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  • 特表-セフチブテン投与レジメン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】セフチブテン投与レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/546 20060101AFI20240312BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/551 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/431 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/424 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/69 20060101ALI20240312BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/546
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/551
A61K31/431
A61K31/424
A61K31/69
A61K31/439
A61P31/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561040
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 US2022071479
(87)【国際公開番号】W WO2022217199
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】63/170,936
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518438335
【氏名又は名称】キューペックス バイオファーマ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】グリフィス, デイビッド シー.
(72)【発明者】
【氏名】ロモフスカヤ, オルガ
(72)【発明者】
【氏名】モーガン, エリザベス イー.
(72)【発明者】
【氏名】ルーティット, ジェフリー エス.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB35
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC53
4C086CB05
4C086CB29
4C086CC05
4C086CC07
4C086CC10
4C086DA43
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB35
4C086ZC75
(57)【要約】
β-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせたセフチブテンの投与レジメンが、本明細書において開示される。その投与レジメンは、1日当たり400mgよりも多い投与量のセフチブテン(例えば、400mgを1日2回、600mgを1日1回もしくは1日2回、または800mgを1日1回もしくは1日2回)を含む。400mgよりも多い量のセフチブテンと、β-ラクタマーゼインヒビターとを含む薬学的組成物が、本明細書において開示される。細菌感染症を処置する方法もまた本明細書において開示され、その方法は、細菌感染症を処置することを必要とする対象に、400mgよりも多い量のセフチブテンと、β-ラクタマーゼインヒビターとを併用投与する工程を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
400mgよりも多い量のセフチブテンと、
β-ラクタマーゼインヒビターと
を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
セフチブテンが500mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
セフチブテンが550mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
セフチブテンが600mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
セフチブテンが650mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
セフチブテンが700mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
セフチブテンが750mgよりも多い量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
セフチブテンが約600mgの量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
セフチブテンが約800mgの量で存在する、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、式(I)~(IX):
【化16】
【化17】
【化18】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、該式において、
各Rは独立的にC1~6アルキルであるか、または各Rは、それらが結合されているジェミナル炭素原子と一緒に、必要に応じて置換されたC3~6シクロアルキル環もしくは必要に応じて置換された4~6員ヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、単結合、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換された2~6員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~6シクロアルキル、必要に応じて置換された5~6員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、および必要に応じて置換された5~6員ヘテロアリールから選択され;
は、C1~6アルキル、-O-C(O)-R、-S-C(O)-R、-NH-C(O)-R、-O-C(O)-O-R、-S(O)-O-R、-NH-C(O)-O-R、-(O)-O-R、-C(O)-S-R、-C(O)-NH-R、-O-(O)-O-R、-O-C(O)-S-R、-O-C(O)-NH-R、-S-S-R、-S-R、-NH-R、および-CH(-NH)-Rから選択され;
は、水素、必要に応じて置換されたC1~8アルキル、必要に応じて置換された2~8員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~8シクロアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたC5~10シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル-C1~3アルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール、必要に応じて置換されたC7~10アリールアルキル、および必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール-C1~3アルキルから選択され;
は、C1~6アルキル、-NR、-CHC(O)NH、および
【化19】
からなる群より選択され;
およびRは、H、C1~6アルキル、および-CHC(O)NHからなる群より独立的に選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、式(X)~(XVII):
【化20】
【化21】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、該式において、
は、C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)C2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)OC1~9アルキル、-CR1011OC(O)OC3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)O(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)OC2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)C6~10アリール、-CR1011OC(O)OC6~10アリール、-CR1011C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH2~3OC(O)C1~4アルキル、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)OC1~4アルキル、-CR1011OC(O)(CH1~3OC(O)C1~4アルキル、および
【化22】
からなる群より選択され;
各R10およびR11は、H、必要に応じて置換されたC1~4アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
各R13およびR14は、H、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
15は、必要に応じて置換されたC1~6アルキルである、
請求項1~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、
【化23】
、またはそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
細菌感染症を処置する方法であって、
細菌感染症を処置することを必要とする対象に、400mgよりも多い量のセフチブテンと、β-ラクタマーゼインヒビターとを併用投与する工程
を含む、方法。
【請求項14】
前記セフチブテンが500mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記セフチブテンが550mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記セフチブテンが600mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記セフチブテンが650mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記セフチブテンが700mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記セフチブテンが750mgよりも多い量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記セフチブテンが約600mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記セフチブテンが約800mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、式(I)~(IX):
【化24】
【化25】
【化26】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、該式において、
各Rは独立的にC1~6アルキルであるか、または各Rは、それらが結合されているジェミナル炭素原子と一緒に、必要に応じて置換されたC3~6シクロアルキル環もしくは必要に応じて置換された4~6員ヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、単結合、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換された2~6員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~6シクロアルキル、必要に応じて置換された5~6員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、および必要に応じて置換された5~6員ヘテロアリールから選択され;
は、C1~6アルキル、-O-C(O)-R、-S-C(O)-R、-NH-C(O)-R、-O-C(O)-O-R、-S(O)-O-R、-NH-C(O)-O-R、-(O)-O-R、-C(O)-S-R、-C(O)-NH-R、-O-(O)-O-R、-O-C(O)-S-R、-O-C(O)-NH-R、-S-S-R、-S-R、-NH-R、および-CH(-NH)-Rから選択され;
は、水素、必要に応じて置換されたC1~8アルキル、必要に応じて置換された2~8員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~8シクロアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたC5~10シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル-C1~3アルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール、必要に応じて置換されたC7~10アリールアルキル、および必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール-C1~3アルキルから選択され;
は、C1~6アルキル、-NR、-CHC(O)NH、および
【化27】
からなる群より選択され;
およびRは、H、C1~6アルキル、および-CHC(O)NHからなる群より独立的に選択される、
請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、式(X)~(XVII):
【化28】
【化29】
【化30】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、該式において
は、C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)C2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)OC1~9アルキル、-CR1011OC(O)OC3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)O(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)OC2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)C6~10アリール、-CR1011OC(O)OC6~10アリール、-CR1011C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH2~3OC(O)C1~4アルキル、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)OC1~4アルキル、-CR1011OC(O)(CH1~3OC(O)C1~4アルキル、および
【化31】
からなる群より選択され;
各R10およびR11は、H、必要に応じて置換されたC1~4アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
各R13およびR14は、H、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
15は、必要に応じて置換されたC1~6アルキルである、
請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記β-ラクタマーゼインヒビターが、
【化32】
、またはそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される、請求項13~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記量のセフチブテンが1日1回投与される、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記量のセフチブテンが1日2回投与される、請求項13~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(あらゆる優先権出願の参照による援用)
本出願とともに提出された出願データシートにおいて外国優先権主張または国内優先権主張が示されているあらゆるすべての出願は、米国特許法施行規則の下で参照によって本明細書により援用される。
【0002】
本出願は、2021年4月5日に出願された米国仮出願第63/170,936号(これは、その全体が援用される)の利益を主張する。
【0003】
(米国政府により支援された研究開発に関する陳述)
本発明は、保健福祉省契約番号HHSO100201600026Cの下で米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0004】
(発明の背景)
(発明の分野)
本出願は、医薬の分野に関し、特に、セフチブテンならびにその処方物および使用に関する。
【背景技術】
【0005】
(関連分野の説明)
セフチブテンは、第三世代セファロスポリン系抗生物質である。それは、1日1回400mgの投与量での経口投与について、FDAによって承認されている。セフチブテンは、細菌耐性の発生に対して感受性である。したがって、耐性発生に対して有効であり得る、セフチブテンを使用する新規治療法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
400mgよりも多い量のセフチブテンと、β-ラクタマーゼインヒビターとを含む薬学的組成物が、本明細書において開示される。細菌感染症を処置する方法もまた本明細書において開示され、その方法は、細菌感染症を処置することを必要とする対象に、400mgよりも多い量のセフチブテンと、β-ラクタマーゼインヒビターとを併用投与する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、1回分の投与量400mg、1回分の投与量600mg、または1回分の投与量800mgの投与後のcis-セフチブテンのAUC0~12を示すグラフである。
【0008】
図2図2は、1回分の投与量400mg、1回分の投与量600mg、または1回分の投与量800mgの投与後のtrans-セフチブテンのAUC0~12を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
本明細書において開示される一部の実施形態は、セフチブテンをβ-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせて投与することにより、細菌感染症を処置することに関する。一部の実施形態において、セフチブテンの1回分の投与量は400mgよりも多い。下記のとおり、400mgよりも多い1回分のセフチブテン投与量ごとの投与は用量比例的な曝露をもたらすことが、驚くべきことに発見された。さらに、より高い濃度のセフチブテンは、β-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせて細菌耐性の発生を減少し得ることが、発見された。これらをまとめると、これらの発見は、β-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせた、400mgよりも多い1回分の投与量ごとのセフチブテンの投与を支持する。
【0010】
種々の実施形態において、セフチブテンの1回分の投与量は、450mg、500mg、550mg、600mg、750mg、800mg、または850mgよりも多い。一部の実施形態において、セフチブテンの1回分の投与量は、400mg、450mg、500mg、550mg、600mg、750mg、800mg、および850mgから選択されるいずれか2つの投与量の間の範囲にある。種々の実施形態において、その1回分の投与量のセフチブテンは、1日に1回、2回、または3回投与される。一部の実施形態において、400mgのセフチブテンが、1日2回投与される。一部の実施形態において、セフチブテンとβ-ラクタマーゼインヒビターとが、同じ処方物で投与される。他の実施形態において、セフチブテンとβ-ラクタマーゼインヒビターとが、別個の処方物で投与される。
【0011】
(定義)
本明細書において使用される場合、「a」および「b」が整数である「C~C」または「Ca~b」とは、指定された基における炭素原子の数を指す。すなわち、その基は、「a」個~「b」個(両端の数値を含む)の炭素原子を含み得る。したがって、例えば、「C~Cアルキル」基または「C1~4アルキル」基とは、1個~4個の炭素を有するすべてのアルキル基、すなわち、CH-、CHCH-、CHCHCH-、(CHCH-、CHCHCHCH-、CHCHCH(CH)-および(CHC-を指す。
【0012】
用語「ハロゲン」または「ハロ」とは、本明細書において使用される場合、元素の周期表の7列目の放射安定性(radio-stable)原子のいずれか1つ、例えば、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味し、フッ素および塩素が好ましい。
【0013】
本明細書において使用される場合、「アルキル」とは、完全に飽和した(すなわち、二重結合も三重結合も全く含まない)直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルキル基は1個~20個の炭素原子を有し得る(アルキル基が本明細書において出現する場合はいつでも、「1~20」などの数値範囲は所定の範囲にある各整数を指し、例えば、「1個~20個の炭素原子」とは、そのアルキル基が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子など、20個まで(20個を含む)の炭素原子からなり得ることを意味するが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルキル」の存在も含む)。アルキル基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキルであり得る。アルキル基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級アルキルであり得る。アルキル基は、「C1~4アルキル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C1~4アルキル」は、そのアルキル鎖に1個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキル鎖がメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0014】
本明細書において使用される場合、「アルコキシ」とは、Rが上記で定義されているアルキルである式-OR(例えば「C1~9アルコキシ」)を指し、これには、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、1-メチルエトキシ(イソプロポキシ)、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、およびtert-ブトキシなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0015】
本明細書において使用される場合、「アルキルチオ」とは、Rが上記で定義されているアルキルである式-SR(例えば「C1~9アルキルチオ」など)を指し、それには、メチルメルカプト、エチルメルカプト、n-プロピルメルカプト、1-メチルエチルメルカプト(イソプロピルメルカプト)、n-ブチルメルカプト、イソブチルメルカプト、sec-ブチルメルカプト、tert-ブチルメルカプトなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0016】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」とは、1個または複数個の二重結合を含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルケニル基は、2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルケニル」の存在も含む。アルケニル基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニルであり得る。アルケニル基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルケニルであり得る。アルケニル基は、「C2~4アルケニル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルケニル」は、そのアルケニル鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルケニル鎖がエテニル、プロペン-1-イル、プロペン-2-イル、プロペン-3-イル、ブテン-1-イル、ブテン-2-イル、ブテン-3-イル、ブテン-4-イル、1-メチル-プロペン-1-イル、2-メチル-プロペン-1-イル、1-エチル-エテン-1-イル、2-メチル-プロペン-3-イル、ブタ-1,3-ジエニル、ブタ-1,2-ジエニル、およびブタ-1,2-ジエン-4-イルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルケニル基としては、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、およびヘキセニルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0017】
本明細書において使用される場合、「アルキニル」とは、1個もしくは複数個の三重結合を含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。アルキニル基は、2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アルキニル」の存在も含む。アルキニル基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキニルであり得る。アルキニル基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルキニルであり得る。アルキニル基は、「C2~4アルキニル」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルキニル」とは、そのアルキニル鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキニル鎖がエチニル、プロピン-1-イル、プロピン-2-イル、ブチン-1-イル、ブチン-3-イル、ブチン-4-イル、および2-ブチニルからなる群より選択されることを、示す。代表的なアルキニル基としては、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、およびヘキシニルなどが挙げられるが、それらには決して限定されない。
【0018】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアルキル」とは、1個または複数個のヘテロ原子(すなわち、炭素以外の元素であり、これには、窒素、酸素および硫黄が挙げられるが、それらに限定はされない)をその鎖骨格に含む、直鎖または分枝の炭化水素鎖を指す。ヘテロアルキル基は1個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロアルキル」の存在も含む。ヘテロアルキル基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのヘテロアルキルであり得る。ヘテロアルキル基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級ヘテロアルキルであり得る。ヘテロアルキル基は、「C1~4ヘテロアルキル」または類似の名称で呼ばれ得る。ヘテロアルキル基は1個または複数個のヘテロ原子を含み得る。単に例示を目的として、「C1~4ヘテロアルキル」とは、そのヘテロアルキル鎖に1個~4個の炭素原子が存在し、その鎖の骨格に1個または複数個のヘテロ原子がさらに存在することを、示す。
【0019】
本明細書において使用される場合、「アルキレン」とは、2つの結合点によってその分子の残りと結合された、炭素および水素だけを含む、分枝または直鎖の完全に飽和したジラジカル化学基(すなわち、アルカンジイル)を意味する。アルキレン基は1個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていないアルキレンという用語の存在も含む。アルキレン基はまた、1個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルキレンであり得る。アルキレン基はまた、1個~4個の炭素原子を有する低級アルキレンであり得る。アルキレン基は、「C1~4アルキレン」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C1~4アルキレン」とは、そのアルキレン鎖に1個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルキレン鎖が、メチレン、エチレン、エタン-1,1-ジイル、プロピレン、プロパン-1,1-ジイル、プロパン-2,2-ジイル、1-メチル-エチレン、ブチレン、ブタン-1,1-ジイル、ブタン-2,2-ジイル、2-メチル-プロパン-1,1-ジイル、1-メチル-プロピレン、2-メチル-プロピレン、1,1-ジメチル-エチレン、1,2-ジメチル-エチレン、および1-エチル-エチレンからなる群より選択されることを、示す。
【0020】
本明細書において使用される場合、「アルケニレン」とは、2つの結合点によってその分子の残りと結合された、炭素および水素だけを含み少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を含む、直鎖または分枝鎖のジラジカル化学基を意味する。アルケニレン基は2個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていないアルケニレンという用語の存在も含む。アルケニレン基はまた、2個~9個の炭素原子を有する中程度の大きさのアルケニレンであり得る。アルケニレン基はまた、2個~4個の炭素原子を有する低級アルケニレンであり得る。アルケニレン基は、「C2~4アルケニレン」または類似の名称で呼ばれ得る。単に例示を目的として、「C2~4アルケニレン」とは、そのアルケニレン鎖に2個~4個の炭素原子が存在すること、すなわち、そのアルケニレン鎖が、エテニレン、エテン-1,1-ジイル、プロペニレン、プロペン-1,1-ジイル、プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-メチル-エテニレン、ブタ-1-エニレン、ブタ-2-エニレン、ブタ-1,3-ジエニレン、ブテン-1,1-ジイル、ブタ-1,3-ジエン-1,1-ジイル、ブタ-2-エン-1,1-ジイル、ブタ-3-エン-1,1-ジイル、1-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、2-メチル-プロパ-2-エン-1,1-ジイル、1-エチル-エテニレン、1,2-ジメチル-エテニレン、1-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペニレン、3-メチル-プロペニレン、2-メチル-プロペン-1,1-ジイル、および2,2-ジメチル-エテン-1,1-ジイルからなる群より選択されることを、示す。
【0021】
用語「芳香族」とは、共役π電子系を有する環または環系を指し、それは、炭素環式芳香族基(例えば、フェニル)および複素環式芳香族基(例えば、ピリジン)の両方を含む。この用語は、環系全体が芳香族である場合に限り、単環基または縮合多環(すなわち、隣接する原子対を共有する環)基を含む。
【0022】
本明細書において使用される場合、「アリール」とは、その環骨格に炭素だけを含む、芳香環または芳香環系(すなわち、隣接する2個の炭素原子を共有する2個またはそれより多くの縮合した環)を指す。アリールが環系である場合、その系にあるどの環も芳香族である。アリール基は6個~18個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「アリール」の存在も含む。一部の実施形態において、アリール基は6個~10個の炭素原子を有する。アリール基は、「C6~10アリール」、「CもしくはC10アリール」、または類似の名称で呼ばれ得る。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、およびアントラセニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0023】
本明細書において使用される場合、「アリールオキシ」および「アリールチオ」とは、Rが上記で定義されているアリールである、RO-およびRS-(例えば「C6~10アリールオキシ」または「C6~10アリールチオ」など)を指し、それらにはフェニルオキシが挙げられるが、それに限定はされない。
【0024】
「アラルキル」または「アリールアルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたアリール基(例えば「C7~14アラルキル」など)であり、それにはベンジル、2-フェニルエチル、3-フェニルプロピル、およびナフチルアルキルが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1~4アルキレン基)である。
【0025】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアリール」とは、その環骨格に1個もしくは複数個のヘテロ原子(すなわち、炭素以外の元素であり、これには、窒素、酸素および硫黄が挙げられるが、それらに限定はされない)を含む、芳香環または芳香環系(すなわち、隣接する2個の原子を共有する2個またはそれより多くの縮合した環)を指す。ヘテロアリールが環系である場合、その系にあるどの環も芳香族である。ヘテロアリール基は5個~18個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、その環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロアリール」の存在も含む。一部の実施形態において、ヘテロアリール基は5個~10個の環員または5個~7個の環員を有する。ヘテロアリール基は、「5~7員ヘテロアリール」、「5~10員ヘテロアリール」、または類似の名称で呼ばれ得る。ヘテロアリール環の例としては、フリル、チエニル、フタラジニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、キノリニル、イソキノリニル(isoquinlinyl)、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、インドリル、イソインドリル、およびベンゾチエニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0026】
「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアリールアルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたヘテロアリール基である。例としては、2-チエニルメチル、3-チエニルメチル、フリルメチル、チエニルエチル、ピロリルアルキル、ピリジルアルキル、イソオキサゾリルアルキル(isoxazollylalkyl)、およびイミダゾリルアルキルが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基(すなわち、C1~4アルキレン基)である。
【0027】
本明細書において使用される場合、「カルボシクリル」とは、その環系骨格に炭素原子だけを含む、非芳香環式環または非芳香環式環系を意味する。カルボシクリルが環系である場合、2個またはそれより多くの環が縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。カルボシクリルは、環系の少なくとも1個の環が芳香族ではないことを条件として、いくらかの飽和度を有し得る。したがって、カルボシクリルとしては、シクロアルキル、シクロアルケニル、およびシクロアルキニルが挙げられる。カルボシクリル基は3個~20個の炭素原子を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「カルボシクリル」の存在も含む。カルボシクリル基はまた、3個~10個の炭素原子を有する中程度の大きさのカルボシクリルであり得る。カルボシクリル基はまた、3個~6個の炭素原子を有するカルボシクリルであり得る。カルボシクリル基は、「C3~6カルボシクリル」または類似の名称で呼ばれ得る。カルボシクリル環の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、2,3-ジヒドロ-インデン、ビシクロ[2.2.2]オクタニル(bicycle[2.2.2]octanyl)、アダマンチル、およびスピロ[4.4]ノナニルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0028】
「(カルボシクリル)アルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたカルボシクリル基(例えば「C4~10(カルボシクリル)アルキル」など)であり、それには、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロプロピルエチル、シクロプロピルブチル、シクロブチルエチル、シクロプロピルイソプロピル、シクロペンチルメチル、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル、シクロヘプチルメチルなどが挙げられるが、それらに限定はされない。一部の場合において、そのアルキレン基は低級アルキレン基である。
【0029】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」とは、完全に飽和したカルボシクリル環またはカルボシクリル環系を意味する。例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシルが挙げられる。
【0030】
本明細書において使用される場合、「シクロアルケニル」とは、その環系のどの環も芳香族ではない、少なくとも1個の二重結合を有するカルボシクリル環またはカルボシクリル環系を意味する。例はシクロヘキセニルである。
【0031】
本明細書において使用される場合、「ヘテロシクリル」とは、その環骨格に少なくとも1個のヘテロ原子を含む、非芳香環式環または非芳香環式環系を意味する。ヘテロシクリルは、縮合様式、架橋様式またはスピロ結合様式で一緒に結合され得る。ヘテロシクリルは、その環系の少なくとも1個の環が芳香族ではないことを条件として、いくらかの飽和度を有し得る。そのヘテロ原子(複数可)は、その環系の非芳香環または芳香環のいずれかに存在してもよい。ヘテロシクリル基は3個~20個の環員(すなわち、炭素原子およびヘテロ原子を含めた、その環骨格を構成する原子の数)を有し得るが、本定義はまた、何の数値範囲も示されていない用語「ヘテロシクリル」の存在も含む。ヘテロシクリル基はまた、3個~10個の環員を有する中程度の大きさのヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基はまた、3個~6個の環員を有するヘテロシクリルであり得る。ヘテロシクリル基は、「3~6員ヘテロシクリル」または類似の名称で呼ばれ得る。好ましい6員単環式ヘテロシクリルにおいて、そのヘテロ原子(複数可)はO、NまたはSのうちの1個~3個までから選択され、好ましい5員単環式ヘテロシクリルにおいて、そのヘテロ原子(複数可)は、O、N、またはSから選択される1個または2個のヘテロ原子から選択される。ヘテロシクリル環の例としては、アゼピニル、アクリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、キシラニル、オキセパニル、チエパニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ジオキソピペラジニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピロリジオニル(pyrrolidionyl)、4-ピペリドニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、1,3-ジオキシニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキシニル、1,4-ジオキサニル、1,3-オキサチアニル、1,4-オキサチイニル、1,4-オキサチアニル、2H-1,2-オキサジニル、トリオキサニル、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジニル、1,3-ジオキソリル、1,3-ジオキソラニル、1,3-ジチオリル、1,3-ジチオラニル、イソオキサゾリニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、オキサゾリジノニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、1,3-オキサチオラニル、インドリニル、イソインドリニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロ-1,4-チアジニル、チアモルホリニル、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾイミダゾリジニル、およびテトラヒドロキノリンが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0032】
「(ヘテロシクリル)アルキル」とは、置換基として、アルキレン基によって結合されたヘテロシクリル基である。例としては、イミダゾリニルメチルおよびインドリニルエチルが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0033】
本明細書において使用される場合、「アシル」とは-C(=O)Rを指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ベンゾイル、およびアクリルが挙げられる。
【0034】
「O-カルボキシ」基とは「-OC(=O)R」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、ハロゲン、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0035】
「C-カルボキシ」基とは「-C(=O)OR」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。非限定的な例としては、カルボキシル(すなわち、-C(=O)OH)が挙げられる。
【0036】
「シアノ」基とは「-CN」基を指す。
【0037】
「シアナト」基とは「-OCN」基を指す。
【0038】
「イソシアナト」基とは「-NCO」基を指す。
【0039】
「チオシアナト」基とは「-SCN」基を指す。
【0040】
「イソチオシアナト」基とは「-NCS」基を指す。
【0041】
「スルフィニル」基とは「-S(=O)R」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0042】
「スルホニル」基とは「-SOR」基を指し、この式においてRは、本明細書において定義されている、水素、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから選択される。
【0043】
「S-スルホンアミド」基とは「-SONR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0044】
「N-スルホンアミド」基とは「-N(R)SO」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0045】
「C-アミド」基とは「-C(=O)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0046】
「N-アミド」基とは「-N(R)C(=O)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC1~6アルコキシ、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0047】
「O-カルバミル」基とは「-OC(=O)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0048】
「N-カルバミル」基とは「-N(R)OC(=O)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0049】
「O-チオカルバミル」基とは「-OC(=S)NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0050】
「N-チオカルバミル」基とは「-N(R)OC(=S)R」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、C3~7カルボシクリル、C6~10アリール、5~10員ヘテロアリール、および5~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。
【0051】
「アミノ」基とは「-NR」基を指し、この式においてRおよびRは各々、本明細書において定義されている、水素、ハロゲン、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC2~6アルケニル、必要に応じて置換されたC2~6アルキニル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリール、および必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリルから独立的に選択される。非限定的な例としては、遊離アミノ(すなわち、-NH)が挙げられる。
【0052】
「アミノアルキル」基とは、アルキレン基によって結合されたアミノ基を指す。
【0053】
「アルコキシアルキル」基とは、アルキレン基によって結合されたアルコキシ基(例えば、「C2~8アルコキシアルキル」など)を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、置換された基は、1個または複数個の水素原子を別の原子または基にする交換が行われた、非置換親基に由来する。そうではないと示されない限りは、ある基が「置換された(置換されている)」とみなされる場合、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、C~Cヘテロアルキル、C~Cカルボシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、C~Cカルボシクリル-C~Cアルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、3~10員ヘテロシクリル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、3~10員ヘテロシクリル-C~Cアルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、アリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、アリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、5~10員ヘテロアリール(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、5~10員ヘテロアリール(C~C)アルキル(ハロ、C~Cアルキル、C~Cアルコキシ、C~Cハロアルキル、およびC~Cハロアルコキシで、必要に応じて置換されている)、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、C~Cアルコキシ、C~Cアルコキシ(C~C)アルキル(すなわち、エーテル)、アリールオキシ、スルフヒドリル(メルカプト)、ハロ(C~C)アルキル(例えば、-CF)、ハロ(C~C)アルコキシ(例えば、-OCF)、C~Cアルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アミノ(C~C)アルキル、ニトロ、O-カルバミル、N-カルバミル、O-チオカルバミル、N-チオカルバミル、C-アミド、N-アミド、S-スルホンアミド、N-スルホンアミド、C-カルボキシ、O-カルボキシ、アシル、シアナト、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、スルフィニル、スルホニル、ならびにオキソ(=O)から独立的に選択される1個または複数個の置換基で、その基が置換されていることが、意味される。ある基が「必要に応じて置換された」と記載される場合はいつでも、その基は上記の置換基で置換されたものであり得る。
【0055】
特定のラジカル命名規則は、文脈に依存してモノラジカルまたはジラジカルのいずれかを含み得ることが、理解されるべきである。例えば、置換基がその分子の残りへの2個の結合点を必要とする場合、その置換基がジラジカルであることが、理解される。例えば、2個の結合点を必要とする、アルキルとして同定された置換基としては、-CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)CH-などのジラジカルが挙げられる。他のラジカル命名規則は、そのラジカルが「アルキレン」または「アルケニレン」などのジラジカルであることを明示する。
【0056】
2個のR基が「それらが結合されている原子と一緒に」環(例えば、カルボシクリル環、ヘテロシクリル環、アリール環、またはヘテロアリール環)を形成すると言われる場合、その原子とその2個のR基との集合的単位がその記載された環であることが、意味される。その環は、個別にみた場合に各R基の定義によって他の方法で限定はされない。例えば、以下の部分構造:
【化1】
が存在し、RおよびRが水素およびアルキルからなる群より選択されると定義されるか、またはRおよびRがそれらが結合されている窒素と一緒にヘテロシクリルを形成する場合、RおよびRが水素またはアルキルから選択され得ること、あるいは、その部分構造が構造:
【化2】
を有し、この構造において環Aは、示された窒素を含むヘテロアリール環であることが、意味される。
【0057】
同様に、「隣接する」2個のR基が「それらが結合されている原子と一緒に」環を形成すると言われる場合、その原子と、介在する結合と、その2個のR基との集合的単位がその記載された環であることが、意味される。例えば、以下の部分構造:
【化3】
が存在し、RおよびRが水素およびアルキルからなる群より選択されると定義されるか、またはRおよびRがそれらが結合されている原子と一緒にアリールもしくはカルボシクリル(carbocylyl)を形成する場合、RおよびRが水素またはアルキルから選択され得ること、あるいは、その部分構造が構造:
【化4】
を有し、この構造においてAは、示された二重結合を含むアリール環またはカルボシクリル(carbocylyl)であることが、意味される。
【0058】
置換基がジラジカル(すなわち、その分子の残りへの2個の結合点を有する)として示される場合はいつでも、そうではないと示されない限りはその置換基は任意の方向配置で結合され得ることが、理解されるべきである。したがって、例えば、-AE-または
【化5】
として示される置換基は、このAがこの分子の最も左の結合点で結合されるように方向付けられている置換基、ならびにAがこの分子の最も右の結合点で結合される事例を含む。
【0059】
本明細書において開示される化合物が少なくとも1個のキラル中心を有する場合、それらは個別のエナンチオマーおよびジアステレオマーとして、またはそのような異性体の混合物(ラセミ体が挙げられる)として、存在し得る。それらの個別の異性体の分離またはそれらの個別の異性体の選択的合成は、当業者にとって周知である種々の方法の適用によって達成される。そうではないと示されない限りは、すべてのそのような異性体およびそれらの混合物は、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。さらに、本明細書において開示される化合物は、1種もしくは複数種の結晶形態または非晶質形態で存在し得る。そうではないと示されない限りは、すべてのそのような形態は、あらゆる多形形態を含めた、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。さらに、本明細書において開示される化合物の一部は、水(すなわち、水和物)または一般的有機溶媒で溶媒和物を形成し得る。そうではないと示されない限りは、そのような溶媒和物は、本明細書において開示される化合物の範囲に含まれる。
【0060】
当業者は、本明細書において記載される一部の構造が、動力学によるものさえ含めた他の化学構造によって正しく示され得る化合物の共鳴形態または互変異性体であり得ることを認識し、当業者は、そのような構造がそのような化合物(複数可)のサンプルのごく一部を示し得るに過ぎないことを認識する。そのような共鳴形態も互変異性体も本明細書において示されていないが、そのような化合物は、示された構造の範囲内にあると考えられる。
【0061】
同位体が、記載された化合物に存在し得る。化合物構造において示される各化学元素は、その元素のあらゆる同位体を含み得る。例えば、化合物構造において、水素原子は、明示的に開示され得るか、またはその化合物に存在すると理解され得る。水素原子が存在し得る化合物のあらゆる位置で、その水素原子は水素の任意の同位体(水素1(プロチウム)および水素2(重水素)が挙げられるが、それらに限定はされない)であり得る。したがって、本明細書における化合物への言及は、そうではないと文脈が明示しない限りは、可能性があるすべての同位体形態を包含する。
【0062】
「溶媒和物」とは、溶媒と本明細書において記載される化合物(代謝産物、またはその塩)との相互作用によって形成される化合物を指す。適切な溶媒和物は、薬学的に受容可能な溶媒和物(水和物が挙げられる)である。
【0063】
用語「薬学的に受容可能な塩」とは、医薬における使用のために生物学的に望ましくないものでも他の点で望ましくないものでもない、化合物の生物学的有効性および特性を保持する塩を指す。多くの場合において、本明細書における化合物は、アミノ基および/もしくはカルボキシ基またはそれらに類似する基の存在によって、酸塩および/または塩基塩を形成可能である。薬学的に受容可能な酸付加塩が、無機酸および有機酸と形成され得る。塩が由来し得る無機酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などが挙げられる。塩が由来し得る有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などが挙げられる。薬学的に受容可能な塩基付加塩が、無機塩基および有機塩基と形成され得る。塩が由来し得る無機塩基としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムなどが挙げられ、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩が特に好ましい。塩が由来し得る有機塩基としては、例えば、一級アミン、二級アミン、および三級アミン、置換アミン(天然に存在する置換アミンが挙げられる)、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂など、具体的には、例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、およびエタノールアミンが挙げられる。多くのそのような塩が、1987年9月11日に公開されたJohnstonらのWO87/05297(その全体が本明細書中に参照によって援用される)において記載されるとおり、当該分野において公知である。
【0064】
(β-ラクタマーゼインヒビター)
一部の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、式(I)~(IX):
【化6】
【化7】
【化8】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、これらの式において、
各Rは独立的にC1~6アルキルであるか、または各Rはそれらが結合されているジェミナル炭素原子と一緒に、必要に応じて置換されたC3~6シクロアルキル環もしくは必要に応じて置換された4~6員ヘテロシクロアルキル環を形成し;
は、単結合、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換された2~6員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~6シクロアルキル、必要に応じて置換された5~6員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたフェニル、および必要に応じて置換された5~6員ヘテロアリールから選択され;
は、C1~6アルキル、-O-C(O)-R、-S-C(O)-R、-NH-C(O)-R、-O-C(O)-O-R、-S(O)-O-R、-NH-C(O)-O-R、-(O)-O-R、-C(O)-S-R、-C(O)-NH-R、-O-(O)-O-R、-O-C(O)-S-R、-O-C(O)-NH-R、-S-S-R、-S-R、-NH-R、および-CH(-NH)-R)から選択され;
は、水素、必要に応じて置換されたC1~8アルキル、必要に応じて置換された2~8員ヘテロアルキル、必要に応じて置換されたC5~8シクロアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル、必要に応じて置換されたC5~10シクロアルキルアルキル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロシクロアルキル-C1~3アルキル、必要に応じて置換されたフェニル、必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール、必要に応じて置換されたC7~10アリールアルキル、および必要に応じて置換された5~8員ヘテロアリール-C1~3アルキルから選択され;
は、C1~6アルキル、-NR、-CHC(O)NH、および
【化9】
からなる群より選択され;
およびRは、H、C1~6アルキル、および-CHC(O)NHからなる群より独立的に選択される。
【0065】
式(I)~(IX)の化合物は、米国特許第10,085,999号(これは、その全体が参照によって本明細書において援用される)において記載される手順にしたがって生成され得る。
【0066】
他の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、式(X)~(XVII):
【化10】
【化11】
【化12】
のいずれか1つの構造を有する化合物またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、これらの式において、
は、C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C1~9アルキル、-CR1011OC(O)C3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)C2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)OC1~9アルキル、-CR1011OC(O)OC3~7カルボシクリル、-CR1011OC(O)O(3~7員ヘテロシクリル)、-CR1011OC(O)OC2~8アルコキシアルキル、-CR1011OC(O)C6~10アリール、-CR1011OC(O)OC6~10アリール、-CR1011C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)NR1314、-CR1011OC(O)O(CH2~3OC(O)C1~4アルキル、-CR1011OC(O)O(CH1~3C(O)OC1~4アルキル、-CR1011OC(O)(CH1~3OC(O)C1~4アルキル、および
【化13】
からなる群より選択され;
各R10およびR11は、H、必要に応じて置換されたC1~4アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
各R13およびR14は、H、必要に応じて置換されたC1~6アルキル、必要に応じて置換されたC3~7カルボシクリル、必要に応じて置換された3~10員ヘテロシクリル、必要に応じて置換されたC6~10アリール、および必要に応じて置換された5~10員ヘテロアリールからなる群より独立的に選択され;
15は、必要に応じて置換されたC1~6アルキルである。
【0067】
式(X)~(XVII)の化合物は、PCT公開番号WO2019/093450もしくは同WO2018/005662(これらの両方は、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載される手順、または当該分野において公知である他の任意のエステル形成手順を使用して生成され得る。
【0068】
一部の実施形態において、本明細書において記載される使用のためのβ-ラクタマーゼインヒビターは、
【化14】
、またはそれらの薬学的に受容可能な塩からなる群より選択される。これらの化合物およびそれらの合成は、米国特許第10,085,999号、米国出願公開番号2019/0202832、PCT公開番号WO2019/093450、PCT公開番号WO2018/005662、およびPCT出願番号PCT/US2021/022799(これらのすべては、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。
【0069】
(投与および薬学的組成物)
本明細書において開示される化合物の投与は、認容される投与様式のいずれかにより得、その投与様式としては、経口的、皮下的、静脈内、鼻腔内、局所的、経皮的、腹腔内、筋肉内、肺内、経膣的、経直腸的、または眼内が挙げられるが、それらに限定はされない。経口投与および非経口投与が、好ましい実施形態の対象である適応症を処置することにおいて慣例である。
【0070】
開示される化合物は、個別にかまたは一緒にかのいずれかで、薬学的組成物へと処方され得る。標準的な薬学的処方技術、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott Williams and Wilkins(2005)(その全体が参照によって援用される)において開示されている技術が、使用される。したがって、一部の実施形態は、(a)1種または複数種の本明細書において開示される化合物と、(b)薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤、賦形剤またはそれらの組合せとを含む、薬学的組成物を含む。
【0071】
上記のとおり有用な選択された化合物に加えて、一部の実施形態は、薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を含む。用語「薬学的に受容可能なキャリア」または「薬学的に受容可能な賦形剤」は、あらゆるすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質のためのそのような媒体および薬剤の使用は、当該分野において周知である。なんらかの従来の媒体または薬剤がその活性成分と不適合性である範囲を除いて、治療組成物におけるその使用が企図される。さらに、当該分野において一般的に使用されるものなどの種々のアジュバントが、含まれ得る。薬学的組成物に種々の成分を含めることに関する考慮事項は、例えば、Gilmanら(編)(1990);Goodman and Gilman’s:The Pharmacological Basis of Therapeutics、第8版、Pergamon Press(これは、その全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。
【0072】
薬学的に受容可能なキャリアまたはその成分として役立ち得る物質の一部の例は、糖(例えば、ラクトース、グルコースおよびスクロース);デンプン(例えば、トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプン);セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム,エチルセルロース、およびメチルセルロース);トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;固体滑沢剤(例えば、ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウム);硫酸カルシウム;植物油(例えば、ピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油およびカカオ植物(theobroma)の油);ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコール);アルギン酸;乳化剤(例えば、TWEEN(登録商標));湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム);着色料;矯味矯臭剤(flavoring agent);錠剤化剤(tableting agent)、安定剤;抗酸化剤;保存剤;パイロジェンフリー水;等張食塩水;ならびにリン酸緩衝溶液である。
【0073】
本主題の化合物と組み合わせて使用するための薬学的に受容可能なキャリアの選択は、基本的には、その化合物が投与される様式によって決定される。
【0074】
上記のとおり有用な組成物は、種々の投与経路のために(例えば、経口投与経路、経鼻投与経路、直腸投与経路、局所投与経路(経皮投与経路が挙げられる)、点眼投与経路、脳内投与経路、頭蓋内投与経路、髄腔内投与経路、動脈内投与経路、静脈内投与経路、筋肉内投与経路、または他の非経口投与経路のために)適切な種々の形態のいずれかであり得る。経口組成物および経鼻組成物が、吸入によって投与される組成物を含み、利用可能な方法論を使用して作製されることを、当業者は理解する。望まれる特定の投与経路に依存して、当該分野において周知である種々の薬学的に受容可能なキャリアが使用され得る。薬学的に受容可能なキャリアとしては、例えば、固体または液体の充填剤、希釈剤、ハイドロトロープ剤(hydrotropies)、表面活性剤、およびカプセル化物質が挙げられる。必要に応じた薬学的に活性な物質が含まれ得、それらは、本化合物の阻害的活性を実質的に妨害しない。本化合物と組み合わせて使用されるキャリアの量は、その化合物の単位投与量につき、投与のために実用的な量の物質を提供するために十分である。本明細書において記載される方法において有用な剤形を作製するための技術および組成物は、以下の参考文献(すべてが本明細書中に参照によって援用される):Modern Pharmaceutics、第4版、第9章および第10章(BankerおよびRhodes編、2002);Liebermanら、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets(1989);ならびにAnsel、Introduction to Pharmaceutical Dosage Forms、第8版(2004)において記載されている。
【0075】
種々の経口剤形が使用され得、それには、錠剤、カプセル剤、顆粒剤および原末などの固体形態が挙げられる。錠剤は、圧縮錠剤、粉薬錠剤(tablet triturate)、腸溶錠、糖衣錠、フィルムコーティング錠、または多重圧縮錠剤(multiple-compressed)にされ得、適切な結合剤、滑沢剤、希釈剤、崩壊剤、着色料、矯味矯臭剤、流動誘導剤(flow-inducing agent)、および融解剤(melting agent)を含み得る。液体経口剤形としては、水溶液、乳濁物、懸濁物、非発泡性顆粒剤から再構成された溶液および/または懸濁物、ならびに発泡性顆粒剤から再構成された発泡性調製物が挙げられ、適切な溶媒、保存剤、乳化剤、懸濁化剤、希釈剤、甘味料、融解剤(melting agent)、着色料および矯味矯臭剤を含む。
【0076】
経口投与のための単位剤形の調製のために適切な薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知である。錠剤は、代表的には、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、マンニトール、ラクトースおよびセルロース);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンおよびスクロース);崩壊剤(例えば、デンプン、アルギン酸およびクロスカルメロース);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルク)などの従来の薬学的に適合性のアジュバントを含む。滑剤(例えば、二酸化ケイ素)が、粉末混合物の流動特徴を改善するために使用され得る。着色料(例えば、FD&C色素)が、外観のために添加され得る。甘味料および矯味矯臭剤(例えば、アスパルテーム、サッカリン、メントール、ペパーミント、および果実フレーバー)が、咀嚼錠のために有用なアジュバントである。カプセル剤は、代表的には、1種または複数種の上記に開示された固体希釈剤を含む。キャリア成分の選択は、味、費用および貯蔵安定性などの副次的考慮事項(それらは決定的ではない)に依存し、当業者によって容易に行われ得る。
【0077】
経口組成物はまた、液体の溶液、乳濁物、懸濁物などを含む。そのような組成物の調製のために適切な薬学的に受容可能なキャリアは、当該分野において周知である。シロップ、エリキシル剤、乳濁物、および懸濁物のためのキャリアの代表的な成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、液体スクロース、ソルビトールおよび水が挙げられる。懸濁物について、代表的な懸濁化剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、AVICEL RC-591、トラガカントおよびアルギン酸ナトリウムが挙げられ、代表的な湿潤剤としては、レシチンおよびポリソルベート80が挙げられ、代表的な保存剤としては、メチルパラベンおよび安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口液体組成物はまた、上記で開示された甘味料、矯味矯臭剤および着色剤などの1種または複数種の成分を含み得る。
【0078】
そのような組成物はまた、従来の方法によって、代表的にはpH依存的コーティングまたは時間依存的コーティングでコーティングされ得、本主題の化合物が、消化管において望ましい局所適用の付近で、または望ましい作用を延長するように種々の時点で、放出されるようになる。そのような剤形としては、代表的には、1種または複数種の酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、Eudragitコーティング、蝋およびシェラックが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0079】
本明細書において記載される組成物は、他の薬物活性剤(drug active)を必要に応じて含み得る。
【0080】
本主題の化合物の全身送達を達成するために有用な他の組成物としては、舌下剤形、頬側(buccal)剤形および経鼻剤形が挙げられる。そのような組成物は、代表的には、1種または複数種の可溶性充填剤物質(例えば、スクロース、ソルビトールおよびマンニトール);ならびに結合剤(例えば、アラビアゴム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)を含む。上記で開示された滑剤、滑沢剤、甘味料、着色剤、抗酸化剤および矯味矯臭剤もまた、含まれ得る。
【0081】
局所的眼科用途のために処方される液体組成物は、それが眼に局所的に投与され得るように処方される。その快適さは可能な限り最大化されるべきであるが、時には、処方物の考慮事項(例えば、薬物安定性)が、最適には達しない快適さを余儀なくし得る。快適さが最大化され得ない場合、その液体が局所的眼科用途のために患者に許容可能であるように、その液体は処方されるべきである。さらに、眼科的に受容可能な液体は単回使用のために包装されるか、または複数回使用にわたって混入を防ぐために保存剤を含むかのいずれかであるべきである。
【0082】
眼科的適用のために、溶液または医薬が、しばしば、生理食塩水溶液を主要媒体(vehicle)として使用して調製される。眼科用溶液は、好ましくは、適切な緩衝系で快適なpHにて維持されるべきである。その処方物はまた、従来の薬学的に受容可能な保存剤、安定剤および界面活性剤を含み得る。
【0083】
本明細書において開示される薬学的組成物において使用され得る保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、PHMB、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀および硝酸フェニル水銀が挙げられるが、それらに限定はされない。有用な界面活性剤は、例えば、Tween(登録商標) 80である。同様に、種々の有用な媒体(vehicle)が、本明細書において開示される眼科用調製物において使用され得る。これらの媒体(vehicle)としては、ポリビニルアルコール、ポビドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポロキサマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび精製水が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0084】
張度調整剤が、必要な場合または便利な場合に添加され得る。それらとしては、塩、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールおよびグリセリン、または他の任意の適切な眼科的に受容可能な張度調整剤が挙げられるが、それらに限定はされない。
【0085】
pHを調整するための種々の緩衝液および手段が、生じる調製物が眼科的に受容可能な範囲で使用され得る。多くの組成物について、そのpHは4と9との間である。したがって、緩衝液としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液およびホウ酸緩衝液が挙げられる。酸または塩基が、必要な場合に、これらの処方物のpHを調整するために使用され得る。
【0086】
同様に、眼科的に受容可能な抗酸化剤としては、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチルヒドロキシアニソールおよびブチルヒドロキシトルエンが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0087】
眼科用調製物に含まれ得る他の賦形剤成分は、キレート剤である。有用なキレート剤はエデト酸二ナトリウムであるが、他のキレート剤もまた、その代わりにかまたはそれと組み合わせて使用され得る。
【0088】
局所的用途のために、本明細書において開示される化合物を含むクリーム、軟膏、ゲル、溶液または懸濁物などが、使用される。局所用処方物は、一般的には、薬学的キャリア、共溶媒、乳化剤、透過促進剤、保存システム(preservative system)、および軟化剤を含み得る。
【0089】
静脈内投与のために、本明細書において記載される化合物および組成物は、薬学的に受容可能な希釈剤、例えば(生理食塩水またはデキストロース溶液)に溶解または分散され得る。適切な賦形剤が、望ましいpHを達成するために含まれ得、それには、NaOH、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HCl、およびクエン酸が挙げられるが、それらに限定はされない。種々の実施形態において、最終組成物のpHは、2~8の範囲または好ましくは4~7の範囲である。抗酸化物賦形剤としては、重亜硫酸ナトリウム、アセトン重亜硫酸ナトリウム(acetone sodium bisulfite)、ホルムアルデヒドスルホキシラートナトリウム(sodium formaldehyde,sulfoxylate)、チオ尿素、およびEDTAが挙げられ得る。最終静脈内組成物において見出される適切な賦形剤の他の非限定的な例としては、リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム、クエン酸、酒石酸、ゼラチン、ならびに糖質(例えば、デキストロース、マンニトール、およびデキストラン)が挙げられ得る。さらなる受容可能な賦形剤が、Powellら、Compendium of Excipients for Parenteral Formulations、PDA J Pharm Sci and Tech、1998、52、238~311、およびNemaら、Excipients and Their Role in Approved Injectable Products:Current Usage and Future Directions、PDA J Pharm Sci and Tech、2011、65、287~332(これらの両方は、それらの全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。抗微生物剤もまた、静菌性溶液または静真菌性溶液を達成するために含まれ得、その抗微生物剤としては、硝酸フェニル水銀、チメロサール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレゾール、およびクロロブタノールが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0090】
静脈内投与のための組成物は、投与の直前に適切な希釈剤(例えば、滅菌水、水中の生理食塩水またはデキストロース)で再構成される1種または複数種の固体の形態で、介護従事者に提供され得る。他の実施形態において、その組成物は、非経口的に投与する用意ができている溶液で提供される。さらに他の実施形態において、その組成物は、投与前にさらに希釈される溶液で提供される。本明細書において記載される化合物と別の薬剤との組合せ物を投与することを含む実施形態において、その組合せ物が介護従事者に混合物として提供され得るか、または介護従事者がその2種の薬剤を投与前に混合し得るか、またはその2種の薬剤が別個に投与され得る。
【0091】
セフチブテンとβ-ラクタマーゼインヒビターとは、併用投与され得る。「併用投与される」によって、それらの2種の薬剤が、それらが実際にいつまたはどのように投与されるかに関わらず、同時に生物学的効果を有するように投与されることが、意味される。一部の実施形態において、それらの2種の薬剤は同時に患者の血流において見出され得る。一実施形態において、それらの薬剤は同時に投与される。そのような一実施形態において、併用投与が、それらの薬剤を単一剤形に組み合わせることによって達成される。別の実施形態において、それらの薬剤は連続的に投与される。一実施形態において、それらの薬剤は同じ経路を通じて(例えば、経口的に)投与される。別の実施形態において、それらの薬剤は異なる経路を通じて投与され、例えば、一方の薬剤は経口投与され、別の薬剤は静脈内(i.v.)投与される。
【0092】
(処置方法)
本発明の一部の実施形態は、細菌感染症を、本明細書において記載される化合物およびその化合物を含む組成物で処置する方法を含む。一部の方法は、本明細書において記載される化合物、組成物、薬学的組成物を、細菌感染症を処置することを必要とする対象に投与する工程を含む。一部の実施形態において、対象は、動物、例えば、哺乳動物(ヒトを含む)であり得る。一部の実施形態において、その細菌感染症は、本明細書において記載される細菌を含む。上記から理解されるとおり、細菌感染症を処置する方法は、細菌感染症のリスクがある対象において細菌感染症を予防するための方法を含む。
【0093】
本明細書において使用される「対象」とは、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類)または鳥類(例えば、ニワトリ)、ならびに他の任意の脊椎動物または無脊椎動物を意味する。
【0094】
用語「哺乳動物」は、その通常の生物学的意味で使用される。したがって、その哺乳動物としては、詳細には、霊長類(サル(simian)(チンパンジー、類人猿、サル(monkey))およびヒトを含む)、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、齧歯類、ラット、マウス、モルモットなどが挙げられるが、それらに限定はされない。
【0095】
本明細書において使用される「処置する」、「処置」、または「処置すること」とは、予防目的および/または治療目的のために化合物もしくは薬学的組成物を対象に投与することを指す。用語「予防的処置」とは、疾患もしくは状態の症状を未だ示していないが特定の疾患もしくは状態に感受性であるかまたはその他何であろうとその特定の疾患もしくは状態のリスクがある対象を処置し、それにより、その患者がその疾患もしくは状態を発症する可能性をその処置が減少することを指す。用語「治療的処置」とは、ある疾患もしくは状態に既に罹患している対象に処置を施すことを指す。
【0096】
本明細書において記載される化合物、組成物および方法で処置され得る細菌感染症は、広範囲の細菌を含み得る。生物の例としては、グラム陽性菌、グラム陰性菌、好気性菌および嫌気性菌、例えば、Staphylococcus、Lactobacillus、Streptococcus、Sarcina、Escherichia、Enterobacter、Klebsiella、Pseudomonas、Acinetobacter、Mycobacterium、Proteus、Campylobacter、Citrobacter、Nisseria、Baccillus、Bacteroides、Peptococcus、Clostridium、Salmonella、Shigella、Serratia、Haemophilus、Brucellaおよび他の生物が挙げられる。
【0097】
細菌感染症のさらなる例としては、Pseudomonas aeruginosa、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas acidovorans、Pseudomonas alcaligenes、Pseudomonas putida、Stenotrophomonas maltophilia、Burkholderia cepacia、Aeromonas hydrophilia、Escherichia coli、Citrobacter freundii、Salmonella typhimurium、Salmonella typhi、Salmonella paratyphi、Salmonella enteritidis、Shigella dysenteriae、Shigella flexneri、Shigella sonnei、Enterobacter cloacae、Enterobacter aerogenes、Klebsiella pneumoniae、Klebsiella oxytoca、Serratia marcescens、Francisella tularensis、Morganella morganii、Proteus mirabilis、Proteus vulgaris、Providencia alcalifaciens、Providencia rettgeri、Providencia stuartii、Acinetobacter baumannii、Acinetobacter calcoaceticus、Acinetobacter haemolyticus、Yersinia enterocolitica、Yersinia pestis、Yersinia pseudotuberculosis、Yersinia intermedia、Bordetella pertussis、Bordetella parapertussis、Bordetella bronchiseptica、Haemophilus influenzae、Haemophilus parainfluenzae、Haemophilus haemolyticus、Haemophilus parahaemolyticus、Haemophilus ducreyi、Pasteurella multocida、Pasteurella haemolytica、Branhamella catarrhalis、Helicobacter pylori、Campylobacter fetus、Campylobacter jejuni、Campylobacter coli、Borrelia burgdorferi、Vibrio cholerae、Vibrio parahaemolyticus、Legionella pneumophila、Listeria monocytogenes、Neisseria gonorrhoeae、Neisseria meningitidis、Kingella、Moraxella、Gardnerella vaginalis、Bacteroides fragilis、Bacteroides distasonis、Bacteroides 3452A相同性群、Bacteroides vulgatus、Bacteroides ovalus、Bacteroides thetaiotaomicron、Bacteroides uniformis、Bacteroides eggerthii、Bacteroides splanchnicus、Clostridium difficile、Mycobacterium tuberculosis、Mycobacterium avium、Mycobacterium intracellulare、Mycobacterium leprae、Corynebacterium diphtheriae、Corynebacterium ulcerans、Streptococcus pneumoniae、Streptococcus agalactiae、Streptococcus pyogenes、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus saprophyticus、Staphylococcus intermedius、Staphylococcus hyicus subsp. hyicus、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、またはStaphylococcus saccharolyticusが挙げられる。
【0098】
本発明をさらに示すために、以下の実施例が含まれる。これらの実施例は、当然、本発明を具体的に限定するものとして解釈されるべきではない。特許請求の範囲の範囲内にあるこれらの実施例の変化形は、当業者の知識の範囲内にあり、そのような変化形は、本明細書において記載され特許請求される発明の範囲内にあると考えられる。本開示および当該分野における技術を備えた当業者は、網羅的な実施例がなくとも本発明を調製し使用することが可能であることを、読者は認識する。以下の実施例は、本発明をさらに記載し、それらの実施例は、単に例示を目的として使用され、限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0099】
(実施例1)
健常成人被験者におけるセフチブテンの二重盲検ランダム化プラセボ対照連続的単回・反復漸増投与試験を、実施した。単回経口投与および反復経口投与の両方を受けた各10人の被験者(8人が実薬および2人がプラセボ)からなるコホートが4つ存在した。コホート1~コホート4についての投与スキームが表1に示される。
【表1】
【0100】
(安全性)
健常志願者におけるセフチブテンは400mg、600mg、および800mgの1日1回/1日2回投与のカプセル処方物において十分に許容された。この試験期間にわたってセフチブテンまたはプラセボのいずれかの単回投与および反復投与を受けた40人の登録した被験者から得た安全性の結論は、以下のとおりである:
・深刻で重篤な生命の危険がある、試験治療下で発現した有害事象(TEAE)も、死をもたらすTEAEも、この試験(単回漸増投与[SAD]期間および反復漸増投与[MAD]期間)の全体を通して何も報告されなかった。
・すべてのTEAEは、因果関係とは無関係に軽度であり、例外として悪心(SAD 800mgセフチブテン)および外陰腟カンジダ症(MAD 800mgセフチブテン)という、重篤度が中程度であった2例のTEAEがあった。悪心の事例はセフチブテンの単回投与後のSAD期間において1人の被験者で発生し、外陰腟カンジダ症の事例はセフチブテンの投与後のMAD期間において1人の被験者で発生した。両方の事例は、最も高い1回分のセフチブテン投与量(800mg)を受けた被験者で発生し、これらは治験責任医師によってこの試験薬物と関連すると考えられた。
・最も高い1回分の投与量の群(800mgセフチブテン)からの1人の被験者において、試験薬物の中止をもたらした2例のTEAE(悪心および下痢)が存在し、悪心の事例もまた、治験責任医師の判断でその被験者がこの試験を中止することをもたらした。その悪心は重篤度が中程度であると考えられ、下痢は重篤度が軽度であると考えられ、両方の事例は治験責任医師によってこの試験薬物と関連すると考えられた。その悪心は、併用薬による処置にもかかわらず、1日目の投与(SAD)から4日目の朝の投与(MAD)まで持続した。その悪心は、その被験者がこの試験を中止した後の9日目に解消した。
・この試験のSAD期間において、報告されたTEAEの頻度は、1回分のセフチブテン投与量の増加にともなって増加しなかった(8人の被験者中4人[50.0%]において5例のTEAEが報告されたプールされたプラセボ群と比較して、全セフチブテン群は32人の被験者中18人[56.3%]において44例のTEAEが報告された)。
・十五(15)例の処置に関連するTEAEが、この試験のSAD期間中に40人の被験者中10人(25.0%)において報告された。処置に関連するTEAEの発生率は400mgセフチブテンおよび600mgセフチブテン、ならびにプールされたプラセボ群について同様であった(8人の被験者中1人[12.5%])が、800mgセフチブテンの投与では、より高かった(16人の被験者中4人[25.0%])。
・この試験のMAD期間において、報告されたTEAEの頻度は、1回分のセフチブテン投与量の増加にともなって増加しなかったが、全セフチブテン群におけるTEAEを報告する被験者の数は、プールされたプラセボ群におけるTEAEを報告する被験者の数の約2倍であった(それぞれ、32人の被験者中22人[68.8%]および8人の被験者中3人[37.5%])。
・この試験のMAD期間において、32例の処置に関連するTEAEが40人の被験者中17人(42.5%)において報告された。処置に関連するTEAEの発生率は、400mgセフチブテン(8人の被験者中1人[12.5%])および600mgセフチブテン(8人の被験者中2人[25.0%])ならびにプールされたプラセボ群(8人の被験者中3人[37.5%])において同様であった。処置に関連するTEAEは、800mgセフチブテン群(16人の被験者中11人[68.8%])においての方が高かった。
・処置に関連するTEAEは、SAD期間、MAD期間およびSAD/MAD組合せ試験においてSOC胃腸障害で最も高い発生率が報告された。その最も高い発生率は、最も高い1回分のセフチブテン投与量(800mg)で報告された。そのMAD期間中の800mg群において最も一般的な胃腸のTEAEは、16人の被験者中4人(25.0%)における悪心、16人中4人(25.0%)における下痢、16人中3人(18.8%)における腹痛、16人中3人(18.8%)における上腹部痛および16人の被験者中2人(12.5%)における腹部不快感であった。ほとんどの胃腸障害のTEAEは一過性で重篤度が軽度であり、介入は必要とされなかった。例外は、1例の悪心の処置関連事例であり、これは被験者111-408(800mgセフチブテン)で報告され重篤度が中程度であった。
・ALTの上昇が、この試験のSAD期間およびMAD期間の両方ですべてのセフチブテン投与群の間で数人の被験者において生じ、その発生率および重篤度は、1回分のセフチブテン投与量の増加にともなって増加しなかった。すべての事例は無症状であり、試験処置の完了後に自然に解消し、アルカリホスファターゼの上昇ともビリルビンの上昇とも関連していなかった。
・血液学パラメータでも、凝固パラメータでも、尿検査パラメータでも、臨床的に意義がない(NCS)異常の傾向は、何も存在しなかった。血液学、凝固、または尿検査において、臨床的に意義がある(CS)と考えられた異常な所見が、低い好中球数の3事例および低いリンパ球数の1事例という4事例存在し、これらはすべて無症状であり、有害事象(AE)の基準を満たさなかった。
・ECGパラメータでも身体検査でも、臨床的に意義がある(CS)異常は何も報告されなかった。
・血圧(収縮期および拡張期)、脈拍数、体温または呼吸数といったバイタルサインパラメータにおいて、ベースラインからの変化傾向は何も存在しなかった。
【0101】
全体として、健常志願者におけるセフチブテンは、400mg、600mg、および800mgの1日1回/1日2回投与のカプセル処方物において十分に許容された。
【0102】
(薬物動態)
400mg、600mgおよび800mgのセフチブテン単回投与後に、平均最大cis-セフチブテン血漿濃度がそれぞれ、17.6μg/mL、24.1μg/mLおよび28.1μg/mLに達し、平均最大trans-セフチブテン血漿濃度がそれぞれ、1.1μg/mL、1.5μg/mLおよび2.2μg/mLに達した。4日目のcis-セフチブテンおよびtrans-セフチブテンの薬物動態パラメータは、1日目のcis-セフチブテンおよびtrans-セフチブテンの薬物動態パラメータと同様であった。
【0103】
400mg、600mgおよび800mgのセフチブテンの反復投与後に、平均最大cis-セフチブテン血漿濃度がそれぞれ、21.7μg/mL、28.1μg/mLおよび38.8μg/mLに達し、平均最大trans-セフチブテン血漿濃度がそれぞれ、1.4μg/mL、1.9μg/mLおよび2.8μg/mLに達した。
【0104】
cis-セフチブテン血漿濃度は投与後2.3時間~3.0時間でピークになり、trans-セフチブテン血漿濃度は投与後3.3時間~4.8時間でピークになった。cis-セフチブテンの終末相半減期は2.3時間~3.1時間の範囲であったが、trans-セフチブテンの終末相半減期は3.0時間~3.6時間の範囲であった。cis-セフチブテンの全身クリアランスは3.9L/時間~5.0L/時間の間であった。
【0105】
単回投与後に、cis-セフチブテンおよびtrans-セフチブテンとしての尿中回収は、それぞれ、投与された量の59.5%~86.9%および9.3%~12.5%を占めた。反復投与後に、cis-セフチブテンおよびtrans-セフチブテンとしての尿中回収は、それぞれ、投与された量の75.8%~100%および14.1%~16.8%を占めた。cis-セフチブテンの腎クリアランスは2.9L/時間~4.2L/時間の間であると推定された。一般的に、腎クリアランスは、セフチブテンの全身クリアランスの大部分に寄与した。
【0106】
用量比例性を、グラフによって、1回分の投与量で標準化した(dose-normalized)Cmax、AUC0~12値およびAUC0~∞の値のANOVA検定を使用して、調べた。cis-セフチブテンおよびtrans-セフチブテンへの曝露は、400mg、600mgおよび800mgのセフチブテンの投与後に比例的に増加した。cis-セフチブテンのAUC0~12曝露を図1に示し、trans-セフチブテンのAUC0~12曝露を図2に示す。これらの図は、増加が用量比例的であったことを示す。
【0107】
(実施例2)
99株のEnterobacteralesを、種々の濃度の以下のβ-ラクタマーゼインヒビター:
【化15】
と組み合わせて1μg/mlまたは2μg/mlのセフチブテンを使用する耐性発生研究において、使用した。
【0108】
化合物1は、PCT公開番号WO2018/005662(これは、その全体が参照によって本明細書において援用される)において記載されている。化合物1の濃度は、1μg/ml、2μg/ml、4μg/mlおよび8μg/mlを含んだ。この研究の目的は、2種の異なるセフチブテン濃度にて変異株の出現を阻止する化合物1の濃度(MPC、変異株阻止濃度)を同定することであった。4μg/mlでの化合物1のデータを表2に要約している。
【表2】
【0109】
このデータは、セフチブテンの濃度を増加すると、≦4μg/mlの化合物1で耐性が阻止される株の割合が高くなることをもたらすことを示す。したがって、β-ラクタマーゼインヒビターと組み合わせてセフチブテンの1回分の投与量を400mgよりも多いように増加させると、耐性発生の減少をもたらし得る。
図1
図2
【国際調査報告】