(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(54)【発明の名称】抗アミロイドベータ抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/18 20060101AFI20240313BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240313BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538973
(86)(22)【出願日】2022-10-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 US2022078913
(87)【国際公開番号】W WO2023077091
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リャオ,ファン
(72)【発明者】
【氏名】チャーヤ,メア
(72)【発明者】
【氏名】マクラスキー,アンドリュー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ネイサン・ジェイ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA21
4H045FA74
(57)【要約】
本発明の概念は、アルツハイマー病(AD)などの障害の治療における使用に適した、脳内のアミロイド-ベータ(Aβ)斑を対象とし、それに特異的に結合し、それを取り除くことが可能な抗体などの、抗体、例えば、組換えヒト化及びモノクローナル抗体、抗体の作製方法、並びに抗体の使用方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)3つのCDRを含む可変重鎖(vH)及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβ
pE3抗体であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項2】
配列番号7として記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8として記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項3】
2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、各重鎖が、配列番号9として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項4】
IgG定常領域を含む、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項5】
Fc部分を含むヒト重鎖定常領域を含み、Fc部分が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMアイソタイプである、請求項4に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項6】
カッパ軽鎖定常領域を含む、請求項5に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項7】
請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体を含む組成物。
【請求項8】
神経変性障害を治療するための方法であって、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
【請求項9】
神経変性障害が、アルツハイマー病(AD)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗ヒトAβ
pE3抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、抗体が、(i)3つのCDRを含むvH鎖;及び(ii)3つのCDRを含むvL鎖を含み、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
ポリヌクレオチド。
【請求項11】
請求項10に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項12】
請求項11に記載のベクターを用いて形質転換された真核生物宿主細胞。
【請求項13】
哺乳動物宿主細胞である、請求項12に記載の真核生物宿主細胞。
【請求項14】
抗ヒトAβ
pE3抗体を産生する方法であって、(a)請求項13に記載の哺乳動物宿主細胞を培養するステップ及び(b)抗ヒトAβ
pE3抗体を回収するステップを含む、方法。
【請求項15】
2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗ヒトAβ
pE3抗体であって、各重鎖が、配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む、抗ヒトAβ
pE3抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている、2021年10月28日に出願した米国仮特許出願第63/263204号の利益を主張するものである。
【0002】
電子化された配列表の参照
本明細書に開示されるアミノ酸配列及びDNA配列を含む、配列番号1~配列番号37が含まれる「ABV21397USO1_ST26.xml」という表題の配列表の全体が参照により本明細書に組み込まれる。配列表は、XMLフォーマットで電子的に提出されている。配列表は、2022年10月27日に作成され、サイズは22,528バイトである。
【0003】
本出願は、とりわけ、抗アミロイドベータ(Aβ)抗体及びその作製及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
アルツハイマー病(AD)のアミロイド仮説は、Aβのクリアランスと産生の間の不均衡により、脳内へのタンパク質蓄積が生じることを示唆するものである。これにより、いくつかの下流の事象が開始され、それが最終的にニューロン及びシナプスの減少に至り、ADの臨床症状として顕在化する(Selkoe及びHardy 2016)。最近のADを治療するための薬物の開発では、可溶性の単量体Aβと不溶性の沈着形態のAβの両方を減少させる化合物に焦点が当てられており、ここ20年で異なる形態のAβに結合するいくつかのmAbが試験されている(van Dyck 2018)。ADを治療するために抗Aβ mAbを投与する手法では、mAbがAβに結合して、当該タンパク質の消去に役立つ免疫応答を刺激するので、主に基礎をなすのは受動免疫療法である。
【0005】
歴史的に、Aβを標的とするmAbは、ADにおける認知及び機能低下を緩徐化することに関する有効性を実証することができていない。しかし、これらの試験により、安全性に関連する重要なデータがもたらされている。さらに、これらの試験により、AD進行を緩徐化するために標的とする必要があり得る特定の形態のAβに関する洞察がもたらされており、Aβがなお、AD治療法を開発するための妥当な標的であると多くの人に考えられるに至っている(van Dyck 2018);(Aisen,Cummingsら、2020)。実際に、どちらもAβを標的とするmAbである、アデュカヌマブ(NCT02484547)に関する第3相試験及びドナネマブ(NCT03367403)に関する第2相試験からの最近の結果は、このクラスの化合物がADの治療において効果的であり得ることを示唆している。したがって、ADのアミロイド仮説に関する科学的裏付け及び抗Aβ mAbの最近の試験において認められた前向きな兆しを考慮すると、新しい抗Aβ mAbの開発は、有効なAD治療の探索におけるさらなる見込みをもたらす。
【0006】
抗Aβ mAbは、多数の臨床試験において何千名もの対象に投与されている。全体として、抗Aβ mAbは忍容性が良好である。いくつかのmAbを含めた、Aβを標的とする能動及び受動免疫学的化合物を精査するメタ分析は、ほぼ全ての有害事象、重篤な有害事象及び死亡に関してプラセボと差異がないことを明らかにしている(Penninkilampi,Brothersら、2017)。有害事象データに関する1つの例外は、抗Aβ mAbを受けた対象ではアミロイド関連画像異常(ARIA)が生じる可能性がより高いことであった。
【0007】
ARIAは、MRIによって検出される脳血管異常に適用される用語である。ARIAは、2つのカテゴリーに分類される:ARIA-Eは、血管原生浮腫、脳溝滲出及び時々の脳回腫大に関連する画像所見を表し、一方、ARIA-Hは、脳実質内微小出血(parenchymal microhemorrhag)及びヘモジデリン沈着を反映するMRIシグナル異常を捕捉する(Sperling、Jackら、2011)。どちらの型も抗Aβ mAb試験において実証されているが、ARIA-Eは、抗Aβ mAb投与の結果としてより頻繁に生じる(Penninkilampi,Brothersら、2017、Greenberg,Bacskaiら、2020)。ARIAの正確な機構(複数可)は分かっていないが、大脳脈管構造からのアミロイドのクリアランスに関し得る又は血管アミロイド沈着の部位における炎症反応が惹起されることによるものであり得る(Greenberg,Bacskaiら、2020)。ARIAの危険因子としては、AβペプチドのN末端を標的とするmAbの投与、以前の微小出血(microbleed)歴、アポリポタンパク質遺伝子のε4対立遺伝子保因及び高用量の薬物が挙げられるが、ARIAリスクの上昇が、絶対的な用量レベルに関連付けられるものであるか力価測定を伴わない高用量の投与に関連付けられるものであるかは不明である(van Dyck 2018、Aisen,Cummingsら、2020、Greenberg,Bacskaiら、2020)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Selkoe及びHardy 2016
【非特許文献2】van Dyck 2018
【非特許文献3】Aisen,Cummingsら、2020
【非特許文献4】Penninkilampi,Brothersら、2017
【非特許文献5】Sperling、Jackら、2011
【非特許文献6】Greenberg,Bacskaiら、2020
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
AC-264713は、hu Aβ(AC-264713)[hu IgG1/K]としても公知であり、Aβの特に急速に凝集する不溶性の凝集形態である、N末端が短縮されており3位のアミノ酸がピログルタミン酸修飾されたAβ(AβpE3)、に結合する組換えヒト化免疫グロブリンG1(IgG1)カッパモノクローナル抗体(mAb)である。AC-264713は、ヒトAβpE3-42原線維に選択的に結合し、その半数効果濃度(EC50)は0.7nMであり、また、ピログルタミン酸修飾されていない全長形態のAβには結合しない。
【0010】
したがって、アミロイド斑をAD脳から除去するために適した、Aβ(AβpE3)に特異的に結合する組換えヒト化IgG1カッパモノクローナル抗体のアミノ酸配列が提供される。当該抗体は、構造的に、AβpE3-42原線維に選択的に結合する相補性決定領域(CDR)を含む可変重鎖及び可変軽鎖を含む。断片結晶化可能領域(Fc)を含む重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む抗体も提供される。抗体のアミノ酸配列によってコードされるこれらの構造要素は、患者におけるADの治療に有効な医薬組成物をもたらす。
【0011】
3つのCDRを含む可変重鎖(vH);及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβpE3抗体であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
抗ヒトAβpE3抗体が、本明細書に記載される。
【0012】
ある特定の実施形態では、抗ヒトAβpE3抗体は、配列番号7として記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8として記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0013】
ある特定の実施形態では、抗ヒトAβpE3抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、各重鎖が、配列番号9として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、抗ヒトAβpE3抗体は、IgG定常領域を含む。
【0015】
ある特定の実施形態では、抗ヒトAβpE3抗体は、Fc部分を含むヒト重鎖定常領域を含み、Fc部分は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMアイソタイプである。
【0016】
ある特定の実施形態では、抗ヒトAβpE3抗体は、カッパ軽鎖定常領域を含む。
【0017】
3つのCDRを含む可変重鎖(vH)及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβpE3抗体を含む組成物であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
組成物もまた、本発明で提供される。
【0018】
神経変性障害を治療するための方法であって、3つのCDRを含む可変重鎖(vH)及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβpE3抗体であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
抗体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む方法もまた、本発明で提供される。
【0019】
ある特定の実施形態では、神経変性障害は、アルツハイマー病(AD)である。
【0020】
抗ヒトAβpE3抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、抗体が、(i)3つのCDRを含むvH鎖及び(ii)3つのCDRを含むvL鎖を含み、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
ポリヌクレオチドもまた、本発明で提供される。
【0021】
抗ヒトAβpE3抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターであって、抗体が、(i)3つのCDRを含むvH鎖及び(ii)3つのCDRを含むvL鎖を含み、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
ベクターもまた、本発明で提供される。
【0022】
抗ヒトAβpE3抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターを用いて形質転換された真核生物宿主細胞であって、抗体が、(i)3つのCDRを含むvH鎖及び(ii)3つのCDRを含むvL鎖を含み、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
真核生物宿主細胞もまた、本発明で提供される。
【0023】
ある特定の実施形態では、真核生物宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。
【0024】
抗ヒトAβpE3抗体を産生する方法であって、(a)哺乳動物宿主細胞を培養するステップ及び(b)抗ヒトAβpE3抗体を回収するステップを含む方法もまた、本発明で提供される。
【0025】
2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗ヒトAβpE3抗体であって、各重鎖が配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む、抗ヒトAβpE3抗体が、本発明でさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】AC-264713のヒトAβ
pE3-42原線維への代表的な結合を示す図である。AC-264713のヒトAβ
pE3-42原線維への結合を直接結合ELISAにおいて評定した。ヒトAβ
pE3-42原線維(50ng/ウェル)でコーティングしたプレートを、段階希釈したAC-264713と一緒にインキュベートした。ELISAを3回繰り返した。代表的な図が示されている。Y軸に450nmにおける光学濃度がプロットされている。ヒトAβ
pE3-42原線維へのAC-264713結合のEC
50値は0.7nMである。
【
図2】前頭皮質由来の新鮮凍結ヒトAD組織内のAC-264713及び比較用抗体Ab1が結合した斑の面積を示す図である。6体のADドナー由来の組織を分析し、データを平均±SEMとして表した。AC-264713はAD脳組織内の斑に濃度依存的に結合した。線は、実施例3に記載の通り組み合わせた6体のドナーについてのデータに対するフィッティングを表す。
【
図3】AC-264713が、固定されていないAPPPS1-21脳組織からのhiPSC由来食細胞によるアミロイド斑の除去を刺激することを示す図である。hiPSC由来食細胞を、種々の濃度のAC-264713と一緒にプレインキュベートしたAPPPS1-21脳組織と共培養した。組織内の残りのアミロイド斑を、チオフラビンSを使用して染色し、数量化した。データを平均±SEMとして表し、一元配置ANOVA、その後、ダネットの多重比較検定を用いて解析した。*、pは0.05未満。
【
図4】単回腹腔内投与の72時間後のAPPPS1-21マウスにおけるAC-264713の用量依存的な標的結合を示す図である。脳内のAC-264713(パネルA)及び比較用抗体Ab1(パネルD)を、抗hIgG免疫組織化学的検査を使用して検出した。隣接する区域上の総標的Aβ
pE3を、AC-264713(パネルB)又は比較用抗体Ab1(パネルE)を使用して染色した。次いで、漸増用量でAC-264713(パネルC)又は比較用抗体Ab1(パネルF)によって占有された%総標的を算出し、y軸上に示した。*Pは0.05未満(クラスカル・ワリス、その後、ダンの多重比較検定)。
【
図5】APPPS1-21マウスにおける、雌マウスにおける単回静脈内投薬の72時間後の脳内のAC-264713及び比較用抗体Ab1曝露と用量依存的な標的結合の相関を示す図である。個々の動物の脳曝露とAβ
pE3占有の相関を示すデータ(符号)が非線形フィッティング(線)と共に示されている。
【
図6】AC-264713マウス前駆抗体及び比較用抗体Ab2を使用して試験した、APPPS1-21マウスモデルにおける微小出血に対するAC-264713の効果を示す図である。(パネルA)赤血球数量化についての画像。(パネルB)プルシアンブルー数量化についての画像。データを平均±SEMとして表した。染色画像は、微小出血誘導の陽性対照群からの所見を表す。パネルAの白抜きの矢印は赤血球を示す。パネルBの矢印はプルシアンブルー染色シグナルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本開示の原理の理解を促進するために、ここで、種々の実施形態を参照する。しかし、それによって本開示の範囲が限定されることは意図されておらず、本明細書に例示される本開示の変更及びさらなる改変は本開示が関する分野の当業者に通常想起されるものと考えられることが理解される。
【0028】
「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」という冠詞は、本明細書では、その冠詞の文法上の目的語の1つ又は1つよりも多く(即ち、少なくとも1つ)を指すように使用される。例として、「1つの(an)要素」は、少なくとも1つの要素を意味し、また、1つよりも多くの要素も含み得る。「及び/又は」という用語は、付随して列挙されている項目の1つ、又は多くのありとあらゆる組合せを包含し、「/」と省略され得る。
【0029】
「含む(comprise)」という用語は、本明細書で使用される場合、その通常の意味に加えて、「から本質的になる(consist essentially of)」及び/又は「からなる(consist of)」という表現も包含し得、一部の実施形態では、それらを特に指し得る。したがって、「含む(comprise)」という表現は、具体的に列挙されている要素を「含む(comprises)」と特許請求されたものが、さらなる要素を含まない実施形態、並びに、具体的に列挙されている要素を「含む(comprises)」と特許請求されたものが、さらなる要素を包含し得る及び/若しくは包含する、又は、特許請求されたものの基本的な及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素を包含する実施形態も指し得る。例えば、具体的に列挙されている要素を「含む(comprising)」特許請求されたもの、例えば、方法、キット、システムなどは、例えば、「からなる(consisting of)」方法、キット、システムなども包含する、即ち、特許請求されたものが、さらなる要素を含まない場合及び、例えば、「から本質的になる(consisting essentially of)」方法、キット、システムなど、即ち、特許請求されたものが、特許請求されたものの基本的な及び新規の特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素を含み得る場合も包含する。
【0030】
「約」は、本明細書で使用される場合、それが修飾する数値を限定することが意図されており、そのような値が誤差限界の範囲内で変動することを示す。データのチャート又は表に示される平均値に対する標準偏差などの特定の誤差限界が記載されていない場合、「約」という用語は、包含され得る範囲、例えば、記載されている値の±20%、±15%、又は±10%及び一部の実施形態では、±5%、±3%、又は±2%を意味し、その範囲が包含されると理解されるべきである。
【0031】
特に定義されていなければ、本明細書で使用される技術用語は全て、本開示が属する技術分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0032】
本開示の実施形態は、脳内の沈着形態のAβに結合して、タンパク質の消去に役立つ免疫応答を刺激する抗体及び、例えば、ADの治療における、これらの抗体の使用方法に関する。
【0033】
AβpE3は、特に急速に凝集すると思われるAβの一形態である(Jawhar,Wirthsら、2011)。AβpE3を標的とするドナネマブにより、ヒトAD脳からの斑の迅速な除去が実現され、また、AβpE3が大脳脈管構造内に他の形態のAβと比べて広く行き渡っていないこと(Kuo,Emmerlingら、1997)を考慮して、ARIAのリスクを低く迅速に斑を除去することを実現することを目的としたAC-264713などの抗AβpE3抗体が生成された。
【0034】
AC-264713は、AβpE3に結合する組換えヒト化IgG1カッパmAbである。AC-264713の起源は、AβpE3に結合するマウスmAbである。マウス抗体の可変ドメインをヒト化し、次いで、ヒトIgG1重鎖及びIgカッパ軽鎖定常領域と融合して、AC-264713を創出した。本開示の抗体などのヒト化mAbをもたらすための、例えばマウスmAbのヒト化は、それだけに限定されないが当業者に公知の任意の方法によって実現され得ることが理解される。
【0035】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、2本の可変鎖、重鎖1本及び軽鎖1本を含む。各可変鎖上に、抗体がAβpE3に結合することを可能にする3つのCDRが存在する。可変重鎖及び可変軽鎖上に、組み合わさった合計6つの異なるCDRが存在する。さらに、ある実施形態では、抗体は、免疫グロブリンクラスG1(IgG1)のヒトFcを含むヒト重鎖定常領域を含有する。本明細書に記載の抗AβpE3抗体は、フコシル化されたもの又はフコシル化されていないものであり得、インビトロにおける機能性、免疫安全性及び薬物様特性を示す。
【0036】
本開示による抗体は、ヒトAβpE3-42原線維を使用したハイブリドーマキャンペーンにおいて同定された抗体のヒト化及び不利な点の工学的操作によって生成された。ヒト化のための抗体に優先順位を付けるために、原線維AβpE3-42に結合する抗体の能力を評価した。抗AβpE3抗体AC-264713は、ヒトAβpE3及びカニクイザルAβpE3とは交差反応するが、マウスAβpE3にもラットAβpE3にも結合しない。
【0037】
本明細書で使用される場合、「抗体」(Ab)という用語は、特定の抗原、例えば、ヒトAβpE3原線維に特異的に結合する免疫グロブリン分子を指す。本発明の概念の抗AβpE3抗体は、AβpE3に結合し、それにより、免疫系をモジュレートする。本発明の概念の抗AβpE3抗体は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方に超可変領域としても公知の相補性決定領域(CDR)を含む。可変ドメインのより高度に保存された部分はフレームワーク領域(FR)と称される。当技術分野で公知の通り、抗体の超可変領域を線引きするアミノ酸部分/境界は、状況及び当技術分野で公知の種々の定義に応じて変動し得る。可変ドメイン内のいくつかの部分は、これらの部分が、一連の基準のうちの1つの下では超可変領域内にあるとみなされ得るが、一方、異なる一連の基準の下では超可変領域の外側にあるとみなされるという点で、ハイブリッド超可変部分とみなされ得る。これらの部分の1つ以上は、延長された超可変領域内にも見いだされ得る。本発明の概念は、これらのハイブリッド超可変部分に改変を含む抗体を提供する。ネイティブな重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれが4つのFR領域を含み、FR領域はβ-シート立体配置を主に取り、3つのCDRと接続しており、CDRは、β-シート構造と接続し、一部の場合ではβ-シート構造の一部を形成するループを形成している。各鎖内のCDRはFR領域によって極めて近傍にまとめて保持され、他の鎖由来のCDRと共に、抗体の標的結合部位の形成に寄与する。可変ドメイン内のCDR配列を同定し、番号付けするために使用され得るKabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest (National Institute of Health,Bethesda,Md.1987)を参照されたい。
【0038】
本開示の抗体は、これだけに限定されないが、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体などを含めた、モノクローナルの、遺伝子操作された及び/又は他のやり方で性質が改変された抗体であり得る。種々の実施形態では、抗体は、抗体の定常領域の全部又は一部を含む。一部の実施形態では、定常領域は、IgA(例えば、IgA1又はIgA2)、IgD、IgE、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)及びIgMから選択されるアイソタイプである。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗AβpE3抗体は、IgG1を含む。他の実施形態では、抗AβpE3抗体は、IgG2を含む。さらに他の実施形態では、抗AβpE3抗体は、IgG4を含む。本明細書で使用される場合、抗体の「定常領域」は、天然の定常領域、アロタイプ又はバリアントを包含する。
【0039】
抗AβpE3抗体の軽鎖定常領域は、カッパ(κ)軽鎖領域であってもラムダ(λ)領域であってもよい。λ軽鎖領域は、公知の亜型、例えば、λ1、λ2、λ3、又はλ4のうちの任意の1つであってよい。一部の実施形態では、抗AβpE3抗体は、カッパ(κ)軽鎖領域を含む。
【0040】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、ハイブリドーマ技術によって産生された抗体に限定されない。モノクローナル抗体は、任意の真核生物クローン、原核生物クローン、又はファージクローンを含めた単一のクローンから、当技術分野で利用可能な又は公知の任意の手段によって引き出される。本発明の概念で有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマの使用、組換え及びファージディスプレイ技術、又はこれらの組合せを含めた、当技術分野で公知の多種多様な技法を使用して調製され得る。
【0041】
「キメラ」抗体という用語は、本明細書で使用される場合、ラット又はマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列及び典型的にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を指す。
【0042】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、少なくとも1つ及び典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のFR領域である。ヒト化抗体は、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものも含み得る。
【0043】
本開示の抗AβpE3抗体は、2本の全長軽鎖及び2本の全長重鎖を含む全長(インタクトな)抗体分子を包含する。
【0044】
ヒトIgG4定常領域を含む抗AβpE3抗体は、Fabアーム交換を妨げることが報告されているS228P変異を含み得る。例えば、Silva,JPら、Journal of Biological Chemistry、290(9)、5462-5469(2015)を参照されたい。
【0045】
治療及び診断への使用のためには、AβpE3に対して高い親和性を有する抗AβpE3抗体が望ましい可能性がある。したがって、本発明の概念は、AβpE3に対して高い結合親和性を有する抗体を意図している。特定の実施形態では、抗AβpE3抗体は、AβpE3に少なくとも約25nMの親和性で結合するが、より高い親和性、例えば、少なくとも約20nM、15nM、10nM、7nM、6nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.1nM、0.01nM、又はさらに高い親和性を示し得る。一部の実施形態では、抗体は、ヒトAβpE3に約1pM~約10nMの範囲、約100pM~約10nMの範囲、約100pM~約1nMの範囲、約100pM~約2nMの範囲の親和性、又は前述の値のいずれかの間にわたる親和性で結合する。
【0046】
一部の実施形態では、本開示は、2セットの2つの異なる可変領域内に2セットの6つの異なる相補性決定領域(CDR)を含む、2本の全長重鎖及び2本の全長軽鎖を有するモノクローナル抗AβpE3抗体を提供する。
【0047】
一部の実施形態では、抗体は、AβpE3に結合する、組換え、脱フコシル化(afucosylate)、ヒト化、IgG1カッパモノクローナル抗体である。
【0048】
ある実施形態では、抗体は、以下の配列を含む6つのCDRを含む:
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である。
【0049】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvH CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvH CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvH CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvL CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvL CDR2;及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含む又は有するvL CDR3を含む。
【0050】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号7に記載のアミノ酸配列又は配列番号7に対して少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む若しくは有する重鎖可変領域を含む:
【0051】
【化1】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号8に記載のアミノ酸配列又は配列番号8に対して少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む若しくは有する軽鎖可変領域を含む:
【0052】
【0053】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号9に記載のアミノ酸配列又は配列番号9に対して少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む若しくは有する重鎖を含む(定常領域が太字になっており、可変重ドメインに下線が引かれており、CDRに下線が引かれ、太字のイタリック体になっている(出現順に、それぞれ配列番号1~3に記載の通り)):
【0054】
【0055】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、C末端リシンが短縮された重鎖、例えば、C末端リシンが短縮/除去された配列番号9に記載の重鎖を含む。
【0056】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、配列番号10に記載のアミノ酸配列又は配列番号10に対して少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む若しくは有する軽鎖を含む(定常領域が太字になっており、可変重ドメインに下線が引かれており、CDRに下線が引かれ、太字のイタリック体になっている(出現順に、それぞれ配列番号4~6に記載の通り)):
【0057】
【0058】
本発明の概念の実施形態は、配列番号9の重鎖配列をコードする核酸及び配列番号10の軽鎖配列をコードする核酸も包含する。一部の実施形態では、例えば、配列番号9に記載の成熟重鎖配列は、配列番号13に記載の核酸配列によってコードされるものであり得る(定常領域は太字の配列によってコードされ、可変重ドメインは下線が引かれた配列によってコードされ、CDRは下線が引かれ、太字のイタリック体になっている配列によってコードされる):
【0059】
【0060】
一部の実施形態では、例えば、配列番号10に記載の成熟軽鎖配列は、配列番号14に記載の核酸配列によってコードされるものであり得る(定常領域は太字の配列によってコードされ、可変軽ドメインは下線が引かれた配列によってコードされ、CDRは下線が引かれ、太字のイタリック体になっている配列によってコードされる):
【0061】
【0062】
遺伝暗号のコドン縮重の結果として、それぞれ配列番号9の重鎖配列、配列番号10の軽鎖配列、配列番号11の重鎖配列及び配列番号12の軽鎖配列をコードする配列番号13、14、15及び16に記載の配列とは異なる核酸配列が本発明の概念の範囲から逸脱することなく意図されることが当業者には理解される。
【0063】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトCH1、ヒトヒンジ、ヒトCH2及びヒトCH3ドメインを含むヒト重鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、コードされる重鎖定常領域は、Fc部分を含み、ここで、Fc部分は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMアイソタイプである。ある実施形態では、FcはIgG1であり、アロタイプはz、非aである。ある実施形態では、軽鎖は、カッパ軽鎖である。
【0064】
抗AβpE3抗体をコードするポリヌクレオチド、発現系及び抗体の作製方法
本発明の概念は、抗AβpE3抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子をコードするポリヌクレオチド分子、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター及び本開示の抗AβpE3抗体を産生することが可能な宿主細胞を包含する。
【0065】
本開示の抗AβpE3抗体は、宿主細胞における免疫グロブリン軽鎖及び重鎖遺伝子の組換え発現によって調製され得る。抗体を組換えによって発現させるために、宿主細胞に、抗体の免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードするDNA断片を有する1つ以上の組換え発現ベクターをトランスフェクトし、その結果、軽鎖及び重鎖を宿主細胞において発現させ、任意選択的に、宿主細胞が培養されている培地中に分泌させ、培地から抗体が回収され得る。
【0066】
そのような抗AβpE3抗体をコードするポリヌクレオチドを生成するために、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域をコードするDNA断片がまず得られる。これらのDNAは、生殖細胞系列DNA又は軽鎖及び重鎖可変配列をコードするcDNAを、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して増幅し、改変することによって得られ得る。
【0067】
抗AβpE3抗体関連VH及びVLセグメントをコードするDNA断片が得られたら、これらのDNA断片は、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準の組換えDNA技法によってさらに操作され得る。これらの操作では、VLをコードするDNA断片又はVHをコードするDNA断片は、抗体定常領域又は柔軟なリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNA断片に作動可能に連結される。「作動可能に連結」という用語は、これに関連して使用される場合、2つのDNA断片が、2つのDNA断片にコードされるアミノ酸配列がインフレームのままになるように接合していることを意味するものとする。
【0068】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAと重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3及び任意選択的にCH4)をコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabat,E.A.ら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91~3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準のPCR増幅によって得られ得る。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であってよいが、ある特定の実施形態では、IgG1又はIgG4である。Fab断片重鎖遺伝子に関しては、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子と作動可能に連結され得る。
【0069】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域CLをコードする別のDNA分子と作動可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当技術分野で公知であり(例えば、Kabatら、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91~3242を参照されたい)、これらの領域を包含するDNA断片は、標準のPCR増幅によって得られ得る。軽鎖定常領域は、カッパ定常領域であってもラムダ定常領域であってもよいが、ある特定の実施形態では、カッパ定常領域である。
【0070】
抗AβpE3抗体を発現させるために、上記の通り得られた部分的な又は全長の軽鎖及び重鎖をコードするDNAが、発現ベクターに、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に作動可能に連結されるように挿入される。これに関連して、「作動可能に連結」という用語は、抗体遺伝子が、ベクターと、ベクター内の転写及び翻訳制御配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳の調節というそれらの意図された機能を果たすようにライゲーションされていることを意味するものとする。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は別々のベクターに挿入され得る、又は、より典型的には、両方の遺伝子が同じ発現ベクターに挿入される。
【0071】
抗体遺伝子は、発現ベクターに、標準の方法(例えば、体遺伝子断片上の相補的な制限部位とベクターのライゲーション、又は制限部位が存在しない場合には平滑末端ライゲーション)によって挿入される。抗AβpE3抗体関連軽鎖又は重鎖配列の挿入前に、発現ベクターが抗体定常領域配列をすでに有していてもよい。例えば、抗AβpE3モノクローナル抗体関連VH及びVL配列を全長抗体遺伝子に変換するための1つの手法は、抗AβpE3モノクローナル抗体関連VH及びVL配列を、それぞれ重鎖定常領域及び軽鎖定常領域をすでにコードしている発現ベクターに挿入し、したがって、VHセグメントがベクター内のCHセグメントと作動可能に連結され、VLセグメントがベクター内のCLセグメントと作動可能に連結されることである。それに加えて、又はその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を容易にするシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるようにベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(即ち、非免疫グロブリン
タンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0072】
本開示の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子に加えて、宿主細胞における抗体鎖遺伝子の発現を制御する調節配列を有する。「調節配列」という用語は、抗体鎖遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を包含するものとする。
【0073】
本開示の組換え発現ベクターは、抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、宿主細胞におけるベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)及び選択マーカー遺伝子などの追加的な配列を有し得る。選択マーカー遺伝子により、ベクターに導入された宿主細胞の選択が容易になる。軽鎖及び重鎖を発現させるために、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは標準の技法によって宿主細胞にトランスフェクトされる。様々な形態の「トランスフェクション」という用語は、外因性DNAを原核生物の又は真核生物宿主細胞に導入するために一般に使用される多種多様な技法、例えば、電気穿孔、リポフェクション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含するものとする。
【0074】
本開示の抗体を、原核生物宿主細胞又は真核生物宿主細胞のいずれにおいても発現させることが可能である。ある特定の実施形態では、抗体の発現は、適当にフォールディングされており、免疫学的に活性な抗体が最適に分泌される真核細胞、例えば、哺乳動物宿主細胞において実施される。本開示の組換え抗体を発現させるための例示的な哺乳動物宿主細胞としては、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えばKaufman及びSharp、1982、Mol.Biol.159:601~621に記載されているDHFR選択マーカーと共に使用されるUrlaub及びChasin、1980、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216~4220に記載されているDHFR-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞が挙げられる。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが哺乳動物宿主細胞に導入される場合、抗体は、宿主細胞を、宿主細胞における抗体の発現又は宿主細胞が成長している培養培地中への抗体の分泌が可能になるのに十分な期間にわたって培養することによって産生される。抗体は、標準のタンパク質精製方法を使用して培養培地から回収され得る。宿主細胞はまた、インタクトな抗体の一部分、例えば、Fab断片又はscFv分子を産生させるためにも使用され得る。上記の手順の変動は本開示の範囲内に入ることが理解される。例えば、宿主細胞に、本開示の抗AβpE3抗体の軽鎖又は重鎖のいずれか(両方ではない)をコードするDNAをトランスフェクトすることが望ましい場合がある。
【0075】
組換えDNA技術は、AβpE3への結合に必要でない、軽鎖及び重鎖のいずれか又は両方をコードするDNAの一部又は全部を除去するためにも使用され得る。そのような短縮されたDNA分子から発現される分子も本開示の抗体に包含される。
【0076】
本開示の抗AβpE3抗体の組換え発現のために、宿主細胞は、2つの本開示の発現ベクター、重鎖由来ポリペプチドをコードする第1のベクター及び軽鎖由来ポリペプチドをコードする第2のベクターを同時トランスフェクトされ得る。2つのベクターは、同一の選択マーカーを含有してもよく、それぞれが別々の選択マーカーを含有してもよい。あるいは、重鎖ポリペプチド及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードする単一のベクターが使用され得る。
【0077】
抗AβpE3抗体の1つ以上の部分をコードするポリヌクレオチドが得られたら、例えば、異なるCDR配列を有する抗体、Fc受容体に対する親和性が低下した抗体、例えば、LALA変異を有する抗体、又はサブクラスが異なる抗体をコードするポリヌクレオチドを生成するために、さらなる変更又は変異がコード配列に導入され得る。抗体をコードするポリヌクレオチドを生成するためにコード配列に導入することができるさらなる変更及び/又は変異は、それだけに限定されないが当業者に公知の任意の方法によって実現され得、生成されたポリヌクレオチドは、例えば、さらなる抗AβpE3抗体、例えば、Fc受容体に対する親和性が低下した抗AβpE3抗体及び/又はサブクラスが異なる抗AβpE3抗体を産生させるために使用されることが理解される。
【0078】
本開示の抗AβpE3抗体は、化学合成によって又は無細胞プラットフォームを使用することによっても作出され得る。
【0079】
抗AβpE3抗体の精製
本開示のポリペプチドは、組換え発現によって産生されたら、タンパク質の精製のための当技術分野で公知の任意の方法によって精製され得る。
【0080】
抗AβpE3抗体は、一旦単離されてから、さらに精製され得る。
【0081】
組成物
本開示の抗体は、対象への投与に適した組成物として提供され得る。一部の実施形態では、抗体組成物は、本開示の抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物である。
【0082】
主題の抗体の特性の要約
これだけに限定されないがAC-264713によって例示される主題の抗体の特性として、以下が挙げられる:
ヒトAβpE3原線維に対する高親和性結合、例えば、例えば実施例1の直接結合ELISAによって決定される、ヒトAβpE3-42原線維に対するEC50が約2.5nM以下、2nM以下、1.5nM以下、1nM以下、0.9nM以下、0.8nM以下、0.7nM以下、0.6nM以下、約0.5nM以下、0.4nM以下、約0.3nM以下、約0.2nM以下、約0.1nM以下、又は約0.05nM以下、又は約0.05nM~約2.5nMのEC50の値の任意の範囲であること。
【0083】
ヒトAβpE3原線維に対する高特異性結合、例えば、ヒトAβpE11-40原線維と有意に交差反応しないこと、並びにヒト、サル、イヌ、ウサギ、ラット及びマウスを含めた全ての種由来のAβ1-40と有意に交差反応しないこと。
【0084】
サイトカイン放出アッセイによって決定される良好な免疫安全性。
【0085】
一部の実施形態では、本開示の抗体は、例えば、アミロイド斑を含有するAD脳への0.4μg/mLのEC50での結合を用量依存的に示し得るが、一方、アミロイド斑が存在しない非ADヒト、ラット、又はカニクイザル脳組織には結合しない。
【0086】
アミロイド前駆体タンパク質及びプレセニリン1のヒト導入遺伝子を発現するAPPPS1-21マウスモデルを使用した試験のデータは、AC-264713が、単回注射後、脳に進入し、Aβ斑に結合することを明らかにした。AC-264713は、ADを有するドナー由来のヒト脳組織内のアミロイド斑にも結合する。さらに、インビトロデータは、AC-264713の断片結晶化可能(Fc)部分が、hiPSC由来食細胞に媒介される斑の除去を誘発するために十分なエフェクター機能を有することを実証した。APPPS1-21マウスを使用した急性微小出血モデルにおいて評価したところ、AC-264713は微小出血を誘導しなかった。総合すると、データは、十分なエフェクター機能を有するAC-264713、即ち抗ヒトAβpE3原線維モノクローナル抗体がAD脳からアミロイド斑を除去することを裏付けている。
【0087】
使用方法
複数の実施形態では、本明細書に記載の方法は、ADを有する患者を本開示の抗AβpE3抗体を用いて治療することに関する。
【0088】
「阻害すること(inhibiting)」、「低減/低下させること(reducing)」又はこれらの用語の任意の変形形態は、例えば、ADの治療及びADに関連するAβ斑の発生との関連では、所望の結果を実現するための任意の測定可能な減少又は完全な阻害を包含する。例えば、Aβ斑の負荷量の、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下、約90%以下、約95%以下、約99%以下、若しくは少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約99%、若しくはそれよりも大きい、若しくはその中で導き出せる任意の範囲の減少(除去)、又はADを有する患者におけるAβ斑の発生の低減及びADを有する患者の治療が存在し得る。
【実施例】
【0089】
本明細書に記載されている本発明の概念の例示的な実施形態のある特定の特色及び特性を強調する以下の実施例は、例示目的で提供される。
【0090】
[実施例1] 組換えAβタンパク質に結合する同定された組換えハイブリドーマmAbのパネル
直接結合ELISAを使用して、同定し、組換えによって発現させたmAbのパネルの、ヒトAβpE3-42原線維に結合する能力及びそれらのヒトAβ1-40、ヒトAβ1-42又はヒトAβpE11-40に対する交差反応性を評定した。ヒト、サル、イヌ及びウサギの間で配列同一性が100%であることから、結合試験を、ヒトAβ1-40及びAβ1-42をこれらの他の種の代表として用いて行った。組換えヒトAβタンパク質を0.2Mの炭酸-炭酸水素塩緩衝剤中に希釈した。Aβタンパク質を、0.1mM/0.2mMのストック溶液から1μg/mLの作用濃度まで希釈し、ウェル当たり50μL(50ng/ウェル)を96ウェルハーフエリア高結合ELISAプレートに添加した。プレートを、4℃、100rpmで振とうしながら一晩インキュベートした。コーティング後、プレートを、190μL/ウェルの1×PBSを用い、自動プレート洗浄器を使用して4回洗浄した。プレートを、190μL/ウェルのDPBS中2%BSAを用いてブロッキングし、室温(RT)で1時間インキュベートした。ELISA用の試薬をDPBS中0.25%BSAに希釈した。
【0091】
【0092】
mAbのパネルの希釈物を、希釈プレート中、ストック溶液から67nM又は100nMのいずれかの作用1×初濃度に調製し、各mAbについて8点5×希釈系列を実施した。ブロッキングのためにインキュベートした後、プレートを、190μL/ウェルの1×PBSを用い、自動プレート洗浄器を使用して4回洗浄した。1:10,000希釈度の抗マウスIgG-HRPを検出のために調製し、50μLを各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートした。1×PBSを用いて4回洗浄した後、TMB基質(Life Technology、002023)50μLを各ウェルに添加し、プレートを、発色するまで室温で約5~10分間インキュベートした。反応を、2Nの硫酸をウェル当たり50μL添加することによって停止させた。プレートをプレートリーダーで読み取って、450nmにおける吸光度(OD450)を得た。mAbのAβタンパク質に対する結合(EC50)を、GraphPad Prism 8.4.3において非線形回帰(4パラメータ用量反応曲線モデル:Y=Bottom+(TopBottom)/(1+10^((LogIC50-X)*Hillslope)))を使用して算出した。
【0093】
モノクローナル抗体(mAb)AC-233661は、AβpE3-42種に対して特異性及び選択性を示し、これをヒト化のために選択した。AC-264713は、AC-233661のヒト化バージョンである。
【0094】
一部の場合では、AC-264713を、比較用抗体を使用して特徴付ける。比較のために実験に含めた抗体のアミノ酸配列を以下に記載する:
【0095】
【0096】
[実施例2] 結合特異性及びエピトープ同定
A.ヒトAβ
pE3-42原線維に対する結合特異性
AC-264713のヒトAβ
pE3-42原線維に対する結合を、抗マウスIgG-HRPの代わりに抗ヒトIgG-HRPを検出のために使用したこと以外は実施例1に記載されている通りの方法を使用して評定した。AC-264713のヒトAβ
pE3-42原線維に対する結合のEC
50値は、0.7nMである。
図1は、AC-264713のヒトAβ
pE3-42原線維への代表的な結合を示す。
【0097】
B.エピトープ同定
以下に列挙する、C末端にビオチンを伴う、アミノ酸3から出発して各アミノ酸がグリシン点位置変化で置換された、N末端3~16アミノ酸長由来の10種のビオチン化ペプチドを生成した。
【0098】
【0099】
AC-264713のペプチドに結合する能力を、直接結合ELISAによって評定した。結合が減少すれば、その残基が、AC-264713がAβpE3-42原線維に結合するために必要であることが示される。組換えヒトAβビオチン化ペプチドを蒸留水中に希釈した。Aβペプチドを2μg/mLの作用濃度まで希釈し、ウェル当たり50μL(100ng/ウェル)を96ウェルハーフエリア高結合ELISAプレートに添加した。プレートを4℃、100rpmで振とうしながら一晩インキュベートした。コーティング後、プレートを、190μL/ウェルの1×PBSを用い、自動プレート洗浄器を使用して4回洗浄した。プレートを、190μL/ウェルのDPBS中2%BSAを用いてブロッキングし、室温で1時間インキュベートした。ELISA用の試薬をDPBS中0.25%BSAに希釈した。
【0100】
AC-264713の希釈物を、希釈プレート中、ストック溶液から、67nM又は100nMのいずれかの作用1×初濃度まで調製し、mAbの8点5×希釈系列を実施した。ブロッキングのためにインキュベートした後、プレートを、190μL/ウェルの1×PBSを用い、自動プレート洗浄器を使用して4回洗浄した。1:10,000希釈度の抗ヒトIgG-HRPをAC-264713検出のために調製し、50μLを各ウェルに添加した。プレートを室温で30分間インキュベートした。PBSを用いて4回洗浄した後、TMB基質50μLを各ウェルに添加し、プレートを、発色するまで室温で約5~10分間インキュベートした。反応を、2Nの硫酸をウェル当たり50μL添加することによって停止させた。プレートをClarioStarプレートリーダーで読み取って、450nmにおける吸光度(OD450)を得た。AC-264713のAβタンパク質への結合(EC50)を、GraphPad Prism8.4.3で非線形回帰(4パラメータ用量反応曲線モデル:Y=Bottom+(TopBottom)/(1+10^((LogIC50-X)*Hillslope)))を使用して算出した。3回の独立した実験を実施した。
【0101】
結果を下記の表に要約する。
【0102】
【0103】
AC-264713のグリシン変異ペプチドへの結合の解析から、残基pyro、3、4及び5が結合のために重要であることが示される。興味深いことに、AC-264713は、pE3-16と比較して結合効力は3分の1に低減するが、E3-16に結合し、これは、組換えAβペプチド調製物におけるグルタミン酸のピログルタミン酸への自発的変換に起因し得る。
【0104】
[実施例3] AC-264713のAD脳組織内のアミロイド斑への結合
固定されていない20μmの組織切片を、ヒト死体AD脳の大脳皮質からクリオスタットを使用して調製し、ガラススライドに解凍マウント(thaw-mount)した。次いで、組織切片を、0.3%H2O2を含有するトリス緩衝食塩水(TBS)中で10分間インキュベートした。TBSで3回洗浄した後、切片を、3%乳を含有するTBS中で30分間インキュベートした。次いで、ビオチン化AC-264713を試料に添加し、4℃で一晩インキュベートした。TBSで3回洗浄した後、免疫反応性を、1:400のABC Elite中で1時間、その後、DAB中で5分間インキュベートすることによって可視化した。
【0105】
画像を全ての試料からスライドスキャナーを使用して取得した。AD試料(n=6)中のビオチン化AC-264713のIRを、HALOTM画像解析ソフトウェアv3.1.1076.423のArea Quantificationモジュールを使用して数量化した。このソフトウェアを使用し、灰白質の輪郭を示し、「閾値」を、染色条件について盲検化された観察者が決定した。閾値は、DABシグナルがソフトウェアによって認識され、バックグラウンド/非特異的染色が解析から除外されるように設定された。適切な閾値が設定されたら、ソフトウェアにより、陽性シグナルを含有する目的の面積パーセンテージを測定した。
【0106】
非線形回帰分析を、Prism Version 9.1.0(Graph Pad Software)を使用して行った。可変勾配モデル、IR=Bottom+(X HillSlope)*(Top-Bottom)/(X HillSlope+EC50
HillSlope)が占める%面積を使用し、ここで、Bottomはゼロに固定し、Topは斑が占める典型的な総面積として10%に固定した。6体のドナー全てについてのデータを複合データフィッティングで解析した。
【0107】
AD脳組織(n=6)において、AC-264713は、斑に、0.4μg/ml(信頼区間:0.1~0.7μg/ml)のEC
50で、0.5~100μg/mLの範囲で濃度依存的に結合した(
図2)。比較のために、AD脳組織に結合する比較用抗体Ab1のEC
50は、12μg/mlであると推定された(
図2。信頼区間:8~17μg/ml)。AC-264713及びAb1のどちらのHill係数も1に近かった(それぞれ1.5及び0.8)。
【0108】
図2は、前頭皮質由来の新鮮凍結ヒトAD組織内のAC-264713及び比較用抗体Ab1が結合した斑の面積を示す。
【0109】
[実施例4] hiPSC由来食細胞による固定されていないAPPPS1-21脳組織からの刺激されたアミロイド斑除去
アッセイプロトコール
固定されていない、20μmの冠状脳組織切片を、クリオスタットにおいて21カ月齢のAPPPS1-21マウスから調製し、12mmのポリ-D-リシンがコーティングされたカバーガラスに解凍マウントした。乾燥した組織切片をPBSで簡単に洗浄し、0μg/ml、又は用量a、用量b若しくは用量c(0μg/ml<用量a<用量b<用量c)のAC-264713と一緒に、PBS中、4℃で一晩インキュベートした。ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)由来食細胞を添加する直前に、組織切片をPBSで3回洗浄した。
【0110】
hiPSC由来食細胞を以前に記載されている通り生成した(van Wilgenburg、Browneら、2013、Haenseler、Sansomら、2017)。簡単に述べると、解離したhiPSCをEB分化培地[Revitacell、50ng/mlのヒトVEGF、50ng/mlのヒトBMP-4(Peprotech)及び20ng/mlのSCF(R&D Systems)を補充したmTeSR-1]中、血球系胚様体(EB)に凝集させた。EBを、EB維持培地[100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン(Thermo-Fisher)、2mMのGlutamax、55μMの2-メルカプトエタノール、100ng/mLの組換えヒトM-CSF及び25ng/mLの組換えヒトIL-3を補充したX-VIVO 15]を含有するT75培養フラスコ中で維持した。食細胞懸濁液をEBフラスコから収集し、直接、抗体で処理したAPPPS1-21組織切片上、食細胞培養培地[100U/mlのペニシリン/100μg/mlのストレプトマイシン(Thermo-Fisher)、2mMのGlutamax、55μMの2-メルカプトエタノール、N-2 supplement(Thermo-Fisher)及び100ng/mlの組換えヒトM-CSFを補充したAdvanced DMEM/F12]中、0.5ml当たり細胞0.4×106個の密度で、37℃/5%CO2で72時間培養した。
【0111】
iPSC由来食細胞と共培養した後、組織切片を4%パラホルムアルデヒド中に固定し、0.025%チオフラビンSを用いて線維状の斑を標識付けした。蛍光画像を、スライドスキャナーを使用して取得し、HALO Image Analysis Software v3.1.1076.423を使用して解析した。線維状の斑の面積を測定するために、対照で処理した組織切片からの蛍光画像を閾値処理して高密度の斑を強調し、続いて、組織切片を同一のパラメータを用いて閾値処理した。データは、高密度の斑によって占有された測定面積(閾値処理された面積)を切片当たりの総組織面積に対するパーセンテージとして表わしたものとして報告されている。
【0112】
統計解析を、Prism Version 8.4.3(Graph Pad Software)を使用して行った。高密度の斑の面積測定値を、一元配置ANOVA、その後、ダネットの多重比較検定によって解析し、各AC-264713処置群(用量a、用量b及び用量c)の平均値と対照群(0μg/ml)の平均値を比較した。群当たり組織切片のn=6。
図3に示されている通り、用量a、用量b、又は用量cでhiPSC由来食細胞と共培養した後、AC-264713により、アミロイド斑のパーセント面積の統計的に有意な低下が導かれた(n=6、濃度a~cと0μg/mlの比較について、調整済p値は0.0001未満)。
【0113】
[実施例5] APPPS1-21マウスにおけるインビボAC-264713曝露及び標的結合(PK/TB)
APPPS1-21動物における抗体曝露及び標的結合のインビボ試験を行って、AC-264713投与後の脳及び血清分布並びにインビボ斑結合潜在性を決定した。
【0114】
動物
8.5~12.5カ月齢のAPPPS1-21(B6.Cg-Tg(Thy1-APPSw,Thy1-PSEN1*L166P)21Jckr))(Radde,Bolmontら、2006)をPK/TB試験に使用した。元の繁殖用マウスをMathias Juckerの研究室からFa.Koesler(Germany)とのライセンス契約の下で入手した。マウスをCharles River Laboratories(Sulzfeld、Germany)において繁殖させ、AbbVie Deutschland GmbHの動物施設に送り、実験の実行のために加齢させた。動物の健康及び安楽を獣医が管理した。マウスを温度制御及び湿度制御された部屋に12時間:12時間の暗/明サイクルで入れ、水及び食物を自由に摂取させた。
【0115】
インビボ方法
本試験に関しては、AC-264713並びに比較用抗体Ab1を、用量1~4の範囲で試験し、尾静脈を介して静脈内投薬した。雌動物3匹を各用量に使用した。調査時点は72時間p.aであった。試験終了時に、72時間時点で心臓穿刺によって血液を抜き取り、血清を単離した。続いて、動物に1000U/Lのヘパリンを伴う低温PBSを10分間灌流し、脳を切開し、正中矢状に半分に切り、右脳半球を免疫組織化学的検査のために調製した。左皮質、前脳の残り及び小脳を単離し、液体窒素中で別々に急速冷凍し、左皮質を、ELISAを用いたAC-264713の数量化のために使用した。
【0116】
組織処理、免疫組織化学的検査及び標的結合の解析
免疫組織化学的検査に使用する右半球を、10%ホルマリンで24時間にわたって滴下固定し、次いで、70%エタノールに切り換えた。組織をトリミングし、試料を標準のエタノール系、その後、キシレンを使用して脱水し、パラフィン包埋した(ASP300、Leica)。脳半球を、試験物及び用量に基づいてランダム化し、ランダム化された半球を含有するパラフィンブロックを4つ生成した。4μmのパラフィン切片を調製し、自動染色器において、クエン酸緩衝剤に基づく熱誘導性抗原回復溶液及び3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)に基づく検出を使用して処理した。インビボ投薬されたAC-264713及び比較用抗体Ab1を検出するために、ヒトIgG(H+L)を検出するビオチン化ロバ抗ヒトF(ab’)2断片(Jackson Immuno)を3.7μg/mLの濃度で使用した。AβpE3標的面積を、0.35μg/mLのAC-264713又は0.26μg/mLの濃度の比較用抗体Ab1を免疫染色のために適用することによって決定した。
【0117】
画像をP1000スキャナーで収集した。各分子についてAβpE3への結合を数量化するために、AC-264713又は比較用抗体Ab1によって占有された面積を、隣接する区域からの斑におけるそれぞれAC-264713又は比較用抗体Ab1のIRに基づいてAβpE3の総標的面積を規定することによって正規化した。そのために、脳当たり3つの対応する切片を、HALOTM画像解析ソフトウェアのArea Quantificationモジュールを使用して解析した。各切片について、皮質の輪郭を示した。このソフトウェアを使用し、「閾値」を、動物の処置について盲検化された観察者が決定した。閾値は、hIgG又はAC-264713又は比較用抗体Ab1免疫反応性の陽性褐色DAB染色がソフトウェアによって認識され、バックグラウンド/非特異的染色が解析から除外されるように設定された。適切な閾値が設定されたら、ソフトウェアにより、hIgG又はAC-264713又は比較用抗体Ab1についての陽性免疫反応性を含有する目的(皮質)の面積のパーセンテージを測定した。次いで、皮質におけるhIgG IR面積をAC-264713 IR又はAb1 IRに対して正規化し、値をプロットし、GraphPadPrism(バージョン8、GraphPad Software)で解析した。データを平均±SEMとして表し、一元配置ANOVA、その後、クラスカル・ワリス多重比較検定)によって解析した。
【0118】
血清及び脳におけるAC-264713レベルの評価
血清試料及び脳試料を、AC-264713及び比較用抗体Ab1について、ヒトIgG1を検出する電気化学発光イムノアッセイを使用して分析した。簡単に述べると、血清を、PBS又は適切な濃度の試料マトリックスを含有するPBSを用いて希釈して、全試料中1%の血清という最終濃度を実現した。希釈係数を予測される分析物レベルに従って選択した。試料を、3つの希釈度で測定し、そのうち少なくとも2つの希釈度は、許容される測定範囲内に入った。希釈した試料を、ヒトIgG1を捕捉するビオチン化抗体ab99757(0.5μg/mL)で予めコーティングしたストレプトアビジンプレートにローディングした。プレートを1時間インキュベートし、TTBS(Tris Tween緩衝生理食塩水)で洗浄し、ヒトIgG1をスルホタグ付けしたEB89抗体(1μg/mL))を用いて検出した。
【0119】
脳試料の分析に関しては、一般的なアッセイ手順を同じままにした。実験の前に、脳組織をホモジナイゼーション緩衝剤(50mMのTris(pH7.5)、150mMのNaCl、1mMのNaF、1mMのNa2VO4、1mMのEDTA(pH7.5)、0.25%Naデオキシコール酸、1%NP-40及び1×プロテアーゼ阻害剤錠)中、1:5にホモジナイズした。分析のために、希釈係数を適切に調整し、CSF試料については1:40及び脳ホモジネートについては1:4とした。
【0120】
AC-264713又はAb1を、それぞれの検量線を構築するために使用し、試験試料と同じ濃度の生物学的マトリックスを含む対照試料を使用した。血清試料の分析に関しては、検量線は、31~7500ng/mLの濃度範囲を包含する7個の標準点に基づくものであった。CSF及び脳に関しては、11個の標準点を使用して、0.023~1330ng/mLの濃度範囲を包含する検量線を生成した。それぞれ両方の分析物について、LLOQは血清については31ng/mLであり、脳については0.152ng/gであった。
【0121】
標的結合のインビボ効力についてのデータ解析
皮質抗体濃度に応じた正規化されたIRシグナルの非線形回帰分析を、Prism Version 9.1.0(Graph Pad Software)を使用して行った。可変勾配モデル、免疫反応性が占める%面積[norm.]=Bottom+X*(Top-Bottom)/(X+EC50)を使用し、ここで、Topを100%に固定した。
【0122】
hIgG染色された切片の画像解析により、皮質における試験物AC-264713及び比較用抗体Ab1の用量依存的な増加及び斑への局在化が明らかになった。皮質におけるAβ
pE3免疫反応性斑の分析及びhIgG IRのAb1 IR又はAC-264713 IRに対する正規化でも、AC-264713並びに比較用抗体Ab1によって占められる斑の範囲の用量依存的な増加が示された(
図4)。
【0123】
測定した全ての濃度が数量化の限界の範囲内に入った。濃度は、皮質及び血清のどちらにおいても、試験した全ての用量で用量依存的に上昇し、AC-264713の平均濃度は皮質では0.0016~0.29μg/gの範囲であり、血清では4.5~352μg/mLの範囲であった。組織の血清に対する比(T/S)は0.03%~0.08%であった。
【0124】
観察された個々の動物の脳内濃度とIRによって数量化される標的結合を相関付けると(
図5)、AC-264713は、Aβ
pE3に0.031μg/g(信頼区間:0.016~0.065μg/g)のEC
50で結合し、それと比較して、比較用抗体Ab1は、より低い効力で結合し、EC
50は0.28μg/g(信頼区間:0.13~1.2μg/g)である。
【0125】
[実施例6] APPPS1-21マウスを使用した、急性微小出血モデルにおけるAC-264713の評価
インビボ試験を行って、APPPS1-21マウスを使用した急性微小出血モデルにおいて、AC-264713マウス前駆抗体により微小出血が誘導されるかどうかを決定した。
【0126】
動物
15~17カ月齢のAPPPS1-21マウスを微小出血試験に使用した。マウスをCharles River Laboratories(Wilmington,USA)で繁殖させ、AbbVie Bioresearch Centerの動物施設に送り、加齢させ、実験を実行するためにCambridge Research Center(CRC)動物施設に移した。マウスを温度制御及び湿度制御された部屋に12時間:12時間の暗/明サイクルで入れ、水及び食物を自由に摂取させた。CRC動物施設内の動物を、個別に換気されるケージ内、12h:12h明-暗サイクルで集団飼育し、食物及び水を自由に摂取させた。マウスを少なくとも72時間にわたって気候順化させた後に投薬を行った。
【0127】
インビボ方法
以前に記載されている(Janssens,Hermansら、2021)モデルにおいて、いくつかの改変を伴って微小出血試験を実施した。15カ月齢の時点で、AβpE3は大脳脈管構造において検出可能であったが、APPPS1-21マウスにおける他のN末端Aβ種ほど豊富ではなかった。マウス(n=4、性別混在)にAC-233661の単回投薬を腹腔内注射によって行った。マウスIgGを陰性対照として使用し(n=4、性別混在)、ADを有する患者においてARIAを引き起こすmu IgG2a/kを有する比較用抗体Ab2を陽性対照として使用した(n=5)。陰性対照及び陽性対照の両方を腹腔内注射によって投与した。注射の3日後、又は重度の有害作用が観察されたらすぐに(いずれか先に生じた方)、マウスを、ペントバルビタールナトリウムを用いて安楽死させ、PBSを灌流し、脳を迅速に取り出した。
【0128】
微小出血についての組織学的分析
次いで、脳の右半球を24時間にわたって10%ホルマリンに滴下固定し、次いで、30%スクロースを含有するPBSに切り換えた。凍結滑走式ミクロトームを使用して各脳半球の吻側から尾側末端まで厚さ50μmの連続した冠状切片を採取した。
【0129】
赤血球数量化のために、12枚に1枚の切片をガラススライドにマウントし、ヘマトキシリンを用いて対比染色を行った。
【0130】
ヘモジデリン沈着物をプルシアンブルー染色によって染色した。12枚に1枚の切片をガラススライドにマウントした。次いで、切片をPBS中で水分を戻し、0.25%Triton-X-100を含有するPBS中で透過処理した。飽和NaCl及び0.01MのNaOHを含有する80%エタノール中でインキュベートした後、切片を、飽和NaCl、0.01MのNaOH及び0.5%Congo Redを含有する80%エタノール中でインキュベートした。次いで、スライドを80%エタノール及び通常の生理食塩水で洗浄し、その後、0.12MのHCl中2%フェロシアン化カリウム中でインキュベートした。PBSで洗浄後、スライドを脱水し、カバーガラスを乗せ、スキャンした。
【0131】
スライドスキャナーをしてスキャンしたら、脳切片を、HALOTM画像解析ソフトウェアのArea Quantificationモジュールを使用して解析した。このソフトウェアを使用し、切片全体の輪郭を示し、「閾値」を、動物の処置について盲検化された観察者が決定した。閾値は、赤血球又はプルシアンブルーシグナルがソフトウェアによって認識され、バックグラウンド/非特異的染色が解析から除外されるように設定された。適切な閾値が設定されたら、ソフトウェアにより、陽性シグナルを含有する目的(切片全体)の面積のパーセンテージを測定した。各動物について、600μm間隔の一連の連続切片の平均値を算出した。
【0132】
比較用抗体Ab2では、3日以内に有意な微小出血が誘導された。対照的に、AC-264713のマウス前駆抗体で処置したAPPPS1-21マウスはこの期間中、健康なままであり、赤血球及びヘモジデリン沈着物は陰性対照mIgG2a/k抗体と同等であった(
図6)。
【0133】
実施例の要約
直接結合ELISAにおいて、AC-264713は、ヒトAβpE3-42原線維に0.7nMのEC50で結合する。AC-264713は別のヒトピログルタミン酸修飾Aβ種であるAβpE11-40とは交差反応しなかった。AC-264713はまた、ヒト、サル、イヌ、ウサギ、ラット及びマウスを含めた全ての種由来のAβ1-40とも交差反応しなかった。さらに、アミノ酸残基pyro、3、4及び5がAC-264713のAbpE3-42への結合に極めて重要であり得る。固定されていない脳組織に対する免疫染色により、AC-264713が、アミロイド斑を含有するAD脳に用量依存的に0.4μg/mlのEC50で結合するが、一方、アミロイド斑が存在しない非ADヒト、ラット又はカニクイザル脳組織には結合しないことが実証された。AC-264713をex vivoファゴサイトーシスアッセイにおいて濃度a~cで試験したところ、AC-264713はhiPSC由来食細胞を活性化して、斑を除去した。AC-264713をAPPPS1-21マウスに単回IV注射後に全身注射した3日後、AC-264713は脳及び血清において検出され、曝露が用量依存的に増加し、斑に用量依存的に結合した。APPPS1-21マウスを使用した急性微小出血モデルでは、AC-264713マウス前駆抗体では、単回IP注射後3日以内に微小出血は引き起こされなかった。総合すると、インビトロ及びインビボデータから、AC-264713、即ち、末梢投与後に脳内のアミロイド斑に結合し、ミクログリアファゴサイトーシスを活性化することができる十分なエフェクター機能を有する抗AβpE3モノクローナル抗体の提唱される作用様式が例示される。前述のことから、アミロイド斑をAD脳から除去することによってアルツハイマー病を治療するための使用に関するAC-264713の適合性が示される。
【0134】
例示的な実施形態
種々の特定の実施形態を例示し、記載してきたが、一部は以下に表される。種々の変化が本発明の概念の主旨及び範囲から逸脱することなくなされ得ることが理解される。
【0135】
1.(i)3つのCDRを含む可変重鎖(vH);及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβpE3抗体であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
抗ヒトAβpE3抗体。
【0136】
2.配列番号7として記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8として記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1の抗ヒトAβpE3抗体。
【0137】
3.配列番号9として記載されるアミノ酸配列を含む重鎖及び配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、実施形態1の抗ヒトAβpE3抗体。
【0138】
4.IgG定常領域を含む、実施形態1の抗ヒトAβpE3抗体。
【0139】
5.Fc部分を含むヒト重鎖定常領域を含み、Fc部分が、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、又はIgMアイソタイプである、実施形態4の抗ヒトAβpE3抗体。
【0140】
6.カッパ軽鎖定常領域を含む、実施形態5の抗ヒトAβpE3抗体。
【0141】
7.実施形態1の抗ヒトAβpE3抗体を含む組成物。
【0142】
8.神経変性障害を治療するための方法であって、実施形態1の抗ヒトAβpE3抗体を、それを必要とする患者に投与するステップを含む、方法。
【0143】
9.神経変性障害が、アルツハイマー病(AD)である、実施形態8の方法。
【0144】
10.抗ヒトAβpE3抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドであって、抗体が、(i)3つのCDRを含むvH鎖;及び(ii)3つのCDRを含むvL鎖を含み、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
ポリヌクレオチド。
【0145】
11.実施形態10のポリヌクレオチドを含むベクター。
【0146】
12.実施形態11のベクターを用いて形質転換された真核生物宿主細胞。
【0147】
13.哺乳動物宿主細胞である、実施形態12の真核生物宿主細胞。
【0148】
14.抗ヒトAβpE3抗体を産生する方法であって、(a)実施形態13の真核生物宿主細胞を培養するステップ及び(b)抗ヒトAβpE3抗体を回収するステップを含む、方法。
【0149】
15.2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、各重鎖が、配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む、抗ヒトAβpE3抗体。
【0150】
当業者は、本発明の概念が、目的を遂行し、言及されている並びにそれらの固有の結末及び利点を得るために十分に適合することを容易に理解する。本明細書に記載されている特定の実施形態は、代表的及び例示的なものであることが意図されており、本発明の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨に包含されるその中及び他の使用における変化は、当業者には明らかになる。
【0151】
参考文献
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【0152】
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【0153】
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)3つのCDRを含む可変重鎖(vH)及び(ii)3つのCDRを含む可変軽鎖(vL)を含む抗ヒトAβ
pE3抗体であって、
vH CDR1が、GFSLSTSGMGVS(配列番号1)であり、
vH CDR2が、HIYWDDDKRYNPYMKR(配列番号2)であり、
vH CDR3が、RADDYDVGFAY(配列番号3)であり、
vL CDR1が、LASQTIGTWLA(配列番号4)であり、
vL CDR2が、AATSLAD(配列番号5)であり、
vL CDR3が、QQLYSSPFT(配列番号6)である、
抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項2】
配列番号7として記載されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号8として記載されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項3】
2本の重鎖及び2本の軽鎖を含み、各重鎖が、配列番号9として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む
、抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項4】
2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗ヒトAβ
pE3抗体であって、各重鎖が、配列番号37として記載されるアミノ酸配列を含み、各軽鎖が、配列番号10として記載されるアミノ酸配列を含む、抗ヒトAβ
pE3抗体。
【請求項5】
ヒトIgG1定常領域を含む、請求項1に記載の抗ヒトAβ
pE3
抗体。
【請求項6】
カッパ軽鎖定常領域を含む、請求項5に記載の抗ヒトAβ
pE3
抗体。
【国際調査報告】