(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】適応ゲイン型能動騒音低減(ANR)デバイス
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20240312BHJP
H04R 1/10 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
G10K11/178 120
H04R1/10 101B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560899
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 US2022020134
(87)【国際公開番号】W WO2022212012
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・オコンネル
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・エイチ・キャッテル
(72)【発明者】
【氏名】デイル・イアン・マケルホーン
【テーマコード(参考)】
5D005
5D061
【Fターム(参考)】
5D005BB11
5D061FF02
(57)【要約】
種々の態様は、能動騒音低減(ANR)デバイス及び方式を含み、1方式は、ANRヘッドフォンのフィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれた音声を表す入力信号を受信することと、エラー測定センサによって取り込まれた音声を表すエラー信号を受信することと、ある周波数範囲にわたってノイズ信号を低減するように構成されたアンチノイズ信号を生成することと、更に、上記エラー信号に基づいて、上記周波数範囲にわたって、上記入力信号、又は上記アンチノイズ信号の少なくとも1つにゲインを適用することとを含み、上記ゲインは、フィルタリングされたフィードフォワード信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記アンチノイズ信号をフィルタリングすること、及びフィルタリングされたエラー信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記エラー信号をフィルタリングすることと、上記エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することと、更に、上記フィルタリングされたエラー信号と上記フィルタリングされたフィードフォワード信号との相関と、上記エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与とに基づいて、上記ゲインを決定することとにより、計算される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方法であって、
能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンのフィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれた音声を表す入力信号を受信することと、
エラー測定センサによって取り込まれた音声を表すエラー信号を受信することと、
ある周波数範囲にわたってノイズ信号を低減するように構成されたアンチノイズ信号を生成することと、
前記エラー信号に基づいて、前記周波数範囲にわたって、前記入力信号、又は前記アンチノイズ信号の少なくとも1つにゲインを適用することとを含み、前記ゲインは、
フィルタリングされたフィードフォワード信号を生成するために前記周波数範囲にわたって前記アンチノイズ信号をフィルタリングすること、及びフィルタリングされたエラー信号を生成するために前記周波数範囲にわたって前記エラー信号をフィルタリングすることと、
前記エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することと、更に、
前記フィルタリングされたエラー信号と前記フィルタリングされたフィードフォワード信号との相関と、前記エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与とに基づいて、前記ゲインを決定することとによって、計算される、方法。
【請求項2】
前記エラー信号への前記フィードフォワード経路の寄与を推定することは、前記ゲインを決定する前に推定器フィルタによって実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エラー信号への前記フィードフォワード経路の寄与の前記推定は、前記アンチノイズ信号に適用される推定されたシステム伝達関数(G
sd)を使用して計算され、前記アンチノイズ信号はANRフィルタによって生成される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定されたシステム伝達関数(G
sd)は、測定された伝達関数成分に基づく推定値である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記フィルタリングはバンドパスフィルタを使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
予め定められ、約50ヘルツ(Hz)~約800Hzに等しい周波数範囲にわたって、前記バンドパスフィルタは適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アンチノイズ信号及び前記エラー信号の位相は、ある閾値未満で変化する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過負荷制御調整、自己音声検出調整、音楽再生モード調整、アウェアモード調整、又は通信モード調整の少なくとも1つに基づいて、前記ゲインを変更することも更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アンチノイズ信号は、ANRフィルタによって生成され、前記ANRフィルタは、前記アンチノイズ信号を生成するためのフィルタ係数の固定セットを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ANRフィルタには、前記アンチノイズ信号を生成するための電圧制限がある、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲインには、前記入力信号又は前記エラー信号の期待値に基づく上限がある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記決定されたゲインが前記ANRヘッドフォンの装着感に起因する閾値を超えたことに応答して、
前記装着感を調整するためのインジケータを前記ANRヘッドフォンのユーザに送信することも、
更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記決定されたゲインが、前記ANRヘッドフォンの頭部での使用に起因する閾値から逸脱することに応答して、
前記ANRヘッドフォンの電源を切ること、又は前記ANRヘッドフォンをスタンバイモードに切り替えることの少なくとも1つ、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ゲインはゲイン制御ブロックによって計算され、前記ゲイン制御ブロックは、前記周波数範囲のみにわたって前記ゲインを計算するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ゲイン制御ブロックは、前記ANRヘッドフォンの電力消費を軽減するよう、前記アンチノイズ信号及び前記エラー信号をダウンサンプリングする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エラー測定センサは前記ANRヘッドフォンにおけるフィードバックマイクロフォンを含み、前記方法は、
前記ANRフィルタにおいて、前記フィードバックマイクロフォンによって検出されたフィードバック信号に基づいて前記ゲインを調整することも更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記ANRヘッドフォンは、インイヤー型オーディオデバイス、又はアラウンドイヤー型オーディオデバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
能動騒音低減(ANR)デバイスであって、
能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンのフィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれた音声を表す入力信号を受信するフィードフォワード入力部と、
エラー測定センサによって取り込まれた音声を表すエラー信号を受信するゲイン制御ブロックと、
ある周波数範囲にわたってノイズ信号を低減するように構成されたアンチノイズ信号を生成するANRフィルタとを含み、
前記ゲイン制御ブロックは、前記エラー信号に基づいて、前記周波数範囲にわたって、前記入力信号、又は前記アンチノイズ信号の少なくとも1つにゲインを適用するように構成され、前記ゲイン制御ブロックは、前記ゲインを、
フィルタリングされたフィードフォワード信号を生成するために前記周波数範囲にわたって前記アンチノイズ信号にバンドパスフィルタを適用すること、及びフィルタリングされたエラー信号を生成するために前記周波数範囲にわたって前記エラー信号に前記バンドパスフィルタを適用することと、
前記エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することと、更に、
前記フィルタリングされたエラー信号と前記フィルタリングされたフィードフォワード信号との相関と、前記エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与とに基づいて、前記ゲインを決定することとを実行することにより計算する、能動騒音低減(ANR)デバイス。
【請求項19】
前記ゲインを決定する前に、
前記エラー信号への前記フィードフォワード経路の寄与を推定するように構成された推定器フィルタも更に含み、
前記エラー信号への前記フィードフォワード経路の寄与の前記推定は、前記ANRフィルタによって生成された前記アンチノイズ信号に適用される推定されたシステム伝達関数(G
sd)を使用して計算され、前記システム伝達関数(G
sd)の振幅は、測定された伝達関数成分に基づく推定値である、請求項18に記載のANRデバイス。
【請求項20】
前記ゲイン制御ブロックは、前記周波数範囲のみにわたって前記ゲインを計算するように構成され、前記ゲイン制御ブロックは、電力消費を抑えるために、前記アンチノイズ信号及び前記エラー信号をダウンサンプリングする、請求項18に記載のANRデバイス。
【請求項21】
前記ANRフィルタに結合するプロセッサも更に含み、前記プロセッサは、
a)前記決定されたゲインが前記ANRヘッドフォンの装着感に起因する閾値を超えたことに応答して、前記装着感を調整するためのインジケータを前記ANRヘッドフォンのユーザに送信すること、あるいは、
b)前記決定されたゲインが、前記ANRヘッドフォンの頭部での使用に起因する閾値から逸脱すること、の少なくとも1つに応答して、前記ANRヘッドフォンの電源を切ること、又は前記ANRヘッドフォンをスタンバイモードに切り替えることの少なくとも1つを、実行するように構成される、請求項18に記載のANRデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本願は、2021年3月31日付けで出願された米国出願第17/218,559号の利益を主張し、その全体を、参照により、本明細書で援用する。
【0002】
本開示は、概して、オーディオデバイスに関する。具体的には、本開示は、オーディオデバイスにおける能動騒音低減(ANR)に関する。
【背景技術】
【0003】
ANRデバイスは、1つ以上のデジタル信号プロセッサ(DSP)を利用して、様々な信号伝達トポロジを実装することができる。かかるDSPの例は、米国特許第10,580,398号、第8,073,150号、及び第8,073,151号に記載されており、これらの特許をそれぞれ、その内容全体を参照により援用する。
【0004】
従来のフィードフォワード(FF)型ANRデバイスは、固定コントローラ(つまり、フィルタ係数の固定セットを持つ)を使用することにより、多くの利点がある。例えば、こうした固定コントローラ方式のデバイスは、過度の処理能力及び/又は消費電力を必要とすることなく、ノイズ状況の変化に素早く対応することができる。こうした従来の固定コントローラ型ANRデバイスは、ユーザのグループに対する平均FFノイズ応答を近似しようとするものである。しかし、かかるデバイスは、装着感のばらつき、並びに、様々なユーザによる使用が原因で生じる性能劣化という問題を抱えている。インイヤー型オーディオデバイスなど、ある特定のフォームファクタにおいて、ユーザ間のばらつきが顕著になる場合があり、これにより、所与のユーザグループ内で許容できない性能劣化を引き起こす恐れがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0006】
種々の態様は、能動騒音低減(ANR)デバイス、並びに能動騒音低減(ANR)用の関連するオーディオデバイスと方式を含む。ある特定の場合では、ANRデバイスは適応ゲイン型である。
【0007】
幾つかの特定の態様において、方法は、能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンのフィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれた音声を表す入力信号を受信することと、エラー測定センサによって取り込まれた音声を表すエラー信号を受信することと、ある周波数範囲にわたってノイズ信号を低減するように構成されたアンチノイズ信号を生成することと、更に、上記エラー信号に基づいて、上記周波数範囲にわたって、上記入力信号、又は上記アンチノイズ信号の少なくとも1つにゲインを適用することとを含み、上記ゲインは、フィルタリングされたフィードフォワード信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記アンチノイズ信号をフィルタリングすること、及びフィルタリングされたエラー信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記エラー信号をフィルタリングすることと、上記エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することと、更に、上記フィルタリングされたエラー信号と上記フィルタリングされたフィードフォワード信号との相関と、上記エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与とに基づいて、上記ゲインを決定することとにより、計算される。
【0008】
幾つかの特定の態様において、能動騒音低減(ANR)デバイスは、能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンのフィードフォワードマイクロフォンによって取り込まれた音声を表す入力信号を受信するフィードフォワード入力部と、エラー測定センサによって取り込まれた音声を表すエラー信号を受信するゲイン制御ブロックと、ある周波数範囲にわたってノイズ信号を低減するように構成されたアンチノイズ信号を生成するANRフィルタとを含み、上記ゲイン制御ブロックは、上記エラー信号に基づいて、上記周波数範囲にわたって、上記入力信号、又は上記アンチノイズ信号の少なくとも1つにゲインを適用するように構成され、上記ゲイン制御ブロックは、上記ゲインを、フィルタリングされたフィードフォワード信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記アンチノイズ信号にバンドパスフィルタを適用すること、及びフィルタリングされたエラー信号を生成するために上記周波数範囲にわたって上記エラー信号に上記バンドパスフィルタを適用することと、上記エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することと、更に、上記フィルタリングされたエラー信号と上記フィルタリングされたフィードフォワード信号との相関と、上記エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与とに基づいて、上記ゲインを決定することとにより、計算する。
【0009】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0010】
ある特定の実装形態において、エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することは、ゲインを決定する前に推定器フィルタによって実行される。
【0011】
特定の場合において、エラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定することは、アンチノイズ信号に適用される推定されたシステム伝達関数(Gsd)を使用して計算され、アンチノイズ信号はANRフィルタによって生成される。
【0012】
幾つかの態様において、推定されたシステム伝達関数(Gsd)は、測定された伝達関数成分に基づく推定値である。
【0013】
ある特定の実装形態において、フィルタリングはバンドパスフィルタを使用して実行される。
【0014】
特定の場合において、予め定められ、約50ヘルツ(Hz)~約800Hzに等しい周波数範囲にわたって、バンドパスフィルタを適用する。
【0015】
幾つかの態様において、アンチノイズ信号及びエラー信号の位相は、閾値未満で変化する。
【0016】
特定の実装形態において、この方法は、過負荷制御調整、自己音声検出調整、音楽再生モード調整、アウェアモード調整、又は通信モード調整の少なくとも1つに基づいて、ゲインを変更することも、更に含む。
【0017】
ある特定の場合では、アンチノイズ信号は、アンチノイズ信号を生成するためのフィルタ係数の固定セットを持つANRフィルタによって生成される。
【0018】
幾つかの態様において、ANRフィルタには、アンチノイズ信号を生成するための電圧制限がある。
【0019】
特定の場合において、ゲインには、入力信号又はエラー信号の期待値に基づく上限がある。
【0020】
ある特定の実装形態において、この方法は、決定されたゲインがANRヘッドフォンの装着感に起因する閾値を超えたことに応答して、装着感を調整するためのインジケータをANRヘッドフォンのユーザに送信することも、更に含む。
【0021】
幾つかの態様において、この方法は、決定されたゲインが、ANRヘッドフォンの頭部での使用に起因する閾値から逸脱することに応答して、ANRヘッドフォンの電源を切ること、又はANRヘッドフォンをスタンバイモードに切り替えることの少なくとも1つを、更に含む。
【0022】
特定の場合において、ゲインは、当該周波数範囲のみにわたってゲインを計算するように構成されたゲイン制御ブロックによって計算される。
【0023】
幾つかの態様において、ゲイン制御ブロックは、ANRヘッドフォンの電力消費を軽減するよう、アンチノイズ信号及びエラー信号をダウンサンプリングする。
【0024】
特定の場合において、エラー測定センサは、ANRヘッドフォンにおけるフィードバックマイクロフォンを含み、この方法は、ANRフィルタにおいて、フィードバックマイクロフォンによって検出されたフィードバック信号に基づいてゲインを調整することも、更に含む。
【0025】
ある特定の実装形態において、ANRヘッドフォンは、インイヤー型オーディオデバイス、又はアラウンドイヤー型オーディオデバイスである。
【0026】
幾つかの場合において、ANRデバイスは、ゲインを決定する前に、フィルタリングされたエラー信号へのフィードフォワード経路の寄与を推定するように構成された推定器フィルタも更に含み、フィルタリングされたエラー信号へのフィードフォワード経路の寄与の推定値は、ANRフィルタによって生成されたアンチノイズ信号に適用される推定されたシステム伝達関数(Gsd)を使用して計算され、システム伝達関数(Gsd)の振幅は、測定された伝達関数成分に基づく推定値である。
【0027】
特定の実装形態において、ゲイン制御ブロックは、当該周波数範囲のみにわたってゲインを計算し、電力消費を軽減するために、アンチノイズ信号及びエラー信号をダウンサンプリングするように構成されている。
【0028】
幾つかの態様において、ANRデバイスは、ANRフィルタに結合するプロセッサも更に含み、上記プロセッサは、a)決定されたゲインがANRヘッドフォンの装着感に起因する閾値を超えたことに応答して、装着感を調整するためのインジケータをANRヘッドフォンのユーザに送信すること、あるいは、b)決定されたゲインが、ANRヘッドフォンの頭部での使用に起因する閾値から逸脱すること、の少なくとも1つに応答して、ANRヘッドフォンの電源を切ること、又はANRヘッドフォンをスタンバイモードに切り替えることの少なくとも1つを、実行するように構成される。
【0029】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される2つ以上の特徴は、本明細書に具体的に記載されていない実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0030】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において記載される。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】種々の実装形態に係るインイヤー型能動騒音低減(ANR)ヘッドフォンを示す図である。
【
図3】種々の実装形態に係るヘッドフォン内のANRデバイスの一部のブロック図である。
【
図4】種々の実装形態に係るプロセスを例解する流れ図である。
【
図5】種々の実装形態に係るゲイン制御ブロックのブロック図である。
【
図6】種々の実装形態に係るANRデバイスに関する例示の周波数応答と振幅応答を例解するグラフ図である。
【
図7】種々の実装形態に係るヘッドフォン内のANRデバイスの一部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
様々な実装形態の図面は必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図するものであり、したがって、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号付けは、図面間の同様の要素を表す。
【0033】
本明細書で述べるとおり、本開示の種々の態様は、全般に、オーディオデバイスにおける能動騒音低減(ANR)に関する。より具体的には、本開示の態様は、オーディオデバイスにおけるANR用の適応ゲイン型方式に関する。
【0034】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために実質的に同等の構成要素であるとみなされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。
【0035】
本明細書で述べるとおり、従来の固定フィードフォワードコントローラ型のANRデバイスは、装着感のばらつき、並びに、様々なユーザによる使用が原因で生じる性能劣化という問題を抱えている。例えば、ある特定のフォームファクタ(例えば、インイヤー型オーディオデバイス、又はオンイヤー型オーディオデバイス)において、ユーザ間のばらつきが、所与のユーザのグループ内で許容できない性能劣化を引き起こす恐れがある。
【0036】
従来のANRデバイス及び方式と比較して、様々な実装形態には、(例えば、様々な装着感にわたって)ユーザのグループのノイズ低減を改善させる周波数範囲にわたり、ゲインを入力信号及び/又はアンチノイズ信号に適用するためのANRデバイス及び方式が含まれる。特定の実装形態において、ANRデバイスは、(フィルタリングされた)入力信号にフィードフォワード(FF)経路の寄与を割り当て、割り当てられたフィードフォワード(FF)経路の寄与を考慮に入れて、フィルタリングされたエラー信号とフィルタリングされた入力信号との相関を使用して、ゲインを計算する。
【0037】
能動騒音低減(ANR)デバイスは、様々な信号伝達トポロジ及びフィルタ構成を実装するために使用することができる構成可能なデジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)を含むことができる。かかるDSPの例は、米国特許第10,580,398号,第8,073,150号及び第8,073,151号に記載されており、これらの開示をそれぞれ、その内容全体を参照によって援用する。米国特許第9,082,388号を、参照によりその内容全体を本明細書で援用するが、同特許では、
図1で見られるように、インイヤー型アクティブノイズ低減(ANR)ヘッドフォンの音響的な実装形態について、述べている。このヘッドフォン100は、フィードフォワードマイクロフォン102と、フィードバックマイクロフォン104と、出力トランスデューサ106(電気音響トランスデューサ又は音響トランスデューサとも称する)と、両マイクロフォン102、104及び出力トランスデューサ106に結合して、両マイクロフォン102、104で検出された信号に基づいて、出力トランスデューサ106にアンチノイズ信号を供給するノイズ低減回路(図示せず)とを含む。回路への追加の入力(
図1には示されていない)は、騒音低減信号とは独立して出力トランスデューサ106を介して再生するための、音楽又は通信信号などの追加の音声信号を提供する。
【0038】
ヘッドフォンという用語は、本明細書でヘッドセットという用語と互換的に使用され、インイヤー型、アラウンドイヤー型、又はオーバーイヤー型ヘッドセット、イヤフォン、及び補聴器などの様々な種類の個人用音響デバイスを含む。ヘッドセット又はヘッドフォンは、イヤーバッド又はイヤカップを各耳に含めることができる。イヤーバッド又はイヤカップは、例えば、コード、オーバーヘッドブリッジ若しくはヘッドバンド、又は後方ヘッド保持構造体によって、物理的に互いに繋がれてもよい。幾つかの実装形態では、ヘッドフォンのイヤーバッド又はイヤカップは、無線リンクを介して互いに接続されてもよい。ある特定の実装形態において、ヘッドフォン(複数)は、オンイヤー型、オーバーイヤー型、アラウンドイヤー型、及び/又はオーバーヘッド型のマウント、あるいはフレームを含む。幾つかの場合において、ヘッドフォン(複数)は、1つ以上の位置でユーザの耳に装着される。特定の実装形態において、ANRヘッドフォン100(
図1)は、ユーザの耳及び/又は外耳道入口の内部、上部、又は周囲に音響シールを提供するヘッドフォンである。こうした場合の幾つかにおいて、ANRヘッドフォンは、インイヤー型オーディオデバイス、オンイヤー型オーディオデバイス、又はアラウンドイヤー型オーディオデバイスである。
【0039】
オーディオ等化、フィードバック・ノイズ・キャンセル、フィードフォワード・ノイズ・キャンセルなどの機能を有効化するために、ANRデバイスには様々な信号伝達トポロジを実装できる。例えば、
図2のANRデバイス200の例示のブロック図で見られるように、信号伝達トポロジは、フィードフォワードマイクロフォン102によってピックアップされたノイズ信号の影響を低減するために、出力トランスデューサ106を駆動して、(例えばフィードフォワード補償器112を使用して)アンチノイズ信号を生成する、フィードフォワードノイズ低減経路110を含むことができる。別の例として、信号伝達トポロジは、フィードバックマイクロフォン104によってピックアップされたノイズ信号の影響を低減するために、出力トランスデューサ106を駆動して、(例えば、フィードバック補償器116を使用して)アンチノイズ信号を生成する、フィードバックノイズ低減経路114を含むことができる。信号伝達トポロジはまた、出力トランスデューサ106を介して再生するための、音楽又は通信信号などの入力音声信号108を処理するための回路(例えば、イコライザ120)を含む音声経路118も含むことができる。
【0040】
種々の実装形態において、オーディオ再生(例えば、電話モードなどの双方向通信、及び/又は音楽/エンターテイメント再生)は、ANRデバイスのゲイン制御の所望の挙動に影響を与える可能性がある。本明細書で述べるとおり、オーディオ再生中のゲイン制御の方式には、適応レートパラメータを調整すること、適応ゲインを所与の状態でフリーズ(一時停止)すること、且つ/又はデフォルト(例えば、公称)ゲイン値に戻すことが含まれてもよい。こうした方式は、ANRデバイスがヒアスルー(外音取り込み)モード、又は「アウェア」モードで動作している場合でも使用可能であり、これにより、周囲の音響信号(ノイズ、他のユーザの声など)は、ある特定のANR機能が無効化されているか、あるいは、軽減されている場合と同様、デバイストランスデューサを通じて再生される。理解すべき点として、ヒアスルーモード、又は「アウェア」モードを含む、複数の動作モードにおいて、ユーザ自身の声の検出によって生じる音響的な「オクルージョン」効果を低減するために、フィードバックループはアクティブなままである。
【0041】
大抵の動作条件の間、ANRデバイスが低減しようとする音響ノイズエネルギーは、システムハードウェアを容量内に保つのに十分小さい。しかし、状況によっては、フィードフォワードマイクロフォン又はフィードバックマイクロフォンによってピックアップされた離散的な音響信号又は低周波数の圧力外乱(例えば、大きな音、バンという音、ドアを強く閉める音など)は、これにより生じるノイズを低減しようとして、ノイズ低減回路が電子機器又は出力トランスデューサ106の容量を超過させる原因となり、それによって、一部のユーザが不快と感じ得る可聴アーチファクトを生じさせる。これらの条件は、本明細書では過負荷条件と呼ばれ、例えば、増幅器のクリッピング、音響ドライバ又はトランスデューサの厳格な可動域限界、又は発振を引き起こすような音響応答の著しい変化をもたらす可動域のレベルによって現れ得る。過負荷状況の問題は、インイヤー型ヘッドフォンなどの小型フォームファクタANRデバイスにおいて特に有意であり得る。例えば、低周波数の圧力外乱(例えば、バスが窪みを乗り越える音、ドアを強く閉める音、飛行機の離陸音など)を補償するために、フィードフォワード補償器112は、音響トランスデューサ106が対応する物理的可動域限界を超えるように要求する信号を生成することができる。音響漏れにより、所与の圧力を生み出すための変動又はドライバ変位は、典型的には、周波数の減少と共に増加する。例えば、特定の音響トランスデューサを1mm変位させて、100Hzノイズのためのアンチノイズ信号を生成し、2mm変位させて、50Hzノイズのためのアンチノイズ信号を生成する必要などがあり得る。多くの音響トランスデューサ、特に小型フォームファクタのANRデバイスで使用される小型トランスデューサは、そのような大きな変位を物理的に生成することができない。かかる場合において、補償器が求める高い変位の要件は、トランスデューサに可聴アーチファクトを引き起こさせる音を発生させ、不快なユーザ体験の一因となることがある。可聴アーチファクトには、振動、潜在的に不快な過渡音(例えば、「ドスンという音」、「割れる音」、「破裂する音」、又は「カタカタという音」)、あるいは、パチパチ/ブンブンという音が含まれる。
【0042】
図3は、種々の開示の実装形態に係る、一例示のANRデバイス300を示す。本明細書で述べるように、ANRデバイス300は、
図2で図示されたノイズ低減経路の1つ以上、例えば、フィードフォワードノイズ低減経路110において実装されてもよい。更に、
図3では図示されていないが、ANRデバイス300は、複数のフィードフォワードマイクロフォン(例えば、フィードフォワードマイクロフォン102)を備えるシステム、例えば、1つ以上のフィードフォワードノイズ低減経路において実装することができる。本明細書で述べるように、ANRデバイス300は、性能を拡張させるために、ある周波数範囲にわたって入力信号及び/又はアンチノイズ信号に適用されるゲインを制御するように構成される。ANRデバイス300は、固定コントローラ(すなわち、フィルタ係数の固定セット)を使用して、本明細書で述べる機能を実行するように構成され、これにより、処理及び/又は消費電力が軽減される。
【0043】
種々の実装形態において、
図2に関して説明したように、ANRデバイス300は、フィードフォワードマイクロフォン102及び電気音響トランスデューサ106に接続されている。ある特定の場合では、ANRデバイス300は、ユーザの外耳道内、又は外耳道周囲からの音声信号を検出するように構成されたエラー測定センサ(EMS)302に接続する。ある特定の場合では、EMS302は1つ以上のマイクロフォンを含む。特定の場合において、EMS302は、フィードバックマイクロフォン104(
図2)を含む。種々の実装形態において、外部ノイズもEMS302で検出される(図示のノイズ信号経路N
so)。
【0044】
ANRデバイス300は、EMS302によって取り込まれた音声を表すエラー信号306を受信するゲイン制御ブロック304も含む。ゲイン制御ブロック304は、ANRフィルタ310からアンチノイズ信号(K
ncout)308を受信するよう、更に構成されている。種々の実装形態において、ANRフィルタ310は、
図2で図示、例解されるK
ff112と同様のフィードフォワード補償器(又は、コントローラ)を含む。ある特定の場合では、フィードフォワード補償器は、-N
so/G
sdの周波数応答を持つことが理想的である(現実的には、これは必ずしも実現されない)。本明細書で述べるとおり、フィルタリングされた信号(アンチノイズ信号308)が出力トランスデューサ106を通過すると、耳(又はEMS302などのエラーセンサ、又はフィードバックマイクロフォン)での音響信号がキャンセルされるよう、フィードフォワード補償器は、外部フィードフォワードマイクロフォン102で受信された入力信号314をフィルタリングする。
【0045】
ANRフィルタ310は、有限インパルス応答(FIR)フィルタとして、無限インパルス応答(IIR)フィルタとして、あるいは、2つ以上のFIRフィルタ及び/又はIIRフィルタの系列として、実装することができる。ANRフィルタ310は、フィードフォワードマイクロフォン102によって取り込まれた音声(例えば、外部ノイズ312)を表す入力信号314を受信するフィードフォワード入力部を有する。ANRフィルタ310は、ある周波数範囲、例えば、規定された周波数範囲にわたって、ノイズ信号(例えば、外部ノイズ312)を低減するように構成されたアンチノイズ信号308を生成する。種々の実装形態において、ANRフィルタ310には、アンチノイズ信号308を生成するためのフィルタ係数の固定セットがある。ある特定の場合では、ANRフィルタ310には、アンチノイズ信号308を生成するための電圧、又は振幅の制限がある。
【0046】
本明細書で記載されるように、ゲイン制御ブロック304は、エラー信号306及びアンチノイズ信号308に基づいて、当該周波数範囲にわたって、入力信号314及び/又はアンチノイズ信号308にゲイン316を適用するように構成される。種々の実装形態において、ゲイン制御ブロック304は、ゲイン制御要素318への信号入力を制御することによって、ゲイン316を適用するように構成されている。ゲイン制御要素318は、フィルタゲイン316に従って、ANRフィルタ310の出力を増幅、且つ/又は減衰させるように構成することができる。フィルタゲイン316は、線形ゲインファクタ又は対数ゲインファクタとして、あるいはゲインファクタへの線形変更又は対数変更として、適用することができる。幾つかの場合において、ゲイン制御要素318は、乗算器(例えば、プロセッサ320内)として、トランスデューサ106へのフィードフォワード信号流路内の可変ゲイン増幅器(VGA)として、あるいは、フィードフォワードマイクロフォン102の信号流路内で実装される。
【0047】
図4は、ゲイン316を計算する際(
図3)、ゲイン制御ブロック304によって実行される処理を例解する流れ図を示す。
図5では、
図4で例示した処理を実行するゲイン制御ブロック304の部分構成要素を例示している。種々の実装形態において、ゲイン制御ブロック304は、以下を実行するように構成される:
プロセス401A:ある周波数範囲にわたって、ANRフィルタ310からのアンチノイズ信号308をフィルタリングして(
図5のフィルタ502によって)、フィルタリングされたフィードフォワード信号504を生成する、更に、
プロセス401B:この周波数範囲にわたって、エラー信号306をフィルタリングして(
図5のフィルタ506によって)、フィルタリングされたエラー信号508を生成する。ある特定の実装形態において、アンチノイズ信号308及びエラー信号306は同時に、あるいはほぼ同時に上記周波数範囲にわたって、フィルタリングされる。他の実装形態において、プロセス401A及びプロセス401Bは、任意の順序で逐次的に実行される。本明細書で述べるとおり、種々の実装形態において、アンチノイズ信号308及びエラー信号306は、同じ周波数範囲にわたってフィルタリングされる。ある特定の実装形態において、フィルタ502及びフィルタ506は、同一、あるいは実質的に同一のフィルタ構成要素である。他の場合では、フィルタ502及びフィルタ506は別個の構成要素である。種々の実装形態において、少なくとも1つのフィルタ502及びフィルタ506は、バンドパスフィルタを含む。特定の場合において、フィルタ502及びフィルタ506の双方が、バンドパスフィルタを含む。幾つかの特定の場合では、例えば、ヘッドフォン100の設計に基づき、予め定められた周波数範囲にわたって、バンドパスフィルタを適用する。ある特定の場合では、周波数範囲は、ヘッドフォン100の種類、例えば、オンイヤー型と比較したインイヤー型に基づいて予め定められる。幾つかの例示の実装形態によると、周波数範囲は約50ヘルツ(Hz)~約800Hzに等しい。種々の実装形態において、バンドパスフィルタ(複数)の周波数範囲は、サンプル・データ・セット(例えば、(n)個のヘッドセット及びユーザのサンプル)について測定されたG
sdの周波数の関数とする位相変動によって、決定される。ある特定の場合では、バンドパスフィルタリング用の周波数閾値(複数)/範囲(複数)は、当該データセットと相関する標準偏差、及び/又は当該データセットに相関する最小/最大値に基づいている。幾つかの場合において、アンチノイズ信号308及びエラー信号306の位相は、公称応答からある閾値、例えば、±90度未満で変化する。ある特定の場合では、アンチノイズ信号308及びエラー信号306の位相は、公称応答から±90度を大きく下回って変化する。周波数範囲及び位相変動は、試験対象者のセットからの統計的平均値、及び/又は中央値に基づいており、フィルタ502及びフィルタ506による適用に備えて、格納することができる。更に、周波数範囲と位相変動は、試験対象者データの変更、及び/又は追加に応じて、更新されるように構成されてもよい。
【0048】
フィルタリング(プロセス401A、B)に続いて、プロセス402において:制御ブロック304は、以下を実行する:
プロセス402:エラー信号306へのフィードフォワード経路の寄与を(キャンセル経路推定器フィルタ又はプラント推定器フィルタとも称される、推定器フィルタ510により)推定する。つまり、キャンセル経路推定器フィルタ510(
図5)は、ゲイン制御要素318を通過して、トランスデューサ106で出力されるアンチノイズ信号308に基づいて、EMS302に到達する信号を推定する。種々の実装形態によると、エラー信号306へのフィードフォワード経路の寄与を割り当てることは、(ANRフィルタ310によって生成された)アンチノイズ信号308に適用される推定されたシステム伝達関数(G
sd)を使用して、実行される。当該技術分野で知られるように、推定されたシステム伝達関数(G
sd)は、測定された伝達関数成分に基づく推定値である。つまり、本明細書で述べるように、ゲイン制御ブロック304(例えば、キャンセル経路推定器フィルタ510)は、システム伝達関数(G
sd)を推定するように構成されており、これは、測定された伝達関数成分に基づいて計算される量である。実験室環境では、ノイズ又は他の音声がない状態、つまり、ANR機能が動作していない状態で、ドライバ信号(電圧)とフィードバックマイクロフォン信号(電圧)との間の伝達関数を計算することによって、このシステム伝達関数(G
sd)を測定することができる。しかし、実用上、ウェアラブル・オーディオ・デバイスでは、ANR機能が使用されることが多いので、システム伝達関数(G
sd)を直接測定することは困難である。したがって、本明細書で述べるシステム伝達関数(G
sd)は、他の測定された伝達関数成分に基づいて推定された関数であることに、留意されたい。この「システム伝達関数(G
sd)」は、伝達関数の測定値とは異なるため、本明細書ではこのように表記する。
プロセス403:フィルタリングされたエラー信号508とフィルタリングされたフィードフォワード信号504との相関と、エラー信号への割り当てられたフィードフォワード経路の寄与(+FF経路割り当て)とに基づいて、ゲインを決定する(例えば、
図5のゲイン計算機512による)。
【0049】
本明細書で述べるとおり、種々の実装形態において、ゲイン計算機512は、フィルタリングされたエラー信号508とフィルタリングされたフィードフォワード信号504との相関と、割り当てられたフィードフォワード経路(+FF経路)の寄与とに基づいて、ゲイン316を決定するように構成される。ある特定の場合では、ゲイン計算機512は、最小平均二乗(LMS)アルゴリズムを含むか、あるいは、これを適用して、ゲインを経時的に更新する。ある特定の場合では、ゲイン計算機512は、ゲインを反復的に更新し、例えば、以前のゲイン値に加算されるデルタ(又は、増分)を計算する。更新の種類には、標準、正規化、符号などがある。ある特定の実施例では、ゲインの式は、g(n+1)=g(n)+F(u(n),e(n))で表され、式中、u(n)はフィードフォワード経路の寄与(+FF経路)であり、e(n)はフィルタリングされたエラー信号508である。LMSフィルタリングに関する特定の実施例は、2017年に出版された「Variants of LMS algorithm」に関するメルビンヒックの講義(Lecture 5)で開示されており、その内容の全体を参照により本明細書で援用し、以下で閲覧することができる:
https://www.cs.tut.fi/~tabus/course/ASP/SGN2206LectureNew5.pdf
【0050】
ある特定の実装形態において、ゲイン316は、周波数範囲、例えば、約50ヘルツ(Hz)~約800Hzの予め定められた周波数範囲のみにわたって、計算される。幾つかの場合において、ゲイン制御ブロック304は、ヘッドフォン100の電力消費を軽減するよう、アンチノイズ信号308及びエラー信号306をダウンサンプリングする。つまり、ゲイン制御ブロック304は、様々な実装形態において、アンチノイズ信号308及びエラー信号306をサンプリングレートよりも低いレートで処理し、後の使用に備えて、リソース(例えば、電力)を節約するように構成される。
【0051】
本明細書で述べるとおり、ゲイン316には上限(最大値)があってもよい。この上限は、ANRヘッドフォンの物理的制限及び/又はシステム上の制限、例えば、システム安定性の制約に基づいてもよく、且つ/又はFFマイクロフォン102が塞がれたり、あるいは損傷したりした場合の不所望なシステム挙動を制御するように、基づいてもよい。ある特定の実装形態において、例えば、本明細書で記載される等の過負荷事象に対処するために、過負荷制御調整に基づいて、ゲイン316を変更するよう、ゲイン制御ブロック304を構成する。例えば、実用上、ドライバ106に印加される電圧、又はドライバ106の機械的変位は全て、「クリッピング」、あるいは他の歪み(本明細書で述べる)を引き起こさずに、超えることのできない最大振幅を含む。かかる「クリッピング」、あるいは他の歪みを防止するために、ゲイン制御ブロック304は、フィードフォワードアンチノイズ信号308及び/又はドライバ106に送られる全出力信号がある閾値(例えば、クリッピング及び/又は歪みと相関する閾値)を超えることを検出したことに応答して、ゲイン316を制限又は低減するよう、構成されてもよい。こうした場合において、ゲイン制御ブロック304は、フィードフォワードアンチノイズ信号308及び/又はドライバ106への計算された出力信号(計算されたゲイン316及びフィードフォワードアンチノイズ信号308に基づく)を、ゲイン制御要素318にゲイン316を割り当てる前の閾値と比較するように構成されてもよい。付加的、又は代替え的な場合において、ゲイン制御ブロック304は、検出された過負荷事象を調整する独立したゲイン制御要素/要素(複数)を含むことができる。こうした場合の幾つかにおいて、ゲイン制御ブロック304は、フィードフォワードアンチノイズ信号308及び/又は計算された出力信号が、過負荷事象を示す閾値から逸脱していると決定することに応答して、ゲイン制御要素318に追加の(別個の)ゲインを適用する。幾つかの場合では、ゲイン制御ブロック304は、本明細書に記載の一次ゲイン制御機能と並行して、過負荷ゲイン制御を実行するように構成されており、ある特定の場合では、過負荷イベントの検出に応答して、一次ゲイン制御機能を無効化、あるいは中断することができる(過負荷ゲイン制御トポロジを厳密に使用して、ゲイン制御要素318の制御を有効化する)。かかる並列補償の例は、米国特許第10,580,398号(上述のとおり、参照により本明細書で援用されている)に記載されている。
【0052】
ある特定の実装形態において、
図3のファントムで見られるように、ゲイン制御ブロック304及び/又はANRデバイス300は、プロセッサ(PU)320を含むか、あるいは、決定されたゲイン316に基づいて、追加のデバイス機能を制御するように構成されたプロセッサ320(例えば、ヘッドフォン100内の中央プロセッサ)と結合している。例えば、ある特定の場合では、プロセッサ320は、決定されたゲイン316がある特定閾値から逸脱するか、又は超えることに応答して、機能を実行するように構成される。特定の実施例において、決定されたゲインがANRヘッドフォン100の装着感に起因する閾値を超えたことに応答して、プロセッサ320は、装着感を調整するためのインジケータをANRヘッドフォン100のユーザに送信するように構成される。例えば、ある特定の場合では、ゲインの値は、不所望な量の音響漏れがユーザの外耳道入口周囲のシールに存在することを示す。こうした場合において、外耳道入口をより密閉するために、ユーザに装着感を調節させると有益となり得る。特定の場合において、プロセッサ320は、例えば、ANRヘッドフォン100上、又はこのヘッドフォンに接続された任意のインターフェイス(例えば、振動などの触覚インターフェイスインジケータ、接続されたスマートデバイス上のディスプレイ内のメッセージ、あるいはドライバ106での出力などの音声通知)を介して、装着感の問題のインジケータをユーザに送信するように構成される。
【0053】
更に進んだ実施形態において、決定されたゲイン316が、ANRヘッドフォン100の頭部での使用に起因する閾値から逸脱することに応答して、ヘッドフォン100の電源を切る、且つ/又はANRヘッドフォン100をスタンバイモードに切り替えるように、プロセッサ320を構成できる。例えば、頭部での使用に起因する閾値は、ANRヘッドフォン100がユーザの頭部に装着されていることを示すことができる。ゲイン316が当該閾値から外れたことに応答して、プロセッサ320は、ANRヘッドフォン100がユーザの頭部にないものと、結論づける。こうした場合において、プロセッサ320は、ヘッドフォン100を1つ以上のスタンバイモードに(例えば、徐々に)切り替えることが可能であり、幾つかの場合では(例えば、待機期間の後)、ANRヘッドフォン100の電源を切る。更なる場合において、プロセッサ320は、例えば、頭部外事象を検出した後、ANRヘッドフォン100がユーザの頭部上にあるかどうかを検出したことに応答して、アクション(例えば、再生の再開、あるいは、ANRフィルタの起動)を取るよう、構成されてもよい。頭部上から頭部外への変化、並びにその逆方向の変化の検出に応答して実行可能なアクションを含む、プロセッサ(例えば、プロセッサ320)の構成要素及び機能に関する追加の例は、米国特許第10,462,551号で見られ、参照により、同特許の全体を援用する。
【0054】
他の場合では、プロセッサ320は、異なるユーザによる適用のためのカスタムフィードバック、及び/又はフィードフォワードANRフィルタを格納することができる。こうした場合において、格納されたゲインの値又は範囲は、特定ユーザに起因し、特定ユーザ(複数)が現在ANRヘッドフォン100を装着しているかどうかを判断するために使用することができる。計算されたゲイン316が格納されたゲインの値及び/又は範囲に対応することに応答して、プロセッサ320は、検出されたユーザに関する1つ以上のANR設定を更新する。
【0055】
ある特定の追加の実装形態において、ゲイン制御ブロック304は、例えば、自己音声検出調整、音楽再生モード調整、アウェアモード調整、又は通信モード調整を含む、ヘッドフォン100の1つ以上の動作モード及び/又は機能に基づいて、ゲイン316を変更するように構成される。例えば、ヘッドフォン100の動作モード及び/又は機能を検出し、対応するゲイン制御調整を有効化するよう、プロセッサ(例えば、
図3のPU320)を構成することができる。幾つかの例示の実装形態において、ユーザが会話中であることを検出したことに応答して(例えば、参照により内容全体が援用されている、米国特許第9,620,142号での記載などの従来型自己発話検出技術によって)、プロセッサ(例えば、PU320)は、ANRデバイス300のゲイン制御機能を一時停止、又は無効化する(例えば、ゲイン制御ブロック304を無効化又は一時停止する)。更に進んだ例示の実装形態において、音楽再生が行われていることを検出することに応答して(例えば、プロセッサ320に結合されたオーディオ再生コントローラ及び/又は回路を介して)、プロセッサは、音楽再生レベル及び/又は検出された外部ノイズレベルに基づいて、ゲイン更新を変調する(例えば、ゲイン制御ブロック304を介して)。追加の例示の実装形態において、アウェアモードが有効化されていることを検出することに応答して(例えば、プロセッサ320の制御により、ANR機能が無効化されているか、あるいは軽減されている場合と同様、ノイズ、他のユーザの声などの周囲の音響信号が、デバイストランスデューサ(複数)106を介して再生される)、プロセッサ(例えば、PU320)は、ANRデバイス300のゲイン制御機能を一時停止又は無効化する(例えば、ゲイン制御ブロック304を無効化又は一時停止する)、且つ/又は公称ゲイン(例えば、1.0)まで戻す。更に進んだ例示の実装形態において、通信モードが行われていることを検出することに応答して(例えば、WiFi、電話など、プロセッサ320に結合されたコントローラ及び/又は回路を介して)、プロセッサは、ANRデバイス300のゲイン制御機能を一時停止又は無効化する(例えば、ゲイン制御ブロック304を無効化又は一時停止する)、且つ/又は公称ゲイン(例えば、1.0)まで戻す。
【0056】
図6は、4人の異なるユーザ(被験者)に関するANRフィルタの理想的な振幅(dB)及び周波数応答の一例の描写を例解するグラフ600である。この例で見られるように、こうしたユーザの理想的な応答は、特定の周波数範囲、例えば、約50Hz~約800Hzにわたって同じような形状をしている。応答形状の類似性から、ゲインを調整すると、振幅曲線が互いに重なる(又は、ほぼ重なる)ことが示されている。例示のユーザのこのグループのフェーズも、緊密にグループ化されている。したがって、本明細書で示され、述べられているANRデバイス300と同様のANRデバイスは、ゲイン調整を効果的に使用して、ユーザのグループ全体にわたってシステム応答の振幅を揃えることができるので、デバイスの装着感の違いによる不所望なばらつきを軽減することができる。
【0057】
図7は、
図3の信号伝達トポロジを例示しているが、検出された減衰ノイズ信号704(つまり、減衰フィルタN
soを通じて処理された外部ノイズ312)に基づいて、ドライバ106への出力を変更するためのフィードバックフィルタ(コントローラ)702が追加されている。幾つかの場合では、減衰された外部ノイズ704は、EMS302(例えば、フィードバックマイクロフォン又はエラーマイクロフォン)で検出される。他の場合では、外部ノイズ312及び/又は減衰ノイズ信号704は、フィードバック(FB)ループの一部ではない別個のセンサによって検出される。更に、
図7は、ゲイン制御要素318とトランスデューサ106との間に離散加算ブロック(SB)706を含む、実装形態も例示している。フィードバックフィルタ702は、
図2で示したフィードバック経路114と同様、フィードバック信号伝達トポロジに存在する。ある特定の実装形態において、フィードバックフィルタ702が存在する場合、アクティブフィードバックシステムでフィードフォワード経路の寄与を推定するために、推定器フィルタ510(
図5)に対する変更が必要になることがある。ある特定の場合では、加算ブロック706は、信号をトランスデューサ106に出力する前に、調整されたアンチノイズ信号308(ゲイン316の適用後)をフィードバックフィルタ702からの出力と合算するように構成される。
【0058】
いずれの場合でも、従来のデバイスと比較して、本明細書で示され、述べられるANRデバイスは、固定フィルタ係数を使用することにより、(例えば、様々な装着感にわたって)ユーザのグループに対するノイズ低減を改善させるように構成される。こうしたANRデバイスは、電力と処理リソースを節約しながら、周囲のノイズ状況の変化に対して、効率的に対応することができる。
【0059】
本明細書で述べるとおり、ANRデバイス300は、様々な実施形態に従って処理を実行するための1つ以上の回路構成要素を含むことができる。ある特定の場合では、ANRデバイス300は、音響出力を生成するための1つ以上の信号に関するゲインを調整するプロセッサ及び/又はロジックエンジンと結合する制御回路を含む。幾つかの特定の場合において、制御回路は、ヘッドセットの片方又は両方のイヤピースに含まれ、本明細書で述べる機能を実行するためのコマンドをロジックエンジンから受信する。更なる場合において、ロジックエンジンが、ANRヘッドフォンのイヤピースに対して遠隔、例えば、スマートフォン、スマートウォッチ、ウェアラブル・スマート・デバイスなどの接続されたスマートデバイス内、あるいはANRヘッドピース(図示せず)の通信構成要素を介してアクセス可能なクラウドベースのロジックエンジン内に配置される。
【0060】
ANRデバイス300のコントローラ(複数)は、メモリ又は二次ストレージデバイス(例えば、大容量ストレージデバイス)に格納された命令を含む、命令(例えば、ソフトウェア)を実行することができる。ANRデバイス300内のコントローラ(複数)は、個別の複数のアナログプロセッサ及びデジタルプロセッサを含むチップのチップセットとして実装されてもよい。ANRデバイス300内のコントローラでは、例えば、ユーザインターフェイスの制御、ANRヘッドピース内の追加の電子機器によって実行されるアプリケーション、並びに、ANRヘッドピースによるネットワーク通信など、ANRヘッドピース内の他の構成要素の調整が可能である。ANRデバイス300のコントローラは、接続されたディスプレイ及び/又は従来のユーザ入力インターフェイスを通じた、ユーザとの通信を管理することができる。
【0061】
様々な実装形態では、「連結された」と記載される電子構成要素は、これらの電子構成要素が互いにデータを通信することができるように、従来の有線及び/又は無線手段を介してリンクさせることができる。更に、所与の構成要素内の下位構成要素は、従来の経路を介してリンクされていると考えることができるが、必ずしも図示されない。
【0062】
本明細書において値に関して使用される「約」という用語は、例えば数パーセント以下の、絶対値からの公称変動を割り当てることができる。当該文脈によって明示的に限定されない限り、「信号」という用語は、本明細書では、電線、バス、又は他の伝送媒体上で表されるメモリ位置(又は、メモリ位置のセット)の状態を含む、通常の意味のいずれかを示すために使用される。当該文脈によって明示的に限定されない限り、「生成する」という用語は、本明細書では、計算する、あるいは、本来であれば生成するなど、通常の意味のいずれかを示すために使用される。当該文脈によって明示的に限定されない限り、本明細書において、「計算する」という用語は、計算する、評価する、平滑化する、及び/又は複数の値から選択するなど、通常の意味のいずれかを示すために使用される。当該文脈によって明示的に限定されない限り、「取得する」という用語は、計算する、導出する、受信する(例えば、外部デバイスから)、及び/又は検索する(例えば、記憶素子配列から)など、通常の意味のいずれかを示すために使用される。本明細書及び特許請求の範囲において、「含む」という用語が使用されている場合、これは他の要素又は操作を除外するものではない。用語「~に基づく」(「AはBに基づく」のような)は、(i)「~に少なくとも基づく」(例えば、「Aは少なくともBに基づく」)、並びに特定の文脈において適切であれば、(ii)「~に等しい」(例えば、「AはBに等しい」)の場合を含む、通常の意味のいずれかを示すために使用される。同様に、「~に応答して」という用語は、「~に少なくとも応答して」を含む、通常の意味のいずれかを示すために使用される。
【0063】
別途指示がない限り、特定の特徴を有する装置の操作に関する開示は、類似の特徴を有する方法(並びに、その逆)を開示することも明示的に意図しており、更に、特定の構成に従った装置の操作に関する開示は、類似の構成に従った方法(並びに、その逆)を開示することも明示的に意図している。「構成」という用語は、その特定の文脈によって指示される方法、装置、及び/又はシステムに関して、使用することができる。特定の文脈により別途指示がない限り、「方法」、「プロセス」、「手順」、並びに「技術」という用語は、一般的且つ同じ意味で使用される。特定の文脈により別途指示がない限り、「装置」、及び「デバイス」という用語は、一般的且つ同じ意味で使用される。通常、より大きな構成の一部を示すために、「要素」及び「モジュール」という用語を使用する。文献の一部の参照による援用は、当該部分内で参照されている用語又は変数の定義(かかる定義が当該文献の他箇所に記載されている場合)、並びに援用された部分内で参照されている図も取り込むものと理解するものとする。
【0064】
本明細書に記載される機能性又はその部分、及びその様々な修正(以下「機能」)は、少なくとも部分的にコンピュータプログラム製品(例えば、1つ以上のデータ処理装置(例えば、プログラム可能プロセッサ、コンピュータ、複数のコンピュータ、及び/又はプログラム可能論理構成要素など)の動作による実行のための、又はその動作を制御するための、1つ以上の非一時的機械可読媒体などの情報担体において有形に具現化されたコンピュータプログラム)を介して実装され得る。
【0065】
コンピュータプログラムは、コンパイル型言語又はインタプリタ型言語を含む任意の形態のプログラム言語で書き得るが、それは、独立型プログラムとして、又はコンピューティング環境での使用に好適なモジュール、構成要素、サブルーチン若しくは他のユニットとして含む任意の形態で配設され得る。コンピュータプログラムは、1つのコンピュータ上で、若しくは1つの設置先における複数のコンピュータ上で実行されるように配設され得るか、又は複数の設置先にわたって配信されて、ネットワークによって相互接続され得る。
【0066】
機能の全部又は一部を実装することと関連した動作は、較正プロセスの機能を実施するために1つ以上のコンピュータプログラムを実行する1つ以上のプログラム可能なプロセッサによって、実施され得る。機能の全部又は一部は、特殊目的論理回路、例えば、FPGA及び/又はASIC(application-specific integrated circuit)(特定用途向け集積回路)として実装され得る。コンピュータプログラムの実行に好適なプロセッサとしては、例として、汎用マイクロプロセッサ及び特殊目的マイクロプロセッサの両方並びに任意の種類のデジタルコンピュータの任意の1つ以上のプロセッサが挙げられる。一般的に、プロセッサは、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信することになる。コンピュータの構成要素は、命令を実行するためのプロセッサ並びに命令及びデータを記憶するための1つ以上のメモリデバイスを含む。
【0067】
図面の要素は、ブロック図の個別要素として図示及び説明される。これらの要素は、アナログ回路又はデジタル回路の1つ以上として実装され得る。代替的に、又は追加的に、これらの要素は、1つ以上のマイクロプロセッサがソフトウェア命令を遂行して実装され得る。ソフトウェア命令は、デジタル信号処理命令を含むことができる。動作は、アナログ回路により、又はマイクロプロセッサが、アナログ動作と同等の動作を実行するソフトウェアを遂行することにより実行することができる。信号ラインは、個別のアナログ信号ライン又はデジタル信号ラインとして、別個の信号を処理することができる適切な信号処理を行う個別のデジタル信号ラインとして、及び/又は無線通信システムの要素として実装され得る。
【0068】
ブロック図でプロセスが表現又は示唆されるときに、ステップは、1つの要素又は複数の要素によって実行され得る。これらのステップは、一括して実行される、又は異なる時点で行われ得る。動作を実行する要素は、物理的に同じであり得るか、若しくは互いに近接し得るか、又は物理的に別個であり得る。1つの要素は、1つのブロックよりも多くの動作を実行し得る。オーディオ信号は、符号化される場合又は符号化されない場合があり、デジタル形式又はアナログ形式のいずれかで伝送され得。従来のオーディオ信号処理装置及びオーディオ信号演算処理は、図面から省略されている場合がある。
【0069】
本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。本明細書に記載される異なる実装形態の要素は、上記に具体的に記載されていない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。要素は、本明細書に記載される構造の動作に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される構造から除かれ得る。更にまた、様々な別個の要素は、本明細書に記載される機能を実施するために、1つ以上の個々の要素へと組み合わされ得る。
【符号の説明】
【0070】
100 ヘッドフォン
102 フィードフォワードマイクロフォン
104 フィードバックマイクロフォン
106 出力トランスデューサ
【国際調査報告】