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特表2024-512822人間の胴部を支援するためのデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】人間の胴部を支援するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20240312BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561206
(86)(22)【出願日】2022-04-05
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 SG2022050192
(87)【国際公開番号】W WO2022216229
(87)【国際公開日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】10202103448P
(32)【優先日】2021-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】202111368770.8
(32)【優先日】2021-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュオ・ディン
(72)【発明者】
【氏名】ハオヨン・ユ
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707CX05
3C707HS27
3C707HT04
3C707HT36
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK16
3C707XK24
3C707XK42
(57)【要約】
本願は、人間の胴部を支援するデバイスに関し、人間の胴部を支援するためのデバイスを提供する。このデバイスは、背部ストラップ(2)を介してユーザの上方背部に結合された胴部リンク(1)と、脚部ストラップ(4)を介してユーザの左右の大腿部にそれぞれ結合された2つの大腿部リンク(3)と、ユーザの左右の股関節にそれぞれ位置合わせして配置され、胴部リンク(1)及び2つの大腿部リンク(3)を回転可能に結合するように構成された、2つの股関節ヒンジ(5)と、ボーデンケーブル(7)を介して2つの股関節ヒンジ(5)に結合され、ユーザに対するモーメント負荷を軽減するために支援トルクを発生させるように構成された、トルク発生器(6)と備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間の胴部を支援するためのデバイスであって、
背部ストラップ(2)を介してユーザの上方背部に結合された胴部リンク(1)と、
脚部ストラップ(4)を介して前記ユーザの左右の大腿部にそれぞれ結合された2つの大腿部リンク(3)と、
前記ユーザの左右の股関節にそれぞれ位置合わせして配置され、前記胴部リンク(1)及び2つの前記大腿部リンク(3)を回転可能に結合するように構成された、2つの股関節ヒンジ(5)と、
ボーデンケーブル(7)を介して2つの前記股関節ヒンジ(5)に結合され、前記ユーザに対するモーメント負荷を軽減するために支援トルクを発生させるように構成された、トルク発生器(6)と
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記胴部リンク(1)は、
2つの前記股関節ヒンジ(5)にそれぞれ回転可能に結合された2つの臀部リンク(101)と、
2つの前記臀部リンク(101)にそれぞれ固定され、前記ボーデンケーブル(7)に連結するように構成された、2つのケーブルコネクタ(102)と、
上方臀部ヒンジ(103)により2つの前記臀部リンク(101)にそれぞれ回転可能に結合された2つの上方臀部リンク(104)と、
2つの前記上方臀部リンク(104)にそれぞれ連結され、腰部コネクタ(106)に固定された、2つの腰部リンク(105)と、
背部リンクであって、前記背部リンクの一端部が、前記腰部コネクタ(106)に固定され、前記背部リンクの他端部が、上方背部プレートに回転可能に結合され、前記上方背部プレートは、前記ユーザの上方背部の姿勢の変化に倣うように構成される、背部リンクと
を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記股関節ヒンジ(5)がそれぞれ、
前記大腿部リンク(3)に固定され、前記臀部リンク(101)に回転可能に結合された、プーリー(501)と、
前記プーリー(501)に回転可能に結合され、前記背部ストラップ(2)に連結されたヒンジ支持部(502)と、
前記プーリー(501)の軸方向位置をロックするように構成された2つの端部キャップ(503)と
を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記ボーデンケーブル(7)の一端部が、前記プーリー(501)中に差し込まれ、他端部が、前記トルク発生器(6)に連結される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記トルク発生器(6)は、腰部位置に装着され、前記ボーデンケーブル(7)により2つの前記股関節ヒンジ(5)を駆動する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記トルク発生器(6)は、
支持プレート(601)と、
前記支持プレート(601)の2つの端部にそれぞれ固定された2つのシャフトベース(602A)及び(602B)と、
2つの前記シャフトベース(602A)及び(602B)の間で可動である2つの外方摺動プレート(604A)及び(604B)と、
2つの前記外方摺動プレート(604A)及び(604B)の間で可動である2つの内方摺動プレート(605A)及び(605B)と、
前記内方摺動プレート(605A)及び(605B)の間に装着された圧縮バネ(606)と
を備え、
前記ボーデンケーブル(608A)の一端部が、前記外方摺動プレート(604B)に固定され、他端部が、一方の前記股関節ヒンジ(5)に連結され、前記ボーデンケーブル(608B)の一端部が、前記外方摺動プレート(604A)に固定され、他端部が、他方の前記股関節ヒンジ(5)に連結される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記トルク発生器(6)は、
相互に平行に配置され、前記シャフトベース(602A)及び(602B)により支持された、2つのシャフト(603A)及び(603B)をさらに備え、
2つの前記外方摺動プレート(604A)及び(604B)ならびに2つの前記内方摺動プレート(605A)及び(605B)は、前記シャフト(603A)及び(603B)に連結され、前記シャフト(603A)及び(603B)に沿って平滑に移動することが可能である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記トルク発生器(6)は、
前記支持プレート(601)の中間部に固定され、前記圧縮バネ(606)を案内するようにさらに構成された、バネスリーブ(607)
をさらに備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記トルク発生器(6)は、
前記外方摺動プレート(604A)及び(604B)と前記デバイスの固定箇所との間で連結され、前記ボーデンケーブル(608A)及び(608B)に張力をかけるように構成された、弾性ロープ(610)
をさらに備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記外方摺動プレート(604A)及び(604B)は、前記ユーザが直立する場合に事前設定初期位置に位置し、前記外方摺動プレート(604A)及び(604B)の間の距離が、前記圧縮バネ(606)の初期長さよりも大きい、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
前記ユーザが、所定の角度Aまで片脚を上げたときに、前記圧縮バネ(606)は、圧縮されず、前記所定の角度Aにおいて、一方の前記外方摺動プレートが、対応する前記内方摺動プレートと接触するように前記ボーデンケーブルによって引かれる、請求項6に記載のデバイス。
【請求項12】
前記ユーザが腰を曲げてまたはスクワット状態になって前記胴部と前記大腿部との間の角度が、A/2以下だけ縮小された場合に、前記圧縮バネ(606)は、圧縮せず、前記ユーザが腰を曲げてまたはスクワット状態になって前記胴部と前記大腿部との間の角度がA/2超だけ縮小された場合に、前記圧縮バネ(606)は、圧縮され、前記ユーザの腰部関節のモーメント負荷を軽減するように前記股関節ヒンジ(5)に支援トルクを発生させる、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記トルク発生器(6)は、前記胴部リンク(1)に設置され、前記ボーデンケーブル(7)を介して両方の前記股関節ヒンジ(5)を駆動し、
前記デバイスは、感知制御ボックス(8)をさらに備え、
前記感知制御ボックス(8)は、前記胴部リンク(1)にさらに設置され、前記トルク発生器(6)に制御信号及びエネルギーを供給する、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記トルク発生器(6)は、
ベースプレート(603)に固定されたモータ(601)及びボールネジ(602)を備える原動機であって、前記ベースプレート(603)は、スライドレール(605)を備える、原動機と、
前記ボールネジ(602)に連結され、前記原動機により前記スライドレール(605)に沿って可動である、スライダ(604)と
を備え、
前記ボーデンケーブル(7)は、前記スライダ(604)と前記股関節ヒンジ(5)との間に連結されて、前記胴部リンク(1)と前記大腿部リンク(3)との間に抵抗モーメントを与える、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記ボーデンケーブル(7)は、送出ボーデンケーブル(701)及び帰還ボーデンケーブル(702)からなり、
前記トルク発生器(6)は、2つのローラ(606A)及び(606B)をさらに備え、2つの前記ローラ(606A)及び(606B)のうちの一方が、前記送出ボーデンケーブル(701)のためのものであり、2つの前記ローラ(606A)及び(606B)のうちの他方が、前記帰還ボーデンケーブル(702)のためのものであり、2つの前記ローラ(606A)及び(606B)は、前記スライダ(604)に設置され、
前記送出ボーデンケーブル(701)は、前記ローラ(606A)に巻き付けられ、前記送出ボーデンケーブル(701)の2つの端部が、2つの前記股関節ヒンジ(5)に連結され、前記帰還ボーデンケーブル(702)は、他方の前記ローラ(606B)に巻き付けられ、前記帰還ボーデンケーブル(702)の2つの端部が、それぞれ2つの前記股関節ヒンジ(5)にやはり連結される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記ボーデンケーブル(7)は、送出ボーデンケーブル(701)を備え、
前記トルク発生器(6)は、前記送出ボーデンケーブル(701)のためのローラ(606A)をさらに備え、
前記ローラ(606A)は、前記スライダ(604)に設置され、
前記送出ボーデンケーブル(701)は、前記ローラ(606A)に巻き付けられ、前記送出ボーデンケーブル(701)の両端部が、2つの前記股関節ヒンジ(5)にそれぞれ連結され、
前記モータ(601)は、前記スライダ(604)を後方に移動し、前記送出ボーデンケーブル(701)を引く、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記トルク発生器(6)は、
ベースプレート(603)と、
前記ベースプレート(603)に固定されたモータ(601)を備える原動機と、
前記ベースプレート(603)に固定されたスライドレール(605)と、
前記モータ(601)により前記スライドレール(605)に沿って可動であるスライダ(604)と、
前記モータ(601)に結合されたプライムプーリー(614)と
を備え、
前記モータ(601)は、前記プライムプーリー(614)を駆動して前記ボーデンケーブル(7)を引くことにより前記スライダ(604)を駆動して後方に移動させる、請求項13に記載のデバイス。
【請求項18】
前記プライムプーリー(614)は、内方リング(614-1)及び外方リング(614-2)を備え、
複数の弾性要素は、前記内方リング(614-1)と前記外方リング(614-2)との間に配置され、前記内方リング(614-1)と前記外方リング(614-2)との間の角度シフトを測定するように構成される、請求項17に記載のデバイス。
【請求項19】
前記原動機は、油圧シリンダまたは空気圧シリンダを備える、請求項14または17に記載のデバイス。
【請求項20】
前記感知制御ボックス(8)は、前記ユーザの運動状況と前記ボーデンケーブル(7)に対する力とをモニタリングして前記トルク発生器(6)に制御信号を送信することにより、作業状況において前記ボーデンケーブル(7)に張力をかけ、前記ボーデンケーブル(7)に対する前記力が非作業状況においてゼロになるように確保するように構成される、請求項13に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、人間の胴部を支援するデバイスに関し、より詳細には、ユーザにより着用され、腰部関節に対するモーメント負荷を軽減し、持上作業の最中における背部に対する圧縮負荷を軽減する可搬式デバイスに関する。このデバイスは、例えば工場、倉庫、病院、空港、建設、配達、及び日常生活支援等の多数の状況において適用することができる。
【背景技術】
【0002】
米国では、作業関連筋骨格系障害(WMSD)により毎年2500億ドルのコストがかかると推定されている。背部損傷がWMSDの中でも最も主要なものであり、背部損傷からの回復には長い時間がかかる。例えば手荷物の取扱い、患者の看護、住宅建設、及び自動車の組立て等の非常に多くの作業により、背部損傷は引き起こされ得る。これらの作業において、作業員は、胴部の曲げ、荷上げまたは荷物の保持、及び荷下ろしを頻繁に行う必要があり、これにより脊椎のL5/S1エリアに大きなモーメント負荷が発生し、背部の筋疲労及び筋損傷が生じる。したがって、腰部関節に対する支援を提供し筋疲労を緩和することが可能な胴部支援デバイスに対する必要性は非常に高い。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本願は、胴部と大腿部との間に回復トルクを印加し、曲げ作業及び持上作業における背部の筋疲労を軽減する、人間の胴部を支援するためのデバイスに関する。
【0004】
一般的に、本願は、人間の胴部を支援するためのデバイスを提供する。このデバイスは、
背部ストラップを介してユーザの上方背部に結合された胴部リンクと、
脚部ストラップを介してユーザの左右の大腿部にそれぞれ結合された2つの大腿部リンクと、
ユーザの左右の股関節に位置合わせして配置され、胴部リンク及び2つの大腿部リンクを回転可能に結合するように構成された、2つの股関節ヒンジと、
ボーデンケーブル(Bowden cable)を介して2つの股関節ヒンジに結合され、ユーザに対するモーメント負荷を軽減するために支援トルクを発生させるように構成された、トルク発生器と
を備える。
【0005】
本願の一実施形態によれば、胴部リンクは、
2つの股関節ヒンジにそれぞれ回転可能に結合された2つの臀部リンクと、
2つの臀部リンクにそれぞれ固定され、ボーデンケーブルに連結するように構成された、2つのケーブルコネクタと、
上方臀部ヒンジにより2つの臀部リンクにそれぞれ回転可能に結合された2つの上方臀部リンクと、
2つの上方臀部リンクにそれぞれ連結され、腰部コネクタに固定された、2つの腰部リンクと、
背部リンクであって、背部リンクの一端部が、腰部コネクタに固定され、背部リンクの他端部が、上方背部プレートに回転可能に結合され、上方背部プレートは、ユーザの上方背部の姿勢の変化に倣うように構成される、背部リンクと
を備える。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、股関節ヒンジがそれぞれ、
大腿部リンクに固定され、臀部リンクに回転可能に結合された、プーリーと、
プーリーに回転可能に結合され、背部ストラップに連結されたヒンジ支持部と、
プーリーの軸方向位置をロックするように構成された2つの端部キャップと
を備える。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、ボーデンケーブルの一端部が、プーリー中に差し込まれ、他端部が、トルク発生器に連結される。
【0008】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、腰部位置に装着され、ボーデンケーブルにより2つの股関節ヒンジを駆動する。
【0009】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、
支持プレートと、
支持プレートの2つの端部にそれぞれ固定された2つのシャフトベースと、
2つのシャフトベースの間で可動である2つの外方摺動プレートと、
2つの外方摺動プレートの間で可動である2つの内方摺動プレートと、
これらの内方摺動プレートの間に装着された圧縮バネと
を備え、
ボーデンケーブルの一端部が、外方摺動プレートに固定され、他端部が、一方の股関節ヒンジに連結され、ボーデンケーブルの一端部が、外方摺動プレートに固定され、他端部が、他方の股関節ヒンジに連結される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、相互に平行に配置され、シャフトベースにより支持された、2つのシャフトをさらに備え、2つの外方摺動プレート及び2つの内方摺動プレートは、シャフトに連結され、シャフトに沿って平滑に移動することが可能である。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、
支持プレートの中間部に固定され、圧縮バネを案内するようにさらに構成された、バネスリーブ
をさらに備える。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、
外方摺動プレートとデバイスの固定箇所との間で連結され、ボーデンケーブルに張力をかけるように構成された、弾性ロープ
をさらに備える。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、外方摺動プレートは、ユーザが直立する場合に事前設定初期位置に位置し、外方摺動プレート同士の間の距離が、圧縮バネの初期長さよりも大きい。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、ユーザが、所定の角度Aまで片脚を上げたときに、圧縮バネは、圧縮されず、所定の角度Aにおいて、一方の外方摺動プレートが、対応する内方摺動プレートと接触するようにボーデンケーブルによって引かれる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、ユーザが、腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度が、A/2以下だけ縮小された場合に、圧縮バネは、圧縮せず、ユーザが腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度が、A/2超だけ縮小された場合に、圧縮バネは、圧縮され、ユーザの腰部関節のモーメント負荷を軽減するように股関節ヒンジに支援トルクを発生させる。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、胴部リンクに設置され、ボーデンケーブルを介して両股関節ヒンジを駆動する。前出のデバイスは、感知制御ボックスをさらに備え、感知制御ボックスは、胴部リンクにさらに設置され、トルク発生器に制御信号及びエネルギーを供給する。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、
ベースプレートに固定されたモータ及びボールネジを備える原動機であって、ベースプレートが、スライドレールを備える、原動機と、
ボールネジに連結され、原動機によりスライドレールに沿って可動である、スライダと
を備え、
ボーデンケーブルは、スライダと股関節ヒンジとの間に連結されて、胴部リンクと大腿部リンクとの間に抵抗モーメントを与える。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、ボーデンケーブルは、送出ボーデンケーブル及び帰還ボーデンケーブルからなり、トルク発生器は、2つのローラをさらに備え、2つのローラのうちの一方が、送出ボーデンケーブルのためのものであり、2つのローラのうちの他方が、帰還ボーデンケーブルのためのものであり、これらの2つのローラは、スライダに設置され、送出ボーデンケーブルは、ローラに巻き付けられ、送出ボーデンケーブルの2つの端部が、2つの股関節ヒンジにそれぞれ連結され、帰還ボーデンケーブルは、他方のローラに巻き付けられ、帰還ボーデンケーブルの2つの端部が、それぞれ2つの股関節ヒンジにやはり連結される。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、ボーデンケーブルは、送出ボーデンケーブルを備え、トルク発生器は、送出ボーデンケーブルのためのローラをさらに備え、ローラは、スライダに設置され、送出ボーデンケーブルは、ローラに巻き付けられ、送出ボーデンケーブルの両端部が、2つの股関節ヒンジにそれぞれ連結され、モータは、スライダを後方に移動し、送出ボーデンケーブルを引く。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、トルク発生器は、
ベースプレートと、
ベースプレートに固定されたモータを備える原動機と、
ベースプレートに固定されたスライドレールと、
モータによりスライドレールに沿って可動であるスライダと、
モータに結合されたプライムプーリーと
を備え、
モータは、プライムプーリーを駆動してボーデンケーブルを引くことによりスライダを駆動して後方に移動させる。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、プライムプーリーは、内方リング及び外方リングを備え、複数の弾性要素が、内方リングと外方リングとの間に配置され、内方リングと外方リングとの間の角度シフトを測定するように構成される。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、原動機は、油圧シリンダまたは空気圧シリンダを備える。
【0023】
本発明の一実施形態によれば、感知制御ボックスは、ユーザの運動状況とボーデンケーブルに対する力とをモニタリングしてトルク発生器に制御信号を送信することにより、作業状況においてボーデンケーブルに張力をかけ、ボーデンケーブルに対する力が非作業状況においてゼロになるように確保するように構成される。
【0024】
次に、本願の実施形態をより明確に説明するために、本願または先行技術の実施形態の説明に使用する必要のある添付の図面に関する簡単な説明を行う。以下のとおりに記載される添付の図面は、本願のいくつかの実施形態にすぎず、当業者は、いかなる創造的努力も必要とすることなく本図面にしたがって他の図面を想起することもまた可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願の第1の実施形態による、持上作業においてユーザにより着用された人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図である。
図2】本願の第1の実施形態による、人間の胴部を支援するためのデバイス側面図である。
図3】本願の第1の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、胴部リンクの背面図である。
図4】本願の第1の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、胴部リンクの側面図である。
図5】本願の第1の実施形態による、胴部リンクの上方端部の近接図である。
図6】本願の第1の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、デバイスが胴の傾斜移動に順応するのを示す概略図である。
図7】本願の第1の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、デバイスが胴の捻り移動に順応するのを示す概略図である。
図8】本願の第1の実施形態による、股関節ヒンジシェルが見えない状態にある、股関節ヒンジの近接図である。
図9】本願の第1の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、トルク発生器の上面図である。
図10】本願の第1の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、トルク発生器の側面図である。
図11】本願の第1の実施形態による、ユーザが直立する場合のトルク発生器の状態を示す図である。
図12】本願の第1の実施形態による、ユーザが片脚(例えば右脚)を所定の角度Aまで上げたときのトルク発生器の状態を示す図である。
図13】本願の第1の実施形態による、ユーザが大きく一歩を踏み出し、例えば左脚が所定の角度Bまで後方に下がり、右脚が角度(A+B)まで前方に進んだときの、トルク発生器の状態を示す図である。
図14】本願の第1の実施形態による、ユーザが腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度がA/2だけ縮小したときのトルク発生器の状態を示す図である。
図15】本願の第1の実施形態による、ユーザが腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度がA/2超だけ縮小したときのトルク発生器の状態を示す図である。
図16】本願の第2の実施形態による、持上作業においてユーザにより着用された人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図である。
図17】本願の第2の実施形態による、人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図である。
図18】本願の第2の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、胴部リンクの背面図である。
図19】本願の第2の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、胴部リンクの側面図である。
図20】胴部リンクの上方端部の近接図である。
図21】本願の第2の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、デバイスが胴の傾斜移動に順応するのを示す概略図である。
図22】本願の第2の実施形態による、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルが見えない状態にある、デバイスが胴の捻り移動に順応するのを示す概略図である。
図23】本願の第2の実施形態による、股関節ヒンジシェルが見えない状態にある、股関節ヒンジの近接図である。
図24】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、トルク発生器の一実施形態の近接図である。
図25】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図24に示すトルク発生器の簡素化された一実施形態の近接図である。
図26】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図24に示すトルク発生器の準拠する(compliant)一実施形態の近接図である。
図27】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、トルク発生器の別の実施形態の近接図である。
図28】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図27に示すトルク発生器の上面図である。
図29】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図27に示すトルク発生器の簡素化された一実施形態の近接図である。
図30】本願の第2の実施形態による、プライムプーリーの準拠する一実施形態の近接図である。
図31】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、トルク発生器の別の実施形態の近接図である。
図32】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図31に示すトルク発生器の上面図である。
図33】本願の第2の実施形態による、保護シェルが見えない状態にある、図31に示すトルク発生器の簡素化された一実施形態の近接図である。
図34】本願の第2の実施形態による、デバイスの作動原理の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願の目的、技術的解決策、及び利点をより明確にかつより理解可能にするために、以下、添付の図面及び実施形態を参照として本願をさらに詳細に説明する。本明細書において説明される特定の実施形態は、専ら例示として意図されたものであり、本願を限定するものとしては意図されない点を理解されたい。
【0027】
本明細書では、本願の実施形態を詳細に説明し、実施形態の例を添付の図面に示す。常に変更されない参照番号または同様の参照番号は、同等または同様の機能性を有する同等または同様の構成要素を示す。添付の図面を参照として以降において説明される実施形態は、例示的なものであり、本願を説明することを意図されたものであり、本願に対する限定的なものとしてみなされるべきではない。
【0028】
ある構成要素が他の構成要素「に固定される」または他の構成要素「に配設される」と述べられる場合に、これは、他の構成要素に直接的または間接的に位置し得る点に留意されたい。ある構成要素が、他の構成要素「に連結される」と述べられる場合に、これは、他の構成要素に直接的または間接的に連結され得る。
【0029】
本願の説明において、例えば「長さ」、「幅」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「垂直」、「水平」、「上部」、「下部」、「内部」、及び「外部」等の用語により示される方向または位置関係は、添付の図面に示す方向または位置関係であり、本願の説明を好都合に行い、この説明を簡略化することを意図したものにすぎず、示唆するデバイスまたは構成要素が特定の位置を有さなくてはいけないまたは特定の位置にしたがって構築及び操作されなければならないことを示唆するものではなく、したがってこれらの用語は、本願を限定するものとしてみなされるべきではない点を理解されたい。
【0030】
本願の第1の実施形態
図1は、持上作業においてユーザにより着用された人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図を示す。このデバイスは、胴部リンク1、背部ストラップ2、2つの大腿部リンク3、脚部ストラップ4、2つの股関節ヒンジ5、トルク発生器6、及びボーデンケーブル7を備える。胴部リンク1は、背部ストラップ2によりユーザの上方背部に結合され、2つの大腿部リンク3は、脚部ストラップ4によりユーザの左大腿部及び右大腿部にそれぞれ結合される。2つの股関節ヒンジ5は、ユーザの左股関節及び右股関節にそれぞれ位置合わせして配置されて、胴部リンク1と大腿部リンク3とを回転可能に結合する。トルク発生器6は、腰部位置に装着され、ボーデンケーブル7により股関節ヒンジ5を駆動する。図2は、人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図を示す。
【0031】
図3及び図4は、胴部リンクの背面図及び側面図をそれぞれ示し、トルク発生器、背部ストラップ、及びボーデンケーブルは見えない状態にある。図5は、胴部リンクの上方端部の近接図を示す。胴部リンク1は、2つの臀部リンク101を備え、これらの臀部リンク101は、左右の股関節ヒンジ5にそれぞれ回転可能に結合される。2つのケーブルコネクタ102が、ボーデンケーブル7に連結するために左右の臀部リンク101にそれぞれ固定される。2つの上方臀部リンク104が、上方臀部ヒンジ103により左右の臀部リンク101にそれぞれ回転可能に結合される。これにより、脚部の外転運動及び内転運動が可能になり得る。2つの腰部リンク105が、左右の上方臀部リンク104にそれぞれ連結され、次いで腰部コネクタ106に固定される。2つの下方背部リンク107が、腰部コネクタ106に固定され、中間コネクタ108により上方背部リンク109に連結される。デバイスのサイズは、リンク同士の相対位置を調節することにより変更され得る及び種々の身体形状に順応し得る。線形軸受110が、上方背部リンク109により支持され、背部シャフト111に線形的に結合する。連結ロッド112が、一端部において背部シャフト111にロックされ、他端部においてユニバーサルベアリング113に連結する。ユニバーサルベアリング113は、上方背部ヒンジ114により上方背部プレート115に回転可能に結合される。ユーザが胴を動かす場合に、背部シャフト111は、線形軸受110に摺動及び回転し、ユニバーサルベアリング113は、上方背部プレート115に対して回転し、それにより上方背部プレート115は、上方背部の姿勢の変化に倣い得る。図6及び図7に示すように、デバイスは、胴の曲げ移動のみならず、胴の傾斜移動及び捻り移動に対しても順応する。
【0032】
図8は、股関節ヒンジの近接図を示し、ヒンジシェルは、見えない状態にある。股関節ヒンジ5は、プーリー501を備え、このプーリー501は、大腿部リンク3に固定され、シャフト及び軸受により臀部リンク101に回転可能に結合される。また、ヒンジ支持部502が、プーリー501に回転可能に結合され、バンデージ504を介して背部ストラップ2に連結される。2つの端部キャップ503が、軸受の軸方向位置をロックするために使用される。ボーデンケーブル7の一端部が、プーリー501上の小穴に差し込まれ、他端部は、トルク発生器6に連結される。
【0033】
図9及び図10は、トルク発生器の上面図及び側面図をそれぞれ示し、保護シェルは見えない状態にある。トルク発生器6は、支持プレート601を備え、2つのシャフトベース602A及び602Bが、支持プレート601に固定される。2つのシャフト603A及び603Bが、相互に平行に配置され、シャフトベース602A及び602Bにより支持される。2つの外方摺動プレート604A及び604Bならびに2つの内方摺動プレート605A及び605Bは、線形軸受と一体化され、シャフト603A及び603Bに沿って平滑に移動し得る。圧縮バネ606が、内方摺動プレート605A及び605Bに装着され、これらの内方摺動プレート605A及び605Bの円筒状構造部により案内される。バネスリーブ607が、支持プレート601の中間部に固定され、またバネ606を案内するために使用される。ボーデンケーブル608Aの一端部が、外方摺動プレート604Bに固定され、他端部が、ケーブルコネクタ609Aを介して左臀部ヒンジのプーリーに連結される。ボーデンケーブル608Bの一端部が、外方摺動プレート604Aに固定され、他端部が、ケーブルコネクタ609Bを介して右臀部ヒンジのプーリーに連結される。いくつかの実施形態では、弾性ロープ610が、外方摺動プレート604A及び604Bに追加され、デバイスの何らかの固定箇所に連結される。弾性ロープ610は、ボーデンケーブル608A及び608Bに張力を印加するために使用され、簡略化のために以降の図面には示さない。
【0034】
図11は、ユーザが直立する場合のトルク発生器の状態を示す図である。ユーザが直立する場合に、外方摺動プレート604A及び604Bは、事前設定された初期位置にある。外方摺動プレート604A及び604Bの間の距離は、圧縮バネ606の初期長さに内方摺動プレート605A及び605Bの厚さを加えたものよりも大きい。圧縮バネ606は圧縮されず、ボーデンケーブル7に対する力は非常に小さい(事前張力のみ)。したがって、デバイスは、ユーザにトルクを印加しない。
【0035】
図12は、ユーザが片脚(例えば右脚)を所定の角度Aまで上げたときのトルク発生器の状態を示す。外方摺動プレート604Aは、ボーデンケーブル608Bにより右側に引かれ、内方摺動プレート605Aに接触し、それにより摺動プレート604A、605A、605B及びバネ606のすべてが、内方摺動プレート605B及び外方摺動プレート604Bが相互に接触するまで、右側へ移動する。この時点において、外方摺動プレート604A及び604Bの間の距離は、圧縮バネ606の初期長さに内方摺動プレート605A及び605Bの厚さを加えたものと同等になる。圧縮バネ606は、圧縮されず、ボーデンケーブル7に対する力は、非常に小さい(事前張力)。したがって、デバイスは、ユーザにトルクを印加しない。
【0036】
図13は、ユーザが大きく一歩を踏み出し、例えば左脚が所定の角度Bまで後方に下がり、右脚が角度(A+B)まで前方に進んだときのトルク発生器の状態を示す。左脚が、所定の角度Bまで後方に下がる場合に、外方摺動プレート604Bは、弾性ロープにより右側に引かれ、シャフトベース602Bに接触する。したがって、右脚は、角度(A+B)まで自由に前方に進み得る。この時点において、外方摺動プレート604A及び604Bの間の距離は、圧縮バネ606の初期長さに内方摺動プレート605A及び605Bの厚さを加えたものと同等になる。圧縮バネ606は、圧縮されず、ボーデンケーブル7に対する力は、非常に小さい(事前張力)。したがって、デバイスは、ユーザにトルクを印加しない。
【0037】
図14は、ユーザが腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度がA/2だけ縮小したときの、トルク発生器の状態を示す。外方摺動プレート604A及び604Bは、外方摺動プレート604Aが内方摺動プレート605Aに接触し、外方摺動プレート604Bが内方摺動プレート605Bに接触するまで、それぞれボーデンケーブル608B及び608Aにより中間まで引かれる。この時点において、外方摺動プレート604A及び604Bの間の距離は、圧縮バネ606の初期長さに内方摺動プレート605A及び605Bの厚さを加えたものと同等になる。圧縮バネ606は、圧縮されず、ボーデンケーブル7に対する力は、非常に小さい(事前張力)。したがって、デバイスは、ユーザにトルクを印加しない。
【0038】
図15は、ユーザが腰を曲げまたはスクワット状態になり、胴部と大腿部との間の角度がA/2超だけ縮小したときの、トルク発生器の状態を示す。外方摺動プレート604A及び604Bは、それぞれボーデンケーブル608B及び608Aにより中間まで引かれる。外方摺動プレート604A及び604Bの間の距離は、圧縮バネ606の初期長さに内方摺動プレート605A及び605Bの厚さを加えたものよりも小さくなる。圧縮バネ606は、圧縮されず、股関節ヒンジ5に支援トルクを発生させることにより腰部関節のモーメント負荷を軽減する。
【0039】
本願の第2の実施形態
図16は、持上作業においてユーザにより着用された人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図を示す。このデバイスは、胴部リンク1、背部ストラップ2、2つの大腿部リンク3、脚部ストラップ4、2つの股関節ヒンジ5、トルク発生器6、ボーデンケーブル7、及び感知制御ボックス8を備える。胴部リンク1は、背部ストラップ2によりユーザの上方背部に結合され、2つの大腿部リンク3は、脚部ストラップ4によりユーザの左大腿部及び右大腿部にそれぞれ結合される。2つの股関節ヒンジ5は、ユーザの左股関節及び右股関節にそれぞれ位置合わせして配置されて、胴部リンク1と大腿部リンク3とを回転可能に結合する。トルク発生器6は、胴部リンク1に設置され、ボーデンケーブル7を介して両股関節ヒンジ5を駆動する。また、感知制御ボックス(バッテリを有する)8が、胴部リンク1に設置され、トルク発生器6に制御信号及びエネルギーを供給する。図17は、人間の胴部を支援するためのデバイスの側面図を概略的に示す。
【0040】
図18及び図19は、胴部リンクの背面図及び側面図をそれぞれ示し、トルク発生器、背部ストラップ、ボーデンケーブル、及び感知制御ボックスは見えない状態にある。図20は、胴部リンクの上方端部の近接図を示す。胴部リンク1は、2つの臀部リンク101を備え、これらの臀部リンク101は、左右の股関節ヒンジ5にそれぞれ回転可能に結合される。4つのケーブルコネクタ102が、ボーデンケーブル7に連結するために左右の臀部リンク101にそれぞれ固定される。2つの上方臀部リンク104が、上方股関節ヒンジ103により左右の臀部リンク101にそれぞれ回転可能に結合される。これにより、脚部の外転運動及び内転運動が可能になり得る。2つの腰部リンク105が、左右の上方臀部リンク104にそれぞれ連結され、次いで腰部コネクタ106に固定される。2つの下方背部リンク107が、腰部コネクタ106に固定され、中間コネクタ108により上方背部リンク109に連結される。デバイスのサイズは、リンク同士の相対位置を調節することにより変更され得る及び種々の身体形状に順応し得る。線形軸受110が、上方背部リンク109により支持され、背部シャフト111に線形的に結合する。連結ロッド112が、一端部において背部シャフト111にロックされ、他端部においてユニバーサルベアリング113に連結する。ユニバーサルベアリング113は、上方背部ヒンジ114により上方背部プレート115に回転可能に結合される。ユーザが胴を動かす場合に、背部シャフト111は、線形軸受110に対して摺動及び回転し、ユニバーサルベアリング113は、上方背部プレート115に対して回転し、それにより上方背部プレート115は、上方背部の姿勢の変化に倣い得る。図21及び図22に示すように、デバイスは、胴の曲げ移動のみならず、胴の傾斜移動及び捻り移動に対しても順応する。
【0041】
図23は、股関節ヒンジの近接図を示し、股関節ヒンジシェルは見えない状態にある。股関節ヒンジ5は、プーリー501を備え、このプーリー501は、脚部リンク3に固定され、シャフト及び軸受により臀部リンク101に回転可能に結合される。また、ヒンジ支持部502が、プーリー501に回転可能に結合され、バンデージ504を介して背部ストラップ2に連結される。2つの端部キャップ503が、軸受の軸方向位置をロックするために使用される。送出ボーデンケーブル701及び帰還ボーデンケーブル702の一端部が、プーリー501上の小穴に差し込まれ、他端部は、トルク発生器6に連結される。
【0042】
図24は、トルク発生器の一実施形態の近接図を示し、保護シェルは見えない状態にある。トルク発生器6は、原動機としてベースプレート603に固定された、モータ601及びボールネジ602を備え、これによりスライダ604が駆動されてスライドレール605に沿って移動する。一方は送出ボーデンケーブル701のための及び他方は帰還ボーデンケーブル702のためのものである2つのローラ606A及び606Bが、スライダ604に設置される。送出ボーデンケーブル701は、ローラ606Aに巻き付けられ、送出ボーデンケーブル701の2つの端部は、左右の股関節ヒンジ5の内部のプーリー501のそれぞれに連結して、胴部リンク1と大腿部リンク3との間に抵抗モーメントを生じさせる。帰還ボーデンケーブル702は、他方のローラ606Bに巻き付けられ、帰還ボーデンケーブル702の2つの端部は、やはり左右の股関節ヒンジ5の内部のプーリー501のそれぞれに連結して、送出ボーデンケーブル701が弛まないようにする。他の2つのローラ607A及び607Bが、帰還ボーデンケーブル702の方向を案内するためにローラベース608に固定される。4つのケーブルコネクタ609が、ケーブル連結のためにL字形状ベース610に固定される。また、この実施形態は、図25に示すように一方向作動へと単純化され得る。モータ601は、スライダ604を駆動して後方へ移動させ、送出ボーデンケーブル701を引くだけである。
【0043】
上記の実施形態では、図26に示すように、2つのバネ611及び612を、ボールネジ602の摺動部分613とスライダ604との間に追加することが可能である。これらのボーデンケーブルに対する力は、バネ611及び612の変形を制御することにより確保され得る。
【0044】
図27は、トルク発生器の別の実施形態の近接図を示し、保護シェルは見えない状態にある。図28は、トルク発生器の上面図を示し、保護シェルは見えない状態にある。トルク発生器6は、原動機としてのモータ601と、ベースプレート603に固定されたスライドレール605とを備える。2つのローラ606A及び606Bが、スライドレール605に沿って移動することのできるスライダ604に固定される。送出ボーデンケーブル701は、ローラ606Aの周囲に巻かれ、帰還ボーデンケーブル702は、ローラ606Bの周囲に巻かれる。別の2つのローラ607A及び607Bが、帰還ボーデンケーブル702の方向を案内するためにベース603に固定される。4つのケーブルコネクタ609が、ケーブル連結のためにベース603に固定される。プライムプーリー614が、モータ601に結合される。前進ケーブル615A及び後退ケーブル615Bの一端部が、プライムプーリー614に固定される。前進ケーブル615Aは、2つの下方ローラ616A及び616Bにより案内され、スライダ604に連結される。後退ケーブル615Bは、下方ローラ616Cにより案内され、スライダ604に連結される。動作において、モータ601は、プライムプーリー614を駆動して後退ケーブル615Bを引き、スライダ604は、後方へ移動することになり、次いで送出ボーデンケーブル701が引かれることになる。モータ601が逆方向に回転すると、前進ケーブル615Aは、引かれることになり、スライダ604は、前方に移動することになり、次いで帰還ボーデンケーブル702が引かれることになる。また、この実施形態は、図29に示すように一方向作動へと単純化され得る。モータ601は、スライダ604を駆動して後方へ移動させ、送出ボーデンケーブル701を引くだけである。
【0045】
上記の実施形態では、弾性要素(例えばトーションバネ)を、モータ601とプライムプーリー614との間に追加することができる。また、プライムプーリー614は、弾性要素として設計することが可能である、一実施形態が図30に示される。プライムプーリー614は、内方リング614-1及び外方リング614-2を備える。内方リング614-1は、モータに結合され、外方リング614-2は、ケーブル615A及び615Bに連結される。バネ614-3が、内方リング614-1と外方リング614-2との間に設置される。動作において、モータ601は、内方リング614-1を駆動し、内方リング614-1と外方リング614-2との間に角度シフトを発生させ、それによりバネ614-3の長さが変更される。内方リング614-1と外方リング614-2との間のトルクは、センサにより測定することが可能な角度シフトの関数となる。
【0046】
図31は、トルク発生器の別の実施形態の近接図を示し、保護シェルは見えない状態にある。図32は、トルク発生器の上面図を示し、保護シェルは見えない状態にある。トルク発生器6は、原動機としてのモータ601と、ベースプレート603に固定されたスライドレール605とを備える。2つのローラ606A及び606Bが、スライドレール605に沿って移動することのできるスライダ604に固定される。送出ボーデンケーブル701は、ローラ606Aの周囲に巻かれ、帰還ボーデンケーブル702は、ローラ606Bの周囲に巻かれる。別の2つのローラ607A及び607Bが、帰還ボーデンケーブル702の方向を案内するためにベース603に固定される。4つのケーブルコネクタ609が、ケーブル連結のためにベース603に固定される。プライムプーリー614が、モータ601に結合される。前進ケーブル615A及び後退ケーブル615Bの一端部が、プライムプーリー614の2つの層にそれぞれ固定される。ケーブル615A及び615Bの巻き付け方向は、相互に逆方向である。前進ケーブル615Aは、3つの下方ローラ616A、616B、及び616Cにより案内され、次いでスライダ604に連結される。後退ケーブル615Bは、スライダ604に連結される。動作において、モータ601は、プライムプーリー614を駆動して後退ケーブル615Bを引き、スライダ604は、後方へ移動することになり、次いで送出ボーデンケーブル701が引かれることになる。モータ601が逆方向に回転すると、前進ケーブル615Aは、引かれることになり、スライダ604は、前方に移動することになり、次いで帰還ボーデンケーブル702が引かれることになる。この実施形態では、弾性要素(例えばトーションバネ)を、モータ601とプライムプーリー614との間に追加することができる。また、この実施形態は、図33に示すように一方向作動へと単純化され得る。モータ601は、スライダ604を駆動して後方へ移動させ、送出ボーデンケーブル701を引くだけである。
【0047】
すべての実施形態において、差動駆動は、1)一方のボーデンケーブルに対する力が常に均一であるため、左右の股関節ヒンジ5に対する支援トルクが同一になる点と、2)2つの脚部が差動的に動くときに、ローラ606A及び606Bが左右の側部のケーブル長の差異を補償するように自動回転する点とによって、実現される。
【0048】
すべての実施形態において、原動機601は、油圧シリンダ及び空気圧シリンダ等であることも可能である。
【0049】
図34は、デバイスの作動原理を概略的に示す。動作において、感知制御ボックス8は、ユーザの運動状況とボーデンケーブル7に対する力とをモニタリングする。ユーザが作業状況にある場合に、すなわち荷を持ち上げるために腰をかがめ、胴部支持を必要とする場合に、この感知制御ボックス8は、送出ボーデンケーブル701に張力をかけ、胴部リンク1と大腿部リンク3との間に適切な支援トルクを供給するために、トルク発生器6に制御信号を送信する。ユーザが、作業状況にない場合には、トルク発生器6は、ボーデンケーブル7の力がほぼゼロになり、日常的活動においてユーザに快適性を与える(抵抗感を感じさせない)ことを確保させることになる。
【0050】
第2の実施形態のデバイスは、さらに軽量であり、ユーザの左右の側部の動機を確保し得る。
【0051】
前述の実施形態は、本願の好ましい実施形態にすぎず、本願に対する限定としてみなされるべきではない。本願の趣旨及び原理の範囲内において行われるあらゆる修正、均等置換、及び改良等は、本願の保護範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0052】
1 胴部リンク、2 背部ストラップ、3 大腿部リンク,脚部リンク、4 脚部ストラップ、5 股関節ヒンジ、6 トルク発生器、7 ボーデンケーブル、8 感知制御ボックス、101 臀部リンク、103 上方臀部ヒンジ,上方股関節ヒンジ、104 上方臀部リンク、106 腰部コネクタ、108 中間コネクタ、109 上方背部リンク、110 線形軸受、111 背部シャフト、112 連結ロッド、113 ユニバーサルベアリング、114 上方背部ヒンジ、115 上方背部プレート、501 プーリー、502 ヒンジ支持部、504 バンデージ、601 支持プレート,モータ,原動機、602 ボールネジ、602A シャフトベース、602B シャフトベース、603 ベースプレート,ベース、603A シャフト、603B シャフト、604 スライダ、604A 外方摺動プレート、604B 外方摺動プレート、605 スライドレール、605A 内方摺動プレート、605B 内方摺動プレート、606 圧縮バネ、606A ローラ、606B ローラ、607 バネスリーブ、608 ローラベース、608A ボーデンケーブル、608B ボーデンケーブル、609A ケーブルコネクタ、609B ケーブルコネクタ、610 弾性ロープ,L字形状ベース、611 バネ、613 摺動部分、614 プライムプーリー、614-1 内方リング、614-2 外方リング、614-3 バネ、701 送出ボーデンケーブル、702 帰還ボーデンケーブル、615A 前進ケーブル、615B 後退ケーブル、616C 下方ローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
【国際調査報告】