(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】臍帯血から得られた制御性T細胞を培養することによって制御性T細胞を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240312BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240312BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240312BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240312BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20240312BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240312BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240312BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240312BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240312BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240312BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240312BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240312BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240312BHJP
【FI】
C12N5/10
A61K35/17
A61P37/02
A61P3/10
A61P25/00
A61P37/06
A61P17/04
A61P37/08
A61P17/06
A61P1/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P17/14
A61P17/00
C12N5/0783 ZNA
C12N15/113 120Z
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561149
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-04
(86)【国際出願番号】 US2022022823
(87)【国際公開番号】W WO2022212705
(87)【国際公開日】2022-10-06
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523376578
【氏名又は名称】テライミューン インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン、ナリ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジョン ホン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BB40
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB59
4C087BB64
4C087NA03
4C087NA05
4C087ZA08
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4C087ZA89
4C087ZA92
4C087ZA96
4C087ZB07
4C087ZB08
4C087ZB13
4C087ZB15
4C087ZC35
(57)【要約】
本開示は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、AATCGTAACCGTCGTATCGGCGAT(SEQ ID NO:1)の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することを含む、制御性T細胞の集団を製造するための方法、上記方法によって調製される制御性T細胞を含む組成物の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む自己免疫疾患を処置する方法、および、自己免疫疾患を処置するための組成物、制御性T細胞を含む組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御性T細胞の初期集団を増殖するために、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養すること
を含む、制御性T細胞の集団を製造する方法。
【請求項2】
前記培地が、TGFβ1をさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記培地が、ラパマイシンをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記培地が、TGFβ1およびラパマイシンをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記制御性T細胞の初期集団が、CD4
+CD25
+/hiCD127
lo/-FoxP3
+に対して濃縮されている請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法によって調製される制御性T細胞の集団。
【請求項7】
請求項6記載の制御性T細胞を含む組成物の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む自己免疫疾患を処置する方法。
【請求項8】
前記自己免疫疾患が、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群より選択される請求項7記載の方法。
【請求項9】
自己免疫疾患を処置するための組成物であって、前記組成物が請求項6記載の制御性T細胞を含む組成物。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群より選択される請求項9記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、臍帯血から得られた制御性T細胞を培養することによって制御性T細胞を製造する方法、および制御性T細胞を含む組成物をそれを必要とする被験体に投与することによって自己免疫疾患を処置する方法が記載されている。
【背景技術】
【0002】
制御性T細胞(Treg)は免疫細胞集団のほんの一部を構成し、および、2つの亜集団に分けられ得る。一つは胸腺で作られ、および感作されるもので、ナチュラルTreg(nTreg)と称される。もう一つは末梢部位で作られ、誘導型Treg(iTreg)と称される(Schmitt EG and Williams CB Front.Immunol.2013; 4(152):1-13)。これらは過剰な免疫反応を不活性化し、および免疫恒常性を維持することに特化している(Sharvan Sehrawat, Barry T. Rouse J Leukoc Biol:1079-1087)。移植片対宿主病(GVHD)または自己免疫疾患に罹患している患者は、健康なドナーに比べてTregが少ないか、または、その機能に異常があることが知られている(Roncarolo M-G, Battaglia M., Nat Rev Immuno., 2007; 7(8):585-598; Riley J L, June C H, Blazar B R, Immunity, 2009; 30(5):656-665)。このような理由から、Treg輸血はこれらに対する可能性を秘めた治療であり得る。Treg養子免疫伝達の予防/治療効果は、マウス実験で証明されている(Hoffmann P, Ermann J, Edinger M, Fathman C G, Strober S, J Exp Med, 2002; 196(3):389-399)。Tregを細胞治療または臨床試験に適用するためには、大量の末梢血または臍帯血(UCB)由来のTregおよび末梢血または臍帯血(UCB)由来のTregの安定的な機能性が必要である。
【0003】
Tregを用いた個別化細胞治療の様態においては、克服すべき2つの大きなハードルがある。第一に、レシピエントは高度に精製された増殖されたTregを大量に必要とする。第二に、Tregの機能にとって最も重要な特徴であるFoxp3は、ヒトTregでは増殖プロセスのあいだに失われやすい。これらの問題を解決するために、多くのアプローチが用いられてきた。例えば、CD127loおよびCD25hiの併用は、CD25intT細胞の混入なしに、Foxp3+T細胞の富化された集団を単離するのに役立つことがわかった(Liu W, Putnam A L, Xu-Yu Z, et al., J Exp Med. 2006; 203(7):1701-1711)。さらに、例えばラパマイシンなどのmTOR阻害剤を加えることで、増殖のあいだのT細胞の従来のコンタミネーションが阻害され、および、純度の高いTregの増殖が可能になることがわかった(Hippen K L, Merkel S C, Schirm D K, et al., American Journal of Transplantation, 2011; 11(6):1148-1157)。
【0004】
末梢血由来Tregと比較して、臍帯血由来Tregは、ナイーブT細胞のマーカーであるCD45RAを高いレベルで発現していることから、よりナイーブな表現型を示した。ナイーブTregは活性化後、低レベルの例えばIFN-γなどの炎症性サイトカインを産生した。さらに、ナイーブTregは、メモリーTregと比較して、長期にわたる表現型安定性を維持し、および、これは、動物モデルによって、および、ヒト検体を用いたインビトロ試験によって証明された(Hoffmann, P, Eder, R, Boeld, TJ, Doser, K, Piseshka, B, Andreesen, R, et al.)。
【0005】
したがって、ヒトの臍帯血(cord blood)(臍帯血(umbilical cord blood))から安定した制御性T細胞を単離し、および増殖させるための効率的な方法が必要とされてきた。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、AATCGTAACCGTCGTATCGGCGAT(SEQ ID NO:1)の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することを含む、制御性T細胞の集団を製造するための方法を提供する。
【0007】
例示的な実施形態において、培地はTGFβ1をさらに含んでいてもよい。さらに、例示的な実施形態において、培地は、ラパマイシンをさらに含んでいてもよい。別の例示的な実施形態において、培地は、臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団がSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1とラパマイシンとの存在下で培養されるように、TGFβ1およびラパマイシンの両方をさらに含んでいてもよい。
【0008】
一実施形態において、制御性T細胞の初期集団は、CD4+CD25+/hiCD127lo/-FoxP3+に対して濃縮され得る。
【0009】
本開示はまた、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することによって調製される制御性T細胞の集団を提供する。
【0010】
加えて、本開示は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することによって調製される制御性T細胞を含む組成物の有効量を、それを必要とする被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を処置するための方法を提供する。
【0011】
一実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群より選択される。
【0012】
別の実施形態において、本開示は、自己免疫疾患を処置するための組成物を提供し、該組成物は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で培養することによって調製される制御性T細胞を含んでいる。
【0013】
いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、Treg増殖のスキームを示す図である。特には、
図1は、0日目に、選別されたCD4
+濃縮T細胞が播種され、ならびに、TGFβ1(2ng/mL)およびBHKps25(2μM;SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド)を含むT細胞培養培地中でTransAcTを用いて5日目まで活性化されたことを示す。3日目~5日目まで、汚染された従来のT細胞集団を除去するためにラパマイシン(100nM)が供給された。増殖されたTregは、6日目に、抗CD3(クローンOKT3)抗体を添加した自己フィーダー細胞を加えることによって再刺激された。10日目と17日目に表現型分析が行われた。BHKps25(SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド)は、13日目から増殖終了までのT細胞培地からは除去された。
【
図2】
図2は、フローサイトメトリーのソーティング戦略および純度を示す図である。
図2では、臍帯血(UCB)がヒトCD4 MicroBeadsで濃縮され、および、Melodyセルソーター上でChorusソフトウェアを用いてソーティングされた。単離細胞群はリンパ球ゲートでゲートされた(データは示さず)。次に、CD4
+集団がゲートされ、続いてナイーブT細胞(CD
4+CD25
-/loCD127
+CD45RA
+)およびTreg(CD4
+CD25
hiCD127
lo)がゲートされた。ソートされたTregおよびナイーブT細胞集団はいずれも97%より高い純度を示した。ナイーブT細胞はコントロールとして使用された。
【
図3】
図3は、0日目の全臍帯血(UCB)および末梢血単核球(PBMC)におけるTregおよびナイーブT細胞集団の同定を示す図である。
図3では、UCB(A-B)およびPBMC(C-D)由来の単核球が0日目に分析された。Foxp3およびHeliosの発現レベルが、生存CD4
+集団中のUCB(A)またはPBMC(C)由来の単核細胞から測定された。ナイーブT細胞の割合は、生存CD4
+集団中のUCB(B)またはPBMC(D)由来のCD25
hiCD127
loおよびCD25
-/loCD127
+細胞から測定された。
【
図4】
図4は、増殖されたnTregおよびiTregの増殖中期および終期における表現型分析を示す図である。細胞は、10~12日目に中間点分析としてFoxp3およびHelios細胞内染色について分析された。さらに、エンドポイント分析が、17~19日目に行われた。UCB(A)およびPBMC(B)からの増殖されたnTregおよびiTregにおける、Foxp3とHeliosレベルの両方が示された。すべてのデータは生存CD4
+集団中で解析された。
【
図5】
図5は、増殖のエンドポイントにおける臍帯血(UCB)および末梢血単核細胞(PBMC)由来のnTregおよびiTregのサイトカイン分析を示す図である。安静nTregおよびiTregが、ブレフェルジンAの存在下で、PMAおよびイオノマイシンを用いて4時間再刺激されえた。細胞内IL-2、IL-4、IL-17A、およびIFN-γのレベルが、UCB(A)およびPBMC(B)由来の増殖されたnTregおよびiTregから分析された。
【
図6】
図6は、臍帯血(UCB)由来のnTregと末梢血単核細胞(PBMC)由来のnTregの、増殖の中間点およびエンドポイントにおける倍数変化の比較を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、AATCGTAACCGTCGTATCGGCGAT(SEQ ID NO:1)の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することを含む、制御性T細胞の集団を製造するための方法に関する。
【0016】
用語「臍帯血(umbilical cord blood)」とは、臍帯血(cord blood)とも称され、出産後に胎盤中に、およびそれに付いている臍帯中に残る血液を指す。
【0017】
用語「制御性T細胞」とは、免疫系を調節し、自己抗原に対する寛容性を維持し、および、自己免疫疾患を予防するT細胞の亜集団を指す。
【0018】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、より大きな核酸分子の分解によって合成または生成され得るヌクレオチド(または塩基)のポリマーを指す。例示的な実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエートをバックボーンとするオリゴデオキシヌクレオチドである。SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドは、0.01~20μMの量で培地に添加され得る。別の実施形態において、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの量の下限は、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4または2.5μMであり得る。SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの量の上限は、15、10、9、8、7、6、5、4.2、2.1または2.0μMであり得る. SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの量の上限と下限は、異なる量の範囲を提供するために組み合わされてもよい。さらに、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの量は、そのような組み合わせの範囲内の任意の量であってもよい。例えば、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの量は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9または3.0μMであり得る。別の実施形態において、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの代わりに、またはSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドと共に、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドのアナログが使用されてもよい。
【0019】
一実施形態において、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドの代わりに、それらがSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドと実質的に同じ機能を果たす場合、他のオリゴヌクレオチドが、臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養する際に使用されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドは、300ヌクレオチド以下の長さ、200ヌクレオチド以下の長さ、100ヌクレオチド以下の長さ、90ヌクレオチド以下の長さ、80ヌクレオチド以下の長さ、70ヌクレオチド以下の長さ、60ヌクレオチド以下の長さ、50ヌクレオチド以下の長さ、40ヌクレオチド以下の長さ、30ヌクレオチド以下の長さ、29ヌクレオチド以下の長さ、28ヌクレオチド以下の長さ、27ヌクレオチド以下の長さ、26ヌクレオチド以下の長さ、25ヌクレオチド以下の長さ、24ヌクレオチド以下の長さ、23ヌクレオチド以下の長さ、22ヌクレオチド以下の長さ、21ヌクレオチド以下の長さ、20ヌクレオチド以下の長さ、19ヌクレオチド以下の長さ、18ヌクレオチド以下の長さ、17ヌクレオチド以下の長さ、16ヌクレオチド以下の長さ、15ヌクレオチド以下の長さ、14ヌクレオチド以下の長さ、13ヌクレオチド以下の長さ、12ヌクレオチド以下の長さ、11ヌクレオチド以下の長さ、10ヌクレオチド以下の長さ、9ヌクレオチド以下の長さ、8ヌクレオチド以下の長さ、または7ヌクレオチド以下の長さであり得る。
【0020】
さらに、このようなオリゴヌクレオチドは、7ヌクレオチド以上の長さ、8ヌクレオチドの長さ、9ヌクレオチドの長さ、10ヌクレオチドの長さ、11ヌクレオチドの長さ、12ヌクレオチドの長さ、13ヌクレオチドの長さであってもよい、14ヌクレオチドの長さ、15ヌクレオチドの長さ、16ヌクレオチドの長さ、17ヌクレオチドの長さ、18ヌクレオチドの長さ、19ヌクレオチドの長さ、20ヌクレオチドの長さ、20ヌクレオチドの長さ、21ヌクレオチドの長さ、22ヌクレオチド以上の長さ、23ヌクレオチド以上の長さ、24ヌクレオチド以上の長さ、25ヌクレオチド以上の長さ、26ヌクレオチド以上の長さ、27ヌクレオチド以上の長さ、28ヌクレオチド以上の長さ、29ヌクレオチド以上の長さ、30ヌクレオチド以上の長さ、40ヌクレオチド以上の長さ、50ヌクレオチド以上の長さ、60ヌクレオチド以上の長さ、70ヌクレオチド以上の長さ、80ヌクレオチド以上の長さ、90ヌクレオチド以上の長さ、100ヌクレオチド以上の長さ、または200ヌクレオチド以上の長さであり得る。
【0021】
上記のヌクレオチド長の範囲の上限および下限は、異なるヌクレオチド長の範囲を提供するために、組み合わされてもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、20ヌクレオチド以上および30ヌクレオチド以下の長さであってもよく、ここで、30ヌクレオチド以上の長さと20ヌクレオチド以上の長さとがヌクレオチド長の範囲を提供するために組み合わされる。さらに、オリゴヌクレオチドは、このような組み合わせの範囲内における任意のヌクレオチド長であってもよい。例えば、オリゴヌクレオチドは、15ヌクレオチドの長さ、16ヌクレオチドの長さ、17ヌクレオチドの長さ、18ヌクレオチドの長さ、19ヌクレオチドの長さ、20ヌクレオチドの長さ、21ヌクレオチドの長さ、22ヌクレオチドの長さ、23ヌクレオチドの長さ、24ヌクレオチドの長さ、25ヌクレオチドの長さ、26ヌクレオチドの長さ、27ヌクレオチドの長さ、28ヌクレオチドの長さ、29ヌクレオチドの長さ、または30ヌクレオチドの長さであってもよい。
【0022】
例示的な実施形態において、培地はTGFβ1をさらに含んでいてもよい。TGFβ1(トランスフォーミング成長因子β1)は、サイトカインのトランスフォーミング増殖因子βスーパーファミリーのポリペプチドメンバーである。例示的な実施形態において、TGFβ1は、0.1~10ng/mLの量で培地に添加され得る。別の実施形態では、TGFβ1の量の下限は、0.2、0.3、0.4、05、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、または2.5ng/mLであり、および、TGFβ1の量の上限は、9、8、7、6、5、4.5、4.0、3.5、3.0、2.9、2.8、2.7、2.6、2.5、2.4、2.3、2.2、2.1、または2.0ng/mLであり得る。異なる量の範囲を提供するために、上記TGFβ1の量の上限と下限とが組み合わされてもよい。さらに、TGFβ1の量は、このような組み合わせの範囲内で任意の量であってもよい。例えば、TGFβ1の量は、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、または3.0ng/mLであり得る。別の実施形態において、TGFβ1の代わりに、またはTGFβ1と共に、TGFβ1のアナログが使用されてもよい。
【0023】
さらに、例示的な実施形態において、培地はラパマイシンをさらに含んでもよい。ラパマイシンはシロリムスとも称され、mTOR阻害剤である。別の実施形態において、ラパマイシンの代わりに、またはラパマイシンと共に、ラパマイシンのアナログが使用されてもよい。ラパマイシンは、0.1~1000nMの量で培地に添加され得る。別の実施形態において、ラパマイシンの量の下限は、1、10、20、30、40、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、または99nMであり得、および、ラパマイシン量の上限は、900、800、700、600、500、400、300、200、190、180、170、160、150、145、140、135、130、125、120、115、110、109、108、107、106、105、104、103、102、または101nMであり得る。上記ラパマイシン量の上限および下限は、異なる量範囲を提供するために組み合わされてもよい。さらに、ラパマイシンの量は、このような組み合わせの範囲内で任意の量であってもよい。例えば、ラパマイシンの量は、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、110、または120mMであり得る。別の実施形態において、ラパマイシンの代わりに、またはラパマイシンと共に、ラパマイシンのアナログが使用されてもよい。
【0024】
別の例示的な実施形態において、培地は、臍帯血から得られる制御性T細胞の初期集団がSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1およびラパマイシンの存在下で培養されるように、TGFβ1およびラパマイシンの両方をさらに含んでもよい。SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1およびラパマイシンのそれぞれの量は、上述した任意の量または範囲で選択され得る。さらに、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1および/またはラパマイシンのアナログが、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1およびラパマイシンの代わりに、またはそれらと共に使用されてもよい。一実施形態において、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド、TGFβ1およびラパマイシンは、異なる期間で培地に添加されてもよい。例えば、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドは、培養の0日目~13日目の期間に培地に添加され得る。TGFβ1は、培養0日目~5日目の期間に培地に添加されてもよい。ラパマイシンは、培養3日目~5日目の期間に培地に添加されてもよい。
【0025】
一実施形態において、本開示は、ヒト血清ABおよびIL-2を含むAIM-V培地中でBHKps25(SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド)、TGFβ1、およびラパマイシンと共にCD4マイクロビーズを用いて臍帯血由来のCD4富化T細胞からソートされるCD4+CD25hiCD127loTregを処理することを含む、臍帯血からnTregを単離および増殖する方法を提供する。
【0026】
一実施形態において、本開示は、臍帯血由来のnTregにおいてFoxp3およびHeliosレベルを高く維持する方法を提供する。別の実施形態において、本開示は、臍帯血由来nTregにおいて、IL-2、IL-4、IL-17A、およびIFNγなどの炎症性サイトカインの分泌を減少、阻害、および/または低下させる方法に関する。
【0027】
一実施形態において、制御性T細胞の初期集団は、CD4+CD25+/hiCD127lo/-FoxP3+に対して濃縮され得る。濃縮は、これらに限定される訳ではないが、分離培地の使用、濾過またはエルトリエーションによる細胞サイズ、形状または密度分離、免疫磁気分離、蛍光分離(例えば、蛍光活性化細胞ソーティングシステム、FACS)、またはビーズベースのカラム分離を含む任意の適切な分離方法によって達成され得る。
【0028】
本開示はまた、臍帯血から得られる制御性T細胞の初期集団を、制御性T細胞の初期集団を増殖させるためにSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で培養することによって調製された制御性T細胞の集団を提供する。
【0029】
加えて、本開示は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られる制御性T細胞の初期集団を培養することによって調製された制御性T細胞を含む組成物の有効量(例えば、治療上有効な投与量)を、それを必要とする被験体に投与することを含む、自己免疫疾患を処置する方法を提供する。
【0030】
用語「投与する(administering)」は、当業者によって周知である様々な方法および送達システムのいずれかを用いた、対象への薬剤(組成物)の物理的な導入を意味する。本明細書中に開示される方法により調製される制御性T細胞のための例示的な投与経路としては、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄、または他の非経口投与経路、例えば注射または注入による投与が挙げられる。本明細書中で使用される「非経口投与」との語句は、経腸投与および局所投与以外の投与様式を意味し、通常は注射によるものであり、これらに限定される訳ではないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ管内静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外、および胸骨内注射および注入、ならびにインビボエレクトロポレーションが挙げられる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法によって調製される制御性T細胞は、非経口経路を介して、例えば経口などで投与される。他の非経口経路としては、局所、表皮または粘膜の投与経路、例えば、経鼻、経膣、直腸、舌下または局所などが挙げられる。投与はまた、例えば、1回、複数回、および/または1回以上の長期間にわたって行われ得る。
【0031】
用語「治療上有効な量」または「治療上有効な投与量」とは、本明細書中で使用される場合、方法によって製造される、および、単独でまたは別の治療剤と組み合わせて使用される場合に、被験体を疾患の発症から保護する、または、疾患症状の重症度の低下、疾患症状のない期間の頻度および期間の増加、または疾患の苦痛による機能不全もしくは障害の予防によって明示される疾患の退縮を促進する制御性T細胞の量を指す。制御性T細胞の疾患の退縮を促進する能力は、例えば臨床試験のあいだのヒト被験体における、ヒトでの有効性を予測できる動物モデル系における、またはインビトロアッセイでの薬剤の活性を測定することによってなど、当業者にとって周知の様々な方法を用いて評価され得る。
【0032】
被験体の治療または処置との用語は、疾患に関連する症状、合併症もしくは状態、または生化学的徴候の発生、進行、発症、重症度もしくは再発を反転させる、緩和する、改善する、抑制する、遅らせる、または予防することを目的として、被験体に対して行われる任意の種類の介入またはプロセス、または被験体への本明細書中に開示される方法により調製される一またはそれ以上の制御性T細胞の投与を指す。一実施形態において、「治療」または「処置」は、部分寛解を含む。別の実施形態において、「治療」または「処置」には完全寛解を含む。
【0033】
一実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群より選択される。
【0034】
別の実施形態において、本開示は、自己免疫疾患を処置するための組成物を提供し、ここで、本組成物は、制御性T細胞の初期集団を増殖させるために臍帯血から得られる制御性T細胞の初期集団をSEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で培養することによって調製される制御性T細胞を含む。
【0035】
いくつかの実施形態において、組成物は、治療上有効な量の制御性T細胞を含む、自己免疫疾患を処置するための医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、自己免疫疾患を処置するための追加の治療剤を含んでいてもよい。別の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含んでいてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、I型糖尿病、多発性硬化症、移植片対宿主病、同種移植片拒絶反応、アトピー性皮膚炎、乾癬、炎症性腸疾患、視神経脊髄炎、関節リウマチ、円形脱毛症、全身性エリテマトーデス、尋常性天疱瘡、自己免疫性血管炎、異種臓器移植、同種臓器移植、および抗薬物抗体媒介性合併症からなる群から選択される。
【実施例】
【0037】
材料および方法
組換えヒトインターロイキン(IL)-2(GMPグレード)は、R&Dシステムから購入された。BHKps25(Phosphorothioate-backboned oligodeoxynucleotides;SEQ ID NO:1)は、TriLink biotechnologiesにより合成された。MACS GMP T細胞TransActは、Mitenyi Biotecから購入された。組換えヒトTGFβ1(前臨床グレード)はCell Genix Inc.から購入された。ラパマイシンはSigma-Aldrich社から購入された。Treg培養用完全培地(TCM)は、300IU/mLのIL-2含有、5%ヒトAB血清、500ユニット/mLペニシリン、500mg/mLストレプトマイシン、1.46mg/mLグルタミンを含むAIM-V培地である。培養中、100nMのラパマイシンおよび2ng/mLのhTGFβ1が培養スケジュールにしたがって添加された。
【0038】
UCBからの制御性T細胞の濃縮、ソーティング、および増殖
臍帯血(UCB)はStem cell expressから購入された。細胞は、メーカーの指示にしたがってヒトCD4 MicroBeads(Miltenyi Biotec Inc.)を用いて濃縮された。濃縮された細胞は、染色され、およびその後2つの集団にソートされた。染色のため、抗ヒトCD4-FITC、抗ヒトCD25-PE-Cy7、抗ヒトCD127-APC、および抗ヒトCD45RA-APC-Cy7が、TonboおよびBiolegendから購入された。Treg(CD4+CD25hiCD127lo)およびナイーブT細胞(CD4+CD25-/loCD127+CD45RA+)は、いずれもMelody cell sorter(BD Bioscience)によってソートされた。
【0039】
ソートされ分離された細胞を培養するために、TransActが0日目に培養液に直接的に添加され(
図1)、および、細胞は、BHKps25(2μM;SEQ ID NO:1)の存在下、TCM中で2週間培養された。TGFβ1(2ng/mL)およびラパマイシンが、それぞれ、
図1に示されるように、異なる期間に提供された。2週間の培養後、細胞は、凍結されるまでBHKps25(SEQ ID NO:1)を含まない培地中で維持された。
【0040】
培養されたTregの2回目の刺激のために、マイトマイシンC処理がされたCD4-細胞である自家フィーダー細胞が、50ng/mLの抗CD3抗体(クローンOKT3)に対して1:10の割合で提供された。6~8日目でも細胞がよく増殖していれば、2回目の刺激は必要ない。
【0041】
Foxp3、Helios、サイトカインに関する細胞内染色
スキーム(
図1)に示されるように、増殖されたTregの表現型およびサイトカイン発現レベルが、培養のエンドポイントでのフローサイトメトリーにより分析された。表面染色には、CD3-BV570、CD4-FITC、CD8-BV421、CD25-BV785、CD127-APC、CD45RA-APC-Cy7に対する抗ヒト抗体、および、生死細胞染色キットが用いられた。これらはTonbo、Biolegend、およびInvitrogenから購入された。染色された細胞は、Foxp3/Transcription factor fixation/permeabilizationキットを用いて、メーカーの指示にしたがって固定および透過処理した。この工程の後、細胞内染色が、抗Foxp3-PE-Cy7抗体および抗Helios-PE抗体を用いて行われた。Tregの表現型は、0日目、10日目、17日目に確認された。サイトカイン解析のため、増殖期のTregが、IL-2フリー培地で24時間培養され、および、ナイーブT細胞が、IL-2フリー培地で48時間休ませられた。17日目の再刺激は、ブレフェルジンAの存在下、37℃、4時間、PMAおよびイオノマイシンのカクテルによって行われた。細胞は、2%パラホルムアルデヒド溶液で固定された。これらの細胞は、ウシ血清アルブミンおよび0.1% TriTon X-100を含むPBSを用いて透過処理された。ヒトCD4-FITC、Foxp3-PE-Cy7、Helios-PE、IL-2-BV510、IFN-γ-PerCP-Cy5.5、IL-4-BV421、およびIL-17A-AF647の抗体が同時に染色された。染色された細胞が、NovoCyte 3000(Agilent)に導入され、そしてFlowjoソフトウェアを用いて分析された。
【0042】
結果
ゲート戦略および臍帯血からのTregの単離
まず、CD4
+T細胞が、CD4マイクロビーズを用いてヒト臍帯血から分離され(
図2上段パネル、プレソート)、FACSMelody
TMソーター上でCD25、CD127、およびCD45RAの発現レベルに応じてTregおよびナイーブT細胞にソートされた。非CD4発現細胞を除外するため、「リンパ球ゲート」がおこなわれ、続いてCD4
+集団が、ゲートされた。その後、
図2に示されるように、ナイーブT細胞およびTregの細胞集団がそれぞれ、CD25
hiCD127
loおよびCD25
low/-CD127
+CD45RA
+でゲートされた。これらのゲート戦略はTregをPBMCから分離するために適用された。ソートされ単離されたTregおよびナイーブT細胞集団は、いずれも、97%より高い純度を示した(
図2、ソート後TregおよびナイーブT細胞)。これらのソートされた細胞は、2週間にわたって増殖されるために培養された。
【0043】
UCBおよびPBMCからのnTregおよびiTregの表現型分析
凍結された臍帯血(UCB)および末梢血単核球(PBMC)の両方が解凍され、および、0日目にCD4
+T細胞の濃縮前に表現型の分析に付された(
図3)。Foxp3
+Helios
+集団は、UCB CD4
+集団中でCD25
hiCD127
loを示した。一方、Foxp3
-Helios
-集団は、CD25
low/-CD127
+CD45RA
+を示す(
図3、A)。UCB中のTregおよびナイーブT細胞の両方を同定するために、それらは、
図3、Bに示されるように、CD4
+集団中のCD25およびCD127の発現レベルによって分析された。その後、それらは、CD45RA発現レベルでゲートされた。TregおよびコンベンショナルT細胞から、両者は共に、96%より高いCD45RA
+ナイーブT細胞集団を示し、これはUCB中のナイーブT細胞の頻度が非常に高いことを示している。これはPBMCと区別されるUCB由来細胞のユニークな特徴であり得る。UCBは子供の出産まで女性の身体の外側からの抗原に暴露されることがないため、UCB中の免疫細胞は、成熟する機会をもち得ない。同じゲート戦略を用いて、PBMC由来の細胞が、
図3、CおよびDに示されるように分析された。UCBとは対照的に、成人のPBMC中の免疫細胞は多様な抗原に出会っているため、Treg細胞およびコンベンショナルT細胞の両方が、低い割合のCD45RA発現を示した。
【0044】
Foxp3およびHeliosの発現レベルを含む表現型分析において、UCB由来のnTregのFoxp3
+Helios
+集団は、中間点で87.6%であり、および、エンドポイントにおいて65.5%に減少した(
図4、A)。UCB由来のiTregの場合、Foxp3とHeliosとの二重陽性集団は、62.9%から15.7%に減少した。両細胞は同じ条件で培養されたにも関わらず、nTregは、培養期間にわたってiTregよりもTregの特徴をより良好に維持している。
図4のBにおいて、PBMC由来のnTregおよびiTregの両方における特徴が同じ戦略によって分析された。培養の中間点におけるnTregは、UCBと同様に約92%のFoxp3
+Helios
+個体群を示したが、エンドポイントでは33.2%に減少した。PBMCからのiTreg中のFoxp3およびHeliosの二重陽性集団は、インビトロでの増殖のあいだに15.8%から1%未満へと変化した。
【0045】
UCBおよびPBMC由来のnTregおよびiTregのサイトカイン分析
臍帯血(UCB)または末梢血単核球(PBMC)由来のnTregおよびiTregの両者によるサイトカイン産生が、長期の増殖におけるT細胞の可塑性を検討するために測定された。IL-2、IL-4、IL-17A、およびIFN-γの細胞内サイトカインレベルが、フローサイトメーターによって測定された。UCBおよびPBMCからのnTregとiTregはともに、IL-4およびIL-17Aをほとんど分泌しなかった。しかしながら、UCBおよびPBMC由来のiTregは、IL-2を分泌した(~35%、
図5)。UCB由来のnTregは、IL-2を6.63%分泌したが、PBMC由来のnTregにおいては、IL-2が19.7%分泌された。この結果は、増殖されたnTregはいかなる系統にも分化せず、インビトロ培養期間のあいだもTreg安定性を保持していることを示した。加えて、本開示によるTreg増殖技術(制御性T細胞の初期集団を増殖するために、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチドを含む培地中で臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を培養することにより、制御性T細胞の集団を製造する方法)が、免疫抑制機能を含むTregの表現型特性を維持するために信頼できることを示している。
【0046】
UCBおよびPBMC由来のnTreg数の、増殖の中間点およびエンドポイントにおける倍数変化
図6には、PBMC由来の増殖されたnTregの数が、11.3倍から24.6倍までわずかに増加されたことが示されている。対照的に、増殖されたUCB由来のnTregの数は、52.6倍から培養のエンドポイントでの500.8倍へと劇的に増加していた。したがって、制御性T細胞の初期集団を増殖するための本開示による方法(制御性T細胞の初期集団を増殖するために、臍帯血から得られた制御性T細胞の初期集団を、SEQ ID NO:1のオリゴヌクレオチド(または、追加でTGFβ1、およびラパマイシンを含む)を含む培地中で培養することにより、制御性T細胞の集団を製造する方法)は、PBMC由来のnTregと比較して、UCB由来のnTregから高い収率をもたらすことが確認された。
【0047】
【配列表】
【国際調査報告】