(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】液体貯蔵キャビティ
(51)【国際特許分類】
B65D 83/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B65D83/00 L
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561118
(86)(22)【出願日】2022-04-01
(85)【翻訳文提出日】2023-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2022058810
(87)【国際公開番号】W WO2022207930
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523375652
【氏名又は名称】オスラー ダイアグノスティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ハイランド、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ライス、ヌーノ
(72)【発明者】
【氏名】ヨーマン、マーク
(72)【発明者】
【氏名】ラクストン、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】リリス、バリー
(72)【発明者】
【氏名】メイ、スチュアート
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PC16
3E014PD21
3E014PE14
3E014PE16
(57)【要約】
【解決手段】本明細書に記載される実施形態は、液体貯蔵キャビティであって、基部と、基部から延びる1つ以上の壁であって、液体貯蔵キャビティは基部および1つ以上の壁によって画定される容積を有する、1つ以上の壁と、1つ以上の壁が基部に接合される周縁部であって、周縁部の少なくとも一部は、基部と1つ以上の壁のうちの少なくとも1つとによって画定される周縁凹部を含み、周縁凹部は液体の体積を収容するように構成される、周縁部と、を備える液体貯蔵キャビティに関する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体貯蔵キャビティであって、
基部と、
前記基部から延びる1つ以上の壁であって、前記液体貯蔵キャビティは前記基部および前記1つ以上の壁によって画定される容積を有する、1つ以上の壁と、
前記1つ以上の壁が前記基部に接合される周縁部であって、前記周縁部の少なくとも一部は、前記基部と前記1つ以上の壁のうちの少なくとも1つとによって画定される周縁凹部を含み、前記周縁凹部は液体の体積を収容するように構成される、周縁部と、
を備える液体貯蔵キャビティ。
【請求項2】
前記1つ以上の壁のうちの前記少なくとも1つは、前記液体貯蔵キャビティの内部から外側に延びて前記周縁凹部を画定する、請求項1に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項3】
前記1つ以上の壁のうちの前記少なくとも1つは、
第1の壁部と第2の壁部とを備え、前記第1の壁部は、前記周縁部の一部の周囲で前記基部と前記第2の壁部との間に延びており、
前記第2の壁部は、前記基部から離れる方向に前記第1の壁部から延びている、請求項1または請求項2に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項4】
前記第1の壁部は、前記第2の壁部と前記基部との間にフィレットを画定する、請求項3に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項5】
前記第1の壁部によって画定される前記フィレットの半径は、0.15mmと1mmの間である、請求項4に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項6】
前記第1の壁部によって画定される前記フィレットの半径は、0.2mmと0.6mmの間である、請求項5に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項7】
前記第1の壁部は、前記周縁凹部が三角形の断面を有するように、前記基部と前記第2の壁部との間で鋭角に延びる、請求項3に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項8】
前記第1の壁部と前記基部との間の前記鋭角は、45度以下である、請求項7に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項9】
前記第1の壁部は、前記第1の壁部と前記第2の壁部との間の接合部を超えて横方向に0.5mm以下の距離だけ延びている、請求項7または請求項8に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項10】
前記第1の壁部は、第1の部分と第2の部分とを備え、
前記第1の壁部の前記第1の部分は、前記第2の壁部に接合され、かつ、前記液体貯蔵キャビティの内部から外側に、前記基部と実質的に平行な方向に延びており、
前記第1の壁部の前記第2の部分は、細長い凹部が四辺形の断面を有するように、前記第1の部分と前記基部との間に延びている、請求項3に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項11】
前記第1の壁部の前記第1の部分は、0.5mm以下の幅を有する、請求項10に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項12】
前記第2の壁部の前記第2の部分は、0.5mm以下の高さを有する、請求項10または請求項11に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項13】
前記液体貯蔵キャビティはカプセルである、請求項3から12のいずれかに記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項14】
前記液体貯蔵キャビティの高さは5mm以下である、請求項13に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項15】
前記液体貯蔵キャビティの高さは3.5mm以下である、請求項14に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項16】
前記第2の壁部は、前記基部に対して実質的に垂直な方向に前記基部から離れて延びる、請求項3から15のいずれかに記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項17】
前記周縁凹部は、前記液体貯蔵キャビティの全周の周りに延びている、請求項1から16のいずれかに記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項18】
前記基部における出口をさらに備える、請求項1から17のいずれかに記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項19】
前記出口は、前記周縁部の一部と一致している、請求項18に記載の液体貯蔵キャビティ。
【請求項20】
液体貯蔵キャビティから液体を取り出す方法であって、
請求項1から19のいずれかに記載の液体貯蔵キャビティを提供することと、
前記液体貯蔵キャビティへの入口および前記液体貯蔵キャビティからの出口を提供することと、
前記出口が前記液体貯蔵キャビティの上側に位置するように、前記液体貯蔵キャビティを方向付けることと、
前記出口から液体を排出するために、前記入口を介して気体を供給することと、
を備える、方法。
【請求項21】
前記液体貯蔵キャビティからの前記出口を提供することは、請求項18または請求項19に記載の液体貯蔵キャビティを提供することを備える、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記液体貯蔵キャビティからの前記出口を提供することは、前記液体貯蔵キャビティの前記基部に前記出口を作成することを備える、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体貯蔵カプセルまたはチャンバなどの液体貯蔵キャビティに関する。
【背景技術】
【0002】
ポイントオブケア診断装置は、診断検査で使用される液体を貯蔵するためのチャンバおよび/またはカプセルのようなキャビティを含むことができる。例えば、カプセルは、特定の診断検査で使用される試薬を貯蔵するために使用され得る。別の例として、溶液の混合(例えば、試料の希釈)を可能にするために、混合チャンバが実装され得る。このようなチャンバ及び/又はカプセルは、通常、出口を含み、液体を装置の別の構成要素に移すことを可能にする。例えば、溶液はフローセルに移されてもよく、そこで電気化学測定が実行される。
【0003】
診断装置で使用されるチャンバおよび/またはカプセルが空気を含むことは避けられない。従って、チャンバ/カプセルの出口を通って流れる液体が1つ以上の気泡を含む恐れがある。気泡は、フローセル内の溶液に対して行われる測定を妨害する可能性があるので、ポイントオブケア診断装置において望ましくない。例えば、フローセル内の電極の1つの上に気泡が位置すると、電気化学測定は、誤った測定値を提供し得る。
【0004】
したがって、キャビティから流出する液体中の気泡を低減または防止する、改良された液体貯蔵キャビティに対する必要性が存在する。
【0005】
液体流中の気泡を防止または減少させることにより、キャビティ内の液体のより大きな割合が、気泡の形成前に取り出され得る。これは、所定量の液体が必要な場合、より小さな液体貯蔵キャビティ(チャンバ、カプセルなど)が実装され得ることを意味する。ポイントオブケア診断装置の設置面積がしばしば制限されるので、これは有益である。
【発明の概要】
【0006】
本概要は、詳細な説明においてより詳細に記載される概念を紹介する。それは、特許請求される主題の本質的な特徴を特定するために使用されるべきではなく、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されるべきでもない。
【0007】
本開示の一態様によれば、液体貯蔵キャビティであって、基部と、基部から延びる1つ以上の壁であって、液体貯蔵キャビティは基部および1つ以上の壁によって画定される容積を有する、1つ以上の壁と、1つ以上の壁が基部に接合される周縁部であって、周縁部の少なくとも一部は、基部と1つ以上の壁のうちの少なくとも1つとによって画定される周縁凹部を含み、周縁凹部は液体の体積を収容するように構成される、周縁部と、を備える液体貯蔵キャビティが提供される。
【0008】
細長い周縁凹部内に収容された液体の体積は、キャビティの周縁部(またはその一部)の周囲に連続的な流体経路を提供する。このことは、出口と細長い周縁凹部との間に液体ブリッジが設けられることができれば、液体が細長い周縁凹部からキャビティの出口まで引き込まれることができることを意味する。これにより、液体の流れに気泡が混入されることなく、キャビティの出口から連続的に液体を流出させることができる。
【0009】
1つ以上の壁のうちの少なくとも1つは、液体貯蔵キャビティの内部から外側に延びて周縁凹部を画定してもよい。1つ以上の壁のうちの少なくとも1つは、第1の壁部と第2の壁部とを備えてもよく、第1の壁部は、周縁部の一部の周囲で基部と第2の壁部との間に延びており、第2の壁部は、基部から離れる方向に第1の壁部から延びている。
【0010】
第1の壁部は、第2の壁部と基部との間にフィレットを画定してもよい。第1の壁部によって画定されるフィレットの半径は、0.15mmから1mmの間であってもよい。この範囲のフィレット半径は、液体貯蔵キャビティが空になった後に周縁凹部内に多すぎる液体を保持することなく、(周縁凹部内の液体の破断なしに)周縁凹部内の連続的な液体供給を維持することにより、特定の液体に対して有用である。好ましくは、第1の壁部によって画定されるフィレットの半径は、0.2mmから0.6mmの間であってもよい。
【0011】
第1の壁部は、周縁凹部が三角形の断面を有するように、基部と第2の壁部との間で鋭角に延びてもよい。第1の壁部と基部との間の鋭角は、45度以下であってもよい。第1の壁部は、第1の壁部と第2の壁部との間の接合部を越えて横方向に0.5mm以下の距離だけ延びていてもよい。第1の壁部の角度および距離に関するこれらの境界は、液体貯蔵キャビティが空になった後に周縁凹部内に多すぎる液体を保持することなく、(周縁凹部内の液体の破断なしに)周縁凹部内の連続的な液体供給を維持することにより、特定の液体に対して有用である。
【0012】
第1の壁部は、第1の部分と第2の部分とを備えてもよく、第1の壁部の第1の部分は、第2の壁部に接合され、かつ、液体貯蔵キャビティの内部から外側に、基部と実質的に平行な方向に延びており、第1の壁部の第2の部分は、細長い凹部が四辺形の断面を有するように、第1の部分と基部との間に延びている。第1の壁部の第1の部分は、0.5mm以下の幅を有してもよい。第2の壁部の第2の部分は、0.5mm以下の高さを有してもよい。第1の壁部の角度および距離に関するこれらの境界は、液体貯蔵キャビティが空になった後に周縁凹部内に多すぎる液体を保持することなく、(周縁凹部内の液体の破断なしに)周縁凹部内の連続的な液体供給を維持することにより、特定の液体に対して有用である。
【0013】
液体貯蔵キャビティは、カプセルであってもよい。液体貯蔵キャビティの高さは、5mm以下であってもよい。キャビティの高さのこの範囲は、キャビティの上部内面と下部内面との間の液柱をもたらし、これは、キャビティが逆さにされた状態(すなわち、その出口がキャビティの上面にある状態)でキャビティから出されることができる気泡のない液体の体積を増加させる。好ましくは、液体貯蔵キャビティの高さは、3.5mm以下であってもよい。
【0014】
第2の壁部と基部との間の角度は、55度未満であってもよい。これは、キャビティが逆さまの向きで空にされたとき、キャビティ内での液体の溜まり及び液滴の形成を低減する。第2の壁部は、基部に対して非平行なキャビティの上面を画定してもよい。これは、逆さで空にする間に液体の溜まりまたは液滴の形成の傾向をさらに低減する。キャビティの幅は、キャビティの高さの2.5倍以下であってもよい。
【0015】
第2の壁部は、基部に対して実質的に垂直な方向に基部から離れて延びていてもよい。このことは、キャビティの所与の設置面積に対して、キャビティの容積を最大にする。
【0016】
周縁凹部は、液体貯蔵キャビティの全周囲に延在していてもよい。これにより、キャビティ周縁部の任意の部分の周りの周縁凹部に液体を引き込むことができる。
【0017】
液体貯蔵キャビティは、基部における出口をさらに備えてもよい。出口は、周縁部の一部と一致していてもよい。周縁部と一致する出口を設けることは、チャンバから液体を取り出すために、出口と周縁部との間に液体ブリッジが必要とされないことを意味する。
【0018】
本開示の別の態様によれば、液体貯蔵キャビティから液体を取り出す方法であって、第1の態様の液体貯蔵キャビティを提供することと、液体貯蔵キャビティへの入口および液体貯蔵キャビティからの出口を提供することと、出口が液体貯蔵キャビティの上側に位置するように、液体貯蔵キャビティを方向付けることと、出口から液体を排出するために、入口を介して気体を供給することと、を備える、方法が提供される。
【0019】
液体貯蔵キャビティの周縁凹部により、キャビティが上下逆の配置のとき(すなわち、出口が液体貯蔵キャビティの上側に位置するとき)であっても、液体貯蔵キャビティを空にすることができる。
【0020】
液体貯蔵キャビティの基部に出口を提供することは、基部における出口を備える液体貯蔵キャビティを提供することを備えてもよい。あるいは、液体貯蔵キャビティの基部に出口を提供することは、液体貯蔵キャビティの基部に出口を作成することを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
具体的な実施形態は、例示としてのみ、添付の図面を参照して以下に記載される。
【
図1A】周縁凹部を有する液体貯蔵キャビティを通る概略断面図であり、液体貯蔵キャビティは空にされる過程にある。
【
図1B】空にされた後の
図1Aの液体貯蔵キャビティを通る概略断面図である。
【
図2D】
図2Aに示す液体貯蔵カプセル内の液体を示すシミュレーションである。
【
図3A】第1の期間後に液体貯蔵カプセル内に残っている液体の等角図を示すシミュレーションである。
【
図4A】第2の期間後に
図3Aでシミュレートされた液体貯蔵カプセル内に残っている液体の等角図を示すシミュレーションである。
【
図5A】第3の期間後に
図3Aでシミュレートされた液体貯蔵カプセル内に残っている液体の等角図を示すシミュレーションである。
【
図5B】第3の期間後の
図4Bの線A-Aを通る断面図である。
【
図5C】第3の期間後の
図4Bの線B-Bを通る断面図である。
【
図6A】第1の期間後のチャンバ内の液体体積(liquid volume)の等角図を示すシミュレーションである。
【
図7A】第2の期間後の
図6Aでシミュレートされたチャンバ内の液体体積の等角図を示すシミュレーションである。
【
図7B】第2の期間後の
図6Bの線A-Aを通る断面図である。
【
図8A】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部はフィレットによって画定されている。
【
図8B】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部はフィレットによって画定されている。
【
図8C】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部はフィレットによって画定されている。
【
図9】面取りによって画定された周縁凹部を有する液体貯蔵キャビティを通る断面図である。
【
図10A】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は面取りによって画定されている。
【
図10B】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は面取りによって画定されている。
【
図10C】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は面取りによって画定されている。
【
図10D】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は面取りによって画定されている。
【
図10E】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は面取りによって画定されている。
【
図11】段(ステップ)によって画定された周縁凹部を有する液体貯蔵キャビティを通る断面図である。
【
図12A】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図12B】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図12C】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図12D】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図12E】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図12F】液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示し、周縁凹部は段によって画定されている。
【
図13A】液体貯蔵キャビティの上部に出口を有する液体貯蔵キャビティを通る断面図である。
【
図13B】液体貯蔵キャビティの上部に出口を有するさらなる液体貯蔵キャビティを通る断面図である。
【
図14A】液体貯蔵キャビティの上部に出口を有する液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示す。
【
図14B】液体貯蔵キャビティの上部に出口を有する液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示す。
【
図14C】液体貯蔵キャビティの上部に出口を有する液体貯蔵キャビティの周縁凹部内の液体の断面積のシミュレーション結果を示す。
【
図15A】液体貯蔵カプセルを変形させるために使用される工具の側面図である。
【
図16】液体貯蔵キャビティから液体を取り出す方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施態様が、カプセルおよびチャンバのような液体貯蔵キャビティを特に参照して以下に説明される。しかしながら、本明細書で説明する実施態様は、基部および1つ以上の壁を有する他のタイプのキャビティに適用可能であることが理解されるであろう。以下の実施例は、(マイクロ流体デバイスのような)ポイントオブケア診断装置において特に有用であるとして説明されるが、そのような実施例は、ポイントオブケア診断装置における実施に限定されず、出口を有するキャビティ内に液体が貯蔵される他の用途において実施されてもよいことが理解されるであろう。
【0023】
図1Aは、本開示による液体貯蔵キャビティ10を示す。一般的に、液体貯蔵キャビティ10は、基部12および1つ以上の壁20(例えば、円筒形キャビティでは1つの壁、四辺形の領域を有するキャビティでは4つの壁など)を有する。1つ以上の壁20は基部12から延びている。液体貯蔵キャビティ10は、基部12と1つ以上の壁20とによって画定される容積を有する。液体貯蔵キャビティ10はまた、1つ以上の壁20と基部12との間の接合部として画定される周縁部30を有する。周縁部30の少なくとも一部(いくつかの例では、周縁部の全体)は、基部12及び1つ以上の壁20のうちの少なくとも1つによって画定される周縁凹部32を含む。周縁凹部32は、液体34の体積を収容するように構成される(例えば、
図1Bに示すように)。
【0024】
図1Aに示す例では、周縁凹部32を画定する壁(複数可)20は液体貯蔵キャビティ10の内部14から外側に延びており、それにより、キャビティ10から横方向に延びるくさび形または溝形の周縁凹部32を画定する。
【0025】
周縁凹部32を画定するために、
図1Aに示す液体貯蔵キャビティ10の壁20は、第1の壁部22および第2の壁部24を含む。
図1Aの破線は、第1の壁部22と第2の壁部24との間の界面を示す。具体的には、
図1Aに示す例では、第1の壁部22は、第2の壁部24とは異なる曲率を有する。第1の壁部22は、周縁凹部32を含む周縁部30の一部分の周囲で、基部12と第2の壁部24との間に延びている。
図1Aに示す例では、第1の壁部22は、第2の壁部24と基部12との間にフィレット36を画定する。第2の壁部24は、基部12から離れる方向に第1の壁部22から延びている。
【0026】
周縁凹部32内に収容された液体34の体積は、キャビティ10の周縁部30(またはその一部)の周囲に連続的な流体経路を提供する。このことは、出口16と周縁凹部32との間に液体ブリッジが設けられることができれば、周縁凹部32からキャビティ10の出口16に液体が引き込まれることができることを意味する(液体ブリッジが必要とされない場合である出口16が周縁部30と一致している場合を除く)。周縁凹部32から出口16に液体を引き込むことは、液体の流れに気泡が混入することなく、キャビティ出口16から連続的に液体を流出させることを可能にする。
【0027】
周縁凹部32内の連続的な流体経路は、溶液の表面張力効果、およびキャビティの壁(複数可)20と基部12に対する溶液の濡れ接触角(wetted contact angle)の結果として形成される。液体34の体積は毛細管現象によって周縁凹部32内に引き込まれるため、キャビティ10内の液体の自由表面エネルギーは最小化される。具体的には、周縁凹部32の形状および寸法は、液体-固体および液体-気体の表面エネルギーのバランスをとり、かつ、周縁凹部32内に連続的な液体の「くさび形」を形成させる、エネルギー的に有利なシナリオを提供する(例えば、
図1Bに示すように)。この効果は、キャビティ10がその基部を下に向けて方向付けられている場合(例えば
図1A)でも、出口がキャビティの上部にあるようにキャビティ10がその基部を上にして逆さまに方向付けられている場合(例えば
図13A)でも観察される。
【0028】
重要なことは、キャビティ10が部分的にだけ充填されている場合でも、周縁凹部32内の連続的な液体体積34は、キャビティ10から液体が流出する間に破壊されないことである。このことは、周縁凹部32内に滞留した液体体積34は、キャビティ10が空になる間、キャビティ10からの液体の流出に継続的な案内を提供することを意味する。キャビティ10から連続的に液体を流出させるために、キャビティ10を加圧することにより、好ましい表面エネルギーバランスが利用されることができる。例えば、空気は、キャビティ10への入口(
図1Aには図示せず)を通してキャビティ10に注入され得る。このような例では、出口16が液体によって妨げられなくなるまで、空気は出口16を通って逃げることができない。したがって、対応する空気体積をキャビティ10に注入することによって、連続した液体体積がキャビティ10から出されることができる。
【0029】
ほとんど空になったキャビティ10から液体を抜き出す場合、流量は、液体に対するせん断効果を最小にするように制御されるべきである。液体に対するせん断力が大きすぎると、周縁凹部32内の液体34の体積が壊れ、このことは、毛細管現象によって液体ブリッジが再形成されるためにキャビティ10の加圧を停止する必要があることを意味する。例えばキャビティが半分満たされているときには液体ブリッジが存在するので、これは、キャビティ10がほとんど空である場合にのみ問題である。
【0030】
周縁凹部32は、(i)(例えば
図1Aに示すような)フィレット36、(ii)(例えば
図9に示すような)三角形の断面を有する周縁凹部を提供する面取り、(iii)(例えば
図11に示すような)四辺形の断面を有する周縁凹部を提供する段、または(iv)前述のものの組み合わせの形態をとることができる。
【0031】
周縁凹部32の大きさを最適化するためのパラメータが、以下に詳述される。一般論として、周縁凹部32内の液体体積34の定常状態の断面形状が、(i)キャビティ10内の他の液体体積から周縁凹部32への連続的な液体供給を維持しながら、周縁凹部32に沿った任意の点から液体を引き込むことができるように十分に大きく、かつ(ii)液体の無駄を最小限にするために、キャビティ10が空になった後に周縁凹部32内に残る液体34の体積が大きすぎないように十分に小さくなるように、周縁凹部32は、大きさが設定されることが好ましい。液体体積34は、キャビティが空になった後に周縁凹部32内に捕捉されたままであるので、いくらかの液量の無駄は避けられない。これは、空になった状態の液体貯蔵キャビティ10を示す
図1Bに示されている。
【0032】
図2Aから
図2Cは、
図1Aに示す周縁凹部が適用された液体貯蔵カプセル100の形態の液体貯蔵キャビティを示す。液体貯蔵カプセル100は、分析装置に受け入れられ得るマイクロ流体カートリッジのようなポイントオブケア診断装置に実装され得る。
【0033】
液体貯蔵カプセル100は、入口チャンバ102、液体貯蔵チャンバ104、および出口チャンバ106の3つの部分を含む。液体貯蔵カプセル100のこれらの部分は、基部112(
図2Cに示す)と液体貯蔵カプセル120の連続する壁120とによって画定される。壁120と基部112との間の接合部は、液体貯蔵カプセル100の周縁部130(同じく
図2Cに示す)を画定する。
【0034】
入口チャンバ102および出口チャンバ106の上面はそれぞれ、(例えば、液体貯蔵カプセル100を備えるマイクロ流体カートリッジが受け入れられる分析装置のアクチュエータによる)下向きの力の印加によって変形されることができる。入口チャンバ102および出口チャンバ106への下向きの力の印加は、入口チャンバ102および出口チャンバ106の材料を変形させ、それが基部112に強制的に接触させられるようにする。下向きの力の継続した印加は、入口チャンバ102と出口チャンバ106の下の基部112を破り、それにより入口118と出口116を形成する(
図2Dに示すように)。入口118と出口116は、入口チャンバ102と出口チャンバ106の下に配置された穿孔要素を作動させることによってなど、他の方法で形成されてもよいことが理解されよう。
【0035】
液体貯蔵カプセル100の壁120は、第1の壁部122および第2の壁部124を備える。第1の壁部122は、液体貯蔵カプセル100の周縁部130の周りで基部112と第2の壁部124との間に延びる。第2の壁部124は、第1の壁部122から、基部112から離れて延びている。この例では、第2の壁部124は、第1の壁部122から離れて延び、液体貯蔵カプセル100の上面を画定する。
【0036】
第1の壁部122は、基部112と第2の壁部124との間にフィレット136を提供する。したがって、周縁凹部が、入口チャンバ102、液体貯蔵チャンバ104、および出口チャンバ106の基部に設けられるように、フィレット136は、液体貯蔵カプセル100の周縁部130の周りに延びる周縁凹部132(
図2Cに最もよく示される)を画定する。
【0037】
液体は、毛細管現象によって周縁凹部に引き込まれ、それにより、
図2Dに示すように、入口チャンバ102と出口チャンバ106の縁の周囲にリング状の液体134の体積が形成される。周縁凹部内の液体134の体積と出口116との間に液体ブリッジが設けられていれば、例えば、空気がカプセル入口118を介して供給される場合に、液体134の体積は、液体貯蔵カプセル100からカプセル出口116を介して流体が流出するための連続的な経路を提供する。
【0038】
図3Aおよび
図3Bは、
図2Aから
図2Cに示す液体貯蔵カプセル100と同様の形状を有する液体貯蔵カプセル内に残留する液体のシミュレートされた体積の等角図および上面図である。
図2Aから
図2Cならびに
図3Aおよび
図3Bに示される液体貯蔵カプセルの形状(例えば、入口チャンバおよび出口チャンバのくぼみ)にはわずかな違いがあるが、便宜上、同じ参照符号が使用される。
図3Aおよび
図3Bのシミュレーションは、第1の期間後の、液体貯蔵カプセル100が空になる間の残りの液体体積を示す。
図3A及び
図3Bは、周縁凹部132内の液体体積134と、カプセル入口118及び出口116(それぞれ、入口チャンバ102及び出口チャンバ106内の中心に位置する)との間に延びる液体ブリッジ140を示す。
【0039】
図4Aから
図4Dは、第2の期間後(すなわち、空にする操作の間の後)の残りの液体体積を示す。
図4Aから
図4Dに示すように、液体の大部分は液体貯蔵チャンバ104から出されている。しかしながら、周縁凹部132は依然として液体体積134を収容しており、液体体積134と入口118及び出口116との間の液体ブリッジ140は持続し(
図4C及び
図4Dに最もよく示されるように)、液体貯蔵カプセル100からの継続した液体抽出を可能にする。
【0040】
図5Aから
図5Cは、第3の期間後(すなわち、空にする操作の間のさらに後)の残りの液体体積を示す。
図5Aから
図5Cに示されるように、液体の大部分は、全体として液体貯蔵カプセル100から出されている。周縁凹部132内の液体体積134と入口118及び出口116との間の液体ブリッジ140は壊れており、これは、液体貯蔵カプセル100からの連続的な液体の流出が終了したことを意味する。すなわち、既に抽出された液体と残りの液体との間に気泡を導入することなく、それ以上の液体を抽出することはできない。
図5Aから
図5Cは、空にする操作が終了した後、周縁凹部132内の液体体積134が残っていることを示している。
【0041】
図6Aから
図6Cは、代替の液体貯蔵キャビティ内に残る液体のシミュレートされた体積を示す。特に、
図6Aから
図6Cにおいてシミュレートされた液体貯蔵キャビティは、例えば、混合チャンバとして実施され得る円筒形チャンバ200(外形のみ示す)である。チャンバ200は、チャンバ200の周縁部230で結合する基部212と連続側壁220とを備える。連続側壁220の第2の壁部224は、基部212に対して垂直に延び、チャンバ200は垂直壁を有する。周縁凹部232は、周縁部230の周りに延び、かつ、液体234の体積を収容するように構成されている。
【0042】
チャンバ200は、チャンバ200の周縁部230に開口を提供する出口216を含む。このことは、
図2Aから
図2Dに示す例とは異なり、出口216は周縁部230と一致していることを意味する。出口216と周縁部230との一致は、チャンバ200から液体を取り出すために、出口と周縁部との間に液体ブリッジが必要ないことを意味する。出口216は、流路242に接続されている。チャンバ200はまた、例えば側壁220の上部に設けられ得る入口(図示せず)を備える。
【0043】
図6Aから
図6Cは、チャンバ200を空にする間の、第1の期間後の残りの液体体積を示している。周縁凹部232内の液体体積234が、明瞭に見られる。この体積は、出口216を介して取り出される液体に接続されている。
【0044】
図7A及び
図7Bは、第2の期間後(すなわち、空にする操作の後)の残りの液体体積を示す。
図7Aから
図7Bに示すように、液体のほとんどがチャンバ200から出されている。出口216に接続された流路242に空気の体積が示されており、これは、既に抽出された液体と残りの液体との間に気泡を導入することなく、それ以上の液体を抽出することができないことを意味する。
図7A及び
図7Bは、空にする操作が終了した後、周縁凹部232内の液体体積234が残っていることを示している。
【0045】
次に、
図8Aから
図8Cを参照し、フィレット36の形状を規定するパラメータが説明される。好ましくは、フィレット36の形状は、周縁凹部32内の液体体積34の断面形状が閾値断面積を下回らないように最適化される。閾値は、周縁凹部32内の液体体積34が破断しないことを確実にするために実施される。液体体積34の破断は、周縁凹部32内に液体を引き込むために不十分な液体体積34をもたらすであろう。したがって、閾値は、キャビティ10内の他の液体体積からの連続的な液体供給を維持しながら、周縁凹部32に沿った任意の点から液体が引き込まれることができることを確実にする。閾値断面積は、粘度、表面張力、および接触角などの液体の特性に基づいて決定され得る。
【0046】
0.005~0.015Pa・sの粘度、0.01~0.06N/mの表面張力、および5~40度のキャビティ壁/基部との濡れ接触角を有する特定の液体に適用可能な一例として、閾値断面積は0.06mm2である。0.06mm2の閾値断面積を達成するために、少なくとも0.15mmのフィレット半径が必要である。
【0047】
また、周縁凹部32内に保持される液体34の体積を上限未満に保つことが好ましい。これは、キャビティ10が空になった後に周縁凹部32内に液体34の体積が保持されるからであり、これは、保持された液体体積34がキャビティ10から取り出されることができないことを意味する。上限は、特定の液体の閾値断面積に依存するであろう。
【0048】
0.005~0.015Pa・sの粘度、0.01~0.06N/mの表面張力、および5~40度のキャビティ壁/基部との濡れ接触角を有する特定の液体に適用可能な例を続けると、フィレット半径は1mm以下であることが好ましい。このような液体のフィレット半径の好ましい範囲は、0.2~0.6mmである。
【0049】
図8Aから
図8Cは、異なるフィレット半径を有する周縁凹部に保持される液体体積のシミュレーションである。シミュレーションは、0.005Pa・sの粘度、0.018175N/mの表面張力、および20度の濡れ接触角の液体特性を用いて行われる。
図8Aは、0.6mmのフィレット半径のキャビティのシミュレーションである。0.6mmのフィレット半径では、周縁凹部内の液体の断面積は0.11mm
2であった。
図8Bは、0.4mmのフィレット半径のキャビティのシミュレーションである。0.4mmのフィレット半径では、周縁凹部内の液体の断面積は0.082mm
2であった。
図8Cは、0.2mmのフィレット半径のキャビティのシミュレーションである。0.2mmのフィレット半径では、周縁凹部内の液体の断面積は0.063mm
2であった。
【0050】
添付書類1の表は、液体特性の他の組み合わせに対する周縁凹部32内の液体体積34の断面積を示している。これらの液体特性は重力方向を含む。この特性が考慮されるのは、周縁凹部32が「逆さ」(すなわち、出口16がキャビティ10の上部にある状態)のキャビティを空にすることを容易にできるからである。液体貯蔵キャビティ10から出される気泡のない液体の体積は、液体の表面張力が液体にかかる重力に打ち勝つ結果として、その上部内面と下部内面との間に垂直な液柱が設けられるように、キャビティが十分に浅い深さ(例えば5mm以下)を有する場合に最大になる。添付書類1の表において、重力方向「1」は、出口16がキャビティ10の底部にあることを示し、重力方向「-1」は、出口16がキャビティ10の上部にあることを示す。
【0051】
図9は、第1の壁部322が基部312と第2の壁部324との間で鋭角に延びる代替の液体貯蔵キャビティ300を示す。これは、第1の壁部322が、基部312と第2の壁部324との間に面取り344を提供することを意味する。従って、周縁凹部332は、三角形の断面を有する。
【0052】
面取り344の形状は、面取り深さと面取り角度という2つの特性によって定義されることができ、それらの両方が
図9に概略的に示されている。面取り深さは、第1の壁部322と第2の壁部324との間の接合部間の横方向の距離であり、かつ、面取り344の最大の横方向外方延長(換言すれば、面取り344が第2の壁部324との接合部から横方向にどこまで延びるか)である。面取り角度は、第1の壁部322と基部312との間の角度である。
【0053】
面取り344は、上述のフィレット36と同様に液体を保持する。面取り344が大きすぎると、多くの液体体積が周縁凹部332に保持され、これは、キャビティ300内のある割合の液体が失われることを意味する。しかしながら、フィレット36と同様に、周縁凹部332内の液体体積334の断面積は、少なくとも閾値であることが好ましい。
【0054】
例えば、閾値断面積は、上述の例と同様に、0.06mm2であり得る。この閾値を達成するために、面取り深さは少なくとも0.2mmであるべきであり、面取り角度は少なくとも20度であるべきである。空になった後に細長い周縁凹部332に大量の液体が保持されるのを防ぐため、面取り深さは0.5mm以下であるべきであり、および/または、面取り角度は45度以下であるべきである。
【0055】
図10Aから
図10Eは、異なる面取り形状を有する周縁凹部に保持される液体体積のシミュレーションである。シミュレーションは、0.01Pa・sの動的粘度、0.054N/mの表面張力、15度の濡れ接触角、および1.02の比重の特性を用いて行われた。重力は、
図10Aから
図10Eに示す矢印の方向であった。これらのシミュレーションで変化させた別のパラメータは、基部312に対する第2の壁部322の角度である。90度(
図10Aおよび
図10B)、60度(
図10Cおよび
図10D)および30度(
図10E)の第2の壁部の角度がシミュレートされた。
【0056】
図10Aは、0.25mmの面取り深さ、45度の面取り角度、および90度の第2の壁部の角度(すなわち、第2の壁部324が基部312に対して実質的に垂直に延びるような)を有するキャビティのシミュレーションである。このキャビティおよび面取り形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.220mm
2であった。
図10Bは、0.75mmの面取り深さ、45度の面取り角度、および90度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティおよび面取り形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.268mm
2であった。
図10Cは、0.75mmの面取り深さ、30度の面取り角度、60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと面取り形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.249mm
2であった。
図10Dは、1.125mmの面取り深さ、30度の面取り角度、60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと面取り形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.276mm
2であった。
図10Eは、0.937mmの面取り深さ、27.5度の面取り角度、30度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと面取り形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.253mm
2であった。
【0057】
図11は、第1の壁部422が段446の形態の周縁凹部432を画定している、さらなる代替的な液体貯蔵キャビティ400を示す。具体的には、第1の壁部422は、第2の壁部424に接合され、かつ、第2の壁部424から外側に(すなわち、液体貯蔵キャビティ400の内部414から外側に)延びる第1の部分426を備える。第1の壁部422はまた、第1の部分426と基部412との間に延びる第2の部分428を備える。このことは、第1の壁部422の第1及び第2の部分426,428が、周縁凹部432の四辺形(例えば正方形、長方形、台形)の断面を画定することを意味する。
【0058】
段446の形状は、段446の幅(すなわち、第1の壁部422の第1の部分426の長さ)と、段446の高さ(すなわち、第1の壁部422の第2の部分428の長さ)との2つの特性によって定義されることができる。これらの特性の両者は、
図11に概略的に示されている。
【0059】
段446は、上述したフィレット36および面取り334と同様に液体を保持する。段446が大きすぎると、多くの液量が周縁凹部432に保持され、これは、キャビティ400内のある割合の液体が失われることを意味する。しかし、フィレット36と同様に、周縁凹部432内の液体体積434の断面積は、少なくとも閾値であることが好ましい。
【0060】
例えば、閾値断面積は、上述の例と同様に、0.06mm2であり得る。この閾値を達成するために、段の幅は少なくとも0.2mmであるべきであり、段の高さは少なくとも0.2mmであるべきである。空になった後に細長い周縁凹部332に大量の液体が保持されるのを防ぐため、段の幅は0.5mm以下であるべきであり、および/または、段の高さは0.5mm以下であるべきである。
【0061】
図12Aから
図12Fは、異なる段形状を有する周縁凹部に保持される液体体積のシミュレーションである。シミュレーションは、0.01Pa・sの動的粘度、0.054N/mの表面張力、15度の濡れ接触角、および1.02の比重の特性を用いて行われた。重力は、
図12Aから12Fに示す矢印の方向であった。これらのシミュレーションで変化させた別のパラメータは、基部412に対する第2の壁部422の角度である。60度(
図12Aから
図12E)および30度(
図12F)の第2の壁部の角度がシミュレートされた。これらのシミュレーションで変化させたさらなるパラメータは、キャビティ400の高さである。2.5mm(
図12Aから
図12D)、3mm(
図12E)及び2.75mm(
図12F)のキャビティ高さがシミュレートされた。
【0062】
図12Aは、0.25mmの段の高さ、0.645mmの段の幅、2.5mmのキャビティ高さ、および60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.311mm
2であった。
図12Bは、0.375mmの段の高さ、0.375mmの段の幅、2.5mmのキャビティ高さ、および60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.228mm
2であった。
図12Cは、0.25mmの段の高さ、0.39mmの段の幅、2.5mmのキャビティ高さ、および60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.250mm
2であった。
図12Dは、0.5mmの段の高さ、0.785mmの段の幅、2.5mmのキャビティ高さ、および60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.238mm
2であった。
【0063】
図12Eは、0.25mmの段の高さ、0.39mmの段の幅、および60度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである(
図12Cと同様)。ただし、キャビティ高さは3mmに増加されている。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.320mm
2であった。
図12Fは、0.25mmの段の高さ、0.68mmの段の幅、2.75mmのキャビティ高さ、30度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.371mm
2であった。
【0064】
上述したように、周縁凹部32を実装することは、キャビティが「逆さま」(すなわち、出口16がキャビティ10の上部にある状態)である場合に、キャビティ(例えばカプセル)を空にすることができる。液体貯蔵キャビティ10から出される気泡のない液体の体積は、液体の表面張力が液体にかかる重力に打ち勝つ結果として、その上部内面と下部内面との間に垂直な液柱が設けられるように、キャビティが十分に浅い深さ(例えば、5mm以下)を有する場合に最大になる。
【0065】
図13Aは、キャビティ500の上部に出口516を有する液体貯蔵キャビティ500の例である(すなわち、基部512は上方に配置されており、これは液体貯蔵キャビティ500が逆さまであることを意味する)。上面と下面との間に液柱が設けられることを確実にするために、キャビティ高さ(
図13Bに示す)は、5mm未満、好ましくは3.5mm未満、より好ましくは3mm未満であるべきである。5mmを超えると、表面張力の影響が重力により克服される。
【0066】
この向きでキャビティ500を空にすると、第2の壁部の角度が90度のキャビティについて
図13Aに示すように、キャビティ500の底部に液滴548が形成され得る。また、
図13Bに示すように、第2の壁部が60度の場合にも、液体はキャビティの底部に溜まる。液体の溜まりと液滴の形成を最小限に抑えるために、第2の壁部の角度(
図13Bに概略的に図示される)は、好ましくは55度未満である(例えば、
図14Cに示すように)。
【0067】
液体の溜まりと液滴の形成はまた、キャビティの底部に平坦な表面が設けられないようにすることによって(例えば、
図14Cにも示されるように)、又はキャビティの底部に湾曲した表面を設けることによって(例えば、
図2Aから
図2Dに示されるように)、最小化されることができる。換言すれば、第2の壁部524が、基部に対して非平行であるキャビティ500の上面を画定するとき、液体の溜まりと液滴の形成が最小化される。
【0068】
出口516がキャビティ500の上部にて中心に(すなわちキャビティ500の周縁部530の中心に)位置する場合、断面幅対高さのアスペクト比は、5:2以下であるべきである(換言すれば、キャビティ幅は、キャビティ高さの2.5倍以下であるべきである)。
【0069】
図13Aおよび
図13Bは、段形状を有する周縁凹部532を有するキャビティ500の逆さで空にすることを示しているが、上面と下面との間に液柱が形成されるようにキャビティが十分に浅ければ、面取りとフィレットによって画定された周縁凹部を有するキャビティも、この構成で空にされることができることが理解されよう。
【0070】
図14Aから
図14Eは、キャビティ500の上部に出口516を有してキャビティが空にされたときの周縁凹部に保持される液体体積のシミュレーションである。シミュレーションは、0.01Pa・sの動的粘度、0.054N/mの表面張力、15度の濡れ接触角、および1.02の比重の特性を用いて行われた。重力は、
図14Aから14Eに示す矢印の方向であった。これらのシミュレーションで変化させた別のパラメータは、基部512に対する第2の壁部522の角度である。90度(
図14A)、60度(
図14B)および30度(
図14C)の第2の壁部の角度がシミュレートされた。これらのシミュレーションで変化させた更なるパラメータは、キャビティ500の高さである。3mm(
図14Aおよび
図14B)および2.75mm(
図14C)のキャビティ高さがシミュレートされた。
【0071】
図14Aは、0.25mmの段の高さ、0.25mmの段の幅、3mmのキャビティ高さ、および90度の第2の壁部の角度のキャビティの逆さで空にするシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.301mm
2であった。
図14Bは、0.25mmの段の高さ、0.39mmの段の幅、3mmのキャビティ高さ、および60度の第2の壁部の角度のキャビティの逆さで空にするシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.314mm
2であった。
図14Cは、0.25mmの段の高さ、0.68mmの段の幅、2.75mmのキャビティ高さ、および30度の第2の壁部の角度のキャビティのシミュレーションである。このキャビティと段形状では、周縁凹部内の液体の断面積は0.370mm
2であった。
【0072】
上述したように、キャビティ10が空になる間に周縁凹部32から液体が確実に引き出されるようにするために、周縁凹部32と出口16との間に液体ブリッジが必要である。中心に位置する(すなわち周縁部30の中心の)出口16の場合、液体ブリッジを設ける1つの方法は、周縁部30と出口16との間にサドル50が設けられるようにキャビティ10を変形させることである(
図15Aに概略的に示されているように)。サドル50は、周縁部30と出口16との間に経路を提供し、それに沿ってキャビティ10の上面が窪んでおり、上面と下面との間の距離がキャビティ10の他の領域よりもサドル50に沿って短くなる。このことは、液体の表面張力がサドル50によって画定された経路に沿って液体を保持するので、周縁部30と出口16との間に液体の流れの経路を提供する。
【0073】
キャビティ10を変形させてサドル50を設けるために、キャビティ10を変形させて入口と出口を形成するとき、隆起(リッジ)54を有するアクチュエータ52が使用され得る。隆起54は、
図15Bに示すアクチュエータ52の断面図から見ることができる。アクチュエータは、キャビティ10を備えるマイクロ流体カートリッジが受け入れられる分析装置の構成要素であってもよい。
【0074】
図16は、液体貯蔵キャビティから液体を取り出す方法60のフロー図である。方法60の特徴が
図16に描かれた順序で実施される必要はなく、特定のステップが異なる順序で実施されてもよいことが理解されよう。一例として、方法の特徴66は、方法の特徴64の前に実施されてもよい。したがって、方法60は、
図16に描かれて以下に説明される特定の順序に限定されない。
【0075】
62において、液体貯蔵キャビティが提供される。液体貯蔵キャビティは、
図1Aから
図15Aを参照して説明された液体貯蔵キャビティのいずれであってもよい。例えば、液体貯蔵キャビティは、カプセル(例えば
図2Aから
図2Dに示すような)、またはチャンバ(例えば
図6Aから
図6Cに示すような)であり得る。他の例(例えば、リザーバ、チャネルなど)も想定される。
【0076】
64において、液体貯蔵キャビティへの入口及び液体貯蔵キャビティからの出口が提供される。液体貯蔵キャビティからの出口を提供することは、(例えば、
図6Aから
図6Cに示すチャンバの場合)恒久的な出口を有する液体貯蔵キャビティを提供することを備え得る。液体貯蔵キャビティが恒久的な出口を有する場合、出口を提供することは、液体貯蔵キャビティが実装される液体処理装置におけるバルブを開くことをさらに備えてもよい。あるいは、液体貯蔵キャビティからの出口を提供することは、液体貯蔵キャビティからの出口を作成することを備えてもよい。出口を作成することは、液体貯蔵キャビティを変形させてキャビティ材料の破れを引き起こすこと(例えば、
図2Aから
図2Dを参照して説明したように)、または穿孔要素を使用してキャビティを穿孔することを備えてもよい。
【0077】
同様に、液体貯蔵キャビティへの入口を提供することは、恒久的な入口を有する液体貯蔵キャビティを提供すること、または液体貯蔵キャビティへの入口を(例えば、キャビティ材料を破るか、穿孔するか、または破壊することによって)作成することを備え得る。
【0078】
66において、液体貯蔵キャビティは、出口が液体貯蔵キャビティの上側に位置するように方向付けられる。上記で説明したように、液体貯蔵キャビティは、液体貯蔵キャビティに入口および出口を提供する前に、このように方向付けられてもよい。一例として、液体貯蔵キャビティは、この向きで液体処理装置に実装されてもよい。その後、液体処理装置は、作動可能な穿孔要素を有する分析装置内に受け入れられてもよい。その後、キャビティ材料は、分析装置の穿孔要素によって穿孔されてもよい。
【0079】
68において、出口から液体を排出するために、入口を介して気体が供給される。気体は、例えば、入口と流体連通する空気圧アクチュエータを介して供給され得る。一例として、液体貯蔵キャビティへの入口は、液体貯蔵キャビティが実装される液体処理装置の空気圧ポートと流体連通してもよい。次に、液体処理装置は、空気圧供給システムを有する分析装置に受け入れられ得る。空気は、液体処理装置の空気圧ポートを介して、分析装置の空気圧供給システムによって入口に供給され得る。
【0080】
気体は、液体貯蔵キャビティ内の液体を置換する。液体は、毛細管現象によって液体貯蔵キャビティの周縁凹部に引き込まれる。周縁凹部内の液体は、液体貯蔵キャビティの他の容積から出口への連続的な供給経路を提供し、それにより液体貯蔵キャビティから排出される気泡のない液体の量を最大化する。
【0081】
いくつかの実施態様では、周縁凹部32は、キャビティ10の全周にわたって延びていなくてもよい。さらに、周縁凹部32を画定するために、段、面取り及びフィレット形状の組合せが使用されてもよい。
【0082】
上記の議論では、周縁凹部を備え得るキャビティの例としてカプセルとチャンバを取り上げたが、周縁凹部はまた、チャネルなどの他の流体構成要素に含まれてもよい。チャネルに組み込まれた場合、周縁凹部は、チャネルを通る液体の流れを助ける。
【0083】
単数形の用語「1つ(a)」および「1つ(an)」は、「1つだけ」を意味するものと解釈すべきではない。むしろ、別段の記載がない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈すべきである。「備える(comprises)」及び「備える(comprises)」を含む「備える(comprising)」ならびにその派生語は、記載された各特徴を含むが、1つ以上のさらなる特徴を含むことを排除するものではない。
【0084】
上記の実施態様は、例示としてのみ記載されており、記載された実施態様は、全ての点において、例示としてのみ考慮され、制限的なものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、記載された実施態様の変形がなされ得ることが理解されよう。また、説明されていないが、添付の特許請求の範囲に属する多くの変形例があることも明らかであろう。
【0085】
【国際調査報告】