(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】出血性脳卒中の予防又は治療のための薬物の製造におけるα-アサロンの使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/09 20060101AFI20240313BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240313BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240313BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240313BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240313BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240313BHJP
【FI】
A61K31/09
A61P9/00
A61P25/00
A61P25/08
A61P25/28
A61K9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523130
(86)(22)【出願日】2021-07-22
(85)【翻訳文提出日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 CN2021107800
(87)【国際公開番号】W WO2023000247
(87)【国際公開日】2023-01-26
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507389842
【氏名又は名称】四川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100130443
【氏名又は名称】遠藤 真治
(72)【発明者】
【氏名】毛声俊
(72)【発明者】
【氏名】高小▲鳳▼
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼▲麗▼君
(72)【発明者】
【氏名】李蕊
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲検▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼迪
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼▲チィー▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼惠媛
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA16
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC01
4C076CC11
4C076FF11
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA34
4C206KA01
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA42
4C206MA72
4C206MA86
4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA22
4C206ZA36
(57)【要約】
本発明は、出血性脳卒中を予防または治療するための薬物の製造におけるα-アサロンの使用を提供し、α-アサロンの構造は式Iに示され、モデルラットの短期神経機能欠損及び長期学習記憶機能を有意に改善し、脳浮腫を軽減し、血液脳関門透過性を改善し、回復期の脳組織萎縮を予防または緩和し、出血性脳卒中の動物モデルに対する明確な治療効果があり、明らかな毒性および副作用がなく、出血性脳卒中の予防/治療薬物として期待されている。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出血性脳卒中を予防又は治療する薬物の製造における式Iで示される化合物の使用。
【化1】
【請求項2】
前記薬物は、さらに、出血性脳卒中による二次性てんかんの予防又は治療に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記薬物は、出血性脳卒中の治療及び出血性脳卒中による二次てんかんの予防に用いられることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記出血性脳卒中は、脳内出血及びくも膜下出血のうちの少なく一つに起因する脳卒中であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
前記薬物は、ICH又はSAHによる神経機能又は運動機能の損傷の改善、ICH又はSAHによる急性脳組織水腫又は血液脳関門機能障害の改善、出血性脳卒中による急性死亡率の低下、生存期間の延長、出血性脳卒中による長期学習記憶機能障害の改善、及び出血性脳卒中回復期の脳組織の萎縮の防止又は緩和のうちの少なくとも一つに用いられることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
前記式Iで示される化合物は、前記薬物の唯一の有効成分であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
前記薬物は医薬補助剤を含有し、好ましくは、前記式Iで示される化合物と医薬補助剤との総重量比が1:20~1000であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記薬物を出血性脳卒中に罹患した者の治療に用いられる場合、前記薬物の式Iで示される化合物の1日投与量範囲が0.15mg~5.0mg/kg体重であり、好ましくは0.3mg~3.0mg/kg体重であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
前記薬物の投与経路は、注射投与又は経口投与であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
前記薬物は乳剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記医薬組成物は式Iで示される化合物及び医薬補助剤を含有することを特徴とする、出血性脳卒中の予防又は治療に用いられる医薬組成物。
【化2】
【請求項12】
前記医薬組成物は、さらに、出血性脳卒中による二次性てんかんの予防又は治療に用いられることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物は、出血性脳卒中の治療及び出血性脳卒中による二次てんかんの予防に用いられることを特徴とする、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記式Iで示される化合物は、前記医薬組成物の唯一の有効成分であることを特徴とする、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記被験者に式Iで示される化合物の治療又は予防の有効量を投与することを含み、好ましくは、前記方法は被験者の出血性脳卒中の治療又は予防、出血性脳卒中による二次てんかんの治療又は予防に用いられ、より好ましくは、前記方法は被験者の出血性脳卒中の治療、出血性脳卒中による二次てんかんの予防に用いられる、被験者の出血性脳卒中の治療及び予防方法。
【化3】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオ医薬分野に属し、出血性脳卒中の治療又は予防のための薬物の製造におけるα-アサロンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脳卒中は現在、世界第2位の死因となっており、中国だけでも毎年400万人近くの新規患者が発生し、世界で最も高い発症率となっている。脳卒中による死亡者数は毎年200万人を超え、生き残った脳卒中患者の約2/3が永久に身体障害者になる。脳卒中は、臨床的には虚血性脳卒中と出血性脳卒中に分類される。出血性脳卒中とは、頭蓋骨内の血管が破裂して血液が脳に漏れ、それに伴う神経システム機能障害など様々な臨床症状が現れることである。出血性脳卒中は、発症率が比較的低いものの、死亡率と障害率が高い。脳組織内の出血部位により、出血性脳卒中は、脳内出血(Intracerebral Hemorrhage、ICH)とくも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage、SAH)の2種類に分けられる。ICHは脳内に、SAHは軟髄膜とくも膜の間に発生する。高血圧性脳出血は非外傷性ICHの最も一般的な原因であるのに対し、SAHの一般的な原因は頭蓋内動脈瘤である。
【0003】
出血性脳卒中による脳損傷は臨床治療の難点であり、障害の重要な原因である。脳損傷は一次脳損傷と二次脳損傷の2種類に分けられる。一次脳損傷は、初期出血による血腫及びその拡大による周辺脳組織の直接的な機械的圧迫損傷と虚血性変化を指し、グルタミン酸過負荷、カルシウム過負荷、ミトコンドリア機能障害などを含み、二次脳損傷のメカニズムはより複雑で、その病理学的経路には、血液脳関門破壊や脳浮腫形成、酸化ストレスや炎症反応、オートファジーやアポトーシス、ミクログリア活性化、脳内エネルギー代謝やプロテオーム変化、鉄の沈着などを含み、最終的には神経障害につながる。出血性脳卒中による脳損傷の病理学的メカニズムには、さまざまな要因とリンクが関与しており、多くの要因とリンクが相互作用し、相互に関連している。その中で、興奮性アミノ酸(例えばグルタミン酸)と抑制性アミノ酸(例えばγ-アミノ酪酸、GABA)の不均衡な調節による神経細胞の興奮毒性が、出血性脳卒中の急性期神経細胞の損傷や死亡の主要因である。
【0004】
現在、出血性脳卒中患者の臨床治療は、主に薬物療法と手術療法を採用している。薬物療法は主に内科対症療法であり、頭蓋内圧の低下、血圧の調整、止血療法、低体温療法、脳代謝賦活剤、カルシウム拮抗剤などを含むが、効果は乏しい。手術療法は実際に患者の命を救う上で積極的な役割を果たしているが、患者の神経学的機能障害に対する有効性は理想的ではなく、より厳しい適用要件がある。現在までに、出血性脳卒中による神経損傷を治療し、それによって患者の生存率を高め、又は患者の予後を改善する薬物療法は承認されていない。したがって、出血性脳卒中を効果的に治療できる薬物を開発することは、臨床的に非常に重要である。
【0005】
α-アサロンは漢方薬石菖蒲(Acorus calamus)の主な有効成分で、鎮静、鎮痙、抗けいれんなどの作用がある。研究によると、α-アサロンは、Na+チャネルを遮断し、GABAA受容体を活性化することにより、抗てんかん作用を発揮できることが示されている(Wang Z J, Levinson S R,Sun L,et al.Identification of both GABAA receptors and voltage-activated Na+ channels as molecular targets of anticonvulsant alpha-asarone[J].Front Pharmacol,2014,5(40):5-11及びHuang C, Li W G,Zhang X B,et al.alpha-asarone from Acorus gramineus alleviates epilepsy by modulating A-type GABA receptors[J].Neuropharmacology,2013,65(2):1-11を参照されたい)。また、神経前駆細胞の増殖促進、抗酸化ストレス、ミクログリアの活性化抑制、神経炎症の抑制、神経細胞のアポトーシスの改善などの効果がある(Chellian R, Pandy V,Mohamed Z.Pharmacology and toxicology of α- and β-Asarone: A review of preclinical evidence[J].Phytomedicine,2017:41-58を参照されたい)。上記の研究は、α-アサロンが多種の神経薬理学的活性を有することを示唆しているにもかかわらず、これまで出血性脳卒中に対するα-アサロンの治療効果については報告されていない。
【0006】
一方、出血性脳卒中による二次性てんかんの臨床治療では、一般的に抗てんかん薬の予防投与は推奨されていない(中国医師会神経学会,中国医師会神経科脳血管疾患グループ,中国脳出血診断・治療ガイドライン2019[J].Chinese Journal of Neurology,2019,52(12):994-1005.)、その理由は、抗てんかん薬は副作用が高く、抗てんかん薬の予防投与は出血性脳卒中患者の神経機能を損なう恐れがあるからである。
【発明の概要】
【0007】
先行技術における出血性脳卒中の予防又は治療のための薬物の不足を克服するために、本発明はα-アサロンの新規な使用を提供する。
【0008】
このため、本発明は、下記の技術的解決策を提供する。
【0009】
本発明は、出血性脳卒中の予防又は治療のための薬物の製造における式Iで示される化合物(トランス-2,4,5-トリメトキシ-1-プロペニルベンゼン、別名α-アサロン)の使用を提供する。
【化1】
本発明は、予想外に、式Iで示される化合物が、モデルラットの短期神経機能欠損及び長期学習記憶機能を有意に改善し、脳浮腫を軽減し、血液脳関門透過性を改善し、回復期の脳組織の萎縮を予防又は緩和し、出血性脳卒中の動物モデルに対して明確な治療効果を有し、明らかな毒性と副作用がないことを見出した。本発明は、血管内穿刺により構築されたクモ膜下出血モデルラット及びコラゲナーゼ注入により構築された脳実質出血モデルラットの治療に、α-アサロン、陽性薬物ビンポセチン注射液及びニモジピン注射液を用いることにより、α-アサロンがモデルラットの患側脳組織の浮腫を著しく軽減し、血液脳関門透過性を改善し、回復期のモデルラットの脳組織の萎縮を予防又は緩和し、短期神経機能スコア及び長期学習記憶機能を著しく改善することを明らかにした。また、α-アサロンはモデルラットの急性出血性脳卒中による二次性てんかんの発生率や死亡率を有意に低下させ、生存期間を延長させることができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記薬物はさらに、出血性脳卒中による二次てんかんを予防又は治療するために使用される。好ましくは、前記薬物は、出血性脳卒中の治療及び出血性脳卒中による二次性てんかんの予防のために使用される。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記出血性脳卒中は、脳内出血(Intracerebral Hemorrhage、ICH)及びくも膜下出血(Subarachnoid Hemorrhage,SAH)の少なくとも一つによって引き起こされる脳卒中である。
【0012】
本発明において、前記式Iで示される化合物は下記の薬理作用を有する:(1)過剰なグルタミン酸による神経興奮毒性に拮抗する、(2)グルタミン酸及びGABAの異常上昇を抑える、(3)神経細胞のカルシウムの流入を抑制し、細胞内カルシウム過剰を抑える、(4)神経細胞のミトコンドリア膜電位を安定化して神経細胞のアポトーシスを抑える、(5)損傷神経細胞の酸化的ストレス反応を軽減する。
【0013】
本発明において、前記薬物は下記の薬理作用を有する:(1)過剰なグルタミン酸による神経興奮毒性に拮抗する、(2)グルタミン酸及びGABAレベルの異常上昇を抑える、(3)神経細胞のカルシウム流入を抑制し、細胞内カルシウム過剰を抑える、(4)神経細胞のミトコンドリア膜電位を安定化し、神経細胞のアポトーシスを抑える、(5)損傷神経細胞の酸化的ストレス反応を軽減する。
【0014】
本発明において、前記薬物は、(1)モデルラットの脳内グルタミン酸量を減少させることにより、脳出血によるグルタミン酸興奮毒性を拮抗する、(2)GABAレベルを回復させ、モデルラットの運動機能の回復を促進する、(3)Ca2+流入を抑制し、Ca2+過剰負荷による有害生化学反応及び興奮毒性を緩和する、(4)ミトコンドリア膜電位を安定化し、神経細胞のアポトーシスを抑制する、(5)神経細胞の酸化ストレス及び損傷を低減することにより、脳浮腫を軽減し、血液脳関門透過性を改善し、回復期の脳組織の萎縮を予防又は緩和し、モデルラットの短期神経機能欠損及び長期学習記憶機能障害を改善し、抗出血性脳卒中作用を発揮する。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記薬物は、下記の少なくとも一つのために使用される:神経又は運動機能の損傷(例えば、ICH又はSAHによる神経又は運動機能の損傷)の改善、二次性早期脳損傷(例えば、急性期脳組織水腫又は血液脳関門機能障害、例えば、ICH又はSAHによる急性期脳組織水腫又は血液脳関門機能障害)の軽減、出血性脳卒中による急性期死亡率の低下、生存期間の延長、脳出血による長期学習記憶障害の改善、及び出血性脳卒中の回復期の脳組織の萎縮の予防又は緩和である。
【0016】
いくつかの実施形態において、前記式Iで示される前記化合物は前記薬物の唯一の有効成分である。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記薬物は、医薬補助剤を含んでもよい。好ましくは、前記式Iで示される化合物は医薬補助剤との総重量比は1:20~1000であり、例えば1:20~200である。より好ましくは、前記式Iで示される化合物は前記薬物の唯一の有効成分であり、医薬補助剤との総重量比は1:20~1000であり、例えば1:20~200である。
【0018】
いくつかの実施形態において、前記薬物の投与対象は、ヒト又は動物であってよい。前記薬物を出血性脳卒中モデルラットの治療に用いる場合、前記薬物における式Iで示される化合物の1日の有効量は、5mg~40mg/kg体重とすることができる。前記薬物を出血性脳卒中に罹患したヒトの治療に用いる場合、前記薬物における式Iで示される化合物の1日の投与量範囲は、0.15mg~5.0mg/kg体重とすることができ、好ましくは0.3mg~3.0mg/kg体重であり、例えば、1日に2~3回投与し、1回の投与量範囲は0.15mg~1.5mg/kg体重であり、好ましくは0.3mg~1.5mg/kg体重である。上記の投与量は、異なる動物種間の用量換算関係に従って求めることができる。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記薬物の投与経路は、注射投与、経口投与、皮下埋め込み投与、吸入投与、経皮投与、経粘膜投与などである。好ましくは、前記薬物の投与経路は、注射投与(好ましくは静脈内注射投与)又は経口投与である。
【0020】
本発明において、式Iで示される化合物が脳に入り、治療有効濃度に達することができる剤形であれば、前記薬物は、ヒト及び/又は動物への使用に適した剤形、例えば、異なる投与経路に適合する任意の剤形とすることができる。いくつかの実施形態において、前記薬物は乳剤(例えば、乳状注射液、経口乳剤)である。乳剤は、現在市販されている注射剤(溶液型注射剤)に比べて安全性に優れ、錠剤に比べて生物学的利用能が高い。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記乳剤は、式Iで示される化合物、薬学的に利用可能な油、薬学的に利用可能な乳化剤、及び水を含有してもよい。
【0022】
ここで、前記薬学的に利用可能な油は、大豆油、中鎖油、オリーブ油及び魚油のうちの少なくとも一つからなってもよい。
【0023】
ここで、前記薬学的に使用可能な乳化剤は、卵黄レシチン、大豆レシチン、プルロニック(登録商標)F-68及びポリエチレングリコールステアリン酸-15(Solutol HS15)のうちの少なくとも一つからなってもよい。
【0024】
ここで、前記水は、注射用水又は精製水であってもよい。
【0025】
ここで、乳化特性によっては、前記乳剤は、オレイン酸及びオレイン酸ナトリウムのうちの少なくとも一つを含有してもよい。製剤は、オレイン酸を油相に、オレイン酸ナトリウムを水相に溶解して実施されるが、両者の混合物を油相と水相にそれぞれ溶解してもよい。
【0026】
ここで、前記乳剤は、さらにグリセロールを含有してもよい。
【0027】
ここで、前記乳剤は、酸化防止剤をさらに含有してもよい。前記酸化防止剤は、重亜硫酸ナトリウム、ビタミンE、ピロガル酸エステル等であってもよい。
【0028】
ここで、経口投与する場合、前記乳剤は、防腐剤や矯味剤などの他の適切な添加物の少なくとも一つを含有してもよい。前記防腐剤は当技術分野で通常の防腐剤であってもよく、例えば、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、エチルパラベン、プロピルエステル及びブチルエステルなどである。前記矯味剤は、当該技術分野で通常の矯味剤であってもよく、例えば、甘味料、芳香剤、ミューシレージ又は発泡剤である。前記甘味料は、シンプルシロップ、ステビオシド、アスパルテームなどであってもよく、前記芳香剤は、アップルフレーバー、ストロベリーフレーバーなどのフルーツフレーバーなどであってもよく、前記ミューシレージは、ゼラチン、メチルセルロースマスチックなどであってもよく、前記発泡剤は、クエン酸、酒石酸と炭酸水素ナトリウムの混合物であってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態において、重量パーセントで前記乳剤は、0.5%~5%の式Iで示される化合物、5%~30%の薬学的に利用可能な油、0.6%~1.8%の乳化剤、0%~2.5%のグリセロール、及び残部の水(例えば精製水又は注射用水)を含んでもよい。乳剤中の式Iで示される化合物の濃度は、ある範囲内で変化することができ、濃度変化の範囲は投与量、投与体積及び式Iで示される化合物の油相への溶解度に依存する。
【0030】
いくつかの実施形態において、前記乳剤は、乳剤注射液である。好ましくは、前記乳剤注射液において、式Iで示される化合物と医薬補助剤(注射用水を含む)との合計重量比が1:20~1000であり、例えば1:20~200である。
【0031】
ここで、前記乳剤の製造方法は、式Iで示される化合物、薬学的に利用可能な油、薬学的に利用可能な乳化剤及び水を高速せん断により混合して初乳を得るステップ、初乳を高圧で均質化して乳剤を得るステップを含んでもよい。
【0032】
いくつかの実施形態において、前記乳剤の製造方法は、下記のステップを含んでもよい:
ステップ1:窒素又は不活性ガスの保護下で、式Iで示される化合物を60~80℃の薬学的に利用可能な油に溶解して油相を得、次いで乳化剤及びグリセリンを60~80℃の水に溶解又は分散させて水相を得る。又は、窒素又は不活性ガスの保護下で、式Iで示される化合物と乳化剤を60~80℃の薬学的に利用可能な油に溶解又は分散させて油相を得、次いでグリセリンを60~80℃の水に溶解して水相を得る。
【0033】
ステップ2:上記の油相と水相を高速せん断により混合し、油相を水相に分散させて初乳を得る。
【0034】
ステップ3:初乳を高圧で均質化し(均質化回数は例えば、高圧均質化1~3回)、乳滴の平均粒径が0.5μmを超えないようにし、ろ過し、窒素又は不活性ガス保護下で、ガラスアンプル、輸液ボトル、バイアル、ソフトバッグなどの薬用容器に充填する。投与経路に応じて、ロータリーオートクレーブ滅菌や滅菌せずに防腐剤を添加することで乳剤を得る。
【0035】
前記高速せん断のせん断速度は、当該分野において乳剤の少量試験又は大規模生産の製造のために使用される従来のせん断速度であってよく、例えば、少量実験室試験用では10000~20000 r・min-1であってよく、また例えば大規模生産用では2000~4000 r・min-1であり、実際のせん断速度は、せん断半径により異なり、いずれもせん断力の大きさを決定する。
【0036】
前記高速せん断のせん断時間は、当該分野において乳剤の製造に使用される従来のせん断時間であってよく、例えば、3~10分であってよく、また例えば、5~8分である。
【0037】
前記高圧均質化の均質化圧力は、当該分野において乳剤の製造に使用される従来の均質化圧力であってよく、例えば、500~1500barであってよく、また例えば500~1000barである。
【0038】
前記高圧均質化のサイクル回数は、当該分野において乳剤の製造に使用される従来のサイクル回数であってよく、例えば、1~3回であってよい。
【0039】
本発明はまた、出血性脳卒中の予防又は治療のための医薬組成物を提供し、ここで、前記医薬組成物は、式Iで示される化合物及び医薬補助剤を含有する。
【0040】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、出血性脳卒中に起因する二次性てんかんを予防又は治療するためにさらに使用される。
【0041】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は、出血性脳卒中を治療するため、及び出血性脳卒中に起因する二次性てんかんを予防するために使用される。
【0042】
いくつかの実施形態において、前記式Iで示される化合物は、前記医薬組成物における唯一の有効成分である。
【0043】
いくつかの実施形態において、前記医薬組成物は乳剤である。
【0044】
本発明はまた、前記被験者に、式Iで示される化合物の治療又は予防の有効量を投与することを含む、被験者の出血性脳卒中の治療又は予防方法を提供する。
【0045】
好ましくは、前記方法は、被験者の出血性脳卒中の治療又は予防に用いられ、出血性脳卒中に起因する二次性てんかんの治療又は予防に用いられる。
【0046】
より好ましくは、前記方法は、被験者の出血性脳卒中の治療に用いられ、出血性脳卒中による二次性てんかんの予防に用いられる。
【0047】
定義と説明
特に明記しない限り、本明細書で使用される下記の用語及び語句は、下記の意味を有している。特定の用語又は語句は、特定の定義なしに不確定又は不明確であると見なされるべきではなく、通常の意味で理解されるべきである。本明細書に商品名が現れる場合、それは対応する商品又はその有効成分を指すことを意図している。
【0048】
特に明記しない限り、本発明において、用語「薬学的に使用可能な」とは、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形について、それらは健全な医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題や合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合うことを指す。
【0049】
特に明記しない限り、本発明において、用語「薬学的に許容される量の」とは、それらの化合物、材料、組成物及び/又は剤形の量について、それらは健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題や合併症なしに、合理的な利益/リスク比に見合うことを指す。
【0050】
特に明記しない限り、用語「医薬補助剤」とは、医薬品の製造や処方箋の作成に使用される賦形剤や添加剤を指し、活性成分以外の薬物製剤に含まれるすべての物質である。中華人民共和国薬局方(2020年版)第4部、又はHandbook of Pharmaceutical Excipients (Raymond C Rowe、2009 Sixth Edition)を参照されたい。
【0051】
特に明記しない限り、用語「治療」とは治療療法を指す。特定の障害に関して、治療とは、(1)疾患又は病症の一つ又は複数の生物学的症状を軽減すること、(2)(a)病症になる、又は引き起こす生物学的カスケードの一つ又は複数のポイント、又は(b)病症の一つ又は複数の生物学的症状を妨害すること、(3)病症に関連する一つ又は複数の症状、影響又は副作用、又は病症又はその治療に関連する一つ又は複数の症状、影響又は副作用を改善すること、又は(4)病症又は病症の一つ又は複数の生物学的症状の進行を遅らせることを指す。
【0052】
特に明記しない限り、用語「予防」とは、疾患、障害、又は病症を獲得又は発症するリスクの低下を指す。
【0053】
特に明記しない限り、用語「治療有効量」とは、被験者に投与される場合に、本明細書に記載の疾患又は病症を治療するのに十分な化合物の量を指す。「治療有効量」は、化合物、病症及びその重症度、ならびに治療される患者の年齢に応じて変化するが、当業者によって必要に応じて調整することができる。有効量は、投与対象(ヒト又は動物など)によっても異なる。
【0054】
特に明記しない限り、用語「予防有効量」とは、疾患、障害又は病症を予防するのに十分な量、又は疾患、障害又は病症に関連する一つ又は複数の症状を予防するのに十分な量、又は疾患、障害又は病症の再発を予防するのに十分な量を指す。
【0055】
特に明記しない限り、用語「被験者」とは、本発明の実施例に従って化合物が投与される、又は投与された任意の動物を指し、好ましくは哺乳動物であり、最も好ましくはヒトである。用語「哺乳動物」とは、任意の哺乳動物を含む。哺乳動物の例としては、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、ヒトなどが挙げられるが、これらに限定されず、ヒトが最も好ましい。
【0056】
本発明において反応温度を特定しない場合、反応温度は室温であり、室温は通常20~35℃である。
【0057】
特に明記しない限り、本発明における「出血性脳卒中に起因する二次性てんかん」とは、患者自身はてんかんの既往がなく、出血性脳卒中による二次性てんかん発作(出血性脳卒中とは関係のない病変を除く)を指す。
【0058】
当該技術分野における常識に反しないことに基づいて、上記の好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の好ましい例を得ることができる。
【0059】
本発明で使用する試薬及び原料はすべて市販されている。
【0060】
本発明の積極的な進歩的効果としては:
本発明は、α-アサロンが出血性脳卒中の治療/予防効果を有することを初めて開示し、薬力学的メカニズムの研究結果は、α-アサロンが(1)モデルラットの脳内のグルタミン酸の含有量を減少させることで、脳出血によって引き起こされるグルタミン酸興奮毒性に拮抗する、(2)GABAレベルを回復し、モデルラットの運動機能の回復を促進する、(3)Ca2+流入を減らし、Ca2+過負荷によって引き起こされる有害な生化学反応と興奮毒性を緩和する、(4)ミトコンドリア膜電位を安定化し、神経細胞アポトーシスを軽減する、(5)神経細胞の酸化ストレス及び損傷を軽減し、それによって脳浮腫を軽減し、脳損傷を軽減し、血液脳関門透過性を改善し、回復期の脳組織萎縮を予防又は緩和し、さらに、モデルラットの短期神経機能欠損及び長期学習記憶機能障害を改善し、モデルラットの急性期におけるてんかんの発生率及び死亡率を有意に低下させ、生存期間を延長し、生存率を改善し、予後を改善し、抗出血性脳卒中の効果を発揮することを示す。
【0061】
本発明は予想外に、α-アサロンはSAHの急性期にあるラットの神経機能欠損の改善において、効果がビンポセチン注射液よりも有意に優れていること、SAH回復期にあるラットの学習記憶機能の改善及び脳組織萎縮の予防又は緩和において、効果がニモジピン注射液より有意に優れていること、ICHラットの神経機能欠損の改善において、効果がニモジピン注射液より有意に優れて、ビンポセチン注射液よりも有意に優れていることを発見した。したがって、α-アサロンは出血性脳卒中の予防/治療薬物として期待されている。
【0062】
α-アサロンは安全かつ効果的であり、本発明の全実験プロセスにおいて、α-アサロンの明らかな毒性及び副作用は見られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1:SAHラットの学習記憶機能及び回復期脳組織萎縮に対するα-アサロンの影響である。A:各ラット群の獲得訓練時のプラットフォーム発見までの潜伏期であり、B:空間探査時の各ラット群の標的象限での滞留時間と遊泳速度であり、C:各ラット群の空間探査時の活動のヒートマップで、プラットフォームの位置は円で示し、その位置する象限は標的象限であり、D:水迷路実験終了後、心臓灌流によって脳が採取され、各群の脳組織萎縮状況である。P、S、M、Nはそれぞれ偽手術群、SAHモデル群、α-アサロン中用量群、ニモジピン注射群を示す。偽手術群と比較して、
###P<0.001、
##P<0.01、
#P<0.05であり、モデル群と比較して、
**P<0.01、
*P<0.05であり、α-アサロン中用量群と比較して、
&&&P<0.001、
&&P<0.01である。
【
図2】
図2:モデルラットにおける脳浮腫及び血液脳関門透過性に対するα-アサロンの影響である。A:各群のSAHラットの脳組織の異なる部位の水分量であり、B:各群のSAHラットの脳組織からのエバンスブルーの滲出量であり、C:各群のICHラットの脳組織の異なる部位の水分量であり、D:各群のICHラットの脳組織からのエバンスブルーの滲出量である。P、S、I、Mはそれぞれ偽手術群、SAHモデル群、ICHモデル群、α-アサロン中用量群であり、偽手術群と比較して、
###P<0.001、
##P<0.01、
#P<0.05であり、モデル群と比較して、
*P<0.05である。
【
図3】
図3:モデルラットの脳組織におけるグルタミン酸とGABAの含有量に対するα-アサロンの影響である。A:各群のSAHラットの脳組織中のグルタミン酸含有量であり、B:各群のSAHラットの脳組織中のGABA含有量であり、C:各群のICHラットの血腫周囲の脳組織中のグルタミン酸含有量であり、D:各群のICHラットの血腫周囲の脳組織中のGABA含有量である。偽手術群と比較して、
##P<0.01、
#P<0.05であり、モデル群と比較して、
*P<0.05である。
【
図4】
図4:モデルラット脳組織におけるカルシウムイオンとミトコンドリア膜電位に対するα-アサロンの影響である。A:各群のSAHラットの脳組織中のカルシウムイオン量の測定結果であり、B:各群のSAHラットの脳組織中のミトコンドリア膜電位の測定結果であり、C:各群のSAHラットの脳組織中のカルシウムイオンとミトコンドリア膜電位の蛍光強度の統計図であり、D:各群のICHラットの脳組織中のカルシウムイオン量の測定結果であり、E:各群のICHラットの脳組織中のミトコンドリア膜電位の測定結果であり、F:各群のICHラットの脳組織中のカルシウムイオンとミトコンドリア膜電位の蛍光強度の統計図である。偽手術群と比較して、
###P<0.001、
##P<0.01、
#P<0.05であり、モデル群と比較して、
***P<0.001、
**P<0.01である。
【
図5】
図5:6μMオキシヘモグロビンの損傷したPC12細胞に対するα-アサロンの異なる用量の影響である。対照群と比較して、
###P<0.001、
##P<0.01であり、モデル群と比較して、
***P<0.001、
**P<0.01である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
下記、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明は記載される実施例の範囲に限定されるものではない。下記の実施例における特定の条件のない実験方法は、従来の方法及び条件に従って、又は製品の説明に従って選択される。
【0065】
製造実施例1α-アサロン注射乳剤の製造
α-アサロン0.50~50.0g、注射用大豆油50.0~300.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン6.0g~18.0gを秤量し、それに添加し、撹拌して溶解させ(必要に応じて、オレイン酸、オレイン酸ナトリウム又は両者の混合物を0.10~0.50g加える)、油相を製造して予備した。また、プルロニック(登録商標)(F68)0~3.0g、グリセロール0~25.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、攪拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に加え、高速で5~15分間せん断し、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。引き続き初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンで濾過し、濾液を窒素ガスの保護下で5mL~20mLのガラスアンプルに充填し、121℃×8~12分間でロータリーホットプレス滅菌して、α-アサロンを0.5~50mg/mLの濃度で含むα-アサロン注射乳剤が得られた。
【0066】
製造実施例2α-アサロン注射乳剤の製造
α-アサロン10.0g、注射用大豆油50.0g、注射用中鎖トリグリセリド(MCT)50.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸ナトリウム0.3gを秤量し、それに加え、撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に加え、高速で5~15分間せん断し、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。引き続き初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンで濾過し、濾液を窒素ガスの保護下で5mL又は10mLのガラスアンプルに充填し、121℃×8分間でロータリーホットプレス滅菌して、α-アサロンを10mg/mLの濃度で含むα-アサロン注射乳剤が得られた。
【0067】
製造実施例3α-アサロン注射乳剤の製造
α-アサロン20.0g、注射用大豆油100.0g、注射用中鎖トリグリセリド(MCT)100.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸0.3gを秤量してそれに加え、撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に加え、高速で5~15分間せん断し、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンで濾過し、濾液を窒素ガスの保護下で5mL又は10mLのガラスアンプルに充填し、121℃×8分間でロータリーホットプレス滅菌し、α-アサロンを20mg/mLの濃度で含むα-アサロン注射乳剤が得られた。
【0068】
製造実施例4α-アサロン注射乳剤の製造
α-アサロン1.0g、注射用大豆油100.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸0.3gを秤量し、それに加え、撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に加え、高速で5~15分間せん断し、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンでろ過し、ろ液を窒素ガスの保護下で50mL輸液瓶に充填し、121℃×12分間でロータリーホットプレス滅菌し、α-アサロンを1mg/mLの濃度で含むα-アサロン注射乳剤が得られた。
【0069】
製造実施例5α-アサロン経口乳剤の製造
製造方法は実施例1と同様であり、油相にはビタミンE、ピロガル酸エステルなどの薬学的に許容される量の抗酸化剤を加えることができ、油相にはエチルパラベンなどの薬学的に許容される量の防腐剤を加えることができる。水相には芳香のある果汁シロップなどの薬学的に許容される量の矯味剤を加えることができ、水相には安息香酸、安息香酸ナトリウムなどの薬学的に許容される量の防腐剤を加えることができる。初乳も同様の方法で製造し、引き続き初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が10μm以下になるようにし、フィルターメンブレンでろ過し、ろ液を窒素ガスの保護下で適当な医薬包装に充填し、100℃×30分、又は121℃×8分で流動蒸気滅菌し、α-アサロン経口乳剤が得られた。
【0070】
製造実施例6α-アサロン注射乳剤の製造
α-アサロン1.0g~20.0g、注射用大豆油50.0g~200.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸0.3gを秤量してそれに加え、撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で60~80℃に加熱して撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に加え、高速で5~15分間せん断し、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。初乳を高圧ホモジナイザーで1~3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンでろ過し、ろ液を窒素ガスの保護下で2mL、5mL、10mLのガラスアンプルに充填し、121℃×8~12分間でロータリーホットプレス滅菌し、α-アサロンの含有量が1mg/mL~20mg/mLであるα-アサロン乳状注射液が得られた。
【0071】
製造実施例7α-アサロン注射乳剤(別名:乳状注射液)の製造
実験材料:
α-アサロン(2883-98-9、Wuhan Lanabai Pharmaceutical Chemical Co., Ltd.)
注射用大豆油(DD20200603、Shandong Ruisheng Pharmaceutical Excipients Co., Ltd.)
卵黄レシチン(202008013、Shanghai Taiwei Pharmaceutical Co., Ltd.)
オレイン酸(160907、Xi’an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.)
グリセロール(20191213、Zhejiang Suichang Huikang Pharmaceutical Co., Ltd.)
実験ステップ:α-アサロン10.0g、注射用大豆油100.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸0.3gを秤量し、それに加えて撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で80℃に加熱し、撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に添加し、19000r/minで10分間高速でせん断して油相を水相に分散させ、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。引き続き初乳を高圧ホモジナイザーで1000barの圧力で3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンでろ過し、ろ液を窒素ガスの保護下で2mL、5mL、10mLのガラスアンプルに充填し、121℃×8分でロータリーホットプレス滅菌し、α-アサロン含有量が10mg/mLであるα-アサロン乳状注射液が得られ、バッチ番号は20201228である。
【0072】
製造実施例8α-アサロン経口乳剤の製造
α-アサロン10.0g、薬用大豆油100.0gを秤量し、適当な容器に入れ、窒素ガスの保護下で80℃に加熱し、撹拌して溶解させた。引き続き卵黄レシチン12.0g、オレイン酸0.3g、抗酸化ビタミンE10.0g、エチルパラベン2.0gを秤量してそれに加え、撹拌して溶解させ、油相を製造して予備した。グリセロール22.0gを秤量し、水約800mLを量り、窒素ガスの保護下で80℃に加熱し、撹拌して溶解させ、水相とした。上記油相を水相に添加し、19000r/minで10分間高速でせん断して油相を水相に分散させ、水を加えて1000mLとし、初乳を製造した。引き続き初乳を高圧ホモジナイザーで1000barの圧力で3回均質化し、均質化した乳滴の平均粒子径が0.5μm以下になるようにし、フィルターメンブレンでろ過し、ろ液を窒素ガスの保護下で10mLの経口バイアルに充填し、100℃×30分流動蒸気滅菌し、又は121℃×8分ロータリーホットプレス滅菌し、α-アサロンの含有量が10mg/mLであるα-アサロン経口乳剤が得られ、バッチ番号は20210105である。
【0073】
効果実施例1:SAH及びICHラットに対するα-アサロンの短期的な治療効果
実験材料:SPFグレードのSDラット、雌雄が半分ずつ、体重が200~240g、四川省のChengdu Dashuo Laboratory Animal Co., Ltd.から購入した。証明書番号はSCXK(川)2020-030である。
【0074】
コラゲナーゼVIIは、米国のSigma-Aldrich Companyから購入した(仕様:1.5KU、バッチ番号:0000111586)。
【0075】
α-アサロン原料は、Wuhan Lanabai Pharmaceutical Chemical Co., Ltd.(仕様:2kg、バッチ番号:2883-98-9)から購入し、その乳状注射液は自作され、バッチ番号が20201228、20210105である。
【0076】
ビンポセチン注射液は、Henan Runhong Pharmaceutical Co., Ltd.から購入した(仕様:10mg:2mL、バッチ番号:1811283)。
【0077】
ニモジピン注射液は、Bayer Healthcare Companyから購入した(仕様:10mg:50mL、バッチ番号:BXJC71)。
【0078】
実験群分け:血管内穿刺後又はコラゲナーゼVII注射2時間後にZea Longaスコアでモデリングが成功したかどうかを判断し、モデリングが成功したラットをランダムにグループ分けて投与した。
【0079】
ラットをランダムに偽手術群(P群、乳状注射液高用量群と同体積の生理食塩水を投与)、モデル群(S又はI群、乳状注射液高用量群と同体積のブランク乳剤を投与)、α-アサロン乳状注射液低用量群(実施例7で製造、7.5mg/kg、L群)、α-アサロン乳状注射液中用量群(実施例7で製造、15mg/kg、M群)、α-アサロン乳状注射液高用量群(実施例7で製造、30mg/kg、H群)、α-アサロン乳剤経口投与群(実施例8で製造、40mg/kg、O群)、β-アサロン乳状注射液群(製造実施例7の方法と同じ方法で実施、乳状注射液に製造、濃度10mg/mL、投与量20mg/kg、B群)、ビンポセチン注射液群(市販、2mg/kg、V群)、ニモジピン注射液群(市販、1mg/kg、N群)に分け、各群12匹であり、N群は腹腔内注射投与された以外、他の各群は尾静脈から投与された。
【0080】
1.1血管内穿刺によるSAHの構築
ラットは手術前12時間絶食させ、4%のイソフルランで麻酔を導入し、2%のイソフルランで麻酔を維持した。仰臥位に固定し、動物の体温を約37℃に維持した。頸部の皮膚を準備し、頸部の正中切開を行い、胸鎖乳突筋の内側の縁に沿って筋肉と筋膜を分離し、右側を露出し、総頸動脈(CCA)、外頸動脈(ECA)、及び内頸動脈(ICA)を鈍的に分離し、CCA近位端、ICA、及びECAにラインを処理して予備した。CCAの近位端とECAを結紮し、動脈クリップでICAを一時的にクランプした後、CCAから分岐部まで約4mmのところに針で小さな穴をあけ、穿刺線をCCA経由でICAを挿入し、ICAの動脈クリップを解放し、頭蓋内に穿刺線を挿入した。穿刺線の先端が総頸動脈の分岐点から18~19mm程度離れたところで抵抗感があり、穿刺線の先端が前大脳動脈と中大脳動脈の分岐点に到達したことを示す。その後、少し力を加えて2mm程度伸ばすと前大脳動脈と中大脳動脈の分岐点に刺さった。穿刺線を完全に除去し、ICAを結紮し、創部を生理食塩水で洗浄して縫合した。偽手術群は、穿刺線が挿入して抵抗を感じたときに引き抜くだけで、前大脳動脈と中大脳動脈の分岐点を穿刺せず、残りの手術手順は実験群と同じであった。麻酔から覚めた後、普通に餌を与えた。
【0081】
SAHの重症度スコアは、短期神経機能スコアを完了し、ラットを安楽死させた後に行われ、基底槽と脳組織表面のくも膜下出血状況に基づいてスコア化した。基底槽は脳底動脈、前大脳動脈、内頚動脈、後大脳動脈、後交通動脈からなるウィリス輪によって六つの領域に分けられている。くも膜下血塊の数に応じて、各領域のスコアは0~3点に分けられる。0:くも膜下血なし、1:少量のくも膜下血、2:中等程度の血塊、頭蓋底動脈が識別可能、3:血塊は、その領域のすべての動脈を覆っている。六つのパートスコアをすべて合計すると、合計18点である。最終スコアによると、SAH出血の重症度は0~7点:軽度のくも膜下出血、8~12点:中等程度のくも膜下出血、及び13~18点:重度のくも膜下出血に分類できる。中等程度から重度のSAHモデルを統計対象として選定した(スコア≧8)。
【0082】
1.2コラゲナーゼインジェクションによるICHモデルの構築
ラットは手術前12時間絶食させ、4%のイソフルランで麻酔を導入し、2%のイソフルランで麻酔を維持した。腹臥位に保たれ、動物の体温は約37℃に保たれた。頭部の皮膚を準備し、頭部の正中切開を行い、諸葛▲啓▼釧によって主に翻訳されたラット脳の脳定位固定マッピング(GeorgePaxinos、CharlesWatson、Paxinos、Watson、&諸葛▲啓▼釧.ラット脳の脳定位固定マッピング[M].人民衛生出版社、2005)によると、定位固定装置を用いてラットの右尾状核の位置を確認し(前フォンタネルを原点、右3mm、深さ5.5mm)、マーキング後に頭蓋骨の貫通穴を使用してマイクロシリンジの針を脳組織の尾状核に挿入し、0.5U VIIタイプコラゲナーゼを1μL注入し、注射時間は5分であり、注射完了後針を抜けず8分維持し、針をゆっくり抜き、骨蝋で頭蓋穿孔を閉鎖し、皮膚を縫合しラットはケージに戻された。偽手術群のラットには薬物を注射せず、滅菌生理食塩水を注射したのみで、その他の操作に変更はない。
【0083】
1.3脳内出血モデルの採用基準
Zea Longaの神経機能スコアを参照して、手術の2時間後のラットが麻酔後に覚醒した後スコアリングされ、スコアが1~3点のラットがグループに含まれた。
【0084】
0点:神経学的欠損症状なし、通常の活動である。
【0085】
1点:反対側の前足を完全に伸ばすことができない。
【0086】
2点:動物は這うときに円を描くように回転する。
【0087】
3点:体が片麻痺側に倒れる。
【0088】
4点:自発歩行ができず、意識を失う。
【0089】
1.1短期神経機能欠損スコア
モデリングの24時間後に、ラットの神経機能をGarciaスコアとビームバランステストによって総合的に評価し、Garciaのスコア基準は表1に示すように、ラットの動き、感覚、爬行、四肢の対称性を評価し、スコアの範囲は3~18点であり、スコアが低いほど神経学的損傷が深刻である。ビームバランステストのスコア基準は表2に示すように、ラットの体の固有感覚と身体の協調性を評価し、スコアの範囲は0~6点であり、スコアが高いほど神経学的損傷が深刻である。採点は、モデリング及び薬物投与に関与しなくて知らない人によって独自に行われた。
【0090】
【0091】
【0092】
表3より、偽手術群(P群)と比較して、手術後24時間のモデル群(S又はI群)のGarciaのスコアが有意に減少し(P<0.001)、ビームバランスのスコアは有意に増加し(P<0.001)、SAH又はICHの24時間後のモデル群のラットは、明らかな神経機能欠損を持っている。異なる用量でのα-アサロンの静脈内投与(L、M、H群)及びα-アサロンの経口投与(O群)は、さまざまな程度にGarciaのスコアを改善し、ビームバランスのスコアを低下させ、SAH又はICHによって引き起こされる神経機能欠損を改善することができ、その中でM群の投与が最も有意な改善効果を持っている(P<0.01)。SAHモデルの場合、M群の治療効果は、くも膜下出血後の血管痙攣を改善するために使用される薬物であるニモジピン(N群)、及び脳出血の後遺症を治療するために使用される薬物であるビンポセチン(V群)の治療効果より優れている。ICHモデルの場合、L、M群の治療効果はV群より優れており、どちらもN群より有意に優れている。逆に、β-アサロン投与群(B)はSAH及びICHモデルラットの神経学的機能に明らかな改善がない。さらに、SAH各群のラットの心臓灌流経由の脳摘出後のモデル群と投与群との間の出血スコアに有意差はなく、モデリングの程度の違いによって引き起こされる行動機能の差を除外することができる。
【0093】
【表3】
注:偽手術群(P群)と比較して、
###P<0.001、
##P<0.01、
#P<0.05であり、モデル群(S又はI群)と比較して、
**P<0.01、
*P<0.05であり、ニモジピン群(N群)と比較して、
&P<0.05である。比較データはx±SDで示され、ANOVA及びTukey-post-hocを使用して多群比較分析を行う。
【0094】
効果実施例2:α-アサロンはSAHラットの二次性てんかんの発生率を低下させる
実験材料、群分け、モデリング方法及び投与方案は効果実施例1と同じであり、ラットのSAH後24時間以内における各群のラットのてんかん発作状況を観察した。結果は表4に示すように、P群と比較して、S群のRacineスコアは有意に増加し(P<0.001)、L、M、H群及びO群は、Racineスコアをさまざまな程度に低下させることができ、その中でM群の投与減少効果が最も有意である(P<0.05)。したがって、α-アサロンは、ラットのSAHによって引き起こされる二次性てんかんの発生率を大幅に低下させることができる。
【0095】
【表4】
注:P群(生理食塩水を投与)と比較して、
###P<0.001、
#P<0.05であり、S群(ブランク乳剤を投与)と比較して、
*P<0.05である。発作グレードは、Racine基準を参照して癲癇の発作程度に応じて発作行動を六つのグレードに分類する。グレード0は無反応又は攣縮停止、グレードIはリズミカルな口又は顔の痙攣、グレードIIはうなずき又は尻尾のフリック、グレードIIIは一つの手足痙攣、グレードIVは多肢の痙攣又は強直、グレードVは全般性強直間代発作である。グレードI、II、及びIIIは間代性発作であり、グレードIV及びVは強直性発作である。
【0096】
効果実施例3:SAHラットに対するα-アサロンの長期保護効果
3.1 ラットの長期生存率
実験材料、群分け及びモデリング方法は、実施例1と同じである。SAHモデリングの2時間後、群分けの投与方案に従って直ちに投与され、その後14日間投与され続け、1日1回投与され、ラットの14日間の生存状況を観察して記録した。結果は表5に示すように、S群の死亡率は24時間以内に53.8%と高く、M、H、O群、及びN群の投与はSAHラットの24時間以内の死亡率を有意に低下させ、生存期間を延長することができ、すなわち、α-アサロンはSAHラットの24時間死亡率を大幅に低下させ、14日間の生存期間を延長することができる。
【0097】
【0098】
3.2長期学習記憶機能評価
モリス水迷路を使用して、各群のラットの長期的な空間知覚及び記憶能力を評価し、これは、生存期間の観察記録終了後、すなわちSAH後15~19日目に実施された。水迷路は直径150cm、深さ60cmの円形のプールである。実験を始める前に、ぬるま湯(24±2)℃を水深30cmまで入れ、顔料を使って水を黒く染めた。プールは四つの象限に分かれており、異なる象限のプールの壁には異なる標識が貼り付けられ、区別を示した。象限の一つの中央に、直径10cm、高さ28cmの無色透明のプラットフォームが置かれ、プラットフォームは水中2cmに沈んでいた。ラットは、実験開始後、実験ガイドラインに従って指定される象限に放された。1~4日目、1回の実験でラットを四つの異なる象限から水中に放し、各ラウンドの実験間の間隔は10分である。ラットが60秒以内にプラットフォームを見つけた場合は10秒間プラットフォームに立たせ、そうでない場合は棒でプラットフォームに誘導して10秒間立たせた。5日目に、プラットフォームを取り外し、ラットを60秒間自由に泳がせ、コンピューター追跡システム(Noldus Ethovision、Tacoma、WA、USA)で逃避潜時、遊泳速度、ターゲット象限探索時間などのデータを記録した。
【0099】
実験結果は
図1Aに示すように、獲得訓練期間中に、P群と比較して、S群及びN群でプラットフォームを見つけるまでの潜伏期が有意に長くなった(P<0.001)。M群の逃避潜時間はS群及びN群より有意に短く、4日目でもP群との統計的差はなかった。
図1B、1Cから、空間探査中に、P群と比較して、S群及びN群はターゲット象限に滞在する時間がより短く、M群はターゲット象限に滞在する時間が長くなり、P群に匹敵し、さらに、この群の泳ぐ速度はS群より有意に速かった(P<0.05)ことがわかった。
図1Dに示すように、長期投薬後、S群とN群の両方で、ラットの脳組織の患側に白化と萎縮の現象が見られたが、P群とM群ではそうでは無かった。結論として、α-アサロンの長期投与は、SAHラットの回復期間の学習記憶機能を大幅に改善し、運動機能の回復を促進するだけでなく、SAHラットの回復期間の脳組織萎縮も緩和できる。
【0100】
効果実施例4:抗出血性脳卒中におけるα-アサロンの作用機序に関する研究
実験材料:
エバンスブルー(C11891158、Shanghai Macklin Biochemical Co., Ltd.)、
ホルムアミド(20190716、Tianjin BODI Chemical Co., Ltd.)、
グルタミン酸検出キット(20210525、Beijing Solarbio Science &Technology Co., Ltd.)、
GABA-Elisa キット(202101、Shanghai Jianglai Biology Co., Ltd.)、
DNase I(226F031、Beijing Solarbio Science&Technology Co., Ltd.)、
パパイン(111S022、Beijing Solarbio Science&Technology Co., Ltd.)、
カルシウムイオン蛍光プローブ(20210313、Jiangsu Kaiji Biological Technology Co., Ltd.)、
ローダミン123染料溶液(119I033、Beijing Solarbio Science &Technology Co., Ltd.)、
氷冷遠心緩衝液(20210525、Beijing Solarbio Science&Technology Co., Ltd.)。
【0101】
実験ステップと結果:
4.1 脳水分量と血液脳関門透過性の測定
24時間の短期神経機能スコアが完了した後、ラットの右尾静脈に4%のエバンスブルー溶液(2.5mL/kg)を注射し、1時間後にラットを深く麻酔し、心臓経由で生理食塩水100mLを注入し、素早く斬首して脳を取り、すぐに左半球、右半球、小脳、脳幹に分けられた。左右半球の冠状を二つに分け、一部分では0.1mg単位の精度である天秤で別々に脳組織を秤量し(湿重量)、その後、サンプルを105℃のオーブンで24時間乾燥させて再度別々に秤量した(乾重量)。脳水分量の算出:脳水分量=[(湿重量-乾重量)/湿重量]×100%である。脳組織の他の部分の湿重量を秤量した後、10倍体積の純ホルムアミドに浸し、60℃で48時間インキュベートし、25℃、10000rpm/minで30分間遠心分離し、上清を吸引してUV分光測光法で622nmでエバンスブルー色素を検出し、定量用の標準曲線を描き、最終結果は脳組織1グラムあたりのエバンスブルー含有量(μg/g)として表示される。
【0102】
結果は、
図2に示されるように。偽手術群(P群)と比較して、モデル群(S又はI群)の出血側の大脳半球は、手術後24時間で有意に脳水分量を増加させ、エバンスブルーの滲出は有意に増加し、血液脳関門の透過性が増加し、α-アサロンの脳内への静脈内投与(M群)は、ラットの出血側の脳組織の水分含有量を有意に減少させ、脳浮腫を緩和し、エバンスブルーの滲出を減らし、血液脳関門の透過性を改善することができる。
【0103】
4.2 グルタミン酸及びGABA含有量の測定
モデリングの12~24時間後に、ラットを深く麻酔し、断頭して脳を取り、出血側の大脳半球皮質の約60~120mgを採取し、10倍体積の生化学的検出に使用される氷冷遠心緩衝液を添加し、氷浴中で10分間ホモジナイズし、4℃、14000rpm/minで30分間遠心分離し、グルタミン酸含量検出キット及びラットGABA Elisaキットの説明書に従って上清液を取り、グルタミン酸及びGABA含量をそれぞれ検出した。
【0104】
結果は、
図3に示されるように、P群と比較して、S又はI群のラットの出血側の大脳半球は、手術後12~24時間でグルタミン酸とGABAの含有量が有意に増加したが、M群の投与は脳出血ラットの脳組織のグルタミン酸とGABAの含有量を有意に減少させることができ、グルタミン酸の興奮毒性に対抗し、脳内の興奮性アミノ酸/抑制性アミノ酸(EAA/IAA)のバランスを回復し、ラットの運動機能を改善するのに有益である。
【0105】
4.3 Ca2+含有量又はミトコンドリア膜電位の測定
モデリングの12~24時間後に、断頭して脳を取り、血腫の周囲の大脳半球の皮質を採取し、酵素消化(パパイン:2mg/mL、DNaseI:0.05mg/mL)により単細胞懸濁液を直ちに製造し、細胞濃度を5×106個/mLに調整し、100μLの細胞懸濁液を取り、最終濃度5μMのFluo-3/AM染色液又は最終濃度10μMのローダミン123染色液に加え、37℃で45分間インキュベートし、PBS(リン酸塩緩衝液、pH=7.2~7.4)で細胞を2回洗浄し、0.5mL PBSを加えて細胞を再懸濁し、励起波長506nm、発光波長526nmの条件下でフローサイトメトリーを使用して10000細胞を検出し、Flowjoソフトウェアを使用してFluo-3及びRh123平均蛍光強度を分析した。
【0106】
結果は、
図4に示されるように、P群と比較して、S又はI群は手術後12~24時間でのカルシウムイオン量は有意に増加し、ミトコンドリア膜電位が上昇し、ミトコンドリアが損傷し、アポトーシスが増加したことが示されたが、M群の投与は、カルシウムイオン含有量を大幅に減少させ、ミトコンドリア膜電位を安定させ、それによって神経細胞のアポトーシスと壊死を減少させることができる。
【0107】
効果実施例5:オキシヘモグロビン損傷神経細胞に対するα-アサロンの保護効果
実験材料:
PC12細胞系はWuhan Pronosai Life Sciences Co.から購入、
オキシヘモグロビン(20210201、Beijing Solarbio Science&Technology Co., Ltd.)、
MTT(C12029690、Sigma-Aldrich、USA)、
DMEM高グルコース培地(AG29301810、Hyclone、USA)、
ウシ胎児血清(20010401、Gibco、USA)、
ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(二重抗体)(20201220、Hyclone社、USA)、
PBS粉末(WK173618-1、Beijing Zhongshan Jinqiao Biological Technology Co., Ltd.)、
DMSO(20201220、Beijing Solarbio Science&Technology Co., Ltd.)
実験ステップ:
完全培地:DMEM高グルコース培地、ウシ胎児血清、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液(二重抗体)を90:9:1の体積比で混合し、4℃の冷蔵庫に保存して得られる。
【0108】
無血清培地:DMEM高グルコース培地とペニシリン-ストレプトマイシン溶液(二重抗体)を99:1の体積比で均一に混合し、4℃の冷蔵庫に保存して得られる。
【0109】
完全培地で培養した対数増殖期のPC12細胞を取り、1×104個/100μL/ウェルで96ウェルプレートに接種し、端のウェルを無菌PBSで満たし、37℃、5%CO2で細胞が完全に壁に接着するまで24時間インキュベートした。上清を捨て、最終濃度がそれぞれ0μM、4μM、6μM、8μM、10μMのオキシヘモグロビンを加え、37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。次に、10μLの5mg/mL MTTを各ウェルに加え、37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。上清を捨て、100μL/ウェルのDMSOを加え、37℃、500r/minで15分間振ってホルマザンを完全に溶解し、マイクロプレートリーダーを使用して570nmでのOD値を検出し、PC12細胞の活力を計算するには、式「異常細胞増殖倍数=[(実験群の平均吸光度値-ゼロ調整穴の平均吸光度値)/(対照群の平均吸光度値)-ゼロ調整穴の平均吸光度値]に従って、本実験条件下で、異常細胞増殖倍数の最大値が1.5倍の場合、対応するオキシヘモグロビンの濃度は6μMであることをスクリーニングした。したがって、この濃度は、予備試験におけるオキシヘモグロビン誘発酸化ストレス傷害モデルの好ましい濃度として採用され、下記の細胞薬力学実験で使用された。
【0110】
また、完全培地で培養した対数増殖期のPC12細胞を取り、1×10
4個/100μL/ウェルで96ウェルプレートに接種し、端のウェルを無菌PBSで満たし、37℃、5%CO
2で細胞が完全に壁に接着するまで24時間インキュベートした。上清を捨て、対照群とモデル群を除いた他の投与群には、無血清培地で希釈した100μL異なる濃度のα-アサロン乳剤(製造実施例7で製造、α-アサロンの最終濃度をそれぞれ1μM、5μM、10μM、25μM、50μMとした)を添加した。2時間培養後、無血清培地で希釈した最終濃度6μMのオキシヘモグロビン溶液を上記各投与群に添加し、20μL/ウェル、37℃、5%CO
2で引き続き24時間まで培養した。対照群は同体積の無血清培地のみを添加した。モデル群には、100μLの無血清培地で希釈したブランク乳剤(α-アサロンを含まない以外は製造実施例7と同じ)、及び20μLの最終濃度6μMの無血清培地で希釈したオキシヘモグロビン溶液を順次に添加した。対照群とモデル群の残りの操作は、投与群と同じである。次に、10μLの5mg/mL MTTを各ウェルに添加し、37℃、5%CO
2で4時間インキュベートした。上清を捨て、DMSO 100μL/ウェルを加え、37℃、500r/minで15分間振ってホルマザンを完全に溶解させ、570nmにおけるOD値をマイクロプレートリーダーで検出し、結果は
図5に示す。
【0111】
実験結果:
図5に示されるように、対照群と比較して、オキシヘモグロビンの添加により、モデル群でPC12細胞の異常増殖が引き起こされ、吸光度が大幅に増加し、細胞の活力が大幅に向上し、明らかな酸化ストレス反応が発生したことが示される。一方、異なる濃度のα-アサロンは、オキシヘモグロビンによって引き起こされる細胞活力の異常な増加を大幅に減少させ、オキシヘモグロビンによって誘発される酸化ストレス反応を大幅に減少させることができることを示している(
図5)。
【0112】
効果実施例6:α-アサロン乳状注射液の安全性予備評価-マウス骨髄小核実験
実験材料:SPFグレードのオスの昆明マウス50匹、体重18~22g、Chengdu Dashuo Laboratory Animal Co., Ltd.から購入され、許可番号はSCXK(川)2020-030)である。注射用シクロホスファミドは、Jiangsu Shengdi Pharmaceutical Co., Ltd.から購入した。1,4-ピペラジンジエタンスルホン酸 (PIPES、715H021、Beijing Solarbio Company)、TritonX-100(829I0210、Beijing Solarbio Company)、ヨウ化プロピジウム(PI、1024S043、Beijing Solarbio Company)。
【0113】
実験群分け及び投与:動物はランダムに10匹ずつの五群に分けられ、ブランク対照群(ブランク群、α-アサロン高用量群と同等体積のブランク乳剤を投与)、シクロホスファミド群(CTX群、40mg/kg)、α-アサロン乳状注射液低用量群(製造実施例7より製造、100mg/kg/日、ASA-L群)、α-アサロン乳状注射液中用量群(製造実施例7より製造、150mg/kg/日、ASA-M群)、α-アサロン乳状注射液高用量群(製造実施例7より製造、200mg/kg/日、ASA-H群)である。
【0114】
すべての薬物は尾静脈から注射され、陽性対照薬物であるシクロホスファミド(CTX)はサンプリングの24時間前に単回注射され、それ以外の群は尾静脈から4日間連続投与され、最後の投与から24時間後にマウスを首切断で殺し、大腿骨を両側から分離した後、大腿骨骨髄細胞をPBSで洗い流し、300メッシュのナイロンメッシュに通して単一細胞懸濁液を作成し、1650rpmで5分間遠心分離し、PBSに再懸濁後、細胞濃度を5×106個/mLに調整し、各サンプルから100μLの細胞懸濁液をPIPES-PI溶液(10mL PIPES溶液(濃度3.5mg/mL)+0.5mgPI+0.01mL Triton X-100(濃度0.1%))に400μL注意深く添加し、穏やかに吹き混ぜてから、4℃で30分間遮光して染色し、フローサイトメトリーで検出し、結果は表6に示した。表6に示すように、PCEは多染赤血球であり、MNPCEは小核を有する多染赤血球であり、fMNPCEは小核を含む多染赤血球の多染赤血球に占める割合であり、マウス骨髄細胞における小核の割合を反映し、値が高いほど遺伝毒性が大きいことを示している。
【0115】
結果は表6に示されるように、ブランク乳剤群と比較して、陽性対照薬物のシクロホスファミド群(CTX)の小核率は有意に増加した(P<0.01)。ブランク乳剤群と比較して、α-アサロン乳状注射液の各用量群で小核率に有意差はなかった。CTX群と比較して、小核率は有意に低く、統計的差異があった(ASA-L:P<0.01、ASA-M:P<0.05、ASA-H:P<0.05)。
【0116】
マウス造血細胞の染色体損傷に関する上記の毒性学的研究は、α-アサロン乳状注射液の静脈内投与量が200mg/kgまででは、マウス骨髄細胞の小核率が有意に変化しないことを示した。前記の出血性脳卒中の治療に有効な用量を考慮すると、この薬物の安全性は良好であると予想される。
【0117】
【表6】
注:ブランク群(Blank)と比較して、
##P<0.01であり、CTX群と比較して、
**P<0.01、
*P<0.05である。
【0118】
要約すると、in vitro及びin vivo薬力学研究の結果は、α-アサロンは、出血性脳卒中ラットの短期神経行動機能、長期学習記憶機能を大幅に改善し、SAHラットの二次てんかんの発生率と死亡率を低下させ、脳浮腫を緩和し、血液脳関門の透過性を改善し、回復期の脳組織萎縮を予防又は緩和し、グルタミン酸興奮毒性に拮抗し、GABAレベルを回復し、脳内の興奮性アミノ酸/抑制性アミノ酸(EAA/IAA)バランスを回復し、Ca2+の流入を減らし、ミトコンドリアの膜電位を安定させ、神経細胞のアポトーシスを減らし、酸化ストレスを軽減し、神経保護効果を発揮することを示した。したがって、α-アサロンは出血性脳卒中の治療薬物として有望であると期待されている。
【0119】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、当業者であれば、これらは単なる例に過ぎず、本発明の原理及び本質から逸脱することなく、これらの実施形態にさまざまな変更を加えることができることを理解すべきである。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】