチド、ならびに前述の化合物を生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は、いくつかの互変異性形で存在し得る。このような互変異性体形は全て、本明細書に記載される組成物の一部とみなされる。また、例えば、本明細書に記載される任意の化合物(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドならびに前述の化合物を製造するための試薬を含むが、これらに限定されない)の全てのエノール-ケト形態も、本明細書に記載される組成物の一部とみなされる。
【0127】
本明細書中の化合物のいくつか(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドならびに前述の化合物のいずれかを生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は、酸性であり、薬学的に許容されるカチオンと塩を形成し得る。本明細書中の化合物のいくつか(非天然アミノ酸、非天然アミノ酸ポリペプチド及び修飾された非天然アミノ酸ポリペプチドならびに前述の化合物を生成するための試薬を含むが、これらに限定されない)は塩基性であってもよく、したがって、薬学的に許容されるアニオンと塩を形成し得る。二塩を含むそのような塩は全て、本明細書に記載される組成物の範囲内であり、それらは従来の方法によって調製され得る。例えば、塩は、酸性及び塩基性の実体を、水性、非水性または部分水性の媒体のいずれかにおいて接触させることによって調製され得る。塩は、濾過、非溶媒による沈殿とそれに続く濾過、溶媒のエバポレーション、または水溶液の場合には凍結乾燥のうちの少なくとも1つの技術を使用して回収される。
【0128】
本明細書に開示の非天然アミノ酸ポリペプチドの薬学的に許容される塩は、親の非天然のアミノ酸ポリペプチド中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンで置換されるか、または有機塩基と配位するときに形成され得る。加えて、開示される非天然のアミノ酸ポリペプチドの塩形態は、出発物質または中間体の塩を使用して調製され得る。本明細書に記載された非天然アミノ酸ポリペプチドは、本明細書に記載された非天然アミノ酸ポリペプチドの遊離塩基形態を薬学的に許容される無機酸または有機酸と反応させることにより、薬学的に許容される酸付加塩(薬学的に許容される塩の一種)として調製され得る。あるいは、本明細書に記載された非天然アミノ酸ポリペプチドは、本明細書に記載された非天然アミノ酸ポリペプチドの遊離酸形態を薬学的に許容される無機酸または有機酸と反応させることにより、薬学的に許容される塩基付加塩(薬学的に許容される塩の一種)として調製され得る。
【0129】
薬学的に許容される塩の種類としては、限定するものではないが:(1)酸付加塩であって、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸と形成されるか;または、例えば、酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-メチルビシクロ-[2.2.2]オクト-2-エン-1-カルボン酸、グルコヘプトン酸、4,4’-メチレンビス-(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの有機酸と形成される、酸付加塩;(2)親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えば、アルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオン;または有機塩基との配位で置換されるときに形成される塩、が挙げられる。許容可能な有機塩基としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが挙げられる。許容可能な無機塩基としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
【0130】
非天然アミノ酸ポリペプチドの薬学的に許容される塩の対応する対イオンは、限定するものではないが、イオン交換クロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、キャピラリー電気泳動、誘導結合プラズマ、原子吸光分析、質量分析、またはそれらの任意の組み合わせを含む様々な方法を使用して分析及び同定され得る。さらに、そのような非天然アミノ酸ポリペプチドの薬学的に許容される塩の治療活性は、実施例に記載された技術及び方法を使用して試験され得る。
【0131】
塩についての言及は、その溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むと理解されるべきである。溶媒和物は、化学量論または非化学量論量いずれかの溶媒を含有し、水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒を用いた結晶化のプロセス中に形成される場合が多い。溶媒が水である場合、水和物が形成され、または溶媒がアルコールである場合は、アルコラートが形成される。多形体には、化合物の同じ元素組成の異なる結晶充填配列が含まれる。多形体は通常、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形状、光学的特性及び電気的特性、安定性、ならびに溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、及び保存温度など、様々な要因により、単一結晶形が主となり得る。
【0132】
非天然アミノ酸ポリペプチドの薬学的に許容される塩の多形体及び/または溶媒和物のスクリーニング及び特徴付けは、熱分析、X線回折、分光法、蒸気収着、及び顕微鏡法を含むが、これらに限定されない様々な技術を使用して達成され得る。熱分析方法は、熱化学的分解または熱物理的プロセス(限定されないが、多型転移を含む)に対処し、そのような方法は、多型形態間の関係を分析するために、質量損失を決定するために、ガラス転移温度を見出すために、または賦形適合性試験に使用される。そのような方法としては、限定するものではないが、示差走査熱量測定(DSC)、変調示差走査熱量測定(MDCS)、熱重量分析(TGA)、ならびに熱重量分析及び赤外分析(TG/IR)が挙げられる。X線回折法としては、限定するものではないが、単結晶及び粉末回折計ならびにシンクロトロン放射源が挙げられる。使用される様々な分光技術には、限定するものではないが、ラマン、FTIR、UVIS及びNMR(液体及び固体)が挙げられる。種々の顕微鏡技術としては、限定するものではないが、偏光顕微鏡、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いる走査型電子顕微鏡(SEM)、EDX(ガスまたは水蒸気雰囲気中)を用いる環境走査型電子顕微鏡、IR顕微鏡、及びラマン顕微鏡が挙げられる。
【0133】
本開示の好ましい実施形態を示し、本明細書に記載しているが、そのような実施形態が、例示として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。ここで、当業者は、多数の変化形、変更、及び置換を本発明から逸脱することなく想定するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する種々の代替手段が、本発明の実施において採用され得ることを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、また、これらの特許請求の範囲に含まれる方法及び構造、ならびにそれらの等価物が、それにより包含されることを意図する。
【0134】
部位特異的抗HER2抗体薬物コンジュゲート
【0135】
臨床的に検証済みの固有のコンジュゲーション技術を用いることにより、抗体に組み込まれ得る非天然アミノ酸であるパラ-アセチル-フェニルアラニン(pAF)と、アミノオキシ含有薬物-リンカーとをコンジュゲートして形成される安定なオキシム結合を介して、抗体に薬物を部位特異的に結合させ得る。これにより、1つの抗体に特異的である正確に2つの薬物-リンカーコンジュゲート部位を得ることができる。最適なコンジュゲーション部位をスクリーニングするために、pAFを抗体の最も表面に露出した部位に組み込んでもよく、他の部位特異的コンジュゲーション技術と比較して有利である。
【0136】
ある場合には、本開示は、非天然アミノ酸組み込み技術プラットフォームを用いて、細胞毒性チューブリン阻害剤にコンジュゲートされたヒト化HER2標的化モノクローナル抗体(mAb)を含む次世代の部位特異的抗HER2 ADCを提供する。このように合成されたADCは、均質で安定性が高いため、標的腫瘍細胞により効率よく薬物を送達し、オンターゲット有効性を最大化し、かつオフターゲット毒性を最小化することにより、治療域を広げることができる。
【0137】
いくつかの場合に、ADCは、細胞毒性ペイロードである細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体AS269を生成するために、モノメチルオーリスタチンF(MMAF)のN末端に結合された短い非切断性のアミノオキシ-PEG4リンカーを含む。MMAFは、チューブリン重合の妨害により細胞増殖を阻害する非常に強力な合成オーリスタチン誘導体である。いくつかの場合に、ADCは、非天然アミノ酸を含むトラスツズマブ系抗体に部位特異的にコンジュゲートされた2つのAS269細胞毒性ペイロードを含む。一部の事例では、ADCは、ペイロードの数及び位置、ならびにペイロードを抗体にコンジュゲートする化学結合を最適化することによって、抗腫瘍活性を示し得る。ある場合には、AS269は、抗体と非常に安定な共有結合を形成し、コンジュゲートされた標的抗体によって支援された場合に細胞内への進入時に腫瘍細胞のみを殺傷させ、それによって正常組織に対するオフターゲット効果を制限するように特異的に設計された、一般的に非細胞透過性のチューブリン阻害剤である。ある場合には、AS269が示すのは、標的抗体とコンジュゲートすることなく細胞膜を横断する透過性がなく、それによって、オフターゲット毒性を低減することに限定される。ある場合には、AS269は、多剤耐性ポンプ(MDR)の弱い基質であり、それにより、がん細胞内で薬物を保持して濃縮しており、このことは、がん細胞のより強力な殺傷につながり得る。AS269の固有の特性を、ペイロードの最適化された数及び位置、ならびに2というDARで抗体にペイロードをコンジュゲートする化学結合と、組み合わせることにより、インビボでの安定性、効力の向上、及び血清中でのペイロードへの曝露の減少が生じ得、このことは、ADCで観察される抗腫瘍活性及び忍容性プロファイルの一因となり得る。ある場合には、ADCは、
図1に従って合成された構造を含む。いくつかの場合に、ADCは、ペイロードとしてAS269と、本明細書に開示される1つ以上の非天然アミノ酸を含む抗HER2抗体とを含む。ある場合には、AS269ペイロードは、mAbの重鎖中の固有の部位(重鎖1つ当たり1ペイロード)で非天然アミノ酸pAFに特異的かつ安定にコンジュゲートされ、抗HER2抗体は、対応するアミノ酸配列、配列番号2(Kabatナンバリング)を有する抗HER2Fabの重鎖定常領域、及び対応するアミノ酸配列、配列番号3を有する軽鎖配列を含む。ある場合には、ADCは、ペイロードとしてAS269と、抗HER2抗体であって、それらのKabatナンバリングを有する抗HER2 Fabの重鎖または軽鎖の定常領域と、対応するアミノ酸重鎖配列、配列番号2、及び軽鎖配列の配列番号4~11を含む抗HER2抗体とを含む。
【0138】
細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体
【0139】
1つのレベルでは、本明細書に記載されるのは、カルボニル基、ジカルボニル基、オキシム基、アミノオキシ基またはヒドロキシルアミン基を有する少なくとも1種の非天然アミノ酸または修飾非天然アミノ酸を含む、ADCまたは類似体の標的化ポリペプチドを生成及び使用するためのツール(方法、組成物、技術)である。非天然アミノ酸を含むADCのそのような標的化ポリペプチドは、ポリマー;水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;第2のタンパク質またはポリペプチドまたはポリペプチドの類似体;抗体または抗体フラグメント;及びそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されないさらなる機能性を含み得る。上述した種々の機能は、1つの機能の構成要素を別の機能の構成要素として分類することができないということを示唆するものではないことに留意されたい。実際、特定の状況に応じて重なりが生じる。一例にすぎないが、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコールの誘導体との範囲で重なるが、この重なりは完全ではなく、したがって両方の機能が上記に挙げられている。
【0140】
一態様には、細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体、及び本明細書に記載の方法、組成物、及び技術を使用して修飾されるべき標的化ポリペプチドを選択及び設計するための方法がある。新規の細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体及び標的化ポリペプチドは、単なる例としては、高スループットスクリーニングプロセスの一部として(この場合、多数のポリペプチドを設計、合成、特性決定、及び/または試験し得る)、または研究者の目的に基づいて新規に設計され得る。新規の細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体、及び標的化ポリペプチドはまた、公知のまたは部分的に特徴付けられたポリペプチドの構造に基づいて設計されていてもよい。どのアミノ酸(複数可)を置換及び/または修飾するかを選択するための原理を、本明細書に個別に記載する。どの修飾を使用するのかの選択も本明細書において説明され、実験者またはエンドユーザの要求を満たすために使用され得る。そのような要求には、限定するものではないが、ポリペプチドの治療効果の操作、ポリペプチドの安全プロファイルの改善、ポリペプチドの薬物動態、薬理学及び/または薬力学の調整、例えば、単なる例示として、水溶性、生物学的利用能の増大、血清半減期の増大、治療半減期の増大、免疫原性の調節、生物学的活性の調節、または循環時間の延長が含まれ得る。加えて、そのような修飾には、単なる例として、ポリペプチドに追加の機能性を提供すること、抗体を組み込むこと、及び前述の修飾の任意の組み合わせが含まれる。
【0141】
また本明細書では、細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体、及びオキシム基、カルボニル基、ジカルボニル基、アミノオキシ基またはヒドロキシルアミン基を有するように修飾されたかまたは修飾され得る標的化ポリペプチドも記載される。この態様には、このような細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体及び標的化ポリペプチドを製造、精製、特徴付け及び使用する方法が含まれる。
【0142】
細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体または標的化ポリペプチドは、カルボニル基もしくはジカルボニル基、オキシム基、アミノオキシ基、ヒドロキシルアミン基、またはそれらの保護形態のうち、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、または10またはそれ以上を含んでもよい。細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体または標的化ポリペプチドは、同じであっても異なっていてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の異なる反応性基を含む誘導体中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20またはそれ以上の異なる部位が存在し得る。
【0143】
本明細書に記載されるように、本開示は、式「標的化ポリペプチド-L-M」(式中、Lは、結合基または化学結合であり、かつMは、別の標的化ポリペプチドを含むがこれらに限定されない任意の他の分子である)を有する別の分子にカップリングされた標的化ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態では、Lは、インビボで安定である。いくつかの実施形態では、Lは、インビボで加水分解性である。いくつかの実施形態では、Lは、インビボで準安定性である。
【0144】
標的化ポリペプチド及びMは、当業者に公知である標準的な連結剤及び手順を使用してLを通じて互いに連結され得る。いくつかの態様において、標的化ポリペプチド及びMは、直接融合され、Lは結合である。他の態様において、標的化ポリペプチド及びMは、連結基Lを介して融合される。例えば、いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチド及びMは、ペプチド結合を介して、任意選択でペプチドまたはアミノ酸スペーサーを介して互いに結合されている。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチド及びMは、化学的コンジュゲーションにより、任意選択で連結基(L)を介して互いに連結される。いくつかの実施形態では、Lは、標的化ポリペプチド及びMのそれぞれに直接コンジュゲートされている。
【0145】
化学的コンジュゲーションは、1つの化合物の求核反応性基を、別の化合物の求電子反応性基と反応させることによって生じ得る。いくつかの実施形態では、Lが結合である場合、標的化ポリペプチドは、標的化ポリペプチド上の求核反応性部分をY上の求電子反応性部分と反応させることによって、または標的化ポリペプチド上の求電子反応性部分をM上の求核反応性部分と反応させることによって、Mにコンジュゲートされる。Lが標的化ポリペプチド及びMを一緒に連結する基である実施形態では、標的化ポリペプチド及び/またはM上の求核反応性部分を、L上の求電子反応性部分と反応させることによって、または標的化ポリペプチド及び/またはMの求電子反応性部分を、Lの求核反応性部分と反応させることによって、標的化ポリペプチド及び/またはMをLにコンジュゲートさせることができる。求核反応性基の非限定的な例としては、アミノ、チオール及びヒドロキシルが挙げられる。求電子反応性基の非限定的な例としては、カルボキシル、塩化アシル、無水物、エステル、スクシンイミドエステル、ハロゲン化アルキル、スルホン酸エステル、マレイミド、ハロアセチル及びイソシアネートが挙げられる。標的化ポリペプチド及びMが、カルボン酸とアミンとの反応により一緒にコンジュゲートされる実施形態では、活性化剤を使用して、カルボン酸の活性化エステルを形成し得る。
【0146】
カルボン酸の活性化エステルは、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、トシレート(Tos)、メシレート、トリフラート、カルボジイミドまたはヘキサフルオロホスフェートであってもよい。いくつかの実施形態では、カルボジイミドは、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、または1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DICD)である。いくつかの実施形態では、ヘキサフルオロホスフェートは、ヘキサフルオロホスフェートベンゾトリアゾール-1-イル-オキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ベンゾトリアゾール-1-イル-オキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP)、2-(1H-7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU)、及びO-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロ-ホスフェート(HBTU)からなる群から選択される。
【0147】
いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドは、MまたはL上の求電子反応性基にコンジュゲート可能な求核反応性基(例えば、リジン、システインまたはセリンの側鎖のアミノ基、チオール基、またはヒドロキシル基)を含む。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドは、MまたはL上の求核反応性基にコンジュゲート可能な求電子反応性基(例えばAspまたはGluの側鎖のカルボキシレート基)を含む。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドは、MまたはLに直接にコンジュゲートし得る反応性基を含むように化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドは、求核性側鎖を有する天然または非天然のアミノ酸を含むようにN末端またはC末端で修飾される。例示的な実施形態では、標的化ポリペプチドのN末端またはC末端アミノ酸は、リジン、オルニチン、セリン、システイン、及びホモシステインからなる群から選択される。例えば、標的化ポリペプチドのN末端またはC末端アミノ酸は、リジン残基を含むように修飾されてもよい。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドは、例えばAsp及びGluなどの求電子側鎖を有する天然または非天然アミノ酸を含むように、N末端またはC末端アミノ酸で修飾される。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドの内部アミノ酸は、本明細書で前述したように、求核性側鎖を有する天然または非天然アミノ酸で置換されている。例示的な実施形態では、置換される標的化ポリペプチドの内部アミノ酸は、リジン、オルニチン、セリン、システイン及びホモシステインからなる群から選択される。例えば、標的化ポリペプチドの内部アミノ酸は、リジン残基で置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチドの内部アミノ酸は、例えばAsp及びGluなどの求電子側鎖を有する天然または非天然アミノ酸で置換されている。
【0148】
いくつかの実施形態では、Mは、標的化ポリペプチドまたはLに直接コンジュゲートし得る反応性基を含む。いくつかの実施形態では、Mは、標的化ポリペプチドまたはL上の求電子反応性基にコンジュゲート可能な求核反応性基(例えばアミン、チオール、ヒドロキシル)を含む。いくつかの実施形態では、Mは、標的化ポリペプチドまたはL上の求核反応性基にコンジュゲート可能な求電子反応性基(例えばカルボキシル基、カルボキシル基の活性化形態、脱離基を有する化合物)を含む。いくつかの実施形態では、Mは、標的化ポリペプチドまたはL上の求電子反応性基にコンジュゲート可能な求核反応性基のいずれかを含むように、化学的に修飾される。いくつかの実施形態では、Mは、標的化ポリペプチドまたはL上の求核反応性基にコンジュゲート可能な求電子反応性基を含むように化学的に修飾される。
【0149】
いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、オルガノシラン、例えば、グルタルアルデヒドで処理されたアミノシラン;シラノール基のカルボニルジイミダゾール(CDI)活性化;またはデンドリマーの利用により行うことができる。様々なデンドリマーが当該技術分野で公知であり、これには、アンモニアまたはエチレンジアミン開始剤コア試薬から出発するダイバージェント法によって合成されるポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマー;トリスアミノエチレンイミンコアに基づくPAMAMデンドリマーのサブクラス;親水性、求核性ポリアミドアミン(PAMAM)内部及び疎水性オルガノシリコン(OS)外相からなる反転単分子ミセルであるラジアル層状(radially layered)ポリ(アミドアミン-オルガノシリコン)デンドリマー(PAMAMOS);ポリ(プロピレンイミン)(PPI)デンドリマー(一般的には、第一級アミンを末端基として有するポリ-アルキルアミンであり、一方でデンドリマー内部は多くの第三級トリスプロピレンアミンからなる);ポリ(プロピレンアミン)(POPAM)デンドリマー;ジアミノブタン(DAB)デンドリマー;両親媒性デンドリマー;水溶性ハイパーブランチポリフェニレンの単分子ミセルであるミセルデンドリマー;ポリリジンデンドリマー;ならびにポリベンジルエーテルハイパーブランチ骨格に基づくデンドリマーが挙げられる。
【0150】
いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、オレフィンメタセシスにより行ってもよい。いくつかの実施形態では、M及び標的化ポリペプチド、M及びL、または標的化ポリペプチド及びLは両方とも、メタセシスを受けることができるアルケンまたはアルキン部分を含む。いくつかの実施形態では、メタセシス反応を加速させるために適切な触媒(例えば銅、ルテニウム)が使用されている。オレフィンメタセシス反応を実施する適切な方法は、当該技術分野で説明されている。例えば、Schafmeister et al.,J.Am.Chem.Soc.122:5891-5892(2000),Walensky et al.,Science 305:1466-1470(2004)、及びBlackwell et al.,Angew,Chem.,Int.Ed.37:3281-3284(1998)を参照のこと。
【0151】
いくつかの実施形態では、コンジュゲーションは、クリックケミストリーを用いて行ってもよい。「クリック反応」は範囲が広く実施が容易で、入手が容易な試薬のみを使用し、酸素及び水に対して非感受性である。いくつかの実施形態では、クリック反応は、トリアゾリル基を形成するための、アルキニル基とアジド基との間の付加環化反応である。いくつかの実施形態では、クリック反応は、銅またはルテニウム触媒を使用する。クリック反応を実施する適切な方法は、当該技術分野で説明されている。例えば、Kolb et al.,Drug Discovery Today 8:1128(2003);Kolb et al.,Angew.Chem.Int.Ed.40:2004(2001);Rostovtsev et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41:2596(2002);Tornoe et al.,J.Org.Chem.67:3057(2002);Manetsch et al.,J.Am.Chem.Soc.126:12809(2004);Lewis et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41:1053(2002);Speers,J.Am.Chem.Soc.125:4686(2003);Chan et al.Org.Lett.6:2853(2004);Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.127:15998(2005);及びWaser et al.,J.Am.Chem.Soc.127:8294(2005)を参照のこと。
【0152】
高親和性の特異的結合パートナー、例えばストレプトアビジン/ビオチン、またはアビジン/ビオチン、またはレクチン/炭水化物を介した間接的なコンジュゲーションも考えられる。
【0153】
いくつかの実施形態では、標的化ポリペプチド及び/またはMは、求核反応性基または有機誘導体化剤を有する求電子反応性基を含むように、官能化されている。この誘導体化剤は、標的化ポリペプチド上の標的化アミノ酸及びM上の官能基の選択された側鎖またはN末端もしくはC末端の残基と反応し得る。標的化ポリペプチド及び/またはM上の反応性基としては、例えばアルデヒド、アミノ、エステル、チオール、a-ハロアセチル、マレイミド、またはヒドラジノ基が挙げられる。誘導体化剤としては、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基によるコンジュゲーション)、N-ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸または当該技術分野で公知の他の剤が挙げられる。あるいは、標的化ポリペプチド及び/またはMは、ポリサッカライドまたはポリペプチド担体などの中間担体を介して間接的に互いに連結され得る。ポリサッカライド担体の例としては、アミノデキストランが挙げられる。適切なポリペプチド担体の例としては、得られるロードされた担体に望ましい溶解性特性を与えるための、ポリリジン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、そのコポリマー、及びこれらのアミノ酸と他のもの、例えば、セリンとの混合ポリマーが挙げられる。
【0154】
システイニル残基を、最も一般的には、クロロ酢酸またはクロロアセトアミドなどのa-ハロアセテート(及び対応するアミン)と反応させると、カルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチル誘導体が得られる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、アルファ-ブロモ-β-(5-イミドゾイル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロメルクリベンゾエート、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応により誘導体化される。
【0155】
ヒスチジル残基は、この薬剤がヒスチジル側鎖に対して比較的特異的であるので、pH5.5~7.0でジエチルピロカーボネートとの反応により誘導体化される。パラ-ブロモフェナシルブロミドも有用であり;反応は、好ましくは、0.1Mのカコジル酸ナトリウム中でpH6.0で行われる。
【0156】
リシニル及びアミノ末端残基は、コハク酸または他のカルボン酸無水物と反応する。これらの薬剤による誘導体化は、リシニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。アルファ-アミノ含有残基を誘導体化するための他の適切な試薬としては、イミドエステル、例えばメチルピコリンイミデート(methyl picolinimidate)、ピリドキサールリン酸、ピリドキサール、クロロホウ化水素、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4-ペンタンジオン、及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。
【0157】
アルギニル残基は、フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、及びニンヒドリンなどの1種または数種の従来の試薬との反応によって修飾される。アルギニン残基の誘導体化には、グアニジン官能基のpKaが高いので、反応をアルカリ性条件で行う必要がある。さらに、これらの試薬は、リジンの基及びアルギニンのイプシロン-アミノ基と反応してもよい。
【0158】
チロシル残基の特定の修飾は、特に、芳香族ジアゾニウム化合物またはテトラニトロメタンとの反応によって、チロシル残基にスペクトル標識を導入することに特に関心を抱いて行われる場合がある。最も一般的には、N-アセチルキシミジゾール及びテトラニトロメタンは、それぞれ、O-アセチルチロシル種及び3-ニトロ誘導体を形成するために使用される。
【0159】
カルボキシル側基(アスパルチルまたはグルタミル)は、カルボジイミド(R-N=C=N-R’)との反応によって選択的に修飾され得、ここでR及びR’は、異なるアルキル基、例えば、1-シクロヘキシル-3-(2-モルホリニル-4-エチル)カルボジイミドまたは1-エチル-3-(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル)カルボジイミドである。さらに、アスパルチル及びグルタミルの残基は、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル及びグルタミニルの残基に変換される。
【0160】
他の修飾としては、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリルまたはトレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のアルファ-アミノ基のメチル化(T.E.Creighton,Proteins:Structure and Molecular Properties,W.H.Freeman & Co.,San Francisco,pp.79-86(1983))、アスパラギンまたはグルタミンの脱アミド化、N末端アミンのアセチル化、及び/またはC末端カルボン酸基のアミド化もしくはエステル化が挙げられる。
【0161】
別の種類の共有結合修飾は、グリコシドをペプチドに化学的または酵素的にカップリングすることに関する。糖(複数可)は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインのもの、(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えば、チロシン、またはトリプトファンのもの、あるいは(f)グルタミンのアミド基に結合していてもよい。これらの方法は、WO1987/05330、及びAplin and Wriston,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259-306(1981)に記載されている。
【0162】
いくつかの実施形態では、Lは、結合である。これらの実施形態では、標的化ポリペプチド及びMは、標的化ポリペプチド上の求核反応性部分とM上の求電子反応性部分とを反応させることによって一緒にコンジュゲートされる。代替的な実施形態では、標的化ポリペプチド及びMは、標的化ポリペプチド上の求電子反応性部分とM上の求核性部分とを反応させることによって一緒にコンジュゲートされる。例示的な実施形態では、Lは、標的化ポリペプチド上のアミン(例えば、リジン残基のε-アミン)とM上のカルボキシル基との反応の際に形成されるアミド結合である。代替的な実施形態では、標的化ポリペプチド及び/またはMは、コンジュゲーションの前に誘導体化剤で誘導体化される。
【0163】
いくつかの実施形態では、Lは、連結基である。いくつかの実施形態では、Lは二官能性リンカーであり、標的化ポリペプチド及びMにコンジュゲートする前に、2つの反応性基のみを含む。標的化ポリペプチド及びMの両方が求電子反応性基を有する実施形態では、Lは、標的化ポリペプチド及びMにコンジュゲートする前に、同じまたは2つの異なる求核性基(例えば、アミン、ヒドロキシル、チオール)のうちの2つを含む。標的化ポリペプチド及びMの両方が求核反応性基を有する実施形態では、Lは、標的化ポリペプチド及びMにコンジュゲートする前に、同じまたは2つの異なる求電子基(例えば、カルボキシル基、カルボキシル基の活性化形態、脱離基を有する化合物)のうちの2つを含む。標的化ポリペプチドまたはMの一方が求核反応性基を有し、標的化ポリペプチドまたはMの他方が求電子反応性基を有する実施形態では、Lは、標的化ポリペプチド及びMにコンジュゲートする前に、1つの求核反応性基及び1つの求電子基を含む。
【0164】
Lは、(標的化ポリペプチド及びMにコンジュゲートする前に)標的化ポリペプチド及びMのそれぞれと反応し得る少なくとも2つの反応性基を有する任意の分子であり得る。いくつかの実施形態では、Lは、2つの反応性基のみを有し、二官能性である。L(ペプチドにコンジュゲートする前)は、式VIによって表され得る:
【化8】
(式中、A及びBは、独立して求核性または求電子性の反応性基である)。いくつかの実施形態では、A及びBは、両方とも求核性基であるか、または両方とも求電子基である。いくつかの実施形態では、AまたはBの一方は求核性基であり、AまたはBの他方は求電子基である。A及びBの非限定的な組み合わせを、以下の表1に示す。
【0165】
【0166】
いくつかの実施形態では、A及びBは、オレフィンメタセシス反応に適したアルケン及び/またはアルキン官能基を含んでもよい。いくつかの実施形態では、A及びBは、クリックケミストリーに適した部分(例えばアルケン、アルキン、ニトリル、アジド)を含む。反応性基(A及びB)の他の非限定的な例としては、ピリジルジチオール、アリールアジド、ジアジリン、カルボジイミド、及びヒドラジドが挙げられる。
【0167】
いくつかの実施形態では、Lは、疎水性である。疎水性リンカーは当該技術分野において公知である。例えば、参照によりその全体が組み込まれる、Bioconjugate Techniques,G.T.Hermanson(Academic Press,San Diego,CA,1996)を参照のこと。当該技術分野で公知の適切な疎水性連結基としては、例えば8-ヒドロキシオクタン酸及び8-メルカプトオクタン酸が挙げられる。組成物のペプチドへのコンジュゲーションの前に、疎水性連結基は、本明細書に記載され、かつ以下に示されるように、少なくとも2つの反応性基(A及びB)を含む:
【化9】
【0168】
いくつかの実施形態では、疎水性連結基は、マレイミド基またはヨードアセチル基のいずれかと、カルボン酸または活性化カルボン酸(例えばNHSエステル)のいずれかとを反応性基として含む。これらの実施形態では、マレイミド基またはヨードアセチル基は、標的化ポリペプチドまたはM上のチオール部分にカップリングし得、カルボン酸または活性化カルボン酸は、カップリング試薬の使用の有無にかかわらず、標的化ポリペプチドまたはM上のアミンにカップリングし得る。当業者に公知の任意のカップリング剤を使用して、カルボン酸を遊離アミン、例えば、DCC、DIC、HATU、HBTU、TBTU、及び本明細書に記載されている他の活性剤などとカップリングしてもよい。特定の実施形態では、親水性連結基は、2~100個のメチレン基の脂肪族鎖を含み、ここで、A及びBは、カルボキシル基またはその誘導体(例えば、コハク酸)である。その他の特定の実施形態では、Lは、ヨード酢酸である。
【化10】
【0169】
いくつかの実施形態では、連結基は親水性、例えばポリアルキレングリコールなどである。組成物のペプチドへのコンジュゲーションの前に、親水性連結基は、本明細書に記載され、かつ以下に示されるように、少なくとも2つの反応性基(A及びB)を含む:
【化11】
【0170】
特定の実施形態では、連結基は、ポリエチレングリコール(PEG)である。特定の実施形態におけるPEGは、約100ダルトン~約10,000ダルトン、例えば、約500ダルトン~約5000ダルトンの分子量を有する。いくつかの実施形態におけるPEGは、約10,000ダルトン~約40,000ダルトンの分子量を有する。
【0171】
いくつかの実施形態では、親水性連結基は、マレイミド基またはヨードアセチル基のいずれかと、カルボン酸または活性化カルボン酸(例えばNHSエステル)のいずれかとを反応性基として含む。これらの実施形態では、マレイミド基またはヨードアセチル基は、標的化ポリペプチドまたはM上のチオール部分にカップリングし得、カルボン酸または活性化カルボン酸は、カップリング試薬の使用の有無にかかわらず、標的化ポリペプチドまたはM上のアミンにップリングし得る。当業者に公知の任意の適切なカップリング剤を使用して、カルボン酸をアミン、例えば、DCC、DIC、HATU、HBTU、TBTU、及び本明細書に記載されている他の活性剤などとカップリングしてもよい。いくつかの実施形態では、連結基は、マレイミド-ポリマー(20~40kDa)-COOH、ヨードアセチル-ポリマー(20~40kDa)-COOH、マレイミド-ポリマー(20~40kDa)-NHS、またはヨードアセチル-ポリマー(20~40kDa)-NHSである。
【0172】
いくつかの実施形態では、連結基は、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、またはポリペプチドで構成されており、ここで、アミノ酸、ジペプチド、トリペプチド、またはポリペプチドは、本明細書に記載されるように少なくとも2つの活性化基を含む。いくつかの実施形態では、連結基(L)は、アミノ、エーテル、チオエーテル、マレイミド、ジスルフィド、アミド、エステル、チオエステル、アルケン、シクロアルケン、アルキン、トリゾイル、カルバメート、カーボネート、カテプシンB切断可能及びヒドラゾンからなる群から選択される部分を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、Lは、1~約60個、または1~30個もしくは以上の原子、2~5個の原子、2~10個の原子、5~10個の原子、または10~20個の原子長の鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖原子は全て炭素原子である。いくつかの実施形態では、リンカーの骨格にある鎖原子は、C、O、N及びSからなる群から選択される。鎖原子及びリンカーは、より可溶性のコンジュゲートを提供するために、それらの予想される溶解性(親水性)に応じて選択され得る。いくつかの実施形態では、Lは、標的組織または器官または細胞に見られる酵素または他の触媒または加水分解条件による切断を受ける官能基を提供する。いくつかの実施形態では、Lの長さは立体障害の可能性を減らすのに十分な長さである。
【0174】
いくつかの実施形態では、Lは、生物学的流体、例えば血液または血液画分において安定である。いくつかの実施形態では、Lは血清中で少なくとも5分間安定であり、例えば5分間にわたって血清中でインキュベートした際に、コンジュゲートの25%、20%、15%、10%または5%未満が切断される。他の実施形態では、Lは、少なくとも10、または20、または25、または30、または60、または90、または120分間、あるいは3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、18、または24時間、血清中で安定である。これらの実施形態では、Lは、インビボで加水分解を受け得る官能基を含まない。いくつかの例示的な実施形態では、Lは、血清中で少なくとも約72時間安定である。インビボで有意な加水分解を受けることができない官能基の非限定的な例としては、アミド、エーテル及びチオエーテルが挙げられる。例えば、以下の化合物(Q及びYは、リンカー基Lによって連結された2つの基を表す)は、インビボで有意な加水分解を受けない:
【化12】
【0175】
いくつかの実施形態では、Lは、インビボで加水分解性である。これらの実施形態では、Lは、インビボで加水分解を受け得る官能基を含む。インビボで加水分解を受けることができる官能基の非限定的な例としては、エステル、無水物及びチオエステルが挙げられる。例えば、以下の化合物(Q及びYは、リンカー基Lによって連結された2つの基を表す)は、エステル基を含むので、インビボで加水分解を受け得る:
【化13】
【0176】
いくつかの例示的な実施形態では、Lは、不安定であり、37℃の血漿中で3時間以内に実質的な加水分解を受け、6時間以内に完全な加水分解を受ける。いくつかの例示的な実施形態では、Lは不安定ではない。
【0177】
いくつかの実施形態では、Lは、インビボで準安定性である。これらの実施形態では、Lは、任意選択である期間にわたってインビボで化学的または酵素的に切断され得る官能基(例えば、酸不安定性官能基、還元不安定性官能基または酵素不安定性官能基)を含む。これらの実施形態では、Lは、例えばヒドラゾン部分、ジスルフィド部分、またはカテプシン切断可能な部分を含んでもよい。Lが準安定である場合、いかなる特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、標的化ポリペプチド-L-Mコンジュゲートは、細胞外環境で安定であり、例えば、上記の期間血清中で安定であるが、細胞内環境または細胞内環境を模倣する条件では不安定であり、したがって細胞に入ると切断される。いくつかの実施形態では、Lが準安定である場合、Lは血清中で少なくとも約24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、42または48時間、例えば、少なくとも約48、54、60、66または72時間、あるいは約24~48、48~72、24~60、36~48、36~72時間、または48~72時間安定である。
【0178】
別の実施形態では、本開示のポリマー誘導体は、以下の構造を有するポリマー骨格を含む。
X-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-O-(CH2)m-W-N=N=N、(式中:
Wは、1~10個の炭素原子を含む脂肪族または芳香族リンカー部分であり;
nは、1~約4000であり、かつXは、上記のような官能基であり、mは、1~10である)。
【0179】
本開示のアジド含有ポリマー誘導体は、当該技術分野で公知及び/または本明細書に開示されている様々な方法によって調製され得る。以下に示す1つの方法では、約800Da~約100,000Daの平均分子量を有する水溶性ポリマー骨格であって、第1の末端が第1の官能基に結合されており、第2の末端が適切な脱離基に結合されているポリマー骨格を、アジドアニオン(これは、ナトリウム、カリウム、tert-ブチルアンモニウムなどを含む、複数の適切な対イオンのいずれかと対合し得る)と反応させる。脱離基は求核置換を受け、かつアジド部分で置き換えられ、所望のアジド含有ポリマーが得られる;
【0180】
X-ポリマー-LY+N3
-→X-ポリマー-L N3
【0181】
示されるように、本開示で使用するのに適したポリマー骨格は、式X-ポリマー-LY(式中、ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)であり、Xは、アジド基と反応しない官能基であり、Yは、適切な脱離基である)を有する。適切な官能基の例としては、限定するものではないが、ヒドロキシル、保護されたヒドロキシル、アセタール、アルケニル、アミン、アミノオキシ、保護されたアミン、保護されたヒドラジド、保護されたチオール、カルボン酸、保護されたカルボン酸、マレイミド、ジチオピリジン、及びビニルピリジン、ならびにケトンが挙げられる。適切な脱離基の例としては、限定するものではないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシレート、トレシレート及びトシレートが挙げられる。
【0182】
本開示のアジド含有ポリマー誘導体を調製するための別の方法では、アジド官能基を有する連結剤を、約800Da~約100,000Daの平均分子量を有する水溶性ポリマー骨格と接触させ、ここで、この連結剤は、ポリマー上の化学官能基と選択的に反応する化学官能基を有し、アジド含有ポリマー誘導体生成物を形成し、このアジドは、連結基によってポリマー骨格から分離される。
【0183】
例示的な反応スキームを以下に示す:
X-ポリマー-Y+N-リンカー-N=N=N→PG-X-ポリマー-リンカー-N=N=N(式中、
ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)であり、Xは、アルコキシなどのキャッピング基または上記のような官能基であり;Yは、アジド官能基と反応しないが、N官能基と効率よく選択的に反応する官能基である)。
【0184】
適切な官能基の例としては、限定するものではないが、Nがアミンである場合には、カルボン酸、カーボネートまたは活性エステルであるY;Nがヒドラジド部分またはアミノオキシ部分である場合には、ケトンであるY;Nが求核試薬である場合には、脱離基であるYが挙げられる。粗生成物の精製は、生成物の沈殿、必要に応じてそれに続くクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されない公知の方法によって達成され得る。
【0185】
アミンの1つがtert-ブチル-Bocなどの保護基部分によって保護されており、得られた単保護ポリマージアミンがアジド官能基を有する連結部分と反応するポリマージアミンの場合のより具体的な例が、以下に示される:BocHN-ポリマーNH2+HO2C-(CH2)3-N=N=N
【0186】
この場合、アミン基を、塩化チオニルまたはカルボジイミド試薬及びN-ヒドロキシスクシンイミドまたはN-ヒドロキシベンゾトリアゾールなどの様々な活性化剤を使用してカルボン酸基にカップリングして、モノアミンポリマー誘導体とアジド基含有リンカー部分との間にアミド結合を作り出し得る。アミド結合の形成に成功した後、得られたN-tert-ブチル-Boc-保護アジド含有誘導体を直接使用して生物活性分子を改変してもよく、または他の有用な官能基を導入するためにさらに構成してもよい。例えば、N-t-Boc基を、強酸での処理によって加水分解して、オメガ-アミノ-ポリマー-アジドを生成してもよい。得られたアミンを合成ハンドルとして使用して、マレイミド基、活性化ジスルフィド、活性化エステルなどの他の有用な官能基を、価値のあるヘテロ二官能性試薬を作製するために導入してもよい。
【0187】
ヘテロ二官能性誘導体は、ポリマーの各末端に異なる分子を結合させることが望ましい場合に特に有用である。例えば、オメガ-N-アミノ-N-アジドポリマーは、活性化された求電子基を有する分子、例えばアルデヒド、ケトン、活性化されたエステル、活性化されたカーボネートなどをポリマーの一方の末端に結合させ、アセチレン基を有する分子をポリマーの他方の末端に結合させることを可能にする。
【0188】
本開示の別の実施形態では、Aは、1~10個の炭素原子の脂肪族リンカーまたは6~14個の炭素原子の置換アリール環である。Xはアジド基と反応しない官能基であり、Yは適切な脱離基である。
【0189】
複数の標的化ポリペプチドは、リンカーポリペプチドによって連結されていてよく、ここで、リンカーポリペプチドは、任意選択で6~14個、7~13個、8~12個、7~11個、9~11個、または9個のアミノ酸の長さである。他のリンカーとしては、限定するものではないが、複数の標的化ポリペプチド分子を互いに結合することを可能にするマルチアームであり得るPEGなどの小さなポリマーを含む。複数の標的化ポリペプチド及び修飾された標的化ポリペプチドは、そのようなリンカーを使用することにより、またはそれぞれのポリペプチドのそれぞれのN末端の間の直接的な化学結合により、それらのN末端を介してヘッド・ツー・ヘッド構成で互いに連結され得る。例えば、2つの標的化ポリペプチドは、それらのN末端アミノ基または修飾されたN末端アミノ基の間の化学結合によって二量体を形成するように連結されていてもよい。また、各標的化ポリペプチドのN末端と結合するための複数の化学官能基を含むように設計された連結分子を使用して、複数の標的化ポリペプチドをそれぞれのN末端で結合してもよい。さらに、複数の標的化ポリペプチドは、N末端アミノ酸またはC末端アミノ酸以外のアミノ酸の間の結合により連結されていてもよい。本明細書に記載される標的化ポリペプチドの二量体及び多量体を形成するために利用され得る共有結合の例には、ジスルフィド結合またはスルフヒドリル結合またはチオール結合が含まれるが、これらに限定されない。加えて、ソルターゼなどの特定の酵素を使用して、標的化ポリペプチドと、その標的化ポリペプチドのN末端を含むリンカーとの間に共有結合を形成し得る。
【0190】
リンカーは、広範囲の分子量または分子長を有し得る。より大きいまたはより小さい分子量のリンカーを使用して、標的化ポリペプチドと連結体との間、または、存在する場合には、連結体とその結合パートナーとの間に所望の空間的関係または高次構造を提供し得る。より長いまたはより短い分子長を有するリンカーは、標的化ポリペプチドとその連結体との間、またはその連結体とその結合パートナーとの間に所望の空間または可撓性を提供するために使用してもよい。
【0191】
いくつかの実施形態では、本開示は、a)アジド、アルキン、ヒドラジン、ヒドラジド、アミノオキシ、ヒドロキシルアミン、またはカルボニル含有部分をポリマー骨格の少なくとも第1の末端に含み、かつb)ポリマー骨格の第2の末端に少なくとも第2の官能基を含むダンベル構造を有する、水溶性二官能性リンカーを提供する。第2の官能基は、第1の官能基と同じであっても異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、第2の官能基は、第1の官能基と反応しない。本開示は、いくつかの実施形態では、分岐鎖状の分子構造の少なくとも1つのアームを含む水溶性化合物を提供する。例えば、分岐鎖状の分子構造は、樹枝鎖状であってもよい。
【0192】
例示的な実施形態では、ポリマーは、リンカーを介して標的化ポリペプチドまたは修飾された標的化ポリペプチドに連結されている。例えば、リンカーは、一方の末端でポリマーに結合する-例えばアルブミン結合部分-及び他方の末端でポリペプチド骨格上の任意の利用可能な位置に結合する、1つまたは2つのアミノ酸を含んでもよい。付加的な例示的なリンカーは、少なくとも5個の非水素原子を含み、これらの30~50%がNまたはOのいずれかである化学部などの親水性リンカーを含む。ポリマーを標的化ポリペプチドまたは修飾された標的化ポリペプチドに連結し得るさらなる例示的なリンカーは、U.S.2012/0295847及びWO/2012/168430に開示されており、それらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0193】
任意選択で、複数の標的化ポリペプチドまたは修飾された標的化ポリペプチド分子は、リンカーポリペプチドによって連結されてよく、ここで、前記リンカーポリペプチドは、任意選択で、1、1~2、1~3、1~4、1~5、1~6、1~7、1~8、1~9、1~10、1~11、1~12アミノ酸の長さ、及びより長い長さであり、任意選択で1つの標的化ポリペプチドのN末端は、リンカーポリペプチドのC末端に融合され、リンカーポリペプチドのN末端は、別の標的化ポリペプチドのN末端に融合されている。利用され得るさらなる例示的なリンカーポリペプチドは、WO/2013/004607号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0194】
本明細書で使用される「求電子基」、「求電子試薬」などの用語は、共有結合を形成するために電子対を受容し得る原子または原子群を指す。本明細書で使用される「求電子基」としては、限定するものではないが、ハロゲン化物、カルボニル及びエポキシド含有化合物が挙げられる。一般的な求電子試薬は、ハロゲン化物、例えばチオホスゲン、グリセリンジクロロヒドリン、フタロイルクロリド、スクシニルクロリド、クロロアセチルクロリド、クロロスクシニルクロリドなど;ケトン類、例えばクロロアセトン、ブロモアセトンなど;アルデヒド類、例えば、グリオキサールなど;イソシアネート類、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、メタ-キシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルメタン-4,4-ジイソシアネートなど、及びこれらの化合物の誘導体であり得る。
【0195】
本明細書で使用される「求核性基」、「求核試薬」などの用語は、共有結合を形成し得る電子対を有する原子または原子群を指す。このタイプの基は、アニオン性基として反応するイオン化可能な基であり得る。本明細書で使用される「求核性基」としては、限定するものではないが、ヒドロキシル、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン及びチオールが挙げられる。
【0196】
表2には、所望の官能基を作り出すために組み合わせられてもよい様々な出発求電子試薬及び求核試薬を示す。提供される情報は、例示を意味しており、本明細書に記載される合成技術に限定されない。
【0197】
【0198】
一般に、炭素求電子試薬は、炭素求核試薬を含む相補的な求核試薬による攻撃を受けやすく、その際に攻撃する求核試薬は、求核試薬と炭素求電子試薬との間に新たな結合を形成するために、電子対を炭素求電子試薬にもたらす。
【0199】
炭素求核試薬の非限定的な例としては、アルキル、アルケニル、アリール及びアルキニルグリニャール、有機リチウム、有機亜鉛、アルキル-、アルケニル、アリール-及びアルキニル-スズ試薬(有機スタンナン)、アルキル-、アルケニル-、アリール-及びアルキニル-ボラン試薬(有機ボラン及び有機ボロン酸)が挙げられるが、これらに限定されず、これらの炭素求核試薬は、水または極性有機溶媒中で速度論的に安定であるという利点を有する。炭素求核試薬の他の非限定的な例としては、リンイリド、エノール及びエノラート試薬が挙げられ、これらの炭素求核試薬は、合成有機化学の当業者に周知の前駆体から比較的容易に生成できるという利点を有する。炭素求核試薬は、炭素求電子試薬と組み合わせて使用される場合、炭素求核試薬と炭素求電子試薬との間に新しい炭素-炭素結合を生じる。
【0200】
炭素求電子試薬へのカップリングに適した非炭素求核試薬の非限定的な例としては、第一級及び第二級アミン、チオール、チオレート、チオエーテル、アルコール、アルコキシド、アジド、セミカルバジドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの非炭素求核試薬は、炭素求電子試薬と組み合わせて使用される場合、通常、ヘテロ原子結合(C-X-C)を生成し、ここで、Xはヘテロ原子であり、これには酸素、硫黄または窒素が含まれるが、これらに限定されない。
【0201】
ある場合には、本開示で使用されるポリマーは、ヒドロキシまたはメトキシで一端で終端し、すなわち、Xは、HまたはCH3(「メトキシPEG」)である。あるいは、ポリマーは、反応性基で終端し、それによって二官能性ポリマーを形成し得る。典型的な反応性基としては、20個の共通アミノ酸に見られる官能基(限定するものではないが、マレイミド基、活性カーボネート(p-ニトロフェニルエステルを含むが、これらに限定されない)、活性化エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニルエステルを含むが、これらに限定されない)、及びアルデヒドを含む)と反応するのに一般的に使用される反応性基、ならびに20個の共通アミノ酸に対して不活性であるが、相補的な官能基(アジド基、アルキン基を含むが、これらに限定されない)と特異的に反応する官能基が挙げられ得る。上記の式においてYによって示されるポリマーの他方の末端は、天然に存在するかまたは天然にはコードされないアミノ酸を介して標的化ポリペプチドに直接的または間接的に結合することに留意されたい。例えば、Yは、ポリペプチドのアミン基(リジンのイプシロンアミンまたはN-末端を含むが、これに限定されない)へのアミド、カルバメートまたは尿素結合であってよい。あるいは、Yは、チオール基(システインのチオール基を含むが、これに限定されない)へのマレイミド結合であり得る。あるいは、Yは、20個の共通アミノ酸を介して一般的にアクセスできない残基への結合であり得る。例えば、ポリマー上のアジド基を、標的化ポリペプチド上のアルキン基と反応させて、ヒュスゲン[3+2]付加環化生成物を形成してもよい。代替的に、ポリマー上のアルキン基を、標的化ポリペプチドに存在するアジド基と反応させて、同様の生成物を形成してもよい。いくつかの実施形態では、強力な求核試薬(ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジドを含むが、これらに限定されない)を標的化ポリペプチド中に存在するアルデヒドまたはケトン基と反応させて、必要に応じてヒドラゾン、オキシムまたはセミカルバゾンを形成してもよく、これを、ある場合には適切な還元剤で処理することにより、さらに還元してもよい。あるいは、強力な求核試薬は、天然にはコードされないアミノ酸を介して標的化ポリペプチドに組み込んでもよく、これを使用して、水溶性ポリマー中に存在するケトンまたはアルデヒド基と優先的に反応させてもよい。
【0202】
ポリマーのための任意の分子量を、実際に望まれるように使用してもよく、これには、限定するものではないが、必要に応じて、約100ダルトン(Da)~100,000Daまたはそれ以上(場合により0.1~50kDaまたは10~40kDaを含むが、これらに限定されない)が含まれる。ポリマーの分子量は、約100Da~約100,000Daまたはそれ以上を含むが、これらに限定されない広い範囲のものであってもよい。ポリマーは、約100Da~約100,000Daであってよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、及び100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーは、約100Da~約50,000Daである。1~100kDa(限定されないが、1~50kDaまたは5~20kDaを含む)の範囲の分子量を各鎖に有するポリマー分子を含むがこれに限定されない、分岐鎖ポリマーも使用され得る。分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、限定するものではないが、約1,000Da~約100,000Daまたはそれ以上であってもよい。分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、約1,000Da~約100,000Daであってもよく、これには、限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、及び1,000Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、約1,000Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖ポリマーの各鎖の分子量は、約5,000Da~約20,000Daである。広範囲のポリマー分子は、参照により本明細書に組み込まれるShearwater Polymers,Inc.カタログ、Nektar Therapeuticsカタログに記載されているが、これらに限定されない。
【0203】
本開示は、いくつかの実施形態では、約800Da~約100,000Daの平均分子量を有する水溶性ポリマー骨格を含む、アジド及びアセチレン含有ポリマー誘導体を提供する。水溶性ポリマーのポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)であり得る。しかしながら、限定するものではないが、ポリ(エチレン)グリコール、ならびにポリ(デキストラン)及びポリ(プロピレングリコール)を含む他の関連するポリマーを含む多種多様な水溶性ポリマーも、本開示の実施における使用に適していること、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、このような分子を全て包含し、含むことを意図していると理解すべきである。PEGという用語には、限定するものではないが、二官能性PEG、マルチアームのPEG、誘導体化PEG、フォーク状PEG、分岐状PEG、懸垂型PEG(すなわち、PEGまたはポリマー骨格に従属する1つ以上の官能基を有する関連ポリマー)またはこれらの中に分解性結合を含むPEGを含む、その形態のいずれかのポリ(エチレングリコール)を含む。
【0204】
ポリマーのこれらの形態に加えて、骨格に弱いまたは分解性の結合を有するポリマーを調製してもよい。例えば、ポリマーは、加水分解されるポリマー骨格にエステル結合を用いて調製してもよい。以下に示すように、この加水分解によってポリマーがより分子量の低いフラグメントに切断する:-ポリマー-CO2-ポリマー-+H2O→ポリマー-CO2H+HO-ポリマー-
【0205】
多くのポリマーがまた本開示での使用に適している。いくつかの実施形態では、2~約300の末端を有する水溶性であるポリマー骨格が、本開示において特に有用である。適切なポリマーの例としては、限定するものではないが、他のポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、それらのコポリマー(エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマーを含むが、これらに限定されない)、それらのターポリマー、それらの混合物などが挙げられる。ポリマー骨格の各鎖の分子量は様々であってよいが、通常、約800Da~約100,000Da、しばしば約6,000Da~約80,000Daの範囲にある。ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約100,000Daであってよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da及び100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約10,000Da~約40,000Daである。
【0206】
本開示のこの実施形態の1つの特徴においては、インタクトなポリマーコンジュゲートは、加水分解前に投与時に最小限に分解され、その結果、切断可能な結合の加水分解は、標的化ポリペプチドの全身循環中への放出前の酵素分解とは対照的に、活性標的化ポリペプチドの血流中への徐放速度を支配するのに有効である。
【0207】
適切な生理学的切断性結合としては、限定するものではないが、エステル、炭酸エステル、カルバメート、硫酸塩、リン酸塩、アシルオキシアルキルエーテル、アセタール及びケタールが挙げられる。そのようなコンジュゲートは、保存時及び投与時には安定である、生理学的に切断可能な結合を有するべきである。例えば、ポリマーに連結された標的化ポリペプチドまたは修飾された標的化ポリペプチドは、最終的な医薬組成物の製造時に、適切な送達ビヒクルに溶解した際に(使用された場合)、及び経路に関係なく投与された際に、その完全性を維持するべきである。
【0208】
細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体の構造及び合成:求電子基及び求核性基
ヒドロキシルアミン(アミノオキシとも呼ばれる)基を含むリンカーを有する細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体は、コンジュゲート(PEGまたは他の水溶性ポリマーとのコンジュゲートを含むが、これらに限定されない)を形成するために、様々な求電子基との反応を可能にする。ヒドラジン類、ヒドラジド類及びセミカルバジド類と同様に、アミノオキシ基の高められた求核性により、限定されないが、ケトン類、アルデヒド類または類似の化学反応性を有する他の官能基を含む、カルボニル基またはジカルボニル基を含む様々な分子と効率的かつ選択的に反応することが可能となる。例えば、Shao,J.and Tam,J.,J.Am.Chem.Soc.117:3893-3899(1995);H.Hang and C.Bertozzi,Acc.Chem.Res.34(9):727-736(2001)を参照のこと。しかしながら、ヒドラジン基との反応により、対応するヒドラゾンが生じるが、オキシムは、一般的に、アミノオキシ基と、例えばケトン、アルデヒドまたは同様の化学反応性を有する他の官能基などのカルボニル基含有またはジカルボニル含有基との反応により生じる。いくつかの実施形態では、アジド、アルキン、またはシクロアルキンを含むリンカーを有する細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体は、付加環化反応(例えば、1,3-双極性付加環化、アジド-アルキン、ヒュスゲン付加環化など)を介して分子を連結することを可能にする。(米国特許第7,807,619号に記載されており、その内容はその反応に関連する程度まで参照により本明細書に組み込まれる)。
【0209】
したがって、本明細書に記載される特定の実施形態では、ヒドロキシルアミン、アルデヒド、保護アルデヒド、ケトン、保護ケトン、チオエステル、エステル、ジカルボニル、ヒドラジン、アミジン、イミン、ジアミン、ケトアミン、ケトアルキン、及びエンジオンヒドロキシルアミン基、ヒドロキシルアミン様基(ヒドロキシルアミン基と類似の反応性を有し、ヒドロキシルアミン基と構造的に類似している)、マスクされたヒドロキシルアミン基(ヒドロキシルアミン基に容易に変換できる)、または保護されたヒドロキシルアミン基(脱保護の際にヒドロキシルアミン基と同様の反応性を有する)を含むリンカーを有する細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体がある。いくつかの実施形態では、リンカーを有する細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体は、アジド、アルキンまたはシクロアルキンを含む。
【0210】
そのような細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体または標的化ポリペプチドは、塩の形であってもよく、または非天然アミノ酸ポリペプチド、ポリマー、ポリサッカライドもしくはポリヌクレオチドに組み込んでもよく、任意選択で翻訳後修飾されてもよい。
【0211】
特定の実施形態では、細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体の化合物は、水溶液中で少なくとも1カ月間、弱酸性条件下で安定である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるADCは、弱酸性条件下で少なくとも2週間にわたり安定である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるADCは、弱酸性条件下で少なくとも5日間にわたり安定である。特定の実施形態では、そのような酸性条件はpH2~8である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるADCは、それぞれ-25℃~-15℃及び2℃~8℃の保存条件で注射するための液体製剤及び凍結乾燥粉末製剤として、1年、2年、3年またはそれ以上の有効期間を有する。
【0212】
本明細書において提供及び記載される方法及び組成物は、少なくとも1つのカルボニル基もしくはジカルボニル基、オキシム基、ヒドロキシルアミン基、またはそれらの保護形態もしくはマスク形態を有する非天然アミノ酸を含むポリペプチドを含む。細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体または標的化ポリペプチドへの少なくとも1つの反応性基の導入によって、限定するものではないが、1つ以上の標的化ポリペプチド(複数可)との特定の化学反応(ただし通常存在するアミノ酸とは反応しない)に関与するコンジュゲーション化学の適用が可能になり得る。一旦、組み込まれると、ADC側鎖の標的化ポリペプチドを、本明細書に記載された化学方法論、または細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体もしくは標的化ポリペプチド中に存在する特定の官能基もしくは置換基に適した化学方法論を利用することによって修飾してもよい。
【0213】
細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体、及び本明細書に記載の標的化ポリペプチド方法及び組成物は、広範な様々な官能基、置換基または部分を有する物質と、限定するものではないが、ポリマー、水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;第2のタンパク質またはポリペプチドまたはポリペプチド類似体;抗体または抗体フラグメント;及びそれらの任意の組み合わせを含む他の物質とのコンジュゲートを提供する。
【0214】
特定の実施形態では、細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体、標的化ポリペプチド、ADC、リンカー及び試薬(本明細書に記載)は、水溶液中では弱酸性条件(pH2~8を含むが、これらに限定されない)下で安定である。他の実施形態では、そのような化合物は、弱酸性条件下で少なくとも1カ月間安定である。他の実施形態では、そのような化合物は、弱酸性条件下で少なくとも2週間安定である。他の実施形態では、そのような化合物は、弱酸性条件下で少なくとも5日間安定である。
【0215】
本明細書に記載される組成物、方法、技術及び戦略の別の態様には、上記の「修飾または非修飾」の非天然アミノ酸標的化ポリペプチドのいずれかを研究または使用するための方法がある。この態様には、単なる例として、治療用、診断用、アッセイに基づく、工業用、化粧用、植物生物学、環境用、エネルギー生産用、消費者製品及び/または軍事用の使用が含まれ、これらは「修飾または非修飾」の非天然アミノ酸ポリペプチドまたはタンパク質を含む標的化ポリペプチドの恩恵を受けるであろう。
【0216】
少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むADC分子が本開示において提供される。本開示の特定の実施形態では、少なくとも1つの非天然アミノ酸を含むADCは、少なくとも1つの翻訳後修飾を含む。一実施形態では、少なくとも1つの翻訳後修飾は、限定するものではないが、標識、色素、リンカー、別のADCポリペプチド、ポリマー、水溶性ポリマー、ポリエチレングリコールの誘導体、光架橋剤、放射性核種、細胞毒性化合物、薬物、親和性標識、光親和性標識、反応性化合物、樹脂、第2のタンパク質もしくはポリペプチドもしくはポリペプチド類似体、抗体もしくは抗体フラグメント、金属キレート剤、補因子、脂肪酸、炭水化物、ポリヌクレオチド、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド、糖、シクロデキストリン、阻害性リボ核酸、生体材料、ナノ粒子、スピン標識、フルオロフォア、金属含有部分、放射性部分、新規官能基、他の分子と共有結合的もしくは非共有結合的に相互作用する基、光ケージ化部分、化学線で励起可能な部分、光異性化可能な部分、ビオチン、ビオチンの誘導体、ビオチン類似体、重原子を組み込んだ部分、化学的に切断可能な基、光切断可能な基、伸長した側鎖、炭素結合糖、酸化還元活性剤、アミノチオ酸、毒性部分、同位体標識部分、生物物理学的プローブ、燐光基、化学発光基、電子密度基、磁性基、挿入基、発色団、エネルギー移動剤、生物学的活性物質、検出可能な標識、小分子、量子ドット、ナノ伝達物質、放射性ヌクレオチド、放射線伝達物質、中性子捕捉物質、または上記の任意の組み合わせ、あるいは任意の他の望ましい化合物もしくは物質であって、特定の反応性基に適していることが当業者に公知である化学手法を利用して、第1の反応性基を含む少なくとも1つの非天然アミノ酸に対する第2の反応性基を含む化合物もしくは物質、を含む分子の結合を含む。例えば、第1の反応性基はアルキニル部分(非天然アミノ酸p-プロパルギルオキシフェニルアラニンを含むが、これらに限定されず、ここで、プロパルギル基はアセチレン部分とも呼ばれる場合もある)であり、第2の反応性基はアジド部分であり、[3+2]付加環化化学方法論が利用される。別の例では、第1の反応性基はアジド部分(非天然アミノ酸のp-アジド-L-フェニルアラニンまたはpAZ(本明細書中で参照される場合もある)を含むが、これらに限定されない)であり、第2の反応性基はアルキニル部分である。本開示の修飾されたADCの特定の実施形態では、少なくとも1つの翻訳後修飾を含む少なくとも1つの非天然アミノ酸(ケト官能基を含む非天然アミノ酸を含むが、これに限定されない)を使用する(ここで、少なくとも1つの翻訳後修飾は糖類部分を含む)。特定の実施形態では、翻訳後修飾は、インビボで真核細胞内または非真核細胞内で行われる。リンカー、ポリマー、水溶性ポリマーまたは他の分子は、分子をポリペプチドに結合し得る。追加の実施形態では、ADCに結合されたリンカーは、二量体の形成を可能にするのに十分な長さである。分子は、ポリペプチドに直接連結されていてもよい。
【0217】
特定の実施形態では、ADCタンパク質は、1つの宿主細胞によってインビボで行われる少なくとも1つの翻訳後修飾を含み、この翻訳後修飾は、通常、別の宿主細胞型によっては行われない。特定の実施形態では、タンパク質は、真核細胞によってインビボで行われる少なくとも1つの翻訳後修飾を含み、この翻訳後修飾は、通常、非真核細胞によって行われない。翻訳後修飾の例としては、限定するものではないが、グリコシル化、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸塩付加、リン酸化、糖脂質結合修飾などが挙げられる。
【0218】
いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸塩付加、リン酸化、または糖脂質結合修飾のための1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化のための、1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化、アセチル化、アシル化、脂質修飾、パルミトイル化、パルミチン酸塩付加、リン酸化、または糖脂質結合修飾のための1つ以上の天然にコードされたアミノ酸を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化のための、1つ以上の天然にコードされたアミノ酸を含む。
【0219】
いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化を増強する1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドのグリコシル化を増強する1つ以上の欠失を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの異なるアミノ酸でグリコシル化を増強する1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの異なるアミノ酸でのグリコシル化を増強する1つ以上の欠失を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの天然にはコードされないアミノ酸のグリコシル化を増強する、1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの天然にコードされたアミノ酸のグリコシル化を増強する1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの異なるアミノ酸でグリコシル化を増強する1つ以上の天然にコードされたアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの天然にコードされたアミノ酸のグリコシル化を増強する1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。いくつかの実施形態では、ADCは、ポリペプチドの天然にはコードされないアミノ酸のグリコシル化を増強する、1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸の付加及び/または置換を含む。
【0220】
一実施形態では、翻訳後修飾は、GlcNAc-アスパラギン連結によるオリゴ糖のアスパラギンへの結合を含む(オリゴ糖が(GlcNAc-Man)2-Man-GlcNAc-GlcNAcなどを含むが、これらに限定されない)。別の実施形態では、翻訳後修飾は、GalNAc-セリン、GalNAc-スレオニン、GlcNAc-セリン、またはGlcNAc-スレオニン連結によるセリンまたはスレオニンへのオリゴ糖(Gal-GalNAc、Gal-GlcNAcなどを含むが、これらに限定されない)の結合を含む。特定の実施形態では、本開示のタンパク質またはポリペプチドは、分泌または局在性配列、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ、GST融合、及び/またはこれらに類するものを含んでもよい。分泌シグナル配列の例としては、限定するものではないが、原核生物の分泌シグナル配列、真核生物の分泌シグナル配列、細菌の発現のために5’を最適化された真核生物の分泌シグナル配列、新規な分泌シグナル配列、ペクテートリアーゼの分泌シグナル配列、Omp A分泌シグナル配列、及びファージ分泌シグナル配列が挙げられる。分泌シグナル配列の例としては、限定するものではないが、STII(原核生物)、Fd GIII及びM13(ファージ)、Bgl2(酵母)、ならびにトランスポゾンに由来するシグナル配列blaが挙げられる。任意のそのような配列は、ポリペプチドを用いて所望の結果を提供するように修飾されてよく、これには限定するものではないが、1つのシグナル配列を異なるシグナル配列で置換すること、1つのリーダー配列を異なるリーダー配列で置換することなどが挙げられる。
【0221】
目的のタンパク質またはポリペプチドは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、もしくは10個またはそれ以上の非天然アミノ酸を含んでもよい。非天然アミノ酸は、同じであっても異なっていてもよく、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の異なる非天然アミノ酸を含むタンパク質中の異なる部位が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個またはそれ以上存在してもよい。特定の実施形態では、タンパク質の天然に存在するバージョンに存在する特定のアミノ酸の少なくとも1つが、ただし全てではないアミノ酸が、非天然アミノ酸で置換される。
【0222】
本開示は、少なくとも1種の天然にはコードされないアミノ酸を含むADCに基づく方法及び組成物を提供する。少なくとも1種の天然にはコードされないアミノ酸をADCに導入することにより、通常存在する20個のアミノ酸と反応させずに、1種以上の天然にはコードされないアミノ酸を用いるものを含むが、これらに限定されない特定の化学反応を伴うコンジュゲーション化学の適用が可能になる。いくつかの実施形態では、天然にはコードされないアミノ酸を含むADCは、天然にはコードされないアミノ酸の側鎖を介して、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、またはリンカーに結合している。本開示は、PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体によるタンパク質の選択的修飾のための高効率の方法を提供し、この方法は、セレクターコドンに応答して、20個の天然に組み込まれたアミノ酸に見られない官能基または置換基、例えば、限定するものではないが、ケトン、アジドまたはアセチレン部分を含むアミノ酸を含むがこれに限定されない遺伝子的にコードされていないアミノ酸を、タンパク質に選択的に組み込み、続いてこれらのアミノ酸を適切に反応性のPEG誘導体で修飾することを含む。一旦、組み込まれると、次いでアミノ酸側鎖は、天然にはコードされないアミノ酸中に存在する特定の官能基または置換基に適するように、当業者に公知の化学的方法論を利用することによって修飾され得る。多種多様な公知の化学方法論は、水溶性ポリマーをタンパク質に組み込むための本開示での使用に適している。そのような方法論としては、限定はしないが、それぞれアセチレンまたはアジドの誘導体などでの、ヒュスゲン[3+2]付加環化反応が挙げられるが、それらに限定されない(例えば、Padwa,A.in Comprehensive Organic Synthesis,Vol.4,(1991)Ed.Trost,B.M.,Pergamon,Oxford,p.1069-1109;及び、Huisgen,R.in 1,3-Dipolar Cycloaddition Chemistry,(1984)Ed.Padwa,A.,Wiley,New York,p.1-176を参照のこと)。
【0223】
ヒュスゲン[3+2]付加環化法は、求核置換反応ではなく付加環化を含むので、タンパク質を非常に高い選択性で修飾し得る。この反応は、触媒量のCu(I)塩を反応混合物に添加することにより、位置選択性に優れる(1,4>1,5)水性条件下で室温で行ってもよい。例えば、Tornoe,et al.,(2002)J.Org.Chem.67:3057-3064;及びRostovtsev,et al.,(2002)Angew.Chem.Int.Ed.41:2596-2599;及びWO03/101972を参照のこと。[3+2]付加環化を介して本開示のタンパク質に付加され得る分子は、実質的に、アジドまたはアセチレン誘導体を含むがこれらに限定されない適切な官能基または置換基を有する任意の分子を含む。これらの分子は、それぞれ、p-プロパルギルオキシフェニルアラニンを含むがこれらに限定されないアセチレン基、またはp-アジドフェニルアラニンを含むがこれらに限定されないアジド基を有する非天然アミノ酸に添加されてもよい。
【0224】
ヒュスゲン[3+2]付加環化から得られる5員環は、還元環境では一般的に可逆的ではなく、水性環境で加水分解に対して長期間安定である。その結果、幅広い種類の物質の物理的及び化学的特性を、過酷な水性条件下で、本開示の活性PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体で修飾し得る。さらにより重要なことに、アジド部分及びアセチレン部分は互いに特異的であるため(かつ、例えば20個の共通の遺伝子的にコードされたアミノ酸のいずれとも反応しないため)、タンパク質は、1つ以上の特定の部位で非常に高い選択性で修飾され得る。
【0225】
本開示はまた、PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体の水溶性及び加水分解安定性の誘導体、ならびに1つ以上のアセチレン部分またはアジド部分を有する関連する親水性ポリマーを提供する。アセチレン部分を含むPEGポリマー誘導体は、セレクターコドンに応答してタンパク質に選択的に導入されたアジド部分とのカップリングに対して非常に選択的である。同様に、アジド部分を含むPEGポリマー誘導体は、セレクターコドンに応答してタンパク質に選択的に導入されたアセチレン部分とのカップリングに対して非常に選択的である。より具体的には、アジド部分は、限定するものではないが、アルキルアジド、アリールアジド、及びこれらのアジドの誘導体を含む。アルキル及びアリールアジドの誘導体は、アセチレン固有の反応性が維持される限り、他の置換基を含んでもよい。アセチレン部分は、アルキル及びアリールアセチレン及びそれぞれの誘導体を含む。アルキル及びアリールアセチレンの誘導体は、アジド固有の反応性が維持される限り、他の置換基を含んでいてもよい。
【0226】
本開示は、広範な種々の官能基、置換基または部分を有する物質と、限定するものではないが、標識;色素;ポリマー;水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;光架橋剤;放射性核種;細胞毒性化合物;薬物;親和性標識;光親和性標識;反応性化合物;樹脂;第2のタンパク質またはポリペプチドまたはポリペプチド類似体;抗体または抗体フラグメント;金属キレート剤;補因子;脂肪酸;炭水化物;ポリヌクレオチド、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド;糖;水溶性デンドリマー;シクロデキストリン;阻害性リボ核酸;生体材料;ナノ粒子;スピン標識;フルオロフォア;金属含有部分;放射性部分;新規官能基;他の分子と共有結合的または非共有結合的に相互作用する基;光ケージ化部分;化学線で励起可能な部分;光異性化可能な部分;ビオチン;ビオチンの誘導体;ビオチン類似体;重原子を組み込んだ部分;化学的に切断可能な基;光切断可能な基;伸長した側鎖;炭素結合糖;酸化還元活性剤;アミノチオ酸;毒性部分;同位体標識部分;生物物理学的プローブ;燐光基;化学発光基;電子密度基;磁性基;挿入基;発色団;エネルギー移動剤;生物学的活性物質;検出可能な標識;小分子;量子ドット;ナノ伝達物質;放射性ヌクレオチド;放射線伝達物質;中性子捕捉物質、または上記の任意の組み合わせ、あるいは任意の他の望ましい化合物もしくは物質を含む他の物質とのコンジュゲートを提供する。本開示はまた、アジド部分またはアセチレン部分を有する物質と、対応するアセチレン部分またはアジド部分を有するPEGポリマー誘導体とのコンジュゲートを含む。例えば、アジド部分を含むPEGポリマーは、アセチレン官能基を有する遺伝子的にコードされていないアミノ酸を含むタンパク質中の位置で生物学的活性分子にカップリングされ得る。PEGと生物学的活性分子とがカップリングされる結合は、ヒュスゲン[3+2]付加環化生成物を含むが、これらに限定されない。
【0227】
PEGを使用して生体材料の表面を修飾できることは当該技術分野で十分に確立されている(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,610,281号;Mehvar,R.,J.Pharm Sci.,3(1):125-136(2000)を参照のこと)。本開示はまた、1つ以上の反応性アジド部位またはアセチレン部位を有する表面と、その表面にヒュスゲン[3+2]付加環化連結を介してカップリングされた本開示のアジド含有ポリマーまたはアセチレン含有ポリマーの1つ以上とを含む生体材料を含む。生体材料及び他の物質は、アジドまたはアセチレン連結以外の連結を介して、例えば、カルボン酸、アミン、アルコールまたはチオール部分を含む連結を介して、アジド活性化またはアセチレン活性化ポリマー誘導体にカップリングされて、その後の反応に利用可能なアジドまたはアセチレン部分を残し得る。
【0228】
本開示は、本開示のアジド含有及びアセチレン含有ポリマーを合成する方法を含む。アジド含有PEG誘導体の場合、アジドは、ポリマーの炭素原子に直接結合され得る。あるいは、得られるポリマーがその末端にアジド部分を有するように、従来の活性化ポリマーに、一方の末端にアジド部分を有する連結剤を結合させることにより、アジド含有PEG誘導体を調製することができる。アセチレン含有PEG誘導体の場合、アセチレンは、ポリマーの炭素原子に直接結合され得る。あるいは、得られるポリマーがその末端にアセチレン部分を有するように、従来の活性化ポリマーに、一方の末端にアセチレン部分を有する連結剤を結合させることにより、アセチレン含有PEG誘導体を調製することができる。
【0229】
より具体的には、アジド含有PEG誘導体の場合、少なくとも1つの活性ヒドロキシル部分を有する水溶性ポリマーが反応を受けて、その上にメシレート、トレシレート、トシレートまたはハロゲン脱離基などの、より反応性の高い部分を有する置換ポリマーが生成される。スルホニル酸ハロゲン化物、ハロゲン原子及び他の脱離基を含むPEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体の調製及び使用は、当業者に公知である。得られた置換ポリマーは、次いで、ポリマーの末端でより反応性の高い部分とアジド部分とを置き換える反応を受ける。あるいは、少なくとも1つの活性求核部または求電子部を有する水溶性ポリマーを、一方の末端にアジドを有する連結剤と反応させることで、PEGポリマーと連結剤との間に共有結合が形成され、アジド部がポリマーの末端に位置する。アミン、チオール、ヒドラジド、ヒドラジン、アルコール、カルボキシレート、アルデヒド、ケトン、チオエステルなどを含む求核性及び求電子性の部分は、当業者に公知である。
【0230】
より具体的には、アセチレン含有PEG誘導体の場合、少なくとも1つの活性ヒドロキシル部分を有する水溶性ポリマーが反応し、アセチレン部分を含む前駆体からハロゲンまたは他の活性化脱離基を変位させる。あるいは、少なくとも1つの活性求核部または求電子部を有する水溶性ポリマーを、一方の末端にアセチレンを有する連結剤と反応させることで、PEGポリマーと連結剤との間に共有結合が形成され、アセチレン部がポリマーの末端に位置する。有機合成の文脈におけるハロゲン部分、活性化脱離基、求核部分及び求電子部分の使用、ならびにPEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体の調製及び使用は、当業者に十分に確立されている。
【0231】
本開示はまた、アジド部分またはアセチレン部分を含む、PEG及びPEG誘導体もしくは細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体、リンカー、または別のADCポリペプチドなどの水溶性ポリマーを含むが、これらに限定されない、改変されたタンパク質に他の物質を付加するために、タンパク質を選択的に改変する方法を提供する。アジド及びアセチレン含有PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体は、生体適合性、安定性、溶解性及び免疫原性の欠如が重要である表面及び分子の特性を改変するのに使用し得るが、同時に、PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体をタンパク質に、当該技術において以前から公知のものよりも選択的に結合させる手段を提供する。
【0232】
本開示で使用するための一般的な組換え核酸方法
本開示の多数の実施形態では、目的のADCの標的化ポリペプチドをコードする核酸が単離され、クローニングされ、多くの場合、組換え法を使用して改変される。そのような実施形態は、例としては、限定するものではないが、タンパク質発現のために、またはADCの標的化ポリペプチドに由来するバリアント、誘導体、発現カセットもしくは他の配列の生成の間に使用される。いくつかの実施形態では、本開示のポリペプチドをコードする配列は、異種プロモーターに作動可能に連結されている。
【0233】
天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、親ポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて合成されてもよく、次いでヌクレオチド配列を変更して関連アミノ酸残基(複数可)の導入(すなわち、組み込みまたは置換)または除去(すなわち、欠失または置換)を達成し得る。ヌクレオチド配列は、従来の方法に従って部位特異的変異誘発により簡便に修飾され得る。あるいは、ヌクレオチド配列は、化学合成であって、限定するものではないが、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいてオリゴヌクレオチドが設計される、オリゴヌクレオチド合成装置を使用すること、好ましくは、組換えポリペプチドが産生されることになる宿主細胞で好適なコドンを選択することを含む化学合成によって調製され得る。例えば、所望のポリペプチドの部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、PCR、ライゲーションまたはライゲーション連鎖反応によって合成して、アセンブルしてもよい。例えば、Barany,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.88:189-193(1991);米国特許第6,521,427号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0234】
本開示は、組換え遺伝学の分野における通常の技術を利用する。本開示における一般的な使用方法を開示する基本的な文書としては、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(3rd ed.2001);Kriegler,Gene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(1990);及びCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubel et al.,eds.,1994))が挙げられる。
【0235】
本開示はまた、直交tRNA/RS対を介して非天然アミノ酸をインビボで組み込むための真核宿主細胞、非真核宿主細胞、及び生物体に関する。宿主細胞は、本開示のポリヌクレオチド、または本開示のポリヌクレオチドを含む構築物で遺伝子操作されており(限定するものではないが、形質転換、形質導入またはトランスフェクションされており)、これには、限定するものではないが、例えば、クローニングベクターまたは発現ベクターであり得る、本開示のベクターが挙げられる。
【0236】
標的核酸を細胞に導入するいくつかの周知の方法が利用可能であり、そのいずれも本開示において使用され得る。これらとしては、DNAを含む細菌プロトプラストによるレシピエント細胞の融合、エレクトロポレーション、プロジェクタイル・ボンバードメント、及びウイルスベクターによる感染(以下でさらに説明)などが挙げられる。細菌細胞を使用して、本開示のDNA構築物を含むプラスミドの数を増幅し得る。細菌は、対数期まで増殖し、細菌内のプラスミドは、当該技術分野で公知の様々な方法によって単離され得る(例えば、Sambrookを参照のこと)。加えて、細菌からのプラスミドの精製のためのキットが市販されている(例えば、EasyPrep(商標)、FlexiPrep(商標)(両方ともPharmacia Biotech製);StrataClean(商標)(Stratagene製)、及びQIAPrep(商標)(Qiagen製)を参照のこと)。次に、単離及び精製されたプラスミドを、他のプラスミドを産生するようにさらに操作するか、細胞をトランスフェクトするために使用するか、または関連するベクターに組み込んで生物体に感染させる。典型的なベクターは、転写及び翻訳ターミネーター、転写及び翻訳開始配列、ならびに特定の標的核酸の発現の調節に有用なプロモーターを含む。ベクターは、任意選択で、少なくとも1つの独立したターミネーター配列を含む一般的な発現カセット、真核生物もしくは原核生物またはその両方におけるこのカセットの複製を可能にする配列(限定されるものではないが、シャトルベクターを含む)及び原核生物及び真核生物系の両方のための選択マーカーを含む。ベクターは、原核生物、真核生物、またはその両方における複製及び組み込みに適している。Gillam & Smith,Gene 8:81(1979);Roberts,et al.,Nature,328:731(1987);Schneider,E.,et al.,Protein Expr.Purif.6(1):10-14(1995);Ausubel,Sambrook,Berger(全て上記)を参照のこと。クローニングに有用な細菌及びバクテリオファージのカタログは、例えばATCCにより、例えばATCCにより発行されたThe ATCC Catalogue of Bacteria and Bacteriophage(1992)Gherna et al.(eds)により提供される。シーケンシング、クローニング、及び分子生物学の他の態様、ならびに基礎となる理論的な考察のための追加の基本手順は、Watson et al.(1992)Recombinant DNA Second Edition Scientific American Books,NY.にも見られる。加えて、実質的に任意の核酸(及び、標準であろうと標準でなかろうと、実質的に任意の標識された核酸)が、様々な商業的供給源のいずれか、例えばMidland Certified Reagent Company(Midland,TX、mcrc.comのワールドワイドウェブで入手可能),The Great American Gene Company(Ramona,CA、genco.comのワールドワイドウェブで入手可能)、ExpressGen Inc.(Chicago,IL、expressgen.comのワールドワイドウェブで入手可能)、Operon Technologies Inc.(Alameda,CA)などに、カスタムオーダーまたは標準オーダーできる。
【0237】
セレクターコドン
本開示のセレクターコドンは、タンパク質生合成機構の遺伝子コドンの枠組みを拡張する。例えば、セレクターコドンには、限定されるものではないが、固有の3塩基コドン、ナンセンスコドン、例えば、終止コドン、例としては、限定するものではないが、アンバーコドン(UAG)、オーカーコドン、またはオパールコドン(UGA)、非天然コドン、4塩基以上のコドン、レアコドンなどが挙げられる。ADCの少なくとも一部をコードする単一のポリヌクレオチドにおける1つ以上、2つ以上、3つ以上、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上を含むがこれらに限定されない所望の遺伝子またはポリヌクレオチドに導入され得るセレクターコドンの数に広い範囲があることは、当業者には容易に明らかである。
【0238】
一実施形態では、本方法は、1つ以上の非天然アミノ酸をインビボで組み込むための終止コドンであるセレクターコドンの使用を含む。例えば、UAGを含むがこれに限定されない終止コドンを認識し、かつ所望の非天然アミノ酸を有するO-RSによりアミノアシル化されたO-tRNAが生成される。このO-tRNAは、天然に存在する宿主のアミノアシル-tRNAシンテターゼによって認識されない。従来の部位特異的変異誘発は、TAGを含むがこれに限定されない終止コドンを、目的のポリペプチドにおける目的の部位に導入するために使用され得る。例えば、Sayers,J.R.,et al.(1988),5’-3’ Exonucleases in phosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis.Nucleic Acids Res,16:791-802を参照のこと。O-RS、O-tRNA及び目的のポリペプチドをコードする核酸をインビボで結合する際に、UAGコドンに応答して、非天然アミノ酸を組み込んで、特定位置に非天然アミノ酸を含むポリペプチドを得る。
【0239】
非天然アミノ酸のインビボでの組み込みは、真核宿主細胞の有意な摂動なしに行うことができる。例えば、UAGコドンに対する抑制効率は、アンバーサプレッサーtRNAを含むがこれらに限定されないO-tRNAと、真核生物放出因子(限定するものではないが、eRFを含む)との間の競合に依存するので(これは終止コドンに結合して、リボソームからの成長ペプチドの放出を開始する)、抑制効率は、例としては、限定するものではないが、O-tRNA及び/またはサプレッサーtRNAの発現レベルを上昇させることによって調節され得る。
【0240】
非天然アミノ酸は、レアコドンでコードされてもよい。例えば、インビトロタンパク質合成反応におけるアルギニン濃度が低下した場合、レアアルギニンコドン、AGGは、アラニンによりアシル化された合成tRNAによるAlaの挿入に有効であることが判明した。例えば、Ma et al.,Biochemistry,32:7939(1993)を参照のこと。この場合、合成tRNAは、Escherichia coliの中でマイナー種として存在する、天然に存在するtRNAArgと競合する。一部の生物体は、全てのトリプレットコドンを使用するわけではない。Micrococcus luteusにおける未割り当てのコドンAGAが、インビトロでの転写/翻訳抽出物におけるアミノ酸の挿入に利用されている。例えば、Kowal and Oliver,Nucl.Acid.Res.,25:4685(1997)を参照のこと。本開示の成分は、これらのレアコドンをインビボで使用するために生成され得る。
【0241】
セレクターコドンはまた、限定するものではないが、4塩基以上のコドン、例えば、4塩基、5塩基、6塩基またはそれ以上の塩基のコドンを含む拡張コドンも含む。4塩基コドンの例としては、限定するものではないが、AGGA、CUAG、UAGA、CCCUなどが挙げられる。5塩基コドンの例としては、限定するものではないが、AGGAC、CCCCU、CCCUC、CUAGA、CUACU、UAGGCなどが挙げられる。本開示の特徴として、フレームシフト抑制に基づく拡張コドンを使用することが挙げられる。4塩基以上のコドンが、例えば、限定するものではないが、1つまたは複数の非天然アミノ酸を同じタンパク質に挿入し得る。例えば、アンチコドンループを有する、例えば少なくとも8~10ntのアンチコドンループを有する、特別なフレームシフトサプレッサーtRNAを含むがこれらに限定されない変異O-tRNAの存在下では、4塩基以上のコドンが、単一のアミノ酸として読み取られる。他の実施形態では、アンチコドンループは、例えば、限定するものではないが、少なくとも4塩基コドン、少なくとも5塩基コドン、もしくは少なくとも6塩基コドン、またはそれ以上の塩基のコドンをデコードし得る。考えられる4塩基コドンは256個存在するので、4塩基以上のコドンを用いて、同じ細胞において複数の非天然アミノ酸をコードし得る。Anderson et al.,(2002)Exploring the Limits of Codon and Anticodon Size,Chemistry and Biology,9:237-244;Magliery,(2001)Expanding the Genetic Code:Selection of Efficient Suppressors of Four-base Codons and Identification of “Shifty” Four-base Codons with a Library Approach in Escherichia coli,J.Mol.Biol.307:755-769を参照のこと。
【0242】
例えば、4塩基コドンは、非天然アミノ酸を、インビトロ生合成法を使用してタンパク質に組み込むために使用されてきた。例えば、Ma et al.,(1993)Biochemistry,32:7939;及びHohsaka et al.,(1999)J.Am.Chem.Soc.,121:34を参照のこと。CGGG及びAGGUを使用して、化学的にアシル化された2つのフレームシフトサプレッサーtRNAを用いて、2-ナフチルアラニンとリジンのNBD誘導体とをストレプトアビジンにインビトロで同時に組み込んだ。例えば、Hohsaka et al.,(1999)J.Am.Chem.Soc.,121:12194を参照のこと。Mooreらは、インビボ研究において、UAGNコドン(NはU、A、GまたはCであってよい)を抑制するNCUAアンチコドンを有するtRNALeu誘導体の能力を調べ、0または-1フレームでのデコードをほとんど行わずに、13~26%の効率でUCUAアンチコドンを有するtRNALeuによって四つ組みのUAGAをデコードできることを見出した。Moore et al.,(2000)J.Mol.Biol.,298:195を参照のこと。一実施形態では、レアコドンまたはナンセンスコドンに基づく拡張コドンを、本開示において使用してもよく、これは、他の望ましくない部位でのミスセンスリードスルー及びフレームシフト抑制を低減し得る。
【0243】
所与の系に関して、セレクターコドンは、天然の3塩基コドンのうちの1つを含んでもよく、その際、内因性の系は天然の塩基コドンを使用しない(またはほとんど使用しない)。例えば、これは、天然の3塩基コドンを認識するtRNAを欠いている系、及び/または3塩基コドンがレアコドンである系を含む。
【0244】
セレクターコドンには、任意選択で、非天然塩基対を含む。これらの非天然塩基対は、既存の遺伝的アルファベットをさらに拡大させる。1つの余分な塩基対は、3つ組みのコドンの数を64から125に増加させる。第3の塩基対の特性としては、安定かつ選択的な塩基対、ポリメラーゼによる高い忠実度でのDNAへの効率的な酵素的組み込み、及び発生期の非天然塩基対の合成後に効率的に継続されるプライマー伸長が挙げられる。方法及び組成物に適合させることができる非天然塩基対の説明には、例えば、Hirao,et al.,(2002)An unnatural base pair for incorporating amino acid analogues into protein,Nature Biotechnology,20:177-182が挙げられる。Wu,Y.,et al.,(2002)J.Am.Chem.Soc.124:14626-14630も参照のこと。その他の関連刊行物を以下に列挙する。
【0245】
インビボでの用途に関して、非天然ヌクレオシドは膜透過性であり、かつリン酸化されて対応する三リン酸を形成する。さらに、増加した遺伝情報は安定しており、細胞酵素によって破壊されない。以前のBennerらによる取り組みでは、標準的なワトソンクリック対のものとは異なる水素結合パターンを利用しており、その最も注目すべき例は、iso-C:iso-G対である。例えば、Switzer et al.,(1989)J.Am.Chem.Soc.,111:8322;及びPiccirilli et al.,(1990)Nature,343:33;Kool,(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.,4:602を参照のこと。これらの塩基は、一般に天然塩基とある程度ミスペアであり、酵素により複製することはできない。Kool及び共同研究者は、塩基間の疎水性充填相互作用が、塩基対の形成を促進するために水素結合に代わってもよいことを実証した。Kool,(2000)Curr.Opin.Chem.Biol.,4:602;及びGuckian and Kool,(1998)Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,36,2825を参照のこと。上記の要件を全て満たす非天然塩基対を開発する取り組みでは、Schultz、Romesberg及び共同研究者らは、一連の非天然疎水性塩基を体系的に合成して研究した。PICS:PICS自己対は、天然塩基対よりも安定であり、Escherichia coli DNAポリメラーゼI(KF)のKlenowフラグメントにより、DNAに効率よく組み込むことができることが判明している。例えば、McMinn et al.,(1999)J.Am.Chem.Soc.,121:11585-6;及びOgawa et al.,(2000)J.Am.Chem.Soc.,122:3274を参照のこと。3MN:3MN自己対は、生物学的機能のために十分な効率及び選択性でKFによって合成され得る。例えば、Ogawa et al.,(2000)J.Am.Chem.Soc.,122:8803を参照のこと。しかしながら、両方の塩基とも、さらなる複製のための連鎖停止剤として作用する。PICS自己対を複製するために使用できる変異DNAポリメラーゼが、最近、進化している。さらに、7AI自己対を複製してもよい。例えば、Tae et al.,(2001)J.Am.Chem.Soc.,123:7439を参照のこと。Cu(II)の結合時に安定な対を形成する新規なメタロベース(metallobase)対、Dipic:Pyも開発されている。Meggers et al.,(2000)J.Am.Chem.Soc.,122:10714を参照のこと。拡張コドン及び非天然コドンは、天然コドンに本質的に直交しているので、本開示の方法は、この特性を利用して、それらのための直交tRNAを生成し得る。
【0246】
また、翻訳バイパス系を用いて、所望のポリペプチドに非天然アミノ酸を組み込んでもよい。翻訳バイパス系では、大きな配列が遺伝子に組み込まれるが、タンパク質には翻訳されない。この配列は、リボソームを誘導し、その配列を乗り越えて、挿入の下流で翻訳を再開させるキューとして役立つ構造を含む。
【0247】
ADCの標的化ポリペプチドなどの目的のタンパク質をコードする核酸分子は、ポリペプチドの任意の所望の位置にシステインを導入するために容易に変異され得る。システインは、目的のタンパク質に反応性分子、水溶性ポリマー、タンパク質、または他の様々な分子を導入するために広く使用されている。ポリペプチドの所望の位置へのシステインの組み込みに適した方法、例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,608,183号及び標準的な変異誘発技術で説明される方法などは当業者には公知である。
【0248】
天然にはコードされないアミノ酸
【0249】
極めて多種多様な天然にはコードされないアミノ酸は、本開示における使用に適している。任意の数の天然にはコードされないアミノ酸をADCに導入し得る。一般的に、導入された天然にはコードされないアミノ酸は、20個の共通の遺伝子的にコードされたアミノ酸(すなわち、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)に対して実質的に化学的に不活性である。いくつかの実施形態では、天然にはコードされないアミノ酸としては、20個の共通アミノ酸(アジド基、ケトン基、アルデヒド基及びアミノオキシ基を含むが、これらに限定されない)には見られない官能基と効率的かつ選択的に反応して、安定なコンジュゲートを形成する側鎖官能基が挙げられる。例えば、アジド官能基を含む天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドを、ポリマー(ポリ(エチレングリコール)または代替的に、アルキン部分を含む第2のポリペプチドもしくはリンカーを含むが、これらに限定されない)と反応させて、アジドとアルキン官能基との選択的反応から生じる安定なコンジュゲートを形成し、ヒュスゲン[3+2]付加環化生成物を形成し得る。
【0250】
アルファ-アミノ酸の一般的な構造を、以下に示す(式I):
【化14】
【0251】
天然にはコードされないアミノ酸は、典型的には、R基が20個の天然アミノ酸で使用されたもの以外の任意の置換基である上記の式を有する任意の構造であり、本開示における使用に適し得る。本開示の天然にはコードされないアミノ酸は、典型的には、側鎖の構造のみが天然アミノ酸と異なるので、天然にはコードされないアミノ酸は、天然または天然にはコードされないアミノ酸を含むがこれらに限定されない他のアミノ酸と、天然に存在するポリペプチドで形成されるのと同じ方法でアミド結合を形成する。しかしながら、天然にはコードされないアミノ酸は、天然アミノ酸からそれらを区別する側鎖基を有する。例えば、Rは、任意選択で、アルキル-、アリール-、アシル-、ケト-、アジド-、ヒドロキシル-、ヒドラジン、シアノ-、ハロ-、ヒドラジド、アルケニル、アルキニル、エーテル、チオール、セレノ-、スルホニル-、ボレート、ボロネート、ホスホ、ホスホノ、ホスフィン、複素環、エノン、イミン、アルデヒド、エステル、チオ酸、ヒドロキシルアミン、アミノ基などまたはそれらの任意の組み合わせを含む。本開示における使用に適し得る他の天然に存在しない目的のアミノ酸としては、限定するものではないが、光活性化可能な架橋剤を含むアミノ酸、スピン標識されたアミノ酸、蛍光アミノ酸、金属結合アミノ酸、金属含有アミノ酸、放射性アミノ酸、新規な官能基を有するアミノ酸、共有結合または非共有結合的に他の分子と相互作用するアミノ酸、光ケージ化アミノ酸及び/または光異性化可能アミノ酸、ビオチンまたはビオチン類似体を含むアミノ酸、グリコシル化アミノ酸、例えば、糖置換セリン、他の炭水化物修飾アミノ酸、ケト含有アミノ酸、ポリエチレングリコールまたはポリエーテルを含むアミノ酸、重原子置換アミノ酸、化学的に切断可能及び/または光切断可能なアミノ酸、天然のアミノ酸に比較して伸長した側鎖を有するアミノ酸、例としては、限定するものではないが、ポリエーテルまたは長鎖炭化水素、例としては、限定するものではないが、約5炭素超または約10炭素超、炭素結合糖含有アミノ酸、酸化還元活性アミノ酸、アミノチオ酸含有アミノ酸、ならびに1つ以上の毒性部分を含むアミノ酸が挙げられる。
【0252】
本開示における使用に適している場合があり、かつ水溶性ポリマーとの反応に有用である、例示的な天然にはコードされないアミノ酸としては、限定するものではないが、カルボニル反応性基、アミノオキシ反応性基、ヒドラジン反応性基、ヒドラジド反応性基、セミカルバジド反応性基、アジド反応性基、及びアルキン反応性基を有するものが挙げられる。いくつかの実施形態では、天然にはコードされないアミノ酸は、糖部分を含む。このようなアミノ酸の例としては、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-ガラクトサミニル-L-セリン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-スレオニン、N-アセチル-L-グルコサミニル-L-アスパラギン及びO-マンノサミニル-L-セリンが挙げられる。このようなアミノ酸の例としては、アミノ酸と糖類との間の天然に存在するN-結合またはO-結合が、限定するものではないが、アルケン、オキシム、チオエーテル、アミドなどを含む、天然には通常見られない共有結合によって置き換えられている例も挙げられる。そのようなアミノ酸の例としては、2-デオキシグルコース、2-デオキシガラクトースなどの天然に存在するタンパク質には通常見られない糖類も挙げられる。
【0253】
本明細書で提供される天然にはコードされないアミノ酸の多くは、例えばSigma-Aldrich(St.Louis,MO,USA),Novabiochem(EMD Biosciencesの一部門,Darmstadt,Germany)、またはPeptech(Burlington,MA,USA)から市販されている。市販されていないアミノ酸は、任意選択で、本明細書に記載のように、または当業者に公知の標準的な方法を用いて、合成される。有機合成技術に関しては、例えば、Organic Chemistry by Fessendon and Fessendon,(1982,Second Edition,Willard Grant Press,Boston Mass.);Advanced Organic Chemistry by March(Third Edition,1985,Wiley and Sons,New York);及びAdvanced Organic Chemistry by Carey and Sundberg(Third Edition,Parts A and B ,1990,Plenum Press,New York)を参照のこと。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,045,337号及び同第7,083,970号も参照のこと。新規な側鎖を含む非天然アミノ酸に加えて、本開示での使用に適している場合がある非天然アミノ酸は、任意選択で、限定するものではないが、式II及びIIIの構造により示されるような修飾された骨格構造も含む。
【化15】
(式中、Zは、典型的には、OH、NH
2、SH、NH-R’、またはS-R’を含み;同一または異なり得るX及びYは、典型的には、SまたはOを含み、任意選択で同一または異なるR及びR’は、典型的には、式Iを有する非天然アミノ酸及び水素について上に記載されたR基の構成要素の同一リストから選択される)。例えば、本開示の非天然アミノ酸は、式II及びIIIによって示されるように、アミノ基またはカルボキシル基における置換を任意選択で含む。この種の非天然アミノ酸には、限定するものではないが、α-ヒドロキシ酸、α-チオ酸、α-アミノチオカルボキシレートが挙げられ、これらは、限定するものではないが、一般的な20個の天然アミノ酸に対応する側鎖または非天然の側鎖を有する。加えて、α-炭素における置換には、任意選択で、限定するものではないが、L、Dまたはα-α-二置換アミノ酸、例えば、D-グルタミン酸、D-アラニン、D-メチル-O-チロシン、アミノ酪酸などが挙げられる。他の構造的代替物としては、環状アミノ酸、例えばプロリン類似体ならびに3員環、4員環、6員環、7員環、8員環及び9員環プロリン類似体、β及びγアミノ酸、例えば、置換されたβ-アラニン及びγ-アミノ酪酸が挙げられる。
【0254】
γ
多くの非天然アミノ酸は、チロシン、グルタミン、フェニルアラニンなどの天然アミノ酸をベースとしており、本開示における使用に適している。チロシン類似体としては、限定するものではないが、パラ-置換チロシン、オルト-置換チロシン及びメタ置換チロシンが挙げられ、この置換チロシンとしては、限定するものではないが、ケト基(限定するものではないが、アセチル基を含む)、ベンゾイル基、アミノ基、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、チオール基、カルボキシ基、イソプロピル基、メチル基、C6~C20直鎖状または分岐状炭化水素、飽和または不飽和炭化水素、O-メチル基、ポリエーテル基、ニトロ基、アルキニル基などを含む。さらに、複数の置換されたアリール環も企図される。本開示における使用に適し得るグルタミン類似体としては、限定するものではないが、α-ヒドロキシ誘導体、γ-置換誘導体、環状誘導体、及びアミド置換グルタミン誘導体が挙げられる。本開示における使用に適している場合がある例示的なフェニルアラニン類似体としては、限定するものではないが、パラ-置換フェニルアラニン、オルト-置換フェニルアラニン及びメタ-置換フェニルアラニンが挙げられ、ここで、この置換基は、限定するものではないが、ヒドロキシ基、メトキシ基、メチル基、アリル基、アルデヒド、アジド、ヨード、ブロモ、ケト基(アセチル基を含むが、これに限定されない)、ベンゾイル、アルキニル基などを含む。本開示での使用に適切であり得る非天然アミノ酸の具体例としては、限定するものではないが、p-アセチル-L-フェニルアラニン、O-メチル-L-チロシン、L-3-(2-ナフチル)アラニン、3-メチル-フェニルアラニン、O-4-アリル-L-チロシン、4-プロピル-L-チロシン、トリ-O-アセチル-GlcNAcβ-セリン、L-ドーパ、フッ素化フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、p-アジド-L-フェニルアラニン、p-アシル-L-フェニルアラニン、p-ベンゾイル-L-フェニルアラニン、L-ホスホセリン、ホスホノセリン、ホスホノチロシン、p-ヨード-フェニルアラニン、p-ブロモフェニルアラニン、p-アミノ-L-フェニルアラニン、イソプロピル-L-フェニルアラニン、及びp-プロパルギルオキシ-フェニルアラニンなどが挙げられる。本開示における使用に適している場合がある種々の非天然アミノ酸の構造の例は、例えば、「In vivo incorporation of unnatural amino acids」と題するWO2002/085923に提供されている。追加のメチオニン類似体については、また、Kiick et al.,(2002)Incorporation of azides into recombinant proteins for chemoselective modification by the Staudinger ligation,PNAS 99:19-24(参照により本明細書に組み込まれる)も参照のこと。「Compositions Containing,Methods Involving,and Uses of Non-natural Amino Acids and Polypeptides」と題する国際出願第PCT/US06/47822号(参照により本明細書に組み込まれる)には、p-アミノ-フェニルアラニン及び還元的アミノ化を含むがこれに限定されない芳香族アミン部分の還元アルキル化が記載されている。
【0255】
本開示の別の実施形態では、1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を有するADCポリペプチドは、共有結合により修飾される。生物系の多様な機能性に直交する選択的化学反応は、化学生物学における重要なツールとして認識されている。合成化学のレパートリーに関連するニューカマーとして、これらの生体直交反応によって、化合物ライブラリー合成、タンパク質工学、機能性プロテオミクス、及び細胞表面の化学的リモデリングに関する新たな戦略の着想が得られている。アジドは、生体共役反応(bioconjugation)のための独特な化学的ハンドルとして顕著な役割を確保した。シュタウディンガーライゲーションは、細胞性複合糖質に代謝的に導入されるアジド糖をタグ付けするためにホスフィンと共に使用されてきた。シュタウディンガーライゲーションは、生理学的傷害なしに生きている動物において実施し得るが、それにもかかわらず、シュタウディンガー反応は、義務ではない。必要なホスフィンは空気酸化しやすく、水溶性の向上及び反応速度の増加のためのそれらの最適化は、合成的に困難であることが判明した。
【0256】
アジド基は、生体直交反応性の代替的なモードを有し:すなわち、ヒュスゲンにより説明されるアルキンによる[3+2]付加環化を有する。その従来の形態では、この反応は、合理的な反応速度に高い温度(または圧力)を要するために、生物系での適用性が制限されている。Sharpless及び共同研究者は、生理学的温度及び十分に機能化された生物学的環境において容易に進行する、「クリックケミストリー」と呼ばれる銅(I)触媒バージョンの開発によってこの障害を克服した。この発見により、複合組織溶解物からのウイルス粒子、核酸、及びタンパク質の選択的修飾が可能になった。残念なことに、必須の銅触媒は、細菌細胞と哺乳動物細胞の両方に対して毒性であり、したがって、細胞の生存可能性を維持させなければならない用途は排除される。電子求引置換基によって活性化されるアルキンの無触媒のヒュスゲン付加環化は、周囲温度で発生することが報告されている。しかしながら、これらの化合物は、生物学的求核試薬とのマイケル反応を受ける。
【0257】
一実施形態では、非天然アミノ酸(例えばp-(プロパルギルオキシ)-フェニルアラニン)を含むADCの標的化ポリペプチドの組成物が提供される。q-(プロパルギルオキシ)-フェニルアラニンと、限定するものではないが、タンパク質及び/または細胞とを含む種々の組成物も提供される。一態様では、p-(プロパルギルオキシ)-フェニルアラニン非天然アミノ酸を含む組成物は、直交tRNAをさらに含む。非天然アミノ酸は、直交tRNAに結合し得(共有結合を含むが、これらに限定されない)、これには、限定するものではないが、アミノ-アシル結合を介する直交tRNAへの共有結合、直交tRNAの末端リボース糖の3’OHまたは2’OHへの共有結合などを含む。
【0258】
タンパク質に組み込むことができる非天然アミノ酸を介した化学部分は、タンパク質の様々な利点及び操作を提供する。例えば、ケト官能基の独自の反応性によって、インビトロ及びインビボで、複数のヒドラジン含有またはヒドロキシルアミン含有試薬のいずれかにより、タンパク質を選択的に修飾することが可能になる。重原子非天然アミノ酸は、例えば、X線構造データの整相に有用であり得る。非天然アミノ酸を使用した重原子の部位特異的導入は、重原子の位置を選択する際の選択性及びフレキシビリティも提供する。光反応性非天然アミノ酸(限定するものではないが、ベンゾフェノン及びアリールアジド(限定するものではないが、フェニルアジドを含む)側鎖を有するアミノ酸を含む)は、例えば、効率的なインビボ及びインビトロでのタンパク質の光架橋を可能にする。光反応性非天然アミノ酸の例としては、限定するものではないが、p-アジド-フェニルアラニン及びp-ベンゾイル-フェニルアラニンが挙げられる。光反応性基を提供する時間制御の励起により、光反応性非天然アミノ酸を有するタンパク質を、任意で架橋し得る。一例では、非天然アミノのメチル基は、核磁気共鳴及び振動分光法の使用を含むがこれに限定されない、局所構造及びダイナミクスのプローブとしての、メチル基を含むがこれらに限定されない同位体標識により置換され得る。アルキニルまたはアジド官能基により、例えば、[3+2]付加環化反応を介して、分子でタンパク質を選択的に修飾することが可能になる。
【0259】
アミノ末端でポリペプチドに組み込まれる非天然アミノ酸は、20個の天然アミノ酸で使用される置換基以外の任意の置換基であるR基と、アルファ-アミノ酸に通常存在するNH2基とは異なる第2の反応性基とで構成されていてもよい。同様の非天然アミノ酸を、アルファ-アミノ酸中に通常存在するCOOH基とは異なる第2の反応性基でC末端に組み込んでもよい。
【0260】
本開示の非天然アミノ酸は、20個の天然アミノ酸では利用できない付加的な特性をもたらすように選択されても、または設計されてもよい。例えば、非天然アミノ酸は、任意選択で、例えば、それらが組み込まれているタンパク質の生物学的特性を改変するように設計されても、または選択されてもよい。例えば、以下の特性:毒性、生体分布、溶解性、安定性、例えば、熱、加水分解、酸化、酵素分解に対する抵抗性など、精製及び処理の容易性、構造特性、分光学的特性、化学的及び/または光化学的特性、触媒活性、酸化還元電位、半減期、他の分子と反応する(例えば、共有結合または非共有結合的に)能力などを、非天然アミノ酸をタンパク質に含ませることによって任意選択で改変してもよい。
【0261】
いくつかの実施形態では、本開示は、オキシム結合により水溶性ポリマー、例えば、PEGに結合したADCを提供する。多くの種類の天然にはコードされないアミノ酸は、オキシム結合の形成に適している。これらとしては、限定するものではないが、カルボニル、ジカルボニル、またはヒドロキシルアミン基を含む天然にはコードされないアミノ酸が挙げられる。このようなアミノ酸は、米国特許公開第2006/0194256号、同第2006/0217532号、及び同第2006/0217289号ならびにWO2006/069246号(発明の名称「Compositions containing,methods involving,and uses of non-natural amino acids and polypeptides,」)に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。天然にはコードされないアミノ酸はまた、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,970号、及び米国特許第7,045,337号にも記載されている。
【0262】
本開示のいくつかの実施形態は、パラ-アセチルフェニルアラニンアミノ酸で1つ以上の位置が置換されているADCポリペプチドを利用する。p-アセチル-(+/-)-フェニルアラニン及びm-アセチル-(+/-)-フェニルアラニンの合成は、参照により援用されるZhang,Z.,et al.,Biochemistry 42:6735-6746(2003)に記載されている。他のカルボニル含有またはジカルボニル含有アミノ酸は、当業者によって同様に調製され得る。さらに、本明細書に含まれる非天然アミノ酸の非限定的な例示的な合成は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,083,970号明細書に提示される。
【0263】
求電子反応性基を有するアミノ酸は、とりわけ求核付加反応を介して分子を連結するための様々な反応を可能にする。このような求電子反応性基としては、カルボニル基(ケト基及びジカルボニル基を含む)、カルボニル様基(カルボニル基(ケト基及びジカルボニル基を含む)に類似する反応性を有し、かつカルボニル基と構造的に類似する)、マスクされたカルボニル基(容易にカルボニル基(ケト基及びジカルボニル基を含む)に変換可能である)、または保護されたカルボニル基(脱保護の際にカルボニル基(ケト基及びジカルボニル基を含む)に類似する反応性を有する)が挙げられる。このようなアミノ酸としては、式(IV)の構造を有するアミノ酸が挙げられる:
【化16】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン(alkarylene)、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Jは、
【化17】
であり;Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;各R”は、独立して、H、アルキル、置換アルキル、または保護基であるか、または2つ以上のR”基が存在する場合、2つのR”は任意選択でヘテロシクロアルキルを形成し;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
R
3及びR
4の各々は、独立して、H、ハロゲン、低級アルキル、もしくは置換低級アルキルであるか、またはR
3及びR
4もしくは2つのR
3基は、任意選択でシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルを形成するか;
あるいは-A-B-J-R基は一緒になって、少なくとも1個のカルボニル基(ジカルボニル基を含む)、保護カルボニル基(保護ジカルボニル基を含む)、またはマスクされたカルボニル基(マスクされたジカルボニル基を含む)を含む、二環式または三環式シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成し;
あるいは-J-R基は一緒になって、少なくとも1個のカルボニル基(ジカルボニル基を含む)、保護カルボニル基(保護ジカルボニル基を含む)、またはマスクされたカルボニル基(マスクされたジカルボニル基を含む)を含む、単環式または二環式シクロアルキルまたはヘテロシクロアルキルを形成し;
ただし、Aがフェニレンであり、各R
3がHである場合、Bが存在すること;Aが-(CH
2)
4-であり、各R
3がHである場合、Bは、-NHC(O)(CH
2CH
2)-ではないこと;及びA及びBが存在せず、各R
3がHである場合、Rがメチルではないことを条件とする)。
【0264】
さらに、式(V)の構造を有するものが含まれる:
【化18】
(式中、
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
ただし、Aがフェニレンである場合には、Bが存在すること;Aが-(CH
2)
4-である場合には、Bは-NHC(O)(CH
2CH
2)-ではないこと;及びA及びBが存在しない場合には、Rは、メチルではないことを条件とする)。
【0265】
さらに、式(VI)の構造を有するアミノ酸が含まれる:
【化19】
(式中:
Bは、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
各Raは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択される)。
【0266】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化20】
ここでこのような化合物は、任意選択で、アミノ保護基、カルボキシル保護基またはその塩である。さらに、以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0267】
さらに、式(VII)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化21】
(式中、
Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択され;かつnは0~8であり;
ただし、Aが-(CH
2)
4-である場合、Bは-NHC(O)(CH
2CH
2)-ではない)。
【0268】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化22】
ここで、このような化合物は、任意選択でアミノ保護され、任意選択でカルボキシル保護され、任意選択でアミノ保護され、かつカルボキシル保護されるか、またはその塩である。さらに、これらの非天然アミノ酸及び以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0269】
さらに、式(VIII)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化23】
(式中、Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドである)。
【0270】
さらに、式(IX)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化24】
(Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
式中、各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択される)。
【0271】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化25】
このような化合物は、任意選択でアミノ保護され、任意選択でカルボキシル保護され、任意選択でアミノ保護され、かつカルボキシル保護されるか、またはその塩である。さらに、これらの非天然アミノ酸及び以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0272】
さらに、式(X)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化26】
(式中、Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択され;かつnは0~8である)。
【0273】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化27】
このような化合物は、任意選択でアミノ保護され、任意選択でカルボキシル保護され、任意選択でアミノ保護され、かつカルボキシル保護されるか、またはその塩である。さらに、これらの非天然アミノ酸及び以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0274】
モノカルボニル構造に加えて、本明細書に記載される非天然アミノ酸は、ジカルボニル基、ジカルボニル様基、マスクされたジカルボニル基及び保護されたジカルボニル基のような基を含んでもよい。
【0275】
例えば、式(XI)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化28】
(式中、Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドである)。
【0276】
さらに、式(XII)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化29】
(Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
式中、各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択される)。
【0277】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化30】
このような化合物は、任意選択でアミノ保護され、任意選択でカルボキシル保護され、任意選択でアミノ保護され、かつカルボキシル保護されるか、またはその塩である。さらに、これらの非天然アミノ酸及び以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0278】
さらに、式(XIII)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化31】
(式中、Bは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、低級ヘテロアルキレン、置換低級ヘテロアルキレン、-O-、-O-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S-、-S-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-S(O)
k-(式中、kは1、2、または3である)、-S(O)
k(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)-、-C(O)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(S)-、-C(S)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)-、-NR’-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-C(O)N(R’)-、-CON(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-CSN(R’)-、-CSN(R’)-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)CO-(アルキレンまたは置換アルキレン)-、-N(R’)C(O)O-、-S(O)
kN(R’)-、-N(R’)C(O)N(R’)-、-N(R’)C(S)N(R’)-、-N(R’)S(O)
kN(R’)-、-N(R’)-N=、-C(R’)=N-、-C(R’)=N-N(R’)-、-C(R’)=N-N=、-C(R’)
2-N=N-、及び-C(R’)
2-N(R’)-N(R’)-からなる群から選択されるリンカーであり、ここで、各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択され;かつnは0~8である)。
【0279】
さらに、以下のアミノ酸を含む:
【化32】
ここで、このような化合物は、任意選択でアミノ保護され、任意選択でカルボキシル保護され、任意選択でアミノ保護され、かつカルボキシル保護されるか、またはその塩である。さらに、これらの非天然アミノ酸及び以下の非天然アミノ酸のいずれかを、非天然アミノ酸ポリペプチドに組み込んでもよい。
【0280】
さらに、式(XIV)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化33】
(式中、
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
X
1は、C、SまたはS(O)であり;かつLは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである))。
【0281】
さらに、式(XIV-A)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化34】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
Lは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルである))。
【0282】
さらに、式(XIV-B)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化35】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
Lは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル,置換アルキル,シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである)。
【0283】
さらに、式(XV)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化36】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
X
1は、C、SまたはS(O)であり;nは、0、1、2、3、4、または5であり、各CR
8R
9基の上の各R
8及びR
9がH、アルコキシ、アルキルアミン、ハロゲン、アルキル、アリールからなる群から独立して選択されるか、または任意のR
8及びR
9が一緒になって、=Oもしくはシクロアルキルを形成するか、または、隣接するR
8基に対するいずれかが一緒になってシクロアルキルを形成し得る)。
【0284】
さらに、式(XV-A)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化37】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
nは、0、1、2、3、4、または5であり;かつ各CR
8R
9基の上の各R
8及びR
9がH、アルコキシ、アルキルアミン、ハロゲン、アルキル、アリールからなる群から独立して選択されるか、または任意のR
8及びR
9が一緒になって、=Oもしくはシクロアルキルを形成するか、または、隣接するR
8基に対するいずれかが一緒になってシクロアルキルを形成し得る)。
【0285】
さらに、式(XV-B)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化38】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
nは、0、1、2、3、4、または5であり;かつ各CR
8R
9基の上の各R
8及びR
9がH、アルコキシ、アルキルアミン、ハロゲン、アルキル、アリールからなる群から独立して選択されるか、または任意のR
8及びR
9が一緒になって、=Oもしくはシクロアルキルを形成するか、または、隣接するR
8基に対するいずれかが一緒になってシクロアルキルを形成し得る)。
【0286】
さらに、式(XVI)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化39】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
X
1は、C、SまたはS(O)であり;かつLは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである))。
【0287】
さらに、式(XVI-A)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化40】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
Lは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルである)。
【0288】
さらに、式(XVI-B)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化41】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Rは、H、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
Lは、アルキレン、置換アルキレン、N(R’)(アルキレン)またはN(R’)(置換アルキレン)である(式中、R’はH、アルキル、置換アルキル、シクロアルキルまたは置換シクロアルキルである)。
【0289】
さらに、式(XVII)の構造を有するアミノ酸が含まれる:
【化42】
(式中:
Aは任意であり、存在する場合、低級アルキレン、置換低級アルキレン、低級シクロアルキレン、置換低級シクロアルキレン、低級アルケニレン、置換低級アルケニレン、アルキニレン、低級ヘテロアルキレン、置換ヘテロアルキレン、低級ヘテロシクロアルキレン、置換低級ヘテロシクロアルキレン、アリーレン、置換アリーレン、ヘテロアリーレン、置換ヘテロアリーレン、アルカリーレン、置換アルカリーレン、アラルキレン、または置換アラルキレンであり;
Mは、
【化43】
であり、ここで(a)は、A基への結合を示し、及び(b)は、それぞれのカルボニル基R
3及びR
4に対する結合が、独立してH、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキルもしくは置換シクロアルキルから選択されるか、あるいはR
3及びR
4または2つのR
3基もしくは2つのR
4基が任意選択でシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルを形成することを示し;
Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
T
3は、結合、C(R)(R)、O、またはSを表し、Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドである)。
【0290】
さらに、式(XVIII)の構造を有するアミノ酸が含まれる:
【化44】
(式中:
Mは、
【化45】
であり、ここで(a)は、A基への結合を示し、及び(b)は、それぞれのカルボニル基R
3及びR
4に対する結合が、独立してH、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキルもしくは置換シクロアルキルから選択されるか、あるいはR
3及びR
4または2つのR
3基もしくは2つのR
4基が任意選択でシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルキルを形成することを示し;
Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
T
3は、結合、C(R)(R)、O、またはSを表し、Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;
R
1は任意であり、存在する場合には、H、アミノ保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;かつ
R
2は任意であり、存在する場合には、OH、エステル保護基、樹脂、アミノ酸、ポリペプチド、またはポリヌクレオチドであり;
各R
aは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、-N(R’)
2、-C(O)
kR’(kは、1、2、または3である)、-C(O)N(R’)
2、-OR’、及び-S(O)
kR’(各R’は、独立して、H、アルキル、または置換アルキルである)からなる群から選択される)。
【0291】
さらに、式(XIX)の構造を有するアミノ酸が含まれる:
【化46】
(式中:
Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルであり;かつ
T
3は、OまたはSである)。
【0292】
さらに、式(XX)の構造を有するアミノ酸が含まれる:
【化47】
(式中:
Rは、H、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、または置換シクロアルキルである)。
【0293】
さらに、式(XXI)の構造を有する以下のアミノ酸が含まれる:
【化48】
【0294】
いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸を含むポリペプチドは、反応性カルボニルまたはジカルボニル官能基を生成するように化学的に修飾される。例えば、コンジュゲーション反応に有用なアルデヒド官能基を、隣接するアミノ基及びヒドロキシル基を有する官能基から生成してもよい。生物活性分子がポリペプチドである場合、例えば、N末端セリンまたはスレオニン(これは通常存在し得るか、または化学的もしくは酵素的消化によって曝露され得る)を使用して、過ヨウ素酸塩を使用する穏やかな酸化切断条件下でアルデヒド官能基を生成し得る。例えば、Gaertner,et.al.,Bioconjug.Chem.3:262-268(1992);Geoghegan,K.& Stroh,J.,Bioconjug.Chem.3:138-146(1992);Gaertner et al.,J.Biol.Chem.269:7224-7230(1994)を参照のこと。しかしながら、当該技術分野で公知の方法は、ペプチドまたはタンパク質のN末端のアミノ酸に制限されている。
【0295】
本開示においては、隣接するヒドロキシル基及びアミノ基を有する非天然アミノ酸を、「マスクされた」アルデヒド官能基としてポリペプチドに組み込んでもよい。例えば、5-ヒドロキシリジンは、イプシロンアミンに隣接するヒドロキシル基を有する。アルデヒドを生成するための反応条件は通常、ポリペプチド内の他の部位での酸化を避けるための温和な条件下でのモル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加を含む。酸化反応のpHは、通常、約7.0である。典型的な反応には、約1.5モル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムをポリペプチドの緩衝溶液に添加し、続いて暗所で約10分間インキュベートすることが含まれる。例えば、米国特許第6,423,685号を参照のこと。
【0296】
カルボニルまたはジカルボニル官能基は、水溶液中での温和な条件下でヒドロキシルアミン含有試薬と選択的に反応して、生理学的条件下で安定な対応するオキシム結合を形成し得る。例えば、Jencks,W.P.,J.Am.Chem.Soc.81,475-481(1959);Shao,J.and Tam,J.P.,J.Am.Chem.Soc.117:3893-3899(1995)を参照のこと。さらに、カルボニル基またはジカルボニル基の固有の反応性によって、他のアミノ酸側鎖の存在下で選択的な修飾が可能になる。例えば、Cornish,V.W.,et al.,J.Am.Chem.Soc.118:8150-8151(1996);Geoghegan,K.F.& Stroh,J.G.,Bioconjug.Chem.3:138-146(1992);Mahal,L.K.,et al.,Science 276:1125-1128(1997)を参照のこと。
【0297】
A.カルボニル反応性基
カルボニル反応性基を有するアミノ酸は、とりわけ、求核付加反応またはアルドール縮合反応を介して分子(PEGまたは他の水溶性分子を含むが、これらに限定されない)を連結させる様々な反応を可能にする。
【0298】
例示的なカルボニル含有アミノ酸は、以下のように表すことができる:
【化49】
式中、nは0~10であり、R
1はアルキル、アリール、置換アルキル、または置換アリールであり、R
2は、H、アルキル、アリール、置換アルキル、及び置換アリールであり;かつR
3はH、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、R
4はH、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である。いくつかの実施形態では、nは、1であり、R
1は、フェニルであり、かつR
2は、単純アルキル(すなわち、メチル、エチルまたはプロピル)であり、かつケトン部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。いくつかの実施形態では、nは、1であり、R
1は、フェニルであり、かつR
2は、単純アルキル(すなわち、メチル、エチルまたはプロピル)であり、かつケトン部分は、アルキル側鎖に対してメタ位に位置している。
【0299】
p-アセチル-(+/-)-フェニルアラニン及びm-アセチル-(+/-)-フェニルアラニンの合成は、参照により本明細書に援用されるZhang,Z.,et al.,Biochemistry 42:6735-6746(2003)に記載されている。他のカルボニル含有アミノ酸は、当業者によって同様に調製され得る。
【0300】
いくつかの実施形態では、天然にはコードされないアミノ酸を含むポリペプチドは、反応性カルボニル官能基を生成するように化学的に修飾される。例えば、コンジュゲーション反応に有用なアルデヒド官能基を、隣接するアミノ基及びヒドロキシル基を有する官能基から生成してもよい。生物活性分子がポリペプチドである場合、例えば、N末端セリンまたはスレオニン(これは通常存在し得るか、または化学的もしくは酵素的消化によって曝露され得る)を使用して、過ヨウ素酸塩を使用する穏やかな酸化切断条件下でアルデヒド官能基を生成し得る。例えば、Gaertner,et al.,Bioconjug.Chem.3:262-268(1992);Geoghegan,K.& Stroh,J.,Bioconjug.Chem.3:138-146(1992);Gaertner et al.,J.Biol.Chem.269:7224-7230(1994)を参照のこと。しかしながら、当該技術分野で公知の方法は、ペプチドまたはタンパク質のN末端のアミノ酸に制限されている。
【0301】
本開示においては、隣接するヒドロキシル基及びアミノ基を有する天然にはコードされないアミノ酸を、「マスクされた」アルデヒド官能基としてポリペプチドに組み込んでもよい。例えば、5-ヒドロキシリジンは、イプシロンアミンに隣接するヒドロキシル基を有する。アルデヒドを生成するための反応条件は通常、ポリペプチド内の他の部位での酸化を避けるための温和な条件下でのモル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムの添加を含む。酸化反応のpHは、通常、約7.0である。典型的な反応には、約1.5モル過剰のメタ過ヨウ素酸ナトリウムをポリペプチドの緩衝溶液に添加し、続いて暗所で約10分間インキュベートすることが含まれる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,423,685号を参照のこと。
【0302】
カルボニル官能基を、温和な条件下、水溶液中で、ヒドラジン含有、ヒドラジド含有、ヒドロキシルアミン含有、またはセミカルバジド含有試薬と選択的に反応させることで、生理学的条件下で安定な、対応するヒドラゾン、オキシム、またはセミカルバゾン結合をそれぞれ形成し得る。例えば、Jencks,W.P.,J.Am.Chem.Soc.81,475-481(1959);Shao,J.and Tam,J.P.,J.Am.Chem.Soc.117:3893-3899(1995)を参照のこと。さらに、カルボニル基の固有の反応性によって、他のアミノ酸側鎖の存在下で選択的な修飾が可能になる。例えば、Cornish,V.W.,et al.,J.Am.Chem.Soc.118:8150-8151(1996);Geoghegan,K.F.& Stroh,J.G.,Bioconjug.Chem.3:138-146(1992);Mahal,L.K.,et al.,Science 276:1125-1128(1997)を参照のこと。
【0303】
B.ヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジド反応性基
求核性基、例えばヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジドを含む天然にはコードされないアミノ酸は、様々な求電子基との反応を可能にして、コンジュゲート(PEGまたは他の水溶性ポリマーとのコンジュゲートを含むが、これらに限定されない)を形成する。
【0304】
例示的なヒドラジン、ヒドラジドまたはセミカルバジドを含有するアミノ酸は、以下のように表すことができる:
【化50】
式中、nは0~10であり;R
1はアルキル、アリール、置換アルキル、もしくは置換アリールであるか、または存在せず;XはO、N、もしくはSであるか、または存在せず;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、かつR
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である。
【0305】
いくつかの実施形態では、nは4であり、R1は存在せず、かつXはNである。いくつかの実施形態では、nは2であり、R1は存在せず、かつXは存在しない。いくつかの実施形態では、nは1であり、R1はフェニルであり、XはOであり、かつ酸素原子は、アリール環上の脂肪族基に対してパラ位に位置する。
【0306】
ヒドラジド含有、ヒドラジン含有及びセミカルバジド含有アミノ酸は、商業的供給源から入手される。例えば、L-グルタミン酸-γ-ヒドラジドは、Sigma Chemical(St.Louis,MO)から入手可能である。市販されていない他のアミノ酸は、当業者によって調製され得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,281,211号を参照のこと。
【0307】
ヒドラジド、ヒドラジンまたはセミカルバジドの官能基を有する天然にはコードされないアミノ酸を含むポリペプチドは、アルデヒドまたは同様の化学反応性を有する他の官能基を含む、様々な分子と効率的かつ選択的に反応され得る。例えば、Shao,J.and Tam,J.,J.Am.Chem.Soc.117:3893-3899(1995)を参照のこと。ヒドラジド、ヒドラジン及びセミカルバジドの官能基の固有の反応性は、これらの官能基を、20個の共通アミノ酸に存在する求核性基(セリンもしくはスレオニンのヒドロキシル基、またはリジン及びN末端のアミノ基を含むが、これらに限定されない)と比べて、アルデヒド、ケトン及び他の求電子基に対して著しく反応性にする。
【0308】
C.アミノオキシ含有アミノ酸
アミノオキシ(ヒドロキシルアミンとも呼ばれる)基を含む天然にはコードされないアミノ酸は、様々な求電子基との反応を可能にして、コンジュゲート(PEGまたは他の水溶性ポリマーとのコンジュゲートを含むが、これらに限定されない)を形成する。ヒドラジン類、ヒドラジド類及びセミカルバジド類と同様に、アミノオキシ基の高められた求核性により、アルデヒド類または類似の化学反応性を有する他の官能基を含む、様々な分子と効率的かつ選択的に反応することが可能となる。例えば、Shao,J.and Tam,J.,J.Am.Chem.Soc.117:3893-3899(1995);H.Hang and C.Bertozzi,Acc.Chem.Res.34:727-736(2001)を参照のこと。しかしながら、ヒドラジン基との反応により、対応するヒドラゾンが生じるが、オキシムは、一般的に、アミノオキシ基と、ケトンなどのカルボニル含有基との反応により生じる。
【0309】
アミノオキシ基を含む例示的なアミノ酸は、以下のように表すことができる:
【化51】
式中、nは0~10であり;R
1はアルキル、アリール、置換アルキル、もしくは置換アリールであるか、または存在せず;XはO、N、Sであるか、または存在せず;mは0~10であり;Y=C(O)であるかまたは存在せず;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、かつR
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは1であり、かつYは存在する。いくつかの実施形態では、nは2であり、R
1及びXは存在せず、mは0であり、かつYは存在しない。
【0310】
アミノオキシ含有アミノ酸は、容易に入手可能なアミノ酸前駆体(ホモセリン、セリン及びスレオニン)から調製され得る。例えば、M.Carrasco and R.Brown,J.Org.Chem.68:8853-8858(2003)を参照のこと。特定のアミノオキシ含有アミノ酸、例えば、L-2-アミノ-4-(アミノオキシ)酪酸)は、天然源から単離されている(Rosenthal,G.,Life Sci.60:1635-1641(1997)。他のアミノオキシ含有アミノ酸は、当業者によって調製され得る。
【0311】
D.アジド及びアルキン反応性基
アジド官能基とアルキン官能基との固有の反応性によって、それらは、ポリペプチド及び他の生物学的分子の選択的修飾に非常に有用になる。有機アジド、特に脂肪族アジド及びアルキンは、一般的に、一般的な反応性化学条件に対して安定である。特に、アジド官能基及びアルキン官能基の両方とも、天然に存在するポリペプチドに見られる20の共通のアミノ酸の側鎖(すなわち、R基)に対して不活性である。しかしながら、近接させると、アジド基及びアルキン基の「ばね負荷された」性質が明らかになり、それらは、選択的かつ効率的に、ヒュスゲン[3+2]付加環化反応を介して反応し、対応するトリアゾールを生成する。例えば、Chin J.,et al.,Science 301:964-7(2003);Wang,Q.,et al.,J.Am.Chem.Soc.125,3192-3193(2003);Chin,J.W.,et al.,J.Am.Chem.Soc.124:9026-9027(2002)を参照のこと。
【0312】
ヒュスゲン付加環化反応は、求核置換ではなく、選択的付加環化反応を含むので(例えば、Padwa,A.,Comprehensive Organic Synthesis,Vol.4,(ed.Trost,B.M.,1991),p.1069-1109;Huisgen,R.in 1,3-DIPOLAR CYCLOADDITION CHEMISTRY,(ed.Padwa,A.,1984),p.1-176を参照のこと)、アジド及びアルキンを含有する側鎖を有する天然にはコードされないアミノ酸の組み込みにより、得られたポリペプチドは、天然にはコードされないアミノ酸の位置で選択的に修飾されることが可能になる。アジドまたはアルキンを含有するADCを含む付加環化反応は、Cu(II)をCu(I)に還元するための還元剤の存在下で、インサイチュで、触媒量で、Cu(II)の添加(限定するものではないが、触媒量のCuSO4の形態で)により、水性条件下で、室温で行うことができる。例えば、Wang,Q.,et al.,J.Am.Chem.Soc.125,3192-3193(2003);Tornoe,C.W.,et al.,J.Org.Chem.67:3057-3064(2002);Rostovtsev,et al.,Angew.Chem.Int.Ed.41:2596-2599(2002)を参照のこと。例示的な還元剤としては、限定されるものではないが、アスコルビン酸塩、金属銅、キニーネ、ヒドロキノン、ビタミンK、グルタチオン、システイン、Fe2+、Co2+、及び印加電位が挙げられる。
【0313】
ある場合には、アジドとアルキンとの間のヒュスゲン[3+2]付加環化反応が望ましい場合に、ADCは、アルキン部分を含む天然にはコードされないアミノ酸を含み、アミノ酸に結合される水溶性ポリマーは、アジド部分を含む。あるいは、逆の反応(すなわち、アミノ酸上のアジド部分及び水溶性ポリマー上に存在するアルキン部分を用いる)を行ってもよい。
【0314】
アジド官能基はまた、アリールエステルを含む水溶性ポリマーと選択的に反応して、アリールホスフィン部分で適宜に官能化されて、アミド結合を生成することもできる。アリールホスフィン基は、アジドをインサイチュで還元し、その後、得られたアミンが近位エステル結合と効率的に反応して、対応するアミドを生成する。例えば、E.Saxon and C.Bertozzi,Science 287,2007-2010(2000)を参照のこと。アジド含有アミノ酸は、アルキルアジド(2-アミノ-6-アジド-1-ヘキサン酸を含むが、これに限定されない)またはアリールアジド(p-アジド-フェニルアラニン)のいずれであってもよい。
【0315】
アリールエステル及びホスフィン部分を含有する例示的な水溶性ポリマーは、以下のように表すことができる:
【化52】
式中、Xは、O、N、Sであるか、または存在しなくてもよく、Phは、フェニルであり、Wは、水溶性ポリマーであり、かつRは、H、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリール基であってよい。例示的なR基としては、限定するものではないが、-CH
2、-C(CH
3)
3、-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-C(O)R’、-CONR’R”、-S(O)
2R’、-S(O)
2NR’R”、-CN及び-NO
2が挙げられる。R’、R”、R’’’、及びR’’’’は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例としては、限定するものではないが、1~3のハロゲンで置換されるアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本開示の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、R基の各々は、R’、R”、R’’’、及びR’’’’基のうちの2つ以上が存在するとき、これらの基の各々のように独立して選択される。R’及びR”が同一の窒素原子に付加されるとき、それらは、窒素原子と組み合わされて、5、6、または7員環を形成し得る。例えば、-NR’R”とは、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。上の置換基の考察から、当業者は、「アルキル」という用語は、水素基以外の基、例えば、ハロアルキル(限定するものではないが、-CF
3及び-CH
2CF
3を含む)及びアシル(限定するものではないが、-C(O)CH
3、-C(O)CF
3、-C(O)CH
2OCH
3などを含む)に結合される炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解するであろう。
【0316】
アジド官能基はまた、チオエステルを含む水溶性ポリマーと選択的に反応して、アリールホスフィン部分で適宜に官能化されて、アミド結合を生成することもできる。アリールホスフィン基は、アジドをインサイチュで還元し、その後、得られたアミンがチオエステル結合と効率的に反応して、対応するアミドを生成する。チオエステル及びホスフィン部分を含有する例示的な水溶性ポリマーは、以下のように表すことができる:
【化53】
(式中、nは1~10であり;XはO、N、Sであるか、存在しなくてもよく、Phはフェニルであり、Wは水溶性ポリマーである)。
【0317】
例示的なアルキン含有アミノ酸は、以下のように表すことができる:
【化54】
式中、nは0~10であり;R
1はアルキル、アリール、置換アルキル、もしくは置換アリールであるか、または存在せず;XはO、N、Sであるか、または存在せず;mは0~10であり、R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、かつR
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1はフェニルであり、Xは存在せず、mは0であり、かつアセチレン部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは1であり、プロパルギルオキシ基は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している(すなわち、O-プロパルギル-チロシン)。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1及びXは存在せず、かつmは0である(すなわち、プロパルギルグリシン)。
【0318】
アルキン含有アミノ酸は市販されている。例えば、プロパルギルグリシンは、Peptech(Burlington,MA)から市販されている。あるいは、アルキン含有アミノ酸は、標準的な方法に従って調製され得る。例えば、p-プロパルギルオキシフェニルアラニンは、例えば、Deiters,A.,et al.,J.Am.Chem.Soc.125:11782-11783(2003)に記載されるように合成し得、4-アルキニル-L-フェニルアラニンは、Kayser,B.,et al.,Tetrahedron 53(7):2475-2484(1997)に記載されているように合成し得る。他のアルキン含有アミノ酸は、当業者によって調製され得る。
【0319】
例示的なアジド含有アミノ酸は、以下のように表すことができる:
【化55】
式中、nは0~10であり;R
1はアルキル、アリール、置換アルキル、置換アリールであるか、または存在せず;XはO、N、Sであるか、または存在せず;mは0~10であり;R
2は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはアミノ末端修飾基であり、かつR
3は、H、アミノ酸、ポリペプチド、またはカルボキシ末端修飾基である。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1はフェニルであり、Xは存在せず、mは0であり、かつアジド部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。いくつかの実施形態では、nは、0~4であり、かつR
1及びXは存在せず、かつm=0である。いくつかの実施形態では、nは1であり、R
1はフェニルであり、XはOであり、mは2であり、かつアジドエトキシ部分は、アルキル側鎖に対してパラ位に位置している。
【0320】
アジド含有アミノ酸は、商業的供給源から入手可能である。例えば、4-アジドフェニルアラニンは、Chem-Impex International,Inc.(Wood Dale,IL)から得ることができる。市販されていないアジド含有アミノ酸の場合、アジド基は、当業者に公知の標準的な方法を使用して、限定するものではないが、例えば、適切な脱離基(ハロゲン化物、メシレート、トシレートを含むが、これらに限定されない)の変位により、または適切に保護されたラクトンの開裂により、比較的容易に調製され得る。例えば、Advanced Organic Chemistry by March(Third Edition,1985,Wiley and Sons,New York)を参照のこと。
【0321】
E.アミノチオール反応性基
ベータ-置換アミノチオール官能基の固有の反応性によって、チアゾリジンの形成を介したアルデヒド基を含むポリペプチド及び他の生物学的分子の選択的修飾にそれらが非常に有用になる。例えば、J.Shao and J.Tam,J.Am.Chem.Soc.1995,117(14)3893-3899を参照のこと。いくつかの実施形態では、ベータ置換アミノチオールアミノ酸は、ADCポリペプチドに組み込まれ、次いで、アルデヒド官能基を含む水溶性ポリマーと反応し得る。いくつかの実施形態では、水溶性ポリマー、薬物コンジュゲートまたは他のペイロードは、チアゾリジンの形成を介して、ベータ置換アミノチオールアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドにカップリングされ得る。
【0322】
F.さらなる反応性基
【0323】
本開示のADCポリペプチドに組み込むことができるさらなる反応性基及び天然にはコードされないアミノ酸(限定されるものではないが例えばパラ-アミノ-フェニルアラニンを含む)は、以下の特許出願に記載されており、これらは全て、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:米国特許公開第2006/0194256号、米国特許公開第2006/0217532号、米国特許公開第2006/0217289号、米国仮特許第60/755,338号;米国仮特許第60/755,711号;米国仮特許第60/755,018号;国際特許出願第PCT/US06/49397号;WO2006/069246;米国仮特許第60/743,041号;米国仮特許第60/743,040号;国際特許出願第PCT/US06/47822号;米国仮特許第60/882,819号;米国仮特許第60/882,500号;及び米国仮特許第60/870,594号。これらの出願はまた、コンジュゲーションのためのヒドロキシルアミン(アミノオキシ)基を含むがこれらに限定されない、PEGまたは他のポリマー上に存在し得る反応性基も考察している。
【0324】
ADCポリペプチド中の非天然アミノ酸の位置
本明細書に記載の方法及び組成物は、本開示のADCを作製するために、1つ以上の非天然アミノ酸を標的化ポリペプチドに組み込むことを含む。1つ以上の非天然アミノ酸が、標的化ポリペプチドの活性を妨害しない1つ以上の特定の位置で組み込まれてもよい。これは、疎水性アミノ酸を非天然もしくは天然の疎水性アミノ酸に、嵩高いアミノ酸を非天然もしくは天然の嵩高いアミノ酸に、親水性アミノ酸を非天然もしくは天然の親水性アミノ酸に置換することを含むが、これらに限定されない「保存的」置換を行うこと、及び/または、非天然アミノ酸を活性に必要とされない位置に挿入することによって達成され得る。
【0325】
ADCの標的化ポリペプチド内での非天然アミノ酸による置換のために所望の部位を選択するために、様々な生化学的及び構造的アプローチを利用し得る。いくつかの実施形態では、非天然アミノ酸は、細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体のC末端で連結されている。他の実施形態では、非天然アミノ酸は、細胞毒性チューブリン阻害剤誘導体のN末端で連結されている。ADCの標的化ポリペプチドの任意の位置は、非天然アミノ酸を組み込むための選択に適しており、かつ選択は、任意のまたは特定の所望の目的のための合理的な設計に基づいていても、またはランダム選択によって行ってもよい。所望の部位の選択は、受容体結合モジュレーター、受容体活性モジュレーター、バインダーパートナーへの結合のモジュレーター、結合パートナー活性モジュレーター、結合パートナー高次構造モジュレーター、二量体もしくは多量体の形成、天然分子と比較して活性もしくは特性に変化がないこと、またはポリペプチドの任意の物理的もしくは化学的特性、例えば可溶性、凝集、もしくは安定性の操作を含むがこれらに限定されない、任意の所望の特性または活性を有する、非天然アミノ酸ポリペプチド(これはさらに修飾されてもよいし、非修飾のままでもよい)の生成に基づく場合がある。あるいは、生物学的活性に対して重要と識別される部位は、ポリペプチドについて探索された所望の活性に応じて、非天然アミノ酸による置換に適した良好な候補ともなり得る。別の選択肢は、非天然アミノ酸を用いてポリペプチド鎖上の各位置に連続置換を単純に行い、このポリペプチドの活性に対する効果を観察することである。非天然アミノ酸で置換される位置を任意のポリペプチドに選択するための任意の手段、技術、または方法は、本明細書に記載された方法、技術、及び組成物での使用に適している。
【0326】
欠失を含むポリペプチドの天然に存在する変異体の構造及び活性も調べて、非天然アミノ酸による置換に耐性である可能性が高いタンパク質の領域を決定してもよい。非天然アミノ酸による置換に対して不耐性である可能性が高い残基が一旦除去されると、残りの位置のそれぞれにおける提案された置換の影響を、関連するポリペプチドの三次元構造及び任意の関連するリガンドまたは結合タンパク質を含むがこれらに限定されない方法を用いて試験し得る。多くのポリペプチドのX線結晶学的及びNMR構造は、タンパク質データバンク(PDB、ワールドワイドウェブ、rcsb.org)で利用可能であり、これはタンパク質及び核酸の大分子の三次元構造データを含む集中型データベースであり、非天然アミノ酸と置換され得るアミノ酸位置を同定するために使用され得る。加えて、三次元構造データが利用可能でない場合、ポリペプチドの二次及び三次構造を調べるモデルを作成し得る。これにより、非天然アミノ酸で置換され得るアミノ酸位置の同一性を容易に得ることができる。
【0327】
非天然アミノ酸の例示的な組み込み部位としては、限定するものではいが、潜在的な受容体結合領域から除外されたもの、または結合タンパク質もしくはリガンドに結合するための領域が挙げられ、これらは完全にもしくは部分的に溶媒曝露されていてよく、近くの残基との水素結合相互作用を最小限しか有さないかもしくは全く有さず、近くの反応性残基に最小限に曝露されていてよく、及び/またはその関連する受容体、リガンドもしくは結合タンパク質を有する特定のポリペプチドの三次元結晶構造で予測される高可撓性の領域にあってもよい。
【0328】
多種多様な非天然アミノ酸が、ポリペプチド内の所定の位置を置換してもまたはそこに組み込まれてもよい。例として、特定の非天然アミノ酸は、ポリペプチドとその関連するリガンド、受容体、及び/または結合タンパク質との三次元結晶構造の調査、保存的置換の好ましさに基づいて、取り込みについて選択され得る。
【0329】
一実施形態では、本明細書に記載の方法は、非天然アミノ酸をADCの標的化ポリペプチドに組み込むことであって、ADCの標的化ポリペプチドが第1の反応性基を含む、組み込むことと、ADCの標的化ポリペプチドを、第2の反応性基を含む分子(限定するものではないが、第2のタンパク質またはポリペプチドまたはポリペプチド類似体;抗体または抗体フラグメント;及びそれらの任意の組み合わせを含む)と接触させることと、を含む。特定の実施形態では、第1の反応性基はヒドロキシルアミン部分であり、第2の反応性基はカルボニルまたはジカルボニル部分であり、これによりオキシム結合が形成される。特定の実施形態では、第1の反応性基はカルボニルまたはジカルボニル部分であり、第2の反応性基は、ヒドロキシルアミン部分であり、これによりオキシム結合が形成される。特定の実施形態では、第1の反応性基はカルボニルまたはジカルボニル部分であり、第2の反応性基はオキシム部分であり、これによりオキシム交換反応が起こる。特定の実施形態では、第1の反応性基はオキシム部分であり、第2の反応性基はカルボニルまたはジカルボニル部分であり、これによりオキシム交換反応が生じる。
【0330】
ある場合には、非天然アミノ酸のADC組み込み(複数可)の標的化ポリペプチドは、他の化学的特性、物理的特性、薬理学的特性及び/または生物学的特性に影響を与えるように、ポリペプチド内のその他の付加、置換または欠失と組み合わされる。ある場合には、他の付加、置換または欠失は、ポリペプチドの安定性(タンパク質分解性の分解に対する耐性を含むが、これに限定されない)を増大し得るか、またはその適切な受容体、リガンド及び/または結合タンパク質に対するポリペプチドの親和性を増大し得る。ある場合には、他の付加、置換または欠失は、ポリペプチドの可溶性を増大し得る(限定するものではないが、E.coliまたは他の宿主細胞で発現される場合)。いくつかの実施形態では、E.coliまたは他の組換え宿主細胞での発現後にポリペプチドの可溶性を高める目的で、非天然アミノ酸の導入のための別の部位に加えて、天然にコードされたアミノ酸または非天然アミノ酸による置換のための部位を選択する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、関連するリガンド、結合タンパク質、及び/または受容体に対する親和性を調節する別の付加、置換、もしくは欠失を含むか、受容体二量体化を調節する(限定するものではないが、増加または減少させる)か、受容体二量体を安定化するか、循環半減期を調節するか、放出もしくは生物学的利用能を調節するか、精製を促進するか、または特定の投与経路の改善もしくは変更する。同様に、非天然アミノ酸ポリペプチドは、化学的もしくは酵素切断配列、プロテアーゼ切断配列、反応性基、抗体結合ドメイン(FLAGまたはポリ-Hisを含むが、これらに限定されない)、またはポリペプチドの検出(限定するものではないがGFPを含む)、精製、組織もしくは細胞膜を介する輸送、プロドラッグの放出もしくは活性化、サイズ低下もしくは他の形質を改善する他のアフィニティベースの配列(限定するものではないが、FLAG、ポリ-His、GSTなどを含む)もしくは連結分子(限定するものではないがビオチンを含む)を含んでもよい。
【0331】
標的化部位に関する例としての抗HER2抗体
本明細書に記載された方法、組成物、戦略及び技術は、標的化部位ポリペプチドまたはタンパク質の特定の種類、クラスまたはファミリーに限定されない。実際には、事実上、任意の標的化部位ポリペプチドは、本明細書に記載のADCの標的化ポリペプチドを含む少なくとも1つの「修飾または非修飾」非天然アミノ酸を含むように設計または修飾され得る。単なる例として、標的化部位ポリペプチドは、アルファ-1抗トリプシン、アンジオスタチン、抗溶血因子、抗体、抗体フラグメント、モノクローナル抗体(例えば、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、インフリキシマブ、アダリムマブ、バシリキシマブ、ダクリズマブ、オマリズマブ、ウステキヌマブ、エタンエルセプト、ゲムツズマブ、アレムツズマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ニモツズマブ、パリビズマブ、及びアブシキシマブ)、アポリポタンパク質、アポタンパク質、心房性ナトリウム利尿因子、心房性ナトリウム利尿ポリペプチド、心房性ペプチド、C-X-Cケモカイン、T39765、NAP-2、ENA-78、gro-a、gro-b、gro-c、IP-10、GCP-2、NAP-4、SDF-1、PF4、MIG、カルシトニン、c-キットリガンド、CCケモカイン、単球化学誘引タンパク質1、単球化学誘引タンパク質2、単球化学誘引タンパク質3、単球炎症性タンパク質-1アルファ、単球炎症性タンパク質-iベータ、RANTES、1309、R83915、R91733、HCC1、T58847、D31065、T64262、CD40、CD40リガンド、コラーゲン、コロニー刺激因子(CSF)、補体因子5a、補体阻害剤、補体受容体1、サイトカイン、上皮好中球活性化ペプチド-78、MIP-16、MCP-1、上皮成長因子(EGF)、上皮性好中球活性化ペプチド、エリスロポエチン(EPO)、表皮剥脱毒素、第IX因子、第VII因子、第VIII因子、第X因子、線維芽細胞成長因子(FGF)、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、4ヘリックスバンドルタンパク質、G-CSF、glp-1、GM-CSF、グルコセレブロシダーゼ、ゴナドトロピン、成長因子、成長因子受容体、成長ホルモン放出因子、ヘッジホッグタンパク質、ヘモグロビン、肝細胞成長因子(hGF)、ヒルジン、ヒト成長ホルモン(hGH)、ヒト血清アルブミン、ICAM-1、ICAM-1受容体、LFA-1、LFA-1受容体、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)、IGF-I、IGF-II、インターフェロン(IFN)、IFN-アルファ、IFN-ベータ、IFN-ガンマ、インターロイキン(IL)、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、ラクトフェリン、白血病阻害因子、ルシフェラーゼ、ニュールツリン、好中球阻害因子(NIF)、オンコスタチンM、骨形成タンパク質、がん遺伝子産物、パラシトニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、PD-ECGF、PDGF、ペプチドホルモン、プレイオトロフィン(pleiotropin)、タンパク質A、タンパク質G、発熱性外毒素A、発熱性外毒素B、発熱性外毒素C、ペプチドYY(PYY)、リラキシン、レニン、SCF、小型生合成タンパク質、可溶性補体受容体I、可溶性I-CAM1、可溶性インターロイキン受容体、可溶性TNF受容体、ソマトメジン、ソマトスタチン、ソマトトロピン、ストレプトキナーゼ、超抗原、ブドウ球菌エンテロトキシン、SEA、SEB、SEC1、SEC2、SEC3、SED、SEE、ステロイドホルモン受容体、スーパーオキシドジスムターゼ、毒素性ショック症候群毒素、サイモシンアルファ1、組織プラスミノーゲン活性化因子、腫瘍増殖因子(TGF)、腫瘍壊死因子、腫瘍壊死因子アルファ、腫瘍壊死因子ベータ、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)、VLA-4タンパク質、VCAM-1タンパク質、血管内皮増殖因子(VEGF)、ウロキナーゼ、mos、ras、raf、met、p53、tat、fos、myc、jun、myb、rel、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、テストステロン受容体、アルドステロン受容体、LDL受容体、及びコルチコステロンからなる群から選択される治療タンパク質に相同であり得る。
【0332】
一実施形態には、乳癌、小細胞肺癌、卵巣癌、子宮内膜癌、膀胱癌、頭頚部癌、前立腺癌、胃癌、子宮頸癌、子宮癌、食道癌、及び大腸癌からなる群から選択される、HER-2を過剰発現し、HER-2変異を有し、またはHER-2遺伝子増幅を有する固形腫瘍の治療方法がある。別の実施形態では、固形腫瘍は乳癌である。さらなる実施形態では、固形腫瘍は卵巣癌である。さらなる実施形態では、固形腫瘍は胃癌である。
【0333】
したがって、トラスツズマブの以下の説明は例示を目的として単に例として提供されており、本明細書に記載される方法、組成物、戦略及び技術の範囲を限定するものではない。さらに、本出願におけるトラスツズマブの言及は、任意の抗体の一例として一般的な用語を使用することを意図している。したがって、トラスツズマブに関して本明細書に記載された改変及び化学物質は、本明細書に具体的に列挙されたものを含む任意の抗体またはモノクローナル抗体に等しく適用され得ることが理解される。
【0334】
トラスツズマブは、HER2/neu受容体の細胞外セグメントのドメインIVに結合するヒト化モノクローナル抗体である。HER2遺伝子(HER2/neu及びErbB2遺伝子としても公知)は早期乳癌の20~30%で増幅され、これが過剰発現を引き起こす。また、がんでは、HER2は、マイトジェンがいずれの受容体にも到達及び結合することなく、シグナルを送信し、これが過活動を引き起こすことがある。
【0335】
HER2は、細胞膜を通って広がり、細胞の外側から内側にシグナルを伝達する。健康な人では、マイトジェンと呼ばれるシグナル伝達化合物が細胞膜に到達し、HERファミリーの受容体の他のメンバーの外側部分に結合する。その後、これらの結合した受容体はHER2と結合(二量体化)し、それを活性化する。HER2は、その後、細胞の内部にシグナルを送信する。このシグナルは、種々の生化学的経路を通過する。これには、PI3K/Akt経路及びMAPK経路が含まれる。これらのシグナルは、細胞の血管の侵入、生存及び成長(血管新生)を促進する。
【0336】
トラスツズマブで治療した細胞は、細胞周期のG1期に停止するため、増殖が抑制される。トラスツズマブは、HER2/neuのダウンレギュレーションによってその効果の一部を引き起こし、受容体二量体化の破壊及び下流のPI3Kカスケードによるシグナル伝達をもたらすことが示唆されている。次いで、P27Kip1はリン酸化されず、核内に入ってcdk2活性を阻害して、細胞周期停止を引き起こすことができる。また、トラスツズマブは、血管新生阻害因子の誘導と血管新生促進因子の抑制の両方によって血管新生を抑制する。がんで観察された未調節の成長への寄与は、細胞外ドメインの放出をもたらすHER2/neuのタンパク質分解切断に起因し得ると考えられる。トラスツズマブは、乳癌細胞のHER2/neuエクトドメイン切断を阻害することが示されている。
【0337】
非真核生物及び真核生物における発現
クローニングされたADCポリヌクレオチドの高レベル発現を得るために、本開示のADCポリペプチドの標的化ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、転写を指示する強力なプロモーター、転写/翻訳ターミネーター、及びタンパク質をコードする核酸の場合には翻訳開始のためのリボソーム結合部位を含む発現ベクターに、典型的にはサブクローニングさせる。適切な細菌促進剤は当業者に公知であり、例えば、Sambrook et al.and Ausubel et alに記載されている。
【0338】
本開示のADCポリペプチドを発現するための細菌発現系は、例としては、限定するものではないが、E.coli、Bacillus sp.、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida、及びSalmonella(Palva et al.,Gene 22:229-235(1983);Mosbach et al.,Nature 302:543-545(1983))において利用可能である。そのような発現系のためのキットは市販されている。哺乳動物の細胞、酵母及び昆虫細胞のための真核生物発現系は、当業者に公知であり、また市販されている。直交tRNA及び(上記の)アミノアシルtRNAシンテターゼが本開示のADCポリペプチドを発現するために使用される場合、発現のための宿主細胞は、直交する成分を使用するそれらの能力に基づいて選択される。例示的な宿主細胞としては、グラム陽性細菌(B.brevis、B.subtilis、またはStreptomycesを含むが、これらに限定されない)及びグラム陰性細菌(E.coli、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas putida)、ならびに酵母及び他の真核細胞が挙げられる。O-tRNA/O-RS対を含む細胞は、本明細書に記載されるように使用され得る。
【0339】
本開示の真核宿主細胞または非真核宿主細胞は、非天然アミノ酸を大量の有効量で含むタンパク質を合成する能力を提供する。一態様では、組成物は、任意選択で、限定するものではないが、少なくとも10マイクログラム、少なくとも50マイクログラム、少なくとも75マイクログラム、少なくとも100マイクログラム、少なくとも200マイクログラム、少なくとも250マイクログラム、少なくとも500マイクログラム、少なくとも1ミリグラム、少なくとも10ミリグラム、少なくとも100ミリグラム、少なくとも1グラム、もしくはそれ以上のタンパク質(非天然アミノ酸を含む)、またはインビボでのタンパク質製造法で達成できる量を含む(組み換えタンパク質の生成及び精製の詳細は本明細書に示す)。別の態様では、タンパク質は任意選択で、限定するものではないが、1リットル当たり少なくとも10マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも50マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも75マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも100マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも200マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも250マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも500マイクログラムのタンパク質、1リットル当たり少なくとも1ミリグラムのタンパク質、もしくは1リットル当たり少なくとも10ミリグラムまたはそれ以上のタンパク質の濃度で組成物中に存在し、これには、限定するものではないが、細胞溶解物、緩衝液、医薬緩衝液、または他の液体懸濁液(限定するものではないが約1nL~約100Lまたはそれ以上のあらゆる容量を含むが、これらに限定されない)を含む。少なくとも1つの非天然アミノ酸を含む真核細胞内でのタンパク質の大量の生成(限定するものではないが、インビトロ翻訳を含む他の方法で典型的に可能であるものよりも多い)は、本開示の特徴である。
【0340】
ADCポリペプチドの標的化ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする配列を含んでもよいし、含まなくてもよい。シグナルペプチドは、ポリペプチドが発現される細胞からそれが分泌される場合に存在する。このようなシグナルペプチドは、任意の配列であり得る。シグナルペプチドは、原核生物であっても真核生物であってもよい。Coloma,M(1992)J.Imm.Methods 152:89 104)には、哺乳動物細胞において使用するためのシグナルペプチド(マウスIgカッパ軽鎖シグナルペプチド)が記載されている。その他のシグナルペプチドとしては、限定するものではないが、S.cerevisiae由来のアルファ因子シグナルペプチド(参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,870,008号)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O.Hagenbuchle et al.,Nature 289,1981,pp.643-646)、改変されたカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A.Valls et al.,Cell 48,1987,pp.887-897)、酵母BAR1シグナルペプチド(WO87/02670、参照により本明細書に組み込まれる)、及び酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(参照、M.Egel-Mitani et al.,Yeast 6,1990,pp.127-137)が挙げられる。
【0341】
適切な哺乳動物の宿主細胞の例は、当業者に公知である。そのような宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、CHO-K1;ATCC CCL-61)、サバンナモンキー細胞(COS)(例えば、COS1(ATCC CRL-1650)、COS7(ATCC CRL-1651));マウス細胞(例えば、NS/O)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞株(例えば、ATCC CRL-1632またはATCC CCL-10)、及びヒト細胞(例えば、HEK 293(ATCC CRL-1573))、ならびに組織培養における植物細胞であってもよい。これらの細胞株及び他のものは、American Type Culture Collection,Rockville,Mdなどの公的な受託者から入手できる。ADCポリペプチドのグリコシル化を改善する目的で、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第5,047,335に記載されているように、哺乳動物宿主細胞を改変して、シアル酸転移酵素、例えば、1,6-シアル酸転移酵素を発現してもよい。
【0342】
哺乳動物の宿主細胞に外因性DNAを導入するための方法としては、限定するものではないが、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、ウイルスベクター及びLipofectamin 2000を使用したLife Technologies Ltd,Paisley,UK及びFuGENE 6を使用したRoche Diagnostics Corporation,Indianapolis,USAによって説明されるトランスフェクション法が挙げられる。これらの方法は、当該技術分野では周知であり、Ausbel et al.(eds.),1996,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,USAにより説明されている。哺乳動物細胞の培養は、確立された方法に従って、例えば(Animal Cell Biotechnology,Methods and Protocols,Nigel Jenkinsにより編集,1999,Human Press Inc.Totowa,N.J.,USA及びHarrison Mass.and Rae IF,General Techniques of Cell Culture,Cambridge University Press 1997)に開示されているように実施され得る。
【0343】
E.Coli、Pseudomonas属、及びその他の原核生物
【0344】
細菌発現技術は、当業者に公知である。細菌宿主で使用するために多種多様なベクターが利用可能である。ベクターは、単一のコピーまたは低いもしくは高いマルチコピーのベベクターであってよい。ベクターは、クローニング及び/または発現に役立ち得る。ベクターに関する豊富な文献、多数のベクターの商業的入手可能性、ならびにベクター及びそれらの制約マップ及び特性を記述するマニュアルさえも考慮して、本明細書では詳細な考察は必要ない。周知であるとおり、ベクターは、通常、選択を可能にするマーカーを含み、このマーカーは、細胞毒性剤の耐性、原栄養性または免疫を提供し得る。多くの場合、種々の特性を提供する複数のマーカが存在する。
【0345】
細菌プロモーターとは、細菌RNAポリメラーゼに結合し得、コード配列(例えば、構造遺伝子)のmRNAへの下流(3’)転写を開始し得る任意のDNA配列である。プロモーターは、通常コード配列の5’末端の近くに位置する転写開始領域を有する。この転写開始領域は、典型的には、RNAポリメラーゼ結合部位及び転写開始部位を含む。細菌のプロモーターは、RNA合成が開始される隣接するRNAポリメラーゼ結合部位と重なり得る、オペレーターと呼ばれる第2のドメインを有してもよい。遺伝子リプレッサータンパク質がオペレーターに結合して特定の遺伝子の転写を阻害し得るので、オペレーターは、負の調節(誘導性)転写を可能にする。構成的発現は、オペレーターなどの負の調節エレメントがない場合に起こり得る。さらに、遺伝子活性化タンパク質結合配列によって正の調節を達成することができ、これは、存在する場合には通常、RNAポリメラーゼ結合配列の近位(5’)である。遺伝子活性化タンパク質の例は、Escherichia coli(E.coli)におけるlacオペロンの転写の開始を補助する、異化代謝物活性化タンパク質(CAP)である(Raibaud et al.,ANNU.REV.GENET.(1984)18:173を参照のこと)。したがって、調節された発現は、正または負のいずれであってもよく、それによって転写を促進または低減する。
【0346】
「細菌宿主」または「細菌宿主細胞」という用語は、組換えベクターまたは他のトランスファーDNAのレシピエントとして使用され得る、または使用された細菌を指す。この用語には、トランスフェクトされた元の細菌宿主細胞の子孫が含まれる。単一の親細胞の子孫は、偶発的または意図的な変異に起因して、形態またはゲノムDNAもしくは総DNA補体が必ずしも元の親と完全に同一である必要はないことが理解される。ADCポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の存在など、関連特性によって特徴付けられるべき親に十分に類似している親細胞の子孫は、この定義によって意図された子孫に含まれている。
【0347】
ADCポリペプチドの発現に適した宿主細菌の選択は、当業者に公知である。発現のための細菌宿主の選択の際、適切な宿主には、特に、良好な封入体形成能、低タンパク質分解活性、及び全体的な堅牢性を有することが示されるものが含まれ得る。細菌宿主は、一般的に、Bacterial Genetic Stock Center,Department of Biophysics and Medical Physics,University of California(Berkeley,CA);及びAmerican Type Culture Collection(“ATCC”)(Manassas,VA)を含むが、これらに限定されない様々な供給源から入手可能である。産業/医薬の発酵では、一般に、K株(例えば、W3110)に由来する細菌、またはB株(例えば、BL21)に由来する細菌が使用される。これらの菌株は、その成長パラメータが非常によく知られており、かつ堅牢であるため、特に有用である。さらに、これらの菌株は非病原性であり、安全性及び環境上の理由から商業的に重要である。適切なE.coli宿主の他の例としては、限定するものではないが、BL21、DH10Bの菌株、またはそれらの誘導体が挙げられる。本開示の方法の別の実施形態では、E.coli宿主は、プロテアーゼマイナス株であり、これには、限定するものではないが、OMP-及びLON-を含む。宿主細胞株は、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas aeruginosa、及びPseudomonas putidaを含むが、これらに限定されないPseudomonasの種であってもよい。MB101株と命名されたPseudomonas fluorescens次亜種1は、組換え生産に有用であることが知られており、治療的タンパク質製造法に利用可能である。Pseudomonas発現系の例としては、The Dow Chemical Companyから宿主株として入手可能な系(Midland,MI、dow.comのワールドワイドウェブで入手可能)が挙げられる。
【0348】
一旦、組換え宿主細胞株が樹立されると(すなわち、発現構築物が宿主細胞に導入され、適切な発現構築物を有する宿主細胞が単離される)、組換え宿主細胞株を、ADCポリペプチドの産生に適した条件下で培養する。当業者には明らかであるように、組換え宿主細胞株の培養方法は、利用される発現構築物の性質及び宿主細胞の同一性に依存することになる。組換え宿主株は、通常、当業者に公知の方法を用いて培養される。組換え宿主細胞は、通常、当業者に公知の同化可能な炭素源、窒素及び無機塩を含有し、任意選択で、ビタミン、アミノ酸、成長因子、及び他のタンパク質性培養サプリメントを含有する液体培地中で培養される。宿主細胞の培養用の液体培地は、任意選択で、発現ベクターを含む宿主細胞を選択するための抗生物質を含むがこれらに限定されない、望ましくない微生物及び/または化合物の増殖を防ぐための抗生物質または抗真菌薬を含んでもよい。
【0349】
組換え宿主細胞は、バッチまたは連続式で培養されてもよく、細胞採取(ADCポリペプチドが細胞内に蓄積する場合)、または培養上清の採取は、バッチまたは連続式のいずれかで行う。原核宿主細胞における生産のためには、バッチ培養及び細胞の採取が好ましい。
【0350】
本開示のADCポリペプチドは、通常、組み換え系での発現後に精製される。ADCポリペプチドは、当該技術分野で公知の様々な方法によって宿主細胞または培養培地から精製され得る。細菌宿主細胞で産生されるADCポリペプチドは、難溶性または不溶性(封入体の形態)であり得る。本開示の一実施形態では、アミノ酸置換は、本明細書に開示されている方法及び当該技術分野で公知の方法を利用する組換え生産されたタンパク質の溶解度を増加させる目的で選択されるADCポリペプチドにおいて容易に行われ得る。不溶性タンパク質の場合、タンパク質は、遠心分離によって宿主細胞溶解物から収集され、続けて細胞の均質化がさらに行われてもよい。難溶性タンパク質の場合には、ポリエチレンイミン(PEI)を含むがこれらに限定されない化合物を添加して、部分可溶性タンパク質の沈殿を誘発し得る。沈殿したタンパク質は、次いで遠心分離により簡便に回収され得る。組換え宿主細胞は、当業者に知られている様々な方法を用いて細胞内から封入体を放出するために破壊されても、または均質化されてもよい。宿主細胞の破壊または均質化は、限定されるものではないが、酵素的細胞破壊、超音波処理、dounce均質化、または高圧放出破壊を含む周知の技術を用いて行われ得る。本開示の方法の一実施形態では、高圧放出技術を使用して、E.coli宿主細胞を破壊し、ADCポリペプチドの封入体を放出する。ADCポリペプチドの封入体を取り扱う場合、可溶化、機械的せん断またはタンパク質分解などの要因による損失を伴わずに封入体の収率を最大化するためには、反復時の均質化時間を最小限に抑えることが有利であり得る。
【0351】
不溶性または沈殿したADCポリペプチドは、次いで、当該技術分野で知られている多数の適切な可溶化剤のいずれかを使用して可溶化され得る。ADCポリペプチドは、尿素または塩酸グアニジンで可溶化され得る。可溶化ADCポリペプチドの体積は、簡便に管理可能なバッチサイズを使用して大きなバッチを生成できるように最小限に抑えるべきである。この要因は、組換え宿主が体積数千リットルのバッチで増殖し得る大規模な商業的環境において重要であり得る。さらに、ADCポリペプチドを大規模な商業的環境で、特にヒトの医薬用途のために製造する場合、機械及び容器、またはタンパク質製品自体を損傷し得る過酷な化学物質の回避は、可能であれば回避されるべきである。本開示の方法では、より穏やかな変性剤の尿素を、より過酷な変性剤のグアニジン塩酸塩の代わりに、ADCポリペプチド封入体を可溶化させるために使用できることが示されている。尿素の使用は、ADCポリペプチドの製造及び精製プロセスで使用されるステンレス鋼設備の損傷のリスクを有意に低減しながら、ADCポリペプチドの封入体を効率的に可溶化する。
【0352】
ADCタンパク質の可溶性標的化ポリペプチド(soluble targeting polypeptide)の場合、ADCの標的化ポリペプチドは、周辺質の空間中に、または培養培地中に分泌されてよい。さらに、可溶性ADCが宿主細胞の細胞質中に存在し得る。精製ステップを行う前に可溶性ADCを濃縮することが望ましい場合がある。当業者に公知の標準的な技術を用いて、例えば細胞溶解物または培養培地から、可溶性標的化ポリペプチドを濃縮し得る。加えて、宿主細胞を破壊して宿主細胞の細胞質または周辺質の空間から可溶性ADCを放出するために、当業者に公知の標準的な技術を使用してもよい。
【0353】
一般に、発現したポリペプチドを変性及び還元し、次いでそのポリペプチドを好ましい高次構造にリフォールディングさせることが望ましい場合がある。例えば、目的の翻訳生成物に、グアニジン、尿素、DTT、DTE及び/またはシャペロニンを添加してもよい。タンパク質を還元させる、変性させる、及び復元させる方法は、当業者には公知である(上記の参考文献、及びDebinski,et al.(1993)J.Biol.Chem.,268:14065-14070;Kreitman and Pastan(1993)Bioconjug.Chem.,4:581-585;及びBuchner,et al.,(1992)Anal.Biochem.,205:263-270)を参照のこと)。例えば、Debinskiらは、グアニジン-DTEにおける封入体タンパク質の変性及び還元を説明している。タンパク質は、酸化型グルタチオン及びL-アルギニンを含むがこれらに限定されない酸化還元緩衝液中でリフォールディングされ得る。リフォールディング試薬は、1つ以上のポリペプチドもしくは他の発現産物と接触するように流されてもよいか、もしくはそうでなければ移動されてもよく、またその逆も可能である。
【0354】
ADCポリペプチドの原核生物による産生の場合、このようにして産生されたADCポリペプチドは、ミスフォールディングされる場合があり、そのせいで生物学的活性を欠いているか、または低下している。タンパク質の生物活性は、「リフォールディング」によって回復され得る。一般に、ミスフォールディングされたADCポリペプチドは、例えば、1種以上のカオトロピック剤(例えば、尿素及び/またはグアニジン)及びジスルフィド結合を還元し得る還元剤(例えば、ジチオスレイトール、DTTまたは2-メルカプトエタノール、2-ME)を使用して、ポリペプチド鎖を可溶化すること(ADCポリペプチドも不溶性である場合)、アンフォールディングすること、及び還元することによってリフォールディングされる。カオトロープの適度な濃度では、次いで酸化剤(例えば、酸素、シスチンまたはシスタミン)が添加され、これにより、ジスルフィド結合の再編成が可能になる。ADCポリペプチドは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,511,502号、同第4,511,503号及び同第4,512,922号に記載される方法などの当該技術分野で公知の標準的な方法を使用してリフォールディングされ得る。ADCポリペプチドはまた、ヘテロ二量体またはヘテロ多量体を形成するために、他のタンパク質とコフォールディングされてもよい。
【0355】
リフォールディング後、ADCの標的化ポリペプチドを、さらに精製してもよい。ADCの精製は、疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどまたはそれらの任意の組み合わせを含む、当業者に公知の様々な技術を使用して達成され得る。追加の精製には、精製されたタンパク質を乾燥または沈殿させるステップも含まれ得る。
【0356】
精製後、ADCの標的化ポリペプチドは、限定するものではないが、透析濾過及び透析を含む、当該分野で公知の様々な方法のいずれかにより、異なる緩衝液に交換されても、及び/または濃縮されてもよい。単一の精製タンパク質として供給されるADCは、凝集及び沈殿を受ける場合がある。
【0357】
ADCの精製された標的化ポリペプチドは、少なくとも90%の純度(逆相高速液体クロマトグラフィー、RP-HPLC、またはドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS-PAGEにより測定)、または少なくとも95%の純度、または少なくとも96%の純度、または少なくとも97%の純度、または少なくとも98%の純度、または少なくとも99%もしくはそれ以上の純度であり得る。ADCの標的化ポリペプチドの純度の正確な数値にかかわらず、ADCの標的化ポリペプチドは、医薬品としての使用またはさらなる処理、例えばPEGなどの水溶性ポリマーとのコンジュゲーションの場合には十分に純粋である。
【0358】
特定のADC分子は、他の活性成分もしくはタンパク質(賦形剤、担体、及び安定剤、血清アルブミンなどを除く)の非存在下で治療剤として使用してもよいし、またはそれらは別のタンパク質もしくはポリマーと複合体化されてもよい。
【0359】
先に、所望のアンバーナンセンス変異を含む遺伝子でプログラムされたタンパク質合成反応物に化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを添加することにより、非天然アミノ酸をインビトロでタンパク質に部位特異的に組み込むことができることが示された。これらのアプローチを用いて、特定のアミノ酸に対して栄養要求性の菌を用いて、多数の共通の20個のアミノ酸を類似する構造相同物で、例えばフェニルアラニンをフルオロフェニルアラニンで置換し得る。例えば、Noren,C.J.,Anthony-Cahill,Griffith,M.C.,Schultz,P.G.A general method for site-specific incorporation of unnatural amino acids into proteins,Science,244:182-188(1989);M.W.Nowak,et al.,Science 268:439-42(1995);Bain,J.D.,Glabe,C.G.,Dix,T.A.,Chamberlin,A.R.,Diala,E.S.Biosynthetic site-specific Incorporation of a non-natural amino acid into a polypeptide,J.Am Chem Soc,111:8013-8014(1989);N.Budisa et al.,FASEB J.13:41-51(1999);Ellman,J.A.,Mendel,D.,Anthony-Cahill,S.,Noren,C.J.,Schultz,P.G.Biosynthetic method for introducing unnatural amino acids site-specifically into proteins,Methods in Enz.,vol.202,301-336(1992);及び、Mendel,D.,Cornish,V.W.& Schultz,P.G.Site-Directed Mutagenesis with an Expanded Genetic Code,Annu Rev Biophys.Biomol Struct.24,435-62(1995)を参照のこと。
【0360】
例えば、終止コドンUAGを認識し、非天然アミノ酸で化学的にアミノアシル化したサプレッサーtRNAを調製した。従来の部位特異的変異誘発を用いて、タンパク質遺伝子における目的の部位に終止コドンTAGを導入した。例えば、Sayers,J.R.,Schmidt,W.Eckstein,F.5’-3’ Exonucleases in phosphorothioate-based oligonucleotide-directed mutagenesis,Nucleic Acids Res,16(3):791-802(1988)を参照のこと。アシル化サプレッサーtRNAと変異遺伝子とをインビトロ転写/翻訳系において組み合わせた際に、UAGコドンに応答して非天然アミノ酸を組み込み、特定の位置にそのアミノ酸を含むタンパク質を得た。[3H]-Pheを用いた実験及びα-ヒドロキシ酸を用いた実験により、所望のアミノ酸のみがUAGコドンによって指定される位置に組み込まれること、及びこのアミノ酸はタンパク質の他の部位には組み込まれていないことが実証された。例えば、Noren,et al,上記;Kobayashi et al.,(2003)Nature Structural Biology 10(6):425-432;及び、Ellman,J.A.,Mendel,D.,Schultz,P.G.Site-specific incorporation of novel backbone structures into proteins,Science,255(5041):197-200(1992)を参照のこと。
【0361】
tRNAは、化学的または酵素的アミノアシル化を含むがこれらに限定されない任意の方法または技術によって、所望のアミノ酸とアミノアシル化され得る。
【0362】
アミノアシル化は、アミノアシルtRNAシンテターゼ、またはリボザイムを含むがこれらに限定されない他の酵素分子によって達成され得る。「リボザイム」という用語は、「触媒RNA」と互換性がある。Cech及び共同研究者(Cech,1987,Science,236:1532-1539;McCorkle et al.,1987,Concepts Biochem.64:221-226)により、触媒として作用し得る天然に存在するRNA(リボザイム)の存在が実証された。しかしながら、これらの天然RNA触媒は、切断及びスプライシングのためにリボ核酸基質に作用することしか示していないが、リボザイムの人工的な進化の最近の開発は、触媒作用のレパートリーを様々な化学反応に拡張した。研究では、アミノアシル-RNA結合を触媒することができるRNA分子がそれ自体で(2’)3’-末端で同定されており(Illangakekare et al.,1995 Science 267:643-647)、及び1つのRNA分子から別のRNA分子にアミノ酸を転移し得るRNA分子が同定されている(Lohse et al.,1996,Nature 381:442-444)。
【0363】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2003/0228593号には、リボザイムを構築する方法、ならびに天然にコードされたアミノ酸及び天然にはコードされないアミノ酸を用いるtRNAのアミノアシル化におけるその使用が記載されている。限定するものではないが、リボザイムを含むtRNAをアミノアシル化することができる酵素分子の基質固定化形態は、アミノアシル化生成物の効率的なアフィニティー精製を可能にし得る。適切な基質の例としては、アガロース、セファロース、及び磁気ビーズが挙げられる。アミノアシル化のためのリボザイムの基質固定化形態の製造及び使用は、Chemistry and Biology 2003,10:1077-1084及び米国特許出願公開第2003/0228593号に記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0364】
化学アミノアシル化法としては、限定するものではないが、Hecht及び共同研究者(Hecht,S.M.Acc.Chem.Res.1992,25,545;Heckler,T.G.;Roesser,J.R.;Xu,C.;Chang,P.;Hecht,S.M.Biochemistry 1988,27,7254;Hecht,S.M.;Alford,B.L.;Kuroda,Y.;Kitano,S.J.Biol.Chem.1978,253,4517)により紹介されたもの、ならびにSchultz,Chamberlin,Doughertyら(Cornish,V.W.;Mendel,D.;Schultz,P.G.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1995,34,621;Robertson,S.A.;Ellman,J.A.;Schultz,P.G.J.Am.Chem.Soc.1991,113,2722;Noren,C.J.;Anthony-Cahill,S.J.;Griffith,M.C.;Schultz,P.G.Science 1989,244,182;Bain,J.D.;Glabe,C.G.;Dix,T.A.;Chamberlin,A.R.J.Am.Chem.Soc.1989,111,8013;Bain,J.D.et al.Nature 1992,356,537;Gallivan,J.P.;Lester,H.A.;Dougherty,D.A.Chem.Biol.1997,4,740;Turcatti,et al.J.Biol.Chem.1996,271,19991;Nowak,M.W.et al.Science,1995,268,439;Saks,M.E.et al.J.Biol.Chem.1996,271,23169;Hohsaka,T.et al.J.Am.Chem.Soc.1999,121,34)によって紹介されたものが挙げられ、これらは参照により、アミノアシル化におけるシンテターゼの使用を避けるために本明細書に組み込まれる。そのような方法または他の化学アミノアシル化法を用いて、tRNA分子をアミノアシル化することができる。
【0365】
触媒RNAを生成するための方法は、ランダム化されたリボザイム配列の別個のプールを生成すること、このプールに対して指向的進化を行うこと、このプールの望ましいアミノアシル化活性をスクリーニングすること、及び望ましいアミノアシル化活性を示すこれらのリボザイムの配列を選択することを含み得る。
【0366】
再構成された翻訳システムを使用してもよい。精製された翻訳因子の混合物を使用して、mRNAをタンパク質に翻訳すること、及び溶解物または開始因子-1(IF-1)、IF-2、IF-3(αまたはβ)、伸長因子T(EF-Tu)、もしくは停止因子などの精製された翻訳因子を補充した溶解物の組み合わせを翻訳することも成功した。無細胞系はまた、転写/翻訳系とカップリングし得、ここでDNAは系に導入され、mRNAに転写され、mRNAは、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel et al.editors,Wiley Interscience,1993)(参照により本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されているように翻訳される。真核生物転写系で転写されるRNAは、異核種RNA(hnRNA)または5’末端キャップ(7-メチルグアノシン)及び3’末端ポリAテール成熟(3′-end poly A tailed mature)mRNAの形であってもよく、これは特定の翻訳系では有利な場合がある。例えば、キャッピングされたmRNAは、網状赤血球溶解系において高効率で翻訳される。
【0367】
ADCポリペプチドにカップリングされた高分子ポリマー
本明細書に記載された非天然アミノ酸ポリペプチドに対する様々な修飾は、本明細書に記載された組成物、方法、技術及び戦略を用いて行うことができる。これらの修飾には、ポリペプチドの非天然のアミノ酸成分上のさらなる機能性の組み込みが挙げられ、これには限定するものではないが、標識;色素;ポリマー;水溶性ポリマー;ポリエチレングリコールの誘導体;光架橋剤;放射性核種;細胞毒性化合物;薬物;親和性標識;光親和性標識;反応性化合物;樹脂;第2のタンパク質またはポリペプチドまたはポリペプチド類似体;抗体または抗体フラグメント;金属キレート剤;補因子;脂肪酸;炭水化物;ポリヌクレオチド、DNA、RNA、アンチセンスポリヌクレオチド;糖;水溶性デンドリマー;シクロデキストリン;阻害性リボ核酸;生体材料;ナノ粒子;スピン標識;フルオロフォア;金属含有部分;放射性部分;新規官能基;他の分子と共有結合的または非共有結合的に相互作用する基;光ケージ化部分;化学線で励起可能な部分;光異性化可能な部分;ビオチン;ビオチンの誘導体;ビオチン類似体;重原子を組み込んだ部分;化学的に切断可能な基;光切断可能な基;伸長した側鎖;炭素結合糖;酸化還元活性剤;アミノチオ酸;毒性部分;同位体標識部分;生物物理学的プローブ;燐光基;化学発光基;電子密度基;磁性基;挿入基;発色団;エネルギー移動剤;生物学的活性物質;検出可能な標識;小分子;量子ドット;ナノ伝達物質;放射性ヌクレオチド;放射線伝達物質;中性子捕捉物質、または上記の任意の組み合わせ、あるいは任意の他の望ましい化合物もしくは物質が挙げられる。本明細書に記載される組成物、方法、技術及び戦略の例示的で非限定的な例として、以下の説明は、そこに記載される組成物、方法、技術及び戦略が、限定するものではないが、上記されるものを含む他の機能性を添加することに適用可能である(必要に応じて適切な修飾が行われ、かつ本明細書の開示により当業者が行うことができる)ことを理解した上で、高分子ポリマーを非天然アミノ酸ポリペプチドに添加することに焦点を当てる。
【0368】
広範な種類の高分子ポリマー及び他の分子を、ADCポリペプチドの生物学的特性を調節するために、及び/またはADC分子に新たな生物学的特性を提供するために、本開示のADCポリペプチドに連結してもよい。これらの高分子ポリマーは、天然にコードされたアミノ酸を介して、天然にはコードされないアミノ酸を介して、または天然もしくは非天然アミノ酸の任意の官能性置換基を介して、または天然もしくは非天然アミノ酸に付加された任意の置換基もしくは官能基を介して、ADCポリペプチドに連結され得る。ポリマーの分子量は、限定するものではないが、約100Da~約100,000Daまたはそれ以上を含む広い範囲であってもよい。ポリマーの分子量は、約100Da~約100,000Daであってよく、これには、限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da及び100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマーの分子量は、約10,000Da~約40,000Daである。
【0369】
本開示は、ポリマー:タンパク質コンジュゲートの実質的に均一な調製物を提供する。本明細書で使用される「実質的に均一」とは、ポリマー:タンパク質コンジュゲート分子が全タンパク質の半分よりも大きいことが観察されることを意味する。ポリマー:タンパク質コンジュゲートは生物学的活性を有し、本明細書で提供される「実質的に均一な」PEG化ADCポリペプチド調製物は、均一な調製物の利点、例えば、ロットからロットへの薬物動態の予測可能性における臨床応用の容易さを示すのに十分に均一な調製物である。
【0370】
ポリマー:タンパク質コンジュゲート分子の混合物を調製することを選択することもでき、本明細書で提供される利点は、混合物に含めるモノポリマー:タンパク質コンジュゲートの割合を選択し得るということである。したがって、必要に応じて、様々な数のポリマー部分が結合した(すなわち、ジ、トリ、テトラなど)様々なタンパク質の混合物を調製し得、前記コンジュゲートを、本開示の方法を使用して調製されたモノポリマー:タンパク質コンジュゲートと結合させて、所定の割合のモノポリマー:タンパク質コンジュゲートを有する混合物を有し得る。
【0371】
選択されるポリマーは、それが結合しているタンパク質が生理学的環境などの水性環境において沈殿しないように水溶性であってもよい。ポリマーは、分岐していても非分岐であってもよい。最終生成物調製物の治療的用途に関して、ポリマーは薬学的に許容されることになる。
【0372】
ポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリアルキルエーテル及びそのアルコキシキャップ類似体(例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン/プロピレングリコール、及びそのメトキシまたはエトキシキャップ類似体、特にポリオキシエチレングリコール、後者はポリエチレングリコールまたはPEGとしても知られる);ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルキルエーテル;ポリオキサゾリン、ポリアルキルオキサゾリジン及びポリヒドロキシアルキルオキサゾリン;ポリアクリルアミド、ポリアルキルアクリルアミド及びポリヒドロキシアルキルアクリルアミド(例えば、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド及びその誘導体);ポリヒドロキシアルキルアクリレート;ポリシアル酸及びその類似体;親水性ペプチド配列;ポリサッカライド及びそれらの誘導体、例としては、デキストラン及びデキストラン誘導体、例えばカルボキシメチルデキストラン、デキストラン硫酸塩、アミノデキストラン;セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース;キチン及びその誘導体、例えばキトサン、スクシニルキトサン、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルキトサン;ヒアルロン酸及びその誘導体;デンプン;アルギン酸塩;コンドロイチン硫酸;アルブミン;プルラン及びカルボキシメチルプルラン;ポリアミノ酸及びその誘導体、例えば、ポリグルタミン酸、ポリリジン、ポリアスパラギン酸、ポリアスパルタミド、無水マレイン酸コポリマー、例えば:スチレン無水マレイン酸コポリマー、ジビニルエチルエーテル無水マレイン酸コポリマー;ポリビニルアルコール;それらのコポリマー;そのターポリマー;それらの混合物;ならびに前述の誘導体が挙げられる。
【0373】
ポリエチレングリコール分子のタンパク質分子に対する割合は、反応混合物中でのそれらの濃度と同様に変化することになる。一般に、最適比(過剰な未反応のタンパク質またはポリマーが最小であるという反応の効率に関して)は、選択されるポリエチレングリコールの分子量、及び利用可能な反応性基の数によって決定され得る。分子量に関して、典型的にはポリマーの分子量が高いほど、タンパク質に結合し得るポリマー分子の数は少なくなる。同様に、これらのパラメータを最適化する際には、ポリマーの分岐を考慮すべきである。一般に、分子量が高いほど(または分岐がより多いほど)、ポリマー:タンパク質の比は高くなる。
【0374】
本明細書で使用される場合、そしてPEG:ADCポリペプチドコンジュゲートを考慮する場合に、「治療上有効な量」という用語は、患者に所望の利益を与える量を指す。この量は、人ごとに変化し、患者の全体的な身体的状態及び治療される状態の基礎となる原因を含む、多数の要因に依存する。治療に使用されるADCポリペプチドの量は、許容可能な変化率をもたらし、所望の応答を有益なレベルで維持する。治療上有効な量の本組成物は、公的に利用可能な材料及び手順を用いて当業者によって容易に確認され得る。
【0375】
水溶性ポリマーは、直鎖状、フォーク状または分岐鎖状を含むがこれらに限定されない任意の構造形態であってよい。典型的には、水溶性ポリマーは、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)であるが、他の水溶性ポリマーも使用できる。例として、PEGは、本開示の特定の実施形態を説明するために使用される。
【0376】
PEGは、市販されているかまたは当業者に公知の方法に従ってエチレングリコールの開環重合により生成可能である周知の水溶性ポリマーである(Sandler and Karo,Polymer Synthesis,Academic Press,New York,Vol.3,pages 138-161)。「PEG」という用語は、PEGの末端のサイズまたは修飾に関係なく、広く使用されて、任意のポリエチレングリコール分子を包含し、以下の式によりADCポリペプチドと連結されると表すことができる:
XO-(CH2CH2O)n-CH2CH2-Y
(式中、nは、2~10,000であり、Xは、HまたはC1-4アルキル、保護基、もしくは末端官能基を含むがこれらに限定されない末端修飾である)。
【0377】
ある場合には、本開示で使用されるPEGは、ヒドロキシまたはメトキシで一端が終端し、すなわち、Xは、HまたはCH3(「メトキシPEG」)である。あるいは、PEGは、反応性基で終端し、それによって二官能性ポリマーを形成し得る。典型的な反応性基としては、20個の共通アミノ酸に見られる官能基(マレイミド基、活性カーボネート(p-ニトロフェニルエステルを含むが、これらに限定されない)、活性化エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド、p-ニトロフェニルエステルを含むが、これらに限定されない)及びアルデヒドを含む)と反応するのに一般的に使用される反応性基、ならびに20個の共通アミノ酸に対して不活性であるが、天然にはコードされないアミノ酸に存在する相補的な官能基(アジド基、アルキン基を含むが、これらに限定されない)と特異的に反応する官能基が挙げられ得る。上記の式においてYによって示されるPEGの他方の末端は、天然に存在するかまたは天然にはコードされないアミノ酸を介してADCポリペプチドに直接的または間接的に結合することに留意されたい。例えば、Yは、ポリペプチドのアミン基(限定されないが、リジンのイプシロンアミンまたはN-末端を含む)へのアミド、カルバメートまたは尿素結合であってよい。あるいは、Yは、チオール基(システインのチオール基を含むが、これに限定されない)へのマレイミド結合であってもよい。あるいは、Yは、20個の共通アミノ酸を介して一般的にアクセスできない残基への結合であってもよい。例えば、PEG上のアジド基を、ADCポリペプチド上のアルキン基と反応させて、ヒュスゲン[3+2]付加環化生成物を形成してもよい。あるいは、PEG上のアルキン基を、天然にはコードされないアミノ酸中に存在するアジド基と反応させて、同様の生成物を形成し得る。いくつかの実施形態では、強力な求核試薬(ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドロキシルアミン、セミカルバジドを含むが、これらに限定されない)を天然にはコードされないアミノ酸中に存在するアルデヒドまたはケトン基と反応させて、必要に応じてヒドラゾン、オキシムまたはセミカルバゾンを形成してもよく、これを、ある場合には適切な還元剤で処理することにより、さらに還元してもよい。あるいは、強力な求核試薬は、天然にはコードされないアミノ酸を介してADCポリペプチドに組み込んでもよく、これを使用して、水溶性ポリマー中に存在するケトンまたはアルデヒド基と優先的に反応させてもよい。
【0378】
PEGのための任意の分子量を、実際に望まれるように使用してもよく、これには、限定するものではないが、必要に応じて、約100ダルトン(Da)~100,000Daまたはそれ以上(場合により0.1~50kDaまたは10~40kDaを含むが、これらに限定されない)が含まれる。PEGの分子量は、限定するものではないが、約100Da~約100,000Daまたはそれ以上を含む広い範囲であってもよい。PEGは、約100Da~約100,000Daであってよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da及び100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEGは、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGは、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGは、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGは、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGは、約10,000Da~約40,000Daである。1~100kDa(限定されないが、1~50kDaまたは5~20kDaを含む)の範囲の分子量を各鎖に有するPEG分子を含むがこれに限定されない、分岐鎖PEGも使用され得る。分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、限定するものではないが、例えば、約1,000Da~約100,000Daまたはそれ以上であってもよい。分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、約1,000Da~約100,000Daであってもよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、及び1,000Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、約1,000Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、分岐鎖PEGの各鎖の分子量は、約5,000Da~約20,000Daである。広範囲のPEG分子は、例えば、限定されないが、参照により本明細書に組み込まれるShearwater Polymers,Inc.カタログ、Nektar Therapeuticsカタログに記載されている。
【0379】
一般的に、PEG分子の少なくとも1つの末端は、天然にはコードされないアミノ酸との反応に利用可能である。例えば、アミノ酸側鎖との反応のためのアルキン部分及びアジド部分を有するPEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体を、本明細書に記載されるように、PEGを天然にはコードされないアミノ酸に結合させるために使用し得る。天然にはコードされないアミノ酸がアジドを含む場合、PEGは、典型的には、[3+2]付加環化生成物の形成を引き起こすためのアルキン部分またはアミド結合の形成を引き起こすホスフィン基を含む活性化PEG種(すなわち、エステル、カーボネート)のいずれかを含むことになる。代替的には、天然にはコードされないアミノ酸がアルキンを含む場合、PEGは、典型的には、[3+2]ヒュスゲン付加環化生成物の形成を引き起こすためにアジド部分を含むことになる。天然にはコードされないアミノ酸がカルボニル基を含む場合、PEGは、一般的に、対応するヒドラゾン結合、オキシム結合及びセミカルバゾン結合をそれぞれ形成するために、強力な求核試薬(ヒドラジド、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、またはセミカルバジド官能基を含むが、これらに限定されない)を含むことになる。他の代替形態では、上記の反応性基の向きの逆を使用してもよく、すなわち、天然にはコードされないアミノ酸におけるアジド部分を、アルキンを含むPEG誘導体と反応させてもよい。
【0380】
いくつかの実施形態では、PEG誘導体を含むADCポリペプチドは、天然にはコードされないアミノ酸の側鎖上に存在する化学官能基と反応する化学官能基を含む。
【0381】
本開示は、いくつかの実施形態では、約800Da~約100,000Daの平均分子量を有する水溶性ポリマー骨格を含む、アジド含有及びアセチレン含有ポリマー誘導体を提供する。水溶性ポリマーのポリマー骨格は、ポリ(エチレングリコール)であり得る。しかしながら、限定するものではないが、ポリ(エチレン)グリコール、ならびにポリ(デキストラン)及びポリ(プロピレングリコール)を含む他の関連するポリマーを含む多種多様な水溶性ポリマーも、本開示の実施における使用に適していること、PEGまたはポリ(エチレングリコール)という用語の使用は、このような分子を全て包含し、含むことを意図していると理解すべきである。PEGという用語には、限定するものではないが、二官能性PEG、マルチアームのPEG、誘導体化PEG、フォーク状PEG、分岐状PEG、懸垂型PEG(すなわち、PEGまたはポリマー骨格に従属する1つ以上の官能基を有する関連ポリマー)またはこれらの中に分解性結合を含むPEGを含む、その形態のいずれかのポリ(エチレングリコール)を含む。
【0382】
PEGは、典型的には、澄明で、無色で、無臭で、水に可溶で、熱に対して安定で、多くの化学物質に対して不活性で、加水分解も劣化もせず、かつ一般的に非毒性である。ポリ(エチレングリコール)は、生体適合性であると考えられており、すなわちPEGは、害を及ぼすことなく生体組織または生物と共存することが可能である。より具体的には、PEGは実質的に非免疫原性であり、すなわち、PEGは体内で免疫応答を生成する傾向がない。生物活性剤などの身体内で何らかの望ましい機能を有する分子に付着した場合、PEGは薬剤をマスクする傾向があり、何らかの免疫応答を低減または排除し、それによって生物は薬剤の存在に耐えることができる。PEGコンジュゲートは、実質的な免疫応答を生じさせることもなく、または凝固もしくは他の望ましくない効果を引き起こすこともない傾向がある。式-CH2CH2O-(CH2CH2O)n-CH2CH2-を有するPEG(式中、nは、約3~約4000、典型的には約20~約2000である)は本開示での使用に適している。約800Da~約100,000Daの分子量を有するPEGは、本開示のいくつかの実施形態では、ポリマー骨格として特に有用である。PEGの分子量は、限定するものではないが、約100Da~約100,000Daまたはそれ以上を含む広い範囲であってもよい。PEGの分子量は、約100Da~約100,000Daであってよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da、及び100Daが含まれる。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、PEGの分子量は、約10,000Da~約40,000Daである。
【0383】
ポリマー骨格は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。分岐状ポリマー骨格は、当該技術分野で一般に公知である。典型的には、分岐状ポリマーは、中心分岐コア部分と、中心分岐コアに連結した複数の直鎖状ポリマー鎖とを有する。PEGは、通常、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、及びソルビトールなどの様々なポリオールにエチレンオキシドを添加することによって調製され得る分岐形態で使用される。中心分岐部分は、リジンなどのいくつかのアミノ酸から誘導することもできる。分岐状ポリ(エチレングリコール)は、R(-PEG-OH)mとして一般的な形態で表すことができ、ここで、Rは、コア部分、例えば、グリセロール、グリセロールオリゴマー、またはペンタエリスリトールから誘導され、mは、アームの数を表す。マルチアームのPEG分子、例えば、米国特許第5,932,462号;同第5,643,575号;同第5,229,490号;同第4,289,872号;米国特許出願第2003/0143596号;WO96/21469;及びWO93/21259(これらはそれぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載のものを分子ポリマー骨格として使用してもよい。
【0384】
分岐したPEGは、PEG(--YCHZ2)n(式中、Yは、連結基であり、Zは、定義された長さの原子鎖によってCHに連結された活性化末端基である)で表されるフォーク状のPEGの形態であってもよい。さらに別の分岐形態である懸垂型PEGは、PEG鎖の末端ではなく、PEG骨格に沿って、カルボキシルなどの反応性基を有する。
【0385】
PEGのこれらの形態に加えて、骨格に弱いまたは分解性の結合を有するポリマーを調製してもよい。例えば、PEGは、加水分解されるポリマー骨格にエステル結合を用いて調製してもよい。以下に示すように、この加水分解によって、ポリマーはより低い分子量のフラグメントへと切断される:
-PEG-CO2-PEG-+H2O→PEG-CO2H+HO-PEG-
【0386】
ポリ(エチレングリコール)またはPEGという用語は、本明細書に開示されたものを含むがこれらに限定されない当該技術分野で公知のあらゆる形態を表すか、またはそれらを含むことが、当業者には理解される。
【0387】
多くの他のポリマーがまた本開示での使用に適している。いくつかの実施形態では、2~約300の末端を有する水溶性であるポリマー骨格が、本開示において特に有用である。適切なポリマーの例としては、限定するものではないが、他のポリ(アルキレングリコール)、例えばポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)、それらのコポリマー(エチレングリコール及びプロピレングリコールのコポリマーを含むが、これらに限定されない)、それらのターポリマー、それらの混合物などが挙げられる。ポリマー骨格の各鎖の分子量は様々であってよいが、通常、約800Da~約100,000Da、しばしば約6,000Da~約80,000Daの範囲にある。ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約100,000Daであってよく、これには限定するものではないが、100,000Da、95,000Da、90,000Da、85,000Da、80,000Da、75,000Da、70,000Da、65,000Da、60,000Da、55,000Da、50,000Da、45,000Da、40,000Da、35,000Da、30,000Da、25,000Da、20,000Da、15,000Da、10,000Da、9,000Da、8,000Da、7,000Da、6,000Da、5,000Da、4,000Da、3,000Da、2,000Da、1,000Da、900Da、800Da、700Da、600Da、500Da、400Da、300Da、200Da及び100Daが挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約50,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約100Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約1,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約5,000Da~約40,000Daである。いくつかの実施形態では、ポリマー骨格の各鎖の分子量は、約10,000Da~約40,000Daである。
【0388】
当業者は、実質的に水溶性の骨格についての前述のリストは、決して網羅的ではなく、かつ単なる例示であること、及び上記の品質を有する全てのポリマー材料が本開示での使用に適していると考えられることを認識するであろう。
【0389】
本開示のいくつかの実施形態では、ポリマー誘導体は「多官能性」であり、これは、このポリマー骨格が、官能基で官能化または活性化されている少なくとも2つの末端、場合によっては約300もの末端を有することを意味する。多官能性ポリマー誘導体としては、限定するものではないが、2つの末端を有する直鎖状ポリマーが挙げられる(各末端は、同じであっても異なっていてもよい官能基に結合している)。
【0390】
「保護される」という用語は、特定の反応条件下での化学反応性官能基の反応を防止する保護基または部分の存在を指す。保護基は、保護される化学反応性基の種類に応じて変化する。例えば、化学反応性基がアミンまたはヒドラジドである場合、保護基は、tert-ブチルオキシカルボニル(t-Boc)及び9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)の群から選択され得る。化学反応性基がチオールである場合、保護基はオルトピリジルジスルフィドであり得る。化学反応性基が、ブタン酸またはプロピオン酸などのカルボン酸、またはヒドロキシル基である場合、保護基は、ベンジル、またはメチル、エチル、もしくはtert-ブチルなどのアルキル基であり得る。当該技術分野で公知の他の保護基も、本開示で使用され得る。
【0391】
文献における末端官能基の特定の例としては、限定するものではないがN-スクシンイミジルカーボネート(例えば米国特許第5,281,698号、同第5,468,478号を参照のこと)、アミン(例えば、Buckmann et al.Makromol.Chem.182:1379(1981),Zalipsky et al.Eur.Polym.J.19:1177(1983)を参照のこと)、ヒドラジド(例えば、Andressz et al.Makromol.Chem.179:301(1978)を参照のこと)、スクシンイミジルプロピオネート及びスクシンイミジルブタノエート(例えば、Olson et al.Poly(ethylene glycol)Chemistry & Biological Applications,pp170-181,Harris & Zalipsky Eds.,ACS,Washington,D.C.,1997を参照;また米国特許第5,672,662号も参照のこと)、コハク酸スクシンイミジル(例えば、Abuchowski et al.Cancer Biochem.Biophys.7:175(1984)及びJoppich et al.Makromol.Chem.180:1381(1979)を参照のこと)、スクシンイミジルエステル(例えば、米国特許第4,670,417号を参照のこと)、ベンゾトリアゾールカーボネート(例えば、米国特許第5,650,234号を参照のこと)、グリシジルエーテル(例えば、Pitha et al.Eur.J Biochem.94:11(1979),Elling et al.,Biotech.Appl.Biochem.13:354(1991)を参照のこと)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchamp,et al.,Anal.Biochem.131:25(1983),Tondeolli et al.J.Controlled Release 1:251(1985)を参照のこと)、p-ニトロフェニルカーボネート(例えば、Veronese,et al.,Appl.Biochem.Biotech.,11:141(1985);及びSartore et al.,Appl.Biochem.Biotech.,27:45(1991)を参照のこと)、アルデヒド(例えば、Harris et al.J.Polym.Sci.Chem.Ed.22:341(1984)、米国特許第5,824,784号、米国特許第5,252,714号を参照のこと)、マレイミド(例えば、Goodson et al.Biotechnology(NY)8:343(1990),Romani et al.Chemistry of Peptides and Proteins 2:29(1984))、及びKogan,Synthetic Comm.22:2417(1992)を参照のこと)、オルトピリジル-ジスルフィド(例えば、Woghiren,et al.Bioconj.Chem.4:314(1993)を参照のこと)、アクリロール(acrylol)(例えば、Sawhney et al.,Macromolecules,26:581(1993)を参照のこと)、ビニルスルホン(例えば、米国特許第5,900,461号を参照のこと)が挙げられる。上記の参考文献及び特許は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0392】
p-アジド-L-フェニルアラニンなどの天然にはコードされないアミノ酸を含むADCポリペプチドのPEG化(すなわち、任意の水溶性ポリマーの添加)は、任意の簡便な方法で行われる。例えば、ADCポリペプチドは、アルキン末端mPEG誘導体でPEG化されている。簡潔に言えば、過剰の固体mPEG(5000)-O-CH2-C≡CHを、撹拌しながら、p-アジド-L-Phe含有ADCポリペプチドの水溶液に室温で添加する。典型的には、この水溶液を、反応が行われるpH付近のpKaを有する緩衝液で緩衝する(総じて約pH4~10)。pH7.5でのPEG化に適した緩衝液の例としては、例えば、HEPES、リン酸塩、ホウ酸塩、TRIS-HCl、EPPS、及びTESが挙げられるが、これらに限定されない。pH値を継続的にモニタリングし、必要に応じて調整する。反応は、典型的には約1~48時間続くことが可能である。
【0393】
反応生成物を、その後、疎水性相互作用クロマトグラフィーに供して、遊離mPEG(5000)-O-CH2-C≡CH、及び非遮断PEGが分子の両端で活性化されると形成し得るPEG化ADCポリペプチドの任意の高分子量複合体から、PEG化ADCポリペプチドを分離し、それによってADCポリペプチド分子を架橋させる。疎水性相互作用クロマトグラフィー中の条件は、遊離mPEG(5000)-O-CH2-C≡CHがカラムを通って流れる一方で、1つ以上のPEG基にコンジュゲートされた1つのADCポリペプチド分子を含む、所望の形態の後に任意の架橋PEG化ADCポリペプチド複合体が溶出することである。適切な条件は、所望のコンジュゲートに対する架橋錯体の相対的なサイズに応じて変わり、当業者によって容易に決定される。所望のコンジュゲートを含む溶離液は、限外濾過によって濃縮され、透析濾過によって脱塩される。
【0394】
実質的に精製されたPEG-ADCは、上記で概説した溶出法を使用して生成され得、ここで、生成されたPEG-ADCは、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、及びキャピラリー電気泳動などの適切な方法で測定して、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度レベル、特に、少なくとも約75%、80%、85%の純度レベル、より具体的には少なくとも約90%の純度レベル、少なくとも約95%の純度レベル、少なくとも約99%またはそれ以上の純度レベルを有する。必要に応じて、疎水性クロマトグラフィーから得られたPEG化ADCポリペプチドは、当業者に公知である1つ以上の手順、例えば、限定されるものではないが、アフィニティークロマトグラフィー、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー(例としては、限定するものではないが、DEAE SEPHAROSEを用いる);シリカのクロマトグラフィー;逆相HPLC;ゲル濾過(例としては、限定するものではないが、SEPHADEX G-75を用いる);疎水性相互作用クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、金属キレートクロマトグラフィー;限外濾過/透析濾過;エタノール沈殿;硫酸アンモニウム沈殿;クロマトフォーカシング;置換クロマトグラフィー;電気泳動手順(分取等電点電気泳動を含むがこれに限定されない)、溶解度差(硫酸アンモニウム沈殿を含むがこれに限定されない)、または抽出によってさらに精製され得る。見掛け分子量は、球状タンパク質標準(Preneta,AZ in PROTEIN PURIFICATION METHODS,A PRACTICAL APPROACH(Harris & Angal,Eds.)IRL Press 1989,293-306)と比較してGPCによって見積もられ得る。ADC-PEGコンジュゲートの純度は、タンパク質分解性の分解(トリプシン切断を含むが、これに限定されない)と、それに続く質量分析の解析とによって評価され得る。Pepinsky RB.,et al.,J.Pharmcol.& Exp.Ther.297(3):1059-66(2001)。
【0395】
本開示のADCポリペプチドの標的化ポリペプチドのアミノ酸に結合した水溶性ポリマーは、限定することなしにさらに誘導体化されても、または置換されてもよい。
【0396】
アジド含有PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体
本開示の別の実施形態では、ADCの標的化ポリペプチドは、天然にはコードされないアミノ酸の側鎖上に存在するアジド部分と反応するアルキン部分を含むPEG誘導体で修飾される。
【0397】
いくつかの実施形態では、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造を有することになる:
RO-(CH2CH2O)n-O-(CH2)m-C≡CH
(式中、Rは単純アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2~10であり、nは100~1,000である(すなわち、平均分子量は5~40kDaである))。
【0398】
本開示の別の実施形態では、アルキン含有の天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドが、アミド結合によってPEG骨格に連結されている末端アジド部分または末端アルキン部分を含むPEG誘導体で修飾される。
【0399】
いくつかの実施形態では、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造を有することになる:
RO-(CH2CH2O)n-O-(CH2)m-NH-C(O)-(CH2)p-C≡CH
(式中、Rは単純アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは2~10であり、pは2~10であり、かつnは100~1,000である)。
【0400】
本開示の別の実施形態では、アジド含有アミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドは、末端アルキン部分を含む分岐状PEG誘導体で修飾され、分岐状PEGの各鎖は、10~40kDaの範囲の分子量を有し、5~20kDaであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、アルキン末端PEG誘導体は、以下の構造を有することになる:
[RO-(CH2CH2O)n-O-(CH2)2-NH-C(O)]2CH(CH2)m-X-(CH2)pC≡CH
(式中、Rは、単純アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)であり、mは、2~10であり、pは、2~10であり、かつnは、100~1,000であり、かつXは、任意選択でO、N、Sまたはカルボニル基(C=O)であるか、または存在しない)。
【0401】
ホスフィン含有PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体
本開示の別の実施形態では、ADCの標的化ポリペプチドは、天然にはコードされないアミノ酸の側鎖上に存在するアジド部分と反応するアリールホスフィン基をさらに含む活性化官能基(エステル、カーボネートを含むが、これらに限定されない)を含むPEG誘導体で修飾される。一般に、PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体は、1~100kDa、いくつかの実施形態では10~40kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0402】
いくつかの実施形態では、PEG誘導体は、以下の構造を有することになる:
【化56】
(式中、nは1~10であり;XはO、N、Sであるか、または存在しなくてもよく、Phはフェニルであり、Wは水溶性ポリマーである)。
【0403】
いくつかの実施形態では、PEG誘導体は、以下の構造を有することになる:
【化57】
式中、XはO、N、Sであるか、または存在しなくてもよく、Phは、フェニルであり、Wは、水溶性ポリマーであり、かつRは、H、アルキル、アリール、置換アルキル及び置換アリール基であってよい。例示的なR基としては、限定するものではないが、-CH
2、-C(CH
3)
3、-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-C(O)R’、-CONR’R”、-S(O)
2R’、-S(O)
2NR’R”、-CN及び-NO
2が挙げられる。R’、R”、R’’’、及びR’’’’は、それぞれ独立して、水素、置換もしくは非置換ヘテロアルキル、置換もしくは非置換アリール、例としては、限定するものではないが、1~3のハロゲンで置換されるアリール、置換もしくは非置換アルキル、アルコキシ、もしくはチオアルコキシ基、またはアリールアルキル基を指す。本開示の化合物が2つ以上のR基を含む場合、例えば、R基の各々は、R’、R”、R’’’、及びR’’’’基のうちの2つ以上が存在するとき、これらの基の各々のように、独立して選択される。R’及びR”が同一の窒素原子に付加されるとき、それらは、窒素原子と組み合わされて、5、6、または7員環を形成し得る。例えば、-NR’R”とは、限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むことを意味する。上の置換基の考察から、当業者は、用語「アルキル」は、例えば、ハロアルキル(例としては、限定するものではないが、-CF
3及び-CH
2CF
3)ならびにアシル(例としては、限定するものではないが、-C(O)CH
3、-C(O)CF
3、-C(O)CH
2OCH
3など)などの水素基以外の基に結合される炭素原子を含む基を含むことを意味することを理解するであろう。
【0404】
他のPEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体及び一般的コンジュゲーション技術
ADCポリペプチドに連結され得る他の例示的なPEG分子、ならびにPEG化法としては、限定するものではないが、例えば、米国特許公開第2004/0001838号;同第2002/0052009号;同第2003/0162949号;同第2004/0013637号;同第2003/0228274号;同第2003/0220447号;同第2003/0158333号;同第2003/0143596号;同第2003/0114647号;同第2003/0105275号;同第2003/0105224号;同第2003/0023023号;同第2002/0156047号;同第2002/0099133号;同第2002/0086939号;同第2002/0082345号;同第2002/0072573号;同第2002/0052430号;同第2002/0040076号;同第2002/0037949号;同第2002/0002250号;同第2001/0056171号;同第2001/0044526号;同第2001/0021763号;米国特許第6,646,110号;同第5,824,778号;同第5,476,653号;同第5,219,564号;同第5,629,384号;同第5,736,625号;同第4,902,502号;同第5,281,698号;同第5,122,614号;同第5,473,034号;同第5,516,673号;同第5,382,657号;同第6,552,167号;同第6,610,281号;同第6,515,100号;同第6,461,603号;同第6,436,386号;同第6,214,966号;同第5,990,237号;同第5,900,461号;同第5,739,208号;同第5,672,662号;同第5,446,090号;同第5,808,096号;同第5,612,460号;同第5,324,844号;同第5,252,714号;同第6,420,339号;同第6,201,072号;同第6,451,346号;同第6,306,821号;同第5,559,213号;同第5,747,646号;同第5,834,594号;同第5,849,860号;同第5,980,948号;同第6,004,573号;同第6,129,912号;WO97/32607、EP229,108、EP402,378、WO92/16555、WO94/04193、WO94/14758、WO94/17039、WO94/18247、WO94/28024、WO95/00162、WO95/11924,WO95/13090、WO95/33490、WO96/00080、WO97/18832、WO98/41562、WO98/48837、WO99/32134、WO99/32139、WO99/32140、WO96/40791、WO98/32466、WO95/06058、EP439 508、WO97/03106、WO96/21469、WO95/13312,EP921 131、WO98/05363、EP809 996、WO96/41813、WO96/07670、EP605 963、EP510 356、EP400 472、EP183 503及びEP154 316に記載されるものが挙げられ、これらは本明細書に参照によって組み込まれる。本明細書に記載されたPEG分子はいずれも、単鎖、分岐鎖、マルチアームの鎖、単官能性、二官能性、多官能性,またはそれらの任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない任意の形態で使用され得る。
【0405】
ヒドロキシルアミン(アミノオキシ)PEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤-リンカー誘導体を含むがこれらに限定されない追加のポリマー及びPEG誘導体または細胞毒性チューブリン阻害剤リンカー誘導体は、以下の特許出願に記載されており、これらはすべて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる:米国特許公開第2006/0194256号、米国特許公開第2006/0217532号、米国特許公開第2006/0217289号、米国仮特許第60/755,338号;米国仮特許第60/755,711号;米国仮特許第60/755,018号;国際特許出願第PCT/US06/49397号;WO2006/069246;米国仮特許第60/743,041号;米国仮特許第60/743,040号;国際特許出願第PCT/US06/47822号;米国仮特許第60/882,819号;米国仮特許第60/882,500号;及び米国仮特許第60/870,594号。
【0406】
ADCポリペプチドのグリコシル化
グリコシル化は、ADCポリペプチドなどのポリペプチドの物理的特性(例えば、溶解性)に劇的に影響を及ぼし得、またタンパク質の安定性、分泌、及び細胞内の局在性にも重要であり得る。グリコシル化ポリペプチドはまた、増強された安定性を示し得るか、または1つ以上の薬物動態特性、例えば、半減期を改善し得る。さらに、溶解性の向上により、例えば、非グリコシル化ポリペプチドを含む製剤よりも医薬投与に適した製剤の生成を可能にし得る。
【0407】
本開示は、糖残基を有する1つ以上の天然にはコードされないアミノ酸を組み込んだADCポリペプチドを含む。糖残基は、天然(N-アセチルグルコサミンを含むが、これに限定されない)または非天然(3-フルオロガラクトースを含むが、これに限定されない)のいずれであってもよい。糖類は、N-もしくはO-結合グリコシド結合(N-アセチルガラクトース-L-セリンを含むが、これらに限定されない)または非天然結合(オキシムまたは対応するC-もしくはS-結合グリコシドを含むが、これらに限定されない)のいずれかによって天然にはコードされないアミノ酸に連結され得る。
【0408】
糖(グリコシルを含むが、これに限定されない)部分は、インビボまたはインビトロでADCポリペプチドに添加され得る。本開示のいくつかの実施形態では、カルボニル含有の天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドが、アミノオキシ基で誘導体化された糖で修飾されて、オキシム結合を介して連結された対応するグリコシル化ポリペプチドを生成する。天然にはコードされないアミノ酸に一旦結合すると、糖転移酵素及び他の酵素による処理によって、糖をさらに構成し、それによって、ADCポリペプチドに結合したオリゴ糖を生成し得る。例えば、H.Liu,et al.J.Am.Chem.Soc.125:1702-1703(2003)を参照のこと。
【0409】
本開示のいくつかの実施形態では、カルボニル含有の天然にはコードされないアミノ酸を含むADCポリペプチドは、アミノオキシ誘導体として調製された規定の構造を有するグリカンで直接修飾される。当業者は、アジド、アルキン、ヒドラジド、ヒドラジン、及びセミカルバジドを含む他の官能基が、糖類を天然にはコードされないアミノ酸に連結するために使用され得ることを認識するであろう。
【0410】
本開示のいくつかの実施形態では、アジドまたはアルキニル含有の天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドは、次いで、例えば、限定するものではないが、それぞれ、例えば、限定するものではないが、アルキニル誘導体またはアジド誘導体とのヒュスゲン[3+2]付加環化反応によって修飾され得る。この方法により、タンパク質を非常に高い選択性で修飾することが可能になる。
【0411】
HER2標的
HER2ポリペプチドの活性は、標準的なまたは公知のインビトロまたはインビボアッセイを使用して決定され得る。ADCは、当該技術分野で公知の適切な方法によって生物学的活性について分析され得る。そのようなアッセイとしては、限定するものではないが、応答性遺伝子の活性化、受容体結合アッセイ、抗ウイルス活性アッセイ、細胞変性効果抑制アッセイ、抗増殖アッセイ、免疫調節アッセイ及びMHC分子の誘導をモニタリングするアッセイが挙げられる。
【0412】
HER2ポリペプチドは、感受性シグナル伝達経路を活性化するそれらの能力について分析され得る。一例は、インターフェロン刺激応答エレメント(ISRE)アッセイである。HER2受容体を構成的に発現する細胞は、ISRE-ルシフェラーゼベクター(pISRE-luc,Clontech)で一過性にトランスフェクションされる。トランスフェクション後に、細胞をADCの標的化ポリペプチドで処理する。多数のタンパク質濃度、例えば0.0001~10ng/mLを試験して、用量反応曲線を生成する。ADCポリペプチドがHER2受容体に結合し、活性化すると、得られたシグナル伝達カスケードはルシフェラーゼ発現を誘導する。発光は、例えば、TopCount(商標)またはFusion(商標)マイクロプレートリーダー及びStable-GloRルシフェラーゼアッセイ系(Promega)を使用することによって、様々な方法で測定し得る。
【0413】
HER2ポリペプチドは、HER2受容体に結合するそれらの能力について分析され得る。非天然アミノ酸を含む非PEG化またはPEG化のADCポリペプチドの場合、HER2のその受容体に対する親和性は、BIAcore(商標)バイオセンサー(Pharmacia)を使用することにより測定できる。適切な結合アッセイとしては、限定するものではないが、BIAcoreアッセイ(Pearce et al.,Biochemistry 38:81-89(1999))及びAlphaScreen(商標)アッセイ(PerkinElmer)が挙げられる。
【0414】
標的化ポリペプチドを作製するためにどの方法が使用されるかにかかわらず、標的化ポリペプチドは、生物学的活性のためのアッセイに供される。一般に、生物学的活性についての試験は、所望の結果に対する分析、例えば、(修飾ADCと比較した)生物学的活性の増減、(修飾ADCと比較した)異なる生物学的活性、受容体もしくは結合パートナー親和性分析、(修飾ADCと比較した)ADC自体またはその受容体の高次構造もしくは構造の変化、または血清半減期の分析を提供するべきである。
【0415】
効力、機能的インビボ半減期、及び薬物動態学的パラメータの測定
本開示の重要な態様は、ポリペプチドが水溶性ポリマー部分にコンジュゲートされたまたはされていないADCの構築によって得られる延長された生物学的半減期である。投与後のADC血清濃度の低下の速度によって、コンジュゲート及び非コンジュゲートADCポリペプチド及びそれらのバリアントを用いた治療に対する生物学的応答を評価することが重要になり得る。本開示のコンジュゲート及び非コンジュゲートADCポリペプチドならびにそのバリアントは、例えば皮下投与またはi.v.投与により、投与後にも血清半減期が延長され得るため、例えばELISA法または一次スクリーニングアッセイによる測定が可能になる。商業的供給源からのELISAまたはRIAキット、例えば、Invitrogen(Carlsbad,CA)を使用してもよい。インビボの生物学的半減期の測定は、本明細書に記載されるように実行される。
【0416】
天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドの効力及び機能的なインビボ半減期は、当業者に知られているプロトコールに従って決定され得る。
【0417】
天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドの薬物動態学的パラメータは、通常のSprague-Dawley雄ラット(処置群当たりのN=5動物)で評価され得る。動物は、25ug/ラット(iv)または50ug/ラット(sc)の単回投与を受け、かつ約5~7個の血液サンプルを、所定の時間経過に従って採取し、総じて、水溶性ポリマーにコンジュゲートされていない天然にはコードされないアミノ酸を含むADCの標的化ポリペプチドについては約6時間、水溶性ポリマーにコンジュゲートされた天然にはコードされないアミノ酸を含む標的化ポリペプチドについては約4日間、カバーする。天然にはコードされないアミノ酸のない標的化ポリペプチドについての薬物動態学的データは、天然にはコードされないアミノ酸を含む標的化ポリペプチドについて得られたデータと直接比較してもよい。
【0418】
投与及び医薬組成物
本開示のポリペプチドまたはタンパク質(以下に限定されるものではないが、シンテターゼ、1つ以上の非天然アミノ酸を含むタンパク質など)は、例えば、限定されないが、適切な医薬担体と組み合わせて、治療的使用のために任意選択で使用される。そのような組成物は、例えば、治療上有効な量の化合物、及び薬学的に許容可能な担体または賦形剤を含む。かかる担体または賦形剤としては、限定するものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及び/またはこれらの組み合わせが挙げられる。製剤は、投与形態に適合するように製造される。概して、タンパク質を投与する方法は、当業者に公知であり、本開示のポリペプチドの投与に適用され得る。組成物は、例えば薬学的に許容される塩として存在する水溶性形態であってもよく、これは酸付加塩及び塩基付加塩の両方を含むことを意味する。
【0419】
本開示の1つ以上のポリペプチドを含む治療用組成物は、当業者に公知の方法に従って、疾患の1つ以上の適切なインビトロ及び/またはインビボ動物モデルにおいて、有効性、組織代謝を確認し、投与量を推定するために任意選択で試験される。具体的には、用量は、最初に、本明細書における非天然アミノ酸の天然アミノ酸相同体に対する活性、安定性、または他の適切な尺度(1つ以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されたADCの標的化ポリペプチドとこのADCの標的化ポリペプチドの天然アミノ酸の比較、及び1つ以上の非天然アミノ酸を含むように修飾されたADCの標的化ポリペプチドと現在利用可能なADC治療との比較を含むが、これらに限定されない)によって、すなわち、関連するアッセイにおいて、決定され得る。
【0420】
投与は、通常、分子を導入して血液または組織細胞と最終的に接触させるために使用される任意の経路によるものである。本開示の非天然アミノ酸ポリペプチドは、任意の適切な方法で、任意選択で1つ以上の薬学的に許容される担体と共に投与される。本開示の状況でこのようなポリペプチドを患者に投与する適切な方法が、利用可能であり、2つ以上の経路を用いて特定の組成物を投与し得るが、特定の経路が別の経路よりも迅速かつ効果的な作用または反応を提供し得る場合が多い。
【0421】
薬学的に許容される担体は、部分的に、投与される特定の組成物によって、ならびにその組成物を投与するのに使用される特定の方法によって決定される。したがって、本開示の医薬組成物の多種多様な適切な製剤が存在する。
【0422】
本開示のADCは、タンパク質またはペプチドに適した任意の従来の経路によって投与されてもよく、これには、非経口投与、例えば、限定されないが、皮下注射もしくは静脈内注射などの注射、または任意の他の形態の注射もしくは注入が挙げられるが、これらに限定されない。ADC及びその組成物は、経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または直腸手段を含むがこれらに限定されない、多くの経路によって投与され得る。修飾または非修飾である非天然アミノ酸ポリペプチドを含む組成物も、リポソームを介して投与され得る。このような投与経路及び適切な製剤は、当業者に一般的に知られている。ADCは、単独で使用されても、または医薬担体などの他の適切な成分と組み合わせて使用されてもよい。ADCは、他の薬剤または治療剤と組み合わせて使用されてもよい。
【0423】
非天然アミノ酸を含むADCを、単独で、または他の適切な成分と組み合わせて、吸入により投与されるエアロゾル配合物とすることもできる(すなわち、それらは「噴霧できる」)。エアロゾル配合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧された許容可能な噴射剤に入れてもよい。
【0424】
例えば、関節内(関節の中)、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内及び皮下経路などによる非経口投与に好適な製剤には、抗酸化物質、緩衝液、静菌剤、及び溶質(製剤を対象とするレシピエントの血液と等張にさせる)を含有し得る水性及び非水性の等張滅菌注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が含まれる。ADCの製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量または多用量の密封容器で提示され得る。
【0425】
非経口投与及び静脈内投与が、好ましい投与方法である。特に、天然のアミノ酸同族体治療に既に使用されている投与経路(EPO、GH、G-CSF、GM-CSF、IFN、例えば、インターロイキン、抗体、FGF及び/または任意の他の薬学的に送達されるタンパク質に典型的に使用されるものを含むが、これらに限定されない)は、現在使用されている製剤と共に、本開示のポリペプチドのための好ましい投与経路及び製剤を提供する。
【0426】
患者に投与される用量とは、本開示の文脈において、患者において有益な治療応答を経時的に、または他の適切な活性を、適用に応じてもたらすのに十分である。用量は、特定のベクターまたは製剤の有効性、及び使用される非天然アミノ酸ポリペプチドの活性、安定性または血清半減期、及び患者の状態、ならびに治療すべき患者の体重または表面積によって決定される。用量の大きさはまた、特定の患者における、特定のベクター、製剤などの投与に伴う任意の有害な副作用の存在、性質、及び程度によっても決定される。
【0427】
疾患(好中球減少症、再生不良性貧血、周期性好中球減少症、特発性好中球減少症、チェディアック・東症候群、全身性エリテマトーデス(SLE)、白血病、骨髄異形成症候群、及び骨髄線維症などを含むが、これらに限定されない)の治療または予防において投与されるベクターまたは製剤の有効量を決定する際、医師は循環血漿濃度、製剤毒性、及び疾患の進行を評価する。
【0428】
例えば、70キログラムの患者に投与される用量は、典型的には、関連する組成物の変更された活性または血清半減期に合わせて調整された、現在使用されている治療用タンパク質の投与量に等しい範囲である。本開示のベクターまたは医薬製剤は、抗体投与、ワクチン投与、細胞毒性剤の投与、天然アミノ酸ポリペプチド、核酸、ヌクレオチド類似体、生物学的反応修飾剤などを含む任意の公知の従来の療法によって、治療条件を補い得る。
【0429】
投与の場合、本開示の製剤は、関連製剤のLD-50またはED-50により決定される速度で、及び/または、例えば、限定されないが、患者の質量及び全体的な健康に適用される、様々な濃度で非天然アミノ酸ポリペプチドの任意の副作用の観察によって投与される。投与は、単回投与または分割投与によって達成され得る。
【0430】
製剤の注入を受けている患者が、発熱、悪寒、または筋肉痛を発症した場合、その患者は、適切な用量のアスピリン、イブプロフェン、アセトアミノフェン、または他の疼痛/発熱調節薬を投与される。発熱、筋肉痛、及び悪寒などの、注入に対する反応を経験した患者は、アスピリン、アセトアミノフェン、または例としては、限定するものではないが、ジフェンヒドラミンを、将来の注入の30分前に前投薬される。メペリジンは、解熱薬及び抗ヒスタミン薬に速やかに反応しない、より重度の悪寒及び筋肉痛に使用される。反応の重症度に応じて、細胞の注入を遅らせるかまたは中止する。
【0431】
本開示のADCの標的化ポリペプチドのヒト形態は、哺乳動物対象に直接投与されてもよい。投与は、ADCまたはポリペプチドを対象に導入するために通常使用される経路のいずれかによって行われる。本開示の実施形態によるADC組成物としては、口腔、直腸、局所、吸入(エアロゾルを介するものを含むが、これらに限定されない)、頬部(舌下を含むが、これに限定されない)、膣部、非経口部(限定するものではないが、皮下、筋肉内、皮内、関節内、胸膜内、腹腔内、脳内、動脈内、または静脈内を含む)、局所部(すなわち、気道表面を含む皮膚及び粘膜表面の両方)、肺、眼内、鼻腔内、及び経皮投与に適したものが挙げられるが、いずれの所与の場合においても最も適切な経路は、治療される症状の性質及び重症度に依存し得る。投与は、局所であっても全身性であってもよい。化合物の製剤は、アンプル及びバイアルなどの単位用量または多用量の密封容器で提示され得る。本開示のADCは、薬学的に許容される担体と共に単位投与量注入可能な形態(溶液、懸濁液またはエマルションを含むが、これらに限定されない)で混合物中に調製されてもよい。本開示のADCはまた、(浸透ポンプなどのミニポンプを含むがこれに限定されない)連続注入、単一ボーラス、または徐放性デポ製剤によって投与されてもよい。
【0432】
投与に適した製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の溶液、等張滅菌液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。溶液及び懸濁液は、前述の種類の滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製し得る。
【0433】
凍結乾燥とは、目的のタンパク質調製物から水を除去するのに役立つタンパク質を提示するために一般的に使用されている技術である。凍結乾燥(Freeze-drying)または凍結乾燥(lyophilization)とは、乾燥すべき材料をまず凍結させ、その後、氷または凍結した溶媒を真空環境下で昇華により除去するプロセスである。凍結乾燥プロセス中の安定性を高めるため、及び/または保管の際の凍結乾燥製品の安定性を改善するために、凍結乾燥前の製剤に賦形剤を含ませてもよい。Pikal,M.Biopharm.3(9)26-30(1990)及びArakawa et al.Pharm.Res.8(3):285-291(1991)。
【0434】
医薬品の噴霧乾燥は、当業者にも公知である。例えば、Broadhead,J.et al.,“The Spray Drying of Pharmaceuticals,”in Drug Dev.Ind.Pharm,18(11 & 12),1169-1206(1992)を参照のこと。小分子医薬品に加えて、様々な生物学的材料が噴霧乾燥されており、これらとしては、酵素、血清、血漿、微生物及び酵母が挙げられる。噴霧乾燥は、液体医薬調製物をワンステップ法で微細な、埃のない、または凝集した粉末に変換できるので、有用な技術である。基本技術は、以下の4つのステップを含む:a)供給溶液をスプレーに噴霧化する、b)スプレーエア接触、c)スプレーを乾燥させる、及びd)乾燥した製品を乾燥空気から分離する。米国特許第6,235,710号及び同第6,001,800号は、参照により本明細書に組み込まれており、噴霧乾燥による組換えエリスロポエチンの調製が記載されている。
【0435】
本開示の医薬組成物及び製剤は、薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含み得る。薬学的に許容される担体は、部分的に、投与される特定の組成物によって、ならびに組成物を投与するのに使用される特定の方法によって決定される。したがって、本開示の医薬組成物(任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤を含む)の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th.ed.1985)を参照のこと)。
【0436】
適切な担体としては、限定するものではないが、コハク酸、リン酸、ホウ酸、HEPES、クエン酸、ヒスチジン、イミダゾール、アセテート、重炭酸塩及び他の有機酸を含む緩衝液;アスコルビン酸を含むがこれらに限定されない抗酸化剤;限定するものではないが、約10残基未満のものを含む低分子量ポリペプチド;限定するものではないが、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンを含むタンパク質;ポリビニルピロリドンを含むが、これらに限定されない親水性ポリマー;限定するものではないが、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、ヒスチジンもしくはヒスチジン誘導体、メチオニン、グルタミン酸、またはリジンを含むアミノ酸;単糖類、二糖類、及びその他の炭水化物、限定するものではないが、トレハロース、スクロース、グルコース、マンノース、またはデキストリン;限定するものではないが、EDTA及びエデト酸二ナトリウム(edentate disodium)を含むキレート剤;限定するものではないが、亜鉛、コバルト、または銅を含む二価金属イオン;限定するものではないが、マンニトールまたはソルビトールを含む糖アルコール;限定するものではないが、ナトリウム及び塩化ナトリウムを含む塩形成対イオン;充填剤、例えば、微結晶セルロース、ラクトース、トウモロコシ及びその他のデンプン;結合剤;甘味料及びその他の香味料;着色剤;及び/または非イオン性界面活性剤、例としては、限定するものではないが、Tween(商標)(Tween 80(ポリソルベート80)及びTween 20(ポリソルベート20)を含むがこれらに限定されない)、Pluronics(商標)及び他のプルロニック酸、例えば、限定されないが、プルロニック酸F68(ポロキサマー188)、またはPEGが挙げられる。適切な界面活性剤は、例えば、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)、すなわち(PEO-PPO-PEO)、またはポリ(プロピレンオキシド)-ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(プロピレンオキシド)、すなわち(PPO-PEO-PPO)、またはそれらの組み合わせをベースとするポリエーテルを含むが、これらに限定されない。PEO-PPO-PEO及びPPO-PEO-PPOは、Pluronics(商標)、R-Pluronics(商標)、Tetronics(商標)、及びR-Tetronics(商標)(BASF Wyandotte Corp.,Wyandotte,Mich.)という商標名で市販されており、さらに米国特許第4,820,352号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。他のエチレン/ポリプロピレンブロックポリマーは適切な界面活性剤であり得る。界面活性剤または界面活性剤の組み合わせを使用して、撹拌から生じる応力を含むがこれらに限定されない1つ以上の応力に対してPEG化ADCを安定化してもよい。上記のいくつかは、「増量剤」と呼ばれる場合がある。一部は、「浸透圧調節剤」と呼ばれることもある。抗菌保存剤は、製品の安定性及び抗菌効果のために適用されてもよく;適切な保存剤としては、限定するものではないが、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、メタクレゾール、メチル/プロピルパラベン、クレゾール、及びフェノール、またはそれらの組み合わせが挙げられる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,144,574号には、本開示及び他の送達製剤の医薬組成物及び配合物に適している場合がある追加の材料が記載されている。
【0437】
PEGなどの水溶性ポリマーに連結されるものを含む、本開示のADCは、徐放系によって投与されても、またはその一部として投与されてもよい。徐放性組成物としては、フィルムまたはマイクロカプセルを含むがこれらに限定されない成形品の形態の半透過性ポリマーマトリックスが含まれるが、これに限定されない。徐放性マトリックスとしては、生体適合性材料、例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(Langer et al.,J.Biomed.Mater.Res.,15:267-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982)、エチレン酢酸ビニル(Langer et al.、上記)またはポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸(EP133,988)、ポリラクチド(ポリ乳酸)(米国特許第3,773,919号;EP58,481)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコ-グリコリド(乳酸とグリコール酸とのコポリマー)ポリ無水物、L-グルタミン酸とガンマ-エチル-L-グルタミン酸とのコポリマー(Sidman et al.,Biopolymers,22,547-556(1983)、ポリ(オルト)エステル、ポリペプチド、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、ポリサッカライド、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン及びシリコーンが挙げられる。徐放性組成物はまた、リポソームに捕捉された化合物を含む。この化合物を含むリポソームは、それ自体公知の方法:DE3,218,121;Eppstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:3688-3692(1985);Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,77:4030-4034(1980);EP52,322;EP36,676;米国特許第4,619,794号;EP143,949;米国特許第5,021,234号;日本特許出願83-118008;米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号;ならびにEP102,324によって調製される。引用される全ての参考文献及び特許は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0438】
リポソームに捕捉されたADCは、例えば、DE3,218,121;Eppstein et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,82:3688-3692(1985);Hwang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,77:4030-4034(1980);EP52,322;EP36,676;米国特許第4,619,794号;EP143,949;米国特許第5,021,234号;日本特許出願83-118008;米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号;ならびにEP102,324に記載の方法によって調製され得る。リポソームの組成及びサイズは、周知であり、または当業者によって容易に経験的に決定され得る。リポソームのいくつかの例は、例えば、Park JW,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:1327-1331(1995);Lasic D and Papahadjopoulos D(eds):Medical Applications of Liposomes(1998);Drummond DC,et al.,Liposomal drug delivery systems for cancer therapy,in Teicher B(ed):Cancer Drug Discovery and Development(2002);Park JW,et al.,Clin.Cancer Res.8:1172-1181(2002);Nielsen UB,et al.,Biochim.Biophys.Acta 1591(1-3):109-118(2002);Mamot C,et al.,Cancer Res.63:3154-3161(2003)に記載されるとおりである。引用される全ての参考文献及び特許は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0439】
本開示のADCの治療的使用
本開示のADCは、広範囲の障害の治療に有用である。本開示はまた、HER2の過剰発現、増幅、変異及び/または標的療法に応答性のがんのリスクを有するか、それを有しているか、及び/またはそれを有した哺乳動物の治療方法を含む。ADCの投与は、短期間の効果、すなわち、観察されるいくつかの臨床パラメータに対する直ちに有益な効果をもたらし得、これは、投与から12時間または24時間であってもよく、他方で長期効果、腫瘍増殖の進行の有益な遅延、腫瘍サイズの減少、及び/または循環型CD8+T細胞レベルの増大をもたらし、本開示のADCは、当業者に公知の任意の手段によって投与されてもよく、注入により、例えば、動脈、腹腔内または静脈内注射及び/または注入によって、所望の薬理学的効果を得るのに十分な用量で、有利に投与され得る。
【0440】
本開示の状況で患者に投与される用量は、対象において有益な治療応答を経時的にもたらすのに十分であり得る。ADC用量は、10~200mg、または1回の治療当たり体重1kg当たり40~80mgのADCの範囲であり得る。例えば、投与されるADCの用量は、ボーラス注入として、及び/または臨床的に必要とされる時間、例えば、数分から数時間、例えば、24時間までの範囲の時間の注入として与えられる、体重1kg当たり約20~100mgのADCであってもよい。必要に応じて、ADC投与を1回または複数回繰り返してもよい。いくつかの実施形態では、ADCは、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0mg/kgまたはそれ以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/ml、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の用量で投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の用量でQ2Wで投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/ml、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の用量でQ3Wで投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/ml、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kgまたはそれ以上の用量でQ4Wで投与される。いくつかの実施形態では、ADCは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/ml、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2mg/kgまたはそれ以上の用量でQ6Wで投与される。
【0441】
他の実施形態では、用量は、0.05~2mg/kgもしくはそれ以上であるか、またはその間の任意の値である。他の実施形態では、用量は、0.05mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.1mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.2mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.33mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.4mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.5mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.6mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.66mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.7mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.8mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.88mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、0.9mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.1mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.2mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.3mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.4mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.5mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.6mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.7mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.8mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、1.9mg/kg以上である。他の実施形態では、用量は、2.0mg/kg以上である。いくつかの実施形態では、ADCは、1時間ごと、1日ごと、1週間ごと、1ヶ月ごとまたは1年ごと投与で投与される。いくつかの実施形態では、対象に対するADCの用量を、種々の用量パラメータに従って選択してもよい。適用された初回用量での対象における応答に基づいて、患者の忍容性が許容する程度で、より高いまたはより低い用量を使用してもよい。
【0442】
一実施形態では、ADCを、1日目に初回用量で対象に投与し、次いで第2の用量で投与を行う。いくつかの実施形態では、第2の用量は、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回投与される。一実施形態では、ADCは、対象に、2週間の第1のサイクルの1日目に初回用量で投与され、その後に、2週間の第2のサイクルが続く。いくつかの実施形態では、2週間の第2のサイクルは、2週間の第1のサイクルと同じまたは異なる用量を含む。一実施形態では、ADCは、対象に、3週間の第1のサイクルの1日目に初回用量で投与され、その後に、3週間の第2のサイクルが続く。いくつかの実施形態では、3週間の第2のサイクルは、3週間の第1のサイクルと同じまたは異なる用量を含む。一実施形態では、ADCは、対象に、4週間の第1のサイクルの1日目にある用量で投与され、その後に、4週間の第2のサイクルが続く。一実施形態では、ADCは、対象に、6週間の第1のサイクルの1日目にある用量で投与され、その後に、6週間の第2のサイクルが続く。いくつかの実施形態では、6週間の第2のサイクルは、6週間の第1のサイクルと同じまたは異なる用量を含む。一実施形態では、ADCは、対象に、8週間以上の第1のサイクルの1日目にある用量で投与され、その後に、8週間以上の第2のサイクルが続く。いくつかの実施形態では、8週間以上の第2のサイクルは、8週間以上の第1のサイクルと同じまたは異なる用量を含む。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約2.0mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.9mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.8mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.7mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.6mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.5mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.4mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.3mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.2mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.1mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約1.0mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約0.88mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約0.66mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、単回投与または約0.33mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。
【0443】
別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.7mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.6mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.5mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.4mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.3mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.2mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.1mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.88mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.66mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.8mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.33mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.6mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.5mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.4mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.3mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.2mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.1mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.88mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.66mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの約1.7mg/kgの用量で対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.33mg/kgの用量を含む。別の実施形態では、ADCは、約1.6mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.5mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.4mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.3mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.2mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.1mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.88mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.66mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.6mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.33mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、約1.5mg/kgの初回用量として対象に投与され、その後、毎週1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、4週間ごとに1回、5週間ごとに1回、6週間以上ごとに1回、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.10mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kgまたはそれ以上の第2用量を投与される。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.4mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.3mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.2mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約1.1mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.88mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.66mg/kgを含む。別の実施形態では、ADCは、4週間の第1のサイクルの1.5mg/kgで対象に投与され、ここで、この投与には、さらに、4週間の第2のサイクルの1日目に約0.33mg/kgを含む。
【0444】
本開示のADCの投与を、化学療法剤、免疫療法剤、ホルモン剤、抗腫瘍剤、免疫刺激剤、免疫調節剤またはそれらの組み合わせを含む治療剤などの他の薬剤の投与と組み合わせてもよい。本開示のADCの投与は、チェックポイント阻害剤、HER2キナーゼ阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、小分子キナーゼ阻害剤または白金系治療剤の投与と組み合わせてもよい。本開示のADCの投与は、ラパチニブ(Tykerb(登録商標))、ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))、及びアド-トラスツズマブメンタンシン(Kadcyla(登録商標))(T-DM1としても公知)を含むがこれらに限定されないHER2標的化治療剤の投与と組み合わせてもよい。追加のHER2標的化治療剤には、乳癌細胞株及び異種移植モードにおけるHER2媒介下流シグナル伝達及び腫瘍増殖の遮断において優れた前臨床活性を実証している、HER1、HER2、及びHER4の小型不可逆阻害剤であるピロチニブが挙げられ得る。さらに、本開示は、がんの予防及び/または治療方法であって、それを必要とする対象に有効量のADCを投与することを含む、方法に関する。
【0445】
ADCの平均量は様々であってよく、特に適格な医師の推奨及び処方に基づき得る。ADCの正確な量は、治療される病態の正確な種類、治療される患者の状態、ならびに組成物中の他の成分などの要因を受けやすい好みの問題である。本開示はまた、治療上有効な量の別の活性剤の投与も提供する。与えられる量は、ADCによる治療に基づいて当業者によって容易に決定され得る。
【実施例】
【0446】
以下の実施例は、特許請求される開示を例示するために提供されるものであり、限定するものではない。
【0447】
実施例1:ADC製剤
本開示のADC(例えば、ARX788)は、細胞増殖を阻害する非常に強力なチューブリン阻害剤である、細胞毒性ペイロードAS269に連結されたヒト上皮成長因子受容体2(HER2)指向モノクローナル抗体(mAb)からなる新規の抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。本発明者らの独自の技術により、非天然アミノ酸であるパラ-アセチルフェニルアラニン(pAF)を、抗HER2 mAbの重鎖上の所定の部位に正確に組み込み、AS269を、高度に安定なオキシム結合または二重結合を介してmAb上の非天然アミノ酸pAFに特異的にコンジュゲートさせて、ADC(重鎖1つ当たり1つのペイロード)を生成する。得られるADCは、1.9~2.0の均一な薬剤対抗体比(DAR)(理論最大DARが2.0)を有する。ADCの作動機構は、複数の連続するステップによって達成される。ADCは、がん細胞表面のHER2に特異的に結合し、急速に内在化して、ライソソームに輸送されて、ライソソーム内で代謝されて、pAF-AS269を放出し、これが微小管に結合して細胞周期停止及び細胞死を誘導する。ADC中のHER2抗体とペイロードAS269との間の高度に安定した結合を考慮すると、血漿サンプル中でADCをインキュベートした後に、遊離AS269は検出されなかった。したがって、そのIV投与後の循環では遊離AS269の放出は予想されない。このADCは、がん細胞表面上のHER2に特異的に結合し、続いてがん細胞に急速に内在化し、ライソソームに輸送され、標的細胞によって代謝されて、がん細胞の増殖を抑制し得る強力なチューブリン阻害剤pAF-AS269を放出する。
【0448】
ADCは、がん細胞表面上のHER2への結合、急速な内在化、ライソソームへの輸送、及びライソソーム内の代謝によるパラ-アセチルフェニルアラニン(pAF)-AS269の放出(微小管に結合し、がん細胞周期停止及び細胞死を誘発する)を含む複数の連続するステップを通じてHER2過剰発現腫瘍を死滅するように設計される。Kadcyla(登録商標)(トラスツズマブエムタンシン、T-DM1)及びEnhertu(登録商標)(トラスツズマブデルクステカン、T-DXd)を含むいくつかの他のHER2標的化治療剤、抗体、小分子、及びADCは、HER2過剰発現を有するがんにおいて臨床活性を実証している。
【0449】
実施例2:
図1に示す試験で使用した薬物
有効活性成分(API)は、ADC、ARX788である。ADCは、カップリング比が1:2に固定された、2つの微小管妨害ペイロードAS269(小分子細胞毒性薬剤)に共有結合したヒト化抗HER2モノクローナル抗体(IgG1κ)からなる。このADCの2つの成分は、1)ヒトHER2に対して特異性を有する抗HER2 mAb(この抗HER2 mAbの重鎖中のアミノ酸位置121に非天然アミノ酸pAFを含む)、及び2)細胞成長を阻害する能力が高く、このmAbに直接コンジュゲートされ得るチューブリン阻害剤である細胞毒性ペイロードAS269である。AS269のアミノオキシ基は、安定なオキシム結合(重鎖ごとに1つのペイロード)を介してpAFに特異的にコンジュゲートする。試験薬物としては、注射液及び凍結乾燥された凍結乾燥粉末の2つの製剤がある。臨床試験で使用される主な薬物は、凍結乾燥ADCである。
【0450】
pAF含有抗HER2抗体を、コンジュゲーション緩衝液(30mmol/Lの酢酸ナトリウム、pH4.0)中で10~20mg/mlに濃縮した。酢酸ヒドラジド及び10モル当量のAS269(コンジュゲーションのためのヒドロキシル-アミン官能基を含む)を抗体に加えた。コンジュゲーション反応を、30℃で18~20時間続け、続いて、Capto SP Impresカラム(GE Healthcare)で精製して、過剰の試薬を除去した。精製したADCを製剤緩衝液にバッファー交換して、さらに使用するまで≦65℃で保存した。AS269は、米国特許第8,476,411号に開示されている実験手順に従って合成してもよく、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0451】
ADC製剤の製造プロセスは、当該技術分野において周知である簡単なプロセスであり、無菌充填仕上げ及び凍結乾燥プロセスで一般的に使用されているステップを含む。ADC製剤の製造プロセスには、ADCバルク薬剤物質の解凍、プール、滅菌濾過、バイアルへの無菌充填、部分的な打栓、凍結、一次及び二次乾燥、完全な打栓及びキャッピング、それに続く外部バイアルの洗浄及び目視検査、包装のラベリング及び保存が含まれる。
【0452】
凍結乾燥製剤の最適化には、ADCタンパク質及びポリソルベート80の濃度、緩衝液濃度ならびにADCタンパク質及びトレハロースの濃度のスクリーニングを含んでいた。凍結乾燥サイクルの最適化は、予備凍結パラメータ、一次乾燥温度、真空圧及び二次乾燥時間に焦点を当てていた。
【0453】
ADC製剤に選択される最終製剤は、注射のための滅菌水で再構成した後に、5mMのL-ヒスチジンpH6.0の中の20mg/mlのADCを含有し、6%トレハロース及び0.02%のポリソルベート80を有する凍結乾燥粉末である。凍結乾燥製剤は、白色またはオフホワイトのケーキまたは粉末であり、メルトバックも崩壊もしていない。再構成された製剤溶液は、透明から僅かに乳白色、無色から淡黄色の液体であり、実質的に可視粒子を含まず、6%のトレハロース、及び0.02%のポリソルベート80(pH6.0)を含む、5mMのL-ヒスチジンの滅菌溶液中で20mg/mLのADCを含有する。凍結乾燥ADCをWFI(注入用水)を加えて再構成し、そのADC演算量を0.9%生理食塩水の250mL注入バッグに移して注入バッグを準備する。
【0454】
ADCはまた、10mLのガラスバイアル中で54mg/5.4mlのARX788を含有する液体中に配合される。再構築後の製剤は、5mMのヒスチジン、6%のトレハロース、0.02%のポリソルベート80(pH6.0)であり、20mg/mLの公称ADC濃度を有する。
【0455】
実施例3:この実施例は、本開示で使用される様々な方法論及び技術を開示している。
分子クローニング-CHO細胞コドン最適化抗体重鎖及び軽鎖cDNA配列は、市販のDNA合成サービス(IDT,San Diego,CA)から得た。合成されたDNAフラグメントをHind III及びEcoR I(両方ともNew England Biolabs(NEB),Ipswich,MA製)で消化し、PCR精製キット(Qiagen,Valencia,CA)で精製した。消化された抗体遺伝子フラグメントを、クイックライゲーションキット(NEB)を介して発現ベクターにライゲーションして、野生型抗体重鎖及び軽鎖の発現のための構築物を得た。得られたプラスミドをE.coliで増殖させて、DNAシーケンシングサービス(Eton)によって確認した。
【0456】
アンバーコドン含有変異体の生成-抗HER2 Fabの結晶構造に基づいて、軽鎖定常領域に位置する10個の異なる表面アクセス可能部位を選択して、非天然アミノ酸(例えば、パラ-アセチル-フェニルアラニン(pAF)、またはパラ-アジド-フェニルアラニン)を遺伝的に組み込んだ。これらの部位は、抗原抗体結合にとって重要ではない。次に、選択された部位の各遺伝子コドンを、部位特異的変異誘発によってアンバーコドン(TAG)に変異させ、その抗体変異体に関する発現プラスミドを生成した。プライマーは、IDTから購入した。全ての部位特異的変異誘発実験を、指示マニュアル(NEB)に従って、Q5部位特異的変異誘発キットを使用して実施した。変異体の発現プラスミドをE.coliで増殖させて、DNAシーケンシングサービス(Eton)によって確認した。表3に、Kabatナンバリング及び対応するアミノ酸配列、配列番号2及び4~11を有する抗HER2 Fabの重鎖及び/または軽鎖定常領域におけるアンバー突然変異部位のリストを示す。配列番号1及び3には、それぞれ抗HER2 Fabの野生型重鎖及び軽鎖を示す。抗HER2Fabは、以下の重鎖及び軽鎖の配列を含む:配列番号2及び配列番号3;配列番号2及び配列番号4;配列番号2及び配列番号5;配列番号2及び配列番号6;配列番号2及び配列番号7;配列番号2及び配列番号8;配列番号2及び配列番号9;配列番号2及び配列番号10、配列番号2及び配列番号11、配列番号2及び配列番号12、配列番号2及び配列番号13。
【0457】
表3.非天然アミノ酸組み込みのためのアンバー部位を有する抗HER2 Fab重鎖(HC)及び軽鎖(LC)アミノ酸配列。また、Xが任意の非天然アミノ酸で置換されている表3の全ての配列;任意のアミノ酸が任意の非天然アミノ酸で置換されている表3の全ての配列;及びXがpAFである表3の全ての配列も開示されている。
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
Xは、非天然アミノ酸(nnAA)を表し;下線は、表3におけるFc変異を表し、変異位置は、当業者に周知であるように、Kabatナンバリングに従って記載する。
【0458】
114の位置(Kabatナンバリング)の重鎖におけるアンバー変異に加えて、Fc変異は、薬物動態を改善及び/または抗体依存性細胞食作用(ADCP)及び/または抗体依存性細胞毒性ADCC活性を増強するために、抗HER2抗体または抗体フラグメントの様々な位置で操作されてもよい(表4)。
【0459】
【0460】
実施例4:乳癌の治療
HER2陽性の転移性乳癌患者におけるARX788の第2相研究(その疾患がT-DM1、及び/またはT-DXd、及び/またはツカチニブ含有レジメンに対して抵抗性または難治性である)。
【0461】
主な目的:T-DM1、及び/またはT-DXd、及び/またはツカチニブ含有レジメンに対して抵抗性または難治性のHER2陽性乳癌の対象におけるRECIST v1.1に基づく盲検の独立セントラルレビュー(BICR)により確認されたARX788の奏効率(ORR)。
【0462】
副次的目的:(1)奏功期間(DOR)、測定可能な腫瘍の最長径の合計における最良の変化率、最良総合効果(BOR)、病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、及び全生存期間(OS)を評価すること;(2)ADC(ARX788)の安全性、忍容性、及び免疫原性プロファイルを評価すること;(3)ARX788の薬物動態(PK)を決定すること。
【0463】
予備的目的:奏功までの時間(TTR)を評価し、潜在的な予測バイオマーカー及び/または予後予測バイオマーカーを同定すること
【0464】
研究設計:第2相シングルアーム試験により、T-DM1、及び/またはT-DXd、及び/またはツカチニブに基づく治療、または他の利用可能かつアクセス可能なHER2指向性治療もしくは治験療法の後の、HER2陽性(IHC3+またはIHC2+及びISH+)進行性乳癌の対象におけるADCの忍容性、安全性及びPKに加えて抗がん活性を評価した。標的集団を表5に示す。
【0465】
【0466】
対象は、第1の4週間サイクルの1日目に初回用量として1.5mg/kgでADCを受け、その後は、耐えがたい毒性、疾患の進行、治験担当者の臨床判断による中止、対象の選択による中止、または調査を中止する治験依頼者の判断まで、その後の4週間サイクルごとに1.3mg/kgを受ける。
【0467】
投薬量及び投与
【0468】
1回の治療サイクルは21日または28日である。用量レベルは、0.33mg/kg、0.66mg/kg、0.88mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.5mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kgまたはそれ以上の用量を含み得る。
【0469】
ARX788は、IV注入(Q3W/Q4W)として投与され得る。最初の注入時間は90±10分であり、その後の注入は、十分に忍容性があり、注入反応の履歴がない場合、治験担当者の裁量で、60±10分に減らしてもよい。前投薬の詳細については、プロトコールの併用投薬のセクションを参照のこと。
【0470】
いくつかの実施形態では、対象は、投与計画に従って、第1の4週間サイクルの1日目に初回用量として1.7mg/kgでARX788を与えられ、その後、4週間サイクルごとに1.5mg/kgを与えられた。他の実施形態では、対象は、投与計画に従って、第1の4週間サイクルの1日目に初回用量として1.5mg/kgでARX788を与えられ、その後の4週間サイクルごとに1.3mg/kgを与えられた。注入バッグは、適切な量のARX788を、注射用の0.9%生理食塩水の250mLバッグに加えることによって調製される。許容される場合、バッグの内容物を全て、(インライン0.22μmのフィルターを用いて)対象に投与して、各用量を送達する。
【0471】
ARX788の初回投与時の注入時間は90分であるが、十分に忍容性があり、注入反応の履歴がない場合、治験担当者の判断に基づいて、その後の注入では60分に短縮してもよい。注入の開始時間及び停止時間ならびに注入中断時間を含む各投与の日時が、電子的症例報告書(eCRF)に記録される。サイクル期間は28日(Q4W)であり、対象が治療を継続する資格を有している限りサイクルが続く。
【0472】
対象を処置群に割り当てる方法
【0473】
約200人の対象を登録して、ARX788の抗がん活性及び安全性を評価する。
【0474】
研究スケジュール
【0475】
治療サイクル
【0476】
【0477】
各治療サイクルの1日目に、対象にARX788を注入により投与する。評価及び検査は、治療サイクル内の各来院及びEOT来院時に完了する。
【0478】
各治療サイクルの1日目に、対象にARX788を注入により投与する。評価及び検査は、治療サイクル内の各来院及びEOT来院時に完了する。評価及び検査は、研究プロトコール/ガイドラインに従って行われるものであり、HER2状態評価及びバイオマーカー分析のための腫瘍生検;サイクル2から開始した各サイクルのARX788投与の前及びEOTでのECOG一般状態;尿検査;眼科検査、腫瘍画像検査(スクリーニング時、次いで、治療サイクルと無関係にQ8W(±7日間)、及びEOT来院時の胸部のコントラスト増強CT、CT/MRIを介した腹部、骨盤、ならびに疾患の全ての他の既知及び/または疑われる部位のCT/MRIを含む);造影剤の有無の脳の脳画像-MRI(またはMRIが禁忌の場合はCT)(脳転移を除外するために、スクリーニングの間に全ての参加者に対して必要とされる);胸部X線(CXR);肺機能検査(PFT)、心エコー図、心エコー、血液学的検査/血液検査を含むバイタルサイン;腎機能分析;免疫原性検査;AE/SAEの観察、生存経過観察を含む。
【0479】
評価項目
【0480】
主要評価項目:T-DM1、及び/またはT-DXd、及び/またはツカチニブ含有レジメンに対して疾患が抵抗性/難治性であるHER2陽性転移性乳癌の対象におけるRECIST v1.1に基づく盲検の独立セントラルレビュー(BICR)により確認されたARX788の奏効率(ORR)。
【0481】
副次的評価項目:
【0482】
有効性:ARX788の抗がん活性を副次的評価項目として評価する。BICR及び/または治験担当者が評価する抗がん活性パラメータとしては:(1)奏功期間(DOR);(2)測定可能な腫瘍の最長径の合計における最良の変化率;(3)最良総合効果(BOR)(完全奏功(CR)、部分奏功(PR)、不変(SD)、または進行性疾患);(4)病勢コントロール率/臨床的有用率(DCR/CBR=CR+PR+SD);(5)無増悪生存期間(PFS);(6)全生存期間(OS)が挙げられる。
【0483】
安全性:参加している対象の安全性及び忍容性、ならびに免疫原性プロファイルは、AE、バイタルサイン、ECG(RR、PR、QT間隔及びQRS持続時間)、LVEF、臨床検査、ADA分析、身体検査、病歴ならびに前投薬及び併用投薬により評価し、該当する場合はベースラインからの変化を分析する。
【0484】
薬物動態:ARX788(インタクトADC)の血清濃度、全抗体、及び代謝物pAF-AS269を、投与量レベルのARX788に対して評価する。ARX788及びその主要代謝物のPK及びPDxの特性をさらに評価する。PKパラメータを評価する。
【0485】
免疫原性:ADAの存在及びそれらのPKに対する潜在的な影響、ARX788の有効性及び安全性が評価される。
【0486】
探索的評価項目:ARX788の奏功までの時間(TTR)及び特定のバイオマーカー関連PDx効果は、腫瘍組織のサンプルと血液サンプリングに基づいて評価される。
【0487】
実施例5:ARX788-101研究におけるARX788の有効性
【0488】
ARX788-101は、HER2発現のある進行がんの対象に単剤として静脈内投与されるARX788の第1相多施設共同非盲検複数回用量漸増試験であり、ARX788を評価する初のヒトでの研究であった。評価可能な腫瘍を有する乳癌患者7人中7人で腫瘍反応(PR及び不変)が観察され、DCRは100%であった。最良の全体的な腫瘍反応はPRであり、7人の対象のうち3人で観察されたが、4人の対象では不変が報告された。疾患が進行した対象はいなかった。ベースライン及びベースライン後の腫瘍サイズデータが利用可能な6人の対象では、様々な程度の腫瘍サイズの減少が観察された。
【0489】
実施例6:ACE-Breast-01研究(ARX788-111)及びACE-Pan tumor-01研究(ARX788-1711)におけるARX788の有効性
【0490】
ACE-Breast-01研究(ARX788-111)では、HER2発現を伴う進行性乳癌の対象に単剤として静脈内投与されるARX788の第1相多施設共同非盲検複数回用量漸増試験により、合計28人のPR(及び不変が認められた27人の患者)を含む59人(60人中)の評価可能な対象からの予備的な有効性データが示され、これまでのところ用量漸増研究全体のORRは47.4%、DCRは93.2%であった。1.5mg/kg Q3Wで投与された対象では、29人の評価可能な患者のうち19人のPR(18人で確認)及び5例の不変が報告され、ORRは66%(確認されたORRは62%)、及びDCRは100%であった。これらの患者は高度な前治療を受けており、前治療の中央値は5であった(範囲:2~11)。研究は継続されており、全ての研究(上記のものを含む)からの有効性データの要約が表6に示される。
【0491】
【0492】
ACE-Breast-01研究の場合:研究(ACE-Breast-01)におけるこれらの用量での腫瘍体積の全体的な減少のウォーターフォールプロットを
図2に示す(ARX788:ACE-Breast Cancer-01で確認されたORRは62%、DCRは100%(1.5mg/kgコホート))。
図3のスパイダープロット(ARX788は、ACE-Breast-01(1.5mg/kgコホート)において迅速で、深く、持続的な反応を示した)は、各時点での各対象の反応を示す。
図4に示すスイマープロット(ARX788は、ACE-Breast-01(1.5mg/kgコホート)において持続的な反応を示した)は、各対象の奏功期間を示す。この研究で、1.5mg/kg Q3W用量ではDOR中央値及びPFS中央値に達していなかったが、このデータでは、これらの高度な前治療を受けた患者で観察された有効性が持続していることを示唆している。
図7は、研究(ACE-Breast-01)におけるこれらの用量での腫瘍体積の全体的な減少の別のAウォーターフォールプロットを示す。
図8に示すスイマープロット(ARX788は、ACE-Breast-01(1.3mg/kgコホート)において持続的な反応を示した)は、各対象の奏功期間を示す。
【0493】
ACE-Pan tumor-01研究の場合:研究(ACE-Pan tumor-01)におけるこれらの用量での腫瘍体積の全体的な減少のウォーターフォールプロットを
図5に示す。
図6のスパイダープロットは、各投与時点での各対象の応答を示す。
【0494】
ARX788の安全性
【0495】
安全性の点では、臨床研究((ARX788-1711(ACE-Pan-tumor-01)及びARX788-111(ACE-Breast-01))における投与集団からの累積データに基づくと、ARX788は一般に忍容性が良好であり、ほとんどの有害事象が軽度(グレード1)または中程度(グレード2)で管理可能である。
【0496】
ARX788治療に関連する可能性があり得る有害事象(AE)としては、間質性肺炎、眼事象、及び脱毛症が含まれた。間質性肺炎は、1.3mg/kg以上の用量で4~5サイクルの投与後に発生する最も重大な遅発性SAEであり得る。
【0497】
研究ARX788-1711(ACE-Pan-tumor-01、米国及びオーストラリア)及びARX788-111(ACE-Breast-01、中国)におけるAEの大部分は、重症度がグレード1(軽度)またはグレード2(中等度)であり、管理可能である。表7を参照のこと。
【0498】
【0499】
特に注目すべき有害事象(AESI)を表8及び9に示す。
【0500】
【0501】
【0502】
図9~13は、SASシステムを使用したLIFETEST手順に従って示された、危険に曝されている対象の数による様々な製品限界生存推定値を示す。
【0503】
実施例7:別の臨床研究
【0504】
現在までに生成された臨床データに基づいて、以下に示すように、HER2陽性転移性乳癌のグローバルな治験であるACE-Breast-03が開始された。T-DM1及び/またはT-DXd、及び/またはツカチニブを含むレジメンが効果を示さなかったHER2陽性転移性乳癌患者におけるARX788の治験を以下に説明する。
【表18】
【0505】
実施例8:別の臨床研究
【0506】
適用された初回用量での対象における反応に基づいて、その後の用量を投与に関して調節して、所望の結果を達成し得る。場合によっては、患者の忍容性が許す範囲で、より低いまたはより高い有効用量を使用し得る。例えば、対象の反応に基づいて、4週間サイクルの1日目に1.7mg/kgの初回用量を投与し、続いて以下に図示するように1.5mg/kgまたは1.3mgまたは0.88mg/kgまたは0.66mg/kgの次の用量を投与してもよい。
【表19】
【0507】
ARX788の胃がん臨床試験
【0508】
トラスツズマブを含む他の利用可能な治療が効果を示さなかった患者における、HER2陽性転移性胃/GEJがん治験、ARX788のACE-Gastric-01第1相臨床試験が進行中である。HER2陽性進行胃癌または胃食道接合部腺癌(GC/GEJ)の患者におけるARX788の安全性及び有効性を評価した。この治験では、1.5mg/kgのARX788をQ3Wで投与された患者のコホートにおける有望な抗腫瘍活性により、Q3Wで1.3mg/kgのARX788を投与された患者のコホートで、46%(患者13人中6人)でORRが確認され、43%(患者7人中3人)でORRが確認されたことが観察された(表10)。
【0509】
【0510】
HER2陽性進行胃癌を対象とした、ARX788、ACE-Gastric-02グローバル第2/3相の追加の臨床試験(GEJを含む)が進行中である。対象は2:1の比率で無作為化され、ARX788を1.7mg/kgでQ3Wで投与される。GEJを含むHER2陽性進行胃癌に対する追加の臨床試験では、対象はARX788を1.8mg/kgでQ3Wで投与される。
【0511】
ARX788は、HER2低乳癌患者、ならびに胃/GEJ、非小細胞肺癌(NSCLC)、尿路上皮癌、結腸癌、卵巣癌、胆管癌または膵臓癌、及び固形腫瘍を有する患者を含むがこれらに限定されない、より広範囲の患者に利益をもたらすために使用され得る。
【0512】
実施例9
【0513】
HER2発現または変異を伴う進行性固形腫瘍における単独療法としてのARX788の第1相研究
【0514】
転移性HER2+乳癌(BC)、HER2低乳癌、胃癌、その他の固形腫瘍、またはHER2活性化変異を有する患者におけるARX788の有効性及び安全性を評価するための、グローバルな用量設定ACE-Pan tumor-01第1相試験が進行中である。ARX788は、Q3Wサイクルで1.6kg/mgまたは1.7kg/mgでIVとして投与される。有効性は、RECIST 1.1基準を使用してQ6Wごとに評価され、評価項目にはORR、DOR、TTR、BOR、DCR、PFS、及びOSが挙げられる。安全性は、PE、AE、VS、ECG、臨床検査、及び免疫原性によって評価される。PK及びバイオマーカーも評価される。
【0515】
図13は、最初の腫瘍評価スキャンで部分奏効を示した85歳のHR+/HER2低転移性乳癌患者(HER2 IHC1+)を示す。肝転移は、ARX788の2サイクル後にサイズが30%減少し、その後ARX788の4サイクル後にさらに59%(PR)減少することが示された。観察された脳転移は、0.66mg/kgで8サイクル後に完全に消失したことが判明した。
【0516】
本開示の好ましい実施形態を本明細書で示して説明しているが、そのような実施形態が、例示として提供されるにすぎないことは当業者に明らかである。当業者はまた、本開示から逸脱せずに、数多くの変形、変更及び置換に想到するであろう。本開示を実施する際には、本明細書に記載されている本開示の実施形態に対する様々な代替物を用いてよいことを理解されたい。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を定義し、これらの特許請求の範囲の範囲内の方法及び構造ならびにそれらの均等物がそれにより網羅されることを意図している。
【配列表】
【国際調査報告】