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特表2024-512791ニフェジピンとリドカインとを含む局所用ワイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】ニフェジピンとリドカインとを含む局所用ワイプ
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 31/4422 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240312BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/4422
A61P13/00
A61P17/02
A61P43/00 121
A61K9/70
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/36
A61K47/46
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561034
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 US2022023130
(87)【国際公開番号】W WO2022212892
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】63/169,768
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523374828
【氏名又は名称】スティール セラピューティクス,インク.
【氏名又は名称原語表記】Steel Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】519 South Van Buren Street, Iowa City, IA 52240, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マシュー スタール
(72)【発明者】
【氏名】ロビー シュウェンカー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA71
4C076AA77
4C076BB29
4C076BB31
4C076CC17
4C076CC19
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD41
4C076DD43
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD59
4C076EE09
4C076EE23
4C076EE32
4C076FF34
4C076FF35
4C076FF39
4C076FF43
4C076FF51
4C076FF57
4C076FF68
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC25
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA31
4C086MA32
4C086MA56
4C086MA63
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA19
4C206GA31
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA05
4C206MA51
4C206MA52
4C206MA76
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA10
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZC75
(57)【要約】
本開示は特に、ニフェジピンとリドカインとを含む薬用局所用ワイプを使用した肛門裂溝の治療のための医薬組成物、キット、および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃度で0.15%~7.5重量%のリドカインおよび濃度で0.15%~1.5重量%のニフェジピンを含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプ。
【請求項2】
濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインおよび濃度で少なくとも0.15重量%のニフェジピン、任意選択的に少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインを含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプ。
【請求項3】
濃度で1.5%のリドカインと濃度で0.3%のニフェジピンとを含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプ。
【請求項4】
前記ワイプが少なくとも一つの賦形剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項5】
前記ワイプが抗酸化剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項6】
前記ワイプが保存剤をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項7】
前記賦形剤が、抗酸化剤、浸透促進剤、保存剤、保水剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、可塑剤、界面活性剤、ポリマー、粘度調整剤、軟化剤、フィルム形成剤、テーリング溶媒、共溶媒、および/または油からなる群から選択される、請求項4に記載の局所用ワイプ。
【請求項8】
前記溶液がアルコール溶媒をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項9】
前記ワイプが繊維から作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項10】
前記ワイプが不織布繊維から作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項11】
前記ワイプが織布繊維から作製される、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項12】
前記ワイプが概ね長方形である、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項13】
前記ワイプが、一回限りの使用のために個別に包装される、請求項1~7のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項14】
前記浸透促進剤が、ベンジルアルコール、ジメチルイソソルビド(DMI)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノール、フェノキシエタノール、オレイン酸、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド(MCT)、およびトランスクトールからなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項15】
前記湿潤剤が、プロピレンカーボネート、グリセリン、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、アロエベラジュース、抽出物、ヘキシレングリコール、ヒアルロン酸、および乳酸からなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項16】
前記乳化剤が、ポリソルベート(20~80)、Span-80,PEG-40、水素化ヒマシ油、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポロキサマー、ソルビタン(20~85)、およびモノオレイン酸グリセリル(GMO)からなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項17】
前記界面活性剤が、PEG 400、tween-80、オレイルアルコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項18】
前記抗酸化剤が、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アルファ-トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸スクアレン、パルミチン酸アスコルビル、チオ硫酸ナトリウム、およびメタビス硫酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項19】
前記ポリマーが、カルボマーホモポリマータイプA、BおよびC、カルボマーコポリマー、インターポリマー、ポリカルボフィル、ペムレン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択される、請求項7に記載の局所用ワイプ。
【請求項20】
前記溶液が、水、プロピレングリコール、およびヘキシレングリコールからなる群から選択される溶媒を含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項21】
前記ワイプが、ベンジルアルコール、トランスクトール、プロピレンカーボネート、ポリソルベート80、BHT、PEG400、グリセリン、およびヘキシレングリコールのうちの一つまたは複数をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項22】
前記ワイプが、濃度で少なくとも2%のベンジルアルコールを含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項23】
前記ワイプが、濃度で30~40%のトランスクトール、具体的には濃度で30%、35%、または40%のトランスクトールを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項24】
前記ワイプが、濃度で少なくとも4%のプロピレンカーボネートを含む、請求項1~23のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項25】
前記ワイプが、濃度で少なくとも2%のポリソルベート80を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項26】
前記ワイプが、濃度で少なくとも0.2%のBHTを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項27】
前記ワイプが、濃度で30~60%のプロピレングリコール、具体的には濃度で30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%のプロピレングリコールを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項28】
前記ワイプが、濃度で少なくとも15%のグリセリンを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項29】
前記ワイプが、濃度で少なくとも10%のヘキシレングリコールを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項30】
前記ワイプが、製剤I、製剤II、製剤III、製剤IV、製剤V、および製剤VIからなる群から選択される製剤を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の局所用ワイプ。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の複数の局所用ワイプを含む容器。
【請求項32】
前記容器がソフトパックを含む、請求項31に記載の容器。
【請求項33】
前記容器がハードパックを含む、請求項31に記載の容器。
【請求項34】
請求項1~30のいずれか一項に記載の複数の個別に巻かれた局所用ワイプを含む、キット。
【請求項35】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインおよび濃度で少なくとも0.15重量%のニフェジピンを含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを前記対象の肛門周囲領域に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項36】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で0.15重量%~7.5重量%のリドカインおよび濃度で0.3~1.5重量%のニフェジピンを含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを前記対象の肛門周囲領域に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項37】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で0.15重量%~7.5重量%のリドカインおよび濃度で0.3~1.5重量%のニフェジピンを含む製剤を、前記対象の肛門管から1cm以内の肛門組織に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項38】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインおよび濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンを含む製剤を、前記対象の肛門管から1cm以内の肛門組織に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項39】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインおよび濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンを含む製剤を、前記対象の外肛門括約筋に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項40】
それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法であって、濃度で0.15重量%~7.5重量%のリドカインおよび濃度で0.3%~1.5重量%のニフェジピンを含む製剤を、前記対象の外肛門括約筋に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む、方法。
【請求項41】
濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよび濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインを含む局所用ワイプの製造方法であって、ワイプを提供することと、少なくとも0.3%のニフェジピンおよび少なくとも0.15重量%のリドカインを含む製剤を適用することと、前記ワイプを十分な時間乾燥することと、前記ワイプを気密容器またはパウチに包装することとを含む、方法。
【請求項42】
濃度で0.3~1.5%のニフェジピンおよび濃度で0.15%~7.5%のリドカインを含む局所用ワイプの製造方法であって、ワイプを提供することと、少なくとも0.3%のニフェジピンおよび少なくとも0.15%のリドカインを含む製剤を適用することと、前記ワイプを十分な時間乾燥することと、前記ワイプを気密容器またはパウチに包装することとを含む、方法。
【請求項43】
局所用ワイプを使用する方法であって、前記ワイプが、濃度で少なくとも0.3%のニフェジピンおよび少なくとも0.15%のリドカインの製剤を含み、前記製剤が前記対象の肛門管から1cm以内の外肛門括約筋または肛門組織と接触するように、前記ワイプを対象の肛門周囲領域に適用することを含み、前記対象が肛門裂溝を有する、方法。
【請求項44】
局所用ワイプを使用する方法であって、前記ワイプが、濃度で0.3%~1.5%のニフェジピンおよび少なくとも0.15%~7.5%のリドカインの製剤を含み、前記製剤が前記対象の肛門管から1cm以内の外肛門括約筋または肛門組織と接触するように、前記ワイプを対象の肛門周囲領域に適用することを含み、前記対象が肛門裂溝を有する、方法。
【請求項45】
少なくとも1.5%、1%、0.5%、または0.4%、または0.3%、または0.2%、または0.1%のニフェジピンと少なくとも0.15%のリドカインとの可溶性製剤を含む組成物。
【請求項46】
少なくとも0.3%のニフェジピンと、少なくとも0.5%、0.8%、1%、1.2%、1.5%、または2%、または2.5%、または3%、または3.5%、または4%、または4.5%、または5%、または6%、または7%、または7.5%のリドカインとの可溶性製剤を含む組成物。
【請求項47】
少なくとも1.5%、1%、0.5%、または0.4%、または0.3%、または0.2%、または0.1%のニフェジピンと、少なくとも0.15%、0.3%、0.5%、1%、1.2%、1.5%、または2%、または2.5%、または3%、または3.5%、または4%、または4.5%、または5%、または6%、または7%、または7.5%のリドカインとの可溶性製剤を含む組成物。
【請求項48】
0.3~1.5%のニフェジピンと1.5~7.5%のリドカインとを含む可溶性製剤を含む組成物。
【請求項49】
ニフェジピンが、無水ニフェジピン、ニフェジピン一水和物、およびニフェジピン二水和物からなる群から選択される、請求項45~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
リドカインが、無水リドカイン、リドカイン一水和物、およびリドカイン二水和物からなる群から選択される、請求項45~48のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2021年4月1日に出願された「Topical Wipe Containing Nifedipine and Lidocaine」と題された米国仮特許出願第63/169,768号に対する米国特許法第119条(e)に基づく優先権を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、軟部組織損傷を治療する分野に関し、より具体的には、肛門裂溝の治療における治療化合物の送達のための局所用ワイプに関する。
【背景技術】
【0003】
骨化または石灰化によって硬化しない組織として一般的に定義されるヒトの体の器官および軟部組織は、ヒトの身体の組成の大部分を含む。そのような組織としては、筋肉、腱、靭帯、脂肪、皮膚などが挙げられる。軟部組織は、一般的に非常に弾力のある材料であり、故障することなくかなり大きな変形を受けとめることができ、その本来の構成に戻る。いずれにしても、ある特定の力および負荷の下では、軟部組織でさえも故障を受けて裂けることがある。このような裂傷の多くは軽度であり、時間と共に自然に治癒するが、一部はより重篤であり、不快感と痛みとをもたらし得る。さらに、敏感な場所にある一部の裂傷には、特に痛みがあり、日常的な生活活動を阻害し得る。身体のある特定の部分における軟部組織の損傷はまた、タブーおよびその他の社会的態度のゆえに、患者が議論を恥ずかしくまたは困難に感じるものとさせる。
【0004】
このような例の一つは、肛門裂溝であり、一般に肛門を裏打ちする組織の小さな裂傷として定義される。このような裂傷は乳幼児において最も一般的であるが、全年齢層の人々に起こり、成人350人のうち約1人に発生し得る。ほとんどの軟部組織損傷と同様に、浅いかまたは表在する裂溝は、通常は自然にひとりでに治癒し、単純な治療によって、時には、随伴する不快感が軽減される場合もあり、治癒が加速される場合もある。しかしながら、場合によっては、重篤な症例は自然に治癒せず、医薬または手術を必要とする場合がある。
【0005】
ニトログリセリン軟膏、ならびにニフェジピン、ジルチアゼム、およびインドラミンなどのカルシウムチャネル遮断薬などの医薬が、肛門裂溝の治療に用いられてきた。Golfamら(Acta medica Iranica,Vol.48,No.5,2010,pages 295-299)は、0.5%ニフェジピンを含有するクリームで四週間、慢性肛門裂溝を処置し、患者の70%が治癒を経験したことを見出した。Wise(米国特許第10,543,201号)は、0.3%ニフェジピンを含有する局所用組成物を用いて、内肛門括約筋および/または骨盤底を治療する。内肛門括約筋は、肛門管内の奥深く(肛門管から1cm超離れている)に位置するため、アプリケータ装置を使用することなく、または指を深く貫入することによらず、局所用組成物をその組織に塗布することはできない。ゲルまたはクリームは、典型的には、患者により指で、またはシリンジもしくは座薬を用いて塗布される。患者は、プラスチックラップまたは使い捨て手袋で指を覆い、カバーした指に規定量の軟膏を絞り出した後、その軟膏を患部に指で広げる。このタイプの適用は、必ずしも実用的または快適なものであるとは限らない。患者によっては、このような様式で軟膏を塗布する融通性または器用さを持たない。軟膏を塗布することのできる患者は、多くの場合、このプロセスを不快に感じている。このことは、不適切または不完全な塗布につながる可能性があり、治療の有効性を制限するか、または患者がこの治療を適用する意志を完全にそぐ可能性がある。
【0006】
発明の概要
一態様では、本開示は、濃度で0.15重量%~7.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で0.15~1.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0007】
関連の一態様では、本開示は、濃度で1.5重量%~7.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で0.3~1.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0008】
関連する一態様では、本開示は、濃度で0.15重量%、または0.2重量%、または0.25重量%、または0.3重量%、または0.35重量%、または0.4重量%、または0.45重量%、または0.5重量%、または0.8重量%、または1重量%、または1.2重量%、または1.5重量%、または1.8重量%、または2重量%、または2.2重量%、または2.5重量%、または2.8重量%、または3重量%、または3.2重量%、または3.5重量%、または3.8重量%、または4重量%、または4.2重量%、または4.5重量%、または4.8重量%、または5重量%、または5.2重量%、または5.4重量%、または5.6重量%、または5.8重量%、または6重量%、または6.5重量%、または6.8重量%、または7重量%、または7.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で0.15重量%、または0.18重量%、または0.2重量%、または0.22重量%、または.25重量%、または.28重量%、または.3重量%、または0.32重量%、または0.35重量%、または0.38重量%、または0.4重量%、または0.42重量%、または0.45重量%、または0.5重量%、または0.55重量%、または0.6重量%、または0.65重量%、または0.7重量%、または0.75重量%、または0.80重量%、または0.85重量%、または0.90重量%、または0.95重量%、または1重量%、または1.2重量%、または1.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0009】
関連する一態様では、本開示は、濃度で1.5重量%、または1.8重量%、または2重量%、または2.2重量%、または2.5重量%、または2.8重量%、または3重量%、または3.2重量%、または3.5重量%、または3.8重量%、または4重量%、または4.2重量%、または4.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で0.15重量%、または0.18重量%、または0.2重量%、または0.22重量%、または.25重量%、または.28重量%、または.3重量%、または0.32重量%、または0.35重量%、または0.38重量%、または0.4重量%、または0.42重量%、または0.45重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維性基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.2重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.1重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.15重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.25重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.35重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.4重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0017】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.45重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0018】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0019】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも1重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0020】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも1.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0021】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも0.15重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0022】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも0.2重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0023】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも0.4重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0024】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも0.6重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0025】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも0.8重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0026】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0027】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも1.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0028】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも2重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0029】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも2.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0030】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも3重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0031】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも4重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0032】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも4.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0033】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0034】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも6重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0035】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも6.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0036】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも7重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0037】
一部の実施形態では、本開示は、濃度で少なくとも7.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で少なくとも0.3重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを提供する。
【0038】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、濃度で約0.15~7.5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で約0.3~1.5重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプは、肛門裂溝を治療することができる。
【0039】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、濃度で約1.5~5重量%のリドカインおよびその塩(例えばリドカインHCl)、ならびに濃度で約0.15~0.45重量%のニフェジピンおよびその塩を含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプは、肛門裂溝を治療することができる。
【0040】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、本局所用ワイプは保存剤をさらに含む。一部の実施形態では、本局所用ワイプは抗酸化剤をさらに含む。一部の実施形態では、本局所用ワイプは、少なくとも一つの賦形剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、上記賦形剤は、からなる群から選択され、賦形剤は、抗酸化剤、浸透促進剤、保存剤、保水剤、分散剤、湿潤剤、乳化剤、可塑剤、界面活性剤、粘度調整剤、軟化剤、フィルム形成剤、テーリング溶媒、共溶媒、および/または油からなる群から選択される。一部の実施形態では、本局所用ワイプはアルコール溶媒をさらに含む。
【0041】
本明細書に記載のいずれかのワイプの一部の実施形態では、浸透促進剤をさらに含み、該浸透促進剤は、ベンジルアルコール、ジメチルイソソルビド(DMI)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール、エタノール、フェノキシエタノール、オレイン酸、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド(MCT)、およびトランスクトールからなる群から選択される。
【0042】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、湿潤剤をさらに含み、該湿潤剤は、プロピレンカーボネート、グリセリン、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、アロエベラジュース、抽出物、ヘキシレングリコール、ヒアルロン酸、および乳酸からなる群から選択される。
【0043】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、乳化剤をさらに含み、該乳化剤は、ポリソルベート(20~80)、Span-80、PEG-40、水素化ヒマシ油、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポロキサマー、ソルビタン(20~85)、およびモノオレイン酸グリセリル(GMO)からなる群から選択される。
【0044】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、界面活性剤をさらに含み、該界面活性剤は、PEG400、tween-80、オレイルアルコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、およびプロピレングリコールからなる群から選択される。
【0045】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、抗酸化剤をさらに含み、該抗酸化剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アルファ-トコフェロール、没食子酸プロピル、アスコルビン酸スクアレン、パルミチン酸アスコルビル、チオ硫酸ナトリウム、およびメタビス硫酸ナトリウムからなる群から選択される。
【0046】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、生体接着性ポリマーをさらに含み、該ポリマーは、カルボマーホモポリマータイプA、BおよびC、カルボマーコポリマー、インターポリマー、ポリカルボフィル、ペムレン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ならびにヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)からなる群から選択される。
【0047】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、溶液は、水、プロピレングリコール、およびヘキシレングリコールからなる群から選択される溶媒を含む。
【0048】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、ベンジルアルコール、トランスクトール、プロピレンカーボネート、ポリソルベート80、BHT、PEG400、グリセリンおよびヘキシレングリコールのうちの一つまたは複数をさらに含む。
【0049】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも2%のベンジルアルコールを含む。
【0050】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で30~40%のトランスクトール、特に濃度で30%、35%、または40%のトランスクトールを含む。
【0051】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも4%のプロピレンカーボネートを含む。
【0052】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも2%のポリソルベート80を含む。
【0053】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも0.2%のBHTを含む。
【0054】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で30~60%のプロピレングリコール、特に濃度で30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%のプロピレングリコールを含む。
【0055】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも15%のグリセリンを含む。
【0056】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、該ワイプは、濃度で少なくとも10%のヘキシレングリコールを含む。
【0057】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、ワイプは、製剤I、製剤II、製剤III、製剤IV、製剤V、及び製剤VIからなる群から選択される製剤を含む。
【0058】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、本局所用ワイプは繊維から作製される。一部の実施形態では、本局所用ワイプは不織布繊維から作製される。一部の実施形態では、本局所用ワイプは織布繊維から作製される。
【0059】
本明細書に記載されるいずれかのワイプの一部の実施形態では、本局所用ワイプは、概ね長方形の形状である。一部の実施形態では、本局所用ワイプは、一回限りの使用のために個別に包装される。
【0060】
別の一態様では、本開示は、本明細書に記載の複数の局所用ワイプを含む容器を提供する。一部の実施形態では、上記容器はソフトパックを備える。一部の実施形態では、上記容器はハードパックを備える。
【0061】
別の一態様では、本開示は、別々の個々の単回使用パック内に、またはそれぞれ少なくとも30枚のワイプのバルク内に、本明細書に記載の複数の局所用ワイプを含むキットを提供する。
【0062】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法を提供し、本方法は、濃度で少なくとも1.5%のリドカインHClおよび濃度で少なくとも0.3%のニフェジピンを含む溶液で湿らせた繊維質基材を含む局所用ワイプを、前記対象の肛門周囲領域に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む。
【0063】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法を提供し、本方法は、濃度で1.5%~5%のリドカインHCl、好ましくは少なくとも1.5%のリドカインHClと、濃度で0.15~4.5%のニフェジピン、好ましくは少なくとも0.15%のニフェジピンとを含む製剤を、前記対象の肛門管から1cm以内の肛門組織に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む。
【0064】
別の態様では、本開示は、それを必要とする対象において肛門裂溝を治療するかまたは寛解させる方法を提供し、本方法は、濃度で1.5%~5%のリドカインHCl、好ましくは少なくとも1.5%のリドカインHClと、濃度で0.15~.45%のニフェジピン、好ましくは少なくとも0.15%のニフェジピンとを含む製剤を、前記対象の外肛門括約筋に適用し、それによって治療的な緩和を提供することを含む。
【0065】
別の態様では、本開示は、濃度で0.15~.45%、好ましくは少なくとも0.3%のニフェジピンと、濃度で1.5~5%のリドカインHCl、好ましくは少なくとも1.5%のリドカインHClとを含む局所用ワイプの製造方法を提供し、本方法は、ワイプを提供することと、少なくとも0.15%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインHClを含む製剤を適用することと、前記ワイプを十分な時間乾燥することと、前記ワイプを気密容器またはパウチに包装することとを含む。
【0066】
別の態様では、本開示は、局所用ワイプを使用する方法を提供し、前記ワイプは、濃度で0.15~.45%のニフェジピン、好ましくは少なくとも0.15%のニフェジピンと、少なくとも1.5%のリドカインHClとの製剤を含み、本方法は、前記製剤が前記対象の肛門管から1cm以内の外肛門括約筋または肛門組織と接触するように、対象の肛門周囲領域にワイプを適用することを含み、前記対象は、肛門裂溝を有する。
【0067】
一部の実施形態では、肛門周囲領域へ前記ワイプを適用すると、少なくとも0.15%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインHCl、好ましくは0.3%のニフェジピンおよび1.5%のリドカインを含む製剤は、外肛門括約筋と接触する。
【0068】
一部の実施形態では、肛門周囲領域へ前記ワイプを適用すると、少なくとも0.15%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインHCl、好ましくは0.3%のニフェジピンおよび1.5%のリドカインを含む製剤は、外肛門括約筋および内肛門括約筋と接触する。
【0069】
一部の実施形態では、肛門周囲領域へ前記ワイプを適用すると、少なくとも0.15%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインHCl、好ましくは0.3%のニフェジピンおよび1.5%のリドカインを含む製剤は、外肛門括約筋と接触するが内肛門括約筋とは接触しない。
【0070】
一部の実施形態では、肛門周囲領域へ前記ワイプを適用すると、少なくとも0.15%のニフェジピンおよび少なくとも1.5%のリドカインHCl、好ましくは0.3%のニフェジピンおよび1.5%のリドカインを含む製剤は、肛門管から1cm以内の肛門組織と接触する。
【0071】
ここで、特定の例示的な実施形態を説明して、物質の組成物(例えば、ニフェジピンおよびリドカインHClの製剤)、ならびにそれを作製する方法の全体的な理解を提供する。本開示は、物質の組成物を製剤化するための様々な成分および/またはそれらの組合せを提供し、さらに、物質の組成物に到達するために様々な成分および/またはそれらの組合せを組み合わせるために使用され得る様々な工程を提供する。当業者であれば、本明細書に記載の組成物および方法が非限定的かつ例示的な実施形態であり、本開示の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するものとなる。例示的な一実施形態に関連して図示または説明される特徴は、別段の示唆のない限り、典型的には、他の実施形態の特徴と組み合わされてもよい。例えば、当業者であれば、本開示を考慮して、本明細書に提供されるような物質の組成物を作製するための一つの方法の一部として提供される、一つまたは複数の工程を理解するものとなり、このような工程は、本明細書に提供されるかまたは当技術分野で別様に公知である物質の組成物を作製するための他の方法において使用することができる。同様に、当業者であれば、本開示の趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示されるかもしくは当業者に別様で公知である様々な方法の間で互換的であり得るか、または本明細書に開示されるかもしくは当業者に別様で公知である様々な方法を考慮してその他改変され得る、様々なステップを理解するものとなる。非限定的な例として、当業者であれば、本開示を考慮して、本出願に明示的に開示されているか、または本開示の観点から当業者に公知であるかにかかわらず、代替技術の使用が、典型的には、本開示に関連する発明の概念を依然として維持することを理解するものとなる。
【0072】
本開示では、数多くの異なる用語は、互換的に使用することができるとともに、当業者にはやはり理解される。非限定的な例として、「からなる群より選択された」、「から選ばれた」などの語句は、指定された材料の混合物を含む。数値の限界または範囲が本明細書に記述される場合、終点が含まれる。また、数値の限界または範囲内の全ての値および部分範囲は、明示的に記述されているかのように具体的に含まれる。単数形の要素への言及は、特に明記のない限り、「一つおよび一つのみ」を意味するのではなく、むしろ「一つまたは複数」を意味することを意図する。特に明記のない限り、「一部の(some)」などの用語は、一つまたは複数を指し、「a」、「an」、および「the」などの単数形の用語は、一つまたは複数を指す。
【0073】
発明を実施するための形態
一態様では、本開示は、肛門に適用することができる治療剤および局所麻酔剤を含む薬用ワイプを提供することによって肛門裂溝を治療するための方法および組成物に関し、このワイプはとりわけ、治療を加速または促進することができ、疼痛を局所的に麻痺させて快適さを補助することができ、局所筋肉を弛緩して患部への血流を増加させ、それによって肛門裂溝の治癒を促進することができる。
【0074】
本ワイプは、治療化合物および局所麻酔剤のためのより使い易くより快適な送達機構と、疼痛、刺激、および他の不快感の冷却、鎮静、および快適な低減と、より良好かつ促進された治癒をもたらす化学組成物とを含む、先行技術を超える改善を提供する。また、本ワイプは、必ずしも実用的または快適ではない従来技術の軟膏とは異なり、局所用医薬の適用により良好なコンプライアンスを確実にもたらす。従来技術の軟膏は、概して肛門腔内および/または肛門腔周囲に撒布され、指による挿入を必要とするのに対し、本明細書で使用される局所用ワイプは、治療化合物を外部に撒布する。このことは患者の快適さおよび使い易さを促すが、なぜなら、この拭き取り動作の機構が、日常的なトイレでの衛生行為を模しており、挿入を必要としないためである。このことにより、ひいては、治療レジメンの遵守および転帰の改善が促進される。さらに、本化合物は皮膚に安全に曝露され得る。そして、ワイプの使用は、指による挿入を必要としないため、患者は、使い捨て手袋またはその他の衛生カバーを使用することなく、単に使用後に手を適切に洗ってもよい。
【0075】
一部の実施形態では、前記ワイプ中の活性医薬化合物は、標的組織に対して効果的な透過プロファイルを達成して、治療的な緩和を提供する。各化合物の透過プロファイルは、とりわけ、各化合物の物理的および化学的な特性、各化合物の微細構造の特性、本局所用ワイプのローディング用量、および標的組織の特徴に基づいており、これらは異なる解剖学的領域で実質的に変わり得る。すなわち、頭皮、腹部、または手などの特定の領域での使用に適していることが知られている製剤および従来技術の製品は、本明細書に記載される局所用ワイプによる使用には適切ではない場合がある。追加の考慮事項は、製品の使用の「乱雑さ」に影響を与え得る粘度または知覚的な感覚などの属性を考慮して、化合物製剤が選択または最適化され得るという点で、感覚的である(例えば、過度に飽和した施用化合物は、使用前後にワイプから過剰に滴ることもあれば、患部に過剰量の製剤を移し込むこともあるが、これらは皮膚を透過しないため手作業で除去する必要がある)。
【0076】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは、外肛門括約筋を弛緩させ血流を増加させるのに有効な治療特性を有する一つまたは複数の局所用薬剤で治療される。例として、以下に限定されないが、そのような化合物のファミリーの一つは、カルシウムチャネル遮断薬である。さらに別の例として、以下に限定されないが、そのようなカルシウムチャネル遮断薬の一つは、以下に図示されるニフェジピン、C1718である。
【化1】
【0077】
ニフェジピンは、不活性ガスにより取り除かれるものとなるEtOH(3mg/ml)、DMSO(30mg/ml)、およびジメチルホルムアミド(30mg/ml)などの有機溶媒に可溶性である。ニフェジピンを使用する課題の一つは、親油性が高くアルコールに溶解するものの、水性緩衝液にはほとんど溶解しないことである。
【0078】
別の実施形態では、本局所用ワイプはさらに、または代替的に、患部の不快感を低減するのに有効な疼痛または痒みを緩和する特性を有する一つまたは複数の局所用薬剤により治療される。例として、以下に限定されないが、このような化合物の一つは、リドカイン(下記に図示する)およびその塩、例えば、リドカインHCl、C1422O(下記に図示する)などである。
【化2】
【0079】
リドカインおよびその塩は、作用の迅速な開始を伴う局所麻酔剤であり、アルコール(4mg/mlのEtOH)およびクロロホルムに高度に可溶性であり、エーテル、ベンゼンに溶け易い。また、油に溶解する。
【0080】
別の実施形態では、本局所用ワイプは、筋弛緩剤および/または疼痛緩和剤などの所望の化合物を含む溶液で予め湿らせ、次いで、ソフトパックまたはハードカバー容器など、スリット上部開口部を有する即時供給可能な形態に包装されるが、このような開口部は、酸素および他の分解剤の取込みを阻害し、水分を保持して蒸発を阻害し、ワイプを外部汚染物質から保護する。ワイプは、処方または必要に応じて一度に一つずつ即時使用するために容器から取り出されてもよく、その後、容器が再密封されてもよい。代替的に、または追加的に、本ワイプは、単回使用容器または軟包装で個別に包装されてもよい。
【0081】
一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約1.5重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約2重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約2.5重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約3重量%のリドカインHClおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約3.5重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約4重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約4.5重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で約5重量%のリドカインおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。一部の実施形態では、本ワイプは、濃度で1.5~5重量%の範囲のリドカインHClおよび約0.3重量%のニフェジピンを含む溶液で、予め湿らせる。
【0082】
これらの濃度は、本明細書の他の箇所で考察される他の化合物の添加によって変更され得る。そのような化合物としては、以下に必ずしも限定されないが、保存剤および抗酸化剤が挙げられる。この濃度はまた、他の要因に応じて変化し得る。そのような要因としては例えば、典型的な処方量、貯蔵間隔要件、一般的な詳細環境における予想される密封貯蔵寿命、開封および使用時の貯蔵寿命、ならびに一般的な輸送条件など、適用可能な実用的な制約に従って、問題の化合物が合成および/または包装、出荷、および貯蔵され得る際の量および濃度などが挙げられる。具体的には、合成または保存中に形成され得る不純物または化合物関連分解物の混入に注意すべきである。
【0083】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは、所望の濃度を達成するように一般的に選択される適切な賦形剤および/または溶媒をさらに含む。例えば、ニフェジピンおよびリドカインの両方は、アルコールへの可溶性が高い。一つまたは複数の賦形剤または賦形剤のクラスが含まれ得る。そのような剤としては、必ずしも以下に限定されないが、抗酸化剤、浸透促進剤、保水剤、分散剤、粘度調整剤、軟化剤、フィルム形成剤、保存剤、テーリング溶媒、共溶媒、油などが挙げられ得る。使用される治療化合物の質量および/または体積は、任意の所与の製剤に含まれる賦形剤を考慮して、本明細書の他の箇所に記載される所望の濃度を達成するように変更または適合され得る。賦形剤は、多くの因子に基づいて選択され得る。そのような因子としては、必ずしも以下に限定されないが、安定性、および治療化合物との相互作用の可能性が挙げられ、これらは、想定される用量レベルで分解の阻害またはその他の機能阻害をもたらすものとなる。
【0084】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは、天然または合成の繊維または布などの繊維性基材を含み、それらの基材は好ましくは、敏感な皮膚に穏やかな、滑らかで摩擦の少ない表面および/または仕上げを有する。一部の実施形態では、前記望ましい組み合わせの医薬品を充填するのに有効な吸収特性を有するとともに、望ましい保存特性(例えば、過度に腐敗または分解することなく、所望の貯蔵安定性の期間に上記薬剤化合物を充填し保存状態に保持する能力)、使用特性(引き裂きや破損に対する耐性)、および所望の廃棄特性(例えば、生分解可能である、堆肥化可能である、フラッシュ可能である、腐敗に対し安全であるなど)を有する、不織布繊維を使用してもよい。一部の実施形態では、本局所用ワイプの構成成分は、約二年間、貯蔵安定性製品を提供するために有効である。
【0085】
一部の実施形態では、本ワイプは、一つまたは複数の保存剤および/または抗酸化剤を含む。これらの化合物のクラスおよび量または濃度は、好ましくは、通常の出荷、小売、および消費者の条件下で本局所用ワイプの所望の貯蔵寿命を確保するために有効である。定型的な実験および試験を通して適切な化合物およびその量を決定するための技術は、当該技術分野で公知である。
【0086】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは概して直角であり、好ましくは長方形であり、それゆえにすぐに保存および回収できる。本ワイプは、密封された単一ユニットパケットまたはパウチなどに個別に包装されてもよいし、複数に包装されてもよい。包装は、ジッパーまたは接着剤の使用によるなどで再密封可能であることが好ましい。
【0087】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは摩擦がなく、敏感な皮膚に対して穏やかである。
【0088】
一部の実施形態では、本局所用ワイプは、フラッシュ可能であり、使い捨て可能であり、腐敗に対し安全である。
【0089】
一部の実施形態では、局所用ワイプは、少なくとも2年間貯蔵安定性である。
【0090】
前述の局所用ワイプは、ヒトにおける肛門裂溝の治療のための特定の化合物に関して記載されているが、同じ考慮事項や原則が、他の分野にも適用されること、ならびに非ヒト哺乳動物または他の動物の組織における類似のタイプの損傷を治療するために、および自己投与療法への患者の完全なコンプライアンスを阻害する類似の医療特性、解剖学的な幾学的配置、または社会的態度を伴う他の解剖学的領域における類似のタイプの傷害を治療するために使用されてもよいことが、容易に理解されよう。
【0091】
本発明は、好適な実施形態であると現在考えられているものを含む特定の実施形態の説明と併せて開示されているが、詳細な説明は、例示することを意図しており、本開示の範囲を限定するものと理解されるべきではない。当業者によって理解されるように、本明細書に詳細に記載されるもの以外の実施形態は、本発明に包含される。記載された実施形態の改変および変形は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく行われてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0092】
図1図1は、治療用途のためのワイプを含浸するのに好適なニフェジピンおよびリドカインの製剤に達するように、異なる組み合わせの賦形剤を試験し、濃度を変更するプロセスを示す。
図2図2は、選択された賦形剤と共に、ニフェジピンおよびリドカインの製剤を含む局所用ワイプを生成するための異なる含浸方法を示す。A)必要量のリドカインHCl+ニフェジピン溶液を容器に取る。B)ワイプを活性溶液にt分間浸すかまたは漬ける。C)t分間の浸漬後にワイプを乾燥する。D)必要量のリドカインHCl+ニフェジピン溶液をスプレーボトルに取る。E)ワイプに活性溶液をt分間スプレーする。F)t分間の噴霧後にワイプを乾燥する。G)必要量のリドカインHCl+ニフェジピン溶液をピペットで採取する。H)t分間ピペッティングすることによって活性溶液でワイプを湿らせる(ピペットを用いてワイプに製剤を段階的に添加する)。I)t分間のピペッティング後にワイプを乾燥する。飽和ローディングは、ワイプの最終重量/ワイプの乾燥重量であり、飽和のパーセンテージは、ワイプの最終重量/ワイプの乾燥重量×100であり、含浸製剤の重量は、(ローディングおよび乾燥後の乾燥ワイプの重量)-(乾燥ワイプの風袋重量)である。
図3図3は、異なる方法で含浸された全てのワイプを乾燥するために一貫して使用される乾燥方法を示す。
図4図4は、各増分添加工程での含浸溶液の重量、飽和ローディング、および飽和ローディング%のグラフを示す。各添加工程後、ワイプを45分間乾燥させた。
図5図5は、各増分添加工程での含浸溶液の重量、飽和ローディング、および飽和ローディング%のグラフを示す。各添加工程後、ワイプを15分間乾燥させた。
図6図6は、異なるワイプの重量/サイズで得られた較正曲線を示す。
図7図7は、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ、溶液、ワイプ、および軟膏)中のリドカインHClの平均累積透過量を示す。
図8図8は、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ、溶液、ワイプ、および軟膏)中のリドカインHClの平均流束を示す。
図9図9は、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ、溶液、ワイプ、および軟膏)中のニフェジピンの平均累積透過量を示す。
図10図10は、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ、溶液、ワイプ、および軟膏)中のニフェジピンの平均流束を示す。
図11図11Aは、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ、溶液、ワイプ、および軟膏)における組織中のリドカインHClの平均保持量、組織から回収された総リドカインHCl(ng/cm2片中の量)を示し、図11Bは、適用用量のリドカインHClの対応する回収量を%の回収として示し、図11Cは、三種の製剤中の組織の総保持量を示す。
図12図12Aは、各タイプの製剤F1~F3(それぞれ溶液、ワイプ、および軟膏)における組織中のニフェジピンの平均保持量、組織から回収された総ニフェジピン(ng/cm2片中の量)を示し、図12Bは、適用用量のニフェジピンの対応する回収量を%の回収として示し、図12Cは、三種の製剤中の組織の総保持量を示す。
図13図13Aは、肛門管およびそれに関連する様々な組織を示す。本局所用ワイプは、好ましくは、肛門管の最初の1cm以内の組織に適用される。患者による局所用ワイプの適用により、API(ニフェジピンおよびリドカインHCl)が外肛門括約筋に送達され、肛門裂溝の治療の一助となる。図13Bは、複数の層を含むヒトの皮膚構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0093】
定義
本明細書で使用される場合、「ワイプ」という用語は、便宜上、またはディスペンサーの場合に、折り畳まれて個別に巻かれたプラスチックまたは布の湿った小~中サイズの一片を指す。ワイプは、一般に個人の衛生などの清掃目的に使用されるが、エチルアルコール(無菌ワイプ)、またはウィッチヘーゼル(痔疾ワイプ)などの医薬的活性化合物で含浸された場合には治療目的に使用され得る。本開示の局所用ワイプは、肛門裂溝の治療に用いるために、ニフェジピン(少なくとも0.3重量%)およびリドカインHCl(少なくとも1.5重量%)の製剤で含浸される。ワイプの寸法は、使用の性質に応じて異なるものとすることができ、持ち運びサイズのワイプは、多くの場合にさらに小さく、例えば、約6インチ×3インチなどである。通常のワイプは、例えば、約6インチ×4インチ、約8インチ×8インチ、または9インチ×7インチの範囲である。本ワイプの厚さは0.5mm~1mmの範囲である。好ましくは、本ワイプは6×4インチであり、セルロースで作製された不織布繊維で作製される。
【0094】
ワイプは、シート状に形成されたポリエステル、ポリプロピレン、綿、木材パルプ、またはレーヨン繊維などの材料で作製される。ワイプは、個別に包装されてもよいし、または小包装もしくはバルク包装であってもよい。ワイプは、織布繊維および不織布繊維で作製することができる。活性成分がより良く機能するのを助けるとともにユーザーコンプライアンスを確保するために、ワイプを、水および他の不活性成分、例えば界面活性剤や保湿剤などで湿らせる。これらは、細菌およびカビの成長を防止するための保存剤などの他の成分を含有することがある。ワイプは、無菌使用に安全であるように、生分解性およびフラッシュ可能にすることができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、「織布繊維」という用語は、二つ以上の糸を互いに直角に織り合わせることによって作製される繊維を指す。織布またはワイプは、天然繊維および合成繊維の両方から作製することができ、多くの場合、両方の混合物から作製される。例えば、100%のナイロンまたは80%のナイロンおよび20%のポリエステル。
【0096】
本明細書で使用される場合、「不織布繊維」という用語は、織り込まれた撚りを含まないが組織化された内部構造を有する繊維を指す。これらは、繊維を一緒に配し、次いで熱、化学物質、または圧力を使用して、それらを合一して粘着性の布様材料とすることによって作製される。綿、ウール、絹などの従来の材料とは対照的に、不織布は製織を必要としない。これは、高密度の織地に組み合うまで、繊維を溶液中で撹拌することによって作製される。セルロースは、一般に不織布繊維の作製に使用される。
【0097】
本明細書で使用される場合、「リドカイン」という用語は、N,N-ジエチルグリシンと2,6-ジメチルアニリンとのホルマール縮合から生じるモノカルボン酸アミドを指す。これは、局所麻酔薬および抗不整脈薬として作用する。リドカイン塩の例は、リドカインHClであり、リドカインの他の塩もまた、本明細書に記載される局所用ワイプで使用されることが企図される。
【0098】
本明細書で使用される場合、「リドカイン塩酸塩」または「リドカインHCl」または「2-(ジエチルアミノ)-N-(2,6-ジメチルフェニル)アセトアミド;塩酸塩」という用語は、リドカイン由来の塩酸塩、アミノエチルアミド、およびアミドクラス麻酔薬のプロトタイプメンバーを指す。リドカインは、神経細胞膜内の電位開口型Na+チャネルと相互作用し、Na+に対する興奮性膜の透過性の一過性の増加を遮断する。これにより、神経インパルスの生成および伝導が妨げられ、可逆的な感覚喪失が生じる。リドカイン塩酸塩はまた、クラスIBの抗不整脈効果を示す。この剤は、活動電位の第0相の間、特にプルキンエネットワーク上において、心筋組織へのナトリウムイオンの流れを減少させ、それによって脱分極、自動性、および興奮性を減少させる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ニフェジピン」または「2,6-ジメチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン-3,5-ジカルボン酸ジメチル」という用語は、ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断剤を指す。ニフェジピンは、心筋細胞および血管平滑筋細胞への細胞外カルシウムイオンの膜貫通流入を阻害し、主な冠動脈および全身動脈の拡張を引き起こし、心筋収縮性を減少させる。この薬剤はまた、一部の多剤耐性腫瘍で過剰発現される薬物排出ポンプP-糖タンパク質を阻害し、一部の抗悪性腫瘍剤の有効性を改善しうる。ニフェジピン塩基およびニフェジピン塩はまた、本明細書に記載される局所用ワイプで使用されることも想定される。
【0100】
本明細書で使用される場合、「肛門管」という用語は、下部GI管/大腸の最末端の部分を指し、これは、下位の肛門周囲の肛門縁(肛門開口部、肛門)と上位の直腸との間にある。
【0101】
本明細書で使用される場合、「肛門裂溝」という用語は、肛門の薄く繊細な裏層における切断または断裂を指す。この断裂は、肛門括約筋と呼ばれる肛門周りの筋肉を露出することが多い。損傷により、筋肉がけいれんし、裂溝の縁がさらに引き離されることがある。このけいれんは、痛みを引き起こし、治癒を遅らせることがある。腸の動きはまた、裂溝がより快方に向かうのを防ぐことがある。
【0102】
本明細書で使用される場合、「外肛門括約筋」という用語は、肛門管の外壁と肛門開口部とを取り囲む随意(横紋)筋の層を指す。外肛門括約筋は、その前端から後端まで約8~10cmの長さがあり、肛門に向かい合って約1~2.5cmあり、この括約筋は排便時に収縮する。これは二つの層、すなわち浅層および深層からなる。浅層は、筋肉の主要部分を構成しており、尾骨の先端から肛門の後方辺縁部まで延在する肛門尾骨縫線という狭い腱帯から生じる。そして浅層は、筋組織の二つの平坦な平面を形成し、この平面は、肛門を取り囲み、前面で合わさって会陰部の腱中心点へ挿入され、この腱中心点は、浅会陰横筋、肛門挙筋、および球海綿体としても知られる球海綿体筋と結合している。深い方の層は、肛門管に対して完全な括約筋を形成する。
【0103】
本明細書で使用される場合、「内肛門括約筋」という用語は、肛門管の周りを囲む平滑筋の環を指す。その下縁は、外肛門括約筋と接触しているが完全に分離している。内括約筋は、平滑筋から成り、自律神経系によって神経支配されるのに対し、外括約筋は、横紋筋から成り、陰部神経と呼ばれる神経によってもたらされる体性(随意)神経支配を有する。
【0104】
本明細書で使用される場合、「肛門周囲」または「直腸周囲」という用語は、直腸開口部または肛門管の開口を囲む領域を指す。一般に、ワイプは、肛門周囲領域を清掃するかまたは該領域に達するために使用される。
【0105】
本明細書で使用される場合、「直腸内」という用語は、直腸または肛門管の内部の深部領域を指す。一般に、直腸内領域にアクセスするには、指による貫入またはアプリケータ杖が必要である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、医薬製剤で使用される不活性医薬成分を指す。賦形剤は、医薬品において様々な機能的な役割を果たし得る。各賦形剤は、剤形の適切な性能のために特定の目的(例えば、結合剤、崩壊剤、またはpH調整)を果たす。最終剤形の特性(すなわち、安定性)は、ほとんどの場合、選択された賦形剤、それらの濃度、ならびに活性化合物とのおよび互いの相互作用に大きく依存する。製品製剤に使用される賦形剤の大部分は、公定品目(米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、日本薬局方(JP))である。
【0107】
本明細書で使用される場合、「API」とい用語は「活性医薬品成分」を指す。完成した医薬品(FPP)に使用される任意の物質または物質の組み合わせが、薬理学的活性をもたらすか、または疾患の診断、治癒、緩和、治療もしくは予防に直接的な効果をその他有するか、または治療に直接的な効果を有することが意図されている。本開示におけるAPIという用語は、ニフェジピンおよびリドカインHClを指す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「保存剤」という用語は、微生物の成長を防止または阻害し、医薬品の貯蔵寿命を延長する物質を指す。これらの系で一般的に使用される保存剤としては、安息香酸ナトリウム、EDTA、ソルビン酸、およびパラベンが挙げられる。
【0109】
本明細書で使用される場合、「抗酸化物質」という用語は、フリーラジカルによって引き起こされるものなど、酸化に起因する活性成分の損傷を低減する物質を指す。抗酸化物質のよくある例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アルファ-トコフェロール、没食子酸プロピル、ベータヒドロキシ酸(BHA)、スクアレン、パルミチン酸アスコルビル、チオ硫酸ナトリウム、およびメタビス硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「浸透促進剤」または「浸透促進剤」という用語は、皮膚に浸透し皮膚成分と相互作用して薬物流束を促進するか、またはバリア耐性を可逆的に減少させる薬剤を指す。よくある例としては、ベンジルアルコール、ジメチルイソソルビド(DMI)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、フェノキシエタノール、オレイン酸、オレイルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖トリグリセリド(MCT)、およびトランスクトールが挙げられる。エタノールまたはIPAと、オレイン酸、オレイルアルコール、中鎖トリグリセリド(MCT)、またはミリスチン酸イソプロピルのうち一つまたは複数との組合せも使用することができる。
【0111】
本明細書で使用される場合、「保水剤」または「軟化剤」という用語は、皮膚の表面の周りにバリアを形成し、皮膚細胞からの水分の喪失を防止する物質を指す。よくある例としては、シアバター、ココアバター、鉱油、ラノリン、ワセリン、パラフィン、蜜ろう、およびスクアレンが挙げられる。
【0112】
本明細書で使用される場合、「分散剤」という用語は、水などの媒体中に別の物質を分散させてコロイド溶液を形成する物質である。それらの主な機能は、粒子間の接着を低減し、凝集(flocculationまたはagglomeration)を防止することである。よくある例としては、塩化セトリモニウム、PEG-10ジメチコン、PEG-7グリセリルココエート、およびGlycereth-26が挙げられる。
【0113】
本明細書で使用される場合、用語「湿潤剤」は、水蒸気を吸収して水を皮膚に結合する吸湿性物質である。湿潤剤の水溶液は、水分の損失率を低減することができる。これらは一般的に、乾燥を防止するために、水中油タイプのクリーム(バニシングクリーム)のような化粧品に添加される。湿潤剤の一般的な例としては、プロピレンカーボネートおよびグリセリン、ペンチレングリコール、ブチレングリコール、アロエベラジュース/抽出物、ヘキシレングリコール、ヒアルロン酸およびその塩、乳酸およびその塩が挙げられる。
【0114】
本明細書で使用される場合、「乳化剤」という用語は、エマルションの安定剤として作用し、通常は混合しない液体が分離するのを防止する、化合物または物質である。よくある例としては、ポリソルベート80、Span-80ステアロイル乳酸ナトリウム、モノグリセロールおよびジグリセロール、ホスファチドアンモニウム、PEG-40水素化ヒマシ油、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ポロキサマー(コブロックポリマー)、水素化ヒマシ油、ポリソルベート(20~80)-TWEENS、ソルビタン(SPANS(20~85))、およびモノオレイン酸グリセリル(GMO)が挙げられる。
【0115】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」という用語は、液体に添加された時に、その表面張力を低減し、それによってその拡散特性および湿潤特性を増加させる物質、例えば洗剤などを指す。界面活性剤は、医薬品においていくつかの用途を有し、i)水性媒体中の疎水性剤の可溶化のための用途、ii)エマルションの構成成分としての用途、iii)経口的および経皮的な薬剤送達のための界面活性剤性自己組織化ビヒクル、iv)半固体送達システムの可塑剤としての用途、およびv)薬剤吸収を改善する剤としての用途を有する。よくある例としては、PEG400、tween-80、オレイルアルコール、グリセリン、ヘキシレングリコール、およびプロピレングリコールが挙げられる。
【0116】
本明細書で使用される場合、「粘度調整剤」という用語は、医薬成分の厚さまたは質感を変化させることができる物質を指す。粘度調整剤は、増粘剤、調質剤、ゲル化剤、および剛化剤などの製品を含み得る。数多くの粘度調整剤を用いて、液体をゲル、ペースト、または粉末に変換して、エンドユーザーにとって理想的な製品を製剤者が作り出す一助とすることができる。粘度調整剤により、液体のとろみを減少させて、注出性、表面での伸展性を改善することができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「フィルム形成剤」という用語は、表面に適用された際に、毛髪または皮膚を覆って可撓性、粘着性、および連続性のある被覆を残す化合物を指す。このフィルムは、強力な親水特性を有し、皮膚上に滑らかな感触を残す。よくある例としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリレート、アクリルアミド、およびコポリマーが挙げられる。生体接着性ポリマーは、薬用ワイプと肛門皮膚との間の摩擦を低減し、拭き取り後の保持を改善するためのフィルムを作り出す、賦形剤として使用され得る。このような生体接着性ポリマーのよくある例としては、カルボマーホモポリマータイプA、BおよびC、カルボマーコポリマーおよびインターポリマー(ポリカルボフィルおよびペムレン)、セルロース誘導体、例えばヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などが挙げられる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「IVPT」という用語は、薬剤の測定を伴うインビトロ放出試験(IVRT)を指し、ここでは、薬剤は、ビヒクルからレセプター媒体中に放出され、不活性膜によって分離され、半固体剤形またはワイプから放出される活性医薬成分(API)の量を定量化するためにおよびその放出速度を決定するために使用される。IVPTを実施する方法の詳細は、Rath S,Kanfer I.A Validated IVRT Method to Assess Topical Creams Containing Metronidazole Using a Novel Approach.Pharmaceutics.2020;12(2):119.Published 2020 Feb 3.doi:10.3390/pharmaceutics12020119に見ることができる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「TEWL」という用語は、皮膚バリアの両側の水蒸気圧勾配により皮膚を通して外部環境に受動的に蒸発する水分の量であり、皮膚バリア機能の特徴を表すために用いられる。ヒトの平均TEWLは、約300~400mL/日であるが、環境的因子および固有因子によって影響を受けることがある。経表皮水分蒸散量(TEWL)は、角質層のバリア特性の有効性の尺度としての役割を果たし得る。
【0120】
ワイプの製造
局所用ワイプに使用される材料は、オムツおよび乾燥機シートまたは織布に使用されるタイプに類似した不織布であり得る。従来の織地(織布繊維)は、絹、綿、ポリエステル、ウール、および類似の材料の繊維を一緒に織り合わせて、織布と呼ばれるループの連動マトリクスを形成することによって作製される。一方、不織布(不織布繊維)は、材料の単一のシートを別々の繊維の塊から押し出すプロセスによって作製される。綿やレーヨンなどの繊維は、このプロセスで使用されるだけでなく、ポリエステル、ポリエチレン、およびポリプロピレンなどのプラスチック樹脂も使用される。ワイプは、商業的供給源から入手可能な不織布100%セルロース(木材パルプ)で作製されることが好ましい。(https://pdicontract.com/)。
【0121】
局所用ワイプは、任意選択的に、保湿剤、香料、および保存剤と混合された中性洗剤を含有し得る。本ワイプは、任意選択的に、ワイプに使用されるジンアホ酢酸ナトリウムやココホスファチジルPG-ジモニウムクロリドなどの両性界面活性剤を含有し得る。これらの化学物質は、天然の油である皮膚を剥がさず、皮膚刺激の可能性も低減する。穏やかさは、本ワイプが肛門および生殖器の周りの繊細な皮膚と接触することを考慮すると、主要な考慮事項である。プロピレングリコールやグリセリンなどの湿潤剤が、任意選択的に添加されて溶液の早期乾燥を防止し、皮膚の保湿に寄与し得る。
【0122】
さらに、鉱油、ラノリン、またはシリコーンなどの油が、皮膚を軟化させるのに役立つ所望の製剤(リドカインHClおよびニフェジピンならびに好適な賦形剤)に組み込まれ得る。増粘剤、例えばヒドロキシメチルセルロースのようなセルロース誘導体などは、最終製品の粘度を制御し、それを適切な粘稠性に保つ。他の成分としては、確実に溶液が微生物増殖を支援しないようにするための、メチルおよびプロピルパラベンなどの保存剤が挙げられる。また、消費者の魅力を高め、体臭を抑える一助とするために、芳香剤を加えることもできる。アロエベラやオートミール抽出物など、皮膚に優しいことが知られている天然成分を添加して、皮膚にさらに栄養を与えることもできる。
【0123】
不織布を組み上げる主な方法は二つある。ウェットレイドプロセスとドライレイドプロセスである。ドライレイドプロセスは、プラスチック樹脂から不織布を作製するために使用される「メルトブロー」法である。この方法では、プラスチックペレットが溶融された後、空気圧によって、押し出されるか、または小さな穴を通して押し付けられる。繊維の流れが冷却されると、凝縮してシートを形成する。高温金属ローラーを用いて、繊維を平坦化して合わせて結合する。
【0124】
ウェットレイドプロセスは、典型的には、綿混紡を使用するさらに柔らかい布、例えばオムツワイプなどに用いられる。このウェットプロセスでは、繊維を水およびその他の化学物質を含む液体スラリー状に作製する。結果として得られるペーストを、ローラーによって圧縮して平坦なシートとし、次いで乾燥して、長い織地のロールを形成する。次に、これらのロールをさらに処理して狭い幅に切った後、ミシン目を入れるかまたは個別のシートに切り分ける。完成した布を、少なくとも1.4オンス/in2(40g/m2)の乾燥重量で分類する。ワイプの吸収性も重要な要件である(高品質ワイプは溶液中の重量の200%~600%を吸収することができる)。
【0125】
不織布を調製すれば貯蔵ロールからコーティング機械上に供給し、そこで所望の製剤(リドカインHClおよびニフェジピンならびに適切な賦形剤)を塗布する。このプロセスでは、いくつかの方法を用いることができる。溶液の入った容器に織地を通すことによって製剤を追加することもできるし、織地のシートに一連のノズルから製剤を噴霧してもよい。
【0126】
あるいは、別個の濡れナプキンを、密封ホイルパウチに包装してもよい。このプロセスでは、積層ホイルのシートを自動機器に供給し、その機器では、ホイルを折り畳んで小さなパウチとし、三辺を加熱によりシールし、開口した状袋を形成する。同時に、別のコンベヤーラインが不織布をパウチに供給する。スタッフィングバーを通って延在する導管を含む液体供給機構が、濡れナプキン材を詰めるのと同時に、濡れナプキンの束の中に湿潤用液体を注入する。次いで、パウチを熱封止して、湿潤性を維持する。
【0127】
ワイプの寸法は、使用の性質に応じて異なるものとすることができ、持ち運びサイズのワイプは、多くの場合にさらに小さく、例えば、約6インチ×3インチなどである。通常のワイプは、例えば、約8インチ×8インチ、または9インチ×7インチの範囲である。本ワイプの厚さは0.5mm~1mmの範囲である。ワイプは、シート状に形成されたポリエステル、ポリプロピレン、綿、木材パルプ、またはレーヨン繊維などの材料で作製される。ワイプは、個別に包装されてもよいし、または小包装もしくはバルク包装であってもよい。活性成分がより良く機能するのを助けるとともにユーザーコンプライアンスを確保するために、ワイプを、水および他の不活性成分、例えば界面活性剤や保湿剤などで湿らせる。これらは、細菌およびカビの成長を防止するための保存剤などの他の成分を含有することがある。ワイプは、無菌使用に安全であるように、生分解性およびフラッシュ可能にすることができる。
【実施例
【0128】
実施例1-溶解性アッセイを使用した溶媒スクリーニング
適切な溶媒系を特定するために、実験を行って、一連の賦形剤中のニフェジピンおよびリドカインHClの視覚的溶解性を評価した。両方の構成成分を溶解することができる溶媒系を、このプロセスによって特定した。分析に使用した溶媒を表Iに列挙する。シンチレーションバイアルの含有する各溶媒に、リドカインHClのアリコート(例えば、20~30mg)を添加した。次いで、バイアルを閉じ、周囲条件で多位置撹拌プレート上に置き、少なくとも15分間混合する。次いで、バイアルを、濁度の有無について定期的に(1時間)目視で検査し、薬剤が可溶化している場合には、飽和が達成されるまで追加のリドカインHClのアリコートを加える。上述と同じプロトコールに従って、ニフェジピンのアリコートを用いて、プロセスを別々に繰り返した。
【0129】
試料を撹拌に保ちながらこの試験を24時間実施し、翌日に目視で検査した。各バイアルの最終重量を得て、各賦形剤中のおよその溶解性を決定した。視覚的溶解性アッセイの結果を表IIに列挙する。
【0130】
溶解性アッセイの分析では、ニフェジピンが本質的に親油性であることが示された。ニフェジピンは、水相および油相に容易に分配されないが、ベンジルアルコール、DMI、プロピレンカーボネート、トランスクトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)、およびポリソルベート80などの溶媒系に分配することができる。また、リドカインHClが、本質的に親水性であり、ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、およびトランスクトール(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)と共に、水およびグリコール相、例えばプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、PEG400などに容易に分配されることも示した。
【0131】
トランスクトール-Pおよびプロピレングリコールは、リドカインHCLを安定化し、不織布からの用量の湿潤性を高めた。また、肛門周囲組織へのリドカインHCLの経粘膜送達を高め、局所麻酔剤として機能する効率を改善する。ポリソルベート80は、活性医薬成分(ニフェジピンおよびリドカイン)を含む製剤がワイプの表面上に容易に含浸可能となるように、製剤の表面張力を減少させることが見出された。ポリソルベート80はまた、適用部位への薬用ワイプの湿潤性を増加させることによって送達を高める。ベンジルアルコールはまた、活性医薬成分(ニフェジピンおよびリドカインHCl)の保存剤としても機能した。プロピレンカーボネートは、ニフェジピンの可溶化に有用であった。ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)は、リドカインHClおよびニフェジピンの抗酸化剤および安定剤として機能した。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
実施例2-薬物賦形剤の適合性および安定性試験
薬剤-賦形剤の適合性試験は、概して、治療成分であるニフェジピンおよびリドカインHClと適合性のある剤形の構成成分を選択することを主な目的として実施される。様々なクラスの賦形剤、例えば、抗酸化剤、浸透促進剤、保水剤、分散剤、粘度調整剤、軟化剤、フィルム形成剤、保存剤、テーリング溶媒、共溶媒などを、治療成分(ニフェジピンおよびリドカインHCl)と組み合わせて試験し、賦形剤に曝露された際に製剤に何らかの不適合性があり得るかを評価した。図1は、賦形剤の各カテゴリーおよび至適濃度を最適化してAPI(リドカインHClおよびニフェジピン)を含有する製剤に到達し、次いで、この製剤を用いて本ワイプを含浸させて、肛門裂溝を治療することのできる局所用治療用ワイプを作り出すプロセスを概略的に示す。
【0135】
ほとんどの賦形剤は、直接的な薬理作用を持たないが、投与を容易なものとし、活性成分の放出を調節し、分解に対し薬剤を安定化させるのに重要である。薬剤と賦形剤との間の潜在的な相互作用は、治療成分の化学的、物理的、生物学的利用能、および安定性に影響を与える。薬物-賦形剤混合物を、1.5重量%の強度で、ニフェジピンおよび/またはリドカインHClについて0.3重量%の標的濃度で、好適な溶媒(ベンジルアルコール、プロピレンカーボネート、トランスクトール)中に溶解された原薬からなる溶液を作製することによって調製した。
【0136】
試験のために四つの試料セットを作成した。各試料セットは17個のバイアルを有するものとし、試験される賦形剤当たり1バイアルと、賦形剤を含まず活性化合物を含む対照1バイアルとした。第一の試料セット(I)を、治療化合物としてニフェジピン(0.3重量%)のみを有するものとし、表IIIに示す各賦形剤を、個別に添加して溶液を形成し、この溶液を混合してバイアルに保存した。第二の試料セット(II)を、治療化合物としてリドカインHCl(1.5重量%)のみを有するものとし、表IIIに示す各賦形剤を添加して溶液を形成し、この溶液を混合してバイアルに保存した。第三の試料セット(III)を、治療化合物としてニフェジピン(0.3重量%)およびリドカインHCl(1.5重量%)の両方を有するものとし、表IIIに示す各賦形剤を添加して溶液を形成し、この溶液を混合してバイアルに保存した。第四の試料セット(IV)を、リドカインHClもニフェジピンも含まないプラセボ対照としたが、溶媒のみを、表IIIに示す各賦形剤と混合して溶液を形成し、バイアルに保存した。各試料セット由来のバイアルを、二つの均等なサイズのさらに小さなバイアル(AおよびB)に分割した。次いで、各試料セット由来のバイアルAを、室温での貯蔵後に分析に供し、各試料セット由来のバイアルBを、高温(40℃および相対湿度75%)条件下での保存後に分析に供した。バイアルを4週間保存し、2週間および4週間の時点でバイアルを分析した。
【0137】
【表3】
【0138】
各バッチのAバイアルを、(a)視覚的濁度についてモニタリングし、(b)顕微鏡下でモニタリングして沈殿または結晶化の兆候を確認し、(c)pHを測定し、(d)HPLCを実施して、分解生成物ピーク(T0測定)があるかどうかを確認した。次いで、各バッチ由来のバイアルを、室温(25℃および相対湿度60%)で2週間保存し、次いで、視覚的濁度、顕微鏡下での分析、および上記のpH測定(T-2測定)をチェックした。次いで、各バッチ由来のバイアルを室温でさらに2週間(合計4週間)保存し、同じ分析を繰り返した(T-4測定)。実験を二連で繰り返して、添加された賦形剤が活性成分(ニフェジピンおよびリドカインHCl)と適合性があるかどうか、およびそれらが2~4週間後に室温保存で安定な貯蔵寿命を有するかどうかを判定した。
【0139】
各バッチのBバイアルを、(a)視覚的濁度についてモニタリングし、(b)顕微鏡下でモニタリングして沈殿または結晶化の兆候を確認し、(c)pHを測定し、(d)HPLCを実施して、分解生成物ピーク(T0測定)があるかどうかを確認した。次いで、各バッチ由来のバイアルを、高温(40℃および相対湿度75%)で2週間保存し、次いで、視覚的濁度、顕微鏡下での分析、および上記のpH測定(T-2測定)をチェックした。次いで、各バッチ由来のバイアルを高温でさらに2週間(合計4週間)保存し、同じ分析を繰り返した。(T-4測定)実験を二連で繰り返して、添加された賦形剤が活性成分(ニフェジピンおよびリドカインHCl)と適合性があるかどうか、およびそれらが2~4週間高温条件で保存された際に安定な貯蔵寿命を有するかどうかを判定した。
【0140】
両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第一の試料のT0測定では、対照試料(ニフェジピンのみ)が不純物なしでT0週で安定しているように見えることが示された。T0でのいずれの賦形剤の組合せにおいても、大きな分解(>5%)は観察されなかった。両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第一の試料のT4測定では、対照試料(ニフェジピンのみ)が不純物なしでT4週で安定しているように見えることが示された。大きな分解(>5%)が、トランスクトール、DMI、ベンジルアルコール、オレイルアルコール、PEG400、およびアスコルビン酸のDECの組合せで観察されたが、このことは不適合性を示している。Tween80の組合せを用いても僅かな分解が観察された。抗酸化剤BHTを製剤に添加すると、分解は著しく減少した。
【0141】
両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第二の試料のT0測定では、対照試料(リドカインHClのみ)が不純物なしでT0週で安定しているように見えることが示された。T0でのいずれの賦形剤の組合せにおいても、大きな分解(>5%)は観察されなかった。両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第二の試料のT4測定では、対照試料(リドカインHClのみ)が不純物なしでT4週で安定しているように見えることが示された。大きな分解(>5%)が、トランスクトール、DMI、およびPEG400の組合せの DECの組合せで観察されたが、このことは不適合性を示している。ベンジルアルコールおよびオレイルアルコールとの組合せでも僅かな分解が観察された。
【0142】
両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第三の試料のT0測定では、対照試料(ニフェジピンおよびリドカインHCl)が不純物なしでT0週で安定しているように見えることが示された。T0でのいずれの賦形剤の組合せにおいても、大きな分解(>5%)は観察されなかった。両方の温度(RTおよび40℃)で設定された第二の試料セットのT4測定では、第一および第二の試料セットに類似した結果が示された。試料セットの結果に基づいて、さらに別の分析を行うために、特定の濃度の賦形剤を有する六つの製剤を選択した。
【0143】
実施例3-製剤の安定性分析
さらに別の安定性分析を行うために、以下の六つの製剤を選択した。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
【表7】
【0148】
【表8】
【0149】
【表9】
【0150】
各製剤を、三つの異なる温度条件(25℃/RH60%、30℃/RH65%、40℃/RH75%)および四つの異なる保存時点(T0、1ヶ月、2ヶ月、および3ヶ月)で供試し、次いで、製剤を、(a)視覚的濁度についてモニタリングし、(b)顕微鏡下でモニタリングして沈殿または結晶化の兆候を確認し、(c)pHを測定し、(d)HPLCを実施して、実施例2で述べた各時点後に分解生成物ピークがあるかどうかを確認した。
【0151】
T-0測定値では、六つの製剤すべてが安定していること、および異なる温度に曝露された場合でさえHPLC上で分解プロファイルが観察されなかったことが示された(25℃、30℃、および40℃)。
【0152】
T-1ヶ月測定値では、製剤-1を除くすべての製剤が安定していることが示された。F-I製剤では、三つの不純物(RRT 0.293、RRT 2.630、およびRRT 2.796)が合計約0.75%で観察され、他の製剤では観察されなかった。
【0153】
T-2ヶ月測定値では、F-I製剤がいくらか分解を示したことが示された。F-I製剤では、三つの不純物(RRT 0.293、RRT 2.630、およびRRT 2.796)が40℃では合計約1.1%、25℃では約0.5%観察され、他の製剤では観察されなかった。同様に、F6製剤は、40℃で合計0.1~0.2%、RRT2.672の不純物を示した。
【0154】
T-3ヶ月測定は、F-IおよびF-II製剤がいくらか分解を示したことを示した。F-I製剤およびF-II製剤で観察されたRRT 0.106での不純物は、以前の時点と依然として一致していた。F-I製剤では、三つの不純物(RRT 0.293、RRT 2.630、およびRRT 2.796)が40℃では合計約1.4%、25℃では約0.8%観察され、他の製剤では観察されなかった。F-III製剤では不純物は観察されなかった。F-IV、F-V、およびF-VI製剤は、以前の時点から不純物の有意な増加を示さなかった。
【0155】
実施例4-ワイプの飽和ローディング容量
製剤IIIを、ワイプ上にロードされる能力について試験されるように選択した。本実施例に記載されるプロトコールは、本明細書に開示される任意の製剤に適用することができる。飽和ローディング含有量を確立する目的で、活性物質を含まない製剤組成物3を使用するプラセボ溶液を使用した。
【0156】
図2に示すように、製剤を、浸漬、ピペッティング、または噴霧技術のいずれかによってワイプに添加した。
【0157】
浸漬
浸漬については、風袋を引いた容器中で、約6×4インチのワイプの風袋乾燥重量を測り、次いで、各添加時間の間、約30gのプラセボ製剤を含む容器にこのワイプを添加した。ワイプを約1分間製剤に浸漬した後、図3に示すようにワイプを乾燥させた。各乾燥工程は約15分を要する。乾燥時間を滴下の量に基づいて推定し、15分では滴下はほとんど見られず、これを乾燥の少なくとも50%が発生した時点であるものと仮定した。ここで、ワイプを再び計量して、一回の製剤添加工程後のワイプの乾燥重量を確定した。
【0158】
ピペッティング
ピペッティングについては、風袋を引いた容器中で、約6×4インチのワイプの風袋乾燥重量を測り、次いで、各添加時間の間、約5gのプラセボ製剤をこのワイプにピペッティングした。毎回5g超の製剤の添加が滴下を示したという以前の研究に基づいて、5gの添加を決定した。ワイプを約1分間製剤に浸漬した後、図3に示すようにワイプを乾燥させた。ここで、ワイプを再び計量して、一回の製剤添加工程後のワイプの乾燥重量を確定した。
【0159】
噴霧
噴霧については、風袋を引いた容器中で、約6×4インチのワイプの風袋乾燥重量を測り、次いで、スプレーボトルを用いて、各添加時間の間、約5gのプラセボ製剤をこのワイプに噴霧した。ワイプを約1分間製剤に浸漬した後、図3に示すようにワイプを乾燥させた。ここで、ワイプを再び計量して、一回の製剤添加工程後のワイプの乾燥重量を確定した。
【0160】
本研究では、乾燥時間、添加回数、および適用プロセスが、製剤によるワイプの飽和能力を制御または制限するのに有意な役割を果たさないことが示されている。以下の表および図(図4および図5)は、含浸製剤の重量、飽和ローディング、および飽和ローディング%についての研究の詳細およびそれらのそれぞれの計算を示す。
【0161】
図4は、含浸製剤の重量が4.8g~6.05gの範囲であり、添加回数または適用プロセスに関して傾向がなかったことを示している。秤量前にワイプを45分間乾燥させた。飽和ローディングは5.5~6.5であることが見出され、添加回数または適用プロセスに関して傾向はなかった。飽和ローディング率は550~650の範囲であることが見出され、添加回数または適用プロセスに関して傾向はなかった。したがって、この結果では、添加回数および適用プロセスが、含浸された製剤の量またはワイプの飽和ローディング量に全く影響を与えないことが示された。
【0162】
同じ実験を、乾燥時間を15分増加させて繰り返した。実験の結果を図5に示す。45分の乾燥時間の場合と同様に、含浸製剤の重量は、3.6g~5.8gの範囲であり、添加回数または適用プロセスに関して傾向はなかった。飽和ローディングは4.2~6.2であることが見出され、添加回数または適用プロセスに関して傾向はなかった。飽和ローディング率は420~620の範囲であることが見出され、添加回数または適用プロセスに関して傾向はなかった。したがって、この結果では、添加回数および適用プロセスが、含浸された製剤の量またはワイプの飽和ローディング量に全く影響を与えないことが示された。
【0163】
さらにローディングの均一性を確立するために、異なる重量およびサイズのワイプを用いて、それらを製剤に浸漬して同じプロセスパラメータに供することによって、較正試験を実施した。ワイプの重量を、製剤をロードする前および後に測定した。以下の表は、得られた結果を示す。
【0164】
【表10】
【0165】
図6の較正曲線は、このローディングが異なるワイプサイズと整合することを示し、このことは、製剤がワイプ内に均一に分布していることを示している。
【0166】
実施例5-治療用ワイプのインビトロ透過試験
インビトロ透過試験(IVPT)は、明確に定義された局所用製品に製剤化された特定の活性医薬成分(API)のインビトロ透過プロファイルを、標的のヒト組織内に対し決定するよう設計されたものである。特定のAPIの透過プロファイルは、APIの物理的および化学的特性(サイズ、溶解性、親油性、logPなど)によって決定されるだけでなく、局所用製品の微細構造特性(粘度、選択された透過促進剤、乳化剤など)および剤形によっても影響を受ける。したがって、IVPTは、単一製剤におけるニフェジピンHClおよびリドカインHClの実行可能性に関する情報および理解を提供するだけでなく、目的の標的作用部位にAPIが到達する能力に対する様々な製剤プロトタイプの効果も示す、重要なツールである。
【0167】
IVPT試験のプロトコールは、Santosら(Santos LL,Swofford NJ,Santiago BG.In Vitro Permeation Test (IVPT)for Pharmacokinetic Assessment of Topical Dermatological Formulations.Curr Protoc Pharmacol.2020 Dec;91(1):e79)に開示されている。
【0168】
インビトロ透過試験(IVPT)を、エクスビボでヒト凍結保存死体肛門周囲組織にわたって行い、1.5%リドカインHC1と0.3%ニフェジピンとを含有する製剤IIIを含む局所用溶液、ワイプ上のその対応する溶液、および軟膏製剤の皮膚浸透を比較した。実験は、本明細書に開示された同じ手順に従って、他の製剤(I~IIおよびIV~VI)で繰り返すことができる。
【0169】
試薬および材料
a) 1.5%リドカインHClおよび0.3%ニフェジピンの製剤III
i.溶液としての製剤III(F1)
ii.ワイプ上に含浸された製剤III(実施例4のプロトコールに従う)(F2)
iii.軟膏(F3)としての製剤III
b) 凍結保存ヒト死体肛門周囲組織(厚さ500±250μm)
c) 製剤当たり4連を使用した
d) 1×リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)
e) 均質化溶液(50/50のメタノール/LCMSグレード水)
f) 20mLシンチレーションバイアル
g) セラミックビーズを含む6.0mLの均質化バイアル
h) 質量分析用96ウェルプレート
i) 洗浄溶媒(70体積%エタノール)
【0170】
機器
a) 自動垂直インラインフロースルーセル(PermeGearコレクターFC 33、バージョン3.1)
b) 容積式ピペット
c) キャリパー/測定ゲージ
d) 水分蒸散計(デルフィンテクノロジーズ社)
e) 赤外線/レーザー温度計
f) プローブ温度計
g) 組織ホモジナイザー
h) 60℃の実験室オーブン
i) 質量分析計
j) 遠心分離機
【0171】
凍結保存されたヒト死体肛門周囲組織を商業的供給源から入手し、到着時点で-80℃で保存した。皮膚組織を室温で解凍し、目に見える穴、損傷、広範な伸展、または瘢痕がないか調べた。経表皮水分蒸散量(TEWLまたはTWL)は、皮膚組織バリア機能の特徴付けに一般的に使用される。各皮膚組織試料のTEWL値を測定して、水分蒸散計を用いて組織の完全性を見積もった。TEWL値が低いことは、一般的に、組織バリア機能が無傷であることの特徴である。製剤(F1~F3)を適用する前に、各拡散セル(フランツ型拡散セル)のTEWLを測定して記録する。
【0172】
自動化インラインフロースルー拡散セルシステム(PermeGearコレクターFC 33、バージョン3.1)を使用して、組織透過実験における薬物/APIを評価した。IVPT試験全体を通して、周囲環境制御実験室温度範囲を21℃±2℃、湿度範囲を50%±20%の相対湿度に維持した。フロースルー拡散セルシステムをレセプター媒体で平衡化した。
【0173】
皮膚試料が32℃±1℃に維持されるように、ヒーターおよびサーキュレーターを調整した。拡散セルを配置し、システムの可動アームを支持しながら加熱して、皮膚表面温度(32℃±1℃)を維持した。セルをマルチチャネル蠕動ポンプに接続して、20mLシンチレーションバイアルに滴下するように拡散セルの出口を向けた。皮膚組織の切片を1.5×1.5cmの切片に切断し、表皮層/角質層を上にして拡散セルに取り付けた。ドナー区画ブロックを皮膚組織(角質層上のドナーチャンバー)上に配置し、ステンレス鋼クランプを用いて固定して、漏れなく密封した。拡散セルを反転させることによって気泡を除去し、拡散セルの下側のガラス窓で目視により確認した。適切なシンク条件を提供するために、30μL/分(1.8mL/時間)の流速を維持するように、ポンプを調整した。
【0174】
拡散セルを約30分間平衡化した。組織の上部に水の蓄積を示したどのセルも解析から除いた。平衡化後、赤外線または適切な温度計を使用して、各セルの温度を測定した。皮膚表面温度を32℃±1℃で安定に維持した。T 「0」試料を、投与の前に、30μL/分(1.8mL/時間)で30分間採集した。
【0175】
10μLの体積を適切に送達するように設定した容積式ピペットを使用して、各製剤(F1、F2、F3)を、連続拡散セル上に交互の順番で皮膚組織表面上へ均一に分注した。ドナーチャンバーを周囲条件付近に保った。画分を、プロトコールに標示される間隔で、最大24時間時点にわたって採集する。試験終了時に、未投与の皮膚試料を採集した後、処置済み皮膚を採集した。
【0176】
洗浄しテープで剥がした皮膚を、真皮側を下にしてアルミニウム箔上に配置した。該当する場合は、60℃に設定されたオーブンに肛門周囲組織試料を約2.0分間置く。表皮を真皮から分離するためにピンセットを使用した。洗浄した組織を、それぞれの予め秤量されたラベル付きバイアルに入れ、組織の重量を記録した。まず未投与の皮膚試料を、続いて処置済み皮膚を処理してバイアルに入れた。
【0177】
清潔な表皮および真皮の組織を、予め計量された各ラベル付きバイアルに入れ、組織の重量を記録した。表皮および真皮の組織試料を、以下のプロトコールに従ってOmni Prepホモジナイザーを用いて均質化した。
a) 新しい外科用メスを用いて、組織を適切かつ均一に刻んだ。
b) 2000μLの均質化溶媒(体積比50:50のメタノール/LC-MSグレード水)を、皮膚試料を含むラベル付きチューブに添加した。
c) 4.5m/秒を3×30秒、一時停止45秒で、組織を均質化した。
d) 均質化が完了した後、200μLのこのアリコートを、800μLのアセトニトリルを用いたAPI(ニフェジピンおよびリドカインHCl)抽出に使用し、短時間ボルテックスし、次いで水浴中で10分間超音波処理した。
e) バイアルを5℃で5分間、10,000RPMで遠心分離する。
f) 上清を質量分析に使用してAPIの存在を確認し、APIの量(LC/MS)を定量化するものとする。
【0178】
皮膚組織の表面上の製剤の回収は、1つの乾燥スワブ、70%エタノール(v/v)の洗浄溶媒に浸漬した1つの湿ったスワブ、および1つの乾燥スワブにより清拭した後、一つの連続したテープストリップにより実施した。スワブおよびテープストリップを、分析のためにラベル付きバイアルに収集した。次いで、組織を均質化およびタンパク質破砕に供して、吸着された製剤を抽出した。未投与の皮膚試料をまず洗浄した後、清潔な切開ボード上で皮膚を処置した。
a) 10mLのACNをテープおよびスワブ試料に添加し、試料を採集し、撹拌プレート上に置き、600RPMで一晩撹拌した。
b) 上清の200μLのアリコートを質量分析に使用した。
【0179】
すべての試料を、短期保存(1週間未満)には2~8℃で、長期保存(1週間超)には-20℃で、LC-MS/MSによる分析まで保存した。分析により、組織全体のリドカインHClの累積透過量が、溶液ベースの送達製剤(F1)では、ワイプベースの送達製剤(F2)および軟膏ベースの送達製剤(F3)のものと比較して高かったことが示された。
【0180】
累積透過量を計算するための式は、分析物の濃度×試料の体積であり、試料の体積は、毎回の採集後に以前の時点で採集された同じものに追加される。Jmaxは、各連により研究期間に達成される最大流束の計算値である。Jmaxを数学的に計算するための式は、cm/時間で表される分配係数Kpであり、これは分析物の拡散特性に、mg/Lで表される水飽和溶解度Csat-maxを乗じたものである。Jmax=Kp×Csat-max。
【0181】
興味深いことに、組織全体のリドカインHClの累積透過量は、ワイプベースの送達製剤(F2)では、軟膏ベースの送達製剤(F3)の透過量と比較して高かった。(図7を参照)。同様の傾向は、平均流束の測定値がF1においてF2およびF3と比較して高かった場合に見られた。同様に、F2の平均流束はF3の平均流束よりも高かった。(図8を参照)。
【0182】
分析ではまた、組織全体のニフェジピンの累積透過量は、溶液ベースの送達製剤(F1)では、ワイプベースの送達製剤(F2)および軟膏ベースの送達製剤(F3)と比較して高かったことが示された。興味深いことに、組織全体のニフェジピンの累積透過量は、ワイプベースの送達製剤(F2)では、軟膏ベースの送達製剤(F3)の透過量と比較して高かった。(図9を参照)。同様の傾向は、平均流束の測定値がF1においてF2およびF3と比較して高かった場合に見られた。同様に、F2の平均流束はF3の平均流束よりも高かった。(図10を参照)。
【0183】
三種類の送達製剤について組織中のリドカインHClの保持を図11に示す。組織中のリドカインHClの保持は、溶液ベースの送達製剤(F1)では、ワイプベースの送達製剤(F2)および軟膏ベースの送達製剤(F3)の保持と比較して高かった。同様に、組織中のリドカインHClの保持は、ワイプベースの送達製剤(F2)では、軟膏ベースの送達製剤(F3)よりも高かった。
【0184】
三種類の送達製剤について組織中のニフェジピンの保持を図12に示す。組織中のニフェジピンの保持は、溶液ベースの送達製剤(F1)では、ワイプベースの送達製剤(F2)および軟膏ベースの送達製剤(F3)の保持と比較して高かった。同様に、組織中のニフェジピンの保持は、ワイプベースの送達製剤(F2)では、軟膏ベースの送達製剤(F3)よりも高かった。
【0185】
実験では、ワイプベースの送達が、ニフェジピンおよびリドカインHClの軟膏ベースの送達よりも有効であることが示された。ワイプによって送達されたニフェジピンおよびリドカインHClの製剤は、肛門周囲組織を通して最大24時間浸透することができ、IVPT試験により観察された。局所用の溶液は、作用部位では薬剤分子の絶対的な有用性をもたらすが、患者の使用およびコンプライアンスの観点から塗布するには実用的ではない。
【0186】
参照による援用
本明細書に言及されるすべての刊行物および特許は、それぞれの個々の刊行物または特許が参照により援用されることがあたかも具体的かつ個別に示されているかのように、全体が参照により本明細書に援用される。
【0187】
他の実施形態
主題の具体的な実施形態が論じられているが、上記の明細書は例示であって限定するものではない。多くの変形が、本明細書および以下の特許請求の範囲を概観する際に当業者に明らかになろう。本発明の全範囲は、そのような変形と併せて、特許請求の範囲の均等物の全範囲および本明細書と共に、特許請求の範囲を参照することによって決定されるべきである。
図1
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【国際調査報告】