(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-19
(54)【発明の名称】神経学的状態の症状をモニタリングするための機器、システム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20240312BHJP
A61N 1/36 20060101ALI20240312BHJP
A61N 1/08 20060101ALI20240312BHJP
【FI】
A61B10/00 H
A61B10/00 E
A61N1/36
A61N1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574744
(86)(22)【出願日】2022-02-22
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 AU2022050136
(87)【国際公開番号】W WO2022174312
(87)【国際公開日】2022-08-25
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523319656
【氏名又は名称】ニューロード ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEURODE PTY LTD
【住所又は居所原語表記】11A George Street,Dover Heights,New South Wales 2030(AU)
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】グアイラルドゥ,ナタリー
(72)【発明者】
【氏名】ソフレヴスキ,ダミアン
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053JJ02
(57)【要約】
対象への電気刺激の送達を制御するためのシステム。本システムは、電気刺激生成器に刺激指示を送信して、電気刺激生成器に、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させるように構成された、制御デバイスを備える。刺激指示は、刺激パラメータ値を含む。制御デバイスは、標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された光学センサからセンサデータを受信し、更新されたシミュレーションパラメータ値を含む更新された刺激指示を電気刺激生成器に伝送して、電気刺激生成器に刺激の特徴を修正させるように構成されている。本システムは、センサデータを分析して活動尺度を判定し、判定された活動尺度に基づいて更新された刺激パラメータ値を判定するように構成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象への電気刺激の送達を制御するためのシステムであって、前記システムは、
制御デバイスであって、
電気刺激生成器に刺激指示を送信して、前記電気刺激生成器に、前記対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させることであって、前記刺激指示は、少なくとも1つの刺激パラメータ値を含む、送達させることと、
前記標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサから、センサデータを受信することと、
1つ以上の更新されたシミュレーションパラメータ値を含む更新された刺激指示を前記電気刺激生成器に伝送して、前記電気刺激生成器に、前記刺激の1つ以上の特徴を修正させることと、
を実行するように構成された、制御デバイスを備え、前記システムは、
前記センサデータを分析して、活動尺度を判定することと、
前記判定された活動尺度に基づいて、前記1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、を行うように更に構成されている、システム。
【請求項2】
前記センサデータは、前記1つ以上の電極への刺激の前記送達に先立って取得された刺激前センサデータと、前記1つ以上の電極に前記刺激が送達されている間に取得された刺激中センサデータと、前記1つ以上の電極に前記刺激が送達された後に取得された刺激後センサデータと、を含み、前記システムは、
前記刺激前センサデータ、刺激中センサデータ及び刺激後センサデータから、1つ以上の特性について、それぞれ刺激前、刺激中、及び刺激後の値を判定することと、
前記1つ以上の特性の各々について、(i)前記刺激前の値から前記刺激後の値、(ii)前記刺激前の値から前記刺激中の値、及び(iii)前記刺激中の値から前記刺激後の値への、前記特性の値の相対的な変化を判定することと、
前記1つ以上の特性の値の前記相対的な変化及び前記刺激パラメータ値を、活動判定モデルに提供することと、
前記活動判定モデルによって、前記活動尺度を判定することと、を行うように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記活動尺度は、前記対象に十分な刺激が送達されたことを示すものである、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記1つ以上の特性は、光学センサチャネルの対の間の機能的接続性、及び/又は光学センサチャネルから取得されたデータの統計的尺度を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記1つ以上の特性は、前記1つ以上の電極の刺激電極のまわりの及び/又は刺激電極間の光チャネルの対から取得されたセンサデータから抽出される、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記センサデータは、前記対象の左外側前頭前皮質、前記対象の内側前頭前皮質、及び/又は前記対象の内側前頭前皮質と左外側前頭前皮質との間の境界領域から取得されたデータを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサデータは、前記対象の右外側前頭前皮質、前記対象の内側前頭前皮質、及び/又は前記対象の内側前頭前皮質と右外側前頭前皮質との間の境界領域から取得されたデータを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記システムは、前記判定された活動尺度に基づいて、前記1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定するように構成されており、
前記活動尺度が閾値未満であるという判定に応答して、前記刺激パラメータ値を増加させ、前記増加された刺激パラメータ値で前記刺激を再印加することと、
前記活動尺度が閾値に到達したという判定に応答して、前記刺激パラメータ値を、ユーザ固有の較正された刺激パラメータとして判定することと、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記光学センサを担持する頭部装着可能アレイを更に備え、前記光学センサは、機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記頭部装着可能アレイは、前記1つ以上の電極を更に担持する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上の光学センサに結合された光学センサモジュールであって、前記光学センサモジュールは、前記1つ以上の光学センサのそれぞれの発光器から光を放出させるように、かつ前記1つ以上の光学センサのそれぞれの検出器から反射光を示す信号を受信するように構成されており、前記信号は、前記標的化された領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールを更に備え、
前記光学センサモジュールは、前記センサデータを前記制御デバイスに提供するように構成されており、前記センサデータは、それぞれの1つ以上のセンサから受信された前記信号に基づくものであり、
前記光学センサモジュールは、前記制御デバイスから受信された指示に応答して動作するように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記制御デバイスは、前記光学センサモジュールに、前記1つ以上の光学センサの前記発光器を、相対的に高い周波数でオン及びオフに切り換えさせて、ロックインアンプ効果を作り出し、それぞれの検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するように構成されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記1つ以上の光学センサの各々は、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え、2つの検出器チャネルを形成し、前記制御デバイスは、前記光学センサの各々の前記検出器チャネルの信号を復調するように構成されている、請求項11又は12に記載のシステム。
【請求項14】
複数の機能的チャネルからの前記センサデータは、ダウンサンプリングされる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記センサデータは、(i)前記1つ以上のセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度、(ii)酸素化ヘモグロビン(HbO)濃度、(iii)脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度、(iv)総ヘモグロビン(ThB)濃度、及び(v)尺度(i)~(iv)のいずれかにおける相対的な変化のうちの1つ以上を含む測定データを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御デバイスは、(i)経頭蓋直流刺激(tDCS)、(ii)経頭蓋交流刺激(tACS)、(iii)経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、(iv)経頭蓋パルス電流刺激(tPCS)、(v)経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、及び(vi)振動tDCS(otDCS)のうちの1つ以上を、前記刺激生成器に供給させるように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記刺激指示は、(i)電圧、(ii)電流、(iii)周波数、(iv)継続時間、及び(v)オフセットのうちの1つ以上を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御デバイスは、前記電気刺激生成器に、相対的に短い電気刺激のパルスを前記1つ以上の電極に送達させるように、かつ前記相対的に短い電気刺激のパルスが前記1つ以上の電極に送達された後に、前記光学センサモジュールに、それぞれのセンサからの反射信号を記録させるように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御デバイスは、前記電気刺激生成器に、相対的に長い電気刺激のセッションを前記1つ以上の電極に送達させるように、かつ前記電気刺激が前記1つ以上の電極に送達されている間、前記光学センサモジュールに、それぞれのセンサからの反射信号を記録させるように構成されている、請求項1~17のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記制御デバイスは、前記1つ以上の電極への前記電気刺激の前記送達の前、前記送達中、及び/又は前記送達の後に、前記1つ以上の光学センサから前記記録されたデータを受信するように構成されている、請求項1~19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御デバイスは、前記対象の脳活動を継続的にモニタリングするように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御デバイスは、前記制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス上に展開された認知パフォーマンスモニタリングアプリケーションから受信された指示に応答して、セッションを誘起するように構成されている、請求項1~21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
通信ネットワークにわたって前記制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス又はサーバを更に備え、前記コンピューティングデバイス又はサーバは、
前記制御デバイスから前記センサデータを受信することと、
前記センサデータを分析して、前記活動尺度を判定することと、
前記判定された活動尺度に基づいて、前記1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、
前記更新された刺激パラメータ値を前記制御デバイスに伝送することと、を行うように構成されている、請求項1~22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記制御デバイスは、処理のために前記センサデータをコンピューティングデバイス又はサーバに伝送するように、かつそれぞれのコンピューティングデバイス又はサーバから前記更新された刺激パラメータ値を受信するように構成されている、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
対象への電気刺激の送達を制御するための刺激パラメータを判定するためのシステムであって、前記システムは、
1つ以上のプロセッサと、
実行可能命令を含むメモリであって、前記実行可能命令は、前記1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、前記システムに、
制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、
前記センサデータを分析して、活動尺度を判定することと、
前記判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することであって、前記更新された刺激パラメータ値は、前記制御デバイスの制御下で、電気刺激生成器によって前記対象に送達されるべき経頭蓋電気刺激の特徴を示す、判定することと、
前記更新された刺激パラメータ値を前記制御デバイスに伝送することと、を行わせる、メモリと、を備える、システム。
【請求項26】
前記センサデータから抽出された特性を入力として受信するように、かつ前記活動尺度を出力として提供するように構成された、活動判定モデルを更に備える、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記制御デバイスは、刺激を付与する際に使用されるべき前記電極のサブセットの選択を可能にし、それによって、特定の対象の頭部サイズに合うように前記制御デバイスを調整するように構成されている、請求項1~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記制御デバイスは、ユーザインタフェースを介して、前記対象から頭部サイズ指標を受信するように、かつ前記頭部サイズ指標に基づいて、使用されるべき前記電極のサブセットを判定するように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記制御デバイスは、
前記アレイの電極の1つ以上のサブセットの各々に、少なくとも第1の試験信号を送達することと、
それぞれのセンサモジュールによって検出された試験応答を分析することと、
前記検出された試験応答に基づいて、前記対象に好適な電極のサブセットを判定することと、
前記対象の頭部に前記刺激を付与する際の使用のために前記好適な電極のサブセットを選択することと、を行うように構成されている、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記対象の頭部に対する前記アレイの正しい配置において前記対象を支援するように構成された位置決めフィードバックモジュールを更に備える、請求項9に直接的又は間接的に従属する場合の請求項1~29のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項31】
前記位置決めフィードバックモジュールは、
前記制御デバイスの前記アレイを身に着けた前記対象の1つ以上の画像を判定することと、
前記1つ以上の画像内の前記対象の1つ以上の顔の特性の位置を検出することと、
前記判定された顔の特性に対する、前記1つ以上の画像内の前記アレイの位置を検出することと、
前記アレイの判定された位置を標的位置と比較することと、
前記アレイの前記位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、前記アレイが正しく配置されていると判定することと、
前記アレイの前記位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、前記アレイが不適切に配置されていると判定し、ユーザインタフェースを介して、前記対象にフィードバックを提供して、前記対象が前記標的位置を達成することを目的として、前記アレイを再位置決めすることを支援することと、を行うように構成されている、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
対象への電気刺激の送達を制御するための方法であって、前記方法は、
電気刺激生成器に刺激指示を送信して、前記電気刺激生成器に、前記対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させることであって、前記刺激指示は、少なくとも1つの刺激パラメータ値を含む、送達させることと、
前記標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサから、センサデータを受信することと、
前記センサデータを分析して活動尺度を判定することと、
前記判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、
前記電気刺激生成器に前記刺激の1つ以上の特徴を修正させるために、1つ以上の更新されたシミュレーションパラメータ値を含む更新された刺激指示を前記電気刺激生成器に伝送することと、を含む、方法。
【請求項33】
対象への電気刺激の送達を制御するための刺激パラメータを判定するための方法であって、前記方法は、
制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、
前記センサデータを分析して活動尺度を判定することと、
前記判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することであって、前記更新された刺激パラメータ値は、前記制御デバイスの制御下で、電気刺激生成器によって前記対象に送達されるべき経頭蓋電気刺激の特徴を示す、判定することと、
前記更新された刺激パラメータ値を前記制御デバイスに伝送することと、を含む、方法。
【請求項34】
1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、請求項32又は33に記載の方法をコンピューティングデバイスに実行させる命令を記憶した、非一時的機械可読媒体。
【請求項35】
神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するためのシステムであって、前記システムは、
前記対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサからセンサデータを受信するように構成された、制御デバイスを備え、
前記システムは、
1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の前記対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、
前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、
前記症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を行うように更に構成されている、システム。
【請求項36】
前記症状重症度及び/又は進行尺度は、各々が前記神経学的状態に関連する行動又は経験の重症度レベルを示す複数のスコアを含む、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記神経学的状態は、ADHDであり、前記症状重症度及び/又は進行尺度は、(i)総合的ADHD評価スケールスコア、(ii)ADHD中核症状スコア、(iii)不注意スコア、(iv)多動性スコア、及び(v)衝動性スコアのうちの1つ以上についてのスコアを含む、請求項35又は36に記載のシステム。
【請求項38】
前記システムは、前記タスクデータ及び前記センサデータに基づいて、前記症状重症度及び/又は進行尺度を判定するように構成された、症状重症度及び/又は進行判定モデルを含み、前記症状重症度及び/又は進行判定モデルは、臨床母集団から導出されるデータを使用してトレーニングされたものである、請求項35~37のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記システムは、前記センサデータから1つ以上の特性値を判定し、前記特性値を前記症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供するように構成された、特性抽出モジュールを備える、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記1つ以上の特性値は、光学センサチャネルの対の間の機能的接続性、及び/又は光学センサチャネルから取得されたデータの統計的尺度を示す、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記対象の右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、総合的ADHD症状重症度尺度及び/又はADHD中核症状重症度尺度を判定するために、前記症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供される、請求項39又は40に記載のシステム。
【請求項42】
前記対象の右外側前頭前皮質、左外側前頭前皮質、及び/又は前記左外側前頭前皮質及び内側前頭前皮質と重なる領域における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、ADHD中核症状重症度尺度を判定するために、前記症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供される、請求項39~41のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記対象の内側前頭前皮質、及び/又は前記対象の左外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、不注意重症度尺度及び/又は衝動性重症度尺度を判定するために、前記症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供される、請求項39~42のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記タスクデータの反応時間基準及び/又はエラー省略基準から導出された1つ以上の特性値が、総合的ADHD症状重症度尺度、衝動性重症度尺度、及び/又は不注意重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る、請求項39~43のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記光学センサを担持する頭部装着可能アレイを更に備え、前記光学センサは、機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)である、請求項35~44のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記1つ以上の光学センサに結合された光学センサモジュールであって、前記光学センサモジュールは、前記1つ以上の光学センサのそれぞれの発光器から光を放出させるように、かつ前記1つ以上の光学センサのそれぞれの検出器から反射光を示す信号を受信するように構成されており、前記信号は、前記標的化された領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールを更に備え、
前記光学センサモジュールは、前記センサデータを前記制御デバイスに提供するように構成されており、前記センサデータは、それぞれの1つ以上のセンサから受信された前記信号に基づくものであり、
前記光学センサモジュールは、前記制御デバイスから受信された指示に応答して動作するように構成されている、請求項35~45のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記制御デバイスは、前記光学センサモジュールに、前記1つ以上の光学センサの前記発光器を、相対的に高い周波数でオン及びオフに切り換えさせて、ロックインアンプ効果を作り出し、それぞれの検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するように構成されている、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記1つ以上の光学センサの各々は、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え、2つの検出器チャネルを形成し、前記制御デバイスは、前記光学センサの各々の前記検出器チャネルの信号を復調するように構成されている、請求項46又は47に記載のシステム。
【請求項49】
複数の機能的チャネルからの前記センサデータは、ダウンサンプリングされる、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記センサデータは、(i)前記1つ以上のセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度、(ii)酸素化ヘモグロビン(HbO)濃度、(iii)脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度、(iv)総ヘモグロビン(ThB)濃度、及び(v)尺度(i)~(iv)のいずれかにおける相対的な変化のうちの1つ以上を含む測定データを含む、請求項35~49のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項51】
前記システムは、前記1つ以上の光学センサの各検出器チャネルの品質を示す品質尺度を判定し、前記品質尺度が品質閾値未満となったことに応答して、前記症状重症度及び/又は進行尺度を判定する際に、それぞれの検出器チャネルからのセンサデータを除外するように構成されている、請求項35~50のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項52】
前記システムは、タイムスタンプされたセンサデータ及びタイムスタンプされたタスクデータに基づいて、前記対象がタスクを実行している間に取得されたタスク関連センサデータを含むセンサデータのサブセットを判定するように構成されている、請求項35~51のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項53】
前記システムは、前記タスク関連センサデータから1つ以上の特性を抽出するように構成された特性抽出モジュールを備え、前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて前記症状重症度及び/又は進行尺度を判定することは、前記1つ以上の特性及びタスクデータに基づいて前記症状重症度及び/又は進行尺度を判定することを含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記システムは、
1つ以上の特定のタスクを実行している前記対象を評価することと、
前記タスクを行っているときの前記対象のパフォーマンスに基づいて、前記対象に1つ以上のタスクスコアを割り当てることであって、前記タスクデータは、前記1つ以上のタスクスコアを含む、割り当てることと、を行うように構成された、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーションを含む、請求項35~53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記制御デバイスは、電気刺激生成器に刺激指示を送信して、前記電気刺激生成器に、前記対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させるように構成されている、請求項35~54のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項56】
前記1つ以上の電極を担持する頭部装着可能アレイを備える、請求項35~55のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
通信ネットワークにわたって前記制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス又はサーバを更に備え、前記コンピューティングデバイス又はサーバは、
前記制御デバイスから前記センサデータを受信することと、
前記タスクデータを判定することと、
前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて、前記症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、
前記症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を行うように構成されている、請求項35~56のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記制御デバイスは、前記センサデータを前記コンピューティングデバイス又はサーバに伝送するように構成されている、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記制御デバイスは、刺激を付与する際に使用されるべき前記アレイの電極のサブセットの選択を可能にし、それによって、特定の対象の頭部サイズに合うように前記制御デバイスを調整するように構成されている、請求項55、又は請求項55に直接的若しくは間接的に従属する場合の請求項56~58のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記制御デバイスは、ユーザインタフェースを介して、前記対象から頭部サイズ指標を受信するように、かつ前記頭部サイズ指標に基づいて、使用されるべき前記電極のサブセットを判定するように構成されている、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記制御デバイスは、
前記アレイの電極の1つ以上のサブセットの各々に、少なくとも第1の試験信号を送達することと、
それぞれのセンサモジュールによって検出された試験応答を分析することと、
前記検出された試験応答に基づいて、前記対象に好適な電極のサブセットを判定することと、
前記対象の頭部に前記刺激を付与する際の使用のために前記好適な電極のサブセットを選択することと、を行うように構成されている、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記対象の頭部に対する前記アレイの正しい配置において前記対象を支援するように構成された位置決めフィードバックモジュールを更に含む、請求項56、又は請求項56に直接的若しくは間接的に従属する場合の請求項57~61のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記位置決めフィードバックモジュールは、
前記システムの前記アレイを身に着けた対象の1つ以上の画像を判定することと、
前記1つ以上の画像内の前記対象の1つ以上の顔の特性の位置を検出することと、
前記判定された顔の特性に対する、前記1つ以上の画像内の前記アレイの位置を検出することと、
前記アレイの判定された位置を目標位置と比較することと、
前記アレイの前記位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、前記アレイが正しく配置されていることを判定することと、
前記アレイの前記位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、アレイが不適切に配置されていることを判定し、ユーザインタフェースを介して前記対象にフィードバックを提供して、前記対象が前記目標位置を達成することを目的として前記アレイを再位置決めすることを支援することと、を行うように構成されている、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するためのシステムであって、前記システムは、
制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、
1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の前記対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、
前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、
前記症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を行うように構成されている、システム。
【請求項65】
神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するための方法であって、前記方法は、
前記対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサからセンサデータを受信することと、
前記対象が1つ以上のそれぞれのタスクを行う際のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、
前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、
前記症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を含む、方法。
【請求項66】
神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するための方法であって、前記方法は、
制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、
1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の前記対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、
前記センサデータ及び前記タスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、
前記症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を含む、方法。
【請求項67】
対象の脳活動を検出するための制御デバイスと通信ネットワークにわたって通信するように配設されたサーバであって、前記サーバは、
前記制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、1つ以上のセンサが対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされ、前記対象が特定のタスクを実行している間に、前記制御デバイスに結合された前記センサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度を示す、受信することと、
前記対象に関連するコンピューティングデバイス上に展開された認知評価アプリケーションから1つ以上のタスクスコアを受信することであって、前記認知評価アプリケーションは、前記特定のタスクを実行している前記対象を評価し、そのパフォーマンスに基づいて前記1つ以上のタスクスコアを前記対象に割り当てるように構成されている、受信することと、
症状重症度及び/又は進行判定モデルへの入力として、前記センサデータ及び前記1つ以上のタスクスコアを提供することと、
前記症状重症度及び/又は進行判定モデルの出力として、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することであって、前記症状重症度及び/又は進行尺度は、神経学的状態の症状の処置において前記対象が呈している進行を示す、判定することと、を行うように構成されている、サーバ。
【請求項68】
神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するコンピュータ実装された方法であって、前記方法は、
前記制御デバイスからセンサデータを受信することであって、前記センサデータは、1つ以上のセンサが対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされ、前記対象が特定のタスクを実行している間に、前記制御デバイスに結合された前記センサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度を示す、受信することと、
前記対象に関連するコンピューティングデバイス上に展開された認知評価アプリケーションから1つ以上のタスクスコアを受信することであって、前記認知評価アプリケーションは、前記特定のタスクを実行している前記対象を評価し、そのパフォーマンスに基づいて前記1つ以上のタスクスコアを前記対象に割り当てるように構成されている、受信することと、
症状重症度及び/又は進行判定モデルへの入力として、前記センサデータ及び前記1つ以上のタスクスコアを提供することと、
前記症状重症度及び/又は進行判定モデルの出力として、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することであって、前記症状重症度及び/又は進行尺度は、神経学的状態の症状の処置において前記対象が呈している進行を示す、判定することと、を含む、方法。
【請求項69】
1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、コンピューティングデバイスに請求項65、66又は68に記載の方法を実行させる命令を記憶した、非一時的機械可読媒体。
【請求項70】
頭部装着可能な機器であって、
複数の光学センサコンポーネントを含むアレイであって、前記コンポーネントは、前記アレイの長さに沿って配置され、各光学センサコンポーネントは、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え、
前記発光器は、第1の相対的に短いチャネルを形成するよう、前記第1の検出器に近接して配置され、前記発光器は、第1の相対的に長いチャネルを形成するよう、前記第2の検出器から相対的に大きな距離に配置された、アレイと、
前記光学センサコンポーネントの選択された発光器から光を放出させ、選択された光学センサコンポーネントの前記第1及び第2の検出器から反射光を示す信号を受信するように構成された、光学センサモジュールであって、前記信号は、前記発光器と検出器との対によって標的とされる領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールと、を備え、
前記アレイは、複数の電極を更に含み、各電極が、隣接する光学センサコンポーネントの対の間に配置される、機器。
【請求項71】
前記発光器及び前記第1の検出器の両方が、前記アレイの第1の端部に向かって配置され、前記第2の検出器が、前記アレイの第2の端部に配置される、請求項70に記載の機器。
【請求項72】
前記1つ以上の電極は、前記対象に電気刺激を送達するように構成されている、請求項70又は71に記載の機器。
【請求項73】
前記1つ以上の電極は、前記対象からの脳波(EEG)信号を判定するように構成されている、請求項70又は71に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、一般的に、対象における神経学的状態の症状、特に、注意欠陥多動性障害(ADHD)等の神経行動障害の症状のモニタリング、及びいくつかの実施形態においては処置のための、方法、機器及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ADHDを有する対象は、注意を払うことが困難であること、衝動的な行動を制御することが困難であること、及び/又は過度に又は異常に活動的となり得ること等の症状を呈する傾向がある。ADHDには3つの主なタイプ、すなわち、対象が指示に従うこと及び注意を払うことが困難であり、気が散りやすく、混乱した状態となりやすい不注意優勢型と、対象がそわそわし、落ち着きがなく、衝動的である多動性衝動性優勢型と、対象がこれら両方のタイプの症状を呈する混合型と、がある。
【0003】
ADHD症状を評価するための手法は、ワーキングメモリ、注意、及び衝動制御を試験すること等の実行機能のパフォーマンスを測定する心理測定試験を含み、ADHD症状は、これらの試験における低下したパフォーマンスとして現れ得る。
【0004】
電気脳刺激は、認知プロセスに顕著な効果を有することが知られており、印加される刺激のタイプに依存して様々な異なる効果を有する。Min-Fang Kuo及びMichael A. Nitscheによる、「Effects of transcranial electrical stimulation on cognition」(2012)(43(3)Clinical EEG and Neuroscience192-199)によれば(その全内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする)、非侵襲的電気脳刺激手法は、認知の間に必要とされる神経生理学的プロセスを増幅し得るものであり、及び/又は認知の生理学的プロセスを模倣し得るものであり、更には、異なるタイプの刺激が、異なる反応を生じ得るものである。例えば、経頭蓋直流刺激(tDCS)は、学習及び記憶形成に重要であると考えられている皮質機能の神経可塑的変化に類似した生理学的変化を誘発し得る。多くの調査が、タスクパフォーマンスに対するtDCSの有益な効果を示している。更に、Kuo及びNitsche(2012)は、交流刺激(tACS)及びランダムノイズ刺激(tRNS)等の他の手法も、電気刺激の周波数に依存して他の皮質活動を変調させ得ることを観察している。
【0005】
ADHD及び他の神経行動障害等の、対象における神経学的状態の処置のための先行技術の手法に関連する1つ以上の不足点若しくは欠点に対処若しくはそれを改善するか、又は少なくともそれに対する有用な代替物を提供することが所望される。
【0006】
本明細書に含められた文書、行為、材料、デバイス、又は物品等のいかなる考察も、これらの事項のいずれか又は全てが、添付される請求項の各々の優先日前に存在した先行技術基盤の一部を形成しているか、又は本開示に関連する分野における一般常識であったことを認めるものとしてみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0007】
いくつかの実施形態は、対象への電気刺激の送達を制御するためのシステムであって、システムは、制御デバイスであって、電気刺激生成器に刺激指示を送信して、電気刺激生成器に、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させることであって、刺激指示は、少なくとも1つの刺激パラメータ値を含む、送達させることと、標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサから、センサデータを受信することと、1つ以上の更新されたシミュレーションパラメータ値を含む更新された刺激指示を電気刺激生成器に伝送して、電気刺激生成器に、刺激の1つ以上の特徴を修正させることと、を実行するように構成された、制御デバイスを備え、システムは、センサデータを分析して、活動尺度を判定することと、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、を行うように更に構成されている、システムに関する。
【0008】
センサデータは、1つ以上の電極への刺激の送達に先立って取得された刺激前センサデータと、1つ以上の電極に刺激が送達されている間に取得された刺激中センサデータと、1つ以上の電極に刺激が送達された後に取得された刺激後センサデータとを含み得、システムは、刺激前センサデータ、刺激中センサデータ及び刺激後センサデータから、1つ以上の特性について、それぞれ刺激前、刺激中、及び刺激後の値を判定することと、1つ以上の特性の各々について、(i)刺激前の値から刺激後の値、(ii)刺激前の値から刺激中の値、及び(iii)刺激中の値から刺激後の値への、特性の値の相対的な変化を判定することと、1つ以上の特性の値の相対的な変化及び刺激パラメータ値を、活動判定モデルに提供することと、活動判定モデルによって、活動尺度を判定することと、を行うように構成されている。
【0009】
活動尺度は、対象に十分な刺激が送達されたことを示すものであり得る。
【0010】
1つ以上の特性は、光学センサチャネルの対の間の機能的接続性、及び/又は光学センサチャネルから取得されたデータの統計的尺度を含み得る。
【0011】
1つ以上の特性は、1つ以上の電極の刺激電極のまわりの及び/又は刺激電極間の光チャネルの対から取得されたセンサデータから抽出され得る。
【0012】
センサデータは、対象の左外側前頭前皮質、対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の内側前頭前皮質と左外側前頭前皮質との間の境界領域から取得されたデータを含み得る。
【0013】
センサデータは、対象の右外側前頭前皮質、対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の内側前頭前皮質と右外側前頭前皮質との間の境界領域から取得されたデータを含み得る。
【0014】
システムは、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定するように構成されており、活動尺度が閾値未満であるという判定に応答して、刺激パラメータ値を増加させ、増加された刺激パラメータ値で刺激を再印加することと、活動尺度が閾値に到達したという判定に応答して、刺激パラメータ値をユーザ固有の較正された刺激パラメータとして判定することと、を含み得る。
【0015】
本システムは、光学センサを担持する頭部装着可能アレイを更に備え得、光学センサは、機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)である。頭部装着可能アレイは、1つ以上の電極を更に担持し得る。
【0016】
本システムは、1つ以上の光学センサに結合された光学センサモジュールであって、光学センサモジュールは、1つ以上の光学センサのそれぞれの発光器から光を放出させるように、かつ1つ以上の光学センサのそれぞれの検出器から反射光を示す信号を受信するように構成されており、信号は、標的化された領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールを更に備え得、光学センサモジュールは、センサデータを制御デバイスに提供するように構成されており、センサデータは、それぞれの1つ以上のセンサから受信された信号に基づくものであり、光学センサモジュールは、制御デバイスから受信された指示に応答して動作するように構成されている。
【0017】
制御デバイスは、光学センサモジュールに、1つ以上の光学センサの発光器を、相対的に高い周波数でオン及びオフに切り換えさせて、ロックインアンプ効果を作り出し、それぞれの検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するように構成され得る。
【0018】
1つ以上の光学センサの各々は、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え得、2つの検出器チャネルを形成し、制御デバイスは、光学センサの各々の検出器チャネルの信号を復調するように構成される。
【0019】
複数の機能的チャネルからのセンサデータは、ダウンサンプリングされ得る。
【0020】
センサデータは、(i)1つ以上のセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度、(ii)酸素化ヘモグロビン(HbO)濃度、(iii)脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度、(iv)総ヘモグロビン(ThB)濃度、及び(v)尺度(i)~(iv)のいずれかにおける相対的な変化のうちの1つ以上を含む測定データを含み得る。
【0021】
制御デバイスは、(i)経頭蓋直流刺激(tDCS)、(ii)経頭蓋交流刺激(tACS)、(iii)経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、(iv)経頭蓋パルス電流刺激(tPCS)、(v)経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、及び(vi)振動tDCS(otDCS)のうちの1つ以上を、刺激生成器に供給させるように構成され得る。
【0022】
刺激指示は、(i)電圧、(ii)電流、(iii)周波数、(iv)継続時間、及び(v)オフセットのうちの1つ以上を含み得る。
【0023】
制御デバイスは、電気刺激生成器に、相対的に短い電気刺激のパルスを1つ以上の電極に送達させるように、かつ相対的に短い電気刺激のパルスが1つ以上の電極に送達された後に、光学センサモジュールに、それぞれのセンサからの反射信号を記録させるように構成され得る。
【0024】
制御デバイスは、電気刺激生成器に、相対的に長い電気刺激のセッションを1つ以上の電極に送達させるように、かつ電気刺激が1つ以上の電極に送達されている間、光学センサモジュールに、それぞれのセンサからの反射信号を記録させるように構成され得る。
【0025】
制御デバイスは、1つ以上の電極への電気刺激の送達の前、送達中、及び/又は送達の後に、1つ以上の光学センサから記録されたデータを受信するように構成され得る。
【0026】
制御デバイスは、対象の脳活動を継続的にモニタリングするように構成され得る。
【0027】
制御デバイスは、制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス上に展開された認知パフォーマンスモニタリングアプリケーションから受信された指示に応答して、セッションを誘起するように構成され得る。
【0028】
本システムは、通信ネットワークにわたって制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス又はサーバを更に備え得、コンピューティングデバイス又はサーバは、制御デバイスからセンサデータを受信することと、センサデータを分析して活動尺度を判定することと、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、更新された刺激パラメータ値を制御デバイスに伝送することと、を行うように構成されている。
【0029】
制御デバイスは、処理のためにセンサデータをコンピューティングデバイス又はサーバに伝送するように、かつそれぞれのコンピューティングデバイス又はサーバから更新された刺激パラメータ値を受信するように構成され得る。
【0030】
いくつかの実施形態は、対象への電気刺激の送達を制御するための刺激パラメータを判定するためのシステムであって、システムは、1つ以上のプロセッサと、実行可能命令を含むメモリであって、実行可能命令は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、システムに、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、センサデータを分析して活動尺度を判定することと、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することであって、更新された刺激パラメータ値は、制御デバイスの制御下で、電気刺激生成器によって対象に送達されるべき経頭蓋電気刺激の特徴を示す、判定することと、更新された刺激パラメータ値を制御デバイスに伝送することと、を行わせる、メモリと、を備える、システムに関する。
【0031】
本システムは、センサデータから抽出された特性を入力として受信するように、かつ活動尺度を出力として提供するように構成された、活動判定モデルを更に備え得る。
【0032】
制御デバイスは、刺激を付与する際に使用されるべき電極のサブセットの選択を可能にし、それによって、特定の対象の頭部サイズに合うように制御デバイスを調整するように構成され得る。制御デバイスは、ユーザインタフェースを介して、対象から頭部サイズ指標を受信するように、かつ頭部サイズ指標に基づいて、使用されるべき電極のサブセットを判定するように構成され得る。制御デバイスは、アレイの電極の1つ以上のサブセットの各々に、少なくとも第1の試験信号を送達することと、それぞれのセンサモジュールによって検出された試験応答を分析することと、検出された試験応答に基づいて、対象に好適な電極のサブセットを判定することと、対象の頭部に刺激を付与する際の使用のために好適な電極のサブセットを選択することと、を行うように構成され得る。
【0033】
本システムは、対象の頭部に対するアレイの正しい配置において対象を支援するように構成された位置決めフィードバックモジュールを更に備え得る。位置決めフィードバックモジュールは、制御デバイスのアレイを身に着けた対象の1つ以上の画像を判定することと、1つ以上の画像内の対象の1つ以上の顔の特性の位置を検出することと、判定された顔の特性に対する、1つ以上の画像内のアレイの位置を検出することと、アレイの判定された位置を目標位置と比較することと、アレイの位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、アレイが正しく配置されていることを判定することと、アレイの位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、アレイが不適切に配置されていることを判定し、ユーザインタフェースを介して対象にフィードバックを提供して、対象が目標位置を達成することを目的として、アレイを再位置決めすることを支援することと、を行うように構成され得る。
【0034】
いくつかの実施形態は、対象への電気刺激の送達を制御するための方法であって、方法は、電気刺激生成器に刺激指示を送信して、電気刺激生成器に、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させることであって、刺激指示は、少なくとも1つの刺激パラメータ値を含む、送達させることと、標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサから、センサデータを受信することと、センサデータを分析して活動尺度を判定することと、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することと、電気刺激生成器に刺激の1つ以上の特徴を修正させるために、1つ以上の更新されたシミュレーションパラメータ値を含む更新された刺激指示を電気刺激生成器に伝送することと、を含む、方法に関する。
【0035】
いくつかの実施形態は、対象への電気刺激の送達を制御するための刺激パラメータを判定するための方法であって、方法は、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、センサデータを分析して活動尺度を判定することと、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の更新された刺激パラメータ値を判定することであって、更新された刺激パラメータ値は、制御デバイスの制御下で、電気刺激生成器によって対象に送達されるべき経頭蓋電気刺激の特徴を示す、判定することと、更新された刺激パラメータ値を制御デバイスに伝送することと、を含む、方法に関する。
【0036】
いくつかの実施形態は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、開示される方法をコンピューティングデバイスに実行させる命令を記憶した、非一時的機械可読媒体に関する。
【0037】
いくつかの実施形態は、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するためのシステムであって、システムは、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサからセンサデータを受信するように構成された、制御デバイスを備え、システムは、1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定し、センサデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を行うように更に構成されている、システムに関する。
【0038】
症状重症度及び/又は進行尺度は、各々が神経学的状態に関連する行動又は経験の重症度レベルを示す複数のスコアを含み得る。
【0039】
神経学的状態は、ADHDであり得、症状重症度及び/又は進行尺度は、(i)総合的ADHD評価スケールスコア、(ii)ADHD中核症状スコア、(iii)不注意スコア、(iv)多動性スコア、及び(v)衝動性スコアのうちの1つ以上についてのスコアを含む。
【0040】
いくつかの実施形態において、本システムは、タスクデータ及びセンサデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定するように構成された、症状重症度及び/又は進行判定モデルを含み、症状重症度及び/又は進行判定モデルは、臨床母集団から導出されるデータを使用してトレーニングされたものである。
【0041】
いくつかの実施形態において、本システムは、センサデータから1つ以上の特性値を判定し、特性値を症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供するように構成された、特性抽出モジュールを備える。1つ以上の特性値は、光学センサチャネルの対の間の機能的接続性、及び/又は光学センサチャネルから取得されたデータの統計的尺度を示すものであり得る。
【0042】
対象の右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、総合的ADHD症状重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。タスクデータの反応時間及び省略エラー(omission error)基準に基づく特性値は、総合的ADHD症状重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。
【0043】
右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、ADHD中核症状重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。
【0044】
対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の左外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、不注意重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。タスクデータの反応時間及び省略エラー基準に基づく特性値は、不注意重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。
【0045】
対象の右外側前頭前皮質、左外側前頭前皮質及び/又は左外側前頭前皮質及び内側前頭前皮質に重なる領域における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、多動性重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。
【0046】
対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の右外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された1つ以上の特性値が、衝動性重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。タスクデータの反応時間及び省略エラー基準に基づく特性値は、衝動性重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供され得る。
【0047】
本システムは、光学センサを担持する頭部装着可能アレイを更に備え得、光学センサは、機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)である。本システムは、1つ以上の光学センサに結合された光学センサモジュールであって、光学センサモジュールは、1つ以上の光学センサのそれぞれの発光器から光を放出させるように、かつ1つ以上の光学センサのそれぞれの検出器から反射光を示す信号を受信するように構成されており、信号は、標的化された領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールを更に備え得、光学センサモジュールは、センサデータを制御デバイスに提供するように構成されており、センサデータは、それぞれの1つ以上のセンサから受信された信号に基づくものであり、光学センサモジュールは、制御デバイスから受信された指示に応答して動作するように構成されている。
【0048】
制御デバイスは、光学センサモジュールに、1つ以上の光学センサの発光器を、相対的に高い周波数でオン及びオフに切り換えさせて、ロックインアンプ効果を作り出し、それぞれの検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するように構成され得る。1つ以上の光学センサの各々は、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え得、2つの検出器チャネルを形成し、制御デバイスは、光学センサの各々の検出器チャネルの信号を復調するように構成されている。
【0049】
複数の機能的チャネルからのセンサデータは、ダウンサンプリングされ得る。
【0050】
センサデータは、(i)1つ以上のセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度、(ii)酸素化ヘモグロビン(HbO)濃度、(iii)脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度、(iv)総ヘモグロビン(ThB)濃度、及び(v)尺度(i)~(iv)のいずれかにおける相対的な変化のうちの1つ以上を含む測定データを含み得る。
【0051】
本システムは、1つ以上の光学センサの各検出器チャネルの品質を示す品質尺度を判定し、品質尺度が品質閾値未満であることに応答して、症状重症度及び/又は進行尺度を判定する際に、それぞれの検出器チャネルからのセンサデータを除外するように構成され得る。
【0052】
本システムは、タイムスタンプされたセンサデータ及びタイムスタンプされたタスクデータに基づいて、対象がタスクを実行している間に取得されたタスク関連センサデータを含むセンサデータのサブセットを判定するように構成され得る。本システムは、タスク関連センサデータから1つ以上の特性を抽出するように構成された特性抽出モジュールを更に備え得、センサデータ及びタスクデータに基づいて症状重症度及び/又は進行尺度を判定することは、1つ以上の特性及びタスクデータに基づいて症状重症度及び/又は進行尺度を判定することを含む。
【0053】
本システムは、1つ以上の特定のタスクを実行している対象を評価することと、タスクを行っているときの対象のパフォーマンスに基づいて、対象に1つ以上のタスクスコアを割り当てることであって、タスクデータは、1つ以上のタスクスコアを含む、割り当てることと、を行うように構成された、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーションを含み得る。
【0054】
制御デバイスは、電気刺激生成器に刺激指示を送信して、電気刺激生成器に、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の電極に経頭蓋電気刺激を送達させるように構成され得る。
【0055】
頭部装着可能アレイは、1つ以上の電極を更に担持し得る。
【0056】
本システムは、通信ネットワークにわたって制御デバイスと通信するコンピューティングデバイス又はサーバを更に備え得、コンピューティングデバイス又はサーバは、制御デバイスからセンサデータを受信することと、タスクデータを判定することと、センサデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度及び/又は進行尺度を判定することと、症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を行うように構成されている。制御デバイスは、センサデータをコンピューティングデバイス又はサーバに伝送するように構成され得る。
【0057】
制御デバイスは、刺激を付与する際に使用されるべきアレイの電極のサブセットの選択を可能にし、それによって、特定の対象の頭部サイズに合うように制御デバイスを調整するように構成され得る。制御デバイスは、ユーザインタフェースを介して、対象から頭部サイズ指標を受信するように、かつ頭部サイズ指標に基づいて、使用されるべき電極のサブセットを判定するように構成され得る。制御デバイスは、アレイの電極の1つ以上のサブセットの各々に、少なくとも第1の試験信号を送達することと、それぞれのセンサモジュールによって検出された試験応答を分析することと、検出された試験応答に基づいて、対象に好適な電極のサブセットを判定することと、対象の頭部に刺激を付与する際の使用のために好適な電極のサブセットを選択することと、を行うように構成され得る。
【0058】
本システムは、対象の頭部に対するアレイの正しい配置において対象を支援するように構成された位置決めフィードバックモジュールを更に含み得る。位置決めフィードバックモジュールは、システムのアレイを身に着けた対象の1つ以上の画像を判定することと、1つ以上の画像内の対象の1つ以上の顔の特性の位置を検出することと、判定された顔の特性に対する、1つ以上の画像内のアレイの位置を検出することと、アレイの判定された位置を目標位置と比較することと、アレイの位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、アレイが正しく配置されていることを判定することと、アレイの位置が許容可能な範囲内にあるという判定に応答して、アレイが不適切に配置されていることを判定し、ユーザインタフェースを介して対象にフィードバックを提供して、対象が目標位置を達成することを目的としてアレイを再位置決めすることを支援することと、を行うように構成され得る。
【0059】
いくつかの実施形態は、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するためのシステムであって、システムは、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、対象が1つ以上のそれぞれのタスクを行う際のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、センサデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度又は進行尺度を判定することと、症状重症度又は進行尺度を出力することと、を行うように構成されている、システムに関する。
【0060】
いくつかの実施形態は、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の行動的進行を推測するための方法であって、方法は、対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされるように配設された1つ以上の光学センサからセンサデータを受信することと、1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、センサデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度又は進行尺度を判定することと、症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を含む、方法に関する。
【0061】
いくつかの実施形態は、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測するための方法であって、方法は、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、対象の頭部の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上の光学センサから導出される、受信することと、1つ以上のそれぞれのタスクを行う際の対象のパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含むタスクデータを判定することと、センサデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度又は進行尺度を判定することと、症状重症度及び/又は進行尺度を出力することと、を含む、方法に関する。
【0062】
いくつかの実施形態は、対象の脳活動を検出するための制御デバイスと通信ネットワークにわたって通信するように配設されたサーバであって、サーバは、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、1つ以上のセンサが対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされ、対象が特定のタスクを実行している間に、制御デバイスに結合されたセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度を示す、受信することと、対象に関連するコンピューティングデバイス上に展開された認知評価アプリケーションから1つ以上のタスクスコアを受信することであって、認知評価アプリケーションは、特定のタスクを実行している対象を評価し、そのパフォーマンスに基づいて1つ以上のタスクスコアを対象に割り当てるように構成されている、受信することと、症状重症度又は進行判定モデルへの入力として、センサデータ及び1つ以上のタスクスコアを提供することと、症状重症度又は進行判定モデルの出力として、症状重症度又は進行尺度を判定することであって、症状重症度又は進行尺度は、神経学的状態の症状重症度、又は神経学的状態の症状の処置において対象が呈している進行を示す、判定することと、を行うように構成されている、サーバに関する。
【0063】
いくつかの実施形態は、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の行動的進行を推測するコンピュータ実装された方法であって、方法は、制御デバイスからセンサデータを受信することであって、センサデータは、1つ以上のセンサが対象の脳の標的化された領域に近接して位置決めされ、対象が特定のタスクを実行している間に、制御デバイスに結合されたセンサによって検出された2つの固有の波長における反射光強度を示す、受信することと、対象に関連するコンピューティングデバイス上に展開された認知評価アプリケーションから1つ以上のタスクスコアを受信することであって、認知評価アプリケーションは、特定のタスクを実行している対象を評価し、そのパフォーマンスに基づいて1つ以上のタスクスコアを対象に割り当てるように構成されている、受信することと、症状重症度又は進行判定モデルへの入力として、センサデータ及び1つ以上のタスクスコアを提供することと、症状重症度又は進行判定モデルの出力として、症状重症度又は進行尺度を判定することであって、症状重症度又は進行尺度は、神経学的状態の症状重症度、又は神経学的状態の症状の処置において対象が呈している進行を示す、判定することと、を含む、方法に関し得る。
【0064】
いくつかの実施形態は、1つ以上のプロセッサによって実行されたときに、コンピューティングデバイスに開示される方法を実行させる命令を記憶した、非一時的機械可読媒体に関する。
【0065】
いくつかの実施形態は、頭部装着可能な機器であって、複数の光学センサコンポーネントを含むアレイであって、コンポーネントは、アレイの長さに沿って配置され、各光学センサコンポーネントは、発光器と、第1及び第2の検出器と、を備え、発光器は、第1の相対的に短いチャネルを形成するよう、第1の検出器に近接して配置され、発光器は、第1の相対的に長いチャネルを形成するよう、第2の検出器から相対的に大きな距離に配置された、アレイと、光学センサコンポーネントの選択された発光器から光を放出させ、選択された光学センサコンポーネントの第1及び第2の検出器から反射光を示す信号を受信するように構成された、光学センサモジュールであって、信号は、発光器と検出器との対によって標的とされる領域における神経活動に関連する脳血流力学的応答を示す、光学センサモジュールと、を備え、アレイは、複数の電極を更に含み、各電極が、隣接する光学センサコンポーネントの対の間に配置される、機器に関する。発光器及び第1の検出器の両方が、アレイの第1の端部に向かって配置され、第2の検出器が、アレイの第2の端部に配置され得、1つ以上の電極は、対象に電気刺激を送達するように構成され得る。1つ以上の電極は、対象からの脳波(EEG)信号を判定するように構成され得る。
【0066】
この明細書全体を通して、「含む(comprise)」という語、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」等の変形は、記載された要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を含むことを意味するが、他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群を除外することを意味するものではないことは、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0067】
添付図面の様々なものは、単に本開示の例示的な実施形態を例解するものであり、その範囲を限定するものとみなされるものではない。
【0068】
【
図1】いくつかの実施形態による、ユーザに置かれた神経学的状態の症状をモニタリング及び/又は処置するための機器の概略図を描写する。
【
図2】いくつかの実施形態による、神経学的状態の症状をモニタリング及び/又は処置するための、
図1のデバイスを含むシステムアーキテクチャのブロック図を描写する。
【
図3】いくつかの実施形態による、
図1の機器のブロック図を描写する。
【
図4】いくつかの実施形態による、
図1の機器のマウントの、それぞれ正面図及び透視図を描写する。
【
図5】いくつかの実施形態による、
図1の機器のマウントの、それぞれ正面図及び透視図を描写する。
【
図6】いくつかの実施形態による、
図1の機器のマウントの、それぞれ正面図及び透視図を描写する。
【
図7a】いくつかの実施形態による、
図1の機器の電極及び光学センサのマウントアレイを描写する。
【
図7b】いくつかの実施形態による、
図1の機器の電極及び光学センサマウントアレイを描写する。
【
図8】いくつかの実施形態による、経頭蓋電気刺激の送達を制御する方法のプロセスフローを描写する。
【
図9A】経頭蓋直流刺激(tDCS)及び経頭蓋交流刺激(tACS)を含む複合電流の、時間に対するグラフ描写であり、複合電流は、いくつかの実施形態による、
図2のシステムの電気刺激源によって供給される。
【
図9B】経頭蓋直流刺激(tDCS)、経頭蓋交流刺激(tACS)、経頭蓋パルス電流刺激(tPCS)、経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、及び振動tDCS(otDCS)を含む電流の、時間に対するグラフ描写である。
【
図10】いくつかの実施形態による、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の行動的進行を推測する方法のプロセスフローを描写する。
【
図11】光信号から導出される酸素化ヘモグロビン(HbO)、脱酸素化ヘモグロビン(HbR)及び総ヘモグロビン(ThB)濃度の例示的なプロットである。
【
図12】いくつかの実施形態による、感知領域を描写する、
図1の機器の電極及び光学センサマウントアレイを描写する。
【
図13】いくつかの実施形態による、ユーザの頭部上の電極アレイの頭上から見た図を描写する。
【
図14】いくつかの実施形態による、ユーザの頭部上の電極アレイの頭上から見た図を描写する。
【
図15】電流(mA)に対する十分な刺激の確率の例示的なプロットである。
【
図16a】総合的ADHDスコアのカテゴリについての、予測された症状重症度尺度/スコア(症状重症度判定モデル327によって予測されたもの)に対する、実際の症状重症度尺度/スコア(ADHD評価尺度質問票スコアによる)の例示的なプロットである。
【
図16b】一次ADHD診断スコアのカテゴリについての、予測された症状重症度尺度/スコア(症状重症度判定モデル327によって予測されたもの)に対する、実際の症状重症度尺度/スコア(ADHD評価尺度質問票スコアによる)の例示的なプロットである。
【
図16c】不注意のカテゴリについての、予測された症状重症度尺度/スコア(症状重症度判定モデル327によって予測されたもの)に対する、実際の症状重症度尺度/スコア(ADHD評価尺度質問票スコアによる)の例示的なプロットである。
【
図16d】多動性のカテゴリについての、予測された症状重症度尺度/スコア(症状重症度判定モデル327によって予測されたもの)に対する、実際の症状重症度尺度/スコア(ADHD評価尺度質問票スコアによる)の例示的なプロットである。
【
図16e】衝動性のカテゴリについての、予測された症状重症度尺度/スコア(症状重症度判定モデル327によって予測されたもの)に対する、実際の症状重症度尺度/スコア(ADHD評価尺度質問票スコアによる)の例示的なプロットである。
【
図17】いくつかの実施形態による、活動判定モデルを使用して活動尺度を判定するプロセスの概略的な概要図である。
【
図18】いくつかの実施形態による、症状重症度又は進行判定モデルを使用して症状重症度又は進行尺度を判定するプロセスの概略的な概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
実施形態は、一般的に、対象の神経学的状態、特に注意欠陥多動性障害(ADHD)等の神経行動障害の症状のモニタリング、及びいくつかの実施形態においては処置のための、方法及びシステムに関する。
【0070】
神経行動障害を有する対象の脳への電気刺激の印加は、時間経過とともに、学習及び記憶形成に重要であると考えられている皮質機能の神経可塑的変化をもたらす、生理学的変化を誘導するのに有効である。しかしながら、かかる対象において、例えば、タスクを実行している間の特定の期間、認知的なパフォーマンスを改善するために必要とされる刺激の程度及び継続時間は、タスク毎に、また対象毎に異なり得る。いくつかの説明される実施形態は、対象への電気刺激の送達を制御し、電気刺激に応答して改善し得る対象の測定された脳活動に基づいて、電気刺激のパラメータを調節するための手法を開示する。
【0071】
いくつかの実施形態において、対象の脳への電気刺激の送達を制御し、神経活動に関連する脳血流力学的応答をモニタリング又は検出するためのシステムが提供される。いくつかの実施形態において、神経活動に関連する脳血流力学的応答を検出するためのシステムが提供される。本システムは更に、脳血流力学的応答に基づいて活動尺度を判定し、活動尺度に基づいてシミュレーションの1つ以上のパラメータを調節するように構成される。したがって、いくつかの実施形態において、本システムは、脳活動の「閉ループ」モニタリングを提供し、このことは、印加された刺激が実際に対象の脳に到達したことの確認、及びそれが所望の効果を生じているか否かの判定を可能にする。また、電流が届いていない場合、又は届いている電流が所望の効果を生じるのに十分でない場合に、動作がとられることを可能にすることもできる。例えば、刺激を送達するために使用される電極は、刺激の印加及び達成される結果を改善するために、調節され得、及び/又は刺激パラメータが変更され得る。このことは、患者の転帰を改善し得る。
【0072】
本システム又は本システムの少なくとも一部は、ヘッドセット等の頭部着用型の又は頭部装着可能な機器を含み、刺激を送達するための電極及び/又は脳活動をモニタリングするためのセンサを担持している。対象は、脳の特定のエリアを標的とするために、頭部着用型機器を着用した状態で、特定のタスク又は認知評価を実行するように求められ得る。いくつかの実施形態において、(スマートフォン等のような)コンピューティングデバイス上に展開された認知パフォーマンスモニタリングアプリケーションが、実行されるべきタスクをシステムの動作と連携させるために、システムと協力するように構成され得る。
【0073】
いくつかの実施形態において、本システム、又は本システムの機器は、制御デバイスが、対象の頭部上の重要な位置に位置決めされた、機能的近赤外分光法センサ(fNIRS)等の複数の光学センサ又はオプトードを介して、標的化されたエリア中の活動を検出又はモニタリングするように配設される。例えば、頭部着用型の機器は、対象の頭部に対してセンサを適切に位置決めするように構成され得る。対象による特定のタスクのパフォーマンスが、対象の脳の特定部位における活動をもたらすこととなり、この活動が、センサを介して制御デバイスによって検出及びモニタリングされる。
【0074】
制御デバイスは、ADHD等の神経行動障害の症状に対する処置又は有益な効果を生じることを目的として、脳の特定の領域を刺激するように、前頭部(額)等の対象の頭部における特定の位置又はその近傍に配置された複数の電極に、経頭蓋電気刺激が送達される(電気刺激生成器によって)ようにする。脳の特定領域における刺激は、ニューロン発火の可能性を増大させる(Chhatbar et al.,2018、Voroslakos et al.,2018、Islam,Aftabuddin,Moriwaki,Hattori & Hori,1995、Polania,Nitsche & Paulus,2010)。このような繰り返されるニューロン発火は、長期増強及び脳由来の神経栄養因子のアップレギュレーションを介して、ニューロン結合の強度を高めることが見出されている(Liebetanz,Nitsche,Tergau & Paulus,2002、Cocco et al.,2020、Cavaleiro,Martins,Goncalves & Castelo-Branco,2020)。このことは、学習及び神経可塑性のヘッブ理論と一致しており、ヘッブ理論は、ともに発火する細胞はともに配線されると述べている(Hebb,1949、Shatz,1992)。
【0075】
対象の神経興奮性は、電気刺激の印加に応答して変化し、皮質活動の変動は、センサを介して制御デバイスによって検出され得る。本システムは、電極に近接して位置決めされ得る光学センサからの測定データ(脳血流力学的応答データ)を分析するように構成され、測定データは、それぞれのセンサからの光学信号に基づくものであるか、又は光学信号を含む。例えば、光信号は、2つ以上の区別可能な波長における反射光の強度を示すものであり得、測定データは、光信号、及び/又は、酸素化ヘモグロビン(HbO)、脱酸素化ヘモグロビン(HbR)、及び/又は両者の組み合わせ(総ヘモグロビンThB)の濃度変化を示す曲線を含み得る。この分析に基づいて、本システムは、刺激によって影響を受けたものであり得る、標的とされている脳の領域の活動度を示す活動尺度を判定し、活動尺度に基づいて刺激パラメータの値を判定し、刺激パラメータを含む刺激指示を電気シミュレーション生成器に伝送して、電極を介して対象に送達されている又は送達されるべきシミュレーションを修正又は調節する。
【0076】
いくつかの実施形態において、本システムの制御デバイスは、測定データを分析するように構成されている。制御デバイスは、標的とされている脳の領域の活動度を示す活動尺度を判定し、活動尺度に基づいて刺激パラメータの値を判定し、刺激パラメータを含む刺激指示を電気シミュレーション生成デバイスに伝送して、電極を介して対象に送達されている又は送達されるべきシミュレーションを修正又は調節するように更に構成され得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、制御デバイスは、測定データを、例えばBluetooth等の無線通信ネットワークを介して、コンピューティングデバイス又はサーバに提供又はストリーミングするように構成され得る。コンピューティングデバイス又はサーバは、標的とされている脳の領域の活動度を示す活動尺度を判定し、活動尺度に基づいて刺激パラメータの値を判定するように構成され得る。コンピューティングデバイス又はサーバは、刺激パラメータを含む刺激指示を制御デバイスに伝送して、電気シミュレーション生成器に、電極を介して対象に送達されている又は送達されるべきシミュレーションを修正又は調節させることを、制御デバイスに行わせ得る。
【0078】
活動尺度は、センサから受信された光信号から抽出された特性又は特徴から導出され得るものであり、皮質活動の変化に関連するバイオマーカを示し得る。例えば、対象がタスクに取り組むことを開始し、及び/又は送達される電気刺激にさらされると、その結果生じる神経活動が、対象の脳の中の血管の局所ネットワークにおける生理学的変化を引き起こし、脳組織の単位当たりの脳血液量(CBV)、脳血流の速度、並びにオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの濃度に変化を引き起こし得る。検出される光信号は、活動度に関連するこれらの脳血流力学的応答を示す。
【0079】
いくつかの実施形態において、システム(例えば、制御デバイス、コンピューティングデバイス又はサーバ)は、センサ信号から抽出された特性を入力として受信し、活動尺度を出力として提供するように構成された、一変量又は多変量活動判定モデルを採用し得る。例えば、活動尺度は、標的化されたエリアにおける所望の活動レベルを達成するために十分な刺激が対象に送達されたか否か、又は、それが送達されたか否かに関連する信頼度スコアを示すものであり得る。活動尺度は、ユーザの脳活動が十分に活動的である、活動度が低い、過度に活動的である、反応性が高すぎる、十分に反応性がある、又は反応性が低いとみなされるかを示すものであり得る。
【0080】
かかる実施形態において、本システムは、活動尺度に基づいて、刺激パラメータ、又は刺激パラメータに対する変更を判定することができる。いくつかの実施形態において、本システムは、入力として、活動尺度、及びいくつかの実施形態においては以前に印加された刺激パラメータを受信し、かつ出力として更新された刺激パラメータ値を提供するように構成された、一変量又は多変量刺激制御判定モデルを採用し得る。刺激パラメータは、単にオン/オフパラメータ値であり得るか、又は、周波数、継続時間、振幅等のパラメータのための値を含み得る。制御デバイスは、刺激パラメータを含む刺激指示を電気刺激生成器に伝送して、例えば、刺激の停止を引き起こすために、又は刺激の特徴を調整することによって、患者に送達されている刺激を調節する。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイス又はサーバは、刺激指示を制御デバイスに伝送し得る。
【0081】
いくつかの実施形態において、活動判定モデル及び/又は刺激制御判定モデルは、制御デバイスが特定の対象にカスタマイズされた処置を提供するように構成されるように、対象から導出されたデータに対してトレーニングされ得る。ユーザに対してモデルをカスタマイズすることによって、モデルは、より正確になる傾向があり、改善した制御デバイスをもたらす。いくつかの実施形態において、活動判定モデル及び/又は刺激制御判定モデルのためのグローバルモデルが、複数の対象からの例を含むグローバルデータセットに対してトレーニングされ得る。グローバルデータセットは、年齢及び性別等の、候補対象と共通するいくつかの又はそれ以上の因子を有する対象から導出される例を含むように、フィルタリングされ得る。トレーニングされたグローバルモデルは次いで、候補対象に関連するデータ又は候補対象から収集されたデータに基づいて改良され、カスタマイズされたユーザ固有のモデルを提供し得る。グローバルデータセットに対してモデルをトレーニングし、トレーニングされたグローバルモデルをユーザ固有のデータに基づいて改良することによって、その結果のカスタマイズされたユーザ固有のモデルが、相対的に少ない候補対象データのセットに基づいて判定され得る。
【0082】
いくつかの実施形態において、対象は、脳の特定の領域を活性化するためのタスク又は活動を、それらのタスクによって活性化された脳の領域への刺激の効果を標的化することを目的として、実行する。かかるタスクは、作業記憶、注意、及び/又は衝動制御等の行動又は症状に焦点を当てたものであり得る。これらのタスクに関連するスコア(タスクデータ)、及びタスクの実行前、実行中及び実行後に記録されたセンサデータは、システムによって分析されて、症状重症度又は進行尺度を判定し得る。いくつかの実施形態において、本システムは、神経行動障害の複数の症状、行動、及び/又は経験に対する重症度スコアを判定するように構成され得る。
【0083】
症状重症度又は進行尺度は、センサから受信された光信号から抽出された特性又は特徴から導出され得るものであり、皮質活動の変化に関連するバイオマーカを示すものであり得る。例えば、対象がタスクに取り組むことを開始すると、その結果生じる神経活動が、対象の脳の中の血管の局所ネットワークにおける生理学的変化を引き起こし、脳組織の単位当たりの脳血液量(CBV)、脳血流の速度、並びにオキシヘモグロビン及びデオキシヘモグロビンの濃度の変化を引き起こし得る。検出される光信号は、活動に関連するこれらの脳血流力学的応答を示す。
【0084】
いくつかの実施形態において、本システム(例えば制御デバイス、コンピューティングデバイス又はサーバ)は、センサ信号から抽出された特性、及びタスクデータを入力として受信し、症状重症度又は進行尺度を出力として提供するように構成された、一変量又は多変量の症状重症度又は進行判定モデルを採用し得る。進行尺度は、以前に予測された症状重症度に対する症状重症度を示すものであり得、かくして対象が神経学的状態の症状の処置において呈している進行であり得る。例えば、症状重症度又は進行判定モデル327が、ADHDに関連する特徴又は行動の症状重症度又は進行を判定するように構成される場合、症状重症度又は進行判定モデル327は、出力として、総合的ADHD評価スケールスコア、ADHD中核症状スコア、不注意スコア、多動性スコア、及び衝動性スコアのうちの1つ以上についての値を提供し得る。
【0085】
いくつかの実施形態において、対象によって行われている、神経行動障害の症状を処置又はモニタリングするためのセッションに関連する情報は、プロセスに関連する通知、又はセッションの間の身体的状態及び/若しくはパフォーマンスの基準等の、対象のコンピューティングデバイス上に展開された認知パフォーマンスモニタリング若しくは評価アプリケーション又は他のアプリケーションに伝送され得る。
【0086】
本システムは、例えば、タスクを実行するときに脳の特定のエリア又は領域を刺激することを支援するために、アドホックベースでユーザによって使用され得、それによって、タスクを実行する際のユーザの即時のパフォーマンスを向上させ得る。したがって、本システムは、ユーザに短期的な利益を提供し得る。例えば、子どもが宿題をするときに、本システムを使用することを選択し得る。いくつかの実施形態において、本システムは、タスクを実行するときに脳の特定のエリア又は領域をモニタリングすることを支援するために使用され得、それによって、タスクを実行する際の脳の特定のエリア又は領域におけるユーザの神経活動についての情報を提供し得る。本システムは、例えば処置計画の一部として定期的に使用され得、それによって、脳由来の神経栄養因子の長期的な増強及び上方制御を介して神経結合の強度を高めることによって、ユーザの長期的な認知パフォーマンスを向上させ得る。
【0087】
図1は、ADHD等の神経行動障害の症状のモニタリング及び/又は処置のための機器100の実施形態を描写する。いくつかの実施形態において、症状は、標的とされる作業記憶、注意、及び/又は衝動制御である。
【0088】
いくつかの実施形態において、かつ例解されるように、機器100は、対象又はユーザ115によって頭部に着用されるように構成された、マウント125を備え得る。例えば、マウント125は、頭部に装着されるバンド又はキャップであり得る。機器100のマウント125の実施形態の更なる例が、以下でより詳細に考察されるように、
図4、
図5、及び
図6に例解されている。機器100は、ポータブル型の又は着用可能なヘッドセットであり得る。
【0089】
機器100は、目標エリア又は関心領域中のユーザ115の頭部の近くに又は頭部に取り付けられるように構成された、1つ以上の電極120を備え得る。いくつかの実施形態において、かつ例解されるように、電極120は、アレイ状に互いに対して配設され得、及び/又はマウント125によって担持され得る。電極は、制御デバイス110の制御下で、電気刺激生成器又は供給源350(
図3)から電気刺激を受信し、かつユーザ115の脳の目標エリアに経頭蓋電気刺激又は経頭蓋神経刺激を送達するように構成され得る。例えば、電極120は、経頭蓋直流刺激(tDCS)、経頭蓋交流刺激(tACS)、及び/又は経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)等の供給される電流を、目標エリアに送達するように構成され得る。電極120は、いくつかの個別に取り付け可能な電極、又はアレイ構成の1つよりも多い電極を含み得る。脳への電気刺激の印加は、脳活動に影響を与え、したがって、機器100がユーザ115によって着用されているときの、互いに対する、並びにユーザ115の頭部及び脳に対する、電極120の設定される場所又は位置が、脳の特定の領域が刺激の標的とされることを可能にする。
【0090】
機器100は、1つ以上の光学センサ130を更に備える。光学センサ130は、近赤外光(典型的には650~1000nmの波長を有する)を放出するように構成された機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)を備え、脳活動に関連する脳血流力学的応答を測定するように構成され得る。具体的には、光学センサ130は、2つ以上の異なる波長で光を放出するように構成されている。この目的のために、各光学センサ130は、発光器130A及び対応する光検出器130Bを備える(
図7a及び
図7b)。発光器130Aと光検出器130Bとの対は、
図7a及び
図7bに示されるように、マウント125上、及び/又は別様にユーザの頭部上に、同側に配設又は配置される、そのため、記録される測定値は、楕円形の経路に追従する後方散乱(反射)光によるものである。光学センサ130によって検出される反射光は、酸化ヘモグロビン(HbO)及び脱酸素ヘモグロビン(HbR)の濃度変化を示し、これらの感知信号(又は記録されたデータから導出される測定情報)は、分析のために制御デバイス110に提供される。機能的近赤外分光学センサ(fNIRS)は、Noman Naseer及びKeum-ShikHongによる「fNIRS-based brain-computer interfaces:a review」((2015)Frontiers in Human Neuroscience)に記載されるように(その全内容が参照により本明細書に組み込まれるものとする)、光強度測定に基づいて脳内のヘモグロビン濃度の変化を定量化することによって、神経-血管結合を介して、脳皮質のニューロン活動を間接的に測定する。
【0091】
光学センサ130は、ユーザの脳に対するセンサの配置に依存して、ユーザ115の脳の特定の領域における血液酸素化の変化を記録するように構成され得る。血中酸素の変化は、酸素の代謝によって示される、ニューロン活動の増大により増大したものであっても、ニューロン活動の低下によって減少したものであっても、脳の当該エリアのエネルギー必要量を表すため、脳活動の変化を反映するものである。このことは、光の反射及び吸収に基づく生の信号の分析によって、及び/又は生の信号を血流力学的応答に変換することによって、達成され得る。
【0092】
機器100が対象の頭部に適用される場合、光学センサ130は、発光器130Aと光検出器130Bとの対の間の中間又は中点にある、対象の脳の場所又は位置における脳活動を測定するように構成される。典型的に、各電極120を介して対象の脳に送達されている電気刺激のうちの最適なもの又は最大のものは、それぞれの電極120の真下の点におけるものである。したがって、光学センサ130は、刺激電極のまわりの及び刺激電極間の脳活動を測定するように構成される。光学センサ130、すなわち発光器130Aと光検出器130Bとの対の配置を、それぞれの電極120に対して設定することによって、対象の脳の特定の部位又は位置が、刺激及び関連する(又は反応性の)測定される脳活動の標的とされ得る。光学センサ130及び電極120の構成の一例は、
図7a、
図7b、及び
図12を参照しながら、以下により詳細に説明される。
【0093】
機器100のアレイ700がユーザの頭部上に配置されると、光検出器の対D1、D2及び発光器S1は、ユーザの脳の左前側頭領域の一部に向けられ、光検出器の対D3、D4、及びD5、D6、並びに発光器S2及びS3は、ユーザの脳の左外側前頭前皮質に向けられ、光検出器の対D7、D8及びD9、D10、並びに発光器S4及びS5は、ユーザの脳の内側前頭前皮質に向けられ、光検出器の対D11、D12及びD13、D14、並びに発光器S6及びS7は、ユーザの脳の右外側前頭前皮質に向けられ、光検出器の対D15、D16、及び発光器S8は、ユーザの脳の右前側頭領域に向けられる。
【0094】
光学センサ130としてのfNIRSセンサの使用は、他のセンサと比較した場合、相対的に低いコスト、携帯性、安全性、精度及び/又は使いやすさを可能にし得る。特に、fNIRSセンサは、磁気共鳴画像法(MRI)等の他の血液酸素化センサよりも、運動アーティファクトに対する感度が低くなる。fNIRSセンサはまた、脳波(EEG)等の他の電気センサと比較して、電気ノイズ及び運動アーティファクトの影響を受けにくい。したがって、光学センサ130としてのfNIRSセンサの使用は、センサ130が電極120の電気刺激部位の相対的に近くに配置されることを可能にし、それによって改善された読み取りを提供する。更に、fNIRSセンサは、EEGと比較して相対的に高い空間分解能を有し、説明される実施形態において、より高い信号品質を呈する。更に、fNIRSセンサは、EEGでは正確かつ効果的に行うことが困難である、刺激が送達されている間の活動データの測定及び記録を可能にする。このことは、神経信号は振幅が非常に小さいものであり、他の信号及びノイズによって目立たなくされてしまい得るためである。刺激生成器は電流を送達し、この電流がEEGによってピックアップされ、刺激信号の振幅は神経信号よりも何桁も大きなものとなる。電気刺激を印加しながらEEGを記録しようとすると、EEG信号の大部分は電気刺激に起因するものとなり、神経応答は検出が困難になり得る。更に、刺激はEEGセンサを飽和させ、神経信号を見ることを不可能にし得る。その結果、刺激が印加されている間にEEGを使用してデータを記録することは困難であり、センサの飽和の相対的に高い可能性のため失敗しやすく、またニューロン信号を回復しようと試みるための複雑な信号処理を含む。したがって、光学センサ130としてのfNIRSセンサの使用は、より高い精度の信頼性で、改善された信号品質のより効率の良い判定を可能にする。
【0095】
機器100は、制御デバイス110を更に備える。例解されるように、制御デバイス110は、ハウジング112中に収容され得る。ハウジング112は、光学センサモジュール340及び/又は電気刺激源350を更に備え得る(
図3)。ハウジング112は、電極120のためのリターン電極パッドとして機能する、電極(背後電極)123を備え得る。
図3を参照しながら以下でより詳細に考察されるように、制御デバイス110は、刺激指示を伝送するように構成され得、この刺激指示は、電気刺激源350に、電極120を介して、経頭蓋電気刺激を電極120及び脳の目標エリアに送達させるための、電気刺激源350に対する刺激パラメータ値を含み得る。制御デバイス110は、光学センサモジュール340を介してセンサ130から応答信号等の応答データを受信するように構成され得る。いくつかの実施形態において、電極120は、例えば対象の脳活動の尺度を判定することのような、送達されている電気刺激の尺度を判定するように構成され得る。例えば、かかる実施形態において、電極120は、脳波(EEG)信号を判定又は受信するように構成され得る。
【0096】
例解されるように、制御デバイス110及び/又はハウジング112は、センサ130に対してマウント125の後部に、又はセンサ130に対してマウント125の前部に、装着され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、マウント125の一部として形成され得る。例えば、制御デバイス110及び/又はハウジング112は、機器100が対象の頭部に装着されるときに、対象の額の近く又は額に、又は後頭部の近く又は後頭部に、位置決めされるように配設され得る。
【0097】
図2は、いくつかの実施形態による、対象への経頭蓋電気刺激の送達を制御する、及び/又は対象の神経活動をモニタリングするための、システムアーキテクチャ200のブロック図を描写する。制御デバイス110は、通信ネットワーク210を通して、サーバ230、1つ以上のコンピューティングデバイス220、及び/又はデータベース240と通信し得る。
【0098】
ネットワーク210は、1つ以上のメッセージ、パケット、信号、又はそれらの組み合わせ等の伝送、受信、転送、生成、バッファリング、記憶、ルーティング、切り換え、処理、又はそれらの組み合わせ等を行う1つ以上のノードを有する、1つ以上のネットワークの少なくとも一部を含み得る。ネットワーク210は、例えば、無線ネットワーク、有線ネットワーク、インターネット、イントラネット、公衆ネットワーク、パケット交換ネットワーク、回線交換ネットワーク、アドホックネットワーク、インフラストラクチャネットワーク、公衆交換電話網(PSTN)、ケーブルネットワーク、セルラネットワーク、衛星ネットワーク、光ファイバネットワーク、又はそれらの組み合わせ等のうちの1つ以上を含み得る。
【0099】
サーバ230は、複数のネットワークデバイス間でデータ又はリソースを共有するように構成された、1つ以上のプロセッサ又はコンピューティングデバイスを備え得る。サーバ230は、物理サーバ、仮想サーバ、又は1つ以上の物理サーバ若しくは仮想サーバの組み合わせを備え得る。
【0100】
データベース240は、ネットワーク210を通してネットワークデバイスからのデータを記憶するように構成されたデータストアを含み得る。データベース240は、サーバ230によってネットワーク210に接続された、又はネットワーク210に直接接続された、コンピューティングデバイスのメモリ中の仮想データストアを含み得る。
【0101】
電気刺激源350は、制御デバイス110から指示を受信して、その指示に応じて1つ以上の電極120に電気刺激を提供するように構成される。いくつかの実施形態において、電気刺激源350は、制御デバイス110に印加されている電気刺激の情報又はライブモニタリングフィードバックを提供して、制御デバイス110が、電極120に提供又は供給されている電気刺激の特徴をモニタリング及び/又は制御することを可能にし得る。例えば、制御デバイス110は、電気刺激源350のパフォーマンスをモニタリングして、電気刺激源350が指示されるどおりに、かつ許容可能な安全限界内で動作していることを確実にするように構成され得る。電気刺激源350はまた、制御デバイス110から受信された指示に基づいて、刺激パラメータ又は印加される電気刺激の特徴を修正するように構成され得る。
【0102】
電気刺激源350は、経頭蓋直流刺激(tDCS)、経頭蓋交流刺激(tACS)、及び/又は経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)等の電流を、1つ以上の電極120を通して、ユーザ115に供給するように構成され得る。いくつかの実施形態において、例えば電流が正であるが交番もするといったような、2つ以上の刺激タイプの組み合わせが使用され得る。このことは、tDCS及びtACSの両方の有益な効果を提供し得る。時間に対するtDCS及びtACSを含む組み合わせられた電流のグラフ描写が、
図9Aに描写される。いくつかの実施形態において、電気刺激源350は、0.1~10khzの周波数範囲で刺激を提供するように構成され得る。ピーク間の振幅は、0.5~4mAの範囲内であり得る。
【0103】
図9Bは、時間に対する、経頭蓋直流刺激(tDCS)、経頭蓋交流刺激(tACS)、経頭蓋パルス電流刺激(tPCS)、経頭蓋ランダムノイズ刺激(tRNS)、及び振動tDCS(otDCS)を含む電流のグラフ描写である。いくつかの実施形態において、otDCS信号は、tDCS、tACS、及びtPCSの組み合わせによって生成され得る。いくつかの実施形態において、描写された信号タイプのいずれかの組み合わせが、経頭蓋刺激(
図9Aに見られるようなtDCS及びtACSの組み合わせ等)を提供するために使用され得る。いくつかの実施形態において、tDCS、tACS、及び/又はtRNSの組み合わせが、経頭蓋刺激、又はotDCS及びtRNSの組み合わせを提供するために使用される。電気刺激源350は、電極120によって、
図9A及び
図9Bの描写される信号タイプのいずれかに対応する刺激を提供するために使用され得る。印加される刺激のタイプは、コンピューティングデバイス220を使用するユーザによって選択され得、このコンピューティングデバイスが、ネットワーク210を通して制御デバイス110に指示を発行する。
【0104】
制御デバイス110は、光学センサモジュール340から神経活動を示す信号又は測定値を受信するように構成され得る。光学センサモジュール340は、光学センサ130に接続されるように構成される。光学センサモジュール340は、fNIRS記録モジュールを備え得る。制御デバイス110からの指示の受信に応答して、光学センサモジュール340は、発光器130Aから光を放出させ、検出器130Bから検出又は測定された反射光を示す信号を受信するように構成される。例えば、光学センサモジュール340は、制御デバイス110から受信された指示又は信号を変調し、複合信号(搬送波に重ねられた指示又は入力信号)を発光器130Aに提供して、特定の特徴を有する光を発光器に放出させ得る。いくつかの実施形態において、検出器130Bによって検出された反射光信号は、光学センサモジュール340によって復調され、記録されたデータ又は測定値が制御デバイス110に提供される。他の実施形態において、制御デバイス110は、検出された反射光信号を復調し得る。いくつかの実施形態において、光学センサモジュール340は、発光及び検出の情報又はライブモニタリングフィードバックを制御デバイス110に提供して、光学センサモジュール340及びセンサ130の動作を制御デバイス110がモニタリング及び/又は制御することを可能にし得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、光学センサモジュール340は、検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するために、ロックインアンプ効果を作り出すように構成され得る。例えば、光学センサモジュール340は、制御デバイス110から受信された指示又は信号を変調し、複合信号(搬送波に重ねられた指示又は入力信号)を発光器130Aに提供して、特定の特徴を有する光を発光器に放出させるように構成され得る。例えば、光学センサモジュール340は、それぞれの光学センサモジュール340の発光器130Aを相対的に高い周波数、すなわち点滅周波数で、オン及びオフに切り換えるように構成され得る。換言すれば、発光器130Aは、点滅周波数で変調される。例えば、点滅周波数は、100hz以上、例えば125hzであり得る。結果として、それぞれの検出器130Bによって検出されたデータ又は信号は、点滅周波数付近の周波数に移動させられる。アナログ信号測定においては高周波数よりも低周波数においてしばしばノイズが多いので、応答信号を相対的に高い周波数に移動させることによって、応答信号のSNRが向上させられ得る。
【0106】
検出器130Bによって検出された応答信号からセンサデータを判定するために制御デバイスによって使用されるサンプリングレートは、検出される応答信号の最高周波数成分の少なくとも2倍でなければならない(ナイキストの定理)。しかしながら、サンプリングレートが高くなるほど、信頼性の高いサンプルを取得することがより困難になる傾向があり、より多くのサンプルが取得され、及び/又は制御デバイス110のプロセッサ310が他の処理タスクを実行する必要がある時間が短くなる。したがって、いくつかの実施形態において、発光器信号130Aの最高周波数成分の4倍のサンプリングレートが選択される。例えば、点滅周波数は125hzであり得、サンプリングレートは例えば500hzであり得る。
【0107】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、例えば無線でコンピューティングデバイス及び/又はサーバと通信するように構成された無線デバイスであり得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110はBluetooth対応のものであり得る。
【0108】
上述したように、相対的に高い周波数でサンプリングすることは、対応して相対的に多数のデータサンプルの取得をもたらす。例えば、機器100が、各々が短いチャネル及び長いチャネルを提供する8つの光学センサ130(又は光学センサコンポーネント130)を担持する実施形態を考えると、(500サンプル/秒)*(3バイト/チャネル/秒)*(16検出器チャネル(すなわち検出器130B))=24キロバイト/秒となる。かかるデータレートは、低エネルギーBluetoothプロトコルBLE5.0を利用するには高すぎる(典型的には、BLE5.0では最大約5キロバイト/秒が伝送され得る)。したがって、低エネルギーBluetooth等のいくつかの無線技術を使用して、取得されたデータをこのレートでコンピューティングデバイス、サーバ、又は他のコンピュータに無線で伝送するには、ダウンサンプリング及び/又は復調が必要になり得る。いくつかの実施形態において、データレートは、検出された応答信号を復調することによって低減され得る。例えば、16本の検出器チャネルは、44本の機能的チャネル等の、より多くの機能的チャネルに分割され得る。いくつかの実施形態において、36本の長いチャネル及び8本の短いチャネルが使用される。例えば、中心電極が除去又は省略された
図7の機器100が、使用され得る。長短のチャネルの構成は、
図12を参照しながら以下でより詳細に考察される。データはまた、10Hzのサンプリングレートにダウンサンプリングされ得る。この例において、新しいデータレートは元のレートのほぼ10%であるが、依然として有益な情報を保持しており、(10サンプル/秒)*(6バイト/チャネル/秒)*(44チャネル)=2.64キロバイト/秒/となる。したがって、センサデータが、相対的に高い精度(例えばサンプル当たり3バイト)で取得され得る。
【0109】
機器100は、各々が一対のデータチャネルを含む、44本の機能的チャネル等の複数の機能的チャネルを備え得る。機能的チャネルは、発光器と検出器との対を含み得る。発光器と検出器との対によって達成可能な頭部への測定の深さは、一対の発光器と検出器との間の距離に依存する。いくつかの実施形態において、機能的チャネルは、長いチャネル又は短いチャネルを含み得る。長いチャネルは、供給源と検出器とが相対的に大きな距離で互いから離隔されている機能的チャネル対を含み得る。例えば、長いチャネルの場合、発光器と検出器との対は、互いから約3cm離隔され得る。短いチャネルは、発光器と検出器とが、約1cm等の相対的に短い距離だけ互いから離隔されている機能的チャネル対を含み得る。長い機能的チャネルと短い機能的チャネルとが分離されて、異なる測定を行い得る。短いチャネルは、供給源と検出器との間のより短い距離のため、頭皮における血液酸素化の測定するために使用され得る。長いチャネルは、対象の頭皮及び脳の両方からの血液酸素化を測定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、頭皮からの血液酸素化の測定は、望ましくない影響となり得る。かかる実施形態において、データ分析の間にそれぞれの長いチャネルによって判定された測定値から望ましくない影響を判定し減算することを可能にするために、短いチャネルが使用され得る。いくつかの実施形態において、44本の機能的チャネルは、8本の短い機能的チャネル及び36本の長い機能的チャネルを含み得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、取得されたセンサデータの評価及び処理が、制御デバイス110以外のコンピューティングデバイス又はサーバ上で実行されることが好ましいものとなり得る。例えば、制御デバイス110のプロセッサ310は、他のタスクを実行しながら追加的なデータ処理を実行するのに十分に強力ではないものであり得る。制御デバイス110は、低電力コンポーネントを使用するものであり得、長期間使用されるために大きなバッテリを必要としないものであり得る。記録されたセンサデータは、追加的な処理及びローカル/クラウドの記憶のために外部デバイスに送信され得る。制御デバイスは、センサデータを記録するために使用される無線ヘッドセットであり得、取得されたセンサデータの評価及び処理は、コンピューティングデバイス220又はサーバ230上で実行され得る。
【0111】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、電気刺激源350及び光学センサモジュール340と協働して、閉ループの刺激及び/又は対象の脳活動のモニタリングを提供するように構成される。閉ループモニタリングは、神経行動障害等の神経学的症状の特定の症状を処置するための、情報に基づいた刺激の印加を可能にする。
【0112】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、電気刺激源350に、短パルスの形で電極120に電気刺激を提供するように指示するように構成される。各短パルス信号は、振幅、周波数、継続時間及びオフセットによって特徴付けられ得る。いくつかの実施形態において、各短パルスは一度に1つずつ送達される。電極への各パルスの送達の後、光学センサモジュール340は、センサ130を介して脳活動を記録し、その記録又は測定値を評価のために制御デバイス110に提供するように構成される。
図3を参照しながら以下でより詳細に考察されるように、制御デバイス110は、光学センサモジュール340から受信された情報に基づいて活動尺度を判定する。例えば、いくつかの実施形態において、活動尺度は、ユーザの脳活動が、十分に活動的である、活動度が低い、過度に活動的である、反応性が高すぎる、十分に反応性がある、又は反応性が低いと判定される、指標であり得る。脳の活動度及び刺激の目的に依存して、制御デバイス110は、電気刺激源350に、同じ又は異なる特徴を有するより多くのパルスを送達するように指示し得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、単一の相対的に長いセッションの形で電極120に電気刺激を提供するように、電気刺激源350に指示するように構成される。電気刺激信号は、振幅、周波数及びオフセットによって特徴付けられ得る。光学センサモジュール340は、電極への刺激の印加の間に、センサ130を介して脳活動を記録し、その記録又は測定値をリアルタイムでの(同時に、すなわち脳が刺激されている間に)評価のために制御デバイス110に提供するように構成される。制御デバイス110は、光学センサモジュール340から受信された情報に基づいて活動尺度を判定する。例えば、いくつかの実施形態において、活動尺度は、ユーザの脳活動が、十分に活動的である、活動度が低い、過度に活動的である、反応性が高すぎる、十分に反応性がある、又は反応性が低いと判定される、指標であり得る。脳の活動度及び刺激の目的に依存して、制御デバイス110は、電気刺激源350に、送達されている電気刺激の刺激パラメータ(すなわち信号の特徴)を調節するように指示し得る。例えば、制御デバイス110は、電気刺激源350に電極120への電気刺激の提供を停止させ得るか、又は電極120に提供されている信号の特徴のうちの1つ以上を調節させ得る。
【0114】
制御デバイス110は、電気刺激源350若しくは光学センサモジュール340から受信されたデータ、又は制御デバイス110自体によって生成されたデータを、更なる処理のためにサーバ230に、又は記憶のためにデータベース240に、伝送するように構成され得る。制御デバイス110はまた、サーバ230から指示又はデータを受信するように配設され得る。例えば、サーバ230は、制御デバイス110がどのように動作するかを修正するために、構成指示又は更新情報を制御デバイス110に伝送するように構成され得る。
【0115】
制御デバイス110は、コンピューティングデバイス220に情報を送信及びコンピューティングデバイス220から情報を受信し得る。コンピューティングデバイス220は、コンピュータ、スマートフォンデバイス、ラップトップ、タブレット、又は他の好適なデバイスを含み得る。コンピューティングデバイス220は、1つ以上のプロセッサ222と、プロセッサ222によって実行されたときに、コンピューティングデバイス220に、制御デバイス110と協働して、説明される方法に従ってプロセスを実行させる命令(例えばプログラムコード)を記憶するメモリ224と、を備え得る。コンピューティングデバイス220は、ユーザに関連付けられたコンピューティングデバイスであり得るか、又は、例えばユーザの臨床医若しくは他の臨床医のコンピューティングデバイスであり得る。
【0116】
コンピューティングデバイス220は、通信ネットワーク210のコンポーネントとの通信を容易化するネットワークインタフェース226を備える。コンピュータデバイス220はまた、ユーザがパフォーマンスモニタリングアプリケーション225、及びコンピューティングデバイス220によって提供される他のアプリケーション又は機能とインタラクトすることを可能にする、ユーザインタフェース228を備え得る。
【0117】
メモリ224は、認知パフォーマンスモニタリング又は認知評価アプリケーション225を含む。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、プロセッサ222によって実行されたときに、コンピューティングデバイス220が、制御システム110と協働して、対象が機器100を使用して処置を受けているとき、又は対象が機器100を使用してモニタリングされているときに、対象の認知パフォーマンスをモニタリングすること、及び、いくつかの実施形態において、制御デバイス110の動作を制御することを可能にする。認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、対象のコンピューティングデバイス220上にダウンロードされるか、又は別様に展開される。
【0118】
いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、ユーザの進行についてのデータを制御デバイス110から受信して保存するように配設され得、このデータは、ユーザに表示され、及び/又はサーバ230又は別のコンピューティングデバイス220に提供され得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、睡眠データ、マインドフルネス活動、運動、食事、及び/又は個人の認知パフォーマンスに影響を及ぼし得る他の情報等の行動データを、受信及び追跡するように構成され得る。例えば、ユーザは、ユーザインタフェース228を介してかかる情報を入力し得るか、又は、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225が、歩数計等のコンピューティングデバイス220上で動作する他のアプリケーション、又はスマートウォッチ等の他のユーザデバイス上で動作する他のアプリケーションと協働するように構成され得る。認証された臨床医は、ユーザのコンピューティングデバイス220上に展開された認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225への、又はデータベース240若しくはサーバ230に記憶されているユーザに関連するファイルへの、アクセスを提供され得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、タスクによって活性化される脳の領域への刺激の効果を標的化することを目的として脳の特定の領域を活性化するために、及び機器100を使用した結果の刺激の効果をモニタリングするために、機器100を使用して処置を行うときに、ユーザによって実行され得る1つ以上のゲーム、タスク、活動又はアプリケーションを含み得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225のタスクは、機器100を使用した神経活動をモニタリング又は測定することを目的として、脳の特定の領域を活性化するために(脳への電気刺激の送達なしで)、ユーザによって実行され得る。例えば、かかる対とされた活動は、作業記憶、注意、及び/又は衝動制御を含むタスクに焦点を当てたものであり得る。いくつかの実施形態において、アプリケーション225は、電気刺激セッションとは独立して又は電気刺激セッションの間に完了される、一連のタスクベースの活動及び/又は心理測定試験を更に含む。このことは、標準化された活動のベースラインセットの有益な効果を提供し得るものであり、ユーザ115の脳活動のより一貫した分析を可能にし、制御デバイス110又はコンピューティングデバイス220のモデルがトレーニングされ得る一貫したベースラインを提供し得る。認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、臨床医及び/又はユーザに、経時的なユーザのパフォーマンスについてのフィードバックを提供することもでき、このフィードバックは、処置の選択肢、計画及び/又は制御デバイス110の動作パラメータを判定する際に使用され得る。ユーザに自らのパフォーマンス及び理想的には改善を時間とともに追跡してもらうことは、ユーザのモチベーションを高め、処置に取り組み持ち遵守するように奨励し得る。
【0120】
認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、ユーザインタフェース228を介してユーザから入力を受信し得る。入力は、対とされたタスクを実行するための指示に関連するものであり得る。入力は、制御デバイス110への指示の送信及び制御デバイス110からの指示の受信を含む、制御デバイス110の動作のための指示に関連するものであり得る。コンピューティングデバイス220は、1つ以上の電極120若しくは1つ以上の光学センサ130に関連するデータ、制御デバイス110からのデータ、又はサーバ230及びデータベース240からのデータを含む、機器100についての情報を、ユーザに表示するように更に構成され得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、例えばユーザインタフェース228を介したユーザ入力に応答して、制御デバイス110を起動又は開始し、電極への刺激の送達、及び/又は標的とされている領域に対する刺激の効果のモニタリングを開始するための指示を伝送し得る。同様に、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、制御デバイス110に指示を送信することによって、電気刺激セッション及び/又はセンサデータの記録を、一時停止又は非アクティブ化し得る。換言すれば、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、機器100の制御デバイス110の動作を制御するために使用され得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、タスクデータを制御デバイス110又はサーバ230に伝送するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110又はサーバ230は、制御デバイス110からタスクデータを受信し得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220は、例えば、ユーザインタフェース360を使用したユーザ入力を介して、他の場所から補足的なタスクデータを受信し得る。タスクデータは、セッションの間又は処置を受けている間に、ユーザによって実行されるべきタスクのタイプを示すものであり得る。制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、タスクデータを使用して、1つ以上の刺激パラメータ値を判定し得、及び/又は活動尺度を判定し得る。例えば、必要とされる刺激、活動尺度及び/又は刺激パラメータ値を判定するための閾値及び/又は特性は、タスク毎に異なり得る。いくつかの実施形態において、タスクデータは、タスクを実行する際にユーザによって達成された1つ以上のスコアを含み得、制御デバイス110によって測定データと組み合わせて使用されて、対象の行動的進行を推測し得る。例えば、スコアは、タスクの実行に関連する精度及び/又は反応時間を示すものであり得る。他の実施形態において、記録されたデータ及び/又は活動尺度及びスコアを含むタスクデータは、対象の行動的進行を推測する処理のためにサーバ230(リモートサーバ等)に伝送され得る。
【0122】
図3は、いくつかの実施形態による、経頭蓋電気刺激の送達を制御するための、及び/又は脳活動をモニタリングするための、システム300の概略図を描写する。この図において、
図2の制御デバイス110の機能コンポーネントが、より詳細に描写されている。しかしながら、他の実施形態において、制御デバイス110の機能コンポーネントのうちの1つ以上が、コンピューティングデバイス220及び/又はサーバ230等の、他のデバイス又はシステム上に展開され得ることは、理解されるであろう。
【0123】
制御デバイス110は、ハウジング112内に収容され得る。ハウジング112は、光学センサモジュール340及び/又は電気刺激源350を更に含み得る。いくつかの実施形態において、電気刺激源350及び/又は光学センサモジュール340は、ハウジング112の外にあり得る。ハウジング112は、ユーザ115に供給される電気刺激及び/又は光学感知を手動でオン又はオフに切り換えるように構成された、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)355を更に含み得る。いくつかの実施形態において、HMI355は、システム300をアクティブ状態、パッシブ状態、及び電源オフ状態の間で切り換えるように構成され得る。
【0124】
制御デバイス110は、1つ以上のプロセッサ310と、プロセッサ310によって実行されたときに、説明される方法に従って制御デバイス110を機能させる指示(例えばプログラムコード)を記憶するメモリ320と、を備える。プロセッサ310は、1つ以上のマイクロプロセッサ、中央処理デバイス(CPU)、グラフィック/グラフィックス処理ユニット(GPU)、特定用途向け命令セットプロセッサ(ASIP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又は命令コードを読み取り実行することが可能な他のプロセッサを備え得る。プロセッサ310は、追加的な処理回路を含み得る。例えば、プロセッサ310は、複数の処理チップ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、アナログ-デジタル又はデジタル-アナログ変換回路、又は本明細書に説明される機能を実行するための処理能力を有する他の回路若しくは処理チップを備え得る。プロセッサ310は、本明細書に説明される全ての処理機能を制御デバイス110上でローカルに実行し得るか、又は、いくつかの処理機能をローカルに実行し、他の処理機能をサーバ230若しくはコンピューティングデバイス220等の別の処理システムにアウトソーシングし得る。
【0125】
メモリ320は、1つ以上の揮発性又は不揮発性メモリタイプを含み得る。例えば、メモリ320は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、電気的に消去可能なプログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、又はフラッシュメモリのうちの1つ以上を含み得る。メモリ320は、プロセッサ310によってアクセス可能なプログラムコードを記憶するように構成される。プログラムコードは、実行可能なプログラムコードモジュールを含む。換言すれば、メモリ320は、プロセッサ310によって実行可能となるように構成された実行可能コードモジュールを記憶するように構成される。実行可能コードモジュールは、プロセッサ310によって実行されたときに、以下により詳細に説明されるように、制御デバイス110に特定の機能を実行させる。
【0126】
メモリ320は、特性抽出モジュール322、分析エンジン324、及び/又は刺激制御モジュール326を備え得る。
【0127】
特性抽出モジュール322は、プロセッサ310によって実行されたときに、制御デバイス110に、光学センサモジュール340によって記録され、光学センサモジュール340から受信された信号又はデータの特徴又は特性を識別又は抽出させる、実行可能プログラムコードを含む。光学センサモジュール340又は制御デバイス110によって測定又は算出される信号は、Hbo及びHbr、Hbo及びHbr曲線、並びに、総ヘモグロビンThB(ThB=Hbo+Hbr)を含む、それらの組み合わせの変化を含み得る。
【0128】
特性は、認知機能若しくは認知パフォーマンス又は皮質活動に関連するバイオマーカの特徴又はかかるバイオマーカを示すものであり得る。いくつかの実施形態において、特性抽出モジュール322は、以下のうちの1つ以上を判定するように構成される:
・ピーク振幅、
・ピーク幅、
・ピークの数(例えば二峰性信号)、
・信号の一部の傾き、
・自己回帰移動平均(ARMA)係数、
・振幅又は傾きの立ち上がり時間、
・ベースライン活動度、
・ベースライン傾向、
・ゼロ交差の数、
・HbOとHbRとの相関等の、ヘモグロビン値、
・ピークの立ち上がり時間、
・振幅、幅、傾き、又は他の特徴に関する、HbRに対するHbOの比、
・総血液量の変化、
・信号形態、及び、
・曲線の下の面積。
【0129】
他の実施形態において、他の信号特性又は特徴が抽出され得る。特性抽出モジュール322は、抽出された特性を分析エンジン324への入力として提供する。いくつかの実施形態において、特性抽出モジュール322は、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220上に展開され得る。
【0130】
いくつかの実施形態において、特性は、機器100のチャネルの対の間の機能的接続性、すなわち、脳の隣接する領域又は別個の領域からのデータの対の間の統計的依存性及び/又は類似性を含むか、又はかかる機能的接続性を示すものである。いくつかの実施形態において、特性は、1つ以上のチャネルから導出されたデータに適用される統計を含むか、又はかかる統計を示すものである。
【0131】
例えば、活動判定モデル328によって活動尺度を判定するために使用される特性は、対象の左外側前頭前皮質、内側前頭前皮質、及び/又は内側前頭前部と左外側前頭部との境界から取得されたセンサデータから抽出され得る。総合的ADHD症状重症度尺度を判定するために症状重症度又は進行判定モデル327によって使用される特性は、対象の右外側前頭前皮質から取得されたセンサデータから抽出され得る。また、タスクデータからの反応時間及び省略エラー基準が、症状重症度又は進行判定モデル327への入力特性を判定し、総合的ADHD症状重症度尺度を判定するために、使用され得る。
【0132】
一次ADHD中核症状スコアを判定するために症状重症度又は進行判定モデル327によって使用される特性は、対象の右外側前頭前皮質から取得されたセンサデータから抽出され得る。
【0133】
不注意スコアを判定するために症状重症度又は進行判定モデル327によって使用される特性は、対象の内側前頭前皮質、及び/又は内側前頭前皮質と左外側前頭前皮質との境界領域から取得されたセンサデータから抽出され得る。また、タスクデータからの反応時間及び省略エラー基準が、症状重症度又は進行判定モデル327への入力特性を判定し、不注意重症度尺度を判定するために使用され得る。
【0134】
多動性スコアを判定するために症状重症度又は進行判定モデル327によって使用される特性は、対象の右外側前頭前皮質、左外側前頭前皮質、及び/又は左外外側前頭前皮質及び内側前頭前皮質と重なる領域から取得されたセンサデータから抽出され得る。
【0135】
衝動性重症度尺度を判定するために症状重症度又は進行判定モデル327によって使用される特性は、対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の右外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質から取得されたセンサデータから抽出され得る。タスクデータの反応時間基準に基づく特性値が、症状重症度及び/又は進行判定モデルに提供されて、衝動性重症度尺度を判定し得る。
【0136】
分析エンジン324は、制御デバイス110によって実行されたときに、光学センサモジュール340によって測定された脳血流力学的応答に基づいて、標的化された領域におけるユーザ又は対象の測定された脳活動を示す活動尺度を判定するように構成された、実行可能プログラムコードを含み得る。分析エンジン324は、制御デバイス110によって実行されたときに、神経学的状態の症状を示す症状重症度尺度、又は、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225によって収集され得るような、光学センサモジュール340によって測定された脳血流力学的応答及びタスクデータに基づいて、標的化された領域において測定された脳活動に基づいて、神経学的状態の症状を処置している対象の進行を示す進行尺度を判定するように構成された、実行可能プログラムコードを含み得る。換言すれば、分析エンジン324は、記録されたfNIRSデータから、いくつかの実施形態では更にタスクデータから、実行機能パフォーマンスを推測する。
【0137】
いくつかの実施形態において、複数のセンサ130から検出された特性は組み合わせて又は互いに対して分析されて、行動又は活動のパターンを判定し得る。例えば、連続するセンサ又はチャネルが正の振幅を示しているが、それらの正のセンサを囲むセンサが明確に負の振幅を示している場合、酸素化された血液がある領域から別の領域に移動していることを示すバイオマーカであり得る(例えば「盗血仮説」で説明される)。
【0138】
いくつかの実施形態において、分析エンジン324は、単変量又は多変量の活動判定モデル328を備える。活動判定モデル328は、機械学習モデルであり得る。活動判定モデル328は、センサ信号から抽出された特性を入力として受信し、かつ活動尺度を出力として提供するように構成され得る。例えば、活動尺度は、脳の標的化された領域が十分な活動レベルを呈しているか否か、及びこれに加えて、目標エリアにおいて所望の活動レベルを達成するために十分な刺激が対象に送達されたか否かを、示すものであり得る。このことは、活動尺度を閾値と比較することを含み得る。他の実施形態において、活動尺度は、標的化された領域において十分な活性が生じているか否かに関連する信頼度スコアであり得る。いくつかの実施形態において、活動判定モデル328は、一般的な線形モデル分析、ベータ値又は回帰分析、ロジスティック回帰、線形回帰、ニューラルネットワーク、及び信号のあるチャネルにおける活動度の別のチャネルに対する比較等の技術を使用し得る。
【0139】
いくつかの実施形態において、分析エンジン324は、刺激制御モジュール326への入力として活動尺度を提供する。刺激制御モジュール326は、単変量又は多変量モデル329を利用し得る。刺激制御モジュール326は、機械学習モデルであり得る。刺激制御モジュール326は、活動尺度を入力として受信し、刺激パラメータ値を出力として提供するように構成され得る。刺激パラメータは、単にオン/オフのパラメータ値であり得るか、又は、周波数、継続時間、振幅等のパラメータの値を含み得る。
【0140】
いくつかの実施形態において、分析エンジン324又は分析エンジン324の活動判定モデル328は、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220上に展開され得る。かかる実施形態において、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220は、活動尺度を判定し、その活動尺度を制御デバイス110に提供するように構成され得、制御デバイス110は次いで、刺激パラメータ値を判定し得る。いくつかの実施形態において、刺激制御モジュール326は、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220上に展開され得、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220は、制御デバイス110に刺激パラメータ値を提供して、対象に送達されている刺激を制御するように構成され得る。
【0141】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、刺激パラメータを含む刺激指示を電気刺激源350に伝送して、例えば、刺激の停止を引き起こすために、又は刺激信号の特徴を調節することによって、患者に送達されている刺激を調節する。
【0142】
いくつかの実施形態において、分析エンジン324は、単変量又は多変量の症状重症度又は進行判定モデル327を含む。症状重症度判定モデル327又は進行判定モデル327は、機械学習モデルであり得る。症状重症度又は進行判定モデル327は、記録されたデータ又は測定データから抽出された1つ以上の特徴又は特性、及び、データが記録されている間に対象によって実行されたそれぞれのタスクに関連する1つ以上のスコアを、入力として受信するように、かつ症状重症度尺度又は進行尺度を出力として提供するように構成され得る。例えば、スコアは、タスクの実行に関連する精度及び/又は反応時間を示すものであり得る。各々が特定のタスクについてのセンサデータ及び関連するスコアを含む複数のデータセットが、症状重症度尺度又は進行尺度を判定するために使用され得る。例えば、データのセットは、特定の期間にわたるものであり得る。いくつかの実施形態において、ベースライン又はデータの初期セットが判定され、そのベースラインに対して進行が評価される。いくつかの実施形態において、判定された進行尺度は、最近判定された進行尺度又は症状重症度尺度に対して判定される。いくつかの実施形態において、症状重症度又は進行判定モデル327は、特定のタスクに関する行動の進行を推測するように構成された1つ以上のサブモデルを含み得る。他の実施形態において、症状重症度又は進行判定モデル327は、複数のそれぞれの試験に関連するスコアを入力として受信するように構成され得る。症状重症度又は進行判定モデル327は、1つ以上の症状に関連する症状重症度の指標又は値を提供するように構成され得る。例えば、症状重症度又は進行判定モデル327が、ADHDに関連する特徴又は行動の症状重症度又は進行を判定するように構成されている場合、症状重症度又は進行判定モデル327は、出力として、総合的ADHD評価スケールスコア、ADHD中核症状スコア、不注意スコア、多動性スコア、及び衝動性スコアのうちの1つ以上の値を提供し得る。
【0143】
いくつかの実施形態において、症状重症度又は判定モデル327は、リモートサーバ等のサーバ230又はスマートフォン等のコンピューティングデバイス220上に展開され得、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220が、症状重症度又は進行尺度を判定するように構成され得る。例えば、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220は、制御デバイス110又は特性抽出モジュール322及び/又は認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225から、例えばスコアを含むタスクデータ、及び記録又は測定データを、受信又は判定するように構成され得る。
【0144】
システム300は、コンピューティングデバイス220、データベース240及び/又は他のシステム若しくはサーバ230等の、ネットワーク210にわたってシステム300のコンポーネントとの通信を容易化するためのネットワークインタフェース又は通信モジュール330を備える。通信モジュール330は、関連する通信チャネルを通した通信を確立、維持及び促進するのに好適な、ネットワークインタフェースハードウェアとネットワークインタフェースソフトウェアとの組み合わせを含み得る。通信モジュール330は、無線Ethernetインタフェース、SIMカードモジュール、Bluetooth接続、又はネットワーク210を通した無線通信を可能にする他の適切な無線アダプタを備え得る。例えば、いくつかの実施形態において、制御デバイス110及びコンピューティングデバイス220は、Bluetoothを介して互いと通信するように配設される。いくつかの実施形態において、有線通信手段が使用される。
【0145】
例えば、いくつかの実施形態において、システム及び/又は制御デバイス110は、無線ヘッドセット等の無線システム又はデバイスであり得る。かかる実施形態において、システム300及び/又は制御デバイス110のコンポーネントは、例えば相対的に大型のバッテリを必要することなく長時間の使用を可能にするために、特に低電力動作のために選択又は構成され得る。このことは、デバイス又はシステム全体のサイズが縮小されることを可能にし、製造が安価となり得る。
【0146】
活動判定モデル328及び/又は症状重症度又は進行判定モデル327は、例えば、fNIRSデータから活動尺度を推測するようにトレーニングされた、ロジスティック回帰、線形回帰及びニューラルネットワーク等のモデルに基づくものであり得る。いくつかの実施形態において、活動判定モデル328及び/又は症状重症度又は進行判定モデル327は、トレーニングデータサブセットと試験データサブセットとに分割されたトレーニングデータセットを使用する教師あり機械学習アプローチを使用してトレーニングされる。トレーニングデータセットは、臨床的に関連する神経行動障害評価スケール質問票に回答し、光学センサモジュール340がfNIRSデータを記録している間に実行機能パフォーマンスを測定する心理測定試験を実行した、複数の個人についてのデータを含む。したがって、トレーニングデータは、複数の個人の各々についての例示的なデータを含む。例示的なデータは、心理測定試験の結果(及びいくつかの実施形態においては試験のタイプ)、並びにそれぞれの試験の実行されている間に記録された関連するfNIRSデータを含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、活動判定モデル328及び/又は症状重症度又は進行判定モデル327は、光信号データ、タスクデータ(例えば心理測定試験の結果)及び/又は刺激パラメータの間の追加的な関係を明らかにするのに役立つ、教師なし機械学習を利用して、トレーニングされ得る。活動判定モデル328及び/又は症状重症度又は進行判定モデル327はまた、ユーザ115の処置において医療専門家に提供されるフィードバックの基礎を形成し得る。このようにして、一貫したフィードバックが臨床医に提供されて、ユーザの進行の評価及び処置の判定、並びにいくつかの実施形態においては制御デバイス110の再設定において、臨床医を支援することができる。いくつかの実施形態において、活動判定モデル328は、特定のタスクに関する脳活動を推論するように構成された1つ以上のサブモデルを含み得る。他の実施形態において、活動判定モデル328は、複数のそれぞれの試験に関連するスコアを入力として受信するように構成され得る。
【0148】
いくつかの実施形態において、刺激制御モデル329は、実験的に異なる刺激パラメータの有効性の評価又は鑑定に基づいて判定又はトレーニングされ得る。例えば、刺激制御モデル329は、ロジスティック回帰、線形回帰、及び/又は教師あり機械学習アプローチを使用してトレーニングされたニューラルネットワーク等のモデルを含み得る。いくつかの実施形態において、同様の心理測定試験が、刺激の印加の有無にかかわらず、参加者に対して実行され、パフォーマンスの統計的変化を観察及び記録し得る。多くの異なる刺激構成をシミュレートし、最も有望なものを実験的に鑑定することによって、最も適切なモンタージュ及び刺激パラメータ(例えば刺激の振幅及びタイプ/周波数)についての判定がなされることとなる。
【0149】
いくつかの実施形態において、刺激制御モジュール326、モデル329、活動判定モデル328、症状重症度(又は)進行判定モデル327、及び特性抽出モジュールのうちの1つ以上は、コンピューティングデバイス220のメモリ224内に位置し得、コンピューティングデバイス220のプロセッサ222によって実行され得る。
【0150】
図4は、いくつかの実施形態による機器100の一例である。機器100は、ユーザ115の頭部の前部における配置のために構成された前部バンド405と、ユーザ115の頭部の後部における配置のために構成された、背後電極マウント410を有する後部バンド415と、を備える。前部バンド405は、
図5に描写されるように、点420のまわりに枢動させられ得、後部バンドは、ユーザ115の異なる頭部のサイズに適応するように調節可能であり得る。後部部品415は、制御デバイス110を収容又は支持し、それによって
図2におけるハウジング112として機能するように構成され得る。リターン電極123もまた、後部部品415上に配置され得る。いくつかの実施形態において、後部部品410は省略され得る。前部バンド405は、
図7に描写されるように、電極120を担持又は装着するように配設された、長細のアレイ700を更に備え得、電極120は、この実施形態において、アレイ700の長さに沿って離隔された態様で配置される。アレイ700は、光学センサ130(又は光学センサのコンポーネント)、より具体的には、発光器130A及び検出器130Bを、担持又は装着し得る。この例において、各光学センサ130は、発光器130Aと、2つの対応する光検出器130Bとを備える。電極120、発光器130A及び光検出器103Bは、本機器がユーザによって着用されたときにユーザの頭部と接触するように、アレイ700の内側面上に同側に配設又は配置される。かかる実施形態において、前部バンド405は、アレイ700をユーザ115の頭の前部に対して適所に保持するものであり、より容易に一貫した電気刺激をユーザ115に提供し、より一貫した光学的応答をユーザ115から受信するように構成される。したがって、電極120及び光学センサ130についてのアレイ上の固定位置は、この実施形態においてはユーザ115の頭部に配置されたときに、複数の刺激セッションにわたって同じ領域が刺激されることを可能にする。このことは、頭部の所望の領域に電気刺激を印加する際に高度な一貫性を達成し、測定される光信号の精度を確実にするという有益な効果を有し、このことが更に、分析エンジン324による有益な効果の判定の精度に有益な効果を有する。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、選択された若しくは特定の電極120、又は電極120の特定の組み合わせに、電気刺激を提供するように電気刺激源350に指示し得る。他の実施形態において、制御デバイス110は、電気刺激源350に、アレイ700中の全ての電極に電気刺激を提供させるように構成される。
【0151】
いくつかの実施形態において、前部バンド405上のアレイ700のサイズに依存し得る、より多い数又はより少ない数等の、異なる数の電極120及び/又は光学センサ130が提供され得る。
【0152】
図12は、アレイ700のセクション1200を描写する。セクション1200は、電極1202の第1の側1206に配置された第1の光学センサ1204と、電極1202の第2の側1210に配置された第2の光学センサ1208と、を有する電極1202を含む。第1の光学センサ1204は、第1及び第2の光検出器1204A
1及び1204A
2、並びに発光器1204Bを備える。第2の光学センサ1208は、第1及び第2の光検出器1208A
1、1208A
2及び発光器1208Bを備える。
【0153】
例解されるように、いくつかの実施形態において、第1の光学センサ1204の発光器1204Bは、電極1202の第1の側1206において電極1202の第1の端部1212に向かって、又は第1の端部1212に、配置される。第1の光検出器1204A1は、電極1202の第1の側1206において電極1202の第1の端部1212に向かって、又は第1の端部1212の近傍に、かつ、例えば発光器1204Bの近傍に、配置される。第1の光学センサ1204の第2の光検出器1204A2は、電極1202の第1の側1206において、電極1202の第2の端部1214(第1の端部1212の反対側)に向かって、第2の端部1214において、又は第2の端部1214の近傍に、配置される。いくつかの実施形態において、第2の光検出器1204A2は、発光器1204Bよりも第1の光検出器1204A1の近くに位置決めされる。換言すれば、第1の光検出器1204A1は、発光器1204Bの最も内側に位置決めされる。
【0154】
例解されるように、いくつかの実施形態において、第2の光学センサ1208の発光器1208Bは、電極1202の第2の側1210において電極1202の第2の端部1214に向かって、第2の端部1214に、又は第2の端部1214の近傍に配置される。第2の光学センサ1208の検出器1208A1は、電極1202の第2の側1210において第2の端部1214に向かって、又は第2の端部1214の近傍に配置される。第2の光学センサ1208の第2の光検出器1208A2は、第1の端部1212に向かって、第1の端部1212に、又は第1の端部1212の近傍に配置される。いくつかの実施形態において、第2の光検出器1208A2は、発光器1208Bよりも第1の光検出器1208A1の近くに位置決めされる。換言すれば、第1の光検出器1208A1は、発光器1204Bの最も内側に位置決めされる。
【0155】
上で説明されたように、アレイ700を備える機器100が対象の頭部に適用されるとき、光学センサ130は、発光器130Aと光検出器130Bとの間の中間又は中点にある、対象の脳の場所又は位置における脳活動を測定するように構成される。
【0156】
再び
図12を参照すると、電極1202を介して対象の頭部に刺激が印加されると、発光器と検出器との対1204A
1及び1204Bは、発光器1204A
1の位置と光検出器1204Bの位置との間の中間の位置において、対象の血液酸素化の全身(皮膚、頭蓋骨等)の変化を判定又は測定するように構成される。
【0157】
再び
図12を参照すると、電極1202を介して対象の頭部に刺激が印加されると、発光器と検出器との対1204A
2及び1204Bは、光検出器1204A
2の位置と発光器1204Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Aにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成される。同様に、発光器と検出器との対1204A
2及び1208Bは、光検出器1204A
2の位置と発光器1208Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Bにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1208A
2及び1204Bは、光検出器1208A
2の位置と発光器1204Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Dにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1208A
2及び1208Bは、光検出器1208A
2の位置と発光器1208Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Cにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1208A
1及び1208Bは、発光器1208A
1の位置と光検出器1208Bの位置との間の中間の位置において、対象の血液酸素化の全身(皮膚、頭蓋骨等)の変化を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1208A
1及び1204Bは、光検出器1208A
1の位置と発光器1204Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Eにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1204A
1及び1204Bは、光検出器1204A
1の位置と発光器1204Bの位置の間の中間の位置において、対象の脳活動を判定又は測定するように構成され、発光器と検出器との対1204A
1及び1208Bは、光検出器1204A
1の位置と発光器1208Bの位置との間の中間の位置、
図12においては位置1230Eにおいて、対象の脳活動を判定又は測定するように構成される。
【0158】
発光器と検出器との対1204A
2及び1204B、1204A
2及び1208B、1208A
2及び1204B、1204A
1及び1208B、1208A
1及び1204B、並びに1208A
2及び1208Bは各々、相対的に長いチャネルを形成する。これらの長いチャネルは、発光器と検出器との対の間の中間の点において脳血液酸素化を測定するように配設される。発光器と検出器との対1204A
1及び1204B、並びに1208A
1及び1208Bは各々、相対的に短いチャネルを形成する。これらの短いチャネルは、発光器と検出器との対の間の中間の点において、対象の近くの頭皮又は頭皮領域の脳血液酸素化を測定するように構成される。この情報(すなわち近くの頭皮における脳血液酸素化)は、データ処理の間に長いチャネルの測定値から頭皮情報を除去するために分析エンジン324によって使用され得る。光学センサ130、すなわち発光器130Aと光検出器130Bとの対の配置を、それぞれの電極120に対して構成することによって、対象の脳の特定の部位又は位置が、刺激及び測定される関連する(又は反応性の)脳活動の標的とされることができる。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、それぞれのセンサモジュール130の1つ以上の発光器と光検出器との対130A、130Bから受信された1つ以上のセンサ信号に基づいて、対象の脳の特定の部位における脳活動を判定するように構成される。例えば、
図12のセクション1200を含むアレイ700を備える制御デバイス110の場合には、対象への刺激の印加の部位の近傍及びその周囲の位置(位置1230Eにおいて示される、電極1202の直下の対象の脳の一部又は部位であり得る)における、並びに刺激1230Eの位置における脳活動が、判定され得る。いくつかの実施形態において、位置1230Eにおける脳活動は、発光器と検出器との対1204B及び1208A
1、及び/又は1208B及び1204A
1を使用して判定され得る。
【0159】
この構成は、同じ位置での脳のfNIRS記録及び電気刺激のための統合された機構を提供する。アレイ700又は同様のものを備える機器100は、fNIRSを使用した脳の電気刺激の効果のより正確な測定及び分析を可能にすることができる。
【0160】
いくつかの実施形態において、電極120の位置は、EEG10-5システムに基づくものであり、位置F3~F4、FP2~F3、P3~FP2、F6~F5、AF7~AF8を含み得る。しかしながら、電極120の位置は、P7~P8、FT9~FT10、F9~F10、AF7~AF8、FP1~FP2、PO3~PO4及びO1~O2の間の線を横切る位置の任意の組み合わせを含み得ることは、理解されるであろう。これは、同じ平面上のこれらのランドマーク間の10~5位置の場所を含む。光学センサ130は、電気刺激の部位に対する近接さを確実にするように、選択された刺激チャネルの周囲に配置され得る。かかる実施形態において、異なるバンドの形状及び位置が、ユーザ115の頭部との正確なフィットを確実にするために使用され得る。いくつかの実施形態において、枢動点420を通した前部バンド405の調節が、電極120が所望の頭部の領域を標的とすることを可能にする。
【0161】
アレイ700のフィットは、所与のユーザ115について正確な測定値が得られることを確実にするために、ユーザ115の頭部から所望の距離における光学センサ130の配置を可能にするように特に構成され得る。
【0162】
神経刺激の送達のための電極の配置は、刺激によって標的とされる脳の位置を判定するので、重要である。機器100は、人によって、特に性別によって頭のサイズが異なることに留意し、様々な頭のサイズにフィットする又は適応するように構成され得る。頭のサイズの違いにより、機器100の静的な又は固定された構成のアレイ700上の電極の位置では、電極120の配置(例えば、電極が額に接触する位置)が個人毎に異なり得ることとなり、刺激の結果及び/又は刺激の印加の有効性の変動をもたらし得る。
【0163】
したがって、いくつかの実施形態において、機器100の前部バンド405及び/又はアレイ700は、対象の頭部上の所望の位置における電極120の選択的な配置を可能にするよう調節可能であり得る。
【0164】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、対象の頭部に対する電極位置のソフトウェア割り当て(例えば、アレイ700の電極120の特定のサブセットの選択)を可能にし、それによって、ユーザの頭部のサイズに依存して、対象に刺激を送達するために、電極120の適切なサブセットが選ばれ得る。
【0165】
図13は、対象の頭部1310上に配置されたアレイ700の頭上から見た構成1300を描写する。アレイ700は複数の電極120を含み、そのセットは対象の頭部に刺激を送達するために選択的に使用され得る。この例において、アレイ700は4つの電極を備え、そのうちの外側の2つは選ばれた電極1320であり、内側の2つは選ばれていない電極1330である。電極120のこの選択は、相対的に大きな頭部のサイズを有する対象に適応するもの又は合うものとなり得る。同様に、
図14は、対象の頭部1310上に位置決めされたアレイ700の頭上から見た構成を描写する。アレイ700は複数の電極120を含み、そのセットは対象の頭部に刺激を送達するために選択的に使用され得る。この例において、アレイ700は4つの電極を備え、そのうち外側の2つは選ばれていない電極1330であり、内側の2つは選ばれた電極1320である。電極120のこの選択は、相対的に小さい頭部のサイズを有する対象に適応するもの又は合うものとなり得る。
【0166】
図13及び
図14において、描写されている電極の数は、単に代表的なものである。したがって、4個、6個、又は8個の電極等の、任意の数の電極がアレイ700上に配置され得る。
【0167】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、例えばユーザインタフェース360を介して、対象又は他のユーザから入力を受信するように、かつどのサイズ構成が対応されるべきかを示すように構成され得、このことが次いでどの電極120の組み合わせが刺激を付与する際に制御デバイス110によって使用されるかを決定付け得る。例えば、ユーザインタフェース360は、対象が小型、中型又は大型の頭部のサイズを選択することを可能にし得る。
【0168】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、電極120の1つ以上のセットを介して対象の頭部に送達される試験刺激を付与し、それぞれのセンサモジュール130を介して受信された応答を分析することによって、所与の対象に対する電極の適切な選択を判定することを支援し、対象の頭部に対する電極の正確な配置を判定するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、応答を分析し、電極の1つ以上のセットの適切性又は他のものを判定し、またいくつかの実施形態において、1つ以上の電極セットのセットを、対象への刺激の付与のための選ばれた電極として、判定又は選択することを支援するように、構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、対象の頭部に対する電極の正確な配置に対する分析のために、ネットワーク210を通して応答をコンピューティングデバイス220の認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225に又はサーバ230に伝送し得る。例えば、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220、及び/又はサーバ230は、応答を分析して、好適に配置されたアレイ700を示す強力な又は効果的な電極配置に関連する条件を、この応答が満たすか否かを判定するように構成され得る。いくつかの実施形態において、応答が条件を満たさない場合、制御デバイスは別の電極のセットを選択し、再び試験刺激を付与し、応答が電極の適切な配置を判定するために分析されることを目的として、関連する応答を測定し得る。例えば、分析がコンピューティングデバイス220又はサーバ230によって実行される場合、このことは、制御デバイス110への適切な命令の送信を含み得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、例えばユーザインタフェース228を使用して、指示を対象又はユーザに出力させて、ユーザに頭部上のアレイ700の配置を変更するように案内し得る。
【0169】
異なるユーザに適応するためにアレイ700の電極のセットを選択的に選ぶことを可能にすることによって、制御デバイス110及び/又は機器100は、対象に対する個別化された刺激に合わせて調整されることができ、このことは特に家庭内の環境において有益なものとなり得る。
【0170】
いくつかの実施形態において、頭部におけるアレイ700、したがって電極120の、信頼性が高い又は正確な配置において対象を支援するために、顔認識フィルタが使用され得る。かかる実施形態において、コンピューティングデバイス220は、ユーザが自身の画像を捕捉することを可能にするように構成され得る、前面カメラを備える。コンピューティングデバイス220のメモリ224は、位置決めフィードバックモジュール227を含み得、このモジュールは、プロセッサ222によって実行されたときに、コンピューティングデバイス220に、捕捉された画像又は画像ストリームに基づいて、対象又はユーザを、その頭部に対するアレイ700の、したがって電極120の、正しい配置において支援させる。位置決めフィードバックモジュール227は、鼻、眉毛、髪の生え際、及び/又は他の顔の特性等の顔の目印が、捕捉された画像又は画像ストリームから判定されることを可能にする、顔認識アルゴリズムを含み得る。かかる特性は、ユーザの顔の姿勢及び/又は構造が判定されることを可能にし得る。認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、判定された顔の特性に対する制御デバイス110のアレイ700の位置、又はアレイ700自体の姿勢を判定するように構成され得る。認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225はまた、アレイ700の判定された位置を、理想的な又は目標の位置(又は位置の範囲)と比較するように構成され得、その比較に基づいて、対象にフィードバックを提供して、目標位置を達成することを目的として、対象にアレイ700を再位置決めするよう案内し得る。例えば、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、アレイの現在の位置及びアレイの目標位置を示す指標をユーザインタフェース228によってユーザに表示して、対象が所望の配置を達成することを支援し得る。かかる位置決めフィードバックモジュール227の1つの利点は、ユーザによって使用されるときに、機器100の、より正確で信頼性の高い配置を可能にすることであり、このことは、特に家庭内の環境において、改善された刺激及びデータ捕捉の信頼性をもたらし得る。
【0171】
図8は、いくつかの実施形態による、経頭蓋電気刺激の送達を制御する方法800のプロセスフロー図を描写する。本方法は、例えば、メモリ320の特性抽出モジュール322、分析エンジン324、及び刺激制御モジュール326を実行する、制御デバイス110のプロセッサ310によって実行され得る。いくつかの実施形態において、方法800は、制御デバイス110及びコンピューティングデバイス220及び/又はサーバ230のプロセッサ222によって実行され得る。
図17は、いくつかの実施形態による、方法800の概要を例解する。方法800が実行されている間、ユーザは、安静状態にあり得る。
【0172】
805において、制御デバイス110は、刺激制御モジュール326からの指示を、電気刺激源350に送信又は伝送して、電気刺激源350に、1つ以上の電極120へと電気刺激を送達させる。1つ以上の電極は、ユーザ115の脳の標的化された領域に経頭蓋電気刺激を送達するために、ユーザ115の頭部への配置のために配設又は構成される。制御デバイス110によって送信される命令は、電極に印加又は送達されるべき電気信号の電圧、電流、周波数、継続時間及び/又はオフセット値のうちの1つ以上を定義する指示を含み得る。電気刺激は、予め選択された時間の長さの間、又は刺激が他の態様で修正されるまで、印加され得る。指示は、tDCS、tACS、tPCS、tRNS、otDCS若しくはランダムノイズ刺激、又はそれらの組み合わせを供給する指示を含み得る。
【0173】
指示は、相対的に短いパルスを供給する指示を更に含み得、このとき各パルスは振幅、周波数、継続時間及びオフセットによって特徴付けられる。各パルスは、一度に1つずつ送達される。他の実施形態において、指示は、単一の長いパルスを含み得る。いくつかの実施形態において、ユーザのための電気刺激の送達のための初期の及び更新された刺激パラメータ値は、標的とされるべき脳の特定の領域、及び/又はセッションの間にユーザによって実行されるべきタスク又は活動のタイプに依存し得る。
【0174】
810において、制御デバイス110は、脳の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上のそれぞれの光学センサから、記録されたデータを受信する。記録されたデータは、それぞれの1つ以上の光学センサからの1つ以上の信号を含み得る。信号は、光学センサの検出器130Bによって検出された反射光の強度を示すものであり得る。いくつかの実施形態において、かつ上で考察されたように、光学センサモジュール340は、検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するために、ロックインアンプ効果を作り出すように構成され得る。
【0175】
いくつかの実施形態において、電気刺激が1つ以上の電極120に送達された後、光学センサモジュール340は、ユーザ115の頭部に位置決めされたそれぞれの光学センサ130によって検出された光応答を記録し、記録されたデータを制御デバイス110に伝送又は提供する。いくつかの実施形態において、光学センサモジュール340は、刺激が印加される前、刺激が印加されている間、及び刺激が印加された後に、例えばリアルタイムで又は継続的に、データを記録し、記録されたデータをリアルタイムで、処理のために又は送信時に、制御デバイス110に伝送する。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、記録されたデータを処理のためにサーバ230又はコンピューティングデバイス220に伝送又はストリーミングするように構成され得る。いくつかの実施形態において、かつ上で考察されたように、制御デバイス110は、相対的に高い周波数でデータをサンプリングし、例えばデータをコンピューティングデバイス又はサーバに伝送する前に、データをダウンサンプリング及び/又は復調するように構成され得る。
【0176】
815において、制御デバイス110(又はいくつかの実施形態においてはコンピューティングデバイス220及び/又はサーバ230)は、記録されたデータを分析して、活動又は有効性の尺度を判定する。記録されたデータは、血液酸素化の変化を示すものであり得る。
【0177】
いくつかの実施形態において、記録されたデータを分析することは、記録されたデータから頭皮の影響を除去又は軽減することを含む。このことは、例えば、候補の長いチャネルに関連する、又はその近傍にある1つ以上の短いチャネルを判定し、短いチャネルからの信号を長いチャネルから減算することによって達成され得る。いくつかの実施形態において、利用可能な全ての短いチャネルの信号が、候補の長いチャネルから減算される。いくつかの実施形態において、候補の長いチャネルに物理的に最も近くに位置する短いチャネルのみからの信号が、長いチャネルの信号から減算される。
【0178】
いくつかの実施形態において、測定されたチャネルからの信号における刺激の効果を分離するために、他の信号処理手法が使用され得る。その例は、測定データのバンドパスフィルタリング、信号からの加速度計データの回帰、及び/又は信号からのベースライン変動の回帰を含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、特性抽出モジュール322は、記録されたデータ、若しくは光応答信号、又は処理された記録されたデータから、特性又は特徴を抽出する。抽出された特性は、ユーザの認知機能若しくはパフォーマンス、又は皮質活動に関連する、特徴又はバイオマーカに対応するものであり得る。抽出された特性は、活動判定モデル328への入力として提供され得、活動判定モデル328は、出力として活動尺度を提供し得る。いくつかの実施形態において、活動尺度は、HbOの一時的な増大を含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、かつ
図17に例解されように、制御デバイス110は、記録又は測定されたセンサデータから、刺激前センサデータ(すなわち刺激が印加される前に取得されたデータ)、刺激センサデータ(すなわち刺激の印加の間に取得されたデータ)、及び刺激後データ(すなわち刺激が印加された後に取得されたデータ)を判定し得る。特性抽出モジュール322は、刺激前センサデータ、刺激センサデータ、及び刺激後データのそれぞれのセットの各々から、刺激前特性のセット、刺激特性のセット、及び刺激後特性のセットを判定し得る。いくつかの実施形態において、特性は、一対のチャネル(脳の2つの領域)間の機能的接続性、及び/又はデータチャネルから取得されたデータの統計的尺度を含む。いくつかの実施形態において、特性は、刺激電極のまわりの及び刺激電極間の光チャネルの対から取得されたセンサデータから抽出される。
【0181】
制御デバイス110は、刺激前特性及び刺激後特性のセットに基づいて、活動判定モデル328のための第1の入力のセットを判定し得る。第1の入力のセットは、刺激前から刺激後までの特性値の相対的な変化を含み得る。制御デバイス110は、刺激前特性及び刺激中特性のセットに基づいて、活動判定モデル328のための第2の入力のセットを判定し得る。第2の入力のセットは、刺激前から刺激中までの特性値の相対的な変化を含み得る。制御デバイス110は、刺激中特性及び刺激後特性のセットに基づいて、活動判定モデル328のための第3の入力のセットを判定し得る。第3の入力のセットは、刺激中から刺激後までの特性値の相対的な変化を含み得る。
【0182】
制御デバイス110は、第1、第2及び第3の入力のセットと、印加された刺激パラメータ(例えば振幅)とを、活動判定モデル328に提供して、十分な刺激が印加されている確率等の、活動尺度を判定するように構成され得る。
【0183】
いくつかの実施形態において、入力の3つのセットのうちの2つのみが、特定の特性の値を含む。例えば、第1及び第2の入力セットは第1の特性の値を含み得るが、第3の入力のセットはその特性の値を含まない。
【0184】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、第1、第2、及び第3の入力のセットのうちの2つのみを判定し、第1及び第2の入力のセット、第1及び第3の入力のセット、又は第1及び第3の入力のセットのみを提供し、印加された刺激パラメータを活動判定モデル328に提供して、十分な刺激が印加されている確率等の活動尺度を判定する。
【0185】
活動尺度は、ユーザの脳活動が、十分に活動的である、活動度が低い、過度に活動的である、反応性が高すぎる、十分に反応性がある、又は反応性が低いと判定されるかを示すものであり得る。いくつかの実施形態において、活動尺度が1つ以上の活動尺度閾値と比較されて、対象が十分に活動的であるか、活動度が低いか、過度に活動的であるか、反応性が高すぎる、十分に反応性があるか、又は反応性が低いかを判定し得る。
【0186】
いくつかの実施形態において、活動尺度が閾値レベルと比較されて、対象の脳が刺激に対して無反応であるか反応性があるかを判定する。820において、制御デバイス110は、判定された活動尺度に基づいて、刺激指示を修正し得る。いくつかの実施形態において、刺激制御モジュール326は、判定された活動尺度に基づいて、1つ以上の刺激パラメータ値を判定する。刺激指示は、刺激パラメータ値を含み得る。
【0187】
825において、制御デバイス110は、判定された1つ以上の刺激パラメータ値を含む更新された刺激指示を、電気刺激生成器に伝送して、電気刺激生成器に、刺激の1つ以上の特徴を修正させ得る。
【0188】
いくつかの実施形態において、活動尺度が閾値未満であるという判定に応答して、制御デバイス110は、刺激パラメータ値を増加させ、この増加した刺激パラメータ値で刺激を再印加する。いくつかの実施形態において、活動尺度が閾値に到達したという判定に応答して、制御デバイス110は、この刺激パラメータ値をユーザ固有の較正された刺激パラメータとして判定する。
【0189】
更新された刺激指示は、電極120に送達されている電気刺激の周波数、振幅、電圧、及び/又は電流を修正する指示を含み得る。実施形態において、十分な刺激が印加されたことを活動尺度が示しており、例えば、神経学的状態の症状、例えばADHDの症状に対する所望の効果に対応するユーザ115の脳活動の変化があった場合、刺激制御モジュール326は、適用され、刺激制御モジュール326は、刺激の送達を停止することによって電気刺激を修正し得、すなわち、刺激パラメータ値が、刺激を停止するためのゼロ又は他のインジケータを含み得る。いくつかの実施形態において、刺激制御モジュール326によって生成される刺激パラメータ値は、既存の設定で刺激を一定時間継続するか、又は電気刺激の特徴を修正して、脳の領域を標的とするよう信号送信し、及び/又は異なる応答を誘導するように、電気刺激生成器又は電気刺激源350に示唆又は指示し得る。
【0190】
所望の活動レベルが満たされない場合、刺激制御モジュール326によって生成される刺激パラメータ値は、現在の刺激のレベルの送達を継続するか、刺激のレベルを増大させるか、刺激のレベルを低下させるか、又は印加されている刺激の特性を修正するように、電気刺激生成器又は電気刺激源350に示唆又は指示し得る。所望の活動レベル又は活動レベル閾値は、セッションの間にユーザによって実行されている又は実行されるべきタスク又は活動のタイプ及び継続時間等のタスク情報に依存するものであり得る。
【0191】
例えば、制御デバイス110は、刺激の印加に先立って、それぞれの1つ以上のセンサ130からの光信号に関連する測定データから、振幅で2マイクロモルの平均酸素化濃度変化を判定し得る。刺激が印加されると、制御デバイス110は、(測定データに基づいて)対象の脳活動が振幅で3マイクロモルの酸素化濃度の変化まで増大したと判定し得る。この例において、刺激が対象に与えた影響は、測定されたエリア中の血液酸素化濃度の1マイクロモルの変化となり得る。いくつかの実施形態において、この増大は、特定のタスクのパフォーマンスの増大、例えば精度及び/又は反応時間の増大を伴うものとなり得る。活動判定モデル328は、血液酸素化濃度の振幅、及び任意選択的に、センサデータが記録されている間にタスクを行っている間に達成されたタスクスコアを、入力として使用して、活動尺度を判定し得る。その結果の活動尺度が活動度閾値を満たす場合、制御デバイス110は、十分な刺激が送達されたと判定し、一定期間適切なレベルの刺激を送達し続け、所定の時点において、刺激の送達を停止するように、刺激生成器に指示し得る。一方、その結果の活動尺度が活動閾値を満たさない場合、制御デバイス110は、継続的な刺激(既存のパラメータ値又は変更パラメータ値での)が必要であると判定し、それに応じて刺激生成器に刺激を維持又は修正するように指示し得る。
【0192】
いくつかの実施形態において、光学センサ130は、電気刺激が印加されているか否かにかかわらず、セッションの間は常にユーザ115からの光応答を測定又はモニタリングし続け得る。かかる実施形態において、光学センサ130は、例えば標的化された領域におけるユーザの脳活動が閾値活動度レベル未満である場合のような、電気信号が再び印加される必要があり得ることを示すユーザ115の脳活動の変化を検出し得る。したがって、一定期間デバイスを使用するユーザ115は、デバイスを起動して刺激セッションを開始し得、閾値活動レベルが満たされるまでの一定期間、電極120を介して電気刺激が印加され、最初の電気刺激の神経学的状態の症状、例えばADHDの症状に対する有益な効果がもはや検出されなくなった後に、電極120を介して更なる電気刺激が印加される。
【0193】
いくつかの実施形態において、方法800が、特定の対象に対して機器100を較正するために使用され得る。例えば、(815において)判定された活動尺度が較正閾値レベルと比較されて、対象の脳が刺激に対して応答していないか否かを判定し得る。脳が応答していないとみなされたことに応答して、制御デバイス110は、判定された活動尺度に基づいて、(820において)刺激指示を修正するように構成され得る。例えば、制御デバイス110は、判定された刺激パラメータ値を含む更新された刺激指示を(825において)電気刺激生成器に伝送して、電気刺激生成器に、刺激の1つ以上の特徴を修正させるように構成され得る。いくつかの実施形態において、刺激パラメータ値は、印加されるべき刺激の固定増分であり得る。活動尺度は再び判定され(815において)、十分な刺激が印加されたとみなされるまで、又は電気刺激生成器が最大安全限界に到達するまで、刺激指示が更新され(例えば増大した刺激)得る。いくつかの実施形態において、十分な刺激が印加されたとみなされるか、又は電気刺激生成器が最大安全限界に到達すると、制御デバイスは、電気刺激生成器に、セッションに対して十分とみなされるシミュレーションを送達し続けるか、セッションの間の特定の時間ウィンドウに対して十分とみなされるシミュレーションを送達し続けるか、又は対象への刺激の送達を停止するように、指示し得る。
【0194】
かかる較正プロセスは、対象とのセッションの開始時に実行され得、それによって本機器が特定の対象に対して較正され、例えば皮膚の油性、電極の導電性、毛髪の成長/太さ/スタイル等の、電流がどの程度良好に対象によって受信されるかに影響を及ぼすか又はそれを変更し得る、またセッション毎に変化し得る、あらゆる要因が考慮される。
【0195】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、HMI355スイッチを起動することによって起動又は始動され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、コンピューティングデバイス220のプロセッサ222によって実行されている認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225によって起動又は始動され得る。かかる実施形態において、ユーザ115は、アプリケーション225を使用している間に、コンピューティングデバイス220のユーザインタフェース228を使用して指示を開始し得る。いくつかの実施形態において、制御デバイスは、制御デバイス及びシステム全体の動作をアクティブ化/非アクティブ化及び/又は制御するための入力をユーザが提供することを可能にするように構成された、ユーザインタフェース360を備える。ユーザインタフェース360はまた、制御デバイス110の動作についての情報をユーザに中継するための、ディスプレイ又はオーディオ出力を備え得る。
【0196】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、検出された脳活動110に関連付けられたデータを、通信モジュール330を介して、ユーザに関連付けられたコンピューティングデバイス220に又はサーバ230に、処理又は記憶のために伝送するように構成され得る。このデータは、印加されている電気刺激、検出されている脳活動の光学的応答、光学的応答から導出される測定データ、1つ以上のバイオマーカの検出、又は刺激セッションに関連する他のデータに関連する基準を含み得る。いくつかの実施形態において、アプリケーション225は、例えば、ユーザ115によってアクセスされ、コンピューティングデバイス220のユーザインタフェース228上に表示されるように、このデータをコンピューティングデバイス220のメモリ224に記憶し得る。アプリケーション225はまた、刺激履歴、過去の精神測定試験のパフォーマンス、又は刺激セッションに関連する他の情報を表示し得る。かかる実施形態において、データは、制御デバイス110から受信され得るか、又はネットワーク210を通してデータベース240から取得され得る。
【0197】
いくつかの実施形態において、処置セッションは、ユーザがHMIスイッチ355、又は制御デバイス110若しくは機器100上に備えられた他の起動機構を起動することによって、誘起され得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、制御デバイス110と協働してセッションの始動を誘起し得る。例えば、ユーザ又は臨床医は、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225と対話してセッションを開始し得る。いくつかの実施形態において、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、制御デバイス110に、例えば臨床医に関連付けられたコンピューティングデバイス220に、又はサーバ230に、タスクデータを伝送する。タスクデータは、ユーザによって実行されている又は実行されるべきタスクのタイプについての情報を含み得る。タスクデータは、特定のタスクを実行する際にユーザによって達成された1つ以上のスコアを含み得る。
【0198】
いくつかの実施形態において、タスクデータは、タスクを実行する際にユーザによって達成された1つ以上のスコアを含み得、制御デバイス110によって測定データと組み合わせて使用されて、対象の行動的進行を推測し得る。他の実施形態において、記録されたデータ及び/又は活動尺度及びスコアを含むタスクデータは、対象の行動的進行を推測するための処理のために、リモートサーバ等のサーバに伝送され得る。
【0199】
図10は、いくつかの実施形態による、神経学的状態の1つ以上の症状に対する処置を受けている対象の症状重症度及び/又は行動的進行を推測する方法1000のプロセスフロー図を描写する。いくつかの実施形態において、方法1000は、制御デバイス110によって実行され得る。他の実施形態において、方法1000は、サーバ230及び/又はコンピューティングデバイス220と連携して制御デバイス110によって実行され得る。
図18は、いくつかの実施形態による、方法1000の概要を例解する。
【0200】
1005において、制御デバイス110は、刺激制御モジュール322に指示を送信又は伝送して、電気刺激源350に1つ以上の電極120へと電気刺激を送達させることを、刺激制御モジュール322に行わせ得る。1つ以上の電極120は、ユーザ115の脳の標的化された領域に経頭蓋電気刺激を送達するために、ユーザ115の頭部における配置のために配設又は構成される。制御デバイス110によって送信される指示は、電極に印加又は送達されるべき電気信号の電圧、電流、周波数、継続時間及び/又はオフセット値のうちの1つ以上を定義する指示を含み得る。電気刺激は、予め選択された長さの時間、又は刺激が他の態様で修正されるまで、印加され得る。指示は、tDCS刺激、tACS刺激、若しくはランダムノイズ刺激、又はそれらの組み合わせを供給する指示を含み得る。プロセス800を参照しながら上で考察されたように、指示は、短いパルス又はより長いパルスを供給する指示を含み得る。しかしながら、方法1000のいくつかの実施形態において、対象に電気刺激を送達することは必須ではなく、症状重症度及び/又は進行尺度は、タスクデータ及びセンサデータのみに基づいて判定され得る。
【0201】
1010において、制御デバイス110は、脳の標的化された領域に近接して位置決めされた1つ以上のそれぞれの光学センサから記録されたデータを受信又は判定する。記録されたデータは、それぞれの1つ以上の光学センサからの1つ以上の信号を含み得る。信号は、光学センサの検出器130Bによって検出された反射光の強度を示すものであり得る。記録されたデータは、刺激が印加されていない(すなわち印加されている刺激がない)場合、刺激が印加された後、又は刺激が印加されている間に同時に、記録され得る。いくつかの実施形態において、かつ上で考察されたように、光学センサモジュール340は、検出された反射光信号の信号対雑音比(SNR)を改善するために、ロックインアンプ効果を作り出すように構成され得る。
【0202】
1015において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220、及び/又はサーバ230は、タスクデータを判定する。例えば、タスクデータは、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225によって判定され得る。タスクデータは、1つ以上のそれぞれのタスクを行う又は参加する際のユーザのパフォーマンスに関連する1つ以上のスコアを含み得る。例えば、好適なタイプのタスクは、心理測定タスク、又は、作業記憶、衝動制御、認知柔軟性等の実行機能パフォーマンスを測定する試験を含み、更には、ストループタスク、ウィスコンシンカード分類タスク、corsiブロック試験、go-no-goタスク、連続パフォーマンスタスク、Nバックタスク等を含む。心理測定タスク又は試験は、標準的な試験の修正された又はゲーム化されたバージョンであり得る。いくつかの実施形態において、タスクデータは、1つ以上のそれぞれの光学センサからの記録されたデータと実質的に同時に判定される(1005)。
【0203】
いくつかの実施形態において、タスクデータは、精度、反応時間、省略エラー及び/又はコミッションエラー等の、1つ以上の行動的又は特徴的な症状についてのスコア又は基準を含み得る。本システムは、タスクデータの基準に基づいて、タスク特性値を判定し得る。タスク特性値は、精度、反応時間、省略エラー、及び/又は誤処理エラー(commission error)の平均値及び/又は標準偏差値等の基準の統計的尺度であり得る。
【0204】
いくつかの実施形態において、反応時間についてのタスクデータ基準から導出される特性値は、一次ADHD中核症状スコア又は尺度、不注意重症度スコア、衝動性重症度、及び/又は多動性重症度スコアを判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用され得る。
【0205】
1020において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、記録されたデータ及びタスクデータに基づいて、症状重症度又は進行尺度を判定する。サーバ230又はコンピューティングデバイス220が症状重症度又は進行尺度を判定する実施形態において、それぞれのサーバ230又はコンピューティングデバイス220は、記録されたデータを制御デバイス110から判定又は受信するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、記録されたデータをサーバ230又はコンピューティングデバイス220に伝送又はストリーミングするように構成され得る。いくつかの実施形態において、かつ上で考察されたように、制御デバイス110は、相対的に高い周波数でデータをサンプリングし、それに応じて、例えばデータをコンピューティングデバイス又はサーバに伝送する前に、データをダウンサンプリング及び/又は復調するように構成され得る。
【0206】
症状重症度及び/又は進行尺度は、ADHD等の神経行動障害の1つ以上の行動又は特徴のそれぞれについての1つ以上のスコアを含み得る。例えば、症状重症度又は進行判定モデル238は、(i)総合的ADHD評価スケールスコア、(ii)ADHD中核症状スコア、(iii)不注意スコア、(iv)多動性スコア、及び(v)衝動性スコアのうちの1つ以上についてのスコアを提供するよう構成され得る。かかる例において、症状重症度又は進行判定モデル238は、ADHD評価尺度質問票から判定されたスコアによってラベル付けされた、ラベル付きデータタスク及びセンサデータを使用してトレーニングされたものであり得る。例えば、臨床母集団は、i)総合的ADHD評価スケールスコア、(ii)ADHD中核症状スコア、(iii)不注意スコア、(iv)多動性スコア、及び(v)衝動性スコア等の、複数のADHD症状のスコアを判定するために使用され得る、標準的なADHD評価スケール質問票に記入するように求められている場合がある。タスクデータ及び関連するセンサデータは、臨床母集団に対して判定され、関連する参加者に対して判定されたスコアに従ってラベルが付けられた。タスクデータ、センサデータ、及びラベルが次いで、症状重症度又は進行判定モデル238をトレーニングするために使用された。したがって、症状重症度又は進行判定モデル238は、神経行動障害を測定又はモニタリングするための、自動化された症状重症度若しくは進行尺度又はモニタリングツールとして使用され得る。
【0207】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110、サーバ230又はコンピューティングデバイス220は、強度信号を含む記録されたデータを分析して、測定データを判定する。例えば、測定データは、(i)酸素化ヘモグロビン(HbO)濃度、(ii)脱酸素化ヘモグロビン(HbR)濃度、及び総ヘモグロビン(HbR)濃度のうちの1つ以上を含む、記録されたデータ、及び/又は記録されたデータから導出されたデータを含み得る。HbO、HbR及びHbR濃度の例示的なプロット例が、
図11に例解される。
【0208】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、複数のチャネルからセンサデータを受信するように構成され、各チャネルは、光学センサ130の発光器と検出器との対に対応する。上で考察されたように、チャネルのうちの1つ以上は、発光器がそれぞれの検出器の近くに配置される、相対的に短いチャネルであり、チャネルのうちの1つ以上は、発光器がそれぞれの検出器から相対的に遠い距離に配置される、相対的に長いチャネルである。
【0209】
長いチャネルは、それぞれの発光器と検出器との対の間の中間の点において脳血液酸素化を測定するように構成される。短いチャネルは、発光器と検出器との対の間の中間の点において対象の近くの頭皮又は頭皮領域中の脳血液酸素化を測定するように構成される。いくつかの実施形態において、長いチャネルからの信号のみが使用される。
【0210】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、光学センサ130によって提供されている有用な生物学的情報をスクリーニングするように構成されている。例えば、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、それぞれのチャネルからの信号が十分な品質のものであるか否かを判定するように構成され得る。有用な情報を導出するのに効果がないもの、及び/又は不十分な品質のものであると判定されたチャネル(すなわち「不良」であるチャネル)は、更なる分析から除外され得る。いくつかの実施形態において、光学センサの各検出器チャネルの品質を示す品質尺度が判定され、品質閾値未満である品質尺度に応答して、それぞれの検出器チャネルからのセンサデータが、症状重症度又は進行尺度を判定する際に除外又は無視される。
【0211】
いくつかの実施形態において、頭皮結合指数(SCI)が、チャネルの各々について判定される。SCIは、特定の測定の継続時間にわたるチャネルについての信号の品質の尺度である。SCIが閾値SCI値未満となったことに応答して、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、それぞれのチャネルが「不良」であると判定し、更なる分析についてはそのチャネルからの測定値を除外するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、検出器の飽和を判定するように構成され得る。例えば、この飽和は、電圧測定値が例えば-1.2V~1.2V等の許容範囲外にあるか否かを検出することによって判定され得る。検出器の飽和が判定されたことに応答して、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、それぞれのチャネルが「不良」であると判定し、更なる分析についてはそのチャネルからの測定値を除外するように構成され得る。いくつかの実施形態において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、動きアーティファクトを低減するために、チャネルから受信された信号に対して動きアーティファクト補正を実行し得る。例えば、かかる動きアーティファクト補正は、スプライン補間を使用して動きをモデル化し、それらをそれぞれの信号から減算するように構成され得る。いくつかの実施形態において、ウェーブレットベースの方法が使用される。適切なスプライン補間及びウェーブレットベースの方法の更なる詳細は、Scholkammらの論文「How to detect and reduce movement artifacts in near-infrared imaging using moving standard deviation and spline interpolation」(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20308772/)、及びMolaviらによる「Wavelet-based motion artifact removal for functional near-infrared spectroscopy」(https://iopscience.iop.org/article/10.1088/0967-3334/33/2/259/meta?casa_token=s1IqbEC3gYQAAAAA:gbJBtl-KCd_xpeG2oKUflnjnh5BHdGFR7UqQWmmjNjghCDwWTpWLx7j9NI99HboeTw5zosE80A)に見出すことができ、このいずれも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0212】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、複数のチャネルに対してバンドパスフィルタリングを実行して、重要でない情報を除去し得る。
【0213】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、チャネルからの情報を更に処理して、記録されたデータから既知のアーティファクト等の他のアーティファクトを除去し、例えば、観察されたデータにおける血流力学的応答の顕著さを増大又は最大化させ得る。これらは、多項式ドリフト、短いチャネルのデータ、及び加速度計データを用いて回帰を実行することによって達成され得る。例えば、機器100及び/又は制御デバイス110は、加速度計データを捕捉するための加速度計(図示されていない)を備え得る。多項式ドリフトは、多項式をデータにフィッティングすることによって算出され得るものであり、回帰は、各時系列(例えば、短いチャネル、加速度計、多項式ドリフト)が測定された長いチャネルデータにどれだけ寄与しているかを定量化し、それを減算することを含み得る。
【0214】
制御デバイス110、コンピューティングデバイス220、又はサーバ230は、各チャネルからのセンサデータを、対象が安静にしていたとき又はタスクを実行していなかったときに関連付けられたセンサデータ(安静条件下のデータ)と、対象がタスクを実行したときに関連付けられたセンサデータ(タスク条件下のデータ)と、に分離するように構成され得る。
【0215】
このことは、データに関連するタイムスタンプを考慮することによって達成され得る。例えば、いくつかの実施形態において、タスクデータは、タスクに関連するそれぞれの1つ以上の動作を実行する対象に関連する1つ以上のタイムスタンプ(例えばタスク関連タイムスタンプ)を含み得る。センサデータは、時系列データ又はタイムスタンプ付きデータを含み得る。制御デバイス110(又はサーバ230若しくはコンピューティングデバイス220)は、タイミングに基づいて、センサデータの1つ以上のサブセットをそれぞれのタスクデータに関連付けることによって、症状重症度又は進行尺度を判定するように構成され得る。いくつかの実施形態において、タスクデータは、記録されたボタン押下、又は対象に表示されているタスク等の、対話又はイベントに従ってタイムスタンプを付けられ得る。タスク関連タイムスタンプは、判定されたセンサデータに関連するものであり得る時系列タイムスタンプに対する追加的なタイムスタンプであり得る。
【0216】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110、サーバ230又はコンピューティングデバイス220(例えば認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225)は、タスク関連タイムスタンプを用いて、センサデータのセクション又はサブセットにタイムスタンプを付けるように構成され得る。例えば、制御デバイス110又はサーバ230は、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225からのタイムスタンプ指示の受信に応答して、センサデータにタイムスタンプを付けるように構成され得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、制御デバイス110は、センサデータをコンピューティングデバイス220に提供又はストリーミングする。タスク又はタスク関連イベントが発生しているとき、認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225は、それぞれのタスク又はイベント関連タイムスタンプを用いて、センサデータにタイムスタンプを付ける。このことは、例えば対象にコンピューティングデバイスのユーザインタフェース上の画像が表示されること、又は対象が特定のタスク又は動作を実行することのような、刺激イベント又はタスクイベントが発生したとき等の特定の時間に発生したタスクデータに、センサデータが関連付けられることを可能にする。タイムスタンプが付けられ、人間の行動に当てはめられた生物学的データは、純粋な生物学的データよりも本質的に情報量が多くなる傾向があるため、このことは、データ収集の向上した容易性、及び/又は改善した結果の分析の精度を可能にし得る。
【0218】
制御デバイス110、コンピューティングデバイス220又はサーバ230は、各チャネルについて代表的な応答を判定するように構成され得る。例えば、代表的な応答は、タスクの実行に関連する測定データ又はセンサデータの関数として、タスクの間の活性化を示すものであり得る。例えば、チャネルについての応答(例えば血流力学的応答)は、そのチャネルによって記録又は測定されたタスクの実行に関連する測定データ又はセンサデータ(例えばタスク条件下のデータのブロック)の平均であり得る。したがって、代表的な応答は、長いチャネルであり得る、考慮される複数のチャネルの各々に対して判定され得る。
【0219】
いくつかの実施形態において、特性抽出モジュール322は、記録されたデータ又は測定データから特性又は特徴を抽出する。例えば、特性抽出モジュール322は、上で説明されたように、1つ以上のチャネルの代表的な応答から、例えばHbO振幅又は曲線下の面積等の、特性又は特徴を抽出し得る。抽出された特性は、ユーザの認知機能若しくはパフォーマンス又は皮質活動に関連する、特徴又はバイオマーカに対応するものであり得る。抽出された特性は、スコアとともに、症状重症度(又は進行)判定モデル327への入力として提供され得、症状重症度又は進行判定モデル327は、出力として症状重症度又は進行尺度を提供し得る。進行尺度は、対象が神経学的状態の症状の処置において呈している進行を示すものであり得る。
【0220】
いくつかの実施形態において、特性抽出モジュール322は、光学センサチャネルの対の間の機能的接続性を示す又はこの機能的接続性を含む特性値、及び/又は、光学センサチャネルから取得されたデータの統計的尺度を判定するように構成され得る。
【0221】
いくつかの実施形態において、右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された特性値は、総合的ADHD症状重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用される。
【0222】
いくつかの実施形態において、右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された特性値は、一次ADHD中核症状スコア又は尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用される。
【0223】
いくつかの実施形態において、対象の内側前頭前皮質、及びいくつかの例においては、対象の左外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された特性値は、不注意の重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用される。
【0224】
いくつかの実施形態において、対象の右外側前頭前皮質、左外側前頭前皮質、及び/又は左外側前頭前皮質及び内側前頭前皮質と重なる領域における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された特性値は、前頭前皮質は、多動性の重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用される。
【0225】
いくつかの実施形態において、対象の内側前頭前皮質、及び/又は対象の右外側前頭前皮質に向く、重なる、又は隣接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成された光チャネルから取得されたセンサデータから導出された特性値は、衝動性の重症度尺度を判定するために、症状重症度及び/又は進行判定モデル328によって使用される。
【0226】
1025において、制御デバイス110、サーバ230又はコンピューティングデバイス220は、症状重症度又は進行尺度を出力する。例えば、制御デバイス110若しくはコンピューティングデバイス220は、ユーザインタフェース360を介して症状重症度若しくは進行尺度をユーザに提供することによって、症状重症度若しくは進行尺度を出力し得るか、又は、制御デバイス110若しくはサーバ230は、例えば、ユーザのコンピューティングデバイス220の認知パフォーマンスモニタリングアプリケーション225に、若しくは臨床医のコンピューティングデバイスに、サーバ230に、若しくはデータベース240に、症状重症度若しくは進行尺度を伝送し得る。
【0227】
いくつかの実施形態において、ステップ1015、ステップ1020及び/又はステップ1025は、サーバ230によって実行され得る。いくつかの実施形態において、ステップ1015、ステップ1020及び/又はステップ1025は、コンピューティングデバイス220によって実行され得る。
【0228】
最初の調査は、印加された刺激に応答した、ユーザの認知機能若しくは認知パフォーマンス又は皮質活動に関連する特徴又はバイオマーカに対応する又はそれらの相対的に強力なインジケータである、センサデータから抽出することができる1つ以上の特性を判定することを目的として、実施された。
【0229】
この調査には、16人の参加者又は対象が関与した。ヘッドセット又は機器100(又は機器100のアレイ700)が、各対象の額に配置された。機器100は、眉毛と髪の生え際との間、及びこめかみからこめかみまで延在した。機器100には、対象の頭部、特に前頭前皮質に電流を送達するために、導電性スポンジ(電極120)が嵌合された。対象は、目を閉じて横になるように指示された(安静状態測定として知られている)。制御デバイス110は、電気刺激生成器350から導電性スポンジに、したがって対象の前頭前皮質に、刺激を送達するために使用された。特に、制御デバイス110は、各刺激セッションの間に電流のない中断を伴うことなく、様々な強度の刺激を送達するために使用された。例えば、多くの対象に対して、8回の刺激及び記録のセッションが実施された。最初のセッションは、刺激のない期間(例えば2分~8分)と、それに続く印加期間(例えば2分~8分)の間の0.25mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。2番目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の0.5mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。3番目のセッションは、印加期間の間の0.75mAの電流での刺激の印加を含んだ。4番目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の1.0mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。5番目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の1.25mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。6回目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の1.5mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。7回目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の1.75mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。8回目のセッションは、刺激のない期間と、それに続く印加期間の間の2.0mAの電流での刺激の印加と、を含んだ。各セッションの間に機器100のセンサからセンサデータが記録され、それによって、それぞれの印加期間及び休息期間を伴う0.25mAのステップで、0.25mA~2.0mAの各刺激電流設定についてのセンサデータのセットを含むセンサデータセットを生成した。
【0230】
記録されたセンサデータセットからトレーニングデータセットが生成されて、ロジスティック回帰モデル(シグモイドモデル)、すなわち活動判定モデル328をトレーニングした。トレーニングデータセットは、第1の例のセットを含み、その各々は、第1の刺激セッション(すなわち0.25mAの刺激電流)の間に記録されたセンサデータに対応するものであった。第1の例のセットは「不十分」、すなわち脳から十分な応答を引き出すには不十分なもの、又は不十分な活動尺度を生成するものとしてラベル付けされた。トレーニングデータセットは、第2の例のセットを含み、その各々は、8回の刺激セッション(すなわち2.0mAの刺激電流)の間に記録されたセンサデータに対応するものであった。第2の例のセットは「十分」、すなわち脳から十分な応答を引き出すのに十分なもの、又は十分な活動尺度を生成するものとしてラベル付けされた。トレーニングデータセットは、活動判定モデル328をトレーニングするために使用された。
【0231】
特性の係数は、トレーニングセットの1000回の異なるランダムサンプリングに対して活動判定モデル328をトレーニング及び試験し、次いで値を平均することによって判定された。
【0232】
モデルがトレーニングされると、刺激電流の各々についてそれぞれの対象に十分な刺激が送達されている確率を予測するために、2回目から7回目の刺激セッションの間に取得された残りのセンサデータの例から、関連する特性値が抽出された。全対象の平均の結果が
図15に例解されており、本図は刺激電流(mA)に対する十分な刺激の確率のプロットである。
【0233】
取得されたセンサデータは、上で考察されたように、短いチャネルの除去及び加速度計の除去を含む、標準的な手法を使用する処理及び信号増強を受ける。センサデータは、刺激前、刺激中、及び刺激後の、3つの時間ブロックに分割される。各時間ブロックについて、Hbrデータ及びHboデータの両方について以下の統計値が算出される。
【0234】
全てのfNIRS長チャネルについて、(i)平均値(raw_mean)、(ii)標準偏差(raw_std)、(iii)導関数の平均値(diff_mean)、及び(iv)導関数の標準偏差(diff_std)。全てのfNIRS長チャネルの対について、(i)相関係数(raw_corrcoef)(注:これは機能的接続性を判定するために使用される)。
【0235】
異なる時間ブロック間のこれらの統計値の変化は、特性を生成するために使用される。使用される3つの変化は、(i)刺激前から刺激中(before_to_during_change)、(ii)刺激前から刺激後(before_to_after_change)、及び(ii)刺激中から刺激後まで(during_to_after_change)である。
【0236】
長いチャネルの各々についての特性の全てが収集され、使用される刺激の電流との有意な相関について試験される。活動判定モデル328において、p値<0.005の相関を有する特性のみが使用された。
【0237】
これらの例のセンサデータから抽出され、活動の良好な予測因子であることが見出されたモデルへの入力として使用された特性は、モデルのトレーニングによって判定された重み又は係数の平均値とともに、表Iに示される。表Iは、特性の係数値の標準偏差、tスコア、及び分散の係数(CoV)の値を更に含む。表Iの特性は、最も予測性の高い特性、すなわち対象の活動レベルを最もよく示す特性から、その特性のセットの中で最も予測性の低い特性への順に、並べられている。正の係数値を有する特性の全てが、活動尺度と正の相関があり、負の係数値を有する特性(「S2D6 hbr S3D8 hbr raw corr coeff during to after change」)は、活動尺度と負の相関がある。表Iの結果によれば、特性「S3D4 HbR raw std before to after change」は、十分な刺激が印加されたか否かを最もよく示すものであり、十分な刺激が印加されたか否かの確率を予測するのに好適な信頼性の高い特性である。特性「S3D hbo S4D8 hbo raw corr coef before to during change」は、対象に十分な刺激が印加されたか否かを示す高性能な特性であり、十分な刺激が印加されたか否かの確率を予測するのに好適な信頼性の高い特性である。
【0238】
表Iの特性のいずれか1つ又はいずれかの組み合わせが、十分な刺激が印加されたか否かの確率を予測するために使用され得る。かかる特性は、活動判定モデル328をトレーニングするために使用され得る。トレーニングされると、センサデータから抽出された特性の値を活動判定モデルへの入力として提供することによって、活動判定モデル328は、対象についての活動判定モデル328の活動尺度となる。
【表1】
【0239】
以下の表IIは、表1の特性のために使用される用語のいくつかの記述を提供する。表Iからの特性の全てが表IIに含まれているわけではないが、特性を定義するために使用される用語の説明として提供される記述は、表Iの他の特性にも同様に適用され得ることは、理解されるであろう。
【表2】
【0240】
刺激陰極(負の刺激電極)のまわりのチャネルにおける、刺激の印加前から刺激の印加後の脱酸素化血液の標準偏差の変化の尺度である、特性「S3D4 HbR raw std before to after」に関して、活動尺度と正の相関があることが見出された。このことは、陰極における負の電流の増大を引き起こす、刺激の増大によるものであり得る。陰極における負の電流は、陰極のまわりの活動度の低下、それゆえ、脱酸素化された血液の活性の増大を引き起こし得る。
【0241】
特性「S4D8 HbO S5D8 HbO raw corr coef before to during」及び「S3D8 HbO S4D8 HbO raw corr coef before to during」に関して、これらの特性は両方とも、刺激電極の陽極(正)と陰極(負)との中点における脳領域内の酸素化された血液の機能的接続を示すものであり、活動尺度と正の相関があることが見出された。電流が陽極から陰極に移動すると、機能的接続性の増大が、2つの電極間の点において増大した同期活動が起こることを伝える。このことは、刺激前の機能的接続性を刺激中と比較すると明らかであり、刺激強度と正の相関があり、接続性の増大が刺激によって引き起こされる活動度の増大によるものである見込みが高いことを示している。
【0242】
図7a及び7bを参照する表II、表I及びIIにおいて参照されるセンサと検出器との対の位置は、容易に理解され得る。
【0243】
いくつかの実施形態において、活動判定モデル328の特性は、対象の左外側前頭前皮質から取得されたセンサデータから抽出される。例えば、機器100は、第1のセンサモジュール(センサS2並びにセクタD3及びD4を含む)と隣接する第2のセンサモジュール(センサS3並びに検出器D5及びD6を含む)とが、対象の左外外側前頭前皮質からのデータを測定又は記録するよう位置決めされるように、対象の頭部に位置決めされ得る。例えば、対象の左外側前頭前皮質から取得されるセンサデータは、第1のセンサモジュールの第1のセンサ(S2)と第1の検出器(D4)との間の長いチャネル、第2の隣接するセンサモジュールの第2のセンサ(S3)と第2の検出器(D6)との間の長いチャネル、第1のセンサモジュールの第1のセンサ(S2)と第2のセンサモジュールの第2の検出器(D6)との間の長いチャネル、及び第2のセンサモジュールの第2センサ(S3)と第1センサモジュールの第1の検出器(D4)との間の長いチャネルのうちの1つ以上から判定されたセンサデータを含み得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、活動判定モデル328についての特性は、対象の内側前頭前皮質から取得されたセンサデータから抽出される。例えば、機器100は、第3のセンサモジュール(センサS4並びにセクタD7及びD8を含む)と隣接する第4のセンサモジュール(センサS5並びに検出器D9及びD10を含む)とが対象の内側前頭前皮質からのデータを測定又は記録するよう位置決めされるように、対象の頭部に位置決めされ得る。例えば、対象の内側前頭前皮質から取得されるセンサデータは、第3のセンサモジュールの第1のセンサ(S4)と第1の検出器(D8)との間の長いチャネル、及び第4の隣接するセンサモジュールの第2のセンサ(S5)と第3のセンサモジュールの第1の検出器(D8)との間の長いチャネルのうちの1つ以上から判定されたセンサデータを含み得る。
【0245】
いくつかの実施形態において、活動判定モデル328についての特性は、対象の左外側前頭前皮質、内側前頭前皮質、及び/又は内側前頭前皮質と左外側前頭前皮質との間の境界から取得されたセンサデータから抽出される。いくつかの実施形態において、センサデータは、第2のセンサモジュールの第2のセンサ(S3)と第3のセンサモジュールの第1の検出器(D8)との間の長いチャネル、及び第3のセンサモジュールの第1のセンサ(S4)と第2のセンサモジュールの第2の検出器(D6)との間の長いチャネル及び長いチャネルのうちの1つ以上から取得され得る。いくつかの実施形態において、センサデータは、チャネルS2D4、S2D6、S3D4、S3D6のうちの1つ以上、チャネルS4D8及びS5D8のうちの1つ以上、並びに任意選択的にS3D8及びS4D6のうちの1つ以上から取得され得る。
【0246】
図7bに示されるように、異なる領域はいくらかの重なりを有する。例えば、S4D6及びS3D8は、内側前頭前部と左側前頭前部との間の境界チャネルであり、そのためいずれか/両方の領域の一部とみなされ得る。このことは、
図7bにおいて円が交わる全ての場所に当てはまる。
【0247】
第2の調査は、対象が特定のタスクを受けている又は行っている間の、対象の認知機能若しくは認知パフォーマンス又は皮質活動の、特徴若しくはバイオマーカに対応する、又はその相対的に強力なインジケータである、センサデータ及び/又はタスクデータから抽出され得る、1つ以上の特性を判定することを目的として実施された。
【0248】
この調査には、ADHDを有する10人の参加者又は対象が関与した。ヘッドセット若しくは機器100(又は機器100のアレイ700)は、各対象の額において、眉毛と髪の生え際との間、及びこめかみからこめかみまでに配置された。ヘッドセット又は機器100は導電性スポンジを有さず、刺激は印加されなかった。この調査において、機器100は、fNIRSセンサを含む光学センサ130を使用して、対象がタスク又は試験を行っている間の、脳の応答又は皮質活動を記録するためにのみ使用された。
【0249】
対象は各々、ADHD評価スケール質問票に回答した。ADHD評価スケール質問票は、ADHDの診断を助けるために精神科医によってしばしば与えられる18問の質問のセットを含む。特定の質問は、ADHDの様々な症状を評価し、不注意タイプ、多動性タイプ又は複合タイプのいずれかである、その人物が有するADHDのタイプ及び/又は程度を特定するのに役立つように設計されている。このスケールは、一般的な症状にどのくらいの頻度で影響を受けているか、またその症状によってどれくらい深刻に影響を受けているかを、「全くない」から「頻繁に」までのスケールで患者が記入することができる、自己申告のスケールである。対象によって提供された質問票への回答は、判定された症状重症度又は進行スコアのセットを対象に割り当てるために使用された。例えば、判定された進行スコアの各セットは、合計又は総合的ADHD評価スケールスコア、ADHD中核症状スコア、不注意スコア、多動性スコア、及び衝動性スコアを含むものであった。
【0250】
対象は、対象の衝動制御及び注意力を試験するために設計されたよく知られた試験である「Go-No/Goタスク」と呼ばれる第1の認知パフォーマンス(実行機能)タスクを実行するように求められた。対象はまた、対象の作業記憶及び注意力を試験するために設計されたよく知られた試験である「Nバック(N-Back)タスク」と呼ばれる第2のパフォーマンス(実行機能)タスクを実行するように求められた。
【0251】
この調査において、Go-No/Goタスク及びNバックタスクの各条件について、記録されたボタン押下情報を使用して、以下の基準が算出された。
a.精度-平均値(accuracy_mean)
b.精度-標準偏差(accuracy_std)
c.反応時間-平均値(reaction_time_mean)
d.反応時間-標準偏差(reaction_time_std)
e.省略エラー-平均値(omission_errors_mean)
f.省略エラー-標準偏差(omission_errors_std)
g.誤処理エラー-平均値(commission_errors_mean)
h.誤処理エラー-標準偏差(commission_errors_std)
【0252】
実行された各タスクについてのタスクスコアのセットが、各対象に対して生成された。例えば、第1及び第2のパフォーマンスタスクについてのタスクスコアは、反応時間、精度、省略エラー、及び誤処理エラーについての値を含むものであった。
【0253】
各対象について、対象が第1のパフォーマンスタスクを行っている間に第1のセンサデータのセットが記録され、対象が第2のパフォーマンスタスクを行っている間に第2のセンサデータのセットが記録された。
【0254】
センサデータは、上で考察されたように、短いチャネルの除去及び加速度計の除去を含む処理及び信号増強を受けた。
【0255】
センサデータは、各実験条件の全ての繰り返しにわたって平均化された。Go No/Goについては、条件は(go、gonogo)、Nバックについては、条件は(0-back、1-back、2-back)である。センサデータは、各関心領域にわたって平均化された。換言すれば、以下により詳細に考察されるように、特定のセンサチャネルからのデータが、領域にグループ化される。各関心領域について、Hbrデータ及びHboデータの両方について、以下の統計値が算出される。
a.平均値(raw_mean)
b.標準偏差(raw_std)
c.最大値(raw_max)
d.最小値(raw_min)
e.一般線形モデルにフィッティングされた係数(theta)
【0256】
例のトレーニングデータセットは、センサデータ、タスクスコアのセット、及び判定された進行スコア(ラベル)から生成された。トレーニングデータセットは、線形モデル、すなわち症状重症度(又は進行)判定モデル327をトレーニングするために使用された。症状重症度判定モデル327は、入力として、第1のパフォーマンスタスクが実行されている間に取得されたセンサデータからの特性、第2のパフォーマンスタスクが実行されている間に取得されたセンサデータからの特性、第1のパフォーマンスタスクからのタスクスコア、及び第2のパフォーマンスタスクからのタスクスコアを受信し、かつ出力として、進行若しくは症状重症度の尺度、又は症状の各カテゴリについての症状重症度尺度(例えば、総合的ADHDスコア、ADHD中核症状スコア、不注意スコア、多動性スコア、衝動性スコア)を提供するように構成された。
【0257】
症状重症度(又は進行)判定モデル327は、トレーニングデータセットのデータの75%に対してトレーニングされ、残りの25%に対して試験された。このことは、トレーニングデータ及び試験データの様々なサンプリングについて1000回行われた。長いチャネル及びタスク特性の各々についての特性の全てが収集され、症状重症度尺度との有意な相関について試験される。全ての利用可能な特性のうち、上位10の相関関係を有する特性のみが、症状重症度(又は進行)判定モデル327において使用された。
【0258】
例のセンサデータのセット及び/又はタスクスコアのセットから抽出され、モデルへの入力として使用される、高性能な特性のいくつかが、モデルのトレーニングによって判定された重み又は係数の平均値とともに、以下の表III~表VIIに示される。これらの表は、特性についての標準偏差、tスコア、係数値の分散の係数(CoV)、及びp値の値を更に含む。
【0259】
再び
図7a及び7bを参照すると、以下の表に記載されている領域「left_3」、「left_2」、「left_1」、「mid」、「right_1」、「right_2」、「right_3」は、以下を指す。
・left_3=S1D2、S2D2、S1D4
・left_2=S2D4、S3D4、S2D6
・left_1=S3D6、S4D6、S3D8
・mid=S4D8、S4D10、S5D8、S5D10
・right_1=S6D10、S5D12、S6D12
・right_2=S7D12、S6D14、S7D14
・right_3=S8D14、S7D16、S8D16
【表3】
【0260】
表IIIは、総合的ADHD症状重症度尺度の良好な予測因子であると判定された上位10の特性を表に示しており、タスクスコアデータから抽出された1番目の特性(「1-back reaction time std」)及び3番目の特性は、症状重症度尺度と正の相関があり、4番目、7番目、9番目及び10番目の特性(いずれもセンサデータから抽出されたもの)は症状重症度尺度と正の相関があり、センサデータから抽出された他の4つの特性は、総合的ADHD症状重症度尺度と負の相関がある。したがって、センサデータ及びタスクデータの両方からの特性が、トレーニングされた症状重症度判定モデル327への入力として使用されて、対象についての総合的ADHD症状重症度尺度を判定する。利用可能なタスクデータのうち、反応時間及び省略の基準が、総合的ADHD症状重症度尺度と最も強い(正の)相関を有する。利用可能なセンサデータのうち、右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成されたチャネル(S7D12、S6D14、S7D14)が、総合的ADHD症状重症度尺度と最も強い(負の)相関を有していることは、注目に値する。
【表4】
【0261】
表IVは、一次ADHD中核症状スコアの良好な予測因子であると判定された上位10の特性を表に示しており、センサデータから抽出された1番目、3番目、4番目、7番目及び8番目の特性は、一次ADHD中核症状スコアと負の相関があり、センサデータから抽出された他の特性は、一次ADHD中核症状スコアと正の相関がある。したがって、センサデータからの特性のみが、トレーニングされた症状重症度判定モデル327への入力として使用されて、対象についての一次ADHD中核症状スコアを判定する。利用可能なセンサデータのうち、右外側前頭前皮質における活動を測定するように構成されたチャネル(S7D12、S6D14、S7D14)が、一次ADHD中核症状スコアと最も強い(負の)相関を有していることは、注目に値する。
【表5】
【0262】
表Vは、不注意の症状の良好な予測因子であると判定された上位10の特性を表に示しており、1番目、3番目、7番目及び8番目の特性(いずれもセンサデータから抽出されたもの)、2番目、5番目及び10番目の特性(タスクスコアデータから抽出されたもの)は、不注意の症状と正の相関があり、いずれもセンサデータから抽出された他の特性は、不注意の症状と負の相関がある。したがって、センサデータ及びタスクデータの両方からの特性が、トレーニングされた症状重症度判定モデル327への入力として使用されて、対象についての不注意の重症度尺度を判定する。利用可能なタスクデータのうち、反応時間及び省略エラーの基準が、不注意の症状と最も強い(正の)相関を有する。利用可能なセンサデータのうち、対象の内外側前頭前皮質における、及びいくつかの場合においては対象の右外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成されたチャネル(S6D10、S5D12、S6D12)が、不注意の症状と最も強い相関を有していることは、注目に値する。
【表6】
【0263】
表VIは、多動性の症状の良好な予測因子であると判定された上位10の特性を表に示しており、1番目、2番目、4番目、5番目、6番目、8番目及び10番目の特性(いずれもセンサデータから抽出されたもの)は、多動性の症状と負の相関があり、センサデータから抽出された他の特性は、多動性と正の相関がある。したがって、センサデータのみからの特性が、トレーニングされた症状重症度判定モデル327への入力として使用されて、対象についての多動性の重症度尺度を判定する。利用可能なセンサデータのうち、右外側前頭前皮質(S7D12、S6D14、S7D14)における及び左外側前頭前皮質における、及び/又は左外側前頭前皮質及び内側前頭前皮質と重なる領域(S2D4、S3D4、S2D6)における活動を測定するように構成されているチャネルが、多動性の重症度尺度と最も強い(負の)相関関係を有していることは、注目に値する。
【表7】
【0264】
表VIIは、衝動性の症状の良好な予測因子であると判定された上位10の特性を表に示しており、1番目の特性(タスクスコアデータから抽出されたもの)、2番目、4番目、5番目、6番目、8番目及び9番目の特性(いずれもセンサデータから抽出されたもの)は、衝動性の症状と正の相関があり、同様にいずれもセンサデータから抽出された他の特性は、衝動性と正の相関がある。したがって、センサデータ及びタスクデータの両方からの特性が、トレーニングされた症状重症度判定モデル327への入力として使用されて、対象についての衝動性の重症度尺度を判定する。利用可能なタスクデータのうち、反応時間が、衝動性の症状と最も強い(正の)相関を有する。利用可能なセンサデータのうち、対象の内側前頭前皮質における、及びいくつかの場合においては対象の右外側前頭前皮質に向く、重なる、又は接する内側前頭前皮質における活動を測定するように構成されたチャネル(S6D10、S5D12、S6D12)が、衝動性の症状と最も強い相関を有していることは、注目に値する。
【0265】
以下の表VIIIは、表III~表VIIの特性のために使用される用語のいくつかの記述を提供する。表III~表VIIからの特性の全てが表VIIIに含まれているわけではないが、特性を定義するために使用される用語の説明として提供される記載は、これらの表の他の特性にも同様に適用され得ることは、理解されるであろう。
【表8】
【0266】
図16a~16eを参照すると、総合的ADHDスコア(
図16a)、一次ADHD中核症状スコア(
図16b)、不注意(
図16c)、多動性(
図16a)、衝動性(
図16e)のカテゴリの各々について、(症状重症度判定モデル327によって予測されたもののような)予測された症状重症度尺度/スコアに対する、(ADHD評価スケール質問票スコアによる)実際の症状重症度尺度/スコアのプロットが示されている。
【0267】
本開示の広範な一般的範囲から逸脱することなく、上で説明された実施形態に対して、多くの変形及び/又は修正がなされ得ることは、当業者には理解されるであろう。それゆえ、本実施形態は、あらゆる点で例解的なものであり、限定するものではないと考えられるべきである。
【国際調査報告】