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特表2024-512818抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する化合物を含む退行性神経疾患の予防または治療用組成物
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  • 特表-抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する化合物を含む退行性神経疾患の予防または治療用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する化合物を含む退行性神経疾患の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/423 20060101AFI20240312BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240312BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20240312BHJP
   C07D 263/58 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61K31/423 ZNA
A61P25/00
A61P43/00 105
A61P9/00
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/14
C07D263/58
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561185
(86)(22)【出願日】2022-03-28
(85)【翻訳文提出日】2023-10-02
(86)【国際出願番号】 KR2022004341
(87)【国際公開番号】W WO2022211420
(87)【国際公開日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0042958
(32)【優先日】2021-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0130307
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523376590
【氏名又は名称】クロトー サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ドン ジュ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC70
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZC01
(57)【要約】
本発明は、抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する化合物を含む退行性神経疾患の予防または治療用組成物に関する。本発明による化学式1で表される化合物は、老化に関連する
遺伝子であるKlotho遺伝子の発現量を向上させる効果が優れており、退行性神経疾患の予防、改善または治療用の医薬組成物または食品組成物として有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を含む退行性神経疾患の予防または治療用薬学組成物:
【化1】
(前記化学式1において、
は、単一結合または
【化2】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、ハロゲン、-NOまたはC1-10の直鎖または側鎖アルキルである)。
【請求項2】
前記Lは、単一結合または
【化3】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-5の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-7のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-5の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-7のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ-H、ハロゲン、-NOまたはC1-5の直鎖または側鎖アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記Lは、単一結合または
【化4】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、-CH、またはフェニルアミドであり、ここで、前記フェニルアミドのフェニルには、-Cl、-NOおよび-CHClのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにフェニルを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、-F、-Cl、-NOまたは-CHCHであることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記Lは、単一結合または
【化5】
であり;
は、-H、-OH、-CH
【化6】
であり;
は、-Hであり;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにフェニルを形成することができ;
は、-Hまたは-Clであり;
は、-H、-Fまたは-Clであり;
は、-F、-Cl、-NO、または-CHCHであり;
は、-Hであり;
は、-Hであることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、下記化合物群から選択されるいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の薬学組成物:
1)N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミド;
2)8-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール;
3)2-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オル;
4)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2-クロロ-5-ニトロベンズアミド;
5)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)
-3,4-ジクロロベンズアミド;
6)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3-(クロロメチル)ベンズアミド;
7)2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール;
8)N-(3,4-ジクロロフェニル)ナフト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン;
9)N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン;および
10)N-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン。
【請求項6】
前記組成物は、クロソ遺伝子の発現量を向上させることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記退行性神経疾患は、脳卒中、中風、記憶力の喪失、記憶力の損傷、認知症、健忘症、認知機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピーク(Pick)病、クロイツフェルト-ヤコブ(Creutzfeld-Kacob)病、ハンチントン病、およびルーゲリック病からなる群から選択される1つ以上の疾患を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退行性神経疾患の予防または改善のための健康機能食品組成物:
【化7】
(前記化学式1において、
は、単一結合または
【化8】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、ハロゲン、-NOまたはC1-10の直鎖または側鎖アルキルである)。
【請求項9】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退行性神経疾患の予防または改善のための食品組成物:
【化9】
(前記化学式1において、
は、単一結合または
【化10】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、ハロゲン、-NOまたはC1-10の直鎖または側鎖アルキルである)。
【請求項10】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物を個体に投与または服用することを含む、退行性神経疾患の予防または治療方法:
【化11】
(前記化学式1において、
は、単一結合または
【化12】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、ハロゲン、-NOまたはC
1-10の直鎖または側鎖アルキルである)。
【請求項11】
下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む組成物の退行性神経疾患の予防または治療用途:
【化13】
(前記化学式1において、
は、単一結合または
【化14】
であり;
およびRは、それぞれ、-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NOおよびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記RおよびRは、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
、R、R、RおよびRは、それぞれ、-H、ハロゲン、-NOまたはC1-10の直鎖または側鎖アルキルである)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する化合物を含む退行性神経疾患の予防または治療用組成物に関する。
【0002】
[背景技術]
神経免疫システムの制御不均衡は様々な神経変性疾患の病因として知られており、中枢神経系内でパーキンソン病、アルツハイマー病、外傷損傷、中風、発作による脳損傷などに対して神経炎症反応が原因で起こるという多くの研究が報告されている。
【0003】
一方、動物の老化を調節できる遺伝子が存在できるという事実は、1981年に報告されたSAM(senescence-accelerated mice)から知られることになった。AKR/J系マウス
を交配する途中に偶然に作られたこのマウスは、同系マウスより非常に老化が速かったが、このマウスは、色々な遺伝子に変異を有していることが確認された。以後、単一グループの老化関連遺伝子の発見は、1990年代に報告された。報告された遺伝子は、RecQ familyであり、DNA helicaseという酵素を発現させる遺伝子であった。この遺伝子に変異が発生すると、早期老化が発生したり、がんが生成される結果が報告されたが、これは、DNAの修復に影響を及ぼして発生すると知られた。単一遺伝子として老化に関連したものは、1997年に報告されたklotho遺伝子である。Klotho遺伝子は、高血圧マウスの形質変更動物モデルを作成している中、偶然に発見されたが、この遺伝子を発現しなくなったマウスでは、早期老化現象が発生し、生命が短くなった。さらに興味深い事実は、以後にこの遺伝子の発現を増加させたマウスは、雄性の場合、寿命が20.0~30.8%が増加し、雌性では、18.8~19.0%増加した。これは、単一遺伝子の発現によってマウスの寿命が増えることも、減ることもできるという事実を初めて世間に知らせることになった契機になった。そして、Klotho遺伝子の塩基配列は、動物間に非常に類似していて、マウスとヒトの場合は、98%程度一致することが報告された。これは、ヒトにおいてもklotho遺伝子の発現によって寿命が調節されうることを示す。
【0004】
ヒトにおいてklotho遺伝子ファミリーの中で老化に関連することが知られているα-klotho(以下、klothoと表記)は13番目の染色体に位置し、β-グルコシダーゼと塩基配列が類似した膜タンパク質を生産する。Klothoタンパク質は、腎臓の尿細管上皮細胞と脳の脈絡叢(choroid plexus)で主に発現し、一部が副甲状腺で発現することが報告された。Klotho遺伝子は、多様な老化の表現型に関連した遺伝子であり、klotho遺伝子が欠乏したマウスでは、寿命減少、活動性低下、成長遅延、粥状硬化症、動脈の石灰化、骨粗しょう症、生殖器未熟、不妊、皮膚萎縮、肺気腫などの老化過程と類似の症候群が発生する。Klotho変異マウスでは、ヒトにおいて老化によって発生するMonckeberg typeの動脈硬化症と類似
した様相の動脈硬化症が大動脈から小動脈まですべての動脈で観察され、angiogenesisとvasculogenesisに障害が発生する。
【0005】
Klotho mRNAは、腎臓組織において他の組織より発現が顕著に高いが、高血圧、2
型糖尿病、糖尿病性腎症 、慢性腎不全の疾患モデルマウスの腎臓では、klotho mRN
Aの発現が減少する。Klotho発現低下マウスでは、血管内皮由来弛緩因子であるNO(N
itric Oxide)の生産が減少し、多くの心血管系疾患の危険因子を同時に有す
るOtsuka Long-Evans Tokushima fatty rat(OLETF)マウスにklotho遺伝子をウイル
ス遺伝子伝達体を利用して注入すると、血管内膜の機能異常が好転し、NOの生産を増加させ、血管肥厚と線維化を抑制して血圧を降下させる。また、klotho遺伝子は、マウスに
おいて糖とインスリン代謝にも影響を及ぼし、代表的な高コレステロール血症治療剤であるスタチンは、腎近位尿細管細胞でklotho mRNAの発現を増加させる。Klotho発現低下マウスでは、骨芽細胞および破骨細胞両方の分化障害による低い骨交替状態の骨減少症が発生し、これは、ヒトにおいて年齢の増加による骨量の減少および老人性骨粗しょう症の特徴と類似している。また、Klotho変異マウスでは、骨端部位の骨梁の異常な伸長と微細電算化断層撮影で異常な骨梁組織の所見が観察され、これは、骨吸収過程の障害に起因する。ヒトにおいて観察されるKlotho遺伝子突然変異による臨床的表現型の変化は、多様である。Klotho遺伝子exon2の3つの部位の突然変異を有するKL-VS(functional variant of klotho)変形は、脂質代謝、血圧、寿命、認知機能、冠状動脈疾患および脳血管疾患に関連していて、Klotho遺伝子のmicrosatellite多形成と単一塩基遺伝子多形成が骨密度に関連していて、健康な成人女性においてKlotho遺伝子の単一塩基遺伝子多形成が心血管系疾患の危険因子および骨密度と関連していることも発表されたことがある。最近では、Klotho遺伝子とアルツハイマーとの関連性も色々な論文を通じて報告された。アルツハイマー認知症マウスモデルにおいてklothoを過発現させる場合、マウスの寿命が30%増加し、認知機能低下が抑制されることが報告された。また、klotho発現によって脳内でアミロイドベータタンパク質の生成が50%減少することが観察された。ヒトにおいても、klothoの発現量は、アルツハイマー疾患の進行程度と反比例し、klothoタンパク質がアルツハイマー疾患者の血液で炎症性サイトキンの量を減少させるという報告が提出された。
【0006】
このように明確な老化阻害効果を有しているklotho遺伝子の発現を誘導できる物質の開発に対する努力が続いてきた。知られた物質のうちklothoの発現を誘導できると報告されたものには、rapamycin、vitamin D、statinなどがある。2012年にボストン大学校の研究チームは、合計15万個に達する化合物ライブラリーを利用してklotho遺伝子発現を誘導できる化合物をスクリーニングして、3個の化合物を報告した。
【0007】
本発明者は、これらの化合物のうち、医薬品として開発可能性が大きい構造を有するcompound Hという化合物を選定して、実際実験を通じてこの化合物が細胞でklotho遺伝子を発現させることができることを確認し、その作用メカニズムに対する研究結果を論文に発表した。以後、compound H(比較例1)の構造を分析する実験を進めてklotho発現を誘
導できる化合物の構造的特性を把握し、これをベースにして10倍以上活性が増加した新しい化合物を作成することになった。さらに、本発明者らは、抗老化遺伝子klothoの発現を誘導する新規化合物が退行性神経疾患の予防または治療に有用であることを実験的に確認し、本発明を完成した。
[発明の概要]
【0008】
[発明が解決しようとする課題]
本発明の目的は、式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退行性
神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退
行性神経疾患の予防または改善のための健康機能食品組成物、または食品組成物を提供することである。
【0010】
[課題を解決するための手段]
前記目的を達成するために、
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分
として含む退行性神経疾患(neurodegenerative disease)の予防または治療用薬学組成物
を提供する。
【0011】
【化1】
【0012】
(前記化学式1において、
1は、単一結合または
【0013】
【化2】
【0014】
であり;
1およびR2は、それぞれ-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、または
6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NO2およびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換され
ることができ;
前記R1およびR2は、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ、-H、ハロゲン、-NO2またはC1-10
の直鎖または側鎖アルキルである)。
【0015】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有
効成分として含む退行性神経疾患の予防または改善用の健康機能食品組成物を提供する。
さらに、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を
有効成分として含む退行性神経疾患の予防または改善用食品組成物を提供する。
【0016】
さらに、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を
有効成分として含む組成物を個体に投与または服用することを含む退行性神経疾患の予防または治療方法を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を
有効成分として含む組成物の退行性神経疾患の予防または治療用途を提供する。
【0018】
[発明の効果]
本発明に係る式1で表される化合物は、老化に関連する遺伝子であるKlotho遺伝子の発
現量を向上させる効果に優れ、退行性神経疾患の予防、改善又は治療用薬学組成物又は食品組成物として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1aは、比較例1~4のヒトのklotho遺伝子の開始部位から1.7kbpの前までのプロモーターを含むレポータ遺伝子を利用してルシフェラーゼ発現実験の結果を示す図である。図1bは、比較例1~4のヒトのklotho遺伝子の開始部位から240bpの前までのプロモーターを含むレポータ遺伝子を利用してルシフェラーゼ発現実験の結果を示す図である。
図2図2は、実施例1~実施例6のヒトのklotho遺伝子の-2.1kbアップストリームまで含まれたプロモーターを含むレポータ遺伝子を利用してルシフェラーゼ発現実験の結果を示す図である。
図3図3は、実施例1~3のヒトのklotho遺伝子の-2.1kbアップストリームまで含まれたプロモーターを含むレポータ遺伝子を利用してルシフェラーゼ発現実験の結果を示す図である。
図4図4は、実施例1および実施例2によるklotho(KL)遺伝子のmRNA発現量をRT-PCRで確認した結果である。
図5図5は、実施例1~2および実施例7~10の化合物で処理したRPTEC細胞においてklotho遺伝子の発現を確認した結果である。
図6図6は、実施例1、実施例9および実施例10の化合物で処理したHK2細胞において細胞毒性を確認した結果である。
図7図7は、HT22細胞(マウスヒポカンプス由来の神経細胞)におけるKS1化合物(実施例10)の神経細胞老化抑制効果を確認した結果である。
図8図8は、HT22細胞(マウスヒポカンプス由来の神経細胞)におけるKS1化合物(実施例10)の神経細胞の炎症抑制効果を確認した結果である。
図9図9は、5xFAD認知機能障害動物モデルにおけるKS1化合物(実施例10)の認知機能障害タンパク質発現減少効果を確認した結果である。
図10図10は、5xFAD認知機能障害動物モデルにおけるKS1化合物(実施例10)の神経細胞マーカーNeuN発現増加効果を確認した結果である。
図11図11は、5xFAD認知機能障害動物モデルにおけるKS1化合物(実施例10)の物体探索能力向上効果を確認した結果である。
図12図12は、5xFAD認知機能障害動物モデルで受動回避(Passive Avoidance)実験を通じてKS1化合物(実施例10)の空間学習及び記憶力向上効果を確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[発明を実施するための最良の形態]
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分
として含む退行性神経疾患の予防または治療用/改善用組成物に関する。
【0021】
本発明による下記化学式1で表される化合物は、老化に関連する遺伝子であるKlotho遺
伝子の発現量を向上させる効果に優れ、退行性神経疾患の予防、改善又は治療用薬学組成物又は食品組成物として有用に使用することができる。
【0022】
退行性神経疾患の予防または治療用医薬組成物
本発明は、下記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退行
性神経疾患の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0023】
【化3】
【0024】
前記化学式1において、
1は、単一結合または
【0025】
【化4】
【0026】
であり;
1およびR2は、それぞれ-H、-OH、C1-10の直鎖または側鎖アルキル、または
6-8のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NO2およびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換され
ることができ;
前記R1およびR2は、これらが連結された炭素原子とともにC6-8のアリールを形成することができ;
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ-H、ハロゲン、-NO2またはC1-10
直鎖または側鎖アルキルでありうる。
【0027】
本発明による一実施例において、
前記L1は、単一結合または
【0028】
【化5】
【0029】
であり;
1およびR2は、それぞれ-H、-OH、C1-5の直鎖または側鎖アルキル、またはC6-7のアリールアミドであり、ここで、前記アリールアミドのアリールには、ハロゲン、-NO2およびC1-5の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上が置換されることができ;
前記R1およびR2は、これらが連結された炭素原子とともにC6-7のアリールを形成することができ;
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ-H、ハロゲン、-NO2またはC1-5の直鎖または側鎖アルキルでありうる。
【0030】
本発明による一実施例において、
前記L1は、単一結合または
【0031】
【化6】
【0032】
であり;
1およびR2は、それぞれ-H、-OH、-CH3、またはフェニルアミドであり、こ
こで、前記フェニルアミドのフェニルには、-Cl、-NO2および-CH2Clのうち1
種以上が置換されることができ;
前記R1およびR2は、これらが連結された炭素原子とともにフェニルを形成することができ;
3、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ-H、-F、-Cl、-NO2または-CH2CH3でありうる。
【0033】
本発明による一実施例において、
前記L1は、単一結合または
【0034】
【化7】
【0035】
であり;
1は、-H、-OH、-CH3
【0036】
【化8】
【0037】
であり;
2は、-Hであり;
前記R1およびR2は、これらが連結された炭素原子とともにフェニルを形成することができ;
3は、-Hまたは、-Clであり;
4は、-H、-Fまたは、-Clであり;
5は、-F、-Cl、-NO2、または-CH2CH3であり;
6は、-Hであり;
7は、-Hであるものでありうる。
【0038】
本発明による化学式1で表される化合物の好ましい例としては、下記の化合物群が挙げ
られる。
1)N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミド;
2)8-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール;
3)2-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オル;
4)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2-クロロ-5-ニトロベンズアミド;
5)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3,4-ジクロロベンズアミド;
6)N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3-(ク
ロロメチル)ベンズアミド;
7)2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール;
8)N-(3,4-ジクロロフェニル)ナフト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン;
9)N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン
;および
10)N-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン。
【0039】
本発明の前記化学式1で表される化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で使用でき、
塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩が有用で
ある。薬学的に許容可能な塩という表現は、患者に比較的非毒性であり、無害な有効作用を有する濃度であり、この塩に起因した副作用が化学式1の塩基化合物の有利な効能を落
とさない化学式1の塩基化合物のいずれの有機または無機付加塩を意味する。これら塩は
、遊離酸としては、無機酸と有機酸が使用でき、無機酸としては、塩酸、臭素酸、硝酸、硫酸、過塩素酸、リン酸などが使用でき、有機酸としては、クエン酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、メタンスルホン酸、グルコン酸、コハク酸、タルタル酸、ガラクツロン酸、エンボン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、シュウ酸、(D)または(L)リンゴ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、4-トルエンスルホ
ン酸、サリチル酸、クエン酸、安息香酸またはマロン酸などが使用できる。また、これらの塩は、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)およびアルカリ土類金属塩(カ
ルシウム塩、マグネシウム塩など)などを含む。例えば、酸付加塩としては、アセテート
、アスパルテート、ベンゾアート、ベシレート、バイカーボネート/カーボネート、バイサルフェート/サルフェート、ボラート、カムシレート、シトレート、エジシレート、エシレート、ホルメート、フマラート、グルセプテート、グルコネート、グルクロナート、ヘキサフルオルホスフェート、ハイベンゼート、ハイドロクロリド/クロリド、ハイドロブロミド/ブロミド、ハイドロヨージド/ヨージド、イセチオナート、ラクテート、マレート、マレアート、マロネート、メシレート、メチルサルフェート、ナフチレート、2-
ナフシレート、ニコチネート、ナイトレート、ヨロテート、オキサレート、パルミテート、パモエート、ホスフェート/水素ホスフェート/二水素ホスフェート、サッカレート、ステアレート、スクシネート、タルトレート、トシレート、トリフルオルアセテート、アルミニウム、アルギニン、ベンザチン、カルシウム、コリン、ジエチルアミン、ジオラミン、グリシン、リシン、マグネシウム、メグルミン、オラミン、カリウム、ナトリウム、トロメタミン、亜鉛塩などが含まれ得、これらのうち、ハイドロクロリドまたはトリフルオルアセテートが好ましい。
【0040】
また、本発明の前記化学式1で表される化合物は、薬学的に許容される塩だけでなく、
通常の方法によって製造できるすべての塩、異性体、水和物および溶媒和物を全部含む。
本発明による付加塩は、通常の方法で製造することができ、例えば、化学式1の化合物
を水混和性有機溶媒、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、またはアセトニトリルなどに溶かし、過量の有機酸を加えたり、無機酸の酸水溶液を加えた後、沈殿させたり、結晶化させて製造することができる。次に、この混合物から溶媒や過量の酸を蒸発させた後、乾燥させて、付加塩を得たり、または析出された塩を吸引ろ過させて製造することができる。
【0041】
前記化合物の製造方法1
本発明は、下記反応式1に示されたように、
化合物2を有機溶媒に溶かした後、化合物3を添加し、10~50℃で12~20時間反応させて化合物4を得る段階(段階1);および
過酸化カリウム(Potassium superoxide)が溶解した有機溶媒に、前記段階1で得られた化合物4が溶解した有機溶媒を滴加した後、15~30℃で10~16時間反応させて化合物1Aを得る段階(段階2);
を含む化学式1Aで表される化合物の製造方法を提供する。
【0042】
【化9】
【0043】
前記反応式1において、
1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、請求項1の化学式1で定義したものと同一
のものを表し、
前記化合物1Aは、請求項1の化学式1に含まれる。
【0044】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒の例としては、メタノール(MeOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジ
メチルスルホキシド(DMSO)またはジオキサンを単独でまたは混合して使用できる。
【0045】
本発明の製造方法において、前記製造方法によって製造できる化合物の例としては、8
-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール、2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール、N-(3,4-ジクロロフェニル)ナ
フト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン、N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミンまたはN-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミンでありうる。
【0046】
前記化合物の製造方法2
本発明は、下記反応式2に示されたように、
化合物5を有機溶媒に溶かした後、化合物3を添加し、10~50℃で12~20時間反応させて化合物6を得る段階(段階1);
過酸化カリウム(Potassium superoxide)が溶解した有機溶媒に、前記段階1で得られた化合物6が溶解した有機溶媒を滴加した後、12~24時間反応させて化合物7を得る段階(段階2);および
化合物7を有機溶媒に溶かし、三臭化ホウ素(BBr 3)を添加した後、常温で20~28時間反応させて化合物1Bを得る段階(段階3);
を含む化学式1Bで表される化合物の製造方法を提供する。
【0047】
【化10】
【0048】
前記反応式2において、
3、R4、R5、R6およびR7は、請求項1の化学式1で定義したものと同一のものを表
し、
前記化合物1Bは、請求項1の化学式1に含まれる。
【0049】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒の例としては、メタノール(MeOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジ
メチルスルホキシド(DMSO)またはジオキサンを単独でまたは混合して使用できる。
【0050】
本発明の製造方法において、前記製造方法によって製造できる化合物の例としては、2
-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オルでありうる。
【0051】
前記化合物の製造方法3
本発明は、下記反応式3に示されたように、
化合物8、二硫化炭素(Carbon disulfide)、ヨードメタン(Iodomethane)、および水素化ナトリウム(sodium hydride)を有機溶媒に
溶かした後、10~50℃で2~8時間反応させて化合物9を得る段階(段階1);および
化合物9および化合物2を有機溶媒に溶かした後、2~8時間反応させて化合物1Cを得る
段階(段階2);
を含む化学式1Cで表される化合物の製造方法を提供する。
【0052】
【化11】
【0053】
前記反応式3において、
1、R2、R3、R4、R5、R6およびR7は、請求項1の化学式1で定義したものと同一
のものを表し、
前記化合物1Cは、請求項1の化学式1に含まれる。
【0054】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒の例としては、メタノール(MeOH)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジ
メチルスルホキシド(DMSO)またはジオキサンを単独でまたは混合して使用できる。
【0055】
本発明の製造方法において、前記製造方法によって製造できる化合物の例としては、N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミドでありう
る。
【0056】
前記化合物の製造方法4
本発明は、下記反応式4に示されたように、
化合物10および化合物3を有機溶媒に溶かした後、10~50℃で20~28時間反応させて化
合物11を得る段階(段階1);
過酸化カリウム(Potassium superoxide)が溶解した有機溶媒に、前記段階1で得られた化合物11が溶解した有機溶媒を滴加した後、10~50℃で12~24時間
反応させて化合物12を得る段階(段階2);
化合物12を触媒とともに有機溶媒に添加した後、水素ガスを注入して10~50℃で12~20時間反応させて化合物13を得る段階(段階3);および
化合物13および化合物14を有機溶媒に溶かした後、10~50℃で12~24時間反応させて化合物1Dを得る段階(段階4);
を含む化合物1Dで表される化合物の製造方法を提供する。
【0057】
【化12】
【0058】
前記反応式4において、
3、R4、R5、R6およびR7は、請求項1の化学式1で定義したものと同一のものを表
し;
8は、ハロゲン、-NO2およびC1-10の直鎖または側鎖ハロゲン化アルキルのうち1種以上であり;
前記化合物1Dは、請求項1の化学式1に含まれる。
【0059】
本発明の製造方法において、前記有機溶媒の例としては、メタノール(MeOH)、ジメ
チルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、テトラヒドロフラン(THF)、ジクロロメタン(DCM)、1,2-ジメトキシエタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジ
メチルスルホキシド(DMSO)またはジオキサンを単独でまたは混合して使用できる。
【0060】
本発明の製造方法において、前記製造方法によって製造できる化合物の例としては、N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2-クロロ-5
-ニトロベンズアミド、N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール
-5-イル)-3,4-ジクロロベンズアミドまたはN-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3-(クロロメチル)ベンズアミドでありうる。
【0061】
本発明において、前記組成物はKlotho遺伝子の発現量を向上させることができる。
本発明において、前記退行性神経疾患は、脳卒中、中風、記憶力の喪失、記憶力の損傷、認知症、健忘症、認知機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピーク(Pick)病、クロイツフェルト-ヤコブ(Creutzfeld-Kacob)病、ハンチントン病、およびルーゲリック病からなる群から選択される1つ以上の疾患を含むことができるが、これらに限定され
ない。
【0062】
本発明の化合物は、臨床投与時に経口および非経口の様々な剤形で投与でき、製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して製造される。
【0063】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の本発明の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)、ラクトース(lactose)またはゼラチンなどを混ぜて調製される。また、単純な賦形剤の他にマグネシウム、ステアレート、タルクのような潤滑剤も使用される。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤またはシロップ剤などが該当するが、頻繁に使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に、様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。
【0064】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水性溶剤、懸濁溶剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、エチルオレートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウィテップゾール(witepso
l)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼ
ラチンなどが使用できる。
【0065】
また、本発明の化合物の人体に対する効果的な投与量は、患者の年齢、体重、性別、投与形態、健康状態および疾患程度によって異なり、一般的に、約0.001~100mg/kg/日であり、好ましくは、0.01~35mg/kg/日である。体重が70kgの成人患者を基準とするとき、一般的に0.07~7000mg/日であり、好ましくは、0.7~2500mg/日であ
り、医師または薬剤師の判断によって一定の時間間隔で1日に1回~数回に分割投与することもできる。
【0066】
退行性神経疾患の予防または改善用食品組成物または健康機能食品組成物
本発明は、前記化学式1で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む退行
性神経疾患の予防または改善のための食品組成物または健康機能食品組成物を提供する。
【0067】
本発明において、組成物はクロソ遺伝子の発現量を向上させることができる。
本発明において、前記退行性神経疾患は、脳卒中、中風、記憶力の喪失、記憶力の損傷
、認知症、健忘症、認知機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、ピーク(Pick)病、クロイツフェルト-ヤコブ(Creutzfeld-Kacob)病、ハンチントン病、およびルーゲリック病からなる群から選択される1つ以上の疾患を含むことができるが、これらに限定され
ない。
【0068】
食品の種類には、特別な限定はない。本発明の有効物質を添加できる食品の例としては、ドリンク剤、肉類、ソーセージ、パン、ビスケット、モチ、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、アルコール飲料およびビタミン複合剤、乳製品および乳加工製品などがあり、通常の意味における健康食品および健康機能性食品を全部含む。
【0069】
本発明による有効物質を含有する健康食品および健康機能性食品組成物は、食品にそのまま添加したり、他の食品または食品成分と共に使用でき、通常の方法によって適切に使用できる。有効物質の混合量は、その使用目的(予防または改善用)によって適宜決定できる。一般的に、健康食品および健康機能性食品中の前記組成物の量は、全体食品重量の0.1~90重量部で加えることができる。しかしながら、健康維持を目的としたり、または健
康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は、前記範囲以下であってもよく、安全性の面から何の問題もないので、有効物質は、前記範囲以上の量でも使用できる。
【0070】
本発明の健康食品および健康機能性食品組成物は、指示された比率で必須成分として本発明の有効物質を含有する以外には、他の成分には特別な限定がなく、通常の飲料とともに様々な香味剤または天然炭水化物などをさらなる成分として含有してもよい。上述した天然炭水化物の例は、モノサッカライド、例えば、ブドウ糖、果糖など;ジサッカライド、例えばマルトース、スクロースなど;およびポリサッカライド、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどのような通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリスリトールなどの糖アルコールである。上述したもの以外の香味剤として、天然香味剤(ソ
ーマチン、ステビア抽出物(例えばレバウディオサイドA、グリチルリチンなど)および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用できる。前記天然炭水化物の比率は、本発明の健康機能性食品組成物100g当たり一般的に約1~20g、好ましくは、約5
~12gである。
【0071】
前記の他に本発明の有効物質を含有する健康食品および健康機能性食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、ミネラル(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有してもよい。その他、本発明の健康食品および健康機能性食品組成物は、天然果物ジュースおよび果物ジュース飲料および野菜飲料の製造のための果肉を含有してもよい。
【0072】
このような成分は、独立して、または組み合わせて使用できる。このような添加剤の比率は、あまり重要なことではないが、本発明の有効物質を含有する健康食品および健康機能性食品組成物100重量部当たり0.1~約20重量部の範囲で選択されることが一般的である。
【0073】
以下、本発明を下記の実施例によってさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0074】
<実施例1>N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミド(N-(Benzo[d]oxazol-2-yl)-2-chloro-4-nitr
obenzamide,FCCS-17064)の製造
【0075】
【化13】
【0076】
段階1:ジメチル(2-クロロ-4-ニトロベンゾイル)カルボニミドジチオエート(Dimethyl(2-chloro-4-nitrobenzoyl)carbonimidodithioate、17064-2-1)の製造
2-クロロ-4-ニトロベンズアミド(2-Chloro-4-nitrobenzami
de)(500mg、2.49mmol)、二硫化炭素(Carbon disulfide,CS2)(759mg、9.97mmol)、ヨードメタン(Iodomethane)(1.13g、7.97mmol)をジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamide)(7mL)に溶
かした後、60%水素化ナトリウム(sodium hydride)(200mg、4.98mmol)を入れ、室温で5時間撹拌した。
【0077】
反応混合物に氷水(ice-cold water)をゆっくり加え、エチルアセテート(ethyl acetate)で抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をシリカ-ゲルカラムクロマトグラフィー(
Silica-gel column chromatrography)(10% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、ジメチル(2-クロロ-4-ニトロベンゾイル)カルボニミドジチオエート(Dimethyl(2-chloro-4-nit
robenzoyl)carbonimidodithioate、17064-2-1)を淡黄
色の固体(160mg、21%)として得た。
【0078】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ8.34(d、1H、J=2.0Hz)、8.29(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)、8.20(d、1H、J=8.4Hz)、2.65(s、6H)。
【0079】
段階2:N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミド(N-(Benzo[d]oxazol-2-yl)-2-chloro-4-nitrobenzamide,FCCS-17064)の製造
前記段階1で得られたジメチル(2-クロロ-4-ニトロベンゾイル)カルボニミドジチオ
エート(Dimethyl(2-chloro-4-nitrobenzoyl)carbo
nimidodithioate、17064-2-1)(150mg、0.49mmol)をジメチルホ
ルムアミド(N,N-dimethylformamide)(15mL)に溶かした後、2-アミノフェノール(2-aminophenol)(53mg、0.49mmol)を入れた。
【0080】
反応混合物を6時間還流した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物にジエチルエー
テル(diethyl ether)を入れ、沈殿した固体をフィルターして得られた固体をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrogr
aphy)(40% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化
合物N-(ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)-2-クロロ-4-ニトロベンズアミド(N-(Benzo[d]oxazol-2-yl)-2-chloro-4-nitroben
zamide,FCCS-17064)を茶色の固体(70mg、30%)として得た。
【0081】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ8.36(d、1H、J=2.0Hz)、8.3
3(dd、1H、J=2.0、8.4Hz)、8.09(d、1H、J=8.4Hz)、7.62-7.56(m、2H)
、7.40-7.33(m、2H)。
【0082】
<実施例2>8-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(8-Methyl-2-[N-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzoxazole、FCCS-17065)の製造
【0083】
【化14】
【0084】
段階1:1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)チオウレア(1-(3,4-Dichlorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-meth
ylphenyl)thiourea、17065-2-1)の製造
2-アミノ-p-クレゾール(2-Amino-p-cresol)(300mg、2.44mmol)をメタノール(methanol)(12mL)に溶かした後、3,4-ジクロロフェニルイソチオシアネート(3,4-dichlolrophenyl isothiocyanate)(497mg、2.44mmol)を入れ、室温で18時間撹拌した。TLC(thin laye
r chromatography)で反応終結を確認した後、冷蔵庫(0~4℃)で冷却(cooling)した。沈殿した固体をフィルターして、白色固体(346mg)として1-(3,4
-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)チオウレア(1-(3,4-Dichlorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-methylphenyl)thiourea、17065-2-1)を得、さらなる精製することなく、次のステップに使用した。
【0085】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ7.98(dd、1H、J=0.4,2.0Hz)、7.55-7.50(m、2H)、7.43(br s、1H)、6.94-6.90(m、1H)、6.85(d、1H、J=8.4Hz)2.24(s、3H)。
【0086】
段階2:8-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(8-Methyl-2-[N-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzoxazole、FCCS-17065)の製造
過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(375mg、5.29mmol)、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(15mL)の溶液に前記段階1で得られた1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)チオウレア(1-(3,4-Dichlorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-me
thylphenyl)thiourea、17065-2-1)(346mg、1.06mmol)をアセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(25mL)に溶かした溶液をゆっくり加
えた後、室温で18時間撹拌した。
【0087】
反応混合物にジクロロメタン(dichloromethane)と水を入れて抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrog
raphy)(10% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的
化合物8-メチル-2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(8-
Methyl-2-[N-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzo
xazole、FCCS-17065)を白色の固体(170mg、24%、2 steps)として得た。
【0088】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ8.29(d、1H、J=2.8Hz)、7.73(dd、1H、J=2.8、8.8Hz)、7.76(d、1H、J=8.8Hz)、7.32-7.20(m、1H)
、7.28(d、1H、J=8.0Hz)、7.00-6.970(m、1H)、2.41(s、3H)。
【0089】
<実施例3>2-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オル(2-((3,4-dichlorophenyl)amino)benzo[d]oxazol
-5-ol、FCCS-17066)の製造
【0090】
【化15】
【0091】
段階1:1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-Dichlorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-met
hoxyphenyl)thiourea、17066-3-1)の製造
2-アミノ-4-メトキシフェノール(2-Amino-4-methoxyphenol)(1.13g、8.12mmol)をメタノール(methanol)(40mL)に溶かした後、3,4-
ジクロロフェニルイソチオシアネート(3,4-dichlolrophenyl isothiocyanate)(1.99g、9.74mmol)を入れ、室温で18時間撹拌した。TLC(thin layer chromatography)で反応終結を確認した後、冷蔵
庫(0~4℃)で冷却(cooling)した。沈殿した固体をフィルターして、茶色固体(2g)として1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メトキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-Dichlorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-meth
oxyphenyl)thiourea、17066-3-1)を得、さらなる精製することなく
、次のステップに使用した。
【0092】
1H NMR(400MHz、methanol-d4);δ7.82(d、1H、J=2.4Hz)、7.48-7.44(m、2H)、7.39(dd、1H、J=1.4、8.8Hz)、6.81(d、1H、J=8.8Hz)、6.66(dd、1H、J=1.6、8.8Hz)、3.73(s、3H)。
【0093】
段階2:N-(3,4-ジクロロフェニル)-5-メトキシベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-dichlorophenyl)-5-methoxybenzo[d]
oxazol-2-amine、17066-3-2)の製造
過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(540mg、7.6m
mol)、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(20mL)の溶液に前記段階1で得られた17066-3-1(525mg、1.52mmol)をアセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(30mL)に溶かした溶液をゆっくり加えた後、室温で18時間撹拌した。反応混合物にジクロロメタン(dichloromethane)と水を入れ、抽出した
。有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrog
raphy)(20% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、N-(3,4-ジクロロフェニル)-5-メトキシベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4
-dichlorophenyl)-5-methoxybenzo[d]oxazol-2-amine、17066-3-2)を茶色の固体(230mg、35%)として得た。
【0094】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ8.29(d、1H、J=2.4Hz)、7.70(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)、7.55(d、1H、J=8.8Hz)、7.30(d、1H、J=8.8Hz)、7.08(d、1H、J=2.8Hz)、7.74(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)、3.84(s、3H)。
【0095】
段階3:2-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オル(2-((3,4-dichlorophenyl)amino)benzo[d]oxazol-5-ol、FCCS-17066)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階2で得られた17066-3-2(200mg、0.65mmol)をジク
ロロメタン(dichloromethane)(15mL、anhydrous)に溶かした後、氷浴(ice-bath)で冷却(cooling)した。三臭化ホウ素(BBr3)(3.23mL、1.0M in dichloromethane)をゆっくり入れ、室温まで温度を上げた後、24時間撹拌した。水酸化ナトリウム(NaOH)溶液(8mL、1.0M in w
ater)をゆっくり入れ、反応を終結し、分液漏斗(separatory funnel)に移して、有機層と水層を分離した。水層をエチルアセテート(ethyl acetate)で抽出した後、Na2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物
をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrogr
aphy)(40% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化
合物2-((3,4-ジクロロフェニル)アミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-オル(2-((3,4-dichlorophenyl)amino)benzo[d]oxazol-5-ol
、FCCS-17066)を茶色の固体(97mg、50%)として得た。
【0096】
1H NMR(400MHz、acetone-d6);δ8.29(br s、-OH)、8.26(d、1H、J=2.4Hz)、7.72(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)、7.56(d、1H、J=8.8H
z)、7.21(dd、1H、J=2.0、7.2Hz)、6.95(d、1H、J=2.0Hz)、6.66(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)。
【0097】
<実施例4>N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2-クロロ-5-ニトロベンズアミド(N-(2-(4-Ethylphenylamino)benzo[d]oxazol-5-yl)-2-chloro-5-nitrobenzamide、FCCS-17067)の製造
【0098】
【化16】
【0099】
段階1:1-(4-エチルフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)チオウレア(1-(4-ethylphenyl)-3-(2-hydroxy-5-nitropheny
l)thiourea、Interm-3-1)の製造
2-アミノ-4-ニトロフェノール(2-Amino-4-nitrophenol)(1.88
g、12.25mmol)と4-エチルフェニルイソチオシアネート(4-ethylpheny
l isothiocyante)(2g、12.25mmol)をメタノール(methanol)(80mL)に溶かした後、室温で一日間撹拌した。減圧下で溶媒を除去した後、クロマト
グラフィー(Silica-gel column chromatrography)(20% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、1-(4-エチルフェ
ニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)チオウレア(1-(4-ethylphenyl)-3-(2-hydroxy-5-nitrophenyl)thiourea、Interm-3-1)を茶色の固体(2.9g、65%)として得た。
【0100】
1H NMR(400MHz、methanol-d4);δ9.24(d、1H、J=2.8Hz)、7.88(dd、1H、J=2.0、9.2Hz)、7.36(d、2H、J=8.4Hz)、7.25(d、2H、J=8.8Hz)、6.94(d、1H、J=9.2Hz)、2.66(q、2H、J=7.6Hz)、1.24(t、3H、J=7.6Hz)。
【0101】
段階2:N-(4-エチルフェニル)-5-ニトロベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(
N-(4-ethylphenyl)-5-nitrobenzo[d]oxazol-2-
amine、Interm-3-2)の製造
過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(2.8g、39.38m
mol)、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(130mL)の溶液を氷浴(ice-bath)で冷却(cooling)した後、前記段階1で得られたInterm-3-1(2.5g、7.88mmol)をアセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(170mL)に溶かした溶液をゆっくり加えた後、室温で18時間撹拌した。反応混合物にジクロ
ロメタン(dichloromethane)と水を入れ、抽出した。有機層を塩水で洗浄して、Na2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrography)(10%
Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、化合物Interm-3-2を茶色の固体(1.78g、80%)として得た。
【0102】
1H NMR(400MHz、methanol-d4);δ8.20(d、1H、J=1.0Hz)、8.08(dd、1H、J=0.8、9.6Hz)、7.59(d、2H、J=8.8Hz)、7.51(d、1H、J=8.8Hz)、7.22(d、2H、J=8.8Hz)、2.64(q、2H、J=7.6Hz)、1.24(t、3H、J=7.6Hz)。
【0103】
段階3:N-(4-エチルフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2,5-ジアミン(N-(4-ethylphenyl)benzo[d]oxazole-2,5-diamine、Interm-3-3)の製造
Pd/C(Palladium on carbon)(1.70g、0.80mmol、10wt.%、wet support)を丸いフラスコ(round-flask)に称量して入れ
た後、Arガスでパージング(purging)した。そこへ前記段階2で得られたInt
erm-3-2(1.58g、5.30mmol)をメタノール(methanol)(80mL)に溶かした溶液をゆっくり入れた後、H2(g)で置換した。H2(g)をbubblingしながら、室温で18時間撹拌した。TLC(thin layer chromatography)で反応終結を確認後、Celite padでフィルターした後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chro
matrography)(40% Ethyl acetate/n-hexane)で精
製して、化合物Interm-3-3を淡茶色の固体(1.21g、90%)として得た。
【0104】
1H NMR(400MHz、Acetone-d6);δ7.71(m、2H)、7.19(m、2H)、7.03(dd、1H、J=0.8、8.4Hz)、6.75(dd、1H、J=0.8、2.0Hz)、6.44(dd、1H、J=2.0、8.4Hz)、2.60(q、2H、J=7.6Hz)、1.19(t、3H、J=7.6Hz)。
【0105】
段階4:N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2
-クロロ-5-ニトロベンズアミド(N-(2-(4-Ethylphenylamino)b
enzo[d]oxazol-5-yl)-2-chloro-5-nitrobenzamide、FCCS-17067)の製造
前記段階3で得られたInterm-3-3(253mg、1mmol)、2-クロロ-5-ニト
ロベンゾイルクロリド(2-chloro-5-nitrobenzoyl chlori
de)(220mg、1mmol)をジメチルホルムアミド(N,N-dimethylform
amide,DMF)(4mL)に溶かした後、ジイソメチルプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine,DIPEA)(129mg、1mmol)を入れ、室温で18時間撹拌した。18時間後、2-クロロ-5-ニトロベンゾイルクロリド(2-chloro-5-nitrobenzoyl chloride)とジイソメチルプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine,DIPEA)各0.5当量を追加し、8時
間さらに撹拌した。反応混合物に10% HCl(aq.)を入れ、エチルアセテート(ethyl acetate)で抽出した後、有機層を飽和されたNaHCO3水溶液と塩水で順に洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrogra
phy)(40% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化合
物N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-2-クロロ-5-ニトロベンズアミド(N-(2-(4-Ethylphenylamino)benzo
[d]oxazol-5-yl)-2-chloro-5-nitrobenzamide、FCCS-17067)を淡黄色の固体(120mg、27%)として得た。
【0106】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6);δ10.71(s、1H)、10.53(s、1H)、8.48(d、1H、J=2.8Hz)、8.34(dd、1H、J=2.4、8.8Hz)、7.90(d、1H、J=8.8Hz)、7.82(d、1H、J=2.0Hz)、7.64(d、2H、J=8.8Hz)、7.46(d、1H、J=8.8
Hz)、7.40(dd、1H、J=2.0、8.4Hz)、7.21(d、1H、J=8.8Hz)、2.58(q、2H、J=7.6Hz)、1.18(t、3H、J=7.6Hz)。
【0107】
<実施例5>N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3,4-ジクロロベンズアミド(N-(2-(4-Ethylphenylamino)ben
zo[d]oxazol-5-yl)-3,4-dichlorobenzamide、FC
CS-17068)の製造
【0108】
【化17】
【0109】
前記実施例4の段階3で得られたInterm-3-3(253mg、1mmol)、3,4-ジク
ロロベンゾイルクロリド(3,4-dichlorobenzoyl chloride)(209mg、1mmol)をジメチルホルムアミド(N,N-dimethylformamid
e,DMF)(4mL)に溶かした後、ジイソメチルプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine,DIPEA)(129mg、1mmol)を入れ、室温で18時間撹拌した。反応混合物に10% HCl(aq.)を入れ、エチルアセテート(ethyl acetate)で抽出した後、有機層を飽和されたNaHCO3水溶液と塩水で順に洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrography)(40
% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化合物FCCS
-17068を淡白色の固体(270mg、64%)として得た。
【0110】
1H NMR(400MHz、Acetone-d6);δ8.18(d、1H、J=2.4Hz)、7.99(t、1H、J=2.4Hz)、7.97(d、1H、J=2.0Hz)、7.80-7.20(m、3H)、7.70-7.50(m、1H)、7.35(d、1H、J=8.8Hz)、7.24(d、1H、J=8.8Hz)、2.63(q、2H、J=7.6Hz)、1.22(t、3H、J=7.6Hz)。
【0111】
<実施例6>N-(2-(4-エチルフェニルアミノ)ベンゾ[d]オキサゾール-5-イル)-3-(クロロメチル)ベンズアミド(N-(2-(4-Ethylphenylamino)b
enzo[d]oxazol-5-yl)-3-(chloromethyl)benzam
ide、FCCS-17069)の製造
【0112】
【化18】
【0113】
前記実施例4の段階3で得られたInterm-3-3(253mg、1mmol)、3-(クロロメチル)ベンゾイルクロリド(3-(chloromethyl)benzoyl chlo
ride)(189mg、1mmol)をジメチルホルムアミド(N,N-dimethylfo
rmamide,DMF)(4mL)に溶かした後、ジイソメチルプロピルエチルアミン(diisopropylethylamine,DIPEA)(129mg、1mmol)を入れ、室温で18時間撹拌した。反応混合物に10% HCl(aq.)を入れ、エチルアセテート(ethyl acetate)で抽出した後、有機層を飽和されたNaHCO3水溶液と塩水で順に洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥した後、減圧下で溶媒を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrogr
aphy)(30% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化
合物FCCS-17069を淡白色の固体(170mg、40%)として得た。
【0114】
1H NMR(400MHz、Acetone-d6);δ8.08(t、1H、J=1.2Hz)、8.03(d、1H、J=2.0Hz)、7.98(dt、1H、J=1.2、7.6Hz)、7.80-7.75(m、2H)
、7.69-7.65(m、1H)、7.57-7.52(m、3H)、7.34(d、1H、J=8.8Hz)、7.26-7.22(m、2H)、2.62(q、2H、J=7.6Hz)、1.22(t、3H、J=7.6Hz)。
【0115】
<実施例7>2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(2-[N
-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzoxazole、FCC
S-17065-A)の製造
【0116】
【化19】
【0117】
段階1:1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-dichlorophenyl)-3-(2-hydroxyphenyl)thiourea、FCCS-17065-A-2-1)の製造
Arガス雰囲気下で2-アミノフェノール(2-Aminophenol)(300mg、2.749mmol)にメタノール(anhydrous MeOH)(8mL)を加えて溶かした後、3,4-ジクロロフェニルイソチオシアネート(3,4-dichlorophenyl iso
thiocyanate)(0.47mL、3.299mmol)をゆっくり滴加し、14時間常温で撹拌させる。TLC(thin layer chromatography)で確認して、出発物質が全部消えることを確認し、減圧して、溶媒を除去後、crudeにsilicaを入れて吸着させ、シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Silica
-gel Flash Column Chromatography)(30% EtOAc/hexane、R=0.4)を行うことによって、1-(3,4-ジクロロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-dichlorophenyl)-3-(2-hydroxyphenyl)thiourea、FCCS-17065-A-2-1)、793mg(light brown foamy solid、92%)を得た。
【0118】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ7.82(d、1H、J=2.8Hz)、7.63(d、1H
、J=7.6Hz)、7.45(d、1H、J=8.8Hz)、7.39(dd、1H、J=8.6、2.2Hz)、7.11-7.06(m、1H)、6.90(dd、1H、J=8.0、1.2Hz)、6.85(td、1H、J=7.6、1.2Hz)。
【0119】
段階2:2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(2-[N-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzoxazole、FCCS-17065-A)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階1で得られたFCCS-17065-A-2-1(400mg、1.277
mmol)と過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(454m
g、6.386mmol)を入れ、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(48mL)を加えて常温で14時間撹拌する。TLC(thin layer chromatography)で確認して、出発物質が全部消えることを確認後、crudeにsilic
aを入れて吸着させ、減圧する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(S
ilica-gel Flash Column Chromatography)(20%
EtOAc/hexane、R=0.4)を行うことによって、目的化合物2-[N-(3,4-ジクロロフェニル)]アミノベンゾオキサゾール(2-[N-(3,4-dichlorophenyl)]aminobenzoxazole、FCCS-17065-A)、231mg(w
hite solid、65%)を得た。
【0120】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ8.06(d、1H、J=2.8Hz)、7.55(dd、1
H、J=8.6,2,6Hz)、7.48-7.45(m、2H)、7.39(d、1H、J=8.0Hz)、7.24(td、1H、J=7.6、1.2Hz)、7.16(td、1H、J=7.8、1.2Hz)。
【0121】
<実施例8>N-(3,4-ジクロロフェニル)ナフト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-dichlorophenyl)naphtho[2,3-d]oxazol-2-amine、FCCS-17065-B)の製造
【0122】
【化20】
【0123】
段階1:1-(4,5-ジクロロフェニル)-3-(3-ヒドロキシナフタレン-2-イル)チオウレア(1-(3,4-dichlorophenyl)-3-(3-hydroxynaphthalen-2-yl)thiourea,FCCS-17065-B-2-1)の製造
Arガス雰囲気下で3-アミノ-2-ナフトール(3-Amino-2-naphthol)
(350mg、2.119mmol)にメタノール(anhydrous MeOH)(7mL)とクロ
ロホルム(chloroform,CHCl3)(2mL)を加えて5分間常温で撹拌後、3,4-
ジクロロフェニルイソチオシアネート(3,4-dichlorophenyl isothiocyanate)(0.38mL、2.638mmol)をゆっくり滴加し、13時間常温で撹拌させる。TLC(thin layer chromatography)で確認して、出発物質が全部消えることを確認し、減圧して、溶媒を除去後、ジクロロメタン(dichl
oromethane)(8mL)を加えて、5分間撹拌後、溶けない固体をフィルターして
、1-(4,5-ジクロロフェニル)-3-(3-ヒドロキシナフタレン-2-イル)チオウレア(1
-(3,4-dichlorophenyl)-3-(3-hydroxynaphthalen-2-yl)thiourea,FCCS-17065-B-2-1)、792mg(white so
lid、99%)を得た。
【0124】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6);δ10.48(s、1H)、10.34(s、1H)、9.57(s、1H)、8.59(s、1H)、8.05(d、1H、J=2.0Hz)、7.73(d、1H、J=8.0Hz)、7.67(d、1H、J=7.6Hz)、7.60(d、1H、J=8.4Hz)、7.52(dd、1H、J=8.6、2.2Hz)、7.35(t、1H、J=7.2Hz)、7.27(t、1H、J=7.6Hz)、7.24(s、1H)。
【0125】
段階2:N-(3,4-ジクロロフェニル)ナフト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン(N
-(3,4-dichlorophenyl)naphtho[2,3-d]oxazol-2-
amine、FCCS-17065-B)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階1で得られたFCCS-17065-B-2-1(400mg、1.101
mmol)と過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(391m
g、5.505mmol)を入れ、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(42mL)を加えて常温で14時間撹拌する。TLC(thin layer chromatography)で確認して、出発物質が全部消えることを確認後、crudeにsilic
aを入れて吸着させ、減圧する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(S
ilica-gel Flash Column Chromatography)(20%
EtOAc/hexane、R=0.5)を行うことによって、目的化合物N-(3,4-ジクロロフェニル)ナフト[2,3-d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-dichlorophenyl)naphtho[2,3-d]oxazol-2-amine、FCCS-17065-B)、236mg(white solid、65%)を得た。
【0126】
1H NMR(400MHz、DMSO-d6);δ11.22(s、1H)、8.20(d、1H、J=2.0Hz)、7.98-7.95(m、4 H)、7.72(dd、1H、J=8.8,2.4Hz)、7.66(d、1H、J=8.4Hz)、7.47-7.41(m、2H)。
【0127】
<実施例9>N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-difluorophenyl)-5-methylbenzo[d
]oxazol-2-amine、FCCS-17065-C)の製造
【0128】
【化21】
【0129】
段階1:1-(3,4-ジフルオロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)チオウレア(1-(3,4-difluorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-met
hylphenyl)thiourea、FCCS-17065-C-2-1)の製造
Arガス雰囲気下で2-アミノ-p-クレゾール(2-Amino-p-cresol)(300mg、2.436mmol)にメタノール(anhydrous MeOH)(8mL)を加えて
溶かした後、3,4-ジフルオロフェニルイソチオシアネート(3,4-difluoroph
enyl isothiocyanate)(0.37mL、2.923mmol)をゆっくり滴加し、13時間常温で撹拌させる。TLC(thin layer chromatograp
hy)で確認して、出発物質が全部消えることを確認し、減圧して溶媒を除去後、cru
deにsilicaを入れて吸着させ、シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Silica-gel Flash Column Chromatography)(30% EtOAc/hexane、R=0.4)を行うことによって、1-(3,4-ジフルオロフェニル)-3-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)チオウレア(1-(3,4-difluorophenyl)-3-(2-hydroxy-5-methylphenyl)thiourea、FCCS-17065-C-2-1)、710mg(white foamy solid、99%)を得た。
【0130】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ7.57-7.52(m、1H)、7.40(s、1H)、7.25
-7.13(m、2H)、6.91(dd、1H、J=8.0、1.6Hz)、6.79(d、1H、J=8.0Hz)、2.25(s、3H)。
【0131】
段階2:N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-difluorophenyl)-5-methylbenzo[d]o
xazol-2-amine、FCCS-17065-C)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階1で得られたFCCS-17065-C-2-1(400mg、1.359
mmol)と過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(483m
g、6.795mmol)を入れ、アセトニトリル(acetonitrile,MeCN)、M
eCN)(52mL)を加えて、常温で14時間撹拌する。TLC(thin layer chromatography)で確認して、出発物質が全部消えることを確認後、crud
eにsilicaを入れて吸着させ、減圧する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Silica-gel Flash Column Chromatogr
aphy)(20% EtOAc/hexane、R=0.45)を行うことによって、目的化
合物N-(3,4-ジフルオロフェニル)-5-メチルベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-difluorophenyl)-5-methylbenzo[d]oxazol-2-amine、FCCS-17065-C)、224mg(white solid、63%)を得た。
【0132】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ=7.83-7.78(m、1H)、7.33-7.29(m、1H)、7.27-7.20(m、3H)、6.97-6.95(m、1H)、2.41(s、3H)。
【0133】
<実施例10>N-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(
N-(3,4-difluorophenyl)benzo[d]oxazol-2-amine、FCCS-19025)の合成
【0134】
【化22】
【0135】
段階1:1-(3,4-ジフルオロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-difluorophenyl)-3-(2-hydroxyphenyl)thiourea、FCCS-19025-2-1)の製造
Arガス雰囲気下で2-アミノフェノール(2-Aminophenol)(150mg、1.37mmol)をメタノール(methanol)(8mL)に溶かした後、3,4-ジフルオロフェ
ニルイソチオシアネート(3,4-difluorophenyl isothiocyanate)(224μl、1.65mmol)をゆっくり加えた後、室温で13時間撹拌した。TLC(
thin layer chromatography)で反応終結を確認した後、減圧
下でメタノール(Methanol)を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Si
lica-gel column chromatrography)(20% Acetone/n-hexane)で精製して、1-(3,4-ジフルオロフェニル)-3-(2-ヒドロキシフェニル)チオウレア(1-(3,4-difluorophenyl)-3-(2-hydro
xyphenyl)thiourea、FCCS-19025-2-1)を淡黄色の固体(354mg
、92%)として得た。
【0136】
1H-NMR(400MHz、MeOH-d4)δ7.62(d、J=8.0Hz、1H)、7.55(ddd,J=2.4Hz、1H)、7.25-7.13(m、2H)、7.11-7.05(m、1H)、6.92-6.82(m、2H);ESI-(+)281.3[M+H]
【0137】
段階2:N-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-difluorophenyl)benzo[d]oxazol-2-amine、FCCS-19025)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階1で得られたFCCS-19025-2-1(224mg、0.80mmol)、過酸化カリウム(Potassium superoxide,KO2)(284mg、4.00mmol)をアセトニトリル(acetonitrile,MeCN)(25mL)に溶かした
後、常温で14時間撹拌した。TLC(thin layer chromatograp
hy)で反応終結を確認した後、減圧下でアセトニトリル(acetonitrile,M
eCN)を除去した。反応混合物をクロマトグラフィー(Silica-gel column chromatrography)(10~20% Ethyl acetate/n-hexane)で精製して、目的化合物N-(3,4-ジフルオロフェニル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-アミン(N-(3,4-difluorophenyl)benzo[d]ox
azol-2-amine、FCCS-19025)を白色の固体(160mg、82%)として得た。
【0138】
1H-NMR(400MHz、MeOH-d4)δ7.82(ddd,J=2.8Hz、1H)、7.42(d
、J=7.6Hz、1H)、7.36(d、J=8.0Hz、1H)、7.34-7.29(m、1H)、7.28-7.18(m、2H)、7.16-7.10(m、1H);ESI-(+)247.2[M+H]
【0139】
下記表1に実施例1~実施例10の化学構造式を示した。
【0140】
【表1】
【0141】
<比較例1>
N-(2-クロロフェニル)-1H-インドール-3-カルボキサミド(N-(2-chlorophenyl)-1H-indole-3-carboxamide)を比較例1として使
用した。
【0142】
【化23】
【0143】
<比較例2>
2’-クロロアセトアニリド(2’-Chloroacetanilide,C0621)を購
入して、比較例2として使用した。
【0144】
【化24】
【0145】
<比較例3>
N-メチル-1H-インドール-3-カルボキサミド(N-methyl-1H-indole-3-carboxamide,FCCS-16030)を購入して、比較例3として使用し
た。
【0146】
【化25】
【0147】
<比較例4>N-(2-((クロロフェニル)アミノ)-2-オキソエチル)-1H-インドール-3-カルボキサミド(N-(2-((2-chlorophenyl)amino)-2-oxoethyl)-1H-indole-3-carboxamide,FCCS-16031)の製造
【0148】
【化26】
【0149】
段階1:メチル2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)アセテート(methyl 2-(1H-indole-3-carboxamido)acetate,CCS-16031-3
-1)の製造
Arガス雰囲気下でインドール-3-カルボン酸(Indole-3-carboxyl
ic acid)(600mg、3.72mmol)とグリシンメチルエステル(glycine
methyl ester)(467mg、3.72mmol)をクロロホルム(Chlorofo
rm)(11mL)に溶かし、氷浴(ice-bath)で冷却(cooling)する。トリエ
チルアミン(Triethylamine)(1.04mL、7.446mmol)とN,N-ジイソプロピルカルボジイミド(N,N-diisopropylcarbodiimide)をさ
らに入れた後、0℃で14時間撹拌する。10% NaHCO3水溶液で洗った後、5%HCl
水溶液で洗って、無水Na2SO4 Padに通過させて、残った水分を除去した後、減圧下で溶媒を除去する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Silica
-gel Flash Column Chromatography)(70% ethyl aceate/n-hexane)を行うことによって、メチル2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)アセテート(methyl 2-(1H-indole-3-carb
oxamido)acetate,CCS-16031-3-1)430mg(white solid、50%)をmixture状態で得た。さらなる精製することなく、次のステップに進め
た。ESI-MS:231.2[M-H]
【0150】
段階2:2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)酢酸(2-(1H-indole-3-
carboxamido)acetic acid、FCCS-16031-3-2)の製造
前記段階1で得られた2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)アセテート(meth
yl 2-(1H-indole-3-carboxamido)acetate,CCS-16031-3-1)(220mg、0.947mmol)をテトラヒドロフラン(tetrahydrofu
ran)(6mL)に溶かし、そこへ水酸化リチウム水和物(LiOH monohydra
te)(131mg、3.126mmol)を水(2mL)に溶かした溶液を入れ、常温で1時間撹拌す
る。1.0N HCl水溶液を加えてpH2に調整後、エチルアセテート(ethyl ac
etate)で抽出した。無水Na2SO4 Padに通過させて、残った水分を除去した
後、減圧下で溶媒を除去する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Si
lica-gel Flash Column Chromatography)(10% methanol/dichloromehtane)を行うことによって、2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)酢酸(2-(1H-indole-3-carboxamid
o)acetic acid、FCCS-16031-3-2)147mg(yellow foam
y solid、71%)を得た。
【0151】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ8.10-8.08(m、1H)、7.92(s、1H)、7.43(dt、J=8.0、1.2Hz、1H)、7.17(quint d、J=7.2、1.6Hz、2H)、4.12(s、2H)。
【0152】
段階3:N-(2-((2-クロロフェニル)アミノ)-2-オキソエチル)-1H-インドール
-3-カルボキサミド(N-(2-((2-chlorophenyl)amino)-2-oxoethyl)-1H-indole-3-carboxamide,FCCS-16031)の製造
Arガス雰囲気下で前記段階2で得られた2-(1H-インドール-3-カルボキサミド)酢酸(2-(1H-indole-3-carboxamido)acetic acid、FCCS-16031-3-2)(200mg、0.917mmol)とTSTU(N,N,N’,N’-Tetramethyl-O-(N-succinimidyl)uronium tetrafluoroborate)(290mg、0.962mmol)をジメチルホルムアミド(N,N-dim
ethylformamide)(4mL、anhydorus)に溶かし、N,N-ジイソ
メチルプロピルエチルアミン(DIEA)(0.4mL、2.293mmol)を加えた後、常温で3
時間撹拌する。2-クロロアニリン(2-chloroaniline)(0.29mL、2.751mmol)とN,N-ジイソメチルプロピルエチルアミン(DIEA)(0.64mL、3.668mmol)を入れ、60℃で4時間加熱する。減圧下で溶媒を除去後、ジクロロメタン(dichl
oromethane)とNH4Cl飽和水溶液を加えて抽出をして、有機層を得、無水N
2SO4 Padに通過させて、残った水分を除去した後、減圧下で溶媒を除去する。シリカ-ゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(Silica-gel Flash
Column Chromatography)(70% ethyl acetate/n-hexane)を行うことによって、目的化合物N-(2-((2-クロロフェニル)アミノ)-2-オキソエチル)-1H-インドール-3-カルボキサミド(N-(2-((2-chlorophenyl)amino)-2-oxoethyl)-1H-indole-3-carboxamide、FCCS-16031)20mg(white solid、6.6%)を得た。
【0153】
1H NMR(400MHz、CD3OD);δ8.15-8.12(m、1H)、8.04(dd,J=8.0、1.2Hz、1H)、7.97(s、1H)、7.46-7.41(m、2H)、7.33-7.28(m、1H)、7.23-7.12(m、3H)、4.26(s、2H)。
【0154】
<実験例1-1>ルシフェラーゼ(Luciferase)発現実験(比較例1~4)
ルシフェラーゼ活性評価を通したklotho遺伝子の発現有無を評価するために、ヒト腎臓の近位尿細管(proximal tubule)の上皮(epithelium)細胞であるRPTEC(human renal proximal tubule epith
elial cell,ATCC CRL-4031)細胞を米国のLonza社から購入して使用した。
【0155】
培養のためには、同じLonza社製のRenal Epithelial Growth Medium(REGMTM)Bulletkitを使用し、37℃、5%CO2条件で培養した。ルシフェラーゼ発現のためのプラスミドは、ヒトのKL(klotho)遺伝子のプロモーター部位が蛍ルシフェラーゼ(firefly luciferase)遺伝子発現を調節するように配置されたものを使用した。
【0156】
プラスミドは、Roche社のX-treme GENE transfection
reagentを使用して細胞内に取り入れた。細胞で発現したルシフェラーゼ活性は、Promega社製のDual-Luciferase reporter assay systemを利用して測定した。各化合物を表示された濃度ずつ培養された細胞に24時間処理した後に、ルシフェラーゼ活性を測定した。ルシフェラーゼの活性が高い場合は、klotho遺伝子の発現が増加できることを間接的に示す。
【0157】
比較例1~比較例4をRPTEC細胞に5μMの濃度で処理し、ヒトのklotho遺伝子の開
始部位から1.7kbpの前までのプロモーターを含むレポータ遺伝子またはヒトのklotho
遺伝子の開始部位から240bpの前までのプロモーターを含むレポータ遺伝子を利用して
レポータ遺伝子の発現を確認した。
【0158】
その結果、図1に示されたように、比較例1の化合物のルシフェラーゼ活性が最も高いことを確認した。
<実験例1-2>ルシフェラーゼ発現実験(実施例1~6)
前記実験例1-1の結果を基盤として、比較例1と類似した化学構造を有する実施例1~6
を合成し、本実験例1-2を実施した。
【0159】
ヒト腎臓の近位尿細管(proximal tubule)の上皮(epitheliu
m)細胞であるRPTECに実施例1~6をそれぞれ0.5,1および5μMの濃度で処理し、比
較例1は、5μMの濃度で処理して、ヒトのklotho遺伝子の-2.1kbアップストリームま
で含まれたプロモーターを含むレポータ遺伝子(pHKP-luc)を利用してレポータ遺伝子の発現を確認した結果を図2および図3に示した。
【0160】
図2に示されたように、実施例1、実施例2の化合物のレポータ遺伝子の発現が比較例1と
類似したレベルであることを確認した。
図3に示されたように、比較例1および実施例1~3をRPTEC細胞に5μMの濃度で処
理し、ヒトのklotho遺伝子の-2.1kbアップストリームまで含まれたプロモーターを含
むレポータ遺伝子(pHKP-luc)を利用してレポータ遺伝子の発現を確認した結果、実施例2の化合物が比較例1と類似したレベルであることを確認した。
【0161】
<実験例2>Real-time PCR実験を利用したklotho(KL)遺伝子発現量の
定量評価
比較例1および実施例1~2の化合物を6時間処理したヒト腎臓の近位尿細管(proxi
mal tubule)の上皮(epithelium)細胞であるRPTEC細胞からR
NA抽出のために、Qiagen社のRNeasy kitを利用した。抽出されたRNAは、Thermo社のSuperscript II kitを利用してcDNAを製造し、KL(klotho)遺伝子特異的キットは、Appliedbiosystem社のTaqman Gene Expression assaysを利用して実施した結果を図4に示した。
【0162】
図4に示されたように、実施例2の化合物が比較例1と類似したレベルであることを確認
した。
本実験例2の結果をベースとして、実施例2化合物と化学構造が類似した実施例7~10化
合物を合成して、次の実験例3に使用した。
【0163】
<実験例3>一般PCR実験を利用したklotho(KL)遺伝子発現量の定量評価
実施例7~10を2.5μMずつ6時間ヒト腎臓の近位尿細管(proximal tubule)の上皮(epithelium)細胞であるRPTEC細胞に処理後、細胞からRNA
を抽出し、抽出されたRNAは、Thermo社のSuperscript II kitを利用してcDNAを製造した後、一般PCRを実施した。
【0164】
実験に使用されたプライマーの情報は、下記の通りである。
KL-F GATAGAGAAAAATGGCTTCCCTCC(配列番号1)
KL-R GGTCGGTAAACTGAGACAGAGTGG(配列番号2)
GAPDH-F TGACAACTTTGGTATCGTGGAAGG(配列番号3)
GAPDH-R AGGGATGATGTTCTGGAGAGCC(配列番号4)
PCRで増幅されたDNAは、アガロースゲルで電気泳動後、エチジウムブロマイド(
Ethidium Bromide)染色を通じて確認し、バンド内のDNA量は、Sp
eedyQuantプログラムを利用して定量比較して、図5に示した。
【0165】
図5に示されたように、比較例1より実施例8~10のklotho(KL)遺伝子発現量がさらに
高いことが確認され、特に実施例10は、比較例1と比べて約10倍向上することが示された
【0166】
<実験例4>毒性テスト
培養されたHK2(Human kidney-2)細胞に比較例1、実施例2および実施例9~実施例10を25μMまたは12.5μMの濃度で処理し、24時間後にEZ-Cytox k
itを利用して細胞毒性を測定した。EZ-Cytoxは、生きた細胞のミトコンドリア酵素によって450nmで吸光度を有するホルマザン(formazan)を生成するので、
生きた細胞は、450nmでさらに高い吸光度を示す。処理した化合物の量と同じ体積のDMSOを処理した細胞の毒性を1と見なすとき、化合物サンプル処理によってどれくらい細胞が毒性に減少したかを確認し、その結果を図6に示した。
【0167】
図6に示されたように、12.5μMまたは25μMの濃度で処理した場合、全部実施例10の
化合物が最も少ない毒性を示し、比較例1と比べて毒性が20%以上改善されたことを確認
した。
【0168】
<実験例5>KS1化合物(実施例10)による神経細胞老化抑制効果分析
1)細胞培養と化合物処理
Mouse hippocampus由来の神経細胞であるHT22細胞を、10%FBSを添付したDMEM培養用培地で培養した。細胞培養は37℃のインキュベーターで5%CO2条件で培養し、細胞が培
養ディッシュの表面を80%程度飽和するように成長したら0.05%トリプシンで処理して、新しい培養ディッシュに移して継代培養した。化合物は、最終濃度が2.5μMに維持され
るように継代培養のたびに培地に添加した。陰性対照のために溶媒であるDMSOのみを入れた細胞を使用し、老化が進行しなかった対照群として3回継代培養した細胞(#5)を用いた。老化を誘導した細胞は全て20回継代培養した細胞(#25)を用いた。
【0169】
2)老化程度の確認
細胞の老化の程度を確認するために、Cell Signaling Technology社の「Senescenceβ-galactosidase staining kit」を使用した。実験当日に細胞に染色液を入れ、8時間後に
染色された細胞を確認した。 200倍顕微鏡下で観察された細胞全体の数の間に染色された細胞の数を同定して比率で示し、1サンプル当たり異なる3つの場所で染色された細胞数を数えて平均した。細胞の老化が進行するほどβ-ガラクトシダーゼ酵素の発現が増加する
ため、染色された細胞は、染色されていない細胞より老化が多く進行した細胞と判断することができる。
【0170】
3)実験結果
実験結果20回継代培養した細胞は、5回継代培養した細胞に比べて老化の程度が増加し
たことが分かった。顕微鏡下で200倍で観察したとき、20回継代培養した細胞は細胞の50
%程度が全て染色されたが、5回継代培養した細胞は5%の細胞のみが染色された。同様に20回継代培養したが、培地にKS1化合物(実施例10)を培地に入れて培養した細胞群で染色
の程度が減少し、細胞中40%程度が染色された。すなわち、KS1化合物(実施例10)が存在
する状態で培養された細胞は、20回の継代培養期間中、DMSOを入れた培地で育った細胞よりも老化の程度が20%程度減少したことが示された(図7)。
【0171】
<実験例6>KS1化合物(実施例10)による神経細胞炎症抑制効果分析
1)細胞培養と化合物処理
Mouse hippocampus由来の神経細胞であるHT22細胞を、10%FBSを添付したDMEM培養用培地で培養した。細胞培養は、37℃のインキュベーターで5%CO2条件で培養し、細胞が
培養ディッシュの表面を80%程度飽和するように成長したら、0.05%トリプシンで処理して新しい培養ディッシュに移して継代培養した。化合物は、最終濃度が2.5μMに維持さ
れるように継代培養のたびに培地に添加した。陰性対照のために溶媒であるDMSOのみを入れた細胞を使用し、老化が進行しなかった対照群として3回継代培養した細胞(#5)を用いた。老化を誘導した細胞は全て20回継代培養した細胞(#25)を用いた。
【0172】
2) 炎症誘発実験
160μl培地に細胞を10,000個となるように96ウェルプレートの各ウェルに分注し、37℃培養器で5%CO2条件で24時間培養し、このとき化合物を最終濃度2.5μMとなるよう
に培養培地に入れて一緒に培養した。 培養後、Cell application社のLPS(lipopolysaccharide)を1μg/mL濃度で添加し、24時間さらに培養した。その後、同社製品であるCyto X cell viability assay kitを各ウェルに20μlずつ入れてから1~4時間培養した。その後
、色の変化を450nmで測定した。
【0173】
3)実験結果
実験結果、20回継代培養した細胞は、5回継代培養した細胞に比べてLPS処理による
細胞の毒性が増加したことが示された。吸光度の変化を吸光光度計(spectrophotometer)
で測定したとき、DMSOを含めて培養された20回継代培養した細胞は80%程度がLPS毒性に
より死んだが、5回継代培養した細胞は50%の細胞のみが死んでいるようで、比較的有毒
な細胞死が老化した細胞でより多く発生した。 KS1化合物(実施例10)を添加した培地で培養した細胞の場合、20回継代培養した細胞ではLPS処理により死ぬ細胞の割合が60%であり、5回継代培養した細胞では45%の細胞が死ぬことが分かった。すなわち、KS1化合物(実施例10)が存在した状態で継代培養された細胞においてLPSによる細胞毒性の減少が現れ、より多くの細胞が生存していることが確認され、これはKS1化合物(実施例10)が神
経細胞の炎症抑制に有効であることを示す(図8)。
【0174】
<実験例7>認知機能障害動物モデルにおけるKS1化合物の治療効果確認実験
1)動物モデル及びKS1化合物(実施例10)投与方法
この実験では、4ヶ月齢または6ヶ月齢の5xFADマウスを使用した。 5xFADマウスは
、βアミロイド(Aβ、βアミロイド)を過生成するように遺伝的に変異したアルツハイマーマウスであり、これを維持及び販売しているKIST研究動物資源センターから提供されて使用された。正常対照(WT)は、βアミロイド(Aβ、βアミロイド)を過生成するように遺伝的に変異が生じていない正常マウスをKIST研究動物資源センターから提供されて用いた。実験動物は実験前に1週間の順化過程を経た。マウスは実験中に温度22±2℃、湿度は40~60%に維持された飼育室で自由食餌で飼育され、明暗周期は12時間間隔で調節された。すべての動物実験は、韓国科学技術研究院(KIST)動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)の動物実験運営規定に準拠して行われた。
【0175】
動物モデルマウスおよび正常対照マウスは、4週間または12週間の間、vehicle(5% DMSO
+ 65% PEG400 + 30% Saline)、またはKS1(実施例10)を溶解したvehicleを経口(po)で毎
日10mg/kgの度で投与された。各実験群当たりのマウスを3匹ずつ使用した。投与期間中に毎週体重を測定し、投与終了後認知機能について実験を進行し、 sacrificeした後臓器を摘出し、変化状態を生化学的方法により確認した。
【0176】
2) 認知機能確認実験方法
2-1) 新しい物体探索試験(novel object recognition test, NOR)
新物質探索試験(Novel object recognition test)は既存の方法を変形したもので、適
応期間、探索期間及び新物質認識期間で構成されている。実験の前日に30分間マウスを開場に置き、適応させた後、2つの同一の物体を一定の間隔で設置した。実験動物を10分間
自由に探索するようにしながら、Ethovisionで各物体に留まる時間を測定し、その後ケージに1日間戻した。そして翌日設置した物体の一つを新物質に置き換え、実験動物の動き
を10分間測定した。物体の嗜好度(recognition index(%))は、全探索した時間のうち、各物体に留まる時間を百分率に換算した。
【0177】
2-2) 手動回避(passive avoidance)実験
手動回避実験機構は2つの区域に分かれており、それぞれ光が入ってくる区域と暗い区
域であり、底は金網で構成されている。訓練中、実験動物は明るいゾーンに置かれ、実験動物が暗いゾーンに移動するとすぐにドアが閉じ、0.45 mAの電流が2秒間流れるフットショック(foot shock)を受ける。訓練を受けてから一日過ぎてテストを実施するのに、実験動物が明るいゾーンに置かれ、再び暗いゾーンに移動するまでの時間を測定した(最大時
間は600秒と定めた)。この手動回避実験により、空間学習と記憶力(spatial learning and memory)を評価した。
【0178】
2-3)統計処理
すべてのデータは平均(SEM)で示され、各グループ間の違いは、ワンウェイANOVAとTuke
y's multiple comparisons testを用いて確認された。統計的に差があると判定される場
合、p<0.05*、p<0.01**、p<0.001***と表記した。
【0179】
3)実験結果
3-1) 認知機能障害タンパク質発現の減少
5xFAD認知機能障害動物モデルと正常対照動物モデルの対照群(CTL)およびKS1の1ヶ月および3ヶ月投与群から分離された脳組織切片の各部位(HPC:海馬;CTX:新
皮質)で測定されたホスホタウ(phospho-Tau)蛍光レベルを免疫蛍光法(Immunohistochemistry)で調べた。その結果、vehicleを投与されたマウスと比較してKS1(実施例10)を投与されたマウスでは、phospho-Tauタンパク質の発現が統計的に有意なレベルに減少したこと
が確認できた。海馬(HIPCAMPUS、HPC)部位では3ヶ月投与マウスでのみタン
パク質の減少が示され、一次体性感覚皮質(primary somatosensory cortex、CTX)部位では1ヶ月及び3ヶ月投与マウスの両方でタンパク質の発現減少が認められた(図9)。
【0180】
3-2)神経細胞マーカーNeuN発現増加
5xFAD認知機能障害動物モデルと正常対照群動物モデルの対照群(CTL)およびKS1 1ヶ月
および3ヶ月投与群から分離された脳組織切片の各部位(CTX:新皮質、CA:アンモン角、DG:歯床会)で測定したNeuNの蛍光レベルを免疫蛍光法(Immunohistochemistry)で調べた。その結果、vehicleを投与されたマウスと比較してKS1(実施例10)を投与されたマウスでは、NeuN神経マーカータンパク質の発現が統計的に有意なレベルまで増加したことが確認できた(図10)。 一次体性感覚皮質(primary somatosensory cortex, CTX)部位と歯状回(Dentate Gyrus, DG)部位ではKS1による有意なNeuNの増加を確認できず、コルヌ・アンモニス(Cornu Ammonis, CA)部位ではKS1投与群でNeuNの増加が確認された。
【0181】
3-3) 新規物体探索試験(Novel Object Recognition Test, NOR)
NOR法でマウスの行動を探索したところ、KS1を投与された認知機能障害(5xFAD)マウスでは、vehicleを投与されたマウスより物体探索能力が統計的に有意に高くなった
ことを確認した(図11)。
【0182】
3-4) 手動回避(Passive Avoidance)実験
手動回避実験で空間学習と記憶力を実験した結果、認知機能障害(5xFAD)マウスは、正
常なマウスに比べて著しく低下したことを確認できたが、KS1を4週間投与されたマウスは正常マウスと同程度の能力を保持していることを確認した(図12)。
【0183】
これまで、本発明に関してその好ましい実施形態を中心に見てきた。本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で変形された形態で具現され得ることが理解されるであろう。したがって、開示された実施形態は限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮されるべきである。本発明の範囲は前述の説明ではなく、特に特許請求の範囲に示されており、それと同等の範囲内にある全ての相違点は本発明に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
2024512818000001.app
【国際調査報告】