(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】モジュール式マルチポートACバッテリ電力変換器システムおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240312BHJP
【FI】
H02M7/48 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561054
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 US2022023529
(87)【国際公開番号】W WO2022216738
(87)【国際公開日】2022-10-13
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504466834
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】メイジャー,ミカエル ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】マレラプディ,アニルッダ
(72)【発明者】
【氏名】カンデュラ,ラジェンドラ プラサド
(72)【発明者】
【氏名】ディバン,ディーパック エム.
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA02
5H770BA02
5H770CA06
5H770CA08
5H770DA03
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5H770DA22
5H770DA41
5H770JA10X
5H770JA18X
(57)【要約】
本開示の例示的な実施形態は、第1のバッテリモジュールと、第2のバッテリモジュールと、第1の変圧器と、第2の変圧器と、第1の電流形変換器ブリッジと、第2の電流形変換器ブリッジと、第3の電流形変換器ブリッジとを備える電力変換システムを提供する。第1および第2の変圧器は、低電圧側および高電圧側を有することができる。第1のブリッジは、第1および第2のバッテリモジュールと第1および第2の変圧器の低電圧側とを接続するように構成され得る。第1および第2のバッテリモジュールの直列接続の中点は、第1および第2の変圧器の直列接続の中点に接続することができる。第2のブリッジは、第1の変圧器の高電圧側と、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている1つまたは複数のポートとに接続できるように構成されている。第3のブリッジは、第2の変圧器の高電圧側ならびに1つおよび1つ以上のポートに接続するように構成され得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のバッテリモジュールと、
前記第1のバッテリモジュールと直列に接続された第2のバッテリモジュールと、
低電圧側と高電圧側とを有する第1の変圧器と、
低電圧側と高電圧側とを有する第2の変圧器であって、前記第1の変圧器の低電圧側が、当該第2の変圧器の低電圧側に直列に接続されている第2の変圧器と、
前記第1のバッテリモジュールおよび前記第2のバッテリモジュールと、前記第1の変圧器および前記第2の変圧器の低電圧側とを接続するように構成されている第1の電流形変換器ブリッジであって、前記第1のバッテリモジュールと前記第2のバッテリモジュールとの直列接続の中点が、前記第1の変圧器と前記第2の変圧器との直列接続の中点に接続されている第1の電流形変換器ブリッジと、
第2の電流形変換器ブリッジであって、前記第1の変圧器の高電圧側と、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている1つまたは複数のポートとに接続するように構成されている第2の電流形変換器ブリッジと、
第3の電流形変換器ブリッジであって、前記第2の変圧器の高電圧側と、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている1つおよび1つまたは複数のポートとに接続するように構成されている第3の電流形変換器ブリッジと、を備えた電力変換システム。
【請求項2】
前記第1の変換器ブリッジは、前記第1のバッテリモジュールの第1の極および前記第2のバッテリモジュールの反対の極を、前記第1の変圧器の低電圧側の巻線の端子に選択的に接続するように構成されている第1のスイッチング回路を備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記第1のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備える、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記第1の制御可能なスイッチは、Si MOSFETである、請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記第2のスイッチは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つである、請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記第1のスイッチング回路は、直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチと前記第2のスイッチとに並列に接続された共振極ネットワークをさらに備える、請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記共振極ネットワークは、前記第1のスイッチング回路の前記第1の制御可能なスイッチを、ZVSターンオフおよびZCSターンオンできるように構成されている、請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記共振極ネットワークは、抵抗器-ダイオード回路と直列に接続されたコンデンサを備える、請求項6に記載の電力変換システム。
【請求項9】
前記抵抗器-ダイオード回路は、前記第1の共振極ネットワークの前記コンデンサの充放電中に異なるインピーダンスを与える、請求項8に記載の電力変換システム。
【請求項10】
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の変圧器から前記第2のバッテリモジュールに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備える、請求項2に記載の電力変換システム。
【請求項11】
前記クランピングデバイスは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つである、請求項10に記載の電力変換システム。
【請求項12】
前記第1のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備え、
前記第1のスイッチング回路は、バイパスコンデンサであって、当該バイパスコンデンサと前記クランピングデバイスとの直列接続が、前記第2のスイッチと直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチに並列に接続されるように、前記クランピングデバイスと直列に接続されたバイパスコンデンサをさらに備える、請求項10に記載の電力変換システム。
【請求項13】
前記第1の電力変換器ブリッジは、前記第2のバッテリモジュールの第1の極および前記第1のバッテリモジュールの反対の極を、前記第2の変圧器の低電圧側の端子に選択的に接続するように構成されている第2のスイッチング回路を備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項14】
前記第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備える、請求項13に記載の電力変換システム。
【請求項15】
前記第1の制御可能なスイッチは、Si MOSFETである、請求項14に記載の電力変換システム。
【請求項16】
前記第2のスイッチは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つである、請求項14に記載の電力変換システム。
【請求項17】
前記第2のスイッチング回路は、直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチと前記第2のスイッチとに並列に接続された共振極ネットワークをさらに備える、請求項14に記載の電力変換システム。
【請求項18】
前記共振極ネットワークは、前記第2のスイッチング回路の前記第1の制御可能なスイッチを、ZVSターンオフおよびZCSターンオンできるように構成されている、請求項17に記載の電力変換システム。
【請求項19】
前記共振極ネットワークは、抵抗器-ダイオード回路と直列に接続されたコンデンサを備える、請求項17に記載の電力変換システム。
【請求項20】
前記抵抗器-ダイオード回路は、前記共振極ネットワークの前記コンデンサの充放電中に異なるインピーダンスを提供する、請求項19に記載の電力変換システム。
【請求項21】
前記第2のスイッチング回路は、前記第2の変圧器から前記第1のバッテリモジュールに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備える、請求項13に記載の電力変換システム。
【請求項22】
前記クランピングデバイスは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つである、請求項21に記載の電力変換システム。
【請求項23】
前記第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備え、
前記第2のスイッチング回路は、バイパスコンデンサであって、当該バイパスコンデンサと前記クランピングデバイスとの直列接続が、前記第2のスイッチと直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチに並列に接続されるように、前記クランピングデバイスと直列に接続されたバイパスコンデンサをさらに備える、請求項21に記載の電力変換システム。
【請求項24】
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の変圧器から前記第2のバッテリに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備え、
前記第1の電力変換器ブリッジは、前記第2のバッテリモジュールの第1の極および前記第1のバッテリモジュールの反対の極を前記第2の変圧器の低電圧側の端子に選択的に接続するように構成されている第2のスイッチング回路を備え、
前記第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備え、
第2のスイッチング回路は、前記第2の変圧器から前記第1のバッテリに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備え、
前記第1のスイッチング回路の前記第2のスイッチと直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチは、前記第2のスイッチング回路の前記クランピングデバイスと直列に接続されており、
前記第1のスイッチング回路の前記クランピングデバイスは、前記第2のスイッチング回路の直列に接続された前記第1の制御可能なスイッチと前記第2のスイッチとに直列に接続されている、請求項3に記載の電力変換システム。
【請求項25】
前記電力変換システムは、前記第1の変圧器および/または前記第2の変圧器の低電圧側にわたって並列に接続された共振回路を備えていない、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項26】
前記第2の電流形変換器ブリッジは、前記第1の変圧器の高電圧側に並列に接続された第1の共振回路を備え、
前記第3の電流形変換器ブリッジは、前記第2の変圧器の高電圧側に並列に接続された第2の共振回路を備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項27】
前記第2の電流形変換器ブリッジおよび前記第3の電流形変換器ブリッジのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの逆阻止スイッチを備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項28】
前記少なくとも1つの逆阻止スイッチは、ダイオードと直列に接続された制御可能なスイッチを備える、請求項27に記載の電力変換システム。
【請求項29】
前記少なくとも1つの逆阻止スイッチは、反対の電流阻止方向で直列に接続された第1の制御可能なスイッチと第2の制御可能なスイッチとを備える、請求項27に記載の電力変換システム。
【請求項30】
前記電力変換システムは、前記第1の電流形変換器ブリッジ、前記第2の電流形変換器ブリッジ、および前記第3の電流形変換器ブリッジが非アクティブであるとき、前記システムの最大電圧が、前記第1のバッテリモジュールまたは前記第2のバッテリモジュールの電圧レベルであるように構成されている、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項31】
前記第1のバッテリモジュールまたは前記第2のバッテリモジュールの電圧レベルは60ボルト未満である、請求項30に記載の電力変換システム。
【請求項32】
前記第1の電流形変換器ブリッジは、スイッチングサイクルで動作するように構成されている、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項33】
前記スイッチングサイクルは、クロスクランプフェーズを備え、前記第1の変圧器および前記第2の変圧器のうちの少なくとも1つから、少なくとも1つのクランピングデバイスを通して、少なくとも反対のバッテリ極に送電される、請求項32に記載の電力変換システム。
【請求項34】
前記第1の電流形変換器ブリッジは、前記第1の変圧器および前記第2の変圧器のうちの少なくとも1つからのリークエネルギーの大部分が、前記第1のバッテリモジュールおよび前記第2のバッテリモジュールのうちの少なくとも1つに回収されるように構成されている、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項35】
前記電力変換システムは、フェイルセーフ状態で動作するように構成されており、前記第1の電流形変換器ブリッジ、前記第2の電流形変換器ブリッジ、および第3の電流形変換器ブリッジに接続されたすべての制御可能な電力デバイスはオフにされ、前記第1の変圧器および前記第2の変圧器のうちの少なくとも1つの磁化電流は、前記第1のバッテリモジュールおよび前記第2のバッテリモジュールのうちの少なくとも1つに放電される、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項36】
前記第2の電流形変換器ブリッジおよび前記第3の電流形変換器ブリッジの前記1つまたは複数のポートは、第1の電動モータに接続された第1のポートを備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項37】
前記第2の電流形変換器ブリッジおよび前記第3の電流形変換器ブリッジの前記1つまたは複数のポートは、第1の電動モータに接続された第1のポートと、充電端子に接続された第2のポートとを備える、請求項1に記載の電力変換システム。
【請求項38】
前記第2の電流形変換器ブリッジおよび前記第3の電流形変換器ブリッジの前記1つまたは複数のポートは、第2の電動モータに接続された第3のポートをさらに備える、請求項37に記載の電力変換システム。
【請求項39】
前記電流形変換器の前記1つまたは複数のポートは、第2の電動モータに接続された第2のポートをさらに備える、請求項36に記載の電力変換システム。
【請求項40】
請求項1から請求項39のいずれかに記載の第1の電力変換器システムと、
請求項1から請求項39のいずれかに記載の第2の電力変換システムと、を備え、
前記第1の電力変換システムおよび前記第2の電力変換システムは、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている前記第1の電力変換システムおよび前記第2の電力変換システムの1つおよび1つまたは複数のポートのうちの少なくとも1つに並列に接続されている、モジュール式バッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2021年4月5日に出願された米国仮特許出願第63/170,790号の利益を主張するものであり、この仮出願は、その全体が本明細書に記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示の様々な実施形態は、概して、電力変換器システムに関し、より詳細には、低電圧バッテリが一体化されており、タッチ電圧の条件に対して安全性が改善されたモジュール式マルチポートACバッテリ電力変換器システムに関する。
【背景技術】
【0003】
自転車から、自動車、トラック、航空機まで、数百ワットから20MWを超える定格を有するバッテリの駆動による輸送手段は、エネルギーインフラの脱炭素化を推進するうえで重要な鍵を握っている。一般的なバッテリパックは、4ボルトのLiイオンセルが並列に接続されたアレイからなり、次いで、このようなバッテリパックが、400ボルトから1000ボルト以上の所望のバッテリパック電圧を得られるように直列に接続されている。これまでのバッテリ火災事故の歴史や、バッテリに関連する重大な安全性の問題を鑑みて、産業界においては、電気的、機械的、および熱的な管理を含む安全性に強い焦点が当てられており、衝突テストや横転テストを含む厳格なテストが実施されている。走行する電気自動車(EV)の数が増加するにつれて、多く人が事故に巻き込まれることになり、それらの事故の中には、厳しい環境条件の下で発生する深刻な事故も含まれる。ガソリン車と比較して、EVにおける最も厄介な新たな安全上の懸念は、乗員、居合わせた人、および第一対応者の死亡率を高める高電圧バッテリシステムである。自動車産業の対応としては、一体化されているバッテリパックの機械的および構造的な完全性を向上させることと、衝撃時にバッテリ端子を切断する爆発性のパイロヒューズをバッテリパックに装着することとが含まれていた。しかしながら、バッテリが破損する事故の場合には、致命的な電圧にさらされる可能性が依然として存在する。さらに、システム電圧を増加させる傾向に対しては、全米防火協会(NFPA)および米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)などの組織における懸念が高まっている。世間の大きな関心事や責任問題になる前に、または今後のEV市場の成長を停滞させる前に、EV産業が上記の懸念に取り組むことが重要である。
【0004】
この問題は、自動車産業や電気通信産業でも認識されており、システム内のどこにも有害なタッチ電位が存在しない、本質的にタッチセーフであると考えられる48ボルトDCシステムの開発につながっている。48ボルトDCシステムは、燃費基準を満たすマイルドハイブリッド化用途に自動車産業で使用されており、より最近では、小型EVに使用されている。48ボルトDCシステムの本質的な安全性はよく理解されているが、必要な電力レベルまで能力を拡張するには、現在の利用可能な技術では困難であった。このため、セルレベルで制御するための複雑なバッテリ管理システム(BMS)を用い、保護、誘電体絶縁、および熱管理を行うための精巧な技術を用いた数千個ものセルを車両の全長および全幅にわたって配置する高電圧バッテリパックの開発が行われている。こうした開発は、バッテリ寿命、性能、ならびに急速に発展しているバッテリ技術を融合および整合させることに著しい影響を与えている。このような制約は、先に論じた安全性の問題に追加される。
【0005】
バッテリパックは、車両に搭載される他のすべてを規定するものでもある。例えば、典型的な自動車は、
図1に示されるように、自動車を推進させるためのモータを駆動する1つの120kWインバータを有し得る。このインバータ駆動は、高電圧バッテリにより動作し、一般的には、
図2に示す2レベル電圧形インバータ(VSI)構造に依存する。レベル2の充電のため、208VAC~240VACへ直接接続できるようにするために、AC/DC絶縁変換器も車両に搭載される。電気自動車の急速充電もまた、フリート充電および航続距離への不安に対処するための重要な特徴であり、現在までの自動車では50kW~300kW、トラックでは最大2MWの充電率である。一般的に使用されるDC急速充電のためのインフラストラクチャは高価であり、総コストは、米国だけでも500億ドルを超えると予想される。大電力のDC充電器を車両に搭載することは、サイズおよびコスト面で非実用的であると考えられてきたため、このようなインフラストラクチャが採用されている。急速充電の能力があっても、重大な制限がある。バッテリパック内で多数のセルが直列に接続されている場合、各セルを均一に充電することが最も重要であり、そのように各セルを均一に充電することには複雑なBMSシステムが必要であり、また、バッテリの過充電および発火を回避すべき場合には、スタック全体の充電電流を充電サイクルの早期の段階で低減する必要がある。したがって、電力システムのアーキテクチャに関する設計上の決定、特にバッテリが1つの単一スタックとして維持されなければならないと仮定する設計上の決定によって、システム全体の安全性、コスト、および性能においては重大な妥協が求められることは明らかである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の例示的な実施形態は、第1のバッテリモジュールと、第2のバッテリモジュールと、第1の変圧器と、第2の変圧器と、第1の電流形変換器ブリッジと、第2の電流形変換器ブリッジと、第3の電流形変換器ブリッジとを備える電力変換システムを提供する。第2のバッテリモジュールは、第1のバッテリモジュールと直列に接続することができる。第1の変圧器は、低電圧側と高電圧側とを有することができる。第2の変圧器は、低電圧側と高電圧側とを有することができ、第1の変圧器の低電圧側は、第2の変圧器の低電圧側に直列に接続することができる。第1の電流形変換器ブリッジは、第1のバッテリモジュールおよび第2のバッテリモジュールと、第1の変圧器および第2の変圧器の低電圧側とを接続するように構成することができ、第1のバッテリモジュールと第2のバッテリモジュールとの直列接続の中点を、第1の変圧器と第2の変圧器との直列接続の中点に接続することができる。第2の電流形変換器ブリッジは、第1の変圧器の高電圧側と、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている1つまたは複数のポートとに接続するように構成することができる。第3の電流形変換器ブリッジは、第2の変圧器の高電圧側と、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている1つおよび1つまたは複数のポートとに接続するように構成することができる。
【0007】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の変換器ブリッジは、第1のバッテリモジュールの第1の極および第2のバッテリモジュールの反対の極を、第1の変圧器の低電圧側の巻線の端子に選択的に接続するように構成されている第1のスイッチング回路を備えることができる。
【0008】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続されている第1の制御可能なスイッチを備えることができる。
【0009】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の制御可能なスイッチは、Si MOSFETであり得る。
【0010】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つであり得る。
【0011】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のスイッチング回路は、直列に接続された第1の制御可能なスイッチと第2のスイッチとに並列に接続された共振極ネットワークをさらに備えることができる。
【0012】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、共振極ネットワークは、第1のスイッチング回路の第1の制御可能なスイッチを、ZVSターンオフおよびZCSターンオンできるように構成され得る。
【0013】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、共振極ネットワークは、抵抗器-ダイオード回路と直列に接続されたコンデンサを備えることができる。
【0014】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、抵抗器-ダイオード回路は、第1の共振極ネットワークのコンデンサの充放電中に異なるインピーダンスを与えることができる。
【0015】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のスイッチング回路は、第1の変圧器から第2のバッテリモジュールに送電されるように構成されたクランピングデバイスを備えることができる。
【0016】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、クランピングデバイスは、ダイオード、制御可能スイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つであり得る。
【0017】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備えることができ、第1のスイッチング回路は、バイパスコンデンサであって、当該バイパスコンデンサとクランピングデバイスとの直列接続が、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチに並列に接続され得るように、クランピングデバイスと直列に接続されたバイパスコンデンサをさらに備えることができる。
【0018】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の電力変換器ブリッジは、第2のバッテリモジュールの第1の極および第1のバッテリモジュールの反対の極を第2の変圧器の低電圧側の端子に選択的に接続するように構成されている第2のスイッチング回路を備えることができる。
【0019】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備えることができる。
【0020】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の制御可能スイッチは、Si MOSFETであり得る。
【0021】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つであり得る。
【0022】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチング回路は、直列に接続された第1の制御可能なスイッチと第2のスイッチとに並列に接続された共振極ネットワークをさらに備えることができる。
【0023】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、共振極ネットワークは、第2のスイッチング回路の第1の制御可能なスイッチを、ZVSターンオフおよびZCSターンオンできるように構成され得る。
【0024】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、共振極ネットワークは、抵抗器-ダイオード回路と直列に接続されたコンデンサを備えることができる。
【0025】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、抵抗器-ダイオード回路は、共振極ネットワークのコンデンサの充放電中に異なるインピーダンスを与えることができる。
【0026】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチング回路は、第2の変圧器から第1のバッテリモジュールに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備えることができる。
【0027】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、クランピングデバイスは、ダイオード、制御可能なスイッチ、およびGaN HEMTのうちの1つであり得る。
【0028】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備えることができ、第2のスイッチング回路は、バイパスコンデンサであって、当該バイパスコンデンサとクランピングデバイスとの直列接続が、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチに並列に接続され得るようにクランピングデバイスと直列に接続されたバイパスコンデンサをさらに備えることができる。
【0029】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のスイッチング回路は、第1の変圧器から第2のバッテリに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備え、第1の電力変換器ブリッジは、第2のバッテリモジュールの第1の極および第1のバッテリモジュールの反対の極を第2の変圧器の低電圧側の端子に選択的に接続するように構成されている第2のスイッチング回路を備えることができ、第2のスイッチング回路は、第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチを備えることができ、第2のスイッチング回路は、第2の変圧器から第1のバッテリに送電されるように構成されているクランピングデバイスを備えることができ、第1のスイッチング回路の第2のスイッチと直列に接続された第1の制御可能なスイッチは、第2のスイッチング回路のクランピングデバイスと直列に接続することができ、第1のスイッチング回路のクランピングデバイスは、第2のスイッチング回路の直列に接続された第1の制御可能なスイッチと第2のスイッチとに直列に接続することができる。
【0030】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電力変換器システムは、第1の変圧器および/または第2の変圧器の低電圧側にわたって並列に接続される共振回路を備えなくてもよい。
【0031】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の電流形変換器ブリッジは、第1の変圧器の高電圧側に並列に接続された第1の共振回路を備えることができ、第3の電流形変換器ブリッジは、第2の変圧器の高電圧側に並列に接続された第2の共振回路を備えることができる。
【0032】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の電流形変換器ブリッジおよび第3の電流形変換器ブリッジのうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの逆阻止スイッチを備えることができる。
【0033】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの逆阻止スイッチは、ダイオードと直列に接続された制御可能なスイッチを備えることができる。
【0034】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、少なくとも1つの逆阻止スイッチは、反対の電流阻止方向で直列に接続された第1の制御可能なスイッチおよび第2の制御可能なスイッチを備えることができる。
【0035】
本明細書に開示される実施形態のうちのいずれかにおいて、電力変換システムは、第1の電流形変換器ブリッジ、第2の電流形変換器ブリッジ、および第3の電流形変換器ブリッジが非アクティブであるとき、システム内の最大電圧が、第1のバッテリモジュールまたは第2のバッテリモジュールの電圧レベルであるように構成され得る。
【0036】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1のバッテリモジュールまたは第2のバッテリモジュールの電圧レベルは、60ボルト未満であり得る。
【0037】
本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の電流形変換器ブリッジは、スイッチングサイクルで動作するように構成され得る。
【0038】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、スイッチングサイクルは、クロスクランプフェーズ(phase)を備えることができ、第1の変圧器および第2の変圧器のうちの少なくとも1つから、少なくとも1つのクランピングデバイスを通して、少なくとも反対のバッテリ極に送電される。
【0039】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第1の電流形変換器ブリッジは、第1の変圧器および第2の変圧器のうちの少なくとも1つからのリークエネルギーの大部分が、第1のバッテリモジュールおよび第2のバッテリモジュールのうちの少なくとも1つに回収され得るように構成され得る。
【0040】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電力変換システムは、フェイルセーフ状態で動作するように構成可能であり、第1の電流形変換器ブリッジ、第2の電流形変換器ブリッジ、および第3の電流形変換器ブリッジに接続されたすべての制御可能な電力デバイスはオフにされ、第1の変圧器および第2の変圧器のうちの少なくとも1つの磁化電流は、第1のバッテリモジュールおよび第2のバッテリモジュールのうちの少なくとも1つに放電される。
【0041】
本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の電流形変換器ブリッジおよび第3の電流形変換器ブリッジの1つまたは複数のポートは、第1の電動モータに接続された第1のポートを備えることができる。
【0042】
本明細書で開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の電流形変換器ブリッジおよび第3の電流形変換器ブリッジの1つまたは複数のポートは、第1の電動モータに接続された第1のポートと、充電端子に接続された第2のポートとを備えることができる。
【0043】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、第2の電流形変換器ブリッジおよび第3の電流形変換器ブリッジの1つまたは複数のポートは、第2の電動モータに接続された第3のポートをさらに備えることができる。
【0044】
本明細書に開示される実施形態のいずれかにおいて、電流形変換器の1つまたは複数のポートは、第2の電動モータに接続された第2のポートをさらに備えることができる。
【0045】
本開示の別の実施形態は、第1の電力変換システムおよび第2の電力変換システムを備えるモジュール式バッテリシステムを提供する。第1の電力変換システムおよび第2の電力変換システムは、電気負荷および/または電源に送電し、かつ/あるいは当該電気負荷および/または当該電源から受電するように構成されている第1の電力変換システムおよび第2の電力変換システムの1つまたは複数のポートに並列に接続することができる。
【0046】
本開示のこれらおよび他の態様は、以下の詳細な説明および添付の図面において説明される。実施形態の他の態様および特徴は、図面と併せて、特定の例示的な実施形態の以下の説明を検討することで、当業者に明らかになるであろう。本開示の特徴は、特定の実施形態および図に関連して論じられ得るが、本開示の全ての実施形態は、本明細書で論じられる特徴のうちの1つ以上を含むことができる。さらに、1つまたは複数の実施形態は、特定の有利な特徴を有するものとして説明され得るが、そのような特徴のうちの1つまたは複数はまた、本明細書で説明される様々な実施形態とともに使用され得る。同様に、例示的な実施形態は、デバイス、システム、または方法の実施形態として以下で説明され得るが、そのような例示的な実施形態は、本開示の様々なデバイス、システム、および方法において実装され得ることを理解されたい。
【0047】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むと、より良く理解されるであろう。本開示を例示する目的で、特定の実施形態が図面に示される。しかしながら、本開示は、図面に示される実施形態の厳密な配置および手段に限定されないことを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】電気自動車のモータ駆動用途に使用される従来の2レベル電圧形インバータを示す図である。
【0049】
【
図2】高電圧バッテリパックを使用する従来の電気自動車の電力アーキテクチャを示す図である。
【0050】
【
図3】本開示の例示的な実施形態による、2つの低電圧バッテリモジュールから電気自動車用途のための2つの高電圧ポート(1つの三相インバータポートおよび1つの三相ACまたはDC急速充電ポート)を実現し、高電圧変換器ブリッジのための2つの制御可能なスイッチ(例えば、デュアルMOSFET構造)の直列接続を使用する電力変換器システムの例示的な構成を提供する図である。
【0051】
【
図4】本開示の例示的な実施形態による、2つの低電圧バッテリモジュールから電気自動車用途のための2つの高電圧ポート(1つの三相インバータポート及び1つの三相ACまたはDC急速充電ポート)を実現し、高電圧変換器ブリッジのためのダイオードおよび制御可能なスイッチ(例えば、MOSFET)の直列接続を使用する電力変換器システムの例示的な構成を提供する図である。
【0052】
【
図5】本開示の例示的な実施形態による、2つの低電圧バッテリから、電気自動車用途のための3つの高電圧ポート(2つの三相インバータポートおよび1つの三相ACまたはDC急速充電ポート)を実現する電力変換器システムの例示的な構成を提供する図である。
【0053】
【
図6】本開示の例示的な実施形態による、電力変換器システムの例示的なスイッチング波形を提供する図である。
【0054】
【
図7】
図7A、
図7Bは、本開示の例示的な実施形態による、電力変換器システムの低電圧ブリッジ内の制御可能またはアクティブなスイッチ(Si MOSFET)の例示的なスイッチング遷移を提供する図である。
【0055】
【
図8】本開示の例示的な実施形態による、電力変換器システムのための簡略化されたブリッジ制御ブロック図を提供する図である。
【0056】
【
図9】本開示の例示的な実施形態による、より高い電力で単一の電動モータを制御するために並列に接続された複数のモジュール式マルチポートACバッテリ電力変換器システムを使用する、例示的な電気自動車の電力アーキテクチャを提供する図である。
【0057】
【
図10】本開示の例示的な実施形態による、各々が専用電動モータを制御する複数のモジュール式マルチポートACバッテリ電力変換器システムを使用する例示的な電気自動車の電力アーキテクチャを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本開示の原理及び特徴の理解を容易にするために、様々な例示的な実施形態が以下に説明される。本明細書に開示される実施形態の様々な要素を構成するものとして以下に記載される構成要素、ステップ、および材料は、例示的なものであり、限定的なものではないことが意図される。本明細書に記載される構成要素、ステップ、および材料と同じまたは同様の機能を実行する多くの適切な構成要素、ステップ、および材料は、本開示の範囲内に包含されることが意図される。本明細書で説明されない、そのような他の構成要素、ステップ、および材料は、本明細書で開示される実施形態の開発後に開発される同様の構成要素またはステップを含むことができるが、それらに限定されない。
【0059】
以下に説明するように、本開示は、電力変換器システムを対象とする。説明のために、以下の実施形態は、モジュール式マルチポートACバッテリ(MMACB)の文脈で説明され、これは、特に電気輸送手段において、本質的な安全性から利益を得ることができる多種多様な最終使用用途を満たすための、汎用ビルディングブロックとして使用することができる。MMACBは、電力変換システムがオフにされている(すなわち、半導体がゲートオフされている)間に、システム内の最大電圧を、タッチセーフな電圧または危険でない電圧として定義される60ボルト未満に制限することができ、数百キロワットまでスケーリングすることができる。MMACBは、バッテリおよびすべての必要な電力変換器を統合してインテリジェントマルチポートビルディングブロックを形成可能である。インテリジェントマルチポートビルディングブロックは、(1)BMS、充電、および保護を含むバッテリの管理が可能であり、(2)EVの牽引および車両の充電/急速充電のための複数の出力ポートを提供可能であり、(3)グリッドサポート、ビークルトゥグリッド(V2G)、および自律的なボトムアップマイクログリッドの形成を含む高度な機能を達成するために複数のMMACBの使用を可能にし、(4)電気的な故障、事故、システムの故障、またはシステムへの物理的損傷の場合に完全に保護され安全であり得る。加えて、MMACBは、比類のない柔軟性を可能にし、将来のバッテリおよび電力変換技術と相互連携可能であり得る、従来の技術にとらわれないビルディングブロックを作成することができる。
【0060】
図1に示されるように、MMACBは、第1の電力変換器ブリッジ150、第2の電力変換器ブリッジ155、および第3の電力変換器ブリッジ160を備えることができる。第1の電力変換器ブリッジ150が第1の変圧器125の低電圧側に接続され、第2の電力変換器ブリッジ155が第1の変圧器125の高電圧側に接続されるように、第2の電力変換器ブリッジ155は、第1の変圧器125を介して第1の電力変換器ブリッジ150に接続することができる。第1の電力変換器ブリッジ150が第2の変圧器126の低電圧側に接続され、第3の電力変換器ブリッジ160が第2の変圧器126の高電圧側に接続されるように、第3の電力変換器ブリッジ160は、第2の変圧器126を介して第1の電力変換器ブリッジ150に接続することができる。
【0061】
いくつかの実施形態では、MMACBは、
図1に示されるように、高電圧ブリッジのためのソフトスイッチングソリッドステートトランス(S4T)変換器と、低電圧バッテリブリッジのための新規のCSIブリッジ構造とを利用することができる。S4T変換器は、PCT出願のPCT/US2017/033186号、PCT/US2019/042969号、およびPCT/US2021/038232号に開示されている。MMACBは、バッテリモジュールと1つ以上の高電圧ACおよびDCポート(例えば、モータ、充電端子等)との間の電力フローを管理することができるマルチポート変換器を実現することができる。マルチポート変換器は、完全に双方向であり得、高周波ガルバニック絶縁を用いて高いブースト変換比を達成することができる。
【0062】
図1に示すように、例示的なMMACBは、モジュール当たり1C連続放電(15kW)および2Cピーク放電能力(30kWのピーク電力)を有する約15kWhの定格の2つの48ボルトバッテリ105、106を、第1の電力変換器ブリッジ150に組み込むことができる。バッテリパックの中点は、高インピーダンスでシャシーグラウンド110に接続され、これにより、タッチ電圧が、任意の故障または破損条件下においても48ボルトを超えないことが保証される。変換器には、低電圧バッテリ段のためのGaN HEMTおよびSi MOSFETに基づくハイブリッドスイッチングセル構造と、高電圧段のためのデュアル共通ソースSiC MOSFET構成とを使用することができる。この形態では、ソフトスイッチング条件下で動作して、広い動作電力範囲にわたって96.5%から98.5%の効率で、25kHzを超えるスイッチング周波数を達成することができる。MMACBは、フィルタリングされた波形、低EMI、および協調制御を特徴とすることが可能である。協調制御とは、数百キロワットまでのモジュールの並列化を可能にし、40マイクロ秒の変換器スイッチングサイクルごとに、必要に応じてポート間およびモジュール間のエネルギーの正確な交換を可能にするものである。さらに、電流形変換器として、MMACBは、大型のDC-リンクコンデンサなしで動作することができ、シュートスルーおよび短絡故障の影響を受けず、完全に保護されたバッテリ用のDCポートを提供することができ、無損失エネルギー回収機構を用いて変圧器のリークインダクタンスを管理することができ、一般的な変換器よりも高い温度で動作することができる。
【0063】
高電圧ブリッジ155、160は、いくつかのインバータ極または位相レグ110A~110Cを備えることができ、各々は、直列に接続された4つの制御可能な(アクティブとも呼ばれる)スイッチ115A~115Dを含む。スイッチ115A~115Dは、当技術分野で知られている多くのスイッチとすることができる。いくつかの実施形態では、スイッチ115A~115DはSiC MOSFET(
図3)である。(
図4に示されるような)いくつかの他の実施形態では、スイッチは、SiC MOSFETおよびSiCショットキーダイオードの直列接続であり得る。変換器システムは、電源/負荷と変換器システムとの間での送電を可能にするために、1つ以上のポート120A~120Cを提供することができる。例えば、1つのポート120Aを使用して、電動モータを変換器に接続することができる。必要に応じて、例えば、車載のDCまたはAC急速充電器120B用、および第2の三相トラクションインバータ120C用の、追加の接続ポートを提供するため、電力密度を著しく低下させることなく、インバータ極110A~110Cの数を増やすことができる。
【0064】
図3に示されるように、MMACBは、低電圧直流段側に分割DC-リンク構造を使用することができ、センタータップ点は、2つのバッテリモジュール105、106の直列接続により形成されるバッテリパックの中点に接続するために用いられる。この分割DC-リンクは、2つの直列接続された高周波変圧器125、126を使用して実現することができ、これにより、本形態にガルバニック絶縁およびブースト変換比が提供される。
【0065】
さらに、DC-リンクブリッジは、ブリッジがスイッチング遷移している間、および本形態におけるすべての制御可能な電力デバイスがオフにされるとき、自然にオンにされ得る2つのクランピングデバイス130、131を備える。これにより、変圧器の磁化電流が流れる経路が提供され、本形態において無損失のリークエネルギー回復機構を可能にし、変換器に故障が発生した場合に電流DC-リンクがバッテリに安全に放電される特有の安全機構が与えられる。このクロスクランプ動作モードは、提案されたMMACBに特有であり、これにより、従来のS4Tベースの高電圧ブリッジ上の共振シーケンスが簡略化される。したがって、MMACBの故障モードは実質的に存在しないことになり、バッテリは、常に保護され得ることになり、短絡の可能性がほとんどまたは全くなくなる。いくつかの実施形態では、
図3および
図4に示すように、クロスクランピングデバイス130、131は、伝導損失を低減するためにGaN HEMTで実装することができる。いくつかの実施形態では、クロスクランピングデバイス130、131は、本質的に逆回復の影響を受けないダイオード技術(例えば、SiCショットキーダイオード)を用いて実装することができる。
【0066】
図3に示すように、一方の第1のバッテリ極のSi MOSFET140、141および直列GaN HEMT142、143(このデバイスも、SiCショットキーダイオードなどの逆回復無しのダイオード技術で置き換えることができる)と、反対側のバッテリ極に接続されたクランピングデバイスとにより、新規のハイブリッドスイッチング回路が形成される。低電圧DCブリッジのアクティブデバイス(例えば、Si MOSFET)のZVSターンオフおよびZCSターンオンを可能にするために、コンデンサ145、146および充電/放電抵抗器-ダイオード回路147、148の直列接続によって実現される共振極ネットワークが、ハイブリッドスイッチングセルの複合アクティブスイッチ回路(Si MOSFET140、141+GaN HEMT142、143)にわたって接続される。これにより、低電圧ブリッジ上に追加のS4T共振タンクを使用することなく、MMACBの低電圧DCブリッジ用途の新しいソフトスイッチング機構が提供される。本形態の、従来のS4T構造に対する基本的な違いにより、MMACBが、低電圧入力バッテリを使用してS4Tにアクセスできない電力範囲をスケーリングすることが可能となる。
【0067】
MMACBの2つの高電圧ブリッジは、すべての主電力デバイスがZVSを有する従来のS4Tブリッジを採用することができ、フィルタ要件をさらに低減するためにインターリーブ方式で動作することができる。
【0068】
図6は、スイッチングサイクルにわたる例示的なMMACBの例示的なシミュレーション波形を示し、クロスクランプ動作モードが強調されている。スイッチング遷移の間、クロスクランプ動作は、低電圧ブリッジ上のデバイス電圧ストレスを制御し、公称のDCバッテリ電圧(この例では2×48V=96V)にクランプし、一方、ブリッジは、この例示的な設計では、30kWの動作点で600アンペアにわたってスイッチングしている。クロスクランプ動作により、変圧器のリークインダクタンスに捕捉されたエネルギーの無損失管理機構が提供され、磁化電流は、
図6において強調されているように、LVブリッジからHVブリッジへと遷移する。
【0069】
この動作モードはまた、すべての電力デバイスをゲートオフすることによってスイッチングサイクル中に有効となり、そのため、図に示されるようにDC-リンク電流がバッテリに放電される。これにより、変換器がバッテリを充電するために使用されるときのエネルギー回収機構が提供されるだけでなく、変換器に障害が発生した場合に、従来の電流形インバータの場合で生じたような壊滅的な故障につながることなく、DC-リンク電流が自然にかつ安全に0Aに放電されるための特有のフォールバックまたはフェイルセーフ機能も提供される。
【0070】
MMACBのLVブリッジにおけるアクティブSi MOSFETのうちの1つのターンオフ遷移およびターンオン遷移が
図6において強調されており、
図7Aにおいてより詳細に示される。ターンオフ時に、共振極ネットワークは、
図7Bにおいて拡大されているスイッチング波形に見られるように、ゼロ電圧スイッチング(ZVS)を行い、この例では、市販のデバイスにおける600A/96Vでのスイッチングにおいて、実質的にスイッチング損失(ターンオフエネルギーの約72μJまでと推定される)はない。同様に、
図7Aにおけるターンオンにおいて、高電圧ブリッジのS4T動作では、スイッチの共振極ネットワークを放電し、Si MOSFETは、ゼロ電流スイッチング(ZCS)条件下でターンオンする。
図7Aで強調されているように、この市販のMOSFETにおけるターンオン時のスイッチング損失は、この例では96Vおよび600Aのデバイススイッチングの場合は、無視できる。MMACBに特有のこのソフトスイッチング手法は、目標の低電圧レベルおよび高電力定格を有する、そのような高電流レベルで動作する低電圧ブリッジを用いて、高変換効率を達成するための鍵である。
【0071】
MMACBの制御は、S4Tの形態の基本原理に従うことができ、各LVおよび各HVブリッジは、一連の電圧レベルまたはアクティブベクトルを印加し、1つのブリッジは、アクティブフェーズ中に一度に電力を転送する。アクティブベクトルは、最も正の電圧から最も負の電圧にソートされ、スイッチングサイクル全体を通して連続的に印加される。LVブリッジ極、および対応するHVブリッジの一般的なゲーティングパターンが、
図6のシミュレーション波形と並んで示されている。LVブリッジとHVブリッジの両方におけるすべてのアクティブデバイスがオフにされるクロスクランプ動作モード中に、典型的なS4T動作からの1つの著しい逸脱が観察され得る。この場合、クロスクランピングデバイスは自然にオンになり、反対のバッテリ極から負電圧を印加して、DCリンク電流I
Lmを放電することができる。これにより、任意の制御エラー、ミスゲーティング、ゲートドライバ障害、またはデバイス障害が、制御されていないDC-リンク電流レベルまたは過剰電圧状態につながらないので、MMACB制御における堅牢性を大幅に改善することができる。さらに、S4Tブリッジの共振シーケンス制御はまた、共振スイッチをオンにしてクロスクランプモードから抜けて共振フェーズを開始する前に、共振タンク電圧を、クロスクランプモードによって決定される、既知の電圧レベルに系統的にクランプすることによって簡略化される。
【0072】
LVブリッジ極-HVブリッジ対の簡略化された一般的な制御ブロック図が、
図8に示されている。これは、従来のDSP-FPGA制御のアーキテクチャで実施することができる。適切なアクティブベクトルの順序付けを用いて変更されたCSI空間ベクトル変調ストラテジを通して、変調が可能となる。スイッチングサイクルは、各ブリッジから選択されたアクティブベクトルを使用して構成することができる。最終的に、より高いレベルの制御ループを使用して、ポートレベル(例えば、V、I、P、Qなど)で所望の制御動作を実現することができる。
【0073】
本明細書に開示される本質的に安全なMMACBアーキテクチャは、特に数百キロワット以上の定格の輸送システムにおいて、バッテリエネルギーを貯蔵する用途に大きな影響を及ぼす可能性がある。MMACBは、重大な事故が起きた後、およびバッテリスタックが破損した後であっても、性能、サイズ、またはコスト(規模)に影響を与えることなく、タッチセーフ条件を実現することによって、安全上の重大な懸念を排除する。複数のMMACBを車両内に柔軟に配置することができ、必要に応じて、車両に影響を与えることなくアップグレードまたは交換することができる。全ての電力/エネルギーの管理機能が1つの柔軟でモジュール式の拡張可能なビルディングブロックに統合されるので、車両設計が簡略化される。単一の120kWの電動モータを駆動するために並列に接続された4つの30kWのMMACB電力変換システムを使用する、電気自動車用の例示的な電力アーキテクチャが
図9に示されている。4つの30kWのMMACB電力変換システムを使用し、各々が独立した30kWインホイールモータを駆動する電気自動車用の例示的な電力アーキテクチャが
図10に示されている。
図9および
図10の両方において、4つのMMACB電力変換システムは、ACまたはDC充電ポート上の並列接続を通してエネルギーを交換することができる。MMACBは、最小のサイズおよびコストペナルティで、容易に拡張することができ、デュアルモータの制御、およびDCまたはAC入力の充電機能を含むマルチポート機能が実現できる。従来のEVインバータとは異なり、ソフトスイッチングおよびフィルタリングされた波形によって、EMI、モータ損失、および軸受電流が低減され、インバータとモータとが近接することを必要としない。MMACBで制御されるバッテリ充電により、エネルギー損失を低減することができ、追加され得る走行範囲のマイル/分が著しく改善され、総充電時間を低減することができる。MMACBはまた、3相ACを使用した急速充電を可能にし、高価な全国的なDC急速充電インフラストラクチャのコストおよび必要性を排除することができ、EVの普及に劇的な影響を及ぼす。最終的に、MMACBにより、高度なV2G、V2H、およびマイクログリッド機能が提供されることになり、EVが将来のグリッドエコシステムにおける統合要素になることが可能となる。
【0074】
本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲は、それらの適用において、説明に記載され、図面に示される構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。むしろ、説明および図面は、想定される実施形態の例を提供する。本明細書に開示される実施形態および特許請求の範囲はさらに、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実践および実行されることが可能である。また、本明細書で使用される表現および用語は、説明のためのものであり、特許請求の範囲を限定するものと見なされるべきではないことを理解されたい。
【0075】
したがって、当業者は、本出願および特許請求の範囲が基づく概念が、本出願において提示される実施形態および特許請求の範囲のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法、およびシステムの設計の基礎として容易に利用され得ることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲がそのような等価な構成を含むものとみなされることが重要である。
【0076】
さらに、前述の要約書の目的は、米国特許商標庁および一般公衆、特に特許および法律用語または言い回しに精通していない当業者を含む公衆が、本出願の技術的開示の性質および本質を一読して迅速に判断できるようにすることである。要約書は、本出願の特許請求の範囲を定義することを意図するものでも、特許請求の範囲を限定することを決して意図するものでもない。
【国際調査報告】